
少年たちの気持ちの代弁者として
大阪少年鑑別所 心理技官

少年鑑別所で採用され、心理技官として現在3年目の女性。毎日様々な少年との面接や心理検査を通じて、非行に至った原因や今後の生活を改善する方法について、少年とも一緒に考える「鑑別」という業務に携わっています。外部の専門家を招いた研修会で事例を報告したり、少年院に研修に行ったりと、心理技官として幅広い知識や経験を得るために、積極的に自己研さんに励んでいる姿が印象的です。いつも礼儀正しく、勉強熱心な女性心理技官が、矯正職員としての仕事に対する思いを語ってくれました。
先輩職員の優しさに支えられて
採用されて間もない頃から現在まで、優しく教えてくれ、困ったことがあればすぐに駆け付けてくれる先輩がたくさんいて、とても心強く感じています。毎年の異動により、施設の雰囲気や人間関係は変わりますが、先輩の優しさや頼りがいのある感じは変わらないなと思っています。
施設の雰囲気や人間関係を良くするためには、職員が部署を越えて交流することが大切だと思っています。他の部署の方に分からないことを気軽に聞けたり、少年について情報共有ができたりすると、「働きやすさ」や「少年についてのより深い理解」につながると思います。私自身、ちょっとしたことでも話し掛けてもらえるとすごくうれしいです。もっと私の部署の業務について知っていただきたいですし、他の部署の業務についても知りたいなと感じています。
少年たちの気持ちの代弁者として
ふだんの業務では、面接の先生という形で少年と関わっています。少年たちは私に対して、最初はカウンセラーのような印象を持っているかもしれません。面接の中で、これまでの人間関係や生活環境について詳しく聞いたり、事件のことを繰り返し尋ねたりするうちに、うっとうしいと感じる少年もいると思います。面接場面での少年との関わり方には、いつも難しさを感じています。自分の気持ちを素直に言葉にできる少年ばかりではないので、話を聞く側である私たちの工夫が必要だと感じています。少年が自分の気持ちを素直に言えるようになれば、非行に走ることは少なくなるという思いを胸に、どのように関われば、少年はこれまで抱えてきた気持ちや苦しみを語ってくれるだろうかということを、日々考え続けています。
また、私たち心理技官が少年と向き合ったからこそ得られた情報を、施設での生活全般を見ている教官の先生にできる限り伝えることも大切だと感じています。面接で知り得た本人の生い立ちにまつわることや、内心つらいと思っていることを職員間で共有することで、少年の理解や、本人に合った関わり方につながると思います。少年鑑別所に収容される少年は、社会の変化に伴い、多様化してきていると聞きます。だからこそ、「元気良くがんばれ」と前向きなことを伝えるだけでなく、まずは丁寧に話を聴き、少年の性格や抱えている問題を理解しようとすることが必要だと思います。
犯罪被害者等の苦しみに触れるために
被害者の中には「加害者が更生するわけがないだろう」、「保護しても仕方がないだろう」と感じている方もいると思います。その一方で、「矯正施設に入って、更生してもらいたい」という思いをお持ちの方もいると思います。置かれた状況によって、様々な意見をお持ちだろうと想像しています。
私自身、日々少年から話を聴き、少年の変化を目の当たりにすると、少年の苦しみに触れ、少年の肩を持ちたくなることも少なくありません。それでも、被害者の方が受けた苦しみや悲しみを理解した上で、少年と向き合うことを大切にしたいと考えています。被害者の中には、私たち矯正職員を加害者側の人間だと捉えて、私たちと会ったり、接点を持ったりすることに抵抗を感じられる方もいらっしゃると思います。被害者の方が置かれた立場に十分配慮しながらも、互いの思いを共有し、理解を深められるような機会を作ること、そして、矯正職員が被害者と加害者双方の思いや立場を理解して処遇に当たることが大切だと考えています。
知ってもらいたい「少年の頑張り」
社会から見たときに、矯正施設のことは、あまり知られていないと思います。悪い人が閉じ込められている謎の施設というような見方をされているのではないかと想像しています。このような漠然としたイメージから一歩進んで、少年や受刑者が更生に向けて努力していることや、そのために私たち矯正職員が熱心に指導していることを知ってもらえれば、少年や受刑者も社会復帰がしやすく、もっと安全な社会になると感じています。
少年の中には、家族が引受けを拒否し、社会に帰る場所がないために少年院を出ることができない少年もいます。帰るべき場所がなかなか見つけられない中でも、少年は、「再び社会で生きたい」という希望を持って過ごしています。そのことを、皆様にもっと知ってもらいたいです。
矯正とは改善更生に関わるしごと
ほとんどの人が、「少年鑑別所」という施設を知らないのではないかと思います。偏見というわけではないのでしょうが、少年鑑別所で働いていると話すと、「非行少年を相手にするのは危険ではないか」と心配されることもあります。20年後には、矯正の仕事は怖い仕事ではなく、改善更生に携わる仕事だということが、もっと社会に認知されるといいなと思います。
そのためにも、自分の仕事に没頭するあまり、他部署のことは関係ないというような姿勢にはなりたくありません。忙しい中でも、職員一人一人が他の部署のことを気に掛けながら、余裕を持って働けると良いですし、そのためのシステム作りが必要だと感じています。私は、先輩方のように、難しいケースも担当できるようになったり、高い質で様々な業務をこなせるようになりたいと思っています。もし家庭を持つことになれば、仕事と子育てを両立しつつ、頑張りたいです。


