法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第1回会議 議事録 第1 日 時  平成29年 3月16日(木) 自 午後 3時15分                        至 午後 5時45分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 委員等自己紹介         2 部会長の互選及び指名         3 議事録の取扱い等について         4 審議 第4 議 事 (次のとおり) 議       事 ○羽柴幹事 予定の時刻になりましたので,ただ今から法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の第1回会議を開催いたします。 ○林委員 法務省刑事局長の林でございます。   本日は御多忙中のところ,当部会の御審議にお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。   部会長が選任されるまでの間,暫定的に私が進行を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。   まず,今回お集まりの委員・幹事の方々におかれましては,初対面の方も少なくないかと存じます。そこで,簡単に御所属,お名前等を伺えればと存じます。   まず初めに,本日は高橋宏志法制審議会会長に御出席いただいておりますので,御紹介申し上げます。   それでは,恐縮でございますけれども,青木委員から,着席順に自己紹介をお願いいたします。 ○青木委員 第二東京弁護士会に所属しております弁護士の青木と申します。よろしくお願いいたします。 ○井上委員 早稲田大学の法科大学院で刑事訴訟法を担当しております井上と申します。よろしくお願いいたします。 ○今井委員 法政大学法科大学院で刑法を担当しております今井と申します。どうかよろしくお願いいたします。 ○大沢委員 読売新聞で編集局次長をしております大沢と申します。よろしくお願いします。 ○太田委員 慶應義塾大学で刑事政策・被害者学を専攻しております太田でございます。よろしくお願いいたします。 ○小木曽委員 中央大学法科大学院の小木曽と申します。刑事訴訟法が専門です。 ○奥村委員 同志社大学の法科大学院で刑法を担当しております奥村です。よろしくお願いいたします。 ○川出委員 東京大学で刑事訴訟法を担当しております川出でございます。よろしくお願いいたします。 ○佐伯委員 東京大学で刑法を担当しております佐伯でございます。よろしくお願いいたします。 ○池田幹事 神戸大学で刑事訴訟法を担当しております池田と申します。よろしくお願いいたします。 ○大賀幹事 警察庁刑事局刑事企画課長をしております大賀と申します。よろしくお願いいたします。 ○岡本幹事 内閣法制局第二部参事官をしております岡本と申します。よろしくお願いいたします。 ○小西幹事 警察庁生活安全局で少年課長をしております小西と申します。よろしくお願い申し上げます。 ○田鎖幹事 第二東京弁護士会所属の弁護士の田鎖と申します。よろしくお願いいたします。 ○橋爪幹事 東京大学で刑法を担当しております橋爪と申します。どうぞよろしくお願いします。 ○福島幹事 最高裁刑事局第一課長の福島と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山下(幸)幹事 東京弁護士会所属の弁護士の山下です。よろしくお願いします。 ○和波幹事 最高裁家庭局で第一課長をしております和波と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○酒巻委員 京都大学教授の酒巻と申します。刑事訴訟法を担当しております。 ○武委員 少年犯罪で何の落ち度もない大切な子供・家族を殺された家族の会をやっております武といいます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○田中委員 最高検察庁の検事の田中と申します。よろしくお願いいたします。 ○中里委員 東京地方裁判所刑事部で裁判官をしております中里と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○羽間委員 千葉大学教育学部で非行心理学・犯罪心理学を担当しております羽間と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○廣瀬委員 立教大学で刑事訴訟法,少年法を担当しております廣瀬と申します。よろしくお願いいたします。 ○村田委員 最高裁家庭局長をしております村田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山﨑委員 神奈川県弁護士会に所属しております弁護士の山﨑と申します。よろしくお願いいたします。 ○山下(史)委員 警察庁生活安全局長の山下でございます。どうぞよろしくお願いします。 ○今福幹事 法務省保護局総務課長の今福と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○吉田幹事 法務省大臣官房審議官の吉田と申します。よろしくお願いいたします。 ○畝本関係官 法務省で保護局長をしております畝本と申します。よろしくお願いいたします。 ○羽柴幹事 法務省刑事局で刑事法制企画官をしております羽柴と申します。よろしくお願いいたします。 ○田野尻幹事 法務省刑事局刑事法制管理官をしております田野尻と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○富山関係官 法務省矯正局長をしております富山と申します。よろしくお願いいたします。 ○名執幹事 法務省大臣官房審議官の名執と申します。よろしくお願いいたします。 ○久家幹事 法務省矯正局で参事官をしております久家と申します。よろしくお願いいたします。 ○林委員 皆様,どうもありがとうございました。   なお,本日,幹事を務めます法務省大臣官房審議官の加藤は,若干遅れての参加となります。   それでは,次に部会長の選任に移りたいと存じます。   法制審議会令第6条第3項によりまして,部会長は部会に属すべき委員及び臨時委員の互選に基づき,法制審議会会長が指名することとされております。   そこで早速,当部会の部会長を互選することといたしたいと存じます。部会長の選任につきまして,皆様の御意見を伺いたいと存じます。どなたか御発言をお願いいたします。 ○小木曽委員 法制審議会の委員でもいらっしゃいますし,御経歴,御業績から考えて,井上正仁委員が適任であると考えます。 ○林委員 ただ今,小木曽委員から井上正仁委員を部会長に推薦する旨の御提案がございました。この御提案に対しまして,御意見ございますでしょうか。 ○山下(幸)幹事 私も賛成の意見を述べたいと思います。   かつて私自身も参加した公訴時効の廃止に関する刑事法部会におきまして,井上委員が部会長をされたことがありまして,よく存じております。今回,非常に大きなテーマを取り扱い,また,多数の委員・幹事が出席する少年法・刑事法部会におきましては,やはり委員・幹事の皆様の意見を公平に聞いた上で,慎重に,また十分な審議がされることが期待されていると思いますけれども、井上委員は正にその適任であると考えておりますので,賛成いたします。 ○林委員 どうもありがとうございました。   ほかに,この御提案に対して御意見ございませんでしょうか。   それでは,他に御意見もないようでございますので,部会長には井上正仁委員が互選されたということでよろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○林委員 ありがとうございます。   それでは,ただ今のとおり,部会長には井上委員が互選されましたので,高橋法制審議会会長に部会長の御指名をお願いいたします。 ○高橋会長 御説明にありますように,互選に基づきまして会長が指名するということになっております。   それでは,私高橋が,ただ今互選されました井上正仁委員を部会長に指名いたします。   井上委員,よろしくお願いいたします。 (井上委員部会長席に移動) ○井上部会長 一言御挨拶申し上げます。   ただ今,部会長の御指名を受けました井上でございます。   先ほど山下幹事から非常に重い御注文があったところでありますけれども,今回の諮問事項は少年法制及び成人の刑事法制のかなり広範囲に及ぶものであり,かつ,法制面だけではなく運用面,あるいは人,組織,施設,場合によっては資金というところまで,大きな影響を与える,殊の外重要な問題であると承知しております。そのような問題につきまして,生来がさつな私がうまく進行を,特に山下幹事がおっしゃったような適切な役目を果たせるかどうか,甚だ心もとないところでございますけれども,皆さんの御協力を得まして,できるだけ内容の濃い,充実した,しかも,その出口として非常に実りの多い審議にしていければと存じる次第です。どうかよろしくお願い申し上げます。   ここで高橋会長は御退出になります。どうもありがとうございました。 (高橋会長退室)   それでは,まず最初に,諮問事項に関する審議に入る前に,手続的事項3点についてお諮りさせていただきます。   まず,法制審議会令第6条第5項の規定によりまして,部会長に事故があるときにその職務を代行する方をあらかじめ部会長が指名しておくということにされておりますので,これはお諮りするというよりは私が指名させていただくということですけれども,委員の方々の中で奥村委員にお願いしたいと思います。奥村委員,どうぞよろしくお願いします。   次に,関係官の出席について御承認を頂くという件がございます。先ほど,既に自己紹介されたところでございますけれども,法務省矯正局長の富山聡氏及び法務省保護局長の畝本美氏に関係官として当部会に出席していただきたいと考えておりますが,よろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○井上部会長 それでは,お二人,よろしくお願いします。   次に,当部会の議事録の取扱いについてでございますけれども,法制審議会の部会における議事録の作成・公表方法等につきましては,平成23年6月6日の法制審議会第165回会議におきまして,発言者名を記載した議事録を作成して,原則としてこれを公表するということとされるとともに,一定の場合には発言者名等を明らかにしないことができるとされました。この点の詳細につきまして,事務当局から御説明をお願いしたいと思います。 ○羽柴幹事 法制審議会の総会における議事録の取扱い等に関する審議,決定の状況について,御説明いたします。   平成23年4月1日に公文書管理法が施行されたことに伴い,内閣総理大臣決定として「行政文書の管理に関するガイドライン」が定められ,審議会の議事録については,発言者名を記載した議事録を作成する必要があるものとされました。その趣旨からいたしますと,法制審議会総会及び部会のいずれにつきましても,発言者名を記載した議事録を作成すべきものとなります。   その上で,同年6月6日に開催されました法制審議会第165回会議におきまして,議事録の公開方法について改めて審議がなされました結果,その公開方法については次のとおりとすることが決定されました。   すなわち,まず,総会については,発言者名を明らかにした議事録を公開することを原則とする一方,法制審議会の会長において,委員の意見を聞いて,審議事項の内容,部会の検討状況や報告内容のほか,発言者等の権利利益を保護するため当該氏名を公にしないことの必要性,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれの有無等を考慮し,発言者名等を公開するのが相当でないと認められる場合には,これを明らかにしないことができることとされました。   また,部会につきましても,発言者名を明らかにした議事録を公開することを原則としつつ,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに,総会での取扱いに準じて,発言者名等を公表するのが相当でないと認められる場合には,これを明らかにしないことができることとされました。   したがいまして,当部会におきましても,原則として発言者名を明らかにした議事録を作成するものの,部会長におかれて,委員の御意見をお聴きし,ただ今申し上げたような諸要素を考慮して,発言者名等を公表するのが相当でないと認められる場合には,これを明らかにしないこととすることができることとなります。 ○井上部会長 ただ今の御説明に対して,何か御質問がございますでしょうか。   特に御質問はないようですので,ただ今の御説明を踏まえて考えますと,当部会におきます審議の内容を広く国民の皆さんにも知っていただくという観点から,発言者名を明らかにした議事録を公開するということが相当かと思われます。   そこで,部会長といたしましては,原則として発言者名を明らかにした議事録を作成して,法務省のウエブサイト上において公表するという取扱いがよろしいのではないかと考えます。   ただ,先ほどの御説明にもありましたが,審議事項の内容その他の事情を考慮して,発言者の氏名を公表するのが相当でないと考えられるようなことがあった場合には,その都度,皆様にお諮りした上で,部分的に公表しない措置を採ることもあることとしたいと考えますけれども,いかがでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○井上部会長 では,そのように取り扱わせていただきたいと思います。   それでは,法制審議会総会におきまして,当部会で調査審議するように決定のありました諮問第103号につきまして審議を行いたいと思います。   まず,諮問を朗読していただきます。 ○羽柴幹事 諮問を朗読いたします。   諮問第103号。   日本国憲法の改正手続に関する法律における投票権及び公職選挙法における選挙権を有する者の年齢を18歳以上とする立法措置,民法の定める成年年齢に関する検討状況等を踏まえ,少年法の規定について検討が求められていることのほか,近時の犯罪情勢,再犯の防止の重要性等に鑑み,少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすること並びに非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備の在り方並びに関連事項について御意見を賜りたい。 ○井上部会長 次に,事務当局から,ただ今読み上げられました諮問について,その経緯及び趣旨の説明をしていただきます。 ○田野尻幹事 諮問第103号につきまして,諮問に至りました経緯及び諮問の趣旨等について御説明申し上げます。   資料としまして,資料2以下をお配りしております。適宜御参照いただければと存じます。   まず,諮問に至る経緯ですが,近年における年齢に関わる主要な法律の改正等を概観いたしますと,まず,平成19年に成立しました日本国憲法の改正手続に関する法律の本則におきまして,国民投票の投票権を有する者の年齢は18歳以上とされましたが,附則において,「国は,この法律が施行されるまでの間に,年齢満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法,成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされ,この法制上の措置が講ぜられ,年齢満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加すること等ができるまでの間,国民投票の投票権を有する者の年齢は20歳以上とされました。   その後,平成26年に日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律が成立し,平成30年6月以降にある国民投票から,その投票権を有する者の年齢は18歳以上とされ,その附則に,先ほど述べたのと同様の検討条項が設けられたところでございます。   また,平成27年に成立しました公職選挙法等の一部を改正する法律において,公職選挙法の選挙権を有する者の年齢が18歳以上とされました。公職選挙法等の一部を改正する法律の附則においては,「国は,国民投票の投票権を有する者の年齢及び選挙権を有する者の年齢が満18年以上とされたことを踏まえ,選挙の公正その他の観点における年齢満18年以上満20年未満の者と年齢満20年以上の者との均衡等を勘案しつつ,民法,少年法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされております。   すなわち,これらの法令においては,他法における年齢に関する規定の改正等を踏まえて,少年法の「少年」の上限年齢について検討が求められているものと理解できるところでございます。   また,平成21年に,民法が定める成年年齢を18歳に引き下げるのが適当であるとする当審議会の答申がなされており,この答申に基づきまして,民法改正についての具体的な検討が行われているところでもあります。   法務省といたしましては,かねて,少年法における「少年」の上限年齢についての検討は,単に「少年」の範囲を現行法の範囲のまま維持するか,上限年齢を引き下げるかという観点のみから行われるべきものではなく,刑事司法全般において,成長過程にある若年者をいかに取り扱い,改善更生・再犯防止を図るかという大きな問題に関わるものであると考えてまいりました。   このような考え方に基づき,法務省では,平成27年11月から,少年法の適用対象年齢を含む若年者に対する刑事法制の在り方全般について検討を行うため,「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」を開催し,関連する多様な分野の研究者や実務家,一般有識者の方々からヒアリングを行うなどし,この問題に関して検討を行う上で必要となる基礎的知見を幅広く収集してきたところでございます。   そして,昨年12月20日,その成果を取りまとめて公表し,その中では,少年法の「少年」の上限年齢の在り方とともに,犯罪者に対する処遇を一層充実させるための措置等を幅広く掲げたところでございます。これは,勉強会において実施したヒアリングにおいて述べられた御意見なども踏まえまして,少年法における「少年」の上限年齢について検討するに当たっては,併せて,若年者に対してどのような刑事政策的措置を採り得るのか検討することが重要であり,同時に,このような刑事政策的措置は,若年者,あるいはそれに限らず,全ての年齢の者の改善更生・再犯防止に資するものでもあると考えられたことによるものでございます。   そして,この報告書をも踏まえ,更に検討を進めたところ,近時の犯罪情勢,再犯の防止の重要性等に鑑み,少年法における「少年」の上限年齢の在り方とともに,非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための法整備の在り方について,専門家の知見を反映しつつ十分な検討を行う必要があると考えるに至り,本年2月9日,諮問に及んだものでございます。   次に,諮問の趣旨について御説明いたします。   今般の諮問は,少年法の規定について検討が求められていることのほか,近時の犯罪情勢,再犯の防止の重要性等に鑑み,少年法における「少年」の上限年齢を18歳未満とすること,並びに非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備の在り方並びに関連事項について,御審議をお願いするものでございます。   近時の犯罪情勢について申し上げますと,刑法犯認知件数は平成15年以降減少傾向にあるものの,刑法犯検挙人員に占める再犯者の割合は平成9年以降高まっており,平成27年には48%に至りました。刑法犯検挙人員の推移については,後ほど資料に基づき御説明いたしますが,平成27年の初犯者の刑法犯検挙人員が平成16年から半減しているのに対し,この間,再犯者の刑法犯検挙人員は約17%の減少にとどまっているなどの犯罪情勢によれば,再発防止の重要性は一層大きくなっていると考えられるところでございます。   また,少年の犯罪情勢につきましても,検挙人員に占める再犯者の割合が増加傾向にあるほか,振り込め詐欺の検挙人員が増加し,少年による殺人等の凶悪事件が発生するなど,依然として対策が求められる情勢であることに変わりはございません。   そこで,先ほど申し上げました少年法の規定について検討が求められていることのほか,ただ今申し上げました近時の犯罪情勢,再犯の防止の重要性等に鑑み,少年法における「少年」の上限年齢の在り方とともに,非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備の在り方並びにこれらの関連事項につき,幅広く御議論いただきたいと考え,御審議をお願いしているところでございます。   諮問の趣旨につきましては以上のとおりでございます。 ○井上部会長 次に,配布資料につきまして,事務当局から説明していただきます。 ○羽柴幹事 配布資料の御説明をさせていただきます。   資料1から9までの資料につきまして御説明いたします。   資料1は,先ほど朗読いたしました諮問第103号でございます。   次の資料2は,ただ今御説明いたしました今回の諮問に至る経緯について,2枚にまとめたものでございます。   若干資料として付言いたしますと,1枚目の一つ目の○,平成19年に成立した日本国憲法の改正手続に関する法律の附則におきまして,「公職選挙法,民法その他の法令」について検討が求められたところでございます。   そして三つ目の○,平成26年の同法律の一部を改正する法律の附則におきましても同様に,「公職選挙法,民法その他の法令」について検討が求められておりました。   それに対しまして,1枚おめくりいただき,一つ目の○,平成27年の公職選挙法等の一部を改正する法律の附則におきましては,国民投票の投票権を有する者の年齢及び選挙権を有する者の年齢が満18年以上とされたことを踏まえ,「民法,少年法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずる」とされ,少年法について,明確に検討が求められております。   このうちの民法につきましては,1枚お戻りいただきまして,1枚目の二つ目の○にありますとおり,既に平成21年に法制審議会から答申を頂いております。   次の資料3を御覧ください。これは,ただ今申し上げました民法の成年年齢の引下げに関する諮問第84号に対する平成21年10月28日付け法制審議会の答申でございます。   1枚目の下から4行目以下を御覧ください。この答申においては,民法の成年年齢について,18歳に引き下げるのが適当であるとされております。   ただ,その時期については,1枚おめくりいただきまして,上から3行目以下にありますとおり,「民法の定める成年年齢を18歳に引き下げる法整備を行う具体的時期については,関係施策の効果等の若年者を中心とする国民への浸透の程度やそれについての国民の意識を踏まえた,国会の判断に委ねるのが相当である。」とされています。   なお,この答申では,これ以上に,少年法やその他刑事法制との関係について触れられておりません。   次の資料4は,先ほど,諮問に至る経緯の御説明の中で触れました,「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書です。   この中の4ページを御覧ください。「1 少年法適用対象年齢の在り方について」とございますけれども,ここでは,少年法における「少年」の上限年齢について,現行法,すなわち20歳未満を維持すべきであるという考え方と,18歳未満に引き下げるべきであるという考え方のそれぞれの主な理由を整理しております。   まず,(1)の20歳未満を維持すべきであるという考え方の主な理由を御紹介いたします。   4ページの「ア」は,法律の適用年齢は,立法趣旨や目的に照らして各法律ごとに個別具体的に検討するべきであり,少年法における「少年」の上限年齢は,必然的に公職選挙法の選挙権年齢や民法の成年年齢と連動しなければならないものではないというものです。   「イ」は,少年保護事件の手続及び保護処分に付された少年に対する処遇は,少年の再非行の防止と立ち直りを図る上で機能しているというものです。   「ウ」は,少年法における「少年」の上限年齢を引き下げた場合,18歳,19歳の者は刑事処分の対象となるが,刑罰による威嚇で非行を思いとどまらせることがはできない,再非行の防止と立ち直りに必要なことは,まず少年の資質,生育歴,環境上の問題点等を理解し,被虐待体験等がある場合には,その心の傷を受け止め,教育的・福祉的な援助をすることである,18歳,19歳の者が保護処分の対象から外れることになれば,例えば,現行法の下であれば少年院送致となる者が実刑となる場合,少年院送致となる者が自由刑の全部執行猶予,罰金又は起訴猶予となる場合,保護観察となる者が保護観察の付されない執行猶予,罰金又は起訴猶予となるような場合に,再犯の防止に必要な処遇が行われなくなる,また,現行法のもとでは行われている家庭裁判所調査官や少年鑑別所による調査・分析及び改善更生に向けた働き掛けが行われなくなり,ぐ犯による処分も行われなくなる,その結果,再犯の増加が懸念されるというものでございます。   5ページの「エ」は,18歳,19歳の者の社会的・精神的な成熟度は以前よりも低くなっているというものです。   「オ」は,脳の発達が20歳代半ばまで続くという脳科学の知見を見ても,18歳,19歳の者は,未成熟で発達の途上にある可塑性が高い存在であって,罪を犯したことについて成熟した大人と同じように非難し,責任を負わせるべきではなく,また,処遇・教育の効果が特に期待できる存在であるというものです。   「カ」は,少年法は,平成12年以降,いわゆる原則逆送制度の導入,少年に科し得る刑の在り方の見直し等の改正がされ,悪質重大な少年事件についての対応がされてきており,少年法における「少年」の上限年齢を引き下げる必要はないというものです。   6ページの「キ」は,諸外国では18歳を成人とする国が多いが,現行少年法は世界的にも評価されており,また,各国の制度,状況等はそれぞれ異なることから,諸外国に合わせる必要はないというものです。   「ク」は,少年法における「少年」の上限年齢を18歳未満に引き下げた場合,若年者に対する刑事政策的措置を講ずるとしても,行為責任原則や刑事手続的なデュー・プロセスの確保から生ずる限界があるというものです。   次に,(2)は18歳未満に引き下げるべきであるという考え方の主な理由でございます。   こちらを御紹介いたしますと,「ア」は,保護処分は,少年が類型的に未成熟であって判断能力が不十分であることから,国家が後見的に介入するという保護主義,パターナリズムによって正当化されている側面があるとした上で,民法の成年年齢が18歳に引き下げられた場合,その成年者を保護処分の対象とすることは,過剰な介入であるというものです。   「イ」は,一般的な法律において大人として取り扱われることとなる年齢は,一致する方が分かりやすいというものです。   「ウ」は,法律の適用年齢は立法趣旨や目的に照らして各法律ごとに個別具体的に検討するべきであるとしても,各法律の制度の根拠に共通する部分があるのであれば,整合性が図られるべきであるとした上で,少年法の保護処分と民法の未成年者制度とは,いずれも本人が未成熟であって判断能力が不十分であることに鑑み,本人のためにその自由を制約するものであり,民法の成年年齢が18歳に引き下げられた場合,民法上成年者である18歳,19歳の者を少年法上「少年」と扱って国家が後見的に介入することは整合的でないというものです。   「エ」は,犯罪被害者等から,「少年」の上限年齢の引下げは犯罪の抑止につながる,選挙権年齢や民法の成年年齢が変わるのであれば,責任ある行動がとれると国によって認められた18歳,19歳の者が重大な罪を犯した場合に,少年法が適用されて刑罰が減免されるなどということは許されない等の意見が述べられているというものです。   「オ」は,民法の成年年齢が18歳に引き下げられた場合,18歳,19歳の者について国民の寛容を期待することは困難であるというものです。   「カ」は,選挙権及び国民投票の投票権を有する者の年齢は18歳以上に引き下げられており,18歳,19歳の者には相応の判断能力があると認められたものと評価できる上,民法の成年年齢が引き下げられたときは,18歳,19歳の者は,親権に服する必要がなく,単独で法律行為を行う能力があると認められたと評価できるというものです。   「キ」は,脳の発達が20歳代半ばまで続くとしても,脳の発達の程度だけで,罪を犯したことについてどの程度非難し責任を負わせることができるかが決まるものではないというものです。   「ク」は,諸外国では18歳を成人とする国が多いというものです。   「ケ」は,少年法における「少年」の上限年齢の引下げに対する刑事政策的懸念には,若年者に対する刑事政策的措置により対応することができるというものです。   次に,8ページを御覧ください。   この取りまとめ報告書では,少年法における「少年」の上限年齢の在り方とともに,「若年者に対する刑事政策的措置」として,犯罪者に対する処遇を一層充実させるための措置等を広く掲げたところです。これは,勉強会において実施したヒアリングにおいて,少年法における「少年」の年齢を引き下げることに対し刑事政策的懸念が示され,現行法を維持すべきであるとの意見や,「少年」の年齢を引き下げる場合にはこれらの懸念に対応する措置を採るべきであるとの意見等,様々な意見があったことから,少年法における「少年」の上限年齢を引き下げるか否かを検討するに当たっては,このような刑事政策的懸念について,どのような刑事政策的措置を採り得るのか検討することが重要であり,同時に,このような刑事政策的措置は,若年者,あるいはそれに限らず,全ての年齢の者の改善更生・再犯防止に資するものでもあると考えられたことによります。   なお,この報告書に掲げられた刑事政策的措置は,運用によって対応可能なものから法制上の措置を必要とするものまで幅広く記載したものであり,また,理論的な観点等からなお検討を要するものもあります。さらに,ここに記載されていない刑事政策的措置を今後の検討対象から除外することを意図するものでもないとされております。   次に,この「若年者に対する刑事政策的措置」の内容を順番に御説明いたします。   8ページ(1)の「受刑者に対する施設内処遇を充実させる刑事政策的措置」としては,9ページ,「ア」の「若年受刑者に対する処遇の原則の明確化及び若年受刑者を対象とする処遇内容の充実」,「イ」の「若年受刑者に対する処遇調査の充実」,「ウ」の「自由刑の単一化」が記載されています。   このうち,「自由刑の単一化」は,懲役刑と禁錮刑とを一本化した上で,その受刑者に対し,作業を含めた各種の矯正処遇を義務付けることができることとする法制上の措置を採るというものが記載されています。   10ページ,(2)の「施設内処遇と社会内処遇との連携を強化するための刑事政策的措置」としては,「ア」の「施設外の機関等と連携した矯正処遇等の充実」,11ページ,「イ」の「社会内処遇に必要な期間の確保」,「ウ」の「施設内処遇から一貫した社会内処遇の実施」が記載されています。   このうち,「ア」の「施設外の機関等と連携した矯正処遇等の充実」としては,適格者に対する外部通勤作業,外出・外泊等の活用を含め,施設外の機関等と連携した就労支援,修学支援,福祉的支援,釈放前の指導等を充実させることが考えられると記載されています。   11ページ,(3)の「社会内処遇を充実させるための刑事政策的措置」としては,12ページ,「ア」の「保護観察の活用のための刑の全部の執行猶予制度の見直し」,「イ」の「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,次の13ページ,「ウ」の「社会内処遇における新たな措置の導入」,14ページ,「エ」の「その他の社会内処遇及びこれに関連する手段等の活用」,さらに,15ページ,「オ」の「社会復帰を支援するための更生保護の環境整備」が記載されています。   このうち,「保護観察の活用のための刑の全部の執行猶予制度の見直し」は,保護観察に付することが必要かつ適当な事案について,保護観察を活用しやすい状況を整えるため,保護観察付き刑の全部の執行猶予の猶予期間中の再犯であっても,一定の要件の下で,再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができる仕組みを導入することが考えられるというものです。   また,「社会内処遇における新たな措置の導入」としては,保護観察を始めとする社会内処遇を現行より多様化することが考えられること等が記載されております。   15ページ,(4)の「罰金又は起訴猶予となる者に対する再犯を防止するための刑事政策的措置」としては,16ページ,「ア」の「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」,「イ」の「起訴猶予等に伴う再犯防止措置」,「ウ」の「少年鑑別所や保護観察所等の調査・調整機能の活用」が記載されています。   16ページ,(5)の「若年者に対する新たな処分の導入」としては,18歳以上一定年齢未満の若年者につき,少年院送致に準ずる処分や保護観察に準ずる処分を行うことについて記載されています。この「若年者に対する新たな処分」は,刑事処分においては,要保護性に応じて処分が決定されるわけではないため,特に,犯した罪が比較的軽微である者について必要な処遇が行われないことがある等の理由により,ただ今紹介した(1)から(4)までの各措置では,18歳,19歳の者を含む若年者の保護として不十分であるとする立場から,導入が適当であるとの考え方もあり得るとされたところです。もっとも,処分の正当化根拠をどのように考えるか等の理論的に検討すべき課題や,いかなる基準により処分を決するものとするか等の制度設計上の課題もあると記載されております。   17ページ,(6)では,若年者に対する刑事政策的措置の対象である「若年者」の範囲について記載されていますが,ここでは,刑事政策的措置ごとに各措置の目的,内容等に応じて定めることが考えられるとし,例えば,「若年者に対する施設内処遇を充実させる刑事政策的措置」の対象者については,現在の行刑実務等を踏まえ,26歳未満の者を「若年者」とすることが一案として考えられると記載されています。   (7)では,「手続の在り方」について記載されています。刑事政策的措置の検討に当たっては,どのような内容の処分あるいは処遇を行うのかということと同様に,どのような手続で行うこととするのかについても十分な検討が必要であると考えられるものの,この報告書においては,刑事政策的措置ごとにそれにふさわしい手続の在り方について,更に検討を要すると記載されています。   報告書の本文についての説明は以上でございます。   次に,添付資料の御説明をいたします。   添付資料1は,勉強会の構成員名簿,添付資料2は,ヒアリングの実施日,対象者及び各意見の要旨を記載した資料でございます。   添付資料3は,平成26年に家庭裁判所の少年審判において,終局時14歳から19歳までの少年が,どのような非行で,どのような終局処分を受けたのかを,年齢別にまとめた統計です。   添付資料4は,平成26年に終局時14歳から25歳までの者が,どのような罪名で,どのような刑事処分を受けたのかを,年齢別にまとめた統計です。   添付資料5は,保護処分に付された原則逆送事件及び少年院送致又は公判請求をされた18歳,19歳の年長少年に係る事件の概況に関する資料です。具体的には,審判書及び判決書を検討することにより,事案の概要を調査したものです。   1ページの第3では,平成26年に家庭裁判所において終局処理された,いわゆる原則逆送事件のうち,逆送されなかった7件の概要が記載されています。罪名について御紹介しますと,殺人が1件,承諾殺人が1件,傷害致死が5件となっています。   3ページの第4では,処分時年齢が18歳又は19歳の少年が少年院送致された事件の概要について,調査の結果が記載されています。具体的には,3ページ一番下から始まります窃盗事件の概要では,手口,被害額,犯行時間帯の別,少年院送致歴の有無,非行事実が窃盗のみであり,かつ,窃盗の被害金額が合計1万円未満である事案8件の概要が記載されております。   続いて,7ページの第5では,公判請求時の年齢が18歳,19歳の年長少年に係る公判請求事件の概要が記載されております。   次に,添付資料6は,少年院出院者及び刑事施設出所者の予後調査の結果に関する資料です。   「2 対象者」の欄に記載のとおり,平成22年1月1日から同年6月30日までに少年院を仮退院又は退院した者のうち,入院時の年齢が18歳又は19歳であったもの735名及び平成21年1月1日から平成22年12月31日までに刑事施設を出所した受刑者のうち,入所時の年齢が20歳又は21歳であったもの684名を対象に調査を行い,出院又は出所の日から2年以内又は5年以内に有罪の裁判の確定があった者を再犯があったとして,再犯率を調査いたしました。   少年院出院者又は刑事施設出所者の再犯状況については,再入率,すなわち,ある年の刑事施設出所者あるいは少年院出院者のうち,出所あるいは出院後の一定期間内に新たな罪を犯して,刑事施設に入所又は少年院に入院した者の割合が用いられることがございますが,この再入率では,再犯には及んだけれども,執行猶予になるなどして,刑事施設にも少年院にも入所・入院しなかった者が含まれません。そこで,今回,追跡期間中に有罪の裁判の確定があった者を「再犯があった」と計上する形で,新たに調査を行ったものでございます。   1枚おめくりいただきまして2ページですが,青い折れ線グラフで表されている少年院出院者の再犯率は,出院後2年以内が20.4%,5年以内が40.0%でした。また,赤い折れ線グラフで表されている刑事施設出所者の再犯率は,2年以内が26.9%,5年以内は44.0%でした。3ページ以降では,窃盗,傷害,強盗の罪名別に再犯率が記載されています。   次の添付資料7は,保護観察対象者の現状調査及び保護観察処分少年の予後調査の結果に関する資料です。   1ページの第1では,平成27年に全国の保護観察所において保護観察を開始した保護観察処分少年及び少年院仮退院者の人数,特徴等を整理しています。   また,2ページの第2は,平成18年に保護観察を開始した保護観察処分少年1万9,475人から300人を無作為抽出し,保護観察開始後,平成28年7月末までの刑事処分及び保護処分の有無を調査し,再処分率を算出しています。その結果,保護観察開始後の再処分は300人中108人に認められ,その割合は36.0%でした。審判時の年齢別に見ると,審判時18歳以上の少年の再処分率は26.5%,18歳未満の少年は40.6%でした。   資料4の取りまとめ報告書の御説明は以上でございます。   次に,資料5は,現行少年法における年齢における取扱いの差異をまとめた資料です。   少年法は20歳未満の者を「少年」としており,「保護処分」欄のとおり,処分時に20歳未満の者が保護処分の対象とされており,家庭裁判所における調査・審判を経て保護処分等の処分が行われます。もっとも,行為時14歳以上の者は刑事責任能力が認められており,刑事処分の対象とすることも可能です。   「刑事処分」欄のとおり,家庭裁判所は,調査の結果,刑事処分を相当と認めるときは事件を検察官に送致します。いわゆる逆送でございます。また,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件,例えば殺人事件や傷害致死事件であって,行為時に16歳以上の少年に係るものについては,家庭裁判所は,原則として逆送することとされております。原則逆送制度でございます。逆送された事件は,刑事処分の対象となりますが,少年法は,少年に対する刑事処分について,成人に対する刑事処分とは異なる規定を設けております。「刑事処分」欄にあるとおり,処分時20歳以上の成人に有期刑を言い渡す場合には,その上限は20年,併合罪等の場合は30年とされているのに対し,処分時20歳未満の少年について有期刑をもって処断すべきときは,刑の長期と短期を定めた不定期刑を言い渡すこととされており,その長期の上限は15年,短期の上限は10年とされております。   また,「死刑・無期刑の緩和」欄のとおり,行為時18歳未満の者に対しては死刑を科することはできず,行為時18歳未満の者に対して無期刑をもって処断すべきときであっても有期刑を科することができるとされております。   次の資料6は,諸外国における制度概要をまとめた一覧表です。A3判で3枚ございます。   我が国の刑事司法制度について御検討いただく前提として,主要国の刑事司法制度等について比較した資料を作成したものでございます。各国の制度の全容を表し尽くせているものではないという点は御容赦いただきたいと思いますが,そのような趣旨で作成をしたものでございます。なお,アメリカ合衆国については,州ごとに刑事司法制度が異なっておりますことから,ニューヨーク州とカリフォルニア州の2州を取り上げております。   主な点を御説明いたします。   まず,この表の1枚目,1段目には「私法上の成年年齢」,3段目には「刑事手続において少年として扱われなくなる年齢」を記載しております。   次に,この表の1枚目の下から2段目には,各国の「自由刑の種類」が記載されております。日本と同様に,自由刑が懲役と禁錮とで区別されているのは韓国のみとなっております。なお,フランスには刑法の条文上,重罪について懲役と禁錮があり,軽罪には拘禁刑がありますけれども,これは慣例上そのような訳語が当てられているのみで,実際にはいずれも作業の強制を伴わない自由刑のようでございますので,便宜上,この表には拘禁刑と記載させていただきました。   次に,一番下の段は「受刑者の義務」についてでございます。御覧のとおり,自由刑が拘禁刑という名称の国であっても,フランス以外は,刑法・行刑法によって作業等が義務付けられているようです。   2枚目を御覧ください。   1段目の「刑の執行猶予」の欄には,各国の刑の全部の執行猶予制度の概要を記載しております。刑の執行猶予制度のないニューヨーク州を除き,各国とも刑の執行猶予制度の概要自体に大きな違いはないようです。   また,2段目の「再度の執行猶予の可否」の欄に記載しましたとおり,カリフォルニア州,イギリス,ドイツでは,執行猶予中の再犯による再度の執行猶予を禁止する規定は存在しないようです。   次に,3枚目を御覧ください。   1段目には,「宣告猶予制度又はこれに類似する制度」を記載しております。まず,ニューヨーク州の「訴追却下を考慮するための延期」,カリフォルニア州の「判決の宣告猶予」という制度は,いずれも講学上の判決の宣告猶予に相当する制度のようです。その他の各国の制度については,その名称は様々ですが,いずれも講学上の刑の宣告猶予に相当する制度のようです。   最後に,一番下の段には,各国の「起訴猶予に伴う再犯防止措置」について記載しております。ここに掲げたものは,いずれも制定法に根拠が明示されている代表的な措置に限っておりまして,運用によってのみ行われているものは対象としておりません。ここに記載された制度は,被疑者が自身に課された一定の条件を充足した場合などに訴追を回避することを可能とする制度であることが分かると思います。   諸外国の刑事司法制度については,詳細は現在調査中でございますので,追って調査結果を提供させていただきたいと考えております。   次に,資料7は,参考のために,少年法について,平成12年から平成26年までの改正経緯をまとめたものでございます。この間に少年法は4度にわたって改正されております。   資料8は統計資料1です。   1枚おめくりいただきまして,目次がございます。統計資料1は,この目次に記載されている16点の統計資料からなっております。   1-1は,近時の犯罪情勢に関するもので,刑法犯検挙人員中の再犯者人員と再犯者率の推移を表したグラフです。先ほど,諮問の趣旨で御説明いたしましたとおり,赤い折れ線グラフで表されている刑法犯検挙人員中の再犯者率は平成9年以降高まっており,平成27年は48.0%となっています。青い棒グラフで表されている初犯者の検挙人員は,平成16年に25万30人に増加した後,減少に転じ,その後,一貫して減少傾向にあり,平成27年には12万4,411人となっています。この間の減少率は約50%です。赤い棒グラフで表されている再犯者の検挙人員は,平成16年に13万8,997人であったところ,平成27年は11万4,944人となっており,この間の減少率は約17.3%にとどまっています。   下の1-2は,刑法犯少年の検挙人員中の再犯者人員・再犯者率の推移を表したグラフです。この再犯者率は平成10年以降高まっており,平成27年は36.4%となっています。初犯者の検挙人員は,平成15年に10万4,023人に増加した後,減少に転じ,その後,一貫して減少傾向にあり,平成27年は2万4,766人となっています。この間の減少率は約76.2%です。再犯者の検挙人員は,平成15年に4万381人であったところ,平成27年は1万4,155人となっており,この間の減少率は約65%となっています。   なお,年齢が異なる成人と少年とでは条件が異なり,同一に比較できませんので,この1-1と1-2の数値を比較するという趣旨ではございません。   1枚おめくりください。1-3は,平成27年における一般保護事件の終局総人員を,年少少年,中間少年,年長少年ごとに,処分別に色分けして表したものです。左の棒グラフは14歳,15歳の年少少年,真ん中の棒グラフは16歳,17歳の中間少年,右の棒グラフは18歳,19歳の年長少年について,それぞれ検察官送致,少年院送致,保護観察,不処分,審判不開始の処分別に人数を表しており,年齢区分ごとの処分状況が分かります。なお,年少少年,中間少年,年長少年のいずれにおいても,不処分と審判不開始の合計が全体の60%前後に達しています。   1-4は,平成11年から平成27年までの各年における一般保護事件の終局総人員を処分別に色分けし,その推移を表したグラフです。一般保護事件の終局総人員は,平成14年に8万3,676人であったのが,平成15年以降おおむね減少を続け,平成27年は3万2,741人となっています。1枚おめくりください。   先ほどのものが終局処分別に色分けしていたのに対しまして,次の1-5は,各年における一般保護事件の終局総人員を年長少年,中間少年,年少少年等の年齢区分別に色分けし,その推移を表したグラフです。緑色の棒グラフが年長少年,赤色は中間少年,青色は年少少年を表しています。   次の1-6は,1-4のうち,「検察官送致」部分を抽出し,これを年齢区分別に色分けし,その推移を表したものです。   次のページの1-7は,同様に「少年院送致」とされた人員を,1-8は,同様に「保護観察」とされた人員を,年齢区分別に色分けして推移を表したものです。   次の1-9,それから,その先にございます1-10は,先ほど御説明いたしました資料4の勉強会取りまとめ報告書の添付資料3及び4,すなわち,家庭裁判所の少年審判において終局時14歳から19歳までの少年が,どのような非行で,どのような終局決定を受けたのかを年齢別にまとめた統計と,14歳から25歳までの者が,どのような罪名で,どのような刑事処分を受けたのかを年齢別にまとめた統計の平成27年版でございます。   次の1-11は,各年における出所受刑者の人員と,そのうち一定期間内に再び刑事施設に入所した再入者の人数及び出所受刑者に占める再入者の割合の推移を表したグラフです。   次の1-12は,各年における少年院出院者の人数と,そのうち一定期間内に少年院に再入院し,又は刑事施設に入所した再入者の人数及び出院者に占める再入者の割合の推移を表したグラフです。   次の1-13は,略式命令請求事件を除く全被告人の罪名別・量刑別の終局人員に関する資料です。略式命令請求事件以外の事件において,どのような罪名で,どのような刑事処分を受けたのかをまとめた統計資料となります。   1枚おめくりいただき有期禁錮の欄を御覧いただきますと,この資料では,有期禁錮となった被告人の罪名が,「刑法犯その他」あるいは一番下の「特別法犯その他」となっており,具体的な罪名が明らかになりません。   そこで,次の1-14を御覧ください。1-14は,平成25年ないし平成27年において禁錮刑の言渡しを受けた者の罪名別科刑分布状況を明らかにするものです。一番上の総数の欄のとおり,平成25年ないし平成27年においては,毎年3,100名前後の者が禁錮刑の言渡しを受けており,その多くは刑の執行が猶予されています。また,罪名別に見ますと,上から3段目から順に,業務上失火,重過失失火,業務上過失傷害,同致死,重過失傷害,同致死,過失運転致傷,同致死と,過失犯が並んでおりまして,特に過失運転致傷と同致死の合計が全体の約98%を占めています。   次の1-15は,略式命令請求事件の既済人員についての資料です。略式命令は,公開の裁判を開くことなく,書面審理によって一定額以下の罰金等を科することができる略式手続に基づいて発せられる命令ですが,先ほどの1-13は略式命令請求事件を除いた表となっておりましたので,検察官が簡易裁判所に対し略式命令を請求した人員を,罪名別,年齢区分別に明らかにした1-15を配布したところでございます。平成27年における略式命令請求は,全体で27万8,529件でしたが,表の一番下の2列のとおり,そのうち自動車による過失致死傷等が4万8,174件,道路交通法等違反が18万3,481件となっており,その合計で全体の約83%を占めております。また,年齢別に見ますと,少年について略式命令請求がなされたのは16歳,17歳の46件と18歳,19歳の2,080件ですが,そのうち18歳,19歳の者の自動車による過失致死傷等が43件,道路交通法等違反が2,025件となっています。   次の1-16は,検察における被疑事件の既済人員を既済事由別に明らかにしたものです。平成27年における既済人員総数39万828人のうち,公判請求が7万9,162人,略式命令請求が4万6,874人,起訴猶予が11万3,130人などとなっております。   統計資料1は以上でございます。   資料9は参照条文です。   最後に,席上にお配りしております資料について御説明をいたします。   右上に【席上配布資料】と記載してあり,題名が「第178回法制審議会における諮問第103号に関する御発言の概要」という2枚紙を御覧ください。こちらは,去る2月9日に開催されました法制審議会総会におきまして,諮問第103号について御審議いただきました際の委員の皆様の御発言をまとめたものでございます。   本来であれば,議事録の抜粋を資料として皆様にお配りさせていただくべきところではございますけれども,まだ議事録が出来上がっておりませんので,事務当局の責任においてまとめさせていただきました。各委員の御発言の詳細につきましては,後ほど公開されます議事録を御確認いただければと存じます。   この部会での御審議に当たりましては,このような総会での委員の皆様の御意見も踏まえて御議論を進めていただければと思っております。   配布資料の御説明は以上でございます。 (加藤幹事着席) ○井上部会長 事務当局からの説明は以上のとおりです。諮問事項に関する審議の進め方につきましては後ほど皆様にもお諮りして決めたいと思いますけれども,この段階で,ただ今の事務当局からの説明に関しまして質問等がございましたら,どなたからでも御発言をお願いします。 ○山﨑委員 諮問の中に「近時の犯罪情勢,再犯の防止の重要性等に鑑み」とございますけれども,先ほど御説明いただいた内容のほかに,この「等」というところに何かお考えになっているようなことがおありかどうかということを御説明いただければと思っております。 ○羽柴幹事 諮問事項の「近時の犯罪情勢」は,先ほど申し上げましたことでございます。それと並べまして「再犯の防止の重要性」を盛り込んだものでございますけれども,「等」は,「その他諸情勢,諸事情」であり,特定の事項を想定しつつ具体的に明示しなかったものがあるという趣旨ではございません。 ○山下(幸)幹事 冒頭,井上部会長からもありましたが,今回,非常に大きな諮問がされているわけですね。それで,もともとは,先ほどの諮問の経緯の中で,若年者の刑事法制の在り方についての勉強会が行われたということがあったわけですけれども,今回の,もちろん少年の年齢のところはその中にありますけれども,非行少年を含む犯罪者に対する処遇という形で,少年又は若年者ということではなく,全ての,ある意味で高齢者も含んだ,非常に幅広い,全ての受刑者に関する処遇の見直しということが提案されているんですけれども,どうしてこのような大きな諮問をこの時期にすることになったのか。もともと若年者の刑事法制ということで議論していたのが,全ての受刑者に広がって,非常に大きな諮問になり,かつ,実体法,すなわち刑法の改正を含む非常に大きな今回の諮問になっているその理由とか,この時期にこのことを議論するというその必然性とか必要性というか,そういうことについて御説明いただければと思います。 ○羽柴幹事 御説明いたします。   先ほど御説明をいたしましたような経緯でこの諮問に至っているわけでございますけれども,勉強会のヒアリングにおきましても,少年法における「少年」の上限年齢に関して,刑事政策的懸念を示す意見ですとか,それに対応する刑事政策的措置を採るべきであるという御意見等,様々な意見が述べられたところでございまして,そのため「少年」の上限年齢を引き下げるか否かを検討するに当たっては,併せて,若年者に対してどのような措置を採り得るのかを検討することが重要であると考えられたわけでございますけれども,同時に,このような刑事政策的措置は,若年者,あるいはそれに限らず,全ての年齢の者の改善更生・再犯防止にも資するものであると考えられましたことから,若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会の取りまとめ報告書におきましても,少年法における「少年」の上限年齢の在り方とともに,犯罪者に対する処遇を一層充実させるための措置等を幅広く掲げたというものでございます。   この報告書も踏まえて,更に検討を進めまして,先ほど申し上げました近時の犯罪情勢や再犯の防止の重要性等に鑑みますと,若年者に対する処遇を一層充実させる刑事法の整備が,若年者に限らない,非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるものでもあると改めて考えられまして,そのような場合には対象者を若年者に限定せずに御審議いただくのが適当であると考えられましたことから,諮問におきまして,先ほど申し上げたような表現となったものでございます。 ○山下(幸)幹事 今の御説明はよく分かるんですけれども,今回,処遇法では既にいろいろと,例えば特別改善指導の義務化とかされているわけですけれども,今回,これが実体法,すなわち刑法の改正まで必要であるというような,それをこの時点で,これを議論することの必然性というか必要性というか,それについてはどういう御検討をされた上でそのような御判断をされたのかをお聞きしたいと思います。 ○羽柴幹事 取りまとめ報告書では,運用上可能なものから法制上の措置が必要なものまで,まず,考えられる措置というものを幅広く掲げたところでございます。この時点で刑法の改正が必要であるという判断をしたという,そういうものではございませんで,考えられる措置というものを広く掲げた上で,実際にどのような措置を採ることが適当であるのかということにつきまして,当部会において御議論いただきたいと考えているところでございます。 ○井上部会長 最終的にどこに収束していくのかということは今の段階では分からないわけで,親審議会で私も質問したところですけれども,少年と成人の処遇というものが本当にクリアに分けることができるかというと,濃淡はあるかもしれないが連続しているところもあるので,まずは幅広く捉えて議論をした末,落ち着くところに落ち着けばいいと,そういうことではないかと受け止めました。   御質問は,ほかにございますでしょうか。中身についての御意見は,また後にお伺いすることにして,この段階でほかに御質問はございませんか。むろん,この後の中身についての御議論の中で,御自分の御意見に関連して御質問があれば,出していただいて結構ですが。   それでは,取りあえず御質問につきましてはここで一区切りとさせていただいて,この辺でちょっと休憩を入れさせていただきたいと思います。     では,午後4時50分に再開させていただきたいと思います。 (休     憩) ○井上部会長 時刻ですので,会議を再開させていただきます。   これから諮問事項の審議に入りたいと思いますけれども,先ほどの御説明にもありましたように,今回の諮問事項は,検討すべき範囲が広範囲にわたっておりまして,想定される論点も非常に多い。また,委員・幹事それぞれ,様々なお考えがあると思われます。   そこで,本日は第1回ですので,まずは概括的,総括的なことで結構ですので,諮問事項の全体について御意見をいただくこととしたいと思います。また,想定される論点及び審議の進め方などについても御意見を頂き,意見交換を行うのが有益ではないかと考えますけれども,いかがでしょうか。いわゆるフリーディスカッションということです。             (「異議なし」の声あり) ○井上部会長 それでは,御異議がないようですので,諮問事項の全体について御意見を伺うこととし,併せて,想定される論点及び審議の進め方についても御意見があれば御発言頂き,意見交換をさせていただくことにしたいと思います。   なお,大変重要な事項であり,しかも,それぞれ様々なお考え,御意見がおありになることでしょうから,発言を希望される方,皆様から御発言頂きたいと思いますので,一回一回の御発言はなるべく簡潔にお願いできればと思います。ほかの方の御意見も伺って,更にまた御意見を頂くという形で進めることができればと思います。   それでは,御発言のある方は挙手をお願いしたいと思います。 ○青木委員 進め方の全体像ではなくて,要望ですけれども,この諮問について,犯罪者に対する処遇を一層充実させるための法整備の在り方,関連事項についてという諮問になっておりますけれども,それを検討するに当たっては,犯罪者に対する処遇というのは現在どうなっているのかという実態をできるだけリアルに把握しておく必要があると思うのですね。そのようにリアルに把握した上で,現在の処遇のどのようなところがよくて,それをより良くしていくというために,先ほど運用でできるのかどうかという話がありましたけれども,運用でできるのかどうか,法改正が必要なのかどうか。あるいは,もしその処遇に問題があるとすれば,どこに問題があって,その問題を解決するにはどうすればよいのか。それも運用でできるのか,あるいは法改正が必要なのかと,そういった議論をしていった方がいいと思いますので,是非そういう実態がなるべく分かる形のことをやっていただきたいというふうに思います。   先ほど,若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会の御報告がありまして,そこでもヒアリングが行われているということは承知しておりますけれども,そもそもそれで十分かという問題もございますし,特に成人に関する犯罪者に対する処遇という点では,例えば,刑務所で実際に処遇に当たっておられる方などのヒアリングも全くなされていないわけですね。そういう意味で,そういう方のヒアリング,あるいは視察,あるいは,今回いろいろおまとめいただいていますけれども,さらに,その実態も含めて,こちらの方でもいろいろ,こういうことについて知りたいということを出していきたいと思っておりますので,事務当局において,その現状について何らかのまとめをしていただいて,報告していただくというようなことを含めて,もし全て期日内で行うことが難しければ期日外ということも含めて,是非そういう実態が分かるようなことをやっていただきたいというふうに思います。   例えばこういうことっていうのもいろいろ考えてきたのですが,長くなるとまずいので,この辺でやめておきます。よろしくお願いいたします。 ○佐伯委員 関連しまして。青木委員から,処遇の実態についてヒアリング等をしてはどうかという御提案がございまして,特に成人の刑事施設について御言及になりましたが,少年院や少年刑務所で,どのような体制で,どのような処遇が行われているのか,保護観察につきましても,保護観察に付された少年等がどのような働き掛けを受けているのかというようなことにつきましても,ヒアリングや施設の視察などを行うことが有益であると思います。もちろん勉強会で既にヒアリング等がなされておりますので,なるべく重複しないように行うのが適当かと思います。   さらに,家庭裁判所におきまして,どのような調査,教育的措置あるいは審判が行われているのかということにつきましても,可能であればヒアリングを行い,また,施設の視察を行うということも御検討いただければと思います。 ○井上部会長 今の点は,基本的には御要望として承っておきたいと思うのですが,事務当局の方で何かコメントがございますか。 ○加藤幹事 審議の進め方につきましては,もとより部会において決定されるべき事項ではございますが,ただ今の青木,佐伯両委員の御意見を踏まえまして,事務当局としてのヒアリング及び視察について若干の提案をさせていただきます。   ヒアリングにつきましては,先ほど御指摘もありましたように,勉強会でも相当程度行っておりますので,まず,その成果を活用いただくことが効率的な審議に資するのではないかと考えております。加えまして,本部会におかれましても,まずは家庭裁判所の少年保護事件の取扱いでありますとか,少年院,少年鑑別所,少年刑務所,あるいは刑務所等の施設内処遇の実情,更には,少年及び若年の成人に対する保護観察の実情,あるいは,それらの連携といったことに関しまして,実務に携わっている関係者からのヒアリングを行っていただき,さらに,これらに関連する施設等の視察を行われるのが適当ではないかと思料しております。   具体的な実施の順番,視察先等の詳細につきましては,追って各委員と御相談をさせていただきたく存じますが,次回からヒアリングを実施されるということでありましたら,準備の都合等もございまして,次回は少年院及び少年鑑別所の実情に関するヒアリングを行っていただくのが適当ではないかと考えております。 ○井上部会長 今日は御要望を承ったということで,更に事務当局でも検討していただこうと思います。今日のところ,そういうことでよろしいでしょうか。 ○山下(幸)幹事 家庭裁判所のヒアリングという話があったのですが,是非とも家庭裁判所調査官に関して,家庭裁判所調査官がどのような具体的な役割を果たしているのかということも,是非ともヒアリングをしていただければと思いまして,だから,家庭裁判所調査官そのものですね。現在,家庭裁判所調査官をしている方,そういう方も是非ヒアリングの対象にしていただければと思います。   それからあと,実際,先ほどの刑務所うんぬんという話もありましたが,実際に,例えばいわゆる年長少年で保護処分になった,少年院送致になったとか,保護観察になったとかという,その経験を有する人,実際になった方の,今現在社会復帰している方ということですけれども,できればそういう方の声もヒアリングをしたらどうかと思います。 ○井上部会長 それも御意見として承っておきたいと思います。 ○加藤幹事 御意見,御要望として承りたいと存じますが,当然,所属先の関係機関との調整もございますので,また御相談させていただきたいと存じます。 ○井上部会長 相手のあることですので,その点でフィージブルかどうかということも含めて,御検討いただければと思います。 ○廣瀬委員 まず,進め方ですけれども,今回は非常に大きなテーマで,委員等の人数も多いですから,少年年齢の関係と,若年者処遇の関係と,ある程度分けて議論した方がいいのではないかと思います。できればもう少し小さい委員数で審議することも含めて,今後御検討いただければという気もいたします。   それから,少年法をずっと研究している者として申し上げます。先ほどの御説明の外国法制の話,間違いではないけれども,一部しか出てきていないので,これでは全体像が比較検討として不正確になるおそれ,違う印象を与えてしまうおそれもあるという気がします。引き続き調査中ということですから,いずれきちんとしたものが出てくるのだと思いますけれども。一つは,外国の場合,成人と少年で手続の差異はそれほど大きくなく,処分・処遇の違いが非常に大きいのです。そこで,処分・処遇の違いについて,実質的な少年年齢というか,若年者の特別扱いというか,その辺の実態を出していただいて比較検討していかないと,有用な比較・検討にならないと思います。是非,これから追加・補充されるということなので,その点を出していただければ,より中身のある議論になってくるのではないかと思います。   次に,日本の少年法は,制度としてしっかりしていますが,同時に,それが外国と比べると非常に特徴的なのです。手続・処分ともに,少年と成人とで180度違うような制度になっているわけです。実は,こういう国はそう多くはないので,その影響の変化・断絶の大きさを何とかしていかなければいけないと思います。制度である以上,どこかで区切っていかなければいけないわけですけれども,人間の成長・変化を考えると,制度的にも中間的・段階的な変化の方がより望ましいことは間違いないわけです。諸外国で,この資料にも少し出ていますけれども,中間層みたいなものを設けているのも,そういう面があるわけです。   もう一つは,犯罪の重さ・軽さと手続・処分との関係です。資料にはそこまで詳しく書いてありませんけれども,例えば,ドイツやフランスなどでは,ごく軽い罪,一般的な犯罪と重い罪では,手続も処分も相当違う区分が設けられており,少年も成人もそうなっているわけです。そういう制度だと,年齢の区切りを変えてもそれほど大きな影響は出ないのですが,日本の場合には,そういう枠組みではなく,犯罪の軽重による扱いの違いは全て裁判官や検察官の運用に任せられているわけです。実際には,それなりにうまく運用してきていると思いますけれども,年齢の区切りを一律に変えると,このような犯罪の軽重による差異・区分のなさが裏目に出る,非常に問題が出てくるという懸念があります。この点も,日本法の特徴をきちんと捉えて考えていかないといけないだろうと思います。この改正論議の発端も重い罪でしたし,殺人などの事件が問題になって議論が起きることは当然の話です。少年法制において,被害者の納得,国民の理解,社会の寛容から許容されるかという観点は非常に大事だと思っていますが,それが問題になるのは重い罪の場合がほとんどです。資料にも出ていますが,実際に犯罪少年として扱われている者たちの大半は,それほど重い罪ではないわけです。少年犯罪の中には,謝罪・弁償,償いのための活動などを尽くせば,被害者も一般社会も納得してくれるものが相当数あり,むしろその方が多いのが実態です。重い罪とそれ以外の犯罪では違う対応の仕方を考える余地が十分あるのではないかと思います。現に諸外国ではそういうことで犯罪の軽重に応じて手続・処分が区分されているわけです。ですから,今回の問題を考えるに当たっても,そういう視点も是非持ってもらいたいと思います。   もう一つは,家庭裁判所・家庭裁判所調査官の措置などです。このまとめでも,調査・審判の中での教育的働き掛けのことに触れられています。今の制度上,調査段階では調査しかできないので,調査のための働き掛けという位置付けで理解するほかなく,家庭裁判所でもそう言っているわけです。しかし,比較法的に見ると,家庭裁判所,家庭裁判所調査官の保護的措置,教育的措置や少年鑑別所における鑑別などは,例えばドイツでいえば,教育処分,懲戒処分に相当します。終局的な処分が出る前の段階でも,実質,保護処分に当たるような措置を,日本の場合にはいろいろやっているわけです。この点も問題意識としてしっかり持っていかないといけないと思います。終局処分の代替策をどう考えるかという観点だけで検討すると,処遇上重要なところが欠落してしまうということを言いたいのです。   もう一つは,調査機構です。日本の場合には家庭裁判所に専属していますが,諸外国では調査担当者・機構は独立しています。先ほど述べたとおり,犯罪の軽重などに応じて,いろいろな機関が処分の決定に関わっても,調査機構が独立していれば,手続・処分機関に対応することができます。このような制度なら年齢の区分や処分が変わっても,実質的な調査活動には大きな影響は受けず科学調査が行われ得るわけです。ところが,日本の場合には,もし年齢の区分を変えて家庭裁判所を外すと,科学調査を全くしないということになってしまうわけです。この落差も日本法ならではの大きな問題なのです。   以上のような枠組み的な日本法の特徴をきちんと踏まえ,そこに焦点を当てた議論・検討をしていかないといけないだろうと思います。先ほどのまとめはよくできていますが,日本法の特徴・問題の重要性を考えると十分ではない点もあると思います。これまで述べたところに焦点を当てて実態に合った,つまり,18,19歳の年長少年のうちの8割,9割の対象者をどう扱ったら一番うまくやっていけるのかという観点からの検討を考える必要があると思います。先ほど言った重い罪は1,2%,多く見ても数%ぐらいのものです。そこに焦点を当てて議論したのでは,全体として,うまくいかないのではないかと非常に危惧するわけです。   結論をどう持っていくか,それは皆さんにお知恵を出していただいてということでいいと思いますが,その議論の前提となる認識・問題意識の共有化を是非図れればと思い,実務及び研究をしてきている者として,最初に申し述べさせていただきました。 ○井上部会長 最後におっしゃった点については,皆さんいろいろな知見をお持ちですので,積極的に御意見あるいは御注意等を頂いて,それを反映させて,よりよいものにしていっていただければと思います。   初めの2点はロジスティックスに関わることですが,問題の整理の仕方とか取り上げるべき事項,その規模などによっては,そういうことを考える必要も出てくるかもしれませんけれども,まだそこまでいっていませんので,まずは全体でいろいろな御意見を伺うということを何回かやって,ようやく,こういう点を中心的に検討する必要がある,検討しようということが見えてくる。それに応じて検討の仕方も考えていくべきで,これは過去の幾つかの部会などでも出た話なのですが,分科会という形で細分化して議論することばかりになってしまうと,それぞれの委員や幹事としては,自分が関わった部分しか分からないことになり,よくないので,委員・幹事方々全員が全ての事項について実質的に理解して頂いた上で,最終的に意見をまとめるということでなければならないだろう。その過程で,どういう進め方をするかは,これから何回かやや幅広い議論していただき,それを踏まえて論点がある程度整理された上で,その次にどうするか,どのような形で議論を進めるかということを,皆さんと御相談しながら考えていくということにさせていただくのがよいのではないかと思います。   この点,事務当局としてはどのように考えていますか。 ○加藤幹事 ただ今の点について,事務当局からも申し上げます。   もとより部会の進行に関しましては,部会でお決めいただく事項でございますが,ただ今部会長からもお話がありましたとおり,比較的抽象的な形で諮問をいたしておりますこともあり,まずは,部会全体におかれまして問題認識あるいは現状認識などについて共有をされた上で,必要があれば,例えば法制審議会の仕組みとして部会の下に分科会という仕組みを設けることができるとされていますので,必要に応じて,そういった審議の進め方といった点も御検討いただければと存じます。したがいまして,当面は,この部会において大きな御議論を頂くのが適当ではないかと考えております。   もう1点,外国法制に関する資料についての御指摘がございました。不十分ではないかと,かつ,つまみ食いではないかという御指摘は耳の痛いところでございます。今後,調査を進めまして,より有益な資料を収集・整理いたしたいと考えておりますが,その過程におきましては廣瀬委員にも御指導いただきまして,どういったものが必要であるかといった点についても御相談をさせていただきたいと存じます。 ○井上部会長 外国法制について,全体を捉えてパーフェクトな紹介をするというのは,不可能なことだろうと思いますが,委員・幹事の中には,廣瀬委員始め,深く研究されておられる方々がおられますので,そういう方々とも御相談しながら,できるだけ実態を的確に捉え,バランスのとれた資料にしていただければと思います。皆様にも是非御協力をお願いしたいと思います。 ○山﨑委員 私自身は,少年事件の付添人という活動をずっとやってきていますけれども,今,廣瀬委員がおっしゃったように,実際の事件の中では,非常に手続の過程における効果ということが大きいのではないかと感じています。少年事件の場合は,家庭裁判所の調査官が少年に働き掛けをして,最終的には不処分等であっても,かなり働き掛けをして効果を上げているということを実感しておりますので,廣瀬委員がおっしゃったように,処分という形だけではなくて,現行の手続がどのような効果を上げて,それが再犯防止とどのように結び付いているのかという観点は,大変大事ではないかと思っておりますので,先ほど,ヒアリング・視察の対象として挙がっていましたように,家庭裁判所,家庭裁判所調査官,あるいは少年鑑別所といったところもしっかり見ていけるとよいと考えております。   それともう一つは,諮問の中で再犯の防止の重要性ということが言われておりますけれども,当然のことながら,再犯の中身というのはそれぞれ違うかと思います。その罪種ですとか,あるいは再犯を犯す者の年齢,性別も含めて,そういったところはやはり細かく個別的に見ながら,その原因と対策を考えていく必要があるのだろうと思っておりますので,そういったところも踏まえた審議を進めていただければと考えております。   いずれにしましても,少年法の年齢問題については,今日の席上配布していただいた資料にもございますけれども,総会の方でも,年齢引下げありきというような形ではなくて,幅広く丁寧で透明性を持った審議をと言われておりますけれども,私もそのような審議が今後進められていくことを期待,希望したいと考えております。 ○今井委員 今の2名の委員の方の御発言に触発されて,一言だけ申し上げます。   今回,諮問の中では,少年と言われる者の概念につき,その年齢をもう少し下げるべきかという話がきっかけとして出てきているわけでありますけれども,仮にそうなった,あるいは,その方向を検討する際には,現在の刑罰を適用する対象が広がってくるわけですが,今お二人の委員からも御指摘がありましたように,私も,その手続といいますか,ダイバージョン,ディバージョンというのでしょうか,ああいう効果を既存の刑罰の中にどういうふうに盛り込んでいくのかということが実体法的には重要な問題だと思っております。   ディバージョンといいますか,あるいはサスペンションというのかもしれませんけれども,そういったものの組み合わせによって,対象者によっては,実際の刑を科すことと同等の効果が図れるということであれば,それは経済的でもありますし,スティグマの無駄な適用を避けるということでも有益であると思いますので,刑法,実体法の観点からいいますと,先ほど事務当局から御説明がありました自由刑の一本化,統一化というところの,そこに流れている発想といたしまして,これは手続法の効果かもしれませんが,ディバージョンあるいはサスペンションということを意識したいなと思っております。 ○山下(幸)幹事 少年の年齢の問題については,例えば少年法は61条というのがあって,現在は18歳,19歳という年長少年でも当然名前が,実名が報道されないわけですけれども,これが18歳,これからは18歳以上はもう名前,成人ということで実名が報道されると。そのような形で,これまでの少年に対するプライバシーとか,そういう非公開の原則というんですかね,これが変わるわけですね。その点が余りこの報告書とかにも見当たらない。そういうことに関する配慮はないと思うんですけれども,そういう点も,副次的といいますか,自動的にといいますか,61条の適用範囲が変わるということですよね。   それから,現在,審判非公開ということで,18歳,19歳の少年については,原則は,逆送されない限り,非公開の審判廷でやっているわけですけれども,これが全部今後は,基本的には,もちろん略式はともかく,公判で刑事裁判やると。私も弁護人の経験でいうと,今,逆送事件では,14歳以上は公開の法廷でやる,あり得るんですけれども,やはり少年に対する影響を考えますと,非公開の審判廷でやれる場合と,公開の法廷で大人と同じように刑事裁判をされる場合では,少年本人が自由に物をしゃべれるかといいますかね,そういう点について,かなり違いがあります。相当やはり。しかも,そこにはいろいろな人が傍聴,被害者も含め,多くの人が傍聴している中で自由に物が言えるかという。今まで18歳,19歳,少年とされていたからということもありますけれども,そういうことでですね。それで考えると,今回いきなり18歳以上は全て,原則は要するに公開の普通の刑事裁判という形になりますので,やはりこれまでの非公開の原則というものが,18歳より上についてはがらっと変わるという,そういうことも,単なる処遇だけではなくて,やはり手続ですね。その受ける手続も大きくがらっと変わるという。それによって,これまで少年とされて非公開の原則ということで守られていたものが,守られなくなるということも考慮する必要があるのではないかと思います。 ○武委員 私は,先ほども言いましたように,少年犯罪で,本当に何の落ち度もない子供,家族を殺された遺族の集まりをしていて,私自身は息子の事件からもう20年になります。そして,会を作って19年,少年犯罪のことだけを見つめ続けて20年間過ごしたようなものなのです。   今おっしゃったように,すごく分かるのです。少年だから,プライバシーがある,保護しないといけない,健全な育成をしなければいけない。それから,よく言われました,立ち直る可能性があると。だから被害者は我慢をしなさいっていう法律だったのです。私たちは,事件に遭った直後,この少年法の壁がすごく厚くて,とっても苦しい思いをしたのです。それで声を上げ続けてきました。   私は思います。改正されたら18歳,19歳で名前が出るようになる。でも,今でも犯罪によっては20歳以上でも出ないことがあります。出ないこともあるかもしれないけれども,多くは名前が出るようになると思うのです。でも,私は,それはすごく大きな問題だとは思えないのです。   なぜかというと,今は情報社会なので,いろいろなところで名前は出ているのです。そして,その少年は,罪を犯した少年なのです。だから,そこまで手厚く守らなければいけないというのが,私たちには分からないのです。名前が出たとしても,ずっと覚えている周りの人って,本当に近くに住んでいる人なら別ですが,一般の人は,名前が出てニュースになっても,日々ニュースは変わりますので,覚えている人は少ないと思うのです。それを,ずっと名前が出たことを理由に,立ち直る可能性が奪われるとか,そういう大きな理由にするというのは,私は違うような気がするのです。   確かに,社会に出たときに,社会の受入れ方というのは問題はあると思うし,考えないといけないと思います。   それと,18歳,19歳の少年が,未熟なゆえに軽微な犯罪を犯した場合,やはりそれは少し考えないといけないとは思います。   そのことを考えるときに思うのですが,20歳を過ぎて未熟な人ってたくさんいると思うのです。私は,ニュースを見ていて,もう大人なのに「まだこんな事件を起こしている」と思うことがよくあります。   今までそういう成人の事件はどのような処理をされてきたのか,どのようなフォローをしてきたのか,それがうまくいっていたのか,私には分からないです。そういうことをよく考えて,もっと充実させるということもできると思うのです。だから,名前が出るとか,目に見えるようなものだけで議論してはいけないなといつも感じております。   それから,18歳,19歳で重大犯罪に重きを置いたら余り良くないのではないかという御意見もありましたが,確かに偏るかもしれないと思うのですが,でも,大きな問題が隠れているのも事実なのです。私たちの会の人に限って言えば,18歳,19歳の少年を見たときに前歴があります。何らかの非行を繰り返し,その延長上で18歳,19歳になって死亡事件を起こしているのです。   その少年が,軽微な犯罪を起こしたときに扱いはどうだったのだろうと不信感が募ります。警察に捕まっていないこともありましたし,少年審判になっていても,とても簡単に保護処分で終わっていることもありました。   軽微な犯罪のときに,少年がしっかりと罪と向き合っていたなら死亡事件は起こしていなかったのではないかと思うと,とても悔しく悲しいのです。   だから,大きな犯罪を起こす前に,何が足りなかったのか,もっとできることはなかったのかなどがとても大切な問題だと思うのです。そういうところにも目を向けていただきたいと思います。   それからもう一つ,私たちは,いつも矛盾を感じています。例えば,刑事裁判にならなかった場合,ほとんどの人が民事裁判を起こします。刑事裁判になった場合でも大人の犯罪とは刑罰も違うので,民事裁判を起こす人が圧倒的に多いのです。そうしたときに,よく言われます,「少年は未熟だから,保護処分がいいのだ」と。   今度,民事裁判を起こしたときにはどう言われるかといいますと,「少年はもう自立している」と。大人扱いです。そして,親の責任が認められないことが多いのです。最近でもありました。民事裁判の被告,加害者少年が18歳,19歳でした。その親は非行を知っていました。いろいろ悪いことをしているのを知っていたので,親の責任が問えると思いましたが,その少年の場合も,もう自立していると大人扱いで,親の責任は認められませんでした。私たちは,今まで,そんな扱いに矛盾を感じてきました。そういうこともまた考えていただけたら有り難いなと思います。 ○廣瀬委員 ちょっと補足させていただきます。先ほど8割,9割の一般非行を中心に議論すべきだと言った趣旨は,これまでは重い罪だけをイメージしている気がするので分けて議論すべきという趣旨です。決して重い罪の方を重視してはいけないと言っているわけではないのです。一般犯罪と重い罪はそれぞれ違う制度なり扱い方があるはずなので,そこはきちんと分けて議論をしていかないとよい制度にならないだろうという趣旨ですので,誤解のないように申し添えます。 ○池田幹事 先ほどから御指摘がありましたように,保護処分の適用対象の範囲を見直すということは,保護処分に付されるかどうかということ自体にとどまらず,少年審判手続全体の適用対象となるかどうか,あるいは少年法第61条の適用があるかどうかといった,多岐にわたる効果と結び付いているということに,これまでの御指摘を受けて,改めて,意識を向けなければならないと思いました。   他方で,保護処分の適用がないという結果,これまで与えられてきた保護が与えられなくなるというのは,一面においてはそのとおりなのですけれども,そうなった場合に,それらの年齢層の方々がそのような処遇といいますか,社会においてそういう位置付けを与えられているということが本当に整合的なのかどうかについても,検討すべきだと思います。   本日,事務当局から,関連規定の整備の見直しに関わる説明があったところですけれども,そのように,成人としての権利も付与されてきているという方々について,引き続き保護を与えるということが妥当なのかどうかという観点も踏まえて検討がされるべきだと思います。これは意見として申し上げます。 ○武委員 私たちが,自分たちの加害少年を見ていると,少年法を知っている子どもたちが多いです。今だったらまだ大丈夫って,自分はそんなに大したことにはならないということを言っている少年たちが本当に多いのです。全体の少年から見て,罪を犯す少年というのは,ほんの一部だと思うのです。でも,その子たちはよく知っているのです。   だから,どこかで線引きをしなければいけないのであれば,時代に合った年齢に引き下げて,もうあなたたちは大人と同じようになるんですよということを示すことによって抑止力になるのではないかなと思っているのです。   加えて言いますと,加害少年の周りには予備軍がいるのです。グループがいます。その少年たちは見ています。その予備軍の少年たちが犯罪を起こさないようにするためにも改正が必要なのです。 ○山下(幸)幹事 武さんのお話を聞きまして,武さんのお話はよく分かりますし,実は2000年以降,少年法は,武さんたちの活動も含めて,大きくいろいろ変わってきています。審判の傍聴も認められるようになりました。だから,かなり被害者の関係においては,相当少年法は2000年以降,今日,資料の中にも少年法改正の経緯というのありますけれども,何度も改正されて,武さんの活動などを踏まえて,かなり大きく,特に被害者のことについては,かなり変わってきていると思うのです。   それから,少年法は,もともと死刑については,18歳以上を死刑にすることができるってもともとなっていて,だから,もう18歳以上,現行法でも既に18歳以上で死刑を科すことができるわけですね。そういう意味では,かなり現行法で,特に被害者に対する対策もいろいろ取られてきている現状の中で,果たして18歳で,もう一度少年年齢を18歳まで下げるということが本当に今必要なのか。私は,被害者との関係では,それほどそれを下げる必然性はないというか。つまり,重大な犯罪については,もう対処できるような法整備がされているし,少年法自体が18歳以上は死刑を科すことができるということによって,重大な犯罪の対処についてはかなりされているのです。   そういう意味で,先ほどから廣瀬委員が言われていますけれども,重大ではないものについてまで全て18歳より上を成人と同じように扱って,一切保護処分をなくしてしまうということが,もちろん,保護処分に近いものを入れるという話もありますけれども,そういうことが本当に必要なのかということが今回の議論ではないかと思いますので,その辺が私は今回の論点といいますかね。   ですから,被害者の方に対する配慮は相当,これまで法律は,少年法はされてきているのではないかというふうに感じています。   反論するつもりではありませんが。 ○武委員 確かに18歳以上であれば死刑もありますが,少年事件というのは死刑とまでは言えない,そして,無期とまでは言えないということが多いです。その刑を何年にするのかを決めるときにすごく難しいと思うのです。だから,それをもう大人として同じようにすることで,刑の範囲が広がり,かえって私はやりやすいのではないかなと思うのです。 ○井上部会長 この点は,両方の見方があるところですので,中身に立ち入って議論するところで,他の方々も含めて突っ込んだ議論をしていただくことにして,それに向けての論点出しをしていただいたものと受け止めさせていただければと思います。 ○酒巻委員 私は,先ほど話題に出た,これまでの大きな少年法改正審議のうち,一つは幹事として,あと二つは少年法部会の委員として,これまでの少年法改正に携わり,戦後以来の少年法運用の歴史についても考える機会を得ましたが,これまでの日本の少年法運用を実際に中核で支えておられたのは,やはり家庭裁判所調査官と,それから家庭裁判所である。この努力の賜物であるところが,もちろんいろいろな批判はありますけれども,それはやはり大きいと思います。是非実際に支えてこられた調査官と家裁の運用について,まずは正確な認識を共有するというのが非常に重要なことだと思っております。事務当局からのお話でも,家庭裁判所についてのヒアリングなどが行われるということですので,それをよろしくお願いします。繰り返しになりますけれども,本当によく支えてきてくださった,その人たちのことはやはり常に考えていかなければいけないと思っております。 ○廣瀬委員 抑止力について,武さんがおっしゃっていることは非常によく分かります。重い罪はおっしゃるとおりなのだと思います。しかし,それほど重くない事件では,逆送して成人手続になると罰金で済む,起訴猶予で済む,正式起訴されても執行猶予で済むということも,少年たちはよく知っているのです。非行少年たちは,少年鑑別所へ行く,少年院へ行くことを非常に恐れています。そこで,それほど重くない罪では,これまで家庭裁判所の調査・審判の中で実質的に厳しくやってきたようなところが年齢引下げで緩んでしまうわけです。多少すれているような少年たちにとっては,改正されて大人扱いになって,むしろ楽になった,言葉悪いですが,そういうおそれも現実問題としてあるのです。これは,実務に関わられている方はお分かりだと思いますけれども,審判で「裁判官,早く逆送してください」などと言う者も実際にいるのです。刑事裁判の在り方,あるいは刑事処分の在り方が大幅に変ればまた違ってくるとは思いますが,そうでない限りは,そういう問題も起きてくるのです。抑止力を考えるについては,こういう事情も同時に認識していただけたらと思います。 ○井上部会長 今の御発言があったように,単に区切りを変えるだけでは済まず,これまで意味のあったことや重要な機能を果たしてきた点をどうするかも考えていく必要があるというのはそのとおりで,今回,幅のある諮問がなされているのも,そのことを考えてのことだと思います。その意味で,それでは駄目だよと言うだけではなくて,こうすればいいというアイデアも出していっていただければと思います。 ○田鎖幹事 取りまとめの報告書の中の考えられる施策の中で,作業ですとか矯正処遇の,これは成年の関係ですけれども,義務付け,作業以外の処遇の義務付けということもございました。実際,現在,既に刑事収容施設法の中で義務となっているわけなんですけれども,実際のところは,被収容者に対する効果というものを考えましたときに,実際には,本人がやる気がある場合に,そういった処遇を積極的に働き掛けていくと,そういう実態があるのかなというふうに私は捉えております。   一方で,更生保護の場面でも,特別遵守事項としての様々なプログラムの受講といったものもあるわけですけれども,やはり義務付けといったときに,飽くまで目的があって,やはり効果が出ていかないといけないわけですので,現場において実際にどういうアセスメントをしてですね,ちょっと細かい話になっているんですけれども,実際に義務といったときに,実際の運用がどうなっているのか。例えば作業ですと,確かに怠役になった場合に懲罰というのがルーティンで科せられるという認識はあるんですけれども,実際,その他の矯正処遇の場合に,運用がどうなっているのか。そういった点も是非教えていただきたいなというふうに考えております。 ○富山関係官 矯正局です。   作業については,それを拒否すると懲罰に科されたりは確かにいっぱいあるんですが,改善指導や教科指導について,それを拒んで懲罰を科している例があるのかと言われますと,恐らく極めてまれなのではないかなとは思うんですが,ないわけでもない。その対応が極めて悪質なケースなんかは,やはり懲罰をもって臨んでいるケースはあるようです。   ただ,作業と違って,やはりおっしゃるとおり,やる気がない人に科しても余り効果が出ないということはありますので,その意味では,懲罰をもって間接強制をするというケースは極めてまれであろうというふうには認識しています。   ただ,網羅的に調べておりませんので,これなんかも場合によってはヒアリングの際などに,直接現場を見ていただいて確認していただけたほうがいいかもしれません。 ○井上部会長 更に付け加えて御発言がなければ,そろそろ今日の会議は終了とさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。   次回ですが,次回も今回に引き続き,諮問事項全体についての意見交換をしていただくとともに,想定される論点や審議の進め方について御意見を伺わせていただきたいと思います。   また,先ほど事務当局のほうから触れられましたけれども,ヒアリングですが,これは相手のあることですので,調整が付けばということになると思いますが,少年院及び少年鑑別所の実情に関するヒアリングということを,次回は予定させていただきます。   事務局の方で,次回の会場等について,御案内をお願いします。 ○羽柴幹事 次回につきまして,御案内を申し上げます。   次回,第2回の会議は4月19日水曜日の午前9時15分からでございます。場所は本日と同じ,こちらの法務省大会議室となっております。 ○井上部会長 なお,本日の会議の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものではなかったかと思いますので,発言者名を明らかにした顕名の議事録を公表するということにさせていただきたいと思います。また,配布資料につきましても公表することとしたいと思いますけれども,議事録及び配布資料について,そのような取扱いでよろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○井上部会長 それでは,そうさせていただきます。   本日は長時間になりましたけれども,どうもありがとうございました。   次回以降もよろしくお願いします。 -了-