法制審議会 刑事法(裁判員制度関係)部会 第5回会議 議事録 第1 日 時  平成26年6月26日(木)   自 午後1時01分                         至 午後1時19分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部改正について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○東山幹事 ただいまから法制審議会刑事法(裁判員制度関係)部会の第5回会議を開催いたします。   井上部会長,よろしくお願いいたします。 ○井上部会長 御多用中のところお集まりいただきまして,ありがとうございます。   なお,本日,木村委員及び松尾関係官は所用により欠席されておられます。   また,栗生委員におかれましては,所用のため遅れられるという御連絡がありました。   それでは,審議に入ります。   本日は,前回会議までの議論を踏まえ,要綱(骨子)について詰めの議論を行っていただきたいと考えます。そして,その上で議論が終局いたしましたら,部会としての意見の取りまとめに移りたいと思っております。   前回会議において,資料11として要綱(骨子)修正案が示されましたけれども,その修正後の要綱(骨子)に関して,第一から第四までのどの部分についてでも結構でございますので,御意見等おありの方は御発言をお願いいたしたいと思います。 ○前田委員 審理に長期間を要する案件の除外の問題と,裁判員候補者に対する守秘義務の点について,前回の会議で意見を留保しておりましたので,私の考えを述べたいと思います。   まず,審理に長期間を要する案件の結論ですが,事務当局修正案に私も賛成をいたします。この案件につきましては,私自身も修正案を出しました。現時点では除外をすべきような案件がないという中で,新たにこういう法律を作ることになりますと,取りあえず裁判員等選任手続まで入った上で裁判所が判断するということではどうだろうかという案です。前回の会議で示された事務当局修正案には,裁判員等選任手続に入らずに除外するケースがないわけではないとの疑念が残ってはいるものの,実際にスタートする時点では,裁判員等選任手続まで入って,その上で除外するかどうかを裁判所が判断するという運用がなされるだろうというふうに思うことができましたので,賛成をいたします。   前回,東山幹事の発言の中に,現状における過去の裁判員の選任又は解任の状況を前提といたしますと,まずは裁判員候補者の呼出しには着手した上で,必要な人数の裁判員及び補充裁判員の選任ができた場合には裁判員裁判を実施し,その選任ができなかった場合には除外決定を行うというのが当面の通常の運用になるのではないかと想定しているという発言がございました。また,裁判所の合田委員から,当面の間は,争点及び証拠の整理の結果,長期審理が避けられないこととなった事件であっても,そのことをもって直ちに除外決定をするのではなくて,まずは裁判員裁判を実施する前提で呼出しや選任手続を行って,それで実際に選任ができれば先に進む,その段階で候補者が不足して手続が現実に頓挫した場合にはその段階でこの規定による除外を検討する,こういう形で運用をスタートさせることになると想定をしておりますという発言がございました。   私自身が提案をいたしました趣旨もこういうことが含まれておりましたので,このような事務当局の御発言や,あるいは運用に責任を担う裁判所の立場からの御発言がありましたので,このような運用がなされれば私の提案の趣旨にも沿うものでありますので,事務当局修正案に賛成をする次第です。   もう一つ,裁判員候補者の守秘義務の点につきまして,かねてから私自身は立法事実について疑問を呈しておりました。前回の議論をいろいろ踏まえて更に検討いたしました結果,被害者特定事項を明らかにせざるを得ないというのは極めて限られた事態であると考えられますし,その極めて限られた事態の中で,裁判所としてその秘匿事項に関しての事項を明らかにせざるを得ない場合があったときには,守秘義務がありますよという告知を当該候補者にすると,そういう運用も十分考えられるので,そういう運用がなされるのであれば,それについてまで反対することはないと考えました。この規定が果たして必要があるかという疑問は残ってはおりますものの,申し上げたような運用がなされるということであれば反対することはないと,こういう結論でございます。 ○児玉委員 要綱(骨子)第一の長期化の部分と第四の二については,私は反対いたします。その他については賛成いたします。   理由につきましては,もう端的に言って立法事実が認められないということに尽きると思います。特に,要綱(骨子)第一の審理の長期化に関しましては,第3回会議で,諸外国の立法例について事務当局から御報告いただきました。少なくとも調査した結果,同様の規定を置いているところは見つけられなかったということです。そして,それは陪審を受ける権利が憲法上の権利かどうかということとも特に関連はしてないというようでした。ですので,様々な長い歴史を持った諸外国において同様の事態に陥って困っているということが見当たらないのに,なぜ日本だけそこだけ先行するのか。やはりそれは第1回会議から疑問を呈してまいりましたが,前回の第4回会議あるいは本日を含めた議論の中でも私の中では納得しきれない部分がございます。   その必要性という点で言いますと,同じ法務省の管轄内で入管の医療に関して視察委員会が毎年のように改善を求めたにもかかわらず,今年の3月に牛久の入管センターで連続して亡くなるという事件が起きています。本来であれば,このような事態こそ喫緊の改善,法体制を整備しなくてはならないところ,そこに手を付けず,特に必要性が認められないようなところの立法作業をするという点が,いまだにやはり納得ができない部分でございます。   ですので,要綱(骨子)第四の二に関しましても同じようなことが申し上げられます。立法事実がないということで,私はその2点については反対いたします。 ○小木曽委員 今の御指摘ですけれども,確かにそのような事態が今まで起こっていないというのはおっしゃるとおりだろうと思いますが,この法案の意義は,万が一そのような事態が起きたときに備えるという点にあろうかと思います。もし,万が一そのような事態が起きたときに法律がないということになると,長期にわたって裁判が止まってしまう,開かれないまま止まってしまうという事態になるおそれがある。ということはつまり,被告人の裁判を受ける権利にも影響しかねないという事態を想定してのことでありますから,そのような事態に備える法律を用意しておくということには一定の意義があるのではないかと思います。   同じことは被害者特定事項についても万が一に備えるという意味では言えるのではないかと思いますし,また裁判員法第1条には,その制度の目的として,刑事裁判への国民の理解を増進するのだということが盛り込まれております。この理解を増進するということの意味を広く捉えますと,その犯罪の被害に遭われた方が特定事項について非常にセンシティブになるということを選任手続に来られる候補者にも分かっていただくということで,裁判員法第1条の言っている刑事裁判への理解増進ということに資するというような意味もあるという理解の仕方もあるのではないかと考える次第です。 ○井上部会長 ほかの方いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。更に付け加えるべき御意見等はないと理解してよろしいでしょうか。   それでは,議論はこれで終結したことにさせていただき,部会としての意見の取りまとめに移りたいと思います。   法制審議会からこの刑事法(裁判員制度関係)部会に付託された諮問第97号は,「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の施行の状況に鑑み,裁判員の参加する刑事裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるようにするため,早急に法整備を行う必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。」という内容であり,その別紙として,要綱(骨子)が付されておりました。   この要綱(骨子)については,御承知のとおり,前回会議において事務当局の方から修正案が提出されました。具体的には,要綱(骨子)の第一について,委員・幹事の方々の御意見等を踏まえまして実質的な修正がなされ,要綱(骨子)第二については,形式的な修正がなされました。第三と第四につきましては,特段の修正は施されておりませんが,それらを含め前回会議において資料11として配布された要綱(骨子)修正案を,この後は便宜上「要綱(骨子)」と呼ばせていただきます。   そこで,採決の方法ですけれども,諮問第97号において,裁判員法附則第9条に定められた検討条項を踏まえ,裁判員制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるようにするために,要綱(骨子)第一から第四までの規定について一括して諮問がなされているということに鑑み,要綱(骨子)の第一から第四までを一括して採決の対象とすることにさせていただきたいと考えておりますけれども,それでよろしいでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○井上部会長 それでは,そのように取り扱わせていただきます。   では,採決を行います。   要綱(骨子)第一から第四に賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ○井上部会長 次に,反対の委員の方は挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ○井上部会長 それでは,採決の結果について報告してください。 ○東山幹事 ただいまの採決の結果を御報告いたします。   賛成の委員の方11名,反対の委員の方1名でございました。   なお,出席委員総数は,部会長を除きまして12名でございました。 ○井上部会長 ただいま報告がありましたとおり,要綱(骨子)第一から第四につきましては,挙手されました委員の賛成多数で可決されたと認めます。   諮問第97号につきましては,配布資料11の事務当局による修正後の要綱(骨子)を部会の意見として総会に報告することに決しました。   この決定は,部会長から総会に報告することになりますけれども,この部会長の報告につきましては,慣例上,部会長に御一任願うことになっておりますので,そのように取り扱わせていただいてよろしいでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○井上部会長 ありがとうございます。   それでは,本日予定した議事はこれで全て終了いたしました。   この際,特に発言したいということがございましたら,御発言いただいて結構でございます。 ○和氣委員 皆様方には犯罪被害者等にいろいろ御配慮いただきまして,ありがとうございます。   最近問題になりました事例がありましたので,今後対応していただければありがたいと思い発言させていただきます。   裁判員裁判中に起きた事例でございます。全4回の公判期日中の第3回目の公判の日の朝刊に,裁判内容の記事と被疑者側寄りのコラムが掲載されました。被害者等にとって大切な家族を失った殺人事件でありましたので非常につらかったのですけれども,このコラムの内容によっても更に二次被害を受けることになってしまいまして,非常に耐え難いことでした。   また,このようなコラムは,裁く側に公平公正な立場で判断していただくことにも影響があるのではないかと懸念いたしましたので,是非今後,マスコミの方の対策等もお願いしたいと思いまして,発言をさせていただきました。 ○井上部会長 ほかの方,よろしいでしょうか。   それでは,事務当局の方から御発言がございます。 ○林委員 法務省刑事局長の林でございます。会議の終わりに当たりまして,事務当局を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げさせていただきたいと思います。   委員・幹事の皆様方におかれましては,御多忙のところにもかかわらず,今回の諮問につきまして御熱心に審議をいただきまして,厚く御礼申し上げます。   また,井上部会長には,議事の進行から取りまとめに至るまで全般にわたりまして格段の御尽力を賜りまして,誠にありがとうございました。   本日の部会における諮問第97号に関する御決定につきましては,今後開催が予定されております法制審議会の総会に部会長から御報告いただきまして,速やかに答申を頂戴いたしたいと考えております。その上で,法案の立案作業を進めまして,できる限り早期に関連する法律案を国会に提出いたしたいと考えておりますので,委員及び幹事の皆様方には,今後とも引き続き御支援,御協力のほどよろしくお願い申し上げます。   どうもありがとうございました。 ○井上部会長 本日の会議につきましては,特に公表に適さない内容に当たるというものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を作成し,公表するということにさせていただきます。   ちょうど裁判員制度が施行されて5年を過ぎたところですけれども,こういうタイミングで部会としての取りまとめをすることができるに至ったことは,皆様の御協力の賜物だと思っております。部会の運営については非常にお粗末であったかもしれませんけれども,御協力に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。   それでは,これで散会させていただきます。 -了-