商法等の一部を改正する法律案要綱案
平成9年1月22日
法制審議会商法部会
法制審議会商法部会
第一 商法の一部改正 |
一 設立委員 |
(一) | 設立委員の制度は、廃止する。 |
(二) | 新設合併の場合には、合併をする各会社の代表者が定款に署名しなければならない。 |
二 合併契約書の承認決議 |
合併後存続する会社(以下「存続会社」という。)が合併により定款を変更して株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めを設ける場合においては、その会社及び合併によって消滅する会社(以下「消滅会社」という。)であって定款にその定めがないものにおける商法(以下第一において「法」という。)第四百八条第一項の決議は、法第三百四十八条第一項の規定によらなければならない。 |
三 合併契約書等の備置き等 |
1 合併契約書等の備置き |
取締役は、合併契約書の承認をすべき株主総会の会日の二週間前から合併の日後六月を経過する日まで次の書類を本店に備え置かなければならない。 |
(一) | 合併契約書 |
(二) | 消滅会社の株主に対する株式の割当てに関する事項についてその理由を記載した書面 |
(三) | 合併契約書の承認をすべき総会の会日の前六月内の日において作成した合併をする各会社の貸借対照表 |
(四) | (三)の貸借対照表が最終の貸借対照表でないときは、最終の貸借対照表 |
(五) | 合併をする各会社の最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書 |
(六) | (五)の損益計算書のほか、(三)の貸借対照表と共に損益計算書を作成したときは、その損益計算書 |
2 備置書類の閲覧等 |
株主及び株式会社(以下第一において「会社」という。)の債権者は、営業時間内いつでも、1の書類の閲覧を求め、又は会社の定めた費用を支払ってその謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。 |
四 吸収合併の合併契約書の記載事項 |
合併をする会社の一方が合併後存続する場合には、合併契約書には、法第四百九条第一号から第五号に掲げる事項のほか、次の事項を記載しなければならない。 |
(一) | 合併により定款を変更するときは、その規定 |
(二) | 合併期日 |
(三) | 各会社が合併の日までに利益の配当又は法第二百九十三条ノ五第一項の金銭の分配をするときは、その限度額 |
(四) | 存続会社につき合併に際して就職すべき取締役及び監査役を定めたときは、その規定 |
五 存続会社の自己株式 |
存続会社は、合併に際してする新株の発行に代えて、自己の株式を消滅会社の株主に移転することができる。この場合においては、その株式の総数、額面無額面の別、種類及び数を合併契約書に記載しなければならない。 |
六 新設合併の合併契約書の記載事項 |
合併によって会社を設立する場合には、合併契約書には、法第四百十条第一号から第四号まで及び第四百九条第五号に掲げる事項のほか、次の事項を記載しなければならない。 |
(一) | 合併によって設立する会社(以下「新設会社」という。)の定款の規定 |
(二) | 合併期日 |
(三) | 各会社が合併の日までに利益の配当又は法第二百九十三条ノ五第一項の金銭の分配をするときは、その限度額 |
(四) | 新設会社の取締役及び監査役の氏名 |
七 債権者保護手続 |
1 催告の省略 |
会社がその債権者に対して合併に異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨の公告を官報をもってするほか、その会社が公告をする方法として定款で定めた時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙にも掲げてしたときは、知れたる債権者に対する各別の催告をすることは要しない。 |
2 債権者に対する弁済等 |
債権者が異議を述べたときは、合名会社、合資会社又は株式会社は、弁済をし、若しくは相当の担保を供し、又は債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社に相当の財産を信託しなければならない。ただし、合併をしてもその債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。 |
八 株式の分割 |
合併による株式の分割は、法第二百十八条第二項の規定にかかわらず、最終の貸借対照表により会社に現存する純資産額を分割後の発行済株式の総数で除した額が五万円を下るときであっても、することができる。 |
九 報告総会 |
報告総会の制度は、廃止する。 |
十 創立総会 |
創立総会の制度は、廃止する。 |
十一 資本の限度額 |
1 存続会社の資本の増加額 |
存続会社の資本は、合併により消滅会社から承継する財産の価額から承継する債務の額、消滅会社の株主に支払う金額及び五により消滅会社の株主に移転する株式につき最終の貸借対照表の資産の部に計上した金額の合計額を控除した額を限度として、増加することができる。この場合において、合併に際して額面株式を発行するときは、一株の金額にその額面株式の数を乗じた額は、資本に組み入れなければならない。 |
2 新設会社の資本の額 |
新設会社の資本の額は、合併により消滅会社から承継する財産の価額から承継する債務の額及び消滅会社の株主に支払う金額を控除した額を超えることができない。この場合において、新設会社が合併に際して額面株式を発行するときは一株の金額にその額面株式の数を乗じた額、無額面株式を発行するときは五万円にその無額面株式の数を乗じた額は、資本に組み入れなければならない。 |
十二 資本準備金 |
五により消滅会社の株主に移転した株式につき最終の貸借対照表の資産の部に計上した金額の合計額は、法第二百八十八条ノ二第一項第五号の超過額の算定上、消滅会社から承継した財産の価額から控除する。 |
十三 簡易合併 |
1 要件 |
存続会社が合併に際して発行する新株の総数が存続会社の発行済株式の総数の二十分の一を超えず、かつ、消滅会社の株主に支払をすべき金額が最終の貸借対照表により存続会社に現存する純資産額の五十分の一を超えないときは、存続会社は、法第四百八条第一項の承認を得ることを要しない。この場合においては、合併契約書に四(一)及び(四)に掲げる事項を記載することができない。 |
2 存続会社の自己株式 |
五により消滅会社の株主に移転する株式は、1の適用については、合併に際して発行する新株とみなす。 |
3 債権者保護手続 |
存続会社がその債権者に対してする合併に異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨の公告及び知れたる債権者に対する各別の催告は、合併契約書の作成の日から二週間内にしなければならない。 |
4 株主の株式買取請求権 |
(一) | 存続会社は、合併契約書の作成の日から二週間内に、法第四百八条第一項の承認を得ずに合併をする旨、消滅会社の商号及び本店並びに合併期日を公告し、又は株主に通知しなければならない。 |
(二) | (一)の公告又は通知の日から二週間内に、会社に対し書面をもって合併に反対の意思を通知した存続会社の株主は、会社に対し、自己の有する株式を合併契約がなければその有すべかりし公正な価格をもって買い取るべきことを請求することができる。 |
(三) | (二)の請求は、(二)の期間の満了の日から二十日内に、株式の額面無額面の別、種類及び数を記載した書面を提出してしなければならない。 |
(四) | 法第二百四十五条ノ三第二項から第五項まで及び第二百四十五条ノ四の規定は、(二)の場合に準用する。 |
(五) | 存続会社の発行済株式の総数の六分の一以上に当たる株式を有する株主が(二)による反対の意思の通知をしたときは、法第四百八条第一項の承認を得ずに合併をすることはできない。 |
5 合併契約書等の備置き等 |
(一) | 1の場合においては、存続会社の取締役は、3又は4(一)の公告、催告又は通知の日のうち最初の日から三1の書類を合併の日後六月を経過する日まで本店に備え置かなければならない。 |
(二) | 1の場合においては、存続会社についての三1(三)の貸借対照表は、その備置きの日の前六月内の日において作成したものとする。 |
十四 合併の登記 |
会社が合併をしたときは、本店の所在地においては二週間、支店の所在地においては三週間内に、存続会社については変更の登記、消滅会社については解散の登記、新設会社については法第百八十八条に定める登記をしなければならない。 |
十五 合併に関する事項を記載した書面の備置き等 |
1 合併に関する事項を記載した書面の備置き |
取締役は、債権者保護手続の経過、合併の日、消滅会社から承継した財産及び債務その他の合併に関する事項を記載した書面を合併の日から六月間本店に備え置かなければならない。 |
2 備置書面の閲覧等 |
株主及び会社の債権者は、営業時間内いつでも、1の書面の閲覧を求め、又は会社の定めた費用を支払ってその謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。 |
十六 存続会社の取締役及び監査役の任期 |
存続会社の取締役及び監査役であって、合併前に就職したものは、合併契約書に別段の定めの記載があるときを除き、合併後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時に退任する。 |
十七 合併無効の訴え |
(一) | 株主が合併無効の訴えを提起したときは、裁判所は、会社の請求により、相当の担保を供するべきことを命ずることができる。ただし、その株主が取締役又は監査役であるときは、この限りでない。 |
(二) | 会社が(一)の請求をするには、合併無効の訴えが悪意によるものであることを疎明しなければならない。 |
十八 その他 |
その他所要の改正をする。 |
第二 有限会社法の一部改正 |
一 違った種類の会社の合併 |
1 新設会社を株式会社とする有限会社同士の合併 |
(一) | 有限会社は、株式会社を新設会社として他の有限会社と合併をすることができる。 |
(二) | 有限会社が(一)により合併をするには、有限会社法(以下第二において「法」という。)第四十八条に定める決議によらなければならない。 |
(三) | (一)の場合においては、新設会社である株式会社は、商法の規定に従わなければならない。 |
2 新設会社を有限会社とする株式会社同士の合併 |
(一) | 株式会社は、有限会社を新設会社として他の株式会社と合併をすることができる。ただし、合併をする会社の一方又は双方が社債の償還を完了していないときは、この限りでない。 |
(二) | (一)により合併をする株式会社は、商法第三百四十八条第一項に定める決議によるほか、商法の規定に従わなければならない。 |
3 存続会社又は新設会社を有限会社とする有限会社と株式会社との合併 |
有限会社と株式会社とが合併をする場合において、存続会社又は新設会社が有限会社であるときは、その株式会社については、商法第三百四十八条第一項に定める決議によらなければならない。 |
4 裁判所の認可 |
有限会社と株式会社とが合併をする場合において、存続会社又は新設会社を株式会社とするときの裁判所の認可制度は、廃止する。 |
二 設立委員 |
(一) | 設立委員の制度は、廃止する。 |
(二) | 新設合併の場合には、合併をする各会社の代表者が定款に署名しなければならない。 |
三 合併契約書等の備置き等 |
第一の三は、有限会社について準用する。 |
四 吸収合併の合併契約書の記載事項 |
第一の四は、有限会社について準用する。 |
五 存続会社の自己持分 |
第一の五は、有限会社について準用する。 |
六 新設合併の合併契約書の記載事項 |
第一の六は、有限会社について準用する。 |
七 債権者保護手続 |
(一) | 第一の七は、有限会社について準用する。 |
(二) | (一)において準用する第一の七1の公告の方法につき定款をもって時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲げてする旨を定めたときは、本店の所在地においては二週間、支店の所在地においては三週間内に、その登記をしなければならない。 |
八 報告総会 |
第一の九は、有限会社について準用する。 |
九 創立総会 |
第一の十は、有限会社について準用する。 |
十 資本の限度額 |
第一の十一は、有限会社について準用する。 |
十一 資本準備金 |
第一の十二は、有限会社について準用する。 |
十二 合併の登記 |
1 有限会社が合併をしたときの登記 |
有限会社が合併をしたときは、本店の所在地においては二週間、支店の所在地においては三週間内に、存続会社については変更の登記、消滅会社については解散の登記、新設会社については法第十三条第二項に定める登記をしなければならない。 |
2 株式会社が合併をしたときの登記 |
株式会社が一2(一)により合併をしたときは、新設会社である有限会社につき本店の所在地においては二週間、支店の所在地においては三週間内に、法第十三条第二項に定める登記をしなければならない。 |
十三 合併に関する事項を記載した書面の備置き等 |
第一の十五は、有限会社について準用する。 |
十四 合併無効の訴え |
第一の十七は、有限会社について準用する。 |
十五 その他 |
その他所要の改正をする。 |
第三 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部改正 |
合併によって株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律第二条に該当する会社を設立する場合には、合併契約書に新設会社の会計監査人の氏名又は名称を記載しなければならない。 |
(注)原文縦書 |