法制審議会会社法制部会           第18回会議 議事録 第1 日 時  平成24年3月21日(水)  自 午後1時30分                        至 午後5時21分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  会社法制の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○岩原部会長 それでは,予定した時間になりましたので,法制審議会会社法制部会第18回会議を開会いたします。本日もお忙しい中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   それでは始めたいと存じます。事務当局から配布資料の説明をお願いいたします。 ○坂本幹事 それでは,御説明いたします。配布資料目録と部会資料20を事前にお配りしております。部会資料20の内容につきましては,後ほど御説明させていただきます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。それでは,本日の御議論をお願いしたいと存じます。まず,部会資料20の第3の「1 特別支配株主による株式売渡請求等」から始めたいと思います。まず,「(1) 対象会社の範囲」について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「第3 キャッシュ・アウト」のうち,「1 特別支配株主による株式売渡請求等」の「(1) 対象会社の範囲」について御説明いたします。試案第2部第3の1の①では,株式売渡請求の制度における対象会社について,「株式会社」とする以上の限定は付していません。これに対して,パブリック・コメントでは,公開会社でない株式会社―部会資料20では,「全株式譲渡制限会社」と称しております―を一律の要件で対象会社に含めることについて,反対する意見や,慎重な姿勢を示す意見が寄せられています。全株式譲渡制限会社においても,キャッシュ・アウトの余地を認めることには意義があると考えられるところ,株式売渡請求の制度は,対象会社の株主総会決議を要しない点で,キャッシュ・アウトに係る時間的・手続的コストの低減に資するものと言えます。そこで,(1)については,これを踏まえ,全株式譲渡制限会社において,この制度における少数株主の救済方法が不十分なものと言えるか,他の手法におけるキャッシュ・アウトと比較しつつ,検討する必要があるものと存じます。この点に関し,株式売渡請求の制度は,株主総会決議の瑕疵を理由とする少数株主の救済の余地がない一方,差止請求や売渡株式の取得の無効の訴えを設けることとしています。また,裁判所に対する価格決定の申立てが認められる点では,他のキャッシュ・アウトの手法と同様です。そこで,全株式譲渡制限会社において,これらの仕組みによっては少数株主の利益を十分に確保し得ないような場面があるか,具体的に検討する必要があるものと存じます。また,検討の前提として,売渡株式の取得の無効の訴えによる救済が認められる範囲―特に,対価の金額が著しく不当であるなど,対象会社の株主総会決議を要する手法によるキャッシュ・アウトであれば決議取消事由の存在を理由にキャッシュ・アウトが無効となり得るような場合に,それが売渡株式の取得の無効事由となり得るかどうか等―についても,議論を整理する必要があると思われます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。全株式譲渡制限会社を対象会社に含めることについて,御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○伊藤委員 全株式譲渡制限会社において,株主総会決議不要型のキャッシュ・アウトを導入する必要はないのではないかと思います。このような会社に少数株主が存在することは,様々な理由があると思います。例えば,少数株主が従業員として雇用関係になってしまうケースもあれば,過去に共同で会社を設立していたというケースもございます。このような少数株主は,株式の適正な対価を支払うというだけでは納得しないケースが多く,株主総会という話合いの場を経ないでキャッシュ・アウトを可能にするということは,いたずらに紛争を惹起する懸念があると思います。   また,市場で取引される上場企業と異なって,中小企業の株式の評価は,非常に難しく,支配株主が決めた買取価格に少数株主が不満を持つことが少なくない。キャッシュ・アウトされる株主は,差止請求や価格決定の申立てができるということによって保護されていますけれども,逆に,中小企業において,請求や申立てへの対応自体がまた負担になることも考えられます。結果的に企業活動を阻害してしまうことを懸念しております。   さらに,少数株主が存在する中小企業においては,株主間のコミュニケーションを図る場としても,株主総会を開くというプロセスは,大変重要なものであると思います。少数株主の権利を奪うキャッシュ・アウトの実施に当たっては,慎重な対応が必要なのではないかなと思います。もちろん,中小企業であっても,事業継承やM&Aなど,キャッシュ・アウトが必要な場面もございます。しかし,全株式譲渡制限会社は,株主総会を開きやすい環境にあるため,株主総会必要型のキャッシュ・アウトが可能であれば,それで十分なのではないかなと思います。 ○前田委員 一般論としては,正しく伊藤委員が御指摘になったように,全株式譲渡制限会社では,株主たる地位を維持し続ける利益が公開会社よりも重要だということは,否定できないところだと思います。ただ,この新たな制度では,特別支配株主は,議決権の90%以上の株主とされており,この90%という割合は,略式組織再編の制度を参考にしたと説明されているところですけれども,ここには,略式組織再編と同じように,株主総会を開催する意味が乏しいということのほか,90%もの圧倒的支配株主がいる会社では,少数株主は,対価の適正さえ確保されれば,株主でい続けることにほとんど意味はなかろうという意味も込められているのだと思います。対価の適正,更には対価の交付が確保されるための手当ては,十分に講じておく必要はありますけれども,特に全株式譲渡制限会社を対象外とする必要はないのではないかと思います。   現行の他のキャッシュ・アウトの制度でも,特に全株式譲渡制限会社だけ特別扱いすることはなされていないのですね。キャッシュ・アウトの制度は,前にも申し上げましたように,本来は,今回の新たな制度に一本化できれば一番よかったと思うのですけれども,現在の議論では,いろいろな事情から,現行の制度も残さざるを得ないということになっているのだと思います。そうしますと,現行の制度で既に全株式譲渡制限会社についてもキャッシュ・アウトを認めている以上は,この新たな制度についてだけ,特に全株式譲渡制限会社を特別扱いする意味は乏しいでしょうし,他の方法との整合性も説明しにくくなるのではないかというように思います。 ○伊藤委員 今の部分では,前田委員がおっしゃるとおり,適正な価格であれば何の問題もないと思うんですよ。我々の中でよく議論したことが,この法律を悪用するケースですね。市場で株式が取引されていない中小企業の一部では,適正な価格を意図的に下げて過小に評価するケースが存在するのではないかという問題意識を持っています。利益がきちんと出ていても,その株式の価値,これを何で見るかによるのでしょうけれども,悪用した場合は,ほとんどゼロで少数株主を追い出してしまうというようなことが可能なのではないか。そこで,非公開会社の場合には,株主総会不要型のキャッシュ・アウトは不要なのではないかなというのが我々の基本的な考え方なんです。 ○齊藤幹事 前田委員の御意見の後にこのように述べるのは,大変ためらわれるのですけれども,私は,キャッシュ・アウト制度の対象に全株譲渡制限会社を含めることについては,従来から反対する意見を述べてきており,現在でもその意見は変わっておりません。確かに,現行法に存在する事実上のキャッシュ・アウトの制度は,全株譲渡制限会社を特に対象外としておりません。しかし,対価柔軟化の立法過程で特に強調されてきたのは,上場会社等の完全子会社化のためのキャッシュ・アウトの実現可能性でした。そのニーズを踏まえて,いろいろなキャッシュ・アウトの手法が編み出されてきて,法でもそれを追認したという形になっているかと思いますが,その過程で,閉鎖会社において,このようなキャッシュ・アウトを認めるニーズというのが同程度に認識されてきたのかという点については,多少疑問を持っているところでございます。もちろんメリットはございますが,メリットというのは飽くまでも多数株主にとってのメリットでございまして,そのメリットを法によって実現可能とすることの正当性の有無については,まだ議論の余地があるのではないかと思います。本来は,対象を有価証券報告書提出会社に限ってもよいと思っているぐらいであります。我が国の公開会社は,非常に広い定義を採っておりますので,その中には,実際には閉鎖的な会社もございますため,そのような会社において,このような形でキャッシュ・アウトを認めることについて疑問があります。ただ,法律上公開会社であるが,株式を上場していない会社の中においても,未公開株に関わる詐欺の事件などにも表れているように,株式が比較的分散している会社もたくさんございまして,そのような会社において株主構成を整理するという必要性も高いかと思いますので,そういうような会社を対象外にしないということについては合理性もあろうかと思います。   閉鎖的な会社についても,キャッシュ・アウトを立法で認めた例として,よくドイツが引き合いに出されますけれども,ドイツにおいて,株式会社形態を採っているのは,せいぜい1万社ぐらいでございまして,残りの何十万社もの会社は,有限会社,合資会社,合名会社等の形態を取っています。それに比べて,我が国は,株式会社が100万社以上ございまして,そのような状況とドイツの状況は,一概に同じようには考えられないであろうと思います。   閉鎖的な会社の株式の評価は,現在も株式譲渡制限会社における株式の譲渡承認について,市場価格がない株式の評価について,それなりに先例がございますので,不可能ではないかと思いますが,その文脈においては,既に株主は株式を手放すことに納得している人たちでございます。手放そうとしない人たちに株式の売渡しを説得する場合には,通常の取引であればプレミアムを払うはずで,市場価格に当たる手掛かりが存在しない譲渡承認等における株式の評価価格が可能であるから,同じ価格で,これまで株式を手放さなくてよかった人たちに強制的な売渡しを認めてもよいということには直ちにはならないと思います。株主総会を開いたとしても,確かに株主総会決議は通ってしまうわけでありますけれども,株主総会が開催される場合には,決議取消しの文脈で,実質的な必要性について裁判所が判断する機会が一応確保されているということはあるかと思います。確かに,今回の制度について,無効の訴えがございますので,無効の訴えにおいて,閉鎖的な会社については,実質的な必要性まで裁判所がチェックをするという解釈論を確立していくという余地はございますけれども,せっかく,株主総会が開催されない簡易なタイプのキャッシュ・アウト制度を創設するにもかかわらず,無効事由の解釈の広い余地を認めるということは,それだけ,この制度自体の法的安定性と機動性を損ねることでもあります。こういう制度を作る以上は,利用可能な範囲を限定し,少数株主の排除の是非自体については無効原因として争われないというような制度にしていくほうが,全体として使いやすい制度になるのではないかと考えております。 ○中東幹事 私も,前田委員の御意見には反対でして,伊藤委員と齊藤幹事の御意見に賛成させていただきます。実質的な話は,伊藤委員,齊藤幹事がおっしゃったことにほぼ賛成でございます。取り分け,2点述べさせていただきたいのですが,1点は,閉鎖的な会社で内紛になった場合には,現行法の下では,株主総会の決議取消し,決議不存在とかいろいろな形で,本来の筋としては悪いのかもしれませんが,不満のある株主は会社から出ていかなくてもよいことを前提に,いろいろな決議の瑕疵などを争って,その結果,和解等で,相応の金額をもらって出ていくという形で終結していると思います。株式売渡請求を導入することによって,取締役会決議で出ていかなければならないという建て付けと,そうではない建て付けとでは,紛争の交渉過程や結果において,違いが生じると思っています。   もう1点は,メッセージ性の問題でして,前田委員がおっしゃいましたように,全体として,こういった方法を区別していないではないか,それは,確かにそうであると思います。ですが,特別支配株主による株式売渡請求という特別な方法を使ってまで非公開会社についてもキャッシュ・アウトできることになり,しかも,非公開会社でも利用することができるかについて議論をした上で,できるという結論になりますと,他の方法を使う場合にも,手続にさえ従えばやっていいのだという話にもなりかねません。キャッシュ・アウトが認められる会社の範囲について,正面から議論しているのはこの項目だけであると認識しておりまして,その意味では,ここで,非公開会社については簡易な形でのキャッシュ・アウトは認めないと,むしろそういうメッセージを発信することが必要だと思っています。 ○藤田幹事 私は,この点について確たる意見がないのですけれども,どちらかというと前田委員に近いような立場から発言させていただきます。まず,対象会社から全株式譲渡制限会社を除くべきであるとする理由付けとして,少数株主の保護が欠ける,特に,価格について不当な価格で締め出される危険があるということを挙げられるとすれば,それは理由にならないと思います。締め出しの価格の不満は,基本的には,株式買取請求権を行使してもらい,「公正な価格」を支払うという形で救済するというのが,今回の新しいキャッシュ・アウト制度の建前ですし,既存のキャッシュ・アウト手段によって締め出される場合であっても,救済は基本的にはこれによっているわけです。それでは不十分で駄目だと言うのであれば,そもそも全株式譲渡制限会社においては,キャッシュ・アウトはおよそできないというところまで徹底しないと一貫しないと思います。   もう一つ強調された株主とのコミュニケーションの手段として総会を開くことが重要だという視点―可決されるか決議がされるか否かは別として,とにかくコミュニケーションの場としての総会が必要だという議論―は,それが本当に説得力があれば,この制度を適用しない,ただし,株主総会決議を経て行うその他のキャッシュ・アウトは可という,そういうルールも説明できることになります。しかし,コミュニケーションの場を確保するということだけのために開催を要求するというのは,恐らく今の会社法上,余り想定されていないような株主総会の使い方だと思いますので,それを根拠に,全株式譲渡制限会社については,新しいキャッシュ・アウト制度の適用を除外するということは,制度化しにくいと思います。   ここまでははっきり言えるのですが,そこから先について歯切れが悪くなるのは,私も,確かに,ある種の会社において締め出しというのを慎重に考えなければいけないこともあるのかもしれないという感触自体は分からないではないからです。ある種の会社においては,例えば,定款によって多数決によっても自由には締め出しができないようなコミットメントをすることができるような類型の会社を作るということは考え得る選択肢かもしれませんが。ただ,もしそういうことを考えるのであれば,この新しいキャッシュ・アウト制度を適用しないということのみならず,既存のやり方を使っても簡単にはキャッシュ・アウトできないようなコミットメントができるようにするのであれば一貫すると思うのですけれども,この制度を適用しないという極めて消極的な形でのみ工夫するというのは非常に中途半端な議論のような気がします。もし,ある種の会社において,株主が締め出しされない利益というのを重視し,少なくとも簡単に締め出せない会社にすることを株主の意思によって選択する余地を認めるという道を,少なくとも公開会社でない会社について構築するということは考えられると思うのですが,ただ,そのような制度はなかなか作るのが難しいですね。いくら定款などで定めても,後で特別多数決によって定款変更することにより,全部ひっくり返ってしまいますので,一旦そういう定款を置いたら簡単に定款変更できないようなことまで組み込んで制度を作らなければいけなくなります。そうなるとかなり大規模な改正を行わなくてはならなくなります。そこまで手を付けないというのであれば,基本的には,前田委員のおっしゃったように,公開会社でない株式会社も含めて適用あると考えるべきでしょう。ただ,いずれにしても,この制度についてのみ,公開会社でない株式会社について適用を外すというのは,ちょっと積極的に説明しにくいような印象は持っております。 ○杉村委員 全株式譲渡制限会社ということで考えてみますと,企業グループとして子会社をたくさん抱えている中には,グループ外の少数株主が含まれる形ではありますが,全株式譲渡制限会社でもあるという会社を抱えているケースもままあります。そのような形態の会社も,閉鎖会社といいますか,全株式譲渡制限会社になるわけです。そして,企業グループの中で資本政策の変更などを行う場合に,本制度を利用するケースも想定されると思います。したがいまして,こうした観点から考えますと,時間や手続等の面から非常に効率的に実行できる制度の対象から,全株式譲渡制限会社を外すということは,余り望ましくないのかなと思います。 ○伊藤委員 日本の企業数の99%,雇用の7割は中小企業が占めているわけなんですが,そのほとんどが非公開会社であると考えられます。このような中,例えば,私が申し上げているケースというのは,話合いの場すら持てない,唯一その話合いの場が株主総会であったりするケース,また,先ほどお話申し上げました従業員として報酬を得るケースなど様々なケースが考えられます。例えば,設立時に主たる経営者が90%出資し,友人が10%出資したケースはよくある話です。その10%出資された方が亡くなってしまって,それは息子さんが継承されるような場合,息子さんと主たる経営者の間には面識はありません。仮にこの会社が資本金1000万円であれば,100万円の株式を保有していることになると思いますが,この出資額が何の一切の話合いもなくどこかに行ってしまうというのは,何となく不公平感があります。また,結果的に,会社側として提訴されることも,中小企業側としてみたら,企業活動を阻害してしまうので,これも良くないよという話を申し上げました。これは,近年横行している悪いコンサルタントが,こういう方法を使ってキャッシュ・アウトできますよというような持ち掛けをしてこのようなキャッシュ・アウトを助長することもあるのではないでしょうか。このような場合,少数株主の追い出しに成功したからと言って後で訴訟を提起されるのは中小企業自身であり,人的なリソースの少ない企業にとっては大変な痛手になります。また,中小企業の場合,利益を出すことより,給与などを充実させていくことを重視する,もちろんこれは,お金が回ればの話ですけれども,そういう経営者が多い。そのため,適正な価格といっても少数株主が納得するだけの十分な対価はなかなか算定されないのではないかということをちょっと懸念しているというのが考え方の基にあるんですよ。 ○齊藤幹事 藤田幹事の御意見に反論するのも大変ためらわれるのですけれども,意見を述べさせていただきます。確かに,定款変更してしまえば,公開会社でない会社も,公開会社になってしまいますので,前者を対象外にするということは,体系的整合性が取れないというのは,確かにそのとおりだと思います。ただ,現在公開会社でない株式会社の多くは,かつて有限会社であったわけでございます。もちろん全株譲渡制限株式会社というのもございましたが,いずれにしても,それらの会社を作った人たちは,設立した当時は自分たちの持株比率が小さいからという理由で,その株式を失うとは思っていなかったはずです。その後,有限会社が廃止されて株式会社に統一されて,どちらかというと株式が分散している会社のニーズを酌んでキャッシュ・アウトという議論がなされるようになってきたわけです。もちろん,閉鎖的な会社においても,除名制度の必要性については常に議論があったかと思います。しかしながら,除名制度の場合は,除名の必要性を基礎付ける実質的な事由を必要とすることが前提になっていたかと思います。現在の公開会社でない株式会社の当事者になっている人たちが,果たしてこのようなキャッシュ・アウト制度を想定して自分たちの地位を確立してきたかということを考えたときに,この法改正をもってその地位を大きく変更してしまうということは,果たしていいのかという点に疑問がございます。もちろん,今から合同会社に変わればいいという議論もあり得ますけれども,現在少数株主である人たちにその現実的な可能性がないことや,この制度ができたらキャッシュ・アウトされてしまうような地位にある人たちが,従来より悪化してしまうその地位を守る具体的な手段が余りないことを考えますと,現段階でこれらの会社を対象に含めることについては,少し疑問がございます。キャッシュ・アウトするためだけに株式の譲渡制限を外す定款変更をするということについては,その定款変更の有効性を問題にするという余地もないわけではないかと思います。 ○岩原部会長 他に御意見ございますでしょうか。この点については,御意見がかなり分かれました。今日ここで取りまとめることは難しいかと思いますので,先に進ませていただきたいと思います。よろしいでしょうか。   それでは,次の論点に移らせていただきます。「(2) 新株予約権付社債に付された新株予約権の取扱い」について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「(2) 新株予約権付社債に付された新株予約権の取扱い」について御説明いたします。試案の②の(注1)に関しまして,パブリック・コメントにおいては,新株予約権付社債に付された新株予約権も売渡請求の対象とすることを認めるべきであるとの意見が寄せられており,これに対して異論はありませんでした。新株予約権付社債に付された新株予約権も,株式売渡請求の後に行使されてしまうとキャッシュ・アウトの意義が損なわれるおそれがある点では,通常の新株予約権と異ならないため,売渡請求の対象とすることを認めることは,合理的であると考えられます。   なお,新株予約権付社債に付された新株予約権は,基本的に社債と分離して譲渡することができないものとされていることからすれば,新株予約権部分が売渡請求の対象とされる場合には,社債部分も併せて対象となることを原則とすべきであると考えられます。ただし,新株予約権買取請求に係る規律と同様,新株予約権付社債の募集事項において新株予約権部分のみが売渡請求の対象となるなどの別段の定めがある場合には,当該定めに従うものとすることが考えられます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。新株予約権付社債に付された新株予約権も売渡請求の対象とすることについて,パブリック・コメントにおいては,異論はなかったようでございますが,そのようなことでよろしいでしょうか。   特に御異論がないようでございますので,そのような方向にしたいと存じます。それでは,次に,「(3) 価格決定の申立期間」について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「(3) 価格決定の申立期間」について御説明いたします。試案の⑥では,対象会社が株式売渡請求を承認した場合に,売渡株主に対して所定の事項を通知すべきものとしていますが,公開会社において常に通知を要するものとすれば,時間的・手続的コストの増大につながると思われることや,他の制度との均衡等を考慮しまして,公開会社においては,この通知を公告により代替することができるものとしています。パブリック・コメントにおいては,そのような代替を認めるべきではないとの意見も見られましたが,試案に異論を述べないものが多数でした。   他方で,取得日後にも価格決定の申立てを認めるかどうかという試案⑪の(注)に関しましては,公告しか行われないために,少数株主の知らないうちにキャッシュ・アウトの効力が生じ,価格決定の申立期間も徒過してしまうという事態が生ずることへの懸念から,これに賛成する意見が出されています。この点については,取得日後における想定外の取得費用の増加に対する懸念から,取得日後に価格決定の申立てを認めることに反対する意見もあり,パブリック・コメントにおいて意見が分かれたところでございます。そこで,公告による代替がされた場合における価格決定の申立期間を,例えば,取得日後20日間を経過する日までの間に伸長するかどうか,検討する必要があるものと存じます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。それでは,この点について,皆様の御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○本渡委員 補足説明の中に,「公告しか行われないために,少数株主の知らないうちにキャッシュ・アウトの効力が生じ,価格決定の申立期間も経過してしまうという事態が生ずることへの懸念」とありますが,私は,これについては非常に懸念しております。そして,「そこで」の後で,価格決定の申立期間を,取得日後20日を経過するまでの間に伸長するのはどうかということですが,この取得日が仮にあったとしても,その取得されたということを少数株主はどうやって知るのか,そこら辺がよく分からないということ,あと,公告を見る人は見ると思いますが,見ていない人もかなりいると思います。それで,公告を見ずに,全く知らないうちに,自分は少数株主だと思っていたにもかかわらず,その株が強制的に買い取られてしまって,後は,代金はこの金額だよと,代金の価格も争えなかったということになると,これは,少数株主の方は立腹する方もかなりいるのではないかなと思うんですね。そうすると,何でこんな法律作ったんだとかいうことで,事実上そうやって文句を言ったりとか,最終的には裁判までやって,それで,こんな法律は憲法違反だとかいう可能性も,主張としては出てこざるを得ないのではないかなと思いますので,ここはかなり慎重にやっていただきたいと。   それで,通知を必要としないで,公告だけでいいよということを御提案になっていますけれども,通知をするということがそれほど大変なことなのかなという気がしております。通知をするということをもう大体原則とし,株式公開買付けなんかの後に,すぐにこの制度を使うときは公告だけでもいいとか,そういう例外は設けてもいいけれども,基本的には通知をしないといけないと,少数株主にはきちんと知らせて,株は,きちんと売り渡さないといけないんだよということを知らしめないと,何か問題が起こってしまうのではないかという気がしてなりませんので,御配慮のほど,お願いいたします。 ○杉村委員 今の点でございますけれども,通知をすることはそれほど大変なことかという話もありましたが,たくさん株主さんがいらっしゃることを考えた場合,通知をするということは,時間的な問題,費用的な問題,手続的な問題から,やはりコストの増大になります。こうした観点から,現行法の他の制度におきましても,公開会社の株主に対する通知には公告による代替を認めております。したがいまして,この制度でも,通知をさせればいいということに簡単にはならないのではないかと思います。   部会資料20の(3)の申立期間に関しましては,補足説明でも御紹介がありますように,パブコメの中でも,期間の伸長には反対の立場があります。取得日後となりますと,特別支配株主は,もう撤回する手続ができない段階であり,想定外の取得費用の増大といったリスクを回避することができない段階になっているとの指摘があります。そういう意味では,取得日後まで申立てができるとすることは,慎重に検討をする必要があるのではないかと思っております。 ○荒谷委員 私も,本渡委員がおっしゃることは非常によく分かるのですけれども,その上でお伺いしたいのですが,このケースについてだけ,公告ではなく通知を要するとお考えなのでしょうか。他にも通知の代わりに公告をもってするというものがございますが,その場合も同様に扱わないと,少数株主の保護という点では一貫しないのかなという気もいたしますが,その点についてのお考えをお伺いできますでしょうか。 ○本渡委員 確かに,略式組織再編でキャッシュ・アウトをする場合に,公告のみで現在の法律は足りてしまうということは理解しております。しかし,略式組織再編というのは,基本的には,キャッシュ・アウトを目的とした制度ではなかったのではないかと思っております。ですから,今ここで略式組織再編のほうを改正しろなんていうことを申しているわけではないですが,今回のこのキャッシュ・アウトの売渡請求の制度は,株主と株主との間で,しかも,キャッシュ・アウトのみを目的とする制度ですので,もう,少数株主は,株を強制的に売り渡さないといけないと,代金請求だけになってしまうわけですね,そうすると,あと保護されるのは,もちろん無効訴訟とかはあるかもしれませんが,結局は,価格決定の申立てができるかどうかというのが非常に大きいことなので,その価格決定の申立てもできないうちに,全く知らないうちにもう売買が成立してしまって,後は,代金を払えばそれで終わりよというような状況になるということは,これは,やはり少数株主の保護という観点からいっても,不当ではないかということを言われかねないなという気がしておるので,少なくともこの売渡請求の制度については,通知を必要とすべきだと考えております。 ○三原幹事 通知・公告のところで,今お話がありました費用負担の点は,6ページにあります。現在の提案では,特別支配株主が費用負担することになっていますので,通知をするという規定にした場合でも,公告だけという場合でも,費用は,一応会社の負担にはならないので,会社の負担というのは,費用の負担ではなくて,会社としての事務作業の手間が掛かるということかもしれません。   それと,この部分につき,略式組織再編との整合性という問題がある一方で,株主がその意に反して権利を失う制度の中には,例えば,所在不明株主の権利を喪失する制度というのがあります。所在不明株主の制度も含め,いずれの制度との平仄を考えるのかを考えていったときに,略式組織再編があるので,それとの平仄が取れればよい,と言い切ってしまってよいのか,やはり考える余地があるかと思います。   また,提案にある20日の期間は,かなり短いと思います。なぜかというと,価格決定の申立てがあったということを知らずに期間が過ぎてしまい,それで20日経ったら知ることができるのかというと,20日間プラスすれば知るということを経験則上簡単には言えないので,20日というのは少なくとも短いと思います。元々根本的には,先ほどの全株式譲渡制限の話もあるように,実は,この制度には,濫用されるおそれがあるのではないかという,漠然とした心配があります。なぜかというと,制度を作ってしまえば,これは,他と同じだというふうに言っても,結局は,この制度がまた違う形で使われる―後ほど議論がありますから,もう少し発言したいと思いますが―,この制度が濫用されるおそれはないのかという懸念があります。例えば,制度として,かなり制限的に作っていくという政策的な在り方もある中で,この通知・公告の問題も,今ある別の制度と同じだということで立法化するのではなくて,別の考えで立法化する余地はあるという気もします。これは,慎重に御検討いただきたいと思います。 ○田中幹事 私も,株主に対しては公告だけで足りるものとし,しかも,効力発生日までに価格決定申立ての期間も終了させてしまって,後は何も異議申立てができないという制度にすると,やはり,株主が何も知らないうちに株式をお金に替えられてしまって,あと何も反対できないという事態が生じることを懸念したものですから,そもそも公告だけでいいのかという疑問もあったのですけれども,仮に公告だけでいいとするのであれば,申立期間のほうを伸長すればいいのではないかということを,以前の部会で申し上げました。しかし,確かに,本渡委員のおっしゃるように,株主が知らないうちにキャッシュ・アウトをやられる場合は,効力発生日から20日の間に知る保証も必ずしもないわけでして,そうすると,例えば,キャッシュ・アウトの代金支払の時とか,その時点から申立期間を走らせるかということになるわけですが,そういうことであれば,いっそ通知が必要ということを原則にすべきではないかというのは,説得力があるのではないかと思っております。   現行法の下では,基本的には,上場会社でキャッシュ・アウトするときでも,株主総会決議が事実上は必要になる。確かに,特に,略式組織再編をキャッシュ・アウト目的で使う場合には決議は必要とはされませんが,税制上の要因があって,現実的には余り使われていません。それが現在の状況だということを前提にした場合,法改正でいきなり,こういう形のキャッシュ・アウトができていいのかというふうに議論すべきだろうと思います。つまり,確かに現行法上は,略式組織再編を使えば,公告だけでキャッシュ・アウトできる建て付けにはなっていますが,そのことを前提にして考えないほうがいいのではないかと私も思います。では,結論としてどうかということなんですけれども,本渡委員,三原幹事のおっしゃるように,濫用の心配というのは,やはりあるのではないかと私も思っていまして,それは,例えば,会社法制定の際に,会社分割における債権者異議のための手続をいろいろと簡素化したことによって,突然に濫用的なものが多数現れたというふうに,法制度にはアナウンスメント効果みたいなものがあります。そういったことも考えつつ,漸進的に制度改革をしていくべきではないかとも思います。そういうことも考え合わせますと,少なくとも現在の提案のように,全ての会社についてキャッシュ・アウトを可能にするのであれば,それは,株主に対する通知を要求することを原則にして,ただ,いわゆる二段階買収というか,公開買付けを前置した上でキャッシュ・アウトを行うという場合には,その公開買付開始公告において,二段階目のキャッシュ・アウトをするということも開示されていることを前提にして,その場合には,十分株式市場に情報が開示されているのだから,この場合は公告で足りる,しかし,それ以外は,やはり,キャッシュ・アウトするよというところで一回通知し,キャッシュ・アウトしたよというところで恐らくもう一回通知すると,それぐらいはやるということでもいいのではないかなと私は考えております。 ○前田委員 今の田中幹事の御意見とほぼ同じなのですけれども,当初,申立期間を伸長するという方法は,優れた解決方法だと思っていたのですが,本渡委員あるいは三原幹事から御指摘がございましたように,取得があったこと自体をどうやって知るのかという問題があると思います。取得があったことを現実に知る機会が保障されていない以上は,申立期間を20日程度伸長することでは余り意味はなく,もし延ばすのであれば,株主総会を挟めるように,1年など大幅に延ばさなければ意味はないことになってしまいますけれども,それは余り現実的ではありません。そうしますと,やはり,キャッシュ・アウトの制度では,何度も指摘されてきましたように,何といっても対価の適正の確保が決定的に重要ですので,公告だけで済ますのではなくて,通知を要するという考え方に説得力を感じつつあるところです。そして,ここで,もし公告で足りず通知を要することにするのであれば,他のキャッシュ・アウトの方法のうちで,株主総会決議を挟まないタイプ,つまり,略式組織再編を利用したキャッシュ・アウトについても,それに合わせるのが合理的かなというように思います。 ○内田関係官 今までの御議論を踏まえまして,この制度の御提案の趣旨を改めて振り返ってみますと,対象会社の株主総会決議が必要になると,特に上場会社のような場合には,非常に多くの株主がいて,招集通知を送るまでの間にすごく時間が掛かってしまうということがございます。通知にお金が掛かるということ以上に,時間が掛かるという点がポイントでありまして,先行するTOBの強圧性排除というような観点も含めて,キャッシュ・アウトに必要な期間を何とか短くすることができないのかと,そういうところから出発した御提案だったと思っております。そこで時間が掛かるといったときに,その一番大きい要因というのが,正に株主に対して個別に通知をするということであろうと思います。もちろん,株主総会の開催のためには,招集通知後更に2週間が必要になるわけですけれども,一番時間が掛かっているのは,やはり通知の部分であろうと思います。そういう意味で,通知が必要ということになると,株主総会の開催をするというのと余り変わらないことになってしまうと思います。そうすると,この制度そのものの意義というところまで遡ってしまうわけですけれども,今の御議論を踏まえますと,少数株主が公告に気付かないうちに価格決定のチャンスまで失ってしまうのではないかという御懸念が一番のポイントだったのではないかと思っております。そうだとすると,取得日の前に個別の通知をすることまでが本当に必要なのかというと,そこは議論の余地があるように思われるところでございます。今のこの御提案というのは,取得日以降であれば対価の支払が行われるので,少数株主もキャッシュ・アウトに気付く機会があるだろう,そこで,取得日後20日間あれば,取得価格の決定の申立てはできるのではないか,というものであったわけです。それで本当に気付く機会が十分にあるといえるのかどうかという点については,議論の余地もあろうかと思いますけれども,御指摘になった問題意識は,事前の通知まで求めるというレベルの議論には,必ずしも論理的につながるものではないのではないかと思っております。 ○三原幹事 今のお話を踏まえますと,個々の株主はいつの時点から自己の保有する株式につき売渡請求がなされたと知るような制度になっているのでしょうか。つまり,順番を追っていったときに,どのタイミングで知ることになるのかというところを整理し,そこがいつなのかを確定し,そして,どの段階でこの価格決定の申立てがもうできなくなってしまっているのか,あるいは,できるのかというところを,もう少し教えていただけますか。つまり,株主は,恐らくお金を払われるときには,あなたは株主ではありません,何株はいついつを効力発生日としてなくなりました,このお金は幾らですから払いますと言われます。恐らく,口座を教えてくださいというのか,郵便為替か何か送るのかという話になるのですが,その段階と価格決定の申立てをすることができる期間との相関関係はどうなるのでしょうか。 ○内田関係官 今の御提案を前提にいたしますと,この対価である金銭の支払義務は,取得日に期限が来るということになりますので,その日に提供する必要があるということになります。したがって,株主は,その日には知って,そこから価格決定の申立てをする機会があるはずだと,そういう御提案でございます。 ○三原幹事 そこから20日になるのですか。 ○内田関係官 はい。今,取得日から20日以内ということになっているのは,そういう趣旨でございます。 ○三原幹事 取得日には,郵便等の到達に2,3日掛かるのかもしれませんけれども,取得日から各個別の株主に,あなたの株は取得されましたので幾ら幾ら支払いますという通知が個別に来るということですか。 ○内田関係官 もちろん実務上は若干の前後があるのかもしれませんけれども,基本的には,取得日に期限がやってまいりますので,そこで弁済の提供をするという前提です。 ○岩原部会長 それは,事実上そういうことになるであろうということですか。 ○内田関係官 少なくとも法律上はそういう建て付けになります。 ○荒谷委員 今のお答えに対する質問ですが,そうしますと,株主ごとに取得日が異なるという理解でよろしいのでしょうか。複数の方のお話を総合すると,そう理解したのですけれども。 ○内田関係官 取得日という言葉は,売渡株式が特別支配株主に移転する日を意味するものとして使っていますが,そのような意味での取得日と,代金債権を実際にいつ支払うかということとは,別の問題と整理しております。売渡株式の移転は,取得日に一律に生ずるということになるわけですけれども,その対価である代金債権については,取得日に期限が来まして,その日に一部の株主に弁済提供しなければ,その株主との関係では履行遅滞ということになると,そういう趣旨で御説明を差し上げた次第です。 ○荒谷委員 履行遅滞の問題ではなくて,その取得日がいつになるかによって申立ての期間が変わってきますので,それを一律に解釈するのか否かが,今一つよく分からなかったのですが。 ○坂本幹事 内田関係官からも申し上げておりますが,取得日あるいは代金支払期限というのが個々の株主ごとに変わってくるということは,全く想定しておりません。それは全て一律です。内田関係官の説明にもありましたように,取得日に当然取得されますし,代金支払期限も一律にそこで期限が到来するということで,そこは全てそういうふうに統一されるということでございます。 ○齊藤幹事 今の点について,考えを十分に整理しないまま申し上げて恐縮なのですが,配当については,株主の元に確実に届けなければいけないということが法規定で徹底されているのですけれども,本制度における代金についても,取立債務化してしまうことなく,株主の下に適時に確実に届けるべきことにつき,会社側の責任であるか支配株主の責任であるかはともかくとして,手当てをしておかないといけなければならないように思います。健全な実務としては,支払の通知等がされるということはあろうかと思いますけれども,その法的な担保が必要なのではないかと思います。 ○坂本幹事 恐らく,何も書かなければ,民法上の原則である持参債務になるというふうに思っています。それを更に会社法に書くのかどうかは,配当について規定を設けている趣旨等も踏まえつつ,考えることになるのだろうなと思っておりますけれども,何も書かなくても,持参債務にはなるだろうとは思っております。 ○三原幹事 私も,齊藤幹事の御心配が実は妥当するのではないかと思って,今の御意見を拝聴しました。つまり,取得日に支払債務がいわゆる期限を迎え,金銭債務ですから,その日から支払わないと履行遅滞になるわけでございます。ところが,20日間だけ利息を払いますというふうに思い込んで,特別支配株主が,21日目に,「はい,お金を払います」ということをすれば,20日分伸長されたとしても価格決定の申立てはもうできなくなります。21日分の利息を払うことで,その価格決定の申立ては排除した上で,しかし,代金を払うということができてしまうことになります。恐らく,齊藤幹事のおっしゃった法的担保をしないと問題が起こるというのは,実はこういうことではないかと思ったのですけれども,いかがでしょうか。 ○内田関係官 法律上は飽くまで取得日に期限が来るということになりますので,そこから先,それを回避するために,どこまで濫用的なことが行われることを想定して法律を作るのかということだろうと思います。 ○三原幹事 ただ,5ページにある「(5) その他の手続」の①に,代金支払の手続を確保するということも,御提案の中に頂いているわけですから,20日間の申立期間が実は21日分だけ利息を払うことで価格決定の申立てを排除するということも,同じく濫用というのか,巧妙な対応をするというのか,分かりませんけれども,5ページでの問題意識と同じく,金銭の交付が行われることを確保するための方策と同じように,実務的な考慮として必要ではないのかなというのが私の印象でございます。 ○岩原部会長 いかがでしょうか。何かありますか。確かに,遅延利息20日分払うというサンクションだけで,どれだけ実効的に通知がなされるかということに対する御懸念があるわけでありまして,その点に関する御心配がかなり強いようであります。何かそれに付け加える御意見はありますでしょうか。   ないということであれば,今日は,そういう点の御懸念が多くの委員,幹事からかなり表明されましたので,それを踏まえた上でもう一度,事務当局にその点を考えていただくということにいたしましょうか。 ○坂本幹事 今御議論いただいた価格決定の申立てのところと,あと,その前に御議論いただいた対象会社の範囲のところもそうでございますけれども,いろいろと濫用的なと申しましょうか,そういった点に対する御懸念という御指摘を頂戴して,どうもありがとうございました。私どもも,そういう発想自体は理解しつつ,他方で,現行法の既存の制度との整合性をどう説明していくのかということとの関係も,また考えなければいけないものと思っております。また,価格決定の申立期間については,公告をもって通知に代えられるかという,この制度を導入する意義まで遡って考えなければいけない問題であろうと考えて,こういう形で整理させていただいておるわけでございますけれども,本日いろいろ御指摘いただいたことを踏まえまして,何かうまい手があればというところはございますので,また改めて御相談させていただくことになるのかなと思っておる次第でございます。 ○岩原部会長 多くの委員,幹事から通知が実効的に行われるかに関する御懸念が表明されましたので,今,坂本幹事から申し上げましたように,事務当局のほうでその点を検討した上で,またこの部会に案を出させていただくということにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきたいと思います。次に,「(4) 売渡株式の取得の無効の訴え等」について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「(4) 売渡株式の取得の無効の訴え等」について御説明いたします。パブリック・コメントにおいては,株式売渡請求に対して不服のある株主は,自らの有する株式の売渡しの効力のみを争うことができれば足り,新たに差止請求や売渡株式の取得の無効の訴えを設ける必要はないとの意見もありました。しかし,株式売渡請求による売渡株式の取得については,対象会社の株主総会決議の取消しの訴えに代わる売渡株主の救済方法として,差止請求を認める必要があると考えられます。そして,株式売渡請求は,全ての売渡株主の有する売渡株式を一括して取得するものである以上,差止請求をした売渡株主の保有する売渡株式のみならず,売渡株式全部の取得を一体として差止めの対象とすべきであると考えられます。また,株式売渡請求による売渡株式の取得は,多数の株主の利害に影響を及ぼすため,法的安定性の確保や法律関係の画一的処理等の観点から,対世効を有する無効の訴えを設け,売渡株式の取得の無効は当該訴えをもってのみ主張することができるものとすることが適切であると考えられます。差止請求の制度及び売渡株式の取得の無効の訴えを設けることについては,当部会においては異論がなく,また,パブリック・コメントにおいてもほとんど異論がなかったところです。そこで,(4)は,これらを設けることを前提に,パブリック・コメントにおける意見も踏まえ,売渡株式の取得の無効の訴えに係る手続の詳細について問うものでございます。   まず,①は,試案の⑭では取得日から6か月間としていた提訴期間を,対象会社が全株式譲渡制限会社である場合に,1年間に伸長することに関するものです。新株発行の無効の訴え等の提訴期間は,会社法制定に際して,全株式譲渡制限会社が株主総会を開催せずに新株発行した場合に,株主がその事実を知らないまま提訴期間を経過してしまうことが多いとの指摘を踏まえ,1年間に伸長されたものです。これに対して,それ以外の会社の組織に関する行為の無効の訴えについては,利害関係人が多いこと等を踏まえ,法的安定性の確保という観点から,提訴期間の伸長は見送られたという経緯がございます。①のような提訴期間の伸長の当否については,このような経緯を踏まえ,法的安定性に配慮しつつ検討する必要があるものと存じます。   また,②は,提訴権者に監査役等を追加することに関するものでございます。この点について,試案の⑭では,売渡株主のほか,対象会社の取締役及び取得日において対象会社の取締役であった者に提訴権を認めるものとしております。これは,株式売渡請求による売渡株式の取得においては,対象会社は取引の当事者でないため,その役員に無効の主張を認める必要はないとも思われる一方,対象会社の取締役は,株式売渡請求の承認に際してキャッシュ・アウトの条件の適正さを検討するなど,売渡株主の利益に配慮すべき立場にあることから,売渡株主の利益を確保するため,取締役に提訴権を認めることが合理的であるとの考え方に基づくものです。そこで,②については,対象会社の監査役,執行役及び清算人の役割を踏まえ,売渡株主の利益の確保という観点から,これらの者に提訴権を認めるべきかどうか,それぞれ検討する必要があるものと存じます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。売渡株式の取得の無効の訴えに関して,部会資料20の①や②のような規律をすることについて,皆様の御意見は,いかがでしょうか。 ○岡崎幹事 前提になる部分で一つ質問させていただきたいんですけれども,無効の訴えの当事者は,会社が入っているわけではないと思うのですけれども,無効の訴えが対世効を持つ理論的な根拠はどういった感じで捉えたらよろしいものでしょうか。 ○内田関係官 岡崎幹事がおっしゃいましたとおり,無効の訴えの被告は特別支配株主であり,対象会社は当事者にはならないというのが,試案の御提案でございます。この理論的な説明ということになりますと,やはり,当事者適格に関する基本的な考え方からは,問題となる権利関係について一番利害関係が強い者を被告にするということが原則かと思いますけれども,この場面で考えてみますと,組織再編とは異なりまして,この手続は,株主間での売買という法形式になります。対象会社は,一部,株式売渡請求の承認等で受動的に関与はするわけですけれども,取引の当事者ではありません。そのように考えていきますと,利害関係が一番強いのは,対象会社というよりは,やはり特別支配株主なのであろうということで,その一番強い利害関係を持つ特別支配株主を被告とする,これによって,逆に,その判決に対世効を与えるということが正当化される,そういった説明になるのかなと理解しております。 ○岡崎幹事 今の御説明で分からないではないんですけれども,会社も,この手続の中に一定の関与をしていて,場合によっては,その手続を誤ったことによって無効になってしまうということになると,後に責任追及の対象になり得るのかなと思われます。その場合に,無効の訴えそのものに一切かんでいないということで,特に問題がないのかどうか,これは,後に責任追及をされた訴えの中では,無効の訴えの対世効によって確定されるのは,取得自体が無効になっているというだけで,必ずしも会社自体の責任については何らの既判力等が及ぶわけではないので,いいのかなという感じもしないではないんですけれども,この辺りはどのように考えたらいいものでしょうか。 ○内田関係官 この点については,もちろん,利害関係があり得るということはそのとおりで,そういった場合には,補助参加をすることが可能であろうと思っております。御指摘の事例は,少数株主のほうがアタックしてきて,特別支配株主と対象会社でディフェンスしているという場面だったと思いますけれども,逆に,対象会社が売渡株主側に立つような場合,例えば,特別支配株主から提供された情報が虚偽であったというような場合も考えられ,そういった場合には,原告側に補助参加したいということも理論的にはあり得ると思います。そのような場面も考えると,当事者として被告に入れることよりも,むしろ,状況に応じて,原告側,被告側のいずれに補助参加することもできるというような建て付けにするほうが,現実には合うのではないかと考えている次第でございます。 ○岡崎幹事 もう1点。ただいまの,会社を当事者にするかどうかというところの他に,この無効の訴えに対して,実は自分としては有効と考えていると,つまり,賛成だという立場の株主もいるのかなと思うんですが,その人たちにも対世効が及ぶということの理論的な根拠はどういうことになりましょうか。 ○内田関係官 一番強く有効だと言いたいのは特別支配株主のはずですので,そのような特別支配株主が被告として十分に訴訟遂行すればよいのではないかと思っております。 ○岡崎幹事 利害関係を十分代弁してくれるという意味ではおっしゃるとおりだと思うのですけれども,特別支配株主ではない賛成する少数株主の利害がどうなるのかという観点から,なぜその効力が及ぶのかという点について,ちょっと疑問に思ったんですが。 ○坂本幹事 それを言い出すと,現行法の組織再編無効の訴えについても,実は同じ問題があるということになりますよね。逆に言うと,それとどこが違うのかということになってまいります。そこは,無効事由というものをどう捉えるのかと関係するのかもしれませんが,端的に言うと,法令違反を無効事由として主張してきたという場合に,それを最も利害関係を有する株主が主張しているということになってくる―これは,先ほどの内田関係官からの説明と同じところに戻ってしまいますけれども―最も利害関係を有する人間同士に争わせて,それによって対世効が担保されていくということで,それは,特別支配株主以外の株主に対しても,同じではなかろうかと考えております。 ○岩原部会長 民事訴訟法理論的には,いろいろな議論があって,かつては,株主総会決議取消訴訟が提起されたりしたときは,会社に公告をさせていたんですね。そういうことで,全ての株主も提訴があったことを知り得て,訴訟に参加する可能性が担保されていたのですが,公告の規定は,削除されてしまいました。公告の規定の削除は,民事訴訟法学者からは批判のあったことだったと思います。そこら辺を含めて,民事訴訟法的な手続論としてはいろいろな御議論があり得て,ここでも同じような手法があるいは問題なのかもしれないと伺いました。他に御意見はございますでしょうか。 ○岡崎幹事 今の御提案の前提としては,一括して売買の効力が生ずるということが前提になっていると思うんですが,こういう手続,つまり,こういう売渡株式の取得の無効の訴えの中で和解をすることというのは,可能なんですかね。つまり,訴訟物としては,自分の株式の売買の効力だけではなくて,全体として一括した売買の効力が問題になっている,その中で和解をするとした場合に,自分の株式に関しての和解しかできないと思いますけれども,和解はできるという理解でいいでしょうか。 ○坂本幹事 合併無効の場面での和解ということで考えますと,確か,合併の無効自体,すなわち訴訟物自体について和解することはできないと解されていますよね。それと基本的にはパラレルに考えるということで,全体を無効とすること,すなわち訴訟物自体について和解をするということは,考えにくいのではなかろうかと思います。 ○岩原部会長 これも,民訴理論的にはいろいろ議論のあるところだろうと思います。一般的に対世効のあるような訴訟について和解ができるかというのは,いろいろ議論があるところですので,代表訴訟については,和解について,そのための特別の手当ての規定を入れたわけでありまして,細かく考えれば,御指摘のようなところは詰めておく必要があるかと思います。では,そこら辺はまた,事務当局のほうで問題点の詰めをしていただきたいと思います。今,岡崎幹事から御指摘いただいた以外の点で,何かございますでしょうか。 ○齊藤幹事 この①の提案は,私も,中間試案の公表直前に指摘させていただいておりまして,このように取り上げていただくことに賛成申し上げます。先ほど来,全株譲渡制限会社を対象から外すべきであると申し上げておりますが,もしその提案が通らなかった場合には,この提案は,最低限,このような会社において株主を保護するために必要な措置ではないかと思います。全株譲渡制限会社の場合においては,先ほど来問題になっている通知・公告のうちの通知がなされることが一応法定されることになっておりますけれども,この無効の訴えの制度というのは,通知もなされない,金銭も支払われない,そのような場合の最後の保護になるものです。1年間というのは,新株発行等の場合においては,定時株主総会が開かれるから,その機会に違法な行為が明らかになるということですが,キャッシュ・アウトの文脈では,排除された株主は,株主総会に呼んでもらえず,本来お声が掛かるはずの定時株主総会に呼んでもらっていないことに思い至ることを通じて事態が判明するということを想定せざるを得ないので,新株発行の場合より若干必要性の説明に苦しいところはございますけれども,それでも,そのような機会を確保しておく必要があるのではないかと思います。 ○安達委員 質問事項というより確認事項と言ったほうがいいかもしれませんですけれども,①で,全株式譲渡制限会社だけを1年に伸長するということの提案だと理解しております。確かに,その御説明は,4ページの真ん中ほどにきちんと書いてありますが,あえてこの場で全株式譲渡制限会社だけを取り上げるというのは,何かいま一つ,納得できかねております。例えば,パブコメで,この意見が非常に多かったとか,一方では,法的安定性という観点があると思います。それとの兼ね合いを含めて,もう少し詳しく御説明いただければと思いますが,いかがでしょうか。 ○内田関係官 1年になっていることの趣旨につきまして,会社法制定時の議論を改めて御紹介いたしますと,旧商法では6か月だったものがなぜ1年に伸長されたかというと,全株式譲渡制限会社においては,新株の発行には株主総会の決議が必要とされ,株主総会の決議を経ずにこれを行った場合には,新株発行の無効事由になるということが前提としてございました。それを前提としつつ,ただ,そもそも株主総会決議を行わなかったという一番典型的な無効事由になる場面において,招集通知も行われず,結局何も通知がされない場合に,無効事由にはなるんだけれども,知らない間に新株発行後1年が経っているので,無効の訴えの提訴期間がもう過ぎてしまっていると,そういう場面が多いのではないかという御指摘を踏まえて,その典型的な無効事由の場面にある程度対応できるようにしようということで,1年間に伸長された―定時株主総会が年に一度は開催されるというのが会社法の建て付けになっておりますので,それが開催されれば,新株発行があったことに気付くチャンスがあるだろうということで,最低限,定時株主総会が1度は開催されるという期間として,1年という期間が設定された―というのが,会社法制定時の議論だったわけでございます。 ○安達委員 そうしますと,今回のパブコメの中で,そういう意見も結構寄せられたということでしょうかね。 ○内田関係官 パブリック・コメントでも,この提訴期間については,より長めにすべきだという御意見が幾つか寄せられたところでございます。 ○太田委員 なかなか的確なコメントがしにくいところなんですが,3ページ目の,今御説明になった(4)の②に,監査役を付け加えるか否かという問題設定だと思うんですが,この点に関しても,提訴権という言葉がいいのかどうか,よく分かりませんけれども,取締役ということであれば,そこには,監査役は含まれるという理解での御質問です。監査役は,監査役設置会社におきましては,社外監査役の設置も義務付けられておりますし,加えて,本来は,監査役の職責という観点から見ますと,取締役と比較すれば,特別支配株主からも独立した存在でもあると,こういうふうに言えると思います。特別支配株主が提示した条件の検討を含めて,少数株主への配慮の観点から,キャッシュ・アウトの手続の妥当性,プロセスに関する評価ということが中心になります。それを見ているというのは,至極当たり前のことであって,このことによって新しく何か義務とか職責が付加されるというような性格のものではなかろうと,こういうふうに理解しておりますが,こういう理解でよろしいのでしょうか。つまり,提訴権と言われた場合に,それをうまく利用しない場合に,逆に,そのことが訴えられるというような懸念にまで及ぶ可能性があるのだろうかということを心配しているわけです。つまり,わざわざ提起権と言わずともよろしいのではないかという印象を持ちますが。 ○内田関係官 こういう権限がある以上,明らかに無効事由があるのに訴えを提起しなかったという場合に,責任を負うという議論が全くあり得ないとまでは言い切れないのだろうと思います。ただ,提訴権を認める趣旨にもよるのかもしれませんが,現行法上,キャッシュ・アウトの場面で監査役が負っている義務を強化しようというよりも,むしろ,現行法上どんな義務を負っているのかをまず整理した上で,それを踏まえて提訴権を与えるかどうかを議論していただきたいというのが,ここでの趣旨でございます。監査役の義務を強化するとか,責任の範囲を現行法よりも広げるという趣旨の御提案ではないということは,申し上げられるかと思います。 ○太田委員 分かりました。 ○中東幹事 質問ですが,無効事由について何を想定されているかです。先ほどの齊藤幹事の話にも関係するのですが,通知をしたほうが簡便で安いにもかかわらず,わざわざ公告をしたというような場合,新株発行無効の訴えでも,裁判例によっては,無効を認めているものがあります。この場合にも,そういった,濫用的といいますか,通知をしたほうが簡便かつ安いのに,わざわざ公告で目立たないようにしたということになれば,これは,無効事由に当たり得るという含意もあるという理解でよろしいでしょうか。 ○内田関係官 一般論として,公告という方法を認める前提で申し上げますと,当然ながら,公告を選んだからといって直ちに無効ということにはならないと思います。後は,個別の事案で,どの程度濫用的な扱いがされているのかというところ次第かと思いますので,無効事由となることが全くあり得ないとまで申し上げるつもりもございませんけれども,具体的な事情次第かなというところでございます。 ○岩原部会長 他に何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,この無効の訴えについては,ほぼ部会資料20で提案されているような形で制度を考えていくという方向でよろしゅうございましょうか。無論,岡崎幹事から御指摘のあった民事訴訟法的な問題等については詰めておくということになると思いますけれども,よろしいでしょうか。 ○岡崎幹事 無効の事由として,どういうものを想定しているか,今ちょっと中東幹事のお話にも出てきましたけれども,その点について,例えば,売買の価格ですとか,あるいは割当てがおかしい場合というのが,どの程度無効事由になるのかというところは,どんな感じで考えたらいいのでしょうかね。 ○内田関係官 御指摘の点につきましては,事務当局としても,議論の整理ができたほうが望ましいのかなと思っているところではございます。それで,部会資料20で申しますと,2ページの(2)の直前の補足説明の「また」という段落で,正にこの無効の訴えでどういう場合が救済されるのかという点について記載しています。括弧の中で「特に」として記載しているところが,正に今,岡崎幹事から御指摘いただいた,対価が著しく不当である場合が無効事由となり得るのかという点です。この点については,例えば,現行法上,対象会社の株主総会決議を経て,現金対価の組織再編によりキャッシュ・アウトを行うことを想定しますと,特別利害関係者が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされたときという要件に該当するのであれば,決議取消事由ということになり,取消事由に基づく株主総会決議取消しの訴えは,組織再編によるキャッシュ・アウトの効力が生じた後になりますと,組織再編無効の訴えに吸収されるというのが通説かと思います。いろいろと学説上の御議論の対立はあるとは思いますけれども,少なくともその限りでは,対価の著しい不当性が最終的にキャッシュ・アウトの無効事由になり得るというのが,現行法の下での通常の理解ではないかと思います。そのこととの比較で,略式組織再編の場面でも同じことだと思いますけれども,対象会社の株主総会決議を経ないけれども,これを経ていれば決議取消事由になり得るような場面について,無効の訴えで拾えるのか拾えないのか,その辺りが,特に御議論を頂きたいと思っていた部分でございます。 ○岩原部会長 非常に大きい問題ですが,この点について何か御意見等ございますでしょうか。先ほど,この(1)のところは,御議論を経ないで進んできてしまったのですけれども。 ○鹿子木委員 価格の不当性を無効事由に入れるかどうかという問題ですが,「著しい」というのを付けるかどうかという問題があるとしても,その価格の当・不当というのは,かなり主観的な問題がありまして,幾らが相当な価格かというのは,人によって見方が違うというところがあります。そうすると,ある人が自分は価格に不満だと言うときに,別の人はこの価格でもいいというふうに思っている人もいるわけで,その不満だと思っている人が,価格決定の手続と別に,無効の手続によって全部を止めることを認める必要があるのかという疑問があります。略式組織再編との比較をおっしゃるわけですが,略式組織再編の場合には,本来的に組織再編は特別決議を経るべきものを略式化しているので,その代わりに差止めを認めるという議論だと思いますけれども,こちらのほうはそもそも,買収をしたいという人と本来の株主との間の手続に会社をどう絡ませるかという問題ですので,ちょっと場面が違うのではないのかなと,本来,その決議が要件になる場面ではないところに何らかの手続を設けようとするわけですので,そこは,性質が違うのではないのかなと思われます。そうすると,やはり手続的な瑕疵があるときに,それは全部の株主に影響する問題ですから,それを無効事由にするということは理解できるとしても,価格の問題というのは,人によって全然考え方が違いますので,他の満足している人の利益までも,その一部の人が代替して主張しなければいけないのかどうか。そのときに,仮にそれが無効だというふうになったときに,本来満足して売却できる機会を得ていた人は,その利益を失うことになりますが,それはどのように考えるべきなのかというところに疑問があるわけです。 ○藤田幹事 ただいまの鹿子木委員の意見について,実は全く逆の感触を持っていたものですから,まずその点について若干申し上げたいと思います。私には,株主総会決議を経てキャッシュ・アウトした場合よりも,この新しいキャッシュ・アウト制度による簡易なやり方を使って締め出した場合のほうが,その効力が安定的になるというのが,バランス感覚としてよく分からないところなのですね。わざわざ株主総会決議を取って,多数決で締め出した場合であっても,最終的には価格の当・不当の問題があれば―その株主個人がどう思うかではなくて,客観的に裁判所の目から見て問題があればですが―,特別利害関係人による議決権行使によって著しく不当な決議がなされたとされ,値段に文句ない人も含めて全ての株主との関係で効力はひっくり返ってしまう可能性は残ります。株主総会決議による多数決というステップをあえて経て行った場合ですらそうなのに,それがないまま行われたものが,それ以上に安定的になるのは,分からない気がします。  その上で,ここからは,事務当局の方への質問ですが,おおざっぱな相場観として,この制度を使った場合の無効原因というのは,どのぐらい広いものと捉えるのかということを確認させていただきたいと思います。部会資料の4ページには,新株発行無効の訴えに倣って提訴期間に関する考え方が書かれていますが,先ほどの説明からしますと,新株発行無効の話よりも,無効原因は広いように思われます。新株発行の場合は,そもそも特別決議が必要な場合に特別決議なしで発行されても有効だというのが最高裁判例ですけれども,この新しいキャッシュ・アウト制度では,基本的には,その手続的な瑕疵があるものは,基本的に無効原因になり得る,その限りでは,むしろ組織再編に近いというイメージでよろしいでしょうか。ただ,更に言えば,組織再編と比べても,更に無効原因は広いのではないかとすら思います。というのは,組織再編の場合は,新たな組織を前提に多くの利害関係人がその後現れ,また,財産も大きく動いていたりするのですが,ここで問題となっているケースでは,全て株式が一人の人に集中するだけで,その後,それを基に法律関係がどんどん積み重なって,という面は,組織再編に比べると弱い。そこで,新株発行等と比べるともとより,組織再編と比べても,更に無効原因は広めに考えてもいいかもしれない,会社法上の形成訴訟はいろいろありますけれども,その中では,無効原因が最も広く解される可能性があるような類型という程度のイメージで捉えてよろしいのでしょうか。 ○内田関係官 一般論としては,そのようなイメージで事務当局としても考えております。 ○岩原部会長 他に御意見ございますでしょうか。無効の訴えの無効事由をどこまで認めるかというのは,今の藤田幹事の御指摘のような大きい見方の他に,鹿子木委員の御指摘になった問題等は,一方で,価格決定の救済が実際上どこまで認められるか,先ほどの,通知が必要かというようなこととの見合いで決まってくる面もあると思いますので,そこら辺を含めて,事務当局で御検討いただいた上で,無効事由を実際条文に書くというのはかなり難しいでしょうから,むしろ,解釈の基本的な考え方として,どういう考え方を採ったらいいかということを,この部会である程度議論していただいて,将来の解釈の一つの参考にしていただくということになるかと思います。これについては,よろしいでしょうか。   それでは,今議論していただきました無効の訴えの(4)のところについては,部会資料20の方向に基本的に従って見直しを考えていただくということにさせていただきたいと思います。   それでは,次に,「(5) その他の事項」のうち,まず,「① 対価の交付を確保するための方策」について,事務当局から説明を頂きたいと存じます。 ○内田関係官 それでは,「① 対価の交付を確保するための方策」について御説明いたします。パブリック・コメントにおいては,特別支配株主について,売渡株式の対価を交付するための資金的裏付けの証明を要するものとすべきであるとの意見や,対価の交付がされないことを売渡株主の取得の無効事由とすべきであるとの意見が寄せられています。これらの意見は,売渡株主が特別支配株主の資力等を確認した上で取引に応ずるかどうかを決定する機会を与えられないことを踏まえたものであると思われます。この点については,当部会においても同様の指摘がされており,これらを踏まえ,特別支配株主による対価の交付を確保するための方策について検討する必要があるものと存じます。この点に関し,対象会社の取締役は,株式売渡請求の承認の当否を判断する際には,売渡株主の利益に配慮して,特別支配株主による対価の交付の見込み,例えば,資金の準備状況等を確認すべきであり,そのような確認を怠った場合や,対価の交付の見込みがないことを知りつつあえて売渡請求を承認した場合等には,任務懈怠責任を負うものと考えられます。そこで,この点をより明確にするため,例えば,事前開示手続において,対価の交付の見込みに関する事項の開示を要するものとすることなどが考えられます。このような規律は,開示内容に虚偽があり,対価の交付がされない場合に,明文の規定に基づく手続の瑕疵を理由とすることで,売渡株式の取得の無効を主張しやすくなるという点でも,売渡株主の利益の確保に資するように思われます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。それでは,①について,皆様から御意見を頂きたいと思います。いかがでございましょうか。 ○前田委員 対価の交付を確保するための方策として,御提案くださっていますように,開示プラス取締役の責任という方法で対応することに賛成です。取締役の責任は,任務懈怠責任ということで,これは,429条のほうの責任だと思いますけれども,責任追及が容易になるように,1項ではなくて2項のほうでいけるよう手当てをすることも考えていいのではないかと思います。虚偽の公告は429条2項で既に規定されていますけれども,通知とか事前開示のほうも2項に含んで,取締役のほうで無過失の証明ができなければ責任を負うようにすることは,検討に値すると思います。 ○藤田幹事 私も,基本的にこの御提案でいいと思うのですが,ちょっと提案の中身について念のために確認させてください。事前の開示手続で「対価の交付の見込みに関する事項」―この表現がいいかどうかはちょっと検討が必要かもしれませんけれども―,要するに,買取請求者においてきちんと資金の裏付けがあるか否かということを開示させて,もし見込みがないのにあると開示した場合には,これが直ちに手続の瑕疵となる。先ほど議論のあった無効原因の捉え方からすれば,当然に無効事由になる。逆にもし―これは,余りないと思うんですが―対価交付の見込みがないと開示してきたら,今度は,取締役の側でそのような人を相手に承認してしまったということにより,会社法429条の責任が生じる,そういう捉え方でよろしいでしょうか。まあ細かなことを言うと,「ない」のに虚偽の開示をしたのだけれども実際はお金を払えてしまった場合とか,いろいろなケースはあるのですけれども,そういう場合は,適宜解釈論で対処するとして,基本的には,今言ったような形で抑止するという提案,つまり,対価を払わせることそのものを担保しているというよりは,抑止効果によってそれを達成しようとしているという,そういう提案と理解し,そういうものとして賛成したいと思います。 ○内田関係官 正に藤田幹事におっしゃっていただいたとおりの趣旨による御提案でございます。 ○岩原部会長 そうすると,特別支配株主は,そういうことをきちんと自ら開示した上で売渡請求をするということになるわけですね。 ○内田関係官 承諾をする前提として,そういうものが開示されなければ,逆に,取締役としては承認をすべきではないということになるのだと思います。 ○岩原部会長 中間試案の売渡請求の中には,そこまで書いていなかったようには思うのですけれども,それを前提にしているということですね。 ○内田関係官 承認をする際の取締役の義務の内容として,恐らくそういうことになっていくのではないかと思っております。 ○岩原部会長 特別支配株主が請求するときに,これだけきちんと資金の手当てはできていますということを言った上で,ということになるのですかね。 ○内田関係官 逆に,こういう情報開示の規律があることによって,何も情報を与えずに請求してきた場合は,取締役のほうで承認を拒絶すべきだという,そういう話になるのではないかと思います。 ○岩原部会長 そういう対応関係があるということですね。他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,この①については,部会資料20の方向に従って会社法の見直しを進めるということにさせていただきたいと思います。   次に,「② 株式売渡請求の撤回」について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「② 株式売渡請求の撤回」について御説明いたします。試案では,株式売渡請求の撤回に関する規律については,特に記載されていませんが,株式売渡請求がされた後に,特別支配株主の財務状態が悪化し,対価の交付が困難となった場合等において,株式売渡請求の撤回の余地を全く認めないものとすることは,かえって不合理な結果につながるおそれがあります。他方で,特別支配株主による一方的な撤回を無制限に認めることは,売渡株主の予測可能性を害するなど,売渡株主の利益の確保という観点から適切でないとも思われます。そこで,株式売渡請求の撤回の当否について,株式売渡請求を承認する立場にある対象会社の判断を経ることを要することとし,取得日の前日までに対象会社の承諾を得た場合にのみ,撤回を認めることが考えられます。この場合には,対象会社は,遅滞なく,撤回を承諾した旨を売渡株主に対して通知し,又は公告しなければならないものとすることが考えられます。   なお,パブリック・コメントでは,特に,株式売渡請求が撤回された場合に意義を有する規律として,株式売渡請求を承認した対象会社による通知・公告等の費用を,特別支配株主の負担とすべきであるとの意見が寄せられました。株式売渡請求においては,組織再編におけるのとは異なり,対象会社自身は取引の当事者とはならないことに加え,対象会社による通知・公告は,特別支配株主による意思表示を代替する機能をも有することを踏まえると,通知・公告等の費用は,特別支配株主の負担とすることが合理的であると思われます。 ○岩原部会長 以上のようなことですが,いかがでしょうか。②について,何か御意見ございますでしょうか。 ○本渡委員 この売渡請求の構造なんですが,一応通知を,発信主義ですけれども,通知を出すことによって,株式の売買の申込みをします。それに対して,売渡株主は,承諾したとみなされるというような形で,売買は,通知を発信することによって成立していると私は理解していたわけです。そうすると,売買が成立しているにもかかわらず,一方の当事者である特別支配株主だけに,売買の契約に対する解除権,撤回権を認めるということは,ちょっと公平の観点からも,少数株主と特別支配株主との公平の観点からいってもおかしいのではないかと,これは,特別支配株主に一方的な利益を与えるという規定になってしまうのではないかという気がいたしまして,これに対しては,私は,反対したいと考えております。 ○藤田幹事 基本的な法律関係は,株式売渡請求について会社の承諾があると,言わば売買契約が成立したかのような状態になって,ただ,売買契約で言えば履行期に相当する効力発生日が後で来る,そして撤回に対しても会社の承諾が必要ですので,これは言わば一種の合意解除みたいなものというイメージで捉えれば,理解はできるような仕組みだと思います。そしてそもそも売買の成立においても個々の株主との合意が最初から要求されない特殊な売買契約ですので,それを撤回することについても,一々個々の株主の承諾がないと各株主の利益が害されるとまで考える必要はないのだと思います。   ただ,そこから先で,ちょっと細かいですが,制度の根幹に関わる点で質問です。株式売渡請求の承諾の場面―撤回の承諾ではなくて,元々の売渡請求自体の承諾のほうですが―について,取締役は,株主の利益を考慮して適切な値段を確保するように行動するような義務を負っているという前提で議論されてきましたし,少なくとも中間試案の補足説明には書かれておりました。条文上は,多分明文では書かれないと思いますけれども,そういうことを前提とした制度だというふうに想定されていると理解しています。もしそうだとすると,撤回についての承諾についても,やはり,同じような性格の義務を,取締役等は負っていることになり,株主の利益になる場合にしか撤回は承諾してはいけないということになりそうです。そこで株主の利益になるか否かという判断を,どういうふうに考えるかということが問題になりますが,元々,一方的に売れと言われていて,それがなくなるだけだから,撤回を認めたところで,別に誰も損害を被らないというふうには考えてはいけないという理解でよろしいかという確認です。つまり,新しい市場価格より恐らくは高い値段で一旦は申し込んで,会社の承諾によって売買が成立した後の合意解除のようなイメージで捉える以上は,その値段が実現しなかったこと自身が,原則としては個々の株主にとっての不利益である,したがって基本的には取締役としては簡単に容認してはいけない,ただ,例外的に,お金を払えないような事情が最初の申込みの後で発生したような場合には,それ以上進めたところで無駄なだけですし,株主にとっては手間が掛かるだけですから,そういう場合は,場合によっては撤回してもいいかもしれない。しかし,今言ったような非常に限られた場合以外は,撤回の可能性は認めると言っても,実態としては,取締役等の行為規範としては原則としては承諾してはいけないのが原則であるというルールになるというふうに理解してよろしいかという,そういう質問です。 ○内田関係官 おっしゃっていただいたとおりでございまして,撤回について承諾するという場面では,その前提として既に株式売渡請求の承認をしていて,その段階から考えて,株主の利益になるかならないかということを検討することになると思います。何もなかった状態と比べるというよりは,既にされた株式売渡請求の申出を承認したという状態をベースにして考えるということになりますので,そのような観点から,株主の利益にならないような撤回の承諾が不用意に認められるわけではないと思っております。 ○本渡委員 非常に理論的にはよく分かるんですが,実際問題として,9割以上の議決権ある株式を持っている支配株主が,もうこんな,ちょっと高くなり過ぎてしまったから撤回したいなんていうことを対象会社の取締役に言って,それを拒否するということは,実際できるのでしょうか。 ○内田関係官 一番分かりやすい典型例としては,株式売渡請求の承認後に事情が変わってお金を払えないということになってしまったときに,誰も引き返せないということになってしまうと,かえって少数株主の利益を害するという場面も,十分想定されると思うんですね。 ○本渡委員 この特別支配株主が手元不如意で代金が払えなかった場合は,少数株主は,債務不履行による解除権は行使できるんですか。 ○内田関係官 結果的に支払われなかった場合に,個別の売買を解除できるかどうかというのは,これは解釈の問題になってくると思っております。また,それとは別に,全然支払われなかったというようなひどい場合には,売渡株式の取得の全体が無効になり得るという議論も,もしかしたらあり得るかもしれません。ただ,いずれにせよ,ここで撤回を認めるかどうかという文脈で申し上げると,特別支配株主としても,お金がもうなくなってしまって,もう誰が見てもストップをかけたほうがよいことが明らかな状況になっているにもかかわらず,個別の株主の同意を得る時間がないがために,取得日が到来してしまって,わざわざこれを巻き戻すために積極的に行動しない限り売渡株式が移転してしまうと,そういう結末に導くことが果たして合理的なのかというところです。そういった場合に,特別支配株主が自らストップをかけたいと申し出た場合に,引き返せる道をある程度用意しておかないと,かえって不合理な結論になるおそれがあるだろうと,そういう発想の御提案でございます。 ○本渡委員 これは,結局,幾ら幾らで株式を買い取りますという通知が来ますよね,そうすると,それに対しては,株主としては,その金額でよければそれでいいし,これでは安過ぎるということであれば,価格決定の申立てをする,価格決定の申立てをするといっても,それは,弁護士を頼んだりとか,裁判所に申立費用はそれほど掛からないかもしれないけれども,ある程度お金も掛かるわけですから,そういうような状況に置かれ,この金額でいいと思った株主は,このお金が入ってくるだろうという期待もあるわけです。売却できるという期待もあるわけですから,それを,この対象会社の取締役が非常に一生懸命やってくれるのかもしれませんけれども,簡単に撤回,ちょっと手元不如意になってしまったから撤回しますなんて言って撤回してしまうということができるのは,何かおかしな気がいたします。それだったら,きちんと代金が払えないのだったら強制執行でもできるぐらいのことのほうが,私はいいのではないかと考えております。 ○坂本幹事 もし効力が発生してしまって代金が払われなければ,当然のことながら債務名義を取って強制執行できる,それは当たり前です。逆に言うと,強制執行までしなければいけないことになります。また,先ほど内田関係官から説明がありましたけれども,事後的に巻き戻そうと思えば,必ず少数株主側からアクションを取らせなければいけないわけで,そういう意味でも,少数株主に手間を取らせてしまう。そうなる前に,客観的に見て,そのまま突っ走っても誰の利益にもならないというような場面では,後戻りできる道を作るというのが,この撤回という仕組みです。典型的に想定されるのは,そういう場面ですので,そこをあえて突っ走るしか道がなくなってしまい,一旦株式売渡請求が承認された以上は,およそ後戻りができないということになってしまうと,不合理な,硬直的に過ぎる制度になってしまい,かえって少数株主にとっても不幸な結果を招きかねないことが出てくるのではないかというふうに考えて,こういう制度を作っておる次第でございます。 ○岡崎幹事 今の事務当局の御説明には,大筋理解をしているところではあるのですけれども,先ほど内田関係官がおっしゃった中で,やや細かい話なんですが,一部の少数株主が自分の株式の売買についてのみ解除することができるという見解もあり得ると,こういう御説明だったとお聞きしたような気がするのですが,その点について,先ほどの売渡請求が一括して全少数株式の売買が行われるというスキームになっているとの御説明との関連性はどんな感じになるでしょうか。 ○坂本幹事 正に当然のことながら,無効の訴えを作るということになると,その無効は訴えのみをもって主張しなければならないという規定は当然入ってくると思いますが,そのときに,代金が支払われなかったときに個別の株主から解除を認めるのかどうかというところについては,解釈として両方あり得るのかなと,今のところ考えています。 ○岩原部会長 ということは,事務当局としては,それは,将来の解釈に委ねるということですね。無効の訴えの救済方法としての排他性の対象に,この売買契約の解除が当たるかどうかということは,将来の解釈に任せるというお考えで案を作られたようであります。 ○岡崎幹事 有効・無効のところで一括して判断するというようなスキームでいくという一方で,事後的に解除をするときには個別に解除できるというのが,必ずしもすっきり落ちてこないなという印象は持つんですが,いかがなものでしょうか。 ○坂本幹事 すっきり落ちるかどうかというところは,またいろいろ考え方が分かれ得るのかなというところでございまして,個別解除を仮に認めるとした場合,無効事由と個別解除のすみ分けがすっきりしないということであるのであれば,個別解除はできないという解釈をされるのかもしれませんし,逆に,すみ分けについてすっきり整理ができるということになるのであれば,個別解除という余地も出てくるのだろうと思っております。 ○内田関係官 解釈論がどうなるのかという結論はどうあれ,売渡株式の取得が,一括しての取得であるということと,そのうちの一部について個別に解除ができるかどうかという話は,区別して考える余地のある問題であろうとは思っております。例えば,会社分割の文脈では,権利義務が一括して承継されますが,例えば,日本アイ・ビー・エム事件における平成22年7月12日の最高裁判決では,平成12年商法改正附則5条の協議が特定の労働者との関係で全く行われなかったような場合には,当該労働者は,その労働契約の承継の効力を争うことができるという判断―相対的無効説というような表現もされているようですけれども―がされているところですので,一括しての取得だからといって,そのうちの一部について代金が支払われない場合に個別解除を認めるという解釈の余地が論理的に全くないとまでは,必ずしも言えないのであろうと思います。そこから先,この場面でも本当にそのような取扱いが適切なのかどうかは,解釈に委ねるということでございます。 ○三原幹事 3点ございます。まず第1点は,先ほどの撤回を認めるという,この提案そのものの話でございます。撤回を取得日の前日まで認めるとなっていますが,元々,キャッシュ・アウトの制度は,上場会社を念頭に置いて,TOBで90%以上を買って残った場合にどうするかというイメージを考えていて,それが今では,全株譲渡制限会社まで広がっているということです。けれども,例えば,TOBの場合を考えたときに,TOBが終わりました,90%を取得し,残りは全株取得をしますというキャッシュ・アウトしますと,それによって,恐らく,通常であれば,上場会社の株は,株価が変動するわけでございます。けれども,最終的に取得日の前日にやめましたと言うことができるとなると,上場会社の場合を考えると,実際には株価操縦のような状況も発生し得るわけで,これを制度的に認めることになるわけです。しかも,それによってどういう担保があるかと,例えば,先ほど藤田幹事から御指摘のあったように,承諾における制限が少数株主の利益になるかどうかという観点であれば良いのですけれども,会社が了解しさえすればよいとなると,制度的に株価がいろいろな形で動いた後に撤回になりますが,それに理由はありませんということでもいいわけでございまして,元々,法務大臣の諮問は,市場関係者を含めた信頼の一層確保というであったことから考えて,こういう点を認めて,本当に,信頼の確保ができるのかというのは,どうなのかなという疑問が実はあります。それを認めないと不合理ではないかという事例として,部会資料20の5ページの一番下に,特別支配株主の財務状態が悪化したときとありますが,まずは,きちんと資金的確保をしていただいてキャッシュ・アウトを行うというのが5ページの上のほうに書いてあるわけでございます。株式売渡請求をした後に,実は手元不如意になりましたからやめますということでよいのでしょうか。それから,6ページ目の一番上にある二つ目の理由として,対価の交付が困難となった場合―これはどういう場合か分かりませんが―,三つ目が,特別支配株主の想定を超える数量の売渡株式について価格決定の申立てがなされた場合とありますが,これはあってしかるべきでありまして,1割か2割ぐらいかなと思ったら,実は大半につき価格決定の申立てが来てしまったという場合でも,これで売渡請求自体をやめることを認めるわけでありますから,これでは正に制度的株価操縦もよしとするような感じになるということを思っています。この制度を利用するにはそれなりの覚悟をやっていただくべきではないかという立場もあるわけでございますので,本当に,クローズする前日まで撤回を認めていいのかということについては,私はやはり慎重に考えるべきではないかと思い,やるからにはそれなりにきちんとした対応をしてやるべきであると思いますので,撤回については,疑問なしとしないと思います。   二つ目は,先ほどから議論になっています,支払がなかったときに解除するべきかどうかという議論です。もしお金を支払わなくとも債務不履行解除を認めないとなりますと,株主には議決権がありますから,100%株主になったまま,例えば,配当も受領しますし,あるいは総会でも議決権行使しますとなり,しかし,とにかく払いませんということも認めることになります。徹底的に争えば何年争うのか分かりませんし,お金を払わない場合,どういう法的救済があるのか分かりませんけれども,ずっと解除ができないと,一人会社のまま,ずっと会社を支配し続けるという100%株主状態が続くわけでございます。個別解除事由にならないとなると,後は,一人に支払わない場合を全部無効にするかという話だけになるわけですけれども,本当に解除ができないということでいいのかということについて,将来の立法,解釈に委ねるということで,それを法文化するときに結末を決めずに,ここで出してしまっていいのかという問題があると思います。   3点目が,6ページ目の「なお,パブリック・コメントでは」で始まる文節での費用負担でございます。これは,特別支配株主の御要望に従って売渡請求できるとの制度を認めるわけですから,本来は,言ってみれば,株主の権利行使に関わる費用であります。そうすると,120条2項により,無償で財産上の利益を供与したときは,株主の権利行使に対し財産上の利益を供与したものという推定規定があるわけでございますので,そうだとすると,売渡株主の売渡請求についての費用は,全て,本来は,売渡株主,特別支配株主の費用負担になるというのが本来的な原則ではないかと思います。したがいまして,この「通知・公告等の費用」の「等」に何が入るのか分かりませんが,恐らく一番大きい費用は,公告であれば公告費用が掛かりますし,通知すれば郵送費用が掛かります。その他,「等」という中には,会社の取締役が価格についても含めた承諾をする場合に,この価格でいいのかということを決定する場合の鑑定費用が入りますので,鑑定費用も会社が負担するということになれば,120条2項の関係―無償なのかどうか分かりませんけれども,会社に対しては無償だと思いますが―をどう整理するのかということがあります。本来は,キャッシュ・アウトに要する費用は,全て特別支配株主の負担とするという原則を打ち立てていただいて,その枠の中で,この通知・公告をどう扱うのかという議論にするべきであって,通知・公告の費用だけを取り上げるというのは,120条との整合性が取れないのではないかと思います。 ○内田関係官 まず,1点目の撤回のところ,相場操縦という点につきましては,公開買付けの撤回が制限されている趣旨を踏まえた御指摘かと思いますけれども,ここでは,既に特別支配株主が90%取得している状況で,しかも,対象会社の承諾があって初めて撤回が認められるというものですので,公開買付けの撤回とは場面が大分違うのでないかという印象でございます。   2点目の,個別解除できるかどうかについては,無効事由に関する解釈論との兼ね合い等も考えますと,これを法律で一律に規定することは,なかなか難しいという気がいたします。   それから,最後の点ですけれども,通知・公告については,株式売渡請求の承認後に,正に特別支配株主のためにやっている手続という位置付けになるわけですけれども,承認するかどうかの判断の前提として,専門家の株式評価とか,フェアネス・オピニオンのようなものを取得するための費用については,別の議論があるところかと思っております。パラレルに考え得る場面として,公開買付けの局面を考えますと,賛同表明をするかどうかを判断するに当たって,対象会社でも専門家の株式評価を取得することがあると思います。そういった場合の専門家の株式評価は,株主の利益への配慮という観点から賛同表明の当否を判断するための資料として取得されるものですので,公開買付者の負担で専門家を雇うということになると,逆に,これはまずいのではないかとも思われるところです。同様の観点から,株式売渡請求の承認をするかどうかを判断する場面でも,対象会社が専門家の株式評価を取得するための費用を特別支配株主の負担にすると,逆にその評価の公正さ等について疑いが生じてくるという懸念もあり得るのかなと思っております。 ○田中幹事 撤回のことと,それから先ほどの債務不履行解除について,1点ずつ御意見を申し述べさせていただきたいと思います。まず,撤回すべきか,撤回を認めるかどうかということなのですけれども,これは,この制度を公開買付けのように構成するという考え方と,これまでの会社法の諸制度にあるような組織再編的に構成するという,どちらの考え方もあり得るわけです。公開買付けのように構成しますと,確かに,現行の金商法上,買付者は撤回できないのが原則になります。これに対し,組織再編においては,当事会社の合意によって撤回することが可能であるということがあり,それとの平仄で考えると,特別支配株主が撤回したいと考え,そして,対象会社の取締役会がそれを承諾すれば,撤回できるということになるのではないかと思います。確かに,この制度は,特別支配株主と他の株主との間で売買契約が成立するという制度のように見えますから,そこを考えると,他の株主の同意がなければ,それも,個別の同意がなければ撤回できないことになるのかも分かりませんが,制度自体は,特別支配株主の対象会社に対する意思表示と対象会社の取締役会の承諾によって,そういった法律関係が形成されるということになっていますから,そうだとすると,これを撤回する場合にも,この両者の合意があれば可能である,効力発生日までは撤回が可能だという考え方も十分できるのではないかと思います。そこで,三原幹事のおっしゃった問題に関してですけれども,これについては,現行の会社法と金商法の体系上,そもそも,上場会社を買収するときに,キャッシュ・アウトそれ自体を義務付けるルールがないという現実があります。ですので,キャッシュ・アウトしますよと言ったときだけ,後からもう撤回はできないんだとしても,必ずしもそれだけでは少数株主を保護したことにはなっていないということがあります。現実にも,公開買付けによって90%以上株式を取得しても,なおキャッシュ・アウトしていないというケースもありますので,そういったケースについて特段の措置を取らないで,一度キャッシュ・アウトしますと言ったときだけ,もう撤回できないというふうな制度にすることが,本当に適切かという問題があるのではないかと思っております。それから,現行法上,何らかの救済の余地があるかどうかということについては,キャッシュ・アウトの場合でも,例えば,公開買付けにおいて,公開買付けが成立したら速やかに同額でキャッシュ・アウトを行いますというようなことを公開買付開始公告で表示していれば,相当の理由なくキャッシュ・アウトをしなければ,それは,公開買付開始公告における虚偽表示ということで,責任が発生し得るのではないかと思います。そのようなことだけで足りなくて,とにかく一度このキャッシュ・アウトをするといった場合には撤回はできないとするのが本当に適切かと,例えば,特別支配会社の資力が不足したといった状況で,どうしてもキャッシュ・アウトを強制すれば,一部の株主だけが代金の支払を得られて,他の株主は代金の支払が得られないとか,いろいろな不公平な状況も生じ得るかと思います。それから,この制度自体が,公開買付け前置で行うキャッシュ・アウト以外のものにも適用されることを想定していますので,そういう場合に,特別支配会社がキャッシュ・アウトしようと思ったけれども,反対株主から想定以上に多くの価格決定請求がなされたと,つまり,想定以上に多くの株主が実際に反対しているということですから,そのことを理由にして,やはりキャッシュ・アウトはやめますと特別支配会社が考えるということも,一つの経営判断としてあり得るのではないかと考えています。そのようなことからも,制度の建て付けとして,公開買付け的な発想にすれば,確かに撤回できないという考え方は十分成り立ち得るわけですけれども,組織再編的に構成して,対象会社の取締役会の承諾を得れば撤回できるというふうな建て付けにすることも,十分考えられるのではないかと考えております。   以上が1点目で,2点目は,債務不履行解除についてですが,私,ここは大変興味深い問題ですから,学者としては,ここは,解釈論に残していただくのがいいのではないかと思っておりますけれども,ここ最近の最高裁判例も含めた裁判例の展開を見ていると,どうも,組織再編その他の会社の組織上の行為の無効は訴えをもってしか主張できないという会社法の規定は,一般に,その行為全ての効力を否定することは訴えをもってしかできないという意味だというふうに解するのが,むしろ現在の判例の展開に合っているのではないかと思っています。それは,先ほど内田関係官から言われた,会社分割において労働契約承継法の手続が履践されなかった従業員は,個別に会社分割による契約の承継を否定できるというのが最高裁判例と解されますが,この解釈が認められるのは,結局,その従業員が本来移るべき会社に移らなかったとしても,会社分割自体がなくなるわけではないと,ただ,その個別的なある部分,ある法律関係の部分だけが否定されるにすぎないので,会社分割の無効は訴えをもってのみ主張できるという会社法の規定とは矛盾しないのだという説明になるのだと思います。それから,詐害的な会社分割を詐害行為取消権によって取り消せることが,多くの下級審裁判例がほぼ一致して認めているわけですけれども,これも同じでして,会社分割で行われた行為のうちで,ある財産権の移転のみがその効力を否定されるだけですから,やはり,会社分割の無効は会社分割無効の訴えをもってのみ主張できるという会社法の規定とは矛盾しない,という解釈になるのだと思っております。そうしますと,特別支配株主による売渡請求による行為の効力を,無効を訴えをもってしか主張できないというのは,ここで行われた株式移転が全部否定されるというようなことは,この無効の訴えをもってしか主張できないということであって,個々別々の株主が自らの代金が支払われないという債務不履行を理由に解除するということまで否定しているわけではないという解釈も,十分可能ではないかと思います。現実問題としても,このようなキャッシュ・アウトの行為の効力が生じても,100%株主になった特別支配株主が株式を再度譲渡すれば,100%関係は失われるわけでして,言ってみれば,キャッシュ・アウトとはその程度のことであると言うこともできます。また,現実的にも,特別支配株主が無資力になってしまって代金支払は期待できないけれども,対象会社には,まだ十分資力があって,少数株主が対象会社の株主に戻ることは経済的に十分意味があるというようなときには,解除を認めることによって株主が救済されることもあり得るかと思います。したがって,債務不履行による解除ということもあり得べきということになるのではないかと考えております。 ○中原幹事 撤回のところで,対象会社の取締役の義務というのが,場合によっては非常に厳しいことにならないように,解釈論を今後展開していただく必要があるかなというような気がしておりまして,藤田幹事に御指摘いただいたことは,理論的には非常に御指摘のとおりではないかというふうに拝察しましたけれども,その義務の所在というのを,今の田中幹事のお話にあったように,公開買付けのほうに寄せて相場観を形成するのか,それとも,組織再編のほうに寄せて相場観を形成するのかということで,何か違いが出てくるのではないかなという気がしております。例えば,最初の支払の見込みというところでは,キャッシュフローがあるでしょうということだったんですけれども,突然出費が生じて現金が出ていって,それで,そのキャッシュフローがなくなってしまったと,そのときにこうしたキャッシュ・アウトが実施されるということになったと,ただ,バランスシート上は遊休資産があって,それを売ればキャッシュは確保できるかもしれないけれども,現時点でキャッシュはありませんというような場合であっても,大体こういう場合では,先ほどの内田関係官のお話で,このまま突き進んでも,すぐ支払えるかどうか分からないという見込みを措定して撤回の承諾をするということであっても,対象会社の取締役というのは,善管注意義務違反というわけではなくて,429条的な責任かもしれませんけれども,そういった違反に問われることはないというような形で考えてよいのかどうかというところだけ,確認をさせていただければと思います。 ○岩原部会長 ただ,この制度は,それこそ,個別株主の同意に代えて会社の取締役が承諾をするという構成になっていますから。 ○藤田幹事 田中幹事が言われた,組織再編に寄せるか,公開買付けに寄せるかという対比は,有用な面もあるのですが,取締役のこの手の行為規範を考える際には,余り決め手にはならないのではないかという気がします。この局面においては,ある種その多数株主と少数株主の間の利害対立を前提に,9割取っている多数株主が少数株主を不当に害することがないように,株主の利益を守る立場として取締役が役割を担うことが想定されているわけです。一般的な組織再編の場合,いろいろなことがありますけれども,例えば,独立な会社同士の組織再編の場合ですと,純粋の経営判断で,やめたほうがいいと多くの株主が言う場合に,やめるという選択肢があり得るわけなんですけれども,組織再編の場合に経営判断であるところが,ここの局面においてはもう少し厳しい行為規範が課せられる,基本的には,組織再編的に考えて撤回は認めるというふうな枠組みで物を考えるにしても,行為規範の当てはめの際の判断としては厳しめにすることとは必ずしも矛盾しません。ですから,この辺りは余り比喩的な対比で考えるのではなく,株主間の利害対立状況がある場合の少数株主の保護という役割を課せられている取締役としての立場を前提に考える必要があります。その上で,取締役として承認してよいのをどのぐらい限定的に考えるのか,資金がない場合とか,非常に限られた場合だけなのか,もう少し広いのか,それはまたいろいろなことは考えられると思いますけれども,純粋な経営判断というのとはやはりちょっと性格違うものだとは思います。 ○岩原部会長 撤回に同意をする取締役には,ある意味でレブロン基準みたいな注意義務が求められるわけで,かなり厳しいなという感じはしますね。ですから,そこから逆に,現在の9割以上の特別支配株主がいる会社の取締役に,現実にそういうことを判断してもらうことが実際に期待できるだろうかというのが,先ほど本渡委員が御指摘になった御懸念かという感じはします。その意味で,この制度の建て付けそのものが一体どれだけ機能するものだろうかという御議論はあり得るかと思います。非常に御議論が錯綜していますが,いかがでしょうか。 ○内田関係官 念のため,最後にお取りまとめいただいたところに関しまして,今回の御提案では,いわゆるレブロン義務―合理的に獲得可能な最高の価格を引き出すべく行動する義務―を取締役に課すというところまで踏み込むという意図は必ずしもございませんので,その点のみ補足させていただきます。 ○岩原部会長 分かりました。注意義務の対象が,会社の利益を考慮する単なる経営判断ではなく,買取請求を受けた少数株主の利益を守るという判断が求められるということから,レブロン基準に言及したものにすぎません。注意義務のレベルがレブロン基準並みということを申し上げたわけではありません。かなり議論が錯綜しまして,ここで,この点についてまとめるのは難しいかと思いますし,多くの今までにない論点の御指摘がございましたので,ここは,事務当局のほうで,今日頂きました御議論を踏まえて,もう一度詰めていただくということにいたします。   では,ここで一旦休憩とさせていただきます。           (休     憩) ○岩原部会長 それでは,時間ですので,審議を再開させていただきたいと存じます。「③ 種類株主総会の決議事項」について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「③ 種類株主総会の決議事項」について御説明いたします。対象会社が種類株式発行会社である場合には,株式売渡請求は,全ての種類の株式について行われることとなりますが,この場合,対価の割当てについては,株式の種類ごとに異なる取扱いを行うことを認めることが考えられます。そこで,一定の場合に種類株主総会の決議を要するものとすることにより,種類株主間の利害調整を図ることについて,検討する必要があるものと存じます。具体的には,株式売渡請求の承認を種類株主総会の決議事項に追加し,対象会社が当該承認をする場合において,ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは,そのような種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要するものとすることが考えられます。ただし,その検討に当たっては,種類株主総会の決議を要するものとすることの意義,すなわち,種類株主間の割合的な権利関係の変動による不利益からの救済と位置付けるか,対価が不十分であることによる不利益からの救済と位置付けるかといった点等や,売渡株主の利益を確保するための他の仕組みとの関係,特に,価格決定の申立てに加えて種類株主総会の決議による保護を与えることの意義について,整理を要するものと思われます。 ○岩原部会長 ありがとうございます。それでは,③について御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○前田委員 確かに,会社の承認という会社の行為によって,ある種類の株主が損害を受けるおそれがあるわけでございますけれども,株主たる地位を失うこと自体は,どの種類も同じですので,種類間の利益調整として,実質的に考慮すべき不利益は,結局は,価格だけの問題になるのだろうと思います。ですので,価格決定の申立ての制度があるにもかかわらず,ある種類株主に拒否権まで与えて,全部を止めることができるようにするのは,強力に過ぎるのではないか,現実には,定款で拒否権は排除されることになるでしょうけれども,実質に照らすと,ちょっと手続が重くなり過ぎるのではないでしょうか。 ○三原幹事 種類株式の322条1項に規定を追加するということについては,基本的に賛成でございます。優先株を例に取りますと,種類株式の場合には,例えば,無議決権で配当だけ優先する株式というのは非常に多くて,恐らく東証に上場されているような事例などもそういう事例だと思います。その意味で,自益権についてのものは,基本的には価格の問題ということで,部会資料20の7ページ目の3行目,4行目辺りのところの議論が妥当すると思います。これに対して,共益権についても,黄金株のような,異なる議決権が与えられた種類株式がありまして,一定の場合には,いわゆる拒否権が与えられているような権利ですとか,例えば,国家主権の延長上にあるような権益を持つ会社について,各省庁が議決権を持っているというような特殊な株式というのも存在しているわけでございまして,そういう場合には,価格だけで全部を吸収できないという場合もあり得るので,それらは損害を及ぼすおそれという,この322条の規定については考慮してしかるべきかなと思います。全て利益,全てお金であるということだけではない,議決権,共益権の場合があり得るのではないかと思っており,そういう上場株が実際には存在していると思っております。 ○岩原部会長 他の御意見はいかがでしょうか。両方の御意見が出ましたが。 ○杉村委員 そもそもこの制度は,現行法の手続では,時間的な,あるいは手続的なコストが大きいという指摘を踏まえて検討されているということに立ち返れば,種類株主総会の決議事項とすることが,この制度の創設趣旨に反しないのかというところがあります。価格の問題は,価格決定の申立てを認めるということでも担保されております。そういった点を踏まえて,慎重に検討したほうがいいのではないかと思います。 ○岩原部会長 他の御意見はどうでしょうか。価格決定の制度のほうがあることによって,それで十分代替されていると考えるのか,三原幹事のように,それでは代替され得ない問題があるから,やはり322条の原則に従って種類株主総会決議を要求すべきという御意見と,両方に分かれていますが,いかがでしょうか。 ○本渡委員 私も,三原幹事と同じ考え方でして,要するに,種類株式というのも,内容が,いろいろな内容の種類株式があるわけですから,価格だけで決定できるものは,こういう場合は売渡請求に応じてもいいよとか,そういうことを決めておけばいいわけであって,やはり全てが価格だけで評価できないものも,いわゆる黄金株だとか,経営権に関わるものもあるわけですから,全て売渡請求の対象にして種類株主総会は必要ないよという規定は,ちょっと難しいのかなと,今の御提案のとおりでいいのかなと私は考えております。 ○岩原部会長 他には御意見ございませんか。御意見が分かれていますが。 ○田中幹事 ちょっと現在の実務の下での法解釈について確認させていただきたいのですけれども,現在,322条1項ただし書によって,定款で,322条1項で要求される種類株主総会は必要ないものとすることが認められているため,そういった定款条項はかなりあると思っております。そのような場合に,新たに,同項の第14号として,この少数株主のキャッシュ・アウトを含めた場合には,既存の定款条項自体が,「322条1項の種類株主総会は必要ないものとする」というように一般的に書いてあるのだから,新しくできた14号についても,やはり種類株主総会は必要ないというふうに解することができるのではないかと思うのですけれども,そこをちょっと,法務省の方の御見解を教えていただきたいのですけれども。 ○内田関係官 具体的な定款の文言次第というところもございますので,飽くまで一般論としてしかお答えしづらいところですが,第1項各号の全部が入るような文言になっていれば,それで基本的に読めるという解釈は,十分成り立ち得ると思います。後は,定款の趣旨の解釈の問題ということで,改正法の施行後の株主総会でどういった説明をされるのかとか,その辺りの実務上の取扱いによっても,いろいろと議論はあり得るのかもしれませんが。 ○田中幹事 今のような解釈をもし前提にするのであれば,現在,定款によって種類株主総会は必要ないとしている場合には,現行法下でも,例えば組織再編など,他の方法でキャッシュ・アウトされる可能性があるところを,種類株主はそれでもいい,価格決定手続だけで救済を受けるということでいいという意思表示があると考えていいかと思います。したがって,その場合には,キャッシュ・アウトについても種類株主総会が必要ないと解してもよいと思います。これに対して,そういう定款の定めがない場合は,種類株主は,現行法の下でキャッシュ・アウトされることを封じ込んでいると,種類株主総会の同意がない限りはキャッシュ・アウトされないという期待が生じている可能性がありますので,この新たに作った制度でキャッシュ・アウトができるとすると,種類株主の期待に反するという問題が生じるのではないかなという感じがします。これに対しては,全ては価格の問題であるからから,価格決定手続に救済を任せればいいという考えもあるかもしれませんが,普通株式ですらも,裁判所による価格決定がどの程度適切になされるかについてはなかなか難しい問題もあるところ,まして,種類株式の価格決定などというのは,ほとんど学説もなくて,果たしてそれだけに任せることができるかということもあります。それから,種類株主として,例えば拒否権などいろいろな権利が付いている場合には,もはや,全体の株主総会で10分の9の議決権があるかどうかということはその種類株主の権利の大きさを考える上では余り重要なことだとは認識されておらず,むしろ,いろいろな事項について拒否権があるということのほうが重要だと認識されている場合もあると思いますので,そういったことも含めると,トータルで考えると,322条1項各号の中にキャッシュ・アウトも入れて,現行法の下で,322条1項各号の行為をするについては種類株主総会は必要ないという定款条項を持っている会社についてのみ,新設のキャッシュ・アウトについても種類株主総会は必要ないというふうに解釈するというのが,私には穏当な考え方ではないかなと思っております。 ○藤田幹事 私も,最初に部会資料を読んだときは,結局,対価がキャッシュの場合だけで,お金の多寡の問題だけだから,種類株主総会は要らないかなと思っていました。部会資料20を見ますと,種類株主間の割合的な権利関係の変動による不利益からの救済とか,対価が不十分であることの不利益からの救済とか,こういった観点では,種類株主総会の必要性は説明できないのですね。ただ,いろいろ考えてみますと,今,田中幹事が指摘されましたように,種類株式にもいろいろなものがあります。例えば,拒否権を持っているような種類株式を持っている人も,他の株式と合わせて9割を持たれると,キャッシュ・アウトされてしまう可能性がある。いかに強力な拒否権などを持っている株主であっても,それ以外の種類の株式を取得されてしまえば,結局拒否権も機能しなくなってしまうが,そういうことになってもよいと割り切りをしていいかどうかという問題です。これは,その種類株式の性格によっては,その他の株式ではない株式の取得を通じて権利を失うことの適否という観点からの話なので,部会資料に書かれている理由付けとは全く別の種類の利益の保護が問題になり得るように思います。9割が賛成しているということの数え方や意味の捉え方という言い方をしてもよいと思うのですけれども,そことの関係から制約があり得るのかもしれません。まあ将来の種類株式について言うと,ルールが決まっていれば,それに合わせて定款を発行するときに調整すればいいということで,割り切りは成り立つのかもしれませんが,今現在既に出ているものを想定しますと,やはり322条1項の決議事項に加えるということでよいと考えるに至っております。 ○岩原部会長 いかがでしょうか。他に御意見ございますでしょうか。   ということで,ただいまの議論の中では,価格決定の手続があれば,それで種類株主総会による保護に代えることができるという御意見もございましたが,その後の御意見では,拒否権付株式のような種類株式等,共益権に関わるものを考えれば,価格決定だけで代替できるものではないものもあるのではないか,そういうことからすると,322条1項に,株式の売渡請求権を付け加えることが合理的ではないかという御意見が比較的多かったかと存じます。大体そのような御理解でよろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきたいと思います。次に,「④ 新株予約権の売買価格の決定の申立て」について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「④ 新株予約権の売買価格決定の申立て」について御説明いたします。特別支配株主が株式売渡請求に併せて新株予約権の売渡しを請求する場合には,新株予約権者にも価格決定の申立てを認めることが考えられます。もっとも,新株予約権については株式の場合よりも売買価格の決定に困難を伴うことが予想され,全ての新株予約権に関して価格決定の申立てを認めると,手続的コストが増大するおそれもあります。また,新株予約権者に交付される対価が,新株予約権の内容としてあらかじめ定められた条件に合致するものであれば,新株予約権者の利益を不当に害するおそれはないと思われます。そこで,新株予約権の内容として,売渡請求がされる場合に交付されるべき対価の金額又はその算定方法が定められている場合には,それに合致する条件で売渡請求がされる限り,新株予約権者による価格決定の申立てを認めないものとすることについて,検討する余地があると思われます。この点については,組織再編に際し,消滅株式会社等の新株予約権者に対して,あらかじめ定められた条件に合致する条件で存続株式会社等の新株予約権が交付される場合に,新株予約権買取請求権が生じないものとされていることが参考になると思われます。消滅株式会社等の新株予約権に対して金銭が交付される場合―これは,現行法では,合併の場合の消滅株式会社の新株予約権者に限って認められているのですが―については,このような規律は設けられていませんが,株式売渡請求の制度においては,新株予約権についても金銭を対価とする売渡請求を正面から認めることに鑑み,④のような規律を設ける余地があると考えられます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。④について,いかがでしょうか,   特に御異論はございませんでしょうか。よろしいですか。それでは,この④については,部会資料20のような方向で考えていくということにさせていただきたいと思います。   最後に,「⑤ その他」について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「⑤ その他」について御説明いたします。株式売渡請求については,これまでに試案において掲げたものや,本日御議論いただいたものの他にも,その手続等に関して詳細な規律を定める必要があると思われます。⑤では,その一例として,株主名簿記載事項の記載等について特別支配株主による単独請求を認めることや,株券の提出等に関する手続を定めることを掲げております。これらのほか,株式売渡請求に関する手続等の詳細については,事務当局において詰めさせていただければと考えております。 ○岩原部会長 ありがとうございます。それでは,⑤のア及びイについて,御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。   特にございませんか。それでは,特に御意見がないようでございましたら,部会資料20の方向で考えていくということにさせていただきたいと存じます。 ○三原幹事 このアとイの話ではありませんが,今後,この所要の規定を設けるという,アとイ以外の事項の内容が決まりましたら,事務当局から部会資料で出していただけるという理解でよろしいのでしょうか。それとも,これで,他のところも皆所要の改正となってしまうということになるのでしょうか。その確認だけでございます。 ○坂本幹事 どこまでお示しさせていくかですが,お示しし出すと,ある意味切りがないというところもございますので,今後,更に検討して内容を詰めていくわけでございますけれども,検討の中で,部会にお示しして御議論いただいたほうがよいというものについてお示ししていくという形で,御了解いただければと思っている次第でございます。 ○岩原部会長 部会で議論すべき重要性のあるものについては,部会で御議論いただくということかと思います。   それでは,先に進ませていただきたいと思います。第3の「2 株式の併合(端数となる株式の買取請求)」に移らせていただきます。まず,「(1) 買取請求権を有する株主の範囲」について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「2 株式の併合(端数となる株式の買取請求)」の「(1) 買取請求権を有する株主の範囲」について御説明いたします。株式の併合については,従前は,資金調達に関する論点として,企業統治の在り方の部分で取り上げてまいりましたけれども,議論の内容から,キャッシュ・アウトの問題と関連するものとして御議論いただいたほうがよいと考えまして,ここで取り上げております。   試案第1部第3の2(1)では,株式の併合により端数となる株式の買取請求の制度を創設するものとしていますが,パブリック・コメントにおいては,このような制度の創設自体に反対する意見は,ほとんどありませんでした。そこで,2では,端数となる株式の買取請求の制度設計について,パブリック・コメントで寄せられた意見を踏まえて,検討を要すると思われる論点を挙げております。   (1)は,買取請求権を有する株主の範囲に関するものです。試案の①では,会社債権者の利益との関係や手続的コストを考慮して,端数となる株式の買取請求をすることができる株主を反対株主に限るものとしています。この点について,パブリック・コメントでは,請求権者は反対株主に限るべきでないとの意見も寄せられていますが,反対株主以外の株主については,端数株式売却許可事件の手続に参加することによって一定の保護が与えられることなどを理由に,試案に賛成し,あるいは試案に異論を述べない意見が多数でございました。端数の処理に際して適切な対価が交付されないおそれがあると考える株主は,それを理由に株式の併合に反対することも可能であることからしますと,あえて株式の併合に反対しなかった株主にまで端数となる株式の買取請求を認めることは,適切とは言えないように思われます。そこで,(1)は,端数となる株式の買取請求をすることができる株主を反対株主に限ることを,改めて提案するものでございます。 ○岩原部会長 (1)につきまして,いかがでございましょうか。 ○静委員 買取請求権を有する株主の範囲を反対株主に限ることについて,2点ほど申し上げたいと思います。私は,基本的には反対株主に限らないほうがいいということをずっと申し上げてきました。市場では,単元株制度を採用している会社の株は1単元単位で取引され,そうでない会社の株は1株単位で取引されています。買った後に株式分割で増えた部分の扱いが違うのは仕方ないとしても,市場で買った株自体が株式併合で流通に適さない状態になる場合には,単元株制度採用会社ではその大半が単元未満株になり,単元株制度非採用会社では一株に満たない端数になるということを考えると,端数か単元未満株かを問わず,反対しなくても買取請求できるほうが公平ではないかと思ったからです。ただ,事実関係が変わってきているところがございまして,今年1月に,全国証券取引所で,2014年4月1日までに全ての上場内国会社で100株か1000株を一単元とする単元株制度採用会社となっていただくことを決定しました。したがいまして,今申し上げたような,単元株制度採用会社と単元株制度非採用会社の差というのは,少なくとも上場会社については生じず,この問題は,遠からず解消するという見込みが立ったというわけでございます。したがいまして,部会資料20の案を採用しても,私が申し上げたような問題については,差し障りがなくなるのではないかと思われますので,その部分についての事実関係を一つ申し上げておきたいというのが1点目でございます。   2点目でございますけれども,先ほど御説明ありましたように,キャッシュ・アウトの中に株式併合の項目を入れたことで,意図は分かりやすくなりましたけれども,新しいキャッシュ・アウトのための制度を作るという方向で議論しているのに,株式併合のような実務的に封印されている制度まで復活させるというのは,私はどうかと思います。しかしながら,部会資料20にありますように,株式併合をキャッシュ・アウトに使える仕組みにするということを前提として考えると,買取価格の算定に際し,キャッシュ・アウト後の企業価値向上分の一部も含めて公正な価格が少数株主に交付される必要があると思います。中間試案では,公正な価格と書いてありますけれども,これは,そういうことを意識してお書きになっているというふうに理解してよろしいでしょうか。質問でございます。 ○内田関係官 キャッシュ・アウトに用いられる場合の公正な価格につきましては,現行の全部取得条項付種類株式の取得という手法でキャッシュ・アウトが行われる場合―法文上は明確には書かれていないものの,その場合にも,裁判所が決定する価格は,公正な価格と言われております―と同じ発想が妥当するのであろうと考えております。 ○岩原部会長 他に御意見ございますでしょうか。特にございませんか。   それでは,ただいま御指摘のような点はございましたが,実際上の事情も変わってきているということでもございますし,部会資料20にあるような方向で考えていくということでよろしゅうございましょうか。それでは,そのように扱わせていただきたいと思います。   次に,「(2) 併合の割合が一定割合を上回る場合の取扱い」について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「(2) 併合の割合が一定割合を上回る場合の取扱い」について御説明いたします。試案の①の(注3)では,端数となる株式の買取請求に関し,併合の割合が一定割合を上回る場合には,これを認めないものとする旨の例外を設けるかどうかについて,なお検討することとしています。当部会においては,そのような場合でも,株式の分布状況によっては,端数となる株式の株主に与える影響が大きくなる可能性があることが指摘されていましたが,パブリック・コメントにおいても,これと同様の理由や,例外要件を満たす株式の併合を繰り返すこと等による潜脱のおそれがあるとの理由から,そのような例外を設けることに反対する意見が多数でした。そこで,(2)では,併合の割合に着目した例外を設けないものとする,すなわち,単元株式数に併合の割合を乗じて得た数が整数となる場合を除いて,端数となる株式の買取請求を認めるものとすることを提案するものでございます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。いかがでしょうか。   よろしいですか。これも,パブリック・コメントでは,このような考え方に対する支持が多かったということでございますので,部会資料20にあるような方向で進めていくということにさせていただきたいと思います。   それでは,次に進ませていただきまして,第3の「3 その他の事項」に移らせていただきます。事務当局からの説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「3 その他の事項」について御説明いたします。試案では,部会資料20において取り上げている事項のほか,キャッシュ・アウトに関する事項として,全部取得条項付種類株式の取得に関する規律の見直しや,株主総会等の決議の取消しにより株主となる者が当該決議の取消しの訴えの提起権を有する旨の明文の規定を設けること等を掲げていましたが,パブリック・コメントにおいては,これらに反対する意見はほとんどありませんでした。これらにつきましては,部会資料20では取り上げておりませんけれども,試案のとおりの見直しをするということで,後は,事務当局において詳細を詰めさせていただければと考えております。   パブリック・コメントでは,キャッシュ・アウトを行うための対象会社における株主総会の決議について,決議要件を加重すべきであるとの意見も寄せられました。当部会でもそのような御意見があったことは,試案の補足説明でも書かせていただいたとおりですけれども,これらに対しては,当部会において,一部の少数株主の反対によってキャッシュ・アウトが阻止され得るという規律は合理的ではないとの指摘や,そのような少数株主の立場が濫用的に利用される懸念があるとの指摘がされたことから,試案には掲げられなかったところでございます。また,パブリック・コメントにおいても,合理的なキャッシュ・アウトが阻害されることへの懸念から,少数株主に交付される対価の適正さを確保するための制度の整備を条件に,決議要件の加重は要しないとする意見が寄せられております。対象会社の株主総会における議決権行使の状況,特に,支配株主以外の株主が有する議決権の過半数が賛成しているかどうかといった事情は,裁判所による価格決定手続における公正な価格の検討等に際しての考慮要素となり得ると考えられます。実際,株式買取請求に関する価格決定に際して,そのような事情を考慮要素に掲げた裁判例もございます。もっとも,キャッシュ・アウトに先行して公開買付けが行われる場合等も念頭に置くと,決議要件を一律に加重することは,かえって合理的なキャッシュ・アウトを阻害するおそれもあり,適切でないと考えられます。3は,このような観点から,決議要件については,現行法の規律を見直さないということを提案するものでございます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。キャッシュ・アウトにおける株主総会決議の要件の見直しについての御意見を頂きたいと思います。いかがでございましょうか。 ○静委員 先ほども申し上げましたけれども,今回新しいキャッシュ・アウトのための制度を作るということでございますので,全部取得条項付種類株式を用いるスキームのような制度の目的外利用はやめるべきだと思います。そして,もしこういった既存の手法を今後も認めるということであれば,せめて残存株主の過半数だとか,全体の9割程度だとかいった程度にまで決議要件を引き上げるというのが本筋だというふうに今でも思います。しかしながら,部会資料20のように,もし現行の規律を見直さないということであれば,併せて,これまで積み上げてきた現行の実務もしっかりと尊重されるように,説明の仕方を工夫していただくことが重要なのではないかと思います。何を心配しているのかと言いますと,現行の規律を見直さなくても,実質的には緩んでしまうのではないかという点です。つまり,今後は,公開買付けで9割が取れれば新制度でキャッシュ・アウトするが,取れなければ既存の制度で,すなわち,出席株主の3分の2で押し切ることができると安易に理解されてしまいかねません。その結果何が起こるかと言いますと,公開買付けを行うときに,公開買付価格の設定において,9割を目指さない金額を設定するということで,対価の適正さすらも保てなくなるということを懸念しています。したがいまして,現行の規律を見直さないという選択肢もないとは申しませんけれども,それに付随する実務慣行も維持され,尊重されるように,説明の仕方を十分工夫していただきたいと思います。そうしませんと,せっかくこれまで実務的な積み上げをしてきた上場会社の皆様や関係者の皆様の努力が生きてこないと思います。重要なことだと思いますので,是非御検討いただけないかと思います。 ○中東幹事 私も,この点,静委員と同じスタンスでまいりましたので,一言申し上げたいと思います。静委員おっしゃった点に,内容的にも,今後のやり方にしても,賛成でございます。確かに,補足意見の第三段落の最後の「もっとも」で始まる文にありますように,公開買付け前置の場合等を考えますと,やはりなかなか法文上書き切れないということもあると思いますし,書いたところで,この基準が満たされないと必ずできないということまで今の段階で法定する必要があるかということはあるかと思います。事務当局におかれましては,例えば,東京地裁平成23年の決定をお引きになったりして,こういったものの形での実務の蓄積を非常に期待しているということで,静委員の問題提起を受けていらっしゃるものだと認識しておりますが,その認識でよいかということについてお教えいただければ幸いでございます。そうであれば,当面は,こういった形でいけばよろしいかと思います。ただ,ここで挙げられていますのは,株式買取請求権についての規定,価格決定に関する裁判例であるわけでございますが,株式買取請求権がどれだけ機能するんだろうかということには疑問もあります。例えば,反対する株主の持株数が少なければ,弁護士報酬のほうが高いから,会社は株主の言い値を払うというようなこともあるようでございます。その意味で,部会資料20でも,「公正な価格の検討等」と書いていただいていますが,この事後的な救済手段としての価格決定だけではなくて,差止めについてもそうですし,あるいは,決議取消し,決議無効等,こういったものについても,やはり,構造的に利益相反があるような組織再編,キャッシュ・アウト一般に限る必要はないと思うのですが,そういうものについて,手続的に公正さが保たれるような実務が積み重ねられていくことこそが大事であると思っています。静委員がおっしゃいましたように,それこそが関係者の努力の成果であると思いますが,その点,静委員あるいは私の認識でよいかについて,お教えいただければ幸いでございます。 ○内田関係官 正に,中東幹事から補足説明の記載部分について御紹介いただきましたとおりでございまして,この点については,支配株主以外の株主が有する議決権の過半数の賛成を得ているなどの事情が全く考慮されないということではないのだということを,この場で御議論いただいておくという意図もございまして,このような記述を入れさせていただいた次第でございます。価格決定のみならず,決議取消訴訟や,差止制度を導入する場合には差止めの仮処分申立てといった手続の中でも,このような事情が考慮される余地があるという点についても,御指摘いただいたとおりかと思っております。補足説明の第3段落の「公正な価格の検討」の後に「等」というのを細かく入れていますのも,そのような理解に基づくものでございます。 ○岩原部会長 他にございますでしょうか。   よろしいですか。それでは,ただいま静委員,中東幹事から御指摘のありましたような点が将来留意されるということを前提にして,部会の方針としては,部会資料20に書いてあるようなことで進ませていただくということでよろしゅうございましょうか。   それでは,先に進みたいと思います。第4の「1 株式買取請求をした後の反対株主の剰余金配当受領権等」について,事務当局から説明をお願いしたいと思います。 ○髙木関係官 それでは,御説明いたします。中間試案第2部第4の「1 買取口座の創設」及び「2 株式買取請求に係る株式等に係る価格決定前の支払制度」については,パブリック・コメントにおいても,反対意見は少数でしたので,中間試案にあるような見直しをする方向で,詳細については引き続き事務当局において検討させていただきます。   部会資料20の第4の「1 株式買取請求をした後の反対株主の剰余金配当受領権等」の本文は,中間試案第2部第4の2の(注4)として掲げていたものです。これについて,パブリック・コメントにおいて寄せられた意見の中では,剰余金の配当と法定利息について実質的な二重取りになることを理由に,反対株主は,株式買取請求をした後,当該請求に係る株式について,剰余金配当受領権を有しないものとすべきとするものが多数でした。仮に,株式買取請求をした後に当該請求に係る株式について剰余金配当受領権を否定する場合には,当該会社につき経済的利害関係が希薄となる以上,反対株主は,議決権等の共益権も有しないものとすべきであるとも考えられます。そして,そのように考えた場合,株式買取請求に係る株式の買取りの効力が生ずる時を,存続株式会社等,吸収分割株式会社又は新設分割株式会社の反対株主についても,効力発生日等とすることのほうがより直截であると考えられ,当部会でも,そのような規律の見直しをすべきであるとの指摘がされています。この点については,現行法が,これらの会社の反対株主につき,当該株式の買取りが効力を生ずる時を,効力発生日ではなく,当該株式の代金の支払の時としていることの理論上及び実務上の意義を考慮しつつ,検討する必要があると思われます。仮に当該株式の買取りが効力を生ずる時を効力発生日等とする場合には,買取口座に関する中間試案第2部第4の1④の規律についても,所要の手当てをすることが必要であると考えられます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。それでは,第4の1につきまして,御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○前田委員 買取請求をした株主については,当初は,特に,剰余金配当受領権を認めるのが不合理だと考えていたのですけれども,株主権の一部だけを否定するというのは,若干無理があるかもしれませんし,むしろ,補足説明で御指摘のように,会社と実質的に利害が切れた者に議決権行使を認める必要はありませんし,適切な行使を期待できませんので,むしろ,行使を認めるのは有害であるとさえ言えると思いますので,議決権などの共益権も否定するのがよいのではないかと思います。そして,そこまでいくのであれば,更に進んで,補足説明の後半でお書きくださっていますように,株式の移転時を合併等の効力発生日にしてしまうのが一番簡明ではないかと思います。現行法が株式の移転時を代金支払時としているのは,代金の支払を確実にするためだと考えられますけれども,株式移転時を代金の支払時にするのは絶対的な要請ではなくて,法定利息の制度に加えて維持しておくべき規律であるとは思われません。合併の消滅会社等の側は,株主は別に代金を受け取っていなくても,合併等の効力発生日に株式は移転するのであって,存続会社等の側もそれに合わせるのがいいのではないかと思います。ですので,私は,補足説明でお書きくださっている考え方に賛成です。 ○荒谷委員 私も,以前,反対株主は,買取請求をした後も,剰余金配当請求権は認められるべきであるという意見を申し上げましたけれども,その理由は,今,前田委員もおっしゃっておられましたが,現行法のように,株式買取請求の効力は原則として代金支払の時に発生するということになりますと,代金の支払がなされるまでは株主の地位はまだ失われていないということになりますので,剰余金請求権は認められるべきだと解していたわけです。しかし,よく考えてみますと,部会資料20の補足説明に書かれておりますように,反対株主が買取請求をするということは,会社から退出するという意思表明をはっきりしていることになりますから,後は,対価,つまり買取価格を幾らにするのかという問題だけが残るのだと思います。そういたしますと,その点について手当てがなされていれば,もうそれで十分なのかなという気がいたしますので,補足説明に書かれておりますように,価格決定前の支払制度を導入する場合には,効力発生日に買取りの効力が発生するという規定を設けることを前提に,その場合には,剰余金配当請求権等は当然なくなると解する案に賛成をしたいと思います。 ○神作幹事 私も,前田委員,荒谷委員と同じ考えなのですけれども,剰余金の配当と法定利息の実質的な二重取りがよろしくないというのは,パブコメでも多数の支持を得たということですし,実質的な判断として,恐らく多くの方の賛同が得られるのではないかと思います。しかしながら,二重取りのおそれがあるという理由で,剰余金配当請求権を法律で否定することは,特に,他の株主権の取扱いのことを考慮しますと立法論としてなかなか難しいと思います。さらに,剰余金の配当と法定利息の二重取りを否定するために剰余金の配当請求権を一般的に否定するというのは,目的に照らしてやや過大な規律になるような気がいたします。そうだといたしますと,私も,効力発生日に株式の移転の効力が生ずるという規律を置いたほうが,簡明でシンプルな制度になるのではないかと考えます。   そこで,1点,多少気になる点がございますので教えていただきたいのですけれども,効力発生日に株式の移転の効力が生ずるものとする規定を置いたときに,公正な価格の決定についての基準日に関する従来の規律や解釈論に影響が及ぶ可能性はありますでしょうか。その点について,教えていただければと存じます。 ○髙木関係官 現行法では,存続会社側及び分割会社においては,基本的に代金の支払の時に株式買取りの効力が生ずるとされ,分割会社以外の消滅会社側においては,効力発生日に買取りの効力が生ずるとされています。しかし,これらの規律の違いによって買取りの価格について異なる判断がされているかといいますと,今の裁判例を見ますと,そこは,特に区別されていないと認識しています。そのことから考えますと,ここで,効力発生日に株式の買取りの効力が生ずるものと規律を改めることとしましても,株式の価格の決定について特に影響はないのではないかと考えております。 ○岩原部会長 よろしいでしょうか。他に何か御意見ございますか。   それでは,部会資料20に書いてあるような方向で考えていきたいと思います。このような考え方を取りますと,例えば,買取請求の撤回というようなことが効力発生日後でも起こり得ますので,そうしますと,一旦取得した株式の所有権が再び戻るというようなことになると思いますし,それは,株券発行会社においても,株券を交付しないでもそういう形で株式の所有権が移転するということ等,いろいろなことがそれに伴って出てくるかという感じがいたします。   それでは,次に,第4の「2 簡易組織再編等における株式買取請求」に移らせていただきたいと思います。事務当局から説明をお願いします。 ○髙木関係官 それでは,「2 簡易組織再編等における株式買取請求」について御説明いたします。パブリック・コメントでは,中間試案第2部第第4の3に関し,簡易組織再編の要件を満たす場合でも,株主に影響が生ずるおそれがあるなどの理由で反対する意見も寄せられましたが,賛成する意見が多数でした。そこで,中間試案にあるような見直しをすることを御提案するものです。 ○岩原部会長 この点について,いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。これは,余り御異論がなかったと思いますので,そのように扱わせていただきたいと思います。   それでは,続きまして,第4の「3 組織再編の条件の公告後における株式買取請求」に移らせていただきます。事務当局からの説明をお願いいたします。 ○髙木関係官 それでは,御説明いたします。パブリック・コメントでは,中間試案第2部第4の(後注)に関し,株式会社が組織再編の条件について公告をしたときは,当該公告後に株式を取得した反対株主は,株式買取請求権を有しないものとすべきかどうかについて,意見が分かれました。また,株式買取請求権を有しないものとすべきとする意見の中でも,当該公告時に既に株主であった者や,当該公告後に担保実行や組織再編により株式を取得した者については,株式買取請求権を有するものとすべきとの意見があるなど,どのような場合に反対株主の株式買取請求権を否定し,又は肯定すべきかについて,様々な意見がありました。また,仮に中間試案第2部第4の(後注)のような見直しをした場合には,株式買取請求権という権利の存否を巡る紛争の増加を招くことが懸念されます。他方で,濫用的な株式買取請求は,中間試案第2部第4の1から3までの見直しをすることによって,相当程度防ぐことができるとも考えられ,現時点では,更に中間試案第2部第4の(後注)に掲げたような明文の規定を設ける必要性は,必ずしも高くないと考えられます。そこで,この点については,見直しをしないことを御提案するものです。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。それでは,この点について,いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。特に御意見がないようでございましたら,部会資料20のような方向で進めさせていただきたいと存じます。   それでは,次に,「第5 組織再編等の差止請求」に移らせていただきたいと思います。事務当局からの説明をお願いいたします。 ○髙木関係官 それでは,「第5 組織再編等の差止請求」について御説明いたします。略式組織再編に加えて,それ以外の組織再編等について,差止請求に係る明文の規定を設けるかどうかについては,当部会において意見が分かれていたことから,中間試案第2部第5では,明文の規定を設けるものとするA案と,明文の規定は設けないものとするB案を掲げていました。パブリック・コメントでも,A案に賛成する意見とB案に賛成する意見に大きく分かれました。そこで,ここでは,仮に差止請求に係る明文規定を設けるものとする場合における具体的な要件について検討しております。パブリック・コメントでは,A案の(注1)についても,意見が分かれましたが,A案における差止事由を手続的な違法に限定すべきであるとの意見を含めると,A案の(注1)に掲げる事由を差止事由とすることに反対する趣旨の意見が多数でした。このような意見を踏まえ,本文①及び②について,どのように考えるか,検討する必要があると思われます。なお,本文③について,株式の併合のうち,単元株式数に併合の割合を乗じて得た数が整数となるものについては,株主に対する影響が小さいと考えられますので,差止めの対象から除くことが考えられます。また,パブリック・コメントにおいて,中間試案第2部第5のA案の(注2)に掲げるもののうち,事業譲渡等については,会社法第360条の規律で足りるとの意見があったことを踏まえ,本文③には,事業譲渡等を掲げておりません。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。それでは,第5について御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○三原幹事 非常に細かい質問なのですが,一番最後に書いてある,360条の規律で足りるという対象は,「事業譲渡等」とありまして,まず,事業譲渡については,現在の現行法で,360条で対応できるか,分析なりお考えがあるかどうかという確認が一つ,それから,この「等」というのは具体的に,何をお考えで「等」が付いているのかということ。この2点を教えていただければと思います。よろしくお願いします。 ○髙木関係官 まず,御質問の後段からお答えしますと,これは,「事業譲渡等」でワンワードでして,468条で用いられている「事業譲渡等」を指しています。   御質問の前段ですけれども,事業譲渡等の場合は,会社がその事業を譲り渡して自ら対価の交付を受ける,又は,事業を譲り受けて,その対価を会社財産の中から交付するということになりますので,会社に損害が生じないが株主には損害が生ずるという場面が想定されないと考えられますので,360条で対応することができるのではないかと考えております。 ○伊藤委員 まず,1のような規定を設けることには反対させていただきます。経済のグローバル化に伴い,組織再編においても一層迅速な経営判断が求められております。このような組織再編行為に個別の株主の関与を認める,企業再編の判断に不可欠なスピード感が損なわれる,このような制度が導入された場合,濫訴の可能性があるのではないかなと思います。組織再編の判断に萎縮的な効果をもたらすことは否定できないのではないかと思います。よろしくお願いします。 ○橋爪関係官 ①の要件の記述自体に特に反対という趣旨ではございませんが,この中間試案のパブリック・コメントの際にも,この要件に,いわゆる合併再編の対価の不当というものが含まれるのかどうかという点について,若干分かりにくいという意見があったこともありまして,パブリック・コメントにおいては,そういったことを法律の明文に書くことはできないものかといった指摘が,裁判所のほうから出ております。法律に書くことができるかどうかという問題は,また別途あろうかと思いますが,少なくともこの①の要件の解釈として,そういった対価の不当というものは,この①には含まれていないというのが事務当局の解釈だと思いますし,恐らくこの部会の皆様もそのような解釈でいらっしゃるということを,念のために確認させていただければと思います。 ○髙木関係官 中間試案の補足説明におきまして,中間試案第2部第5のA案の本文における「法令」の違反というところに,善管注意義務違反又は忠実義務違反は入らないという御説明をさせていただいています。部会資料20の第5の本文①に挙げている「法令」の違反に関しても,その整理は変わっておりません。 ○岩原部会長 他に御意見ございますでしょうか。他に特にないということですと,伊藤委員のような御意見はございましたが,それ以外の委員,幹事の方は,基本的には,部会資料20に書いてあるような方向でよいと理解させていただいてよろしゅうございましょうか。   それでは,そのように理解させていただきたいと思います。   次に,第6の「1 詐害的な会社分割における債権者の保護」に移らせていただきたいと思います。事務当局からの御説明をお願いいたします。 ○宮崎関係官 それでは,「1 詐害的な会社分割における債権者の保護」について御説明いたします。試案第2部第6の1のような見直しをすることについては,パブリック・コメントにおいて寄せられた意見の中では,賛成する意見が多数であったことから,本文は,当該見直しをすることを提案するものでございます。これに関して,パブリック・コメントにおいては,試案第2部第6の1①について,「承継した財産の価額を限度として」という承継会社等の責任の限度額を設けるべきではないとの意見が寄せられております。もっとも,詐害的な会社分割における承継会社等の残存債権者に対する責任について,限度額を設けないこととする根拠は,必ずしも明らかではありません。承継債権者及び会社分割の前から存在する承継会社等の債権者への利益の配慮の必要性や,いわゆる人的分割の場合において承継会社等が各別の催告を受けなかった残存債権者に対して負う責任の限度額及び民法上の詐害行為取消権との均衡を考慮すると,試案第2部第6の1①にあるとおり,承継会社等の残存債権者に対する責任は,「承継した財産の価額を限度」とすることが適切であると考えられます。なお,承継会社等が分割会社から財産だけでなく債務も承継した場合における,「承継した財産の価額」とは,当該財産の価額から当該債務の価額を差し引いた残額ではなく,当該財産自体の価額であると解することとなると考えられます。   以上に加えまして,試案では,第2部第6の2において,不法行為債権者の保護として,会社分割について異議を述べることができる不法行為債権者であって,分割会社に知れていないものは,分割会社と承継会社等の双方に対して債務の履行を請求することができるものとするということを掲げており,パブリック・コメントにおいて,これに賛成する意見が多数寄せられました。これについては,部会資料20では採り上げておりませんが,試案にあるような見直しをするということで,事務当局において詳細を詰めさせていただければと存じます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。詐害的な会社分割における債権者の保護に関する新しい規律を設けることにつきましては,パブリック・コメントにおきましても,賛成意見が多数であったと理解しております。何か御意見ございますでしょうか。 ○伊藤委員 まず,会社分割が濫用的に用いられている実例が見逃すことができないと思っております。ただ,事業承継や事業再生の場合には有効な手段であることも十分考えられます。事前に債務が承継されない債権者とのコミュニケーションをしっかり図る努力を行っているような健全な会社分割,こういうことにまで影響を及ぼさないように配慮すべきではないかと思います。裁判で問題になっておりますような濫用的な会社分割というのは,債務が承継されない債務者と十分なコミュニケーションを取っていないケースが多いと聞いております。真面目に企業再生を行おうとする経営者は,会社分割によって不利益を被るであろう債権者ときっちりコミュニケーションを取っている,この努力をしております。全国の商工会議所において,中小企業再生支援協議会を通じまして,中小企業の事業再生を支援する事業を私ども実施しております。このような社会的に認められましたプロセスを踏めば,試案のいうような直接請求はできない旨を法律上明らかにすべきではないかなと思います。中小企業にとっては,訴訟の対応自体が大変大きな負担であります。特に,事業再生局面におけます中小企業では,より深刻であると考えられます。中間試案第2部第6の1では,「承継されない債務の債権者を害することを知って」という規定がなされておりますけれども,この要件が広く解釈されることを懸念しております。中小企業が会社分割を用いて事業再生を図ろうとする場合,一部の債権者のみが合意しないことも考えられます。このような場合に,その一部の債権者がこの規定を用いて請求するような事態が生ずると,企業再生の流れに水を差すことになりかねないと思っております。よろしくお願いします。 ○鹿子木委員 この提案につきましては,前の議論のときにも申し上げましたとおり,私としては,賛成であります。問題は,その際にも申し上げましたけれども,例えば,破産手続が開始したときの破産管財人との権限の調整についてはどういうふうにお考えになるのかというところをお聞かせいただければと思います。 ○宮崎関係官 以前の部会でもありましたが,今の御質問は,破産管財人が破産管財人としての立場で同様の請求ができないかという御質問であると存じますが,事務当局といたしましては,この見直しによる請求権というものは,分割会社の責任財産を保全するための権利ではなく,残存債権者が有する請求権であることからいたしますと,破産管財人にこの請求権を認めるということは,困難ではないかと考えております。 ○鹿子木委員 この請求権の性質をどう整理をするかというところにも掛かってくるので,直ちにどうしたほうがいいというふうに申し上げるつもりはないのですが,仮に,分割会社について破産手続が開始して,管財人が,例えば,会社分割に否認の訴えを提起するなどで財産の回収を図るときに,債権者がこの制度に基づいて別個に請求をするとなると,二重の請求が実質的には起こってくることになりますので,そこの関係をどう調整するのか。この権限自体を管財人が行使できないというのは,それは一つの整理としてはそうだと思いますけれども,そこの調整をどうするのかという問題,それから,複数の債権者がこの制度に乗っかって双方請求したときに,最終的にどこでどう調整するのかといった問題もあろうかと思います。制度の組立て段階の問題ですので,直ちにここでお答えいただかなくても結構ですけれども,いずれにしても,そういった調整をどうするのかということを是非御検討いただきたいと思います。 ○坂本幹事 御指摘ありがとうございます。これによる請求と否認に基づく請求の両方がされる場合や,また,複数の債権者からの請求がされ得るという場合も当然あり得るだろうと思っております。その調整ということですが,競合していることがどの段階で分かるのかということになろうかと思います。例えば,債務名義が出た後に執行段階で分かるのか,口頭弁論終結前に分かるのかといった,いろいろなパターンがあり得て,それによって調整の仕方というのは,この責任が物的有限責任としていることとの関係で,変わってくるのだろうと思っております。この点は,法律で書く話ではないのではないかというところはございますけれども,整理の必要性があるということは理解しております。 ○杉村委員 経済界といたしましては,従来から,詐害的な会社分割を何とかしなければいけないという制度の趣旨は理解をしております。その上で,今回の部会資料20では,承継した財産の価額の考え方を補足説明の一番最後の辺りに書いていただいておりますけれども,例えば,このような考え方を取った場合に会社分割前から存在する承継会社側の債権者との利益のバランスはどう考えていくのかなど,更に検討する必要があるところがあるように思います。すなわち,承継した財産の価額ということですので,消極財産を差し引かない,積極財産部分を限度とするということだと思いますが,そうしたときに,承継会社側に元々いた債権者の利益がある意味損なわれるような部分もあるのではないか,そのバランス論についてはどのように考えるかといった問題がございます。 ○宮崎関係官 部会資料20で,「なお」のところで記載したことについて,若干その趣旨を御説明いたしますと,「財産の価額」というのが,どうして,承継した債務の価額を差し引いた価額ではないと考えることになるのかという点ですが,「財産」という用語からしても,当然,部会資料20にあるとおりになるのではないかというのがまずあると思います。また,その財産から債務を控除した額としてしまうと,残存債権者が承継会社等に請求できる額というのは,その分なくなってしまって,結局,この見直しの目的が達成できないということになってしまうのではないかというところからして,この「なお」以下のような記載をしたというところでございます。 ○内田関係官 御提案の趣旨は,宮崎関係官から御説明申し上げたとおりですが,さらに,杉村委員の御指摘は,承継会社に元々いた債権者についてはどうなのかということですが,新設分割の場合には,そのような債権者はいないわけですので,主に,吸収分割の場合を想定されているものと理解しております。吸収分割の場合を想定しますと,試案で申し上げると,第6の1の①の本文ただし書というのがございまして,吸収分割の場合について,吸収分割承継会社が,その分割の効力が生じたときにおいて,「残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは,この限りでない。」ということにしています。とすると,この請求権が認められるというのは,吸収分割承継会社が,詐害的な会社分割であることを知っている場合ということになるわけです。そういう場合には,承継会社側の債権者は,その認識があったにもかかわらず会社分割をやったのかということで,吸収分割承継会社の取締役等に任務懈怠責任を追及できる場面もあるのではないか思われ,それで一定の保護は図り得るという整理をしている次第でございます。 ○中原幹事 今更ながらで恐縮ですが,坂本幹事が物的有限責任というふうにおっしゃったのですけれども,その趣旨を,少々私は勘違いをしていたのかもしれないのですが,承継した財産の価額を限度とするということで,新設分割のときはいいのですけれども,吸収分割のような場合に,仮に,執行のようなことを考えたときには,詐害行為取消権のように,実際に,具体的に移転した財産に掛かっていくということだけを考えるわけではなくて,その価額の限度で他にも掛かっていけるという意味で,物的有限責任という表現を使われたという理解でよろしいですか。 ○坂本幹事 正におっしゃるとおりでございます。 ○藤田幹事 基本的に今の御提案で賛成ですけれども,中間試案の段階から少し意味が分からなかったところがありますので,教えていただければと思います。今回の新しい提案で書かれている部分ではないんですが,この残存債権者が請求できる期間です。中間試案の言葉を使いますと,「分割会社が①の会社分割をしたことを知った時から2年」,「会社分割の効力が生じた時から20年」とあります。このうち「①の会社分割をしたことを知った時」の意味ですが,「①の会社分割」というのは,詐害的な分割を指しますが,そうなると,詐害性についての認識が生じたときから2年なのか,それとも,詐害的の認識を問わず,とにかく会社分割があったということを知れば,そこから2年なのか,いずれの趣旨でしょうか。一般的な詐害行為取消権の考え方だと,詐害性の認識は必要なはずです。ここでは,それと違う考え方を採っているのか,つまり,会社分割の場合は,いろいろな,既に開示その他あるので,会社分割がなされたことさえ知れば何か内容は分かるだろうから,特に詐害性の認識は不要だとする趣旨なのか,それとも,やはり,普通の詐害行為のように,詐害性のある会社分割がなされたということを認識してから2年なのか,確認させてください。 ○宮崎関係官 ただいま藤田幹事がおっしゃったようなつもりで書いておりまして,要は,ただ会社分割があったことを知っただけで「知った時から」という趣旨ではなくて,詐害性について認識した時からという意味で,中間試案の②では,「①の会社分割」という表現にしております。 ○藤田幹事 ありがとうございました。必ずしもそう読まれていないようなこともあるように思いますので,念のために確認させていただきました。 ○三原幹事 最初に,伊藤委員からお話がありました,健全な会社分割については,対象から外すなり,何らかの対処をするべきであるということについて,これは,もしかしたら,伊藤委員に対する御質問をしているのかもしれませんが,具体的には,債権者と協議するというのは,法的な枠組みで引き直して考えると,債権者保護手続を残存債権者に対しても行っている場合には,それはこの制度の対象外にするという御提案としておっしゃっているのでしょうか。それから,反対しているわけでは決してなくて,良い会社分割というのがあるという倒産実務があると私も聞いておりまして,それは,どういう場合なのかというと,会社分割の中には,濫用的なものとそうではないものがあり,それを区分けしたほうがいいという意見もあるやに聞いております。伊藤委員が御認識の健全な会社分割なるものがどういうものか,立法事実として分かったほうがいいという議論としてお伺いしたいという純粋な質問でございまして,もし教えていただければ大変有り難いと思います。よろしくお願いします。 ○伊藤委員 良い会社分割と悪い会社分割と捉えていまして,悪い会社分割というのは,ただ単に債務を逃れるということを意味しております。複数の事業をやっている場合に,いい事業を継承して会社の生き残りをかけようと,当然悪い部分もあって,その悪い部分の債務を直接新会社に請求できるかできないかというところを問題にしているわけで,会社が存続することがやはりいいことなんだと,それは,経営者のタイプの中に二通りいまして,それを悪用してしまって,債務逃れですね,単純に言うと,その部分を言わせていただいているつもりでおります。そんな感じでよろしいでしょうか。 ○三原幹事 それは,債権者をきちんと巻き込んでやっている,だからいいということなのでしょうか。 ○伊藤委員 債権者ときちんとお話をするということですか。 ○三原幹事 そういう場合です。実務的には,債権者の全てというのは難しいと思いますが,ほぼ大きな債権者とは協議をしながらやるような場合で,実際に承諾を得たり,あるいは協議をしたりして承継させている場合があり,これに対して,現行制度は,そういう大きな債権者に対して何も通知しないでもできるわけですけれども,それを現行制度のままやっている場合,それは問題があるということなのでしょうか。 ○伊藤委員 これは悪い。全ての債権者に対してきちんと御説明をさせていただくと。 ○三原幹事 となると,前者のような場合については,これの除外規定として何か手当てをするべきでないかという御提案になるということなわけでしょうか。 ○伊藤委員 はい,おっしゃるとおりです。 ○三原幹事 分かりました。どういう場合をお考えなのかをお聞きしたかったということでございます。 ○岩原部会長 他に御意見,御指摘ございますでしょうか。よろしゅうございますか。   第6の1につきましては,ほぼほとんどの委員の方がこの制度のこのような形での導入に賛成していらっしゃると理解させていただきました。伊藤委員の御指摘の点等は,恐らく,伊藤委員もおっしゃいましたように,第6の1の要件,「害することを知って」という要件のところを誤解のないようにするということで,問題に対処していくということになるのではないかと思っております。ということで,第6の1につきましては,幾つかの解釈問題等もここで明らかにされましたし,大体これでよろしゅうございましょうか。   それでは,部会資料20に従って進めさせていただくということにさせていただきたいと思います。   それでは,最後に,第6の「2 その他の事項」に移らせていただきます。事務当局からの説明をお願いいたします。 ○宮崎関係官 それでは,「2 その他の事項」について御説明いたします。本文は,試案第2部第6の(後注)のような見直しをすることの当否を問うものでございます。試案第2部第6の(後注)のような見直しをすることについては,パブリック・コメントでは,このような見直しにより,株主が,組織再編等が企業価値に与える影響を知り得ることになるとの理由等から,賛成する意見もあったものの,反対する意見が多数でございました。反対する意見の理由としては,会社を取り巻く様々な利害関係人のうち従業員についてのみ,その意見等を開示する手続を設ける根拠が十分ではないことや,迅速な組織再編等の実現を困難にするおそれがあることなどが挙げられております。試案第2部第6の(後注)のような見直しをすることの当否については,これらの点も踏まえ,検討する必要があります。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。試案第2部第6の(後注)にある組織再編等の場合における従業員の意見等の開示について,いかがでございましょうか。 ○伊藤委員 先ほども申し上げましたとおり,組織再編においては,極めて迅速な経営判断を求められております。従業員の方の意見の集約には時間が掛かるため,このような規定を設けることは,非現実的なのではないかなと考えます。仮に従業員が反対しており組織再編が円滑に進まない場合には,経営者が従業員に対して十分な説明をまず行えばよく,このような規定を設ける必要はないと考えます。 ○川島委員 この項目は,私ども連合から,前委員が提起した内容ですが,この見直しをすることの有用性を踏まえて,引き続き御検討いただきたいというのが現時点での私の考えでございます。これまで,繰り返しこの審議会で発言をさせていただきましたので,かいつまんで申し上げますと,まず第一に,この審議会における会社法見直しのそもそもの趣旨,諮問の趣旨が,会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点から見直しをする必要があるというものでございました。私どもは,その一つの提案といたしまして,この組織再編あるいは事業譲渡に関して,従業員に説明をし,また,そこでの意見を開示するということを提案いたしました。確かに,パブコメでも,なぜ従業員についてのみなのかという意見がありましたが,我々としては,会社には幅広い利害関係者がある中で,この規律に関与しているのはなぜ専ら株主,経営者,債権者の三者のみなのかという問題意識を持っております。また,今回のパブコメで,私ども以外でも,この従業員の意見といったものが株主にとって企業価値に関する判断材料の一つになるという意見もあった次第です。   先ほど御指摘のありました,経営判断の足を引っ張り,迅速性について難点があるとおっしゃった点は,この意見表明についての期限を区切るなど,いたずらに期間を長くしないことで,回避する方法というのは考え得るのではないかというように考えております。   最後に,これまでこの中間試案の取りまとめに向けて,何度もこの点については御議論いただきました。また,このパブコメにおいても,賛成,反対,様々な意見が出されたところでもありますので,今後の進め方につきましては,これまでの議論経過を踏まえて,部会長,事務当局の皆さんに一定の方向性を出していただきまして,それについて従うといいますか,考えていきたいと思っております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。他に何か御意見等ございますでしょうか。   それでは,パブリック・コメント等からの多数意見としては,このような制度を特に設けるということに対する慎重論のほうが強かったかと存じます。その上で,今,連合の川島委員のような御意見もあったということでございまして,それを踏まえて今後進めさせていただきたいと思います。特にありますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,本日の部会は,以上をもって終了とさせていただきたいと思います。本日の部会の終了の前に,次回の部会の予定について,事務当局から説明をしていただきたいと思います。 ○坂本幹事 次回でございますけれども,4月18日水曜日午後1時半から,予定では午後5時30分まででございます。場所は,法務省20階第1会議室でございます。本日と場所が異なりますので,お間違えのないよう御注意願います。   次回は,企業統治の在り方に関する個別論点の御検討をお願いしたいと考えております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。それでは,法制審議会会社法制部会第18回会議を閉会いたします。長時間にわたり,御熱心な御審議を頂きまして,誠にありがとうございました。 -了-