法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  平成29年 4月19日(水)   自 午前9時13分                          至 午後0時01分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 少年鑑別所及び少年院の実情についてのヒアリング         2 少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすること及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方について          第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の第2回会議を開催いたします。 ○井上部会長 本日は御多忙のところ,お集まりいただきましてありがとうございます。   本日,林委員におかれましては,所用のため欠席されています。また,名執幹事は所用のため,遅れて出席される予定とのことです。   本日はまず幹事の異動がございましたので,御紹介させていただきます。最高裁判所事務総局家庭局の和波宏典氏が幹事を退任され,新たに澤村智子氏が幹事に任命されました。 ○澤村幹事 澤村でございます。よろしくお願いいたします。 ○井上部会長 よろしくお願いします。   また,法務省矯正局の久家健志氏が幹事を退任され,新たに小玉大輔氏が幹事に任命されました。 ○小玉幹事 小玉と申します。よろしくお願いいたします。 ○井上部会長 よろしくお願いします。   それでは,初めに事務当局から資料について説明をお願いします。 ○羽柴幹事 本日,新たに配布しているものは,議事次第のほか,先ほど部会長から御紹介のあった幹事の異動後の委員及び幹事の名簿,資料10「統計資料2」,ヒアリング資料として,「少年鑑別所における業務の概要」から始まる資料,「少年院における業務の概要」から始まる資料,それとパンフレット3点でございます。なお,前回の配布資料はファイルにとじて机上に置いてございますので,必要がございましたら御参照いただければと存じます。   それでは,まず,資料10「統計資料2」について小玉幹事から説明を致します。 ○小玉幹事 それでは,統計資料について御説明いたします。時間の関係もございますので,簡潔に御説明させていただきます。本日の部会におきましては,この後で少年鑑別所及び少年院に関するヒアリングが行われますが,お配りした統計資料は刑事施設に関するものも含めた矯正全体に関する資料となっております。1枚おめくりいただいた目次にありますように,資料は合計33点ございます。   1枚おめくりください。統計資料の中で複数回使用している基本的な用語の説明を記載しています。   1枚おめくりください。2-1は非行少年に対する手続の流れを図にしたもので,数字は平成27年のものです。図の右側に赤枠で囲っていますが,少年鑑別所に入所した者は9,132人,真ん中上にありますが,家庭裁判所において終局処理がなされた者は8万2,441人,そのうち,真ん中下に赤枠で囲っていますが,少年院に入院した者は2,743人となっています。   次に,2-2は刑事手続の流れを図にしたもので,数字は平成27年のものです。図の真ん中上にありますが,裁判が確定したものは33万3,755人,そのうち,真ん中下に赤枠で囲っていますが,刑事施設に入所した受刑者は2万1,539人となっています。   次に,2-3は全国の少年鑑別所・少年院・刑事施設の配置状況や種類を示したものです。なお,刑事施設には多数の支所がありますが,この図には本所のみを記載しています。   この資料に補足いたしまして,それぞれの組織構成について若干,説明いたします。少年鑑別所には所長の下に庶務課及び首席専門官が置かれています。このうち,首席専門官は鑑別や観護処遇を所管しています。規模の大きい施設には所長を補佐する次長や医務課が置かれているところもあります。また,規模の小さい施設では首席専門官が置かれていないところもございます。少年院には院長の下に院長を補佐する次長がおり,庶務課,医務課及び首席専門官が置かれています。このうち,首席専門官は矯正教育や社会復帰支援を所管しております。首席専門官は通常,1名でございますが,規模の大きい多摩少年院,瀬戸少年院及び浪速少年院には矯正教育担当と社会復帰支援担当の2名が置かれています。刑事施設には一般的には所長の下に総務部,処遇部及び医務課が置かれており,規模が大きくなるに従って部も増えていきます。規模が特に大きい府中刑務所,名古屋刑務所及び大阪刑務所には,総務部,処遇部,教育部,医務部,分類審議室及び国際対策室の6部室が置かれております。   続いて,2-4と2-5ですが,少年鑑別所,少年院,刑事施設ごとに職員数や予算額について,その内訳とともにまとめたものです。このうち,法務教官は教育学,社会学などを専門分野としており,主として少年鑑別所においては観護処遇を,少年院においては矯正教育や社会復帰支援を担当しています。心理技官は心理学の専門家であり,少年鑑別所における鑑別を主な業務としていますが,近年は少年院や刑事施設においてもその専門性をいかした業務を行っています。刑事施設における教育専門官は法務教官から,調査専門官は心理技官からそれぞれ命じられることが一般的です。   続いて,2-6でございますが,少年院と刑務所の施設規模の比較として,少年院,刑務所,少年刑務所のそれぞれにつきまして,上から順に大規模,中規模,小規模の施設の順番に収容定員,職員定員,収容人員等をまとめたものです。なお,一番下の少年刑務所の表の収容人員の欄には,左側から順番に全体の収容人員,太い括弧内には少年受刑者の人員,その右側の括弧内にはいわゆるY指標受刑者の人員を記載していますが,全体の被収容者のうち,少年受刑者はごく僅かであり,ほとんどは成人の受刑者となっています。   続きまして,2-7でございますが,少年鑑別所・少年院・刑事施設の一日平均収容人員の推移になります。   続きまして,2-8は少年鑑別所・少年院の新収容人員,刑事施設の新受刑者数の推移でございます。   続いて,2-9ですが,少年鑑別所・少年院の新収容者の年齢別人員です。いずれも年少少年が全体の2割程度,中間少年と年長少年がそれぞれ3割から4割程度となっています。   続きまして,2-10でございますが,少年鑑別所・少年院の新収容者の非行名別構成比のグラフです。男子につきましては少年鑑別所と少年院とで構成比に大きな差はありませんが,女子につきましては少年院の新収容者における覚せい剤事犯者の占める割合が大きくなっています。   続いて,2-11ですが,少年鑑別所の新収容者の審判決定別人員・構成比になります。全体の約4割が保護観察,約3割が少年院送致となっております。   続いて,2-12は少年院の新収容者の非行時の身上別人員・構成比になります。   続きまして,2-13ですが,少年院の新収容者の保護処分歴別人員・構成比になります。一番上のグラフですが,過去に保護処分歴等がない者は全体の2割程度になっております。年長少年について個別に下のグラフを見ますと,6割を超える者が過去に保護観察を受けており,また,過去に少年院送致歴のある者が4分の1を占めています。   続いて,2-14でございますが,少年院の新収容者の教育程度別人員・構成比です。年長少年につきましては,高校中退の者が5割程度,中学卒業が3割弱となっております。   続きまして,2-15ですが,少年院の新収容者の就学・就労状況別人員・構成比になります。年長少年につきましては,有職者が5割強となっていますが,無職者も4割近くおります。   続いて,2-16は少年院の新収容者の保護者状況別人員・構成比です。少年の年齢層ごとの構成比に大きな違いはなく,どの年齢層におきましても保護者が実母のみである者が4割強となっています。   続いて,2-17は少年院の出院者の進路別人員・構成比になります。年長少年につきましては,就職又は復学が決定している者が4割弱であり,進路が確定しないまま,出院する者が6割強となっております。   続いて,2-18は少年院の矯正教育課程の一覧と,次のページは全国の少年院ごとに少年院の種類と指定されている矯正教育課程をまとめたものになります。このうち,例えば発達障害や知的障害などを有し,処遇上の配慮を要する少年につきましては,2-18-1の真ん中下辺りにありますが,支援教育課程,いわゆるN1からN5が指定されます。このような支援教育課程が指定されている少年院につきましては,2-18-2の表で御確認いただければと思います。   この後はいずれも刑事施設に関する統計資料となります。   2-19でございますが,新受刑者の刑名,これは懲役刑と禁錮刑ということでございますが,刑名ごとの刑期別人員・構成比であり,続いて,2-20は新受刑者の罪名別人員・構成比になります。   続いて,2-21でございますが,新受刑者の年齢別人員・構成比です。19歳以下の少年は男子が33名,女子が3名の合計36名でございまして全体の約0.2%となります。   続いて,2-22は新受刑者のうち,少年受刑者の推移です。この20年間で最も多かったのは平成14年の87名となっております。   続きまして,2-23でございますが,新受刑者の教育程度別人員・構成比,続いて,2-24は新受刑者の犯時職業別人員・構成比になります。   続いて,2-25でございますが,受刑者の処遇指標の一覧と,次のページで全国の刑事施設ごとにどのような受刑者を収容しているのかをまとめたものになります。   続いて,2-26でございますが,刑務作業につきまして,木工,印刷,洋裁などの業種別人員の推移をまとめたものになります。   続いて,2-27でございますが,職業訓練種目数,職業訓練受講人員及び資格取得人員の推移です。このうち,グラフに水色で示してありますように,平成20年度からはPFI手法を活用した民間事業者による職業訓練が開始されておりまして,種目数,受講人員,資格取得人員とも増加しております。   続いて,2-28でございますが,特別改善指導の受講開始人員の推移,続いて,2-29は教科指導の受講開始人員の推移です。これらはいずれも刑事収容施設法の施行により,開始されたものです。   続いて,2-30は受刑者の釈放事由別人員と仮釈放率の推移です。一般に女子受刑者の方が仮釈放率が高い傾向にありますが,近年はその差が縮小しています。   続いて,2-31は有期刑仮釈放者の刑名別の刑執行率になります。   続いて,2-32でございますが,受刑者の釈放時就職内定状況です。釈放時において就職が内定している者は15%程度ですが,少しずつ割合は増加しています。   最後に,2-33は特別調整の取組状況の推移です。釈放後の生活に困難を抱える者について,受刑中から保護観察所,地域生活定着支援センター,福祉施設等の関係機関との連携を図り,円滑な社会復帰を果たせるよう取組を強化しているところです。   統計資料の説明は以上です。 ○井上部会長 ただいまの配布資料の説明内容に関しまして質問等がございましたら御発言をお願いします。 ○山﨑委員 資料の5ページの表2-4-2になりますけれども,少年院におられる心理技官の数が26名ということで,3ページの少年院の数に比べると約半数ぐらいということになっており,全ての少年院にいらっしゃるというわけではないということかと思います。そこで,心理技官が置かれる少年院の基準と言いましょうか,少年院の種類ですとか,規模ですとか,そういった何かあるのでしたら教えていただければと思います。 ○小玉幹事 基本的には規模の大きい施設でございますとか,処遇上配慮が必要な者が多く収容されているような施設に置かれているということでございます。 ○青木委員 31ページの2-28に関連してなのですけれども,特別改善指導の受講開始人員が増えているというのは,この表である程度,分かるのですが,特別改善指導を受けるべき受刑者がどの程度,受けられているのかというのは,この表では分からないのですけれども,何かそのような統計なりはございますでしょうか。 ○小玉幹事 特に数についての統計というものはございませんが,特別改善指導につきましては,それぞれのR1からR6についての対象者の基準というものがございまして,その対象者について特別改善指導を行っているということでございます。ただ,特別改善指導の対象に指定された者であっても,例えばプログラムを受講できる状態にないと判断されるような受刑者,これは例えば受講するための刑期が不足している者ですとか,身体,精神の疾患等の治療が優先される者などにつきましては,対象に指定された者であってもプログラムを受講せずに出所する場合もございますが,基本的には対象に指定された者につきまして,特別改善指導を行うということでございます。 ○山下(幸)幹事 6ページの2-6ですけれども,これの少年院のところで収容率が多いところと中間ぐらいのところ,少ないところの3つがあるということで,3つがあがっているんですけれども,全部で52庁あるという少年院の全体の平均の収容率というのはどのぐらいなのかとか,その辺が分かるようだと教えていただきたいんですが。 ○小玉幹事 少年院全体の収容率でございますが,平成27年12月末時点でございますけれども,収容定員が5,558人であるところ,収容人員は2,634人でございまして,収容率ということでいきますと47.4%ということになります。 ○田鎖幹事 お尋ねなんですけれども,5ページに関連いたしまして特に少年院の方で,法務教官,心理技官,これらの専門職の方々が一人当たり大体どのぐらいの少年を見ているかと,そういう負担に関するデータなどはございますでしょうか。また,それを後ほど提供していただけますでしょうか。 ○小玉幹事 専門職に特化した統計というのはないんですけれども,職員一人当たりの被収容者数ということでございますと,平成27年12月末時点のものですが,少年鑑別所が0.5人,少年院が1.1人,刑事施設が3.0人ということになっております。 ○井上部会長 御質問がほかになければ,資料の説明についてはこのぐらいにさせていただきます。   これから審議に入ります。本日は御案内のとおり,少年院及び少年鑑別所の実情についてのヒアリングを行います。その後,前回に引き続き諮問事項全体,想定される論点及び審議の進め方について意見交換を行うことにしたいと思います。   ヒアリングの進め方ですが,少年鑑別所,少年院の順番で実情について各25分ずつ合計50分程度,御説明いただきまして,最後にまとめて質疑応答を30分ほど行わせていただきたいと思います。   それでは,少年鑑別所の実情について東京少年鑑別所の小山和己所長から御説明をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○小山参考人 東京少年鑑別所長の小山と申します。よろしくお願いいたします。   それでは,少年鑑別所の業務の概要につきまして説明させていただきます。   配布資料の1ページ目の下を御覧になってください。少年鑑別所の主たる業務は,鑑別業務,観護処遇業務,そして地域援助業務の三つになります。それぞれの業務の特徴は,ここに書かれているようになっております。一つ目の鑑別は,家庭裁判所等からの求めに応じて行うもので,個々の対象者の非行要因等の分析を行った上で,再非行防止等に向けた処遇に関する意見を提出するものです。二つ目の観護処遇は,少年鑑別所に収容して行う処遇全般のことを言いますが,少年たちを収容している間,その情操の保護に配慮しながら健全な育成のための支援等を行っております。三つ目の地域援助ですが,これは平成27年6月に少年鑑別所法が施行されたことに伴い,新たに少年鑑別所の本来業務となったもので,一般の方や学校,福祉機関等からの依頼に基づき,非行や犯罪の防止に向けた活動を行っております。   資料を1枚めくっていただきまして2ページ目の上を御覧ください。それぞれの業務を若干,詳しく説明していきたいと思います。   まずは鑑別についてです。鑑別には家庭裁判所の審判に資するための鑑別と,審判決定後の少年院や保護観察所等の処遇に資するための鑑別があります。ここでは鑑別のメインとなっております収容審判鑑別について説明いたします。収容審判鑑別は,家庭裁判所による処遇選択に資することを目的として,観護措置決定により少年鑑別所に収容された少年に対して行う鑑別です。少年審判の調査は家庭裁判所調査官によって行われますが,少年法第9条にはなるべく少年鑑別所の鑑別の結果を活用して行うよう努めなければならないと規定されております。   家庭裁判所調査官による社会調査と少年鑑別所の鑑別との違いですが,社会調査では少年の改善更生とともに環境面の調整にも焦点を当てておりまして,少年や少年を取り巻く環境等について幅広く調査が行われます。これに対して鑑別は,非行に関連の深い性格特性等の改善を念頭に,少年の資質面の調査に重点を置くもので,少年を理解するという目的は共通ですけれども,そのためのアプローチの仕方が異なるということになろうかと思います。   収容審判鑑別の目的は,一言で言いますと,その少年がなぜ非行に及んだのかということを明らかにし,そこに改善更生の糸口を見付け,どうすれば立ち直れるのかという処遇指針を提示することにあります。そして,その目的を達成するために,心理技官,法務教官,医師が多様な視点から多様な調査方法を用いて情報の収集,分析を行っております。   2ページ目の下を御覧ください。収容審判鑑別の手順はこのような流れになっております。対象となる少年たちは,家庭裁判所の観護措置決定により少年鑑別所に収容されます。収容の目的は,家庭裁判所が審判を行うに当たり,少年鑑別所の持つ専門的機能を用いて鑑別を行うという目的のほかに,その少年が審判を前にして行方をくらませたり,証拠を隠したりすることを防ぐといった目的もあります。収容期間は平均するとおおむね3,4週間になります。   横の流れが入所から退所までの時系列を示し,緑の部分が法務教官,青い部分が心理技官,赤い部分が医師の業務を示しております。法務教官は主として行動観察を担当し,心理技官は主として面接や心理検査を担当し,医師は主として健康診断や精神医学的診察等を担当しております。オレンジの縦長で示されている判定会議においては,収容期間中に収集された情報を総合的に分析,検討し,その少年の再非行防止や改善更生のために最も有効,適切と考えられる処遇に係る判定を行います。そして,最終的にはその判定会議の結果に基づいて鑑別結果通知書という文書を作成し,家庭裁判所に提出することとなります。家庭裁判所の審判においては,鑑別結果通知書等を参考に個々の少年の処分が決定されることになります。   このように,収容審判鑑別は24時間体制でつぶさに行動観察を行いつつ,様々な職員が協働する形で実施されており,また,オレンジ色で示しました鑑別方針設定や判定会議においては,所長を含めた複数の職員が関わって鑑別方針や判定を決定するなど,組織的に実施されている点に特徴があります。また,黄色で示しました家庭裁判所調査官との事例検討につきましては,全てのケースにおいて実施することとされておりまして,それぞれの調査を通じて得られた情報をお互いに持ち寄ることによって,個々の少年に対する理解を更に深めていくという工夫がなされております。   なお,心理技官は刑事施設にも配置されており,刑事施設においては主として受刑者の処遇調査等を担当しております。受刑者に対する処遇調査と収容審判鑑別との一番の違いは,処遇調査が刑が確定した後の刑事施設の中での処遇に必要な基礎的な資料を得るための調査であるのに対し,収容審判鑑別は処分が決定される前の処分選択に資するための調査であるという点が一番ですが,収容審判鑑別においては少年本人のみならず,少年を取り巻く関係者からもできるだけ客観的な情報を収集しながら調査を行っている,こういう点も大きな違いの一つと言えると思います。   収容審判鑑別においては,その結果が処分選択のための資料となるということに鑑み,再非行の可能性や改善すべき問題点等に対する理解を,できるだけ精度の高いものとする必要があります。そのため,収容審判鑑別の実施に当たりましては,様々な職員が協働する形で組織的に実施していることに加え,全ケースにおいて家庭裁判所調査官と事例検討を行い,また,必要に応じてですが,保護者や教師や雇い主等と面接を行ったり,医療機関等に照会を行ったりするなど,一人一人の少年に時間を掛け,可能な限り,多くの情報を収集し,分析することを通じ,個々の少年に対する理解を深めていくことを心掛けております。   資料を1枚めくり,3ページ目の上を御覧ください。これは心理技官が主として担当しております面接及び心理検査についての説明になります。面接においては赤の枠内にあるような話題について時間を掛けて少年の話を聞き,時折,こちらの理解を返すなどとして話を整理し,信頼関係を築きながら少しずつ少年の内面を掘り下げていきます。どうせ話したって分かってもらえないと最初は拒否的な態度を示す少年もいますが,こちらがきちんと話に耳を傾け,共感的に理解しようと努め続けることで,多くの少年がいろいろな心情を吐露してくれるようになったり,あるいはほかの人には余り話したことのないエピソードを話してくれるようになったりします。   心理検査につきましては,緑の枠内にあるような種類があります。個々の少年の特性,問題性に応じ,幾つかの心理検査を組み合わせて実施しております。例えば集団方式の知能検査において低い数値が示された場合には,より精度の高い個別方式の知能検査を実施したり,発達上の問題がありそうな場合には発達検査を実施したり,防衛的な構えが強い場合には投影法という性格検査を実施したり,交通関係の非行で入所した少年には運転適性検査を実施したりということになります。   もちろん,これらは万能ではありません。面接も心理検査も取り組む姿勢によって得られる情報の質や量,これが左右されますので,面接や心理検査の実施に当たっては,少年のやる気や協力的な姿勢を引き出すことがとても重要になります。また,特に面接においては外面的な事実以上に少年の内面を重視します。少年の物事の捉え方であるとか,心情等に焦点を当てますので,家庭裁判所調査官との事例検討を始め,様々な関係者から客観性の高い情報を収集したり,次に述べるような行動観察を通じて具体的な行動から少年の特徴を把握したりすることなどによって,できるだけ少年を多面的に理解することが重要となります。   3ページ目の下を御覧ください。これは法務教官が主として担当している行動観察についての説明になります。行動観察は赤い枠内にあるような点に着目して行われますが,行動観察には運動や面会等の通常の生活場面における行動観察のほかに,例えば家族についてとか,友達についてといったテーマを与えて作文や描画等を作成してもらい,その取組状況を観察するといった意図的に設定した場面における行動観察というものの2種類があります。面接とは異なり,行動観察においては目に見える具体的な行動を通じてその少年の特徴を浮き彫りにするわけですが,職員からの働き掛けに対する反応あるいは変化の有り様,少年鑑別所という枠組みの中での振る舞い,こういうものを観察することは,その少年にとって最もふさわしい処遇方法を見極める上においても重要な意味を持っております。   なお,24時間体制で少年たちのあるがままの姿をつぶさに観察できるということは,収容審判鑑別の大きな強みになっておりますが,時には職員に反抗し,少年鑑別所のルールを守ろうとしない少年もおります。そうした少年に対しては,少年鑑別所の規律,秩序を維持するためにもその非を丁寧に諭すなど,必要な指導を行うことになります。   資料を1枚めくり,4ページ目の上を御覧ください。これは鑑別を通じて得られた情報が最終的にはどのような形で整理され,また,活用されるかを示したものです。具体的に言いますと,鑑別においては赤い枠内にあるような家庭環境や生い立ち,本件に至るまでの非行歴や交友関係,心身の状況や発達の程度,少年鑑別所在所中の生活態度や行動傾向等に関する情報が収集されます。そして,それらは総合的に分析,検討された末,鑑別結果通知書の中では青い枠内にあるような処遇に係る判定やそのような判定に至った理由,身体状況や精神状況,非行要因の分析や立ち直りに向けた処遇指針という形で整理されます。   また,このように整理された鑑別結果については家庭裁判所の審判の資料となるほか,審判により処分が決定した後は,少年院や保護観察所においては処遇上の参考資料として,また,刑事施設においては処遇調査を行う上での参考資料として,それぞれ活用されております。また,少年院や保護観察所につきましては,そのような形で収容審判鑑別の結果が活用されているほかに,処遇による改善状況を把握したり,それに対応して新たに処遇指針を提示したりする目的で,少年院長や保護観察所長からの求めに応じて,少年院在院者に処遇鑑別というものを実施しております。   4ページ目の下を御覧ください。次に,観護処遇についての説明になります。観護処遇については,特に観護処遇の一環として行っている健全な育成のための支援についての説明をさせていただきます。少年鑑別所においては,成長発達期にある少年たちを収容していることから本人の自主性を尊重しつつ,その健全育成を支援するための働き掛けを積極的に行っております。   具体的にどのようなことをやっているかと言いますと,少年たちが毎日書いている日記にコメントを書いたり,悩み事や心配事の相談に乗って助言を与えたりといったことのほかに,少年たちが健全な社会生活を営むことができるように,挨拶や言葉遣い等の基本的な生活態度に関する助言・指導を行ったり,外部講師の協力も得ながら学習支援,就労支援,教養講話等を行ったり,また,少年の情操を豊かにする機会としまして,普通の社会で生活していれば経験するであろうお花見であるとか,七夕等の各種の季節行事を催したりしています。   赤い枠内は,少年たちに対して行っている退所時アンケートからの抜き書きです。大抵の少年が入所の時点では不満や不安を抱いておりますが,退所の時点では少年鑑別所での生活を肯定的に評価するようになります。少年鑑別所は少年院とは異なり,教育を行う機関ではありませんが,このような感想を見ていますと少年鑑別所に収容されることによる付随的な教育効果は,それなりに大きなものがあることが分かります。   資料をめくり,5ページ目の上を御覧ください。これは10年前,20年前との比較において,少年鑑別所に入ってくる少年たちにどのような変化が生じているのか,鑑別から見られる特徴を示したものです。   一つ目は赤字で「単独非行化」と書きましたが,具体的に言いますと,共犯者のある非行や不良集団,特に暴走族に所属している少年の割合が減少傾向にあります。また,傷害のような被害者のある非行の割合が増加傾向にあり,他方,薬物非行のような被害者のない,どちらかと言えば自分自身を傷付けるタイプの非行が減少傾向にあります。二つ目は赤字で「自立の先送り」と書きましたが,進学率が高くなり,学生の割合が増えたこともありまして,家族と同居している少年の割合が増加傾向にあります。三つ目は赤字で「非社会性,福祉・医療的な支援の必要」と書きましたが,知的障害や発達障害系の精神障害の診断を受ける少年が増加傾向にあります。また,実際に少年鑑別所で見ておりますと,集団場面や対人接触を嫌う少年,あるいは職員との関わりを余り積極的には求めない少年というものが10年前,20年前と比較して増えているという印象を受けております。   以上が少年鑑別所から見た最近の非行少年の特徴ということになりますが,簡単に要約しますと,不良集団に所属している少年が減少し,暴走族のような集団非行が減少しつつあることに加え,発達障害系の精神診断を受ける少年が増え,少年院におきましても,そのような少年を収容する少年院の収容人員が多くなっているということなどを考えますと,非行少年の社会性は10年前,20年前と比較して,総じて未熟になっているのではないかと思っております。   以下は鑑別から見られる特徴変化として,ただいま説明したことの根拠となる統計資料になります。5ページ目の下を御覧ください。これは男女別に非行名の変化を10年ごとに示したものです。資料を1枚めくり,6ページ目の上を御覧ください。これは共犯者の有無や不良集団への所属の変化を示したものです。6ページ目の下を御覧ください。これは居住の状況や職業等の状況の変化を示したものです。なお,御参考までに保護者の状況の変化につきましてもグラフを載せています。資料を1枚めくり,7ページの上を御覧ください。これは精神状況の変化を示したものです。知的障害やその他の精神障害を有する少年が増えておりますが,このその他の精神障害の内訳としましては,注意欠如・多動性障害あるいは広汎性発達障害といった発達障害系の精神障害が多くなっております。   7ページの下を御覧ください。これは18歳,19歳の少年,いわゆる年長少年に見られる特徴を示したものです。   一つ目は赤字で「孤立(希薄な人間関係)」と書きましたが,これぐらいの年齢になりますと,周りの非行少年がだんだん落ち着き始めますので,地域社会の中で次第に孤立し,共犯のある非行や不良集団に所属している少年の割合が低くなります。また,このような状況の中で少数ではありますが,単独で覚せい剤を使用するようになったり,場合によっては自分を受け入れてくれる場を求めて,暴力団との接触を持つようになったりする少年も出てきます。   二つ目は赤字で「社会的自立のつまずき」と書きましたが,年齢が上がるにつれて家族との間に距離を置くようになりますので,家族と同居している少年の割合は低くなりますが,社会的なスキルの乏しさ等から,なかなか,仕事を長続きさせることができず,無職者の割合が高くなります。   三つ目は赤字で「更生意欲や自信の低下」と書きましたが,実際に少年鑑別所に収容されているこの年齢の少年たちは,年少の少年たちと比べますと,それなりに落ち着きもあり,ある程度の社会性も備えていますので,総じて扱いやすい少年たちと言えますが,中にはいろいろな失敗体験や被害体験を繰り返す中で更生意欲や自信を失い,大人に対する不信感を強め,自暴自棄になっている少年たちも含まれております。   そのような少年たちは,開き直った態度で職員に反発してきますし,各種調査にも意欲的に取り組もうとせず,また,少年鑑別所のルールを守ろうとしないこともありますので,それぞれの少年の心情に配慮しながら,いろいろな形での働き掛けを少年鑑別所の中でも行うことになります。また,いつまでたっても社会的な自立を果たせず,地域社会の中で孤立していく中で,少年たちの内面には自立や進路選択をめぐる焦り,不安を高めている少年が多く見受けられます。   資料を1枚おめくりください。以下は年長少年に見られる特徴として,ただいま説明したことの根拠となる統計資料です。8ページ目の上を御覧ください。これは年齢層別に共犯少年の有無,不良集団への所属,薬物使用関係を示したものです。8ページ目の下を御覧ください。これは年齢層別に居住の状況及び職業等の状況を示したものです。   それでは,資料を1枚めくり,9ページの上を御覧ください。以上,年長少年に見られる特徴を統計資料等に基づき紹介しましたが,実際に年長少年の鑑別を行うに際して,その着眼点を説明したいと思います。まずは非行タイプの見極めが重要となります。一口で年長少年と言いましても,その中には様々なタイプの少年が含まれております。その主なタイプとしましては,そこに書きましたが,年長になってから非行化したタイプ,比較的早期から非行化し,年長となってそろそろ非行を収束させつつあるタイプ,比較的早期から非行化し,今後も非行を繰り返していきそうなタイプ,このような三つのタイプが挙げられます。   タイプによって,資質上,環境上の問題性の大きさ,あるいは再非行の可能性の程度等は異なっております。したがって,最も有効・適切と考えられる処遇も異なってきますので,この見極めが重要となります。例えば問題性の大きさということで言えば,①のタイプは比較的小さく,③のタイプは比較的大きく,②のタイプはその中間に位置する場合が多いですし,再非行の可能性ということで言えば,①のタイプは比較的低く,③のタイプは比較的高く,②のタイプにはその両方が交じっている場合が多くなっております。   次に重要となるのは,適切な処分の見極めです。年齢が成人に近付けば近付くほど,保護処分と刑事処分との間で鑑別判定に迷うことが多くなりますので,このような見極めが重要となります。実際の鑑別判定においては鑑別の目的に照らし,その少年の再非行防止や改善更生のために最も有効・適切な処遇は何か,そういう観点から判定が行われますが,最近の研究によりますと,再非行防止のためには再非行の可能性の程度に応じた密度の処遇を対象者の特性に適した方法で,すなわち,対象者の社会的な成熟度や能力等に見合った方法で実施することが重要であるということが実証されておりますので,そのような観点から保護処分が相当か,刑事処分が相当かという見極めを行うことになります。   9ページ目の下を御覧ください。これは鑑別判定を検討するに際しての類型を便宜的に示したものです。なお,実際の鑑別判定におきましては,保護不適として検察官送致の判定を行うことはめったにありません。いわゆる原則逆送事件を含めましても,検察官送致の判定を行うのは全体の1%程度にとどまっております。実際の鑑別判定においてはほとんどの場合,保護観察を選ぶか,少年院送致を選ぶかという判断になりますが,再非行の可能性の程度に応じた密度の処遇を行うことが重要ですので,再非行の可能性の高い少年は少年院送致の判定をすることが多くなり,再非行の可能性の比較的低い少年は保護観察の判定をすることが多くなっております。また,再非行の可能性が中程度という場合には,その少年の自己統制力や社会適応力等を踏まえ,自由度の高い社会内処遇と枠組みのしっかりした施設内処遇のどちらが有効適切かという観点やその少年の能力や意欲等を踏まえ,集中的,計画的な教育がどの程度必要かといった観点から判定を行うことが多くなります。   検察官送致についてはそもそも判定すること自体が非常にまれですので,その類型を挙げることは難しいですが,原則逆送事件以外で検察官送致の判定を行う場合としましては,例えば問題性が大きく,再非行の可能性も高く,したがって,本来であれば密度の高い手厚い処遇を実施する必要があるものの,既に少年院での矯正教育を再三受けており,可塑性が低く,保護処分による矯正の可能性が余り期待できない場合,あるいは逆に成人近くまで全く非行と関係のない,比較的健全な社会生活を送っていた過失運転致死事件の少年のように,再非行の危険性が低く,改善すべき問題点がほとんど見当たらず,社会的成熟度も比較的高く,保護処分による矯正の必要性が低い場合等,むしろ,こういった場合には厳正な刑事処分を通じて社会人としての自覚を深めたり,本件に対する責任の念を深めたりする方が適当であるという考えから,検察官送致の判定が行われることもあります。   なお,鑑別のための調査方法としましては,面接,心理検査,行動観察等があると先ほど説明しましたが,平成25年度以降は法務省において開発されました「MJCA(法務省式ケースアセスメントツール)」という調査ツールも使われるようになっております。これは再非行の可能性や改善すべき問題点等をより客観的に把握するために開発された調査ツールです。   配布資料を1枚めくり,最後のページの上を御覧ください。最後に,地域援助についての説明になります。地域援助の実施件数は本来業務となった平成27年以降,大幅に増加しております。実際の援助内容としましては御覧のようなものがありまして,その対象は少年だけではなく,大人も対象となっております。例えば保護者や学校等から,何らかの問題を抱えたお子さんや生徒さんに対する心理相談や心理検査等の実施を依頼されることがありますが,このような一般の方を対象とした支援においては,鑑別によって培ったケースを正しく見立てる能力や指導方法を具体的に提示する能力等が重要となっております。地域援助の経験からは,子どもたちが何らかの問題行動に及んだとしても比較的早い段階であれば,問題の原因やつまずきの背景事情等を明らかにしやすいですし,また,早期に必要な支援を行うことができれば,それに対する手応えも得られやすく,改善の効果も上がりやすいという実感を持っております。   10ページ目の下を御覧ください。地域援助のうち,関係機関からの依頼としましては,司法,教育,福祉・保健,医療に関するもの等,多岐にわたりますが,例えば司法に関するものとしましては地方検察庁からの依頼に基づき,いわゆる入口支援への協力として,被疑者等に対して知能検査や発達査定を実施しております。全国の少年鑑別所の実施件数は御覧のとおりです。知能検査等の結果は,精神鑑定を行うか否かを判断したり,社会復帰支援を行うに際して,どのような福祉的支援が必要であるかを見極めたりする際の参考資料として用いられております。   早口になってしまいましたが,少年鑑別所についての説明は以上で終わります。ありがとうございました。 ○井上部会長 ありがとうございました。   それでは,引き続きまして少年院の実情につきまして,多摩少年院の柿崎伸二院長から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○柿崎参考人 多摩少年院の柿崎と申します。よろしくお願いいたします。今日はこの春まで当院の首席専門官をしていた,現在は帯広少年院長の青木と共に説明をさせていただきます。   それでは,お手元の資料の1ページ目の下の絵を御覧ください。初めに,少年院の業務につきましては,大きく分けて,在院者の特性に応じた様々な矯正教育を行うこと,また,社会復帰支援をはじめとする健全育成に資する処遇を行うことと,この二つがございます。これらを行うことにより,在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ることが少年院の目的であり,少年院法の第1条に書かれているところであります。   次のページを御覧ください。それでは,最近における年長在院者の代表的な事例を紹介しながら,その特徴について説明をさせていただきます。なお,この事例は代表的なものの中から幾つかの事例を組み合わせて再構成したものであり,特定の事例ということではございません。   それでは,まず,年齢は19歳,事件名は窃盗です。高校を中退しており,非行時は無職で保護観察を受けていました。また,AD/HD(注意欠如・多動性障害)の診断があり,幼少期に実母からのネグレクトによる虐待を受けています。性格としては,衝動性が高く,目先の刺激に流されやすい,感情表現の不器用さから周囲からの理解を得にくい,他者との信頼関係を築きにくい,慢性的な不安や寂しさを抱えているといったことが認められています。実父母は幼少時に離婚しておりまして,その後,実父とは音信不通となっています。実母は過去に虐待があったものの,少年が少年院送致となったことを機に危機感を持ち,出院後に引受人となる意思を示しています。本人に発達障害などもありまして,周囲からのいじめを受けるなど地域や学校での生活になじめず,早い段階から万引き等の問題行動が認められています。   下の絵を御覧ください。処遇の状況です。入院直後の3級の段階では少年院のルールになじめず,反則行為を度々繰り返しました。また,職員の指導に対しては自分ばかりが悪く見られていると,被害的に受け止めることが多くありました。   次に,2級の段階では,生活に慣れるに伴って独自の感覚や要領に固執するということが増えて,また,気の合わない者に対し,とげとげしい態度をとるなど対人トラブルを起こすことが多くなりました。寮での集団生活に課題を抱えるようになっていきます。そのため,集団寮から離れて単独寮において個別処遇を行うとともに,個別担任の職員が面接を行うなどして本人の話をじっくりと聞いて粘り強く関わったところ,徐々に授業や集団生活に参加できるようになっていきました。また,院内において高校卒業程度認定試験を受験して合格しています。   出院に向けた準備を整える最終段階である1級の段階では,集団寮に復帰して生活することができるようになりました。上級生となり,新入生の面倒を見る役割を任せられたことなどから周囲からの評価もよくなり,本人も生活に自信を持つようになっていきます。ただし,障害特性等もあり,場面に応じた柔軟な判断をすることや,周囲からの助言を聞き入れることが難しいという面は引き続き見られました。   社会復帰支援に関しては,就労支援として就労支援スタッフによるキャリアカウンセリングを定期的に行いました。また,実母との関係を調整するために通常の面会時間,通常は30分ということになりますが,通常の面会時間より長い時間を掛けて行う特別面会や,個別担任,保護者,本人による三者面談を行っております。さらに,社会生活への移行に向けた調整として,保護観察所,家庭裁判所,少年鑑別所等が出席する処遇ケース検討会というものを開催しております。これらの取組を通じまして,本人や保護者は,出院後に福祉関係の仕事に就くことを目指して,専門学校に通うことを決めています。また,出院後の家庭内でのルールなどを話し合うこともできました。更に社会内処遇を行う保護観察所等に対しまして,適切な情報の共有を図ることができています。   出院後は無事に専門学校に入学し,通学を続けています。しかし,周囲との人間関係がうまくいかずに悩むこともあり,本人が少年院に電話で相談をしてきたため,保護観察所と連携を図った上で,個別担任が話を聞いて助言や激励をするといった対応をしております。   次を御覧ください。この事例のように,発達障害や知的障害を有する在院者が増加しており,平成27年には16%を超えています。このような対象者には,集中力が続かない,衝動性が高い,独特のこだわりが強い,対人認知の偏りが大きい,対人不信,被害感,劣等感が強いといった処遇上の課題があります。少年院では,このような対象者に対する支援を行う教育コース,先ほど説明もありましたが,支援教育課程というコースを少年院の約半数に当たる25施設に設けており,外部の専門家からのアドバイスを受けて,支援に当たる職員に対する指導のガイドラインを策定したり,職員に対して発達の課題や特性に関する研修を行うなどして対応の充実を図ってきています。   次の絵を御覧ください。自立が困難な者の状況についてです。障害等により自立が困難で適当な帰住先がないなど,福祉,医療等による支援を必要とする者が増加してきております。これらに対し,少年院の社会福祉士等が地域生活定着支援センターなどと連携した特別調整や一般調整の取組により,帰住先や就労先の確保であるとか,福祉サービス等の調整を行っていますが,お示ししてあるとおり,その数も年々増加してきている状況にあります。円滑な社会復帰を実現するためには,在院中に生活環境を調整する必要がありますが,保護者が引受けを拒否する,少年を引き受けてくれる更生保護施設等の受皿が限られており適当な帰住先の確保が困難である,帰住先が決まっても社会内での福祉的な支援が受けられるような体制作りが必要であるなど,現状では多くの課題を抱えています。   なお,少年院の場合には,調整に要する期間が限られることや帰住先が決まった後に仮退院の申出をすることにより,帰住先の決定から出院までの期間が2か月ほど空いてしまい,その間,受入先の施設に部屋を空けて待っていていただかなければならないといった事情があって,特別調整等が使いにくいということで,これらによらずに独自の調整を行っているケースの方がむしろ多い状況にあります。グラフに示した以上に,調整を要するケースというのをたくさん抱えているということです。もちろん,障害のある在院者以外でも自立に困難を抱えている者は多数おります。そういった者に対して様々な関係機関,団体,企業等と連携して調整を行っているという状況です。   次の絵を御覧ください。4ページ目の上になります。保護者及び引受人の状況についてです。障害等がない者であっても,引受けに課題のある場合が少なくありません。右上のグラフになりますが,入院者の保護者の状況を見ると,かつては実父母の割合が最も高かったのですが,現在では実母のみの割合が最も多くなっています。いわゆるシングルマザーの増加がありまして,その結果,経済的な困窮やネグレクト等の問題を抱えるケースが増えてきていると思われます。左下のグラフを御覧ください。出院者の引受人の状況を見たものです。親族以外の下に帰住する割合が増加しておりまして,更生保護施設,自立準備ホーム,福祉施設,雇用主の下への住み込み就労などが増えていることが分かります。このようなデータが示すように,家庭の監護力の低下,引受け拒否等による帰住先確保の困難化が生じています。また,実父母が引受人である場合であっても,家庭内の不和を抱えている場合が少なくなく,帰住先の環境の調整が必要な者が多くなっています。   次に,下の絵に移ります。被虐待体験を有する在院者についてです。先ほど紹介した事例では,ネグレクトによる虐待を受けていたということでしたが,少年院には虐待を受けた経験を持つ者が相当数おります。平成27年に羽間京子委員と共同で行った調査では,グラフに示したとおり,年長少年においても,特に女子少年において高い割合で虐待を受けた経験のある者がいることが分かります。虐待による影響には,感情や衝動の調整が困難,安定した対人関係の構築が困難,物事への対処の仕方が不適切,社会や大人への不信感,自尊感情の低下などがあり,これらが様々な問題行動,逸脱行動,非行の背景となっていると思われます。少年院においては,安全・安心な場であることを体験的に理解させ,個別担任,寮担任がチームとして関わり,信頼関係を構築した上で改善のための働き掛けを時間を掛けて行っています。また,虐待の問題が継続している場合には,帰住先の確保や出院後の支援も必要となっています。   次のページを御覧ください。女子少年についてです。女子の在院者には,被虐待体験を有する者や性的被害を受けた者が多くなっており,そのことを背景に一般的に自己表現力が乏しく適切な問題解決ができない,自己イメージが悪く逃避や依存で問題を回避しがちである,被害体験によるトラウマがあるなど,精神的に不安定であるといった特性が認められます。女子の年長少年の非行のグラフを示していますが,覚せい剤事犯が半数以上を占めています。その背景には,このような問題があり,薬物依存からの離脱をするためだけの指導ではなく,安定した対人関係の構築の仕方を学び,自尊感情を高め,自立した生き方への意欲を高めることが重要となります。このため,女子少年院では職員が在院者に寄り添ってきめ細かな指導・支援を行うとともに,自傷や摂食障害への対応を時間を掛けて丁寧に行っています。   次の絵に移ります。ここからは,少年院における矯正教育及び社会復帰支援について順次,説明します。   まず,矯正教育の仕組みについて,個人別矯正教育計画の策定,成績の評価,処遇段階の向上といった流れを説明します。少年院では入院後,速やかに在院者の特性に応じて行う矯正教育の目標,内容,実施方法,期間などを盛り込んだ個人別矯正教育計画を策定します。その中では,最終的に達成すべき個人別矯正教育目標が定められ,更に3級から1級までの処遇の段階ごとに細分化した段階別教育目標を設定しています。資料の方にはサンプルの目標を表示しています。教育期間は家庭裁判所から処遇勧告がなされた場合を除き,一般的にはおおむね11月から12月が標準とされています。個人別矯正教育計画は在院者本人に告知するとともに,本人が理解できるまで説明を行います。また,随時,面接を行って指導をしております。さらに,保護者にもこの教育の計画を通知しています。   成績評価は原則として毎月,定期的に行われます。評価は段階別教育目標の達成度に加え,教育への取組状況や規範意識,基本的生活態度,対人関係といった生活及び行動の状況について行います。成績評価の結果は在院者に説明して動機付けを高めるとともに,保護者にも通知を行っています。成績評価の結果に応じて処遇の段階が3級から2級,1級へと向上します。処遇の段階が向上するのに応じて矯正教育の内容,社会復帰支援の実施方法や生活に関する処遇の実施方法が変わっていきます。例えば1級の段階では,出院準備寮において自律的な生活を行って,社会復帰に向けた準備を整え,その後,出院していくということになります。   次のページを御覧ください。個人別矯正教育計画を策定して,個別的な教育を行っていることについてただいま説明しましたが,この計画は在院者本人との面接の結果や保護者の意向のほか,家庭裁判所における社会調査,少年鑑別所における鑑別による豊富な情報と科学的アセスメントの結果を踏まえて策定しています。もちろん,実際に教育を行っていく中では,必ずしも計画どおりに教育計画が進むということではありませんので,必要な場合には少年鑑別所による処遇鑑別を行うなどして,計画の修正や変更を行っています。特に必要な場合には,少年鑑別所に短期間収容して処遇鑑別を行うということもあります。このような教育計画の下で在院者個々の成長・発達を促しつつ,一人一人が抱える問題性や事情に配慮した指導が行われることになります。   次を御覧ください。少年院における処遇をもう一つの観点から説明いたします。少年院における処遇の基礎は,安全で明るく規則正しい生活であり,昼夜にわたり,職員が行動を共にして行う生活指導により,また,個別担任や寮担任として職員が面接,助言指導,行動観察を行う密接な関係により,更生的な風土が保たれていることにあります。その上で,少年院の処遇は大きく「育て直し」と「再非行防止・社会復帰支援」に分けることができます。教えることの土台には育てることがあり,少年院では,家庭,学校,社会において不適応状態にあった在院者に対し,個別指導と集団指導を組み合わせて適切な対人関係の持ち方や基本的な生活習慣を身に付けさせる「育て直し」に力を入れています。その上で,問題行動への指導や被害者心情理解指導といった再非行の防止に向けた指導,社会復帰支援が行われているということになります。   よく,施設の見学に訪れた方からは,「施設が明るくて生徒の様子も普通であって,イメージしていたものと違った。」という感想が聞かれますが,職員が昼夜にわたり,行動を観察しながら考え方や生活習慣に踏み込んだ指導をするということは,在院者にとって相当に厳しいものであって,このことは出院時の感想文などにもよく表れています。   次を御覧ください。処遇の基盤についてもう少し詳しく2点説明いたします。   まず,安全で安心な環境についてです。少年院では日課等に基づき,規則正しい生活が起床から就寝まで行われます。生活のルールは明確にされており,在院者が理解するまで繰り返し説明されます。ルールに違反した場合には,基本的に公平・厳格に取り扱われ,指導や懲戒処分が行われます。また,夜間や休日においても常に職員が行動を共にして見守り,指導や助言を行っています。このように構造化された枠組みの中で,障害のある者も被虐待経験のある者も徐々に落ち着いて生活ができるようになり,更生的風土が醸成されるようになります。また,規律・秩序が適切に維持されること,生活の様々な面できめ細かい配慮がなされていることにより,在院者は安心して生活できるようになります。   次を御覧ください。もう一つの処遇の基盤が職員との信頼関係にあります。社会や大人への不信感が強い在院者に対し,その考え方や家族等との関係に踏み込んで厳しい指導を行うためには,職員と在院者との間に信頼関係がなければなりません。そのためには在院者の人権を尊重しつつ,じっくりと話を聞く,傾聴することにより心情を受け止め,把握することが重要となります。少年院では一般に20人程度の小規模な寮集団を編成し,数人の寮担任が役割を分担して個別担任制と組み合わせた指導体制を採っており,小規模で高密度な処遇を展開しています。とは申しましても,もちろん,全ての在院者と信頼関係を結べるわけではなく,大人への不信感が強く,なかなか処遇が浸透しない者もいることから,職員は叱り方や動機付け面接法といったものを学ぶなどして取り組んできています。   次を御覧ください。再非行防止を図るための矯正教育の一つとして特定生活指導があります。ここにありますように六つの指導が用意されており,少年鑑別所が作成する処遇指針を踏まえて個々の在院者の必要性に応じて選択し,実施しています。特に下から2番目の家族関係指導とその下の交友関係指導は,これらの指導が非行事実だけでなく,その背景にある問題に踏み込むものであるという点で少年院における指導の特徴を表しています。   各特定生活指導は,中核プログラムと周辺プログラムによって構成されています。中核プログラムは,外部専門家のアドバイスを受けて作成した標準的なテキストに基づき,全ての施設で共通に実施していますが,周辺プログラムについては,適切な対人関係の持ち方や感情のコントロールなどといった共通の目的において,施設の特徴をいかし,アサーション,アンガーマネジメント,セカンドステップ,プロジェクトアドベンチャーなどといった多様な指導内容を用意しています。このような指導を通じて学んだことは,実際に生活する中で,スポーツのように繰り返して実践して身に付けることが重要であり,職員はそのような実践ができたときを見逃さずに,「今の対応はよかったね。」といったように認めることで動機付けを高めるようにしています。   次を御覧ください。社会復帰支援の取組について説明します。社会復帰支援を効果的に行うためには,保護観察所をはじめ,様々な関係機関や関係者との間で顔を合わせて協議や調整を行う必要があります。少年院では,処遇ケース検討会や各種打合せなどの機会を活用し,多機関との連携に努めています。また,少年院からの出院はほぼ100%が仮退院であり,施設内処遇と社会内での処遇が組み合わされているところに特徴があります。したがって,保護観察に円滑に移行するために,地方更生保護委員会,保護観察所,保護司などとの間では密接な情報共有と連携が行われています。また,出院後においても少年院の職員が保護観察所が開催する合同支援会議に出席するなどして,継続的に関わるケースもあります。新しい少年院法では,退院者等からの相談を受けることが規定されたことにより,退院者等からの相談件数も増加してきています。相談内容は様々ですが,在院中に築いた人間関係を基に個別担任の職員などが助言を行っています。   様々な処遇によって少年は成長していきますが,出院後の生活環境が改善されていなかったり,地域の不良集団等との関係が調整されていない場合には,どうしても再非行のリスクが高くなっていきます。そのため,在院中から出院後に適切な支援が継続的に行われる体制をいかに構築するかということが課題となっています。   最後の絵を御覧ください。出院後の自立に向けた取組についてです。少年院では,本人や保護者の希望や意向を踏まえた上で,就労支援,修学支援に力を入れており,就労支援の対象者,高卒認定試験の合格者は増加傾向にあります。就労支援は,平成18年度から法務省と厚生労働省が連携して実施しているもので,支援対象者を選定して公共職業安定所の職員による職業相談や職業あっせんを行うものです。   課題としては,せっかく就職,進学に結び付けても定着せず,長続きしないというケースが多くあることがあります。そのため,現在はビジネスマナーや対人関係スキルを習得させる指導を行ったり,自分に合った学校を選択できるよう,業者に委託して情報を収集して提供しているほか,在院中に就労先や修学先あるいは帰住先に外出して見学したり,体験することを行っており,具体的な心構えを持たせるように取組を強化しています。   説明は以上でございます。 ○井上部会長 どうもありがとうございました。いずれも,非常に中身の濃い御説明であったと思います。   ここで休憩を取らせていただきたいと思います。再開は10時45分とさせていただきます。           (休     憩) ○井上部会長 それでは,再開させていただきます。   先ほど非常に詳しい御説明を伺ったのですが,この御説明に対する質問がありましたら,まず,どなたからでも御発言ください。   少年鑑別所及び少年院で御勤務されている方々に直接,御質問できる非常に貴重な時間ですので,なるべく,前置きを省いて端的に御質問していただければ,たくさん質問できると思います。よろしく御協力のほどお願いしたいと思います。 ○太田委員 今日は御説明をどうもありがとうございました。少年院と鑑別所について一つずつ御質問させていただきます。   少年院の方ですけれども,レジュメで言いますと最後から2ページ目のところに,今度,新しい少年院法で出院者からの相談という制度が導入されましたけれども,まず,保護観察,2号観察が行われている場合に,実際にこの相談において少年院の職員の方が保護観察官とどう連携されているのかということと,それから,年長少年の場合には仮退院した後に成人になった後でも相談に対して対応が理論上はできるわけですけれども,その場合は保護観察が終わってしまっている場合がほとんどですので,そういう場合に少年院のように施設外での手段といいますか,足がないところで成人の相談に対する対応をどのように整えていかれるのかということについてお聞きしたと思います。   それから,少年鑑別所の方については,一番最後のスライドだったと思いますけれども,入口支援との関係で検査等をされているということですが,これは基本的に成人に対して行っているわけですけれども,対象者というのは知的障害とか発達障害が疑われるような者で,例えば行った行為は非常に軽いものだけれども,問題性が非常に高そうな者についてもやるようなケースがあるのかどうかということと,それから,こういう成人に対する鑑別というか,検査のノウハウとして少年鑑別所としては特に問題なく実施できてるのでしょうか。しかも,観護措置の場合には非常に長い期間をかけて鑑別ができるわけですけれども,入口支援の場合,身柄拘束され,非常に限られた期間の中で検査をされるわけなので,実際上,成人に対してこういう短い期間の中でやることには難しい点もおありかと思うんですけれども,それについてお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。 ○柿崎参考人 それでは,御質問いただいた保護観察所との連携の点ですが,出院後に相談を受けた場合には,保護観察中であれば保護観察所に対して,そういう相談を受けたことをまず情報として提供して,保護観察所側が把握している情報や現在の処遇の状況も聞き取った上で,少年院としての相談対応や助言指導といったものを行っています。その結果についても,当然,保護観察所の方に事後に伝えて連携を図るということになります。   もう1点,成人になった場合等でも,相談については継続的に関わるというケースが今後出てくると思われますけれども,出院者からの相談の場合には,電話によるもの,それから,本人が来訪するもの,手紙等によるもの,様々な形がありまして,こういった相談を受けた場合に職員が対応していくという形が多く,職員が院外に出向いていって対応するというのは,先方からの求めがない限りは,通常は余り行われないかと思います。保護観察中であって,保護観察所からの依頼があれば,先ほど御説明したように出向いて支援会議等に職員が出席するということもございますが。 ○小山参考人 入口支援の対象者としましては,先生がおっしゃったように知的障害であるとか,あるいは認知症であるとか,そういう障害を持っている方が多くなります。その事件につきましては,私が知る範囲では,それほど重大なものというよりは比較的軽微なものが中心になっているかなという気がします。社会復帰支援につなげていくための事前の知能検査等の実施ということになりますので,そういうことになるのかなと思います。   また,成人に対する調査ということで言いますと,ある程度のキャリアを積んできますとほとんどの心理技官が刑事施設での勤務経験を有するようになりますので,基本的には特に支障なく実施できます。ただ,収容審判鑑別のように時間を掛けて丁寧にということは限界があります。ただ,その分,通常の処遇鑑別においても私たちは少年院に出向いていって,1日でいろいろなデータを集めて必要最小限の所見は出しておりますので,そういう範囲であればできますけれども,収容審判鑑別と同じ程度のものというわけにはいきません。   以上でよろしいでしょうか。 ○太田委員 一点だけ。検査の内容は,知能検査以外にもいろいろ少年鑑別所でやられているような検査なども行うことになろうと思いますが,勾留中だと思いますので,その間にそこで実施されているということなんでしょうか。 ○小山参考人 発達査定であるとか,あるいは認知症を見極めるテスト等もよく実施しております。 ○山﨑委員 まず,今の観点に関連してなんですが,成人の被疑者が勾留されている場合の,今言われたような検査というのは,具体的に,場所は接見室などでやられているんでしょうか。その点がまず1点。先にその点だけよろしければ。 ○小山参考人 刑事裁判に入る前の段階ですけれども,すみません,正確に把握しておりません。 ○紀参考人 八王子少年鑑別所長の紀でございます。私の現場の感覚としては,少年鑑別所の職員が,身柄を勾留している場所等に出向いて検査をするというのがスタンダードかと思います。身柄の戒護の権限の問題がございますので,職員がテストを持って先方に行き,実施して戻ってきた後,速やかにテスト結果を通知することに努めていると思います。 ○山﨑委員 その場合,警察署の留置場に勾留されている被疑者等が多いと思うんですけれども,その場合はどこでどう検査するんでしょうか。 ○紀参考人 多分,警察の接見室等をお借りしているのだと認識しておりますけれども,正確なところは把握しておりません。 ○山﨑委員 それと,少年鑑別所一般のことをまとめて御質問しますけれども,先ほどの鑑別の流れ図の中で,資料の2ページになりますが,家庭裁判所調査官との情報交換というのがどの段階で何回ぐらいあるものなのかということが1点です。   2点目は,心理技官の面会・面接というのが,一般的には収容期間中何度ぐらい行われて,いつの時期まで行われるのかということでございます。   3点目としては,それを受けて判定会議が行われ,鑑別結果通知書が提出される時期がおおむねどのくらいかということでございます。観護措置の期間は原則2週間ですけれども,更新されて3,4週間を掛けるのが一般的かなという実務感覚があります。その点に照らして,どのくらいの時期に通知書が出されているのかというのが3点目でございます。   あと,最後ですけれども,出された鑑別結果通知書を私たちが家庭裁判所で見るときには,調査票などと一緒に社会記録としてファイルされた状態であるわけですけれども,その内容物はその後,保護観察所とか少年院とか,場合によっては刑務所だとかに,ファイルの形でそのまま行くというイメージなのでしょうか。その辺り,鑑別結果通知書の中身が,その後の処遇にどういう形式で伝わっていくのかという点を教えていただければと思っております。 ○小山参考人 まず,家裁の調査官との事例検討の時期と回数につきましては,調査官が少年鑑別所に調査に来られた際に,いつと限らずに比較的早くから通知書を出すまでの間,何回か行われるというのが通常ではないかなと思っております。あと,鑑別面接の回数につきましては,心理技官が行うものについては,実際的なところは3回から5回ぐらいではないかなと。ただ,それぞれの経験年数等によりまして未熟なというか,比較的若い心理技官はもっと多くの回数,少年と会っているのが実情でございます。また,面接の回数につきましては,そういうふうに限られますけれども,面接と面接との間に,例えば次の面接までにこういうことをやっておいてくださいとか,こういうことを考えておいてくださいということで,その間にも少年たちはいろいろな課題をしたり,内省を深めたりということをしております。   また,鑑別結果通知書を提出する時期ですが,ほとんどの少年はほぼ4週間弱おりますので,審判に間に合わせるように,例えばその4日前であるとかに家裁に提出するということになると思います。   鑑別結果通知書が各機関で活用されるときに,どういう形態で送られるかということですが,基本的には少年簿という行政文書の中につづられて,本人の身柄と一緒に例えば少年院送致になれば少年院に送られますし,保護観察になれば保護観察所に送られますし,ずっと先に刑事施設に入った場合には,先方からの依頼に基づいて,それが先方に送られるという形になっております。 ○青木委員 少年院のことでお尋ねしたいのですけれども,今日,配っていただいた少年院のしおりというのの5ページに特別活動指導というのが載っていまして,社会貢献活動等について触れられているのですけれども,こういう社会貢献活動ですとか,あるいは地域の方との交流などについてどの程度の頻度で行われていて,少年たちがそれに対してどういう反応を示しているかというようなことについて教えていただけると有り難いのですが。 ○青木参考人 社会貢献活動につきましては,少年院の外に出てやるものですから,基本的には1級生になってから,大体,頻度としては一人に対して数回実施します。その施設によってやることは違うんですけれども,例えばうちの少年院の場合ですと,盲学校に行って子どもたちと触れ合って,そこの清掃活動をするですとか,あるいは神社に行って清掃活動をするですとか,施設によってやることは違います。彼らは,社会で人から感謝されるという,ありがとうと言われる経験が余りないものですから,行って非常に喜んでもらってありがとうと言われることによって,自尊感情がすごく上がってすごく喜びます。ですから,なかなか,難しいんですけれども,あらゆる機会を通じて,そういった社会貢献活動もこれからも実施していく必要があるなと感じております。 ○奥村委員 お聞きしたいことは一杯ありますが,2点だけに絞ってお伺いします。   まず1点は,少年院の資料の2ページに挙げられている処遇例について,対象少年は,最初,反則行為を繰り返すことが多いが,それは自ら置かれた状況につき被害的に受け止める傾向が強いことから反抗的になるものの,処遇過程でだんだんと1級になっていくにつれて自信を付けることにより,出院後には電話相談をしてくるようにまでなってきたということですけれども,一般的に少年院における在院中の処遇過程において当初の反抗的態度から前向きに進む自立的態度へと成長変化していく傾向になっていくと理解していいのか,ただ,先ほどもおっしゃったように,出院後に社会に戻るといろいろな環境や人間関係等のあつれきで再非行とか再犯を犯すということが残念ながら少なくないということでしょうか。であれば,少年院における指導理念の実効性が社会においてもその実効性が担保されるよう方策を練る必要があります。   もう1点は,「統計資料2」の19ページに少年院の矯正教育について言及がありますけれども,先ほど太田委員からも出ましたように知的障害とか発達障害の方が増えてきているということで,知的障害とか発達障害を有する非行少年と,一般的なそういう障害を持たない人に対しては処遇の違いがあるのか,両者の処遇の相違があれば,違いの具体的なイメージを教えていただければ有り難いと思います。 ○柿崎参考人 まず,この事例が一般的なものかどうかということですけれども,少年院の仮退院時にこういった処遇経過をたどって,少なくとも出院するタイミングで本人が前向きになっているということは一般的な事例でございます。むしろ,そうではなくて最後まで不信感を抱き続けるといったケースは本当に少ないということになります。   それから,障害者に対する対応については,私から一般的なことを述べた上で,青木の方からまた御説明したいと思いますけれども,一番の特徴は,話をよく聞く,本人からじっくりと話を聞いて本人が抱えている生きづらさ,困難性というものをじっくり聞き取るということが基本になります。障害特性には様々なものがあって,この点については外部の研究者の方からもアドバイスを頂いて,職員がそういった発達上の課題を持つ者に対応する際の着眼点や対応の仕方といったものをガイドラインの形でまとめておりまして,そういったものを踏まえて対応することになります。 ○青木参考人 通常の少年と接し方が変わるわけではないんですけれども,障害特性がありますので,職員の方は関係性をしっかり作るというところに非常に時間を掛けるということ,それから,当然,できないのが当たり前ですので,諦めない,粘り強くという,まず,それを前提にして様々な働き掛けをしていくことになります。具体的には身体的になかなかバランスが悪いということがありますので,身体向上トレーニング,コオーディネーショントレーニングですとか,あるいは共感性とか他者理解というのは非常に難しいものがありますので,それを補うようなセカンドステッププログラムですとか,そういった普通の一般の少年とは違う治療的なプログラムを用意して実施しております。 ○田鎖幹事 少年院の関係で2点,質問させていただきます。   1点目は処遇例の中にも出てまいりました反則行為を当初,頻発する少年が多いということですが,一方で,本人の自主性とか自立性を尊重して,自尊心とかも高めていかなければいけないと。そうすると,当然,機械的に例えば懲戒で対応するとはいかないと思うんですけれども,実際,現場で厳重な訓戒ですとか,謹慎とかいうものはどのようなケースで,あるいはどのような頻度といいますか,割合で用いられているのか,具体的にイメージを持つための材料を教えていただきたいというのが1点でございます。   もう1点は,個別的な矯正教育の計画を策定するに当たって少年に告知をする,それから,理解を得られるように説明するということ,それが重要だということだったんですけれども,先ほどもじっくりと時間を掛けて説明したり,向き合うということなんですけれども,具体的なイメージで,子どもなので聞かれても例えば自己表現も難しかったり,その場では対応できないようなこともあると思うんですけれども,具体的な事例を教えていただければと思います。 ○柿崎参考人 反則行為への対応というのは,基本的には遵守事項というものが,要するに少年院生活のルールというものが明確に定められていて,細かく決められています。入院した者に対しては,これを繰り返し,どういうルールかということが分かるまで丁寧に説明しています。もう一つは,やっていいことといけないことがそうやってはっきりしている中で,そのルールに抵触した場合には,先ほども言いましたが,それぞれ障害特性とかは考慮しますけれども,基本的には公平に対応することでルールが明確化されて,在院者にとってはそれが構造化された安心できる環境ということになっていると思います。   少年院における懲戒は,教育的な要素も当然含んでいますので,懲戒を行うことによってその後の生活をよくするきっかけにするという意図が当然働いているわけで,謹慎といったような処分においても,あるいは訓戒を与えるといった言渡しにおいても,本人がそれをきちんと受け止められるかどうかというところも見ていますし,謹慎中はただ個室の中でじっとしているわけではなくて,課題を与えて,その後の生活への転換点となるように職員が個別面接を行ったり,コメントをするなどして働き掛けを行う,教育的に取り組んでいます。 ○青木参考人 通常,月に1回,成績が付きまして,その場合は個別担任が告知します。面接という形で1対1で告知して,本人の問題性であるとか,それも踏まえて目標に沿って説明して,当然,全部の少年が納得するわけではないんですけれども,そういった場合には先ほども言いましたように焦らずに,時間を置こうということで単独室に入れて,そこである種,しっかり考えさせると。その間,また,職員が行って面接するというふうにして,納得するまでしっかりと説明するということをしております。 ○小玉幹事 質問ではないのですが,先ほどの山﨑委員の御質問の中で,少年鑑別所が地域援助の一環として成人の勾留中の被疑者に対して行う知能検査などの場所の話でございますけれども,勾留中ですので留置されている警察署内で行うこともあるかと思いますが,それ以外に,警察が被疑者を押送した検察庁の室内で行うこともあると承知しております。 ○山下(幸)幹事 少年院の関係でお聞きしたいんですけれども,今日,特に例としては19歳という年長少年のことでお話を頂いたんですが,職員,法務教官といいますか,教官の方が,年齢層がかなり16歳ぐらいから20歳近くまで対象の少年がいらっしゃると思うんですが,担当する教官というのは年齢層によって違うのか,全部の年齢層に全て別に普通に対応しているのか,年齢ごとに教官が違っているというか,そういうことがあるのかというのが第1点でございます。   第2点としては,今回,ここで議論している年長少年がまさに少年院の対象から外れた場合に少年院の運営の在り方とか,そういうものに何か影響が出るということが考えられるのかどうなのか,今現在,人数としては年長少年がかなり多くの割合を占めていると思うんですけれども,また,多摩少年院は収容者の定員に占める割合がかなり多い方だと思いますけれども,そのときにまさに年長少年が対象から外れた場合,少年院の運営の在り方自体に何か影響が出るのかどうかということについてお聞きしたいと思います。 ○柿崎参考人 年齢による対応の違いというのは,当然,年少少年と年長少年では社会復帰に向けた次のステップの段階へのニーズが異なりますので,年少の場合には復学や進学を前提とした対応,あるいは年長になればほとんどが就労に向けた対応であるといったようなニーズの違いによって,教育内容や対応の仕方というのは変わってきます。それから,年齢だけではなくて個々の成長発達の程度や持っている問題性というのは様々ですので,むしろ,職員は個人個人への対応というところで処遇をしていまして,年齢だけが切り口ではないというところがあります。当然,年少の場合には自分のコントロールができなかったり,年齢相応に,あるいはそれ以上に発達上の課題を抱えているケースがあるので,どうしても「育て直し」と先ほど言いましたけれども,そういった要素が強くなります。相対的にいえば,年長になるにつれて,その部分の占める割合がより少なくなり,再非行防止や社会復帰支援の割合が多くなってくると一般的には言えるのかと思います。   また,2点目の仮に年齢が引き下がった場合の少年院の教育への影響ですけれども,職業指導や職業訓練における資格取得の中には,18歳以上を対象とするものも数多くありますので,例えば建設機械の運転訓練とか,そういう教育というのは対象から外れることになるということがあります。また,少年院は基本的に同じような問題性のあるグループを集団として編成して,そこに効果的な教育活動を行っていくという枠組みを採っていますので,集団の構成が大きく変わる場合には,そのターゲットに対応した教育内容を充実させるという形で変化することになります。   少年院の運営としてはどうかということであれば,そういったことになりますが,翻って,18歳,19歳に対する教育の機会がもしなくなると,先ほどから説明してきたように,ちょうど,社会不適応に陥っている状態で,二次的な障害や環境の問題によって犯罪傾向が進んでいく段階での早期の手当てができなくなるということになります。少年院に収容して,社会から一旦切り離して,保護者との関係や,あるいは社会との関係を調整するという機会も失われてしまうことになれば,現在,行っている取組のメリットの一部は失われることになろうかと思います。 ○井上部会長 次の議事の予定もありますので,あと,お一方かお二方になろうかと思いますが,御質問があればお願いします。 ○武委員 少年院のことですが,見学に行った人たちが思っていたイメージとは違って,とても明るかったと印象をもったということは私も聞いたことがあります。そのことは,今日のお話にもありました。私たち遺族が思っている少年院というのは,見学の人たちが見に行ったときであっても,緊張感が走るような場所であると想像しているし,そうあるべきだと思っています。見学に行った人の中には,過ごしやすい場所のように見えたという人もいるのですが,それは見学に来る人たちが来たときだけがそうなのか,日頃からそういう場所なのか,緊張感はどこにいったのかなと,疑問に思ってしまいます。それはどうなんでしょうか。   それともう一つあります。これだけ手厚い指導を行っているのであれば,教官の人,職員の人はとても負担が大きいと思うんです。その人たちの精神的な面はどうしているのか,それがとても気になりました。そして,その人数は足りているのか,先ほど職員の人たちの数が書いてありましたが,私たちから見てそれが足りているのか,足りていないのかは分かりません。でも,これだけ手厚くやるのであれば,とてもたくさんの人数が必要だと思うので,足りていないのではないかなという心配もあります。教えてください。 ○柿崎参考人 第1点目の見学に訪れた方が見ている少年院の子どもたちの姿というのは,いつもの変わらない姿です。そのときだけ特別なものをお見せしているということではありません。多分,見学者の方が持ってこられるイメージとのギャップを感じられているのだと思います。では,少年院が明るい環境で,子どもたちは楽な生活をしているのかという点については,先ほども触れましたけれども,子どもたちが出院するときに述べる感想の多くは,少年院の生活は非常に厳しいものであったというものです。職員は在院者を見守ると言いましたけれども,同時に個々の在院者の問題性を見ているわけで,問題に取り組もうとしない,あるいは誤った考え方をそのまま持ち続けるといったことに対して,繰り返し繰り返し,内省を深めるように働き掛けをしていきます。そういった自己の問題への直面化を繰り返し求められていく少年院の教育の在り方というのは,ある意味で非常に厳しい部分がございます。その点は,見学で御覧いただく姿と,そういった部分というのはまた見えにくい部分なのかなと思っています。   また,職員の負担について,お尋ねをいただきました。実務家の立場から,職員が足りないということはなかなか言いにくいことではございますけれども,在院者の数そのものはこの10年以上,一貫して減少傾向にあります。ただ,先ほど説明したように,社会復帰に向けた様々な取組,院外に実際に連れて行って行う支援や教育といったものに力を入れてきておりますので,そういう取組を強めていく中では,職員の数というのはまだまだ十分とは私は個人的には感じておりません。もちろん,実務においては与えられた条件の中で職員が最大限,ベストを尽くすということになります。少年院の職員は総じて熱心でございまして,休日や自分の非番の日であっても出てきて,在院者と面接するということは一般にどの少年院でも行われているように思います。 ○井上部会長 御質問はまだまだ尽きないと思いますけれども,先の議事も重要ですので,御質問はこのぐらいにさせていただきたいと思います。さらに御質問があれば,事務当局の方に寄せていただくか,現場に伺うことも計画されてますので,その際にまた出していただくこととして,本日のヒアリングはこのぐらいにさせていただきたいと思います。参考人の方々には,お忙しいところをお出でいただき,ありがとうございました。                (参考人退室)   それでは,続けさせていただきます。この後の時間は,前の方で申しましたように,前回に引き続き諮問事項全体,想定される論点及び審議の進め方について意見交換を行わせていただきたいと思います。前回も申し上げたので,しつこいようですけれども,御発言はなるべく簡潔にお願いできればと思います。御発言を希望される方は挙手をお願いしたいと思います。 ○佐伯委員 先ほど参考人の方から,少年院では個々の在院者の特性等に応じた非常に高密度な処遇が行われているという御説明を伺うことができました。今後の部会の審議におきましては,勉強会の報告書で指摘されていることでありますが,若年者につきましてもその特性に応じた処遇原則を明確化する,そして,施設内処遇を充実させる,また,処遇調査を充実させるということについて検討すべきであると考えます。私は勉強会のヒアリングでも申し上げさせていただいたんですけれども,刑務所における若年受刑者の処遇につきましても,今,御説明いただいたような少年院における処遇に準じたものにしていくべきではないかと考えております。   これも勉強会の報告書で指摘されていることなわけですけれども,少年院における処遇に準じたものにしていくという点で,懲役刑に作業が義務付けられているということがもし障害になるのであれば,自由刑の単一化ということについても検討すべきではないかと考えております。そういう受刑者の特性に応じて作業,改善指導,教育指導等を行うということになりましたら,若年受刑者のみならず,高齢受刑者や障害を持った受刑者に対する処遇もより柔軟化することができ,より充実した処遇を行うことができるのではないかと考えるところです。 ○大沢委員 本日,少年院や少年鑑別所の説明を受けて,非常に丁寧に処遇がなされているということを感じた次第です。それで,仮に今後,少年法の適用年齢が変わったとしても,こういった丁寧な働き掛けというのは非常に必要だと思いまして,そういったものが何らかの形で,これだけノウハウ等が積み上がっているわけですから,いかせるような形での前向きな議論というのをしていただければ,していった方がいいのではないかなと思う次第です。   それでまた,今回の検討を契機に今の刑罰の在り方というのをもう一回,見直して,今,佐伯先生がおっしゃっていたことにも通じるかもしれませんけれども,刑罰の中に教育的な要素をどうやって入れていくかと,そういったことを考えていくということも必要なのではないかと思います。それで,それは飽くまで再犯防止ということに役立つという観点があれば,非常に国民の理解も得られるのではないかと思います。   それから,もう一つ,私は報道機関の立場におりますので,推知報道について,これは飽くまで私の私見ですけれども,申し上げさせていただきたいと思います。仮に今後,少年法の「少年」の上限年齢が引き下げられた場合なんですけれども,私は勉強会のときのヒアリングでも申し上げたんですけれども,報道は基本的に実名報道が原則です。それで,それは被害の実態とか,そういったものをしっかり読者,国民に伝えるということで実名報道でやっているわけです。ですから,今後,「少年」の上限年齢が引き下げになって,もし18歳,19歳が成人として扱われるということになるのであれば,裁判の公開原則ということもあるわけですから,そこは実名が原則なのではないかと私は感じています。   ただ,更生への影響ということは当然,考えなければいけないわけで,そういった中で事案の内容とか,悪質性とか,そういったものを総合的に勘案して,個別に報道機関がこのケースでは実名にするかどうかということを選択するということも,そこは十分検討するということはあると思います。あるいは自主的なルールというものを報道機関側が考えるということもあるかもしれません。ですが,いずれにせよ,それは報道機関側の自主的な取組に委ねられるべきことなのではないかなと現時点で私は考えています。   それで,もう1点,今後,民法の成年年齢が引き下げられても少年法はそのままという,そういう考え方も,当然,そういう御主張もあると思います。ただ,そこで御紹介しておきたいのが新聞協会が1958年に少年法第61条の扱いの方針というのの見解を出しています。その中で,推知報道のことを取り上げているんですけれども,その中で,新聞は少年たちの親の立場に立って法の精神を実践するものですということを言っているわけです。ですから,今後,もし民法の成年年齢が引き下がっても,少年法は引き下がらないとなった場合,そうすると,親の保護を離れる成人についても要するに推知報道は今までどおりとなった場合に,そこら辺の理屈がどう整合性が付くのかなということは思う次第です。それで,何よりそういったずれた扱いをするということが一般の国民読者の理解を得られるかどうかというところも,また,考えていかなければいけないのではないかと思う次第です。 ○山下(幸)幹事 今日のヒアリングにおいて,少年鑑別所と少年院において,今,非常に年長少年に対しても大変きめ細かなというか,調査,そして,それを踏まえた処遇が行われているということが明らかになったわけなんですけれども,基本的になぜ現在,きちんと行われている年長少年に対するそのような調査とか,処遇をわざわざ外して,少年法の年齢を下げることによってそれを変えて,しかし,それでも,それを成人と扱った上で,そちらの処遇を今のものに近いものにするという発想は,現行のやっていることが何か非常に不具合があるということであれば,それを変えるということは必要だと思うんですけれども,民法の成年年齢が引き下げられるということに合わせて引き下げることを前提に,別に現行上,何か不具合があるわけでもないのにそれを変えて,そして,成人になるいわゆる19歳,20歳の少年に対する処遇を今の処遇に近いものにするというのは,論理が逆転しているというか,まず,現在,行われている調査や処遇に本当に不具合があって,これを変えなければならないという必然性があるのかどうかということをまずきちっと議論した上ですべきではないか。   年齢を変えると,18歳とか19歳を少年とは扱わないということを前提に御議論がスタートしているという,論理が逆転していると思いますので,まず,現在,行われている18歳,19歳という年長少年に対する調査,処遇というものを本当に変えなければならないような不具合が生じているのかどうかということをきちっと議論すべきではないかと思います。 ○田鎖幹事 今の点に関連してなんですけれども,本日,ヒアリングの機会を設けていただきましたし,現場を視察する機会も今後あると伺っております。ただ,いかんせん,今,山下幹事が言われたように,現状,どう機能していて,どこに不具合があるのかないのか,あるいはもっと有効に機能するためにはどんなことが必要なのか,そういうことをきちんと見極めるための材料というのは足りないのだろうと思います。時間は限られておりますけれども,視察やヒアリングで足りない分を補うために,例えば現場の職員の方々にアンケートを行うというようなことは,是非,私は御検討いただきたいと思います。行刑改革会議のときにも,施設は選んでおられましたけれども,職員さんたちからのアンケートというのを取って,それは非常にその後の議論にいかされたと考えておりますので,よろしくお願いいたします。 ○井上部会長 御希望として承っておきます。 ○今井委員 私も個人的には,佐伯委員,大沢委員と同じ意見を持っております。その上で,山下幹事や田鎖幹事がおっしゃったことを踏まえてなのですが,今日のヒアリングを受けまして,私も年長少年に対して大変手厚く,充実した処遇がなされていることを改めて認識しました。今後,そういう年長少年が刑罰を受ける対象になったとしても,これまで培われてきた経験を基に,そういった方々の改善更生,再犯防止に役立つような措置を考えるということは,十分可能でありまして,そういう現実的な可能性を考えますと,選挙権年齢が引き下がり,あるいは民法における成年年齢の検討状況を踏まえるならば,私としては少年法の適用年齢は引き下げた上で,現在の良いところを使えるような刑罰制度の見直しをするというのが,一番望ましい方向ではないかと思っております。 ○池田幹事 私も,引下げありきの議論ではないというのは,そのとおりだと考えておりますけれども,他方で,「少年」の上限年齢の引下げの当否を検討するためには,本日,伺ったようなお話も踏まえて,これまでの施策が果たしてきた機能が年長少年との関係で果たされなくなるということをも考慮の上,生じうる懸念に対応するということも併せて考えておかなければならないと思います。そして,そのような懸念に対応する方策として,勉強会の取りまとめ報告書では若年者に対する刑事政策的措置が複数列挙されておりまして,これらについて論点として取り上げるということは適切だろうと,そのように考えております。 ○橋爪幹事 ただいま池田幹事からも御発言がございましたけれども,勉強会の取りまとめ報告書の中には若年者の再犯予防に関する様々な方策が提案されておりますので,これらを論点として具体的に検討することが有益であるように考えております。一つ具体的な例を申し上げます。別紙,資料4番の12ページ(ア)で示されているところでございますが,保護観察の活用のための刑の全部の執行猶予制度の見直しです。そこに書かれている点に尽きるわけですが,若干,申し述べますと,再犯予防という観点からは,社会内処遇の一環として,保護観察を積極的に活用することが有益であると思われますが,刑法第25条第2項ただし書の規定によって,執行猶予判決の際に保護観察に付した場合には,執行猶予期間中の再犯については,再度,刑の執行猶予を付けられないことになっており,このことが,裁判官が執行猶予判決を言い渡す場合に保護観察に付することをちゅうちょする原因になっているという指摘が以前からあるかと存じます。   もし,このような問題が実務において本当に発生しているのであるならば,今後,保護観察を付すべき事案について,積極的に保護観察制度を活用すべく,刑法第25条第2項の規定内容についても点検を加え,場合によっては,保護観察付きの執行猶予期間中の再犯でありましても,一定の要件の下においては,再度の刑の執行猶予を可能にするような法制度の在り方につきまして,検討することが有益であるように思います。もちろん,これは若年者の問題に限られることではありませんが,重要な点であると思われ,あえて申し上げました。 ○羽間委員 先ほど少年院長に対する御質問の中にもございましたが,仮に少年年齢を18歳未満としたときに,現状にしてどのようなことが起こり得るのかということについてかなり気になっております。若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会取りまとめの報告書でも,刑事政策的な懸念と指摘がございますが,例えば現在18歳,19歳で少年院送致になっている人,あるいは保護観察になっている人がどうなっていくのか,あるいは再犯や再非行,それを防止する,あるいは更生を目指した何らかの働き掛けというのがどの程度,実現されるのか。こうしたことについてのある程度の予測といいましょうか,そういったものができるのか,あるいは既になさっているのかということをお伺いしたく存じます。 ○井上部会長 今の点について事務当局から何かありますか。 ○田野尻幹事 今の御発言は,事務当局なり,法務省の方で,勉強会などでの検討過程も含めて,年齢が下がった場合の扱いについての予測的なものを持っているのかという御発言かと理解いたしましたが,我々の方では,年齢が下がった場合の考えられる対応策などについて議論を始めたところでございまして,そういった点について勉強会の取りまとめ報告書に列挙する形で紹介させていただいております。むしろ,この部会で委員の皆様に御議論いただきながら,そういったところを御検討いただきたいと思っております。 ○井上部会長 是非,お知恵を出していただきたいと思います。ほかに御発言があればお願いします。 ○山﨑委員 先ほどから,少年院での処遇の実情を踏まえて,少年院処遇が非常に有効に機能しているので,それに代わるものがどういうふうなことが考えられるか,ということがお話に出ていますけれども,施設に入った後の処遇の問題だけではなくて,そこに至る審判の手続過程における効果という面についても,どういうものがあるのかという点をしっかり見るべきであろうと思っております。今日,少年鑑別所の方のお話でもありましたように,鑑別自体がもたらしている効果ですとか,あと,行動観察等を通じていろいろな働き掛けをされているということがあって,その上で審判を迎え,施設収容かそれ以外かという処分が決まっていくという,このプロセスの中で果たされている機能というものをしっかり再認識すべきではないかと思っております。その意味では,これから家庭裁判所の調査官のお話なども伺えるということですので,果たしてそれに代わり得るような手続がどこまで構築し得るのか,ということをしっかり考える必要があるだろうと思っています。   それとの関係で言いますと,私が今後勉強したいと思っていることですが,今,行われている手続は少年法が健全育成という目的を持っており,それに伴って少年鑑別所や少年院や調査なども行われているという構造があると思われます。仮に年齢引下げといった場合には,果たしてそれがどうなるのか,更に言うと,職権主義の手続構造ですとか,審判の非公開原則といったようなこととの関係,あるいは調査において黙秘権などが果たしてどのように取り扱われるべきか。そういったことも含めて,今,行われていることがなぜ可能であり,制度が変わったときにそれがどこまで可能なのか,ということをしっかり考えるべきだろうと思っております。 ○小木曽委員 先ほど少年鑑別所における地域援助について教えていただきました。また,その際に検察庁への協力もなさっているというお話も伺いました。成人事件の場合,検察官が処理する事件の5割以上が起訴猶予となっておりまして,少年年齢が下がる,下がらないにかかわらず,早期の段階で再犯予防の働き掛けができないかという関心があるだろうと思います。勉強会の報告書でも言及されておりますけれども,起訴猶予に伴う何らかの再犯予防措置が考えられないかということについては,検討する価値があるのではないかと考えています。 ○青木委員 今日のお話にもありましたけれども,早期に介入して保護するということに非常に重要なところがあると思います。それで,成人の場合には処遇調査というのは処分が出た後,要するに刑が決まった後に行われるということ,少年の場合には処分が出る前に調査が行われるというのが大きな違いだという話が今日もありましたけれども,成人と同じだと引き下げた場合には,調査というのがどの段階でどう行われるかというのが非常に大きな問題で,成人の場合には手続の二分がありませんので,処分の前に介入して調査し,その調査の過程で実際には介入するというようなことを成人にしてしまってできるのだろうかと,そこの部分が非常に重要な意味を持っているのに,その部分を変えてしまって一部だけ今の少年のところを取り入れましょうといっても,多分,一番大事なところがそこで抜け落ちてしまうのではないかということを非常に懸念しております。 ○太田委員 検討事項と,それから,情報提供のお願いです。先ほどの小木曽委員と,それから,前回の廣瀬先生の御発言,御関心とも関わることだと思いますけれども,年齢を18歳未満に引き下げた場合に,従来,少年には認められていなかった微罪処分というものの適用が,成人ですので適用があるということになるのかもしれませんけれども,果たしてそういうことが妥当なのかどうかということ,年齢は引き下げても18歳,19歳の微罪処分はできないという選択肢もあろうかと思いますので,そういった微罪処分の在り方ということ,これは勉強会の方では必ずしも十分に検討へ盛り込むことができなかったものですから,これについての考察も必要だろうということと,それから,今日,法務省の方から御提示いただいた資料の中にもありますけれども,少年院に送致された者の中に審判不開始の経験を持っている者が非常に多いということとの関係で,この中には通常送致に基づく審判不開始もいるかと思いますけれども,簡易送致に基づく審判不開始もかなり含まれており,中には数回も審判不開始を受けているという者がおりますので,簡易送致の問題に対する本来の処分の在り方はどうだったのかということを検討する必要もあるのかなと思います。ただ,これまで私の知る限りでは,簡易送致になった少年の予後の調査は1回しか行われたことがなかったように思いますので,そういった早期介入との関係でも比較的軽微な罪を犯した少年に対する働き掛けをどうするのか,そこに先ほどの小木曽委員がおっしゃられた起訴猶予プラスアルファのような働き掛けということも,今,検察庁がいろいろな試みを行っていますけれども,やっていくということも十分,考えられるわけでございますし,それはまた,微罪処分についても同じだろうと考えておりますので,こういったことについても今後,この部会で御検討いただければと思っております。 ○佐伯委員 山﨑委員,青木委員から御指摘のありました点に関連して,今日,御説明いただいたように,少年鑑別所が非常に重要な機能を果たしているということですので,年齢引下げありきということではありませんけれども,若年者についてもその機能を利用することはできないかということは,是非,検討すべきだろうと思います。それから,小木曽委員の御指摘との関係では,保護観察所の調査や調整の機能を起訴猶予時に活用できないかということも,併せて検討していくべきかと思います。 ○武委員 私たちの経験から加害少年を見たときに,18歳,19歳の少年たちは,前回も言いましたように自分たちはまだ少年法で守られると,まだ,軽く済むということを知っているんです。その少年たちは年齢が引き下げられたらどうかというと,これはいけないことだと私は感じると思うんです。あなたたちはそういう悪いことをしてはいけない,「もう大人として扱われるんです」ときちんと区別をするということは抑止力に絶対につながると思います。それから,周りの予備軍のためにも,犯罪が増えないことにも,私はつながると思います。   それに,統計にも出ていましたように18歳,19歳の加害少年は前に何か悪いこと,犯罪を起こしていることが圧倒的に多いです。だから,急に18歳,19歳になって初めて犯罪を起こすということはまず少ないので,少年法で守られていることを知っていながら犯罪を起こすということがはっきり言えると思うんです。   それと,健全育成のことをいつも言われるんですが,私は健全育成というのは加害少年のためだけのものではないと思います。少年法がしっかり改正になったときに,周りにいるグループの少年たちも,少年法が変わったんだということで健全育成につながると私は信じています。それから,犯罪を起こしていない普通の少年たちのためにも,悪いことをしたらそうなるんだということを示すことが健全育成につながると思うので,決して健全育成というのは加害少年のためのものだけではないと思っています。ありがとうございました。 ○川出委員 先ほど指摘がありましたように,少年院における年長少年に対する処遇は非常に手厚く行われており,その改善更生と社会復帰に役に立っているというのはそのとおりだと思います。それゆえに,少年院送致も含めた保護処分を18歳,19歳の少年が受けられなくなるのは望ましくないということで,民法の成年年齢が18歳に下がったとしても少年法の適用年齢はそのままにしておいて,18歳,19歳の者に対してこれまでと同じように保護処分を課すことができるようにする,あるいは,勉強会の取りまとめ報告書にありますように,少年法の適用年齢を下げ,18歳,19歳の者が成人として扱われることになったとしても,それらの者に対しては保護処分に類似した新たな処分を課せるようにしたらどうかということが,検討課題として出てくるのだろうと思います。   ただ,その場合には,いずれの方策についても当てはまる問題として,民法の成年年齢が下がったときに,18歳,19歳の者,あるいはそれを含めた若年成人について,現在と同じ保護処分を課すことが正当化できるのかということを検討する必要があると思います。といいますのは,現在の保護処分は要保護性に応じて課されており,過去の犯罪に対する応報としての制裁ではないということから,刑罰における罪刑均衡のような意味での非行事実と処分との均衡が要求されていません。そして,それは,保護処分が,他人から監督を受けるような立場にある少年を保護するために,言い換えれば,少年の利益のための処分であるという点から正当化されています。そうしますと,民法の成年年齢が引き下げられたことにより,親権に服さないことになる成年に対して,国が後見的な観点から現在と同様の保護処分を課すことが本当にできるのかという点を検討する必要が出てきます。そうする必要性があるということだけでは正当化できませんので,この点の理論的検討を含めて,少年法の適用年齢をそのままにしておくことができるのか,あるいは,適用年齢を引き下げたうえで,新たな処分を創設することが可能なのかどうかを検討する必要があるのではないかと思います。 ○山下(幸)幹事 今日の少年鑑別所のところでかなりはっきりしたんですけれども,早い段階から保護処分をするための必要な情報といいますか,それをきちっといろいろな調査を行うということは重要なことだと思うんですけれども,これをもし成人にしてしまいますと,結局,現在の成人については判決前調査という制度がないわけです。したがって,判決前調査という制度を作らないといけないはずですし,また,若年成年だけに判決前調査の制度を作るというのもおかしなことなので,全ての成人について判決前調査制度を作らないとおかしいと思うんですけれども,そこまでやるのかと。   要するに現在,不具合なくできている少年鑑別所の制度を使ってやっている年長少年について,わざわざ,新しい制度を作って処遇も同じような処遇をし,更に判決前調査という制度まで導入するという,そこまでするほどの必要がどこにあるのかということが先ほどから民法の成人年齢とのずれといいますか,親権者がいなくなるということによる不具合の話がありましたけれども,現在,柔軟といいますか,非常に順調になされている年長少年に対する事前の調査が成人になることによって全く新しい枠組みで判決前調査という制度にして,それをするということが,そこまでするほどの必要性とか,それで,成人全体に判決前調査を導入することについて,そこまでするのかということも含めて,もう少し,その点については冷静に議論する必要があるのではないかと思います。 ○田鎖幹事 今の点とも関連するんですけれども,判決前調査の点はおくとしても,例えば少年鑑別所からのお話でも,少年鑑別所の方で成人に対する入口支援に関与する例が出てきているというお話もありましたけれども,太田先生の御質問の前提としても,それは極めて限られた期間と,それから,提供するリソースとしても限定的なものだという,その前提でのお話でありました。ですので,早期に介入し,しかも,詳密に時間を掛けて調査するというものとは全く異なるということも明らかな前提だろうと思います。ですので,仮に引き下げた場合に新たなものあるいは類似のものというふうなものが,御意見とか議論の中で出ているわけなんですけれども,全く同じものというのはあり得ないわけでして,同じであれば変えなければいいわけでして,それから抜け落ちてしまうもの,抜けるものにどれだけの意義があって,それはほかのものによって置き換えることが,あるいは補うことができるものなのかどうか,そこはきちんと見極めなければいけないと私は考えております。 ○井上部会長 ほかに御発言のない方で特に御発言の御希望があれば,是非,お伺いしたいと思うのですけれども。 ○廣瀬委員 先ほど川出委員がおっしゃったことは,非常に重要なところだと私も思っています。ただ,その場合に理論的・体系的な整合性という問題がどのぐらい立法を規制することになるのか,そのことも根本的に考える必要があるだろうと思っています。そこは掘り下げて検討して十分に議論したいと思います。整合性の問題にもいろいろな要素・程度があると思いますので,幅広く,多角的な検討・議論をするという形でやっていただければと思います。 ○井上部会長 政策論的な切り口もありますが,法制度の問題でもあるわけですので,理論的に筋が通るかどうかということも重要なポイントであることは確かだと思いますね。むろん,それだけではないと思うのですけれども,その点を含めて議論してほしいというのが川出委員の御趣旨ではないかと思います。 ○廣瀬委員 そこは僕も同じですけれども,理論的・制度的な整合性による縛り,つまり,立法への影響・規制の強さの程度,整合性の要素にもいろいろあるのではないかということです。 ○井上部会長 ほかに御意見はございませんでしょうか。ほぼ,本日の段階では御意見を承ったと考えてよろしいでしょうか。むろん,これで終わりではありませんので,今後も御意見を承るわけですが,目下のところは,これから何についてどのようにして検討を進めていくべきかということを考えている段階ですので,そのような論点出しという意味で,ほかに付け加えることはございませんか。 ○山﨑委員 進め方に関する要望なんですけれども,前回も出たかと思うんですが,今日の話を伺っていて,例えば少年院で具体的にどう処遇されているか,かなりイメージができたのですが,一方で,それが少年にとってどういう効果をもたらしたのかというのは,そちらの当事者からもお話は是非伺いたいなと感じました。ヒアリングを法務省の勉強会の中でもやられていて,セカンドチャンスの方が出られておりましたけれども,かなり限られた時間であったかと思いますので,今後のヒアリングの対象としては元非行少年の方及びその保護者の方などとか,そういった関係者の方も是非御検討いただきたいと思っております。 ○井上部会長 事務当局,何か御意見はありますか。 ○羽柴幹事 今,言及も頂きましたけれども,若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会で,今,御紹介がありましたセカンドチャンスの才門さんほか3名の方に来ていただいてお話を伺っております。その際,少年院入院歴を有する方,刑務所への収容歴を有する方,両方を有する方から,その経験を踏まえたお話を伺ったというところでございます。こういったヒアリングの成果も,ここでは御活用いただければと思っておりまして,その先,どのように議論の中で考えていかれるかというのはまたあろうかと思いますけれども,現時点ではその点を御活用いただければと考えています。 ○井上部会長 そのような御希望があったということで,承っておきたいと思います。余計な感想を申せば,本当は,成功例だけではなく失敗例も聞いてみたいというところもありますが,おそらくヒアリングにはなじまないのでしょうね。ほかに論点出しという意味で御意見はございますでしょうか。よろしいですか。   多様な意見を開陳していただきましたので,これらの御意見を踏まえ,これをどう整理して,今後,どう進めていくかについて御相談したいと思うのですけれども,事務当局の方で何か御提案があれば伺いたいと思います。 ○田野尻幹事 審議の進め方でございますので,これにつきましてはもとより部会において皆様で御議論いただきまして,決定されるべき事柄と存じますが,ただいま委員・幹事の皆様から検討すべき論点について多様な御意見を頂戴いたしましたので,それを踏まえまして若干の御提案をさせていただきたいと思います。   前回と今回の御議論などもお聞きして,多様な御意見が検討すべき論点として挙げられておりますので,議論を整理する意味で,部会において今後論点として検討すべき事項を整理する形で,論点表案のようなものを作成して,そういったものをたたき台として,また,論点はそれに尽きるという趣旨ではございませんで,更に委員・幹事の皆様の御意見も頂戴しながら,論点の洗い出しを行い,それに基づいて御審議いただくというのが,適当ではないかなと考えておるところでございます。 ○井上部会長 今,事務当局の方から御提案のあったところですが,私もそういうものを作ってみて,それで過不足がないかどうかという形で議論を進めていった方が生産的かなと思いますので,部会長である私が最終的に責任を持ち,事務当局と協力しながら素案のようなもの,非常にラフなスケッチのようなものをまず作って,皆様に御提示し,それについて,ここが足りないのではないか,ここはこうした方がいいのではないかと,そういった議論をしていただくということでいかがかと思いますけれども,いかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,次回ぐらいまでにそういうものを用意させていただければと思います。そういうことで,次回は論点整理の素案のようなものを御提示すると同時に,ヒアリングが予定されています。次回のヒアリングについて事務当局の方から,準備状況がどうなっているかについて御説明いただけますか。 ○田野尻幹事 本日,少年院と少年鑑別所からヒアリングをいたしました。次回につきましては,今度は刑事施設,少年刑務所と刑務所の実情と,また,少年及び若年成人に対する保護観察の実情,更にはそういった施設内処遇と社会内処遇との連携,項目が多いんですけれども,そういった大きく3点についてヒアリングを実施できるように調整を進めておるところでございます。 ○井上部会長 それでは,次回はヒアリングとしては,少年刑務所及び刑務所の実情,少年及び若年成人に対する保護観察の実情,それに,施設内処遇と社会内処遇の連携という三つのテーマについてヒアリングを実施させていただきたいと思います。また,先ほど申しましたように論点表案を準備してお示しできればと思います。   次回の予定について事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○羽柴幹事 次回,第3回の会議は5月31日(水曜日),午前9時15分からでございます。場所は変わりまして東京地方検察庁の会議室を予定しております。皆様方におかれましては,法務省1階ロビーにお越しいただきましたら,そこから会議室へ御案内させていただくつもりでございます。 ○井上部会長 終了時刻は,現在調整中でございますが,現時点では12時半頃を予定しております。次回も朝早くからということになりますが,よろしく御協力の方をお願いします。もう一度確認しますと,5月31日(水曜日),時間は午前9時15分からおおむね12時半頃を目途にということで,場所は東京地検の会議室で,集合は法務省の1階ロビーということでございます。   本日の会議の議事録ですけれども,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思いますので,発言者名を明示した形の議事録を公表することとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。             (一同異議なし) ○井上部会長 ありがとうございます。それでは,そのようにさせていただきます。   本日はどうもありがとうございました。 -了-