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弁護士委員案

第1 裁定合議制
第2 弁護士たる付添人
第3 適正手続
第4 罪となるべき事実認定をするための審判の手続
第5 観護措置期間
第6 抗告
第7 少年再審手続
第8 被害者への審判手続等の説明及び結果の通知等
第9 その他

第1  裁定合議制
 家庭裁判所は、少年法3条1項1号に掲げる少年の保護事件の審判において、少年が罪となるべき事実を否認した場合であって、罪となるべき事実を認定するための手続を合議体で行う旨の決定を合議体でしたときを除いて、1人の裁判官でその事件を取り扱うものとすること。
 合議体で審判を行う事件で、弁護士たる付添人がないときは、職権で弁護士たる付添人を付さなければならないものとすること。

第2  弁護士たる付添人
 家庭裁判所送致前にした弁護人の選任は、家庭裁判所送致後において付添人選任の効力を有するものとすること。
 家庭裁判所は、次の各号の一に該当する場合において弁護士たる付添人がないときは、職権で弁護士たる付添人を付さなければならないものとすること。
  (1)  少年を少年法17条1項2号の観護の措置をとるとき
  (2)  少年が少年法3条1項各号の事由を否認したとき
  (3)  裁判所法26条2項2号の罪に係る事件の送致を受けたとき
  (4)  合議体で審判を行うとき
 家庭裁判所は、少年に弁護士たる付添人がない場合において、必要と認めるときは、2以外の場合でも職権で弁護士たる付添人を付することができるものとすること。
 2及び3により選任された弁護士たる付添人の旅費、日当、宿泊費および報酬は家庭裁判所が支給するものとすること。
 
第3  適正手続
   少年法3条1項1号及び2号に掲げる少年に係る保護事件の審判手続に関し、以下の適正手続の条項を明記するものとすること。
 告知と陳述の機会
  (1)  家庭裁判所は、観護措置手続及び審判手続において、少年並びに保護者及び付添人に対し、送致事実(罪となるべき事実又は刑罰法令に触れる事実)及び適用すべき罪名罰条、黙秘権、扶助付添人制度の説明を含めた付添人選任権、その他最高裁判所規則で定める少年の権利を保護するため必要な事項をわかりやすく告げたうえ、少年並びに保護者及び付添人に対し送致事実について陳述する機会を与えなければならないものすること。
  (2)  家庭裁判所は、事件受理後すみやかに、少年並びに保護者及び付添人に対し、送致事実及び適用すべき罪名罰条を、書面で通知するものとすること。
 家庭裁判所は、少年及び保護者に対し、扶助付添人制度の説明を含めた付添人選任権を書面で通知するものとすること。
  (3)  家庭裁判所調査官は、調査開始にあたり、少年に対し、送致事実及び適用すべき罪名罰条、黙秘権、扶助付添人制度の説明を含めた付添人選任権を口頭でわかりやすく告知するものとすること。
  (4)  家庭裁判所は、送致事実と同一性を害しない限度において、送致事実と異なる事実を認定しようとする場合には、認定しようとする事実を、少年並びに保護者及び付添人に告知し、(1)の陳述の機会を与えるものとすること。
 証拠の開示
  (1)  少年又は保護者若しくは付添人は、家庭裁判所に対し、審判開始の決定前であっても、保護事件の書類、証拠物その他参考となる資料の閲覧及び謄写をすることができるものとすること。
  (2)  やむをえない事由で事件と同時に送付できない書類、証拠物その他参考となる資料があるときは、送付できない理由と証拠の標目を記載した書面を、家庭裁判所に送付しなければならないものとすること。
  (3)  少年又は保護者若しくは付添人は、捜査機関に対し、(2)の未送付の書類、証拠物その他参考となる資料の開示を求め、閲覧及び謄写することができるものとすること。
 証拠調の請求
   少年又は保護者若しくは付添人から証拠調請求があったときは、家庭裁判所は次の場合を除き、証拠調べを実施しなければならないものとすること。
  (1)  証拠調請求が不適法なものであるとき
  (2)  証明しようとする事実が審判にとって意義を有しないものであるとき
  (3)  証明しようとする事実が既に証明されたものであるとき
  (4)  証拠調請求が明らかに手続の遅延を目的としているものであるとき
 少年に対する証拠の説明
   家庭裁判所は、審判期日において、送付された書類、証拠物その他参考となる資料の概要を、少年に対し、わかりやすく告知しなければならないものとすること。
 証拠法則
 (少年の供述書又は供述録取書)
  (1)  刑事訴訟法319条1項及び2項を準用する旨の規定をもうけるものとすること。
  (2)  少年の不利益な事実の承認ないし自白を内容とする供述書又は少年の署名若しくは押印がある供述録取書は、少年又は保護者若しくは付添人が異議を述べたときは、次の場合を除き、証拠とすることはできないものとすること。
    (1)  保護者又は弁護人が少年の取調べの全過程に立会っていること。
 ただし、少年が保護者又は弁護人の立会いを求める権利を任意に放棄した場合はこの限りではないこと。
    (2)  少年の取調べの全過程を収録した録音テ-プ又はビデオテ-プが付添人に開示され、少年の供述が特に信用すべき情況の下でなされたものであることが明らかにされること。
 (少年以外の者の供述書又は供述録取書)
  (1)  送致時に送付された供述書又は供述録取書
     家庭裁判所送致と同時に送付された当該少年以外の者の供述書又は供述録取書は、少年又は保護者若しくは付添人が原供述者の証人尋問を行わないまま供述書又は供述録取書を証拠とすることに異議がある旨述べたときは、原供述者の証人尋問を行わない限り証拠とすることができないものとすること。
 ただし、供述書又は供述録取書が刑事訴訟法323条の書面である場合及び原供述者の死亡又はこれに準ずる事由により原供述者を尋問できない場合はこの限りではないものとすること。
  (2)  追送付された供述書又は供述録取書
    (1)  家庭裁判所は、捜査機関に補充捜査を命ずるときは、少年並びに保護者及び付添人の意見を聴いたうえで、具体的調査事項及び調査期間を明示した書面をもってしなければならないものとすること。
    (2)  家庭裁判所送致後に追送付された当該少年以外の者の供述書又は供述録取書(前項の補充捜査により作成されたものを含む)は証拠とすることができないものとすること。
 ただし、少年又は保護者若しくは付添人が証拠とすることに同意した場合、供述書若しくは供述録取書が刑事訴訟法323条の書面である場合又は原供述者の死亡若しくはこれに準ずる事由により原供述者を尋問できない場合はこの限りではないものとすること。
 証明の程度
   罪となるべき事実又は刑罰法令に触れる事実の認定については、合理的な疑いを超える証明を必要とするものとすること。
 通訳が必要な事件については無料で通訳が受けられるものとすること。
 家庭裁判所は、少年又は保護者若しくは付添人から請求があるときは、3日以内に決定書謄本を交付しなければならないものとすること。

第4  罪となるべき事実認定をするための審判の手続
 家庭裁判所は、少年法3条1項1号に掲げる少年に係る死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪(刑法236条、238条又は239条の罪及びその未遂罪、暴力行為等処罰に関する法律1条ノ2・1項若しくは2項又は1条ノ3の罪並びに盗犯等の防止及び処分に関する法律2条又は3条の罪を除く。)に係る事件において、少年が罪となるべき事実を否認し、かつ、少年又は保護者若しくは弁護士たる付添人が請求したときは、罪となるべき事実認定をするための審判の手続(以下「乙事実認定手続」という。)を開始する決定をするものとすること。
 ただし、保護者又は弁護士たる付添人が請求するときは、少年の明示の意思に反することはできないものとすること。
 家庭裁判所は、乙事実認定手続を開始するときは、検察官又は司法警察員から送付された書類、証拠物その他参考となる資料のうち送致書以外のもの(以下「証拠等」という。)を検察官に送付するものとすること。
 乙事実認定手続を開始する前に証拠等を閲読した裁判官は、当該事件を審判することができないものとすること。
 乙事実認定手続においては、検察官が罪となるべき事実の存在を証明するものとすること。
 乙事実認定手続には、刑事訴訟法321条1項2号後段を除き、証拠調べに関する同法の規定を準用するものとすること。
 少年の自白に関しては第3の5のとおりとすること。
 家庭裁判所は、乙事実認定手続を開始することを決定したときは、速やかに検察官及び弁護士たる付添人と協議して、審理を迅速かつ継続的に行うため、事件の争点及び証拠を整理しなければならないものとすること。
 家庭裁判所は、罪となるべき事実の存否について判断をするのに十分な審理を遂げたときは、その判断の結果を示し、乙事実認定手続を打ち切らなければならないものとすること。
 この場合には、その後の手続には検察官は関与しないものとすること。
 乙事実認定手続に立会する検察官は、少年の心理・特性に関する知識及び少年処遇の実務に関する研修を積んだ少年専門検察官をもって充てるものとすること。
10  乙事実認定手続において少年が弁護士たる付添人を複数選任することを求めたときは、家庭裁判所は、相当と認めた場合、必要な人数の弁護士たる付添人を付すことができるものとすること。

第5  観護措置期間
 観護措置の手続
  (1)  少年法17条1項2号の観護の措置をとる決定は、少年に対し同法3条1項各号の事由を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができないものとすること。
 また、少年に保護者又は弁護士たる付添人があるときは、家庭裁判所は、請求により、その保護者又は弁護士たる付添人を少年の意見陳述の手続に立ち会わせ意見を聴かなければならないものとすること。
  (2)  家庭裁判所は、少年法17条1項2号の観護の措置の必要がなくなったときは、少年又は保護者若しくは弁護士たる付添人の請求又は職権により、決定をもって速やかに同号の措置を取り消さなければならないものとすること。
  (3)  少年又は保護者若しくは弁護士たる付添人は、少年法17条1項2号の観護の措置をとる決定、その期間を更新する決定及び同号の措置の取消請求を却下する決定に対して、不服申立をすることができるものとすること。
 少年が乙事実認定手続を選択した場合の身体拘束
  (1)  少年法17条1項2号の観護の措置は、家庭裁判所が乙事実認定手続を開始する決定をした場合、その決定の日から3日以内に取り消さなければならないものとすること。
  (2)  乙事実認定手続を選択された場合に限り、少年法17条1項2号の観護の措置とは別に「審理のために身体を拘束する制度」を新設するものとすること。
  (3)  要件及び手続
    (1)  家庭裁判所は、乙事実認定手続を開始する決定をした場合において、少年に次に該当する事由があるときは、検察官の請求により、「審理のための身体拘束」をする旨を決定することができるものとすること。
      i  少年を保護・監護する保護者その他適当な成人がおらず、少年に次の事由があり逃亡しあるいは出頭しないことにより審理が中断するおそれがあるとき
ア すでに逮捕を免れようとし、又は逃走のための準備をしたとき
イ 定まった住所又は居所を有しないとき
ウ 身許を明らかにすることができないとき
エ 少年の挙動が逃走の準備又はこれと同視しうるものであるとき
      ii  少年の挙動が、証人予定者に危害を加える準備又はこれと同視しうるものであるとき
    (2)  検察官が(1)の請求をするには、前記(1)ⅰ又はⅱの事由が存在することを認めるべき資料及び意見を家庭裁判所に提出しなければならないものとすること。
 また、家庭裁判所は、請求により、少年又は保護者若しくは弁護士たる付添人に対し、検察官の提出した資料及び意見を直ちに閲覧及び謄写することを認めなければならないものとすること。
    (3)  「審理のための身体拘束」をする決定は、少年に対し検察官の意見を告げ、これに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができないものとすること。
 また、家庭裁判所は、請求により、少年の保護者及び弁護士たる付添人を少年の意見陳述の手続に立ち会わせ、その意見を聴かなければならないものとすること。
    (4)  「審理のための身体拘束」の期間は、2週間を超えることはできないものとすること。
 ただし、特に継続の必要があるときは、1回に限り、決定をもって、これを更新することができるものとすること。
    (5)  家庭裁判所は、「審理のための身体拘束」の理由又はその必要がなくなったときは、少年又は保護者若しくは弁護士たる付添人の請求又は職権により、決定をもって速やかに「審理のための身体拘束」を取り消さなければならないものとすること。
    (6)  少年又は保護者若しくは弁護士たる付添人は、「審理のための身体拘束」をする決定、その期間を更新する決定及び「審理のための身体拘束」の取消請求を認めない決定に対して、不服申立をすることができるものとすること。
    (7)  不服申立がなされた場合、原決定をした家庭裁判所または不服申立を審理する裁判所は、決定をもって、執行を停止することができるものとすること。
    (8)  「審理のための身体拘束」に基づき少年の身体を拘束する場所は、教育的配慮がなされた場所とすること。

第6  抗告
 検察官による抗告は認めないものとすること。
 少年又は保護者若しくは付添人は、少年法3条1項各号に該当する事実を認定した不開始又は不処分決定に対しても抗告をすることができるものとすること。
 少年又は保護者若しくは付添人は、原裁判所の決定につき、原裁判所又は抗告裁判所に対して、執行停止の申立をすることができるものとすること。
 抗告裁判所は、少年法3条1項各号の事由が認められないときは、決定で、原決定を取消し、更に裁判をしなければならないものとすること。
 抗告裁判所及び同裁判所から差戻又は移送を受けた家庭裁判所は、原決定の保護処分より重い保護処分を言い渡し又は少年法20条の決定をすることはできないものとすること。
 抗告裁判所は、弁護士たる付添人がないときは、職権で弁護士たる付添人を付するものとすること。

第7  少年再審手続
 保護処分終了後、少年法3条1項各号に掲げる審判に付すべき少年に該当する事由が認められないにもかかわらず保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、保護処分決定をした家庭裁判所は、職権又は利害関係人の申立に基づき決定をもって、その保護処分を取消し、非行事実なしを理由とする不処分決定をしなければならないものとすること。
 少年法3条1項各号に掲げる事由を認定したうえでの不開始決定、不処分決定に対して、少年に前記事由が認められないにもかかわらずこれらの決定をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、原決定をした家庭裁判所は、職権又は利害関係人の申立に基づき決定をもって、原決定を取消し、非行事実なしを理由とする不処分決定をしなければならないものとすること。
 1及び2の利害関係人は、次のとおりとすること。
  (1)  少年
  (2)  (1)の少年の法定代理人
  (3)  (1)の少年が死亡し、又は心神喪失状態にある場合は、その配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹

第8  被害者への審判手続等の説明及び結果の通知等
 家庭裁判所は、少年法3条1項1号又は2号に掲げる少年に係る保護事件について、最高裁判所規則の定めるところにより当該事件の被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)から申出があるときは、その申出をした者に対し、審判手続の概要及び審判手続の進展状況等を説明するものとすること。
 ただし、少年の健全な育成又は少年及び関係人のプライバシーを害するおそれがあると認められるものについては、この限りではないものとすること。
 当該事件の被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)は、家庭裁判所に対し、少年法3条1項1号又は2号に掲げる少年に係る保護事件について事件が終局した後において、次に掲げる事項の開示を求めることができるものとすること。
 ただし、少年の健全な育成又は少年及び関係人のプライバシーを害するおそれがあると認められるものについては、この限りではないものとすること。
ア 少年及びその法定代理人の氏名及び住所
イ 当該決定の主文及び理由の要旨
 被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)は、民事訴訟の提起の準備等特別の必要が存在する場合は、家庭裁判所に対し確定した法律記録の閲覧又は謄写を求めることができるものとすること。
 ただし、少年の健全な育成又は少年及び関係人のプライバシーを害するおそれがあると認められるものについては、この限りではないものとすること。

第9  その他
 一事不再理効
   少年法3条1項1号及び2号の保護事件の非行事実なしを理由とする不処分決定又は不開始決定に対しても一事不再理効を認めるものとすること。
 検察官送致決定に対する不服申立
   少年法20条の決定にも少年又は保護者若しくは付添人に不服申立を認めるものとすること。
 忌避申立
   少年又は保護者若しくは付添人に、裁判官が不公平な審判をする虞があるときは忌避申立を認めるものとすること。
 管轄権留保
  (1)  少年が抗告した後に成人に達した場合においても、差戻し又は移送された家庭裁判所において、引き続き当該事件の審判ができるものとすること。
  (2)  少年が抗告した後に成人に達した場合においても、抗告裁判所は少年法3条1項各号の事由が認められないときは、決定で、原決定を取消し更に裁判をできるものとすること。