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文書提出命令制度小委員会(第6回)議事要旨

平成10年1月23日
担当:法務省民事局

1 日時   平成10年1月23日(金)13:30~16:30
2 場所   法務省第1会議室
3 議題   改正案骨子の検討
4 会議経過
 (1)  前回の審議において問題となった公文書の文書提出命令制度及び公務員の証人尋問制度について,河村幹事から運用の実情が紹介され,質疑応答が行われた。その結果は概ね次のとおりであった。
   ・  文書提出命令における「所持者」の意義については,一般の注釈書等と同様の概念と考えており,訟務局において特にこれと異なる見解を採っているものではない。行政訴訟では,行政庁を所持者とするが,民事訴訟では,調べてみた限りでは,記録上すべて所持者を国としている。もっとも,所持者を国としつつ,かっこ書きで行政庁を付記するものもある。このように所持者を国として申し立てる理由は,おそらく国を当事者とする訴訟で,所持者を国とする文書提出命令の申立てならば,不提出のときに真実擬制の効果が生ずることによるものと考えられる。国を所持者とする文書提出命令の申立てがあった場合に,国側から行政庁を表示すべきであると異議を述べたことはないし,裁判所から所持者の表示が誤っているとの指摘があったことも聞いたことがない。このような申立てがあった場合において,現に握持している公務員が守秘義務を負っている場合には,国から当該守秘義務の主張を行うが,このような主張に対して,国が所持者だからそのような主張はできないと争われたこともない。実情としては,国と行政庁とを区別せずにほぼ一体のものとして扱っていることになろう。
 文書の所持者を単に「国」とだけ表示して文書提出命令の申立てがされた場合に,それだけではどこの行政庁が所持しているか分からないという不都合が考えられる。しかし,実務上は,文書提出義務の有無に関する審理の中で特定されることになり,いきなり国に対する文書提出命令が発せられることはない。仮に,最後までどの行政庁に存在するのかが分からないような文書であれば,文書の所持自体を争うという対応をすることになる。実際には,戦後補償をめぐる事件等では,どの行政庁に存在するか判明しないような文書が問題になったことがあるが,そのような文書について国に対する文書提出命令が発せられた例はない。
 公務員の証人尋問において,監督官庁の承認を求められた事例はほとんどない。国側の対応としては,尋問事項から守秘義務に関することが考えられる場合には,証人の採否を決定する段階で守秘義務に関する旨を述べておくが,その段階で裁判所が直ちに監督官庁の承認を求めることはほとんどなく,まずは証人尋問を採用して尋問を始めることが多い。国の代理人としても,守秘義務に関する尋問に及んだ場合に異議を述べることができるように準備しておくが,現実には異議を述べることなく終了することが多い。また,国側から守秘義務に関するとの異議を述べた場合には,裁判所が質問を変えることを命じ,当該質問以外の質問を先に行うことが多く,すべての質問が終了した後に異議があった質問は放棄されることが多い。
   ・  公務員個人を所持者とする文書提出命令の申立てがないかについては,皆無ではないと思うが,公務員個人を所持者とする文書提出命令が発せられた例は,調べた限りでは存在しない。
 (2)  事務当局作成の「民事訴訟法の一部を改正する法律案(仮称)の骨子」(以下「改正案骨子」という。)について説明が行われた後,意見交換が行われたが,その内容は,おおむね次のとおりであった。
  ○ 改正案骨子一について
   ・  改正案骨子については,全般に賛成であるが,別の考え方もあり得るのではないかと思われる部分を挙げる。
 文書提出命令の義務の主体について,諸外国の例をみると,公務員が所持の主体であって,文書提出命令の相手方になり得るとの考え方はなく,国又は行政庁を所持者としていると思われる。実際には,文書提出命令の申立人に所持者を探知する負担を負わせるのは妥当でない。私法人の場合には所持者を法人とすることに問題はないことと比較して,公務員が握持する文書については行政庁の長を所持者と解することはできないかという問題提起をしておく。
 改正案骨子一4で公務文書についても自己使用文書を除外文書とすると,私文書と公文書との間の「不合理な官民格差」を生じないようにするとの見地から妥当でないのではないかと思われる。情報公開法の不開示情報と比較すると,自己使用文書は行政機関内部又は行政機関相互の審議検討情報に近いと思われ,情報公開法の要綱案において審議検討情報が不開示情報とされた趣旨からみると,自己使用文書は改正案骨子一2の公務秘密文書に該当すると思われる。
 除外文書に関する立証責任については,一般的には除外事由とするのでもよいと思われる。しかし,改正案骨子一2の公務秘密文書については,実際には,所持者の側で詳しく主張・立証することになるから,不都合はないかもしれないが,文書提出命令の申立人の側に「公共の利益を害するおそれ」や「公務の遂行に対する支障」の立証責任を負わせることに若干疑問が残る。
   ・  民事訴訟における文書の所持者について前提にしている考え方は,所持者とは,直接文書を握持している者のみならず,文書に対する事実上の支配を有し,提出義務を課せられた場合に履行できる者を含むというもので,公務員個人とその公務員が属する国又は地方公共団体のいずれもが所持者であるというものである。公務員個人として誰が所持者であるかが分からない場合には,国を所持者として申し立てればよく,申立人に所持者を探知する負担を負わせることにはならない。
 また,民事訴訟法第220条第4号のかっこ書きで除かれている「公務員又は公務員であった者が職務に関し保管し,又は所持する文書」という表現からみて,公務員が文書を所持することは現行法で前提にしている言わざるを得ないので,国も公務員個人も所持者たり得るとするのが妥当ではないかと思われる。なお,行政庁を所持者とする考え方は,行政訴訟においてはともかく(行政事件訴訟法第11条参照),民事訴訟では,権利義務の主体でない行政庁が公法上の義務である文書提出義務を負うことになるため,妥当でない。
 このほか,自己負罪拒否特権が問題となる文書(改正案骨子一1)自己使用文書(同一4)及びにおいても所持者概念が問題となる。一1の文書については,国にとって自己負罪拒否特権が問題になることはなく,この場合の所持者は,公務員個人に限られる。一4の文書について,公務員個人の自己使用文書(例えば,公務員個人の手控え)が含まれることは明らかであるが,自己使用文書における所持者に国が含まれるかどうかは解釈問題であろう。現行法の解釈として,私企業について稟議書を自己使用文書の一例とする見解もある一方で,これに疑問を呈する見解もあるところであり,国についての自己使用文書が認められるかどうかは,私法人における自己使用文書と同じく,解釈の問題であると考えられる。
   ・  公務秘密文書についてだけ拒絶事由の構成とすることも考えられるが,「提出を拒絶することができる」とすると,監督官庁の不承認だけで除外文書となるというかつての政府原案の考え方と同様のものであると誤解されるおそれがあろう。また,訴訟物の存否に関わる要件事実の立証責任の問題は確かに重要であるが,決定手続においては,弁論主義の適用があるか否かも不明確であり,主張立証責任の所在で結論が左右される,いわゆるノン・リケットの場合がどれ程存在するのかという点についても判決手続と同じかどうかは定かでない。そのような中で立証責任だけを問題にしても有益ではないと思われ,これらの事情を総合的に考慮すれば除外事由とする方がよいのではないか。
   ・  改正案骨子三(文書提出義務の存否の判断)において,「一の除外文書」となっているが,一1から5までの全部の除外事由が問題になるのか。また,改正案骨子三の1(国の安全や外交に関わるもの)及び2(犯罪捜査や公訴維持に関わるもの)の事由については,立証責任が転換されるのか。
   ・  いわゆる特別席は公務秘密の中核的な部分であり,改正案骨子一2以外の文書で特別席が問題になることはないであろう。また,特別席は立証責任を転換するものではなく,審理の方式が変わるにすぎないものと思われる。
   ・  監督官庁の承認制度を採らないこととインカメラ審理を全般に及ぼすことが採り入れられた点は高く評価している。改正案骨子一2については,第191条第2項を参考にしたということだが,第220条第2号の請求権に公法上の請求権(特に,情報公開法上の開示請求権)を明記することは採り入れられておらず,文書提出命令では情報公開法よりも広い範囲の文書が提出されることが明らかになっていない。また,一2の「おそれ」は抽象的なおそれで足りるとの解釈がされてきたので,「おそれ」を除くこととしてはどうかという意見もあろう。さらに,自己使用文書と公務秘密文書との関係が十分練れていないと思われ,「公務の遂行に著しい支障」とは,第三者の秘密が明らかになって公務の遂行に支障が生ずるときだけを考えているのかどうかについて疑問がある。これらの諸点について具体的な代案があるわけではないが,議論の対象とするために意見を述べる。
   ・  第220条第1号から第3号までは変えずに,第4号を加えて一般義務とするのが改正案の趣旨である。そのため,第2号についての解釈論は維持されることになり,現在,解釈論としては,第220条第2号の請求権に公法上の請求権を含むという有力説があるが,この点は今後の判例の動向に委ねられることになろう。なお,現在の案でも情報公開法による開示の範囲よりも文書提出義務の範囲の方が広いと考えられる。例えば,情報公開法では,個人識別情報というだけで,原則として不開示情報になるが,文書提出命令では個人識別情報であることから直ちに除外文書になることはない。
   ・  同じ実質秘の概念として,証人尋問の場合には「おそれ」があり,文書提出命令の場合には「おそれ」がないとするのは妥当でないのではないか。
   ・  改正案骨子一2と4との関係については,両者が重なることもあると考えるべきであろう。一つの文書が除外文書の複数に該当することもあり得るし,どれか一つの除外文書に該当するときは他の除外文書には該当しないことになるように除外文書を整理することは不可能ではないか。
   ・  職務上の秘密であっても,必要があれば提出されるべきであるという立場からは,改正案骨子一2の要件でよいかどうかという問題がある。また,除外事由としては,刑事訴訟法にならって「公共の重大な利益を害する」こととすべきではないか。
   ・  「公共の重大な利益を害する」という要件は,刑事訴訟の押収の拒絶事由と同様の概念であるが,刑事訴訟では,国家の刑罰権の発動という重要な公益との調整が問題になっているのに対し,民事訴訟では,適正な裁判の実現という公益が問題になっているということもできるが,結局は私人間の私益が問題になっているにすぎない。そのような違いを無視して刑事訴訟と同じ要件とすることは妥当でないのではないか。
   ・  証拠としての必要性があるならば,どんな公共の利益(国民一般が受ける利益)が害されてもよいということにはならないはずである。情報公開法は不開示情報を客観的に書いた上で,形式的に判断することによる弊害を除くために公益裁量開示の制度を設けているが,民事訴訟法では,要件をある程度抽象的に書かざるを得ないため,提出義務の存否の判断の中で自ずと比較衡量が行われ,妥当な結論になると考えられる。
   ・  改正案骨子一2に「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」を加えずに,「公共の利益を害するおそれ」だけにすべきではないか。
   ・  「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」は「公共の利益を害するおそれ」の一つの類型的場合であると考えられるが,証言拒絶についての第191条では明文で要件としてくくり出しており,文書提出義務の除外の場面で第191条よりも抽象化した要件とするのは妥当でないのではないか。
   ・  高裁の決定例では,「公共の重大な利益を害するおそれ」とするものが多いのではないか。証人についての第191条第2項とパラレルにする必要はなく,文書の場合には,ある程度客観的に除外事由を書くべきであると考える。「おそれ」を除いて,裁判所が判断しやすく,当事者も納得しやすいものにすべきではないか。
   ・  改正案骨子一5の刑事訴訟及び少年保護事件における記録等を除外文書とすることには疑問がある。第220条第1号から第3号までの解釈に変化はないが,第4号がこのまま立法されてしまうと,従来第1号から第3号までの解釈で提出されていた文書までが提出されなくなるのではないかとの心配がある。刑事記録等他のスキームがあるものに対して文書提出命令を及ぼすべきでないことは理解できるが,除外文書でなく,他の処理ができないか。
   ・  刑事訴訟の記録については完結的な制度があるからという理由は,一般人を対象とする情報公開法の場合には言えても,民事訴訟法という特別の世界で一般義務とする場合には妥当しない。刑事訴訟記録を全部除外することには当事者の立場からすると危機感を抱く。文書送付嘱託や第220条第1号から第3号までの従来からの部分に変わりはないと言ったとしても,影響が出てくるのではないか。
   ・  第220条第4号から刑事記録を除いても,現行の文書送付嘱託や第220条第1号から第3号までの従来からの解釈・運用に影響を与えることは考えられない。むしろ,現行制度のもとで刑事訴訟法や少年法の規制によると提出できない文書が,文書提出命令によると提出される余地を認めることには不都合があるのではないか。
   ・  刑事記録を除外文書としなくても,民事訴訟法以外に開示の規範があるものについては,その制度における要件を満たさなければ,文書提出命令は発令されないのではないか。
   ・  刑事の裁判所や家庭裁判所と民事の裁判所とは,別の裁判所であり,判断するための規範が異なるから,判断が一致するとはいえないであろう。
   ・  刑事・少年事件については,厳格な制限がある捜査記録と裁判所にある記録との間の整合性から説明することができ,比較的納得しやすい部類に属する。民事・家事事件の記録にも議論が及ぶと,刑事・少年事件の記録だけに除外文書を限った改正案の長所が失われるおそれがある。
   ・  刑事・少年事件では,第226条ただし書の適用を除外するという中間的解決はできないか。送付嘱託が常にできることを明らかにしてはどうか。民事の裁判所が証拠の必要性に関する判断をして,それを記録の所持者に伝達して送付嘱託をすることにしてはどうか。
   ・  国も公務員も所持者であり得ることは理解できるが,これをすべて解釈に委ねてしまうと,手続の違い等についてわかりにくいと思われる。
   ・  所持している公務員が具体的に特定できるときには,その者を所持者として申し立てることも,国を所持者として申し立てることもできるが,公務員であった者が文書を所持するときは,その者だけが所持者となるだろう。すべての場合に公務員個人の所持を否定して,国や地方公共団体のみが所持するとすると,条文化が困難であろう。
   ・  国が当事者である場合において,公務員個人を所持者とする文書提出命令に対して公務員個人が文書を提出しなかったときは,その効果はどうなるか。
 また,職務に関する文書を公務員個人が所持していて,それが自己負罪拒否特権があるような文書であるときにまで,除外文書として提出しなくてよいとするのが妥当か。
   ・  実際上は,国を所持者として文書提出命令の申立てをすれば問題がないが,公務員個人を相手にすることはできないかというと,そうとも言えないようだ。また,既に民事訴訟法上,「公務員が…所持する」という文言が入っていることをどう考えるかという問題もある。
  ○ 改正案骨子二(監督官庁の意見聴取)及び三(文書提出義務の存否の判断)について
   ・  改正案骨子三のただし書は,情報公開法の特別席にならったものだが,情報公開法との関係では次の点に問題があると思われる。
 情報公開法の不開示情報は列挙主義を採り,民事訴訟法の除外文書は抽象的に要件を書き表しているのに,なぜ民事訴訟法の特別席だけを列挙主義にするのか。
 情報公開法で特別席を設けた理由は,行政機関に不開示情報であることの立証責任があり,インカメラ手続がないところで,裁判所が国家の重大な利益について判断する立場に追い込まれるからであるが,民事訴訟法では,除外文書に当たらないことの立証責任が申立人にあり,インカメラ手続もあるから,情報公開法のときのように,裁判所の負担軽減を考える必要はない。
 情報公開法では,まず行政処分という第1次判断があって,それを裁判所が判断することになるが,民事訴訟法の場合には行政処分に該当するものがない。
 情報公開法では,請求する者に制限がなく,外国のスパイでも請求することができるが,民事訴訟法では,訴訟の当事者に限られる。
 附則でいう情報公開法と並行して検討という趣旨からは,特別席の扱いまで並行することは要求されないと思われる。
   ・  特別席の相当の理由を審査するためにも,インカメラ手続を使えるか。インカメラ手続を使うかどうかについて,一般席の場合と異なる要件が存在するか。
   ・  インカメラ手続を採用するかどうかは,裁判所が必要と認めるかどうかであり,特別席であるから,インカメラ手続の利用に制限があるということはないと考えられる。ただし,審理の方式が異なるため,実際問題としては文書の内容を見る必要性が減少することはあり得よう。しかし,意見の前提となった文書の記載事実が真実かどうかを検証するためであれば,相当の理由を判断する場合であっても,インカメラ手続を利用することになろう。
   ・  提出義務の存否を最終的に裁判所が判断することには賛成であるが,証言拒絶の当否の判断と提出義務の存否の判断とが本質的に異ならないことを考えれば,証言拒絶の当否についても司法審査を及ぼせるという考え方が出てこないか。
   ・  インカメラ手続のように事前に内容を確認する方法が,証言については採り得ないし,尋問途中で公務秘密の問題が生ずれば,その都度監督官庁の意見を求めて,それについて裁判所が判断するとした場合に,合理的に機能する制度となり得ないのではないか。
   ・  国又は地方公共団体が所持者であるときに,監督官庁が意見を述べることはどう説明するか。
   ・  国又は地方公共団体自体には監督官庁はないが,所持者が国であっても公務員個人であっても,監督官庁とは,直接握持している公務員の監督官庁と考えるべきである。政府原案でも監督官庁としては,公務員の監督官庁を想定していたはずである。
   ・  改正案骨子二は三の前提と理解してよいか。すなわち,三がなくなれば二も必要がなくなるということか。
   ・  改正案骨子二の監督官庁の意見聴取は,同三の特別席のためだけにあるのではない。守秘義務を解除するか否かの権限を持つ監督官庁の意見を聴く固有の必要があり,そのことが同時に,特別席に該当するとの意見を述べる機会にもなるという意味である。国を所持者としたならば,監督官庁の意見聴取というのではなく,内部関係で処理されることになりそうだが,文書提出命令で対象となるのは行政庁だけでなく,国会や裁判所まで含まれるから,国を所持者だとすれば,監督官庁の意見聴取は必要がなくなるというものでもない。
   ・  改正案骨子二で「公務員の職務上の秘密に関する文書」となっているが,一2に該当することを前提として監督官庁の意見を聴くのは意味がないのではないか。
   ・  公務員の職務上の秘密に該当する文書かどうかは,監督官庁の意見を聞いた上で出る結論であり,「公務員の職務上の秘密に関する文書」とはそれよりも広い概念である。裁判所が公務員の職務上の秘密に関係しそうだと判断したならば,監督官庁の意見を聴くことにする趣旨である。監督官庁の意見を聴いた結果,職務上の秘密ではないことになることもある。
   ・  改正案骨子三の特別席は,一般席とは審査の対象が変わるというよりも,審査の仕方が変わるというべきではないか。すなわち,一般席は初審として,特別席は事後審として審査するということではないか。
   ・  裁量処分の取消訴訟の判断方式と類似する考え方に立っているから,一般席と特別席とでは,審査の仕方が異なると言うこともできよう。
   ・  情報公開法では,特別席について裁量処分という考え方を採っていない。特別席にはマクリーン判決のような判断手法を採り入れるとの意見もあったが,結局,それを採らないとの考え方に落ち着いた。
   ・  民事訴訟法の特別席も裁量処分という考え方ではなく,裁量処分の取消訴訟における司法審査の方式と類似した考え方を採った情報公開法にならったということになるのではないか。
   ・  監督官庁が意見を述べたときに,特別席でも一般席でも最終的に裁判所が判断するとなると,違いがないのではないか。
   ・  除外事由の中で一般席と特別席とに実体要件が分かれていないが,判断のしかたが異なるために要件が異なるのと同じような結果になる。特別席は一般席とセットにして理解する必要がある。
   ・  審査の仕方が異なるというよりも,実体要件を2種類に分けたことになるのではないか。列挙主義を採っていない民事訴訟法では,特別席と一般席とを一つの除外文書としてまとめ,あとは裁判所の判断に任せればよいのではないか。
   ・  民事訴訟法では,除外文書をあまり限定的に列挙していないが,特別席は一般席に対して例外となるから,例外を規定する性質上,細かく列挙することになろう。
   ・  特別席に該当するような場合には,たとえインカメラ手続を利用することができても,裁判所はなかなか判断できないのではないか。
   ・  特別席と一般席とを一つにするのでなければ,条文上で要件を別々に規定することも考えられるのではないか。
   ・  表現ぶりは更に検討する余地があろうが,特別席がなかったとしたら,国の安全を害するおそれ等は,裁判所が初審的に判断するのが難しい事項ではないか。
   ・  今回の案では,裁判所が最終的判断権を有しており,文書提出義務が拡充されることは間違いなく,また,裁判所として審理がやりやすくなることが期待されるであろう。
   ・  特別席の規定があることは,中核的な秘密かどうかについて裁判所が考慮しながら審理を進めることができ,審理の支障ではなく,むしろ参考になると思われる。
  ○ 改正案骨子四(第三者の意見聴取)及び五(インカメラ手続の採用)について
   ・  インカメラ手続が特別席の判断にも使えることを明確に表現する方がよい。
   ・  第三者への意見聴取をすると文書提出命令の判断が遅れるということにはならないようだ。仮に規定がなくても,第三者から情報を得ている場合には,第三者の意見を聴かざるを得ないのでないか。
 (3)  今後の日程について,事務当局から次のとおり説明がされた。
   ・  次回の小委員会は,1月30日に開催され,次回までに配付する要綱案的な資料をもとに議論することとされた。
   ・  その後は,2月6日に部会を,2月20日に総会を開催し,要綱案の了承を得たいと考えている。