法制審議会動産・債権担保法制部会第3回会議 議事録 第1 日 時  平成15年12月24日(水)  自 午後1時30分                         至 午後5時05分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  動産譲渡の登記制度の整備について(2) 第4 議 事  (次のとおり)               議         事 ● 予定した時刻が参りましたので,法制審議会動産・債権担保法制部会の第3回会議を開会いたします。   本日は,御多忙の中を御出席いただきましてありがとうございました。          (委員の異動紹介省略)   それでは,早速ですが動産・債権譲渡の公示制度の整備についての審議に入ってまいりたいと思います。   まず初めに,本日の配布資料について事務局から説明をしてもらいます。 ● 事務局から配布いたしました資料は,配布資料目録のとおりでございますが,部会資料といたしましては資料番号3-1「動産譲渡の登記制度の整備について(2)」と題する書面を事前に送付させていただいております。   また,参考資料といたしまして,参考資料番号3-1の最高裁判所平成5年2月26日第二小法廷判決,及び資料番号3-2の最高裁判所平成7年11月10日第二小法廷判決,この2件の判例を事前に送付させていただいております。これは,資料番号3-1の部会資料の中で引用しております判例を,参考のためにお示ししたものでございます。   さらに,事務局からは,本日,席上配布といたしまして,「登記優先型のイメージ」と題する補足説明資料を配布させていただいております。   それから,本日,席上に,○○弁護士及び○○弁護士が作成いたしました,「動産・債権担保に関する法制審議会への諮問についての意見」と題する書面を配布させていただいております。   配布資料は以上のとおりでございます。 ● 今,御指摘のございました配布資料のうちの○○弁護士と○○弁護士,こちらからの意見でございますけれども,これは実は日弁連で,倒産法の改正に関連しまして日弁連の倒産法検討委員会というのがございます。そちらで今回のこの担保法制の改正につきましても関心を持っておりまして,小委員会というものができておりまして,そこで議論をしておるところでございますけれども,そこの正式の意見と申しますよりは,この2名の委員の方々の見解という形で御提出させていただいております。よろしくお願いいたします。 ● それでは,早速ですが,部会資料3-1と補足説明資料につきまして,事務局から説明していただきます。   なお,本日の部会は,動産譲渡の登記制度の整備に関し,前回第一読会を済ませましたが,それに引き続く第二読会でございます。本日の部会において,中間試案の作成に向けて基本的な方針を固めたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ● 部会資料3-1に基づきまして御説明いたします。   前回の部会におきましては,例えばといたしまして,三つの制度設計をお示しして御議論をいただきました。三つの制度設計と申しますのは,占有改定排除型,登記優先型,単純対抗要件型であります。   このうち,占有改定排除型につきましては,前回の部会でも御意見がありましたように,占有改定の対抗力を否定してしまうということになりますと,担保取引に与える影響が大きいため,相当ではないと考えられます。そこで,若干前後してしまいますけれども,部会資料の8ページ目を開いていただきますと,(後注)といたしまして,占有改定排除型につきましては,これを採用することは困難ではないかというふうに整理させていただいております。この点についても,後で御検討いただければと思います。   残りの二つの制度設計,すなわち登記優先型と単純対抗要件型につきましては,前回の部会におきまして,それぞれについて支持する御意見があったところであります。そこで,今回の部会におきましては,これらの制度設計につきまして更に検討すべき事項を提示させていただいておりますので,この点について御検討いただきたいと考えております。   なお,登記優先型と単純対抗要件型のいずれの制度設計につきましても,前回の部会におきまして,法人が行う譲渡に限るという点におきましては特に御異論もなかったと思われますので,それを前提とした制度設計を御提示させていただいております。   まず,登記優先型について御説明いたします。   部会資料の1ページを御覧いただきますと,そこにⅠで「登記優先型」と書かれておりますが,その柱書きに記載しておりますところが登記優先型の基本的な制度設計でございます。   二つのポツが打ってあります。1ポツの部分が,後で論点として出てまいりますが,登記できる譲渡の部分であります。2ポツの部分が,いわゆる登記優先ルールの部分であります。   そこで,本日,席上に配布させていただいております補足説明資料,「登記優先型のイメージ」という書面を御覧いただきたいと思います。   先ほど申し上げました部会資料の1ポツの部分,その部分がこのイメージ図でいきますと一番左に「登記できる譲渡」と書かれた枠の部分に当たります。   それから,部会資料の2ポツで書いた登記優先ルールの問題,これがこのイメージでいきますと真ん中の枠と右側の枠,この部分に当たります。   前回の部会では,このイメージ図でいきますと一番右の枠の部分を御議論いただいたわけです。その際の審議も踏まえまして,登記をしたものとの関係で対抗することができないものとされるのは,占有改定により対抗要件を具備した担保目的譲渡と整理させていただいております。   この点は,補足説明資料でいきますと一番右の黒く太く枠で囲った部分が,その部分であります。それから,部会資料の登記優先型の柱書きの部分の2ポツの記載におきましても,そのように整理して記載をさせていただいております。   以上が,前回の部会での検討の内容であったのですが,本日の部会で,この登記優先ルールにつきまして御検討いただきたいのは,このイメージ図で申し上げますと,真ん中の枠の部分,矢印が書いて「登記優先ルールを適用するか?」と記載しているところでもありますが,この部分を御議論いただきたいというところでございます。   以上は論点の位置づけです。   なお,部会資料に戻っていただきまして,部会資料の1ページ目の柱書きに(注)と書いて,「登記優先ルールは,担保取引の効率性,安定性の観点から当事者の主観的要素を要件としないこととする。」と記載しているところですが,この点は登記優先ルールにつきましては,登記制度の持つ客観性,画一性という利点を生かすとともに,担保取引の効率性,安定性の観点から,当事者の善意・悪意は問わないものとすべきものと整理をさせていただいているところであります。   それでは,部会資料の記載としましては順序が前後してしまいますが,まず1ページ目の(検討すべき事項)のうち,2の問題,すなわち「現実の引渡し,簡易の引渡し又は指図による占有移転がされた担保目的譲渡を登記優先ルールの適用除外とする必要があるか」という点について御説明をいたします。   この論点につきまして,占有改定による譲渡担保の場合には,占有改定による占有の開始では善意取得することができないため,先行する占有改定による譲渡担保という隠れた譲渡担保に劣後するおそれがあるという問題があります。それに対処するために,登記優先型では,登記を具備した場合には先行する占有改定による譲渡担保に対抗することができるものとしたものです。   このように,登記優先型の制度設計において,登記を具備すれば先行する占有改定による譲渡担保に優先することができるものとして念頭に置かれていたのは,占有改定によって対抗要件を具備した譲渡担保であるのですが,ここでの論点は,そのような占有改定の場合だけではなくて,現実の引渡し等がされた場合であっても,登記を具備した場合には登記優先ルールの適用を認めてもよいのではないかという問題点です。   例えば,Aが占有改定で担保目的譲渡を受けた後に,同一の物件について更にBに対する担保目的譲渡がされた,そしてBが目的物の現実占有を取得したという場面です。Bの担保目的譲渡が譲渡質である場合や,あるいは譲渡担保の実行として目的物を引き上げる場合を想定していただきたいと思います。   このような場面で,Bが自己の担保目的譲渡について更に登記を取得したならば,先行する占有改定で担保目的譲渡を受けたAに対抗することができるものとするのかというのがここでの問題点です。   補足説明資料のイメージ図でいきますと,真ん中の枠の「登記優先ルールを適用するか?」と書かれた枠の部分について,登記優先ルールの適用を認めるかという点であります。   この点につきましては,登記優先ルールは担保取引の効率性,安定性の観点から,先行する占有改定をした譲渡担保よりも,登記を具備した譲渡担保を優先させるというものですので,このように現実の引渡し等がされている場合について,あえて登記優先ルールを適用除外とする必要はないように思われるのですが,この点はいかがでしょうか。   それから,2の問題点に関連しまして,部会資料の2ページ目のちょうど真ん中あたり,アステリスクで記載したところですが,譲渡人が動産を占有代理人によって占有している場合を,登記優先ルールの適用除外とするかという問題があります。つまり,この場合には,登記をしたとしても先行する占有改定による担保目的譲渡に優先することを認めないということにするかという点であります。   この点,若干説明させていただきますと,前回の部会におきまして,占有代理人によって占有がされている場合の譲渡については,指図による占有移転によって対抗要件が具備されますが,このような場合については一応の公示力があるので,後からされた登記によって対抗力が否定されるものとすべきではないと整理したところです。   先ほどの補足説明のイメージ図でいきますと,一番右の枠の中の問題ですが,対抗力を登記との関係で否定するものは,占有改定のみとしておりまして,指図による占有移転は対象としておりません。前回の部会で申し上げたのはそこの部分であります。   この点について,今回の資料でこれを変更したというわけではありません。   ここで取り上げて問題としている問題点は,イメージ図でいきますと真ん中の枠の部分の問題点であります。すなわち,登記をすることによって,先行する占有改定による担保目的譲渡の対抗力に優先する効力が認められるものとするかどうかというところであります。   部会資料に記載しましたとおり,動産の所有者が占有改定によって担保目的譲渡を行った後に,当該動産を第三者に預けた上で,更に担保の目的で譲渡を行った場合,後行の第二譲受人にとっては隠れた譲渡担保のおそれがあるということになります。この場合に,後行の第二譲受人について登記優先ルールを適用するということにすれば,譲渡担保の予測可能性が高まることになると考えられます。すなわち,先ほどのイメージ図でいきますと,真ん中の枠の部分に関しまして,譲渡人が占有代理人によって占有している動産を担保目的で譲り受けた者につきましても,登記をすれば占有改定による譲渡担保に優先するものとすることが考えられるというわけであります。この点についても御意見をお伺いできればと思います。   次に,2ページの「3 登記できる譲渡について」の部分について御説明をいたします。   補足説明資料のイメージ図に戻っていただければと思いますが,ただいま御説明いたしました登記を具備することによって占有改定によって対抗要件を具備した担保目的譲渡に優先する譲渡が何であるのかという問題は,補足説明資料の真ん中の枠の中の部分の問題であります。   ただいま御説明いたしました内容を前提といたしますと,登記優先ルールが適用される譲渡は,担保目的譲渡全部ということになります。   他方,登記できる譲渡というのは一番左の枠の部分の問題でありまして,このうちのどの部分について登記ができるものとするのかということが御検討いただきたい問題であります。   なお,部会資料にも記載させていただいておりますが,登記優先ルールが適用される譲渡というものと,登記できる譲渡というのは別の問題であるというふうに考えられます。   さて,登記できる譲渡をどのようなものにするかにつきましては,部会資料では二つの案を御提示しております。部会資料の2ページ目から甲案が始まっておりまして,3ページ目に乙案が記載されております。   まず,甲案の方でありますが,これは担保目的譲渡も真正譲渡もすべて登記できるものとするという案であります。   なお,1点御注意いただきたいのは甲案の柱書きのアステリスクに記載したところでありますが,甲案におきまして真正譲渡も登記することができるとしたからといって,登記すれば占有改定をした譲渡担保よりも優先するという効果までも与えるというものではありません。   仮にこの案に立った場合の理由としまして,まず(注)①に記載しましたとおり,真正譲渡まで登記できるものとすると,より明確に譲渡を公示することができるというメリットがあるのではないか。また②に記載したところですが,担保目的譲渡に限った場合には登記官が実質的にチェックすることが困難であるということが理由として挙げることができるのかどうかというところであります。   他方,③に記載しましたとおり,この甲案におきましては真正譲渡については登記をすることを認めましても,これに先行の占有改定をした担保目的譲渡に対抗することができるという効果までも与えるものではありません。そうすると,この制度を利用する者に誤解や混乱を与えないかということが懸念されるところだと思われます。   次に乙案でありますが,これは担保目的譲渡についてのみ登記を認め,真正譲渡については登記することを認めないという案です。この案の理由として考えられるところとしては,(注)に記載しましたように,予測可能性を高める必要があるのは担保目的譲渡であるので,それに限って登記対象にすればよいということや,先ほど申し上げましたとおり,真正譲渡も対象としますと,制度の利用者に誤解や混乱を与えることになってしまわないかという点が考えられます。   他方,この案の場合に,担保目的譲渡と真正譲渡とで対抗要件具備方法が異なることとなってしまって問題がないかという点につきましては,4ページ目の(注)の③に記載しましたように,担保目的譲渡と真正譲渡とでは譲渡に違いがあって,対抗要件具備方法が異なるということも許容されるのではないかと考えられるのではないでしょうか。アステリスクに最高裁の判例を記載しておりますが,そこにおきましても譲渡担保と真正譲渡との間の違いを認めているところでもあります。あるいは,担保目的譲渡と真正譲渡との間に違いはないといたしましても,今回の立法の趣旨からしまして,担保目的の譲渡についてのみ制度的手当てをしたという理由づけだけでも足りるのではないかと考えられるのではないでしょうか。   それから,部会資料の4ページ,アステリスクのところでありますが,譲渡人が占有代理人によって占有をしている場合に,これを登記することができる譲渡から除外するかどうかという点でありますが,この点につきましては特に除外の必要はないようにも思われます。その理由につきましては,一つ目のアステリスクに記載しましたように,部会資料の2ページ目の真ん中のアステリスクのところで,登記優先ルールが適用される場合から譲渡人が占有代理人によって占有している場合を除外しないということであれば,この場合も登記できる譲渡にすべきということになろうと思います。   また,登記によって対抗要件を具備することができるとすれば,より明確に譲渡を公示することができるというメリットはあるのではないかと思われます。つまり,占有代理人によって占有している場合は,一応の公示力はありますが,動産を譲り受けようとする者からの問い合わせ等に対して真実を述べるという法的義務は課されていないですし,所有者と親子会社との関係にあって,実質上同一の利害関係を持つという場合もあります。こういう場合に,登記をすることができるということであれば,より明確に公示をすることができることになるのではないかと思われます。   さらに,5ページのアステリスクのところでありますが,このアステリスクでは,登記できる譲渡につきましては登記によって対抗要件を具備することができるものとしております。この点,動産の譲渡においては少なくとも占有改定による対抗力は付与されているのであるから,あえて登記に対抗力を付与する効力を認める必要はないという見解もあり得るかもしれませんが,実際の訴訟の場面を考えますと,当事者が立証の容易な対抗要件具備方法を主張することを認めるということに何の支障もないところであり,登記の存在という簡明な立証方法で対抗要件の具備を証明する道をあえて否定する必要はないと思われますが,この点,御異論があるかどうか,御検討をお願いしたいと思います。   部会資料を前後してしまいますが,次に1ページに戻っていただきまして,一番初めに(検討すべき事項)として掲げております,担保目的譲渡の登記がされている場合には,その後の担保目的譲渡の譲受人は,善意取得の保護を受けないものとするという規定を設けるべきか否かという点であります。   なお,真正譲渡の譲受人について,善意取得の保護を受けないものとすることは,真正譲渡取引に与える影響が大きいと考えられますので,真正譲渡の譲受人についてこのような規定を設けるというところまでは意味しておりません。担保目的譲渡の登記がされている場合に,担保目的譲渡の譲受人についてこのような善意取得を阻止する規定を設けることの要否や,規定を設けることが相当なのかどうか,この点御意見をいただきたいと思います。   なお,この論点につきましては,本日の御審議がこの論点に入ります直前に補足して説明をさせていただければと思います。   また後ろのページに行っていただいて,5ページ目でございます。   4の「既存の登記制度による登記を経た担保権者と占有改定による対抗要件を備えた担保目的譲渡の譲受人との関係について」を御説明いたします。   これまで申し上げてきております登記優先型による制度設計のもとでは,動産譲渡登記をした担保目的譲渡の譲受人は,占有改定による担保目的譲渡の譲受人に対抗することができます。ところで,既存の登記制度におきましては,登記を経た担保権者が先行する占有改定による担保目的譲渡の譲受人に対抗することができるというような,登記優先ルールと同様の規律というのは設けられておりません。そこで,このことによって両者の間のバランスを欠くというような問題があるのか,何らかの手当てを講じる必要があるのかというのが御意見を賜りたいところであります。この点,この登記優先ルールが譲渡担保の実効性を高めるために特に設けられるというものである点から考えますと,バランスを欠いて手当てを講じる必要があるとまでは言えないとも思うのですが,この点はいかがでしょうか,御意見をいただきたいと思います。   登記優先型のところは以上でありまして,次に6ページでありますが,「Ⅱ 単純対抗要件型」と書かれたところを御説明いたします。   柱書きに書いておりますのが,単純対抗要件型の基本的な制度設計でございます。   ここで(検討すべき事項)としましては,登記できる譲渡をどうするかという問題があります。単純対抗要件型において登記制度を設ける趣旨につきましては,6ページ目のところからアステリスクで記載しております。   こうした,単純対抗要件型におきまして登記制度を設ける趣旨からいたしますと,登記できる譲渡については少なくとも担保目的譲渡であって,占有改定がされたものということになろうかと思います。   そこで,登記できる譲渡をどのように考えればいいのかという点につきましては,7ページ以下に甲案と乙案をお示ししております。   甲案は,担保目的譲渡も真正譲渡も,すべて登記することができる譲渡とするものであります。   乙案は,担保目的譲渡のみを登記できるものとして,真正譲渡は登記することはできないものとするという案であります。   なお,甲案も乙案も,占有改定がされた場合のみならず,現実に引渡し等がされている場合であっても登記することができるとするものであります。   甲案と乙案を示しておりますが,いずれの案の方が相当であるのか,御検討いただきたいと思います。   また,単純対抗要件型におきましても,7ページのアステリスクに記載しておりますように,譲渡人が占有代理人によって占有している場合を登記できる譲渡から除くかという問題があります。   それから,8ページ目に行っていただきまして,そこのアステリスクで記載させていただいたように,登記できる譲渡については,登記によって対抗要件を具備することができるものとするということについても記載しております。これらは,いずれも登記優先型の部分で御説明いたしましたのと同様の内容でございます。   資料の説明は以上でございます。 ● それでは,ただいまの御説明に基づきまして本日の審議を進めたいと思います。   まず最初に,前回の部会では占有改定排除型というのが提示されておりましたけれども,今回の部会資料では,8ページに記載されておりますように,占有排除型につきましては採用が困難ではないかという御指摘でございますけれども,占有排除型につきましては中間試案における制度設計の案から排除するということでよろしゅうございましょうか。この点について,御意見を伺いたいと思います。   特に異論はないというふうに理解してよろしゅうございますか。   それでは,次に登記優先型と単純対抗要件型のそれぞれの制度設計につきまして,前回の部会で検討がされ尽くされていないと思われる部分について,補足的な御説明,あるいは新たな論点の提示をいただきました。そこで,登記優先型と単純対抗要件型のいずれの制度設計によるのが相当であるかということを御議論していただく前提として,それぞれの制度設計において検討すべき事項というのを先に御検討いただきたいと思います。   御説明の順番に従っていきたいと思いますが,まず登記優先型について。   これにつきましては,1ページの2の「現実の引渡し,簡易の引渡し又は指図による占有移転がされた担保目的譲渡を登記優先ルールの適用除外とする必要があるか」という点について,まず御審議いただきたいと思います。この点についての御意見はございますでしょうか。   これは,必ずしも分かりやすい問題とは言えないような気がするのですけれども,従前,占有改定しか備えていない譲渡担保が二つぶつかり合ったというときには,片一方が登記を備えていれば登記をしている方が勝つのだと,こういう議論をしてきたところです。2に記載してありますのは,占有改定しか備えていない譲渡担保権者がいるときに,現実の引渡し,簡易の引渡し,指図による占有移転をした譲渡担保権者がいて,この人たちが登記をすれば,やはりその登記優先ルールによって,先行する占有改定による譲渡担保権者に勝てるようにする,こういうふうな制度設計にすることはどうかという趣旨でありますけれども,いかがでしょうか。 ● まず御質問ですけれども,ここに現実の引渡し,簡易の引渡し,指図による占有移転と三つ並んでおりますけれども,現実の引渡しと指図による占有移転については御説明があったのですが,占有改定と簡易の引渡しが連続して起こるというのは,現実に起こり得る場合としてどういう場合を想定しておられるのかということのイメージがわかない。今日のペーパーは大体そうですけれども,論理的な組合せのパズルを組み合わせていくとこういう問題があるということを御検討いただいたのですが,現実の問題に即して考えた場合に,当事者が一体どういう行動をとるとこういうルールが必要となるのかという点のイメージが全然分からないという点がありますので,まずそれを前提としまして,簡易の引渡しというのは一体現実にはどういう場合になるのかということであります。   それからもう一つ,現実の引渡しの例として,譲渡担保の実行として目的物を引き上げる場合ということを口頭で言われたと思いますけれども,これは,占有改定によって譲渡担保権を設定したけれども,その後,実行するときに登記をすると登記優先ルールの適用がある,そういうふうにお考えになっていると理解していいのか。その2点についてまず御質問させていただきます。 ● 最初に,簡易の引渡しですけれども,これは債務者が占有している間に譲渡担保を占有改定で設定した,その後,自分の倉庫が手狭になったので,倉庫業者等の他人に預けた,その預かった人に対して譲渡担保を設定するということが考えられ,その場合には簡易の引渡しで対抗要件を備えるということになり,あり得る事例と思います。その場合をあえて除外する必要があるかということです。   それから,現実の引渡しですが,占有改定で譲渡担保を設定した上で現実の引渡しを受けた場合,仮に,現実の引渡しを受けるときに,債務者の行動が挙措不審で,ひょっとしたら隠れた譲渡担保を設定している可能性があるなと思うとき,そのときに登記をして登記優先ルールの適用による利益を享受することをあえて排斥する必要があるかということです。 ● 後者の例ですけれども,物権変動はいつの時点であるというお考えですか。 ● 譲渡担保の設定のときです。まず譲渡担保の設定は,法律的には所有権の移転ですので,実行というのは所有権に基づく引渡請求権の行使といえます。そうしますと権利の移転は最初の段階で発生しているのだと思います。 ● よろしいですか。   今の簡易の引渡しの御説明との関係で言えば,集合動産譲渡担保ですと倉庫から出した途端に目的物の範囲から外れますから,これはもう個別動産譲渡担保の場合にしか起きないと考えるべきだろうと思います。 ● 失礼しました。そうですね,個別動産の場合です。集合動産の場合は倉庫から出た途端に公示の衣から外れますので,対抗力がなくなってしまうと考えられますから。 ● それから,真正譲渡の方も,資料として配られた判例なんかとも関連するのですけれども,法律構成次第ではやはり実行のときに確定的に所有権が移転したので,むしろ真正譲渡型で考えるべきだという議論も成り立ち得るところだろうと思います。   何かほかに,御意見の方はいかがでございましょうか。 ● どういう局面になるかというのがいまだに全然分からないのですけれども。 ● 現実の引渡し,簡易の引渡し,指図による占有移転,それぞれですか。 ● いや,一番最初議論していたのは,Aが譲渡担保権を取得したけれども占有改定で引渡しがされて,現実の占有は債務者のところにあると。その後Bさんが出てきて,Bも占有改定なんだけれどもあわせて登記を行ったというときに,Bが勝つという話ですかね,そういうところから始まったのですか。   それで,(検討すべき事項)の2というのは,これはゴシックの文章を何回読んでも意味がよく分からないのですけれども。   債務者がAに対して譲渡担保を設定して,占有改定による引渡しをした後にBが出てきた。そのBが何らかの形で対抗要件を具備するわけだけれども,その人が現実の引渡しを受けたり,簡易の引渡しを受けたり指図による占有移転で占有移転を受けた。そのときにプラスして登記がなされたときに,Bは登記の力による優先というものの恩恵を受けるか,こういう話ですか。 ● そういうことですね。   確かに,現実の引渡し,簡易の引渡し,指図による占有移転というのは,旧来の制度でも善意取得で保護されるのですけれども,過失があったらだめだと。そこは登記優先ルールを適用すれば,過失の有無を問わないというところまで高められるところが実質的な違いだと思うのですが。 ● 前回までの議論ですと,占有改定では公示が弱い,債務者のもとにあるもので占有改定で担保権が設定されているものが分からないので,登記によって公示をすると。登記簿を見ると,債務者のもとに占有はあるけれども担保権設定されているものが分かるようにするということでした。そこから始まって,登記をすれば勝つというルールを登記優先ルールと呼んで,それがどこまでいくかというのが今日の議論だと思いますが,そうしますと例えば譲渡担保権を実行して登記をする,そういうものがどんどん登記簿に載っていくということになるわけですね。   そうすると,占有改定の公示力が弱いので,それを補うための登記というのと,登記によって従来ない特別な効力を付与されるので,その特権を得るためにする登記という,二つのものがまざってきそうな感じがするのですけれども。両者の関係がまだもう一つよくのみ込めないところがございますけれども。   そもそも何で登記をすれば優先するのか,こういう人たちが登記をすれば登記がないと付与されない効力が付与されるようになるのは,なぜなのか。ただ単に動産について物権変動を公示するのが望ましいからというのは観念的な説明でありまして,動産については不動産と違うわけですから,物権変動の過程を正確に登記簿に反映させてという要請は不動産のようにはないと思うのですね。ところが,今日の議論では登記をすると特別の効力が発生して,法律で優遇して扱うというのですけれども,何でそんなことになるのかという点について御説明いただければ,もう少し理解できるようになるかと思いますけれども,よく分からないものでこういう質問をさせていただきます。 ● 御説明といいましょうか,それぞれの御意見を承ればよろしいのだと思っておりますけれども。   基本的には,担保取引の効率化といいましょうか,安定性という観点からは,このルールの適用を認めておいた方が望ましいのではないかということでございます。   アメリカの場合には,UCC9で御存じのとおり現実の引渡しや指図による占有移転は,それだけで隠れた占有改定をひっくり返してしまう効力を持っていますけれども,そこまでいくのは今回の改正では行き過ぎだろうと思いますけれども,いったん登記をすることによって,隠れた占有改定を登記優先ルールで覆すということもあっておかしくはないだろうというふうに思っておりますけれども。 ● 議論に入る前に,2点確認させていただきたいのですけれども。   先に現実の引渡しなり簡易の引渡しなり指図による占有移転によって譲渡担保を受けて,後で別の人が占有改定で譲渡担保の設定を受けて登記を備えた場合,どちらが勝つかというと,前者が勝つ,これはもう今回の議論の対象外と考えてよろしいわけですね。   次に確認させていただきたいのですけれども,占有改定どうしだと,先行する占有改定があるということを後行者が分かって,自分は登記しちゃえと。これは善意取得と関係ありませんから,先に占有改定があるということが分かっていながら登記しても,登記優先で後の方が勝つと,これが登記優先ルールだと思うのですけれども。   そうすると,先に占有改定による譲渡担保があるというのが分かっていながら,後に現実の引渡しなり簡易の引渡しなり指図の占有移転により譲渡担保の設定を受けた場合に,登記優先ルールが適用されないとなると,善意取得で考えなければいけないから,占有改定による譲渡担保の設定があるということを知っていると勝てないという,そういう理解でよろしいのですか。 ● そうだと思います。   おっしゃられたとおり,善意取得では勝てますけれども,善意取得ですと過失があったら取得できませんから,そこを登記によって過失の有無や善意・悪意を問わないことにして,一段高めてはどうかという発想です。 ● ほかに御質問,御意見は。 ● 先ほど,○○幹事から御指摘のあったことに私もうなずくところがあるのですけれども,部会資料の2ページの頭の5行ぐらいの中に,今回,今話題になっている論点が提起されるに当たって,何ゆえに登記優先ルールというものを導入するのかということの趣旨について,恐らく二つの異なる考え方が混在して同時に出されているという嫌いはあるだろうと思います。   二つと申し上げたのは,占有改定に善意取得が認められないから登記優先ルールが入ってくるのだというルートの議論と,それとは別に,もう少し離れたといいますか,高次の次元から担保取引の効率性,安定性の観点ということを強調して考えていこうという議論でありまして,その両方の可能性があると思いますが,ただ恐らく事務局資料としては,そのいずれでいくかという考え方の整理も含めてお出しいただいたものだというふうに認識いたしますので,むしろ私としてちょっと伺ってみたいのは,実務界のニーズとして,今挙がっている設例場面で,指図による占有移転や現実の引渡しを受けたBが善意取得の立証負担を回避するために登記をすると,登記をしたがゆえに勝つのだという取扱いをしてもらうことが,融資等の担保取引の観点からニーズがあるのだ,大変楽になっていいのだというふうにお考えになるのか,格段そこまでのことを要求しないというふうにお考えなのか。それを伺って直ちにそれで決まるということではないと思いますけれども,ニーズのところも確かめておきたいというふうに考えるものですから,御質問させていただきたいと思います。 ● 今の御質問に関連して……。 ● 銀行界の方で,今回意見を聞いてきたところがあるのですけれども,担保権者としての立場で考えた場合に,先行する担保権者の立場と後から担保取得する担保権者の立場と両方あり得るものですから,なかなか意見の統一がとれてないところがございまして,そういう意味からすると,そもそも登記優先型か単純対抗要件型かという部分でも,現状意見が分かれているというところもございます。   仮に登記優先型をとった場合,1ページ目の真ん中辺の(注)に主観的要素を要件としないこととするという案が記載されていますけれども,これは要するに後行のBが悪意であっても,登記さえすれば勝てるという意味だと理解しておるのですが,果たしてそこまで登記の効力を認めることがいいのだろうかというところも若干疑問として出てきているところでございまして,なかなかまとまっていなくて申し訳ないのですけれども,考え方の一つの案としては,主観的要素はむしろ考慮する,すなわち,後行のBが悪意の場合には,登記をしても先行のものには勝てないという考え方もあるのではないかとの意見も出てきております。すなわち,占有改定についても登記すれば,善意取得の適用を肯定する,ただそれによって善意取得することができる先行の担保権者というのは,占有改定によって対抗要件を具備した担保目的の譲渡による権利者に限るという案もあるのではないかという意見がありました。 ● 今の御提案の部分についてはまた御議論があろうと思いますけれども,ほかに実務界から○○幹事の御質問に対して何か御発言がございましたら……。 ● 商工会議所の立場から申し上げます。   まず,譲渡担保が従来占有改定により設定されていて,そこに公示性が欠如されているがゆえにこれまで問題提起をさせていただいているわけです。その上で申し上げますが,あくまで占有改定等によりますと,実際のトラブルの例というのは,基本的には相当数の方々が善意であっても,後々後付けの契約書でいろいろな権利を主張されるというようなケースが多々あるわけでございまして,そういう意味での実務界の混乱というものをかんがみますと,基本的にはやはり登記優先であるべきだというふうに考えております。   加えて言いますと,ここにも書いておりますが予見可能性という点からして,これは私ども商工会議所としては,中小企業者が担保,資財を提供するわけでございますから,担保取引に関してむしろ公に担保に出していますということを示した方がよろしいというふうに思っておりまして,そういった点でも隠れた担保というふうな形での占有改定を,いわば同列に認めるということはいかがなものかと,逆に考えておるところでございます。   更に申し上げますが,いわゆる簡易の引渡し等に関してですが,これは先ほど○○幹事の方から例として御指摘がございましたが,先般の第2回目の会合では,余り現実の可能性はどうかという点を申し上げましたが,よくよく考えてみますと確かに他人に預けるというようなことはないとは言えないということもございますので,そういった点では「適用除外とする必要があるか」というこの(検討すべき事項)の2に関しましては,除外する必要はないと思われるわけでございます。   繰り返しますが,一気通貫した論理で申し上げれば,やはり登記優先とし,またそれを最大限考慮していただきたいということでございます。 ● ほかには特にございませんか。   それでは,今,○○委員からの御提案がございましたけれども,それについて何かこの場で御発言があれば,あわせてお伺いしておきたいと思いますが。   登記優先型というのは,今御指摘がありましたように,悪意でも登記さえすれば先行する譲渡担保が破れるという仕組みなわけですが,それは行き過ぎで,やはり善意者だけを保護すれば足りるのではないかというのが前回この検討の場から消えてなくなった善意取得型,登記をして善意であれば先行するものに勝てるという考え方だったわけですけれども。 ● 逆に,○○委員にちょっと御質問させてもらってよろしいでしょうか。   悪意の場合,知っていた場合には担保取得ができないとしますと,訴訟の場で知っていたか知らなかったか,善意か悪意かが争われるということになりますね。   登記で,対抗問題として考えるとしますと,そこが問題としなくても済むのでリーガルコストの削減になってきますが,そうでなくても構わないという御判断なんですね。 ● 先ほど申し上げた意見で統一がとれているわけでもないものですから,一つの意見としてそういうのもあったということだけなのですけれども,そういう点からしますと,仮にそういう悪意者は勝てないこととすると,善意・悪意について訴訟で争われることが発生してくるわけですけれども,そのコストと,悪意者であっても勝ってしまって,それでも先に担保取得した者としては構わないのかどうか,そこの利益衡量の話だと思うのですけれども。その利益衡量次第で,どちらの考え方もあり得るのだろうとは思います。 ● 最終的にはまとまってはいないということですね。 ● はい。 ● ただいまの点ですが,確かに個々のケースにおいて,悪意の場合も保護されるのは行き過ぎであるとかいう利益衡量の問題が出てくることは否めないのですが,そもそも論でいえば,登記という制度を採用するということは,対抗要件の基本的な考え方として,法定的な一定の手続をとった場合に,その効果について画一的な処理をするということが登記等の対抗要件の--対抗要件と大きくまとめますと,対抗要件主義をとった場合の最大のメリットであるはずというふうに私は認識しております。   このことは,もちろん不動産の場合には背信的悪意という例外は設けますけれども,債権譲渡登記においてもしかりで,要するに主観的要素は要件としないというのが基本的な考え方であろうと思います。ここにこういうふうに書かれますと,悪意の場合でも保護されるというのは行き過ぎではないかという利益衡量の議論が表に出てきてしまうのですけれども,登記という形での法定的な対抗要件の制度を採用するのであれば,そこは画一的な処理というメリットを重く見た方が私はよろしいと思いますが。 ● ほかに御意見,いかがでございましょうか。 ● 経団連でも,数日前に今回の資料について議論いたしました。それで,先ほどの○○委員もおっしゃいましたように,今回の資料は大変難しくて理解が追いつかないということがあったのですが,議論が非常に千々に分かれておりまして,意見が必ずしも一致したというわけではございませんですけれども,ただこの登記優先型か単純対抗要件型かということの根本にも出てくるのですけれども,担保目的の譲渡というのは類型で色分けして,誰が見ても明らかにそうだと言えるようなものかどうかというところに関しての不安といいますか,議論というのが根本にあるような気がいたします。   担保目的の譲渡であれば登記ができる,登記ができればこのような効力があるということは,登記制度の根幹からするとそうあるべきだというのは非常に分かるのですが,一方で真正譲渡との関係におきますと,やはり真正譲渡の方が優先をするということは確かでしょうけれども,一方でそれがどこまで見分けがつくか。そうすると,物は移転をしているけれども,それが担保目的の譲渡であれば登記すべきだと。一方で,当事者は真正譲渡のつもりで物が引き渡された,これでいいと占有改定のままに置いたと。ところが,これを後から見て,担保目的の譲渡という色彩があると思った人は,後から登記してしまえということになって,やはりトラブルになってくる可能性も否定できないのではないかと思います。したがいまして,取引の当事者という観点からしますと,この登記の効力というのはある程度制限をするというところからスタートしていった方が,世の中の混乱を招かないのではないかと思います。   これは,決して制度自体を否定するわけではなくて,フレッシュマネーの供給というような大義があるので,それは必要だと思うのですけれども,あらかじめかちっと効力を強力に認めた制度としてスタートすることに対する不安というふうに御理解いただければと思います。 ● 最初のころに提起された問題について,必ずしも画一的な結論が出ているわけではございませんけれども,よろしゅうございますか,補充の意見は。 ● ただいまの○○委員の御発言に関しては,私も既に質問させていただいたことではありますけれども,もう一度申し上げておきますと,担保目的と真正譲渡というのを区別するメルクマールが取引の実態の中でどれだけはっきりしているのかというのは私も懸念しているところでありまして,既に申し上げたように国際的には債権譲渡の方では担保目的か真正譲渡か区別がつかないという判断でアンシトラルの条約はできております。ですから,動産の場合には区別がつくのですねということをこの前にもお尋ねしてあるのですが,今の○○委員の御発言のように,そこのところは現実の様々な取引形態の中で,当事者の認識,あるいはそれが周囲からどう分かるのかというところに,ちょっと不安がございます。それを重ねて申し上げておきます。 ● 初めて出席をさせていただきます。部会としてこの制度にということなので,ちょっと外れるかなと思っていたのですが,議論がもとに戻ってきたみたいですので,発言させていただきます。   まず,いわゆる金融の資金繰りを含めて整備を図ろうというところからこの議論が出てきたというふうに理解をしておるのですが,その観点に立つと,法技術的な議論はいろいろあるのかもしれませんが,真正の譲渡等で,明らかに金を借りるがための担保としての部分として公示制度も含めて整備をせよという議論だったと思うので,そこのところの根幹がはっきりしないということであれば,これは問題があるのかなというふうに感じます。   それから,○○委員には恐縮ですが一言言わせていただきますが,この資金繰りのためによくするという部分のところで,公示等の部分で特権的なものを与えて,画一的にしやすくしようという政策的な意味合いの妥当性については,これは上で決まったことなのだということになるのかもしれませんが,勤労者の立場としては異論があります。一番懸念をするのは,現在の状況において非常に不動産でもなかなかお金が借りられない,動産一切も含めてということでお金が借りられるようにしようということであるのならば,正しく不動産等がなくて,将来の価値とかそういうものに融資をするという部分の整備というのは社会的な意義があると思いますが,現実には,この制度がそういったような,雇用を含めて企業,ビジネスを伸ばしていくというためだけではなくて,むしろ非常に資金繰りが苦しくなっていくときの債権回収の手段として使われるという可能性が,現在の産業状況を見ていると非常に強いのではないかというふうに不安を持っております。   もともと,いわゆる特別の先取特権というか,特別の動産の担保権でございますから,そういう意味で現在の状況を見るならば,不動産等のところはすべて担保に入って,あわせて将来的な動産の部分等も含めて包括的に入ってくるということになると,結局企業経営者としての総財産といったものから,特定的なものがすべて個別的な部分で抜かれ,最終的に残るいわゆる総財産のようなものがほとんどなくなってしまう。勤労者の立場で考えますと,勤労者は経営者を信じてぎりぎりまで,給料の多少の遅配があっても一生懸命会社再建のために頑張ろうというのが通常の行動パターンでございまして,最後の最後になって未払い等,あるいは未払いの退職金も含めて多額あるいは若干の労働債権が発生をする。この部分は一般先取特権で一応保護されるということになっておりますが,そもそもこういう状況がどんどん進展していくと,いわゆる一般先取特権にかかるその他の総財産というものはほとんどない。そういった状況が加速するのではないか。   将来的なキャッシュフローを含めて,ビジネスを伸ばしていこうという考え方であれば,基本的にビジネスが正常に伸びていって,その間の一般の取引先の負債,あるいは労働者の賃金といったものはまず確保された上で,その間の成長性を担保にしてやるというのが,多分これから伸ばしていくという不動産がないところの担保の筋だというふうに考えておりますので,やはり全般的な,いわゆる一般先取特権等にも配慮した制度設計,政策的なことはあわせて必要なのではないか。現状のまま進むということについては大いに議論をすべきではないかと思いますし,この問題を提起するに当たっても,その点はきちんと議論を広く問うべきではないかというふうに感じます。   済みません,ちょっと戻るような議論で申し訳ありませんが,とりあえず。 ● ただいまの○○委員の御意見に直接対応するものではございませんが,そもそも論をおっしゃいましたので,私どもの立場からも,蒸し返して恐縮でございますが,申し上げます。   あくまで,アセットベース・ファイナンスの促進につながるものであるという前提で,中小企業の資金繰りに資するという観点から,当該担保目的の譲渡登記制度について賛成するものでございます。先ほどフレッシュマネーというようなお言葉が出ましたけれども,そのような資金調達が可能になることによりまして,むしろ売掛債権,あるいは給料等の支払いが全うできる,いわゆる運転資金調達のためにこの制度が活用できるというふうに考えておりますので,そういった点の期待はあえて申し上げます。   なお,御案内のとおり債権回収若しくは保全強化のためにのみこのような制度が濫用されるということになると,これは中小企業者にとっても大変ゆゆしき事態だというふうに思っておりますが,そのことにつきましては,やはりあくまでフレッシュマネー若しくは現在の貸出条件の緩和等があって初めての担保制度だということを前提に,例えばやみくもな保全強化策の展開,債権回収策としての担保取得というふうなことであれば,それをでき得れば抑止するべく業界団体として所要の措置を講じていただきたい。あるいはまた,御当局においてもいろいろと御配慮いただきたいと思います。   ちなみに,本年の7月末に発出されました与信取引に関する顧客への説明体制及び相談苦情の処理機能に関する新しい監督指針という,いわゆる金融庁のガイドラインにおきましては,もろもろの契約時の御質問等に関しては,適時適切に丁寧な説明を求め,それがよしんば不適切な場合には,極端なことを言えば業務改善命令が出てくるというふうな金融庁の御指針がございますが,こういったことも十分視野に入れつつ,今後の業界団体並びに御当局の御配慮というものを希望したいと思います。   この場で恐縮でございますが,一言申し添えます。 ● 今のそもそも論は,ずっとこの問題についてつきまとっている問題でございますので,継続していろいろな箇所で考えていただかなければいけないことだろうと思います。   それから,担保目的と真正譲渡の区別の困難性の御指摘は,この後に出てきます単純対抗要件型と登記優先型とどちらを選ぶのかというときに,非常に重要なポイントになることではないかというふうに思います。 ● 前半部分のことについて,意見として問題の設定の仕方について意見を述べさせていただきたいと思います。   今日の事務局のペーパーの1ページの問題設定は,まず登記優先ルールが及ぶのだということを前提に,適用除外とする必要があるかという問題設定なんですけれども,そもそも実務の方からの意見が,登記にどれほど強い効力を認めるかということについてはかなりの懸念がなお示されているというところです。お互い占有改定どうしであって担保目的である場合には,登記で優劣を決定しましょうというコアの部分は,この登記優先型によった場合もある程度コンセンサスが得られたとして,それ以外のところまで,登記に強い効力をどこまで付与すべきかという点について,もう一つ今日は問題提起いただいたというふうに理解しました。そこまで登記の効力をのっけていくべきかということについての事務局のスタンスは,何か作るのだから,できるだけ法的効力をのっけたいというふうに傾きがちのように私は印象を受けますけれども,フロアーの意見は割と慎重意見も有力でありますので,そこまでのっけるのが適当かどうかという点について問題を立てるということが必要だと思います。ですから,逆に登記優先ルールを及ぼす必要があるかという形に問題設定をする方が,より適切ではないかと思います。   その点について,私自身もまだ固まった意見があるわけではありませんけれども,できるだけ慎重に臨むというスタンスからいけば,善意取得の限度で保護されればいいのではないかという形で,及ぼさないという選択肢がなお一つあろうかと思います。仮にそれではだめで,もう少し強くすべきだという場合も,事の発端は先ほど申し上げましたように,担保権設定したけれども占有改定しかしない担保権者は,公示を欠いていると。その十分な公示を欠いた担保権者に対して登記をしていないと一定のサンクションを加えますよというのが対抗要件制度の趣旨だとしますと,占有改定だけで登記をしないと,他に担保を目的とする譲渡があった場合には,その担保権者に対しては占有改定だけにとどまる担保権者は,当該担保権設定を対抗できないという案もあるのではないかと思います。   違いは,この案は登記をすれば指図による占有移転でも簡易の引渡しでも,あるいは実行でも,登記をすれば勝つというルールだとおっしゃいましたけれども,もともとはそういうルールではなくて,登記をしなければ占有改定の公示が不完全であるということを担保について導入しようというのがここでの出発点であったはずでありますから,そこから素直に出てくる結論は,占有改定で担保権取得したけれども,他に現実に引渡しを受けたり,あるいは簡易の引渡しとか指図による占有移転がどれほどあるか分かりませんけれども,そういう形で担保権を設定した者が他にいた場合には,そちらに対しては当該担保権設定を対抗できないという形で処理をする方がいいのではないかと。   なぜそう申し上げるかといいますと,当事者の行動として考えた場合に,占有改定で担保権をつけるときには登記までしなければいけない,そうしないと一般債権者には勝てるかもしれないけれども他の担保を目的とする譲渡に負ける可能性があるということを考慮に入れて,登記をするというのが行動の基準になるかと思いますけれども,もしこの原案どおりでいきますと,例えば担保権を実行するときも登記をする,あるいは指図による占有移転の場合にも登記をするというように,メリットを受けるために登記を利用することがあるかと思いますけれども,この二つはやはり違う局面ではないかというふうに考えるからであります。   先ほどの○○委員の御意見も,善意・悪意の話もありましたけれども,もう一つは要するに登記をしたから保護されるという形ではなくて,占有改定の方を弱めるという意見が含まれていたかと思いますけれども,そちらの制度設計もあるわけです。ですからそもそも及ぼすかどうかという点と,及ぼすという場合も,こういう登記優先ルールという形での解決がいいのか,それとも別の形がいいのかという点についてはなお検討の必要があるのではないかと思います。   これは,後で対象となります登記できる譲渡--これもいろいろ問題がある概念だと思いますけれども,登記できる譲渡というものを広く考えるという案がベースにあるように思われますけれども,こちらの問題ともかかわりますので,そちらとあわせてまた議論をする必要があろうかと思います。   ちょっと長くなりましたが,以上です。 ● 制度設計についてはいろいろとあることは承知しておりますし,いろいろな御意見を承りたいのですが,確かにこれは,占有改定という目に見えない対抗要件で譲渡担保にとってしまうのは担保取引によろしくないということがそもそもの発想であります。ただ,普通,動産を譲渡担保に供して融資を受けたいという人がいたときに,その人のものであるかどうか調査しなくてはいけませんが,そのときにみんなが登記していればそれは明らかですけれども,占有改定を併存させるという形になりますと,占有改定という目に見えない形で譲渡担保が設定されている可能性は残ります。そうしますと,そこを調査しなければいけない。日時をかけて,費用をかけて,いつまでも調査していればよろしいのかもしれませんが,そうしますと融資に関する費用,コストが非常にかかる。そのときに,ある程度の調査でよいといいましょうか,徹底的にやらなくても,そこの部分は登記手数料を払って登記をすれば勝てるとすれば,調査をしなくてもいいことになって,融資の低コスト化につながる。そういう観点からの制度設計というのも,あり得べしかなというふうに思っております。   その観点から,正に逆に,UCC9もそうかもしれませんが,登記することによってメリットがあるということも,制度設計としてはあり得るのではないかと思います。ですから,この登記優先型というのは,登記をすることによって正にメリットを与えるというような発想と受けとめることもできるのではないでしょうか。 ● 今の御発言に端的にあらわれていたと思いますけれども,UCC9については,私は専門家ではありませんけれども,これはむしろ警告型でありまして,調査の端緒を与えるために登記をするのであって,登記をすれば調査をしなくて済むための登記ではないというふうに理解しておりますので,これがもし登記をすれば調査しなくても済むという理解だとすると,そもそもそういう登記制度を入れるのがいいのかということが問題になろうかと思います。   それから,先行する担保取引はそうですけれども,例えば先行する真正譲渡は占有改定でも勝てるわけですから,その点については調査をしなければ負けてしまうわけでありますし,また所有権留保やリースその他の,ここで対象としていない実質は担保の取引もあるわけでありますから,外観から見れば債務者の財産のように見えるけれども,そうでなくて,負けてしまうものはたくさんあるわけでありますから,登記をすれば調査をしなくてよくなるというのは,それは間違いだと思います。 ● おっしゃるとおり,完璧なものではないことは承知しております。所有権留保が入りませんし,リースも入りませんし,真正譲渡も入りませんので,若干機能としては弱いのだと思っておりますが,ただ登記をすることによっていつまでも調査しなければいけない,日時がかかる,費用がかかるというところについては,隠れた譲渡担保のところだけに限定はされますけれども,メリットはある。登記にそういう恩典があるという考え方は,あながちおかしくはないのかなと思いますが。 ● これは,もともと○○幹事がおっしゃるように,本来占有改定の効力をどこまで縮めていくかというのが基本の発想で,ただ占有改定対現実の引渡しとか,占有改定対簡易の引渡し,これを全部優劣をつけていこうということになると,もう民法改正的になってくるので,登記というのを媒介にして,登記に負けるというのを媒介にして占有改定の効力を限りなく否定--否定はできないから,少し弱めていこうという発想なんだろうと思います。   それを,裏から言えば,登記をすれば一定の効力があると。登記に効力があるなら,ではこの登記の効力はどこまで広げようかというのですけれども,そこは余り登記の効力の一人歩きを強調しない方がいいのかもしれない,そういう趣旨であるかもしれませんね。 ● この前も議論のときに実務の方からお話になったことで,2のところで具体例で質問したいのですが。   例えば,倉庫に預けているものを指図による占有移転でAという人に担保に入れたと。その後,Bという人にも担保に入れたと。このBという人に入れたときに,ついでに登記もしたということになりますと,この登記優先ルールを適用すれば,これはBが勝つわけですね。 ● 先行する指図による占有移転は,登記によって否定されるものではないですから,登記があっても先行の指図による占有移転の優先効は維持される。 ● 登記優先ルールを二つの指図による占有移転の場合に適用すれば,Bが勝ちますね。 ● それにも登記優先ルールを適用するという立場をとれば,登記をすれば勝ちますけれども,原案は先行する譲渡担保権者が占有改定の場合にしか登記優先ルールは適用しないというふうに言っているので,現在の事務局原案でいけば,先行する譲渡担保が指図による占有移転であれば,後から登記されてもこれは揺るがないということです。 ● 揺るがないということですね。   前のお話では,現在でも倉庫なんかに預けているときの指図による占有移転による担保設定というのはきちんと機能しているので,もしこれを登記優先ルールにしちゃうと,かえって今うまくいっているところで登記というコストをかけなければいけなくなりますので,少なくとも指図による占有移転の場合は原案のとおりでいいのではないかというふうに思いました。それだけです。 ● だから,この(検討すべき事項)の2における「指図による占有移転」という言葉は,Bが行った場合だけを考えているのですね。Aは占有改定による引渡しを受けていると。だから,私は最初から文章が悪いと言っているのですけれども……。   Aは占有改定による引渡しを受けているというのがべたっと全部にあって,その後Bが何をした場合に適用されますかという話として,2のところに現実の引渡し,簡易の引渡し,指図による占有移転というのがかかってくるということですよね。 ● ○○幹事風の言い方をすれば,譲渡担保権者が占有改定しかしていない場合には,後に設定された譲渡担保権について登記がされてしまうと,その者には対抗できなくなります。後の譲渡担保権者の占有取得の態様が,占有改定であろうが現実の引渡しであろうが指図による占有移転でも,この際問題にしないということでいかがでしょうかというのが,今日の2の提案だったわけです。 ● 具体的なシチュエーションで,そういうことがあるかどうかというのが最初の質問でしたけれども,今のケースで譲渡担保権を設定して,譲渡担保権者が占有改定で占有していると。それを倉庫に入れるときには,倉庫はだれのために占有していることになるという前提なのか。譲渡担保権者のために占有していなさいといって,この譲渡担保権者がそれを処分する場合には,そこから指図による占有移転で移転していくということなのか,債務者から預かっているという前提なのか。そこは事務局はどちらの前提なのかということです。   もし,債務者から預かっているとすると,譲渡担保権者は今まで占有改定で間接占有を持っていたわけですけれども,倉庫に預けた場合には間接占有はなくなるのか残るのか,そこの整理はどうなっているのかについて,具体的なケースが出ましたので御質問したいと思います。 ● 債務者のところにある動産にまず占有改定で譲渡担保権を設定した後で,倉庫業者あるいは第三者に預けた場合に,それはだれのために預けたかという御質問ですね。 ● つまり,倉庫に預けたまま物品を処分したりするような場合は,正当な権限者からオーダーが来ないと処分してはいけないという扱いだと思いますので,だれのために預かっているかというのは重要だと思いますけれども,その点を実務上処理した上で預けたというシチュエーションを念頭に置くと,こういう話になるかという点が分からなかったのです。今,具体的なケースが出ましたので,そのケースをもとに御説明いただくと,○○委員の疑問も解けるのではないかと思いましたものですから,質問させていただきます。 ● 考えていましたのは,現実にそういうものはたくさんあるかどうか分かりませんが,自分のところにあるものを占有改定で譲渡担保に設定した後で,他人のところに預けたと。預けるからには,自分のものとして預けるのだと思いますが。 ● それを第二譲渡担保に供して指図による占有移転をして,それに登記をしましたと。これも法律論としてはいろいろあって,第二譲渡担保は無権利者からの設定だから,善意取得を一枚かませないと,登記だけでは絶対に勝てないのだよという話も出てき得るということになる。 ● 事務局にかわってお答えする趣旨では全然ないのですけれども,○○幹事の問いに対しては両方あるのではないでしょうか。 ● 私も,いずれかというと二つです。両方あるので……。 ● 両方あって,債務者が,○○幹事がおっしゃったように自分が持っているかわりに第三者に預けるということもあるでしょうが,それだけではなくて,債権者・債務者の関係で譲渡質タイプにするというのでしょうか,そのために,債務者は第三者に預けるけれども,もう私は占有から下りると,債権者のためにこれから占有してくれといって第三者に渡すというタイプも多分あるのだろうと思うのです。ですから,一概には言えなくて,それぞれについて今の話を展開していくことになるのだろうと思います。 ● 債権者のために預けちゃうと,債務者が譲渡して登記しても,効力ないですよね。譲渡担保設定して,登記をしても,その登記は無効であると。 ● そうですね。 ● 債務者が占有していたものを第三者に預けて,しかもその第三者に対して譲渡担保権を設定した最初の人のために占有しろというのなら,そこで指図による占有移転が起こっちゃっているので,その後にやっても,占有改定との対抗関係にならないのではないかということで,事務局は自分のために預けているという場合を想定して言ったのだと思います。 ● 今,2ページ目の真ん中の問題も含めて,1ページの2というテーマについての御議論をいただいてきたところですけれども,これは今のところ意見は一つにはまとまっていないというふうに受けとめさせていただいて,今後しばらく議論しても,一つにはなりそうもないような気がいたしますね。 ● ここで言っているのは余り現実的にはないだろうとは思っているのです。譲渡担保の設定というのは,大体占有改定が多いので,現実の引渡しまで進むというようなことはほとんどないでしょうし。   ただ,この登記優先ルールというのを,先行の譲渡担保権の設定が占有改定でなされたときに,その後,譲渡担保目的の権利譲渡があって,それについて登記がされた場合には,登記が優先するのだという形で考えたときに,その要件事実だけならそれで済むのですが,そのときに,後行の譲渡担保設定が登記もされたけれども,たまたまレアなケースでほかに現実の引渡し,あるいは指図による引渡しといったようなものも同時にあったときに,それが外れるのだというふうに考えると,抗弁としてそれが主張できることになってしまう。争点が一つふえてしまう。一体そんな面倒なことを本当にやる必要があるのか。現実にそういう占有改定以外の引渡しがされているときに,それをわざわざ主張させて,いや,それがあるから登記では決まらないのですと,次に,では後行の方で善意取得があるのかどうなのかという争点にまた移っていくという,そこまでやる必要があるか。   登記があって,登記で決まるのならそれ以上入らなくてもいいのではないかというのが出発点。それを整理すると,こういう格好になってしまうものですから,入れるか入れないかというのが最初からすごく大きな問題になるようですけれども,要は最初に占有改定による譲渡担保があって,それについて後行で既に登記がされていると,そこまで立証されたらそれ以上の審理は要らないのではないかというのがそもそもの出発点なんです。   それが外れるということになりますと,次はそこが争点になってくるものですから,一応主張させて,しかもそれについて,いやいや善意取得があるのですということがまた出てくるのかという,そこまで複雑にしなくてもいいのではないかという感じなんです。 ● ただいまの○○委員の御指摘,非常に重要なところがございまして,加えて先ほどの○○幹事の方からの,特に金利の問題等御指摘がございましたが,複雑な考え方ですと,担保権者の方々がそういうリスクないしコストを,金利あるいは管理手数料というふうな形,あるいは調査手数料でも構いませんが,そういう形で債務者の方に求めてこられるということだって実務的には考えられますので,むしろそれだったら登記を優先して考えて,全部適用するような形ではっきりとされた方が,私どもとしてはむしろ助かると。かつ,取引の安定性にも通じていくというふうに考えます。   加えますけれども,インセンティブの問題からして,逆に大変な負担を担保提供者側にかけられるようでしたら,それはいかがなものかということを一言申し添えさせていただきます。 ● 今,○○委員がおっしゃったように,占有改定しか備えていない人は,後の譲渡担保権者が登記をしたら,それに負けると。その後の譲渡担保権者の占有取得の態様については,問題にしないと。ある種特殊な取得の態様について,特に問題にしなければいけない理由があるか,それがないようだったら,占有取得の態様はここでは問わないと。それが多分,登記申請手続のときにもあなたの占有の態様はどうですかということは審査の対象にならないというつながりになってくるのだと思うのですけれども。登記の効力を強くすると,いろいろな意味での議論が出てくると思いますけれども,今のような考え方で,占有取得の態様は問わなくてもこの原則を適用していって処理ができるのではないでしょうかという発想だと思いますが。 ● 先ほどの,仮に及ぼすという場合に,二つの考え方があるというふうなもう一つの考え方として,占有改定にとどまる場合には,他の担保目的譲渡に対しては対抗できないという制度が私の意見でありまして,指図による占有移転とか簡易の引渡しとかいう場合にも登記をするといいことがあるというルールを作るのがいいか。そのためには担保権実行するごとに動産についてみんな登記をしないといけないというふうに,かえってコストがかかるわけですから,もし今○○委員がおしゃったようにそういう占有態様を問わないという制度設計が望ましいという前提に立つ場合には,登記をしたら勝ちではなくて,占有改定で登記をしていなければ他の占有取得の態様に対しては担保権設定を対抗できませんよという方が,この制度に合致するのではないかというのが,先ほど私が申し上げた意見であります。 ● 何か説明の方向が違うだけで,中身は同じではないかというふうに思うのですが。 ● ○○幹事のおっしゃったことは,つまり占有改定による担保のための譲渡は,登記も備えないと対抗できない。 ● 一定の範囲の人に対しては,ということ。一般債権者は除くわけですね。 ● 分かりました。 ● その対抗できない第三者の要件の中に,登記をしている第三者というのが要件として加わるわけですね。 ● それを入れるかどうかが違うのだと思うのですけれども。 ● ○○幹事のだと,登記をしていない現実の引渡しを受けた人にも対抗できないというふうになる。そうではなくて,占有改定しかしていない譲渡担保権者は,登記をした譲渡担保権者には対抗できない。登記をした譲渡担保権者の占有態様については問題にしない。これが事務局原案。 ● 私は,ほかの占有態様の場合には,登記をしたかどうかは問わずに保護されるという方がすっきりする。もしそういう目的を達成したいということであれば,そちらに登記を要求するという必要はないのではないか。現実に占有を引き取ったようなものを,債務者の登記簿に登記をするというのは,何のためにするのですかというと,過去に担保権があって実行しましたという物権変動の過程を公示する,それが無用の紛争を防止するというわけですけれども,それと占有改定プラス登記をするというときの登記は,ちょっと違うものになってこないかということであります。   それから,全体にかかわることですけれども,今まで登記と占有改定の関係について,漠然と占有改定は占有改定,登記は登記というふうに理解してきたと思うのですけれども,ただ前提としては占有改定だけではだめで,占有改定プラス登記をするという前提なのではないかと思っていたのですけれども。占有改定はないけれども登記だけするとか,簡易の引渡しはないけれども登記だけするということはあるのかないのか。これがあるとなると,また更に複雑な場合分けが出てくるのですけれども,私の先ほどの線からいけば,占有改定は一応の対抗力はあるけれども,それは不完全な対抗力であって,登記までしないと一定の範囲の人に対しては対抗できませんよというルールを入れて,占有改定によって担保権を設定する人に対しては登記をして,できるだけ公示しなさいというインセンティブを与えるというふうに説明する,占有改定プラス登記なんですけれども。占有改定はないけれども登記だけする人が出てくると,これはまた非常にややこしい話になりますが,登記は形式的審査ですからできてしまうということがあり得ますので,事実上そういう人が出てきたらどうするかという問題はありますけれども,典型的な場合としては,一応占有改定はあるということを前提に議論していたように思うのですが。ただそれを言っていくと登記優先型とか単純要件対抗型というこの区分けも,単純要件対抗型というのは要するに対抗要件は占有改定であって,それで登記は警告型の登記が乗っているという説明になりますので,全体に影響を及ぼす意見ですので,余り最初から申し上げるのがいいかどうかためらっていたのですけれども,その点もあわせてかかわってくる問題だと思います。 ● その点,何か事務局からありましたら……。 ● 今おっしゃった,占有改定をした後で登記をする,さもないと一定範囲の人には負けるという仕組みがいいとおっしゃったのですが,一定範囲というのはどの範囲になるのですか。 ● 担保の目的で譲渡をした場合であって,占有改定による場合を除くと。 ● そうしますと,現実の引渡しが仮にあっても,あるいは指図による占有移転が仮にあっても入るのですね。 ● 入るわけです。ですから,及ぼすという前提に立つ場合は,そちらの方がいいのではないかと。及ぼすべきかどうかという点については,登記の効力としてどこまで付与するかというところを,占有改定をしたにとどまる人にどれだけサンクションを課すかというふうに言い換えても同じことだと思いますけれども。 ● そうしますと,占有改定で対抗要件を備えた人は,現実の引渡しあるいは指図による占有移転をした人には負けるということにしますと,真正譲渡の場合は影響しませんですか。真正譲渡の場合も同じように占有改定と指図による占有移転,現実の引渡しの間の差をつけろという話にはならないですか。切り分けはどうやってやればいいのでしょう。 ● 真正譲渡と担保目的譲渡については全般にかかっていることで,ですから真正譲渡が出てくればまたそれは別論になるのではないかと思いますけれども。あくまでも担保を目的として譲渡する場合に限ればいいのではないでしょうか。 ● ○○幹事のおっしゃったような,要するに占有改定の効力を一段弱めるというのは,それは考え方としてはあり得るとは思うのですが,占有改定がされた後,例えば登記なしの現実の引渡しがされたという場合に,現状と結論が逆になってくる,そういう意味では占有改定の効力そのものを相当大きく変えるようなことになってくるのではないかと。   今回検討しているのは,ともかく占有改定という非常に見にくいものについて,もう少し明確にするために登記という形で決着をつけたらどうかという発想で始まっているものですから,占有改定そのものをそういう他の引渡しに比べて一段常に弱くしてしまうというのは,ちょっと考え方としても……。それはあり得るとは思いますが,現状との差が大きくなり過ぎてしまうのではないかと。   もちろん,占有改定・占有改定の場合に登記で決めるのだという考え方をもう少し広げて,いや現実の占有の移転の仕方,引渡しの仕方を問わずに,登記があれば登記で決めてしまうのだというのは,占有改定同士の場合に限定する場合に比べれば少し広がることは事実ですが,占有改定一般の効力を弱めてしまうという場合に比べれば,なお譲渡担保目的でやっている場合に限定する理由がついてくるのではないか。占有改定そのものをそこまで弱めてしまうと,今言ったように,真正譲渡目的のときの対抗要件としての占有改定の効力は,依然として従来と全然変わらないということで本当に済むのか,検討の範囲がどんどん広がっていくのではないかという気がするのです。 ● 私は,個人的には○○幹事のおっしゃるような考え方は十分にあると思うのですけれども,ここでの従来の議論で,やはり占有改定もそれなりの効力を持つものとして残しておいてほしいという要望がかなり強かったことが一つと,もう一つは,占有改定対例えば現実の引渡しの優劣を決めるということになると,ここに与えられている課題が動産譲渡担保の公示制度についてという枠内で処理できるものというのが一応形式的な枠組みであり,それを超えないと処理できない問題にかかわってきますので,当面はやはり登記を媒介にしたものに限る。登記との関係で占有改定は効力を制限されるという点については共通の認識になっていると思いますが,後行の譲渡担保権者が登記はしていないけれども現実の引渡しその他をしているときに,なお占有改定に優先するかというのは,ここの議事としては新しく出てきた問題なので,直ちにそれを取り込むというよりも,やや将来の課題的に検討させていただくという処理にさせていただけると助かるのですけれども,よろしいですか。   それでは,大分時間をとってしまいましたけれども,休憩の予定の時間になりましたので,ここでいったん休憩をさせていただきます。             (休     憩) ● それでは,再開させていただきたいと思います。   進行に手間取っておりまして申し訳ございません。2ページ目の「登記できる譲渡について」。   先ほど,どういう場面で登記の優先効が適用になるかということについて御議論いただいたのですけれども,その登記優先ルールが働く場面だけを登記の対象にするのか,あるいは登記という制度がある以上,もっと幅広く,全譲渡も登記したければさしてやってもいいのではないかという考え方をとるか,こういう話なのですけれども,この点について御意見をいただければと思います。   実務界からのニーズ,あるいは理論的な問題ということで……。 ● まず前提の確認なんですが,今日の補足説明資料には,「登記できる譲渡」の下に(対抗力付与)と書いてありますけれども,この対抗力付与の意味内容と,どう理解したらいいかという点について,確認させていただきたいと思います。   登記優先ルールというのが登記をした者が権利の取得を対抗できるかという,実体法上の効果があるものだとすると,ここに言う登記できる譲渡というのは,実体法上の効力はないけれども,しかし登記はできると。そうすると,法的な効力として何があるかということの説明で,冒頭の事務局の御説明ですと,その説明としては立証の容易な対抗要件具備方法として登記ができるという御説明があったように聞きました。そうしますと,そこで「対抗要件」という言葉は実体法上の対抗要件ではなくて,ある種の立証--登記があることによって権利の移転を立証するための手段としての登記というものを考えておられるような説明をされたように聞きました。そうするとここで言う「対抗力付与」,対抗力の意味内容は,実体法のレベルではなくて証明レベルの話だということになりそうでありますけれども,そういう理解でいいのか,この対抗力とかあるいは対抗要件具備で登記優先ルール以外のものとしてはどういう効力を考えておられるのかについて,まず御確認させていただきたいと思います。 ● 立証のためのというつもりではありません。実体法上の対抗力を付与するという意味です。 ● 「対抗力を付与する」の中身は何かという質問なのですけれども。 ● ここで言っている「登記できる譲渡」,登記できるかどうかといっているのは,例えば担保目的の譲渡だけが登記できるという考え方をとる場合には,登記の要件として,例えば担保目的の権利移転ですということを審査して,そういうものだけを登記しますと。それに対して,そういう権利移転の原因まで審査せずに,ともかく動産についての登記申請が来れば受けちゃいますと,そういう場合には登記できる譲渡について制限がないという形になるわけですね。   それで,担保目的の登記に限るという場合には,当然実体上も担保目的の権利移転がなされて,それが公示され,対抗力が与えられる。   一方,真正譲渡も含めて権利移転の原因を審査せずに,すべて登記してしまうと考えた場合に,その登記の効力をどう考えるか。そのときに,譲渡担保目的の登記に限って正にここで言っているような占有改定に優先する対抗力を付与する,真正譲渡に基づく登記であれば,それは登記として対抗力の意味を有しない,そういう考え方もあるのではないかということが,ここで言おうとしていることではないかと思っているのですが。 ● ○○委員の御説明,私全然違和感がないのです。そういうことであれば,私の質問は撤回したいのですけれども,そうでないように聞こえたものですから,そうであるかどうか,もう一つ念のため確認したいのですけれども。   前回,問題を二つに分けてというときの登記できる譲渡というのは,要するに登記官が形式的審査しかできないということから,本当に担保目的かどうかチェックした上で登記をさせるかという制度は,どのみち限界があるということで,そうなりますと問題は,登記の申請のための手続といいますか,書類,例えば登記原因の書面を出すときに,債権者名と債務者名を書きなさいというふうに欄があって,そこを埋めて担保の形で持ってくると,これは本当は担保かどうかは審査できないので登記できてしまうと。ただ,登記できたとしても,真正譲渡の場合には法的な効力は何もありませんよということだという理解だったのですけれども,それでいいかどうか。   そういう話でいきますと,今日のペーパーの3ページの甲案の(注)の②にかかっている指摘というのは,登記の申請手続という面から見るとすべて登記制度にかかってくる問題で,これを前提にせずに制度設計をすることはおよそあり得ないので,甲案だけに入っているのがどうもよく分からないところでありますけれども,要は登記の申請をするときにどういう書面を出させるのかということで,例えば売主・買主という書面でも登記はできるという制度にするのか,債権者・債務者という形をとるのか,あるいは被担保債権は書かせるのか書かせないのかとか,そのレベルでの手続としてどこまで書面を出させるかという議論として甲案・乙案が並んでいるのだというのは○○委員の説明でよく分かるのですけれども,今日はそういう話ではなくて,別のレベルで「対抗要件具備」とか「対抗力」という言葉が出てきますので,真正譲渡についても登記ができて,できると何か別の法的な効力があるという前提に立っておられるような印象を受けましたし,そういう説明も冒頭にありましたものですから,その点,法的な効力が全くありませんと,単に登記ができるだけで効力はないというふうに理解してよいか,もう一度確認させていただきます。 ● その点は,考え方として動産の譲渡の登記の制度を設けて,担保目的に限らず広く登記制度として活用します,ただ占有改定に優先するような効力,いわゆる登記優先ルールは譲渡担保目的の場合に限るのですと。真正譲渡の場合には,一般の譲渡の対抗要件として単に登記されたときに対抗力を備えるという限度でのものであって,先に占有改定があったものをひっくり返すというところまでの力はありません。単に登記としての対抗要件を備える効力の限度で認めますという,そういう考え方もあり得るわけで,そこも含めて一緒に説明しているからちょっと分かりにくかったのだと思うのですが。 ● 先ほどの質問にかかわります。そうしますと,占有改定とか引渡しとかはないけれども登記だけあるということもあり得るという前提なのか,それとも占有改定プラス登記なのか。登記だけあるという場合は当然あり得るという前提なのでしょうか。 ● これは先ほどの質問に出たことにも関係するのですが,現実的に考えれば,債務者が先に占有している場合に,譲渡担保を設定してわざわざ登記をして,しかしながら占有改定の合意がないということはほとんどあり得ないだろうと思います。しかし,それを法律上要件と考えるかどうかということはまた別の話で,法律上登記を対抗要件にしておきながら,占有改定も備えないと対抗力はないのですというと,登記プラス占有改定の事実を主張立証しなければいけない。しかも,占有改定という漠然としたものは,常識的にはあるだろうと思いますが,現実に訴訟で立証するとなれば,いついつ占有改定の合意をしたということまで主張立証しなければならないので,法律を作るときに登記を対抗要件にするときに,プラス占有改定も要件ですという条文は多分つくれないだろうと思うのですね。 ● 今のは,真正譲渡についても。 ● いや,譲渡担保についてということです。私が今言っているのは。 ● 真正譲渡の場合には,幾ら登記をしたからといって,占有改定をしたかどうかの立証が困難だから,真正譲渡について登記をしておくと引渡しを受けたということの立証に役に立つとか,立証面でのメリットはないという前提でよろしいわけですね。 ● 事務局案は,むしろあるのではないですか。真正譲渡について甲案をとると……。 ● ○○委員の説明と事務局の説明とでは若干食い違いがあるように思うものですから,そこをちょっと,しつこいのですが確認させていただいたと。 ● 事務局としては,甲案・乙案を議論していただければ結構といいましょうか,委員の方たちの意見を本当に虚心坦懐にお聞きしたいのです。   真正譲渡も入れるかどうか,それがいいのかどうか,どういう理由でいいのかもお聞きしたいのです。ここに書いてある理由は,事務局として積極的にこういう理由でという意味ではございませんで,この立場に立ったらこういうことも考え得るのかということで,議論していただくときに参考にしていただきたいという観点から書かせていただいておりますけれども,こういう理由で自分はとらないというのであれば,別の理由をおっしゃっていただければいいのですが。 ● 基本的に対抗要件として登記を考える場合には,その登記がされれば対抗要件を備えたと判断できるようなものでないと,制度として効率的でないので,そういう登記があるのが引渡しの態様がどんな場合に現実に意味があるのかという判断はあると思いますが,法律上対抗要件として登記を作るのであれば,それはもう登記を主張立証するだけで対抗要件を備えたと扱えるような制度にする必要があるのではないかとは思っていますけれども。 ● おっしゃったことには別に異論はないのですけれども,ここで問題にしているのは,真正譲渡まで含めるか含めないかという形で甲案・乙案が出ていて,そこが違いがあるようだと。真正譲渡まで含めると,その真正譲渡については○○委員がおっしゃるような効果があるかというと,対抗要件ではないわけですから,それはないということですね。   つまり,対抗要件で実体法上けりをつけるという制度になった場合には,それだけ立証すればいいというのは実体法上の要件としてそれが立つからであって,真正譲渡についてはそういうことはないと。おっしゃることは,担保目的譲渡の場合に限った話で,ここでの話とは違うと。   それから,○○幹事のおっしゃる甲案・乙案について私が申し上げたかったのは,要するに問題設定の前提として,どういう前提で問題を立てられているかということで,その前提が仮に適切でないとすると,甲案・乙案どちらが賛成ですかという質問に対して,どちらですというふうに答えることは難しくなるので,その前提としてまずお聞きしたかったというのが私の趣旨であります。 ● この資料の書き方も必ずしも明確でないように思うのですが,考え方としては,真正譲渡も含めて,ともかく権利移転の原因を問わずに登記の対象にするとした場合に,先行する譲渡担保目的で占有改定があった場合に,なおかつ後ろで譲渡担保目的で登記があったときにそれをひっくり返せるという,非常に限定した意味での登記優先ルールですね,これの適用があるのは,正にそういう譲渡担保目的の登記に限られる,それははっきりしていると思います。   そのときに,真正譲渡についてはそのような効力は当然与えられないということもはっきりしているわけですが,ではその場合に,真正譲渡について登記制度の対象にしておいて,登記上何の効力もないという考え方も一つあり得ると思いますけれども,登記できるとした以上は,対抗力の付与という効果だけは認めようという考え方もあり得るのではないか。ですから真正譲渡についておよそ効力を認めないという考え方と,真正譲渡についてひっくり返すまでの効力は認めないけれども,要するに順位保全効としての対抗力付与の効果までは認められるという考え方の二つが成り立ち得るのではないかと。その点を明確に書いていないものですから,非常に分かりにくいのではないかと思いますが。 ● 幾つかの段階に分けていかなければいけないのですが,登記優先ルールについては占有改定をした譲渡担保と真正譲渡との間には適用にならない,これは事務局もそれが前提。つまり,占有改定による譲渡担保があって,その後真正譲渡があって,真正譲渡も占有改定だとしても,登記をすれば譲渡担保に勝てるという原則は真正譲渡との間には適用しない。   そうなると,先ほどのように譲渡担保については占有取得の態様のいかんを問わず,登記をすれば先行する隠れた譲渡担保に優先できるという制度にする以上は,すべての譲渡担保は登記できるようにしなければいけない。これは当然ですね。ですから,乙案は,最低限とらなければいけないということですね。   それに加えて,譲渡担保以外の,例えば真正譲渡であっても登記をできるようにしてやるかどうかというのが一つの問題で,そして仮に真正譲渡について登記がされたときに,それはただ登記はされているけれども,実体法上の効力は何もありませんという登記にするのか,登記制度をわざわざつくって登記させてやった以上は,対抗力ぐらい与えてやらなければいけないというので,対抗力があるというふうにすべきかと。   この配布資料の甲案というのは,そのうちの対抗力があるという前提で書かれているけれども,選択肢としては対抗力がない,対抗力は占有改定なりその他の引渡しで満たしてくださいと,こういう行き方もあり得ますよと,こういうことですね。 ● そうしますと,例えば倉庫に預けてあるものを指図による占有移転で担保に設定しましたと。先の方は占有移転だけしたけれども,後の方はプラス登記をしたとか,先の方は登記だけあるけれども,その後指図による占有移転をしたとか,そういう場合には,先ほどから問題になっている登記の対抗力なるものはどう働くことになるのかということを,前回でのここでの議論を前提に御説明していただきたいと思います。 ● ちょっと趣旨がよく分からないのですけれども。   登記をすることによってまず対抗力が発生する,そして担保目的のときは先ほどの登記優先型のイメージの右側の担保目的譲渡ですので登記優先ルールの適用になるというふうに考えております。 ● 占有改定のときは,現在の判例の理屈でいえば譲渡担保の契約をして,占有がそのままだったら占有改定であったものとみなすわけですから,占有改定は常に認定される。それに登記をしたときに,登記に対抗力があるかどうかというのは,訴訟になったときに,登記をしていますと言うだけで対抗要件を満たしたものというふうに扱ってもらえるかどうかというのが一つですね。   もう一つは,今の○○幹事がおっしゃられた例で,むしろ指図による占有移転のケースの方が厄介なのかもしれない。そういうものについても登記をすれば対抗力があるといったときに,先行する譲渡は登記だけで指図による占有移転はしていない,それで後行する譲渡が指図による占有移転をした,その後行者に登記だけした人が勝てるという原則をここで導入するのかどうかいうことの方が顕著に対立するのではないかと思うのですけれども。 ● それは,導入しないということは……。 ● 甲案のように真正譲渡でも登記ができるというふうにしてあって,その譲渡に伴う占有移転の形態は何でも構わないというふうになると,それは登記ができて,しかも登記に対抗力があるというと今のような問題が起きる。 ● そうしますと,占有改定の場合は実際上は登記をすれば占有改定もあるというふうに言っていいので問題ないわけですけれども,今のケースで,例えば倉庫業者から見ると登記があるかどうか分からない,初めて譲渡担保権が設定されたと思ったところがその前に登記がなされていたという場合には,先の登記をした方が勝ってしまうわけですか。   そういうことは困るので,指図による占有移転の場合には適用除外をしようという議論を前回したように思うのですけれども。私も前に貿易金融のEDI関係に関与したことがございまして,そういうルールが入ってしまいますと非常に問題がありますので,登記をすれば対抗力があるというのは,少なくとも占有改定の場合はいいのかもしれませんけれども,他の占有態様の場合について同じくそういうルールを入れていいのかというのは,根本的に検討しなければいけない問題ではないかと私は考えます。 ● それが,この資料の4ページのアステリスクで,占有代理型の場合は除外すべきかどうかというのが出てくる。これが出てくるということは,逆に言えば甲案は文字通りの対抗力がある登記というのを前提にするから,だから4ページのアステリスクの議論をしなければいけないことになる。そういうつながりではないかというふうに思います。 ● 議事進行上の提案なんですが,今日試案の骨格に向けての議論をしなければいけないと思いますので。   確かに資料自体は甲案の意味理解に文章のあいまいなところがございますけれども,先ほどの○○委員の理解でよろしいのだと思うのです。登記ができて,かつ登記をした場合には対抗力が備えられるという意味で甲案をお書きになっている趣旨だと私も理解いたします。   その前提で,オーソドックスな場合について甲案・乙案の採否を議論した上で,仮にそこで一定の結論が得られたとき,その前提で,4ページ目の下のところにある,○○幹事御指摘になった実務上やや限局された場面についての障害があるのかないのかというところを御議論していただくという順序が効率的かなというふうに考えます。 ● 乙案までつぶされるとどうにもならないわけですから,甲案に拡張するかどうかということと,それに付随して今出ていた問題で,対抗力のない形での登記があってもいいのではないかという御議論もあるかもしれませんが,その辺の御意見をいただきたいと思います。 ● 私は,今の点については割と単純な意見でありまして,先ほど申し上げたように私は登記をいわゆる対抗要件としてとらえておりますので,その画一的処理というメリットを維持したいというか,登記を使うのだったらそれを持った制度にしたいと。   そうすると,真正譲渡であっても登記できるか,真正譲渡であっても登記させるかという議論は,私の前提からするといささか疑問でありまして,さっきも発言しましたが目的によって分けるというのは必ずしも画一的処理になじまない要素を入れてくることになるわけですし,それに加えて,登記官は担保目的譲渡かどうかのチェックというのはできるのですか。この前発言したときも,それがどういうふうにやるのか,標準というか基準を示していただきたいということを申し上げたと思うのですが,今回の資料にそういう基準がなかったものですから,その点を確認したい。   私は,その両者から--両者からというのは,画一的的処理という問題と,実際の登記官のチェックの問題とで,私個人はどうチェックするのか分からなかったこともありまして,甲と乙といえば甲案の方でいくべきだろうと。   甲案のようにいった場合,対抗要件で考えますと,今の御議論にもあったところですけれども,何らかの対抗力は当然出てくるということで,その対抗力の中身を,先行の占有改定をひっくり返せるかどうかとか,担保目的のときにはそういう効果まであるけれども,真正譲渡のときは順位保全効しかないとか,そういう議論を次の段階でするということになるのであって,登記という制度を入れつつ,真正譲渡のときには登記しても何もなりませんという話は,私はないだろうというふうに,非常に単純な切り方かもしれませんが思っております。 ● 甲案のような形をとるのは,一つは担保目的以外のものだって登記の制度がある以上使いたいという,非常に積極的な理由づけが一方であると同時に,他方で担保目的と評価されるかどうか分からない微妙なケースはとりあえず登記できるようにしておいてもらわないと不安でしようがないという,その両面があるのかもしれません。   その辺のところで,実務界の側でどんなお考えをお持ちなのか聞かせていただければと思います。 ● 実務の方の御意見をお聞きしたいのですが,今の○○委員のお話はよく分かるのですが,ただ甲案をとりますと,全く真正譲渡としか考えられないものについても,登記をしておかないと不安でしようがないというような事態がつくり出されるようだとちょっと問題かなと思うので,実務ではその辺,どういうふうに受けとめられるのかをお聞きできればと思います。 ● 本来は,今,実務の方がお答えになる場面なんでしょうけれども,議論を○○幹事が整理をしてくださったのですが,それでもちょっと分かりにくいところがまだありまして……。   と申しますのは,休憩前にそもそもどういうふうな制度の枠組みにするのかというので,大きく二つの意見があったのだと思うのですね。一つは,占有改定というものが見えない,可視性がないということから,それを弱めよう,一定の人に対しては優先権を主張できないという形で弱めると,占有改定を下げるという形で入れるというもの。もう一つは,登記をしているとプラスアルファの効力が一定の場合に発生するというように,登記をプラスのものとして考える。占有改定を今下げるというのは議論の流れとしては結構難しいので,登記をプラスする要素として考えるという話だったと思うのです。   ところが,この部会資料の登記優先型の最初のポツもそうでございますし,今の議論もそうなんですけれども,登記をもう一つの対抗要件として考え,かつそれについては今までの対抗要件よりもプラスアルファの効力を一定の場合に考えるという話ですよね。けど,本当に最後のものだけが選択肢なんですか。   つまり,私は本当は学者としては占有改定を弱めるという形で議論をした方が筋はいいというふうに思っているのですが,ただ議論の流れといたしましては,占有改定というのも大切だ,占有改定を弱めるのではなくて,より安定した動産担保方法をやりたいと。今までが悪いと--私は悪いと思っているのですが--悪いとは言わないで,今までも悪くないのだけれども,より安定した形にしたい。だから占有改定を弱めるというのは難しくて,登記をしていることによってプラスの効力が発生するというふうにした方がいいというのは,まあそれは仕方がないかなという気もするのですけれども,それは対抗要件があってプラスなのか,もう一つの対抗要件なのかというのはよく分からないのですが。   というのは,1ページの,先ほど休憩前に議論しました現実の引渡し,簡易の引渡し,また指図による占有移転がされた担保目的譲渡を適用除外とする必要があるかという話で,文章はよく分からないと私申しましたけれども,これはBがやった場合ですというふうなことをお答えいただいたわけですが,Bがやった場合というのは,Bは現実の引渡しを受けて登記をしている,Bは簡易の引渡しを受けて登記をしている,Bは指図による占有移転を受けて登記をしているというふうに,今までの対抗要件というもののワン・オブ・ゼムを備えた上に別種の登記をしているということで論じたわけですね。   さて,甲案・乙案というときに,本当に別種の,今までにプラスした独立の対抗要件であるというふうな選択ないしは前提のもとに甲案・乙案の議論をすべきなんですか。また,それしか選択肢は本当にないのでしょうか。 ● 両様ありです,それは。両方あり得る。 ● ○○委員がおっしゃったように両様あり得ると思うのですが,要するにこの図を余り信じないでいただきたいと思うのは,Bのところに,今,○○幹事がおっしゃったように占有改定をして登記をした,現実の引渡しをして登記をしたというのがありますけれども,一つ足りないのは,何もしないけれども登記をしたというのがあるのが恐らく事務局原案なんだと思うのです。そこが違うというお考えがあるいは○○幹事のようにおありかもしれないけれども,恐らくお出しになっている部会資料の文章はそういう意味なんで,この図はそこのところはいわば省略して書かれているのだと私は思っております。 ● それでも結構なんですが,そうすると別にまた休憩前に戻るわけではないのですが,検討すべき事項2というのは問題が立たないですよね。登記の効力は常に認められるかという問題の立て方になるはずであって……。そうなんですかね。   この補足説明資料というのを信じ切っているがためにそういう質問をしたわけではなくて,混乱の発端というのは,登記というのをプラスアルファのものとしてとらえなくて,完全に独立のものとしてとらえていることにあるのかなという気がするものですから,私のプラスアルファのものとするという話がおかしいのならば,ちょっと蒙を開いていただければ有り難いと思いますので,発言をさせていただいた次第です。 ● 考え方としては双方あり得るのでしょうが,基本的に対抗要件として登記を考えるときに,登記をすれば対抗要件を満たしたという効果を与えたいというのが基本的な考え方ですから,登記さえ主張立証すれば対抗要件は備えると。その限りでいえば,独立の対抗要件具備手段として考えるというのが出発点。   ただその場合,現実の引渡しによる対抗要件具備の方法も併存しているものですから,それが併存したときに登記にどの程度の効果を与えるのか,あるいはそういうものを具備したときに登記を認める必要があるのかということもあるので,ここで2のような登記優先ルールを適用するかどうかという,要するに現実の引渡しのようなかなり強力な対抗要件具備手段があるときに,そういったものを持っている者にもなお先の占有改定をひっくり返すというような登記の効力を与える必要があるかという,そういう問題の出発点にはなっていますが,先ほど申し上げたように,現実的な問題としては,通常はそういう場合は登記はされない。   ただ,訴訟の場面でいいますと,登記で完結していればもう登記だけでいいわけですが,こういうものがある場合は別だと言ってしまいますと,少なくとも抗弁の形でそれが出てくる可能性があるので,そういうものについてどうするかを決めておかないと,訴訟の場での決着が非常につけにくくなるので,こういう問題提起をして決めていただきたい,こういうことを申し上げているわけです。   どちらかというと,積極的に,現実の引渡しあるいは指図による占有移転をやった人に登記を利用させてメリットを与えようという発想よりも,譲渡担保目的で対抗要件として登記がありますといったときに,なおかつ,ほかの占有移転の引渡しの態様を審査する必要があるかどうかという,出発点はそういうことなのです。それを突き詰めていけば,ここに言ったように適用除外するのかしないのかということを決めていただければ,適用除外にしないといえば登記だけで決まりますし,いや,適用除外にするのだといえば,その主張があれば判断ざるを得なくなる,そういうことだと思うのですが。 ● 今の御議論を伺っていますと,先ほど申し上げたことですけれども,登記を独立の対抗要件として引渡しと並ぶものとするというのが果たしてよいのかどうかという点について,疑義が表明されているのだと思います。登記を対抗要件とするという趣旨が今まではっきりしていなかったのは確かだと思いますけれども,占有改定プラス登記とか,指図による占有移転プラス登記というのはどうかという議論はあっても,そういう引渡しは一切ないけれども登記だけした場合はどうかという議論は,明示的にはしてこなかったのだと思います。   そういうものを入れていく必要があるかどうかというのは,休憩前の議論とかかわっているわけですけれども,その話と,形式的な審査主義であるから,プラスであったとしても登記官の前に持ってこられたときには登記ができてしまうというここでの話は,やはり切り離して議論しないと混乱する可能性がありますので。その前提がもやもやしたまま,切り離したところだけ議論していると,またその切り離した議論が一人歩きをして,何でも登記をすれば独立の対抗要件で対抗力まで付与されてしまうということが前提であるかのように受けとめられがちな印象を与える点を懸念するものですから,先ほどから申し上げている次第であります。 ● 本日の配布資料の一番最初なんですけれども,この資料を成り立たせる考え方は一番最初の「法人が行う動産に関する物権の譲渡について,引渡しに加えて,登記によっても対抗要件を備えることができるものとする」,これが原案の出発点なんです。ですから,第5の対抗要件としての登記というのがあって,その登記が更に付随的に占有改定に優先する効力を持つのが登記優先型で,第5の対抗要件で他の四つの引渡しと同列に並ぶというのが単純対抗要件型という,こういう仕組みで本日の資料はできていると。 ● そもそも引渡しを対抗要件にしているのは,単なる意思主義で,観念的な権利移転だけでは第三者へおよそ分からない,それを何らかの形で表示するということで,動産では登記が考えられないので,引渡しを対抗要件にしているわけですから,登記制度を設けて,その登記によって表示ができるということにすれば,それで第三者に対する対抗要件としては何ら問題はないのではないかと思うのですね。プラスして,更に引渡しというようなものまで要求する必要があるのかどうか。しかもその場合,ではいつの時点で対抗要件が備わったと考えるのかという問題も起きてしまうわけですので,やはり登記を対抗要件と考える以上は,登記のみで対抗要件充足した,登記の日によって充足の日が当然決まるわけですので,そう考えるということだと思いますね。 ● 甲案・乙案に私が立ちはだかって,機能をさせないようで申し訳ないのですけれども,○○委員がおっしゃるのはよく分かって,そういうふうにして一貫させれば,それはそれで一つの制度としてできると思うのですが,そのように考えたときに,担保目的のときに限って先行する占有改定を後発的な登記具備者が否定することができるようになるということの正当化根拠というのは,あるのでしょうか。   つまり,登記というのは別個の対抗要件である,今までの意思主義をクリアする--意思主義だけではいかんからということで非常に簡明化された引渡しを一応要求しておくというふうなものと違って,登記制度というのができたのだから,それは立派な対抗要件であるということになりますと,それが常に勝ちますというのは何となく分かるのですけれども,担保対担保のときだけ登記が勝ちますというのが制度設計であって,その辺に押さえておかなければまずいだろうなという気も私もいたします。   そうなると,この登記制度というのは,実は○○委員がおっしゃったような話ではなくて,債権者,担保権者間の優劣を確定するための一つの基準として用いるというふうなものであって,そうなると,引渡しという現行法上の対抗要件とは,ある意味では独立の流れにあるものなのではないかというような気がするのですが,そんなことはないのですかね。 ● そういう意味でいえば,正に一番必要性が高いのは,おっしゃるように譲渡担保権者と譲渡担保権者との間だろうと思うのです。登記制度を設けるときに,そこに限定する正当化はというのですが,同じ対抗要件制度といっても引渡しと登記制度ではコストが違う。国の制度として設けるという意味の国の負担もありますし,利用者の負担もあります。使いたくなければ使わなくてもいいとはいっても,登記制度を設けるということは,ある意味でどうしても実際上利用を強いられる面がありますので,その適用対象をどうするかということは,現在のコストが比較的低廉についている引渡しによる対抗力の具備という制度が十分機能している部分についてまで,新しい制度を設ける必要が果たしてあるのかということは当然あるだろうと思います。   また,国の制度として設ける以上は,国の制度としての費用負担もありますので,そういう観点から考えれば,やはり現在の対抗力の具備の問題が一番大きいのは,占有改定による譲渡担保の部分ですから,そういう意味でそこに限定するということは十分考えられるだろうと。やはりそういう必要性の高い部分について考えていく,これは国にとっても担保制度を利用する国民にとっても,そういう考え方は十分あり得ると思っています。 ● しかし,その問題は二つに分けて考えなければいけないのであって,つまり占有改定によって譲渡担保を設定しているが,公示が不十分であるという,最初にやって登記をしていなかった人をどこまで保護すべきか,この人の権利をどういった場面に否定すべきなのかという話と,そのときに見えない形で行われているのは問題であるから,ある程度否定しようということになりますと,後ろのものが譲渡担保のときだけ否定するという論理にはならないはずであって,後ろのものがある種の強い,きちんとした形式を整えていれば,否定されるということになるのではないでしょうか。   今度,後ろの方の譲渡担保権者,あるいは登記をした譲渡担保権者を強めるというか,少なくとも登記に誘導していくのは,そういうふうな見えない形になってしまっている譲渡担保の公示ではなくて,なるべくそれを可視化するために,その部分を登記に誘導していくことが今回大切なのであるという立場に立ちますと,今度は真正譲渡の場合に,それではなぜ独立の対抗要件としての価値があるのか,ないしは可視化することによってプラスの効力を与えるというのならば,独立の対抗要件として観念しなくてもいいのではないかというふうな問題が出てくるような気がして……。   私も頭の中が十分整理されていないのですが,占有改定による譲渡担保という際に,二つあって,登記されていないそれを弱めようという話と,登記されているそれを強めようというのがあるわけですね。何か,必ずしも両方を説明できていない。そして,その対決の場面だけに登記が意味があるということが十分に説明し切れないのではないかという気がするのですが。 ● 何か同じことの繰り返しみたいなんですが,ただこういうふうには理解できないのでしょうか。   要するに,今までは占有改定とか現実の引渡しとかいう対抗要件があったと,その間には特に優劣というのはなかったわけですね。しかし,占有改定との関係では,登記というものにより優先的な対抗要件を与えようと。ただ,その順位をつけるということについては,担保目的の譲渡の場合だけにしておこうということだけだろうと思うのですね。   それで,真正譲渡については,これは受理要件としては真正譲渡の場合にも登記を認めざるを得ないと思うのですが,それを登記した場合に,何も意味を持たないかというと,これは登記をする以上,債務者の承諾書なり債務者の共同申請が原則ですので,実質的には占有改定よりも強い両当事者の関与があると思うのですね,ですからそういう実態を踏まえて登記も一つのほかの引渡しの種類と同じような対抗要件と考えると。そういうふうに頭を整理しちゃったのですが,それでいいような気もするのですが,いかがでしょうか。 ● 言葉を選ばないで言うと,結論をおっしゃっただけなのではないかという気がするのですが。それがどう論理的に正当化されるのかということなのではないかと思うのですが。 ● 整理していただいたとおりではないかと思うのですが,登記申請の場面で担保目的に限定することがおよそ不可能なのかということは,それはそういうことはないので,登記原因を書かせて,どの程度まで審査するかという問題はいろいろありますが,こういう場合に限った登記にしますということは十分あり得る。もちろん,登記官の審査というのは形式審査ですから,当事者が合意してうそをついていれば見分けられないというのは,常にどんな登記でもあり得る話ですので,そこは別に登記原因についてそういうものを要件にしますということを考えれば,それに見合った審査の仕方は当然あり得るという話ですので,およそ区別ができないだろうから全部受けざるを得ないということはないと思います。 ● ちようど,今,登記官の形式的審査についてお話がありましたので,現在,債権譲渡登記でも同様の制度がございますので,それについての現在の商事課の取扱いだけ御紹介させていただきたいと思います。   要は,登記官は形式的な審査しかできないわけですが,申請書に何を書かせるかという問題と,添付書面として何を要求するか,登記原因証書として譲渡担保契約書まで要求するかどうかという問題になろうかと思います。現在の債権譲渡登記制度では,申請書の方には質権設定の登記であれば質権設定者の名前と質権者の名前を書いて,また被担保債権の額というものも書かせるというふうに,債権譲渡特例法で書いてあります。ただし,添付書面については,不動産登記とは異なりまして,特段の登記原因証書までは要求していないということですので,結局登記申請書に質権設定目的であるというふうに書けば,そしてそれに反するような特段の事情がうかがわれない限りは,そのまま登記を受け付けるという仕組みになっております。   ですので,今回の部会資料の3ページの甲案・乙案につきましても,今,○○委員の方から申し上げましたとおり,論理的に甲案という真正譲渡,担保目的譲渡,いずれも登記せざるを得ないというわけではなくて,乙案のようにしたといたしましても,申請書の方に担保目的である旨,また被担保債権を書かせるなどして,登記原因証書は付さないというふうな選択肢も十分あり得るかというふうに考えております。   ただ,そうしますと当事者の方が真正譲渡であるのにそれを譲渡担保目的だと言ってきた場合には,登記官は当事者にだまされて受け付けざるを得ませんが,そのときは無効の登記であるというふうな話になるでしょうし,現在の債権譲渡特例法の運用においては,真正の譲渡と担保目的の譲渡でこれを悪用する例というのは聞いたことがないので,それほどの弊害は出ていないのではないかというふうに思われます。   他方,不動産登記のように登記原因証書を要求したといたしましても,その原因証書を当事者間が適宜つくれば,登記官の形式的審査は越えてしまいますので,どれほどの効力があるかというのは,程度問題とも言えるかもしれません。仮にそのような登記原因証書を要求するということにするとすれば,当事者の利便性の点もまた考慮しなければならないと思いますし,恐らく事務当局の方は,債権譲渡登記並びの制度というのをお考えになっているのではなかろうかというふうに考えております。 ● そういう意味では,3ページの②でありますように,「登記官が担保目的であることを実質的にチェックすることが困難である」というのは,なかなか読み方が微妙で,本当の実質審査は登記官はやらないことになっていますし,書面審査の枠内では,形式さえ整えば,担保目的か担保目的でないか振り分けは可能であるということになりますかね。   甲案をとるかどうかということについて,この段階では両論あったということで全く問題ないと思うのですけれども,実際上のニーズの側が出てこないので,必要もないのにわざわざ国費をかけて制度をつくらなくてもいいと思うのですけれども,この議論が始まった当初には,できれば証券化なんかにも使いたいという御議論もあったところですけれども,そういうのは別にもう構わないと,必要の範囲内で登記ができれば,それ以上に余計なことはしなくてもいいというのが一つの考え方だし,できるものなら全部やらせて,余り細かい区別をしなくていいのではないかという御意見も先ほどあったところですけれども,実務界,それからあるいは理論的にもこっちでなければいけないというふうな御意見もまた出していただければと思いますが,いかがでしょうか。 ● 証券化の関係につきまして,そういう利用の仕方もあるのではないかという考え方があるのですが,実際に聞いてみましても,それほどそういうニーズは出てこなかったというのが実情でございます。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 担保を提供する側からすると,あくまで担保目的譲渡に限定をしていただかないと,真正譲渡等というふうな擬装をされて,それを強要されるようなこともないとは言えないわけでございます。したがって,あくまで登記は共同申請で,自ら担保と認めて申請をする,それだけでよいのではないかと。なおそれ以上に登記の制度が可能とすると,当然そういうふうな雪崩を打つ可能性がありまして,それがよい意味でも悪い意味でも混乱するわけです。あくまで担保目的に限定されて,加えて言うと担保目的の譲渡であるかの真正性まで登記所がチェックされる必要はないわけですから,そういう意味では乙案で十分,登記所の方も対応可能ではないかと。   あと,それをいわばむしろ否定するかどうかというと,共同申請主義でやって,それで担保目的であるというふうに自認するわけですから,かえって何が問題なのかというふうに思うぐらいです。したがって,真正譲渡まで含めて登記の対象にしなければならないというのは,本当にそういう需要がどこまで出てくるのか,むしろ提供する側からすると非常に疑問がございまして,もちろん買い受ける側からすると必要なのかもしれませんが,それでは転々流通して売買を重ねる度にそういうことをするというふうなことにもなりかねませんし,どんでもないコストがかかりそうですね。したがって,どうかなというふうには率直に思いますけれども。 ● この登記の現場で真正譲渡とか譲渡担保が区別が難しいから,真正譲渡も登記できるというのは少し飛躍した言い方ではないかというふうに思います。   といいますのは,真正譲渡で登記できるというふうにした途端,では真正譲渡を登記したときの効力,さっき○○委員もおっしゃいましたが,どこまであるのかというのが必ず問題になってくるかと思います。対象となる動産についても,たしか個別動産ということでしか限定がございませんから,要は何でも登記できるということになってまいります。そうすると,登記しなければ対抗できないのではないかという誤解を招くおそれもありますし,あと,今のところ譲渡担保で先後とか対抗要件の問題が議論されていますけれども,今後真正譲渡を登記できるという前提で進めた場合に,二重譲渡とかそういう問題も当然出てくるのではないか,そうすると先行して占有改定だけによる登記を備えた真正譲渡と,後行の現実の引渡しを備えた真正譲渡のどちらが優先するのかといった,非常に難しい問題が出てまいります。そうすると,実務界としては,一々すべての動産取引について登記の有無を調査しないと善意取得が認められないということになると,幾ら何でもこの登記制度としては行き過ぎではないかというふうに考えております。   何度か各社の御意見,いろいろ討論しましたけれども,当初は,登記制度を設ける以上はある程度一定の効力がないと無意味であるという意見が半分以上あったのですけれども,実際にその登記した場合の効力がどこまで認められるのかというところの議論になると,だんだん議論していく中で分からなくなってまいりまして,それがどちらかといいますと単純対抗要件型に傾いていっている大きな理由かなというふうに思っております。 ● 私も,この真正譲渡につきましては,特に現実の引渡しがあったり指図による引渡しがあったりした場合に,登記の必要性はほとんどないのだろうと思うのですが,ただ真正譲渡と担保目的による譲渡というのはなかなか分からないわけでありまして,例えばリースバックがあった場合に,これは担保と見るのか真正譲渡と見るのか。だから,絶対にいわゆる真正譲渡がだめだというふうなことになってきますと,非常に迷うわけですね。だから,どちらでも登記できるような格好にしておいて,ここに書いてありますように利害関係者が現れたときの予告機能といいますか,そこら辺の機能も果たしてもらえれば,それなりの効果はあるのだろうというふうには思いますけれども。 ● そういう意味では,登記官にとって難しいというよりも,当事者にとって判断が難しいというのがここでの問題の核心なんだろうというふうに思うのです。   この点は,両方の意見があったということでとりあえず次に行かせていただいてよろしいですか。これは,当然その後の登記優先型なのか単純対抗要件型なのかということとも密接に絡んでくるとも思うのですけれども。 ● 一言。今の○○委員の御発言に関してですが,この甲案をとった場合,登記は対抗要件の一つになるだけですので,先に占有改定による対抗要件が備わっていたということが立証されれば,この登記によるものは負けるはずですね。ただ登記を持っているということで,不当な圧力をかけてくる人がいるのではないかとか,多分その辺の問題があるのだろうと思いますので,できれば実務の方でもう一度見ていただいた方がいいのではないかなというふうに思うのです。 ● 分かりました。そういう意味でも,また中間試案になると各界の御意見を伺うということになると思いますので,そこで御意見をいただけるかと。   実際上占有改定をして長期間そのままの状態でいるというのは,譲渡担保以外に真正譲渡でそういう必要がある場合というのは,そう考えられないと思うのですけれども,実際にこういうニーズがある,あるいは実際にこういう不都合があるというふうなことをまた御意見を集めるようなことでよろしゅうございますか。   では,次のテーマに移らさせていただきます。   先ほど,4ページのアステリスクについては○○幹事から御指摘のあったところですけれども,何か特に補充することがなければ,次の1ページに戻って,(検討すべき事項)の1の,「担保目的譲渡の登記がされている場合には,その後の担保目的譲渡の譲受人は善意取得の保護を受けないものとするとの規定を設けるべきか」というテーマに移りたいと思うのですが,○○幹事,よろしゅうございますか。 ● 特に補充するわけではないのですが,先ほど○○委員が言われたことにも関係するのですが,○○委員が不当な圧力をかける可能性があるというふうにおっしゃったときというのは,恐らく製造番号等で動産が特定されて登記がされている,そうするとそれがほかのところに行ったって,ほら,おまえ,実はこの製造番号が登記されてこっちに行っているのだぞというふうなことを言って,それをなかなか消さないということになると,効力がないものとしても実際上は嫌な感じの登記になってしまいますよね。その前提というのは恐らく場所的な特定がなくても,製造番号等を特定すれば登記が可能であるというふうな前提をとった場合の話だと思うのです。   この4ページのアステリスクの問題も,恐らく同じようなところがありまして,実際の登記制度を作る際に,倉庫に預けているというふうなものについて,本当に特定して登記をすることができるのか,それとも譲渡人に現実の占有がないとできないのか。それは現実の引渡しのときに登記制度というものを利用できるようにするのかという話とも密接に関係しているのですが,どうもどういった登記制度というものができて,どういった形で動産が特定されるのかということに対しては,私もイメージがわかなくて,恐らくそれをどんなふうにするのかということでかなり変わっていくような気がするのです。そうすると,中間試案とかでパブリックコメントで出すというときも,全く登記制度のイメージなく出してしまうと,答えにくいような問題というのが幾つかできてくるのではないか。早いうちに登記制度というものにおける,とりわけ動産の特定についてのイメージというのを固めておく必要があるのではないかというのを,関連して一言だけ,言わせていただきます。 ● 今,○○委員が注意を喚起していただいた4ページの下から三つ目のアステリスクでありますが,私は全体について意見を申し述べることはできないのですけれども,○○幹事の考えに聞くべき点があるのではないかと思います。   二つ申し上げたいのですが,一つは,この表現と1ページの2のところの指図による占有移転がされた担保目的譲渡を登記優先ルールの適用除外とする必要があるかというのとの関係が,こちらは登記優先ルールの問題で,4ページは登記をすべき譲渡という点は分かるのですが,2の方も恐らく指図による占有移転がされたときの担保目的譲渡ではなくて,譲渡人の占有代理によって占有している動産の担保目的譲渡を登記優先ルールの適用除外にするかどうかという問題の立て方になるのではないかなと思います。それが1点。   それから第2点ですが,○○幹事の意見に聞くべき点があるというのは,占有代理人である第三者が持っているわけで,そうするとこういう新しい考え方,登記によって少なくとも対抗力を認めるだけでも,その占有代理人である第三者がだれにそれを返すかという問題が,追加的に処理すべき問題として出てくるだろうと思います。すなわち,債権譲渡特例法で債務者に通知・承諾なしに第三者対抗要件が備わったというのを実現したのと同様の状態が生ずるだろうと思いますので,このような考え方をとるならば,そこについて手当てが不可欠であると。しかし,その手当てについて,今適切な案が思い浮かびませんので,そうであるとすると,この占有代理人によって占有している場合は除外して考えるというのが安全かなというように思います。 ● ほかに,よろしゅうございますか。 ● 4ページのところはどういうまとめになったかというのは,これは問題があるということで,まだオープンになっているというまとめでよろしいわけですね。   先ほどの甲案か乙案かという話は,私も乙案を基本に考えていって,債権譲渡特例法の実務と同じように債権者・債務者,それから被担保債権を書かせるかどうかと,添付書面は要らないという形で,当事者が書面をつくってくれば担保目的譲渡としてできますよと。リースバックその他の問題は,そこをどう工夫するかの問題ということでいいのだと思うのです。   それは占有改定の場合はそれでいいのですが,指図による占有移転の場合に登記ができてしまうということになりますと,前回は登記制度の対象外とするという話がそこまで及んでいなかったということのようですけれども,問題の質は同じことであって,保管している第三者が,知らないうちに登記をなされてしまって,それに何らかの効果が付与されると困るということで,前回は登記の対象外とするという議論だったのですけれども,それと同じことがここでも妥当するかと思いますので,それはそれとしてまだ議論していない問題として,今後更に詰めていただくということで,それが前の問題にもかかわりますので,再度全体を踏まえて議論を整理していただくというまとめだというふうに理解してよろしいわけですね。 ● 本日のところは,その限度ではないかと思うのですが,事務局はそれで……。 ● 大丈夫です。次回は中間試案のたたき台の検討の予定でございますけれども,若干時間を割いて,そこの点を検討していただくのも一案かなと思いますので。 ● それでは,1ページ目に戻りまして,1の善意取得関連の点ですけれども,これもどうしてこういう問題が起きてくるのかが今ひとつ理解し難いところがございますので,事務局から補足の説明をしていただいてから議論をしたいというふうに思います。 ● (検討すべき事項)の1について,補足して説明をさせていただきます。   このような問題提起をさせていただきました趣旨は,次のようなところにあります。   すなわち,登記優先型の制度設計のもとにおきまして,先行の担保目的譲渡について登記がされた後に,同一の物件について更に別の人に担保目的譲渡がされた場合に,後行の担保目的譲渡については完全な無権利者からの処分に当たるということになります。したがって,その譲受人が善意無過失で現実占有を取得したという場合には,民法192条の善意取得の適用が問題となります。   ところが,このような場面について後行の担保目的譲渡の譲受人による善意取得を肯定するということになるならば,先行の担保目的譲渡の譲受人は,登記を具備しているにもかかわらず,おくれて登場した担保目的譲渡によってその地位を覆されることになってしまいます。   そこで一つの考え方ですが,担保取引の効率性,安定性を高めるという観点からは,こういう場面については後行の担保目的譲渡の譲受人における善意取得を排除するということも考えられるわけです。こういう観点から,善意取得を排除する規律の要否という問題をここで御提起させていただきました。   規律の対象は,担保目的譲渡の譲受人に限定して,真正譲渡の譲受人を含めていない,こういうことで御検討いただきたいということであります。   ここで御検討をお願いしたいと申しますのは,まずこのように先行の担保目的譲渡について登記があった場合,後行の担保目的譲渡の善意取得が排除されるという解決が実質的な評価の問題として適当なのか,必要なのかという点があります。   それから,仮にそういう解決が実質的にも正当であるとしましても,善意取得を排除するというような明文規定を設けることについて,理論上の問題とか,あるいは実際上の弊害が生じないかどうか,その点についても御検討をお願いしたいというふうに考えております。   なお,つけ加えて申し上げますと,単純対抗要件型の制度設計においても,こういったことが同様に考えられるのかどうか,そこも御意見等いただければ幸いでございます。 ● この点につきまして,御自由に御意見をお出しいただければと思います。 ● 前提の質問ですけれども,こういう規定を設けないと善意取得があり得るという前提の善意取得は,どういう場合にあり得るか。登記がなされているけれども善意無過失であるというのはどういう場合にあり得るということを想定して,こういう検討をなされたのか教えていただきたいと思います。 ● どういう場合にあるかといいましょうか,善意取得の可能性がないのであれば,これは事実上ほっておいても善意取得はできないといいましょうか,事実上の推定が働くのかもしれませんが,それを法律上の推定に高めたって一向に構わないはずなので,ですから善意取得がどういう場合にあるかと言われても,ちょっと質問としては答えにくいのです。   基本的にはあり得ないわけではないと思いますが,普通譲渡担保で融資を受けようとするときには,ほかの人にも融資話を持ちかけている可能性がありますから,譲渡担保の設定を受けようとする人は調査しなければいけませんね。調査するときに登記を見ないでおいて,過失なしかというと,そうはいい難いと思います。○○幹事は多分そんなのは過失があるのは当たり前だろうとおっしゃるのだろうと思いますが,ただ融資を受けようとする者が登記事項証明書を見せろといわれてもいろいろな抗弁をして見せなかったとか,そういったこともあり得ないわけではない,そういったときには過失があると言い切ることもなかなか難しいときもあるのではないだろうか,そのときに過失の推定規定を置くということも,おかしくはないだろうと思いますけれども。   御質問に対する答えになっていないかもしれませんが。 ● 2点。先ほどの議論の説明の中で,登記をすれば調査を省略できるという御説明があったので,調査義務がない場合であるということを前提にこういう規定が必要だというふうに御説明になるかと思ったら,そうではなくて,調査はするのだと。私はそうあるべきだと思いますけれども,担保をとるときにはこれから公示システムがありますので,その公示を手掛かりに担保が入っているかどうか一定の調査をした上で,担保を設定しないと保護されないというルールが前提となる取引がここでは想定されていると思いますので,そうするとこういうルールがなくても当然そうなるのではないかと,何のために登記制度を入れたのかと。   ただ,先ほどの説明の中で,登記をすれば調査しなくても保護される,その分のコストを省ける場合があるのでということをおっしゃったので,その場合を想定したのであれば意味があるかと思いますけれども,そうでなければこれは要らないのではないかと。もしこういうのが要るのだということであれば,観念的な組合せではなくて,実際にこれがないと困った場合があるというのを幾つか例を挙げて説明できないと,説得力はないのではないかというのが1点であります。   それからもう1点は,推定規定を設けて問題がないかというと,例えば集合動産のどの範囲が担保になっているかということで争いがあるような場合がございますね。例えば,下級審が動物を集合譲渡担保でとった場合がありますけれども,それぞれのハムを作る動物の種類が違ったりしているのですが,一部が重なっている場合にどこまでかということが争いになったケースがありますけれども,例えばそういう場合に推定規定があると,今の範囲については及ぶのか,それとも担保目的であることに及ぶのか,何に推定が及ぶのかという点が難しい問題として出てくるかと思いますけれども,その点についてはどういう検討を行って,何について推定が働くというふうにお考えになったのかについて,追加的に教えていただきたいと思います。 ● 範囲については検討しておりません。かえって,どういう問題が起きるか,教えていただけると有り難いのですけれども。 ● つまり,置いてしまうとそういう問題についても推定が及ぶという見方ができてしまうということになると,そこは検討しないけれども,かえってまた強い効力を与え過ぎて,そこまで保護されないということでは困るという場合が出てくるのではないかと。そうすると,その意味ではブランクにしておいて,解釈に委ねた方が賢明ではないかということですけれども。あえて規定を置くのであれば,置くとするとどういうことが問題になるかという,様々な現実のバリエーションを想定して検討しないと,危険ではないかというふうに感じます。 ● どういう点が問題点になりましょうか。 ● 今,一つ挙げましたので,例えばそれを御検討いただければと思いますけれども。 ● ほかには何か,今,○○幹事の頭の中に思いついているものは。 ● 特に要らないのではないかと私は思うものですから,まず要らないのではないかというのと,置くことによって付随的に,本来カバーすべきでない部分についても推定を及ぼしてしまうことになる可能性があると。 ● ○○幹事の最初の質問で,私,この文章を読んだときにイメージしましたのは,特定物の担保目的の譲渡の場合を考えていて,それで最初に登記をしておいた,その後善意取得,つまり現実の引渡しを受けちゃったというような場合を考えたのですが,そういう場合ではないのですか。2番目ももちろん,担保目的の譲渡なんですけれどもね。   そういう場合に,善意取得をされちゃうと,最初に登記までとって担保にとっていた人が安心できなくなるということだと思ったのですが。 ● これは,特定物に限った制度ではないのですね,御提案は。 ● そうではないけれども,例えばこれがないと困る場合はどんな場合かというと,そういう場合を……。 ● しかしそれは,当然登記がなされていれば善意無過失とはいえないのではないでしょうか。 ● だから,それはそういうふうに言い切れるのかどうか。 ● これは,考え方としては,二重の譲渡担保で,登記制度が導入されていれば,例えば二人とも登記をしたって登記の順で優劣が決まるべきだというのが担保法の考え方なんですけれども,目的物が動産であると,後から出てきた人が善意無過失であるとひっくり返ってしまう,それではせっかく登記による予測可能性を高めた制度をつくっても意味がないですねと。そういう意味で,担保権者同士の争いはともかく登記の順番で決めましょうというものの裏づけをするための制度として考えられたと思うのですけれども,現実問題としては,譲渡担保の典型的なのは占有改定で,占有改定では即時取得できませんから,後行の占有改定が設定されただけでは善意取得にならないというのが一つ。   それからもう一つは,例えば工作機械,建設機械なんかの譲渡ですと,プロ同士の取引ですから,この業界では大体みんな所有権留保になっていることは分かっているはずだというふうなことで,善意無過失が認定されたケースというのは,少なくとも裁判例なんかではほとんどありませんよね。それと同じで,譲渡担保とるような人だったら譲渡担保は登記があるということは分かっているはずだから,基本的には登記を見ていなかった人はみんな過失だと,善意無過失で善意取得するケースなんていうのはほとんど想定できないのではないだろうかというのが現実ですよね。   でも,例外的に現実の引渡しを受けるようなケースだと負けてしまうけれども,それにもやはり勝たなければいけないというニーズが本当にあるのかどうかですね。   それからもう一つ,問題点としては,先ほど○○幹事がおっしゃられた問題点もありますけれども,既存の動産抵当制度とのバランスはどうなんだろうか。向こうは動産抵当でこっちは譲渡担保だから別だといえば別ですけれども,動産を対象とする抵当制度は,問題が起きないからかもしれませんけれども,こういうたぐいの規定は設けていませんし,個別取引で善意取得されちゃうことは,やむを得ないという態度でいるので,それとの関係はどうなのかというふうなことで,なお少し検討の余地はあるように思いますけれども。   ほかに何か,参考になる御意見をいただければと思います。 ● 度々で済みません。私,この考え方は多分規定を置いた方がいいのではないかと思うのです。それで,私の個人的な理解ですが,動産の譲渡担保の場合のいわゆる二重譲渡型の場合の善意取得の問題は,結局順位を入れ替えるためのものだと思うのですね。ですから,今度登記を優先するとなれば,これが優先的な地位を保持するという考え方で,結局善意取得はしない。   今までも,私は譲渡担保の場合は前の譲渡によって無権利者になる,だから192条で保護するというのではなくて,第二順位の善意の場合は前の順位を乗り越えて先にいくのだという仕組みだったと思うのです。だから,今度登記というのを優先する対抗要件にするということになれば,実質は対抗要件の問題だと思うのです。   ただ,今まで学説・判例は192条でやってきているので,多分これは入れた方がいいし,もう一つ心配なのは,ここのところは「その後の担保目的譲渡の譲受人」とありますが,善意取得で問題なのは質権取得者の場合があると思うのですね。ですから,ここでは担保目的譲渡の譲受人の中に質権取得者も含めて善意取得を排除するということが必要ではないかと思います。   ちょっともう一つ,つけ加えて言いますと,今の私の頭ではこれは二重譲渡型と考えていますので,いわゆる預かっているものとか借りているものを善意取得するという場合とは違いますので,考え方としては同じ所有者から担保目的譲渡あるいは質権設定を受けた者は善意取得しないという内容の規定を設けるべきではないかと思います。 ● ほかに御意見,いかがでしょうか。 ● 立場によって意見が違うとは思うのですけれども,この制度を中小企業の資金調達という面からとらえてみれば,当然のことながらこういう規定を設けないと,例えば占有改定でAというところに担保提供したと,倉庫業者に渡して,それを指図による占有移転でBというところにやった場合,善意取得されちゃうということだと,Aとしては安んじてお金を貸さないのかという気がしますので,これはやはり規定を設けるべきではないかと思います。 ● 動産譲渡担保融資を促進するという立場から,先行するもの,隠れた譲渡担保をひっくり返す力を与える,その裏側として,後行の善意取得を生じにくくするということで,入口・出口両方ふさいで強い効力を与えようと,これは分かるのです。そういう意味で,こうした善意取得阻止のために何らかの措置が講じられるということは非常に歓迎だと思うのですが,一方においてちょっと気になるのは,その善意取得を封じたいとというのは,譲渡担保目的に限らないわけでして,これは集合物譲渡担保で通常取引の認められた範囲内の取引は別ですけれども,本来許されない処分によって真正売買で売られてしまうという場合も,登記を見なかったのではないかという過失でもって即時取得を防ぎたいという要請は同じように働くはずだと思うのです。そうしますと,こういう担保目的の場合のみの推定規定というものを置くことによって,非常に中途半端な形になりはしまいかという懸念が今思いつきましたので……。 ● それを入れると,真正譲渡で買うときに一々登記を見なければいけないということになってしまいますよね。取引に与える影響はすごく大きくなるのだと思うのですけれども。   それと,担保目的の場合は,先ほどのようにそもそも基本的には物を債務者のところに置いたままにしておきますけれど,真正譲渡で買うときは,類型的には物を引き取ってしまうわけですので……。 ● この推定規定の範囲を広げるべきだという意見を申し上げているのではなくて,逆に,純粋な即時取得の要件に委ねるというのも一つの選択肢ではなかろうかと。どちらかというと,そちらの方が適切な意見かなと思うのですけれども。 ● 推定規定を設けないで,実務の解釈に委ねるというのですか。 ● はい,そうですね。というのも,一つの行き方ではなかろうかと。 ● 今,○○幹事がおっしゃったこと,ごもっともで,担保目的取引当事者間に登記簿照覧の取引慣行が形成されれば,悪意ないし重過失の事実上の推定が働くだろうという期待を持つことができるのでありますから,この規定を設けたときと設けないときの違いは,事実上の推定を動揺させるか,法律上の推定を覆すための本証たる反証を提出しなければならなくなるかの違いだけであるかもしれないのです。そういう意味では,○○幹事の御議論はよく分かると同時に,ただし民法の186条ないし188条で善意が推定されるという規律が法律の規定としてある以上は,規定に対しては規定を設けて排除しないと,法制的に説明が難しいという問題もひょっとしたらあるかもしれないので,さっきの事実上の推定,法律上の推定間の問題と,関係規定の適用のカバーする実際上の範囲との問題などを留意しながら,これも引き続き御検討いただくということになるのかなという気がしますけれども。 ● 中小企業金融の現場では,恐らく二重,三重の担保提供が行われるようなケースが多々あって,その中でやみくもに善意取得等の議論もなされる可能性も多分にありますので,そういう意味ではかような明文規定を置いていただいた方が大変分かりやすい。一言申し上げます。 ● 私は,解釈に委ねた方がいいのではないかというのは,今の○○幹事と○○幹事の意見とも共通しますけれども,やはりここで問題にしている対抗要件制度というのは不動産登記と違いまして非常に相対的な,ある意味では中途半端な制度を入れている。これはある種の取引慣行が醸成されることを前提にうまくいくという制度で,そういう要素を制度に組み入れるということが重要なので,そうしますと取引慣行が成り立てば,ほっておいても悪意重過失というふうに判断されるでしょうし,そういう前提がない場合についても法律上の推定を与えてしまうと問題があるのではないか,そういう御指摘だと思います。   それから,○○幹事の占有の推定効との関係というのは,これはまた先ほどの登記だけしたのか占有改定プラス登記をしたのかという議論にかかわってくるわけで,占有改定プラス登記をした場合には,占有それぞれあるわけですから,一方が占有だけある状態なのか,そのあたりの整理にかかわってくるので,やはり登記を独立してということを,そういう形でとらえていくと。どこにどういう影響が出てくるかという問題は,そういう観点で拾い上げて真剣に検討しないと,穴が出てくる可能性があるという気がいたします。 ● ほかに,御意見ございますか。   実務界からは,設けていただいた方が助かるという御意見でしたけれども,実際のいろいろな場面に対応するには192条の解釈に任せた方がいいのではないかという御意見もあったところですけれども。半々ぐらいですかね。 ● 私も,どちらという意見があるわけではないのですが,ちょっと気になったのは,○○幹事のおっしゃった真正売買の場合も調べなければならないとなると大変なのではなかろうかということだったのですけれども,これはどうなんでしょう,実務慣行が醸成されていけば,やはり真正売買の場合も,価値の大きな動産については見るべきだというのは,これはそういう社会になってもしょうがない,なるのが当然という理解でいるのですが。それは間違っていますでしょうか。 ● 私,先ほど○○幹事の趣旨を取り違えておりまして,この規定を広げるべきだというふうに受けとめたものですから,先ほどの回答は撤回いたします。 ● これも具体的な場面によって,○○幹事がおっしゃったように集合財産譲渡担保でこの登記が使われるとすると,通常の取引はみんな善意取得を待つまでもなく許容されるので,ある意味で通常ではない場合だけの問題だと。通常ではないのに善意取得する場合というのが,そんなにたくさん出てくるのだろうかというのがそもそもあり得るのと,システムとしては先ほどおっしゃられたように出口と入口をきちんとしておいた方が,制度利用者には信頼感があると,そういうところの兼ね合いで,絶対に入れると困るという意見もそれほどはないのですけれども,いま少し御検討を次回までに内部で詰めていただければと思います。   残り時間がほとんどなくなってきてしまったのですけれども,まだたくさん論点を残してしまっております。   5ページの既存の登記制度による登記,これはちょっと後回しにさせていただいてよろしいですか。   むしろ一番大きいのは,単純対抗要件型にするのか,あるいは登記優先型にするのかというのが根本的で,これも最終的には両案併記でも構わないということではあると思うのですけれども,単純対抗要件型にした場合の登記できる譲渡の範囲について,これも甲案・乙案という,動産に関する物権の譲渡すべてについて登記できるものにするという案と,担保目的譲渡のみを登記できる譲渡として真正譲渡をこれに含めないという,先ほどと同じ問題があるのですけれども,前提が登記優先ルールは適用しない,みんな同じ対抗要件だという前提でどうお考えになるか,少し御意見をいただければと思います。   前回は○○委員は,単純対抗要件型の方がいいのではないかという御提案もあったのですけれども,何か御意見ございませんか。 ● 繰り返しになってしまって,今までの議論を無にしてしまうようなことで申し訳ないのですけれども,やはり登記を優先して,どういう効力を持たせるかということを前提にすると,その適用除外の範囲をどのように設けるかというのを事細かに具体的に議論していかなければいけないというのは,これはもう必然だろうと思います。   ところが,一方で単純対抗要件だとしても,対抗要件の効果が全然ないということではなくて,少なくとも占有改定と比較した場合,先後だけははっきりするという効果はあるわけですから,それだけでも十分な効果はあるのではないかと。そうすると,そこからスタートすれば,これまで出てきたような問題点というのは,ほとんど議論するまでもなく片づいてしまうような気もいたします。   これを前提としますと,ここで書かれてある(検討すべき事項)の中で「登記できる譲渡」の範囲というのは,そもそもそんなに問題とはならないということも言えるかもしれませんが,制度の根本に立ち返ると,担保の目的で行う譲渡の前提でということですので,これもやはり先ほどと同様に,単純な対抗要件でありながら真正の譲渡についても登記できるということになると,そもそも意味がよく分からなくなってくるということになると思います。 ● ほかの御意見,いかがでしょうか。 ● 前回,単純対抗要件型もいいとは申していないのですけれども,捨て難いのではないかということを申し上げたのですけれども,今日はややそれを撤回するような形で意見を申し述べたいと思うのですが。   私は,前提としては,担保目的に限定することなく,真正譲渡も含めて動産の公示制度が明確化されるということに対するニーズが高いものというふうに理解しておりました。先ほど,実務界の委員の皆様からも御説明がありましたとおり,証券化等も含めて真正譲渡に対する公示のニーズというのはさほど高いものとは言えないという御紹介もありましたので,もしそうだとしますと,担保目的というある程度閉じた世界の中で,しかし効力として担保目的を果たせるような強いものを与えるという行き方が合理的なのではないかというふうに考えられますので,したがって前回の発言を多少修正させていただきたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか,登記優先型と単純対抗要件型と,どっちがいいかというふうな話が中心になっておりますけれども,その点,あるいはそれに関連するほかの論点でも。 ● とりあえず,実務の方がどうとらえるかということを別にして,制度設計という観点から申し上げれば,先ほど,○○委員の御発言があったのとは私は逆に思っておりまして,単純対抗要件型ならば真正譲渡でも登記したいならさせて構わないはずだと。つまり弱い効力のもので,それを限定なしに,適用除外なしに使うことを可能にする,これは○○幹事の御発言の前半の一つの制度設計としては,ニーズの強さや検証は必要なのですけれども,私はそれは成り立つ話ではないかと。   逆に,先ほどの登記優先型でありますと,私は対抗要件という制度の画一的処理ということでさっき申し上げましたけれども,お話を伺っておりますと,やはりある程度強い効力のあるものであると申請段階で何らかの原因証書等を出させて担保目的に限定するという方が,弊害というか副作用が少ないのかなという印象を持ちましたが,なお制度設計的にはシンプルに,適用除外なしにというのも考え方としてはこれありというふうに思いますので,自分の立場として申し上げます。 ● ほかの御意見,いかがでしょうか。 ● 冒頭申し上げたことの重ねての表明でございますが,あくまで法人の有する資産,特に流動資産等につきまして,これを担保に提供して資金調達するのであれば,それは本来なら公にすべきである,オープンに財務内容等も含めて開示をすべきであって,したがって単純対抗要件というのはむしろいかがなものかと。私自身は,登記優先でよろしいというふうに思っているところでございます。   繰り返して申し上げますが,加えて言えばこれまでの占有改定型の譲渡担保に関しては,後々トラブルが生じた場合に,作為的な形で後付けの契約書でひっくり返されるというようなことが多々起こっておりますので,そういった点からしても,むしろ登記を導入する,かつそれを優先する,そういったトラブルを未然に防ぐというふうな効用も大いにあり得るというふうに思っております。 ● ほかに御意見ないようでしたら,先ほど飛ばしました課題,5ページの4,「既存の登記制度による登記を経た担保権者と占有改定により対抗要件を備えた担保目的譲渡の譲受人との関係について」という項目でございますけれども,ここについて何か御意見がございましたら……。 ● この問題について,5ページの真ん中辺の「両制度間においてバランスを欠くという問題はないか」ということなんですが,私の理解では,工場抵当法の場合ですと機械あるいは設備等は工場に附属しているから及ぶものであるのに対して,今回考えられているのは動産そのものを担保にとるものですので,今回どういう制度をとるかということと工場抵当の方がどうなるかというのは一応別の問題というふうに考えていいと思います。   ただ,一つの工場にくっついている機械とか設備が,あらかじめ今回の登記による担保目的の譲渡に入っていた,あるいは工場抵当が設定されて登記がなされた後,その部分だけ別に担保目的の譲渡で登記がなされたというときの調整の問題は,何かルールをつくらなければいけないと思いますが,ここのバランスを欠くという問題は,手当てを講ずる必要はないと思います。 ● ほかに,御意見ございますでしょうか。 ● まだ十分問題が把握できていないのですが,5ページの(注)のところで,抵当権者は従物等について譲渡担保権者の地位を覆すことまで期待していないのではないかということなのですが,現行制度で占有改定による引渡しがなされて譲渡担保が設定されているということになった場合は,どうなるという前提のもとなのでしょうか。私,個人的には,所有権が譲渡担保権者に移っているということになりますと,別に供用物に当たるようなものであっても,工場抵当権の効力は及ばないのだと思っているのですが。それを,登記制度ができたことによって変える……,まさか,登記したらとられちゃうと変えるわけではないですね,そうするとどういうふうにするということなのですか。 ● 今のままでよろしいでしょうか,何か変えなくてはいけないでしょうかという質問なのですが。 ● そうすると,今次の立法をすることによって,登記されていない場合には,どちらかといえば工場抵当の方が勝つという立法をするということでしょうか。 ● そのケースは変わらない,変えようがないと思いますね。 ● そこが変わらないのだったら,どこも変わらないですね,何をしたって。 ● 変えようというよりも,従来は占有改定の後に登記が出てきたって勝てなかっただろうと,今回は勝てるようになって,何かそれでおかしいと言われないかと。 ● そうです,何かおかしいと言われやしないかとちょっと怖いだけの話でございまして,今まで占有改定で譲渡担保を設定した場合には,先に勝っていて,後から登記しても登記した人は負けていましたので,今回新しい登記制度でひっくり返すという制度をつくったときのバランスですね。 ● 分かりました。 ● これはちょっと特殊,特異な問題で,個別ケースについてお伺いしたいのですが。   自動車の場合,登録制度というものがありまして,所有権を消費者,使用者それぞれ登録することができます。所有権を所有者として登録したとしても,これは必ずしも所有権を意味するものではなくて,所有権留保というふうに理解されています。ただ一方で,例えば車の売り先が倒産法の適用を受けたような場合に,直ちに取戻しができるかということになると,多くは更生担保権というふうに把握されているのではないかと思います。そうすると,こういう所有権が留保された自動車が,登記--今回の制度は後から登記するわけですから登録後の登記になるわけですけれど,先後は明確に決まってくるのですけれども,そうしたようなものについてはこの登記制度というのは機能するのでしょうか。 ● これは,どう考えていらっしゃいますか。既存の登記登録のある動産について,これは二重に登記登録ができるのか,そういうふうにとらえてよろしいですね。 ● はい。 ● その問題については。 ● 特段,既存の登録制度がある部分については,適用範囲には含めないと思っておりますけれども。含めた方がよろしいという御意見でしょうか。 ● いや,逆でございまして,対象物が個別動産ということでしか今のところまだ限定されておりませんので,自動車だけではなくて船舶など登記登録制度があるものについてバッティングの問題が出てくるのではないかなと思っております。それを心配しているということです。 ● 今の含めないという趣旨は,先ほどの手続上受け付けないという趣旨ではなくて,登記はできてしまうけれども効力がないという意味なんでしょうか。   今のケースですと,効力があるとしても,先に所有権留保がなされて,そちらが登録されているという前提ですので,結論は変わらないように思うのですけれども,お答えの趣旨がちょっと理解できなかったものですから,確認のために。 ● 自動車登録が済んだ後でこちらで登記をすることができて,その効力があるかどうかというところは,それは効力がないと思うという意味なのですけれども。 ● 登記はできるわけですね。登記をやったときに,登録制度のある動産は除いてとか,あるいは特定の範囲の中に入りそうだった場合にはだめだとか,そういう制度をお考えなわけではないわけですね。その点だけ,確認したいのですが。 ● 今のところ考えていますのは,もう既に登録されたものはこちらの登記の中には入ってこない,登記できないというふうに考えていますけれども。 ● 却下するという意味ですよね。 ● 登記手続にも関係しますが,具体的に自動車そのものを対象にした登記申請は,それはもう受け付けないような形になるのだろうと思います。ただ,集合物のような特定の仕方をしたときに,一々「自動車を除く」と書かなければいけないかどうかというのは,これはまた実際の運用の問題になるのではないかとは思っておりますが,そこら辺はまたこれから具体的に制度をつくっていく上で考えていくことになると思いますが。 ● 予定した時間を超過させてしまいまして,誠に申し訳ございませんが,事務局から次回の中間取りまとめに向けて,この点だけは委員・幹事の皆さんの御意見を伺っておかなければいけないという点がございましたら,お願いいたします。 ● 一応お伺いいたしましたので,次回に向けて御準備させていただきます。   積み残しの部分も数点ありましたので,それも次回のときにまた御議論願う形になるかと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。 ● それでは,本日は幾つかの論点は議論がまとまりませんでしたので,それは両論併記というような形でのたたき台をおつくりいただいて,議論させていただくということになるかと思います。   時間超過いたしましたけれども,次回日程の説明等をお願いいたします。 ● 次回は,年が明けまして1月27日火曜日になりますが,今日と同じ1時半から5時まで,ただ場所は20階の方になりますので,お間違えないようにお願いいたします。 ● 中間取りまとめは,次回1回だけですか。 ● 中間試案は次回と次々回で,次々回が最終的な決定をいただければと思っております。 ● そういう意味で,実質的な議論は次回に集中して行って,次々回は中間試案の本当の取りまとめということにいたしたいと思いますので,場合によっては5時を少し回ることがあるかもしれないという前提で,日程をお組みいただければと思います。   本日は,長時間にわたりまして御議論いただき,ありがとうございました。法制審議会動産・債権担保法制部会をこれにて閉会させていただきます。 -了-