日 時
平成18年1月27日(金)午前9時30分〜午後零時30分
場 所
警察庁第1会議室(16階)
出席者
〔委 員〕 |
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(座長) |
南 | | 博 方 |
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大宮法科大学院大学教授,一橋大学名誉教授 |
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井 嶋 | | 一 友 |
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弁護士,元最高裁判所判事 |
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江 川 | | 紹 子 |
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ジャーナリスト |
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葛 西 | | 敬 之 |
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東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長 |
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菊 田 | | 幸 一 |
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弁護士,明治大学法学部名誉教授 |
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久保井 | | 一 匡 |
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弁護士,元日本弁護士連合会会長 |
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佐 藤 | | 英 彦 |
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警察共済組合理事長,前警察庁長官 |
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瀬 川 | | 晃 |
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同志社大学法学部・大学院司法研究科教授 |
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成 田 | | 頼 明 |
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日本エネルギー法研究所理事長,横浜国立大学名誉教授 |
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(敬称略,五十音順) |
〔事務局・法務省〕 |
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小 津 | | 博 司 |
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官房長 |
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小 貫 | | 芳 信 |
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矯正局長 |
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三 浦 | | 守 |
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官房審議官(刑事担当) |
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山 下 | | 進 |
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官房審議官(矯正担当) |
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林 | | 眞 琴 |
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矯正局総務課長 |
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北 村 | | 篤 |
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官房参事官(刑事・矯正担当) |
〔事務局・警察庁〕 |
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安 藤 | | 隆 春 |
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官房長 |
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片 桐 | | 裕 |
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官房総括審議官 |
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岩 瀬 | | 充 明 |
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官房総務課長 |
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福 田 | | 守 雄 |
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官房総務課留置管理室長 |
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山 田 | | 知 裕 |
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官房総務課理事官 |
【山田官房総務課理事官(警察庁)】予定の時刻になりましたので,ただいまから未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議の第5回会議を開催いたします。
まず事務局より,今回の会議の配席について御説明させていただきます。これは,南座長の御指示により,事務局席をメインテーブルから移動し,日弁連の発言席を設けることとしたことによるものでございます。
それでは,南座長,よろしくお願い申し上げます。
【南座長】本日は,早朝から皆様お忙しいところお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
【南座長】まず,前回菊田委員より提出されております第3回未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議の補充発言についてでありますが,本補充発言の中に「1,裁判所への出廷時にも無罪推定の原則を」というのがありました。この論点は,これまでの論点整理表に含まれていませんが,この点につきまして事務局から御説明お願いいたします。
【北村官房参事官(法務省)】現在,拘禁されている被告人が法廷に出廷する場合には,逃走や自殺などを防止する観点から,ネクタイ,ベルト,靴等の使用は禁じられているところでございますが,被告人の服装に関しましては日弁連からも主張がなされております。しかしながら,被告人の服装の点につきましては,一昨年の3月に裁判員制度の導入等を踏まえて設置されました法務省・最高検察庁,最高裁判所,日本弁護士連合会の三者の「刑事手続の在り方等に関する協議会」における検討テーマとされていることから,この有識者会議における論点には掲げなかったものでございます。
【井嶋委員】よろしいですか。
【南座長】どうぞ。
【井嶋委員】裁判員制度が施行されるようになりますと,今までと違いまして裁判員が被告人から受け取る印象というのが一つの大事な要素になるということは確かに御指摘のとおりだろうと思いますから,従来職業裁判官がやっているときはそんな服装なんかには余りこだわりませんが,そういったこともありますから,と同時に今説明がありましたように,本来法廷警察権に基づく逃亡防止といったような観点からの制限があったのだろうと思いますけれども,そういったものも裁判員制度になるとある程度変わってまいらざるを得ないのだろうというふうな感じがいたします。そういった意味で,これはマターそのものは今御説明があった最高裁を始めとした裁判所も含めた会議でお決めになるのが正しい解決だと思いますけれども,御提案については私も理解ができます。ある程度そういう,今制限している部分を配慮しながら,新しい裁判員制度に向けた服装,つまり拘置所から出るときにその服装が必要でありますから,そういった服装の準備といったものが必要だろうと思いますから,そういった方向で改善されることは私もいいのではないかとは思いますけれども,ただ一言つけ加えておけば,裁判員制度といえども法廷は舞台ではありませんから,余り華美な服装だとか何とかいったような要求までのめるかどうかということもございましょう。しかし,いずれにしても方向としては全体会議にお任せするとしても,早く解決すべき方向にある問題ではないかなと思います。
【南座長】いかがでございましょうか。この問題につきましては,裁判所も加わった協議会において議論される問題でありますので,この会議ではこれ以上の議論はいたしませんけれども,裁判員制度の実施を控え配慮が必要とされる問題ではありますので,提言におきまして井嶋委員からただいま御意見があった点,すなわち裁判員制度の実施をも考え,事故防止に支障とならない範囲で可能な限り服装にも配慮することが望ましいというような点を確認してはいかがかと思いますが,その点いかがでしょうか。
【菊田委員】それで私は結構ですけれども,後で議論をする機会がないということであれば一言だけ。手錠とか捕縄等については,法廷に入るまではともかくも,入った後はやはりとるということも,具体的ですけれども,議論がなければその辺つけ加えていただければ有り難いと思います。
【南座長】それでは,今井嶋委員から御意見がありましたような趣旨の修正をさせていだきたいと思います。
次に,法務省から瀬川委員からの御質問に対しまして説明があるとのことですので,よろしくお願いいたします。
【北村官房参事官(法務省)】第3回の会議におきまして,瀬川委員から諸外国における未決拘禁者に対する懲罰について御質問があった点でございます。
実態などの詳細につきましては調査は困難でございますが,法令レベルで調査した結果を申し上げさせていただきます。
まず,アメリカにつきましては,アメリカの連邦司法省の矯正局所管の施設に収容されている未決拘禁者には,連邦行政規則28編Chapter5が適用されますが,Part541に,未決拘禁者を含む被収容者,原文ではinmatesでありますが,これに適用される懲罰の規定がございます。イギリスにつきましては,1999年監獄規則の51条以下に,未決拘禁者を含む被収容者prisonerに適用される懲罰の規定がございます。それから,ドイツにつきましては,未決勾留執行規則に未決勾留における被勾留者に対する懲戒処分が定められておりますし,フランスにつきましても,未決拘禁者にも懲罰を科することができるとされているとの回答を得ております。さらに,韓国につきましては,行刑法の46条以下に未決被収容者を含む被収容者に対する懲罰の規定がございます。
以上でございます。
【南座長】今の点についてですか。それでは,簡潔にお願いいたします。
【海渡雄一弁護士(日弁連)】日弁連の対策本部の海渡と申します。今御報告のあった拘置所の実情についてはそのとおりというふうに理解しておるのですけれども,私どもも各国の警察,留置場における懲罰の現状について,これは警察庁が調査されたレポートの中から調べてまいりましたけれども,イギリス,フランス,ドイツの三か国について,規律違反行為があったときに,特別室―保護室ですね―に収容するような措置はとられているし,実力で規制するというような措置も認められておりますけれども,懲罰ないしはそれに類するような制度というものはないということを確認しております。
【南座長】それでは,瀬川委員よろしゅうございますか。
【瀬川委員】はい。
説明資料
【南座長】では,次に日本弁護士連合会から,代用監獄についての補充説明という資料が配付されておりますが,説明がございましたら簡潔にお願いしたいと思います。なお,ここで説明を受けた事項についての議論は,時間の関係もありますので,提言(案)の該当の審議の中でお願いをします。それでは。
【小池振一郎弁護士(日弁連)】日弁連の実現本部の小池でございます。前回日弁連として御説明したいことが多々あったのですが,発言の機会がなかったものですので,ペーパーという形で補充説明をさせていただきたく提出をさせていただきました。簡単に御説明申し上げたいと思います。
まず漸減条項についてでございます。1980年法制審議会の要綱110項で「被勾留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること」ということが,法制審の委員全会一致で採択されました。これが,この間日弁連と当局との間の激しい議論となってきた代用監獄問題における1980年時点での一致した結論でございます。これを踏まえて,今回の有識者会議でそれをどう発展して提言としてまとめるかが問われている課題だろうと思います。
1980年に,警察庁は通達によって警察署の内部で捜査と留置が分離されたから,この80年以降また状況が変わったという御説明がございました。しかしながら,確かに組織システム上は分離されていますけれども,捜査が留置に優先する実態というものに変わりはなく,例えば9時の就寝時間を過ぎても取調べが続く。10時,11時続く,さらに深夜の1時,2時まで続くという例がたくさんあるわけです。それは留置係としては,本来であれば9時には就寝ですよと言わざるを得ないにもかかわらずそれができていないということは,これは一つの象徴ですが,捜査が留置に優先するというこの実態が,何ら変更されていないというふうに見ざるを得ないと思います。
したがって,代用監獄の弊害というものが80年以降も解消されているわけではなくて,この状況は続いている。昨年5月の死刑求刑から一転無罪判決が出された佐賀の北方事件や,2003年の選挙違反の鹿児島事件などで,代用監獄の弊害の例など枚挙にいとまがありません。国際人権規約委員会は,1993年と98年と2回にわたって代用監獄の廃止を勧告しております。これは,1980年要綱以降,その実態を踏まえ,また要綱をも認識しながらあえてこの93年,98年に勧告しているわけでございます。そのときに,同じ部局の内部で分離されたといっても,それは問題を解決したものにはなっていないということまで理由として説明していることでございます。こういう状況を踏まえて,今回の有識者会議では,この漸減条項をさらに一歩進めて,国際的な視点からも内外の状況も踏まえて,今回どういう提言を打ち出すかが問われていることだろうと思います。
あとは簡単に御説明します。
大型・独立留置場の問題につきましては,現在原宿警察とかあるいは立川とか,それから新聞報道によりますと北海道等々全国的にもかなり大規模な独立した留置場が建設される,あるいは建設される予定であると聞いております。これは正に未決拘禁施設というにかなり特化したものでありまして,私たちはやはり代用監獄を漸減するその具体的な実践としては,まずこのような大規模・独立留置場は,法務省の施設として移管して,拘禁に名実ともに特化したものとしてやるべきであるというふうに考えております。
否認事件の移監請求等につきましては,文書に書いてありますとおりということで省略させていただきます。
最後の不服申立て制度につきまして,公安委員会とは別の被収容者からの不服申立ての処理に特化した独立性のある機関こそ必要だと思います。現在の公安委員会が不服申立て制度に耐えられる組織形態と実態を備えているというふうには到底見られない。なぜならば,3人から5人ぐらいの委員でどこまで,しかも警察行政全般を監督しているという,そういう公安委員会がこの不服申立て制度に対応できるとはとても思えないので,独立した機関を新たに設置していただければと思います。
それから,ついでながら,先ほど法廷における服装の問題が出ましたけれども,これが論点整理から落ちていたのは,先ほど法務省からの御説明がありましたように,最高裁,法務省,日弁連の協議会で検討されているからということであえて外した経緯がございます。しかしながら,その後ちょっと日弁連として実態を調査してみますと,その協議会で余り議論がされていない。むしろこれは法務省矯正局マターといいますか,の問題にも絡むというふうな認識が,明確に合意されているわけではないのですけれども,そういう雰囲気もあるやに聞いておりました。実際に例えば拘置所から法廷に入るときにも,拘置所を出る段階からスリッパでというふうな形になっておりますので,裁判所の法廷の中だけの問題ではなくて,拘置所から出る段階でどういう服装にするかが問われているということでありば,正にこの有識者会議で討議し,提言にも触れることの方が正しいのではないか,妥当ではないかと,こういうふうに日弁連としても思っております。
【南座長】ありがとうございました。時間の制限もありますので,大変簡潔にお話しいただいてありがとうございました。
【南座長】本日は,これまでの議事全般について総括をし,提言の取りまとめに向けた詰めの議論をしていきたいと思います。議論のたたき台としまして,事務局にこれまでの議論等を踏まえ,論点ごとに取りまとめた
提言(案)
を作成していただきましたので,これに沿って進めていきたいと思います。また,菊田委員から
提言案の修正案
が提出されていますので,御議論に当たって御参照をしていただく,またその都度,特に菊田委員の方から御発言がありましたらまたお聞きをしたいと思います。
これまでの議論の順序に従いまして,全体の論点を大きく三つに分けまして,およそ10時25分ごろまで,できれば20分ごろまで,総論部分及び未決拘禁者の外部交通の在り方に関する論点全般,これは項目の第1〜第4までです。それから,第2にはおよそ11時10分ごろまでの間,未決拘禁者のその他の処遇の在り方に関する論点全般,これは項目第5。それから最後に休憩を挟みまして,およそ午後0時20分ごろまでの間,代用刑事施設制度(代用監獄)の存廃に関する論点全般,項目第6,第7を御議論いただきたいと思います。
【南座長】では,最初の総論部分,及び未決拘禁者の外部交通の在り方に関する論点全般,すなわち項目第1〜第4につきまして,まず事務局から該当部分の読み上げをお願いいたします。
〜 読み上げ 〜
【南座長】以上,事務局から提言案第1〜第4を全文を読み上げていただきましたが,どの点についても結構でございますので,御議論をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【菊田委員】では,私が提案についての別紙修正を提出させていただきましたので,簡単に。
【南座長】文書でも出ておりますので,簡単に。
【菊田委員】もとよりこれは事務局案でございまして,こういう議論のための素材を提供していただいたことにはお礼申し上げたいと思います。それ自体は有り難いですけれども,そういう意味を含めまして,大変細かいところまで字句の訂正までさせていただいたことを,ちょっと御理解いただきたいと思います。
それと,基本的にはこの問題になっております代用監獄の存廃ということでやるわけですけれども,この問題については多くの研究者は,やはり長い歴史の中で代用監獄を即時廃止すべきだという意見があることは事実でありますが,私は研究者のはしくれではありますけれども,基本的には現状を踏まえて即時廃止については消極的基本点を維持しているつもりであります。したがって,問題はその現実の中から将来に向かってどうするかということの方向づけというものをしっかりとらえておかなければならないと思っております。そういう点で,今回提出させていただきましたこの修正案自体も,日弁連の当局者と時間をかけて議論させていただきました。その見解は,日弁連自体は今までは代用監獄即時廃止ということをうたってまいりましたけれども,現実的にはやはり私と同じような意見であったという意味で協力的に議論させていただいたという意味でございます。したがいまして,私の意見も含めて日弁連の専門家の方の意見も踏まえて,これを修正させていただいたということを申し上げたいと思います。
それから,もう一つだけ大きな点で,国際基準という問題ですけれども,これはこの全体の書きぶりといいますか,思想の流れを一つ定着させるといいますか,そういう意味で重要なことだと思いますが,前回にも私この総論的なことを申し上げたのですけれども,何といっても国際基準というのは,言うまでもないのですが,長い国際的な努力といいますか,積み重ねによって得られた成果というもの,歴史的産物であるわけです。その産物に対して,各国がその基準に対してどの程度それに順応していこうかということが各国において求められているわけです。もとより国際基準というものは抽象的でもありますので,その国の国情に応じてレベルの違いは当然出てくるわけですけれども,少なくとも人類が得た成果に対して,各国がどのように充実していくかという努力をするかということの方向性が,やはりそこに示されなければならないだろうと思います。したがって,ある国が独自の伝統とか歴史というものを踏まえて,国際基準がすでに満たされているんだというような表現は,これはもう多くの一般的な人を含めた研究者においては,特に理解されるはずがないというふうに御理解願いたいと,僭越ですが思います。そういう基準で,国際基準に照らして,今ある日本の状況は問題である。問題はすぐに解決できないけれども,将来に向かってどうするかというようなスタンスで物事を考えていただく必要があるのではないかと思っているわけです。
その点からいきますと,先ほどの日弁連の話にもありましたけれども,被疑者の段階,被告人の段階においては,これはあくまでも無罪推定が原則という一つの大きな刑事訴訟法における原則も確立しているということも,国際基準に向かってどうかという基準で検討すべきことであろうというように思いますので,そういう視点のもとに私の立場からこの文章を書かせていただきました。というのは,あくまでも,前後しますが,これは有識者会議が提言する文章でありますから,私どもが委員として表現をするということの姿勢をやはり持って,これに一つ一つの文言にかかわっていく必要があると思いますので,よろしく御検討お願いしたいと思います。
【南座長】これは,私ども今いただいたばかりなものですから。
【菊田委員】結構です。
【南座長】ひとつ検討をさせていただきたいと存じます。
【菊田委員】そういうことで結構です。
【江川委員】今は読み上げがあったところについての質疑や意見だと思うので,その範囲で三つほど。一つ質問と二つの意見なのですが,一つは2ページ目の「外部交通の在り方」と書いてあるのの上の部分の2行なのですが,「その範囲を超えて刑の執行に伴う制限等をすることができない」というのは,これはどういうことを意味しているのかちょっとよく分からなかったのですけれども。つまり権利及び自由の制限は,未決拘禁者としての身柄拘束のために必要かつ合理的な範囲のものでなければならないのは当然のことであるので,何でいけないのかがちょっと分からない。何を意味されているのかをちょっと教えてくださいというのが質問です。
それから,次の外部交通の在り方のところで,夜間・休日接見ということでここに今までの意見がまとめられているわけですけれども,そこに,これはもう裁判所も絡んでくるので,ここで全部結論をすぐに出すということはできないのだと思うのですけれども,裁判所に仮監というのですか,それがありますよね。そこもやはり夜間というのですか,時間外の接見というのを認める方向にということも検討すべきだということは言ってもいいのではないかと思うのです。というのは,ここにも書いてありますけれども,裁判員制度が始まると短期間で連日的・集中的公判というふうになっているので,そうなると今日の裁判が終わった後明日の裁判についての打合せというときに,拘置所の方は夜間やるにしても,そこに行かないで裁判所でできればそれはそれでむしろみんなが時間が節約できるということになると思うので,そういうことももう少し広げて検討してもいいんじゃないかということを私の意見として申し上げました。
【南座長】今おっしゃったのは,拘置所だけではなく,裁判所におけるところの,裁判所構内での接見というのがございますよね。それについて。
【江川委員】それを5時以降も。
【南座長】含めるべきだと。
【江川委員】というのが1点。
それから,まとめて言ってしまいますけれども,5ページ目の最後の方で,録音の問題がありますが,録音について,その録音も「信書の検閲の論点と同様に考えるべきである」というふうになっておりますが,これは。
【南座長】何ページですか。
【江川委員】5ページの処遇の在り方の前ですね。「意見も示された」というところがありますよね。そこの行から下から4行目です。「上記4の弁護人等に発する信書の検閲の論点と同様に考えるべきである」。ただこれだと,ここの総意としてこういうふうになったという感じになるのですけれども,私は接見での録音は,手紙のやりとりとはちょっと性質が違うのではないか。つまりそこの録音というのは,接見の内容そのものです。接見の内容はチェックされないということになっているわけです。ですからこの録音はメモと同じような感じにとらえるべきだと私は思います。以上です。
【南座長】今の御意見について,御議論ございますか。
【久保井委員】江川さんの御質問は,私も同じような感じを持っておりますので,それについてはまた御説明をいただきたいと思いますが,総論のこの基本的な考え方という,総論の総論みたいなことについて意見を言ってもいいですか。
この有識者会議の提言という原案を,事務当局が大変短期間の時間のない中で精力的に作業していただいて原案をおつくりいただいたことについては,これは深く感謝したいと思います。また,2,3日前に御説明をいただいた際に私などが申し上げた意見も一部は取り入れられているということもありまして,その点もあわせてお礼を申し上げたいと思います。
ただこの有識者会議の提言は,これは国民に呼びかける,そういうペーパー,あるいはやがては立法原案に結びつき,国会で法律案の審議ということで結びついていく,その基礎になるペーパーになっていく。したがって,国会あるいは国民に対してアピールする,アピール力のある,そういう魅力のあるものにできたらした方がいいのではないかと思います。事務的なことが少し先行しておって,アピール力をふやす,例えばデパートで物を買いましても中身の充実も重要ですが,やはり包装紙もきれいな包装紙で,なるほどこれは立派な商品だというようなそういう工夫が要るのと同じで,各界の有識者が集まって100年ぶりの未決拘禁の設備を,施設をどういう方向で改革しようということにしたのか。現在はどういう状態であって,それをどういう方向に改革しようとしているのか。その哲学といいますか,理念を少なくとも最初の「はじめに」とか,第1,第2,第3,この短い文章を三つに分ける必要はあるかどうか,少なくとも第2と第3は一本でもいいのではないかと思いますけれども,その辺は執筆者,原案作成者のくせとか好みの問題もありますからいいのですけれども,少し夢を感ずる,胸を打つような,ペーパーを読んだ人の胸を打つようなそういうペーパーにできないかなという,ぜいたくかもわかりませんけれどもそういう感じがいたします。
特に行刑改革会議で,これは実質は同じようなものですけれども,あそこでつくりました提言が,非常に各方面の高い評価を,お褒めの言葉をいただいた。それは,最初の数ページ,たしか3ページか5ページあったと思いますけれども,その一度失敗した人間ももう一度活躍の場を与える人間のルネッサンスを提唱した,そういうことが各方面にすごい共感を呼んだと思うのです。私はこの未決拘禁者の処遇の問題,未決拘禁者施設の処遇の問題についても,やはり一定の方向性,哲学をこの基本的な考え方の中に入れることができれば入れた方がいいのではないか。
ただ格差の是正,つまり既決について法律ができてしまったから,未決についてもほっておいたら不平等になるから直すというだけの説明,そうでない部分もあるかもわからないけれども,端的に言うとそういうことしか書いてない。だから,確かにそれも一つの考え方,思想を貫いている柱だと思いますけれども,それだけでなくて,やはり明治41年にドイツのそういう刑事拘禁施設を手本に日本で刑事施設を導入したけれども,100年たったと。新しい世紀を迎えた。新しい世紀というのは,やはり国際的に見て人権の世紀にしなければならないという世界的な世論があるから,そういう人権の世紀にふさわしい見直しが必要だったと,あるいは各国の特殊事情はあるにしても,国際的な動向も可能な限りは取り入れる方向で努力したとか,何かそういう柱みたいなものを,リップサービスでもいいのですけれども,リップサービスでもいいけれどもそういうものを入れないと国民が感動しないというか,そういう感じがします。だから,御面倒かもわからないけれども,この原案は原案で立派にできていると思いますけれども,座長なりあるいは江川さんなり,そういう才能のある文章力のある人,あるいは瀬川先生のような学者の人,そういう一人,二人の人が起草委員になっていただいて,事務局の案をたたき台にして,そういう少し明るくて前向きな,そういう雰囲気の総論に少し書きぶりを直していただいたらという感じが強くするので,ひとつお願いしたいと思います。
【南座長】はい,どうぞ。
【葛西委員】今の話は大変おもしろい話なのですが,物事の性格上極めて技術的なものと,それから極めて多くの人たちが日常生活の中で日常の言葉で話が分かりやすい問題と,両方あるように思います。したがいまして,質実剛健という言葉がありますが,飾ったり装ったりするよりは,内容はきちんとしているということがすべての基本かと思います。もし強いて入れるのであれば,時代の要請は治安の回復とか一般の善良な市民の安心した生活ができるというところが一番アピールするところであり,一番言って欲しいことであり,一番求められているところですから,その観点からこれが今までよりもより弱体化するものではないということを,大変きれいな言葉で出されたらよろしいのではないかと。それ以上のものは要らないし,むしろポピュリズムに類するようなことは,日本の国を害している一番大きなことの一つではないかと思います。
【南座長】どうぞ。
【佐藤委員】私は,今読み上げられた部分について特段の意見はございませんが,その理由は,この原案というのはこれまでにここで議論されてきたことが集約されていると思えるからであります。先般配付された議事録を確認をいたしましても,それぞれの委員の発言されたことがその言葉で表現されておりますし,したがって事務局が用意したものについて我々が云々するという性格のものではなくて,我々自身が議論したその成果物について今再評価をすればどうか,こういう観点で議論できる,そういうものとして整理されていると思いますので,そのような意見でございます。
【久保井委員】おっしゃることは十分に理解できますが,この改革に当たっては日本の社会が非常に国際的に高い地位を占める段階に達した以上,刑事施設の面でも国際的な水準というか,そういう相場というものに従ってやはり見直す。もちろん治安は大事だということは異論がありませんけれども,しかし,他方そういう刑事被疑者の人権保障とかそういうことについても,やはり国際的水準に合わせる必要があるということは,私は今まで4回の会議で折に触れて希望してきたところでありまして,そういう意味ではここに書いてあるまとめ方は私のような考え方が反映されていない,だから少しは反映させていただきたい。これは全員一致の意見ということになりますと,私としては不満があるので,ここはやはりそういう意見も強く主張されているわけだから,そういうものは理念的観念論であって要らないというような,そういうことではなかったと思うのです。1ページの真ん中の辺に,「本会議は,抽象的・理念的な議論に終始することなく」と言っていますが,やはり私は抽象的・理念的な議論も必要だと思うのであって,それだけではいかん,実際の具体的な中身はしっかりしていかなくてはいけないということは異論がありませんが,やはり哲学のないペーパーは,これは事務当局,あるいは立法当局はそれでいいと思います。有識者会議というのは,国民の代表であり,国民各層の代表なんだから,だからそこはやはりそういうレベルの発信力を持ったペーパーにしなければいけないし,現に会議の席では菊田先生もおっしゃいましたけれども,私も何回も申し上げたつもりであって,その意味ではこの会議の経過が正確に反映されているとは思わないから申し上げたわけです。
【南座長】どうぞ。
【江川委員】これはだれあてに,というかだれが読むものなのでしょうか,提言は。
【南座長】原案は事務局案です。
【江川委員】いや,読み手です。だれあてに出すものであって,だれが読むことを想定にしたものでしょうか。
【南座長】これは私の推測ですが,やはり立法の資料ではないのですか。ちょっと,それでは事務局の方で。
【久保井委員】政策立案の資料かもわからないけれども,だけど実際は国民各層に呼びかける,国民に呼びかける文章だと僕は思います。
【南座長】前の提言と同じじゃないでしょうか。行刑改革……。
【江川委員】前は大臣あてでしたよね。大臣あてだったけれども,やはり外の人も読むようにという感じでやったのだと思うのですけれども,これの場合はどういうことを想定していらっしゃるのでしょうか。
【成田委員】これが立法資料としますと,パブリックコメントにかけることになっていますね。これはその時間がないので,パブコメにはかけないのでしょうか。法務省の方,あるいは警察の方に伺いたいのですが。
【南座長】それではちょっと議論も時間の関係もございますので。多少文章等の手直しだとか,それからこの文章がやはり一般の方も御覧になるということですので,特に第1の「はじめに」の総論部分のところだと思いますけれども,私に,あるいはどなたか補助していただく人をお願いをしまして,多少分かりやすい文章,少なくとも各論に結びつくような形で総論を考えたいと思っておりますが,よろしゅうございますか。今ちょっと事務局の方から修正の部分があるというお話がございましたので,よろしくお願いいたします。
【北村官房参事官(法務省)】先ほどの江川委員の御質問に対するお答えということでよろしいでしょうか。
第3の最後の段落のところでございます。下から2行目のところに「その範囲を超えて刑の執行に伴う制限等をすることができないことは」の部分でございますが,ここは未決拘禁者を刑が確定した受刑者,既決の者と対比して書くために入っている文言でありますが,必ずしもこの部分がなくても特に意味が変わるという,そういうものでもございません。単に受刑者との対比で書いたという程度のことでございます。
それから,先ほど来お話に出ております,だれに対する提言なのかということでございますが,この会議は法務事務次官と警察庁長官から御意見を伺うという形で諮問しているものですので,形式的にといいますか,直接的には,そちらに答申と言いますか,提言をいただくというものでございますが,もちろん,公開の形で議論していただいておりますし,提言も当然公開することになりますので,その意味では間接的には国民に示す形になるものでもございます。
【南座長】よろしゅうございますか。
菊田委員から,修正案が出ておりまして,その第3の処遇の在り方に関する基本的考え方の部分に関し,「無罪推定を受ける者にふさわしい処遇は国際的な原則にもうたわれているとする意見があった」。そういうように修正を求める御意見でございますね。この趣旨を盛り込んではいかがかと思いますが。菊田委員の御趣旨を盛り込んではいかがかと思うのですけれども,よろしいですか。
【菊田委員】私はそう希望的に書いておきました。
【南座長】「無罪推定を受ける者にふさわしい処遇は国際的な原則にもうたわれているとする意見があった」。この程度ならよろしいですね。
【菊田委員】結構です。
【南座長】そういう意見のあったことはたしかですから。
それからもう一つは,先ほども出ましたが,これは第4の2,夜間・休日接見につきましては,短期間での連日的・集中的な公判審理の必要性が格段に高い裁判員裁判が始まれば,拘置所だけではなく裁判所の構内における夜間接見についても充実を図る必要性があるという御意見がございましたので,これについても御賛同を得られたものと存じますので,裁判所の構内における夜間接見の必要制限を提言に追加するというような修正を加えることにしたいと存じますが,これもよろしいですね。
それからもう一つは,第4の5ですけれども,弁護人等との接見時における書類等の授受,録音機等の使用につきましては,録音機による記録内容の検査を行うべきではないとの反対意見がありますので,「録音機による記録内容」の以下の第3段落,第2文を「上記4の弁護人等に発する信書の検閲の論点と同様に考えるべきであるとする意見が多数を占めた」と,これは「同様に考えるべきである」とあったのですけれども,「とする意見が多数を占めた」としまして,この点については全会一致の結論でないということを明記したいと思います。よろしゅうございますね。
【久保井委員】時間がないのに申し訳ないのですが,電話による外部交通の4ページの2行目ですね。「権利的あるいは全国一斉に導入することは適当ではないという意見もあり」という,この権利としては認めない,あるいは全国一斉に一度にやるということは難しいということを指しているのでしょうが,これはステップ・バイ・ステップで進んでいく以外に実務としてはないと思いますけれども,この表現が少し通常用いられていない表現,「権利的」とか「恩恵的」と,「恩恵的」という言葉に対応する言葉でお使いになっているのだろうと思いますけれども,少し露骨過ぎるんじゃないか。権利として認めないということがここまで露骨に書かなくても,もう少しマイルドな表現に工夫できるものであれば,考えていただきたい。対案がちょっとないのですけれども,座長の方なりあるいは仕上げをされる担当者の方でお考えいただいたら有り難いと思いますけれども。
【南座長】何かほかにかわる言葉はございますでしょうか。「権利的」ということですよね。
【久保井委員】「権利的」というのが要るかどうかも私は,「全国一斉に一度に導入することは困難である」とか,つまりいろんな物的・人的な制約もあるから全国一斉に一度に導入することは困難であるという意見があったというような,そういうレベルの問題ではないかと思いますけれども。
【南座長】いかがでしょうか。
【井嶋委員】ここは,そういう意見があったということの中身ですから,この提言の意見じゃないのですよね。だから恐らく,あるいは私もそんなことを言ったかもしれませんが,そういう意見もあると書いてある部分だから,余りこだわることはないのではないでしょうか。
【久保井委員】「権利的」という言葉が。
【井嶋委員】「権利的」というのがね。
【久保井委員】そういう言葉は使わない。
【井嶋委員】意見を述べた人はそういう気持ちで述べている。
【久保井委員】ああ,そうですか。まあ,お任せします。
【南座長】後段の方は,「実施可能な範囲や具体的な方法等について十分に検討を行う必要がある」としておりますので,ひとつこれで御了承いただければと思います。
【久保井委員】はい。
【南座長】ほかに何かございませんか。久保井先生。
【久保井委員】5ページですけれども,弁護人と被拘禁者との間における文書の授受については,「差入れ等の手続を経ることが必要とされている」という,5行目にありますね。5ページの5項の5行目に。確かに現状はそうなのですね。それで,結局記録を見せながら,あるいはいろんな地図なんかを書かせながら,そういう裁判の打合せをするのに一々差入れの手続が必要だということは非常に打合せにとっては不自由なので,それを何とか自由に打合せができるようにということが,これがこの弁護人の要請なのですけれども,それがもしこのペーパーのように問題だと,すぐに認めるわけにいかないとしたら,やはり差入れの手続を非常に簡便化する,そのきちっとした差入れの手続ではなくても係員の了解をとってやれるような,手続の簡素化とか何かしないと,やはり打合せが非常に不自由であるという事実はあると思うので,そこは考えていただきたいので,せめて差入れ手続を実情に応じた簡素な方法でやるなどの工夫が要るのではないかと思いますので,そういうことをちょっと入れていただいたらいいと思いますけれども。
【南座長】今の点ですけれども,例えばこういう表現ではいかがでしょうか。「差入れ等の手続をできる限り迅速に行うよう配慮すべきであるが」というような文言を入れて,「迅速に行うよう配慮すべきである」と。「直接文書等の授受を認めることとすると,未決拘禁者は,検査を受けることなく,その意思内容を表す文書を弁護人等に発することが可能となることから,上記4の弁護人等に発する信書の検閲の論点と同様に考えるべきであるとする意見が多数を占めた」と,その程度に修文をさせていただきたいと思います。
【久保井委員】そんなに難しいことを要求するつもりはないのだけれども,打合せがスムーズにできるための。
【南座長】おっしゃるとおり,「できる限り迅速に」。
【久保井委員】迅速・簡便な方法で。
【南座長】簡便なということですね。
【久保井委員】差入れの手続ができるようにしていただくような,ゼロ回答ではなくて何らかのものをやはり付与していただきたいと思いますけれども。
【南座長】そのように,それでは修文をさせていただきます。
ほかに,何か意見ございませんか。
【成田委員】中身ではないのですけれども,これを読んでみますと,検討すべきというというところに「真剣に」というのがついているのもあれば,単に「検討すべき」というのもあるし,「慎重に検討する」というのもあるのですね。これはこの会合での発言の強弱の度合いに配慮してこういう表現になされたのかどうか。何か意識されているのでしょうか。
【北村官房参事官(法務省)】厳密なところでどうかと言われますと,いろいろと評価もあろうかと思いますが,基本的には,結論の程度の違いといいますか,そういうニュアンスを表すためにつけている,表現させていただいているつもりでございます。
【成田委員】従来「慎重に検討すべき」というのは,実際上にはやりませんというふうに受け取られていたのですね。そこら辺の使い方は,少し配慮していただいた方がいいんじゃないかと思うのですけれども。
【菊田委員】よろしいですか。
【南座長】簡単にどうぞ。
【菊田委員】こういう細かい字句の訂正を認める,認めないということになりますと,今のおっしゃった形容詞のような形で,その点は認めます,認めないということで進めていかれるようですと……。
【南座長】この原案ですか。
【菊田委員】ええ。というようになると,私が訂正しました赤で消している部分がありますが,これを全部認めろというつもりはありませんけれども,これは私の意見はこういう意見だということで,修正を検討していただくということでよろしいわけですね。
【南座長】ですから今申し上げたようなところは,少なくとも挿入させていただく。
【菊田委員】それは分かりましたが。
【南座長】その他の点ですか。
【菊田委員】私が修正で赤字を出していますね。それは発言しないのですけれども,あえて,これは後日検討……。
【南座長】発言していただいていいのですけれども,ちょっと時間の関係もありますし,せっかくこれだけ詳細な文書で出ていますので,皆さんにまた後で御検討していただくと。
【菊田委員】削除するなり加えるなりを,私の資料をもとに検討をしていただく,こういうことですね。
【南座長】そういうことです。次回にまた。
【菊田委員】分かりました。それではそれで了解します。
【南座長】それでは,ただいま総論部分及び未決拘禁者の外部交通の在り方に関する論点全般について御意見を伺いました。それぞれのお立場から御意見が出されましたが,おおよその方向性というのが見えてきたと存じます。また,御意見を入れまして修文をいたしました。なお,具体的な修正の表現ぶりにつきましては,これはもちろんまた御議論いただきますけれども,一応は座長に御一任をいただきたいと存じます。
それでは,そのように取り扱わせていただきます。
【南座長】それから,おおむね11時10分までの間,未決拘禁者のその他の処遇の在り方に関する論点全般,項目第5について御議論をいただきたいと思いますので,事務局から該当部分の読み上げをお願いいたします。
〜 読み上げ 〜
【南座長】ありがとうございました。では,どの点についてでも結構でございますので,御議論をお願いしたいと思います。特に未決拘禁者のその他の処遇の在り方に関する論点中,2,作業・教育の機会の保障,3,居室外での処遇等,及び5,生活条件につきましては,時間の関係もありまして,これまで議論がございませんでしたので,一応論点として日弁連の主張を挙げさせていただいた上で,各項目につきまして事務局説明をもとに記載してございますが,御意見はございませんでしょうか。よろしくお願いいたします。
【菊田委員】2の作業・教育の機会の保障,これは全般はそれで結構なのですが,私の赤を書いているところをちょっと見ていただけばと思います。ページは同じ6ページだと思いますが。細かいことは省きますけれども,その作業・教育の機会の保障の最後の段落で,「直ちにその実施を求めることは相当ではないとの意見が示された」というふうにお願いしたい。同時に,「これに対して,諸外国の実情を」―「実情」が二つになっていますが,これはミスですが,「実情を調査し,この点を今後の課題とするべきである」という意見も示されたということを,付加していただきたいと思います。
【南座長】いかがでしょうか。これでよろしいでしょうか。「直ちにその実施を求めることは相当ではない」とあったのを,そうではなくて,「相当ではなく,今後の検討課題とすべきである」,この程度の修文でよろしいでしょうか。菊田委員の御趣旨を生かしたつもりでありますが。
【菊田委員】今後の検討課題……。検討課題は検討して終わりということもあり得るわけでしてね。
【南座長】やはりポツッと切るよりは。「今後の検討課題とすべきである」と。
【菊田委員】結構ですが,いずれにしましても,私が先ほど申し上げたように,全面的に線を加えたり削除したりしているわけです。この点について,一々承諾を得なければここを通らなければ修正されないのかどうか,その辺もう少し明確にしておいていただかなければここで一つ一つ申し上げなけばならないことになるのですが,その点いかがですか。座長。
【南座長】これはまた,委員の意見を修文されたところをすべて盛り込むというわけにはいかないと思うのです。
【菊田委員】もちろん。
【南座長】ですから,その中でまあ大方の同意が得られるようなものとか,あるいは原文が不適当であったようなものについては,これは修文させていただきたいと思います。ただ,修文したものについては次回に,この会議にお諮りをして,御不満であればまたおっしゃっていただければということで。
【菊田委員】分かりました。それで了解です。
【南座長】ということで,全部が全部これちょっと盛り込むわけには。
【菊田委員】もちろんそうです。分かりました。
【南座長】その点御了解いただきたいと思います。どうぞ。
【久保井委員】7ページの一番下の健康保険と雇用保険の適用のところですけれども,私はこれは健康保険,現在の扱いでは逮捕・勾留されれば,その被疑者が非常に高い収入があり,そして資産もあるような人であっても,全部国費で治療をしているのですね。それはまあ非常に問題ではないか。本来まだ未決で拘禁されているのは裁判のために拘禁されているだけですから,自分の治療費は自分で払うべきだ。少なくとも金を持っている人,支払い能力のある人についてまで,国が負担をするというのは,これはちょっと過剰サービスではないかと思うのですね。また反面,国民の大部分は健康保険,会社の保険とか国民健康保険とかいろんな保険に入っている人が圧倒的に多いわけで,裁判の結論が出た後は既決囚としてそれは別扱いということは分かるのですけれども,未決の段階では金のある人は自費で払う,あるいは保険に入っている人は保険で払うというようなことは,それほど非常識なことではなくて当然のことだと思うのです。ただ,事務が面倒くさいとかいろいろなことがあると思いますから,十分検討しなければいけないのでしょうけれども,こんなに適当でないと断定するほどはっきりした問題ではない。8ページの上の3行を見ると,「適当ではない」というふうに,雇用保険についても同じことが言えますけれども,適当でないという意見もそれは分からんではないけど,やはりむしろこれは現在の扱いの方がおかしいのではないかと思うのです。だから,そう断定的に言うべき問題ではないと思うのですけれども,皆さんの,ほかの委員の先生方の御意見をちょっと伺いたいと思いますけれども。
【南座長】断定的に言うべきではないというような。
【久保井委員】いや,私はこれは反対なのですよ。
【南座長】わかります。だけど,この書きぶりですよね。
【久保井委員】これだったらもうみんなが意見が一致したことになっているのですけれどね。私は,これはできたらそんなものは金のある人は自費で払うべきだし,金のない人,保険に入っている人は保険を使わせるべきだと思います。雇用保険も同じだと思いますけれども,特に健康保険についてはそういうふうに思います。
【南座長】例えば……はい,どうぞ。
【井嶋委員】これはあるいは江川さんがお答えになるのが一番いいのかもしれないのだけれども,前の行革会議のときに第3分科会でおやりになった問題に絡むわけですね。そのときに,要するにこの場所で,その会議で決める問題ではないという意見が多数を占めたのだろうというふうに思っておりますが,いずれにいたしましても御意見は御意見として,所管の厚労省なんかがいないところで結論は出せない問題ですから,そういう趣旨が少しニュアンスとしてあれば,恐らく久保井さんも納得されるのではないかなと思いますが,結論的には私はやはり適当でないと思いますけれども,しかしそれにしても議論する場所が違うということであることは間違いないわけですから,その辺のニュアンスがうまく出ないのかなという気はしますけれども,しかしまあ結論的には難しいのではないでしょうか。実務的にも含めてね。国民健康保険という制度全体から考えてね。
【久保井委員】私の考えは間違っているんでしょうかね。
【井嶋委員】いや,間違っているとは思いませんけれども,一つの意見だと思いますし。ただ,金のある者は自分でやれ,ない者は健康保険というのは,やはりちょっと……。
【久保井委員】保険にも入ってない人は国費でいいのです。
【井嶋委員】そうなのですか。
【久保井委員】ええ。
【井嶋委員】しかし,いずれにしても一律的にやらなければいけないということは施設としては当然要請されるわけですから,やはり不公平なことが起こらないような配慮も必要だろうし。
【久保井委員】断定的にここで議論をするのは困難だとか,何か入れていただいたら多少緩和されるかもわからないけれども,ちょっとこれ中身から言うとちょっと。
【江川委員】短期の未決拘禁者の場合は,例えば久保井さんがおっしゃっていることがすごく可能かもしれないのですけれども,かなり長期の人もいますよね。そういう人なんかは,住民票も拘置所の方に移してしまっていると。そうなると,この健康保険になると,そこの自治体というのですか,あそこだったら葛飾区になるのでしょうか,東京だったら,そこの所属ということになるわけですよね。そうなると,やはり地元の自治体なんかの協力とか,そういうのが,理解とかそういうのがどうなるのかと。だから,例えば刑務所のときもそれがすごくたしか第3分科会は問題になったと思うんですね。ですから,そうすると例えば短い人と長い人で扱いが違うとか,そういう扱いが違う基準をどうするかということで問題になるので,やはり今国が責任を持ってやるというふうに言う以上,その医療を充実させていくという方向でいいのではないかというふうに私は思いました。
【菊田委員】今のちょっと明確にしなければいけないのは,拘置所へ住民票が移るわけではないのですからね。ですから,当然留守宅に住民票があるわけですから,それは健康保険そのものは適用されているわけですよ。ところが,既決になれば保険料を払わなければとめられるということはあるわけですけれども,既決でも保険を払っている人はそのまま続いている,けれども適用にならないというだけなのですよ,刑務所内では。ですから,ましてや未決においては,これは健康保険を適用して,あくまでも未決ですから,推定無罪の人ですから,だから人並みにやるというのは基本原則だと思いますよ,それは。だから,それと同時にここで議論するのがおかしいというのは,私はちょっと異議があるわけでして,その人たちのことをどう考えるかということを提言するのですから,その保険法の適用がおかしければ,それに対してやはり私どもの意見を言うということが当然筋ではないでしょうかね。
【南座長】どうでしょうかね,確かにこれ健康保険制度全般とかかわる問題ではありますので,ちょっと表現を変えまして,「本会議においてその適用の要否について結論を出すことは相当ではない」ぐらいにさせていただいたらいかがでしょうか。これは雇用保険についても同様だと思います。
その他,何か。
【江川委員】7ページなのですが,3点あるのですけれども,一つは懲罰のところなのですが,文章がちょっと非常によく分かりにくいのです。4行目から,「これを導入する場合には」云々ときて,最後「考慮し,配慮すべき」という部分は,要するにこういうことなのでしょうか。懲罰制度を導入すべきであるという意見が多数を占めたと。「なお,現行法上も懲罰を科すことが可能であるが,運用上は実施を控えられており,今後も引き続き慎重な運用をすべきであるとの意見も出された」と,こういうことで,もうちょっとすっきりさせた方がいいのではないでしょうか。配慮とか考慮とかいろいろ入れるものですから,何を言いたいのかよく分からないので。もうちょっと文章を普通の文章にしていただきたいなというのが一つ。
それから,その次に生活条件の(1)居室環境の改善で,これ最後は「やむを得ないものと考える」となっているのですが,そうなると,もうこれはしようがないじゃないかという感じで,もう身もふたもないという感じがするのですね。実際窓から外が全く見えないという状況に長く拘束されるということは,やはり精神衛生上もよくなくて,実際裁判に支障が出ることも考えられるので,やはりそれは少しでも環境を改善する努力はすべきだと思います。例えば構造上でもそうですし,あるいは処遇上少しは外を見られるところに1日1回は連れていくとか,とにかくいろんな形で努力はするということはどこかに入れておいていただきたいなというのが2点目。
それから冷暖房のことなのですけれども,「予算的な制約の中で施設の場所,構造,国民感情等の諸事情を総合的な考慮して」というふうにありますが,それに加えていろんな要素の一つに「拘禁者の健康」ということも入れておいた方がいいのではないかなと思いました。以上です。
【南座長】以上の御意見について,何かありませんか。
【瀬川委員】簡単に申します。江川委員とほぼ同じなのですけれども,居住環境の改善面については前回警察庁から示されたのですけれども,これは終わりはないと思うので,今後も引き続き改善すべき点は大いに改善していくことを我々確認しておきたい。あれですべて終わったというふうには思えません。さしあたり,特に通風とか採光の問題は,やはり人間らしさというか,人間としての取扱いというのをきちっとやはりやるべきであろうと思いますので,引き続き検討してもらいたいと思います。
【南座長】居住環境の改善ですが,これは「必要な範囲で視界を制限することがやむを得ないものと考える」と切ってあるのですけれども,「視界を制限する必要もあるが,その場合であってもできる限り施設の構造や処遇において配慮するとともに,居室内の通風や採光をできる限り確保するように努める」というような表現でいかがでしょうか。―よろしゅうございますか。では,そのように改めさせていただきます。
【江川委員】居室環境の改善というのは,それは代用監獄においても同様だと思うのですね。だから拘置所だけの問題ではないというふうに思います。
【成田委員】さきほどの懲罰の件ですが,この説明はちょっと省略し過ぎていて分かりにくい点があるので,現行の監獄法上とありますけれども,これは刑事施設法の改正に伴ってこの施設については懲罰に関する規定が残っておりまして,例えば7日以内の重屏禁だとか,それから糧食自弁の15日以内の停止とか,そういう古いものが入っているわけですね。これらの懲罰はもう実際上運営が停止されているということは,これ当然だと思うのですけれども,監獄法の旧規定がそのまま残ってしまった結果,非常に古い,どうかと思われるものが残っているのだということをちゃんと説明しておかないと,懲罰を科すことが可能であるという,そのところがちょっと舌足らずなのではないかと思うのです。懲罰を科すること自体は必要がある。しかし,問題はやはり中身になるわけで,今の時代でも納得のできるようなものでなければいけないということなのでしょう。それがどういう種類の懲罰なのかという議論はここではまだされていませんが,やはりそういうことを考えながら,その運用を慎重にしなさいということじゃないですかね。
【南座長】この点はいかがでしょうか。懲罰制度を一切否定する……。今,懲罰に関する成田委員の御指摘について,それではちょっと御議論いただけますか。
【菊田委員】懲罰制度については,多数は存置という意見があったかもしれませんが,私は基本的に反対していますから,こういう問題は多数決で決める問題ではなくて,やはりなぜ懲罰が必要か,必要でないかと,基本的なところから議論を重ねて,やはり私は自分の主張を貫かざるを得ないというふうに思っていますから,したがって監獄法が残っているのを懲罰,未決について今後どういうふうにするよと,レベルの問題以前の基本的な問題について議論していただきたい。ですから,懲罰は私は……。
【成田委員】そのことはここに書いてあって,設けることに強く反対する意見が示されたとあり,それに続いて,これに対して,とあるわけですね。そこにはしっかりと書いてあるのですよ。
【菊田委員】そういう意味で,限定の上ですね。はい,分かりました。いずれにしても,私は懲罰制度については承服しておりませんから。
【南座長】ですから,こういうふうにしてはどうでしょうか。「懲罰制度を一切否定することは相当ではない」と,こうなっていたのですけれども,「相当ではないとする意見が多数を占めた」ぐらいの表現で。すべきだというお考えも強く出されているわけですから。それを趣旨を生かす。そうでないと,「相当でない」と切ってしまったら,その意見がね。その程度の修文で。
【瀬川委員】それで結構かと思うのですけれども,同時に,趣旨としては,「慎重な運用を考慮すべき」というのが多数の意見だったかと思うのです。だから,特に菊田委員もおっしゃったように自白強要のおそれがあるという場面が多々あるのではないかということをおっしゃったのですけれども,危険性というか,おそれはかなりあると思われますので,慎重な運用を私は配慮すべきだというふうに考えます。
それから,今成田委員のおっしゃったことに関連してですが,懲罰の種類ですね,前に井嶋委員が古いものはなくなったとおっしゃったのですが,一体何が残って何が今後もし規定するとすれば必要かということは,きちっと明確にしておかないといけないのではないかという気がします。ただその際にも,できるだけ刀は抜かない,適用しない方がいいと思います。前ある委員がおっしゃったように,コミニュティーがあってそういうルールがないのはおかしいということも確かに常識的には正しいかと思いますが,ただこれは非常に重大な問題で,特に自白の任意性に絡みますので,十分慎重な運用,できるだけ謙抑的な運用が望ましいというふうに考えております。
【井嶋委員】瀬川委員の発言に一つ付加いたしますが,先ほど成田委員がおっしゃった部分は,この答申案の中ではなお書きのところ,一番最後なお書き以下のところに抽象的には書いてあるわけでありますが,要するに今後法案をつくる際に,既決と同じように懲罰の在り方を踏まえて懲罰の中身とか手続とか,より明確なものにするということが想定されております。その中で,懲罰事由といったものも整理をされる。近代的な行刑にふさわしいものに変えていくという考え方で,これから事務当局が行うわけでありますから,その際にここで出たようないろんな議論が検討されるのだということでございます。
【成田委員】ただ,今のお話はよく分かりますけれども,その事由については書いてありますけれども,問題は種類ですよね。
【井嶋委員】だから,種類も含むわけであります。
【成田委員】現行では60条ですが,残った懲罰の規定は,規定の上では1号から9号まであるのです。全部の運用が控えられているのか,私は5号とか9号の糧食自弁の停止とか重屏禁ですね,これが控えられているという話は聞いていますけれども,叱責というのもあるので,それらを全部含めて今停止されているのでしょうか。そこがちょっとよく分からないのです。
【井嶋委員】今度の既決の法律を見ていただければ分かりますけれども,この前既決の分を整理するときに,そういった文言も全部含めて検討して,新しいものに変わっております。ですから未決につきましても,同様の検討はされるのだということだと思います。それからなお付言すれば,未決といいましても拘置所におる未決と留置所におる未決というものがあります。これはそれぞれ目的が違います,勾留の目的が。したがいまして,その目的に応じ,端的に言えば勾留は,留置場は10日あるいは20日を原則とする勾留でありますから,そういったものを前提として懲罰はどういうものがいいのか,どういう種類がいいのかと,あるいは拘置所においては裁判中の未決拘禁でありますから,相当期間がかかります。その場合にどういう懲罰の事由がいいのか,種類がいいのか。これはそれぞれ,やはりきめ細かく検討される予定だろうと思います。また,そうしなければいけないのだろうと思います。ですから,そこに委ねるとして,抽象的にはここにそういう表現として書いてあるというふうに御理解いただければと思います。
【成田委員】ですから,事由と種類と手続,この三つですね。種類が全く書いてないものですから,そういうことを申し上げたかったのです。
【菊田委員】何か懲罰を存続させることを前提に議論が進んでいるようですけれども,日弁連の意見をちょっとお聞きしたい。
【南座長】それより先に,ちょっと警察庁に懲罰の運用の実態についてお聞きしたいと思います。
【菊田委員】分かりました。日弁連の方がどういう懲罰について意見をお持ちなのか,私質問したいと思いますので。
【南座長】それは,まず先に警察庁の方の。
【菊田委員】いや,今終わったのではないですか。
【南座長】考えておりますので。どうぞ,よろしく。先に。
【山田官房総務課理事官(警察庁)】警察の留置場における懲罰の運用なのですけれども,こちらに記載してございますとおり,この現行監獄法に規定されております懲罰の規定が警察留置場にも適用される。けれども,運用上その実施を控えているというのがここに記載してあるとおりなのですけれども,懲罰の種類ですが,現行監獄法上は,60条というのがございまして,「叱責」,「賞遇ノ3月以内ノ停止」,「賞遇ノ廃止」,「文書図画閲読ノ3月以内ノ禁止」,「請願作業ノ10日以内ノ停止」,「自弁ニ係ル衣料臥具著用ノ15日以内ノ停止」,糧食自弁ノ15日以内ノ停止」,「運動ノ5日以内ノ停止」,「作業賞与金計算高ノ一部又ハ全部減削」,「7日以内ノ減食」,「2月以内ノ軽屏禁刑」,「7日以内ノ重屏禁」と,12個載っておりますが,もちろん作業ですとか刑務所独自のものにつきましては適用されませんというか,事実上不可能でありますということですとか,あと重屏禁といったようなことは人道上まずいので適用しないというような運用になっているかと思います。ただ,昨年5月にできました受刑者処遇法では,そのあたりの事情も勘案いたしまして懲罰の種類が限られております。中身は,戒告,作業の10日以内の停止,自弁物品摂取の一部の停止,書籍等の閲覧の停止,報奨金計算額の削減,それとあと閉居罰となっております。このうち警察でもし適用といいますか,かけられる懲罰があるとすれば,作業ですとか刑務所の中の作業に関係するもの以外については検討の対象になろうかと考えております。
【南座長】ありがとうございました。発言を求めてください。
【菊田委員】日弁連の懲罰に関する意見がどうなのか,私から質問したいと思いますので。
【南座長】私を通じて……あなた,質問されるわけですか。
【菊田委員】いや,どういうお考えかということをお聞きいただきたいということです。
【南座長】それではお願いします。
【海渡雄一弁護士(日弁連)】それではお尋ねですので,お答えいたします。まず,ただいま警察庁の方から御説明がありましたけれども,現状を整理しますと,現状の警察留置場内における処遇は監獄法によって実際上運用されているのではなく,被疑者留置規則によって運用されております。被疑者留置規則の中には,戒具等の定めはありますけれども,懲罰についての定めは一切ありません。したがって,現状警察留置場では懲罰制度は全く運用されていないというのが実態でございます。1987年に国会に提出された留置施設法案という,拘禁2法案と呼ばれていた法案ですが,この中でも留置施設法案の17条では,被留置者の遵守事項違反については戒告の処分だけを行うということで,それ以外の懲罰は一切提案されておりませんでした。ただいまの警察庁の御説明からすると,戒告を更に越えて実質的な懲罰を導入するということを検討されておられるようですけれども,これは明らかな留置施設法案,日弁連が強く反対して何度も廃案になった法案を更に改悪するものであるというふうに考えざるを得ませんので,それに対しては日弁連としては強く反対をするという御意見を述べさせていただきます。
我々は,拘置所における懲罰についても,本来であれば原則論からすれば廃止すべきであるというふうな意見を持っておりますが,これは現状も運用されているものであって,これを直ちに廃止せよという主張に固執するものではございません。日弁連としては,戒告というのは比較的に軽い懲罰でありますけれども,やはり取調べにおいて対応関係にあって,実際にはこれは警察署長から言い渡されることになると思いますので,捜査の責任者でもある警察署長から戒告処分がされるということは,仮にそれだけを認めたとしても非常に大きな心理的な圧力になって,自白強要の圧力になるのではないかというふうに考えております。日弁連としては,少なくとも現状全く実施されていない,今から20年前に提案された法案においても戒告しか提案されていなかったものについて,実質的な懲罰を導入するといったことは絶対に容認できないというふうに考えております。
【南座長】分かりました。御意見として承りました。
【江川委員】質問があります。警察の方に質問したいのですけれども,今の中で,今お話をずっと聞いていると,今のところはやってないと。それで特に問題は起きてないのではないかなという気もしないでもないのですが,どうしても懲罰が必要な理由と,それからどういうことを想定してというか,今現状懲罰ができないためにこういうことが困っているということが具体的に何かあるのであれば,教えていただきたいなと思います。
【南座長】警察に対する質問。どうぞ,お答えください。
【山田官房総務課理事官(警察庁)】お答えいたします。懲罰の必要性ですけれども,御存知のとおり20年前,留置施設法案を出したころには収容率が40%を切っていたのですが,最近は収容率が70%,80%で,大都市部については100%を超えているという状況下におきまして,例えば平成11年の事件になりますけれども,被留置者が留置室の外に出て騒動状態になった事件ですとか,あとは看守に対して過剰な要求,不当な要求をする事案という事件がまま見られるようになっております。戒具の使用というのはあくまで現在行われている秩序違反行為を抑えるものであり,懲罰というのは事前にそういう規律秩序を害するような行為を抑える抑止効果というのもあるので,現在の実情にかんがみますと,20年前とは違って懲罰制度を運用する必要性があるのではないかと考えているところでございます。
【南座長】江川委員から,この点,懲罰についての文章が分かりにくいという御指摘がございましたですね。私も加わりまして検討させていただく,分かりやすい文章に変えたいと思います。
それからもう一つは,冷暖房の件で,健康への配慮ということをおっしゃったので,これも挿入を,修文させていただきたいと考えております。
以上の点につきまして御議論いただきまして,修正すべきところは修正をする,その他の点については,これは事務局案を御了承いただくということにしたいと思います。なお具体的な修正の表現ぶり,文章等につきましては,これは先ほど申し上げましたように座長に御一任をいただきたいと思います。
それから,あとは代用刑事施設制度といいますか,代用監獄の存廃に関する論点全般について御議論いただきたいと思いますが,この間10分ばかり休憩をとりたいと思います。よろしくお願いいたします。
〜 休憩 〜
【南座長】それでは,会議を再開させていただきます。おおむね零時20分までの間,代用刑事施設制度,代用監獄の存廃に関する論点全般,項目の第6から第7について御議論をいただきたいと思いますので,事務局から該当部分の読み上げをお願いいたします。
〜 読み上げ 〜
【南座長】ありがとうございました。では,どの点についてでも結構ですので,御議論をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【菊田委員】最初に,申し上げるのは,くどいようですけれども,座長は先ほど,この案をもとにして,事務局案ですね,これを承認していただいてというような発言があったと思うのですが,修正以外はですね,くどいようですけれども,私が特に代用監獄等を含めて修正意見を出しております。それを検討することを条件に,事務局案を承認するということを確認させていただきたいと。よろしいですか。
【南座長】よろしいです。
【菊田委員】分かりました。それではお願いします。
理念的なことについては最初に申し上げたので繰り返しませんけれども,いずれにしましても現実論として現在代用監獄があるということは,私はそれを即刻廃止しようとは思っておりません。したがって,その今ある代用監獄の近代化と申しますか,その点については具体的な提案されていることについて賛同するものです。けれども,その焦点でありますところの永久に存続させるという前提での近代化ということについては,絶対に承服するということはできないということだけ,最初に申し上げておきたいと思います。
【南座長】先ほど私が申し上げましたのは,先ほどの議論についてということで,今回の代用監獄については,これから御議論いただくと。
【菊田委員】もちろんそうです。今最初に申し上げたのは,全体についての座長の確認をお願いしたわけです。
【南座長】分かりました。
【久保井委員】この代用監獄に対して,我々9名の有識者がどういう方向性を出すかというのは,恐らくこれは何十年の歴史に一定の方向性を出すということで,大変な重要な問題だろうと思います。私は意見ははっきりしているのですけれども,しかしこの原案の趣旨のちょっと質問をしたいのですけれども,9ページの真ん中ぐらいに,「現在の司法の運用において,大半の被疑者が代用刑事施設に勾留されている事実も踏まえると,代用刑事施設制度を存続させることを前提としつつ」というこの意味ですけれども,意味が,それは永久に存続させるという趣旨まで含んでいるのか,そうでなくて当面存続させることを前提としつつという,そういう「当面」という意味なのか。事務局の起案の趣旨が,これは「永久に」とも書いてありませんし「当面」とも書いてありませんが,どういう趣旨で起案されたのか,よければちょっとお聞かせいただいて,その上で意見を申し上げたいと思います。
【南座長】それでは,法務省の御見解。
【北村官房参事官(法務省)】書いてあるとおりでございまして,どちらにも言及していないという書きぶりでございます。
【久保井委員】それなら少し救われるのですけれども,私はこの問題について,三つの面から,少なくとも永久にということではいかんと思うのです。一つは,今までの国の機関,法制審議会の答申とか,そういう流れというものがあるわけですね。随分昭和55年の段階で激しい議論がなされて,将来に向かって減らしていくというような方向性が出た。事実としては逆の方向へ行っているので,それが問題だとは思いますけれども,そういう歴史的な流れを無視して一挙に結論を出すというわけにいかない。特に,この有識者会議の審議は,確かにこの前綾瀬警察署も見ましたし,それから小菅の拘置所も拝見しまして,そういう意味では視察はしたけれども,会議はきょうを合わせて5回ですわ。そういう2か月ぐらいな審議期間で,歴史的な問題について決着をつけるというのは,これはやはり乱暴だと思うのです。特に,国際的なことについては必ずしも十分な調査もできてない。制度の法律上の制度としてどの国はどうなっているとかいろいろありますが,国際的に見ると例のない制度だということになるとしたら,余り軽率な結論を出すということだけは避けなければいけない。だから私は,これは国民もそこに注目をすると思うし,マスコミも注目すると思います。だから,この中には永久に存続させるということではなくて,前後のパラグラフから見ると,いろいろあるけれども,とりあえずはと,とりあえず存続させることを前提としてと,「とりあえず」というか「当面」というか,言葉はどちらでもいいですけれども,その範囲内であれば,これは恐らく9人の,今やめるという意見の,今直ちにやめるということを言う委員はいないのだから,とりあえず当面存続させることを前提として,実質的な面で取り入れていく。国際的な動向を取り入れていくということであれば,これは恐らく全員一致すると思うので,そこで提案ですけれども,この9ページの存続の前に,「当面」または「とりあえず」とか,そういう修飾語を入れて,これは永久に存続させるという趣旨ではないのだということをやはり注意を喚起していただきたい。是非これは,ほかの委員の方にも何とかこの有識者会議が丸くおさまってコンセンサスが得られるというようにお願いしたいと思うのです。これはどうしてもお願いベースになるかも分からんけれども,よく考えて恥ずかしくない意見書にしていただきたいと思います。そんなに意見違わないのですよね。やめるという意見ではないのだから。
【葛西委員】私は今の話を伺っていて,歴史的経緯があるという話。しかし時代の要請も一方でありまして,現在設備が不足しているとか,犯罪の率が上がって治安状態に対する不安が高まっているとか,そういう中で捜査を今ある設備,今ある言ってみれば人的能力の中で,最大限度に効率的に行っていかなければならないという観点がもう片方にあると思うのですね。ですから,先ほど法務省の方から御説明がありましたように,どちらとも言わないというのがいいのであって,「当面」とか「しばらくは」とか何か言わなくても,時代の要請と歴史の経緯がバランスがとれたところで決まっていくのだと思えば,そのことについてあえて触れる必要はないと思います。
それから国際的という言葉がありますが,私はこれは国際的に刑務所に入ったことも留置場に入ったことも国内的に入ったこともないので分からないのですが,信頼感という観点で言いますと,私だけでなくて私の知る限りのほとんどの人は,日本の司法,警察制度に対して非常にやさしいという面では信頼感を持っています。必要十分な抑止力を果たしてないという意味では危惧と不満を持っている,そういうのが現在の状況でありまして,そういうことを考えますと,あえて「当面」というようなことを入れない方がいいというのが私の見解であり,そこはやはり言ってみれば整理すべきところは整理し,割り切るところは割り切っていかなくてはいけないのであって,言葉によるまやかしは避けるというのが私はよろしいことではないかと思います。
【成田委員】私も基本的に,今おっしゃった御意見に賛成ですけれども,これはこの問題の本質的な部分だと思うのですね。そこに「暫定的」とか「当分の間」ということを入れるとすると,これは当然に法文に条文を書くときも,「当分の間」という言葉を使うことになると思うのです。今までここで議論しているのは,「当分の間」というふうなことで議論しているのではなくて,当然この制度を存続させるという前提で管理,処遇をどう改善するかという議論をしてきたわけですね。前回も江川委員が,存続を前提にしながら内容の公正透明化を図るべきだということをおっしゃったので,そういうことは前回も申し上げたわけです。法律の条文で「永久」という言葉を使うとしても,法律には永久ということはあり得ないので,時代が変わればまた新しい法律を出して改廃するいうことは,特に行政法規などではよくあることなのです。「当分の間」という言葉を入れても,明治以来全然変わらずに維持されてきたような例もたくさんあるわけなので,それは余り法的には意味がないのではないかというふうに思うのですね。
それからもう一つは,私はやはり,今この収容施設の中に移監待機といって,当然拘置所に移すべきものまで実際上はスペースが足りないために留置施設に収容されているという実態があるので,そこはやはり筋を通して,法務省の方でちゃんと予算要求をし,財政当局と折衝して立派な拘置所をつくっていただくということを要望したいと思います。そうしてそこにだんだん移していく。そうなれば,次第に法制審議会の答申にあるように結果的に留置施設に収容されている者がだんだん減っていくことになるのではありませんか。それが一番現実的だというふうに私は思うのです。
【南座長】ありがとうございます。どうぞ。
【佐藤委員】今久保井委員がおっしゃった趣旨が非常によく理解できるだけに,また冒頭にこの提言は格調高く見栄えのいい美しいものにしたいという,そういう発言にかんがみますと,なかなか物言いが難しいのでありますけれども,結局は今成田委員がおっしゃいましたけれども,法律で制度をつくる場合には,その法律がある限り存続するということは,これは当然のことだろうと思うのです。したがって,憲法ですら改正されるべく改正規定が置かれているように,これは当然のことなのではないのかなと思うのです。しかし,発言の御趣旨というものが理解できますだけに,それをどのようにこの提言上表現するかというのは,かなり技術的な問題かなと思います。恐らくその表現の問題ということなのでございましょうか。さて,それはどう表現する技術があるかなということについて,私は知恵はございませんけれども。
【江川委員】私も,「当面」という言葉を特にこの中にどうしても入れなければならないというふうには思わないのですが,ただ一方では,この問題はこれで一丁上がりではないということもあると思うのですね。拘禁場所をどこにするか,代用施設にするのかそれとも拘置所にするのかとか,そういう問題についてもいろいろ意見,議論がまだあることですし,それから拘置所や代用施設の在り方についても,これでもう十分だというふうに思っている人はいなくて,いろいろ課題もあるでしょう。それから,それだけでなくて冤罪や人権侵害がなく適正に捜査が進められるという観点から言うと,どこに身柄を入れるかだけではなくて,取調べ過程の透明化の問題だとか,いろんな課題があると思うのですね。そういったものを,そういった諸問題についてやはり関係機関などが引き続き協議をするというのをどこかに一文きちっと入れておく。これでもう全部が一丁上がりではなくて,これからの諸問題について引き続きみんなで考えていきましょうということを入れていったらどうかなというふうに思ったのですが,いかがでしょうか。
【南座長】ほかに何か。
【久保井委員】今江川委員がおっしゃったことを敷衍するようなことになるかも分かりませんが,先ほどの私の最初の発言で不十分な点があったので,それを補うことも兼ねて発言をさせていただきますが,私がどうして「当面」という言葉をどうしても入れるべきだ,入れてほしいかといいますと,さっき言ったことのほかに次のような理由があります。要するに代用監獄を改革する,未決拘禁の刑事施設を改革するポイントは二つあると思うのですね。一つは,要するに処遇を人間らしい処遇にする。つまり,大昔というか,20年,30年,40年前の留置場は,本当に井戸の中の底みたいに窓もなくて物すごく環境の悪い留置場があった,そういう時代があったと思います。それがだんだんとよくなってきて,居住環境,いろんな意味で処遇の面で前進してきて改善されてきている。そういう面での改革は必要だ,新しい世紀に来たから,施設自身の物的な環境条件を改革するという,処遇をよくするということがあると思います。
もう一つポイントがあると思うのですね。要するに,そういう捜査をする警察官が警察の中に入れるということで,それで長時間の取調べとか,あるいは無理な取調べ,あるいは捜査機関と勾留機関とが同じ警察署の中で分離したといっても相対的な分離しか,完全な分離ではないために,そこで無理な調べをしやすいということ,助長しやすいという,そういう観点からの改革と二つあると思うのです。
前者の改革は,この間見学しまして,非常によくなって,綾瀬の警察署の実態を見ると,昔の留置場とはもう全然違う立派なものになっている。まだ改革をすべき点があるにしてもよくなっていると思いますが,しかし捜査の関係では,昭和55年に分離がされて,組織上,運用上分離されてきて,改善されているのは事実ですけれども,やはりその点は拘置所とは違って非常に捜査機関と近接したところに身柄があるために,自白の強要という言葉がいいかどうかは知らないけれども,非常に無理な調べをしやすい状況にある。その二つのポイントを是正するのに,いろんな方法はあると思う。一つは,完全に拘置所に移して捜査官が調べにくくするというような方法もありますし,もう一つはやはり捜査に関する刑事訴訟法,捜査の可視化とか,それから諸外国があれしているように被疑者の保釈制度とか弁護人の立会権とか,そういうような面での捜査の仕方について改革を加える,あるいは捜査の時間制限をするとかですね。そういうこととセットになって全体として改革が進めば,場合によれば代用監獄でもいいというような問題になってくると思うのです。だから,今江川さんがおっしゃられました,要するにそういうものの改革の進展ぐあいを見てこの問題について最終的な結論を出す。トータルなものが出そろった段階で結論を出す。今の段階では,まだ論議が始まったばかりなのですね。捜査の透明化にしても,その他刑事訴訟法の改正にしても,まだ議論が始まったばかりだから,そういう議論がまだ進んでない段階で,今のままでいいというような,存続を前提とするということは,やはりちょっと走り過ぎだ。それをやるのだったら,もうちょっとこの有識者会議についても関係者をヒアリングする。今まで本当にこれは代用監獄のために冤罪が生じたのかどうか。その辺のことについても,いろんな関係者からヒアリングをする。この前刑務所改革のときには,受刑経験者を呼んでヒアリングをしましたし,外国にも行きました。いろんな学者の意見も聞きましたが,そういうこともした上でやるなら別として,そんなこともほとんどしないまま,1回視察に国内の施設を1回視察しただけで,しかも全体としての議論が進んでない中で結論を出すというのはおこがましいと思うのです。だから,これをよく読めば当面というふうに読めますよ,これはすっと素直に読めば。だからその点を国民が誤解しないように,「当面存続させる」という2字を入れればその点がすっきりする。これは10年先,20年先は別として,当面存続させるということは,それほど大きな譲歩ではないと思うのです。この点は,私は大きな大局的見地から,ほかの委員の先生には是非御理解いただきたい。是非お願いしたい。
【南座長】ほかに何か。
【井嶋委員】この代用監獄制度存続について,根本的な議論はもうここではいたしません。もう蒸し返しになりますから。しかしこの答申をまとめるに当って,こういう表現で出てきているわけでありますけれども,それぞれ今江川さんもおっしゃったし,あるいは久保井さんもおっしゃったけれども,それはそれぞれ頭の中のお考えはそれぞれ違いはあるとしても,ここで例えば「永久に存続させる」というふうに書くとすると言えば,全員賛成するか。それはできない。同じような意味で「当面」と書くと,またこれも賛成できないという,実はジレンマにあるわけですね。そこで,結局今回はそういう中で現行の刑事司法との絡みで機能している代用監獄制度を,現在の現実論を踏まえてどのように改革するか,よりよくするかということについて法案をつくろうとしているわけですから,やはり「永久」とか「当面」とかと書かずにさらっと書いて,そしてよくしていくということに重点を置いた改革を今回は提案するのだということであれば,全員が賛成できるということなのだろうと思うのですね。ですから,おっしゃることはそれぞれ分かりますけれども,やはり答申としてまとめる,皆が賛成できるというのを求めるとすれば,「当面」も「永久」もやめた方がいいと私は思います。
【菊田委員】やはり,どちらでもないというのは,これは事実上代用監獄そのものを存続させるという方向に実務はなるのですよ,それは。そういうことと同時に,これは少なくとも100年にわたって代用ということで,将来は廃止するという方向の歴史の積み重ねがあるわけです。ですから,そのまま来たこと自体が問題なので,ここにおいてその事態を踏まえて,いいです,今は早急に改正できないのであれば,やはりそこは佐藤委員がおっしゃったように,何か事務当局で利口な方がいると思うのですよ。ですから,あいまいなものでなくて,やはり「当面」でなくとも,現実を踏まえて漸減するということならそれでも,いろいろな表現の仕方があると思います。そういう方向に,やはり一定のあるべき姿を示すということは,私は最低必要だと思います。この問題は,ただ単に多数決とか少数意見とか,全員一致というレベルではなくて,やはり長いスタンスで日本のあるべき状況というものを,今までの研究者その他の意見,専門家の意見も踏まえて,それを体して提言というのがあるべきなので,ただ単にここで少数意見があれだったとかいうことでいくべき課題ではないというふうに私は思います。
【佐藤委員】この会議は法律を制定しよう,そして受刑者と処遇の均衡を図っていこう,そういうことで集められた会議だと思いますので,法律をつくるという前提に立ちますと,法律内容をどうするかという議論をするときに,理想像はこう,現実論はこうという,そういう法律のつくり方というのは,通常はないですね。今こういうものをつくるべきだ。もしだめなら改正すべきだ。どうしても時間を限る必要があるのなら,時限を打つべきだということで,日本の法律はできておりますので,そこのところははっきり割り切っていただかないと,法律はつくりがたいのではないですか。
【南座長】ほかに,御意見ございませんか。この問題につきましては,先ほど佐藤委員がおっしゃいましたように,提言の表現をどうするかと。私は基本的には,多数意見,少数意見,書くのは簡単なのですけれども,そうじゃなくて,ある程度方向性としては一致しておりますので,皆様ができるだけ賛同していただけるような案を私なりに実は考えております。ここではまだ表現が熟しておりませんけれども,ひとつそれを考えさせていただいて,皆さんにお示しいたしますので,それを読んでひとつ御検討いただければと思っておりますが。
【成田委員】私はやはり,座長にいろいろと知恵をいただいて,完全に100%と言わなくても,99%ぐらいの合意はとれるように配慮して欲しいと思います。
【南座長】いい知恵が出るかどうか分かりませんがね。とにかく私なりにひとつ,何とか皆さんまとまるような御意見ですね。佐藤委員もおっしゃったように,久保井先生あるいは菊田先生のおっしゃる趣旨というのは十分理解できるとおっしゃっているわけでございまして,表現をどうするかということで,ひとつ知恵を出して案を作成してみますので,また御検討いただければと思います。よろしく,そういうことでお願いいたします。
そのほかに,何かございませんか。
【成田委員】ちょっと一つ言いたいのは,この代用という言葉を従来どおり使うのかどうかという問題です。これはそれを引き受ける都道府県警察と自治体にとっては,「代用することを得」というような形で国が法律が決めてしまうのは大変失礼なことだと思うのです。事務自体は自治事務になっているわけですが,仕事はやらなければならない。「代用することを得」などというのは,その仕事をお願いするときの事務の授権の仕方ではないですよ,これね。代用という用語は,私個人としてはもうやめてほしいと思っています。
【南座長】これは監獄法にそのような規定があって。
【成田委員】現行法ではそうなっているでしょう。しかしこれはまた改正も可能でしょう。
【南座長】現行法も,これは監獄法の改正法の新法もそうですけれども,これは長い歴史的な経緯があって。
【成田委員】歴史認識や国際認識の問題をめぐっていろんな立場からの見方があるわけです。この前も申し上げたのですけれども,余り歴史認識や国際認識にこだわっていると,現代の時代的要請に適合できないと思います。そういった意味で私は現実主義者なのです。表現は,もちろんお任せします。
【南座長】分かりました。よく承知しております。
【瀬川委員】先ほどの議論との関連でもあるのですけれども,久保井委員も菊田委員も,代用監獄の即時廃止というのは言われないで,またほかの委員も永久の存続ということは言わなかったということなので,その範囲で合意があるというふうに私は解釈しております。また他面,恐らくこの点も久保井委員も菊田委員も同じだと思うのですけれども,実質的な防御権の保障について我々はもっと議論すべきだと思います。一つは,いわゆる防声具の使用という問題ですね。これは2年前でしょうか,和歌山で事件があって,その後使用されていない。これからは安全性を確認して使用するという方向なのですけれども,本来的にはやはりまず保護室対応が原則だと思いますので,今後も保護室の建設の推進を是非やっていただきたいと思います。この防声具の使用というのは,久保井先生がおっしゃったように,いわゆる無理な取調べの疑いが持たれる可能性,あるいは自白強要の疑いが持たれるおそれがあるわけですから,そのリスクをできるだけ少なくするという方向で考えるべきなので,この点保護室での対応が私は望ましいというふうに考えております。
それから,もうひとつ御検討いただきたい点があります。ここですぐに回答される必要はありませんけれども,防声具を使用する場合に,使用前の状況から,施用時,それから施用後の状況について,ビデオ録画できないのかということです。この点はいわゆる受刑者処遇法の段階で,保護室の問題がたしか出たと思うのですけれども,これは法律には規定されませんでしたけれども,保護室でビデオ録画することになっていますので,防声具の使用の点についてもリスクを避けるためにもビデオ録画してはどうか,この点御検討いただけないかという気がいたします。和歌山の例のような,二つ防声具をつけて布団をかぶせたという事案は少なくとも避けることができるのではないかと思いますし,そういう危険性というのは避けるためにも,ビデオ録画を是非実施いただけないかという,要望というかお願いをしておきたいと思います。
それから捜査部門と留置部門の分離ですけれども,これは先ほど来の話ですと留置場規則等に書かれているかと思うのですが,法的な整備をする今回の段階においては,法律で明記するという形でやって,もっと周知徹底してそういう方面での工夫というか,具体的な工夫を進めていただきたいというふうに思いますので,この点も要望としてお願いしたい。
【久保井委員】細かいことかも分かりませんが,9ページの注の9ですね。「被疑者・弁護人からの不服の申立てがなされる事案が少数にとどまっている事実も指摘された」と,確かにこういう指摘はありましたが,しかしこれは不服の申立てをしても準抗告の申立てをしても入れられることが,見込みがないので少数にとどまっているのであって,満足しているから,つまり満足しているから不服の申立てをしてないのではないということも,私前回の会議で申し上げたわけで,注をつけるのであればこういうように満足しているかのごとき誤解を与えないようにしていただかなければいけない。表現はお任せしますけれども,なぜ少ないかというその理由については異論があったとか,何か入れていただかなければいかんと思います。
【菊田委員】削除だね。
【久保井委員】削除してもいいですよ。削除したらあれですけれども,要するに不服の申立てがないのだから満足しているではないかというように,この報告書は見えますからね。
【南座長】ほかに,何か御意見。
【江川委員】不服審査機関なのですけれども,この第三者機関としては公安委員会ということを想定されているのですけれども,今日の日弁連の意見でそれでは十分対応できないのではないかということが懸念として出されています。私も例えば一連の警察の捜査費用の問題なんかでも,余り公安委員会が積極的に事案の解明に活躍しているという感じには見えなかったので,ひょっしたらもう今やっていることで手いっぱいということかもしれません。公安委員会によるなら,その拡充とか充実というのをもう少し促した方がいいのではないかなという気はしました。言ってもなかなか審査が遅くなったりするとやはり意味がないので,迅速な対応をすべきだと,それでそのための体制を各都道府県がやるべきだということを添えていただければなと思いました。
【南座長】江川委員のお考えというのは,公安委員会以外に第三者的な審査機関ですか。
【江川委員】それができればもっと望ましいのでしょうけれども,それがもし無理であれば……。
【南座長】もし可能であれば。
【江川委員】別の機関の方がいいと思いますが,公安委員会に委ねるとすれば,それが迅速にやはり−だってあれは1か月に1回ぐらいしかやってないのではないですか−だからそれが迅速に行われるような体制づくりというのが求められるということだと思います。
【久保井委員】ちょっと質問があるのですけれども,その日弁連が公安委員会ではいかんと言う理由を,ちょっと日弁連に聞いてほしいのですよ。
【南座長】分かりました。それでは先生から言ってください。
【海渡雄一弁護士(日弁連)】お尋ねですのでお答えいたします。公安委員会は,御存知のように警察行政全般にわたって審査する機関でありまして,もちろん機関としての有用性は疑う余地もないわけですけれども,非常にたくさんの議題を次から次へやっていかなければいけない。その刑事施設についてつくりました不服審査のための機関,既にこれは発足しておるわけですけれども,これはまさしく不服審査のためだけに機能するということで,南座長を中心として今もう既に発足しておるわけですけれども,やはりその問題に集中して,そこについて一定の基準をつくっていく。かなり実務的でこつこつした作業だと思うのですけれども,そういうことをやる機関としては,やはり公安委員会というのは適当ではないのではないか。そういう第三者的な機関をつくるということ自身は警察も刑事施設に導入される不服申立て制度との均衡ということを言われているわけですから,法務省のもとにつくられようとしているこの不服審査会と同様のものを,是非構想していただきたいという趣旨で御意見を述べました。
【南座長】その旨の御意見も記載するというようなことで,よろしいですかね。
【佐藤委員】今の件は,私,疑問に思うのです。まず不服申立てのうち,審査請求を受ける機関というのは,これは上級庁であるべきですね。これは日本の制度はそうなっているわけですので。この不服申立て,異議申立てをどこにするか分かりませんけれども,警察本部長に対してだといたしますと,それの上級庁は都道府県公安委員会,そういうことになりますので,都道府県公安委員会がその機関であるべきは,これは議論をまたないと思うのですね。そのときに,今御意見が,あるいは御発言があったように,十分に審議できる能力というか機能をどう確保できるようにすべきかという,その観点は重要な観点だと思います。したがって,それはそれで検討いただく必要があろうと思いますけれども,その折に,そこでは無理だからその審査を別の機関に委ねるというのは,これは大変なことではないかなと思うのですね。すなわち,その審査の請求を受けた審査を行うべき機関が,自らそれを行わずして第三者にせしめるというからには,それはそれなりの理由が要る。そうしますと,調査をする権能が要りますでしょうし,恐らく日本の制度では,そのために調査を含めた審査の補助をする機関というものをつくっている制度というのは,情報公開の審査をする制度のほかにどういう制度があるかちょっと承知しないのですけれども,その情報公開の場合には各省,各庁の長が受けた不服申立てについて判断を下すときには,その審査機関に諮問しなければならないとなっていて,その諮問を受けた機関は強制権を持って各省の資料を調査するという権能を持ち,かつ守秘義務が法律上課せらせて,その機関の場合にはたしか罰則も定められておりますから,そういう機関として置かれているわけですね。また総理大臣任命ですし,両院の同意も要る,その委員については。そういう機関にして,初めて不服申立てを受けた各省が検討を委嘱するということなのですよね。そういう機関を都道府県の公安委員会の下につくるということなのか。
【南座長】多少の誤解がおありかとも思いますけれども,あくまでも審査の請求の提出先というのは公安委員会ですね。そしてまた,最終的決定権のあるのも公安委員会ですよね。ただ,その決定をするに先立って第三者に諮問をするということなのですよね。この第三者機関というのは。
【久保井委員】受刑者の場合は,そういう仕組みになっています。
【佐藤委員】何で諮問しなければいけないのですかね。
【南座長】やはりそれは,公正性といいますか。本人は非常にしっかりと公正にやっておられるはずなのですけれども,やはり第三者が見るということによって公正らしさといいますか,そういうものが担保されるし,またその段階でやはり事実誤認であるとか法令の適用の誤りなんかが発見されることもありますよね。
【佐藤委員】それは目がたくさんあった方がいいという意味においては,事実問題としてはそういう点はあるでしょうけれども。
【南座長】チェック機能なわけです。
【佐藤委員】そうだとすれば,当然法律で設置されるべきですよね。
【南座長】実は今刑事施設,刑務所の関係については先日からもう既に発足しております。
【佐藤委員】それは,効率性の問題でありますとか,各公安委員会おしなべてそういう機能,能力がないということになるのでなければ,そのような仕組みは制度としては成り立ちませんでしょうからね。そういうことを総合勘案すると,ここでその問題を決めるべきどうかについては,非常に疑問がありますね。と言いますのは,ちょっとそれるかもしれませんけれども……。
【南座長】分かりました。これは刑事施設といいますか,刑務所のときにも問題になったところでもありますけれども,私もこの間12日でしたかね,第1回目がございましたけれども,非常に効果はあったと思います。それは何かといいますと,法律家も入っておりますけれども,そのほかに篤志家の方だとか,それから医師,お医者さんですね,そういうような方も入っている,それから研究者の方も入って,5名で審査をしておりますけれども,裁決権者とはまた違った見方というのがあるのですね。もちろんおっしゃること,よく分かるのですよ。といいますのは,公安委員会もいわば民主的な機関としてできたわけですよね。だから,普通の執行する機関とはまたちょっと違うと思いますね。だから,それはよく私も理解できる。
【佐藤委員】似たような問題で……。
【南座長】だから屋上屋を重ねるというような……。
【佐藤委員】それもありましょうし,効率性もありましょうし,それから公安委員会については……。
【南座長】しかしそういう御意見がありますので。それと,私もっともう少し問題があると思いますのは,一体どういうふうな不服申立て,不服申立ての対象になるものがどういうものがあるかということなのですね。それから,非常に未決拘禁者の場合は短いですよね,期間が。その点,刑務所の受刑者とは違いますね。そういう場合に,不服申立てを導入するのについて,何か問題はありはしないだろうかと。
【成田委員】その場合の第三者機関というのは,これは決定権を持った審査決定機関なのか,あるいは諮問機関なのか。諮問機関であれば条例で置かれている例がありますけれども,本当の決定権を持った第三者機関は,地方自治法上制約があるわけです。だから,それはやはりちゃんと法律とか条例とかで手当てしないとできないと思います。
【南座長】その関係もあります。
【成田委員】それから,第三者機関と言っても,結局その委員は,やはり任命権者がいて,自治体の場合なら知事,警察の場合であれば公安委員会が任命するわけですね。だからその第三者機関なるものが本当に中立性を持った機関であるという保障はないわけです。それがまたいいかげんだったら,また独立の監視機関を置かなければならんというふうな話になるわけで,屋上屋を架することになりかねません。
【南座長】それのまたチェックというような問題が出てきますからね。
【成田委員】これは警察刷新会議でもそういう話がいろいろ出たようです。
【南座長】そこはひとつ慎重に考えることに。
【成田委員】それともう一つは,公安委員会には,監察権があるわけで,個々のケースがほかにもある可能性があれば,監察制度を使っての対応を改善するという余地はあるわけですね。だから,まあオンブズマン的な役割を果たしながら一般的な制度,一般的なものにつなげていくというふうなのは,やはり公安委員会にやらせれば可能であるということもあるのではないでしょうか。
【南座長】何か御意見,そのほか何かございますでしょうか。
【瀬川委員】不服申立てに関して,先ほどの私の発言と脈絡は同じなのですけれども,やはり不服申立てというのはもし今回こういう法改正をやる場合には重要な位置づけというか,意味合いを持ってくると思います。確かに佐藤委員のおっしゃるように,またこの間も総括審議官から刷新会議以後の状況というのは我々も報告を聞きましたので,ある程度改善され,現実的な処理がなされることは我々も認識はしています。内部的なチェックももちろん大事なのだけれども,公平性というか,それからそういうデュープロセスの観点から不服申立てに対して我々は配慮しなければならない。特に受刑者よりも未決の方がより重要であると言えば重要なので,件数は少ないかも分かりませんけれども,より第三者性のある機関を構想するということが大事だと考えています。
【南座長】先ほど瀬川委員から,防声具のお話が出ましたけれども,これはこうしましょうか。保護室が設置されていない留置場に限り,必要とされる場合にこれを使用するということはやむを得ない。そういう文言をつけ加えるということにしたいと思います。
【瀬川委員】そのニュアンスとして,保護室対応は原則にしていただきたいという趣旨が含まれているのであれば,結構です。それからビデオ録画も検討いただきたいというように思っています。
【南座長】そうですね。もう一つは使用方法の問題がありますから,使用方法について指導を徹底するというような文言を加えさせて,修文させていただきたいと考えております。
【瀬川委員】結構です。
【南座長】そのほかに,何かございませんでしょうか。
それぞれのお立場から御意見が出されましたが,ほとんどの論点について少なくともおおよその方向性というのが見えてきたように思います。修正すべきところは修正いたしまして,その他の点についてはまた皆様に修正の箇所をお示しして御意見をいただく。また,具体的な修正の形式的な表現ぶりというものについては,先ほども申しましたように座長に御一任をいただきたいと思いますが,よろしゅうございますか。
そろそろ予定の時間が参りましたので,本日はこの程度としたいと思います。本日はすべての論点を対象として総括的に議論をしていただきました。個々の論点について,これまでの議論を踏まえまして私がまとめさせていただき,その内容に沿って事務局の方で提言(案)の修正をお願いをしたいと思います。
【南座長】次回第6回は,これをもとに本会議としての提言をまとめられればと存じます。事務局から時間と場所についてお願いいたします。
【山田官房総務課理事官(警察庁)】次回は2月2日(木)午後3時〜午後5時30分ごろまで,法務省大会議室地下1階を用意しております。
【南座長】本日は長時間にわたりまして,大変活発,有益な御議論をいただきありがとうございました。これをもって閉会とさせていただきます。ありがとうございました。