法制審議会刑事法           (自動車運転に係る死傷事犯関係)部会           期日外ヒアリング(1日目) 議事録 第1 日 時  平成24年10月25日(木)自 午後2時00分                       至 午後4時56分 第2 場 所  東京地方検察庁会議室 第3 議 題  自動車運転による死傷事犯の罰則整備について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○上冨幹事 予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会刑事法(自動車運転に係る死傷事犯関係)部会における被害者団体からのヒアリングを開催したいと思います。 ○西田部会長 本日は御多用のところ多数の委員,幹事の皆様にお集まりいただき,ありがとうございました。前回の第1回部会で皆様にお諮りしましたとおり,本日と明日の2回にわたりまして,被害者団体の方から御意見や御要望を伺うことにしたいと思います。本日予定しております団体につきましては,お手元の資料のとおりでございます。時間の関係もございますので,1団体について15分以内ということでお願いしております。別途意見書,要望書等も出ており,文書という形でも委員,幹事の皆様には既に配布済みだと思いますので,それも参考にして被害者団体の方からの御意見や御要望を聞いていただきたいと思います。   その上で,15分の時間を過ぎましたら5分間,委員,幹事の皆様からの御質問の時間を設けたいと思います。今回の手続は被害者団体の御意見を伺うということでありますので,もし御質問なさる場合でも,その趣旨の範囲内で,要するに被害者団体の方の御意思や御要望の内容を確認するという範囲内で委員,幹事の方からの御質問もとどめていただけるようにお願いしたいと思います。なお,本日のヒアリングにつきましての質疑・応答の記録につきましても第1回会議と同様,逐語的な議事録を作成してこれをホームページで公表するということでよろしゅうございましょうか。もし,ヒアリングの過程で何らかの事情でこの部分はプライバシー等の観点から公表しないほうが妥当だと私が感じた場合にはまた個別に,会議終了後に御意見を伺うこともあるかもしれませんが,その点はお含みおきください。   それでは,ヒアリングを実施したいと存じます。   最初は,特定非営利活動法人KENTOと書きまして,ケントというNPO法人の方々に御来室願いたいと思います。 (「特定非営利活動法人 KENTO」の意見陳述者等入室) ○西田部会長 私は,部会長をしております西田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。   NPO法人KENTOの代表理事の児島早苗様と正会員の佐藤清志様でよろしゅうございますか。   本日は,御多忙のところお越しいただいてありがとうございます。当部会では法務大臣の諮問によりまして,昨今の自動車運転による死傷事犯の実情に鑑みまして,事案の実態に則した罰則の整備という諮問事項について調査審議しております。その調査審議をより充実したものとするために,本日部会の委員,幹事が被害者,あるいは御遺族の方から罰則の整備の在り方について,御意見を広くお伺いするという機会を設け,本日お越しいただいた次第でございます。あらかじめ事務局からお願いしていると思いますけれども,今日,6団体の方を予定しております関係上,時間的には15分ということで,その後,委員,幹事のほうからもし質問があれば5分程度質問をさせていただくということで進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。   では,どうぞ。 ○児島氏 NPO法人KENTO代表の児島と申します。今日は佐藤さんと2人でそれぞれ要望をお話しさせていただきたいと思います。まず,私のほうから要望書を読み上げさせていただきます。  法務大臣 滝実殿 危険運転致死傷罪見直しに関する要望書   本日は,交通事故犯罪に関する危険運転致死傷罪見直しのヒアリングに参加させていただきありがとうございます。私たちNPO法人KENTOは交通事故ゼロ社会を実現するために日々活動を続けています。今回,下記のとおり,意見を述べさせていただきますので,要望趣旨を御理解の上,見直しをよろしくお願いいたします。 要望事項  1.「準危険運転罪」創設でなく,「危険運転致死傷罪」の適用範囲拡大を要望   「自動車運転過失致死傷罪」,「危険運転致死傷罪」,「準危険運転罪」の三本立て法は,国民が戸惑う元であり,理解しやすいものとは決してならない。   世の中では,飲酒運転による福岡幼児3名死亡事故が起きてもなお全国で飲酒運転常態化の風潮がなくならず,膝元の福岡市でさえ繰り返されている現状は無念極まりない。   抜け穴的な法の存在は,人心をますます狡猾に至らしめ,国への信頼度を貶め,悪用を広めるばかりである。   社会に根強く蔓延する「交通事故だから仕方がない」「たかが交通事故」と,他人事のような言葉に表されている交通事故に対する根本的な思い違いを今こそ是正すべく,「危険運転致死傷罪」適用範囲拡大をし,全ドライバー及び国民が襟を正す厳罰化を,国は法をもって明示していただきたい。  <適用を求める悪質運転行為>   ①無免許運転   ②無保険運転(自賠責保険)   ③ひき逃げ   ④飲酒運転   ⑤スピード違反運転   ⑥過労運転   ⑦てんかん等持病無申告運転   ⑧わき見運転   ⑨居眠り運転  2.文言の明確化を要望   現行法文言中に,「殊更に……」,や「進行を制御することが困難な高速度……」等の明瞭でない言葉が使用され,適用・不適用時に,どのような解釈もあり得ることが判明し,社会問題化している。この度の見直しに際し,国民が理解・納得できるよう具体的・平易な文言使用をしていただきたい。  3.飲酒・速度の明確な数値化を要望   ①飲酒運転 0.15mm以上に適用   ②スピード違反運転 通学路 時速40キロ以上に適用             生活道 時速50キロ以上に適用             高速道 時速120キロ以上に適用  4.万が一の政府交代時も,来年度通常国会に法案提出を固く要望  5.刑事裁判での厳格な審査と適切な刑事罰の適用を要望   裁判所内の量刑基準を見直していただきたい。   刑法の条文内容(刑罰)が厳しくなっても,現状の刑事裁判での判決内容は非常に甘い。法廷では,「任意保険に加入している」,「本人が反省している」等と裁判官の口からいまだもって常套句のごとく語られ,ほとんどが執行猶予付き判決となっている。この刑の甘さは,交通事故に関して特に顕著である。検察の求刑とおりの判決が出るように裁判所内の基準を見直していただきたい。国民感情とかい離のない量刑を下すことが,事故抑止に反映こそすれ,国民が法を侮る要因とはならない。  6.法制審議会に遺族代表の参加を要望   法制審議会に,交通事故遺族1名を加えることを要望。決して専門家ではないが,一般国民の一人であり,遺族といえどもほかの誰よりも事故抑止を願い,冷静に考え続けている立場にある。国は,参加させることに「不可能」理由を挙げるのではなく,すぐにでもできることだと思考切換えをし,参加受入れ対応を進めていただきたい。  7.対処法の繰り返しでなく,スウェーデン「ビジョン・ゼロ」に見る抜本的な交通安全施策の取り入れを要望   危険運転致死傷罪見直しに直接は関しませんけれども,述べさせていただきたいと思います。   厳罰化以降,事故抑止効果が顕著に高まったことが下記グラフからも明らかに見てとれる。   図表1,交通事故発生件数・死者数・負傷者数の推移   都度,都度の迅速な対策は重要であり,国民の関心が高まるとともに,意識に着実な変化が伴う。また個々の対策の積み重ねの延長線上では,時間の経過や時代の流れに伴い,見直しと抜本的な対策が不可欠となる。文明の進化に反し,様々な文明利器による日常的便利さの享受が,人間の運動能力・肉体能力を衰退させつつある。集中力・持続力・反射力が要求される自動車運転にも,衰退の影響は顕著である。   このような実情を踏まえ,交通事故抑止のために,スウェーデンが実施する施策のごとく,道路交通安全を人間・車・道路・テクノロジー等を総合的に捉え,道路交通システムとして組み直してみること,また長期的目標を同国のビジョン・ゼロ「長期的な目標は,交通システムによって,死亡したり,重傷を負う人をなくす,ゼロにする」という壮大な目標においていくことが,今後求められてよいのではないか。   同国がシステム化の目的で実施した,「交通事故のうち死亡・重傷事故については,全例徹底的に調査を行い,どうすれば防げたかを分析,類型化した」という事実は,安全施策において今後の重要・不可欠な課題と言える   下記に,スウェーデンがビジョン・ゼロを目指し実施する11の重点対策項目及び国土交通省技術政策総合研究所が平成16年から20年の期間に実施した調査のうち,「スウェーデンにおける交通安全施策の動向に関する調査」を付記する。   (表6)交通安全目標達成のための11重点項目    1.特に危険な道路には,特別な安全対策を    2.都市部の道路安全をより改善する    3.道路使用者の責任を強調する    4.自転車にとって,もっと安全な状況を作る    5.公共交通の質を保証する    6.スノータイヤの装着義務化    7.スウェーデンのテクノロジーを活用する    8.道路交通システムの計画者により大きな責任を負わせる    9.交通違反の取扱いを再検討する    10.ボランティア組織の役割を活用する    11.新しい道路への投資を見直し,別の方法を採用する   国土技術政策総合研究所が行った,交通事故の削減に関する方向性調査。皆様,この機会を逃して,このビジョン・ゼロについてあまり目にされることもないと思いますので,読ませていただきたいと思います。お聞きください。  [研究目的及び経緯]   日本における交通事故者数は2007年には54年ぶりに5,000人台まで減少するなど近年減少傾向にあるとはいえ,いまだに多くの貴い命が犠牲となっており,負傷者数は9年連続して,100万人を超えているなど,交通事故を取り巻く状況は依然として厳しいと言える。   ここで,日本の交通事故発生状況を諸外国と比較すると,スウェーデンは図-1に示すように億台キロ当たり交通事故者数が日本と比較して低く,スウェーデンにおける交通安全の取組が今後の日本の交通安全施策の参考となることが期待される。   そこで本研究では,今後の日本における交通安全施策の方向性を検討する上での基礎資料とすることを目的に,スウェーデンにおいて実施されている交通安全施策について調査した。  [研究内容]   「第5回日本スウェーデン道路科学技術に関するワークショップ」等を通じて,スウェーデンにおいて実施されている交通安全施策(「ビジョン・ゼロ」等)に関する情報を収集・整理した。得られた情報を以下に示す。  [研究成果]  (1)ビジョン・ゼロの概要   スウェーデンでは,1997年より「ビジョン・ゼロ」と呼ばれる交通安全施策を実施している。長期的な目標は,「交通事故における死者・重傷者ゼロ」であり,この点で日本の交通安全における長期的目標(交通事故ゼロ)と異なっている。「ビジョン・ゼロ」では,目標達成のための交通事故削減対策として,例えば速度抑制効果のあるラウンドアバウト(詳細は(2)に示す。)の設置や,ドライバーに車両速度を超過させないためのスピードカメラの設置(詳細は(3)に示す。)等,特に車両の速度を抑制させる対策に積極的に取り組んでいる。  (2)ラウンドアバウトの設置   ラウンドアバウトは図-2に示す道路交差点の一種で,信号機のかわりに中央島を設け,車両は島の周りを右側通行の場合反時計回りに周回する。優先権は既に周回している車両に与えられている(還道優先)。構造上,中央にある島が直進を妨げているので車両は減速せざるを得ないため,信号交差点に比べて,交通事故死者・重傷者の発生リスクが小さい。側面衝突事故が発生するため事故件数そのものの抑止は困難であるものの,死者・重傷者をなくすという観点から,スウェーデンではラウンドアバウトの設置が積極的に進められている。   VTI(スウェーデン道路運輸研究所)の研究によると,ラウンドアバウトの設置前後で,歩行者・自転車の死亡事故のリスクが55%低減し,重傷事故のリスクについては47%低減したという効果が得られている。  (3)スピードカメラの設置   スウェーデンでは,車両速度抑制策の一つとして,図-3に示すスピードカメラの設置を行っている。これは,スピード違反者を捕まえることよりも,カメラを多く設置し,かつそれを周知することによりスピード違反者を減らすことを主目的としている。したがって,この点で考え方の違いが見られる。   すみません。以上にさせていただきます。   このビジョン・ゼロについては,私たちKENTOが自費で作成し,全国の交通事故被害者,当事者,支援センターさん,いろいろな方々,法律関係者に無料で配布している冊子が2冊あり,この中でも取り上げられています。置いていきますので,どうぞ御参考にしてください。   それでは,佐藤から意見を述べさせていただきます。 ○佐藤氏 時間が余りないので手短にお話しさせていただきます。私の方としては,悪質運転行為の中での3番のひき逃げについて特化して皆さんに御意見をさせていただきます。危険運転致死傷罪ができて,その後,飲酒の発覚を恐れる,あるいは無免許ということから逃れるために,ひき逃げをしてしまうということが社会問題になっていて,それが危険運転の対象にならないということがよくニュースなどでも述べられます。そういう意味では,第1回のときの配布された資料の中で危険運転とあるいは自動車運転との違いによって公判請求されたか,略式になったか,そういったところを見ていただけると,自動車運転過失の場合は,致死に値したものに対しても6割以上が公判請求されないような状況にあります。このひき逃げというのは正にそこの部類に当たるものです。   そして,皆さんに,今日になってお配りさせていただいた資料の中に,グラフがあるんですけれども,これは交通安全環境研究所の研究員の方から頂いた資料ですけれども,昭和45年頃,1万6,000人の死者が出た,そのときに交通戦争という言葉が叫ばれました。それから,今,4,000人台にまで下がり,3分の1まで,死者に関しては減ってきておりますけれども,その中の状態別分類からすると歩行者,自転車という交通弱者の死亡比率が非常に高いのが我が国に特化した問題です。そして,この交通弱者の被害というところがひき逃げというところに直接,特有の問題になってくるところであります。自動車同士の被害であれば,そういったことは余りないのかもしれませんけれど,人対車という場合には,車のほうには余り損傷がないのでそのまま逃げてしまう事案があります。   悪質行為,卑劣,その場で我が身のことばかりを考えて,保身に迫り,被害者のことを考えないで逃げていく,このひき逃げの行為が刑法犯の枠に入らない,道路交通法違反の中で裁量されてしまうことにより,非常に軽微というか低い段階での判断にしかされていません。   この資料を見ていただけるとその1万6,000人が出た1970年の頃と今2010年のところまでの資料ですけれども,この歩行者,車両,二輪車,自転車,この被害の比率を見ていただけると,全く今と昭和45年,第1次交通戦争の頃の比率とが同じような状況になっているのです。現在は全体の死者が減ってはいますけれども,こういう形態,悲劇の下という面では,第1次交通戦争の頃と同じような状態で,交通弱者が危険にさらされている状態なのです。こういったところも踏まえて,危険運転の対象の中に,このひき逃げというものを,また,このひき逃げというものが,てんかんなどでの不申告問題ですとか,無免許の問題,そういったところも含めた問題で発生しているということも鑑みていただき,ひき逃げ問題に関しては,道路交通法の中ではなくて,刑法の中でしっかりと国民一人一人が不道徳性を認識できるような犯罪として扱われていただくことを強く願っています。 ○西田部会長 御趣旨としては,要望書1ページ,要望事項1,準危険運転罪ではなく危険運転致死傷罪の適用範囲拡大を要望すると。次のページにあります①から⑨まで,特に佐藤さんの御意見では,③のひき逃げについて道交法ではなく,刑法の中で明記してほしいという御趣旨だと伺いましたが,よろしゅうございましょうか。 ○佐藤氏 刑法で適用されることもそうなのですけれども,現行法においてもそれに匹敵するほどの公判での量刑が付くことを目指すことが大事だと思います。 ○西田部会長 委員,幹事の皆様から御質問はございますでしょうか。   よろしいですか。   では,本日はどうもありがとうございました。   御意見を踏まえて検討させていただきます。 (「特定非営利活動法人 KENTO」の意見陳述者等退室) ○西田部会長 次に,TAV交通死被害者の会の方,お願いしたいと思います。 (「TAV交通死被害者の会」の意見陳述者等入室) ○西田部会長 本日は,わざわざお越しいただいてありがとうございます。私は,本部会の部会長を務めております西田と申します。先般,法務大臣からの諮問によりまして,法制審議会では,本部会を設置いたしまして,昨今の自動車運転による死傷事犯の実情に鑑み,これに適正に対処するための罰則の整備という諮問事項について調査審議しております。本日は,被害者団体の方においでいただきまして,広く御意見を聞かせていただくという場にしたいと思ってお越しいただいたわけでございます。本日は6団体の方を予定しておりますので,時間の関係もございますので,15分で御意見,御要望を述べていただき,その後,今日出席しております委員,幹事から御質問があれば質問をさせていただきたいと思います。   TAV交通死被害者の会,代表の西浦義朗様とノイエンドルフ眞紀様ということでよろしゅうございますか。 ○西浦氏 本日は,被害者遺族団体へのヒアリングの機会を頂き,誠にありがとうございます。私たちTAV交通死被害者の会というのは現在116家庭の会員が属し,大阪事務所を本拠に活動を行っており,発足以来,交通犯罪によって人生を奪われた遺族にて,被害者がゼロになることを目的として活動をやっております。被害者遺族の声及び世論の高まりで危険運転致死傷罪,その後に自動車運転過失致死傷罪が新設されましたが,その後も,悲惨な交通事件というのは後が絶っておりません。再び繰り返されているというのが現状ではないかと思っています。   今回,この罰則の整備について議論が広められたという背景には,近年になされた交通刑法改正が遺族及び世論による危険な運転行為に対して,厳罰化要求を満たしていないばかりか,法理論的にも様々な問題が提起されており,さらには法実務においても危険運転致死傷罪の本格的な限界が露呈しているという実情があると考えております。今回,この自動車運転による交通死傷犯に対する罰則の全体像についての包括な議論がなされ,交通犯罪の抑止につながるような法改正で是非あってほしいなと期待をしております。   私たちTAVの会として,会員の声が一番大きく出たというところで,まず自動車運転過失致死傷罪,それと危険運転致死傷罪,それの一本化をしていただきたいということが第一番に挙がりました。自動車運転によって被害者を死傷させた事件の刑罰の在り方については,危険運転致死傷罪と自動車運転過失死傷罪になりますが,これをあえて自動車運転致死傷罪という形で一本化していただきたいということをまず柱として改正をお願いしたいと思っています。   その中に過失致死傷罪,過失という言葉,これが我々遺族にとってはどうしてもなじめない言葉であります。一般的に言えば,当然過失という部分で,うっかりミスという交通事故だからというイメージがあるから,いい加減な運転というか,加害者の運転によって人が死傷する事故が連発するのではないか。それによって罪名から一本化を行い,過失をなくすことでドライバーの交通犯罪に対する意識が高まることを私たちは期待したいと考えております。   そして,新設されるべき自動車運転致死傷罪には従来の危険運転致死傷罪,準故意犯も含んでいるという部分で,是非この過失という言葉を取り除いていただきたいな,というのが私たちの思いでございます。   実質的な危険性を有する運転行為というのは,危険運転致死傷罪として類型化された行為だけではないと思います。運転行為が実質的にどれだけ悪質・危険であっても結果がどれだけ重大であっても,危険運転致死傷罪の構成要件を満たさないと判断された事件については現行法上自動車運転過失致死傷罪が適用されております。この自動車運転過失致死傷罪,危険運転致死傷罪の上限の差異も大変大きく,交通刑法の構造の根本的な更なる見直しを考えて検討していただきたいなと思っております。   ただし,この一本化に関しては,いろいろな議論が飛び交うと思われます。現行,多発する重大事故を防ぐために早急に自動車運転過失致死傷罪,それと危険運転致死傷罪の整備を一本化なされるまでには対処を早急にしていただきたいということで,個別に書かせていただきました。   危険運転致死傷罪の改正について,まず現状と問題点ということで,施行以来年々起訴件数が下がり続けているという現状があります。それから,危険運転致死傷罪の立件,それから改正を求める遺族の署名活動が,活発化しているというのが現状であると思います。それから,施行以来20年という最高刑もありますけれども,ほとんどが5年以下という判例になり,バラツキが多いかなと私たちは見ております。社会通念上,許容されるその範囲程度を越えて社会的相当性を欠く,無謀かつ危険な運転行為は危険運転致死傷罪で罰せられるという国民の認識と法実務がかい離していると言わざるを得ないのかなと思います。現状のままでは日本の国民社会の維持が難しく,早期の法改正を求めたいと思います。   まず,運用改善ですが,法改正,整備が行われる期間,是非この危険運転致死傷罪の制定目的を踏まえて,現行法の運用の改善を図っていただきたい。警察,検察による捜査,徹底捜査に基づく積極的な立件姿勢,それから危険運転致死傷罪での起訴件数を増加するということで判例を増やしていただきたい。   それから,危険運転の認識を国民目線で感じる構成要件での改正を願います。正常な運転が困難な状態,その進行を制御することが困難な高速度,及びその進行を制御する技能という行為や状況,殊更評価的要素を付加した部分。これが私たちにはどうしても理解しにくく,具体的な構成要件を決めていただきたいという思いが現状であります。   会員116家庭からの意見,これが皆さんに資料が配布されていると思うんですけれども,危険運転の項目として挙げさせていただきました。飲酒呼気の数値,これを0.25以上と明記。それから,覚せい剤,脱法ドラッグ薬物使用による運転,過労睡眠不足による居眠り運転,無免許運転,無車検運転,警察官の停止命令を無視して逃亡した運転,虚偽申告による運転免許取得による運転,医師からの運転免許勧告を無視し,運転に必要な処方薬を服用しなかった運転,携帯電話等,通信機器を使用しながらの運転,速度超過運転,速度超過運転に関しては,道路の状況,それから高速であるかとか,いろいろな道路形態があるかと思うんですけれども,そこにはあえて,例えば規定速度の2倍とか3倍とか,そういう明記はしませんでしたけれども,先日ありました旭川の事件でも制限速度30キロを90キロで走った。これはどう考えても我々にとっては危険運転であり,決して自動車運転の過失ではないと思っております。やはり要件の具体性をもう少しはっきりと分かるようにしていただきたいというのが私たちの思いでございます。   それから,もう一つ,危険運転致死傷罪が無免許やひき逃げ,速度超過など,全て悪質で危険な運転行為に適用されるようにこの類型の見直しをされることを私たちは思っております。危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪の法改正については以上,御検討をいただきたいと思っております。   続いて,ノイエンドルフ眞紀の方から,報告をさせていただきたいと思います。 ○ノイエンドルフ眞紀氏 本日は,聴取の機会を頂き,どうもありがとうございました。先ほど,西浦の方から申し上げましたように,会員の中で一番多い意見は危険運転と自動車運転過失致死傷を一つにしてほしいという意見なんですけれども,その前の段階というか,時間が掛かる議論の間の段階としてはどうしておくべきか。その次に書かせていただいておりますが,自動車運転過失致死傷罪の改正として,法定刑の上限の大幅な引上げ,その理由として,自動車運転過失致死傷罪の実質的危険性について危険運転致死傷罪が適用されるような事件と実質的危険性が変わらないというような事件が今まで実際に裁判で判決が出されている以外にも報道がなされているような事件でもたくさんあるように思われます。法定刑上限を大幅に懲役15年まで上げていただきたい。このような意見も多数出ていますので,今回,TAVからの要望とさせていただきたいと思います。   また,次に自動車運転過失致死傷罪のうち,過失致死につきましては,実際に加害者が起訴されても大半に執行猶予が付く,あるいは罰金刑になるという現状が,交通安全法規軽視の要因の一つになっているのではないか。意味としては立法及び法実務が人を死亡させるような運転行為は許されないという姿勢を示していないのではないか。あるいは,加害者にとって執行猶予が付いたり,罰金刑では人生が激変するようなこともないので,また同じようないい加減な運転で人を死亡させるような事件を起こすというようなことにつながるのではないか,という意見があります。致死罪については自動車運転過失であっても,罰金刑の廃止を求めたいというような意見も多くあります。   次に,裁判員裁判対象の事件の見直しもお願いしたいと思うのですけれども,自動車運転致死については,やはり結果が死亡という重大な事件であることから,判決に市民感覚を反映させるべく,全て裁判員裁判の対象とするという可能性がないかということを御検討いただきたいと思います。   次に,少年事件の処分という言葉が適切かどうか分からないんですけれども,車の運転,自動二輪に関しては満16歳になったら免許が取得できる年齢になっていますので,自動車運転によって被害者を死傷させたような事件で,罪を犯した満16歳以上の少年は原則として検察官に送致するというような少年法の改正ができないかということについても見直しを御検討いただき,同時に16歳ということは義務教育を終了したという年齢になっていますので,義務教育が終了するまでに自動車運転にはどのような法的な責任,特に刑事責任が伴うのかということについて,例えば私が中学を卒業するまでにこのようなことについて学んだ記憶は全くないので,このような法教育を徹底するとともに,16歳からは免許を持たずに人を死傷させるような事件を起こしたら大人と同じような裁判を受けなければいけない,というような制度にしていただきたいというのがTAVからの意見です。   その他,直接,刑事法には関係ないのかもしれないんですけれども,その他の法整備として出ました意見が医師からの運転免許停止勧告制度とでもいうのでしょうか。不正な運転免許取得,あるいは運転すべきではない者による運転の継続ができないように医師からの情報を何らかの形で運転免許停止制度に反映させるような制度ができないか。この点について御検討いただきたいと思います。   また,私たちの願いというのは,本当に死傷事件というのが一つでも減ることなので,それを物理的に防止したり,抑止したりするシステムを法的に義務化して,メーカーに対しても,早期に導入していくよう,例えばエンジンのスタート前に,有効な運転免許が認識できなければ車がスタートしないとか,ドライブレコーダーを付けていて,証拠が残るんだから,もっと安全運転をしなければいけないとか。アルコールインターロックで飲んでいたらエンジンがかからないとか。刑罰を重くする前の段階で,これを法制化しておいてくれたらと思っている遺族はたくさんいます。これについても早期に法的義務化を検討していただければと思います。   この要望書の最後に書かせていただきましたのが,運転免許の停止,取消の刑事罰化,あるいは再取得要件の厳罰化ということで,運転行為によって人を死傷させた事件の刑事裁判で有罪を受けていても,現在のところ運転免許を取り消すとか,停止するというのは,それとは独立して行政処分としてなされており,実際に私の母が亡くなった事件もそうだったんですけれども,刑事裁判で有罪になって執行猶予が4年付いたんですけれども,なぜか行政処分の免許取消は,公聴会の結果,免許停止に軽減されて,刑事裁判が始まった時点で,もうトラックの運転手の仕事をしていたんです。有罪になって,執行猶予が4年付いて,私はせめてその4年の間だけでも車の運転はやめてほしいと思いましたが,申し立てる先はどこにもありませんし,刑事裁判の結果と行政処分の結果は全く何も関係ないという制度が分かりましたので,このような制度は再犯防止する面に加えて,執行猶予を付けて社会内での更生を期待する間に,人を死傷させているにもかかわらず安全運転をしながら更生してくださいというような制度はおかしいと思います。このような点についても検討していただきたいと思います。   また,行政処分で例えば飲酒運転の場合,どのようなプログラムを受けるかというのが詳しくは分からないんですけれども,例えば飲酒運転で人を死傷させた場合に,このようなプログラムをきちんと受けて,専門家があなたはもう一度運転してもいいというような判断を下さない限り,もう一度運転することは許さないというような判決を刑事裁判で出せるような再取得要件の厳格化ということが,刑事罰としてできないかどうか,この点について,御検討いただければと思います。 ○西田部会長 どうもありがとうございました。御意見としては,大きく分けると第1が,この過失という文言が法文上あることに対する御批判で,将来的に危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪と一本化して,自動車運転致死傷罪という形で一本化する。過失という文言をなくしてほしいということが第1点。その改正に当たっては,要望書の3ページの3にあるような,酒気帯びの場合の0.25以上の飲酒運転等々,これらを危険運転の中に織り込む。そういう改正に至る前になすべきこととして,現在の自動車運転過失致死傷罪の法定刑の引上げ,あるいは致死罪についての罰金刑の廃止。それから,裁判員裁判の対象とすること。あるいは少年法の改正。それから,さらに運転免許との関係で行政罰との連動,あるいは刑事罰の中にそういうものを取り込むべきだという御提言。非常に具体的で,かつ細かく,いろいろな視点からの御意見で参考になりました。   委員,幹事の皆様から御質問はございますでしょうか。   本日はどうもありがとうございました。 (「TAV交通死被害者の会」の意見陳述者等退室) ○西田部会長 では,続いて北海道交通事故被害者の会,お入りいただいて。 (「北海道交通事故被害者の会」の意見陳述者等入室) ○西田部会長 北海道交通事故被害者の会,代表の前田敏章様でいらっしゃいますか。本日は,御遠路のところわざわざおいでいただいてありがとうございました。今日の会合は法制審議会の刑事法部会におきまして,法務大臣からの諮問に基づいて,昨今の自動車運転による死傷事犯に対する罰則の整備という調査審議に先立ちまして,被害者団体の方からの御意見を伺い,これを部会,あるいは法制審議会における議論の材料とするため,広く御意見を聞くという趣旨のものでございます。時間の関係もございますので,15分程度,御意見を述べていただいて,委員,幹事のほうから御質問があれば5分程度御質問をさせていただくということで進めたいと思います。 ○前田氏 北海道交通事故被害者の会の代表を務めております前田と申します。私は,17年前のちょうどこの日,当時高校2年生の長女を交通犯罪で奪われました。長女は学校帰りの歩行中,前方不注視の運転者によって,後ろからはねられ即死させられました。正に通り魔殺人的被害にあったのです。しかし,加害者は執行猶予の判決でした。裁判長は,脇見運転を「往々にあること」である,こういうふうに述べて,軽い刑の「理由」としました。以来,私は同じ思いの仲間と共に,「犠牲を無にしない」,「被害者の視点が社会正義につながる」,その一念で活動を続けております。   お手元に,「いのちのパネルとは?」という冊子をお配りしましたが,あってはならない理不尽な被害死,あるいはけがをされた方々からの「繰り返すな」という魂の叫びを受け止めていただきたい。このように思います。   当会の活動概要につきましては,追加でお配りしました会報39号,それから資料を御覧いただきたいと思います。   私たちは13年前の結成以来,互いの支援・交流と合わせて,犠牲を無にせず,交通死傷被害ゼロの社会を創るための活動をその中心として位置付けています。そして,「こうした措置が採られていれば,私たちのような犠牲はなかった」という切実な思いを要望書としてまとめ,毎年内閣府,法務省,警察庁など関係機関に提出し続けております。その重要項目の一つが,今回の刑罰適正化です。その要点は,交通犯罪を特別の犯罪類型として厳罰化することであり,危険運転致死傷罪の適用要件の緩和であり,自動車運転過失致死傷罪の最高・最低刑の引上げであり,そして交通犯罪が軽く扱われる一因でもある刑法211条2項の「刑の裁量的免除」規定の廃止です。   この要望内容というのは,2001年の刑法改正,このときに危険運転致死傷罪ができたわけですが,これに向けて北海道でも署名活動を行った経緯も踏まえて作られたものです。資料の新聞の切り抜きに示しましたけれども,危険運転致死傷罪のおよそ実態に合わない適用基準の問題は,その施行直後より当会の被害遺族などから幾度も,「この事案に適用されないのであれば法を定めた意味がない。法は飾りなのか」と指摘されておりました。新聞の切り抜きに,今年に入って,兵庫と京都の事件への危険運転致死傷罪適用を求める署名を1月は厳寒期の札幌で支援し,行う,そういう遺族の記事があります。この会員の御遺族というのは,2001年の刑法改正に向けての署名を数千筆集めた,そういう方でした。現在に引き継いでいるということです。   そして,記事コピーに示しましたけれども,今年6月に北海道旭川市で起きた事件です。パトカーに追われ,制限速度を70キロ近く超えた危険速度の車に衝突させられ,母親を失った遺族の息子さんは,判決前の今も「これがなぜに危険運転にならないのか」という悲痛な声を上げているわけです。私たちは,2007年の自動車運転過失致死傷罪創設に当たっても,当時の法制審議会の場で,業務上過失致死傷罪からの分離については大いに評価しながらも,しかしその最高刑が7年にとどまることの問題について強く意見しました。同時に,危険運転致死傷罪の矛盾改正についても主張したところです。   このように,十数年前からの,全国の被害者遺族とつながった積年の思いを持って今回臨んでおります。大いに期待をして出席をしております。そのことをまず御理解いただきたいと思います。   以下,部会長宛てに提出しました要望意見書に基づいて,申し述べたいと思います。   要望意見の1は,今回の刑罰改正を「被害ゼロ」のための改正と位置付けてもらいたいということです。被害者と国民,共通の願いは人間が作った本来道具であるべき車が凶器ともなっている事態を改めてほしいということです。2010年の身体犯被害者総数は93万人。そのうち自動車運転による死傷被害が96%を占める。このような異常事態は即刻改善しなければなりません。憲法13条には,国民の生命について,最大限の尊重がうたわれております。法治国家として見過ごすことなく,立法措置を採って,車による被害者も加害者も生まない社会にしていただきたいのです。   「法益」とは,法によって保護される社会生活上の利益のことだと思います。社会が守るべき法益に人命以上のものがあるはずがありません。不可逆的な死傷という重大結果を招く交通犯罪,これを抑止するために,交通犯罪は特別の犯罪類型として体系化し,過失であっても,結果の重大性から重く処罰し,社会としてあってはならない,決して許されないという社会規範として示すべきです。今回の刑罰見直しが「被害ゼロ」の道に確実につながるものになることを心から願っております。   要望意見の2は,危険運転致死傷罪の適用要件緩和と類型の拡大です。その一つは,条文にある「正常な運転が困難な状態」「その進行を制御することが困難な高速度」及び「その進行を制御する技能」という,行為や状態に殊更評価的要素を付加し,適用のハードルを高くしている部分を改正していただきたい。その構成要件を緩和していただきたいということです。   同様に,人又は通行を「妨害する目的」及び信号を「殊更に無視」し,という主観的要素の目的は適用要件を過度に狭めておりますので除いていただきたい。二つは,無免許運転やひき逃げ,制限速度超過,さらにてんかんクレーン車運転事件に見られる投薬を怠ったケースなど,悪質で危険な行為全てに適用されるように,その類型の見直しを適切に行っていただきたい。その際に,「逃げたほうが得」という矛盾が生じないように,所要の改正をお願いしたい。これが危険運転致死傷罪の改正要望です。   その理由です。現行の危険運転致死傷罪の,施行当初から指摘されていた矛盾は幾つもあります。例えば,「アルコール又は薬物の影響で正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ」とあり,「正常な運転が困難な状態」を「認識」していることを故意要件としていますが,酩酊状態が深くなればなるほど,その「認識」が難しくなる,そういう指摘が当初から専門家からなされておりました。   不要な高いハードルというのは,「目的」や「殊更に」という内心的要素の立証を求めた部分にもあります。そもそも「通行中の人又は車に著しく接近する行為」や信号無視という行為は,それ自体客観的に危険な行為なのですから,目的等の主観的要素がなくとも,処罰に値すると考えるべきです。   こうした矛盾や問題が,施行後11年を経た今も改められていない結果,平成22年の同法致死罪の検挙人員は31人と,自動車運転過失致死等の4,002人に対して,130分の1に過ぎず,そのことから全国から改正を求める声が広がっているのです。   私は,ここにある根本問題というのは,人命軽視の車優先社会の問題であると考えています。そして,それを補完するために,交通事故被害を「仕方のない被害」と軽視し,「結果の責任」ではなくて,根拠のない「意思責任」を問うという,近代刑法の誤りが反映しての現実だと思っています。   京都府亀岡市の惨事を引き起こした無免許運転についても,「結果的に運転を制御する技能があれば危険運転致死傷罪に該当しない」という無免許運転の悪質性に,矛盾した認定がなされないよう,改正が必要だと思います。てんかん発作の薬の服用を怠ったケースなど,全ての事案の悪質性・危険性が適正に裁かれるように類型を拡大していただきたい。   救護義務違反行為は人の生命に対して及ぼす危険性が大きく,また自己の犯罪行為の証拠隠滅という卑劣な行為でもあり,重罪として処罰する根拠が十分にあります。法益に照らして,逃げたほうが得という意識をみじんも持たせない,そういう法整備をしていただきたいと思います。   大きな要望意見の3は,自動車運転過失致死傷罪の見直しです。3項目あります。一つは,交通犯罪抑止の法益から,そして危険運転致死傷罪の20年との隙間を埋めるために,致死罪の上限を10年以上に大幅に引き上げていただきたい。二つは,致死の場合の最低刑を罰金刑ではなく有期刑に引き上げていただきたい。三つ目は,刑の裁量的免除規定を廃止することです。   理由です。自動車運転が危険なものであるという社会的共通認識があるというべきですから,過失犯であってもその結果の重大性に見合う処罰を科すことが交通犯罪抑止のために不可欠だと思います。近年,危険運転致死傷罪新設や飲酒運転の厳罰化などにより,交通死者数は顕著な減少がありました。しかし,その絶対数は依然深刻です。そして,事故件数と負傷者数,これに注目してみますと,ようやく減少傾向に入ったとはいえ,その数は膨大なものがあります。昭和42年以来の最少であった昭和52年の被害数に比べますと,事故件数が1.50倍で,負傷者数は1.44倍と極めて深刻な状況が続いていると言わざるを得ません。   また,この交通事故件数の中で,酒酔い運転によるものが2001年に比べまして,2001年を100としましたら,27。これは顕著な減少となっています。しかし,一方,脇見や安全不確認など,一般には過失と見られ,件数も圧倒的に多い安全運転義務違反,これは2001年比77と顕著な減にはなっていないわけです。すなわち悪質運転に対する法整備はその適用に問題を残しながらも,厳罰化という法の感銘力が有意にあったということであり,しかし一方,自動車運転過失致死傷罪は,最高刑が従来の業過5年から,窃盗や詐欺罪よりも軽い7年に上げられたにすぎず,その実際の適用も,依然として致死事件でありながら,執行猶予判決が多く残り,更に寛刑化に拍車を掛ける「裁量的免除規定」の影響もあって,「交通犯罪の罪は軽い」,「事故だから仕方がない」というような深刻なモラル低下を払しょくできないまま経過し,結果として法の感銘力が希薄であったと言えます。   私は,「誰でも加害者になり得る過失犯だから重罰にできない」という論立ては間違いだと思います。これでは,もしこれを怠れば人を死傷させるかもしれないという運転の際の注意義務が疎かにされ,加害行為がまた繰り返されるという,負の連鎖に陥ります。求められるのはこの連鎖を断ち切る重罰化だと思います。   このことについて,私たちは学校や一般の集まりで体験講話を行っていますが,この講話を聞いて書かれた生徒の声を二つ紹介したいと思います。   「交通事故も人を殺したということでは,殺人と同じなのに,不注意だからと罪が重くないのには,同じ命で尊さは平等なのにおかしいと疑問に思いました。」中学2年生女子の感想文です。もう一人の高校3年生の女子は,「少しの犠牲は当たり前と思っているような社会からこの国は変えていかなければならないのだろう。」このように意見を寄せています。   安全軽視の危険運転行為が根絶されるよう,抜本的な改正をすべきだと思います。自動車運転過失致死傷罪について,危険運転致死傷罪との隙間を埋めるべく,そしてその行為責任が結果の重大性に見合った罪となり,死傷被害ゼロのための抑止力として機能するよう最高刑を大幅に引き上げてください。   同時に,現行法の致死の結果について罰金刑の選択を許すと,結果に見合わない軽い処罰の余地を認めることになります。下限を引き上げることが交通犯罪被害ゼロの社会を作るために不可欠だと思います。   「刑の裁量的免除」規定は,検察官による「起訴便宜主義」により,交通事犯の9割近くが不起訴となっている不当な現状を刑法が追認し,さらには自動車運転業務についてのみ免除が設けられているということで,交通事犯を一般の業務上過失致死傷罪に比べ,軽く扱うという間違った通念が広がってしまいます。削除すべきだと思います。   以上,申し述べましたけれども,本要望意見書を補強するものとして,交通犯罪で奥様を亡くし,その後弁護士を志した当会副代表の内藤裕次弁護士の要望書を補充意見書として提出いたします。被害遺族であり,法律に携わる専門家でもある立場からの貴重な意見として併せて受け止めていただきたいと思います。   最後に付け加えますが,私たちが厳罰化を望むというのは,感情に流された,いわゆる「報復」の意識ではないということです。理不尽に通り魔殺人的被害で命や健康を奪われた私たち被害者・遺族は,悲嘆と絶望の痛みを分かる当事者だからこそ,同じ被害者を生まない社会を作ってほしいと願い,それが死者への供養になるのでは,という純粋な気持ちになるのです。私たちが常に思い浮かべるのは「命の尊厳」という言葉です。私たちの願いは,奪われた肉親を,損なわれた健康を元のままで返してほしい。それしかないのです。それがかなわないのであれば,せめて失われた命,犠牲を無にしてほしくないと願い,命の重みに見合う刑事罰が科せられて,交通犯罪抑止につながることのみを望むのです。このことを申し上げ,繰り返しになりますが,私たちの積年の痛切な思いが漏れなく答申に反映されることを切に願って,北海道の会の要望意見といたします。 ○西田部会長 どうもありがとうございました。前田代表の要望意見並びに内藤副代表の要望書も手元に文書として届いておりますので,十分これも合わせて考えさせていただきます。   今日の御意見の御趣旨は,危険運転致死傷罪の評価的要素,あるいは主観的要素を削除する。他方で,いろいろな速度違反,あるいは無免許その他,悪質・危険な行為にまで類型を拡張する。それから,自動車運転過失致死傷罪については,法定刑の引上げ,それから致死罪については罰金刑を削除する。それから,刑法211条第2項ただし書きの刑の裁量的免除についても削除を要望するという具体的な御提案だと受け止めました。   委員,幹事の皆様から,よろしいでしょうか。   それでは,どうもありがとうございました。 (「北海道交通事故被害者の会」の意見陳述者等退室) ○西田部会長 暫時休憩を取らせていただきます。           (休     憩) ○西田部会長 時間が参りましたので,再開したいと思います。   次は,第4番目,全国交通事故遺族の会の方にお入りいただきたいと思います。 (「全国交通事故遺族の会」の意見陳述者等入室) ○西田部会長 本日は,御多忙のところおいでいただいてありがとうございます。当部会の部会長を務めております西田と申します。全国交通事故遺族の会,副会長の戸川様,理事の片瀬様,それから会員の鴻巣様で,よろしゅうございますか。   本部会は,法務大臣の諮問に基づきまして,自動車運転による死傷事犯の実情に鑑み,罰則を整備するという任務を負って調査審議しておるわけですが,今般,被害者団体の方からも広く御意見,御要望をお聞きして調査審議の資料といたしたく,今日おいでいただいた次第でございます。   時間の関係がございまして,短い15分という時間に限られておりますけれども,御意見を述べていただき,その後,委員,幹事のほうから5分程度質問があるかもしれません。よろしくお願いいたします。 ○戸川氏 御紹介頂きました全国交通事故遺族の会の副会長を務めております戸川と申します。よろしくお願いします。   今日,同行しましたのは,片瀬です。よろしくお願いします。それから,次が鴻巣です。よろしくお願いいたします。   では,着席させていただきます。   丁重な御挨拶を頂きましてありがとうございます。こういう席に呼んでいただくことは,私たちの長い活動をお認めいただいたということで,大変うれしいことです。今日はこの問題につきましてじっくりと説明させていただきたいと思ったのですが,時間が15分ぐらいということで,外側の部分を少しだけ聞いていただこうかと思っています。まず,今回ヒアリングは,危険運転致死傷罪についての見直しについてとなっていますけれども,そのきっかけになりましたのは,去年から今年にかけての大変痛ましい事故が全国各地で発生していて,その御遺族の方,あるいはそれに感情を移入された市民の方,マスコミが一緒になって,危険運転致死傷罪の現状の姿はおかしいのではないか,と思い始めたのがスタートではないかと思います。   遺族の会は今年で設立21年目を迎える全国で一番歴史の長い,それから会員数も多い団体ですけれども,私たちもこの問題については長いこと取り組んでおりましたので,その動きに乗るといいますか,これをきっかけとして私たちもこの問題について関わっていこうということになりました。今日,お手元の資料として配りましたように,8月27日に滝法務大臣にお目にかかって,私たちが長年温めていた考えを申し上げた次第であります。   危険運転致死傷罪ということを考えたときに,私はそのできた当時のことにどうしても思いをはせてしまいます。きっかけになりましたのは,東名高速で飲酒運転のトラックにより幼い2人の子供が焼き殺された井上さん,また同じような事故を経て,神奈川県の座間で命のメッセージ展をやっている鈴木共子さん。2人とも遺族の会の会員ですけれども,この方たちが中心になって危険運転致死傷罪の制定を働きかけた結果,実現したわけです。   しかし,実はその発起人となった方ばかりではなく,私たち遺族の会もそういった方たちの横から後ろから一生懸命支えて,頑張ってきました。しかし,あの方たちが主張していたことは御自分の家族が殺された飲酒運転に対する厳罰化の問題だけだったのです。私たちはその当初法案ができたときに,正直言って大変驚きました。というのは,いわゆる世論というか,被害者の声に押されて新法を制定するだけだったら,例えば悪質危険飲酒運転致死傷罪というように,非常に狭いところを突いた法律でよかったのです。それが出来上がったものを見ると,スピード違反,それから赤信号の無視など,世間一般で考えられるような危険運転行為が入り込んでいました。実はこれは私たちが狙っていたところです。なぜ私たちが飲酒運転撲滅の運動をやらなかったかというと,世間には飲酒運転だけではなくて,その他の危険運転行為がたくさんあったからです。こうして私たちの願いが聞き入れられた形で,危険運転致死傷罪ができました。そういう意味で私は法務省の御担当者たちの幅広い見識といいますか,御自分の職務の中で本来,今,しなければならないことは何なのかということをよく考えた上でできた法律ではないかと考えています。   そういう法案の良い部分を見た反面,実は私たちには,半分は落胆もしました。それは世間一般で言っている,危険運転と言われる行為とこの法案に盛られた案とのかい離です。法務省が所管している刑法は,犯した犯罪に対して処罰する法律です。ところが,今,話題になっているような無免許運転,あるいはてんかんの未申告というような問題は,軽い違反,あるいはこれから犯罪に至るだろうという部分と見なされ,危険運転行為とされなかったわけです。私たち交通事故の遺族だけではなく,世間一般の常識から考えますと,正に今,問題になっているような行為,例えて言えば暴走族なんかを考えていただくと分かりやすいかと思います。   彼らは町の中で違法運転をして楽しむ集団です。楽しむことは自由だと言いますけれども,そもそも違法を前提にしたグループが,運転をして,もしけがをさせたり,人を死なせたとしたらこれが危険運転,悪質運転でなくて何と言ったらいいでしょうか。そういったふうに私たちは考えて,最初にできた危険運転致死傷罪の概要が出たときに,法務省でヒアリングを開いていただきました。その折,私たちは申し上げました。この法案では私たちは全面的に賛成するわけにはいかない。なぜならば運転前の部分,すなわち無免許,無保険,暴走行為,こういったものが欠け落ちている。   それから,もう一つは,危険運転致死傷罪を逃れるためにひき逃げが必ず増える。ひき逃げをこの法案から外せば,危険運転致死傷罪は一種のざる法になってしまいますよということを申し上げました。それが今日に至ってようやく世間の人たちから,現在の危険運転致死傷罪には,こんな欠陥があったんだということが分かってきたのが実情ではないかと思っています。私は,今こそこの危険運転致死傷罪をきちんと見直して,世間一般の人たちが考えるような危険運転行為,それを危険運転致死傷罪の中に盛り込むということが必要な時期になったのではないかと思います。   そんな背景もあり,名古屋,京都での事故がきっかけとなって国会も動き始めました。民主党の中に,危険運転致死傷罪を改正するための議連が出来上がったりもしました。私たちはこうした動きに大きな期待を寄せました。しかし,蓋を開けてみますと,やはり法務省というか,この刑法の壁というのは厚いなということを感じたんです。あれだけ意気込んでいた議連の出した中間案というものは全く見る影もない,破れ傘みたいなものですね。私たちが狙っていた法律の改正ではなく,刑罰を上げることによってお茶を濁したというような案で終わってしまったんです。逆に言えば,それだけその刑法の壁というものが大きかったのではないかと思います。   今日お手元に資料を二つ出しましたけれども,法務省の滝大臣に出したのと,もう一つは国家公安委員会の松原大臣に出した要望書があります。   法務省には刑法,危険運転致死傷罪に,先ほど言ったように事件の前の部分,事件の後の部分を足して欲しいと言っても足してくれません。ところで,運転の前後の行為は警察庁が所管する道交法で現在扱っています。私は,それならば道交法の中に予備・不作為罪という法律を作ってくださいという要望を国家公安委員長に出しました。正に8月27日,滝大臣にお目にかかった同じ日に松原大臣にもこういう要望を出しました。   私たちがいかにも二兎を追う,そういうように映るかも分かりませんけれども,なぜこういう考えに至ったかということは,是非御理解を頂きたいと思います。本来の姿であれば,危険運転致死傷罪という大きな法律があるわけですから,それを骨格として,その前後を補完するのが,やはり本筋ではないかと思います。刑法,危険運転致死傷罪の見直しで解決すべきではないかと私は今でも考えています。   滝法務大臣に出しました要望書の中に,私たちの危険運転致死傷罪の見直しに関する要望がまとめてあります。これは後からじっくり読んでいただくとしまして,今までいろいろな被害者団体,そういった人たちが加えてほしいという無免許問題,てんかん等の無申告の問題,こういったことも含まれています。これは是非検討いただきたいと思います。   それから,もう1点,私たちが主張しているのが,この滝法務大臣に出した一番最後の部分です。ここには危険運転致死傷罪を定量化して分かりやすくすると提案してございます。博多で幼い子供が海に3人,海に叩き落とされて死んだ飲酒運転事件がありました。地方公務員だった加害者はベロベロに酔っていたにもかかわらず,そこの現場に着くまでに真っすぐ運転できたという判断から,当初は危険運転致死傷罪が適用されませんでした。遺族が大騒ぎをしてようやく危険運転致死傷罪が認められましたけれども,被害者が3人もいたから私は見直しがされたと思います。もしも被害者が1人だったり,あるいは親が泣いてばかりで不満を発信できなかったら,あのような結果は得られなかったと思っています。   なぜならば現在の危険運転致死傷罪は,飲酒運転,薬物の問題も,みんな危険運転項目としては入っていますけれども,適用するのに大変難しさがあるからです。分かりにくさがあります。それで,私たちはその一つの解決策として,危険運転行為の中で違反行為を定量化したらどうかと考えています。例えば,飲酒運転について言えば,この数字が正しいかどうか分かりませんので,医者などと相談いただきたいと思いますが,これ以上飲んだら車を完全制御できない,この数値を超えたら絶対に駄目だという数値を定め,その数値に至るまで飲んで事故を起こしたら,一発でレッドカードを出す,こういう制度が必要だと思います。これがここでいう定量化の意味です。   例えば薬物の場合,これはそもそもお酒のように店で売っているものではありません。悪いやくざとかいろいろなところから買うわけです。だからそこまでして入手した薬物を服用して結果事故を起こせば,これはもう一発で適用する,たとえ僅か0.何ミリグラムであっても,危険運転致死傷罪を適用してほしいのです。   それから,速度違反です。私も車に乗っていますけれども,やむを得ず気が付いてみれば,5キロ,10キロ超過してしまうことがあります。しかしそういうやむを得ず出てしまうのと,高速道路などで猛スピードで追い抜いていく者がいますけれども,そういうのとは全然別だと思います。そういうことで,道路ごと,あるいは高速道路,一般道路のような種別ごとに,これ以上出したら,そこで事故を起こして人を傷つけ,けがをさせたら,即この法律を適用するというような定量化というものを考えるべきではないかと思います。      あっという間に,15分が過ぎてしまいましたけれども,そういうことで短い時間に十分説明できなかったかと思いますけれども,冒頭に申し上げましたように,当初危険運転致死傷罪ができましたように,私たちの意見を幅広く汲み取って,今度こそ改定の必要のないような法律に作り替えていただきたいというのが,遺族の会からのお願いでございます。   最後に,せっかく参りましたので,片瀬と鴻巣の方から,一言ずつお話をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○片瀬氏 片瀬でございます。時間がありませんので,手短に2点,お話ししたいと思います。全体的にはただいま戸川が申し述べたとおりでございますけれども,危険運転致死傷罪の現在の状態といわゆる一般国民が考えている危険運転致死傷罪の大きなかい離というのは委員の皆様方が御承知のとおりだと思います。私としては,危険運転致死傷という考え方ではなくて,危険運転行為という考え方で御判断いただくと,より一般的に国民になじむ形になってくるのではないかと考えております。   もう1点は,現在は事後の行為という扱いになっている,いわゆるひき逃げ,この問題というのは最近痛ましいひき逃げ事件が多発していて,中には殺人罪で起訴されるというケースも出てきていますけれども,博多のケースでもありましたけれども,いずれにしても被害者を死に至らしめる,あるいは重篤な状態に至らしめて,本人は自己保全のためにいろいろな言い訳はしますけれども,現場を立ち去る。非常に卑劣な行為であるわけです。例えば飲酒にしても,一旦現場を立ち去って,飲酒の痕跡を消して出てくれば,現状では罰せられないという非常に遺族から見れば理不尽な状態になっている。こういったことも故意犯罪ではないかと我々遺族は考えております。したがって,ひき逃げという部分,非常に重要な部分になると思いますので,是非御検討をお願いしたいと思っております。 ○鴻巣氏 鴻巣と申します。皆さん,お集まりいただきましてありがとうございます。私の息子は10年前にセンターラインを越えてきた乗用車に50CCのオートバイに乗っているときに正面からぶつけられて,3日目に亡くなりました。そのときの加害者の状況は,覚せい剤をやっておりまして,かつ免許停止の状態でした。警察の調べた後で,経歴を見ますと,スピード違反が10件ぐらい,その他薬物売買,それもやっている経歴があるわけです。裁判のときには,薬物摂取の件は訴因になってなかったんです。求刑が3年6か月で,決まったのが3年ということで,非常に刑が軽すぎる。なぜかということを周りの人に聞きますと,それは判例だと,相場だということを言っておりました。   あの頃から,自動車運転過失致死傷罪とか,危険運転致死傷罪が決まりましたけれども,現在,危険運転致死傷罪の適用の決め方がよく我々には分からなくて,そういうような適用にならないで,刑が軽いなということは常々新聞なんかを読んで考えるんですが,もうちょっと,人の命を奪ったときの刑罰が重くなるようにしてほしいと考えております。   ですから,簡単に要約しますと,覚せい剤そのものを摂取して運転するということは,一種の危険運転の予備行為になる。言ってみれば逆の言い方をしますと,今度は薬を飲むべき特別の病気の人が飲まないで運転するというようなことは一種の予備行為なものですから,その辺も罪のほうに数えてほしい。それと刑罰をもっと厳しくしてほしいというのが私の考え方です。ありがとうございました。 ○西田委員 どうもありがとうございました。国家公安委員会の国務大臣あての道交法の御要望もこちらに資料としては頂いておりますけれども,法務大臣あての要望書に関しましては,戸川副会長がおっしゃったとおり,まず第一には危険運転致死傷罪の適用範囲の拡大,それからもう一つは,定量化して適用を分かりやすくするというこの2点だったとお伺いしまた。極めて明確な御提言で参考にさせていただきたいと思います。   委員,幹事の皆様から御質問,御意見はございますでしょうか。   どうも,今日は御苦労さまでした。ありがとうございました。 (「全国交通事故遺族の会」の意見陳述者等退室) ○西田部会長 5番目のNPO法人いのちのミュージアムの方にお入りいただければと思います。 (「特定非営利活動法人いのちのミュージアム」の意見陳述者等入室) ○西田部会長 NPO法人いのちのミュージアム理事の中土美砂様,佐々木様,土屋様,お三方,本日は御足労いただいてありがとうございます。諮問第96号に関しまして,部会が開かれ,今,部会長を務めております西田でございます。よろしくお願いいたします。   もう諮問の内容は御承知のとおりでございますけれども,被害者団体の方から御意見や御要望を承って,部会並びに法制審議会における調査審議の重要な資料といたしたく,本日はお越しいただいた次第です。多数の団体の方から御意見を聴取しておりますために,時間的には15分しか用意できませんけれども,その範囲内で御意見,御要望を頂ければと思います。   手元にあります御意見には,この意見は一被害者遺族個人としての見解であって,会を代表する意見ではありません,ということが書いてありますが,今,事務局からNPO法人いのちのミュージアムの構成員であり,NPO法人としての見解として述べるということを聞きました。そういうふうに理解してよろしゅうございますか。 ○土屋氏 はい,間違いありません ○西田部会長 それではお願いいたします。 ○土屋氏 それではまず私の方からお話をさせていただきます。私は,いのちのミュージアムの土屋と申します。いのちのミュージアムというよりは,私たちの団体は,実は2000年に一人息子を飲酒運転,無免許,無保険の悪質な加害者に殺された鈴木共子が代表のいのちのメッセージ展,この危険運転致死傷罪の成立に至る活動をした団体を運営する組織として3年前にNPO法人化したものであります。既に私は要望書という形で皆様方に提出済みですので,そこに書かれてあることのちょっと行間を埋めるようなお話をさせていただければと思います。   私たちの活動は,厳罰化だけでは悲惨な事故や事件はなくならないという思いから,犠牲者の等身大の人型のパネルを作り,その足元に生前履いていた,生きた証として靴を展示して,全国,2001年から展示を続けております。最初は16名からスタートした活動も11年半を経過しまして,現在151家族,人型の数も156にまで増えてきているところです。この156名の人型の内訳を申し上げますと,134名が交通事故の犠牲者です。うち44名が飲酒運転の犠牲者という現状です。そして,この134名の犠牲者のうち,34名,これは小学校6年生まで,いわゆる児童。残りの更に38名は,成人式を迎えられなかった青少年です。合計72名が命,夢を奪われたということなんですが,この中で危険運転致死傷罪が適用になった事例はたったの2件です。   11年前,法律の中に命の重さを反映してほしいということで,危険運転致死傷罪という法律をせっかく作っていただいたんですが,残念なことに私たちの体験しているところではこのように非常に少ないということが言えます。当時は一般市民による初の法改正ということを持ち上げられまして,ただその体系が自動車運転過失致死傷罪を基にその中でも特に悪質なものを類型化して致死傷罪に処するということから,なかなか裁かれることが少ないということを正に我々は実感しているということが言えるかと思います。   昨年来,栃木県のクレーン車が突っ込んで小学生が亡くなった事件。それから,名古屋の事件。それから,最近では京都亀岡の事件,このようなことからこの法改正に結び付くこういう機会を得られたということは非常に期待を持って臨んでいるところです。要望書にも書いたとおり,現行法の自動車運転過失致死傷罪を基礎にした危険運転致死傷罪の手直しではなくて,根本的に危険運転罪というようなものの成立を望むところです。それと危険運転罪は,飲酒運転そのものが危険運転,それから薬物の摂取による運転も危険運転というようなことで,法律が定められることを望んでいます。   犯罪被害者等支援の施策と関連付けたような法律の作りっ放しではなくて,何年か後に見直して現状に沿った手直しがなされるような,そういったことも要望します。これが私たちの団体の最大公約数と言われると思うところの要望です。以上です。   続きまして、各自から申し上げさせていただきたいと思います。 ○佐々木氏 佐々木と言います。よろしくお願いいたします。私もあらかじめお手元のほうに資料が届いていると思いますけれども,この危険運転致死傷罪に関して,実は私の息子も2年前に,時速100キロの車に跳ねられて,18歳で亡くなっております。同じように,交通違反の繰り返しうんぬんもさることながら,仮釈放中の身であったというような方で,この団体に所属すると法無視の精神とか,遵法精神が著しく欠けている人,そういった者が圧倒的に交通事故の死亡事故を起こしていることに私自身直面して,私も自分の仕事を辞めて,こういった死亡事故で苦しんでいる方々と一緒に何かできることはないかと考えております。   そこで,この危険運転致死傷罪の考え方について,いろいろ話を聞いてみると,どうも社会の圧倒的な反応として,もちろんこの具体的な危険行為というものもさることながら,極めて反社会性とか悪質性,そういったものに関して悩んで憤りを感じている遺族の方々が多々あります。一概に無免許が,確かにルールですので,無免許の中で危険行為とか,そういったことを論ずるのではなくて,なぜこのような悪質で反社会的なものが重く裁かれないのかということで,本当に多くの遺族の方がその壁にぶち当たって,どうしようもなくて泣いているということが自分自身で感じました。   そこでこういう機会があって,法律を改正していくに当たって,そういった悪質性の高い行為とか,反社会的な行為とか,明らかに法無視だと。これは許されるべきではないという交通事故,そのものに関してはやはり危険運転致死傷罪というものをきちんと適用できるような制度に改正していただきたいと思っております。   また,本来,この危険運転致死傷罪というのは,法定刑を引き上げることによって,一般的予防というものを見越したもので作られた経緯があるようですが,そうではなくて元々基本法は道交法,あるいは無車検,無保険といえば道路運送車両法であり,自賠責法であり,そういった別の法律で基本法が定められますので,むしろそういった飲酒運転,無免許運転,そういった基本的な法律のほうの罰則の引上げ,そういうことで予防的見地を図ることによって,そういう危険運転致死傷罪を予防するという考え方を少し取り入れてほしいと思いました。   それから,2点目について,圧倒的に交通事故に関して,この2番で書いてあるように,交通事故に関しての責任を共謀共同正犯的に捉えられないかと思っています。やはりその中で,特に京都の亀岡の事件,話題になっておりますけれども,あのように誰か止める人間がいないのかと。あるいは一緒に,加功行為がある,あおり,唆し,そういった行為があるものに関しては,運転行為ではなくて,発生した結果に対して同様に処罰できる手続をそのような制度を改正していただければと思いました。   多くの遺族の方々が悩んでいるのは,警察捜査に対する客観性の在り方です。一体どのような交通事故があったのか。愛する人が息子や妻や恋人が知らないところで死んでいったときに,客観的にどのような交通事故で逝ったのか,それを現場の警察官の書いた図面,全て処理が終わった後に見せられる図面でしか把握できない。それに関して,年間4,000人,5,000人の方が亡くなっていて,4,000名,5,000名の遺族の方が全てそのとおりだと,納得できるものではありません。やはり被害者が参加して客観的にこのような事故はこうだったんだと,誰が見ても分かるような,有利,不利を問わず明らかにこれが本当の交通事故の起きた姿だったんだということを分からせるためには,端的に言えば,ドライブレコーダーなどを全車に装着させる。それによって,まず事故の概要はこうだったんだということを客観的に証明できるような制度,それはさほど難しいことではないので,そのようなことを法改正の中に盛り込んで検討していただければ,遺族としては有り難いことだと思います。   長くなりますので,私は以上としたいと思います。以上です。ありがとうございました。 ○中土氏 こんにちは。いのちのミュージアムの理事をさせていただいております中土と申します。私のほうも要望書という形でお手元の方に書面にて提出させていただいております。意見ということでしたので,本当に思い付くままを書かせていただきました。もしかしたら一般の市民感覚で書かれているものがほとんどですので,その中で感じられることも多々あるかと思います。実際運用的には難しいものというのもあえて書かせていただきました。   私は,8年前に当時4歳だった二男を交通事件で,私の目の前で奪われております。そのときも先ほど土屋のほうから,亀岡の事件もありましたけれども,私の息子が亡くなったときというのもお子さんがたくさんいるような路上で起きた交通事件でした。私は,その当時一般の市民感覚として,その当時は業務上過失致死傷罪ということで,罪名がなっておりましたけれども,なぜこれが業務上で,なぜこんな罪が軽いのだろうという憤りをその当時ものすごく感じておりました。   その後,法改正等がありまして,危険運転致死傷罪は2001年にできていたものの,やはり私の息子の事件ではそれは適用になることはなくきてしまって,本当にその当時,なぜなんだろうという思いがずっと私の中でありました。その後,法改正がありまして,自動車運転過失致死傷罪というのもできまして,法定刑も上げられましたけれども,私にとっては2年しか違わないということ。もっともっと厳罰化が行われて当然なんではないかという思いが私の中ではありました。   提出させていただいた書面に関しましては,危険運転致死傷罪について,個々疑問に思っている点,おかしい点というところを書かせていただきました。自動車運転過失致死傷罪に関しましては,限りなく故意に近い過失もあれば,明らかに過失と思われるものがあると書かせていただいたんですけれども,私も交通の遺族として活動する中で,限りなく故意に近い過失というものは存在すると感じています。私の息子が亡くなった事件でも,周囲にたくさん子供がいることを知りつつもスピードを上げて走っていた。子供がいることは認識していたということが加害者が述べていたにもかかわらず,結局危険運転にすることはできませんでした。   そんな中で,やはりそういったところも過失と一言で言っても,過失にも幅があるということを汲み取っていただいて,そういったことを考慮したような罰則を作っていただければ,私としてはより分かりやすくなるのではないかと感じています。運転免許証に関しては,私どもの代表をしております鈴木も無免許,無保険の車のドライバーに息子さんを殺されたわけですけれども,免許証自体の存在というのは,やはり必要なものでありまして,かと言って,ここに述べさせていただいているように,てんかんの患者の方の件もありますけれども,持っているだけでは何の意味もないということもありますので,免許制度のことも含めて,今回の罰則の強化,見直しに反映していただきたいなと思います。   最後になりますけれども,そのほかとして交通事件事故被害者への更なる支援の充実をお願いしたいと書かせていただきました。まだまだ一般の方の感覚というのは交通事故というものにとどまっていて,国民の理解の増進というのは進んでいないように思います。そういった増進を進める上でも私どものような団体では教育機関,小さいお子様,そういったところに出向いてメッセージ展というパネル展を展示しております。   官民両方で併せてそういった理解も進めていきたいと思う中で,そういったこともすくい取っていただけるような罰則の見直しにしていただきたいと思います。私からは以上です。 ○西田部会長 どうもありがとうございました。   お三方の御意見,それぞれ文書としても出ておりますが,特に致死傷という結果を伴う,その重視をすることなく,危険運転そのものを重視して危険運転罪というものを創設すべきだという御意見。それから,もう一つは,悪質性や反社会性,あるいは結果の重大性を重視した危険運転致死傷罪の適用を求めるという点。もう一つは道交法になろうかと思いますけれども,飲酒,無免許,無車検,その他のそういうものについて,罰則の強化を求めるという,こういう御趣旨かと理解しました。   委員,幹事の皆様からございますでしょうか。   どうも本日は貴重な御意見ありがとうございました。 (「特定非営利活動法人いのちのミュージアム」の意見陳述者等退室) ○西田部会長 本日の最後ですが,亀岡無免許暴走事件の会,名古屋飲酒運転ひき逃げ死亡事故の会,本来2団体でありますけれども,御一緒に活動もなさっているということなので,では,お呼びしてください。    (「亀岡無免許暴走事件の会,名古屋飲酒運転ひき逃げ死亡事故の会」の意見陳述者等入室) ○西田部会長 本日は御足労願ってありがとうございます。   亀岡無免許暴走事件の会,代表の中江様ほか,会員3名。それから,名古屋飲酒運転ひき逃げ死亡事故の会,眞野哲代表ほか2名の方。   私は,この部会の部会長を務めております西田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。法務大臣からの諮問第96号によりまして,自動車運転による死傷事犯の実情に鑑み,罰則を整備すべきであるということで,今,法制審議会では,この部会を立ち上げまして,調査審議しているところでございますが,その前提として被害者団体の方々から御意見や御要望をお聞きして,調査審議の資料といたしたいと思って,本日御足労願った次第であります。   まず,最初に,亀岡の無免許暴走事件の会のほうから,要望書は2枚のものが出ております。追加の何か文書等はございますでしょうか。あるいは,今日,口頭でということであれば,口頭で承りますし,事後に更に文書として御提出なさるおつもりがあれば,いつでも事務局のほうにお届けいただければ更に部会の審議の資料として,委員,幹事に配布するつもりですので,よろしくお願いいたします。   まず,代表の中江様からどうぞ。 ○中江(美)氏 中江です。今回はこういう席を設けていただいてありがとうございます。単刀直入にお願いしたいんですけれども,僕が裁判を今,被害者遺族で裁判中で,今戦っている最中なんですけれども,本当に疑問に思うのが,無免許運転,故意犯という部分を適用しないというところの不手際,僕らにとって全く理解できない。皆さんはお知りで,僕は常に訴えることなんですけれども,一番つらいことが,僕は言いたいのは,お腹の赤ちゃんが一人の命としてみなしていただけないというところ,これから法律改正とか,僕らは今,裁判中で適用しない,民事の戦いでも適用しないというところが,もう本当に納得できないし,これからの世の中のために7か月で死んでいるのに,1名としてみなしてもらえない。世の中に出てから1名というところが,もう本当に全く分からない。これを伝えたい,お願いしたいというところ,まず一つとして今回よろしくお願いします。 ○中江(龍)氏 中江と申します。よろしくお願いします。新聞記事で見させていただいたところでございます。準危険運転致死傷罪というふうな見出しがありまして,私たちが思っている構成要件の中に,無免許を入れるというのは,最低限のことではないかと思っているんですけれども,無免許を繰り返せば,繰り返すほど,技能を有しているという法の解釈,それはちょっと被害者だけでなく,皆さん同じ思いではないのでしょうか。というのもございまして,準危険運転という間を作られるというのは,ちょっと納得ができないという一つの疑問であるんですけれども。やはり構成要件,危険運転の中に無免許を含めるべきだと思っております。 ○小谷氏 京都亀岡からきました小谷と申します。補充といいますか,無免許の,今回僕らの中で審議されたのが,運転技能を有する,有さないという部分で,無免許を危険運転の方にはちょっと適用できないとお聞きしていたんですけれども,単純に免許を持ってない者はやはり車に乗る資格がないと僕らの方ではみんなちょっとそういうふうに考えていまして,技能がある,ないというのは,審議するところではないのではないかと思っていますので,やはりそれは無免許運転というものをもっともっと重く考えていただいて,刑法の方もですし,道交法の方でも,やはりもう少し免許の重みというものを考えていただいて,法律のほうをちょっと見直していただきたいなと思っています。 ○横山氏 亀岡遺族の横山と申します。今回,無免許運転の厳罰化ということで,一つありますのが,厳罰化することによって,現状の数年前と比べて,今の飲酒運転の部分が風潮として,「しない,させない」となってきているというのは肌で感じるんですけれども,そういった部分が無免許運転に関しては,現状ないと思います。やはり要望したいのが,無免許運転自体を危険な行為として,危険運転に組み込むということで,「しない,させない」という抑止力にしていただきたい。そう思っております。以上です。 ○西田部会長 亀岡の会の御意見は以上でよろしゅうございますか。事件の特殊性から,無免許ということについて,こだわっておられるのはよく理解できますし,胎児に関して,これが事件の客体として認められないのはおかしいではないか。それから,民事のことにも言及されましたけれども,御意見としては今私がまとめたような御意見であると承っておいてよろしいでしょうか。 ○中江(美)氏 ありがとうございます。少しお願いがあるんですけれども,僕らは今裁判中で,まだまだこれから戦う中で,ちょっと不安に思うのが,やはり少年法でものすごく守られているという実感があるんですけれども,幇助の同乗者,車を貸した少年,それもやはり簡単な罪で収まっていくことが,この世の中にこれから犯罪が簡単に,ああ,あんな簡単に,幇助とか,車を貸した人間があんな簡単な罪で収まってしまうのかということと,これに対して,少年だからというなら,親御さんは,御両親は,これから大人の人に十分責任を負ってもらうという法改正,法律というものを作って厳罰に処してもらうという責任ですか,そういうところをしっかり考えていただかなくては子供は絶対に,簡単に,大人が,本当にそういう重みを人の命を奪って,4人の命を奪って,その重みを子供に伝えていかなくてはいけないという責任をしっかり両親に,というところの難しい部分になると思うんですけれども,親の責任というのもしっかりとこれからは法律として,何かの刑を与えてもらいたいというのが事実です。 ○西田部会長 では,引き続きまして,名古屋飲酒運転ひき逃げ死亡事故の会,代表の眞野様からまずお願いいたします。 ○眞野(哲)氏 名古屋から参りました眞野と申します。今日は,実は下の階のほうで40分ぐらい待っておりまして。一人一つずつぐらい御紹介のことをまずお話しさせていただこうと,残った時間がございましたら,皆さん委員のほうから,我々素人で被害者で遺族です。うまいこと言えない部分があれば,どんどん引き出して,質問で聞いていただいて,またお話しさせていただきたいというのも一つあります。なので,簡単に御紹介させていただきました。また後でお話があれば是非いろいろと吸い上げていただきたいという思いがあります。   私は,息子を飲酒運転の外国人に無免許運転,無車検,無保険,一方通行逆走,もう数えあげたらきりがないような,そういう交通事故で,長男を亡くしました。その事故で亡くした息子の命の代償が今の国では危険運転にはならず,自動車運転過失,これがついうっかりの過失で,7年ですよと。控訴もさせていただけないようなこんな裁判で,非常に二次被害,三次被害で,いまだ苦しんでおります。今月の30日でようやく1年たつんですが,まだ昨日のことのように,息子が最後に息を引き取る瞬間,血まみれで頭がい骨が陥没した,顔が変形した息子の顔が今でも浮かびます。これだけひどい交通事故の被害者である我々が,何でこの日本の法律はその被害者遺族,亀岡もそうですよ。我々被害者遺族が日本の法律に更なる追い打ちを,いじめのような日本の法律で我々遺族がまた苦しめられるんです。裁判でまた苦しめられるんです。   私は,今,法改正ということで全国の被害者遺族を代表して,亀岡,名古屋で連結し法改正に向けて頑張っておりますが,これはその部分と実は法改正はもちろんしていただきたい。でもそれと同時に,警察の捜査の在り方,裁判に至るまで,ここも全面的に見直していただかないと,我々被害者遺族の声というのは出ないです。完結しないです。   実際,京都の亀岡も名古屋も見ていただければ警察の捜査,もうひどいなんていうものではないです。我々どれだけ証拠があっても,全く採用していただけないような警察の捜査があって,日本というのは法治国家ではないですか。法と証拠に基づく裁判がそこの証拠がまるで我々が持っている証拠も反映されずに,法と証拠のその裁判が全くなしていない。これは法治国家ですかと。この裁判は一体何ですか。今回我々たくさんの被害者遺族とお会いしました。今,超党派における危険運転致死傷罪を考える会というのが,我々のケースがモデルとなって,超党派で議論していただく,そういった会にも参加させていただきまして,何度も議論させていただきました。   この日本の法律というのは,我々被害者遺族の気持ちに置き換えて,個々の委員の皆さん,考えてください。もし,あなたたちの大切な,大切な御家族,息子さん,娘さん,また家族がこんなひどい事故で亡くなったときに,今の日本の法律は,ついうっかりですよと。自動車運転過失ですということで,しようがないよね,この日本の法律であれば,これは今はついうっかりだよね,という納得できるケースはほとんどないと思います。   私たちは,無車検,無保険,相手は資力のない外国人ですと。補償も何もありませんよと。これは今回の趣旨とは違うかもしれませんが,ここを押さえていただかないと,このヒアリングは成立しないと思います。法と証拠に基づく裁判が,実はこの裁判は何ですかということが,超党派における勉強会で,野党,与党全部集まったその勉強会の中でも終わった後で,我々全国の被害者遺族の代表と会うんですよ。皆さんに警察の捜査はどうだったかと言ったら,もう本当にひどい,物損程度ぐらいの捜査しかしていないんですよ。その捜査の内容を基に,裁判が,今の亀岡もそうです。そんなずさんな捜査で裁判が始まるんですよ。その裁判で答えが出て,判決なんですよ。   我々は7年でした。亀岡は何年か分かりません。今正に公判中,裁判中で,非常に苦しんでいるこの御遺族の気持ちを思うと,約1年前に私たちの息子が亡くなった裁判を振り返ると,この日本の司法,もう狂っているんではないかと。被害者遺族の気持ちを考えてください。被害者支援というのはこの国にはないですか。私たちは相手から,裁判でも謝罪の言葉もないです。もちろん資力がないから,何も弁済がありません。相手が外国人で,刑の7年を終えたら,強制送還でブラジルに帰ります。私は長男を亡くした,息子ですが,相手の加害者にせめてバカ野郎も言いたいですし,どうしてくれるんだということも言いたいです。   日本の制度は,我々はよく仕組みは分かりませんが,強制送還でブラジルへ帰るんですよね。私たちは謝罪も補償も何もない状況で,どうすればいいですか。この怒りの矛先をどこにぶつければいいですか。   それは裁判のこの日本の法律が我々にとってもまた苦しめる裁判です。無免許運転,共通項は無免許運転です。一度も免許を取ったことのない人間がたとえ未成年であっても,人の命を奪った以上は,少年法とかうんぬんを言うのであれば,18歳からということではなく,20歳からにしてください。でなければ18歳から免許が取れるのであれば,18歳で人の命を奪う行為があれば,少年法なんて言わないでくださいと。一般の事件と同じように扱ってください。   飲酒ひき逃げもそうです。逃げ得になるような法律の穴だらけではないですか。我々は今,力を合わせて全国悪質運転ゼロの会ということで,全国で今活動しております。明後日も東京でシンポジウムをやります。12月も東京でシンポジウムを2日間やります。2月は埼玉でやります。その前は名古屋でやりました。大阪でやりました。全国各地,我々被害者遺族が自らのお金で講演会を開いて,シンポジウムを開いて,我々被害者遺族がこんなことまでしなければ,法律は変わらないんですか。おかしいではないですかという思いを是非今日委員の皆様方に本当に御自身の気持ちになって,あなたたちの息子が亡くなった,娘さんが亡くなった,お孫さんが亡くなった,それでついうっかり,自動車運転過失ですねと,日本の法律がそうだったらしようがないよねと,納得ができる方がいたら,今,教えてください。手を挙げてください。いないと思うんですね。私たちは悔しいんですよ。亡くなっただけで悔しいんです。その思いは我々一生消えない。その一生消えない思いが,僅か数年,又は少年法,又は危険運転の4つある構成要件にどれも該当しないから駄目です。ということであれば,構成要件を満たしてないような法律は,法律に穴があると,不備があると,我々被害者遺族が大きく世論に訴えて,法律が今,正に変わる瞬間かもしれませんが,そこは準危険運転,先ほどありましたが,準危険運転の創設を検討するとか,うんぬんありますが,そういったことを希望しているわけではなくて,構成要件を例えば無免許運転で人の命を奪ったら,一発で危険運転でしょう。   遺族は亡くした子供は一生帰ってこないんです。未成年だろうが,何だろうがへったくれだろうが,人の命を奪った,一度も免許を持ったことがない,たくさん乗っていたから運転技能を有する,おかしいですよ。この法律の不備はやはり今の政治なのかどうか分からないですけれども,我々被害者遺族としては,今の法律はもう全く理解できないです。   と同時に先ほど言いました飲酒でもひき逃げしたら,逃げ得であると国民から言われているようなこの日本の法律というのは誰が作ったんですか。そんな我々では分からないようなお偉い方の法律家,又は政治の方がこの法律を自分でも免許もないような黒塗りの車の後ろに乗って,自ら運転しないような法律家たちが作った法律だとすれば,我々被害者遺族の気持ちを全く汲んでいなくて,この危険運転致死傷罪,こんなガタガタの法律を作ってしまったんだと。   私は平沢勝栄さんとも何度も何度もお会いしました。お電話もたくさん頂きました。平沢勝栄さんも危険運転致死傷罪を創設するに当たって,そこにいたメンバーだそうです。その平沢勝栄さんが,今の危険運転致死傷罪の構成要件,これはもう本当に現場の捜査官が苦労する。これでは適用したくたってできないんだということで警察出身の平沢さんはそういった意見もあります。適用したくてもできないんではないかという意見もありますが,実際に適用したくてもできないようなそんな捜査の現場です。   危険運転致死傷罪を視野に入れた捜査にもかかわらず残念だったと言われますが,何を言っている,危険運転致死傷罪を視野に入れた捜査,ふざけるなと。私たちのほうが証拠を持っているんだ。この証拠を何一つ汲み取ってくれないような裁判が実際に日本ではある。これは名古屋の私たちが特別な事案ではなく,全国の被害者遺族を聞いたら,みな同じような状況である,こういった本当に現場の被害者遺族の声を是非今日お越しの委員の先生方,我々被害者遺族がもう二次被害,三次被害,四次被害,どれだけ苦しみ悩んで,我々は一生ゴールはありません。一生この胸に悔しさを抱えています。   どうぞ法改正ということであれば,今回この意見をまたどんどん取り入れて,本当に被害者遺族が少しでも納得できる,本当にいい法律を是非皆様のお知恵を借りて,我々遺族が少しでも楽になるような,法改正に向けて是非取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○西田部会長 眞野志奈様,西川幸代様からもどうぞ御意見あれば。よろしいですか。 ○眞野(志)氏 もう主人が全て言ってくれましたけど,事故にあって初めて法律って誰のためにあるんだろうかって考えさせられました。普通でしたら被害者遺族,私たちのためにあるものだと思っていたんですけれども,実際のところ,経験してみて,みんな加害者のためにある法律なんだなと実感させられましたし,そういったところではやはり今の法律の現状では難しいと分かってはいるんですけれども,息子に関して,全部全てそろっているのに,無免許,無車検,無保険,一方通行は逆走,道路交通法でも本当に何もかもそろっているんですけれども,捜査もきちんとしてもらえてない状況の中で,危険運転にはならないということに対して,もう憤りを感じていますし,本当に息子は何のために死んでしまったというか,もう本当にこの法を変えるために,息子は亡くなって,今ある法律はおかしいということで言っているんだということで,私たちは今これから戦っていくんですけれども,先生方も本当に中身を見直していただいて,この法律は多分もう本当に,いろいろな方々からのお話も聞かせていただいているんですけれども,何を基にいろいろな法律が,中身の改正かということもあるんですけれども,本当に一つ一つの事件を見ていただいて,これで正しいのかということで,法律をきちんと見直していただければと思っています。 ○西川氏 全国悪質運転ゼロの会を開設しました西川と申します。今回,思うに,危険運転致死傷罪を適用する各地域によって,まるで違うというのがとても不思議に思えるんです。やはり構成要件が曖昧ということで,ここの地区のこの事案で危険運転致死傷罪で送検したというお話を聞くと,どういう事案で,一つ言うと,制御不能のスピード,それは制御不能というのはどういう範囲なのか。その曖昧さが本当に分かりにくいと思います。信号無視を殊更無視をした。それが一方通行逆走でも一時停止無視でも,それは適用なくて,信号無視だけが適用される。それの一つ一つの事案が細かすぎて,それに本当にかすっているのに当てはまらないということが,なぜ起こったのかというのがやはり素人からして,本当に見えにくいです。   そこの部分をパシッとはまるような事案以外は,適用できないということがあること自体,やはり考えられないことなので,もう少し構成要件の解釈のほうを分かりやすい表現で,幅広い事案を含めた総合的な判断をしていただいた上の危険運転致死傷罪というものを適用してほしいと思います。 ○西田部会長 どうもありがとうございました。亀岡の中江様,名古屋の眞野様のケースは正しく今回,法務大臣から諮問があった,正にその契機となった事件だろうと私も認識しております。   今日,二つの団体からお聞きした御意見は非常に重く受け止めさせていただきまして,今後の部会の議論に十分反映させていきたいと思っております。 ○眞野(哲)氏 ちょっと待ってください。これで終わるとは思うんですけれども,今回京都の亀岡は今裁判中でございます。私も先ほどずっと見させていただきまして,先生方の中から木村先生,一生懸命聞いていただいた思いがありまして,是非京都の亀岡の方たちに何か一つでもいいので,質問を投げ掛けていただけませんでしょうか。代表の中江さんが是非お話,もう一言,二言多分言いたいところがあると思うんですよ。お時間も多分分かりますが,私たち名古屋から,ずっと昨日の夜から寝ていません。今日のこのたった10分,15分という世界に全て,法改正に向けて来ているので,是非,もうあと一言,二言,お話だけ聞いてあげていただけませんですか。 ○西田部会長 それはもちろん。中江さんから御意見があれば。 ○中江(美)氏 ありがとうございます。眞野さんが僕の,いつも眞野さんが僕らの気持ちを上手に伝えていただいているんだとは思うんですけど,こうして今,先生方が僕らの気持ちを聞いていただいている中で,同じ人間として,どういうふうに本当は受け取ってもらっているのか。   この粛々と僕らも裁判が終わっていく中で,この法改正を僕らが署名を一瞬で20何万という,短期間で集めさせてもらったんですけれども,今もなお毎週土日ぐらいでしか署名活動はさせてもらってないんですけれども,こういうことについて被害者遺族が過去の被害者でもそうなんですけれども,過去の被害者は僕らも現実の被害者がこうして訴え続けていかなくては法律が改正できないというところが,僕は常に疑問に思うんですけれども,先生方々,何か僕たちにそういうところで,何か助言というのか,というところをお聞かせ願いたいというのが正直な気持ちです。僕らの気持ちだけが今日,この場でお話を聞いていただける場所なのかもしれませんけど,何か。 ○眞野(哲)氏 今,日本の法律を変えるために,彼らは今,仕事を辞めて署名活動,又はシンポジウム,講演会でやって,日本の法律を変えるために,我が身を捨てて死にものぐるいでやっている遺族がいるということも分かってください。その上で,その思いで,一言しゃべりたいです。 ○中江(龍)氏 私たち被害者遺族だけでなく,やはり皆さん同じ気持ちで法の解釈というのを考えていただくという,やはり人の命というのはこの世で一番大事なものだと思うんです。物より,窃盗罪よりこの刑が軽いって僕は聞いているんですけれども,自動車運転,過失に当たれば刑は7年。窃盗罪で10年でしたっけ。ちょっとその法律の解釈ですか,やはりこれは被害者遺族だけでなく,皆さん同じ思いで考えていただくことではないんですか。私たちは自分らにこういう被害があるまで,そんなことを考えたこともありませんでした。やはりそういう中身を知れば知るほど,おかしい,納得できないという思いがあるからこそ,こういうふうに活動して,今もなおこういうふうに動いているというのを分かっていただきたいです。   もし,今後,こういう場が設けられるのであれば,また是非呼んでいただきたい。以上です。 ○西田部会長 お二方はよろしいですか。 ○小谷氏 余りうまいことを言えるか分からないですけれども,やはり僕らにとっては大切な命というものをなくしていまして,今日ここに来られている過去の被害者の方とかもそうだと思うんですけれども,やはりたまたまでうっかりでという場合ももちろんあるとは思うんですけれども,この交通事故に関しては,でもやはり遺族としては,それをたまたまとはやはり僕なんかは多分死ぬまで思えないでしょうし,もう悔やんでも悔やみ切れないと思っていますんで,これだけの車社会になっているんですから,やはりたくさん事故も起こるとは思うんですけれども,もっとみんなの意識を高めるような,事故は多分本当についうっかりというものがどこかに重なって起こっているものだと思いますので,それで失っている命というのがあるので,そこをもっと車って本当に一歩間違えれば凶器なんだというものをもっとみんなが認識できるような法律にしていってもらえたら,少しは僕たちの娘や亡くなった家族は浮かばれるのではないかなと僕は思いますので,どうかよろしくお願いします。 ○横山氏 今回,事故が起こりまして,まず思ったのが,亡くなった後,被害者遺族,家族,どうして悲しんでいたいときに,いろいろなこと,例えば警察,検察,裁判所の聴取であったり,その他いろいろ本当に何もしたくない,そういった気持ちの中で,悲しんでいたいというときに,そこが一番いろいろなことをしないと駄目なんですよね。その中でやはりあるのが,支援というのが全くない。僕らが何かをしないと駄目。全てをやらないと駄目。そういうふうな状況だと思うんですよ,現状が。そういった意味でも刑法とかそういった部分とは外れるとは思うんですけれども,被害者支援という部分を僕たちの立場になって,そういった部分を充実させていただきたいということをちょっと僕のほうからお願いいたします。 ○西田部会長 必ずしも十分に対応できませんが,被害者並びに御遺族の感情は非常に伝わってまいりました。必ずしもこの部会で諮問された事項以外のものもたくさん皆様の御意見の中に入っておりまして,それにこの部会としては,正面から取り組むことができない部分もたくさんございますけれども,正にこの部会が立ち上がった一つの大きな契機となった事件の御遺族の方々の御意見でしたので,この部会としても重く受け止めさせていただきまして,今後の部会の審議並びに将来の立法に十分反映させていきたいと思います。   どうも本日はどうもありがとうございました。 ○武内委員 もしよければちょっと質問をさせていただいてもよろしいでしょうか。   二つほど質問をさせてください。   私は犯罪被害者支援活動をやっている弁護士の武内と申します。お話,ありがとうございました。それぞれの会の皆さんにお伺いしたいんですけれども,まず1点目としては,今回それぞれ無免許ということだったんですけれども,現行法の進行を制御する技能を有しないという点,構成要件にそれぞれの事案は当てはまってもおかしくなかったのかなと私は考えているところですが,仮にそれぞれの事件について,今回危険運転致死傷罪の適用があったとした場合でも,この危険運転関係の条文に関して何か改正が必要だとお考えになられますでしょうか。これが1点です。   あともう1点は,正に諮問の範囲から外れますけれども,先ほどの部会長の発言に甘えて質問させていただければと思うのが,被害者のための支援という御意見を頂戴しましたけれども,私どもは加害者だけでなく,犯罪の被害を受けた人にも事件発生直後から国費で弁護士をきちんと選任すべきではないのかという活動をやっているところなんですけれども,その点について,弁護士が早い段階で国費で選任されていたとしたら,支援につながったかどうか,ちょっと御感想を聞かせていただけると大変うれしく思います。よろしくお願いします。 ○中江(美)氏 ちょっとその支援のことで僕はいつも思うんですけれども,亡くなった人間は人権も何もない,死んでしまったから仕方がない,でも加害者には更生する権利が保護される法律があるというところで,では一方的に殺されて,お腹の赤ちゃんも全て,申し訳ございません,被害者感情がむき出しになってしまうんですけれども,それは大変申し訳ないと思うんですけれども,生き残って,その子の命を惜しんで僕たち被害者遺族が死んだ子の代わりの人権だと思ってください。僕は常にそう思っているんです。死んだ子が人権ということを言葉に出せないなら,被害者遺族,家族みんながその人権なんです。それを十分に分かってもらいたいというのが僕の一番のお願いです。  ○眞野(哲)氏 今のお話の流れで言いますと,京都の加害者が今回は未成年で,名前も写真も何も出ないですよね。人権ということか,個人情報なのか分かりません。私の息子は19歳,大学1年生でした。亡くなったからでしょうか,私の息子は顔も学校も名前も個人情報全部出るんですね。これ,先生,おかしいですよね。亡くなった被害者というのは未成年でも顔も出る,名前も出る,家族もむき出し状態。守られるものがないんですよ。おかしいではないか。その部分において何をしていいか分からない。先ほど先生おっしゃっていただいた最初の段階で,弁護士の先生がもし付いてくだされば,これから立ち向かうであろう刑事裁判,民事裁判において,何から始めていいか分からないんですよ。   私たち,殺された我々が葬儀をあげて,いろいろな取調べを受けて,また刑事裁判,強制的に呼ばれる刑事裁判に我々被害者が高額な弁護士を自らのお金をかき集めて,弁護士を頼むんです。今度また民事も同じように起こるんですが,私たちは民事できないんですよ。資力のない相手だから,する価値がないと。でも,価値がないかあるかというのは分からないですけれども,ただ相手に裁判したいんですよ。人の命を奪った相手に,強制送還して何もおとがめなしというのもやはり納得できない。そういった意味で,弁護士の先生にお話ししたいんです。でも,すればするほどまた被害者遺族が弁護士費用がかさむ。30分相談したら,5,000円とか,そういったことが積み重ねてやってくる。我々も好きで裁判をしているわけではなくて,刑事裁判に臨むために幾ら,どれだけのお金を被害者が使っているかということです。   亡くなった息子は大学1年生で定期券を解約するために,家内が行ったんですけれども,まず本人が来いと,本人亡くなりました。住民票を持ってこいとか,たかが定期を解約するだけで何回も何回も往復するんです。こんなようなことが健康保険もそうですし,ありとあらゆることが,例えばお役所から一人誰か来てくださって,眞野さん,息子さん亡くなって大変だねと,では,何からやりましょうね,とそんな状態ですよね,ではこういったことから始めましょうと。順番を経て教えてくださる方が誰もいない。頭真っ白で息子が亡くなって,悲しい,悲しい,そのときに全部考えなければいけない。先ほど悲しみに浸りたい瞬間もあるというお話を聞かれたと思いますが,そんな瞬間もあるにもかからず,毎日,毎日,警察から電話がかかってきて,つらいところに土足で,亡くなった瞬間の話をどんどんして,またいろいろな取調べ調書の中で,同じことを何回も何回も,警察で取り調べられて,県警に行って,検事もまたいろいろなところで何回も何回も同じことを話をする。それは亡くなった被害者遺族,誰か弁護士の先生か,お役所の人か,誰か付いていただかないと,もうパニックです。   本当にこれ,亡くなった人は,先生,皆さんおっしゃいますよね。誰か付いてほしいんです。助けてくださいと,そんな思いです。 ○西田部会長 武内委員,よろしいですか。 ○武内委員 はい,結構です。十分です。 ○西田部会長 時間も経過したので,これで終了したいと思います。 (「亀岡無免許暴走事件の会,名古屋飲酒運転ひき逃げ死亡事故の会」の意見陳述者等退室) ○西田部会長 明日,御欠席の委員,幹事の方もおられますので,2回目の予定につきまして,事務局からアナウンスをお願いいたします。 ○上冨幹事 次回の部会につきましては,11月30日,金曜日の午後2時から午後5時という日程を確保しております。ただ,場所については,現在調整中でございますので,後ほど決まった段階で改めて御連絡させていただきたいと思います。 ○西田部会長 では,本日は皆様,長時間御苦労さまでした。明日も同じ時間帯2時から4時半ぐらいまでということで,この部屋で行いますので,御都合の付く方はよろしくお願いいたします。 -了-