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CPのペーパーレス化に関する研究会(大蔵省と共催)(第6回)議事概要

平成11年11月24日
担当:法務省民事局

日  時 平成11年11月24日(水) 13:30~15:30
場  所 法務省会議室
議  題 (1) 前回までの論点整理-実体的権利義務関係以外
(2) 電子署名に関する法的検討
議事内容
    初めに,事務局から,前回までの論点整理の説明が行われた。
    次に,東京丸の内法律事務所の室町弁護士から,電子署名に関する法的検討について説明があり,質疑が行われた。
メンバー等からの主な意見等
  (1) 前回までの論点整理について
    商品性については,基本的には現在の特性を維持すべきではないか,との意見が多かった。ただしその中でも,基本的にはプロ同士の商品と位置付けるべきではないかとの考え方がある一方,発行体や投資家が広く参加できる道を開いておく配慮が必要ではないかとの考え方もあった。
    証券取引法上の有価証券としての位置付けについては,異論は出ていない。ただしその場合,私募発行について,券面50枚未満・適格機関投資家以外への譲渡禁止等,私募要件の充足をどのように担保するかが問題となる。
    ペーパーレス化されたCPが実現した場合の現行CPの扱いについては,並存させて市場の判断に委ねればよいとの意見と,できるだけ早期にペーパーレス化されたCPへの集約化が進むことが望ましいとの意見があった。
    発行・流通・償還システムの効率性に関しては,運営コストが軽いものにすべきではないかとの意見がある一方,証券決済システムの統一化の動きを見ながら,二重投資を避けられるようなシステムにすべきではないかとの意見があった。
    安全性については,
      証券の流通においてはその真正性が重要であり,証券がネットワークで行き来する「電子証券方式」では,滅失,偽造,変造,二重譲渡を未然に防ぐため,充分なセキュリティ確保が必要ではないか
      可能な限りの決済期間短縮及びDVPの実現が重要ではないか
      仲介者破綻時のリスクについて,分別管理・緊急時流動性供給・担保処分・ロスシェア等についての明確なルール設定,間接参加者も含めた権利者の一元管理及び信託公示の簡易化が必要ではないか
      との意見があった。
    他の証券決済制度との関係については,資金・担保の効率的利用やコストの面で他の証券を含めた統一的決済制度が望ましいのではないか,システム構築が二重投資にならないよう証券決済システム全般の改革と整合的であるべきではないかとの意見がある一方,早期実現のため新たな決済システムの構築も検討する必要があるのではないかとの意見もあった。
    システム構成については,
      集中保管機関を使わないと無券面化できない,というのは制度の作り方としてやや重いのではないか
      「電子証券方式」では二重譲渡に備えて対抗要件を具備するためセンター的なものが必要であり,「集中型」のブック・エントリー方式のほうが効率的ではないか
      同一参加者の顧客間での移転の簡便性,市場規模・参加者が広がる可能性を考慮すれば,階層構造が合理的ではないか
      偽造等を防ぐ上で,集中管理の方が各参加者の負担が軽くなるのではないか
      との意見があった。
    「管理機関」・「決済機関」のあり方については,新規参入の機会を確保すべきではないか,セキュリティの確保やルール遵守の観点から何らかの公的監視のもとに行われるべきではないか,との意見があった。
    法律と自主ルールの分担については,安全性確保のため法律において必要最小限の要件を定めることが必要ではないか,将来の技術革新を制約しないよう両者の峻別に留意すべきではないか,効率性と柔軟性の観点から市場参加者の自主的運営を尊重する方向性が望ましいのではないか,との意見があった。
    実現のタイミングについては,日銀システムのRTGS化に遅れない時期等,できるだけ早期が望ましいのではないかという意見がある一方,日銀システムのRTGS化に多少遅れても許容範囲内ではないかとの意見もあった。
  (2) 電子署名に関する法律的検討
    ネットワーク取引では,データ・メッセージの真正性,完全性,秘匿性,到達確認の4点が重要。暗号技術により,前3点のセキュリティが確保される。
    電子署名には,暗証番号方式,共通鍵暗号方式,公開鍵暗号方式がある。
    電子署名は,秘密鍵が破られた場合のリスクもあるが,使用の枠組みによっては,データ・メッセージの真正性の確認と秘匿性の確保について,印鑑証明制度と類似の機能を営むことも可能である。不安要素としては,暗号強度の問題,認証機関制度をとる場合の当該認証機関の秘密鍵が破られた場合のリスク,個々の登録者の同一性や登録意思等の確認,社会的・制度的認知,受信者の保護とデータ・メッセージの作成者の保護とのバランスを指摘できる。
    社会的認知の程度によっては消費者保護が必要になる。
    カリフォルニア州では最近電子署名法が成立し,署名帰属の推定を認めた。
    EUでは近々草案を上程予定であるが,法律効果については各国法制に委ねることとなる模様である。
    電子証券方式もブックエントリー方式も,秘密鍵が破られれば機能しないという意味で,システム内部のセキュリティの強さに差はない。他方,二重譲渡防止の面では,分散管理よりも集中管理の方がやりやすいのではないか。
    多少の危険があろうと,80年代の銀行オンライン的なシステムではなく,オープンなシステムを採るべきではないか。その際には,挙証責任,責任負担等の法律論や証跡を残す技術が必要であろう。
    本人確認が難しい自然人に比較すれば,発行体・投資家が法人の場合には,いわゆる商業登記制度に基礎を置く電子認証制度を用いると,発行段階の効果帰属の問題はすっきりする。
    法人についても,末端の従業員が秘密鍵を濫用した場合や作成者の意思とは異なるデータ・メッセージを作成するようにソフトウエアが書き換えられた場合等の効果帰属の問題は残るのではないか。
    電子認証制度の下では,電子署名を利用しても二重譲渡の危険は解決できない。
    二重譲渡の問題を規律するのに,民法の債権譲渡のように,発行体に通知する手法はどうか。
    確定日附に相当するデータへのタイムスタンプにつき,あまりよい技術がない。
    ペーパーレス化されたCPの権利者がその権利を書面化して欲しいと要望した場合の処理を考えるべき。特に国際的取引では想定される場合もあろう。
    真意に基づかずに発行されたCPにつき,発行体の帰責性を問わず,常にその効果の帰属を法で強制するのはどうか。
    公開鍵証明の取消手続に時間がかかると困るのではないか。