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商法等の一部を改正する法律案要綱の概要

平成11年2月
担当:法務省民事局

第1 法制審議会における審議の経緯
 法務大臣の諮問機関である法制審議会は,平成11年2月16日,「商法等の一部を改正する法律案要綱」(以下「要綱」という。)を取りまとめ,同日,これを法務大臣に答申した。
 商法部会は,平成9年12月以降,完全親子会社関係の創設のための手続である株式交換制度等の導入及び親会社株主に対する子会社の情報の開示等を内容とする親子会社法制に関する問題点並びに一定の金融資産について時価による評価を認めること等を内容とする資産の評価基準の見直しに関する問題点について検討を行ってきたが,平成10年7月8日,「親子会社法制等に関する問題点」を取りまとめ,同問題点についての関係各界に対する意見照会の結果等を踏まえて,更に審議を重ね,平成11年1月27日,要綱案を取りまとめるに至った。今回の要綱は,この要綱案を法制審議会の総会において了承したものである。
第2 要綱の概要
 会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ,商法,有限会社法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律について,次の改正を行うとともに,関係法律の整備を行うものである。
1 完全親子会社関係(親会社が子会社の発行済株式の総数を有する親子会社関係)を円滑に創設するため,株式交換及び株式移転の制度を新設する。
2 親会社株主の利益を保護するため,子会社の業務内容等の開示を充実する。
3 会社の計算の適正を図るため,金銭債権等につき時価による評価を可能とする。
第3 要綱の骨子
1 株式交換による完全親会社の創設
(1) 株式交換の意義
 完全子会社となる会社(B社)の株主の有するB社株式を完全親会社となる会社(A社)に移転し,他方,B社株主にA社新株を割り当てることにより,A社が完全親会社となり,B社が完全子会社となる制度
(2) 株式交換の手続
 ア 株式交換契約書等の事前開示
 イ 株式交換契約書の株主総会の特別決議による承認
 ウ 反対株主への株式買取請求権の付与
 エ 株式交換に関する事項を記載した書面の事後開示
(3) 株式交換無効の訴え
  株主,取締役,監査役等は,株式交換の日から6月内に限り,株式交換無効の訴えを提起することができるものとする。
2 株式移転による完全親会社の設立
(1) 株式移転の意義
  完全子会社となる会社(B社)の株主の有するB社株式を新たに成立する完全親会社(A社)に移転し,他方,B社株主にA社株式を割り当てることにより,A社が完全親会社となり,B社が完全子会社となる制度
(2) 株式移転の手続等
  1の(2) 及び(3) と同様の措置を講ずる。
3 子会社の業務内容等の開示の充実等
(1) 親会社株主の子会社の株主総会議事録等の閲覧権等(第244条,第260条ノ4,第263条,第282条関係)
  親会社株主は,その権利を行使するため必要があるときは,裁判所の許可を得て,子会社の株主総会議事録,取締役会議事録,定款,株主名簿,計算書類,会計帳簿(発行済株式の総数の100分の3以上に当たる株式を有するものに限る。)等の閲覧等を求めることができる。
(2) 親会社監査役の子会社調査権(第274条ノ3関係)
  親会社監査役は,その職務を行うため必要があるときは,子会社に対し営業の報告を求め,又は子会社の業務及び財産の状況を調査することができる。
(3) 親会社検査役の子会社調査権(第294条関係)
ア 発行済株式の総数の100分の3以上に当たる株式を有する株主は,会社の業務の執行に関し不正の行為等があることを疑うべき事由がある場合において,その権利を行使するため必要があるときは,裁判所に対して,検査役の選任を請求することができる。
イ 検査役は,その職務を行うため必要があるときは,子会社の業務及び財産の状況を調査することができる。
(4) その他
ア 監査報告書の記載事項の充実(第281条ノ3,株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律第13条関係)
  監査役は,商法第274条ノ3の規定により,子会社に対し営業の報告を求め,又は子会社の業務及び財産の状況を調査したときは,監査報告書にその方法及び結果を記載しなければならない。
イ 有限会社である親会社の社員の子会社の社員総会議事録等の閲覧権等(有限会社法第28条,第43条ノ2関係)
 (1) と同様の措置を講ずる。
4 資産の評価
(1) 金銭債権等の評価(第285条ノ4,第285条ノ5,第285条ノ6関係)
  市場の相場がある金銭債権,社債,株式等については,時価で評価することができる。
(2) 利益配当の制限(第290条関係)
  (1) により資産を時価で評価した場合において,その時価の総額がその取得価額の総額を超えるときは,時価で評価したことにより増加した貸借対照表上の純資産額は,配当することができない。