法制審議会会社法制部会           第13回会議 議事録 第1 日 時  平成23年9月28日(水) 自 午後1時30分                       至 午後4時35分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  会社法制の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)                議    事 ○岩原部会長 それでは,予定した時刻がまいりましたので,法制審議会会社法制部会第13回会議を開会いたします。本日も,お忙しい中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   まず,事務当局から配布資料の説明をお願いいたします。 ○坂本幹事 まず,配布資料目録と部会資料14を事前にお配りしております。部会資料の内容につきましては,後ほど御説明させていただきます。   また,本日,机上に,「会社法制部会の日程(予定)」というものを追加して配布しております。これには,来年,平成24年2月から5月までの日程の予定を新たに記載させていただいております。それ以降の日程については,追ってまた御連絡いたします。 ○岩原部会長 ありがとうございます。よろしゅうございましょうか。   それでは,本日の御議論をお願いしたいと思います。まず,前回の会議で持ち越しとされました部会資料13の6ページ,「第2 株主名簿の閲覧等請求の拒絶事由に関する論点」から始めたいと思います。まず,事務当局から御説明をしたいと思います。 ○宮崎関係官 それでは,「第2 株主名簿の閲覧等請求の拒絶事由に関する論点」について御説明いたします。当部会における議論を踏まえると,会社法第125条第3項所定の株主名簿の閲覧等請求の拒絶事由のうち,同項第3号を削除すべきであると考えられます。この場合,新株予約権原簿の閲覧等請求の拒絶事由についても,同様の見直しをすることとなると考えられます。   本文は,このほか,株主名簿の閲覧等請求の拒絶事由について見直しを要する事項はあるかを問うものでございます。この点について,当部会において,拒絶事由のうち,第125条第3項第1号及び同項第2号は,不当に広く解されるおそれがあるため,各号の削除を含め,その見直しを検討すべきであるのとの指摘がされています。第125条第3項は,拒絶事由を類型ごとに明確化することを目的として,会社法において新設された規定でございますが,同項を見直すことによって,閲覧等請求を拒絶し得るかどうかの判断等に係る会社の負担が増大することとならないか,検討する必要があるものと思われます。また,第125条第3項第1号及び第2号は,株主等の権利行使が権利の濫用にわたるものであってはならないという基本原理に基づくものであると解されており,各号の具体的な適用範囲については,この点を踏まえて決せられるものと思われます。そこで,以上申し上げた点を踏まえ,現時点において第125条第3項第1号及び第2号を見直すことが適切か,御検討を頂きたいと存じます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。会社法第125条第3項各号に定める株主名簿の閲覧等請求の拒絶事由のうち,第3号を削除することについては,第一読会では,一部には御異論もございましたが,おおむね御異論がなかったと存じますので,第3号以外の拒絶事由を中心に御議論をお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。 ○杉村委員 それでは,経済界の意見を申し上げたいと思います。まず,第125条第3項の第1号及び第2号に関しまして,削除するといった見直しの必要はないと考えております。これらを見直すことによりまして拒絶事由が不当に狭まることにもなりかねず,濫用的な請求を拒絶し得るかどうかの判断に係る企業の負担の増大が懸念されるところであります。   それから,岩原部会長より,第3号を削除することにはおおむね異論がなかったという話もございましたが,この第3号に関しましても,経済界といたしましては,従来述べてきましたとおり,削除することに反対であります。部会資料13にも引用されております東京高裁の平成20年6月12日決定は,競合関係を立証責任の転換事由にする趣旨だと認識をしておりまして,これは一つの妥当な結論ではないかなと考えているところです。第3号の削除までいってしまいますと,この決定よりも更に進んでしまい,競合関係はもう法的な意味を有さないということになってしまいます。繰り返しになりますが,第3号の削除には反対であることを申し上げたいと思います。 ○藤田幹事 部会資料13に載せられております今回の提案は,多分,私の前回の発言を受けて作られたものと思われますので,若干ふえんして説明させていただければと思います。繰り返しもあるのですけれども,もちろん3号の削除それ自体は賛成で,最小限の手当てだけで済ませようとしたら,これだけということになるわけです。それだけでもしないよりましですから,それはそれでいいことだと思うのですが,これまで申し上げてきましたように,現在の規定の問題は,そんなところだけではないと思っています。会社の企業秘密に直結する会計帳簿の閲覧についての拒絶事由をそのままコピーした現在の125条3項は,全体として目的とややずれており,それが二つの方向で問題をもたらしていると思います。一つは,3号は除いても,それ以外の事由についても拒絶事由がやや広くなり過ぎている点で,もう一つは,ちょっと今まで申し上げていなかったのですが,現在と違った観点から拒絶事由が必要な面もあるのではないかという,その2点でずれていると思います。   拒絶事由が広過ぎるほう,つまり,部会資料13に書かれている話ですが,125条3項1号,2号についての問題です。1号,2号は,17年改正前から判例法上認められていた権利濫用のケースを具体化したものであるというふうに言われることがあるのですが,私は,この規定は,それにとどまらず,従来のルールの実質を大きく変えてしまっている可能性があると思います。これらの条文はいずれも帳簿閲覧の拒絶事由と同じ文言を採用したことから,そちらに関する解釈論にどうも引きずられることになります。その結果,平成17年改正までは,株主による株主名簿の閲覧は原則オーケーであるが濫用的な場合は排除するという発想だったのが,今はむしろ積極的に株主の権利に裏付けられ,支えられた請求以外は認めるべきではないという運用のされ方になる可能性が出てきていると思います。実際に,昨年出されましたフタバ産業事件の決定―名古屋高裁の平成22年6月17日決定,これは上告されて棄却されています―は,正にそういう懸念を裏書きするものでした。この事件は,有価証券報告書の虚偽記載があった場合に,被害者である株主が自分と同じ立場の人がいないかということを知りたいという目的で同じ時期に株主になった人を探すということで閲覧請求したものです。この決定がどう言ったかというと,金融商品取引法上の損害賠償請求というのは株主の地位に基づいてするものではない,したがって,これは株主が権利の確保又は行使に関する調査の目的で請求したとは言えないとして拒絶を認めたのです。共同の原告を募るような目的での請求を認めるべきかどうかは,ちょっとセンシティブな問題がありますので,これが議論する場合の具体例としていい例なのか,ちょっと留保したい面はあるのですけれども,ただ,この決定の一般論の判断の仕方を見ると,株主の「権利の確保又は行使」という条文文言が,帳簿閲覧の場合に倣って,かなり狭く解されている気がします。単に,濫用的なものを拒絶するというのではなくて,具体的に会社法上の株主権の裏付けがないものは基本的に駄目という,そういう方向がうかがわれるわけです。仮にこれが定着してきますと,例えば,ある程度株式を保有している人が,更に買い増して支配権を取ろうかというふうなことを考える前段階に,前提として株主構成を知りたいなと思って見るというのも,これも株主権の確保や行使とは言えないということで拒絶できることになるのが自然だと思います。そういったものを全て形式的にはねるという方向でこれを運用されますとしますと,これは明らかに,平成17年改正前の株主名簿の閲覧請求についての拒絶事由の発想―株主名簿の閲覧についての権利濫用の場合には拒絶できる―とは実質が違いますし,そういうことを意図して,こういうふうな文言を選んでルールを作ったかも,かなり疑わしいと思います。そういう意味で,現行法の文言には問題あると思いますし,現にその懸念どおりを裏書きするような運用があるのではないかということで,見直したらどうかというふうに申し上げてきたところです。もちろん,何か条文がないと必要な場合にも拒絶してもらえないから不安だという会社の側の気持ちは分かりますので,1号,2号を単純に削除するのがいいとは言えないかもしれません。それならそれで,帳簿閲覧の拒絶事由とは違った,より適切な文言で表現して不安ないし不安定さを解消するということでしたら,異論はございませんが,とにかく,帳簿閲覧の規定をそのままコピーした文言を残すことについては十分慎重に考えたほうがいいのではないかと思っております。   もう一つの逆の方向の話は,簡単に済ませますが,これは,株主名簿の拒絶事由が狭過ぎるのではないかという面もあるということです。つまり,現在の条文は,株主の個人情報への配慮が非常に弱いのですね。4号,5号あたりで,名簿屋への対処という形で,個人情報への配慮が多少は表れているようなところがあり,その限りでは少しは扱っていると言えなくもないですけれども,しかし,これも正面から出てきているわけではない。個人情報の保護の観点は,濫用的な閲覧請求の防止ということとは別次元の話で,濫用にならない場合,極端な話,株主権の確保・行使の目的と言える場合であっても,全ての株主の住所まで見せる必要があるのですかという話で,現在の株主名簿の閲覧制度がきちんと対応しない問題だと思います。   したがって,今申し上げた両面において,現在の株主名簿の閲覧請求に関する条文は,かなり根本的なところで問題を抱えておりまして,問題を放置しないほうがいい。もし見直すのであれば,3号だけ削除するというよりは,もうちょっと根本から考え直したほうがいいような状態なのではないかというふうに考えております。 ○前田委員 藤田幹事の御意見に賛成です。今御指摘がありましたように,現在の1号,2号の規定は,濫用的な行使を過不足なく抑えるためには,表現として,まずいのではないかと思います。また,1号と2号は,その相互の関係も非常に分かりにくいものになっているように思います。会社法制定前から濫用的な行使であると一般的に解されていた事由を,過不足なく表す表現としては,例えば,代表訴訟の濫用的な提起を抑える規定,847条1項ただし書の「当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合」というような形にするほうがふさわしいのではないかと思います。 ○岩原部会長 ほかに何か御指摘ございますでしょうか。   特にございませんか。それでは,この株主名簿閲覧請求の拒絶事由につきましては,経済界からは3号の削除ということについて御懸念が示されましたが,それ以外の委員,幹事の方からは特に御意見はございませんでした。恐らく3号の削除には賛成される方が多いのかと思います。   そのほかに,今,藤田幹事,それから前田委員から御意見がございましたように,それ以外の各号についての表現の仕方については,見直す余地があるのではないかという御意見があったということでありますので,今後,そういう点について,事務当局のほうで更に御検討いただきたいと思います。よろしいでしょうか。   それでは,部会資料13の審議はこれぐらいにさせていただくことにいたしまして,部会資料14に移りたいと思います。個別の事項について御審議を頂く前に,中間試案のたたき台に関しまして,事務当局から説明をしていただきたいと思います。 ○坂本幹事 それでは,各論に入ります前に,総論的なところを御説明させていただきたいと思います。まず,今の部会資料13までの御審議をもちまして,第二読会の御審議を終えていただきましたので,ここからは,中間試案の取りまとめのための御審議をお願いしたいと思います。事務当局におきまして,第一読会及び第二読会における議論を踏まえまして,中間試案のたたき台を作成いたしましたので,これに基づきまして御審議いただきたいと思っております。当部会におきましては,各論点について様々な御意見を頂戴いたしましたけれども,特に御意見の分かれた事項に関しましては,部会資料14にもございますとおり,A案,B案等と併記するなどして,中間試案を取りまとめていただいて,パブリック・コメントの手続に付したいと考えております。   本日は,主に,中間試案のたたき台の前半部分といたしまして,企業統治の在り方に係る見直しに関しまして,部会資料14のような内容でパブリック・コメントの手続に付すことについて御議論いただきたいと思います。したがいまして,各案の賛否自体については,いろいろと皆様御意見がおありかと思いますけれども,今申し上げましたように,本日は,中間試案という形で,こういうものを世に示すということでよろしいのかどうかという観点を中心に御議論いただければと思いますので,よろしくお願い申し上げます。   部会資料14の冒頭に(前注)というのを書かせていただいておりますけれども,このたたき台におきましては,当部会でこれまで必ずしも具体的な案が示されていなかった事項,特に数字の部分が多いかと思いますけれども,そこにブラケットを付した上で,考えられる案ということで,部会の御議論も踏まえながら,事務当局で考えた案を仮に記載させていただいております。また,たたき台の内容のうち,特に必要と思われる事項につきましては補足説明を記載しております。先ほど,複数の案を掲げているということを申し上げましたけれども,その順番につきましては,現行法を大きく変更するものから順番に並べております。したがいまして,例えば,A案からC案まで並んでいるものにつきましては,現行法の規律を最も大きく変えるというものをA案,その次に変える,中間的と申しましょうか,そういうものをB案,現行の規律を見直さないというものをC案というふうに,そういう順番で並べております。   なお,中間試案につきましては,法務省民事局参事官室の責任におきまして補足説明を別途作成して,中間試案をパブリック・コメントの手続に付す際には,その補足説明も併せて公表させていただく予定でおります。部会資料14に記載した補足説明は,飽くまで部会資料14の補足説明ということでございまして,これがそのまま中間試案の補足説明になるわけではない―かなり流用させていただくところはあろうかと思いますけれども―ということに御留意いただければと思います。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。中間試案の作成に当たっての本日からの審議の仕方についての説明をしていただきましたが,ただ今お話しいただきましたように,A案,B案,C案というふうに並んでおりますが,その中のどの案がいいかという是非ではなくて,こういう形で中間試案を一般に,世間に公表するということの是非を中心に御議論いただきたいということでございますので,その趣旨をよく踏まえて御審議をお願いしたいと思います。   それでは,部会資料14の第1の「1 監査役会設置会社における社外取締役の選任の義務付け」について,事務当局から説明をしていただきます。 ○塚本関係官 それでは,「第1部 企業統治の在り方」の「第1 取締役会の監督機能」のうち,「1 監査役会設置会社における社外取締役の選任の義務付け」について御説明いたします。当部会においては,監査役会設置会社における社外取締役の選任の義務付けの当否について意見が分かれたことを踏まえ,本文において,一人以上の社外取締役の選任を義務付けるものとするA案と,義務付けはしないものとするB案の両論を併記しています。A案の本文については,当部会における議論を踏まえ,社外取締役の選任の義務付けの対象とする会社を,監査役会設置会社のうち,会社法上の公開会社であり,かつ大会社であるもの,すなわち,会社法上監査役会を置かなければならないとされているものに限定しています。他方で,社外取締役による監督の必要性の程度等によって,社外取締役の選任を義務付ける会社を更に限定することについて検討する余地があることから,A案の(注)を記載しております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。部会資料14では,監査役会設置会社において一人以上の社外取締役の選任を義務付けるというA案と,義務付けはしないというB案がございますが,A案の(注)を含め,皆様の御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○静委員 まず,本題に入ります前に,中間試案全体のことについて一言だけ,お願いを申し上げたいと思います。中間試案につきましては,是非英訳文を御用意いただけないかということでございます。我が国の上場会社の株式というのは,大体もう4分の1を超えて,私どもの統計では26.7%が海外投資家の保有になっております。彼らは,言わば日本の上場会社の実質的な筆頭株主ということですので,紛れもなく会社法の重要な利用者の一人ということだと思います。日本の会社法を良くしたいと思うのであれば,彼らの声にも耳を傾けないという手はないと思いますので,事務当局には少なからず御負担をお掛けするかもしれませんけれども,是非御検討いただきたいと思いますので,よろしくお願い申し上げます。   その上でということで,本題のほうに一言申し上げさせていただきたいと思います。私どもでは,この部会の中で,上場会社を念頭に置きまして,不特定多数の少数株主が安心して投資をできるようにということで,社外取締役の設置を義務付けるべきだということを申し上げてまいりました。その考え方につきましては,A案にしっかり反映されていると思いますので,基本的には,この形で公表されることについては異論はございません。ただ,その上で1点だけ申し上げますと,A案の(注)のところに,有価証券報告書の提出会社限定という考え方が記載されてあります。この点につきましては是非,A案,B案と並べて,独立した案として追加をしていただけないかと思います。と申しますのは,A案を採用いたしますと,公開会社かつ大会社ということを対象にしておりますので,現に不特定多数の少数株主がいる会社はもちろんのこと,そういう可能性があるというだけの会社でもこの範ちゅうには入ってくるでしょうし,その数というのは決して少なくないと思われます。現に有価証券報告書提出会社のような不特定多数の少数株主がいる会社とそういう会社を比べますと,義務付けの意義ですとか必要性というのは大分違うということがあろうかと思います。したがいまして,この二つにつきましては,それぞれ別々の案として世に問うという形にしておかないと,今後の議論に本当に参考になる意見が頂けない可能性があると思いますので,是非この(注)の内容を独立した案として追加していただくということをお願いしたいと思います。 ○岩原部会長 まず,前半の要望は,事務当局に関わりますので,事務当局からお願いします。 ○坂本幹事 まず,英訳文の点,御指摘ありがとうございます。ただ,御指摘ではございますけれども,お金の問題等もございますので,正直,なかなか難しいところかと思います。東証さんのほうで,もしそういう御努力を頂けるのであれば非常に有り難いと思う次第でございます。 ○静委員 もし御協力を頂けるのであれば,ちょっと考えてみたいと思いますので,後で御相談させてください。 ○塚本関係官 今,静委員から頂きました(注)との関係ですけれども,今の記載振りが不明確だったかもしれませんけれども,先ほど読み上げの際にも申し上げましたとおり,この(注)の位置付けといたしましては,本文において括弧書きで,公開会社で,かつ大会社と書いておりますが,それを更に限定する趣旨でこの(注)を書いておりまして,括弧書きの中で書かれている会社と有価証券報告書提出会社を別個ばらばらで書いているわけではございません。したがいまして,静委員の御指摘と方向性は同じかと思っておりまして,今のこのA案の(注)という位置付けでよろしいのではないかと思っております。 ○上村委員 今議論になりました(注)のところですけれども,私は,有価証券報告書提出会社をベースにして考えるというのはいいと思うんですけれども,それだからといってそれに限定すべきとは考えておりません。大会社への規制水準を下げてはいけませんので。ですから,その辺の書き方はちょっとお考えいただけたらと思います。 ○太田委員 中身の当否を問うのではなく,その議論の仕方をというふうに言われるので,大変コメントの仕方が難しいので,少し率直に意見を申し述べたいと思います。A案の出し方なんですが,括弧書きにありますように,公開会社かつ大会社,あるいは上場会社と,こういうふうに限定できるのか,していい理由は何か,そういうことについて,私ども日本監査役協会は多少の問題意識を持っております。簡単に申し上げますと,ガバナンスがある程度,上場規則だとかいろいろなことできちっとできている会社は,実はそう大きな問題ではなくて,そうではない,そうした仕組みができていない会社にこそ問題があるのではないかということです。後ほどの監査体制の充実というところでもまた触れたいと思いますが,大会社以外,それが即中小という言い方が妥当かどうかは分かりませんが,中堅だとか,そういうところにいろいろな問題が実は潜んでいて,過去,そういうところでの企業不祥事が引き金になって各種の法制の強化につながってきたのではないかと思うものですから,このように限定する場合の理由といいますか,意味合いがなかなか分かりにくいのではないかなと思いますという点が1点。   もう1点は,この社外取締役の義務化,選任の義務付けということですけれども,これも従来から指摘したところかと思いますが,東証の98%の会社が採用している監査役会設置会社,これが日本の実態を表しているわけでありまして,ここのガバナンスを弱める,又は,その懸念があってはならないと思うのです。つまり,社外取締役の義務化ということと社外監査役の削減ということが,言ってみれば同時に起きる,トレードオフは,是非避けるべきではないか思っております。   これ以上言いますと,賛成か反対かのところにだんだん近付きますので,これでやめます。 ○岩原部会長 前半で御指摘のありました,なぜ大会社に限定してこういうA案を提案しているかというような理由付けについては,先ほどの事務当局から説明ございましたように,中間試案の補足説明の中で,その趣旨を誤解のないように,書いていただくということになるかと思います。そういう場合に,太田委員の御指摘のような点も配慮した説明がなされることになるかと思います。よろしいでしょうか,ほかに。 ○安達委員 中間試案の出し方,あるいは,たたき台の出し方ということであれば,これ自体に関しては,特に異論はございません。公開会社であり,かつ,大会社に限るということになっていますので,私の立場から言いますと,未公開のベンチャー企業は,対象にならないということかと思います。   ただ,この中間試案のたたき台を変更するという意味ではありませんが,私どもの要望としてお聞きいただきたいことは,上場申請するに当たって,通常は,申請期間そのものは数か月ということになっていますけれども,実態としましては,2年前又は3年ほど前から準備を開始して,しかるべき証券会社等々の指導を受けることになります。仮にこういう案が通った場合,当然,上場審査として,2年,3年前から社外取締役の義務付けが実質的に,前倒しで適用されることは必至です。将来起こることになりますので,これはやはりベンチャー企業にとっては非常に負担が大きくなるということ,これだけは皆さんに是非御理解いただきたいと思っております。 ○岩原部会長 それは,上場審査の在り方に関わりますので,多分そういう場合には,証券取引所のほうで審査する際に,今おっしゃったような御意見を考慮した実務の取扱いがなされることになるのではないかと理解しております。ほかに御意見ございますでしょうか。 ○藤田幹事 先ほどから出ている,(注)の扱いのお話ですが,私も,静委員と同じように感じておりました。それは,事務当局の説明を伺った後でも同じでありまして,併記するしかないということ自体もありますが,どういう配慮で考え方が分かれているかというのが分かるような形で,提示できたほうがいいなとは思っております。A案の本文で書かれているこの要件の立て方と(注)の要件とは,そもそも発想が相当違いますので,これをこんな形で並べるのは,考え方の提示の仕方としてミスリーディングではないかというような気がします。仮に最終的に両方を重畳的に要件として課すという選択肢を採ることがあるにしても,そういうふうに思います。  そもそも社外取締役の設置の強制という提案がどういうことを狙いにしているのかということですが,もし,これが多数の一般投資家が存在するような会社を想定し,そういうタイプの会社のガバナンスについては,独立性のあるボードが必要だと考えているということであれば,そういう性格を一番よく反映するのは,有価証券報告書提出会社とか上場会社とか,そういう要件だと思うのですね。公開会社・大会社というのはまたちょっと別の観点でして,こちらを要件とするなら,社外取締役の強制設置の趣旨も変わってくるかもしれない。まして両者を重畳的に適用するというのでは,社外取締役の設置を強制する論理が,更に分かりにくくなってくる。例えば,株式の譲渡制限はしていないが余り多数の株主がいない,事実上閉鎖的な会社で,しかし,規模は大きい会社というのは,先ほどから申し上げている,社外取締役の設置強制の趣旨からしてどう扱うべきかということこそが,本当は考えなければいけない本質的な問いですが,今の提案のような問題提示のされ方をされると,そういうふうに問題を正面から考えなくなってしまうということが問題だと思います。  最後に,まさかとは思うんですが,公開会社かつ大会社という要件の立て方を掲げる原案の背景に,金融商品取引法上の概念によって会社法の適用範囲を画することによる抵抗感ということがあるのだとすれば,そういうことで物は考えないほうがいいと思います。今回の法制審議会への諮問の背景の一つは,公開会社法制の構築ということだったと理解しておりますし,いずれは金融商品取引法と会社法の相互乗り入れ,規制の相互乗り入れという方向に行かざるを得ないと思います。そういうことがあるとすると,これを機に,有価証券報告書提出会社とか,あるいは場合によっては上場会社とか,そういった概念が会社法に出てくること―これまで余りそういうのはなかったのですけれども―にも慣れるべきで,そういう意味からも,公開会社とか大会社ではない要件も積極的に取り入れることを考えてもいいのかもしれません。  いずれにせよ,考え方が,そのA案の本文と(注)では根本的な考え方の背景が違いますので,やはり分けて示したほうが議論を混乱させないと思います。 ○中東幹事 私も,静委員,藤田幹事の御意見に賛成です。有価証券報告書提出会社であっても大会社でない会社もあるわけですので,三つ並べたほうがフィロソフィーも分かりやすいと思います。 ○岩原部会長 よろしいでしょうか。そうすると,要するに,有価証券報告書提出会社ということを要件にするというのは,A案のベースにある考え方と違う考え方,言わば質的に異なる考え方をベースにした案であるから,それは独立した案にしたほうがいいというのが,静委員,藤田幹事,そして中東幹事の御意見だったかと思いますので,最終的な中間試案をまとめるまでに,そういう御意見がかなりあったということで,事務当局に更に御検討いただきたいと思います。私も,そういう面があるかと思います。韓国は,このような問題を最初に証券取引法に規定して,それを最近,会社法の中に織り込む形にしたわけでありまして。やはりそういった問題はありますので,その点,事務当局に御検討いただきたいと思います。よろしいでしょうか。ほかに何か,この第1の1について御指摘いただくこと,ございますでしょうか。   よろしいでしょうか。特になければ,では,今の御指摘いただいたA案の(注)のところの表記の仕方については更に事務当局に御検討いただくということにして,次に,第1の「2 監査・監督委員会設置会社制度」に移らせていただきたいと思います。事務当局から説明をお願いいたします。 ○塚本関係官 それでは,「2 監査・監督委員会設置会社制度」について御説明いたします。2は,当部会における議論を踏まえ,社外取締役の機能を活用するための方策として,新たな機関設計を認めることとして,監査役並びに指名委員会及び報酬委員会を置かず,社外取締役が構成員の中心となる監査・監督委員会が監査等を担う制度を創設するという提案でございます。(前注)のとおり,このような新しい制度の呼称については,この委員会の権限等とも関連して,なお検討するものとしています。   まず,「(1) 監査・監督委員会の設置」についてですが,①は,定款の定めによって,監査・監督委員会を置くことができるものとし,②から④までは,監査・監督委員会設置会社の機関設計について,取締役会及び会計監査人を必置の機関とし,監査役並びに指名委員会,監査委員会及び報酬委員会を置かないものとしています。なお,③に関しまして,任意に指名・報酬委員会のようなものを設けることは妨げられませんが,そのようなものを設けたとしても,委員会設置会社になるわけではないという趣旨で,「置かないものとする」としております。また,⑤及び⑥は,監査・監督委員会設置会社には,執行役を置かないものとし,取締役が監査・監督委員会設置会社の業務を執行するものとするとともに,これに関連して,監査・監督委員会の委員でない取締役は,使用人を兼ねることができるものとしています。   次に,「(2) 監査・監督委員会の構成等」についてですが,①及び②は,監査・監督委員会は,3人以上の取締役で組織するものとし,また,当部会における議論を踏まえ,委員の過半数は,社外取締役でなければならないものとしています。③は,監査・監督委員会においては,委員会設置会社の監査委員会と同様に,いわゆる内部統制システムを利用した監査が行われることになると考えられるため,(注2)において,監査・監督委員会設置会社は,大会社であるかどうかにかかわらず,取締役会において,内部統制システムの整備について決定しなければならないものとした上で,本文において,常勤の監査・監督委員の選定の義務付けはしないものとしています。もっとも,任意に常勤の監査・監督委員を選定することもあると考えられるため,(注1)において,その場合には,事業報告に,常勤の監査・監督委員に関する事項を記載するものとすることが考えられます。④は,監査・監督委員について,委員会設置会社の監査委員の兼任禁止と同様の兼任禁止を定めるものです。   「(3) 監査・監督委員会の経営者からの独立性を確保するための仕組み」については,当部会における議論を踏まえると,監査・監督委員の選解任の方法に関して,監査・監督委員である取締役をその他の取締役とは別に株主総会で選任する株主総会選任型と,監査・監督委員を取締役会の決議によって選定する取締役会選定型の二つの方法が考えられることから,A案及びB案の両論を併記しています。A案は,現行法上の監査役の独立性を確保するための仕組みを参考とした株主総会選任型の仕組みを定めるものです。これは,監査・監督委員の地位と取締役の地位とを一体のものとし,両者は切り離さないということが前提となります。なお,当部会において,監査・監督委員である取締役の独立性を確保する観点から,監査・監督委員である取締役の任期は,その他の取締役の任期よりも長くすべきであるとの指摘がされています。そこで,⑦は,監査・監督委員である取締役の任期を,差し当たって2年とし,その他の取締役の任期を1年としています。これに対して,B案は,監査・監督委員は,取締役会の決議によって選定・解職するという取締役会選定型の仕組みを定めるものです。B案を採る場合には,監査・監督委員会の独立性を更に確保するという観点から,取締役の選任について,①の(注1)のような規律を設けることについて,検討する余地があるものと思われます。   「(4) 監査・監督委員会等の権限」については,監査・監督委員会は,委員会設置会社の監査委員会が有する権限と同様の権限を有するものとし,また,各監査・監督委員は,委員会設置会社の各監査委員が有する権限と同様の権限を有するものとしています。さらに,社外取締役には,経営全般の評価に基づき,取締役会における経営者の選定・解職の決定に関して議決権を行使することなどを通じて経営者を監督する機能,すなわち,経営評価機能が期待されることに鑑み,監査・監督委員会が選定する監査・監督委員が,株主総会において,監査・監督委員である取締役かその他の取締役かを問わず,取締役の選任等について意見を述べることができるものとすることについて検討する余地があることから,(注1)を記載しています。また,社外取締役に期待される利益相反の監督機能のうち,会社と経営者との間の利益相反を監督する機能に鑑み,会社と取締役との利益相反取引について,監査・監督委員会が事前又は事後に賛成した場合に,取締役の任務懈怠の推定規定である会社法第423条第3項を適用しないものとすることについて検討する余地があることから,(注2)を記載しています。   最後に,「(5) 監査・監督委員会設置会社の取締役会における業務執行の決定」については,監査・監督委員会設置会社の取締役会の監督機能を確保する観点から,取締役会は,その決議によって,①から⑥に掲げる事項の決定を取締役に委任することができるものとしています。もっとも,⑥の「その他の業務執行」に関しては,委員会設置会社と異なり,指名・報酬委員会がないことを考慮して,(注)にあるとおり,取締役に決定の委任をすることができる事項の範囲について株主の意思を問うものとすることも,検討する余地があるものと思われます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。部会資料14におきましては,監査・監督委員会設置会社制度の具体的な制度設計を記載しておりますが,その中で,「(3) 監査・監督委員会の経営者からの独立性を確保するための仕組み」については,株主総会選任型のA案と取締役会選定型のB案が併記されております。これらの案を含め,(1)から(5)まで,かなり論点が多いのですけれども,これを一括して御意見を頂きたいと思います。いかがでございましょうか。 ○太田委員 まず,この監査・監督委員会の構成についてなんですが,率直に申し上げて,非常勤役員だけとするというのが本案になっていまして,脚注で,それは義務付けないけれども,常勤者については置くことはできると,こういう建て付けになっているわけですが,これで本当にいいのだろうか疑問です。その理由を2点ほど申し上げたいと思います。実際に監査の現場におきましては,やはり常勤の監査委員を配置するケースがありますし,常勤の監査委員に加えて,委員の方々を補助する内部監査担当の取締役の配置があったりしております。実証的に申し上げますと,実質的に監査の効率性を上げるという観点から,必ずしもそれが義務付けられていない委員会設置会社方式を採用されている企業の現状を見ても約7割の企業が,そういう補佐する役職,執行役員又は取締役であったりと形式は様々ですが,そうした補完的な措置を採っているという実態があります。こうした実態を考えると,それを自由設計でよろしいというふうにするのはいかがなものかなと思います。私の提案の1点目は,常勤者を自由設計ではなくて,それを義務付けるということです。常勤者の配置を義務付けるということを,本案で出されるのが実態に即した議論になるのではないかと考えます。無論,そのことがコスト論に及ぶとか,そういう論議があることは承知しておりますが,出し方としていかがかなというのがまず1点目のところであります。更に加えますと,法で義務付けなくても,自然に落ち着くべきところに落ち着くのではないかという御意見も当然あろうかと思いますが,少数といえども,やはりガバナンスに問題のある会社にあって,これを放置していいというふうにはならないだろうと思いますので,常勤の監査委員の設置を法が要請するという立場を明確にする提案の仕方が望ましいのではないかと,こんなふうに考えているということであります。   2点目ですが,半数以上か否かという配置数の考え方の問題ですが,これも実態論からいいますと,大会社におきましては大多数が,正確なちょっとデータはお示しできないんですけれども,過半数の社外監査役が設定されているケースが多いと思われます。協会の粗い調査におきましては,大会社以外におきましては大体半数の,つまり過半ではない,社外監査役の配置というのが実態だろうと理解しているものですから申し上げております。つまり,監査役制度から,この新制度,新類型への移行ということを企図するのであれば,過半数に必ずしもこだわる必要がないのではないかなと思うところであります。 ○逢見委員 私も,太田委員の1点目の論点について,同様の意見を持っております。監査・監督委員会を有効に機能させるためには,3人以上で組織する監査・監督委員会メンバーが,全員非常勤で良いのか疑問があります。この非常勤という意味合いが非常に曖昧で,例えば取締役会の日しか来ないような場合でも非常勤として役割を果たしているとすると,果たして監査・監督がきちんと機能していることになるのか疑問です。3人以上で組織するならば,少なくとも一人は常勤とすべきで,それが有効な監査機能を得るための要件になるのではないかと思います。したがって,最初から常勤の義務付けはしないという建て付けではなくて,少なくとも1名は常勤とするという提案をすべきではないかと思っております。 ○中原幹事 今,太田委員と逢見委員から御意見があったところですが,私は,事務当局の案を基本としてスタートすべきではないかと思っております。と言いますのは,現行法にも既に常勤という概念はあるのですけれども,実はどのようなケースが常勤に該当するのかという点につきましては,複数社掛け持ちされていらっしゃるとか,あるいは,必ずしも営業日に全部出勤されていらっしゃらないけれども常勤であるという扱いをされていることも伺ったことがございまして,したがって,もちろん法の精神自体はよく分かるのですけれども,こうした概念を要件として要求するということを,広く広げていくことがいいのかどうかという点につきましては,消極に解さざるを得ません。それから,その監査・監督のやり方というのは,内部統制システムを構築した上で,多様な方法があり得るわけですし,何も常勤を義務付けないからといって,制度として非常勤を原則とするということではないわけですから,私は,事務当局の提案が一つのスタート地点としてよろしいのではないかというふうに考えております。 ○杉村委員 この点に関しましては,中原幹事が発言されましたように,自社の内部統制の仕組みなどと兼ね合わせてどのように考えるか,各企業の選択に委ねるべきではないかと存じます。まずは部会資料14の提案のとおりに出されるのがよろしいのではないかと思っております。   それから,先ほど太田委員より,社外取締役の監査・監督委員は過半数ではなく半数以上とする,という議論がありましたが,経済界の立場としましても,監査役会設置会社からの移行を考えた場合には,検討すべき選択肢かと思っております。例えば,監査役会設置会社では,監査役を3名以上選任することとなっておりますが,実際は5名や6名の監査役が選任されており,また,5名の監査役のうち3名を社外監査役とされている会社も結構あると思います。その場合の社外監査役を3名選任する考え方ですが,企業の実務からいえば,万が一辞任等により社外監査役に欠員が生じた場合でも,すなわち,5名の監査役のうち3名が社外監査役であったのが,4名の監査役のうち2名が社外監査役となっても,半数以上の社外監査役は確保できるというセーフティガードの下での人数設定であります。監査・監督委員の過半数を社外取締役とすることとなれば,今の論理では間に合わなくなり,5名の取締役を選任する場合は4名の社外取締役が必要だという話になります。新しい制度への移行を促進することを考えるのであれば,半数以上という選択肢は検討の余地があると考えております。恐らく過半数と書かれた趣旨は独任制との兼ね合いかと思いますが,もし半数以上ではデッドロックになることを心配するのであれば,重要な監査・監督の事案に関しては社外取締役の判断を優先するというように,何かほかの工夫によりまして,過半数という人数のハードルを少し下げるということも,検討の余地がある提案だと思っております。 ○前田委員 常勤の委員を置くべきかどうかについては,先ほど中原幹事からも御指摘がございましたように,この監査・監督委員会というのは,内部統制システムを利用した組織的な監査を行うことが予定されていると思いますので,もちろん置くことは禁止はされませんけれども,置くことを義務付けることまでは必要ない,委員会設置会社に合わせるということでいいのではないかと思います。   それから,人数に関しては,社外取締役は半数では足りないのではないでしょうか。確かに監査役会では,社外監査役は半数で足りることになっていますけれども,それは,杉村委員御指摘のように,監査の方法として独任制を前提にしているからだと思います。つまり,監査役会というのは独任制を前提として,情報の共有とか役割分担をするための存在にすぎないのに対しまして,この監査・監督委員会というのは,正しく内部統制システムを利用した組織的な監査を前提にしますので,委員会の意思決定で社外取締役の意見が通らないということでは具合が悪いのではないかと思います。杉村委員がおっしゃったような工夫の余地はあるのかもしれませんけれども,審議の過程も含めた意思形成の全体において社外取締役が主導権を取れるよう,過半数であるということは,やはり確保しておくべきではないかと思います。 ○三原幹事 常勤のお話もありました。また,パブリック・コメントの出し方という問題もありました。まず,お話がありました常勤のところからお伝えしたいと思います。本日は,パブリック・コメントとしてどう国民にお聞きするかというお話ですから,常勤を置くべきかどうかという議論としては,常勤の監査・監督委員を義務付けるものとするという案と,義務付けないものとするという案をA,Bとして聞くか,それとも今のまま聞くかという,聞き方の問題をどうするのかということだと考えます。事務当局でどう聞くかの案を作っていただくことを今議論しているものと思っておりまして,A案とB案というふうに(2)の③を分けるか分けないかということだと思います。これだけ議論があるすると,どうも結論として分けたほうがいいのではないかなと思います。なぜかというと,そもそもこれは,監査役会設置会社からの移行を考える考え方,つまり監査役会設置会社との連続性を考えるという考え方と,対局に,委員会設置会社との平仄を考える考え方と,二つがあって,どちらの案に,あるいは,どちらの現行制度に近付けるのかということがあります。この点からすれば,常勤者については,監査役会設置会社では常勤者は必要ですから,やはりそちらのほうに近く考える方もありますし,委員会設置会社の監査委員会では常勤は法的には必須でないのでそれに近付けて考える方とがあり得ます。ここは,この部会でもこれだけ分かれるわけですから,ここは広く意見を聞くということもあり得るというのが私の意見でございます。   それから,この2の監査・監督委員会設置会社制度は,1の社外取締役の選任の義務付けの場合と違って,A案,B案という選択肢にはなっておりません。そもそも監査・監督委員会設置会社制度を設置することが前提となっていて,2のうち,(3)だけがA案,B案になっていますけれども,全体として,監査・監督委員会会社については設置するものとするというA案と,設置しないものとするというB案があって,設置するものとする場合には内容をいかにするかという議論になるのでしょうか。それとも,これは(3)のA案,B案だけしか選択にならないのでしょうか。パブリック・コメントの出し方という見地で,どうして1と2が違うのかを教えていただきたいと思います。   それから,もう一つ。(5)のところに飛んでしまいますが,(5)も,先ほど申し上げた現行の監査役会設置会社からの移行を考えての連続性を考える立場と,現行の委員会設置会社のほうから眺める考える方とがあります。(5)につきましては,現行362条4項と同じように,取締役会が普通にいろいろなものを決めるという考え方がまず一つあって,それと,この①から⑤のような委員会設置会社と同様とするという考え方があって,この二つが,いずれがA案かB案かは構いませんが,二つを並べていただくという聞き方は,少なくとも質問の出し方としてはあるのではないのかなと思っております。   もしかしたら後ほど細かいところを追加で発言させていただくかもしれませんが,パブリック・コメントの出し方論ということで,発言は一旦ここまでとさせていただきます。 ○岩原部会長 それでは,ただ今の三原幹事の御意見の中で,第2点は,事務当局の案の作り方に対する御質問ですので,それについて事務当局から答えていただきたいと思います。 ○塚本関係官 2の監査・監督委員会設置会社制度について,そもそもこれを創設するか,創設しないかという出し方をしていないのは,第一読会及び第二読会における議論で,監査・監督委員会設置会社制度の導入に反対であるという強い御意見はなく,監査・監督委員会ないしは監査・監督委員の独立性がきちんと確保されるのであれば,導入し得る制度であるという御意見が多かったためです。そのため,2は,このような立て方をした上で,(3)が正に肝となるものとして,A案,B案を掲げております。 ○岩原部会長 今の御説明は要するに,委員,幹事の間でも比較的異論のなかった点については,既にそれを前提にして,A案,B案というふうに分けずに記載している,意見の相違があった点について,A案,B案というふうに案を分けて提案している,そういう御説明ですね。そこの点を含めて,御指摘いただくことがあれば,ほかに。 ○中東幹事 私も,三原幹事と同じ問題意識を持っております。強い批判がなかったのは確かにそうだと思うのですが,塚本関係官がおっしゃったように,独立性が確保されるのであれば等々の前提となる条件がやはり付されていたはずです。今回も,今までお話を伺ってみまして,いろいろな御発言,御意見が出されています。例えば常勤の話にしても,置かないのであれば,そもそもこういう制度は入れるべきではないと,こういう議論も当然あり得るものとして,我々は議論してきたと思います。どんなものでも,とにかく監査・監督委員会を入れるのだと,こういう形での意思が,皆で固まっていたとは,少なくとも私は認識をしておりませんでした。   委員会設置会社あるいは監査役会設置会社と同様のガバナンスが効くことが前提となって,個々の会社の個性に合った,より使いやすい機関設計があるのであれば,それは導入に値するということだったのではないかと思っています。もし軽いガバナンスにするという中身になってしまうのであれば,これはよろしくないという議論もあり得ると理解しています。例えば,上場会社の中でも,ここだけはガバナンスが軽いですよねという評判が立つと,上場会社というもの自体への評判が損なわれてしまう懸念があります。東証の現状のガバナンス体制を採用している理由に関する開示にしても,ガバナンスが効かない体制にしましたと開示するわけにはいかないわけですし,あるいは逆に,監査役会設置会社のままですと,なぜなら監査・監督委員会は軽いガバナンス形態だから,私たちは採りませんなどと開示されても困ります。そういう意味で,一定の前提があったと思いますので,中身がこれだけ議論がされ,定まっていない以上は,やはり最初の段階で,三原幹事がおっしゃったように,入れるかどうかという問いの立て方をしていただくのがよいと思っております。 ○坂本幹事 御指摘ありがとうございます。今,正に中東幹事に御指摘いただいたとおり,監査・監督委員の独立性が確保され,きちんとガバナンスが効いた制度にするということは,皆さんの当然の前提,共通認識だと思っております。その上で,では,この制度を導入するとして,どのような制度設計にしていけばそういうガバナンスが効いた制度になっていくのかということが議論の中心であって,これについて今まで御議論いただいてきたというところでございます。そこから翻って,制度内容によっては,反対だという御意見もあり得るかもしれませんが,ただ,当部会での御議論は,創設するということで,では,どういうふうに独立性を確保し,ガバナンスが効いた制度にするように,制度を設計していきましょうかという観点からの御議論だったのではないかと考えておりますので,こういう整理にさせていただいている次第でございます。 ○田中幹事 これまでの御議論を伺っていた限りでは,監査・監督委員会を置くこと自体に反対という意見はなくて,置くときの組織設計のところで意見が分かれているというふうに理解しました。そうだとすれば,B案で置かないものとするという提案を置くよりは,むしろ置くという前提で,組織設計について,A案,B案といった形で今よりももう少し選択肢を詳しく提示するほうが,この部会の現在の議論の方向を示すという点では,いいのではないかと思いました。組織設計についてですが,どういう組織がしっかりしていて,どういう組織がしっかりしていないと言えるかは,かなり人によって見解が違っているだと思いまして,例えば,海外ですと,監査委員会といったら,みんな独立取締役でなければいけないと,そういう方向になるわけですね。ただ,それが,本当に全員が独立取締役であるほうが監査の実効性が高まるという実証的な支持に基づいて主張しているかというと,疑問があると思っております。ですから,常勤の人がいたほうがむしろいいのだと,そういう人は会社の利益のために一生懸命監査するインセンティブがあるんだということもあり得ますし,そういう実例もあるかと思います。ですから,しっかりした組織にしなければならないのはもちろんですが,何がしっかりした組織なのかということも含めて見解が分かれているのですから,その意味でも,両論を併記したほうがいいのではないかなと思います。   その上で,私が思うのは,今までの御議論でいうと,監査・監督委員会というのが,監査役会がある中で,その監査役は取締役でもあって取締役会で議決権を持つという,そういうタイプと,現在の委員会設置会社からスタートして,その監査委員会に近い制度という,二つのコンセプトがあるわけですから,そういう実際の議論を反映させた形で両論併記されるのがいいのではないかと。現在の監査役会から出発するのであれば,社外取締役は半数以上であるが常勤がいると,そして独任制であるといった仕組みが自然に考えられることになるでしょう。なお,私は,独任制を選択肢から排除する理由はないと思っています。別に,取締役であるからといって単独で調査権限を持ってはいけないということにはならないと思います。個々の取締役が単独の調査権限を持つかどうかは,現行法の解釈論としても意見が分かれるところであり,まして立法論であれば,単独の調査権限を持つという制度は当然考えられます。ですので,独任制ということも含めて,現在の監査役会に近い制度として設定するという選択肢も提示して,広く意見を求めたほうがいいのではないかと私は考えております。 ○上村委員 この監査・監督委員会の役割と機能ですけれども,先ほど前田委員は内部統制を利用した組織監査とおっしゃいましたが,それはまさしく公認会計士監査そのものですね。ですから,それは期中の財務情報に関する情報を把握して,そして,適時適切に情報開示をして,というようなそういう機能を担っているわけです。そこに,監査役もあるいは監査・監督委員会もそこにぴたっと対応して,そういう資本市場向けの監査を把握しチェックすべきということであれば,常勤がいなければということになるだろうと思うんです。しかし,他方で,最後の(5)のように,重要財産の処分とか,こういう権限を,監査・監督委員会に委任できることになっています。そうなりますと,今度は,むしろこの監査・監督委員会が委員会設置会社における取締役会,モニタリング機能を持った取締役会そのものに代わる機能を現実に期待されているように思います。これは,事実上はこの制度の利用に誘導するという実践的な意味もあるかもしれませんけれども,とにかく,いずれにせよこちらの機能を中心に考えるのであれば,私は,前から申し上げていますように,会計監査人の監査の結果の相当性についての意見を言わせるという制度はもう要らないのではないかと思います。要するに,会計に傾斜したモニタリング,あるいは業務監査機能を中心に提案するという聞き方もあり得るのかなと思います。今までのお話を聞いていますと,一方では,公認会計士監査そのものを代替するかのような観点から常勤は要らないという話と,他方では,取締役会が持っているモニタリングシステムそのものを代替するんだというようなことの両方が一緒に含まれて出ていますので,何か異質なものの選択を求めているような感じもします。その辺,判断基準としては結構難しいなという感じを持っています。ですから,いっそのことモニタリング中心でいくのであれば会計監査は公認会計士に任せると決めてしまったほうが良いのではないか。内部統制を利用した組織監査にも対応するというのであれば,むしろ常勤を置いて,きちんとそれはフォローできるような組織として構成しなければならないということになってくるだろうと思うんです。その辺の選択の枠組みといいましょうか,判断基準がちょっと分かりにくいのではないかという感じを持っています。 ○前田委員 先ほどから御議論のある,(5)の取締役会の決定権限を委任できる範囲について,内容に関わりますけれども,案の出し方としてこれでいいのか,疑問を感じております。委員会設置会社の制度を導入したときの基本的な考え方は,業務執行者に大幅な決定権限を与える代わりに,三つの委員会で取締役会の監督機能を強化しようというものでした。この監査・監督委員会設置会社の制度では,指名委員会と報酬委員会を欠きますので,人事と報酬の両面から取締役会全体を代表取締役等から独立させて,取締役会が解職権を背景として強力な監督をするということは期待できないのですね。大幅な権限移譲の前提になる取締役会全体の独立性を確保する仕組みがない以上は,取締役会の監督は,監査役会設置会社と同じように相当部分を,意思決定を通じたチェックという形で行わざるを得ないのではないでしょうか。確かに,監査・監督委員会に一部,指名委員会の代替的な機能を行わせるということで,監査役会設置会社よりは若干権限移譲の範囲を広げることはできるのかもしれませんけれども,現在の案のように委員会設置会社並みに広げるということはできないのではないか,つまり,監督の仕組みが弱いままに業務執行者の権限だけを大きくするということには無理があるのではないかと思います。確かに,他方では,大幅な権限移譲を認めないと,せっかく新たな制度を作っても,ろくに使われないという懸念はあるのですけれども,だからといって,この提案のような広い権限移譲を認めますと,委員会設置会社との整合性も説明しにくいのではないかと思います。このことは,制度導入そのものの是非に関わる重要な問題だと思います。それから,(5)の(注)にありますように,定款で定めればどうかということですけれども,取締役会決議が必要な事項というのは,いかに定款をもってしても,株主が意味のある同意をすることは期待できないという理由からだと思うのですけれども,下位の機関に決定を委任することはできないと従来解されてきたと思います。つまり,定款で定めればよいというものではないように思います。 ○太田委員 3点ほど申し上げたいと思います。1点目は,今,前田委員からも御指摘のあったところと重複する指摘になります。新たな制度設計を打ち込むという場合に欠かせない点が二つあるのではないかと思っていまして,一つは,誰のための企業統治の強化と,充実に役立つのかという,その視点が一番大事だろうと思います。株主だとか投資家だとかを中心とした多様なステークホルダーが企業を取り巻いているわけですけれども,それらにとって,やはり透明性の高い企業統治システムなんだということをきちっと言えるかどうかという点が,何よりもまず大事ではないかという点があると思います。   もう1点は,今,前田委員からの御指摘のとおり,制度移行ということの検討を加速させるんだという前提であれば,やはり移行することに際して,魅力のある新しい類型だとか,あるいは発展形なのかというところが明確になりませんと,社内での議論にまずなじまないと思うのです。例えばこれが法によって強制されるようなケースでなくて選択制だという前提で議論される場合に,監査・監督委員会って,何が今までと違って,何がいいと思っているんだいという,こういう議論が監査役会あるいは三委員会設置会社を問わず,実際の対話や協議のイメージが,なかなか想像しにくいと言わざるを得ません。冒頭にも申し上げましたように,東証に上場されている98%の会社は,いわゆる監査役会設置会社なわけです。2%の三委員会設置会社の人たちからの移行があるとは余り思えませんし,仮にあったにしても,それは一桁の小さい会社数,せいぜい一桁台ではないかと思います。そうしますと,残りの98%の会社の人たちからの機関設計として,この新類型への移行ということは,結果において数百社,実はそこに移行できるんだというような結果が起きてこないと―結果の証明というのは難しいんですが―,これは一体何だったんだろうかということになります。結果において,適正な制度間競争になっていたのかというようなところに,また舞い戻る可能性があると思います。したがいまして,私は,監査役会設置会社からの移行ということを仮定して論議をしているつもりなんですが,監査役会設置会社において守られているガバナンスのレベル,これに不満を持つような企業群からの移行があって,その場合,トータルとしてのガバナンスの低下を招くようなことにならないようにするための,何らかの魅力のある提案がやはり必要なのではないか―歯止めと言ってもいいと思います―と思います。   3点目,先ほど田中幹事のほうからの御指摘に賛成です。独任制についてですが,私は,新制度の設計なんですから,何も従前の,こういうところには独任制があって,ここには独任制がないということに縛られる必要はないと思います。特に独任制の意味するところはたくさんあるわけですが,簡単に言えば,例えば会社ぐるみでの不祥事,そういったときに,そういった発生予防だとか,あるいは事後対応のときに,取締役の責任を追及する監査役の立場というのは,独任制ということが後ろ盾になってやれるというところに最大の実は利点が,あるいは現場における意味があるのです。そういった良好な政策効果というんでしょうか,独任制が及ぼす,そういったことをこのケースで放棄するのではなく,少なくとも選択肢の中に,独任制についてはこれも選択肢として残す残さないという議論を,是非方法論として残し,草案として残しておくべきではないかと思います。 ○藤田幹事 多分,現在原案として出ているものは,恐らく事務当局の側としてはある種のイメージを持って,その観点から一貫して作ったものを提案されていると思うのですけれども,実はその根本のイメージが,各委員,幹事に共有されていない。監査役制度との連続性を強調する人と,委員会設置会社のほうから考える人がいて,議論が分かれている。実は,既にそのレベルで,事務当局がドラフトを作られたときの意識が共有されていないとすると,そこを明示した選択肢の形で示したほうがいいかもしれないというのが,三原幹事が言われた御意見だというふうに理解しました。それは私もよく分かるところです。   ただ,その場合,仮に各論点ごとに併記し,個別に議論してしまいますと,一貫した選択がなされなくなる危険がありますので,そうならないような提示の仕方にはくれぐれもしてほしいことと,もう1点,注意していただきたいのは,先ほどの監査役会設置会社から出発する発想と委員会設置会社から出発する発想という対立の仕方で切れる論点と切れない論点があって,そこを誤解すると,ちょっと話を混乱させることにも注意を頂きたいということです。確か三原幹事の御意見の中に,(5)の論点,つまり権限委譲の範囲についても,同様の視点で見ることができるのではないかという御示唆があったかと思いますが,これはそう見てはいけないものだと思います。これは,恐らく前田委員の言われたこととも関係するのですが,(5)についての問題は,監査役設置会社の側から見るか,委員会設置会社から見るかということとは違った,固有の視点,相反する要請の対立なのだと思います。委員会設置会社では,三委員会を強制し,言わば擬似的に独立性の高いボードの存在があるから大幅な権限移譲を認めるという発想で制度が作られていたわけですね。それに対して,その発想からすると,そういう仕組みが欠けている以上は,そんな幅広い権限移譲は問題である―前田委員の御発言のトーンはそうだったわけですけれども―ということになります。他方で,移行の利便性ということ以外に,取締役が監査・監督を行うという発想からすると,執行と監督はできるだけ分離するほうがいいという思想もあり得て,そうなってくると,本当は権限を持ってはいけないというところまでいかなくてはいけないのですが,委員会設置会社でもそこまでは要求していないものですから,大幅な権限移譲を認め,取締役会の決定すべきことを軽くする,余りたくさんの権限を取締役会に留保しておかないという方向の話もあるのかもしれません。恐らく,現在の提案は,後者に軸足を置きながら,加えて利便性のことも考え,ただ,前者の懸念もあるから,わずかにお茶を濁すように,⑥についてだけ,しかも定款でという,前田委員のご指摘のような,ちょっと見なれない利害調整方法を持ち込むということになっています。むしろ,ここは,何と何が対立して,どういう考え方の対立があって,それを前提にするとどういう形の権限の分配の仕方があり得るかという形で―⑥についての(注)という形ではない形で―,このあたりの選択肢を提示されたほうがいいと思います。そしてそれは,先ほどからの監査役会設置会社から見るか委員会設置会社から見るかとは随分違った次元の論点ですので,もう少し広く選択肢を示していただければと思います。 ○三原幹事 (5)について,私なりに若干反省しているのは,監査・監督委員会会社について,自己監査の問題があるのではないかという指摘がありました。つまり,執行と監査・監督の分離ということから,どうしても自己監査のことを強調すると,(5)のような形の帰結になってしまうということです。私は,監査・監督委員会会社の御提案について,当初はまだ中身が明確になっていないため様々な点を問題点として申し上げたのかもしれません。第一読会,第二読会で,そこを強調しておりました。しかし,監査・監督委員会会社を導入するとするなら,(5)については二つ案があるように思います。そういう意味では,この(5)の論点は,藤田幹事又は前田委員のおっしゃったとおり,監査役設置会社と委員会設置会社の三委員会がないことの関連で,どちらに引きずるかという問題でなくて,それとは視点が違う問題だということは,藤田幹事がおっしゃるとおりでございます。ただ,先ほどは説明を端折ってしまいましたが,(5)については,結論として,出し方論という意味では二つに分けていただきたいという結論は維持したいと思います。   それと,一つだけ関係ない話をさせていただきます。補足説明は,法務省民事局の責任と判断でお作りになるという御説明がありました。逆に言うと,補足説明は,審議会の場では見せていただけないということになってしまうのかどうか,若干心配となりました。部会長の御発言もありまして,そこはどうなるか,機会があれば教えていただきたいと思います。 ○岩原部会長 では,その点も含めて,坂本幹事のほうからお願いします。 ○坂本幹事 後の御質問のほうからお答えしますが,今のところ,補足説明は,できればお示ししたいと考えてはおります。ただ,いかんせん,議論が多々分かれており,最後までいろいろと中間試案を訂正していくことになろうかと思います。そうなってくると,もしかすると,まとまった形で補足説明を事前にお示しするには,作業が間に合わないということもあり得ますので,そこは御了承いただければと現時点では考えております。   前段のところに関しまして,監査役会設置会社から見るのか,委員会設置会社から見るのかという点ですが,新設の制度として設計しようとしておりますので,いろいろな見方があり得るということは承知しております。他方で,独任,半数かつ常勤ということになってくると,監査役会設置会社とどこが違うのだろうかというところを―理屈の問題として,そういう制度設計はあり得るということは理解しているつもりですけれども―,現行の監査役会設置会社と委員会設置会社とが両立している中で,新たに制度を作るというときに,その制度は,監査役会設置会社とどこが違うんですかと言われたときに,どう説明するのか,正直なかなか難しいのではないかというところもあり,こういう形で整理させていただいている次第です。正に新制度でございますので,いろいろと案が分かれると,一体どういう制度なのかよく分からなくなるというところもございまして,このように一つの案である程度決め打ちということにさせていただいた次第ではございます。この案は,取締役会の中で,ある程度独立性を持った社外取締役の方々を中心に監査していただくということからすると,その点だけ捉えてみれば,ある意味,委員会設置会社的なところもあるだろう,そうであるとすれば,あちらでしっかりと監査していくためのいろいろな仕組みがありますけれども,そういう仕組み自体は委員会設置会社よりも緩くする―そういうと,先ほど田中幹事が御指摘になった,何が厳しいのか緩いのかというところはあるかもしれませんけれども―,そこを緩くするということはなかなか難しいだろうということで,こういう形に整理させていただいている次第でございます。取りあえず,なぜこういう形になっているのかというところを御説明させていただきました。 ○塚本関係官 前半のほうで議論になった,(2)の③の常勤者のところですが,第二読会のときにも,常勤の監査役が重要な役割を果たしているという御意見があったことは十分認識した上で,義務付けはしないということをあえて書いておりまして,その趣旨について御説明させていただきたいと思います。常勤者が重要であるという点は御指摘があったとおりではありますが,先ほど太田委員から御指摘があった,委員会設置会社の7割近くが常勤の監査委員を任意に設置しているという点につきまして,ここで重要なのは,常勤の監査委員を置いていない,残りの3割近くの委員会設置会社において,何か監査上問題が生じているのかという点であると思われます。そして,そのような常勤の監査委員を置いていない委員会設置会社について,監査やガバナンスにおける問題があるとは指摘されていないと思われます。また,委員会等設置会社を創設した平成14年改正のときの中間試案で既に,常勤者の義務付けについてはなお検討するとされてパブリック・コメントの手続に付した上で,最終的には義務付けないこととしたという経緯があります。他方で,監査・監督委員会設置会社において常勤者を義務付けるとなりますと,委員会設置会社においても,常勤者を義務付けるという議論が出てくると思っております。   なお,「委員会」という形態で,組織的な監査を行うという前提となりますと,常勤者の義務付けはしないということで書いていますが,置いてはいけないという趣旨では全くございませんので,そういうことから,(注1)も置いております。 ○岩原部会長 非常に多様な御意見を頂きまして,どのように議論を整理していっていいか,非常に困っております。私の受けた印象では,監査・監督委員会を設けるという非常に大枠については,第一読会,第二読会でかなり広い皆様の御支持があったかと思うのですけれども,それを更に詰めて,どのような制度にするかという,その内容については,必ずしも詰めた検討が第一読会,第二読会で行われていなかったのではないかと思います。そこで,委員,幹事の間で,監査・監督委員会の具体的な制度内容についての理解がかなり分かれているのではないか。大きな分かれ方としては,先ほど田中幹事等から御指摘がありましたように,言わば監査役の制度に近付けて,監査役の代替として監査・監督委員会というものを理解する立場と,もう一つは,三委員会の,委員会設置会社の中の監査委員会を言わば変形させたものとしてこの制度を理解する立場があるのではないか。更にその中でも,仮に後者のように委員会設置会社に近付けて考えるのであれば,(5)などについてこれでよいのかというように,具体的な内容について考え方が更に分かれているところかと思います。第一読会,第二読会においては,そこまでの詰めた検討は必ずしもなされていない中で,今の坂本幹事や塚本関係官の御説明にありましたように,事務当局として問題をこういう形で整理したいというお考えに基づいて,部会資料14の案は作られているようであります。そうなると,委員,幹事の皆様の中で,これはちょっと自分の考えとは違うとか,そういう御意見が出てきたのはやむを得ないところがあったのかなと思います。私も,部会資料14を拝見したときに,この案というのが,基本的には監査役制度から発想する制度ではなくて,委員会設置会社の制度から発想するものとして整理したいという考えが表れているように思いました。例えば4ページの(注1)の「監査・監督委員会が選定する監査・監督委員は」ということで,独任制ではなく委員会として行動するんだということがはっきり示されています。その上で,(5)においては,監査・監督委員会設置会社における取締役の権限が,言わば委員会設置会社の執行役に近いというか,ほぼ同じ権限を与えるというところまで進んだ案になっているかと思います。そのように委員会設置会社型に整理するとして,そこまで行けるのかというのが,さっき前田委員が正に御指摘になった問題かと思います。幾つかの輻湊した問題がこの案の中には含まれていると思います。   ここで,部会資料14に書かれているような形で,一つの案としてパブリック・コメントの手続に供するということは,何人かの委員,幹事の方が御指摘になったように,ここでの委員,幹事の御議論を公正に反映した案としてはちょっと足りないのではないかと思います。今日,非常に多様な御意見を頂きまして,整理の仕方も多分基本的な考え方によって分かれてくると思いますので,この中間試案をまとめるまでにもう一度,こういう大きい考え方に沿って整理し直してみてはいかがでしょうか。先ほど藤田幹事がおっしゃったように,それを一貫した整合性のある形でお示しするのは非常に難しいと思いますけれども,ただ,恐らく発想の違いによって,大きくそれぞれ分かれた幾つかの案は出てくると思いますので,中間試案としてお示しするにはどういう形のものにしたらいいかということを,もう一度,事務当局に整理し直していただきたいと思います。今日,考えるべきポイントについては多くの方から大体御指摘いただいたように思いますので,事務当局に中間試案の取りまとめに向けての整理をもう一度お願いしたいということで,よろしいでしょうか。   (3)について,これも全体に関わりますけれども,特にここで御意見を頂けることがあれば御意見を頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○齊藤幹事 (3)についてですが,御提示いただいた案が独立性の担保に配慮しているということですけれども,これが議論の出発点としてどのような位置付けにあるのか,これよりも厳しくする余地も今後の議論の状況によってはあり得るということも含んでいる,ということでよろしいでしょうか。というのは,例えば取締役会選定型として新しい規定を設けることが今後決まったとして,御提示いただいた案では,出席した社外取締役の過半数の賛成という要件を入れるというような形で独立性確保への配慮がなされていると思うのですが,新しい機関設計に関して提出され得る意見の中には,こういうタイプを採用する場合には,やはり取締役会の構成自体について,社外取締役の割合をもう少し増やすべきだとか,そのようなものもあり得ると思います。そのような議論の余地を,この中間試案が排除しているのであれば,困りますので,その点については,議論の余地を残しておいていただきたいと思います。 ○坂本幹事 御指摘ありがとうございます。そのような御指摘は,もちろん排除はしてございません。A案,B案,いずれかを採用したときに,例えばこういう工夫の余地がまだあるのではないかという御指摘をしていただくことは,もちろんそれは歓迎するところでございますので,よい工夫があれば,是非御指摘いただければと思う次第でございます。 ○岩原部会長 ほかに,特に御指摘いただくことございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,先ほど申し上げましたような整理で,事務当局に,本日頂きました御指摘を踏まえて,もう一度,中間試案の案を整理し直していただくということにさせていただきたいと思います。   それでは,先に進ませていただきたいと思います。第1の「3 社外取締役及び社外監査役に関する規律」に入りたいと思います。(1)から(3)まで一括して事務当局から説明をお願いしたいと思います。 ○塚本関係官 それでは,「3 社外取締役及び社外監査役に関する規律」について御説明いたします。まず,「(1) 社外取締役等の要件における親会社の関係者等の取扱い」については,当部会において,社外取締役の要件に,特に親会社の関係者でないことを追加することの当否について意見が分かれたことを踏まえ,社外取締役の要件に,親会社の関係者でないこと及び株式会社の取締役等の近親者でないことを追加するものとするA案と,現行法の規律を見直さないものとするB案の両論を併記しています。また,当部会における議論を踏まえ,A案の②のとおり,社外取締役の要件を見直すこととする場合には,社外監査役の要件についても同様の見直しをするものとしています。A案の①のアは,社外取締役の要件に,親会社の関係者でないことを追加するものです。なお,親会社の会計参与及び監査役は,現行法上,それぞれ欠格事由及び兼任禁止によって子会社の取締役を兼ねることができないため,①のアでは,親会社の会計参与でないこと及び親会社の監査役でないことについては言及していません。また,A案の①のイは,社外取締役の要件に,株式会社の取締役等の近親者でないことを追加するものです。近親者のうち,血族及び姻族については,差し当たって3親等内としています。   次に,「(2) 社外取締役等の要件に係る対象期間の限定」は,当部会における議論を踏まえ,(1)のA案のような見直しをすることとする場合には,社外取締役の要件について,社外取締役として就任する前の全期間でなく,就任する前10年間における株式会社等との関係によるものとし,社外監査役の要件についても同様の見直しをするものとしています。なお,(1)のA案で追加するものとしている,親会社の関係者でないこと及び株式会社の取締役等の近親者でないことについては,社外取締役として就任する前の期間に係る要件をそもそも設けないことを前提としています。(注)は,社外取締役の要件に係る対象期間の限定を撤廃した平成13年改正の経緯に鑑み,社外取締役又は社外監査役の要件の潜脱を防止するために,所要の見直しをするものとするものです。   最後に,「(3) 取締役及び監査役の責任の一部免除」は,当部会における議論を踏まえ,(1)のA案のような見直しをすることとする場合には,責任限定契約等取締役及び監査役としての責任の一部免除の場面において,その適用範囲を見直すものです。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。まず,「(1) 社外取締役等の要件における親会社の関係者等の取扱い」について御意見を頂きたいと思います。(1)では,社外取締役と社外監査役の各要件に,親会社の関係者でないことなどを追加するA案と,現行法の規律を見直さないB案を併記しておりますが,いかがでございましょうか。 ○静委員 社外取締役につきましては,独立性を高めることが重要だということをずっと申し上げてまいりましたので,その考え方がA案のほうに入っているということで,私は,基本的には異論はないということでございますが,その上で1点だけ申し上げたいと思います。A案ですと,先ほど岩原部会長の御解説にもありましたように,親会社関係と親族関係が除かれているということだと思いますけれども,このほかに,いわゆる重要な取引関係がある方について,社外性の要件の問題として捉えるということにつきまして,せめて,「なお検討を要する」といったような注を追加していただけないかということでございます。理由につきましては,重要な取引関係を社外性の要件にするというのは,これはもう主要国に共通するグローバルスタンダードになっておりますので,日本では,その考え方を試案の中にすら入れないということだとすると,せっかくこれだけ一生懸命議論をしているのに,本気度を問われかねないということだと思います。もちろん,国によって重要な取引先の範囲がかなり違うという問題や技術的に難しいという問題がございますので,ここで具体的な案を決めて新しい案として追加してほしいということは私も申し上げませんけれども,せめて,そういう部分についてなお検討が必要なのではないかというような注記ぐらいは入れていただけないだろうかと思って,御提案を申し上げます。 ○坂本幹事 御指摘ありがとうございます。重要な取引先についての御指摘があったことは,重々承知しております。他方で,この部会で御議論いただきましたとおり,その部分は正に静委員自らも御指摘になりましたが,重要な取引先とは何ぞやという問題がございまして,そこをどうやって切り出すのかというところは,この部会でも,非常に難しい問題であるということを御指摘いただいたところでございますので,そこは,解決への出口が見えない中で,注という形でも挙げるというのも難しいということで,本日の案では重要な取引先というのは挙げていない次第でございます。もし何か具体案があれば,御教示いただければと思う次第でございます。 ○中東幹事 今の点でお教えいただきたいことがあります。パブリック・コメントの趣旨にも関わると思うのですが,我々がこう考えたけれども,これでよろしいのかというパブリック・コメントであれば,それはそうおっしゃるとおりになると思うのですが,我々としてはここまで考えましたが,もっといいアイデア,誰か出してくれませんかというパブリック・コメントなのであれば,静委員の御意見のようになると思うのですが,これはどう考えればよろしいのでしょうか。 ○岩原部会長 私の考えとしては,パブリック・コメントの手続に付すということは,正に広く社会の御意見を承るということですから,当然,パブリック・コメントの手続に付した意見,案以外の御意見も頂けるのであれば,それは広く頂くということになると思います。多分そういうことを含めて,正に先ほどの補足説明の中にどこまで書き込むか,どのように書き込むか,という問題になってくるのではないかとは思っています。 ○坂本幹事 広く御意見を問うべきだということは,おっしゃるとおりでございます。他方で,中間試案とはいえ,最終的には法律という形で要綱案をお取りまとめいただくという責任もございますので,それとの兼ね合いの中で,どこまでお示しして,どこまでお示ししないのかというところはあろうかと思います。今,岩原部会長から御示唆いただきましたように,補足説明等に記載することも含めて,御指摘の点は検討したいと思っております。 ○逢見委員 部会資料14では,A案,B案とされていて,B案については,現行法の規律を見直さないとされています。しかし,これまで,社外取締役や社外監査役の規律を変えようと議論してきた経過からすると,より独立性の高いものにしていくべきだというのが議論の方向であったと思います。その意味からすると,B案を出すとすると,今のままでいいのだということになります。前の論点である監査・監督委員会設置会社の社外取締役についても,B案でいいとなり,現行法の規律によって選任された社外取締役が監査・監督委員会を運営するというようなことになると,せっかく独立性やガバナンスの強化を議論してきたのが,方向が違ってくることになるのではないかと思われます。この場では,ガバナンスの強化を前提にして議論しておりますが,実際の会社の現場へ行くと,オーナー経営者などは,余り監査,監査といって縛られたくないというのが本音としてあることは事実です。もしB案が提示されると,今のままで何も問題ないという認識なのかどうか問われるのではないかと思います。今のままでいいということがこの部会の中で認識されているということならば,選択肢としてB案なのですが,私はこれまでの議論で果たしてそうなのかと思ったものですから,なぜB案を示したのかということについて,もう一度説明していただきたいと思います。 ○塚本関係官 B案を掲げている点につきましては,事務当局が現行法のままで問題ないと考えているかどうかというところとは別の次元のものだということを,まず申し上げたいと思います。基本的に,第一読会,第二読会を踏まえまして,先ほど申し上げましたように,特に親会社の関係者について,子会社の社外取締役や社外監査役として,子会社の監査・監督をしっかりやっているということで,そういった人たちを社外から外すのはいかがなものかという御意見があったことを踏まえて,B案を掲げております。ですので,今の御質問は,現行法の規律を見直さなくていいというB案を主張されている方に対する問題提起と理解したほうがいいのかもしれません。   それから,もう1点,監査・監督委員会設置会社制度―委員会設置会社にも関係することだとは思いますが―,その創設という議論と,この社外の要件の見直しの議論は,別個の論点と思っております。このA案で挙げている,親会社の関係者あるいは近親者を社外から外すという論点は,例えば,親会社の関係者について言えば,親会社と株式会社との間の利益相反についてきちんと監督することができるのかという,そういった利益相反の場面できちんと監督・監視ができるかというものですので,監査・監督委員会ですとか委員会設置会社における社外取締役あるいは監査委員の役割,その全てが,ここでA案を採らないことによって否定されてしまうという関係にはないと考えております。 ○杉村委員 経済界はB案を主張しており,その立場は変わっておりませんので,A案についてコメントするのは何だということかもしれませんが,ブラケット付きで3親等内という具体的な数字も出ていますので,A案として提示する案についてのコメントという観点から,意見を申し上げたいと思います。   まず,この案には記載のない重要な取引先につきまして,先ほど少し議論に出ましたが,坂本幹事からお話しいただいたとおり,基準の明確性などに懸念がありますので,是非慎重な御配慮の下に取り扱っていただきたいと存じます。   それから,この案に記載されております部分につきまして,まず,アとイがセットのように提案されておりますが,これらは分けて検証することも考えられると思いますので,そのような配慮も必要だと考えております。また,イの,先ほど申しました3親等内に関してですが,特に「その他使用人」の3親等までを含むということになりますと,かなり広い範囲にわたり影響が出てまいります。会社としましては,社外役員の選任に当たりまして,アルバイト従業員や契約社員を含め,全ての社員の親族関係を確認しないと資格要件がはっきりしないという事態にもなりかねません。公職にある者の基準というわけでもないと思いますので,企業に立場を置く者としては,ここは少し行き過ぎなのかなという感じがしております。さらに,組織再編で合併するケースで,相手の会社にそういった立場の者がいることで,資格要件を満たさなくなる懸念もあります。この点につきましては,例えば証券取引所の独立役員の独立性に関する基準では,2親等内という基準が使われていると理解しておりますので,それも参考にしながら,もう少し慎重に検討いただければと考えている次第です。 ○野村幹事 聞き方に関連することなんですが,(2)の期間の限定については,「(1)のA案のような見直しをすることとする場合には」ということになっておりますが,かねてから独立した問題として,現行の制度の下でも,期間制限について限定を加えるべきではないかという意見もあったかと思います。この点は,(1)でA案を採った場合にだけ検討するというお立場でよろしいのでしょうか。 ○塚本関係官 御指摘の点は,(3)にも関連するものであると思いますが,出発点としては,(1)のA案のように社外の要件を厳しくした場合には,例えば人材の確保といった観点から,(2),(3)のような緩和をしてほしいという発想があったと思います。また,法務大臣の諮問事項との関係で,基本的には企業統治の強化といった観点がありますので,(1)でA案を採らずに,(2),(3)だけは見直しをするということは,なかなか難しいということで,(2),(3)のいずれについてもA案を前提とした記載としております。 ○岩原部会長 (2)のほうの議論も口火を切っていただきましたので,(2)も含めて御意見を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。 ○太田委員 野村幹事と同意見なんですけれども,(1)と(2)は,独立して扱っていいのではないかと,今の御説明を伺った上で,改めてそういうふうに思います。その理由は,社外監査役でも相当の数の兼任をされているという実態がございまして,一言で言えば,やはり母集団を広げておくことが必要だということです。無論,無制限にということではありません。したがって,一定の時間的な制約を設けるということでいいと思うんですが,母集団を広げるということは,ガバナンスの強化にやはりつながっていく可能性が高いということと,一方,企業の経営実態からいいますと,ここにありますように,例えば,仮に10年と書いてありますが,最近はもっとドッグイヤーですから,5年だとかそれぐらいの経過期間の中で業務への精通の度合いは格段に落ちてきます。事業環境,グローバルな競争環境の中では時間の持つ意味合いが変質してきていると思いますので,10年に特段の意味があってこれを書かれているとは思いませんが,一応10年というふうに数字が独り歩きしないように,私はやはり5年程度ぐらいが,適切なところにいくのではないかなと考えます。また,(1)の見直しをすることとする場合に限りということでなくて,これは並列的にやはり論議をされていいのではないかと,こんなふうに思っております。 ○中原幹事 私も,今の太田委員と同じ意見でございまして,先ほど事務当局のほうから,企業統治の強化を図ることとする場合にはという前提を踏まえてという御説明がございましたけれども,しかし,(2)で考えるべきは,形式的な美しさに必ずしも拘泥するのではなく,実質的な視点を含めて考えたほうが企業統治の強化につながるのではないかということであり,すなわち,現状では社外取締役になれる人が十分にいないではないか,一定の期間経てば,会社と癒着しているとは言えないのではないかという実質的な視点を踏まえて制度設計を行ったほうが企業統治の強化につながるのではないかということですから,ここは必ずしも関連させなくてもいいのではないかとも思います。   それから,10年間というところにつきましても,現在,経営者が大体5年から6年くらいで平均して替わっているということ,会社の中期計画などは大体3年から5年くらいを目途に立てるということ,それから,商事債権の消滅時効が5年だということを考えますと,ビジネスの世界では,5年くらい経てば,これは水に流そうぜと。十年一昔ならず,五年一昔というのがビジネスの世界である。さらに,最近のドッグイヤーの,時代はものすごく速く変わるということも含めて考えますと,5年というのが一つの案になるのではないかなというふうに考えております。 ○塚本関係官 ただ今の10年か5年かという点ですけれども,平成13年改正の前までは5年でしたが,その改正により今のような形になっているということを踏まえまして,それをまた元どおりの5年に戻すというのは難しいのではないかというのが一つございます。   また,太田委員と中原幹事から,今は事業環境の変化が速いという御指摘がございましたが,就任前における会社との関係に係る要件につきましては,そのような事業環境の変化の速さによって決まるのではなく,経営者の指揮命令系統に属していた場合において,そのような関係から離れてすぐに社外として経営者を監督することができるかというと,そうは言えないであろうということにあると考えられていると思います。ですので,事業環境の変化が速いからということではなくて,そういった経営者ないしは会社との関係が,どれぐらいの期間が経てば薄まるのかという―第二読会のときの部会資料9にも記載いたしましたが―,そういった観点から,期間の長短についての御検討が必要ではないかと思っております。 ○伊藤(雅)委員 今の(2)の期間の問題のお話にまたなってしまうんですけれども,部会資料14の中の「(1)のA案のような見直しをすることとする場合」という表現をあえて入れる必要はないのではないかなということと,それから,今,皆さんおっしゃっている10年間ですよね。今存続している企業が合併を繰り返したりとかというと,長期間,10年間分をいろいろな会社から調べることが非常に難しいのではないか。また,10年というのは,第二読会における例示であったと聞いております。今のようなことで,7年とか5年とか,いろいろ議論があるんですけれども,もうちょっと短縮すべきだと思います。それと,企業の中において,社外取締役というものが会社の中でいろいろな判断をするに当たって,何も関わりがなかったほうがよかったのか,それから,逆に知っていたほうがよかったのかというと,知っていたほうがよい場合というのがあると思うんですね。何年で会社のことを忘れるかということと,それから,やはり当然知っていたほうがいいことの,そのバランスを考えると,全然関係ないほうがいいなという判断だけではないのではないのかなと思います。私の経験から,ある程度会社の中を知っていたほうがいろいろな指摘がすぐできるというようなことも,一緒に検討していただけたら有り難いと思います。 ○岩原部会長 ほかに何かありますか。よろしいですか。 ○中原幹事 すみません,一つだけ。かつて5年だという要件があったところ,平成13年改正において取締役の責任に関する規定の改正とセットで現在の規定のような手当てがなされたかと思うのですけれども,しかし,その後の状況等々いろいろ踏まえますと,例えば商法から会社法に変わるときなど,かつて入れたものをもう一回無くすというようなこともしておりますし,その後のいろいろな状況を見据えて,何が妥当なのかということをもう一度確認するという見地から,一回無くしたからもう一回復活してはいけないという議論をする必要は必ずしもないのではないかと。むしろ実態を見ずに経緯論だけで10年だというふうにするほうが何かかなり危険な気がしますので,その意味からも,是非5年というオプションは入れていただきたいと思います。 ○岩原部会長 ほかに何かありますか。よろしいですか。(3)も含めて御議論いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○伊藤(靖)幹事 (3)ですけれども,A案のような見直しをすることとする場合には,責任限定契約を締結できる取締役と監査役の範囲が,現在の427条1項よりも広がるわけなんですが,それはなぜだったんでしょうか。 ○塚本関係官 この点も,元々の出発点は,(1)のA案を前提として,親会社の関係者が社外取締役であったのに,その見直しによって社外取締役でなくなると,そうすると,責任限定契約を締結することができなくなる,そういったところを一つ配慮すべきではないかということがあったと思います。他方で,(3)の①のアの内容は,(1)における見直しの内容如何に関係なく,社外の要件を依然として満たさない人たち,例えば,子会社の業務執行取締役を兼ねる株式会社の取締役も,責任限定契約を締結することができるというものです。それは,特に第二読会で,そもそも責任限定契約を認めるべき人というのは,株式会社の業務執行のラインにいない人たちなのではないかという御指摘があったことを踏まえたものであります。 ○伊藤(靖)幹事 もしそうであれば,なぜ,「A案のような見直しをすることとする場合」という限定を付さないといけないのでしょうか。 ○塚本関係官 それは,(2)について御説明した趣旨と同じ趣旨です。 ○荒谷委員 私は,第一読会のときも第二読会のときも申し上げたのですけれども,やはり(3)で,A案のような見直しをする場合という限定を付した理由がよく分かりませんのでお伺いしたいのですが。社外取締役の制度と取締役の責任の限定の話を必ずしもワンセットで論じる必要はないのではないかと思っておりますので。もう一つは,(3)の①のところで,「執行役又は支配人その他の使用人でないもの」という記載がありますが,これは,使用人兼務取締役もこれから除外されるという趣旨でよいのでしょうか。そうであると,そこまで限定をするという提案については,ちょっと考慮の余地があるのかなという気がしているのですけれども。 ○塚本関係官 これは,使用人兼務取締役は,責任限定契約を締結することができないという趣旨です。 ○荒谷委員 支配人兼務取締役はともかく使用人兼務取締役については責任限定の対象になると考えてもよいのではないかという気がしないでもありませんので,この機会に取締役等の責任の在り方自体を見直してほしいという意図がちょっとあったものですから,これは問題提起なのですが。 ○坂本幹事 皆様から御指摘を頂いたとおり,(2)と(3)について,(1)のA案を前提とするのが論理必然,あるいは論理的前提になるものではないということは重々承知しております。その上で,あえてこうさせていただいている次第でございます。この(1)のA案という見直しを前提とせず,(2)と(3)だけを改正したときの出来上がりの姿を見たときに,(2)と(3)自体を見たときはいいのかもしれませんが,全体の姿として見たときに,果たしてそれがバランスが取れているか,そういうと少し言い過ぎなのかもしれませんけれども,それがうまく説明できる制度なのかというと,それはなかなか厳しいのではないかと考えたことから,このように,(2)と(3)は,(1)のA案のような見直しをする場合という前提を付させていただいた次第でございます。その判断がどうかというところは,いろいろお考えがあるかとも思いますけれども。 ○野村幹事 御趣旨はよく分かっているんです。最終的に決めるのは,この部会だと思うんですね。ニーズというか,そういうものがあるかどうかということは,バイアスが掛からない形で聞くべきであって,独立した問題であれば,必要性について多く広くいろいろな人たちの意見を聞くべきではないかと思います。(1)のA案を採らずにそれだけやるかどうかということがもし問題になったとすれば,正にこの部会でみんなが議論して,仮に意見が多かったからといっても(2)と(3)は採用できないんだという結論に至ることは十分あり得るのではないかなというふうに考えて,聞き方として伺ったということであります。 ○岩原部会長 よろしいでしょうか。事務当局としては,今,坂本幹事からの御説明のような考慮に基づいて,このような案を作成されたということですが,今日頂きました御意見も踏まえまして,更に中間試案の案を練っていただくということにしたいと思います。各々ほかの委員の御意見も伺いながら,更に検討していただきたいと思います。よろしいでしょうか。   ここで休憩としたいと思います。           (休     憩) ○岩原部会長 それでは,時間でございますので,審議を再開させていただきたいと存じます。第2の「1 会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等の決定」に移らせていただきたいと思います。事務当局から説明をしていただきます。 ○宮崎関係官 それでは,「第2 監査役の監査機能」の「1 会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等の決定」について御説明いたします。当部会においては,会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等の決定を監査役又は監査役会の権限とすることなどについて,様々な意見が出されたことを踏まえ,A案からC案までの3案を併記しています。現行法上,監査役又は監査役会は,会計監査人の選解任等に関する議案等への同意権及び議案等の提案権並びにその報酬等への同意権を有し,監査委員会は,会計監査人の選解任等に関する議案等の決定権及びその報酬等への同意権を有しています。C案は,このような現行法の規律を見直さないとするものです。これに対して,A案は,監査役又は監査役会に,会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等の決定権を付与し,監査委員会に,会計監査人の報酬等の決定権を付与するという点で,現行法の規律を見直すものです。また,B案は,監査役又は監査役会に,会計監査人の選解任等に関する議案等の決定権を付与するという点で,現行法の規律を見直すものです。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。それでは,部会資料14ではA案からC案までが掲げられておりますが,皆様の御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○太田委員 A案については,これまでのこの場において,日本監査役協会が提案をさせていただいた内容に沿っていると思っております。したがいまして,これで是非お諮りいただきたいと思います。なお,A案,B案,C案という並列でよろしいんですが,1点補足させていただきますと,A案に関してですけれども,日本公認会計士協会自身が,やはり執行からの選解任あるいは報酬の決定と,無論,監査役会に同意権はあるということは当然のことですが,そういったことを十分踏まえた上で,会計監査の実務に当たる人たち自身も,このA案を基本的に望んでいる,こういう事実関係というのは重いと思いますので,私どもとしては是非この案で進めていくべきではないかと思います。併せて,もう1点だけ申し上げれば,仮に,今までの議事を拝見いたしましても,A案ではあれなのでB案,C案という,こういう案が出ているわけですが,B案のほうがまたねじれを作るような話で,はっきり言って非常に分かりにくいと思います。したがって,A案とC案というのが極端なケースなのかなと思いますが。仮にA案に進む場合ということで,もし仮に監査権限が余りにも大きくなり過ぎるのではないかというような御懸念が執行側にあるとすれば,例えば,私どもが提案している内容に付加して,執行側に同意権を与えるというようなことは十分評価に値するのではないかと思います。少しこれは各論の各論になって恐縮ですが,あえて申し上げたいと思います。 ○岩原部会長 ほかに御意見ございますでしょうか。A案からC案のような形で中間試案としてパブリック・コメントの手続に付すということで,よろしいでしょうか。   それでは,「2 監査の実効性を確保するための仕組み」についての説明をお願いします。 ○宮崎関係官 それでは,「2 監査の実効性を確保するための仕組み」について御説明いたします。当部会における議論を踏まえると,監査役による監査の実効性を確保するため,まず,監査を支える体制に関する規定の充実・具体化を図ることが考えられます。具体的には,いわゆる内部統制システムに関する事項に,監査役の職務を補助すべき使用人に対する監査役の指示の実効性確保に関する事項や,監査費用に係る会社の方針に関する事項を追加することが考えられます。   次に,当部会における議論を踏まえると,監査役による使用人からの情報収集に関する体制に関する規定の充実・具体化を図ることが考えられます。具体的には,内部統制システムに関する事項に,使用人が監査役に法令違反等の情報を提供したことを理由として当該使用人に対して不利益な取扱いをしないようにするための体制を追加することが考えられます。また,これに関連して,当部会においては,監査役の一部の選任に関し,株主総会に提出する議案の内容を従業員が決定するものとすべきであるとの指摘がされており,(注)において,この点については,なお検討するものとしています。   さらに,当部会における議論を踏まえ,内部統制システムの運用状況の概要等を事業報告の内容に追加することが考えられます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。それでは,この第2の2につきまして,皆様の御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○太田委員 今の,監査を支える体制,あるいは監査役による使用人からの情報収集に関する体制と,この特に前段のところについて,先回も申し上げましたが,データに基づいてコメントしたいと思います。現行の法制下で,その監査役の職務執行のための必要な体制の整備に留意するという義務が当然なされています。その一環として,監査役の補助使用人の確保体制と,その現状はどうかということなんですが,監査役スタッフ,いわゆる補助使用人,これを置いている会社は,上場会社におきましても約半数にとどまっているという事実があります。一方,配置している会社,監査役スタッフを配置している会社でも,スタッフ総数の平均は2.0人でしかありません。加えて,専任スタッフ,これに限定しますと,1名未満の0.81人というデータがありまして,一名にも満たないというのが監査補助人の配置の現状です。したがいまして,会社法の本則というふうにはならないとは思いますけれども,法務省令等による制度整備を含めて,専任か兼任かを問わず,各社に最低1名以上の監査役の補助使用人の配置ということに向けて,会社実務の変革を促す契機となるような法制の後押しをお願いできないものだろうかと申し上げておきます。 ○岩原部会長 ほかに御意見はございませんでしょうか,この第2の2につきまして。(注)を含めて,よろしいですか。こういう形で中間試案としてパブリック・コメントの手続に付すということでよろしいでしょうか。   それでは,そのようにさせていただきたいと思います。次に,第3のほうに移らせていただきたいと思います。第3の「1 支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等」のうち,「(1) 株主総会の決議の要否」について,事務当局から説明をお願いしたいと思います。 ○内田関係官 それでは,「1 支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等」の「(1) 株主総会の決議の要否」について御説明します。(1)は,公開会社が支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等を行う場合に,株主総会の決議を要するものとするかどうかに関するものでございます。当部会においては,支配株主の異動については経営者ではなく株主が決定するべきであるとの観点から,公開会社による募集株式の発行等について,有利発行に該当しない限り株主総会の決議を要しないこととしている現行法の規律を見直し,支配株主の異動を伴う第三者割当ての場合には,株主総会の普通決議を要するものとすべきであるとの指摘がされています。他方で,株主総会の決議を要するものとすると,資金調達の緊急性が高い場合に柔軟な対応をすることができず,かえって株主の利益に反する結果となることもあり得るとの指摘もされています。  部会資料14では,これらの指摘を踏まえ,三つの案を掲げることとしております。C案は,資金調達の緊急性が高い場合における柔軟な対応を可能とするため,現行法の規律を見直さないというものでございます。これに対して,現行法の規律を見直すこととする場合には,A案又はB案のいずれかによることが考えられます。A案は,取締役会による役員等の責任の一部免除に関する会社法第426条の規律を参考とするものでございます。具体的には,支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等については,原則として株主総会の普通決議を要するものとした上で,取締役会が当該募集株式の発行等による資金調達の必要性,緊急性等を勘案して特に必要と認めるときは株主総会の決議を省略することができる旨を,定款で定めることができるというものです。公開会社は,このような定款の定めに基づいて株主総会の決議を省略する場合には,異議があれば一定の期間内に述べるべき旨を株主に通知又は公告しなければならず,総株主の議決権の一定数以上の議決権を有する株主がこの期間内に異議を述べたときは,株主総会の決議の省略は認められないものとしております。この案では,異議を述べる株主が有する議決権の割合については,会社法第426条第5項に倣い,差し当たり100分の3を基準としております。また,異議を述べるべき期間については,会社法第426条第3項では,1か月を下ることができない旨定められておりますが,資金調達の緊急性への配慮という観点から,例えば,株主への通知又は公告の後2週間以内とすることが考えられます。これに対して,B案は,簡易組織再編の要件を満たす組織再編について,一定数以上の議決権を有する株主が反対通知をした場合には株主総会の決議を要するものとする会社法第796条第4項の規律を参考とするものでございます。具体的には,支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等について,株主総会が開催されれば普通決議の成立を阻止し得る可能性のある株主―すなわち,普通決議の要件について定款に別段の定めがない場合には,総株主の議決権の4分の1を超える数の議決権を有する株主―が一定期間内に反対通知をした場合には,株主総会の普通決議を要するというものです。この案においても,反対通知をすべき期間は,公開会社による株主への通知又は公告の後2週間以内とすることが考えられます。   次に,(1)の柱書の部分についてですが,A案又はB案のような規律の対象とする募集株式の発行等は,引受人が新たに公開会社の親会社となるようなものとすることが考えられます。もっとも,そのような募集株式の発行等の範囲は,募集株式の発行等の効力に影響し得ることから,客観的かつ形式的な基準によって定めるべきであるとの指摘がされています。そこで,部会資料14では,ある引受人に募集株式を割り当てることにより,当該引受人が総株主の議決権の過半数を有することとなるような募集株式の発行等を規律の対象とするものとしております。ただし,当該引受人が募集株式の発行等の前から公開会社の親会社又はそれと同等の影響力を有する自然人である場合には,当該募集株式の発行等は,支配株主の異動を伴うものとは言えないため,規律の対象から除外するものとしております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。第三者割当てによる募集株式の発行等について,株主総会の決議を要するものとするかどうかに関し,部会資料14では,A案からC案までが掲げられております。A案又はB案のような規律の対象となる募集株式の発行等の範囲も含めて,御意見を頂きたいと存じます。いかがでしょうか。 ○静委員 以前にも申し上げましたけれども,第三者割当て関係の問題というのは,これだけではなくて,本当にいろいろあると思っていますが,今回の部会資料14で採り上げていただいております,いわゆる経営者による支配権の異動に関する問題というのは,株式会社制度の根幹に関わるものだと思いますので,この部分を最優先に手当てをするということで,この部会資料14の整理に基本的には異論はございません。   しかしながら,1点だけ申し上げますと,総会決議を要するケースにつきまして,過半数の議決権を引受人が持つことということを御提案いただいていると思うんですけれども,この部会の議論では,私の記憶では,過半数だと実効性に限界があるので,象徴的な意味しかないのではないかという御指摘が田中幹事からあったと思いますし,あるいは濱口委員からも,水準についてはまだ議論があるのではないかというような御議論もあったというふうに記憶をしております。具体的に幾つがいいのかというのは,確かに非常に難しい問題だなと思いますけれども,私ども取引所では,20%をめどにしているという例はあります。何らかの案を追加するというのは無理だというのであれば,せめて,なおその部分について検討を要するという旨の注記を追加していただいて,意見を聞いていただけないかと思います。 ○田中幹事 私も,静委員の意見に賛成です。金融商品取引法の公開買付規制でも,買付け後の株券等所有割合は3分の1を超えることを一つの目安にしていまして,支配権の異動ということに着目するとしても,過半数に拘泥する必要はないのではないかと。かえって,過半数というふうにしますと,総議決権の過半数を得なくても,上場会社では十分実効支配できるということがむしろ常態ではないかとも思いますので,少しこの点は注に付け加えるですとか,考えていただきたいかと思います。少なくともB案のように4分の1の株主が反対しているというようなケースを考えますと,取締役会が3分の1の株式を発行しようとしているのに対して4分の1の株主が反対していたら,もうそれは立派に支配権争いがあるといってよいと思いますので,その場合には,その株式発行の当否は株主が判断するというのが現在の判例法理に照らしても十分筋が通っているのではないかと思いまして,そのような選択肢も排除しないでいただきたいと思います。 ○杉村委員 私どもは,そもそも現行法の規律を見直す必要はないと考えておりますが,あえてA案若しくはB案について,委員,幹事の方から御発言があったことに関してコメントを申しますと,仮に見直す場合でありましても,その対象となり得る募集株式の発行の範囲は,実務に混乱を来さないためにも,支配株主の異動が客観的に明白になるような基準,すなわち過半数という基準を用いるという,部会資料14の提案を軸に考えるべきではないかと考えております。 ○栗田幹事 私も,基本的には,支配権の異動を伴うような大規模な第三者割当てについては投資者保護を図る必要があり,そういう観点で,今回示されているように,株主総会の決議を要するとするのは結構なことかと思います。ただ,資料にも書いてありますように,資金調達の必要性とか緊急性というような点にも十分配慮が必要ではないかと考えております。例えば,我々の立場で申しますと,銀行に公的資金を入れるような場合には,預金保険法や金融機能強化法といった法律に基づいて,預金保険機構が引受人になるわけでございますけれども,そういう公的な引受人が緊急の必要性に基づいて引き受けるような場合に柔軟に対応できるような配慮が必要かと考えております。部会資料14では,定款で定めて,かつ100分の3以上の株主が異議を述べないということが要件になっているわけですけれども,いろいろなケースがあり得るので,柔軟な対応ができるような考慮をしていただければ,なおいいのではないかと考えております。 ○上村委員 基本的な発想そのものには賛成なんですけれども,この責任の一部免除に関する426条を参考にするということですが,私は,426条それ自体が合理性のある規定ではないと思っております。これはここで言い出すと切りがないからやめておきますけれども,要するに,裁判所が,余り過大な請求額を認めるから,株主総会で是正しますとか,取締役会で決めますとか,あるいはこの場合でも3%の株主の異議があれば変えられないとか,要するに株主総会での,言葉は悪いですけれども,株主間の権力争いに責任の帰趨を委ねているのですね。これは,非常に筋の悪い話ではないかと思っております。あれを入れた時には緊急避難的で仕方なかったのかもしれませんが。今,栗田幹事もおっしゃいましたけれども,必要性・緊急性があるにもかかわらず―つまり,これは,必要性・緊急性があるわけですね―,それにもかかわらず,3%の人が異議を申し立てると株主総会まで持っていって,その緊急性・必要性は犠牲になっても仕方ないということですね。あるいは,ちょっとこの辺の関係がよく分からないんですけれども,例えば,第三者割当てが買占めに対する対抗策として出てきたというような場合に,相手が非常に筋の悪いものであっても,3%の株主の異議があれば,株主総会に戻るということでいいのか,その辺はちょっとはっきりしないように思います。私は,場合によっては,3%の異議というのはそもそも必要ないのではないかという感じがしているんですけれども。それを除けば,基本的には賛成です。 ○濱口委員 私も,静委員と同じ意見で,過半数に限定したことにすると,これを新しく導入する意義が相当薄れると思います。現に,過去,買収防衛的に,これ以下の割合で発行されたような例もありますので,その辺の濫用も防ぐためには,違うオプションも提示して,広く意見を聞くべきだと思います。 ○三原幹事 1点確認です。今年2月の第二読会ではA案とB案につき余り議論はしていないと思いますのでお伺いしたいと思います。210条の不公正発行の差止めとの関係で,A案を採った場合,例えば,緊急性・必要性を勘案して,総会を省略し,3%なり4分の1なりの株主の異議がなかったとします。しかし,210条の不公正発行という制度は別段排除されないので,それはそれで別の法制度として,210条の差止めというのは,それとして当然あるという前提で考えている御提案だということで理解してよろしいですよね。質問として,教えていただきたいです。 ○内田関係官 この手続に従って発行する場合でも,会社法210条による差止めの余地は,必ずしも排除されないという前提での御提案でございます。 ○岩原部会長 よろしいでしょうか。   それでは,静委員,濱口委員等から,あるいは田中幹事から,このパーセンテージ等についての御意見ございましたので,それを踏まえて,中間試案として,あるいはその補足説明を含めた記載をどのようにするかということを,更に事務当局に考えていただきたいと思います。それでは,次に,「(2) 情報開示の充実」について,事務当局から説明を頂きたいと思います。 ○内田関係官 それでは,「(2) 情報開示の充実」について御説明します。(2)は,公開会社が支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等を行う場合において,差止請求権や株主総会における議決権等の行使に関する十分な判断資料が株主に提供されるようにするため,株主への通知又は公告による情報開示の充実を図るものでございます。具体的な開示事項は,①及び②で掲げております。また,(注1)に掲げた事項についても,通知・公告の対象に加えることが考えられます。特に,当部会では,支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等について,社外取締役や監査役の意見が開示される仕組みを設けるべきであるとの指摘がされており,これらの指摘を踏まえて,(注1)のウ及びエを掲げております。なお,(注2)に記載しておりますとおり,有価証券届出書等において同様の事項が開示されている場合には,通知・公告を省略し得るものとすることになるかと存じます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。それでは,この「(2) 情報開示の充実」につきまして,皆様の御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○中東幹事 通知・公告をもってこれに代えることができるという尋ね方について御検討いただければと思っています。情報開示が充実すると,内容は非常に充実するというのは分かるのですが,伝わらなかったら意味がないわけで,例えば,非上場の公開会社の内紛等でクーデターが起こりかかっている,そういう事例を考えると,個別通知したほうが安いのに公告をするという例もあります。(注2)との関係で,金融商品取引法等の開示がされている場合には,そもそも通知を要しないとされており,それ以外の場合には,全部公告でよいということになると,情報開示の充実が看板倒れになるような取りまとめのような感じがいたします。その点,少し表現を工夫していただければと思っております。 ○内田関係官 御趣旨の確認ですが,公告によることが認められる会社の範囲を制限するという方向での御発言でございましょうか。 ○中東幹事 例えばそのような形など,どのような場合でも公告でよいと考えているわけではないことが分かる表現のほうがよいと思っております。 ○内田関係官 公告をもって通知に代えられるという点につきましては,会社法201条4項を参考に,それと並べる形での御提案としているところでございます。ここでは,公開会社に関する規律として御提案しているわけですが,現行の会社法の建て付けとして,公開会社が募集株式の発行や組織再編等のいろいろな場面で株主に重要な事項を周知するためのツールとして,公告を用いることができることになっております。この場面でも,そのような現行法の規律との横並びで,公告で代えられるということを御提案している次第です。 ○中東幹事 ありがとうございます。公開会社であっても,非上場の会社というのはたくさんあるわけですので,申し上げたということでございます。 ○岩原部会長 ということは,公開会社であっても非上場の会社については,公告でよいという場合を限定するような考えや意見があったということを,中間試案の中に反映してほしいということでしょうか。 ○中東幹事 そうしていただければ十分有り難いです。 ○岩原部会長 それでは,補足説明で書くか,あるいはどうするか,事務当局で検討していただきたいと思います。ほかに御意見ありますでしょうか。 ○荒谷委員 情報開示の充実として,株主への通知事項とすべき項目として9ページのエのところで,当該募集株式の発行等の適法性についての監査役又は監査委員会の意見が例示されておりますけれども,新株発行差止請求権の行使ですとか株主総会における議決権の行使等に関して,株主に対して十分な判断資料を提供させるという趣旨から見ますと,既に現行の会社法施行規則において,監査役に買収防衛策についての意見を事業報告で表明させるという記載がございますので,もしできましたら同じように,支配権の異動を伴う第三者割当てについても監査役の意見を述べることの当否,そこにまで踏み込んで述べることの当否について,(注)でも結構ですので,検討の余地があるというようなことを書いていただければと思います。 ○内田関係官 意見の対象をどのように定めるのかという点については,いろいろなレベルがあり得るところとは考えております。買収防衛策についての意見が監査報告の記載事項とされていることを御指摘いただきましたが,買収防衛策の場合には,完全に支配権争いの問題という整理が可能かと思いますけれども,ここでの規律の対象となる第三者割当ては,支配権に関連する場面ではあるわけですが,他方で,やはり資金調達や業務提携に関するビジネス上の判断という面があり得ることも否定できないところかと思います。そういった高度な経営判断事項についてまで監査役が踏み込むのかどうかというところに関しては,いろいろな議論があり得ると思われますので,まずはやはり適法性について意見を開示するという内容でパブリック・コメントに掛けることを御提案している次第でございます。この点は,当部会でも,例えば業務提携上の第三者割当ての必要性等についてまで判断を示すというのは,伝統的な監査役の役割から離れてしまうという御意見があったことも踏まえたものでございます。 ○太田委員 今の御説明を踏まえても,なおやはり,荒谷委員から御指摘のあったように,ここで適法性というこの三文字で言うことが,かえって,誤解を招かないか危惧するところです。これまで実態上,こういう株式発行に際しての監査役意見の表明を記載しているという実例がたくさんございますから,それは適法性だけなのかということです。もう神学論争はやめたほうがいいという意味で申し上げているんですが,何もその妥当性と適法性について論ずる気はありませんが,実際,意見表明されている文例だとか実例は,狭義の―狭義のというのは,また私の感覚が入ってしまいますが―法にかなっているかどうかということを乗り越えたところまで意見表明されているという実情をもう少し勘案されて,適法性というふうにわい小化された表現にとどまらないほうが,私は適切ではないかと思っております。 ○岩原部会長 ほかに御意見ございますでしょうか。   よろしいですか。それでは,この問題についても,今頂きました御意見を踏まえて,更に最終的な中間試案の案,あるいはその補足説明を検討していただくということにしまして,次の第3の「2 株式の併合」に移らせていただきたいと思います。まず,「(1) 端数となる株式の買取請求」について,事務当局から説明をしていただきたいと思います。 ○内田関係官 それでは,「2 株式の併合」の「(1) 端数となる株式の買取請求」について御説明します。現行法上,株式の併合に際して生ずる一株未満の端数については,金銭交付による処理が定められていますが,多くの端数が生じる株式の併合の場合には,このような処理によると,端数について適切な対価が交付されないおそれがあるとの指摘がされています。そこで,(1)では,株式の併合に際して端数となる株式につき,株主が株式会社に対してその買取りを請求することができる制度を創設するものとし,その具体的な制度設計をお示ししております。  まず,対象となる株式の併合の範囲ですが,①では,単元株式数に併合の割合―すなわち,併合前の株式数を分母,併合後の株式数を分子とする割合―を乗じて得た数が整数となる場合には,単元株式数の株式が端数となることはないため,そのような株式の併合は,対象から除外するものとしております。これに加えて,(注3)では,併合の割合が一定割合を上回るような場合―これは,基準となる割合よりも分母が小さいこと,すなわち,併合による株式数の減少の幅が小さいことを意味するわけですが―には,このような株式の併合も対象から除外するということにするかどうかについて,なお検討するということとしております。  また,買取請求をすることができる株主は,②に掲げる反対株主としております。当部会においては,反対株主に限定すべきではないとの指摘もあったところですが,自己株式の取得に関する財源規制との関係を含め,現行法の他の制度とのバランスも考慮して,反対株主に限定することにしている次第でございます。なお,①の(注2)のとおり,端数となる株式のうち買取請求がされなかったものの処理は,会社法第235条に定める通常の端数処理の手続によることになります。この手続との関係で,端数となる株式の一部についてのみ買取請求がされると,端数の処理が無用に複雑化するおそれもあるため,(注1)において,買取請求は,反対株主の有する株式のうち買取請求の対象となり得るものの全部について,一括して行わなければならないものとしております。③及び⑪は,端数となる株式の買取請求権を生ぜしめる株式の併合について,組織再編の場合と同様の事前開示及び事後開示の手続を設けるものです。キャッシュ・アウトに関する当部会での議論を踏まえますと,③の事前開示手続においては,株式の併合の条件のほか,(注)に掲げているような端数の処理の方法に関する事項等も,開示の対象に含めることが考えられます。④から⑩までは,端数となる株式の買取請求の手続について,基本的に,組織再編の場合における株式買取請求と同様の手続を設けるものとしております。⑩の買取りの効力発生時期については,端数の機動的な処理を確保する観点から,株式の併合の効力発生日に買取りの効力が生ずるものとしております。⑫では,端数となる株式の買取請求に応じた株式の取得に関する分配可能額規制の在り方について,現行法における他の株式買取請求制度におけるのと同様,自己株式の取得財源に関する規制は適用されないものとしております。他方で,株式の併合は,会社が単独で行うことができるため,端数となる株式の買取請求が濫用的な会社財産の還元に用いられるおそれがあるとの指摘もされています。この点については,同様の指摘が妥当し得る会社法第116条第1項の株式買取請求に関する規律に倣い,会社法第464条と同様の責任―すなわち,株式の取得に関する職務を行った業務執行者の責任―を定めることによって対応するものとしております。   端数となる株式の買取請求制度の制度設計は,以上のとおりですが,(注)に記載しましたとおり,買取請求に関する手続等については,組織再編等における株式買取請求制度に準じて,所要の規定を設けるものとしております。手続の詳細に関する規定を設けるほか,当部会における議論を踏まえて,価格決定前の支払を認める等株式買取請求制度に関する規律を見直す場合には,それに準じた規定を設けることを考えております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。それでは,(1)につきまして御意見をいただきたいと存じますが,いかがでしょうか。 ○静委員 先ほど,財源規制の問題があるのでこういう案になったというお話を伺いましたけれども,その話を伺っても,やはり反対株主でなくても買取請求権は認めるべきだと思います。まず,同じ買取請求でも,先ほどから例に挙がっております組織再編の場合を考えますと,会社のためになると思って賛成した人から株を買い取る必要は確かにないと思いますけれども,株式併合の場合は大分様子が違うのではないかと思います。会社のためになると思って併合に賛成した人でも,併合されると株の全部ないしは一部を失ってしまうということになるかとか,当然あるわけでございまして,部会資料14の案だけでいきますと,会社のためになると思っても,買い取ってほしければ反対するということをせざるを得ないということに,そうでなければ公正な買取りが望めないということになってしまう可能性があるということでございますので,やはり筋が通らないのではないかと思うということでございます。更に申し上げますと,同じ株主が単元のくくり直しで単元未満株を持つことになった場合には,これは,反対しなくても買取請求はできると,ところが,同じ株主が併合で端株を持つことになった場合には,決議に反対しないと買ってもらえないということは,やはりどう考えても不平等なのではないかと思いますので,もう一つ案を追加して,意見を問うていただきたいと思います。 ○内田関係官 御指摘を踏まえ,ここで買取請求権者を反対株主に限定している趣旨について,補足的に御説明を申し上げたいと思います。まず,反対をしなかった人でも端数となって困ることがあるのではないかということですけれども,買取請求をしなければ全く保護されないということではなくて,既存の会社法235条に基づく端数の処理という手続がまず用意されているということが,この御提案の大きな前提になっています。ここで御提案している買取請求制度というのは,部会資料14の10ページ冒頭の(注)にあるような端数処理の方法等に関する開示の内容も踏まえ,そのような通常の端数処理手続では適正な対価が交付されない可能性があるという不安を感じている株主に,通常の端数処理手続とは別に,更に手厚い保護を与えるというコンセプトの制度と位置付けることになると思います。そこで,そういった手厚い保護に値するのはどのような株主なのかということに加え,そういった保護を与えることに伴ういろいろなコストや債権者保護の要請等も考え合わせると,反対株主に限定するのがバランスとして適切なのではないかということでございます。   それから,単元未満株式の買取請求制度についても御指摘がありましたが,単元株式制度というのは,株主管理コストを削減する方法としては,株式の併合のように端数処理が必要になる方法とは別に,端数処理を要することなく,株主はそのまま株主であり続けてもらいながら,その議決権等の権利を制限することを認めるものであって,その意味で非常に便利な制度といえようかと思います。他方で,単元未満株主は,株主でありながらそういった権利制限を受け,譲渡による投資回収も難しくなるという立場に置かれますので,その代わり,いつでも―何らかの株主総会決議の機会に反対するという要件を満たさなくても―単元未満株式の買取請求をすることができることにして,投資回収の機会を確保するという制度かと思います。これに対して,ここで御提案している端数となる株式の買取請求は,正に株式の併合に際して端数処理がされる場面で,通常の端数処理手続に加えて,より手厚い保護を与えようとする制度ですので,単元未満株式の買取請求制度とは,その前提になっている状況が大きく異なるのではないかと考えております。 ○静委員 現実に通常の端数処理手続では金銭交付がなされなかったという事件が起こっているから御提案申し上げています。端株はいずれお金になると思っていたらならなかったということが上場会社で大っぴらに行われているという問題があり,現行法に基づく端数処理手続で本当に保護が十分だと言えるのかという問題が根っこにあります。単元未満株はいつでも単元未満株を公正な値段で買い取ってもらえるという仕組みですが,端株については元々株主だった人が株主でなくなってしまうときの処理だけの問題で,その後いつでも買取りをさせられるということとは違うと思います。にもかかわらず,端数処理の場合には先ほどの債権者保護というか財源規制の問題を言い出してしまうと,やはり最後は,単元未満株でなかったがために,併合で処理をされてしまったがために,最終的には補償が受けられないという方が出てきてしまうと思うので,やはり私は,ここは案としては一つ置いていただけないかなと思います。 ○田中幹事 私も,今の静委員の案は一つの案として載せるのがいいのではないかと思います。組織再編,例えば交付金合併などと比べますと,端数処理の場合は,端数を売却してみないと少数株主は幾ら得られるのか分からないという部分があるので,やはり違うということは確かだと思います。現行法の仕組みですと,全部取得条項付種類株式の際の取得額決定も反対しないと駄目というのがありまして,これとの並びでいうと,やはり反対しないと駄目だということになるんだろうとは思いますが,全部取得条項付種類株式でも結局端数になるので,実は売却代金は最後まで分からないという点では,やはり同じ問題が本当はあると思います。現在,それが問題になっていないのは,全部取得条項付種類株式でやる場合は,基本的にはある一人の支配株主が残りの株式を全部買い取って100%子会社にするという,そういうケースでしか使われていませんから,売却代金は幾らになるかはもう分かっているという,事実上それで問題が生じていないだけだと思います。本当は,172条の関係でも問題はないわけではなかったように思いますので,その点,この静委員の御提案は一つの案にして,公の意見を問うてみるというのがいいのではないかと私も考えました。 ○岩原部会長 ほかに何かございますか。静委員からの御意見に賛成される御意見もございますので,最終的な中間試案までに更に検討していただきましょうか。 ○内田関係官 頂いた御意見を踏まえまして,更に検討させていただきます。一つだけ,その際の懸念としましては,株式併合の決議が可決された場合に,賛成した株主もやはり買取請求をしたいということで,それを認めてしまうと,買取請求が非常に多くなる事態が生じる可能性があります。その点についても,考慮が必要ではないかと感じております。 ○静委員 端株分になってしまった部分だけを買取請求の対象にすることはできないということをおっしゃっているのですか。 ○内田関係官 例えば,仮に株式併合がキャッシュ・アウトに用いられる場合には,端数が非常に多く生ずることになりますので,そういった場合に,株主総会で賛成した者まで含めた少数株主の全員が買取請求をするとどうなるのか,そのような買取請求を全て認めることが,果たしてバランスのよい結論なのか,というのが素朴な疑問として思い浮かびましたので,申し上げた次第です。 ○静委員 そういう株式併合をキャッシュ・アウトに用いるような場合をいいと思うかどうかの問題だと思いますが,おっしゃっていることの趣旨は分かりました。 ○岩原部会長 それでは,そういう実務的な問題を含めて更に御検討いただいて,中間試案の正式な案にするのか,あるいは補足説明の中で書くようなことにするのか,更に検討していただきたいと思います。それでは,次に,「(2) 発行可能株式総数に関する規律」について,事務当局から御説明をいただきたいと思います。 ○内田関係官 それでは,「(2) 発行可能株式総数に関する規律」について御説明します。(2)は,既存株主の持株比率の低下の限界を画するという発行可能株式総数の制度趣旨を実効的なものとするため,株式の併合後における発行可能株式総数が発行済株式の総数の4倍を超えないよう,公開会社の発行可能株式総数に関する規律を見直すというものでございます。具体的には,株式の併合に係る株主総会の決議において,併合後の発行可能株式総数を定めるものとし,この発行可能株式総数について②のような制限を課すとともに,この決議がされた場合には,発行可能株式総数に関する定款の定めについても,③のように変更される旨の規定を設けるものとしております。 ○岩原部会長 いかがでございましょうか。皆様の御意見を頂きたいと思いますが。この(2)につきましては,第二読会では特に御異論がなかったかと承知しております。もし特に御意見がなければ,部会資料14のとおりでパブリック・コメントの手続に付させていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,そのようにさせていただきたいと思います。次に,第3の「3 仮装払込みによる募集株式の発行等」に移りたいと存じます。事務当局から御説明をいただきます。 ○宮崎関係官 それでは,「3 仮装払込みによる募集株式の発行等」について御説明いたします。仮装払込みによって募集株式の発行等がされる場合,既存株主から払込みの仮装をした者に対する価値の移転が生ずるおそれがありますが,この点については,取締役に対する責任追及等現行法の規律の下での救済では,必ずしも十分ではないと考えられます。そこで,3は,募集株式の発行等に係る払込みの仮装に関与した引受人及び取締役等の責任を見直すものでございます。まず,①は,仮装払込みにより既存株主から価値の移転を受けた引受人は,それを返還すべき地位にあると言えることから,払込期日又は払込期間の経過後も払込みの義務を負うものとしています。取締役等と通じて払込みを仮装した引受人に対しては,会社が責任追及を怠るおそれがあると考えられるため,(注)にあるとおり,当該義務は,会社法第212条第1項の募集株式の引受人の責任と同様,会社法第847条第1項の責任追及等の訴えの対象に含めるものとしております。また,②は,払込みの仮装に関与した取締役等は,仮装払込みによる募集株式の発行等について,責めに帰すべき立場にあると言えることから,その責任を定めるものです。平成17年改正前の商法における取締役の引受担保責任は,取締役が所定の手続を経ることなく株式を引き受けることができるのは適切ではないことなどから,会社法制定時に廃止されましたが,②の義務は,そのような引受担保責任とは異なり,仮装払込みの金額に相当する額を支払うという特別の法定責任として定められるものです。取締役等は,その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明すれば,このような義務を免れるものとしており,その意味で過失責任ということになりますが,払込みの仮装をした取締役等については,その行為態様等に鑑み,無過失責任としています。また,(注)では,株式会社の設立時における株式の発行に係る払込みが仮装された場合についても,①及び②と同様の規律を設けるものとしております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。現行法の下では,仮装払込みは払込みとして無効だというのが確定した最高裁判例ですので,それを前提にすると,会社法208条5項や63条3項によって引受人が失権してしまう。失権した以上は,もう払込みを請求することができなくなるということになって,変なことになってしまいますので,それをカバーしたいというのがこの提案でありまして,第二読会では,この点については特に御異論はなかったかと思いますので,中間試案としてはこのような形で提案させていただくということでよろしゅうございましょうか。 ○上村委員 念のためお尋ねしますが,設立の場合には,この払込みが欠缺していても,わずかではなくて相当大規模な欠缺があれば設立無効になるはずですから,そういう形で処理されると思うんですけれども,この募集株式の発行の場合には,大変な大規模なものもあり得るわけですね。これは,注意義務としての法定責任だという御説明でしたので,その株式の有効・無効とは関係ないという理解でよろしいでしょうか。 ○岩原部会長 そちらは当然解釈問題として出てきますが,そこは解釈論に委ねるということです。ここは,飽くまで引受人の責任の問題や,それに関わる役員の責任についてだけ,こういう規定を置くということを提案するものです。よろしいでしょうか。   それでは,このような形で中間試案に付させていただきたいと存じます。次に,第3の「4 新株予約権無償割当てに関する割当通知」について,事務当局から御説明をお願いしたいと思います。 ○内田関係官 それでは,「4 新株予約権無償割当てに関する割当通知」について御説明します。当部会における議論を踏まえますと,新株予約権無償割当てに関する割当通知は,株主に新株予約権の行使の準備をする時間的余裕を与えるという機能に加えて,株主の有する権利の内容の変更を株主及び登録株式質権者に知らせるという機能も有するものと考えられます。この機能に鑑みて,割当通知の期限を新株予約権の行使期間の初日の2週間前としている現行法の規律を改め,割当通知は,新株予約権無償割当ての効力発生日後遅滞なく,かつ,新株予約権の行使期間の末日の2週間前までにしなければならないものとしております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。この論点についても,第二読会で特に御異論はなかったかと思いますが,特に御意見はございますか。 ○栗田幹事 このような御提案を頂くのは非常に有り難いのですが,ライツ・オファリングにつきましては,非常に早く措置してほしいとの声が実務界から寄せられております。今回のこの御提案が実現できれば,ライツ・オファリングにおけるリスクというのはかなり軽減されるというふうに考えておりますので,これは全くのお願いですけれども,もし可能な機会があれば,ここだけ切り離してでも前倒しで改正をお願いしたいと考えております。 ○岩原部会長 御要望として承ります。よろしいでしょうか。   それでは,特に御異論がなければ,このような形で中間試案に付させていただきたいと思います。   今日は予定よりも早く審議を終えることができまして,これも皆様の御協力のおかげと感謝しております。ただ一方で,今日,大変重い宿題も頂いたと理解しておりまして,取り分け監査・監督委員会の意見照会の形については,かなり大きい整理をした上で,皆様の御意見を反映した形の案に作り直して,中間試案としてパブリック・コメントの手続に付したいと思います。それについては,事務当局のほうに,大変な御苦労かと思いますけれども,お願いしたいと存じます。   それでは,本日の審議はこれぐらいとさせていただくことにいたしまして,本日の部会の終了の前に,次回の部会の予定について事務当局から説明をお願いいたします。 ○坂本幹事 本日はどうもありがとうございました。本日の議論を踏まえまして,恐らく次々回になるかと思いますけれども,この第2版をお示しできればと思っております。   次回につきましては,10月26日水曜日の午後1時30分から,予定では5時30分までとなっております。場所につきましては,本日と同じ,この20階の第1会議室でございます。中間試案の取りまとめのための御審議の第2回ということで,親子会社に関する規律とその他論点に関する規律,両方まとめて御審議をお願いする予定でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。それでは,法制審議会会社法制部会第13回会議を閉会いたします。本日は,大変御熱心に御審議いただきまして,誠にありがとうございました。 -了-