法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第6回会議 議事録 第1 日 時  平成29年12月19日(火)   自 午前10時01分                          至 午前11時58分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題  1 少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすること及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方について         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の第6回会議を開催いたします。 ○井上部会長 本日も,御多用中のところお集まりいただきましてありがとうございます。   まず,議事に入る前に,前回の部会以降,委員・幹事の異動がありましたので,御紹介させていただきます。   中里智美氏が委員を退任されまして,新たに伊藤雅人氏が委員に任命されました。 ○伊藤委員 東京地方裁判所の伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○井上部会長 小西康弘氏が幹事を退任されまして,新たに滝澤依子氏が幹事に任命されました。 ○滝澤幹事 警察庁少年課長の滝澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○井上部会長 田野尻猛氏が幹事を退任されまして,新たに保坂和人氏が幹事に任命されました。 ○保坂幹事 法務省刑事局刑事法制管理官をしております保坂でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○井上部会長 大賀眞一氏が幹事を退任されまして,新たに松坂規生氏が幹事に任命されました。 ○松坂幹事 警察庁刑事企画課長の松坂でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○井上部会長 もうお一方,新たに吉田智宏氏が幹事に任命されました。ただ,本日,吉田幹事は,所用のため欠席されておられます。   また,小木曽委員と橋爪幹事は,少し遅れて出席される予定です。   まず,初めに,事務当局から本日の資料について説明をお願いします。 ○羽柴幹事 本日,配布資料として,配布資料16「諸外国の制度概要」,配布資料17「分科会における検討(中間報告)」を配布しております。   また,参考資料として,各分科会における統計資料等の配布資料を配布しております。   なお,従前部会の配布資料14としてお配りした「論点表」を参考のために机上に置いてございます。   配布資料16は,従前部会の配布資料6として「諸外国の制度概要」という一覧表をお配りしていたところ,その後,事務当局として一層の調査を進め,その調査の結果を資料として取りまとめたものです。なお,配布資料6の一覧表についても,内容を一部更新しましたので,改めて配布資料16-6として配布いたしました。   配布資料17は,各分科会における現時点での検討状況を論点ごとに取りまとめたものであり,後ほど,各分科会での検討状況の報告に際して用いる予定です。   参考資料については,各分科会で配布した統計資料等を整理してお配りするものです。              (橋爪幹事 入室) ○井上部会長 ありがとうございました。   それでは,審議に入ります。   前回の第5回会議では,部会の審議を効率的に進めるため,「論点表」の大項目の2に掲げられた各論点につき,理論的・技術的な観点を含めて,具体的な検討を加えつつ,考えられる制度の概要案等を作成する場として,当部会の下に,三つの分科会を設置したところです。   その際,分科会長等の人選については部会長である私に御一任いただきましたが,その後,別途御案内いたしましたとおり,佐伯委員に第1分科会長,酒巻委員に第2分科会長,小木曽委員に第3分科会長をそれぞれお願いいたしました。   また,全体としての進め方については,まずは,各分科会において,それぞれが担当する論点につき検討の上,考えられる制度概要案の作成及び検討課題の整理を行っていただき,それを踏まえて,更に当部会において調査審議を行うことにしましたが,その際,それに至る過程でも,各分科会での検討状況について,適当な時期に当部会に報告していただき,部会全体としての意見交換を行う機会を持ち,その意見交換の結果ないし状況を各分科会にフィードバックして,分科会で更なる検討を行っていただくということにしました。   これまでに,いずれの分科会も3回ずつ開かれ,各論点について,ひとわたりの検討を行ってくださったと伺っていますが,各分科会では,今後,制度の概要案の作成に向けて,更に具体的な検討を進めていただくことになりますので,本日は,各分科会での検討状況について,それぞれの分科会長から報告していただき,その上で,皆様から現時点における検討の結果ないし状況に対する御意見や,今後の検討の方向性についての御意見などを伺うことにしたいと思います。   本日の進め方ですが,第1分科会,第2分科会,第3分科会と,分科会ごとに区切って,それぞれが担当する論点について報告を伺った上で,皆様に意見交換をしていただき,最後に,包括的な意見交換を行うということにしたいと思いますが,このような進め方でよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   それでは,早速,第1分科会が担当する論点から意見交換を行いたいと思います。   まず,第1分科会における検討状況について,佐伯分科会長から御説明をお願いします。              (小木曽委員 入室) ○佐伯委員 第1分科会が担当する論点について,分科会における検討状況を御報告いたします。   第1分科会は,論点表の大項目2に掲げられた論点のうち,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」などの四つの論点について検討いたしました。   3回にわたり会議を開催し,1巡目の意見交換においては,それぞれの論点に関係する従来からの制度,運用あるいはこれらに対する評価・問題点等を把握しつつ,論点表に掲げられた制度や措置の意義,在り方などの大づかみの議論を行いました。そして,2巡目の意見交換においては,1巡目の議論を踏まえ,検討課題や問題点などについて更に議論を深めました。   分科会における主な意見を各論点ごとに御説明いたします。   まず,1点目の「刑の全部の執行猶予制度の在り方」についてです。配布資料17の1ページを御覧ください。   まず,現行制度の運用状況と問題点について意見交換を行い,保護観察付き執行猶予の言渡し状況や執行猶予の取消し状況を踏まえ,検討に当たっての観点として,お手元の資料の「1」にある意見などがありました。   次に,考えられる制度として,お手元の資料の「2」の(1)から(5)までについて意見交換を行いました。   「2」の(1)は,現行法上,初度の保護観察付き執行猶予の猶予期間中の再犯について再度の執行猶予を言い渡すことができないとされているのを,一定の条件の下で再度の執行猶予の言渡しを可能にすることについてです。   「2」の(2)は,現行法上1年とされている再度の執行猶予を言い渡し得る刑期の上限を引き上げることについてです。   「2」の(3)は,現行法上遵守事項違反により執行猶予を取り消される要件である「情状が重いとき」という要件を緩和するなど,執行猶予を取り消すための要件を緩和することについてです。   「2」の(4)は,現行法上,執行猶予の猶予期間内に更に罪を犯した場合,その有罪裁判が猶予期間内に確定しない限り執行猶予を取り消すことができないとされているのを,その有罪裁判の確定が猶予期間経過後であっても一定の条件の下で執行猶予の取消しを可能にすることについてです。   最後に,2の(5)は,現行法上,執行猶予を言い渡した有罪裁判の確定により様々な資格が制限されるとされているのを,裁判所が執行猶予判決を宣告する際に,このような前科による資格制限の排除を可能にすることについてです。   「2」の(1)から(5)までについては,お手元の資料にあるとおりの意見があったほか,(3)に関連して,要件の緩和を検討するに当たっては,「遵守事項を遵守していれば早期に保護観察を終了させ得る仕組み」や「執行猶予を取り消す場合には,言い渡された刑期の一部のみの取消しも可能にする仕組み」も考えられるのではないかとの意見もありました。   また,お手元の資料の「2」の(1)から(5)までの対象者については,社会内処遇を通じて対象者の改善更生を図るという趣旨は全ての年齢の者に共通することから,若年者に限定する必要はないとの意見もありました。   続いて,2点目の「自由刑の在り方」についてですが,配布資料17の2ページを御覧ください。   この論点については,自由刑を単一化すべきか否か,単一化するとした場合,その処遇内容をどのようにすべきか等について意見交換を行いました。   まず,自由刑の単一化については,過去の法制審議会における改正刑法草案に関する議論や,懲役受刑者と禁錮受刑者の処遇の差異などの矯正処遇の現状を踏まえて意見交換を行ったところ,お手元の資料の「1」にあるとおりの理由から,自由刑を単一化する方向で検討すべきとの意見がありました。   次に,自由刑を単一化するとした場合の処遇内容等については,お手元の資料の「2」にあるとおり,現在の矯正処遇の中心である作業及び指導が,受刑者の改善更生のために重要な役割を果たしていることに異論はなく,受刑者の改善更生のためにいかなる義務付けの在り方が適切かという観点からの意見交換が行われました。ほかにも,作業及び指導の義務付けと刑罰の目的との関係について,これらの義務付けは,特別予防・一般予防に資する効果とともに,応報の性質をも有するのではないかとの意見のほか,作業及び指導の義務付けの在り方は,新たに設けられる自由刑と現行の懲役刑及び禁錮刑との軽重にも関係するとの指摘などがありました。   続いて,3点目の「社会内処遇に必要な期間の確保」についてですが,配布資料17の3ページを御覧ください。   この論点については,刑の一部執行猶予制度の拡大・活用,仮釈放制度の積極的活用,考試期間主義等について,統計資料や事務当局の説明により運用状況を念頭に置きつつ,意見交換を行いました。   まず,刑の一部の執行猶予制度については,お手元の資料の「1」にあるとおり,その拡大・活用が考えられるものの,まだ開始されたばかりの制度であり,運用の実績を踏まえて検討する必要があるとの御意見がありました。   次に,仮釈放制度について,社会内処遇の期間が短過ぎるかどうかは,その間に行うべき処遇や効果を踏まえて検討する必要があるとの意見がありました。   その上で,お手元の資料の「2」の(1)にあるとおり,社会内処遇の期間を確保するという観点のみから早期の仮釈放を認めていくことには困難な面もあるのではないかとの意見,満期釈放者の再犯防止も重要な問題であるが,満期釈放者には仮釈放が認められにくい相応の理由があり,その理由の解消が必要との意見がありました。   考試期間主義については,お手元の資料の「2」の(2)にあるとおり,責任主義や刑の事後的変更についての指摘等を踏まえて意見交換を行いました。裁判所が判断する仕組みについての意見,仮釈放の期間が一定の法定期間に満たない場合に仮釈放の期間を当該期間とする制度についての意見があり,それぞれ検討課題等が示されました。   最後に,4点目の「若年受刑者に対する処遇原則の明確化,若年受刑者を対象とする処遇内容の充実,少年院受刑の対象範囲及び若年受刑者に対する処遇調査の充実」についてですが,配布資料17の4ページを御覧ください。   まず,お手元の資料の「1」にあるとおり,法令上,若年受刑者に対する処遇原則を明文化することの意義・必要性と,その処遇原則の内容に関し,意見交換を行いました。   現行法に受刑者一般の処遇原則が規定されているものの,今後,若年者に特化した処遇を充実させていくために,特に若年者の処遇原則を明文化することが考えられるとの意見がありました。   次に,処遇内容の充実と少年院受刑については,検討内容において相互に密接に関連するため,まとめて意見交換を行いました。   お手元の資料の「2」にあるとおり,刑事施設において,少年院が培ってきた青少年期の者に対する処遇のノウハウを積極的に活用することが検討されるべきとの意見がありました。   さらに,一定の年齢の成人受刑者を含めた少年院受刑の制度を導入することが考えられるのではないかとの意見がありましたが,少年院で受刑する制度を拡大することは問題があり,むしろ刑事施設で少年院のような教育的な処遇を行えるようにすることで対処できるのではないかとの意見もありました。   最後に,お手元の資料の「3」にあるとおり,処遇調査の充実について,個人の特性に応じた適切な処遇を実施するため,精密な処遇調査の対象者の拡大や,調査内容の充実を図ることが考えられるとの意見がありました。 ○井上部会長 ありがとうございました。   それでは,第1分科会の担当する論点について,いずれの点でも結構ですし,あるいはまとめてでも結構ですので,御意見あるいは御質問があれば御発言いただきたいと思いますが,本日の会議の趣旨からしますと,まずは,第1分科会に所属されている委員・幹事以外の方から御発言いただくのが適当かと思いますので,よろしくお願いします。 ○太田委員 2点ばかり意見を申し上げたいと思います。   まず1点目は,仮釈放後の保護観察に関する規定を刑法に置くことについてでございます。現在,仮釈放後の保護観察につきましては,更生保護法の中の第40条に規定されておりますけれども,刑法自体には規定されておりません。その背景には,仮釈放を単なる自由刑の執行の一形態にすぎないというふうな捉え方とも無縁ではないように思いますけれども,現在の仮釈放とかその後の保護観察は,対象者の社会復帰であるとか再犯防止の観点から,より積極的に捉えられているということを考えると,仮釈放後の保護観察を刑罰の基本となる刑法にもきちんと定めるべきであろうと考えます。これは,第1分科会で検討されております考試期間主義を採用するかしないかにかかわらず,やはり規定を置くべきだろうと思います。   それから,もう一点は,今も御報告がありましたように,考試期間主義に関する理解の仕方でございます。考試期間主義の是非については,今,第1分科会で御議論いただいておりますけれども,第3分科会においても保護観察の充実に関する様々な制度を今検討しておりまして,こうした制度の導入に当たっても,仮釈放後に現在よりも長い保護観察期間を取ることが有効かつ効果的であると考えております。第1分科会におきましては,第3分科会において検討している,こうした仮釈放後の保護観察の充実策を踏まえて,考試期間主義の採否を検討していただければと思います。   ただ,中間報告によりますと,考試期間主義が刑の事後的変更に当たり,しかも事後的な刑の加重に当たるかのような指摘がなされておりますけれども,こうした見方が考試期間主義の正しい評価であるかどうかについては疑問がありまして,これと異なる評価があるのだということは指摘しておきたいと思います。   判決の事後修正に当たるかどうかというのは,一旦さておくとしましても,残刑期間を超える考試期間を設定したことだけに着目すれば何か加重しているように見えますけれども,それは,残刑の執行を猶予しているという点を看過しているように思います。すなわち,従来,普通の判決で懲役6月の全部実刑と懲役6月の2年間保護観察付き執行猶予とを比べた場合にどちらが重いかと言いますと,懲役6月の全部実刑の方が明らかに重いとされるのと同様に,残刑6月を猶予して2年間の保護観察の考試期間,仮釈放期間を設定しても,それは加重には当たらない,むしろ軽くなっているという見方の方が妥当でさえあろうかと思います。   そして,刑の事後的な修正に当たるかどうかということについても,これは,考試期間の性質に由来するものではなくて,かねてから仮釈放というのは刑を不定期化する機能があると言われておりますように,仮釈放という制度に由来するものでありますので,もしこれが許されない事後修正だということであれば,仮釈放を廃止するしかないわけであります。けれども,それは社会内処遇を不可能とし,不当でありますので,法律の制度として仮釈放を認めることを前提とした上で,仮釈放は残刑を猶予するものとし,一定の仮釈放期間を設定することを,あらかじめ法律で規定しておくということは,制度上十分に可能であると考えます。   また,第1分科会で,仮釈放とは別に残刑の執行猶予制度というものの導入可能性が指摘されておりますけれども,従来,考試期間主義に基づく仮釈放が残刑の執行猶予制度だと言われていることを考えると,こうした提案というのは,実質的に現在の残刑期間主義の仮釈放と考試期間主義の仮釈放を併存させるということになり,理論上不可能であるとは言えませんが,もし両者を別立ての制度にするとなると,非常に構造が複雑になり,運用も難しくなるおそれがあるため,こうした問題点を踏まえて検討が行われることを希望いたします。もっとも,残刑執行猶予の性質を持った考試期間主義の仮釈放を採用した上で,これを基本としながら考試期間を残刑期間とするということを認めるという方法はあり得るだろうと思います。 ○山下(幸)幹事 私の方からは,「自由刑の在り方」の論点について意見を述べたいと思います。   今,第1分科会で検討されているのは,禁錮刑を廃止して懲役刑の一本化を図った上で,刑法の刑罰内容に各種指導も含めるというような方向だと受け取れるような議論がされているかと思います。ただ,国際的な傾向としては,自由刑の純化論という議論がありまして,むしろ,どちらかというと禁錮刑への一本化の方向にあると理解されるところでありまして,その傾向に逆行しているのではないかというような疑問がございます。   また,各種指導を刑法の刑罰内容に書き込むという議論もされているところでありますが,既に刑事収容施設法では各種指導が義務付けられた上で,違反行為には懲罰もあるという中で,実体法である刑法に各種指導についての義務付けをした上で懲罰,その義務付けをするという,そういう刑罰内容に書き込むということを考えられているようでありますけれども,そもそもやる気のない受刑者に各種指導を義務付けるということについて疑問があるところでありまして,刑法にそういう刑罰内容として各種指導というものを書き込んで義務化するということが,どれほどの意味というか,効果があるのかということについては,疑問があるところでございます。   以上のような点についても,更に今後,第1分科会の議論の中で御検討いただければと思います。 ○田鎖幹事 私も,「自由刑の在り方」に関して,自由刑を単一化するとした場合の処遇内容について,述べさせていただきます。   確かに作業及び各種指導というものが処遇として重要な役割を果たしているといたしましても,そこから,その義務付けという結論が直ちに導かれるというものではありませんし,ましてその義務の履行というものを,懲罰をもって担保するという結論に直ちに結びつくものでもないと考えられます。御承知のように,日本の懲役刑の在り方というものは国際的にも注視されておりまして,2013年には国連の社会権規約委員会から懲役刑の廃止が勧告されております。これに対して,日本政府は,懲役刑は廃止すべきものであるとは考えていないと回答されておられます。   しかし,他方で,日本の法務省からも代表が参加して改訂の作業がなされた国連の被拘禁者処遇最低基準規則の中では,その規則96において,受刑者というものは作業をする機会を有する,あるいは自己の社会復帰に積極的に参加する機会を有するものとされています。また,同じ処遇最低基準規則の基本原則の中においても,刑事施設当局は,適切かつ利用可能な教育,職業訓練,作業,その他の形態の援助を提供しなければならないとしています。つまり,作業,指導を強制するのではなく,その機会を提供して社会復帰を援助するという方向性が顕著であります。2020年に日本で国連の犯罪防止刑事司法会議が開催されるということも考え合わせますと,検討にはこのような視点も不可欠であろうと考えます。 ○羽間委員 「刑の全部の執行猶予制度の在り方」についてお願いを申し上げさせていただきたいと思います。   「刑の全部の執行猶予制度の在り方」として,保護観察付き執行猶予中の再犯について,再度の執行猶予を言い渡すことができるようにすることで,初度から保護観察付き執行猶予を活用しやすくするという制度改正の方向性について,結論としては,採り得るものであると考えております。その上で,制度をより良くするという観点から,3点ほどお願いがございます。分科会においても,なお御検討いただければと存じます。   1点目は,第1分科会でも既に御指摘がございましたけれども,この制度改正によって,どのような事件,あるいはどのような特性を持った対象者を,初度から保護観察付き執行猶予とすることを意図しているのか,その制度趣旨等を明確にしていただきたいということでございます。   2点目は,今回の改正を経て,裁判所が初度の執行猶予者に保護観察を付けるかどうかの判断方法について,これまでとどのように変わることを意図しているのか,例えば,特別予防の観点を考慮する比重が高まるということであれば,その判断のための資料はこれまでと異なるのか,資料入手のための調査はどうなるのかということも,御検討の上で明らかにしていただきたいと存じます。   3点目でございます。第1分科会の資料を拝見いたしますと,現在,執行猶予者の保護観察率は1割程度のようでございますけれども,今回の制度改正によって,これまで単純執行猶予であった者のうち,どれぐらいの者が保護観察付き執行猶予となることを想定していらっしゃるのかということです。以前の部会でお配りいただいた資料では,確か現行の18歳,19歳の一般保護事件の終局人員のうち,4割ほどが保護処分を受けているということだったと記憶しておりますが,このような要保護性の高い層が単純執行猶予となって,何らの処分も受けないことになるということではなく,保護観察付き執行猶予につながっていくような制度となるのかという観点からも,御検討いただきたいと存じます。   以上3点が御検討いただきたい点でございますが,他方で,特に現行では18歳,19歳の一般保護事件の終局処分のうち,約1割が少年院送致となっており,こういった層について,保護観察付き執行猶予がどの程度活用されるかについては,保護観察の処遇の内容がどの程度充実するかにもよってくると思われます。そこで,今申し上げましたような点について第1分科会で御検討いただくのと並行して,私が所属させていただいております第3分科会においても,保護観察付き執行猶予者に対する処遇をどのように充実させるかについて,引き続き検討させていただきたいと考えております。 ○奥村委員 1点だけ申し上げます。   自由刑の単一化のことです。先ほど,作業の義務付けについては御批判がございましたけれども,受刑者は,いわゆる「お務め」を果たす意識について,刑務所の施設内に拘禁されていた以上,刑期が終了すれば「お務め」を果たしたと考える傾向が強いと言われる。しかし,被害者の観点からしますと,被害者に対する弁償問題が残っているのですね。ただ,施設内処遇を受けていた人は,一定期間懲役刑を科せられることで義務は果たしたんだという意識が結構強く,被害者に対して謝罪し続ける意識は全然持たない者が多いと言われます。   そこで,自由刑を一本化し,従来の懲役とは異なる性質と意義を持つ職業訓練を義務付ける必要があろうと考えます。そこで,作業の義務付けの仕方が問題だと思うんですけれども,是非検討していただきたいことは,改善更生,社会復帰の点は,これは御異論ないと思うんですが,この改善更生,社会復帰のための仕組み,つまり,自立,自活できる仕組みをどのように制度設計するかということなんです。そのために,一般社会において自活できるように訓練をする必要があります。もっとも,刑務所は職業訓練校ではないわけで,応報の部分もありますので,そういう制約された中ですけれども,受刑者の適性,希望,能力等を勘案してその者にふさわしい職業訓練を行い自立,自活できるようにすることが肝要であろうと思います。そうすると,再犯防止にも有効かと思います。その点で,最近立法化された再犯防止推進法ともリンクしていくと思うんですけれども,社会復帰との絡みで再犯防止をリンクさせて,再犯防止推進計画の閣議決定が先般なされましたね。そういう社会復帰,改善更生という点で,加害者が社会に迷惑をかけ,被害者に対しても賠償の義務があるため,自立,自活できるように職業訓練を受ける義務があると思われます。そのためには,社会も協力しないといけないと思いますが,自由刑の一本化については,以上の検討が必要かと思います。 ○山﨑委員 私からは,「少年院受刑の対象範囲」について,一言意見とお願いを述べさせていただきたいと思います。   少年院受刑の対象範囲を拡大するということになりますと,同じ少年院の中で,保護処分を受ける少年と刑罰を受ける受刑者が併存,混在するという事態が予想されるわけですけれども,やはり保護処分としての少年院送致という処分と刑事処分としての刑罰ということを考えますと,同様の犯罪行為に対しても,対象者の収容期間が異なってまいりますし,また,その中での成績評価によって,社会復帰ができる時期が異なるなど,両者の間にはやはり大きな違いがあると考えられます。   さらに,刑事処分としての刑罰において,現在の少年院における矯正教育と全く同様に対象者の人格的な内面に対する介入ということが果たして許されるかどうかという点についても,議論があるところではないかと考えております。   そもそも,この点に関する現行法の規定,少年院受刑に関する規定というのは,検察官送致の対象年齢が16歳以上から14歳以上へと引き下げられた際に,14歳,15歳という義務教育の対象となる低年齢の少年らについて,16歳になるまでの間は,少年院での教科教育ですとか矯正教育を行うのが適当ということで設けられた規定だと理解しております。実際にこの改正後,十数年間でこの規定が適用された少年は全くおりませんので,実際にこの規定を使って少年院に受刑者を収容した場合に,先ほど申し上げた処分の性質の違いなどから,どういった問題が果たして生じるのかというところが,全く未知数という状況であろうかと思います。   ですので,少なくとも,現時点でこの対象範囲の拡大を論じるという際には,やはり様々なことを慎重に配慮しなければいけないのではないか,特に保護処分と刑罰との性質による違いですとか,法で健全育成という目的が掲げられている対象者とそうでない者といったような点も踏まえて,慎重な御検討を頂きたいと思っております。 ○井上部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   ほかに御意見がないようですので,次に移らせていただきたいと思います。   次は,第2分科会の担当する論点についてですが,まず,酒巻分科会長から検討状況について御説明をお願いします。 ○酒巻委員 第2分科会が担当する論点について,分科会における検討状況を御報告いたします。   第2分科会は,論点表の大項目2に掲げられた論点のうち,「宣告猶予制度」,「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」,そして「若年者に対する新たな処分」について検討いたしました。   第2分科会でも,3回にわたり会議を開催し,1巡目の意見交換においては,それぞれの論点に関する過去の検討,従来からの制度の運用あるいはこれらに対する評価や問題点等を把握しつつ,論点表に掲げられた制度や措置の意義,当該制度を設けることについて検討する目的などの大づかみの議論を行いました。そして,2巡目の意見交換におきましては,1巡目の議論を踏まえ,検討課題や問題点などについて更に議論を深めました。   分科会における主な意見を各論点ごとに御説明いたします。資料17の中間報告の各項目を引用いたしますので,御参照いただければと思います。   1点目の「宣告猶予制度」については,配布資料17の5ページを御覧ください。   宣告猶予制度につきましては,過去の刑法改正に関する法制審議会刑事法特別部会において検討がなされていたことから,同部会案を踏まえた上で意見交換を行いました。   まず,お手元の資料「2」の「考えられる制度概要案の作成に向けた検討課題」について意見交換を行いましたところ,(1)から(3)までにあるとおりの意見がございました。   まず,(1)は,制度の基本的枠組みについてであり,改正刑法草案部会案のほかに,①現在は起訴猶予や罰金刑となっている者を対象とした仕組みや,②裁判所が実刑か執行猶予か迷うような場合の仕組みが考えられるとの意見があった一方,これらについて問題点の指摘もありました。あわせて,裁判所が関与して早期の社会内処遇を可能とする制度として,簡略な手続を設けることも考えられるという意見もありました。   また,お手元の資料の(2)の対象者については,①,②の仕組みから想定される対象者とは別の観点から,資料に記載した意見が出されたほか,(3)にあるとおり,宣告猶予の要件などの具体的な要件についての検討課題や,執行猶予又は起訴猶予と宣告猶予とをどのように使い分けるのかといった検討課題などが示されました。   これらを踏まえて宣告猶予制度の要否について意見交換を行いましたところ,お手元の資料「1」にあるとおりの検討課題が示されました。   さらに,少年鑑別所の調査機能の活用について,お手元の資料「3」にあるとおりの検討課題が示されました。   続いて,2点目の「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」について,御説明いたします。配布資料17の6ページを御覧ください。   「罰金の保護観察付き執行猶予」は,現行法上既に存在する制度であるため,罰金の保護観察付き執行猶予に関する統計及び現行法制度の趣旨等を踏まえつつ,意見交換を行いました。   現在,罰金の保護観察付き執行猶予が活用されているとは言い難い状況にあることから,まず,罰金の保護観察付き執行猶予に適すると考えられる事案が存在しないということなのか,その存否について意見交換を行いましたところ,お手元の資料「1」にあるとおりの意見が出されたところでございます。   次に,資料の「2」にあるとおり,罰金の保護観察付き執行猶予が活用されていない理由については,これを活用しようという発想がなかったこと,あるいは,罰金事案の多くが略式手続によって行われていますので,その中で検討する契機がなかったこと等が要因ではないかとの意見や,罰金刑に執行猶予だけでなく保護観察が付されるとかえって負担が重くなるとの感覚があるのではないかという意見等がございました。   そこで,これらを踏まえ,罰金の保護観察付き執行猶予の活用に向けた検討課題については,資料の「3」にありますとおり,罰金の保護観察付き執行猶予に適する事案を適切に判断するための方策等活用のための具体的方策に関する意見や,略式手続において活用することの適否に関する意見があったところです。   最後に,「若年者に対する新たな処分」について,配布資料17の7ページを御覧ください。   この「若年者に対する新たな処分」は,これまでに存在しない新たな処分の創設を検討するものでありますので,出発点として,このような処分を設けることを検討する目的について意見交換を行いましたところ,資料の「1」にあるとおり,少年法における少年の年齢が仮に18歳未満に引き下げられた場合に,比較的軽微な罪を犯した18歳及び19歳の者に対し改善更生に必要な処遇や働き掛けを行うことを可能にすることがその目的と考えられるという点に異論はありませんでした。   次に,お手元の資料の「2」にありますとおり,この処分の正当化根拠及び法的性質はどのようなものと考えられるかについては,この処分を保護原理,パターナリズムによって正当化することはできないということに異論はなく,その上で,この処分は,対象者の改善更生を目的として,対象者が罪を犯し法益を侵害したことについて非難が可能な限度で,要保護性に応じて処分を行うものとすることが考えられるという意見がございました。   また,お手元の資料「3」にありますとおり,この処分の対象者については,比較的軽微な罪を犯し,刑罰が科されず処遇が行われないものの,処遇や働き掛けを要する18歳及び19歳の者とすることが考えられるとの意見がございました。   さらに,資料の「4」の「処分及び手続の基本的枠組み」につきましては,(1)から(3)までにあるとおり,少年院送致に準ずる処分,保護観察に準ずる処分及び手続に関し,それぞれ検討課題が示されました。   第2分科会における検討状況の御報告は以上です。 ○井上部会長 ありがとうございました。   それでは,第2分科会が担当する論点について意見交換を行いたいと思います。   これにつきましても,まずは,第2分科会に属されていない委員・幹事の方から,御意見,御質問があればお伺いしたいと思います。 ○羽間委員 「若年者に対する新たな処分」につきまして,18歳,19歳を始めとする若年成人のうち,行った犯罪は比較的軽微であるものの要保護性が高い者に対し,その要保護性を調査した上で,要保護性に応じた処分を行う,そういう制度であると承知しております。この層に対する処分としては,有効なものであろうと考えております。この新たな処分の導入に向けて,引き続き御議論をいただきたいと考えます。   第3分科会に所属する立場として,甚だせんえつではございますけれども,2点ほど御検討いただきたいことがございます。   第1点目は,少年院送致に準ずる処分についてでございます。第2分科会の議事録などを拝見しておりますと,比較的軽微な罪を犯した者に対する行為責任の範囲内での処分となるということを前提に,少年院送致に準ずる処分としては,この処分を設けたとしても,現行法の少年院送致と比べると,その数は大幅に少なくなるか,あるいはほとんど考えにくいという御指摘,あるいは仮に行為責任に応じた短期の少年院送致に準ずる処分というものが理論上は考えられるけれども,改善更生の観点から,有効性があるとまでは言えないのではないかという御指摘がなされていました。   他方で御検討いただきたいのは,新たな処分の対象となるような若年成人の中には,要保護性が高く,再犯リスクの主たる要因が交友関係あるいは家族関係といった環境面にあることが少なくない者,つまり,社会内での処遇だけでは再犯防止や改善更生が難しい者が相当数含まれているのではないか,こういった者に対する処遇として,たとえ短期間であっても,問題のある環境から分離して集中的な処遇を行うべきではないかということでございます。   確かに,第2分科会で御指摘がございましたとおり,短期間の施設収容では,現行の少年院での処遇水準よりも低い処遇水準にならざるを得ないのかもしれませんけれども,しかし,少年院内での処遇の有効性という観点だけで捉えるのではなく,短期間の施設収容の後に,再び保護観察を実施するということを前提として,保護観察が有効に機能し得る限度での施設内処遇と,その間の保護観察官による生活環境の調整が行われるということであれば,一定の有効性が認められるのではないかと考えます。そこで,短期間の施設内処遇の有効性等について,改めて御検討いただければと思います。   2点目は,保護観察に準ずる処分において,遵守事項違反があった場合の措置についてでございます。18歳,19歳を始めとする若年者は,自分自身に課せられた約束事を守らなかった場合に,どのような不利益な措置が待っているのかということ,そして,そういった措置がどの程度のものなのか,こういった観点から制度を捉えようとする傾向がございます。そのため,仮に新たな処分として保護観察に準ずる処分を導入するとした場合,その実効性を担保するためには,遵守事項に違反した場合の措置ということも,併せて設けておく必要があるものと考えております。その場合の措置の内容ですが,先ほども申し上げましたとおり,この処分の対象者の中には,環境面の問題が主たる再犯リスクとなっている者も相当数含まれていると考えられますので,遵守事項に違反している状態というのは,その要保護性や再犯リスクが特に高まっている状態と言えます。したがって,処遇の転換の一つの方策として,一定期間,異なる環境に居住ないし宿泊させるという,言わば環境分離の措置が有効ではないかと考えております。この措置として,行為責任の限度で少年院等に短期間収容して教育を行うということも考えられるので,その点を御検討いただきたいと存じます。   ただ,今申し上げました行為責任の限度で,少年院等に短期間収容して教育を行うという考え方と両立するものの一つとして,飽くまでも保護観察の実効性を担保するために,必要な行政上の処分として短期間収容する措置を設けるということも,別に考えられるのではないかと思っております。例えば,遵守事項違反がなされたことで,新たな特別遵守事項を設定するなど,社会内処遇の方法を見直すための集中的な調査が必要であるものの,対象者が在宅での調査に応じないような場合,あるいは有効な調査のためには環境分離が必要な場合などに,一定期間少年鑑別所等に収容して調査や鑑別を行うというように,飽くまでも保護観察の実効性を担保するという行政上の処分としての観点で,こういった制度を設けるということが考えられるのではないかと思っております。そこで,こういった観点からも,保護観察に準ずる処分における遵守事項違反に対する措置の在り方について,御検討いただきたいと存じます。 ○廣瀬委員 今の羽間委員の御意見と重なるところもありますが,まず,総論的に,第2分科会だけではないのですが,前に部会で申し上げたとおり,いろいろな良い処分や制度を作ることは大事で,その御検討をいただいているわけですが,できたものをどの機関にどう振り分けて適切に適用・実施していくかということが最終的には一番大事なわけです。そのためには,やはり調査・調整の機能の確保という観点の検討が必須だと思います。これは順番の問題で,制度が決まらなければ主体が決まらないということがあるとは思いますが,そのような問題意識,観点が十分ではないのではないかという印象を受けますので,是非,手続関係や主体も含めて御検討いただけたらと思っております。   それから,特に家庭裁判所以外の機関が処分決定や手続の選別などをするということになりますと,調査機関を持っていないわけですから,その段階での専門性のある者による調査,働き掛けをしっかり確保する必要があると思いますので,是非よろしく御検討いただきたいと思います。   また,特に新たな処分を作るということになれば,調査・調整という観点からも議論をしていただきたいと思うわけです。新たな処分については,対象者と内容について,これから申し上げるようなことを更に御検討いただければと思っております。   対象者としては,まず,起訴猶予や罰金になり得る者というのが想定できますけれども,その中でも,問題性の高い者には,この調査・調整の機能などを経て処分を加えていくということが有効だろうと思います。それから,軽いものは保護観察等に準じてということになると思います。また,もう少し重い,現在なら懲役や禁錮の執行猶予にされるような者も対象になる余地があるのではないかと思っています。第1分科会で検討されている保護観察付き執行猶予の活用が大幅に拡大していくことになれば,かなり解消されるかもしれないですが,実際に裁判をやった経験に照らして考えますと,調査や判断方法等の枠組みを相当組み替えるということにならないと,制度を変えたとしても想定するほどには保護観察付き執行猶予の活用は広がらないのではないかという懸念もあります。そうであれば,現在では懲役や禁錮の執行猶予にされる者についても,若年者に即した処分というものを検討する必要があるのではないかという気がいたします。              (羽間委員 退室)   それから,原則論にかえってしまって恐縮ですが,この新しい処分を保護原理では正当化できないことに異論がないとか,行為責任の範囲内に限定されるなどとして,議論が進められているわけです。この点は,私が根本的な話を余りしなかったのがいけなかったのかもしれませんが,保護の原理を,国親といいますか,親権の代行や補充というような,非常にシンプルな,少年法の発足時のような考え方を採るのであれば,確かに親権が外れた以上,保護原理では基礎付けられないことになるでしょう。しかし,後見保護には,成年後見を考えても分かるようにいろいろな観点があるのです。   世界的に見れば,高齢者,障害者などに対して特則を設けているような法制もあるわけです。日本はこれまで実質的に実務上の配慮をしてきたわけですが,高齢者などはこれから正に必要な検討課題ではないかと思います。もし高齢者,障害者などにも一般の成人と違う特則を設けるとすれば,それは一種のパターナリズム,保護原理的な介入として基礎付けられるものではないかと思います。そういうことを考えると,少年には確かに親権の代行という面が強いでしょうが,若年成人に対しても若年者の特性,つまり,人格の未熟性,教育可能性の高さ,社会の寛容もある程度期待できることなど,少年と共通する若年者の類型的な特性に基づいて,保護的な原理での規制を加えていくことは,理論的に十分あり得るし,また,やるべきことだろうと思います。そこを一律に理念で切ってしまうことには,私は反対ですし,更に是非御検討いただきたいと思います。   それから,次の段階として,これまでの議論を前提にして行為責任の範囲内という制約を仮に認めるとすれば体系的整合性の保持が問題となります。この点は,例えば,「犯した罪に見合った処分をしなければならない」というような注意規定でも設ければ,少なくとも理論的,体系的な整合性は保てるだろうと思いますし,裁判所もそれを基準にして判断するので不当な処分が起きるということも懸念されないのではないかと思います。   また,行為責任の制約から,少年院送致はほとんど考えられないなどと報告されていますが,これは実務感覚からして,私は非常に違和感が強いです。行為責任による縛り,規制を考えたとしても,それは,発現する場面で随分違ってくるのではないかと思います。重大事件と軽い事件,あるいは一般的な事件,それから量刑において執行猶予にするか実刑にするかというような場面,あるいは起訴猶予にするか罰金にするかというような場面など,それぞれの場面でかなり違ってくるのではないかと思います。重い罪,懲役10年か5年かなどという場面では確かに,その縛りが強くてそれほど幅がなく,特に公平性も重視しなければいけないでしょう。   しかし,起訴猶予に関しては,刑事訴訟法第248条に明記されていますように,「犯人の性格,年齢及び境遇」という行為者の事情がメインに規定されているわけです。これは,ある程度軽い罪,それほど重い罪でなければ,何をやったかはもちろん大事ですが,同時に,その人が立ち直れるか,再犯を防止できるかということも,相当重視してもいいというのが,この条文だろうと私は思います。それは,理論的に矛盾するということではなく,枠組みの内容からすると,適用場面が違ってきて,重点の置き方の幅があるのではないかという気がするわけです。こう考えてみると,行為責任の範囲という制約から,少年院の活用ができなくなってしまうということには直結しないのではないかと思われます。   もう一つ,今の刑との対比は検討されていますが,新しい処分で,例えば開放性,教育性,利益性などを強めるとすれば,収容期間の少し長めのものも検討できるのではないか,あるいは,先ほどの羽間委員の御意見と共通しますが,短期間の少年院の教育と保護観察を組み合わせたような処分も構想できるのではないかと思います。   お願いしたいのは,新たな処分をということで考えるわけですから,現在の刑罰と保護処分との比較検討にとどまらないで,週末拘禁とか夜間拘禁とか開放施設での処遇とか,今言った組合せの処分とか,そういう少し発展的なものを考えていただければ,今までの枠組みを前提としても,現在の処分・施設なども実質的にはいろいろ活用の余地があり得るのではないかと思います。そこを,是非もう少し御検討いただければと思います。 ○橋爪幹事 今の点に関連しまして,若干違った観点から申し上げたいと存じます。配布資料17の7ページの「若年者に対する新たな処分」でございますけれども,特に目的と対象者について,私なりのイメージを申し上げたいと存じます。   これは,正に今後の検討課題というべきですが,少年法の少年の上限年齢の引下げを仮に行った場合という仮定の問題であると理解しております。つまり,飽くまでも少年法の少年の上限年齢を引き下げ,18歳,19歳を成人として取り扱うことになった場合に限った検討課題であると理解しております。そうしますと,本来18歳,19歳の者が罪を犯した場合,それは,成人である以上,刑罰をもって対応するのが本来でありますので,比較的重大な犯罪を犯した場合につきましては実刑あるいは執行猶予付きの自由刑を科すことになるかと存じます。そして,このような者に対する再犯予防等の措置につきましては,まさに今議論されておりますように,自由刑の内容の充実,あるいは保護観察などの社会内処遇の充実によって,再犯防止・社会復帰を図るのが筋ですので,若年者に対する新たな処分プロパーの問題は存在しないと考えます。   つまり,この論点は飽くまでも,比較的軽微な罪を犯して,基本的には起訴猶予になり得るような者をターゲットとしたものだと思います。つまり,それほど対象が広いわけではなければ,重大な犯罪を犯した者を含むわけでもなく,現在の実務においては,起訴猶予相当の者を対象にした処分であると理解しました。   そうしますと,本来これは成人として取り扱っても起訴が必要ではない者を主たる対象とする以上,身柄拘束などの厳しい処分を科すことは,罪刑均衡の観点からも困難ではないかと考えます。   その上で,更に1点申し上げます。このような処分は起訴猶予相当の者を対象にする以上,飽くまでも刑罰ではないわけです。さらに,成人として取り扱われるわけですから,先ほど来議論がありますけれども,保護処分として正当化することも困難だと思われます。このような意味で,この処分の法的性質については,刑罰と保護処分の中間的な処分を設けるという観点から,更に理論的な検討も必要になると思います。 ○今井委員 この若年者に対する新たな処分を,どのような法的性質と捉えるか,あるいは,それをどうやって正当化するかということでございますけれども,私は,この配布資料17の7ページに書かれております中間報告の内容に,基本的に賛成でございます。   まず,若年者に対する新たな処分というものを,パターナリスティックな観点から正当化することは,やはりできないだろうと思います。それは,ここで考えております対象者は民法上の成年者であり,既に保護処分の対象から外れている18歳以上の者ですから,この点を踏まえて具体的に想定される処分を科すことの根拠を考えざるを得ないからです。そのような対象者に対して,義務として処分を受けることを命ずるわけでありますけれども,国家がそういったことをする根拠につきましては,この中間報告の7ページにも書いてありますように,そうした対象者の方が罪を犯した点,具体的には法益を侵害した点に着目せざるを得ないだろうと思います。   その上で,処分の目的が,そのような若年の対象者に改善更生に必要な処遇を行うように働き掛けるということでありますから,この中間報告に書かれているとおりでございますけれども,専ら対象者の改善更生,特別予防を目的とするということを明確にしながら,今後の処分の内容も検討すべきであり,応報を目的とするという観点は考慮する必要はないのではないかと思います。   このように,目的を明確にし,対象者の具体化,対象者の属性といいますか地位を具体的に踏まえた上で処分を考えていきますと,橋爪幹事からも発言がありましたけれども,刑法学的に考えても,通説である相対的応報刑論からも応報という観点が出てくるものではありません。繰り返しになりますが,専ら対象者の改善更生,特別予防に根差された新たな中間的処分であろうと考えまして,その限りにおいて,私もこの報告に賛成するところであります。 ○青木委員 「宣告猶予制度」に関連して意見を申し上げたいと思います。   宣告猶予制度については,過去にずっと議論されてきたわけですけれども,起訴猶予あるいは執行猶予とどこが違うかというと,裁判所が関与して保護観察などの社会内処遇を付して,それがうまくいけば前科が付かないというものだと思います。ただ,過去に検討された宣告猶予制度は,もろもろ問題があるということで実際には行われていないわけですけれども,過去の議論にとらわれずに,裁判所がとにかく関与する形で保護観察をさせて,うまくいったら前科にならないという制度は,刑事政策的には非常に意味のあるものだと思いますので,その方向の検討を更に進めていただければと思います。   実際に,具体的にどういうふうにするのかというのはなかなか難しいと思うのですけれども,例えば薬物の自己使用で考えた場合に,薬物から離脱するには保護観察が付いたほうがよくても,実際に今の状況では,初犯の場合には単純執行猶予になっていることがほとんどであろうと思います。今議論している,例えば再度の執行猶予が広がるというようなことで,初犯の場合にも保護観察を付けやすくするということも検討課題として出ていて,そういう方向もあり得るんでしょうけれども,仮にそうだとして,単純執行猶予だったものが保護観察付き執行猶予になるということは,保護観察に本人に利益になるという側面はあるとしても,明らかにそれは重罰化になると思います。   そういうことで考えたときに,保護観察は必要だけれども重罰化しない方法,あるいは社会内処遇を有効に機能させる方法として,例えば,全く思い付き的なことで,十分検討したわけではないんですけれども,懲役1年執行猶予2年,2年間保護観察に付するというような刑を解除条件付きのような形で言い渡して,保護観察に付した上で,その間,問題なく終了すれば,刑の言渡しがなかったものとして,前科にもならないような制度というようなものが考えられないのか。   これとは違いますけれども,ニューヨーク州の制度の中に,若年が対象だと思いますけれども,刑はあるけれども前科にならないというようなものもあるように拝見いたしました。何らかの工夫をしてそういう制度が考えられないかということも,是非御検討いただければと思います。   さらに,起訴猶予か,あるいは起訴かということが迷われるような事案について,保護観察ないしは保護観察類似の処遇を行うというのであれば,それに裁判所が関与するという制度も検討するべきではないかと思います。これも思い付き的なことで申し訳ないんですけれども,例えば,公訴取消し含みで公判請求ではない簡易な起訴をして,簡易な裁判所の手続で有罪認定を経て,一定期間保護観察ないしはそれに類するものに付した上で,その間問題なく無事に終了すれば公訴を取り消して,問題が生じた場合には通常の公判手続に移行するというような制度というのは考えられないかとか,それがいいかどうか分かりませんけれども,いずれにしましても,裁判所が関与する前科の付かないディバージョン制度というものは,何らかの形で更に検討していただければと思っております。 ○山下(幸)幹事 私の方からは,第2分科会の「宣告猶予制度」と,それから「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」の2点について,意見を述べたいと思います。   まず,宣告猶予制度についてですけれども,これは,この後,第3分科会において御報告があります「起訴猶予等に伴う再犯防止措置」とも関連するんですけれども,そちらの方では,検察官がこの起訴権限,起訴猶予権限を基にして,被疑者に対する一定の働き掛けを行って,それで起訴猶予にするかどうかを決めるという,そういう制度ですけれども,それは,ある意味では検察官によるディバージョンだと考えられます。   ただ,やはりそういうディバージョンを検察官が行う,そして,それは一方当事者でありますし,必ずしも刑事政策の担い手としての専門家とも言えない検察官が,しかも現在よりも非常に広大な権限を与えられるということは,問題があると思います。やはり,そのようなディバージョン的な機能は,裁判所が関与して行うべきでありまして,宣告猶予制度というのは,かつて検討されて採用されていないわけですけれども,その制度の在り方について改めて再評価をした上で,採用するかどうかを検討されるべきではないかと考えます。   第2分科会においても既に,そこでは,どちらかというと宣告猶予制度については消極的な意見が多く出されているように思いますけれども,必ずしもかつての宣告猶予制度の枠組みにとらわれることなく,裁判所が関与して,早期の社会内処遇を可能にする制度という形で,簡略な手続を設けてはどうかという意見も出されているところでございまして,もう一度,宣告猶予制度という枠にとらわれずに,新たな制度について検討していただければと思います。   もう一点は,罰金の保護観察付き執行猶予についてでございます。確かに,現在これが使われていないということがございまして,それは,やはり略式手続で現在罰金の事件が多く処理されており,略式手続では書面審理だけの手続で行われておりますので,その中で保護観察を付けるかどうかというようなことを判断するというのは,極めて難しい,困難であると考えられますし,さらに,例えば身近な事件を想定いたしますと,罪体だけではなくて,この保護観察を付けるのがふさわしいかどうかというような資料を準備する時間的な余裕もなかなかないのではないかなどが考えられるところでございます。   この制度が現在運用されていないというのには,やはり実務としての一定のそのような理解があったからだと考えられますので,それには一理があると思います。したがって,罰金の保護観察付き執行猶予制度については,今述べた点も踏まえて,更に慎重な御検討を頂きたいと思います。 ○今井委員 「宣告猶予制度」について意見を申し上げたいと思います。   青木委員と山下幹事のお話を聞いておりまして,私も,そういう新しい制度はかなり魅力的だなと思いますし,例えば,裁判所が関与して新しい制度を作るということも,検討に値すると思いますが,今日の会議の主たる目的は,第2分科会で検討されてきたことをベースにして,どういう問題点があり,私たちがどう考えるかということだと思いますので,この配布資料の5ページに掲げられた検討の過程について,意見を申し上げたいと思います。   そこでは,宣告猶予制度を考えるとした場合に,二つの制度設計が示されておりますけれども,結論として,私もそこで問題があると指摘された点は,理論的にも運用面においても,なお熟考すべき課題だろうと思います。   まず,第一の制度設計でありますけれども,これは,本来は起訴猶予相当である方を起訴して宣告猶予の手続に乗せていくという制度であると考えられます。けれども,処遇の充実という目的があるといたしましても,本来起訴されずに済む方を起訴して公判手続に乗せるということには,やはり私もかなり抵抗がございます。このような方を対象とする場合,起訴猶予相当の事案で,検察官が被疑者の処罰を求めるまでではないのですが,宣告猶予が相当であると考えて,あえて起訴するということになってくるのだろうと思いますが,そういった立場に対象者を置いてよいのだろうかという基本的な疑問があります。この点は,改正刑法草案の部会案との関係でも指摘されていたところだろうと思いますので,なお検討が必要だと思います。   また,もう一つの②の制度設計でありますけれども,そこでは,裁判所が実刑か執行猶予かを迷う事案において,宣告を猶予して社会内処遇を行い,その間の行状を考慮して,最終的に実刑と執行猶予のいずれかの判決をするということが想定されていると思います。そのような制度は,現在の執行猶予制度とそれほど運用面において変わらないのではないかという気もいたします。そこで,執行猶予制度に加えて,このような②の制度を導入する点のメリット,デメリットをより精査され,検討を続けていただければと思いますし,同じ感想は,改正刑法草案部会案についても妥当すると思います。繰り返しますと,執行猶予や起訴猶予との使い分け,在り方,それらの制度に加えて,新たにここでの目的に沿った制度を構築する必要性と,運用面を想定した御検討を願えればと思います。   今後,第2分科会におきまして,さらに,①,②を基本として具体的な制度が検討されていかれると思われますので,是非ここで掲げられた問題を詳細に御検討いただければと思う次第であります。 ○井上部会長 ほかに御意見がある方はいらっしゃいませんか。よろしいですか。   それでは,次に移らせていただきます。   第3分科会の担当する論点についてですが,小木曽分科会長から検討状況の御報告をお願いいたします。 ○小木曽委員 第3分科会は,論点表の大項目2に掲げられた論点のうち,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」などの論点について検討いたしました。   第3分科会でも,3回にわたり会議を開催し,1巡目の意見交換においては,それぞれの論点に関係する従来の制度,その運用あるいはこれらに対する評価・問題点等を把握しつつ,新たな制度を構築するとしたらどのようなものがふさわしいかなどの概括的な議論を行いました。2巡目の意見交換においては,1巡目の議論を踏まえ,提案のあった仕組みの意義や検討課題などについて更に議論いたしました。   分科会における主な意見を各論点ごとに御紹介いたします。   まず,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」についてです。配布資料17の8ページを御覧ください。   この論点については,現在検察庁において「入口支援」として,起訴猶予となる被疑者を福祉的支援につなげるなどの取組が行われていることから,その取組の現状と問題点について意見交換を行ったところ,資料「1」にあるとおりの意見などがありました。   次に,そこで掲げられた問題点を解決するための方策として考え得る事項として,資料の「2」の(1)の「ア」及び「イ」の基本的枠組みについて意見交換を行いました。   「ア」は,現在検察庁において「入口支援」として行われている福祉的支援の取組を進めることや,若年者の問題性への対応として生活環境調整を行うことなどのほか,更生保護に関する規定の整備として,更生緊急保護の対象者の拡大や,保護観察官による生活環境調整の明示的規定の新設についてであり,「イ」は,検察官が起訴猶予に際し,一定の守るべき事項を設定し,指導・監督を行う仕組みを導入することや,その仕組みにおいて被疑者の同意を要するかなどについてですが,それぞれ資料にあるとおりの意見や検討課題が示されました。   「2」の(2)は,検察官が起訴猶予等に伴って再犯防止措置を採るのに際して,少年鑑別所の調査機能を活用することについてであり,資料にあるとおりの検討課題が示されました。   続いて,「保護観察・社会復帰支援施策の充実」についてです。配布資料17の9ページを御覧ください。   この論点については,まず,保護観察として行われている施策を事務当局から説明してもらい,これらの概要や運用状況を踏まえた上で意見交換を行いましたところ,資料「1」の「現在行われている取組の現状及び問題点」にあるとおり,課題や問題点の指摘がありました。   次に,それらの問題点を解決するための方策として考え得る事項として,資料の「2」の(1)から(3)までについて意見交換を行いました。   「2」の(1)は,保護観察・社会復帰支援施策の充実に向けた方策として,今後どのような仕組み・取組が考えられるかという点についてであり,「ア」から「ウ」にあるとおり,問題性を改善するための指導の充実という観点からの意見,より犯罪被害者等の視点に立った処遇の充実という観点からの意見,良好措置の在り方という観点からの意見がありました。   「2」の(2)は保護観察・社会復帰支援施策において重要な役割を担っている民間施設の処遇体制の整備について,(3)は少年鑑別所の調査機能の活用についてであり,それぞれ資料にあるとおりの意見がありました。   続いて,「社会内処遇における新たな措置の導入」についてです。配布資料17の10ページを御覧ください。   この論点に関しては,まず,現行法上,保護観察の特別遵守事項として設定し得る類型や,当該類型に応じた標準的な設定の例等を事務当局から説明してもらい,これを踏まえた上で意見交換を行いましたところ,資料「1」の「現在行われている取組の現状及び問題点」にあるとおり,課題や問題点の指摘がありました。   次に,それらの問題点を解決するための方策として考え得る事項として,資料の「2」の(1)及び(2)について意見交換を行いました。   「2」の(1)は,社会内処遇において必要と考えられる措置の内容として,どのようなものが考えられるかという点についてであり,「ア」及び「イ」にあるとおり,自助グループへの参加や施設への通所,更生保護施設等への宿泊等を特別遵守事項として設定できるようにすることに関する意見,「ウ」にあるとおり,遵守事項違反を重ねた場合の少年鑑別所等への収容に関する意見,「エ」及び「オ」にあるとおり,犯罪被害者の視点を踏まえた措置等に関する意見がありました。   「2」の(2)は,新たな措置を実施するための手続についてであり,現行法の特別遵守事項と比較して,権利制限が同程度のものであれば手続を変更する必要はないとの意見がありましたが,制限が大きいものについては,裁判所がより強く関与する仕組みとすればよいのではないかとの意見と,現行法の関与方法で不十分なところはないのではないかとの意見等がありました。   最後に,「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」についてです。配布資料17の11ページを御覧ください。   この論点についても,資料の「1」の「現在行われている取組の現状及び問題点」について意見交換を行い,課題や問題点が指摘されました。   次に,現在の問題点を解決するための方策として考え得る事項として,資料の「2」の(1)及び(2)について意見交換を行いました。   「2」の(1)は,施設内と社会内における処遇内容の一貫性の確保についてであり,「ア」から「ウ」までにあるとおり,処遇プログラムの一貫性の確保という観点からの意見,段階的な処遇の確保という観点からの意見,処遇における情報共有という観点からの意見がありました。   「2」の(2)は,住居・就労等についての施設外の機関等との連携の確保についてであり,外部通勤作業や外出・外泊の実施に資するものとするという観点から,更生保護施設等の活用,受入れ就労先の環境整備などに関する意見がありました。   第3分科会における検討状況は以上です。 ○井上部会長 ありがとうございました。   それでは,第3分科会が担当する論点について御意見を伺いたいと思います。   これも,今までと同様,まずは第3分科会に属されていない委員・幹事から御発言いただくのが適当かと思います。御発言のある方は挙手をお願いいたします。 ○武委員 配布資料17の9ページにあります「より犯罪被害者等の視点に立った処遇の充実」のところで,少し経験をお話ししたいと思います。   ほとんどの加害少年は,刑事裁判,民事裁判のときに,「本当に悪いことをした,反省しています,一生かけて償います」と言うんです。民事裁判を起こして,本当は判決までいきたいけれども,和解の方がいろいろな約束事,条件を付けられると説明を受けて,仕方なく和解をする人もいます。まず謝罪をすること,命日にはお墓参りをすること,手紙を書くこと,そして支払い続けることなど,いろいろな約束事を,被害者が悩んで悩んで一つずつ決めるんです。でも,それが守られることは本当に少ないです。国の機関である裁判所の中で,加害者が言ったことや約束事が守られていないんです。だから,謝罪,賠償のことなどを是非,特別遵守事項に入れていただきたいです。きちんと明文化していただきたいです。国が逃げ得を教えてはいけないからです。   今までしっかりと教育されていたなら,私たちはこれほど苦しい思いをすることはなかったと思うんです。早い段階からの教育がとっても大事です。罪と向き合い,どうやって謝罪をしていくのか,賠償はどうしていくのか,考えなければならないです。刑務所で作業して,もしもらえたお金があったなら,少しでも,少しずつでも払っていくなど,具体的に考えてほしいです。なぜかと言いますと,教えるとか,教え込むだけでは駄目だと思うからです。行動するというのが,私は大事だと思うんです。それを,しっかりと最初の段階から教えるべきだと思います。判決の前だから謝る,仮釈放,仮退院が近くなったら謝るではいけないのです。早い段階から謝る,支払い続けることを身に付けさせることが,すごく大事なことだと思います。例えば,保護観察中だけ頑張ったらいいとか,それもいけません。社会に出てからもそれを続けて行動するという,本当の贖罪教育が大事だと思うんです。   悲しいことに,私たちの子供の命はもう戻ることはないです。私たち家族も,元には戻れません。でも,加害者が心から本当に悪かったと思って償いをし続けるということが感じられたときに,初めて私たち遺族は,今よりは少し生きていきやすいのではないかと思います。   もう一つ,「心情伝達制度」というのが,今あります。仮釈放とか仮退院の前に,遺族に話を聞きましょうという制度があって,それを利用した人もたくさんいます。でも,その人たちに話を聞くと,もう仮釈放も仮退院も決まった上で,形だけ遺族の話を聞いているのではないかという印象を受けているんです。遺族は,何日も前から泣きながら文書を考えるんです。子供のことを思い出しながら考えるのですが,それが本当に伝わっているのだろうかって。行かなくても一緒ではないかということを,皆言っています。だから,そういう伝達をしたなら,それがどういかされるのか,どんなふうに関係していくのかというのを,きちんと後で教えていただきたいです。   もう一つ言えば,仮釈放や仮退院が決まってからではなく,資料17の10ページにも書かれていますように,早い段階から,遺族がこんなことを思っている,こんなことを聞きたいという,そういうことを早い段階からしてほしいなと思います。例えば,遺族がこんなことを加害者に言ってもらいたい,こんなことをしてもらいたい,こんな教育をしてもらいたいって言ったときに,そのときも同じです。一方通行ではなく,もしそれを聞いたなら,それは,では,こういうふうにいかしていきますよとか,こういうふうにいかされましたとか,その後,きちんと遺族に教えてもらいたいです。   今まで,被害者の方は何もかもが一方通行で終わっているような気がするんです。それでは,私たち遺族は,置いてきぼりを受けているような感覚になってしまいます。何をしても無駄ではないかって,やはり思ってしまうんです。だから,そういうことを早い段階から,時期を考えながら,被害者からの心情を聞き,それをどう反映させるか,私は,それが加害者にとっても大事なことだと思うので,そういうことも是非,今回考えていただきたいです。   私たちは,何も落ち度のない子供を殺されています。家族を殺されています。それだったら,国が私たちに代わってきちんとしてくれるはずだと思いました。まずは,敵討ちができません。敵討ちをしたいのです。でもできないです,もちろんそれは分かっています。だったら,国がきちんとしてほしいんです。私たちに有利にしてほしいというのではないのです。私たちに代わって,国がきちんと,被害者のことも考えながら,そして,もちろん加害者のことも将来を考えながらですが,しっかりと,私たちにも少し分かるようにというか,私たちの視点ももう少し入れながら,国が考えていただきたいなと思います。今回は,是非それを盛り込んでいただきたいです。ありがとうございました。 ○山下(幸)幹事 「起訴猶予等に伴う再犯防止措置」について,意見を述べます。   先ほども少し宣告猶予制度のところで述べたんですけれども,この制度というのは,検察官の起訴権限を背景として,一定の事項について指導等を行うということが考えられているようですけれども,第3分科会の方でも指摘がされているようですが,それが義務かどうかという議論がありますが,それが義務でないとしたとしても,事実上の起訴権限を背景に行うものですから,事実上の強制ということになりますので,やはり検察官にそのような権限を与えることについては疑問がございます。   そのような措置というのは,一種の社会内処遇というものを,まだ罪責が確定していない段階で行うということになりますので,その意味でも疑問がありますし,起訴すべきではないということになる人について,そのような措置が行われれば,一種の保安処分として機能するということにもなりかねません。いずれにしても,この起訴猶予等に伴う再犯防止措置については,様々な疑問点,懸念点がございますので,そういうことも踏まえて,慎重に御議論していただければと思います。 ○奥村委員 配布資料17の10ページの「犯罪被害者の視点等を踏まえた特別遵守事項」と「刑の執行初期段階における被害者等心情等伝達制度等の創設」の2点について,質問があります。まず「エ」の方ですが,現在ストーカーの問題とか,被害者に対する接近について禁止する措置とかありますけれども,具体的にはどの程度まで,どういう被害まで拡大されるのかということについて検討されているかというのが1点です。   もう一点は,「オ」の方ですけれども,刑の初期執行段階において,心情や意見等を聴取して,それを踏まえた矯正処遇を行うということですけれども,その具体的な内容を,今御議論なさっている段階で結構ですので,明らかであれば教えていただきたいと思います。 ○羽柴幹事 今御質問いただきました1点目,配布資料17の10ページの「2」の(1)「エ」の関係でございます。この点の議論状況といたしましては,御指摘のとおり,現行法上,被害者への接触を禁止するということ,あるいは,いかがわしい場所に立ち入らないということなどについて,特別遵守事項で設定することができるとされていますけれども,現行法上で設定されている内容のもので十分であるのか,仮に十分でなければ,更に設定できる内容としてどのようなものがあるのかということを,今後検討すべきであろうという形で,検討課題が示されているところです。それについて,更に具体的に,この点をこのようにというような御指摘があるという状況ではございません。   それから,2点目の「オ」の関係ですけれども,これも,基本的に記述しているような御意見があるという状況です。先ほど武委員からも御指摘がありましたけれども,仮釈放の審理に際して,被害者の意見聴取というものがあり得ますが,その段階に至って御意見を聞いても,なかなか結果に反映するということは難しいのではないかという疑問が示され,また,処遇にいかすということを考えても,時期的な問題からなかなか反映するというところにつながらないのではないかといった御指摘がございました。   そこで,自由刑の実刑の場合に,心情伝達と統合するような形で,刑の執行の初期の段階で,被害者の被害の状況や受刑者に対する要望等を聴取する機会を設けておいて,そのうち,受刑者に伝達した方がよい事項については伝達をし,その上で,被害者から聴取した内容も参考にしながら,被害者の視点に立った矯正処遇を実施していくようにし,そして,仮釈放審理に際しては,それを踏まえた処遇の成果,これを含めて判断をしていくようにすべきであるといった御意見が出されたところです。 ○大沢委員 「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」について,まず意見というか,感想も述べたいんですけれども,やはり,仮に,今後少年法の適用対象年齢が引き下げられた場合を考えてみますと,これまで保護処分の対象になっていた18歳,19歳で,比較的軽微な罪を犯した18歳,19歳について,かなり起訴猶予になるということが考えられると思います。そういうことを考えると,そういった起訴猶予になった18歳,19歳に対して,何らかの働き掛けというのはやはり重要だと思いまして,この起訴猶予に対する再犯防止措置の在り方での働き掛けというのは,やはり検討に値すると思いますので,是非具体的な検討をお願いしたいと考えています。   それから,この第3分科会でテーマとなっている社会内処遇のメニューを増やしていく,あるいは施設内と社会内の段差をなくしていって,ソフトランディングしていくという方向性は非常に重要だと思いますので,是非お願いしたいと思っています。それに伴って,この第3分科会のこの制度設計が進んでいきますと,非常にこれまで以上に社会内処遇というもののウエイトが大きくなってくるんだと思います。そういったときに,この社会内処遇を担っていく担い手が大丈夫なのかなということに一抹の不安も感じるわけです。ですから,特に,今,高齢化が指摘されている保護司とか,そういった担い手を確保していくということを同時に考えていかなければいけないのではないかなというふうな感想を持ちます。   それからもう一つ,社会内処遇が拡大していくということになると,やはり社会で受け入れていくということに対する,国民というか地域住民というか,その理解を得ていくということも必要なのではないかと思います。どうしても実際に自分の差し迫った地域でそういうことが起きたとき,また,身近にそうした方が出てきたときに,それを受け入れられるかどうかということは,やはりいろいろ問題が起きることもあると思いますので,粘り強く,それは,私たちメディアの役割でもあるとは思うんですけれども,こういった社会内処遇の重要性,またそれに対する国民の理解を得ていくということも,並行してやっていかなければいけないのではないかなというふうなことを,感想として思った次第です。 ○山﨑委員 私の方では,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」について,意見を述べさせていただきます。   この論点は,私が担当しております第2分科会の宣告猶予制度とやはり関連するところですので,大変関心を持って議論を拝見させていただいております。この点に関して,過去の刑法の全面改正ですとか,被収容人員適正化方策に関しての当審議会での過去の議論状況なども確認させていただいておりますけれども,そういった議論の際には,やはり検察官が起訴猶予に伴って,保護観察を含む社会内処遇を行うという方向性については,いずれも否定的といいますか,採用されずに今日まで至っていると理解しております。そういった過去の議論において,どういった問題点が指摘されているかということは,今回の議論でもやはり十分に踏まえて御検討いただく必要があるのではないかと思っております。過去の議論を見ている限り,やはり旧刑事訴訟法とは異なりまして,現行憲法の下での現行刑事訴訟法の解釈として,検察官の権限ですとか役割をどういうふうに考えるべきかといった根本的な問題が,やはりあるのではないかと感じております。ですので,今後第3分科会でこの問題を検討するに際しましても,その必要性,有効性というのはもちろんなのですが,他方で,法的な面から見て許容されるものであるのかどうか,という点も慎重に御検討いただきたいと思っております。   また,具体的な内容としましても,中間報告にもございますが,検察官が対象者に対して守るべき事項を設定して,一定期間指導・監督を行い,その結果いかんでは,起訴もあり得るとされ,その一定期間については,2年ですとか1年といったような御議論がされていると認識しておりますけれども,そうなりますと,これまでであれば,社会内処遇に付されることなく起訴猶予となっていた対象者がその対象となって,相当期間にわたって検察官の指導・監督下に置かれる,さらに,結果によっては起訴される可能性が出てくるという意味で,やはり重罰化と評価されるものになるのではないかと感じております。   さらに,そうなりますと,例えば指導・監督の期間を1年と考えますと,起訴,不起訴が決せられるまで1年間,捜査期間が続くということになり,対象となる被疑者を非常に長期間不安定な地位に置き続けて,その負担をかなり重くするのではないか,という点が懸念されるところです。先ほど今井委員から,宣告猶予については対象者にかかる負担ということを考慮しなければいけないという御発言がありましたけれども,起訴猶予に関する措置を検討される際にも,やはりそういった観点で慎重な御検討をお願いしたいと考えております。 ○青木委員 私の方から,「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」に関連して,一言だけ意見を述べさせていただきたいと思います。   ソフトランディングが必要だということはそのとおりで,連携は是非深める方向でと思いますけれども,その中の一つのやり方として,施設内処遇の段階から少しずつ社会に近いものを持ち込んでいって,施設内で段階的に社会に近い生活ができるようにしていくというようなことも必要なのではないかと思っておりますので,その観点からの検討も是非お願いしたいと思います。   外部通勤などを増やすのは非常に良いことだと思うのですけれども,それは,外部との調整が整わなければできないわけですが,施設内でより社会に近づく方向というのは施設内でできるわけです。例えば,段階的に施設内での自由度を上げていくと。鍵のない部屋にして,一定の範囲では自由に動けるようにするとか,今,釈放前に,本当にわずかな期間だけ使っている普通の住宅のようなところがありますけれども,そういうところにもう少し早く入れるような形にして,受刑者自身に掃除,洗濯,炊事など普通の生活をそこでしてもらうとか,あるいは,施設内の売店で受刑者が売ったり,買ったりというような,社会に近いようなことをするというようなことも考えられるのではないかと思いますので,そのような方向での検討も是非お願いいたします。 ○廣瀬委員 起訴猶予と罰金になるという層がかなり問題があるというのはそのとおりで,それに伴う対応をするということでの検討は,是非前向きに進めていただきたいと思います。   ただ,そのやり方としては,起訴を決めるというプロセスの中で対応するというのもあるでしょうけれども,旧少年法のような,例えば,起訴猶予にした上で,保護処分に準ずるような何らかの措置をしていくという発想もあり得るのではないかと思います。それから,罰金に相当するものについても,何かそういうことを考えていくという余地は十分あるのではないかと思います。ただ,その場合にも,調査だとか,審判の手続,あるいは人権保障をどうするかということが問題点になるだろうと思いますので,そういうところも少し広げて検討していただければと思います。 ○武委員 先ほどに加えて話をしたいと思います。   私は,最近,刑務所,少年院から出所するときに就職の支援をしている企業の代表の方とよく話をしています。その方がおっしゃるのは,出る前には,「就職して頑張ります」と言うけれども,出てきて,仕事を始めると,やはりすぐに辞めてしまうので,とっても苦労しているという話でした。それで,そのときに,加害少年たちと話をすると,被害者のこと,被害者に謝罪をすること,被害者に賠償金を支払うことの発想がその子たちに全くないと言うんです。それにはびっくりしたとおっしゃっていました。   それを考えると,どんな教育をされていたんだろうということになります。今は被害者の視点を入れた教育がされているという話を聞きますが,加害少年の現状を見ていると,それは本当に足りないと思うんです。せっかく社会で受け入れて応援しようという受け皿の企業でさえ苦労しているということになると,そういう企業の協力者が減るのではないかなと思うので,やはり教育というのがとても大事だと思います。先ほどの繰り返しになりますが,初期段階から,被害者から意見を聞いたり,心情を聞いたり,それを反映させるということに力をもっと入れていただきたいと思います。   それから,被害者の心情や意見を聞く場所が保護観察所なのか,刑務所,少年刑務所,少年院なのかは分かりませんが,聞いたところだけでその内容を持つのではなくて,連携をしていただきたいです。少年刑務所,少年院,そして保護観察所,それから保護司がちゃんと連携をとりながら,被害者の心情を,どこが聴取してそれをどう反映してきたのか,そういうことを,共有しながらつないでいただきたい。うまくバトンタッチをしていくようにしていただきたいです。それでなければ,保護観察が解けたとき,保護司がもう付かなくなったときに,その子たちはまた元に戻ってしまうという可能性が高いので,早い段階からの連携,聞いた話を共有しながらいかしていくということがとても大事だと思いますので,是非考えていただきたいです。 ○井上部会長 ありがとうございました。   今回はこの程度でよろしいでしょうか。   それでは,第3分科会の担当論点に関する議論は,一応これまでとさせていただきます。   最後に,全体を通じて,横断的な御意見や,これまで出されていない論点についての御意見,あるいは論点表の大項目の1,少年法の適用年齢の点に関する御意見など,御発言があればお伺いしたいと思います。 ○奥村委員 2点ございまして,まず,一つは,横断的な御検討をお願いしたいと。横断的と申しますのは,三つの分科会に分かれていますけれども,第1分科会と第2分科会の中で御議論いただいている問題ですが,第2分科会との関係で若年者に対する新たな処分の少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げると,対象者について,比較的軽微な罪を犯して,18歳,19歳が成人となりますため,橋爪幹事がおっしゃったように,成人となるとこれは保護の対象から外れますので,したがって,普通不起訴になっているというものが,この中間報告では,更生のための保護の対象にすべきだというのは過度の干渉になり得るという御趣旨だったと思うんです。これに対して今井委員などは,この提案に賛成とおっしゃったわけですけれども,そこで,第1分科会のところの若年者に対する保護の問題がありますよね。第1分科会での議論ですと,こことの絡みで,横断的に議論していただければと思います。   私は,その点,橋爪幹事の御意見に基本的には賛成ですが,18歳,19歳が成年になった場合,これは保護の対象から外れる者に対して新たな処遇とか働き掛けをするということですので,これは大切かもしれませんが,過度の干渉にならないよう,慎重にしないといけないと思います。   それから,もう一つは,第3分科会と第1分科会との関係ですけれども,これは,第3分科会で配布資料17の9ページのところ,先ほど申し上げているように犯罪被害者に対する具体的な賠償計画を立てることについて,これを被害回復の点で検討するということですけれども,この点を,第1分科会の自由刑の単一化の問題で,刑事施設内での作業の在り方の検討は,第3分科会における社会内処遇の一環としての社会復帰支援施策の在り方についての検討とがあいまって,受刑者が自立し得る社会復帰と再犯防止目的及び被害者等に対する賠償義務の履行目的の実現にいかされるのではないかと思います。 ○山下(幸)幹事 三つの分科会でいろいろ議論がされているわけですけれども,その分科会は必ずしも若年者に限った形での議論ではないわけですが,ただ,その中でもやはり,今日も出ていますけれども,いわゆる,現在年長少年とされている18歳,19歳が成人になった場合という仮定ですけれども,その場合の処遇についても議論がされているところであります。私もかなり傍聴はさせていただいたんですけれども,これまでの三つの分科会の議論からすると,この18歳,19歳が成人になった場合に考えられるものとして,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置」,「罰金の保護観察付き執行段階の活用」,「若年者に対する少年の新たな処分」,それから「少年院での受刑」などがそれに該当すると考えられます。   この部会において,現在家庭裁判所における年長少年に対する調査,処遇については,大変良好なものであるということは共通認識があるわけでございますが,今回出されている,この検討されている制度というのは,現在の家庭裁判所における調査,処遇と比較すると,ちょっと余りにも見劣りがするものではないか,また,再犯防止という観点からも見ても不十分なものではないかと考えられますので,今後,三つの分科会における議論においては,現在の家庭裁判所等において行われている制度との比較を意識して,それで議論していただければと思います。 ○橋爪幹事 先ほどの奥村委員の御発言に関連して申し上げますけれども,私の発言の趣旨に不明な点があり,大変失礼いたしました。   私は,「若年者に対する新たな処分」につきましては,総論としましては賛成でございます。少年の上限年齢が引き下げられた場合,本来,18歳,19歳について刑罰を科すのが相当であるべきところ,やはり軽微な犯罪であって,起訴が相当ではない事件があり得る以上,そのような対象者については,改善更生に向けられた何らかの措置が必要であり,新たな処分の導入自体は積極的に検討すべきと考えますが,それが飽くまでも刑罰ではない以上,また,成人となっており,保護処分でもない以上,中間的処分という観点から,処分の具体的な内容については検討が必要であるという趣旨で申し上げました。 ○山﨑委員 山下幹事の御発言とも関連するのですけれども,少年法の少年の上限年齢を仮に引き下げた場合に懸念される刑事政策的な問題点に対して,いろいろと他の制度でどういうことが可能かということも今検討しているかと思うのですが,廣瀬委員からも御発言がありましたように,やはり現行の少年法のシステムで家庭裁判所調査官の調査・調整機能が果たしている意義というのは,極めて大きいだろうと感じています。   これはヒアリングや現地視察でも確認されたところだと思いますけれども,現行制度では家庭裁判所調査官がかなり綿密な調査をし,かつ教育的働きかけなどの調整機能,家族関係の調整など,そういったことを行っていることによって,その対象者の問題性を正確に把握して,その対象者に対してなすべき働き掛けの内容を正確に決することができているということかと思います。逆に言うと,それが確保されないままに,何かそのような制度だけを作ったとしても,やはりその対象者の問題性を見誤ってしまったり,更には働き掛けが的外れなものになってしまって,処遇の実が上がらないというようなことが考えられると思います。   ですので,それぞれの分科会の各論点において,やはり現行,実績のある家庭裁判所調査官の調査機能,調整機能というのが,どのような形で活用できるのか,できないのか,できないとすれば代わり得るものとして,本当に代わり得るものが,他のものがあるのかといった点を慎重かつ詳細に検討する必要があるのではないかと考えております。 ○井上部会長 ほかに御意見がなければ,本日はこのくらいにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,ひとわたり御意見を伺いましたので,各分科会におかれては,今後,本日皆様から頂いた御意見をも踏まえつつ,引き続き,考えられる制度概要案や検討課題についてまとめるための検討を行っていただきたいと思います。   その上で,適当な時期に当部会に報告していただき,当部会において,更に意見交換を行い審議を進めることとしたいと考えておりますが,このような進め方でよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   ありがとうございます。   それでは,本日の審議は,これで終了します。   今後の予定について,事務当局から説明をお願いします。 ○羽柴幹事 今後は,各分科会の第4回会議を行うことになります。日程については追ってお知らせいたします。 ○井上部会長 引き続き,よろしくお願いします。   なお,本日の会議の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明記した議事録を作成し,公表することとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。              (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。   本日は,どうもありがとうございました。 -了-