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第1回行刑改革推進委員会顧問会議

日 時: 平成16年6月7日(月)14時10分~16時10分
場 所: 法務省第1会議室(20階)

午後2時10分 開会

○林矯正局総務課長 それでは,行刑改革推進委員会顧問会議を開催いたします。

行刑改革推進委員会委員長あいさつ

○林矯正局総務課長 まず始めに,当委員会の委員長であります但木法務事務次官からあいさつがございます。
○但木事務次官 行刑改革推進委員会顧問会議の開催に当たりまして,一言ごあいさつを申し上げます。
 顧問の皆様方におかれましては,本日は御多用中のところ,この行刑改革推進委員会顧問会議に御参集いただきまして,誠にありがとうございました。
 行刑改革は法務行政における喫緊の課題となっているところでございますが,昨年末,皆様方から貴重な御提言を頂いたことによりまして,現在本格的な作業を省を挙げて行っているところでございます。最近の治安情勢の悪化を受けまして,全国の行刑施設は過剰収容の状態が続き,行刑を取り巻く厳しい環境は依然として続いておりますが,一方で治安の最後の砦として行刑に対する各方面からの関心は,かつてないほどに高まっていると思っております。
 このような情勢の中で,私どもといたしましては行刑改革会議から頂きました御提言の趣旨を最大限尊重し,是非とも国民に理解され支持される行刑施設を実現しなければなりません。そのためには,本日御報告いたします具体的な諸改革を更に進めることはもとより,現場施設において勤務するすべての矯正職員に行刑改革会議から御提言いただいた趣旨を理解させ,その精神を徹底することが不可欠であると考えております。全矯正職員に対して,御提言の冊子を配布いたしましたほか,研修や各種協議会の場におきまして提言についての説明を実施するなど,様々な方策を講じているところでございます。
 本日は,法務省が取り組んでおります行刑改革の実施状況や検討状況を顧問の皆様方に御報告させていただきますために,この会議を開催させていただきました。本日法務省から顧問の皆様方に御報告させていただきます点は,一つは,法改正を待たずに実施できる方策として既に取り組んでおります改革の具体的な実施状況についてであります。もう一つは,監獄法の抜本的改正の方針についてであります。
 既に行刑改革会議の席上などでお示しいたしました「法改正を待たずに実施できる方策」は多岐にわたるものでございまして,その実施状況にはかなり進んだものもある一方で,今後本格的に進めなければならないものもございます。いずれも行刑改革を着実に進めるためには大変重要なものであると考えておりますので,本日顧問の皆様からお伺いする御意見等も踏まえまして,引き続き真剣に取り組んでまいりたいと存じます。
 また,監獄法の抜本的改正につきましては,監獄法が明治41年に制定されて以来,実質的な改正を経ないまま今日に至っているため,被収容者の権利,義務が明確でないなどの不十分なものとなっており,過去三度国会に法案を提出しながら,いずれも実現しなかった経緯がございます。行刑改革会議の御提言でも,速やかな全面改正が求められているところであります。本日は,その法改正の方針について御報告させていただきますが,行刑改革を成し遂げるためには監獄法を新しい時代にふさわしいものに改めることが不可欠でありまして,その早期実現に向けて最大限の努力を行っていきたいと考えております。
 最後に,行刑改革の実現に御協力していただいていることに対しまして改めて感謝申し上げますとともに,本日の私どもからの報告につきまして,これまで同様,行刑改革を真に実りあるものとする観点から,忌たんのない御意見,御指摘を頂ければ非常に幸いでございます。どうぞよろしくお願いします。
○林矯正局総務課長 ここで報道の方が退席しますので,しばらくお待ちください。

                〔報道関係者退室〕
○林矯正局総務課長 それでは議事に入りたいと思います。

法改正を待たずに実施できる方策の実施状況について

○林矯正局総務課長 行刑改革会議の席上におきまして,既に二度にわたりまして直ちに実施できる改善策について御報告させていただきましたけれども,それらの実施状況につきまして,山下官房審議官から説明をさせていただきたいと思います。また,行刑改革会議に御報告した以外にも,矯正局におきまして行刑改革に関する方策を検討いたしまして実施に移しているものもございますので,その状況についても併せて説明をさせていただきたいと思います。
○山下官房審議官 官房審議官の山下でございます。私から,「法改正を待たずに実施できる方策」についての現在までの進ちょく状況について御報告をさせていただきます。
 お手元に資料をお届けしてあるかと思いますが,これに従いまして御報告をさせていただきたいと思います。資料の表紙部分に19項目を表示してございます。このうち1項目から6項目目までは,昨年6月16日の行刑改革会議第3回会議におきまして,「法改正を待たずに実施できる方策」として御報告をさせていただいた事柄でございます。7項目目から16項目目は,12月22日の第10回会議で同様の御報告をさせていただいた事項でございます。これらは,いずれも私ども当局において,会議での御議論の推移などをも踏まえながら,法改正を要さずに改善着手が可能と考えられる事項を報告いたしまして,御提言を頂く前から少しでもそれを進めてまいりたいということで,当時報告した事項でございます。御提言を頂きました後にも,更に17,18の2項目を加えまして,それぞれについて鋭意その実現に向けて取り組んでいるところでございます。また,最後の項目19につきましては,「法改正を待たずに実施できる方策」には掲げておりませんけれども,行刑改革会議から御提言いただきました主な事項について,現在までの検討状況を簡単にまとめたものでございます。これにつきましても,併せて御報告をさせていただきたいと思います。
 それでは,資料に従いまして順次御説明を申し上げます。
 まず,資料1は,「保護房収容中のビデオ録画等の義務化」でございます。これにつきましては,全行刑施設にビデオカメラを整備する必要がありました関係上,若干の時間を要しましたが,ようやく環境が整いましたので,実施状況の欄に記載してございますとおり,この4月から全施設に対しまして保護房収容の開始から終了までの状況をすべて録画しておくことを義務付けいたしました。
 また,これと併せて,暴れている受刑者を制圧したり戒具を使用したりするなどの職員が実力を行使した際の状況についても,すべてビデオで録画することといたしております。なお,録画いたしましたテープは,5年間保存することといたしております。
 資料2は,「C型肝炎の早期発見及びインターフェロンの投薬等治療の充実」でございます。これにつきましては,今月,つまり6月以降,40歳から70歳までの受刑者を5歳刻みでとらえまして,つまり40歳,45歳,50歳,55歳ということになるわけでございますが,5歳刻みの受刑者につきましてC型肝炎のスクリーニング検査を行い,また,40歳以上の受刑者に対しましては,肝機能指標を含む一般血液検査を実施する方向で調整を進めております。本年度予算におきましては,実施状況欄に記載してありますとおり,C型肝炎のスクリーニング検査の実施について約2,000万円,肝機能指標を含む一般血液検査の外部委託につきまして約7,000万円の予算が得られました。したがいまして,これらを順次実施していきたいと考えております。その上で,医師が必要と認めた治療を確実に実施できるようにしてまいりたいと考えているところでございます。
 資料3は,「処遇関連情報等の定期的公表」でございます。これにつきましては,収容人員や懲罰人員,保護房収容件数などの定期的に公表いたすものと,逃走や食中毒など特殊な事案が発生した場合に個別的に臨時に公表するものに分けて対応することといたしております。定期的なものについては,毎月矯正管区において公表いたし,また,臨時に公表するものについては,各施設において対応するということといたしております。
 公表の方法といたしましては,矯正管区又は施設に対応する記者クラブに,ファックスなどで連絡をいたした上で,記者説明会を開くなどしているのが現在の運用でございます。これまでの記者発表資料を数点,次のページ以下に添付しておりますので,後ほど御覧いただければと存じます。
 数枚をめくっていただきまして,資料4でございます。資料4は,「心理技官等専門職員による処遇困難者へのカウンセリングの実施」でございます。これにつきましては,昨年10月,矯正局長通達が発出され,心理学,教育学の専門家である少年鑑別所,少年院の心理技官,法務教官を行刑施設に応援させて実施することといたしました。本年3月末までに43の行刑施設において,規律違反行為を繰り返したり,集団生活になじめず長期間にわたり独居拘禁されている者など,処遇困難と思われる受刑者延べ201名に対するカウンセリング,面接指導等を実施いたしております。その効果は直ちに評価できる性質のものではありませんけれども,これまでにも一部の被収容者について,「反発的言動が少なくなった」,「違反行為が減少した」,「工場への出役に意欲を見せ始め,その後出役するに至った」といった報告も受けておりますので,今後ともどのような対象者にどのような場面で実施することが,より効果的であるかといったようなことも探りながら,処遇支援を充実させてまいりたいと考えております。
 資料5は,「「死亡帳」記載の適正化等被収容者死亡時の対応」でございます。これにつきましては,実施状況欄記載のとおりでございますが,矯正局長通達等が2件発出されまして,被収容者死亡時の適切な対応について詳細な指示等を行っております。これに従った処理を施設で行うことといたしたところでございます。
 資料6は,「矯正職員の「相談・提言窓口」の設置」でございます。これにつきましては,矯正局の参事官を相談員として指名いたし,匿名での相談でも差し支えない旨を明らかにした上で,相談・提言を受け付ける窓口を設けました。現在まで様々な相談が寄せられており,利用状況は下段の実施状況欄にあるとおりでございます。個々の相談等の具体的な内容につきましては,匿名での相談も受け付けることとしている関係上,今後の利用に差し支えることもあるかもしれませんので,御説明を差し控えさせていただきます。なお,本年3月からは同様の窓口を各矯正管区,矯正研修所にも設置いたしまして,その運用を開始いたしたところでございます。
 資料7は,「刑務作業の時間短縮による教育的処遇等の充実(試行)」でございます。これにつきましては,実施状況欄記載のとおり市原刑務所,長野刑務所,奈良少年刑務所の3施設において試行を行っております。いずれの施設においても,行動適正化,対人関係円滑化,被害者感情理解,自己啓発,社会復帰支援などを目的とした教育活動を実施いたしております。
 このうち,市原刑務所及び長野刑務所では,毎月第2,第4の金曜日を免業日といたしまして,集中的に教育活動を実施いたしております。
 市原刑務所は,交通事犯受刑者を集めて収容している関係もございまして,改善更生の可能性が高い者が多く,このような教育活動について受講者の反応は良いと聞いております。教育活動の方法も,VTR視聴,交通安全教室,講話,合同焼香,希望教誨,実務講座,個別指導,読書指導,感想文作成,録音教材視聴,通信教育といった様々な手法にわたっており,かなり盛りだくさんのプログラムとなっているため,職員の負担には大きいものがございますが,教育部門の職員を増員して対応に当たっているところでございます。
 長野刑務所につきましては,全般的にはプログラムに関心を示していると評価できるものの,「疲れた」,「作業をしていた方がいい」という感想を述べる者もおりますし,特に漢字の読み書きができない者,能力的に低い者等については,プログラムに興味を持てないまま,一日近くを居室で過ごすことに不満を有している者もいるようでございまして,教育プログラムの在り方を考える必要があるように思っております。同刑務所では,市原刑務所ほど職員の体制が整っておりませんため,教育活動の方法としては,テレビ視聴,録音教材視聴,読書指導,音楽鑑賞,処遇類型別指導といった手法を採用しております。
 また,奈良少年刑務所では,毎日の作業時間を1時間短縮する試みをいたしております。教育活動の方法といたしましては,日記指導,個別指導,処遇類型別指導,補充教育,通信教育,体育,ホームルームといった手法を採用いたしておりますが,作業時間を短縮いたしましてねん出した1時間の間では,工場から教室等に移動するのに思いのほか時間がかかり,また,職員配置がひっ迫していることから,実施場所の確保や連行職員の確保にも困難を来しているとの報告を受けております。加えて,当面は指導に当たる職員の研修も必要でございまして,職員の負担が増大していると聞いておるところでございます。
 このように,現在までの試行状況を見ますと,かなり現場職員に負担をかけている状況が伺え,教育活動の充実を本格的に実施していくためには,相応の体制整備が必要であると考えておりますが,一方,一部の者を除き受刑者に対する効果はあるものと考えられますので,今後とも試行庁を増やし,問題点を洗い,検討しながら,その拡充に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
 資料8は,「中国との受刑者移送条約の早期締結」でございます。これにつきましては,現在,我が国と中国との間では,領事関係国際約束の締結を交渉中でございますが,これらにつきまして締結のめどが立ちました後に,次のテーマとして移送条約の締結に向けての協議を開始する予定となっております。また,協議に向けて中国の受刑者移送制度や刑事司法制度全般に関する調査研究を進めていきたいと考えておるところでございます。
 資料9は,「保護房のリニューアル」でございます。これにつきましては,大声,室内汚損,破壊などと,保護房に収容しようとする被収容者の状態に合いますように,採光の確保などにも配慮いたしながら,幾つかの種類の居室を設置することを検討いたしております。資料にございます写真は,現在検討中の,制止に従わず大声を発する被収容者用の単独室の模型でございますが,主な改善点としては,従来はガラスブロックの小さな窓のみでございましたものを,強化ガラスを使用した大きな窓を設置して採光を確保すること,また,従来は,換気扇や床暖房のみを設置いたしておりましたけれども,冷暖房設備を設置いたしまして,空調面の改善も図ることなどを予定いたしております。
 資料10は,「外部交通の取扱要領の公表」でございます。これにつきましては,面会,手紙の授受,差入れにつきましての要領を作成いたしまして,本年3月31日から法務省のホームページ上で公表をいたしております。次のページ以降にその要領を印刷したものを添付いたしております。なお,現在は,各施設におきましても実情に即した内容の報告を行うことにつき,検討を開始したところでございます。
 数枚めくっていただきまして,資料11でございます。資料11は,「受刑者釈放時アンケートの実施 その結果の公表」でございます。これは,従来各施設単位で独自に実施いたしておりました受刑者の釈放時感想録を,統一的な様式のアンケート用紙として実施しようとするものでございます。現在,本年度中の実現を目指しまして,アンケート項目を検討いたしておるところでございます。
 資料12は,「広報のための施設見学の制度化」でございます。これにつきましては,学術研究のための参観とは別の制度として設けるものでございまして,本年3月26日付けで通達を発出いたしました。先週でございますが,6月3日及び4日に全国の刑務所長会同を実施いたしましたが,幾つかの施設から近隣住民などの施設見学の案内,あるいはこれを実施したという事例の報告がございました。実施庁ではそれなりの手ごたえを感じたという報告でございました。今後,各施設におきまして開催される矯正展などの機会に,通達の趣旨を踏まえながら,広報のための施設見学が実施されることとなる予定でございます。
 資料13は,「矯正施設における死亡事案の全件公表」でございます。これにつきましては,昨年2月27日から,自殺による死亡,司法解剖の実施が把握できた死亡などについて,その概要を公表することといたしましたが,本年1月以降は,個別の事案に加えまして病死等を含む死亡事案の全件数を,矯正管区における処遇関連情報の定期公表の際に,併せて公表することといたしました。これまでの公表資料を数点,次のページ以下に添付しておりますので,後ほど御覧いただければと存じます。
 また数ページめくっていただきまして,資料14でございます。資料14は,「情願処理体制の暫定運用」でございます。これにつきましては,最近著しく増加している情願を迅速に処理するため,本年1月1日から申立ての性質に応じて,違法又は不当な処分等に関する不服と苦情とに分ける取扱いといたしております。そして,不服につきましては,大臣が人権擁護局又は矯正局に振り分けて調査をさせた上で処理することとし,苦情につきましては,矯正局が処理し,その結果につきまして定期的に大臣に報告することといたしております。暫定運用の開始から本年4月末日までの受理件数とその内訳は,資料に記載してあるとおりでございます。
 資料15は,「外部医療機関との連携体制の構築」でございます。これにつきましては,本年3月25日,法務省,厚生労働省,文部科学省,日本医師会等をメンバーとする行刑施設の医療に関する関係省庁連絡会議を設け,会議を開催したところです。今後引き続き行政施設における医療の現状,病院移送先の確保の方策,医師確保の方策などについて協議をいたすこととなりましたが,同会議においては各省庁の課長以下をメンバーとするワーキンググループを設置することとし,必要な調整,検討を行うこととしております。なお,現地施設レベルにおきましても,都道府県等が開催いたします,地域における医療対策協議会への参加について,現在,準備を進めているところでございます。
 資料16は,「行動科学的な視点を取り入れた実務に即した人権研修」でございます。これにつきましては,「民間プログラム(非暴力的危機介入法)」の導入と人権研修用教材の作成配布という二つの取組を行っているところでございます。このうち,非暴力的危機介入法といいますのは,アメリカの民間研究機関によって研究開発されたトレーニングプログラムで,暴力的行為にまで発展するような事態が発生した場合に,強制的な方法によってこれを抑制するのではなく,行動科学を応用し,当事者が自分で興奮を鎮めることができるように仕向けて事態を安全に収拾することができるような技術を習得させることをその内容といたしております。具体的には,ロールプレイングなどを通じまして危機的場面を見極める方法を学んだり,共感的な話の聞き方や危機的状況下において自分自身の感情をコントロールする方法,あるいは心理的ストレスを軽減する方法等についての技術を習得することが,このプログラムの内容となっているところでございます。この非暴力的危機介入法というプログラムは,アメリカ,カナダ,イギリス等の諸外国において,学校,病院あるいは更生施設等に携わる者を対象として実施されているとのことでございます。我が国におきましても,プログラムの内容が我が国の行刑の実情を考慮した内容になるよう検討を加えつつ,順次,行刑施設の中間監督者等に対する研修として実施していく予定としております。
 またこの外に,職場で研修用教材として「事例研究・ロールプレイング用教材~施設における人権研修~」という教材を今作成中でございまして,こちらにつきましても教材ができ次第各施設に配布して,職員研修に活用させることといたしたいと考えております。
 次の2項目は,行刑改革会議の御提言を頂いた後に,新たに加えさせていただいたものでございます。
 まず,資料17は,「職員の意見聴取」でございます。これは,資料6で矯正職員の「相談・提言窓口」を設置した旨の御報告をいたしましたが,これに加えまして,矯正局の職員が,直接,現場職員の意見を聴取できる機会を増やし,風通しのよい施設運営を実現しようというものでございます。これにつきましては,本年2月から,現場職員が職務改善についての自由な意見をメールで矯正局に直接提出することができるような仕組みとしております。本年5月末までに全部で257件の意見があり,うち134件が行刑施設の職員からの意見となっております。提出された各意見につきましては,局内の各部署におきまして,それぞれどのように業務に反映させることができるかなどについて検討をいたしておるところでございます。なお,これまでに提出された意見の例を幾つか御紹介いたしますと,「職員のメンタルヘルスについては,職場の人間に知られないで相談できる制度を活用すべきである。」,「懲罰手続を簡素化すべきである。」,「局や管区への報告について,類似した項目の報告を何度も求められることがあるので,改善してほしい。」などといったようなものが含まれております。
 次に,資料18は,「各種報告文書の体系的検討」でございます。これは,ただ今申し上げましたとおり,現場職員から上がってまいりました職務改善意見の一つでもあるわけでございますが,本省への報告文書の必要性について見直しを図り,施設職員の負担を軽減しようというものでございます。これにつきましては,現在,大臣訓令に基づく各種報告文書,あるいは矯正局内の各課・係が独自に提出を求めている報告文書について,その必要性の検討を進めており,一部は既に廃止したところでございます。今後とも,更に見直しを進めていきたいと考えております。
 以上が「法改正を待たずに実施できる方策」18項目についてのこれまでの取組状況でございますが,この外にも,行刑改革会議からの御提言を踏まえ,種々の見直しを進めているところでございまして,その検討状況を,簡単ではございますが資料19「「提言」その他の検討状況」にまとめさせていただきました。時間の関係もございますので,項目を絞りました上で御説明をさせていただきたいと思います。
 まず,受刑者処遇の在り方につきましては,提言の中で,「受刑者自らが犯した罪による被害者等に対して十分に思いを致した上で,自発的に改善更生及び社会復帰の意欲を持つことが大切であ」るとの御指摘がございました。これにつきましては,今月から「被害者の視点を取り入れた教育」研究会という場を設けまして,被害者支援団体を含めた外部の有識者の方々とともに,矯正施設において実施する「被害者の視点を取り入れた教育」の充実について検討を願うこととしております。第1回会議を今週予定いたしているところでございます。
 また,上から3番目に「薬物依存者の処遇の在り方の検討」という御提言がございます。これにつきましては,本年4月から「薬物事犯受刑者処遇研究会」という会を立ち上げております。研究会には,大学で専門的研究をなさっている方々などにも入っていただきまして,月1回のペースで,薬物事犯受刑者に対する教育を一層充実させるための方策等について検討を進めているところでございます。
 1枚めくっていただきまして,「行刑運営の透明性の確保」の部分で,「内部監査の充実強化」という御提言がございました。これにつきましては,従前2年ごとに1回,行刑施設に対し実施しておりました巡閲を見直し,矯正管区ごとの基幹施設及び収容定員1,000人以上の施設につきましては,本年度からは毎年巡閲を実施することといたしております。
 次に,「矯正医療の在り方」につきましては,いまだ検討中の事項も少なくありませんが,本年度中に実施する事項として,例えば八王子医療刑務所におけるMRI(磁気共鳴画像診断装置)の整備等が実施されることとなったことが挙げられるところでございます。
 次のページに参りまして,「職員の人権意識の改革」につきましては,「人事異動制度の見直し」という御提言がございました。これにつきましては,本年度春の人事異動計画において,一般職員の異動を前年比約7割増しとして,486人という数字でございますが,職員が別の施設の執務に触れる機会が増加するよう逐次努めているところでございます。
 最後に,「行刑施設における人的物的体制の整備」につきまして,まず「施設の増設」という御提言がございました。これにつきましては,本年度17庁において全体改築等の整備を実施中でございます。
 資料19の4枚目の「行刑施設における収容状況の推移」というグラフを御覧いただきたいと存じます。本年度は,本年2月に成立いたしました平成15年度補正予算と合わせて5,000人を超える収容定員増のための予算措置が認められましたが,このような成果が得られましたのも,行刑改革会議における熱心な御議論と御提言のおかげと考えております。この外,PFI手法を活用した刑務所の新設や,仮称ではございますけれども,福島刑務支所の開設に向けた作業についても,現在着実に進めているところでございます。
 また,「人的体制の整備・充実」という御提言につきましては,本年度は関係当局の御理解もございまして,行刑施設の職員数について400人の増員,計画削減を差し引きまして純増259人を得たところでございます。
 次のページに,過去10年間における行刑施設の職員数の推移をグラフにしたものを添付いたしておりますので,御覧いただければ幸いでございます。
 以上でございます。
○林矯正局総務課長 ただいま説明させていただきました「法改正を待たずに実施できる方策」の実施状況などにつきまして,顧問の皆様方から御質問あるいは御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○久保井顧問 久保井ですけれども,この改革会議の中で今の社会的状況に合わない軍隊式の行進とかあるいは軍隊式の報告,大きな声を出して上司に報告する,その方式とか,そういうことについては,やはり今の社会にふさわしいものに見直すというようなことだったと思いますが,その点はどうなりましたでしょうか。
○山下官房審議官 資料19の下から2段目でしょうか,「所内規則の相当性及び合理性についての見直し」ということで,実は3月にも全国の処遇現場の責任者になります処遇首席を集めまして会議を開いたわけですが,逐次見直しを指示いたしておりまして,かなり進展しつつあると理解しておりますが,私どもの方も巡閲その他の機会に随時点検をするということで,現場に連絡をしているところでございます。
○宮澤(弘)顧問 今のお話は,逐次実現をするとおっしゃったんですか。こんなものは,やろうと思えば明日からでも,そう言っては難しいかもしれませんけれども,やろうと思えばそんなに難しい時間をとることではないと思いますが,違いますでしょうか。私の聞き間違いだろうか。
○山下官房審議官 逐次点検をすると申し上げました。逐次というのは,私どもが各施設を順次回りながら進展状況を確認するということでございます。確かにおっしゃるように,一気にある日から突然私どもが指示をいたしまして実施することは一方では可能ではございますが,これが本当に定着する,職員に本当に理解されて実施されるためには,少しく,十分職員がこなせるような,そういう時間が必要かということで,それを今現場の責任者が一所懸命一般の職員に説明し,必要性を訴え,若干の猶予期間を置いているということでございます。
○宮澤(弘)顧問 要するに反対があるのですか,多いのですか,率直に伺うと。今のような軍隊式のようなものはもうやめていこうじゃないかというのが総論でしょう。それに対していろいろお話があったけれども,いや,もう続けた方がいいやという意見が多いのですか。そういうことではないのですか。
○山下官房審議官 一部にはそういう気持ちを持っている職員もまだいるやに考えられますので,そこを十分理解させることが必要だということでございます。行刑施設は非常に不器用なといいますか,小回りが利かない部分がございまして,そういうためには全職員に,すべての職員に対して漏らさず理解を浸透させる必要がある。それでないとなかなか,職員は,被収容者との接点と申しますか,被収容者と面接する場面あるいは対じする場面で,かなり心理的な圧迫を受けながら実は勤務しているのが実態でございまして,そういった心的バランスを失わせないように十分根回しをしながらやっていくことが,刑務所を崩壊させないといいますか,着実にいい成果を得られるような道を選ぶことになるのではないかと。急がば回れといいますか,若干,先生には間だるいというお気持ちをお感じかもしれませんが,少しく時間をかけているところでございます。
○南顧問 現場では,厳正な規律保持ということが非常に重視されているために,やはり反対があるのではないかと思いますね。看守の間でも上命下服の関係ですし,また,看守と受刑者の間でも上命下服の関係を保つ。そのことが規律保持になるという考えが非常に強いと思うのです。しかし,時代のすう勢でもありますので,一気には無理かとは思いますけども,例えばある刑務所で試行錯誤的にやってみられる。それが効果があればまた全体に波及して,あるいはリスクが少なくないというのであれば全体に及ぼしていくというような方策も考えられるのではないでしょうかね。
○山下官房審議官 ちょっと私の説明が不十分だったかもしれません。反対があるというのは,100人が100人賛成というわけではないという意味では反対があるかもしれませんが,先ほど次官からも御説明がございましたけれども,この提言については全職員にその内容を十分周知させましたし,それから,もともと改革会議が立ち上がった時点からその趣旨,それから議論の経緯といいますか推移も逐次現場には流しておりましたので,現場職員の理解はかなりできております。それで,逐次と申し上げたのはちょっとよくなかったのかもしれませんが,例えば裸検診をやめたとか,歩調をとることをやめさせたとか,そういう施設はもう既に出てきておりますが,まだ全庁は足並みがそろっていないということで,逐次と申し上げたところでございます。
○瀬川顧問 刑務所のA級刑務所とB級刑務所ですね,その違いで何か浸透の仕方というのは違いがありますか。
○山下官房審議官 大きく言えば,A級系統とB級系統でかなり大きな違いは出ておりますが,B系統の施設でも既に廃止に着手した施設もございますので,まだAができてBができないというところではなくて,むしろBの幾つかももうできているというところでございます。
○江川顧問 既に始めているところで,やってみたら例えば統率がとれないで何か困ったとか,あるいは逆にやってみたら結構すんなりいったとか,そういう現場からの感想みたいなのは上がってきていませんか。
○山下官房審議官 現時点では,大きな弊害が出ているという報告は受けておりません。ただ問題は,これが長期間にわたったときに,具体的にどういう影響が出てくるかというのは見なければならないだろうと思っていますので,今は過渡期で,まだそれほど期間経過がございませんので,従前の扱いも知りながら今の扱いに従っているというところです。従前の扱いを知らない受刑者が新しい扱いの下で生活を始めたときにどういう影響が出るかというのは,もう少し検証していかなければいけないだろうと思っています。
○江川顧問 例えばそれをやってみたら,もう少し現場に人を配置しなければいけないとか,何かそういう現場からの要望というのがなるべく吸い上げられやすいようにしていただきたいなというのが希望です。
○山下官房審議官 ありがとうございます。
○滝鼻顧問 薬物の関係で伺いたいのですが,受刑者処遇の在り方の資料19の上から3番目のところに,「薬物事犯受刑者処遇研究会」というのを設けて,外部の専門家を入れて検討中だというお話があります。それと同時に,その次の紙のところに,「薬物中毒治療センター」というのを局内で検討中だということがありますが,この二つについてもう少し具体的にどういう段階に来ているのか,具体的にはどういうものを作ろうとされているのか,説明していただければと思います。
○山下官房審議官 「薬物事犯受刑者処遇研究会」は,この4月から実は始めているわけでございますが,覚せい剤乱用防止教育とか,今まで行刑施設で幾つかの処遇手法を蓄積いたしておりましたので,それらを持ち寄りまして,御披露いたして,部外の先生方から更にこれをレベルアップする,グレードアップするための御意見やサゼスチョンを頂だいしようということで今進めているところでございまして,近いうちにある種の結論的な御意見を頂だいし,それを今後の行刑施設で行うプログラムにまとめ上げて編成し直していこうということを考えておりまして,今そのかなり詰めの段階に来ているということでございます。
 次のページの「薬物中毒治療センター」は,これは医療の対象としての薬物中毒患者をどこで治療するかということで,現在も医療対象ではあるわけですが,将来いわゆる医療専門施設,医療刑務所で行うのか,あるいは医療重点施設といいますか,各ブロックに医療機器,ドクターを重点配置している施設がございますので,そこの一画で行うのか,あるいはその他の方法で行うのか,まだ具体的な検討には至っておりませんが,そういった対象者をどういうふうに把握するのか,その辺のところの検討を今始めたところでございます。まだ具体化にはちょっと時間がかかるかと思います。
○滝鼻顧問 受刑者の処遇の在り方について検討してきた中で,特に処遇が難しいケースについては,その人が薬物事犯の人が結構多いということ,それで,かつ,中毒症状を呈していることが多い。必ずしも別問題ということではなくて,その辺はダブっていたような御説明を受けたのですが,別問題なのでしょうか。
○山下官房審議官 薬物の影響を受けているという意味ではダブっているのでしょうが,中毒治療センターの対象者は医療を施す状態になっている者というとらえ方でございまして,薬物依存者というのは,そこまでは至らないけれども,いろいろ薬物の影響がある,あるいは薬物依存症である,そういった対象者を含んでいるわけです。
○菊田顧問 別の話題でいいですね。資料19の2枚目ですが,「訓令・通達の公開」の点ですけれども,「訓練・通達集の市販化について検討中」とありますけれども,これは今具体的にどこまで検討しているのか,将来的にどういう形になるのか,もしお分かりなら説明していただきたいのですが。今,例えば刑務官の持っている矯正六法というのですか,あれなども,どの程度我々がすぐ手に入れることができるのか,あるいは今おっしゃった中でいろいろ関係の通達が日々出ているようですけれども,それなどが即座に入手できるような体制になるのかどうか,ちょっとお願いします。
○山下官房審議官 表現がよろしいかどうか分かりませんが,「市販化」と言いますと何か販売目的に売り出すような印象を持たれているかもしれませんが,ここで言いますのは販売目的というよりは,一般の方でも入手が可能な状態にさせていただきますという趣旨で「市販化」ということを言っているわけですが,準備を進めておりまして,うまくいけば本年度中にはできるだろうと思っております。
○菊田顧問 あらゆる通達を含めて。
○山下官房審議官 いわゆる訓令・通達,基本通達です。
○菊田顧問 自動的にどこかで手に入るような形になると,こういうことですか。
○山下官房審議官 自動的にというのは。御要望があれば,一般の方でも入手ができるような仕組みにいたしたいと思っております。メインは矯正職員が購入するわけですが,一般の方でも御希望があれば入手できるような,そういう仕組みにしたいということで今進めております。
○瀬川顧問 具体的に聞きたいのですけれども,今言われた矯正実務六法ですね,それを市販するということでよろしいですか。そういう理解でよろしいですか。
○山下官房審議官 矯正実務六法というのを御存じでしょうか。同じものを多分意識しておられるのではないかと思いますが,これを少し整理し直しまして,あれは非常に分厚いものですから,もう少しコンパクトなものにしてというふうには考えております。
○菊田顧問 昔の通達集のような差し込みの,ありましたよ,冊子が,法規集というのが。加除式のは実行するということは検討されていないですか。つまり,日々変わっていくわけですね。だから,加除式が一番有り難いのだけれども,そういうものまではやらないと。昔はありましたけれども,もう20年ぐらい前は我々手に入ったわけですよ。それが今は全然手に入らない。
○山下官房審議官 これはまだ最終確定しておりませんが,今考えておりますのは,加除式のものを用意しようと。ですから,定期的に加除部分を御購入いただくということにはなろうかと思いますが,ただそれは若干タイムラグがあると思います。印刷ができ上がらなければ加除もできませんので。
○成田顧問 お話を伺っていまして,非常に積極的におやりになっている,ある面では法改正を待たずに進めておられるということを伺って,非常にうれしく思っております。ただ,100年の歴史,この長い歴史の間に作られた,しかも戦前,戦後,こういう中にあったいろいろな制度,仕来りというものは一朝にして変わらない。しかし,その基本において変えようという意思を持っておやりになっている。そしてそういう意欲が出てきて,実行に移している。私はこれから考えていただきたいのは,どういう実行計画を持つのかということ。各個々にもありましょうし,それとそれをどういう行動で実行していくのだと。日本の行刑がそういう計画の下に動いていく,一つのモーメントをつくっていく,行程表をつくってやっていくというようなことが今後必要なのではないかということを考えます。これは,相当長期な仕事になると思いますし。しかしこういう歯車が動いていますから,そういう点で,今私が申し上げたような考え方を導入されたらいかがかと思います。
○宮澤(浩)顧問 先ほどの話に戻るので恐縮ですけれども,薬物の関係のところでの質問になるのですが,先週,実は法務省の方の別のところでそういう問題をちょっと議論したことがありまして,そのときに日本の場合は覚せい剤にしろ麻薬にしろ,とにかく所持自体も悪いことであるという発想がありますよね。これに対して,欧米の国で,自分で使用するのはこれは自由意思だから,それは国がチェックするのはおかしいじゃないかというような発想のもとに,そういう自己使用のものについては犯罪視しないで,治療の対象になるといったような,そういう発想でもって政策的に対応している,そういう国がかなりあるわけですよね。
 先ほど,専門家による会に外部のそういう方々も加わって議論がなされていると伺ったのですが,日本の今の扱い方を前提として,それには違う考え方もあり得るということではなしに,現行法の扱いがこうである,それをどういうふうにするかという立場で御議論なさっているのか,それとも,日本のこういうやり方が少し先進国の中ではこれでいいのかなというような視点も含めて,そういう議論をなさっておられるのか。そして,先ほどの治療的なうんぬんというそのお考えのところでは,そういう患者としての薬物関係者というふうに,その辺どうなっているんだろうなというのが,ちょっと内心分からないものですから。それで,恐らく先ほどの滝鼻さんの御質問もそういうところから来ているのかなと思いながら,何かそういう意味で一種のリベラル化というふうな方向をとるように踏み切ろうとなさるのか,それともそうではなくてやはり一緒のドミノ理論で,薬物というのはアリの一穴からだから,今のように,持つのはいい,自己使用はしようがないだろうというふうなことではなしに,やはりきちんと対応するという政策をとり続けようというふうな形なのかどうか,その辺ちょっと伺わせていただくといいんじゃないかと思いまして,発言をいたしました。
○山下官房審議官 先生のおっしゃる問題は,刑事罰をどうしていくかという問題であるわけでして,基本的にはそういう問題も検討のそ上に載るものではあるかもしれませんが,ただ私どもの今ターゲットにしておりますのは,刑事処分に付されて矯正施設に収容している者を対象にしているわけでございまして,それ以前の本質的な問題については今立ち入ってどうこうということを考えているわけではございません。飽くまで受刑の対象として,刑の執行対象として受け入れた人たちについて,薬物の問題があるならば,その習癖を除去し,軽減させてやろう,また治療を必要とする段階に至っている者については,治療を施そうと,そういう観点でやっているわけでございますので,先生の関心には直接触れていないと思います。申し訳ございません。
○宮澤(浩)顧問 立場はよく分かりました。
○江川顧問 資料7の「刑務作業の時間短縮による教育的処遇等の充実(試行)」というところなのですけれども,そこでいろんな成果と問題点が今出てきているというようなお話がありましたが,例えば問題点としては読み書きも困難な受刑者がついていくのは大変だとか,そうすると新たな教育の必要性というのもいろいろ出てきたと思いますし,あるいは職員の負担が非常に増えている。では外部の人間ももう少し活用できないかとか,いろんなあれが出てきていると思うのですね。この出てきた結果を,だれがどのように活用して,それをいいものにしていくかという,これの試行の後のプランを聞かせていただきたいのですけれども。
○山下官房審議官 試行は,実はこの4月から始めたところでございまして,まだ2か月しかたっておりません。先週の刑務所長会同でもこの関係施設からは一応報告を頂きましたけれども,もう少し試行結果を積み重ねまして,問題点を整理して,それを矯正局の方で集約して,各施設にもまた流していきたいし,必要な施策をとる検討素材にしたいと思っています。
 それから,試行庁ももう少し広げたいなという気持ちは実は持っておるわけでございますが,何分にも作業を提供する業者との契約の問題もありまして,その契約をある程度守らなければならないという問題があります。それから今非常に過剰収容で,教室だとかいろんなところを実はつぶして部屋に当てているというところもございまして,場所の確保の問題もございます。それから,民間の方の協力を得るにしても,そういう条件が整っている施設と,実はそうでないへき地にある施設と,いろいろあるものですから,それぞれに応じた処遇の在り方をどうすべきか,もう少し若干の試行を重ねた上で整理して,それぞれの施設にもまた流してやりたいとは思っておりますけれども。
○江川顧問 ただ,現時点で,もうかなり,例えば現場の方はつらいという声が上がってきているということは,そのままずっと続けると余りよくない影響も出てくるのではないかと思うので,それをどうするか。だからプログラムを決めたりとか変えたりするのも,現場だけに任せておくというのではなくて,資料19のところでは被害者の視点を取り入れられた教育研究会と,これは外部の人間も含めたそういう研究会ができているわけですよね。研究会ばかり一杯できてもしようがないのかもしれませんけれども,やはりこういった現場から上がってくる声を吸い上げて,それをどういうふうに活用していくかというのについても体制づくりをお願いしたいなと思います。
○山下官房審議官 おっしゃるように,ちょっと私,重要な視点が抜けておりましたけれども,行刑改革会議の御提言で,職員の勤務負担を軽減しろということを大きな柱の一つにしていただいておりますので,私ども受刑者の処遇を充実させていくにしても,負担は軽減させる方向を同時に追求したいということは常々念頭に置いているところでございます。いろんな試行結果につきましては,それなりに私どもも整理して,またいろんな部外の協力も得られるような体制も参考に示しながら,それぞれの施設の立地に合わせたプログラムを提示していきたいなと思っております。実はこの3庁についても,事前にかなりカリキュラムの打合せはさせていただいて,とりあえず双方が了解したところで試行を始めた段階でございます。
○高久顧問 資料15の一番下のところに,「現場レベル」という表現があり,「都道府県等が開催する「地域における医療対策協議会」への参加についての通達」と書いていますが,具体的にはどういう人たちが参加をするわけですか。
○山下官房審議官 一応行刑施設,少年施設ももちろんあるわけでございますが,矯正施設の関係者を参加メンバーに加えさせていただくような形で御相談をさせていただこうと思っています。
 実はもう少し申し上げますと,この地域医療対策協議会というのは,まだできていない都道府県もあるようでございまして,総務省と厚生労働省が音頭をとられて,全国の都道府県で開催するようにという努力目標を出しておられるようでして,私どもの方は,医師の確保と,外部から協力を得られる病院,通院だとか往診だとか入院とか,そういう協力病院の確保と,二つの側面が実はあるのですけれども,この地域医療の問題は,どちらかというと医師の確保の方に比重が置かれているというふうには聞いていますが,現場レベルで余りに錯そうして,いろいろ協議会を矯正が中心になって立ち上げるのもいかがかということで,既存の協議会に加えさせていただいて,矯正が抱えている問題についても御協力をいただけるような,そういう方向で動きたいということで今準備を進めているところでございます。
○南顧問 資料14の情願の問題ですけれども,これは今年になってからもう既に4月末日までに2,557件と著しい増加を示しておりますが,これについて迅速かつ適正な処理というのは,ある程度実績は上がっているのでしょうか。
○山下官房審議官 少しずつではございますが,上がってきていると考えております。処理に要するスタッフも少しく増強いたしましたし,実態を調査するスタッフも増強いたしました。情願についてはこれまで年間6,000件ぐらい,今年はちょっとそれをオーバーしそうなペースでありまして,未済案件も相当数ございましたので,今その未済案件の圧縮といいますか,処理の促進というところに精力を置いているところでございます。
○南顧問 未済案件というのは,どのぐらい残っていますか。
○山下官房審議官 未済が,3月末時点で6,000ぐらいあったと思いますが,今5,000近くになっているはずでございます。
○南顧問 それで今,処理に追われていらっしゃるわけですね,そっちの方に。
○山下官房審議官 新しいものと同時に進行しながら。
○南顧問 両方進行しながら処理をすると。
○山下官房審議官 ここにございますように,不服と苦情に分けまして,不服の部分はできるだけ手厚くかつ迅速にというふるい分けの対象にしてございますので,こちらはこちらで急ぐようにしますし,積み残している部分は積み残している部分で早く片づけるように今進めているところでございます。もう少しお時間を頂きたいと思います。
○野沢法務大臣 1月から専門にこの情願を読んでもらう人を増やしていただきまして,A,B,Cの3ランクに分けまして,Aランク,これは不服を主体にということでございますが,これは私が全部見ることにしています。12月までは全件全部,私と副大臣と政務官が手分けして読んでおったのですが,これが毎週このぐらい積み重なるわけです。結果的にフォローできないものですから,国会の対応もございますので,専門に読んでもらって,AとBは基本的に私が見ましょう。Cについては,とにかく担当に任せて処理をする。大分スピードアップはしたように思いますが,今の話でまだ大分たまっているという点が。
○南顧問 未済も残っておりますのでね。
○野沢法務大臣 なかなか実は容易でないことなのですが,ただ私,中身を見ていますと,責任者が現場の問題点を直接受けるというこの制度は,100年前につくった制度にしては素晴らしいことだと思っております。何とかこの直結ルートというものは残しておきたいし,今後も大事にしなければいけないけれども,ただそれが余りにも多いものですから,どうやってこれを具体的に有効に処理ができるか,これからの大きな課題であるということにはやはり変わりないと思っております。
○南顧問 迅速な処理も必要ですけれども,また同時に適正な処理も必要ですので,迅速かつ適正な処理に努めていただきますようにお願いいたします。
○倉吉秘書課長 秘書課長でございますが,大臣を補佐する立場で若干補足させていただきたいと思います。今大臣からお話のあったとおりでして,A,B,Cという形でやっておりますが,Cの事件についても,それを最初に見た担当者が中身をある程度要約しまして,記録は,実は大臣には大変申し訳ないのですが,Cまで含めて全部秘書官の方で持ち込みまして,概略をざっと説明して,大臣に御了解を頂いて,そしてめりはりのついている処理をしているということでございまして,大臣がC事件を一切見ていないとか,そういうことはございません。それもやっておりまして,それがまた補佐する私どもの立場としては非常に心苦しいというところがあるのですが,今のところそういうめりはりをつけまして,AとBには重点的にということで,そういう形で体制を整えております。若干未済事件が多いのではないかと御心配の向きもあるかもしれませんが,だんだん減っておりまして,そのペースで順調に処理できると,今のところ私どもはそう考えております。
○広瀬顧問 ここには,法改正を待たずに改正できる部分というのがずっとありまして,随分あるものだなと思うのですが,行刑の改革をしたいけれども,法律改正がなければどうしてもできないという一番やりたい点を二つ三つ挙げるならば,どういう点ですか。
○山下官房審議官 いたしたいことはたくさんあるわけですが,全く現行法の下でできないのは,今話題に上りました不服の問題は,現在は情願という形でございますけれども,これは法的性質は請願ということで,受理して誠実に処理すればいいという,そういう性質のものになっております。新しい法案では,権利救済制度としてしっかりしたものに構築し直したい,いわゆる行政不服審査法に倣ったような処理手続,あるいは大臣に対する処理義務を法的に付与した制度を設けたいというのが一つございますが,これは現行法の下ではできない。できるだけそれに近いように調査をして,調査結果については必要な処理結果を通知する,そういう運用はしておりますけれども,それが一つございます。
 また,そういう適性があれば,また本人の改善更生のために有益であれば,場合によっては外出,外泊というものも認めたいというときに,そういう制度は現行法の下ではできないとか,現行法ではできない事項は幾つかございます。
 突然でございまして,ちょっと整理してないものですから,言い尽くしていないかもしれませんが。
○後藤田顧問 一つお伺いをしたいのですけれども。これは法律改正前のやり方ですけれども,そしてまたそれに手を着けてからまだ時間がたっていませんから,答えにくいのかもしれませんけれども,刑務所の中の収容されておる人の現状と,それを管理をしておる刑務官諸君との考え方を考えたときに,この諮問委員会で答申をして改革に掛かっているわけですけれども,刑務官の立場からいいますと,大体実態の分からない無理な要求をしておるのではないかといったような,刑務官自身の中に,改革についての,これは無理ですよといったような,積極的な抵抗感ではなくて,それはちょっと頭の中でお考えになっていることではありませんか,無理な御要求ではありませんかなという消極的な立場の考え方があるのかないのか。これをちょっとお伺いしたいのですね。
 私は今から3年前の警察の刷新会議でもいろいろ議論をして,改革に乗り出して,もちろんよくなった点があるのですけれども,しかし基本的にあかんのですよね。それは,意識の問題なのです。意識というのは,警察の場合であれば幹部の意識が十分でない。そして同時に,ましてや第一線の警察官諸君は,必ずしもそれについていくという積極的な改革の意志が乏しいといったようなことがあるのですね。
 この刑務所の中の処遇の改善も,文字どおり今のような社会の中での犯罪者ですから,我々の想像以上のことがあるのではないか。そうなると,我々が頭で考えていることでは,皆さんおっしゃる理屈は分かるけれども,現実には合いませんよといったような考え方が,皆さん方直接この仕事に携わっていらっしゃる事務の方,報告があると思うのだけれども,どういう状況ですか。刑務官自身の頭の中がある程度変わらないことには,私は,そう簡単には改革の実を上げることができないのではないかと。そういう意味で,現実はどうなのだろうか。一番最初の形式的な,軍隊の悪いところだけが取り入れられておると我々は思うのだけれども,中の刑務官にすれば,あれ以外何か方法ありますかといったような反発の気持ちが実はあるのではないか,だから直らないのではないか。そこはどうですか。
○山下官房審議官 刑務官個々の意識は十分には把握し切れてはおりませんけれども,少なくとも,おっしゃるような御懸念がないように,我々は手間ひまをかけて趣旨を説明し,目的を理解させ,また,これが今や必然であるということを十分理解させるようにいたしております。先ほど次官も冒頭に申し上げましたけれども,いろいろな研修,協議会,そういう場を通じて,それから現場の中においても幹部の職員から一線の職員に,十分その辺を浸透させると同時に,この提言は直ちにやれということももちろんあるわけですが,その筋道をちゃんとつけて,人とお金が必要なところにはそれなりの手当をしなさいとか,いろんなそういう筋道の問題もちゃんと触れてありますので,今こういう条件を整えてやるのだよというところも十分説明をしながら,できるだけ理解を得るということにしております。
○後藤田顧問 あなたの答えとすれば,それ以外ないわな。だけれども,それに関連して言いたいことが,一体刑務官の本当の意味での人事処遇というのは,今まででいいのかと。今度の改革の中,これは法律事項になるのですか。要するに刑務官の諸君は先が開けていませんよ。今2万何千人おるでしょう。この人たちがあの刑務所の中の仕事だけで,本当に自分たちの,それが人生のあれだったというような,それが本当に持てるのだろうか。もう少し,刑務官というのは大変な苦労をしておるのですから,それなりの処遇というものをお考えにならないと駄目なのではないか。その点が,この中には余りないんじゃないの。ありますか,処遇改善の問題。
○但木事務次官 今度の行刑改革で極めて重要なことは,刑務官の支持を得る改革にしなければいけないということだと思うのです。そうでないと,改革そのものが長続きしない。改革そのものができない。幾つかの人事の問題も行刑改革会議の提言の中にございました。ただ,刑務官の処遇の一般的改善というものについては,必ずしも触れてはないと思うのです。実はここには非常に大きな問題があって,階級制というものと給与とが結びついておるものですから,一生涯働いても結局3級ないし4級程度しか昇給しないで最後を迎えるという方々もたくさんおる。もちろん,それを今までは勲章とかそういうものによって,一生涯刑務官をやったということの満足感というのはそれなりにお持ちで,決して誇りのない職業ではないと私は思っておりますけれども,ただ処遇がその苦労にふさわしいだけのことをしているかと言われると,そこはやはりいまだに問題が大きくあると思っております。それは必ずしもこの行刑改革会議の御提言というだけにとらわれずに,一つは法改正によって,刑務官の法的な権限,責任を明確にしてあげることによって,職権行使を自信を持ってできるようにさせるということが一つ非常に大きなこの改革のねらいだと思っております。
 それからもう一つは,国民に今まで見せてない部分をやめまして,むしろ刑務所の中を見てもらうことによって国民の理解を得ていく。むしろ国民から理解してもらうことによって,少なくとも暗いイメージの刑務所から,むしろ国民の支持を得ている刑務所に転換しなければいけない。これが今度の刑務所のもう一つの非常に大きな柱。もう一つのものは,そうした理解を得る中で,刑務官の処遇というものをきちっとその内容にふさわしいものにしていかなければいけない。階級制との結びつきという非常に難しい技術的問題はあるのですが,この問題は考えなければいけないと思います。
 先ほど成田顧問から,大きな意味での行程表が必要であるという御発言がありましたけれども,そういう意味では大きな意味での行程表というのがやはり必要なのだろう。ただそれにはいろいろ条件が,今まだ分かってないものが一杯ございまして,それを一つ一つ埋めながら,この行刑改革の最終的なゴールというものをどういうものだとして,それをどういうふうにやっていくのか。成田顧問が言われたことは極めて重要で,ただ,今遺憾ながら我々にはそれを全部判断できるだけの材料がまだ手元にないなというのが実感であります。例えば先ほど薬物の話がございましたが,本当は薬物は社会内で病院に通院させるという制度とどうやってリンクしながら,この刑務所の中の処遇をやるのか,あるいは刑罰なのか刑罰ではないのか,医療なのか保安処分なのかとか,本当は様々な考え方があって,多分それを折り合わしてやらなければならないのだと思うのですが,今そういうものがないのです。だから,ある意味では行刑改革会議の御提言を本当に実現するための大きなプログラムというのですか,行程表をつくっていかなければ本当は完成はないと思っております。
○菊田顧問 今おっしゃったこと,非常に大事なことをおっしゃったのですけれども,このアンケートを見ますと,受刑者が増加している以上職員を増員すべきだ,これが一番大きな声に出ていますね。これはもう私も同感だと思います。同時に,やはり現場を知らない上司が多いというのが,一般の刑務官の多数のアンケートで出ていますね。国民に開かれた行刑もいいのだけれども,上司がやはり現場を知る。長い間専門的に働いた人が上司になり,そして現場と一体になる。現場に理解された上司というものも付け加えて,今後体制として臨んでいただきたいと思います。
○成田顧問 私も菊田さんの意見と同じなのですが,やはり統治なのだね。要するに,どうこの刑務所を支配していくのか,統治していくのか。そうした場合に,例えば一つの軍隊基調でうんぬんという形で今までやってきた。これはどうもやはりいかんなと。ところが,あるところはいいと言い,あるところは本当によくなったよと,何かそういうディスカスが,各地方のあの人たちと話し合う,あるいは官房審議官のところまで上がってくる。おい,やはりこちらの方がいいぞと。そうすると,やはりそれでやらせようよというようなことが改善作業ではないかと思うのですな。現場から上がってくる。そして,それに対してどう対応していくか。こういうものが広がっていくということが,私はこの改革につながっていくのではないかと思いますがね。
○但木事務次官 おっしゃるとおりだと思っております。私も,いろいろな会同で物を申す機会があるものですから,「今度の改革がうまくいくかいかないかは,現場の声が反映された改革になるかどうかということがかぎである。だからよろしく,現場の声を上げてきてくれ。それを改革につなげることが,今度の改革の成否を決するから」ということは,何度も何度も申し上げて,できればそういうふうになってくれればいいなと思っています。それは,具体的には審議官なり局長がおやりでございます。
○林矯正局総務課長 数々の貴重な御意見ありがとうございました。

監獄法改正について

○林矯正局総務課長 次に,第2の議題でございますけれども,監獄法改正の方向につきまして,横田矯正局長から説明させていただきます。
○横田矯正局長 矯正局長の横田でございます。それでは,監獄法改正の方針につきまして,法務省が考えておりますところを御説明申し上げます。
 法務省では,昨年末に行刑改革会議から頂きました御提言や,自由民主党政務調査会に設けられました「行刑行政に関する特命委員会」における御議論などを踏まえまして,関係機関とも協議しながら監獄法改正の方針について検討してまいったところでございますが,結論から申し上げますと,来年の通常国会に監獄法の全面改正法案を提出させていただきたいと考えております。
 御案内のように,監獄法は,受刑者,未決拘禁者,死刑確定者など,監獄に在監する者すべての処遇等について規定している法律でございますが,明治41年に制定されて以来,実質的な改正を行うことなく今日に至っておりまして,在監者の権利義務関係が明確ではないなど,時代の変化にそぐわないものになってしまっております。
 法務省は,かねてからこのような監獄法を改正する必要があると考えていたところでございまして,これまで三度にわたりまして監獄法の全面改正法案である刑事施設法案を国会に提出させていただきました。また,これに伴いまして,警察庁も,警察の留置施設に留置される被逮捕者,被勾留者等の処遇等について規定いたしました留置施設法案を国会に提出いたしました。しかしながら,この刑事施設法案及び留置施設法案につきましては,日弁連などから,代用監獄を恒久化するものであるなどとする反対意見が強く主張されまして,いずれも廃案となってきたところでございます。
 監獄法改正につきましては,行刑改革会議からも,「この提言の中心は,なんと言っても,明治時代にできた監獄法を,その後の時代の変化などに見合ったものになるよう,全面的に改正することである。この立法に向けた作業も,また,可及的速やかに行う必要がある」との御提言を頂きました。
 行刑改革会議の御提言につきましては,日弁連からも高い評価を頂いているところでございますが,他方で,本年に入りまして,日弁連からは,受刑者を除く未決拘禁者等の処遇に関しましては,今後更に検討すべき問題があるとして,まずは,監獄法のうち受刑者の処遇に関する部分のみの法改正を行うべきであるとの御意見や,未決拘禁者等の処遇については,行刑改革会議のような審議会を開催するなどして改めて十分に検討した上で,受刑者の処遇に関する部分と併せて法改正を行うべきであるとの御意見が寄せられました。
 しかしながら,先ほども申し上げましたとおり,監獄法は,受刑者のみならず,未決拘禁者等の処遇についても規定しているものでございまして,これを改正する以上,未決拘禁者等の処遇に関する部分についても法改正を行うべきことはむしろ当然でございますし,行刑改革会議の御提言も,行刑改革会議が設置されたいきさつからも受刑者の処遇に焦点を当てたものとなってはおりますが,その御趣旨は,受刑者のみならず未決拘禁者等の処遇についても,監獄法を改正し,改革を進めることを求めているものだと理解しております。その上,受刑者の処遇に関する部分のみの立法を行い,未決拘禁者等については現行の監獄法を適用し続けることは,受刑者の処遇と未決拘禁者等の処遇との間に法律上アンバランスを生じさせるため,現場施設を預かる立場といたしましては,容易にこれを受け入れることはできません。
 また,監獄法改正は喫緊の課題であることなど諸般の状況に照らしますと,是非とも来年の通常国会に法案を提出しなければならず,全面的な法改正を先送りすることは適当ではないと考えております。
 なお,法務省が来年の通常国会に未決拘禁者等の処遇に関する部分を含めた監獄法の全面改正法案を提出する場合には,警察庁としても,警察の留置施設に留置されている者の処遇等に関して定める法案を提出する意向であると伺っておりますが,日弁連からは,そのような立法は不要であるとの意見が出されております。
 このように,未決拘禁者等の処遇についての監獄法の改正や留置施設に関する法案の扱いについて,法務省及び警察庁のスタンスと日弁連のお考えには隔たりがあります。法務省といたしましては,本日の顧問会議における御意見も踏まえつつ,監獄法改正に向けて最大限の努力をする所存でございますが,そのためには日弁連を始めとする関係機関の御理解を得るよう努める必要があると考えております。そして,去る6月4日,法務省から日弁連及び警察庁に対し,監獄法改正に関する意見交換を行う場として,法務省,警察庁及び日弁連の三者による協議会を立ち上げたい旨の申入れを行いました。そのような場での意見交換などを通じて,関係機関の御理解が得られるように努力いたしたいと考えております。
 監獄法改正の方針について,現在法務省が考えているところは以上のとおりでございます。
○林矯正局総務課長 ただいま横田局長から説明がありました監獄法改正の方向性につきまして,顧問の皆様から御質問若しくは御意見がございましたら,よろしくお願いいたします。
○菊田顧問 幾つかちょっと分からないところがあるのですけれども,日弁連と警察庁と矯正局等との協議会をつくるということが既に予定されているということを最後におっしゃったわけですね。ということは,その前提として,提案されてきている未決拘禁者を含む新たな審議会をつくれということは,もう頭から否定しているというふうに理解していいかということですが。
 もう一つは,そういう審議会というものを設置しない,時間的にも無理だということのようでしたら,この行刑改革会議の提言の理念というものと,未決拘禁の理念というもののすり合わせというものを,我々の手から離れて,矯正局あるいは立法機関に全面的にゆだねるということに今日同意しろ,こういう意味なのでしょうか。その点,ちょっと確認しておきたいのですが。
○横田矯正局長 お答えを申し上げますけれども,まず審議会うんぬんということにつきまして,これから三者の協議会でどういうことがテーマになるかによりますので,それによってまたいろいろな御意見が出てくるかと思いますが。
 それから,先ほど私の方から現在私どもの考えていることの御説明を申し上げましたけれども,この顧問会議の場において顧問の先生方からそれについて同意してくれとか,反対しろとか,そういう趣旨は全くございません。今日はいろいろ御意見がございましたら,それも伺わせていただきながら今後進めてまいりたいということでございますので。
○菊田顧問 ということは,新たな未決を中心とした議論をするための協議会なり審議会を設置するということも想定しているというふうに取っていいわけですか。検討していただくと。
○横田矯正局長 もちろんそれは,これから三者協議会の中でどう進んでいくかということだと思います。
○菊田顧問 三者協議会じゃなくて,この提言した委員会ですね。行刑改革会議を含めた未決についての特段な審議会というものをつくることは,可能性としては考えられるということですか。
○横田矯正局長 それについて,顧問の先生方からまたどういう御意見があるか分かりませんが。
○菊田顧問 私は,そういうことを当然やっていただかなければ困るのではないか。つまり全然議論してないわけですね。議論してないところで,御存じのように刑事施設法案そのものは非常に問題があった。あったものを多少修正するなり,新しいものができるにしても,素通りしているわけですから,議論する場は設けていただかなければ困るのではないかと思っているわけですけれども。
○横田矯正局長 最初の点で,私どもの考えといたしましては,新たな審議会を現時点で設けなければならないというふうには考えておりません。と申しますのは,私どもは御提言の文言から,行刑改革会議は未決拘禁者の処遇等に関して,法務省において専門的な知識,ノウハウを生かして十分に検討した上で,可及的速やかに監獄法の全面改正をすべきであると御提言になっていると理解しておりまして,法改正の範囲を受刑者の処遇に関する部分に限定すべきものということではございませんし,それから未決拘禁者等の処遇について何らかの機関を設けて検討することを求めているものではないというふうに理解をしております。
 ただ,もとより未決拘禁者等の処遇の在り方を含めまして,監獄法の改正につきましては,これまでも日弁連の御理解を得るために努力してまいったところでございまして,法務省としては,今後ともその方向で努力をしてまいりたいというふうには考えています。
○菊田顧問 今おっしゃった意味は,行刑改革会議とは,完全にその未決問題等については離れて実施する,こういう方針ですね。つまり,今の提言の文句についてだけ言いますと,49ページに今お読みになったところがありますね。ここの文言,「専門的な知識,ノウハウをいかして」とありますけれども,この「専門的な知識」というのは矯正当局の専門家であって,我々行刑委員の専門性というものは,あるいはその他の学者やその他の専門家の意見というものは,「専門的な知識,ノウハウ」というものに入ってない,こういうような限定をして考えておられるわけですか。
○横田矯正局長 ちょっと先生の御趣旨がよく分からないのですが。
○菊田顧問 趣旨は,今おっしゃったのは未決拘禁のこれからの立法作業については,内容については,法務省内というかその「専門的な知識,ノウハウ」というのは実務家,専門家の矯正局の意向によってやっていくという趣旨であって,行刑改革会議とは離れているのだ,こういう趣旨だと思う,おっしゃったのは。
○横田矯正局長 私どもは,その提言は,表題がまず「法務省に望むこと」ということで,「今後の行刑改革の推進に向けて」ということで,あくまでも行刑改革への御提言は,私ども法務省に対してこの点についておっしゃっているというふうに理解をしたので,そのように申し上げたわけです。
○菊田顧問 それはそれで結構です。この場合の「専門的な知識」というのは,矯正局,法務省の知識,ノウハウを生かして速やかに検討すると,こういうふうに取られているということですね。
○横田矯正局長 私どもは,ですから先ほども申し上げましたように,基本的にはそうですけれども,しかしまた,いろいろな御意見も当然,例えば日弁連など,これまでも御理解を。
○菊田顧問 日弁連はいいのです。我々この行刑改革会議の顧問なら顧問という大きな名称を頂いていますけれども,今までの議論を踏まえて矯正局内で専門的ノウハウを生かして議論するということであって,我々の意見というものは今後一切出ないと,こういうことですか。
○横田矯正局長 決してそのように申し上げたことはありません。
○菊田顧問 どういう場でそれを設定できるのですか。
○横田矯正局長 ですから,今後もまた必要があればこういう顧問会議などもございますでしょうし,そのほかにもまたいろいろな御意見を伺うこともあるかもしれません。決して私どもだけで独善でやって,それでもうすべてシャットアウトしてと,そういう考えで申し上げたわけではございません。
○菊田顧問 ということは,中身の議論,要するに刑事施設法案の議論で非常に大きな問題になった点でペンディングになっているところがあるわけですけれども,そういうものをひっくるめてとにかく議論した上で素案を出す。出した上で皆さんに議論してくれ,こういうふうなことですね。
○横田矯正局長 これは,今後の進め方についてはまた,先ほど申し上げた三者協議も含めてこれから検討してまいりますということで,今日はそういう方向ですという御報告を申し上げております。ですからそのほかに顧問の先生方から御意見がございましたら。
○菊田顧問 ついでながら,私が配布させていただきました提言と死刑囚の扱いの問題,それからこれは後で弁護士の方が未決について書いていますけれども,十分参考にしていただきたいと思います。
○井嶋顧問 今御議論されておりますことや,あるいは先ほど局長から御紹介があった日弁連からの申入れの前提になる認識の部分が,私,少なくともこの行刑改革会議の委員として参加した認識とは大分ずれているのではないかという気がするのです。つまり,菊田先生も今言われたように,しきりに未決拘禁の部分は議論をしていない,つまり今度の提言では対象にしていないということになっておりますが,それはどうも間違いではないだろうか。
 確かにこの提言の2ページの下段の方を御覧いただくと分かりますけれども,「4月から12月までの9か月という期間は,予備知識のない大多数の委員には,余りに短かった。そこで,イメージしやすい「受刑者」を議論の対象の中心に据え,周辺の議論は思い切って割愛した。そして,それぞれの委員が持つ社会経験を武器として議論した」,こういうことを書いてございますが,こういったことを受けまして,確かに第1分科会では,時間がなかったものですから受刑者処遇を中心に議論をして,未決拘禁についての,未決拘禁に処遇ということは余りないのですけれども,少なくとも議論はしていません。
 しかしながら,第2分科会では行刑の透明性ということで,これは未決既決関係なく刑務所の管理の問題として,いろいろな透明性にかかわる制度の構築を提言しておられますし,さらに,第3分科会では矯正医療の在り方の問題,それからさらに施設面の人的物的体制の整備といったようなことを議論しておりますが,こういったことはすべて未決既決関係なく議論したことであります。
 つまり,総じて言えば,この最後のページに,先ほど局長がお読みになったところにありますように,総じて言えば要するに一日も早く明治41年の監獄法行刑から脱却をして,全面的な抜本的な改正をすべきだという精神を根っこに置いて,底流に置いて提言をしているのだということでございまして,先ほど議論になっておりますこの49ページの部分というのは,私はこのように理解をしております。「最初にも述べたとおり,この提言は,年内に改革の方向を示すという至上命題があったため,「受刑者」に焦点を当てて検討したものである。そのため,改革を進めるに当たっては,受刑者と未決拘禁者の法的性質の違いなどをも踏まえ,細かく検討しなければならない問題点もあるはずである。我々の力の及ばなかったところである。専門的な知識,ノウハウをいかして,速やかにこの点の検討を行うことを期待する。」というのは,つまり,我々は確かに,第1分科会に関しては処遇の問題として受刑者処遇を中心にやりましたけれども,あるいは第2分科会で受刑者の外部交通の問題を議論しておりますけれども,そういったところの底流にある物の考え方,提言の基本的な認識というものを,この専門的な知識でもって未決拘禁者に及ぼしていけば,十分改革はできるよ,残念ながら時間が足りなかったから細かい議論はしていないけれどもね,という気持ちがここに表れているわけでありまして,私は日弁連が御提言されておるというふうに聞きましたが,未決拘禁のためにまた新たにこのような審議会を設けるというようなことは,またますます時間を先に延ばすことになるのでありまして,一日も早く望まれる抜本的な監獄法改正が遅れるばかりであるという意味におきましても,それは絶対に承服できないと思います。
 むしろこの未決拘禁の問題というのは,皆さん御承知のとおり,作業とか教育とかいった処遇はないわけでありまして,単に裁判所の呼出しあるいは捜査のための呼出しといったものに対応するために拘禁をしておくというものでありますから,本質的に言えば問題となる事項というのは恐らく外部交通の問題であろうと思います。外部交通の問題というのは,受刑者の外部交通の問題について我々は十分議論しましたから,この基本的な線を踏まえて未決拘禁に適合した制度を皆さんでつくっていただければいいという意味で委任をしておるわけでありますから,そういう精神でこの提言をつくられたというふうに私は思います。
 それからもう一つついでに申し上げれば,これは異論が出るのかもしれませんけれども,代用監獄問題というのは,警察の留置場を監獄として代用するかどうかという問題ですから,これは一つの政策判断,政策の決定の問題だと思います。したがいまして,審議会で審議することで十分解決できるという問題でもない。そういうことも含め,やはり政策の問題として今局長が言われたような,警察庁を加えた審議の機関,協議の機関でもって十分そういった点を協議していただくということで十分ではないのだろうかと思います。これは私の考えです。
○江川顧問 今の問題に関連して質問なのですけれども,来年の通常国会に法案提出をするという,もう行程ができているということは,法案の骨子というものも,もう考えられていると思うのです。だから,もし意見を言うということであれば,そういうものがあれば早くお示しいただきたいなということと,それから,その中で多分一番もめそうな,かつてもめた代用監獄の問題というのを,法務省としてはどういうふうにしようと考えていらっしゃるのか。これからもちろん日弁連とも話し合うということですけれども,法務省としてはこうしたいという方針はもう当然決まっていてしかるべきだと思うので,どういうふうになっているのか教えていただけますか。
○横田矯正局長 代用監獄の問題から申し上げますと,代用監獄の問題については,従前の法務省の立場は変わっておりません。
 それから法案につきましては,現在,事務的には作業を進めているところです。したがいまして,素案のようなものが出来上がった段階で顧問会議にお示ししまして,また御意見などを伺いたいというふうには考えております。
○江川顧問 つまり,監獄として代用するという文言を入れる方向みたいな感じでやっていらっしゃるのですか。
○横田矯正局長 従前の立場,基本的立場は変わっておりません。
○瀬川顧問 行刑改革会議では受刑者について御議論してきましたので,未決拘禁の問題を入れると非常に複雑化して議論が長くなってしまわないか。名古屋刑務所の事件が起こって,その後いろいろ浮かび上がった問題点を解決するということが大前提だったものですから,未決については,まだ議論が及ばなかったというのが正直なところだと思うのです。だから,ここで未決の問題を入れるとまた余計な時間がかかって,今せっかく名古屋刑務所の事件をきっかけとして日の目を見かけた行刑改革というか,受刑者を中心とした行刑改革が遠のいてしまわないのでしょうか。未決の問題や死刑の問題を入れるということになって,今行刑改革の提言による問題解決が遅れるということについて,どういう見通しを持っておられるのか。
 それから未決の問題については,代用監獄という理念的な対立を含む問題があって,それが議論が先延ばしした一つの原因だと思います。その点で,警察庁,あるいは日弁連と協議される上で,代用監獄についてある程度の見通しを持って臨む必要がある。全面改正というのは望ましいと思いますけれども,かといって,本命の名古屋事件をきっかけとした行刑改革の提言が,結局先送りになる,あるいは先細りになってしまうという可能性を恐れます。その点の,何か明言というか,確かなところをお伺いしたい。
○横田矯正局長 先ほど申し上げましたように,監獄法の全面改正というのは喫緊の課題,これをしなければ行刑改革というものの基盤はできないと考えておりますので,まず,私どもは監獄法の早期の全面改正を実現したい,そのために努力をしたいと考えてございまして,いろんな御意見がありますが,現時点で私どもはそういう答え,何とかそれを実現したいということでやっています。
 あと瀬川顧問がおっしゃったことについては,今日の顧問会議においてそういう御意見がございましたということで,またそれはそれとして考えさせていただきたいということで,現時点では従前の答えの繰り返しになってしまいますので,お答えという形ではちょっと失礼させていただきたいと思いますが。
○瀬川顧問 今おっしゃった,全面改正する理論的な整合性はあると思います。その点で,死刑囚も含めて,未決も含めて全体的な監獄法を改正するのは正しいと思うのですが,ただ,そういうことを入れることによって,今までの行刑改革の提言というものが何か先細りにならないようにということを是非お願いしたい。いろいろな背景事情が変わっているところもあるかと思いますので,警察庁,日弁連と建設的に御議論いただきたいと思います。
○横田矯正局長 はい,かしこまりました。
○久保井顧問 この行刑改革会議の審議なり提言の射程距離といいますか,どこを射程距離とするものであったかという点については,49ページの表現方法はともかくとして,その中心が受刑者にあったということは恐らく異存はないことだろうと思います。
 井嶋顧問がおっしゃられた未決拘禁者も意識してといいますか,それもある程度念頭に置いて審議はされたはずだし,また,この提言を応用すればそこにも及ぶはずだといいますか,そういう御主張も私も理解できるのはできます。
 ただ,代用監獄の問題について議論しなかった,これを取り上げて議論しなかったというのもまたこれ事実でありまして,しかし,未決の問題を議論する際に,代用監獄が狭い意味での処遇の在り方そのものかどうか,井嶋委員がおっしゃるように,それは別の政策の問題だという言い方もできるかもわからないけれども,しかし,やはり昭和50年以来約30年間にわたって監獄法改正がストップしてきた最大の問題点がここにある以上,この点について少なくとも国民的なコンセンサス,今の新しい時代に立脚した国民的なコンセンサスが要るのではなかろうか。
 それは,方向性が出た後で詰めるのは,弁護士会が刑事被疑者の弁護を担当していますから,弁護士会,あるいは法務省,警察庁の専門家の検討が不可欠だと思いますけれども,それと同時に,若しくはそれ以前に,この時代においてこの問題をどうするのか。これ以上,もう30年もたって放置するわけにいかないのだから,国民的観点から合意形成をして,この際やるという,そういうことは時間が若干かかるかもわかりませんけれども,来年の通常国会が来年の臨時国会になるかもわからないし,若干のずれがあるにしても,そこはやはり努力,弁護士会だけが承諾すればいいというものでもありませんし,警察さえ承諾すればいいというものではありませんから,そこはやはりおやりになった方がいいのではないかという感じがいたします。
 私も監獄法の全面改正には反対ではありません。既決,未決及び死刑確定者の処遇を,新しい時代が来たわけですから,国際的な水準に合わせて恥ずかしくない,そういうものに見直していくということ,日本的行刑のよさも生かしながら国際水準に合わせていくという,そういうことには反対ではありませんけれども,もともと前の提言,改革会議のときに,余りぜいたくを言っていたらもう前に進まない,だからステップ・バイ・ステップでできるところからやろうじゃないか,取りあえず受刑者の処遇の改善はだれも異存のないことだ,弁護士会も警察も,あるいは法務省もだれも異存のないことだから,まずここを片づけて,それから次に行ったらいいじゃないかという暗黙の合意のもとにこうしてやってきたと思うのです。だから,根本的には反対ではありませんけれども,そういう国民的合意を取りつける努力はしていただかないといけないのではないかと思います。
○横田矯正局長 分かりました。久保井顧問の御意見は承りました。特に私がここでお答えを申し上げる内容ではないと思いますので,そういうことで,ありがとうございました。
○林矯正局総務課長 よろしいでしょうか。

法務大臣あいさつ

○林矯正局総務課長 それでは,御熱心に御議論いただきましてどうもありがとうございました。議題についてはこれで終わりますけれども,本日の閉会に当たりまして,野沢法務大臣からあいさつがあります。
○野沢法務大臣 野沢でございます。本日は御多忙のところ,行刑改革推進委員会顧問会議に御出席いただき,誠にありがとうございました。
 行刑改革会議から聖域なき議論の成果である御提言を頂いてから,5か月余りが過ぎました。御提言につきましては,関係各方面から高い評価を頂いているところでありますが,特に御報告いたしたいのは,今回,私,通常国会においてずっと答弁に立つ立場にございましたが,与野党を通じまして,この御提言に対する法務委員会の先生方の評価が大変良かったということを御報告申し上げたいと思います。それゆえにこそ,御提言を頂きました趣旨に沿いまして,行刑改革が本当の意味で実を結ぶように努力をしなければならないと考えております。
 この御提言を頂きました際に,これを最大限尊重し,全力を挙げて取り組む決意であると申し上げましたところでございますが,以来,確固たる決意を持って抜本的な行刑改革に取り組んでおるところでございます。こうした中,本年4月30日には,歴代総理では初めて小泉総理大臣が府中刑務所を視察されまして,行刑施設の厳しい現状について御理解を賜ることができました。現場の職員も大変士気が上がったと報告を受けております。また,報道におきましても,改善更生への取組や処遇困難者等の問題など,実態を見据えた形で行刑施設が取り上げられる例が増えてきております。
 治安が悪化し,国民が安全に暮らせる社会の再生が強く求められている昨今,治安の最後の砦であり,そして変革の時を迎えている行刑施設に対しまして,強い関心と大きな期待が寄せられているものと実感をいたしております。今こそ行刑改革を遂げる好機であり,まだ緒についたばかりではありますが,本日,行刑改革の第一歩を皆様に御報告をし,委員会で御苦労いただきました皆様から貴重な御意見を頂きましたことは,誠に有り難いことでございます。
 当省といたしましては,皆様の御意見を参考にさせていただき,「国民に理解され,支えられる刑務所」を実現するため,運用上の改善はもとより,長年にわたり遂げることができなかった監獄法の改正につきましても,関係機関の御理解を得ながら全力で実現してまいりたいと考えております。顧問の皆様方には,今後とも行刑について関心を持ち続けていただき,行刑改革の行く末を見守っていただきますよう心よりお願いを申し上げまして,私のあいさつといたします。ありがとうございました。

その他

○林矯正局総務課長 それでは,これをもちまして本日は閉会とさせていただきます。今後とも監獄法改正を始めとしまして,改革の節目節目にその進ちょく状況を顧問の皆様に御報告申し上げたいと思います。
 なお,菊田委員からの御依頼で,資料の中に「CPR News Letter」中の論文を配布させていただいておりますので,申し添えます。
 本日は御多忙中のところ,誠にありがとうございました。

午後4時10分 閉会