○野々上秘書課長 ただ今から,刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会の第1回会議を開催いたします。
初めに法務大臣からあいさつがあります。
【法務大臣あいさつ】
○杉浦法務大臣 おはようございます。法務大臣の杉浦正健でございます。検討会を開催するに当たりまして一言ごあいさつを申し上げます。
まず,先生方には大変御多忙のところ,この会の委員をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございます。
この会は,国民に理解され支えられる刑務所を目指しまして,平成15年に有識者の方々に御参集いただいて開催されました行刑改革会議におきまして,人権救済のための制度の整備について御提言をいただいた,先生方御案内のとおりの経緯で立ち上げたものでございます。具体的に申し上げますと,刑事施設の被収容者からの不服申立てにつきまして,より公平で公正な救済を図るべく,優れた識見を有しておられる皆様によって御審理いただき,私どもに御意見をいただくものでございます。
私どもは,行刑改革会議の御提言の趣旨を最大限尊重いたしまして,現在,法改正も含めた諸改革を進めているところでございますが,国民に理解され支えられる刑務所を作るためには,国民の視点からの御意見を頂戴することが何より大切なことでございます。
委員の先生方におかれましては,それぞれの御専門のお立場と豊かな御経験から,審理をお願いする案件につきまして,率直に御議論いただき,忌憚のない御意見をいただけますよう,よろしくお願いいたします。私どもといたしましても,頂戴した御意見を踏まえ,不服申立てについて,より一層適切な処理に努めてまいる所存でございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
○野々上秘書課長 それでは法務大臣は退席させていただきます。
〔法務大臣退席〕
【委員紹介】
○野々上秘書課長 秘書課長の野々上と申します。司会を進行させていただきます。本検討会は,大臣官房秘書課に置かれることとなりますので,私が事務局長の役目をさせていただきますので,何かございましたら私の方に御連絡いただきますようお願いいたします。
それでは,最初に私の方から,委員の先生方を御紹介させていただきます。〔秘書課長から各委員が紹介された〕
【座長選出等】
○野々上秘書課長 それでは続きまして,この会議の座長を委員の皆様方からお選びいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。どなたか御推薦いただきますようお願い申し上げます。
○横山委員 僣越でございますけれども,私の方から南博方委員を推薦させていただきたいと思います。今日お集まりの委員の皆様すべて御適任だと思っておりますが,南先生は,行政法の第一人者であります上に,公害等調整委員会委員,国税審査会委員を歴任され,実際に数多くの不服審査をされております。今回,刑事施設の被収容者からの不服を第三者が審査するというのは初めてのことであり,この大変な問題について,座長として御活躍いただくのに御適任かと思い,僣越でございますが,私から推薦をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
○野々上秘書課長 ありがとうございました。今,横山委員から南委員が適任者ではないかとの御意見がございましたが,いかがでございますでしょうか。
○委員 (賛成)
○野々上秘書課長 それでは御異議ないようでございますので,南先生に座長をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○南座長 御指名がございましたので,大変僣越ではございますが,私が座長として議事進行役を務めさせていただきます。
私は,行刑改革会議の委員として,行刑の問題,特に受刑者の人権と不服申立制度の課題についてかかわらせていただきました。そこでの議論を通じまして,行刑におきましては,不服申立制度の整備とともに,公平かつ公正な処理をどのようにして担保するかが重要な課題であると強く感じたのでございます。
法律の制定によりまして,制度の整備はなされましたので,次に,公平かつ公正な処理をどのように担保していくかが今後の課題となると考えますが,そのためには,外部の意見を処理に反映させることが必要であります。この会は,新たな制度に魂を入れるものと言っても過言ではなかろうと思っております。
一方,被収容者に対する措置には専門・技術的な部分が少なくなく,その措置に対する不服を外部の者が審査するということは,複雑困難な面もあろうかと思いますけれども,皆様方の御見識をもって,適切かつ適正な御審査をお願いできればと考えております。私も,これまで携わってまいりました行政不服審査の経験などを生かしまして,微力ながら努めてまいりたいと考えております。
最後になりましたが,座長といたしまして,誠心誠意会議の運営に携わってまいりたいと存じますので,皆様の御支援と御協力のほど切にお願い申し上げる次第でございます。
○野々上秘書課長 座長におかれまして,場合によっては御欠席等のこともあろうかと思いまして,あらかじめ座長代理をお決めいただければ幸いに存じます。これについては座長の御指名でいかがかと思いますが,よろしくお願いいたします。
○南座長 それでは,葉山先生に座長代理をお願いしたいと存じます。葉山先生は,弁護士として多年御活躍されているばかりでなく,日本道路公団における入札監視委員会委員の御経験もあると伺っております。適任と存じますので葉山先生どうぞよろしくお願いいたします。
○葉山委員
僕が適任かどうか分かりませんけれども,誠心誠意座長を補佐してやっていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
○南座長 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
【委員自己紹介】
○南座長 それでは資料説明の前に,簡単に自己紹介をお願いしたいと存じます。五十音順でお願いいたします。後藤先生,桜井先生,葉山先生,私,横山先生の順で自己紹介をお願いいたします。
○後藤委員 千葉大学の後藤です。私の専門は刑事法でございまして,少年法や刑事政策について長年研究してきております。先ほど座長の御挨拶にもございましたように,新しい法律ができてその中のひとつの大きな改善点としまして不服審査の制度があると思います。刑務所の中にいる方達というのは外部との接触があまりなく,その中で誰の助けもなく孤立している状態があるかと思います。そういう意味では,刑務所の中での人権をより適正に保障していくということでこの検討会の役割というのはかなり大きなものと思っております。微力ではございますが,このような歴史的と言っても過言ではない会の一員として,皆様と御一緒に適正な対応に努めたいと思いますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。
○桜井委員 桜井と申します。内科医でございます。以前に府中刑の医務部に少し勤務したことがございまして,その関係でこのような大役が回ってきたのだと思いますが,不慣れなことと申しますか,公正公平にというのはなかなか難しいのではないかと思いますが,一生懸命やらしていただきますのでよろしくお願いいたします。
○葉山委員 葉山と申します。第二東京弁護士会所属です。昭和57年に刑事施設法が上程されたころ,当時反対であったのですけれども,とにかくそういうメンバーに入って十数年,研究というと大袈裟ですけどやってきまして,全国の刑務所を十数か所見学させていただきました。それから全くその方から離れてしまったので,全く今白紙の状態です。どこまで公正にきちんと見れるかどうか分かりませんけれども,皆さんと共に研究していきたいと思っています。よろしくお願いします。
○南座長 南でございます。一橋大学教授,それから成城大学学長を二期勤めまして,昨年の4月から大宮法科大学院の教授をいたしております。大宮法科大学院は葉山先生が会長を務められておりました第二東京弁護士会が作りました日本で唯一の大学院,法科大学ロースクールでございます。専攻は行政法,特に行政訴訟,不服審査法,行政紛争処理を中心に研究をしてまいりました。この度は,受刑者の不服申立ての審理の仕事に携わることになりまして,大変光栄に存じております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○横山委員 横山武士でございます。昭和30年に東京教育大学農学部を出まして,教員として38年間勤めてまいりました。その間,教育委員会の勤務もありますけれども,大部分は学校で過ごしてまいりました。退職後も教育に関わる仕事をさせていただいておりますけれども,平成10年1月1日東京拘置所の篤志面接委員に任命されまして,今年で9年目に入り,刑務行政の教育の面で関わっております。学校では,同和教育の視点で人権教育を進めてまいりまして,シビアな人権感覚が必要だということをいろいろな場面で感じております。この度,ささやかな経験を生かして,皆さんと一緒に円滑な刑務行政が進められるよう努力してまいりたいと思いますで,御指導のほどよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○南座長 自己紹介どうもありがとうございました。
【配布資料説明】
○南座長 資料がございますので,資料1及び資料2について事務局から御説明をお願いしたいと思います。
○林矯正局総務課長 矯正局の総務課長でございます。私からは,資料1につきまして,資料1にありますこの会開催の経緯につきまして御説明させていただきます。
資料1,行刑改革会議提言を御覧ください。この31ページを見ていただきますと,「人権救済のための制度の整備」という項がございます。この下(2)「公平かつ公正な救済」という段につきまして,「行刑施設における被収容者の人権侵害に対し,公平かつ公正な救済を図るためには,矯正行政を所掌する法務省から不当な影響を受けることなく,独自に調査を実施した上で判断し,矯正行政をあずかる法務大臣に勧告を行うことのできる機関を設置することが必要不可欠である。このような観点からは,独立性を有する人権救済機関が,可及的速やかに設置されるべきであると考える。」といった提言がございました。これに対し,次に続きますが,「他方,被収容者の人権侵害に対する救済制度等の整備は喫緊の課題であるところ,上記人権救済機関が設置されるまでには,若干時間が掛かるものと思われることから,それまでの間,暫定的かつ事実上の措置として,法務大臣が情願及び新法によって整備された再審査の申立てを処理するに当たり,刑事施設不服審査会(仮称)に調査審理をさせ,必要な場合に法務大臣への勧告を行わせることにより,その公平かつ公正な処理を期するべきである」といった運営の提言をいただいたものであります。この提言を受けまして,今回のこの刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会を開催するものでございます。
なお,この調査検討会という名称でございますが,これは,被収容者の不服を審査するという趣旨であることに加えまして,場合によって実地調査をすることがあるということも明確にするため,名称を刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会としたものでございます。
○佐藤矯正局矯正監査室長 引き続きまして,被収容者の不服申立ての現状について簡単に御説明させていただきます。監獄法第7条では,刑事施設の在監者は,監獄の処置に不服があるときは,法務大臣に対して情願をすることができるとされております。この情願の件数ですが,資料2にありますとおり,毎年増え続けており,平成11年には1,526件であったのが,昨年平成16年には7,500件というふうになっております。これは,収容人員数が増えていることがまずその要因の一つでありますが,ちなみに平成11年は53,947名の収容人員でしたが,昨年16年は一日平均で75,289名と人員が増えております。そのような要因の一つのほかに,一人当たりの申立件数が増えていることが言えると思います。これは,平成11年は一人当たり平均2.6回であったのが,16年には3.6回というように一人当たりの件数が伸びている。それから,申立てをする者の割合が,平成11年には全体の1パーセントであったのが,16年には3パーセントというように伸びているということも要因の一つであると考えられます。
次に資料2の2枚目でございます。2枚目は情願申立件数のうち,既決と未決の別を示したものであります。平成11年と平成16年を比較しますと,未決は2倍弱の増加でございますが,これに対しまして,既決は6倍を超えるという増加になっております。これは,未決の被収容者の増加がこの5年間で約1,000名だったのに対し,既決の方は約20,000名増えている,やはりこれは収容人員の増によるものというふうに考えております。
次に資料2の3枚目でございます。情願申立ての内容の構成比であります。これは,平成16年中に処理した情願についてでございますけれども,多い順から言いますと,職員関係,職員関係と申しますのは,職員による暴行があったとか,不適切な発言ということがあったとかということでございますが,それが27パーセント,それから衛生医療が13.6パーセント,その次に懲罰が8.7パーセント,そして苦情処理が8.0パーセントとなっております。なお,この苦情処理というのは,施設の幹部職員,所長,部長,それから課長,首席,統括等に対する面接を願い出たけどもなかなか実施してもらえないとか,その面接の内容に不服があるというようなものをまとめまして苦情処理というところに入れております。以上簡単ですが説明を終わらせていただきます。
○南座長 ありがとうございました。資料1及び2について御説明をいただきましたが,これまでの説明において,御質問等がございましたらよろしくお願いします。
○後藤委員 今の御説明ですけれども,例えば1番多い方で,年間どのくらいの件数を情願されているのですか。
○佐藤矯正局矯正監査室長 一番多い人で,一年間で200件です。
○後藤委員 ということは,ほぼ毎日のように。
○佐藤矯正局矯正監査室長 ほぼ日記のように書いている人もございます。
○横山委員 男女比はどうですか。
○佐藤矯正局矯正監査室長 圧倒的に男性が多ございます。次回にでも統計等でお示ししたいと思います。
○南座長 ほかに何か御質問はございませんか。
それでは,会議の時間の関係もございますので,申し訳ありませんが,御質問については以上で切り上げまして,後ほど個別に事務局に説明をしていただきたいと思います。
【開催要綱】
○南座長 続きまして,次の議題であります,今後の会議の進め方について,事務局から資料3開催要綱案の御説明をお願いいたします。
○野々上秘書課長 私から御説明申し上げます。開催要綱案につきましては6項目からなってございます。
1の目的でございますが,刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会は,刑事施設の被収容者によりなされた法務大臣に対する不服申立てについて,法務大臣による付議に応じて,調査検討を行うことを目的として開催するということでございます。
構成は,別紙のとおりでございます。不服検討会の座長を構成員の互選によりこれを定めることとしております。
運営でございますが,座長は,不服検討会の意見を取りまとめるとともに会務を総理する。座長に事故があるときは,あらかじめその指名する構成員がその職務を代理することと定めることとしております。
開催期間でございますが,不服検討会の開催期間は,平成19年3月31日までとするとしてございます。これについて御説明申し上げますと,行刑改革会議の提言におきましては,人権救済機関が設置されるまでの暫定かつ事実上の措置として提言されているところでございますが,これに従えば,極端に言いますと人権救済機関が設立されるまでという定めもできるかと思いますが,それではあまりにも漠然としておりますことから,一応区切りを付けるという意味で,19年3月31日までとして,その都度更新するという扱いにさせていただきたいと考えているところでございます。
それから,不服検討会におきましては,調査検討した不服申立ての処理について,法務大臣に提言をするとしてございます。先ほど大臣のあいさつにございましたとおり,当然,当省といたしましては,その御提言を最大限尊重して処理させていただきたいと考えているところでございます。
構成員は,不服検討会において知り得た秘密を漏らしてはならない,不服検討会の構成員を退いた後も同様とする。これは,個別,プライバシーにわたる事項を取り扱いますので,そのような取扱いにさせていただきたいと考えてございます。
それから庶務でございますが,不服検討会の庶務は,法務大臣官房秘書課において行うとしております。これは,行刑改革会議の提言におきまして,検討会は矯正に関する事務を担当する部局等から独立したものとすべきであるとされていることを踏まえて,矯正局ではなくて,大臣官房秘書課において事務を行うこととしたものでございます。
以上でございます。
○南座長 ありがとうございました。ただ今の事務局案に対しまして,御質問等ございませんでしょうか。
○葉山委員 葉山です。5の法務大臣に提言するというふうに書いてあるのですが,行刑改革会議だと勧告するというふうに書いてある。それから,この会の名称も刑事施設不服審査会と,仮称なのですけどなっていて,今回のような名称になった経過を御説明して下さい。
○野々上秘書課長 まず会の名称につきましては,会の目的が不服審査に関するものを行うということと,それから,そのためには実地調査を含む調査をしていただくということで,それを十分,適切に表す文言としては,この調査検討会が適切ではないかと考えた次第でございます。
また,勧告ということではなく提言ということでございますが,これは,暫定的かつ事実上の措置として設置するということでございますので,気持ちとしては当然,提言を最大限尊重するということではございますが,勧告という言葉はなかなか使いにくいのではないかと考えた次第でございます。
○南座長 ただ今の説明でよろしゅうございますか。御異議ございませんか。事務局案のとおりでよろしゅうございますか。
○委員 (異議なし)
○南座長 それではこの事務局案で決定させていただきます。
【審理手続】
○南座長 次に事務局から資料4審理手続案を御説明願います。
○佐藤矯正局矯正監査室長 審理手続案について御説明いたします。資料4の1審理する案件ですが,これについては先ほどの行刑改革会議の提言の資料1の32ページ3行目に「情願及び監獄法改正により整備される再審査の申立てを処理するに当たり,刑事施設不服審査会(仮称)に調査審理をさせ」とあることから,新法におきましては,法務大臣に対する再審査の申請及び事実の申告を審理いただきまして,未決被収容者につきましては,それに準じた情願を審理いただきたいと考えております。新法施行前におきましては,審査の申請,事実の申告の対象となる措置に対する情願を審理いただくことを考えております。
また,同じく行刑改革会議の提言,同じページの一番下の行ですけれども,法務大臣は,被収容者の不服に理由がないと判断しようとするときは審査会の議に付するものとされておりますことから,被収容者の不服に理由がないと判断しようとするものを審理いただきたいというふうに考えております。
この場合の処理の流れを図で御説明いたします。資料5の情願処理手続図をご覧いただきたいと思います。まず現行の監獄法の情願処理手続でございますが,情願の申立てがあった場合,不服とされている措置が審査の申請と事実の申告の対象となる措置か,その他の措置かにより,手続が異なります。また,反復した申立てや趣旨不明なもの,監獄の措置に当たらないものは,不適法なものとして棄却しております。なお,用語の問題ですが,情願においては,理由なしとするものを却下,不適法なものを棄却としておりまして,行政不服審査法とは反対になっております。
これまでは,調査・審査の後,法務大臣等の決裁を受けておりましたが,今後は,審査の申請と事実の申告の対象となる措置に対する情願である場合には,決裁の前に,審査会において御審理をいただきまして,その結果を踏まえ,情願処理をいたします。
次に審査の申請における審査の手続について御説明申し上げます。審査の申請の対象となる措置は,新法の第112条に規定されておりますが,資料6にまとめてございます。御覧ください。措置というところで領置金の使用不許可措置というところから始まりまして,下の取調隔離措置というところまで,これまでが審査の申請を行うことができる刑事施設の長の措置となっております。なお,措置の名称は,便宜上記載したものでございます。
これらの措置に不服がある場合の流れについて,資料7の審査の申請処理手続図にまとめてございますので御覧ください。まず,矯正管区に審査の申請が行われます。そして,矯正管区において調査し,審査します。そして矯正管区の長により却下,棄却,認容のいずれかの裁決がなされますが,この裁決に不服がある場合,受刑者は法務大臣に再審査の申請をすることができます。再審査の申請は,矯正局において,調査・審査をし,施設の措置に違法又は不当なしとして,棄却の裁決をしようとする場合には,検討会にお諮りするものでございます。
次に事実の申告について説明いたします。事実の申告の対象となる行為は,新法の第118条に規定されておりますが,資料8にまとめてございます。職員による暴行,それから捕縄使用,手錠使用,拘束衣の使用,保護房収容といった行為についてであります。事実の申告の処理手続につきましては,資料9の事実の申告処理手続図を御覧ください。これは審査の申請と同様でございまして,まず矯正管区に申告がされ,矯正管区において確認がされ,その確認に不服がある場合には,法務大臣に事実の申告をすることができます。矯正局におきまして,調査・審査をし,違法又は不当ではないとして,事実なしの確認をしようとする場合に,検討会にお諮りするものでございます。
次に資料4に戻りまして,2の審理方法でございます。これまでの情願の処理状況からみますと,審理する案件は,多い場合には月に100件となる場合もあり得ることから,限られた時間内でそれらのすべての資料を精査し,詳細に審理していただくことは困難であろうと考えられます。したがいまして,例えば事案が重大であるとか,理由なしとするには若干の疑義があるなど特に慎重に処理すべきと認められるとして当局又は先生方が指定される案件については,証拠資料を提示するなどして詳細な審査をというように考えております。
そのほかの案件につきましては,資料4の2枚目に添付しております概要等を書きました案件リストを基にいたしまして,御意見をいただきたいと考えております。
次に資料4の3,審理手順についてでございます。まず,(1)の事前送付等として,審査会の2週間程度前に,案件リストを作成し,各委員ごとに案件を振り分け,各委員に案件リスト及び振り分けた案件に係る不服申立書の写しを送付することといたしまして,委員の先生には,振り分けられた案件の中から重要なものと認める案件又は疑義があると認められる案件につきまして,検討会の前日までに,事務局に御通知いただきまして,当日,証拠資料を示すなどして詳しく御説明等をしたいと考えております。なお,送付する案件リストには,氏名でありますとか,年齢とか個人識別情報は記載せずに,不服申立書の写しにおいては,個人識別情報は黒く塗りつぶした上で送付させていただきますので,御了承いただきたいと思います。
審査会の回数ですが,月に2回程度考えておりますが,2回検討会を開催するとしても,これまでの情願の処理状況からしますと,1回当たり審理する案件は30から40件程度になると考えられます。それらのすべてのうちから先生方に案件を指定していただくとした場合,案件リストの全部を読んでいただかなくてはなりませんので,その手間を多少なりとも省くために,案件を割り振り,その中から重要なものと認められるものを御指定いただきたいと考えている次第でございます。
次に(2)当日の審理についてでございますが,特に慎重に処理すべき案件及び委員から指定された案件について,必要に応じて証拠資料を提示するなどして説明し,御意見をいただき,そのほかの案件につきましては,案件リストを基に御意見をいただくこととしたいと考えております。
次に(3)処理案について委員から疑義が提示された場合についてですが,必要に応じて,矯正局による再調査及び再検討を行い,次回の審査会において又は個別に委員の先生に説明し,御意見をいただき,委員の先生から要望のある場合には,委員の先生が直接刑事施設に赴き,職員又は被収容者からの事情聴取でありますとか,資料の閲覧などを行っていただき,その上で御意見をいただきたいということを考えております。これらにより頂戴した意見を踏まえまして不服申立てを処理するということにしたいと考えております。
最後に,4のその他でございますが,定足数についてでございます。御多忙な先生が多ございますので,毎回5人全員そろうということは難しいかと思います。しかし一方で,不服申立ても速やかに処理する必要がありますので,委員の先生の過半数をもって検討会を開催することとさせていただきたいと考えております。
以上で,手続案の説明を終了させていただきます。
○南座長 ありがとうございました。ただ今は,審理手続案について御説明いただきましたが,これについて御質問等ございましたらお願い申し上げます。
○後藤委員 新法ができた後とできる前とで上がってくる案件の種類というのはどうなっているのでしょうか。
○佐藤矯正局矯正監査室長 新法施行前は,情願しかまだ不服申立制度がございませんので,情願の中で,再審査の申請,事実の申告に当たるものをピックアップいたしましてお諮りする,それもこちらの方で棄却をする又は事実なしとするものについてお諮りするということになります。新法施行後におきましては,再審査の申請,事実の申告というのは,受刑者は申し立てできますが,未決につきましてはそのままの情願が残りますので,その情願の中で再審査の申請,事実の申告ができるという内容のものの中で棄却しようとするもの,事実なしとするものについてお諮りするということになります。
○後藤委員 基本的には,ずっと2つの流れでいく,情願として受けたものと新法施行後は新法として受けたものを分けて,その分けた上で審査を行っていくと理解してよろしいのでしょうか。
○佐藤矯正局矯正監査室長 はい。
○後藤委員 この会議というのは,手続の流れの中で一部の案件のみ,例えば新法施行後ですと再審査の申請というものだけを見ていくわけですけど,その前の矯正管区レベルのシステム,つまり,申し立てられた不服がここまで来るかどうかというのが一つ大きな問題だと思うのです。もちろん,矯正管区等において適切な処理がされているとは思いますけれども,このような第三者機関の設置に際して,ここでの審理の直接対象とはならないとはしても,何か考えてらっしゃることはあるのでしょうか。
○野々上秘書課長 それにつきましては,私どもとしましては,単なる苦情だと思っていても,申し立てる側は処分等に対する不服だとか思っている場合もあって,そこら辺の双方の食い違いというのはできるだけ公平に見ていただくのがこの検討会の趣旨にも合致すると思います。そういうことで,俎上に上らない言わば概括的なことについても,取りあえず定期的に概況を御説明する機会を設けて,その中で御注文,御指示に従って,ある程度具体的なものもサンプル的にということはあり得るのではないかと考えられます。ただそれを全部上げるとなりますと,今の統計ですと7,000件,これら苦情処理的なものまでは実際上げられないので,そこのスクリーニングがきちんとなされているということについて,できるだけ御説明をこの会の機会に工夫させていただきたいとは考えております。
○後藤委員 その再審査の対象とならずにこぼれていってしまうもの,今おっしゃたように苦情レベルの中でも苦情として取り扱うことが果たして適当なのかということについても,せっかくこういう検討会ができたので,大きくシステム全体を見通せるような資料の提供や御説明を取りあえずやっていただかないと,上がってきたものだけを見ても,それが全体の中でどのような意味付け,位置を占めているのかというのが分からないと思いますので,その点についてできる限り対応していただければと思います。7,000件一度に来るわけでもないものですから,年間の件数が10,000件よりもっと増えたとしても,私の個人的な希望としては,こういうことが今月はありましたという月間の報告でも構わないので出していただければと思います。ここで判断するときの基準として実際どういう形で不服の処理に対して対応してらっしゃるというのが分からないと,こちらも今までの実務とかけ離れた対応をする,若しくは実務が適切に運営されていないのにそれを継続させるような形になってしまうという検討会の趣旨に反することになりかねないと思います。この点につきましては,先ほどの審理のところに書くことではないかと思いますが,全体像の御説明を必ず行っていただくということを何らかの形で付け加えていただければと思います。
○林矯正局総務課長 一点補足させていただきますが,今の後藤委員のお話は二つのことがあると思いますが,それは一つは,審査の申請とか事実の申告に当たる部分とそうじゃない部分の区分けについての問題,それが適正になされるかという問題,それからもう一つは,苦情の処理についても何らかこの調査検討会で御意見をうかがうかどうかといった,こういった二つの問題があるのではないかと思うのですけど,前者に関して言えば,審査の申請と事実の申告はもう法律で非常に定型的に定まっておりますので,この区分けにおいて不分明なことが起きるかというとそれほどはないと思います。その点については,そのために法律で細かく限定列挙いたしましたので,その点は大丈夫だと思います。それから苦情についてはどのような対応をするかと言いますと,少なくとも苦情自体は法務大臣への苦情というのがございますので,全部が全部苦情については管区で止まってしまって法務省に上がって来ないというわけではございません。ですから苦情は苦情として我々として処理させていただきます。ただもちろん秘書課長からありましたとおり,苦情についても,トータルのようなかたちで何らかの情報提供をさせていただくということは十分に配慮させていただきたいとは思っております。
○後藤委員 情願の部分も残るわけですよね。確かにおっしゃるように新法については限定列挙できちんとされているのですが,情願というところでは同じ問題が残ると思います。
○林矯正局総務課長 情願の中の苦情として上がってくるものもあれば,新法の中でいわゆる苦情として法律上位置付けられて上がってくるものもあります。
○南座長 ほかに何か御質問は。
○葉山委員 多くて月100件くらいあるということなのですが,果たしてこの5人の委員でそれを処理できるかどうか。それで,情願している人にとっては,やはり公平に公正にやっているということが保証されなければいけないし,そう思えるような形にしなければいけないと思うんですね。5人の委員でそれが果たして審査できるかどうか。そうするとやっぱり,事務局の機能を非常に強くして,だけど事務局が法務省だけだと内々にやっているんだというふうに情願する人から見られるので,外部の人をですね,人権擁護法案では確か弁護士を入れてというようなことがありましたので,外部の委員を入れた事務局を構成するということをですね,すぐとは申し上げませんけど,そういうことを少し構想していただけたらと。もしそういうことが当分できないということであれば委員を増加するなどしていくつかの部門を分けてですね,分科会みたいなものを設けて処理をするとか,何かそういう手当をしないとまずいのではないかなというように思っています。取りあえず今,こういうことでスタートさせてですね,追々進んでいったときに問題が生じたときにそこら辺を御配慮いただけたらと思っています。
○南座長 今の御意見について事務局の方から何かございますか。
○野々上秘書課長 事務局長の立場として一言。専属となりますと職員になっていただくしかないというのが事務的な問題としてはあろうかと思いますが,ただ幅広く御意見は頂戴していきたいと思っておりますので,本日は事務局のリストを資料の中に入れておりませんで申し訳ございませんでしたけれども,きちんと事務局として看板を作りまして常時窓口をオープンにさせて,いろんな外部の方とも接触を図らせていただきたいと考えておりますので,取りあえずそれで進めさせていただきたいと思います。
○南座長 確かに今葉山委員がおっしゃったように案件がかなり多ございますので,果たして5名だけでやっていけるかどうか問題があるかと思いますが,とにかくこれで一度発車いたしまして,試行的にやってみた上で少し御検討いただきたいと思います。
新法ができるまでは,先ほどの問題に関連しますが,情願というのはですね,これは私は反対なのですけども,判例あるいは学説によりますと請願と同じ性質を持っているとされてきました。ですから請願と言えば一種の苦情処理的なものですけども,それをどうやって新法で言うところの不服申立て,特に法務大臣に対する再審査の申請,それともう一つは事実の申告,それから純粋な苦情申立てというのがありますけれども,これの振り分けですね。今度は不服申立ての対象というのが列記されておりますので,それに係るものは全部不服申立てとされるわけでしょうか。そのように理解してよろしいですね。
○佐藤矯正局矯正監査室長 はい。
○南座長 そうすると事実の申告についてもこれの対象となるのは3つくらいありますので,その対象となるものは苦情申立てではなくて事実の申告として扱う,それ以外のものは苦情申立てということになるわけですね。そこのところを振り分けですが,きちんとしていただければと思います。
ほかに御質問はございませんか。それでは,ただ今御説明をいただきました事務局の審理手続案に御異議はございませんか。
○委員 (異議なし)
○南座長 それでは御異議ないと認めましてこれを決定させていただきます。
【議事録の作成及び公開】
○南座長 最後になりましたが,議事録の作成及び公開について,事務局案を御説明ください。
○野々上秘書課長 議事録の作成につきましては,第1回は別といたしまして,第2回以降の個別の案件審理におきましては,案件の内容によっては個人識別情報をマスキングしても申立人が特定されることなどもあり得るため,刑事施設の被収容者という特殊性にかんがみまして,議事録は作成せず,資料も公開すべきではないと考えております。そして,この会の意見は,個別の案件の資料として,その一部として記載をすると,個別資料の中には資料として記載されるという扱いをさせていただきたいと考えております。なお,審理した案件数とそのうち法務省意見相当とした件数及び不相当とした件数については,公開をさせていただきたいと考えおります。以上が事務局案でございます。
○南座長 ただ今の事務局案に御意見はございませんか。
○委員 (意見なし)
○南座長 御意見がないようですので,それでは,第1回の議事録及び資料は公開する。それから第2回以降につきましては,議事録は作成せず,資料も公開しないとすることとしてよろしいでございますね。
○委員 (異議なし)
○南座長 それでは,本日の議題はすべて終了いたしましたので,閉会としたいと思いますが,最後に何か,御発言等ございましたらお願い申し上げます。
○後藤委員 先ほどスクリーニングの話がありましたけれども,この会議の設置について,受刑者,被収容者達にどのようなかたちで広報されるのかということが若干気になっております。スクリーニングもさることながら,客観的に見て不適切なものができる限り少なくなっていくということが望ましいことを考えますと,「申立てをしたら適切に扱ってくれる」と被収容者が思うことがとても大切かと思っております。今後,新法についてもいろいろな説明も被収容者にしていかなくてはならないと思うのですが,そういうときに同じような形で「こういう検討会が設置されて,再審査については外部の人たちがチェックする」ということも折に触れて広報していただければと思います。
○南委員 何か御意見ございませんでしょうか。今後の運営につきましても結構でございます。
○葉山委員 日程的にはどうなるのですか。
○野々上秘書課長 取りあえず次回は1月26日午前10時からこの会議室での開催を予定しております。今考えている案といたしましては,第二,第四木曜日の午前中を定例日とさせていただければありがたいのですが。
○南座長 皆さんの御都合をうかがって,定例をきちんと決めておいた方が皆さん御都合を付けやすいと思いますので,そのような方向でお願いいたします。4月からはまた別途考えていただくとして,3月末まではそれでよろしゅうございますね。
○委員 (異議なし)
○南座長 それでは,第1回の会合を閉会します。
以上
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