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文書提出命令制度研究会(第3回)議事要旨

平成9年2月19日
担当:法務省民事局

1 日  時  平成9年2月19日(水)13:30~16:50
2 場  所  法務省第2会議室
3 出 席 者  座 長  竹下
        研究員  秋山,阿部,伊藤,宇賀,菅野,熊谷,長野,萩本,長谷部,花村,平山,深山,山下
        講 師  藤原靜雄・國學院大学教授
        その他  柳田審議官(民事局担当)
4 議  題  情報公開制度に関するヒアリング(2)
5 会議経過
    (以下では,第2回研究会の議事要旨で用いた「要綱案」「考え方」「資料集」という略語をそのまま用いる。)
 (1)  宇賀研究員から,「外国の情報公開制度-アメリカを中心として」と題するテーマで報告がされた。その概要は,次のとおりである。
   ○国の安全等に関する情報(要綱案第6第3号関係)
      これに相当するFOIA(資料集362頁参照)の不開示情報は,(b)(1)の国家安全保障にかかわる不開示情報(Exemption 1)であり,大統領命令(executive order)により秘密指定が行われる点が一つの特色である。アメリカにおいては古くから,権力分立の原則に基づき,重要な秘密情報については議会や裁判所などの他部門からの開示請求を拒否する大統領特権(executive privilege-これにはコモンロー上のものと憲法上のものがあるといわれている。)が認められており,このような観念がExemption 1の背景にはあると考えられる。executive privilegeにはstate secrets privilegeとofficial privilegeとがあり,前者に相当するものが(b)の(1),後者に相当するものが(b)の(5)や(7)である。
 クリントン政権の大統領命令が1995年4月に制定された第12,958号(資料集380頁参照)である。その1.1条は,国家安全保障を国防及び外交関係(relations)と定義しているが,FOIAの国防又は外交政策(policy)という表現よりも広い表現を用いていることから,両者の関係について議論があるところである。
 1.3条は,秘密をTop Secret,Secret,Confidentialの3つのレベルに区分しており,開示した場合に生ずる危害の大きさに応じた定性的な区分ということができる。この秘密区分の指定権限者を定めたものが1.4条である。秘密指定の事項的な範疇(どのような事項を秘密指定することができるか)については,1.5条が7種類に限定している。指定期間は,1.6条により,10年が原則であり,これよりも短い期間を定めたときはその期間になる(もっとも,同条(d)の(1)~(8)までの事項については例外が認められている。)。1.8条の(a)に列挙されている場合には,秘密区分の指定が禁止される。同条の(e)は,mosaic approachといわれているもので,個々の情報を取り出してみると秘密指定に値しないが,それらをあわせると重要な事項が漏れてしまうというような場合に,まとめて秘密指定をすることができる旨を規定している。
 1.9条には,秘密区分指定の見直し提案制度が定められている。これは,秘密指定が不適当であると考える場合に,見直しの提案をすることを奨励する制度で,提案をしたことによって報復を受けないこと及び提案について中立的な機関による審査の機会を与えられることが保障されており,不服申立ても認められている。
 3.4条の規定は,秘密区分の指定を自動的に解除する制度であり,指定から25年経過したもので永久保存する歴史的価値のある記録について自動的に秘密区分の指定を解除するという基準を設けている。もっとも,この原則にも(b)に列挙した事項については例外が認められており,例外が広すぎるという意見もある。このように自動的な指定解除の例外とされたものについても,できるだけ早期に指定が解除されるように,3.5条に系統的な審査の制度が設けられている。
 3.6条の義務的審査は,国民一般の請求により行政機関に秘密区分指定の見直しを義務付ける制度である。クリントンの大統領命令の特色は,(d)において,請求の拒否に対する行政上の不服申立てを認めた点である(司法審査は認められていない。)。FOIAの対象外である大統領記録(Presidential records)についても,秘密指定の見直しを請求することができるものとされていることから,この制度は,FOIAの代替的あるいは補足的な手段としての側面を有するということができる。
 3.7条(a)は,いわゆるグローマー拒否と呼ばれるもので,行政文書の存否そのものを答えることを拒否することができる旨の規定である。
 4.2条(a)は,秘密区分の指定をしたまま,その情報への特別のアクセスを認めるものである。FOIAは,請求者が誰であるかを問わないものであり,請求者がいかに国家に忠実な者であっても不開示情報へのアクセスは認めていないのに対し,大統領命令は,このような特別のアクセスを認めている。(1)の要件は,秘密区分指定情報にアクセスをさせても問題がないことを確認することであり,security clearanceといわれる。(3)は,need to knowの要件であるが,これについては4.5条(a)で適用除外が認められている。
 大統領命令に従わなかった場合のサンクションを定めるのが5.7条で,免職,停職,戒告等がある。  FOIAの(c)は,1986年改正で設けられたもので,exclusionといわれるが,この規定の意味については見解が分かれている。イングリッシュとカインドネスの両下院議員は,グローマー拒否をすることができる場合を特に明文で定めたものと理解していた(レイヒー上院議員同旨)。これに対し,ハッチ上院議員は,グローマー拒否は記録の存否を答えないものであるが,この(c)は,記録が存在していても「ない」と答えるべきもので,グローマー拒否とは異なるという解釈を示していた。この改正については各院の報告書がまとめられていないため,立法者意思は必ずしも明確でないが,FOIAの所管省である司法省は,後者の見解を支持しており,行政実務上もこの解釈に従った運用がされている。
 司法審査について,アメリカでは行政作用の司法審査は覆審的審査を行わないのが通常であるが,FOIAの(a)(4)(B)により,FOIA訴訟においては覆審的な審査を行うものとされており,Exemption 1についても例外とはされていない。また,インカメラ審理については,明文の規定がなくても認められると解されているが,FOIAにはこれを認める旨の明文の規定がある。さらに,FOIA訴訟においては,被告の行政機関が立証責任を負うものとされており,この点でも一般の行政訴訟とは異なっている。
 EPA v. Mink,410 U.S.73(1973)は,Exemption 1について,実質秘説を採用した控訴審判決を破棄し,大統領命令で秘密指定を受けたものについては開示義務が免除され,裁判所は実質的に秘密に当たるかどうかを司法審査することはできないという形式秘説の立場に立つ判示を行い,部分開示が可能か否かを判断するためのインカメラ審理も否定した(当時の(b)(1)の規定は,1966年制定当時のもので,国家安全保障にかかわる情報で大統領命令により特定的に指定されたものという内容であった。)。しかし,ベトナム戦争やウォーターゲート事件により,伝統的なexecutive privilegeを根拠とした行政の秘密主義に対する批判が高まっていた社会的な背景も手伝って,この判決は議会の反発を買い,1974年には情報公開を進める方向での改正がされた。この改正によって(b)(1)に(A)及び(B)の要件が設けられ,大統領命令に基づく秘密指定を受けていても,その指定自体の妥当性を裁判所が審査しうるとする実質秘説の立場に立ち,手続面・実体面の双方で裁判所が行政機関の判断に縛られずに覆審審査を行うことや,インカメラ審理が可能であることが明らかにされた。もっとも,インカメラ審理を行うかどうかは裁判所の裁量に委ねられており,これを行うことが義務付けられているわけではない。両院協議会の報告書は,国家安全保障の分野において情報を開示した場合に生ずる危害の程度については行政府が独特の洞察力を持っていることを認めた上で,Exemption 1につき覆審的審査をするに当たっては,行政機関の宣誓供述書(affidavit)を十分尊重することが期待されるという見解を表明している。
 この改正後の判例の動向として,裁判所は,インカメラ審理を命ずる前に,まず行政機関に宣誓供述書(ヴォーン・インデックスを含む意味で用いる場合と含まない意味で用いる場合とがあるが,ここでは含む意味で用いる。)を出させており,この機会を与えずに直ちにインカメラ審理を行うことはしていない。そして,この宣誓供述書が十分に詳細で行政機関が不誠実に行動した形跡もない場合には,裁判所は正式事実審理を経ない判決(summary judgement)をすることになり,大半のFOIA訴訟はこれによって解決している。他方,行政機関の宣誓供述書が十分詳細でない場合には,より詳細な宣誓供述書の提出を求めることになる。請求者にも提示される公開の宣誓供述書(public affidavit)で詳細な説明することが困難であるときは,インカメラ審理をすることになるが,実際に記録をみるインカメラインスぺクションを行うことは少なく,インカメラ宣誓供述書が利用されることが多い。インカメラ宣誓供述書は,Exemption 1についての審査の場面において特によく利用されている。インカメラ審理において原告の代理人の同席は明文では禁止されてはいないが,Exemption 1に関しては同席させた例はない(例外的ではあるが,Exemption 4の関係では原告の代理人を同席させた例がある。)。記録が大量で一人の裁判官によるインカメラ審理が困難であるときは,特別補助裁判官(special master)を使用することも可能であるが,その場合には,前述のsecurity clearanceが問題になる。また,記録が大量であるときには,サンプルについてのみインカメラ審理を行うことも可能である。
 カナダの情報へのアクセス法(以下「アクセス法」という。)では,15条に国家安全保障にかかわる不開示情報の規定があるが,FOIAと比べると,法律レベルでかなり詳しく規定されている。この点についての司法審査は,50条により,開示を拒否する合理的理由(reasonable ground)の有無の審査をするものとされており,行政機関の裁量が認められている。
   ○公共の安全等に関する情報(要綱案第6第4号関係)
      これに相当するFOIAの不開示情報は,(b)(7)の法執行(law enforcement)にかかわる不開示情報(Exemption 7)である。要綱案第6第4号は,「考え方」4(4)アに示されたとおり,いわゆる司法警察に限定し,行政警察を含まない趣旨であるが,FOIAは,刑事法執行に限られず,民事法執行や行政手続を通じた法執行も含んでいる。
 Exemption 7の中でも特に刑事法執行にかかわるセンシティブなものについては,前述のとおり,(c)の(1)及び(2)でexclusionの取扱いが認められている。1966年のFOIA制定後,判例はExemption 7を広く解釈していたため,1974年改正により,(A)~(F)の6つの支障のいずれかを惹起しうるときに限って不開示とすることができるという限定がされた。この規定については,レーガン政権下の1986年に,麻薬犯罪の取締強化を求める世論もあって,治安や安全保障を重視する観点から不開示の範囲を若干広げる方向での改正がされたが,(A)~(F)の6類型は変更されなかった(レーガン政権下で,大統領命令により,法人情報に関して第三者の意見を聞く手続が導入されたが,請求権者から外国人を除外しようとする試みは失敗した。)。(A)は執行手続への支障,(B)は公正な裁判・裁決,(C)はプライバシー,(D)は秘密の情報源,秘密の情報源から提供された秘密情報,(E)は法執行の調査技術,手続,ガイドライン,(F)は生命又は身体の安全である。
 プライバシーについてはExemption 6で不開示情報とされているが,(7)(C)は,法執行にかかわるプライバシーを特に厚く保護する趣旨である。これについては,前科記録の開示が問題となったReporters Committee v. DOJ,485 U.S.(1988)において,最高裁は,(1)FOIAではfirst party request(本人が自分の情報の開示を求める場合)を除いて請求者が誰かは開示の有無に影響しない,(2)プライバシーの適用除外において比較衡量の対象とされる公益(開示による公益)とは,行政機関が制定法上の義務を履行しているかを明らかにするものに限定される,という判断を示した。すなわち,行政機関が制定法上の義務を履行しているかどうかを明らかにすることがFOIAの核となる目的であり,ある人の前科記録を開示してもこれによって行政機関が制定法上の義務を履行しているかを明らかにすることにはならないから,開示は認められないと結論付ける。この判決は(7)(C)についての判決であるが,(6)についてもこの判決の基準が適用されると解されている。
 司法審査に関しては,1986年の改正により,Exemption 7で要求される危険の程度が“would”から“could reasonably be expected to”(合理的に予見できる場合)に変更された。これは,行政機関に立証が要求される危険の程度を減少させることによって不開示としうる範囲を広げたものであり,それだけ司法審査の範囲が限定されたことを意味する。
 なお,(b)(2)の不開示情報は,開示によって具体的な支障を生ずるものではなく,他の不開示情報とは趣を異にする。これについては,いわゆるlow 2とhigh 2という区別がされている。前者は,それほど重要ではないもの(例えば,行政機関の職員専用の駐車場のルール等),すなわち,開示しても公益に資するとは考えにくく,かえって費用や時間がかかるにすぎないものであり,後者は,行政機関の取締りのマニュアル等,開示することによって支障が生じうるものである。前者が(2)に含まれることには異論がなく,これについては裁量的な開示の対象となる。しかし,high 2が含まれるか否かについては,上院と下院の解釈が分かれており,行政実務においては,high 2も含ませるような運用がされてきた。もっとも,1974年改正により(7)(E)に法執行の調査技術,手続,ガイドラインが含まれることが明示されたので,(2)に無理にhigh 2を含ませる必要性は法執行についてはなくなったということができる。
 カナダのアクセス法16条(1)(a)の不開示情報には,請求の日が記録の日付から20年を経過していないものという期間の限定が付されている。同条(1)(c)及び(d)の不開示情報については,50条により,拒否の合理的理由の有無が司法審査の対象とされている。17条は,人の安全を脅かすことが合理的に予見される情報を不開示情報としている。
   ○法人等に関する情報(要綱案第6第2号関係)
      これに相当するFOIAの不開示情報は,(b)(4)である。いわゆる任意提供情報については,法文上,特段の規定は設けられていないが,コロンビア特別区巡回控訴裁判所のCritical Mass判決(資料集214頁参照)において,提供者が通常は公にしていないものであれば不開示とすべきであるという基準を示している。この判決は,それまでの実務において支配的であった同裁判所の国立公園事件判決に基づく基準(モートン基準。資料集219頁参照)を実質的に変更したものであると理解されており,まだ確立した判例とまではいえないかもしれないが,現在の支配的な考え方であると思われる。なお,FOIA訴訟については,コロンビア特別区の地方裁判所が全事件の3分の1強を扱っており,同特別区の地方裁判所や控訴裁判所にはFOIA訴訟に関する専門的知識が蓄積されているため,その判決は,他の裁判所や行政機関においても尊重される傾向がある。
 カナダのアクセス法では,20条(1)(b)及び(5)により,第三者から提供された秘密情報は,当該第三者の同意がなければ開示することができないものとされているが,同条(6)において公益による開示が定められている。同法の適用除外は,class test (類別検査-情報が特定された種類に該当するかどうか)に属するものと,injury test(阻害検査-開示が有害であることが合理的に予見されるかどうか)に属するものとに分類されるが,任意提供情報については,情報コミッショナーが同意がなければ出せないという解釈をとっているのに対し,財務委員会はinjury testもやっているという認識のようである。仮にinjuryがないということで開示をした場合には,breach of confidenceで提訴される可能性があるが,実際に提訴されたことはないと聞いている。
   ○行政文書の存否に関する情報(要綱案第8関係)
      いわゆるグローマー拒否とは,請求された文書を行政機関が保有しているという事実自体がFOIAの不開示規定で保護されている情報であるときに,行政機関は記録を保有しているか否かを答えることを拒否することができるというものであり,アメリカでは,Phillippi v. CIA,546 F.2d 1009(D.C.Cir,1976)以来,判例法上認められているものである。これは,特定の不開示情報に限定された考え方ではなく,すべての不開示情報に共通して認められている。exclusionの規定であるFOIAの(c)をグローマー拒否の規定ととらえて,グローマー拒否が限定的に認められていると紹介されることも少なからずあるが,(c)がグローマー拒否の規定でないことは前述のとおりである。(c)以外の場面でグローマー拒否が行われている例は実際にもあり,プライバシー・グローマリゼーションといわれるくらい,グローマー拒否が行われている事例の多くはプライバシーに関するものであるともいわれている。
 カナダの連邦では,アクセス法10条(2)により,行政機関の長は記録の存否を明らかにする義務を負わないものとされており,このような取扱いは,特定の不開示情報に限定されたものではない。不開示情報を限定していないのは,記録の存否を明らかにすることにより記録そのものを開示するのと同等の支障が生ずる場合をあらかじめ限定することは難しいからであると説明されている。なお,カナダでは各州がそれぞれ情報公開法を制定しており,グローマー拒否の規定を設けているものと設けていないものとがある。
   ○公益上の理由による開示(要綱案第6第1項ただし書ニ,第2項ただし書,第7関係)
      プライバシーについては,(b)の(6)や(7)(C)により,開示するかどうかの判断に当たり,開示による不利益と開示による公益との比較衡量が行われることになる。これに対し,(b)の(4)が定める法人情報については,比較衡量をすることが予定されていない。例外的に比較衡量を行っているかのような判例もないではないが,一般的には行われていない。FOIAの不開示情報の規定は,クライスラー判決により,開示の義務を免除する規定である(開示をしなくてもよいが,開示をすることは可能である)と解されている。しかし,すべての情報について裁量開示をすることができるわけではなく,他の法律によって開示が禁止されていれば,裁量開示をすることはできない。(b)の(6)や(7)(C)については,多くの場合,プライバシー法により開示が禁止されているので,裁量開示の余地はほとんどない。法人等情報についても,その多くはTrade Secrets Actにより開示が禁止されているので,基本的に裁量開示はできない。
 カナダでは,アクセス法19条(1)により,プライバシー法が規定している個人情報の開示が禁止されているが,同条(2)は,例外的に開示することが許される場合を定めている。例えば,開示が同法8条の規定に従って行われる場合には開示することが許されるものとしている。同法8条(2)(m)(i)は,開示することにより生命・身体が守られる場合に開示を認める規定であり,この規定の適用不適用を判断する際に公益との利益衡量が行われることになる。法人情報については,前述のとおり,任意提供情報も含めて,20条(6)により裁量的開示ができるものとされている。
   ○国会,裁判所及び地方公共団体に関する情報の取扱い(考え方4(7)関係)
      FOIAによる開示の対象は,行政機関の記録(agency record)に限られている。control testの結果,請求を受けた行政機関が当該記録を管理(control)しているといえなければ,行政機関の記録に該当せず,FOIAの対象外とされる。例えば,行政機関が議会から入手した記録を保管している場合であっても,議会の承認なしに開示してはならないとされているような場合には,行政機関が管理しているとはいえず,FOIAによる開示の対象外となる。
 行政機関と議会間の文書又は行政機関と裁判所間の文書で,agency recordに当たるが,開示すると議会や裁判所の事務に支障が生ずるという場合には,Exemption 5が適用されると解されている。Exemption 5は「行政機関」という表現を用いており,議会や裁判所との関係文書には適用されないようにも読めるが,この規定の解釈については機能的なアプローチが採用されている。
 カナダのアクセス法では,13条(1)(c)及び(d)が州政府やその機関,地方公共団体等から秘密を条件として入手した情報についての不開示を,また,14条が連邦と州間の問題に関するカナダ政府の処理を阻害する情報についての不開示をそれぞれ定めている。
   ○不開示情報と守秘義務との関係(考え方4(10)関係)
      FOIAの不開示規定は,前述のとおり,開示義務を免除するものであり,基本的には裁量開示(discretionary disclosure)をすることができる。しかし,個別の法律で開示が禁止されている場合には,開示することはできないから,この場合に裁量開示をしてしまうと,守秘義務違反になる。守秘義務違反には,罰則規定も設けられている。もっとも,検察は,FOIAを誠実に運用した結果として開示した場合については,起訴しない方向で運用しているようである。
 カナダのアクセス法では,Exemptionが2通りに分かれている。mandatory exemptionとdiscretionary exemption,すなわち,開示を禁止しているものと開示義務を免除するにすぎないものの2通りであり,前者に違反して開示をした場合には,守秘義務違反の問題が生ずる。
   ○第三者保護に関する手続(要綱案第13関係)
      FOIAには,第三者保護に関する手続規定はない。この点については,1966年制定時にはあまり考慮されていなかったようであるが,その後,第三者から開示の差止めを求める訴訟が提起されるなどしたため,レーガン政権では規定を設けることも検討された。その結果,FOIAに規定を設けるには至らなかったが,大統領命令第12,600号(資料集404頁参照)において第三者から提供された情報(第三者情報一般ではない。)を保護するための手続が定められた。
 カナダでは,アクセス法27条以下にかなり詳細な手続が設けられている。
   ○権限の委任(要綱案第16関係)
      FOIAには権限の委任に関する規定はなく,各行政機関のFOIA規則によって開示請求に対して第一次的な決定を行う者(IDA=Initial Denial Authority)が定められている。
 カナダのアクセス法では,7条により行政機関の長が請求に対する措置をとるものとされており,3条に行政機関の長の定義規定が置かれている。
   ○不服審査会の調査権限,不服審査会に対する事件の取扱い(要綱案第20,第21関係)
      行政上の不服申立ては,(a)(6)(A)(i)の規定上,行政機関の長に対する不服申立てとされているが,実際には,各行政機関の規則により,行政機関の長が指定した職員に対する不服申立てとされている。この指定は,IDAよりも上級の者に対してされているので,不服申立ての性格は,異議の申立てではなく,審査請求ということができる。アメリカでは,行政上の不服申立ては書面審理が原則であり,審査請求に対する裁決機関はIDAの上級機関になるので,裁決に当たっては請求の対象文書そのものを見て判断することもある。
 カナダでは,独立性を有するオンブズマンとして情報コミッショナーが設けられており,行政上の不服申立ては,アクセス法30条により,情報コミッショナーに対する不服申立てである。情報コミッショナーには,36条により,同条(2)のインカメラ審理をはじめとする様々な調査権限が与えられている。
   ○関係法律との調整(要綱案第28関係)
      FOIAの(b)(3)は,制定法により特に開示が免除されているものを不開示情報としている。この規定については,これを広く解釈した連邦最高裁の判決が出されたことがきっかけとなって,1976年に,(A)及び(B)の要件を追加し,不開示としうる場合を限定する改正がされた。なお,不開示とすることを定めている制定法の数は,これまで明らかではなかったが,昨年(1996年)の改正により,各行政機関は(3)に該当する法律及び(3)を使って不開示とした事例を毎年司法省に報告する義務が課された((e)(1)(B))。
 カナダでは,アクセス法24条にFOIAの(b)(3)と同趣旨の規定があるが,FOIAと異なり,対象となる制定法が別表で列挙されている。アメリカにおいても制定法を別表で列挙する改正案が提案されたことがあるが,成立するには至っていない。
 (2)  上記の報告に基づいて質疑応答が行われた。その概要は,次のとおりである。
   ・  FOIA訴訟の裁判地については,(a)(4)(B)で4種類の裁判地が認められており,ワシントンDCは一般的裁判地とされている。原告は,複数の裁判地から選択をすることが可能であるが,ワシントンDCの連邦地方裁判所に訴訟が提起されることが多い。また,早く判決を得られるとの期待から事件数の少ない裁判所に訴訟が提起されることもあるようである。原告は,自己にとって最も有利な裁判地で訴訟を提起しようとする(これをforum shoppingといっている。)が,最近は,第9巡回区控訴裁判所が請求者(FOIA訴訟の原告)に有利な判決を出す傾向があるとの指摘があり,原告が裁判地の選択に当たってこのことを考慮することもあるようである。類似のケースが複数の裁判所に提起されたような場合には,移送されることもある。
   ・  FOIAの規定は,行革委の要綱案と比べると,司法審査の部分が詳しいが,アメリカでは我が国の行政事件訴訟法に当たるような一般法がなく,制定法上の審査(statutory review)については,個別の法律で裁判地や出訴期間についても定めるのが一般的であり,このためFOIAの規定も詳しくなっているということができるように思われる。また,議会への報告義務に関する規定も詳しいが,この点についても,アメリカでは行政を統制する法律においては議会への報告事項を詳細に設ける例が多い。さらに,手数料に関する規定も詳細である。1966年制定時のFOIAは,手数料についての規定を設けずに,各行政機関に授権していたため,行政機関の中にはFOIAの運用に消極的で,高額の手数料を徴収するところがあった。そこで,1974年改正により手数料に関する規定が設けられ,さらに,1986年には請求目的に応じた手数料の類型を設ける改正がされたという経緯がある。
   ・  FOIAの(f)では,大統領府(Executive Office of the President)も行政機関に含まれると規定されているが,大統領及び大統領への助言・補佐を職務とする機関はFOIAの対象機関ではないと解されている。これらについては,大統領記録法に開示に関するルールが定められているが,同法はFOIAと比べると開示の範囲が制限されている。もっとも,国家安全保障にかかわる不開示情報については,大統領命令に基づく義務的審査制度によって,秘密区分指定の解除の審査請求をすることはできるものとされている。
   ・  FOIAでは,国家安全保障にかかわる不開示情報もインカメラ審理の対象とされている。公開の宣誓供述書によりsummary judgementで終わるものが多いが,インカメラ宣誓供述書を提出させることも珍しくない。もっとも,インカメラで記録そのものを見ることはかなり例外的であり,秘密区分の指定がされているにもかかわらず開示まで命じることは極めて稀であると思われる。
   ・  宣誓供述書のイメージとしては,日本の訴訟実務で用いられている当事者の陳述書に相当するような証拠書類と考えればよいのではないか。
   ・  公開の宣誓供述書では抽象的な記述にとどまってしまう場合でも,インカメラ宣誓供述書であれば裁判官だけが見るので,相当程度詳しい内容を記載しているようである。
   ・  民事訴訟のdiscoveryであれば,protective orderを出して相手方当事者の代理人が同席することはあるが,Exemption 1についてのインカメラ審理には,原告の代理人を同席させていない。
   ・  インカメラ宣誓供述書の作成者について,特段の資格は要求されていないと思われる。しかし,当然のことながら,公証人についても,公証人から秘密が漏れることがないようにsecurity clearanceを厳密に行っていると思われる。
   ・  FOIAには司法審査の進め方についての規定はないが,いきなりインカメラ審理をすることはなく,まず行政機関に宣誓供述書を提出させ,説明の機会を与えている。Phillippi v. CIA,546 f.2d 1009(D.C.Cir,1976)では,グローマー拒否の場合にも,まず宣誓供述書を提出させ,グローマー拒否をする必要性についての説明を求めている。このように行政機関の宣誓供述書を尊重すべきことは,1974年改正の際に議会が指摘している点でもあり,どの裁判所でも同じような運用がされていると思われる。
   ・  FOIAの(b)(2)の規定には「人事規則」という訳語が用いられているが,身分上の人事規則等がいわゆるlow 2に該当するというわけではなく,これは職員の昼食時間に関する規則や職員専用の駐車場の規則などを指すものである。
   ・  いわゆる任意提供情報については,現在,FOIAの(b)(4)の解釈としてCritical Mass判決の基準が支配的になっており,この基準は,任意提供情報と強制提供情報とを区別し,前者については,提供者が通常公にしていないものであれば不開示とするものである。Critical Mass判決は,モートン基準の射程距離を明確にするといったもので,修正するといったものではないが,実質的には同基準を修正したものと理解されている。
   ・  国会や裁判所に関する情報について,行政機関がagency recordに該当するかどうかを判断する場合に,国会や裁判所の意見を公式に聴くための手続は定められていない。しかし,判断が微妙な場合には,事実上国会や裁判所の意見を聞いて参考にしているのではないかと思われる
   ・  FOIAの対象外である国会や裁判所が管理する情報については,一般的な開示制度は存在しない。したがって,開示に関する特別の規定がない場合には,憲法に頼らざるを得ず,修正1条を根拠とするアクセス請求がされることがあるようである。国会や裁判所が管理する情報についても公開制度を設けるべきであるとの意見もあるようである。
 (3)  藤原靜雄・國學院大学教授から,「ヨーロッパ各国の情報公開制度について」と題するテーマで,ドイツ及びフランスの法制度の紹介を中心とする報告がされた。その概要は,次のとおりである。
   ○英・独・仏の制度の特徴とEUの動向
      イギリスには情報公開法がないが,1994年の政府情報へのアクセスに関する行動規範(Code of Practice on Access to Government Information)があり,情報コミッショナーも積極的に活動している。
 ドイツでは,ECの理事会指令を国内法に転換するための法律として,1994年に環境情報法(資料集567頁参照)が制定されたが,その際,アメリカ,カナダ,スウェーデン,オランダ等の法制を参考として情報公開制度に関する一般的な議論がされた。実務上は,行政裁判所の裁判官の態度が大きな役割を果たすことになるであろうといわれている。
 フランスでは,1978年に行政文書へのアクセスに関する法律(以下「仏アクセス法」という。)が制定された。実務上は,CADA(Commission d'acces aux Documents Administratifs,行政文書のアクセスに関する委員会)と呼ばれる不服審査会がかなり重要な役割を果たしているほか,コンセイユ・デタ(Conseil d'Etat)との関係にも注意する必要がある。
 EUには,委員会及び閣僚理事会の情報へのアクセスを定めた情報公開綱領,それを受けたEC委員会と閣僚理事会の決定がある。EUの条約で情報公開のためのルールを定めようとする動きもあるが,成立には至っていない。もっとも,最近は,スウェーデンやデンマークなど情報公開法を古くから有する国の参加によってEU全体の風向きが変わりつつあるという指摘もされている。
   ○ドイツ環境情報法の場合
    (不開示情報の概観)
      ドイツ環境情報法7条及び8条は,公益の内容に基づき,全体として18の適用除外事項(不開示情報)を定めている。7条が定める適用除外事項は,次の4つの類型に分類されている。第1は外交,防衛,治安といった高次の公益にかかわるもの,第2は行政の内部情報(行政庁の審議の秘密,裁判・捜査・行政上の手続情報,未完成情報,未処理データ,行政内部の通知),第3は環境保護のための秘密(環境財,行政上の措置,第三者情報),第4は権利濫用である。
 適用除外事項についての規定には,行政庁の裁量との関係で,4通りの定め方がされている。第1は,「請求権が存在しない(Der Anspruch besteht nicht)」と規定するもので,7条1項(外交,防衛,治安,行政庁の審議の秘密,裁判・捜査・行政上の手続情報,環境財,行政上の措置),8条1項1号・2号(個人データ,知的所有権(特に著作権)),同条1項3文(税法上の秘密,統計上の秘密)がある。これらの非開示事項が存在する場合には,開示拒否が義務付けられ,請求の認容について行政庁の裁量はない(義務的拒否理由となり,裁量開示を認める余地はない。)。なお,我が国の地方自治体の情報公開条例の「できる」型の規定についても,行政庁の裁量との関係が論じられている。第2は,「申立てを拒否すべきである(Soll-Vorschrift)」と規定するもので,7条2項(未完成情報,未処理データ,行政内部の通知)がある。これについては,原則として開示拒否が義務付けられるが,非定型的な場合で行政の効率性が害されないときに限り裁量による開示が可能であると解されている。もっとも,実際に認められる範囲は限られているようである。第3は,「申立ては拒否されなければならない(sind abzulehnen)」と規定するもので,7条3項(濫用)がある。この場合も,行政庁は開示拒否を義務付けられる。第4は,「アクセスを許してはならない(durfen nicht)」と規定するもので,7条4項(第三者の任意提供情報),8条1項2文(企業及び業務上の秘密)がある。この例外要件を満たせば,やはり行政庁は開示拒否を義務付けられ,請求権がないのと同視される。このように,規定によって表現が微妙に異なるのは,立法の過程で各規定がそれぞれ別々に修正を受けたことが原因のようである。
 適用除外規定のうち,8条1項1号は,個人情報について「情報の開示により個人データが明らかになり,そのことにより当事者の保護に値する利益が侵害されるおそれがある場合」と規定しており,行政庁が個別の事案ごとに利益衡量を行うことを前提としている。もっとも,個人の思想・信条のようなデータ(大阪府の公文書公開条例9条1号が定めているような情報。資料集587頁参照)については,類型的に適用除外事項とされることになると考えられる。それ以外の個人データについては,利益衡量を行うことになるが,この場合,データの社会的関連性とsensitivitat(傷つきやすさ)の程度との比較衡量を行うことになる。なお,公務員については,公務との関連性を重視して職及び氏名をともに開示する取扱いが一般的である。
    (裁判所の審査密度との関係)
      裁判所の審査密度については,行革委の要綱案第6第3号及び第4号と第5号及び第6号とで異なる表現が用いられているのと同様に,環境情報法の規定上も書き分けられている。すなわち,7条1項1号の国際関係,国防,行政庁の審議の秘密については,8条1項1号の「侵害する(beeintrachtigen)」という概念よりも弱い「触れる(beruhren)」という概念が用いられている。これは,立案段階において「侵害」という概念が用いられていたものが,各省庁との交渉過程で修正されたものであり,他の不開示情報よりも保護法益の侵害の蓋然性が低くてよいと解されている。もっとも,このような規定上の差異があっても,行政裁判実務においてはそれほど異なる取扱いはされないのではないかという指摘もある。この指摘の背景には,原発訴訟における裁判所の積極的な判断(差止めを認容した事例も相当数ある。)にみられるように,ドイツの行政裁判所裁判官は一般に政治的な問題に消極的ではないという認識があるように思われる。
    (任意提供情報)
      7条4項により,任意提供情報は不開示とされている。これは,第三者からの任意の情報提供の流れを確保することを目的とするものである。ドイツの行政実務においては,許認可の事前手続等としてのインフォーマルな交渉が一定の役割を果たしており,企業との日常的な接触の中での情報収集が重要であるといわれているし,特に化学物質,遺伝子工学等の先端分野では事前の情報収集を欠くことができないという認識が強い。また,企業情報の提供者との信頼関係の保護も,任意提供情報を不開示とした理由の一つに挙げられている。
 我が国の行革委の議論においては,任意提供情報を不開示とすることについて,その濫用を懸念する意見が出されたが,この点について,ドイツでは,行政情報一般について任意提供情報を不開示とした場合の濫用の危険はともかく,環境情報法の解釈としては,任意の提供が合理的であるとはいえない場合には不開示情報該当性が否定されると解されているようである。また,生命・身体の危険にかかわるような情報については,個別の環境法規で情報の義務的提供が定められている場合があり,この場合には不開示情報に該当しないし,義務的提供の規定がない場合でも,法の一般原則として開示されうると解されているようである。なお,ドイツでは,行政庁が第三者から情報提供を受ける場合には,その根拠となる法的義務が法定されていることが多いことに注意する必要があろう。
    (存否情報)
      ドイツでは,環境情報法の制定の際,このような類型を設けるべきかどうかという議論はなかったようである。ドイツにおけるインタビュー調査では,存否情報という概念を理解してもらうのに苦労したほどである。したがって,存否を明らかにすることができない情報について開示請求があった場合には,そのような記録は存在しないと回答することになるようである。しかし,ドイツにも存否を明らかにすることができない情報は存在するから,このような情報について開示請求を却下する場合には,行政手続法に基づいて具体的な理由を記載することは難しいと思われる。このため,将来,理由附記が十分でないとして争われる可能性があるという指摘もされている。
    (守秘義務との関係)
      不開示情報には,税法上の秘密や統計上の秘密(8条1項第三文)のように,秘密に関するものもあるが,守秘義務一般との関係について特段の検討はされていないようである。
    (行政文書の提出・インカメラ・理由の説明)
      ドイツの環境情報法は,司法審査に,開示拒否文書のインカメラ手続を導入しなかった。しかし,その立案過程においてはかなり詳細な検討がされたようであり,将来,同法を改正する必要が生じた場合には,第一に取り上げられる課題になるであろうといわれている。
 インカメラ手続の導入の是非については,ドイツ行政裁判所法99条及び100条との関係で議論がされた。すなわち,同法は,99条1項1文において,「行政庁は,記録若しくは文書を提出し,または情報を提供する義務を負う」と定める。そして,他方,100条1項で,「関係人は,裁判記録および裁判所に提出された文書を閲覧することができる」としている。情報公開訴訟において,原告側が100条1項により記録・文書を閲覧することができたら,訴訟はそこで終わりである。その文書閲覧権は本案を先取りするものであり,情報提供者側を保護しないものである。そこで,ドイツの立法関係者は,99条1項2文が,「これらの記録若しくは文書またはこれらの情報提供の内容を公にすることが,連邦または州に不利益を与える場合,または,当該事実が法律により若しくはその性質上秘密に付されなければならない場合には,所管の最高行政庁は,記録又は文書の提出および情報の付与を拒否することができる」と定めている点を捉えて,環境情報法の適用除外事項は,法律により秘密に付されなければならない情報であるとする。この場合には,開示の可否は,99条2項の「関係人の申立てに基づき,本案裁判所は,記録若しくは文書の提出,または情報の提供を拒否するための法律上の要件が存在することの疎明がなされているかにつき決定で裁判する」という規定の解釈・運用に委ねられることになる。99条2項1文の「疎明」については,連邦行政裁判所の判例により,所管の行政庁が,秘密の保持の必要性を根拠づける事情を,裁判所が法治国としての利益を考慮した上でなおもっともである(noch als triftig)と認める程度の明白性をもって説明すればよいと解されているが,過去の実務は,疎明の程度に高いものを要求していないといわれている。それゆえ,情報公開に積極的な学説からは,この訴訟法上の秘密保持規定の実際の運用によって,情報公開請求権の価値が低いものとされてしまうという批判がなされている。また,裁判所が,実際の文書を見ずに行政庁の判断を審査できるのかという批判は根強い。つまり,99条2項の適用ないし類推適用は実質的に行政庁優位の裁判上の審査にしかつながらないという批判がある。これに対して,立法関係者及び有力な学説は,行政庁優位の仕組みであることを認めつつも,環境情報法の領域では,行政裁判所の裁判官が,これまでのような99条2項の運用はせず,疎明の程度も高いものを要求するのではないかということを前提として議論をしているようである。いずれにせよ,これでは不都合であると考えれば,インカメラ手続を導入すべきことになる。しかし,他方,基本法103条1項は,「何人も,裁判所において,法律上の審問を請求する権利を有する。」と規定しているから,インカメラ手続を導入することとすると,この規定(特に当事者公開の原則)に反するのではないかという疑義が生ずる。例えば,環境省はインカメラ手続を導入しても基本法上の問題はないとの見解であったのに対し,法務省や行政手続法を所管している内務省は,基本法に反するのではないかという疑義を示していた。学説上は,当初,アメリカにおけるインカメラ手続の否定的な側面(インカメラ手続に基づいてされた判決は先例としての価値に乏しいとか,書類の山による訴訟の遅延を招くといった批判)が強調されて紹介されたこともあって,否定的な見解が有力であったが,最近では,インカメラ手続を導入することは可能であると解する説も有力である。積極説は,インカメラ手続を導入すれば,これによって裁判所の判断の基礎資料が充実することになり,その結果として,基本法19条4項が定める実効的な権利保護に資することになるから,インカメラ手続は同法103条1項と矛盾抵触するものではないことを理由として挙げている。
 このような議論を経て,最終的には,行政裁判所法99条の解釈によって対処することが可能であるという立場から,インカメラ手続は導入しないこととされた。すなわち,繰り返していえば,環境情報法7条及び8条の適用除外事項で保護すべき利益については,行政裁判所法99条1項2文の「法律により若しくはその性質上秘密に付されなければならない」事実に該当するものとみなされ,所管の最高行政庁が提出を拒んだ場合には,同条2項による提出拒否の要件の疎明の程度が軽減され,疎明がされたものと認めることができると解されている。情報公開請求権を骨抜きにしてしまうという学説からの批判があることは,既に触れたとおりである。
 なお,ドイツにはオンブズマン的な制度として,連邦データ保護法によるデータ保護監察官があり,データ保護法関係で行政庁の文書の開示不開示が問題となった場合には,データ保護監察官がインカメラ手続により文書を見ることができる。もっとも,連邦憲法擁護庁などいくつかの官庁については明文でインカメラ手続の適用が除外されている。
    (第三者保護に関する手続)
      第三者情報については,8条2項において,個人データや知的所有権(とくに著作権)を開示する場合には当事者からの聴聞を実施しなければならないものとされている。個人名が情報に含まれている場合も,保護に値する利益が侵害されなければ,聴聞の義務付けの問題はおこらないとされる。
    (管轄)
      情報公開訴訟の管轄については,特段の定めはなく,開示拒否処分をした行政庁の所在地を管轄区域とする行政裁判所が土地管轄を有することになる。しかし,ドイツの環境法分野の法律は,そのほとんどが州以下の地方自治体の行政庁によって執行されているため,その情報も地方の行政庁が保有している。そして,環境情報法9条により,開示請求を処理するのは情報を保有する行政庁とされているから,開示拒否処分をするのも地方の行政庁ということになり,地方在住者にとって不便ではないかという問題は生じない。
   ○フランスの行政文書へのアクセスに関する法律の場合
    (CADAの構成等)
      CADAは,任期3年の委員10名から構成されている。具体的には,コンセイユ・デタの代表,破毀院の代表,会計検査院の代表,国民議会議員,上院議員,首相の代表,県議会議員,市町村議会議員,大学教授,公文書館長,刊行物センター長により構成されている。委員の下に調査を担当する報告委員がいるが,その主任にはコンセイユ・デタの破毀院の調査官が就任するのが通例であり,不服審査に関する答申集の取りまとめも担当している。このように,行政関係の法解釈についてはコンセイユ・デタと密接な連携をとっていることを指摘することができる。
 CADAは,裁決機関ではなく,諮問機関である。不服申立前置主義が採られており,CADAへの不服申立てが訴訟提起の要件とされている。CADAは,不服審査会としての役割のほか,開示請求に関する行政庁からの相談に応ずるなどの役割を果たしている。
    (不開示情報)
      仏アクセス法6条1項に不開示情報が列挙されている。
    (任意提供情報)
      仏アクセス法には任意提供情報に関する規定がないが,行政実務においては,原則として「商業上及び工業上の秘密」という不開示情報を広く解することによって問題が生じないように対処している。基本的には,非公開約束がある場合には開示すべきでないと解されている。
    (存否情報)
      ドイツと同様に,FOIAのグローマー拒否的な規定を設けることは考えなかったようであり,存否を明らかにすることができない情報について開示請求があった場合には,そのような記録は存在しないと回答している。CADAに対しては存在するかしないかをありのままに答える必要があるが,CADAが判断の理由を示す場合には,抽象的な理由の記載にとどまっている。
    (守秘義務との関係)
      フランス法における守秘義務とは,刑法典等の法律において明文をもって定められている職業上の秘密を指すと解されているが,仏アクセス法との関係については,守秘義務は「現行法規により特別に定められている場合,特に行政文書へのアクセスの自由に関する場合を除き」免除されないと規定されている(官公吏の権利と義務に関する1983年7月13日の法律,資料集345頁参照)。また,一般的な倫理規定として,例えば,医師が労災認定のための診断書作成の機会にしか収集し得ない事実を報告したもの,労働監督官が調停の任務の際に作成した文書で労使の見解をまとめたもの等については,開示することができないものとされている。
    (行政文書の提出・インカメラ・理由の説明)
      行政機関には,デクレ又は政令によるCADAへの文書提出義務がある。もっとも,これまでにプルトニウムの製造・輸送に関する情報等について,例外的に文書が提出されなかった事例もある。実務上問題となるのは,物理的な不存在であり,フランスでは文書管理が不十分なこともあって,CADAに対して文書がないという回答がされることも間々あるようである。このような場合,CADAは,この種の文書が存在しないことについては驚きを禁じ得ない旨の答申をすることがある。
 CADAは,インカメラ審理を採用している。フランスには秘密を保護するために秘密指定の手続を定めた政令があるが,行政庁が不開示決定をするに際して秘密指定文書であることを援用したとしても,インカメラ審理によって文書そのものを見て不開示決定の当否を判断するのが原則とされている。理論的には大統領しかみることができない文書もあり得るが,国の安全等に関する情報についてもほとんどの場合にはインカメラ審理が行われている。
 不服審査については,書面主義が採用されており,書面と電話のやりとりで行われる(このため地方在住者への便宜は特に図られていない。)。どの程度の審査密度になるかは,不開示情報の種類,秘密指定の有無等によってケースバイケースである。
    (国会,裁判所及び地方公共団体との関係)
      国会関係の情報のうち,国会の各委員会の質問事項に対する行政庁の回答については,議会の監督権限にかかわるものであって仏アクセス法の対象ではないとしたCADAの答申がある。
 フランスでは,仏アクセス法の対象文書が行政文書に限定されているため,裁判文書か行政文書かが問題となる。裁判文書とされたものについては,裁判所法に開示に関する規定があればその規定に従うことになり,仏アクセス法の対象とはならない。6条1項には「裁判所に継続中の手続の進行及び裁判手続の予審の進行」が不開示情報として掲げられているが,これは,行政文書に該当することとされた場合にはじめて問題となるものである(実際には,行政文書に該当するとされた例は少ないようである。)。司法当局に対して開示請求がされ,司法当局が仏アクセス法の対象ではないという理由で開示を拒否することもあるが,このような事例についてはCADAの権限も及ばない。
 以上に対して,国の文書か市町村の文書かが問題となることはほとんどないようである。フランスでは,市町村法典の特別規定により,すべての個人又は法人は市町村議会の議事録,市町村の予算決算書類について開示請求権を有するものとされており,しかも,開示請求に当たっては,市町村又は国の外部機関のいずれに対しても請求をすることができるものとされているからである。
    (関係法律との調整)
      関係法律との調整の一環として,秘密保護に関するいくつかの法律を見直す必要があるといわれている。また,著作権法については,CADAが見直しの提言をまとめているようである。
    (管轄)
      情報公開訴訟の管轄裁判所は,開示拒否の決定をした行政当局の所在地を管轄する行政裁判所である。フランスの場合,パリに訴訟が集中しないように土地管轄についての例外規定が多く認められているが,情報公開訴訟についてはこのような手当てがされていない。
 (4)  上記の報告に基づいて質疑応答が行われた。その概要は,次のとおりである。
   ・  ドイツでは,環境情報の公開を目的とする環境情報法が制定されたものの,これはEC指令の国内法への転換義務という外圧の産物であり,ドイツはなお,行政情報の公開に対してEUで最も懐疑的な国の一つではないかと思われる。その背景事情の一つとしては,行政手続法,地方自治法,社会法典等による情報提供規定が十分に機能しているという認識があるように思われる。
   ・  環境情報法7条1項1号は,「国際関係」,「国防」又は「行政庁の審議の秘密」に触れる可能性がある場合を請求権がないとする趣旨の規定であり,国際関係と国防については秘密という言葉は用いられていない。しかしながら,行政庁の要件の認定は全面的に裁判所の審査に服することになる。
   ・  同法7条1項1号の「行政庁の審議の秘密」は,仏アクセス法6条1項の「政府及び執行権について責任を有する当局の審議の秘密」を参考にして定められたものである。フランスでは,この適用除外事項を高度の政治的な判断を伴う秘密と解しており,この影響を受けて,ドイツ環境情報法の場合も,審議の過程での情報が適用除外事項に該当するのであって,意思形成の基礎となった事実・データは審議の秘密には該当しないと解されている。
   ・  環境情報法7条1項2号は,「裁判手続又は刑法上の捜査手続が継続中である場合,及び行政庁が一の手続に基づいて入手したデータに関して,行政庁による当該手続が継続中である場合」には請求権がないものとしており,開示請求権の対象となる文書の範囲を非常に限定している。この適用除外事項は,行政手続法の規定に基づいて利害関係を有する当事者に必要な情報を開示すれば十分であり,情報公開制度の対象にする必要はないという意見を踏まえて設けられたものである。しかし,不開示の範囲が広すぎるという批判を浴びており,特に,行政庁が行政手続を始めてしまえば情報公開の対象にならないとしている点については,EC指令に違反している疑いが強く,将来,改正される可能性があると考えられる。
   ・  ドイツ行政裁判所法99条についての裁判例は,主として公安関係の事件,すなわち公務員の身辺調査,外国人の退去強制処分等に関する事件で,憲法擁護庁を被告とする事件において展開されてきたものである。それゆえ,これが情報公開訴訟に妥当するかという批判が出されているところである。
   ・  行政裁判所法86条は職権探知主義を採用しており,同法99条の規定はこれを前提とした規定ということができると思われる。
   ・  ドイツの情報公開訴訟において行政裁判所法99条による提出命令が問題になった場合に,環境情報法7条及び8条の適用除外事項が行政裁判所法99条1項第二文の「法律により若しくはその性質上秘密に付されなければならない」事実に該当するかどうかで判断をするとすると,本案で判断すべき事項について,付随手続である提出命令の手続の中で判断をするになってしまうのではないか。
   ・  ドイツの場合,行政訴訟では行政裁判所法99条によって広く提出義務が認められるが,民事訴訟では限定的な提出義務しか認められない。したがって,同一の文書について,行政訴訟では提出義務が認められるのに,民事訴訟では提出義務が認められないという事態が生ずることになるように思われるが,この点は問題とされていないのであろうか。また,民事訴訟の証拠として利用しようと考えて,行政訴訟による提出命令を利用しようと考える濫用事例が起きるおそれもあるのではないか。
   ・  環境情報法をめぐる議論を通してのみの推測であるが,99条による提出義務は,ぎりぎりのところでは,それほど広く認められてこなかったように思われる。それゆえにこそ,多くの学説がインカメラ手続の導入を求めているものと考えられる。私人間の純然たる民事訴訟における行政文書の証拠としての利用については,判例として現れてこない事例において,どのような運用がなされているかの調査が必要になるように思われる。
   ・  ドイツにおいて,私人間の純然たる民事訴訟で,行政庁の文書が証拠として必要となる場面がどれだけあるかという問題があるかもしれない。そのような必要がある場合には,行政裁判所法99条の規定があることを前提として,一定の範囲で任意の提出に応ずる運用がされているのかもしれない。
   ・  フランスの行政訴訟は書面審理が原則であるから,情報公開訴訟において,裁判所は開示拒否文書を見ることができると考えられる。
   ・  フランスでは,CADAの答申が出されても,行政庁やコンセイユ・デタがその内容に従わないことがあると聞いている。
6 次回研究会の開催予定  平成9年4月8日(火)午後1時30分から(場所:法務省第1会議室)


(別紙)

文書提出命令制度研究会研究員名簿

 (座長) 竹 下 守 夫  (駿河台大・民事訴訟法)
      秋 山 幹 男  (弁護士・第二東京弁護士会)
      阿 部 一 正  (新日本製鐵株式会社知的財産部専門部長・経団連推薦者)
      伊 藤   眞  (東大・民事訴訟法)
      宇 賀 克 也  (東大・行政法)
      菅 野 雅 之  (最高裁事務総局民事局参事官)
      熊 谷 謙 一  (日本労働組合総連合会労働対策局次長・連合推薦者)
      小早川 光 郎  (東大・行政法)
      長 野 勝 也  (最高裁事務総局民事局付)
      萩 本   修  (法務省民事局付) *
      長谷部 由紀子  (成蹊大・民事訴訟法)
      花 村 良 一  (法務省民事局付) *
      平 山 正 剛  (弁護士・東京弁護士会)
      深 山 卓 也  (法務省民事局参事官) *
      山 下 孝 之  (弁護士・大阪弁護士会)
      山 本 和 彦  (一橋大・民事訴訟法)

*印は幹事役を示す。

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