法制審議会会社法(現代化関係)部会 第23回会議 議事録 第1 日 時  平成16年6月2日(水)  自 午後1時00分                       至 午後6時07分 第2 場 所 法務省第1会議室 第3 議 題 会社法制の現代化に関する要綱案(案)たたき台(4)について    株式会社及び有限会社の一体化に関する諸問題について 第4 議 事 (次のとおり) 議    事 ● 予定した時刻が参りましたので,第23回会社法(現代化関係)部会を開会することにいたします。   本日は御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   それでは,配布資料につきまして事務局から説明をお願いします。 ● 事前にお配りいたしました資料は,部会資料21と22でございます。   それから,本日の審議にかかわるものとして,中小企業庁から資料を提出していただいております。   また,日本公認会計士協会からの意見書もいただいておりますので,席上配布させていただいております。   さらに,日本司法書士会連合会からも意見書をお出しいただいております。本日の議題にかかわるものでございますので,その際にこちらの方からその内容を改めて御説明いたします。   配布資料につきましては,以上でございます。 ● 配布資料につきまして何か御質問ございますでしょうか。--よろしいですか。   それでは,日本公認会計士協会の御意見は後ほどの部会資料22にかかわりますので,そちらの審議の際に御説明をいただくことにいたしまして,ここでは,中小企業庁から出ている資料につきまして○○幹事から説明をお願いしたいと思います。 ● 申し訳ございません,私どものものも実は資料22にかかわるものでございますが,冒頭に御説明せよということでございますので,させていただきます。   封筒の中にパンフレットと資料を入れてございます。簡潔に説明させていただきます。   私ども,決算公告義務について,従来より義務化の必要はないという立場で議論をしてきているわけでございますが,ややもしますと,私どもは会計に関するいろいろな取組みをしている中でこういう議論をしているものですから,全体の文脈を御説明しませんと,ただ会計について非常に否定的な対応をとっているという誤解を招く部分があるのではないかと思ったものでございますから,ちょっと視野を広げて本日御説明させていただくという趣旨でございます。   私どもは,中小企業の会計の問題は何よりも中小企業の経営者自身にとって重要だということが出発点でございますので,その意味では,会計について否定的な対応をとるということはそもそも論としてあり得ないわけでございます。その上で,当面の課題との関係で言いますと,銀行からの資金調達の関係でいわゆる会計の質の向上ということが非常に重要になってきているということがございますし,そういう意味で,中小企業の経営者にとって,自分にとっての意味,それから金融との関係での意味ということを踏まえた上で,それ以外の,債権者でも,あるいは株主でもない方への情報開示ということが課題になってくるという,そういう順序が多分あるのだろうというふうに考えております。   それから,会計に関する取組みで申し上げますと,平成14年,私ども中小企業庁で中小企業の会計に関するレポートを出して以来,日本税理士会連合会,あるいは日本公認会計士協会の方からも,中小企業に着目した形での会計の考え方というものが提示されたり,あるいはチェックリストというようなものの提示をいただいておるわけでございます。そういった普及・啓発活動がかなり進んできておりまして,私どももこの同封いたしましたパンフレットをお配りしておりますけれども,こういったものが,今,40万部ほど,これは税理士,あるいは中小企業診断士といった実際に中小企業に指導される方を通じてこの会計の考え方を広めていくという,かなり実践的な,かつ地道な活動をかなりやっております。最近の私どものアンケートでも,3分の1ぐらいの中小企業の方がこういう活動が行われていることを知っているという感じになってきていますので,まだまだ先は長いと私どもは思っておりますけれども,そういう状況がございます。   それから,金融機関の取組みがこの面では非常に重要でございまして,実は,金融庁とともに,リレーションシップバンキングという中でも,こういった会計制度を高めた企業に対する融資制度,融資プログラムの面での対応ということをお願いしてきております。その結果としまして,大半の地銀,第二地銀,あるいは信金,信組等,かなりの部分の金融機関が,そういう財務諸表の精度が高い中小企業向けの制度を作るという取組みを始めつつございます。   2ページを御覧いただきますと,具体例としても,三井住友銀行とか商工中金,岩手銀行,横浜銀行といった,これは税理士会の方の御協力でやっているようなもの,それから,東京三菱銀行を始め全国で40行近い銀行がやっている取組みですとか,それ以外にも,税理士法人によるいろいろな制度などとも絡めていろいろな取組みがなされているということがあって,こういうものがだんだん進むことで,実は会計の質を上げていくことが中小企業にとって意味がある,大事だというメッセージがますます広まっていく,そういう実態的な環境整備が進んできているわけでございます。   3番目なのですが,したがって,私ども,こういうコンテクストの中で決算公告義務が本当に会計の質の向上にとって必要なのだろうかという点で,従来から申し上げておりますとおり,やはり商法上の決算公告義務は実効性という面で本当に効果があったのだろうかという意識があるわけでございます。   これは,実は,遵法意識が低いとかそういう問題では決してなくて,やはり金融の状況に大きく依存していると。現に,間接金融主体のドイツにおきましても,日本と同じように,義務づけがあるにもかかわらず中小企業がほとんど守っていないという実態もございますし,実際には金融機関に計算書類初め十分な情報が提供されている,それがあるために必ずしも公告とかの必要性を感じないという実態もありますし,それから,親事業者等による値引きの交渉とか,あるいは風評被害とか,そういうマイナスもあるのだという議論は,これはおもしろいことに,日本でもよく言われるのですが,ドイツでも全く同じだというふうに聞いております。   それから,情報開示先進国だというふうによく言われるアメリカも,御案内のとおり,いろいろな経緯の中で非公開会社については決算情報の開示を義務づけていない。これについては, 非公開会社は,そこはむしろ企業自身の選択として,どういう情報を外に出していくのかというのを選ぶのが本来の金融市場の在り方だという考え方があるということでございますので,その意味で,世界的にもこういうところの公告義務がないという法制は決して変な制度ではないというふうに私は考えております。   それから,金融機関,取引先等への提供ということは,さっき申し上げましたけれども,ユーザーであるはずの銀行業界も含めて決算公告義務は不要というふうに主張されていることをどう考えるのかということもございますし,やはり,こういうほとんど経済実態を反映しない義務づけというのが,結果的に,決算処理というのは他人事だなと,何かよく分からない義務がある,それだけのことだなということで,結局自分の問題としてとらえることすらかえって阻害しているのではないかという指摘すらあるわけでございます。   それから,次は,情報開示の強制がかえって不正確な情報の蔓延を助長するというおそれについても,これはやはり指摘をせざるを得ないところがございまして,個々具体的にこういう制度とかいうことはちょっと申し上げにくいところではありますけれども,現実に情報開示の必要性というのがなかなか理解されにくい中で無理に開示をすると,しかも,今の世の中,赤字であるということがいろいろな面で不利になるということがあるものですから,残念ながら,表に出てくればくるほど,非常に怪しげな情報が出てきているということが現実の問題としても起こってきております。   そういう意味では,本来の制度は,これはここでも議論がありましたとおり,例えば,徹底的な会計監査人の義務づけといったようなことを通じて,もう完璧を期して公開するということがあるわけですけれども,これも,今の100万,200万会社があるという状況のもとでは社会コスト的にも過剰だというのが恐らく現状での御判断だろうというふうに思いますので,そういう意味で,この問題というのはより根が深いと。   それから,手法についてインターネット公告が認められた結果として,やることにコストがかかるということは多分本質的な問題ではなくなってきていると思いますので,そういう意味では,より本質的に,なぜこういうことをする必要があるのかというところに議論が戻ってきているのだろうと思います。   最後のページですけれども,そういう中で,私ども,したがって,法的にはやはり間接開示の規定によって株主あるいは債権者に対して義務づけるというのがせいぜいというか,それでもって十分なのではないかということがあるわけでございまして,逆に,それ以上の,それを超えた形での開示をするということについては,それによって有利になる,メリットがあるのだということが関係者に広く理解されていく,かつ,それを支えるような中小企業の会計をチェックする使い勝手のよいサービスがどんどん発展していくとか,あるいは金融機関のさっき申し上げたようなインセンティブがどんどんつくられていく,そして,単に数字だけを見るのではなくて,やはり実際の中小企業の実力をきちっと見極めるという,そういう取引文化ができていく中で,債権者あるいは株主を超えたところの開示もだんだん進んでいくということだろうと思いますし,商法の中でそれを受けるとすれば,一律かつ強制的な法的義務ということよりも,今回の御提案の中にも出てきますけれども,任意の「会計参与」あるいは任意の会計監査,それから監査役の権限に選択肢を設けるといったようなことでいろいろな対応をとれるようにしてあげるというのが,恐らく最も素直に考えたときの商法の対応ではないかなというのが背景にあって,決算公告義務についてこういう御意見を申し上げているということがあるものでございますから,とりあえず考え方の一端を御紹介させていただきます。 ● それでは,これも部会資料22に関係するものでありますので,もし御質問等ありましたら,その際にしていただくということにしたいと思います。   それでは,本日の審議に入らせていただきます。   まず,部会資料21につきまして一括して事務局から説明をお願いしたいと思います。 ● 部会資料21は,前回の部会資料20に掲げていた項目のうち前回の時間内には御審議いただけなかったものを再度掲げさせていただいているものでございますが,前回の資料から若干変更を加えているところもありますので,そのあたりも含めてもう一度御説明をしたいと思います。   まず,第3部の「2 法人無限責任社員」でございますけれども,新たな会社類型に関する検討を行うこととした場合には,その新たな法人類型において法人が業務執行社員となり得るということが検討の方向性としては必須でございます。そのことを前提にいたしますと,合名会社・合資会社におきましても,法人が無限責任社員となり,業務執行社員となり得るということを検討する必要があり,その場合における,いろいろな弊害等の懸念に対しては,例えば2の(2)の本文,更には(注1)のような手当てを講ずることでそのような懸念が相当程度払拭されるのではないかという趣旨でこの提案をさせていただくものでございます。   (注1)につきましては,要するに,業務執行者となる法人がいる場合には,当該法人がこの本文に従って選任する自然人たる職務執行者を,あたかも業務執行者と同様に取り扱うということにさせていただくというものでございます。   また,(注2)は,法人が業務執行社員となるということを許容するかどうかという問題とは直接にはかかわりませんけれども,合資会社の有限責任社員--つまり業務執行を担当しない社員--の業務執行社員に対する監視権について,現行よりもその行使要件の緩和を図る,すなわち,あらかじめ裁判所の許可を要することとはしないという手当てをさせていただくということでよろしいのではないかという提案をさせていただくものでございます。   次に移りまして,第4部の「第7 組織再編関係」でございますけれども,「1 対価柔軟化」につきましては,対価の種類について,いろいろと御意見があったところではありますが格別法律上の制約は設けないということでよろしいかどうか,その方向性についての確認をいただきたいと思います。   それから,御議論いただくべき点は(注2)でございます。株式交換を行う場合において,現在では,対価が主として株式であるということを前提に債権者保護手続は要しないものとされておりますけれども,株式以外の対価を用いた株式交換というものを許容することとした場合,親会社となる会社につきまして債権者保護手続を要しないままにしておいてよいかどうか,意見照会結果でも意見が分かれているところでございますので,改めて御議論いただきたいと思います。現行法が債権者保護手続を不要としている趣旨をどのように理解し,仮に一般的に債権者保護手続を要することとした場合には現行法では要しないこととされている類型の株式交換をどのように取り扱うかというような点が論点になると思いますけれども,それらの点について十分な御議論をちょうだいしたいと思います。   (注3)についてですが,対価の適正性調査のために法定の制度を設けるかどうかという論点については,意見照会結果では反対意見が多数であったということもありまして,組織再編に係る情報開示の中で問題を賄っていけば足りるということとすべきではないかと思われるところでございます。   (注4)は,本日の資料において新たにつけ加えさせていただいた点でございます。   買取請求権が行使された場合の買取価格について,現行法ではこの(注4)のイの価格が保証されているわけです。しかしながら,これは必ずしも対価柔軟化の実現を前提とするものではない議論ですが,組織再編の効果が生ずる段階で当該株式の価値が一定程度高まるということを前提にしても,その高まりの程度について少数の反対株主と多数株主との間に意見の差があるという場合--シナジーの評価に意見の相違がある場合--に,イの価格ではなくて,それよりも高いロの価格を保証するという道を認めるかどうかということでございます。これは,現行法で認められている類型の組織再編における買取請求手続の買取価格の実質についても変更を加えることになりますけれども,このような形で,ある意味では反対株主の保護を手厚くするということとしてよろしいかどうかということについて,御意見をちょうだいしたいと思います。従前の議論では,特に対価の柔軟化をするのであれば,反対株主の株式に対する価値の保証ができるだけ図られるべきであるという御意見が有力であったように記憶しておりますので,このような措置をとったらどうかという趣旨でございます。   「2 簡易組織再編行為」につきましては,(1)の簡易組織再編行為に係る要件について,5%から20%に引き上げることとするという,その数字についての御確認をいただきたいと思います。   (注3)につきましては,従来御議論があったところですけれども,反対株主の異議要件について,特別決議の要件の見直しがされたということを受けて,例えば9分の1に引き下げるべきではないかという御意見がこの部会でも有力であったところでございますが,そうすべきかどうか,更に,例えば,略式組織再編に係る要件との関係で1割という数字がある意味で大きな意味を持ってくるとすれば,ここもそれに合わせて,9分の1ではなく,10分の1という線でそろえるかどうかということが,細かい話ですけれども,選択肢としてはあり得るところでございますので,どの程度に引き下げるべきかという点について,御意見をちょうだいしたいと思います。   なお,2の(1)の(注4)につきましては,意見照会結果でも意見がかなり分かれているところでございますので,再度部会において十分な御議論をちょうだいしたいと思います。   「3 略式組織再編行為」につきましては,まず,要件について,総株主の議決権の9割ということでよいかどうか,その方向性の御確認をいただきたいと思います。   それから,部会ではいろいろと御意見があったところですが,対価の種類によっては手続を区別しないということとしたいと思うところですけれども,その方向性でよいかどうか--意見照会の結果ではこの方向性を支持する意見が多数であったところでございますけれども--それについての御確認をいただきたいと思います。   (注2)については,意見がかなり分かれていたところでございますので,改めて御議論をちょうだいしたいと思います。   (注3)につきましては,前回申し上げましたけれども,①のみ,②のみ,あるいは両方を推す意見,あるいは両方に反対する意見等,意見照会では様々な意見が寄せられたところでございますけれども,理屈としては,導入するならば①と②はセットであろうと思われるところですので,その点の御議論をもいただいた上で,もし調整が困難であれば,今回の作業ではいずれについても導入を見送るという選択肢も十分あり得るのではないかと思われるところでございます。   「4 効力発生」につきましては,(注2)について,効力発生後登記までの間の利害関係人の保護策として,登記までの間は第三者の善意悪意にかかわらず対抗することができないという形での整理をさせていただくということでよろしいかどうか,御確認をいただきたいと思います。   なお,(注3)については,一部実務的な要望はあるところですけれども,新会社を設立する類型の組織再編行為の効力発生時は,会社の設立一般の効力発生時そのものと密接に関連する議論であり,なおかつ設立一般の効力発生時を設立登記時とするということについて今回変更を加えないこととしておりますので,それとの関係上,なかなか見直しは難しいことから, このような結論をとらせていただきたいと思う次第です。   続きまして,第6部の「第1 新たな会社類型」についてですが,試案において,例えばという形で(注)に記載してあった内容を本文に格上げしたものですけれども,若干試案の内容を修正した項目がありますので,それについて明示的な御議論をちょうだいしたいと思います。   1の(2)についてですけれども,社員の氏名・出資の価格については定款の記載事項とはしないという取扱いが実務的には望ましいという意見が比較的有力に寄せられたところでございまして,そのような取扱いの当否についての御議論をいただきたいと思います。   (6)についてですが,試案では必ずしも明示的に掲げられていなかった点ですけれども,業務執行社員と会社との関係について,本文及び(注)のような形で整理をさせていただくということの当否についての御議論をいただきたいと思います。   (7)についてですが,これは代表訴訟そのものではないのですけれども,業務を執行する者に対して会社が訴えを提起するという場合には,通常であれば業務執行権限を有しない社員も含め,いわば代表訴訟と同様に各社員にその権限を与え,これについての定款の定め又は総社員の同意による制限というものは認めないこととして,各社員の監視権,是正権を一定程度強行法的に保障するということとしてはどうかという趣旨でございます。   (7)のような手当てをする場合には,合名会社や合資会社についても同様の取扱いをすべきであるということになるのではないかと思われますが,それが(注1)と(注2)の前段の問題でございます。(注2)の後段ですけれども,合資会社の有限責任社員は業務執行権限あるいは代表権限を有してはならないという規定について,このようなこと自体は,合資会社における定款自治の範囲内で自由に定め得ることとしてよろしいのではないかということから,その規定を削除したらどうかということを提案させていただいているところでございます。   2の(4)につきましては,(注)を御確認いただきたいと思います。業務執行者以外の社員につきましては,現行法で言えば有限会社における社員総会を構成する社員と同じような立場であるとも言えようかと思いますけれども,業務執行者がそれらの者の意見に従って違法な行為をしたというような場合を念頭に,当該社員自体の対第三者責任に係る規定を明示的に設けるかどうかという論点が部会でも指摘されていたところでございます。そのような特別の規定は設けないこととした場合には,恐らく不法行為責任一般の問題になり得るかどうかということだと思いますけれども,特別の規定を設けないものとしてよろしいかどうかという点を御議論いただきたいと思います。設けるという方向性については,非常に強く消極的な意見が寄せられていたところでございました。   (5)につきましては,社員の退社による持分の払戻しについて,①から③までのような整理をさせていただくということでよろしいかどうかということでございます。すなわち,持分の払戻しについて,いわば当該会社の一部清算的な処理をするということでございます。   それから,3のところですけれども,(2)につきましては,合名会社,合資会社あるいはこの新たな会社類型について,その相互間の行き来等の規律の適用関係をこのような形で整理して,できるだけ同一の規定を適用する形での法律上の整理をさせていただくことができないかどうかということをお諮りするものでございます。イからニまで,別に大して難しいことが書いてあるわけではありませんけれども,このような整理でよろしいかどうかということでございます。   ②に米印が二つありますけれども,一つ目は,「合名会社」・「合資会社」という商号の使用と社員の責任関係との間にこのような関連を持たせるということでよいかどうかという点でございます。   米印の二つ目は,新たな会社類型について,どのような名称が望ましいかという点でございます。最終的には法制的な問題ですけれども,実務的な需要を踏まえて,このような名称が望ましいという御意見があればお伺いしたいということでございます。   「(3) 株式会社への組織変更」は,新たな会社類型・合名会社・合資会社,この3つの類型からの株式会社への組織変更に係る論点でございます。(注2)に星印がついていませんが,(注2)と(注3)について御確認いただきたいと思います。   新たな会社類型については,内部の機関設計は社員間の人的つながりを重視してかなり柔軟なものではありますけれども,債権者保護の関係では株式会社との間に相当程度差があるということではないはずでございますので,総社員の一致によることとすれば足り,必ずしも債権者保護手続を要しないという整理ができるのではないかという点が,(注2)でございます。   (注3)は,合名会社と株式会社との合併,合名会社同士の株式会社を新設会社とする合併というような制度を,すべて合名会社等から株式会社への組織変更を前提とし,その組織変更後の株式会社の合併という形での整理をさせていただくということでよろしいかどうか--どちらかというと,そのような整理をした方が法制的にも問題点が少ない制度設計が可能ですので,そのような形での整理をさせていただきたいと思いますけれども--いかがかということでございます。   部会資料21の説明は,以上でございます。 ● それでは,まず,この資料21について御審議をいただきたいと思います。   「第3部 合名会社・合資会社関係」から始まっておりますけれども,この部分は「第6部 その他」の「第1 新たな会社類型」と関連があるということでありますので,本日は,まず,第4部の「第7 組織再編関係」を御審議いただいて,その後,「合名会社・合資会社関係」の部分と「新たな会社類型」の部分とを御審議いただくという順序にいたしたいと思います。   そこで,まず,「第7 組織再編関係」の「1 対価柔軟化」,ここから御審議をいただきたいと思います。新たな問題も加えましていろいろあるのですけれども,どうぞ,どの点でも御意見をいただければと思います。   まず,この本文でありますけれども,対価の柔軟化に関しまして,対価の種類については格別の制約を設けないということにつきましては,いかがでしょうか。御承認いただけますでしょうか。 ● 私はかねてより,この点につきましては慎重意見をずっと言い続けてきておりますので,もう一度その点を申し上げるということだけなのですけれども,心配なのが,一つはやっぱり金銭関係だと思うのですね。それからもう一つ,外国会社の株式等の場合がやっぱり心配なのではないか。この2点についての心配がどうしても残るということだけ申し上げたいと思います。   金銭について言いますと,やはりこれが締め出しにつながるということは言うまでもないわけでして,多数決でもって,今この株式の価値はこれだけだというふうに決められて,それでお金を払って追い出されるということがこれによって可能になるということで果たしてよいのかという心配を引き続き持っています。   これに関連して,たたき台(2)の方の「第3 株式・持分関係」の6の(2)②のところでも,比較的よく似たことが問題になったかと思います。つまり,多数決でもって無償で消却できるのかということについて心配だということをずっと前に申し上げたわけですけれども,これについてはやはり裁判所の許可を得ることが必要なのではないかということで,この間,審議をまとめてきていただいたところであるわけです。これが,無償ではなくて1円と評価するのであれば裁判所の許可が要らないということにもつながらないのか。その点の関係はどう考えたらよいのか。私は,同じ心配があるのではないかと思うものですから,お伺いするのですけれども。 ● 今の○○委員の御意見につきまして,何か,ほかの委員・幹事の方から御意見等ございますでしょうか。 ● まず,たたき台(2)の方の無償消却を認め得る場合の要件や手続等につきましては,従前,御指摘のような形でお諮りしたところでございますけれども,要件の設定が難しく,また,裁判所の許可にかからしめることとした場合,裁判所の判断すべき内容に極めて判断困難な要素が含まれることになるということもありまして,制度設計を組み直した上でまた御議論していただきたいと思っているところでございます。   今考えておりますのは,要件の設定をどうするかは別にして,裁判所の許可にかからしめることなく,一定の多数決での消却を認めることとした上で,その場合の少数者の保護は株式買取請求という形で図ることとするというものでございます。   組織再編の際の買取請求については,その買取請求の価格について不当なことが生じないように,先ほどの(注4)のような手当てをするということとさせていただくのがよろしいのではないかと思われます。   なお,現金と外国会社株式につきましては,極めて強い要望が国内外から寄せられているところでございまして,実現しないという選択肢の採用はなかなか難しいものですから,実現するということを前提に,もし懸念される弊害があるとすれば,いかにその弊害を抑え得るかという方向で御議論いただければ非常に幸いでございます。よろしくお願いいたします。 ● ○○委員がおっしゃった締め出しの問題でありますけれども,これは恐らく,金銭で追い出されましても,公開会社の場合だとまた買えばいいわけですから問題ないので,非公開会社で金銭で追い出されるという場合をどうするかという問題が主たる問題だと思います。   この点につきましては,現行法のままで対処するとすると,そういう締め出しのみを目的として,例えば,ある株主だけを蚊帳の外に置いてほかの人間が代理会社をつくって,そこに吸収合併して,その蚊帳の外に置かれた人には現金を渡すと,そういうのが典型的な例だと思うのですけれども,現行法で言うと,これは恐らく商法247条1項3号の特別利害関係人のところの解釈になってくるのではないかと。そこのところでそういう問題が解決できないと考えるのであれば,何らかの規定が必要なのかもしれません。しかし,解釈論でそういうものは決議取消し等の手段があるのだということであれば,それは解釈論で何とかなるという話なのではないかと。その辺も御審議いただければと思っているところですけれども。 ● 特別利害関係人ということで後の救済をしていくというのは少し迂遠で,やっぱり保護が薄くなるのではないかということを懸念しているというのが私の立場ということになります。   先ほどの,一応非常に要望の強いところであるので,何らかの積極的に取り入れるための要件という形で別に考えられないかということでしたけれども,どうしてもそういう方向で考える必要があるとすれば,私は,やはり,金銭で締め出す結果になるような場合についてはほかの点での要件を厳しくするということではないかというように思います。単なる特別決議ではなくて,もう少し加重された要件で慎重に判断してもらうということが一つの方法だと思います。もちろん,もっと望ましいのは,適正性調査のための何らかの法定の制度を設けるということだろうと思います。あるいは,適正性調査のための法定の制度を使うか,それを使わないのであればもう少し厳しい決議要件等を課したものでいくというオプションを用意するという手もあるかというように思います。   それからもう一つ,外国会社の株式の件なのですけれども,これも外国会社との合併は直接には認められていないわけですね。これをくぐる……。 ● それをどうするかというのはまた今後の問題で……。 ● これからの問題になるかもしれませんが,そこと一緒にあわせて判断していくことになるのかもしれませんけれども,従来は,突然,どういう法制になっているのかよく分からない国の会社の株式に,自分が賛成していないにもかかわらず,多数派の方々が賛成したからという形で強制的に変えられてしまうということの手当てというものは,国際的な合併を認める場合にはやや慎重に考えなくてはならないのかどうかという問題とあわせて考えていくべき問題なのだろうという感じがします。 ● いかがでしょうか,ほかの委員・幹事の方は。   対価の種類によって要件を変えるというのも,これも法技術的にはなかなか難しいかなという気もするのですけれども。   ○○委員が終始問題にしておられるのは,外国会社株式の場合と締め出しの場合だと思うのですが,そういうものについて,いかがでしょうか。多少違った問題かもしれませんが。 ● この問題は難しくてよく分からないのですが,少なくとも金銭については,現行法でも解釈論として認められるという見解も有力であったし,それを前提とすると,今は本文の問題なのでしょうが,先ほども少し言及された(注4)で,とりわけロ,ここで裁判所が結局関与してくることになろうかと思いますし,このときに質問しようと思ったのですが。例えば,1株について50という数字が出たけれども,極端な場合,裁判所が,このロでそれが100になったと,こういう場合が想定されるわけですね。その場合には買取請求をした人だけなのか,ほかの人,つまり黙っていた人は,黙っていたから50でいいのだということになるのかということを,この(注4)で聞こうとは思っていたのですが,それはともかく,そういうクレームをつけた方については,事後的だけれども,現金については,(注4)のロの制度が認められれば,現在よりはずっとよくなるという面もあるのかなという気もいたしました。   そして,その他の財産について,特に外国株式の場合にはなかなか合理的な評価ができないことは確かですので,(注3)あたりの制度がある方がいいのかなという気がいたしますが,これについても,恐らく現在の合併実務でも一応専門家の鑑定をとっておられる,これは取引所のルールか何かでそうなっていると思うのですが,そういう取引所なりしかるべきところの自主規制で賄えるならそれでもいいと思うけれども,それを法定の制度とできないことも,なぜできないのかも含めて,この(注3)との関係があるかなと思いましたけれども,そういう形で少し要件を検討することで,まあこの流れは仕方がないのかと思ったのです。   ただ,あらゆる財産に限定を設けなくてもいいのかということについては,当初から,試案のときから気にはなっていたのですが,じゃあどういう区分けがあるかという具体的対案を出すべきときに対案がないときには黙らざるを得ないのかという,そういう中途半端な状況ですが,そういうふうに思います。 ● ○○委員から御意見がありましたので,(注4)のロに関して,ちょっと私の思いついたことを申しますと,例えば合併を考えまして,合併前の株式の価値が50だったと。ところが,合併するということを前提にするといわゆるシナジーが発生して,それが100になるという例を挙げられたわけですけれども,その場合に,結局は公正な合併比率というのは50なのか100なのかと,そういうことになってくるわけですね。その場合,従来の,株式を合併の対価として合併新株が交付されるという場合ですと,そのシナジーの部分は存続会社株式に反映するはずなので,合併前の存続会社株式50をもらうと,合併後はそれが100になるということで,普通はそれで100もらえたわけです。ところが,今度は対価柔軟化で現金だということで,その場合に,存続会社としては一体50渡せばいいのか,100渡せばいいのかという問題になります。恐らく従来のあれだと,100渡さないとシナジーは全部存続会社の株主が独り占めするということですから,それは100でしょうということになると思うのです,何も規定を改正しませんと。しかし,およそそういう合併決議,合併を前提にすれば100になるはずなのが50しか払わないという,そういうキャッシュアウト・マージャーの決議が通るというのは,それは存続会社側が特別決議を通すだけの株式を持っているという場合だと思います。その場合,現行法だとどうなるかというと,先ほどの247条1項3号でありまして,著しく不当な決議かどうかということになってくるわけですね。この場合に,株式買取請求権の規定が現在のままでありますと,それは50であれば著しく不当じゃないんですよという解釈だって出てきかねない。だから,ここはやはり100だということで,ロの条項を置く必要があるのではないかというのが,私がこの(注4)について考えているところであります。 ● 今の(注4)のところなのですけれども,先ほど○○幹事の方からは,これは,自社株式を対価とする場合であったとしても今の原則を変えるのだというお話だったのですけれども,これを考慮するにいたしましても,今,○○委員が言われたとおり,株式以外のものを対価とする場合の特則というふうなことで検討の対象として挙がるのかという気がするのですけれども,そこはいかがなのでしょうか。シナジーの問題であれば,その株式を渡すのであれば後で享受できるわけだから。 ● ただ,株式の場合,合併すれば100になる株式,先ほどので言うと,合併を前提としなければ50の価値の存続会社株式をもらえば100になるのですけれども,それが,例えば合併条件として対価は株式40だという合併比率の案が出てきたときに,それはけしからんから株式買取請求をしますと言ったときに,その人は50ですというのは,やっぱりちょっとおかしいのではないでしょうかね。 ● そうすると,すべての組織再編行為について,これを原則としようと。   これは,こういたしますと,ロの算定をどういうふうにするのかというのは非常に難しいと思いますし,先ほど○○委員が言われたとおり,これでギャンブルをやってみよう,すべての組織再編行為について反対票を投じていこう,その結果を見て高い値段がついていれば買取請求をしてみようというふうに動いていくのではないか。   だから,将来どうなるか分からない価格について,その時点で反対だ,賛成だということになると,やはり皆反対ということに回るのではないか,組織再編行為をスムーズに実施できなくなるのではないかという危ぐがあるものですから,ロを入れるとした場合には,この「公正な価格」というものについてもっと計算式をはっきりとしていただかないと,組織再編を実施する当事者としては非常に不安定な状態に置かれるという気がするのですけれども,いかがでしょうか。 ● ただ,合併条件については現在でも説明書を書いておられるはずなので,かつ組織再編をやるというのは,そこから何らかのシナジーが発生するからやられるのだろうというふうに私は思っているのですけれども。シナジーはありませんよという合併をやっておられるのかなという気がするのですけれどもね。   まあ,それは人によって,株主は50が100になると言い,存続会社側は,とんでもない,50が51か52になるにすぎませんと言うかもしれませんが,それは見解の相違で,裁判所で決めてもらうしかないということだと思いますが。 ● 先ほど○○委員がおっしゃったところなのですけれども,反対の人のみが(注4)のロのことで救済されるのかと,こういう問題ですね。株式を対価とする場合であればそこのところが明確になりませんので,皆さん,反対した方が買取請求権を行使して幾ら幾らで結局裁判所の方で決まって決着がついたということを聞いても,それほど不満は残らないと思うのですが,金銭であった場合,自分がもらった金額と違う金額を裁判所の方が後で適切だというふうに言ったということになったときの不満たるや,非常に大きなものが出てくるような気がするのですね。しかし,その場で反対しておかないと,それは行使できないのだということになると,それこそ,やっぱりとりあえず反対しておこうということにはならないでしょうか。 ● とりあえず反対することは--まあ,損か得かは分からないんですよね,裁判所次第ですからね。例えば,現金60ということだったと,それで裁判所に行ったら55だったということだってありますから。 ● ロの「組織再編行為の効力が生じた時の株式の公正な価格」というのは,恐らくそのときの時価が反映しているのだろうということになりますと,大株主,かなりの株を持っている者が事前に反対をしておいて,それから市場で買い集め行為に入って--組織再編行為の効力が生じるときというのは事前に分かっているわけですから,そのときの株価をとにかく極限までつり上げて--そこで買取権行使をぽっとすると。裁判所は当然,そのときの時価でしょうから,それを認めるというふうな,これは本当に株価操作にすごくつながってくるような案件ではないかという気もするのですけれども。弊害の方が多いのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。 ● 買取請求の対象になる株式がどこまでか,どの時点までに取得したものかという,この解釈論はあるのですけれどね。これは○○幹事等が詳しいところでありますけれども。 ● 先ほど○○委員がおっしゃられた点についての確認なのですが。   先ほど,60という価格が出たけれども後でこのロの価格を裁判所が55と算定する可能性もあるとおっしゃられたわけですけれども,これは買取請求権を途中で撤回することを認めないという前提ですよね。そのような制度にするということと考えてよろしいでしょうか。 ● 株式買取請求の手続は,現行法はどうでしたっけ。   効力発生は払ったときですよね,株式買取請求というのは。買取価格を払ったときに請求するから,途中でやめようと思えばできるわけですね。 ● 今の点に関係するのですが,確かに,実例としては,今,株式買取請求のケースというのは非常に少ないですし,私どもが経験する限りでも,反対はしておいても結局買取請求まではしないというようなケースも結構あるわけです。ただ,反面,価格の予想がつかない関係もあって,反対をして買取請求してとことん裁判までやるというケースもないわけではない。ただ,ケースとしては少ないですから,ある意味では,少数株主保護の制度という意味では余り機能していないのかなという気がするのですが。   また,先ほど先生方がおっしゃったように,現金合併を認めたときにバランスをとるというような意味合いも確かによく分かるのですが,実務レベルから申しますと,もしこのロの価格も対象として選択できるということにすると,とりあえず反対しておいて,決議なければ有していた株式価格をもらえるという地位を確保する。更に買取請求をして,効力が生じたときの価格と比較して,それも獲得できる地位を取得すると。さらに,現行法では245条ノ3で決議から90日間は訴訟ができるという形になっていまして,その90日間は訴訟をやって,裁判所の見通しなどを聞いてそれを取り下げて,買取請求を撤回するという形をとることも可能ですから,結局,決議に基づく新株あるいは現金の取得をするという選択もできるという結果が生じるのではないかと思われるわけでして,そうすると,決議に反対しておいて買取請求もやってみるというケースが増えるという可能性はかなり濃厚になるのではないかという気持ちが,実務レベルから見ますと,いたします。   別に買取請求のケースが増えること自体を問題とするというつもりはないのですが,ある意味では株主のこういった射幸的な権利行使を助長するような面が起きるという懸念は少なくともあるのではないかという感触を持ちます。   ですから,今,○○幹事がおっしゃったように,撤回を認めないということにするかどうか,これは,時期的にどういう期限で区切るかというのが制度設計がなかなか難しいと思いますけれども,一つの考慮要素ではあろうかという感じはいたします。 ● 今,○○委員と○○幹事が御指摘になって,特に○○委員が御指摘になった点に関して言えば,とりあえず株式買取請求権を行使しておいて,その後の株価の推移を見て態度を決めようという問題は現行法でも存在するわけで,それが,確かに,御指摘のとおり,このロが入るとより問題が大きくなり得る可能性が あるということですけれども,現行法の考え方は,要するに,そのようなその後株価が下がるような合併等をするということはそもそも合理的なことではなくて,むしろ,こういう権利を与えることによってそういうおかしい合併が行われることをチェックしましょうという意味もこの現在の制度には含まれていると思いますので,確かにそういう面もありますけれども,それは逆に今言ったようなおかしな合併をチェックする機能をも果たしているわけですから,それだけを特に取り立てて,この制度がおかしいと言うのはどうかという気がします。   そして,このロが入るということは,現在の価格よりも下がるような,いわばシナジーのないような合併はそういうチェックが働くというだけではなくて,合併をしたときにシナジーの分配が合併の相手方との間でフェアになされないような合併に対しても同じように買取請求権のチェックが働いてきますよということを意味するのが,このロの御提案だと思っておりまして,それは私は非常に合理的ではないかと思います。   そしてまた,特に交付金合併等が認められることになりますと,交付金合併を認めることによって,いわば--これは○○教授の論文で非常に詳しく議論されていることでありますけれども--それ自体によって会社のリストラクチャリングがやりやすくなることによって会社にメリットが生じる,その会社に生じた利益について,交付金合併で追い出される人がその利益に全くあずかれない,自分が締め出されておいて残った人にだけ利益が生じるというのはおかしいですから,そういうことについてもちゃんと手当てがなされるようにしようということで,このロの規定が入るということは合理的ではないかと思っております。 ● いろいろ御意見をお聞きして,私も少しずつ分かってきた感じもするのですが,私もやはり,多様な組織再編を柔軟にしようというスキームを作るなら,反対する株主の利益のためにこの(注4)のロを入れることが必要だろうと思います。   そして,これを入れることによって,他方,また別の問題もあろうかと思いますが,先ほどの繰り返しになることですけれども,恐らく予防法学的には,事前のそういう将来のトラブルを避けるために,実務的には,(注3)にあるような対価の適正性を確保するために,独立の専門家の鑑定なり調査を依頼されるだろうと。そういう形できちっとしておれば,こういうトラブルがあったとしてもそれなりの対応はできるし,それを法定の制度とした方がもう一歩確実になると個人的には思いますけれども,ただ,それを強制されるのはいかがかという御意見が強い場合にはやむを得ないのですけれども,やはりそういうことも含めて,この(注3)についても少し実務的な詰めをしていただければというのが,一つの先ほどの結論です。   あと一つ。先ほど○○委員が,非公開会社の問題が非常に重要だと。金銭合併何なりと言われたけれども,247条1項3号ですが,甚だ無知でお恥ずかしいのですが,こういうものがいったん結合してしまいますと,それを解き放つのは非常に困難なのですね。その意味で,この247条1項3号で決議の取消しを訴えたときに,ともかくそれを差し止めることは,現行法上ちょっと……。認められるかどうか問題もありますが,少し待ってくれというのを,当然にではないとしても,何かそういうことをしないと,要するに,1年,2年,3年あたりたってからこれはだめですということが,とりわけ合併なんかの場合に本当にできるのだろうかということになると,そこら辺のことも必要なのかなと思ったりもいたしました。 ● 私,今のお話を伺っていまして,理論的には確かに,シナジーの分配ということをここで制度設計しなければ,こういう対価の柔軟化の適正性という制度設計は難しいだろうという考えでありますが,恐らく争点というか論点になっておりますのは,それが本当のシナジーなのか,それとも株価の操作等によって生じた価格変動なのかということが結局混然一体となってしまうというところに問題の本質があるのだと思いますが,やはり,裁判所が最終的に判断するときに,時価がすべてではないと。ここに「公正な価格」と書いてあるもののそこのところの判断の中身で,例えば時価が著しく高騰しているような場合であれば,その原因と理由とが主張立証された中で価格の決定が行われるということにならざるを得ないのではないかというふうに思います。恐らく現行制度の中でも,例えば,多額の合併交付金などを与えれば,シナジーの分配については相当おかしいのではないかという事象は現在でもあるわけですし,それについて,現行の決議なかりせば有したであろう価格というのでは十分な利益調整ができないということはかねてから指摘されてきているところでもありますので,やはりそれはキャッシュアウト・マージャーだけではなく,株式が対価になる場合についても同じ制度の中に乗せた上で,最終的には裁判所の判断というものにゆだねざるを得ないのではないかというふうに考えます。 ● 先ほどからのお話しを伺っていて,まだ問題をのみ込めないので,ちょっとピント外れなことをお伺いしますけれども,先ほどの○○委員の設例で,シナジー込みで100のキャッシュを受け取ったというケースですね。それは要するに,100の価値の株式を受け取って,100の価値で換金してもらったということと基本的に同じですよね。それは,合併に反対だから買い取ってくれということになるのでしょうかね。つまり,株式を受け取るということは,合併に応じたということと同じなわけで,合併に反対するから買取請求を行使するという精神とうまくマッチしていないような気がしないでもない。私は,むしろここで言う「公正な価格」という言葉の意味であって,これが本当に公正な価格であれば,何となく理屈ではイでもよさそうな気がするのです。   ただ,実際には,公正な価格といっても,私は実態を知りませんけれども,かなり低く決まるということであれば,それに対してロのような措置を講ずるということは意味があるかもしれないし,あるいは,仮に公正な価格と決めておいても,組織再編を少しスムーズに運ぶために何か特段の措置を講じようということであれば,ロのような考え方はあるのかもしれないと思いますけれども,最初に申し上げたように,シナジー込みの現金を受け取るということは,それと同等の株式の交換に応じておいて,自分だけそれを換金しろと言っているのに等しいような気がしないでもないので,ちょっとそこが引っ掛かっています。 ● おっしゃるとおり,株式は受け取って,ですから公正なものを受け取って,かつ,それを現金でもらうというのが……。この株式買取請求は,こういう制度になりますとそういう趣旨の制度になります。   イが公正だというふうには,少なくとも立法論的には考えていないと思います。アメリカでも,こうはっきり書いてある州法というのは恐らくないと思いますね,決議なかりせばという価格が。アメリカの場合は,フェアバリューとかフェアマーケットバリューとか,州によっていろいろな言葉を使っていますけれども,決議なかりせばある価格だという解釈になっている州というのは……,そういうのはありますかね。 ● ここでの問題は,合併には別に反対していないけれども,合併の条件について賛成できない,いわばシナジー効果を合併相手方が独占するような合併条件での合併には反対しているという株主にクレームをさせる可能性を与えるというのがこの制度だろうと思うのですね。そういうことを通じて,さっき言ったように,結果的にはフェアな合併条件の合併がなされる一つのインセンティブを制度的に与えることになるということで,そういう趣旨でフェアなマーケットの価格で株式買取請求権を行使できるようにするということではないかと思っております。 ● 関連してちょっと発言させていただきたいのですけれども。   アメリカの場合は,○○委員がおっしゃったように,制定法上の文言は州によって多少違いますけれども,デラウェア州などは裁判所が判例でかなり広い解釈をしてきまして,今,○○委員がおっしゃったように,合併自体には賛成だけれども条件には反対というか,当該決議には反対という株主の不満を金銭的に救済する手段になってきたのですけれども,私が確認させていただきたいのは,この(注4)のロの考え方は二つある不満のうちの一つだけしか解決しないということなのですが,アメリカは両方を含んでいます。   その二つの不満というのは,第1の不満は,合併自体にはもちろん賛成なのですが,シナジーの分配を受けないというその条件に不満があるということです。   第2の不満は,合併には賛成なのですけれども,合併比率自体に不満がある。したがってシナジーの分配比率にも不満があるということに当然なるのですけれども。   現在の(注4)のロは,イは当然,この「株式」は消滅株式の株式でしょうけれども,ロは存続会社の株式でしょうから,何株分かというところがありますので,合併比率に不満がある場合にはロでは救済されないのですね。もっとも,何株分かというのはここで言っていないということだと思いますけれども。   ○○委員が最初におっしゃった例で言いますと,株式と株式の交換の合併であっても,比率に不満があれば,言うまでもないことですけれども,ロでは解決しないわけです。それから,現金の場合で言っても,比率に不満があれば,何株分かということを計算しないと生じない。具体例で言いますと,例えば50円もらった,多数決で決めた合併比率に従ってシナジーが配分されたとしたら100になると,これはロで救えるのですけれども,そもそも合併比率に不満があるから,50ではなくて,シナジー抜きだったら55を自分はもらうべきだ,シナジー込みだったら110だという例が当然ながらあるわけでして,現在のロの考え方は,私の理解では,50・100は解決する。すなわち,比率は多数決で決まった比率に従う,その比率に従ったシナジーの分配がないという,この不満は解決するのですけれども,その比率自体が不満だという不満は解決しないのですね。   そこで,恐らく,○○委員がおっしゃった趣旨を更に進めますと,比率自体の不満は,ロのような規定があった場合には,247条1項3号,あるいは解釈論として可能であれば合併無効でということになるのですけれども,アメリカはそうではなくて,比率自体の不満も,このロのような言い方はしませんけれども,いわば損害賠償請求権として金銭的な調整をして,それは株式買取請求手続の中で認めましょうというふうに,少なくともデラウェア州の最高裁判所はそういう解釈を示してきたわけです。   そこで,私は,理想を言えば,247条1項3号にせよ,合併無効にせよ,その株主は合併には賛成しているわけですから,しかし合併比率に不満があるわけですから,救済として合併をなくしてしまうという話は余りよろしくないというか,できれば金銭的な調整をする方が望ましいと思うのですけれども。   そうだとしますと,(注4)のロの提案はそこまでは含んでいないように読める。もっとも,この株式が何株分かというのは更に詰めますというお話かもしれませんけれども,そうだとしますと,もう一歩行った方がいいように思いますし,しかし,そこは比率自体は別に争えと,比率に従ってシナジーが分配されないことの不満だけを救うのだというふうに理解すれば,先ほど○○委員がおっしゃったとおりの,(注4)のロでいいという,そういう整理になるように思いますので,ちょっと確認的な意味で発言させていただきます。 ● あるいはおっしゃるような問題がロの文言にはあるのかもしれません。これでは合併比率の不満は入らないというのはそのとおりなのかもしれませんけれども,もちろん,それを排除する趣旨ではないので,文言に問題があれば,ちょっと事務局に考えてもらわなければいけないのですが。 ● 私が発言していいのかどうか分かりませんが,日本の場合,最高裁の判例というところでは,合併比率については事後的な救済はしないという立場が今は確立しているということになっていますので,そういう考え方からいけば,○○委員がおっしゃられるように,むしろ対価のところでもう少し手厚い配慮をするというのもあろうかと思いますが,例えばアメリカは,私は必ずしも十分調べていないとは思いますけれども,ワインバーガー事件以降,デラウェア州の株式買取請求権の価格決定の変更以降,別の州によっては,やはり事後的な救済の方でやると言っている州もあるわけでして,確かに,○○委員がおっしゃられるように,そこの買取請求権でやって合併を存続させるというのもありますけれども,私は,もうここまで来れば,このロのところまで救済すれば,あと残りの合併比率の方は,例えば先ほど○○委員がおっしゃられたような事後的な合併行為そのものの効力にかかわる救済というのを用意しておいて,そうであれば,合併を実現させたいのであれば合併比率は適正さを確保するという,先ほど○○委員がおっしゃられたような方向での実務慣行を確立していくということでよろしいのではないかなというふうに個人的には思います。 ● ほかにいかがでしょうか。   ちょっと時間のあれもありますので,1については包括的に御議論いただきたいのですが,特に(注)の中では,(注2)につきましてはまだ御議論ないのですが,この点,是非御審議いただきたいと思います。   これは,前回議論がありました,株式交換のときに新株予約権付社債を承継することを認めると。その際に,債権者保護手続が要るのかどうかという問題のときに,この(注2)を○○委員から御指摘がありまして,それは一連の問題であるということで,是非ここで,あの問題も含めて御議論いただきたいと思う次第ですが。 ● 今ちょっと私の前回の発言が引用されましたので,あるいは前回はちょっと舌足らずだったかのかもしれませんので申し上げますが,前回の新株引受権付社債の承継の問題につきましては,株式交換そのものの場合とやっぱり前提が少し違うという面があるかと思います。   といいますのは,新株予約権付社債の引受けの場合には,債務引受けという問題が発生いたしますので,それと現金が出るのと同列に扱った場合に,前回の記載と今回の(注2)がイメージ的に矛盾するのではないかという問題が指摘されないかということをちょっと申し上げたのですけれども。   新株予約権付社債の承継の問題について言えば,この間申し上げたように,一つは,社債が親会社に引き受けられれば子会社が負債を免れる結果,子会社の株価が上昇して,その子会社株式を取得する親会社にとっては特段損害が発生しないのではないかという点を申し上げたのですが,もう一つは,子会社の側で,新株予約権付社債を親会社に引き受けてもらう対価として何がしかの金銭を払う,それによって受贈益などの発生がないようにするということをすれば,そういう面でも親会社にとっては損害が発生しないという見方ができるのではないかということを申し上げたわけです。   それに対して,今回の(注2)の問題については,組織再編全体をどういう構成で見るかという非常に難しい議論があるかとは思いますが,やはり株式交換一般に子会社の株式を親会社が取得して,その対価として現金あるいは株式を出すということですので,そういう意味では,この(注2)に書かれているように,親会社の債権者にとって計数的に損害は発生しないと見てよろしいかと思いますので,この(注2)については私は賛成という意見でおります。 ● 結局,(注2)で問題にしているのは,現在,株式交換については確かに債権者保護手続はありません。ただ,ない理由として従来説明されてきたのは,これは前回,○○委員から御指摘がありましたように,完全親会社となる会社に入ってくるのは株式ですから,価値はマイナスではない。この点が合併とか会社分割とは違うことでありまして,合併とか会社分割ですと,入ってくるのがマイナス資産かもしれない。少なくともそういう懸念はない。   それから,従来の株式交換でありますと,出ていくのは,多少交付金が入っている場合はありますけれども,ほとんどは新株であると。言いかえますと,資産は出ていかない。だから,株式交換によって完全親会社の財産状態が悪くなるということは,少なくともほとんどないはずであるということで,ない。   そして,新株予約権を完全親会社が承継できるという制度を--何年の改正でしたか--つくったのですけれども,あのときも新株予約権付社債の承継は認めないということにしたわけですね。それはなぜかというと,新株予約権付社債を承継しますと,その社債部分という債務を引き受けることになると。ですから,その株式交換が結局マイナスの資産を抱え込むことになる可能性が出てくるので,したがって,それは認めない,およそ承継できないという制度にしていたわけです。   しかし,今回は,それでは不便なので新株予約権付社債の承継は認めますということにした場合に,それでは合併や会社分割と同じになってしまうのだから,会社債権者保護手続もしなければいけないのではないかというのが前回の問題でありまして,それにつきましては,従来から,○○委員も御指摘になったように,これは非常にいろいろ議論があったのですね。完全親会社が社債の支払債務を引き受ければ,それによって完全子会社となる会社については債務を免れて,税制上は受贈益が発生したりするものですから,だから,普通は,その見返りとして,完全親会社は完全子会社に対して求償権を持つということになるであろうと。しかし,完全子会社となる会社に資力がなければ名目的な債権額ですから,これは完全親会社が結局かぶってしまったという可能性が出てきますので,それはやっぱり,先ほど言ったマイナス資産の引継ぎなのではないですかという問題は避けられないという,そういう問題が前回議論されたのだと思います。   ここでも,価値のない株式を取得して金を払うということであれば,結局のところ,これは先ほどの会社分割と変わらないのではないかという問題があるのではないかというのが,ここでの論点なのだろうと思っております。   いかがでしょうか,この点につきまして。 ● 私は,今,○○委員がおっしゃったことに基本的に同感なのですけれども,要するに,新株予約権付社債を引き受けても引き受けなくても,親会社が支払う合併の対価が同じであるというならば,それはいろいろ難しいところがあるのかもしれませんが,新株予約権付社債を引き受けるということは,その分,親会社が子会社に対して支払う対価が減るということでありますから,結果においては,親会社にとっては払うべきお金が減って,いわばお金をもらったと同じことですよね。それは,新株予約権付社債という債務を引き受けて,同時にお金が出るのが減った,つまりもらったと同じことだから,新たな借金と同じことでありまして,新たな借金をするときに,債権者保護手続が必要であれば当然とりますけれども,そうでなければそれは必要ないという話になるのではないかなというのが,直感的な印象ですけれども。 ● ただ,組織再編行為でそういうふうに債務を負担するというようなときには,これは債権者保護手続がみんなついているわけですね,先ほど言いましたように,合併・会社分割は。これに対して,ついていない理由が先ほど言ったようなことでありまして,普通の株式取得とか営業の譲受けとかいうことであれば,組織法上の行為とされていなければ,会社債権者保護手続などはない。これも現行法上明らかなことなのです。 ● 正に○○委員御指摘の点がここのポイントだろうと思いまして。   この(注2)で考えているような株式以外の対価,特に例えば現金を用いて株式交換をするということになりますと,これは単に株を買っているのと同じではないかという見方もできてきて,そうだとすると,では債権者保護手続というのはなぜ要るのかと,多分そういう発想でこの(注2)の案はできているのではないか。   それを更にさかのぼっていけば,株式交換・株式移転というのを一種の会社組織法上の行為と規定して,いわば合併のアナロジーで制度をつくったところまで問題は行くわけなのですが,さはさりながら,そこまで議論していってしまいますと大変なことで。   もし分解して考えていけば,むしろ一種の新株の発行,完全子会社になる会社の株式を対価とする新株の発行と見れば,むしろ新株発行についての現物出資の検査役の調査が必要ではないかとか,そっちの方の話になってくるので,そういうのを省く一つの論理として,あれは組織法上の行為であるということで一応合併類似の手続でやっていったのですけれども,こういうふうに条件を一つずつはがしていくと,単に株式を買い取る行為と近くなってきてしまって,そういうときにまで債権者保護手続が必要なのかという疑問が出てきたのではないかと思います。   実質的に言えば,確かに会社の資産がここでは流出する可能性がありますから,株式交換・株式移転を対価として出すものは株式だけなので会社資産がマイナスになることはないという株式交換・株式移転をつくったときの制度の説明から言うと,こういう場合は債権者保護手続が必要なのではないかということになってくるわけですけれども,一方で,今申しましたように,いわば現金で株を買ったときとどう違うのという,その行為を分解して考えていく考え方からすると,こういう場合には,もう組織法上の行為でなくて,債権者保護手続はむしろ一般原則にゆだねれば足りるという考えも出てくるのかなと思いました。私自身も非常に迷ってしまっているのですけれども,まあ,(注2)のような考え方もあり得るのかなという感じであります。 ● (注2)を見ておりますと,例えば吸収分割で,物的吸収分割で現金を払いますと,これも結局は営業の一部譲受けと同じであって,債権者保護手続なんて要らないのではないですかということにつながってくるのではないかというふうに私は思うのですが。 ● 私も,本当にここのところは悩ましいものですから,ずっと黙っているのですけれども,どこが違うかと言えば,法理論的には,やはり詐害行為取消権の対象になるかならないかということになるんでしょうか。 ● 前回のあれにも何か書いてありましたけれどね。前回も詐害行為取消権の点は議論に出ましたが。 ● そちらの方で何か別の工夫をすればすっきりするのでしょうけれどね。何かやっぱり釈然としないものが残ることは残るんですね。こんなことまで言わなくてもいいだろうという気がする反面,詐害的なことが行われたときに何の救済策もなくなってしまうような制度設計で果たしていいのだろうかということが気にはなっているのですけれども。 ● ですから,この考え方をとれば,○○委員御指摘のとおり,詐害行為取消権の一般原則の方にゆだねて,合併と同様の債権者保護手続の対象にはしないという案だと理解したのですけれども。   ただ,その両者の間の線をどこで引いて,どこからを株式交換・株式移転を合併類似の会社組織法上の制度として考えるか。いわば,これはそもそも,こういった行為を株式交換・株式移転として会社組織法上の行為として扱った場合どうかということですので,論理から言うと,むしろ(注2)はおかしいと言えるのだろうと思うのですけれども,実質論で,さっき申しました普通の株式買収と比較してどこまで違うのということを考えると,(注2)のような考え方も出てくるのかなというだけのことです。 ● 先ほどの物的吸収分割の比較でいきますと,○○委員は,株式を取得するか,資産を取得するか,つまり営業を取得するかでは区別があっていいというお考えですか。そこで線を引くのはちょっと難しいのではないかなと私は思っているのですが。 ● そもそも,株式交換・株式移転をそういう会社組織法上の行為と位置づけたところから問題が出発しているのだろうと思いますけれどね。 ● それこそ,○○委員がよく言われる,学生にどうやって説明しますかという……。 ● そもそも債権者取消権が行使できるとした場合に,「債務者カ其債権者ヲ害スルコトヲ知リテ」という要件の,その害するというのは,一体だれがどう判断するのか,だれの害する認識なのかとか,そこら辺からまず問題になってまいりますね。 ● その点,債権者保護手続があると非常に困りますかね。債権者保護手続の制度は,多分,今国会で通過すると思うのですけれども。電子公告制度はですね。 ● もし,それほど実務的に困らなくて,むしろ論理を重んじるのであれば,これはあくまで株式交換・株式移転という組織法上の行為ですから,そこで会社の資金等が流出して財務状態が悪くなる可能性があるならば債権者保護手続の対象にするという方が,論理的にはすっきりすると思います。 ● いかがでしょうか。 ● (注4)のロがなくなれば,(注2)で債権者保護手続をとるということを検討するのもやぶさかではありません。 ● それはどういうバーターなのかよく分かりませんが。 ● (注4)のロというのは,今決定してしまうわけではないでしょうね。 ● ええ,御議論が分かれているということは認識しております。 ● (注4)のロの問題につきまして,これが通るということだと,そもそも対価の柔軟化から出てきているのであれば,対価の柔軟化自身もういいじゃないかという議論になりかねないような大きな問題でもあると思うので,経済界の中でもう一度,本当に根本に戻って議論をしてみたいと思っているわけですけれども。(注2)の方というのが,私どもの意見というのは,それでもって出るお金--入ってくる株式の資産を考えないで,出るお金が剰余金の範囲内に入っているのであれば債権者保護手続は不要だという限定で,そういう場合に不要としていただければよろしいのではないか,剰余金を割り込むような場合はやっぱり要るということであってもやむを得ないと,こういう意見を出したわけで,これを更に今のような考え方で徹底していただいたら有り難いのですけれども,理論上の整理ができないとかいうふうなことであれば,今のような案というのも考えていただければと思いますが。 ● いろいろな議論が出ましたけれども,どうもこの場で決めるのは難しそうで……。   よろしいでしょうか。   ほかに,1については御意見ありますか。 ● (注4)のロについて,シナジーの効果というのは10年20年で出てくるわけですけれども,この「効力が生じた時」というのは,正にその1点をとらえているわけですよね。これがまた理論的に正確なのかどうかというのも根拠が薄弱ではないのかという気もするものですから,それも含めて……。その後20年間の平均価格とするとかいうのだったらまだ分かるのですけれども。 ● 対価柔軟化したときは,先ほどの合併比率のかけ方とか,やっぱり現在とは変わってくるのかもしれないですね。   それでは,経済界でも御検討いただくようでありますので,ほかの学者の方もお願いいたします。 ● 私も,そのシナジーの配分をすべきだというのはそのとおりなのですけれども,ロの書き方はやっぱりもうちょっと検討する必要があるのではないかという気はします。   というのは,どうもこれだと,特に公開会社だと,市場価格,特に効力が生じたときの市場価格を問題にして算定されてしまいそう,使われてしまいそうなのですけれども,もし市場が効率的だったら,組織再編の計画を発表した時点でシナジーを入れ込んでぽーんと価格が上がるはずですよね。そこから効力が生じた時点までの株価の変動というのは,それ以外の要因によって影響されている部分が多いかもしれないですね。そうなると,もしこれが効力が生じた時点の市場価格が基準になるのだというふうに考えると,必ずしも適切な算定にはならないのではないかという気がするのです。組織再編を行うことによって有するであろう公正な価格が本来基準になるのではないか,その効力が生じた時点を基準にするのはおかしいと思います。 ● おっしゃるとおりかもしれません。確かにこれは,肝心なときには使ってないとか,いろいろその点には問題があるのかもしれません。分かりました。   ほかに御意見ございますか。   それでは,この1の問題ですね。本文の方は,○○委員から御意見はあったのですが,先ほど事務局も言いましたように,これは絶対に曲げられないのだというのがあって,恐らくほかの委員・幹事の方もその点についてはもうお認めではないかと思いますので,御了承いただければと思います。   (注)につきましては,特に(注2)と(注4)についてはなお検討するということにさせていただきたいと思います。   それでは,先に進ませていただきまして,2の(1)でありますけれども,まず,この本文は従来から議論があったところですけれども,20%とするという点については御了承いただけますでしょうか。 ● 本文はこれでよろしいかと思いますし,(注1)も実質的にはよろしいかと思うのですけれども,この意味内容をお教えいただきたいのですが。(注1)で,「簡易な手続を許容する」とありますが,これは従来から,重要な一部のあれが分からないので10%か20%かはっきり立法で手当てをしてほしいというような御要望があったと思いますが,その趣旨だと理解してよろしいわけですか。それとも,もう少し何か今とは違う制度をおつくりになるという御予定ですか。 ● 趣旨を変えるつもりはありませんが,20%未満であれば,重要な一部と判断されるような場合であってもこの手続でいけるということです。 ● 特別決議が要らないということですね。 ● はい。 ● 質問なのですけれども,「営業の全部譲受けを含む」とか入っているのですけれども,この場合には発行済株式総数の20%という基準は使えないですよね,多分,つまり,譲受け側は。ないしは,営業の全部譲受けの場合にはこれを基準にはちょっとできないような気がするのですけれども,そこはどう考えていらっしゃるのでしょうか。 ● 済みません,(注2)とあわせて読んでいただけると幸いでございます。 ● なるほど。 ● ほかに。 ● ちょっと細かな質問なのですが,勘違いしているかもしれないのですけれども,この「発行済株式総数」というのは,自己株式を含むのでしょうか。100出ていて,80を自己株で持っていた場合に,20新たに出すと,実際は倍額増資ですよね。ちょっと,前からよく分からないので,勘違いしているかもしれません。 ● 純資産額基準を(注2)のように採用するとすれば,多分,自己株は控除することになると思うのですけれども。 ● 現在,「発行済株式総数の」とか単純に言っているのは,あるいはこの現代化を機会に全部見直す必要があるのかもしれないのですが,○○委員の御質問の点の実質的な考えは,今,事務局が言ったとおりのようです。   一応御了解いただけますでしょうか,20%につきましては。 ● これはむしろ次の(注4)のところで申し上げるべきことかもしれませんが,この20%というのは従来に比べると かなりの緩和でありまして,相当大きい,実質的な組織再編に当たる場合だけが株主総会の特別決議が必要だということになってくるわけで,それとのバランスで言うと,そういう非常に--20%を超えるのがいわば実質的な組織再編に当たるという考え方から言えば,正にニューヨーク証券取引所なんかのルールとのバランスから言っても,この(注4)のような場合も,20%を超えるような大型の新株発行であれば,こういう異議手続等,あるいは本来だったら株主総会の特別決議の対象にするという考え方の方がむしろ筋が通ってくることになるのではないかなという感じがします。 ● 私も,○○委員と同じような考えであると同時に,本文のような改正は進めてもよいかと思いますけれども,やはり(注3)で議論されているような別の手当ても一緒に考えていくということがよいのではないかと思いますし,この(注3)の御提案は,私としては,大変いいのではないかと思います。つまり,「また,」以降のことなのですけれども,端的に株主総会決議を行うべきことを請求できる権利というものをこの際設けて,それを10%の少数株主権的な扱いにするという御提案かと思いますので,是非,これを進めながら本文のような改正を行うということで,ここはワンセットで考えていくということがいいのではないかと思っております。 ● それでは,この(注)も含めまして,特に(注3),それから(注4)はまた後で御議論いただきますけれども,(注3)を含めまして,御意見をいただければと思いますが。 ● (注3)でありますけれども,本来,簡易組織再編なるものは,株主への影響が軽微であるからということで取締役会決議でやっているのだということでありますので,今の6分の1というのを9分の1に引き下げるということについては反対ではあります。反対ではありますけれども,一方では5%基準から20%基準になったということの問題もございますので,それとの兼ね合いで(注3)を考えることもできるのですけれども,そのときは例の特別決議との関係で今までとらえられているものですから,そうすると,定款で定めている定足数の特別決議掛ける3分の2掛ける2分の1と,そういうふうに規定していただければと。そのときは,ある会社で定款でもって,「ただし,組織再編の場合には定足数は過半数とする。」というような定款を設けるような会社もあるでしょうし,そういう会社の自由を認めていただきたい。2分の1のままにしている会社もあるわけですから,9分の1に一律に引き下げるというのはいかがかと思います。   (注4)につきましては,先ほどありましたように,組織再編とそれ以外のものというのは理論を分けて今までも考えてきているわけでありますので,単純なる資金調達のための新株発行と組織再編行為とを同一視しないでいただきたいと,かねてより申し上げているとおりで,○○委員がおっしゃることもかねてより理解しておるのですけれども,ここら辺も……。 ● (注3)の規定を柔軟化せよという御意見ですが,いかがでしょうか。その点を含めて御意見をいただければと思いますが。   ○○委員が言われたように,いろいろ計算式から出てきて,だから定款自治だという考え方と,もう一方の端に,これはもう単純に10分の1とせよという案が出ているわけですが,この辺,いかがでしょうか。ほかの委員・幹事の方はいかがお考えか。   御意見がないと,どっちの方向へあれしていいのか,事務局も困ってしまうのですが。 ● 恐らく,沈黙される大方の理由は,○○委員の先ほどの数式に説得力があったからではないかと思うのですが,○○委員が前段で言われたように,従来からの5%を20%にするということから,ある程度--通常はそうだけれども,ある程度のボリュームの株主がやはり株主総会できちっと決めてくれと言われればそうしましょうというと,この前の2分の1掛ける3分の2掛ける2分の1の6分の1ですか,その算数を少し基礎数を変えてもそれなりに合理的ですので,この御提案でもいいのかなという気がいたしますが,ただ,確かにこれは,今後こういうものを利用する会社で定足数を3分の1に引き下げるところが相当少なくなる,要するに過半数のままというところも多いとなると,確かにそういうきめ細かさも必要かなと思うけれども,こういうのはやっぱり画一的な方がいいし,6分の1か,まあ9分の1か10分の1かは最後はエイヤだと思いますけれども,6分の1より少し低減する方が,20%の数字との関連ではあるかなと。余り強く言うつもりはないのですが,この御提案の方が何かおさまりがいいような気がするという,弱々しい意見だけを 申し上げさせていただきます。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   これもいつかは決着をつけなければいけないのですが,それでは,ほかの委員・幹事の方はもう一度お考えいただいて……。今度出てきたときは必ず決めなければいけないわけですから。   それでは,(注4)についてはいかがでしょうか。 ● 先ほども申しましたけれども,是非,この(注4)は,今回の簡易組織再編行為で20%という形でこういう改正を行うのにあわせて手当てをすべき問題だというように思います。本来であれば,○○委員がおっしゃるように,20%以上であればもう株主総会決議が当然であるということの方が望ましいには違いないのですが,ここに御提案になっていらっしゃるのも一つの工夫の方向ではないかというように思いまして,今に比べれば相当よくなるといいますか,問題があると思ったときに,新株発行差止め等で争うよりは,こういう格好で株主総会に諮ってくれという形で提案していけるということであれば,もう一つ柔軟な対応が可能になるわけですし,「反対株主による異議手続」とございますけれども,これは恐らくその前の(注3)のところを受けて,端的に株主総会決議を行うべきことを請求する権利ということでお考えかと思いますが,そうであればかなりすっきりした一つの案ではないかというふうに私は思います。 ● (注4)の趣旨,「反対株主による異議手続」というのは,今,○○委員がおっしゃったような趣旨ですね。その点は間違いないわけですね。 ● はい。 ● そういう趣旨であることは間違いないようです。   ○○委員はいかがでしょうか。 ● (注4)は絶対に反対でございまして,授権株式制度をとっているわけですから,そういう中で,授権株式の範囲であれば自由に--まあ,有利発行の場合は別ですけれども--やっていいということを得ているわけですから,その場合,株主の方からそれは困るというのであれば,授権株式なるものをもっと低くしておくだけの問題でありますから,そこで株主の意思というのは十分に反映されているだろうと,法律的には思います。   実際問題としては,その増資がなければその会社がもうつぶれてしまうというのを,反対があって株主総会にかけて,それでその間に会社が倒産してしまうと,こういうふうなことが本当に必要なのかどうか。緊急の増資をするというときに,そのときは2割増資なんていうのは当然あるだろうと思いますけれども,それがなければもう明くる日に倒産してしまうというときに,2週間以内にどーっとやるわけですから,それを株主総会にかけて,あと3か月待てといったところで,つぶれてしまう。こういうふうなことを要求するのが本当に目的にかなっているのかという気がします。もう授権株式制度の中での運用ということでやっていただきたいということです。 ● これはもう前から○○委員が非常に強くおっしゃっているところであります。   ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   ○○委員はこの点はいかがでしょうか。 ● ちょっと(2)にも関連するのですが,要するに,平成2年に譲渡制限会社について新株引受権が設けられたということも含めて(2)のような発想もあるのだろうと推測はするのですが,そのときに譲渡制限会社で新株引受権を設けられた経緯を考えますと,譲渡制限会社の場合には持株比率の維持が重要だと,そして公開会社の場合には市場で買えば持株比率の維持はできるのだから価格の公正が決定的だと,こういうような議論が あったと思うのですが,ある程度のボリュームになりますと,市場買付けでは余りにも株価が高騰して持株比率の維持ができないといったような形のこと,すなわち,大株主の移動を経営者が自由にできるかという一つの問題があります。他方,資金調達という側面,更には先ほど○○委員がおっしゃったような救済増資の場合には機敏にやらなければいけない,ある程度の規模の会社では臨時株主総会を開こうにも二,三か月かかるぞ,これをどうするんだということでいろいろ悩むのですが,やはりこの制度は,救済の場合に,以前にもどなたかがこの場でおっしゃったと思いますけれども,ある程度欠損状態になる,ないしは大幅になる場合に,善後策を経営者に任すのか,あるいは株主総会を開いて株主に考えてもらうのか,その判断があると思うのです。そして,少なくとも現行法は経営者に任すということになっているのだろうと思いますので,そのシステムからすると,○○委員の御意見にもそれなりの理由があると思うのです。   ただ,他方--まあ20%であればそうかもわからないけれども,極端な場合,倍額増資をして完全に子会社になってしまうというようなことまで,それは大体救済的な面が多いのでしょうけれども,まだ数か月余裕があるような場合にまで当然にやっていいのか。とりわけ,ソニー・アイワ事件というのがこういう問題の一つの重要なあれですが,これは関係された方に私的に聞いた話をこういうところで言うのはあれですが,有利発行決議を得ようと考えたけれども,当時,有利発行すると,贈与税,税金の問題というのもあるので,ちょっといろいろ……,というような話も仄聞したことがありますので,そういう形のことを考えると,やはりある程度,こういう問題について当然に株主総会の特別決議が要るということは現行法上ややラジカルな改正かもわかりませんけれども,中間段階として,(注4)程度であれば,10%になるのか6分の1なのか知りませんが,それぐらいの人が株主総会で聞いてくれと言われたら,聞くことはできるのではないかと。つまり,特別決議を要求するというのが筋かなと私は思うけれども,それは少しきちっと議論しなければいけないとしても,少なくとも,先ほど○○委員がおっしゃったように,(注4)の問題は相当おかしなことがない限りできないもので,そういうことからすると,(注4)程度のことを,もう少しいろいろ整理する必要がありますけれども,こういうものを設ける方向で実務との調整をしていただいた方が合理的な案になるのかなという感じがいたします。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。   どうもこれも難しいですね。これも依然として意見が非常に対立しているようで。   それでは,先に進んでよろしいでしょうか。   次が3でありますけれども,これも要件として9割以上ということが入っておりますが,この本文につきまして,特にこの数字につきまして,いかがでしょうか。御了解いただけますでしょうか。 ● 数字ではないのですけれども,先ほど○○委員が指摘なさっていた商法247条1項3号ルートというのは,この3では使えなくなるわけですね。今の裁判所のルールだと,単なる合併比率の不公正とか,これは合併無効原因ではないというふうにされていて,そうすると,この(注3)の②みたいなものを認めるのだったらこれはもう仕方がないのですけれども,そうでない場合に,幾ら公正な内容の条件が決められたとしても,株式買取請求権だけで救済するということになるのは,ちょっと救済手段としては不十分な気もするので,何かやはり,こういう場合には組織再編無効原因とかそういうものを見直す必要はないのかというあたりはいかがなんでしょうか。 ● 私は,今の○○幹事の御指摘の点はこの(注2)にかかわるのかなと思っていたのですけれども。   おっしゃるとおり,現在は,ある特定の株主,特に組織再編の相手方の会社が特別決議を通すだけの株式数を持っていて,通してしまうと。それに対してほかの株主が不満を持っているという場合については,特別利害関係人の議決権行使による著しく不公正な決議ということで247条1項3号の可能性が出てくるのですけれども,それは判例も認めていると思います。おっしゃるとおり,それがなくなりますので,そこでこの(注2)のような話が出てくるのかなと思っていたのですけれども,その点も含めてまた御意見をいただければと思いますが。 ● 9割ということではなくて,やはり3分の2にしていただきたいと言っているわけですけれども,(注2)の制度を設けることによって,3分の2以上ということでお願いできればと思うのですけれども。 ● (注)も含めての御議論ということになりますと,(注2)は,本文をどのように決めようとも,これは当然のこととしてまず押さえておくべきなのではないかというふうに思います。つまり,株主総会を省略してもよいといいましても,不公正な組織再編等が行われる場合に差し止めるということは当然また別にあるべきだと思いますので,これは○○委員がおっしゃるようなバーターの材料ではなくて,まず必要ということを固めておいた方がいいのではないかと思います。 ● ○○委員が言われるように3分の2ということになりますと,これは子会社では取締役選任だって総会決議は要らないということになりかねないのではないかと思うのですが。その論理を推していくと。 ● それでは,4分の3とか。9割というのはちょっと高いなと思うものですから。 ● 我々の中小企業でも,自分のところのグループでこういう関係というのはよくあるのですが,そもそもこの9割という数字自体は何か根拠があるのでございますか。まずそのことを。何かバナナの叩き売りみたいな感じで。 ● 多分,諸外国では9割ぐらいの要件を要求しているのが多いということだと思います。 ● 例えばどういう国が。 ● ドイツとか……,ドイツは確かに9割ですね。ほかの国はちょっと細かい数字は把握しておりませんが,少なくとも,特別決議を通すだけのあれを持っておれば当然に持たれている方の会社の総会の決議は要らないということにしている例というのは,そこまで緩いのはないのではないかと。よほど持っているから,持たれている方は決議が要らないということなのではないかと理解しておりますが。 ● これは感想にすぎませんけれども,普通,支配権を有しているというのは,私どもの世界では,まずは51%というような仕切りがあって,その次に3分の2があってという感じで,9割というのは,我々の頭の中では,○○委員と同じなのですけれども,ちょっと高いのかなという感じはしますね。 ● それは,4分の3とか,8割とか,9割とか,何か根拠が……,実際,根拠があるかと言われると,私も困るのですけれども。 ● この9割というのは,株主総会に行って株主が質問できない,説明を求められないという,こういう権利を奪っているわけですから,私は,やっぱり3分の2ではちょっと低いのではないかという印象を持つのですけれども。   これはちょっとお聞きしたいのですけれども,この略式組織再編が行われるときには,株主に対する情報開示とかはどういうふうな形になるのでしょうか。例えば,今までですと,書面による議決権行使を認めている会社であれば少なくとも参考書類が送られ,そうでない場合でも議案の要領というものが知らされているわけですが,この差止め制度を設けるにしても,差し止めるべきかどうかを判断する材料がなければもうどうしようもないのですけれども,このあたりはどういう予定で提案されているのでしょうか。 ● 特にはないですけれども。簡易再編と同じような手続の流れになるというだけなので。参考書類を配らなければいけないかどうかというところは若干差異があるといいますか,検討を要するところだと思いますけれども。 ● この略式組織再編の9割という問題は,○○委員がおっしゃったように,海外でも9割とか95%とかいう法制が多いというのを,私ちょっと伺っているのですが,それとの兼ね合いということもありますし,現金でこれを認めると,(注3)の強制買取りとか,そういう制度を認めるのと同じような結果になるわけですね。ですから,そういう意味でも,この9割程度の支配力というものを要求することはやむを得ないというか,当然というか,妥当だと思うのですが,(注2)の「明文の差止め制度」の差止めの要件をどういうふうに考えられるのか。これは280条ノ10が引用されていますが,280条ノ10ですと,「不公正ナル方法ニ依」る発行という表現になっておりまして,一般的には,これは支配力獲得あるいは強化のためというような理解になっていると思いますが,9割というのを前提にしますと,支配力強化とかそういうものが不公正という観念にはなってこない,関係しないと思いますので,ですから,明文の事前の差止め制度を認めるにしても,その差止め要件をどういうふうに条文上設定するか,これは十分に検討した方がいいのではないかと思うのですが。 ● 今,○○委員から御指摘があった点も含めて,(注2)につきましては,委員・幹事の方,いかがお考えでしょうか。   まあ,これはもう9割持たれているわけですから,9割を前提にすれば,そのこと自体には恐らく反対できないと思いますね。ですから,結局,条件だけの話だと思いますね。 ● ですから,差止め事由の要件をどういうふうに条文上定めるかですね。   例えば,「悪意により」とか,そういう抽象的なことですと,代表訴訟の担保提供命令のようにいろいろ解釈が分かれてくるかと思いますので。 ● 条件が不公正だといっても,それはある枠の範囲内でいろいろな考え方があるでしょうという程度であれば,これは株式買取請求なり何なりで済むのですね。ですから,やっぱり相当ひどいケースであろうとは思いますけれども。 ● そこを文言上280条ノ10と区別した形にすることが妥当ではないかというふうに思うものですから。 ● それは重要な点の御指摘ですが,やっぱり要件は相当厳しくないと,差止めというところまではいかないのではないかと思いますが。   いかがでしょうか,○○委員,(注2)はそんなにぼんぼん差止めが認められるというような要件ではないということですと,3分の2でなくても,それは……,その点は御了解いただけますでしょうか。9割が高過ぎるというのは,それはあるいはもうちょっとおろすことが考えられるのかもしれませんが。 ● 諸外国にかんがみてリーズナブルだと皆様が御提案できる数字が9割であれば,それで結構でございます。 ● それでは,大体9割の数字はよろしいでしょうか。   そうすると,9割はお認めいただいたということを前提にいたしますと,(注1)の点はよろしいでしょうか,対価の種類によって区別はしないということでありますが。この点は御了解いただけますか。   では,(注2),(注3),この点はなお御意見をいただければと思いますが,いかがでしょうか。 ● 差止め制度に関してでありますけれども,これも釈迦に説法で恐縮ですが,272条の株主の差止請求権のほかに,新株発行のときに特段の条文を用意している理由は,言うまでもなく,株主に損害が生ずるおそれがある,株主の不利益が生ずると。もしこの制度がなければ,「会社ニ回復スベカラザル損害」ですから,会社に何も損害がなければ,株主が泣き寝入りをせざるを得ないということになりますので,恐らくここでの問題は,株主に生じている不利益をどう回復するかという話ですので,条文を新設する必要があるということが前提だと思います。   そうなりますと,例えば,明らかに法令上の手続に違反しているようなケースであって,手続違反があっても,今の272条では差し止められないということになりますので,そこの部分は,この「株主に不利益が生ずる」という言葉を足すだけでも十分意義があるというふうに考えます。   それから,具体的な例はどんなのがあるか分かりませんが,9割というのをあえてつくり出すために,例えば自己株式を大量に買って,議決権の9割だということで締め出しをしてしまうというようなケースは不公正ではないかと考えられますので,文言的には,ポイントはちょっとまだ,○○委員がおっしゃられたように検討の余地はあるかと思いますけれども,株主の不利益というものを救済するための差止請求権の新設は必須ではないかというふうに思います。 ● おっしゃるとおりですね。確かに,手続を守っていない,例えばこれの買取条件を定める参考書類を,当然何らかのものは作るのでしょうけれども,そういうものをおよそ配ってこないというようなときは,それは救済の必要が出てくることは確かであります。   ○○委員から,あるいは○○幹事から御指摘のあったような点をあれして,具体的な制度として文言を詰めていただく必要があるかと思いますが,(注2)は,一応,こういうものを認めるという点は御了解いただけますでしょうか。 ● 詰められるときにどっちに整理するのかということで,確認の意味で発言させていただきたいのですけれども。   つまり,○○委員がおっしゃったように,こういうものが組織再編一般について差止めの可能性を認めるものなのか,それとも,先ほど○○委員がおっしゃったように,247条1項3号がなくなることによってそれに代替する機能を果たすものなのか。もし後者だとすれば,支配関係というか,9割がある,ですから,文言を書くときでも,どういうふうに書くか分かりませんけれども,247条1項3号的に決議はないわけですから,「支配株主の存在に依りて著しく不当なる条件に依る組織再編」とか,多分そういう文言になると思うのですね。考え方はかなり違うと思いますので,そこははっきりさせてから詰めていただければと思います。 ● それでは,(注3)はいかがでしょうか。 ● 先ほど○○幹事の方から,この①と②はセットであるというようにおっしゃいましたけれども,必ずしもセットでなければならないわけではないのではないでしょうか。   と申しますのは,もう②の方は,ある意味,先ほど○○委員もおっしゃいましたように,既にこれに近いことはできるわけでございまして,ただ,一応組織再編の必要性があるからということがつくのか,それとも,そういうものさえなくても,追い出しのためだけに使えるのかという差ぐらいでしかなくて,事実上,②に近いことは既に会社側はできるようになっているということとの関係からいきますと,それに見合う形で今回は①だけ設けるという選択肢も十分にあり得るんじゃないかというふうに思うのですが。 ● ほかの御意見,いかがでしょうか。 ● ①,②とも先送ったらいかがかと思います。先ほど○○幹事もそういう方向を示されたような感じがいたしましたが。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● ①も当然でしょうけれども,②を採用する場合でも,これは支配株主が一定の価格を決めて強制的に買い取る制度ですね。そうすると,やっぱり,いわゆるネゴシアブル能力が欠けていますから,この対価の公正さはどういう制度を考えられているのでしょうか。そういうのがあって,ちょっとすぐにはできるかなという感じはしないではないのですが。   ヨーロッパあたりでは裁判所なり何なりが公正な価格を決めるということになっていますと,そうするとまたこの本文に跳ね返る可能性も--つまり,本文だって,どうせ親会社と子会社ですから,こんなのは対等の当事者でアームズレングスではないだろうとなると,やはりどうなのかこうなのかになるから,この(注3)の②を考えると,相当いろいろ……。だからこそこれをまじめに考えて本文にも反映させろということになるのかもわかりませんが,ちょっとそこら辺……。   後半はちょっと要らないことを言いましたが,前段の,売渡請求制度のときに付加的制度が要るか要らないか,事務的に どうお詰めになっているのか,お教えいただきたいと思います。 ● おっしゃるとおりで,もし制度をつくれば,これは相当な条文数が必要に……。ドイツなんかだと相当条文がありますよね。   いかがでしょうか。○○委員がおっしゃるように,今の現状ではちょっとその作業は難しいかなという気はしますが。 ● 先ほど,本文の制度を設ければこの(注3)と同様のことができるから,9割ぐらいは必要だろうというふうに申し上げたのですけれども,実際に制度として設けるときには,本文の方は一つの組織再編行為ということで,(注3)の方はいわば個別取引行為ということになりますので,やはり実需という面では,これがあると非常にゴーイングプライベートのためには助かるなというベースはあると思うのですが,ただ,今,○○委員がおっしゃったように,法制化するとなると,適正な価格という問題も出てきますし,それから,前にも,たしか○○委員からもお話があったような気がするのですが,株主からの買取請求を認めますと,会社の意向にかかわらず100%が崩れて連結納税の関係で支障が生ずるという問題もあるというようなお話もありましたし,それから,売渡請求を認めたときには、やはりどうしてもねらい撃ちとかそういう問題が出てくるということがありますので,かなり過激な制度になるというようなイメージがありますので,今回は,「なお検討する」というレベルにとどめた方が,私としては,よろしいのではないかと思っています。 ● それでは,この(注3)は①,②ともに見送るということでよろしいでしょうか。--それでは,そのようにさせていただきます。   次,4でありますが,これにつきましては,本文と(注1)については御了解いただけていると認識しておりますが,(注2),(注3)の点であります。   まず,(注2)につきましては,これは第三者に対しては登記が対抗要件だということで,結局のところ,第三者以外というのは,前から問題になっておりましたように,株式関係,それだけがこの会社間で定めた一定の日において効力が生ずるものとして扱われるということだと思いますが,いかがでしょうか。御了解いただけますでしょうか。   よろしゅうございますか。--それでは,(注2)は御了解いただいたものとして取り扱わせていただきます。   (注3)につきましては,これはやはり設立一般について,設立登記によって効力が発生することとされていることとの関係で見直しは難しいというのが原案でありますけれども,この点についても御了解いただけますでしょうか。   よろしゅうございますか。--それでは,この点も御承認いただいたものとして取り扱わせていただきます。   それでは,本来もうちょっと行ってから休憩にしたかったのでありますけれども,相変わらず審議が活発でありまして遅れておりますが,ここで休憩いたしたいと思います。            (休     憩) ● それでは,時間の関係もありますので,そろそろ再開させていただきたいと思います。   それでは,部会資料21の最初に戻りまして,「第3部 合名会社・合資会社関係」であります。   2の星印でありますけれども,まず,(1)については,これは御了承いただけますでしょうか。 ● むしろ(2)の方であわせて申し上げた方がよかったかもしれませんが,この問題に関する懸念は前にもここで申し上げたところですが,要するに懸念されますのは,ドイツで問題になっておりますように,株式会社あるいは有限会社を唯一の無限責任社員とする合資会社のようなものがつくられて,実質的には物的会社であるのに,人的会社としての法規制を受けることによって,特にドイツで一番問題にされておりますのは,社員の情報請求権ですとか,あるいは少数社員権が実質的に否定されるようなことが起きるのが問題になる。   そういうことが問題になるかどうかというのはここでの問題だと思うのですけれども,今回の案を拝見しますと,(2)の方で一定の配慮がされておりますし,それから,現行法ですと合資会社の有限責任社員は153条の監視権だけですけれども,後で出てきます第6部の第1 の1の(6)や(7),特に(7)のところで(注1),(注2)がございまして,合名会社・合資会社の社員についても少数社員権を強化し,かつ監視権についても,ここのところの(注2)にありますように,「裁判所の許可を要しないものと」するというような形で権利の強化が図られておりますので,これによってかなり問題はよくなっているのではないかと思います。   最後に残りますのは,そういった人的会社では損益計算書や営業報告書がつくられないということではないかと思っておりまして,商法32条1項が,現行の有限会社法43条1項と比べましても,人的会社であるということで損益計算書や営業報告書を作成しなくてよいということになっているわけですけれども,これは余り適当ではないように思っておりまして,むしろ人的会社については損益計算書や営業報告書も作るということを,できれば御検討いただければ有り難いと思います。   もともとこれは,国会に提出した法案では入っていたものが貴族院の修正で除かれてしまったというものだったと思いますので,もともと余り合理的な規定でないので,まあ,今すぐ検討は難しいかもしれませんけれども,本来はその点の見直しをしていただけたら有り難いと思っている次第です。 ● 有益な御指摘をいただきました。   (1)につきましては,皆さん御了解いただいたというふうに考えてよろしいでしょうか。--ありがとうございます。 ● (2)の(注2)の点なのですけれども,もしかするとただいまの○○委員の御意見と反対の方向で意見を述べることになるかと思いますが,この(注2)の,有限責任社員の監視権の行使を従来よりも強化して,裁判所の許可を要しないものとしてはどうかということでございますけれども,私は,これは定款自治に任せる方がよろしいのではないかと。もちろん,そのような,裁判所の許可なく強い監視権を持って合資会社に参加する有限責任社員というのがあるということは認めるのが望ましいと思われますけれども,組織の設計として,むしろ有限責任社員に対するガバナンスへの関与を限定できるという,そういう一つのフォーマットも組織として必要ではないかと思われますし,かつ,合名会社・合資会社につきましては,持分の譲渡というようなものは前提とされていないものでありますから,設立時に社員間における合意がなされたのであればそれを最大限尊重していくべきような企業組織形態だと思われますので,強行法規というのではなく,定款自治に任せるという方向で御検討いただけないかと思います。 ● 定款自治という意味は,これはもう認めないという定款自治も認める……。重要な事由があるときですから,これは結局同じことなんですよね。結局は,拒否したら裁判所へ行くしかないんですよね。 ● ただ,大分違ってくるのかなと。こういう書き方にした場合は従来とは相当違ってくる可能性が強いものですから。従来の線あたりまでは強行法規なんでしょうね。ですけれども,それよりもあえて強行法規的に強めるのではなくて,定款によってはそのようなこともできるというぐらいの書き方にしてはどうかと思いますが。 ● ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ● 前に戻るのかもわかりませんが,(注1)の③とも関連するのですが,極論すると,法人無限責任社員,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,株式会社が一人,無限 責任社員でおりましたと。その株式会社についても,先走るようですが恐らく最低資本金制度がないから,1円とは言わないまでも,1万円ぐらいで設立しますと。そういたしますと結局実質も有限責任になってしまって,そういう株式会社が唯一の無限責任社員である場合に,先ほど貸借対照表と損益計算書の話をされましたが,これは無限責任社員が個人の場合でも一般的に必要ですけれども,そういう特殊な場合については,貸借対照表と損益計算書だけでなく,ある場合には資本規制もある程度考慮する必要があるのか。あるいは,それを自由な形でしようと思うと,(注1)の③に,「職務執行者は,業務執行者と同一の権利義務」で,この際,例えば第三者に対する責任はどうなるかなということもちょっとお考えいただけたらなという気がするのですが。無限責任社員単独の合名会社を認め,それが株式会社であり,濫用的にそれが使われる場合の手当てのためにも,やはり職務執行違反について相当重い責任を課さないと,少し濫用的な手当てが懸念されるか,それか資本規制を導入するか,どちらかかなという気がいたしましたが。   第6部の第1の1の(7)に,「業務を執行する者」ということで,これは専ら対内的なのですが,第6部の第1の2の(4)だと,これも当然に入ればまあそれでいいという,その確認をした方がよかったのかもわからないのですが。 ● 私も,その点がどうなるのかなと思ったのですが,これはどうなんですかね,第三者責任は。「新たな会社類型」では,2の(4)のところがあるのですが,「合名会社・合資会社関係」については,合名会社・合資会社の業務執行者となる法人については……。対第三者関係というのは,会社が二重になっているために何かちょっとよく分からないのですけれども,どうなんですかね。普通なら第三者に責任を負っているのだから……,もともとありますよね,その無限責任社員になる会社については。取締役にはあるけれども,会社自身については余りはっきりしないということですか。 ● 二重になっていますので,私も誤解しているのかもわかりませんが,どうも人の責任をきちっとする必要があるのでは。少なくとも業務執行を担当する人の責任については,無限責任社員とほぼ同じような,ちょっと制度が違いますから変容するにしても,それなりの責任規制を設ける必要があるのではないかと。新たな会社類型の対内関係については,善管注意義務,忠実義務を明言されているのですが,外部関係については特になかったので,最低限それはお考えいただく必要があるのではないかと思ったのですが。 ● これは職務執行者についての話ですよね。 ● そうです。 ● ちょっと問題点を事務局に検討してもらいますけれども,何か今ありますか。   それでは,今の点は検討させていただきますので。 ● 私ども,この議論,必ずしも合名・合資について今までこの場でもたくさんしてきたわけではないものですから,今回がいわば初めてなのでございますが,合名・合資で大体10万社ぐらいありまして,実は私も親戚に合資会社がいるぐらいでございまして,中小企業では結構多く使われてきている制度ですし,これからも簡便な制度としては使われるだろうと期待しております。   そのときに,貴族院での修正の話から出て,ちょっと確認のしようがない,生まれてもいなかったのであれなんでございますが,今の世の中の感じからいくと,有限と株式が一緒になるという話が一方であると同時に,合名・合資はほぼそのままの形という,通常の企業の方とかいろいろな方の大体のコンセンサスみたいなものがあって,これはこれで残るんだろうという期待感が実はあった。そこで,書類を一つ二つ余計に作るぐらいはいいではないかという議論も十分に分かります,私は。それでその会社の信用が上がるんだからというのもあるのでございますが,何か状況がころっと変わったからこれをしなければいけないという理由があるならともかく,この部分について余り規制がかかっていくというのはちょっとつらいなと。これはやや感想に近い話なのでございますが,それがあります。   それで,この後,有限会社と株式会社についての議論も当然進みますけれども,これも私どもは,新たな株式会社という法制について,なるべく有限会社的な規制がかかるようなものをお願いしておるのですが,こちらの方は全然,今までの有限と全く同じ規制にしてくれということではなくて,あるところは多少は厳しくなるということもあるのではないかということは頭の中に置いて議論してきたものですから,このあたりの300万社に近い有限会社・株式の話と10万社の合名・合資の話とは少し議論のフェーズを変えながらお願いできないかなと思う次第でございます。 ● たしか○○委員から,そういう貸借対照表・損益計算書の御指摘がありましたけれども,ちょっと私も実態をよく知りませんので。   ○○委員,何かありますか。 ● 規制強化と言うと,それだけで今おっしゃるような御指摘が必ず出てくるのですけれども,ただ,普通,計算書類を作るというか貸借対照表を作るとき,誘導法でつくれば自動的に損益計算書もできてくるわけで,貸借対照表だけつくって損益計算書をつくらないというのは,実際の会計のやり方ですと余り考えられないことではないかと思いまして,当然,貸借対照表をつくろうと思えば損益計算書もできてくるものですので,そんな実質的な規制強化にならないと思いますし,ですから,さっきの貴族院の修正については合理的な修正ではなかったというのが一般的な理解だと思いますので,少なくとも実質的な負担増ということは本当はないのだろうと私は一応思っています。 ● 若干,私の知っている事実関係を。少し法律の枠からはみ出すのでございますが。   例えば,代表がいらっしゃいますけれども,私の親戚の会社も税理士さんなんかにみんなお願いをしております。したがって,今御指摘のように,これをつくればこっちも出てくるというのはあるのでございますが,世の中は,できたものに合わせて料金の設定がされているわけでございまして,すべてそういうことなんでございますよ。ですから,リストに二つ加わると,普通は世の中ではこれはプライスアップなんでございますよ。まあ,これはそうだと肯定していただく必要はないのでございますが,そういう世の中なものですから。それから,それを作るということになると,経営者はその中身を全部チェックして,その中身を打合せをしてと。   よろしければ,そういう事情の世の中なのであるから,売上高が1千万で,例えば消費税の新しい免税点1千万円を超えないような企業もたくさんあるわけでございますし,小さい企業についてはそこまでの負担を上げないでいけるような道をできればお許しいただきたいと,こういうことでございます。 ● (注1)につきましては,基本的にはこれで御了解いただけますでしょうか。   (注1)につきまして何か御意見ありますでしょうか。こういう点も必要ではないかという御意見,先ほどちょっと○○委員からございましたが,ありますでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,先ほどの○○委員の御指摘の点は事務局に検討していただくことにしまして,(注2)は……。(注2)は,私,本当言って,余り変わらないのではないかと思っているのですけれどね。○○幹事の御意見はありましたけれども。--よろしいでしょうか,先に進ませていただいて。   それでは,第6部の「第1 新たな会社類型」について御審議いただきたいと思います。   まず,「1 会社の内部の関係」につきましては,(2)の点でありますけれども,社員の氏名・出資の価格は定款の記載事項とはしないということでありますけれども,この点についてはいかがでしょうか。 ● そちらの方は賛成でありまして,要望しておったところでございますけれども,(1)と(2)の総社員の一致が原則というところなのですけれども,これは原始定款に別段の定めがあれば多数決でというふうなことは当然認められるという前提での議論かどうかということを御確認いただきたいと思います。 ● それはそうですね。 ● はい。 ● ほかに何か御意見ありますでしょうか。 ● 定款に書く必要はないと思うのですが,これは登記とか何かで分かるようにはなるのですか。従来のあれだと,定款に書き,かつ設立登記事項にもなっているというのが合名会社のルールですし,株式会社についても,資本に関連する株式とかそういったものは登記されているのですが,ここではここら辺のことはどうなっているのか,お教えいただければと思いますが。 ● 社員の氏名自体が登記事項になるということは,こういうふうにすると,多分なくなると思います。そこは社員名簿なるものを作ると。   他方で,有限責任になりますので,そこは株式会社と同じような登記,たとえば資本とかそういうものについてはそういう取扱いということになると思います。 ● そういうことですが,よろしいでしょうか。--それでは,この(2)につきましては御了解いただいたものとして取り扱わせていただきます。   星印がついているのは,次は(6),(7),これは一連の問題かと思いますので,あわせて御議論いただければと思いますが,いかがでしょうか。 ● 星印以外のものは後からということですか。 ● ちょっと今日は時間がないですから,もうどんどん,星印がなくても議論していただいて結構です。 ● (5)ですけれども,業務執行者は社員でなくてはならないという規定なのですが,この御趣旨を一応御説明いただきたいなと思いまして。   これは,いわゆるパススルー課税をとるという意味でこのような要件を入れておくのはやむを得ないのかなという御趣旨で入っているのか。そういった戦略的なものであれば分からないでもないのですが,ただガバナンスという観点だけから見れば,これはLLCの使い勝手を非常に悪くする規定だと思いますので,御再考いただければと思います。   ちなみに,アメリカの模範LLC法等におきましても,このような規制といいますか,業務執行者が社員でなくてはならないというような規定はありません。 ● 今御指摘の点は,多分,(6)なり(7)なりと関連して御検討いただかないといけないと思うのですが,一応,この事務局の案では,今の合名会社・合資会社とその新しい類型はとにかく社員自らが業務をするということでありますので,株式会社と違って,委任関係がどうのとかいうことについては余り目くじらを立てない仕組みにして内部を緩やかにし,責任についても(6),(7)の程度でどうかというようなことなのですけれども,仮に社員以外の者に業務執行を委任するということになりますと,設計自体が株式会社とほとんど同じになってきますので,そうすると,内部の取扱いも今の合名・合資のままでいいのかどうかというところについて再度議論が必要になるのかどうかと。そこら辺の見極めがよくできなかったものですから,ある程度現行法で合名・合資会社の枠から出ないということであるとすると,この程度でどうだろうかということなのです。 ● そもそも前文のところで,要するに内部関係は組合だという前提で出発されていらっしゃって,だから原則全員一致で,かつ,社員自ら業務執行に当たるということから始まっていらっしゃるように思われるのですが,ただ,LLCを実際に使うであろうことが今いろいろなところで想定されて,実際にこういうところ,ジョイントベンチャーで,ベンチャー企業で,あるいはファンドで,弁護士事務所等で使ったらどうなるかという議論がかなり進んでおりますが,そういった想定されている企業は,現行の組合であるとか合名・合資会社が想定しているような企業とは全然違うものでありまして,やはり使い勝手のいいガバナンスデフォルトルールを提供するという観点からすると,その前提をちょっとお変えになっていただけないか。もうちょっと柔軟な,フレキシブルな観点から,全く新しいものであるというような意識でお考えいただいた方が,使いやすいものが出てくるのかなという感じがいたしまして,その上で体系的に,あるいはパススルー課税との関係でどうしてもここは譲らなくてはいけないというところが出てくれば,またそれは別なのですが, まず組合ありきということで,だからこうだというのはちょっと違うのではないかと,個人的に感想を持っております。 ● かなり大きな問題で,これはちょっとにわかには事務局もこうだということは言えないと思いますので,その点は検討してもらいたいと思いますが。--よろしいでしょうか,そういうことで。   (6),(7)はいかがでしょうか。 ● 済みません,(3)の退社権を付与しているところなのですけれども,無限責任社員の場合の退社権というのは分かるのですけれども,これは全員が有限責任ということですから,ここまで退社権を明文の規定で設ける必要があるのかどうか。そもそも,どうしてもできないときには,公序良俗違反でもって退社してはいけないということがだめだということになると思うものですから,(3)というのはもう削除するというふうなことは可能ではないのでしょうか。 ● いかがでしょうか。 ● 譲渡が自由でないという前提をとる以上,こういう形で投下資本の回収権を保障せざるを得ないのではないでしょうか。何かはやっぱり必要だということになった場合には,このような手当てが妥当なのではないかというように考えます。 ● (3)につきましては,全く退社あるいは全くエグジットの道がないというものはやっぱり問題なのかなとは思うのですが,ただ,合理的な期間内で,設立後5年とか10年なのか,それはちょっとどこまでが合理的か分かりませんけれども,それについては退社はないというような定款の定めは認めるべきではないか。要するに,この点につきましても,公序良俗に反しない限りにおいて,できるだけ定款自治を認めていただきたいと私も思います。 ● 同じことです。 ● その点は何かありますか。 ● 有限責任であるということを前提にしての「やむを得ない事由」とは何かという,解釈問題に尽きるのではないかと思うのですけれども。それを公序良俗云々と言うかどうかという程度問題ではなかろうかと思いますが。 ● 実際の結果はそんなに変わらないのかもしれないのですが,絶対に5年間は退社させないということが有効なのかどうかという……,まあ,ぎりぎりのところはそういうところかと思いますが。 ● 実は,専門職業としてこういう組織形態はあるかなという立場で,それを類推適用したいということで眺めているのですけれども,社員の退社については一般的には定款の自治でいいと思うのですけれども,いわゆる業務執行権限を持って責任を持たされるような実行をしていて,本当に責任が生じたような場合,これはやはりやむを得ない事由があるか否かにかかわらず,退社はむしろさせられないという事態もあり得ると思うのですね。   ですから,そういう意味では,定款の定めにかかわらず,常に退社が自由ということではなくて,やはり業務執行をした権限,その裏返しで責任がある,そういう場合には,多分定款でも退社できないと思いますけれども,そこはやはり退社させるべきではないということもお考えいただきたいと思います。 ● 退社をしたからといって責任がなくなるわけではないわけですから,それは現在の合名・合資会社などの退社にかかわる,あるいは除名ということもあり得るかもしれませんが,そこら辺と同じ規律でよろしいのではないでしょうか。 ● やはりいろいろと訴訟が起きて,裁判事例なんかになることが多いと思うのですけれども,退社されますと,そういうことについて一体となってどう対応していくかということについて情熱が欠けてくるのではないかと。そういう事例が現実にあるような気がしますので,そこは慎重にと私は思っていますけれども。 ● 質問なのですけれども。もっと前に聞いておくべきだったのですが。   この(2)と(3)の関係なのですけれども,この場合は,これは有限責任なので,社員が亡くなったときには相続人が社員としての地位を相続することが前提になっているということなのでしょうか。 ● そこは定款次第ですね。一般的には相続しないことがデフォルトになるのではないかと思いますけれども。 ● そうすると,相続しないということは,(3)で言う「退社」をすることになる。要するに,今まででも,法定退社原因というのが合名会社の場合は定められているわけですから,もしそれが定款で定められていれば,それは定款退社原因ということになるということですか。 ● 今は法定で退社事由が決まっていますけれども,これを定款で,そのまま相続人が--再出資するのか,それとも承継するのかよく分かりませんけれども--い続けられるという定めができるというふうに解されていますので,その定め次第だと思います。   だから,その意味での「退社」とここでの「退社」は若干違っていると言えば違っています。 ● よろしいですか。   それでは,(3)についてはいろいろ御意見が出ましたので,もう一度,御意見を踏まえて事務局に考えてもらいたいと思いますが,よろしいでしょうか。   (6),(7)が肝心な割には,なかなか事務局が審議してもらいたいと思っているところには入らないのですが,いかがでしょうか。 ● (7)の(注2)というところの,合資会社の有限責任社員は業務執行権限・代表権限を有してはならないという規定を削除すると,デフォルトルールとしては持っていないけれども定款で定めることはできるということになるのか,それとも,デフォルトルールとしては有限責任社員は持っているというルールになるのか,どちらの方を考えていらっしゃるのでしょうか。 ● デフォルトは,1の(5)にある,「社員全員が会社の業務を執行する権限を有するものと」する,要するにこの条文がすべての社員に当てはまると。 ● 合資会社もそうするということですね。 ● ええ,そうしてはどうかと。 ● (6)と(7)を一緒にお伺いしてよろしいでしょうか。   まず,(6)の方の趣旨を確認させていただきたいのですが,これは責任の減免の在り方については定款自治に任せるという理解でよろしいのでしょうか,というのがまず一つ。   それから,(7)でありますけれども,これについては反対でありまして,この点につきましても,だれがどのような形で業務執行者を提訴する権利を持つかということも含めて定款自治に任せていただけないだろうかと。これも根拠は,先ほど申し上げましたように,LLCは,合名・合資と同じように,その持分は譲渡がない,もう社員は固定だということを前提として,契約自由のもとで集まっているということでございますので,いわば株式会社よりもきついというのでしょうか,各社員が必ずすぐに代表訴訟というよりも直の提訴権限があるというのは,ちょっと逆なのではないか。むしろそれも社員間の合意にお任せいただけないだろうかというふうに思います。   ついでにと言っては何ですけれども,先ほど○○幹事から御質問があった(注2)ですけれども,これはむしろ,合資会社のデフォルトは,有限責任社員は業務執行権限を持たない,しかし定款で持つような修正は可能であるとした方が,合資会社の一つの特色を生かした組織フォームを残すということになるのではないかと思います。 ● ちょっと○○幹事にお伺いしたいのですが,私の認識では,アメリカでは,(6)については各州によって非常に取扱いが分かれている。つまり,どこまで定款自治を認めるか,例えば利益相反で会社に損害を与えたような場合についても免責ができるのかということが分かれている。(7)につきましては,明文の規定を置いている州と置いていない州がありますが,解釈としては,株主代表訴訟にパラレルな,要するに社員が業務執行者を訴えるということは,これはもう全州で認められる。私は,アメリカはそうではないかというふうに認識しているのですが。 ● (6)の善管注意義務・忠実義務に関しましては,それはいろいろな解釈はあると思うのですけれども,基本的には,忠実義務に反するような,要するに会社の財産を盗んだというようなものについては免責はできないというのでしょうか,定款自治によってもやっぱり盗んだ人の責任まで免除することはできないというのが基本的な考え方だろうと思います。   ただ,善管注意義務については完全に免責も可であるということで,ですから,定款自治に完全に,と申しましたのは少し正確ではなかったのかもしれませんが,もちろん,盗んだようなものまで免除できるかどうかという問題はありますが,どういう形の責任減免の制度をとるかというのは基本的に定款自治に任せた方がいいのではないかと。   LLCのことにつきましては,ちょっと今手元に資料がないのですけれども,このことについてモデル法が強行法的に必ず各社員が訴権を持っているというような規定はなかったと思いますので……。 ● 明文の規定で置いている州と置いていない州とありますが,ただ,向こうの会社法の本なんか見ますと,明文の規定がない州も含めて全州で代表訴訟的なものは認められる というふうに書いてあってものは見たのですが。   こういう規定がありませんと,普通の解釈で言うと,業務執行者だけが会社を代表して訴えられるということなので,業務執行者が一人ですと,だれも訴えられないということになってしまわないかという問題があるわけです。 ● 随分以前に調べたので,今はどうなっているか,間違っているかもしれませんが,ドイツの有限会社法でも,有限会社の場合は本来社団の構成をとっていますけれども,それでも会社の代表者に対しては他の株主が,特に小さくなって閉鎖的な環境を持っているような団体については,解釈によって,すべての社員が業務執行者を訴えることができるというのが,actio processioという法理として認められていたのではないかというふうに思いますので,私は,それは一つの見識なのではないかなというふうに考えます。 ● 確認ですが,(6)というのは,冒頭の組合ベースをあれして,現行の民法でも,業務執行組合員は644条の規制に服しますから,これもそうしようと。そして,(6)の(注)は,そういう民法の組合の法理に基づいて責任の減免も考えたらよいと。ただ,減免はそうだけれども,減免されない限り,すべての社員に責任追及訴訟を起こす機会を与えようと,こういう御趣旨だと思うのですが,そのときに,言葉の問題で申し訳ないのですが,「代表権限及び業務執行権限」と,ここまで詳しくお書きになった趣旨というのはどういうことかなと。要するに,責任追及訴訟を提起できると一言書けばいいことを,こうすると責任の減免も何か関連してくるのかなというインプリケートがされないかと。つまり,(6)で責任があって,責任が減免されない限り(7)でだれもが訴えを提起できるぞと,こういうスキームならそれなりのルールかなという気がしたのですが。 ● (7)は割と趣旨がはっきりしていると思うのですが,(6)は,おっしゃるように,読み方によっては,これは強行規定であると。株式会社なんかでは,こういう規定が置かれると,もうこれは強行規定であって,民法をその点で変更するのだということになってしまいますよね。これはそういう趣旨なのかという問題が……。(6)については,趣旨がどういうことかなという問題があるように思うのですが,実質何がいいかも含めて御意見をいただければと思いますけれども。 ● (6)ですけれども,現行の合名会社の場合はどうなっているかというと,定款自治があるのだと,それでデフォルトルールとしては,自己取引になるわけだから,商法75条に基づいて過半数の決議で免責をしていけばいいのだと,これが今の理解だろうと思うのですけれども,要するにそれと同様とするという趣旨なのかどうかを確認,今までいろいろ議論しています点はそういうことなんでしょうかということと,(7)については,○○委員が言われましたけれども,現状は過半数で決めるということになっているわけですけれども,これを各自の権限にしなければやはり現状不都合がかなり生じてきているという事実があるということなのか,お教えいただきたいと思いますけれども。 ● (6)については,合名会社と同じでいいのかどうかということはあるのですね。これは有限責任でもありますし,先ほど言ったように利益相反にまで--現在の合名会社・合資会社について利益相反みたいな場合どうなのかという問題はあると思うのですけれども,ちょっと今まで余りはっきりしていない,そもそも合名会社・合資会社についてもはっきりしていない問題なのかもしれないですね。 ● 私も,この(6),(7)については,まず,モデルになっているアメリカのLLCについての法制の理解としては,○○委員がおっしゃったとおりだと思います。私も調べて見ましたけれども。かつ,模範LLC法も,こういう信任義務等についてはむしろ強行的に責任を負わせるという形になって,最低限のそういう業務執行を行う者の責任については,それがエンフォースされるようにすることによって担保しようとしている。   ○○委員御指摘のような御理解もあると思いますけれども,○○委員がおっしゃったように,これは合名会社・合資会社ではなくて,有限責任を負う会社としてつくりますので,実際に業務執行に当たる人が変なことをやったときにそれに対するチェックが働く機能は,やっぱり無限責任ではありませんので,実際に業務執行をやった人について責任ある行動をとってもらおうということを担保をする最低限のルールはやはり必要ではないかと思っていまして,そういう意味で従来の合名・合資とはちょっと違う側面があるので,私は,この(6),(7)は,アメリカと同じように,必要ではないかというように思っています。 ● ただ,(6)はアメリカと同じかというと,ちょっと議論は……。 ● それがまた……。   そもそも,この(6)の(注)の書き方を含めて,さっき○○委員が御指摘のように,社員の単純多数決で免責できるのかということ等を含めていま一つはっきりしない点があるのですが,私は,これで,あとは解釈に任せるということでも,実際の会社の運用を見ながらということにでもなるのかなと,そういうことを考えてこういう案をつくられたのかなと思ったのですが。 ● (6)は,これは事務局としては,原案はどういう趣旨ですか。強行規定という考えですか。 ● (注)自体は,要するに,今,株式会社ですと総株主同意でないと免除できないという規定がすべての責任についてありますけれども,そういう規定は置かないということですので,善管注意義務違反について言えば,多数決と定めてあれば多数決でカットできることもあるでしょうし,先ほど来問題になっているような忠実義務違反みたいなものについては,そういうカットが有効かどうかということで争っていただくということになるのだろうと思います。 ● ちょっと規定の性格はよく分かりませんけれども,免責決議のようなことをした場合にどこまで有効かは解釈の問題として残るのだというのが,どうも原案の趣旨だということのようです。 ● これは文言も含めてもう少し詰めていただくことになると思うのですが,(6)ですが,要するにこれは254条3項のような規定を置くということでよろしいわけですね。つまり,業務を執行する社員はメンバーですから,当然に委任関係にあるわけでないので,その意味で,民法上の組合についても業務執行組合員に委任の規定を準用し,とりわけ644条を準用している。そういう644条だけを置くのであって,善管注意義務や忠実義務をそこでお書きになる御趣旨でないかということを確認したいのですが。 ● 法制的にどちらで書くべきかという問題はあるのですけれども,今の合名・合資会社においてもそうなのですが,組合の規定を準用するという中に入っている委任の規定の準用規定をどこまで分かりやすく書き切るかという問題になるのであろうと。結果として,その書き下しで民法と同じ条文が書かれるのか,それとも準用規定になるのかで,それは法制的に……。 ● 要するに,忠実義務がここに出てくると,先ほど来の善管注意義務の免責と忠実義務の免責と,いろいろなことになるから,さらっと民法の規定をそのまま書くか,644条を準用しておいて,あとは解釈に委ねるのが一番合理的かなと思ったということです。 ● そうですね。○○委員が今おっしゃったような書き方だと,その辺はすべて解釈問題ということになる。非常に読みやすい規定になるかとは思いますが。   むしろ実質の方を御議論いただければ,あとは事務局がしかるべき条文は書いてくれるのではないかと思うのですが。   もうこれは,どこまで免責できるかはかなり問題があるので,解釈に委ねるほかないと,それで大体御了解いただけますでしょうか。(6)はそういう趣旨だと。--よろしゅうございますか。   (7)につきましては,先ほど来,○○委員の御意見と○○委員の御意見が出ているのですが,あるいは○○幹事からも御意見がありましたけれども,この点につきましてはいかがでしょうか。   一応,アメリカはこういうことだと私も理解しておりますけれども。 ● これで賛成です ● 私も,本来は○○委員のおっしゃるように過半数ということで決めてよろしいのではないかというふうに思いますが,この(7)の文言なのですけれども,少なくとも株式会社の代表訴訟並びということでお願いできないかなと。つまり,先ほど○○委員からの御指摘もありましたが,各社員が代表権限及び業務執行権限を持つという,要するに,ストレートに訴権を持つというのではなくて,一度会社にその行為をする機会を与えるという代表訴訟的な手続は少なくとも踏まなくてはならないという形のものにしていただかないと,株式会社よりもきつい制度になるというのはやはり理屈が立たないのではないかなと思います。 ● 株式会社の場合の代表訴訟並びということであれば理解できると思うのですけれども,これは,500人ぐらいの社員がいる中で一人が訴訟を起こす,そのときに,そのLLCに来て,自分の好きな弁護士を起用して,社員なんかを自分の支配下に置いて訴訟していく,そういうふうな権限まで,ほかの人が反対しているのに,1名に与えていいのかということになると,かなり疑問だと思うものですから,株式会社並みの制度にしていただければと思います。 ● それでは,株式会社並みということであれば大体の御了解はいただけますでしょうか。それでよろしゅうございますか,ほかの委員・幹事の方も。--それでは,株式会社並みに規定を書くということで進めさせていただきたいと思います。   そうしますと,次は,「2 会社の外部との関係」でありますが。 ● 質問だけなのですが,2の(1)の(注)なのですが,合資会社の有限責任社員の会社債権者に対する責任は少し別扱いをしていたのを,今度またここで別扱いにするという,その理由はどういうふうに説明されるのですか。 ● 合資会社の有限責任社員については,157条1項のただし書がありまして,「既ニ会社ニ対シ履行ヲ為シタル出資ノ価額ニ付テハ此ノ限」ではないとなりますので,全額払込みをとりますと,要するにここの基本的な部分が全部変わってしまいますので,それだけの意味です。 ● 量的には非常に違ってくるでしょうね。   ただ,万一払い込まなかったときの責任ということだけがここでは問題になるかと思うのですが。 ● そこは,株式会社と並びにするのであれば,失権するなり何なりということになるだけなのですけれども。全額払込主義を採用するので,払い込まれなければ持分は取得しないという……。 ● だから,責任が残るというのではなくて,失権なり何なり,そちらの方で扱うということですね。 ● はい。 ● よろしゅうございますか。   それでは,星印がついているのは(4)の(注)のところでありますけれども。 ● (3)とも関連するのですが,ちょっと(3)を言わせていただきますと,剰余金の分配について,株式会社と同様の規定を設けると。そして,266条1項1号があるぞと言って,そして266条ノ2があるのですが,290条の2項もやっぱりあるという前提で考えたらよろしいのかというのが,(3)の質問なのですが。   そして,恐らくこの剰余金の分配というのは社員の決議に結局よるのだろうと推測されるのですが,例えば,業務執行者が提案したものと違う提案がなされて,それが結果として財源規制に違反していたというような場合についてということになると,(4)の(注)をもう少し整理する必要があるかなと思ったりもしたのですが。あるいは,これは業務執行者が利益配当もすべて決めるという前提の仕組みですか。つまり,重要な事項について社員が決議する場合,とりわけ財源規制違反について何か手当てが必要ではないかと思ったのですが。   株式会社でも株主は責任を負いませんが,それが290条の2項になってしまうということで,290条の2項があるから,社員はその責任で,ここら辺のところは290条2項がきちっとうまく運用できるから要らないと言われれば撤回しますが,290条の2項の方をむしろ聞きたいのですが,それとの関連で第三者責任を少し整理していただきたいということです。 ● (3)の(注)から290条2項が抜けているのは意図的ではなくて,単に前から並べていたときに届かなかったというだけの趣旨だと思っていただければと。   したがいまして,いわゆる剰余金の分配といいますか違法配当といいますか,その関係についての関係者の責任については,業務執行者自体が取締役に当たり,社員自体は株主総会を構成する株主に当たるという方向でパラレルに整理をしたいということです。 ● 趣旨はそういうことですが,よろしいでしょうか。   この(4)の(注)自体は,「特別の規定を設けない」ということは,これは一般の不法行為責任を負う可能性はあるということでありまして,266条ノ3のような規定は設けないということですね。--よろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきまして,(5)でありますけれども,これは従来から問題になっていたところですが,いかがでしょうか。 ● 賛成です。 ● 分配限度額を超えて払戻しをする羽目になったけれども,債権者保護手続を会社が行ってくれないというときは,これは解散判決なり何なりで処理するということでしたよね。 ● そうですね。 ● よろしいでしょうか。 ● ちょっとお尋ねしたいのですが,この組織自体が非常にマイナスの財産になっていたというときには,どんなふうに理解をすればいいのでしょうか。だれか一人退社するというときには,マイナスをその人が割ってお支払いをして退社をされると。まあ,有限責任ですから,その出したものでそれで終わりということなのですが,それ以外にいろいろなことが,それだけで割り切れないような責任がもやもやした形でよくあると思うのですね。今,仕掛中の仕事が動いているけれども,それがうまくいってなくて,例えば半年後1年後には物すごい損が出る可能性もあるとか,いろいろなことが起こると思うのですね。特に人的な組織になりますと,社員の中のAさんとBさんが頑張っているのだけれども,それがうまくいかないもしれないとか。そうすると,我勝ちに退社すると。沈むタイタニックから早くおりてハワイに行っちゃおうという世界があるんですね。実際上そういうことが他の企業形態についてもあるわけでございますけれども,そういうようなケースというのはどういうふうに理解をすればよろしいのでしょうか。特に,債権者あたりから見たら,例えば……。 ● 普通の株式会社・有限会社と変わらないのではないかと思いますが。 ● 損害賠償とかのそういう世界で全部解決していくということですかね。 ● 何らかの,例えば業務執行者としての責任があれば,それは後にも追及されますけれども,単なる社員であるということだと,それ以上は……。やめますよと言ってやめた場合は,それを何かマイナスをてん補してからやめろというようなことはできないのだろうと思いますけれども。それはもう有限責任ですから。 ● まあ,それが有限責任なわけですけれども,例えば,AさんとBさんが何かやって失敗しそうなものを,割とバインドの緩い組織ですから,社員ではいるのだけれども余り何もコメントしないでいたという責任がどうなるとか,何か非常に相当ごちゃごちゃしそうな可能性があるなという気がするのでございますけれども,それはもう通常の民法上の……。 ● 黙っていたというのは,結局監視義務違反ということですから,ここでは,そういうものについては第三者責任は課さないというのは,そういうことも含んでいるのですね。 ● そうすると,外から見るとなかなか難しい組織,要するに,ここと取引することによっていろいろなことが起こる可能性もあるので,そうすると,例えばトランスペアレンシーの問題で,どれぐらい出資金があるのか何とかというのは,先ほどの,余り定款にも書かれていないようなのですけれども,ちょっと不安だなと。一体この組織というのは外から見て--いや,私なんかはそれに近いことをいろいろ言って,まあいいじゃないかみたいなことをよく言うわけでありますが,ここまでいいじゃないかだと,ちょっと不安もあるなという感じもあるのですが,ちょっとこれは言い過ぎかもしれませんけれども。そこら辺は,やはりこの組織自体が安心感のある仕組みになっていくという線は守らないといけないような気がするのですね。 ● 少なくとも,社員の責任で何か賄うという考えでないことは確かだと思うのです。 ● 例えば,外から見て一体どれぐらいの出資金がたまっているのかというのはよく分からないし……。 ● それは貸借対照表・損益計算書で。 ● それを見ればいいということですかね。   ということは,毎年毎年それをとるのであって,登記所に行って定款を見ても分からない,貸借対照表をいただいてチェックをすると,こういう仕組みになっているということなんですかね。   いや,ちょっと私の理解が十分ではないので,何か非常に時々不安になる仕組みかなという気もしたものですから,お尋ねしただけなのですけれども。 ● 財産状況だけを申し上げれば,資本の額を登記されていることによって財産状況が分かるかどうかはさておき,資本の額は登記されるということになりますので,そこは有限会社と同じレベルですね。あとは,業務執行者なり職務執行者なりについてはその氏名・住所が登記されますので,そこも同じことになります。   したがって,対外的な見え方としては,有限会社とほぼ変わらない見え方がすると。 ● そういう理解をして見ておけばいいということなんですかね。 ● 外向けにはそういうことですね。 ● ただ,そこが有限責任なので,一定のところで終わりだよと。そういう覚悟をして取引をしてくれということでは有限会社と同じと。 ● はい。 ● それでは,先に進ませていただいてよろしいでしょうか。   3ですが,3の(2)でありますが,会社形態の変更のような問題が①で挙がっておりますが,この点につきましてはいかがでしょうか。何か御意見ありますでしょうか。よろしゅうございますか。   よろしいですか,○○委員,(2)の①については。 ● はい。 ● それでは,御了解いただいたものとして取り扱わせていただきたいと思います。   次に②でありますけれども,商号の在り方,これは米印が二つついておりますけれども,特に二つ目は,どれがいいかというのがありますが,何か御意見ありましたら。前の方の米印の一つ目ももちろん結構ですが。 ● 新たな会社類型の名称なのですけれども,この中から一つを選ぶということではないですよね。   といいますのは,現行有限会社の歴史的な教訓もございますように,ネーミングというのは ,これからこの日本版LLCがどのぐらい使われるかについて非常に大きな事実上の影響力を持つと思われますので,むしろ法律家が考えるよりは,専門家というか,広告会社とかそういうようなところも含めて,広く意見を募った上で慎重にお決めいただければと。まあ,余計なことですが。 ● 何か○○幹事御自身のアイデアは。 ● 私自身は特にないのですけれども。 ● いかがでしょうか。   最初の方の米印はいかがですか。名称と社員の責任との連動ということでありますけれども。名称を維持するとすると,その名称に応じて社員の責任が連動するということですが,この点についてはよろしいでしょうか。 ● しゃくし定規に言わなくてもいいのかもわかりませんが,今こういう制度をつくったら,合資会社については,結果,実質的に違反したところで実害はないと思うのですが,やはり合名会社として,例えば二人の社員がいるということが分かって,もちろん登記なり何なりを見れば,そのA・BのうちのBが有限責任社員だというのは分かるのかもわかりませんが,通常--そして,両方が業務執行社員であると,今回それが認められるようですので,会社代表もするし,業務執行もすると,ところが,定款なり登記を見るとBは有限責任だったというと,普通はそこまでいかずに,合名会社ということで両方が無限責任社員だということを信頼いたしますので,そうするとこういう責任を負わせるということになるのですが,それもやっぱり,そういう場合には合資会社にしないといけないぞとした方が,制度としては素直なのではないか。ただ,すぐにその方がお出になって合名会社に戻るのだから,商号の変更登記や,あるいはそれ以上に看板を書きかえるのが面倒だと言われればあれですが,やっぱりそこぐらいは法としては要求すべきではないかなと,理念的には思います。ただ,強く主張するつもりはありませんが。 ● よろしいでしょうか。   それでは,2番目の米印は,何か今御意見があれば,是非。 ● 名前について,ネガティブチェックだけなのですが,「合名」・「合資」・「有限」,それから,私どもの組織は中小企業の協同組合の組織なのでございますが,それと紛らわしい名前を使わないでいただきたい。例えば,ここで言うと,「合同会社」というのは,「合名」の「合」が使われているし,なるべく違う漢字,1字もダブらない漢字をお使いいただくようなものを工夫していただけないかなと。   それから,本当にこれが会社ということなのか。英語で言うと恐らく「パートナーシップ」なので,そういうイメージが私なんかは非常に強いのですけれども,本当に「会社」という言葉を使うべきなのかどうかもよく御検討を。まあ,「会社法」なのですけれども,何かほかの言葉を使うと,LLCは使いやすい仕組みだというイメージアップにもなるような気がするのですけれども。   何もアイデアがなくて,ただネガチェックをしているだけなのでございますけれども。 ● 一応,会社だという前提で話は進んでいると思うのですね。 ● でも,大分今までの会社とは違って。   なぜこんなことを申し上げるかというと,最終的にこの仕組みが使われるのは,税法上の何らかのアドバンテージが,やっぱり裏づけが将来的に出てくる可能性も見据えて議論しているわけですから,要するに,会社に課税しないで個人参加者に課税するというようなことも,まあこれは決まったわけではありませんけれども,それも含みでネーミングに色をつけておかないと。ああ,会社かということになると,会社というのは会社が責任を持って,そこで働いている人たちが全部責任を持ってと,こういう形になっていて,利益はどこに行くのかというと,会社に利益がとどまって,それをどう処分するかという議論ですが,そこがちょっと違ってくる可能性もある。それは可能性の話でありますが,税法上の問題,そこら辺を含みで,何かいい,よりベターなものがあればという程度の話なのでございますけれども。   「簡易会社」とかという言葉になると,「複雑会社」もあるのかとか,またいろいろな反対解釈も出るものですから,非常にこれはつらいなと思っております。 ● 今の○○委員の方からのネガティブチェックリストに入ってしまったので,私は違うように考えるということだけで申し上げたいのですけれども。   全く根拠があるわけではないのですが,私は,「合同会社」あたりはなかなかいい名前なのではないかなというふうに思います。というのは,やはり合名会社・合資会社・「合同会社」は似通った会社であるということを,「合」の字が共通だということで示すのもなかなかいいのではないかなと,そういう感じを持つのですが。 ● とても今日決めるということにはならないと思いますので,いろいろ御意見をいただければと思うのですが,ほかにはございませんか。 ● 別のことでもよろしゅうございますか。   非常に初歩的な質問で申し訳ないのですが,今の「② 商号の在り方」の米印の一つ目について,先ほど○○委員がおっしゃったように,義務づけるという方向で私は賛成なのですが,その前のページの「① 規律の適用関係」で,イとロが,有限責任社員を新たに加えた,あるいは有限責任社員の全員が退社したときに,それぞれ,「爾後合資会社に係る規定の適用を受ける」,ロの場合には,「爾後合名会社に係る規定の適用を受ける」と。これは,商号を変えたり,あるいは登記をしなくても,そのときから規定の適用関係が変わるという意味でしょうか。 ● 規定の適用関係はそうなるのですね。 ● 有限責任社員を新たに加えて合資会社の規定の適用を受けることになったときには,商号変更の登記は義務になるという理解でよろしいのでしょうか。 ● それはすべきなのですね。定款を変更して商号を変更するというのがやるべきことなのですが,もしやらなかったときにどうなるのかということです。 ● イとロは,こういう会社において行うべき手続というものも法定するという趣旨で読ませていただいてよろしいのでしょうか。 ● そうなります。   イは,多分それで問題はないと思うのですが,ロは,退社したりすると,そのときに直ちに変えることはできませんので,今でもそうですけれども,ある程度,1か月程度猶予期間をとって,その間にということになると思うのですけれども。 ● 分かりました。 ● よろしゅうございますか。   それでは,名前の点は,またアイデアがありましたら,いつでも結構ですから,事務局に御連絡等いただきたいと思います。   先に進ませていただいて,(3)でありますけれども,(3)につきましては,(注3)に星印がついておりますが,(注2)の点につきましても御審議をいただきたいということであります。いかがでしょうか。 ● (注2)につきまして,新たな会社類型から株式会社への組織変更について,債権者保護手続を要しないというのは全く賛成でございますが,それに加えまして,総社員の一致によるというところなのですが,これも,「原則として」というふうに入れていただけないかと思います。この原案は,強行法規という御趣旨ですよね。 ● そうでしょうね。 ● どうして総社員一致だとまずいかと申しますと,一応この日本版LLCはいろいろな使い方がございますけれども,将来におきまして,株式会社に組織変更して公開すると,IPOを行うというようなルートも十分に念頭に置いて使ってもらいたいということだろうと思います。そうしたときに,組織変更の段階で非常に零細な持分を持っている,例えば従業員にストックオプション的なものを与えたその一人が拒否権を持つようなことになってしまうというのは,非常に機会主義的行動を誘発することになりますので,全員一致でなくてはならないというのはやはり非常にまずいだろうと思います。 ● これは確かに重要な点ですが。   これは組織変更一般に通ずる問題ですよね。どう考えるかということですね。 ● 多分,現行法の理解にもよると思うのですが,今の98条になりますか,合併をするには総社員の一致だというのはあるのですけれども,そこが強行規定なのか,定款で別段の定めが許容されるのかということだと思います。   ちなみに,解散の方は,総社員の一致は総社員の一致で必要なのですが,別途定款に定めたる事由等がありますので,それで定めるということになるのだと思うのですけれども,ちょっと現行法の規定がはっきりしないものですから……。 ● 責任関係が違いますから,合名・合資とは違って考えていいという考え方はあり得ると思いますね。ですから,その辺ちょっと……。   どうですか,ちょっと考える時間を置いて……。 ● 私は,○○幹事の御意見に賛成です。新たな会社類型から株式会社への組織変更に関して言えば,必ずしも総株主の一致でなくてもいいというのはおっしゃるとおりなのではないかと思いますし,今後,いろいろな利用の仕方がひょっとしたらされるかもしれませんね。つまり,現在の有限会社的なものが将来なくなる方向で,株式会社と全部一体化する格好で使われるということになりますと,ひょっとしたら,従来有限会社を選んでいらっしゃったような方々の一部がこの新しい類型に流れるかもしれないというようなこともあるかと思いますので,そういうことを考えましても,おっしゃるように,だんだん大きくしていって株式会社にきちんと変えて将来は公開したいというようなことを抑える必要はないと思います。 ● 確かにそういう問題はあると思います。ただ,今まで事務局も考えていなかったようですから,ちょっと検討させていただきます。 ● 単に組織変更することになりますと,当然,従来の社員に株式の割当て等をしなければいけなくて,どういう割当てになるのかということも非常に大きい問題だと思うのですね。単に組織変更するというだけでなくて,そういった条件等について,やはり社員の同意が本来はむしろ必要だと私は思います。もしそういうのが全部事前に決めておけるのならばいいですけれども,当然,会社が変わっていく中で,組織変更する時点での社員の持分をどう評価して,どういうふうにその株式会社の株式を割り当てるべきかとか,そういう問題が出てきますので,少なくとも,そうするとそれこそ退社権と絡めて考えなければいけないというようなことにもなってくるでしょうし,ちょっとこれは,単に組織変更するかしないかについての総社員の同意が必要かどうかというだけの問題ではない。ドイツの組織変更法なんかも全員を必要としていますし,その点,もうちょっと慎重に検討していただければと思います。例えば,信用出資や労務出資をしている人をどう扱うのかというようなことも実際上問題になってくると思いますので,そこら辺のところをお考えいただければと思います。 ● 確かに難しい問題があるようで,ちょっと検討させていただきたいと思います。   それでは,(注2)はそういうことで,(注3)についてはいかがでしょうか。この点については御了承いただけますでしょうか。 ● ちょっと時機に遅れたのですが,(注2)の「債権者保護手続は要しない」という,ここで考えられている「債権者保護手続」というのは,商法100条的なことを念頭に置かれているのか。例えば,有限会社から株式会社についての価格てん補責任とかそういうたぐいのものがありますが,そういうものはまた別にお考えいただけるということですね。 ● はい。 ● それでは,(注2)は今のようなことです。   それから,(注3)もよろしいでしょうか。 ● この原案にはないのですけれども,一つ確認させていただきたい点がございます。   といいますのは,この日本版LLCが,何度も出てまいりましたように,パススルー課税を受けるということを前提にしているとすれば,いわゆる企業の利益を各社員に配布する,要するに組合的な利益の配布というのが利益配当とは別個に生ずるという考え方になるのだろうと思います。その点についてはあえて規定を乗せないということでしょうか。つまり,事務局としてはその点をどういうふうにお考えになっているのかを一応確認させていただきたいのですが。 ● 悩ましい問題なのですけれども,財物の移転については、どうしても違法配当その他の問題がありますので,どういう手続でどういうふうに戻すかという規律になると思います。   他方,多分,御指摘の点はそうではなくて,会社の持っている利益全体がどういう形で帰属しているかという問題だと思うのですけれども,それ自体は,理念的にはさておき,会社法上の法的効果は余りないものですから,そこについては特段規定を置かないということになると思います。 ● 分かりました。 ● 合名・合資・「合同」についてお願いがあるのですけれども,社債の発行権限は,今,合名会社とか合資会社はないと聞いているのですけれども……,あるのでしたっけ。では,この「合同」についても社債が発行できるということでよろしいか,御確認をいただければと思います。 ● 社債につきましてはまた検討していただきたいと思っているのですが,一応,今の事務局としては,合名・合資・「合同」--「合同」じゃないかもしれないのですけれども--すべての形態について社債を発行することができるという方向で検討し,規律につきましても,株式会社とほぼ同様の規律でやれるようにしたらどうかというふうに考えております。 ● 参考までに一つ。   先ほど議論になりました,(注2)の「総社員の一致による」というところなのですが,私どもの中小企業団体の組織に関する法律という組合関係の法律がありまして,組合から株式会社ないしは有限会社といったようなものへの組織変更の場合には3分の2の特別決議,それで反対した組合員には持分全部の払戻しということで,これが一番最初のこういう形態の法改正だったと思いますが,参考までに申し上げておきます。 ● ちょっと言い忘れてしまったのですが,2点あるのですけれども。   1点は,社員の退社の持分の払戻しのところなのですが,お伺いしたかったのは,先ほど,○○幹事とのやりとりの中で,定款に定めれば社員が死亡した場合も退社の事由になるということだったかと思うのですが,その場合の持分の払戻しはどのように考えておられるのかということがちょっと気になったものですから,1点お尋ねしたかったということです。   それから,先ほどのネーミングのことなのですが,確かに,○○幹事が言われたみたいに広告会社に聞くのはいいかなと思うのですけれども,そうすると,「成長会社」とか「発展会社」とかになりそうな感じもして,どうかなとも思いましたものですから,ちょっと気になっているのですが。私は,むしろ大事なのは,英文で表記したときにこれがLLCであるということが分かるということではないかなというふうに思いますので,そういう意味ではある程度限定されてくるのではないかと思います。 ● 死亡退社はほかと何か違うんですかね。計算の仕方なんかは普通の退社と同じだと思います。 ● ああ,そうですか。   いや,死亡の場合,先ほど,持分の払戻しについて債権者保護手続等がとってもらえないときには,その者が解散の方に移行していくということがあり得ると。そうなんだろうなと思うのですけれども,死亡してしまっている場合には,その遺族に対してある程度払い戻さなければいけないという状況が生じていた場合に,上記の分配の限度額を超えても払うということになるのか,それとも,そういうときには何期かにわたってゆっくりと払っていくということになるのか,それはどうなっているのでしょうか。 ● それは一遍に払うのでしょうけれども,おっしゃるように,社員ではない者が解散請求できるのかという問題は確かに法技術的な問題としてはあります。ちょっとこれは検討する必要があるかと思います。   そこまで考えていなかったのですが,何かありますか。 ● 株式買取請求について財源規制をかける場合の処理と同じにさせていただいてよろしいかどうか,いま一度整理をさせていただきたいと思います。そのような整理ができるとすれば,請求権自体は発生し,あとは,財源規制に引っ掛かるというのであれば,業務執行者の責任の問題ということで処理することができると思いますので--その責任の在り方とも関連いたしますけれども--その方向で整理をさせていただきます。 ● それでは,資料21につきましてはよろしいでしょうか。   もう5時近くなってようやく資料21が終わりましたが,資料22も大変でありまして。   それでは,事務局から資料22につきまして説明をお願いしたいと思います。 ● 本日の部会資料として事前に配布させていただいた責任上,この資料22については概略の御説明をとにかくさせていただきます。恐らく,次回,引き続いて御審議いただくと思いますので,その際にはまたこちらの方から特に検討していただきたい事項を中心に再度御説明を差し上げますけれども,本日のところは,この資料の趣旨,各項目の概要につきまして概観していただきたいと思いますので,少しお時間をいただきます。   この部会資料22は,有限会社と一体化した上での株式会社の機関設計に係る論点を中心に,現行法上の両会社類型を一つの会社類型として規律するという方針をとった場合に生ずる諸論点につきまして,これまでの御議論を踏まえまして,この段階で議論の方向性の整理をさせていただこうとするものでございます。主たるテーマは機関設計の部分でありますけれども,一体化に伴うそれ以外の,これまで御議論いただき,あるいは積み残しになっていた項目につきまして,一応の事務局側の整理を掲げさせていただいているところでございます。   まず,「二 株式会社の機関設計」に関する部分についてですが,ここは1から6まで項目を分けさせていただいておりますけれども,試案も含めました従前の資料とは異なりまして,一体化されたものとした上での株式会社の機関設計の在り方について,現行の規律からの変更点を掲げるという方針ではなく,規律の内容を一から積み上げて記載するという方針で,項目の並べかえ,整理を行っております。思考の便宜ということもありますし,法律の条文の並び具合というものもイメージしていただけようかと思います。議論に漏れがないような形で項目を整理させていただいているところでございます。   また,この機関設計と三のそれ以外の論点との関係で,従前,株式会社的な機関設計をとった会社,現行の有限会社的な機関設計を採用することとすべき株式会社につきまして,それらの機関設計の相違とそれ以外の規律についての現行法上の株式会社と有限会社の違いというものとをある意味で結びつける方向での議論というのもさせていただいてきたところでもありますけれども,これまでの御議論で,機関設計についての選択というものが,機関設計がその典型的なものとして予定しているような実態と必ずしも一致せず,どのような実態の会社がどのような機関設計を採用するかということは,それぞれの会社の自治,自由な選択の結果であって,選択の結果が当然実態に即したものとなるわけではないという御指摘をちょうだいしているところであります。したがいまして,この機関設計の選択とそれ以外の規律の在り方とについては当然には両者を結びつけることとはしないという形で,従前までの項目の立て方を見直し,中身の修正をさせていただいているところでございます。主として三の論点にかかわることでございますけれども,そういう意味で,機関設計は機関設計の問題としてまず御吟味いただきたいと思います。   1は,株主総会及び取締役に関する規律を列挙したものでございます。   現行の有限会社的な機関設計の選択を認めるということになりますと,新しい法制のもとでの株式会社の最もシンプルな機関設計は,株主総会と取締役のみということになるわけでございます。そのことが(1)に掲げてありますし,その場合には決議事項の制約に係る230条ノ10のような規定の適用を受けないという点が(2)でございます。   (3)も,現行の有限会社の規律の確認をさせていただいているものでございます。   (4)も同様でございます。複数の取締役を設置することは妨げられるところではありませんが,複数の取締役が設置されたからといって当然にその複数の取締役を構成員とする何らかの機関の構成を予定するというわけではないということでございます。取締役の過半数をもって業務執行の意思決定をするという原則--現行の有限会社法における規律--の確認をさせていただくものでございます。   (注1)でございますけれども,複数--2人でもあるいは3人以上でも結構ですけれども--複数の取締役がこの株式会社に置かれた場合,現行の有限会社法によりますと,その間の業務執行の意思決定の在り方について定款での別段の定めというものが許容されているわけでございます。その定めの内容として,例えば,現行の株式会社における取締役会のような手続規定を設け,定足数なり決議要件なりを定め,あるいは議事録を作成するかどうかというようなことも定める,このような取締役会的な規定を設けるということは,もとより現行の有限会社についても妨げられているところではありませんけれども,そのことは新しい法制のもとでも同様に可能であるということを確認するものでございます。   なお,株式譲渡制限会社以外の会社--非譲渡制限会社--につきましては,現行の株式会社に関する規律,すなわち取締役会の設置の義務づけを維持するというのが,(4)の(注2)でございます。   (5)ですけれども,(4)の場合,すなわち株式譲渡制限会社において複数の取締役が置かれた場合に,どのような形で代表権を持つべき者を定めるのか,代表権を持つ者がだれなのかということについては,現行の有限会社法の規律と同様の規律を設けるということでございます。もとより,(4)の(注1)の任意の取締役会のような規定を定款に置く会社においては,その規定に従って代表権を有する取締役を選定するということも妨げられないところでございます。   (6)についてですけれども,ここは従来の実質を若干変更すべきかどうかということをお諮りさせていただきたいところでございます。デフォルトルールとしては,株式会社には当然には監査役という機関が設けられないということになります。また,後の方での議論次第では,監査役が必ずしも業務監査権限を持たないということになる可能性もありますが,いずれにしても業務監査権限を持つ監査役が置かれていない会社におきましては,株主の取締役に対する監督権,是正権といったものを現行よりもやや強化すべきではないかという観点から,業務監査権限を持っている監査役が置かれていればその監査役が行使できるであろう権限--違法行為差止請求権についての行使要件の問題ですけれども--について,そのような監査役が置かれていない場合には,株主がそれと同様の要件のもとにその権限を行使することができることとしたらどうかというものでございます。制度の選択肢を多様化することとした場合であっても,制度のバランスということを考えますと,業務監査権限を持つ監査役の有無によって株主の権限にこのような違いを生じさせるというのがむしろ適当ではないかという配慮に基づくものでございます。   次が,「2 取締役会等」でございますけれども,(1)は,株式譲渡制限会社における規律として,現行の株式会社における取締役会に相当する機関,すなわち商法230条ノ10の適用により株主総会の権限が制約されるというタイプの取締役会を設置することができるものとするということでございます。すなわち,株式譲渡制限会社におきましては,そのような法定の,230条ノ10の適用を前提とする取締役会の設置をすることが--任意でありますけれども--妨げられないということを確認させていただくものでございます。この場合には,株主総会の権限を制限することとなるということの性質上,現行法における取締役会の法定権限,取締役会で決議すべき事項,あるいは取締役会に係る様々な手続的な規律というものが適用されるべきことになるものと整理することができると思います。   (2)は,取締役会が設置された場合,この法定の取締役会は,230条ノ10を前提にいたしますと,株主総会から離れて,相当程度法定の権限を持つということになりますので,それに対して一定の監査権限を有する機関というものが必要になると考えられるところでございまして,現行法はその点を少なくとも監査役という機関を設置させることで保障しているわけですけれども,そのような機関設計,すなわち取締役会プラス監査役という機関設計を原則とした現在の株式会社と同様の取扱いをロ・ハでまず確認させていただこうとするものでございます。イについては,後ほど4のところで改めて御説明申し上げます。すなわち,譲渡制限会社におきまして,ロを選択した場合には取締役会プラス監査役ということになりますし,ハを選択した場合には言うまでもなく委員会等設置会社ということになるわけでございます。   なお,ここでは,(2)のロについて,監査役は業務監査権限を持つということを前提にして記載しておりますけれども,その監査役の権限の見直しの要否については,また後に御議論いただきたいところでございます。   (注1)については4の方に回すことといたしまして,(注2)について若干説明させていただきます。委員会等設置会社は,現在,大会社あるいはみなし大会社として会計監査人の設置を前提にした制度とされております。しかしながら,仮にこの三委員会を持つ取締役会というものが,会計監査という面を除いてもコーポレートガバナンスの制度設計として成り立ち得るものであるということであれば,会計監査人の設置ということを必ずしも委員会等設置会社という制度自体とは結びつけずに議論することもできるところでございまして,(2)のハにつきましては,(注2)も含めまして,そのような趣旨の選択というものがあり得るかどうか,要するに,委員会等設置会社とするためには必ず会計監査人を置かなければならないということにしておくべきかどうかという点について,改めて御確認,御議論いただきたいということでございます。   なお,2の(3)は,株式譲渡制限会社以外の株式会社については,取締役会プラス監査役,あるいは委員会等設置会社のいずれかの選択が必要であるということを確認させていただくものでございます。   それから,「3 監査役・監査役会」ですけれども,譲渡制限会社におきましては,監査役という機関を前提としない委員会等設置会社を除きまして,監査役を設置することができるということが原則的なルールになります。複数置くかどうかということは自由ですけれども,複数置いた場合は,監査役会の決議事項とされる事項等については監査役の過半数の同意を要するものとするという形で議論の整理をさせていただくということでございます。   監査役につきましては,まず3の(2)の点ですけれども,従前からいろいろと御議論がありますとおり,監査役について一律に業務監査権限--会計監査権限を含む業務監査権限--を与えるべきかどうかという論点がございます。試案でも一律に業務監査権限を与えるという方向での案の提示をしておりましたけれども,これについては賛否両論,意見が大きく分かれているところでございます。仮に会計監査権限のみを持つ監査役というものを残すということになりますと,例えば,それを一定の規模以下の会社等,一定の範ちゅうの会社に限るということとすべきなのかどうか,そもそも現在は同一の会社において権限が異なる監査役の混在ということが予定されていませんけれども,仮に混在するということがあり得るといたしますと,同じ名称としておくことが可能かどうか,名称を分けるべきではないかなど,いろいろと御議論いただくべき点があるのではないかと思います。   また,会計監査権限のみを有する監査役のみが設置されているという場合には,(注1)の後段に書いてありますように,取締役と株主総会との権限分配につきまして,230条ノ10というものを同様に適用してよいのかどうか--適用してはならないということになりますと,結局,その場合の取締役会というものは,法的機能としては,任意の取締役会とほぼ同じということになってしまいますけれども,そのような整理をすべきなのかどうか--いろいろ御議論をいただきたいと思います。   (3)についてですが,これは従前,会計監査人を設置する場合の機関設計の柔軟化という形で論点を提示させていただいておりましたけれども,譲渡制限会社につきまして,会計監査人の設置が義務づけられる会社でありましても監査役会を設置することまでは要しないという整理をさせていただくことでどうかというものでございます。   (4)は,監査役会の設置が強制されない会社において複数の監査役を設置する場合に,定款で監査役会の設置を任意に選択することを許してよいかどうかという点でございます。現行法のもとでは,会計監査人が設置される場合に限って監査役会という機関が存在し得るわけですけれども,複数の監査役の監査の在り方として,現行法の監査役会設置会社における監査役会の規律を,会計監査人が設置されない会社にも適用することはどうかというものでございます。むしろ,会計監査人が設置されない場合には複数の監査役が置かれたとしても監査役会を構成することができないという規律にしておくべきかどうかと言った方が正しいかもしれませんが,その点についての御議論をいただきたいということでございます。   (注1),(注2)は,会計監査人が設置されずに監査役会が設置されたという場合を想定いたしますと,このような整理になるのではないかということでございます。   4についてですが,事務局において仮に「会計参与」と称させていただいておりますけれども,会社の新たな機関の創設を検討すべきではないかという提案をさせていただくものでございます。   古くは昭和61年の商法・有限会社法改正試案の中での「会計調査人による調査」あるいは「会計専門家による指導」の提案など,主として中小規模の会社の計算の適正さの確保等の観点から,様々な提案がこれまでされてきたところでございます。   今回,試案の中で,会計監査人の設置範囲の拡大ということで,現行法で言う小会社についても会計監査人の設置の許容をすべきではないかという点を掲げさせていただきましたところ,それについては非常に多くの賛成意見が得られたところですけれども,一方で,中小規模の会社の計算の適正さを確保するためには必ずしもそれだけでは十分ではないのではないか,会計監査人による監査というものの利便,利益を享受することができる中小規模の会社は非常に限られており,むしろ,より利用可能性の高い制度の構築を検討すべきではないかという御意見も非常に多数寄せられたところでございます。これを受けて,このような制度設計を考えたらどうかというのが,お諮りする趣旨でございます。   これは,一定の資格者が就任することを前提にし,内部的な機関として位置づけつつも,内部の他の機関からの独立性を確保し,いわば社外取締役と同様の立場に立たせ,その職務については,計算書類の取締役等との共同作成,それにかかわる株主総会における説明,計算書類の保存,株主等への開示に対する対応等とし,その職務を行うことを前提にして必要となるべき権限を持たせる,という規律の制度としてはどうかというものでございます。社外取締役に相当する立場に立たせることとした場合には,責任についても,社外取締役と同様の会社・第三者に対する責任を負うということとなるものでございます。   本日,一部の新聞で報道されているところでございますけれども,あくまで会社における任意の機関として位置づけ,他方,外部監査たる会計監査人制度とは別個の性質を持ち,それぞれが並び立ち得る--同一の会社でその両者が存在することもあり得る--ということを前提にして,このような制度設計を構築することはどうかということをお諮りさせていただきたいということでございます。   それから,「5 会計監査人」のところですけれども,ここでは,試案に掲げておりました会計監査人に関する諸論点を,余り異論のないところも含めまして一括して掲げさせていただいております。現段階で特に御意見をお伺いしたい点を中心に再度確認させていただきたいと思います。   まず,①につきましては,両論の御意見があり得るところでございますけれども,現時点でその範囲を画する基準を動かし,一定の基準を再設定するということは極めて困難な情勢にあると感じているところでございまして,この際,今回の改正の中では現行基準の見直しはしないということにさせていただきたいけれども,いかがかということでございます。   ただ,このことは,有限会社相当の会社につきましても株式会社として整理するということから,例えば,取締役会が置かれないというような機関設計を持つ会社につきましても会計監査人が設置されるということがあり得るということをも意味するものでございます。   もっとも,その場合に,会計監査人が置かれる以上はやはり取締役会が必要ではないか等,いろいろな御議論もあり得るところですので,その点は(2)のところで改めて御議論いただきたいと思いますが,基本的な考え方としては,従前の有限会社型の会社でありましても大会社に相当するものについては会計監査人の設置が強制されるべきであるという点の実質を変えようとするものではございません。   なお,①の(注4)でございますけれども,従前,連結計算書類作成会社の完全子会社については,その規模のいかんにかかわらず会計監査人の設置を強制しないこととすべきであるという実務上の要望があったところではありますけれども,これにつきましては,強い反対意見も他方にあるところでありまして,恐らく近い将来,企業結合法制一般の議論というのが会社法の中で行われると思いますけれども,その際の議論に委ねるということとして,今回は見送らせていただくことでどうかということをお諮りしたいと思います。   (1)の②は,先ほど少し触れました,会計監査人の設置が可能な会社の範囲についてでございます。現行の小会社に相当する会社におきましても会計監査人を任意に設置することは妨げられないこととするよう,資本が小さいこと等を理由に会計監査人制度の利用を阻害するという規制は撤廃するということを意味しているところでございます。   (2)についてですが,基本的には,会計監査人が設置される場合の機関設計のうち,公開会社--譲渡制限がされていない会社--における機関設計については現行法の規律を変えようとするものではございません。会計監査人の設置が強制される場合の譲渡制限会社,それから会計監査人を任意で設置する会社につきまして--これが機関設計の柔軟化として議論されていたところでありますが--監査役ないしは三委員会,すなわち業務監査権限を持つ監査役あるいは業務監査権限を持つ機関を有する委員会等設置会社のいずれかを選択すれば足りるということに整理させていただいてはどうかということでございます。   極論いたしますと,株式譲渡制限会社である大会社におきましては,委員会等設置会社を除けば,取締役会も監査役会も必ずしも設置する必要はなく,すなわち,取締役プラス監査役プラス会計監査人という機関設計があり得るということを意味しております。(2)の(注2)はそのことを明らかにしているところでございます。   監査役会あるいは監査委員会が設置されないという選択が可能となりますと,その場合の効果は(注3)のように整理されることになります。   それから,取締役会を設置しないという選択がされ,かつ,会計監査人が置かれるという場合については,(注4)のような整理がされるということになります。   (3)については,特に御異論がなかったところであると思います。   (4)についてですが,会計監査人の会社に対する責任につきましては,これまでも御議論が分かれていたところでありますが,基本的に代表訴訟の対象としつつ一部免除制度を導入するということとし,(注1)にありますように,その限度額等の基準を報酬の2年分,すなわち社外取締役と同様の取扱いとすることとしてはどうかということをお諮りしたいと思います。   なお,会計監査人については,その性質上,責任軽減契約による免除ではなく,法律上当然の責任限度額を設けておくべきであるという御意見が,この部会でも強く御主張されたところでありますが,その点についてどう取り計らうべきかということも改めて御議論いただきたいと思います。   (5)につきましては,少なくともこの限度での整理をさせていただくということには御異論がなかったかと思います。更に,同意権限にとどめることなく,監査委員会については決定権限まで付与すべきかどうかという議論が残っていたと思いますが,差し当たり,報酬の決定自体については業務執行権限を有する機関に委ねることとしてはどうかということから,どちらにつきましても同意権限を付与することにとどめるということでいかがかということでございます。   (6)につきましては,取り立てて御説明申し上げることはございません。   (7)につきましても,この方向性については特に御異論はなかったように記憶しているところでございます。   6についてですが,重要財産委員会制度について見直しをすべきかどうかについては,見直しをするとした場合の具体的な見直しの方向性についての指摘もさせていただいたところでございますけれども,導入後まだ間もないということもありまして,今回の作業での見直しは拙速ではないかという意見も非常に多いところでありますので,それに従わせていただくことでどうかというものでございます。   ただし,委員会等設置会社以外の会社におきまして,その規模いかんにかかわらず,商法特例法第1条の3第1項各号に掲げる要件に該当する場合であれば重要財産委員会を設置することができるものとするという規律の整理をさせていただこうかと思いますけれども,これについての御意見を確認させていただきたいと思います。   なお,平成14年の改正に関しまして,(後注2)のような指摘もあり,実務的な要望も強いというふうにも承っていたところでございますけれども,これも重要財産委員会制度と同様,この段階での見直しはやや拙速ではないかという指摘も強いところでございますので,見直しは行わないということでいかがかということでございます。   (後注3)につきましては,機関設計についての柔軟な選択が認められるとした場合,期中における機関設計の変更に伴う様々な複雑な問題の発生を回避するために,このような措置を講じさせていただくのが適当ではないかと事務局限りで考えているところでございますが,この点についての御確認をいただきたいと思います。   それから,三のところでございます。先ほども申しましたように,現在の株式会社と有限会社の規律が異なる部分の調整の在り方について,極力,機関設計の在り方とは結びつけない形で整理をさせていただこうとしているところでございまして,まず,その代表的な論点というのが,これまで何度も御議論いただきました役員の任期であり,少数株主権の行使要件であり,特別決議の要件であると思います。これらの論点につきまして,いろいろな御議論を踏まえた結果,このような案で最終的な御議論をいただけないかというのが,この1から3までに掲げた案でございます。いずれも,株式譲渡制限会社一般につきまして,機関設計の選択のいかんにかかわらず,極力統一的な取扱いをするという方針で臨んでいるところでございます。   1の任期につきましては,委員会等設置会社以外の会社の取締役の任期は原則として2年,監査役の任期は原則として4年とし,譲渡制限会社については定款でその延長を認めることとし,その延長幅につきましては,最大で例えば10年ということでいかがかということでございます。   この点については,一方で,従前,現行の有限会社型の会社については,任期規制を設けないという,現在の有限会社の規律を維持することを前提とした御議論をいただき,他方におきまして,現行の株式会社型の会社における取締役の任期については2年を原則としつつ,譲渡制限会社にあっては株主の変動が少ないという実態を踏まえて,もう少し長い期間の選択を認めるべきではないかという指摘があり,その期間の幅をどのぐらいにするかという御議論があったところでございますが,それらの前提となる会社の実態に必ずしもそれほど違いがないという指摘もあり,そうなりますと,どのように統一的に取り扱うのが適当かということが問題になるわけでございます。   他方,任期規制が全く行われていない現在の有限会社について,法定の任期規制を設けるべきであるという御議論もそれなりに有力であったところでございます。特に,登記が放置されているということが,実体とは乖離した登記事項が開示される結果を招いているという指摘を踏まえ,相応の任期規制を設ける必要があるのではないかという御議論があったところでございます。   これらの事情をいろいろと考え合わせますと,双方押しなべて,取締役については原則2年,監査役については4年とした上で,定款での自治の範囲をある程度長目に認め,どの程度の線に落ち着くかは,当該会社における事情を踏まえた株主総会の判断にゆだねることとしつつ,最高限を設けることによって,法定の任期規制がないことに伴う弊害の指摘に対しても今回の改正である程度こたえようとするのが,この案でございます。   「2 株主の少数株主権の行使要件」についてですが,従前の御議論を踏まえますと,ほぼこれでよろしいのではないかと思いますけれども,会社の規模いかんにかかわらず,現行の株式会社の,つまり有限会社よりも軽い行使要件,持株要件とするということで統一させていただきたいということでございます。   (注)については,特段これまでも御異論はなかったものと承知しております。   「3 特別決議の要件」ですけれども,特に(2)の②の取扱いをめぐって,例えば,この②のような取扱いが認められるべき会社については,特別決議要件が加重されるべきではないか,あるいは人数規制が維持されるべきではないかという御議論があったかと思いますけれども,最終的にこのような整理をさせていただくということに格段の不都合があるかどうか,いま一度の御議論をちょうだいしたいと思います。基本的には現行の株式会社の特別決議の決議要件というものをあまねく維持することとし,譲渡制限の定めを設けるという場合,それから現在の有限会社に認められております別段の定めをするという場合につきましては,加重された要件での決議--加重の在り方については,従前御議論いただきましたとおり,総株主の半数以上,総株主の議決権の3分の2以上というように統一した,いわば特殊決議--を要するということにしたらどうかというものでございます。頭数要件が必要とされるような場合がほかにもあるかどうかという点についても御意見をいただきたいと思いますが,事項によってこのような決議要件の使い分けをするということで,従前指摘されているような弊害についてはそれなりに対応可能なのではないかということでございます。   最後に,4と5についてですが,最低資本金制度の見直しにつきましては,前回までの御議論の中で,試案の中で掲げておりました三つの機能に係る見直しのうち二つについてまでは試案と同じような整理をさせていただくということでほぼ御異論はなかったものと承知しておりますけれども,設立時の払込価額規制についてどのような見直しをするかということについては,試案を取りまとめるまでの間も大きく意見が異なり,試案に対する意見照会の結果におきましても,経済界・学界を含めて相当程度意見の隔たりがあったところでございます。今回,事務局といたしましては,設立時の払込価額規制についての見直し要望が実務上非常に強いということを踏まえまして,一応それについては制限を設けないということでどうかということをお諮りさせていただきたいと思います。   最低資本金規制の見直しをこの点も含めて全面的に行うということになりますと,剰余金の分配規制もそうですけれども,形式的な資本の額よりも,実質的な会社の財産状態自体が重要であり,計算の適正さの確保やその開示ということが更に重要になると思われるところでございまして,恐らく,4のような見直しをする前提としては,開示についての規制の後退ということはなかなか許され難いところではないかと思われます。   したがいまして,5の「決算公告」につきましては,ここもまた非常に大きな意見の隔たりがあったところでありますけれども,現行の株式会社についての規律を堅持するということでどうかと考えているところでございます。   実効性についての御議論は承知しているところではありますが,各種方面に今回の改正作業の内容を説明する機会がありますと,必ずしも規制緩和ということで評価を受けるばかりではなく,会社制度についての適切な規律の確保が必要であるという指摘もよく受けるところでございます。設立時における最低資本金の見直しを行うということであれば,当然配当規制についての実質的な最低資本金規制の維持という点も御承認いただいていると思っておりますけれども,それ以外の,会計監査人制度の利用範囲の拡大や新たな会計に係る機関の創設,更には決算公告制度の維持というような点を合わせることにより,関係各方面の理解が得られるのではないか,あるいは,そうでなければなかなか得にくいのではないかというように事務局限りで思うところでございまして,4と5を合わせてこのような形で議論の対象とさせていただきたいというところでございます。   なお,4に関しまして,法人格否認の法理に係る規律の明文化等という点については,どちらかというと法人格否認の法理の適用を縛ってしまう可能性もありますので,規定を設けない方がむしろ柔軟な対応が可能なのではないかと思われることから,設けないものとするということでよいかというようにさせていただいております。4の(注1)でございます。   あと,やや細かい点ですけれども,現在の有限会社法で認められております債権者による設立取消しの訴え,これを株式会社一般についても許容するということでよいかどうかという点が,4の(注2)のところでございます。簡易に会社を設立することが可能となるということであれば,何らかの手当てとして一つ考えられるところではないかというものでございます。   いろいろと御質問等がおありだと思いますけれども,差し当たり,事務局の方から,資料の趣旨・概要ということで御説明差し上げました。 ● この部会資料22につきまして,全体を通じまして何か御質問ありますでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,次に,先ほど申しましたように,今日○○委員の方からお出しいただきました日本公認会計士協会の御意見でありますが,これがこの部会資料22にかかわっております。ここで○○委員から御説明をいただければと思いますが。 ● 部会資料22につきまして,特に申し上げたいことを,今日は字を大きくしてまいりましたので,ひとつ御理解をいただきたいと思います。   まず,「会計参与について」です。   会計参与については,任意の制度として会計参与を新設することに賛成いたします。これは,中小会社に対して,公認会計士のほか,税理士を有効活用し,中小会社の計算書類の正確性を高める効果が期待できるというふうに考えます。一方,大会社に対しても,高度に専門化しつつある会計実務に的確に対応し,かつ適切な情報開示を進めるために一定の効果が期待できると考えられますので,そういう趣旨で賛成をいたします。   2番目として,「会計監査人の設置強制の範囲について」ですけれども,今回の資料22では,現行どおりということにされておりますけれども,私どもとしては,過去の,資本金1億円以上だったという答申があったことや,実際,企業の実態は適正に示すという透明性の確保ということが今の世の中でますます必要と思われますので,資本金3億円以上又は負債総額60億円以上の会社については会計監査人の設置が必要であるというふうに考えます。   それから,そこの最後の方ですけれども,企業の社会的責任を踏まえて,会計監査人の選任懈怠をしている会社,これは結構ございます。事件があってみると,会計監査人を設置しなければいけない会社において会計監査人がいないという会社が結構ございますので,これは是非過料の額を引き上げていただきたいというふうに思います。   3番目といたしまして,「完全子会社の監査の特例について」でございますけれども,私ども,当初案では大変危機感を持っておりまして,一生懸命調べましたが,完全子会社で商法特例法の適用を受けている会社,私どもの監査を受けている会社は,一部上場で1,000社以上ございました。そういうことで大変危機感を持っておりましたが,今回の資料22ではそれを取り下げていただきましたので,この提案に賛成いたします。   4番目といたしまして,「会計監査人の任意設置の範囲について」ですけれども,これは,小会社の任意性を尊重し,また経営環境の整備に寄与するものとなるので,法律に裏づけを持った会計監査人を設置できることとすることに賛成いたします。以下,理由は省略いたします。   5番目といたしまして,「会計監査人が不適法意見を述べている場合の措置について」ですけれども,この原案には賛成です。   なお,会計監査人が監査のために必要な調査をすることができなかった--私どもは「意見差し控え」と言っておりますけれども--そういう場合も,財務諸表が必ずしも適正でない,適法でないというケースが多うございますので,このことも決算公告の中に明示することが相当ではないかというふうに考えます。   6番目といたしまして,「会計監査人の会社に対する責任について」ですけれども,会計監査人を代表訴訟の対象にすることには私どもは反対でありますけれども,意見を集約してみますと,それを言っているのはどうも私どもだけだという環境になりましたので,もうあえてここではそれ以上言わないということで,妥協いたしまして,今度の段階では,会計監査人を取締役等の会社の内部機関と同等に代表訴訟の対象とする場合には,責任の限度を報酬の2年分と法定すべきであるという主張を申し上げたいと思います。契約で責任を制限できるというふうに考えることもできるわけですけれども,その場合には監査報酬と責任の範囲の問題が経営者において関連づけられて,監査の独立性に対する重大な脅威となると思います。監査の独立性を維持した上で,初めて本来の監査の機能を発揮し得るものであり,そのためには責任の限度を法定する必要があると。これは以前に議論されました監査期間の短縮・伸縮の問題と同様であり,これはあくまでも法定としないと経営者とつまらないところで争いが出るというふうに思っております。   7番目として,「会計監査人の報酬について」ですけれども,監査役会又は監査委員会に,報酬の同意権でなく,決定権を与えるべきではないかというふうに考えます。これは,本来,経営者が自ら監査を受けるという立場で監査報酬を決めるというふうな形は望ましいことではなくて,監査役会又は監査委員会にそういう権限を付与することが,適正な監査,ひいては透明な財務情報の確保ということになるのではないかというふうに思います。   以上,特に申し上げたいことだけ申し上げさせていただきました。 ● それでは,それぞれの項目について御審議いただくわけでありますけれども,先ほど事務局から説明がありましたように,従来は,特に株式譲渡制限をした会社につきまして大きく2種類に分ける--主として株主総会に権限がある会社と,取締役会という形で経営者が権限を持っている会社と--2種類あるということで要綱試案等はできていたのですが,どうも審議をここで一つ一つ詰めていきますと,どちらの--従来,1種・2種と言っておりましたけれども,1種だから株主総会にかけなければいけないという項目はほとんどないのですね,実は。かけなければいけない項目については1種も2種もほとんど変わらない。そうすると,1種の方は任意に総会で決議できるのだといいましても,それはほとんどかけられないであろうと。そうすると,どこが違うんだという話になってまいります。それから,1種の方につきましては,特別決議要件とか,あるいは株主数の制限とか,そういうことで実体を区別すべきだという御意見もあったのですが,それに対しては非常に強い反対の御意見もあると。そういうことを踏まえますと,機関設計とそれ以外とはもう離してしまって,機関設計は基本的には非常に選択肢を広くするということで,そのほかにどういうことが考えられるかということが問題なわけですが,その苦心の結果がこのような原案になっているわけでございます。   それで,せめて少しでも進んでおいた方が次回楽だと思いますので,最初のところを御審議いただきたいと思います。   まず,一につきましては,こういうことで御了解いただいているかと思いますけれども,二の1でございますが,この点につきましては,今回新たに出てきた問題といいますのは,強いて言えば1の(4)の(注1)の点。これは,従来の有限会社と同じ取扱いだと。つまり,有限会社であっても,現在,取締役の過半数の承認ということなのですけれども,それについて何らかの手続を設ける,会議体を手続として定めて,その出席者の過半数というようなことも定められるわけですけれども,それと同じような規定を設けるということでよろしいかという点。   それから,この案で新しい点は,(6)でありますが,監査役,あるいはこれは業務権限のある監査役のない会社ということになるかもしれませんが,そういうものがない会社については,やはり,先ほど申しましたが--極端な場合,取締役が一人という会社というケースを考えた場合ですね,現在の有限会社よりも強くなりますけれども,何らかの株主の権限の強化をする必要があるのではないかということで,こういうことは考えられないかということだと思います。   この1につきまして御審議いただければと思いますが,どの点でもどうぞ。 ● 整理の御苦労は非常によく分かるのでありますけれども,そもそも株式会社というのは所有と経営とが分離しているものだというふうに教わってきまして,その株式会社の原則を,株主総会がすべてについて決議をすることができるというのを大原則に据えるということは,本来の株式会社とは随分違うものをイメージするところからまず始まっているのではないか,有限会社の理念を株式会社の理念としているのではないかという,そもそもの考え方が,ちょっと長年教わってきたところを大転換するものですから,それで本当によろしいのかと。株式会社というのは所有と経営が分離しているための経営形態であると,こういうふうに言われてきたのですけれども,それを百八十度発想を転換させているということについて,皆様がそれでよろしいのか。我々は実務家ですから,こんなのは運用はどうにでもしていくのですけれども。 ● それは,「株式会社は」と書いてありますけれども,従来の言葉で言えば「物的会社」だとか,そういうことだと理解するしかないのではないでしょうか。 ● 私も,この点について言えば○○委員と同じ感想を持ちまして,更に言えば,この部会資料22をいただきまして,どこを読んでも目をこすりながら読むような感じで,更に非常に複雑になっているものですから,そもそも正確に理解できているのか非常に不安がございます。確かに,各界のいろいろな御意見を伺って,なるべく選択を広げ,一方で基本的には同じ制度のもとに置こうという理念ですね,さっきの,有限会社や株式会社のような従来の区別を廃止してなるべく同じ制度のもとで,あとは選択だということにした結果,非常に複雑な制度になって,かつ,制度の趣旨が分かりにくくなってしまっているのではないかと。今,○○委員がおっしゃった所有と経営が分離するような株式会社というのは,一体この中のどこにどのようにしてあって,どういうものをとったときがそういうものなのかというのが分からない。   特に一番痛切に感じますのは,委員会等設置会社が全く性格の違うものになってしまって,株式譲渡制限をしている会社についてまで委員会等設置会社になり得て,見ると,会計監査人がつかないということもあり得るということですから,そうすると,多分,利益処分権限も株主総会の方に行く委員会等設置会社が出てき得るということになってくるのかなと。そうすると,今までの委員会等設置会社とまるで違ったものが出てき得るのではないか。そうなりますと,もともとの従来やってきた制度の割り振りとの関係が非常に変わってきてしまうのではないか。   従来は,むしろ大小会社はそれぞれの実態にふさわしい法制にしようと昭和49年改正以来努力してきたのではないかと思います。小会社については,簡易化と,なるべく任意的に定款自治等もなるべく認めようという方向でいくと。それに対して,大会社についてはガバナンスの強化を図って,監査や監督体制の強化や,あるいは監査役会ですとか社外取締役ですとか,あるいは社外監査役,あるいは委員会等設置会社といったような制度を充実させてきたように思うのですけれども,はて,この新しい御提案の中では従来のそういった努力してきたものがどのような形になってしまうのか。   私がよく分からないのは,例えば「5 会計監査人」の(2)の(注5)ですか,「監査役の員数は1人以上で足り,常勤監査役・社外監査役は不要とする」とあるのですが,これが商法特例法上の大会社にも適用されるのかされないのか,ちょっとこの文章だけではよく分かりませんで,仮にこれが商法特例法上の大会社にまで適用されるということだとすると,いわば監査役会ですとか社外監査役,常勤監査役等の,平成5年改正以来非常に努力して監査役設置会社についてのガバナンスの強化を図ってきたことはどうなってしまうのか,後退するのではないかという疑問が出てくるのではないかというおそれを感じました。私が誤解していたら謝りますけれども。   この現代化の作業を始めたときは,エンロン等の事件がおきて,大会社については,そういう会計の不正などが起きないように,むしろ監査の体制は強化しようという精神で始めたように理解しているのですけれども,仮に今言ったようなことがインプライされている案だとすると,それはおかしいのではないかという気がします。   まず,非常に分かりにくいということと,できたものが一体,特に大会社について,大会社に適切な制度になっているのか。一方で,小会社についても,非常に複雑になってしまったがために,果たして適切になっているのか。さっきの定款の変更要件なんかも,結局大会社と同じ定款変更要件にしてしまいますから,多分,定款自治を認め得る範囲もそう広くするわけにはいかないというようなことも出てきてしまう可能性があると思いますし,選択の幅を広げようというのはよく理解できるのですけれども,一方で,従来,昭和49年改正以来営々と努力してきた制度をここで一体どうしようとしているのか。少なくとも分かりやすくする必要がありますし,ガバナンスについては,特に大会社のガバナンスについては,少なくとも後退させる必要があるとは思えませんので,その点,この案ではどういうふうにお考えなのか承れれば有り難いと思います。 ● 私も100パーセント正しく理解しているという自信はありませんけれども,私は,株式譲渡制限をしていない大会社について後退しているとは思っておりません。ただ,株式譲渡制限をしている会社については,一部,例えば常勤監査役は要らないとか,若干弱まっているところがあるかと思いますが,これは,株式譲渡制限をしている会社というのをどう考えるべきかという問題だと思います。大会社につきましてはそういうことです。   それから,株式譲渡制限をしている会社につきましては,これは実態に規制を合わせるという努力をしてきたのだということですけれども,これは実態がどんどん変わっていくという御意見が一方にありまして,なかなか難しいところであると。 ● この新しい紙を私が全部理解しているかどうかということも自信がないのですけれども,必死になって勉強してある程度理解をしたところによれば,そもそもこれまでの会社法でいろいろな細分化をして,いろいろなジャンル分けをしたクライテリアの会社について様々な規制をしてきて,例えば,今御指摘がありましたが,大会社については,その数は,例えば東証の一部上場はわずか1,500社,ジャスダックまで入れて,各地の証券取引所上場会社を全部,店頭市場まで入れて5,000社,それについて相当な厳しい規制もされてきたことも私どもは承知しております。中小企業の団体の立場から言えば,300万社,400万社に近いような,個人企業を含めて,そういう立派な企業になろうということでみんなやる気と能力をつけようと思って頑張っていると,こういう状況であります。   今度は実態を振り返ってみますと,今回こういう整理をしていただいたのは,私ども,前の1種・2種というのは大変ショックでありまして,非常に区別・差別があると。前回の有限会社・株式会社,株式会社の中は幾つかにクライテリアが分かれていたという正にその区別されていた--差別とは言いませんが,区別されていた世界を違う切り方に整理学でしていただいて,しかし規制のレベルは,私の知る限りでは,そんなに大きく変わっているというふうには理解をしておりません。ほぼ同じ規制レベルになっていると。   ちょっと長くなって恐れ入りますが,申し上げれば,まず有限会社というクライテリアがありました。この有限会社というのは,取締役会があるわけでもなく,ある一定の規制はあるけれども割とゆったりと動かせた。小会社というのもあって,それ以上いろいろありましたが,今回,有限会社と株式会社を一緒にするということで,そこで我々にとっては非常に不本意な区分けがされるのではないかということで,そこについては大分強く御意見を申し上げました。   結果として,今この案を読ませていただいて,どういうふうに理解をすればいいかというと,まず,小さい会社,中小会社,譲渡制限会社であるかどうかは別にして,すべてについて最低限のルール,あるいは我々が守るべきルールというものはまずしっかり書いてもらわなければいけないと思っております。   それから,有限会社と株式会社を一体化するときに,先ほどもちょっと発言をしたのですが,有限会社がこれまで享受してきたアドバンテージみたいなものが株式会社に比べてあったと思うのですが,そのすべてが確保されなければいけない,とも必ずしも思いません。すなわち,一定部分については規制強化が行われる--まあ,そういう字面になるかもしれませんが,そういうことがあってもいいのではないかと思います。具体的に申しますと,例えば,取締役の任期について,これまで有限会社については特段任期がなかったのが,2年を原則とし,まあ10年まで延ばせると括弧書きで案がありましたが,これは有限会社をつくろうと思っていた方にとっては大いなる規制強化かもしれません。そういうものが幾つか,我々にとってみると,入っていると。   じゃあ規制緩和は何かあるかというと,実は,ちょっと言葉は悪うございますが,そんなにウハウハするようなものが たくさんあるわけではないわけでありまして,有限会社をつくろうと思っていた私が今度の新しいシステムで株式会社を作ると,有限会社のときは取締役会なんてなかったわけですから,それで今回はどうかというと,取締役会はない形でつくれると。ああ,同じじゃないかと。ただ,取締役会みたいに集まって決めることはできると。それで,これまでは有限会社は監査役はなかったのですが,監査役は必要かと言われれば,ない場合もあるし,自分で好きなように,例えば委員会,新日鐵のような大きい会社,ソニーのような会社と同じような仕組みもつくれると。これは,先ほどちょっと御発言があったのですが,大会社にとって独占的なアイテムではなくて,年商1,000万円以下のようなビジネスをしている人が,委員会をつくって立派な会社でこれから大きくなろうというときに使わせていただいてもいい仕組みじゃないかなと思うのですね。   どういう仕組みを選ぶかというのは,ちょっとこれは大変失礼なんでございますけれども,例えば,今,讃岐うどんの店がはやっていまして,いろいろなトッピングを乗せていくわけですね。自分が一番欲しい讃岐うどんのトッピングは,たくさん乗ったものがいいか,素うどんがいいかということを自分で決められると。そのうどん屋さんで私が素うどんを食べていたとすると,外から見た人は,ああ,○○さんはそういうものを食べているんだと。というとちょっと言葉が悪いのですが,それは差別ではなくて,そういうものを選択したのだということが外から見える。そうではなくて,もうてんこ盛りにしまして,ありとあらゆるものが乗っていて,ただし食べるときにはお作法が必要ですよと言われるわけですね。そういうものを選択した人だという評価も受ける。外からの評価というのはそういうことで決まるのではないかと。   したがって,会社というのは,スモールビジネスからビッグビジネス,ワールドビジネスまで,いろいろなものがあるので,それが連続的に動いていくという中で様々なものが選択できるという仕組みにしていただくのが非常に,形としては,ある意味でいい形になってきたのではないかと。   しかし,繰り返し申し上げますが,大会社を含め,小会社もそうでございますが,必要なルールを緩くするということはあってはならないし,もう一つつけ加えていえば,不必要なルールがこれまであったとすれば,一部の規模の小さい会社あるいは制限のある会社については緩めてもいいのではないかと。   そういう意味で,実は中身については私どもまだまだ不満がたくさんあって,いろいろな御意見をこれから申し上げたいと思いますけれども,とりあえずこれで前の仕組みから整理学が変わったけれども,何か規制が大幅に緩和されたとか,大幅に妙なことになったということではむしろないのではないかなと。私,いろいろな発言をしましたが,そんなに特別なアドバンテージをいただいてはいないかもしれないと,そこら辺もまたこれから議論したいと思っております。 ● 何か総論的な発言が続きますが……。 ● ○○委員からの御指摘につきましては,詳細はまた次回に御議論いただければと思いますけれども,基本的には,譲渡制限が課せられていない会社の中の大会社の機関設計については変更はないという御理解をしていただきたいと思います。会計参与が任意選択になるということが御了承いただけるとすれば,その選択肢はつけ加わることになりますけれども,それ以外の変更はございません。   他方,例えば委員会等設置会社を小会社についても認めるという選択肢は試案の中でも既にあったところでございます。小会社にまで会計監査人の設置という選択を認めようということであれば,当然そこでは,委員会等設置会社を小さな規模の会社についても認めようということが念頭に置かれていたと思います。ただし,会計監査人がセットでなければ委員会等設置会社になれないのかという議論を新たにしていただく必要はあります。機関設計についての様々な規律の整理をしていくと,これとこれを組み合わせなければ絶対にだめであるという議論はなかなか成り立ちにくいところがございまして,例えば,230条ノ10の規定を前提とした法定の取締役会については常に業務監査権限を有する機関がともになければならないという今の株式会社の規律--これも小会社についてはそうではありませんけれども--を原則にするという意味では,そこはセットかもしれないのですけれども,監査役会という機関が何かとセットでなければいけないかとか,会計監査人が何とセットでなければいけないか--これが試案の中で,そもそも会計監査人が置かれた場合の機関設計の柔軟化という論点として議論されていたものですけれども--という点を考えていきますと,もちろんこれが万全だというわけではないのですけれども,この機関設計はさらにこのような要件がなければ認めてはいけないかどうかという議論として整理されることになりますので,そういう目で見ていただいた方がよろしいのではないかと思います。例えば,委員会等設置会社は会計監査人がいなければ使わせてはならない制度であるとか,そういう整理の問題ではないかと思っているところでございます。 ● ある程度の柔軟化は分かるのですけれども,そもそも委員会等設置会社の基本的な思想ですね,例えば,取締役会というのは基本的には監督機関であって,なるべく執行役に業務執行をやらせて効率化を図るといったようなことが,さっき言いましたように一部が株主総会権限に移るとかいうことが出てくるとすると,随分性格の違ったものになり,かつ,多分責任の規定なんかについてもちょっと意味が違ってきたりするような感じがしますので,そこら辺のところ,正確にどういうものになるかがちょっとよく理解できないところもありまして。少なくとも,今理解されているものとは非常に違うことが出てき得るのではないかと。   確かに柔軟化は非常に望ましいところはあると思うのですが,一方で,余り複雑になると,制度を外の人が理解して,その制度とつき合っていくときに何が何だか分からないという面もありますので,ある程度のシンプルさも一方では必要だと思いますので,そこら辺のバランスを考えていただきたいということです。 ● そういう,委員会等設置会社をどこまで認めるかといった議論は,また次回,個別のところでお願いしたいと思います。   ほかに,総論的な御意見等で結構ですが,何か御発言ありますでしょうか。   それでは,先ほど事務局から説明をいただきましたので,その分は皆さん御理解いただいたと思いますので,次回の審議はその分だけははかどるのではないかと期待いたしまして,本日はこれぐらいで終了させていただきたいと存じます。   なお,事務局から連絡事項がございます。 ● 部会資料22の説明については,若干急いだこともありまして,幾つか説明し足りないところがあるのですけれども,それは次回に譲らせていただきます。   次回は,6月9日水曜日,午後1時から,場所は同じくこの第1会議室で行わせていただきます。   本日の資料は,申し訳ございませんが,御持参いただくようにお願いいたします。   また,次回に向けて別途資料を用意しておりますので,あわせて御持参いただければ幸いでございます。 ● 次回はこれだけではなくて,これに追加して御審議いただくということでございます。   それでは,本日は長時間にわたりまして熱心に御審議いただきまして,ありがとうございました。本日の審議を終了させていただきます。