法制審議会 民事執行法部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  平成28年12月16日(金)自 午後1時30分                       至 午後5時36分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民事執行法制の見直しについて 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本(和)部会長 それでは,予定した時刻になりましたので,法制審議会民事執行法部会第2回会議を開会したいと思います。   本日も御多忙の中御出席いただきまして,誠にありがとうございます。 (前回欠席された委員等の自己紹介につき省略) ○山本(和)部会長 本日は石井幹事,岡田幹事,山田幹事が御欠席です。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。本日は実質的な審議の第1回ということで,債務者財産の開示制度の実効性の向上についての御審議を頂く予定であります。このテーマに関しましては,一つは現行の財産開示手続の見直し,もう一つは第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の新設という,大きく二つの検討課題がありますので,順次御審議を頂きたいと思います。   それでは,部会資料2の「第1 現行の財産開示手続の見直し」の部分につきまして,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○筒井幹事 部会資料2では,ただ今部会長から紹介がありましたとおり,第1として「現行の財産の開示手続の見直し」,第2として「第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の新設」を取り上げております。前回の会議では,債務者財産の開示制度の見直しについて,こういった二つの方向の見直しがあり得ることを御提示し,フリーディスカッションで御意見を承りましたところ,結論はともかくといたしましても,この二つの方向についてそれぞれ検討を深めていく必要があるといった点につきましては大方の異論がなかったものと受け止めております。それを踏まえまして,今回はそれぞれの方向についての検討を行っております。   用語について触れておきたいと思いますが,「債務者財産」という言葉は債務者の個別の財産ではなく全体的な財産の状況といったような意味で使っているのですけれども,その債務者財産の開示制度という言い方をしているときは,部会資料の第1,1(1)の6行目に,「広い意味での開示制度」というふうに書きましたように,現行の財産開示手続のみでなく,第三者から情報を取得する制度も広い意味での開示制度といって差し支えないであろうという理解の下で,その双方を含む意味で「債務者財産の開示制度」という言葉を使っております。その点をあらかじめ御了解いただきたいと思います。   では,「第1 現行の財産開示手続の見直し」の「1 総論」の部分でございますけれども,御案内のとおり,平成15年の民事執行法の改正により,現行の財産開示手続が創設されました。その後,十数年にわたる運用の実績が積み上げられてきたわけですけれども,この間の運用状況を見ますと,利用件数がそれほど多くはないという指摘がございます。具体的な数字を部会資料の1ページで紹介しておりますが,おおむね毎年1,000件前後と言ってよいかと思います。この数字については,意外に多いという見方もあるかもしれませんけれども,例えば債権執行の事件数が年間10万件を超えるぐらいであることと単純に見比べてみたときに,果たしてどうなのかということもあるかと思います。そして,実務界の実感としても,本来利用すべき場面で十分な機能を発揮しているとは言えないのではないかといったような指摘があるところでございます。こういった指摘などを踏まえて,今般この手続の見直しを行う必要があるのではないかと考えられているところだと思います。   そして,「(2) 見直しに当たっての留意点」のところですが,ここには1ページ目の最後から,①として債務者のプライバシー等の保護との関係で謙抑的であるべきではないか,あるいは②,それから③といった幾つかの問題点の指摘を取り上げております。これらはいずれも平成15年改正の際に新制度の創設に当たっての懸念といった意味合いで指摘されていたところであったと思います。その当時におきましても,これらの点はそれほど重視すべき事情ではないといった御意見もあったと思いますけれども,しかし,現行制度の制度設計に当たってこういった懸念があり得ることが意識されて,現在の制度が組み立てられていると思います。   そこで,改めて今般この制度の見直しをするに当たって,こういった指摘についてどのように評価するのか,またそれとの関連で,平成15年改正以降の状況の変化,部会資料では③の点について貸金業者を取り巻く状況の変化といった点を御紹介しておりますが,こういった変化もあったと思います。こういった点を踏まえてどのように考えるのかという問題を取り上げたところでございます。   次に,2ページの「2 財産開示手続の実施要件の見直し」についてですが,この手続は,基本的には強制執行することができる客観的な状況にあるにもかかわらず,強制執行の申立てをするのに必要な財産の特定をすることができない債権者のために必要な情報を提供するという目的のものだと思いますので,そういった意味で,強制執行が可能な状況にあることがまずはこの手続の基本的な実施要件となるのだと思います。   それに加えて,現行制度は,制度の趣旨あるいはその特質といったことを考慮して,言わば上乗せの要件を定め,あるいは再実施を一定の場合に制限する,こういう制度になっております。今般,この制度の実効性を向上させるという観点からは,その上乗せの要件を撤廃するのかどうかといったことが議論の俎上に上ってくるのだろうと思います。そこを御議論いただきたいわけですけれども,とはいえ,一定の制度の趣旨,特質といったことを考慮して定められた現行法の要件を見直すに当たっては,どのような具体的な問題が生じているのか,またそれを見直すとすればどのような根拠に基づくのか,といったところが問題になってこようかと思います。   具体的な見直しのポイントとしては,債務名義の種類を拡大するかどうか,それから不奏功等の要件を見直すかどうか。それから,部会資料の5ページでは,再実施の制限,これを緩和するかどうか,こういった点を取り上げております。   次に部会資料の6ページでございますが,「3 陳述義務の内容の見直し」という点を取り上げております。現在は基本的に開示義務者が陳述の時点を基準としてその積極財産についての陳述義務を負うことになっているわけですけれども,制度の実効性を高めるという観点からは,過去に処分された財産など一定の基準時よりも前の情報についても陳述義務を負わせるべきかどうかといった問題提起がされているところです。実効性を高めるという観点からは,確かにそういった陳述義務の範囲の拡大ということが検討課題となり得るとは思いますが,制度の目的との関係で,どのような根拠付けによってそれをすることができるものとするのかが問われるところだと思います。   そして,資料7ページの「4 手続違背に対する制裁の見直し」ですが,現行制度は,正当な理由のない不出頭,宣誓拒絶などにつきまして30万円以下の過料という制裁を用意しております。この点についても,制度の実効性を高める観点から,例えば刑事罰を導入するかどうか,あるいはそれ以外の制裁手段を用意するかどうか,こういったところが検討課題となってこようかと思います。この点につきましても,制度創設の際にはやはり幾つかの懸念が指摘されていたことを踏まえて,比較的緩やかな制裁手段にとどめたといった議論の経緯があったかと思います。今般の議論に当たっても,例えば罰金刑を科すのであれば,不払の場合には労役場留置といった形で身体拘束につながる可能性があることも踏まえて,改めて議論してみる必要があろうかと思います。   資料についての説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,ただ今御説明がありました「第1 現行の財産開示手続の見直し」の部分について,適宜項目を区切りながら御議論を頂きたいと思います。そこで,まず「1 総論」ですね,資料1ページから2ページにかけての部分でありますが,この点についての御意見をお伺いしたいと思います。どなたからでも結構ですので,御自由に御発言を頂ければと思います。 ○阿多委員 意見というよりも質問というか確認をさせていただきたいのですが。2ページに挙げていただいています三つの理由のうちの②なのですけれども,拝見していまして,この理由が財産開示制度を謙抑的に位置付ける理由として15年当時議論をされたのだと思うのですが,どうもよく飲み込めませんで,①,③については理解しておりますし,③については社会状況の変化というのも分かるのですが,②がどういう理由から理由とされたのか,そしてまたその内容によっては現時点で変化しているのか,考慮すべきなのかどうかということの判断になりますので,ちょっと内容を御紹介していただければと思います。 ○筒井幹事 当時言われていたことは,おおむね部会資料に記載したとおりですので,その趣旨なり背景なりというのは当時の議論にも御参加された方から補充していただいた方がよいかもしれませんけれども,私からも簡単に補足いたしますと,平成15年改正では,同じタイミングで間接強制の補充性を見直すという改正も行っております。逆に言えば,その当時は間接強制は補充的なものと位置付けられる旨が実定法上定められていたわけです。そういった観点からすると,財産開示という新たな制度によって債務者に対して心理的な圧力をかけることについては,これは評価にわたることですけれども,一定の否定的な評価をする意見もあったと思いますので,そういった評価と関連しているのではないかと思います。 ○今井委員 当時無用の心理的負担というようなことがそれほど深刻に議論されたという記憶が実は個人的にはないのでありますけれども,ただこういうふうな議論がされたとすれば,当時は初めての制度で非常に効力が大きい,実効性が上がって,大いに使われるだろうというようなところから,この濫用であったり行き過ぎであったり,そういうことに対する懸念が随分議論されておりましたけれども,実際に始まってみないと分からないことなのですけれども,こんなこともあるのではないか,あんなこともあるのではないかということで,確たる根拠があったとは言えないのではないかという感じがしております。そういう中の一環として,無用な心理的負担というようなことがあったのかなというふうに推測しているわけであります。   ついでに申し上げますと,①のプライバシーのこと,開示するのに当該債務者のこれから強制執行する上での資産を開示してくださいというところで,プライバシーが先に出てくること自体,そういうことを懸念すること自体がまたこの制度が余りにも強力すぎるとどうなのかという議論の結果だったのかと。ただ,よく考えてみれば,この開示というのは元々プライバシーというものを乗り越えているはずですので,これは前回山本克己先生がおっしゃられたようなことにもつながるのかなと,こんなふうに思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。松下委員,特にございませんか。 ○松下委員 今出たとおりだと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。阿多委員,よろしゅうございましょうか。 ○阿多委員 はい,結構です。 ○山本(和)部会長 それでは,ほかにこの総論の部分では,御発言ございますか。 ○勅使川原幹事 プライバシーというのも前回から既に余り重視すべきではないという考え方が出ていたということでございますけれども,やはり債権者が既にもう財産権の侵害状態にあって,弁済を受けるまではそれがずっと維持されてしまうというところからスタートすべきではなかろうかと思います。これで仮にプライバシーを盾に債務者財産の秘匿につながるようなことをすると,やはりその侵害状態の維持がまた長引かせることに法が手助けをしてしまうということになりかねないということも考えられますので,やはりここで債務者財産のプライバシーということを言うなら,少なくとも法の保護に値する利益ではないのではないかということを確認の上で議論を先に進めた方がよろしいのではないかというふうに考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○道垣内委員 プライバシーということだけ考えますと正にそのとおりだろうと思うのですけれども,最終的に陳述をしないこと,あるいは虚偽の陳述をすることに対して刑罰を加えるとか過料を加えるということになったときに,自己負罪をさせないということとの関係は考えておく必要があるだろうと思います。つまり,例えば犯罪によって取得した物があるとき,それを公表しないことがそれ自体が犯罪になるというのは私はおかしいのではないかと思います。プライバシーの保護の問題と少し違いますので,発言しておきます。もっとも,この制度について,以上の理由で拡充に対して反対であるということではありません。ただ,プライバシーは関係ないよねという整理は多少怖い議論かなと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがでしょうか。平成15年改正のときに①から③のようなことが言われていたというのは恐らく事実としてあったのだろうと思いますけれども,皆様方の御認識としてはこの制度を今後考える上においては当時と状況が変わっている部分というのもあり,またそもそもそれほど重視すべきことであったのだろうかという疑問も呈されるということで,そういう意味ではこの①から③というものについては,過度に拘泥することなく検討を進めていってはどうかというぐらいのところでしょうか。 ○阿多委員 ①から③というのを拝見していまして,むしろ個々の論点のところでどの理由が出てくるかというのが全部ニュアンスが違うかと思います。むしろ以下の各論のところでどこまで広げるか,全くこれについての考慮がいらないのであれば今ある制度自体がなぜこうなっているのかというところが問題になると思いますので。ここのところで,私などは①というのは別のところで考慮される要件なのかなというふうにも思っていますので,そこで御議論いただければと思っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○今井委員 ③については全く資料の御指摘のとおりだと思います。プライバシーの点について一言また触れさせていただきます。プライバシー一般という問題と本件は債務名義があって給付命令のある当該債務者の責任財産が分からないときに債権者の立場でそれを開示してもらう,若しくは開示せよという制度なので,当該債務者自身のいわゆるプライバシーの問題とは厳密に考えると,違うのではないかというふうな感じを持っております。   15年改正のときには,私の記憶では第三者の情報提供のときに当該債務者の情報を開示することはプライバシーという議論というのは何となく記憶があるのですけれども,当該債務者が,しかも支払命令を受けている債務者の情報を開示することがプライバシーだという問題設定自体にどこか少し混乱がないだろうかという感じをしております。要は開示してくださいということは当然責任財産自体のプライバシー性を否定する,若しくは乗り越えることが前提で初めてこの制度の正当性が認められるのだろうと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○佐成委員 平成15年改正のときの趣旨と言いますか,非常に謙抑的,抑制的に制度設計された趣旨がこの①から③までの懸念に基づいているということも非常によく理解できましたし,その当時の議論の前提としたものが大分変質してきているというところも分かります。ただ,考慮する必要がないというわけでもない。そういったところで個々の論点でこの①から③について議論していくということは私も賛同したいと思っております。それが一つでございます。   私が申し上げたいのは,そもそもこの実効性の問題が議論として出てきている背景には,現行の財産開示手続が余り使われていないのではないかというようなところがございます。1,000件が多いのか少ないのかとそういうことですけれども,やはり使うか使わないかというのは,要するに,手続が重いかどうか,すなわち非常に厳しくてなかなか手軽に使えないという面と,それから使ったとしても余り得られるものが少ないという成果の問題と両面があって,どちらの方がそういった実効性の問題につながっているのかということが気になるわけでございます。やはり私などは経済界におりますものですから,例え手続がかなり厳しくても得られるものが大きければそれなりにやはり頑張ってやろうというところはあると思うのですが,実際弁護士などの話を聞きましても,余りやっても無駄であるというような成果の面が,どちらかというと手続的な負担の大きさに比べて見劣りするということなのです。したがいまして,手続だけを緩めれば利用件数が伸びるかというと必ずしもそうではないと思います。むしろ我々経済界の中におりますと,やはり成果というのがかなり重視される。ですから,以下の論点でも成果が本当に上がるのかという点が重要でございまして,単に手続を緩めれば簡単になるからというものではないだろうというところは御指摘と言いますか,感想と言った方がよいのかもしれませんが,意見として述べさせていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。大変貴重な御意見だと思います。 ○山本(克)委員 今の御発言はよく理解できるところなのですが,ただ成果が出ない理由というのは大きく分けて二つあると思うのですね。現に財産を持っていないから開示しろといっても何も出てこないというものと,現行の制度で余りにもザルなので隠し得だと。結局本当のことを言ってくれないから成果が出ないということなのかどちらなのかということの検証が,これは実際には検証不可能ですけれども,両方あるということを意識して議論すべきなのではないかなと思います。 ○山本(和)部会長 その点,誠に御指摘のとおりで,私が知る限りでも日本に比べればもっと強い制度を持っているドイツとか韓国とかそういう国でもこれで本当に情報が多数出てきているかといえば,それは必ずしもそうではない面があって,それはやはり,ない袖は振れないと言いますか,ない人からは情報は出てこないということはあるのだろうと,それはそのとおりなのだと思います。しかし,他方では山本克己委員が言われた後者の面というのもそれは否定はできないというところはあるのだろうと思います。   それでは,おおむねよろしければ,先ほど阿多委員からも御指摘があったように,各論的なところで更にこのプライバシーの問題等々についても出てくるところがあろうかと思いますので,順次各論的な議論に移ってまいりたいと思います。   そこで,続きましては「2 財産開示手続の実施要件の見直し」ですが,これは債務名義の種類の拡大,不奏功要件,それから再実施制限という大きく三つの柱からなっておりますが,ここは特に区切らずに,この2の部分,2ページから6ページの部分についてまとめて御議論を頂きたいと思います。ここもどなたからでも結構ですので,御意見を頂ければと思います。 ○阿多委員 この債務名義の種類の件ですが,先ほど上乗せされている条件という御説明がありましたが,上乗せかどうかは別にいたしまして申し上げます。今回対象となるものが差押え等の正に財産で預金その他で回復可能なものか情報なのかというところの違いが15年改正のときには上乗せの要件を課すかどうかのところの理由になったのだと思います。   多分検証すべきなのは,その上乗せを課すほどの,先ほどの②,③ではないですが,弊害があるのかどうかというところで,多分執行証書との関係は上の③の状況を踏まえて弊害が,懸念であったりないしは社会環境の変化でなくなっているのではないかという御指摘かとこれを拝見して思いました。しかしながら,執行証書の懸念というのは③で出ている特殊な社会状況というか貸金業者等だけではなくて,公正証書一般をめぐる裁判のやはり一定数の存在というのが理由になっているのかと思います。請求異議の際の原因になるもの,統計的なものまで持ち合わせておりませんが,弁護士などにすれば公正証書の内容が必ずしも適切でないがゆえにトラブルになっているということについては一定数経験をしているところでございまして,やはり執行証書について現状拡大,それを上乗せを外すというのは問題があるのではないかというふうに考えています。   ただ,後半で御指摘されている執行証書の中でも養育費等につきましては社会的実情のあるところも理解できるところでありまして,この部分については外すことはあり得るのではないかと考えています。   では,同じ執行証書の中でなぜ区分ができるのか,多分そこの線引きの理由の問題になるかと思いますが,貸金業者等の場合の執行証書については契約関係その他金銭の債権債務関係という,言わば当事者の合意ないしは事実に基づくものですが,この養育費等については親子関係,戸籍関係というものが前提になって,そこ自体が問題になること自体は余りないのではないかと思います。紛争の実質は金額の当否その他の問題でありまして,少なくとも親の方としては養育費負担というのは義務としてあるわけですので,そういう意味では同じ執行証書の中でも区別が可能ではないか。実際作られている執行証書も,執行証書の最初の見出しのところでもどういう内容の公正証書なのかというのは意図して区別されていると思っておりまして,そのような形式的区別も持続的にも可能であるというふうに考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○松下委員 (1)の債務名義の種類の拡大について3点申し上げたいと思います。   今阿多委員からは,執行証書の成立等をめぐるトラブルがある,だからその執行証書の拡大について慎重であるべきではないかという御意見がありましたけれども,しかし,現行法はそれを飲み込んだ上で債務名義として定めているわけですから,強制執行の準備だという財産開示の位置付けからすれば現行のように債務名義の中で差を設けて財産開示の基礎にできるものとできないものを区別するというのは,小さく生むときには妥当するかもしれませんが,今までその利用がそれほど多くなく濫用の話も余り聞こえてこないという現状を踏まえてこの議論をするのであれば,債務名義の種類に限定を設けないという方が整合的ではないかと思います。以上が第1点です。   第2点ですが,確かに一旦財産に関する情報が開示された後で権利の存在が否定されるということがあり得るわけです。例えば仮執行宣言付判決について上訴審で判断が変更されたような場合に,財産は回復できるが情報は戻らないではないかという懸念があって現行法がこうなっているのだと思います。しかし,権利がなくなったのであれば,その得た情報を使うのは類型的に目的外使用になるわけですね。現行法202条でいう,「当該債務者に対する債権をその本旨に従って行使する目的」が,債権がなくなったことによって類型的になくなるわけですから,それを使えば目的外使用だということなるわけです。なので,現行法で言うと206条の2項でサンクションが科されるわけで,そこで対応すべき問題ではないかと思います。   後の方の7ページの「手続違背に対する制裁の見直し」では,206条2項の話は余り直接的には出てこないように見受けられますが,今のような文脈からは206条2項についても現状よりも実効性のある,端的に言えば重い制裁を構想すべきではないかということです。以上が第2点です。   3点目は細かい話なのですが,現行法で言うと197条1項で言う債務名義の種類の限定を外すのであれば,201条が定める財産開示事件の記録の閲覧できる人について201条2号で債務名義の種類の限定がありますけれども,こちらも外すのが筋だろうと思います。以上が3点目です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。確認ですけれども,そうすると,債務名義については基本的には,支払督促なども含めて一切認めるべきだというお考えだということでしょうか。 ○松下委員 はい,現行法が債務名義として認めている以上はその準備ができる可能性について差を設けるべきではないという趣旨です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。 ○青木幹事 私も松下委員の一つ目の意見に賛成で,債務名義として認められていて強制執行本体ができるわけですので,その前提となる財産開示についても認めるべきではないかなと思います。現行法ですと,債務名義とされるものの一部が一律に排除されてしまっておりますので,例えば,執行証書を持っている債権者は財産開示の手続を利用しようとすればまた場合によっては改めて訴えを提起するなどの手続をとる必要が出てくるわけですけれども,それはやや煩雑なのではないかなというのが一つの理由ということになります。   一律に否定しなくても問題のあるものについては個別的に執行停止の裁判を得るなどして手続を止めるということは可能ではないかなというふうに考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 私も基本的には制限を設けないという方向に共感を覚えるところですけれども,ただ1点付け加えますと,およそ債務名義として認められていて強制執行ができるのだから財産開示手続との関係でも何ら差異を設ける理由はない,というふうに一概に言ってしまえるかどうかという点については,私は問題によっては区別を設けるべき場合というのがないとは言い切れないように思います。ただ,ここで具体的に問題とされている,例えば情報が一旦開示されたものは開示されなかった状態にはできない,そのこと自体は事実なのですけれども,しかし,そのことが債務者の被る不利益としてどの程度深刻であり重要視されるべきものなのかということを考えたときに,この理由で現在のような区別を設けることが十分説明できるのかというと,そこは必ずしも説明できないのではないかというように感じます。   また,執行証書に関しましても,これは先ほどの総論部分の②とか③のところの評価にも関係するかと思いますが,抽象的に何か弊害とか濫用のおそれというのは確かに分かるような気もするところではありますが,実際に財産開示手続の利用を認めたというそのことによってどの程度具体的な弊害がどういう形で考えられるのかということを考えますと,現在の状況を前提にしたときにこの制限を維持する理由が十分にあるのかということについては結論としては私も疑問だと考えております。   したがいまして,方向としては先ほど松下委員や青木幹事がおっしゃったような方向に私も賛同するところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。 ○柳川委員 養育費とか扶養に関わるものについては外していただきたいと思います。消費生活センターには支払が滞って,訴訟等になり,債務名義を取られたといった相談も入ってきます。消費生活センターでそれらの債務の中身をよく検討すると,例えば販売形態や販売方法によっては特定商取引法や消費者契約法等の法律に基づいて処理がなされるわけですが,本来クーリング・オフ処理されるべきものがクーリング・オフ行使されていないとか,クーリング・オフが見られるので,クーリング・オフが可能と考えられるだとか,中途解約ができる条件が整っているので,中途解約権に基づいた清算処理がされていなければならないとか,消費者契約法や特商法,割賦販売法によって,取消しや無効を主張できるものなどが,法律に基づいた処理がされないまま債務名義となっていることがあります。   こういった現実があるので,債務名義の中身をきちんと見ていくという手立ても残しておかなければバランスが悪いのではないかと考えます。 ○阿多委員 研究者の方3名続けて上乗せを外すという御意見を頂きましたので,もう一度実務家としてなのですが,今御指摘ありました執行証書については御指摘のとおりで,むしろ法務省のホームページ等を拝見しても執行証書をめぐるトラブルについての注意喚起をしているような状況で,執行証書に関してはトラブルが多いというのはある程度一般的な認識で共有できるのかと思います。   仮執行宣言付判決について言うならば,控訴審等で原判決の破棄も含め,一定変更される率が,正確な数字は今日手元に持っておりませんけれども,20%等の割合で原判決の変更がなされているということもあると,必ずしも確定していない段階で情報取得まで認める必要があるのかという点,さらには,この上がっている仮執行宣言付判決や支払督促については現状のままでするのがトラブル回避としては望ましいのではないかと。ただ,執行証書の一部については必要性の方が有意となってというので変更することは妥当であるというふうに考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。20%変更されているというのは,仮執行宣言付判決について20%ということですか。 ○阿多委員 いえ,そういう統計は多分ないと思うのですが,原判決自体が変更されている内容がということです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。 ○谷幹事 債務名義の拡大をこの度図るかどうかという論点については,やはり具体的な実情を踏まえて考えていく必要があるだろうと思っておりまして,その幾つかの実情については執行証書については阿多委員から出ましたし,それから支払督促についてもお話が出ました。執行証書について若干補足をさせていただきたいと思いますのは,今養育費の問題に限っては債務名義として認めていいのではないかというふうな御意見がございます。そういう場面も多々あるのだろうとは思いますけれども,ただそれなりに経験する例としては,必ずしも額の定め方が適正なのかどうなのか,今裁判所の実務では算定表を基に,基本的にはその算定表に従った金額を定めるという実務が行われておりますけれども,必ずしもそうでもない場面があったり,それは多い場合もあるし少ない場合もある。多い場合というのは恐らく弁護士が関与せずに当事者同士でやる場合が多くて,離婚するために非常に多額の養育費を決めてしまうとか,場合によっては一括払いで養育費を決めてしまうとか,一括払いで数百万,1,000万の養育費を決めてしまうというようなこともありまして,少しそういうふうな実情などを経験しておりますと,無条件で執行証書を認めていいのかどうかということについては慎重な検討が必要なのかなと思っております。   これは恐らくそういう場合に仮に財産開示の申立てをされたとして,債務者としてどういう対応ができるのかということを考えますと,非常に手続も煩雑になるといいうふうなことも踏まえた上で検討する必要があるのではないかということでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○村上委員 債務者にもなり債権者にもなるような立場から少し総論的なお話をさせていただきたいと思います。   現行の財産開示手続の見直しだけではなくて,第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度を新設する場合の,両者に当てはまるかと思うのですが,今回見直すに当たっては個人情報保護の問題や,先ほど指摘されました債務者は弱い立場にあるというケースもありまして,こうしたものと保護法益とのバランスというものが求められるだろうと考えております。   見直しの方向として,あらゆる債権を対象とするというよりは,要保護性が高い,例えば生存権に関わるような債権を対象としていって,そこから広げていくということも考えられるのではないかと思います。例えば養育費や,犯罪被害者などの不法行為による損害賠償債権もありますし,また前回も申し上げましたが,民法の先取特権で保護されている労働債権などが該当するのではないかと考えております。   未払の賃金や未払の退職金などの労働債権については,現行の債務者財産の開示制度を利用したケースというものは私どもとしては余り聞いたことがない状況でございます。こういったことを鑑みますと,やはり労働者側には情報収集の能力の格差がございますので,制度を充実させていく必要があるだろうと考えております。   ただその一方で,先ほども申し上げましたとおり,債務者の立場が弱い場合もありまして,その場合,例えば債権者の制度利用によって債務者である労働者の勤務先が明らかになり,そのことを理由にして解雇がなされるなどの不安はないのだろうかということも心配されるところであります。また,昨今問題になっている奨学金の返済など,若い方の問題というのもございますので,もう少し個別具体的に,この場合には保護しなければいけないというところは守っていくべきではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○山本(克)委員 阿多委員のおっしゃったことと谷幹事がおっしゃったことについて御質問したいのですが。執行証書について請求異議の訴えの成立の瑕(か)疵(し)の方の訴えが多いというのは公知の事実なのですが,養育費の場合にはそういう成立の瑕(か)疵(し)の頻度が低いということを言わないと,養育費だけをくくり出して別箇扱いするというのは難しいのではないのかなという気がします。養育費だけはそういう瑕(か)疵(し)があることを目をつぶって特別扱いするという議論は,私はちょっと納得がいかないということです。   それと,先ほど谷幹事がおっしゃった支払能力を超えるような一時払いの養育費を合意してしまったという場合ですが,執行証書になったときは,単に離婚協議書という私製証書を作って,それに基づいて給付判決を受ければ同じことになるので,なぜそういう過大な,支払能力を超えるような養育費を負担してしまった人をなぜ保護しなければ,このコンテクストですよ,保護しなければいけないのかというところについてもう少しお教えいただければと思います。 ○谷幹事 恐らくおっしゃったような公正証書ではなくて私的な合意で過大な養育費を定めた場合に法的にはどういう関係になるかというと,その合意がまず有効か無効かということが問題になるのでしょうけれども,養育費の定めですので,これは後の事情によって変更を求めることができるということに恐らくなるのだろうと思います。具体的には,調停なり家事審判の手続で変更を求めると。それで変更されれば債務の内容,仮に元々の合意が有効だとしても変更されれば債務の内容が変わるということにはなるのだろうと思いますので,そうなれば恐らく私的な合意書で訴訟を起こしたとしても,その段階でそういう主張なりができると,そういう関係になるのだろうと思います。 ○山本(克)委員 今の点ですけれども,一時払いの養育費を定めた場合に事情変更があり得るのかどうかというのはちょっとそれ自体一つ問題なのではないか。普通考えているのは定期金支払で,定期金を支払うだけの収入がなくなってきたような場合に変更するということを考えているので,一時払いで今すぐ払いますという約束をした場合に事情変更があり得るのかどうかという点については家裁の実務がどうなっているのか私存じませんので詳しくは,家庭局の方が今日は残念ながらお休みなので聞けませんが,それ自体一つ問題なのではないかと思います。それはともかくとして,私が申し上げたのは,離婚書の中にそういう定めがあった場合には給付訴訟を起こして給付判決をとれるというのが一般的な考え方ですから,その場合に給付判決に基づけば当然開示を求めることができるわけですね。そこのところとの関係がどうなっているのかということをお伺いしたかったのです。 ○谷幹事 分かりました。少し一般化して考えた方がいいかなと思いますのは,そういう場合には訴訟,訴えを提起した場合には,その中で様々な無効原因が審理をされるということになるのだろうと思うのですね。先ほど申し上げた養育費の額の変更ということがあり得るのかどうか,それから暴利行為なりというようなことでの無効なりというふうなことが審理をされて,それでその結果有効だということになればそれは債務名義,確定判決として成立をするということになりますので,それはそれで,それに基づいて手続がなされるというのは,これは当然のことではあります。しかし,執行証書にはそういう無効原因があると,それをどこかで判断がなされるということを考えるならば,直ちに執行証書で財産開示を認めるというのは問題があるのではないかということでございます。 ○山本(克)委員 それはそのために請求異議制度があるのではないのかということになるのではないか。やはり,それを言い出すと,執行証書によって強制執行できること自体おかしいので。それを今おっしゃったような事態を避けるために請求異議制度があり,日本法はドイツ法と違って債務名義の成立についての瑕(か)疵(し)についても請求異議を認めているというふうな形をとっているわけなので,そちらに行かずに入り口で制約するという議論がもう一つ,松下さんが最初におっしゃったことですけれども,それに納得がいかないということです。 ○谷幹事 その点は恐らく最終的には価値判断なのかなと思いますけれども,請求異議があるということだとしても,手続を具体的に考えれば,財産開示の申立てがあって実施決定がなされて,請求異議の訴えを提起して執行停止をとり,それでその執行停止文書を提出して手続を止めるという,こういうことになるわけでして,これはやはりなかなか大変なテーマでございますので,しかしそれはそれとして仕方ないのだ,そういう制度にすべきなのだという決断するかどうか,これは一つの価値判断だと思いますけれども,そこまでの強い効力を認めていいのかどうかについては私としては疑問があるということでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   あと,山本克己委員が1番目に言われた方ですね,養育費の執行証書の方が瑕(か)疵(し)が生じる率が低いのかということですが,これは何か,阿多委員からお願いします。 ○阿多委員 私に投げられた質問ですので申し上げます。養育費の場合とほかの金銭債権を内容とする公正証書でその頻度が高いのか低いのかということについては,まず御承知のように,公正証書作成に際しては公証人が前提となる事実関係を確認するわけではなくて,公正証書の作成者の提示する内容に基づいて判断する,何も事実の調査をするわけではない。そういう状況において先ほど区別の根拠として申し上げた家族関係があるかないか,戸籍関係があるかないかという情報について,それは調べなくてもそれほど内容が不正確,端的に言えば虚偽という可能性は低くて,あとはそれに基づく法律上の義務としての養育費が幾らが適切かというかなり評価が入ってくる内容になるかと思いますけれども。金銭債権の成立,存否についてはやはり前提となる事実があるのかないのかによって相当影響がある。そこで養育費や,これは婚費も入るかと思いますけれども,戸籍関係に基づく情報に関する公正証書についてはそれほどトラブルになる可能性が低いというふうに考えて,この対象に取り込むことは可能ではないか,そういう理由で線引きをしています。 ○山本(克)委員 私が聞きたかったのは,内容の虚偽性よりも成立の瑕(か)疵(し)の話だったのですけれども。今のは内容の虚偽性の話ですよね。 ○阿多委員 成立の瑕(か)疵(し)は,離婚の場合は少なくとも協議離婚というような形式が立って,別箇の手続もなされているので成立についてもそれほどトラブルがあるというふうには考えていない,聞いていないということになるかと思います。 ○山本(和)部会長 この辺りの実状については,実証的に法務省もなかなか分からないですかね。 ○今井委員 今養育費のことを中心にこの制度をどこまで広げるか,現行法より広げるかという御議論だと思います。そうなると,今要保護性とかどこで区別するか,要保護性が高ければという議論は非常に分かりますが,実際にはなかなかどういうふうにそこを線引きするのかなというところが難しいのだろうなと思っております。今学者の先生が中心に,債務名義全般だろうというのが非常に分かりやすいわけで,結局債務名義があって,つまり強制執行可能な債権があって,それについての対象財産を探すという意味では,債務名義で区分けする必要はないではないかという議論は非常に分かりやすいと思うのですね。ただ,現実には例えば執行証書,それから暫定的判断になるような種類の債務名義で,それを一律にやっていいのかというところは,やはりやや躊躇するところがございます。   観点はちょっと違うのですが,前回柳川委員からだと思いますけれども,一生懸命裁判所で審理して判決をとって,それは我々のこういう法律に関与している実務家からすると債務名義と執行と分けるのですけれども,やはりこれ国民と言いますかユーザーとしての国民から言えば,債務名義は何のためかと言えばその権利の実現だという意味で,こういう場でこういう表現は不適切かもしれませんが,やはり債務名義の執行なり権利の実現は一気通貫だというふうに一般には考えられておりますし,それが司法のインフラという面だと思うのですね。   そういう面から言うと,やはり裁判所で主張,立証を当事者が尽くして,厳格な立証をするわけですね。そして,債務名義ができた。そこで執行の手前の探すというところがスポッと抜けてる,それは自己責任だよねと,そこだけ自己責任として自力救済禁止と言いながらそこだけは自分でやりなさいという。申立てがくれば執行はやってあげますよというところはあるのですけれども。ですから,そのスポッと抜けているところの説明としてそこに財産開示の意義がある,これが司法のインフラを完備するということではないかなというふうに私は思っているわけです。   そうすると,裁判所が判決を出す,その結果として一気通貫で裁判所で財産開示し,裁判所が関与して強制執行するというのは非常に説明しやすいと思います。執行証書はそうなると裁判所ではないけれども,国が関与しているといえば国が関与する。ただ,これは合意調書ということもありますので,裁判所の判断によってというのとまたちょっと違うので,そういう意味からすると,そこはちょっと仕分けができそうな気がする。ただ,その中に今御議論がありましたとおり,養育費の点はその中でも例外を作るべきだという区分けができるのかなという,更に問題が難しくなる気がします。   ただ,裁判所が関与したとしても,阿多委員からお話がありましたとおり,暫定的で上で一部若しくは全部が変わるというリスクがあるわけですから,それをやっていいのかなと,ちょっと悩ましいところでございます。   いろいろ申し上げましたけれども,一つの切り口としては裁判所の関与したということは説明がつきやすい,債務名義という全般からするとそれを分断して一部を分けるというのは現実には難しいなということで,ちょっとまだ個人的には結論が出ていない状況ではありますが,そんな切り口で考えるべきではなかろうかということを申し上げたかったものです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○阿多委員 村上委員から御発言がありました犯罪被害者の保護の関係なのですが,私が手続の実情を正確に理解していないのかもしれませんが,犯罪被害者の保護というのは当然重要なのですが,附帯私訴でする場合には通常の判決と同じ債務名義になっていて,その執行証書で犯罪被害者の保護をしているという場面は必ずしも多くないのではないか。そうすると,犯罪被害者の保護の必要性から執行証書をここの中で取り込まなければいけないという必要はないのではないかというふうに理解しています。 ○山本(和)部会長 損害賠償命令のことですね。 ○阿多委員 ええ。 ○松下委員 部会長はもしかしたら(2)とか(3)についても言及するようにと思ってらっしゃるのかもしれませんが,誠に申し訳ありません,まだ(1)なのですけれども。   執行証書と仮執行宣言について1点ずつ追加して意見を申し述べます。現在,執行証書については執行債権の要保護性による区別ができるのではないかと,あるいはすべきではないかという議論がされているわけです。そのこと自体を否定するわけではないのですが,ただ具体的にそれが可能なのか,あるいはこの債務名義の種類の制限というのは財産開示手続の冒頭にくる要件ですので,手続の入り口でひっかかってなかなか先に進まないということになってしまうのではないかという懸念もあります。運用のしやすさということを考えるとなかなか区別が難しいのかなと思います。だから,冒頭,私が債務名義の種類に区別を設けるべきではないと申し上げたのは,執行証書についても区別するアイデアを持っていないということを含意したことだということです。何かいいアイデアがあれば私もそれに乗ることにやぶさかではないということです。以上が第1点です。   第2点ですが,仮執行宣言付判決については先ほど阿多委員から上訴審での覆滅可能性という話が出ましたけれども,しかしこれもまた現行法は未確定判決であっても強制執行できるという権能を第一審勝訴原告に与えているわけで,確かに控訴審での覆滅可能性もありますが,他方で敗訴被告の控訴による確定引き延ばしということから原告を守るという重要な機能もあるわけですから,そこも考えて債務名義の種類の限定を撤廃するというのを考えるべきではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   今松下委員からも御指摘を頂きましたが,もし可能であればこの(2),(3)の方にも御意見を頂ければ大変有り難いと思います。制限するわけではありませんけれども。いかがでしょうか。 ○谷幹事 すみません,(1)で申し訳ないのですけれども,こういう点の考慮が必要ではないかということだけちょっと指摘をさせていただきたいと思います。   執行証書を広く認めるべきだという御意見の理由は,いずれも強制執行できるからということが大きな理由だと思いますが,ただ,やはり考えなければならないのは,その執行手続の性質によって違いがあるのではないかということは考えないといけないと思います。仮執行宣言について金銭債権に基づいて執行するという場合には,執行して後で覆ったとしても金銭債権だから回復が可能であるということから認められていると思います。   一方,財産開示については,財産の内容,これをプライバシーとして保護すべきかどうかという議論はありますけれども,私的な情報であることは間違いございませんので,それが一旦出てしまうとそれが覆えらないということになりますので,それをどういうふうに考えるのか,その辺りの視点も踏まえた上で結論を出すべきだろうということだけ指摘をしたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○青木幹事 債務名義の種類を限定すべきだという考え方は,今,谷幹事がおっしゃったように,その情報が開示されてしまうと回復ができないという性質を挙げられているのですけれども,更に開示された情報に基づいて現実に不当執行がされてしまうということ,それを現行法では財産開示が行われず,情報が得られないので執行できないということで防いでいるというのが恐らくあるのではないかなと思いますが,それはいかがですか。 ○山本(和)部会長 どなたへの問いでしょうか。阿多委員はいかがでしょうか。 ○阿多委員 すみません,ちょっと正確に理解できてないのですが。 ○青木幹事 補足させていただくと,総論のところでは債務者の財産についてのプライバシーというものは余り考えなくてもいいのではないかという意見も多く出ていたところで,それと比べてここでなぜ債務者の財産が一旦開示されてしまうと回復できないということが強調されるのかなというふうに疑問に思ったので,むしろ現実に不当執行がされてしまうということを問題にされているのではないかなと思ったので確認の質問をさせていただいたということです。 ○阿多委員 不当執行がされているかどうかということについては,この統計的なものはないのですが。むしろ総論のところで実効性確保で問題になっているのは,いわゆる不出頭率が余りに高いというところで,この不出頭率をいかに下げるのか,更にはその不出頭率が高いというのが実は我々はそれが申立件数の減少の理由だというふうに考えていますので,申立件数をいかに拡大するのかというのが実効性の確保という趣旨で理解しておりまして。この債務名義の拡大ということが実効性とどうむしろ結び付くのかというのはそもそも問題提起として疑問に思っているところです。   先ほどお話出ました,仮に執行証書の内容が問題があれば執行抗告やその手続で争えばいいというお話でしたが,そもそも執行抗告の中の事由になるのかという問題もありますし,先ほども出ました金額の相当というのは理由としてそれが適切なのかという疑問もありますし。むしろ松下委員からは,仮に理由がなければ目的外使用で制限されているではないかという形で,それは過料等の制裁で担保されているという形で守られているというお話もあったのですが,理由もないのに開示させられること自体が問題ではないか。開示させられた情報がどこかに流用されるとかいうところが問題と考えているのではなくて,開示させられること自体がやはり問題であるというふうに考えていますので,先ほどのその後執行に利用されているのかどうか以前の段階でやはり開示させられるべきものでない場合にはその段階で手続としては止めるべきであると,こういうふうに考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○垣内幹事 申し訳ありません,今の論点にも関係することで申し上げます。従来の議論あるいは今の御指摘にもありました情報を一旦開示するとそれはなかったことにはできないということに対して,強制執行の実施それ自体は財産はそれで動くかもしれないけれども,財産については回復が可能であるという議論がされてきたわけなのですけれども,しかし,私はその両者を比較したときに,情報開示の方がより深刻であるという評価は必ずしも自明ではないのではないかという気がしております。むしろやはりある財産,差押可能な財産があるかどうかというところが判明することと,実際にそれが差し押さえられて換価されて奪われるということを考えたときに,一般的には後者の方がより深刻な不利益なのであって,前者はその準備段階であるという位置付けが可能なように思われますので,前者についてのハードルの方が高いというのが均衡がとれた規律なのかという点について,私としてはなお疑問の余地があるように感じているところです。   ただ,実際には先ほど来様々な事案,類型において弊害が懸念されるというお話があり,それ自体は理解できる面もあるように感じるのですけれども,ただ考えてみますと,先ほど言ったことの繰り返しになりますけれども,仮にそうした例えば執行証書であれ支払督促であれ,そうした債務名義を持っている者がたまたま差押え可能な財産を把握していれば差押えが可能で,あるいはそれは不当執行かもしれませんけれども,強制執行は適法にできるという地位にあるわけでありまして,そこをうまく財産を隠し通せればいいのだけれども,そうでなかった人は強制執行されてしまうけれども,それはそれで仕方がないというのが果たして規律として適切かということも問題なのではないか。むしろ不当執行のおそれということに関して申しますと,それに対する実効的な手当てができていないというところに問題があるのかもしれません。それは手続法の立法あるいはその研究をする者の責任として返ってくるのかもしれませんけれども,本来,少なくとも理論的にはそちらの方で考えるべき問題ではないか。山本委員が請求異議という話をされましたけれども,そういった手当てで対応すべき問題,理論的にはそういう整理なのだろうと思います。しかし,なお現実はいろいろあるのだということであれば,それは政策判断としてあり得るのかもしれませんけれども,私自身の整理としては以上のように理解をしているところですので,付け加えさせていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 簡潔に申し上げます。先ほどの垣内委員の御意見を拝聴していましても,どうも財産開示というのは本来の強制執行の手段的なその準備としての位置付けという面が強調されていて,言わば本来の強制執行のところではそのような要件が課せられていないのに,なぜ財産開示という同じ執行手続の中で違いがあるのか,その点の御指摘があったかと思います。執行の対象が違うということ,同じことの繰り返しですが,やはり財産開示についてはわざわざ手段ではなくて独自の第4章という形で章立てをして,それ自体の執行として一つ完結している手続なわけで,財産開示とほかの強制執行とを上乗せというお話がありましたが,要件が違うというのは制度の設計としてはあり得る。これを元々強制執行の手段,準備という中で強制執行の中の,例えば申立てに際しての準備行為なのだと位置付けるのであれば元々の強制執行の要件を前提に議論することになるかと思いますけれども,15年改正は少なくとも独自の章にしたというところに意味があると思っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   この(1)の部分については,その議論の分かれ,そしてそれぞれの根拠というのは相当程度明らかになったのではないかと思いますので,恐縮ですが先に進ませていただくというか,(2)の不奏功要件の問題,(3)の再実施制限の緩和の問題,これはいずれも重要な問題だと思いますので,是非こちらの方についても御意見を頂ければと思います。 ○山本(克)委員 (1)の最後の阿多委員の発言についてちょっとコメントした後,(2)について発言させていただきます。   民事執行法の体系としてはここに入れざるを得ないと,そういう前裁きに資するということは執行機関が執行官である場合に前裁きとして執行裁判所に手続を置くということは不可能ですし,これは一般先取特権の実行にも適用される手続ですから,当然ここにくるというのは当たり前だと思いますので,それは当然のことがこうなっているだけで,阿多委員の言われるような理由には当たらないと思います。   それはともかくとして,私15年改正のときには審議会に関与してなかったので詳細は存じ上げないのですが,この(2)の二つの要件ですね,強制執行ないしは配当要求の不奏功と,ないしは知れている財産では満足を得られないというようなことを疎明することでなぜ濫用が防止できるのかと,一体ここで考えていた濫用というのは何なのかというのが私はよく分からない。もし御存じの方があればそこを教えていただければと思います。 ○阿多委員 私自身は後で結論を述べますように,2に関しては不奏功要件の廃止を考えているのですが,先ほど御指摘のところについてはこの不奏功要件が入った理由は総論の理由①,②,③のうちの①が理由で,いわゆる謙抑的にすべきではないか。つまり,一旦執行したけれども,執行というのは債務から積極的に払っているわけではないですが,支払わないから財産開示という形の立て付けで考えたからこうなっているのであって,そのために①が正に配当手続において完全な弁済を得ることができないと,②はそれとほぼ同様の状況を要求しているということが根拠なのであって,濫用でむしろ議論したのは再実施制限のところなのかなと思っています。   今の実情だけお話しますと,①のいわゆる配当等の手続でという形になりますと,配当手続までいかないとこの財産開示への申立てができないと,我々実務的には動産執行等では執行不能というのがあるのですが,その執行不能ではこの要件も満たしませんし,何かほかの配当手続までいかないと駄目だという形になりますし,実務の運用としてはこの②というのは,1号,2号といえば評価として同価値のものを要求されているため,②について我々が疎明するには非常に実際上負担が大きいと。それで機能していないのでこの要件を見直していただくことによってより利用しやすい,それが実効性が高いという制度に改めていただければと思っています。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○餘多分幹事 今お話のあった不奏功等要件の見直し自体にそれほど意見があるわけではないのですけれども,今②の要件について審査が厳しいのではないかというお話もあったので,そこについてまず1点申し上げます。   知れている財産に対する強制執行を実施しても完全な弁済が得られないことの疎明については,全国全ての裁判所の運用を必ずしも把握しているというわけではないのですけれども,一般的に伺っている限りではそれほど厳しいことを求めているとは聞いておらず,例えば債務者の住所地の不動産登記簿などを出させる程度でその疎明資料としては足りると判断をしているところが多いのではないかと思っております。   また,不奏功等要件の見直しについては先ほど申し上げたようにそれ自体に大きな意見があるわけではないのですが,部会資料の中では正当な理由がないときという要件を設けることはどうかという御提案がされているのですけれども,これについては基本的には余り賛成できないというふうに考えております。というのは,正当な理由がないときという要件自体が非常に抽象的な要件でございますので,判断基準が不明確になりやすく,円滑,安定的な実務運用というのが難しいのではないかと思っております。これを判断しようとすれば,例えば債務者の反論を実施決定の前に聞かなければいけないというようなことにならないかなどを懸念しているところでございます。   部会資料の中には正当な理由の例示として,申立人がその金銭債権の完全な弁済を得るに十分な債務者の財産を容易に探すことができると認められるなどといった例示がされているところでございますけれども,どのような場合にこの例示の部分に当たるのかということ自体が容易に分からず,またこのような例示があったとしてもその場合だけに正当な理由がないときが限定されるわけでもないわけですので,正当な理由の判断は非常に難しいかなと思っております。   実際問題として,阿多委員からも,「知れている財産に対する強制執行を実施しても,申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったとき」という現行の規定ですら先ほどのような御批判がある中で,このような正当な理由だとか完全な弁済を得るに十分な債務者の財産を容易に探すことができると認められる要件を課すと,結局のところやはり重い手続になりかねず,不奏功等要件を緩和しようとしていることにそぐわない結果になるのではないかと非常に懸念しております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○谷幹事 私もこの不奏功要件につきましては撤廃ないし緩和をすべきではないかなというふうに考えているところでございます。その関係で,ちょっと実情が分かれば是非教えていただきたいと思いますのは,本日の部会資料2の1ページに統計がございまして,それで年度によって変動はあるのですけれども,最新の平成27年でいきますと,開示事件数が284で34.8%と。これが今計算しますと既済事件数の中の開示事件の割合のようでございまして,この中には恐らく財産開示手続をとったことによって任意に支払われて取下げをするというようなことも含まれているのだろうとは思うのですけれども,今のこの不奏功要件に該当しないということで却下をされている例というのもあるのではないかと思いますので,もしその辺りの実情が分かれば教えていただきたいなと思います。   と申しますのは,これも弁護士会の中で議論した中では,この財産開示の制度を使わない理由として,どこまで調査をしないといけないのか,つまり②の要件に関してどこまで調査をしないといけないのかというのは必ずしも明らかではないと。今餘多分幹事の方から実情の御紹介ありましたけれども,裁判所によって運用が若干違うというふうな御意見も聞いたこともございますし,そういう意味でこれが一つの利用のネックになっているというような実情が弁護士側からすればあるのではないのかなと思っておりますので,ちょっとその辺の実情も踏まえたこともお聞かせいただきたいし,これについては何らかの見直しが必要なのかなと思っております。   それから,手続が重くなるようなことは避けたいという餘多分幹事の御意見ありました。その点は私どもも全く異論はないわけでございまして,手続的に発令の判断の中で重い手続で重い判断をするというふうなことではない何らかの制度作りというものができないのか。これも今後議論していくことなのでしょうけれども,場合によっては正当な理由という要件を仮に付けたとして,それについては発令段階では一定判断はもちろんするのですけれども,発令をした上で,債務者側からの執行抗告の中で具体的な資料を出してもらってそれを根拠があれば取り消すというふうな手続もあり得るのかなと思っているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○餘多分幹事 実情のお話がありましたので,若干御紹介をさせていただきます。部会資料に載っている平成27年の数値の関係で申し上げますと,開示があった事件数が284件なわけですけれども,それ以外の事由で一番多いのは不開示で337件です。それ以外は取下げが168件でございまして,これ以外に,却下,取消し,その他といった事由があるのですけれども,却下されたのは7件でございます。却下の理由は必ずしも明らかではないわけですけれども,197条の1項2号の要件で却下したかどうかということについては,全国で執行事件を扱っている大きな裁判所の裁判官とお話をしたことがあるのですけれども,その中ではそういった経験があるといった話は出ませんでしたので,197条1項2号の要件で却下しているという例はほとんどないというふうに認識しております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○太田委員 私の実感ということになってしまうのかもしれませんけれども,却下の話については餘多分幹事のお話のとおりだと思います。私は4月以降の経験しかないのですが,この要件で却下したというのは東京の限りでは周りの裁判官含めて記憶がないということです。実務の運用はかなり厳しいのではないかという御指摘がありまして,ひょっとしたら小さく生んだ頃にはそういうのがあったのかもしれないのですが,今私の実感としては,要件は余り厳しくはしておりませんで,例えば自然人ですと働いておられたらどういう勤務先ですかとか,営業されている方だと通常の取引銀行とか御存じですかというようなことは場合によっては伺うかもしれませんけれども,それを超えて全ての財産について調べてきてくださいというようなことは申し上げてはいないというふうに承知しております。   これは感覚の問題かもしれませんけれども,財産開示期日において財産を開示するということになりますと債務者の財産全体について開示することになっていまして,財産目録を作っていただくのが前提になっておりますので,全ての財産について目録を作っていただくということになりますと,その作業はかなり大変なのかなと思っておりまして,そのような負担とのバランスで,ある程度の要件があるというのは,現段階では合理的かなと思っておりまして,そのように運用しておるつもりであります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○道垣内委員 いや,全ての財産について目録を作るというお話を今伺いまして,ちょっと私もひるんでいるのですが。というのはどういうことかというと,この制度自体がどういうふうな作りになっているのかということなのですね。つまり,200条というのが存在して,その足りるだけの財産について開示をすると,執行裁判所の許可が必要ですけれども,それ以上については開示をしなくてもよいという制度になっている。そうなると,この制度自体は少なくとも現行法の下では当該債権者,権利者を満足させるのに必要な財産を明らかにするという手続になっているのではないかという気がいたします。そうしますと,もし仮に200条のような手続を仮に残すとすると,財産開示請求から足りないことを疎明するという要件を外すということは,結局足りているということをどちらの側が疎明あるいは証明しなければいけないのかという点について,責任負担者が債務者になるという制度設計なのかなという気がするのですね。   また,この正当な理由というのが分からないという話ですが,正当な理由ということ自体が不安定になる言葉なのかもしれませんけれども,こういうふうな裏側から書くと言いますか,正当な理由がないときには却下されるというふうな話で書くというのは,債務者の側で,十分ではないかということ,つまり200条は陳述義務が課されて一部を開示するという場合を想定しているわけでしょうけれども,積極的に一部を開示すればそれで正当な理由を失わせることができるということではないかという気がするのですね。   そういう手続ないしは要件というのはやはりどこかに必要なのではないか。債権者がいて,開示を求めたら,とにもかくにも全部をオープンにしなければならないというふうなのは制度の作りとしては行き過ぎなのではないか。そうなってくるとこの疎明の要件というのは私はそれほどおかしな要件ではないと思います。そこを削るのならば,例えば一部免除の仕方とかをどういうふうにするのかということと併せて御検討いただければと思います。 ○山本(和)部会長  ありがとうございました。ほかにこの点ございますでしょうか。 ○阿多委員 先ほど申しましたように,この要件というのは総論の①との関連で,支払をしない,つまり一旦執行不能と同じような状況になったから情報開示をするという形で不奏功というのを位置付けているのだと思うのですが,逆にこの要件が入っているために弁護士の方としては使いにくい状況,先ほど申し上げたとおり,考えなければいけないのは,その不奏功ほどの要件ではなくて,ほかに何か軽い要件が考えられるかということなのですが。(1)に戻るつもりは全然ないのですけれども,例えば債務名義が確定していると,本来ならばすぐにでも払わなければいけない状況にあるにもかかわらず一定期間経過しても払わないとかいうような状況であれば,この不奏功要件ほど重たくない要件として考えられるのではないかと。   つまり,今の債務名義を前提にするのであれば,有名義債権で確定していることが前提ですから,先ほど道垣内委員の方がおっしゃった余りに要件をなくすことによってできる権利として非常に強すぎるのではないかという部分については,期間経過とかそういうふうな形で代替できる要件としては考えられるのではないかというふうに考えます。   正当な理由については裏側というのでそういう理解もあるのかなと思うのですが,であるならばもう少し内容的に明確にしたものを作っていただいて,こういう場合は駄目だというような形でしていただかないとなかなか実際は機能しにくいのかなと思っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○道垣内委員 この議論を「不奏功要件」という言葉で議論するのはやめた方がよいのではないかと思います。①又は②なわけですよね。①が厳しすぎるというのは私もよく分かります。しかし,②は普通の話ではないかという気がするのですね。また運用でそれほど厳しくしていなければ,ですが。「不奏功要件」と言うと何かすごく重たそうな気がするのですが,①又は②だということをもう少し意識すべきではないかと思います。 ○山本(和)部会長 私の表現が悪く,資料には不奏功等の要件と,きっちり書かれていますので,そういうことだと思います。 ○今井委員 不奏功要件が一番ふさわしい言い方だと私は思います。実際にこの一つ二つの要件が効果がなかったときにやるのだと。15年改正のときも個人的には何でこういう要件が必要なのかということは疑問というか私は個人的には反対でした。だったらもっと反対すべきだったと思いますけれども。なぜかというと,これは強制執行の前段階でその対象資産を開示させるという制度なのに,既に1回執行が失敗したから,それが開示の要件というのはちょっと本末転倒というか順序が逆ではないかという気は今でもするわけですので,法律としては,谷幹事,阿多委員と同じですけれども,これは必要がないと。これは,本来この制度は論理的にも説明がつかないのではないかという感じがいたします。   それからあと,必要性という意味からすると,やはり執行は債務名義ではそれなりの時間をかけて本当に権利があるのかどうか,審理してやっと判決が出て,いつでも執行ができると。それなのに何で執行自体ではなくて執行の対象資産を探すことになぜブレーキをかけなければいけないのか。そういう意味では判決がいつでも執行できるという迅速性が国の制度として,インフラとしての司法制度としては大事な視点ではないかなという気がいたします。   また観点違いますけれども,民事裁判がなぜ国民が躊躇するのだといえば,やはり一番は裁判手続に時間がかかるということ。そこには当然執行の部分もあると思うのですね。そういう意味では仮に債務名義で時間かかったとしてもそれが執行だとすればより迅速に,より強力に,これが今回の改正の一番の使命,目的ではないかと私は思っているわけであります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○餘多分幹事 若干だけ補足なのですけれども,先ほど道垣内委員から200条の話があったのですけれども,統計はないのですけれども,実務上,200条の陳述義務の一部免除の例はほとんどないというふうに聞いております。   また,正当な理由のところで先ほど申し上げた趣旨としては,200条のような判断を実施決定の場面で,債務者の話を聞かないで債権者の申立てによって判断するのはかなり難しいと思っているということでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○道垣内委員 200条のような判断を実施決定のときにできないのであれば,正にそれは疎明をしたことになるのではないかと私は思います。それが第1点です。   第2点は,200条の例がほとんどないというふうにおっしゃるときに,それはたっぷり財産のある人が一部を開示しても認められなかったのか,この制度に乗るときには思い切って全部開示しなければ,足りないことがほとんどで,一部で足りたという例はほとんどありませんというのか。後者であるならば別にこの制度の一部免除という制度が抽象論として働かないという話ではないわけですよね。 ○餘多分幹事 詳細までは把握していないのですけれども,道垣内委員がおっしゃるような財産がたっぷりある人が一部を開示すれば足りるという場面が多いわけではないと思っておりますので,そこは御指摘のとおりかと思います。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがですか。 ○今井委員 谷幹事がお話してくれた正当な理由というところが私もずっと気になっていまして,正当な理由ということがもしこういうことが生きるのだとすれば,これは開示を受ける債務者側がそれを異議を出すときに疎明するという座りだとすれば,それもあるのかなという気もしますけれども。そもそも執行法と実体法の概念の中ですみ分けの中で,実体法の中ではそれぞれ権利があるかどうか,それから抽象的な規定についてのあてはめによってジャッジするわけですけれども,執行ということになってくると,執行法はやはり余りそこに不確定概念なり抽象的概念を使うこと自体が執行法上の考え方としても決して好ましいことではないし,場合によってはそれは執行法上不適なのではないかと,こういうふうなことをまず考えるわけであります。   少なくとも正当事由,現実に正当事由というのがありやなしやということをやれば,それを執行裁判所で改めてまたそういうことを議論し,審理すること自体が執行という分野で健全にワークする上では大きな支障になる,私はそんなふうに思うのですが。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○松下委員 (2)についてです。4ページの中ほどにあるとおり,私も基本的には,強制執行を開始できるために一般的な要件が備わっていれば財産開示もできるとすべきであり,不奏功等の要件は重すぎると思うのですが,ただ,正当な理由というかどうか別にして,先ほど谷幹事からも御指摘ありましたけれども,財産開示を拒む債務者側で拒絶事由の主張立証責任を負わせるという立て付けにしておけば,具体的な主張立証がなければその財産開示は進められるということになります。債務者が事由を主張する場合には恐らく執行抗告によることになると思います。したがって,要件が抽象的だからこの部分がワークしないということにはならないのではないかなという気がします。   ではどういう書きぶりがいいのかですけれども,全然違う場面なのですが,民事再生法の中で共益債権に基づく強制執行が例外的に止まる場合の要件として,再生債務者が他に換価の容易な財産を十分に有するときという表現があるのですが,例えばこんなことが参考にならないかなと思ったので申し添える次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,(3)についてももし御意見が,再実施制限についての緩和という点ですけれどもいかがでしょうか。 ○阿多委員 これについて意見を述べる前にちょっと実情について教えていただきたいのですが。この再実施制限というのは手続としては実施決定の際にこの再実施制限があるかないかを裁判所は判断しているのか,それとも実施決定後の執行抗告で債務者から出て判断する内容なのか。逆にまた債権者の方は既に債務者が財産開示を一旦しているというような情報を債権者は入手する方法があるのか。というのは,それがないのであれば財産開示を申し立てた債権者以外の債権者にすれば先行して何があったか全体分からない状況で申立てをした。申立てをしたら知らない,裁判所が実施決定の段階で却下するのか,更には執行抗告で却下するのかということになるかと思うのですが。最初に申立てをした債権者以外が分からない情報で却下されるというのであればやはりちょっと手続的にバランスが悪いように思いますので,運用も含めて御紹介いただけたらと思います。 ○太田委員 運用ということですので私の方で把握していることを印象にわたるところもあるかもしれませんけれども,お話したいと思います。   再実施制限については積極的な立証をお願いしているということはありません。知っていたら言っていただければということで,知らなければ知らないというお答えを頂ければ,それ以上は申しておりません。   裁判所によってちょっと違うかもしれませんが,東京地裁では私の記憶の限りでは,東京地裁が蓄積している情報から過去の事件情報と照らし合わせて3年以内にあるかないかのチェックはしていたように思います。ただ,その情報がこのために完璧に作っているかという問題がある上,住所等移転している場合にはそもそも使えませんので,完全ではありませんが,裁判所の方で一応チェックして,ヒットした場合にはその旨お話をするというような運用をしているかと思います。実際にヒットしていた場合には取り下げていただくことが多いかと思いますので,それで却下したという例は余り記憶にはないところです。   先行して実施された財産開示手続を債権者が積極的に調べる方法があるかというのは,裁判所の立場では何とも言いにくいのですけれども,積極的な手段というものは特段思い付かないところです。 ○阿多委員 今のお答えを踏まえてこれについての意見なのですが,元々再実施制限というのは債務者側の負担として頻繁に申し立てられることの負担が大きいということで設けられたのだと思うのですが,先ほどお伺いしましたように,元々申し立てた人が期間を置くというのは分かるのですが,他の債権者にしてみれば事情が分からない状況で一旦申し立てた上で却下されて,既になされている財産についての閲覧謄写をしてくださいという手続になるので,そこのために他の債権者から見れば本当に3年も待たなければいけない話なのかというふうな気がしています。   ですから,この再実施制限自体廃止も含めて検討すべきなのですが,少なくとも申立てをした債権者が頻繁に申し立てるという濫用の問題と,他の債権者が申し立てる場合の手続の場合は区別して制度設計すべきなのではないかと。例えばですけれども,他の債権者が申し立てた期間が余りたっていないとしても債務者の方は既に開示した財産目録を提供すれば,もう再度呼び出しを受けることは免れるとか,そういう形でのもっとバランスを図った制度で構築されたらどうかと思います。   あと,3年はいかにも長いと思います。元々の197条のところの3項の除外のところでは上がっていますけれども,今の財産状況から考えると,3年もかからずに債務者の財産内容の変動があるので,むしろこの3年自体はもっと,仮に設けるとしても短い期間,1年というふうに短縮すべきではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 私も1年ぐらいに短縮することには賛成なのですが,他の債権者と第一次の財産開示の申立債権者を区別するというのはうまくいくのかどうかという点には若干疑問があります。1回目の申立債務者の債権譲受人の扱いですね,それで当該債務名義の譲受けなら簡単に分かるのですが,2本名義がある債権を持っていて,1本で申し立てて,その後もう1本の方を第三者に譲り渡して,それが申し立ててくるような場合,どう考えるのかというような面倒くさいことを考えるのは制度的にやってられないという気がしますので,これはもう毒皿で現行と同じように1年ということで,あとは1回目の申立人とそれ以外の債権者を区別するということはしない方が制度としては作りやすいのではないかなという気がします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○今井委員 思い付きで。やはり財産開示の制度を議論するときに,いつも前提がどういう債務者をイメージしているかというので,全然意見の根底が変わってくるということがこれまでの議論で非常に感じておりまして。例えば本当に消費者の多重債務者で資力もなく,言わば気の毒な債務者というイメージなのか,それから悪質な債務者,今消費者裁判特例法ができましたけれども,本当にマルチみたいな本当に有害的な存在であるような債務者,どの観点を捉えるかで全然イメージが違ってくると思うのですね。そういう意味では今の消費者被害で誠実な債務者はちゃんと被害弁償すると思うのですね。だけれども,悪質なところは払わない,だけれども,倒産しないというようなところには将来的には多くの債権者がいるわけですけれども,そういう多くの債権者について任意で裁判が終わっても支払わないと,仮にあるとしたら,では最初に一人がそれを開示請求したら残りの人はみんなあと1年以上待たされるのかという,そういう債務者を具体的に考えると,どうも1年というのはなぜ1年が合理的なのかという説明が,3年は長いので1年というのは素朴に分かるのですけれども,ではなぜ1年待たなければならないかという積極的な説明というのはつけられるのかなという,ちょっと疑問に思っております。 ○山本(和)部会 今の御意見は,もう再実施制限というのは基本的にやめてしまえばいいのではないかという御趣旨ですか。 ○今井委員 結局そういうふうになるかなという気がします。 ○山本(和)部会長 分かりました。ほかにいかがでしょうか。 ○佐成委員 休憩の時間が近づいているのかもしれないのですけれども,手短に述べさせていただきます。   この手続要件に関しては冒頭総論のところでも少し申し上げまして,今,学者の先生方,実務家の先生方の御意見を踏まえて議論していただいているということなのですけれども,やはりまず(1)のところで少し議論がありましたのですけれども,入り口の部分を広げれば恐らく件数は伸びるだろうということは当然分かります。議論している中で少し気になった点は,手続が本来の目的で現実に使われているのかというところであります。財産開示手続というのが取下げで終わってしまうケース,和解で終わるケースなどは結構あると思います。それらがどうやって終わっているのかというと,実際の目的,すなわち強制執行の対象となる財産を見つけるというよりむしろ別の目的,例えばほかに資力のある者,例えば親族がいるという場合に,そういう人を見つけるようなための手段として使われ,それで和解をしてしまって取り下げてしまうケースがあると思います。これが本来の財産開示手続の目的なのかというのは少し疑問には思うところなのですけれども,そういった形で実際使われているというところでございます。   何を申し上げたいかと言いますと,プライバシーとか営業の秘密というむしろそういったところと関係してきますが,手続の中でうっかり資力のある親族の名前を言ってしまって,それで取り返しのつかない事態になってしまうということでございます。そういう方の立場で考えると,少し気になるだろうと感じたところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○筒井幹事 再実施制限の緩和のところで,再実施の制限を撤廃する旨の御意見もあったと思いますが,この点に関しては,道垣内先生が言及してくださったように,債務者が全部の財産を開示するか,当該債権者の満足に足りる範囲の一部の開示にとどめるかを選択することとし,それと再実施の制限の有無とをリンクさせるのが現行法の作りですので,再実施制限を撤廃するという論者においては,その関係についてどのようにお考えなのかを確認させていただきたいと思います。 ○今井委員 その点は詳しくは追究はしておりません。私が申し上げたかったのは,1年だったらいいという積極的な理由が見付からないのではないかということを申し上げたかったのです。それでは正面から撤廃ということになる積極的な理由があるかと言われれば,それがすぐに見付からないという前提から言えば,撤廃を強く推薦するというところまでの自信はございません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   よろしいですかね。   それでは,おおむね御議論いただきましたので,ここで休憩にしたいと思います。           (休     憩) ○山本(和)部会長 それでは,皆さんおそろいですので,再開をさせていただきます。   休憩前に佐成委員の方から,この再実施制限の緩和の関係で本来の目的との関係でどういうふうに使われているのか,その和解等で終わって親族等を巻き込んで和解を改めて行う等というようなお話もございました。御存じのところの実情をお話いただければと思いますが。 ○阿多委員 実施決定及び債務者の出頭自体では裁判所の手続上では和解というのは制度的に予定していませんので,実はこの出頭された場合には財産開示の手続はそれで聴取,質問等をして完了するわけですが,その期日後に和解をしている例というのはそれなりにあります。その理由としては,財産開示をして,こちらは強制執行できる財産に関する情報を得ているわけですが,債務者にすれば執行されると例えば預貯金ですと取引停止というような期限の利益喪失等で相当ダメージが大きいとか,工場等の財産等ですと今後の事業継続に支障が生じるというような場合に,債務名義はあるけれども,分割払等についての合意をして,実際上執行猶予の形の話合いをすることはそういう方法があるということを認識して利用している代理人は一定数いますと。私などはそういうのが更に制度化,制度の中で取り込まれると思っていいと思っているのですが,実情としてほかの保証人を連れてこいとか,その時点での責任財産を超えるような形でのものにこの手続を利用しているというのは余り実例としては聞いていませんので,その点御紹介をしておきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○佐成委員 私が実際にそういうことをされている代理人を直接知っているわけではないですけれども,結構ウェブ上にも,財産開示手続の中でポロッとしゃべってしまって,その後期日外の和解の中で要するにそういう資力のある親族を保証人につけることによって和解を成立させ取り下げると,そういうことがコツであるというふうに何か堂々と宣言されているようなものもございますので,その辺りがどうなのかと少し思ったというところでございます。 ○阿多委員 分割払に際して与信の補強として何らかの保証人を立てていただくとか,物上保証というような話がないとまでは申し上げないのですが,基本的には債務者からは責任財産についての履行の方法という形で御報告しておきたいと思います。 ○山本(和)部会長 貴重な情報をありがとうございました。   それでは,次に,資料6ページ,「3 陳述義務の内容の見直し」の部分について,基本的には現在の財産ということになっているわけでありますが,過去の部分,過去の一定期間内に処分された財産についても陳述義務を負わせたらどうかというような提案,指摘ということについてどう考えるかということですけれども,この点いかがでしょうか。 ○阿多委員 陳述義務の内容については,現在は開示時点の債務者財産の内容を全て開示するということになっていますが,過去に処分された財産についての情報についても開示対象として追加すべきであると考えます。そのため,ただ,どこまで遡るのかという問題がありますので,一定の期間を付したという前提になるかと思いますけれども,過去情報についても記載すべきだと。   その理由ですけれども,他の執行の場合は正に債務者財産というのを特定した上で執行するということが必要ですので,債務者財産は現時点での財産を特定する前提なのですが,この手続というのはその債務者財産として何があるのかと。制度的にある程度探索的なものが想定されていますし,いわんや債務者財産のうちでも価値変形をしている,例えば動産を売却して代金が入って,その代金を預金に変えているのか,それとも費消してしまったのかというような形で,債務者財産の内容構成をしているものについてそれをたどっていくというのは情報収集としても当然必要かと思います。典型的には債権者の方はこういうのがあったけれども,この目録には載っていないのだけれどもどうしたのと聞くのは別段おかしなことではないと思いますので,過去情報についても開示というのは今回追加すべきであるというふうに考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○道垣内委員 私は大体保守的な方向で発言しており,いかにも今回の制度の拡充について反対の立場のようにお感じになるかもしれませんが,そんなことはありません。しかし,これについてはさすがに反対,積極的に反対です。説明にも書いてありますように,詐害行為取消の対象になるかならないか分からないようなものについて,なぜ自白をしなければならないのか,私には理解ができません。 ○山本(和)部会長 詐害行為取消の対象にならないというのは,対象になり得る場合は何らかのお考えがあるのでしょうか。 ○道垣内委員 なるかならないかは相手方の主観的要件なども必要になってきますが,財産開示手続は,そこで実体的な判断をいろいろ行うという構造になっているような制度ではないですよね。そうすると,なるかもしれないということで陳述義務を負わせるというのは私はおかしいと思います。 ○山本(和)部会長 分かりました。 ○山本(克)委員 私も道垣内委員のおっしゃることに同感で,民法の建前,改正法案を含めて債務名義を有する債権者が債権者取消権の主体だとされていないわけですので,なぜ債務名義を持っている債権者だけがほかの債権者と違ってそういう詐害行為取消になるかもしれない広範な処分行為について調査する権限を持つことができるのか,説明はできないように思います。私はここはコンサバティブで,ほかはそうでもなくて,ここは保守的に駄目だと言いたいところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○谷幹事 過去財産について詐害行為取消権を根拠にして開示を義務付けるという議論があるわけですけれども,日弁連の提言もそうなっているのですが,理論的には私個人的にはそれはやはり無理だろうなと思っております。先生方がおっしゃったとおりという問題もありますし,これは執行手続ですので本来目的は債務者の責任財産を明らかにさせるということですので,その責任財産に属するものではないような詐害行為取消の対象となる財産を明らかにさせるというのは,これは目的を超えるのではないのかなと思っております。   ただ,過去財産の開示を義務付けるというのはドイツの制度にもございますので,これはこれで現実的な要請もありますので,何らかの理由付けができれば過去財産の開示ということも導入を検討すべきではないかなというふうに結論的には考えているのです。   そうすると,あとはどういう理由付けになるのかということなのですけれども,責任財産の内容を明らかにさせるという目的だとした場合に,過去財産,一定の時期に処分をされた財産があれば,それが例えば不動産であれば現金に変わりそうな,その現金がどうなっているのか,あるいはそれ以外のものでも,仮に預金を解約した,保険を解約した,そうするとその解約して価値変形物がどうなっているのかというのは債権者として是非見たいところであります。それを明らかにさせることによって現在の債務者の責任財産が明らかになるということにもつながると思いますので,そういう意味で現在の責任財産を明らかにさせるための追加情報と言いますか,付加情報として過去財産の開示を義務付けるというのは説明としてはあり得るのではないのかなと思います。   民事執行手続に関する研究会報告書でも書かれていますように,実情としては債権者,申立人の方は財産開示期日において債務者に質問ができて,その辺りについての現在の財産に関連するという限りでの質問は許されるということになっておりますので,それを制度的に義務付けるということはあり得るのではないのかなと思っております。 ○山本(克)委員 今のお話は,執行可能財産を特定するために必要な情報は当然出てくるというのは今の立て付けでもそうなのではないでしょうか。例えば売買代金債権として誰々幾ら持っているだけでは差押えとして,債権の特定性が欠ける場合もあるわけで,いついつ付けの不動産売却の代価としての代金幾ら幾ら,残額誰々に対して持っていますということは言わせないと,債権の特定性に欠ける場合がありますから,そういう限りでは情報は必要なのは当然織り込み済みだと思うのですよね。それを超えてここでは要求されるべきだというふうにおっしゃっているのだと思いますので。今谷幹事がおっしゃったのは私の理解が間違っている可能性もあるので,もう少し教えていただければと思います。 ○谷幹事 おっしゃるように本来的には今ある財産を必ず開示しないといけないという立て付けにはなっているのですけれども,それが例えば過失によって抜けていた,あるいはあえて隠すということでもあり得るのだろうとは思いますけれども,そういうものを検証する手段として過去財産の処分状況というのを開示をさせるということがあり得るのではないか。そういう情報をもとに期日においてまた質問をするとかいうような形で開示された財産の正確性なりを検証していくというふうな機能があり得るのではないか。その限りでは一定の過去財産の開示の義務は認めていいのではないかということでございます。 ○道垣内委員 それは現在例えば存在している金銭,現金の形でもいいのですが,それについては陳述義務があるのに開示しないかもしれない,でも過去の処分したものについては陳述義務を認めればそれぐらいはしゃべるだろうという前提を採ることになりますか。隠す可能性は同じなのではないですか。 ○谷幹事 いや,それは過去の財産を隠されればそれはそのとおりだと思います。隠す可能性という意味ではそれはそうだろうと思います。ただ,不動産の例えば処分などであればこれは登記から明らかになってくる可能性も高いと思いますので,あえてその点について虚偽の陳述をするというのはそれなりのハードルがあるのかなというふうには思います。 ○阿多委員 陳述の内容と直接には関係ないのですが,今回の改正でその実効性を上げる方法としてこの財産目録の陳述が作成以外に資料添付ということも御検討いただけたらなと思っています。例えば個人の場合ですとこれだけの要件があるというのであれば一番シンプルなのは預金通帳を添付していただいて本当にあるのだなということが確認できるとかいうような形。そうした場合に,では預金について現在の残高について残高証明を資料として出さなければいけないのかと,そんなお金をかけるよりも一番シンプルなのは持ってきてもらってそうですねと確認するのが簡単で,そうすると当然預金通帳は入出金履歴も含めて情報として出ていると。それをでは見るのはまずいのかという話になるのかなと思って。論理的に説得できているとはもちろん思っていませんが,その程度の情報であれば現在前半で太田委員の方から財産目録の作成が相当負担であるというような形のお話もありましたけれども,財産目録の作成の仕方及びそれの資料というような形で一定の範囲で過去の取引関係についての資料も出してもらうことの方が負担感としても軽いのではないかなと。そういう意味で陳述義務というと非常に重たいのですけれども,提供される情報の範囲としては広げるということは可能ではないかと思っています。 ○山本(克)委員 広げる目的は何なのかが分からなくなってきました。最初は債権者取消権の対象行為の候補を見つけ出すという話だったような気がするのですが,今のだとそういう話ではなくなってきたので,何のために広げるのか,目的をもう少し今の御提案の場合にどうなるのかを教えていただけますでしょうか。 ○阿多委員 私自身は詐害行為取消と関連付けずにずっとお話をさせていただているつもりなのですが,弁護士会が全員同じ発言だとは限らないということで御理解いただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 具体的な目的というのはどういうことになるのでしょうか。 ○阿多委員 目的については,本人の陳述の正確性をやはり担保するためには例えば倒産などでも3期の決算分を提出させるのはその間の資金で不正なことがないのかというのを3期見れば大体経験値としてよく分かるというような形で,一定のものが出ることによってそこに記載されているものが適正である,ないしはその前に特異な処理がされていないということは分かるかと思いますので,そういう意味で今の財産目録の記載の正確性の担保,更にはその裏付けということで一定の過去の資料も提供するような制度にしてはどうかという提案です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 破産の場合には破産犯罪の制度であるとか,否認権の行使というのは管財人の職務上の必要があれば行うことが義務ですから,それと結び付けてそういうことになっているのだと思います。それに倒産に至る経緯は債権者説明会等で説明しなければいけないという制度的な背景があってそうなっているので,任意に私ちゃんとやっていますというのを示すために出されるのは構わないですけれども,義務付けるというのはどうなのか。正確性を担保するのであればむしろそれは罰則が適用の際に正確性を担保してましたよという後から資料が出てくるのは理解できるのですけれども,いきなり最初からそこで正確性を担保させるために広く出しなさいとまで強く言うというのは私はちょっと考えられない。今は事業者を念頭に置かれておっしゃっていたと思いますけれども,私なんかは自分の金の出入りなど全然管理していませんから,そんなこと言われても出せませんので,どうしたらいいのかと,途方に暮れるしかないという気がしますけれども。 ○阿多委員 今の少なくとも制度というのが債務者の全財産の開示というような形になっていて,その作成の負担というのが大きくて,なおかつそれが全てを現在の価値ないしは額面という形で作成しなければいけないので,それを少しでもある意味では通帳というような形ですれば軽くなるのかなと,そういうことも一つ意図しています。   それから,おっしゃった制裁との関係では,正確性を担保するというのは少なくともこの制度でも不実記載ないしは記載をしないということについての過料の制裁もありますし,今後それを刑罰というような形で,刑罰に格上げという言葉が適切なのか分かりませんが,そういうことも検討されていますので,内容の正確性を求めると,それが不正確であるかどうかを判断する材料としても前倒しでそれの資料を出してもらうということは必ずしも制度からそれほど外れることを求めているわけではないと思います。   ただ,戻りますけれども,陳述義務というのと私資料という形でお話しましたけれども,調書に記載する範囲についてはどうするのかというのは考えないといけないとは思っていまして,これは期日が開かれて調書で,私の理解では財産目録添付というような形でしていますので,それに過去の資料も全部調書に添付するというのはちょっといかがなものかと思っていますので,そこは記載の内容と資料というのは分けることは十分あり得るとは思っています。 ○山本(和)部会長 いかがでしょうか,この陳述義務の部分。 ○垣内幹事 今までもいろいろな委員,幹事の先生方から御発言がありましたけれども,私自身も詐害行為取消権行使のために過去の処分について開示の対象とするというのはやや無理があるのではないかというふうに考えております。ただ一方で,これまでこの問題について考えてきた中で,例えば財産開示の実施決定の債務者に対する送達後の処分については,例えば実施決定があったので急いで財産を処分してしまうというような債務者がいるとか,その時間を確保するために抗告をしたりとかいうことは仮に実際問題として想定され得るのだとすれば,そういったかなり部分的なものですけれども,時期の拡大ということはあるいは考えられなくはないのかなというようなことを私自身は考えたこともあるのですけれども。ただ,それによって除去できるような弊害が実際には余り問題になっていないというようなことであれば余りそういうことを検討しても余り意味はないかというふうにも思いますので,もしその辺りについて実務家の先生から実情等をお教えいただけるのであれば大変有り難いというふうに考えております。 ○山本(和)部会長 今の点はいかがでしょうか。 ○今井委員 今垣内幹事のお話がありましたとおり,現実問題,これは個人的な弁護士業務としての経験ですけれども,それは勝訴が近いなり勝訴判決が出たというその前に一番手っ取り早いのは所有されているマンションの名義を奥さんや身内の方にすぐ変えてしまう,これはもうそういうことは随分慣れていますので珍しいことではないという印象があります。ただ,それが責任財産の流出なのでそれをどうやって食い止められるかということになると,なかなか判決に至るまでには時間がかかりますし,それは極端に言うと訴えが出て敗訴が大分色濃いとそういうこともありますので,それを本当に制度的に阻止するというのは現実問題なかなか難しいだろうなと。そういう意味で今現実にある制度としては債権者取消権というようなところがあるわけですけれども,ただ,幹事がおっしゃるとおり,それをこの制度で債権者取消権のために2年前に遡ってと,15年改正のときもこういう議論した記憶ありますけれども,2年前に遡ってというような議論はなかなかこの制度としては限界があると思います。ただ,現実問題そういう債務者財産の流出という現象,それが本当の流出なのか名義だけのただの仮装なのかそれは分かりませんけれども,実態としては恐らく私だけではなくて弁護士としてはそういう経験は少なからずあると推測しております。 ○山本(和)部会長 今の御質問の趣旨は,財産開示実施決定後財産開示期日までの間に処分するというような例というのはあるのかという御趣旨だったようにも思いますが。 ○今井委員 開始決定ですか。それはそういう関心は財産開示の開始決定後という限定すると,それは統計をとったこともありませんし,他の弁護士会でもそういう統計はとったことはないと思いますので分からないけれども。後という,やる方はもっと早いと思いますね。 ○山本(和)部会長 確かに。ありがとうございます。 ○垣内幹事 ありがとうございます。よく分かりました。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。おおむねよろしいでしょうか。 ○山本(克)委員 ここに書かれているのは方向性が逆なのですけれども,営業秘密との関係で,売掛金債権の債務者ですね,第三債務者が分かるということは顧客情報の流出ということにつながる可能性はあるので,そういう部分を陳述義務の対象の外にしていいかどうかということは一つの論点として設定できると思います。ただ,債務名義があるのだからそういう債務名義を持つ債権者との関係ではそういう営業秘密を保護する必要はないのだという立場も十分オーバーライドするからという立場もあり得るのですけれども,私は余りプライバシーの保護というのは,前回も申し上げましたように外れているのではないかなと思うのですけれども。営業秘密については若干当たるところがあるのではないのかなという気がしなくはありません。 ○山本(和)部会長 それは別途の問題として御検討いただくということにしたいと思います。   それでは,恐縮ですが先を急ぎたいと思います。 ○今井委員 垣内幹事の御質問にちょっと補足ですけれども。であれば保全かければいいではないかという,仮差押えをすればいいではないかという議論が当然あると思うのですね。それも要するに本当にこの財産開示の原点になるわけですけれども,所在が分かっていれば仮差押えをかけられますけれども。ですから,我々が裁判で勝訴判決が近いなというときには,もちろん住んでおられるところが借りているところなのか所有資産なのか誰の名義なのかそれは当然調べることが多いと思うのですね。それは調べられるのですけれども,それ以外にどこかというのが分かりませんので,保全制度も結局は資産が分からないというところでワークしないというこういう現実があると言えると思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○阿多委員 先ほど山本克己委員の方から営業秘密のお話が出ましたので,今回この陳述義務。先ほども全財産という形で個人の場合も法人の場合もなのですが,確かに顧客情報,どこどこに幾らの売掛がある,どこどこに売掛があるというような形の顧客情報が営業秘密として整理されているのは分かるのですが,先ほど逆の方向とおっしゃったように,売掛債権を特定するに際しては第三債務者の名称と債権の性質,金額という形で,そうすると請負代金債権で幾ら幾らというような形で特定せざるを得ない,特定した情報をもらえないと執行できないというところがありますので,営業秘密という話もどこまでなのかという。むしろこの陳述義務の対象を全財産という広い整理ではなくて,現実には破産等と似たような財産目録というような形の目録,書式も出てそれで運用していますので,どの情報を開示するのかどうかをもう少し整理していただいて,私はまず第三債務者の名前,法人名等は執行で必要ですので,それが営業秘密に当たるとしても開示の対象に入れるべきだとは思うのですが,ほかの営業秘密ももしかすると出てくるかもしれませんので,整理していただくことは必要だと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。では,その点も含めて御検討を。 ○佐成委員 この陳述義務の内容のところはやはり得られる情報としては非常に重要なので,少し確認をさせていただきたいのですけれども,御提案がございます債権者取消の対象となり得るようなそういった財産についても開示対象にするという話は,これはどちらかというと財産目録等に記載せよというような文脈で議論されていたと思います。一方で,期日の当日に裁判所の許可を得て質問をするということもあるかと思います。その中で,許可されるかどうか実態は分からないのですが,現状はどうなっているのかというところもあると思います。ある程度直近にそういった処分が行われていることもありますし,その辺りに関する質問について裁判所の運用がどうなっているのかなというのが若干気になるところでありますということだけ申し上げておきたいと思います。 ○山本(和)部会長 実務のもし御紹介があればと思いますが。 ○太田委員 これは許可という問題なのでその裁判体の判断かなと思うのですけれども,処分された財産について一切聞かないという運用でもないかなとは思っています。非常に直近の時期にかなりまとまった額の財産が処分されたというのが相当程度見込まれるような,例えば債権者はある程度具体的な情報をお持ちで,それなのにそれに見合うような預金も現金もないということだと,そこについての確認の質問というのは恐らく裁判官としてはするのだろうなと思っています。ただ,その時期がかなり昔になるとか情報が曖昧であるとか,場合によってはあったのではないのか,みたいなことになってくると,それはちょっと事案に応じて裁判体の判断かなと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 代理人の立場であれですが,先ほど個々の訴訟指揮というか裁判所の許可の問題ですので個人差が大きいかと思うのですが。こちらの質問がある程度具体的に特定,先ほど申しましたようにこういう財産があったけれども,載っていないけれども,どうしたのかというような形の質問であれば受けていただけることが多いかと思うのですが,抽象的にほかに処分した財産がないのかとか,もっとあるはずではないかというような質問というのは,質問としても適切ではないというのもあるとは思いますけれども,かなり制限的で,質問の時間も含めてそれほど期日に長時間とってもらっているということではなくて,本当に数分と,数分と言うと失礼ですが,十数分というような印象です。 ○太田委員 もうちょっと時間はかけているような印象ですが,人によるかもしれないですね。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,引き続きまして,この項目の最後になりますけれども,7ページから8ページにかけて,「4 手続違背に対する制裁の見直し」に移りたいと思います。現在の過料の制裁であるわけですけれども,それ以外の制裁というのを考えるというより強力な制裁の下を用意するということについてどのように考えるかということです。どなたからでもお願いいたします。 ○今井委員 15年改正のときも罰則,刑事罰か過料かということがテーマになりまして,やはり振り返ってみますと,この制度の実効性がこの表1のような結果になっているのは,やはり過料だという制裁は弱かったという担保機能としての弱さが一つの要因ではなかったかということを個人的には感じております。16年の統計を見ていただきますとおり,冒頭ありましたとおりすごい効果的な強い制度だと。だからこそ濫用について懸念があり,弁護士会でも随分そういう観点で議論をし,だからこそ刑事罰は強すぎるのではないかというような,個人的な意見はともかく,弁護士会全体としてはそういう意見が主流だったような気がいたします。   ところが,実際に始まってみるとこのような結果になって,16年,17年辺りは裁判所に民事の関係で任意に支払わないと呼ばれて制裁があるそうだというようなことで,16年,17年急にこの件数増えておりますけれども,この頃はそういうふうな執行力強化が期待ができた年だという感じがいたします。実際に開示事件も最初は50%を超えていますし,その後は40%台に落ちて,21年以降はみんな30%台になっております。これは感想ですけれども,やはり制裁もそれほど驚くこともないしというような実務の状況が影響してきているのかなと。もちろんこの罰則の制裁の点だけではありませんけれども,やはり弁護士の方も使い勝手が余りよくないねという印象が出てきたように思います。   2年前に日弁連の第26回民事司法シンポというのをやりまして,そのときに弁護士会内で財産開示について現状どう思うかということについて尋ねますと,15年改正の頃と全く雰囲気が変わりまして,やはり実効性がないという意見の方がずっと強くなりました。過料の変更はどうかと,改正はどうかということについては,ちょっと正確な数字は手元に今ないのですが,やはり過料でない方がいいという意見がかなり多数を占めたという記憶がございます。   そういうことを考えますと,では過料でなく罰金になった場合にどれぐらいの実効性が期待できるのかということは分かりませんが,やはり罰金なのだぞというところが担保機能としては大きいのかなという意味からすると,こういう改正をすべきであるというふうに個人的にも思いますし,今の弁護士会の実情から考えるとおおむねそういう方向ではないかというふうに感じている次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。それでは,ほかにいかがでしょうか。 ○阿多委員 現状の制度としては過料しかございません。過料の実務について実際の運用等について裁判所等と意見交換していますと,過料を発令してもらうために通常過料上申という形で申立債権者の方が上申をして,それで裁判所がその上申によって発動するかどうかを決められているわけで,金額的にも30万以下の過料になっていますけれども,私などが認識する限りにおいては大体20万程度の過料が一定の割合で発令されている。その発令の対象としてあるのは,不出頭がほとんどであって,出て来られたけれども,内容が虚偽だという形で虚偽陳述を理由とするものは,それは虚偽かどうかが分からないということもありますけれども,ほとんどないというのが現状なのかなと思います。   そういう意味では途中虚偽だけを重くするというところについては現状過料もないのにということになるかもしれませんが,結局それは情報がない,内容が虚偽かどうかを裏付ける資料がないということに基づくもので,先ほどの資料の提案もそうですが,最後の公判廷から出てくる第三者からの情報取得というような形で陳述内容が虚偽であれば,そちらで虚偽であることを裏付ける資料というのはまた確保して申し立てることができるかもしれません。   そういう状況において,今回過料から刑罰というのがありますが,刑罰になりますと一定の法人や事業者はそうふうな刑事罰を受けていないということが登録とか資格要件等になっていて,そういう不利益を受けないためにはやはり出頭するということになりますので,いわゆる刑事罰がよく持つ一般予防的な効果ということを考えると,過料ではなく刑事罰というのを導入すべきだと思います。   対象については全部なのか一部なのか,それぞれの事由によるとは思いますけれども,少なくとも先ほど言いました現状余りないとしても,裏付け資料がきちんと見出せる方法が確保できるのであれば,虚偽陳述は少なくとも刑事罰,その債権者の執行をある意味では妨害しているわけで,虚偽の情報が出てくることによってその後の執行手続を妨害しているということになりますので,虚偽陳述等は刑事罰の対象とすべきと考えます。 ○道垣内委員 ちょっと前提をお伺いしたいのですが,ここで刑罰を導入するときに,民事訴訟法上の例えば証人とか当事者尋問でもいいのですが,全部変えてしまうのですか。それとも,ここだけが刑罰になるのでしょうか。そうだとすると,それは何によって正当化できるのですか。 ○阿多委員 やはり第1回目の話ではないですけれども,言わば裸の当事者という形でなくて,有名義債権で債務名義を取得して,それを国家の方が実現ということについて認めているにも関わらずそれを妨げているというところが刑罰を正当化する根拠。つまり,債務名義があって,それに基づく法律上の手続をとっているにも関わらずその実現が阻害されているということが正当化の根拠だと思います。 ○道垣内委員 それは裁判所侮辱なのですか。法益は。 ○山本(和)部会長 債権者の利益を害しているのか,それとも司法に対しての罪ということでしょうか。 ○阿多委員 私は先ほど司法,債権者が利用する司法の手続でそれを害しているというふうに,司法に対する罪だと思います。 ○道垣内委員 一般的なコンテンプトオブコートの犯罪がないという国において,ここだけ刑罰というのが,法制度として整合的なのですか。 ○山本(克)委員 いや,それは強制執行を妨害する罪というのは刑法上もありますので,それの前段階なので,別にここで刑罰を導入することが体系的に整合的ではないということにはならないし,裁判所侮辱の場合,クリミナルコンテンプトの場合は目の前で何か悪いことをしたらそのままぶち込むわけですよね,裁判所が。今言っている刑罰というのはそうではなくて,捜査機関の捜査を経て公訴を提起されて,略式起訴でもいいのですが,それで刑事裁判所が科す刑罰なので,それの裁判所侮辱とは全く性格を異にする制度だと思いますので,私は特に刑事罰を導入することが現在の法体系の中で異質な存在であるというような感じはしません。 ○道垣内委員 山本克己委員のおっしゃることは分かりました。しかし,いずれにせよそういうふうなことをきちんと検討しましょうというだけです。 ○山本(和)部会長 貴重な御指摘だと思います。 ○松下委員 きちんと検討しましょうと言われた後に言うのはなかなか難しいのですけれども。先ほど道垣内委員の御指摘は,結局財産開示における不出頭とか虚偽陳述を何に近いと考えるかということだと思うのですね。現行法は当事者尋問のうち虚偽の陳述をした過料,これが今10万円以下の過料ですが,これよりは重いだろうというので30万円になったというのが制定の経緯だと思います。そのときにはですから,宣誓した当事者が当事者尋問で虚偽の陳述をしたのに近いだろうという整理をしたわけですけれども,別の整理は可能なわけで,例えば先ほど出ましたけれども,強制執行妨害でもそうですし,例えば破産犯罪における説明義務違反とか重要財産開示義務,これはみんな刑罰ですけれども,こちらに近いという整理も可能だろうと思います。   ですから,ほかをいじらなくてもこの開示義務者の不出頭,虚偽陳述について現在と違うサンクションを科すということは体系的にはほかのものを動かさずに私はできることだというふうに考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○餘多分幹事 別の話になってしまうかもしれないのですけれども,4番の提案の中には手続違反者に対する裁判所が名簿を作成した上で登録するという制度が出てくるのですけれども,これについては余り賛成できないと思っております。具体的には名簿を作ったときに誰が閲覧できるのかというのがそもそもよく分からないところはあるのですけれども,仮に広く閲覧できるとして,一種のブラックリストのようなものとして扱われるようになれば,債務者の就労とか更生といったことにも資さないようにも思います。また,裁判手続違反についてこういう名簿を作って一律に公開するというような仕組みはほかにはないのではないかと思っていまして,なぜこの場面だけこういう名簿を作るのかということがなかなか正当化しにくいのではないかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○今井委員 先ほど申し上げた意見はアンケート等とりますと,多くの弁護士の本音としては使い勝手が弱い,やはり実効性が乏しいという意見が多い,これは間違いないわけです。とはいえ,今道垣内委員のような御指摘で,刑事罰を科すのはいかがかという,抵抗のある弁護士ももちろんいるわけですので,そういう意味では我が会が一体になることは非常に難しいので,そういう意見でまとまっているとまでは言えませんが,実際にアンケート等をとりますと,今の過料では実効性が弱い,担保機能としては,刑事罰が必要だという意見が多いということは言えると思います。   それから,やはりではこれが実効性のある担保機能とした場合に,阿多委員が申し上げた虚偽の陳述に対するというところは,確かにこの違法性と言いますか,悪性と言いますか,そこについて何となく刑事罰にフィットするような印象はありますけれども,やはり飽くまでもこの開示の実効性という意味から言うと,出頭をいかに確保するということの方が私は大事なような気がしますので,後ろの方の虚偽陳述だけのところを刑事罰だけというのはこの実効性という観点からするとやや中途半端だと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 この4で挙げられている制裁方法としてのもろもろのうんぬんについて,餘多分幹事の方から意見がありまして,触れずにおいていいのかなと実は思っていたのですが。債務者名簿,注4,中段及び注4に指摘されているものですが,債務者名簿というのは必ずしも私は効果があると,それによる影響の方が大きいので,導入すべきではないと考えています。さらには,この中に挙げていただいている身体拘束,いわゆる勾引引致についても証人尋問等でまれに経験をすることがありますけれども,それはむしろ混乱を招くだけで,債務者を引致したからといってこれが実効性が高まるというふうにも考えませんので,制裁としてこのような手法もいかがなものかと。そうするとやはり事後的な話になりますけれども,刑事罰というような形のものが最も今回の実効性確保としては有効ではないかと思います。   その導入に際して1点,多くの弁護士がついている事件等であればこれが確定して履行されない場合はどういうことが起こりますよというのは説明をしていますし,債務者の方も確定した場合に不履行ならばどういう不利益を被るのかというのは情報として得ているわけですが,必ずしも弁護士強制ではありませんので,最初の債務名義の種類の如何によっては弁護士が全く関与しない例がある。そうすると,こういう不利益を受けるのだということを何ら知る機会もなくこの制裁が強化されるという形になりますと,場合によっては非常に過酷なイメージを与えることになりかねないかと思います。法律の手続に入るかどうかということ,こだわるわけではありませんが,債務名義が取得されるに際して履行しなければこういうふうなことになりますよということの教示というか情報提供を制度として導入していただいて,債務者の方にもまず払わなければいけない,何しろ財産開示は出頭しなければいけないのだということが分かるようにするということも必要だと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかにこの制裁の点,いかがでしょうか。弁護士の先生方からは比較的積極論が提示されていると思われますが,ほかの委員,幹事の皆さんの御感触はいかがでしょうか。 ○山本(克)委員 私も定見がなくて,私も刑罰は導入はいいのですけれども,自由刑を含めるのかどうかというのがかなり侵害される国家の作用の軽重ということと絡みかなり難しい問題なのですけれども,弁護士会はどういうふうにお考えなのかちょっと私自身が考えるよすがとしてお教えいただければ。 ○山本(和)部会長 いかがでしょうか。 ○阿多委員 今日冒頭罰金にした場合労役場留置もありますよと。ただ私ども分からないのは,罰金にした場合のその後の刑事訴訟に基づく手続で労役場留置だけをこの場合は排除するというようなことが制度として可能なのかというのがよく分からなくて,それは罰金を導入するということになればそういうことも含めて対象にせざるを得ないと思っています。 ○山本(和)部会長 そういう形で債務者が拘束されることはあるけれども,自由刑を直接こう考えているわけではないという御趣旨ですか。 ○阿多委員 はい,そういうふうに理解していただいたらと思います。 ○山本(和)部会長 分かりました。ほかにいかがでしょうか。 ○佐成委員 冒頭申し上げたとおり,この手続によって得られるものというのが,刑罰というもので一定の担保があるような情報ということであれば,それなりに手続を使う意味が非常に高まってまいりますし,クライアントに弁護士の方が説明するについてもそれなりにやってみるべきだというふうにお勧めできると思います。現状は過料ということですので,恐らく不出頭が非常に多いということで,余り手続を使っても意味がないのではないかみたいなそういったところがあると思います。懲役を加えるというのはそのバランスを考えて検討しなくてはいけないとは思いますが,刑罰化というのは方向性としては支持できるのではないかと感じております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。 ○柳川委員 債務者の中には多重債務に陥った最初から支払能力もなければ,どういった法的救済方法があるか,どこに相談すればよいかなどを知らないで逃げ回っているうちに強制執行の手続となったという債務者が多くいらっしゃると思います。そういった債務者は,不出頭の場合はどうなるかという情報が何らかの形でそれらの債務者に届けば出頭等のアクションを起こすでしょうが,一般的にはずっと逃げ回ってきていて外部との情報交換も余りないと思われるので難しいと考えられます。またそれらの債務者は連絡すらとれない,不良債務者だとなり,事業者は強制執行という形をとる確率が高くなると思います。情報過疎の中にいる債務者がいる一方で,もう一方では逃げ得と言いますか,法律も知っている,現在の法制度の限界も知っている債務者がいます。それらの債務者は,自分が損をしないような方策をとると思います。多重債務者の中にもいろいろな方がいらっしゃるのに,そういう情報のない債務者が出頭しないがゆえに過料が課されるとなったときに,果たして公平であるかが気になります。私にはバランスが悪いような気がして,落ち着きません。   先ほど情報提供をしっかりしなければというお話がありましたけれども,何らかの形で情報提供できるような仕組みを作って,その上で債務者本人に判断させるというような形がとれると大変よいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○山本(克)委員 今の点ですけれども,現状で債務者に最初にする送達文書の中にそういう出頭しない場合あるいは虚偽陳述をした場合のサンクションについての教示をする文章というのは入れておられるのでしょうか。 ○餘多分幹事 詳細は把握していないので正確に申し上げられないのですけれども,多分庁によって送る文章が違いますので,ちょっと今の段階では申し上げられないですが。 ○山本(克)委員 これは法律事項ではないと思うのですけれども,執行規則でそういう教示文書を同封して送達しなければならないというような形でできるだけ今柳川委員がおっしゃったような方向性を出していけば,刑罰を科すことにしてもそれほど弊害は少ないのではないか。送達をされた文書をきちんと見てくれないとか,郵便に付す送達だった場合どうなのかというような細かい問題が残るわけですけれども,一応手続を国の側もきちんととっているのだという形にしておくのが望ましいのではないのかなと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○阿多委員 今多分開始決定の際の同封する書類についてのお話だったと思うのですが,一番最初の入り口に戻りますけれども,債務名義の種類によって執行証書や支払督促等では少なくとも執行証書だと普通に送達して実施決定があってそれを入れるのがいいのか,もう少し早い段階で今後手続としてこうなりますよというところを入れるのがいいのかというのは,私はもう少し早い段階で債務者の方に情報提供した方がいいのではないかというふうにまず思っています。 ○山本(克)委員 執行証書を作る段階で債務者に対して教授するというのもそれはもちろん選択肢として十分あり得る話だと思いますので。ただ,本人出頭完全にしているのですかね,その債務者本人が。よくある自動車の割賦販売のようなケースでは本人出てこないのが多くて,それがトラブルの元になっているというのが,古い認識ですけれども,今は違うのかもしれませんが,昔はそれよく言われたことですけれども。 ○阿多委員 委任状で本人が出頭しないというのは公正証書等の場合には多いかと思いますけれども,ですから,教示という手続がいいのか,私は書類で渡すしかないのかなというようなところを思って先ほど御提案しました。   柳川委員がおっしゃったところについて,過料ないしは刑罰の点ですけれども,現時点でも過料上申があれば全てについて裁判所が過料を発令しているということではなくて,案件で実際は判断されていますし,刑罰ということになりますと少なくとも検察庁の起訴便宜の問題がありますので,検察庁がこれを罰金に付すのが適切なのかどうかというのは判断されるので,今の多重債務者や更に高齢者等で裁判所から来た書類を一切開けずに置いてらっしゃると,積み上げてらっしゃるというような方が自動的に刑罰の対象になるというようなことにはならないのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。 ○青木幹事 私も結論的には刑罰,特に罰金というようなところになるのかなと思うのですが,ドイツにおいては身体拘束が間接強制の手段としてこの場面でも用いられていて,ただ,実際には身体拘束がされることはほとんどなくて,執行官がねばり強く交渉して開示をさせるという方向に至っているようであります。   それとの関係で,刑罰を制裁の手段として用いる場合には,恐らく刑罰になるとそれだったら開示しますというふうに言っても,決まってしまうとそれを免れるという仕組みにはなりにくいのかなと思います。あるいは別の場面ですけれども,罰金を払えばそれでいいのかという,払ってもうそれで開示しないという問題もあるかと思うので,できれば開示させる方向での制裁というものも考えることができたらいいのかなと思うのですけれども,具体的に何か御提案できるというわけではございません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。ほかには。おおむねよろしいでしょうか。   ありがとうございました。それでは,以上で現行の財産開示制度の問題についての議論は一通りやっていただきましたので,引き続きまして,本日の資料の第2,新しい制度ですが,第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度につきまして御審議を頂きたいと思います。   まず,事務当局の方からこの第2の1及び2の部分につきまして御説明をお願いしたいと思います。 ○松波関係官 それでは,資料8ページの第2の部分について御説明いたします。こちらは債務者財産の開示制度の見直しの方向のもう一つであります,第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の新設という点について取り上げております。   まず,8ページの1,制度創設の要否というところでございますが,この制度を創設することに関する総論的な事項として幾つか取り上げております。第三者から情報を取得するという制度を創設するという考え方につきましては,平成15年改正の際には採用されなかったところでございますが,その後の状況を踏まえて,今般改めてこの制度を創設すべきであるとの考え方が提示されております。そこで,まずは平成15年改正後の状況等を踏まえまして,この制度を創設する必要性があるかという点や,留意点としてどのようなものがあるかという点につき,御意見を頂きたいと思います。   次に10ページからの2の部分ですが,こちらではこの制度を新設するに当たりどのような第三者からどのような情報を取得することを目指すのかといった点について取り上げております。この点につきましては,まず基本的な考え方として,広く国民一般や公的機関から債務者財産に関する情報の提供を求めるという広いアプローチがあり得る一方で,債務者の預貯金口座に関する情報というように情報取得の必要性が特に高いと考えられる場合に限定して個別に検討するというアプローチもあり得るところでございます。このうち後者のアプローチ,個別的に情報取得の必要性が高いものについて検討するアプローチに沿って検討する上では,どのような要素を考慮して第三者や情報の範囲を限定するかということが問題になります。この点につきましては資料11ページから15ページまでで取り上げております。   まず,アの情報取得の必要性という点に関しましては,この問題を検討するに当たりましては我が国の債権差押えの実務におきまして差し押さえるべき債権の厳密な特定が必ずしも要求されていないということを意識した検討が有益ではなかろうかというふうに考えております。例えばということですけれども,生命保険契約の解約返戻金等の差押えの場面では,債権者はその債権差押命令の申立書におきましてその取扱店舗や契約番号等を具体的に明示することをしなくても債権差押命令が裁判所において発令していただけるということがあるというところでございます。   こういった場面と異なりまして,預貯金債権の差押えの場面を検討しますと,債権者は申立ての対象とする預貯金債権の取扱店舗を限定しなければならないということが平成23年の最高裁の決定によって明確に意識されるに至っております。そのため,こういった取扱店舗の特定が必要とされる預貯金債権を差し押さえしようとする債権者はあらかじめその預貯金口座のある取扱店舗等に関する情報を取得する必要があると考えられます。   こういった違いを踏まえまして,例えば預貯金債権につきましては情報取得の必要性が特に高いというようなことが考えられますし,またこのほか情報取得の必要性が特に高いものとしてどのようなものがあるのかといったことにつきまして御意見いただきたいと思っております。   イの部分ですけれども,この制度により第三者が負うこととなる情報提供義務の根拠について取り上げております。ここではこの義務を民事訴訟における証人義務のような広く国民一般が負うべき義務と整理するような考え方と,これを第三債務者の陳述義務を時間的に前倒しするものと整理する考え方を紹介しております。   このほか,ウとエの部分ですが,第三者と情報の範囲を検討する上ではこの対象となります情報に債権者の個人情報等が含まれることを踏まえて,この制度により第三者が負うことになる情報提供義務と第三者が元々負っている守秘義務等々どのように整理するのかということだとか,またエの部分で第三者が回答に要する事務負担やその第三者の対応能力等も問題になり得ると考えられますので,それぞれ御意見を頂きたいと思います。   15ページの(3)では,この制度の対象となります具体的な第三者と情報の一例として,銀行等の金融機関から債権者の預貯金口座に関する情報を取得する制度を創設するという考え方を取り上げております。ここでは金融機関から提供を求める情報の範囲について,より具体的な検討をすることを試みておりまして,例えば預貯金債権を特定するための事項のみを対象とするという考え方がありますほか,相殺予定に関する情報だとか,過去の取引履歴についても対象とするという考え方を紹介しております。   16ページの(4)の部分ですが,こちらでは銀行以外の事業者等から情報を取得する制度について取り上げております。その一例としましては,生命保険契約の解約返戻金の請求権に関する情報を取り上げておりますが,これに限らずこの制度の対象とすべきものがございましたら幅広く御意見いただきたいと思います。   (5)になりますが,ここでは公的機関からの情報取得ということの制度の一例として,債務者の勤務先に関する情報を取得するということを取り上げておりますが,これは個人に対する強制執行の場面においては,企業債権の差押えをすることが重要となる場面があると考えられますものの,債権者にとってみますと,債務者がどこで働いているのか,その勤務先がどこかということを把握することが必ずしも容易ではないという意味におきまして,その情報取得の必要性が特に高いという指摘があり得ると考えたからでございます。勤務先の情報のほかにも,公的機関から情報を取得する必要性が特に高いものというのがもしございましたら御紹介いただきたいと思います。   また,この公的機関からの情報取得につきましては。平成15年改正の際にその情報の目的外利用というのには個人情報保護の観点から問題があるという指摘がされておりましたので,このこととの関係についても御意見いただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この第2の部分につきましても項目を区切って御議論いただければと思いますが,まず1の制度創設の要否,総論的な部分でありますが,平成15年改正の議論から現在制度創設の必要性,更に制度創設に当たっての留意点,この辺りの総論的な部分について御意見を頂戴できればと思います。どなたからでも結構ですので,御発言いただければと思います。 ○中原委員 金銭債権についての強制執行の実効性を確保し,司法の信頼性を上げる見地から金融機関が保有している債務者の預金情報を回答するという方向性には異論はございません。ただし,金融機関と言いましても,例えば部会資料2の16ページにありますように,いわゆるメガバンクから信用金庫,信用組合,協同組合まで幅広い様々な形態の金融機関があります。したがって,検討に際しては,各々がどの程度対応できるのかという点について十分に配慮していただく必要があると思います。   また,過去情報をコンピュータの預金ホストコンピュータに持っている金融機関もありますし,あるいは,例えば各支店単位のデータを手作業で集計する必要がある金融機関もあると思いますので,負担の軽減も合わせながら,金融機関がどの範囲で協力できるかについてはよく議論をさせていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。個々の金融機関の状況に応じた留意につきまして,また各論のところでも御議論いただくことがあるかと思います。 ○今井委員 15年改正でもここにありますとおり議論されたわけですけれども,記憶としては,これは個人的な感想ですけれども,財産開示と今回は第三者からの情報提供というふうにちょうど並列になっていますけれども,当時は先ほど来御議論がありますとおり,財産開示についてとにかく新しい制度で,これは強力であり,むしろ濫用とかの弊害についてそれは十分に議論された気がいたします。   そういう中で更に新しい第三者からの情報提供という制度につきましては,私の記憶ではそれほど財産開示と並んで議論された記憶はありません。そういう意味で,財産開示でこれが十分にワークすれば取りあえずは十分ではないだろうか,それを更に第三者からというのは制度発足としては債務者財産の情報収集の制度としては,まずは財産開示でいいのではないだろうかという印象があります。   ところが,先ほど来申し上げたとおり,全然当初の期待と言いますか予想と反した経過をたどっておるので,そういう意味ではやはり本人からの情報収集というのには限界があるのかなと。それと合わせてまた第三者からの情報収集の方が現実的ではないのかな。こういう流れというふうに認識してございますので,このような制度の新設というのはある面で機は熟したと言うべきなのか,やや遅いというのか,そんな感想を持っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。平成15年改正の経緯から御指摘を頂きました。 ○阿多委員 この1の(1)から(3)まであって,社会状況の変化,いわゆるコンピュータシステムの整備というのが15年のときと社会環境として異なるというのは御指摘のとおりかと思います。そのうちの制度創設に当たっての留意点で御指摘されている10ページのところについて御質問と意見なのですが。   まず,ほかでも出てきますけれども,債務者の個人情報保護の観点という言葉が何か所かキーワードとして出てくるのですが,13ページでしたか,等で出てくるときは個人情報等という形で,個人情報保護に関する法律等が引用されているのですけれども,通常そこで言う個人情報というのは個人識別情報の話なのかなと思います。そうしますと,幾つか出てくる個人情報保護というのが一体中身として何を取り組まれているのか,先ほど来出てくるプライバシーだとか企業秘密というような意味で用いられているのであればそういう内容として個別にまた考慮する必要があるのかなと思います。   それから,10ページの一般論として第三者が保有する情報は第三者が自らの時間と費用をかけて収集したものであってと,もちろん一般論としてそのような場合が多数であるというのも理解はしていますが,情報によっては,言わば情報センターというか制度としてそこに情報を登録,集中管理してもらってするのであって,自らの時間と費用という形で第三者が常に情報を保有するきっかけになったということに限られない場合もあり得るのだと思います。後半公的機関や第三者の情報というのが出てきますけれども,登記登録制度というのが前提にするのであれば,それらは利用者としてはそれは登録せざるを得ない手続があって,それに基づいて登録して,その登録機関としては情報管理をしているわけですから,いろいろなパターン,情報の入手の仕方というのは必ずしもその第三者の時間と費用だけではなくて,いろいろな場合があり得るということを前提にそれぞれの類型化をするなりしてこの情報提供してもらうことの当否ということを考える必要があるのではないかと思いますので,御質問と意見という形で述べさせていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。前段の御質問のところですけれどもいかがでしょうか。 ○筒井幹事 債務者の個人情報の保護といった表現をしているのは,基本的には,債務者の財産に関する情報は必要もないのに開示を強制されることはないという広い意味で言っているものと御理解いただければよろしいのではないかと思います。そうでない意味で使っているところがあるとすれば,それに応じて書いていたと思います。   後半の御意見は,そういった御意見を踏まえて御議論いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○谷幹事 制度創設の必要性に関して意見を述べたいと思います。この部会資料2では平成15年改正以後の状況を踏まえて今般改めて制度を創設すべきであるとの考え方が提示されているということでございまして,幾つかの財産開示の限界があるとかいう点が指摘されているのですけれども,この第三者から情報を取得することによる一番大きなメリットは,やはり債務者本人に知らせないで言わば密行的に情報を取得できるということだろうと思っております。先ほど来指摘がありましたように,財産を隠してしまうのではないかというような問題があるかと思いますが,財産開示の申立てを受けて預金を引き出してしまうというふうなこととか,これは幾らサンクションを設けてもやはりあり得ることだろうと思いますので,そういう意味で債務者に知らせないで債務者の財産に関する情報を取得するというのはそれは大きなメリットがあるだろう。   先ほど15年改正のときの法制審の議論の御紹介がありましたけれども,当時法制審では余りこの点は議論されなかったということのようなのですが,日弁連では比較的ここは割と重視をして議論をしておりまして,むしろ債務者本人から財産を開示させるというよりも,第三者から取得をするという制度の方が実効性があるのではないかというような議論をしていたところですが,当時の結論としては導入されないということになって少し残念に思っていたところなのですけれども,今のようなメリットというのも必要性として考えられるのかなと。   そういう必要性を考えるとすれば,それに応じてまた制度内容をどうするかということにも関連をしてくるだろうと思いますので,こういう視点でも検討いただければという趣旨でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○中原委員 金融機関の立場としては,この制度に基づいて回答しても金融機関の守秘義務に違反することにはならないことが大前提になると思いますので,その点については十分留意していただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○山本(克)委員 今の守秘義務というのはどういう内容の守秘義務をお考えになっているのでしょうか。 ○中原委員 金融機関は,顧客との銀行取引によって金融機関が取得した取引情報についてみだりに公開してはならないという守秘義務です。 ○山本(克)委員 その場合の預金残高があるかないかと,預金があるか,残高は幾らかというものも守秘義務の内容に入るという御理解なのでしょうか。 ○中原委員 その通りです。預金取引の有無や,預金残高についても守秘義務の対象になると考えています。 ○山本(克)委員 それは差押えがされた場合の第三者債務者の陳述義務との関係をどういうふうにお考えになっているのですかね。 ○中原委員 守秘義務は法令上の根拠があれば解除されると一般的に考えられています。陳述義務については民事執行法上の制度ですから,それに基づいて回答する限りは,守秘義務が解除されると考えています。 ○山本(克)委員 今回は法令上免除する規定を作るのではないことを前提にしているのではないでしょうか。ただ,もちろん守秘義務をむやみに解除する法令はまずいと思うのですが,今回のは法律で第三者に情報提供義務を認めるということですから,正に法令上の例外規定を作るということなので,そことの関係を考えろという趣旨がもう一つよく分からなかったのですが。 ○中原委員 金融機関が懸念しているのは,回答することにより預金者から法的な責任を追求されるのではないかということです。新たな制度に基づいて預金情報を開示した場合,金融機関の守秘義務違反が問われないということを何らかの形で確認していただければ,それで構わないという趣旨です。 ○山本(克)委員 そういう趣旨ですか。それならもう裁判所をかませるということがあれば基本的には大丈夫だということですね。 ○中原委員 そうですね,はい。 ○山本(和)部会長 事務当局の方からも何かあれば。 ○筒井幹事 今の議論の一つ前の話題で,平成15年改正のときに第三者から情報取得する制度について余り議論がされなかったというのは,適切な認識ではないだろうと私は思います。部会資料にも書いてあるとおり,例えば,債務者の預貯金口座に関する一般的な情報を取得しようと思っても,少なくとも当時は,適切に情報の蓄積された照会先はなかった。一方で,債権差押えの実務では,ある程度は探索的な差押えの申立てが認められていたので,それによって一定程度は開示の機能を代替することもできるであろうと考えられたのだと思います。それからもう一つ,公的な機関からの情報取得を目指すかどうかについても,その当時,正面から議論されたと思います。ただ,当時の議論としては,公的な機関がその情報を取得する目的の範囲を超えて,目的外にその情報を開示することについては,それは適当でないという意見の方が優勢であったから見送られたという経緯だったように思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにこの総論的なところで御発言いただくことはございますか。よろしいでしょうか。   それでは,引き続きまして各論的な話ですけれども,最もこの制度を新設する場合の根幹的な問題になる制度の対象となる第三者及び情報の範囲という2の部分であります。ここかなり中身が多くて,基本的な考え方,どういう根拠に基づいてその開示というものをさせるのかということであるとか,その第三者情報の範囲限定するに当たっての基本的な考慮要素,幾つかの要素が挙げられ,更に具体的な第三者及びその情報の範囲として金融機関その他の事業者あるいは公的機関というのが今具体的に挙がっているということですが,特にここは区切りませんので,今の点,また前後関連すると思いますので,どこからでも結構ですので,御意見を頂ければと思います。 ○垣内幹事 制度を考える際に一つの基本となる点として,第三者に仮に一定の義務を課すとすればその理論的根拠は何なのかという点があろうかと思います。資料でもその点について幾つかの箇所で関連する記述があるかと思いますけれども。一つは10ページの(1)のところ,それからより具体的には12ページから13ページにかけての辺りということかと思います。私自身は,とりわけ12ページから13ページのところの御説明で,一方で証人義務とパラレルに考えるという考え方と,他方で債権執行における第三債務者の陳述義務に手掛かりを求める考え方とが御紹介されていると思いますけれども,これらは確かに義務が発現する場面というのは異なるのですけれども,基本的に根本的に異質なものであるということでは必ずしもなくて,証人義務の場合には民事訴訟手続において当該証人に対して証拠調べをする必要性が生じたということによって当該義務が具体化するということであり,第三債務者の場合には民事執行手続において債権差押えがされて,その第三債務者になっているというそういう地位から執行手続に一定の協力が求められるということになるので,いずれも一定の司法手続との関係で,そうでなければ普通の一般国民にとどまる第三者,必ずしも当該事件の当事者ではない第三者に対して一定の協力義務が課されるという場合だと理解しておりまして,両者を相容れないものというふうに考える必要は必ずしもないのではないかというふうに考えております。   そのように考えたときに,しかし,範囲としては証人義務というのは非常に広範なものだというふうに考えられているのに対して,第三者の陳述義務というのは非常に具体的,特定的な場面で顕在化する義務だということで,どちらの方から出発するかということでかなりその範囲が具体的には異なってくるということだと思うのですけれども,私自身は先ほど申し上げたような理解から,理論的にはかなり広い国民一般を対象としてこういう債務者の責任財産に関する情報を提供させるというものを考えることは可能なのだろうと思います。ただ,だからといって具体的に実施可能な十分に合理性のある手続としてそれが設計できるかどうかということはまた別の問題があろうかと思いますので,最終的には必要性と,それを可能にする合理的な手続としてどういうものが実際に考えられるのかということとの関係で具体的な範囲というものを考える必要があると思います。したがいまして,根拠についてどういう考え方をとったから自動的にこうなるということまでもないのだろうということでありまして,各論的な,とりわけ手続をどういう形で仕組むかというようなことを考え合わせて具体化をしていくという,それでどこまでできるのかということを考える問題なのかなと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 垣内幹事の意見と重なるのかもしれませんが,10ページの2の(1)の基本的な考え方で,前者後者という形で指摘されている内容は,前者は中段,第2段落のところで,第三者の情報提供義務を証人義務のように広い国民一般の義務として捉え,対象とする第三者の範囲は基本的に限定しない方向を目指すものという整理をされ,後者については,第3段落で,前者の考えに対するこのような問題点を踏まえ,まず情報取得の必要性が特に高いことと考える場合に限定して,第三者の情報提供義務を負わせるというふうに整理されています。後者の場合ですと前提としての義務についてはまず考慮せずに,個別的に法律が認めれば義務を負うのだという整理に読めるのですが,議論としては抽象的に国民が何らかの義務を負うのかという形であって,そのときに制度として広く抽象的な形で義務を負わせて,個別の申立てで司法機関である裁判所が判断して提供義務を負わせるという制度を考えるのか。そうではなくて,ある一定の類型のものに限って,それでも裁判所の判断を加えるのかという,言わば間口を広くするのかある程度整理するのかという議論と,義務の議論,いわゆるこの提供義務の議論というのは必ずしも結び付かないのではないかなと。つまり後者の問題でも抽象論としての証人義務はあっても,訴訟手続であれば裁判所の採用決定という判断が入るのを言わば類型的に裁判所の判断に変えて制度として設けるのだという説明も可能かと思いますので,義務の議論と制度設計というのは論理的に結び付ける必要はないのではないかと思ってこの資料を拝見しました。 ○山本(和)部会長 垣内幹事,阿多委員御指摘のとおり,恐らく厳密な1対1対応ということでは当然ないのだろうというふうには思います。全体的な傾向というか,そういうものが書かれているということなのかなというふうには思っております。御指摘ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○今井委員 今のお二人の幹事,委員の意見とかぶるかもしれませんが。証人義務や陳述義務について,基本的に司法の,先ほど来言っていて恐縮ですけれども,インフラという司法制度というものの第1番目の義務者は私は国家だと,国だと思います。それで,国がこの制度をどういうふうに作るのかという制度設計であって,個々の一人一人の開示を対象にする義務と言えば義務なのですけれども,そういう司法制度の中で責任や義務があるとすれば,それは国がどういうふうに司法制度を設計するのかの結果に過ぎない。ただ,その問題と個々の第三者なりに対する義務というのをどう結び付けるのかということになると,それは例えば納税義務のように一人一人が幾ら払うという直接の義務ではなくて,この司法制度の問題として制度設計がされ,それが運営されるようにそれぞれが協力する。そういう意味では協力義務に近いのかなというふうに個人的には思っております。そういう意味で真の義務者は国であって,一人一人の協力はそれは負担というふうに考えた方が分かりやすいのかなという気がします。したがいまして,その負担が余りに大きく,それが過度な弊害を生むということになると,それは負担の問題を軽減するなりなくすなりという問題であって,国のインフラとしての執行制度をよりよく作らなければいけないという義務がなくなるわけではない。私自身はこんなふうに整理しているわけです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○道垣内委員 私自身は別に人の執行に協力してあげようという気はありません。私にとって関係ない話ですから。問題はやはり預貯金の性格というものから考えていくべきではないだろうかという気が私はしております。現在の民法改正案におきましても改正案の466条の5というところでは譲渡制限に関して預貯金だけ特別扱いをする,あるいは477条で弁済に関して口座への振込みというのを特別な扱いをするということになっています。そこに何が表れているのかというと,民法改正案においては,またそれは現在の考え方と全く違うものをそこに導入したわけではないのですけれども,預貯金の金銭性が前提になっているのだと思います。したがって,金融機関が預貯金があるというときに,それはそこに債務者の金銭があるというのと同様であると考えたら,その金融機関に一定の協力義務でもいいのですけれども,陳述義務があってもおかしくはないような気はします。およそ一般的に,人々が他者の執行に協力をしてあげなければならないというふうには私は考えません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。預金の特殊性から説明すべきではないかといいう御趣旨だと思います。 ○山本(克)委員 私も今道垣内さんがおっしゃったことに同感で,第三債務者一般に広げると,あるいはもっと広く債務者の勤務先を知っている人は誰でも聞かれたら答えなければならないとか,そういうのはいかがなものかと。警察国家みたいになって悪夢の世界みたいになってくるような気がしますので。やはり預貯金の特殊性ということ,しかも事務局の説明からもありましたように,預貯金については差押えの際に特殊なほかの第三債務者にない特別な扱いがされていると,だからそういう特別な扱いをしないで済むような制度作りというものを考えるのだという形で何らか,あるいは特別な扱いを前提として債権者が不利益を被らない制度作りをするのだという辺りで,私は銀行の預貯金に限るべきだというふうに考えております。   その関係でちょっと中原さんに,先ほどおっしゃったことで名寄せの関係ですね,名寄せの関係で手作業でやるようなところがあるというお話でしたが,それは預金保険の対象となる金融機関の中にもそういうところがあるという御趣旨なのでしょうか。 ○中原委員 預金保険で求められている名寄せは,当該金融機関が破綻したときに,どの預金者に,幾らの預金残高があるのかを全店ベースで確認する手段の整備が求められています。金融機関が破綻したときに確定できれば良いわけですから,一分一秒を争うという時限性はありません。そこで,コンピュータの容量等の関係で,ホストコンピュータではなく,名寄せデータを紙に印字して保管しているというところもあると聞いています。したがって,全ての金融機関がオンラインで名寄せができるとは限りません。実態は,各金融機関に対してアンケートを行う必要があるだろうと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○今井委員 道垣内委員と山本委員についての私の考えです。私は一般的に協力義務というふうに比喩いたしましたけれども,一般的に国民が協力義務を負っているとまで言ってるわけではなくて,義務という概念があるとすればそれは国家だというふうに言っているわけであります。私が先ほど申し上げたのは,そのことによって金融機関以外の一般にも広げろというふうに言っているわけではないということは御理解いただきたいと思いますし,なぜこういうことができるかというテーマについての意見を申し上げたわけでありまして,やはりそれは国としての司法制度,なかんずく今回は執行制度ですけれども,それの真の,と言いますか直接の義務者は国だと,こういうふうに言っているだけです。その上でこの司法制度,執行制度が一番効果的で,よりよい制度になるかどうか,これは制度設計の問題でありまして,それが例えば金融機関であれば,それは金融機関は当該債権者に対する義務ではなくて,そういう制度設計の中における協力をするのだと,こういう意味では協力義務と言えるのかなというふうに申し上げているわけであります。   それで,そういう意味では金融機関が預貯金を出す,それはこの実効性という意味からすると非常に実効性がいいのではないか。それは制度設計の問題だということであります。だからといって一般的にどんどんいろいろな方から論理必然的に協力をすべきだというところにまでいっているわけではないと思います。そういう意味で先ほど申し上げたのは,協力義務というよりはむしろそれぞれの制度設計の中における協力による負担だと。ただ,その負担が余りにも大きかったり本来の仕事に対する支障が余りにも大きかったら,それは制度設計としてはやるべきではない,こういうふうに言っているわけです。 ○谷幹事 負担と言うか協力義務と言うか,言葉の問題なのかも分かりませんけれども,いずれにしてもこれ第三者に情報の開示を義務付けるということになると思いますが,その義務付ける根拠をどう説明するのかというのは整理をしておかないといけないのかなと思っているところです。その点では垣内幹事おっしゃったように証人義務と同様あるいは類似のものとして考えるというのが説明がしやすいし,実態にも即しているのかなというふうに思っているところでございます。ただ,そういうふうに考えた場合に解決をしておかなければならない問題は,証人の場合は裁判所が必要性を認めて決定をして呼び出しをして証言をさせるということになるわけで,具体的な必要性については裁判所が判断していると。ところが,今回制度を作るとした場合に,そういう具体的な個別の必要性について判断させるのかどうかという問題がございます。その点については,一つ一つ個別の事件について個別に判断をするというのは少し制度としては余り使い勝手のいいものにはならないだろうと思いますので,ここは法律的に類型的に陳述を求めることが必要な情報,類型的に法律で定めるということで立法的に必要性の判断は解決をするという,そういう説明でどうなのかなと思っております。   したがって,具体的にどういう第三者に対してどういう情報の開示を求めるのか,これを個別的に必要性を判断をして,立法に結び付けるという,こういう作業が必要になるのかなと思っております。 ○山本(克)委員 私が申し上げたかったのは,別に今井委員がおっしゃっていることに反対するとかそういう趣旨でなくて,便利だから義務を課してやれという発想はまずいのではないのかということを申し上げたつもりです。普通に証人義務も文書提出義務も司法に対する協力義務だと位置付けていますので,もちろんおっしゃるとおりだと思います,憲法32条を実体化するために国が制度設計するために国民に義務を課すという点では誰もそれは否定していませんので,そういうことを議論するつもりは全くなくて,こういう情報が入ったらすごく便利だからというだけで第三者に対する義務を正当化できるのかということについて疑問があって,先ほど言いましたように預貯金の特殊性という観点から預金取扱金融機関に限って義務を課すべきではないのかということを申し上げたつもりです。 ○道垣内委員 手を挙げてしまったので申しますが,全く同じことを今私も言おうとして手を挙げたところでした。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○阿多委員 今山本克己委員の方から今の発言の前のところで預貯金の特殊性というお話が出たのですが,私も正確に理解ができないものですから確認をさせていただきたいのが1点なのですが。いわゆる債権差押えの,特に預金の場合はほかの動産差押え,不動産差押えと違って,現状支店単位でするために割り付けをしてしていると。本来ですと債務名義を割り付ける必要はなくて,一つの申立てをしてあとは支店だけを挙げていけばいいのかと思うのですが,従前からこの債権差押えは支店ごとの割り付けをしていると。その特殊性に関する情報を第三債務者の方から,つまり支店で幾らあるということさえ提供すればそれで足りるということで預金の特殊性を挙げられたのか,むしろ御質問は,第三債務者という債務者性のところに債務者の場合は何らかの負担があるから情報開示についても協力するということが正当化できるということでおっしゃったのか。すみませんが,ちょっと債権の差押えの関係のところがよく分からなかったものですから。 ○山本(克)委員 例えば,全国展開している問屋さんは今は余りないですけれども,問屋さんがあるとして,債権差押えの際には,問屋さんの売掛金債権を特定するのにどこどこ支店の扱いということはいらないわけですよね。それに対して銀行は,どこどこ支店の誰々さんに対する預金債務という形でしか差押えができないというのが現在の判例ですから,ほかの第三債務者よりは手続的に有利なポジションに置かれているわけですよね。その有利なポジションを負っているのだから,代わりに協力義務を負わせても構わないのではないかということを申し上げたつもりです。 ○阿多委員 そうしますと,いわゆる現在の判例とおっしゃった,預金に対する差押えの特殊性ゆえに金融機関だけは協力義務としての回答義務があると,逆にそういう説明になりますと,金融機関以外の第三債務者,第三者よりも更に狭い第三債務者について協力義務としての回答義務を負担を負わせるのは行き過ぎだという御説明になるのでしょうか。 ○山本(克)委員 そう言ったつもりです。 ○阿多委員 分かりました。第三者はむしろその債務者性とかいう概念でおっしゃるように便利だからというような形で全ての第三者に負担をかけるというのは行き過ぎだとは思いますけれども,制度として第三者に情報集約するというのが実例としてあるわけですね,生保協会にしても現状個々の生命保険会社の方に照会されるよりも生保協会に照会してほしいと,そういうふうな形で第三債務者,更にはもっと絞った便宜を与えられている第三者というような形で限定せずに,情報提供を目的とする団体もあり得るわけですから,そうなると第三債務者で限定をされたものだけに回答義務を負わせるというのは制度設計としては余りに狭いのではないかと思うですが,いかがでしょうか。 ○山本(克)委員 その業界団体が情報を収集して提供するかどうかはそこの任意ですよね。 ○阿多委員 はい。 ○山本(克)委員 ですから,そういう任意にやるかどうかというのはそれは別のベースで考えるべきであって,この法令上の協力義務の対象にすべきではないのではないかということを申し上げている。 ○阿多委員 もちろん現状任意でしているのですが。 ○山本(克)委員 いや,それでは,その業界団体に対して,情報提供義務というよりも,情報収集義務を負わせることになりますよね。その団体が情報を集約しなければ回答しようがないわけですから。そういうことを各団体に負わせることが可能なのでしょうか。つまり,たまたま集めているところだけを狙い撃ちして法令でそのような義務を課すというのは,私はなんか変な感じがしますけれども。 ○阿多委員 今の御指摘の情報集約義務と回答義務についてはやはり別の問題で,現時点で保有している情報の提供を求めるというのと,その情報が不足しているから足りないものも含めて集めてこいというような意味での集約義務を第三者に負わせているということにはならないと思います。飽くまで第三者の性格として情報センターというか情報集約機関としての役割が期待されていて。 ○山本(克)委員 なぜ期待されているのかと聞いているのですよ。それは集約義務があるからこそ期待できるのであって,集約義務も何もないのになぜ期待できるのかということが私には理解できないということを申し上げたつもりです。 ○阿多委員 違う例を出してあれですが,例えば軽自動車の場合ですと軽自動車検査協会というところを通じて登録をしないと軽自動車の登録なり名義変更はできないわけですが,そこは情報集約しようとしているわけではなくて,制度としてそこに情報が集まるようになっているのだと私は理解しています。そうしますと,そのような本来目的で情報集約をする目的ではないような団体に対してでもやはり第三者としての情報提供を求めて,ある名義人の軽自動車登録の状況はどうかというような形の照会ができてもそれが認められるのです。そもそもそこに登録制度を利用しないと軽自動車の登録ができないわけですから。 ○山本(克)委員 私のイメージしているのは文書提出義務的なものなのですね。送付嘱託的なものを別途かませるということで,お願いベースでやるというのであれば,私は構わないと思いますが,業界団体に義務を課すのであれば,それなりに何らかの制度的背景がないと義務は課せられないし,その今の軽自動車うんぬんというのも,それでは不動産登記で司法書士に各司法書士会にお宅の会員の情報を集めて回答しなさいとかいう話にも下手するとつながりかねない。そういうようなことは私はやめるべきであって,送付嘱託のような形で,お願いベースで頼むというのはありだと思います。 ○山本(和)部会長 両委員の御意見はかなりよく認識できたと思いますので,ほかの方の御意見も伺ってみたいと思いますが。 ○道垣内委員 結論は山本克己委員と一緒なのですが,私はそれを実体的な権利の性質の方から基礎付けた方がよいのではないかという意味で申し上げたと。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○佐成委員 余りこの部分は発言しないつもりでいたのですが,今の道垣内委員と同じ意見であります。今回の民法債権法改正の議論の中で預金債権は特殊な扱いを受けているのですね。これは我々一般企業が第三債務者になる場合と異なりかなり有利に扱われている局面がありまして,ずるいなというような率直な印象を持ったところでございます。問題となった論点は経済界の中でもかなり反対意見も強かったところでしたが,今回は預金債権を別に扱うことで改正を認めることになったわけです。預金債権は特殊だなと,それが経済界の一般的な認識であろうかと思います。ですから,そういう意味で実体法的な基礎付けという方が経済界にしてみても,また,事務負担が当然銀行には発生しますので,その現場の負担感という点から考えても,そういった部分はやはり基礎付けの要素になるのではないかと思います。証人義務一般というのはいかがなものかという気がいたしますというところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○村上委員 先ほど10ページの基本的な考え方についての御議論だったかと思います。私どもとして理論的にどうするかということまで申し上げる立場にはありませんけれども,広く一般国民の立場で言えば,対象となる第三者や取得できる情報の範囲というのは,例えば債務者預金口座に関する情報に限定していくべきではないか,また,債権の種類についても要保護性の高いものからスタートすべきではないかと考えております。こういうことから制度をスタートして,問題がなければ広げていくというようなことでなければ,一般国民の立場からは広く情報提供ということへの理解は,なかなかにしづらいのではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○垣内幹事 私自身は理論的には証人義務というのは全く訴訟に関係のない第三者であっても裁判所が証人尋問の必要があると,事件に関係がある情報を持っているだろうということであればこれは義務が生ずるわけですし,文書提出義務についても同様なわけですね。これは訴訟の場合には権利の存否の判定に関して第三者の協力をそういう形で要請できるという現行制度を採っている,同じようなことを権利の債務名義に表象されている権利の実現過程についても考えることができないかというと,理論的な可能性としてはそれは考える余地はあるのだろうと思っております。そういう意味では抽象的にはかなり広い範囲でこういう義務を設定するということは私はあり得ると思います。ただ,それは現在では基本的には債務者財産に関する情報は債権者が自己責任で収集するか,あるいはせいぜい債務者本人に対して財産開示手続という形で提供を求めることができるにすぎないということですので,非常に他の第三者,一般の第三者たる国民の目から見ればそういう義務を広範に認めるということはこれまでにない義務を新たに創設するという形になるわけですから,いきなり非常に広いものをそういった形で制度として入れるということが簡単に納得が得られるだろうとはやはり考えられないわけでして,そこは必要性が特に高いですとか正当化の理由が容易に見つけることができるというような領域に限って最初は類型的に認めていくと。先ほど財産開示手続そのものについても小さく生んで大きく育てるというようなお話もありましたけれども,やはりこちらの制度につきましても非常に新たな制度を設けるということになりますので,当初の段階から余り無理に広げすぎるということは当然難しいだろうということは私も承知しております。   したがいまして,例えば銀行の預貯金というものについて説明が十分付くということであればそこから出発するという選択肢は十分合理的なのだろうと思っておるところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 私の意見は特段全てに対して広く認めてというこの10ページの2の(1)を必ず前提とするものではなくて,ケースとして対象はある程度限定列挙をしながらということをも含めて申し述べているつもりですので,まず最初にその点だけお話をしたいと思います。   この部会が始まった最初のフリーディスカッションのときに発言をさせていただいたのですが,この制度を創設するときに,もちろん新しい制度ですけれども,既存の手続で同種情報が入手できるという場合に,それと同じことしかできないというのであれば制度創設をする実質的な意味が乏しいのではないかという発言をさせていただきましたが,現状少なくとも弁護士会の23条照会という照会を使えば金融機関に関して言うと,その中原さんもいらしていますけれども,少なくとも都市銀行,大手4行全て及びゆうちょ等については残高についての回答は全てもらえるというのが今の実務の状況です。そうしますと,銀行預金についてないしは郵便貯金も含めてという形になりますと,既存の制度で実現できるものの情報しか今回の制度創設では,小さく生んでというお話もありましたけれども,できないというのであればこの制度を創設する実質的意味がどこにあるのかということも含めて御検討いただく必要があるのではないかと思います。そういう意味では制度を創設する以上,今できないことをいかに実現するのかということをやはり考えていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○中原委員 いわゆる弁護士法23条照会については,当行を含めて一部の金融機関は債務名義があるものについては照会に応じて,回答しています。金融機関の中には各地弁護士会と協定を締結しているところもあるようです。当行は弁護士会と協定は締結していませんが,協定を締結している金融機関と同じように回答しています。ただし,メガバンクの一部や,地方銀行,その他の金融機関では,非常に保守的で回答に応じていないところもあると聞いております。したがって,今回新たに金融機関の預貯金に限定した照会制度が導入されることはかなりの前進ではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○阿多委員 1点だけ。メガは全て今度協定ができることになりました。おっしゃるように都市銀行というかそれを前提にすると,地方に関しては地方銀行しかなく,更には信用金庫,信用組合しかないところもありますが,現状弁護士会の方の尽力で個別にそのような先ほどのコンピュータ等で管理可能なところについては本店照会で全て回答いただける,本当に個別に今努力しておりまして,相当数,数の認識の差はあるかもしれませんが,相当数でそのようなことが実現しているというのが現状と思います。 ○道垣内委員 結論としてそれほど大きく広げようとされている方はいらっしゃらないのかもしれませんが,差し当たって,理論的に大きく広げることに支障はないのかという問題については,私はそうではないと思います。と申しますのは,例えば私が真実としては誰かに対して借金を負っているというときに,裁判上それについて支払を請求されたからといって,自分で負ってますというふうに言わなければならないわけではなく,立証責任は向こうにあるわけですよね。しかるに,例えば私がそれでは債務を負っているときに,私に対する債権者が強制執行を受けようとしており,私に対して質問が来たというときには自白しなければいけないのですか。普通の訴訟だと言わなくてもよいのに,負ってないと言ったら刑罰が科されるですか。私はおかしいのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 普通の訴訟で言わなくていいのかどうかというのが先ほどの証人義務のお話だと思いますし,その第三者にどういう制裁を科すかというのは今のところまだ決まってはいないというか,この提案の中には第三者に対する制裁等については触れられていないということなのかなというふうには思います。   そろそろ予定された時間がまいりまして,私の不手際でこの2のところもちょっと今の議論もそろそろ佳境に入り始めた感じはしますが,これからが佳境なのかなという感じもしますので,恐縮ですけれども,この2のところを更に言い残されたこと等については次回に回させていただいて,更に3の手続の話はもう丸々次回に回させていただくということにさせていただきたいと思いますが。今日の段階でどうしてもこれだけは言っておかないとというようなことがございましたら言っていただいてもあれですが。よろしゅうございましょうか。   それでは,今のような形で次回に積み残した部分を御議論いただくというふうにしたいと思います。   それでは,次回の議事日程等につきまして事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○筒井幹事 次回会議は来年1月13日,金曜日,午後1時半から午後5時半まで,会場は本日と同じ法務省地下1階の大会議室となります。   次回会議の予定ですが,ただいま部会長からありましたように,本日の積み残しの部分から御審議いただくことになりますが,当初,第3回会議では不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策について御検討いただくことを予定しておりましたので,部会資料につきましては予定どおりその暴力団員の買受け防止に関する資料を事前にお届けすることとし,審議としては今回の積み残し部分から順次時間の許す範囲でお進めいただくことにしたいと思います。次回会議用の新たな資料については事前送付をいたしますけれども,本日の部会資料2については改めて御送付いたしませんので,次回会議にはまたお持ちいただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,これにて法制審議会民事執行法部会第2回会議は閉会にさせていただきます。本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。 -了-