法制審議会 会社法制 (企業統治等関係)部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  平成29年 5月24日(水)   自 午後 1時30分                          至 午後 5時46分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  会社法制(企業統治等関係)の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神田部会長 それでは,予定した時間になりましたので,始めさせていただきます。法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会の第2回目の会議を開催させていただきます。   本日は,皆様方には大変お忙しいところをまた多数御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日でございますけれども,参考人の方々をお招きしておりますので,まず事務当局から御紹介をお願いいたします。 ○竹林幹事 本日は,部会長と御相談の上,振替機関,口座管理機関,株主名簿管理人のお立場の方々を参考人としてお招きしておりますので,御紹介させていただきます。   参考人の方々の御所属等は,議事次第に記載させていただいておりますけれども,本日は粟津様,田中様,島崎様,前田様,川島様の5名の方に参考人として御参加いただいております。   また,前回御欠席の稲垣委員,藤田委員は,本日が初めての御参加となります。   尾崎委員は,本日は遅れて御参加される御予定と承っております。   さらに,本日は金融庁総務企画局市場課市場業務室の錦織様,経済産業省経済産業局企業会計室から日置様にも関係官として御参加いただいております。   どうぞよろしくお願いいたします。 ○神田部会長 ありがとうございました。どうぞよろしくお願い申し上げます。   それでは,次に,本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○竹林幹事 本日は,お手元に配布資料目録,議事次第,部会資料2と3,参考資料7から9まで,川島参考人からの御提出資料,ウェブ開示によるみなし提供事項の範囲に関する文献の抜粋,株主提案権の行使事例に関する文献の抜粋,委員等名簿を配布させていただいておりますので,御確認ください。   不足のもの等ございましたらお申出いただければと存じます。   配布資料の御説明は,以上でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。   それでは,審議に入らせていただきたいと思います。   本日ですけれども,お手元の議事次第に記載させていただいていますが,テーマは二つになります。一つ目が,「株主総会資料の電子提供制度に関する論点の検討」です。二つ目が,「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備に関する論点の検討」ということになります。   そこで,まず一つ目の「株主総会資料の電子提供制度に関する論点の検討」の審議からお願いしたいと思います。   お手元の部会資料2について,まず事務当局に説明をしていただきまして,その後参考人の皆様に必要に応じてプレゼンテーション等をしていただきたいと思います。   それでは,事務当局の説明からお願いします。 ○邉関係官 それでは,部会資料2について御説明させていただきます。   部会資料2は,株主総会資料の電子提供制度に関する論点の検討のために作成したものでございます。   部会資料では,電子提供の方法として,株主総会資料をウェブサイトに掲載し,そのウェブサイトのアドレスを書面により通知するという大きく二つのステップにより株主総会資料が適法に提供されたものとする仕組みを提案しております。   「第1 基本的な仕組み」は,このような仕組みの具体的な内容について議論しようとするものでございまして,「1 株主総会資料のウェブサイトへの掲載」では,そのファーストステップである株主総会資料のウェブサイトへの掲載について提案しております。ここでは大きく3点について御提案しております。   一つ目は,ウェブサイトへの掲載期間を株主総会の狭義の招集の通知を発したときから株主総会の日以後3か月を経過する日までの間とすることです。   二つ目は,ウェブサイトへの情報の掲載の方法は,株主が掲載された情報を自己のパソコン等に保存したり,その情報の内容を閲覧したり,印刷することができるような方法でなければならないものとすることです。   三つ目は,ウェブサイトへ掲載する情報を(注)の①から⑦までに掲げる事項とすることです。この点について補足させていただきますと,現行法上,株主総会資料については,各種類ごとに株主に対して提供しなければならない場面というものがそれぞれ定められております。(注)の①から⑥までにおいては,電子提供制度を採用する場合であっても,どのような場面においてどのような株主総会資料を株主に対して提供しなければならないかという要件は基本的に維持するという考えに基づき,各種類ごとにウェブサイトへ掲載しなければならない要件を定めることとしております。   (注)の⑦は,いわゆるウェブ修正と言われる実務を参考に,ウェブサイトへ掲載した株主総会資料に修正すべき事項が生じた場合にはウェブサイト上で修正をすることができるようにする趣旨のものでございます。ただし,現行法上,ウェブ修正により修正をすることができる範囲には限界があるというふうに解されておりまして,この(注)の⑦に基づく修正につきましても同様に修正をすることができる範囲には限界があるものと解されるべきと考えております。   続きまして,4ページ目でございますが,「2 ウェブサイトのアドレス等の書面による通知」では,セカンドステップとなりますウェブサイトのアドレスの書面による通知の方法等について提案しております。ここでは,まず通知を現行法上の狭義の招集の通知によって行うものとすることを前提としております。その上で,(1)では記載事項を必要最小限のものとする観点から,アからカまでに限定することを提案しております。   なお,このように限定した場合であっても,現行法上の狭義の招集の通知の記載事項である会社法第298条第1項各号に掲げる事項につきましては,先ほどのウェブ掲載事項として(注)の①に含まれておりますので,ウェブサイトに掲載されるということになります。   (2)ではこのように記載事項が限定された狭義の招集の通知の発送期限を,現行法上の公開会社における期限よりも1週間あるいは2週間前倒しし,3週間前又は4週間前とすることを提案するものでございます。株主総会資料の印刷や郵送をする必要がなくなれば,会社はより早く株主に対して情報を提供することが可能になると思われますし,株主が議決権を行使するための検討期間がより長くなることを制度的に担保することが会社と株主の間のコミュニケーションの向上を図るという株主総会資料の電子提供制度の新設の趣旨にも合致するものと考えております。   続いて,6ページ目の「第2 書面交付請求」についてでございますが,ここでは株主が株式会社に対してウェブ掲載事項の全てを記載した書面の交付を請求することをA案又はB案のような仕組みで保障することについて提案しております。   A案は,株主が狭義の招集の通知を受け取った後にも書面交付請求をすることができるような仕組みとする案でございまして,(1)のとおり,書面交付請求の期限を狭義の招集の通知の発送期限の1週間後とし,(2)のとおり書面交付請求を受けた場合における会社の書面の発送期限をその更に1週間後とするものでございます。   まず,(1)について補足いたしますと,これは飽くまでも期限でございますので,株主がこれよりも前に,例えば,狭義の招集の通知を受け取る前の段階であっても,書面交付請求をすることができることを想定しております。   続いて,(2)について補足させていただきますと,書面を発送する期限の定め方としましては,このような一律のものとして定めるのではなくて,例えば「株主の書面交付請求があってから1週間以内に」というように,個別の請求ごとに定めるということも考えられるところでございます。もっとも,このように個別の請求ごとに期限を定める場合には事務の負担が大きくなる懸念があることから,そのような定め方はせずに,一律の期限を定めることとしております。   ただし,このような形で期限を一律に定めることにした結果,株主が例えば株主総会の1か月前や2か月前に書面交付請求をしたとしても,会社は株主総会の日の1週間前又は2週間前に送付すれば法律上は足りることとなっております。   (注)は,仮にA案を採用することとする場合に,この制度を利用するために定款の定めがあることを要しないものとすることについて皆さんに御議論いただくために記載しているものでございます。   続きまして,B案でございますが,株主の書面交付請求と狭義の招集の通知,これをA案のように関連付けずに,株主総会資料を書面で受領したいと考える株主は,あらかじめ株式会社に請求しておくものとする案でございます。請求というよりも登録というような表現の方がもしかするとイメージに沿うものかもしれませんが,いずれにせよ,(1)のとおり基準日を設定している場合には基準日までに書面を交付することを請求している株主がいる場合にその株主に対して狭義の招集の通知とともに書面を交付しなければならないものとし,その上で,(2)のとおり,この制度を利用するためには定款の定めを必要なものとし,また,定款の定めがある場合には必ずこの制度を利用しなければならないものとしております。   A案と異なりまして,B案では(2)のとおり定款の定めを必要なものとしておりますのは,B案の場合には株主が株主総会の狭義の招集の通知を受領したときにはもはや書面交付請求をすることができないことから,電子提供制度を利用するかどうかについてあらかじめ株主に周知しておく必要性が高いことを踏まえたものでございます。   B案の(注)は,仮にB案を採用することとする場合に,株主が書面交付請求をした旨を株主名簿及び振替口座簿の記載事項として管理するものとすべきかどうかについて問うものでございます。   株主名簿及び振替口座簿の記載事項とした場合には,書面交付請求があったかどうかについて会社が一元的に管理することができるというメリットがあると思われますが,他方で,現行の振替制度を前提とすると,保有する銘柄ごとに書面交付請求をすることができないことになるという指摘などもございます。   インターネットを利用することが困難な株主に銘柄ごとに書面交付請求の要否を決定させる必要性はないという考え方もあるかとは存じますが,常に保有銘柄全てに書面交付請求したものと取り扱われることになれば,会社が書面を交付しなければならなくなる場面が多くなることが予想されることにも留意する必要があるかと存じます。   なお,B案を採用した上で,株主が書面交付請求をした旨を株主名簿及び振替口座簿の記載事項にしないということも理論的には可能であろうと考えております。現行法上も,株主に係る情報の全てが株主名簿及び振替口座簿の記載事項となっているわけではございません。例えば,会社法第126条第1項に基づき,株主が株主名簿の住所とは異なる通知先を通知した場合におけるその通知先に関する情報などは,株主名簿や振替口座簿の記載事項ではないものの,株式会社としては管理しておかなければならない情報と考えられます。株主が書面交付請求をした旨につきましても,これと同様のものと取り扱う余地もあるのではないかと考えております。   続いて,10ページ目,補足説明4で触れておりますが,このような書面交付請求の対象となる書面の内容について補足させていただこうと思います。いわゆる現行法上のウェブ開示によるみなし提供が認められる事項については,書面交付請求の対象から外してもよいのではないかという考え方もあり得るところでございますが,お手元に別途お配りしておりますウェブ開示によるみなし提供事項の範囲に関する文献,Q238と1ページ目のところに書いてある資料の3ページ目,この改正後とあるものが現行法上のみなし提供事項の範囲でございますが,これを御覧いただければ分かるとおり,現行法上,このみなし提供事項の範囲というのはかなり多くございまして,これらを全て書面交付請求の対象から除外してしまいますと,結局書面交付請求をした株主が十分な情報を得られなくなるということにもなりかねません。   また,そもそもインターネットを利用することが困難な株主は,ウェブサイトに掲載された株主総会資料の全てについて閲覧することができませんので,いわゆる現行法上のみなし提供事項につきまして省略することはできないことをここでは御提案させていただいております。   また,10ページ目の(補足説明)の5では,書面交付請求に際する個別株主通知の要否について触れております。(補足説明)に記載のとおりでございますが,部会資料ではA案とB案のいずれの案を採用した場合であっても個別株主通知は不要と整理しております。   続いて,11ページ目「第3 株主総会資料の電子提供をすることの義務付け」では,一定の会社,例えば上場会社においてこの制度の利用を義務付けることについてどのように考えるかを皆様に御検討いただきたいと考えております。制度の利用を各会社の任意に委ねた場合には,株主としては保有する銘柄ごとに株主総会資料の提供を受ける方法が変わることとなったり,提供を受ける方法を逐一確認しなければならなくなるという指摘や,インターネットを利用した株主総会情報の提供を促進するという観点からは強制すべきではないかという指摘もあるところでございます。   続いて,「第4 任意に書面を提供することの制限」では,会社が任意に書面で情報を提供することを制限する規定は設けないものとすることを提案しております。会社が任意に書面で情報を提供する場面として,全ての株主に対して任意に情報を提供する場面と,特定の株主に対してのみ任意に情報を提供する場面,この2パターンが考えられるところでございますが,部会資料はそのいずれについても制限する規定は設けないものとすることを提案しております。   なお,この提案のとおりに制限する規定を設けなかったとしても,法律上の歯止めが全くないというわけではございません。全ての株主に対して任意に情報を提供する場面では,それが著しく不公正な態様である場合には,決議取消事由に該当することになろうかと思いますし,特定の株主に対してのみ任意に提供する場面では株主平等原則の趣旨等から許されない場合があると考えております。   続いて,13ページ,「第5 ウェブサイトへの掲載の調査及び掲載の中断」でございますが,現行法上の電子公告と同様に,調査制度や中断時の救済規定を設けることについて提案するものです。   1の調査制度につきましては,調査に要する費用を懸念する意見があるところかと存じますが,現行の電子公告調査の実務では,公告する情報の内容の分量によって調査費用の額が設定されているわけではなく,期間等によって設定されているものと理解しております。現行の電子公告調査における調査費用は自由競争に委ねられておりまして,電子提供制度における調査を設けた場合におけるその調査に要する費用についても同様に自由競争に委ねることが考えられますので,調査に要する費用の額を正確に予測することは性質上困難ではございますが,このような実務を考慮すれば調査に要する費用は必ずしも高額になるわけではないということを前提として御議論いただいてよいように思われます。   他方で,このような調査制度は,ウェブサイトに情報を掲載する義務の履行に瑕疵がないことを立証する手段を確保させるために,株主と会社双方にとって重要なものであると考えられますので,このような提案をさせていただいております。   駆け足となりましたが,部会資料2の御説明は以上となります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,参考人の方々から御発言を頂ければと思います。まず最初に,証券保管振替機構の粟津さんと田中さん,どうぞ,よろしくお願いいたします。 ○粟津参考人 ただ今,御紹介いただきました証券保管振替機構の粟津と申します。   本日は,企業統治等関係部会の場で弊社の制度を説明する貴重な機会を頂きまして,ありがとうございます。早速ですが,説明に入らせていただきます。   「株主総会資料の書面交付請求における振替口座簿・総株主通知の利用について」という資料を作ってまいりました。   まずはページをおめくりください。目次です。振替制度につきましては,実務に携わっていないとなじみにくいところもあるかと思いますので,初めに株式等振替制度の全体像を紹介させていただきまして,その後総株主通知の概要,そして仮に振替口座簿・株主情報を利用した場合の加入者情報の流れについて説明させていただき,最後に,振替制度の運営上の課題について説明させていただきます。   次のページに移ってください。項番1番,「株式等振替制度について」でございますが,資料の説明に入る前に,簡単に弊社証券保管振替機構とは何者かということについて触れさせていただきます。   証券保管振替機構,長いので保振機構と言わせていただきます。その保振機構でございますが,国債以外の有価証券である株式,短期社債,社債,投資信託等を取り扱う振替機関でございまして,資本市場の重要な基盤である決済インフラとして信頼性,利便性の高いサービスを提供することにより資本市場の機能向上に寄与して社会の発展に貢献することを企業理念としている会社でございます。   前置きはこのぐらいにして,資料の説明に入ります。(1)概要,その保振機構ですが,様々な制度を現在運営してございます。その中の一つが上場株式等を取り扱う株式等振替制度です。株式等についての権利ですとか,その移転,行使等につきまして「社債,株式等の振替に関する法律」に基づき,振替機関であります弊社,それから口座管理機関である証券会社等が備える振替口座簿において電子的に記録している制度になります。   振替口座簿とは,振替株式に係る権利を管理する法定帳簿のことで,株主名簿は発行会社が備えるものであるのに対しまして,振替口座簿は振替機関である弊社や口座管理機関である証券会社が備えるものになります。   なお,振替制度では法律上,発行会社は発行者,株主は加入者となりますので,本日の資料表記もそうさせていただいてございます。   続きまして,(2)関係者のイメージです。振替制度は階層構造の制度になってございまして,保振機構を頂点として振替機関に口座を有する直接口座管理機関,直接口座管理機関に口座を有する間接口座管理機関がそれぞれ口座を有する加入者の権利を管理する制度でございます。振替口座簿は加入者ごとに管理されますので,振替機関と全ての口座管理機関の振替口座簿を合わせることで全ての株主の権利情報を把握することが可能になる仕組みになってございます。   なお,法定帳簿である振替口座簿に記録されている事項として,代表的なものは加入者の氏名,住所,銘柄ごとの数量になります。   続きまして,右側(3)に規模として,先月末時点の数値を記載しております。株式の発行者が3,674社,その事務を取り扱っている株主名簿管理人が6社,口座管理機関は直接が171社で間接が120社ということで,口座管理機関として合計で約300社に参加いただいてございます。   あと,関係するデータ量としては,加入者口座,いわゆる株主の情報ですけれども,約2,860万でございます。その下に株主等通知用データと記載してございますが,こちらは名寄せ後の口座数でございます。株主によっては複数の口座管理機関に口座を開いているケースもあるかと思います。そういう場合は名寄せという形で一つに集めて管理しており,その場合の合計が1,904万件となってございます。   以上が株式等振替制度についてでございます。   ページをおめくりいただけますでしょうか。項番2番「総株主通知の概要」でございます。振替口座簿には株式の日々の権利異動に関する情報が記録されますが,振替機関と口座管理機関が備えるものでございますので,発行者が株主名簿を更新するためには,自身の銘柄を保有している全ての加入者の振替口座簿の情報を把握する仕組みが必要となります。その仕組みが総株主通知でございます。   概要を簡単に右側に記載してございます。読み上げさせていただきますと,1点目,株主名簿の更新は,総株主通知に基づいて行われます。2点目,総株主通知は,保振機構が発行者に対して,決算期日等の基準日時点における加入者の振替口座簿の記録事項を通知する手続です。3点目,総株主通知は,口座管理機関が保振機構に対して行う総株主報告に基づいて行っています。   今お話しした流れをざっとイメージ図にしたものが左側でございます。こちらですが,まず(1)として,口座管理機関は随時加入者情報を,図中では①になっていますが,保振機構に報告いただいております。保振機構は名寄せ後の結果を株主等通知用データとして管理してございます。   続きまして(2),口座管理機関は,銘柄ごとの基準日,これは決算期日等になりますが,加入者の株式数情報を保振機構へ報告いただいています。これが図中の②になります。   続きまして(3),保振機構は,名寄せ後の株主情報及び株式数情報を株主等通知用データに基づいて株主ごとに合算した株式数として発行者の方に③及び④として総株主通知としてお知らせしています。これが総株主通知の概要になります。   ちなみに,今年の3月末の株主確定日,大半が会社決算日だったのですが,そちらの例でお話しいたしますと,対象となる発行者数が2,680社ございました。口座管理機関は月初第2営業日,今年の場合ですと,4月4日までに株主確定日時点で株式を保有している株主,保有数量等の情報を総株主報告として保振機構へ通知頂きました。保振機構はそれらの総株主報告を夜間バッチ処理で株主ごとに合算して,総株主通知データとして月初第3営業日,今年の場合ですと4月5日に各発行者,具体的には株主名簿管理人に送信しています。そのデータ件数が今年の場合ですと4,370万件ございました。   ここでお伝えしたかったのは,株式等振替制度というのは多くの関係者の御協力の下,非常に大量のデータをコンピュータシステムとネットワークを利用して,短期間で,確実に処理することで成り立っている制度であるということでございます。この後,実務への影響といった話も出てまいりますので,その前提となる参考情報として御認識いただければ幸いでございます。     続きまして,ページをまたおめくりください。項番3番「振替口座簿・株主情報を利用する場合の加入者情報の流れ」ということで,こちらの資料は今御説明いたしました総株主通知の仕組みに基づき,仮に書面交付請求権を振替口座簿に記録し,総株主通知を利用して発行者に通知する場合に,どのような流れで情報が流れていくのかということをイメージして書いたものでございます。   こちらにつきましては幾つか前提を置いてございます。下から上へというデータの流れになりますが,まず,加入者Aさんは,口座管理機関の甲と乙という二つの口座管理機関に口座を開設していると仮定してございます。そして,このAさんはαとβという2銘柄を保有しているとします。一番上に発行者が二つございますが,こちらがAさんの保有している2銘柄に相当する発行者になります。   この状況の下で,Aさんが口座管理機関の甲に対して書面交付請求の手続をしたとします。口座管理機関甲を御覧いただきますと,甲が管理する振替口座簿のAさんの口座にはAさんの情報として左から氏名,住所といった項目がございます。本日はここに書面交付請求という欄を追加してございまして,書面交付請求があった旨を「あり」と記録することをイメージしてございます。一方,乙の方を御覧いただきますと,乙の方には書面交付請求の手続がなされておりませんので,書面交付請求は「なし」ということになってございます。   両者は保振機構に対して加入者情報を報告いただいておりますが,それが図では②と②´ということになりますので,Aさんの加入者情報の氏名,住所は同じになりますが,書面交付請求の有無は一致しないということになります。保振機構では報告された加入者情報を氏名,住所等で名寄せして,名寄せ後のAさんの株主としての情報を株主等通知用データとして管理してございますが,その際の簡単なイメージは図表のとおりです。   書面交付請求は異なる内容になるため,今回の場合はどうしましょうということでクエスチョンにしてございます。仮に「あり」を優先とするルールとした場合には,ここでは「あり?」と記載してございますが,実際にはどちらを優先するのか決める必要があると思います。   Aさんが保有しているαとβの基準日が到来しますと,保振機構からは発行者に対して総株主通知を行いますが,その際の株主情報,この場合ですと③になりますが,この③は株主等通知用データに記録されているAさんの情報をお知らせすることになります。その内容は,株主としての名寄せ後のAさんの内容となりますので,どちらの発行者にも同じ内容,今回のこの例ですと書面交付請求は「あり」として,お知らせすることになります。この点が資料の右に記載している留意点のaになります。   ここで,発行者αとβの株主名簿,それから口座管理機関甲と乙の振替口座簿を改めて見てみますと疑問が生じます。Aさんは銘柄αを甲と乙の両方で保有しておりますが,書面交付請求については振替口座簿間で不一致となります。また,銘柄βについては乙でしか持っていないため,Aさんがβについて書面交付請求をした記録はありませんが,βの株主名簿上は書面交付請求していることになります。このように振替口座簿と株主名簿の不整合が生じるのではないかというのが留意点のbになります。     続きまして,ページをおめくりいただけますでしょうか。項番4番「振替制度運営上の課題」として,最後に振替制度運営上の課題について御説明いたします。   弊社で認識している課題としては3点ございます。  まず,1点目でございますが,振替制度の根幹の仕組みを大幅に変更することに伴うコストとリスクでございます。振替口座簿の記録事項と総株主通知を代表とする振替口座簿記録事項に係る通知は,振替制度の根幹的な仕組みでございまして,システムも大変複雑な仕様となってございます。振替口座簿記録事項を通知しているデータに書面交付請求権の項目を追加するだけとの印象があるかもしれませんが,追加することにより,現在のシステム処理のロジックを変更する大規模な修正が必要となります。   あわせて,振替口座簿は個別株主通知,発行者からの情報提供請求,株主からの振替口座簿記録事項証明書の請求でも用いられておりますので,改修箇所が広範囲に及ぶ可能性もございます。また,これらの改修は開発コストの問題だけではなくて,複雑な仕様となっているシステムの根幹部分に手を入れることになりますので,それにより現在の振替制度のシステムに影響を及ぼすリスクも意識しなければいけません。振替口座簿は誰がどれだけの株式を保有しているかという極めて重要な権利関係を記録する唯一の手段であり,システム運営上,安全性・安定性を最優先すべきであると考えてございますので,弊社としてはシステム開発リスクを負う対応は避けた方が良いと考えてございます。   続きまして2点目でございます。口座管理機関全社におけるシステム対応・実務構築に伴うコストでございます。株主の振替口座簿を備えます口座管理機関におきましても,弊社同様にシステム対応が必要となります。これに加えまして,口座管理機関は株主の窓口としても書面交付請求の申出を受ける実務を構築することが必要となり,そのためのコストも発生することと思います。個社で対応コストは異なるかと思いますが,約300社の口座管理機関全体で発生するコストというのは恐らく多大なものになるのではないかと考えてございます。   1点目と2点目の課題でございますけれども,実務的なものではございますが,振替口座簿と総株主通知を利用して新たな制度を構築しようとすれば,なかなか簡易な仕組みで対応するというわけにはいかないかと思います。どうしても本格的,恒久的な対応とならざるを得ない面がありますので,書面交付請求が株主総会資料の電子的な提供のバックアップの位置付けであり,必ずしも将来にわたって活発な利用が推奨されるものではないという性質がもしあるのであれば,その手段として振替制度,特に振替口座簿を利用することが適切なのかどうかということについてはやはり慎重に検討いただく必要があると考えてございます。   最後になります。3点目は,関係する業界の合意形成でございます。振替制度は,繰り返しになりますが,弊社だけではなく証券会社,銀行等の口座管理機関,株主名簿管理人並びに発行者といった多くの関係者によって成り立っている制度でございます。制度全体としてどこが欠けても運営することはできません。例えば,加入者についての情報は必ず口座管理機関を窓口にして,ネットワークシステムを通じて弊社に伝達していただいてございます。仮に書面交付請求の通知について振替制度の利用を検討しようとする場合であっても,それぞれの関係者において必要な対応を行うことについて大筋で賛同が得られ,スキーム案について詳細な仕組みを協力して考えてみましょうという合意ができていることが重要でございますので,こうした合意が伴わなければ弊社としても詳細な検討を進めるのは難しいのではないかと認識してございます。   説明は以上でございます。   このほか,参考資料として6ページに振替口座簿記録事項に関する法令をピックアップして記載してございます。   また,7ページには振替口座簿を使用している業務がいろいろある旨先ほど説明させていただきましたが,その具体的な利用業務のイメージ図を記載してございます。いずれも参考情報として御覧いただければと思います。   保振機構からの資料説明は以上になります。御清聴ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは続きまして,みずほ信託銀行の川島さん,どうぞよろしくお願いいたします。 ○川島参考人 ただ今御紹介いただきましたみずほ信託銀行の川島でございます。   そういたしましたら,書面交付請求の仕組みにつきまして,株主名簿管理人として発行代理側の実務的観点から意見を述べさせていただきます。   資料の方は,「株主総会資料の電子提供制度に関する論点の検討について」というA4横のスケジュール表でございます。   まず,1枚目のスケジュール表に基づきまして,現行会社法下でのスケジュールで招集通知の発送,それから議決権行使関連の実務について御説明申し上げたいと思います。   このスケジュールは,3月末を議決権行使基準日としたスケジュールでございますが,スケジュールの番号を振っております2番のところで,先ほど機構様の方からも御説明いただきましたとおり,総株主通知で3月末時点の株主を確定させるためにこのデータの受信を我々はしております。これによりまして,株主数が確定されまして,各種印刷物の発注数が確定すると,こういった流れになります。   3番から6番,これは主に発行会社側の決算関連のタスクでございまして,スケジュール的には4月中旬から5月上旬に行われます。   それから,7番でございますけれども,封筒の校了・作成ですけれども,これは招集通知決議通知・配当書類ですね,これらを発送するために各発行会社固有の封筒を作成するものでございまして,4月下旬から5月中旬に行われております。5月上旬から中旬にかけまして,ナンバー9のところで取締役会で議案が確定すると。この議案の確定を受けまして,ナンバー11のところで招集通知・議決権行使書が校了されると,これが5月中旬ぐらいのスケジュールとなります。   校了されますと,ナンバー12から15にかけてですけれども,議決権行使書・招集通知の印刷・封入・発送,こういったスケジュールになっておりまして,これが5月中旬から6月上旬と,こういったスケジュールになっております。   一番下の欄に議決権行使書再発行というのを記載しておりますけれども,これはA案,後ほど出てきますA案の類似事務といたしまして参考までに記載したものでございます。これは現行やっておる事務でございますけれども,株主名簿管理人が紛失等の事由によって株主から個別の依頼に基づいて招集通知や議決権行使書を再作成,再発送しているものでございますけれども,スケジュール的には6月上旬から中旬ぐらいに今行われております。   この作業は発送する部材等,手でピックアップいたしまして,更新につきましても手作業で宛名印刷等行いまして,封入・封かん作業も全部手作業で今発送しているという事務でございます。我々現会長会社のみずほ信託銀行でも年間500件ほどしかやっていない事務でございます。   以上が現行制度下での招集通知発送,議決権行使関連の実務となります。   次のページで,これを踏まえまして,部会資料の書面交付請求のA案,B案で想定されるタスクとスケジュールを落としております。それぞれA案,B案共通のスケジュールとなっているものは黒塗りをしておりまして,それぞれスケジュールが異なるものについてはオレンジ色で線引きをしております。それぞれのメリット,デメリットを株主名簿管理人としてというところが中心となりますけれども,記載をしております。   それでは,A案の方ですけれども,これは交付請求,総会の2週間あるいは3週間前,交付を1週間あるいは2週間前とするA案でございますけれども,企業側のコスト面,それから書面交付対象者宛ての発送日程の実務面で,かなりスケジュール的には厳しい案になっているかなというふうに感じております。   具体的にメリット,デメリットのところでございますけれども,メリットのところは,スケジュール表のナンバー15,16のアクセス通知を受領してから短期間ではございますけれども,書面請求を行う時間が設けられておりまして,内容を踏まえて交付請求するかどうかを株主側は検討することができるのかなというところをメリットとして記載をしております。   デメリットの1のところでございますけれども,B案と比較いたしますと,発行会社にとってはコスト高,それから実務上のリスクもある制度と感じておりまして,上場会社へ義務付けをされない場合は普及しない可能性もあるのかなというふうに感じております。   具体的に申し上げますと,①のところでございますけれども,アクセス通知につきましては全株主に一度発送する必要がございますので,その上でウェブ掲載事項資料を別送するということになりますと,現状よりも印刷費,封筒代,郵送費など発送コストが高く付くという可能性があると思われます。   それから,②のところでございますが,書面請求者に対する資料・封筒の印刷につきましては事前に行う必要がございますので,余裕をみた通数をあらかじめ準備する必要があると。予測を超えて書面請求件数が増加いたしますと,短期間で追加印刷というのは非常に困難かなと思っておりまして,これが法定となりますと,会社側はどうしても保守的に多くの余丁を準備するものと思われます。   それから,③のところですが,印刷以外でも封入・発送も予想を大幅に超えますと短期間でこれを対応するというのはとても困難かなというふうに感じております。   それから,④のところでございますけれども,株主名簿管理人側の発送業務も,現状発行会社の総会が集中していることもございまして,短期間,ここで言うと最短では1週間になると思いますけれども,これで数万から数十万単位の書面請求事務をこなすというのは先ほどの再発行事務を前提とした現状の事務システム体制では不可能だと思っております。   ですので,事務システムの全面的な刷新が必要だというふうに感じておりますけれども,この全面的な刷新でも可能かどうかといったところのフィージビリティにつきましては現状も未検証という状況でございます。   それから,デメリットの2でございますけれども,ウェブ掲載事項資料の発送が1週間前となりますけれども,事実上書面行使には間に合わない可能性もあるというふうに感じております。2週間前であれば間に合うような可能性もありますけれども,これに伴って書面請求期限も1週間前倒しになりましょうし,それより前の工程も前倒ししないといけなくなると思われますけれども,アクセス通知の校了の前倒しには限界があるかなというふうに感じております。   以上がA案でございます。   続きまして,次のページのB案でございますが,これにつきましてはメリットの1ですけれども,発行会社は事前に書面請求対象者が絞り込めるということもございますので,A案に比べると無駄な発注を行う必要がないのかなと思っております。   それから,メリット2ですけれども,株主名簿管理人で発送する場合も,事前にこの発送準備に係る手配ができると。   それから,メリット3ですけれども,アクセス通知とウェブ掲載事項資料が同時に発送できますれば,A案に比べて大幅な資料提供の早期化が図れるかなと思いますので,株主が総会までに行使内容を検討する期間が十分に確保できると考えております。   デメリットでございますけれども,アクセス通知を受領した後,書面請求で切換えをやはり申し出たという株主についての対応を,発行会社は任意の判断にならざるを得ないと思われます。   それから,最後に,一番下の全体に係る意見のところでございますけれども,アクセス通知,現状,発送期限が3週間又は4週間前というふうにありますけれども,現行の決算取締役会の決算スケジュールによりますと,全ての上場会社が発送可能かどうかといったところは,現時点では不明かなと考えております。   以上で説明を終わりたいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,大和証券の島崎さんと前田さん,お願いいたします。 ○前田参考人 ただ今紹介にあずかりました大和証券の前田でございます。本日は意見陳述の場を設けていただき,誠にありがとうございました。よろしくお願いいたします。   お手元の日本証券業協会名の資料でございますが,こちらは協会さんの方で証券会社のいろいろな実務家の方にヒアリングをいたしましてその意見を踏まえて作成したものでございます。もちろんこの中には弊社の意見も取り入れております。   資料の性格は以上のとおりです。   本日は,法務省様より書面交付請求について御提案,二案されているかと思いますが,それらについて口座管理機関への影響等を御説明いたします。   1ページ目については,A案,B案共通の内容になります。まず,口座管理機関というものは,御承知のとおり,投資家様の株式売買等に伴う振替を行うための口座を開設し,振替業を行っているものでございます。   その一方で,株主総会に関する資料というものは,基本的に発行会社様が直接株主様に株主名簿に基づいて郵送等されております。また,議決権の行使に関しても,株主様が直接行使されているというふうになっておりまして,現状これらの手続については,口座管理機関である証券会社というのは全く関与していないという実態がございます。   こういう中で,今回の書面交付請求については,株主総会資料の電子提供というものの表裏一体と考えるとは思いますが,これらの手続に全く関与していない口座管理機関がこの書面交付請求のみに切り出して手続に関与するというのは,若干違和感なり不自然かと考えております。   1ページ目は以上です。   次,2ページ目をお願いします。こちらB案注記の振替口座簿の記録事項とする仕組みに関してとなります。先ほど保振機構さんの方からも御説明ありましたとおり,こちらは口座管理機関の方の影響を踏まえて御説明いたします。   まず,振替口座簿の記録事項となりますと,法務省さんからの資料にもありますとおり,加入者の口座ごとにどうしても区分管理せざるを得なくなると,銘柄ごとに管理できなくなるというのがございますので,今回,株主総会資料の電子提供制度を推進していく流れの中では,個別の発行会社様の推進の取組を阻害することがないよう,推進できるような仕組みが望ましいのではないかと思われます。   また,今回,電子提供が今後中心になっていくと思われている中で,書面交付請求というのが減少していくということを踏まえれば,振替口座簿の記録事項とするような大掛かりな仕組みを構築することは経済合理性の観点からもちょっと疑問であると考えております。   続きまして,最後3ページ目を御説明いたします。こちらは,A案において仮に口座管理機関が書面交付請求について手続に関与した場合の影響について記載しております。発行会社様,証券代行会社様も懸念されていると思いますけれども,多数の口座管理機関においても窓口に請求が来ると時間的にタイトであるというのは一緒でございます。こういった集中的に大量に作業が発生するという可能性は,口座管理機関においても同様の懸念がございます。   また,発行会社様における書面請求受付後の事務処理に加えて,口座管理機関から見ますと,更にその口座管理機関での受付,その後に発行会社又は証券代行会社様に手続を連携するというワンクッション入りますので,やはり更によりタイトになるということも口座管理機関が入ることによって懸念されているというところでございます。こちらについては,基準日の総株主通知による株主名簿という情報もございますので,それをベースに早めに対応していくことが有効かなと考えております。   簡単ではございますが,以上でございます。本日はありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   以上のほか,お手元には参考資料9を経産省から出していただいていると思いますが,この資料につきましては後ほど審議の中で言及あるいは御説明を適宜していただけると伺っております。   それでは,御審議をお願いしたいのですけれども,二つぐらいのパーツに分けて御議論をお願いできればと思います。部会資料2で申しますと,第1から第3までで一旦区切りたいと思います。第1が「基本的な仕組み」,第2が「書面交付請求」,第3が「株主総会資料の電子提供をすることの義務付け」,資料で言いますと,部会資料2の1ページ目から12ページの上から3行目まで,ここまでについて皆様方から御質問,御意見をお出しいただきたいと思います。   なお,関連して参考人の方々から今御説明のありました点についての御質問,御意見等も,併せて御発言いただければと思います。どなたからでも結構です。お願いします。 ○川島委員 ありがとうございます。   まず,株主総会資料の電子提供制度につきましては,株主の利便性向上,会社のコスト削減,省資源化,会社と株主の建設的な対話の促進など,数多くのメリットが期待できることから,積極的に進めるべきだと考えます。   その上で,部会資料2の「第1 基本的な仕組み」,「第2 書面交付請求」で示された内容は,制度の枠組みとして適切,妥当であると考えます。   なお,書面交付請求の仕組みとして例示されましたA案,B案のどちらが良いかについては,現時点で考えはまとまっておりませんが,検討に当たっては個人株主が受け取ることのできる情報の量やタイミングが今よりも後退しないこと,また,個人株主の議決権行使にマイナスの影響を与えないことを基本とする必要があると考えます。   また,7ページ,「(補足説明)1」の最終段落に事務負担への配慮について記述されていますが,その対策の一つとしまして,経済産業省の提出された資料,具体的には参考資料9の真ん中以降のところにシート番号で22というものがあります。これは何かと言いますと,米国における総会関連書類を書面で郵送する代行サービスが紹介をされております。こうした代行サービスが参考になると思いました。一言で言いますと,書面交付を会社の業務から切り離して専門会社が集中して効率的に業務を行うというのがポイントだと思います。   そこで,1点質問があるのですが,今の我が国の法律の下でこのようなサービスを行うことは可能なのか,あるいは業法や証券取引所の規則などの見直しが必要なのか,参考までに教えていただけたらと思います。   以上です。 ○神田部会長 ありがとうございました。御質問がありましたけれども。 ○竹林幹事 現在,業法等につきまして全ての規制を私どもで把握しているわけではございませんけれども,もし何か制度的な支障等が生じるのであれば,その点も含めて制度の見直し等ができるかどうかというのを検討していきたいと思っております。先ほどプレゼンテーションいただきました内容等も踏まえまして,どういった形でそういったサービス等を提供することが考えられるのかということについて御意見をいただければと考えております。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。 ○川島委員 ありがとうございます。 ○神田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○古本委員 ありがとうございます。まず,第1の「基本的な仕組み」の1の「総会資料のウェブサイトへの掲載」でございますけれども,これにつきましては,ウェブ掲載期間,ウェブサイトへの掲載の方法,ウェブ掲載事項,このいずれにつきましても御提案の内容に異論はございません。   一つ確認なのですけれども,「(注)ウェブ掲載事項」の②議決権行使書面につきまして,部会資料の補足説明の中で株主の氏名・名称と議決権の数について書かれてございますが,これをウェブ掲載事項とするのは当然現実的ではないということからウェブ掲載事項から除外しようとこういうことになってございますけれども,これは,株主の氏名・名称,議決権の数は飽くまで法定記載事項として残るものの,電子的にウェブ掲載するときには掲載不要とするということであって,書面で任意に議決権行使書面を送る場合はやはり法定の記載事項であるのかということをまず1点目として確認したいと思います。   続けてよろしいでしょうか。 ○神田部会長 はい,続けていただいて結構です。 ○古本委員 2の「ウェブサイトのアドレス等の書面による通知」についてでございますが,アクセス通知の記載内容,電子メール等による株主総会の招集の通知の発送,これにつきましては異論ございません。ただ,アクセス通知の発送期限でございますけれども,この点は,やはり慎重に御判断いただきたいと思います。特に第2の「書面交付請求」のB案にございますように,アクセス通知を発送するのと同時に書面を交付しなければならないということになりますと,書面請求が多数なされたときには,印刷・封入・発送といった手間は,結局,現状と大差ないということになります。それにもかかわらず,現状よりも1週間ないし2週間書面を前倒しして発送しなければならないということになってしまいますと,やはり実務的にかなり厳しい状況が想定されますので,ここは慎重に御判断いただければと思ってございます。   それからまた,現行制度の下でも,株主総会の招集通知の発送期限は,今でも総会の2週間前である中で多くの企業が自主的に前倒しを行っているという状況にございまして,これは電子化されても何ら変わるところはないと思います。したがって,特に前倒しを義務付けず現状どおりとした場合でも,今と同じように総会の2週間前には書面が発送されるということになりますので,株主の利便性という観点から見ましても,大きな影響はないのではないかと考えてございます。   それから,「第2 書面交付請求」のところにA案とB案がございますけれども,今,御説明ありましたが,私どもも大体同じような受け止めでございます。まずA案ですけれども,これは実務から見ますと相当難しい,このままでは賛成し難いという会員企業がほとんどでございます。A案のように株主総会前の一定期間までに書面交付請求権の行使が許されるとこういうことになりますと,株主数が多い会社にとりましてはスケジュール的にも極めてタイトで,発行会社におきましても恐らく信託銀行さんにおいても,現状よりも逆に管理が煩雑になってしまうのではないかという気がいたします。   A案では,書面交付請求権の行使期限から1週間以内に書面の発送を全て完了しなければならなくなるわけですけれども,請求してきた株主を確認して,間違いなく発送するというのは,実務的な負荷が大きく,発送ミスなどのトラブルも懸念されます。   また,先ほどもございましたが,事務コストも十分には低減しないという懸念があります。A案の場合,必要な書面の数を想定して事前に印刷しておくことになると思うのですけれども,人数ベースでは,株主のほとんどは個人株主になりますので,相当の数の請求が来ることを想定しておかざるを得ないと思います。結局,当面は大量の印刷物を用意するということになりまして,コスト低減効果は限定的ということになるのではないかと懸念してございます。   次に,B案ですけれども,これは発行会社の立場からいたしますと,A案と比較すれば十分検討に値すると思ってございます。実務が回るような制度ということになりますと,どうしてもやはり画一的・一律の事務処理ができること,これがポイントになると思います。そのためには,B案のように,基準日までに書面交付の請求をした株主に対してのみ書面を交付すれば良いとすることとし,かつ,部会資料の(注)にございますように,「株主名簿及び振替口座簿の記載事項又は記録事項」とするというのが現実的ではないかと思います。   もちろん,B案につきましても,先ほど来,御指摘ございましたように,本当に実務が回るのかというのは確認しておく必要があると思います。また,制度として更に改善するように御検討いただくべき点もあるのではないかと思います。   まず,実務の観点からですけれども,総株主通知事項に各株主による書面交付請求権の有無を加えることになりますが,そのためには,御紹介ありましたとおり,証券会社,保振,信託銀行においてシステムの改造が必要になります。それから,発行会社からなのか証券会社にやっていただくのか,何らかの形で全ての株主について書面請求の意思確認を行う必要があります。こうしたことが全体としてどの程度の負荷になるのかも含め,制度としてフィージブルであることを確認しておく必要があると思います。   制度面でB案について気になりますのは,定款変更を要件としている点でございます。これは恐らく上場会社につきましても電子提供制度は義務ではなく選択制であることを一旦前提とした上でこのように書かれていると理解いたしますけれども,電子化が進展する世の中の動きに合わせてこの新たな電子提供の制度を導入しようとするときに,電子化を選択する会社に定款変更といった重い要件を課すのが適当なのかという気がいたします。会社にとって電子提供によるメリット,これは書面請求の影響次第という部分もございますので,メリットを確実に見通せない部分というのが残ると思います。そうした中で,定款変更まで要求されますと,多くの会社は,では当面は様子を見ましょうということになりまして,電子化が進まないといったようなことにもなりかねないのではないかと思います。   定款変更を必要とする理由が新制度の導入の周知のためということであるのであれば,政府,発行会社,証券会社といった関係者が協力して周知に努めるなど定款変更によらない手段というのもあるかと思いますので,この点は御検討いただければと思います。   それから,もう一つ,A案,B案いずれの案におきましても,書面交付請求権がいわゆる強行法的に保障されることが前提となっていると理解いたしましたが,今申し上げましたように,この書面交付請求権への対応は,相当負荷が高くなる懸念もありますので,定款に規定することによりこの権利を排除することができるとする案も検討の対象に含めていただきたいと思います。   第3の「義務付け」につきましては,いろいろ申し上げましたけれども,招集通知と交付請求を受けた書面の送付期限,それから書面交付請求権の立て付け,これを含めまして実務的に十分対応可能な制度設計ということになるのであれば,上場会社にとりましては,一律に新制度を導入するということへの抵抗感は,それほど大きくないというふうに理解してございます。むしろ,十分に合理的かつ柔軟な制度になるよう,制度設計がなされるということであれば,上場会社にとっても一律導入となった方が望ましい面もあろうかと思います。仮に上場会社について導入を任意とした場合に,先ほど申し上げましたように,新制度の採用の要件として定款変更が必要になるということになりますと,当面様子を見ようということになりますので,そういった観点からも一律導入ということにして,新制度のメリットを会社サイドも株主サイドも受けられるようにする方が適当なのかもしれないと考えてございます。   ただし,何度も繰り返して恐縮ですけれども,義務付けということになりますと,十分に実務が回る立て付けであることが前提条件になりますので,今,申し上げたような点を御検討いただいて,そちらの方向で考えていただければというのが上場会社としての考えでございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。   最初の方に質問があったと思います。 ○竹林幹事 御質問がありました議決権行使書面を送付する場合ということでございますが,基本的にここで書かせていただいておりますのは,ウェブにアップするものについてでございまして,書面でお送りする場合については安定性といった観点からも法定の記載事項にしておくということを念頭に置いておりました。 ○古本委員 ありがとうございます。 ○神田部会長 よろしいでしょうか。   ほかにいかがでしょうか。 ○日置関係官 ありがとうございます。   まず,本日招集通知のこの電子提供制度について具体的な制度設計の議論が始まるということで,これは非常に我々としても喜ばしいことだと思っておりまして,この制度が是非企業に実際に使われるように,そして,その上で企業と株主との対話が促進される方向で制度設計がなされることをまずは期待していると,そのことを述べさせていただきます。   その上で,本日,参考資料として,先ほど川島委員からも御言及いただきましたけれども,株主総会プロセスの電子化等に関する研究会,こちらを昨年開催させていただいておりまして,昨年4月にこの電子提供制度に関する海外の制度,実務,そして海外へのシステムインフラなどに関しての情報収集などさせていただいております。こちら詳細を本日説明するというわけではございませんが,ディスカッションの参考にしていただければと思って机上に配布をお願いした次第でございます。   その上で,我々としてこの電子提供制度に期待する効果というものは,情報開示の充実効果だということをまずは強調させていただきたいと思います。株主の議案検討期間の確保,これに関しては既にコーポレートガバナンス・コードに基づいて上場企業の多くが早期ウェブ開示という形で招集通知を発送する前に既にウェブ開示をしているというのが現状でございます。そうした中では,議案の検討期間確保という効果は,一定程度確保されているということでございまして,これをあえて電子提供に大きくシフトさせていこうという趣旨はやはり紙面なりこの郵送,印刷のコストから解放されることでより情報提供しやすくなる,充実させやすくなるという効果があると期待しております。   それは,研究会の中でも,例えば,コーポレート・ガバナンス報告書,こちらに記載している事項を招集通知にも盛り込みたいなと思ったときに,どこまで盛り込めるのかということはやはりコストなり紙面との関係で考えざるを得ないと,そのような声もございます。   また,そういった充実した効果を別途ウェブで公開すればいいではないかというお話ももちろんあるのですが,これに関しましては,やはり株主に対して一つの情報をまとめ提供したいと,そのようなポリシーの会社さんもいらっしゃるということを現に聞いております。   そうした中では,今回充実させた情報を株主総会資料としてひとまとめにして提供すると,その上で電子提供というものが非常に効果があるのではないかと期待をしております。   更に加えまして,現在政府全体で会社法の書類,今回の総会資料でございます,こちらと有価証券報告書,こちらのより一層の共通化,一体化に向けて取り組んでいるところでございます。こちらについては前回金融庁さんからも言及があった次第でございますが,この今回の電子提供制度というものを使いやすい,そういった環境ができますと,例えば,企業が諸外国と同様に,有価証券報告書を総会資料として提供すると,そういったこともやりやすくなると期待しているところでございます。   そうした意味においても,今回の電子提供制度が整備される,使いやすいものになるということについて,我々が非常に重視しているということについて,まずは我々としての期待ということで述べさせていただきました。   その上で,今回の制度設計に関してでございますけれども,やはり研究会においても書面請求権,こちらについて非常にいろいろな,様々な議論がございました。今回の部会資料,法務省さんの提案という形では,書面請求権を法定化することが前提の内容となっておりますが,これに対してやはり企業の実務対応を考えますと慎重な意見も研究会でも多かったものですから,本日この場ではその意見なり懸念をちょっと紹介させていただければと思います。   まず,我々としての懸念といたしましては,この書面請求権が法定化された場合の効果でございます。個別に行われる書面請求に対応する実務リスクや法的リスク,特に総会決議の取消しリスクと完全に切り離されないということになります。これは重く受け止める必要があるのではないかと考えております。   先ほどから関係者の方からも言及がありましたように,総会が集中する時期に書面請求という個別対応を数少ない株主名簿管理人の方々で果たしてどこまで対応できるのか,諸外国で書面請求率が低いと言いますが,仮に6月総会企業について,株主の米国では0.2%程度を書面請求すると言われておりますが,この株主の0.2%を書面請求したとすると10万通ほどの個別対応が発生すると。先ほど15万通,それよりも大きければ15万通より更に多い個別対応が発生すると,そのような試算にもなります。その対応を100%ミスが許されないという緊張感の中で対応しきれるのかという点は,やはり慎重に考えざるを得ないのかなという感じはいたします。ミスがあっても裁量棄却に相当するだろうとか,であれば実務慣行をもうちょっと大らかにしてもいいのではないかとか,あと,総会日程をより分散させればいいのではないかと,いろいろな対応もあり得るのかもしれませんが,これを企業や株主名簿管理人にそうした対応を委ねているというような状況では問題はなかなか解決しないのではないかと,そのような感じがいたします。   更に申し上げますと,我々の研究会が書面交付請求の対応によって実務リスク,法的リスク,これを抱えるぐらいであれば従来どおり全て書面で提供した方が良いとの声もございました。こうした声を乗り越えて,制度の利用を促進するインセンティブとして機能する一つの要素が電子化によるコスト削減効果ということになろうかと思います。欧米の招集通知の参考書類,添付書類は200ページにも及ぶようなアニュアルレポートでございます。一方で,日本の招集通知と言いますのは60ページ,80ページというようなものでございまして,もちろん株主の数も考慮する必要はございますが,コスト削減という電子化を促進する推進力に関しては欧米よりも弱そうだなという点を気にしております。実際それがどう動くかというのは別として,我々としては気になるところでございます。   こうした点を踏まえますと,やはり書面請求というものを法定化するのかどうなのかという点について慎重に御議論いただけたらなと思うところでございます。この懸念ばかりを説明していても仕方はないのですが,本日の議論の参考まで,法令上書面交付請求権を手当てしない場合の理由,考え方として,研究会で提示された考え方をここでは御紹介させていただければと思います。   まず一つ目といたしましては,株主総会資料として提供する情報の性質とその提供する効果に着目した考え方でございます。書面であってもインターネット経由であれ,株主に何らかの情報を提供することで議決権行使の機会,こちらが与えられていることになるので,書面請求への対応を法令上規定せずともよいといった考え方でございます。   すなわち,今回の制度設計上,招集の通知,招集通知本体は書面で株主の元に届くという提案になってございます。これによってネットにアクセスできないデジタルデバイドな方々であったとしても,株主として議決権行使の機会は確保されていると言えるのではないか,それで十分なのではないかとの考え方になります。逆に,招集通知本体以外の資料,事業報告なり計算書類でございますが,そういった情報は書面で届いたからといってこれまで必ず株主がその情報を見ていたのか,それを見た上で議決権行使をしていたのかと,そうしたことまでは確保されているとは限らないのではないか。仮にこれが書面ではなく電子提供されていたとしても,そこのプロセスは同じと整理ができるのではないか,そのような考え方でございました。   これに関連する考え方といたしまして,ドイツの制度設計の言及もございました。ドイツでは招集の通知以外の関連情報に関してはウェブで開示しているのであれば書面請求権を認めていない,そのような立て付けになってございます。その背景としてはやはり情報提供した後の効果は異なるという点が挙げられるという指摘でございます。先ほどの文脈で言えば,議決権行使の機会を与える効果があるものと,そうとは限らないもの,という整理になろうかと思います。   加えまして,もしデジタルデバイドな方に配慮するというのであれば,現行の会社法で募集株式の通知に際して電子提供,電子公告でよいこととなっている点,有価証券報告書をEDINETで提供していればそれでよいとなっている点について,これに関しては書面交付請求権までは法定化されていない,これとの関係をどう考えるのかという御指摘もございました。招集通知以外の書類,今回電子提供の対象としている書類についても,募集株式に関する通知と同様に扱う余地もあるのではないかと,そのようなお話もあった次第でございます。   2点目に関しましては,定款変更でございます。総会決議や定款変更といった株主意思確認手続を経ているのであれば,書面交付請求権を法定化しなくてもよいのではないかといった意見でございます。   3点目でございますが,こちら先ほど申し上げましたが,やはり書面交付請求という個別対応が生じる事態そのものを避けるべきということでございまして,これは,まず現行制度は,株主の個別承諾により電子提供としますが,個別の書面請求権も認めていると,そのような制度でございます。この制度を採用している企業は,全体の2%程度,3%程度しか存在しないというこの現状を真摯に受け止める必要があるのではないか。すなわち,仮に個別承諾が不要な制度となったとしても,個別の書面請求の制度が付与される限りにおいて,株主ごとの個別対応や分別管理が必要となるために,電子化を進める動機が失われるのではないかと,そのような強い意見が提示された次第でございます。   こうした意味におきましては,今回提示されておりますB案でございます,定款変更という重い手続を経て電子提供制度を導入するということにもかかわらず,書面請求権も付いてくると,そういった制度設計は絶対に避けるべきだと,そのような強い御意見も出たというようなことでございます。   そのほか,電子提供を行う方が対話の充実といった面で株主全体にとっても望ましいという場面において,書面請求への対応を法令上定めるといった固い制度設計にしてしまうと,結果として株主の過剰な保障となり,電子化による効用を減殺しかねないのではないかとの指摘もあった次第でございます。   以上のように,ちょっと,その書面請求権の法定化に関して慎重な意見ばかりを御紹介した次第でございますが,これを法定化するにしても実務がワークする範囲内で認めると,そういった案も,これは研究会でも出てございますし,今回の法務省さんの提案の内容もそうした配慮というものは十分にしていただいているものだとも理解しております。   いずれにしましても,この制度が利用されるようになるためには,今のような指摘なり実態というものもちょっと踏まえていただきまして,使われる制度となる方向で議論が進めばなと願うばかりでございます。   長くなりましたが,以上でございます。ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○小林委員 ありがとうございます。小林でございます。   私ども実務の立場から,多少規模の小さい会社のところまで対象として考えたときの部分も付け加えさせていただいての意見ということになります。   先ほど古本委員がおっしゃられたように,大きいところでは,先ほどの御意見と同じようなところが多いのですが,まず株主総会資料のウェブサイトの掲載というところにこれを主眼に置いて提供されるという仕組みそのものには,特段異論はございません。また,次に招集の通知の記載事項という2番のところも特に異論はありません。   招集通知の発送期限につきましては,先ほどのお話もありましたけれども,この今の法定期限が2週間というところが早めにということではあるのですけれども,やはり今の実務の中で,特に3月末決算で6月総会を行う会社の中で6月末に集中せずに,前倒しで総会をやってみようという会社が少しずつ増えている中で,実際の決算作業からこの総会の招集通知を送るまでの実際の期間を考えますと,今の2週間が4週前までということになると結果的にまた後ろに遅らせなければならないというようなことになると,そこの分散化が逆にできなくなる事態も全くないとは言えないと考えておりまして,この期間についてはやはり慎重に考えていただきたいというところがございます。   それともう一つ,資料の中では電子メールによる株主総会の招集の通知の発送というところが備考のところにございましたが,これは中小のところからの一つは質問ということもございます。今,電子メール等による株主総会の招集の通知の発送は可能ということで考えられているということでございますが,現行の規定は,電子提供ではなく,「電磁的方法」というようなそういう言い方になっているところなのですけれども,この現行の法定の規定ですと,株主の個別の承諾を取れば,招集通知を電磁的に送れば,参考資料等も電磁的に送れることになっています。メールでも,例えば,今のウェブサイトの方法でも,例えば,DVDもいいというようなそういうふうな理解でございますが,そうなりますと,今回の電子提供の仕組みを入れることによってこの電磁的方法がなくなるということになると,むしろ,今,簡便にこのような仕様を行っている企業にとっては,逆に非常に固い制度ができて,簡便な方法が使えなくなるおそれがあるので,ここの部分の今の現行の電磁的方法というのが残ることを,我々としては,もちろん前提で考えたいところですが,そこをどう考えられているかというところについて質問でございます。   それから,書面交付請求については,いろいろな御意見があるとおりで,私どもとしても書面交付が法定されるというところは非常に厳しいのかなという意見も結構強くて,もちろん定款変更ということになれば,なおさらということでございます。   もう一つ,大本,遡って恐縮ですけれども,電子提供というところは,例えば,上場企業に義務付けということであっても,大きい会社はそういうこともあるのかもしれないのですけれども,逆にそれほど規模が大きくない企業の場合,全部に電子提供させる,そういう意味での必要性というのはどのぐらいあるのかなということと,株主数との見合いで,むしろ全部別に郵送,書面提供しても構わない,むしろその方が簡便であるというふうに認識する企業も全くないというよりも,それなりの数いるのではないかなというそういう印象を持っております。   もちろん,株主数が多い大規模な会社であっても,むしろ小口株主に対しては始めからデフォルトで全部送った方がむしろ簡便だし,そうさせてほしいという企業にとっては逆に言うとそれは自由にやってください,でも電子提供の仕組みも全部に義務付けという話になると二重投資になるのかなというところもあって,その辺の考え方についてはどうだろうかということを意見としては述べさせていただきたいというところがございます。   A案,B案のところ,提供の仕組みにつきましては,A案ですとやはりなかなか実務がワークしないだろうなというところは,私どもも共通の思いでございます。B案につきましても先ほどお話がございましたように,株主ごとに名簿管理をするというようなところでの企業の負担が非常に大きくなるような仕組みですとやはり現実的ではないということもあって,法定であると厳しいので,そこの部分をどういうふうに考えるか非常に難しいところですけれども,例えば,先ほど古本委員がおっしゃったように,定款変更をくぐってでも,例えば,書面提供を行わないことが可能な設計というのも考えられるのではないかなというのが私どもの印象でございます。   私からは以上でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   質問があったと思います。 ○竹林幹事 電磁的方法を残すかどうかという点でございますが,この資料は残すという前提で作らせていただいておりまして,株主総会の狭義の招集の通知,すなわちアクセス通知と言われるようなものも電磁的方法で提供できるということを考えております。 ○小林委員 ありがとうございます。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。   ほかにいかがでしょうか。 ○稲垣委員 稲垣と言います。本日から参加させていただきます。事業会社に所属していますので,そういう観点でのお話になると思います。   全体としての方針としてですけれども,電子提供制度を進めていくということについては,これは私としても賛成をしたいと思います。ただ,この点で,確かにコストの面というふうにおっしゃっていましたけれども,上場会社の場合,大きなコストが株主総会資料の印刷送付関係で掛かっているのは事実ですけれども,それが果たして莫大なものかというと必ずしもそうでもないというのは実情だと思います。ですから,やはり株主の皆様にとって利便性が高まるという観点で考えていくべきだと思っております。   また,実務に過度な負担が掛からないという観点におきましては,恐らく一番大事なことは,初年度の見通しが付きにくいということに尽きるかなと思います。印刷物の準備にしましても,大体1年やればどのぐらいの請求が来るかとかそういったことが分かりますので,初年度のところの見込みが難しいのではないかなと思います。   電子提供につきましては,時代の流れとしては,当然の方向だと思いますが,ただ,多くの上場企業の場合,機関投資家等の方々に保有されている株式数が圧倒的で,ただ,人数としましては個人株主の方が多いと。誰に向けてこういった利便性を考えるかということが大事でありまして,また,個人株主の方々を見ましても,株主総会にいらっしゃる方々を見ますと,かなり御高齢な方が多いというのも事実でありまして,株式の保有を実際にしている方でも,割と年齢の高い人が多いのではないかと思います。私もちょっと調べてみたいと思います。   そうしますと,電子提供というのが本当に利便性を一時的に高めるものかどうかというのも,やはり少し慎重に考えることが必要かなと思います。ですから,先ほど言いましたように,事業会社としましては,仮にこういったものが制度化されても,会社によっては,先ほど御意見もありましたように,郵送の形でしばらく続けるということも考えざるを得ないということも出てくるのかなというふうには思っております。   私の意見は以上でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○沖委員 ありがとうございます。   電子提供制度は,書面提供のコストを削減することによって情報提供の量と速度を増やすことと,そのことを通じて総会のプロセスを通じた会社と株主の対話を促進するというものだと理解しております。   他方で,現行の会社法では,電子公告の採用に定款変更を要件とするとか,通知の電磁的提供に株主の承諾を要件とする,あるいは承諾した株主にも総会資料の電磁的提供に当たり書面請求権を保障するなど,株主の保護を行っております。   今回,書面提供を電子提供に原則的に転換するに当たりましても,このような現行法の立て付けや株主保護との整合性は問われることになると思います。そうしますと,電子提供制度というのは,その内容も相当程度選択肢がありますので,基本的な合理的な制度設計を標準型として決めて,これを各社の機関決定で採用するということになりますし,この基本的な標準型の中には,株主の書面請求権を基本的に保障するということ,これは必要なことだと考えております。この機関決定は定款自治ということで,定款変更によるということになるかと思います。   問題は,書面請求権への対応なのでありますけれども,これは株主の便宜であるとか,会社の側の対応の体制を考えますと,やはり議決権行使の基準日までに行う必要があることと,これを株主名簿の記載事項にするということが妥当ではないかと思います。   その上で,上場企業につきましては,電子提供のメリットが大きいですし,複数の銘柄を保有する株主から見た分かりやすさということから考えまして,利用を強制するということが妥当ではないかと思います。これについては,株券電子化の際に株券の廃止の定款変更をみなしで行うという措置が採られたかと思いますが,これと同じような措置は検討に値すると思います。   そこで,上場企業のように多数の株主がいる会社で書面請求の事務処理を時間的制約の中で円滑に行うためにどうするかということですけれども,これは部会資料に案として出されておりますように,振替口座簿の記載事項として,株主は,その記載によって書面請求権を行使するということが,実際上は,唯一の合理的で可能な選択肢ではないかと思われるのであります。そういう意味で,先ほど来,日本証券業協会等の方々から書面請求を振替口座簿の記載事項とすることについて,膨大なコストが掛かることと,経済的合理性や配分が疑問であるという御指摘がありましたし,それは理解できるのであります。ただ,少なくとも初期は相当程度の書面請求が出されることが予想されますし,これを円滑に処理しながら,将来,電子化が進んだ場合には,かなりのコスト削減効果が得られるということですから,そのための合理的なコストと位置付けることも考えられるかと思いますので,是非前向きな検討をお願いしたいと思います。   以上申しましたような構成を採った場合の深刻な問題点としましては,書面請求権が保障されて,これを非常に容易に行使できるということから,大量の書面請求が出てしまうということだと思います。書面請求権は,本来デジタルデバイドの問題を抱えた高齢者の方々等によって行使されれば,非常にいいのでありますが,それ以外に取りあえず行使すると,もらっておこうという方も相当数出てしまうと,この状態が高止まりしてしまいますとせっかく大きなコストをかけて電子化をしたのに,その効果が十分に得られないということが心配されるのであります。   そこで,今回の電子提供制度の採用に当たっては,株主の側が分かりやすく行使できる書面請求の制度を保障すると同時に,これを将来どうやって減らしていくかということも併せて検討する必要があると思いますので,よろしくお願いいたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○梅野幹事 やはり私の考えとしましても,費用削減,早期の情報提供あるいはコミュニケーションの質の向上という観点から,時代の趨勢として,電子化は在るべき方向だろうという点に関しては,皆様の意見と一致するところでございます。   ただし,強調させていただきたいのは,デジタルデバイドの問題をどう捉えるかという点です。高齢者あるいはコンピューター・リテラシーのない株主の方々に不利益を及ぼさないということが非常に大切であろうと思っています。   部会資料2,7ページにインターネットの利用率の統計が記載されていますけれども,先回も申し上げましたが,このインターネットの利用者の中には通常のモバイルフォンを利用されているだけの方も多分多く含まれていて,そういった方々がモバイルフォンを通じて情報にどの程度アクセスできるのかという点については,疑問があるだろうと思っています。ウェブのアドレスを通知されたとしても,議決権行使に必要な情報源にきちんとアクセスした上,必要な情報に到達することができるということ,あるいは必要な情報をプリントアウトできる環境があるということというのは,この問題を考えていく上で大事だろうと思います。私などもそうですが,なかなか電子情報の画面を見るだけでは,情報の処理であるとか,内容の理解ができないということも多いので,プリントアウトができるような環境があるかどうかということにも配慮が必要だという点は強調させていただきたいと思います。   また,私ども実務家として株主総会に立ち会う機会が多くございますけれども,高齢者の方々の出席者も多い。こういった高齢者の方々,あるいは貯蓄から投資へという流れの中で資産をお持ちの方々を重視する必要があるだろうと思います。そういった意味で,希望者には現在の実務とは余り変わらない形で株主総会情報の入手を可能とする書面交付請求権というのは,必須なものではないか。これは私見にわたる部分ではございますけれども,書面交付請求権を定款変更によって奪っていいものかどうかという点については,よく御審議いただきたいと思うところでございます。   部会資料2の11ページを見ますと,書面交付請求は,株主総会資料の提供を受ける方法に関する株主の権利であり,株主総会における議決権行使に密接に関連する権利だと記載されていますが,この位置付けは,非常に重要なポイントであろうと思っています。ただし,もちろんのことながら,デジタルデバイドの状況というのも時代に応じて変わっていくものなので,制度として,沖委員からも言及がありましたけれども,柔軟性を残しておくといったことはあり得るのだろうと思っております。   部会資料2の6頁以降ですが,書面交付請求権について,A案,B案が提示されておりますが,私が拝見した限り,保振機構の方からはいろいろコメントがございましたけれども,B案というのが優れているのかなという考えでおります。B案の場合,個別銘柄ごとの選択ができないという点が指摘されておりますけれども,その点については,現在も複数の株式を保有されている方々のところには招集通知が一斉に来るという状況であり,それと変わる状況をもたらすものではないので,どの程度その点を重視すべきかと思っております。   ただし,B案によった上でも,制度施行後一定程度の年数が経過した時点以降になるかと思いますけれども,その時点におけるデジタルデバイドの状況等を鑑み,定期的あるいは何年かに一度といったことでもよいと思うのですけれども,どこが主体となって行うかは別として,書面交付請求をしている株主の意思を確認して,もういらない,書面を受け取る必要はないという株主,あるいは回答がない株主については,書面交付の対象から外していくといったような形で,徐々に書面交付請求の数を減らしていくといったような手当というのは,あり得るのかなというように個人的には考えているところです。   最後の電子提供の義務付けですけれども,株主から見て分かりやすい制度ということで上場会社が一律に採用する,あるいは定款のみなし変更で対応をするといったことは,検討に値するのではないかと思っている次第でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかに。 ○青委員 私からは,取引所としての観点から述べさせていただきます。   まず,招集通知の電子提供を進めるということにつきましては,政府の日本再興戦略においても取り上げられておりますし,企業価値の向上,中長期的投資の促進を目指して,株主と会社の間での建設的な対話の基礎を整えていくため,この改正を進めていくことは大変重要なことであると考えております。   その際,先ほど,情報の充実という観点と,議案の検討・対応の期間の確保という観点の二つの観点のうちの,期間の確保については現在の実務界の努力による早期開示で十分ではないかという話もございましたけれども,株主との十分な対話の期間が確保されているかという観点からいきますと,現状でも必ずしも十分ではないという声も,投資家から,特に海外の方から出ております。株主総会資料のウェブ掲載について,例えば,ACGA等からは4週間程度前に必要ではないかという御意見も頂いているところでございます。ただ一方で,現実に対応ができるかということもあるかと思いますので,現実の状況も踏まえながら,できる限りウェブ掲載で総会の資料を株主が見ることができるタイミングを,可能な限りどこまで前倒しできるかという観点も重要ではないかと考えております。   それから,第3の電子提供の義務付けの要否というところでございますけれども,この点については,先ほどからも御意見が出ておりますとおり,電子提供を進めていくということで考えますと,定款変更等の手続を企業に課すというのは,なかなかそこのハードルを越えるのが難しい点もあるかと思いますので,ここは義務付けという方向で一斉に移行するのが良いのではないかと考えます。株主から見ても各社ごとに対応が異なるというのは非常に分かりにくい点もございますので,一律で移行するという形が良いのではないかと考えております。   ただ,先ほどからほかの方からも御意見が出ておりますとおり,書面交付請求については,デジタルデバイドの方を保護する観点からいって,どういう形でやるのか,どの程度のレベルで,今と全く同じようなことを求める必要があるのかどうかというところについては,ある程度柔軟に考える余地はあるかもしれないと思っておりますが,電子的な情報を利用できない方々が何らかの方法で情報を利用できるという手段を確保すること自体は,重要だと考える次第でございます。   その際,先ほどのA案,B案いずれも難しい点があるというふうに御紹介がありましたとおり,書面請求の対応については十分に対応できるという実務を確立するということが必要でしょうし,仮に各社が任意で選択してもよいということにするとしても,実務上もワークするものでなければ,絵に描いた餅にすぎないということになるおそれもありますので,できる限り,実際にワークするものを何らかの工夫によって作り上げた上で,一斉適用するということが一番良い方向感ではないかと考える次第です。   それから,書面請求の仕組みについて,様々な難しい点があるかと思いますので,最低限どういった点を確保すべきかということと,どういった点は柔軟にしてよいかということを,慎重に,かつ,大胆に議論していくということで考えるのが適切ではないかと考える次第です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○柳澤委員 発言の機会を頂きまして,ありがとうございます。   基本的な仕組みに関して3点,株主総会資料のウェブサイトへの掲載,ウェブサイトのアドレス等の書面による通知,株主総会資料の電子提供をすることの義務付けにつきまして,投資家の観点からコメントをさせていただければと思います。   まず,株主総会資料のウェブサイトへの掲載につきましては,ウェブ掲載期間の考え方になりますが,投資家として注視しておきたいのは,株主総会後いつまで資料が掲載されているかというよりも,株主総会前の段階でいつウェブサイトに掲載されるのか,それもどのぐらい早いタイミングで掲載されるのかという点になります。少なくとも招集通知を受け取った時点で確実に株主総会資料の閲覧が可能になっているというためには,招集通知を発した時には,ウェブサイトに掲載されている必要があると思いますので,法令上の設定の仕方としては発した時がウェブ掲載の開始時期として妥当と考えております。   その上で,議決権行使を実施するに際して,総会議案の検討に要する期間を少しでも確保しておきたいという観点からは,法令上のウェブ掲載の開始要件を充足するにとどまらず,可能な限り早期のウェブ開示が進展していくことを望みたいと考えております。   なお,この点に関しては,コーポレートガバナンス・コードにおきまして,「上場会社は,株主が総会議案の十分な検討期間を確保することができるよう,招集通知に記載する情報の正確性を担保しつつその早期発送に努めるべきであり,また,招集通知に記載する情報は,株主総会の招集に係る取締役会決議から招集通知を発送するまでの間に,TDnetや自社のウェブサイトにより電子的に公表すべきである」とされています。   また,本日配布されております「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」の参考資料1(3),スライド7ページに記載されていますが,コーポレートガバナンス・コードの導入を機に,早期ウェブ開示を実施する企業が増加していることが示されております。記載データによりますと,2015年6月総会の東証上場会社2,352社のうち,約33%に当たる769社が早期ウェブ開示を実施している状況にあります。なお,招集通知発送日から発送前開示までの日数を見ますと,平均は2.7営業日となっておりますが,1営業日前に開示した企業が全体の36.5%と構成比としては最も高い割合を占め,1営業日前から5営業日前に開示した企業で全体の約94%を占めるといった状況を確認しておきたいと思います。   次に,ウェブサイトのアドレス等の書面による通知に関してですが,基本的にアクセス通知の機能を招集通知の記載で担う設計になっていると理解しております。株主総会の招集通知に記載する事項に関しましては,ウェブに総会資料が掲載されることを踏まえて考えれば,必要不可欠なものに絞り込んで事項を限定していくことが妥当ではないかと思います。   株主総会資料の電子提供によって期待される時間的かつ費用的な削減メリットを損なうことのないよう記載事項を整理し,印刷や郵送のコストが過大にならない方向で取り決めることが肝要と考えております。   招集通知の発送期限ですが,株主総会資料を電子提供する場合には,招集通知の発送に際して株主総会資料の印刷や郵送の準備をしておく必要がなくなりますので,従来,株主総会資料の校了から印刷までに掛かっていた期間については,相当程度前倒しが可能になるものと見ております。この期間につきましては,上場会社では実務上通常で10日から2週間程度を要するとの指摘がございますので,法令上の発送期限としましては,現行法上の期限である株主総会の2週間前から少なくとも1週間程度の前倒しは容易に可能ではないかと考えております。   投資家サイドといたしまして,議決権行使の集中期において,可能な限り総会議案への検討に要する期間を確保していきたいという観点に立って考えますと,部会資料の選択肢の中では4週間前までという提案の方が望ましいものと受け止めております。例えば,議案検討期間が一定程度拡大するような状況が定着していけば,必要に応じて企業との対話の機会を拡充して,議案を精査するといった取組についても,これまで以上に踏み込んで実施することが可能になるのではないかと思っています。   しかしながら,実際にどの程度まで前倒しが可能なのかは個々の企業の事務対応との兼ね合いになりますし,ある程度のばらつきも想定されますので,法令上の発送期限として定めるということになりますと,2週間前倒しとなる4週間前までという設定では,企業によっては対応困難なレベルとなる可能性も出てくるといった認識も持っております。   したがいまして,飽くまで招集通知の発送期限の規律という点では比較的対応がしやすいと想定される1週間前の前倒しで取決めを行い,結果として株主総会日の3週間前までに発送しなければならないとするのが選択肢としては,妥当な設定なのではないかという考え方をしております。   その上で,企業側の任意の御対応という範疇にはなりますが,法令上の期限に対して,実務面においては,より早期の招集通知発送に努めていただければというように考えております。   さらに,それに付随することですが,株主総会資料につきましては実務上難しい面もあるかもしれませんが,招集通知の発送前に可能な限り早期の段階でウェブサイトへの掲載ができるよう,引き続き検討していただければと思っております。   仮にですが,招集通知の発送期限に関して,法令上の期限が1週間前倒しされた場合におきましても,改めてそこを起点として早期開示への企業側の取組がこれまでどおりのスタンスで継続し,可能な限りにおいて更に進展していくことを投資家として望んでおきたいと考えております。   最後に,上場企業に対する株主総会資料の電子提供の義務付けにつきまして,簡単にコメントさせていただきます。部会資料で紹介された指摘にもあるとおり,インターネットを利用した株主総会情報の提供を促進し,株式会社と株主との間のコミュニケーションの質の向上を図る観点からは,一定の株式会社には株主総会資料の電子提供を利用することを強制すべきとの見方に関しては,基本的に同じ見解を持っておりますので,提案に沿って上場企業への義務付けを行う方向で検討を進めていただければと考えております。   仮に上場企業全体に電子提供の義務付けがなされるとすれば,情報利用者として一様にアクセスや検索がしやすくなるとともに,情報ベンダー等を通して様々なデータが体系化されて提供される可能性も高まり,効率的に分析,比較等ができる環境が一段と整備されていくのではないかと認識しております。企業側におきましても,株主総会資料に関して情報提供面での工夫が更に進んでいくものと想定されますし,文字情報以外の発信,例えば,経営陣や役員候補者からの動画によるメッセージ配信といった情報提供や,株主総会のインターネット中継や質問対応等にも活用が進んでいくことも考えられます。電子化研究会の提言におきましても,「対話型株主総会プロセス」を実現していくには,インターネットを最大限活用することが有益であるとされており,株主総会を含めた対話プロセス全体を通じて情報提供の取組が進めば,企業と株主との対話が一層充実したものになるとの期待が示されています。   こうしたインターネット利用の効果が上場企業全体に浸透していき,株主総会プロセスにおける企業と投資家の対話,コミュニケーションの充実が進展していくことが望ましい方向性と捉えておりますので,そのための基盤として上場企業に対する株主総会資料の電子提供の義務付けが重要な役割を担うものと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○前田委員 書面交付請求の制度は,言うまでもなく,実務の負担には十分配慮しなければならないと思いますけれども,やはり株主に意味のある議決権行使の機会を与えるために,不可欠ではないかと私は思います。   そして,挙げていただいているA案,B案,それぞれのメリット,デメリットをこれまでお聞きした限りでは,B案の方が実務にとっての負担が小さいという点で優れているのではないかと思います。   A案を採るメリットは,結局,株主が議題を見てから書面交付請求をするかどうかを選択できるという点なのだと思いますけれども,そのような選択まで認める必要性は乏しいのではないか。つまり,株主は,自分がインターネットを使えないと判断すれば,早めに書面交付請求しておけばいいのであって,この議題であれば書面はいらないと思ったのに書面が送られてきてしまうというような不利益まで考慮する必要はないのではないかと思います。   あとそれから,義務付けについてなのですけれども,この電子提供の制度ができれば,上場会社は,特に義務付けられなくてもコスト削減のために多くは自らこれを採用するのではないかと推測はするのですけれども,制度の分かりやすさという点から私も義務付けがいいのではないかという感触を持っております。もし義務付けがされますと,今の書面交付請求にしましても,上場会社の株式を取得した株主であれば,もういちいち定款を確認しなくても電子提供がされることが分かり,早期に書面交付請求することが容易になると思います。   そもそもの制度趣旨に照らしましても,電子提供がされれば株主の側にも早期に充実した内容の情報を入手できるという利点が挙げられているところであり,上場会社であれば義務付けにも対応できるでしょうから,上場会社には義務付けを考えていいように思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○三瓶委員 ありがとうございます。   私は大きく2点申し上げたいと思います。一つ目は,議決権行使の実務からの観点です。特に外国人株主というような立場に近いのではないかなということで,例えば,弊社の場合は機関投資家として議決権行使の実務をするときに,全て社内では英語でやります。そうすると,その英語の環境で議決権行使をする株主と同じ状況だと思いますが,一層検討する時間がタイトになってきます。その辺を踏まえてお話しさせていただきたい。もう一つは,かなり大きな観点ですけれども,先ほどからたくさん出ているA案,B案のこととか,電子提供の任意か又は法的強制かというところについて,大きなお話をさせていただきたいと思っております。   1点目の実務の方からなのですが,結論から申し上げますと,招集通知の発送期限については,提案されている中ではかなり積極的な「4週間前まで」という意見に賛成です。それと併せて,書面請求は3週間前まで,そして,それに対する交付を2週間前ということを考えています。   これが可能かどうかというのは,先ほど冒頭で実務的な面のお話がありましたが,一方で投資家の観点で見ていきますと,3月末の会社を想定して,基準日から株主総会まで法的には約91日あるわけですけれども,その間のスケジュール感を見ていくと,まず決算発表が基準日から45日でなされるわけですね,決算短信。今現状でもほぼ100%に近い会社がそういうふうになっていますが,例外的に50日超というのがあります。この状況で,そういう意味では次に現状で招集通知がどのぐらいに送られているかというと,基準日から計算すると67日目ぐらいです。これはいろいろな資料によって株主総会から手前21日(3週間前)とか28日(4週間前)とかいろいろなのがありますけれども,私のところでは,少しコンサバに計算して,全株懇さんの資料を基に株主総会から平均19日前(基準日から67日目)というふうに計算しています。そうすると,決算発表があって,それに伴って決算の取締役会があって,その取締役会で株主総会についての決議をしますが,実際に招集通知が発送されるのが基準日から67日目,決算発表からこの間約3週間です。全株懇さんの記述では二,三週間程度とあります。こちらでの会議資料では通常10日から2週間程度というふうにありましたが,この二,三週間が先ほどの招集通知を準備するための校了とか印刷,封入のために,正にそのぐらいの間が空いているということが確認できます。   我々議決権行使の実務が始まるのは,招集通知を受け取ってからですが,そこから,実は,例えば,日本語だけで提供されているものは英訳の作業が入ってきて,内容を検討できるのが実質3日ぐらいになります。このことは,既に提出されています株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会でも指摘されているところです。   そういう意味では,今も株主総会時期の集中がありますし,相当タイトな状況でやっている。しかも,金融庁からは,例えば,議決権行使が非常に形式的なのではないか,そういったものをもっと実質重視で行うべきという指導もありますけれども,それをするには余り機械的なプログラムで自動的に処理するだけではなくて,議案によってはよくよく運用会社内で検討する又は発行会社に問合せをする,そういった手間が必要になります。今はそういう時間は極めて限られているということです。   先ほど決算発表又は決算の取締役会から実際に招集通知の発送まで,今現在平均で3週間あるというふうに申し上げました。ということは,これを電子化することによってこの印刷,封入等の手間を大幅に削減できるとなると,4週間前,1か月前の発送は十分に可能であるというふうに見えます。この差は,実際に議決権行使を,内容をよく検討して行うには非常に大きな影響があります。   そして,大きな2点目なのですが,まず,電子提供について任意で行う場合と,電子提供は法的強制とするという大きな二つの提案がありますが,その中で,なおかつ電子提供任意の場合に定款規定が必要だというものと,取締役会での決議でいいということ,またさらに,定款規定の中でも,B案の場合に関連しますけれども,これは定款で規定したものは必ずそうしなければいけないというものと,A案では定款で規定しつつも,取締役会でその都度決議すればいい選択肢もあり,これ合計すると4種類あるということになりますね。   一方で,ここにA案とB案を掛けていくと,単純に考えれば8通りあることになります。ただ,B案の方ではこの中の二つほどが現実的にはあり得ないと思うので,合計6種類考えられると思うのですけれども,この中で一番懸念しますのは,B案と電子提供の法的強制という組合せです。なぜかと申しますと,電子提供の法的強制ということで,これは実務として固定されるわけですね。一方で,B案も,先ほど冒頭で事務局の御説明の中で,言わば,登録のようなものという表現がありましたけれども,正にそうだと思うのですね。一旦書面請求ということで登録すると,よほど後から撤回しない限りはそのままそれが固定されると。そうすると,アメリカの例などで見ていくと,電子提供の普及というのが年々広がっているわけですけれども,このまま最初に制度が導入されたときに固定化されてしまって,一向に進展が進まないという懸念があります。今,ここでいろいろな議論をしているのは,新しい方向性として電子提供していく,ただ,最初はそれについてはハードルが高いことがあるかもしれないので,いろいろな措置を考えていると。そこにはだんだん世の中の変化とともに,電子提供がメインになっていくような方向を暗黙に考えているのではないかと思うのですが。そのときに,この組合せは余り良くないなという感じがしています。   一方で,A案にもいろいろな問題点が先ほどから指摘されていますが,そもそもこういった場合分けをたくさんしなければいけない状況からすると,例えば,日本の制度を外から見たときに,この制度の予見可能性というのが余り高くないのは非常に理解しづらい,分かりづらいというのがあります。そういう意味では,予見可能性を高くするためには,私個人的には,電子提供の法的強制というのがありつつ,A案で毎年請求を必要な方はしてもらって,だんだんそれが書面請求ではなくてもよくなっていくという変化を求めていくのがいい方向ではないかと思います。   電子提供について,今,いわゆるウェブサイトのみなし提供ということで定款規定がある会社数というのが,平成26年1,299社だったのが28年には1,407社になっていて,実際に個別の注記とか連結の注記をしている会社もその3年間で300社ほど増えているという意味では,方向性としてはどんどんそちらの方向に移っているということもあると思いますので,上場企業に関しては,例えば,法的強制というのは十分にあり得る方向性ではないかなと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○田中幹事 大変有意義な報告がなされまして勉強させていただきました。特に書面交付請求に伴うコストに関して,私これまで認識していなかったことまで含めて説明していただけたと思います。   その上で,私,ゼロベースでこの問題について改めて考えてきたときに,コストに見合うベネフィットがあるかということをもう一度少し自覚的に考えてもいいのではないかなと思っております。特に書面交付請求を強行法規的に保障しないで電子提供したときのデメリットとして,デジタルデバイドの問題が指摘されましたけれども,私としては,確かにデジタルデバイドのある株主への配慮ということも当然ながら大切なのですけれども,それと並んで気になっているのは,大部分の個人株主にとってハガキでURLが送られてきて,それでインターネットにアクセスして見ろと,そういうふうに言われたときに,現在の個人株主は端的にそれを利便性の低下というふうに見る人が大部分なのではないかなということであります。つまり,これは電磁的に受け取ることができるかというのと,それを喜ぶかということは相当に違っているのではないかと思います。   例えば,この会社法制部会の資料は,多くは電子メールで送られているわけであります。ちょっと,今回,全て送られてきたか分かりませんが,大体は送られてきたかと思います。しかしながら,その電子的に送られてきた資料を現在電磁的なデバイスで見ていらっしゃる委員は必ずしも多くないわけであります。これが現実ではないかと思うわけであります。   例えば,株主総会資料も御承知のように,最低限,取引所のホームページを通じて,株主は今でも見ることができるわけですけれども,これを個々の株主が利用しているかというと,我が身を振り返ってみても,ダウンロードしてあれを見ろということだとデバイスが今みたいに小冊子を読むのに比べてそれほど簡単ではないわけです。電磁的に提供された資料を見るといっても,現状では紙がデバイスになっているだけなわけですから,率直に言って,情報的な価値はそれほど高くないわけですね。これが確かに電子提供制度が普及すれば,紙では提供されなかったような充実した情報が提供されるとか,もっと早い段階,早期で情報が提供されるとか,そういう期待はあるかもしれませんが,これらは現行法制度でも可能であるということを鑑みれば,せいぜい事実上の期待にすぎません。   そしてまた,これまでの上場会社の取組で,もとより上場会社としては,基準日から3か月という無理と思えるようなタイトなスケジュールの中で頑張ってやってらっしゃるということは,承知しているつもりですけれども,投資家にとって情報量,それから情報提供の時期の双方について,必ずしも満足できる水準ではないわけであります。こういう中で,電子提供制度を作ったときに,果たして,株主はそれを歓迎するのであろうかということは,若干の懸念を持っております。   また,個人株主としては,このような制度ができるとこういうサービスの向上が見込めるとか,例えば,民間の議決権行使サービスが提供されて,株主は持っている銘柄についてワンストップであるサイトに行けば総会資料も見られて,そして,議決権行使も電磁的に行えると,そういうサービスが提供されるのですよということがあれば,私も新制度導入を歓迎したいのですけれども,現状では遺憾ながらそういう話は出て来ていないわけですので,何かひたすら株主の権利,書面交付請求権を与えるか与えないかと,与えた上で排除を認めるかと,そういう話だけになってしまっているということがどうしても制度の導入について手放しに賛成できないと,そういう状況になっているということであります。   これはだから全部反対ということではなくて,もちろん,長期的に見れば情報が電子化されていくということは,必然的な流れでありますから,それは一般的には推進するべきなのですけれども,しゃにむにこれを推進するほどのベネフィットが現状見込めるかということを立ち止まって少し考えてみてもいいのではないかと思います。   すみません,思ったより長くなってしまったのですが,以上です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ここで一旦休憩を取らせていただいてもよろしいでしょうか。それでは,15分間の休憩を取りたいと思います。この部屋の後ろの時計で今37分のようですので,中途半端で恐縮ですけれども,50分までということでよろしいでしょうか。3時50分に再開させていただきます。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○神田部会長 それでは,再開させていただきたいと思います。   先ほど休憩直前に田原さんと松井さんが手を挙げられたのではないかと見えたのですけれども,藤田委員が札を立ていらっしゃるので,順不同になって申し訳ないのですが,藤田委員からまずお願いしたいと思います。 ○藤田委員 休憩前,非常に壮大な話が出ましたので,ちょっとなかなか発言しにくいのですけれども,確かに田中委員のおっしゃるお話も私も非常に分かる面はあって,この電子提供が実現すれば,何か根本的に世の中変わるかのような議論がされることがあるのですが,多分そのようなことはない。総会関係書類が電子化されたところで,それだけで劇的に株主との対話が進むなどということはなく,それ自体のもたらす効果をそれほど過大評価すべきものではない,むしろこの制度とは別に,その外でいろいろ工夫していただくことに依存する面が大きいと思います。   さはさりながら,長期的にこの制度の外で対処しなければいけないものが一杯あるにせよ,今議論している,株主総会資料の電子化の可否と,最低限そのために設けなくてはならない要件は,それはそれでやはり議論することも必要だとは思うので,以下そういう観点から若干申し上げます。   最初に,書面請求権が本当に必要なのかということは,確かに疑問がないわけではなくて,私も書面請求権がなくなることがおよそ容認できないという立場ではありません。デジタルデバイドの問題がよく強調されるのですけれども,自分自身でコンピュータを操作し,全部自分自身で対処できるということは別にデジタルデバイドの問題を克服するための必要条件ではない。誰か家族なり知り合いに手伝ってもらえれば,資料を入手できるとすれば,本人がインターネットにアクセスできないということだけで,およそ全て権利が行使できなくなるかのような議論は,やや誇張されています。私の母は85ですけれども,しょっちゅう私に携帯メールを送ってきて,PDFファイルをプリントアウトして送ってくれとか,どこかのウェブサイトをプリントアウトしてくれということを頼んでくるのですけれども,それで用は足りている。自分の身の回りの人がプリントアウトしてくれれば,それを見て議決権行使書面を送り返せばいいし,いずれは特定のURLにアップされたファイルを紙にしてあげますというようなサービスが発達してくるかもしれない。だから,書面請求権がなくなると,一部の投資家がおよそ何もできなくなるかのような言い方で,この問題を誇張するのも良くないと思います。   他方で,書面交付請求権があると,総会関係書類の電子化はおよそ誰も導入しなくなるといった議論もちょっと誇張かなという気がいたします。たとえ書面請求権がない形で総会関係書類の電子提供が導入されても,サービスベースでの送付,つまり義務はなくても一定の範囲でサービスとして書面を配ることは,会社は当面は続けるでしょうし,一定の範囲で個別対応が必要なことはどのような制度設計にしたとしても,制度導入の最初期にはつきもののことだと思います。したがって,書面交付請求権を入れたためにどの企業も導入しなくなって,総会関係書類の電子化が失敗に終わるという反対論も,ちょっと誇張し過ぎかなという気がします。   そういう意味で,私は書面請求権の要否それ自体についてそれほど強い意見はないのですけれども,多くの方がこの書面交付請求権がない制度設計に抵抗を覚えておられるようでしたら,そういう判断でいいと思いますし,その前提で,以下,A案,B案といった具体的な案の内容について見ていきたいと思います。まず,A案は,これまでの議論で余り評判が良くないようです。A案について,今まで聞いた議論の中で,唯一積極的にメリットを示唆する主張があるとすれば,三瓶委員のおっしゃったことで,必要と考える投資家が個別に書面交付請求権を行使し,そのうちだんだん行使されなくなってだんだん減っていくという健全な進化のプロセスに適合した仕組みだという観点で,これが唯一積極的にこの案を支持するものだと思います。   ただ,B案を採りますと,電子化へ向けた進化が止まってしまうかというと,それは別問題でして,制度の作り方次第かと思います。逆に言うと,B案を採る場合には,何らかの形で書面請求の登録のリセットが起きるような仕組みを導入することを工夫すべきだということだと思います。システムの負荷との関係でどこまでできるか分かりませんが,例えば,株主総会何度かに一度あるいは何年かに一度,株主が再度登録をしないと書面交付請求の登録が消えるといった仕組みにし,各投資家に再登録させる,そして,長期的には登録数が徐々に減っていくような仕組みを付けないと,最初に登録したら,それが既得権として永久に消えなくなるという問題点があるのがB案の問題だということになります。   ただ,この点を除くと,B案の問題点として言われていることは,振替機構における導入コストという点だけが問題で,それ以外は余り気にしなくていいのではないかと思います。例えば,アクセス通知を受け取ったことを個別に判断する機会などというのは不要で,そもそもこれがデジタルデバイド対策ということであれば,そういう投資家であることを自覚していれば,その者は最初から登録すべき話ですし,一部の銘柄についてだけ登録を認めるといった選択を認める必要もないと思います。乱暴に言いますと,どこかの証券会社の口座簿で特定の,どの銘柄であれ登録すれば,全てについてこの書面が送られてくるようになる,そういうふうな仕上がりの制度になるのだと思います。   ただし,技術的に見た場合,投資家にとって不意打ちになる可能性があるのは,次のようなケースです。例えば,A証券会社である銘柄を買って,それについて登録して,その結果全ての銘柄について書類が送られてきているという状態があり,その後,その証券会社で保有していた当該株式を売ってしまった結果,今度はどの銘柄についても書面が送られてこなくなるということが起きてしまうということです。その投資家はある証券会社で特定の銘柄を売ったことでそのような大きな効果が起きると思っていない可能性があるのです。この辺りは実務的に証券会社の方で注意喚起してやるとかそういったことで対応すべき問題なのか,あるいはもうちょっと深刻に考えるべき問題なのかは必ずしもよく分からないところです。やや細かな技術的問題ですがB案で振替機構を通じて対処するというやり方を採った場合の多少気になっている点はその点です。   また,A案,B案にかかわらず,株主総会の基準日あるいは総会の期日の一定期間前までに自分がそもそも書類をもらえる立場なのかそうではない立場なのか分からないまま期限を過ぎてしまう,その結果適切に書面交付請求権を行使する機会がない総会が少なくとも一度は来る可能性があるという問題が生じるおそれはあります。しかし,その対策として,定款変更のための株主総会決議が有効かというと,そうは思えない。そういうところで手続を加重したところで,書面交付請求権を行使する機会を失わないことが保証されることになるかというと疑問があります。この点を非常に深刻に考えるのであれば,総会決議とかいった採択のための手続以外の周知手段が必要になるかもしれません。あるいは証券会社の方で株式を買った人に啓蒙するといった実務的な慣行の発達に委ねるという割り切りもあるかもしれません。いずれにしても,導入の手続を重くすることで,投資家の不意打ちを避けるといった発想は余り適切ではないような気がしています。   あと2点ほど,A案,B案,あるいは書面交付請求権と無関係な点で,今まで議論なかった点をついでに伺ってよろしいでしょうか。   一つは,書面交付請求に対応して書面で送られてくる情報の対象です。この案を見ていますと,ウェブ掲載事項全部というふうに書かれておりまして,その趣旨が必ずしもよく分からないのですが,ウェブに載っているものが書面で必ずそのまま送られて来ることを想定されているのかということです。もちろん動画のようなものは送れないのはいいのですけれども,性質上無理なのは除いて,ウェブに掲載されているものがそのまま来ると,そのような発想を採っているのかということです。   なぜこれを伺うかと言いますと,書面で送付しなくていいことになると,印刷・送付費用を考慮しなくてよくなる結果,どんどん開示書類の内容が開示すべき情報が拡大していく,充実していく可能性があるということが言われています。そうなった場合に,ウェブには非常に充実したものを載せるのだけれども,書面の方は従来どおりのものを送るということが許されるのかという疑問が出てきます。   この問題については二つ対照的な考え方があり得ます。第1は,書面交付請求権というのはウェブを見ることができるのとできるだけ同じ状態を書面で達成しなければいけないのであって,原則としてそこは差があってはいけないという考え方です。もう一つは,電子的な提供も書面交付請求に応じた書面の送付も,両方とも株主総会の招集通知の送付として,各々法律上必要な要件を満たしていればよい,ウェブで見られる資料と同じか否か検討する必要はなく,書面それ自体について要件を満たしていればよいという考え方です。なお,後者を採るのであれば,株主平等原則の関係もありますので,あるいは何らかの条文上の手当が必要かもしれません。これらの二つのいずれで考えるのか。前者のように考えると,ウェブ掲載の情報をどんどん充実させていくということの妨げになる危険がないわけではないのかもしれません。前者の立場に立ちながら,書面交付請求に応じて送る書面に含まれているのと同じ情報をウェブに上げつつ,そうではない情報,つまり法律上要求されている最低限の事項を超えた情報を,義務がないにもかかわらずサービスとしてウェブで追加的に開示するという実務上の工夫も考えられるかもしれません。ただ,項目自体を加えるようなことであればうまくいきそうですが,例えば,ウェブで開示されている取締役候補者の履歴書は非常に細かなところまで書いてあるけれども,書面として送られてくる履歴書は簡略的なものであるといった量的な差なのであれば,うまく整理できるかよく分からない。この辺りの考え方としてどっちへ望むのかというのはどこかで固めて明確にした方がいいようなことだと思います。   また,似たような話で,アクセス通知の記載事項につきまして,必要な記載事項が何かということは,今回の提案内容で結構だと思うのですけれども,会社法研究会の報告書のところでは,それ以外について載せるのは自由ですという記載があり,その後若干補足説明でいろいろな議論があります。そのとき議論になった論点として,アクセス通知上,例えば,株主提案と会社提案を異なった扱いをしてよいかという問題があります。会社提案はアクセス通知と共に詳細な内容が載っているけれども,株主提案についてはURLしか載せないという扱いをしていいのですかという議論があったのですが,この辺りは載せていないということは,まず特に規制はしないし,全て解釈に委ねるというふうに理解してよろしいですか。   最後の2点は事務局への質問です。よろしくお願いします。 ○神田部会長 ありがとうございました。事務当局からありますでしょうか。 ○竹林幹事 今,御質問がありました1点目の送られてくる書面との同一性ですけれども,我々がこの資料を作成したときには,会社側が複数のものを準備するのも負担だと思いましたので,基本的にはウェブに載せたものが送られてくるという認識でおりましたが,御指摘を伺いまして,書面請求権の存在がウェブに載せられる情報の制約,足かせになってはいけないというような視点から,どういった制度設計が適当なのか,改めて検討させていただきたいと思います。   また,会社提案と株主提案の取扱い等でございますけれども,基本的には規制はしないということを念頭に置いております。もっとも,第4のところに関わる議論だと認識しておりますが,解釈に委ねるとしても,株主平等原則に反しないかどうか,あるいは不公正な方法になるかどうかといったような一定程度の制約があると認識しております。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。   それでは,野村委員と中東委員から札を立てていただいているのですけれども,休憩前に手が挙がったのではないかと思う,田原幹事,松井幹事の順でお願いします。 ○田原幹事 すみません,ありがとうございます。   前回も申し上げたことで恐縮でありますが,今,藤田先生からもお話があった点ともちょっと関係するのかなと思いますので,申し上げさせていただきます。   前回お話しさせていただいたのは,今,政府として全体的に開示書類の内容を共通化していく,あるいは一本化するという努力をしていくべきではないかということで,具体的には,例えば,事業報告・計算書類と有価証券報告書の内容を,今でもそろえられるわけですけれども,よりそろえやすくするとか,一本で出しやすくするというそういう努力をしているわけです。   それで,今回の電磁的提供という機会の中で,一つ一つ目の前のものについて電子化するということもあるわけですけれども,これをEDINETで,例えば,有価証券報告書を事前に提出しておけば,その内容については,会社法上もウェブ開示されたとみなしていただくというようなことを考えていただくことで,やはり創意工夫ができるだけいかせるような形を作って将来に備えていくという,未来へ進んでいくような形で制度を作っていくということを考えていくということが必要ではないかなと思います。先ほどの書面交付の内容についても,今,竹林参事官からもお話がありましたけれども,工夫をしていくということが重要ではないかなと思った次第です。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○松井(智)幹事 ありがとうございます。   私が前回からずっとこだわっているのが,同族会社などの少数株主などがこういった制度が導入されたときにどうなるのかということなのですけれども,今回の資料では6ページに3の第3段落,「なお」とあるのですが,公開会社でない株主会社とひとくくりにされているわけでありますが,この公開会社でない株式会社のうち,取締役会設置会社でない会社については,総会で決議できる事項については柔軟にその場ででも変更できるということを考えると,ここまでやる必要があるのかなというのがある一方で,たまたま取締役会を置いていて,しかし,株主が投資家ではなくて承継してしまったような株主で,例えば,書面交付請求権があるかどうかということも,あるいは書面で,例えば,提供してくれるサービスをしてくれる業者がいるとしても,そういったことについても余りよく分からないのだけれども,とにかく株式を持ってしまったというような人がいる場合にどうするのかというような問題であります。そういう場合には,得てしてと言いますか,経営陣と時々紛争が生じているみたいなことが考えられるのですが。こういったことについて著しく不公正な招集手続というものがあったというふうに全て裁判の法理でやっていくということをするというふうにするのか,せめて何かしらのことを法律に書いておくのかというようなことが私の頭の中でちょっと引っ掛かっていることです。   それとの関係でちょっとこれはどうかなと思いましたのが,招集通知の記載事項の中に,ここではなくてもいいのですね,例えば,B案を採る場合には,また別の場所になるかもしれませんけれども,書面交付請求ができる旨及びその方法ですね,やり方が分からなければどこどこに電話をするとこれこれがもらえますとか,この裏面に記載事項を書いて郵送すれば書面が来ますといったようなことを招集通知と併せて,でなければ,そうでなくても別の機会に法令で定める方法でもいいと思うのですけれども,保障してあげるということがそういった人たちにとっては必要なのかなと思います。   先ほど書面交付請求権自体を認めないという話があったのですけれども,それはそれで一つのやり方と思うのですけれども,その提案というのは,株主が今までゼロコストで株主総会で決議できたことについて,これから費用を要求するような社会にしますというような設計をこれから作るということであって,もしそれができるのであれば,A案であっても会社としては,別にそれほど濫用されることもないだろうとかいうふうに安心できる制度になっていくのかなと思うわけですけれども,そういう外部業者を使うということ自体に頭が及ばないような,余り望まずして株主になってしまったような人たちのことも少し考えなければいけないのかなと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○野村委員 ありがとうございます。今の松井幹事のおっしゃったこと,私も非公開会社の中で,特に取締役会不設置の会社についての配慮は一定程度必要かなというふうに拝聴いたしましたので,同調させていただきたいと思います。   その上で,デジタルデバイドの話なのですが,先ほど藤田委員の方から,自分でパソコンを使えないという人についていろいろな配慮をする必要あるかもしれないけれども,その個人でも努力の可能性というのはあるのだというお話がありましたし,そのサポート体制というのもあるということはあるのですが,私がやはり気にしますのは,例えば,震災などが起こりまして,ある地域の人たちが,例えば,仮設の住宅に行かなければいけないというような状況になっているときに,自宅の方にパソコンなり何なりのセットは全部あって,ふだんはウェブなり何なりを使っていても,なかなかそういうようなことにアクセスしにくい環境になってしまうということは誰にでも起こる可能性のある事柄だと思いますので,そういう意味では,そういう方々が希望すれば書面を交付してもらうというようなことの機会保障というのは,一定程度用意しておくことが必要なのではないかなと考えています。   その上で,やはりA案,B案の話になるのですけれども,A案,B案のときに,どうしても最後引っ掛かりますのは,B案がいいと私は思うのですが,やはり保振さんの方からプレゼンがありましたように,システムに関する費用というものと,それから恐らく保振さんというのは更新のタイミングが一定期間ごとに行われているはずですので,この制度を作った後,保振さんの方のシステム対応にどのぐらいの時間が掛かって施行との間うまく合うのかどうかといったような問題点というのもあるのだというふうには思います。   他方で,コストに関しては,やはり先ほど御発言がありましたように,将来それがどんどん増えていく制度であれば,先行投資をして,それでシステム対応するということに必要性を感じられると思いますけれども,むしろだんだんフェードアウトしていくものに対して初期投資をたくさんするということに対しては御懸念があるのは確かではないかなというふうな気もするわけです。   そういう中で,先ほどちょっと関係官からの御説明の中に言及されていたような気もするのですけれども,例えば,126条1項のところで,株主名簿に記載されていない住所・連絡先に対して招集通知を送ってほしいと言っている人に対して,実務上は,その人に対しては,別途別送している形になっていると思うのですが,株主名簿に記載されていないということは,保振からの総株主通知での対応ではないということですよね。ということは,保振の仕組みの外の中で招集通知の発送業務というのはどこかで行われているわけで,恐らく株主名簿管理人たる証券代行さんのところで対応されているのではないかなと思うのですけれども,そういうような形で,何らかの事柄を事前に届けておいて,保振のシステムに乗せなくても,そのことを横置きしておくことによって一定期間までに届け出た人については別送というそういう手続をどこかで工夫していくことはできないのかということを是非実務を教えていただきながら御検討いただければ有り難いなと思います。   それからもう一つ,先ほども私が言おうと思っていたことを藤田さんがおっしゃられたのであれなのですが,いわゆる今の書面交付をして要求してきたときに提供する情報というのは,株主の議決権行使の機会の保障と,それから準備の機会の保障としてこれまで提供されていたもので必要にして十分だと思われますので,それ以上のものがウェブで開示されているとしても,ここからこっちはウェブ特有の情報提供ですよという切り分けはやはりあってもいいのかなというような感じがします。   特に,例えば,ウェブですから動画というのもあり得ると思うのですけれども,動画で見てもらったり,動画を通じて説明をしたりとかというようなことを今後工夫していくようなことになったときに,動画については,では,例えば,DVDか何かを一緒に載せて送るのかというふうに言うと,今度うちにはDVDがありませんという人はどうするのかというような議論がだんだん出てきてしまいますので,やはりある意味ではウェブ特有の大量に情報を載せられるとか,特殊な情報伝達手段があるといったようなことについて,紙に足を引っ張られることのない形で将来的な発展の形態というのを考えていただければと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○中東幹事 私も基本的にB案を採った上で,第3の点については義務付けるのが良いと思いつつ,御意見等を拝聴していまして,今のところ,その考えは変わっておりません。そのためには,やはり振替制度による対応が望ましいとは思っておりまして,参考人のお話をとても期待していたのですが,やや残念な気はいたしました。ただ,野村委員のお話を聞いていてもなかなかすぐに御対応いただくことは難しいようですので,そうであれば,最初の方で川島委員がおっしゃいましたように,米国のようなサービス制度が許されるのであれば,対応は可能ではないかと思います。私がサービス会社を作って繁盛するようでしたら,信託銀行さんに事業を買い取っていただけるのかもと思いました。   田中幹事もおっしゃったように,ゼロベースで費用を考えたときに,株主管理コストをどのように負担しているかという話も関係すると思っています。つまりは,機関投資家にも,1個の議決分の株しか持っていない株主にも,皆にほぼ同じ株主コストが掛かっていると推察しております。そうであれば,もし特定の株主にだけ書面の交付請求を認めてそれを渡すということになると,その人たちだけのために会社は追加的な費用が掛かり,他方で,機関投資家は書面は不要なので,書面が必要な株主に要する費用を実質的には負担させられていることになります。そういう意味で,現在は公平ではない状況で,書面交付請求を行った株主に費用を負担してもらえば,そこの帳尻を合わせるという意味もあると思います。   このような発想からは書面交付請求をした株主から手数料を取るということをベースに考えていくのが一案ではないかと思っています。そうしますと,先ほどのサービス会社を利用したいのであれば必要とする株主がその手数料を払えばいいですし,コンビニに用紙を持って行けば,コピーしてもらえるようにすることも考えられると思います。あるいは証券会社さんや信託銀行さんに行って,元々こういう株主たちはネットを使わないという前提でやっているわけですから,ネット証券も使っていないでしょうから,店舗に行ってもらい,印刷を依頼して手数料を払うという形でもいいと思います。藤田委員のところにお願いに行ったら高そうなのでやめた方がいいかもしれませんが,知り合いにお願いするという方法もあるかもしれません。   こういった形にもしするのであれば,松井幹事がおっしゃったことにも関係するかと思うのですが,アクセス通知に「書面で欲しい人はこのようにしてください」という手引きが明確に書いてあるのであれば,会社としてはそれだけでよく,適法に招集通知を発したことになると考えることもできます。つまり,個々の株主が書面を欲しているかどうかは聞くまでもなく,アクセス通知を読んで,書面が欲しいからここに行けばいいのだな,あるいはここに電話すればいいのだなということが分かれば足りると思います。そのような意味では,第1と第2を分けて議論する意味というのはそれほどなくなるのかと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○田中幹事 2回発言して申し訳ありません。直接的には,藤田委員の御指摘のウェブ掲載事項の範囲なのですが,私はこの資料を読んだときには,1ページ目にウェブ掲載事項の定義が書いてあって,第1の1のところですが,「株主総会資料に記載し,又は記録しなければならない事項」を「ウェブ掲載事項」と呼んでいるので,ですから,ウェブ掲載事項全てを書面で交付請求するというのは,飽くまで記載記録しなければならない事項についての書面交付請求になるということであって,それ以外の任意の情報については,ウェブで掲載されていても書面交付請求にその部分については応じる必要はないと,そういう整理だと思っていました。   実質的にも野村委員おっしゃるように,そのようにするべきだと思います。今後,ウェブで開示がされたときに,例えば,クリックして画像にリンクしているとか,あるいは映像を提供するとか,そういったことが期待されるわけですから,それが同じものを書面で交付しなければならないという法律上の義務によって進まないというのは,非常に問題がありますので,法的にはウェブ掲載にするにしても,書面交付に対しては法律上最低限株主に提供しなければならない情報だけを提供すればよいと,それ以上送るかどうかは会社の任意ということでいいかと思います。   それから,若干個々の制度について,先ほど全然コメントしませんでしたので,少しだけコメントさせていただきたいと思いますが。   A案,B案という交付請求権を認めたときのその行使時期については,私も初年度の株主への周知を徹底すればB案でいいのではないかと。恐らく初年度に株主の期待に反するようなことになると非常にこの制度自体が問題になると思うので,十分にこれを始めるのですということを周知徹底すれば,基準日までに交付請求した人だけに書面を交付すればいいということになるかと思います。   問題は交付請求をどのような手続で行うかということでして,先ほど来,保振の対応についてのコスト面について明らかにされました。それらのうちで,名寄せをしたときに書面交付請求「あり」と「なし」で矛盾した対応になるという点については,矛盾した株主の利益にそれほど配慮する必要はないわけですから,ここは法律で「あり」ということを1回でも言ったら「あり」にすればいいとか,そういうことを法令上決めることは可能かと思います。ただ,それでもこのような交付請求をするかどうかということについてフラグを立てるだけでもコストは掛かるというのは恐らくそのとおりかと思います。   ただ,この点については,もし保振を通じた交付請求をしないのであれば,結局発行会社に対して交付請求するということになるわけで,それはB案でも同じことかと思いますから,そうなると発行会社ないし株主名簿管理人のところにそのコストが分散していくということになりますから,全体としてどの程度のコストが掛かるのかを考える必要があると思います。発行会社に対して請求するという制度にしておいて,発行会社は民間のサービス会社に委託して,民間サービス会社は発行会社の代理人としてそれを処理するということは法的には可能かと思いますので,ここはやはり少なくとも当面は強行法規にするかどうかはともかく,多くの会社は書面交付請求への対応をにらみながら,この制度導入を考えていかざるを得ないのではないかと思いますから,是非ともよりコストの低い方法での制度導入が行われるように期待したいと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○北村委員 発言の機会を与えていただき,ありがとうございます。   まず,書面交付請求についてのA案とB案でございますが,A案がいいかB案がいいかという議論が主流になっていたと思いますけれども,私の理解では,A案は,株主の個別同意があったときに行われる電磁的方法による招集事項の送付という現行の制度の延長線として,アクセス通知を受けた後に書面交付請求ができるという前提でのウェブ上の株主総会招集関係事項の開示制度と位置付けることができます。   それに対し,B案は,アクセス通知の前に書面交付請求をしなければいけない代わりに定款の定めが必要となるというものです。  このように整理いたしますと,A案とB案は相いれないものではなく両方導入することもできると考えられます。特に今回株主総会の電子化を何とか進めようということであれば,A案のような制度を取りあえず導入しておくことは意味がございますし,どの程度の数の株主が書面交付請求をするのかを招集通知の前に知りたいというニーズが会社にあるのであれば,B案のような選択肢を設けておくことにも合理性があると思います。   そして,B案を採用する場合には,上場会社について,それを強制するということには賛成です。この場合,株券電子化のときと同じように一定の周知期間・準備期間を置き,定款の定めがあるとみなしてしまうという方法を採れば良いと思う次第です。   その上で,B案の(1)の括弧の中でございますけれども,上場会社については,これでいいと思うのですが,そうでない会社について,アクセス通知の前のどの時点を設定するかというのは定款自治に任せてもいいと考えます。細かな話ですが,会社法124条4項に基づき基準日後に株主になった者に議決権行使させるという場合についても,定款の定めにより対応できるようにしておくのが良いと思います。   次に,部会資料2の10ページの4の第2段落に,ウェブ開示によるみなし提供が行われている場合に,書面交付請求があったときにはウェブ掲載事項の全てを提供しなければならないとの指摘があります。ウェブ開示は,定款の定めがあることを前提に書面交付をしなくてよい,厳密には株主に当該事項を提供したものとみなすという制度でございますので,ウェブ開示がされている事項であれば,それは書面交付の対象にならないと考える方が筋が通るように思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○尾崎委員 発言の機会を頂きまして,ありがとうございます。   今日資料9という形で経済産業省の方からの資料提供もございますが,今から申し上げることは,それと全く関係ないというか,そちらは研究会全体の意見をまとめただけでございまして,これから先は,個人の意見を少し述べさせていただこうと思います。   ただ,これまでの議論が出てきたときのこの報告書などもそうなのですが,今いろいろと議論が出ている中で,まず対象としている企業をある程度特定しないとこの話は拡散するのではないかということをまず述べたいと思います。経済産業省の研究会での議論としてはある意味で上場会社を想定して,そして機関投資家もたくさんいる,そして,数の上では圧倒的に多い個人株主もいると,こういう株主像を前提とした上での対話促進の一環としてのIT化の議論であったということをもう一度申し上げておきたいわけです。   飽くまでも目的とするところは,対話促進というところにあり,対話の促進のためには情報を株主が持たないことにはいけない。これは定時株主総会周りにおける情報提供という限りにおいては,その限りの情報をできるだけ早く提供すれば,様々な株主としてのリアクトもできると考えられます。そして,議決権行使というのは最大のリアクトであろうとすると,そういったことにとって重要な情報をできるだけ早くに提供するにはどうするか。そうすると,ITを使うのが見やすいではないかと,こういうコンテクストであったと私なりに整理はしているわけです。現在でもウェブであるとか様々な方法を使って,事前にそういう電子的な技術を使って早くに情報提供するという方法は,採ろうと思えば採れるわけですが,その採用がなかなか進んでいないという状況を考えるならば,何らかの後押しというのでしょうか,何か邪魔をしているものはないのだろうかというふうな言い方もあるわけで。そのときに,やはり会社法の理屈からいくと,やはり紙媒体というのでしょうか,書面が前提となっていて,例外的に株主の個別同意があって初めてできるとか,あるいはみなしであるとか,任意にやってはいいと,こういう制度設計になっています。そして,現にウェブ開示がなされているのは,注記表レベルではないかとか,こういうデータが次々出されてきたわけです。やはりもう少し重要な情報をITを利用してあらかじめ提供するという,こういうことが必要ではないかというのが一つの出発点であったと個人的には理解しているわけです。   恐らく大きな発想の転換が必要であって,これまで先ほど言われていたように,株主は会社から情報がやってくるのを待っているというのを,今度は取りに行くというふうに,初期設定を変えるという発想の転換がなされる必要があると考えます。つまり,従来,株主は待っていていいわけで,そして自分で同意したときには自分から取りに行くというか,ウェブへ近付いていくという制度設計でしたが,これは紙媒体中心の発想です。「アクセス通知」という言葉も少しミスリーディングかもしれないわけですが,自分で取りに行く,つまり,アクセスしなさいということを促す通知であるということかなと思っているわけであります。   そうしますと,先ほど来からの議論にもありますように,デジタルデバイドの問題が必ず出てくるわけで,また,個人株主への配慮を全くしなくていいかと。私もこのようなことは全く考えていないわけではありません。個人株主,取り分けデジタルデバイドを抱えている人たちというのはやはりいることはいるわけですし,先ほど来から出ておりますように,やはり高齢の株主さんたちもいらっしゃるわけです。それに対しては,周りの方がサポートすればいいでしょうということも言えるわけでしょうが,やはりその人たちにとっては,従来,向こうから来ていたサービスが,受けられていたサービスが受けられなくなったという不満が出てくるのではないかということはやはり意識しているわけです。制度は後退しないでほしい,やはり現在得られているレベルのことは守ってほしいという実務の感覚は非常によく分かるつもりです。しかし,発想の転換をするには,今をおいてほかはないという認識の方が勝っているというのが,正直なところです。   もう一つ個人株主の配慮をどうするかというものですが,そこで書面請求権が出てきたわけです。先ほど来から出てきているように,現時点でやる必要があるのですかという疑問は強いと思います。今日の参考人の方々のお話でも,もし保振のシステムを取り替えるとすると膨大なコストが掛かるとか,あるいは様々な影響が出てくるとされています。では,将来そういうことが起こらないのかと。将来IT化が起こらないというのかというと,恐らく皆さんのイメージとしてはやはりそういう情報伝達において電子的な方法への依存というのはもっと出てくるだろうと思われているのではないでしょうか。そして,電子的な方法にすると,この議論のプロセスにおいて動画も送れる,様々な情報が送れると,ウェブを使えば株主にもっともっと情報が伝達できるのだというふうなことも意見としては出てきたわけです。では,いつインフラ整備を始めるのですかというその時期の問題を議論するところにきているのではないかと認識しています。むしろ,IT化の動きを後押しするにはどういうふうな仕組みが必要ですかという議論がいずれ出てくるだろうと予想しますが,そうであるならば,それは今のはやり言葉ではないですが,「今でしょう」という感じがしています。いや,それをもっと先に延ばしてくれとおっしゃるならば,それは先に延ばせばいいわけですが,いずれこのコスト負担の議論をせざるを得ないという話は出てくるのではないかという気がしています。そうであれば,それは「今でしょう」という意見です。   その点では,今様々な議論が出てきたところで,これらを参考にして,どういった点を考慮すれば,障害を除去できるのかは明らかになってきたと思います。そういうことを,今,真剣に議論していただきまして,まずは発想を転換すること。それでも残る障害をどうするのかに英知を傾ける必要があると思うわけです。   つまり,先ほど松井幹事がおっしゃったように,これはゼロコストからコストを掛けろというふうに大きく転換することではないかと。そして,変更初年度には,やはり大きな影響が出てくるわけで,そこをいかに抑えるか。そのときに,初年度で固い登録をしていたものについてどこでリセットをするかと,こういうような議論が次々出てくるわけでしょうが,根幹では情報をたくさん提供するという方法としてIT化が進む必要があるという共通認識が重要です。そして,そのときにデジタルデバイドの人をどのように救済するか。これは,先ほど来,沖委員だとか梅野幹事からおっしゃっていたように,そういう方々への配慮というのを含みながら,基本的な方向性をここで確認していきましょうということが決まればいいのかなというふうに個人的には思っているわけでございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○加藤幹事 ありがとうございます。   既にほかの委員,幹事の方々の御意見御質問と重なる部分もあるかもしれませんが,私も何点か意見及び質問を述べさせていただきます。   1点目ですが,株主総会資料のウェブサイトへの掲載に関して,ウェブ記載事項の範囲若しくは掲載の仕方の点であります。部会資料2では,ウェブ掲載事項を印刷することができる形で掲載するようにという御提案がされていますが,これは,現在の招集通知のウェブ掲載のようにPDFファイルのような特定の形を想定しているのか,それとも単にウェブページを印刷できればいいのかというのがまず一つであります。   2点目は,ウェブ掲載事項の範囲ですけれども,この点については,先ほどの藤田委員と田中幹事の御意見では,ウェブ掲載事項と株主総会に際して,各企業の方々が用意する株主総会用のサイトに掲載される情報は一致する必要はないということだったかと思います。ウェブ掲載事項プラスアルファの情報も当然株主総会用のページに掲載してもよいということだと思います。そうしますと,2ページでウェブ掲載期間として,ウェブ掲載事項のみ3箇月というのはどうなのかと。つまり,株主としてはやはり株主総会用のウェブサイトに掲載された情報を前提にして議決権行使などをするわけであって,仮にそれに何か虚偽の情報であったり,ウェブサイト掲載事項以外の情報でウェブサイトに掲載されている情報に虚偽などがあれば,それは当然決議の効力に影響を与える事情だと思います。そうすると,ウェブ掲載期間とウェブ掲載事項の関係を考えた場合に,ウェブ掲載期間を決議の後3箇月とすることを取消訴訟の証拠の確保ということから正当化するのであれば,その対象が狭いのではないかという印象を持ったということです。   3点目は,アクセス通知の内容なのですけれども,現在のアクセス通知の内容として,アからカの事項が部会の資料に挙げられておりまして,現在株主総会の招集通知に実際に記載されている事項を念頭に置きますと,かなりの情報をアクセス通知に書かなければいけないのではないかという気がいたします。例えば,経済産業省の研究会の資料で紹介されているアクセス通知と比較した場合に,現在招集通知に記載されている事項を全てアクセス通知に書かなければいけないとなると,少なくともハガキ1枚では納まらないのだろうなという気がいたしますが,一応そういう想定で,ハガキ1枚で納まらなくて,封書という形で書面を送るということを前提にして御提案されているのかということを伺いたいということであります。   今の話は,アクセス通知の記載事項が多過ぎるのではないかという印象なのですけれども,逆に少な過ぎるのではないかという印象もあります。現在議題の記載の仕方は,取締役何名選任の件であったり,定款変更については定款一部変更の件等となっています。ウェブサイト掲載事項として挙げられている株主総会の目的である事項というのは,やはり議題の記載に限られるのではないかなという気がいたします。そうすると,定款一部変更の件という議題を見ても何なのかが分からないわけで,株主にとっては,アクセス通知で提供される情報が乏しいのではないかという気がしております。   関連してもう1点,これは,確か田中幹事がおっしゃったと記憶しておりますけれども,ウェブサイトのアドレスの話であります。アメリカの例などを参照しますと,プロキシーコム,ボートコムのように非常に簡潔なアドレスになっておりますが,日本の場合,恐らくこのウェブサイトというものは各会社が個別に用意するということを前提にしているような気がいたします。そうすると,どうしても長くなるように思います。現在の電子投票の場合は,イーボートとか非常に簡単なのですね。ですから,余りウェブサイト,長いURLを入力しなくてもいいような工夫というものが,これはもしかしたら実務の方々に工夫していただくということかもしれませんけれども,重要ではないかなという気がいたします。   最後に4点目として,書面交付請求権のA案とB案の話ですが,B案のメリット,B案で定款変更決議を要求する根拠として周知の必要性というものが挙げられております。9ページの辺りに書かれています。この点について,周知の必要性のために定款変更を要求するのは行き過ぎであるという藤田委員の御指摘に私も賛成です。関連して,そもそも基準日が設定されていたにもかかわらず,つまり臨時株主総会のための基準日が設定されていたにもかかわらず,改めて周知しなければいけないということ自体少しおかしいのではないかという印象も持っています。つまり,基準日設定公告が現行法では余り機能していないからこそこういう議論が出てくるのではないかなという気がいたしておりまして,その辺も何か,もしA案,B案とかの今後書面交付請求権の具体的な設計を考える際には,基準日の設定公告が公告として機能していないという状況についても考える必要があるのではないかなという印象を持ちました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○小林委員 どうもありがとうございます。   先ほど申し上げたところに若干付加させていただきたいのですけれども。中堅企業という観点で言えば,全体の議論はあるのですけれども,上場企業,非上場企業等にかかわらず,電子提供あるいは書面による総会関係資料の提供については選択制が望ましいということが私どもの考え方でありますということを改めて申し上げておきます。   ただし,様々な状況によって,例えば,上場企業に義務付けをするというようなことに,もちろん義務付けについては書面交付請求権がどうなるかということにもよるのですけれども,これは,取引所さんの方になるのかもしれませんが,いわゆる一部上場企業とそれ以外の市場では取扱いを当面は別にするというようなことも,場合によっては,考えてもいいのではないかということは検討には値するのではないかと思います。   あるいは規模が大きくないというか,十分な準備期間をどのくらい取れるのかというところで,これが法案化されて実際に施行されるのがいつかということはありますけれども,その準備期間については相当程度考えていただかないと,規模あるいは会社の事情の大小によっては相当な利害があるので,そこの部分については十分に御検討いただきたいということがございます。   あと,ウェブみなし開示できる資料まで書面交付請求に含まれるかということでございますが,これは現時点で定款を変えて,あえてこの形にして,いわゆる書面を送らなくてもいいという立て付けになっているものを,また元に戻して紙で提供することが起こり得るというのは,むしろ電子化に逆行するのではないかなという感覚もございますので,ここについては,やはり現行どおりにしていただきたいというところ,これは先ほど申し上げるのをちょっと失念しておりましたので,追加させていただきたいと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○齊藤幹事 システムについて専門的な知識を持ち合わせておりませんので,思い違いをしているのかもしれませんが,現在,上場会社の配当の支払実務におきましては,株主の口座に直接振り込むか,あるいは領収証を受け取り,郵便局で換金するかについて,選択ができるようになっているかと思います。書面請求権の問題につきまして,このようなシステムに乗せる形で,書面を希望する株主とそうでない株主とを区別して取り扱うことができないものかと,この問題に関連して思っておりました。   それとの関連で,更に申しますと,銘柄ごとの書面請求の有無の違いや,通知後の変更は認める必要はないと思います。デジタルデバイドへの対処というのは,そのような意味での利便性を保障することではなくて,IT環境をそもそも利用しにくいことに対する手当てと理解しております。そのような意味で,B案で,しかも株主単位で対応を分けることで足りるのではないかと思います。   ただ,株主のグループといたしまして,書面でないと本当に困る人たちの存在のほか,中間層として,御本人は書面の方が良いと思っているかもしれないけれど,実際にITを利用してみれば,こっちの方が便利だということを気付く可能性を潜在的に有している層がいて,その層に,ITの自発的な利用を促していくという形で書面の利用率を減らしていくというのが望ましいシナリオではないかと思います。ただ,書面請求権を保障するという以上は,実際に書面を利用している人を不便な状況に追い込んで,書面請求はなるべく利用させないという形の制度設計にはなるべきではないのではないと思います。あるいは,一旦書面請求を放棄して,電子提供を選択したけれども,それが不便だと思い直して後日選択を変更するときに,電子提供の方への変更は簡単だけれども,書面に戻すのは非常に手続上難しかったりして,電子提供の選択が事実上不可逆的なものとなるようなことも望ましくないと思います。潜在的な株主のニーズを掘り起こして,株主のニーズと招集手続の方法のマッチングがうまくいくまでは,その行き来がしばらくは起こるということが前提の制度設計をすべきであると思っております。   そのような制度のコンセプトの延長として,初年度,各株主について,書面と電子提供のどちらをデフォルトに設定するのか,その株主の意思をどういう形で確認していくのかというのが大事になってくるのですが,初年度に,個人株主については,デフォルトとして,書面請求を希望しているものと扱うようであれば,余りこの制度を導入するメリットは大きくないだろうと思いますので,ひとまず電子提供をデフォルトとしつつ,各株主の方で書面が必要であれば,窓口とされているところ,それがどこになるかは今後決まっていくかと思いますけれども,そこにアクセスをして自分で書面請求の手続をするという制度設計にするのが望ましいのではないかなと思っております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。私ども手元の進行案によりますと,もう既に1時間遅れになっていまして,本日は,ほかの点につきましても御意見を是非頂きたいと思うのですけれども。   第1から第3までについては非常に多彩な,また活発な御議論を頂きましてありがとうございました。私の方から,本日の御議論の大勢はこうでしたねと申し上げられるほど簡単ではないといいますか,いろいろな貴重な御指摘を頂いたと思いますので,ひとまず先へ進ませていただきまして,第4と第5です,部会資料2の12ページの「第4 任意に書面を提供することの制限」,それから「第5 ウェブサイトへの掲載の調査及び掲載の中断」について,御意見がございましたらできれば手短にお出しいただければ有り難く思います。 ○古本委員 どうもありがとうございます。手短にお話ししたいと思います。   まず,「第4 任意に書面を提供することの制限」でございますけれども,やはり先ほど来,議論に出ておりますように,可能性としては上場企業については一律導入ということもかなり視野に入ってくると思いますので,やはり柔軟な制度が望ましいと考えておりまして,その観点から,制限規定を設けないというこの部会資料に記載の考え方に賛成でございます。   現実的に考えますと,新制度を導入した後も,任意に議決権行使書面又は議決権行使書面に加えて参考書類,これを書面で個人株主さんなどに送るということが十分想定されます。また,これまでもレポート,それからアンケートの類いでございますけれども,こういうものを任意に同封している会社がかなりあるというふうに伺っておりますので,この新しい制度の下でもそうしたものを同様に送付できるようにすべきであると考えてございます。   それから,「第5 ウェブサイトへの掲載の調査及び掲載の中断」について申し上げます。まず,ウェブサイトへの掲載に関する調査につきましては,上場会社の場合は既に東証のウェブサイトに招集通知の掲載が義務付けられているということもございますので,費用が余り大きくないということよりも,手間の問題とかもいろいろございますので,電子公告調査を義務付ける必要はないのではないかと考えてございます。仮に東証のウェブサイトでも,なお不十分,安全性に懸念があるということであれば,今は,総会後に金融庁のEDINETの方に掲載しておりますので,それを総会前にも掲載できるような仕組みを作っていただければほぼ問題なくなるのではないかと,こういう意見が経団連の会員企業から出てございます。   それとちょっと逆の話になるのですけれども,一方で,この電子化が進んでいったときに,何らかの大規模な災害などで中断時間が今の10分の1の許容限度を超えるようなケースが出た場合どうなるのかといった声もございます。そういった場合の救済と申しますか,対処する規定も併せて御検討いただければと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○藤田委員 念のために,「株主総会資料の電子提供をする場合において,取締役が,株主に対して株主総会の招集の通知の必要的記載事項以外の事項に関する情報を任意に書面により提供することを制限する規定は設けない」とお書きになっていることの趣旨を確認させていただければと思います。「株主総会資料の電子提供する場合において」と書かれていますので,ウェブに電子情報として総会関係情報が開示されていてアクセス通知でアクセスの仕方が分かる,そして書面交付請求によって一定の書面が与えられる,そういう状態が確保されているという状況だと理解してよいと思います。そうなると,もうそれによって会社側としては,株主総会の招集通知に伴う情報提供は履行済みであって,ここで書かれている話というのは,株主総会の招集に際して法律で要求される義務の外の話をしているように私は理解したのですが,そうだとすると,必要的記載事項以外に提供することを制限することを設けないのは当たり前だし,法定記載事項であろうが何であろうが,好きに送ればいいだけの話ということになります。ただし,もちろん任意に送った情報に虚偽の内容が含まれていれば決議の瑕疵につながるといったことはまた別問題としてありますが,いずれにせよ招集手続とし,法律上要求される情報提供の外の話だから,法律上は何も規定しないというように受け取らせていただいてよろしいでしょうか。 ○竹林幹事 基本的には藤田委員から御指摘いただいたような御理解でよろしいのではないかと思っております。 ○稲垣委員 それでは,簡潔に。第4の任意に書面を提供することの制限ですけれども。こちらについては制限を設けないということに賛成です。先ほど来,今回の電子的な提供につきましても株主とのコミュニケーションの質の向上を図るということが目的だというふうに書いてありました。そのとおりだと思うのですけれども,本当に大事なことというのは,議題に関する事項の必要的記載事項はもちろんそうですけれども,それは必要条件であるけれども,必ずしもそれは十分条件ではないと考えております。   本当に大事なことは,例えば,役員,取締役の選任につきましても,会社が抱えている課題が何であって,その課題にどう取り組んでいって,そのためにどういうようなガバナンスや取締役の構成が必要で,なぜそのように考えてこの人を選んでいるかということをきちんと説明していくことが本当に株主とのコミュニケーションの質の向上を図っていくものだと思いますし,このような形にやはり日本の企業もなっていくべきだと思います。   そういった意味におきましては,むしろ必要的な記載事項以外のところで,いかに会社がそういった説明を株主の方々にして,そして質の高い対話ができるかということが大事だと思いますので,この点については,やはり任意的な開示と言いますか,情報提供ができるような形にしておくことは大事ではないかと思います。 ○沖委員 2点質問をさせてください。1点目は,株主総会当日の運営に関する質問です。当日出席した株主から書面を持参していない者から参考資料について書面で見たいという要請が必ず出てくると思いますが,これについては会社が任意に提供することは妨げられないと理解しております。その場合の提供する書面の内容や体裁なのですが,これも会社の判断に委ねられているという理解でいいのかどうかというのが1点です。   もう一つは,ウェブ掲載事項について,先ほど来,複数の委員や幹事の方から御質問がありましたのでちょっと整理のようなことになるのですけれども。二つ問題があって,一つは法定の記載事項についてはウェブ掲載事項と書面で差を設けていいかどうかはもう一度再検討すると,全く任意の事項についてはウェブ掲載事項は何も制限がないと,こういうような理解でいいのかどうかという点なのですけれども。すみません,よろしくお願いいたします。 ○竹林幹事 前半の御質問につきましては,基本的には任意なものである以上,何らの制約が掛かってくるというものではないと理解しております。   後半につきまして,私が御趣旨を十分理解していないかもしれないですが,基本的には任意のものであればそれも同様の仕切りで任意なのだと思います。 ○沖委員 ちょっと私の言い方がおかしかったかもしれません。基本的に法定の記載事項についてウェブに掲載すれば書面提供は要らないという立て付けになっているかと思うのですけれども。それで,何を書かないといけないかはこの部会資料に列挙されているということです。   その法定の記載事項について,例えば,書面よりもそのウェブの方で詳しい書き方になっているということも考えられると思うのですけれども,それについては何らかの規制というものが考えられるかどうかということであります。 ○竹林幹事 先ほど藤田委員,田中幹事から御指摘があった点だと思います。検討しますと申し上げましたけれども,恐らく最低限の要請を満たしているものを提供すれば足りるということになるのではないかと理解しております。 ○沖委員 ありがとうございました。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○小林委員 まず,「第4 任意に書面を提供することの制限」につきましては,これは既にお話があったとおりですけれども,やはり多くの場合,議決権行使書面については同封したいというニーズが非常に強いというふうに認識しておりまして,そういたしますと,恐らく現在の参考書類のうち,いわゆる議題ではなく議案の方の同封の要望が非常に強いと考えています。もちろん株主提案を載せないというとか,そういう不平等な取扱いを行わないという前提で考えておるわけですけれども,議決権行使を特に個人株主に行っていただきたいというそういう発想からすれば,恐らくその二つは最低限同封される場合が多いだろうと考えておりまして,そういうようなことも考えますと,この任意に書面を提供することの制限はないことを前提で考えさせていただけると有り難いと考えております。   それから,ウェブサイトへの掲載の調査についてでございますが,こちらの調査制度は,先ほど古本委員からも御指摘がありましたように,東証等のウェブサイトに掲載が義務付けられているというようなこともございますし,必ずしも自社だけではないところに何か所か載せるようにすれば,株主にとって不利益はないのではないか,ということは調査制度までは要らないのではないかと考えております。   もう一つ,この調査期間がいわゆる電子公告の場合よりもかなり長期になるので,費用はそれほど掛からないとは言いましても,企業規模にもよるのですけれども,その他の今回の決まりの作り方によっては,必ずしも負担が小さいとは言えないのではないかなというレベル感もございますので,そういう意味でも必ずしもこの調査制度を必須とする必要はないのではないかというところを考えさせていただきました。 ○神田部会長 ありがとうございました。   それでは,野村委員,お願いします。それで,大変申し訳ないのですけれども,ちょっと先へ進みたいと思いますので,更に御意見があればまた事務当局に別途お寄せいただくというようなことを考えさせていただきたいと思います。どうしてもということであればもちろん手を挙げていただいて結構でございます。 ○野村委員 先ほど来から議論になっていることと絡めて,調査の話をちょっと一言申し上げたいと思いますが。   先ほど来から私もちょっと発言いたしましたが,例えば,紙で送ってくるときには写真になっているところをクリックするとその人がしゃべりだすというようなウェブに作り込んでいるときに,これというのは内容は一緒なのですけれども,印象が違うという問題もありますので,表現方法等も含めて同一でなければいけないのかどうかということは1点考えていただきたいなというふうには思っています。   その上で,例えば,ウェブに掲載されている事項の中では,今,申し上げたのですが,動画だけは押しても作動しなかったという,こういう事態が起こったときに,それが電子公告であれば,丸ごとずっと同じ情報が流れているかどうかをチェックしているという形になっているのですけれども,何らかの法的な判断でここまでは動いてなくても大丈夫なのではないかとか,ここは問題があったのではないかということを後から検証できるような形でのチェックが本当に働くのかどうかというようなところをしっかりと考えていただいた上で調査の在り方というのを検討していただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,大変恐縮ですけれども,更に御意見がありましたら事務当局までお寄せいただければ大変有り難く存じます。   今日もう一つテーマがありまして,全部はちょっと無理かとは思いますが,そのテーマはお手元の議事次第にありますように,「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備に関する論点の検討」でございます。それで,部会資料3についての説明を事務当局からお願いします。 ○野澤関係官 関係官の野澤でございます。   時間の関係もございますので,重要な点に絞って御説明させていただきます。   まず,第1の「株主提案権の濫用的な行使の制限の要否」におきましては,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置を整備するものとすることでどうかとしております。株主提案権の制度の趣旨は,株主の疎外感を払拭し,経営者と株主とのコミュニケーションを良くしようとするものですが,近時,株式会社を困惑させる目的で議案が提案されたり,一人の株主により膨大な数の議案が提案されるなど,株主提案権が濫用的に行使される事例が見られます。株主提案権が濫用的に行使されることにより,株主総会における審議の時間等が無駄に割かれ,株主総会の意思決定機関としての機能が害されることや,株式会社における検討や招集通知の印刷等に要するコストが増加することが弊害として指摘されております。   裁判例では,一定の場合には株主提案権の行使が権利濫用に該当することが認められておりますが,実務上株主提案権が行使された場合に,株式会社がその株主提案権の行使が権利濫用に該当すると判断することは難しいと指摘されております。   そこで,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置といたしまして,第2で御議論いただきますように,株主が提案することができる議案の数を制限することや,株主による不適切な内容の議案の提案を制限することを提案しております。   まず,第2の「1 株主が提案することができる議案の数の制限」におきましては,「取締役会設置会社においては,会社法第305条第1項の議案(役員及び会計監査人の選任又は解任に関する議案を除く。)の数は,[10]を超えることはできないものとすることで,どうか。」としております。10にブラケットを付けている趣旨といたしましては,制限される議案の数につきましては仮のものとして現段階では提案させていただくものでございます。   本文では,役員等の選任又は解任に関する議案については,議案要領通知請求権に基づき,株主が同一の株主総会に提案することができる議案の数の制限の例外にすることを提案しております。役員等の選解任議案は1候補1議案と解されていることから,役員等の員数に応じて株主が提案することができるようにしておくことが合理的であり,議案の数の制限の例外とする必要があるのではないかと考えております。   また,本文では,株主が同一の株主総会に提案することができる議案の数は10を超えることができないことを提案しております。この提案は,近時,提案数が多いとされている電力会社に対する運動型株主の提案に係る議案の数も多くて10程度にとどまっていることや,株主が同一の株主総会に議案を何十も提案する必要があることがまれであることなどを踏まえたものでございます。   本文の(注1)は,株主が提案することができる議案の数を制限する場合におきましても,株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を一つの議案として提案したときにおける定款変更議案の数え方についてどのように考えるかを問うものでございます。   定款変更議案の数え方につきましては,現在の株主総会の実務を前提といたしますと,関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案であっても,株主が当該議案を分けて提案しなければ,形式的には議案の数は一つであると考えられるように思われます。しかし,株主がこのような定款変更議案を提案した場合には,定款変更の内容の固まりごとに複数の議案が存在すると考えることもでき,そのように考える場合におきましては,定款変更の内容の固まりごとに複数の議案に数の制限が及ぶとも考えられます。   ただし,そのような取扱いが会社提案に係る定款変更議案に及ぼす影響など,現在の株主総会の実務に与える影響を踏まえまして,定款変更議案の数の考え方につきましては御議論いただければと考えております。   なお,本文におきましては,議題提案権に基づき提案できる議題の数及び議場における議案提案権に基づき提案することができる議案の数については制限しないものとしております。議題提案権につきましては,実務上,株主提案権の濫用的な行使が問題となっている株主総会参考書類を交付しなければならない会社におきましては,株主が議題提案権を行使した場合において,議題に対応する議案の要領を通知しなかったときは,株式会社はその株主の提案を拒否することができると解されることなども踏まえますと,議題提案権については数の制限をすることは相当でなく,またその必要性も高くないのではないかと考えております。   また,議場における議案提案権につきましては,取締役会設置会社におきましては,株主総会は招集通知に記載された目的以外の事項については決議することができないことや,いわゆる修正動議の範囲につきましても目的事項から一般的に予見される範囲にとどまること,議場における議題提案権の行使態様などによってはその議案や修正動議を全て取り上げなければいけないものではないと解されることなども踏まえますと,議場における議案提案権につきましても数の制限をする必要性は高くないのではないかと考えております。   また,本文におきましては,取締役会設置会社以外の株式会社における株主総会につきましても,権限分配なども考慮しまして,数の制限はしないこととしております。   続きまして,第2の「2 不適切な内容の提案の制限」では,「会社法第304条及び第305条の規定は,次のいずれかに該当する場合には,適用しないものとすることで,どうか。」としております。   ①といたしまして,「株主が専ら人の名誉を侵害し,又は人を侮辱する目的で同法第304条の規定による議案の提出及び同法第305条の規定による請求(以下第2の2において『株主提案』という。)を行ったとき。」,②といたしまして,「株主が専ら人を困惑させる目的で株主提案を行ったとき。」,③といたしまして,ここでは二つの案を提案させていただいておりますが,「[株主が株主総会の適切な運営を妨げ,株主の共同の利益を害する目的で株主提案を行ったとき。/株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるとき。]」としております。   なお,補足説明で記載いたしましたとおり,議案の数の制限と同様の理由によりまして,議題提案権については不適切な内容の制限をしないこととしております。   続きまして,本文の①から③までの事由についてそれぞれ御説明させていただきます。本文の①は,株主が専ら人の名誉を侵害し,又は人を侮辱する目的で株主提案を行った場合に,当該株主提案を行うことができないものとすることを提案しております。株主が専ら人の名誉を侵害し,又は人を侮辱する目的で株主提案を行った場合には,正当な権利行使とは言えませんので,このような株主提案を制限することが考えられます。   また,本文②は,専ら人を困惑させる目的で株主提案を行った場合に,当該株主提案を行うことはできないものとすることを提案しております。人の名誉侵害や侮辱に至らない場合でありましても,株主が人を専ら困惑させる目的で株主提案を行ったときは,株主総会の活性化を図ることを目的とする株主提案権の制度の趣旨に反するのみならず,第1で申し上げましたように,株主総会における審議の時間等が無駄に割かれることになることなどもありますので,嫌がらせ的に株主提案権制度を利用することを防止するために,このような株主提案を制限することが考えられます。   最後の本文③は,(注)に記載いたしましたとおり,株主が株主総会の適切な運営を妨げ,株主の共同の利益を害する目的で株主提案を行った場合に,当該株主提案を行うことができないものとすること,又は株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがある場合に,当該株主提案を行うことはできないものとすることのいずれかを択一的に提案するものでございます。   株主提案権は,株主総会において行使されるものとして,株主総会の適切な運営との関係において制約を受けると考えられますことから,株主が株主総会の適切な運営を妨げる目的で株主提案を行った場合や,株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられるおそれがある場合などにつきましては,先ほど申し上げた株主提案権の制度の趣旨に反するだけではなく,株主総会の審議時間が無駄に割かれるなどの弊害も生ずることとなり,結果として株主の共同の利益が害されることになりますので,このような株主提案を制限することが考えられます。   本文③におきまして,株主の共同の利益を害する目的を要求する場合と当該目的を要求しない場合というように二つの案を提案させていただいている趣旨でございますが,株主が株主総会の適切な運営を妨げ,株主の共同の利益を害する目的で株主提案を行ったときという要件とした場合につきましては,株式会社側において株主の主観的意図の有無を判断し,立証することが困難であるという御指摘等も考えられることも踏まえまして,株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるという要件も併せて提案するものでございます。   時間の関係で,第3以下につきましては次回また改めて御説明させていただきます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   今おっしゃっていただきましたように,部会資料3については7ページから「第3 その他」がありますけれども,その説明と御審議は次回とさせていただきたいと思います。   そこで,今御説明のありました部会資料3の第1と第2,すなわち「株主提案権の濫用的な行使の制限の要否」と,「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置」について皆様方から御質問,御意見をお出しいただきたいと思います。どなたからでも結構です。 ○古本委員 ありがとうございます。   まず,第1点目の「株主提案権の濫用的な行使の制限の要否」でございますけれども,前回も申し上げましたが,これを制限するための措置を整備することに賛成でございます。こういった権利が濫用的に行使されますと,会社においては,提案についての対応の検討,それから招集通知の印刷,郵送,こういったところで,無用の手間とコスト負担を余儀なくされます。また,総会当日におきましては,株主提案に関する趣旨の説明,会社からの反対の意思表明など,必要以上に時間を取られまして,ほかの株主の発言の機会を制約することになってしまいます。会社と株主との建設的な対話の場の一つとしての株主総会の運営に悪影響を及ぼすことにもなりますので,株主提案権の濫用的な行使,これは制限すべきであると考えてございます。   第2の「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置」のうちの議案の数の制限でございます。部会資料では役員選任議案等を除いて10個までとすることが提案されております。まず,この数としての10個についてですけれども,やはり実務の感覚からはいかにも多いということを申し上げざるを得ないと思います。   元々数の面のみで濫用か否かを判断するということは非常に難しいと考えてございまして,判例上も10個を超えれば濫用であるというふうになっているわけではないと理解してございます。つまり,10という数字が必ずしも濫用か否かのメルクマールになるというわけではないということからいたしますと,10という数字が座りが良いのかもしれませんが,ほかの数字を考えてもおかしくはないのではないかと思う次第でございます。   後で出てまいりますけれども,行使要件が現行法では非常に緩く設定されていると考えておるわけでございます。これとの絡みで,やはり一人10個までとなりますと,同じ株主グループでも二人,三人とこの要件を満たせば,別々の主張という形をとって20個,30個といった数の提案が可能になってしまうという問題がございます。取締役会という株主から信任を受けた機関,これが提案する議案の数が役員選任議案を除きますと,通常は,一つか二つということになっておりますので,これとの比較で見ましても1株主に必ず10個まで保障するというところまで本当に必要なのだろうかという思いがございます。   今申し上げましたように,濫用という観点からだけでは,数において上限設定をするのは難しいと思いますので,一人の株主が総会の時間を独占する,そういうことによる弊害の防止という視点も加味してこの上限の数を検討いただいてもよろしいのではないかと思います。   仮に10個の提案がなされたといたしまして,1議案当たり趣旨説明が5分,会社の反対意見表明,質疑で10分といたしますと,全部で150分掛かるということになります。総会実務では,総会の場では,できるだけ多くの株主に発言の機会を確保するという趣旨から,質問につきましても一人1問ですとか,3問までといったような制限を設ける会社が多いのではないかと思います。これと同じような考え方から,株主提案の上限個数につきましても一人につき1個ないし3個というような数にすることで十分ではないかと考えます。   次に,「役員選任議案を除いて」という部分ですけれども,部会資料に記載のとおりにいたしますと,仮に役員選任議案で10個提案したといたしましても,それは0個というふうにカウントされるということで,あと10個,結局,20個提案できるということになってしまいます。役員選任議案については,全くカウントしないというのはやはり妙な気がいたしますし,先ほど申し上げた総会時間の独占の回避という視点から見ますと,役員選任議案もほかの議案と同じことになりますので,合理的な制限が設けられてしかるべきではないかと思います。   それから,(注1)の記載になりますが,株主が関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案を一つの議案として提案したとき,この定款変更議案の数え方でございますけれども,資料の3ページ目の(補足説明)の2にありますように,内容の固まりごとに判断するということにつきましては,異論はございません。ただ,会社側が定款変更を提案するといったときの議案の数え方との関連もございますので,この定款変更議案につきましては業務執行の範囲に属する事項については提案できないとすることも併せて御検討いただきたいと考えてございます。   なお,部会資料では議題提案権,それから議場における動議については制限しないとなってございますけれども,これらも制限の対象としてもよろしいのではないかと思います。議題提案権を制限しない理由につきまして,先ほど御説明ありましたけれども,必ずしも法文上明確でないということであれば明確に規定してはいかがかと思いますし,議場における動議につきましても,場合によっては,実務で対応しにくいといったケースもございますので,制限の対象に含めてもよろしいのではないかと思います。   それから,第2のうちのもう一つの「不適切な内容の提案の制限」でございますけれども,これは,記載されている御提案に賛成でございます。③につきましては,先ほど御説明いただいたとおり,やはり株主の主観に属する提案の目的を立証するということは困難を伴うと思われますので,後の方の文言の,「株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるとき」とする方が望ましいと考えます。   なお,議題提案権について制限しないとしている点につきましては,先ほど申し上げたとおりでございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○梅野幹事 少し違う観点からと申しますか,むしろ反対の方向から,まずは論点等を明確にするために発言させていただきます。   濫用的と言えるような事例をどう評価するか。株主提案権の行使を制限する立法事実として十分なのかというところについては,いろいろな意見があり得るだろうと思います。部会資料3の8ページにございますとおり,平成27年7月から28年6月総会において,約3,500社と言われる上場会社のうち,50の会社で提案権行使がされたというように理解しております。それにつきましては,今日配布された『資料版商事法務』の資料においても同様の記載がされているところかと思います。   このうち何社かについては,支配権争いに伴う株主からの提案権の行使であり,何社かについては,電力会社における運動型株主によるものであり,あるいはこれらの中には,定款変更等で不適切な内容と思われるものも含まれていると思います。このような事実をどう評価するかという問題だと思います。   特に数・議案数の観点から制限すべきかについては,より慎重に検討する必要があるのではないかと思います。私が何か事実を見落としているのがあれば御教示いただきたいと思いますが,2013年以降の商事法務の『株主総会白書』というのを見てきたのですけれども,提案数は会社ごとに数個あるいは10個以内にとどまっているというのが多いというように認識しています。部会資料3の2ページにも,電力会社に関する運動型株主の提案に係る議案の数であっても,多くても10個程度にとどまっているという指摘がございます。もちろん,過去に一人の株主から極めて多くの株主提案がなされたことがあったということは認識しております。そういった提案に対しては会社側が真摯に努力をされ,交渉されて議案数を減らすといったような試みもされてきたところだと思いますけれども,そういうある意味ごく一部というか少数の例をもってして株主提案権の行使という重要な権利について数を制限しなければいけないのかどうかという点については,慎重に検討する必要があるのではないかというように考えています。   また,提案権の行使によってどれだけ総会が長時間化しているのかということは必ずしも明らかではないように思います。総会の適正な時間をどれぐらいに想定するかということにもよるかと思いますけれども,提案権が行使された場合,当然,先ほど御指摘があったように,ある程度時間は掛かることになります。ただし,その会社が置かれている状況,あるいはその総会における審議の必要性とか株主の利益といった観点から,本当に許容できないほどの長時間を要しているのかという点については,個別の事案ごとに見ていく必要があるのではないかと思います。仮に提案権行使がない場合であっても,例えば,事業報告に対する質問とか,役員選任議案に対する質問ということで,同程度の時間を要するような場合もあるのではないかと考えています。   私は,株主総会の運営の実務に携わっておりますが,最近の総会は相当運営が洗練されてきていて,提案権の行使に伴い当然時間は取られますけれども,それでも株主からの発言は広くお受けして,なるべく対話型の総会を試みているという努力もされているというように認識しております。   また,本当に数の制限でうまくいくのかという点も,若干疑問があると思っています。部会資料3の3ページには定款変更の内容の固まりごとに複数の議案が存在すると考えることができるとありますが,その議案の固まりをどう分類するかというのは大変難しい問題のように思え,そう簡単に結論を出せないのではないかなというのが1点目。次に,株主ごとに10個なり何個なりと制限したところで,何人かの株主が提案されると結局同じような事態になってしまうのではないかというような懸念もあるのではないかと思います。そういった意味で,議案の数による制限については,慎重に御検討いただければと思う次第です。   定款変更議案等で不適切と思われる議案があるのは,確かであると思います。個人的には,これに対応するために法律上何らかの定めを設けることはあり得るだろうと思います。ただし,今回提案されている工夫されている三つの案,部会資料3の5頁に記載されている①から③までの案,そのうちの3番目の案については二通りの提案がされていますが,実際これが採用されたとしても,株主提案がなされた段階で,いずれにせよ会社としては,これらの要件に該当するか否かという非常に難しい判断を要求されることになるだろうと思います。通常の会社としては取消事由にはならないとしても,損害賠償義務を負うということ自体避けたいという感覚だと思いますが,そういった状況において非常に難しい判断を強いられる。そうであったとしても,御提案いただいているような単なる一般条項ではない,何らかの形で具体化した条文があれば,それは実務上役に立つ面がある,取っ掛かりにできるというようにも思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○沖委員 ありがとうございます。   株主提案権の濫用的な行使の制限のための措置ですが,その必要性や要件の設定については立法事実の慎重な評価が必要なことは事実だと思います。そのための資料ですけれども,先ほど御指摘がありました,公益社団法人商事法務研究会の刊行する『資料版商事法務』,この毎年9月号に前年の7月から当年の6月総会までの具体的な株主提案権の事例が整理して毎年掲載されております。これを過去に遡って見ますと,正直,やはりその提案の中身は問題があるのではないかというものが多数見られます。そういったものをどのように評価するかということになってくると思います。   これを,株主総会の実質的な機能という観点から見てみますと,この企業法務の分野でも総会の運営というのはここ二,三十年で大きく変化した分野でありまして,私が弁護士登録した当時は株主の対応とか質問への回答というのは一種の有事対応であるかのような扱いでしたが,今では様変わりで,会社が株主の質問に対して丁寧に答えると。時間の許す限り答えると。そういった対応はされておりますので,本当に対話ということを考えるようになっているかと思います。   ただ,そうは言いましても,株主総会の審議時間というのは,おのずから合理的な制約はあるかと思うのですね。例えば,朝10時に始めますと,正午までが一つの勝負なわけです。そういった限られた中で公平に株主の質問を受けたり,株主総会の機能を全うするという観点も重要だと思いますので,そういった機能から問題になっている株主提案権の制限の必要性の有無というのを考える必要があるということであると理解しております。   この制限をする場合に,要件の設定については,部会資料では目的の観点と内容の観点からそれぞれ提案がされていると思います。そこで,株主名簿の閲覧請求等ですと,これは基本的に行為としては同じでありまして,目的の点から評価するほかはないわけです。ただ,株主提案権というのは正に提案の内容があるわけでして,その内容面からのやはり制限措置というのは検討する必要があると思います。   その際に,まず,総会の適切な運営を妨げ,株主共同の利益を著しく害するという要件が提案されていますが,この前半の総会の適切な運営を妨げるかどうか,これは株主総会の会議体としての目的との関係でどうかということだと思います。これと後半の株主共同の利益を著しく害するというのは,これは言わば,議案の内容そのものが問題になってくる。もし仮にその議案が可決されたときに会社にどういう影響を及ぼすかということだと思いますので,それぞれこの二つの要件は分けて,独自の要件として設定することが妥当ではないかと考えます。   あとは,『商事法務』の具体例を見ましても,問題と思われる議案のほとんど全てが定款を変更することによって代表取締役に特定の行為を義務付けるというそういう形態のものとなっておりますので,そういったものに問題が多いことは事実だと思います。ですから,この要件の設定に当たっては,そういった定款変更議案の濫用に対応できるものでないといけませんので,その意味でも株主共同の利益を著しく害するという要件は検討する必要があるのではないかと考えます。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○大竹委員 御指名いただきまして,ありがとうございます。   いろいろ議論を興味深く拝聴しておりましたが,裁判所の立場から少し観点を変えまして,株主提案権で苦労しているとすれば,株主提案権に基づく保全処分ということになりますので,少し私の部で担当させていただいた保全処分の実例を御紹介させていただきます。   事案は,株主である債権者が同社の代表執行役である債務者らに対して株主提案権に基づいて招集通知及び参考書類に議題,議案の要領及び提案の理由の記載を求める仮処分の申立てであります。当初は20個の議題,議案の要領及び理由の記載等,これは反対提案とか修正提案も含んでいたようですが,その20個の提案と,それから7個の理由の記載の補充を求めて申立てがされました。   申立ては4月30日でありました。株主総会の予定日は6月1日以降とされておりました。こういう保全処分の申立てを受けますと,裁判官としては,現行法の下では,審理の終期は印刷に付す日だなと,そうすると会社の方にいつ印刷に付しますかというのをお聞きして,それまでにできるだけ裁判所の方で判断をするようにしたいと考えるというのが多くの裁判官のマインドかと思います。   その事件でも,保全の決定は5月9日にされ,一部認容でしたので,保全異議の決定は5月15日にし,保全抗告がされまして,5月27日に,これはもう印刷に付された後ですけれども,高裁の方で抗告審の決定が出たということになります。一般論としては,この保全の審理,特に当初の審理では,掲載を求める議案が明らかに理由がないあるいは違法であるといったものは「もう取り下げたらどうですか」という勧告をする。それから,表現ぶりが不穏当ではあるが少し直せば掲載が認められそうなものは,申立人には「少し直したらどうですか」と言い,会社の方には「そう直すと言ってるから載せたらどうですか」というような和解のようなことをして,取下げをしてもらうというようなことをして,残ったものについては保全裁判所として判断をすることになりますが,時間との闘いということになり,裁判所としてはなかなか厳しい類型の事件ということになります。   その観点からは,提案できる議案の数に数の上で制限を設けていただくというのは,基本的には方向としては賛成であります。それが,10個がいいのかどうかというのはよくいろいろな御議論をいただいたらよろしいかと思います。   その点から裁判所からの質問ないし要望といたしましては,もう出ているところでありますけれども,1個の数の数え方ということになります。特に,実際問題としては株主が1個の議題あるいは議案の要領,提案理由の中に内容的に複数のものを盛り込んで1個の株主提案権の行使だと主張するというのは,容易に推察されるということになりますので,その点はよくこの場でいろいろ御議論いただいて,裁判所も勉強させていただきたいと思います。   それから,部会資料3の5頁に①,②,③と挙がっていることに関連して,二つほど質問ないし要望がございます。   一つ目は,この5ページの①の「株主が専ら人の名誉を侵害し」というこの類型においては,そういう目的で株主提案権を行使するという,①はそういう表記になっていますが,他方で,6ページの(補足説明)の2の第2段落の終わりのところは,「客観的にみて人の名誉を侵害し,又は人を侮辱する事実があるかどうかが考慮要素になる」という書き方になっています。この客観的にみて考慮要素になるというのがどういう御趣旨なのか。特に名誉毀損訴訟を担当している裁判官からは,これは真実性の証明を許すのか,真実だという主張が出てきたときにどう扱うことになるのかというのは疑問に感じるところですので,少し御議論をいただけましたら有り難いと存じます。   二つ目は,同じく5ページの①の類型に関連して,実際には取締役の解任事案などでこの手の取締役の不行状というのが出てきて,その中にいろいろ真実かどうか分からないけれども,その取締役の社会的評価を低下せしめるような事実が摘示されるということはままあるところかと思います。その場合のまとめ方は,そうであるので取締役の適格性には疑問がある。」という提案の理由になるわけなのでしょうけれども,そういう提案の理由になったときのこの種の取扱いと言いますか,それを「専ら人の名誉を侵害する目的」で株主提案権を行使したのか否かの中で判断するというのもなかなか厳しい感じがします。実際に審理を担当する者からはそのような疑問を持ちますので,またおいおい御議論いただけたらと存じます。 ○神田部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○前田委員 この濫用的な行使を制限するための措置として二つ挙がっているうち,重要なのは,後者の不適切な内容の提案の制限の方だと思います。ここは表現が非常に難しいところだとは思うのですけれども,今回せっかく明文規定を設けるのであれば,できることならもう権利濫用の一般規定に頼らずに会社法だけで完結できるように,濫用的な行使を全てカバーできるような形にするのが一番望ましいのではないかと思います。株主名簿の閲覧請求,会計帳簿の閲覧請求,あるいは説明義務の規定などは全てそのような自足的な規定になっているのだと思います。   今回の案は,③が広く使えそうな書き方になっており,これら①から③で権利濫用と考えられる場合を全てカバーできるのかもしれませんけれども,あるいはより一般的な包括規定になり得るようなもの,例えば,「株主であることと関連しない利益のために株主提案を行ったとき」というぐらいの,もう少し一般的,抽象的な場合を定めておくことも考えられるのではないかと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○小林委員 どうもありがとうございます。   まず,株主が提案することができる議案の数の制限というところなのですが,先ほど実務的な感覚については古本委員の方からいろいろお話がありましたので,そちらと概ね同じなのですが,やはり株主総会の運営上,株主との対話,特に質疑等を一般的な意味で充実させるという意味では,余り議案の数が多過ぎると,その他の言わば,説明に時間が取りにくいということがあるのと,もう一つ,質疑はよろしいのですが,議案ということを考えますと,株主全体の利益に関わる熟度の高い提案であることが必要だと考えるとしますと,一般的に可決されるところまでいくかどうかは別としても,かなり多数の賛同が得られるような議案でないとおかしいのではないかなとそういう感覚がございます。   そうすると,一人の株主からそういう議案がたくさん幾つも出されるのかというと,ちょっとそういうレベルのものが10個も出てくるというのはどう考えてもそこまではいかないのではないかと。やはりそういう意味での熟度のレベルからいくと,よくて二,三個ぐらいではないかなという感じがしますので,先ほど古本委員から1個あるいはということなのですけれども,私どもの検討としては3個ぐらいが限界なのではないのだろうかという感覚を持っております。   それから,不適切な内容の提案の制限については,こういう文言を考えていただいて大変有り難いところでございますが,特に③の方はやはり客観的要素が盛り込まれている方がいいと思いますので,後段部分の方がいいのかなと思うのですが。   一つ,①,②につきまして,人の名誉を侵害し,人を侮辱すると書いてあるのですけれども,もう一つ人を困惑させるというところで,「専ら」という文言が付いているのです。これだと非常に厳しい基準かなと。そこをどういうふうに実際認定するのかということはあるのですけれども,やはり「主として」くらいの感じで,「専ら」ではなくて,もう少しレベル感を下げていただいてもいいのではないか。「主として人の名誉を侮辱し」とか,あるいは「主として人を困惑させる」というぐらいでもいいのではないか。この辺はちょっと技術的な問題はもちろんおありかもしれませんが,私どもの印象としてはそういう感じです。   もう一つ,③につきましても株主の共同の利益が著しく害されるおそれがあるというふうになっているのですけれども,これにつきましても「著しく」とまで言う必要があるのかどうか,ちょっとこの辺については検討いただきたい。私どもとしてはむしろ「著しく」はない方がいいと考えておりますが,御検討いただけると有り難いなというところでございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○加藤幹事 ありがとうございます。   2点意見を述べさせていただきます。   1点目は,株主が提案することができる議案の数の制限についてです。様々な御意見を伺っておりまして,議案の数を制限する根拠を濫用の抑止という観点だけに求めるのか,それとも株主総会を通じて株主と会社の間で意味のある対話が行われることを確保及び促進するという観点も考慮すべきとの立場が存在するように思います。   数の制限を,むしろ濫用というよりは,後者の言わば,株主総会で意味のある対話が行われることの確保及び促進という観点から位置付けるのであれば,10よりも少し下げてもいいかなという気がいたします。   それに対しまして,濫用のメルクマールとしての数ということになりますと,実は10個では少な過ぎるのではないかと思います。数のみに着目して株主提案権が濫用されているという状態は,もっと数が多い場合を指すように思います。   繰り返しになりますが,提案の数を制限する意味には二つあって,制度設計をする際に両者をどのように考慮するかによって,結論が異なる気がしております。   2点目は,不適切な内容の提案の制限に関してなのですが,具体的な提案として人の名誉であるとか人を困惑させるとかと非常に一般的な規定の仕方がなされています。これは会社を困惑させるとか,役員とかを困惑させるとかということだけでなくて,より一般的に会社とは一見関係がないような人を困惑させるような提案も拒否できるとか,そういう趣旨を含んでいるのかどうか確認させていただければと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○竹林幹事 ここで専ら念頭に置いているのは会社,その関係者を困惑させるというようなことでございまして,具体的な提案が一般的に人を困惑させるようなものは会社も困惑させるのかどうか,ちょっとその辺り具体的なものをどのように念頭に置かれているのかにもよりますけれども,ここでは人と書いておりますが,会社,その関係者を困惑させるというようなことを念頭に置いて考えております。 ○神田部会長 よろしいでしょうか。   ありがとうございました。   予定の時間をちょっと七,八分過ぎているのですけれども,ほかに御意見があれば伺いたいと思います。 ○松井(智)幹事 手短になのですけれども。第2のところで,たくさんの株主が共同して提案をしてきたことが判別できないと結局減らないのではないかというお話があったのですけれども。会社の側から複数の株主に対して,あなたたちの議案は共同していますので,この点についてはまとめていただけないかという働きを行った上で,これをあえて拒否する場合には第3の権利がないという方に持っていくというやり方というのもあるのかなと思いました。   それとの関係なのですが,複数の株主が10個が10個重複しているわけではなくて,一部分が重複しているけれども,ほかの部分は独自であるというようなそういう提案の仕方をしてきたときに,併せて10個と数えるというこの数え方はどうするのだろうというのがちょっとよく分からなかったので,この点がもし御意見,想定があるようであれば伺いたいということであります。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○竹林幹事 松井幹事の今の御質問なのですが,一部重複というのは内容の一部重複でなくて,人の一部重複をおっしゃっているのでしょうか。 ○松井(智)幹事 内容ですね。 ○竹林幹事 内容の一部重複の問題は,恐らくそれはどこまでが独立した議案なのかということに関わってくるのだろうと思っております。どこまでが一つの議案かということを判断した上で重複があるということになってきた場合については,今でも同じ議案が重複しているようなときにどのように取り扱うのかということとの関係もありますが,その重複した議案を取り下げていただければ残りの議案の数で数えるということになってくるのだと思います。関連ある議案についてどこまでを一つと見ていくのかということ自体に難しい問題があるのだろうとは思っております。 ○藤田委員 私からは,一つ目の提案と二つ目の提案各々について簡単に申し上げたいと思います。   一つ目の提案で,議案の数の制限については,具体的な数字について,今日は意見は控えさせていただきたいと思います。ただ,具体的な数字はいくつにするにせよ,御指摘のありましたとおり,議案の数え方をある程度確立していかないと議案数の制限はおよそ機能しないルールになります。数え方を全部裁判所に丸投げするのも,ちょっと無責任かなという気もしますので,もし可能なら,何らかの形で議案の数え方に関する基本的な考え方を,最後条文になるかどうかはともかく,議論はしておいた方がいいとは思います。   余りいい例を思い付かないので突飛なことを言って申し訳ないのですが,国会法では憲法改正の発議の仕方について規定されていて,国会法68条の3では,「憲法改正原案の発議に当たつては,内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする」とあります。バラバラに全部1条ずつ国民投票にかけたりしますと,およそ両立しないような条文が残ってしまったりしかねない,例えば,両院制廃止する憲法改正をしたのに両院制を前提とした特定の条文が残ったりすると困る,だから関連する事項ごとに区分して賛否を問うということでしょう。論理的に関係があって,切り離して判断することが望ましくないようなものは,少なくとも一つと考えなければいけないという発想が表れている条文だと思います。今の国会法と同じ条文で規定しただけで,裁判所にとって有益な指針になるかどうかは分からないのですが,何もない白紙で委ねるのもどうかと思いますので,少なくとも一定の関連性のある議案を一つと数えるという発想を示すための何らかの規定を置くことができないかを議論することが望ましいと思います。   2番目の内容の制限の方ですけれども,この三つでおよそ足りるかという,前田委員の言われた問題もあるのですが,それとは別に③の内容について確認させていただければと思います。先ほど沖委員からの御意見もあった点です。私は,この条文――前の方でも後の方でもいいのですが――の読み方として,株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,その結果株主の共同の利益が著しく害される,つまり,運営が妨げられることによって共同の利益が害される場合を規定しているものと読みました。したがって,とんでもない内容の提案で,万一これが可決されたら会社が大変なことになるから共同の利益に反するとして株主提案を取り上げないという扱いは,少なくともこの条項によってはできないと読みました。内容が悪い提案を否決するのは,総会において株主が行うべきことで,万一このような内容が可決されたら困るという理由で提案それ自体を拒絶することはできない。しかし,そのような提案を取り上げること自身が株主総会の運営にとって望ましくないと言えるような場合,愉快犯的な提案でほかの議案に使うことができたはずの株主総会の時間を割いて議論するのが時間の無駄としかいいようがなく,株主共同の利益に反するから取り上げないというような扱いを認めるものだと読ませていただきました。それが正しいのかというのが確認したい点です。   もう1点は,「株主総会の適切な運営」という言葉で表現されている内容ですが,総会当日における議場での議事の進行のみならず,株主総会の準備も含め適切な運営と書かれていると私は読んだのですけれども,それでよろしいでしょうか。例えば,膨大な提案を直前になって送りつけて,会社側としておよそ対処もできず,株主総会の準備に支障を来すということは,やはり「適切な運営が妨げられる」という文言の中に含まれていると理解したのですが,それで正しいでしょうか。最後の2点は事務局への質問です。 ○神田部会長 ありがとうございました。では,事務当局から。 ○竹林幹事 記載の趣旨はいずれも藤田委員から御指摘いただいたとおりでございまして,株主共同の利益と書かせていただいておりますのは,株主総会の運営に関わるような利益であると考えております。   また,株主総会の適切な運営でございますが,これは議事そのもののみではなく,会社側の事前の準備等のコストといったものも株主の共同の利益に当たってくるということを念頭に置いて考えております。 ○神田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,まだ御意見もおありかと思いますが,予定の時間も超過しておりますので,なかなかこの会の運営も難しいのですけれども,本日はこの辺りとさせていただいて。更にお気付きの点がありましたら,事務当局までお申出いただければと思います。   このテーマについては次回に第3について御審議いただきます。第1と第2についてはいろいろ御議論いただきましたが,言い残したということがあれば第1と第2についても次回冒頭で補足的に御発言いただければと思います。   それでは,次回の日程等について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 次回の日程でございますが,6月21日水曜日の午後1時30分から午後5時半まで。場所は,東京地方検察庁の15階総務部会議室1531号室となります。また,次回は,本日の積み残しと併せて,役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備について御議論いただきたいと考えております。   本日積み残しが生じましたことと,思いのほか時間が掛かるということもございまして,内容等を踏まえまして,今回は予定の時間内に終わらなそうだという場合には,もしかしたら延長するというようなことを御相談させていただくこともあるかもしれませんが,どうぞよろしくお願いいたします。 ○神田部会長 そういうことでございます。まあもう1回余分にやるよりは多少延長でという方が皆様方にとっても良いのではないかと思いますけれども,またその辺も含めて御相談させていただくと思いますけれども,よろしくお願いいたします。   本日は,実質的には個別のテーマの第1回目に当たる第2回会議だったのですけれども,大変熱心に御審議いただき,貴重な御発言を多数頂きまして,ありがとうございました。   これで散会いたします。ありがとうございました。 -了-