法制審議会 会社法制 (企業統治等関係)部会 第9回会議 議事録 第1 日 時  平成30年 1月10日(水)   自 午後 1時30分                          至 午後 2時52分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  会社法制(企業統治等関係)の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神田部会長 皆様,明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。   それでは,予定した時刻がまいりましたので,法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会の第9回目の会議を開催させていただきます。   皆様方には,本日も大変お忙しい中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   それでは,いつものように,まず本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○竹林幹事 本日は,お手元に議事次第,配布資料目録,部会資料15,参考資料36から39まで,委員等名簿を配布させていただいておりますので,御確認いただければと存じます。   なお,参考資料38と39でございますけれども,これらは,前回の会議で古本委員から席上配布いただきました資料について,公表用として御提出いただいたものでございます。そのため,改めて参考資料として扱わせていただいております。   以上となります。   また,本日ですけれども,藤田委員,岡田幹事におかれましては,御欠席との御連絡を頂いております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,早速ですけれども,本日の審議に入らせていただきます。   本日ですけれども,前回に引き続きまして,会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案のたたき台について,御審議をお願いいたします。   まず,部会資料15の第3部の「第1 社債の管理」について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○邉関係官 それでは,部会資料15の3ページ目,第3部「第1 社債の管理」ついて御説明させていただきます。   本日の部会資料15の御説明につきましては,第一読会及び第二読会から変更している点など,重要と思われる事項を中心に御説明させていただきたいと思います。   「1 社債管理補助者」では,まず「(3)社債管理補助者の義務」の③として,社債権者に対して報告等をする義務を新たに設けております。当部会において,発行会社と社債権者との間の情報伝達の仲介を社債管理補助者の中心的な職務と位置付けるべきであるという御指摘や,社債の総額の10分の1に満たない社債を有する社債権者であっても,社債管理補助者を通じて他の社債権者に社債権者集会の招集開催の要否の意思確認をすることができるような仕組みが必要であるという御指摘も頂いていることを踏まえて,このような規定を設けております。   「委託の本旨に従い」としておりますのは,報告等の義務の対象となる事項の範囲や報告等の方法は,社債管理補助者の権限その他の委託契約の内容,社債に係る契約の内容及び社債の性質などを踏まえて判断されるものであることを前提としており,画一的な内容の報告義務を社債管理補助者に負わせることは相当でないと考えられるためです。   「(4)社債管理補助者の権限等」の③に関しては,第二読会において委託契約の定めによって仮差押えや仮処分を社債権者集会の決議によらずにすることができるようにすることも考えられるという御指摘なども頂いておりますけれども,社債管理補助者の権限を社債管理者よりも裁量の余地の乏しい限定された権限のみとし,責任についても社債管理者ほどの厳格な規定を設けないものとしている社債管理補助者の位置付けからすると,そのような規律を採ることは難しいと考えておりまして,第二読会でお示ししたとおりの内容としております。   続きまして,5ページ目,「(10)社債権者集会の招集等」の②と③に関してですけれども,第二読会において,②と③の場合に加えて,社債管理補助者は,委託契約において定める場合には,社債権者集会を招集することができるようにすべきであるという御指摘を頂いております。ただ,このような規律につきましても,社債管理補助者の権限を裁量の余地の乏しい限定された権限のみとする観点からしますと,設けることは難しいのではないかと考えておりまして,こちらについても第二読会でお示ししたとおりの内容としております。   (10)の④と⑤においては,社債権者集会の決議の執行者に関する規律を設けております。④のとおり,社債管理補助者についても原則として社債管理者と同じ規律の適用があるとしつつも,⑤のとおり,その例外として社債管理補助者の権限に属する行為に関する事項を可決する旨の決議以外の社債権者集会の決議の執行については,委託契約において別段の定めをすることができるものとしております。これは,⑤のような例外を設けない場合には,社債管理補助者が委託契約締結時に想定していなかったような事項に係る社債権者集会の決議であっても,執行しなければならないものとなるという懸念もあり得ることを考慮したものです。   「(11)募集事項等」の①ウにおいては,委託契約において社債権者へ報告等をすべき社債の管理に関する事項又は当該報告等の方法を定める場合には,その定めの内容は,社債管理補助者の権限の内容と同様に社債権者にとって重要であるといえることから,その定めの内容についても,募集事項としております。   続きまして8ページ目,「2 社債権者集会」の「(1)元利金の減免」ですけれども,社債権者集会の決議により元利金の全部又は一部の免除をすることができるという現行法の解釈を明文化するために,会社法第706条第1項第1号に掲げる行為として,当該社債の全部についてするその債務の免除を加えるというものでございます。   「(2)社債権者集会の決議の省略」は,社債権者の全員が書面により同意をした場合には,当該提案を可決する旨の社債権者集会の決議があったものとみなし,かつ,会社法第734条第1項の適用を除外し,裁判所の認可を受けることも要しないものとすることで,会社法上,強行法規として要求されている社債権者集会の決議については,社債権者の全員の同意をもって,これに代えることはできないという解釈に仮によったとしても,社債権者の全員の同意をもって,社債権者集会の決議に代えることができるものとする見直しでございます。   私からの説明は以上となります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,皆様方から御質問,御意見をお出しいただきたいと思います。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。   神作委員,どうぞ。 ○神作委員 ありがとうございます。   2点御意見を申し上げ,1点確認をさせていただきたいと思います。   まず,御意見でございますけれども,資料15の第1の1の(3)の③のところでございます。この社債管理補助者の中心的な義務が,発行会社と社債権者との間に入って,その情報の伝達を媒介すると。これが,社債管理補助者の非常に重要な期待される機能であろうということは,前回ですか,申し上げさせていただいたとおりでありまして,このように社債管理補助者が何をするのかということを明確にしていただけるというのは,大変有り難いことだと思うのですけれども,この「委託の本旨に従い」という文言が入りますと,社債管理補助者の情報伝達の対象ですとか方法等について,やはり非常に不明確な点が生じると思います。したがいまして,もし可能であれば,この「委託の本旨に従い」というよりも,これはもう委託契約において,正に中心的な任務だと思いますので,「委託契約の定めるところに従い」というような文言に変更したり,あるいは,(注)を付けるようなことができないかどうかということを検討していただければと思います。   それから,社債管理について,4ページでございますけれども,(7)の②でございます。①と②に関連することでございますけれども,②で連帯責任が課されておりますけれども,これは,飽くまでもこの社債管理者の場合と違って,(7)の①によって社債管理補助者は各自その権限に属する行為をするものとするということでございますので,この社債管理補助者が複数いる場合であっても,原則として相互に監視義務のようなものが生じるものではないということで理解に間違いがないか,この点について,これが御確認させていただきたい点でございます。   社債権者集会についても,併せてよろしいでしょうか。   8ページ,2の「(1)元利金の減免」でございます。これも何回か発言させていただいて,繰り返しになり恐縮でございますけれども,元利金の減免というのは,社債権者にとっては非常に大きな事項でございまして,これは,自分の意思に反して減免されるということは,あるいは異例なことなのではないかと思います。もちろん,私自身,この社債権者集会の多数決でこの元利金の減免をすることに合理性がある場合があるということは申し上げてきたところでございますけれども,この元利金の減免については,繰り返しになって恐縮ですけれども,この減免が可能であるということを,社債契約にやはり明示しておくということが,社債権者の期待を裏切らないという観点から望ましいのではないかと思います。   比較法的に見ても,多数決で債権をカットできるというのを認めることが当然かというと,必ずしもやはりそうではないと思いますし,マーケットのことを考えた場合には,元利金の減免が可能であるということが取得するときに分かるという,こういう仕組みを考える必要があるかと思います。もちろん,社債契約に書く以外にもそういう手段があるのかもしれませんけれども,しかし,ドイツの経験からすると,オプトイン方式と申しますか,この減免が可能なものと可能でないものという2種類を設けるということが,取り分け社債権者の保護及び市場という観点からは望ましいのではないかと思います。したがいまして,この(1)に,できましたら注意書きのようなものを付けていただいて,このオプトイン方式のようなものもあるということを書いていただけると,大変有り難いと存じます。   以上,2点御意見と,1点御確認を申し上げました。よろしくお願いいたします。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○竹林幹事 今,神作委員から御確認を求められた点ですけれども,私どもといたしまして,社債管理補助者が複数いるような場合に,相互の監視義務を課すというようなことを想定しているわけではございません。②の方で連帯債務者となるような場合につきましても,それぞれ業務を遂行する上で注意義務違反が認められるような場合を念頭に置いておりまして,監視義務違反があるというようなことを念頭に置いているものではございません。 ○神田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。   それでは,ほかにいかがでしょうか。沖委員どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。   まず,前回,私の方から申し上げた要望事項ですけれども,社債権者集会の決議を要する行為や招集につきまして,一部委託契約に基づく保全処分や招集権を認めることを検討していただきたいということを述べましたが,今回の部会資料で,できない理由をかなり詳しく御説明いただきまして,ありがとうございました。その点につきましては理解いたしました。   その上で,意見と質問をさせていただきたいと思います。   まず,意見の方でありますが,まず社債管理補助者の資格についてであります。この問題につきまして,参考資料36としまして,2017年11月14日付けの日弁連の意見書を提出しておりますので,そちらを御覧いただけますでしょうか。   この趣旨は,新しい社債管理機関の資格要件を拡大する方向で検討すべきということと,その候補者としては,弁護士,弁護士法人も検討の対象にしてほしいというものであります。実は,この意見書の後に,今日審議の対象になります部会資料が出ておりまして,社債管理補助者という名称や,あるいは社債管理補助者の義務として,社債権者への報告等の義務が明記されるという重要な点の変更もありましたけれども,基本的な社債管理機関の位置付けにつきましては,社債権者が社債権者集会の決議を通じて社債の管理を行うことを補助すると,そういうものであると理解しておりますので,既に出しております意見書の趣旨は,このままでよいのではないかと考えております。   なお,本日の部会資料の(注)のところで,「例えば,弁護士,弁護士法人,その他のものについても社債管理補助者の資格を付するものとするかどうかについては,なお検討する。」と付記していただいておりまして,ありがとうございます。できればでありますけれども,今回,新しい社債管理機関の設置に関する論点として,その資格要件を拡大すべきかどうかという検討課題があることを,本文で,もしできれば,明記していただければ有り難いと考えております。   以上が意見であります。   次に,もう1点でありますが,質問をさせていただきたいと思います。   先ほど,神作委員の方から御指摘があった点に関連いたします。今回の部会資料では,社債管理補助者の義務として,社債の管理に関する事項を社債権者に報告し,あるいは社債権者はこれを知ることができるようにする措置をとらなければならないという義務が明記されております。ただ,この報告の対象になる範囲や報告の方法は,委託契約の内容,それから社債に係る契約の内容,社債の性質等を踏まえて判断すると,こういうふうに説明をいただいております。   そうしますと,まず委託契約でこの点,対象になる事項や方法が決められていましたら,それに従うということは理解できるのでありますけれども,もし委託契約で何の定めもない場合に,そういった事項や方法の何らかの報告義務というのは,解釈によって決まるということであれば,必ずしも契約で明記の定めがなくても,全くないということにはならないと。解釈によってそういう義務がある場合もあるということになってきますと,例えば,今回の部会資料の中でも,社債権者集会の開催の要否につきまして,社債権者の間で意思確認をすると,その伝達というか取次ぎをすることが,この報告等の義務の一つの内容になり得る場合があるとされているのでありますが,これをもし適切に行おうとすれば,社債管理補助者としては,かなりこれは神経を要する作業になるということも考えられます。   そこで,そういった義務が出てくるというのが,委託契約でない場合には,これは解釈であるかないかが決まってくると。必ずしもないわけではないということなのか,委託契約がなければ,もうないと言ってしまっていいのか,あるいは委託契約で全てないと明記することができるのか,その辺りはどのように考えておられるのかということを御教示いただければと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○竹林幹事 私どもとしましても,そこが難しいとは思っているのですけれども,少なくとも委託契約で全く定めないということを認めることは,適切ではないと思っています。   それは,先ほど神作委員からも御指摘いただいたように,やはり,情報を提供していくということはかなり重要な業務であろうと考えておりまして,最低限というと語弊があるのかどうか分かりませんけれども,一定程度の情報提供というのは必要になってくるだろうと考えております。社債管理補助者に権限というのは何らかの形で付与されますので,それに伴って,少なくとも社債権者の方が適切に社債の管理を行っていくに当たって,必要な情報は提供していただきたいという考えがございます。   そういった考えもございまして,曖昧だという御批判も頂いているところでございますが,「委託の本旨」というのを入れさせていただいているところでございまして,私どもといたしましては,報告義務を課すことで,過度に社債管理補助者に負担を掛けることを考えているわけではないのですけれども,やはり委託契約の中で,適切な範囲で,きちんとどういう形で情報提供していくべきかということを定めていただきたいと考えているところでございます。   ただ,繰り返しになりますけれども,やはり最低限定められるべき権限ですとか,あるいは,先ほど御説明申し上げましたように社債の種類ですとか,社債契約の内容に従って,社債権者の方がきちんと社債の管理をしていくということに資するような情報提供はしてほしいと考えております。できれば,その辺りとして,どういうことをどの程度最低限のものとして情報を提供していくべきなのかを念頭に置いて,それを指す言葉として適当なものがあるのかということについて,この「委託の本旨」というのが曖昧ではないかということであれば,御提案等いただけますと大変有り難く存じます。 ○神田部会長 ありがとうございました。   今の点について,御意見とかはおありですか。 ○沖委員 一応,結構でございます。 ○神田部会長 それではほかに。松井(智)幹事どうぞ。 ○松井(智)幹事 今の権限が不明確であるということと若干裏表なんですけれども,社債管理補助者が決議執行者となった場合の報酬に関してなのですが,部会資料15の8ページの最後のところ,「委託契約において別段の定めをすることができるものとしている。」となっていて,これによってある程度,何らかスキームが組めるということを示唆しているわけですけれども,一方において,741条は,社債発行会社が当該執行者の費用を,報酬を負担するには,裁判所の許可が必要であると定めていますので,委託契約にこの定めをしたとしても,無条件で払ってもらえるわけではないのではないかというようなリスクが残るのではないかと思うのですが,この委託契約における定めの効果ということについて,どのようなことをお考えかということについて,御意見いただければと思います。 ○神田部会長 ありがとうございます。 ○邉関係官 この(10)の⑤のところの「別段の定め」としては,例えば,決議の執行に要する費用を社債権者側で用意することを条件に社債管理補助者が決議を執行するという定めが想定されるように考えております。他方で,会社法第741条第1項は,典型的には,社債管理補助者が費用を支出して執行した後において,その費用を社債発行会社の負担とするための規定であると考えており,場面はそれぞれ異なるものであると整理できるかなと思っております。ただ,本当にこのような整理で問題がないかどうかという点は,頂いた御指摘も踏まえてもう少し検討させていただきたいと思います。   ありがとうございました。 ○神田部会長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。 ○松井(智)幹事 はい。 ○神田部会長 ほかにいかがでしょうか。田中幹事どうぞ。 ○田中幹事 今の5ページ,(10)の⑤のところですが,私は,初めに頂いて読んだときは,それほど違和感はなかったんですが,やはりちょっと,今のやり取りも伺っていますと,社債管理補助者の権限に属する行為に関する執行以外の事項は,社債管理補助者は義務がないのが原則なのですから,むしろ何かそれについては社債管理補助者は執行しないというのが原則で,別段の定めをすれば,それもできるというのが,私は何か素直な理解ではないかと思います。   権限として定めていなければ,社債管理補助者はそれをすることは想定していないと思いますので,費用や報酬もそれを想定しないことが前提のものになっているかと思うので,事後的に裁判所による報酬決定はされるとしても,必ずしも十分でない可能性もありますから,これはちょっと,原則と例外を逆にした方がいいんではないかと,ちょっと今考えたことで,不確実なんですが,一応私の意見として申し上げておきます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○邉関係官 今,田中幹事から御指摘いただきました点についてですけれども,社債発行会社と社債権者との間の情報伝達の仲介ということを考えた場合に,3ページ目の(4)の権限として定められる権限の範囲と,執行する決議の範囲とは必ずしもリンクしないのではないかとも考えておりましたが,今頂いた御指摘も踏まえて,再度整理させていただきたいと考えております。ありがとうございました。 ○神田部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。  特によろしゅうございますでしょうか。先に進ませていただいてもよろしいでしょうか。   それでは,もしまた後でお気付きのことがあれば,戻っていただいても結構かとは思いますので,先へ進ませていただきたいと思います。   第3部,「第2 株式交付」について,事務当局からの御説明をお願いいたします。 ○青野関係官 それでは,9ページの「第2 株式交付」について,第二読会までに提示させていただいた案から変更があった点を中心に御説明いたします。   株式交付における株式交付親会社側の手続に関しては,株式交換に類似するものとして,株式交付親会社の株主及び債権者の保護について株式交換と同様の規律の適用があるものとしています。他方で,株式交付は,株式交換とは異なり,株式交付子会社の発行済株式の全てを取得するものではないことから,株式交付親会社と株式交付子会社との間に契約関係があることは要せず,株式交付親会社は,株式交付親会社と譲渡人との間の合意に基づき,株式交付子会社の株式を譲り受けるものとしています。   このように,株式交付親会社の手続については,株式交換の手続を参考として,株式交換その他の組織再編行為と同様に,1①のとおり,定義を設け,また,②のとおり,株式交付をする場合においては,株式交付計画を作成しなければならないものとすることとしています。   また,株式交付子会社となり得る会社について,本中間試案のたたき台では,株式会社及びこれと同種の外国会社のみが株式交付子会社となり得るものとしており,この点について,第二読会で提示させていただいた案から変更しています。これは,株式交付に関する規律の対象となる行為の範囲は客観的かつ形式的な基準によって定めることが相当であるという観点から,効力発生日において株式交付子会社の議決権の総数に対する株式交付親会社が所有している議決権の数の割合が2分の1を超えることを,株式交付の適用の対象となる「子会社とするため」に該当するか否かのメルクマールとすることを想定しておりますが,持分会社の子会社該当性については,業務執行の権限によって判断することが適当であると考えられており,株式交付に関する規律の対象となるか否かを画する「子会社とするため」に該当する範囲について,株式交付の実行前に判断が可能である客観的かつ形式的な基準を用いることができないことなどの理由から,持分会社は株式交付子会社となることはできないものとしたものです。   次に,「2 株式交付計画」に列記している株式交付計画において定めなければならない事項については,第二読会で株式交付に当たって株主総会の特別決議により定めなければならないとしていた事項から基本的に変更ありませんが,2①のオ及び(注3)のとおり,株式交換の場合と同様に,株式交付親会社の株式の割当てに関する事項を定めなければならないとした上で,当該割当てに関する事項についての定めは,株式交付子会社の株式の譲渡人が譲り渡す株式の数に応じた内容でなければならないものとするという規律を加えています。   続いて,「3 株式交付子会社の株式の譲渡しの申込み等」では,先に申し上げたとおり,株式交付子会社の株式については,株式交付子会社の既存の株主である譲渡人と株式交付親会社との間の合意に基づき,株式交付親会社に対して譲渡されるものとしているため,株式交付子会社の株式の譲渡しの申込み,承諾及び債務の履行たる譲渡の目的物の給付の手続は,募集株式の発行等における引受けの申込み,割当て及び現物出資財産の給付の手続に準じたものとしています。具体的な手続については,第二読会から基本的に変更ございませんが,3①の(注2)のとおり,金融商品取引法に基づく目論見書を交付している場合の通知の省略について,会社法第203条第4項に準じた規律を設けるものとすることを新たに記載し,また,3の(後注1)のとおり,会社法第205条のいわゆる総数引受契約を締結した場合の特則のように,株式交付子会社の株式を譲り渡そうとする者が,株式交付親会社が株式交付により譲り受ける株式交付子会社の株式の総数の譲渡しを行う契約を締結する場合には,3①から⑦までの通知及び申込み等の手続を省略することができるものとする規律を設けるものとすることを,新たに記載しています。   「4 株式交付の効力の発生」は,株式交付による株式交付子会社の株式の譲受け及び株式交付親会社の株式の交付は,個々の株式の給付により完了するのでなく,効力発生日にまとめて生ずるものとしているものです。   「5 株式交付親会社の手続」についても,第二読会からの変更点は基本的にございません。なお,株式交付においては,株式交付親会社と株式交付子会社との間に株式交換契約のような契約関係があることは要しないものの,株式交付親会社の株主への情報開示の必要性の観点から,株式交換の場合と同様に,株式交付子会社の計算書類等の内容も,①の事前開示が必要な事項に含めることが想定され,その場合には,株式交付親会社が事前開示手続をするに当たって,通常,株式交付子会社の協力を要することとなると考えられます。また,⑥のいわゆる事後開示手続における開示書面については,株式交換の場合とは異なり,株式交付親会社は,株式交付子会社と共同して当該書面を作成するのではなく,単独でこれを作成することとなります。そして,⑧の株式交付の無効の訴えについては,株式交換の場合とは異なり,基本的には,株式交付親会社側の株主等その他の関係者のみを提訴権者とすればよいと考えられるものの,株式交付により株式交付子会社の株式を株式交付親会社に対して譲り渡した者については,その地位への影響に鑑みて,提訴権者に含めるものとしています。   最後に,株式交付子会社の手続について,当部会においては,譲渡人以外の株式交付子会社の株主に対する情報提供のための手続に関する規律を設けることや,株式交付子会社において株主総会の決議を要するものとすることなどについて検討してはどうかという指摘がされています。   しかし,株式交付においては,株式交換とは異なり,株式交付親会社は株式交付子会社の株式を有する者から当該株式を個別に譲り受けるのであり,その実質は,株式交付子会社の株式の有償の譲渡又は現物出資と異ならないと考えられます。そして,会社法上,どの株主からどの程度の数の株式をどのような対価で譲り受けるかは,譲渡人と譲受人との間の合意で決まることが原則であって,譲渡人その他の当該株式会社の株主の保護の観点から,対価の相当性を担保するための手続や,譲渡人以外の株主の保護のための手続に関する規律は,株式の譲渡制限を除き設けられていないことを踏まえて,株式交付の場合についても,このような手続に関する規律を設けるものとはせず,譲渡人以外の株主の保護については,公開買付規制や株式交付親会社の株式の交付に関する発行開示規制に委ねることを想定しています。   御説明は以上となります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,御質問,御意見,どなたからでもお出しいただければと思います。  いかがでしょうか。小林委員どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。   このような株式交付についての制度が創設される考え方について,大変賛成でございますが,実務的には,一定の柔軟性がある制度設計としていただきたいと考えます。   今回,子会社の方の株式の下限2分の1ということは,これまでどおり持分会社については含まないということになっており,実務的な感覚から,少し幅を持って,100分の40以上の取得による実質的な支配権も選択肢として考えていただけると有り難いということでございます。ハードルは高いと思いますけれども,パブコメにおいて100分の40以上の選択肢を加える,あるいは,少なくとも補足説明で検討を継続するといった記載をお願いできると有り難いと考えております。   もう一つ,既に2分の1以上の株式を取得している親会社が追加で子会社の株式を取得する場合について,たたき台にはないので,今現時点では規律しないという考え方だろうと理解しておりますが,一括で株式を取得せずに追加で取得するような場合というのも当然あり得ますので,柔軟性を確保する観点からも,株式交付の制度を利用できるようにする選択肢を加えていただきたい。あるいは,先ほどと同様,少なくとも補足説明では検討を継続する等の記載をお願いできると有り難いというのが意見でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   坂本幹事どうぞ。 ○坂本幹事 ありがとうございます。   参考資料37に,経済産業省の意見をまとめて提出をさせていただいております。   こちらの株式交付につきましては,これまでも何度か発言をさせていただいておりますとおり,グローバルな環境変化のスピードが非常に速まっている中で,大胆な事業再編によって経営資源を成長性,収益性が見込める事業に振り向けていくということが,以前にも増して重要になってきているという中で,こうした株式を活用した再編の円滑化に向けての制度整備ということで,株式交付に関する規律の創設について,具体化する案を出していただいているということにつきましては,政策的な意義は極めて大きいものだと考えております。   せっかくのこうした規律を創設する際の,この規律を意義あるものにするという観点から,これまでのこちらの部会の中でも複数御指摘があったかと思いますけれども,先ほどの御発言にもありましたが,新たに親子会社関係を創設する場合と同様に,この子会社株式を買増しするといったようなケースにつきましても,企業価値を向上させるという点での重要性は変わらないのではないかとも考えられますので,こうしたケースも含めて,是非この円滑化を図るという意味で,この規律の対象にしていただくことについても,是非パブコメの結果なども踏まえて,引き続き検討をしていただくというのも考えられるのではないかというのが1点目でございます。   もう一つ,持分会社については対象から外すという点でございますけれども,米国のLLCを始めとして,海外ではこういった株式会社以外の会社形態というのも広く利用されておりますし,我が国におきましても,近年,合同会社を始めとする持分会社,ちょっと統計,平成28年の設立件数の数字を挙げさせていただいておりますが,株式会社約9万社に対して,合同会社の設立件数2万3000件ということで,フローで見ますと相当な割合を占めているというような現状も考えますと,こういった持分会社を対象とする事業再編というのも,今後,重要性を増していくということも考えられますので,株式会社でない場合に一律,一切本規律の対象にしないということは,せっかくのこの規律の創設の意義が縮減されてしまうということも,そういったおそれも考えられますので,この点についても引き続きの検討をしていただくということも御検討いただければと思います。   ありがとうございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。  齊藤幹事どうぞ。 ○齊藤幹事 ありがとうございます。   1点御質問なんですけれども,部会資料15の14ページの5のところの事前開示事項につきまして,株式交付子会社関係の書類が必要であるため,株式交付子会社の協力を通常は要することになるということが書かれておりますけれども,事前開示の瑕疵がございますと,これは無効にもつながるものでございますので,このハードルが高いと,株式交付子会社の方はこの行為の当事者ではないけれども,この行為を妨害することもできるぐらいの立場になるわけなのですけれども,そのような影響力を子会社の方に与えるのが適当なのか,もしそうでないならば,子会社の協力を要さなくても,事前開示が進められるような手続にする必要があるのではないかと感じた次第でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。沖委員どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。   先ほど来,小林委員,坂本幹事の方から御意見があったこととちょっと重なっておりますので恐縮なのですけれども,2点意見を述べさせていただきます。   第1点目は,子会社にするためという要件の判断基準についてですけれども,今回の部会資料では,10ページの②ですが,①イの下限は,効力発生日において株式交付子会社の議決権の総数に対する株式交付親会社が自己の計算において所有している議決権の数の割合が2分の1を超えることとなるように定めるとされている点,また,株式交付の対象は,他の株式会社又はこれと同種の外国会社に限られ,持分会社を除くとされております。この点,他方では,10ページになりますけれども,2の②ですが,加算される自己所有議決権の「自己」には,括弧書きで「その子会社及び子法人等を含む。」とされております。この子会社及び子法人等も,議決権数割合だけで判断して,持分会社を除くのかという点は明らかではないと思いますけれども,もし仮にこの子会社を会社法2条3号,施行規則3条1項の「子会社」と理解すれば,その範囲は会社法上の実質基準で決まって,持分会社も含むということになってくるかと思います。   そうだとしますと,そのような子会社の所有する株式交付子会社の株式を50パーセントから控除した株式が株式交付の対象となる株式として下限を決めないといけないということになってきますので,この加算される株式数自体は,議決権数でこれを判断しても,結局加算するかどうかを判断するためには,実質基準の判断が必要になってくるということではないかと思います。そうだとしますと,その範囲が結局「客観的かつ形式的な基準」では決まってこないのではないかという疑問がございます。仮に子会社,子法人等という要件も議決権割合だけで決めるという基準を明文化すれば,「客観的かつ形式的な基準」で決まるということになってくるのだと思いますけれども,株式交付の要件のためだけに,独自の親子会社関係の基準をもう一つ作るということまでの必要性が,果たしてあるかのどうかという点であります。   元々,会社法上の親子会社関係は全て実質基準で,今,判定されておりまして,その要件に基づいて連結の開示だけでなくて,社外取締役の要件,子会社による親会社株式の取得の禁止,親会社の監査役の子会社に対する監査権というような実体的な法的効果も決まってきていると思います。これらの効果の判断の前提要件として,施行規則3条3項1号から3号の要件の有無を判断するということが実務的には行われておりまして,これは,株式交付の対象の判断要件としても機能しないというわけでもないと考えられます。会社法上,子会社は全て実質基準で,親子関係は全て実質基準で判断されるわけですから,子会社にするためという株式交付の要件も,できればこの実質基準に合わせた方が適切というような考え方もあるのではないかと思います。   もし実質基準の判断に難しい点があってリスクがあると感じるのであれば,株式交付親会社の判断として,任意に議決権行使基準を,例えば,50パーセントを超えるように下限を設定するとか,あるいは大目の株式を下限にしておくというような対応も考えられるかと思います。そうだとしますと,株式交付の要件を議決権だけの形式基準とする必要性がどこまであるかという点で,会社法上の実質基準に合わせてしまうという考え方もあり得るかと思いますので,今回の中間試案では,そのような含みはできれば持たせたような書き方にしていただければよいと考えております。   2点目は,子会社にした後の子会社株式の買増しの株式交付を認めることの適否についてであります。株式交付については,募集株式と異なる規律をするということの基礎付けのために,子会社にする場合だけを対象とすべきというふうな御説明を頂いているかと思います。ただ,完全子会社,親子会社関係の創設のために株式交換が認められており,これに追加して子会社関係を創設するために株式交付を今回認めることになります。そうだとしますと,子会社にした後に,支配関係を強めていくというための譲受けにも,株式交付を認めてもよいのではないかとも考えられます。   親会社株式を交付することが,子会社の株主にとっても買収後のシナジーを付与するということが可能なこととか,あるいは,親会社の資金調達の観点から,親会社株式を対価として追加的な取得を可能とすることによって,少数株主の株式の取得を容易にするという選択肢が認められれば,いささかでも強圧性の防止にも役立つということも考えられるかと思います。子会社にするという,そういうクリティカルな株主だけを株式交付の対象にするという必要は,必ずしもないと思いますので,子会社の支配関係を高めるための譲受けにも認めるということを検討するという意味で,今回の中間試案では,その可能性を認めたような書き方も検討していただければ有り難いと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○竹林幹事 今,沖委員から御指摘いただいた点も含めてなのですけれども,もちろん私どもが御提案差し上げている要件に対していろいろな御意見があったということは,きちんと補足説明等で触れさせていただかなければいけないとは考えているのですが,既にこれまで御説明させてきていただいたところの繰り返しになるのですが,やはりこれから子会社関係を作ろうというときに実質判断を持ち込むというのは,例えば,役員をどれだけ派遣するかとかということを前提に考えるのがかなり難しいのではないかという判断がありまして,今回,株式交付という制度を,この言い方にも御批判があるところかもしれませんが,組織再編的にといいますか,設けるところで,子会社になるということをきっかけに他の規制を排除しようというようなときに,かなり重要となってくる要件でございますので,私どもといたしましては,明確性を確保しておきたいという考えが強く働いておりまして,ここで,これから子会社となる可能性というのを実質的に判断していくというのは,なかなか要件として明確性を欠く場面が出てくるのではないかと思っている次第でございます。 ○沖委員 すみません。1点質問させていただいた点ですけれども,子会社株式が議決権割合だけで判断するという場合に,そこに加算される子会社の株式の子会社性の判断ですけれども,ここは実質基準で判断するという,そういう理解でよろしいんでしょうか。 ○竹林幹事 そこは,御指摘のとおりだと考えております。 ○神田部会長 ほかにいかがでしょうか。加藤幹事どうぞ。 ○加藤幹事 ありがとうございます。   1点,先ほど来,親会社による子会社株式の買増しについても,株式交付の対象とすべきかどうかということが議論されていますが,仮に株式の買増しについても株式交付の対象とする場合には,簡易株式交付の制度設計が難しくなるような気がしております。現行法の簡易組織再編に倣うのであれば,簡易株式交付は,株式交付において交付される株式の数が少ない場合に親会社側の株主総会決議を不要とする仕組みになるかと思いますが,株式の買増しまで対象に入れてしまうと,そのほとんどが簡易株式交付の要件を充たすことになると思います。このことは,親会社が親会社株式を対価として子会社株式を買い増すことについて,現行法の規制を撤廃することに等しいように感じました。仮に株式の買増しを株式交付の対象に含めるのであれば,簡易株式交付の制度設計に工夫が必要であるとの印象を持っています。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。松井(智)幹事どうぞ。 ○松井(智)幹事 すみません。これは,もう提案でも何でもなくて,ただの意見なのですが,株式交付子会社の側の手続が全くないということにつきまして,譲渡承認請求などがあるということ,譲渡制限がある会社の少数株主などが従来から弱い立場に置かれているということは,皆さん御承知のとおりであり,また,ここにあるとおり,株式交付の場合にのみ,このような手続を作るというのが突出してしまうという意見も非常によくは分かるのですが,これで支配株主を新たに作り出すという形の手続になりますので,少数株主がより弱い立場に置かれる機会というのを広く開くという取引であるということに鑑みると,本当に何もなくてよいのかということについては,なお私は不安を感じているということだけ申し述べさせていただきます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,ちょっと新しい制度であることもあって,なかなかどういう範囲でどう線を引いていくかなど,難しい問題もあるのですけれども,本日頂きました御意見も踏まえて,更に先に進ませていただきたいとは思います。   ちょっと本日は,順調過ぎてやや戸惑っているのですけれども,新年早々であることもございまして,もう一つ先へ進ませていただきたいと思います。戻っていただいても結構でございますので。   それでは,次が,部会資料15の第3部の「第3 その他」ということになります。事務当局からの御説明をお願いいたします。 ○坂本関係官 それでは,部会資料15ページ,「第3 その他」の「1 責任追及等の訴えに係る訴訟における和解」について御説明いたします。   本文は,株式会社が当該株式会社の取締役等の責任を追及する訴えに係る訴訟において和解する場合には,監査役設置会社については各監査役の,監査等委員会設置会社については各監査等委員の,指名委員会等設置会社については各監査委員の同意をそれぞれ得なければならないものとするものです。   当部会におきましては,監査役設置会社等が取締役等の責任を追及する訴えに係る訴訟における和解をする場合に,誰が代表者となるのかという点についても御議論いただきました。こちらにつきましては,補足説明の1に記載させていただいております。   株式会社が原告として当該和解をする場合については,監査役等が監査役設置会社等を代表するものとすべきとしつつも,利害関係人又は補助参加人として当該和解をする場合には,監査役等は,一度当該訴えを提起しないことが相当である旨の判断をしているのであるから,取締役と当該監査役設置会社等の利益相反の程度は,原告として当該和解をする場合ほどには類型的に強くないとして,各監査役,各監査等委員又は各監査委員の同意を必要とすることを条件として,通常の業務執行と同様に代表取締役等が当該監査役設置会社等を代表するものとすべきであるという考え方につきましては,多くの方から御賛同をいただいたものと認識しております。   本中間試案のたたき台は同様の考え方を前提としておりますが,現行法上も,原告として和解をする場合については,監査役等が監査役設置会社等を代表するものと一般的に解釈されていることや,原則として代表取締役等は株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有するものとされていることを踏まえ,この考え方に関して,明文の規定を設ける必要はないものと考えております。   また,当部会におきましては,このような考え方によった場合に,監査役設置会社等が利害関係人又は補助参加人として和解をするときに,当該和解が自己取引に該当し,利益相反取引規制の適用があるものと考えるべきかどうかにつきましても御議論いただきました。各監査役,各監査等委員又は各監査委員の同意が必要とされている以上,利益相反取引規制の適用はないものと考えるべきであるという御指摘もあるところではございますが,この点につきましては,引き続き解釈に委ねるものとしております。   続きまして,補足説明の2についてですが,当部会におきましては,株主による責任追及等の訴えの中には,株式会社の利益に反すると評価すべきものがあることから,株主による責任追及等の訴えの提起に新たな制限を設けることを検討すべきであるという御指摘を頂いております。   しかし,他方で,近時において,株主による責任追及等の訴えに係る訴訟の件数が減少していることや,一般予防の観点から,責任追及等の訴えに期待される機能の重要性に鑑み,株主による責任追及等の訴えの提起に新たな制限を設けることについては慎重に考える必要があるとの御指摘も頂いております。   株式会社の利益に反する株主による責任追及等の訴えの提起を制限することにつきましては,以前提出された会社法案において,当初は,責任追及等の訴えにより当該株式会社の正当な利益が著しく害されること,当該株式会社が過大な費用を負担することとなること,その他これに準ずる事態が生ずることが相当な確実さを持って予測される場合には,株主は株式会社に対し責任追及等の訴えの提起を請求することができないものとされておりましたが,これについては,内容が不明確であり,責任追及等の訴えに期待される機能を不当に縮減させてしまう懸念があるという理由で,衆議院において削除されたという経緯もございます。   このような経緯も併せて考えると,株主による責任追及等の訴えの提起に新たな制限を設けることにつきましては,慎重な検討を要するものと考えておりますことから,その旨を記載させていただいております。 ○青野関係官 続きまして,17ページの「2 議決権行使書面の閲覧等」以下についても御説明させていただきます。   議決権行使書面の閲覧等については,第二読会で提示させていただいた案から基本的に変更ございませんが,1点,②アのA案において,第二読会で提示させていただいた案のように,会社法第830条第1項又は第831条第1項第1号の規定による請求に関する調査の目的の場合のみ議決権行使書面の閲覧謄写を認めるものとすると,書面による議決権行使に関連する取締役の責任の追及に関する調査の目的等の場合には閲覧謄写が認められなくなり,狭過ぎるという御指摘も頂戴したことから,これを「株主総会の決議の方法(書面による議決権の行使に関するものに限る。)」という形に変更させていただいております。   また,当部会においては,議決権行使書面の閲覧謄写請求権の濫用的な行使に対応するための措置として,株主に閲覧謄写をさせる代わりに,裁判所が選任した検査役に対し,議決権行使書面が適法に集計されているかなどの調査を委ねることができるものとしてはどうかという指摘もされています。   しかし,検査役の選任及び調査には相当程度の期間を要すると考えられますし,書面により議決権を行使する株主の数等によっては,拒絶事由の有無に関する紛争の決着が株主総会の決議の取消しの訴えの提訴期間である株主総会の日から3か月以内に付かない場合と同様に,当該提訴期間内に検査役の調査の結果を当該請求を行う株主に通知することが困難な場合もあると考えられます。また,調査を迅速化するために検査役を複数選任することや検査役補助者を選任した場合には,検査役に対して支払う報酬等の額は高額化すると考えられますが,そのような費用の負担を株式会社に負わせることの当否については,慎重な検討を要するものと考えられます。他方で,仮に,事案に応じて,裁判所が,当該費用の負担を請求を行う株主に負わせることができるものとすることについても,正当な目的で当該請求を行う株主に対して萎縮効果を生じさせるおそれがございます。そこで,株主に閲覧謄写をさせる代わりに,裁判所が選任した検査役に対し,議決権行使書面が適法に集計されているかなどの調査を委ねることができるものとすることについては,慎重な検討を要するものと考えられます。   次に,18ページの「3 株式の併合等に関する事前開示事項」は,全部取得条項付種類株式の取得又は株式の併合を利用した現金を対価とする少数株主の締出しに際して行われる端数処理手続に関して,いわゆる事前開示手続において任意売却の実施及び株主に対する代金の交付の見込みに関する事項等の開示を要するものとして,情報開示を充実させるものですが,本項目の内容については,第二読会から変更点はございません。   続いて,18ページの「4 新株予約権に関する登記」につきましては,A案とB案を併記しており,A案は,前回の部会における部会資料13の補足説明でも触れていた,会社法第238条第1項第2号及び第3号に掲げる事項は登記することを要しないものとする案です。   他方で,当部会においては,会社法第238条第1項第2号及び第3号に掲げる事項も引き続き登記事項としつつ,これらの事項を登記事項として公示する意義がより認められるものとする観点から見直しを検討すべきであるという御指摘も頂戴しております。そこで,新株予約権の払込金額の算定方法を定めた場合であっても,登記の申請の時までに払込金額が確定しているときは,算定方法ではなく,確定した払込金額を登記しなければならないものとする案を,B案として併記しております。   19ページの「5 株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書」については,最終的に条文化した場合のイメージに即して記載ぶりを変更しておりますが,実質的な内容は,前回の部会で提示した案から変更はなく,株式会社の代表取締役又は代表執行役の住所が記載された登記事項証明書は,当該住所の確認について利害関係を有する者のみが,その交付を請求できるものとする案を記載しております。なお,(注)は,インターネット上で法人の登記情報を閲覧することができる登記情報提供サービスでは,当該住所に関する情報は提供しないものとすることを記載したものです。   最後の6は,「会社の支店の所在地における登記の廃止」について記載したものであり,前回の部会で提示した案から変更はございません。   御説明は以上です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,御質問,御意見,どなたからでもお願いします。  いかがでしょうか。古本委員どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。   1番の「責任追及等の訴えに係る訴訟における和解」については,第5回目の部会のときに,各監査役等の同意ではなく,監査役会等の同意で足りるという考え方もあるのではないかと申し上げたと思うのですが,それを何らかの形で言及していただいて,パブリックコメントに付していただけないかと思います。具体的に申し上げますと,監査役会設置会社につきましては監査役会の同意,監査等委員会設置会社につきましては監査等委員会の同意,指名委員会等設置会社については監査委員会の同意で足りるとする案です。   それから,株主代表訴訟の提起につきましてコメントさせていただきたいと思います。   経団連といたしましては,会社の利益や会社全体の利益に反するような株主代表訴訟が安易に提起され得る現状の制度に懸念を持っておりまして,代表訴訟の提起に一定の制限を設けることについて検討すべきであると,今まで申し上げてまいりました。しかしながら,今回の部会資料では,残念ながら検討項目としては取り上げられておりません。部会資料の補足説明の2を拝見しますと,株主代表訴訟の件数が減少していること,代表訴訟に期待される機能の重要性及び過去の議論の経緯から,結論としては,新たな制限を設けることについては,慎重な検討を要するものと考えられるとされており,本文には記載がありません。   昨年の第5回目の部会だったと思いますが,代表訴訟の件数が示され,近年は増加しておらず,むしろ減少しているという御指摘が確かにありました。ここ最近の年間の新受件数を見ると,一番多かった年が平成24年の106件で,一番少なかった年が平成28年の三十数件ということだったと思いますが,これは決して少ないとは思っておりません。といいますよりも,私どもの懸念は,代表訴訟全体の件数が若干増えた,あるいは減ったからということではなく,一度代表訴訟で訴えられると,訴えられた役員が訴訟対応に追われ,本来注力すべき業務に専念できなくなるという大きな負担を強いられるということであり,日本の株主代表訴訟が,国際的な比較で見ても大変提起しやすい制度になっているということに問題意識を持っております。   このように,会社の経営に大きな影響を及ぼし得る訴訟であるにもかかわらず,訴訟の内容が会社,株主全体の利益に反するようなものであっても,1株あるいは1単元といった非常に小さい株式しか保有していない株主の判断で容易に代表訴訟が提起され得るという現状に対しては,やはり適切な制限を設けてしかるべきであると考えます。   また,補足説明の2では,第162回国会におきまして,当時の提出法案の代表訴訟の制限に関する文言が,内容が不明確であるという理由で削除された経緯があると記載されております。しかし,法案提出に至った当時の部会でも,代表訴訟の提訴に一定の制約を設けることについて合意が得られていたわけですから,より適切な文言を検討した上で,立法化を目指すべきだと考えております。さらに,代表訴訟の却下事由の見直しのほかにも,監査役等による不提訴判断の尊重,代表訴訟の少数株主権化なども考えられますので,こうした方策も併せて,何らかの形で中間試案にも記載していただきたいと思っております。   加えまして,前回の部会において,会社補償の関連で,業務執行取締役の責任限定について,役員責任全体に関わる論点であるとの御見解が法務省から示されたと記憶しております。業務執行取締役の責任限定につきましても,役員責任に関わる論点ですので,本論点と併せて議論すべきものと考えております。   まとめますと,中間試案には,株主代表訴訟の見直し及び責任限定契約の対象者を見直す提案を記載した上でパブコメに付していただければと考えております。   続きまして,2番の「議決権行使書面の閲覧等」に関してですが,①の請求の理由について,②に記載の拒絶事由に該当するか否かを判断するに足る十分具体的かつ明確な理由を示す必要があることを,本文又は補足説明に明示していただけないかと思います。   ②につきましては,アに関して,第5回の部会でも御紹介いたしましたが,株主提案を行った株主が,株主総会後に議決権行使書面の閲覧謄写を請求し,自らの提案に賛成した株主を割り出して,次年度の総会に向けて管理行為等を行っているという事例があります。このような権利行使は,本来の制度の趣旨にそぐわないものですので,私どもとしてはA案に賛成の立場です。ただし,B案と併せてパブリックコメントに付すということに,反対するものではありません。   それから,部会資料の補足説明につきまして,昨年の部会でも申し上げたのですが,少なくとも上場会社については,現行制度が実態と乖離しているのではないかと思いますので,その点をもう少し資料に反映いただけないかなと思います。   繰り返しになって恐縮ですけれども,上場会社の場合,議決権行使書面の数は何万,何十万と非常に多数になることがありますので,株主名簿管理人が機械を使って賛成,反対を読み取ってカウントしております。そしてごく一部,読み取りができないものについてのみ,人の目で確認するというのが実情です。機械の読み取りは誰がやっても同じですので,そこに異論を挟むこと自体が,私どもからすれば非常に不思議なことであり,そうでありますと,目的が別にあるのではないかと思わざるを得ないわけですが,現行制度の下で,株主がもしハンドでカウントして,自動読み取りと異なる結果が出たと主張した場合,一体どうなるのだろうかという疑問があります。自動読み取りが間違いであり,株主が行ったハンドのカウントが正しいと,いきなり結論付けるわけにもいかないので,結局,蓋が閉まらない制度になっているということに問題があると考えています。   上場会社につきましては,議決権行使結果を臨時報告書で開示するという義務が課されており,刑事罰によってカウントの公正性が担保されていると考えてもよろしいのではないかと思います。したがいまして,上場会社につきましては,株主名簿管理人への確認で十分であり,個々の株主に閲覧請求権を与える必要はないと思います。今の実情からすると,制度と現実が合っていないと思います。株主名簿管理人の中立性を疑問視する御意見があることも承知しておりますが,恣意的なカウントがなされた場合には,今申し上げた臨時報告書の虚偽記載となりますので,そういった御懸念は当たらないと考えます。   仮に,それでも異論のある株主のために,何らかの対応が必要であるとすれば,例えば,会社側に重大なカウントに関するミスがない限りは,原則としてそういう申出をした株主が費用を負担するという前提で検査役の選任を求めることができる制度にすればよいのではないかと思いますので,上場会社に関する特例について,再度御検討をお願いしたいと思います。   それから,5番の会社の代表者の住所の取扱いにつきましては,経団連から要望したものを踏まえた御提案になっていると理解しておりますので,この内容で中間試案とすることに賛成です。   ありがとうございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   前田委員どうぞ。 ○前田委員 2の「議決権行使書面の閲覧等」のところ,少し細かな点なのですけれども,第二読会のときにも議論がございましたように,この閲覧等の制度は,株主名簿の閲覧等に比べて,その目的ははるかに特定されており,この②のアのA案に示されておりますように,決議方法に関する調査のための制度であることは,異論のないところだと思います。   そこで私はA案がいいと思うのですけれども,アでA案を採れば,イからエは不要なのではないでしょうか。つまり,決議方法に関する調査という,相当に具体的で特定された目的以外であれば全部拒絶できるはずなのであって,イとウは,アのA案を採るのであれば,このアで十分にカバーできると思います。エは,客観的,形式的に拒絶できるようにするために残す余地はあるのかもしれませんけれども,アでA案を採るのであれば,少なくともイとウをアと並べる必要はないのではないかというように思いました。   中間試案でこのことを必ずしも明示してほしいというわけではないのですけれども,こういう選択肢もあるということで議論を進めていただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   中東幹事どうぞ。 ○中東幹事 「議決権行使書面の閲覧等」について,意見と質問を述べさせていただきます。   意見につきましては,先ほど古本委員がおっしゃいました点も踏まえることが重要であると思っております。基本的な発想において,古本委員のお考えに賛成です。ただ,部会で以前も議論がありましたように,裁判所に関与してもらうことが重要であると思っております。   質問なのでございますが,②のアのA案を採った場合についてです。補足説明にある裁判所が選任した第三者は,事後的に,つまり総会が終わってから検査役が調査するということでございますが,以前の部会では,事前に総会検査役が選ばれているような事案についても手当てしていただきたいと申し上げたところでございます。その観点からの質問ですが,A案を採った場合に,「当該請求を行う株主が株主総会の決議の方法(書面による議決権の行使に関するものに限る。)に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。」に,例えば,総会検査役が既に選任されていて,その報告も出されているというような事案で,株主から自分で議決権行使書面を見たいと請求があったときには,このアのA案で拒絶できると理解してよろしいのでしょうか。 ○青野関係官 今御質問を頂いた点でございますけれども,その場合には,実務上の当てはめの問題として,総会検査役が選任されていて,議決権行使書面の個別の閲覧謄写に代わるような形で調査がされているということであれば,理論的には,閲覧謄写請求に関する拒絶事由の有無の判断において影響があり得るとは考えられると思っております。もっとも,現在の総会検査役の実務に関して私どもが認識しているところでは,議決権行使書面の閲覧謄写に完全に代替するような形の実務の運用があるかどうかというところは,必ずしもそうでない場合もあり得ると認識しております。   つまり,形式的に,事前に総会検査役が選任されているという事実をもって,この拒絶事由に当たると,絶対に判断されるかどうかというところは,そこは形式的に判断するところではなくて,個別の事案において,拒絶事由に該当するような目的の有無を具体的に判断していくに当たって,そのような事実も一事情として考慮され得るというところではないかと考えております。 ○中東幹事 ありがとうございました。   私も,形式的に一律にと申し上げたつもりではありませんでして,表現が悪くて申し訳ございません。総会検査役の調査報告書において,こういったことが確認できるのであればという趣旨でお伺いしたということでございます。 ○竹林幹事 ただ,私どもといたしましては,飽くまで今のA案の文言を前提といたしますと,一応目的は調査報告書のような代替のものを渡せば達せられることもあるのではないかということでございまして,必ずしも目的外の目的だということで,直ちに拒絶できることになるかということについては,疑義も残るとは思っております。 ○神田部会長 ありがとうございました。   小林委員どうぞ。 ○小林委員 どうもありがとうございます。   まず,責任追及等の訴えの提起の制限について,先ほど古本委員から詳しく御意見がありましたので,基本的にはその意見に賛成でございますが,更に加えて,中小企業におきまして,内紛的な株主である近親者ですとか,元取締役といった経営陣のOBが責任追及の訴えを提起することがままあり,どちらかというと,経済的な価値の取得目的よりも嫌がらせ的な目的の訴訟も多いということがございまして,このような本来の目的から逸脱したものが提起されると,特に企業規模においては,その訴訟による人的,経済的資源の損耗というのが非常に大きいということがございます。そういう意味では,本来の趣旨,目的にかなっていない提訴について制限を設けるという考えについては,本文で検討していただきたい,格上げしていただきたいと考えております。   2の「議決権行使書面の閲覧等」でございますが,今回,2の②のアについて,前回の部会で,株主から見て,その範囲が厳し過ぎるということで,今回変更されておりますが,大元の議決権行使書面の閲覧謄写請求の趣旨を考えますと,元々提案されていた株主総会の決議の不存在又は無効の確認の訴えとか,あるいは取引上の訴えに関わる拒絶事由というところだけで制限するという考え方も,あり得るのではないかという感触もありますので,A案,B案,これをパブコメにかけることはもちろん結構ですが,前回の提案も併せてパブコメに付していただくことについては御検討いただきたいと考えております。   それから,補足説明で,閲覧謄写に代わる検査役の調査について,慎重な検討ということですが,少し考え方を変えて申し上げますが,会社側が検査役の費用を負担してもよいと考える場合も,全くあり得ないとはいえないので,その意味で,規律を設ける意義もひょっとしたらあるかもしれないと考えております。   つまり,閲覧謄写請求に応じるか,又は検査役の調査に代えるかということを,企業側が任意に選択できる余地を残すという考え方もあり得るのではないかということでございます。もちろん,補足説明にあるとおり,議決権の数によっては,その決議の取消しの訴えの提起期間の末日を経過する懸念もありますが,お試し的に閲覧謄写請求をされることで,その企業にとって不利益が生じる場合もあることから,事情によっては,個社の考えとして,例えば,提訴期間末日に間に合わないとなれば閲覧謄写請求を受ける,逆に間に合うとなれば,検査役の調査に代えてという選択肢もあり得ますので,これを中間試案に盛り込むこともあってよいのではないかと考えました。   それから,5番の「株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書」のところでございます。この代表者の住所を原則,登記事項証明書に不記載ということについては,特に反対ではございませんが,法文そのものより,利害関係人の範囲をどの程度まで考えるのかというのは,前回の部会でも申し上げましたとおり,商売上の取引関係があるだけでは利害関係人と認められずに,取引先の代表者の委任を必要として,閲覧しなければならないとなると,現状,取引の与信管理で,代表者の自宅住所をその登記事項証明書の閲覧によって確認しているという場合も,中小企業の与信実務でございますので,この点,余りその部分の企業の利便性を損なうまでの制限にはならないようにしていただきたいということを意見として申し上げさせていただきました。 ○神田部会長 ありがとうございました。   坂本幹事どうぞ。 ○坂本幹事 ありがとうございます。   参考資料の37の2ページ目でございますが,「『(1の補足説明)』の2」のところについて,一言意見を申し上げたいと思います。   なお書きになっておりますけれども,株主による責任追及等の訴えの提起の制限につきましては,訴訟件数が減少しているということを指摘されておりますけれども,他方で,他の委員から御意見もありましたけれども,現実に濫用的な訴訟によって株式会社に相当の負担が掛かっている事案が現に発生をしているといったような状況があるということであれば,こうした状況を看過するということは必ずしも適切ではないのではないかとも考えますし,部会資料にもございますが,過去の経緯として,「同号は,内容が不明確であり」とございまして,必ずしも新たな制限を設けること自体が否定をされたということでもないのかなと思いますと,もちろん代表訴訟制度の持つ規律付けの効果というところは損なうことがないようにというのが大前提でございますが,具体的な規律の仕方を工夫して,例えば,明白に濫用的な訴訟のみが排除されるといったような却下理由を設けるといったような工夫をすることで,こうした現に起こっている問題に対処するという方法がないか,この点も,パブコメに付すことも含めて引き続き検討する余地もあるのではないかと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○邉関係官 すみません。古本委員が一番初めに御指摘された各監査役の同意を監査役会の同意へと修正することについてですけれども,私どもとしましては,この和解は実質的には責任の一部免除であり,現行法上,責任の一部免除において,監査役などの同意が要求されている場合には,各監査役,各監査委員,各監査等委員の同意を要求しているということとのバランスもございますので,現行法の規律を前提にしますと,ここを監査役会の同意とすることは,難しいのではないかと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしゅうございますでしょうか。今日は,これで終わってしまいそうなのですけれども。今日の全体について,何か言い残したとかいうことはございますでしょうか。ございませんでしょうか。   どうもありがとうございました。   それでは,本日予定いたしました議事は以上でございますので,時間が大幅に余っているのではありますけれども,本日はこの程度とさせていただきたいと思います。   次回の日程等について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 次回の日程でございます。日時につきましては,平成30年2月14日水曜日午後1時30分から午後5時30分までということで予定をさせていただいております。また,場所につきましては,法務省地下1階の大会議室となります。   次回でございますけれども,中間試案の取りまとめを行いたいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いたいします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   本日も大変熱心な御審議をいただき,ありがとうございました。   以上で閉会いたします。 ―了―