法制審議会           新時代の刑事司法制度特別部会           第2作業分科会(第3回) 第1 日 時  平成25年5月21日(火)   自 午前 9時57分                         至 午後 0時29分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  時代に即した新たな刑事司法制度の在り方について 第4 議 事  (次のとおり)           議        事 ○保坂幹事 ただいまから法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会第2作業分科会の第3回会議を開催いたします。 ○川端分科会長 本日は,御多用中のところ御参集いただきまして,誠にありがとうございます。   本日の議事は,お手元の議事次第のとおり,配布資料の説明の後,まずは,予定に沿って,「自白事件を簡易迅速に処理するための手続の在り方」,「被疑者国選弁護制度の在り方」についての議論を行うことといたします。また,「犯罪被害者等及び証人を支援・保護するための方策の拡充」に関しましては,第1回会議でも検討を行いましたが,時間の制約もあったことから,幾つかの論点について補足的な検討をしていただきたいと思いますので,「被疑者国選弁護制度の在り方」についての議論の後,時間の許す範囲で議論を行うことといたします。   なお,あらかじめお申出がありましたので,当作業分科会の本来の構成員である神幹事に代わって小野委員に御参加いただくことといたします。   それでは,本日の配布資料について,事務当局から説明していただきます。 ○保坂幹事 本日は,配布資料といたしまして,新たに第2作業分科会資料4,5,6をお配りいたしております。資料4と資料5はそれぞれ,「自白事件を簡易迅速に処理するための手続の在り方」,「被疑者国選弁護制度の在り方」につきまして,事務当局において考えられる制度の概要や検討課題を整理したものでございまして,内容につきましては後ほど御説明がございます。資料6は,第1回会議の「犯罪被害者等及び証人を支援・保護するための方策の拡充」に関する議論において用いた資料を,その際の議論を踏まえて修正・加筆したものでございまして,後ほど議論の際に御説明があります。また,参考資料といたしまして,各検討事項に関する参照条文等を整理した資料をお配りし,さらに,「被疑者国選弁護制度の在り方」に関して小野委員から資料が提出されておりますので,これもお配りしております。   資料の説明は以上でございます。 ○川端分科会長 それでは早速,本日の一つ目の検討事項である「自白事件を簡易迅速に処理するための手続の在り方」についての議論に入ります。この検討課題に関しては,基本構想において,実刑相当の自白事件のうち,一定範囲のものを簡易迅速に処理できる手続を創設するとともに,捜査段階の迅速化のための措置を講じることについて検討を行うとされていますので,捜査の簡易迅速化のための措置と新たな手続の在り方の二つの項目を中心に検討を行うことといたします。   まず,配布資料の内容を事務当局から説明していただきます。 ○保坂幹事 御説明いたします。資料4を御覧ください。   最初に,第1の「自白事件の捜査の簡易迅速化を確保するための措置」について御説明をいたします。   基本構想におきましては,現行の即決裁判手続においては,起訴後も判決言渡しに至るまで,同意の撤回などにより通常公判で否認事件として審理されることとなる可能性があるため,捜査機関としては,これに備えてあらかじめ綿密な捜査を遂げた上で起訴せざるを得ず,捜査段階の簡易迅速化が実現していないとの指摘を踏まえ,これを実現するための措置について具体的検討を行うとされております。   お示しした制度概要のA案は,被告人があらかじめ簡易迅速な手続に同意をしていた場合において,公判期日で被告人が有罪陳述をせず,あるいは同意や有罪陳述を撤回するなどして,検察官が公訴を取り消したときに,公訴取消後の再起訴制限を緩和しようとする案でございまして,必要に応じて公訴を取り消して追加捜査を行った上で再度起訴することを可能にしておくことにより,最初の起訴に至る捜査を簡易迅速化しようというものでございます。   B案は,A案に加えてのものでございまして,第一回公判期日前の有罪陳述手続を設けて,被告人及び弁護人の同意を要件として,この手続で有罪陳述をしたときには,同意及び有罪陳述はやむを得ない事情でなければ撤回することができないものとする案でございます。簡易迅速な手続の申立てに同意がされた後の被告人側の対応の変化によりまして,追加的な証拠収集を迫られることになるリスクを低減させるということによって,起訴に至る捜査を簡易迅速化しようとするものでございます。   検討課題について御説明します。   (1)のA案についての課題は,同意の撤回等があった場合に公訴を取り消した後の再起訴制限を緩和して,追加捜査を可能にしておくということによって,捜査の簡易迅速化にどの程度の有効性があるか。公訴取消後の身柄拘束の在り方について,例えば特別の規定を設けるのか,現行法下と同様の再逮捕・再勾留の取扱いによるのかといった点が検討課題になろうかと思われます。   (2)のB案についての課題は,第一回公判期日前に有罪陳述をした場合に,以後,やむを得ない事由がない限りこれを撤回できないとする仕組みが,A案との組合せによって捜査の簡易迅速化にどの程度の有効性があるか,第一回公判期日前の有罪陳述手続を設ける場合,その実施主体や具体的な時期,手続などをどう考えるか,有罪陳述や同意の撤回制限を設けることの当否や,これを設ける場合のやむを得ない事由の内容をどう考えるかといった点が検討課題になろうかと思われます。   以上のような両案の課題を踏まえて,(3)として,A案のみを採るか,B案も併せて採るか,それ以外の制度の在り方が考えられるかについても御議論いただければと思います。   続きまして,第2の「一定範囲の実刑相当事案を簡易迅速に処理するための新たな手続の創設」について御説明いたします。   仮に「新手続」といいますけれども,「考えられる制度の概要」として,一定範囲の実刑相当事案を簡易迅速に処理するための新手続の内容を示しております。この新手続といいますのは,現行の即決裁判手続と同様に,検察官の申立てにより,被告人及び弁護人の同意などを要件として,裁判所の決定により手続を開始する簡略な証拠調べを行うというものであり,現行の即決裁判手続との相違点は,検察官がその同意の確認に際して,予定する公訴事実の要旨及び求刑内容を告知する,検察官及び裁判所が被告人に対して,新手続における科刑制限や上訴制限などについての告知をしなければならない,実刑を含めて3年以下の懲役・禁錮の言渡しができる,新手続により審判する旨の決定の日から,できる限り5日以内に判決の言渡しをしなければならない,としております。   次に,検討課題については,まず,(1)の総論的な課題として,この手続が自白事件の簡易迅速な処理手続として有効・円滑に機能するかであり,その際の検討の視点といたしましては,資料に挙げておりますとおり,簡易迅速な処理に適する事件類型というのはどういうものか,検察官あるいは被告人側にとってのメリットはどのようなものか,情状立証の準備や量刑判断に要する証拠調べを行う必要性がどの程度あるか,裁判所の量刑判断に要する期間がどれくらいかといった点を考慮しつつ御議論いただければと思います。また,この新手続と現行の即決裁判手続を併存させるのか,新手続に一本化するのかにつきましても,両者の関係を踏まえて御議論いただければと思います。   次に,(2)の具体的な制度内容については,まずは対象事件をどのように定めるのかを,資料に挙げている観点から御議論いただき,また,申立ての要件として,どのような事情を考慮するものとするか,手続保障の内容をどのようなものにするか,科刑制限をどの程度にするか,制度概要では3年以下としておりますが,それでよいかどうか,判決言渡しの時期について,どのように考えるか,例えば,ここに書いてありますような5日以内とするのか,具体的な期間を明示しないで,例えば「できる限り早期に言い渡すものとする」ということが相当かどうか,上訴制限について,現行の即決裁判手続と同様に,基本的に事実誤認を理由とする上訴はできないとするのかどうか,といった点を御議論いただければと思います。   説明は以上でございます。 ○川端分科会長 ただいま事務当局から御説明があった二つの検討事項のうち,まず,「第1 自白事件の捜査の簡易迅速化を確保するための措置」について議論を行うことといたします。この検討事項は,後ほど議論する第2の新たな手続の在り方とも密接に関連するものですが,まずは,捜査段階の迅速化を図る仕組みとして,どのようなものが考えられるかという観点から御検討いただき,新たな手続の在り方との関係での課題や留意事項については,第2の議論において適宜御指摘いただければと思います。   それでは,第1に関する検討課題,すなわち,A案として示されている「公訴取消後の再起訴制限の緩和」という案,それから,B案として示されている「同意等の撤回の制限」という案について,それぞれの案についてのものでも結構ですし,あるいは,両案に関わるものでも結構ですので,御質問,御意見のある方は御発言をお願いいたします。 ○酒巻委員 A案とB案の両方についての質問です。これ,法律の形としては,公訴取消後の再起訴制限を緩和するものですが,主たる狙いは捜査を簡易迅速化することにある。再起訴要件を緩和して捜査に戻る仕組みができれば,これまでは,あらかじめしておかなければならなかった捜査を省力化できるのが狙いだというのは,抽象的には分かる気がするのですが,極めて重大な事件は対象になっておりませんから,比較的軽微な事件の自白事件で,かつ,これまではあらかじめしておかなければならず,本当はしなくても済むかもしれないけれども,しておかなければならない捜査には一体どんなのがあるのかというのが具体的に分かった方が話が分かりやすくなると思いますので,捜査関係者の方から,例えばこういう事件で,こういう制度があると随分楽になるんだなということを示していただけると有り難いのですが。よろしくお願いします。 ○上冨幹事 比較的単純な自白事件であっても,捜査機関としては,将来,公判でこういう弁解が出るかもしれない,ああいう弁解が出るかもしれないということを想像して,それを先回りしたいわゆる潰しの捜査をやることもあるわけですし,それから,自白そのものがひっくり返らないように,自白の信用性をどう確保するかということにも関心が向くわけですよね。   ごく単純な例で申し上げると,例えば無銭飲食の自白事件で,「お金は持っていませんでした。払えないことはよく分かっていて注文しました。」と捜査段階で自白しているけれども,よくある弁解として,「だけど,親戚に電話をして,お金を持ってきてもらうつもりでした。」ということを,捜査段階では言わずに,公判で言い出すというようなことは想像できるわけです。そうなると,そういう事件でも,捜査機関としては,そういう親戚はいるのか,そういう人たちは彼にお金を貸してくれる可能性があるのか,そもそも彼の経済状態はどうなのかといったことを,家族とか周囲の人に事情を聴いたり,あるいは,捜索・押収のようなことまでやるかというのは事案にもよるかもしれませんけれども,経済状態を裏付けるための,そういった周辺の捜査もするというようなことは日常的にあるのだろうと思います。   また,自白そのものの信用性を確保するという意味では,それぞれの自白について裏付け捜査を細かくやっていくということもあるわけですし,もう一つは,自白そのものを,例えば詳しく事情を聴いて,犯行状況とか,そのときの気持ちとかいったことまで,できるだけ詳しく話を聴いた上で,それを供述証拠化していく。場合によっては,その自白の信用性を補強するような,罪体そのものではない補助事実になるようなことまで聴き出して,それも供述証拠化しておくというようなことをやったり,あるいは,その自白の裏付けをとるという意味でも実況見分を行う。実況見分は初動で行うのは行うものですが,その際も,将来否認事件になったときにも対応できるような,写真をたくさん添付した詳細な実況見分調書を作っておくというようなことを,捜査機関は行うのだろうと思います。   しかし,公判でも自白が維持されて,新しい弁解も出なければ,そういった捜査はしなくても当然有罪になるような単純な事件なわけですから,その部分がもし省力化できるのであれば,起訴までに要する時間も手間も相当省力化できる事案があるのではないかというのが,この制度の発想なのではないかなと思います。 ○川端分科会長 警察関係では,何かございますか。 ○露木幹事 今の上冨幹事から御説明があったとおりだと思います。   今,現行の制度が適用されている事件の類型は,覚醒剤の所持や使用,万引きといったものが多いのだろうと思います。   今どういう捜査をしているかといいますと,覚醒剤の使用ですと,自白があったとしても,後でよくある否認のパターンとして,「いや,これは知らないうちに,実は注射を打たれてしまったんです。」と,自分の意思で打ったのではありませんというような否認に転ずるケースがあるんですけれども,そういうことがないように,本人がその覚醒剤をどこに隠し持っていたのかとか,どういう方法で打ったのかとか,打つその道具はどこで調達したのかとか,そういうことを,犯行再現を本人にさせながら実況見分をするというようなことをやっておるんですけれども,自白は基本的に維持されるという前提でこの手続が進行するということであれば,そういう詳細な実況見分は省略できるかなということは一つイメージできると思います。   万引きの場合には,現行犯で捕まっているケースが多いですので,それほど今裏付け捜査の手間が掛かっているというわけではないんですけれども,本人の単独の犯行であるということをどの段階で見極めて,そうであるということが分かれば淡々と手続は進むと。この手続は,基本的には,共犯ですとか余罪が多数であるということが想定されていないものが対象でしょうから,その見極めの問題になってくるのかなと思います。 ○川端分科会長 酒巻委員,今の御説明でいかがですか。 ○酒巻委員 何となく分かるんですけれども,今まで綿密全面的に一生懸命やっていたことを,この仕組みがあれば,当初は今までみたいにいろいろなことを想定した部分はやらんでいいということになるわけですね。ただ,お仕事のかなりの部分を占める実況見分なんかは,捜査の性質上改めてやり直すというのが難しいとすると,やはり結局,最初からぴっしりやらなければいけないような気がするのです。要するに,どのぐらい楽になるのかいま一つ分からんなあというところです。 ○上冨幹事 例えば実況見分で,初動でやっておかなければいけない実況見分そのものはやるんだと思うんです。ただ,それをどこまで証拠化しておくか,詳しい書類にするかというのは,事案に応じて当然変わってきていいんだろうと思います。   それで,捜査というのは,犯罪事実を解明して,表で立証することだけの証拠を集めればいいのではなくて,その証拠が公判でも使えるようにしておくために,その証拠の信用性を高める補助的な事実も解明して,あるいは,その供述を支えるような事実を集めてきて,将来,例えば自白,捜査段階の供述と違う公判供述が出たときに,捜査段階の供述の方がより信用性が高いんだということを裁判官に分かってもらえるような事実も集めておくというのが一般的な捜査なんだと思います。   捜査段階の供述が維持されるということであれば,そこのところの,言わば立証すべき事実の周りにある補助的な事実に関する立証捜査というのが,かなり合理化できるのではないかというイメージだろうと思います。 ○髙橋幹事 そういう意味では,起訴の基準は今までと変わらないということでよろしいでしょうか。今までの起訴基準と同じような基準で起訴・不起訴を判断するという前提で,場合によっては,捜査はするんだけれども,それを証拠化・書面化しないとか,そんなイメージなんですかね。 ○上冨幹事 行った捜査について何も記録に残さないということはないんでしょうけれども,その残すレベルというのはおっしゃるような面があるのかなと思います。また,あり得る弁解を想定した捜査というのは,場合によっては,捜査段階の自白が維持されるということがかなりの率で想定されるなら,そもそもやらなくてもいいものもあるはずなのだろうと思います。   おっしゃるとおり,起訴基準が変わるのではなくて,公判で立証すべき罪となるべき事実や情状に関して,言わば法廷に出るべき証拠の内容は変わらないけれども,それがきちんと出るようにするための,周りの事実に関する捜査を省力化できるのではないかということなのではないかなと思います。 ○小野委員 要するに,今この手続が十分に活用されていない原因は,ここにあるような再起訴制限を緩和するような仕組みであれば,もっと積極的に使おうと思われるのか,公訴官というか検察官としては。そこはやはり今の手続が十分に活用できていない大きなポイントになっているんですかね,実際のところ。 ○上冨幹事 気持ちの問題の部分が非常にあるのだろうと思いますが,起訴までの段階で,将来否認されたり弁解されることも想定した捜査までやってしまった後の段階になると,そこから先が,どういう手続になろうと,検察官にとっては捜査を既にもうやってしまっているわけです。そうすると,その後の手続において,普通の公判よりはある程度短くなって,簡易な手続が確保されているとはいっても,自白事件で本当に自白が維持されるのであれば,仮に通常の公判をしたとしても,ものすごく大変ということはないわけです。そうすると,言わばフルセットの捜査をしてしまった後の部分が,現行の即決になるのか,普通の公判になるのかの違いというのが,捜査官としてのメリットとしてはそれほど大きくない可能性があります。それに対して,捜査段階に,捜査の省力化もできるし,時間的にも短くなるというメリットがもしあるとすれば,手続全体として見たときのメリットがやはり大きいのだろうと思います。そうした捜査官の気持ちを考えると,こういう仕組みがあった方が使うインセンティブは働くのではないかなということだろうと思います。 ○小野委員 逆に言えば,省力化した捜査でこれは終結できるというように踏んだ事件は,もうこの手続にのせた方が,もし駄目だったらもう一回やればいいんだという仕組みであれば,そっちにいきやすいと,こういうことなんですかね。 ○上冨幹事 そうだろうと思います。もし駄目だったときの手当として,このA案というのは,捜査段階に言わば後戻りできるような手当を付けておけば,安心して前に進めるのではないかという発想なんだろうと思います。 ○露木幹事 もし駄目なら戻れるようになれば大分前進であるというのは,それはその限りでそのとおりとは思うんですけれども,ただ,先ほど申し上げたように,警察の立場から言えば,省力化できる一番大きなメリットは実況見分なんだろうと思うんです。覚醒剤ですとか万引きを想定するとですね。そうすると,実況見分の場合には,犯行の現場に本人を連れていって,そこで,こういうふうに注射,覚醒剤を隠していましたとか,打ちましたとか,あるいは万引きですと,ここで目に付かないように盗みましたとかいうことを本人にやらせて,それを写真でも撮ったり,あるいはそれを書面にすると。これを今やっておるんですけれども,自白が維持されるということであれば,連れていかなくても,例えば取調室で本人に少しそういう動作をさせて,簡単な指示・説明をさせるなどして,それを簡単に写真で撮っておいて,それを更に書面にするかどうかは別の話かもしれませんけれども,そこが我々としては一つのメリットなのかなと思うんですけれども。   ただ,このA案だけですと,また同意を自由に撤回できて,捜査に戻れるというだけですので,その場合,同意が撤回されているということは,恐らく自白が否認に転じているということが多くの場合予想されると思うんです。そうすると,否認している場合に,今度その再現の見分を後でもう一回できるかというと,本人は否認しているわけですから,そんな再現見分に多分協力はしないだろうと思われるのですね。ですから,そういう場合には,やはりB案のように同意の撤回自体も制限されないと,後でやりたい捜査ができなくなるということを,その機会を小さくするという意味で,このB案というものが私どもの立場からすれば必要になってくるのではないかなということなんです。 ○髙橋幹事 第三者の裏付けをしないとか,あるいは実況見分を簡略化,場合によってはしないということも可能になるのではないかということなんですが,一方で,そのような捜査をしないで起訴をした場合,その後,被告人が否認に転じて,更に再捜査が必要となったときには,ちょっと時間があいてしまっていますよね。そうだとすると,その間に証拠あるいは関係者の記憶などについて,証拠が散逸したり記憶が薄れたりしてしまわないかというふうなことを考えて,やはりここは当初からきちんと押さえておこうといった気持ちに捜査官がなるというようなことはないんですかね。 ○上冨幹事 そういう気持ちが全然なくなるとはいえないでしょう。そこで,資料にあるとおり,A案に加えてB案が提示されているのだと思います。つまり,B案の第一回公判期日前の有罪陳述手続というのを設けるというアイデアは,言わば有罪陳述を前倒しですることによって,公判で自白が維持されるかどうかの見極めを早い段階で付けられるようにするものです。もしこの段階で維持されない可能性が高くなってくれば,早めに否認を想定した捜査をする機会を得られるという意味で,A案に加えB案もセットで付いてくると,捜査機関としてのメリットはより大きくなるという関係になるのかなと思います。 ○川端分科会長 今,A案に加えて更にB案という形での提案がなされているわけですが,これに関して何か御意見がございましたら,お願いします。 ○露木幹事 先ほどの高橋幹事の御質問に関してですけれども,時間の経過によって散逸するようなおそれのある証拠については,恐らくB案の下でも,初動段階で我々としては,その証拠を確保せざるを得ないと思います。 ○酒巻委員 仮にAとB,あるいは両方,こういう制度設計について何か理論的な問題があるかという点について述べますが,まず,この公訴取消後の再起訴が現行法で制限されているのは,本来,公訴取消しがあった場合は何の制限もなく再起訴というシステムもあるのかもしれませんけれども,今制限されている趣旨は,よほどの事情の変更があって,要するに新たな証拠が発見された場合という制度趣旨で,やはり一回公訴棄却された人の法的な地位の安定ということなんだろうと思うんですね。今度新しく設計しようとしているのは,やはり前提として,局面は違いますけれども,被告人が,最初認めていたことを自ら認めないという状態に大きく変わるわけですから,そういう意味で大きな事情の変更があるので,再起訴を許すことには合理性があるでしょうし,しかも,対象者の法的地位の安定という観点からも,特段問題はないと思います。   B案の1の方は,新しい手続で,本来公判でやる冒頭手続を,公判開始前に前倒しという格好になるのですけれども,一体これは公開すべき審理手続なのかという問題はあり得ますけれども,いずれにしろ,冒頭手続に相当する手続を前だし実施すること自体に何か根本的な問題があるとは思いません。   問題は,部会の場でも述べましたとおり,徹底すれば,それは一回有罪であることを認めた以上,もうそれを撤回するのはやめてくれと,これが一番すっきりはするものの,そうすると,もうほぼその段階で有罪になることは確実になる。そういう意味で,重い決断を早い段階でさせるということは,もし弁護人や被告人の立場からいうと,むしろかえってそれに悩んで,躊躇してしまって,かえってこの手続自体にのっかるインセンティブが減退してしまうのではないかという,危惧があります。   あと,理屈ではなくて,仮にこのB案の2,「やむを得ない事由がなければ撤回することができないものとする。」という条文を作ったとしても,被告人が,公判期日になって「やはり僕やっていません。」みたいなことを言い出してしまったら,被告人に対してそういうことは駄目よと言っても,当事者である被告人が争うと言っている以上,これはちょっとどうしようもないなということになりますね。結局,今の即決でもそうでしょうけれども,そこで否認事件になったことがはっきりすれば,これはやはり簡易迅速手続には不相当,ふさわしくないということになるでしょう。だから,撤回は駄目よという条文・制度を作っても,結局そういう事態は想定されて,その辺のところはなかなか難しいですねという気はします。これは制度を作った場合,あるいは動かす場合の想定です。 ○小野委員 今の酒巻委員のお話の関連なんですが,人によっては,本当はよく分かっていなくても,そうだというふうに言っている人は結構いて,この間やった事件では,ちょっとガレージがあって,その横に隣の建物があって,そのガレージと建物が実はくっついていたんですけれども,外から見たらそれは分からないんですね。本人はガレージにちょっとたき火して火つけた。それは現住建造物放火だというふうになって,本人もそうだと言っているので,現場を見ると,どこをどう見ても,くっついていることが本当はよく分からないんですね。本人によく聴いてみると,「いやいや,それはよく分からないけれども,まあいいんだ。」みたいなことを言っていたりとか,そういうこともあったりして,結局,証拠を見て,それでそうかどうかみたいなことを判断する場合はやはり相当あるわけですね。   そういうことも考えると,即決の活用というのは,私は基本的に賛成なんですけれどもね。それで,捜査の軽減とかいうことでも,不必要な捜査はしなくていい事件は,それはあるだろうと。   今のケースは,ちょっと今このようなケースに当たるようなものではないかもしれませんけれども,例えばの話で申し上げたんですが,そういうふうに比較的,例えば中に入りたい無銭飲食というのは結構いたりするわけですよね。そういうこともあると,やはり証拠を,もし弁護人,今この段階ではほとんどまだきちんとした証拠は見られない状態で,例えば同意するとか何とかということになるということになると,やはりためらいを,どうしても弁護人としては出てくるケースはそこそこあるのではないかなと。   他方で,実際見てみたら,何かちょっとこれは違うのではないのということもあるだろうという,そういうことになったときに,やはりそれがやむを得ない事由というふうに考えられているのかどうか,ちょっとよく分かりませんけれども,元に戻るということもあるだろうと思うんですね。   だから,制度の作り方としては,B案をくっつけないと,というのは,早めにということですよね,早めにもう決めてしまいなさいと。それは,証拠の散逸とか何とかということを考えてのことなのかどうか,ちょっとよく分かりませんけれども,早めに決めてしまいなさいというのは,もしかしたら,かえってそれを活用する思いを妨げるような仕組みになってしまうのではないかなと。やはり証拠を見ないで決めて,しかも,決めたことについて撤回が制限されるということになると,ちょっと使うのは怖いなというケースも,もちろんケース・バイ・ケースですからあれですけれども。だから結局,今は捜査側からしてどうも使いにくいなというのがあるのは分からないわけではないんですけれども,それが,こういう仕組みを作ったのに,今度は弁護側からして使いにくいなという仕組みになってしまったら,結局やはりうまくいかないだろうと。だから,私自身もこれがもっと活用できることはいいんですけれども,それになるような仕組みを。今,私は,こういう制度はいいというところまではちょっと頭は回りませんけれども,ちょっとこの仕組みだと使いにくくなってしまうのではないかなという懸念はありますね。 ○岩尾幹事 仮にA案にプラスしてB案を加えたとしても,第一回公判期日前の有罪陳述手続を必要的にするまでの必要はないのではないかという気はいたします。それは,今,小野委員が言われたように,弁護人と検察官が起訴前から,こういった手続の同意に関して,当然ながら打ち合わせもします。そうした場合に,早めの,起訴後直ちに有罪陳述手続をすることが,被告人,弁護人にとっても有利だと思えば,その手続段階に入って,そこで有罪陳述を固定化するというメリットがある事案もあるんだろうと,そんな気がいたします。 ○髙橋幹事 3点ほどございます。まず,B案の2に関してですが,先ほど酒巻委員からも御発言があったんですが,制度上,被告人は同意や有罪陳述の撤回ができないという制限を掛けられたとしても,実際に公判廷で「自分はやっていない。」などと話し出したら,裁判所の訴訟指揮としては,それを止めることはできないことになると思います。そうすると,被告人が否認供述を始めた場合,恐らく裁判所としては,これは即決裁判手続が相当ではないと判断して,即決裁判手続を取り消して,通常裁判に移行するという判断をすることになろうかと思います。そうだとすると,この2番でこういう制限を掛けることは,どれほどの意味を持つことになるのかというのが疑問の一つです。   次に,B案の1に関してですが,小野委員と岩尾幹事とのやり取りを聞いていますと,確かに弁護人としては証拠の中身を見ないと,この手続にのるべきかどうか分からないというような場合もあると思います。そうすると,起訴後すぐにというよりは,若干弁護側の検討する時間を置いた時期に第一回をやるというのも考えられるのではないかと思います。例えば起訴後3日後あるいは5日後で,証拠の中身をある程度把握できた後というイメージです。そういうのであれば,まだワークする余地が広がってくるのかなと思います。   それから,最後の3点目はA案に関する質問です。公訴の取消しを必要とする理由なんですけれども,再捜査をする場合に,あえて公訴の取消しをしなくとも,例えば第三者からの事情聴取や客観的な証拠の収集が必要ということであれば,公訴を維持しながら,その期日間にすることも可能だと思います。そうだとすると,ここはむしろ被告人から,再捜査の結果を踏まえて何か供述を得る必要があるということから,被告人という立場をなくすという意味で公訴の取消しをすることが必要なんだと,そういうイメージで考えておられるのかどうかという点をお聞きしたいと思います。 ○上冨幹事 A案のような制度になったからといって,否認に転じたら常に公訴が取消しを申し立てるかというと,そうではないのだろうと思います。多くの事件は,それまでに収集した証拠で公判を維持できるでしょうし,そうでなくとも,起訴後の補充捜査という形で,補充的な証拠収集をした上で立証が可能であることの方が普通なのだろうと思います。   ただ一方で,やはり起訴後の捜査ということになると,被告人自身の取調べというのは基本的には難しいでしょうし,それから,被告人の家族とか,あるいは被告人の本当に身近な部分に対する強制捜査とか,そういったものについては,理論的にできるかどうかは別として,慎重にやっているのがこれまでの捜査機関の運用なのだろうと思います。   否認に転じた場合には,否認供述を前提としたいろいろな裏付け捜査や,その否認が信用できるのかどうかということについての捜査をやらなければいけないわけですが,それが被告人やその周囲に及ぶような場合については,公訴の取消しというのをオプションとして置いておいた方が,捜査機関の気持ちとしては,やはりこの制度を使って省力化をしようという方向により働くのではないかなということなのだろうと思います。 ○宇藤幹事 今までのお話を聞いておりまして,A案とB案を合わせるにしても,どういうふうに合わせるのかということが結構大きい問題かなと思います。   その点で,その後の公判制度をどのようなものにするかということとも密接に関係してきますし,また,証拠を見なければやむを得ない事情等について判断できないというお話からしますと,従来ある公判前整理手続との関係をどのように整理するのかということで,周辺にある制度と随分すり合わせないといけないかなと思います。   それと,別の話ですが,A案との関係で,A案が成り立ち得るのかということとの関係で,検討課題の二つ目の○,「公訴取消後の身柄拘束の在り方をどう考えるのか。」,この点だけ申し上げておきます。これについては,現行の制度の下での再逮捕,再勾留の制度運用ということで十分対応できるのではないかと思われます。というのは,一つは,現行の制度と区別するだけの理論的な理由がないだろうということと,もう一つは,制度を作るとすると,この部分だけではなくて,全体として再逮捕,再勾留の制度をどういうふうに作るのかという話が出てまいりますので,現時点では材料不足であろうかと思うからです。したがって,少なくとも差し当たりは現行法の下での運用というのを前提にして考えてはどうかと考える次第です。 ○露木幹事 今の公訴取消後の身柄拘束の関係なんですけれども,これは,例えば勾留中に公訴が取り消されたとしたらどうなるのでしょうか。その再勾留は直ちにされるということなんでしょうか。それとも,再逮捕をしなければならないんでしょうか。 ○保坂幹事 資料を作った立場からしますと,正にそこが検討課題で,特に仕組みを設けなければ,元々の勾留状は失効しますから,次の身柄拘束として,現行法上の再逮捕で,令状による再逮捕が可能かどうかという話であり,特別の規定を設けて,引き続き身柄拘束がされる仕組みを設けるかどうか。そこは検討課題だという趣旨でございます。 ○露木幹事 そうすると,逮捕前置ということでしょうから,直ちに再勾留ということはないということになりますと,警察の方で再逮捕をしなければならない。公訴を取り消す理由は,被疑者そのものの取調べを可能にするためであるにもかかわらずですね。公訴は取り消されて勾留が失効して,本人はその時点で釈放されますので,再逮捕するまでにちょっと時間が掛かるのですけれども,その間はどういう扱いになるのでしょうか。 ○保坂幹事 正にそこを御議論いただく必要があると思っていまして,直ちに身柄拘束は引き続く必要があるというのであれば,別途特別な規定を設けるかという話になりましょうし,その間の間があくことがあっても,それはやむを得ないと考えれば,再逮捕が可能かどうかという現行法の運用という話になるのだろうと思います。 ○川端分科会長 その点は,また後ほど御議論させていただきたいと思います。   次に,「第2 一定範囲の実刑相当事案を簡易迅速に処理するための新たな手続の創設」についての議論に移らせていただきます。   検討課題のうち,まず,「(1)総論的な課題」として示されている点について,いずれについてでも結構ですので,御質問,御意見のある方は御発言をお願いいたします。   なお,第1で議論した捜査段階の迅速化を図る仕組みとの関係につきましても,適宜御発言をお願いいたします。 ○小野委員 そのイメージとして,今は執行猶予という前提でやっていますよね。でも,新たな手続をもし入れたときには,一緒にするか,別にするのかという観点でいうと,今はこれも執行猶予なんだと,したがって,刑はもちろん3年以下で執行猶予が付くんだという,ある種,科刑制限みたいな仕組みになっているわけですね。   これ,実刑が入ってきたときに,この運用としては,もちろん「実刑なんだよ。」と検察官が言う,それと,「これは執行猶予なんだよ。」と言うという,区分けをきちっとするかどうかという問題が一つありますよね。執行猶予であれば,もう言ってみれば安心しているというと変ですけれども,それはいいねということになるわけですね。   次に,実刑だという場合に,例えば「これはもう求刑1年なんだよ。」とか,「2年なんだよ。」と言ったときに,原則的には,裁判所としては,それは拘束されないということになるんでしょうけれども,それは,特に実刑期間が短い事件の場合の1年とか2年の違いというのは,本人にとっては大変大きいわけですから,検察官が例えば2年なら2年と言ったときに,これが3年になってしまったら,それはちょっと話と違うよということにもなるわけですから,その場合には,裁判所はそれに拘束されないで,ぼんと出されるのではなくて,そういうことでもし刑を超えるようなことになったときには,例えば通常手続に移してもらうとか,そういうことでもないと,弁護側としては,実刑だということが前提となった手続で上回ってしまうことを恐れて,使いにくいということにならないような仕組みが欲しいなと。そういうことがあれば,使える仕組みになるのかなという気はします。 ○保坂幹事 今の点に質問ですけれども,仮に検察官が予定していた求刑どおり求刑をしたと。ところが,裁判所は,それを上回る量刑をしたいというときに,新手続では具合が悪いということで通常手続にするというのは,弁護人としては,通常手続で手厚い情状立証ができるではないか,そういう発想でのことですか。 ○小野委員 そういう発想です。ですから,この手続だと,ほとんど証人尋問とか何とかは余り考えないでやることになるんだと思うんですけれども,やはりここへ連れてこようとか,いろいろあり得ると思うんですね。あるいは,被害弁償とか何とかもまたあり得ると思うので。この件はもう本当にこれしょうがないねという事件はもちろんあるわけですから,それはそれで,その運用はできるものが,制度があればいいと思うんですけれども,ちょっとそれは何か具合悪いねというときに,新たな補充の立証をできるような仕組みといいますかね。 ○岩尾幹事 まず,現行即決の制度と一本化するのか併存するのかという選択肢が一つあって,併存させた場合に,あえて現行即決ではなく,こちらの制度,新手続をとるということは,それはある程度実刑相当事案だというふうに考えているということは分かると思うんですね。   それで,その求刑について裁判所がそれを超える判決をするかどうかという点に関しては,例えば,被疑者あるいは弁護人に同意を得る際に,求刑について告知したその内容を裁判所が新手続によることを相当と考えるかどうかの判断をする際に,裁判所もその内容が分かるようにするかどうかという観点から検討するということはあり得るのかもしれません。 ○髙橋幹事 小野委員の御提案に関してですが,例えば,現行の即決裁判手続ですと,執行猶予が付くことが前提になっていますので,裁判官としては,その事案が,実刑相当だと思うに至った場合には不相当ということで,即決裁判手続を取り消して,通常の裁判手続に移行することになります。小野委員の御提案によると,求刑を超えるという判断する場合という基準を示されていますが,例えば,検察官が求刑を2年にすると言ったときに,弁護人や被告人は,これを下回る刑の判決をもらえるかもしれないと仮に期待するとしたら,求刑どおりの判決をするような場合にも,そのまま即決裁判手続を進めてよいかという問題もあり得ると思いますが,この点はどうでしょうか。 ○小野委員 その辺は,その求刑を,要するに求刑内容を告知されたときに,この事件はもうこんなものでしょうがないと思うかどうかということはありますから,例えば2年なら2年と言われたときに,「いや,もうほかのいろいろ考えると,これでいいのではないの。」という事件はやはりあるわけですよね。だから,その場合に,2年と求刑されて2年を打たれて文句があるかというと,多分それはないだろうと思うんです。   ただ,2年だと言われながら3年になってしまったと,これはちょっと話が違うのではないのということになるので。もちろん,だから,裁判所が判断して,求刑2年が1年になるということは多々あり得ることですから,それはそれでいいんですけれども,2年が2年になっていかんということでは多分。もしそれで怖いと思えば,多分その手続を弁護人は選ばないだろうと。2年という求刑で,ちょっとこれは具合悪いよと。こんなの10月でいいのではないのと思ったら,これを選ばないということに多分なると思うんですね。そういう感じだと思うんですけれども。 ○川端分科会長 今,見込みの問題が入っておりますので,一種の司法取引の要素がこれに加味されている部分があります。それを弁護側がどのように評価するかという点はいかがなのでしょうかね。 ○小野委員 そうですね。ですから,実質的な司法取引の場面だろうと思うので,それで,検察官の考え方でとっととやってしまった方が本人にとってもいいのではないのというケースであれば,それを選ぶだろうと思うんですね。 ○川端分科会長 そういうケースはあり得るわけですよね。 ○小野委員 あり得ると思います。 ○露木幹事 これは,協議合意制度とは別のものだという理解でおったのですけれども,司法取引の要素を含んでいる制度なんでしょうか。 ○保坂幹事 資料を作った立場からしますと,取引的要素をここに前提としているわけでは必ずしもなくて,元々事件としては自白をしていて,それで,単純で,さっさと公判も終わるだろうと見込まれる事件を対象として,検察官が,こんな事実で起訴して,求刑はこうだよということを告知して,弁護人,被疑者が,手続にのるか反るかという予測可能性も含めた判断材料を提供して,その上でのるというのであれば,この手続で起訴をするということですので,必ずしもそこでネゴシエーションするとか,あるいは,こんな供述をすればこうなるみたいなことを必然的に予定しているわけではございません。 ○酒巻委員 今の保坂幹事の説明で尽きていると思いますが,言葉の使い方についてひとこと。私は元々「司法取引」という言葉は適切でないと思っていますけれども,この制度はまず被告人が認める意思決定することを前提に起動するもので,ネゴシエーションの要素はないと思います。そういう意味では,協議合意とは根本的に違う性質のものだと思います。そこは区別して考えないといけないのではないかと思います。   あと,先ほどから皆さん,頭の中で多分,一定の事件類型を想定してお話しされているんでしょうけれども,それが顕在化していないので,例えばこれに適合的な事案というのはどんなものが想定されているのでしょうね。執行猶予ではなくて,しかし,比較的軽い実刑相当の,そういう類型的,定型的な事件が相当数あるからこそ,そういう事案はこういう簡易な手続でということが想定されているんだと思います。それを具体的に顕在化させ説明例示していただけると有り難いんですが。 ○上冨幹事 実務的によくあるパターンでは,まずは前科の関係で,法律上実刑しかないけれども,今回の事件は非常に定型的で,量刑も,その事件として見たときには比較的低い刑にとどまるようなものが考えられると思います。具体的に言えば,例えば前科のある覚醒剤の自己使用の事件とか,あるいは無銭飲食や万引きの常習犯で,今回の被害額は比較的少額であるというような事件とかが挙げられます。そういった証拠関係も,それ自体は単純だけれども,前科の関係などから実刑にせざるを得ないという事件はそれなりの数あるのではないかなと思っています。   つまり,事件の中身としては,初犯であれば起訴猶予になったり執行猶予になったりする事件で,前科の関係等で刑が実刑になってしまうけれども,証拠関係はやはり,現在前科がなければ,現在の即決に入ってくるような事件というのがあるのだろうなと思います。 ○酒巻委員 今度は裁判所に聞きたいのですが,確か部会の御議論では,裁判所はやはり,実刑を科すとなると,それぞれ固有の量刑事情について,慎重に審理しなければいけない,即決的手続にはなじまない,そういう御発言があったと思います。今例示された相当程度パターン化されたものであっても,どうなんでしょうね,その辺りは。僕はやったことがないから分かりませんけれども,今,上冨幹事がおっしゃったようなパターンの事件というのはそれなりにあって,これはもうどうしても,ほぼ定型的に何年ぐらいだなみたいなのがあるとすれば,それでもなおやはり,その点については,裁判所はなかなか慎重になるのでしょうか。 ○髙橋幹事 今御紹介があった覚醒剤の自己使用,無銭飲食や万引きで,前科がある被告人のような事件で,実刑が見込まれるというような事案を念頭に置いて考えますと,実務的な経験等から,大体何年程度が相当だろうということは,審理の結果,大まかには判断できるのですが,やはり事件そのものにも個性がありますし,それぞれの被告人の関係の一般情状というのもそれぞれ違いますので,執行猶予事案ならともかく,実刑を科すとなると,何年何か月という刑を科すという最終的な具体的な刑期の判断をする上では,かなり慎重に検討をしているので,即日に判決というのはなかなか難しいということはこれまで御説明したとおりです。   これまでの私のそういう発言を踏まえた結果ということかもしれませんが,制度の概要の4のところで,「できる限り」という文言を付して「5日以内に判決の言渡しをしなければならない」と柔軟な形で制度案が提示されておりますし,また,検討課題の方では,具体的な期間を明示せず,「できる限り早期に言い渡すものとする」ということも一つの案として挙げられています。しかし,例えば「5日以内」と定型的に法律で定められても,やはり事案によってはもっと時間が掛かるものもありますし,類型的に,これぐらいで判断できるだろうというふうに言われても,なかなかそうとは言えないものと思います。   それから,判決自体もそうですけれども,実刑が見込まれる場合には,弁護側の情状立証についても,執行猶予事案と比較すると,かなり手厚く準備する必要があるのではないかと考えますと,今の現行即決裁判手続のように2週間以内に第一回公判期日を設けるということ自体も,制度としてワークするのかなという疑問があります。 ○保坂幹事 ちょっと質問も兼ねてなのですけれども,その日の判決が難しいというのは前からおっしゃっている御意見なのですが,科刑制限とか判決が何日以内かというのは,ある意味,この手続にのる事件の横幅と縦幅というか,この刑までで収まるのであればこの手続にのる,この期間で判決が言い渡せるものはこの手続にのるという,縦幅と横幅みたいな考え方があり得て,つまり,検察官としては,この枠内で収まるものを選んでこの手続の申立てをするのでしょうし,弁護人は,その枠内で収まるというふうな判断で同意をするんだろうと思うんです。   その上で,今おっしゃったような起訴から第一回期日までの間というのは,その準備手続がある程度掛かるのが多い,あるいは,その期間をたくさん取れば取るほど,この手続にのってくるものが増えるというのであれば,それは一つのいき方でしょうし,かといって,例えば1か月ということにしてしまうと普通の事件とそう変わらなくてスピーディーでなくなるという,そこのバランスの問題ではないかと思うのですが,今おっしゃったうち,判決が5日以内と決めるのがふさわしくないというのは,5日以内に収まる事件がおよそないんだ,あるいはほとんどないのではないかという,そういう御趣旨なのでしょうか。 ○髙橋幹事 もちろん5日以内で判決ができる事案もあり得ますが,ここで想定されている事件が,定型的に5日以内にできるようなものとしてよいのかということが,そもそもの疑問です。 ○川端分科会長 もう既に具体的な内容に入っておりますので,検討課題の(2)の具体的な制度内容として示されている点について,いずれについてでも結構ですので,御質問,御意見を更にお願いしたいと思います。 ○小野委員 例えば今,分科会長が言われたのとちょっと違うかもしれませんが,無銭飲食を繰り返している人などで,家族も全然いない,あるいは協力もない,結局,情状立証としてもほとんど手立てがないと,もうこれは実刑だというケースはやはりあるので,そういう意味では,使う領域はあるだろうとは思います。   逆に他方で,この第1と第2も併せてそうなんですけれども,例えば現時点でこういう仕組みがない,あるいは即決が十分使われにくいというときに,逆に例えば幾つか認定を落としてしまって略式で終わらせる,あるいは起訴猶予で終わらせているという事件も現にあるわけですね。実刑しか,起訴されたら実刑だと,起訴されなければ言わば起訴猶予で終わるというケースもあるわけなので,こういう新しい仕組みができることによって,これまで起訴されなかったものはこっちに流れていってしまうという運用上の懸念は,我々としてはもちろんあるから,そこのところをちょっとどう考えるのかというのは一つあります。   それから,先ほどの第1の方の関連でちょっと,最後の方に出てきた公訴取消後の身体拘束の関係ですけれども,一定程度の期間,割と比較的早い時期にこれを決めて,残り勾留期間,もちろん丸々10日だの20日だの使わないでやるということになるんだろうと思うんですけれども,そうすると,一遍取消しになって出て,また仮に再逮捕を入れてやるかどうかはちょっと別として,身体拘束期間は実質的に長くなる可能性もあるわけですね。そうしたときに,そこら辺についての何か言わば制限といいますか,何か掛けられないのか。要するに,2度目の勾留,身体拘束期間について,何か仕組みを作っておく必要はないのか。結局,それで何か否認に転じたから,また延々とやるということになったときに,前にもう既に同じ事件で身体拘束されているわけですから,そこは実質的には10日なり20日なり以上の身体拘束期間が生じてくることになるので,その辺の仕組みは何か考えておかなくていいのかなというのが,ちょっと先ほどの疑問です。 ○保坂幹事 今おっしゃった,前段の方について質問ですが,今は起訴猶予になったり罰金になっているものが,この実刑も可能とする新手続ができることによって起訴されてくる懸念というのは,どういうところから生じてくるのかがちょっとよく分からなかったんですが。 ○小野委員 事実上,本当にもうしょうもないから,起訴したら実刑になってしまうので,ともかく今回は起訴しないで帰してやるというケースはあるわけですよね。そういうのも,要するに捜査側としては簡単にできてしまうから,やはりやろうよということはあり得るのではないかと。つまり,捜査の軽減との関連でこういう仕組みができたときに,またきちんとやらなくてはいけないのかと,もういいやみたいなこともないわけではないので,そういうケースはやはりあり得るのではないかと思うんですよね。 ○上冨幹事 捜査が大変だから,あるいは公判が大変だから,起訴すべき事件を不起訴にするということは,検察としてはしていないだろうと思います。   であれば,事実上の効果としておっしゃっているんだろうと思うんですが,この制度自体は,起訴基準を変えるのではないという話とは別にしても,今不起訴になっている事件を新しく起訴する,そういう方向性の制度ではないのではないかなと私は感じますけれども。 ○露木幹事 小野委員がおっしゃった後半の身柄拘束期間の話なんですけれども,本人が同意あるいは有罪陳述を撤回して,その上でまた身柄の拘束を必要とする,そういう場合ですので,先ほど高橋幹事からも話がございましたけれども,通常,当初から捜査が順調に進んでいればできたものが,時間の経過によって,しづらくなっているということもあると思うんですね。ですから,残っている当初の逮捕勾留期間で,例えば20日のところを15日で終結していたから,残り5日だけだよとか,こういう機械的な差引きで次の2回目の勾留期間が制限されるということですと,ちょっと私どもとしては捜査がしづらいなという感覚はございます。   それから,先ほど申し上げかけたことですけれども,公訴が取り消されて勾留が失効して本人が釈放されて,仮に再逮捕しなければならないとなったときに,その段階から再逮捕の逮捕状の請求手続を開始して,裁判官がいつ令状を出すかということは,それは事案によって変わってくると思いますけれども,もし時間が掛かるということであれば,その間に本人がどこか行きたいというのを,説得はするのでしょうけれども,もちろん強制的にとどめ置くことはできないと思いますので。元々勾留されていて,罪証隠滅,逃走のおそれがあるんだという状況の下にある被疑者がどこかへ行ってしまうというのは,いかがなものかなという感じがするんですね。本人に対する捜査が必要であるとして公訴が取り消されているにもかかわらず,本人がどこかへ行ってしまうということが許されてしまうような制度設計というのは,ちょっとおかしい感じがするんですけれども。 ○小野委員 確かに勾留期間を機械的に決めるというのは,なかなかそれはそぐわないだろうと思いますけれども,今,私が申し上げたのは,2回目の勾留の,一般の逮捕勾留であれば,また10日,10日ということになっておるわけですから,そこのところはちょっと何とかならんのかなという,そういうことを考えただけです。   今,露木幹事がおっしゃった後の方は,それはそもそもこの仕組みを作るとしたときに,公訴取消ししたときの手当を何かしておくのかどうかという問題だろうと思って,それはそれで何らかの仕組みはあり得るのかもしれませんね。 ○川端分科会長 ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○小野委員 最後の対象事件というのは,ここに幾つか案がありますけれども,ちょっとここは私もはっきりどれがいいのかということが分かって言うわけではないんですけれども,少なくとも裁判員対象事件は除いて,割と広く設定をしておいた方が,多分使い勝手はいいのかもしれません。そんな感じはします。 ○川端分科会長 その点に関して,いかがですか。 ○上冨幹事 そうですね,量刑も国民の感覚を反映するというところが裁判員制度の趣旨なのでしょうから,その制度趣旨からして,こちらの制度の対象にはできないのではないかなという感じがします。   あとは,どこまで広げるかの問題で,例えば現行の即決が,死刑,無期,短期1年以上のものは除外していますけれども,それと同じにするのか,違いがあるのかを考える必要があるでしょう。例えば常習累犯窃盗を対象にすると考えるのであれば,単純に短期1年以上を外してしまうというのはまずいなということになるんでしょうし,その辺は,この新しい手続については,どの辺をターゲットに置くのが一番使い勝手がよくなるのかということで,個別に検討していく必要はあるのかなと思います。 ○小野委員 やはり常習累犯窃盗なんていうのは入ってきていいのかもしれませんね。 ○酒巻委員 基本的な仕組みについて,いわゆる上訴制限は,即決と同じでいいんではないかと思います。あと,実刑とはいっても,やはり年数の上限は決めておかないと,この手続に応じるかどうか決断する関係者にとって大事な要素であると思います。これを何年にするかは立法政策的判断ですが,3年でよいかと書いてあるけれども,3年というのはつまり,執行猶予が付けられる年数であるという意味ですね。まずはしかし,科刑制限は必要だと思っております。 ○上冨幹事 科刑制限の点について言えば,私は,具体的には3年というのは一つの案かなという感じがします。多くの事件は,やはり3年を超える刑というのは結構重い事件という感じだろうと思いますし,長く,重くなればなるほど,言わば言渡し刑の裁量の幅も広がってくるわけで,先ほどの予測可能性といった点からも,ある程度のどこかで線を引いた方が良いでしょうし,その場合は,やはり3年というのは一つの基準かなという感じがいたします。 ○川端分科会長 裁判所の立場としては,今の御意見に対してはいかがお考えなのでしょうか。 ○髙橋幹事 元々こういう制度を作ること自体,消極なんですが。 ○川端分科会長 仮にこういうのを作るとしたらいかがでしょうか。 ○髙橋幹事 仮に作ると,科刑制限は必要ではないでしょうか。無制限というのでは,それはそもそもこういう制度になじまないということでしょうから,そこは何らか設けなければいけないと思います。 ○宇藤幹事 上訴制限ですけれども,先ほど酒巻委員からお話が出ましたとおり,基本的に現行の即決裁判手続にならうことでよろしいかと私も思います。特に事実誤認は,制度を設ける趣旨から,取扱いを変える必要性はないだろうと私も考えております。  ○上冨幹事 この新制度を使うかどうか,検察官が判断するための考慮事項のようなものも即決と同じように,必要になるのかなと思います。例えば今の即決ですと,事案が明白であることとか,証拠調べが速やかに終わることとかということを考慮するということで,言わば検察官の裁量の幅を決めているわけですので,何らかのそういった規定が,やはりこの新制度の方にも設ける必要はあるのだろうなと思います。   ただ,事案軽微というのが今の即決には入っているんですけれども,新制度で事案軽微と書くのはなかなか難しいのかもしれませんので,そこは新しい制度のターゲットをどうするのかということを踏まえながら,別途検討していくということかなと思います。 ○髙橋幹事 ターゲットという関係でいうと,現在,刑の一部執行猶予の法案が国会に掛かっていて,これが成立した場合には,中には刑の一部執行猶予が相当だと裁判所が考えるような事案も,この新しい手続の中に紛れ込んでくると思いますので,刑の一部執行猶予の制度ができた場合に,この新しい手続との兼ね合いをどう考えるのかということも,検討の対象になると思います。 ○川端分科会長 今の点は,検討事項として取り上げさせていただきます。   ほかにもまだ御意見があると思いますが,この議論を終えさせていただきたいと思います。暫定的に現時点での審議の結果について,次のようにまとめさせていただきたいと思います。   まず,検討事項のうち,「自白事件の捜査の簡易迅速化を確保するための措置」につきましては,A案,つまり公訴取消後の再起訴制限を緩和する案と,B案,つまり同意等の撤回を制限する案が提示されています。それぞれの有効性や課題,そして,A案のみを採るか,A案をも含むB案を採るかについて,様々な御意見が示されました。   また,「一定範囲の実刑相当事案を簡易迅速に処理するための新たな手続」につきましては,新手続を有効・円滑に機能するものとするための課題について,様々な御意見が示されました。その上で,新手続と即決裁判手続の関係については,一本化するのではなく,併存させるものとする意見が示されました。   この二つのテーマは,それぞれの課題もありますが,捜査・公判という一連の手続において自白事件をいかに簡易迅速に処理するかというものであり,今後は,本日の御議論も踏まえつつ,部会で御検討いただく制度案の内容と検討課題の両面を更に具体的に詰めていくことになろうと思います。   こういう形でまとめさせていただきますが,よろしいでしょうか。   では,そのようにさせていただきます。   このテーマは終わりましたので,10分ほど休憩を取った後,次の問題に入っていきたいと思います。                (休     憩) ○川端分科会長 時間ですので,再開させていただきます。   それでは,次に「被疑者国選弁護制度の在り方」についての議論に入ります。この検討事項に関しては,基本構想に沿って,被疑者国選弁護制度の対象を被疑者が勾留された全ての事件に拡大することについて,検討を行うことといたします。   まずは,配布資料の内容を事務当局から説明していただきます。 ○上野幹事 「被疑者国選弁護制度の拡充」について御説明します。資料5を御覧ください。   まず,「考えられる制度の概要」ですが,基本構想では,被疑者国選弁護制度の対象事件を被疑者が勾留された全ての事件に拡大することについて具体的な検討を行うとされたところですので,その旨を記載しております。   次に,検討課題について御説明します。   1点目は「弁護士の対応態勢」です。   被疑者国選弁護制度の導入について審議した司法制度改革推進本部公的弁護制度検討会においては,被疑者国選弁護制度の対象は被疑者が勾留された全ての事件とすべきとの意見があったものと承知しております。もっとも,同検討会における審議の過程において,日弁連が実施・提出したアンケートの結果,国選弁護人の選任率を約30%と相当低く見積もったとしても,全国の約3割の地域では弁護士の対応は困難又は不可能との回答がなされたこと,同検討会において,司法過疎地域を抱える複数の単位弁護士会の実情を視察・調査した際,いずれも,全身柄事件はもとより,必要的弁護事件を対象とした場合であっても,対応態勢が不十分との説明がなされたことなどから,これらも踏まえ,最終的には,死刑・無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件を対象として制度を導入し,その後,段階的に必要的弁護事件への拡大をすることとされたという経緯があるものと承知しております。   したがって,今回,被疑者国選弁護制度の対象事件を被疑者が勾留された全ての事件に拡大することについても,司法制度改革の際に明らかになった課題が克服されており,対象事件の拡大に対応するに十分な弁護態勢が整備されているかが検討される必要があろうかと思われます。そこで,具体的には,対象事件を拡大する場合,必要な国選弁護人の数はどの程度増加するか,地域ごとの弁護士の偏在状況,特にいわゆる司法過疎地域の現状をも踏まえ,対象事件の拡大に遺漏なく対応できるかについて,御検討いただく必要があろうかと思われます。   2点目は,公費負担の合理性です。   被疑者国選弁護事業経費として,既に50億を超える予算が計上されている状況において,その他対象事件を拡大するとなると,更に公費負担の増加が見込まれます。そこで,対象事件の拡大による追加的な公費負担はどの程度と見込まれるか,また,その必要性や合理性につき国民の理解が得られるものであるか。公費負担の総額の増加を抑制する必要がある場合において,そのためにどのように方策が考えられるかについて御検討いただくことが必要となろうかと思われます。   御説明は以上です。 ○川端分科会長 ただいま事務当局から説明があった検討課題のうち,「1 弁護士の対応態勢」に関しては,弁護士会において,司法制度改革後も司法過疎地域の解消を含めた様々な取組を行ってこられたものと思います。そこで,弁護士会の対応の点について,小野委員から御発言をお願いいたしたいと思います。 ○小野委員 この参考資料の後の方,右下に1/29と書かれてある資料から,日弁連で出した資料ということで,ちょっと御説明を申し上げます。   現在,2009年5月からは被疑者国選の対象事件が死刑・無期若しくは長期3年を超える事件というふうに拡大をされて,現在に至っているというところから御説明をした方が分かりやすいのかもしれませんので,まず,この資料のうち,ちょっと後の方からになりますが,18/29というのが弁護士の数の資料ですが,この2009年の時点での弁護士の総数というのが一番右のやや下の方に載っておりますが,2万6,930人ということになっております。それが2012年時点では3万2,088人ということで,約5,000人が増加しているというのが現状で,この増加の度合いは,今のところ,更にこのまま増加をしていくことになるだろうというふうに考えられております。   また,24/29の資料を御覧いただきますと,「国選弁護人契約弁護士 契約数・契約率の推移」というグラフがあります。平成21年の時点で契約数が1万5,556,57.7%でしたが,平成24年で2万1,259の契約で,契約率も66.2%と上がっております。つまり,弁護士の数増以上に契約の割合が増えているというすう勢になります。   それから,いわゆるゼロワンとの関係についてちょっと触れておきますが,19/29で,1993年の時点のゼロ支部に比して,2012年10月1日の数字では,ゼロ支部はもうないということで,ワン支部が2か所になったと。ただ,このうち大分については法テラスがあるというふうになっております。   そういうような実情にある中で,勾留事件全事件に現時点で対応できる状況にあるかどうかということを改めて検討いたしました。元々の資料の1/29に戻りますが,その検討の仕方として,どういう方法を採ったかということについて御説明をいたします。   まず,直近の2011年の勾留状の発付数を手掛かりとして考えました。勾留状発付数,2011年は11万9,167件になっています。   これがどういうふうに増えていくかということのシミュレーションをしてみたわけでありますが,このシミュレーションのために何を考えたかといいますと,次の2/29で,真ん中辺に【注】と書いてある部分がありますが,この数字,これは2011年の司法統計年報を用いた数字なんですが,ここで,要するに国選率というものをちょっと計算してみました。ここでいう国選率というのは,この数字にあるとおり,被疑者の国選という数字がきちっと出てきていないので,被告人の数で,司法統計年報上,地裁・簡裁合わせた被告人,強制により弁護人の付いた被告人数が5万5,509と。そのうち国選弁護人の付いた被告人数が4万8,759という数字になっております。FとIという欄ですね。これで国選率というものを一応想定してみると,87.8%になっていると。これは被告人の国選率なので,恐らく被疑者段階ではもうちょっと国選率が低いのではないかと思われますけれども,一応やや高めの数字を採って考えてみたということです。   そうしてみますと,この勾留状が発付された全被疑者に対して国選率で考えてみると,1/29の3番,拡大件数,想定する拡大件数は,この元々の2011年の勾留状発付数11万9,167の87.8%で考えてみると,10万4,629件に国選弁護人として付く数として想定をしたということです。   そこで次に,この想定をした数,増えた場合,拡大した場合の想定数,そして2011年の被疑者国選弁護事件数,これは現行件数で7万4,007件と。この割合がおおむね141%。したがって,141%拡大するのではないかという想定の上で,今度は各支部ごとに,本庁・支部それぞれについて,勾留事件の国選選任割合を想定してみたのが3/29以降の一覧表ということになります。いずれも各支部ごとで141%,現行に対してですね。   この表については,左から弁護士会と書いて,地裁本庁支部とあります。次に会員数となっています。それから次に,②は国選登録者数,③が被疑者国選登録者数というふうになっております。2013年2月1日現在なんですが,これは,先ほど申し上げました契約者数よりも低い数字になっています。というのは,契約はするけれども,要するに被疑者国選の登録はしないとか,あるいは,被告人国選の登録はしないという人もいるわけなので,ここでは,厳密に契約者数というのではなくて,実働人員を考えたときの計算をしてみたものです。④が,先ほど申し上げました2012年の被疑者国選件数が7万4,007件と。これを先ほどの想定の141%でやってみたときには,10万4,228件になると。これが各支部ごとに計算をしたというものです。   ちなみに,⑥は,これは自動車運転過失傷害と道交法を除く逮捕人員ということで,この検討の後の課題として,逮捕時における国選弁護,国選と言うかどうかは別として,それの計算のための資料として計算してみると約12万7,000件ほどになると。これに対して逮捕段階での弁護活動を考えるときには,この数字が,現時点で検討するとすれば,そういうことになるのではないかなというふうに考えています。   ちなみに,逮捕段階の問題は後の課題ということのようですけれども,ここで資力要件とか何とかということを入れることはなかなか難しいとすると,後からそれを考えるということで,取りあえずは出動すると。その出動する根拠として,訴訟法上,そういう相談を受ける弁護士というような格好にするのか,あるいは弁護人となろうとする者ということで,捜査機関に逮捕された被疑者に対する告知,内容を告げるという形でするのかはともかく,幾つかのやり方はあると思うんですが,そういう形で対応することは可能ではないかなと今ちょっと想定しています。ちょっとあれですけれども。   次の表がスタッフ弁護士数。これは全体で193人ということに,この2013年2月現在でなっております。ここでスタッフを別にカウントしたのは,スタッフとしては,この被疑者国選,1人30件,年間30件の対応見込みということで,これを計算して5,790件はスタッフ弁護士による対応と考えたものです。それを除いた件数が,スタッフではない通常の弁護士,登録している弁護士の数ということで⑨の数字。   そして,各支部ごとに,勾留全件対象事件との割合で,1人当たりどのくらいの件数が見込まれるのかというのを⑩に表しました。ここでの区分けを,赤と黄色で区分けをしておりますが,赤については1人当たりの件数が30件を超えている支部,黄色については1人当たりの件数が15件を超えている支部。つまり,これについては,一応対応が可能であるかどうかについて個別に検討をする必要があるのではないかという想定の下で,このようなやり方を採ったということです。   この間,弁護士会では,対応態勢について,いろいろ検討してきました。具体的な検討の経過としては,11/29以下に「被疑者国選第三段階に向けての各地の対応態勢」。ここでいう第三段階というのは,勾留全件対応するという段階のことを指しておりますけれども,昨年2012年12月に国選シンポというのをやりまして,そこに至るまでの間,各地の具体的な実情の検討を個別に,各県,各支部ごとにやってきたその協議結果というのが,2012年2月までに行った協議結果というのが,その左の欄にずらっと並べて書いてあります。   この協議結果の中で,例えばここに書いてあるように,旭川の稚内については,「対応態勢については今後も注視していく必要がある。」というふうな結果になった。その支部については,今度は右側の欄の2013年4月時点における対応態勢の確認結果という欄に,それぞれ幾つかの,おおむね六つの支部について結果を書いて,いずれも個別の検討の結果,対応は可能であるという検討結果になっておりますけれども,さらに,先ほどの細かな一覧表によって,赤であるとか黄色であるとか,ここでは全てについて御説明をすることはせずに,まとめてざっと申し上げておきますけれども,これらの問題となりそうな支部については,いずれも本庁対応が可能であるのか,あるいは近隣支部による対応が可能であるのかという点,それから,仮に本庁・支部で対応可能であるとした場合でも,本庁・支部あるいはその近隣支部からの距離,それから,そこに至る所要時間も踏まえて,全支部について,ここで赤と黄色で区分けした全支部について,個別に検討を加えました。   結論的に言いますと,全支部について,本庁からの応援,支部によっては本庁の登録弁護士の中で対応。要するに,どこどこ支部対応可能弁護士という名簿ができているところもあるわけですけれども,いずれにしても,距離及び所要時間を詰めた結果,対応することができるということに各全支部について結論的には出ているということで,元々,先ほど申し上げましたように,ここでシミュレーションした国選被疑者全件,勾留全件国選被疑者の数字というのが少し高めに設定していると。また,現在勾留件数が少し減ってきていますけれども,そのことは全く考慮していないという状況の中で,個別に各支部,あるいは現時点でちょっと増員が見込まれる支部などもあるわけですけれども,そういうものを踏まえた結果,全支部についてここで説明することは避けますけれども,対応は可能であるという結論になったというのが現時点の弁護士会における対応態勢の検討状況であります。 ○川端分科会長 ありがとうございました。ただいまの小野委員の御発言に対する御質問も含め,二つの検討課題のいずれについてでも結構ですので,御質問,御意見のある方は,御発言をお願いいたします。 ○酒巻委員 先ほど事務当局の説明にも出てきましたとおり,被疑者国選弁護制度を初めて作るに際しては,司法制度改革推進本部の公的弁護制度検討会で議論が行われました。私はそのメンバーでもありましたので,そのときのこともいろいろ思い出しておりました。被疑者国選弁護制度そのもの,特に身体拘束された被疑者に国選弁護制度を設けるということは,現行刑訴法施行以来の弁護士会の夢でもあるとともに,我々刑事訴訟法の研究者にとっても,一つの理想型,まさに憲法34条の身体拘束された者が弁護人の援助を受ける権利の趣旨をより一層具体的に制度的手当をするという意味で画期的な制度であったわけで,私は基本的には,身体拘束された被疑者について,勾留段階から国選弁護が請求すれば認められるというのは,理想形としては,全く反対するところはありません。   ただ,その公的弁護制度検討会のときも段階的な施行ということにした背景には,これを刑事訴訟法上の制度として設計導入する場合には,まさに全国津々浦々どこでも同じような形できちんと動かないといけない,これはもう絶対的な前提でないといけないわけですね。つまり,場所によって請求してもうまくいかないということがあると,もうそれでは一国の司法制度としては問題があるということになりますので,今,小野委員の御説明で,その対応態勢,弁護士の数の面では大丈夫だというお話なんですけれども,本当に大丈夫かなというのを,より積極的に,特に先ほど,支部については本庁から応援という,そういうお話もありましたが,やはり大都会でないところでも,身体拘束される事例はいつ何どき起こるか分からなくて,そのときに大都会と同じような形できちんと人の手当が現実に担保できるかということを,もっともっと具体的に,説得的な数字とともに示していただくことが,この制度が実現するためには絶対的に必要だと思っております。今日の御説明もかなり詳細に,各支部の状況,各地域の状況を御説明され,データを示されたわけですけれども,その点については,本当にそういう制度にして大丈夫かという点については,万全の説得的シミュレーションが必要だと考えています。   身体拘束全事件に拡張すること自体については,私は全く反対するものではないということであります。   もう一つ,全然話が出てこなかったんですけれども,確かまだ法律は通っておりませんけれども,少年の国選付添人については,その範囲を現在の被疑者国選,つまり必要的弁護事件に当たる事件の範囲に拡大する方向になっていますね。これも全く反対するものではありませんけれども,そういう国選付添人制度が恐らく間もなく少年法の改正として出来上がることになっています。そうすると,その少年付添人も国選ですから,そっちのこともやはり併せて考慮する必要があると思います。その辺のところはきちんと考えておられるのかなというのが,やや気になったところです。 ○川端分科会長 今,御質問がございましたので,小野委員,御回答をお願いします。 ○小野委員 いずれも御指摘のとおりだと思います。   弁護士会としても,このような制度を設ける前提としては,全国津々浦々対応できるということでなければもちろん導入するべきでないというふうに考えておりますし,今日,実は,皆さんに全くお配りをしていなくて申し訳ないんですけれども,私の手控え資料として,ここの,先ほどの資料の赤と黄色で区分けした全支部についての個別の検討資料はもう既にできておりまして,この分科会でそこまでお配りして余りややこしくなってもということで,お配りはしていないのですけれども,全ての支部について,どういう形で,例えばパブリックの弁護士が担う予定であるとか,あるいは,本庁は本庁でこういう名簿ができているので担えるとか,それから,距離は例えば45.7キロ,50分なので,本庁の応援ができるとか,そういうふうに各個別の支部について,いずれもきちっと検証した結果を確認しております。   それは我々がやっていることなので,本当にそうかいなというふうに最後まで言われるところはあるのかもしれませんけれども,少なくともこの間,幸いなことに,弁護士数が増加し,契約弁護士数も非常に増加してきたと,急激に増加してきた。また,先ほど申し上げましたように,割合も増えていっている。契約者の割合ですね。つまり,若い人たちは,より多く積極的に,この登録をしてきているという傾向ははっきり見られているわけです。そういうことで考えますと,この傾向は少なくともまだしばらくは続くわけですけれども,そのことを入れなくても,現時点で第三段階と称している全件勾留,勾留全件の被疑者弁護はできるというふうになっておりまして,改めてこの資料をまた,どういう形でかですけれども,必要な限りでお配りして,御説明をする用意はできております。 ○川端分科会長 少年事件に関する国選付添人制度との関連は,いかがでしょうか。 ○小野委員 ちょっと今,今日,私,その付添人の関係の資料を併せて手元に持っていませんけれども,一応,付添人の件数その他の形で,それは委員会の担当がちょっと違うのですけれども,シミュレーションが作ってありまして,対応可能ということで,今準備を進めているところです。 ○川端分科会長 それでは,また後ほど,資料の御提供をお願いすることになるかと思います。 ○髙橋幹事 人数の確保は,検討によれば,大丈夫だというお話なんですが,質の面としても,被疑者段階からきちんとした弁護活動をしてほしいと思うところです。その辺り,例えば研修などとか,こういう形で質もきちんと確保していくというような御検討もされているのかどうかということを,お伺いしたいんですが。 ○小野委員 今,非常に重大な御指摘だと思いますね。ただ行けばいいというものではないわけですから,そういう質の確保ということについては,弁護士会としては,いろいろな形でこれまで情報提供や研修を重ねてきたわけです。まだまだ不十分な点はあろうかと思いますけれども,各単位会ごとの新人研修,あるいは経験交流会,あるいはいろいろな出版物,あるいは論考の提供という形で,繰り返し重ね重ねてやってきております。   ただ,毎年毎年多くの新しい弁護士登録が増えてくるわけですので,そこに漏れなくそのような研修をする体制というのを築いてきつつあるわけですけれども,まだまだそれは十分ではないだろうという自覚は持っております。   ただ,登録する弁護士全員が,弁護士登録する者全員が被疑者弁護に携わるというわけでは必ずしもなくて,やはり被疑者弁護を一般的には新人研修のところで全部一通りやるわけですけれども,なお重ねての研修といいますか,繰り返しの研修,つまり,スキルアップをしていくという研修体制については,弁護士会側としては,まだまだ我々としても十分ではないだろうというふうに考えております。   そういうことで,今その研修体制全体の見直しも進めておりまして,新たな研修体制を作っていくという仕組みを更に詰めているというのが現状です。 ○川端分科会長 2の方もあると思うのですが,公費負担の合理性に関して,何か御質問,御意見がございましたらお願いします。 ○上冨幹事 今の2の点についてですけれども,部会の方でも若干の議論がありましたけれども,この制度の拡充を考えるに当たっては,公費負担の合理性の問題というのは,単にお金があるかどうかの問題を超えて,制度として社会に受け入れられる合理的なものだと説明できるかどうかということが,やはり視点として必要なのだろうと思っています。   先ほどの小野委員の御紹介いただいた試算からすると,41%ぐらい増えるんだということですが,被疑者国選の予算は,今年の予算案で56億円ぐらいなので,4割増えると20億を超えるお金が毎年掛かるということを,まず現実として頭に入れておくべきだと思います。被疑者国選弁護制度は,平成18年にできて,21年に拡大され,基本的には対象事件が増える中で予算の額も増加する傾向にあるわけですから,更にそれを大幅に増やすということについて国民の理解が得られるかということは,制度を考える上で,やはり考えておいた方が良いと思います。特に前回の21年の拡大から現在まで4年経過しているわけですけれども,そうすると,今対象となっていない部分について,一般的に拡大した方が良いんだということを超えて,対象になっていないことによる問題というのがあって,やはりそこをきちんと公費で賄わなければいけない必要性があるんだということを説得していくことが必要なのではないかと思っていて,その点についても今後さらに,部会での御議論かもしれませんが,御議論いただければと思います。   それから,先ほどお話に出ていた少年の付添人の関係でも公費負担が増えるわけですが,少年法改正の法制審議会での議論では,付添人制度の対象事件の拡大の理由の一つとして,被疑者国選と国選付添人の対象事件にギャップがあって,被疑者国選の対象になっているのに,家裁に送られると国選が付かなくなってしまうということが生じるので,そこを埋めるということで,現在の被疑者国選に合わせる対象範囲に拡大しているわけです。そうすると,被疑者国選の対象事件の方が更に先に行ってしまうと,国選付添人の方のゴールは更に遠くなるという関係になっていて,そういう面でも公費負担は上乗せの形で増えていく可能性があると思います。現在まだ少年法改正自体は法案を出すに至っていませんので,その段階でゴールだけが先に行ってしまうことになりかねないということについても,頭に入れた上で議論を進めていただければと思います。 ○川端分科会長 今の点について,日弁連の方で何か御意見がございますか。 ○小野委員 今年度の予算は,ちょっと私聞いていなかったもんですけれども,基本構想の時点では,基本構想の20ページですか,平成24年度の予算,52億4,000万円が計上されているというような記載があるわけですけれども,確かに,先ほど申し上げましたように,41%増ということになると約20億の増加が見込まれるということなんだろうと思いますけれども,ただ,現実的にそこまで増えるのかということになると,元々の141%という数字がかなり,言わば多めに取っているということもあるので,そこまで実際には増えないのではないだろうかということが一つあります。   それから,現時点の,言わば刑によって国選被疑者弁護を付けるか付けないかという分け方は,一つの目安として考えられてきたわけですけれども,実際の弁護の必要ということでいうと,必ずしも刑によって分けることが適当であるわけでもないわけでありまして,そういうことでいいますと,今問題となっている前提となる,例えば余罪のような形で逮捕とか何とかということも現にありますし,そうでない事件についても弁護人の援助が必要であるという事件はたくさんあるわけですね。他方で,今対象となっている事件であっても,もちろん弁護人の援助が必要でないというふうには言いませんけれども,付いていない事件に比して,どこまで必要なのかというのが問題となり得る事件もあるわけです。そういう意味では,今のように法定刑で分けていること自体が常に合理的かというと,必ずしもそうでもないんだろうというふうに考えます。   それと,費用の点については,この被疑者国選の報酬などについては,徐々に徐々に改定されてきた経過があります。ただ,実際にここに従事している者からすると,まだまだかなり制限的な報酬体系になっている。   要するに,接見回数が増えれば,そのまま全部報酬加算されるかというと,そうではない。報酬は,加算割合が低減されるだけではなくて,最後は,あとはもう何回行っても同じよというような体系にもなっているというのが実情であります。確かに,このところ予算額が増えていることの一因の中に,接見回数が増えているというのもあるのかもしれませんが,例えば示談加算とか,そういう新たな仕組みなども大分盛り込まれてこられたということで,ある意味では弁護活動の結果が反映されるような報酬体系に,少しずつ少しずつ変えてきてもらっているという経過はあります。   他方で,実際にそこで一生懸命やっている弁護人からすると,まだまだ相当な不満が残っていると。これだけ,要するに率直に言って,暇だから,報酬をちょっと増やそうと思ってやろうという被疑者段階での弁護活動というのは余り考えられないんですね。忙しい中,行かなくてはいけないということで一生懸命行くと。事件によっては毎日毎日行かなければいけない事件もあったりするわけなので,にもかかわらず,これが全然,一定程度でもう止まってしまうというふうにこれはなるんだというような,言ってみれば,弁護活動に対する情熱をやや阻害するような仕組みも依然としていろいろな場面に残っているということも是非御理解を頂ければと思っておりまして,そういう意味では,幾らだって金は付くんだなんてことを考えているわけではもちろんありません。税金を使うわけですから,それなりの活動をしなければいけませんし,幾つかちょっと問題になったような,実際の接見回数,間違っているではないかというような御指摘があったり,そういったようなことも全くないわけではありません。   そういうことでいいますと,法テラス含めて弁護士会としては,被疑者弁護の活動の,言わば適正な活動を行うということについては心掛けて,いろいろ調査などもやって,検討はしてきております。他方で,公判段階での弁護活動の充実の前提として,被疑者段階での弁護活動の充実ということが当然要請されてきているわけですので,それも踏まえて,いろいろと御検討いただければと思います。 ○川端分科会長 日弁連の方で更にシミュレーションを踏まえて,公費負担の部分についての御検討をお願いしたいと思っております。よろしくお願いします。 ○露木幹事 公費負担の合理性の点は,一般国民の理解を得るということも重要だともちろん思いますけれども,他方で,被害者の方々が非常に素朴な不公平感を感じておられるという実情もございますので,被害者の方々の理解を得るということも重要ではないかと思います。   あと,公費負担の合理性について,国民の理解を得る上で重要なのが,部会でも一度申し上げたと思うんですけれども,被告人に刑の言渡しをしたときに,原則として訴訟費用は被告に負担をさせるという181条の規定があるわけですね。もちろん無資力の人については例外がありますので,全員に負担をさせるということにはならないと思うんですけれども,この181条の運用が一体どうなっているのか。一旦は公費が投じられても,資力のある者についてはきっちり回収できているということであれば,それを開示するということも重要なのではないかと思います。   あと,また別の点ですけれども,弁護人の選任の数が増えれば当然接見の回数が増える。そうしますと,私どもの接見室の今の施設の状況がそれに対応できるものかどうかということの検証も恐らく重要な点になってくると思います。これももし拡充が必要であるとなりますと,相当の費用が必要になってくると思いますので,その点についての対応可能性についてもまた,これは私どもの方でも調べないといけませんけれども,配慮をお願いしたいと思います。 ○川端分科会長 そこを御調査願います。 ○上冨幹事 先ほどの小野委員から,現状の報酬にもなお改善の余地があるというお話をお聞きしながら,何なのですが,資料の最後の項目にありますけれども,対象事件を拡大すれば当然にその総額が,それに係る公費の総額が増えるということだけではなくて,発想といいますか,知恵の出し方として,その総額をできるだけ抑えながら何とか制度の拡大もするというようなこともやはり今後検討していく中では頭に置いて,それも含めていろいろ知恵を出していく必要があるのではないかなと思いますので,付け加えさせていただきます。 ○小野委員 結局,僕らの実務的な経験からいって,勾留の必要がない件数がそれなりにあるのではないかというふうに考えておりまして,その辺を,適正な勾留ということの実現を目指していく必要があるのではないかなというふうに思います。 ○川端分科会長 時間の関係がありますので,この問題はここで終わりにして,総括させていただきたいと存じます。この検討事項につきましては,配布資料記載の「考えられる制度の概要」には特段の異論はありませんでした。もっとも,弁護士の対応態勢について,対象事件の拡大に十分対応できるとの御説明があった一方,いわゆる司法過疎地域又は弁護士偏在地域の実情をより緻密に検証する必要がないかとの御意見があり,公費負担の合理性や,公費負担の総額を抑制するため,被疑者国選弁護の報酬の見直しが必要ではないかとの御意見も示されたところですので,これらの点について今後更に議論・検討を進めることといたします。   こういうまとめでよろしいでしょうか。それでは,そのようにさせていただきます。   次に,「犯罪被害者等及び証人を支援・保護するための方策の拡充」についての議論に入ります。冒頭にも申し上げたとおり,この検討課題については,第1回会議でもひとわたりの議論を行ったところですが,部会への報告をより充実したものとするため,幾つかの論点について更に検討を加えておくことが有益と思われますので,時間の許す範囲で補足的な議論を行うことといたします。   まずは,配布資料の内容を事務当局から説明していただきます。 ○保坂幹事 御説明いたします。資料6を御覧いただければと思います。   こちらは,分科会の第1回会議で配布した資料1をもとに,その際の議論を踏まえて,制度概要や検討課題について修正又は加筆をしたものでございます。参考までに,修正・加筆部分は下線を付してございます。   事務当局として,今日特に御議論いただきたい点を御説明いたします。   まず,資料の1ページ目の第1の「ビデオリンク方式による証人尋問の拡充」に関しましては,①の類型の対象者の具体的な範囲につきまして,第1回会議でも様々御意見が示されたところでございますが,この対象者の範囲を刑訴法157条の4第1項第1号又は第2号に掲げる者,すなわち,いわゆる性犯罪の被害者に加えて,そのほかの罪の被害者とまでとするかどうかは,前回も御議論ございましたが,更に加えて,被害者以外の証人,例えば御遺族あるいは被害者の方の親族ですとか,あるいは目撃者や共犯者,こういった方も対象とするかどうかにつきまして御検討いただきたいというものでございます。   次に,同じ第1の③の類型につきまして,第1回の会議で,刑訴法の158条の所在地尋問との切り分けをどう考えるかという点ですとか,それとの関連もあって,犯罪の軽重というものを考慮要素として挙げるかどうか,あるいは,単に遠隔地に居住しているというだけではなくて,真にやむを得ない場合が対象になるのではないかと,そういう要件を付けるべきではないかという御指摘もございました。   そこで,この③の類型に関する検討事項として,資料2ページ目のウのところでございますが,その(イ)の要件のところに,「どのような場合にどのような者を対象とすべきか。その要件としてどのような規定とすることが適切か。」という点を追加しておりますので,この点について特に御議論いただければと思います。   続きまして,資料の3ページ目でございます。第2の「被害者等の捜査段階での供述の録音・録画媒体の公判での活用」についてでございますが,前回の資料に挙げておりました供述を記録する手続・方法については,捜査段階の取調べにおける供述を記録するというのは相当ではないという御意見が多かった一方で,第一回公判期日前の証人尋問における供述を記録するという案を相当とする意見ですとか,具体的な制度イメージを踏まえて検討すべきという,そういう御指摘がございました。   そこで,今回の資料では,第一回公判期日前の証人尋問における供述を記録するという制度概要案をお示しいたしましたので,これを踏まえて,(2)の「その他」に挙げております課題について御検討いただければというものでございます。   続いて,資料5ページですが,第3の2の「公開の法廷における証人の氏名等の秘匿」でございます。こちらにつきましては,被害者以外の証人等を対象として,一定の場合に秘匿制度を設けること自体に御異論はなかったようでございましたので,今回の資料では,より具体的な案をお示しいたしております。   この制度概要にお示しをしたとおり,裁判所の秘匿の決定があった場合には,起訴状朗読,証拠書類の朗読,訴訟関係人のする尋問・陳述において,対象者の氏名等を秘匿することになりますが,例えば起訴状の朗読の段階を考えますと,公判前整理手続を経た事件などを除くと,その段階ではまだ対象者を証人として尋問するか否かが確定していないというのが通常でございます。そのような場合でも,この制度の趣旨からいたしますと,被害者特定事項の秘匿制度と同様に,公判の冒頭から対象者の氏名等を秘匿することができるようにするというのが相当ではないかと思われたところでございます。   そこで,制度概要におきましては,対象者について,「証人,鑑定人,通訳人,翻訳人又は証拠書類若しくは証拠物にその氏名が記載されている者であって,被害者以外の者」としまして,対象者が証人として尋問されるか,あるいはその調書が書証として取り調べられるか否かがまだ確定していない段階でも,秘匿の必要があるときには秘匿決定ができるということにいたしております。   その上で,検討課題(1)の一つ目の○,対象者の範囲をどのようにするかという点について,御検討いただければと思います。   御説明は以上でございます。 ○川端分科会長 ただいま事務当局から説明があった四つの論点について,順次検討を行いたいと思います。   まず,「ビデオリンク方式による証人尋問の拡充」に関し,資料6の1ページのアで下線が引かれている①の類型の対象者の範囲の論点と,2ページのウで下線が引かれている③の類型の要件あるいは対象者の論点について,いずれについてでも結構ですので,御意見のある方は御発言をお願いいたします。 ○露木幹事 (1)アの一つ目の○ですけれども,これは前回も申し上げたとおり,性犯罪だけでは狭いと。同じような被害に遭ってPTSDに苦しんでおられる方,ほかの犯罪類型にもございますので,当然それは対象とすべきだろうということと,あと,被害者以外の証人,例えば説明のあったように遺族ですとか,あるいはその場で目撃した人についても,同様の事情はございますので,これももちろん除外する理由はないだろうと思います。 ○小野委員 ちょっとそもそも論みたいになってしまって申し訳ないんですけれども,ここの作業分科会での議論かどうかあれですが,根本的に,やはりビデオリンクというのは,証人尋問,特にビデオリンクで行う場合の,弁護側としては反対尋問ということがほとんどの場合なんですね。そういうケースで,あの方式でやる尋問というのは,率直に申し上げて,とてもこちらとして通常の尋問という形になりにくいということがあるわけです。   そのことをよくよく前提としてお考えいただきたいということと,それから,例えば尋問途中に「では,ちょっとこれを見てください。」と,記憶喚起であれ,同一性の確認であれ何であれ,いいんですけれども,そういう必要が生じるということがあるわけですね。そうすると,こういうケースでそれをどんどん広がっていくと,そういう尋問が事実上できなくなる。事前に例えばこれを用意しておくとか何とかということはあり得るかもしれませんけれども,尋問の流れの中で,「では,ちょっとこれを見てもらいます。」と,それは法廷で,もちろんここで見てもらえばいいんですけれども,全然違うところにいるという人については,それができなくなってしまうということもありますので,今言われているように,次々と対象を拡大していくということは,実質的にやはり尋問,事実上の尋問権がものすごく制限されていくということに,実質的な,事実上の効果としてはなってしまいますので,こういう被害者がいる,あるいはその被害者の関係者がいるということだけで,こういうふうに拡大をしていくということについては,相当慎重にお考えいただかないといけないのではないだろうかと。   すみません,分科会の話ではないかもしれませんが,一言ちょっと申し上げておきたい。 ○川端分科会長 ただいまの趣旨はよく分かるのですが,やはりこれは親部会に掛けて,そこで新たに議論しますので,分科会ではたたき台を作るという前提で議論を進めておりますから,ここで示された範囲についての御意見をお伺いしたいと思っております。 ○髙橋幹事 ①の下線部につきましては,先ほどの露木幹事の御意見と同じで,私としても,現行刑訴法157条の4の1項1号,2号,3号でビデオリンクが使用可能とされている方は,裁判所に来ること自体で精神の平穏を著しく害されるというのであれば,やはり裁判所構外でも同じようにやれるというような仕組みがいいのではないかと思います。したがいまして,性犯罪の被害者以外の被害者,それから,それ以外の証人も対象とすべきだと思います。   それから,次に③に関してですが,単に遠隔地というだけではなく,高齢で遠くまで移動できない,あるいは病気やおけがをしていて遠くの裁判所まで来られないとか,あるいは職業が医者で,緊急の案件が入るかもしれないので,近場の裁判所までなら行けるけれども遠くの裁判所までは行けない,そういったやむを得ないような事情があるような場合に限って,この制度を活用できるという仕組みにするのが相当と思います。やはり基本は公判廷に来ていただいて,そこで証言していただくというのが刑事訴訟の原則ですので,例外はなるべく絞ってという趣旨です。 ○酒巻委員 確認ですが,今日の資料の条文①は,1号,2号に掲げる者「その他の被害者であって」ですね。だから,この条文は,被害者は性犯罪の被害者以外にも拡大する。今あるビデオリンクの方は,157条の4の3号というのは,これは被害者に限っていないんですね。ですから,この案は,外でやるというか,違うところでやる場合には,被害者には拡大するけれども,そうではない証人は,1号ではやらんと,そういう設計でございますな。その趣旨が分からなくなってしまったので,ちょっと教えてください。 ○保坂幹事 資料の趣旨ですけれども,要するに,その被害者以外の証人ということになりますと,元々この規定自体が証人を尋問する場合ということになりますので,要件としては,「であって」の後ろのところ,要するに,「同一構内に出頭するときは精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められるもの」という,それだけで判断をするという制度も考えられるのだろうと思います。一方,制度概要案では,典型的に同一構内に来るときには著しく害されるおそれがあるという人の限りでの入り口要件とし,その中でも同一構内に来ると著しく害されるおそれがあるという,二段階構造みたいな形での案にしております。   先ほど来の御意見としては,二段階ではなくて,現行のビデオリンクの3号と同じように,およそ証人は対象とした上で,その実質要件といいましょうか,同一構内に来ると著しく害されるおそれというところだけで判断できる,そういう要件にしてはどうかと今御指摘を頂いたのだと理解をしております。 ○酒巻委員 そうですね。分かりました。 ○川端分科会長 それだけでよろしいでしょうか。 ○酒巻委員 はい。分かりました。そういう,ちょっと構造が違っているということでありますね。そこは了解しました。 ○上冨幹事 ③に関してですけれども,今の案は遠隔地に居住していることが最低の条件だということになっているわけですが,同一構内の出頭が困難な人の中には,必ずしも遠隔地ではない人がいるのではないかなと考えています。具体的に申し上げますと,刑事施設に収容されていて,死刑の確定判決を受けている人,あるいは,少年院で現に今矯正教育を受けている人で,公開の法廷に出てくることが,例えばその人の心情の安定を害したり,矯正教育に悪影響があったりというような場合があり得るように思います。   そういう場合に,今の制度の下では,所在地尋問をやる場合もかなりあるわけですが,事案によっては,ビデオリンクで,少なくとも尋問は公開の法廷で行って,証拠にも直接証言が使われる方が良いのか,それとも,所在地尋問をした上で,証人尋問調書が証拠になる方が良いのかという選択肢を広げる余地もあるように思いますので,この③の類型については,そういったものを対象にするかどうかという点も今後の議論の対象としてもいいのではないかなと思います。 ○川端分科会長 今の点は,検討事項として加えさせていただきます。 ○髙橋幹事 以前も確認させていただいたと思いますが,裁判所構外のビデオリンクを使う場合というのは,受訴裁判所の法廷で審理を行っていて,別の裁判所に機器を設けて,そこに来ていただくということを想定しているものと考えます。インフラの面でいえば,そのやりとりは外に漏れてはいけないので,機器が設けられている場所同士で閉鎖網を使ってやる必要があると思います。また,別の裁判所の職員に対して訴訟指揮権を発動しながら手続を進めるわけですので,そういった観点からも,やはり別の裁判所の構内に機器を設置してやるのがふさわしいと思っています。   上冨幹事からお話がありました死刑確定囚あるいは少年の場合は,その施設に機器を持って行って,あるいはそこで機器を購入するなりしてやるという御趣旨だとすれば,我々はそこまで考えておりません。証人尋問は,原則は公開の法廷でやるものです。一方で,158条に規定するような諸事情が認められる場合に,例外的に所在尋問でやるということもあり得るかと思うんですが,今,我々のニーズとして,そういう場合に,いわゆる中間的なものとして,ビデオリンクを活用すべき,あるいは活用した方がよいといったニーズは持っていないですね。 ○川端分科会長 今の点は,やはり施設でどうしても尋問しなければいけないという場合が想定されているわけですね。 ○上冨幹事 そうですね。ですので,その場所の問題について,当然,その関連では議論することになろうかなと思いますが,裁判所以外の場所でのビデオリンクをできるようにするかどうかということ自体も一つの論点だろうと思います。例えば,今の民事訴訟法は,少なくとも法律上は裁判所という限定はなくて,規則で裁判所にしているようですので,そういった立法例も参考にしながら,更に議論していかれることかなと思います。 ○川端分科会長 今の点は,インフラの問題とも絡みますし,予算負担をどうするかなど,いろいろな場面が想定されますので,それも踏まえて,裁判所に限定しないで,それ以外の場所でできるかどうかという問題として捉えていただきたいと思います。   次に,「被害者等の捜査段階での供述の録音・録画媒体の公判での活用」に関し,資料6の3ページの制度概要案を踏まえ,検討事項の(2)に記載されている論点について,御意見のある方は御発言をお願いいたします。 ○小野委員 結局,反対尋問の保障がどうなるのかと。この仕組みですと,取りあえず証拠になると。ただ,それについては尋問の機会を与えろというふうになっておりますので,仕組みとしては大分,今ある様々な仕組みとは違うのかなという感じが強いですね。結局,反対尋問を経ないで,まずは証拠にしてしまいましょうということになると,その後にまた尋問するというのと,やはり大分違うんだろうと思うんですね。反対尋問の実質ということでは,なかなか難しいのかなという気はしますけれども。 ○酒巻委員 小野委員,この規定と同じものは既に,ビデオリンクをやって尋問部分が録音されているものについての証拠能力を認めた法321の2があります。それと全く同じ仕掛けを使うわけですから,新しい制度というよりは,既に現行法に存在し,かつ,それは伝聞証拠ではありますけれども,合理的な伝聞例外を定めた規定をそのまま使うわけです。反対尋問の機会がない供述記録が直ちに証拠になるというものでは全くありませんので,御議論の前提が違っているように思います。 ○小野委員 そうでしたか。そうであれば撤回します。 ○川端分科会長 時間の関係がありますので,残りは次回に回しますけれども,この検討事項につきましては,本日も様々な御意見を頂きましたので,部会への報告に向け,本日の議論を整理させていただきたいと思います。本日の検討に使用したたたき台の資料については,部会への報告を念頭に置きつつ,本日の議論を踏まえて整理をさせていただきます。   次回は,まずは予定に沿って,証拠開示制度のうち,積み残しとなっていた公判前整理手続の請求権及び類型証拠開示の対象拡大についての議論を行った後,これまで当分科会で御議論いただいた検討事項のうち,部会への報告に向けて更に議論が必要と考えられる検討事項について議論を行いたいと思います。   なお,具体的な議事次第については更に検討させていただき,事務当局を通じて,追って御連絡させていただきます。   それでは,本日の議事を終了したいと思います。   なお,本日の会議につきましても,特に公表に適さない内容にわたるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を公表することとさせていただきます。   また,前回同様,事務当局において議事録ができるまでの暫定的なものとして概要をまとめて,全委員・幹事に送付させていただきます。   次回の日程は,6月4日,火曜日,午前10時から午後零時30分までを予定しております。場所については追って御連絡させていただきます。   それでは,本日はこれで閉会いたします。どうもありがとうございました。 -了-