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商法等の一部を改正する法律案要綱

平成12年2月22日


法務大臣 殿


法制審議会会長
答        申



 諮問第11号については,現在,商法部会において審議中であるが,会社分割法制の部分につき,別紙のとおり答申する。






(別紙) (注)原文は縦書きです



平成十二年二月二十二日
法制審議会総会決定
一 商法の一部改正
一 新設分割
 新設分割の意義
 会社は、その営業の全部又は一部を設立する会社に承継させるため、新設分割をすることができるものとする。
 分割計画書の承認
(一)  会社が新設分割をするには、分割計画書を作成し、株主総会の承認を受けることを要するものとする。
(二)  分割計画書には、左の事項を記載することを要するものとする。
(1)  分割によって設立する会社の定款の規定
(2)  分割によって設立する会社が分割に際して発行する株式の種類及び数並びに分割をする会社又はその株主に対する株式の割当てに関する事項
(3)  分割によって設立する会社の資本の額及び準備金に関する事項
(4)  分割をする会社又はその株主に支払をすべき金額を定めたときは、その規定
(5)  分割によって設立する会社が分割をする会社から承継する権利義務に関する事項
(6)  分割によって設立する会社が分割をする会社の株主に対して分割に際して発行する株式の割当てをする場合において、分割をする会社の資本又は準備金の減少をするときは、減少すべき資本の額又は準備金に関する事項
(7)  分割によって設立する会社が分割をする会社の株主に対して分割に際して発行する株式の割当てをする場合において、分割をする会社が分割に際して株式の消却又は併合をするときは、その方法
(8)  分割をすべき時期
(9)  分割をする会社が分割の日までに利益の配当又は第二百九十三条ノ五第一項の金銭の分配をするときは、その限度額
(10)  分割によって設立する会社の取締役及び監査役の氏名
(11)  会社が共同して分割によって会社を設立するときは、その旨
(三)  分割計画書の要領は、第二百三十二条に定める通知に記載することを要するものとする。
(四)  (一)の決議は、第三百四十三条の規定によらなければすることができないものとする。
(五)  分割によって設立する会社の定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨を定める場合において、分割をする会社の定款にその定めがないときは、(一)の決議は、第三百四十八条第一項の規定によらなければすることができないものとする。ただし、分割によって設立する会社が分割をする会社に対して発行する株式の総数の割当てをするときは、この限りでないものとする。
 分割計画書等の備置き等
(一)  取締役は、2の(一)の株主総会の会日の二週間前から分割の日の後六月を経過する日まで、左の書類を本店に備え置くことを要するものとする。
(1)  分割計画書
(2)  分割をする会社又はその株主に対する株式の割当てに関する事項につき、その理由を記載した書面
(3)  各会社の負担すべき債務の履行の見込みがあること及びその理由を記載した書面
(4)  2の(一)の株主総会の会日の前六月内の日において作成した分割をする会社の貸借対照表
(5)  (4)の貸借対照表が最終の貸借対照表でないときは、最終の貸借対照表
(6)  分割をする会社の最終の貸借対照表とともに作成した損益計算書
(7)  (6)の損益計算書のほか(4)の貸借対照表とともに損益計算書を作成したときは、その損益計算書
(二)  株主及び会社の債権者は、営業時間内いつでも(一)の書類の閲覧を求め、又は会社の定めた費用を支払ってその謄本若しくは抄本の交付を求めることができるものとする。
 株主の株式買取請求権
(一)  2の(一)の株主総会に先立ち会社に対して書面をもって分割に反対の意思を通知し、かつ総会において分割計画書の承認に反対した株主は、会社に対して、自己の有する株式を承認の決議がなければその有すべき公正な価格で買い取るべき旨を請求することができるものとする。
(二)  第二百四十五条ノ三及び第二百四十五条ノ四の規定は、(一)の場合に準用するものとする。
 債権者保護手続
(一)  会社は、2の(一)の承認の決議の日から二週間内に、その債権者に対し、分割に異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を官報をもって公告し、かつ判明している債権者には、各別にこれを催告することを要するものとする。ただし、分割によって設立する会社が分割をする会社に対し分割に際して発行する株式の総数の割当てをする場合において、分割後も分割をする会社に対しその債権の弁済の請求をすることができる債権者については、この限りでないものとする。
(二)  第百条第一項後段、第二項及び第三項並びに第三百七十六条第三項の規定は、(一)の場合に準用するものとする。
 分割によって設立する会社の資本
 分割によって設立する会社の資本は、分割をする会社から承継する財産の価額から承継する債務の額及び分割をする会社又はその株主に支払をすべき金額を控除した額を超えることができないものとする。この場合において、分割によって設立する会社が分割に際して額面株式を発行するときは一株の金額にその株式の総数を乗じた額、無額面株式を発行するときは五万円にその株式の総数を乗じた額は資本に組み入れることを要するものとする。
 分割によって設立する会社の資本準備金等
(一)  6の前段に規定する資本の限度額が分割によって設立した会社の資本の額を超えるときは、その超過額は、資本準備金として積み立てることを要するものとする。
(二)  分割によって設立した会社が分割をした会社の株主に対して分割に際して発行する株式の割当てをした場合においては、(一)の超過額中分割をした会社の利益準備金その他会社に留保した利益の額を超えない金額を資本準備金としないことができるものとする。
(三)  (二)の場合においては、分割をする会社の利益準備金その他会社に留保した利益の額から(二)の規定により資本準備金としなかった金額に相当する金額を控除することを要するものとする。この場合においては、分割をする会社の利益準備金から控除する金額は、分割によって設立した会社の利益準備金とする金額を超えることができないものとする。
 簡易な分割の手続
(一)  分割によって設立する会社が分割をする会社に対して分割に際して発行する株式の総数の割当てをする場合において、分割をする会社が分割によって設立する会社に承継させる財産につき分割をする会社の会計帳簿に記載した価額の合計額がその会社の最終の貸借対照表の資産の部に計上した額の合計額の二十分の一を超えないときは、2の(一)の承認を得ることを要しないものとする。
(二)  (一)の場合においては、分割計画書に2の(一)の承認を得ないで分割をする旨を記載することを要するものとする。
(三)  (一)の場合においては、3の(一)中「2の(一)の株主総会の会日の二週間前」とあり、及び3の(一)の(4)中「2の(一)の株主総会の会日」とあるのは「5の(一)の規定による公告又は催告の日のうち先の日」と、5の(一)中「2の(一)の承認の決議の日」とあるのは「分割計画書を作成した日」とし、4の規定は適用しないものとする。
 分割の公告
(一)  分割によって設立する会社が分割をする会社の株主に対して分割に際して発行する株式の割当てをする場合において、分割に際して株券及び端株券を提出することを要しないときは、分割をする会社は、分割をする旨及び一定の日において株主名簿に記載のある株主が分割によって株式を受ける権利を有すべき旨を、その日の二週間前、もしその日が第二百二十四条ノ三第一項の期間中であるときはその期間の初日の二週間前に公告することを要するものとする。
(二)  (一)の場合において分割をしたときは、分割によって設立した会社は、遅滞なく、(一)の日において株主名簿に記載のある株主及び株主名簿に記載のある質権者に対して、その株主が受ける株式の額面無額面の別、種類及び数を通知することを要するものとする。
10  分割の登記
(一)  会社の分割があったときは、本店の所在地においては二週間、支店の所在地においては三週間内に、分割をした会社については変更の登記を、分割によって設立した会社については第百八十八条に定める登記をすることを要するものとする。
(二)  分割によって設立した会社が、分割によって転換社債、新株引受権付社債又は第二百八十条ノ十九第一項の新株の引受権に係る義務を承継したときは、(一)の登記と同時に、転換社債の登記、新株引受権付社債の登記又は同条第一項の新株の引受権の行使により発行すべき株式の登記をすることを要するものとする。
11  分割の効力の発生時期
 会社の分割は、これによって設立した会社がその本店の所在地において10の(一)の登記をすることによって効力を生じるものとする。
12  分割の効力
(一)  分割によって設立した会社は、分割計画書の記載に従い、分割をした会社の権利義務を承継するものとする。
(二)  5の(一)に規定する各別の催告を受けなかった債権者に対する分割をした会社の債務については、分割計画書の記載にかかわらず、その債務を負担するものとされなかった会社もまたその弁済の責めに任ずるものとする。ただし、分割の日におけるその有した財産の価額を限度とするものとする。
13  分割に関する事項を記載した書面の備置き等
(一)  取締役は、5に規定する手続の経過、分割の日、分割によって設立した会社が分割をした会社から承継した権利義務並びに財産の価額及び債務の額その他の分割に関する事項を記載した書面を、分割の日から六月間本店に備え置くことを要するものとする。
(二)  株主、会社の債権者その他の利害関係人は、営業時間内いつでも(一)の書類の閲覧を求め、又は会社の定めた費用を支払ってその謄本若しくは抄本の交付を求めることができるものとする。
14  新設分割無効の訴え
(一)  会社の新設分割の無効は、分割の日から六月内に訴えをもってのみ主張することができるものとする。
(二)  (一)の訴えは、各会社の株主、取締役、監査役、清算人、破産管財人又は分割を承認しなかった債権者に限りこれを提起することができるものとする。
(三)  (一)の訴えは、分割をした会社又は分割によって設立した会社の本店の所在地の地方裁判所の管轄に専属するものとする。
(四)  (三)の規定により二以上の裁判所が管轄権を有するときは、先に訴えの提起があった裁判所の管轄に専属するものとする。
(五)  裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるために必要があると認めるときは、申立てにより、又は職権をもって、訴訟の全部を(三)に規定する裁判所に移送することができるものとする。
(六)  第百五条第二項から第四項まで、第百六条、第百九条、第百十条及び第二百四十九条の規定は、(一)の訴えに準用するものとする。
15  分割無効判決の効力
(一)  分割を無効とする判決が確定したときは、分割をした会社は、分割によって設立した会社が分割後に負担した債務につき、弁済の責めに任ずるものとする。
(二)  分割によって設立した会社が分割後取得した財産は、分割をした会社の所有に属するものとする。
(三)  会社が共同して分割により会社を設立した場合において、分割を無効とする判決が確定したときは、分割をした会社は、分割によって設立した会社が分割後負担した債務につき連帯してその弁済の責めに任ずるものとする。
(四)  (三)に規定する場合においては、分割によって設立した会社が分割後取得した財産は分割をした会社の共有に属するものとする。
(五)  (三)及び(四)の場合においては、各会社の負担部分又は持分は、その協議で定めるものとする。協議が成立しないときは、裁判所は、請求により、分割の時における各会社の財産の額その他一切の事情を斟酌してこれを定めるものとする。
16  分割無効の登記
 分割を無効とする判決が確定したときは、本店及び支店の所在地において、分割をした会社については変更の登記を、分割によって設立した会社については解散の登記をすることを要するものとする。
17  準用規定
(一)  第二百八条及び第二百九条第三項の規定は、分割をする会社の株式を目的とする質権にこれを準用するものとする。
(二)  第二百十四条第二項及び第二百十五条から第二百十七条までの規定は、会社の分割の場合の株式の併合に準用するものとする。
(三)  第二百十七条第一項及び第二項の規定は、分割によって設立する会社が分割に際して発行する株式の割当てにより一株に満たない端数を生じる場合に準用するものとする。
 吸収分割
 吸収分割の意義
 会社は、その一方の営業の全部又は一部を他方に承継させるため、吸収分割をすることができるものとする。
 分割契約書の承認
(一)  会社が吸収分割をするには、分割契約書を作成し、株主総会の承認を受けなければならないものとする。
(二)  分割契約書には、左の事項を記載することを要するものとする。
(1)  分割によって営業を承継する会社が分割により定款の変更をするときは、その規定
(2)  承継する会社が分割に際して発行する新株の総数、額面無額面の別、種類及び数並びに分割をする会社又はその株主に対する新株の割当てに関する事項
(3)  承継する会社の増加すべき資本の額及び準備金に関する事項
(4)  分割をする会社又はその株主に支払をすべき金額を定めたときは、その規定
(5)  承継する会社が分割をする会社から承継する権利義務に関する事項
(6)  承継する会社が分割をする会社の株主に対して分割に際して発行する新株の割当てをする場合において、分割をする会社の資本又は準備金の減少をするときは、減少すべき資本の額又は準備金に関する事項
(7)  承継する会社が分割をする会社の株主に対して分割に際して発行する新株の割当てをする場合において、分割をする会社が分割に際して株式の消却又は併合をするときは、その方法
(8)  各会社において、(一)の決議をすべき株主総会の期日
(9)  分割をすべき時期
(10)  各会社が分割の日までに利益の配当又は第二百九十三条ノ五第一項の金銭の分配をするときは、その限度額
(11)  承継する会社につき分割に際して就職すべき取締役又は監査役を定めたときは、その規定
(三)  分割契約書の要領は、第二百三十二条に定める通知に記載することを要するものとする。
(四)  (一)の決議は、第三百四十三条の規定によらなければすることができないものとする。
(五)  承継する会社の定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがある場合又は承継する会社が分割により定款を変更してその定めを設ける場合において、分割をする会社の定款にその定めがないときは、分割をする会社における(一)の決議は、第三百四十八条第一項の規定によらなければすることができないものとする。ただし、承継する会社が分割をする会社に対して分割に際して発行する新株の総数の割当てをするときは、この限りでないものとする。
(六)  承継する会社が分割により定款を変更して(五)の定めを設ける場合においては、その会社につき(五)と同様とする。
(七)  承継する会社の定款に(五)の定めがある場合における(五)の本文の決議をすべき株主総会については、その会社の定款にその定めがある旨を(三)の通知に記載することを要するものとする。
 分割契約書等の備置き等
(一)  取締役は、2の(一)の株主総会の会日の二週間前から分割の日の後六月を経過する日まで、左の書類を本店に備え置くことを要するものとする。
(1)  分割契約書
(2)  分割をする会社又はその株主に対する新株の割当てに関する事項について、その理由を記載した書面
(3)  各会社の負担すべき債務の履行の見込みがあること及びその理由を記載した書面
(4)  2の(一)の株主総会の会日の前六月内の日において作成した各会社の貸借対照表
(5)  (4)の貸借対照表が最終の貸借対照表でないときは、最終の貸借対照表
(6)  各会社の最終の貸借対照表とともに作成した損益計算書
(7)  (6)の損益計算書のほか(4)の貸借対照表とともに損益計算書を作成したときは、その損益計算書
(二)  一の3の(二)の規定は、(一)の書類に準用するものとする。
 新株の発行に代わる自己株式の移転
 分割によって営業を承継する会社は、分割に際してする新株の発行に代えて、その有する自己の株式で第二百十一条の規定により相当の時期に処分をすることを要するものを分割をする会社又はその株主に移転することができるものとする。この場合においては、移転すべき株式の総数、額面無額面の別、種類及び数を分割契約書に記載することを要するものとする。
 債権者保護手続
(一)  各会社は、2の(一)の承認の決議の日から二週間内に、その債権者に対し、分割に異議があれば一定の期間内に述べるべき旨を官報をもって公告し、かつ判明している債権者には各別に催告をすることを要するものとする。ただし、分割によって営業を承継する会社が、その公告を官報のほか公告をする方法として定款に定めた時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲げてするときは、その会社においては、その催告をすることを要しないものとする。
(二)  第百条第一項後段、第二項及び第三項、一の5の(一)のただし書き並びに第三百七十六条第三項の規定は、(一)の場合に準用するものとする。
 暖簾の計上
 分割によって営業を承継する会社が分割により暖簾を承継したときは、これを貸借対照表の資産の部に計上することができるものとする。この場合においては、その取得価額を付し、その取得の後五年内に毎決算期において均等額以上の償却をすることを要するものとする。
 承継する会社の資本
 分割によって営業を承継する会社の資本は、分割をする会社から承継する財産の価額から左の金額を控除した額を限度として増加することができるものとする。この場合において、分割に際して額面株式を発行するときは、一株の金額にその株式の総数を乗じた額は、資本に組み入れることを要するものとする。
(1)  分割をする会社から承継する債務の額
(2)  分割をする会社又はその株主に支払をすべき金額
(3)  4の規定により分割をする会社又はその株主に移転する株式につき会計帳簿に記載した価額の合計額
 承継する会社の資本準備金等
(一)  7の前段に規定する資本増加の限度額が分割によって営業を承継した会社の増加した資本の額を超えるときは、その超過額は、資本準備金として積み立てることを要するものとする。
(二)  承継した会社が分割をした会社の株主に対して分割に際して発行する新株の割当てをした場合においては、(一)の超過額中分割をした会社の利益準備金その他会社に留保した利益の額を超えない金額を資本準備金としないことができるものとする。この場合においては、一の7の(三)の規定を準用するものとする。
 分割をする会社における簡易な分割の手続
(一)  分割によって営業を承継する会社が分割をする会社に対して分割に際して発行する新株の総数の割当てをする場合において、分割をする会社が承継する会社に承継させる財産につき分割をする会社の会計帳簿に記載した価額の合計額がその会社の最終の貸借対照表の資産の部に計上した額の合計額の二十分の一を超えないときは、その会社においては、2の(一)の承認を得ることを要しないものとする。
(二)  (一)の場合においては、分割契約書に分割をする会社においては2の(一)の承認を得ないで分割をする旨を記載することを要するものとする。
(三)  (一)の場合における分割をする会社については、3の(一)中「2の(一)の株主総会の会日の二週間前」とあり、及び3の(一)の(4)中「2の(一)の株主総会の会日」とあるのは「5の(一)の規定による公告又は催告の日のうち先の日」と、5の(一)中「2の(一)の承認の決議の日」とあるのは「分割契約書を作成した日」とし、18の(五)において準用する一の4の規定を適用しないものとする。
10  承継する会社における簡易な分割の手続
(一)  分割によって営業を承継する会社が分割に際して発行する新株の総数がその会社の発行済株式の総数の二十分の一を超えないときは、その会社においては、2の(一)の承認を得ることを要しないものとする。ただし、分割をする会社又はその株主に支払をすべき金額を定めた場合において、その金額が最終の貸借対照表により承継する会社に現存する純資産額の五十分の一を超えるときは、この限りでないものとする。
(二)  4の規定により分割をする会社又はその株主に移転する株式は、(一)の規定の適用については、分割に際して発行する新株とみなすものとする。
(三)  (一)の本文の場合においては、分割契約書に、承継する会社については2の(一)の承認を得ないで分割をする旨を記載することを要し、2の(二)の(1)及び(11)に掲げる事項は、記載することができないものとする。
(四)  承継する会社は、分割契約書を作成した日から二週間内に、分割をする会社の商号及び本店、分割をすべき時期並びに2の(一)の承認を得ないで分割をする旨を公告し、又は株主に通知しなければならないものとする。
(五)  (四)の規定による公告又は通知の日から二週間内に承継する会社に対し書面をもって分割に反対の意思を通知した株主は、会社に対して、自己の有する株式を分割契約がなければその有すべき公正な価格をもって買い取るべき旨を請求することができるものとする。
(六)  (五)の請求は、(五)の期間の満了の日から二十日内に株式の額面無額面の別、種類及び数を記載した書面を提出してすることを要するものとする。
(七)  第二百四十五条ノ三第二項から第五項まで及び第二百四十五条ノ四の規定は、(五)の場合に準用するものとする。
(八)  承継する会社の発行済株式の総数の六分の一以上に当たる株式を有する株主が(五)の規定による反対の意思の通知をしたときは、ここで定めた手続による分割をすることができないものとする。
(九)  (一)の本文の場合における承継する会社についての3の(一)及び5の(一)の規定の適用については、3の(一)中「2の(一)の株主総会の会日の二週間前」とあり、及び3の(一)の(4)中「2の(一)の株主総会の会日」とあるのは「5の(一)又は10の(四)の規定による公告、催告又は通知の日のうち最初の日」と、5の(一)中「2の(一)の承認の決議の日」とあるのは「分割契約書を作成した日」とするものとする。
11  分割の登記
(一)  会社の分割があったときは、分割をした会社及び分割によって営業を承継した会社は、本店の所在地においては二週間、支店の所在地においては三週間内に、変更の登記をすることを要するものとする。
(二)  一の10の(二)の規定は、(一)の場合に準用するものとする。
12  分割の効力の発生時期
 会社の分割は、分割によって営業を承継した会社がその本店の所在地において、11の(一)の登記をすることによって効力を生じるものとする。
13  分割の効力
(一)  分割によって営業を承継した会社は、分割契約書の記載に従い分割をした会社の権利義務を承継するものとする。
(二)  5の(一)に規定する各別の催告を受けなかった債権者に対する分割をした会社の債務については、分割契約書の記載にかかわらず、その債務を負担するものとされなかった会社もまたその弁済の責めに任ずるものとする。ただし、その会社が分割をした会社であるときは分割の日におけるその有した財産の価額を、その会社が承継した会社であるときは承継した財産の価額を限度とするものとする。
14  分割前に就職した承継した会社の取締役等の任期
 分割によって営業を承継する会社の取締役及び監査役で分割前に就職したものは、分割契約書に別段の定めの記載があるときを除くほか、分割後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時に退任するものとする。
15  吸収分割無効の訴え
(一)  会社の吸収分割の無効は、分割の日から六月内に訴えをもってのみ主張することができるものとする。
(二)  (一)の訴えは、分割をした会社又は分割によって営業を承継した会社の本店の所在地の地方裁判所の管轄に専属するものとする。
(三)  第百五条第二項から第四項まで、第百六条、第百九条、第百十条及び第二百四十九条の規定並びに一の14の(二)、(四)及び(五)は、(一)の訴えに準用するものとする。
16  分割無効判決の効力
(一)  分割を無効とする判決が確定したときは、各会社は、分割によって営業を承継した会社が分割後に負担した債務につき、連帯して弁済の責めに任ずるものとする。
(二)  承継した会社が分割後に取得した財産は、各会社の共有に属するものとする。
(三)  一の15の(五)は、(一)及び(二)の場合に準用するものとする。
17  分割無効の登記
 分割を無効とする判決が確定したときは、本店及び支店の所在地において、変更の登記をすることを要するものとする。
18  準用規定
(一)  第二百八条及び第二百九条第三項の規定は、分割をする会社の株式を目的とする質権に準用するものとする。
(二)  第二百十四条第二項及び第二百十五条から第二百十七条までの規定は、会社の分割の場合の株式の併合に準用するものとする。
(三)  第二百十七条第一項及び第二項の規定は、分割によって営業を承継する会社が分割に際して発行する新株の割当てにより一株に満たない端数を生じる場合に準用するものとする。
(四)  第三百五十条第一項及び第三項の規定は、承継する会社が分割により定款を変更して株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めを設ける場合におけるその会社の執るべき手続に準用するものとする。
(五)  一の4、9及び13の規定は、吸収分割の場合に準用するものとする。
 その他
 簡易な営業の譲受け
(一)  会社が他の会社の営業の全部の譲受けをする場合において、その対価が最終の貸借対照表により会社に現存する純資産額の二十分の一を超えないときは、会社においては、第二百四十五条第一項の決議によることを要しないものとする。
(二)  (一)の場合においては、会社は、営業の全部の譲受けを約した日から二週間内に、相手方である会社の商号及び本店並びに第二百四十五条第一項の決議によらないで営業の全部の譲受けをする旨及びその要領を公告し、又は株主に通知することを要するものとする。
(三)  (二)の規定による公告又は通知の日から二週間内に会社に対し書面をもって営業の全部の譲受けに反対の意思を通知した株主は、会社に対して、自己の有する株式を他の会社の営業の全部の譲受けに係る契約がなければその有すべき公正な価格をもって買い取るべき旨を請求することができるものとする。
(四)  (三)の請求は、(三)の期間の満了の日から二十日以内に株式の額面無額面の別、種類及び数を記載した書面を提出してすることを要するものとする。
(五)  第二百四十五条ノ三第二項から第五項まで及び第二百四十五条ノ四の規定は、(三)の場合に準用するものとする。
(六)  会社の発行済株式の総数の六分の一以上に当たる株式を有する株主が(三)の規定による反対の意思の通知をしたときは、ここで定めた手続による営業の全部の譲受けをすることができないものとする。
 子会社の計算による利益の供与の禁止
(一)  会社は、何人に対しても、株主の権利の行使に関し、会社又はその子会社の計算において財産上の利益を供与することができないものとする。
(二)  取締役等は、株主の権利の行使に関し、会社又はその子会社の計算において財産上の利益を人に供与したときは、三年以下の懲役又は三〇〇万円以下の罰金に処するものとする。
 その他
 所要の規定を整備するものとする。
二 有限会社法の一部改正
 有限会社が有限会社を設立する新設分割
(一)  有限会社は、その営業の全部又は一部を設立する有限会社に承継させるため、新設分割をすることができるものとする。
(二)  有限会社が(一)の規定により分割をするには、第四十八条に定める決議があることを要するものとする。
 株式会社が有限会社を設立する新設分割
(一)  株式会社は、有限会社を分割によって設立する会社とする新設分割をすることができるものとする。
(二)  (一)の場合においては、分割をする株式会社に関しては商法の規定に従うことを要するものとする。ただし、分割によって設立する有限会社が分割をする株式会社の株主に対して出資の割当てをするときは、その株式会社における第一の一の2の(一)の決議は、商法第三百四十八条第一項の規定によらなければすることができないものとする。
(三)  分割をする株式会社が社債の償還を完了していないものであるときは、分割によって設立する有限会社にその社債を承継させることはできないものとする。
 有限会社の吸収分割
(一)  有限会社と他の有限会社又は株式会社は、その一方の営業の全部又は一部を他方に承継させるため、吸収分割をすることができるものとする。
(二)  (一)の場合においては、分割をする株式会社又は分割によって営業を承継する株式会社に関しては商法の規定に従うことを要するものとする。ただし、承継する有限会社が分割をする株式会社の株主に対して出資の割当てをするときは、その株式会社における第一の二の2の(一)の決議は、商法第三百四十八条第一項の規定によらなければすることができないものとする。
(三)  1の(二)の規定は、(一)の場合に準用するものとする。
(四)  分割をする株式会社が社債の償還を完了していないものであるときは、承継する有限会社にその社債を承継させることはできないものとする。
 その他
 所要の規定を整備するものとする。
三 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律等の一部改正
 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律等につき、所要の改正を行うものとする。
 会社分割に伴う労働契約上の使用者の地位の承継等に関しては、労働者保護の観点から、所要の措置が講じられることを期待する。