法制審議会 民事訴訟・民事執行法部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  平成15年5月30日(金)  自 午後1時00分                       至 午後4時50分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題  民事訴訟法及び民事執行法についての論点整理について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● それでは,定刻が参りましたので,民事訴訟・民事執行法部会第2回会議を開催させていただきます。           (委員・幹事の異動紹介省略)  本日の議事の進め方についてお諮りいたしたいと思います。  本日は,事務当局作成の部会資料2によりまして,前回議論していただきました民事訴訟法及び民事執行法についての検討課題で採り上げられました論点や,その他の論点につきましての整理を行うことを予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは,早速配布資料の確認を○○幹事からお願いいたします。 ● それでは,資料の確認をさせていただきます。  まず,事前送付資料でございますが,民事訴訟・民事執行法部会資料2「民事訴訟法及び民事執行法についての論点整理」というものがございます。本日は,これに基づきまして御審議いただければと考えております。  それから,本日席上配布資料が幾つかございます。まず,事務当局の方から参考資料でございますが,参考資料1が「司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案新旧対照条文(抄)」でございます。こちらの方は,この法律案におきまして民事訴訟費用等に関する法律が改正されておりますので,その新旧対照表でございます。後ほど督促手続のオンライン化のところで御紹介したいと思っております。  続きまして,参考資料2でございますが,「刑事事件関係書類等に関する現行法の規律についての整理」というものでございます。これにつきましても,後ほど刑事事件関係書類等の文書提出命令の関係で,資料として御覧いただければと思っております。  続きまして参考資料3でございますが,不動産競売手続のチャート図でございます。現行法のもとにおきます手続の流れを図で示したというものでございます。不動産競売につきましての論点の整理,あるいは裁判官と裁判所書記官の権限・役割分担の見直し,こういったところにつきまして御参考にしていただければと考えております。  それから,続きまして最高裁判所の方から資料をいただいております。一つが,「督促手続オンライン処理システム全体概念図(案)」というものでございます。これも後ほど督促手続のオンライン化のところで最高裁の方から御紹介していただけばと考えております。  それからもう一つ,「民事訴訟・民事執行法部会(第2回)配布資料(民事執行関係)」という資料がございます。民事執行関係の論点を御議論いただきます際に,その統計的な資料といたしまして御参照していただければという趣旨かと存じます。これにつきましても,後ほど御説明をお願いできればと考えております。  それから,弁護士の委員・幹事の方々からペーパーをいただいております。○○委員,それから○○幹事,○○幹事の方からそれぞれペーパーをいただいておりますので,また該当の箇所で御紹介いただければと思っております。  配布資料の確認は以上のとおりでございます。 ● ただいまの資料説明につきまして,何か御質問等ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。  それでは具体的な審議に入りたいと思います。  まず初めに,部会資料2の第1「民事訴訟法についての論点整理」,1の「督促手続のオンライン化関係」でございます。○○幹事から御説明をお願いいたします。 ● それでは,部会資料2の第1の1,「督促手続のオンライン化関係」につきまして御説明いたします。  ここのところでは,督促手続のオンライン化といたしましてどのような手続をオンライン化するのか,またオンライン化に当たりまして問題となる点につきまして,その概略を整理させていただいております。  まず(1)でございますけれども,インターネットを利用した支払督促の申立ての方式・内容でございます。すなわち,支払督促の申立てをインターネットを利用してすることを認める,こういうような考え方でございます。具体的には,「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」という法律がございます。一般的には,「行政手続オンライン化法」といった呼ばれ方をしております。この法律の3条に行政機関等に係る申請のオンライン化についての規定がございまして,基本的にはこの3条と同趣旨の手当てをすることとしてはどうかというものでございます。  まずアでございますけれども,最高裁判所が定める簡易裁判所の裁判所書記官に対しては,電子情報処理組織を使用して支払督促の申立てができることとする,こういうものでございます。  次にイでございますけれども,民事訴訟法384条によりますと,「支払督促の申立てには,その性質に反しない限り,訴えに関する規定を準用する」という規定がございます。また,民事訴訟法133条1項によりますと,「訴えの提起は,訴状を裁判所に提出してしなければならない」となっておりますので,支払督促も現行法では書面によるということになっているわけでございます。そこで,アによりまして電子情報処理組織を使用してされた支払督促の申立てについては書面でされたものとみなしまして,書面による申立てに関する規定を適用する,そういうことにしてはどうかというのがイの内容でございます。  次にウでございますが,支払督促の申立てをオンラインで行うということを認めますと,その申立ての時点,いつ申立てがなされたのかという点が問題になってまいります。この点につきましても,行政手続オンライン化法と同じように,簡易裁判所のコンピューターのファイルに記録された時,この時に簡易裁判所に到達したものとみなすものとしてはどうかというものでございます。  次に(注1)でございますけれども,こちらの方は最終的には最高裁判所規則のレベルの話になるかとは思いますが,氏名又は名称を明らかにする措置を講ずる必要があろうかと考えております。典型的には,例えば,いわゆる電子署名を利用することが考えられるのではないか,こういった論点がございます。  次に(注2)でございますが,支払督促が出されますと,債権者の方は仮執行宣言の申立てをすることができるわけでございますが,この仮執行宣言の申立てにつきましても,その手続の利便性を高める,こういう趣旨からオンライン化してはどうかというものでございます。ただし,支払督促の申立てと異なりまして,この申立てにつきましては民事訴訟法上書面でするということは要求されておりませんので,法律レベルで本文のイのような手当ては不要ではないかと考えられるところから,「イを除き」となっているものでございます。  続きまして2ページの(2)でございますが,「申立手数料の納付方法」でございます。支払督促の申立てには手数料がかかるわけでございますが,この申立てをオンラインで認めるということになりますと,その手数料をどうやって納付するのかという点が問題となってまいります。これにつきましては,最高裁判所規則で定めるところにより現金をもって納めるものとすること,こういうこととしてはどうかとなっております。  ただこの点につきましては,実は法律で手当てがされようとしておるということでございます。それが,先ほど御紹介いたしました「司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案」でございます。  これを御覧いただきますとお分かりになりますとおり,現行法では,この手数料は「訴状その他の申立書等に収入印紙をはつて納めなければならない」となっております。今回の通常国会に出されておりますこの法律案におきましては,「ただし、最高裁判所規則で定める場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、現金をもつて納めることができる」,こういうものが入っているわけでございます。  この「現金をもつて納めることができる」というものの具体的な方法でございますけれども,この部会資料2の注のところに書いてございますとおり,現金をもって納める方法としては,オンラインバンキング等によることが検討されているというものでございます。実際には,オンラインバンキングのシステムを通じまして金融機関と連携を取りました財務省の歳入金電子納付システムを利用して申立手数料を納めることとしてはどうかというものでございます。そういうことで,この点につきましては法律レベルでは手当てはされようとしているというものでございます。  続きまして,(3)でございますが,「支払督促の作成及び記録の電子化」でございます。これは,支払督促は電磁的方法により作成し,これを原本として取り扱うものとするということでございまして,支払督促自体を電磁的方法によって作成してこれを原本とするということでどうかというものでございます。また,情報を記録した電磁的記録,これを原則として督促事件記録として取り扱うということが検討されているというものでございます。  ただ,このようにいたしますと,様々な点につきましてまた検討しなければいけないのではないかと考えられるところでございます。例えばということで一つ挙げておりますけれども,裁判所からの債権者あるいは債務者への告知,通知の方式,これをどうするのかといったような点も問題となってこようかと思っております。  以上が,支払督促のオンライン化についての論点の整理でございます。  次に,2ページ(後注)がございます。前回の資料でも督促手続以外の民事訴訟手続等のオンライン化についても検討するとなっておりました。そこで,督促手続以外の民事訴訟手続等の申立てなどにつきましてオンライン化を進めるとした場合に,その立法形式,どういう形で法律の手当てをしていくのかというものが,また一つ論点になろうかと思います。  最初のポツのところにございますとおり,その対象となる手続といたしましては,民事訴訟手続,民事執行手続,あるいは家事事件の手続,こういった手続全体についてオンライン化するということが一つは考えられようかと思います。このように幅広い対象のものを考えますと,個別に一つ一つ条文上の手当てをしていって,更に技術の進展等に応じてその都度その都度その条文の手当てを拡大していくということはなかなか大変ではないかという考え方があろうかと思います。  そこで2ポツ目でございますが,例えば,民事訴訟法及び非訟事件手続法にオンライン化を許容する通則的な規定を置く。こういたしますと,この二つの法律を準用しております他の法律が規定する手続につきましてもオンライン化が許容されるということになろうかと思います。ただそのように通則的に許容いたしましても,具体的にそのオンライン化の実施対象となります手続の範囲につきましては,やはりその手続のニーズですとか,あるいは技術の進展,技術の出来具合ということもございますので,最高裁判所規則に委任して,それによって範囲を広げていく,こういったような立法の形式というものが一つは考えられるのではないかと思っておりまして,そういうことにつきましてもどのように考えるのか御議論いただければと思っております。  このオンライン化の関係の説明は以上でございます。 ● ただいまの督促手続のオンライン化関係につきましては,御説明をお聞きになってお分かりのようにかなり細かな技術的な論点が含まれております。そこで今回の資料では,それが将来法律レベルになるのか,あるいは最高裁判所規則レベルになるのかということを問わずに,オンライン化された督促手続の流れの全体としてのイメージを持っていただくという趣旨で,この部会資料2が作られております。そこで,更にこのオンライン化の具体的なイメージを明確化して御議論していただく方がよいと思っておりますので,引き続きまして最高裁から提出されております席上配布資料につきまして御説明をお願いしたいと思います。○○幹事からお願いできますでしょうか。 ● それでは,今御紹介いただきましたイラスト入りのカラフルなイメージ図に基づきまして,若干システムの説明をさせていただきたいと思います。  現在私どもの方で,この督促手続につきましてオンラインで処理が可能となるようなシステム開発を進めておりまして,具体的な開発自体については本年度から着手して,平成17年度中には開発を終えて稼動を開始したいと,今現在検討をしているところです。  では,具体的にどのようなシステムの流れになるのかという点が,この全体概念図を見ていただきたいと思うわけですけれども,今回のこのシステムというのは,基本的にはインターネットを利用して支払督促を申し立てていただくことを可能とする。その後の審査から発付,それから通知,照会などを含んだ手続全体をオンライン化して,それに基づいて基本的には全国遠隔地の支払督促事件についてもある裁判所で集約処理することができる,こういうシステムの構築を考えているわけです。このシステムの導入によりまして,利用者の方が裁判所に現実に赴くこともなく申立てをすることができるという意味で,利便性が非常に向上するだろうと考えておりますし,またコストもいろいろな観点で,郵送料ですとか時間的なコストとかそういうのも含めて削減効果が生じて,裁判所といたしましても事務の迅速化,効率化等の向上というものを図ることができるのではないかと考えております。  具体的な手続の流れでございますが,図の冒頭に書かせていただいておりますように,まず申立てをインターネット経由で実行することができるということで,債権者の方はあらかじめシステム自体に申立て用の定型フォームを準備しておりますので,基本的にはその定型フォームを埋めていただくという形で申立てデータを作成していただくことになります。それに向かって右側の方に書かれている鍵の図がございますけれども,先ほども事務当局の方で御説明いただいたような電子署名,それから電子証明書を添付するという形になるわけですけれども,これをくっつけた形でインターネットを通じて裁判所に督促の申立てを行っていただくという形になるわけです。仮執行宣言の申立ても,同様な方法で行われることになるわけです。  これも先ほど御説明いただきましたけれども,図の向かって左側の方に手数料納付という部分がございますけれども,この手数料の方につきましても,郵便料等も含んでですが,印紙や切手ではなくて,先ほど御紹介いただいたインターネットバンキングを利用して電子納付をしていただく。これは,申立てがインターネットでできても実際にお金を裁判所に納めに来ていただかなければならないということになると,結局利便性という点では何も変わらないということになりますので,お金の納付の方についてもそのような形で電子的な納付手段ということを考えているわけです。  具体的には,向かって左側の方の矢印の流れが大体お金の流れを示しているわけですけれども,債権者の方で市中金融機関の方に口座を設けていただいて,それをインターネット上で振込みの指示をしてもらって,市中金融機関の方は,この下の方の財務省会計センターというのがありますけれども,これも先ほど御紹介いただいた歳入金電子納付システムというものが作られておりますので,こちらのシステムの方にお金を振り込んでもらう。それによって個々に手数料が納付されるという形になるわけです。そのような形で手数料が納付されたという情報を財務省会計センターの方から,最高裁判所に汎用受付等システムという裁判所側のオンライン手続の窓口になるようなシステムを設けますので,そこを通じて実際にお金が入りましたということを通知してもらう。それによって裁判所のこの真ん中にある督促手続オンライン処理システムは,実際に手数料が納付されましたという情報を入手することができる,こういう形になっているわけです。  これらの情報をこの真ん中の督促手続オンライン処理システムで集めまして,裁判所書記官がこの申立てをシステムの支援を受けて審査する。具体的には,システム自体の中に一定の論理チェックですとか,あるいは利息等の計算についての自動計算の支援機能などを盛り込みますので,そのような支援を受けて審査を行う。その審査を踏まえて,支払督促原本,あるいは仮執行宣言付支払督促原本を電子文書として作成して,これを保存する。したがいまして,これも先ほど御説明いただきましたように,原本自体は電子文書という形で取り扱わせていただくことを考えております。  ただ,実際に債務者に送達をする支払督促正本,あるいは仮執行宣言付の支払督促正本につきましては,これは紙文書を作成して現物を送達する,ここはちょっと電子データでというのはなかなか難しい問題があろうかと思いますので,ここは紙ベースにしようということで真ん中の督促手続オンライン処理システムから右側の方に向けて,郵便配達員の方が走っていますけれども,郵送するという今までどおりの形を考えております。  それから,一通りこの図自体で書かれているのはそういうことで,右側の方は電子署名にかかわる手続の流れを記載している部分でして,これはもう既にできている制度ですから私どもから御紹介するまでもないわけですけれども,民間認証局等が電子証明書等を発行するという形で認証事務を取り扱っているわけでして,そことの間で政府がここの右下の方にGPKIというブリッジ認証局を作っておりまして,このブリッジ認証局を経由しながら電子署名の正当性,あるいは電子証明書が失効しているものではないかというあたりを確認して,その情報も督促手続オンライン処理システムの方に流してもらうということで,そこの署名の正確性ということについても担保できる,こういう流れになっているわけです。  これがいわゆる支払督促全体のシステム処理の流れということになるわけですが,督促異議が出て訴訟に移行するということが当然考えられますので,その場合にどのようになるのかという問題があろうかと思っております。訴訟に移行する場合には,これは少なくとも現在の法制のもとでは紙ベースで督促異議の審理を行うということにならざるを得ないのではないかと思っておりますので,この点は従前どおり原則として債務者の普通裁判籍を管轄する裁判所で紙ベースで審理を行っていくということになると考えております。今現在,このシステムを構築するに当たって検討している状況は以上のようなところでございますが,また今後も,先ほど事務当局の方で御紹介いただいていたような細かな問題はいろいろと出てこようかと思っております。また技術面の問題等もいろいろあり得ようかと思っておりますので,そのあたりも十分慎重に検討しながら,実際に利用者の方々にとって利便性が高まるようなシステムを作ってまいりたいと考えております。 ● それでは,本日は先ほど申しましたように論点整理ということで議論していただくわけでございますけれども,この督促手続のオンライン化関係につきまして,ただいまの事務当局及び最高裁の方からの御説明につきまして,何か御質問あるいは御意見があれば,どなたからでも自由に御発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。 ● どうも考えたことが余りないもので制度としてどうなっているのかよく分からないところがあるのですが,債務者に対して正本を送達するというところから紙ベースだと言われて,技術的に難しいのではないかと御説明があったのですが,実際には債務者側も機械を持っている場合とそうでないようなところで,機械を持っていればそこまでは電子ベースでいけるのではないのかなという気がしますのですが,そこはどういうお考えで紙になったのでしょうか。 ● 今,○○委員の方から御指摘いただいたように,確かに将来の問題としてそういうインターネット上でつながり得る債務者との間において送達を定期的に行うということも考えられると思いますが,現段階でそこまでそういう債務者がいるということを想定してそういう法制度を作っていただくのがよろしいかどうかというあたりについて,私どももまだ十分検討が進まないという状況ですので,いずれにしても債務者の方々,債権者は自分で希望して申し立ててくるということですので,もうそういうことを前提にして手続を進めてよろしいかと思っておりますが,債務者の方はなかなかそういう前提がございませんので,まずはここは紙ベースで送達するというのを少なくとも基本ベースとして考えた方が問題がないかと今思っているところです。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● ちょっと御質問というようなあれなんですけれども,これは債権者にとっての利便性が高まりますのでシステムとしては全然異存がないところなのですけれども,例えば,時効の中断という観点からすると,支払督促の申立てでもって時効の中断事由になるわけですよね。そうすると,この処理システムに到達した時点で時効の中断効が発生する。それはあれでしょうか,例えば,休日でも夜間でもこのシステムが動いていて,そこへどんと到達すれば,そこで時効の中断効は発生するという理解でよろしいのでしょうか。 ● 御指摘のような大きな問題があると思いますので,少なくともいつ到達したかということが分かるような,そういうシステムにしてまいりたいと思っております。 ● そのシステムの組み方にもよるのですけれども,例えば,共通のゲートを設けたりすると,そのゲートとそこから裁判所で正に処理をしているところへ行くまでのタイムラグがあるものですから,おっしゃるように裁判所の方でそこがはっきりするような措置を講ずるということになるだろうと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 現在の機械処理,東京,大阪の管内でやっているものとの関係といいますか,先ほどの御説明では日本全国すべてについて統一的な窓口のような形ともお聞きしたのですが,そのあたりはいかがでしょうか。 ● 御指摘の点につきましては,これはオンラインでできるシステムですので,物理的には,例えば,東京に一つこういう大きなシステムを置けば全国どこからでもアクセスすることは容易に可能だと,こういうものは構築することができるのではないかと思っております。ただ,果たしてそういうような形でうまく回っていくのかどうかというあたりも含めて,私どもも,もう少し最終的にどのような形を採るかという点については検討してまいりたいと思いますが,基本形といたしますと,東京一か所という形になるのか,それとも東京プラスアルファというような形で組んでいくのか,どちらにしても相当程度集約処理をすることが考えられるのではないかと現段階で思っております。 ● 電子情報化の時代でもありますし,技術革新が非常に急速に進んでいる時代ですから,司法の分野においてもこういったオンライン処理のシステム化というものは避けて通れないというような時代だと思います。したがって,今最高裁から御説明のありましたこの概念図を見ても,技術的なことはよく私も分からない面もあるのですが,その流れとしては,やはり利用者の利便あるいはコストという面から見ると,十分にこのシステムを推進していくべきものだと思います。ただ,実際に運用されないと分からない問題など技術的な問題があると同時に,法律化,あるいは規則化する中で問題点がどこにあるのか,もし考えられる問題があればそれをどういうふうに処理していくのかということの詰めの作業というものは十分やっていかなければならないかと思います。結論的に言うと,大いに積極的に進めてほしいと思っております。 ● 今そのような御指摘もいただきまして大変力強く思っておりますが,先ほど私,集約というお話を申し上げましたけれども,もちろん従前どおり紙ベースで申し立てたいという方について,それをできなくしてしまうというようなことは考えておりませんので,それは残した上でこういうようなことを推進していこう,そのような趣旨でございます。 ● ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。  そういたしますと,この督促手続のオンライン化関係,(1)から(3)までございますが,(2)あるいは(3)につきまして何か御意見,あるいは御質問がありましたら承りたいと思いますが,いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。  それでは,これは論点整理ということで,今後この(1)(2)(3)について検討していくということでございますが,そういう意味で(1)につきましては大体こういうかなり具体的な線が出ておりますので,こういうことを中心に検討していくということについて大方の御異議がなかったものと受け取らせていただきたいと思います。  それから(2)につきましては,先ほどの説明にありましたように,既に最高裁判所規則で定める方法で現金による納付になるということでございますので,そういう方法を採り入れるという方向で検討するということ。  それから(3)につきましては,記録の電子化に伴い必要となる手当てにつきましても更に検討を進めるということにさせていただいて,あとは(後注)につきまして何か御意見があれば,あるいは御質問があれば承りたいと思いますが,(後注)についてはいかがでしょうか。 ● 今出ている費用法の改正との関係もあるのですが,さっきの(2)のところにちょっと戻るのですが,現金をもって納めるとかいうところの表現が何か別な表現ができないのかというのがちょっと気にはなっているのですが。最高裁の図式のところでも現金が袋で動いているようなことは書いてあるのですが,実際には現金は動いていないんじゃないのか。要するに,最高裁判所規則で定めるところの方法で手数料を納付したことにするというのが,現金が動いているわけでも何でもないので,もっと適切な表現ができないかということ。それは提訴手数料の問題とかに全部引っかかってきますから,そこのところをちょっと考えていただいた方がいいのではないかという気がしますのですが。 ● これは,既に参考資料1でお配りしているところから明らかなように,この国会に提出されている法律案の改正の案文でございまして,既に司法制度改革推進本部の方で立案されてこのような表現になっております。これまでは書面に収入印紙をはりつけるという形で国庫に納付するということになっていたわけですので,それとの対比において現金でも大丈夫だと。それが預金債権の形をとるのか,あるいは正に通貨をそのまま手渡しするような形でいくのかということでいきますと,今までは日銀の窓口を使って国庫金の納付をやるという形でしか現金が扱えなかったのが,先ほど来御紹介している歳入金電子納付システムを使えば預金口座を通して現金という形で納付ができるという,こういう趣旨でございますので,そのように御理解いただいて,収入印紙を用いなくても納付ができるようになる予定だと,そういう形で御理解いただければと思います。 ● ほかに何かございますでしょうか。  (後注)の関係の督促手続以外の民事訴訟手続のいろいろの申立て,あるいは非訟事件のオンライン化等につきまして,何か最高裁判所の方からお考えがあればお聞かせいただきたいのですが,これはいかがでしょうか。 ● 民事訴訟手続のオンラインにつきましては,先ほど○○幹事の方から説明がありましたとおりオンライン化になじみやすい支払督促手続,これをトータルにオンライン化することとするということで今御審議等をいただいているところですけれども,その他の民事訴訟手続につきましては,まずは平成15年度,今年度ですけれども,規則レベルでの改正で対応可能な申立て等の電子化,これを検討しているところでございます。そのほか法改正が必要な部分というのが今回の点でございますけれども,これについても必要なインフラの整備状況やオンライン化による影響など,それに応じた裁判所内の事務処理の在り方なども踏まえながら,オンライン化による申請や提出になじむ,こういった申立てなどにつきまして順次検討をしていきたいというのが一般的な状況になっております。 ● そういうことでございます。何か御質問ございますでしょうか。この部会では,とりあえず本文に書いたところを検討の対象とする。しかし最高裁の今の御説明のように,この(後注)の方の関係の御検討あるいは具体的なシステムの構築の方が進めば,いずれまたこの部会なり,また別の部会かもしれませんけれども,そういうところで御審議をいただくことになるだろう。そういうことだろうと思っておりますが,よろしゅうございますでしょうか。  それでは,先に進ませていただきたいと思います。  次は民事訴訟法についての論点整理2,「文書提出命令関係」でございます。これも○○幹事の方から御説明をお願いいたします。 ● それでは,部会資料2の3ページでございますが,「文書提出命令関係」につきまして御説明いたしたいと思います。  まず(1)でございますが,「刑事事件関係書類等」でございます。前回の部会でも御紹介いたしましたとおり,平成13年の民事訴訟法の改正法の附則によりまして,平成13年の改正法の施行後の利用状況を踏まえて検討するということになっております。したがいまして,ここでの論点といいますか,ここでの問題というのは,この施行後の利用状況,これについてどのように考えるかというのがここでの論点ということになろうかと思います。  具体的な利用状況といいますものがどうなっているのかということを踏まえました御議論につきましては,前回少し申し上げましたとおり,事務当局といたしましては次回の部会におきまして関係機関からお話を伺いたいと思っているところでございまして,その上で具体的な御議論をしていただいてはどうかなと考えております。本日ここでお出しいたしました論点といたしましては,今後のそういった状況を伺いますヒアリングを行います際の,例えば留意点でございますとか,あるいは一般的な論点につきまして,どのような点を考えておいた方がいいのか,そういう点につきまして御意見を伺わせていただければと考えております。  次にイでございますけれども,この点を議論する際におきましては,捜査,公判及び裁判確定の各段階ごとに異なるこういった刑事事件あるいは少年の保護事件に係る文書開示制度の趣旨,これを念頭に置きながら,そういう利用状況を踏まえて考えていってはどうかというものでございます。  そこでまず前提といたしまして,現在の制度におきましてこの各段階ごとにどのような開示制度が設けられているのかという点につきまして整理させていただきましたのが,参考資料の2でございます。「刑事事件関係書類等に関する現行法の規律についての整理」というものでございまして,この内容を,簡単ではございますが○○関係官の方から御説明をいたしたいと思います。 ● それでは,参考資料の2の関係につきまして,私の方から簡単に説明させていただきます。  今,○○幹事の方から説明があったとおり,参考資料2は,刑事事件記録と少年の保護事件の記録等の開示制度の概略について簡単に1枚紙でまとめさせていただいたものでございます。  まず資料の作りでございますけれども,大きく分けて刑事事件の記録と少年の保護事件の記録と二つに分けさせていただいております。さらに刑事事件記録については,捜査段階,公判段階及び確定後といった3段階に分けて整理をしております。それぞれの段階におきまして,例えば,一定の者あるいは一定の記録,あるいは一定の要件のもとで記録の閲覧等を認めるといった規定などがございますので,その規定部分について網掛けの形で表記させていただいております。  上から順番に参りますと,最初に刑事事件記録の中の捜査段階,これは不起訴処分がされた後も含むものでございますけれども,これについて御説明をさせていただきます。  この場合の原則といたしましては,刑事訴訟法第47条本文に書いてありますとおり,原則としては非公開でございます。例外といたしましては,「公益上の必要その他の事由があつて相当と認められる場合」というものがございます。この相当性を判断するに当たりましては,例えば,民事訴訟における利用の必要性といったものも考慮されることになるということになろうかと思います。  今のただし書に関連をいたしまして,被害者等に対する不起訴記録の開示について,内部的な通達が出されております。そこが網掛けにさせていただいている部分でございますけれども,すなわち,被害者等が民事訴訟等において被害回復のため損害賠償請求権その他の権利を行使するために必要と認められる場合におきまして,客観的な証拠でかつ代替性がなく,その証拠がなくてはその立証が困難であるといった事情が認められるときには,検察官は弾力的に閲覧・謄写に応じる運用を行うということを内容とするものでございます。これがまず捜査段階の基本的な記述でございます。  続きまして公判段階でございますけれども,公判段階といたしましては弁護人が出てまいりまして,弁護人は公訴の提起後に裁判所においてその記録の閲覧・謄写をすることができるとされております。ただしその証拠物の方を閲覧するにつきましては,裁判所の許可を受ける必要がございます。ここの表には掲げてございませんが,被告人に弁護人がないときは,公判調書を閲覧することができることとされております。  今申し上げた場合以外の場合につきましては,従前は特段の規定が設けられていなかったところでございますけれども,平成12年に成立した「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」,網掛けをさせていただいておりますが,そこの第3条の規定により,被告事件が係属する裁判所におきまして,一定の要件を判断いたしまして公判記録の閲覧・謄写を認めるということにされております。  続きまして第3段階目の確定後でございますけれども,裁判の確定後は何人もその記録を閲覧することができるというのが原則でございます。しかしながら,訴訟関係人又は閲覧について正当な理由があると認められる者以外の者からの請求に対しましては,一定の事由がある場合には閲覧をさせない場合がございます。こういった場合におきまして,検察官の処分に不服がある場合につきましては,裁判所に対して準抗告といった形で申し立てることができるということとされております。以上が,刑事事件記録の概略でございます。  続きまして,少年の保護事件の記録について簡単に御説明させていただきます。  ここの段階は,特に3段階には分けておりませんけれども,送致前,家庭裁判所への送致後,家庭裁判所の審判が終わった後といった,大きく分ければここでも3段階といったものが考えられようかと思います。家庭裁判所への送致前におきましては,先ほど申し上げた一番上の捜査段階における刑事事件記録の扱いとおおむね同じでございますので,そちらの方を御覧いただければと思います。  表の方にまとめております家庭裁判所への送致後でございますけれども,これは審判は非公開でございますけれども,ここも平成12年の少年法等の一部改正におきまして,被害者等が閲覧及び謄写をより希望しやすくなるとともに,法の趣旨を踏まえた被害者等に対する配慮の徹底を期待いたしまして,少年法第5条の2を新設いたしまして,これは裁判所が一定の要件を判断いたしまして,少年事件の記録の閲覧及び謄写を認めること,これについて法律に明らかに定めた,こういうものでございます。  今申し上げたような場合以外の場合におきましては,その下に書いてありますように,少年審判規則第7条におきまして,保護事件の記録又は証拠物につきましては,裁判所の許可を受けた場合に限り閲覧謄写をすることができるということとされております。特に表には掲げておりませんが,付添人はその保護事件の記録の閲覧ができるといった規定がございます。  また家庭裁判所の保護処分の後につきましては,これは一定の期間家庭裁判所で記録が保管されるということになっておりまして,その記録の閲覧等の要件につきましては,先ほど申し上げた家庭裁判所の送致後,ここで紙にお書きしているところと同じでございます。 ● 続きまして,私の方から部会資料2に戻りますけれども,3ページの(2)の「自己利用文書」のところの説明をさせていただきたいと思います。  自己利用文書,民事訴訟法220条4号ニの,「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」。この文書提出命令の在り方につきましては,前回の部会でこの点も検討課題としてはどうかという御意見があったことを踏まえまして,このような資料にさせていただいております。  御議論の参考ということで,自己利用文書の範囲に関する最近の最高裁の判例を幾つか御紹介させていただいております。  まず,最高裁の決定。平成11年11月12日の決定でございますけれども,自己利用文書の意味につきまして最初に判示がございます。  ある文書が,その作成目的,記載内容,これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯,その他の事情から判断して,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど,開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には,特段の事情がない限り,当該文書は民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。  こういうものでございまして,この事案ではこの貸出稟議書は,特段の事情がない限り,自己利用文書に当たるというふうに判示がされております。  続きまして資料の4ページ,次のページになりますけれども,②,③でございます。こちらの方は,その特段の事情に当たるかどうかということにつきまして問題になった事例でございますけれども,②につきましては信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことは,「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情とは言えないというようなものでございます。  それから③でございますけれども,平成13年12月7日の決定でございます。こちらの方は信用組合の作成した貸出稟議書の所持者に対する文書提出命令が問題になったものでございますけれども,これは具体的にはこの所持者は株式会社整理回収機構でございましたが,預金保険機構から委託を受けて同機構に代わって破たんした金融機関等からその資産を買い取り,その管理及び処分を行うことを主な業務とする株式会社であること,当該信用組合は清算中であって,将来においても貸付業務等を自ら行うことはないこと等々の事情を認定いたしまして,このケースにつきましては「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるとは言えない特段の事情がある,このように判示したものでございます。  このように,自己利用文書の範囲につきましては,最近の最高裁の判例があるところでございまして,このような状況のもとにおきまして自己利用文書の文書提出義務につきまして,例えば,その制度面におきまして何か検討すべき点があるのかどうか,こういう点が論点になるのかと思っております。文書提出命令の関係の説明は以上でございます。 ● この2の文書提出命令関係につきましては,(1)と(2)がございます。御意見,御審議は(1)と(2)に分けて行わせていただきますが,まずはその前にとりあえず(1),(2)全体に通じまして,ただいまの御説明あるいは参考資料2についての説明も含めまして,御質問があればまず承りたいと思いますが,いかがでしょうか。--  それでは御質問がないようですから,この部会資料の2の(1)の「刑事事件関係書類等」についての御審議をお願いしたいと思います。ここにはアとイという二つの論点が掲げられておりますが,次回の第3回会議では関係機関からのヒアリングを行うことを予定しております。これは,御案内をしているかと思います。したがいまして,本日はアの事項,刑事事件関係書類等の民事訴訟における利用状況等を検討するに当たっての留意事項を中心に御議論をいただければと思っております。  まず,今日席上配布資料といたしまして,弁護士会出身の委員・幹事の方から御意見をいただいておりますが,(1)の関係では,○○幹事の方から,まずこの配布資料の御説明をいただけますでしょうか。 ● まだヒアリングが終わってないことですので,一応今の段階の考え方だけを箇条書きにまとめたものでございますので,これに従ってちょっとだけ御説明申し上げたいと思います。  まず基本的には,公文書のうち現在刑事関係記録は一律除外になっているのですが,その法制度に合理的な理由はないと考えます。利用状況については,昨年8月にある程度のヒアリングがありまして,また更に次回にヒアリングが予定されておりますが,詳細はその中で明らかにされると思いますが,特に不起訴記録とか少年記録は閲覧の対象となっていない,これは少年記録は一部少年法の方で対象となっておりますが,弁護士照会とか文書送付嘱託によっても必ずしも適宜に提出されていることはないようです。また犯罪被害者でない者が当事者となっている訴訟においては,この場合でも,例えば,株主代表訴訟とか住民訴訟,その他いろいろあるかと思いますが,その場合に刑事関係書類が証拠として必要になる場合も多々ありますが,この点についても提出されない場合が,なかなかそれを取れないという場合が多いようです。こういうような現状は,実体的な真実を発見し適正な民事訴訟を実現するという観点から,問題のある状況だと思われます。  それから,確かに犯罪被害者保護法ができまして,それから今御紹介がありましたような弁護士照会,文書送付嘱託に対する運用ということで,かなりの部分カバーされている,刑事関係書類が民事訴訟に出されていることが多くなっているのも,これも確かに事実であろうとは思うのですが,これをもって民事訴訟法改正を不要と即断する理由にはならないと思います。この辺は,ヒアリングの状況も踏まえてということですが,量的な面よりも質的な面からちょっとやはり考えるべきかと思います。特に対象文書が不起訴記録である場合,それから請求者が犯罪被害者等である場合には,これは運用に任されていて,法によって取る手段がないわけですので,そこのところをどう考えるかということで,やはり民事訴訟法を改正すべきではないかということを御議論いただきたいと思います。  確かに刑事関係書類にはセンシティブ情報も含まれていますし,犯罪捜査に支障が出ることもありますが,一応現行の民事訴訟法でも公文書について公務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合は除外事由になっている。さらにこの中には,犯罪の予防,捜査に支障を及ぼすおそれも含まれる。そういうことになっておりますので,この除外規定で対処できるのではないかと思います。ただ,先ほど御紹介がありましたように,関係法律の除外事由はちょっと規定ぶりが違いますので,そのあたりの整合性を考えて,現在ある刑事訴訟記録の除外の220条4号ホを単に削除するだけでよいのか,あるいは別の規定の置き方を考えるかというところを検討するべきだと考えます。 ● ほかにいかがでしょうか。論点整理ということで意見を承っておりますけれども,このア,イについて今後検討するというようなことでよろしいでしょうか。次回にはヒアリングも予定されておりますが。 ● 事務当局といたしましても,本日の御意見なども踏まえまして,次回のヒアリングに向けて準備をさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ● そういうことにさせていただきます。  それでは,(2)の「自己利用文書」に進ませていただきたいと思います。自己利用文書の範囲につきましては,前回の部会でも御発言をいただきました○○委員から,前回,立法問題なのか解釈問題なのかという,そういう御発言がございましたけれども,本日は席上配布資料として御意見をいただいておりますので,まず○○委員から御発言をお願いできますでしょうか。 ● この自己利用文書の点を一応ここに掲げていただきまして,どうもありがとうございます。前回も申し上げましたように,これは解釈問題なのか立法問題なのかということが難しい問題があろうかと思いますが,一応ペーパーに基づいて検討すべき点があるのではないかという趣旨で意見を述べさせていただきたいと思います。  御承知のように,この資料2にあります最高裁平成11年11月12日決定。これは原審の文書提出命令,文書提出を命じた原決定を破棄して,提出命令の申立てを却下したというもので,銀行の貸出稟議書について下級審レベルで非常に積極的な対応があった。これに対して最高裁が破棄したということで非常な論議を呼んだわけでございます。この最高裁決定,先ほど○○幹事から御説明いただいておりますけれども,この判旨を①,②,③,④,⑤と番号を振ってみたのですけれども,その評価なのですけれども,立法時から一般義務化するのに,自己利用文書という内部文書であるという理由で除外していいのかどうかという議論はもともとあったわけです。それについていろいろ①,②のあたりで,「専ら」と言えるかどうかというあたりでうまくバランスを図って,必ずしも「専ら」でなければ自己利用文書に当たらないとするような判断もあるのではないかということがあったわけですが,今回の最高裁の判決を見ると,その辺で何か調整を図ろうという感じはないように思われるわけです。  しかし,逆に今度の最高裁判決が評価される点はこの③のことでございまして,法律の条文にはない実質的な不利益要件,看過し難い不利益がなければならない。それがなければ自己利用文書に当たらないのだとした点は非常に評価される点でありますし,この辺の解釈論を展開することによって,この自己利用文書を制限的に運用するという余地があると思われるわけであります。しかしながら,この貸出稟議書についての最高裁の判断を見ますと,一応自由な意思形成を阻害するというおそれが抽象的にあれば,この看過し難い不利益があると言っているように思われるわけです。  ④の「特段の事情」というのが何を指すのかというのは,ここで何か解釈論的に合理的な筋道が今後判例によって打ち立てられるという余地はあろうかとは思うのですけれども,事務当局の資料②,③がその点に言及はしておるわけですけれども,どうもこの特段の事情というのは非常に狭く解されているように思われまして,この特段の事情という点に着目して具体的妥当性を図るという筋道になっていくのかどうかというふうには不安を覚えるわけです。  自己利用文書を一般義務の例外,除外として今後も維持するとしても,最高裁判決が言っているように実質要件は必要とすべきでありましょうし,それだけではなくて,やはり文書提出命令の制度の趣旨,公正な裁判の実現という目的に照らして一般義務化を図っているということからすると,そういう趣旨を考慮してもなお看過し難い不利益があるというような場合にのみ,この自己利用文書に当たるとするような判断が適切にされるような仕組みというのがなお必要ではないか。それは今後の解釈にゆだねればいいという意見は必ずあると思うのですけれども,立法的に手当てをするということも考えられるのではないか。  そういった場合にいろいろなことが考えられると思うのですが,先走って恐縮ですが,私の考えでは,このメモのハに書きましたように,提出により所持者の自由な意思形成を不当に阻害されるおそれがあると認められるものというような,例えば,立法的な手当てというのはあり得るのではないか。最高裁判決が言っているように実質要件を一応書いて,しかもそれが「不当に」と規定することによって,先ほど申し上げましたような公正な裁判の実現という目的がある,それにもかかわらずなお提出命令をするとそういう自由な意思形成を不当に阻害される,こういう価値判断ができるような条文にするということは考えていいのではないかと思うわけです。  これに関連して,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条というのは不開示情報の規定を定めた規定ですけれども,その5号の中に行政機関の審議検討情報について率直な意見交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるもの,公にすると不当に損なわれるものと,こういう規定がありまして,これは趣旨として説明責任の観点から行政機関が保有する情報というのは原則して開示すべきなのだけれども,単に率直な意見交換が損なわれるというだけではだめなので,そういう考え方に照らしてもなお不当と評価される場合にだけ不開示にできるという規定だと説明されておりまして,その辺の考え方を考慮いたしまして,先ほど申し上げたような立法というのはあり得るのではないかと思われます。  なお,その実質要件について,最高裁判決は今回プライバシー侵害というのを挙げているわけですけれども,先の文書提出命令制度,公務文書の改正のときに情報公開法との整合性というようなことで,個人情報をどう扱うか,一般義務から除外するのかどうかという議論は一応ありましたけれども,民事訴訟にプライバシー侵害であるからといってそういう要件を持ち込むのは好ましくないだろうということで,プライバシー侵害ということをストレートに除外事由に持っていくというのは避けたということからすると,この点は仮に立法するにしても除外しておいて,他の規定で実質的に,そういうプライバシーの著しい侵害といったことは別の従来ある規定で対応すればよろしいのではないかと思っております。 ● ほかの委員,幹事の方いかがでしょうか。 ● 私もこの点について若干自分の意見を申し述べさせていただきたいと思います。  なお,私,従来「自己使用文書」というような言葉を使ってきたものですから,大変恐縮ですがその言葉を使わせていただきますが,意味は自己利用文書と全く同じ意味で使わせていただきます。  いろいろこの間の判例などを見ますと,特段の事情という概念を媒介にして文章提出義務の範囲を決めようということになっているわけですが,全体的なところから言いますと,どうも私はこういう概念が持ち込まれることによって,本来なるべくであれば一義的に明らかであるべき文書提出義務の範囲というものがかなり不安定になっているのではないかと,これは印象だけのことでございますが,思っているわけであります。  例えば,資料にあります平成13年の決定のように,いわば作成者が所属した主体と別な主体が現在の所有者になっているというような場合に,これは特段の事情が認められるのだとされますけれども,これは本来,自己使用文書性の考え方からしてもいわば当然の結論ではないかと思うわけであります。これに対して平成12年の決定の多数意見のように,組織運営の適正さを確保する上で必要な場合であっても特段の事情が認められないというようなことで,先ほど文書提出義務の範囲を考えることについての不安定性が増しているというのは,こういったことを根拠にしているわけであります。結局平成11年決定が言うところの開示されると個人のプライバシーが侵害されたり云々という考え方というのは,法220条4号ハに規定される職業の秘密など,証言拒絶権該当事由の概念の外延を,文書所持者の利用目的を媒介として拡大する結果になっているのではないかと感ずる次第であります。  これはもう御承知のとおりでありますけれども,現行法が作られる際にかつての共通文書的発想から一般的提出義務を認めるという考え方に転換して,いわばその緩和剤として自己使用文書概念を設けたということ,若干表現は違いますけれども,当時の立案担当者もそれに近いような説明をされております。それはそれでその時点では合理性があったとは思いますけれども,現行民訴法の運用も定着した現在,そろそろそういう考え方が本当に維持されるべきものであるかどうか,再検討するべき時代に来ているのではないかと思います。  それから,民事訴訟法の特則として文書提出義務を定めます特許法105条1項ただし書,これは書類の所持者において,その提出を拒むことについて正当な理由があるときにはこの限りでないというような規定の仕方をしておりまして,少なくとも条文上は自己使用文書性というようなことを直接問題にしているわけではありませんし,またこの規定の解釈について書かれた幾つかの論文などを見ましても,営業秘密について,それが仮に営業秘密にかかわるものであっても,正当な理由なしとして提出義務を認めていいかどうかという,専らそのあたりが議論されているようでございまして,そうなると果たして一般手続である民事訴訟法における文書提出義務について,自己使用文書性というのをこのまま検討しなくていいのかどうかというのも問題になろうかと思います。  それから公務文書については,御承知のとおり平成13年改正がございまして,組織的に用いられるものについては除外理由にならないというふうにされ,なぜそういうことを言うかという根拠の一つとしては情報公開制度が挙げられているわけであります。しかし,文書提出義務というのが一般の情報公開とは異なりまして広い意味での司法への協力義務の発現であるということを考えますと,国等が所持する文書と私的団体が所持する文書との間に情報公開と同様の差異を設けることが合理的かどうか,これについても少なくとも検討の必要はあるのではないかと考える次第であります。  ○○委員は先ほどのような具体的な提案をされましたが,その提案について私自身が全面的に賛成するかどうかということは別にいたしまして,この自己使用文書あるいは自己利用文書概念を維持するかどうか,あるいは維持するとしてもそれについて何か立法的な更に検討を加えるべきかどうか,こういったあたりについて私も考えてみる必要があるのではないかと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● この段階でまだ何ともちょっと申し上げられないのですけれども,やはり自己利用文書の範囲が広がるということになると,恐らく企業活動にとっては多大な影響が出て,会社の中なんかでいろいろ作る書類というのが非常に多いのですけれども,そういうものを常に外部の目を意識していろんなことに常に配慮しなければいけなくなる。そういうようなことが,適正な企業活動にそこまで求めることになるというようなことはちょっとしんどいものがあるのではないかと思ったりします。  例えば,米国なんかで証拠開示手続,ディスカバリーというのがありますが,あれでもプリビレッジがきいているドキュメンツについては開示は不要なわけですね。証拠開示手続という広範なすごい制度があるわけですが,その中でもプリビレッジというものが反映されている。あれは一つの例えば弁護士等の間のコミュニケーションを保護するというような制度ですけれども,そういうようなものの保護というのを考えないといけないのではないか。例えば,日本で何かのドキュメンツが裁判の文提にかかって開示されることによって,米国のプリビレッジは消えてしまったりするのです。こういうような問題がグローバルな企業活動が大変増えている現状で,そういうことも含めていろいろ考えていただかなければいけませんよと,ドメスティックなことばかりではちょっとあれなんで,そういうこともいろいろ考えていただかないと,なかなか会社,企業としては納得できないところがあるのではないかと思いますので,非常に慎重なる御審議をお願いしたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。  それでは,この文書提出命令関係につきましては,(1)の「刑事事件関係書類等」につきましては次回に関係機関からのヒアリングを行い,更に事務当局で論点を詰めるということにさせていただきますし,今の(2)の「自己利用文書」につきましてはただいまお三方から御意見もちょうだいいたしましたので,そういう御意見も含めて更に事務当局で論点整理を図りたいと考えておりますが,そういうことでよろしゅうございますでしょうか。--では,そういうふうにさせていただきます。  続きまして,第2の「民事執行法についての論点整理」に進ませていただきたいと思います。  まず1の「少額債権執行制度関係」を御審議いただきたいと思います。まず資料の説明を○○幹事からお願いいたします。 ● それでは,部会資料2,4ページの第2の「1 少額債権執行制度関係」の御説明をさせていただきたいと思います。  現在,債権執行は地方裁判所で行われているわけでございますけれども,やはり国民により利用しやすい執行制度を作るということで,司法へのアクセスを容易にするということが重要ではないかと思っております。そういった意味で,例えば,現在簡易裁判所におきましては少額訴訟制度が設けられているわけでございますが,例えば,この少額訴訟の手続につきまして,執行段階におきましても身近な簡易裁判所を利用することができるということになりますと,非常に手続が国民に利用しやすいものになるのではないかと考えられるところでございます。こういったような考え方も含めまして,こういった制度をどのような必要性,あるいはどのような範囲で認めるのはどうかというのが一つの論点かなと思っております。  また,イでございますけれども,仮に,簡易裁判所に債権執行の権限を認めるといたしましても,具体的な手続のどこまでを認めるのかという論点があろうかと思います。その簡易・迅速という簡易裁判所の性格ということに照らしますと,余り重たい手続を認めるのは相当ではないのでないかといったような考え方も一つはあり得ようかとも思われます。例えば,配当等が必要となる場合には,地方裁判所に事件を移送するということも,これもまた一つの選択肢としてはあり得る考えかなと思っております。そういったように,この簡易裁判所に債権執行の権限を認めるといたしましても,どこまでを認めるのかというのが一つの論点かなと思っております。  それから次の(2)でございますけれども,少額債権執行制度の手続の適正迅速化を図るための手当てとしてどのようなものが考えられるのか。今,簡易裁判所において手続を認めるということで一つアクセスを容易にするということを申し上げましたけれども,そういった手続自体,これを簡易迅速化するということで,より国民に利用しやすいような制度,より国民の利便にかなう,こういったような手当てが考えられるのかどうかというのも一つの論点かなと思っております。これにつきましては,まだ少し抽象的な形での論点整理という形で提示させていただいたというものでございます。 ● それでは,この点につきまして(1),(2)を含めまして,御質問あるいは御意見等もございましたら,どなたからでも御自由に御発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。 ● 質問なのですが,この少額債権執行について具体的にどういう場合に利用者が便利なのか,もう少し具体的なイメージを教えていただくと有り難いのですけれども,いかがでしょうか。 ● これはどこまでのニーズを拾うか,あるいはどういう趣旨で制度を作るかということにもよるかと思います。一つ今例として挙げましたのは,少額訴訟判決をとったという場合におきましては,少額訴訟ということで身近な簡易裁判所で簡単に債務名義がとれたということで,執行の段階までいくということになった場合に,今度は地方裁判所まで行かなければいけないということではなくて,今まで少額訴訟手続でも行った,そういった身近な,同じ簡易裁判所で,債権執行の手続ができるということが仮にできますれば,それは一つ司法へのアクセスといいますか,より手続の利便性が高いというようなことにもなるというのも一つの考え方としてあろうかと思います。  あとはどういう点で利便性があるのかといいますものは,先ほど申し上げましたとおり,どういう範囲,どういうものを念頭に置いて制度を作るのかということにもかかわってくる問題だというふうには思います。 ● ほかにいかがでしょう。 ● 今回は少額債権執行ということになっておりますので,実はちょっとこの枠を外れてしまうのではないかとは思うのですけれども,小さい額の債権というふうにとらえたときに,どうもそういう債務名義をとったときに何か強制執行しようというときに,金銭債権を押さえるというものが余りなくて,実際には目ぼしい動産しかないのではないかということの方が,世の中の現実と言うとちょっと大げさですけれども,そういう方が多いのではないだろうか。そうすると,小さい額の債権の執行の簡易・迅速化という観点からすると,むしろ動産執行も簡便にできるというような方に働くのではないだろうか。  例えば,一方でどうもよく話を聞きますと,自動車をお持ちの方とかというのが多いらしいのですけれども,自動車なんかはなかなかつかまえるのが大変なので,こういうようなところをうまくピッと簡単にできる,そんなようなことの方が,現実論としてはそういうふうなんじゃないかなという意見がございました。ですから,ちょっと今回の範囲ではないということなのかもしれませんけれども,意見ということで申し上げました。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 少額債権執行について,こういう制度を設けること自体については,国民のニーズを広く拾い上げることになりますし,少額債権についてさほど弁護士へのアプローチ等ができないような人に対するサービスとして大変有効になるのではないかという原則的な考え方を持っておりますが,アのところで,例えば,確定判決等の少額訴訟に係る債務名義に限るという点なのですが,この趣旨は,恐らく執行証書のような権利確定手続を経ないものについて,若しくは仮執行宣言付判決のような暫定的な手続のものについては,濫用のおそれであるとか,権利確定の最終的手続を経ていないという趣旨から除くと,こういうことだろうと思いますが,これについては私も財産開示のときに問題になった争点と比較的似ているのだろうと思うのですけれども,こういう絞りをかけることについても賛成でございます。やはり執行証書というのは,それは正しく使われている例もあれば,そうでないという例もあるように聞いておりますので,こういうことを配慮していただいて広く使いやすい制度にしていただきたいというふうに思います。 ● ほかにいかがでしようか。 ● 今,○○幹事の御発言にちょっと出てきたのですが,財産開示制度のことなのですけれども,私は担保・執行法制部会には所属しておりませんでしたので議論を必ずしも十分承知しているわけではありませんけれども,議論の中で財産開示制度について簡易裁判所にも管轄を認めるべきだという御議論がかなり有力なものとしてあったように承知しております。私は議事録を見た限りでは,それが最終的には否定されたのは,財産開示を仮に簡易裁判所に認めても,最終的には執行自体は地方裁判所に行かなければいけないじゃないか,だから財産開示を簡裁に認めても余り利便性はないという御意見があって,それで最終的には採用されなかったと承知しておりますが,もし仮に私のその理解が正しければ,この少額債権執行制度というのを簡易裁判所にもし設けるということがあれば,あるいは財産開示についても少額訴訟の判決を取得した人が財産開示を簡易裁判所に求めて,それに開示された情報を前提としてこの少額債権執行を簡易裁判所で連続的に求めるという制度もあるいは可能なのかというふうにも思います。それが果たして望ましいかどうかということは検討する必要があるのだろうとは思いますけれども,私の理解がもし正しければ検討対象になり得るかと思うのですが,そもそもその理解が正しいかどうかちょっと自信がありませんので,もし事情にお詳しい方々がおられれば御意見を伺えればと思うのですが。 ● 担保・執行法制部会にお出ましいただいた方がもしあれば……。  ○○委員は多分そうじゃないかと思うのですが。 ● 私も今御紹介にあった議事録に記録されている程度のこと以外にはちょっと記憶がないのですが。申し訳ありませんが。 ● 今の点は当然事務局で確かめますけれども,ほかの点ございますでしょうか。 ● 弁護士会での議論でちょっと出たのですけれども,少額債権となると扶養料債権等が最もニーズが高いわけなのですが,これは簡易裁判所を考える前に,むしろ家庭裁判所で執行ができるようにすべきではないかという意見が出ておりましたので,ちょっと一応検討に値する指摘ではないかと思いました。 ● 分かりました。今日は論点整理ということですので,御意見があればどうぞおっしゃっていただければというふうに思います。 ● 今の○○委員と同じことを私も考えていたのですが,この文章を読んだときには一応そういう養育費とか家裁関係の少額債権については少し性質が純粋な財産問題とちょっと性質が違っているのかなと考えて,これは分けて取り扱おうとしている趣旨かなというふうに読んだのですけれども,その点はどうなのでしょうか。今の問題も含めて,この問題を採り上げていくということなのでしょうか。 ● 私ども余り実は率直なところまだ家庭裁判所における執行手続というものを考えておりませんでしたので,今日そういう話を伺いましたものですから,少し考えてみたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 私どももこの制度について,どのように位置付けたらよいのかということについて,なかなか考えがまとまらないところがあるのですが,ただ実務的な感覚に立った場合,裁判所の方で時々聞こえてくる声とすれば,先ほど○○幹事の方から御指摘があったように,少額訴訟を起こされた一般市民の方がせっかく判決をとってこれで何とか回収できると思っていたものが,更に執行手続というものがあって,それについて違う裁判所まで行かなければならない。こんなことだったらという,やはりそこら辺の声が出てくることがあるという話を聞きますので,こういう手続を作る際に,もちろんどのようなニーズを対象にするのかという点が一番ポイントになると思うのですけれども,私どもとすると今申し上げたようなニーズが最も強いものなのかなと。一般国民の方々の観点に立てば,そういうところをどういうふうに裁判所としてもアクセスの向上を図っていくかというあたりなのかなというふうに思っております。  他方,本来の簡易裁判所の役割という,簡易,迅速でできるだけコストをかけないような形で手続を進めていくという,そのあたりの理念に立つと,余り大げさな手続あるいは大ぶろしきを広げてしまうということになると,ここもなかなか難しい問題があるのかなというふうに思っておりますので,是非そのあたりの点について念頭に置いて検討を進めていただければというふうに考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。  それでは,この少額債権執行制度に関しましては,今日かなりたくさんの御意見をいただきましたので,事務当局において更に論点整理を詰めさせていただきまして,また御意見を伺うということにさせていただきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。  それでは,次に2の「不動産競売等関係」というところに移らせていただきたいと思います。その(1)の「最低売却価額制度について」から入りたいと思いますが,これについてまず資料の御説明をお願いいたします。 ● それでは,部会資料の5ページの2の(1)の「最低売却価額制度」でございます。  最低売却価額制度でございますけれども,開始決定がされますと評価人を選任いたしまして評価を命じて,評価書を提出させます。そして,その評価に基づいて最低売却価額を決定するわけでございますが,その見直しの必要性につきまして,こちらの資料に書きましたような意見がございます。例えば,最低売却価額制度については,この売却価額というものはそもそも市場原理に委ねた方がいいのではないかという御意見がございます。そのほか,最低売却価額の決定に時間がかかっているのではないか,あるいは最低売却価額制度の存在によって売却率が低下していること等から,最低売却価額制度を見直すべきである。こういったような御意見がございます。  また,(イ)にありますような,最低売却価額が適正な市場価額を反映していない場合があるのではないかということで,評価制度の在り方を見直すべきではないかといったような御議論もあるところでございます。  そこで,仮に,こういったことを見直すという必要性があると考えますと,どのような在り方が考えられるのか。イでございますが,例えば,最低売却価額の選択制その他簡易な抵当権実行手続を導入する,こういったような考え方についてはどう考えるのかというのが一つの論点になり得るのかなというふうに思っております。  ウにありますとおり,仮に,最低売却価額を定めない制度を創設する,設けるというようにした場合には,やはり最低売却価額が現在果たしております機能,こういうものをどのようにして維持していくのかというのが問題になろうかと考えております。その機能といたしましては,このⅰにございますとおり,最低売却価額に達しない買受申出を認めないということによりまして,適正な価額による売却ということを実現して,債務者,債権者等の保護を図るといったような機能があるわけでございます。  ただ,こういった機能につきましては,この最低売却価額を見直すべきだというような御意見の中では,例えば,抵当権者の保護を図るというのであれば,それは抵当権者に最低売却価額を定めるか否かというものを選択させればよいのではないかといったような選択制の御意見もございますし,あるいはほかの債権者ですとかあるいは債務者の保護を図るというのであれば,もし売却価額が低過ぎる,不当に低いというのであれば,そういった人たちから一定の期間内に買戻しをする,そういう買戻権を認めればよいのではないか,こういったような議論もあるところでございます。  ただ,そういったような保護の方策といいますものが,本当に現実的に十分に機能するのかどうか,あるいはまたその執行手続の進行の円滑性を図る,あるいはその手続の安定性を維持する。こういったこととの要請との関係をどのように考えるのか。こういったようなことも一つの論点になるのかなと思っております。  また,最低売却価額につきましては,この資料の5ページの下のところにございますとおり,買受人に適正価額に関する情報を提供することによって,開かれた競売制度を実現する,こういったような機能もございますし,また一括売却を決定する場合の超過売却の見込みの判断等の基準にもなるわけでございます。そうしますと,こういったような機能を果たすために何らかの代替的な基準というものをどこに求めるのかといった点が,また一つの論点になろうかと思います。  さらに,実際の我が国におきます執行の実情ということにかんがみますと,6ページの(イ)でございますが,もし最低売却価額を定めないものといたしますと,買受希望者を排除して不当に安い価額で自ら落札することを目的とする執行妨害を助長することになるという意見がございますが,こういう点についてどのように考えるのかといったようなことが問題になろうかと思います。 ● ただいまの御説明にもありましたように,この最低売却価額制度につきましては,その存在によりまして売却率が低下しているなどといった現在の不動産売却の実情に対する厳しい認識というようなものを背景として,こういう見直しを迫る強い意見が世上あるところでございます。そこで,その最低売却価額制度についての御議論をいただく前に,不動産競売の現状はどうなのかということにつきましては,本日は席上配布資料といたしまして最高裁判所から幾つかの資料が提出されておりますので,それの御説明を承りたいと思います。これにつきましては,では○○幹事から御説明をお願いいたします。 ● それでは,本日席上に4枚ほど,表紙を入れると5枚ですけれども,資料を配らせていただいておりますので,順に御説明をさせていただきたいと思います。  最初が不動産執行事件数の推移ということでございまして,新受,既済,未済で折れ線グラフをつけさせていただいております。これを見ていただければ明白なわけですけれども,一番上の方にあった赤の未済の部分につきましては,平成8年から10年ころをピークに現在減少の一途をたどっているという状況になっております。他方,緑色の新受の部分につきましては,昨年平成14年,実は少し増加傾向にまた転じまして,平成12年に次ぐ2番目の高い水準を記録しております。また今後高水準の時代がやってくる可能性もあり得るかなというふうに思っているところです。平成8年ころには,新受と未済の差が,未済が新受の2倍近くあったという状況だったわけですけれども,見てお分かりのとおり,昨年はほぼ一致というようなところになってきているという状況でございます。  1枚めくっていただきまして,売却率の関係でございます。東京と大阪の売却率の推移を書かせていただいておりますが,昨年非常に高い数字を記録いたしまして,東京が83%,大阪が79%というような状況になっております。この5年間ぐらいでも売却率,今のこの経済情勢の中では非常に奮闘している方ではないかなというふうに考えております。地方,郡部の方に行きますと,確かにこのような数字ではなく50%を切るようなところもあるというふうに思っております。やはり特に農地,山林等についてはなかなか買い手がいないという現状があろうかと思います。東京,大阪といった都市部で現に売れていない物件について,聞くところによりますとそういうものはやはり物件自体の客観的な条件が非常によくない。接する道路の問題ですとか,がけ地的なものですとか,やはりそういうものはなかなか買い手がつかないという状況があるやに聞いております。  3枚目の評価書の提出期間。今回最低売却価額ということで評価の部分が問題になっておりますので,現実に評価命令が出て評価書が提出されるまでどの程度期間がかかっているかということについてですが,これを見ていただきますと,3分の2程度の事件については2か月以内には評価書が出てきている。これは全国の本庁レベルの数字ですけれども,大まかに言ってそのようなことが言えるかと思っております。かなり早い,1か月程度で出ているものもあるということも,御覧いただければお分かりのとおりです。  最後の,申立てから第1回目の売却実施までの期間ということですが,こちらの方も6月以内に売却実施まで至っているというのが3分の2程度でございます。この6月以内の中には,かなり早い,3月とか4月とかそういうものも混じっておりまして,この6月以内の中で平均的というか標準的な期間を見ると,大体4.5月ぐらいなのかなというような感じがしているところです。客観的なデータということでは,以上のようなところでございます。 ● それでは,ただいまの御説明に対して,まず御質問等がありましたら承りたいと思います。--よろしゅうございますか。  それでは,この部会資料の今の最低売却価額制度,(1)ですね,これにつきまして御意見を承りたいと思いますが,最初に本日席上配布資料として○○幹事の方から資料が出されておりますので,○○幹事の方から御発言をお願いいたします。 ● 最低売却価額制度の見直しについての非常に強いニーズがあるということは,御説明いただいて理解するところではあるのですが,利用する側から競売手続を拝見させていただきますと,ここに記載してございます文章を読んでいただけばそんなに難しいことはないと思うのですが,お分かりいただけると思うのですが,結論から言いますと,現在,売出価額の一定の客観的な基準として提示されている最低売却価額というのが正常に機能しているように私には思えるところであります。最低売却価額制度を撤廃してしまえば,それは売却率は上がるだろうというのはそのとおりのように見えるのですが,しかし技術的な無剰余取消しの判断であるとか,そういった点もございますし,何よりより高い金額で売れてほしいという抵当権者,それから被担保債権消滅に強い利害を有する債務者所有者の利害調整として適正に機能しているような気がいたします。  それから,今御報告があったように,利用者側から見ていても最近の売却率は非常に上がっておりまして,何の問題もないワンルームのマンション等についてはほぼ3か月から4か月で入札期日が入っております。そういう迅速化が図られているということが言えようかと思います。ということから,最低売却価額は正常に機能しているので維持すべきだろうと考えております。  ただ,大変強いニーズがあるということなので,どういう方向でそのいろんな代替案があり得るのかということを仮に考えてみますと,二つ提案がございまして,選択制と簡易な抵当権の実行制度ということが挙がっておりますが,簡易な抵当権の実行制度というのは,確かこれに先立ちます担保・執行法制部会でも検討されておったところだと思いますが,これは先順位の抵当権者が後順位の担保権等を洗い流すために一定の担保権を消滅させる制度というのを作りたいニーズがあるのは,それは大変ニーズとしては高いものがあるとは思うのですが,しかしこれに不服があるときにどういう手続を仕組むかというと,恐らく競売に移行するのだということになろうかと思いますが,そうなりますと競売に前置する手続が更にできるだけであって,結局,不服があれば競売に行くということになってしまって,手続がかえって重くなってしまうのではないか。そしてその不服がある場合というのは,非常に多いのだろうというふうに思われますので,これはなかなか難しかろう。検討できるものとしてその選択制というのがあるわけですけれども,先ほど御提案のあったいろいろなところで新しい制度を作るわけですから考え方はいろいろ出てくると思うのですが,抵当権者の同意によって発動させ,要するに最低売却価額制度を廃止した手続を発動して,更に所有者,債務者所有者に買戻権を与える。こういうことによって,債務者所有者の利益を擁護するという仕組み方ですと,恐らく債務者所有者は破たんして競売を申し立てられておりますので,買戻しの資金を恐らく用意できない困難な状況に陥るだろう。実際上は機能しないのかなというふうに思えるところであります。  ということで,選択制というのがやはり検討の対象としては一つ議論していただくことに合理性があるのかと思いますが,それを詰めていったときに最後の最後に調整し切れるのかなという疑問を持っております。この書きぶりはこういうふうに書いておりますけれども,より詰めた議論をしていただければと思いますが,そういう意味で最低売却価額制度というのは現在適正な機能を有しているのではないかという趣旨から,こういうふうに申し上げさせていただきました。  最後に1点,執行妨害という特殊な事案の場面というのを想定した点だけの付言をさせていただきたいと思いますが,執行妨害というのがいろんな意味で不良債権処理を遅らせていて担保不動産流動化を妨げているというのはそのとおりだと思いますけれども,昨今刑事の摘発件数も多いですし,売却のための保全処分等による保全措置もかなり浸透しておりまして,最近では余り露骨な大胆な妨害行為というのは減っているように私には見受けられます。しかし,さはさりながら大変巧妙になっておりまして,不落物件を見ていますと,やはりだれがいるのかわからないのだけれども普通の人ではない人が出入りしている物件は入札が入りません。これは価値がありそうでも入らないのです。やはりうわさが出てしまって,入りません。こういうことが仮にあるとしますと,保全で排除するだけの資料もない,刑事摘発で全件が押えられるわけでもない。しかし,どうも反社会勢力が入っているようだという物件は,期間入札を3回開いても入札が入らない。そうすると,民事執行法68条の3の規定によって取り消されることがある。それを避けるためには,最低売却価額を時点修正という形で下げていくということで処理をしていると思いますけれども,これがなくなってしまいますと,彼らはただ同然で自分たちで札を入れるだろう。こういうことが容易に想定される心配な事態だということがあろうかと思います。 ● この最低売却価額制度の見直しというのは,昨今の情勢から不動産がなかなか売れないということを背景にいたしまして,他方規制緩和というもう一つの流れが加わって一部で非常に強くこれが言われているわけでございますけれども,しかしこの最低売却価額制度が果たしている現在の機能というようなものをどうするのかということから,これは非常に重要な問題だろうという認識を持っております。そこで,これについて検討する,見直しをするかどうかを含めて検討するとなると,諸外国でどういうことをしているかということも検討の素材として事務当局としては事前に調査したいと思っておりますが,そういう方面での御認識,御経験,御見解を持たれている方については御意見をこの場でまずお伺いさせていただくと,大変事務当局としては有り難いわけでございますが。 ● ちょっと私ども,今先ほど申し上げましたようなこういった機能をどうやって維持する,そういう考え方があり得るのかどうかということも一つの論点かなと思っておりまして,そうしますと諸外国においてもし日本におけるような制度を設けていない,そういう国があるとすれば,それはどういう制度でどういう運用によってなっているのかということも一つの参考になろうかなと思っておりまして,事務当局の方でも少し諸外国の法制につきましては調べているところでございまして,何らかの形でまた資料にしたいと思っておるのでございますが,いかんせんまだ私ども諸外国の法制についての知識が浅いものでございますので,本日もしよろしければ私の方から,本当に大ざっぱでございますが,大体こんなような仕組みということを口頭で御紹介させていただきまして,先ほど部会長の方からお話がありましたとおり,詳しい先生方の方から補足なりをもししていただければ有り難いと思っている次第でございますけれども,よろしゅうございますでしょうか。まずドイツでございますけれども,ドイツの場合には必要な場合には鑑定人を審尋した後で,やはり土地の価額を確定する。こういう手続があるというように認識しております。そこで競売を実施するわけでございますけれども,入札の最高額がその土地の価額の10分の7を下回る場合,多少ちょっと少しほかの条件がありますけれども,土地の価額の10分の7を下回る場合には,一定の要件の下で権利者の方が競落の不許可を申し立てることができるというようになっております。そうしますと,もし不許可が認められますと,今度は職権で新競売期日を指定しなければならないということでございますが,この2回目の方はその土地の価額の10分の7を下回っても申立てによって不許可とすることはできないというようになっております。  また,その入札の最高額が土地の価額の半分に達しない場合。この場合には,職権で競落は不許可としなければいけないということで,これも職権で新競売期日を指定するということになりますけれども,この新競売期日につきましては,この競落は土地の価額の半分に達しない場合でも不許可とすることはできないということで,どうも1回はそういう制限があるわけでございますが,2回目になりますとそういう基準を下回ってもやむを得ないというようなことになっているように見受けられます。  それからフランスでございますけれども,フランスの方は差押債権者の方で最低競売価額というものを定めるというようになっているようでございます。ただ,この基準が現在は0.76ユーロ以上の最低競売価額を定めなければならない。現在,1ユーロは140円ぐらいでございますので,この最低基準は非常に本当に低額のもののようでございます。この差押物件が債務者の主たる住所である場合,ですから住居ということになるのでしょうか,その場合におきまして,差押債権者の設定しました最低競売価額が明らかに低額である,こういう場合には債務者は異議を申し立てることができるということになっておりまして,こういう異議が申し立てられますと裁判所の方で最低競売価額を変更する。  なお,買受けの申出がない場合には,差押債権者がつけた値段まで順次減額していく。こういうような手続のようでございます。  もう一つ,債務者の側の手続といたしましては,債務者の側の方は任意売却による売却への転換を申し立てることができる。こういう制度もあるようでございます。ただこの場合には,債権者の異議があるときは,その債務者の転換の申立ての条件を審査いたしまして,その転換の可否を決するというもののようでございます。この場合,もしその任意売却が認められますと,この最低競売価額は債務者の方が定めるということで,債務者の保護ということになっているようでございます。  また,競落の日から10日以内に競落人となり得る者及び債権者は増価競売を申し立てることができる。増価競売では,競落価額の1割増し以上での申出額が最低競売価額となって,売却期日で買受申出のないときは,申立人が申出額で買受人となるということで,事後的にそういった増価競売によって保護されるということもあり得るというようなことのようでございます。  それからアメリカにつきましては,各州によって制度が異なっておりますけれども,文献によりますとこんなような制度もあるというようなことでございます。まず債権者につきましては,担保不動産以外の債務者の財産から自由に弁済を受けるということではありませんで,他の財産から弁済を受けるためには一定の要件が課されている,こういうような制度がございます。その場合には,裁判所の方から不足金の判決,こういうものを得ませんと,差額の分,不足分につきまして弁済を受けられないというようになっているようでございます。この場合の不足金の判決におけます不足分の判断につきましては,被担保債権額と担保不動産の適正価額との差額を不足分とする。つまり,本来これだけの価額で担保不動産が売れたはずだということと被担保債権額との差額分が不足分ということになっているということのようでございます。  それからもう一つは,買戻権,先ほどもちょっと御紹介しました買戻権でございまして,売却後の一定期間所有者ですとかあるいは後順位担保権者は買受人に対して買戻権を行使して売却価額を支払って競売不動産の所有権を取得することができる。こういう制度を設けている州もあるようでございます。  甚だ浅い知識の勉強でございますので,不十分な点,間違えている点あろうかと思いますけれども,とりあえず概略は以上でございます。 ● そういうことでございますので,ドイツ,フランス,アメリカについてお詳しい方がもしこの機会にこういう制度になっているというようなことを御指摘いただければ大変有り難いと思っておりますが,いかがでしょうか。 ● 別に詳しいわけではありませんが,ドイツ法について,若干補充させていただきます。今御紹介にありました10分の7を下回った場合にという,まずそっちの問題ですが,これにつきましては基本的には後順位の債権者の保護のための制度である。そういう後順位の債権者が申立てをしてもう一度競売をやり直すことができる。もちろんそれで高く売れれば,間接的には債務者の利益にもなるのだと思いますが。  他方で,10分の5,半分という法の制約につきましては,これも今御紹介にありましたように職権で不許可にする,こういうことですから,これは申立ては特に必要ないということだと思いますので,これは直接的にも債務者の利益保護にもつながる制度であると,こう理解できるかと思います。  もう一つは,そういうわけで10分の7については債務者は申立権がないものですから,ある意味では保護はされないわけですけれども,他方で一般条項として過酷な執行の禁止という765条aでしたか,別の条文が同じ今の10分の7に関する条項と同じ時期に戦後入ったわけですが,そちらで場合によっては過酷執行ということで,非常に安い値段で売られたという場合については,こちらは債務者が申立てをしてその競売を取り消してもらうことができる,そういう制度になっているようであります。ただ,その過酷執行の方の規定については,判例を調べたわけではありませんが,若干見たところは,基本的に一番問題になっているのは明渡執行のようでありまして,競売についてその価額の問題でどれだけ規定が働いているのかは,もっと調べてみないとわからないというふうに思っております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● アメリカの方について補充させていただきます。私自身もアメリカ法は詳しく存じませんので,前回の担保・執行法制部会で御披露した知識以上のものはございませんけれども,私が理解している限りのことをお話しさせていただきたいと思います。  先ほど事務当局から御説明がございましたように,最低売却価額制度を正面からアメリカ法は導入していないと言われています。ただ,州によっては大恐慌時期にとんでもないことが起こったために導入したものが現在なお残っている州,ワシントン州がその例だと言われておりますけれども,残っている州もあるということでございますけれども,基本的にはない。その背後には,この見直しの必要性が説いておられるように,市場原理に従った価額こそ適正な担保物の価額であるという原理が,その競売による価額,売却価額が適正な担保物の価額であると。公売というのは,公の売却手続というのは適正な担保目的物の価値を判断する最適な方法であるという思想が広く行き渡っているもののためだろうと思われるわけであります。  ただ,現実には御承知のといいますか,すぐお分かりのとおり,限定された市場原理でありまして,本来の意味での市場原理は働かないわけであります。それにどう対応するかということでありまして,とりわけ最低売却価額制度が果たしている機能の一つである部会資料2の5ページのウの(ア)のⅰに当たりますけれども,最低売却価額制度に達しない買受申出を認めず,債務者,それから,今,○○委員からも御説明がありましたように,この債権者というのはやはり後順位債権者のことを意味する,特に後順位債権者の地位が問題となろうかと思いますけれども,債務者,後順位債権者の利益を保護する,保護しなければいけないという思想はアメリカ法にもあるようでありまして,そのための手段として考えられているのが,先ほど御紹介にありました二つの手段だという位置付けがあろうかと思われるわけであります。  ちょっと長くなりますが,まず一つ目の買戻し,アメリカ法で申しますとリデンプションの受戻し,日本法では受戻しの方が言葉として合うのかもしれませんけれども,この制度があります。この制度は私の調べた限りでは半数以上の州で導入されているということでありまして,売却後一定期間内,1年が最も多いと言われておりますけれども,短い州では6か月,長い州では2年。3年という州もあるという記録もありますけれども,そこが現在どうなっているのかちょっと分かりませんので一応2年としておきますが,債務者に,州によっては後順位債権者に売却代金相当額,州によってはそれにプラスして利息相当額を加えたものを弁済して,目的物の所有権を取り戻す制度ということになるわけであります。  この制度を導入した趣旨は別のところにあるわけでありますけれども,機能的にはこのリデンプションと申しますか,受戻しというものが起こらないような高額で買受けされることが期待されているということになっているわけであります。しかし問題点が当然すぐ浮かぶわけでありまして,この2年間確定的な所有権を得るために買受人は待たなければいけないわけでありまして,その間は買受人は利用できない。かつ,州によっては,どうせ戻ってくるわけですから債務者が占有を続けるという州も多いようでありまして,いずれにしましてもこれらのことで競落人の登場と適正価格形成をかえって阻害している,要するにかえって逆に下げているという結果が出ているというのが,私の調べた範囲でのアメリカの状況であったように思われるわけであります。さらに,これを日本法に導入しますと,先ほど○○幹事からもありましたように,執行妨害にかなり有効な手段を与えるときにもなりかねないということになろうかと思います。  そうしますと,買受人の地位を保護しつつ適正価額形成に向けた対抗策というのを考える必要があるわけでありますが,これが先ほど事務当局から説明がございましたいわゆる不足額と申しますか,被担保債権の残額の追及の制限を図る制度ということになろうかと思います。これは明白に,適正価額形成に向けられた制度として作られたようであります。これも州によって違うわけですけれども,不足額の主張を全く制限する州--カリフォルニアがそうだと言われているわけでありますが,この州は多くは裁判所の競売手続以外の手続を認めている州でありまして,日本法では直ちに役に立たない情報になろうかと思いますので省略させていただきまして,裁判所の競売手続を経ている手続におきましては,先ほど御説明がありました残額の請求については債務名義の必要があるわけでありますけれども,これを不足額の判決という制度で得ることになる。ただ,この手続が非常にややこしいわけでありますけれども,最終的には先ほど御説明がありましたように未履行の被担保債権は配当価額との差額ではなくて,適正価額との差額という扱いをするということでありまして,その段階で裁判所は適正価額,土地の適正価額を自ら判断するという役目を負うことになるわけであります。  これは最低売却価額よりもかなり難しい判断を裁判所,アメリカは陪審ですから陪審がするそうですけれども,することになろうかと思いますが,それは別にいたしまして,これが機能しますのはアメリカ法特有の事情があるようでありまして,というか,私の理解ではアメリカ法特有の事情があると考えるわけでありまして,アメリカの競売制度は,これも担保・執行法制部会で何度も説明されましたように,第三者が現れることを余り予定していない,すなわち公告制度も不十分でありますし,3点セットも不十分でありますし,まして内覧でも改正予定の日本法に遅れているわけでありますので,自己競落がほとんどということであります。譲渡抵当権者,抵当権者でありますけれども,抵当権者が自ら買い受け,それをセカンダリーの市場で転売して,その転売代金から債権者は回収するという形で,アメリカの担保執行制度は機能している。  そうしますと,抵当権者は唯一の買受申出人になるわけですけれども,高く買い受けビッドをするインセンティブは何もないわけでありまして,安く売って転売で回収すればいいというインセンティブが働く。これを抑えるために,先ほど申しましたように残額の請求を制限するという制度を導入して,これによって債権者が,抵当権者がより高額な費用でビッドをかけるということを期待しているようであります。  ただ,これも直ちに思い浮かぶ問題点があるわけでありまして,機能するのは担保割れしている場合のみであります。担保余剰がある場合にはこれは機能しない,抵当権者に高く買うインセンティブは何もないわけであります。更に担保割れしている場合でも,残額追及を制限するとしますと,その正当化が問題となりますし,先ほど申しましたように適正価格を再び裁判所が判断するというかなり無理なことをやらなければいけないような印象を持っております。  ここから先は私の感想でございますけれども,アメリカ法は最低売却価額制度の導入に失敗したために,適正な価額形成のためにかなり無理な制度を導入してしまったわけでありまして,これも成功しているとは言いがたいように思われるわけでありまして,それに比べて日本の最低売却価額制度を評価するという視点が必要ではないかという感想を持っております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● ○○幹事がおっしゃったのと同じくアメリカの話なので,内容的に○○幹事がおっしゃったことと異なるわけではないのですけれども,若干切り口というか観点の違うところから私の印象を申し上げたいと思います。  最低売却価額制度を廃止せよという我が国の論者の多くは,アメリカには最低売却価額制度がない,それでうまくいっている,どうして我が国では廃止できないのかというような論法になるわけですが,これは私実務を知りませんのでもしかしたら勘違いしている部分があるかもしれませんが,私の印象では,確かに法制度的にはアメリカには最低売却価額制度ないですけれども,実際には見た目ほど違わないのではないかという印象を持っております。  一つは,今日のこの論点ペーパーに即して言いますと,最低売却価額制度の欠点として,その最低売却価額の決定に時間がかかるというようなことが書かれております。ではアメリカで担保権を実行するときに,司法上の実行をするときに,最低売却価額のようなものを全く考えずに手続が進んでいくかというと,制度にビルドインされていませんから,裁判所の評価人が判定するという制度はないですけれども,担保権者が実行を申し立てるに際して,先ほど○○幹事もおっしゃったように,不足金判決制度がありまして,しかも不足金判決制度で不足金が取れるのはフェアマーケットバリュー(適正市場価格)との差額だということになっていますから,適正市場価格が幾らであるかという査定をかけてから申し立てしないと危なくて仕方がないということで,実務的な文献等によりますと必ず鑑定を,日本語的に言うと鑑定をやってから実行の手続をするかしないか判断する。場合によっては,これでまずいと思ったらもう司法上の実行はせずに,私的実行をやるとかほかの手段を考えるということで,必ず合理的な担保権者は,その担保権者の責任とリスクにおいてではありますけれども,価額の判定のための手続というのはとっているようであります。そうすると,それにそれなりに時間がかかるということは現実には起きているのだろうと思います。  それから,実際に売却になるときの話ですが,我が国では最低売却価額制度があるから,最低売却価額に達しないと競売自体ができなくなる,要件になっている。確かにアメリカでは要件にはなっていない。しかし,先ほど言いました適正市場価格(フェアマーケットバリュー)に達しない買受けがなされるとどうなるかというと,多くの州で買戻権がありますから,安く落とされたものは安く買い戻せるわけですね。そうすると,かなりの確率で買戻しが起きる。そうすると,安く落とせるからといって競落人の側はそれは後の買戻しが怖いですから,やはり適正市場価格を余り下回って落すことはなかなかしたがらないようでありますから,結局手続の要件ではないけれどもやはり実際には最低売却価額を下回れば,なかなか実際にその手続が進まないということがあるような気が,文献の印象では気がいたします。  しかも,先ほど○○幹事がおっしゃいましたように,買戻期間というのがえらい長くて,年単位なのですね。州によって違うようですけれども,私が,これは調べたことはないのですけれども,ふだんの勉強していて時々引っかかってくる文献で出てくる州はほとんど1年ですが,1年間もしかしどうなるかわからないというので,ますます怖くて,よほど条件がよくないとなかなか買受けがうまく,競売がうまくいかないというので,結局その司法上の競売というのは余り担保権者側にとって得じゃないですよ,だから私的競売をやりなさいなんていうサゼッションをしているものも多いわけですね。そうしますと,結局最低売却価額制度があるのに実務はそんなに,アメリカではあるのにそんなに遠くないような実務になっているのではないかという気がいたします。  それからもう一点,これはアメリカの話ではないのでオーストラリアの話で,しかも実務家からの伝聞ですので若干私の誤解があるのかもしれませんが,オーストラリアでもいわゆる我が国のような要件としての最低売却価額制度というのはないようであります。では最低売却価額制度なしに担保権実行がされているのかというと,裁判所の実行でも私的実行でも,どちらもよく実務家に話を聞くときに,リザーブをつけたからという話を聞くのですね。リザーブというのは,この価格以下では売らないということで,一種の最低売却価額制度なのですね。これは法律の要件ではないけれども,まず多くの場合というか,ほとんどの場合という人もいますけれども,つける。なぜつけるかというと,これをつけずにやって適正市場価格以下で売れると,後で売却実施人が責任追及されるおそれがある。これは司法上の競売でもあり得るというようなことを言う。恐らくこれも不勉強なので間違っているかもしれませんが,コモン・ローの国ですから,恐らく競売実施人というのは一種の信託受託者的な立場に立つのだと思うのですね。そうすると,受託者の義務のようなものが生じてくるというので,実際つけるのだと思うのですね。アメリカの場合そういった問題がどうなっているのか私知りませんけれども,もしかしたらそういう問題もあって,任意に一種のリザーブをつけているケースもあるかもしれないということもあります。  したがって,今まで申し上げたことぐらいしか存じ上げなくて,しかも不正確な部分もあるかもしれませんが,制度の表だけを調べて,アメリカは最低売却価額制度がないというところだけ見ているだけではやはり不十分で,現実が最低売却価額制度があるのと近いような運営がされているのかどうかというところまで踏み込んで調べなければいけないという気がしております。 ● 幾つかの国の比較法的な見解を御披露いただきましたけれども,○○委員,どうぞ。 ● 実は大阪の地方の研究会でこういうことを聞いたのですが,多分同席された方々もいらっしゃるので,私の記憶が間違っていれば御指摘いただいたらいいと思うのですけれども。  抵当不動産が現在どういうふうに処分されているかということについて御報告がありまして,その方は裁判所のやる競売,司法競売とおっしゃっていましたが,司法競売がどんどん少なくなっている。しかも,値段が任意に売却されている価格の方がずっと安いのだというようなことで,なぜそうなるのですかといったら,いわゆる貸しはがしみたいなもので,幾らでもいいからとにかく売ってしまってくれというような企業が非常に多くて,最低売却価額を維持して売ろうなんていうような抵当権者というのは非常にまれなのだというようなお話を聞いたことがあります。私は,そんなことを言ったら担保・執行法制部会でどうやって妨害を排除して高く売るかというようなことを考えているのに意味がないじゃないですかと言ったのですが,それはもう全然意味がないというようなお話でありました。  それが大阪地方の現実かと思うのですけれども,そういうことになると最低売却価額を維持するというのが,かえってもっと安い売却,任意売却に流れているだけではないかというようなことになるかと思うのですが,同時にいわゆる貸しはがしなんていうような現在の非常に特殊な事情のもとでの話であって,そういうことを念頭に置いて最低売却価額を即にやめてしまうというような議論をしていいのかどうかという疑問を持ちます。私がお聞きしたいのは,そういう現象というのは全国にあるのかどうかということであります。 ● その全国的な現象はまたいずれ,今日ではなく,事務当局で調べたりあるいは委員の方々からお話を伺いますが,論点整理としては,今日出しましたこの原案に従って今後議論を進めていくということでよろしゅうございますでしょうか。--それでは,そういうことにさせていただきます。  時間がちょっと超過いたしましたけれども,ここで休憩にさせていただきたいと思います。それではよろしくお願いいたします。           (休     憩) ● 休憩時間が大変短くて恐縮でございますけれども,審議を再開いたします。  先ほどは最低競売価額制度の見直しの要否というこの(1)が終わりましたので,(2)の「その他」と,それから6ページの「執行官による援助請求関係」,これを一緒にして御議論いただきたいと思います。それでは○○幹事から,まず御説明をお願いいたします。 ● それでは,まず(2)の「その他」でございます。不動産競売の手続の見直しの在り方として,先ほど来最低売却価額制度のことを御議論いただいたわけでございますが,なおそのほかに不動産競売等の手続の適正・迅速化を図るための手当てとして考えられるものがあるのかということでございます。  例えばということで,次のような意見があるわけでございますが,この点についてどのように考えるかということでお出ししております。  一つ目は,内覧制度の問題でございます。今通常国会に提出しております担保執行の改正法案におきましては,差押債権者の申立てがあるときは内覧を実施することができるというようにしているわけでございますが,抵当権者等に優先する占有者が競売不動産にいる場合には,その占有者の同意があるときに限る,このようにしているわけでございます。こういったことで,この改正法案におきましては内覧制度というものにつきまして一つの手当てをしているわけでございますけれども,この点につきましてなおより内覧制度を拡充すべきであるというような意見がございます。すなわち不動産を買おうという場合には,当然その不動産の中を見るというのは通常のことである。したがいまして,プライバシーというものを不当に侵害しない,そういう対応のもとで抵当権者等に優先する占有者についても,そういう方がいる場合でも内覧を認めるべきではないか,こういうことによってより多くの人が競売に参加するようになるのだ,こういったような御意見もあるところでございます。そこでまず,この点についてどのように考えるのかというのも,一つの論点となり得るかなというように思っております。  それからイでございますが,競売の申立ての取下げの時期の制限をするかどうかという問題でございます。現在の民事執行法76条でございますが,買受けの申出後は競売の申立てを取り下げるには最高価買受申出人等の同意を得なければならないというようにされております。しかしながら,この条文の解釈といたしましては,開札期日の直前まではこういった人の同意なくして取り下げることができると解されておりまして,債権者が債務者と和解をして取り下げるということが可能だということになっております。この点につきましては,買受人は保証金を提供して入札するわけでございますが,高額な保証金を提供して入札したにもかかわらず,開札直前に取り下げられてしまうということになりますと,その保証金を提供したことが無駄になってしまう,こういったような趣旨の御意見があるわけでございます。そういうことから,入札開始日後は申立ての取下げを認めないというようにしてはどうかというような意見がございます。こういうことで,この点についてどのように考えるのかということも,一つの論点になり得るのかということにつきましても御議論いただければというように思っております。  続きまして,3の「執行官による援助請求関係」でございます。前回の部会で最高裁判所の方から現実の執行の場面,例えば,その不動産の明渡執行の場面におきまして占有者がほかに行く場所がない,こういったようなケースなどで,実際に執行官が困っている場面がある,こういったような御紹介がございました。現在その執行官におきましては,ここの資料に書きましたような警察上の援助ですとか特定の資料の交付等を請求する権限,こういったような権限があるわけでございますが,こういうものを拡充する方向で考えることについてどのように考えるのか,御議論をいただければというように考えております。  その場合に,もしこれを拡充の方向で考えるといたしますと,どういう方法でこれを拡充するのか。一つの考え方といたしましては,執行裁判所と同様に一般的な援助請求の権限を認める,こういう方向で考えるのか,それとも現行法の考え方のように個別の権限を拡充していく,こういった方向で考えていくのかといいますものが,また一つの論点になろうかと思っております。 ● それでは,まず(2)の「その他」につきまして,御質問あるいは御意見を承りたいと思います。どなたでも結構でございますので。 ● この6ページの(2)のアの内覧制度について,少し意見を申し述べさせていただきたいと思います。  今,○○幹事から御説明がありましたとおり,民事執行法の改正法案の64条の2で内覧制度というのが導入されることになったわけですけれども,その担保・執行法制部会で議論しているときには,内覧制度一般について二つほど考える点があるというふうに指摘されておったというふうに理解しております。まず第1は,その内覧というものを実施すると,その場で不正な談合が起きるおそれがあるとか,あるいは債務者に対する不当な取立ての場となるおそれがある。このような指摘があり,これは64条の2との関係では運用のよろしきで対応するということになったかと思います。  もう一つ指摘されていた問題は,居住者のプライバシーということであります。であるからこそ,64条の2で同意という要件が入ったわけですけれども,ただ注意しなければいけないのは,これも正に先ほど御説明があったことですが,抵当権者等に対抗できる権限を有する者についてだけ同意が要件となってくる。裏返していいますと,権限を対抗できない居住者については,同意がなくても内覧できるという仕切りになっているわけでありまして,かなり踏み込んだ内覧制度を作ろうとしているわけであります。  そのようなことを考慮に入れた上でなのですが,内覧を実施する場合に,買受けを希望する者の一部にだけ内覧を認めるということはあってはいけないことなわけで,これは開かれた市場にはならない,そういう開かれた市場という言葉を使うならばそれに相反することになるわけでありまして,やるならば希望者に等しく機会を与える必要があるわけでありまして,そういう意味では見せたくない人には内覧をさせなくてもいい相対任意の売買ともそもそも違う手続だということではないかと思います。  それらを踏まえて,この(2)のアでは更に拡充すべきであるという意見があるということなのですが,64条の2では足りない点について,具体的な必要性がどの辺にあるかということを具体的に意識した議論をしないといけないのではないか。64条の2で議論したから二度と議論してはいけない,一事不再理だというつもりはもちろんなくて,後ほど少額金銭債権について間接強制という議論は賛成だという,既に議論して敗れた議論をもう一回しようと思っていますので,一事不再理でいけないということは言うつもりはないのですが,抽象的に内覧制度を拡充すべきかどうかということではなくて,一体どこに具体的なニーズがあり,権限を対抗できないとはいえ現に占有している人のプライバシーなどを侵害するのを正当化するような強い必要性がどこにあるのかという議論をすべきではないかと考えます。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 今の○○幹事の意見に基本的に同趣旨で賛成でございまして,2点ございます。  1点は,内覧を受忍すべき根拠の問題でありまして,新しい改正法の64条の2で,対抗できる賃借権者には同意を要する。その他の者については同意を要しない根拠は,恐らく区別するとすれば抵当権設定登記のあり,なし,抵当権設定に劣後するかどうかということになろうと思うのですが,その理屈からいいますと対抗できる賃借権者は劣後しておらないわけですから,根拠を欠くのではないかということ。  ただ,私は内覧自体この運用に非常に心配,不安を持っておりまして,総論的に言いますと内覧というのはプライバシーの侵害ということもありますし,執行現場の実情から推測して,内覧というのはどうやって落ち着くのかというところに不安を持っておりまして,通常の不動産売買で自宅を見せるというのは,売りたい人が同意をしているから内覧希望者に家財道具をきちっと掃除して見せるのですけれども,今回この競売によって内覧を受忍させられる人は,自分が債務不履行をしていないのに自分の貸主が債務不履行したということで内覧を課せられる。その根拠が抵当権設定登記だというふうに言われても,恐らくなかなか制度だと言われても納得できにくいものがあるのではないかということで,どれだけ事実上の協力が得られるのか。それからプライバシーというのがありますが,執行の現場を見ていますと,やはり中に動産等がありますと,それは子供のランドセルはある,病人はいる,いろいろ貴重品はある,高価な絵画もある,こういうものについて本当に広く内覧を実施してしまいますと事故が起こりかねないということがありますので,全体的には内覧というのはこれからそこの64条の2を契機にどんどんどんどん拡充されていくべきものとしてとらえるのは,私はどうかというふうに思いますので,その辺の点も含めて御考慮いただきたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 最高裁判所にお願いなのですが,手続の迅速・適正化ですか,前に訴訟のときに非常に長期間かかっている事件について,手続のどこの部分でどのぐらい時間がかかっているかというようなのをケーススタディー的に幾つかお示しいただいたことがあったと思うのですが,執行についてもたくさん調べられるのは大変だと思うのですけれども,幾つか典型的な事例で申立てから,例えば,現況調査命令までどのぐらい時間がかかり,現況調査にどのぐらい時間がかかり,評価にどのぐらい時間がかかっているかというような,そういうそれぞれの手続の区分に従ってどの程度時間がかかるかというようなことを,もし可能であれば調べて教えていただけると,例えば,どういうふうにしたら迅速化できるとか,評価書の提出期間が果たしてこれでいいのか悪いのかというようなことが分かるのではないかと思うので,できましたらお願いしたいと思うのですが,いかがでしょうか。 ● 是非工夫をさせていただきたいというふうに考えておりますが,執行の場合,非常に事件数が多いということもありますが,どういうふうにそのサンプルを作るのがよろしいのかというあたりでいろいろ工夫をさせていただきたいと思います。基本的には標準的なまず流れというのがどんな感じになるのかというあたりと,あとは今の御指摘ですと延びているものの代表例としてどんなものがあるかとか,そのあたりでございますか。ちょっと工夫をさせていただきたいと思います。 ● そんなに大げさに,たくさん統計的にというような話ではありません。幾つかの典型的な例で結構です。 ● この「その他」のところで,何か御意見ございますでしょうか。 ● 再び内覧のことなのですが,今既に御紹介がありましたように,今回審議中の法律案は,法制審議会の要綱から見ましてもかなり踏み込んだ改正提案をしているわけですね。いずれにせよ,この新しく制度をこれから作るという段階にあるわけで,それの実績なりあるいはこれは債権者の求めに応じてということになっているわけですから,どのぐらいそれが利用されるかということについて,もう少しきちんと見た上で,またそれでは不十分なのかどうかということを考えるべきなのではないかと思います。そういう意味では,この段階で更に拡充すべきであるということの是非を議論するというのはかなり難しいのではないかと思います。 ● そういう御意見,確かに私どももそういう意見,中でもあるわけでございますけれども,とにかくいろいろな意見を伺って論点整理をしていきたいと思っております。  ほかに,いかがでしょうか。  それでは,次に3の「執行官による援助請求関係」につきまして,先ほどの御説明のとおりでございますけれども,御意見をどうぞ。 ● (2)のイはいいでしょうか。 ● いいです。どうぞそれも……。 ● お金がないので競売やられたけれども,何とか工面できたからといって取り下げるというのを,絶対取り下げさせないというところまでいく必要があるのでしょうか。契約締結上の過失みたいなもので,損害賠償ぐらいで,契約自体の成立までを認めないという民法の扱いなんかを考えますと,取下げを認めないとまでいかなくても,損害を賠償させるというぐらいのところでとめたらどうかと私は思うのですが。 ● 分かりました。そういう取下げを認めないことにするか,あるいは別の方策を考えるかということももちろんこの中に入ってくると思っておりますが,ほかに御意見ございますでしょうか。--よろしゅうございますでしょうか。  それでは,3の執行官による援助請求のことにつきまして,御意見あるいは御質問も含めてどうぞ。 ● 前回,○○幹事の方から執行官による援助請求関係については論点として採り上げていただきたいということを申し上げさせていただきまして,このように論点として採り上げていただきまして大変感謝しております。再度私どもの方から,現在の実情等について申し上げさせていただきまして,どのようなことを執行官が望んでいるかということについて若干御説明させていただきます。  現在,民事執行上,執行官は先ほど○○幹事の方から御説明がありましたように,警察上の援助,これは明渡執行等多くの場面で利用させていただいているわけですけれども,現況調査のために各種資料の交付を求めるというようなことを認めていただいているわけですけれども,具体的にその不動産の明渡しの強制執行という,強制力を一番激しく使わざるを得ない場面におきましては,自分自身で移動することを確保できない方々がそこにいることが非常に多いという事情にあります。例えば,非常に高齢の方であるとか,あるいは病気で寝たきりのままでいる方,あるいは身体等に障害を持っておられる方,そのような方がいろいろおりまして,実際に明渡執行を現在執行官がやっている際に,非常に時間がかかっているという事例にはこのような事例が非常に多いということで,これは各庁に確認したこともございますが,ほとんどの庁でこういう事例があるということを聞いております。  このような方がいる場合,執行官が実力を行使して外に出してしまうということは,これはもちろん人権,生命,身体に深刻な問題が生ずるというのは明らかであります。例えば,札幌だとか北の方で雪の深いときに,こういうところで執行したらどうなるか。これは明らかであります。そういうような状況で,本来このような他の保護を受けざるを得ない人というのは,本人が申請するか,あるいはその家族,親族が申請するというようなことで公的な保護を受けるというようなことも可能でありますけれども,執行の現場におきましては,なかなかそのようなすんなりとそういう保護を受けてくれるというわけにいかないというのが実情であります。中には,このような老人等を執行妨害に使っているという,例えば,暴力団関係者が自分の両親あるいは親族が非常に高齢なのを奇貨としてというか,そこに住まわせて何年も明渡執行を妨害する,こういう事例も実際にあるわけであります。  最近増えてきたものとしましては,市町村の市営住宅あるいは町営住宅等の明渡執行であります。これは特に寝たきりとかそういうわけではありませんけれども,そもそも市営住宅等に住んでおられる方は収入等の面で非常に難しい状況に置かれているという方が多いわけですけれども,そういうところも家賃の滞納,先日ちょっとどの新聞だったか忘れましたけれども,新聞上でも家賃の滞納が非常に増えて苦慮しているというような報道がされておりました。このような執行が現実に増えてきております。このような場合も,今の失業率の向上とかそういうことで生活に困窮している場合がある。さりとて,執行してしまうと,これは行く場所がないので,この方々がホームレスになってしまったり非常なそういう社会問題にもつながりかねないというような状況もございます。  こういう場合,実際にはこれまで執行官は市町村の福祉担当部署等と何度も交渉をさせていただきまして,何とかならないかということをやってきているわけですけれども,基本的に,例えば,生活保護法による保護,あるいは身体障害者等の福祉施設への入所,こういうものについては本人の申請あるいは家族の申請でないと駄目だという,そういう法律上の規定がネックになって,なかなか進まないというふうに聞いております。実際に,例えば,短期的に養護老人ホームへの入所措置だとか,そういう施設,身体障害者厚生施設とかそういうところへの入所につきましても,非常にその要件が厳しくて,なかなか執行官がその要件を整えるだけの資料などは,執行官がやるのはどうかというところもあるのですけれども,難しいという状況にあります。  このような状況で執行を円滑に行う,民事執行の迅速な実施が求められているところでありますけれども,明渡執行の催告という制度も今回改正法の中に盛り込んでいただきまして,円滑な執行ということで催告に当事者恒定効を認めていただくというような手段も講じていただきましたけれども,それでもなおかつこのような事例は残るというふうに思っております。このような方々は,やはり自分の家に非常に愛着がある,あるいは他に行く場所がないということになりまして,執行を迫りますと,先ほど申し上げたようなこともありますけれども,場合によっては自殺に至るだとか自分の家を放火してしまうだとか,あるいは執行官,債権者に対する暴行を行ってしまう,このようなことも生じているということも聞いております。このようなところで,やはり執行官がこれらの明渡執行の対象となる方々に対して公的施設への保護というものを求めることができるというようなことで仕組んでいただきましたら,明渡執行をスムーズにいくことができる。占有状態で明渡しがスムーズにいくかどうかということで,売却率に影響している部分があります。そういうところも解消する意味では,是非このような内容の執行官の援助というものについて御検討いただければというふうに考えております。  そのほか,迅速な執行,先ほど許可の期間がという御議論もありましたけれども,執行官の明渡し,現況調査報告書を作成する上でも,いろんな官公署,一部については既に認めていただいているものがありますけれども,例えば,土木事務所に対する図面だとかそういうものについても,執行官が直に交渉して見せていただければというようなことも非常に多いというふうに伺っているのです。その辺も含めた形で,援助請求というものを考えていただければ非常に有り難いと思っております。裁判所の援助請求というものがもともとありますので,執行裁判所でということもありますけれども,このような実際の執行の場面では執行官が直接こういう担当部署を訪れて,具体的にどのような対策でやるかというのを十分協議した上で保護を求めるというようなことが必要であります。それが迅速な執行につながると思いますので,是非この辺については御検討いただければと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● ただいま○○幹事から大変詳細な要請についてのお話をいただきましたので,特段付け加えることもない,利用する弁護士の側からしてもないのでございますが,1点大変甚だしい妨害だなと思われる事案だけ報告いたしますと,関西の方で大変価値のあるであろうビルを競売にかけたところ,その占有者であるのか事件屋,整理屋のようなものが,大々的にそこを占有していることを奇貨として各居室にシルバーマンションと銘打って多額の保証金を徴求して老人を全部入れてしまって,自分は逃げてしまったという事案がありまして,これは競落もできないわけで,事実上抵当権としては消滅の結果になったという事案の報告を,これは新聞にも出たことがあるのですが,そういうことがございました。それを1点だけ付け加えさせていただきます。  それから,援助の在り方に関するイメージなのですが,警察への援助要請がどういうふうに行われているかということを,執行現場に立ち会ってきた弁護士としてその経過をちょっとお話ししますと,もともと6条で援助要請の規定はあるのですけれども,当初警察署に援助要請書というようなものを執行官の方から発送していただいても,警察の本来の仕事でないのにどうして民事執行の手続に立ち会わなければいけないのだということで,各警察署長の方になかなか理解してもらえなかったという時代がございました。これも執行官,裁判所の御努力によって今は大変円滑な形で理解をしていただいております。私ども利用する側も,よろしくお願いしますということで事件の経過を警察署に側面から事情説明等に行きますと,大変積極的な援助をしていただいているということに今現在なっております。それもここ5年,6年のことではないかと私は感じているのですが。したがいまして,そのような規定があること,そしてその旨の連絡協議のようなものを作ることによって,福祉施設等が一つその焦点に当たるのだと思いますけれども,是非,他の官庁の御理解を得るための御検討をしていただければと切にお願い申し上げる次第です。 ● ほかにいかがでしょうか。--よろしゅうございますでしょうか。  それでは,この3の「執行官による援助請求関係」につきましても,本日いただきました御議論を踏まえまして,事務当局で具体的にどんな案が考えられるかということを更に検討を進めさせていただくということにさせていただきたいと思います。  それでは先に進ませていただきまして,今度は7ページでありますが,4の「裁判所内部の職務分担関係」と5の「その他」を一緒に御議論いただきたいと思いますが,まず資料の説明をお願いいたします。 ● それでは,部会資料2の7ページでございますが,4の「裁判所内部の職務分担関係」でございます。現在の裁判所内部の職務の分担といいますか役割分担はどうなっているのかといいますのは,本日席上配布いたしました参考資料のフローチャートを御覧いただければ分かるとおりでございます。A3用紙のものでございます。  民事執行手続を更に迅速化するということのためには,一定の事項を裁判所書記官の権限とする,こういう方法で検討することについてどう考えるのかというのが,一つの論点かと考えております。仮に,そのような方向で検討する場合に,具体的に様々な職務があるわけでございますが,どのようにその分担をさせるのか。どのような観点からそういったものを整理していくのかといったような点につきまして,一般的な考え方といいますか,あるいはその基本的な視点につきましてどのように考えるのかというのが,まず一つ論点となるのかなというふうに考えております。また,更に具体的にということになりますと,例えば,不動産競売手続についてどのように考えるのかということを検討していくことになると思われます。  続きまして,5の「その他」でございます。その他民事執行制度につきまして見直しをすべき点があるかということでございます。ここで一定の金銭債務についての間接強制を認めるべきであるか,こういうことにつきまして資料に挙げさせていただいております。こちらの方は,前回の部会では明示的な御意見はなかったわけでございますけれども,事務当局におきまして従来の担保・執行法制部会の議論を踏まえまして,なお御議論いただいた方がよろしいのかと思いまして,挙げさせていただいたというものでございます。  一定の金銭債務についての間接強制でございますけれども,この点は担保・執行法制部会におきましては,例えば,少額の債務につきましては債務者の財産を換価して直接強制をする,こういうことにいたしますと,やはり債務の額に比べてコストがかかり過ぎる。権利の実効性,権利実現の実効性に欠けるのではないかといったような御意見が出されておりました。ただ,他方金銭を支払わない債務者に対して更に金銭の支払いを命ずるということに意味があるのだろうかといったような御意見,あるいは金銭債権につきましてはその遅延損害金の額が,例えば,民法におきましては原則として年5分というように法定されております。そういうことから考えますと,それを超える金銭の支払いを命ずるということには問題があるのではないか,こういったような御意見等がございました。このようにいろいろな御意見がございましたものですから,担保・執行法制部会におきましては,なお時間をかけましてこれは審議すべきであるというふうに問題とされたというように承知しております。そういたしますと,今回民事執行制度につきましてもう少し時間をかけて審議していただきたいということでこの部会が設けられたということになりますと,この点につきましても御検討をお願いしてもよろしいのではないかというように思いまして,今回の資料に挙げさせていただいたものでございます。  なお,具体的な論点といたしましては,仮に,その間接強制を認めるというふうにいたしました場合には,どのような範囲でこれを認めるのかといったようなことが一つの大きな論点になってくるのかと思っております。 ● それでは4と5がありますが,まず4の「裁判所内部の職務分担関係」につきまして,御質問あるいは御意見を賜りたいというふうに思います。どなたからでも,どうぞお願いいたします。 ● 裁判官がやはり判断する部分について,当然裁判官が行う手続としてはこれは当然残す形になりますね。ただ,それ以外のそこまで要しない場合,多分に単なる手続に終わるようなものは書記官がやってもいいではないか,そういう意味で現行法を整理してみよう,こういう趣旨ですね。この目的が,ここに書いてありますように,手続の更なる迅速化を図るためとありますが,そういうふうに整理した場合にどの程度具体的に迅速化が図られるのか。その辺,もしお分かりでありましたら御説明願いたいと思います。 ● これは,やはり○○幹事に。 ● 非常に前向きな御指摘,御質問をちょうだいいたしましたので,少し御説明をさせていただきますと,私どもも改めてこういう手続チャートというのを事務当局の方で作っていただいて見させていただくと,こんなに裁判官が行う手続というのは多かったのだなと,色合いで見てもそっちの方がずっと多いなという感じがしております。では,実際実務はどういう形で運用されているのかということを考えた場合に,実質的に多くの部分について書記官が相当密度の濃いサポートを行っているということが言えようかというふうに思っております。逆に言うと,そういう形で現に書記官が実質的なサポートをして,更にそれをある意味では屋上屋を重ねるような形で裁判官が形式的な審査を行っていくというような形をとっていきますと,どうしてもその部分についてタイムロス等が出てくる。特に執行事件などの場合には,どうしても東京,大阪等の専門部,集中部等がある裁判所は別ですけれども,それ以外の裁判所においては他の訴訟手続等を行いながら執行執務を担当するということになりますので,これは物理的,機械的に,例えば判こを押すだけでも一定の時間がかかり得るということがあり得るわけです。  ですから,そういう今御指摘いただいたような,手続の中でも比較的重要性の低いようなものについてまでそういう屋上屋を重ねるような形になっていますと,ダブルチェックは図られるという面はあるのかもしれませんけれども,そこはちょっと重過ぎるのではないか。そうすると,その部分はカットしていけるということになりますので,そういう見直しを行うことによってかなりの程度手続の回転がよくなるということは間違いなく言えるのではないかというふうに考えております。そのような意味で,私どもといたしましても手続的な影響が余り大きくない,あるいはもちろん手続的な意味での法的効果が薄いというようなものを中心として,是非この機会に大きな見直しを図っていただければというふうに考えているところでございます。 ● ほかに,いかがでしょうか。--よろしゅうございますか。  それでは,この4の「裁判所内部の職務分担関係」につきましては,ただいまのような御意見あるいは御説明を踏まえまして,更にどういう案が考えられるかということについて事務当局の方で検討を進めさせていただくということにさせていただきたいと思います。  それでは次に,5の「その他」に進ませていただきます。  これにつきましては,先ほど○○幹事から御説明がありましたように,金銭債務についての間接強制の可否につきましては,担保・執行法制部会でもある程度の議論がありました。しかし,先ほどのような事情で見送られたということでございます。今回は民事訴訟・民事執行法部会でこの問題を議論するかどうか,どういう形でこれをしていくかということが今問題になっているわけでございますけれども,まずこれをどうするか,担保・執行法制部会に御関係の委員・幹事の方から,またもしよろしければ御発言いただければと思いますが,いかがでしょうか。 ● 担保・執行法制部会でも随分な議論をしましたが,主に指摘された論点は,先ほど○○幹事から御指摘があったとおり,損害賠償額について一定の額で法定をしている民法419条の関係はどうか,あるいは利息制限法の潜脱にならないかというようなところが御指摘としてあったというふうに記憶しております。  それから,またよりプラクティカルな配慮として,濫用のおそれがあるのではないか。それも具体的にどういうものかということについてはいろいろ意見はありましたが,債務者に対して,お金のない債務者に対する無用なプレッシャーを与えることになるのではないかというような御指摘もあったところでございます。  これから先は私の考えるところということになりますが,民法419条との関係ですけれども,これは○○幹事がお書きになっている論文でもあるとおり,果たしてこれが損害賠償として整理するべきものなのかどうかというところを,まず検討する必要があろうかと思われます。  それから,導入について賛成する場合に,積極的な論拠として少額の金銭債権について直接強制をするとコスト倒れになるではないかという御指摘に加えて,それはもちろんそうなのですが,もう一つ考えておいた方がいいのは,直接強制というのは非常に有効な手段でありますが,時として副作用を伴うということを考慮に入れるべきではないかと思われます。例えば,典型的には,扶養料債権などを執行債権として給与債権を差し押さえる,例えば,離婚をして子供を連れた妻が夫の給与債権を差し押さえるというような例を考えるとよいのではないかと思いますが,今次の民事執行法の改正法案の152条の3項で,差押え可能な範囲を広げるという形で対応をし,その直接強制についてより実効性を高めるという点については私は何の異論もないのですが,ただ時として給与債権の差押えによって,例えば,その職場に居づらくなる,原資が断たれるというようなことが抽象的には考えられるわけで,そのような副作用を伴う場合もあるということを考えますと,そのような局面に至らずに払えるものだけに間接強制をかけた上で任意に払ってもらうという仕組みは,実効的な仕組みなのではないかというふうに考える次第です。  先ほど○○幹事から,制度設計をする上では範囲をどのように仕組んでいくかということが問題であるということの御指摘がございました。正にそのとおりだと思います。似たような,しかし二つに分けてもいい問題かと思いますが,一つは債務名義というのをどのように限定していくか。無限定にどのような債務名義でもよいのか,あるいは一定の債務名義に限定するかということが一つ目の問題かと思われます。  似て非なる,あるいはかなりかぶるのかもしれませんが,執行債権の属性についてどう考えるか。少額のものに限るということもありましょうし,ここに括弧の中に書いてありますとおり反復性のもの,少額定期給付のものに限ると典型的に費用倒れになりやすいということで考えることもできましょうし,扶養料債権のように要保護性があるものに更に限定するというような考え方。少額,反復,要保護性と,どの辺で切っていくかということの辺りは,制度設計として考えるべきことではないかと思われます。  それから,付加的に申せば,先ほど濫用のおそれがあるという指摘があり,これは多分いろいろなことを考えているのだと思いますけれども,そのようなものにどうやって対応していくかということもあわせて考えるべきではないかと思います。 ● ほかに,いかがでしょうか。 ● 意見といいますか質問なのですけれども,例えば,扶養料等の少額定期給付について,間接強制を行うという場合に,間接強制金がその扶養料請求権に付加されて請求債権になっていくと思うのですが,その場合,差し押さえられた給与債権,会社に対する給与債権があると思うのですが,これは改正法の152条で4分の3から2分の1に拡大をされているのですが,間接強制のペナルティーというのは,これは扶養料請求権ではないので,これは4分の3のまま維持するということになるわけでしょうか。  何を申し上げたいかというと,恐らく会社の総務で混乱するのではないかということを非常に強く懸念しておりまして,恐らく手続ペナルティーとしての間接強制金については4分の3までは差押禁止で,扶養料請求権部分で押えられている部分は2分の1に拡張されるという複雑なことになるのかなと思っているのですが,そこはそう考えるべきなのでしょうか。 ● そちらの関係は,今回の特例のもとで当然起き得る話でありまして,そもそも扶養料請求権を請求債権として2分の1の範囲にかかっていった場合に,その債権について配当要求をしてきた場合どうなるのかというような場面で当然問題になってくるわけでございます。その場合,今回の特例以前にも,範囲変更の申立てをしまして4分の3から2分の1に範囲変更したその債権執行につきまして更に配当要求をしたというような場合に,現行法下でも当然問題になり得る話でございます。その場合の解釈というのはいま一つ明確ではないのですが,しかし1回その広げたものについて配当要求という形で入ってくるのであれば,そこはやはり広がった差押禁止債権にそのまま,その部分について配当をするという形になるのではないのかなというふうに特例を作った際は考えておったのですが,ただそこはまだいま一つ明確ではないというような状況でございます。 ● 担保・執行法制部会でも申し上げたのですが,この問題,金銭債権への間接強制ということを議論するのであれば,議論それ自体としては最初から少額債務とか少額定期給付債務とかに限らずに,金銭債務一般から入るべきではないかというのが私の意見であります。そう言うと,反対の方もいらっしゃる中で,最初からふろしきを広げると通るものも通らなくなるとか,小さく生んで大きく育てる方がいいとか,そういう御議論もあるかもしれませんが,しかし理屈だけを言うと,少額に限るというのは私は余り理由がないのではないかと思っております。間接強制の目的というのは,言うまでもないことですが,間接強制金を取るところに目的があるのではなくて,その間接強制の威嚇を通じて任意履行させるところに目的があるわけで,何について威嚇を感じるかというのは人様々でありまして,少額の金銭で威嚇を感じる,収入その他資産状況,もろもろの事情によって感じる人もいれば,非常に巨額でも感じない人もいるわけで,一定の金額で切るということの合理性というのはなかなか私には見出しがたいということですので,最終的に議論を尽くした結果,今回はその債務の属性を限定しましょうということがあることはあり得るかと思いますけれども,議論それ自体としては最初から一定のという限定句をつけてやるのはどうかというのが意見の第1点目であります。  2点目,これは意見ということではありませんが,これも担保・執行法制部会で申したような申さなかったような,ちょっと記憶がはっきりしませんが,濫用のおそれというものが常に反対の立場の方から懸念されるわけですが,それについては間接強制を金銭債務について認めるか認めないかというところだけで議論するのではなくて,事後的に間接強制金の減額の手続が設けられるかとか,あるいは取消しの手続が設けられるかとかいうようなことも絡めて議論すべきだろうと考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 間接強制を1回課せられた経験があるのですけれども,この間接強制というのは非常に強力です。簡単にできますし,とにかく履行しないと日々蓄積されていくわけなのですね。この金銭債権の場合,ほかの債権は,まあ履行が可能なのにしないということを前提にしているのでしょうけれども,金銭債権について,支払能力のある人に対しては非常に有効で合理的な制度になり得ると思うのですが,支払能力がなかったらどうしたらいいのでしょうか。払えない人に対して間接強制1日幾らで,これ命令が出たら永久に続くわけでしょう。その人はもう大変な負債を生涯負い続けることになってしまう,破産でもしない限り。そういう制度になってしまうということは,やはりよく考えておく必要があるのではないかなと思うのですが。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● むしろ先ほど申し上げればよかったのかもしれませんが,問題の設定の仕方というか,あるいは議論の仕方として,さっき○○幹事が言われたように,少額かどうかを問わずに議論すべきだという御意見もあって,そういうことであれば,この「その他」というところにふさわしいテーマのようにも思うのですが,まずは少額債権の保護ということで今限定して議論した方がいいということであれば,むしろ先ほどの第2の1の「少額債権執行制度関係」という表題になっていますが,そこをもう少し広げて,少額債権のための執行手続の柔軟化といいますか,そういう切り口で,先ほど御議論が出ましたような財産開示の問題であるとか,あるいは動産執行の問題も入るのかもしれませんが,それも含めてこの債権執行だけではなくていろいろなやり方について議論をするというようなことはいかがなのでしょうか。そういう感想を持ったものですから。 ● こちらで用意した原案は,少額債権,一定の金銭債権で少額,それを「少額定期給付債務」というふうに書いているのは,こういう債権の場合には直接強制をしても手間暇ばかりかかるという,そういう認識があって,とりあえずここに絞ろうということからこういう整理の仕方をしているので,一般に○○幹事がおっしゃったようにそういう制限をするのはおかしいという,そういう立場からくると,むしろここでいいのかもしれません。そこのところ,ちょっとこちらも初めから絞り切っていいのかどうかということもあったものですから,先の方にくっつけないでここに出したわけですけれども,これについてもうちょっと何か御意見があればまた考えますし,それがなければ事務当局の方で更に考えるということにさせていただきますが,何か今の御提案について御意見ございますでしょうか。--  では,こちらで更に考えさせていただきまして,また御検討をお願いするということにさせていただきたいと思います。  それでは,次は第3の「その他」ということでございますが,まず「1 管轄の合意の電子化」につきまして,事務当局から内容を御説明いただきたいと思います。 ● それでは,部会資料2の7ページの第3の「その他」でございます。管轄合意の電子化につきまして挙げさせていただいております。  前回の部会でも申し上げましたとおり,最近は電子商取引の利用が活発になっておりまして,管轄の合意のみ書面で行うというようなこととなるような規定の合理性につきましては,やはり見直す必要があるのではないかといったような御意見がございます。そこで,書面によるほかこういった電磁的な方法によりまして合意をするということを認めてはどうかというようなことでございます。  ここの資料の(参考)のところにございますとおり,仲裁法案におきましては,電磁的記録による合意を認めております。仲裁合意は,これによりまして訴訟による解決をすることができなくなるといったような効果もあるわけでございます。これに対しまして管轄合意の方でいきますと,これは専属的な管轄合意でございましても,裁判所による裁量移送が認められるということになっておりますので,そういった意味で事情に応じて適切な対処が可能という制度になっております。そういったような仲裁法案との関係,前例なども踏まえて考慮いたしまして,電磁的方法による合意を認めるということについて,そういう方向で考えるということについてはどうかということにつきまして,論点として掲げさせていただいております。  最後に「その他」とありますが,これは本当にその他として,なおこの段階で御意見があれば伺いたいという趣旨のその他でございます。 ● それでは,管轄合意の電子化の部分でございますけれども,この案では一つの考え方として,現在国会で審議中の仲裁法案における管轄合意の方式と同じ規律を設けるということはどうかという方向,そういう問いかけになっておりますけれども,この点についてはいかがでしょうか。何か御質問,あるいは御意見があれば承りたいと思います。 ● ちょっと御質問なのですが,合意管轄については現在国際合意管轄についてヘーグで裁判所の「選択合意に関する条約案」というものについて審議がされているというふうに承知しておりますけれども,その中では必ずしも書面によらない方法で管轄合意ができるというような条文案が提示されておるやに承っているのですが,直接それと今回の国内法の立法というのは連動するものではないというふうには思いますけれども,そちらの方の議論もやはり考慮に入れて審議を進める必要があるように思うのですが,もし事務当局の方で可能であれば,そのあたりの御議論について若干御紹介いただければと思いますが。 ● 今の御指摘の点の関係ですけれども,十分な知識を持ち合わせているわけではないのですが,今後その条約の関係の今の審議の状況とかを見守りつつ,こちらの議論にもできる限りフィードバックできるような形でまた情報提供させていただきたいと思います。 ● 別の部会で今議論をしていますよね。それで最終的にどうなるか,いつ形がまとまるのか,それからその解釈も含めて,それを国内法でどう手当てするかの議論をいつから始められることになるのか自体がまだちょっと分からないし,今見込まれている予定でも相当後になりそうですね。そのときに,条約が非常に範囲の狭いものになりそうだということもあって,倒産の方だけは国際関係のものを先に作って,民事訴訟法の方はヘーグを待っていましょうと昔から言っていて,そのヘーグの方が非常に狭い範囲のものになりそうだと。しかし,さはさりながら狭い範囲では標準的なルールができた場合に,それを含む我が国としての国際裁判管轄規定の整備というのは,平成8年の民事訴訟法改正以来の宿題ですので,それはいずれかの時点でやらなくてはいけないと思っているのですけれども,条約自体の先行きがまだいささか不明確なところ,できることはできるでしょうが,いつどういう形になるかがはっきりしない。それから,それは相当後になりそうだということで,今回の見直しの一環としてこの部分だけ先行的に手当てをすることは可能ではないかという趣旨でここに採り上げているということで,最終的にそちらの方で国際的な裁判管轄を見直すときには,それはそれでまた上乗せで更なる民事訴訟法の改正が場合によっては必要になるだろうと思ってはおります。 ● 私の発言の趣旨は,必ずしも国際裁判管轄の合意ということそれ自体についてではございませんで,今回のは恐らく国内裁判管轄の合意を主として念頭に置いておられるのだろうと思いますが,国際裁判管轄の合意に関して一定の国際的なルールが形成されつつあるという状況があるとすれば,もちろん国内の管轄の場合にはディスティングイッシュするということもあり得るのだろうと思うのですが,しかしディスティングイッシュするにしてもディスティングイッシュする理屈が必要だろうというふうに思いますので,そういう趣旨でそちらの方の議論の動向というのをこちらの審議にも参考にする必要があるのではないかという,そういう趣旨であります。 ● そのとおりだろうと思います。随時,今,国際裁判管轄制度部会というのでやっている議論をこちらの部会にも反映させていただきたいというふうに思っております。  この管轄の合意の電子化につきましては,ほかに何か御意見ございますでしょうか。その要否を含めて,あるいは方法も含めて。 ● どういうふうになるのかちょっと分からないのですが,時代だなというのは分かるのですが,管轄の合意そのものについて民事訴訟法改正の議論をしたときに,制限するかしないかとか,商人間,消費者との関係ではどうなのかと,あの議論とこれがどうかみ合うのかなというのが自分でちょっとよく分からないところがあって,そこが電子化されることでもう制限とか何とかいう前にしておった議論は飛んだのか,まだ残っておるのかというのがちょっと気にはなっているのですが,どうなのでしょうか。 ● 平成8年の民事訴訟法の改正についても,管轄の合意の制限という問題がありまして,現在のようなことになって,書面によるということですね。  仲裁法につきましては,私,仲裁検討会の座長を務めさせていただきましたけれども,仲裁の場合にはまあ業者間の取引であるということからこれが必要だということで作りつつ,しかし仲裁も消費者を相手にする仲裁だって十分あり得る。消費者取引もあり得るということで,その消費者につきましては附則の中でそれは除外しているというのが,その仲裁法の場合の管轄の合意の作り方。管轄の合意じゃなくて,全体としてとにかく消費者については外しているということなものですから,これを今度裁判所の管轄の合意に持っていく場合に,そういう電子化をするという場合に,それもなされたものとみなした場合に,じゃ消費者の方についてはどうかという問題は,これが出てくれば当然あり得るということではないかというふうに私自身は考えております。 ● 今の点ですが,御承知のように,今,○○委員御自身もおっしゃったように,民事訴訟法改正に際してはいろいろ議論があったわけです。しかし最終的には,専属的合意管轄の効力をいわば否定するという形で決着をつけたわけですから,電子化をした場合も内容的に言えばそれがかぶってくるので,その限度でとどめるというのが一つの考え方だと思うのですね。しかし,必ずしも徹底はしないかもしれないけれども,そのような消費者保護という視点を取り入れたということに重点を置いて考えると,電子化を認めるとより一層消費者の利益を害する危険があるから,契約全体は電子化でいいけれども,管轄の合意のところだけは本当に書面でやれというのも一つの考え方だと思います。  ただどうも実際的に考えると,今のような時代になって契約そのものは電子化を認めているのに,管轄の合意のところだけは電子化は駄目だというのは,やや実際の状況には反する。したがって,普通に考えれば,最初に申したように現在の民事訴訟法の消費者保護の考え方ですね,それが電子化の場合にも及んでいくというようなことになるのではないかと思います。しかし,これは私の個人的な現段階での意見ですから,最終的にはここで議論していただく,そういうことになるのだろうと思います。 ● ほかにいかかでしょうか。  それでは,今の管轄の合意の電子化の問題は,更に事務当局の方で検討させていただく。そしてどういう形で論点を御議論していただくかをまたお出しするという形にさせていただきたいと思います。  それでは,最後に2の「その他」ということがございます。これは先ほど○○幹事の御説明にありましたように,こちらとしてはここで特にこの席で御意見があればそれを受けて検討したいということで,受け皿の意味でございます。今の予定では,来年の通常国会にここで審議した結果を法案に出すというタイムリミットの中で検討できるようなことが何かあれば,おっしゃっていただければまた検討させていただくという,そういう趣旨でございますが,どなたからでもどうぞ御発言いただければと思います。これだけやるなら,このついでにこういうことはどうかというような,そういう御発言で結構でございます。 ● これはかなり御無理なことになるのだろうという予想はしているのですけれども,先ほど○○委員の方から少額債権執行との関係で,今回まだ法律として成立しておりませんけれども,主として家庭裁判所で成立するような債務名義について,定期的な扶養料請求のような,そういう債務名義については家庭裁判所に執行裁判所としての権限を認めたらどうかという御発言がありまして,私は内容的には誠にごもっともだと思うのですけれども,ただ家庭裁判所は,今,人事訴訟の移管というような大きな問題を抱えていて,執行まで引き受けるというとそれだけの対応ができるのかどうかというところはかなり難しいように思います。初めから,せっかく○○委員がおっしゃったのに私が水をかけるようなことを言うのはいかがかと思うのですけれども,ここにはどうも家庭裁判所関係の方もおいでにならないというところで,少し問題は難しいのかなとは思いますけれども,しかしせっかくの御提案でございますので,最高裁の方でも検討していただければと思いますので,それだけ申し上げておきます。 ● 今の○○委員の御意見もそうですけれども,今までのところに関係することでも結構でございますので,先ほどは言いそびれたけれどもというようなことでも結構でございますので,おっしゃっていただきたいと思います。 ● 引き続き裁判所に対するお願いみたいな格好になるのですが,先ほど売却率の資料に基づく御説明のときに,田舎は東京,大阪に比べると相当売却率が低い。しかし,農地が多いとかそういう特別な事情もあって低いのだというお話,それから東京,大阪で売れないものについても,物件を見ると売れない理由があるのだ,こういうような御説明だったかと思うのですが,多分そういうことだろうと思うのですね,私も見ておりまして。ただ,もしそういうことが分かるような何か資料のようなものがありましたら,より実情がよく分かるのではないかと思うので,いろいろ難しいかとは思うのですが,もし可能であればそういうものの提出も検討していただければと思っておりますので。 ● 今の件とも関連することなのですが,最低売却価額制度なのですが,実務にかかわっているのではありませんので,いろんな論議がされている問題について実態は果たしてどうなのかということの,具体的なことについての認識がないものですから,なかなか一般的に分かりにくいというのが私の認識であります。したがって,もう少し具体的に言うと,ここに書いてあるように,競売における売却価額は市場原理に任せるべきだとか,あるいは売却率が低下しているとか,あるいは適正な市場価格を反映していないとか,あるいは逆に執行妨害を助長すると,いろいろこういう論点として挙げられておりますが,どういう実態にあるからそういう問題が論点として提供されているのだということが非常に分かりにくいのです。これは私だけかもわかりませんが,非常に分かりにくいというのが私の感想でありますので,こういう御説明の機会があるのかどうか,その辺をお伺いしたいと思います。 ● 御議論していただく際に,現状といいますかそういう問題点がどこにあるのかというのがやはりベースだと思いますので,事務当局としても努力してまいりたい。なるべくできる限りのことをしてまいりたいと思っております。 ● 場合によっては,統計的な資料とか,いろいろな資料のほかに,ここにどなたか来ていただいてヒアリング等ができるようなことも,時間との関係でできればそういうことにさせていただいて,十分な実態の把握とそれから関係者の意識を聞いた上で,議論を尽くして実情に沿った法律案を作るように持っていきたいというのが私の希望でございます。  ほかに何か。 ● 先ほどの少額債務の間接強制のことなのですけれども,やはりせっかく債務名義を持っているのに実際には費用倒れになるために執行できないで困っているというところが結構あるのだと思うのです。例えば,その典型が家事債務なんだと思うのですけれども,ここは何とかしないといけないのではないかと私は思っていて,私も実は家庭裁判所の調停委員をしているのですが,例えば,離婚には応じるけれども,その附帯事項できちっと債務を履行してもらえるかどうかということについて不安を持っている当事者がかなりいるのです。そのときに,いざとなったら給料債権を差し押さえられますよと言い切れないところがありまして,それはこういう時代ですから,先ほど○○幹事からも出ていましたけれども,それで職を失うことになったら元も子もなくなってしまうからなのですね。ですから,そこは言えなくて,もしまた困ったら家庭裁判所に来てくださいと言うしかない状況があって,何とかできればいいなと思っていて,間接強制は一つの方法ではないかなと私は思っているのですね。ですから,大上段の議論も必要かもしれないけれども,そういう面から手当てをしていくという議論も必要なのではないかと思います。 ● ほかにどうぞ。今日は途中では少し時間をオーバーするのではないかと心配しておりましたけれども,後半は非常にスムーズに議論を進めていただきましたものですから,まだ若干時間がございますので。 ● 先ほどの外国法の紹介のところで,実はフランス法を本来担当している立場にあったものですから,勉強不十分で時間もなさそうでしたので余り言うこともないかと思っていたのですが,せっかくの機会ですから一言だけ感想めいたことを補充させていただきます。  フランス法は,先ほど御紹介があったように,差押債権者が最低売却価額を定めて,買受申出がない場合には債権者がその価額で買い取るというシステムをとっております。このシステムについてはフランスでもかなり批判が強くて,債権者はそうすると買受人が出ない場合に自分が買わないといけないということを恐れて,やはり高い値段をつけない。自分の持っている債権額と同じくらいの額でつけることが多くて,しかも買受申出がなくて,自分でそれで買い落とすという,そしてすぐに転売してしまうというようなことが多い。そうすると,その後それを安い値段で買い受ける中間的な不動産業者が不当な利潤を得ているのではないか,あるいはそれによって債務者の経済的な更生が困難になっているのではないかという批判がございます。  それに対しては,債務者の保護手段としては,先ほど○○幹事から御紹介があったように,任意売却への転換,コンベルジオンと言われている制度がありまして,これは債務者が申し立てれば債務者の側で最低売却価額を設定できるということになっておりまして,以前はこの制度はよく使われていたと言われているのですが,ちょっと調査不足でよく理由が分からないのですが,最近は裁判所はその運用に慎重になっていると言われておりまして,余りこのコンベルジオンというのは使われなくなっているということで,より最近では問題が顕在化しているということで,1980年代からフランスではこの問題を含めて執行制度全体の改正を行っていたわけでありますけれども,ただ先ほどの問題については,やはり不動産業者を中心として現在の制度を変えることに対する反対も非常に強くて,改正はなかなか進展しておりません。1991年には,不動産執行を除く部分の民事執行法を改正いたしましたけれども,不動産執行については先送りになっております。  ただ,その後も問題はやはり引き続き残っておりまして,これも先ほど事務当局から御説明がありましたが,1998年に部分的な法改正がありまして,債務者の主たる住居が競売の対処になっている場合には,差押債権者が設定した価額が余りに低額である場合には債務者の方で異議を申し立てることができる。この場合には,裁判所がその鑑定等を命じて適切な価額を設定すると,最低売却価額を変更するという余地を認めるという制度ができております。これは主としてフランスでも多重債務の問題が非常に大きくなっておりますので,多重債務者について余りに安い値段で主たる住居が売却されるという事態を防止する趣旨の制度である。そういう意味では,先ほどそれ以前から議論されていた不動産執行の改正の一部をここで部分的に実現したということになっているようであります。  というわけで,こういうフランスの議論の流れを見ると,印象ですが,一つはやや日本の現在されている議論と逆方向になっているのではないか。債務者の利益を保護するために,日本風に言う最低売却価額みたいなものを入れていかなければいけないという方向が出てきているのではないかというのが一つと,それからもう一つはやはり,しかしそれがなかなか実現できないというのはやはり不動産業者を中心としたいろんな利害関係があるということで,そのあたりの利害の調整というのはなかなかやはり難しいのだなという印象を持ったということでありますが,調査は不十分ですので,またもし機会を与えていただければもう少しちゃんと勉強してまた御報告をさせていただきたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 執行関係なのですけれども,その他という意味合いの中で,本日の裁判所内部の職務分担関係ですとか,あるいは債権執行の絡みなどいろいろ見直していただく中で,場合によると細かい実務的な論点というのがいろいろ出てくる可能性もあり得るのかなと思っております。本日の段階でそういうものを私どもも十分整理できていなくて大変恐縮なのですが,その程度の範囲で場合によると何点か小さな論点が出てくるかもしれないと思いますが,その際には是非失権効にかかるという形ではなく,柔軟にお願いできればと思っておりますので,よろしくお願いいたします。 ● ほかに何かございますでしょうか。--よろしゅうございますでしょうか。  それでは,本日はこの論点整理ということで非常にたくさんの方からいろいろの御意見をいただきまして,内容に入った御議論ももちろんありましたけれども,そういう御意見を伺うことによって次の資料をどういう形でこちらが出す方がいいのかということについて非常に貴重な御示唆をいただきましたので,次回以降また引き続きよろしくお願いしたいと思います。  それでは,最後に事務当局から今後の予定につきまして御連絡をいたします。 ● それでは,次回の予定でございますけれども,次回は6月20日の金曜日,午後1時から法務省の第1会議室,法務省の20階でございますが,そちらの方で開催の予定でございます。6月20日の予定といたしましては,公務文書の文書提出命令の利用状況につきまして,関係機関の方からお話,御事情を伺いたいと思っております。その利用状況につきましてのお話を受けまして,いろいろ質疑ですとか御議論をしていただければと思っております。 ● 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは本日の部会はこれにて終了いたします。どうもありがとうございました。 -了-