法制審議会 商法(運送・海商関係)部会 第18回会議 議事録 第1 日 時  平成28年1月27日(水) 自 午後1時30分                       至 午後1時48分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  商法(運送・海商関係)等の改正に関する要綱案(案)          第1部 運送法制全般について          第2部 海商法制について          第3部 その他 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山下部会長 それでは,定刻でございますので,法制審議会商法(運送・海商関係)部会の第18回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中,御出席いただきまして,ありがとうございます。   本日は石原委員,岡田幹事,谷口関係官,野村関係官が御欠席とのことです。   では,本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いします。 ○松井(信)幹事 お手元の資料について御確認いただきたいと思います。部会資料20-1「商法(運送・海商関係)等の改正に関する要綱案(案)」と,部会資料20-2「部会資料19-1からの変更点等の説明」,この二つを事前送付しております。なお,部会資料20-1につきましては,本年1月13日に行われた旅客運送分科会において,その内容について御了承いただいたことを申し添えます。 ○山下部会長 それでは,本日の審議に入りたいと思います。   本日は,部会資料20-1につきまして御審議いただいた上,この部会における最終的な審議結果としての要綱案の御決定をお願いしたいと考えております。   基本的には,途中休憩を入れることなく最後まで御審議いただきたいと思いますが,長時間にわたりそうな場合には適宜休憩を入れたいと思います。   では,審議に入りたいと思います。   まず,部会資料20-1の「第1部 運送法制全般について」を御審議いただきたいと思います。部会資料19-1からの変更点等については,部会資料20-2に記載されておりますので,事務当局からの冒頭の説明は省略させていただき,直ちに審議に入りたいと思います。御自由に御発言をお願いいたします。   これまでの御審議を十分に反映して要綱案(案)ができていると思いますけれども,何か御意見等ございませんか。   よろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきます。   次に,「第2部 海商法制について」及び「第3部 その他」について御審議いただきたいと思います。   部会資料19-1からの変更点については,先ほどと同様に,部会資料20-2に記載されておりますので,事務当局からの冒頭の説明は省略させていただき,直ちに審議に入りたいと思います。御自由に御発言をお願いいたします。 ○石井委員 共同海損と海難救助については,規律について明確化されておられるので,この御提案で結構だと思います。   また,海上保険についてですが,分損計算について定めた現行831条の方が,その対象となる損害についての趣旨が明確であるとは考えますが,法制上の要請があること,また,提案の文言に変わっても可分な部分の一部全損については,分損計算の対象外であるとの実質的な意義と解釈は現行法どおりとの補足説明がなされており,これであれば実務への影響が認められないということなので,保険者としても了承したいと思います。   ただ,法令外国語訳データベースにおいては,他の条文で一部滅失をpartial lossと訳されていますが,この文言は,英法の海上保険の観点からいくと,損傷のほか可分な部分の全部滅失を含む概念である分損を意味しています。   今回の海上保険法改正が海外の保険者からも注目を集めている中,対外的に誤解を招くおそれもあるとの意見もあり,訳文については御配慮いただきたいと思います。 ○山下部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   もし御意見がないということでございますと,多少早いのですけれども,ここで本日の会議のまとめをさせていただきたいと思います。   本日の会議で,部会資料20-1の要綱案(案)に関しまして御審議を頂きましたが,このような内容で要綱案の取りまとめを行うことについて,特段の御異論がなかったものと思います。   そういたしますと,この部会における審議結果としての商法(運送・海商関係)等の改正に関する要綱案につきましては,部会資料20-1の内容で取りまとめることにしたいと思いますが,いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。御異論がないということでございましたら,商法(運送・海商関係)部会として,全会一致をもって部会資料20-1の内容で要綱案を決定したということにさせていただきます。どうもありがとうございました。   この要綱案につきましては,今後,法制審議会総会に報告することになりますが,それまでの間に誤字等の修正がある場合には,恐縮でございますが,部会長である私と事務当局に御一任いただきたいと思います。よろしいでしょうか。   御異論がないようでございますので,そのようにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。   これで要綱案を御了承いただいたということですが,本日が最後の会議ということもありますので,最後のセレモニーに入る前に,少し委員,幹事の皆様から審議全般について,何かコメントがございましたら,あるいは御感想がございましたら,御自由に御発言いただければと思いますが,いかがでしょうか。   運送事業に携わっておられる方や荷主側の実務に携わっておられる方,あるいは法曹の方,研究者の方,いろいろなお立場で,ある部分については非常に厳しい意見の対立がある中で審議を重ねてまいりまして,今日,この要綱案に至っているわけでございますが,最後でもございますので,いかがでしょうか。 ○水口幹事 3ページのところで,6番の荷受人の権利というのがございます。この中で(1)で「荷受人は,運送品が到達地に到着し,又は運送品の全部が滅失したときは,運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する」とあります。この結果については異存がないわけなのですが,国内輸送と国際輸送の相互にいいところをとって,それぞれもし問題が発生したら荷送人と荷受人の間で話し合って決めてくださいねという趣旨だと思うのです。   ですけれども,ここは確認の意味で申し上げるのですが,インコタームズの諸条件に関して,しばしば我々のところでもこういった事例が発生していまして,海外に荷送人がいて国内に荷受人がいたとすると,海外の荷送人が何もしてくれないといってぼやいているケースがあります。   こういったケースの場合,同一の権利を取得すると言っていて,そういう趣旨は分かるのですけれども,荷送人に連絡すると,それは荷受人の方で何とかしなさいよと,場合によっては,保険証券も送ってあるのだから何とかしなさいというようなことをしばしば言われて,荷受人は困り果てていると,そして,最終的に荷受人の方で保険に基づいて求償を行うことになります。そのような中で,荷送人の権利が移転するとまでは言う必要はないと思いますが,荷送人と同一の権利を取得するということが,しばしば御紹介したような問題が生じて,銀行の方で何とかそういうのを解決させようということで動くこともあるのですが,同一の権利を取得するというと,ちょっと問題が発生することがあるかなとは思います。 ○松井(信)幹事 御指摘の点については,今回,損害賠償を請求するに当たっての選択肢を増やすという意味で,協力しない荷送人がいる場合にも荷受人の方が請求できるという形にしたわけでございます。この分野の改正は制定以来100年ぶりということで,全く改正がないままここまで来てしまいました。今日要綱案を御決定いただきましたが,総会における要綱の御決定を経て,その後に法律となった場合には,その後の実務の動向などについても様々御意見をいただきながら,随時必要な見直しを考えていかなければいけないと思います。100年間これが残るということにならないように,我々も見ていきたいと思いますし,皆様にも様々な御協力をお願いしたいと思う次第でございます。 ○山下部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   ありがとうございます。   それでは,今後の予定につきまして,事務当局から説明してもらいます。 ○松井(信)幹事 本日は要綱案を取りまとめいただきまして,誠にありがとうございました。   本日の会議で御決定いただいた要綱案を報告する法制審議会の総会は,2月12日に開催される予定です。総会では,山下部会長から要綱案の御報告をしていただき,御審議いただく予定です。総会における御審議の結果,要綱の決定がされますと,直ちに法務大臣に答申される運びとなります。   なお,この部会で御決定いただきました要綱案や,総会で決定される要綱につきましては,いずれも必要な点検作業などを行った後,速やかに法務省ウェブサイトで公表したいと考えております。   以前御案内いたしましたこの部会の予備日である2月10日については開催しないということになりますので,御承知おきください。 ○山下部会長 ありがとうございました。   以上をもちまして,この部会の議事を全て終えることができたわけでございます。   そこで,最後に,事務当局を代表して,民事局長の小川委員に御挨拶をお願いしたいと思います。 ○小川委員 民事局長の小川でございます。当部会での審議の終了に当たりまして,一言御挨拶を申し上げたいと思います。   今回は,我が国の国民生活の基盤をなす運送・海商法制に関するルールを,先ほども話がありましたように100年ぶりに見直すということで,この部会での御検討を開始していただきました。   当部会におきましては,平成26年4月の第1回会議から本日の第18回会議に至るまで約2年間,毎回長時間にわたり熱心な御議論を頂きまして,本日要綱案の取りまとめを頂きましたことに対しまして,事務当局を代表いたしまして,厚く御礼申し上げる次第でございます。   当部会には,荷主,運送事業者を始めとして,様々な立場を代表する方々に御参加を頂いております。   そして特に,危険物に関する通知義務の論点など,意見の隔たりが大きい箇所も幾つかございましたが,最終的に要綱案の取りまとめに至ることができましたのは,ひとえに,山下部会長を始めとする当部会の委員,幹事の皆様の多大な御尽力があったからこそと深く感謝いたしております。   今後は,先ほど紹介がございましたとおり,2月12日に法制審議会の総会が予定されております。総会において要綱の決定がされますと法務大臣に答申がされますが,これを受けて,法務省として所要の法案をできるだけ早く国会に提出し,早期の法案の成立を目指したいと考えております。   もっとも,これは皆様も御承知のとおりかと思いますが,いわゆる債権法の見直しに関する民法改正法案が現在国会において継続審議中でありますほか,昨年の12月には再婚禁止期間を定める民法の規定が憲法に違反するという最高裁大法廷判決が出まして,これを踏まえた改正を行う必要があるなど,喫緊とも言うべき立法課題が山積しておる状態でございます。   このような中で,法案の提出,成立に至るまでには,なお多くの困難もあろうかと存じますが,法務省といたしましても,法案の提出,成立に向けて精一杯努めてまいりたいと考えておりますので,皆様方には今後とも様々な形で御支援を頂きたいと思っております。是非よろしくお願いいたします。   最後に,山下部会長におかれましては,卓越した御見識と周到な心配りによって常に議事の進行を的確に進めていただきました。お陰さまをもちまして,要綱案の取りまとめをしていただいたところでございます。改めて厚く御礼申し上げたいと思います。   以上をもちまして,私の挨拶とさせていただきます。皆様,本当にありがとうございました。 ○山下部会長 ありがとうございました。   それでは,私からも,最後に一言御挨拶を申し上げたいと思います。   今日をもちまして要綱案の取りまとめができまして,明治以来のこの分野の基本法が現代化される,その案が出来上がったわけでございます。様々な論点について,中には厳しい意見の対立もあったところですが,委員,幹事,関係官の皆様方のお知恵を集約することによってこういう案ができ,私としても大変うれしく思っております。   運送・海商という,日本の全ての産業,あるいは全ての個々人の生活というものに不可欠な取引についての民事の基本ルールが現代化されるということは,大変重要な意味を持つものではないかと思います。今後は,速やかに国会で審議されて成立することを私からも期待しております。   この場をもちまして,この審議に御参加いただきました委員,幹事,関係官の皆様方に,部会長として心より御礼を申し上げる次第であります。どうもありがとうございました。   それでは,以上をもちまして,法制審議会商法(運送・海商関係)部会の審議を終えることとさせていただきます。   長い間本当にありがとうございました。 -了-