法制審議会刑事法           (自動車運転に係る死傷事犯関係)部会           期日外ヒアリング(2日目) 議事録 第1 日 時  平成24年10月26日(金) 自 午後2時00分                        至 午後4時45分 第2 場 所  東京地方検察庁会議室 第3 議 題  自動車運転による死傷事犯の罰則整備について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○西田部会長 少し時間は早いのですけれども,2時からヒアリングを開始したいと思います。   昨日開始の際に申し上げたとおりでございますので,1団体原則として15分のヒアリングを行いまして,委員,幹事並びに関係官の皆様から御質問があれば,5分ということで進めてまいりたいと思います。議事録の作成については昨日お諮りしたとおり,逐語的に行い,これを原則ホームページに公開するということで,もし不適切であるというふうに判断しましたら,また皆様にお諮りして,そのときに御意見を伺うことにしたいと思います。   それでは,まず最初にお手元のスケジュール表にありますように,被害者自助グループ「小さな家」のヒアリングを行いたいと思います。 (被害者自助グループ「小さな家」の意見陳述者等入室) ○西田部会長 どうぞ御着席ください。本日は御多忙の中,どうもありがとうございました。   被害者自助グループ「小さな家」事務局長の大久保様でいらっしゃいましょうか。この部会の部会長を務めております西田でございます。よろしくお願いいたします。   今日は委員,幹事同席の下で法務大臣からの諮問第96号であります,自動車運転による死傷事犯の実状に鑑みて罰則の整備をせよという諮問に対しまして,法制審議会において設置されました本部会において調査,審議しております。今後の議論の重要な参考資料とするために被害者団体の方から御意見,御要望を聴取しているところでございます。何分にも多くの団体の方から御意見を伺いますために,残念ですが,時間は15分ということで,その後,委員,幹事から御質問があるかもしれません。その旨お含みおきの上,よろしくお願いいたします。 ○大久保氏 御紹介いただきました大久保です。このような席に呼んでいただきまして,大変有り難く感謝申し上げます。レジュメの番号に従って御説明いたします。   最初ですが,22年前,私どもの長男が飲酒・ひき逃げに遭って死亡しました。そのときに私たち犯罪被害者を支援してくれる法律というのは犯給法ぐらいだったのではないかと記憶しています。不勉強でちょっと記憶がないんですが。その後,通知制度ですとか,被害者保護法ですとか,犯罪被害者等基本法とか,こういうものができてきたわけですが,何にも被害者を支援する法がなかったときから,二十数年でこちらに関わっておられます法務省の皆さん,警察庁の皆さん,国会もそうですが,関係省庁によりまして,数多くの法律の制定やその改正を頂きました。そして犯罪被害者等の被害回復に支援いただいたということに対しまして,最初に感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。   レジュメの1番目,被害者になるということでございますが,当時,18歳だった私の長男は,平成2年10月ですが,夜食を食べようと歩道を歩いていました。そうしたら,国道との境目に縁石ブロックがありますが,飲酒運転の常習者がそれを乗り越えてタイヤをパンクさせ,ホイールをゆがませて,息子をはねて,また車道へ逃げたんですね。翌日,酔いがさめた頃に警察に出頭してきました。その後,警察で,前日どこで飲んだかというのを全部調べ上げてくれました。ただ,残念だったのは,新聞,マスメディア関係は少年は車道を歩いていたのではないかということで,私ども家族にものすごくいわれのないプレッシャーが掛かりました。私も家内も公務員でしたので,もう職場へ出るのも恐ろしいくらいの毎日でありました。この汚名を挽回してくれたのはやはり裁判官と東京の大学の自動車工学の鑑定人さんのお力添えでした。   裁判になると,誰も味方をしてくれないんですね。加害者は町内でいろいろなことをやってくれた立派な人だ,とばかりに町内の人が傍聴に来ますが,私どもは誰も来ないわけです。そこで知り合いの弁護士さんに来ていただいて,あなたには田んぼを売ってでも弁護費用を出しますから,どうか傍聴人になってくださいということで,裁判と向き合いました。それからこの二十数年,法律改正の請願をしたり,日本には犯罪被害に遭った人を支援する組織・団体はありませんので,アメリカの飲酒運転に反対する母の会という,MADDと書いてマッドと言いますが,そことか,NOVA(全米被害者援助機構)等の組織が,被害者支援組織がありましたので,そこへ直接,研修に行ったり,向こうから来られたときに研修を受けさせてもらったり,そういうことで,少しずつ全国の仲間が集まってきまして,私たちの自助グループの名前も変えて「小さな家」といたしました。今,全国に仲間がいて,その中の何人かは,もう4人か5人は地元へ帰って自助グループを作っておいでになっています。このヒアリングに出てくださいという案内を受けたときに,その仲間に今どういう気持ちで被害者支援をやっていますかと電話で聴いたり,メールを送ったりしましたところ,私が今から申し上げます以下のような気持ちで,それは15年たっても,20年たっても変わらないんです,という案内を頂きましたので,私どものグループの仲間の意見を集約して私が申し上げます。   突然私どもは被害者になったわけですが,被害者になるということは,実は何の前触れもなく,別れのさよならの言葉も言えないうちにやってくるわけです。そしてその衝撃というのは何十年たっても全く消えないんです。精神的ショックで,特にお母さん方は睡眠障害が起きたり,食欲がなくなったり,家庭内のことが,できなくなる。それから,仕事を持っている人は社会生活もまともに送れなくなる。そういうことと,そのほかに納得のいかない法律,それと裁判制度,あとで具体例を申し上げますが,そして判決。そういうものが一層被害者を深く傷つけるわけであります。   ですから,昨年起きた栃木県鹿沼市の事犯だとか,今年の京都府亀岡市の子どもの命を奪った突然の恐ろしい事犯,そういった家族を失った親の衝撃と悲しみというのはいかばかりかというのは,思うだけで本当に心が痛みます。   被害者の悲しみとかトラウマですね。家族をずっと苦しめ続けます。特に小さい子どもが受けた衝撃というのは,お兄さんが亡くなったとか,お姉さんが交通犯罪で亡くなったとか,その衝撃,苦悩というのは,その後の人生に与える影響というのは,親や大人が想像できないほどはるかに大きいものです。   このことに関しましては,今日は本当は冊子でお渡ししたかったのですが,代わりに印刷物が届いているのではないかと思います。私どもが協力し,内閣府が作ってくださったパンフレットでありますが,「交通事故で家族を亡くした子どもの支援のために」というものであります。お手元に配られているかと思います。ここに家族を奪われた子どもたちが直面する苦悩,それから困難,それとカウンセラーなど,周りの大人がどう理解して,それに対応するかと,対応の仕方が書いてございますので,時間のあるときで結構でございます,どうぞ御一読いただきたいと思います。   そのパンフレットにありますが,子どもを失った親はショックで残された子どもの養育がおろそかになります。外国語でいうとネグレクトという言葉を使っているのですが,そのうちに夫婦が,お前があのとき子どもを連れ出して夜歩いていなければこんなことにならなかったんだとか,いろいろなことを言い出すわけです。そして夫婦不仲になったり,あるときは子どもに理不尽な怒りをわけもなくぶつけたりします。子どもはどうしても不安な生活を送らざるを得なくなります。やがて子どもは真面目に生きていても,自分には将来が果たしてあるのだろうか,人間不信に陥ったり,それから,社会に対するいわれない怒りが湧いてきたりします。そして将来への夢が絶たれてしまうと,自分なんかが生きている価値はないんだと捨て鉢になるわけですね。親の多くは,将来,子どものこのような変化がよく理解できないわけですね。自分の頭で考えても,子どもはどうしてこうなっていったのかというのが分からないわけです。そして社会では悪質な交通犯罪であっても単なる事故として受け止めてしまいます。まあせいぜい“かわいそうに,これから家庭は大変ですね,自分でなくてよかった”と,こういう考えでどんどん忘れ去られていきます。これは私ども仲間が常に言っていることであります。   余り嘆き悲しんでいると,近隣とか親類とか,職場の同僚が,“いつまでも嘆き悲しんでいては亡くなった人が浮かばれませんよ”等という言い方をします。このような誤った励ましというのは,逆に二次被害を被害者にストレートに与えてしまいます。   それでも法に照らして,加害者が正当に裁かれるケースならば,事故と事件の衝撃は少し和らいで,被害者は長い時間を掛けて,もう一度社会で自分らしい人生を生きてみようとか,あるいは事件体験をいかして社会のために役立つように努力をしてみようと考えることができるようになります。   こういったことを私どもの自助グループの仲間たちはよく口にするわけです。それを私が代表で申し上げたわけです。以上申し上げたことをどうか含んでいただいて,そして悪質な交通事犯に対しまして,罰則を厳しくしていただきたいとお願いをするわけです。   以下に危険運転致死傷罪,自動車運転過失致死傷罪,昔の業務上過失致死傷ですね。それから,道路交通法などに関しまして,私たちの仲間の意見を集約して申し上げます。   レジュメの2番目ですが,私どもは闇雲に罪を重くしてくれとお願いしているわけではないのです。できれば事故は物理的に科学的に事前に防げれば,こんなうれしいことはないわけですね。加害者だって家庭を破壊してしまうわけですから,これが起こらなければ一番いいわけです。道路交通法を改正しまして,全車種に以下の①,②,③を義務付けるか,それは急にそんなことはできないとおっしゃるなら,違反者に対していわゆるペナルティとして義務付けていただきたいと思います。   また事故の大規模化を防止するためには,②,③は営業用トラック,バスには義務付けていただきたいと思います。シートベルトは非常にうまく定着したようでありますから,そういった方法ですね。こういう「義務付ける」というのは,国民は嫌がるんですが,例えば国の補助金制度ですとか,それから,保険金を割り引きするとか,そういう何か手立てを講ずれば,自然にそれが実現できるのではないかと考えているわけです。   ①としまして,ドライブレコーダーの装備です。「これは進行を制御することが困難な高速度で」という208条の2に出てくる要件と関係します。制御するのが困難と言いつつも,一体時速幾らオーバーしてぶつかったのかということになると,これはカメラとSDカードが一体化されていまして証拠が残ります。僅か3万円前後で非常に安価であり,市販されていまして,タクシーにはもう付けている人が結構いるそうです。裁判になったときに,私の車はそんなむちゃくちゃに走っていませんでしたよと,言える訳です。いろいろこっちの速度と向こうの速度で差し引き時速幾らだったのか分からないのではないかという,そういう心配もありますが,地面との絶対速度でやりますので,そんなごちゃごちゃの判定にならないと聞いております。   実は今までも4トン以上のトラック,それから,乗り合いバスなんかでは俗称タコメーターと言われているものが付いていますので,これは営業用でありまして,普通の乗用車にはドライブレコーダーがどうかと考えています。この後は私が言っていいかどうか分からないんですが,カーナビです。今スイッチ切ったら何にも分からなくなってしまうと思っている人が多いんですが,例えばNTTの電話のいわゆる通信傍受ではありませんが,何月何日の何時何分何秒にどこを移動していたかというのは,分かるような気がするんですね。これはそんなことしたら大変だと言われるかもしれませんが,カーナビというのは宇宙空間で静止衛星がきちんと電波を送って,GPSの機能を持っていますので,下手なドライブレコーダーよりはこれを活用できればすごい武器になると思います。   ということは,暴走傾向の人はそうめちゃくちゃにスピード出したらいかんという一種のプレッシャーになるわけですから,事故が減るのではないかと考えています。そうすると悲惨なことが起こる回数が少なくなるということになります。   2番目,②ですが,飲酒運転防止用アルコール検知器,これは今もトラックとかバスの運転手さんが事業所を出るときに簡易装置でもって息を吹きかけて,上部の管理者の方の目の前でやってみせるんですが,車に乗ってしまうと分からないわけですね。私がこの②に書いてきましたのは,最初に座席に座って息を吹きかけてアルコールが入っているとエンジンがかからないという検知器です。それから,それを拒否した場合もエンジンがかからない。これは20年ぐらい前にMADDというアメリカの先ほどの飲酒運転に反対する母の会のパンフレット,アドボケイトというんですが,それに書いてあったんですが,今もそれやっているんですかと,ある弁護士さんに聴きましたら,もちろんやっていますよ,とのことでした。ただ,日本はそういうのを,違反者にペナルティとしては義務付けていませんということもおっしゃっていました。そろそろそれをやってもいいときですねという話をしておいでになりました。   それで,これをいきなり全員の車種に義務付ける,というのは難しい場合には,違反を何回かやった人に取りあえず義務付ける,という方法もあります。アメリカの話ばかりしますが,性犯罪者が女性のいる所に近付いたら,発信機を付けていまして,無線でキャッチされる。“そこへ近付くな”と,そこ女子高があるから戻れとか監視されているんですね。日本の場合には,人権問題になるんですね。そうするとアメリカでは,人を殺されたり,犯罪被害に遭っている人の人権をどうしてくれると,何が人権だということですぐ切り返すんですね。こういったことは,私は,ゲルマン系のいわゆる狩猟民族に特徴のDNAかなと思うんですね。日本みたいに農耕民族はそこまで厳しい処罰は求めてこなかった経緯があると思います。   それから,これはハンドルの横に付けるのは,今,自動車会社の知り合いの社員に聴きますと,12万円から13万円です。ペナルティとしては通用する金額ではないかと考えております。   3番目,③ですが,居眠り運転防止装置。これは今年でしたか,富山県の人たちも亡くなったのですが,群馬で悲惨な観光バスの事故がありました。居眠りしたときに警報が鳴るというのは,トラックとかバスを製造している会社の社員に聴いたんですが,首が垂れたときに警報が鳴るとか,それから,まぶたが閉じたときに警報が鳴るとか,もっと高度なものは,瞳の光彩ですね。光彩を記憶しておいて,光彩が見えなくなったら警報がなるとか,それはものすごく高い値段が付くから,これは今すぐ義務化というのはちょっと難しいかもしれないということでありました。この点は,どこか頭の隅に入れておいていただいて,余りにもひどい違反をする運転手に対しては,いずれ金額は言っていられなくなると思いますね。   3番目いきます。罰則の強化又は要件の拡充と法類型の変更ということです。   (1)危険運転致死傷罪,この法律ができた当時は悪質な交通犯罪が減ったこと,これは新聞で発表され,私たち自助グループの仲間でもはっきりとそういうふうに意見交換をしていたことであります。   ですから,この法律は交通犯罪の抑止力になっている,大切な根幹をなす法律だと考えております。何か刑事司法界では余り評判がよくなくて,何か私たちは想像できないんですが,“使いにくい”と言われているそうですね。法律で使いやすいのと使いにくいのがあるのかと思って驚いたんですが,後で審議していただければと思います。刑法208条の2の前半に以下の①,②,③のような表現がありますが,その①番です。こういうのがあります。「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な」うんぬんという所があります。これは11月25日,警察庁の運転免許に関わる,いわゆる改正の審議会から答申が出ましたが,いろいろな病気ですね。6種類か7種類,てんかんを始め統合失調症とか,糖尿病なんかも意識を失うことがあるようですが,そういう病気の具体名はともかくとして,私たちの仲間は「アルコール又は薬物の影響及び医師が服用を指示した薬を摂取しなかったことにより,正常な運転が困難な」と広げていただきたいと思います。つまり,薬を飲まなくてはいけない人が薬を飲まないと意識を失って運転してしまうということですね。   ②,「その制御が困難な高速度で」というのはそのまま残していただきたい。無免許運転とか飲酒・ひき逃げなどは,もう208条の2に移行して厳罰化していただきたい。   ③,「進行を制御する技能を有しないで」というのは,その中に無免許が含まれていると聞いて驚いたのですが,無免許運転というのは,もう道路交通法をやめて,刑法の208条の2で別記していただけたらと思います。   制御する技能を有しないというのは,むしろ認知症患者とかのレベルです。私ももうじきそうなるかもしれませんが,そういう場合は家族又は親族が免許証を公安委員会に返納させるというのを1項目付け加えていただいてもいいのではないかと考えます。   無免許運転などというのは,もう犯罪に近いんですね。技能の問題ではないんです,これは。規範意識が欠如しているわけですから,うんと重く罰していただきたい。   (2)ですが,自動車運転過失致死傷罪の罰則の強化,これは危険運転と道路交通の間で一方を譲れば一方,またしわ寄せが来るわけで,数学でいいますと,多変数関数になりますから,整合性を維持するためにやはり甘くならないようにしていただきたい。   (3)は道路交通法から次のものを,208条の2へ完全に移行して厳罰化していただきたいと考えます。まず無免許運転による死傷事犯,それから,飲酒運転による死傷事犯,ひき逃げによる死傷事犯,飲酒・ひき逃げとか,そういうことはともかく,ひき逃げというのを重罪にしていただきたい。   (4),道路交通法の免許停止期間を延長する。罪によって,3年とか5年とか,永久剥奪とか,いろいろ考えていただきたいと思います。   それから,4番目へいきますが,関東のある地裁で道路を無免許で飲酒運転していた少年が120キロ近い速さで走っていて,対向車と衝突した事犯です。その裁判では,危険運転が適用されるかどうかと争われた判決でありますが,被告は無免許とはいえ,十数回を超える車の運転経験があることや,被告が事故の直前まで一定の期間,事故を起こさずに車を運転していたことなどを理由に,進行を制御する技能があったから,危険運転ではないという判決が出たそうです。これは国民は全く理解できないことであります。   それから,交通犯罪ではありませんが,私たち自助グループのメンバーの家族が,覚せい剤のいわゆる中毒患者によって殺害された事件でありますが,どういうことになったかといいますと,心神耗弱の状態だったという理由で罪が軽くなったのです。麻薬,覚せい剤を飲用したということでもう罪を犯しているのに,そのために心神耗弱になったというのは,例えばこれが裁判員裁判だったら絶対にそのときの判決と逆の判決が出ていると思いますね。   随分しゃべりましたが,最後に「小さな家」においでになったオーストリアのウィーンの少年上級裁判所の長官,判事さんですが,私どもの会員の集まった所でこんなことをおっしゃいました。“私は休日には被害者支援に関わっています。これは日ごろ加害者の主張ばかり聴いているので,加害者によって被害を受けて苦しんでいる被害者の心情を知らなければ,正しい判決が下せない。私の被害者支援は職務上必要不可欠なのです”という深い人間愛に満ちたものでありました。   本日は,必要以上のことも話しましたが,今後,自動車による事故や犯罪を引き起こさないように,予防措置の導入を法制化していただいて,その上で交通被害者が納得のゆく罪に見合った厳しい罰則を作ってくださいますよう,最後にお願いしたいと思います。本日はこのような場に呼んでいただきまして,本当にありがとうございました。 ○西田部会長 どうもありがとうございました。委員,幹事の皆様から御質問はございますでしょうか。意見書を拝読いたしましたけれども,極めて明確でかつ具体的な御提案が多く,今後の議論において,十分参考にさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。 (被害者自助グループ「小さな家」の意見陳述者等退室) ○西田部会長 では続きまして,本日2番目に予定されております,関東交通犯罪遺族の会,通称「あいの会」の方に入っていただきたいと思います。 (関東交通犯罪遺族の会(あいの会)の意見陳述者等入室) ○西田部会長 どうぞお座りください。   関東交通犯罪遺族の会,通称「あいの会」の小沢代表,それから,東副代表,それから,高橋相談役及び小沢,中村会員ということでよろしゅうございましょうか。本日は御足労ありがとうございます。本部会は法制審議会から委嘱を受けまして,法務大臣の諮問第96号,交通事犯への罰則の整備について調査,議論している部会でございます。私,部会長の西田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。   今日,6団体からヒアリングをいたします関係で,時間が15分というふうに制限されております。しかし,十分にお気持ち,御意見を拝聴するつもりでございますので,よろしくお願いいたします。 ○東氏 ではよろしくお願いします。「あいの会」の東と申します。まず紹介ですけれども,私の右隣におりますのが中村,左隣におりますのが,代表をしてもらっている小沢樹里,あと相談役をしてもらっている高橋弁護士にも来ていただきまして,その横に小沢の義理の妹で実際に車に乗りまして,重症を負いました小沢恵生も来ております。よろしくお願いいたします。   詳細は,意見書にも書かせていただきましたので,今回は話は簡単に止めさせていただきますけれども,現実を見ますと,まだまだ悪質な加害者の逃げ得というのが存在しています。捜査も不十分という話,大変聞いております。話したいことは本当に山ほどあるんですけれども,今回は4点だけ,私自身が体験しました自転車のこと,あとタンクローリーの過労運転のこと,あと飲酒運転の同乗者のことと,捜査の担当者の当たり外れの問題,この4点に関しまして,お話をさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。   まず私どもの会の紹介ですが,ちょっと私事で恐縮なんですが,私,実は全国交通事故遺族の会に昨年入会しております。ただ,皆さん御存じかもしれませんけれども,この会,今年一杯での解散を決めております。私としては,本当に入会して1年足らずの解散ということで,今後どうしようかなと思っていたところに,ちょうど縁あって知り合いました,中村と小沢と,今回,一緒に会を立ち上げようということで,「あいの会」というのを結成させていただきました。この7月に結成しております。   本当に数人で始めました小さい会でございますので,まだまだこれからの会だと思っております。「あいの会」という名前,簡単にお話しさせていただきますと,関東交通犯罪遺族の会というストレートな名前ですけれども,こちらは本当に近場でお互いに会って,話ができる関係というのをまず大切にしたいと,あと大切な人を奪われた遺族の集まりだということを条件としている意味で付けました。「あいの会」という,これは通称ですけれども,いろいろな意味を込めています。お互いに思い合う,ラブ,愛情という愛という意味と,あと元々の自分を大切したいという,アイアムという,大文字のIという意味のI,あと本来の自分を見失わないという意味のアイデンティティのアイと,いろいろな意味を兼ねて付けております。まだ本当に小さい団体ですけれども,これからいろいろやっていきたいと思っております。   今回,まず4点のうち,私自身の自転車のことからお話しさせていただきます。私ですが,一昨年1月ですが,信号無視の自転車に母を殺されております。加害者は公判で謝罪に来ること自体思い付かなかったと言っておりまして,主張自体もスポーツ用自転車は,下を向いているから信号なんか見えなくて当たり前だったんだと,非常に笑い話みたいな話をしてきておりました。ただ,それでも執行猶予が付いてしまっております。加害者はまだ一度も私のほうに謝罪に来ておりません。裁判官は本当に非常にずっと遺族に対して冷淡でございまして,判決文でも遺族の存在というのは全くかき消されていたという状況があります。なので,せめて遺族の声には裁判官は耳を傾けてほしかったなと,今でも非常に悔しい気持ちで一杯です。   そんな中,何でこんな結果になったんだろうといろいろ考えたんですけれども,そもそもということで自転車,重過失致死での裁きだったということがあったと考えています。加害者は自転車だというだけで,最初から交通犯罪以下の扱いとされておりまして,厳罰が最初から望めない状況でした。なので,執行猶予が付いてしまったんですけれども,本当に執行猶予というのは以後気を付けなさいという訓戒程度の無罪放免の意味でしかないと考えております。これが大変悔しいと思っております。   ただ,人の命を奪うという場合,それが予期される危険な運転だった場合というのは,当然厳しい罰が下されるべきだと考えておりますし,自転車でも車でもその重さには変わりないと考えております。だから,自転車の場合でも,まず一つ目の要望としましては,危険運転あるいは準危険運転というのを適用してもらいたいと考えております。それに補足してということなんですが,そもそもなんですが,自転車の事故,事犯というのを統計も取っていただきたいと考えています。どこで何件の事故が発生して,死者がどのくらいかと,加害者にどういう刑罰が下されるのかと,そういうデータというのはどこにもありません。そういうことが結局,自転車への認識の甘さにつながっているのではないかと,自分は考えております。例えば町中を歩いていますと,例えば今でも赤信号を,当たり前のように無視する自転車ですとか,あるいは猛スピードで歩行者の間をすり抜ける自転車,あるいは場合によってはビール片手にふらふらと運転する自転車なんかもたまに見ます。要するに,こういったものが許されて,現状が分からないままですと,私のような遺族が,今後増えるばかりだと思っておりますので,まずは統計を取って,こういう事例があると,こういう悲惨な事故があるということをまずは世に知らしめていただきたいと思っております。   私からは以上となりますので,続きまして,タンクローリーの件につきまして,中村のほうからお話しさせていただきます。 ○中村氏 私は妻を大型車,タンクローリーに奪われた中村と申します。当時,乳離れをしたばかりの1歳の次男とおむつが取れたばかりの4歳の長男がいました。事件の2年前には埼玉に家を新築して,これから新しい生活が始まろうとしていた矢先の事件でございます。私は通勤に2時間掛けているため育児と仕事の両立もできずに,今,会社のほうには時間短縮勤務というものを申し込んで,そのために収入も減少して,子どもたちの保育園費などの出費も増えております。そのために,苦しい思いもしております。自分自身もPTSDのフラッシュバックがひどくて,きつい日々を送っています。子どもたちも母親と過ごせなくなったことでさみしい思いをしております。   事件の概要ですが,平成22年の4月,全国交通安全運動の初日の日です。当時34歳の妻は四方が畑の見通しのよい交差点で次男を抱いて,青信号の横断歩道を渡っているときに,対向車線より無理に,一気に右折して進行しようとしたタンクローリーに頭を踏み潰されて,そのまま即死しました。次男は妻が必死に守り抜いたのか,ほぼ無傷,軽症で済みました。運転手はその直前も30日以上,休むこともなく,前日も深夜からの長時間運転を行っていました。それにもかかわらず,犯人は疲労はない,対向車に気を取られて進んだだけだと証言した結果,満足な捜査も行われていません。その結果,禁錮2年半,執行猶予5年の判決という形でした。犯人は事件の1年後にはまた大型免許を取得して,今も運送会社で同じような運転をしています。加害者が勤めていた会社は妻の以前にも重傷を負わせる事故を起こしていました。ただ,事故の報告届けの提出もありません。ほかにもその運送会社は無届けの事業計画変更や対面点呼などの未実施が多く,そのほかにも多くの違反をしていましたが,陸運局への是正指導報告の期日前に突然解散して,処分が実施されることはありませんでした。現在,私は民事の方で,刑事裁判で明らかにできなかった事故の対応と会社との関係について争っています。私は加害者の尋問を実施するように求めて署名も裁判所のほうに提出しましたが,裁判官は当事者の尋問は必要ないと判断し,今日判決が下されます。   私の方からは,労働基準を逸脱した運行の厳罰化についてお願いしたいと思います。妻の事件や今年起きた関越道の藤岡ジャンクションでの高速バスの事件,凄惨な事故が後を絶つことがありません。殺傷力が高い大型車両を運転しているにもかかわらず,過労運転の実態があって,利益を優先させた結果によるものだと思っています。それは悪質な犯罪であるはずです。どんな事件でも,業務の状況を捜査していただいて,過労がある場合は危険運転致死と同じように重く処罰をしていただきたいと思います。新たに準危険運転致死の構成要件として加えていただきたいと思います。 ○小沢(樹)氏 すみません,小沢と申します。よろしくお願いします。   私は交通犯罪の被害者遺族です。平成20年2月17日,義理の弟が運転する家族4人の乗った車が埼玉県の熊谷市の路上で,泥酔運転の末,時速40キロの道路を100キロから120キロで暴走した車が対向車線にはみ出し,正面衝突をしました。義理の両親はいずれも即死をしました。義理の妹は顔面を複雑骨折し,上下のあごが砕け,表情が変わってしまいました。義理の弟は腰に複雑骨折を負い,下肢障害や排尿,排泄障害になりました。2人とも今,高次脳機能障害になり,日常生活に大きな支障が出て苦しんでおります。運転手に対しては危険運転致死傷罪で16年の実刑判決が出ております。酒を提供した飲食店の店主に対しても,全国初で懲役2年執行猶予5年の罪が確定しました。そして同乗者については危険運転致死傷幇助の罪で実刑2年の判決が地裁,高裁で言い渡され,現在,被告人は上告中です。   問題点ですが,飲酒運転の事故があったとき,運転手だけではなく,同乗者に対してもアルコール検査を義務付け,同乗者に対しても捜査を徹底して行っていただきたいということをお願いしたいと思います。   私たちの事件では,加害者の車両の中に運転手のほかに2名の同乗者がいました。同乗者は当時,道路交通法の同乗罪で書類送検されましたが,要求・依頼行為を立証することができなかったために,立件が見送られてしまいました。さらに同乗者の一人は,事故車両ではなく,事故直前まで自分の車を飲酒運転していたことを裁判の中でも自白していましたが,同乗者へのアルコール検知が実施されていなかったので,飲酒運転の罪でも立件されることはありませんでした。これでは私たちは納得ができません。そこで,危険運転致死傷の共同正犯で家族4人告訴・告発いたしました。検察官の方に粘り強くお願いした甲斐がありまして,危険運転致死傷の幇助罪で起訴されることになりました。   飲酒運転による犯罪が発生したとき,明らかにしなくてはいけないことがあると思います。運転手が同乗者と一緒に飲酒をしていたかどうか。運転手が飲酒運転をしようとしたことに対して,同乗者が止めたか。あるいは逆に同意したかどうか。さらに,進んで飲酒運転を唆したかどうか。運転手が断れないような上下関係が同乗者との間にあったかどうかなどです。車に乗り合わせている人たちに対して,誰が本当に非難され,処罰されるべきなのか,その人たちにどのような量刑を科すべきなのか,正しい判断をするためには,事故に至った経緯,背後関係,特に同乗者の役割を明らかにすることは不可欠だと思います。私たちのケースでも3人は同じ職場で事故直前まで何時間も一緒に酒を飲んでいました。さらに,同乗者が先輩で,運転手が後輩という関係で,しかも同乗者は運転手のことを金庫番と呼んでいたのです。同乗者に対しても,このように長時間一緒に酒を飲み,また,運転手が同乗者に逆らえない力関係があった場合だったからこそ,同乗者に対しても幇助罪で実刑判決が下されました。   では,同乗者の役割を明らかにするためには何が必要でしょうか。もちろん徹底した捜査が必要ということは言うまでもありません。ですが,その大前提として,同乗者に対するアルコール検査が最低限必要だと思います。ところが,残念なことに現在の法律の運用では,現場に駆けつけた警察官による同乗者に対してのアルコール検知は義務付けられていません。そこで,運転手だけではなく同乗者に対してもアルコール検知を義務付けてほしいと思うのです。その上で,同乗者に対しても運転手と同じ同一レベルでの徹底した捜査を行っていただきたい。同乗者の役割が明確になれば,事故が単に運転手だけが処罰されるものではなく,本来処罰されるべきものが不当に罪を免れることを防止することができると思うのです。そして何より社会生活の中で同乗者の責任を自覚させることは,飲酒運転の抑止に必ずつながります。運転手だけではなく,周りが共に飲酒運転をさせない環境を作ることが大切だと思います。   またもう一つですが,警察官や検察官の当たり外れがある。また,地域差があるということをよく耳にします。その点については,実際に事故に遭い,被害者になってみて,初めて気付くものです。よい検察官を前例にヒアリングなどを行って,よい形で全国どこでも同じ司法サービスを受けられるようにしていただけたらなと思います。また,あるかないか分からないような市区町村の被害者支援窓口での被害者への救済法をより実のあるようなものにしていただければいいなと思っております。   また,睡眠時無呼吸症候群,それから,てんかんなどの病気については,免許制度の改革が必要だと思います。特に職業運転手に対しては検査を義務付けるという形で新たな事故をなくすというような方向性を持っていただければなと思います。   また,副代表の東のほうからお話しさせていただきましたが,自転車に対しても,自転車の中のナンバー制を取り入れていただければなと思っています。小中高の学生に対しては,年齢に応じた免許の取得の方法を確立して,事故の抑止につながっていければいいなと思っております。今日は「あいの会」から3人がお話しさせていただきましたが,手短に話しており,改めて皆さんのほうには意見書に目を通していただき,よりよい法整備に努めていただければなと思い,最後の言葉とさせていただきます。今日は「あいの会」を呼んでいただきまして,ありがとうございました。 ○西田部会長 どうもありがとうございました。委員,幹事の皆様から。   高橋先生からはよろしゅうございますか。 ○高橋氏 それでは,せっかくの機会ですので,一言だけお話をさせてください。   私自身,「あすの会」の副代表として被害者参加制度の創設に深く関与してまいりました。交通犯罪の被害者の方は被害者参加制度を使う率が高いようです。私も被害者参加を支援する側の弁護士として7件ぐらいやりましたが,とりわけ感じるのは検察官の対応がものすごくよくなったことです。本当に被害者の視点に立ってやってくれています。ところが,変わらない検察官が一つだけあります。副検事です。いまだに変わらないです。特に副検事は交通事故を主にやりますから,交通犯罪の被害者は大きな不満を抱いています。ですから是非とも検事にムラがないように,副検事に対してもきちんと御指導して頂きたいと存じます。   あともう1点,非常に印象的なことがありました。我が国で一番最初に行われた平成22年1月の被害者参加裁判での出来事です。交通事故でありました。これは典型的な右直事故で無理に右折しようとして対向車線を直進してきたバイクを跳ねて即死させてしまったという案件でありました。若い旦那さんが即死しました。被害者参加したのは若い奥さんと小さな子どもでした。   その若い奥さんが最後にこういうふうに論告求刑しました。私自身,平成12年からずっと「あすの会」を通して被害者と接していましたから,被害者の気持ちが分かったつもりでいたのですが,そのときは,本当に分かっていなかったのだとつくづく思いました。交通犯罪の被害者の方は,単純に刑が重いことを求めているのではないと気付いたのです。たとえ刑期が短くても,半年でもいいから,3か月でもいいから,1か月でもいいから,実刑にしてほしいというのが交通犯罪の遺族の気持ちだったのです。その理由を聞かされたとき,私ははっとしました。執行猶予5年だったら家に帰りますから,事故のことは忘れてしまいます。でも,1か月でも実刑ならば,もうそのことだけをずっと刑務所の中できっと考えるだろう。それがやはり反省につながるのではないかと,その事故の奥さんは被害者論告でおっしゃっておられたのです。私もそのとおりだと思います。先ほどの中村さんの事故は,青信号で横断歩道を渡っている右直事故ですから,もう典型的な百ゼロの事案です。なんであれで執行猶予が付くのか私にはさっぱり分かりません。1か月でもいいですから,できるだけ実刑になるように法制度を工夫していただけないかなと思います。 ○西田部会長 どうもありがとうございました。委員,幹事の皆様から御質問ないようですので,今日の御意見から,自転車の問題,それから,同乗者の問題等,非常に貴重な御指摘を頂いて,今後,議論の参考にさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。 (関東交通犯罪遺族の会(あいの会)の意見陳述者等退室) ○西田部会長 では続きまして,3番目の,飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会の方に入っていただきたいと思います。 (飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会の意見陳述者等入室) ○西田部会長 どうも本日はありがとうございます。本部会は法務大臣の諮問第96号に基づきまして,自動車運転による死傷事犯の罰則の整備について審議をしているところでございます。被害者団体の皆様から御意見や御要望をお伺いして,今後の議論に反映させていきたいと存じております。今日はこの飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会の佐藤,高石共同代表,それから,井上,井上幹事の4名のほかに,岩嵜悦子,松原道明,祝部美佐子,和氣みちこ,安井陽子の5名の皆様に御参加いただきました。15分ほどの時間しかございませんけれども,御意見,御要望を述べていただきたいと思います。  ○井上(郁)氏 ただいま御紹介いただきました,飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会の私,幹事を務めております井上郁美と申します。本日はお招きいただきまして,どうもありがとうございました。最初の数分で私どもの会のことだけちょっと簡単に御説明するのと,それから,今日先にお配りしております,資料の中で特に今年行いましたアンケート調査の中で一部結果をお伝えしたいと思っておりますことと,それから,後ほど井上保孝の方から皆様にお願いしたいことをお話しして,最後に共同代表から一言ずつ話をしたいと思っております。   まず私どもの会の方なのですけれども,正式に発足しましたのは2005年の7月になります。会の発足から7年を過ぎております。ただ,この飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求めるというところの会の名前に込められた意味というのは,正に2001年12月にできました危険運転致死傷罪ができて以降の事件に遭われた被害者遺族の方々から2003年ぐらいから私どもが連絡を受けることになりました。加害者が飲酒運転をしていたのは明らかであると。ただ,事故の後に,被害者を救護することもなく,110番,119番も通報することもなく逃げてしまっていると。現場から逃走してアルコールが体内から抜けるのを4時間,5時間,6時間,ひどい人は何日も逃げて逃げて,自首する人もいれば逮捕されるまで2か月掛かった人もいます。そういう人たちが結果的にはどうなっているかというと,ほとんどの人たちが,危険運転致死傷罪が適用されることなく,当時の業務上過失致死傷罪,あるいは今であれば自動車運転過失致死傷罪という罪名,つまり過失罪で裁かれている,そのような実態があります。これは逃げた人の方が得ではないかと。なぜ自己保身のために逃げてしまった人が,故意犯で裁かれないのかと。まず飲酒運転というのは故意犯であると。その上に救護義務違反という,やはりこれも自分の意思で人を救護せずに逃げてしまっているという,二重に故意犯を犯していると私たちは捉えているのですが,結果的に過失犯,過失罪にしか問われていない,そのようなおかしなことが起きてしまっているではないか。このようなことは,2001年の前であれば,業務上過失致死傷罪しかなかったわけですから,これは法務省が作ってくださった危険運転致死傷罪というものができたがゆえに出てきた新しい課題だと私たちはずっと訴えております。   そして2003年に相次いで,この会の共同代表をしております大分の佐藤,それから,北海道の高石,たまたま同じ年だったのですが,息子さんを亡くされて,検察官から「危険運転致死傷罪の適用は無理です」という説明を受けて,裁判が行われて,非常に軽い刑罰で済まされてしまったということを皮切りに,『いや,佐藤さん,高石さん,あなたたちだけではなくて,これは全国あちこちで起きている事象で,私たちもそれはすごく気になってきている』と。『これは大分だけの問題,北海道だけの問題ではなくて,全国レベルで連絡協議会というものを作って,みんなで署名用紙のフォーマットも統一して署名活動を展開して,何とかこの逃げ得という法律の抜け穴を塞いでもらいましょう』ということで,2005年に正式に会として発足いたしました。   それから8回,今まで法務大臣に全国で集めた署名を提出してきております。一番最後が今年の6月25日に滝実法務大臣に対してで,累計で59万199名の署名をこれまでに法務大臣宛ての署名を提出しております。やっとこの法制審議会が開かれたという感がございます。私たちは本当に感無量なのです。9年間,これをずっと訴え続けてきて,2007年に確かに自動車運転過失致死傷罪というものを作っていただけた,そのときにも私たちは呼ばれました。法制審議会を開いていただいて,被害者遺族団体に対するヒアリングはありました。ただ,やはりそれで逃げ得がなくなったかというと,まだ抜け穴は塞がらなかった。ということで,私たちも会の中で諮って,活動を続ける,続けない,もうこれでよしとするか?いや,全然こんなところでやめられない,とみんなが異口同音に言って,活動を今も続けています。もう私たちこの署名活動は正直もうやめたいです。今年を限りにやめたいと思っています。何とか今回のこの法制審議会で今度こそ抜け穴のない法律を作っていただくために,私たちが感じていることを今から5,6分かと思うのですけれども,御説明したいと思います。   前置きが長くなったのですが,配布しております資料を数枚めくっていただきますと,A3の用紙が出てまいります。これが滝法務大臣の面談の直前に国会議員のほうでも議員連盟ができまして,危険運転致死傷罪について見直す,検討するという,そういう趣旨の議員連盟ができたことを受けて,こういったデータがあったほうが,より皆さん,現場の状況が分かりやすいのではないかと思って,緊急で,本当に1週間というものすごく短い期間でしたので,全員の回答を受けられたわけではありません。私たちの会の中で35家族いるのですが,その中で20家族ぐらいの回答なのですが,とりわけ御注目いただきたいのが,A群,B群,C群,D群とあるのですが,A群のところです。一番上のほうから9件あります。「危険運転致死傷罪が適用されなかった事件」というもので,これはどういうアンケートをしたかといいますと,家族を亡くされた会のメンバーの方々にその事故の当時の状況,発生日,発生地,それから確定した判決の裁判所名,罪名,どういう罪名で裁かれたかと,つまり,A群は危険運転致死傷罪が載っていません。時代によって違いますが,業務上過失致死傷罪であったり,自動車運転過失致死傷罪であったり,一部窃盗罪とか,余罪も入っていて,その一部余罪が入っている罪名の事件だけは求刑が5年を超えていたりしますが,ほかの事件では所詮過失罪プラス道路交通法違反でどのような求刑がなされているかといいますと,懲役4年,懲役4年,一つ飛ばしまして,懲役4年,もう一つ飛ばしまして懲役4年6か月,懲役4年,懲役7年,懲役5年,判決はもっと低いです。懲役3年,懲役2年10か月,飲酒運転をして救急車も呼ばずに逃げて,寝て,翌朝になって,のこのこと警察に出頭してきたり,逮捕されたりした人が懲役2年10か月,それでも実刑判決を勝ち取れたといってガッツポーズをした検察官もいらっしゃいます。一番右側の欄は,どれだけの酒量を飲んでいたか,お酒の量,例えばビール5.4リットル,ハンドルを握り締めながら最後のビール1缶を空けた19歳の少年もいます。アルコール濃度がどれぐらいであったか,逃げてしまっているので検知できていない人もいるわけです。検知できていないということは,確かに大きな証拠が一つ欠けてしまうことになるかと思うのですが,飲んでいた事実は明らかである。傍証もある。目撃証言もある。でも,この検知ができていないということだけで検察官は,「起訴できません。危険運転は適用できません」と被害者を説得しようとしている事件もありました。   もう一枚めくっていただきまして,そのA群だけ取り上げました。これは本当に生々しいアンケートをそのまま転記しただけのものですので,もし御要望の委員の方々,先生方がいらっしゃいましたら,法務省の方にデータごとまとめてお渡しできます。全部どうぞと思っているのですが,今日はその中のこの抜粋だけを持ってまいりました。御注目いただきたいのは,真ん中の列にあります,警察・検察にどのような理由で危険運転致死傷罪が適用できないと言われたかというところを,ちょっと数例だけ読み上げさせてください。一番上の佐藤隆陸さんの例では,「事故を起こすまで信号無視や車をぶつけるなど全くなく運転ができている。事故を起こした後も狭い道をぶつけることなく4キロ離れた神社まで車の運転ができている」,「一合の酒で酔う人もいれば,一升の酒を飲んでも平気な人がいるので,お酒の量で危険な運転かどうかは決められない」と言われて,危険運転は無理だと言われたケース。   次のものは高石共同代表の息子さんを亡くされた事件なのですが,「長い間逃げていたのでアルコール検知がされていないために飲酒運転は認められない」,「飲んでいたことを示すレシートも証拠としては認められない。」これで自動車の業務上過失致死傷罪と道路交通法違反で問われて2年10月です。次のものは窃盗罪と合わさった事件なのですけれども,「80キロというスピードは生活道路では危険だが深夜の国道1号線では時速何キロなら危険なのか言えない」。   それから,一つ飛びまして,「車を捨てにいくまでに事故を起こしていないので,正常な運転ができなかったとは言えない」,「危険運転致死傷罪で起訴をして裁判で罪状が認められないと無罪になるので,幾つか近い要因はあっても,一か八かでは起訴できない」と。これは多くの被害者が言われていることです。検察官に言わば脅されているのです。無罪になってしまいますよ,無罪になってしまう可能性がありますよと,危険運転で一か八かという賭けできないのです。そのような説明を受けてしまって,何度か諦めるようにというふうに説得されてしまっているんです。   もう一ついきます。松原和明さんの事件です。「酒酔い運転,信号無視,ひき逃げ,スピード違反の4項目全てが該当しなければ危険運転致死傷罪にならない。よって今回の事故は飲酒運転とひき逃げだけだから,危険運転致死傷罪は当てはまらない」このような説明がなされています。   最後の安井さん,A-9番です。「飲酒については酒気帯び運転の起訴もできない事件であり,執行猶予が付く可能性もある。加害者が逃げ帰った自宅で更に飲酒をしていること,事故前の証言などから,事故当時の飲酒量について計算すると,幅が広く,最低値で0.07mg/lという数字が出てくるので起訴は難しい。しかし,酒気帯びで起訴をした程度の求刑はする」と。これで懲役4年です。だんだん年々手口が悪質になってきています。逃げるだけではなくて,逃げた後に,自宅に帰って追い酒をする,重ね飲みをすると。念には念を入れて。たくさんのお酒を事故前も飲んでいたんですけれども,事故を起こしてしまって反省するどころか,帰ってから更にビールを飲んだり,お酒を自宅で飲んだりして,全くその事故のときにどれだけのお酒の影響があったのかというのを分かりにくくしてしまうというふうな。そういった悪質な手口の事件がこの1年,2年でも増えて,今年法務大臣にお会いした方の中でも,重ね飲みをした人,手を挙げてくださいと言うと,7人も手を挙げるのです。そのぐらい手口が悪質になってきています。こういう悪質なことに悪質なことを重ねている加害者に対してなぜ過失罪にしか問われないのか,なぜ危険運転致死傷罪が適用できないのかと。今の危険運転致死傷罪にはやはり構成要件の解釈の幅があるということで,現場ではこういう説明をされて,こういう理由を述べられて,被害者たちは断念させられているわけですね。中には署名活動が功を奏して,例えば東京の岩嵜悦子の息子さんの事件のように,例外的にひっくり返った事件があります。一昨日も宮崎地裁で私たちも裁判を傍聴しに行ったのですが,やはり去年,署名活動が功を奏して,当初は危険運転致死傷罪で起訴されていなかった案件でありながら,署名活動をして,検察に働きかけているうちにころっと危険運転致死傷罪で起訴されることになったと,中にはそういう事件が数件,私たちのメンバーの中にもあります。が,なかなかそうはいかない。一旦検察が「これは自動車運転過失致死傷罪でしか起訴できませんと決められた判断を覆す,ひっくり返してもらうということは,証拠がある事件であっても難しいというのが実態です。   それで,後半,主人の方から言いますのは,私たちの会は,危険運転致死傷罪の見直しだけを求めている会ではございません。危険運転致死傷罪そのものにいろいろな構成要件を放り込んでくださいというようなお願いをするつもりでこちらに来たわけでもありません。そうではなくて,私たちの目的は一つです。逃げた人が得をするような法律ではないようにしてくださいと,そういうお願いをずっと訴え続けています。皆さんのほうが法律にものすごく私たちより知識をお持ちで,いろいろな角度から法律に手当てをすれば,この問題がなくなるかということについては,知見が高いのかなと思っております。後半,主人の方からお話しします。 ○井上(保)氏 同じく幹事をやっております,井上保孝と申します。私たちの子どもたちが1999年11月28日に東名高速で酒酔いトラックに追突されて,娘2人が焼死したという事件がきっかけとなって,危険運転致死傷罪ができました。ただ,その危険運転致死傷罪ができてから,ひき逃げが急増しています。そして,2007年の自動車運転過失致死傷罪,そして道路交通法の救護義務違反の罰則が強化されたということを受けて,多少減っていますが,まだ今でもやはり2000年以前のひき逃げの数を下回るところまでは下がってきておりません。それはなぜかというと,同じく資料の中に,こういう資料が付いているかと思います。逃げ得が解消されていないという資料でございます。確かに2007年に自動車運転過失致死傷罪と道路交通法の救護義務違反が改正されて,厳しくはなりました。でも,現行犯で逮捕されて,危険運転致死罪が適用されると懲役20年まで科せられる可能性があるのに,逃げて,酒の影響により正常な運転が困難であったことが立証されなかった場合は,懲役15年までしかいかない。こういうことですと,抜け穴は塞がっていないし,逃げ得がまかり通るという,こういう現状があります。   この道路交通法改正で救護義務違反を10年に引き上げて,これ以上は私たちはやはりもう無理ではないだろうかと思います。それでは飲酒運転に対して厳しくしたらといっても,道路交通法の方でもかなり厳罰化がなされています。そうすると,この飲酒・ひき逃げ,逃げ得をなくすには,刑法の中で何か新しい手立てをする。危険運転致死傷罪の中でも検討ができないだろうかというようなことを総合的に判断して考えていただきたいというのが,私たちの思いであり,要望でございます。 ○佐藤氏 共同代表をしております,大分県から参りました。佐藤と申します。本日はこのような場を設けていただきまして,本当に感謝いたしております。私たちは署名活動,逃げ得をなくすための法改正を求めた署名活動を始めて丸9年が過ぎました。9年って本当に本当に長いものです。振り返ると,本当に立ち上がれないほどつらい思いをしながら,息子が命を懸けて訴えている逃げ得の問題を解決するために,私たちの命を懸けて,9年間戦ってまいりました。そして今日,この法制審議会に呼ばれて,本当にこれで署名活動を終わりにしてください。逃げ得をなくす法改正をよろしくお願いします。息子たちに報告ができるように,そしてこれまでたくさんの国民の声を頂きました。59万199名のたくさんの皆さん方に法律の改正があったよと,報告ができるような結果を出してください。どうか私たちのこの9年間の苦しみに終止符を打たせてください。よろしくお願いいたします。 ○高石氏 同じく共同代表の高石洋子です。北海道江別市から参りました。今日はどうもありがとうございます。井上幹事,共同代表佐藤からもありましたように,本当にこの9年間,私たちはずっと一つのことだけを目標に頑張って戦い続けてきております。本当につらい日々です。毎日,毎日,本当につらいです。そして私は16歳の高校1年生だった息子を飲酒運転のひき逃げで亡くしたんですけれども,その子の声が聞こえるようです。お父さん,お母さん,僕が教えたんだよ,逃げ得があるよ,まかり通っているよ,こんなのおかしいよ,その声を胸に背中に背負ってずっと9年間頑張ってきました。小さな子どもでも分かる簡単なことです。逃げ得ということは,その場で助けた人よりも逃げてしまう人の方が罪が軽くなってしまうということを小さな子どもでさえ分かることをきちんと道徳的に小さな子どもたちにしっかりと教えていって,絶対にしてはいけないことという教育でも,教えていっていただきたいと思いますし,二度と同じ事故が起きないようにきちんとした立証をできるようなことになって,二度と同じ事故が繰り返されないよう,よろしくお願いいたします。どうかどうかよろしくお願いいたします。今日はどうもありがとうございました。 ○西田部会長 どうもありがとうございました。ほかの参加の方,一言ずつ何かおっしゃりたければ。御希望の方だけで結構でございますので。 ○岩嵜氏 一言申し上げさせていただきます。私は東京で,最終的には危険運転致死傷罪が適用されましたけれども,事故を起こして逃げる途中に更に起こした事故で,その時に息子を見ていながら引きずり続けました。それでも止まることなく逃げて,コンビニに駆け込み,ワンカップを重ね飲みしました。それでも裁判の最初のときには前方不注意とひき逃げだけだったんです。私たちは息子の悔しさを思い,そしてこんなにひどい事件がもう起きないように,必死で今まで戦ってきました。みんな同じような気持ちでいます。もうこのような悲劇が繰り返されないように,きちんとした警察の捜査,そして検察の訴え,裁判が行われますように。私たちの息子たちはもう二度と戻ってこないんです。私たちが今やっている活動というのは,今ある命を,これからの命を守ってほしい,きちんとした法律を作ってくださいという,それだけの思いで9年間頑張ってきました。どうぞここできちんとした法律を作ってください。よろしくお願いします。 ○安井氏 長野県から参りました安井陽子と申します。私の夫の例は,危険運転致死傷罪が適用されなかった事件の一番下に書いてあります,安井誉人になるんですけれども,夫はひき逃げされて,飲酒の車にひき逃げされて,その後,お酒の重ね飲みをして,出頭してきてというような犯罪ということで先ほど説明があったと思うんですけれども,こんなひどいことをしておきながら,懲役4年の刑になったということで,夫を殺しておきながら,こんな懲役4年って短いのではないかということを毎日毎日考えています。まだ事故から1年たちませんので,自分の中でもいろいろ心の整理が付かないんですけれども,人の命ってこんなに軽いんだなということを思いました。法律を知らなかった自分がいけなかったのか,法律がいけないのか,いろいろ悩んでいますけれども,今日このような機会を与えていただきまして,少しお話しできてよかったです。ありがとうございました。 ○祝部氏 神奈川県の茅ヶ崎市から参りました祝部美佐子といいます。今日はこうやって皆さんの前で意見を言わせていただけること,本当にありがとうございました。私たちは本当に逃げ得をなくすために一生懸命声を枯らして署名をずっとしています。先ほどちょっと井上さんから聴いたんですけれども,井上さんのこの間の1回の講演で,その後,本当に4,000人の方が,新日鉄の社員さんが井上さんの講演を聴いて,4,000の署名をしてくださった。それで今度取りにいくというふうに聴いて,本当に国民の人たちがこの逃げ得ということをいけないことなんだ,これは変えなければいけないということを,皆さん本当にそういうふうに思っているんだなということをつくづく思いました。私たちの本当に活動をこれで終わりにしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○和氣氏 栃木県から参りました和氣と申します。私の場合は,平成12年の事故です。飲酒・居眠り運転の大型トラックの正面衝突で大切な19歳の娘を亡くしました。当時は業務上過失で裁かれましたが,「何が過失なんだ」と思いまして,井上さんたちと共に危険運転致死傷罪の活動を始め,危険運転致死傷罪を勝ち取ったわけですが,多くの交通事故の被害者たちから,その危険運転致死傷罪を逃れるために,逃げ得がまかり通っていると,声を伺いました。私も是非微力ながら応援したいと思いまして,会のほうに参加させていただいております。   多くの交通事故の被害者たちは,この法律が命の重みを反映していないとの感情を持っていますが,法律の専門家の方々の判断,物差しがずいぶんかい離しているということを強く感じているところでございます。被害者たちは手弁当で全国を回って,署名活動をしているのです。どれだけの労力,時間,そういうものが掛かっているか是非分かっていただきたい。是非これで活動を終わりにしてください。お願いいたします。 ○松原氏 福岡から来ました松原と申します。平成16年に私の息子が飲酒運転とひき逃げで殺されました。今,逃げ得という言葉をみんなで使っております。これをもう一回掘り起こしてください。逃げ得というのは何でしょうか。人の命を見捨てて逃げることなんですね。ここのところを考えていただきたい。人の命を見捨てて逃げた人間がなぜ刑罰が軽くなるのか,これは誰が考えても分かることなんです。是非ここのところの命の重さというものを深く考えていただいて,そして逃げ得の起こらない,防ぐことができる法律に是非変えていただきたい。そのようにお願いをいたします。 ○小佐井氏 愛媛から参りました小佐井と申します。私は遺族ではありませんが,関係者ということで,この会の活動に6年間御一緒させていただいています。ただいま,会の皆様がお話しになり,訴えておられることは,単なる応報感情という捉え方で受け止めるべきではないと思います。やはり,命の重さに対して法がどのように向き合うのか,交通事犯の刑事責任の在り方というのをどう考えるべきなのか,そのことが根本的に問われていると言えます。正に法の対処すべき課題が,ここには厳然として存在していると感じています。そのことを是非,委員の先生方,しっかりと受け止めていただいて,御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○西田部会長 どうも貴重な御意見,ありがとうございました。本日は特に飲酒・ひき逃げ,逃げ得という点に焦点を当てて,御意見を伺いましたので,その点もしっかり今後議論していくつもりでございます。どうも本日は長時間ありがとうございました。 (飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会の意見陳述者等退室) ○西田部会長 ではヒアリング,ここで休憩としたいと思います。           (休     憩) ○西田部会長 では時間となりましたので,ヒアリングを継続したいと思います。   4番目の交通事故被害者遺族の声を届ける会の方に入っていただきます。 (交通事故被害者遺族の声を届ける会の意見陳述者等入室) ○西田部会長 どうも本日は御足労願いましてありがとうございます。本部会は法務大臣からの諮問第96号に基づきまして,自動車運転による死傷事犯に対する罰則の整備ということで調査審議をしております。その前提としまして,被害者団体の方から御意見や御要望を伺っているところでございます。時間的には15分という短い時間しかございませんが,率直な御意見を伺いまして,今後の議論の重要な参考とさせていただきたいと思います。私,申し遅れましたが,部会長の西田でございます。   それでは,代表の大塚兼治様からまずお願いいたします。 ○大塚(兼)氏 今,紹介ありました,私は交通事故被害者遺族の声を届ける会の代表を務めております大塚です。よろしくお願いします。   本日は,自動車運転による交通死傷者事犯の罰則の整備についてのヒアリングを開催していただき,感謝申し上げます。   当会は2004年に交通事故遺族15名が関係省庁を訪問し,要望書を提出して発足しました。私たち遺族の願いは交通死ゼロを達成することです。この観点からも交通犯罪の遺族としての意見を,隣にいます森本,また,大塚から述べさせていただきますので,よろしくお願いします。 ○森本氏 森本と申します。お手元の方に当会の意見書が配られていると思いますけれども,時間がありませんので,そちらの方は御覧になっていただけるかと思いますので,かいつまんで要点を申し述べたいと思います。   まず,当会の結論としましては,今回の交通事犯をめぐる法整備に関しまして,危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪,これを一つにしてほしい,一つの法律で全てを裁いてほしいというのが結論でございます。27章と28章に二つの法律が分かれているわけでございますが,これを一つにするというのは,非常に専門的にはいろいろと異論もあり,難しいことなのかもしれませんが,私たち素人遺族からしましては,そうしていただくことが,全てが解決する唯一の方法であると思っております。   平成19年,法制審議会において自動車運転過失致死傷罪,これが新設されまして,5年が7年になりました。危険運転致死傷罪は平成13年でしたかね,成立が,最初は15年でしたが,刑法全体に対する見直しから,これが20年に上限が引き上げられた。自動車運転過失致死傷罪につきましては,業務上過失致死傷罪から,5年から7年と,2年上乗せされたわけですが,しかしながら,5年と15年というギャップが更に7年と20年という,逆に広がっているわけでございます。それで,この悲劇がどこにあるかと申しますと,我々遺族の立場から申しますと,私たちは家族を奪われて,非常に突然深い悲しみに突き落とされます。そのときに,お宅の事故はちょっと危険運転ではありませんね,危険運転には該当しませんねと言われたって,何が危険運転ではないですかと,人が死んでいるんですよということになるわけなんですね。意見書の方にも書いてございますけれども,例えば脇見運転,非常に軽く扱われて,そんなに重い刑罰が与えられない。脇見運転にしましても,免許を国からもらっている人間が前を注視せずに,数トンもの鉄の固まり,車,凶器を進行させれば,ひょっとしたら横から人が出てきたら,死傷させるおそれがあるということは,これは必ず認識できるわけでありまして,その意味においては,決して私たちは過失とは思っておりません。法律的には難しい認識ある過失であるとか,未必の故意であるとか,我々にはちょっと難しい言葉がございますけれども,そんなことも意見書の方には書いておりますけれども,我々は決して過失ではないと思っているわけです。   この遺族というものは,危険運転ではないと言われたら,そうしたら,自動車運転過失致死傷罪というもので裁かれる。この境目というものが非常に分からない。我々だけではございません。私が知っているだけでも,遺族が署名を集めて検察庁に陳情したところ,自動車運転過失致死傷罪が変更請求されて,危険運転致死傷罪になった例,たくさんございます。数例ございます。私が知っているだけでも。それほど専門の検察,検事の判断においても難しいというのが危険運転致死傷罪でございます。これがあるのは,ある意味遺族が作った,作ってくれと言ってできた法律でありますから,遺族としては危険運転致死傷罪,もっと厳しくしてくれというのが本来の声であり,私たちもそう思います。ただ,冷静に考えると,私たちの家族はもう,幾ら厳しくしてもらっても帰ってきませんので,これからまだ私たちのような悲しみに見舞われていない一般の国民の方々の命を守っていただくための法律にしていただきたい。そのためには,一番予防効果,抑止力のある法整備にしていただくのがいいと思っております。   危険運転致死傷罪というのは,これを,例えばてんかんを入れる,では網膜色素変性症はどうなんだ,心臓病の人はどうなんだ,いろいろございますね。脳の障害で,見えているけれども,視野が認識できないとか,いろいろございます。そういった問題を考えていくときりがない。しかもその一つ一つにおいて,今の4要件におきましても,殊更の信号無視であるとか,制御できない高速度であるとか,正常な運転ができない飲酒であるとか,非常に判断し難い,非常に難しい法律となっております。これを更に広げて混乱を招いても,私は大した効果は上がらない。広げれば,また次の段階でこれは危険運転ではないのかという人がまた出てくる。その繰り返しではないでしょうか。   片や自動車運転過失致死傷罪,これは7年に,平成19年に業過から引き上げられまして,これは毎月の死者の数が,当会のホームページにもITARDAの数値を速報しておりますけれども,明らかに自動車運転過失致死傷罪の新設以降,減っております。これは非常に抑止効果があった。これは一般のドライバーが自分も関わるかもしれない法律だからです。危険運転致死傷罪は一般の人には関係ありません。へべれけに酒を飲んで車を運転する,故意に赤信号を無視する,故意に幅寄せをする,40キロの所を120キロで走る,そんなことは一般のドライバーはしないわけです。極めて異常なドライバーだけに関係する法律であり,だから限定的に傷害致死相当の罪を与える,罰を与えることになっているんだと,我々は理解しております。その法律を幾ら広げたところで,厳しくしたところで,一般のドライバーの注意喚起にはほとんどならない。一般の人の,これからなくなるであろう命を守るためには,自動車運転過失致死傷罪の法定刑を更に引き上げていくべきです。そして危険運転致死傷罪の適用範囲も広げるのであれば,これを最初に申し上げたように,もう一つにしてしまって,上限20年の中で裁判所の裁量において全てを裁いていただく。これが一番いいのではないかと思います。危険運転にしてもらったりとか,されなかったりとか,このギャップ,遺族はその中で更に苦しむわけです。危険運転致死傷罪が適用された遺族からは,そのほかの遺族は,普通の事故と言われます。あなた方は普通の事故と言われます。遺族の差別化でもあるんです,この法律は。我々は遺族としてここで意見を申し上げているのに,危険運転致死傷罪をなくせと言っているように聴こえるかもしれません。そうかもしれません。でも,危険運転致傷罪で裁かれる事案の中には,本来殺人罪,あるいは傷害致死で裁くべきものが何件かあるのではないでしょうか。わざわざこんな難しい法律を27章に作らずに,殺人罪,傷害致死をなぜ適用しないんでしょう。アメリカのハワイ州では2002年に酒酔い運転が殺人罪で裁かれているという例を聴いております。そうすればいいのではないでしょうか。そして交通事犯に関しましては,上限を20年とした自動車運転致死傷罪,過失を取りまして。ほかの名前でも結構です。交通事犯,特殊な交通事犯を専門に裁く立法をしていただいて,その法律で裁いていただく。これが一番多くの命を救うことができることだと思っております。時間がありませんので,この後,大塚からも意見を述べさせてもらいますので,お手元の意見書に目を通していただいて,素人は全然法律のことも分からずに,とんでもないことを言ってくれるなと思うかもしれませんけれども,我々は命を守ることに関しては,皆さんよりも深く深く毎日考えておる人間であります。専門家の皆さんの知恵を絞って,何とか我々が望むものに近い法整備をお願いしたいと思います。   では続いて大塚の方から。 ○大塚(つ)氏 ではよろしくお願いします。ちょっと今回のヒアリングとは少し外れるかもしれませんけれども,私たちは交通事故での加害者に対して,やはり人の大切な命を奪ったということに対して,やはり厳罰化を望んでおります。にもかかわらず,ちょっと起訴率のことになるんですけれども,昭和60年ぐらいまでは,起訴率70%台だったのが,その62年には66%が16%になっていますが,これは厳罰化と反対の数字ではないかと思うんですが,なぜこのようなことになったのか,これは人の交通事故に対する命というものを本当に考えていただいてのこの数字なのか,ちょっとお伺いしたいなと思うんです。   あと危険運転致死傷罪で,やはり文言の中に制御することが困難な高速度であるとか,信号を殊更に無視であるとか,このようなことで別に交通事故が起きて人が死んでいるわけでもないということは,皆様方,よく御存じだと思うんですけれども,なぜこのような文言になったのか,その辺もちょっとお伺いしたいです。   実際,このような危険運転致死傷罪のような内容を見ると,本当に車を凶器だということをきちんと捉えていらっしゃるのかどうか,非常に疑問に思います。例えば車というのはやはり科学の最高の知恵と技術を集めたものであって,重量も相当な重量がありますし,例えば一般犯罪でよく使われる刃物であるとか,首を絞めるネクタイであるとか,ひもであるとか,そういったものと比較してもらっても全然違うものだと思うんですね。相当な,これはもう重大な凶器であり,相当な脅威を持つ凶器であるということを本当に認識してでのこういう法律なのかどうか,非常に疑問に思います。   例えば原子力発電であるとか,そういうものも確かに科学の最高の知恵と技術,こういうものを集めたもので,ですから,これも広島の原爆投下されたときは,たった一つの原爆の爆弾で20万人以上の人が死亡したことになっていますけれども,やはりそれに匹敵するぐらいの車というのは,凶器ではないかと思うんですね。毎年,今,23年度は死亡者が5,000人を切ったというふうに言われていますけれども,これは30日,5,000人切ったのは24時間以内であって,30日以内まで加えると,5,000人を超えています。5,450名になっています,昨年でも。更に厚生省とかいうのを見ると,もっと,2,3か月後に亡くなる方も多いということですから,もっともっと人数が増えるのではないかと思います。これだけの人数が毎年,毎年,命を失っているようなことが果たしてほかにあるのかどうかと。これも犯罪によって亡くなっているわけですし,これは全て安全運転を逸脱したことによる,私たちから見たら危険運転,危険運転によって命を奪われていること,つまりは安全運転を逸脱した時点では,もう未必の故意ということになると思います。それを逸脱した時点では,もう人が死ぬということはもう容易に考えられることですし,事故が起きなかったのはたまたまということになると思います。そういう点では,全てが死亡事故に関して言えば,私たちから見れば,全てが未必の故意であるにもかかわらず,このように起訴率も10%,今はもう10%切るぐらいになっていると思いますが,起訴率だけ考えてもこのような状態ですし,そしてまたちょっと話が前後しますが,死者数は確かに5,450名,30日以内だけですけれども。でも,死傷者数を考えると,85万4,493名で,一番少なかった60万人台に比べてまだはるかに多い数字になっています。この交通事故の負傷者というのも本当に痛ましい,よくパラリンピックなんかでも見ることができますが,そこに出てこられない,もう寝たきりの状態であったりとか,もう一生普通の状態に戻れない人たち,そういう人たちがたくさんいる,この85万4,493名です。本当にこのような数が出ているのは本当に車だけだと思います。果たして,今,原子力発電でいろいろな問題がありますが,こんなに死傷者が出ているのかというふうに考えます。やはり車というのは相当な力を持った凶器であるということを十分にお考えいただいて,法律をやはり作っていただきたいと思います。 ○西田部会長 ありがとうございました。御意見は最終的には自動車というものが極めて危険なものであり,最終的には自動車運転致死傷罪という形で法定刑の上限を20年にするという単一化の方向で立法してほしいという御意見として承りました。どうも本日はありがとうございました。 (交通事故被害者遺族の声を届ける会の意見陳述者等退室) ○西田部会長 それでは引き続きまして,本日5番目でございますが,NPO法人交通事故後遺障害者家族の会の方にヒアリングをお願いします。 (特定非営利活動法人交通事故後遺障害者家族の会の意見陳述者等入室) ○西田部会長 どうぞお座りください。本日は御出席くださってありがとうございます。本部会は法務大臣の諮問によりまして,交通死傷事犯の罰則の整備ということで審議をしております。その前提といたしまして,被害者団体の方から御意見,御要望を伺うということで本日の会議を持った次第でございます。私,部会長の西田と申します。よろしくお願いいたします。大変短い時間,15分という短い時間で申し訳ないのですけれども,できるだけその時間内で御意見,御要望をお述べいただければと思います。   こちらの方には,意見陳述人,被害者家族A様名義の意見書が参っておりますが,まずA様から御意見をどうぞ。 ○被害者家族A こんにちは。本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。Aと申します。前回,こちらの方にお伺いしたときに,長いお時間を頂き,お話をお聴きしていただき誠にありがとうございます。   本会は北原さんを代表とする交通事故後遺障害者家族の会です。この家族の会には交通事故により重度障害を負った多くの被害者がいます。本日のヒアリングについて,家族の方々とお話をすることがありました。どういうことを皆さん伝えたいですか。何を一番思いますか。何を一番求めていますかと皆さんにお聴きした際,皆さんの気持ちの中に加害者に対する処罰の厳罰化を求めるという言葉が一番多くありました。なぜそのような気持ちになるのか,私たちの心の中には事故から,悔しい,許せない,あり得ない,何でという気持ちが私たちの心の中にあります。その心から処罰の厳罰化について意見を申し上げたいと思います。また,この機会に事故防止の視点と被害者の正当な救済がなされる視点の意見も述べさせていただきたいと思います。   10年,20年前は,車を運転するときにナビゲーションや,携帯電話を使用するというのはありませんでした。しかし今,車を運転するために集中を阻害するものが一杯あります。ナビゲーションをずっと見て運転をしたり,携帯電話で話しながら,適当に運転していても,行きたい所には着くからいいというふうに無責任に,乱暴に運転する方々が多くいます。それは増加傾向にあることをよく御存じだと思います。なぜ責任を持って,なぜ集中しないのでしょうか。その理由の一つには,交通事故は故意ではないと判断され,処罰が甘くされている事実が事故を未然に防止できず増加している要因の一つになっていると思います。重大な被害結果を起こした無責任な運転手に対して,執行猶予のない罰金刑に終わらない,その結果,人にけがさせてしまったその重大な結果を反映した処罰として,実刑を増やしてください。人の生涯を壊した罪の認識を理解し,身をもって痛みを受け理解する為にも執行猶予のない重い刑罰に法改正されることを私たちは強く願っています。   呆然と運転して事故を起こしても何ら罪の処罰を受けない加害者に対して,私たち被害者家族,そして被害者本人はそのけがを負わされた後遺症から,毎日休むことなく一生苦しみ続けています。本来の幸せな生活を失い,生命維持のために喉に穴を空けてる方もいます。,たん,唾等が誤嚥して,誤嚥性肺炎にならないように,喉に穴を空けてたんを吸引します。そのときの苦しみというのは,もう目を真っ赤にさせて,顔も真っ赤にさせて,体を硬直して,ぐっとすごい苦しみの中でたんを吸引する,それが1日に何十回もあるんです。また,脳の障害,頭部外傷によるてんかんやけいれんがいつ発生するか分からない。突然ぶるぶるぶるっと震え始めたら,そのけいれんが止まりません。安心して寝ることもできない日々がずっとずっと続きます。事故のときのそのけがだけではなく,その後もずっと何年も余命まで続く苦しみが私たちにはあります。   私の母が言いました。お兄ちゃんはいつも自由に楽しく仕事をしてきたのに,今,食べたいものも食べられなくなって,動きたくても動けなくなって,手もこんなにぎゅっと固く握りしめて動かなく,動けない体という牢獄に置かれて,ずっと痛みを続けて生きている。しかし加害者は事故の時に携帯電話で話しながらの事故だったのに,今でも携帯電話を危険だと知りながら,運転中に電話をしていると加害者は平然と刑事裁判時に話していました。全く反省していない加害者,それでも何の痛みもなく過ごせているんだよねって,何で。   介護中は治療の痛みから,介護者を突然殴ったり,蹴ったり,痛いからやめてっていう思いで腕を噛むこともあります。今まで両親が頑張って立派に育て,本人も頑張ってきた知識,人格,貴重な財産が破壊されています。被害者家族は国に加害者の罰則を訴えたくても,時間的にも体力的にも精神的にもその余裕さえ一切ない日々を過ごしています。被害者,重度障害者は一生続く過酷な生活の中で,生きていく苦しみについて,是非御理解いただき,お兄ちゃんの優しい人格,みんなの優しい立派な一人一人の人格が破壊されている,その現実を処罰の厳罰化に最大限考慮していただけるようにお願いします。   加害者の処罰の重さは被害者と家族の苦しみに見合わず,不公平で人権軽視の罰則になっていると考えています。後遺障害の中には,パラリンピックに出られるような第2の人生を歩める方もいますが,重度脳障害を受け,痛いからここ外して,かゆいからここ,苦しいからここ何とかしてということさえも言えない方々がいます。それらの能力さえも奪われた事案について,重度脳障害者の家族の立場から,加害者の処罰について特段の厳しい処罰をお願いします。   加害者が警察の供述調書作成時,刑事裁判の尋問の際に反省の態度を示したとしても,本当にその加害者が反省しているかというのは,誰にも分かりません。刑事裁判のときに裁判官が加害者に今後どのように,何をしますかと聴いたときに加害者は,今後謝罪に伺いますと誓いました。刑事裁判の判決文には,反省しているので情状酌量する旨の文面がありました。しかし,刑事裁判が終わった後も,全く一度も連絡も,病院と同じ地区に住んでいるのに病院に訪れたこともありません。加害者の本当の反省は誰にも分からない。不明確な項目を処罰の判断基準に含めないでください。   また,損保会社による賠償支払いがあったとしても,私たちが求めているのは,元の健康な体,それが唯一の希望です。加害者が起こしたその罪,その重さは,ごめんなさいと謝っているから謝罪しているとか損保会社の支払いがあるからという理由で許せる者ではありません。その元に戻せない体や貴重な人格を奪った罪の重さは謝罪や損保会社の支払いを理由に情状酌量には値しません。事故検証の結果と事故被害の重大性から処罰の判断基準にしてください。もし加害者が無保険者の場合や,全く反省のない態度を示した場合は,運転手の責任問題として特段の厳しい処罰に引き上げるようにお願いします。   そして,刑事処罰に関し,痛みを伴わない執行猶予付きではなく,被害者が重度の後遺障害を負い,ずっと苦しんでいるこの痛みに見合うことはないけれども,少しでも痛みを感じる実刑を求めます。   私たちは事故を未然に防ぐ手段に関して,どのような方法があるか被害者家族間でいろいろと話し合いました。その中で,やはり処罰の厳罰,先ほどにも述べたように,処罰の厳罰化をして,増加している無責任な運転手に対して,無責任に運転していると,自分自身も痛い目に遭うんだよという警告を鳴らすためにも重要だと感じています。人を傷つけたときに罰金刑や執行猶予で済まされない重大なことであるという認識をさせることが事故を未然に防ぐことにつながると思います。   また,事故に遭ったときに,加害者は保身のために供述の際,度々嘘をつくことがあります。目撃者もいない事故で嘘を見抜けない場合に,怪しいな,何でなんだろうって被害者家族は感じます。怪しいだけではどうにもならない,そのときに被害者が無実の過失責任を負わされてしまうことがあります。声の出せない被害者に無実の過失責任を負わされる懸念改善のために,ドライブレコーダーの普及について,各関係省庁と話合いをお願いします。ドライブレコーダーを搭載することで,運転手自身も,ああ自分の運転が記録されるので慎重に運転しよう,もし事故に遭ったときにということを考える意識向上につながると思います。将来的に全車両にドライブレコーダーの設置が進み,明確な事故解析と無責任な運転手を減らしてほしいと願っています。   次に,警察の事故調査方法に関する意見についてお話しします。供述調書の可視化の実現を早急に求めます。可視化について,今,法務省でも御検討されていると新聞に記載がありますが,警察が加害者の供述調書に,こうだったから,こうなのではないのという形で誘導して書き加えることが無視し得ないほど生じていて,被害者は二次災害を受けています。実際に私たち家族の中で,うちもそうだったよ,ああ,私のところもスピードをこんなふうに言われたよ,加害者と話したら,そんなこと言ってないと言っていたよということが多々起きています。それらについて疑いを持つことではなく,供述時に可視化をすることで,その疑いがクリアになります。是非可視化の実現を早急に求め,加害者の,また,当事者の話したことが供述書に記載出来るようにお願いします。   そして,人身事故による事故検証,飲酒運転の疑いのため,飲酒検査とドラッグ検査を必ず行ってください。見た感じ,動揺しているけれども,まあ酔っ払ってないだろう,夜中の事故でも見た目で判断しないでください。見た目で判断してしまうと見過ごしてしまう犯罪もあります。人身事故の重大な事故に関して,飲酒運転の検査とドラッグ検査,これは是非必須項目としてください。それらの検査がされていないがゆえに,被害者家族は,ああ,あのとき飲んでいたのではないのかなという思いがずっと消えることはありません。警察の初動事故対応時に運転手の運転能力を即正確に検査していただけるように全国にお伝えしていただき,被害者家族がそのような気持ちを持ち続けさせないようにお願いします。   今回添付資料に付けた資料について,テレビなどの報道でも,少年の上申書の誘導かというのがあります。そちらを見ていただきながら,本会から伝えたい事件として,この10月20日付読売新聞夕刊に,当事者に不当な圧力を加え,架空の事実を認めさせている,足利殺人犯えん罪事件や東電のOLえん罪事件,この新聞記事にあるようなえん罪事件,これらはほんの一部なのか,もしかしたらもっと供述のときのお話を,当事者の話がきちんと書かれていなかったら,細かなことまで見ていくと,もしかしたらもっとたくさんあるかもしれません。このようなことが二度と起きないように司法制度の改善をお願いします。警察の思い込みから当事者や目撃者から架空の供述をさせて,認めないと勾留を続け,認めると早く解放するという手段が行われないようにお願いします。   交通事故のような供述調書のときでも,被害者家族が,被害者のお父さんが,自分は許せないのに,警察の方が許せるよねと誘導を執拗にされたというお父様がいらっしゃいました。息子がけがをしてしまい許せないけれども,どうしていいのか分からなくて,もう長い時間供述調書の部屋にいるのも苦痛になってしまって,加害者のしてしまったことは許せますと一言答えてしまったお父様がいます。それだけが原因ではないと思いますが,遷延性意識障害を負っている息子のその事故は不起訴になってしまいました。   また,本会員の話の中では,警察の方や検察官の方が被害者の立場をよく考慮していただいているという話がある一方で,先ほどのように加害者の走行速度を誘導したりとか,加害者に供述書面をさせている意見などもあるので,しっかりと見直しをお願いします。   最後に,本会の会員の事件で12歳の少年の供述について,少年本人に意見を聴くことができたお父様がいらっしゃいます。そのお父さんが少年に聴いたときに,供述調書に書いてあったことが実際事故をどのように見ていたかを聞いたら,調書内容に書いてある内容とは違うと言いました。違うけど,何かそういうふうに書いてあると12歳の男の子は答えました。しかし,その12歳の男の子は法廷で証言はされませんでした。12歳の男の子は,大人のおまわりさん方がこの事件について,あなたが見たのはこうだったんじゃないですかって,そういった誘導があったかもしれません。子どもは大人からそうなんじゃないのって言われたら,ううん,違うって言える勇気はあるとは言い切れないと思います。言える子もいると思います。でも,その供述調書の信ぴょう性に関して被害者家族は疑いを感じています。交通事故の供述調書に書いてある事実について,尋問ができない場合は調書を証拠としないように,民事訴訟法の改善を求めます。   長くなりましたが,今回のヒアリングについて,貴重なお時間を皆様,ありがとうございます。処罰の厳罰化を求め,私たちの悔しい,苦しい,あり得ないという私たちが思うような気持ちが二度と続かないように,また,交通事故を,被害者を一人でも減らせるように,どうぞよろしくお願いいたします。 ○西田部会長 どうもありがとうございました。理事長の北原様,あるいは竹島様からはよろしゅうございますか。 ○北原氏 北原でございます。私たちは被害者の,障害者の介護という非常に負担の大きい課題を抱えて人生を送っております。実は私事を一言言わせてもらいますと,1987年の11月にうちの当時11歳の息子が横断歩道を自転車で渡っているときに,対向方向から右折してきたトラックに衝突され頭部打撲されました。自転車に乗っていると両手で頭をかばえないので頭部打撲は避けようがないわけですね。よく見える場所で信号はなかったのです。そこで,息子はぶつけられて,そのままアスファルト道路に転倒したのですから往復ビンタを食って,意識を失いました。事故から4時間後に脳内出血が始まったのですぐ手術しないと今晩中に死亡しますと言われて救急手術をしました。その際主治医に助かる確立は1パーセントと言われましたが奇跡的に命が助かりました。事故以来25年間介護生活していまして今年11月で息子は36歳になります。いまだ続く被害者介護人生の重さについて御理解をお願いします。体重60キロになった息子をトイレに座らせる際に滑り落ちる場合がありますが,重くて座らせることが出来ないのが介護困難さの一例です。遷延性の方はそれなりに別の問題を抱えておりますけれども,そういう経験から事故捜査について思うことは,警察の調書作成はストーリーが大体決まっているわけですね。それに誘導してしまう。例えば速度の聴取について言うと,前をよく見ないで人にぶつけるような運転する人が,自分の速度は時速何キロでしたと供述したことに,ほとんどの調書がなっています。これは大変不自然です。前をよく見ていなかったので速度は分かりませんと言う方が自然です。なぜ時速何キロと書くのでしょうか。マニュアルにそう示しているのでしょうか。そこがおかしい。   それで,速度を誘導して言わせてしまう。私は目撃者調書を見た経験がありますが,そのような目撃者調書が存在する下で民事裁判での解決をしなければならないわけです。そういうときに目撃者証言なんかが問題になるわけですけれども,目撃者が協力してくれなければ,民事裁判の証拠調べで証言が得られない。書いてあることが本当かどうか確認できない。そういうものが裁判所で判決の証拠として使われてしまう。目撃者が裁判所に来てくれないと尋問で確認できないわけです。尋問で確認できない調書が裁判の証拠として使われてしまうという理不尽さ,こういう扱いはやめてほしいのです。これらの話は処罰の問題が今の主なテーマ,メーンテーマですから,ちょっとずれると思います。だけれども,被害者の人権救済,あるいは名誉とか,いろいろな救済が有機的に関連する処罰になって被害者救済は成り立つべきと思うのです。そういうことを考えると,私の言うことも,今のメーンテーマではないけれども,聴いていただきたい。   一方で,刑事の記録というのは加害者を処罰する目的であって,民事のための材料ではないという最高裁判例があります。反射的に民事でそれを使うんだという「反射的利益論」というのがあります。それもおかしい。警察の調書というのは公的な機関の公文書ですから,社会の秩序を守るために,広く法的に被害者を救うためにも機能しなければおかしい。それが裁判所で反射的利益論だとか何とか言って,捜査の主目的は刑事ばかりに使うんだと,狭い目的のために使うというのは,被害者救済の趣旨に沿わないと思います。やはりグローバルで幅広く,警察の機能や司法の世界では,弱い立場の被害者を救うという視点でそういうものを見ていただきたいということを,この場で話させていただきたいと思いますので,よろしくお願いします。 ○被害者家族A すみません,一つだけいいですか。刑事裁判の被害者参加制度に私は参加したんですけれども,尋問がすごくたくさん削られてしまって,ほとんど事故の内容が聴けなかったとかという思いはあるんですけれども,それ以上にやはり被害者参加制度という制度はすごくつらい面もものすごく,目の前にするのでつらい面もあるんですけれども,有り難く感じています。検察官の方々,御担当者の方々もものすごく真剣に被害者の家族に対して接してくださいました。あともう何点かこういったところを改善してほしいなというところをこれから進めていただけると思いますので,被害者参加制度という制度ができたことに本当に感謝しています。ありがとうございます。 ○西田部会長 どうも今日はいろいろな側面からの問題点を明らかにしていただいて,ありがとうございました。十分に御意見は今後の議論に反映させていきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。 (特定非営利活動法人交通事故後遺障害者家族の会の意見陳述者等退室) ○西田部会長 それでは,次に鹿沼児童6人クレーン車死亡事故遺族の会の方のヒアリングを行いたいと思います。パワーポイントを使ってプレゼンテーションをなさるそうなので,設備のほうをよろしくお願いいたします。 (鹿沼児童6人クレーン車死亡事故遺族の会の意見陳述者等入室) ○西田部会長 どうぞ御着席ください。本日は御足労いただいてありがとうございます。本部会は法務大臣からの諮問第96号に基づきまして,自動車交通事犯に関する罰則の整備について調査,検討しているものでございます。私,部会長を務めております西田と申します。よろしくお願いいたします。おおむね15分,鹿沼児童6人クレーン車死亡事故遺族の会の皆様から,まず代表のA様に御挨拶を頂いた後,B様からパワーポイントを使ってプレゼンテーションをしていただき,その後,お一人ずつまた御発言を頂くという予定で進めたいと思います。   では,まずA様,よろしく。 ○A氏 改めまして,本日は私たち遺族に対し,このような発言の場を設けていただきありがとうございます。私は遺族会の代表を務めさせていただいております,Aと申します。よろしくお願いいたします。報道等により既に御存じだとは思いますが,私たちの子どもたちは平成23年4月18日,てんかん無申告の運転免許不正所得者によるクレーン車の危険運転行為により,突如未来ある命を奪われてしまいました。我々の事故後も平成23年度中に何件かのてんかん無申告者による事故がありましたが,私たちが17万人,現在は20万人の署名を法務大臣並びに国家公安委員長に提出した僅か3日後,4月12日に京都祗園において,またしてもてんかん無申告者による防げたはずの事故が発生してしまいました。このように,法や制度の改正が遅れれば遅れるほど,尊い命が奪われていく現状を踏まえ,防げた事故に対し,無念の気持ちで一杯であります。今,この瞬間にも同様の事故が起きてしまう可能性があるという現状を,遺族の我々だけが考えても何の意味もありません。本日はここにお集まりの皆様が,自分の愛する御家族に思いをはせ,1日でも早い法改正を実現させられますよう,そして,小手先だけの法改正で事故はなくならないという私たち遺族の強いメッセージを込め,発言をさせていただきます。発言については,当会Bより説明させていただきます。 ○B氏 Bと申します。プレゼンの方をやらせていただきます。よろしくお願いします。こちらに映っていますのが我々の子どもたち6人です。こんな幼い子どもたちが,あんなにも恐ろしい事故によって命を奪われてしまった事故です。そのことをまずお話ししてからスタートしたいと思います。   始めに,事故は時間,場所,そして人を選びません。本日お集まりの皆さん,今,生きている皆様方が帰りに殺されてしまうかもしれませんし,私たちが殺されてしまうかもしれません。皆さんの愛する家族が明日亡くなってしまうかもしれません。あの日,事故とはそういう理不尽なものだということを私たちは思い知らされました。   しかし,法や制度を見直すことにより,あのような理不尽な事故は防げるはずです。そして,今後救える命があるはずです。先ほど代表が言いましたように,本日お集まりの皆様が,形ばかりの審議会ということではなく,自分のお子さん,愛する人に思いをはせて,我々の訴えをお聴きいただければと思います。   請願事項です。4月9日に大臣請願を行いました。請願事項,刑法の条文改正,法務省,署名数20万1,412名,てんかん無申告の運転免許不正取得者による死傷事故に対し,危険運転致死傷罪が適用となるよう,刑法の条文改正を要望します。運転免許制度の改正,警察庁,署名数,19万6,733名,てんかん自己申告の運転免許制度の問題に対し,確実に不正取得ができない運転免許交付制度の構築を要望します。これに対し,17万の署名を重く受け止め,真正面から取り組むと大臣は発言されました。しかし,署名提出後の3日後,4月12日,これも先ほど話しましたように,またしてもてんかん無申告者の運転者による危険運転行為の事故が起きてしまいました。この事故については,運転手本人も命を落としてしまいました。防げた事故です。救えた命です。残念でなりません。   そして,その後に警察が行った対策,これらでは事故を減らすことはできても,防ぐことができないということが証明されたと思います。我々が言いたいことは,事故原因の本質に目を向けてください。そのことを強く言ってきたつもりです。   続きまして,これは警察庁に使った資料なので,これを話している時間はありませんが,事故歴から見る自己申告の運転免許制度の限界ということで,○○受刑者の事故歴を載せております。10年間で12回事故を起こし,執行猶予期間中にクレーン車を取得し,何度も何度も医者に止められながら免許を更新し,執行猶予期間中に我々の子どもたちをひき殺してしまいました。   続きまして,自己申告の現状から見る問題です。先日の5月16日の民主党法務部門会議での我々の質問に対し,てんかんの申告者数は何人いらっしゃるんですかという質問に対しては,警察庁は2,430人と答えました。余りにも少ないのではないでしょうか。この辺はちょっと飛ばします。   祗園の事故において,医師の記者会見のときに,私は運転しないように言いましたという記者会見がありましたが,あの医師は結果として加害者の命も被害者の命も救っていません。命を救うことを生業としている医師が本当に採るべき行動とは何だったのでしょうか。警察庁への提案です。自己申告はもはや限界です。医師の通報制度を提案します。こちらについては,昨日国家公安委員長の方に提案がなされたと思います。納得がいくものではありませんでしたが,一歩前進だ,警察が実効性があるというふうに私たちに言う以上,その数字を検証していってほしいと考えております。   ここからが本日,法制審議会に対する我々の意見です。   遺族の処罰感情から見る刑法の条文改正の必要性,その1です。法律を遵守している人が国民が理解できる過失により起こした事故だったとしたら,亡くなった人間は決して帰ってきませんし,悲しみというものは癒えることはありません。自動車運転過失致死罪もあり得るかもしれません。そして遺族も納得できるかもしれません。しかし,我々の鹿沼のクレーン車事故や祗園の事故,亀岡の事故はどうだったでしょうか。ルールを守っていたでしょうか。これらの事故はルールを守っていた子どもや罪のない人が,突如ルールを守らない大人によって殺されてしまった事故です。いや,事件です。子どもたちは生きていれば,あと何年生きられたか想像してみてください。○○受刑者に下された判決の上限,7年しか生きられなかったのでしょうか。   遺族の処罰感情から見る刑法の条文改正の必要性その2です。遺族にとって一番つらいということは何なのでしょうか。過去の交通事故遺族がこんなにも苦しんでいるのはなぜでしょうか。それは子どもたちが殺され,夢も未来も全て奪われてしまったのに,加害者は生きていられるからです。子どもたちはもう二度と大好きなママに会うこともできません。お腹一杯御飯を食べることも,お菓子を食べることも,大好きな野球やサッカーをすることもできないのです。なぜなら,生きていないからです。皆さんの家族が,同様の理不尽な事故で殺されたことを想像してみてください。現行の刑法の上限が危険運転致死傷罪しかないのなら,被害者遺族がその上限を望むことは当然なのではないでしょうか。なぜなら,加害者には生きていてほしくないからです。   次です。事故の抑止効果から見る刑法の条文改正の必要性その3です。5月16日に行われた民主党法務・内閣・厚生労働合同部門会議で明らかになったように,てんかん自己申告の割合は極めて低く,平成23年度は2,430人だそうです。自己申告の免許制度が限界なことは,申告率からも明らかです。ではどうしたらてんかん無申告の事故をなくすことができるのでしょうか。私たちは警察庁に医師の通報制度を提案しました。警察と医師がデータベースを共有することこそが極めて低い現在の自己申告率を高め,事故を未然に防ぐことのできる最良かつ最善の方法だと考えております。   また,本件事故がそうであったように,法の抜け穴により尊い命が奪われることはあってはならないと考えています。てんかん無申告者による運転者が法の抜け穴により免許を取得し,他人の命を奪い,犯罪者となってしまうことや,自分の命をも失ってしまうことは悲劇です。事故は被害者にとっても,加害者にとっても,一つもいいことはありません。危険運転致死傷罪の適用となる刑法の条文改正は,それでも法を遵守しない悪質な運転者に対する十分な犯罪抑止効果を期待できるものと考えております。   続きまして,○○受刑者の事故歴から見る刑法の条文改正の必要性その4です。先ほどの事故歴からお分かりのとおり,医師の忠告に耳を向けず,てんかんの持病について,虚偽の申告をし,運転免許や大型特殊免許まで取得し,10年間で12回もの事故を繰り返し,過去の裁判でもてんかんの持病を隠し通し,挙句の果てには何の罪もない,ただ歩道を歩いていただけの児童6人を執行猶予期間中にひき殺した事故です。それでも,刑法に当てはまる条文がない,罪刑法定主義という言葉を何度も聴かされましたが,刑法に当てはまる条文がないという理由により,起訴された罪名は自動車運転過失致死罪,法定刑の上限は7年という,命の重さを軽視した日本の法律,上限の決まった負け試合の裁判に挑むしかありませんでした。過失とは何なのでしょうか。皆さんの愛するお子さんや愛する人が同様の危険運転行為により命を奪われたとき,皆さんは納得できるのでしょうか。   法制審議会への遺族意見です。あの日,私たちは痛みや苦しみにもだえる子どもたちを助けてあげることができませんでした。子どもたちは,亡くなる前の日は野球やサッカーをやり元気に動いていました。元気でした。笑っていました。当日の朝も元気に学校に行きましたのに,ただ,歩道を歩いていただけなのに,ルールを守っていた子どもたちが,ルールを守らない大人によって殺されてしまいました。子どもたちは,生きていれば60年も70年も80年も生きて,幸せな未来が待っていたはずでした。恋愛もしたでしょうし,結婚もしたでしょう,孫も生まれて幸せに生きるはずでした。それゆえ,7年の量刑が例えば10年になろうとも,遺族が納得できるはずはないのです。審議では必ず命の重み,そして命の尊さを考えてください。   準という名の下,小手先だけの量刑の引上げを行うことなく,我々の署名活動に賛同を頂いた20万人の声を真摯に受け止め,危険運転致死傷罪の条文改正,これを実現していただくことを切に願っております。   また,本件事故に限らず,悪質かつ反社会性の強い交通事犯については,過失ではなく危険運転致死傷罪が適用となる法改正の審議を要望します。   鹿沼児童6人クレーン車死亡事故遺族の会。   ありがとうございました。 ○西田部会長 どうもありがとうございました。 ○B氏 一つお願いがあります。私だけではなくて,皆さんの意見も聴いていただけると有り難いのですが。 ○西田部会長 ええ。どうぞ。ではこの名簿の順番で,C様,D様,E様,F様御夫妻,どうぞ。 ○C氏 被害者○○の母のCです。私たちは突然子どもを亡くし,悲しんでいるところ,私たちは法律にも苦しめられました。なぜ6人もの子どもの命を奪っておきながら,上限7年という短い刑しか取れないのか。日本の法律は加害者のためにあり,被害者のためにはないのではないか。子どもたちに一つでも悪いところがあったと思いますか。どうか子どもたちや私たち遺族の身になって考えていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○D氏 Dと申します。今回はこういう場を設けていただきまして,ありがとうございました。私も今,Bさんのほうから説明があったとおり,気持ちは全く一緒なので,本当に少しでも早くこの議会において,私たちの納得のできる法律が見直されるように,よろしくお願いいたします。 ○E氏 Eと申します。よろしくお願いします。今後の審議において,人の重さとある日突然,無残にも,理不尽にも命を奪われてしまった子どもたち,遺族の気持ちをよく考えて,今後の法改正に臨んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○F氏 Fと申します。今日はありがとうございます,このような席を設けていただきまして。子どもたちは何も悪いことはしていません。ただ歩道を歩いていただけなので,本当にこれから子どもたちの命を守るような条文改正,法律改正を切にお願いします。よろしくお願いします。 ○G氏 被害者○○の母のGと申します。そもそも申告している人が少ないことを分かっていて,何の罰則もなく免許を取らせてしまったということで,私たちは今苦しんでいます。愛する子どもを奪われて,加害者の刑が軽すぎ,生きていることが許せません。6人の尊い命を奪って,危険運転致死傷罪が適用されませんでした。1日も早く法改正を実現していただきたいと強く願っていますので,よろしくお願いします。 ○西田部会長 どうもおつらいときにお話を聴かせていただきまして,心より御礼申します。この鹿沼のクレーン車事故の問題,それから,祗園の事故の問題は,今回の法務大臣の諮問の大きな契機となったものの一つであります。昨日も警察庁の方で免許制度に関して有識者検討会の提言が出ましたけれども,我々もこの点は極めて重要な問題であるというふうに捉えておりますので,今日の御意見を十分参考にしながら,今後,改正の議論を進めてまいりたいと思います。どうも本日は長時間にわたってありがとうございました。厚く御礼申し上げます。 (鹿沼児童6人クレーン車死亡事故遺族の会の意見陳述者等退室) ○西田部会長 ではまず次回,2回目の予定について事務局からお願いできますでしょうか。 ○上冨幹事 次回につきましては,11月30日金曜日の午後2時から5時ということで,日程を確保してございます。ただ,場所につきましては現在調整させていただいているところでございますので,その点につきましては後ほど改めて御連絡させていただきたいと思います。 ○西田部会長 では場所につきましては,追って御連絡いたしますので,第2回目は,今,事務局発表のとおりの日時で行いたいと思います。それから,議事録についてでございますが,今日の最後の鹿沼の事件の御遺族の方からも発表の中で特定の受刑者のお名前とか,これらは個人情報,あるいはプライバシーの問題にも関わりますし,更には新聞記事等になりますと,これは著作権の問題もございますので,それらの点については十分配慮し,それらの問題が起きない範囲で議事録を作成するということでよろしゅうございましょうか。ではそういうことで,事務局のほうでよろしくお取り計らいください。 ○上冨幹事 そのようにさせていただきます。 ○西田部会長 本日のヒアリングはこれにて終了したいと思いますが,特に御意見ございますでしょうか。   どうも本日はありがとうございました。 -了-