法制審議会 第168回会議 議事録 第1 日 時  平成25年2月8日(金)   自 午後2時01分                        至 午後4時16分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題 等   1 議題 (1) 罹災都市借地借家臨時処理法及び被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する諮問第94号について (2) 少年法改正に関する諮問第95号について   2 報告案件    (1) 新時代の刑事司法制度特別部会における審議経過に関する報告について    (2) 民法(債権関係)部会における審議経過に関する報告について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○松本司法法制課長 ただいまから法制審議会第168回会議を開催いたします。   本日は,委員20名及び議事に関係ある臨時委員1名の合計21名のうち,17名に御出席いただいておりますので,法制審議会令第7条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   本日は公務のため,谷垣法務大臣が当会議に出席できませんので,大臣から委託されております挨拶を後藤茂之法務副大臣が代読いたします。よろしくお願いします。 ○後藤法務副大臣 法務副大臣の後藤でございます。法制審議会第168回会議の開催に当たりまして,一言,御挨拶を申し上げます。本来なら,今,申し上げましたとおり,法務大臣から御挨拶を申し上げるべきところでございますけれども,谷垣法務大臣は衆議員予算委員会をどうしても外すことができないので,私から大臣挨拶の代読をさせていただくことをお許しいただきたいと思います。   委員及び幹事の皆様方におかれては,御多用中のところ,本会議に御出席を頂き,誠にありがとうございます。また,この機会に法制審議会の運営に関する皆様方の日頃の御協力に対し,厚く御礼を申し上げます。   さて,本日は二つの議題について御審議をお願いしたいと存じます。議題の第1は,「罹災都市借地借家臨時処理法及び被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する諮問第94号について」でございます。この諮問については,昨年9月の諮問以後,被災関連借地借家・建物区分所有法制部会において調査審議が行われた結果,罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関する要綱案及び被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する要綱案が取りまとめられ,本日,部会長から報告がされるものと承知をしております。この諮問事項については,早急に所要の法整備を図る必要がありますことから,部会においても精力的に調査審議をしていただいたと伺っております。委員の皆様方には御審議の上,できる限り,速やかに御答申を頂けますようお願い申し上げます。   議題の第2は,「少年審判手続のより一層の適正化及び充実化並びに少年に対する刑事事件における科刑の適正化に関する諮問第95号について」でございます。この諮問事項については昨年9月の諮問以後,少年法部会において調査審議が続けられ,本日,部会長からその結果の報告がされるものと承知しております。少年審判手続の適正化及び充実化,少年に対する刑事事件における科刑の適正化についてはいずれも重要な事項であり,早急に法整備を行う必要があると考えておりますので,委員の皆様方には御審議の上,できる限り,速やかに御答申を頂けますようお願い申し上げます。   また,本日は民法(債権関係)部会及び新時代の刑事司法特別部会の部会長から,部会審議の途中経過の報告がされるものと承知しております。この報告に関しましても,委員の皆様方から御意見をお伺いしたいと存じます。なお,民法(債権関係部会)では,これまでの調査審議を踏まえまして,今月中にも民法の債権関係の規定の見直しについて中間試案を取りまとめる予定であり,その後,これをパブリックコメントの手続に付して,広く一般から御意見を公募した上で,更に調査審議を進めていく予定であるとの報告を受けております。続いて,新時代の刑事司法制度特別部会におきましては,これまでの審議状況についての中間的な取りまとめとして,また,今後の制度設計に向けた審議の指針として,本年1月29日に「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」を取りまとめたとの報告を受けております。   それでは,これらの議題等について御審議をどうぞよろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございます。 ○松本司法法制課長 誠に恐縮ではございますが,法務副大臣は公務のため,ここで退席させていただきます。 ○後藤法務副大臣 それでは,どうも失礼します。           (法務副大臣退席) ○松本司法法制課長 ここで報道関係者が退室いたしますので,しばらくお待ちください。           (報道関係者退室) ○松本司法法制課長 それでは,小川関係官,よろしくお願いいたします。 ○小川関係官 法制審議会の庶務を担当しております司法法制部長の小川でございます。   本年1月4日をもちまして,前会長の野村豊弘委員が退任されましたので,まずは委員の皆様の互選に基づき,法務大臣が指名するという方法により,新会長を選任する必要がございます。新会長選任までの間,仮議長を選出すべきかとは存じますが,特に御異論がございませんでしたら,私が進行を務めさせていただきたいと存じますが,いかがでございましょうか。           (「異議なし」の声あり) ○小川関係官 それでは,どうぞよろしくお願い申し上げます。   まず,互選の手続に入ります前に,前回の会議以降,本日までの間の委員の異動につきまして御紹介させていただきます。詳細はお手元にお配りしております異動表のとおりでございますが,新たに就任された委員が本日,出席されておられますので,私のほうから御紹介させていただきます。   まず,学習院大学教授の能見善久氏が御就任になりました。 ○能見委員 能見でございます。よろしくお願いいたします。 ○小川関係官 次に,東京大学大学院教授の早川眞一郎氏が御就任になりました。 ○早川委員 早川でございます。よろしくお願いいたします。 ○小川関係官 それでは,会長の選任の手続に入らせていただきます。法制審議会令第4条第2項では,会長は審議会の委員の互選に基づき,法務大臣が指名すると規定されておりますので,皆様には会長の互選をお願いしたいと存じます。御意見がございましたら御発言をお願いしたいと思います。 ○岩原委員 法制審議会委員としての御経歴からも,また,学識,見識,お人柄からいたしましても,伊藤眞委員が会長にふさわしいと存じます。 ○小川関係官 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○吉戒委員 ただいま,岩原委員がおっしゃいましたように,私も次期の会長には伊藤眞委員が適任であろうと思います。 ○小川関係官 ただいま,2名の委員から伊藤委員を御推薦いただきましたが,ほかに御意見はございますでしょうか。   それでは,ほかに御意見がございませんようですので,会長には伊藤委員が互選されたということでよろしいでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○小川関係官 ありがとうございました。   それでは,大臣に連絡して指名の手続をとるため,しばらくお待ちください。           (一 時 中 断) ○小川関係官 再開いたします。   ただいま,法務大臣において法制審議会委員の互選に基づき,伊藤委員を法制審議会会長に指名した旨の連絡を受けましたので御報告いたします。   では,私の議事進行はここまでとさせていただきます。どうも御協力をありがとうございました。 ○松本司法法制課長 それでは,伊藤委員,恐縮ですが,会長席にお移りいただけますでしょうか。           (伊藤委員,会長席に移動) ○松本司法法制課長 それでは,伊藤委員,冒頭,簡単に御挨拶をよろしくお願いいたします。 ○伊藤会長 ただいま,皆様方の御推挙に基づきまして,重大な責任をお引き受けさせていただきました。何分でも不慣れでございまして,議事進行等,不手際が多々あるかと存じます。委員の皆様方には,是非,よろしく御協力と御指導をお願い申し上げます。簡単でございますが,私からの御挨拶にさせていただきます。   さて,法制審議会令第4条第4項には,会長に事故があるときは,あらかじめ会長の指名する委員がその職務を代行すると規定されております。そこで,会長代理の指名をしたいと存じます。長期にわたりまして法制審議会で御活躍いただいております西田委員にお願いできればと存じますが,いかがでございましょうか。           (「異議なし」の声あり) ○伊藤会長 それでは,西田委員,よろしくお願い申し上げます。   本日の審議に入りたいと存じます。   先ほどの法務大臣の御挨拶にもございましたように,本日の議題は二つございます。第1の議題でございます罹災都市借地借家臨時処理法及び被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する諮問第94号の審議をお願いしたいと存じます。まず,被災関連借地借家・建物区分所有法制部会におきます審議の経過及び結果につきまして,同部会の部会長を務められました山田臨時委員から御報告をお願いいたしたいと存じます。 ○山田臨時委員 被災関連借地借家・建物区分所有法制部会の部会長の山田でございます。着席させていただきます。   諮問第94号につき,先月29日に開催されました被災関連借地借家・建物区分所有法制部会第9回会議におきまして,罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関する要綱案及び被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する要綱案を決定いたしましたので,当部会における審議の経過及び要綱案の概要につきまして御報告をいたします。   諮問第94号の内容は,今後,想定される大規模な災害に備え,罹災都市借地借家臨時処理法を早急に見直して,同法を現代の社会によりふさわしいものとするとともに,被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法を早急に見直して,大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の取壊しを容易にする制度を整備する必要があると思われるので,それぞれ,その要綱を示されたいというものでございます。   罹災都市借地借家臨時処理法,いわゆる罹災都市法は,被災した借地人・借家人を保護する措置を定めた法律であり,第二次世界大戦後の昭和21年に当時の社会情勢に基づいて制定されました。しかし,制定以来,全面的な見直しが行われていないため,必ずしも現代の社会にそぐわない点があるとの指摘がされておりました。また,被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法,いわゆる被災マンション法は,政令で定める災害により区分所有建物が全部滅失した場合において,区分所有建物を敷地共有者の多数決により再建することができる旨の特例を定めた法律であり,平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災を受けて制定されたものです。   ところが,平成23年3月に発生した東日本大震災においては,重大な被害を受けた区分所有建物を区分所有者全員の同意によって取り壊した事例がございましたが,現行法上,区分所有建物を取り壊すためには区分所有者全員の同意が必要とされており,特例は設けられておりません。しかし,区分所有建物の取壊しに常に区分所有者全員の同意を必要とすると,一人でも反対者がいる場合には取壊しが実現できず,重大な被害を受けた建物が放置されることにもなりかねません。そこで,東日本大震災を契機として,政令で定める災害により重大な被害を受けた区分所有建物について多数決により取壊しを実現することができる制度を設けるべきとの指摘がされておりました。このようなそれぞれの指摘を踏まえ,罹災都市法及び被災マンション法の見直しについて諮問がなされたものと認識しております。   この諮問を受け,平成24年9月,法制審議会第167回会議におきまして,被災関連借地借家・建物区分所有法制部会の設置が決定されました。当部会では平成24年9月から,まずは被災マンション法についての調査審議を開始し,平成24年10月に被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する中間取りまとめを決定いたしました。これにつきましては事務当局において,約1か月間,パブリックコメントの手続を行い,これに対して寄せられた意見も踏まえて,更に調査審議を行いました。   また,罹災都市法につきましては,平成24年11月から平成25年1月にかけて調査審議を行いました。こちらにつきましては,平成24年8月から1か月間,法制審議会における調査審議に先立ち,法務省において作成した担当者素案について,パブリックコメントの手続を行っており,当初からこれに対して寄せられた意見を踏まえて調査審議をしましたことから,その後に改めてパブリックコメントの手続を行うということはしておりません。   そして,先月29日に開催されました第9回会議におきまして,罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関する要綱案及び被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する要綱案を決定いたしました。   以上が当部会における審議の経過でございます。   次に,要綱案の内容につきまして,その概要を御説明いたします。   まず,罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関する要綱案について御説明いたします。この要綱案は,大きく「第1 見直し後の制度の適用の在り方」,「第2 借地権保護等の規律」,「第3 被災地短期借地権」,「第4 優先借家権制度の在り方等」の四つの項目から成っております。   「第1 見直し後の制度の適用の在り方」では,見直し後の制度は,大規模な火災,震災その他の災害であって政令で定めるものに適用することとしております。また,災害ごとの具体的な事情に応じた適用を可能にするため,適用する地区の指定に加えて,法律で規定する制度の一部のみを適用することや,適用する制度や地区を政令で追加して指定することも可能にすることとしております。   「第2 借地権保護等の規律」では,借地権及び借地権者の保護に関する規律を定めております。   まず,「1 借地権者による土地の賃貸借の解約等」では,政令で定める災害により借地上の建物が滅失した場合,借地権者は,政令施行の日から起算して1年間は,土地の賃貸借の解約の申入れ等をすることができることとしております。この規律は,建物が滅失して借地を利用することが困難になった借地権者を早期に賃料の負担から解放するとともに借地契約を解消し,再築する資力のある者に土地を利用する機会を与えて,被災地の復興を促すことを趣旨としております。   次に,「2 借地権の対抗力」では,借地権者が借地上に登記されている建物を所有していたが,その建物が政令で定める災害により滅失した場合,政令の施行の日から起算して6か月間は,何ら公示手段を採らなくとも借地権を第三者に対抗することができることとしつつ,借地上に滅失した建物を特定するために必要な事項等を掲示した場合には,政令の施行の日から起算して3年間は,その掲示をもって借地権を第三者に対抗することができることとしております。現行法は,借地上の建物が滅失した場合には,何ら公示手段をとらなくとも,政令の施行の日から5年間は借地権の対抗力を認めておりますが,借地権の保護と取引の安全のバランスを図るために,災害発生直後は何ら公示手段をとらなくとも借地権の対抗力を認めることとしつつ,その後は掲示することを要するものとしております。   次に,「3 土地の賃借権の譲渡又は転貸」では,借地権者が,政令で定める災害により滅失した建物の敷地である土地の賃借権を譲渡しようとする場合に,借地権が第三者に譲渡をされても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず,借地権設定者が承諾をしないときは,借地権者は,裁判所に借地権設定者の承諾に代わる許可を求める申立てをすることができること等を内容とする規律を設けるものとしております。この規律は,先ほど述べた土地の賃貸借の解約等の規律と同じ趣旨によるものでございます。   次に,「第3 被災地短期借地権」では,政令で定める被災地区において,政令の施行の日から起算して2年間,存続期間が5年以下であって,更新がない借地権を設定することができることとしております。被災地においては,復興の早期の段階では地域の復興の計画も定まらない状況にあることが想定され,土地利用について長期的な見通しを立てることが困難である一方で,暫定的な土地利用のニーズが見込まれることから,暫定的な土地利用を可能とする借地権を創設することとしたものでございます。   次に,「第4 優先借家権制度の在り方等」では,現行罹災都市法上,政令で定める災害により建物が滅失した場合に,その借家人が他の者に優先して当該建物の敷地に最初に築造された建物を賃借することができることとされている優先借家権制度を廃止し,新たに従前の賃貸人が建物を再築し,政令の施行の日から起算して3年以内に賃貸しようとするときは,その賃貸人は従前の賃借人のうち,知れている者に対して,その旨を通知しなければならない旨の通知制度を設けることとしております。この規律は,従前の借家人が居住していた,あるいは事業を行っていた場所に戻る機会を保障することによって,結果として従前のコミュニティを維持し,復興に資することを目的とするものです。   なお,(後注)にございますとおり,優先借地権制度を始めとする現行罹災都市法の各制度については,廃止することとしております。   罹災都市法の見直しに関する要綱案の概要については以上でございます。   次に,被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する要綱案について御説明いたします。この要綱案は,大きく「第1 区分所有建物が大規模一部滅失した場合における特例」,「第2 滅失又は取壊し後の建物の敷地についての特例」,「第3 団地の特例」の三つの項目から成っております。   まず,「第1 区分所有建物が大規模一部滅失した場合における特例」では,政令で定める災害により区分所有建物が大規模一部滅失した場合に適用される各制度について規律しております。なお,大規模一部滅失とは,建物の価格の2分の1超に相当する部分が滅失した場合のことをいいます。   区分所有建物が大規模一部滅失した場合,現行法においても多数決により,建物を復旧する旨の決議や建て替える旨の決議をすることはできますが,被災時においては費用負担の問題等から,復旧や建替えが困難である場合も考えられます。このような場合には,ひとまず建物を取り壊すことや,建物とその敷地を売却するといった方策を採ることが合理的であるとも考えられることから,多数決により,これらの方策を実現することができる制度を設けることとしております。   具体的には,まず,「1 取壊し決議制度」では,区分所有者及びその議決権の各5分の4以上の多数により,大規模一部滅失した建物を取り壊す旨の決議をすることができることとしております。   次に,「2 建物敷地売却決議制度」では,区分所有者及びその議決権に加え,敷地利用権の持分の価格の割合の5分の4以上の多数により,大規模一部滅失した建物とその敷地を売却する旨の決議をすることができることとしております。  次に,「第2 滅失又は取壊し後の敷地についての特例」では,政令で定める災害により建物が滅失し,又は取壊し決議に基づき取り壊された場合における敷地の管理又は処分についての規律を設けることとしております。   「1 敷地共有者による敷地の管理に関する規律」では,建物が滅失し,又は取り壊された後も,一定の期間は敷地利用権であった権利の共有者,すなわち敷地共有者は集会を開き,敷地の管理者を置くなどして,敷地の管理をすることができることとしております。   次に,「2 敷地売却決議制度」では,敷地共有者の議決権の5分の4以上の多数により,敷地を売却する旨の決議をすることができることとしております。   また,「3 取壊し後の敷地についての再建の決議制度」では,区分所有建物が取壊し決議により取り壊された場合について,敷地共有者の議決権の5分の4以上の多数により,建物を再建する旨の決議をすることができることとしております。   これらの決議制度は,区分所有建物が滅失し,又は取り壊された後の敷地について,多数決により売却や再建を可能とすることにより,土地が有効利用されないまま放置される事態を防止することを趣旨としております。   なお,「4 共有物の分割請求の制限」では,敷地売却決議及び再建の決議をすることができる期間内は,敷地共有者は共有物分割請求をすることができないものとしております。個々の敷地共有持分ごとに敷地が細分化されると売却や再建が困難になることに配慮し,このような規律を設けるものです。   最後に,「第3 団地の特例」では,団地内の建物が滅失し,又は取壊し決議に基づき取り壊された場合についての規律を設けております。   まず,団地内の建物を建て替える場合については,現行法では区分所有法第69条において建替え承認決議制度が設けられていますが,団地内の建物が滅失した場合に,滅失した建物の再建を行う場合については,特段の規律は設けられておりません。そこで,「1 再建承認決議制度」では,このような場合について,建替え承認決議制度に準じて再建承認決議制度を設けることとしております。   また,団地内の区分所有建物の全部を一括して建て替える場合については,現行法では区分所有法第70条において一括建替え決議制度が設けられておりますが,団地内の区分所有建物が滅失した場合において,滅失した区分所有建物の再建と滅失していない建物の建替えを一括して行うための規律は設けられておりません。そこで,「2 再建を含む一括建替え決議制度」では,一括建替え決議制度に準じて,これらの再建と建替えを一括して行う旨の決議をすることができることとする規律を設けることとしております。   被災マンション法の見直しに関する要綱案の概要については以上でございます。   以上,簡単ではございますが,罹災都市法の見直しに関する要綱案及び被災マンション法の見直しに関する要綱案について御説明を申し上げました。よろしく御審議のほど,お願いいたします。 ○伊藤会長 どうもありがとうございました。   それでは,ただいまの御報告及び要綱案の全般的な点につきまして,委員の方々より御質問及び御意見を承りたいと存じますが,まず,御質問がございましたらお願いいたします。 ○西田委員 1点だけですが,両方の案について所有権者あるいは借地権者あるいは地上権者等,不幸にしてお亡くなりになったという場合,その場合,相続人が権利者になるということで,例えば相続人が多数いて,まだ,分割協議も済んでいないというようなときに,そういう場合の手当てはどう理解すればいいか,多分,こういう法律ですから,そういう事例も結構あり得ると思うので,その点についてどういう手当て,あるいはどういうお考えか,この点だけお伺いいたします。 ○伊藤会長 では,山田委員,よろしゅうございますか。 ○山田臨時委員 ありがとうございます。   その点については,部会では特に審議された対象にはなっておりません。そこで,どういう考え方が前提になって審議が行われたかということについて,私が理解しているところを申し上げることとさせていただきたいと思います。所有者であったり,借地権者が死亡したときに,相続人が複数いると共同相続になりますので,法定相続人が二人でしたら二人で所有する,共有になります。そして,借地権は二人で準共有するということになります。そこについては共有あるいは準共有の民法の制度に基づいて解決がなされるものと思います。一般的な話になって恐縮ですが,処分に当たることでありましたら,共有者あるいは準共有者が全員一致で意思決定をしなければならないということが基本になろうかと思います。 ○伊藤会長 西田委員,いかがでしょうか。 ○西田委員 御議論がなかったのであれば,そういう場合は余り想定されておられないということだろうと思いますので,そういう点も御議論があったのかなと思って伺っただけなので,結構でございます。 ○伊藤会長 よろしゅうございますか。他の委員の方いかがでしょうか。 ○能見委員 二つありまして,一つは,罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関連しての質問ですが,もう一つは,被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法ついての質問ですが,後者は若干意見も含まれておりますので,あるいは後で議論した方がよければ,そうさせていただきます。まず,罹災都市借地借家臨時処理法ですけれども,今の時期は,ちょうど東日本大震災が起きた直後で,この資料にも同法が今回の地震の被災地域に適用がされるかどうかについての点について,関係市町村からは適用を求めずということなので,適用を見送るというようなことが書いてありますけれども,適用を求めないことの理由が関係市町村のお役所的な観点からなのか,実際にそこに住んでいる住民の意向を十分踏まえた上での関係市町村の希望なのか,そこがよく分かりませんでしたので,伺いたいと思います。最終的にどういう意見を集約して,今回の東日本大震災については適用しないという御判断に至ったのか,その点についてお伺いします。 ○萩本関係官 罹災都市法につきましては,法務省と国土交通省の共管の法律になっておりまして,政令を定めるに当たりましても両省で協力して現状を把握した上で,適用するかどうかを判断するというプロセスを経ております。今回といいますか,2年前の大震災の後も主に国土交通省の協力を得て,地元の都道府県,あるいは都道府県が更に市町村の意見を吸い上げ,それらを政府のほうで集約をし,最終的に両省で協議の上,東日本大震災に罹災都市法を適用するかどうか決定したと,こういうことでございます。具体的に,地元でどうしているかというところの詳細までは把握していないのですけれども,各市町村がそれぞれヒアリングをするなどして,現場の意見を取りまとめていると認識しております。 ○伊藤会長 能見委員,ただいまの点はよろしゅうございますか。 ○能見委員 結構でございます。   マンションのほうは後でマンションのほうに議論が移った段階で,あるいは……。 ○伊藤会長 先程の御発言ですと,両方に関係する趣旨と承りましたけれども。 ○能見委員 結構でございます。   被災マンションのほうは後で議論がこの問題に移った段階でした方がよければそうしますが,あるいは今,続けた方がよいでしょうか。 ○伊藤会長 ただ,先ほどのあれですと,両方に関係をするという趣旨も承りましたけれども。 ○能見委員 では,被災マンション法についての質問と若干の意見を述べたいと思います。今回,建て替えまでを内容としない,取壊しの決議という制度を新設し,まずは取り壊すということについての決議を5分の4で行うということができるようになっています。ただ,これは取壊しについて決議なので,その後,どうするかについてはもう一回,区分所有者の合意を形成しなければならず,この後の再建の決議であれ,売却の決議であれ,5分の4の賛成を得なければならないことになっています。これはなかなか高いハードルで,結局,どのようなことになることを想定されているかという質問です。私もマンションに住んでおりますが,5分の4という多数決は非常に大変で,取壊しについては,ほかの選択肢が事実上ないでしょうから,何とか5分の4の賛成を得ることができても,もう一回,5分の4の高いハードルがあって,再建するか,売却するかを決めるというのは困難が大きい。2回の高いハードルを越えなくてはいけないというのが非常に大変な感じがします。   特に,再建か,売却かという2つの選択肢があると,あるいは分割という選択肢もあるかもしれませんが,改正法が用意する仕組みでいえば,再建か,売却かという選択肢があると,取壊しの決議と違って,区分所有者の意見が分裂する可能性が非常に高いと思います。その意味で,どちらかの選択肢に5分の4で集約するというのは非常に難しいのではないかいう感想を持った次第であります。そこで,私の質問は,以上のような想定ないし危惧をどう考えておられるのか,改正法が用意しようとしている仕組みはどのように機能することを想定されているのか,お伺いしたいと思いました。 ○山田臨時委員 再建か,あるいは敷地の売却か,5分の4の多数を形成するのが困難なのではないかという点については,特にその点に焦点を当てた議論はなされなかったように思います。しかし,他方で取壊しをせずに,建物敷地を売却するということが5分の4でできるということで,二度,決議をしなければならない,二つ,ハードルがあるということは,その方法を採ることによれば解消できるということがあり,建物と敷地の売却決議制度のというものが取壊し決議制度と並んで,まだ,建物が存在している段階で採り得る決議として提案されているところでございます。   更に部会における議論として,詳細な議論までは行われておりませんが,再建の制度は建物の詳細を定める必要がありますので,時間が掛かることが想定されますが,そうではなく,取壊しの決議と,それと敷地の売却の決議,これをできるだけ時間を近接させて行うということについては,必要な手当てを設けることによって実現したらいいだろうということは部会の中で意見が一致しまして,要綱案の中にそのことも述べられているところでございます。 ○能見委員 御説明は分かりました。関連して伺いたいのは,先ほど私自身質問していてよく分かっていなかった点があるのですけれども,5分の4のハードルが高いということで,仮に,再建あるいは売却のいずれについても5分の4の賛成を得られないということになると,取壊しの決議はあって,取壊しは行われるので,後には敷地しかないという状態が生じることになり,ここは普通の共有の分割請求にいくということになるんでしょうか。 ○山田臨時委員 そのとおりでございます。建物が取り壊された後に残っておりますものは敷地のみであり,敷地についてはそれまでの区分所有者が共有しているという状態になります。そして,敷地の共有者が再建の決議か,売却の決議か,この二つの方策を5分の4の多数を形成すれば,反対者がいても行うことができるという制度を用意しておりますが,例えばどちらも50%ずつということになりますと,どちらの決議も成立いたしません。そういたしますと,そのマンションの敷地について,どういう運命をたどるかという点については,先生がおっしゃるとおり,共有物分割の道に進むことになるのだろうと思います。 ○能見委員 そうなると,共有物の分割請求を裁判所に求めて,その結果,現物分割ではなく,一括売却して区分所有者には金銭で分割なんていうことも,あり得るわけですね。 ○山田臨時委員 それは今回の要綱案の中に述べられていることではございませんが,部会の審議で前提とされていた理解としては,先生がおっしゃるとおりでありまして,民法の共有に関する分割の規律がそのまま当てはまりますので,細分化されるということももちろん可能性としてはございますが,物理的には分割せずに,どなたか,第三者の一人の方に買っていただいて,そして,競売による分割といわれる方法だと思いますが,競売代金を共有者で分配をするということもあり得る一つの分割方法であろうと思います。 ○能見委員 何度も発言してすみません,これが最後ですけれども,そうなると,結局,最後は売却されるという可能性が一番高くて,どういう方法ないし手順でなされるかというと,被災マンション法の売却の決議でいくという方法と,一般の共有物分割請求の結果競売での売却がされるということがあり得るわけですが,改正法の売却決議に基づく売却の場合には競売での売却ではなくて通常の売却になるわけですよね。恐らくそちらのほうが高く売れる可能性が高いのだろうと思いますが,売却決議に必要な5分の4の賛成が得られないと,それでも結局分割請求によって売却されることになるのに,後者の場合には競売での売却ということで,何か安い価格で売却されてしまう可能性があって,何か釈然としないものが残ります。再建についての5分の4の多数決が得られないときには,結局最後は売却ということになるのであれば,共有物分割請求に基づく売却ではなく,もう一つ前の段階の,取壊し決議の後の方針を決める際に,敷地の任意の売却が簡単にできるようにした方が全員にとって利益があるのではないかという感じを持ちました。これは意見ないし感想です。御返答には及びません。 ○伊藤会長 よろしゅうございますか。   それでは,ほかに御質問はございますか。 ○佐久間委員 質問だけではなくて意見でもよろしいでしょうか。 ○伊藤会長 どうぞ,おっしゃってください。 ○佐久間委員 ありがとうございます。   そもそも論にもなりますが,区分所有建物のほうにつきまして,決議要件の5分の4等々は高過ぎるという問題意識がございます。ただ,東日本大震災から2年近くたつ今でも復興が余り進んでいないという現状を見れば,一日でも早い対応というのが望まれると思いますので,この要綱案については賛成でございます。ただ,両方の見直しに関わることですけれども,3.11から2年近くたったときにやっと要綱案がまとまるというのは,必要性,緊急性からいうと,随分遅い,時間が掛かり過ぎたということになるのではないかと思います。もちろん,法制審に諮問されたのが去年9月ということですから,それからは加速されているのだと思いますが,そもそもスタートが遅かったということ,これは関係者として反省しなければならないと感じております。 ○伊藤会長 他に御質問はございますか。   御意見に関してはいかがでしょうか。何か御意見がございましたらお願いいたします。もし,ございませんようでしたら,原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしゅうございますか。それでは,そのように取り計らわせていただきます。   諮問第94号につきまして,ただいま,被災関連借地借家・建物区分所有法制部会から報告されました要綱案二つのうち,罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関する要綱案のとおりに答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ○伊藤会長 よろしゅうございますか。   反対の方がおいでになりましたら挙手をお願いいたします。 ○松本司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は15名でございますところ,原案に賛成の委員は15名全員でございました。 ○伊藤会長 ただいま,報告がございましたとおり,全員の賛成を頂きましたので,被災関連借地借家・建物区分所有法制部会から報告されました罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関する要綱案は,原案のとおり,採択されたものと認めます。採択されました要綱につきましては,会議終了後,法務大臣に対して答申することといたします。   続きまして,諮問第94号につきまして部会から報告されました被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する要綱案のとおりに答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ○伊藤会長 よろしゅうございますか。ありがとうございます。   反対の方も挙手をお願いいたしたいと思いますが。 ○松本司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は15名でございますところ,原案に賛成の委員は15名全員でございました。 ○伊藤会長 ただいま,報告がございましたとおり,全員の委員の方の賛成を頂きましたので,部会から報告されました被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する要綱案は,原案のとおり,採択されたものと認めます。採択されました要綱につきましては,会議終了後,法務大臣に対して答申することといたします。   山田部会長,お疲れ様でございました。 ○山田臨時委員 ありがとうございます。 ○伊藤会長 引き続きまして,第2の議題でございます少年法改正に関する諮問第95号の審議をお願いしたいと存じます。   まず,少年法部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の部会長を務められました川端委員からの報告をお願いいたします。 ○川端委員 少年法部会の部会長の川端でございます。着席させていただきます。   それでは,当部会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。   諮問第95号は,少年審判手続のより一層の適正化及び充実化並びに少年に対する刑事事件における科刑の適正化を図るため,早急に法整備を行う必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたいというものでした。   本審議会は,平成24年9月7日開催の第167回会議において,この諮問について,まず,部会で検討させる旨の決定をされました。これを受けまして少年法部会が設けられ,部会では,その構成員として犯罪被害者関係団体の方々にも加わっていただき,同年10月15日から平成25年1月28日までの間,合計4回にわたって審議をいたしました。   お手元の資料刑1ないし刑3を適宜,御覧ください。   資料刑1は,諮問内容,資料刑2の「事務局試案」と題する書面は,諮問別紙の要綱(骨子)中の第二の部分につき,部会における審議の中で示されたものであります。   そして,審議の結論は,諮問事項第一「国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲の拡大」については,全員の賛成により,諮問された要綱(骨子)第一のとおり,法整備をすることが相当であるとの結論に達し,同第二「少年の刑事事件に関する処分の規定の見直し」については,部会における審議の結果,賛成多数で配布資料刑2の事務局試案のとおり,法整備をすることが相当であるとの結論に達しました。   これらの結果を改めて整理し,取りまとめたのが資料刑3です。   それでは,部会における議論の概要につきまして御説明申し上げます。   まず,要綱(骨子)第一の「国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲の拡大」について御説明いたします。   現行法では,家庭裁判所の裁量による国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲について,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪及びその他死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪としておりますが,これを死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪に拡大しようというものであります。   すなわち,非行事実の存否及び適正な処遇を決定するためには,少年審判手続において適正な事実認定が行われることが何よりも重要であり,また,現行法において,家庭裁判所がその裁量により,国選付添人を付し得る事件及び検察官関与の決定をし得る事件以外にも,多数の者が関与し,関係者の供述が相互に異なっている詐欺,恐喝事案や,少年が暴力団組織に所属し,そのことが非行の要因となっているなど,少年の改善更生のために法律の専門家である弁護士の援助を要する事案など,少年審判手続における事実認定や環境調整に検察官や弁護士である付添人の関与が必要であると考えられる事件が存在すること,被疑者国選弁護制度の対象事件の範囲が死刑又は無期若しくは長期3年を超える事件とされているところ,弁護人選任の効力は家庭裁判所送致の際に失われるとされておりますことから,少年に被疑者国選弁護制度によって国選弁護人が付された後,少年が家庭裁判所に送致され,少年鑑別所送致の観護措置がとられる場合には,被疑者段階で選任された国選弁護人は,少年が改めて付添人を選任しない限り,付添人としての活動ができず,不都合な事態が生じ得るおそれがあることから,家庭裁判所の裁量による国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲を拡大することとするものであります。   要綱(骨子)第一の一,国選付添人制度の対象事件の範囲の拡大については,これを拡大することについて反対する意見はありませんでした。そして,この点については,どの範囲まで拡大するのか,国選付添人の選任の要件をどうするのか,すなわち,現行法のとおり,家庭裁判所の裁量とするのか,それとも,家庭裁判所の裁量による場合に加えて,少年又は保護者から請求があった場合には,必ず国選付添人を付さなければならないこととするのかについて議論がなされました。   国選付添人制度の対象事件をどの範囲まで拡大するのかについては,少年鑑別所に送致されて身体拘束を受ける少年の事件全件とすべきであるという意見がございましたが,予算措置を必要とする問題であり,限りある資源を投入するということに,社会全体の理解が得られるほど重大な事件であること,被疑者国選弁護制度の対象事件の範囲と整合性を保つことから,被疑者国選弁護制度の対象事件の範囲である少年鑑別所送致の観護措置がとられている,死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪にまで拡大することが相当であるとの意見が大勢を占めるに至りました。   また,国選付添人の選任の要件につきましては,国選付添人の選任要件については,家庭裁判所の裁量による場合に加えて,少年や保護者が請求した場合をも含むとすべきであるとの意見がございましたが,少年審判手続は職権主義的構造であり,家庭裁判所が自ら少年にとって有利,不利を問わず,必要な事項を調査する仕組みになっていることからすれば,家庭裁判所が必要性を認めない場合にまで,国選付添人を選任しなければならないというのは,国選付添人制度の趣旨と合致しないこと,家庭裁判所が必要性を認めない場合にまで国費を投じて国選付添人を選任することについて国民の理解が得られるか,疑義があることなどから,現行法のとおり,家庭裁判所の裁量によるとすることが相当であるとの意見が大勢を占めるに至りました。   次に,要綱(骨子)第一の二,検察官関与制度の対象事件の範囲拡大については,その必要性・許容性,国選付添人制度の対象事件の範囲拡大との関連性について議論がなされました。   まず,検察官関与制度の対象事件の範囲拡大については,その必要性・許容性がないという意見がありましたが,審判の場に現れた新たな主張・立証に対応するためには,検察官が審判の場に立ち会うことが必要な場面があること,被害者側の立場を審判に反映させるためには,検察官の関与が相当な場合もあることなどから,検察官関与制度の対象事件の範囲拡大について,必要性・許容性が認められるとする意見が大勢を占めるに至りました。   また,検察官関与制度の対象事件の範囲拡大と国選付添人制度の範囲拡大との関連性については,それぞれは別の制度であるから,これを関連付ける必要性はないとの意見もありましたが,両制度は独立した制度であり,論理必然的にその範囲が一致している必要があるわけではないものの,被害者等国民の理解と合意を得るためには,政策的にその範囲を一致させることが相当であるとする意見が大勢を占めるに至りました。   要綱(骨子)第一の一及び二については,一括して採決に付され,私を除く出席委員16名全員の賛成で,諮問のとおり,法改正を行うべきであるとの結論に至りました。   次に,要綱(骨子)第二「少年の刑事事件に関する処分の規定の見直し」について御説明いたします。   諮問の際の要綱(骨子)は,配布資料刑1のとおりですが,諮問の要綱(骨子)においては,まず,現行法においては少年に対して,有期の懲役刑又は禁錮刑を科する場合において科し得る刑の上限は,少年法第51条第2項により,いわゆる無期刑の緩和刑として有期刑を科する場合を除けば,5年以上10年以下の不定期刑とされているところ,少年が被害者の生命を奪うという凶悪重大な犯罪行為を行った場合などにおいて,少年に対して無期刑を科すのは酷であるものの,5年以上10年以下の不定期刑では軽過ぎるという事案や,共犯事件において20歳を僅かに下回る少年が主犯者で,20歳を僅かに超えた成人が従たる役割を果たした事案など,裁判所が適正な量刑を行うことが困難な事案が存在することが指摘されていることから,裁判所が行う量刑判断の幅を広げることにより,少年事件における科刑の適正化を図るため,第二の二において少年に対して少年法第52条の規定により言い渡す不定期刑について,その短期と長期の上限を現行法の5年と10年からそれぞれ5年引き上げ,10年と15年とすることとされておりました。   また,少年法第52条の規定による不定期刑の長期の上限が15年に引き上げられることを考慮すれば,少年法第51条第2項の規定による,いわゆる無期刑の緩和刑として言い渡される有期刑について無期刑の緩和刑であることを考慮しても,15年まで緩和することは不相当に緩和し過ぎであると考えられる事案も存在すると考えられますことから,少年法第51条第2項のいわゆる無期刑の緩和刑についても,第二の一において同じく上限を5年引き上げ,10年以上20年以下の範囲内で定期刑を科すとするなどとされておりました。  更に第二の三においてその他所要の法整備を行うとされておりました。   まず,要綱(骨子)第二の一及び二について少年に対して科し得る有期刑や,いわゆる無期刑の緩和刑の上限を引き上げることの相当性について議論が行われました。この点につきましては,少年の健全育成,社会復帰あるいは社会復帰後の再犯防止という観点や,少年による凶悪重大事犯が増加している状況にはないことなどから,少年に対して科し得る有期刑や,いわゆる無期刑の緩和刑の上限を引き上げることは不相当であるという意見もありましたが,そもそも従前,罪に見合った刑を科すことができない状況にあったといえること,少年に対しても無期刑を科し得るところ,無期刑の次がいわゆる無期刑の緩和刑を除けば,長期が10年の有期刑というのは幅が開き過ぎているといえることなどから,少年に対して科し得る有期刑や,いわゆる無期刑の緩和刑の上限を引き上げることが相当であるとの意見が多数を占めました。   次に,その他所要の法整備として,どのような法整備が必要であるかについて議論が行われました。この点については,少年に対する不定期刑について,現行法においては長期3年以上の有期の懲役又は禁錮をもって処断すべきときに不定期刑を科すとされているのを,有期の懲役又は禁錮をもって処断すべきときに改め,いわゆる無期刑の緩和刑による場合を除き,懲役又は禁錮について有期の実刑とする場合は全て不定期刑を科すべきである,不定期刑の長期と短期の幅について制限を設けるべきである,不定期刑の短期について処断刑の短期を下回って定めることができるようにすべきであるなどという意見が出され,第3回部会において,これらの意見を基に諮問の要綱(骨子)第二の一及び二の内容を取り込んだ事務局試案が示され,更に議論が行われました。   要綱(骨子)第二については,事務局試案について一括して採決に付され,私を除く出席委員16名のうち,賛成15名,反対1名の賛成多数により事務局試案のとおりの法改正を行うべきであるとの結論に至りました。   概略,以上のような審議に基づき,諮問第95号については配布資料刑3のように法整備を行うことが相当である旨が決定されました。   以上で,当部会における審議の経過及び結果の御報告を終わります。よろしくお願いいたします。 ○伊藤会長 どうもありがとうございました。   ただいまの御報告及び要綱(骨子)の全般的な点につきまして,御質問及び御意見を承りたいと存じますが,まず,御質問がございましたらお願いいたします。 ○奈良委員 奈良でございますけれども,私の御質問若しくは確認になろうかと思いますが,内容ではなくて手続に関する御質問ですので,皆さんの顔色を見ながら,今,手を挙げさせていただきました。要綱の中で第一と第二と全く二つの論点があり,今,御説明のとおり,部会では個別に採決をなさったと,このように伺いましたけれども,この審議会において要綱案として一括して採決をされるのか,それとも,第一と第二と分けて個別に採決がなされるのか,どなたに伺ってよろしいのか,私は分かりませんが,そのお答えいかんによって,後ほど私のほうから意見なり,要望を述べさせていただく関係がありますので,結論だけで結構ですので教えていただきたいと思います。 ○伊藤会長 ただいまの奈良委員の御質問部分は,こういう形で要綱(骨子)が示された場合の,従来の採決の仕方がどうであったかということの御質問ないし確認と承ってよろしゅうございましょうか。 ○奈良委員 できれば,従来の慣例若しくは前例を私は承知をしているつもりですが,本件についても従前どおりというお考えなのかどうかも含めて確認をしておきたい。 ○伊藤会長 ということですと,むしろ,委員の方々の御判断によって決めるような事項ですので,どちらかというと御意見になろうかと思いますが,従来の例ではどうであったかとか,そういうことは御質問として,必要があれば事務当局から説明をしていただくのがよろしいかと思いますが,その辺りはいかがでしょうか。 ○奈良委員 分かりました。その点について後ほど意見を述べさせていただけるということであれば,従前の例だけ改めて教えていただければ結構でございます。 ○伊藤会長 分かりました。それでは,小川さんから説明をお願いします。 ○小川関係官 関係官の小川のほうから申し上げます。最近の事例で申しますと,平成19年,これは犯罪被害者等の保護に関する諮問第80号の関連で御審議いただいた際,ただいま,御提案がありましたように事項ごとの分割採決を求める御意見がございました。他方で,他の委員からは部会の報告というものや全体としてバランスを考慮した一体のものであるから,そのようなものとして全体について採決をすべきであるという御意見もございまして,そのときは総会の場で採決の方法について採決をいたしまして,その結果,全体を一括して採決する御意見が多数であったことから,そのような形での採決をしたという例がございます。 ○伊藤会長 よろしゅうございますか。御意見は後でまた承りますので,ほかに御質問はございますでしょうか。 ○西田委員 先ほどの部会長の御説明ですと,第一の一と二は必ずしも連動しないという御説明だったと承りましたが,要するに国選付添人を付けるという場合と検察官関与を認めるという場合は,恐らく検察官関与を認めるときには,当然,国選付添人は付けると,しかし,検察官関与がない場合でも国選付添人を付けるときもあると,こう理解すればよろしいんでしょうかね,その点だけ。 ○川端委員 今,西田委員が御発言されたとおり,論理的な必然性は必ずしもないけれども,政策的にそういう可能性は認められるべきだということで意見が一致したということでございます。 ○伊藤会長 よろしゅうございますか。   ほかに御質問はいかがでしょうか。 ○山根委員 私もそこのところを一つ御質問したかったんです。国選付添人と検察官関与の連動を政策的に考えて必要だという御説明だったんですけれども,政策的にというのは,制度をスムーズに運営,定着させるために必要だという,そういう理解でよろしいんでしょうか,そこは言葉の意味になるかもしれませんけれども。 ○岩尾関係官 国選付添人制度の対象犯罪を拡大するという必要性,また,検察官関与の対象事件を拡大する必要性については,それぞれ個別の理由があると考えられます。しかし,これまでの少年法の改正の経緯では,その対象範囲が一致するというような政策が採られてまいりました。その際に,どういう理由で一致させる必要があるかということでございますが,仮に国選付添人,これは国費で選任された付添人でございますが,その方が事実関係を争っているというような場合に,裁判所が必要と認めたとしても,検察官の関与を求めることができないということになりましたら,事実認定の適正化を図るという検察官関与制度導入の趣旨にも合わない,ひいては被害者を始めとする国民の理解も得られないのではないかということから,政策的に一致させてきたという経緯がございまして,今回もそういった趣旨は同様に当てはまるであろうと,こういう議論がなされたわけでございます。 ○伊藤会長 山根委員,いかがでしょうか。 ○山根委員 結構です,ありがとうございます。 ○伊藤会長 他に御質問はございませんでしょうか。   そういたしましたら,御意見を承りたいと思いますが,奈良委員,先ほどの関係で,御意見をお願いいたします。 ○奈良委員 ありがとうございます。意見と要望を申し上げようと思ったんですが,後ほど申し上げますけれども,採決に関する要望ではなくて意見を申し上げることができそうなので,それも含めて意見として少しお時間を頂きたいと思います。   国選付添人制度の対象事件の拡大につきましては,皆様,御承知のとおり,かねてから弁護士会においても主張してきたところでございますし,私自身,少年の権利保障にとって大変大きい前進であると高く評価をしております。先ほど質疑の中でもございましたように,他方,検察官関与対象事件の拡大につきましては,国選付添人の対象の拡大と理論的に関連しているとは私は思いませんし,そもそも私自身,少年事件に関する検察官関与自体,少年法の精神の面から問題があると考えておりましたので,にわかには賛成し難いところではございますけれども,確かに先ほどお話がありましたとおり,政策的な見地若しくは実質的な見地から,これまで関連付けて議論されてきたと,こういうようなこれまでの経緯も踏まえて考えますと,少年国選付添人事件の拡大という見地から,この第一については私としては賛成をしたいと,このように考えております。   第二の少年事件の刑罰の重罰化といいますか,厳罰化についてでございますけれども,これも皆様,御承知のとおり,弁護士会としては少年法の理念に照らして,これまで一貫して反対をしてまいりました。私自身も少年の改善更生の可能性であるとか,あるいは早期の社会復帰を目指すという観点から,この厳罰化については反対せざるを得ない,また,同時に,今,あえて刑罰を厳罰化するだけの立法事実は存しないと,このように考えております。   そこで,先ほど御質問させていただいた採決の関係に入りますけれども,今,申し上げましたとおり,要綱としては一つですけれども,第一,第二,それぞれ全く別の論点で,よって,部会においても個別に採決をされたという御説明を頂きました。内容の全く異なる論点が二つございますので,今,私が意見を述べさせていただいたように,各委員ともそれぞれの論点について,それぞれの御意見なり,結論があり得るだろうと思います。   仮にこれを一括して,一つの要綱に対する賛否を問うということになりますと,では,私はどうしたらいいのと,股裂き状態になるわけですし,あえて言わせていただければ,一括して採決をすることによって,個別の論点に係る各委員の御意見を封殺する結果にもなりかねない。そういう観点から先ほど私は当初,要望と思っておりましたけれども,本件の議題については要綱案としては一つかもしれませんけれども,第一,第二,個別に採決をお願いしたいと,このように考えております。 ○伊藤会長 分かりました。奈良委員から採決の方法につきまして,要綱(骨子)の第一と第二を分けて分割して採決をする方法を採るべきだという御提案がございました。従来の取扱いについては先ほど小川さんから説明があったとおりで,あえて繰り返す必要はないかと思いますので,他の委員の方々から,採決の方法につきまして,何か御意見がございましたらお願いいたします。 ○西田委員 奈良委員のおっしゃることはごもっともなので,要綱(骨子)の第一と第二はそれぞれ別個に採決に付しても構わないのではないかと思料します。 ○伊藤会長 分かりました。ほかには御意見はいかがでしょうか。 ○岩原委員 諮問95号に関します要綱(骨子)は,先ほど御紹介のございました平成19年の諮問80号の場合と同様に,第一と第二の部分は,政策的に全体としてのバランスを考慮した一体のものとして決定されているように見られますので,この要綱(骨子)も全体を一括して採決することが適切ではないかと存じます。 ○伊藤会長 分かりました。他の委員の方で,ただいまの点につきまして御意見はございますでしょうか。いかがでしょうか。   そういたしますと,分割して採決をすべきであるという御意見と,一括して採決をすべきであるという御意見の両様がございますので,ここで採決の方法について委員の方々に採決をお願いしたいと存じますが,それでよろしゅうございますか。   それでは,一括して採決することに賛成の方は挙手をお願いしたいと存じます。           (賛成者挙手) ○伊藤会長 それでは,反対の方も挙手をお願いいたします。 ○奈良委員 個別にという。 ○伊藤会長 そういうことです。           (反対者挙手) ○伊藤会長 ありがとうございます。 ○松本司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。議長及び部会長を除き,ただいまの出席委員数は14名でございますところ,採決の方法につきまして,一括採決に賛成の委員は8名,反対の委員は6名でございました。 ○伊藤会長 そういたしますと,反対の委員の方の数も相当数に上っておりますけれども,一括の採決に賛成の方が多数でございますので,誠に恐縮でございますけれども,この要綱(骨子)につきましては,一括採決ということで御了解いただけますでしょうか。 ○奈良委員 すみません,お手数をお掛けいたしました。 ○伊藤会長 とんでもございません。   そういたしましたら,一括して採決をすることにいたしまして,諮問第95号につきまして,少年法部会から報告されました要綱(骨子)のとおり,答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ○伊藤会長 ありがとうございます。   反対の方も挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ○松本司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。議長,部会長を除き,ただいまの出席委員は14名でございますところ,原案に賛成の委員は14名全員でございました。 ○伊藤会長 ただいま,報告がございましたとおり,14名全員の委員の方の賛成を頂きましたので,部会から報告されました要綱(骨子)は原案のとおり,採択されたものと認めます。採択されました要綱(骨子)につきましては,会議終了後,法務大臣に対して答申することといたします。川端部会長,お疲れ様でございました。 ○川端委員 どうもありがとうございました。 ○伊藤会長 さて,本日の議題は以上でございますけれども,引き続きまして,現在,調査審議中の部会から,その審議状況等を報告していただきたいと思います。本日は,新時代の刑事司法制度特別部会の部会長であります本田臨時委員及び民法(債権関係)部会の部会長であります鎌田臨時委員にお越しをいただいておりますので,それぞれの部会における審議状況についての報告をお願いし,報告後に委員の皆様からの御意見等を承りたいと存じます。   まず,新時代の刑事司法制度特別部会の部会長である本田臨時委員からお願いいたします。 ○本田臨時委員 ただいま御紹介いただきました新時代の刑事司法制度特別部会の部会長を務めております本田でございます。当部会におきますこれまでの審議状況について,御報告をさせていただきたいと思います。   お手元の「中間報告(新時代の刑事司法制度特別部会)」を御覧いただきたいと思います。平成23年5月,時代に即した新たな刑事司法制度を構築するための法整備に関する諮問が行われ,法制審議会の決定に基づきまして,当部会が設置されたところでございます。   本諮問におきましては,取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直し等が中心的な課題とされておりまして,正に捜査活動から公判審理に至りますまで,刑事司法制度の全般を見据えた審議が必要であると考えられました。そのため,当部会では,平成23年6月以降,本年1月29日までの間,合計19回の会議を行いまして,幅広い観点から議論を行ってまいりました。また,この間,国内外の関係機関等の視察のほか,警察官,弁護士,検察官及び被害者遺族等からヒアリングを行うことなどによりまして,我が国の刑事司法制度の現状等の把握に努め,これらをも踏まえつつ議論を重ねてまいったところでございます。   部会における議論では,それぞれの立場の方々から,大変多岐にわたる事項について,様々な見解が示されました。そして,論点の整理を行いつつ議論を重ねるに従いまして,刑事司法制度の現状等を踏まえました検討の方向性,また,今後の検討の中心とするべき事項について,一定程度の認識の共有が進んでまいったところでございます。そこで,今後,議論を収斂させ,新たな刑事司法制度を構築するためのステップといたしまして,まずはこれまでの議論状況を整理するとともに,今後の検討におきます一定の方向性を示すものとして,今後の検討指針及び検討対象とすべき具体的方策を中間的に取りまとめることにいたしました。   そのような方針に基づきまして,本年1月29日,当部会において取りまとめましたのが,お手元の「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」と題する資料でございます。   この基本構想の中では,総論として,今後の検討指針をお示しした上で,各論として,今後の検討対象とすべき具体的方策につきまして,二つの理念の下に整理をいたしております。   まず,「取調べへの過度の依存からの脱却と証拠収集手段の適正化・多様化」との理念の下,主として捜査活動に関します具体的方策として,「取調べの録音・録画制度」など五つの方策を今後の検討対象としたところでございます。また,「供述調書への過度の依存からの脱却と公判審理の更なる充実化」という理念の下に,主として公判に関します具体的方策として,「証拠開示制度」など四つの方策を今後の検討対象としたところでございます。そして,これら合計九つの具体的方策につきましては,それぞれ可能な限りで,今後の検討手順なり,また,考えられる制度の概括的なイメージなどを示しているところでございます。   御留意いただきたいことは,この「基本構想」に記載した具体的方策は,いずれかの制度の内容を定めたり,あるいは,いずれかの制度の導入を決定したというものではなくて,飽くまでも今後の検討対象として提示したものでございます。今後,まずは「基本構想」に沿いまして,各方策について具体的な制度を想定した検討を行い,その上で,そのような制度を採用するか否かも含めて議論をし,必要な判断を行っていくことといたしております。   このように,当部会では,今回取りまとめに至りました「基本構想」を踏まえまして,その次の段階,つまり,今後の検討対象として示しました各方策につきまして,具体的な制度を想定した検討を始める段階に至ったところでございます。   今後の審議の方法について申し上げます。当部会におきます今後の検討をより効率的かつ実質的なものとするためには,検討対象とされたそれぞれの方策につきまして,それぞれの制度のたたき台等を作成し,これに基づいて議論することが有用と考えられました。そのため,当部会の下に二つの作業分科会を設置いたしまして,各作業分科会で分担して,「基本構想」に沿って,各制度のたたき台としての資料等を作成してもらい,それに基づき,当部会におきまして議論,検討を行うことといたしました。そして,その結果を踏まえた作業分科会での更なる作業を経まして,当部会で議論,検討を行うという方法で審議を進め,最終的な制度案の取りまとめを目指すことといたしました。なお,作業分科会の構成につきましては,「中間報告」の別紙2に記載したとおりでございます。   本諮問につきましては,その重要性に鑑みまして,引き続き充実した十分な審議が必要と考えております。そのため,具体的な検討の段階に入ろうとしている現時点で,最終的な制度案の取りまとめ時期を定めることは困難ではございますけれども,できる限り速やかに審議を進めてまいりたいと考えているところでございます。   以上,誠に簡単ではございますが,新時代の刑事司法制度特別部会の現在の審議状況についての御報告とさせていただきます。 ○伊藤会長 ありがとうございました。   ただいまの部会長からの審議経過報告に関しまして,御質問,御意見等がございましたらお願いいたします。 ○奈良委員 奈良でございます。今日は報告ですので,意見は差し控えさせていただきますが,正真正銘,一つだけ要望ということで,一言,お話をさせていただきたいと思います。   取調べへの弁護人の立会いの問題ですけれども,なかなか,意見の取りまとめが難しいということで,別途検討事項ということになったように,今,お話を伺いましたし,基本構想にもそのように書いてございます。また,34ページですか,「3 その他」で,「事実認定と量刑に関する手続の在り方」を始めとする5点についても別途検討事項と,このようにされております。別途検討事項とされること自体,いろいろ部会で御苦労なされたことだと思いますので,私は異論はございません。ただ,取り分け取調べにおける弁護人の立会権につきましては,世界的にもグローバルスタンダードというように私は理解をしておりますし,今後,具体的な検討が急がれるべきであろうという,私自身,意見を持っております。   この基本構想で述べられております特別部会とは別の機会に検討という表現ですけれども,実は先ほど5点と申し上げました別途検討事項の中で,御承知の方もいらっしゃると思いますが,DNA型鑑定資料の採取及び保管等に係る法制化に関して一昨日ですか,2月6日付けの朝日新聞の社説で,法制化の先送りではないかという厳しい批判記事も載っておりました。厳しいことを申し上げるようですけれども,私の経験からいたしましても,別の機会に検討というのは,得てして何にもしないという結論にもつながりかねないということで危惧をしております。そういう意味では,先ほどの朝日新聞の記事にもございましたけれども,別の機会に検討するということであれば,今後,いつ,どのような機会を設けて検討するのか,部会に申し上げることではございませんけれども,今後,早目に具体的な検討に着手していただきたい。   以上,要望として申し上げさせていただきます。 ○伊藤会長 御要望ということですが,何か,関連した御発言はございますか。 ○稲田幹事 当部会の事務当局としてではなく,法務省としての立場からお答えを申し上げます。今,御指摘のありました点は,確かに別途検討ということになっております。それは先ほど部会長のほうからも御報告がございましたように,意見の対立があるなどして,部会の中で一定の方向性を得るには至らないというようなこともございますし,全体のボリューム等の中で,今後,この部会をどのように運営していくかという観点からも,別途検討ということになったと承知しているところでございます。私どもといたしましても,今後,今の御指摘も踏まえて,どのように対応していくのかということは早急に検討していきたいと考えております。 ○伊藤会長 よろしゅうございますか。   それでは,どうぞ,他の委員の方々,お願いいたします。 ○西田委員 私は質問でございます。18ページの(4)の「被疑者・被告人の身柄拘束の在り方」の最初の丸ですが,勾留と在宅の間の中間的な処分を設けるという,これは私はどうも具体的なイメージが全然湧いてきませんので,一体,どういうことをお考えなのか,お教え願えればということです。 ○稲田幹事 具体的なイメージというほど,まだ固まったものがあるわけではございません。従来から言われております議論として,保釈制度が起訴前には認められていないということはどうなのかというものもありましたが,必ずしもそれに限られるものではなくて,通常の意味でいう身柄拘束がなされてはおらず,在宅ではあるけれども,一定の義務が被疑者に課されている状態,例えば,一定の証拠隠滅工作行為を行ってはいけない,あるいは,一定の求めがあった場合には出頭しなければならないというような一定の義務を課して,しかし,通常の意味でいう身柄の拘束は行わないというような形もあり得るのではないかと認識しているところでございます。 ○西田委員 大体,分かりましたが,これとの関連では接見禁止の在り方も一律,接見禁止というのが今の主流だと思いますけれども,例えば身内とか,特に身柄を勾留されている間の民事的な関係などを考えますと,一律に全部接見禁止というのが果たしていいかどうか,一部除外して接見禁止指定をするというような点も含めて,お考え願えればということを一言,申し添えておきたいと思います。 ○伊藤会長 ありがとうございました。   それでは,他の委員の方,いかがでしょうか。 ○今田委員 現段階での19回にわたる周到な議論の結果の現段階での合意,統一案であると,今,お伺いしました。そういうことで考えた場合に,取調べの録音・録画制度の問題に関して,報告書では両論併記の形で記述されています。中身を読ませていただきましたが,本当に周到な議論がされて,録画・録音による意義・問題点についても入念に検討されています。いろいろな問題が起こったことを契機として,様々な議論がされて,その結果として改革案が出されている。非常に周到な整理のされ方をされているんですが,その結論として,両論併記という議論のまとめ方には少し疑問を感じるわけです。   というのは,第1案は,一定の例外事由を認める上で,原則として録音・録画を義務付けるという内容である。また,対象をどうするかという点で,範囲をどうするかという議論もある。こうした対応によって,想定されるいろいろな問題点というのは対応できるのではないか。率直な意見として両論併記という形が検討結果の整理として適切なのか疑問に感じます。   特にマスコミなどでこういう両論併記のような形で出されたときに,一般の国民は中の細かな議論の経過というのは余り読まないわけですから,そういうときに併記の形で提示されたときに,何のための議論だったのかというような素朴な疑問を持つ方が多いのではないか。議論の集約が非常に大変だったということを重々,理解するべきだとは思うんですけれども,この両論併記の整理の仕方というのは,少し疑問が残るのではないかと私は捉えました。 ○本田臨時委員 先ほど申し上げましたように,この「基本構想」は,今後の検討方針を提示したもので,これから具体的に制度の形を詰めていこうということです。被疑者取調べの録音・録画制度は導入しましょうということですが,原則として取調べの全過程について録音・録画を義務付けることとする場合でも,一定の例外事由を定めることとなり,これが果たして具体的にどういう形でできるかという検討が必要となります。また,録音・録画の対象とする範囲を取調官の一定の裁量に委ねるとこととしても,この場合の「一定の」ということが具体的にどのようなものになるのかという検討が必要となります。基本的には,録音・録画制度を導入する目的があるわけですから,それに沿って,具体的な制度の姿,形なり,そういうものを作業部会で作り出してもらって,それを部会でちゃんと議論しましょうということなのです。つまり,両論併記的に考えるのではなくて,目的を達成するためにどうやったらいいかということであり,今,今田委員がおっしゃったような御意見も含め,いろいろな議論がありましたけれども,具体的な検討を進めていくためには,具体的な案を作る必要があり,そのために,取りあえず,これでスタートしましょうということです。作業部会でいろいろと議論して案を作っていただいて,そこで決めるのではなくて,それを基に飽くまでも部会で議論しましょうという考えでございます。 ○伊藤会長 よろしゅうございますか。ただいまの今田委員からの御指摘も踏まえて,検討を続けていただければと存じます。   他にいかがでしょうか。御質問,御意見がございましたらお願いいたします。 ○岩間委員 質問なんですが,裁判員制度への言及が何箇所かあります。32ページに,自白事件を簡易迅速に処理するための手続ということで,裁判員制度の導入により,刑事司法に関わる者の負担が増していると書いてあり,あと,今,言及のあった録音・録画制度に関しても7ページに対象事件について,裁判員制度の対象事件というのを考えると書いてあるんですが,裁判員制度自体が非常に新しいもので,その実態について今後,改革の余地は十分あると思いますが,御負担が大きいということは,誰にとって,どういう負担があって,それがどういう問題を生じているのかという,そこのところを伺いたいのと,録音・録画と裁判員制度の関連というはどのような議論で,こういうことが記載されているのか,そこのところをお願いできますでしょうか。 ○稲田幹事 まず,32ページの「裁判員制度の導入により」というところですが,裁判員制度が導入されたことによって,裁判員制度対象事件の裁判のやり方は,従来とはある程度変わってきています。これに伴い,法曹三者,つまり,裁判官,検察官,弁護人は,それぞれ,準備や法廷活動,あるいは,裁判官の場合には,評議の在り方等もあろうかと思いますけれども,そういう部分で,裁判員制度導入以前に比べれば,当該事件一件一件に掛かる負担というのが,それぞれに増えてきているという認識は,三者共通に持っているのではないかと思います。正に,ここはそういう意味で申しているところでございまして,それは具体的にどういうことかといえば,例えば,裁判員の方が理解しやすい訴訟活動をどのようにしていくのかというようなところに,一つは集約されているのではないかと思います。   ただ,他方で,裁判員制度自体が個々の法曹三者それぞれにとって負担が重いから問題であるという趣旨で申し上げているつもりは毛頭なくて,国民が司法に参加するという裁判員制度の非常に重要なメリットの部分について,否定的に申し上げているつもりでないことは,申し添えておきたいと思います。ただ,今,申し上げましたように,個々の事件での負担が重くなっている部分はあるということを事実として申し上げているものと御理解いただきたいと思います。   一方,7ページの被疑者取調べの録音・録画制度のところで,裁判員制度対象事件を一つの手掛かりとし,念頭に置いてということにしておりますのは,必ずしも裁判員制度対象事件だからというよりも,裁判員制度対象事件が一定の重大事件ということでくくりになるということです。そういう意味で,事件としてそれぞれが重要で重大な事件,国民の関心を集める事件という切り口から,まずは一つの手掛かりとして,裁判員制度対象事件を念頭に置いてと言っているものでございます。このように,裁判員制度からアプリオリに,取調べの録音・録画制度についての検討対象にするという形になってきているわけではないのです。そういう意味で,32ページと7ページでは,裁判員制度というものとの関連性に違いがあるのかなと思っております。 ○伊藤会長 岩間委員,いかがでしょうか。言われていることの意味が若干違っているようだというようなことでございましたが。 ○岩間委員 ありがとうございます。7ページのほうはよく分かったんですが,32ページのほうで負担が増しているというのはどういうことか,裁判員制度について,その後,そんなに報道がありませんので伺いたいんですが。実際に審理に掛かる期間についてはどういう影響が出ているのか,法曹三者に短期集中的に負担が掛かるのか,どう質が変わってきているのか。そこが大変だから他を簡略化するというのは,制度の改革の趣旨と違うのではないかという気もしますので,そのところの御説明をお願いできますでしょうか。 ○稲田幹事 私も全体像を全て把握しているわけではございませんが,裁判員制度になることによって,法廷での訴訟の進行の部分というのは,おっしゃるように非常にコンパクトな,今までであれば何箇月とか掛かっていたのが数日に短縮されるという意味で,非常に濃縮された訴訟活動が求められるということになりますし,更に事前準備の段階でも,訴訟当事者のいずれにおいても非常に濃密な活動が要求されることになるというのは,客観的事実としてはあるだろうと思います。ただ,もちろん,それが言わば全ての原因であるということを申し上げているわけではなくて,訴訟に携わる者の掛けるエネルギーの掛け場所として,濃縮的にそこにエネルギーを掛ける部分と,簡略化してもいい部分というのがあるのではないかという問題意識で,ここには記載されているように私は理解しているところでございます。 ○伊藤会長 いかがでしょうか。 ○岩間委員 単なる意見というか,要望ですけれども,おっしゃることは分かるんですけれども,何となく,ここにある議論を拝見している限りでは,全体のパイは決まっていて,それをどうこうするんだという前提でお話が進んでいるように思えます。ですが,公正な裁判を受ける国民の権利というのは非常に大事なものだと思いますので,今現在,適正な資源がそこに充てられているかということも含めて,慎重に議論いただければと思います。 ○伊藤会長 この「基本構想」の記述に関しまして,岩間委員からの御指摘も踏まえて,今後の審議をしていただくと。よろしゅうございましょうか。 ○本田臨時委員 今後,各論,具体的な内容を検討するに当たっては,ただいまの御意見も参考にさせていただきながら,検討を進めていきたいと思います。 ○伊藤会長 ありがとうございました。   ほかには御意見,御質問はございますか。よろしゅうございますか。   それでは,本田部会長,ありがとうございました。 ○本田臨時委員 どうぞよろしくお願いいたします。 ○伊藤会長 最後に,民法(債権関係)部会の部会長である鎌田臨時委員からお願いいたします。 ○鎌田臨時委員 御紹介いただきました鎌田でございます。恐縮ですが,着席して報告させていただきます。   民法(債権関係)部会におけるこれまでの審議状況について御報告いたします。   民法のうち,債権関係の規定の見直しにつきましては,平成21年10月に開催されました法制審議会第160回会議において諮問が行われ,民法(債権関係)部会が設置されました。当部会では同年11月から,これまでに合計68回の会議を関催し,債権関係の規定の見直しについて議論を重ねています。   当部会の審議状況に関しましては,既に平成22年10月の法制審議会第163回会議と,平成24年2月の法制審議会第166回会議において,中間報告をさせていただいたところですが,本日は3回目の中間報告ということで,前回の報告以降の審議状況の概要,今後の審議予定等について御紹介を申し上げます。   まず,審議状況の概況でございますけれども,お手元の資料,民5の「民法(債権関係)部会の審議の進め方」という簡単な図を参照していただけますと分かりやすいかと思いますが,民法(債権関係)部会におきましては,全体のスケジュールを大きく三つに区分して,審議を進めることとしております。まず,一昨年の4月までの第1ステージでは,今後の審議対象とすべき論点の整理を行いました。その後,第2ステージで中間試案を取りまとめ,その後の第3ステージで,総会で御議論いただくための最終的な改正要綱案を取りまとめることを予定しております。現在は,第2ステージの段階であり,中間試案の取りまとめに向けた審議を行っているところでございます。   第1ステージの成果物といたしましては,前回の中間報告において御報告したとおり,平成23年4月12日開催の第26回会議において,「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」を取りまとめ,パブリックコメントの手続が行われました。パブリックコメントの手続では,団体と個人を合わせて合計369という多数の意見が寄せられ,当部会におけるその後の審議の参考としております。   中間的な論点整理に対するパブリックコメントの手続と並行して,関係する団体などからのヒアリングを行い,これらを経て,平成23年7月26日開催の第30回会議からは,中間試案の取りまとめに向けた第2ステージの審議を開始いたしました。第2ステージの審議におきましては,平成24年11月6日開催の第61回会議まで約1年半の間,32回にわたって中間的な論点整理に掲載された各論点について1巡目の審議を行いました。その後,第61回会議から平成24年11月27日開催の第63回会議までの3回の会議では,1巡回の審議の対象となった論点の中から,中間試案のたたき台を作成するために補充的な審議を要する論点を幾つか取り上げ,その議論を深める機会を持ちました。   この間,多岐にわたる論点を効率的に審議するための工夫として,当部会の下に三つの分科会を設置し,部会全体における審議と並行して分科会での審議を行いました。これは,部会メンバーのうち,民法の研究者,裁判官又は弁護士である委員・幹事に,第1分科会から第3分科会のいずれかに所属していただき,必要に応じて他のメンバーが議論に加わるという形で,部会全体に比べて少人数で議論を深める場を設け,部会が付託した論点について,補充的な審議を行うというものであります。平成23年11月から平成24年11月までの間,各分科会6回ずつ,合計18回の会議が開催されました。   以上の審議を踏まえまして,平成24年12月4日開催の第64回会議から本年2月5日開催の第68回会議までの5回の会議におきましては,本日,机上に配布いたしました「民法(債権関係)の改正に関する中間試案のたたき台」(1)から(5)まで,資料番号でいいますと民6以下,部会資料番号では53から57ということになりますが,これらの資料についての審議が行われました。これは,中間試案の原案を五つに分割して示したもので,(1)から(5)までで,当部会において議論の対象とする領域の全体をカバーするものであります。たたき台の(5)につきましては,一部,審議未了の部分がありますが,この部分についての審議を終えた後,これまでの会議で出された意見を踏まえてたたき台の改訂作業を行った上で,早ければ今月中にも中間試案を取りまとめたいと考えております。   中間試案のたたき台の内容について,ごく簡単に触れておきたいと思います。中間試案のたたき台では,これまでの審議を踏まえて多岐にわたる論点が取り扱われています。法制審議会への諮問内容に即して,ごく一部でありますが,その内容を御紹介したいと思います。   諮問におきましては「債権関係の規定について社会・経済の変化への対応を図る」という観点が示されています。このような観点から取り上げられた論点の一例として約款が挙げられます。約款につきましては部会資料56の23ページ以下でございますが,今日の取引社会におきましては約款が多用されており,その利用なくしては経済取引が成り立たないと言うことができます。一方,当事者が大部の約款を読むことは期待することができず,現に読んでいない当事者が多いということから,約款については,それがどのような要件で契約内容になるのかという問題も指摘されています。民法には約款に関する規定は設けられていないため,この点についてのルールが明確ではありません。そこで,約款がどのような要件を満たせば契約内容となるかについて,新たに規定を設けるということが検討されております。   また,諮問におきましては「債権関係の規定を国民一般に分かりやすいものにする」という観点が示されていますが,このような観点から取り上げられた論点の例としては,錯誤が挙げられます。錯誤につきましては部会資料53の7ページ以下でございます。錯誤についての現行民法第95条は,法律行為の要素に錯誤があったときはその意思表示を無効とする旨の簡潔なものでありますが,判例は,この規定の内容を解釈によって補ってまいりました。例えば,法律行為の要素とは何かについて条文から読み取ることは困難でありますが,判例は,その錯誤がなければ表意者はその意思表示をせず,かつ,その意思表示をしないことが通常であるといえる程度に重大なものが,要素の錯誤に該当するといたしております。   また,民法第95条が規定する錯誤とは,典型的には言い間違いや書き間違いなどを意味しますが,実際に紛争になるのは,目的物の性質などについての認識の誤りがある場合です。現在の簡潔な条文のままでは,この場合にどのようなルールが適用されるのかを一般の国民が読み取ることは困難であるということから,判例が確立したルールを条文上も明らかにすることが検討されているところであります。   最後に,今後のスケジュールについてでありますが,中間試案が取りまとめられましたら,パブリックコメントの手続が予定されております。中間試案後には,総会で御議論いただくための最終的な改正要綱案を取りまとめるため,第3ステージの審議が開始されますが,中間試案についてのパブリックコメントに寄せられた意見については,第3ステージにおける審議において参考にしたいと考えております。要綱案の取りまとめ時期は未定でありますが,今後も充実した審議を行い,できる限り,速やかに要綱案を取りまとめ,総会に御報告したいと考えております。 ○伊藤会長 どうもありがとうございました。   ただいまの経過報告内容につきまして,御質問,御意見等がございましたらお願いいたします。 ○萩本関係官 資料の訂正をさせていただきたいと思います。資料番号でいくと民5「民法(債権関係)部会の審議の進め方」ですが,この資料の一番下の第1ステージ論点整理が平成23年3月までという表示になっておりますが,今,鎌田部会長から口頭で御報告いただいた際にありましたとおり,平成23年4月までの誤りでございますので,御訂正をお願いいたします。お許しいただければ,この後,法務省のウエブサイトにこの資料を掲載する際には,訂正後のものを掲載させていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○伊藤会長 ただいま,萩本さんからあった点については,御了解いただきたいと思います。   それでは,改めまして,御質問,御意見等をお願いいたします。 ○山根委員 要望なんですけれども,民法の改正は消費生活に直結するとても大きな重要な問題なんですけれども,なかなか,分量も多いですし,私たちが理解をして,分かって議論に加わるのはとても難しいと感じています。ただ,改正の大きな目的は国民一般に分かりやすい法律にするということでありますし,是非,広く学習会とか説明会とかいうようなものを持っていただいて,一般国民が分かるような議論の素地というか,そういうことを作っていただければと思います。特にパブリックコメントの募集期間中ですとか,そういったときに,そういったことを企画いただければ有り難いと思います。 ○伊藤会長 何か今の点,御説明がありましたら。 ○鎌田臨時委員 この点については,事務当局のほうでも,随分,御配慮いただいて,既に幾つかそういった企画も計画されていると聞いておりますので,更に広範にそのような機会を持てるように努力したいと思います。 ○伊藤会長 ありがとうございました。 ○八丁地委員 経済界といたしまして意見を申させていただきます。今,鎌田部会長から御説明がありましたように,2009年に部会が設置をされて以来,70回という大変数の多い審議が行われまして,中間試案が出たということに関しましては,大変,敬意を表するものであります。当然でありますが,民法は企業取引全般を規律するものでありますので,経済界といたしましても大きな関心を持って議論に注目しておりますし,今,山根委員が言われましたように,周知徹底,広く国民への徹底というところもポイントだと思いますので,その辺りも国民運動的に頑張っていただければと思っております。社会・経済の変化への対応ということや,現代の取引に合ったものとするということに関しましても,民法は取引の基盤でございますので,経済界として趣旨には大いに賛成であります。   1点,御配慮いただきたいという点を申し上げさせていただきますと,社会・経済の変化というところで約款が取り上げられておりまして,約款のルールが不明確であるという御指摘は確かにあろうかと思っておりますし,見直しの検討も必要であるとは思いますが,現実には約款という取引は既にかなりの実績を持っておりまして,実務的に問題がないケースが大部分だと認識をしております。事業者間から消費者・事業者の取引までと,約款が多層的に今日の取引のあらゆる場面で利用されている中で,非常に大きな社会的問題が生じているという事案があるのかといいますと,それほど深刻な事案は大部分ではないと考えているところであります。見直しの検討は必要かと思われますけれども,既に安定的な実務の約款取引にまで逡巡が生じるようなことのないように,是非,御配慮を頂きたいと思います。さらに,今後の新しいビジネスというのは,ネット取引でありますとか,約款等がかなり大きく関わってくるところがございますので,そのようなビジネスの障害にならないような御配慮も是非お願いをいたしたく存じます。 ○伊藤会長 鎌田部会長,何か。 ○鎌田臨時委員 御要望は受け止めておりまして,そういった姿勢で取りまとめをするように努力してきたところでございますが,さらに本日の御意見,また,パブリックコメント等で寄せられます御意見を踏まえて,実際の取引に確固たる基礎を与えこそすれ,無用の障害になることのない,そういった民法になるように努力をしていきたいと思っております。 ○伊藤会長 ほかにいかがでしょうか。 ○佐久間委員 まずは大変精力的な御審議をしていただいておりますことに,御礼を申し上げます。八丁地委員のお話と重なるところがありますが,今,御指摘されたように,民法というのは国民の生活,さらには企業活動にとって基本中の基本の法律であります。したがって,時代の流れ,技術の進歩等々に柔軟に応じられるものであるという性格が,基本法たる性格というのが期待されているのではないかと思います。   一方で,今の問題,例えば消費者保護であるように,ある特定の法益といいますか,保護すべき問題というのがあるのも現実だと思います。ただ,その点については,このような基本法で取り上げるというよりは,別の特別法として規律するということが好ましいのではないか,今,起きていることについて,例えばある一定の消費者保護というところについて余り力点を置くと,かえって,そうでないところについての影響もまた大きくなる可能性があるのではないかと,このようにも考えております。したがいまして,その辺りについては,飽くまでも民法は基本法だというところを踏まえた上で,十分に慎重な検討をお願いしたいと思っております。 ○鎌田臨時委員 その点につきましても,十分にこれまでも考えてまいりましたし,今後,更に一層慎重に検討を深めてまいりたいと思います。 ○伊藤会長 ほかにいかがでしょうか。   それでは,他に御質問,御意見がございませんようでしたら,鎌田部会長,ありがとうございました。 ○鎌田臨時委員 どうぞよろしくお願いいたします。 ○伊藤会長 以上で,本日の予定は終了でございますが,ほかにこの機会に御発言がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。 ○岩原委員 昨年9月の法制審議会の総会で,会社法制の見直しに関する要綱を御決定いただいたわけでございますが,それに基づく会社法改正法案を今国会に提出することが,極めて厳しい状況であるという旨の御連絡を法務省から頂きました。しかし,会社法改正法案は,元々,昨年の臨時国会に提出される予定であったものでありまして,それが臨時国会に提出できず,更に現在の通常国会にも提出されないとしますと,要綱の決定から1年以上,立法化が棚ざらしにされるということになります。基本法の一つであります会社法改正が,このように長く棚ざらしにされるということは極めて遺憾でございます。   政治情勢から,国会提出法案を絞らざるを得ないためと伺っておりますが,会社法改正が目指しますコーポレートガバナンスの改革は,現在の政治の第一の課題とされております経済の活性化を実現する上で,大変重要なことと理解しておりますので,そのような意味からも,できるだけ,速やかに会社法改正法案を国会に提出し,法改正を実現するよう,最大限の努力をお願いしたいと存じます。 ○伊藤会長 ただいまの岩原委員からの御発言に関しまして,事務当局から御発言がございますか。 ○深山幹事 今の岩原委員の御指摘はそのとおりで何の異論もございません。昨年来,法務省は提出して審議に至らず,廃案になった法律を多数抱えておりまして,法制審議会の皆さんの答申を受けて立案した法律も,会社法改正法案以外にも廃案になったものが随分ございます。また,その後の法制審議会の審議を反映して,法案化の準備が整ったものもありまして,今年の通常国会には合計で17本ぐらいの法案を用意できる状態になって,これらの法案は,基本的にはいずれも基本法の改正に関わるものですけれども,一方で,今年の国会はいろいろな事情から会期延長がないと言われており,予算に関係しない通常の法案の審議期間は1か月程度しか確保できないのではないか予想されていることから,用意ができている法案を全て国会に提出することすら,なかなか認めていただけないという非常に厳しい状況の下で,会社法改正法案については,この通常国会に提出することが難しい事態になってしまいました。我々としては何としても早く提出し,更には早く成立させたいと念願しておりますことは委員と同じですので,今,申し上げたような事情ではありますけれども,また,秋には臨時国会があるでしょうから,その機会には,できるだけ早く提出をし,成立を図りたいと思っております。   ということで,担当部局としては,省全体で余りにたくさんの法律案が用意されているために,その全てを提出することはできていないという非常に苦しい事情の下で,やむを得ない判断として,会社法改正法案の提出を断念するに至ったということを御理解いただきたいと思います。 ○伊藤会長 よろしゅうございますか。   ほかには何か特に御発言はございますか。   よろしければ,本日の会議はこれで終了させていただきます。   なお,本日の会議におきます議事録の公開方法につきましては,審議の内容等に鑑みまして,私といたしましては議事録の発言者名を全て明らかにして公開したいと存じますが,いかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,議事録の発言者名を全て明らかにして議事録を公開したいと思います。なお,本日の会議の内容につきましては,後日,御発言を頂いた委員等の皆様には,議事録(案)をメール等にて送付させていただきまして,御発言の内容を確認していただいた上で,法務省のウエブサイトに公開したいと思います。   最後に,事務当局から何か事務連絡がございましたらお願いいたします。 ○小川関係官 次回総会の開催予定について御説明を申し上げます。法制審議会は2月と9月に開催するのが通例となっておりますが,次回の日程につきましては内々に御連絡しておりますとおりで,場所は本日と同じこの大会議室において,法制審議会第169回の会議を予定してございます。正式には案件が確定次第の御案内とさせていただきたいと存じます。つきましては,委員・幹事の皆様方におかれましては,御多忙のところとは存じますが,第169回会議の御予定につき,御配慮いただきますよう,よろしくお願い申し上げます。 ○伊藤会長 それでは,以上で本日の会議を終了いたします。   お忙しいところをお集まりいただき,熱心な御審議を頂きまして誠にありがとうございました。 -了-