日 時
平成18年2月2日(木)午後3時〜午後4時50分
場 所
法務省大会議室(地下1階)
出席者
〔委 員〕
(座長) 博 方 大宮法科大学院大学教授,一橋大学名誉教授
井 嶋一 友 弁護士,元最高裁判所判事
江 川紹 子 ジャーナリスト
葛 西敬 之 東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長
菊 田幸 一 弁護士,明治大学法学部名誉教授
久保井一 匡 弁護士,元日本弁護士連合会会長
佐 藤英 彦 警察共済組合理事長,前警察庁長官
瀬 川  晃 同志社大学法学部・大学院司法研究科教授
成 田頼 明 日本エネルギー法研究所理事長,横浜国立大学名誉教授
(敬称略,五十音順)
〔事務局・法務省〕
樋 渡利 秋 法務事務次官
小 津博 司 官房長
小 貫芳 信 矯正局長
三 浦  守 官房審議官(刑事担当)
山 下  進 官房審議官(矯正担当)
林  眞 琴 矯正局総務課長
北 村  篤 官房参事官(刑事・矯正担当)
〔事務局・警察庁〕
漆 間  巌 警察庁長官
安 藤隆 春 官房長
片 桐  裕 官房総括審議官
岩 瀬充 明 官房総務課長
福 田守 雄 官房総務課留置管理室長
山 田知 裕 官房総務課理事官
議事経過
冒頭
事務局補充説明
議論
法務事務次官挨拶
警察庁長官挨拶
座長挨拶
冒 頭
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【小貫矯正局長(法務省)】予定の時刻になりましたので,ただいまから未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議の第6回会議を始めさせていただきます。
では,南座長,よろしくお願いいたします。
【南座長】本日は,お忙しいところお集まりいただきまして,ありがとうございます。

事務局補充説明
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【南座長】まず,菊田委員から大規模独立留置場について資料の要求がございましたので,警察庁から御説明をお願いいたします。
【福田留置管理室長(警察庁)】御説明いたします。1月30日に,菊田委員から大規模独立留置場の設置状況や予定について資料を求められましたので,お手元に配付させていただいております。大規模独立留置場とされているものの御趣旨は何か明らかではありませんが,本資料は,下に※のところに記載されておりますとおり,警察本部が管理する留置施設で,警察本部本庁舎以外に設けられているものを挙げております。場所としては,警察署の敷地内であるとか,警察本部の本庁舎や警察署とは別の敷地に設けられているものがございます。なお,施設の規模については,大規模という御趣旨でしたが,規模を考慮せずに挙げさせていただいております。表のとおり,既に開場済みのものは12施設で,1施設に男性留置場と女性専用留置場がある施設が4施設ございますので,留置場数は16場でございます。また,今後の開場予定としては,下に記載しておりますとおりでございます。
なお,前回の会議の際,日弁連の方の御説明の中に原宿署というお話がございましたが,平成21年を目途として原宿署新庁舎を建設する計画があるとのことでありますが,これは,現段階では同署の新庁舎内の一部を署の留置場として使用することを検討中とのことでありまして,本資料には記載してございません。
以上でございます。
【南座長】ありがとうございました。

議 論
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【南座長】それでは,前回の議論では,事務局において作成しました提言(案)をお示しし,これについて御議論をいただいたところでありますが,幾つかの点につきまして,修正すべきとの御意見などをいただきました。具体的な修正につきましては,最終的には座長である私に御一任いただいたものと理解しておりますので,私の方で,前回までの会議における各委員の御意見,これには菊田委員からの書面による詳細な御意見も当然含まれておりますが,その各委員の御意見や,前回の会議終了後に各委員から提案されました御意見を検討させていただきまして,この会議において取りまとめる提言としてふさわしいものとなるようにと考えまして,配付いたしました座長案PDF を作成させていただきました。
各委員の皆様には,それぞれの御経験や御見識に基づいた御意見もおありであり,提言中にもこれを詳細に反映させるべきであるとのお考えもあるのではないかと思われます。ただ,この会議が有識者の集まりであり,未決拘禁者の処遇等に関する大きな方向性を示すという趣旨で開催されたものであることを踏まえますと,意見が対立している点は,その対立の状況を率直に記するとともに,各委員の意見が一致しているところは,そういうものとしてこれを提言中に表すということが適当なのではないかと考えた次第であります。それぞれの委員にとりまして100パーセント御満足いただけるものにはならなかったところもあるかとも思いますが,どうぞ私の意図するところをお酌み取りいただきたいと存じます。
それでは,本日は,この座長案につきまして最終的な御議論をいただきたいと思いますが,これまでの議論を踏まえ,各項目ごとに分けて御議論いただきたいと思います。
なお,菊田委員から修正案PDF が書面で提出されており,席上に配付させていただいておりますので,議論に当たりまして御参照いただければと存じます。
それでは,まず最初の総論部分,項目の第1について,座長案の御説明をいたします。なお,本日お手元にお配りしてある座長案のうち,緑色の字の部分は,前回の会議におきまして修正が提案され,了承されたものを反映した部分であります。紫色の字の部分は,前回までの会議の状況を踏まえまして,私が修正することが適当と考えた部分であります。
まず,副題の追加でございますが,この提言の副題として「〜治安と人権,その調和と均衡を目指して〜」と付記したいと思います。この点は,江川委員から御提案のあったものであります。
第1「本提言の基本的理念と方向性」。この部分は,前回お示しした案では,第1「はじめに」と第2「法整備の必要性」としていた部分でありますが,久保井委員からの御指摘等を踏まえまして,江川委員がお書きいただいた案をベースにしまして,ほぼ全面的に書き直したものであります。この部分はほぼ全面的な修正ですので,事務局に朗読していただくことにいたします。よろしくお願いします。
〜 読み上げ 〜
【南座長】ありがとうございました。
第1と第2を一緒にしましたので,第3以降はそれぞれ一つずつ繰り上がるということになります。この案につきまして,修正すべき点はございますでしょうか。
【久保井委員】前回の会議で,提言の方向性なり理念なり哲学というものを書いて,国民なり国会議員に対してもアピールできるようにすべきだという,そういう私の意見を取り入れていただいて,非常に格調の高い基本理念と方向性が打ち出されたことについて,まずもって感謝を申し上げたいと思います。私は,この中身についても,基本的にはこの現在示された案でよい,十分であるというふうに思います。
ただ,1点だけ,できたら修正をしていただきたい点がありますが,中身ではないのですけれども,この会議は飽くまで未決拘禁制度の改革を我々は検討を命ぜられているわけで,我が国の治安の悪化についての対策を,検討を命ぜられたわけではないので,冒頭の「治安に対する国民の不安が増している」というところから始まる部分ですね,これは「今日」というふうに入れた方が言葉としてはいいと思いますけれども,その部分,で,「統計上は犯罪の発生はやや改善したものの」,こういうふうに。全部は読みませんけれども,これが冒頭にあると,我々の有識者会議が治安対策についての意見を求められたかのごとく,そういう誤解を招くおそれもあるので,できたらこの部分,10行ぐらいになりますね,「このように考えると……直面する。」というところまで,これを2ページの3行目までに入れかえる。文章はこのままで結構ですけれども。要するに,治安対策のために集まった会議ではないのだということで,未決拘禁者の処遇について我々は会議を持ったのだということから始めていただいた方が,この会議の性格にふさわしいのではないかと思うので,そこの配列だけ,できたら入れ替えていただきたいと思います。
【南座長】今の御意見は,一番冒頭の「治安に対する国民の不安が増している」と,その言葉だけを……。
【久保井委員】1行だけではなくて。
【南座長】1行を2ページの3行目に入れるということ。
【久保井委員】いや,10何行になりますか。その1行だけではなくて。真ん中よりちょっと上に「直面する。」というのがあるでしょう。「という課題にしばしば直面する。」と。10数行。
【南座長】ここまでですか。
【久保井委員】「直面する。」というところまで。
【南座長】「治安に対する」から「このように考えると……しばしば直面する。」,そこまでを2ページの3行目のところに。だから,最初の部分を後の方に。
【久保井委員】移していただけないかと。
【南座長】この点については,これは起草者である江川委員,何か御意見ございませんか。
【江川委員】この間,これはだれに対して出すものですかというふうに質問したときに,警察庁及び法務省であると同時に,国民に向けてということがありました。で,国民がこの問題について考えるときに,どこから入っていくのが一番自分に身近に感じて,そして切実にこの問題に向き合うきっかけになるかということを考えると,やはり治安の問題というのは今非常に関心が高いところですので,そこをまず最初に出した方が,国民の関心が向けられるのではないか。それと同時に,治安の問題に取り組むときにどうしても人権に関する問題が発生する。それについて,考えなければいけないわけで,この2つを並列して,そういう全体の大きな枠組みの中で,この未決拘禁者の処遇についても考える必要があるというふうにした方が国民の理解を助けるのではないか,あるいは親切ではないかというふうに思いました。お役所に対して出すだけであれば,未決拘禁者といきなり言っていいと思うのですけれども,未決拘禁者を巡る問題がなぜ発生するのか,あるいはその問題がなぜ問題になるのかということを考えると,やはり治安と人権の調和とバランスが今ここで重要な課題なのだということだと思うのです。この改革をめぐっては,やはり費用が発生するので,例えば電話の問題とか,やはり国民の理解と協力を得なければならない点も多いと思うので,やはりこのように変えた方が理解されやすいのではないかなと思いました。あとは皆さんの御議論に任せます。
【南座長】これについて,ほかの委員の方の御意見ございますか。
【成田委員】今御発言ございましたように,我々に治安対策を求められていないということは,これは自明の理なのですね。治安対策をもし求められるのだったら,もっといろいろな提言がほかにもあってしかるべきだと思うのです。ここでは,やはり今おっしゃったように,国民全体に訴えるということのほかに,治安の回復が緊急の課題であるということは国民のだれもが認識している非常に大きな関心事なのです。政府も治安対策の基本的なプログラムを進めているという状況にありますので,今日的な視点から見て,なるべく早く犯罪者の捜査と公判を進めることによって,早期の解決を図る。そういう非常に国民的全体の視野から必要だと考えてこの問題を取り上げているのだということをお書きになっているわけで,私は非常によく考えられて,よくバランスがとれているのではないかと思います。私はこのとおりで進めていっていただきたいと思います。
【南座長】その他の委員の御意見もお伺いしたいのですが,いかがでしょうか。
【井嶋委員】江川委員の筆になるものだという御説明でありましたが,今日のこの問題を的確に正しく表現しておられるという点で,そしてまた,役所的なものではなくて,非常に前回の提言と似たようなトーンでお書きになっているという点,さすがに前回も議論された委員の御経験が生きているなというふうな印象を持ちまして,大変敬意を表したいと思っておるところでございます。
ところで,今,久保井委員が場所の移動を提言されましたが,これは,今,成田委員がおっしゃったとおり,治安対策でやる問題でないということは,表題から始まって全体を見ればよく分かるわけでございますが,それにも増して,今,江川委員が説明されましたように,この問題を考えるのに一番先に見出し的にボンと打ち出す,国民にアピールする言葉,あるいは国民だけでなくて政府,法務省,警察庁に対してもアピールする言葉として,やはりこの,治安と人権をバランスよく考えなければならないということをまず前提に出す,その認識というのが非常に大事だというふうに思います。そういった意味で,国民だけではなくて役所に対するアピールも含め,このように書いていただいた方がむしろよく分かるし,非常にいい提言に形としてなるのではないだろうかと思いますので,久保井委員のおっしゃるように,「未決拘禁の処遇に関しては」から始まりますと,何か役所の文書に戻ったような印象が強く残りますので,むしろ江川さんの思いをそのまま残していただいた方がいいというふうに私は思います。
【南座長】はい,どうぞ。
【菊田委員】前から私申し上げたのですが,治安対策とか犯罪者対策という言葉すら出るように,今の問題は未決の問題なのですよ。犯罪が増えようが減るまいが,未決拘禁の処遇問題をどうするかということのための法整備の作業でありまして,それを治安から発想的に物事を考えるというのは,これは正に本末転倒。ただ,今書かれている内容そのものに,私も大方その点においては反対はしませんけれども,最初のこの委員会の主たる目的は何であるという,その柱が従になるということ自体は,これは論理的ではない,説得的でもないと思います。したがって,中に入れるという,今,久保井先生のおっしゃった提案を私は支持したいと思います。
【南座長】ほかに御意見ございますか。
【葛西委員】私は,問題をアプローチするときに,最初に俯瞰しておいて,座標を大体つかんでから各論に入るというのはいい方法だと思いますし,文章もなかなか分かりやすく書けているので,原案の文章は非常によろしいのではないかなというふうに思います。
【菊田委員】いや,文章はいいのですよ。置き場所を言っているのです。重点の置き方を。
【瀬川委員】まず,基本的な認識としては,私は久保井委員と認識は一致していまして,治安対策のためにこの有識者会議があるのではないという認識は一致しております。
もう一つ,事実としても犯罪の凶悪化とか治安の絶対的な悪化みたいな表現というのは望ましくないと思っております。研究者としては,我が国の犯罪状況が凶悪化して,どうしようもないという状況に立ち至っているというふうには私は認識しておりません。そこで,よくこの文章を見ると,治安の悪化ということを前提として,治安対策のためにやるというふうに書いてはいないように思えません。つまり,ここでは国民の犯罪に対する不安感が増しているということを書いてある。恐らくこの文章では,その後に出てくる,3つ目のパラグラフの「このように考えると」以下が中心的なところと考えています。冒頭に,言いましたように,国民の不安感,市民的な安全の要求が今日高まっているということが書いてあって,しかも,言いたいのは,後半といいますか,人権との相克というか,兼ね合いのことを言いたいという文章に読めます。やや中途半端なことを言うようですが,私は,このままでもいいし,移してもどちらでもいいという考えです。
【久保井委員】私もここで大きな衝突を求めているのではなくて,また,中身においては全く認識は一致しておりますから,皆さんがそういう御意見であれば,私の提案はこだわりませんから撤回してもいいのですけれども,ただ,一言冒頭に,未決拘禁制度の在り方についての検討を求められて我々9人は集まったという1行でも加えておいて,それで,今日,治安に対する国民の不安が増大しているというようにしていただいたら,妥協案ですけれども,このままでもいいのではないかと思います。ただ,治安に対する国民の不安が増大していると,ポーンとこういうふうに始まるのが,少し唐突ではないかと思いますから,1行そういう表現でも加えていただいて,このままにしていただいたらどうですか。あまり意味のないところで論争するつもりはありませんので。ただ,この有識者会議は未決拘禁制度についての意見を求められて我々9人は集まったのだ,ところで,今日,治安に対する不安は増しているからということで始まれば,そういう誤解は招かないかも分かりませんから,座長にお任せしますけれども,その辺をちょっと工夫していただいたら,このとおり,原案でいいと思いますけれども。
【佐藤委員】私は自分自身が文章が下手なので意見を申し上げるのを控えていたのですけれども,いずれにしても意味内容には違いは生じないわけですね。しかも,読んでいきますと,井嶋さんがおっしゃったように,確かに文章として流れて,ぎくしゃくしないで読めるという,そういう文章の優れた面というのをこの際生かしていくというのが,一つの国民にアピールする文書を出す,そういう折の要点ではないかなと思います。
それで,内容としては,やはりここで論点を明確にしていると思うのですね。今,瀬川さんがおっしゃったように,「このように考えると」という部分,すなわち治安の回復と人権の擁護,この両方を考えて,そういうスタンスを持って議論をしてきた,その成果がここに結実しようとしているのだという,そういう意味内容も非常に明確に読み取れますので,その意味では,多くの国民に理解を得るには,これは一つのすぐれた方法かなと思って読んでおりましたけれども。
【南座長】これは江川委員に起草してはいただきましたが,正に座長案として出しておりますので,私が全責任を持たなければいけないのですが,ただ,私の感じでは,これは江川委員も,単に諮問機関に対する答申としてこの提言をするというのではなくて,もっと広く国民に訴え,そして未決拘禁者の処遇についても十分に考えていただきたいというような思いを込めておつくりになったことは確かなのですね。だから,やはり国民が読んでくださるような文章でないといけない。決してこれは,私の感じでは,治安維持,治安優先,人権軽視というようなことは読み取れない。しかも,これは治安の維持を強化しろとは言っていない。治安に対する不安が増しているというのは,これは事実でございますが,しかし,全体のこの文章の流れを読んでいただきますと,むしろ未決拘禁者の処遇の改善だとか,あるいは人権の擁護というものが非常に強調されているというように思うのですね。何か初めに来たものが強いようにお感じになるかもわかりませんが,文章というのは,むしろ読んでいて後の方,結論の方が非常に強く印象的,インパクトがあるという場合もありますので,私としては,今日,久保井委員からもおっしゃいましたことも踏まえまして,文言については考えさせていただきたいと思いますけれども,大綱について,この順番はひとつお認めいただけないでしょうか。
【久保井委員】それは結構です。基本的には同じ認識ですから。ただ,始まり方が少し唐突ではないかという感じがするので,1行でも加えていただいたらマイルドになるのではないかという,それだけのことですから。ここに書いてある哲学に異存を述べているわけではありませんから。
【南座長】では,そういうことでひとつまとめさせていただきます。またよろしくお願いいたします。
それでは,第1の部分につきましては,構成はこのままにしておきまして,多少文言等について江川委員と御相談をさせていただくということで御了承いただいたと思います。
次に,「未決拘禁者の地位」,項目第2について座長案の説明をいたします。
第2「未決拘禁者の地位」ですが,第2の部分は,前回お示しした案では「処遇の在り方に関する基本的な考え方」としていましたが,第1の部分を修文したために,その表題では第1との関係が不明確になると思われましたので,「未決拘禁者の地位」といたしました。この部分につきましては,前回の会議において御了承いただきました,「無罪推定を受ける者にふさわしい処遇は国際的な原則にもうたわれている」旨の文言を追加いたしました。そのほか,多少文言等を訂正させていただきました。
これが座長案でございますが,この案について何か修正すべき点はございますでしょうか。この緑色の部分が大きな修正点です。
特段の御意見がなければ,この案で確定させていただきたいと思います。御了承いただけたものと存じます。
次に,未決拘禁者の外部交通の在り方,項目第3について座長案の御説明をいたします。
第3「外部交通の在り方」の部分につきまして,前回の会議において御了承いただきました,「裁判所の構内にある接見設備における開廷前後の接見の実施についても検討すべきである」などの点について修正をいたしました。そのほか,適当と思われる修正をいたしました。この点について,修正すべき点はございますでしょうか。
特段御議論がございませんので,座長案のまま了承されたものとさせていただきます。
次に,未決拘禁者のその他の処遇の在り方に関する部分,項目第4について座長案の御説明をいたします。
第4「その他の処遇の在り方」の部分につきましては,前回の会議において御了承いただきました,「作業,教育の機会の保障について,今後の検討課題とすべきである」とする点などについて必要な修正をいたしました。その他,適当と思われる修正をいたしました。なお,懲罰の部分につきましては,前回での御議論を踏まえまして,「未決拘禁者に懲罰を科することは,その地位と相容れないとする意見も示された」ことを明確にいたしますとともに,「懲罰制度を導入する場合であっても,その種類を合理的なものに限定することが必要である」という旨を追加するなどの修正を加えております。
それから,菊田委員の御意見も取り入れまして,「警察留置場にも懲罰制度を導入すべきであるとの意見が多数を占めた」としていましたのを,「意見が示された」に改めました。また,「これを導入する場合には」とありましたのを,「これを導入する場合であっても」というように改めました。
この点について,修正すべき点はございませんでしょうか。
特段の御異論がございませんようですから,それでは,座長案のとおりに了承させていただいたものとして取り扱わせていただきます。
それでは,次に「代用刑事施設制度(代用監獄)の存廃」に関する部分でありますが,ここに入ります前に休憩を取りたいと思います。それでは,4時まで休憩の時間を取りますので,どうぞよろしくお願いいたします。
〜 休憩 〜
【南座長】皆さんおそろいでございますので,会議を再開させていただきます。
先ほど久保井委員からありました御提案でございますけれども,お配りいたしました提言の一番最初のページは目次でございまして,1ページから本当の提言が始まるわけでありますので,この提言の目的というものをはっきりさせるために,「未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議提言」,そして「〜治安と人権,その調和と均衡を目指して〜」という表題を大きくゴシックで記載するということにさせていただきたいと思います。
もう一つは,この2行目,「治安に対する国民の不安が増している」というところですが,「今日,治安に対する国民の不安が増している」,このように修文をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは,次に,「代用刑事施設制度(代用監獄)の存廃」に関する部分,項目第5について座長案の御説明をいたします。
第5「代用刑事施設制度(代用監獄)の存廃」の部分につきましては,歴史的な経緯もありまして,この会議における議論の中でも最も意見の対立が激しかったところであります。この座長案を作成する上でも最も苦心を重ねたところでございます。冒頭にもお話ししましたとおり,私としては,理念的な対立があることは認めつつも,各委員が共通して考えていると思われるところはそのようなものとして表すという考えで書いたつもりでありますので,その趣旨をお酌み取りいただいた上で御検討いただきたいと思います。
なお,国際人権(自由権)規約委員会の表記の方法につきましては,菊田委員の御意見を入れて修正をいたしました。
この第5の部分は修正部分が多いので,事務局に朗読をしてもらうことにいたします。よろしくお願いいたします。
〜 読み上げ 〜
【南座長】ありがとうございました。
第5の「代用刑事施設制度(代用監獄)の存廃」の全文を朗読していただきましたが,この点につきまして御意見がおありでしょうか。御意見おありの方は,よろしく。
【菊田委員】私は,12ページの下から3行目のところですね,「代用刑事施設制度を存続させることを前提としつつ」ということについて,私の修正案では削除を希望しておりました。その理由については,基本的なこと等含めて今るる申し上げません,繰り返しません。もしこれをそのまま採用されるということでありますと,この部分につきましては座長の責任のもとで修正をするという前回の,私はそういうふうに了解しているわけですけれども,座長とされましては,この「存続させる」ということの具体的な意味はどういうふうに理解されているか,お聞きしたいと思うのですが。
【南座長】正にここに書いてある記載のとおりであって,それ以上のものではございませんけれども,御質問がございましたので多少敷衍させていただきたいと思います。
一つは(3)の部分で,将来的な存廃についてはそれぞれの立場があり,この会議においても意見が対立しているということを明確にいたしました。その上で,12ページのところで,下から4行目でありますが,「今回の未決拘禁者の処遇等に関する法整備に当たっては」という限定をつけまして,すべての委員が一致している範囲ということで,「代用刑事施設制度を存続させることを前提としつつ」としているのであります。菊田委員も前回までの会議において,即時の廃止を求めるものではないとおっしゃっていたところでありまして,その趣旨はこの座長案の書きぶりと異なるものではないと考えております。
さらに,加えまして,(5)のなお書きのところでございますが,「およそ法律上の制度については,その時々の状況に応じて,必要な検討が加えられるべきものである」とした上で,「将来的には廃止すべきとする強い意見もあることや,刑事司法制度全体が大きな変革の時代を迎えていることなどを考えると」,ちょっと飛ばしますが,「代用刑事施設制度の在り方についても,刑事手続全体との関連の中で,検討を怠ってはならない」,このようにしているのでありまして,そういう意味では菊田委員のお考えと相容れないものではないと私は考えております。
【菊田委員】ありがとうございます。即刻廃止をするものではないということについても,私は申し上げたとおりでありまして,現在もその心境ですけれども,将来に向かっても存続させるという点については,絶対に私は受け入れるわけにいかないということですが,この文章を見ますと,今の問題にしているところですけれども,「今回の未決拘禁者の処遇等」というのは,この未決処遇についての法整備をするという全般についての問題でありまして,「今回の」という意味は,何も現在ある代用監獄そのものを存続させた上で,その代用監獄の現在だけでのその他の改善,後に書かれているような明確な人権保障の調和をするということに限定して理解することは非常に困難だというふうに私は思います。一般の人が読みますと,存続させるということは,今ある代用監獄をそのままずっといつまでも存続させるのだという表現に前提としているということが理解されるというように私は思われるので,この辺については,座長の御意見は,永久存続ということは必ずしも含めていないのだ,これは暫定的なものなのだ,どちらなのかということについて,できれば明白なお答えをいただきたいと思います。
【南座長】今申し上げたことに尽きるわけでありまして,それ以上にお答えすることは私としてはございません。だから,この文章自体,記載自体から読み取っていただきたいと思います。
【菊田委員】それでは重ねてお伺いさせていただきますが,代用刑事施設制度を存続させることを前提とするということが,仮に私の主張のように,もし削った場合には,どういう不都合が生ずるのか,できれば警察庁あたりの担当者にお答え願いたいと思います。この文章の中で,これを削除するなら。あるいは,これは座長の権限ですから,そこまでは私は聞く権利はございませんか。
【南座長】これは多数の意見を踏まえまして,私の座長案としたものでございます。今,菊田先生の御意見はよく承りました。先生はかねてからそういうお考えも持っていらっしゃることは私も重々承知しておりますので,その点は十分承ったということにさせていただきたいと思います。
【菊田委員】大変恐縮ですが,私個人の意見では決してなくて,何十年も日弁連は代用監獄廃止を唱えてきていることは御存知のとおりです。廃止というよりも,現在では漸減で結構ですけれども。ところが,ここでこの先も存続させるのだというふうなことで一般がとらえられるような表現でありますと,これは私個人の意見ではなくて,私はもちろんそうですけれども,これは大変な方向について同意したことになりますので,私はとてもそれに同意するわけにいかないと思います。ちなみに,今まで私は多くの点で日弁連の見解と同じでありましたけれども,私は現在個人としてこれを出しましたが,日弁連の方がどうお考えになっているか知りませんけれども,個人としては,これはこのまま承諾するわけにいきませんということだけ申し上げたいと思います。
【南座長】よろしく承りました。
その他の委員の御意見ございませんでしょうか。
【江川委員】ここでいろいろ議論された以上に,この代用刑事施設制度について本当に慎重であるべきだということはかなりきちんと明確に繰り返し書かれておりますし,もちろんそういうどこに拘禁するかという箱ももちろん大事なのですけれども,やはりそこで何が行われるか,あるいは刑事制度の取調べの中で,あるいは捜査全体の中でどういう役割を果たすのかということだと思うのですね。それについて,最後に,「捜査の在り方に加え」あるいは「刑事手続全体との関連の中で,検討を怠ってはならない」ということが含まれているので,大変いろいろな人たちの思いが全部込められた,いい修正になったと思います。
【南座長】はい,どうぞ。
【井嶋委員】この問題につきましては,ただいまの座長の御意見,私は全面的に賛成であります。そして,今説明されましたように,この文章自体は,法整備に当たってということが書いてあるわけでありまして,存続させるということを独立のものとして書いてあるわけではなくて,法整備に当たってということが前提でありますから,これはそんなに永続性のことを言っているわけでも何でもないという御説明はそれなりによく分かると思います。
それで,座長案にも何度も書いてありますけれども,また,従来私も毎回申し上げておりますが,この代用監獄制度というのが刑事司法,特に捜査の在り方との関係で大変大きな機能を果たしているという評価,あるいはそれを果たしていないという評価もありますが,果たしてきているという評価,それが戦後60年続いてきた刑事司法運用の一つの大きな機能的な制度であるということ,そういったことを踏まえて考えますと,やはりこの制度をどうするかというのは,実は刑事施設そのものの立法を考えるこの会議だけでは決められないことであって,むしろこの一番最後のなお書きに書いてありますように,また,今,江川委員が言われたように,捜査の在り方あるいは刑事司法全体との関連の中で検討するということでなければ,代用監獄制度そのものだけを取り上げて,この会議だけで決められるという問題ではないということは明白であります。また,そのことをこの提言はちゃんと書いているわけですね。
このこと自体は,実は前回も申しましたけれども,そのことのために,前回も申したとおり,永久に存続するということも書けないし,同時に,当面ということも書けないと言ったのは実はそういう趣旨でありまして,やはり刑事司法全体の中で,あるいは捜査の在り方全体の中で議論すべきことであって,当会議だけで決められることではないという趣旨を,私はそういう表現をしたわけでありますが,そういった意味で,この会議は制度の永続性,あるいは制度の暫定性に触れるということではなくて,正にこの制度を議論する在り方をきちっと書いてある,在り方論をきちっと書いてあるということがこの会議の成果であるというふうに考えるべきだというふうに思っております。
この会議の在り方というのは,これも何回も言いましたけれども,要するに古い監獄法の羽織はかまを脱がせまして,新しい,近代法の息吹のある,あるいは国際的な準則の理念も取り入れた新しい洋服をこの未決拘禁施設に着せる,そのためにはどういう改善をしたらいいのかということにフォーカスした議論をしてきたというふうに私は認識しておりますし,また,今回は,それが実現するべく,皆さん一生懸命になって提言をしたのだという趣旨であるというふうに思いますから,そういった意味で,ここのところにとらわれて固執されることは何らないのではないかというふうに考えるものであります。
【南座長】ほかに。
はい,どうぞ。
【成田委員】この問題は今までさんざん議論してきたところで,一番根源的な問題であるというふうに思うのですけれども,書かれるときに座長が大変苦労をされてお書きになったことが非常によく分かるのです。今まで議論してきたので,くどくどとは申しませんけれども,一番最後に数行加えられたことによって,永久のものではないということははっきりいたしますし,私は,せっかく苦心してこういうふうにお書きになったことが非常によく理解できますので,今の御発言と併せて座長の原案に賛成したいと思います。
【菊田委員】もう一つだけ。今,井嶋委員がおっしゃられた言葉で,永続するものではないという言葉がありましたね。この代用刑事施設制度を存続させるという本当の意味は,永続させるものではないというふうに理解するということが皆さんの,委員の認識でしょうか。
【井嶋委員】永続させるか廃止するかということは,当会議だけでは決められる問題ではないんだと。我が国が60年やってきている刑事司法全体の中で留置施設が占めてきた機能の部分をどうするかという問題ですから,捜査の在り方全体を考えるという将来の問題なのです。ですから,ここでは「当面」も書けないし「永久」も書けない,こう申し上げているわけです。
【菊田委員】ということは,存続させるというのは,今おっしゃったように,永続も漸減も両方含めてという……。
【井嶋委員】それは,今言いましたとおり,古い羽織はかまを脱がせて新しい洋服を着せる主体として制度があるということを前提としますよということなのです。それだけです。
【南座長】ここは非常に理念的な面もありますし,今までの歴史的経緯もあって,意見の分かれるところでありますが,このなお書きのところの「刑事手続全体との関連の中で,代用刑事施設制度の在り方について検討を怠ってはならない」という文言をひとつ御賢察いただきたい。
【井嶋委員】もう一つ追加しますが,今のその文言は,実はこの前のたしか司法制度改革審の意見書にも同様のことが書かれていたというふうに承知しております。
【南座長】それでは,ほかに何か御意見あったら。
【久保井委員】私は,非常に苦心をされて座長がおまとめになられたこの案で,総意をまとめていただいたらいいと思います。少なくともこの「存続」という言葉は,永久に存続させるという意味でないことは明らかなので,そこまでは含んでいないことは明らかなので,「当面」という言葉遣いはしていないけれども,ほぼ同じようなことが書いてあるわけですから,このペーパーを読む人は,永久存続という誤解はしないと思いますので,これでいいのではないかと思います。
【江川委員】永久というのはどれぐらいのことを言うのか分かりませんし,当面というのはどれぐらいのことを言うのか分かりませんけれども,少なくとも5年や10年では代用監獄がなくなるということは,常識的な発想を持った人は多分だれも考えていないと思うのですね。そういうふうに,今あり,そして存続するということを前提に,とりあえずこの対策を考えておかなければ,これはどの期間存続するかというのはまた別のところで御議論いただくとして,5年や10年ではなくならない,存続している,存続させるということを前提の上で我々はその対策を考えるということなので,これで何ら問題はないのではないかなと思いますけれども。
【菊田委員】別の問題で,いいですか。
【南座長】簡単に。
【菊田委員】今の13ページの(5)ですが,昭和55年以降明確に分離したというくだりがあります。そして,その段落の最後に「積極的に評価すべきである」とありますが,その下に,私の案としましては,「これに対して,昭和55年以降も代用監獄における自白強要とこれに起因する冤罪事件が絶えず発生しており,捜査と留置の分離が不十分であるとの意見も示された」ということをつけ加えていただきたいというのを提案しているわけですが。13ページの上から4行目から始まりますよね。「そのような観点に立って」という部分がありますね。
【南座長】分かりました。菊田委員のおっしゃるのは,「昭和55年以降も代用監獄における自白強要とこれに起因する冤罪事件が絶えず続発しており,捜査と留置の分離が不十分であるとの意見が示された」,そういう修正意見を挿入してほしいということですね。
【菊田委員】そうです。というのは,前半が評価される表現を書かれているわけですけれども,それに対応してこういう意見もあったと。
【南座長】ここには書いてありませんけれども,例えば第5の(1)の4行目になりますか,「この代用刑事施設制度をめぐっては,捜査機関である警察において被疑者の身柄を拘束・収容することにより,自白強要等の違法な捜査が行われやすく,冤罪の温床になるとの批判が加えられ,その廃止が強く主張される一方で」という記述がございますね。これははっきりとこういうふうに書いてあるわけです。
もう一つは,先ほどのところですけれども,これは私大変重要なところだと思いますが,13ページの緑の部分ですけれども,捜査部門と留置部門の分離の徹底に関しまして,「分離の趣旨をより明確にするために,未決拘禁者の捜査に当たる警察官は,その者に係る留置業務に従事してはならない旨を法律上明確に規定することも必要であろう」と,この,法律に規定するというのは大変大事なことだと思うのです。今まで規則あるいは通達によって行われていたのを,今度は法律事項にするということでございますので,菊田委員のおっしゃる趣旨というものはこの中に十分盛り込まれていますので,座長案でよろしいのではないか。
【菊田委員】私の申し上げているのはちょっと趣旨が違いまして,13ページの(5)で前半に「そのような観点に立って,留置場」云々と書いているのは,近代化したということを書いているわけですね。それに対して,私の先ほど申し上げた別の意見もあったということを対応して書いていただかないと不釣合いだという意味で言っているわけです。
【南座長】自白強要と冤罪事件の続発については既に触れておりますし,捜査と留置の分離も不十分である,したがってこういうふうにより分離を明確にするということで,これは法律事項にするということで,菊田委員の御趣旨あるいは御提案というのは十分生かされているのではないでしょうか。
【菊田委員】それ以上は申し上げません。
【南座長】よろしくお願いいたします。
今の第5の,代用刑事施設制度の存廃についての座長案を示しましたけれども,この点について何かほかに御意見,あるいは修正点ございませんでしょうか。
【菊田委員】今の問題まだ続いているのですけれども,私は日弁連の方と議論してこれを追加していただきたいということを申し上げているわけですが,もう少し補充の説明を日弁連の方に。
【南座長】菊田委員から,御説明していただけませんか。
【菊田委員】私は今申し上げたとおりです。私の趣旨は,上段の説明に対応して別の見解があったけれども,それが示されていないということを申し上げたわけです。
【江川委員】今ここは,私たちが自分たちの考えを言うところであって,それぞれの組織の代理人の集まりではないので,菊田先生がもし何か御意見があれば,菊田先生御自身の御意見をおっしゃればいいのではないかと思いますが。
あと,さっきのに付け加えると,菊田委員の趣旨も入っているではないかというところで,例えば11ページの(3)のところで,代用監獄についてのこういう問題点が指摘されたという,そこも加えられているので,かなりの部分懸念の声があったということは再三にわたって強調されているなとは思いました。
【南座長】ここは有識者の会議でございますので,ここでの意見交換をしたいと考えております。
ほかに何か御意見ございませんでしょうか。
御異論がないようですので,座長案で御了承いただいたということにさせていただきます。
【井嶋委員】先ほどの私の発言でちょっと留保しておりましたが,司法制度改革審の意見書というのがございます。その中で,やはりこの代用監獄問題に触れておりまして,ここでも議論がされたわけでありますが,そのまとめとして,次のような意見でまとまっておりますので,参考のためにちょっと読み上げさせていただきますが,よろしいですか。
【南座長】はい,よろしいです。
【井嶋委員】「被疑者・被告人の身柄拘束に関しては,代用監獄の在り方,起訴前保釈制度,被疑者と弁護人の接見交通の在り方,令状審査,保釈請求に対する判断の在り方など種々の問題の指摘がある。そうした指摘をどのように受け止めるかについては,現状についての評価の相違等に起因して様々な考え方がありうることから,直ちに具体的結論を得ることは困難である。しかしながら,我が国の刑事司法が適正手続の保障の下での事案の真相解明を使命とする以上,被疑者・被告人の不適正な身柄拘束が防止・是正されなければならないことは当然である。それらの問題指摘の背景にある原因等を慎重に吟味しながら,今後とも,刑事手続全体の中で,制度面,運用面の双方において改革,改善のための検討を続けるべきである。」と,こういうことです。
【南座長】それでは,第5の部分につきましては,本日お示ししました座長案のとおりで御了承をいただけたものといたします。
次に,「警察の留置場における処遇の在り方等」に関する部分,項目第6について座長案の御説明をいたします。
第6「警察の留置場における処遇の在り方等」の部分につきましては,前回の会議において御了承いただきました,防声具の使用方法等について,「看守勤務員に指導を徹底すること」,この文言を加える修正をしているほか,適当と思われる修正をいたしました。
この案について,よろしゅうございますか。
御異論がないようでございますので,座長案のままに御了承いただいたとさせていただきます。
それでは,いろいろ御議論いただきまして,どうもありがとうございました。
それでは,本日お示ししました座長案につきましてはすべて御了承いただいたことと存じますので,これをもちまして本会議からの未決拘禁者の処遇等に関する提言とさせていただくことにいたします。ありがとうございました。
【小貫矯正局長(法務省)】大変ありがとうございました。

法務事務次官挨拶
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【小貫矯正局長(法務省)】それでは,法務事務次官と警察庁長官からご挨拶させていただきます。
それでは,樋渡事務次官,よろしくお願いします。
【樋渡事務次官(法務省)】委員の皆様方には,御多忙であるにもかかわりませず,この会議に熱心に取り組んでいただきまして,本当にありがとうございました。心から感謝申し上げます。また,座長におかれましては,議事の進行,提言の取りまとめ等に多大な御尽力をいただきました。ありがとうございました。
2か月という短期間であるにもかかわりませず,御熱心に御議論をいただきまして,皆様方の御見識のあふれた御提言をまとめていただいたことに感謝しております。
この会議が始まるときにも申し上げたことでございますが,この監獄法の改正は法務省にとりまして長年の課題でございました。そして,昨年,「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」が成立しまして,その施行も間近に控えております。これが施行されますと,受刑者と未決拘禁者の処遇に差異が生ずるところでございまして,現在の課題といたしましては,この差異が生じないように法整備をしなければならない,これが喫緊の課題でございます。
未決拘禁者の処遇に関しましては,代用監獄制度の在り方も含めまして,根源的な意見の溝がずっと続いておるようでございます。当会議におきましても,そのことを真剣に御議論いただいたところでございますが,当会議がその議論を経ながらまとめていただきましたこの提言は,現下国民が非常に熱望しております治安の回復という問題と,それはそれとして,いつの世でも未決拘禁者の人権の保障をより確実にしていくという配慮は大事である,この二つの要請のバランスを絶妙にとっていただいた,それを目指していただいたものだというふうに我々は受け止めております。皆様方が,厳しい財政事情,それから過剰収容の中にあります拘置所の事情,そして警察留置場の事情を的確に御認識いただきまして,この問題に大きな方向性を与えていただいたものと感謝している次第でございます。
この提言をいただきましたので,今後,法務省といたしましては,警察庁とともに所要の法整備,法案の立案作業を続けまして,今開催されております国会に「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」の一部改正案として出させていただきたいというふうに思っております。法案の成立に尽力させていただきますが,それと同時に,この提言でいただきました,例えば弁護人と未決拘禁者との電話による外部交通等,運用面で実施できること,それから,更に検討すべきだと与えられている課題につきましても真剣に取り組んでまいりたいというふうに思います。
今後とも,委員の皆様方の御支援をいただきながら,我々も頑張っていきたいと存じております。本当にありがとうございました。

警察庁長官挨拶
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【小貫矯正局長(法務省)】では,漆間警察庁長官,お願いいたします。
【漆間長官(警察庁)】それでは,私の方からも一言ごあいさつをさせていただきます。
先ほど樋渡次官の方からお話もありましたとおり,昨年の12月から本当に短い期間の間に大変すばらしい御提言をまとめていただきまして,座長を始め委員の皆様方の御尽力に心から感謝を申し上げたいと思います。
代用刑事施設の在り方については,これまでも理念の違い等から長年にわたってその方向性が決まらなかった。それが今回まとめられた御提言によりまして方向性が決められたということは,大変我々としても勇気づけられるものがございます。この御提言に基づいて今通常国会に法案を提出すべく,法務省と一緒になって努力したいと思いますし,また,運用の面でも,御提言の中に実施すべきもの,改善すべきものがいろいろ入っておりますので,その辺についても御提言の趣旨に沿ってやっていけますように,我々としても最大限の努力をしたいと思っています。
委員の皆様には大変短い間,お忙しい中,コンパクトにまとめなければならない,非常に大きな問題を含んでいるものでございましたけれども,本当に立派な提言をつくっていただいたことを重ねてお礼を申し上げまして,また今後とも我々の施策等に対して御意見を賜ることを切に希望いたしまして,お礼の言葉といたします。今回は本当にありがとうございました。

座長挨拶
議事経過へ

【南座長】それでは,最後に私から一言ごあいさつをさせていただきます。
ただいま法務省事務次官並びに警察庁長官から大変御丁重なごあいさつをいただきまして,ありがとうございました。
私は,先の行刑改革会議に参加させていただきましたが,明治41年に制定された監獄法を現在の行刑にふさわしいものにするための改正,これは是非とも実現すべき喫緊の課題であると痛感をしておりました。監獄法のうち,受刑者の処遇に関する部分につきましては,昨年,「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」が成立いたしまして,改正が実現したのでありますが,未決拘禁者の処遇についてはそのまま取り残されたままになっておりました。このような事情は,未決拘禁者の処遇の在り方については,代用監獄の是非を含めまして理念的な対立もあり,なかなかコンセンサスを見いだし難いという非常に困難な問題が伏在していたからであると思います。
私は,この有識者会議の座長に指名されましたとき,この困難な問題を取りまとめる重責に身の引き締まる思いをしたのであります。外部からは,法曹三者の協議でも決まらなかったこの難問が有識者会議で決まるはずはない,あるいは,いずれ解体するに違いないというような声もしばしば聞かれました。
しかし,監獄法の改正は喫緊の課題でありまして,この機会を失しては当分改正が不可能であるということは,我々委員の間で正に一致した認識であったと思うのであります。
私は毎回,祈るような気持ちでこの会議に臨みました。会議の場あるいは会議の外におきまして,皆様の忌たんのない御意見を聞かせていただきました。この会議は2か月という非常に短い期間でありましたが,誠に充実した議論ができたと思います。
もちろん,それぞれの方は学識,識見を持った方でありますので,意見の一致を見なかったところもございますけれども,しかし,治安と人権の調和,均衡を目指すという方向で皆様の御意見を取りまとめ,収れんさせていただくことができました。未決拘禁者の処遇をめぐる問題について,市民の立場に立って,良識を持って現実的に対応をしていただいたということが,この提言という成果となって結実したものと思います。
議事の進行につきましては,いろいろ不行き届きな点,不手際もあったことと存じますけれども,お許しください。改めて皆様の御協力に感謝いたしますとともに,その真しな,中身の濃い御議論に敬意を表する次第でございます。
最後になりましたが,何よりも未決拘禁者の処遇を含め,明治時代に取り残された監獄法の改正が早急に実現されることが期待されるのでありますけれども,法律施行後においても,その実施の状況について点検を怠ることなく,より良き制度へ向けての検討がなされることを期待してやまないのであります。
これをもってごあいさつに代えさせていただきます。皆様,ありがとうございました。