法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第3回会議 議事録 第1 日 時  平成29年 5月31日(水)   自 午前 9時17分                          至 午後 0時42分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  1 少年刑務所及び刑務所の実情についてのヒアリング         2 施設内処遇と社会内処遇の連携についてのヒアリング         3 少年及び若年成人に対する保護観察の実情についてのヒアリング         4 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただ今から法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の第3回会議を開催いたします。 ○井上部会長 本日は御多用中のところ,お集まりいただきましてありがとうございます。   本日は,奥村委員,村田委員,岡本幹事,加藤幹事におかれましては所用のため,欠席されています。また,山下委員におかれましては,所用のため遅れて出席される予定とのことでございます。   まず,初めに事務当局から資料について説明をお願いします。 ○羽柴幹事 本日,机上に議事次第のほか,資料11「統計資料3」を配布しております。また,ヒアリング資料として,「刑事施設における業務の概要」から始まる資料,パンフレット1部,「日本財団職親プロジェクト」から始まる資料,「中間支援施設における支援」から始まる資料,「保護観察所における保護観察の実情について」から始まる資料,「少年・若年成人に対する保護観察の現状と課題について」から始まる資料を配布しております。また,前回までの配布資料はファイルにとじて机上に置いておりますので,必要に応じて御参照ください。なお,資料11「統計資料3」につきましては後ほど御説明いたします。 ○井上部会長 それでは,早速ですが,審議に入ります。   本日は,御案内のとおり,少年刑務所及び刑務所の実情,施設内処遇と社会内処遇の連携,並びに少年及び若年成人に対する保護観察の実情という三つのテーマについてヒアリングを行います。   初めに,少年刑務所及び刑務所の実情について30分程度御説明を伺った後,質疑応答を行っていただきたいと思います。本日は,東京矯正管区の竹中樹部長,府中刑務所の矢田豊首席矯正処遇官及び矯正研修所の朝比奈牧子教官にお出でいただいておりますので,まず,少年刑務所及び刑務所の実情について説明をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○竹中参考人 本日は,このように少年受刑者処遇の実情について説明する機会を設けていただきましてありがとうございます。東京矯正管区第二部長の竹中樹と申します。   私は盛岡少年刑務所長ですとか,静岡刑務所長,喜連川社会復帰促進センター長を経て,昨年4月から東京矯正管区,関東甲信越の矯正施設を監督する管区ですが,そこで刑事施設を担当する第二部長を務めております。本日,陪席してもらっている二人は,今年3月まで川越少年刑務所で勤務しておりました者であります。   本日は,まず成人,少年に共通する受刑者処遇の基本的事項や仕組みをお配りしている資料に基づき説明した後,少年受刑者の処遇の特徴や少年刑務所における矯正処遇の特色等,さらに,川越少年刑務所の例を紹介させていただいた上で,最後に刑務所と少年院の処遇を対比させて説明を終了させていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。   まず,1ページの下のシートですが,受刑者処遇の原則でありますけれども,刑事収容施設法第30条は,その者の資質及び環境に応じ,改善更生意欲の喚起,社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨とするということで,資質・環境に応じてということで個別処遇の原則を示しています。しかし,個別処遇といっても個々の受刑者ごとに単独で処遇するわけではなくて,社会生活に適応する能力の育成を図るためには,集団の中で矯正処遇を行うことが効果的ですので,同法第86条第1項は,矯正処遇等は一定の集団に編成して行うこととしています。   これをもう少し具体的に,受刑者の入所から出所までの流れに沿って説明したいと思います。2ページ目の上のシートになります。左側から,まず,受刑者は判決が確定しますと,そのとき収容されていた刑事施設,確定施設と言っていますが,どこの施設で刑を執行するかを決めるための処遇調査をここで受けます。処遇調査で受刑者に面接ですとか,検査を行って,その結果に基づいて処遇指標といって,どういう種類,内容の矯正処遇を行うか,一般作業だけでなく,職業訓練を行うのか,特別改善指導を行うのか,例えば薬物依存離脱指導を行うのか,犯罪傾向の進度は進んでいるのかなどを個々の受刑者ごとに指定します。各刑事施設は,薬物依存離脱指導を行う施設ですとか,犯罪傾向の進んでいない者を収容する施設など,処遇区分というものが決まっておりますので,それぞれ,当てはまる施設,処遇施設に移送することになります。これは後ほど詳しく説明します。   おおむね10日間ぐらいで処遇調査を行います。ただし,初めて受刑する26歳未満の男子などは,調査センターでおおむね55日間くらい掛けて精密な処遇調査を行います。そして,処遇施設に移送されてから刑執行開始時の指導の期間にもう一回,処遇調査を行い,処遇要領を定めます。処遇要領の内容については後ほど説明します。この刑執行開始時の指導というのは,受刑の意義ですとか,施設内での生活及び行動について指導を行います。そして,これが終わりますと本格的な矯正処遇の開始になります。   矯正処遇の種類としましては,ここにありますように,作業,改善指導,教科指導の3種類があります。矯正処遇の中で大きなウエートを占めているのが作業です。3種類の矯正処遇の中で,刑法上の義務になっているのが作業だけということもありますが,作業というのは働くこと,人は皆,働いて人生を送り,働くことを通じて何かを学んで,自分の人生を考えていくわけですから,矯正処遇として作業はとても意味のある大切なものであります。単純作業が多くなっているという問題もありますが,真面目に作業をやっていれば,それなりに当該作業のスキルも向上しますし,また,責任ある作業を任せられるようになるということは社会と同じでありまして自己肯定感も得られます。   もちろん,改善指導のグループワークなども指導者の下,受刑者同士で話し合い,更に自分で考えさせ,いろいろなことを気付かせることができるので,矯正処遇として効果のあるものと思いますが,グループ8人程度に指導職員が二人,リーダーとコリーダーの組合せが一般的ですが,必要になってきますので人手が掛かります。少ない職員で多くの受刑者に意味のある矯正処遇を行うという点では刑務作業が優れています。改善指導や教科指導の内容につきましては,また,後ほど説明しますが,このように作業を中心に改善指導,必要な場合は教科指導を行って矯正処遇を行っていきます。   そして,刑期が終盤に近付きますと,就労支援,福祉的支援といった社会復帰支援を実施していきます。人によっては刑期の初め頃から実施する場合もあります。そして,原則として釈放の前,仮釈放の場合,2週間前ですが,釈放前の指導といって釈放後の生活に関する指導等を行い,出所ということになります。   続きまして,下のシートですが,これは先ほどお話ししました処遇調査の手法や調査事項を詳しく説明したものですので,参考にしていただければと思います。   続きまして,3ページの上のシートですが,これは処遇調査の流れを詳しく説明したものであります。左側が調査センターで精密な調査を行う場合でありまして,26歳以下の男子のほかに,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪によって刑に処せられた初入の者は,26歳以上30歳未満の男子なども調査センターで詳しく処遇調査を行います。   下のシートですけれども,このシートは処遇調査の結果,個々の受刑者ごとに指定される処遇指標のうち,矯正処遇の種類と内容を示したものです。個々の受刑者ごとに,作業,改善指導,教科指導のそれぞれについてどのような内容のものを実施するか,処遇指標として指定します。例えば受刑者Xについて,作業は一般作業と職業訓練,改善指導は一般改善指導と特別改善指導の薬物依存離脱指導,教科指導は補習教科指導といった形で処遇指標を指定します。ここでいえば,V0,V1,R0,R1,E1ということになります。   続きまして,次の4ページの上のシートですが,これはもう一つの処遇指標である属性と犯罪傾向の進度を示したものです。属性とは,刑種,刑期,年齢,性別等によって決まってきます。例えば執行刑期が10年以上である者はLという符号が付けられ,最近,例外も多いのですが,原則としてL指標の受刑者を収容する刑事施設で処遇します。少年であればJという符号が,可塑性に期待した矯正処遇を重点的に行うことが相当と認められる26歳未満の者はYという符号が付けられ,少年刑務所で処遇することになります。   犯罪傾向の進度では,犯罪傾向が進んでいない者はA,進んでいる者はBという符号が付けられ,原則としてA指標の者とB指標の者とは違う刑事施設で処遇します。悪風感染を防止するためです。このように各受刑者は確定施設や調査センターで処遇調査を受け,処遇指標を指定され,それぞれの処遇指標に応じた刑事施設に移送され,受刑生活を送ることになります。   下のシートは,どこの刑事施設がどのような処遇指標の者を収容するかの例を示したものです。先ほどの受刑者Xを例にとってみると,Xの犯罪傾向が進んでいて,執行刑期が10年未満ということであれば,Lの付かないB指標であり,薬物依存離脱指導R1を実施している施設ということで,例えば府中刑務所ですとか,横浜刑務所で受刑生活を送ることになります。   次に,矯正処遇の内容について説明していきたいと思います。5ページの上のシートです。まず,処遇要領についてでありますが,最初の受刑者処遇の原則のところで,個別処遇が原則と申しましたように,矯正処遇は個々の受刑者ごとに処遇要領を作成して実施します。処遇要領は処遇調査の結果等を踏まえ,個々の受刑者ごとに矯正処遇の目標,基本的な内容,方法を定めたものです。   下のシートが成人受刑者の処遇要領の例になっております。矯正処遇の目標を複数定めて,例えばここにあるように自分の言動に責任を持たせ,何事にも誠実に取り組ませるなどの目標を定め,その内容,方法,これは処遇調査で定められたものですが,例えば道路交通法違反事件であれば,一般改善指導に加えて特別改善指導として交通安全指導を行うなどと記載します。そのほか,留意事項として矯正処遇に関する本人の希望,職業訓練を希望しているかなどを記載します。   続きまして,6ページの上のシートになります。こちらが少年受刑者の処遇要領の例になります。より綿密な処遇要領となっています。少年受刑者の場合,刑期にもよりますが,原則として3年間,少年受刑者の処遇を行います。つまり,例えば19歳で少年受刑者として刑の執行が開始された場合,20歳を過ぎても通算3年間,22歳まで少年受刑者として処遇を行います。3年間のうち導入期を6か月,展開期2年,総括期6か月の3期に分けて,段階ごとに矯正処遇の目標,基本的な内容及び方法を定め,6か月に1回は処遇調査を行って矯正処遇の目標の達成度を確認して,達成度によっては目標に必要な修正をして処遇していきます。   続きまして,下のシートですが,これは矯正処遇等を行う日と時間についての説明であります。刑事施設の場合,刑事収容施設法第38条で矯正処遇を行う時間帯と矯正処遇を強制されない余暇時間帯をはっきり区別することとされています。矯正処遇を行うのは原則として平日です。矯正処遇等を行う時間は,午前7時から午後7時までの時間帯の8時間以内になります。余暇時間帯は,平日は2時間以上とされています。1日のうち残りは食事や就寝の時間帯になります。   これを図で表したのが次のシート,7ページの上のシートになります。上が一般的な工場就業受刑者の平日の動作時限で,午前6時40分頃に起床,顔を洗ったり,着替えたりしてから居室で朝食,居室は個室と集団室がありますが,集団室は皆,同じ工場の者になっております。午前7時30分頃に居室を出て工場で作業,職業訓練の工場であれば職業訓練をし,12時になりますと工場の食堂で昼食,それからまた,作業,職業訓練,この時間帯に改善指導又は教科指導を受ける人もいます。運動や入浴はこの時間帯に工場ごとに行います。そして,午後4時くらいに工場から居室に戻り,居室で夕食,夕食の後は余暇時間で午後9時には就寝になります。下は月に2日から4日ある矯正指導日で,この日は作業でなく矯正指導を行います。居室で視聴覚教材を使っての一般改善指導,人によっては居室から教室に移って特別改善指導のグループワークを受けます。   下のシートは刑務作業についてであります。刑務作業については懲役刑の本質的要素である所定の作業を具体化するものであり,その意義はさきに述べたとおりで受刑者処遇の基本をなすものであります。上のシートで見たとおり,受刑者生活の中で時間的にも大きなウエートを占めており,刑事施設の組織も刑務作業を中心に出来上がっています。刑務作業の機能として5点記載しました。3番目に勤労意欲を養成することとありますが,刑務作業として行う仕事自体にやりがいを感じて,勤労意欲が養成されることもありますし,単純な作業であっても刑務作業には少額ですが,作業報奨金が支払われますので,勤労意欲の養成が期待できます。   続きまして,8ページ上のシートです。多くの受刑者は木工,洋裁などの生産作業に就きます。職業訓練は刑務作業の種類の一つです。自営作業は刑事施設内の被収容者の食事を作るですとか,衣類を洗濯するなどの作業です。社会貢献作業は,社会に貢献していることを受刑者が実感することによって改善更生,社会復帰に資する作業で,通学路の除雪ですとか,公園の清掃等を実施しているものです。   下のシートが職業訓練の一例です。介護福祉科ですとか,建設機械科ですとか,出所後の就労に結び付きやすい資格が取れる訓練を行っています。   続きまして,9ページの上のシートです。これは改善指導について説明するものです。改善指導は特別改善指導と一般改善指導とに分かれます。特別改善指導は,例えば薬物依存のある受刑者であれば薬物依存離脱指導といったように,個々の受刑者の事情により改善更生等に支障があると認められる受刑者に対し,その事情の改善に資するように特に配慮して行うものです。特別改善指導については本省で標準プログラムを作って,全国の刑事施設で統一的に行い,全てではありませんが,効果検証を行い,内容を修正するようにしています。一般改善指導は広く受刑者一般に対して行うもので,講話ですとか,教養番組の視聴等の手法で行うことが多いものです。   特別改善指導の対象者の選定につきましては,受刑者の処遇調査,資質環境の調査の結果を踏まえて行うことになりますが,例えば薬物依存離脱指導については薬物依存の程度等を測定するためのアセスメントツールがありますので,それを活用するなどして,本件が薬物事犯である場合に限らず,麻薬,覚醒剤その他の薬物に対する依存があることの該当性を判断することになります。また,性犯罪再犯防止指導についても,本件が強姦,強制わいせつ等の性犯罪である場合に限らず,全受刑者を対象に関係書類の精査等によりスクリーニングを実施し,一定の基準に該当する者については更に詳細な性犯罪者調査を実施し,性犯罪の要因となる認知の偏り,自己統制力の不足等がある者の該当性を判断しています。   特別改善指導の対象者ごとにどの程度,指導が実施されているかについて,受講率を網羅的に把握しているものではありませんが,例えば薬物依存離脱指導については平成28年度の出所受刑者のうち,当該指導の対象者は6,473人のところ,実際に同指導を受講した者は5,392人,83.3%,また,性犯罪再犯防止指導については同年度に出所した受刑者のうち,当該指導対象者は693人のところ,実際に同指導を受講した者は537人,77.5%になっております。   9ページの下のシートですが,これは教科指導についてであります。教科指導は,補習教科指導と特別教科指導とに分かれます。補習教科指導は,小中学校の教科の内容に準ずる内容の指導です。受刑者の中には漢字が読めない,掛け算ができないといった者もおりますので,読み書き計算などを教えます。基礎的な学力がないと就職に不利ですし,日常生活において漢字が読めない,掛け算,割り算ができないと本人も恥ずかしい思いをして自分に自信が持てない。そうすると,その結果,自分を大切にしないということで再犯につながりやすいので,読み書き計算とはいえ,大切なものと思っています。特別教科指導は高校の教科の内容に準ずる内容の指導です。高等学校卒業程度認定試験のための受験指導ですとか,一部の少年刑務所では通信制の高校教育もあります。   続きまして,10ページ上のシートですが,これは開放的な処遇ということで,改善更生の意欲の喚起などが一定程度進んだ者には開放的な処遇が可能になります。外部の事業所に刑事施設の職員の同行なしに通勤する外部通勤制度,ハローワーク等に職員の同行なしに出掛ける外出などがあります。   下のシートが少年受刑者処遇の特徴です。ここまでは少年受刑者を含めた一般的な受刑者処遇の話でしたが,これからは少年受刑者処遇の特徴についてお話ししたいと思います。   少年受刑者処遇につきましては,矯正局長通達でここにあるような事項に配慮することとされております。まず,個別担任制度ですが,少年受刑者ごとに個別担任を指定することとしています。個別担任は工場担当職員,教育担当職員,分類担当職員の中から指定されることとなっていますが,教育担当職員,分類担当職員が指定されることが多いようです。少年院の個別担任制度と違うところは,少年院の教官の場合,担任の少年の日中の処遇にも当たりますし,毎晩ではないですが,夜の寮勤務にも当たり,長い時間,密接に担当する少年の処遇に関わり合いますが,刑事施設の場合は昼間は工場担当職員が少年受刑者の処遇を行い,夜間は夜勤職員が矯正処遇でない一般的な処遇を行います。個別担任職員は日記の添削は大体毎日行いますが,自分の本来業務もありますので,個別面接は必要があるときに作業時間中に月に何回か行うという形ですので,少年受刑者との関わりの度合いが薄くなっております。   次に,矯正処遇の実施に当たっては教科指導を重点的に実施するほか,できる限り,職業訓練を受けさせることとされています。1週間のカリキュラムを後ほど川越少年刑務所の例で御説明します。また,少年受刑者の改善更生,社会復帰には家族の果たす役割が大きいことから,家族への手紙の発信を促すなど,家族等との関係維持・改善への働き掛けを積極的に行うこととしています。保護者会などを行う施設もあります。4番目の義務教育年齢にある被収容者ですが,今までのところ,このような収容例はありませんが,参考までに記載させていただきました。   続きまして,11ページの上のシートです。少年刑務所における矯正処遇の特色ですが,少年受刑者の矯正処遇の実施に当たっては教科指導を重点的に実施するほか,できる限り,職業訓練を受けさせるとされていることから,少年刑務所については職業訓練が充実している施設,通信制の高校教育を行うなど,教科指導が充実している施設が多くなっています。松本少年刑務所と盛岡少年刑務所では,地元の高校の協力を得て,通信制の高校教育を実施し,松本少年刑務所については松本市が教育熱心な土地柄でもあり,地元の旭町中学の協力の下,中学校の分校として桐分校を設置しております。   下のシートが松本少年刑務所の高校通信制課程の日課です。月曜から木曜までは午前中は授業を行い,午後は刑務作業を行っています。3年間の教育になりますが,社会で既に一定の単位を取得している人については2年又は3年生に編入されることもあります。   続きまして,12ページ上のシートですが,これは松本少年刑務所の桐分校の日課です。こちらは1年間の教育ですが,1年間で中学卒業の資格を取らせるということもあって,午前と午後ともに授業です。ただし,生徒が懲役受刑者ですので,全く作業を課さないというのは相当ではないので,授業開始前の10分間と授業終了後の15分間,刑務作業として清掃を行わせています。懲役受刑者に対し,刑期のうちの一定の期間だけですが,相当の時間数を刑務作業以外の矯正処遇に割いているところであります。   続きまして,川越少年刑務所における実情を紹介したいと思います。13ページの上のシートになります。これは川越少年刑務所の組織図ですが,職員定員381人となっていますが,熊谷とさいたまの拘置支所に100人くらいおりますので,本所は280人くらいです。そのうち,刑務作業その他の処遇の実施に当たる処遇部の中の処遇部門が160人くらい,皆,刑務官で,工場の担当職員は処遇部門に属します。作業の企画・立案を行う職業訓練部門が25人くらい,そのうち半分以上は作業の技術指導等を行う作業技官です。処遇部が185人になります。   改善指導,教科指導に当たる教育部が15人くらいで,法務教官が10人くらい,鑑別,分類,仮釈の審査,出所後の保護に当たる分類が25人くらいで心理技官が15人くらいおりまして,職員数的には処遇部門が圧倒的に大きな組織になっています。これはどの刑事施設も同じで,川越は調査センターでありますので,分類の職員がこれでも多い方であります。処遇部門の職員160人のうち,70人くらいは夜勤者で,これが4班,4日に分かれて夜間勤務に当たり,1,000人ぐらいの被収容者を戒護しますが,夜間は矯正処遇は行わないので,忙しいですが,少ない人数でやっていけます。   下のシートが川越少年刑務所における少年受刑者処遇対象者の人数,刑期等であります。4月20日現在,20歳未満J指標の受刑者がここにありますように9人おりまして,18歳が2人,19歳が7人です。先ほど処遇要領のところで述べましたように,20歳を過ぎても少年時期と通算して3年間は少年受刑者処遇を行いますので,少年受刑者処遇を受けている者は,ここにあるように34人になります。彼らの特徴としましては,少年で実刑判決を受けているということもあり,重大事件を起こして刑期が長い者が多いという点が特徴です。よほど重大な事件を起こさないと刑事処分ではなく,保護処分になっているのかなとも思います。刑期は相対的不定期刑ですが,長期で見ますと,ここにありますように長期の方で10年以上の人が8人,7年以上10年未満の者が11人となっています。罪名でいうと,殺人,殺人未遂等が5人,傷害致死等が12人と多くなっています。   続きまして,14ページの上のシートですが,処遇の実情になります。川越少年刑務所に34人いる少年受刑者処遇対象者の個別担任は,教育部の法務教官や分類審議室の心理技官が担当しています。平日は毎日,日記指導,月に1回,面接を行います。この図の真ん中,シートの真ん中ぐらいにあるように,20歳未満のJ指標の受刑者は,その者だけを集めた少年工場というものがありまして,そこで処遇します。20歳を過ぎると一般工場に移ります。ただ,工場は移っても個別担任等の少年受刑者処遇は続きます。ただ,例外があって,少年工場での処遇は最低1年間行いますので,19歳以降に少年工場に配役された者は20歳を過ぎても通算1年は少年工場で処遇します。下のシートは少年受刑者処遇の様子の写真等になります。   続きまして,15ページの上のシートですが,このシートは少年工場就業受刑者の日課になります。少年工場では,午前中は一般改善指導として生活指導,教科学習,情操教育などを行います。少年受刑者にはできる限り職業訓練を受けさせることとされていますので,川越少年刑務所の少年工場では午後は園芸の職業訓練などを行っています。資格としては3級造園技能士の資格を取得することができます。   15ページの下は,教育部と工場担当の役割分担を示しております。   最後の16ページの上のシートですが,少年院と刑事施設の処遇の対比を一覧表にしてみました。画面の左側が少年院で右側が刑事施設ですが,刑事施設は少年受刑者と成人受刑者とで処遇が異なりますので,少年受刑者の処遇はブルーの網掛けをしています。   まず,処分の欄ですが,保護処分と刑事処分で大きく違っています。保護処分の少年院送致の場合,教育期間が短いのに対し,少年受刑者の平均刑期は川越少年刑務所の例でも長いのが特徴です。   次に,処遇の内容については,少年院は生活指導が中心になりますが,刑事施設では作業の比重が高くなります。受刑期間が長いので,改善指導ばかりずっと実施するのはなかなか難しいです。ただし,少年受刑者の場合は職業訓練や改善指導の比重が比較的高くなります。   処遇計画については,少年院の個人別矯正教育計画は各級ごとに目標を設定するなど,手厚いものになっております。刑事施設の処遇要領も,少年受刑者については,導入期,展開期,総括期に分けて作成し,比較的手厚いものとなっております。   1日の生活時間は,少年院が原則として余暇時間等を除いて,起床から就寝まで矯正教育を実施するのに対し,刑事施設は原則として8時間以内の矯正処遇で,夜間,休日は余暇時間となっています。   集団の単位は,少年院は寮中心であるのに対し,刑事施設は工場中心となっています。   処遇の主担当者の欄ですが,少年院では,寮担任,個別担任が終日行うことが多いのに対し,刑事施設では基本的に矯正処遇は昼間に行い,しかも集団の単位が工場中心ということで工場担当が昼間の処遇を行い,夜間は夜勤者が見守るという形になっています。ただ,少年受刑者につきましては個別担任が指名されますので,比較的手厚い処遇が行われています。   最後に釈放後,社会に帰った後のことですが,少年院法には退院者等からの相談制度が設けられていますが,刑務所から出所した者にはそのような制度は設けられていません。刑事施設では暴力団関係者を多く収容していることや,出所者に職員が籠絡されて不適正処遇に発展した苦い経験なども影響しているかもしれませんが,受刑者との関係を社会では継続させないよう,厳格に職員に指導しているのが一般的です。   このように少年院の処遇と刑務所の処遇を対比してみますと,保護処分と刑事処分の相違という本質的な違いからか,総じて少年院の処遇の方が手厚いですし,実際に人手も要するということで,職員一人当たり何人の被収容者又は少年を処遇するかという負担率は,刑事施設の方が相当高くなっています。そのような中,刑事施設は懲役刑の内容である作業を矯正処遇の中心とし,その作業を実施する工場を集団管理の単位とすることによって,工場担当職員を中心とした受刑者処遇を行い,少ない職員で意味のある矯正処遇及び施設管理を行ってきているのかなと考えています。   次のシート以降は,就労支援について記載していますが,時間がありませんので資料としてお付けしただけになります。   以上で,私からの説明を終了します。御清聴ありがとうございました。 ○井上部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいまの御説明に対し御質問等があれば,御発言をお願いします。なお,委員・幹事の皆様にそれぞれの御意見を述べていただく機会としては,次回に意見交換を予定しております。本日のところは,現場で勤務している方々に来ていただいており,その方々に御質問できる貴重な時間ですので,御意見というより質問ということでお願いしたいと思います。それでは,御質問のある方は挙手をお願いします。 ○山﨑委員 詳細な御説明をありがとうございました。   2点あるのですけれども,少年受刑者の処遇の内容について川越少年刑務所の例をとって御説明いただいたのですが,その他の少年刑務所の場合にも同じようなことが行われているかどうかという点です。実は,私は以前に川越少年刑務所以外の少年刑務所から出てきた方からのお話を伺うことがあったのですけれども,そちらですと,工場も成人と一緒であったし,運動なども成人と一緒だったということですので,刑務所ごとの実情の違いというのがあれば教えていただきたいというのが1点です。   もう1点は,女子の受刑者の場合に,少年,成人,若年成人について,それぞれ何か特有の処遇というのが行われているのでしょうか,また,私が少年事件を担当していますと,発達障害を持っている方の事件というのが処遇上の問題が出てくるのかなというのを感じているものですから,そういった方に対しての刑務所での処遇というのはどういったことがなされているのか,女子と発達障害の方を中心に教えていただければと思います。 ○竹中参考人 川越以外の少年刑務所の実情ということですが,川越少年刑務所以外では,去年12月末の数字で日本全国で佐賀少年刑務所にJの少年受刑者というのは3名,あと,栃木刑務所に3名いるだけでありまして,非常に少数の少年受刑者しかおりませんので,成人の工場,私が昔いた盛岡少年刑務所でも成人の受刑者と同じ工場で処遇をしていましたが,夜間は必ず夜間単独室に収容するとか,そういう配慮はきちんとしておりました。   あと,女子ですけれども,一応,女子の施設は混禁になっていますが,犯罪傾向の進度別に集団を編成して処遇を行っておりますから,直ちに不都合が生ずるというようなことはないのかなと思っています。   発達障害を有する受刑者を対象として,特化した処遇プログラムみたいなのは設けられておりませんが,小集団を編成してSST,すなわち社会生活技能訓練等により,家庭,職場等で円滑な人間関係を維持するため,必要な対人スキルを身に付けさせる対人関係円滑化指導等を実施しておりまして,発達障害を有する受刑者に対しても,対人関係の問題を有する者は,この指導の対象になります。 ○小木曽委員 特別改善指導ですけれども,参加率が8割程度だというお話でした。中にはきっと自分にはそういうものは必要ないという人もいるのではないかと思うのですが,そうした人に対してどのようにして指導を受けるようにいざなうのか,つまり,どのようにアプローチして,受けてもらうようにするのかということや,あるいは2割くらいは指導を受けない人がいるわけですけれども,そういう人々に対して何らかの働き掛けをなさるのかどうかということを教え願えればと思います。それから,実際,そのような指導を受けた結果,どのような効果といいますか,感想といいますか,効果測定が行われているのかという点についても教えていただければと思います。 ○竹中参考人 特別改善指導については拒否する者も確かにおります。刑事収容施設法上は特別改善指導を拒否した場合,懲罰を科すことができるのですが,ただ,改善指導等について懲罰の威嚇をもって強制しても改善指導の効果はありませんので,私の承知している限り,改善指導を受けないから懲罰を科すというようなことはやっていないと思います。個別に職員が特別改善指導の意義等を話して,説得するということになりますが,最終的に受けない人もおります。   特別改善指導の効果ですけれども,全ての特別改善指導について効果を検証しているわけではないのですが,性犯罪再犯防止指導については平成19年7月1日から平成23年12月31日までに刑事施設を出所した性犯罪者2,147人を対象に,性犯罪再犯防止指導の受講の有無とそれぞれの出所後3年間の再犯率,推定値になりますが,統計的に分析したところ,プログラムを受講した者の再犯率は21.9%,受講していない者の再犯率は29.6%となっており,一定の再犯抑止効果が認められたところであります。 ○山下(幸)幹事 資料の16ページのところの御説明を頂いたのですけれども,刑務所と少年院の処遇の対比のところです。それで,刑務所の中で少年受刑者と成人受刑者があると。少年受刑者は現在,一番上の処遇の内容のところを見ると,職業訓練,改善指導の比重が大きい。特に改善指導が重要だと思うのですけれども,これが今回,今のこの部会の議論は,18歳,19歳という現在の年長少年を成人にするかどうかということを今,議論しているのですけれども,現在,行っている少年受刑者に対する特に改善指導の効果というのですかね,これをすることによって,それなりの効果が上がっているのかどうかということについて,そちらの方の施設の方で,それをどのように受け止めておられるかというのを教えていただけますでしょうか。 ○竹中参考人 統計は少年受刑者だけのものというのがないので,感想みたいなものになりますが,川越で教育部首席を3月までやっていたので矢田がお答えします。 ○矢田参考人 少年受刑者につきましては,年齢層が18歳,19歳というような非常に可塑性のある年齢区分でございますので,我々が現場で教官としていろいろな指導をしていく中においては,非常に変わり得る成果を実感しているところでございます。時間を掛ければ掛けるほど,また,いろいろな指導を行えば行うほど変わり得るということは日常,感じているところです。評価を6か月ごとに行っておりますけれども,その評価時期に6か月の成果を少年受刑者処遇班というものを作りまして確認を行っているところです。このときにもどういうところがよくて,どういうところがこれからの課題だということを考えながら,処遇を行っているところです。 ○太田委員 受刑者,特に若年受刑者に対する処遇の中で作業と作業以外の矯正処遇のバランスをどうとっていくのがいいのかということに関心がありまして,それについて2つ質問させていただきます。   一つは,J指標の少年受刑者がY指標になっても入所から3年間は少年受刑者としての処遇が行われますけれども,それが過ぎた後のY指標の受刑者についてはどの程度特別改善指導や職業訓練が行われているのかということです。比率の説明は難しいかもしれませんけれども,少年受刑者がY指標になって,しかも,3年が過ぎるとがくんと作業中心となってしまって,ほかの一般受刑者と同じように特別改善指導のときだけ工場から引っ張ってくるみたいな,そういう感じになるのか,それとも,J指標と成人受刑者の間ぐらい処遇に比重を置かれているのかということが一つ目のお尋ねです。   それから,刑事収容施設法になって刑務所長が刑務作業の時間を設定できるという規定が入って,要するに作業以外の処遇をもっとしましょうということになったのですけれども,そうした制度改革によって,特別改善指導はいいですけれども,それ以外の一般改善指導はどれぐらい行われているのでしょうか。例えば矯正指導の日が月に2回ありますけれども,私がいろいろな施設に伺うと,ほとんどが居室で読書をさせているとか,運動場で運動をさせているとかいうことになっています。最近,いろいろな施設で一般改善指導としてプログラム性のあるようなものをいろいろやっていますけれども,矯正指導の日などにもう少しプログラム性があるようなものをやっていますというようなことがあるのかどうか,それから,新しい法律になって一般改善指導を含めた処遇の比率がこの程度拡大していますというような数値があるのかどうか,御説明いただけますでしょうか。 ○竹中参考人 一つは,Jで収容されて3年過ぎた人の処遇ということなんですが,この3年間を過ぎると少年受刑者処遇の対象ではなくなりますので,一般のYの受刑者の処遇になります。引き続き,少年刑務所で処遇することにはなりますので,一般の刑事施設に行ってしまうわけではないので,職業訓練とか教科指導が充実した施設で引き続き生活を送ることになりますので,極端に一般の刑事施設と同じようになってしまうということにはならないのかなとは思っています。   もう一つの矯正指導日の充実の問題ですけれども,確かに矯正指導日を充実させるのはなかなか施設長としても難しい問題で,一般改善指導を職員の数が少なくて実施しようとすると,放送機材を使って改善指導の教養番組を受刑者に,部屋にあるテレビで見せてやったりですとか,読書というのも中にはあるかと思いますが,そういう形で実施しますと,相手への感銘力というか,相手に自分の問題点に気付かせる力が弱いことは確かだと思います。フィードバックというか読書指導をするにしても読書感想録を出させて,職員の方で添削するとか,手間暇を掛けていけば,少しは効果も違ってくるんですけれども,読書の感想文を添削するとなると,それまた,人手が非常に掛かってしまうことになりますので,人手と一般改善指導の効果とのバランスをとりながら,各施設で矯正指導日をいかに充実させるか,頭を悩ませているところでありますというのが実情です。 ○太田委員 矯正指導の日は8時間ぐらい時間があるわけですね。そうすると,その間,NHKの教養番組を録って流す,それから,読書を自由にしていなさいというような感じですが,プログラム性のあるものをやるだけの体制というか,職員がいないというのが一番大きな問題でしょうか。要するに様々な問題性を抱えた受刑者がいるにもかかわらず,基本的に皆同じ番組を見ていたり,好きに読書をしなさいということになるのは,それをやるだけの仕組みとマンパワーがいないということが一番大きな障害になっているということでよろしいでしょうか。 ○竹中参考人 ただ,それを改善しようと一部の施設ではワークブックのようなものを取り入れて,そのワークブックを自分で解くことによって,自分の認知のゆがみを少し感じられるようにするとか,そういうワークブックですとか,いろいろ,工夫を凝らしているところではあります。 ○武委員 9ページの特別改善指導のところなのですけれども,①番の薬物と③番の性犯罪の指導というのに対しては数字をおっしゃったのですが,④番の被害者の視点を取り入れた教育というところでは人数をおっしゃらなかったのですけれども,人数というのは分かっているのでしょうか。 ○竹中参考人 数字はありません。 ○小玉幹事 被害者の視点を取り入れた教育の受講開始人員ですが,前回提出させていただいた統計資料の2-28というところで類型ごとの受講開始人員の推移というものがありまして,今の被害者の視点を取り入れた教育の受講開始人員ということでいきますと,平成27年度は860名ということになっております。 ○武委員 ありがとうございました。 ○田鎖幹事 J指標の女子の受刑者について,もうちょっと補足していただけないでしょうか。要するに少年工場はないということで,具体的に少年だけを取り出して改善指導を行うようなことはないということなのか,もうちょっと教えていただけますか。 ○竹中参考人 すみません,私は把握していません。 ○井上部会長 今の点は,また,分かれば,こちらからも補充させていただきます。 ○青木委員 16ページのところで,少年受刑者と成人受刑者の対比をしていただいているのですが,夜間,休日は余暇時間となっていて同じ色になっているのですけれども,余暇時間に関して少年受刑者と成人受刑者で何か取扱いが違うようなことがあるかどうかということと,あと,余暇時間に受刑者同士が会話をしたりすることについて,少年受刑者と成人受刑者で何か規制の違いがあるかというようなことについて教えていただきたいと思います。 ○竹中参考人 余暇時間は基本的に自由に会話ができますので,それは成人も少年も同じであります。余暇時間の使い方で少年受刑者の場合,先ほど日記指導という話をしましたけれども,余暇時間帯に結構,少年受刑者の場合は日記を書いて,職員が必ず指導の添削をしますので,それを部屋で読み返す等のことは一般受刑者と違うことかなと思います。 ○青木委員 日記を書くのは余暇時間に書きなさいということになっているのでしょうか,それとも,そのための時間が別途,設けられているということなのでしょうか。 ○竹中参考人 事実上,余暇時間に書いているという形になります。 ○青木委員 日記を書くことは,一応,義務として与えられているということになりますか。日記指導というのが位置付けがどうなのかということなのですけれども。 ○竹中参考人 改善指導かどうか,矯正処遇かどうかということですかね。強制的に日記を書けとやっているわけではないとは思うのですが。 ○青木委員 ただ,改善指導として改善指導を行う時間にやっているものでもないということなのですね,今のお話だと。 ○竹中参考人 平日の作業時間中等に,面接とかは作業時間中にやりますが,書いたりするのは本人に任せているというのが実態ですね。 ○井上部会長 先ほどの田鎖幹事の質問について,矯正局の方から少し補充的な説明をしていただけるそうです。 ○小玉幹事 若干,補足でございます。少年受刑者の川越少年刑務所以外の少年刑務所での処遇ということでございますけれども,先ほどもありましたように少年受刑者のみを対象とした工場を設置している少年刑務所は,川越以外にはないということです。他方で,原則として3年間の少年受刑者としての処遇というのは,ほかの施設でも一緒ですので,個別担任が付いたりとか,日記の指導などとは同じであると。ただ,少年専用の少年受刑者のみを対象とした工場というものはありませんので,作業自体は成人受刑者と一緒になるということにはなりますけれども,例えば作業の指定に当たって少年受刑者の心身の発育状況,能力適性などを考慮いたしまして,教育上,有用な作業,将来的に技術や技能をいかせるような作業に従事させるといった配慮をしているということでございます。 ○井上部会長 まだ,御質問等があるとは思いますが,後の予定もありますので,ヒアリングはこのくらいにさせていただいてよろしいでしょうか。今後,現地に行って見ていただく機会等もありますので,そういうところでもまた御質問を頂ければと思います。   ここで休憩を取らせていただきます。再開は10時半とさせていただきます。           (休     憩) ○井上部会長 それでは,再開させていただきます。   次に,施設内処遇と社会内処遇の連携について御説明をお伺いし,その後に質疑応答を一定時間,行いたいと思います。本日は,公益財団法人日本財団の尾形武寿理事長,福田英夫部長,及び株式会社ヒューマンハーバーの髙山敦取締役副社長においでいただいております。本日はありがとうございます。   それでは,御説明をお伺いできればと思います。よろしくお願いします。 ○尾形参考人 日本財団の尾形でございます。本日は,私どもの職親プロジェクトに注目していただき,また,この場にお呼びいただきまして,誠にありがとうございます。こういう場所で私どもの事業について見解若しくは状況を述べさせていただくことは,私どもにとっても大変名誉なことだと思っています。   職親プロジェクトでございますが,私どもの職員と,それから,会長,理事長を中心とした役員との対話集会というのを実は幾つかのグループで持っておりまして,これは組織横断でやっておりまして,原則,毎週火曜日の朝8時から2時間というのが決まりでございまして,そこでいろいろな議論を戦わせております。もちろん,会長,理事長が出張等でいないと休みますけれども,原則,やっておるわけでございますが,その対話集会の中から出てきたプロジェクトでございまして,隣にいる福田が再犯防止ということに目を付けまして,それで新聞で特に老人の再犯率が高いという,それに目を付けて何とか再犯防止の方策ができないものであろうかということを彼が提案してきましたので,面白いから一度,やってごらんなさいということで許可したプロジェクトでございます。   職親という言葉でございますが,刑務所及び少年院等の施設から出てきたときに,受刑者なり,出所者が世の中で受け入れられるために企業が親代わりとなって,そして,その人たちを受け入れて社会で更生してもらうという意味合いで,親と職ということで職親プロジェクトという命名にいたしました。   既にこの事業を開始してから5年間になります。それで,最初の年で確か31名程度の内定を参加企業が出しましたが,結局,ほぼ1年がたって定着率は僅か20%ぐらいに確か落ちたと思いまして,結局はゼロだったと思います。それでも,それが事業として失敗したかどうかという議論よりは,なぜ,そういうことになるのだろうと,なぜ,定着率が悪いのだろうということを議論してまいりました。   詳細につきましては,これから隣の福田が説明いたしますが,受け入れる組織がきちんとあるかどうかと,それから,できれば少年院にいるうち,施設の中にいるうちに面接して,そして,受け入れるところとやってはいるのですが,そのときは面接に行って,それで,いろいろな質問をするときは,とにかく模範囚というか,模範人であるべきだということで,きちっとした答えが出てくるんですけれども,一旦,外に出てきますと,どうしても社会とのギャップが多すぎて,社会とうまくコミュニケーションがとれないということが分かってまいりました。   私どもとしては,その次の年から会社さんにお願いして,そして,できれば,できるだけ少年院,施設の中にいるうちから社会に出たら,こういうふうなことでという社会に適応できるような,そういう訓練をしてはいかがかということを申し入れたりしまして,そして,この仕事を続けてきました。今,全国で5か所に集団といいましょうか,職親に携わるというか,参加してくれる企業体が出てまいりまして,つい先日は新潟県でもその決起集会が行われたところでございます。   全国的に,そういう人たちを受け入れる人たちをどんどん増やしていくという成功モデルを作っていく必要があるのだろうと思う一方で,施設内にいるときに,出所者が外に出たときに戸惑わないような,そういう教育の方法というものがないのだろうかということで,私ども自身が法務省に掛け合いまして,そしてどこか,モデルケースを作りたいのだが,施設を決めていただけませんかということを申し入れまして,そこも今,調整中でございます。   そうしますと,例えば養護施設に入っている人たちと全く似たような現象なのですが,18歳まで養護施設に入れておきますと,18歳までは三食,御飯が付いて,そして,何でもかんでも全部保護されている,この人たちは逆に今度は18歳になると外へ追い出されますので,そうすると社会に適応できない,そうすると行き着く先はどこかというと,お定まりのところに行く場合がある。   我々日本財団としては,そういう養護施設から出てくる子供たちの訓練というのを1年間やります。大阪にいるNPOがその中心になって,いろいろな食事のマナーであるとか,それから,銀行に行ってお金をおろす方法であるとか,それから,その後,どこかに勤めたときの挨拶の仕方であるとか,そういうことを含めて1年間のセミナーのようなものを毎回,毎回,開いて,そして,18歳になって出るときには何らかの社会に対して適応できるような,そういう教育を少しでも間に合うようにやっておりますが,この職親プロジェクトも全く同じような現象なのではないのかなと私どもは思っております。   日本財団は御承知のように,私どもの原資はボートレースの収益金で私たちが事業をさせてもらっておりますと,一方で,今,日本の中で寄附文化がどうもきちっと根付いていないということで寄附を集める仕事もしております。これは何でかというと,仕事に対して,事業に対して国民が参加してくれるという,お金で参加するのも,それから,企業として参加する,いろいろ,参加の仕方はあろうと思います。ということで,できるだけ非営利の仕事に参加してもらいたいというつもりで,そういう制度も設けております。   そして,職親プロジェクトに戻りますが,我々としては社会がある意味で非常に偏った社会になっているのではなかろうかなと,戦後の高度成長期に例えば老人ホームであるとか,それから,身障者の授産施設であるとかというものが全部,こぎれいなものを建てて,郊外にみんな建てられました。そうすると,それは一種の隔離政策でございまして,それから,今の朝ドラに近いような状態ですが,私の時代は中学を卒業すると,金の卵と言われて東北から就職列車で東京に行きました。その人たちが全部,長じて結婚すると親方の家を出なくてはいけない,結局,どこに行くかというと,低所得者用の集合住宅に入らざるを得ない,それで,それを文化住宅と称してもてはやした時代があったと思います。ふっと気が付いてみたら,老人や身障者,障害者の方々は全部,郊外に移り住まわされて,そして,町の中は健常者しかいないというある意味ではいびつな社会が出来上がった,そういう中で犯罪が繰り返されている傾向にもあるのではなかろうか。   私どもの今の一つのテーマとしましては,昔であったような人が人を助けるというか,お互いにお互いを助け合うような,そういう社会を作ることを目指して,いわゆる今,はやりの言葉でいえば,インクルーシブな世の中を再度,再構築する必要があるだろうと。この職親プロジェクトも実は同じことでございまして,確かに犯罪者ではあるけれども,きちんと更生施設で自分の罪を悔い改めて更生したわけですから,そういう人たちを世の中が温かく迎え入れるような,そういう社会を作っていかねばならない。   大企業の人たちに,それをお願いしようと思っても,多分,それは無理でございます。結局,お願いするのは商店とか,中小企業の例えばヒューマンハーバーさんがおりますけれども,こういうオーナーが社長になっているような,そういう企業体が一番決断力も早いですし,そして,そういう人たちが広い気持ちで世の中が受け入れてくれる,そういう仕組みを作っていくのが一番いいのではないだろうかと私どもは思っております。   一方で,そういう人たちを先ほどの養護施設の問題も一緒ですが,少年院にいるうちに,施設の中にいるうちに出所後,入ったときからすぐとは言いませんが,できるだけ早く出所した後に,この人たちが社会に取り残されるというか,社会から疎外感を味わわないような,そういう教育又は更生ということが求められているのではないだろうかと私どもは思っております。   いずれにいたしましても,この仕事はもう少し続けていこうと思っております。今,5年目でございますが,定着率も上がってきました。ですから,それがなぜ上がったかというのも,これから詳しくは福田から説明させますが,どうぞひとつお聞きいただいて,それで,何かの足しにしていただければと思います。   では,今後は福田に説明させます。 ○福田参考人 日本財団の福田でございます。よろしくお願いいたします。資料ですけれども,「官民連携の更生支援モデル構築に向けて」という,この資料で御説明させていただきます。   1枚めくっていただきまして,ここでは職親プロジェクトの理念になります。「ひとりをみんなで支える」ということを理念に活動しております。これまでなのですけれども,ボランティアに頼るところが大きかったのではないかと思っております。そのため,問題に直面しますと解決のすべを見いだすことができず,この更生支援から離れるということは度々耳にしてきたことです。プロジェクトを進めてからも,対象者が逃げると心が折れそうになるという経営者の声も聞こえてきます。ただ,プロジェクトを一緒に取り組むということで同じ志の下,進めているということが一つの支えになって,次に前に進むことができるという,この支援の輪というのが広がりつつあるのかなと思っております。   次のページに移らせていただきます。ここでは職親プロジェクトが何であるかというのを書かせていただいております。後ほど読んでいただければと思いますが,特徴として一番下にある特徴なのですけれども,このプロジェクトが広がりを見せているのは,社会にオープンにしてきていることだと思っております。それと,矯正と保護の両面からサポートが得られているというのも大きな前進の鍵になっているのかなと思っております。更には民間と官が一緒に連携がとれているというのが,このプロジェクトを進める上では必須というか,重要なことであると思っております。   次のページに移らせていただきます。更生支援の難しさというところなんですが,ここについては少年とか若年層の対象者についての事例を踏まえながら,御紹介させていただきたいと思います。   まず,マッチングが難しいというところなのですが,私も少年院での面接に立ち会ったことがあるのですけれども,そのときには礼儀正しく受け答えもしっかりしているのですが,出てくるとすぐに逃げてしまうとか,働く前に逃げてしまうとかという事例が何件かございました。これは後々聴いてみますと,早く施設から出るために面接先とか帰住先が決まっていると仮釈放であるとか,仮退院が得られやすいというのが一つの要因になっているようです。また,出てきた後なのですけれども,ある例でいきますと,更生保護施設に入ったのですが,少年院時代の仲間が勧誘に来ますよと,勧誘に来たことによって逃亡してしまうという事例も見られました。   また,些細な失敗で逃げ出すとか,うそをつくというところなのですが,これについても失敗というのは誰でも起こり得るものなのですが,特に一度,つまずいた方々にとって失敗するということは,この人は元々悪いことをしたんだという悪いレッテルを張られてしまうという,それを恐れるがためにうそをついてしまう,あるいはそれに耐えられずに逃げてしまうということが度々,事例として聞かれております。ある少年なのですけれども,町内会の清掃ボランティアというのを企業の経営者から命じられていて,掃除してきましたよというようなことがあったのですが,早すぎるということと集められたごみがないというので問い詰めてみますと,実際にはごみ掃除というか,清掃活動をしていないで時間を潰していたというようなこともあったようです。   それと,保護観察期間終了日に姿を消すというようなことも度々聞かれます。少年と向き合ったこともあるのですけれども,仕事にすごく前向きで,いつも立ち直ります,あるいは頑張りますよというように元気に仕事をしていたのですが,保護観察期間の終了と同時にいなくなりました。よくよく聴いてみますと,連日連夜,夜遊びしていて注意をされてもなかなか直らなかったですよと。その結果,仕事よりも遊びの方を優先してしまったのではないかというようなことも話を聞いております。また,別の少年なのですけれども,夜遊びを注意されましたよと,余り素行が悪いと少年院にまた戻るよというような注意をされたそうです。そうしましたら,保護者が過保護すぎたのか,弁護士の方に相談したところ少年院に戻ることはないよと。それを聞いて,この子は逃亡して実際には今は暴力団関係のところに入ってしまったというような事例もございます。   金銭管理ができないというところなのですけれども,皆様もよく聞かれていることだと思いますが,お金を持つとすぐに使ってしまいますよと,計画なしに使ってしまいますよと。ある少年なのですけれども,1週間分のお昼御飯のお金を渡されたそうです。その日のうちに使ったということなんです。私も聞いてみたんです。使ったら次の日のお昼御飯,明日,明後日のお昼御飯はないですよねといったら,「食べなくていいんです。」ということを言われます。食べないということは健康上も悪いであろうし,金銭管理というのは必要なことではないかなと思います。   また,金銭管理ができないがために,お金を使ってしまったがために前借りをしたいということを社長さんに申し出たところ,前払いは駄目だよと,きちんと計画立ててお金は使いなさいと。ただ,お金は手元にない,でも,友達と遊びたい,それがためにその事務所にあった備品を盗んで逃げてしまったと。その事務所は防犯カメラが付いているのです。防犯カメラが付いていて,そこに映っているのを本人は分かっていながら盗んで逃げるわけです。そこの背景には,そこの社長さんは訴えることはしないというのが分かっていたから,そこまでしているわけです。   また,短時間で高収入の仕事に移ってしまいますよというところなんですけれども,今,スマートフォンとか,簡単に情報を得られるような環境にあると思います。それによって今の自分のやっている仕事がきついであるとか,又は給料がそれほど高くない,でも,スマホで情報を取ると,そこにはすごく短時間で高収入というような情報が飛び交っているわけです。そちらに移りたいというようなことを社長さんに話をするんですけれども,社長は当然,それはだまされるよというようなことを注意するわけです。ただ,遊ぶお金であるとか,そっちの方に目が移ってしまって辞めて,せっかくお世話になっていた会社さんからいなくなってしまうということも度々,例を聞きます。   これらの問題というのを解決するためには,民間だけでは限界があるだろうと思っておりまして,各企業の意見を聴きながら,次のページなのですけれども,官民の合同勉強会というのを提案させていただいて実施いたしました。   また,ページをめくっていただいて,官民の合同勉強会ですけれども,四つの課題をテーマに話合いを行いました。就労,教育,住居,仲間作り,これに参加したのは官と民のところです。   就労に関しては,問題としては求人に対して期待しているほど応募者が集まらないというのがございました。また,すぐ逃げ出す対象者が多いというのも指摘がございました。   教育については,施設における充実した教育プログラムというようなことは施設側からもお話を聞くんですけれども,それが実社会に役立てられていないのではないかというような声もございました。また,施設内では規律正しいというのはとてもよいことだと思うのですけれども,言われたことだけをやりますよというようなことから,自分で考える能力,思考力が低下しているのではないか,あるいはいろいろな人とコミュニケーションを図ることがないので,その能力も低下しているのではないかということで,出た後のリハビリ期間も必要ではないかというようなことも指摘がございました。   住居につきまして,企業さんは中小の零細企業の方々が受け入れているところが多いと思います。その人たちにとって住所を確保するというのは経済的な負担が掛かります。更に満期で出てくる分には,いついつということで民間の住宅を契約することができると思いますが,仮釈放を考えてくると,その3か月とか4か月前には住所を確保しなければならないと。そうすると空家賃みたいなのが発生して,負担が強いられるというような声もございます。   仲間作りなんですが,過去の悪い関係を断ち切るということが重要だろうということがあります。それと併せて信頼できるような仲間を作りましょうと。先ほどスマホという話もさせていただきましたが,今,SNSで過去の悪い友達から簡単にアクセスされるそうです。自分が断ち切ろうと思っても相手側から来るために自分の存在が分かる。しかも,誰々はいついつ,どこどこから出ているよねというのが分かるということもあって,そこをどう切るのかというのが課題になってくるのかと思います。そういった意味で,官と民が連携した新しい支援策というのを作る,提案していくというのが必要だろうと思っていまして,矯正施設と社会をつなぐ一貫したプログラムというものを提案させていただきました。それが次のページになります。   中間支援構想というものなんですけれども,ポイントとしては矯正施設と社会復帰との間のギャップを埋めるというところにあると思います。先ほど紹介させていただきましたように,例えば思考力であるとか,コミュニケーション能力が低下した,それをそのまま,施設から出て社会復帰しなさいといっても難しいというのがございます。そのためには,下の図に行くのですけれども,矯正施設内から社会復帰を見据えた更生支援プログラムの提供が必要ではないかと思っております。   次のページに移らせていただきます。職親プロジェクトにおいては,中間支援を取り入れたモデルを作っていこうということで,施設内での充実したプログラムを実施していきたいなと思っております。既に実施しているものなんですけれども,仕事フォーラムというのを実施させていただいております。まず,仕事に対する意識付けを促すということが一つございます。   それと,経営者と受刑者が小グループになって対話をするという機会も設けていただいております。これによって受刑者の人たちが何に悩んでいるのか,あるいは自分が働こうとする経営者がどんなことを考えているのかということを,お互いに意思疎通することができるのかなと思っております。また,具体的な仕事であるとか,企業の情報を提供する説明会というのも開催させていただいております。これらによって,先ほどなかなか求人に対して応募の手が挙がらないですよということが改善されてきたのと,ミスマッチ,それが少しずつ埋まっていっているのではないかなと思っております。   ある少年院で,グループワークを実際に私も体験させていただいたんですけれども,そのときは7人とも土木関係,建築関係に進みたいというようなお話がございました。なぜですかと聞いたところ,その施設の中での訓練が,そちらの方の訓練が多かったというのが理由です。これは問題提起としてあるんですけれども,働いた経験のない子供たちというか,少年に働きなさいと言っても,働くということは分からないと思います。また,施設内,閉ざされた空間の中で職業ということについて働いたことのない人は,考えることもできないのではないかなと思いますので,そこにはいろいろな職種であるとか,訓練というのは取り入れる必要があるのではないかなと思っております。   次のページに移らせていただきます。これは,これまでの展開について紹介させていただいておりまして,支援の輪というのが広がっております。   次のページに移ります。ここに書いてあるのは,今,参加している企業です。建築とか飲食が多く,最近は介護というのも増えてきております。また,新潟で立ち上がりましたけれども,農業というのも見られるようになってきております。   次のページに移ります。これは実績なんですけれども,企業が増えておりますが,課題は施設内での求人活動ではないかなと思っております。大阪で立ち上げておりますので,大阪では応募者はこれよりも多いんですが,大阪,東京では増えております。和歌山はこれで1年が経ちますけれども,まだ,4人ということで,もう少し施設内での求人活動に力を入れる必要があるのではないかなと思っております。また,その下のところにある実績なのですが,体験修了率,定着率も徐々に向上しております。   この背景には,例えば生活の面倒を見てもらう世話役の人を雇用しましたよという企業さんもあります。例えばいつも寝坊して,あるいは朝御飯も食べないで出てくる子供に,世話役となる人を雇用して,起こしに行って御飯を作るというような企業さん,あるいは何か問題行動を起こしそうだなと思ったときに,自分の自宅にしばらくの間,寝泊まりを一緒にさせるとか,又は家族旅行に連れていく企業さん,あるいは今,ここ最近,大阪で動きが出てきているんですけれども,プロジェクトに参加している企業内で,この社長さんだと難しい,又はこの業種だと難しいけれども,別の職種だったら,この子は定着するのではないかということで,その中でのいい意味での転職ということを促しているというのもございます。   次のページに移らせていただきます。今,御説明してきましたように,職親プロジェクトは立ち上がって5年目に進んでいますが,今でも課題は多いと思っております。更に課題解決のためには,官と民の更なる連携強化が必要だと思っておりまして,ここに書かせていただいているものについては,法務大臣に要望書として提案させていただいたものです。   次のページに移らせていただきます。今後,この提案に基づいての職親プロジェクトなのですけれども,施設に入っている段階で,それと中間支援,出てきたときと定着するまで,これの段階的なモデルを作り,それを連携させる必要があると思っております。ポイントとしては,入った段階で出所する,出るときに働くことを見据えた更生プログラムを提供していく必要があると思っております。   この点なんですけれども,これも一つの事例なんですが,一人の少年が算数,掛け算はできるのですけれども,引き算ができないという人がいました。誰でもそうだと思うんですけれども,成長過程でいろいろな経験を積み重ねて成長していくのだと思うのですが,例えば家庭が崩壊していたよですとか,あるいは悪いことをして学校に行かなかったですよとか,そういった人たちにとって,ある一部のところの人間形成をする上でのキャリアが抜け落ちているというところがあるのではないかなと思っています,若しくは,そこから崩れているのではないかなというところがあります。そこを埋める必要があるだろうということを考えています。   それをするためには,出てきた後では遅すぎるだろうと思っています。ということは,入ったときから抜けているキャリアのところをどうやって埋めていくのか,出た後,中間支援のところ,社会につながる,社会に復帰するところまで考えていったプログラムを提供する必要があるだろうと思っておりまして,今後においても社会の受入れの整備も必要だと思いますけれども,逃がさないというか,ドロップアウトしないような支援体制というのを作っていく必要があるだろうと思って,今後も職親プロジェクトは進めていきたいなと思っております。   以上,簡単ではございますが,職親プロジェクトの紹介です。 ○髙山参考人 福岡のヒューマンハーバーの髙山でございます。私どもも日本財団の職親プロジェクトに参加しまして2年,3年目を迎えました。その中で,企業として服役受刑者の方々を実際に雇用し,教育し,宿泊させてまいりました。それにつきまして簡単ですが,御説明させていただければなと思います。   ヒューマンハーバーは,平成20年12月3日に再犯のない社会を目指して,就労支援,宿泊支援,そういう二つの従来ありました支援だけではなくて,教育支援を取り入れた三位一体の支援こそが必要と考えて,今日までやってまいりました。しかし,今,御説明がありましたように,安定的,継続的な就労につなげるためにも,資料の2ページにございますが,様々な五つの問題がございます。先ほどの説明にもありましたが,金銭とか,指導を受け入れないとか,将来を見据えないと,そういった五つの項目の問題点があると。それを解決するためには,どうしても従来型の縦割りの就労,宿泊だけではなく,教育を取り入れた三位一体の仕組みが必要と思い,やってまいりました。   その中で,就労は従来にありますように企業の中の仕事に従事させ,宿泊は寮に入れ,また,私どもは中間支援施設の中に住んでいただきながら生活をしてもらうと。教育は従来の企業でいう社員研修ということで週に1回,現場の仕事を休んで,朝9時から4時まで専門の学校の先生,教職員の資格を持った先生方に朝9時から4時まで,授業をしてもらうということにしております。中間支援施設の存続軸とあるんですが,そこで基礎教育,人間教育,カウンセリング,教育支援を行ってまいりました。   3ページの三位一体というところがそういうところで,4ページになりますと,教育をしても様々な教育の仕方があると。4ページにありますように,基礎教育,人間教育,カウンセリングとありますが,そこは教育基本法の中で言っていますように,基礎学力の向上というものは人としてどういうふうにしてなるのかと,それから,数学とか,そういったものを,人間教育というものをやっていかなければいけないと考えて取り組んでまいりました。   5ページの方にいきますと,支援というものは企業側から手を差し伸べるのではなくて,指導し,対象者自らが指導の教育を受け入れるものを持たなければ,なかなか,前に進まないと。受け入れる気持ちができたところで,本人の気持ちの変化が出てくるということです。   6ページにありますように,支援から指導に変えることで様々なコミュニケーションの問題とか,我慢できない問題,金銭トラブルというものを自らが利他主義の実践をすることによりセルフコントロールし,解決方法を見いだして,他人を思いやる気持ちとか,意欲に対する気持ちの助長とか,理論的な解決方法を定着につなげる。それをすることによって,社会につなげていくということをやってまいりました。   就労という部分,定着率の部分は犯罪白書24年版にありますが,協力雇用主と企業の現場のニーズのアンケートをとりますと,ページを戻りますが,4ページにあります社会常識とか,社会人の自覚とか,労働に耐え得る体力,勤労意欲,職業倫理,そういったものが実際に今でも欠けているなというふうな声を聞きます。そのことを教育の部分でもって,それを自覚し,自らが気付いて,そういうことを学んでいくと。そうしますと,私どもも生徒を見ていますが,目がだんだん活気が出てきて,やっと自分のしゃべり方とか,そういったものが目に付いてくると。そこら辺の事例が6ページの方にありますが,教育プログラムでは道徳とか,そういったカウンセリング,基礎学力とやっております。   国語,数学,一般的に高校数学では読み書きとか,そろばんではなくして,国語では表現力とか,語学力とか,共感力やコミュニケーション能力を高めて,社会生活のニーズを狙いとしてやっておりまして,数学では理論的な思考の方法や分析,集計といった意識した物の見方を育成すると。そういうことによって,様々な方々がいますので十人十色,要は学校教育,普通の教室でやる全体に同じカリキュラムではなくして,対象者を面接し,それに合ったカリキュラムを組んで私どもはやっております。ですから,上下の学歴の差がありますので,これは十人十色,その人に合った教育をやっているところです。   8ページの方に実際に国語をやって,9ページには数学をやって,義務教育というのは学校に出なくても卒業できるものですから,大切な義務教育というところをもう一回,やり直すということをやっております。   それにまた,大切なのが10ページにありますように,食育とか,生活改善とか金銭,それから,11ページにあります,今は資格の社会でもありますし,また,IT社会でもありますから情報処理,それも資格をきちんと取ってもらうと。私どもは今,対象者の方が情報処理2級を取って,7月に一般の試験ですが,情報処理1級を受けようとしております。多分,合格すると思いますが,そうして教育だけではない食育とか,生活の改善指導とか,そういった資格,そういったものを一緒に合わせて取り組んでおります。そのおかげさまで,私どもが受け入れてきた対象者は,再犯に一人も至っていないと,離脱者もいないとなっております。 ○井上部会長 どうもありがとうございました。   それでは,ただいまのお三方の御説明について質問のある方は挙手をお願いします。 ○山﨑委員 職親プロジェクトの「官民連携の更生支援モデル構築に向けて」という資料の中の12ページで,官民の連携強化へというページなのですけれども,この中で協力雇用主制度の見直しということが書かれております。私自身も協力雇用主という名前をこれまで聞いたことがありましたが,今回の職親プロジェクトがそれとどういう関係にあって,どこが同じで,どこが違うのかという基本的なところがよく分かっていないものですから,その辺りを御説明いただいて,見直しとおっしゃっている課題としてお感じになっているところも御説明いただければと思います。 ○福田参考人 協力雇用主制度の見直しのところなのですけれども,まず,協力雇用主と職親企業のどこがどう違うのかということなのですが,基本的には出所,出院した人を受け入れて雇用し,社会復帰を目指すというのは同じです。同じなのですけれども,プロジェクトとしてやっているのは,一番最初の冒頭に理念がありましたように,一人をみんなで支えるというところが大きく違うと思います。このプロジェクトを進めて,これまで更生支援に携わっていなかった企業の方々も参加しているのですが,協力雇用主として受け入れてきた人たちも参加しています。その人たちにとって,どこがどう違ったかというと,同じ目的を持った仲間が一緒に取り組めるというところが大きな違いだというところが一つあります。   これの見直しの点なのですけれども,次のページにありますように循環型就労支援モデルというのを今後,作っていく必要があると思っております。言いにくいことなのですけれども,今,協力雇用主制度というのは余り機能していないのではないかなと私たちは思っております。それを機能させるためには,例えば最初の方で御説明しましたように,失敗したことによって心が折れますよという経営者がいます。そうすると,この更生支援から遠のいてしまうというのが結果になります。それを防ぐためには一人仲間を作っていく,あるいは逃がさないような体制を作っていくというのが必要だと思っております。   今,全国に1万6,000社を超える協力雇用主があるとは聞いておりますが,それらが連携する,それぞれを例えば就労支援事業者機構さんがうまく連携させて,その中で逃がさないというと言葉が悪いかもしれませんけれども,そこに定着するような体制を作れれば,もう少し定着率が高まるのではないかなと思っております。それをこのプロジェクトで循環型支援モデルというのを作って提案できればなと思っております。 ○青木委員 今と同じところの4ページに関してなのですけれども,職親企業から様々な意見というのがありまして,その中で矯正施設の訓練が実社会とかけ離れている,訓練がいかされていないと書かれているのですが,この訓練というのは職業訓練を指しておられるのか,あるいはそうではないとすれば,どんなことを指されているのか,更に具体的に今,矯正施設で行われている,こういう部分が社会とかけ離れているのではないかというような具体的な御意見がもしあったのであれば,それも教えていただきたいと思います。 ○福田参考人 この訓練は,職業訓練の方を指しております。たまたま,視察するであるとか,面接に行く施設がそうなのかもしれないのですけれども,昔ながらの訓練が多いのではないかなという印象です。ここに参加している企業は,自分のところに受け入れたいというのがあります。自分のところに受け入れたいような訓練がないではないかという指摘がまず一つです。それはそれで別の施設でありますよという話もあります。ただ,そこを動かすことができるのか,あるいはその訓練を持ってくることができるのかというところも,一つ課題としてあるのではないかなと思っております。   それとあと,職業訓練に当たらないのかもしれないのですが,社会に出てから,これは訓練というより教育の部分かもしれないのですけれども,社会に出て生きる力というか,自分で生きていく力というものが失われているのか,元々ないのか,分からないですけれども,そこを施設内で身に付けさせるということが必要ではないかなと思います。 ○山下(幸)幹事 同じ資料の最後のページですけれども,13ページ,それで今回,中間支援モデルという大変興味深いお話を聞かせていただきましたが,今回,これからモデル刑務所と連携して,この点を進めていくというお話で,今,モデル刑務所のところの欄の下を見ると,外部通勤制度の拡充とか,外出による職場見学の拡充とございますよね。確かに現在,余り活用されていないと思うのですけれども,この外部通勤とかは,この辺りについて,今後,官民でいろいろと今,協議しながら進めているというお話があったのですが,この辺についての外部通勤制度とか,外出による職場見学とか,こういうものの実現可能性ということについては,どのようにお考えなのでしょうか。 ○福田参考人 外部通勤制度についてはまだなのですけれども,外出による職場見学というのは大阪の方で何件か,行われたことがございます。できたということは,ほかの地域でもできるのではないかなと思っておりますので,可能性はあると思っております。また,外部通勤制度も既に採られている施設もございますので,これが必ずできないというわけではないと思っております。特に今回,受け入れる企業があって,そこの体制が整っているのであれば,例えば問題があるのかもしれないんですけれども,実行できるのではないかなと思っておりまして提案させていただき,今回,矯正局の方からはある一定の施設,こことここだったらできるのではないかという資料を頂き,その中で私たちはここがいいですよというのも返して,これから,その協議をするところです。その協議は,ここの部分が前提としていただいているものと理解しております。 ○大沢委員 ヒューマンハーバーの髙山副社長に伺いたいのですけれども,教育支援というのは大事だと思うのですけれども,これを支えていらっしゃる教員のスタッフというのは,どういう資格を持った方がやっていらっしゃるのか,その確保はどのようにされているのかということを教えていただけますか。 ○髙山参考人 教員の資格は,それぞれがきちんとした教員の正式な資格を持っておりまして,実際に現場で教員をなさっていた方々が私どもの理念に共感して,そういうところで,また自分の力を発揮したいと,このようなことを言うと定年した人かなと思いがちですが,30歳そこそこ,51歳,52歳とか,実際には九州の方で教頭職をやっていた人間が私どもの今の副塾長になって,カリキュラムをやっております。それから,カウンセリング等については九州女子大学の人間科学部准教授の友納先生と九州女子大学と連携して,専門的なものを2週に1回,入れてやっております。その確保も,それだけの教職員を持っていても,そういった向き合う対象者がやんちゃ,それも飛びぬけたやんちゃなものですから,先生方の思いが強くなければ,なかなか,先生自身が折れてしまうので,確保するのも,今,私どもの課題でもあります。 ○太田委員 私も担当者についてお伺いしたいのですけれども,中間支援の段階では,まだ,仮釈放中であったり,仮退院中であったりするので,保護観察も行われていると思うので,その対象者たちを指導する人がいるわけですけれども,それが終わった後,いわゆるフォローアップの段階になった後に,個々の対象者を指導したり,支援したりするというのは,個々の企業の担当者が行っているということでしょうか。先ほど心が折れるという話もありましたけれども,その企業を支援したり,指導したりするという担当者は,たくさん数がいるのでしょうか。要するに全部,企業にお任せとなったら,企業も本来の仕事をしなければいけないので,大変だと思いますので,そういう企業の支援体制とはどうなっているか,特に保護観察が終わった後の状況はどうなっているかということについてお伺いできますでしょうか。 ○福田参考人 8ページを見ていただいてもよろしいですか。中間支援の考え方なのですけれども,基本的には出所,出院した後は企業が雇用しておりますので,企業で働いております。ただ,働くだけでは定着にはつながらないだろうということで,週に1回,中間支援施設というところに行って教育を受けております。その教育については先ほど髙山副社長からお話のあったような教育を提供しております。ですので,また,戻ってしまって最後のページにありますように,既に東京,大阪,福岡を拠点に3つの中間支援施設を財団の方で作らせていただいております。ここで受けて,ここで6か月終わった後は企業で働き,そのまま継続して働くと。時にフォローアップ研修というのも必要になってくると思います,あるいは例えば対象者が働きながら悩みを抱えるとか,又はそれを上司であるとか,又は社長に話しづらいなというときには,帰れるような場所というようなことも考えております。 ○武委員 教育支援のところに社会常識とあるのですけれども,私たちが考える社会常識というのは,悪いことをしたらごめんなさい,そして,それに対する責任を果たすというのがまずあると思うのです。でも,会の人たちの事件の加害者を見ていると,少年院や少年刑務所を出たら,それで終わったという感覚になってるように思います。被害者のことをすっかり考えなくなってしまう現状があります。   それは少年院や少年刑務所での被害者に関する教育にも問題があると思うのですが,社会に復帰するときに,こういう手厚いプロジェクトが誕生しているとなったら,また,私たちは忘れられてしまうのではないかと心配になります。その基準にあるのは,自分はどんな犯罪を起こしたのか,それによって被害者がいるのであれば,泣いている被害者のことを考え,そこから絶対に逃げないという事が,まず必要だと思うのですが,そういう目線というのは,この社会常識の中に入っているのでしょうか。 ○髙山参考人 今,おっしゃるように加害者支援の方をして,被害者の方が非常に忘れられがちな面がありますが,教育のところでは最初に向き合ったときに,あなたが行った逆には被害者がいるのだと,ずっと忘れてはいけないのだということで常に教育します。自分がそういう教育の中で,ですから,社会常識の中に正しくおっしゃるようなことを忘れないような教育を常に対象者には毎回毎回,あなたはなぜ,これをしたのか,その後ろにはきちんと被害者がいるのだから,それを忘れてはいかんということで教育をやっておりますので。 ○武委員 よかったです。また,置き去りにされるなと思っていました。これからも頑張っていただきたいです。ありがとうございました。 ○井上部会長 それでは,質疑はこのくらいにさせていただけますか。今日はお三方,どうもありがとうございました。お三方はここで御退出されます。ありがとうございました。               (参考人退室)   最後は,保護観察の実情についてお伺いするのですけれども,そのヒアリングの前に資料11の統計資料3につきまして,事務当局から説明をお願いしたいと思います。 ○今福幹事 統計資料3につきまして御説明いたします。   1枚おめくりいただきました目次にございますように,更生保護全体に関する資料が合計17点ございます。   1ページの上のシートでございますが,保護観察の主な種別である4種類の保護観察について整理したものです。それぞれ保護観察処分少年は1号観察,少年院仮退院者は2号観察,仮釈放者は3号観察,保護観察付執行猶予者は4号観察と呼んでおり,以後,適宜,この略称を用いて説明させていただきます。1号観察と2号観察が保護処分に基づく保護観察で,3号観察と4号観察は刑事処分に基づく保護観察です。保護観察に付される法的根拠や期間,平成27年の1年間に取り扱った事件数はそれぞれ表のとおりでございます。   1ページの下のシートでございますが,刑事司法手続の中で保護観察に付されるまでの大まかな流れを整理した表となっております。   2ページの上でございますが,更生保護を担う機関を整理しております。一番下の保護観察所は,基本的に各都府県を単位として設置され,そこで約960人の保護観察官が第一線の保護観察等を担っております。この保護観察官の数につきまして,例えば最も規模が大きい東京の観察所では100人を超えており,その他の大規模庁,例えば大阪,名古屋,福岡などでは40人から70人程度ですが,他方で,全国に50ございます観察所の約4割に当たる観察所では10人未満となっております。図の真ん中の地方更生保護委員会は,高等裁判所に対応して8か所設置されており,事務局に配置されている保護観察官の調査結果などを踏まえて,委員3人で構成される合議体が仮釈放や仮退院の許可などを決定しております。   下の資料でございますが,保護観察官と協働して保護観察に当たる保護司が全国に約4万8,000人おられるなど,更生保護が多くの民間の方々に支えられていることを示しております。   1枚おめくりください。ここからは,保護処分に基づく1号観察と2号観察についての統計であり,最初に直近10年間の開始人員の推移を見ますと,1号観察は一貫して減少,2号観察も全体としては減少傾向にございます。なお,1号観察には4つの種別があり,グラフの上から見ますと,「交通短期」とは非行性の乏しい交通事件の少年を対象に,集団で交通講習を受けさせるなどして3から4か月程度実施するもの,「交通」とは交通短期以外の交通事件の少年を対象に交通関係の指導に重点を置いて個別に指導を行うもの,「短期」とは交通事件以外の少年で,反社会集団に加入しておらず,非行性,資質,環境の問題性が大きくない者を対象に,6から7か月程度の間個別に処遇を行うものであり,最後に「一般」とありますのは,これら以外で一般非行性がより進んだ少年を対象に,おおむね1年以上の処遇を行うものでございます。   4ページの上のシートは,保護観察開始時点における統計について審判時年齢を18歳未満と以上に分けて示しております。最初の1号観察の種別の表は御覧のとおりでございますが,18歳以上の1号観察の対象者の約半数は交通短期が占めております。なお,これ以降の1号観察に関する統計は,この交通短期を除いたものを掲載させていただいております。下のシートは主な非行名です。いずれも窃盗,傷害が多くを占めております。   5ページの上のシートは,保護観察を開始した当初に予定されていた保護観察期間です。18歳以上の2号観察対象者を見ますと,6月以内までの者の合計が全体の約6割を占めております。下のシートは保護処分歴です。18歳以上の者について見ますと,1号観察の約3割,2号観察では7割以上に保護処分歴が見られます。   6ページからは保護観察が終了した時点での統計です。上のシートは1号観察についてであり,年齢の区分にかかわらず,全体の約8割が解除で終了しています。解除と申しますのは,確実な改善更生が見込まれるため,保護観察を継続する必要はないとして,予定よりも早く保護観察を打ち切るものでございます。2号観察では下のシートにあるとおり,18歳以上の者のほとんどが期間満了で終了しております。   7ページと8ページは,保護観察終了時点での就学・就労状況やその状況ごとの保護観察終了事由を示しております。例えば7ページの下のシートを御覧いただきますと,18歳以上の1号観察対象者の場合,右上の円グラフのとおり,就労等が多くを占めておりますが,そのほとんどが解除で終了しております。   9ページからは仮釈放者の3号観察と保護観察付執行猶予者の4号観察についての統計でございます。9ページの上のシートは開始人員の直近10年間の推移を,下のシートは平成27年に開始した人員の性別及び年齢別の構成を示しております。   10ページの上のシートですが,主な罪名であり,いずれも窃盗と覚せい剤取締法違反が多くを占めております。下のシートは保護観察期間別の構成ですが,左の3号観察の場合は,3月以内と6月以内の合計が全体の8割弱を占めております。   11ページでございますが,刑事処分歴や保護処分歴に関する構成を示しております。   1枚おめくりください。ここからは保護観察の終了時の統計を掲げておりますが,12ページにおいては保護観察終了事由別の構成を,13ページには,終了時点での就学・就労の状況やそれぞれにおける保護観察終了事由を示しております。いずれも無職である場合の終了事由が不良である割合が高いことが分かります。   14ページにおいては,上のシートで保護観察官,下のシートで保護司についてそれぞれ直近10年間の人数の推移を示しております。   保護司に関する統計がもう少し続きますが,15ページの上のシートでは年齢層について60代が全体の半数以上を占めており,右の職業については無職,会社員等の順に多くなっております。また,15ページの下のシートの平均年齢については一貫して上昇傾向にあり,直近では65歳となっております。   16ページの上のシートは,協力雇用主や雇用された保護観察対象者の数についての直近8年間の推移です。下のシートは,有職者と無職者の割合を保護観察の開始時と終了時とで比較したものですが,いずれも終了時には有職者の割合が上昇し,無職者の割合が低下しております。   17ページの上のシートは,法務省と厚生労働省が連携して実施しております刑務所出所者等就労支援事業による支援を受けて,就職した件数等の推移でございます。下のシートは,保護観察所で実施しております専門的処遇プログラムについて,特別遵守事項で受講を義務付けて行う保護観察対象者の概要とその開始人員の推移となっています。   18ページの上のシートは,社会貢献活動の概要です。平成27年6月から特別遵守事項により義務付けられることとなりました。下のシートでは,平成27年度におけるその実施状況を示しております。   19ページの上のシートは,全国の更生保護施設の概況です。保護観察所の長の委託により,平成27年は全国103施設で8,000人以上を受け入れており,このうち少年は379人となります。   下のシートの自立準備ホームと申しますのは,NPO法人等が運営する施設の一室などをあらかじめ刑務所出所者等の宿泊場所として,保護観察所に登録していただいているもので,平成27年には保護観察所の長の委託により,1,500人以上を受け入れております。   ただいま御説明いたしました更生保護施設と準備ホームは民間の施設でございますが,20ページの上のシートの自立更生促進センターは,国が設置・運営している施設でございます。全国に4か所あり,民間の施設では受入れが困難な者を受け入れて,濃密な指導監督や手厚い支援を行っております。各センターの定員等は下のシートにお示ししております。   最後の21ページは,通常第一審における保護観察付執行猶予の言渡し状況に関する資料でございます。   統計資料3の説明は以上でございます。 ○井上部会長 この統計資料について特に御質問などございますでしょうか。ないようですが,また,後で何かありましたら,適宜,お申し出ください。   それでは,ヒアリングの3番目として,少年及び若年成人に対する保護観察の実情につきまして御説明をお伺いすることにしたいと思います。本日は,前橋保護観察所の古山正成所長,新潟保護観察所の大日向秀文課長,八王子地区保護司会の可児克之保護司,同保護司会の糠信富雄保護司,この四方にお出でいただいております。   それでは,早速でございますけれども,御説明をお願いいたします。 ○古山参考人 前橋保護観察所長の古山でございます。私は保護観察所や地方更生保護委員会といった,更生保護の現場で約30年間保護観察官として勤務してまいりました。私から保護観察所における保護観察,特に少年事件の実情についてお話しさせていただきます。その後,可児保護司から民間の立場から見る保護観察の実情について説明させていただきます。私の隣におりますのは,新潟保護観察所企画調整課長の大日向でございます。大日向も現場の保護観察官としての経験が長く,自立更生促進センターなどでの勤務経験がございますので,皆様からの御質問にお答えする際に,細かな点などを補ってもらうために同席させていただいております。よろしくお願いいたします。   資料の説明に入ります前に,私が今,勤務しております前橋保護観察所について簡単に御紹介を申し上げますと,職員の数は20人でございます。保護観察官はそのうち12人です。年間に取り扱っている保護観察の件数は約1,300件でございますので,単純に一人当たりで割りますと年間で約110件の保護観察事件を取り扱っているというような観察所でございます。事件数では全国50あります保護観察所のうちの大体15番目ぐらいの中規模の観察所でございます。   それでは,お手元の「保護観察官における保護観察所の実情について」というタイトルが付いた資料に基づいて説明させていただきます。   最初に,少年と成人で共通する保護観察の基本的なことをお話しさせていただいてから,1号観察と言われます保護観察処分少年につきまして,処遇の実情をお話しさせていただきます。資料の8ページ以降は参考資料でございます。時間の関係上,説明は割愛させていただきますが,8ページに目録を付けておりますので,適宜,御参照いただけると幸いでございます。   それでは,資料の1ページ目の下段,処遇の原則を御覧ください。保護観察対象者と一言で申しましても,彼らは一人の人間でございますので,生育歴,抱える問題の内容とか複雑さはそれぞれ全く違います。ですから,問題の改善に当たりましては,性格や経歴など,個々の特質をよく理解した上で,それぞれにふさわしい方法で行う必要がございます。また,社会復帰に向けた援助につきましても,個々の対象者が持っている潜在的な力でございますとか,地域ごとの社会資源の状況に応じて,個別に行うことが望ましいわけでございます。   ですから,保護観察を行う際には対象者との信頼関係を構築して,対象者が自ら立ち直ろうとする意欲を引き出しながら,その対象者に最もふさわしい方法で行うという個別処遇の考え方を原則としております。例えば少年だから必ずこうするというような杓子定規的なやり方をすることは全くございませんで,飽くまで個々の一人一人の対象者の問題性を見て,それにどう対応していくかという処遇を展開しております。   それとともに,不必要なものとか,不相当な干渉に当たるようなこと,それから,不当に自由を制約するようなものは,対象者の反発や拒否を招いたりすることがあるのはもちろんのこと,逆に,対象者の依存心を助長させてしまうこともあるなど,更生の妨げになることから,必要性や相当性,これが認められた範囲内で行うようにしております。   2ページ目の上段を御覧ください。保護観察は開始後,指導監督と補導援護,この二つを一体的,効果的に組み合わせて行っております。まず,指導監督はそこに書いておりますが,面接等の方法で対象者と接触を保ち,行状を把握すること,対象者が遵守事項を守り,生活行動指針に即して生活・行動するよう,必要な指示等を行うこと,特定の犯罪的傾向を改善するための専門的な処遇を実施することでございます。赤で囲っております接触と遵守事項については,後ほどまた説明させていただきます。この指導監督というのは,保護観察における権力的,監督的な側面でございます。   一方,次の補導援護でございますけれども,対象者には自らの力で生活する責任というのがあるんだというようなことを前提としまして,対象者が自立した生活を営むことができるようにするものでございます。内容としましては住居の確保や就労を助けたり,また,必要な生活の指導などを行います。保護観察の実施者は原則として保護観察官と保護司でございますけれども,補導援護の方は保護観察における援助的,福祉的な側面でございますので,指導監督とは異なりまして,更生保護施設を運営している更生保護法人などに委託することが可能となっております。   続いて,2ページの下段でございますけれども,接触と行状把握についてお話しいたします。保護観察は,よく「接触に始まり,接触に終わる」と言われておりますけれども,保護観察では,それぐらい接触を重要視しております。接触方法でございますけれども,対象者の自宅を訪れる,それから,保護観察所や保護司の自宅に呼んで対面で面接する,これが基本でございます。いかに有益な指導や援助も,信頼関係という土台があって初めて本人の心に響いていきます。   そのために対面での面接が非常に重要でございまして,対象者のその時々の認知でありますとか,感情,欲求などについて,表情を見たり,態度,身なり,そういうところに関心を払いながら把握していきます。その際,こちらが共感している気持ちを伝えたり,それから,励ましの言葉を掛けたりしており,そういうことを丁寧にやっていきますと,接触を重ねていくうちに対象者との信頼関係ができてくることになります。最初はかたくなに自分の問題について余り話さなかったり,触れられなかったりというような人たちも,信頼関係によってだんだんと問題と向き合えるようになってきたりするのが現状でございます。   それでは,3ページ目を御覧ください。上段でございますが,ここから次の4ページ上段までは,遵守事項についてまとめました。遵守事項は,保護観察対象者が再犯せずに改善更生するため,保護観察中に守るべき行動規範でありまして,これを守るよう指示していくことが指導監督の中核となります。遵守事項には一般遵守事項と特別遵守事項があります。どちらか一方でも守られない場合には,仮釈放取消しなどの不良措置をとる際の要件の一つになります。   ただ,特に少年の場合は感情統制が不十分で,衝動的に逸脱行動をするというような特性がございます。そこで,不良措置については遵守事項違反に対する制裁としてのみ捉えて,公権力による威嚇を前提にして一方的に指導監督を行うというよりは,遵守事項に違反したら,こうなるんだよということをあらかじめ定めておくことで,対象者に遵守事項の重要性を自覚させて,自発的に遵守事項を守らせるということに主眼があると現場としては感じております。ですから,保護観察対象者と最初に面接する際には,観察官が遵守事項を書面で渡しまして,一つ一つ,この遵守事項はこういうことだよ,こういうことだよと説明して,対象者の理解と自覚を促して,誓約をさせて,頑張りましょうねというような処遇を行っております。   資料の3ページの下段を説明させていただきますと,一般遵守事項について,まとめております。一般遵守事項は,全ての保護観察対象者が守るべきものでございまして,内容はそこに書かせていただいているとおりでございますけれども,いずれも私が先ほど申し上げました保護観察の実施,特に接触,行状把握の基礎となるものが定められております。一般遵守事項は保護観察が終わるまでの間は常に守ることとされていますので,途中で変更されたりとか,取り消されたりとかいうことはございません。   4ページ上段に記載いたしました特別遵守事項は,個々の対象者ごとに改善更生に特に必要と認められる範囲内において設定される事項でございます。特別遵守事項は必要に応じて定められるものですので,必要がない方には定めることはありません。一度,定めた場合でも事後に必要がなくなれば取消しをします。また,事後に変更することも可能です。特別遵守事項に違反した場合には,不良措置がとられることになりますので,内容は具体的な行動規範である必要がありますし,法律に定められております類型に該当するものであることも必要でございます。   以上,遵守事項について説明させていただきました。   遵守事項といいますのは,保護観察における指導監督の中核でございます。特に少年の場合,家庭環境などの悪さなどで生活基盤が不安定であったり,社会生活上の常識的な習慣,これが身に付いていなかったりということが多いです。一般遵守事項と特別遵守事項を先ほど見ていただくと,守って当然のことのように見えるものもあると思いますが,このような守って当然と思われるものが守れない,身に付いていないというのが非行少年の現状でございます。ですから,現場からいたしますと,遵守事項は指導監督の側面だけではなくて,生活基盤を立て直すための目標という意味合いも非常に強く,特別遵守事項は少年の持つ個別の問題への対処方法でもあると考えて処遇をしております。   また,少年は感情が非常に不安定というのは先ほども申し上げましたけれども,一時的な享楽のために衝動的に行動に及んでしまう傾向がありますので,遵守事項違反という不良措置を前提とした義務付けをしておくこと自体が枠組みとしての意味があると感じております。その上で立ち直りのため,遵守事項を守るのは大切なんだというような気付きを与えていきまして,それを理解させて少年が自ら進んで守るように指導していくというようなことを繰り返していくということが,現場ではすごく重要な方法だと思っております。遵守事項は,自ら立ち直ろうとしている非行少年のそういう気持ちを育んでいくという意味では,重要なものであるのだろうと感じている次第でございます。   それでは,次に4ページ下段でございますけれども,ここでは保護観察官と保護司の協働態勢についてまとめております。保護観察は,教育学,社会学等の更生保護に関する専門的知識を有します保護観察官と,対象者の近隣に住んでいて地域の実情に精通したボランティアの保護司が事件ごとにペアを組んで,それぞれの特徴をいかし,相互補完的に役割分担をしながら実施しています。   具体的に申しますと,保護観察官は,対象者や家族らとの面接等の調査をしまして,再非行の防止でありますとか,改善更生を図る上での問題点を整理します。その後,知見をいかして,保護観察の実施計画,すなわち,問題にどうやって対応していくのかというものを策定します。その上で,居住地の状況でありますとか,経験年数,それから,事件の負担の現状などを勘案して,最も適した保護司を指名します。   指名された保護司は,保護観察官の作った処遇の計画に基づきまして定期的に面接して,指導,助言を行います。面接の結果や面接日時を決めるための電話でのやり取りも含めまして,対象者の生活全般について毎月,あるいは何か事が起こればすぐに保護観察官に報告をもらうことになっています。保護観察官はその都度,保護司と協議を行いまして,問題の程度でありますとか対象者の状況に応じて,必要があれば面接をその都度やっていくなどの臨機応変の介入をしていきます。また,対象者の抱える問題性でありますとか,心身の状況によっては保護司を指名せずに,保護観察官が一対一で対象者を直接担当することもございますし,ケースによりましては専門的処遇プログラムを実施したりもします。   ここまでは対象者が少年であっても成人であってもおおむね共通している事項です。   5ページ目でございます。上段を御覧ください。ここからは,保護処分に基づいて保護観察に付された者に対する保護観察の実施方法をまとめております。保護処分の根拠は御承知のとおり,少年法でございますので,健全な育成を期すことが必要とされております。保護処分に基づく保護観察の場合は,保護者に対して監護の責任を自覚させるための指導や助言といった措置をとることができます。実際には母親のみの一人親の家庭も多かったり,両親がそろっていても父親は全く関心がないとか,放任を決め込んで関わろうとしないとか,そういう場合があります。少年の非行を防いで改善更生をしていくためには,保護者の役割というのは非常に重要と感じております。保護者にもきっちりと役割を果たしてもらわないと保護観察が功を奏しないということもありますので,消極的な保護者には保護観察官,そして,保護司から粘り強く指導,助言を行っております。   保護処分には先ほどお話ししました1号観察と2号観察というものがございます。ここからは1号観察と呼ばれます保護観察処分少年の事例なども含めまして,少年に対する保護観察の実情を説明いたします。   5ページの下段を御覧ください。ここでは1号観察の開始から終了までの標準的なフローを記載しております。1号観察では,家庭裁判所で保護観察処分が決定されますと,通常は処分の当日のうちに対象者が保護者同伴で保護観察所に出頭してまいります。ここで担当の保護観察官が必ず最初の調査面接を実施いたします。そして,並行して引き継がれてきます家庭裁判所からの少年調査記録,少年鑑別所に入っている場合は少年鑑別所からの少年簿,これにくまなく目を通しまして,更に自分自身の面接で新たに分かったこと,判明したことなども含めて,少年の全体像を事件調査票に集約していきます。事件調査票で全体像を整理し,先ほど申し上げました問題の対処の処遇の実施計画を策定し,遵守事項を定め,そして,保護司の指名ということで保護観察の実施に入っていくわけでございます。   保護観察処分少年の場合には期間は20歳まで,又は20歳までに2年に満たない場合は2年間となっており,保護観察を継続しなくても確実に改善更生することができると認めるときは,保護観察期間満了前であっても保護観察所長が解除の決定をし,早期に終了させることが可能でございます。逆に,保護観察期間中に遵守事項違反,ぐ犯などの事由がある場合には不良措置をとります。具体的には,遵守事項違反がある場合には少年に対してまず警告をし,家庭裁判所に対して少年院などの施設に送致する旨の申請をする,家庭裁判所へぐ犯の通告を行うことがあります。   6ページでは1号観察の事例を紹介させていただきます。私の経験の基に作ったものでございます。上段を御覧ください。処分決定時,18歳の男子少年,万引き事件です。両親の離婚後,実母に引き取られまして,実母が再婚して異父弟ができるという流れの中で,家庭に居場所を失って不良仲間と付き合い始めるというような事例です。この頃から母親は会話さえも少年とするのを避けるようになります。本人自身も知的な能力が低めだったので,会話もなかなか普通についていけず,高校中退後のアルバイト先でもコミュニケーションがうまくとれないというような子でございました。   少年は保護観察官と最初の面接のときに,「先輩に花火をしたいので盗ってこいと言われた」という,非行の動機をきちんと語るのですけれども,一方で,「共犯である先輩との付き合いをやめるつもりはない」というようなことを言います。そこで,非行の原因として考えられるのは,就労不安定,それから,不良交遊,深夜徘回であり,これに対応していくために必要な特別遵守事項を設定し,ベテランの女性保護司を指名しました。保護司には,母親に近い目線で少年と接してもらうという役割と,母親に対する助言者としての役割を期待して指名したということになります。保護司は毎月,少年の家を訪ねて少年,それから,母親と面接を重ねていくことになりました。   ところが,2か月ぐらいたった夜に,たまたま,少年が共犯者と公園でたむろしているところを保護司が現認します。急遽,少年の家で,保護司が深夜徘徊について問いただしますと,少年は「別に悪い仲間ではないんです」と,「先輩と会うのも,それほど悪いことをしているわけではないんです」というようなことを言って反発いたしました。でも,後日,保護司が母親から聞いてみますと,少年の部屋が悪友のたまり場になりかけていて,非常に心配だというようなことが分かってきます。   そこで,保護司は保護観察官に状況を報告をしました。共犯者2名も保護観察中でしたので,保護観察官は少年と共犯2名を別々に呼び出しまして,それぞれに共犯者同士で付き合うことが良いと思っている点と逆に良くない点を,きちんと紙に書いてまとめてみなさいというような指導をしまして,共犯者同士の交際が更生の妨げになるんだよということを気付かせるというような指導をしていきました。また,それと同時に,少年の担当保護司と2名の共犯を担当する保護司が連携をして,今後は少年と共犯者とが連絡を取り合わないようにしていくということを丁寧にやっていきました。   仕事に関しましては,担当保護司が協力雇用主を知っていまして,そこで雇われるようになりました。最初は無断欠勤とか遅刻とか,迷惑を掛けていましたけれども,雇用主のお力添えもあって次第に意欲的に働くようになりまして,最終的には1年6か月で保護観察が解除になりました。   以上,保護観察の実際の処遇をイメージしていただくために事例を取り上げました。   7ページに移らせていただきます。少年に対する保護観察の留意点として,私が少年事件を担当していて考えることは,実態把握が特に重要であるにもかかわらず,少年の場合,その実態把握というのは非常に難しいということでございます。これは幾つか要素がありまして,非行の背景には心情の不安定でございますとか,能力的な問題,家庭環境の悪さ,悪友との交際など,様々な問題がありますけれども,少年というのはそれを自分の問題として認識していないということと,それが問題だと思っていても,それをきっちり「問題です」と伝えていくこともできないということがありますので,1回の調査とか面接で非行の根底にある原因のところまで明らかにしていくのは,非常に難しいのです。   実態把握に当たって非常に参考にしているのは,家庭裁判所から引き継がれてくる少年調査記録でございますとか,少年鑑別所から引き継がれてくる少年簿でございます。これらの資料には,詳細な非行の原因でありますとか,問題性の根深さを知る重要な基礎資料が豊富に含まれております。もちろん,これらに頼るだけではなくて,保護観察官が一定の期間にわたって,保護司と共に面接等を通じて目の前の少年と向かい合って指導を続ける中で,日々,変わっていく少年の生活状況や問題性を把握して,処遇の内容,やり方を変更するなどして,臨機応変に対応もしているところでございます。   このように少年の問題や実態を把握するために重要となってくるのは,接触を通じた信頼関係です。特に幼少期に虐待などを受けて,対人不信の強い少年などは,特に気を配って接触をしています。少年の話にはきちっと耳を傾けること,それから,長所や,立ち直りに向けた努力,これをきっちりと認めて自信を与えること,つらいとか大変だという心情にきちんと共感していくことが何よりも大事だと思ってやっております。   個々の少年の良いところ,潜在的な能力を考えながら処遇を行うことが重要ですが,非行少年は自己評価が低く,自分では長所に気付けていないことが多いので,保護観察官や保護司は長所を見付けたときには,その長所を伸ばせるように配慮して,そこから改善更生につなげていくというような感じを意識しております。   少年事件の留意点の2つ目でございますけれども,少年は先ほど申し上げましたとおり衝動性が高いということで,これは粘り強くやっていくということがどうしても必要です。感情統制が不十分で,本当に刹那的に逸脱行動をしてしまいます。遵守事項を一度説明したぐらいでは,それですっと守って生活していくということがなかなか期待できないのが実態でございます。この衝動性みたいなものは,少年の場合,社会内で一定の自由が認められる環境下で発現してくるものなんだという特性もあると思うので,遵守事項違反があった場合でも,先ほど申し上げました不良措置をとるかどうかというのは非常に悩みます。違反の理由や態様,違反に対する少年の受け止め方,保護者の状況などの情状面,いろいろなことを踏まえて,少年が何とか自分で遵守事項を守ろうとするためには,どう指導していったらよいのかと悩みながら,また,工夫をしながら粘り強く対応していっているというのが実態でございます。   ただ,一方では遵守事項違反は再非行に直結する,それを示唆する行動でございますので,先ほど申し上げました理由や対応などによっては,少年の改善更生と社会保護のために,これは社会内処遇では難しいということになれば果断に不良措置をとります。そうしなければ再非行を招いて,少年にとっても不幸なことになりますし,家族にとってもです。他方,対象者にとっては,保護観察はこんな感じでいいのかという意識が芽生えてしまったりもしますので,保護観察軽視ということにもつながっていかないように,遵守事項違反に対して適時適切に不良措置をとっていくように心掛けております。   最後でございますけれども,7ページの下段に私が考えます少年の保護観察制度の優れていると思える点について3点ほどまとめてみました。   1点は,先ほどから申し上げております保護観察開始時点で少年の特性に関する情報が非常に豊富でございます。保護観察処分が決定する前から,家庭裁判所調査官による調査でございますとか,少年鑑別所に入っていれば鑑別技官による資質鑑別がなされています。特に資質鑑別の結果でございますけれども,保護観察官が普段の保護観察を行う中ではなかなか得ることができない困難なものでございまして,これら情報を得ることで,問題を掘り下げて把握することができて,早い段階から的確な個別処遇ができていると感じております。少年院仮退院者であれば,なおさら,少年院での手厚い処遇についても保護観察所に伝えられてきます。   2点目は,可塑性を踏まえて必要のある限りは長期的な処遇を行うことができる一方,必要がなければ早期に保護観察を解除等で終結させるということができるという点でございます。仮釈放者は,先ほど6か月未満の保護観察期間というのが大半というのがありましたが,少年の保護観察は,必要な期間,保護観察を実施できるという柔軟さがあります。   3点目は,施設内処遇と社会内処遇との連携でございます。少年院では本当に手厚い処遇をしていただいており,それがほぼ全員,仮退院になっております。通常,また,少年院仮退院者の保護観察期間は仮釈放者より長く確保されておりますので,仮釈放者以上に少年院で行っていただいた処遇をいかした保護観察を実施することができると考えております。   以上の3点が少年の保護観察に対して私が思うものでございまして,いずれも立ち直りや再犯防止にとって有効に機能していると感じております。   私の説明は以上でございます。それでは,続いて可児保護司から説明をさせていただきます。 ○可児参考人 保護司の可児でございます。よろしくお願いいたします。   私は,昭和47年から平成21年まで約37年間,保護観察官として勤務し,平成26年,つまり3年前からは保護司をしながら八王子にある更生保護施設自愛会の施設長を兼ねています。短い時間ですので,私が説明したいことや言いたい意見については,お手元のレジュメにポイントを絞って書いておきました。ですから,ここでは特に話したいことに絞って説明します。また,本日は八王子地区で約20年間,地区の保護司として活動し,現在は自愛会の補導員としても活動している糠信保護司に手助けを頂きたく,同席してもらっております。なお,私が所属しております八王子地区保護司会について簡単に説明しておきますと,平成29年4月1日現在,保護司数145名,男性108名,平均年齢63.5歳です。職業別ですと,会社員等の割合が最も多くて全体の約2割,あとは主婦や無職の方でございます。   それでは,お手元の「少年・若年成人に対する保護観察の現状と課題について」と書かれたレジュメに沿って説明します。   まず,「1,民間の立場からの保護観察」について,3点ほど,そこに丸を振っておきました。   1点目,更生保護施設職員であろうと保護司であろうと,民間の立場で更生保護に携わっている者は,24時間365日態勢という気持ちで保護観察対象者の再犯防止,改善更生に臨んでおり,夜間であろうと休日であろうと,自分の対象者に問題があれば駆け付けるということになります。また,保護観察が終わった者であっても相談があれば,できるだけ応じるようなこともしております。以前は保護観察が終わったら,なるべく接触するなということも言われておりましたが,今は逆にフォローアップということも言われておりますので,そのようなことをやっております。自分は地域の保護司であることということで,ボランティアなんですが,私に言わせると一つの仕事みたいな感じで,仕事は一生懸命やろうという気持ちで,多分,他の保護司も同じだろうと思いますが,そんなことで関わらせてもらっています。   2点目,対象者の問題性に「気付くこと」と「寄り添い」,対象者は,各々問題性は違うわけですが,個人個人を大切にし,尊重するという気持ちでやっております。100人いれば100人,皆,違います。一人一人個性があるので,その個性を尊重しながら本人に寄り添うという気持ちでやっております。   3点目,地域に根差した活動についてです。犯罪をした者であってもいずれは社会に戻ってきます。社会に戻ってくれば,その地域で長年生活している保護司が,対象者がスムーズに社会に戻ることの手助けすることによって,官とは違う立場での活動ができるのだろうと考えております。   次の話題の前提として,自愛会の定員や職員体制について説明してきますと,定員15名で,このうち成人13名,少年2名,少年専門の施設ではありませんが,少年も僅かな数ですが,受け入れております。   次に,「2.少年・若年成人に対する保護観察における保護司の関わりについて」ということで,少年院仮退院者の2号観察について説明いたします。先ほどの古山所長の資料では,18ページ下段と19ページ下段に標準的な流れが載っておりますので,実務中心に話したいと思います。保護司は糠信さんが長年されてきたように地域社会の中で活動し,自宅等で面接する保護司もいれば,私のように更生保護施設の職員として勤務し,入所してきた対象者を主に担当する者がおります。ただ,保護司としての関わりという点では,共通するところがたくさんありますので,保護司全般の関与の流れを説明いたします。   まず,(1)のアの少年院在院中の生活環境調整ということであります。少年院に入る少年は,家庭や交友環境,また,資質に問題を抱えている場合がほとんどです。そのまま同じ環境に戻したのでは,再び非行に及ぶおそれがありますので,少年院に入った少年が帰る場所として,家族の下を希望する場合には,保護司が家族に会って引き受ける意思があるのか,帰れるのかどうか,不良交遊等の心配はないのか,様々な問題の有無と,そうした問題の解決が可能なのかということを調査します。また,私や自愛会の職員は,少年院に入っている間には,私は必ず少年院を訪れて面接します。今後の生活について話し合って,どうするのかということを本人と共に考えるわけです。   ただ,ほとんどの少年がそうなのですが,親と対立している,親には自分のいうことを聞いてもらえない,親から虐待を受けた,父母との関係が非常に悪い少年たちが非常に多いわけですから,こちらの考えを押し付けるのではなくて,じっくりと話を聞いて共感しつつ,少年との信頼関係を築くというような形で行っております。また,多くの場合,生活環境調整を担当した保護司は,そのまま本人が出てくれば保護観察の担当者となりますので,在院中から信頼関係を築くことができれば,退院後の保護観察をスムーズに実施していけるのかなと考えております。   次に,「イ 仮退院中の保護観察」についてです。担当の保護司,先ほど古山所長からも説明がありましたが,月に数回,少年と面接するわけです。少年の家を訪れたり,自分の家に来てもらったり,定期的に保護観察の経過を保護観察官に報告し,少年に問題行動がある場合,必要な場合には保護観察官のもとに行かせるよう指導する,あるいは保護観察官に来てもらえる場合もあります。レジュメに指導監督的側面ということで書いておきましたけれども,このような面接等を行うことで,少年が遵守事項を守って生活行動を立て直していくというような指導を行っております。   次に,補導援護的側面のことであります。生活の安定のためには当然ながら就労が欠かせません。どの保護司も,少年にどのような仕事が合っているのか,どんな仕事につきたいのかということを話して,協力雇用主あるいはハローワークに行かせたり,様々なつてをたどって就職させて,その後は就業が長続きするように働き掛けていくわけであります。また,保護司や保護観察官だけでは十分に対応できない問題を抱えている場合には,関係機関,福祉,医療等のほかに私がいる自愛会では薬物問題であればダルク,法律問題であれば法テラスの弁護士の方に毎月,来ていただいておりますので,そのような人と連携して解決策を探っていきます。   このような処遇を行っていく上で大切なのは,自分の生活を立て直す,また,更生保護施設から自立ということだけではなくて,自分が起こした事件をどう考えているのかを確認するとともに,事件の被害者に対するおわびの気持ちを忘れないということを私は折に触れて対象者本人に言っております。   次に,私が施設長を務める自愛会に迎え入れた少年のことについて話したいと思います。2ページ上,参考事例で少年院仮退院者のKのことが書いてあります。年齢は18歳,窃盗事犯,その前にも薬物事犯の非行歴があります。薬物事犯に関しては,母親が精神疾患で精神安定剤を飲んでいたということで,それを昔からちょくちょく飲んでいるうちに違法薬物にも手を出すようになった。それから,知能が低く,虐待を受けたこともあって,なかなか,心を開かないというような少年でした。ただ,この少年の場合,家庭に帰れないわけですから,少年院へ面会に行って,そこら辺の寂しさとか,つらさとか,そういうことを踏まえた上で自愛会の説明をしつつ,自愛会にどのぐらいいるの,3か月後,6か月後,1年後といったように,出た後はどうするのというようなことも含めて時間を掛けて話をしました。   少年院での面接には,なるべくならば2回行くように心掛けております。少年の場合は先ほどから話が出ていましたように未熟であり,衝動性も高い,いろいろなことですぐつまずく,そういうことがないようにきちんとした処遇をしたいということであります。仮退院のときには出迎えが必要です。当然ながら自愛会では職員が行くわけです。でも,家族のところに帰る少年には親が迎えに来るので,本人自身,孤独な気持ちと,これからは自愛会できちんとやっていけるのかという不安を抱えておりますから,自愛会に入ってきても,まず,丁寧に説明して,ここで一生懸命やって自分の生活を築いていくんだよということを教えていくような形になります。   先ほどからも出ましたように,私どもはよく信頼関係という言葉を使いますが,よく言うんですが,医者のように薬を使えるわけではありません。また,手術のようにメスを使えるわけではありません。言葉でコミュニケーションをとるしかない。少年の多くは皆様方が御存じのように,先ほどから話しましたように,まず,親との関係が圧倒的に悪い。自分も悪いから親が引き受けないということになるのですけれども,まず,自分の話を聞いてくれないという思いを持っている少年たちが多いことは事実です。辛抱強く,粘り強く聞いてあげることから始まると考えておりますので,私ども自愛会の職員は少年にかかわらず,ともかく話を聞いてから指導,助言をする,受容とか傾聴という言葉を使うまでもなく,それが一番大事なことなのだろうなとは思っております。   次に,丸の4番目ですが,「更生保護施設における保護観察で特に必要となる関わり」について。少年は少年院で手厚い処遇を受けておりますけれども,先ほどからの話にもありますように,出院してきたら多少変わってしまうところもあるので,施設の規則をきちんと説明しながら,自立に向けた支援をするということになります。   Kに対する保護観察の結果ですが,更生保護施設での8か月と施設退所後の4か月の合わせて合計約1年,保護観察を行い,仕事は公的援助を受けて学校に通って資格を取って介護ヘルパーの職に就きました。家族については残念ながらお母さんはなかなか精神疾患が変わらないものですから,そこには帰れなかったものの,仮退院期間中に知り合った女性と結婚してアパートを借りて自立したという形になります。自愛会を出てからも私が保護司として引き続き担当したという事案です。   レジュメ2ページ目の(4)若年成人を含む少年の保護観察における留意点と処遇の困難さということでお話しします。これから説明するような少年の特質は,成人になっても直ちに改善はされない,若年成人の保護観察対象者でも同じということですので,レジュメの方にも若年成人を含むと書かせていただいております。   少年や若年成人の動きですが,非常に動きの早さがあり,良い方にも悪い方にもあっという間に変わる。今日は良い表情で,にこにことして話していたのが,翌日になったらぶすっとして声も掛けないというようなことになりますので,大人以上に丁寧に見守る必要があると思います。   また,少年や若年成人には非行や犯罪の背景に,家族や交友関係に深刻な問題がある場合がほとんどですので,少年たちの置かれた境遇を理解した上で調整していく。また,私たち保護司だけでは手に負えないほど環境面に深刻な問題がある場合もあります。そのような場合には,家族と距離を置いて自立させるということも選択しますし,基本的な社会性が欠如している少年もいます。我々自愛会の場合でもそうなんですが,布団の上げ下げもできない,部屋も片付けないというような少年に対しても,分かりやすい言葉で丁寧に粘り強く働き掛けて,そこは一番大事なところであり,基本だよというようなことで話していきます。保護観察の場合,個別処遇が原則です。なので,丁寧な関わりを心掛けていくということであります。   今,私たち保護司は更生保護の最前線に立って,年長少年や若年成人とも真剣に向き合い,一緒に悩みながら少年の立ち直りに関わっています。そのことにやりがいと生きがいを感じております。ちょっとしたきっかけで非行の連鎖から立ち直った少年を何人も見てきました。少年法における少年の上限年齢を引き下げるべきか否かという制度についての難しい話は分かりませんけれども,保護司として思うのは,今,私たち保護司がこのように手を掛けて処遇している年長少年について,処遇を受けることなく放り出すような制度にだけはなってほしくないということであります。   次に,私たち保護司が感じている少年,若年成人に対する処遇の難しさですが,先ほどから動きが早いという話もしているとおり,少年や若年成人を常に見張っているわけではないので,不良仲間とつながってしまう,LINEとかスマホだとかを利用する場合も含め,そういう傾向があります。また,家族が引受人となっている少年,若年成人についても,家族との間に極めて深刻な問題があるような場合には,月に数回の保護司の面接で解決するには限界があることは事実であります。   もし,少年院仮退院者について,少年院での処遇を受けないまま,社会内処遇のみでこれらの問題を解決できたかと聞かれれば相当難しい,正直に言って不安を覚えざるを得ません。少年院に入ることで問題のある環境からは一時的に距離を置くとともに,充実した態勢を有する矯正サイドで育て直しともいうべき手厚い教育を受けるというのは,少年にとって非常に大事なことだと思っております。少年院で手厚い処遇を受けて,少年院で本人が自分の問題点に気付く,そういう気付きはその後の更生保護施設での処遇も含めて,保護観察における少年の立ち直りにつながっているように思います。   最後に,更生保護施設の近年の取組,今後の課題について施設長という立場で少し説明いたします。御承知の方も多いことかと思いますが,更生保護施設は,元々,身寄りがなく刑務所を出所する者に対して宿泊場所や食事を提供することがその役割のほとんどでした。しかし,近年では時代の流れや事情の変化に対応するため,入所者の問題解決に向けた様々な関わりをより積極的に行うようになっています。福祉職員を雇って高齢者や障害者を積極的に受け入れる,薬物事犯者に対する専門的処遇を行っている施設も多くなってきました。どの更生保護施設も,入ってきた少年,犯罪者が再び罪を犯すことなく,社会の一員として無事,生活していくことを願って精一杯の関わりをしています。   ただ,更生保護施設は制度上,補導援護を行う施設ですので,専門的な処遇を行うには一定の限界があることも事実です。更生保護事業法を多少,手直しでもしていただければ,もう少し,更生保護施設も頑張れるのかなとは考えております。同時に,職員の処遇スキルを向上させることも考えていかなければいけません。いずれにしても,現在よりも処遇機能を充実強化させるためには,制度設計だけでなく,予算や職員体制の更なる整備も大前提となりますので,今後,こういった点も踏まえて議論していただければと思います。   以上で説明を終わりにします。 ○井上部会長 ありがとうございました。ただいまの御説明について質問のある方は挙手をお願いします。 ○羽間委員 可児施設長と古山所長に一つずつ質問がございます。   まず,可児施設長にです。資料の最後の,3の更生保護施設の近年の取組,今後の課題の(3)のところです。「現在よりも強い枠組みで処遇を行うための法制度も必要か」と書いていらっしゃるのですけれども,この点について何か具体的なお考えがあれば,お聞かせください。 ○可児参考人 先ほど申し上げましたように,更生保護施設に委託されているのは補導援護だけです。では,指導監督はどうなっているのかという話になるのですが,これには複雑な問題がありまして,指導監督については施設の職員という立場ではなく保護司の立場で行っております。更生保護事業法は今,御存知のように継続保護事業,一時保護事業,連絡助成事業の3つしかありません。更生保護施設をもう少し機能的にさせていくためには,もちろん,こちらの努力も必要ですが,様々なプログラムを更生保護事業として実施できるようになればなと思います。それとともに,現在,対象者に実施できる指導は,更生保護施設に帰りなさいという指導だけで,更生保護施設に一定期間居住しなさい,そこにいて,こういうプログラムを受けなさいというような指導ができる規定は何もありませんので,そこら辺の,指導監督的な面と言っていいのかどうか分かりませんが,それをもう少し入れてくれると,もう少し更生保護施設も頑張れるのかなという気がいたします。 ○羽間委員 古山所長の資料の5ページ目から7ページ目におきまして,1号観察についての特徴というのは非常によく分かりましたが,保護観察付執行猶予者に対する4号観察との比較ということで,実情を踏まえてもう少し教えていただきたいと存じます。現行で1号観察で処遇を行っている年長少年について,仮に4号観察として処遇するとなった際に,保護観察の実効性という観点でどのような影響が考えられるのか,あるいは現行の1号観察の良さをいかすべく,4号観察でもこういう取組がなされるといいなどのことがございましたら教えていただきたいと思います。 ○古山参考人 4号観察についての流れにつきましては,資料でいいますと18ページ上段に保護観察付執行猶予者の場合という標準的な流れ図がございます。そこと先ほどの5ページとを見ていただければと思いますが,今の御質問で私が現場で感じていることも含めて3点ほど述べさせていただきたいと思います。   一つは流れの中で申しますと,決定的な違いは何度も申し上げておりますが,処分までの過程で家庭裁判所における調査でございますとか,少年鑑別所に入った場合は少年鑑別所における資質鑑別があり,その資料が保護観察所の方にきっちりと引き継がれてくるという点がすごく1号観察と4号観察とで大きく違うので,逆に言えば,4号観察で同様の調査や資料があれば非常に良いなと現場としては感じる次第でございます。   もう一つは,これも申し上げましたが,良好的な措置についていいますと,1号観察の場合は解除と申しまして,そこで終局的に保護観察を打ち切ることができます。4号観察は仮解除という類似のものがございますけれども,これは簡単に申しますと,保護観察所との接触の頻度を減らしているだけで,保護観察が終わるわけではございません。少なくとも半年に1回は,保護司が仮解除中の方と会って状況を確認したりします。1号観察の少年の場合は,解除を明確な目標として励めるわけですが,4号観察は若干,そういうものとは違っておりますので,仮解除について何らかもうちょっと手当がなされると,現場の処遇はやりやすいなという思いがございます。   3点目は,今度は不良的な措置についてでございますけれども,少年の1号観察の場合は更生保護法に警告という制度ができまして,遵守事項違反について施設送致申請を段階的に行っていく,又はぐ犯ということで状況が悪ければすぐ家庭裁判所に通告できるということがございます。4号観察の全部執行猶予ですけれども,取消しが当然あるのですけれども,実務上は情状が重いということも含めて,慎重な判断を致しますので,そういう点でももうちょっと柔軟に措置を講じるようにできたら,有効に機能していくのではないかなという,以上,3点が1号観察と4号観察の違い及び希望するところでございます。 ○山下(幸)幹事 今の質問と回答にも関連するのですが,古山さんにお聞きしたいのですけれども,7ページにあります少年に対する保護観察制度の特徴というのがございまして,先ほど古山さんが言われているように,少年の家庭裁判所での調査とか,それから,少年鑑別所での調査とか,その結果が来るのが非常に保護観察に当たっては有り難いというか,大変有用であると。今回,もし,今現在の年長少年が成人だと扱われるようになってしまいますと,その部分が変わってしまって,先ほどからありますように3号観察とか4号観察に変わってしまうわけなのですが,そのことによって保護観察所の体制とか,職員の配置とか,今後の運営の在り方とか,そこが何か大きく変わるというようなことはあるのでしょうか。 ○古山参考人 保護観察所の中で,最初の面接で処遇の実施計画とか,問題点の把握を致します。このときに,今,4号観察の場合は検察庁や裁判所からある一定の定型的な事項が引き継がれてはきますけれども,少年とは全然,量も質も違いますので,かなりの時間とマンパワーを問題点の把握に費やしていき,そして有効な処遇につなげていくと,これはマンパワーの部分と,先ほど申し上げた1回で全部は把握できませんので,時間的なスパンと両方が保護観察所の体制としては必要になってくると思いますし,社会にその日から出てきておりますので,問題点が判明すれば,すぐにできる限り適切な対処法を検討して対応していくことになると思います。1号観察のように豊富な情報を踏まえながら,日々,対応していくということができなくなるという点においては,若干,処遇の実務の中でも,当初は,苦労や紆余曲折が増えていくと思っております。 ○武委員 一般遵守事項の中に被害者のことが盛り込まれていないのですけれども,例えば少年審判や刑事裁判のときに必ず少年は言うのです。「自分は悪いことをした」,「被害者に対して一生,謝る」とか,「償い続ける」と言うのですが,それがほとんど守られていないのが現状なのです。例えば謝罪をしていない,損害賠償が発生した場合も払っていないということが本当に多いのですが,保護観察所では被害者のことに余り触れてはいけないのか,触れないようにしているのか,問題がとても難しいし,損害賠償も払い切れないような金額なので触れにくいのか,余り力を入れていないように感じるのですが,被害者のことに関して何か時間を使っているとか,ここには力を入れているとかいうのがあれば教えていただきたいです。 ○古山参考人 資料の9ページ上段を御覧いただけますでしょうか。私は先ほど,保護観察官がこの事件調査票に内容をまとめるというお話をさせていただきましたが,事件調査票というものの左側の事件番号から始まりまして,4つ目の「犯罪又は非行に関する事項」というところの一番下に,被害者の状況でありますとか,被害に対する心情,被害者に対する謝罪,被害弁償,その他の状況という項目があり,これは定型の様式で必ず保護観察官が確認し,そして,これを保護司に伝えることになっています。これを基に保護司は事あるごとに,ここの部分についてはどうかと本人だけでなく親にも話をします。ただ,おっしゃっていただいたように,なかなか,それが実現しない,実現できるような指導が行き届かないという点は,保護観察所としては本当に今でも真摯に受け止めて,頑張っていかなければなと思っていますけれども,必ずこの事件調査票の項目は必須項目で,それを指導にいかしております。 ○井上部会長 本日のヒアリングはこのくらいにさせていただきたいと思いますが,よろしいですか。お四方,わざわざお出でいただき,ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。それでは,お四方は御退出されます。           (参考人退室)   ここで配布資料がありますので,配布させていただきながら話を進めたいと思います。前回までの意見交換におきまして,論点として検討すべき事項についてたくさんの方々から御意見を拝聴してきましたので,前回最後にお約束したように,部会長である私の責任におきまして,事務当局とも協議し,簡単な論点表(案)を作成しました。それを今,資料12として配布させていただいておりますが,本日はもう時間もありませんので,この論点表(案)についての質疑及び意見交換につきましては,次回に行わせていただくことにしたいと思います。御了解いただければと思います。じっくり見ていただき,次回にこれについての質疑,意見交換を行わせていただきたいと思います。   本日の審議はこれで終了させていただきますが,次回のヒアリングの準備状況について,事務当局の方から説明していただきます。 ○田野尻幹事 次回につきましては,家庭裁判所における少年保護事件の取扱いについてヒアリングの準備を進めておるところでございます。また,これまで委員の先生方から御要望もございましたので,次回の会議の終了後,最高裁判所事務総局家庭局作成の資料を閲覧する機会を設ける方向で調整中でございます。 ○井上部会長 それでは,次回は家庭裁判所における少年保護事件の取扱いというテーマでヒアリングを実施させていただきます。また,論点表(案)の各論点について意見交換を行い,修正という可能性はもちろんあるとしても,できれば論点表を確定させた上で,各論点について実質的な意見交換を行えればと思いますので,もし,論点として追加すべき事項等がありましたら,次回の意見交換の冒頭に御発言をお願いできればと思います。   次回の予定について,事務当局の方から説明をお願いします。 ○羽柴幹事 次回,第4回の会議は6月29日(木曜日)午後1時30分からでございます。場所は今回と同じ東京地方検察庁の会議室を予定しております。なお,会議は午後5時までには終了することを予定しておりますけれども,会議に引き続き同じ場所で最高裁判所事務総局家庭局作成の資料を閲覧していただく機会を設けることについて調整を行っております。こちらは30分以内を見込んでいるところでございます。 ○井上部会長 それでは,次回は,6月29日(木曜日)の午後1時30分からということで,場所はこの同じ会議室で行うことにしたいと思います。   なお,本日の会議の議事につきましては,先ほど可児さんから個人的な経験にわたるので議事録に残さないでほしいとの御意向が示された部分を除き,他の部分については,特に公表に適さない内容に当たるものではなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を公表することとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。            (一同異議なし)   それでは,そのように取り扱わせていただきます。   本日は時間が延びて申し訳ありませんでしたけれども,御協力どうもありがとうございました。これで終了させていただきます。 -了- - 19 -