法制審議会国際裁判管轄法制 (人事訴訟事件及び家事事件関係)部会 第18回会議 議事録 第1 日 時  平成27年9月18日(金)  自 午後4時00分                        至 午後5時34分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室1501 第3 議 題  (1)国際裁判管轄法制(人事訴訟事件及び家事事件関係)の整備について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○高田部会長 では,予定した時刻になりましたので,国際裁判管轄法制(人事訴訟事件及び家事事件関係)部会の第18回会議を開会いたします。   本日は,御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。   なお,道垣内委員,早川委員,山本克己委員,石井幹事,岡田幹事,久保野幹事,平田幹事は本日御欠席です。   では,まず,配布資料の確認をさせていただきます。事務局からお願いいたします。 ○内野幹事 それでは,事前送付資料として部会資料18をお配りしています。また,いつもお配りしている議事次第等の他,過去に参考資料としてお配りしたものですが,昭和39年大法廷判決と平成8年の最高裁判所判決を席上配布させていただいております。   資料としては,以上でございます。 ○高田部会長 何か御質問等ございますでしょうか。   では,審議に入らせていただきます。   本日は,これまでの部会の審議を踏まえた人事訴訟事件及び家事事件の国際裁判管轄法制に関する要綱案の取りまとめを予定しております。   では,順次,事務局から資料の説明をお願いします。 ○内野幹事 それでは,専ら前回から変更されたところを具体的に申し上げつつ,御審議賜りたいと思っております。   具体的には,まず,「第1 人事訴訟事件関係」,「人事に関する訴えの管轄権」の「(7)」を御覧いただければと思います。   前回の要綱案の第一次案の段階での検討におきましては,「(7)」につきまして,行方不明であるとき」というところまででとどまっておりました。この前回の原案に対しましては,本当にこれでいいのかというような強い御指摘も幾つか頂いたところでございます。特に,昭和39年の大法廷判決を一部縮減する意味を持たせるものなのかどうかというような具体的な御発言があったと認識しており,事務局からは昭和39年の大法廷判決を限定するという趣旨ではないことを御説明申し上げました。   このような部会のやり取りを経まして,少なくとも昭和39年大法廷判決及び平成8年の最高裁判決で示された規範を限定する趣旨はないということは部会の共通理解になってきたのではないかと理解をしまして,そうだとすれば,そこで示された規範というものをできる限り条文化していくのが,この部会での検討結果の実質なのではないかという考えに至りました。そこで,そういった前回のやり取りを踏まえまして,この「行方不明であるとき,」以下に文言を付け加えております。   この「他の一方が行方不明であるとき,」という部分が言ってみれば昭和39年大法廷判決で示されたところをすくい取ろうとしているものです。そして,その後の文章の「その他」の前までの部分についてまでが平成8年で事例的に取り出されたようなところを念頭に置いているものです。   このようなことを例示として規定しまして,今申し上げたこの二つの判決が示しているところの指導理念は「当事者間の衡平を図り,又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき。」であり,それを条文化してみたところでございます。   そうしますと,「その他」の前の部分というのが例示として掲げられることの意味というところになるわけですが,もちろん,それは後に規定されております,ただいま申し上げた要件に該当し得る場合の一つではあろうとは思いますが,飽くまでこれは二つの判決を踏まえた例示でございまして,究極的には,この後ろの要件に該当するかどうかが判断要素であります。したがいまして,ここから先は解釈論ということになるところであるわけでございますが,こういった例示として掲げられた事情があっても,その言ってみれば評価障害事実のようなものが更にあれば,最終的には「(7)」の適用というのがない事案もあり得るのではないかと理解をしております。   このような二つの判決,昭和39年判決と平成8年判決から得られるところの規範を明文化するということであれば,部会が前提としております,いわゆる解釈上の緊急管轄というような領域との関係性というのも,この規定があることによって全て否定されるというようなことには少なくともならないのではないか,少なくとも判例の解釈,評価についてはいろいろな議論がある以上は,そういったこととの関係も問題ないのではないかと考えられるところであります。これが前回からの部会の資料,要綱案としての変更点の一つでございます。   併せてもう一つ,前回の部会資料との関係で御議論がございましたのは,いわゆる併合請求における管轄権というものでございました。前回では,これが番号としては「2」というところに入っていたわけでした。   しかし,部会の検討の中では,この「第1」の「1」にございますとおり,全ての訴えについて一つの管轄規定が置かれているわけですので,いわゆる同一当事者間の客観的な請求の併合という場面において,訴え当初からそれらが併合されているときを考えますと,事実上管轄原因の有無がずれるということがあるのかという点,そこは一つの大きな空振りなのではないかというような問題意識,ご指摘があったわけです。   それに対応いたしましたのが,このたび配布させていただきました資料といたしましては,2ページ目の「5」の「(1)」のところでございます。つまり,訴えの変更の場面での管轄規律として,変更前と変更後のものが「同一の身分関係についての形成又は存否の確認を目的とするときに限り,」として,要するに,実質において前回我々がやろうとしていたことを条文上も訴えの変更という場面にだけ適用されるものであることをはっきりさせたものを記載しております。実質において変更はないわけでございますけれども,その規律ぶりについて訴えの変更の場面でのことであるということを明らかにする要綱案としたというところが二つ目の変更点です。   そのほかにつきましては,記載上の一部,「5」の「(1)」に,前回の併合管轄でやろうとしていた「2」が吸収されたということでもって,項の数字がずれているという変更点はございますが,そのほかについては実質的な変更はないということになります。   まず,「人事訴訟事件関係」につきましての前回からの変更点を踏まえた御説明は以上でございます。 ○高田部会長 「1 人事に関する訴えの管轄権」,とりわけ「(7)」の部分から御意見を承れればと存じます。どなたからでもよろしくお願いいたします。 ○山本(和)委員 私は,今回の修正には賛成です。幾つか理由がありますけれども,第一には,前回の行方不明だけということで,あとは緊急管轄の広い解釈に委ねるということであると,やはり余りに解釈によって管轄が認められる範囲が広くなりすぎるのではないかということがあります。人事訴訟という,基本的には個人が当事者になるような,また,外国の方,日本の法制度を十分に知らないような方も当事者になるような場面で使われる規律としては,それは余り望ましくなく,なるべく書けるところは書いていくという一般的な姿勢がいいのではないかということです。   第2に,前回の案では,行方不明が先ほどの御説明で単独の要件になっていたわけですが,これは私も発言したと思いますし,多くの方々が言われていたと思いますが,やはり行方不明という概念はかなりあいまいで分かりにくいところがある概念であり,それが要件となると,それをめぐってかなり解釈の上の議論というものが予想されるということになります。これに対し,今回の案だと,それは飽くまでも例示ですので,厳密にそこは解釈で詰めなくてもよくなるという点では,やはり改善されているのではないかということがあります。   最後に,この最終的な要件としては,今回,当事者間の衡平を図り,適正で迅速な審理の実現を確保するということで,私自身は前から,必ずしも「(7)」に相当する部分は緊急管轄と完全に重なり合うものではなく,とりわけ,この「当事者間の衡平」というところはひとつ大きな意味を持っているのではないかと考えてきて,従来,研究会報告書とか,中間試案にも括弧書で残っていたと思いますが,それが私はあった方がいいのではないかと考えていたものですから,捉え方によるんだと思いますが,それが復活したという見方もできるわけでありまして,このような要件ぶりにするということも私は賛成です。   ただし,私の認識では,この要件それ自体を取り上げて十分に詰めた議論がされていない部分がやはりあるように思いますので,結局,かなりのところ,この法律ができた後の解釈に残らざるを得ないというところです。文言的には特別の事情による却下と似たような言葉遣いがされていて,一定程度そこでの議論も参考になるのかなとは思いますけれども,なおかなり解釈に残っているのかなと思います。しかし,それでも,やはり明文で書いたほうがいいと私は思いますので,私は原案に賛成します。 ○高田部会長 ありがとうございます。ほかの委員,幹事の方いかがでしょうか。 ○山本(弘)委員 私も,この修正後の案に賛成です。最高裁判例が使っている,その他これに準ずる場合という言葉がやはり法律には使いにくいということで,その趣旨をどうやって表現するかということで,結果的には,今,山本和彦委員も言われたように,特別の事情による訴えの却下の裏返しのような条文になったのだと思います。しかし,特別の事情による却下が条理を表しているものだとすれば,これでいいのではないかという気もします。   それと,やはり従来議論になっていた,正に,人事に関する訴えでだけ緊急管轄を明文化しているかのように読めてしまうと,それが書かれざる不文の規範としての緊急管轄に対して,言わば,抑制的な要因になる可能性があるという点は,やはりそうではないという趣旨を明らかにしておくべきで,飽くまでこの規定は,昭和39年のその他これに準ずる事情があるときという文言が,やはり立法技術上使えないので,その趣旨をできる限り正確に表現するためにこの文言が用いられたのであって,この条項の存在が緊急管轄に関する解釈に積極的にも,また消極的にも影響するものではないということをやはり強調しておくべきだろうと思います。 ○高田部会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。 ○大谷幹事 昭和39年と平成8年の二つの最高裁判決を踏まえた文言だという御説明をされていたと思うのですが,その関係で幾つか質問とコメントがあります。   1点目は,結局,先ほどの山本和彦委員の御発言にも関係するのですが,この書きぶりによって,行方不明が例示になったと,「(7)」の管轄原因としては,「その他」以降の「日本の裁判所が」から「認められる」までと読むのだというのが先ほどの説明だと私は理解しました。仮にそうだとしますと,一つは,昭和39年判決でも行方不明又は遺棄されたときその他となっていまして,そういう意味では行方不明は飽くまで例示と読むのか,それとも,例示とは読まずに,それ自体が例外事由と読んだからなのかもしれませんが,行方不明に当たるかどうかが非常に争われるということがありましたが,今回この書き方によって,行方不明は例示で,飽くまで「日本の裁判所」以下が「(7)」が言うところの管轄原因で,行方不明かどうかを巡って争うことにそれほど意味がなくなったということになるというように理解すべきなんでしょうかというのが1点目です。   それから,2番目は,平成8年判決をどう読むかは人によって読み方が多少違うのかもしれませんが,確かに,平成8年の中には,当事者間の衡平や裁判の適正,迅速みたいなことが書いてあるのですが,しかしながら,実際には,それに続く部分,原告が被告の住所地国に離婚請求訴訟を提起することにつき,法律上又は事実上の障害があるかどうか,それから離婚を求める原告の権利の保護,このあたりのことが実際には実務の中で比較的使われてきたといいますか,その前の部分はもちろん条理の中身の話としては書いてあるのですけれども,特に離婚訴訟の場面では,結局,被告の住所地主義の下で,被告の住所地国で起こすことについて法律上又は事実上の障害があるかどうか,日本に住所を有する原告の権利保護みたいなことで実務の中では使ってきたという感触がございます。そうだとしますと,今回の「(7)」の御提案いただいた平成8年判決の前半の部分が文言化されているのを見ますと,若干,今までやってきた感覚とは少しずれがある感じを受けました。といいますのは,原告が被告の住所地国に起こすことに法律上又は事実上の障害があるかとか,離婚を求める原告の権利の保護といいますと,私は,比較的やはりその中には一種価値判断が入っているような気がしまして,つまり多くの場合,日本に原告が住所を持っていますので,日本に住む原告が,日本の裁判所で離婚を求める利益みたいなのが少し価値として入っているように思うのですが,今日の文言ですと,「日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り,又は適正かつ迅速な審理の実現を確保すること」という言い方になっていまして,離婚事件の場合,結局,原告は離婚を求めているが,それを実現するのが困難な場合みたいなのをある意味拾っているようなところがありまして,必ずしも「当事者間の衡平」という言葉でそれがうまく表現できているのか,少しそこにずれがあるような気がしています。うまく説明できていないかも知れませんが,そのように考えています。   今の関係で,今日例示になった二つ目は,平成8年の事案のそのものですので,すごく分かりやすいです。ただ,この部会で議論されてきたのは,それ以外にも,例えば,被告の住所地では離婚が認められていない場合というのも話に上がったことがあったと思います。その場合が,もしこれに入るとすれば,今私が申し上げたことそのものでして,管轄を認めるかどうかの判断の中に,被告の住所地国では離婚が実現できないということを日本の裁判所で言わば管轄を持ってきて救おうという価値判断が入っているように思います。それが平成8年の方でしたら,原告が被告の住所地国に離婚請求訴訟を提起することにつき法律上又は事実上の障害があるかどうか,離婚を求める原告の権利保護ということで,うまくそこに入れるのが分かりやすかったんですが,今日の「(7)」で,そういう場合を含むと読むのかどうかというのがちょっと分かりにくいなと思いました。また,被告の住所地国では離婚の管轄がない場合があります。そういう場合も,「(7)」で仮に拾うのだとしたら,そこもやはり原告が結局は日本の裁判所で離婚ができるようにするという感じがしまして,それはこの「(7)」の,「日本の裁判所が」以下のことに入っているという読み方ができるのかどうかということを少し疑問に思いました。   ただ,このような発言はいたしましたが,反対しようと思っているのではないので,そういう趣旨の発言だととらないでいただきたいのですが,その辺り,この文言で本当にいいのかということが気になりました,平成8年を踏まえてというのに当たって問題提起させていただきたいと思います。 ○高田部会長 ありがとうございます。 ○内野幹事 事務局としましては,抽象的な要件としては,昭和39年と平成8年の判決で,共通項として少なくともくくれる部分はどこなのかということを要件化の段階では重視しております。そうしますと,確かに平成8年の判決について,大谷幹事御指摘の問題意識というのがあるんだとは思いますけれども,やはりそういった部分については解釈に委ねざるを得ないのではないかと考えています。平成8年判決は,少なくとも当事者の衡平や適正かつ迅速な審理の裁判をうたってはおり,昭和39年は正義,衡平というような正義の理念とかこんなような表現になっていたと思うのですが,これらを踏まえて要件として何かをくくり出そうとしますと,やはりこの部分になってしまうのではないかと考えた次第です。ですので,質問に対して明確な答えになっていないのかもしれませんけれども,やはり要件化をして抽象的に取り出すとすると,この部分になるのではないかということです。と思います。   また,行方不明の部分についてはどうなるかという御指摘もございました。これは,確かに,例示である以上は,後ろの「当事者の衡平を図り,又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情」の部分に一般的,抽象的には該当し得るものであり,やはりこの概念に当たり得るのかという争われ方が結果として生じてきてしまうことは否定することはできないとは思っております。しかし,やはり今回御提案の趣旨といたしましては,この二つの判決から酌み取れる,管轄権を肯定しようとする際の要素は何かというところに着目していますので,このような条文化ができることになれば,行方不明等の例示の後ろにある要件を認めるだけの事情が本当にあるといえるのかということが問題とされるのではないかと思っております。そういったところを踏まえますと,これまでの争われ方と同じなのかどうかというのはなかなか答えにくいところはあるんですが,さほど大きな変更はないのではないかと個人的には考えてはおります。むしろ,もしこの点につきましてこういうふうな訴訟での争われ方が予測されるという御議論がありますれば,今日御発言いただくにはふさわしいものではないかと思います。 ○高田部会長 今の点,ほかの委員,幹事の方から御発言ございますか。いずれの判決もその読み方について委員,幹事の間でまだ違いがあり得るところではないかと思いますので,とりわけ平成8年の方は,どこまでが条理に基づく規律なのかという議論もしたやに記憶しておりますし,緊急管轄の規律が別に残るとすれば,この「(7)」で全て取り込まなくても,緊急管轄の規律による事件もあり得るということになるのではないかと,今までの議論からは推測しておりますが,その辺りも含めて,ほかの委員,幹事の方,御意見があれば承りたいと思います。 ○山本(弘)委員 今の大谷幹事からのお話ですけれども,平成8年判決は,一般論として,当事者間の衡平や裁判の公正,迅速の理念により,条理に従って決定すべきだと言って,「そして」以下のところは,正にその一般的な規範をより具体化したもので,これは何を言おうとしているかというと,やはり当事者間の衡平の具体的な中身であって,被告の利益を重視することは当然なのだけれども,原告の裁判を受ける権利というのも重視しなければいけないということを,当事者間の衡平の具体的な内容を明らかにする趣旨で書かれているのではないかなと私は理解しておりますので,そうだとすると,この前段の抽象的な要件は,正に後段の部分も含んで解釈されるべきものだということだと思いますので,私は,今回の規律が特に平成8年判決の趣旨を体現していないとか,あるいはそれを狭めるかのような印象を与えるとかいうものではないのではないかと思っております。 ○高田部会長 ありがとうございます。   いずれにせよ,この要件に該当する部分について,解釈の余地が残るというのは,部会としては心苦しいところがあるのかもしれませんが,今までの委員幹事の御指摘にこたえるべく可能な限りの文言化を図るとすれば,このあたりではないかというのが事務局の御提案かと思いますが,文言も含めてなお御指摘いただく点があれば承りたいと存じます。 ○村上幹事 ちょっと細かい点になるのですけれども,この平成8年を要件化した部分で,外国の確定判決が日本で承認されないときという要件の解釈なのですけれど,管轄の標準時が訴え提起時ということなので,これは訴え提起時に既にもう外国で確定判決が出ている場合に限定されるのか,それとも,これも飽くまで例示なので,確定判決が出ていないんだけれども,手続がまだ進んでいる段階でも,ある程度,承認が予測されるという場合も含めて管轄を認める場合もあるというところまで解釈が広がるのかどうか,その点はいかがでしょうか。 ○内野幹事 その辺りは解釈なのだろうと思います。例示は必ずしも網羅的にされているわけではないということが前提でありまして,文言は正に確定した判決となっていますので,これに素直に従えば念頭に置いているのは確定した判決ということかと思います。もしかしたら,既に平成8年判決の解釈として現在も行われている解釈があるのかもしれませんが,まだ判決が確定していない事件が外国にあって,それが将来的に承認され得るといったものも,この確定した判決に含まれるんだという解釈論が展開されるのかどうかというところになろうかと思います。けれども,少なくとも例示として書いておりますのは,既にそういった確定した判決がある場合です。ただ,いずれにしても,それは例示でございますので,最終的にはそういった一連の事情を加味して,さらに「当事者間の衡平を図り,又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められる」事例があるのではないかと言われれば,抽象的には存在し得るものもあるのかもしれません。 ○池田委員 私は,ここを拝見したときには,もちろんここの「その他」の前の確定判決に関する記載をどこまで厳格に解するかは別として,相互承認がないとかで,その国の判決が絶対に承認されない場合というのがあるわけですから,そういう意味では,ここの前と読むか後ろと読むかは別として,その国の判決が絶対認められない場合には,訴えを起こすまでもなく,日本で起こすことができるのは,この文言からは明らかと解しております。 ○内野幹事 正に,後ろの要件に該当するかどうかが問題ですので,一つの解釈論としてはあり得るところかと思います。 ○高田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○畑委員 私も,結論的には,この辺りでいいのかなという感じがしております。前回申し上げたように,行方不明だけで終わるというのはちょっと寂しい感じがありましたので,昭和39年判決と平成8年判決という,これより狭めようという御意見は余りなかったと見受けられる最高裁判決の文言を使って要件を設けるというのは,この部会の議論の集約としてはそれなりに適切なところかなという感じがいたします。   ただ,今も議論されておりましたけれども,その先の,この案がもし法律になった場合の解釈論はいろいろあるだろうと思います。私は,個人的には,前半部分については,例示である以上は,そこに当たったらやはりこの要件を満たすのではないかというような気もするのですが,その辺りは,この改正が実現した場合の解釈論の問題として残るということかと思います。 ○高田部会長 ありがとうございます。 ○池田委員 今回,行方不明だけではなくて,こういった言葉が入ったので,そういう意味では相当程度裁判所に裁量の余地が出てきたと思っておりまして,私がかねてから入れるべきと申し上げていた,被告が,原告の住所地で裁判をしてもいいと言っているような事案も,裁判所が特別な事情と判断すれば入れる余地があるということがかなり明確になったと思っております。 ○高田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○池田委員 もう1点,これは認知の場合もカバーする規定だと思うのですけれども,外国でそもそも認知の制度がないような場合に,日本で裁判をせざるを得ないというような場合が実務的にはあるということで,そういった場合にも,ここの規定を使ってやらざるを得ないのかなと思っております。 ○竹下幹事 正に今その点少し考えていて,先ほど大谷幹事からも,離婚ができない国との関係という例が出てきたかと思うのですが,恐らくこの中で言われている外国確定判決が効力を有しないという中に,公序の要件を充たさない場合が含まれてくると思いますので,外国で認知がおよそ認められないとして,棄却されたとすれば,日本で公序に反するから承認できないので,そうしたら,日本で裁判をできるということに今の文言だとなると思います。それを敷衍して考えるならば,恐らく離婚ができない国や認知の制度がおよそない国といった場合に外国で裁判がされていなくても,同じように日本で処理をできるとすることが合理的のように思います。その場合には,第三国の目から見た場合に,日本が過剰管轄だと言われる可能性はもしかしたらあるのかもしれないのですが,他方で,日本で解決が必要な以上は,そういった事案についてやはり日本で裁判をするというのは個人的には適切だと思っておりますので,大丈夫なのかなと考えているということだけ発言させていただきます。 ○高田部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。 ○大谷幹事 先ほど発言の補足になりますが,被告が行方不明の場合,被告が行方不明である以上は,それは原告の住所地である日本でせざるを得ないというのは,ある意味,衡平とかという言葉が当たるのかもしれないのですけれども,被告の住所が分かっていて,その国では離婚が認められていないけれども日本でやれば離婚ができるということが,衡平という言葉に入るのだろうかというところが先ほど自分で引っかかっていました。結論的には,私はできるべきだと思っていまして,それが今日の表現で入っているのかというところが先ほどは気になって発言したのです。   ただ,一つは,先ほど内野幹事から御説明がありましたように,結局,最後は解釈論にならざるを得ないことになり,そのときには,これは昭和39年判決と平成8年判決から要件となり得ると考えられるものをくくり出したものであるという読み方をして,平成8年判決の射程距離は何だろうかと,そこまで戻っていくみたいなことになるのかなという気がしまして,平成8年判決自体,読み方はいろいろあるけれども,そこには離婚を求める原告の権利の保護とかそういうことも出てくるので,そういうものも使うのかなとちょっと考えてみましたというのが1点と,もう一つは,今日の「その他」の以下ですが,前半は「日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平」で,後半は「又は適正かつ迅速な審理の実現」,ここが,もしかすると昭和39年判決でいうところの正義,衡平の衡平と正義なのかもしれなくて,その辺りで読み込んでいくのかなと思いました。それが入るのか入らないのかとかは,多分部会で決めることではないと思うのですけれども,先ほどの発言を補足させていただきます。 ○高田部会長 ありがとうございます。これも解釈によるところであり,判例をどう読むかにもよりますけれども,この規律は,緊急管轄一般ではなく,飽くまで原告住所地管轄を被告との関係で認めるべき場合という切り口による条文だと理解できますので,そうした観点から解釈していくということかと個人的には存じますが,ほかに御意見ございますでしょうか。   ここ数回の提案に若干揺れがございましたが,これまで頂いた委員幹事の御指摘を十分生かしつつ,先行判例との関係,さらには,緊急管轄等他の部分に影響を与えないという観点からも,原告の住所地管轄を認めるべき場合を記述するとすれば,こうした表現がよいのではないかということで御提案いただき,本日,皆さんから積極的な賛同と,やむを得ないという賛同と頂いたところかと存じますが,こうした方向で取りまとめるということでよろしゅうございますか。   では,続きまして,訴えの変更の部分ですね,「5」の「(1)」の部分について,御意見を承りたいと思います。   他の法制にない訴えの変更に関する管轄規定が入ることになりますが,規律の対象をより明確にするという観点からこうした方向が望ましいのではないかという御提案を頂いているところでございますが,これでよろしゅうございますか。   では,そのほか,人事訴訟関係事件について御指摘いただく点があれば承りたいと存じます。特にございませんか。   それでは,改めてひとつひとつは確認いたしませんが,「第1 人事訴訟事件関係」につきましては,原案どおりの内容,文言で取りまとめるということでよろしゅうございましょうか。   では,「人事訴訟事件関係」については御了承いただいたということにさせていただければと存じます。引き続きまして,資料を御説明いただきます。 ○内野幹事 引き続きましては,「第2 家事事件関係」でございます。   ここでも,先ほどの人事に関する訴えと同様の規律が想定されていたものが2か所ございました。   具体的には,「7 特別養子縁組の離縁の審判事件の管轄権」の「(5)」というもの,あと「12 財産の分与に関する処分の審判事件の管轄権」の「(4)」というものでありました。   それぞれ議論の経緯は異なりますけれども,大きいところで申し上げれば,特別養子縁組の離縁の審判事件については,可能な限り,普通養子縁組に係る離縁の訴えにおける管轄原因とそろえていったほうがよいのではないかという実質の議論があり,一方で,財産の分与に関する処分の審判事件につきましては,専らその事件の性質というものに鑑みると,それは婚姻関係というものが解消される場面においてされるものだというところが共通の理解になり得るところではないかという問題意識を前提に,先ほどと同様,人事に関する訴えの管轄権というものについてそろえていくべきではないかという議論があったかと存じます。   ただいま人事に関する訴えの管轄権というところの「(7)」について,その方向でという御理解を頂きましたところからしますと,ここでそれぞれお示ししたようなところになるのではないかというところでございます。   また,「特別養子縁組の離縁の審判事件の管轄権」の「(2)」の書きぶりというところにつきまして,前回の部会では御指摘を賜りました。ここは事務局といたしましては,法制的な観点からの問題と考えておりますが,例えば,日本法,つまり民法と違う準拠法において,例えば,実父母以外の者からの申立てというものが認められているような場合につきましては,少なくとも「(2)」というものの管轄規律は,少なくとも実父母以外の者が申立てる場合にも適用ないしは準用されるというようなことも解釈としてはあり得ると考えております。「(2)」で部会の意思として表現したかったところは,養子が申立人でない場合を想定した管轄規律であり,養子以外の者が申し立てる場合には養子の住所を管轄原因とするということだと,このように考えております。   そうしますと,このような養子以外の者が申し立てるような場面を念頭においた実質的な規律を示す表現としては,専ら法制的な観点からの検討によるところですが,このような「(2)」のような表現として取りまとめるというのも一つの姿かなと考えております。ここの部分については,前回お示しした案を変えることではなくて,これで御了解いただければとは考えております。   そのほか,家事事件関係につきまして,前回の部会資料との関係のところでは,個別の管轄権については,変更した点はそのようにはございません。   あとは,「14 特別の事情による申立ての却下」に関するところがあります。   ここの部分につきましては,書きぶりを調整してあります。家事事件につきましては,相手方がない事件というのが,日本の家事事件手続法上存在してございますので,まずは全体をくくる理念として,共通項としての要件の方,すなわち日本の裁判所が審理及び裁判をすることが適正かつ迅速な審理の実現を妨げている特別の事情の方の要件を前に出して,そして,相手方のある事件について,申立人と相手方との間の衡平を害することとなる特別の事情の方を後にするという書きぶりの変更をしております。 ○高田部会長 この点も相互に関係性がありますが,便宜前回から変更があった「7」特別養子縁組の離縁の審判事件についてまずお伺いできればと存じます。御意見を承りたいと存じます。 ○山本(和)委員 基本的には,先ほどの内野幹事の御説明で,これは日本法が準拠法になっている場面を想定して,民法が想定している申立人を想定して書いていて,それ以外の場合は解釈に委ねるということだということで,了解はできました。   そして,「(2)」の部分についての若干の確認があったと思うのですが,「(1)」についても,仮に準拠法上,養親が申立権を持っているような場合に,日本にいる養親が申し立てをしてきて,しかし,養子は日本にはいないという場合に,そのまま読めば何か「(1)」が適用になって,日本に管轄が認められるとも読めるわけですが,しかし,これまでの部会の議論は,そうではないということでコンセンサスがあったと理解しています。このように準拠法上養親が申立権を持っているような場合には,そういう解釈がされる余地があるということを御確認いただければと思います。 ○内野幹事 部会の議論を前提としますと,「(1)」の規律は養親が申立人とならない場合のものですので,養親からの申立ての場合には,養親の住所は管轄原因とはならないということになります。ご指摘のとおり,そのような解釈の余地があり得ると考えております。 ○大谷幹事 養親の住所が日本国内にあって,養子の住所は日本国内にないときは,申し立てができるのかできないのか,もう一度教えてください。 ○山本(和)委員 私が先ほど御質問したのは,養親が申し立てられる外国の法制が仮にあって,養親が今の大谷幹事が言われた状況で申し立てられた場合にどうなるのかというところでなお解釈の余地があるという御指摘で,部会の議論を前提とすれば,養子の住所が日本国内になければ申立てをすることができないという御指摘だったと理解しています。 ○高田部会長 「(5)」はいかがでしょうか。前回御指摘を受けて,普通養子縁組になるべくそろえる観点から,日本法上は相手方のない事件でありますけれども,身分関係の当事者に着目して衡平という概念を入れるという御提案ですが,この点も含めていかがでしょうか。   この規定も日本法にやや寄り掛かった規定ぶりで,解釈の余地を残すことになりますが,規定としては,実質に着目してこの方向で規定するという方向で御了承を得たということでよろしゅうございますか。   では,また便宜,前回から変更のあった単位事件類型について先に御意見を承れればと思いますが,「12 財産の分与に関する処分の審判事件の管轄権」について御意見を承りたいと存じます。   では,単位事件類型全体で「1」から「12」までの12種類の単位事件類型を準備して規律するということになっておりますが,これら「12」までの単位事件類型について御指摘いただく点があれば承りたいと存じます。いかがでしょうか。 ○池田委員 この「12」の「(4)」に関しましては,要するに,離婚した後に財産分与をするという場合が想定されているものと思いますので,この規定の解釈によって保全への道も開かれていると解します。 ○高田部会長 解釈は分かれ得るとは思いますが,御意見は頂いたということかと存じます。   ほかにいかがでしょうか。 ○大谷幹事 今まで見落としていたんだとしたらすみません。「10」の扶養義務のところなんですが,下から4行目「扶養権利者」の中に括弧があります。ここで,括弧の中で,子の監護に要する費用のときは,「子の監護者又は子」になっていまして,結論的には,私はこれで賛成です。管轄の話ではないのですが,扶養権利者が誰かということについて,扶養義務の準拠法に関する法律では,養育費についての扶養権利者は子と解釈をするというのが一般的だと理解しておりまして,ここでこのようにお書きになると,扶養権利者が子であるという理解との関係で,混乱しないかなということが気になりました。 ○内野幹事 大谷幹事のイメージでは,子の監護者を含む,といった表現がいいのではないかという御指摘なのかも知れませんが,こういった問題は限りなく法制的な問題なのかなとも思っております。ここでは,飽くまで管轄の規律で誰の住所を見ればいいかというところを明確にするために,「子の監護者又は子」というように表現しているところでありまして,準拠法の指定の場面での扶養権利者の概念がどのように解釈されているかという部分については,そこに悪影響を与えるようなものではないのではないかと事務局としては考えております。 ○高田部会長 飽くまで国際民事訴訟法の概念として御理解いただくということかと存じますが,これも解釈に委ねている部分ですので,そうした解釈の定着を期待することになるかと存じます。 ○西谷幹事 扶養権利者の概念について,多くの国の法制を調べたわけではないのですが,例えばドイツでは,監護者が扶養権利者になるという構成がなく,子だけが扶養権利者となりますので,ドイツ人の方とずいぶん議論しても,なかなか話が通じなかったことがあります。実体法上の扶養権利者が誰かというのは,準拠法となるいずれかの国の実質法で決めざるを得ません。そのため,「扶養義務の準拠法に関する法律」にいう扶養権利者とは,監護者が扶養権利者となる法制の下では,監護者であると解釈できるかと思います。   それに対して,管轄原因との関係では,準拠法上の扶養権利者の概念をそのまま当てはめる必然性はなく,むしろ国際民事手続法に固有の概念として,扶養権利者を理解してよいように思います。したがって,扶養権利者の住所という管轄原因を考えるときには,そこに「子の監護者又は子」の双方が入ると考えて差支えないように思います。そのうえで,実際にその者が実体法上も扶養権利者であるか否かは,本案の問題として,準拠法に従って判断すれば足りるように思います。 ○高田部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。本来一つ一つ確認すべきなのかもしれませんが,一括して単位事件類型についての管轄規制はここの資料に掲げていただいたものでよいと了承していただけますでしょうか。   では,了承を受けたということにさせていただければと存じます。   続きまして調停事件,特別の事情の却下と管轄の標準時ですが,このうち「特別の事情による申立ての却下」につきましては前回からの変更がございますので,まずこの点について御意見を承れればと存じます。 ○大谷幹事 積極的に今日の御提案の文言に賛成です。 ○高田部会長 ありがとうございます。   いかがでしょうか,ほかに御意見があれば賜れればと存じます。   では,「特別の事情による申立ての却下」の考慮事項と要件立てについては,こうした方向で取りまとめるということでよろしゅうございますか。   では,それ以外の家事調停事件,それから管轄の標準時等について御意見があれば承りたいと存じますが,これらについても御了承いただけるということでよろしゅうございますか。   よろしいようでしたら,「第3 外国裁判所の家事事件についての確定した裁判の承認及び執行」について御説明いただきます。 ○内野幹事 この「第3」の部分につきまして,具体的かつ実質的な変更はございません。   これまでの議論を踏まえて,承認要件につきましては,民事訴訟方第118条を準用することとしています。また,外国裁判所の家事事件についての確定した裁判の執行判決につきましては,家庭裁判所に管轄を動かした上で,前回の部会でお示しした案について,利用者の便宜を図る上で望ましいという御評価があったことから,その実質を変えることなく今回の提案をしています。   「第3」の説明は以上です。 ○高田部会長 では,「第3」承認,執行について御意見を承りたいと存じます。 ○村上幹事 深読みかもしれないのですけど,「(3)」で,前回は「24条第1項の規定にかかわらず」だったところが,今回は「(1)にかかわらず」と変わっているところに何かメッセージが含まれているのでしょうか。 ○内野幹事 「2」の「(3)」は,「2」の「(1)」で,管轄が家庭裁判所に移されるものでない事件,つまり,地方裁判所の管轄である事件についても,家庭裁判所で扱うことができるということを表しています。前回の「民事執行法第24条第1項の規定にかかわらず」という表現は,この要綱案以外の事情,つまり,現行の民事執行法24条1項が存在することを考慮した上での文章でした。しかし,「(1)」では,家庭裁判所が管轄する,となっているので,要綱案の中の事項だけで表現しようとすると,「(1)にかかわらず」という表現になるのではないかということです。実質的に内容は変わっておりません。 ○高田部会長 ほかに御指摘いただく点ございますでしょうか。 ○池田委員 「外国裁判所の家事事件」というものが何を指すかという点は明らかなのでしょうか。将来的に,どっちか分からないということがありそうな気もしますので。 ○内野幹事 部会の議論を集約いたしますと,日本法の観点から見て家事事件に当たり得るものがここでいう「外国裁判所の家事事件における裁判」という概念に当たる,という結論であったと理解しています。 ○池田委員 それは,例えば,同性婚の解消なども,「外国裁判所の家事事件」に当たるという,こういう感じのイメージで思っていればよろしいのですかね。 ○内野幹事 それは日本法上どのように扱われているかという解釈に影響されるものと理解しています。 ○高田部会長 ほかに御意見ございますでしょうか。   よろしければ,承認,執行の部分も,この方向で取りまとめるということで御了解を得たということでよろしゅうございますか。   では,最後,「第4 その他」について御説明いただきます。 ○内野幹事 今回の要綱案は,個別の訴えないし事件について,あるべき管轄規律を議論してまいりましたが,これを法文に表す場面で必要となる整理については,法制的な調整を踏まえて,今後の作業の中で詰められるものと考えています。この部会としましては,個別の単位事件類型についての管轄規律の実質を示すものとしてこの要綱案を取りまとめることとし,整備が必要な範囲については,その他所要の整備という形で取りまとめることが適当であるものと事務局としては考えています。 ○高田部会長 何か御発言ございますでしょうか。   では,特にないようでございましたら,本日の審議事項全体を通しまして,改めて何か御発言がございましたらお伺いしたいと存じます。 ○竹下関係官 よろしいでしょうか。最初の「第1 人事訴訟事件関係」のところで,これまで併合請求に関する管轄権という規定が設けられておりましたのを,今回,訴えの変更という形に改めていただきました。この点について,前回意見を申し上げましたので,事務局の方でいろいろ御検討の結果,こういう形に改めていただいたのだと思いますが,これは大変結構なことだと思います。   やはり法律の規定というのは,一体どういう場合をどのように規定しようとしているのかということを考えて,その規定の趣旨あるいは目的が法文の上に文章として表現されなければいけないと考えます。前回までの規定は,普通の人が見れば,初めから数個の請求をまとめて訴えを提起する場合の規定と読めるわけで,一般の国民からいうと,何を規定しているのか分からないということになってしまって,大げさに言えば,国民の法への接近,アクセシビリティを阻害するということになるわけですから,やはり訴えの変更の場合を規定するのであれば,今回のように,訴えの変更の規定するのが本来の姿だろうと思います。   民事訴訟法7条は,旧法の21条の併合請求の裁判籍の規定を受けたものです。21条は,ドイツ法は現在でもそうですけれども,当初からの訴えの客観的併合であっても,それぞれの請求について裁判所が管轄権を持たなければいけないということになっているのを,日本ではもっと訴えの併合をしやすくしようという趣旨でできた規定ですから,そういう沿革からいっても,訴えの変更の場合にも適用があるというのが旧法以来の解釈ということはそのとおりですけれども,当初からの訴えの客観的併合を主たる規律対象とした規定なのです。   私は1968年に法制審議会幹事を仰せつかってから今日まで,民事手続法の主要な立法作業には関与してまいりましたけれども,これまで,条文を読んでもいかなる事態を想定して規定しているのかが分からない規定は設けたことがないと思います。そういう意味では,今回,何をどう規律しようとしているのかということがはっきり分かるような規定になったというのは,大変結構なことだと思います。 ○高田部会長 ありがとうございました。   ほかに,全体を通しまして,今日の審議事項について御意見があれば承りたいと存じます。よろしゅうございましょうか。   では,要綱案につきまして,当部会としての御意見を全て承ったということにさせていただいてよろしゅうございますか。   では,最後に取りまとめに移りたいと存じますが,これまで個別に御確認申し上げたところですけれども,本日,席上配布した要綱案の文言で当部会の要綱案として決定するということになろうかと存じますが,そう御決定いただいてよろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございます。では,そのように決定させていただきます。   なお,要綱案につきましては,今後,総会での答申に至るまでの間にも,法律案の作成という観点から,形式的な表現等の修正が必要となる場合もあり得るかと思います。そのような修正につきましては,誠に恐縮ですが,部会長としての私と,事務局に御一任いただければ幸いと存じますが,その点も御了承いただけますでしょうか。   それでは,そのような取扱いとさせていただきます。   続きまして,事務当局から,要綱案の今後の取扱いについて御説明いただきます。 ○内野幹事 要綱案を取りまとめいただきまして,ありがとうございました。事務局として心より御礼申し上げます。   今後は,10月9日に法制審議会の総会が予定されております。そちらの方で,本日お取りまとめいただきました要綱案の審議をしていただく予定でございます。そこで要綱が決定され,続いて,大臣に答申という形になりますけれども,そのようになりますれば,要綱を踏まえて,我々といたしましては,早期に国会に所要の法律案を提出するための作業を鋭意していきたいと考えております。 ○高田部会長 続いて,民事局長からの御挨拶ですが,御都合で御退席されたということですので,金子官房審議官から,よろしくお願いします。 ○金子委員 本来であれば,局長の深山から御挨拶申し上げるところですが,10分ほど前に緊急の用事がありまして退席させていただきました。私の方から局長挨拶を代読させていただきます。   当部会の審議の終了に当たりまして,担当部局の責任者といたしまして一言お礼の御挨拶を申し上げます。   当部会における審議は,平成26年4月の第1回会議から18回に及び,この間,委員,幹事の皆様におかれましては,多岐にわたる論点について,比較法的な観点をも踏まえ,大変密度の濃い御審議をしていただきました。本日,要綱案を取りまとめくださいましたことは,高田部会長を始めとする委員,幹事の皆様の多大な御尽力があったからこそと深く感謝しております。   この人事訴訟事件等の国際裁判管轄の法制の整備は,財産関係事件の国際裁判管轄法制の整備,家事事件手続法の制定等に続くものとして,近年の民事手続法に係る基本的な法整備としては,言わば,アンカーを担うものということができると思います。   また,ここに改めて我が国を取り巻く環境に目を転ずれば,国際結婚,海外への移住等に伴い,国際的な要素を持った親族間の紛争は増加する傾向にあるとは言えますし,特に近時に至っては,いわゆるハーグ条約実施法が制定施行され,裁判所に置かれて,実際に事件が申し立てられるに至っておりまして,こういった事情をも踏まえますと,今般の法整備は,現在そして今後一層高まることが予想されます。社会のニーズに的確にこたえるものとして,その意義は大きいものと考えております。   さて,来月9日に開催されます法制審議会の総会で要綱案の御承認が得られましたならば,その後は,私どもといたしまして全力を尽くして早期に所要の国会に法案を提出いたしますとともに,法案が法律として成立するよう努めてまいりたいと考えております。   国会情勢は大変厳しいものがありますけれども,委員,幹事の皆様方には,今後とも様々な形での御支援,御協力を賜りますよう引き続きよろしくお願い申し上げます。   これまでの熱心な御審議と要綱案の取りまとめに向けた御尽力とに重ねてお礼を申し上げまして,私の挨拶とさせていただきます。   どうもありがとうございました。 ○高田部会長 どうもありがとうございます。   続きまして,私からも一言御挨拶申し上げたく存じます。   答申の経緯及びその意義につきましては,今,民事局長の御挨拶にあったとおりでございますので,繰り返させてはいただきませんが,18回,1年半という非常に短い期間に,極めて精力的に密度の濃い御検討を頂き,本日は要綱案の取りまとめに至ることができました。ひとえに委員,幹事,関係官の皆様のおかげと存じております。   個人的なことを申し上げることになりますが,私自身初めての部会長という重責を仰せつかり,さらに,諮問事項が専門的な研究を特に深めていたわけでもない領域でもあって,図らずも誠につたない進行をすることに相成りました。そこでの数々の不手際にもかかわらず,事務局の皆様には,周到な準備をしていただき,それを踏まえて委員,幹事の皆様には,毎回,予定時間を超える長時間にわたる御熱心な御議論を頂き,そして,本日も御発言いただきましたが,竹下関係官からは折に触れて適切な御指導を頂きまして,どうにか部会長の職責を果たすことができたと感じております。   重ねてということになりますけれども,この間の御熱心な審議,さらには,部会の進行につきましての御寛容,お力添えにつきまして,皆様方に改めてお礼を申し上げ,簡単ではございますけれども,私からの御挨拶とさせていただきます。   本当にありがとうございました。   それでは,本部会における審議はこれで終了といたします。   本日まで御熱心な御審議いただきまして,誠にありがとうございました。 -了-