法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第3分科会第4回会議 議事録 第1 日 時  平成30年 2月 2日(金)   自 午後 1時25分                          至 午後 4時02分 第2 場 所  東京地方検察庁刑事部会議室 第3 議 題  1 起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方について         2 保護観察・社会復帰支援施策の充実,社会内処遇における新たな措置の導入及び施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方について         3 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから,法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会第3分科会の第4回会議を開催いたします。 ○小木曽分科会長 本日は,御多忙のところお集まりいただきまして,ありがとうございます。   議事に入ります前に,第6回の部会以降,部会の委員,幹事に異動がございましたので御紹介いたします。   林眞琴氏が委員を退任されまして,新たに辻裕教氏が委員に任命されました。   また,吉田研一郎氏が幹事を退任されまして,新たに宮田祐良氏が幹事に任命されました。   委員,幹事の異動は以上です。   なお,いつも御出席をお願いしております澤村幹事は,本日は所用があおりということで,出席をお願いしておりません。   それでは,事務当局から資料について説明をお願いします。 ○羽柴幹事 本日,配布資料として,配布資料9「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方(検討課題等)」,配布資料10「「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」及び「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」(検討課題等)」を配布しております。   また,太田委員から,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」に関する意見交換の中で,韓国における制度に言及する際の説明の補助資料として,韓国の制度についての参照条文が提出されていますので,参考資料として併せて配布しております。   配布資料の内容につきましては,後ほど意見交換の際に御説明いたします。 ○小木曽分科会長 それでは,審議に入ります。   初めに,本日の審議の進行について確認しておきたいと思います。   部会第6回会議におきまして,これまでの分科会における検討状況について中間報告を行い,当分科会に属さない委員・幹事の方々からも御意見を伺いました。今後の分科会では,これらの御意見も踏まえながら,更に専門的・技術的な検討を加え,考えられる制度の概要案等を作成するとともに,検討課題を整理していきたいと思います。   論点表に掲げられた五つの論点は,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」と,社会内処遇に関係する「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」及び「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」,そして「少年鑑別所及び保護観察所の調査・調整機能の活用」の三つに大別されると思います。このうち,「少年鑑別所及び保護観察所の調査・調整機能の活用」については,これまでと同様,そのほかの論点を検討する中で,必要に応じて,関連する点について議論することとしたいと思います。   ここでの議論の進め方としては,検討に当たって意見交換を重ねる回数や時間がより多く必要になると考えられる事項から順次意見交換をするのが適当であると考えます。   この点,まず,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」の論点につきましては,これまでの当分科会や部会での意見交換を踏まえますと,新たな制度として,「起訴猶予となる者等に就労支援や生活環境調整を行えるようにして,必要に応じて明示的規定を整備すること」及び「検察官が起訴猶予を前提に,一定期間,指導・監督を行う制度の導入」という二つの項目が考えられるのではないかと思いますが,これらのうち,後者の「検察官が起訴猶予を前提に,一定期間,指導・監督を行う制度の導入」については,次回の部会までに複数回にわたって,より時間を割いた意見交換を行う必要があるのではないかと思われます。   社会内処遇に関する三つの論点については,これまでの議論を踏まえて,具体的な検討項目として分類しますと,保護観察の処遇内容に関するものとして,「保護観察における新たな処遇手法を開発し特別遵守事項として設定すること」,「更生保護施設において指導監督を実施すること」,「犯罪被害者等の視点に立った処遇を充実すること」の三つが挙げられ,次に,保護観察の実施に関するものとして,「良好措置や不良措置に関すること」,「外部通勤作業等の,施設内処遇から社会内処遇への円滑な移行に関すること」,「少年鑑別所の調査機能の活用の在り方に関すること」の三つが挙げられると思います。さらに,更生保護事業に関するものとして,「更生保護事業の体系の見直し」が挙げられると思います。   これらの中で特に保護観察の処遇内容に関するものとして挙げられる三つの事項については,検討項目も多く,内容としても,より時間を割いた意見交換を行う必要があると思われます。   そこで,本日は,まず,検察官が働き掛けを行う制度の導入及び保護観察の処遇内容に関するものとして挙げられる三つの事項から意見交換を行うこととしたいと思います。   もとより,そのほかにも重要な事項がありますけれども,本日は時間の都合もありますので,次回以降に意見交換をしたいと思います。   そのような進め方でよろしいでしょうか。                 (一同異議なし)   ありがとうございます。   それでは,まず初めに,「検察官が働き掛けを行う制度の導入」についての意見交換を行いたいと思います。   今後の意見交換については,検討課題を整理しながら具体的な制度の概要案を作成していく必要がありますので,その参考とするために,事務当局において,これまでの分科会における意見交換の内容や部会での御意見などを踏まえて,考えられる制度の概要や検討課題等をまとめた資料を作成してもらいました。まず,事務当局から,それについて説明をお願いします。 ○羽柴幹事 配布資料9について御説明いたします。   「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」の論点については,配布資料9の1ページにあるとおり二つの項目がありますが,本日意見交換が行われる,2ページの「第1 検察官が働き掛けを行う制度の導入」について御説明します。   配布資料9の2ページには,この項目について,これまでの部会及び当分科会における意見交換の状況等を踏まえ,「検察官が働き掛けを行う制度」として「考えられる制度の概要」とともに,検討課題となると考えられる事項を記載しました。いずれについても,現時点において考えられるものを記載したものであり,もとより御議論の対象をこれらに限る趣旨ではありません。   考えられる制度の概要や検討課題として記載した事項について御説明します。   まず,「考えられる制度の概要」についてですが,これまでの検討によれば,「改善更生のために社会内における働き掛けが必要なものについて,検察官が,起訴猶予を前提として,一定の守るべき事項を設定した上で,一定期間,指導・監督を行う制度とする」ことが考えられます。   次に,検討課題について御説明します。   まず,「1 趣旨等」,具体的には,制度の「趣旨及び目的」として,「・」に記載したものでよいか,「2 対象者」,具体的には,制度の「対象者の範囲」として若年者に限定するか否かがそれぞれ検討課題になると考えられます。   次に,「3」の「制度の枠組等」について御説明します。   この制度の枠組を検討するに当たっては,「(1)守るべき事項の設定」として,その下の四つの○にあるとおり,守るべき事項の「内容」,「対象者の選定や守るべき事項の設定のための調査」が,まず検討課題となると考えられます。次に,守るべき事項の設定の「手続」として,具体的には,設定方法,被疑者の同意の要否,検察官以外の機関の関与,弁護人(弁護士)の関与,不服申立ての要否・当否が検討課題となり,また,「設定すべき守るべき事項の内容の基準の要否」が検討課題となると考えられます。   そして,「(2)指導・監督」として,その下の二つの○にあるとおり,「指導・監督の方法及び担当機関」,また,指導・監督を行うべき「期間」が検討課題となると考えられます。   以上のほか,「(3)その他」の二つの○にあるとおり,守るべき事項を遵守して期間が満了した場合の効果や,守るべき事項に違反した場合にとり得る措置の内容が検討課題になると考えられます。   最後に,「4」の「少年鑑別所の調査機能の活用の在り方」についてですが,三つの○にあるとおり,少年鑑別所の調査機能を活用する「必要性」,「調査の方法及び内容」,「調査の時期」が検討課題になると考えられます。   配布資料9の説明は以上です。 ○小木曽分科会長 ありがとうございました。   ただいまの説明に,この段階で,御質問やほかにも検討課題等があるのではないかといった御意見がありましたらいただきたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○田鎖幹事 検討課題なのですけれども,これは「1」の「趣旨等」というところから始まっているのですが,12月の部会でも出ておりましたように,やはり必要性,相当性のうちの特に相当性の議論というものは,欠かせないのではないかと考えます。   具体的に前回の部会の中で,過去の法制審議会における議論を踏まえて,その中で採用されなかったような内容について議論するのであるから,過去の議論をきちんと踏まえる検討が必要だと,必要性や有効性のみならず,制度の許容性についても慎重に検討していただきたいという趣旨の御発言がありましたので,必要性,相当性,特に相当性についての課題についても検討課題とすべきだろうと考えます。   それから,もう一つ検討課題といたしましては,「2」の「対象者」のところで,ここは対象者の範囲について,年齢を基準とした区分についてしかないのでありますけれども,どのような事案を犯した人を対象にするのか,具体的には起訴猶予相当なのか,そうではなくて事案としては起訴相当なのか,どちらをターゲットにするのか,双方なのか,そこも当然に議論の対象とすべきではないかと考えますので,御検討をお願いいたします。 ○羽柴幹事 まず,御指摘をいただいた1点目につきましては,検討課題であるということは認識しておりますが,「1」には記載しておらず,2点目についても「2」には記載していませんでした。記述の趣旨としましては,「3」の「制度の枠組等」の中の議論に含まれると考えており,対象者についても「(1)守るべき事項の設定」の「対象者の選定」という部分に含んでいたのですけれども,ただそこではなくて,「対象者の範囲」のところで併せて意見を述べていただいたほうが議論がしやすいということであれば,それを妨げる趣旨では全くございません。 ○田鎖幹事 ありがとうございます。 ○小木曽分科会長 相当性の議論は「3」のところで扱うことになりますか。 ○羽柴幹事 独立した部分を設けて御議論いただいたほうがよいのか,あるいは,「3」の中に盛り込まれている,その部分その部分で御意見をいただいたほうがよいのか,どちらの方が意見交換を行いやすいのかという観点にもよろうかと思いますけれども,その点につきましても,議論の進め方について御議論いただければと存じます。 ○小木曽分科会長 今,御説明がありましたように,事案の観点は,「3」の「(1)」の「対象者の選定」というところで併せて御議論いただければよいのではないかと思いますし,守るべき事項の設定のところで,制度の相当性についても御議論いただければよろしいかと思いますが,いかがでしょうか。よろしいですか。 ○田鎖幹事 はい。 ○小木曽分科会長 では,そのような進め方にしたいと思います。ほかに検討課題等について御意見があれば伺いますが,よろしいでしょうか。                 (一同異議なし)   それでは,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」の「第1 検察官が働き掛けを行う制度の導入」について,配布資料9に沿って意見交換を行いたいと思います。   検討課題の順序に従って議論を進めていきたいと思いますが,関連する事項につきましては,他の項目に関わると思われるものについても,併せて御発言いただいてよろしいと思います。   では,まず,「1 趣旨等」に関する意見交換から始めたいと思います。   これまでの議論を踏まえますと,「検察官が働き掛けを行う制度」の趣旨及び目的は,配布資料9の記載にありますとおり,「起訴に伴う負担を回避して早期の社会復帰を実現しつつ,確実な更生を担保すること」という点にあると思いますが,この点について異なる意見や補充意見等があれば伺いたいと思います。   御意見がある方は,挙手をお願いします。   よろしいでしょうか。   御意見がないようですので,それでは,次の「2 対象者の範囲」について意見交換を行います。まずは,「18歳及び19歳を含む若年者を対象とするか,年齢に限定しないものとするか」という点についてお願いしたいと思いますが,御意見のある方は,挙手をお願いします。 ○太田委員 対象者については,少年法の適用年齢が仮に引き下げられた場合には,18歳,19歳の者の中で,単に起訴猶予にするだけでは更生を図れないという場合もあると思われますから,18歳,19歳の起訴猶予者に対して,検察官が一定の働き掛けをする意義がある場合もあろうかと思います。ただ考えてみますと,それは別に18歳,19歳に限ったことではなく,20代のような若年者もそうでしょうし,それ以上の年齢においても,様々な特性や問題性を抱えた者に対して一定の働き掛けをすることが更生に資する場合もあると思われます。特に比較的軽微な犯罪行為を繰り返すような者で,行為責任自体は起訴猶予相当であるが更生に不安が残る者に対し起訴猶予に際して一定の働き掛けをすることが有用である場合があろうかと思いますので,年齢という基準だけで対象を絞る必要はないと考えます。 ○保坂幹事 私も太田委員と同意見でございまして,この後議論する守るべき事項の内容にもよるわけですけれども,「1」のところにあった「趣旨等」について御異論がなかったわけですが,この「趣旨等」を前提とすれば,それは,18歳,19歳の若年者のみならず,ほかの年齢層についても等しく妥当するだろうと思われますので,議論の進め方としては,特に年齢を区切って進める必要はないだろうと考えます。 ○小木曽分科会長 ほかはいかがでしょうか。年齢に限定する必要はないという御意見だったと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,次に,「3」の「制度の枠組等」「(1)守るべき事項の設定」について意見交換を行います。   これも配布資料9に沿って「内容」から意見交換を行いたいと思いますが,この点については,当分科会の第3回会議で,太田委員から,「誓約事項」の内容について考えられることを述べていただきました。   この分科会では,今まで「誓約事項」などと呼ばれていたものについて,今後は,便宜上,部会への中間報告に合わせまして,仮に「守るべき事項」と呼ぶこととしたいと思いますが,第3回会議における太田委員の説明によりますと,この「守るべき事項」には二種類が考えられて,一つは,対象者が再犯に及ばずに健全な社会生活を送るために遵守すべき「一般的事項」,もう一つは,犯行の背景となっている特性や問題性を改善するために対象者が履行すべき事項,今後は仮に「履行事項」と呼称するのがよいかと思いますが,これらが考えられるという御意見でした。   前者の「一般的事項」の具体例としては,「善行を保持すること」,「届け出た住所に定住すること」,「検察官からの呼出しや訪問に応諾すること」のほか,「被害者への接近禁止」,「被害者への賠償や謝罪」が挙げられていたと思います。   また,後者の「履行事項」の具体例としては,「社会貢献活動を一定期間行うこと」や,「比較的軽微な窃盗を繰り返す者に対して,認知行動療法を実施すること」が挙げられていたと思います。   このような「守るべき事項」の内容について,賛成意見や補充意見,又は反対意見や問題点の指摘はございますでしょうか。   また,配布資料には,「内容」の下に,「対象者の選定や守るべき事項の設定のための調査」という記載がありますが,この点は,守るべき事項の内容にも密接に関わりますので,併せて御意見をいただきたいと思います。   それでは,御意見のある方は,挙手をお願いします。 ○太田委員 私は,基本的に,生活で守るべき最低限の事項としての仮に「誓約事項」と呼んだりしておりますけれども,それと,より積極的に本人の問題性に対して働き掛けを行う「履行事項」というもののと大きく分ければその二つがあるだろうと考えております。具体的に何かよりどころになるものがないかと思いまして,本日は,私の方から参考資料ということで,韓国の「保護観察所善導条件付起訴猶予」という制度に関して,関係法令を一部翻訳してまいりました。   韓国では,起訴猶予に際して検察官が一定の働き掛けを行う様々な制度がありますけれども,その一つに,この起訴猶予に際して保護観察所による善導と呼ばれる一種の社会内での働き掛けを行う制度があります。   参考資料の2ページ目の第6条に誓約書の徴収に関する規定があるのですけれども,その第2項に,韓国では遵守事項という表現を使っておりますけれども,それを見ていただきますと,私が申し上げたような,一般的に生活上守るべき事項や保護観察官の指示に対する応諾義務といいますか,一定の指示に従うという事項のほか,第2項第4号で,包括的な形ではありますけれども,一定の善導教育を受けるというような形で,今ここで言うところの履行事項というようなものも包括的に規定されているということでございます。   この保護観察所による善導付きの起訴猶予については,このような包括的な内容になっていますけれども,ただ,韓国ではこれを基本的な形といたしまして,様々なプログラムを付けた起訴猶予が行われております。その履行事項には,例えば薬物依存に対しては,その薬物依存教育を起訴猶予に際して行うというものもあります。職業訓練といったものを行うというようなのもありますし,それからDVの場合であれば,そのDV専門の相談所というのが韓国全国にあるのですけれども,そこでの処遇を履行事項として付けたような起訴猶予であるとか,様々な個別のプログラムといったものを起訴猶予に付して各論各則的な対応をするということが行われていますので,この規則には具体的な例としては書かれておりませんけれども,そういった様々なプログラムを起訴猶予に際して行おうというものがあることを申し上げておきたいと思います。 ○田鎖幹事 先ほど申し上げました相当性に関わる部分も含めて意見を述べたいと思います。   今,御意見といいますか,御提案として出ている内容というのは,御発言にもありましたように,実質において極めて保護観察に類似した内容ということです。検察官による働き掛けということなのですけれども,正にこれは検察官による処遇,社会内での処遇ということになるわけなのですけれども,私といたしましては,先ほども若干述べました過去の法制審議会における議論にもありましたように,検察官が起訴猶予に伴って,裁判所による有罪の認定のない段階で,そういった処遇を行うことは許されないと考えます。   韓国の制度の御紹介があったわけなのですけれども,当然我が国と違う制度を前提としたものでありまして,確かに,日本において特に戦前,旧刑事訴訟法の下で検察官による起訴猶予に伴う積極的な働き掛けといいますか,監督措置ということが,実務において行われていたということは承知いたします。けれども,その後,憲法が変わったことに伴って刑事訴訟法も改められ,そして第248条も旧刑事訴訟法の規定を下敷きにはしておりましたけれども,そこに犯罪の軽重という文言が加わって,性格自体も旧刑事訴訟法時代のものとは違っているということですので,やはり検察官のみの判断で司法的関与のないままに社会内処遇を行うということは認めるべきではないと考えます。 ○保坂幹事 守るべき事項として設定することが考えられる「内容」についてです。メニューはたくさんあったほうがよいのだろうと思われるわけですが,部会第6回会議で,この制度に限った話ではないのですが,現在家庭裁判所で行われていることとの対比をしながら議論をしていくべきではないかという御指摘がありました。それとの関係でいいますと,例えば,部会第4回会議で行われたヒアリングにおいては,家庭裁判所調査官から,家庭裁判所で行われている教育的措置の例として,万引き被害を考える教室等の実践例を紹介していただいたと承知をしております。今後,守るべき事項の内容の検討につきましても,家庭裁判所で教育的措置として行われているものを参考にしながら具体化していくということが考えられるのではないかと思います。 ○田鎖幹事 相当性に関する私自身の意見の補足のようなことになります。今,家庭裁判所の運用も参考にしてというようなお話があったわけですけれども,この前の段階の対象者の年齢といいますか,範囲のところでも出ましたように,もともとは仮に少年年齢が引き下げられた場合に,これまで保護処分,保護的措置を受けていた人たちが,何ら処遇を受けられなくなるというところの問題関心から,議論は,出発点としては始まっているということでした。現に,12月の部会第6回会議で,この検察官による働き掛けといいますか,措置に積極的なお立場の意見というのは,いずれもこういった観点から,つまり仮に年齢が引き下げられたら18歳,19歳の者に対しては,やはり働き掛けが必要ではないかという観点からの積極の御意見であったと把握しております。   他方で,同じ部会の会議において,現在の家庭裁判所における調査・処遇と比較すると,余りにも見劣りがするのではないか,現在の家庭裁判所等で行われている制度との比較を意識して議論してほしいという意見も出ております。となると,やはり実質において家庭裁判所で現在行われているようなものに比肩し得るようなものが作れるのかどうかというところを考えざるを得ないわけであります。   そうすると,翻って,また最初の相当性の部分にも関わってくるのでありますが,有罪判決を経ていない人に対して,そのような有効な,裏を返せば介入的な部分が出てくる,そういう働き掛けをすることができるのかという問題に返ってしまうと考えます。 ○小木曽分科会長 対象者の選定や守るべき事項の設定のための調査という項目もあるのですが,この点はいかがでしょうか。 ○太田委員 内容もさることながら,やはりどのような者に対してどのような対応をとればよいのかということを,きちんと実務において決定することが,非常に制度の成否を左右すると思いますので,例えば,被疑者がどのような問題を抱えているのであるとか,またどのような働き掛けが必要かつ有効であるのかというようなことを見極めるためのいわゆるインテーク機能,いわゆる調査と選別ということが非常に重要であると考えます。   そのためには,現在,一部の成人の被疑者に対して行われているように,少年鑑別所の技官による検査や鑑別というのが必要な場合もあるでしょうし,また被疑者の社会的な背景,社会的な状況に関する情報が判断に関して必要なのもあるでしょうから,現在の更生緊急保護の重点実施におきましても,保護観察官による調査と調整が行われるわけでありますけれども,それをより充実させたような生活環境調整的な調査といったものも重要であると考えております。   なお,今の相当性の議論ですけれども,私は結論的には制度そのものを全否定することは適当でないと考えております。もちろん,制度設計によって適切なものにするという必要はあろうかと思いますし,その可能性は十分あると考えておりまして,ではそういう起訴猶予相当ないしは一定の再犯防止措置がとられるのであれば起訴相当のようなものを,これもみんな起訴して公判で有罪にして保護観察付きの執行猶予にするということが適当とは思えませんし,その場合にきちんと裁判所で保護観察は付けてもらえるのかという問題もあると思います。確かに,本人に対し公判の負担を全部背負わせた上で処遇をする必要があるケースもあろうかと思いますけれども,起訴を回避した上で,だけど,やはり確実な更生のためには一定の指導を本人の理解のもとに行おうというのが適切なケースもあるのではないか。そうすることによって,早い段階での社会復帰が実現するケースもあるのではないかと思います。   韓国でこうなっているからこうしろというつもりは全くございません。ちなみに,韓国では執行猶予以外に宣告猶予制度というのがありまして,それにも保護観察が付けられるのですが,余り件数がございません。あることはあるのですけれども,その一方で,起訴猶予に際して非常に多様な働き掛けを行う制度というのがあります。両方そういう制度が導入されていると申し上げておきたいと思います。 ○田鎖幹事 「対象者の選定や守るべき事項の設定のための調査」について,一言述べたいと思います。以前,当分科会のヒアリングのときに,入口支援の実情について伺ったときに,現状の入口支援の実務という前提ではありますけれども,そこで行われている調査的なことというのは,捜査の一環として行われているのではないかというような御説明だったと私は理解しております。   しかし,仮にその,正にインテーク的なことといいますか,制度の趣旨,目的を,飽くまで訴追目的ではなくて,本人の社会復帰,更生ということを考えると,確かに日本の捜査機関による捜査の対象というのは非常に広範にわたるということはありますけれども,やはり基本的に調査の性格は違うのではないかということです。   しかしながら,これは制度設計によりますけれども,ひょっとすると最終的に起訴,通常の公判手続が開始されるということにもなるのかもしれない。ですので,その調査段階では本人の改善更生,利益のために行われるものが,後の手続で別の目的として利用されるという可能性が常にあるわけでして,そういったことから,例えばアメリカにおける公判前のディバージョンのシステムなどでは,それはディバージョンという明確な位置付けではありますけれども,その手続において得られた情報を,その後の手続について利用できるのかどうかということ自体が一つの大きな争点になっております。   私が懸念しているのは,現に今,入口支援として行われている取組の中で,例えば,本人が「支援を受けません」と言い,その後起訴され,その後の公判の中で,被告人に不利な情状として支援を拒絶したというようなことが用いられたというような話も聞きますので,やはり制度を設計する以上は,その後の手続にどのように利用されるのか,一般の捜査上収集された情報として扱うのかどうか,そういうことまでも私は考えなければならないと考えます。 ○太田委員 今のその事案は私は存じ上げませんけれども,入口支援を拒否したことを不利な情状として使ったということよりは,そういった一定の働き掛けが行われることが,より確実な更生につながって再犯を防げるという評価の前提となった本人の再犯の可能性や問題性の状況が,起訴された場合に情状として用いられたという感じではないかなと思います。支援を拒否したのだから,これに対して重く処罰するとか,求刑するというようなことではないのではないかなという印象を持ちます。 ○田鎖幹事 事案として,今も起訴相当の場合とそうでないものが両方含まれているような議論が出ていたと思うのですけれども,冒頭述べましたように,事案として本当に起訴猶予が相当であるというものを,本当に軽微なものを対象とするのか,あるいは事案自体を見たときには起訴することが考えられるというものを想定するのか,これによって全く制度の枠組といいますか,在り方としても違ってくることになります。必要な論点,議論も異なってくるということです。   これも後々の制度設計によるわけなのですけれども,起訴猶予が相当だけれども,立ち直るには支援が必要だということで働き掛けを行うと,しかし,その結果,これもまだこれから後の議論ですけれども,守るべき事項に違反して,最終的にもうどうしてもどれも守ることができなかったという場合には,起訴があり得るということになりますと,それは事案的には起訴猶予相当だったものを起訴するということになってしまうわけです。   これはもともとの趣旨,制度の趣旨を達成できないと,それと逆の効果を導くというだけではなくて,12月の部会第6回会議のときにも宣告猶予に関する議論の中でありましたように,そのときの制度の対象者を起訴猶予相当の人も含むのかということに対して,やはりそれは起訴猶予相当の人を,その制度の対象とするために起訴させるということには非常に疑問がある,違和感があるというような御指摘もありました。やはり事案として起訴猶予相当ということは,起訴猶予が相当なわけですから,それが格上げのような形で起訴にもっていかれるというようなことは,するべきではないと考えます。   もう1点,これは,起訴に伴う負担の回避ということとも関わってくるのでありますけれども,これまでの当分科会での議論では,起訴に伴って手続的な負担,公判の負担,それから前科やそれに伴う資格制限ですとか事実上のラベリング,こういった負担ないし不利益というものがあるだろうという御指摘がありました。   けれども,実際問題として,自白事件の公判というものは極めて速やかに終了するわけであります。かつ,起訴後であれば起訴前には利用できなかった,例えば保釈制度が利用できるとか,必ずしも起訴されたことによって負担ばかりが増えていくともいえない面があります。そうすると,実質的にやはり負担として重いのは前科ということでありまして,そうすると,本来的には起訴相当の事案の人を考えなければ,負担の回避とはならないといえるわけです。   他方で,では起訴相当の人を対象にすべきなのかということを考えると,今度はまた内容面に一体どれだけのことができるのかということと,そういうことをするためには,やはり裁判所の有罪認定を経ていなければ,そういう介入的な働き掛けはできないだろうという問題に今度はぶつかってしまうのではないか,という意見です。 ○太田委員 私は,それは境界問題だと思っています。要するに,どんな場合にも行為責任も極めて軽い,要保護性も極めて低いという人もいることは確かでしょうし,どんな場合でも,必ず起訴しなければいけないというような重いケースもあるでしょうけれども,それ以外の起訴か起訴猶予か分かれるような場合には,将来再犯を犯すおそれがないわけではないというグループの人たちに対してどう対応すべきかということなので,それを客観的にどこからどこまでが起訴猶予で,どこからがそうでないかや,こういうケースの者に対しては重い介入だというふうなことは,形式的に捉えても仕様がないのではないかなと考えています。ですので,そういう再犯防止のために一定の措置を採ることによって不起訴にしていいというグループがいることは間違いないだろうと思います。   それから,これは私が申し上げるよりも検察官の方がたくさんいらっしゃいますのでその方にお話をしていただいたほうがいいのでしょうけれども,従来でも検察官は別に行為責任がどれぐらい重いか軽いかだけで起訴,不起訴を決めているわけではなくて,やはりその人の再犯の可能性とか更生の可能性ということも含めて,いろいろな情報を収集した上で判断をしていると思いますので,そういった判断とここでの判断というのは,別に性質が大きく違うというものではないだろうと思います。 ○田鎖幹事 もちろん個別に見ていった場合に,以前の分科会でも申し上げたと思いますけれども,訴追裁量というものは非常に広範ですので,客観的にAというケースとBというケースを見たときに,事案,犯情自体においてだけでその起訴,不起訴の判断が違ってくるとならない,そういうケースがあるということは事実であります。けれども,刑事訴訟法第248条の中に,あえて,犯罪の軽重ということが,新たに加えられたことの意義というのは,これは見落とすことができないわけでして,別の分科会の議論も私,傍聴させていただいておりますけれども,やはり大きく言って,それは事案からして起訴猶予相当なのかそうでない事案なのかという区分けといいますか,区別というものは当然あった上で,ほかの要素についても勘案していくということであります。   ですので,そこはやはり何でもありなのだというような,ちょっと大ざっぱな議論はできないのではないか。特に,今,制度の設計をしようというところですので,やはり形式的なところをきちっとしないと,何度も申し上げますように,その最終的な効果が,起訴という,最初に負担であると認定して回避しようというものに,正につながっていくと,そういう仕組みなわけですから,ここはなかなか,なおざりにはできないのではないかと考えます。 ○太田委員 まず,絶対に外してはいけないことは,本人がその犯罪行為をやっているということが前提とならなければいけないということです。えん罪ではない,事実関係には争いがない被疑者であるということを前提とした上で,「あなたは有罪判決を受けた上で処遇を受けたほうがいいので,弁護人としては起訴してもらって裁判を経て,保護観察を受けたほうがいいと思いますよ」と言うのと,検察の方からきちんと正しい生活を送れば起訴されませんよと言って,早い段階で社会復帰するのとどちらがいいのかということは,前者でなければいけないとはいえないのではないかと思います。被疑者本人もどちらを希望するだろうかと私は思います。 ○田鎖幹事 客観的に働き掛けとか処遇が必要な人というのがいるということは確かなわけでありまして,そのときにこれも後の制度設計と関わってくるのですけれども,それを守らなければ不利益的な措置が待ち構えているという意味において義務付けられるものなのか,そうではなくて,飽くまで本人の意思というものも尊重した上で,本人に有益な支援につなげていくという形で実現するのか,それは必ずしも前者の道には限られないわけでありまして,そういう意味で,本日のテーマではありませんけれども,更生緊急保護の制度の拡充ですとか整備というものは,私は当然に必要なのだろうと考えております。だから,どういう形でその本人に必要な処遇というものを提供していくのがいいのかということだと思うのです。 ○小木曽分科会長 制度設計の話でもありますので,今後詰めていくということで,「内容」,それから「対象者の選定や守るべき事項の設定のための調査」については,この程度でよろしいでしょうか。   では,先ほども少し出ておりましたが,「手続」の話に進みたいと思います。   これは,守るべき事項を設定するとしたら,それについてどのような手続を設けるかということであります。これまでの意見交換を踏まえまして,資料に記載されているとおり,「設定方法」,「被疑者の同意」,「検察官以外の機関の関与」,「弁護人(弁護士)の関与」,それから「不服申立て」等について御意見をいただきたいと思います。   いずれの点でも結構ですし,その他の手続も考えられるのではないかということでも結構ですので,御意見をいただきたいと思います。 ○太田委員 先ほどの田鎖幹事のお話にも出ておりましたけれども,まず被疑者の同意ということが問題になろうかと思いますが,その点について少しお話をします。   まず,先ほど言いましたように,事実関係の確認というのが先になければいけないとは思いますけれども,その後にもし守るべき事項を設定して守るということを本人に促すというようなことになるとすると,やはりどのような誓約事項,若しくは履行事項を設定するのかということの内容とか,仮に違反した場合に,どのような対応がなされる可能性があるのかということをきちんと告知をした上で,本人に内容を理解してもらうということが,社会内での働き掛けに実効性を持たせる上で非常に重要であろうと思います。そういう意味での同意を得るということが望ましいと思いますし,先ほどお配りした韓国の制度の中でも,第4条の第1項ですけれども,被疑者等から同意を得なければいけないと書かれております。 ○保坂幹事 「被疑者の同意」についてですが,前回の分科会で私から,被疑者の同意というのが果たして本当に法的に要請されるのかどうかという点について,訴追裁量の中でこの仕組みを構築するとした場合に,太田委員の趣旨は実効性を高めるためにという御趣旨だと理解したのですが,現行の刑事訴訟法でいうところの例えば権利制約だとかあるいは権利の放棄という意味で,法的に同意が要請されるものなのかどうなのかを検討すべきではないかということを申し上げたところです。先ほど田鎖幹事から相当性についての議論として,検察官による処遇あるいは介入的な行為というのは,司法判断を経ない,裁判官による有罪認定を経ないでやることは許されないという御発言がございました。なぜ許されないのかの理由を理解するためにあえて御質問するのですが,被疑者が同意をしている,あるいは後の項目になりますが,弁護人あるいは弁護士が関与した上で任意に同意しているというものであったとしても,許されないという,そういう御趣旨なのでしょうか。 ○田鎖幹事 正に今,そこに関連することを,直接の答えではないと思うのですけれども,述べようとしたのですけれども,少なくとも仮にですが,私は反対,許されないという立場なのですけれども,有罪認定なくして検察官が働き掛けを行うとする以上,それは同意というものなしにして正当化されることはあり得ないだろうと考えまして,そうすると,この場合の同意というのは,働き掛けの実効性を持たせるためのものではなくて,これを欠いた状態では,そもそも許容性というもの自体が成り立たない,そういう意味で,同意というものを議論する意味があると私自身は考えております。その上で,では同意があればいいのかというのは,また別の問題であります。   先ほどの,権利制約ですとかあるいは放棄の場面における同意とは異なるというような御発言が以前の分科会でなされたということは私も記憶しておりますけれども,そういう場面とはもうちょっと異なる,要は原理的な問題でありまして,これは刑事訴訟法第248条というものは,「犯人の」とかあるいは「犯罪」という言葉は使っておりますけれども,まだその人について有罪となったわけではないわけです。犯人であるということと,司法判断を経て有罪認定されたということは別の異なるステージのことなわけですから,処遇,それが社会内での処遇にしろ施設に収容した上でのものにしろ,それは司法的な判断を経た上で少なくとも行うということが,成人については当然の前提として制度自体が成り立っているということを,やはり重く考えないといけない。少年はまた少年法のもとで別の枠組に現在はなっておりますけれども,仮に引き下げられた場合の18歳,19歳の者を対象とするとしても,それはもう成人なわけですから,成人であることを前提とした議論をしなければいけないということです。 ○小木曽分科会長 今のは同意の点でしたけれども,そのほかの点はいかがでしょうか。 ○田鎖幹事 弁護人あるいは弁護士の関与ということについて述べます。   何度も申し上げますが,私自身は制度設計自体,制度自体が相当ではないと考えますけれども,仮に考えるとしてということで考えてみます。そうしますと,被疑者が自分にとってどういった利益があるのか,あるいは将来どういった不利益につながり得るのかということを十分に理解した上で,その手続に乗るというためには,やはり弁護人,これを何と呼ぶか,その手続の制度の設計の仕方にもよりますけれども,ここでは弁護人と呼びますけれども,その援助が不可欠であろうと考えます。特にこのような人たちはそもそも更生のために働き掛けが必要だということで対象となる人たちですから,ますます援助の必要性というのは大きいだろう,高いだろうと考えます。   しかも,実際の手続の流れの過程で,当然身体拘束状態から解放されるであろうということを考えますと,やはり勾留されていない場合でも弁護人による援助を利用可能とする制度,具体的には国選弁護人制度のようなものが利用可能でなければ,制度上弁護人あるいは弁護士の関与が可能であるとしても,実質的には機能しない,援助が得られないということになりますので,そういった手当てが不可欠だろうと考えます。   次に,その上の「検察官以外の機関の関与」について述べます。恐らく検察官以外の機関が設定に当たって関与するということなのかと理解したわけなんですけれども,実際問題として,その対象者の持っている特有の事情ですとか困難とかいうことを考えたときに,検察官あるいは検察庁の資源というものだけでは到底足りないだろうということは明らかだと思います。   他方で部会の方でも注文を付けられておりますように,やはりその家庭裁判所で行われているようなものに比肩し得るようなものということを考えようとすると,当然多様な機関から様々な資源,人というものに関与してもらうようなものになってしまわざるを得ないわけなのですけれども,そうすると,必然的に手続自体が肥大化してしまうということになって,これは結局被疑者の負担の増大ということにつながって,制度自体の趣旨,目的とのそごないし矛盾というものを来してしまうのではないかと考えます。   それからもう一つ,一番下の「・」の「不服申立て」に関してなのですけれども,これはそもそも制度の対象として選定されることに対する不服申立てなのか,あるいは守るべき事項ですとか働き掛けの方法に対する不服申立てなのか,あるいは働き掛けがなされる機関に対するものなのか,様々考えられるわけなのですが,いずれにしましても,何を対象にするかということと併せて,どこに不服申立てをするのかということが重要な,かなり難しい問題になるだろうと考えます。   と言いますのも,やはり検察官というものは一体の原則がありますので,それを考えると検察官の措置について,別の検察官に不服申立てをしても実効性は期待できないと考えられる。そうすると,申立先というのは,もう裁判所ということにならざるを得ないわけなのですけれども,ここでいきなり不服申立ての段階で裁判所が登場したとして,果たして適切な判断が可能なのか,それは例えば身体拘束における勾留理由の判断などとは質的に異なる。これは難しいものではないかと考えます。 ○福島幹事 今,不服申立てで裁判所というお話も出たので,感じたところを申し上げます。   今までの議論を伺っていて,守るべき事項の制度をどういうふうに設計するのか,どういう効力を持たせるのかというところによるのだと思うのですが,対象者が守るべき事項に不満がある場合には,それに従う必要はなく,従わないということを前提として検察官が手続を進めるというような立て付けも一つの考えとしてあり得るのかなと思います。ですので,この守るべき事項の性格付けや,あるいはその効果と絡めて,そもそも不服申立てという制度が必要なのかどうか,あるいは不服申立てという制度になじむのかどうかという,まずそこをしっかり検討するのが先ではないかと感じたところです。   その上で,不服申立ての制度を設ける必要があるというような前提に立った上で,ではその宛先が裁判所になるのかという点について申し上げると,守るべき事項というのは,検察官の起訴,不起訴の判断と密接に結び付くもの,あるいはその一環としてなされるものと理解されますので,そのような事項について裁判所が何らかの判断をするというのは,現行の刑事訴訟法上の起訴独占主義あるいは起訴便宜主義との関係で問題がないかどうかということについて,慎重に考える必要があるのではないかと感じたところです。 ○太田委員 「検察官以外の機関の関与」について,私が思っていたイメージは,関与する機関は二つあるのではないかと思っておりました。一つは,調査ということが別建てで検討課題に書いてありますが,被疑者の特性に応じて調査をする必要があるという場合に,検察官以外の専門性を持った人がそこで関わるというのが一つと,それからもう一つは,同意手続にも関わるとは思いますけれども,例えば被疑者に知的障害があるとか,それから,発達上の特性を持っているというような場合に,付添人みたいな方がいたほうがいいとか,例えば外国人の場合には内容をきちんと理解してもらうため通訳人が必要であるとか,そういう二つの趣旨で書かれているのかなと思っておりましたので,一言だけコメントいたしました。 ○小木曽分科会長 「手続」の点はこの程度でよろしいでしょうか。   それでは,「設定すべき守るべき事項の内容の基準の要否」という点について,御意見がおありの方は挙手をお願いします。 ○保坂幹事 守るべき事項をどのように設定するかについて基準を設けるかどうかということでございますが,守るべき事項を課された期間が経過した場合の効果にもよるわけですが,仮にこの仕組みを検察官の訴追裁量権として構成するとすると,結局その守るべき事項を守って改善更生がされたということが,その被疑者にとって有利な事情としてしんしゃくされるということになるんだと思われます。そうすると,検察官がその場合に守るべき事項として設定するのは,やはりそれが改善更生することが有利な事情として取り込めるということの判断があるわけですから,その被疑者の特性や事案の中身を度外視して,恣意的な守るべき事項を設定するということは考えにくいわけでございます。   仮に守るべき事項の基準を細かく法律に書き込むというようなことになりますと,個別の特性に応じた対応というのが,やや硬直的になって問題があるのではないかと思われます。一定の基準が全国的に標準化されていることが仮に必要だといたしましても,それは法律ではなくて,検察における運用指針といったもので十分機能し得るのではないかと考えるところでございます。 ○田鎖幹事 今,訴追裁量の適正な裁量の枠の中で有利な事情をしんしゃくしていくので,恣意的な運用というのは考えにくいのではないかということだったのでありますけれども,やはりどのような制度の設計においても,恣意的なことはある可能性がゼロではないということは,やはり考えなければいけないと思うのです。まして,訴追裁量自体が非常に大きい中で,さらに新たな権限というものを加えようというものなわけですから,私自身は反対の立場ではありますけれども,設ける場合には,やはり標準といいますか,大枠というものを法定化しておかないと,極めて介入的な働き掛けのようなものも法的には可能となってしまうと思います。ですので,何らかの縛りというか標準化というものは,当然にあることが前提なのだろうと考えます。 ○小木曽分科会長 この点についてそのほかの意見はございますか。よろしいですか。   それでは,「(2)指導・監督」について意見交換を行いたいと思います。   ここに記載されております「指導・監督の方法及び担当機関」,「期間」については,いずれも指導・監督の内容に関するものとして相互に関連する事項ですから,まとめて意見交換したいと思います。いずれについてからでも結構ですので,どの点であるかということを初めにおっしゃっていただいた上で,御意見をいただきたいと思います。 ○太田委員 まず,「指導・監督の方法及び担当機関」,特に担当機関ですけれども,いろいろな機関が関わるということは考えられるわけでありますけれども,やはり中心となる機関の現実的な選択としてはやはり保護観察所が適当なのではないかと考えます。   海外の話ばかりして申し訳ありませんけれども,韓国の場合でもいろいろな制度があるのですけれども,先ほど御紹介した法令に基づく制度については,保護観察所の保護観察官が指導や監督を行っています。   それから,「期間」の方ですけれども,これは前にも当分科会で申し上げましたけれども,結論的には1年以下とすることが適当であるように思います。また先ほどの韓国の規則第4条第6項を見ていただきますと,問題性が比較的高い人と低い人の二種類に分けて,高い人の場合には1年間,低い人の場合には6か月とするとなっております。制限はもちろんありますけれども,その後の指導監督状況に応じて延長も可能となっているということですが,原則として1年ないしは6か月となっているということを考えますと,余り長期の間,被疑者を指導下に置くということも適当でないと思いますので,1年間という辺りが具体的な制度設計としては妥当ではないかなと考えております。 ○田鎖幹事 私も「期間」について述べたいと思いますが,平成28年度の司法統計を見ましたところ,先ほども自白事件であれば,公判というのは速やかに終わるというお話をしましたけれども,通常第一審事件のうち,自白事件の平均審理期間を見ますと,地方裁判所の単独事件で2.5月,簡易裁判所ですと2.0月となっておりました。起訴に伴う負担の軽減ということを考える,それを趣旨とするというのでありますと,仮に起訴相当事案を対象としたということを想定したとしても,つまりその場合には有罪判決に伴うラベリングの回避というメリットがあるということを考慮したとしても,現実問題として2.0月とか2.5月で終わっているというものに対して6月,1年というスパンで指導監督を行うということは,やはり明らかな負担増になるのではないかと思います。一方で,そのような負担を考えて,もっと短い期間と考えると,今度はそれで実効性があるのかという点で,甚だ疑問が生じてくるということであります。   しかも,半年,1年といった相当な期間にわたって手続に事実上拘束され,しかもその間,処分が決まらないわけですので,不安定な地位に置かれるということであれば,むしろあえてもう「守るべき事項を私は守りません」と,「もうさっさと起訴をしてください」と望む人というものも,私は当然出てきてしまうのではないかと考えます。 ○保坂幹事 期間の長短そのものに関してはないのですが,先ほど田鎖幹事も若干触れられましたけれども,部会であった意見として,検察官の指導・監督のもとに相当期間置かれて,挙句の果てに起訴される可能性があるのだとすると重罰化ではないか,あるいはその間,指導・監督のもとで起訴されるかどうか分からない不安定な地位に置くのは負担が重いではないかという御指摘があったわけでございます。   検察官が何らかの働き掛けを行う制度については,裁判所が関与しないでそれをやるのは認めるべきではないという御指摘ですが,仮に裁判所が関与して同じことをやろうとする仕組みとしては,第2分科会の方の検討テーマであるわけですが,宣告猶予制度というのがございます。先ほど申し上げた重罰化ではないか,あるいは不安定になって負担ではないかという批判というか指摘というのは,宣告猶予制度にもほぼ等しく妥当し,私が考えるところでは,宣告猶予制度の方がそれが大きいのではないかと思うわけです。   その理由としましては,宣告猶予というのは公訴提起をしていて,控えているのは刑又は判決の宣告を猶予しますが,それを守らなかったら,今度はもう刑罰です。他方で,この検察官の起訴猶予に伴う措置ということを考えると,その違反があったときにどうするかというのはいろいろあるかもしれませんが,訴追裁量ということでいうと,起訴するというところなわけです。したがって,そこで比べてみても,先ほど公判になってもすぐ済むということを言われていましたけれども,手続の進行段階としては,より刑罰に宣告猶予の方が近いわけでございます。   もう一つ申し上げると,その裁判所が宣告猶予の場合は保護観察に付して,遵守事項違反があったら刑を言い渡す,判決を言い渡すということになるわけですけれども,結局従わないときの不利益,あるいはそれによって義務付けられる強さというものを比較した場合に,それは刑罰が直後に控えているということの方が,それは義務付けの度合いもきついわけでしょうし,その分不利益も大きいということになってきますので,むしろ宣告猶予制度の方が負担が大きいということになるのではないかと思います。 ○田鎖幹事 今の御指摘に関しては,そもそもいわゆる宣告猶予制度を,以前の刑法の全面改正の際に議論していたものを想定するのか,そうではなくて,もっと柔軟に考えたほうがいいのではないかという御指摘も,確か第2分科会の中でもありましたし,昨年12月の部会の御指摘でもありました。ですので,そこは宣告猶予的なものの制度の設計いかんによるところが大きいと私は考えます。   そして,重罰化のことに関して言えば,起訴された場合に実際に被疑者が犯罪をしているという事案であれば,その後有罪判決というのは当然結果として来るわけでして,直後に起こる事象が起訴なのか判決なのかというところだけ見て比較しても仕方がないと思うのであります。   むしろ,ここは第3分科会ですので,宣告猶予のテーマではないわけですけれども,そういう観点では,宣告猶予的な制度をもうちょっと柔軟な視点で,起訴相当事案について,第2分科会において御議論いただくというのは,大変重要なことであろうと考えております。 ○太田委員 少し感想めいたことになるのですけれども,やはり制度の設計において,犯罪者にとっての負担が重いか軽いかということだけで考えるということはまずいだろうと思います。これまで起訴猶予になった者が全く再犯を犯していない状況ならともかく,そうではなく,また新たな被害や被害者を生んでいるということを考えると,やはりどのような制度設計にした場合に社会の安全というものをより守れるのか,それから被疑者の更生をどのようにしたら図れるのか,そして,その一方で,きちんとした被疑者の権利保障を担保できるのか,そういった総合的な判断において考えるべきだと思いますので,事を負担の軽重だけで考えるというべきでないというふうに感じました。 ○田鎖幹事 私もこれは印象というよりは,もうちょっと強いものかもしれないのですけれども,負担ということを申しましたのは,飽くまで趣旨及び目的をどう考えるかというときに,起訴に伴う負担の回避というものが「趣旨及び目的」の第1番目にきているものですから,やはりそれは負担というのは実際にどうなのだということを考えざるを得ないわけです。   そこが実際には重要なのではなくて,社会の安全ということが大切なのだというと,そういった趣旨,目的と書き込むというか,形を変えることになるのだろうと思われまして,ただそうなると余計に問題状況というのは複雑かつ困難になるかなと私は考えております。   と言いますのも,確か12月の部会第6回会議においても,この制度自体が保安処分的な要素を持つのではないかというような御指摘も,幹事の中から出たと思います。実際,過去の刑法改正草案のときにも,保安処分の問題を取り扱う第3小委員会においてこの起訴猶予に伴う保護観察のテーマというものが取り扱われていたと記憶しておりますので,制度の立て付けそのものから大議論になってくるのではないかと考えます。 ○小木曽分科会長 この点について本日はそこまでといたしまして,次に「(3)その他」にまいりたいと思いますがよろしいですか。   「その他」に記載のあります「期間の満了の効果」,「守るべき事項に違反した場合にとり得る措置」につきましては,いずれも守るべき事項が遵守されたかどうか,その結果に応じた効果に関する問題ですので,まとめて意見交換をしたいと思います。   御意見がありましたら,挙手をお願いいたします。 ○太田委員 やはり誓約事項や履行事項というものを設定したとすれば,それに違反せず,履行事項がある場合はそれをきちんと履行したという場合には,基本的には事件を再起することはしないという立て付けにする必要があると思います。   ただし,海外でもそうですけれども,後から別の事情が判明したような場合,例えば実は違反があったのだとか,そういうこともありますので,原則的には事件を再起することはしないとしつつも,事件再起も可能としておく必要はあるだろうかなとは思います。   それから,不良措置ですけれども,韓国では,第18条で,再犯や遵守事項違反の明確な違反,所在不明があった場合には取り消すことができるということになっており,取り消した場合には,事件を再起捜査する,再起によって改めて捜査するとなっております。けれども,再起だけではなくて,期間の延長や誓約事項,履行事項の変更というように,直ちに処罰の方に行くのではなくて,場合によっては社会内で社会復帰をすることの可能性というのも残しておく必要性もあると思いますので,それはその状況に応じて選択するようにしておくという制度設計が望ましいのではないかなと考えております。 ○保坂幹事 「期間の満了の効果」という点でございますが,太田委員がおっしゃるように,きちんと守るべき事項を守ったという場合には,それを考慮して起訴猶予にする,起訴することはないというのが自然な流れだろうと思うのですが,太田委員のおっしゃった,後に判明したという事情の中には,きちんと守っていなかったことが後で判明するということだけではなく,その事件の内容についても,当時は分かっていなかったことが後から判明するということがあります。   例えば偶発的犯行だと認定していたところが,後の捜査で常習的だということが判明することもあるでしょうし,例えば傷害事件でいえば,被害者の傷害は軽いと認定していたら,実は重大な後遺症になっていたということが,後から判明するということもありますので,必ず満了したら不起訴にしなければ,あるいは原則として不起訴にしなければいけないという強い仕組みにすると,やや硬直的になるのかなとも感じるところでございます。 ○田鎖幹事 今の御意見を仮に前提といたしますと,そもそも一定の期間,何らかの自由が制約された状態に置かれ,その上で期間が満了したとしても,場合によっては,再起,そして起訴もあり得るということですと,やはりトータルとして負担を,負担という言葉がよくないのかもしれないですけれども,増す方向ということで重罰化と評価されても致し方ないのではないかと思います。やはりそこは一定の期間,指導なり監督を受けたということを評価するのであれば,その後に更に不利益な措置が待っているというと二重処罰,処罰そのものではないとしても,処罰的な要素を帯びてくるとなると思います。 ○小木曽分科会長 この点についてほかに御意見はありますか。   御意見はないようですので,それでは,最後の項目であります「少年鑑別所の調査機能の活用の在り方」について意見交換を行いたいと思います。   御意見がある方は,挙手をお願いします。 ○保坂幹事 現在,検察庁で行っている入口支援におきまして,知能検査や心理検査を依頼してやっていただいて,その福祉や医療的な支援につなぐというようなことの参考に使っていると承知しており,こういった活用というのは,その被疑者の特性を判断して,犯罪の背景にあるものをきちんと見極めるという意味で有用だろうとは思われます。   これは今議論している制度だけの話ではありませんけれども,この制度を考えるときに使いようがあるとすれば,例えば守るべき事項を設定するのかどうか,あるいはどういう内容が最も適切かという前提として,被疑者の特性,いろいろ問題性を把握するために少年鑑別所の調査機能を使うということは十分考えられるのだろうと思われます。 ○小木曽分科会長 この点について,ほかに御意見はありますか。   御意見はないようですので,本日のところは「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」についての意見交換はこの程度といたしまして,次に「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」及び「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」についての意見交換を行いたいと思います。   この論点につきましても,事務当局において,考えられる施策・制度の概要や検討課題等をまとめた資料を作成してもらっておりますので,まず,事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○羽柴幹事 配布資料10について御説明します。   「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」及び「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」の論点については,配布資料10の1ページにあるとおり七つの項目がありますが,本日意見交換が行われる予定の「第1」から「第3」までについて御説明します。   これらの項目については,資料2ページ以下に,これまでの部会及び当分科会における意見交換の状況等を踏まえ,「考えられる施策・制度の概要」とともに,それぞれ検討課題となると考えられる事項を記載しました。いずれについても,現時点において考えられるものを記載したものであり,もとより,御議論の対象をこれらに限る趣旨ではありません。   考えられる施策・制度の概要や検討課題として記載した事項について御説明します。   まず,「第1 保護観察における新たな処遇手法の開発,特別遵守事項の類型の新設等」については,「考えられる施策・制度の概要」に,「1」から「3」までの三つを記載しており,「検討課題」もこれに対応していますので,順次御説明します。   「1」は,「アセスメントツールを開発するとともに,評価結果を踏まえ,罪種や問題性に応じて効果的な処遇を行うための手法をガイドライン又はプログラムとして開発・整備する」というものです。   これについては,「検討課題」の「1」のうち「(1)」にあるとおり,「新たなアセスメントツールの開発」については必要性が,「(2)」にあるとおり,「新たな処遇手法の開発・整備及び当該処遇手法の特別遵守事項としての義務付け」については,必要性・相当性,具体的内容,義務付けの在り方などが検討課題になると考えられます。   次に,「考えられる施策・制度の概要」の「2」は,「民間支援団体等が実施するミーティングへの参加や更生保護施設が実施するプログラムの受講及び民間施設への宿泊や当該施設からの外出禁止について,特別遵守事項で設定することを可能とする」というものです。   これについては,「検討課題」の「2」のうち「(1)」にあるとおり,「民間施設が実施するミーティングへの参加やプログラム等の受講」については,特別遵守事項の類型に追加する必要性・相当性,対象者,特別遵守事項の設定のための手続が検討課題になると考えられます。   また,「(2)」にあるとおり,「民間施設への宿泊の義務付け及び宿泊を義務付けられた施設からの外出禁止」については,必要性・相当性,時期・期間,時間帯,法整備の要否などが検討課題になると考えられます。   次に,「考えられる施策・制度の概要」の「3」は,「施設内処遇と社会内処遇とで指導内容をより一貫性あるものとする」というものです。   これについては,「検討課題」の「3」にあるとおり,一貫性あるものとする指導の内容や具体的方法等が検討課題になると考えられます。   続いて,4ページの「第2 更生保護施設における指導監督の実施等」については,「考えられる施策・制度の概要」として,「更生保護施設での処遇を充実させるため,保護観察における指導監督を同施設に担わせる」ことが考えられます。   これについては,「検討課題」にあるとおり,「1」の「趣旨等」として,更生保護施設に指導監督を担わせる趣旨・目的,相当性が検討課題になると考えられるほか,「2」の「指導監督を担う更生保護施設の対象」として,主体となる更生保護施設の範囲が,「3」の「指導監督の内容」として,更生保護施設が担う指導監督の範囲などが,それぞれ検討課題になると考えられます。   最後に,5ページの「第3 犯罪被害者等の視点に立った処遇の充実等」については,「考えられる施策・制度の概要」に「1」から「2」までの二つを記載していますので,検討課題と併せて順次御説明します。   「考えられる施策・制度の概要」の「1」は,「刑の執行の初期段階において,犯罪被害者等から心情等を聴取し,伝達すべきものについては加害者に伝達するとともに,聴取した心情等を踏まえた矯正処遇を行い,その処遇状況・結果を踏まえた仮釈放審理等を行う」というものです。   これについては,「検討課題」の「1」にあるとおり,趣旨,対象となる被害者等の範囲のほか,聴取主体,手続,処遇への活用方法などが検討課題になると考えられます。   次に,「考えられる施策・制度の概要」の「2」は,「保護観察における指導をより犯罪被害者等の視点に立ったものにする」というものです。   これについては,「検討課題」の「2」にあるとおり,「(1)」の「損害賠償を促すための措置」については,趣旨,義務付けの必要性・相当性等が検討課題となり,また「(2)」の「被害者の被害を理解してそれを踏まえて行動することを促すための指導」については,具体的内容,対象者,義務付けの必要性・相当性等が検討課題になると考えられます。さらに,「(3)」の「接触禁止等の特別遵守事項の拡大」については,その必要性・相当性等が検討課題になると考えられます。   配布資料10の説明は以上です。 ○小木曽分科会長 ただいまの説明について御質問あるいはほかにも検討課題があるのではないかといった御意見がございましたらお願いします。よろしいですか。   それではまず,「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」及び「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」について,ただいまの配布資料10に沿って意見交換を行いたいと思います。   初めに,「第1 保護観察における新たな処遇手法の開発,特別遵守事項の類型の新設等」について意見交換を行いたいと思います。   この論点につきましても,検討課題の順序に従って議論を進めていきたいと思いますが,関連する事項については,他の項目に関わると思われる事項でも併せて御発言いただいて結構かと思います。   まず,「1 保護観察処遇における新たなアセスメントツールの開発及び新たな処遇手法の開発・整備」,「(1)新たなアセスメントツールの開発」について御意見がある方は,挙手をお願いします。 ○羽間委員 保護観察所の保護観察官は,保護観察を実施するに当たって,実施計画を作成しますけれども,そのために保護観察対象者のアセスメントを行います。その際に,対象者の成育歴をたどり,なぜ犯罪や非行に至ったのかを分析し,表面化している問題とその背景を明らかにするとともに,同時にその対象者が持つ強み,これを見いだすことが保護観察処遇上非常に重要です。これまでこのようなアセスメントのプロセスは,主に個々の保護観察官の専門性に委ねられており,保護観察官に共有されたツールにはなっておりませんでした。こうした新たなアセスメントツールの開発は,法整備を要する事項ではないと考えられますけれども,既に保護局においては理論や実証的な根拠に基づいたツールの開発を検討しており,数人の学者の方々から御意見を聞いていると伺っております。このような取組を進めることは極めて有益であると考えております。   また,先ほど保坂幹事が述べられていた少年鑑別所の活用に関して申し上げますと,保護観察官がアセスメントを行うに先立って,あるいは保護観察官のみのアセスメントは難しいというような場合などに少年鑑別所を活用することができれば,非常に有益な情報を得ることができると考えます。特に少年鑑別所では,対象者の行動をより長く観察することができますから,面接だけでは把握できない対象者の特性を把握することができます。また,外部からの刺激を受けずに落ち着いた環境での調査が可能になります。このような少年鑑別所のアセスメント機能を一層活用するということが重要だと考えます。   この開発中のアセスメントツールについては,保護観察開始時点だけではなくて,定期的にアセスメントを行うというように聞いております。そのアセスメントの結果をどのように保護観察処遇に反映させるかは検討中であるとお聞きしておりまして,保護局でもお考えのことだと思いますけれども,アセスメントツールの開発と併せて御検討いただきたいこととして2点指摘させていただきたいと思います。   まず1点目が,アセスメントの結果,保護観察対象者の改善更生が進んでいると評価できる場合です。どうしても新しい制度ということになりますと,あれもこれもと処遇のメニューを増やすことに主眼が置かれがちですけれども,保護観察は保護観察対象者の不利益を伴いますし,再犯のリスクが低い者に対して必要以上の処遇を行えば,かえって再犯を起こしやすくなるというエビデンスもございます。そこで,アセスメントの結果,保護観察の必要がないと認められた人については,保護観察の接触頻度を下げるとか,あるいは保護観察を打ち切る措置をとるなどして,アセスメントの結果を踏まえた対応を,時期を逸することなく行っていくことが必要だと考えます。   2点目は,アセスメントの結果,再犯の危険性が高まっていると判断された場合についてです。このような場合,保護観察官による指導を強化することになるだろうと思います。将来,特別遵守事項として,居所の指定あるいは外出禁止のような制約度合いの強い遵守事項を設定することができるようになるとすれば,定期的なアセスメントの結果を踏まえて,機動的に特別遵守事項の設定変更を行うことができるよう制度を整備することが重要だと考えます。 ○小木曽分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,次に「(2)新たな処遇手法の開発・整備及び当該処遇手法の特別遵守事項としての義務付け」について意見交換を行いたいと思います。   配布資料の「1」の「(2)」に記載のある点につきまして,いずれからでも結構ですので,どの点かをお示しいただいて御発言いただきたいと思います。御意見のある方は,挙手をお願いします。 ○太田委員 まず最初の必要性です。新たな処遇手法の開発・整備及び特別遵守事項としての義務付けの必要性についてですけれども,保護観察対象者の中には,現在専門的処遇プログラムの対象になっているような性犯罪者,薬物犯罪者,暴力事犯者,それから飲酒運転事犯者以外にも,例えば窃盗事犯などのように様々な罪種だとか問題性を有する者がおり,より多くの罪種や問題性を有する者に効果的な処遇等を行うことは,その者の改善更生及び再犯防止にとって非常に有効であると考えられますことから,特別遵守事項として設定することができる処遇手法を現在の罪種に限定することなしに拡大する必要性があると考えております。現在,専門的処遇プログラムとして認められている処遇というのは,非常に高度に体系化されて,一定程度効果が認められている認知行動療法に限定されていますけれども,ある程度体系化されていて,かつ,一定程度の効果が期待できるという内容であれば,必ずしも認知行動療法に限るという必要性はないのではないかなと考えております。   新たに開発整備すべき「具体的内容」ですけれども,一例を挙げれば,現在,福島の自立更生促進センターで行われておりますような窃盗プログラムもありますし,試験的,試行的に行われているものがありますので,今後はそうしたプログラムを検証するなどして,特別遵守事項として設定可能かどうかということを検討することが考えられます。また,罪種や,飲酒に問題があるなどの問題性のタイプごとに,具体的な働き掛けや処遇方法は異なりますから,いわゆるプログラムというような,非常に高度に体系化されたものでなくても,どのようなタイプに対してどのような働き掛けとか,どのような処遇方法が有効であるのかというようなものを集約した上でガイドライン化して,それに即して処遇をしていくということも必要ではないかなと考えております。 ○保坂幹事 太田委員から御発言があった新たな処遇手法の具体的内容というのを前提にした上で,事務当局にお尋ねをしたいのですが,配布資料10の「1」の「(2)」でいうと,相当性あるいは義務付けの在り方,法整備の要否というところに関連する質問になるかと思うのですけれども,現行の更生保護法第51条第2項第4号の規定によって,太田委員がおっしゃったような処遇手法を特別遵守事項として設定可能かどうかということに関して,その規定の趣旨だとか解釈,運用について御教示いただければと思います。 ○今福幹事 御指摘の更生保護法第51条第2項第4号を根拠とするプログラムとしてどのようなものが該当するのかということについて,基本的な考え方を申し上げておきたいと思います。遵守事項に違反した場合には,仮釈放の取消しなどの不良措置に結び付くことがありますので,該当するプログラムとしては,例えば実施期間や実施回数が固定されているなど,何をすべきかということが,処遇の実施者及び保護観察対象者双方にとって明確であるということが必要になります。   また,具体的で均質化された処遇の内容を提供することが可能であるということも必要になりますし,更に処遇上の効果を有すると考えられるものに限定すべきということが前提にございます。   そこで,この条文に従って法務大臣が指定するプログラムとしましては,保護局においては専門家を交えた検討を行いまして,処遇上効果があるとされている認知行動療法に基づくプログラムを開発し,いわゆる専門的処遇プログラムとして四つのプログラムを特別遵守事項で義務付けて運用しているというのが現状でございます。   他方,ただいま太田委員から御指摘のありましたとおり,法律上は,高度に体系化された認知行動療法である必要まではございません。効果が認められ,かつ,ある程度体系化されたものであれば,法務大臣が指定の上,現行の更生保護法第51条第2項第4号の規定で設定することが可能であると考えております。 ○保坂幹事 もう1点,太田委員の御発言に関連してですけれども,先ほどタイプごとに,どういう働き掛けがいいか,処遇方法がいいかということを集約したようなガイドラインを策定して,それでやっていくというのはどうかという御意見があったところですけれども,これについては,配布資料10の「1」の「(2)」でいうと,「時期に応じた各遵守事項の組合せ」というところに関連するわけですけれども,その働き掛けの内容によっては,個別に遵守事項として設定できる内容があるとすれば,それを時期に応じて組み合わせていって処遇効果を高めていく。その組合せの仕方をガイドライン化するということにすれば,必ずしも更生保護法第51条第2項第4号によらなくても,遵守事項として義務付けることは可能になるのではないかと思われます。   必ずしも法整備が必要ということではないと思われますので,まずは先ほどもありましたとおり,保護局の方で,それぞれの問題性に応じたプログラムないしガイドラインを開発,整備していただいた上で,特別遵守事項として設定するなり,あるいはそれ以外にも生活行動指針として,そのプログラムの受講を行うこととするというような方策を御検討いただけるのがよろしいのではないかと思うところでございます。 ○田鎖幹事 私も今,今福幹事からの御説明を伺いまして,現行の更生保護法の枠内で,第51条第2項第4号の範囲でやって十分可能ですし,進めていただくのがよろしいのではないかと考えます。   特に保護観察付執行猶予者の場合には,その法的地位を考えますと,刑の執行それ自体は猶予されていると。しかし,実際には一定の義務付けというものがなされていて,保護観察が一種の刑罰に近いような機能も果たすというところがありますので,やはり明確であって,かつ,相当程度効果というものも分かっていて体系化されたもの,そういうものであるからこそ,言渡し裁判所としても的確な意見を求められた場合に述べることができるのだろうと,そういうふうに考えます。 ○小木曽分科会長 ほかに御意見はございますか。   御意見はないようですので,それでは,「2 民間施設等での処遇を義務付けるための特別遵守事項の類型の新設」「(1)民間施設が実施するミーティングへの参加やプログラム等の受講」について意見交換を行いたいと思います。   これにつきましても,いずれの点についてからでも結構ですので,どの点かを明示いただいて御意見をお願いしたいと思います。 ○太田委員 まず,必要性,相当性ですけれども,保護観察の問題としまして,特に3号観察など期間が非常に短いという場合もありまして,その期間が経過した後は,それまで保護観察処遇として受けていたプログラム等を受けることができなくなってしまうわけでありまして,結果として,再犯に至ってしまうという問題が指摘されています。前回までの当分科会の会議におきまして,保坂幹事から,いわゆる自助グループによる依存やし癖等の問題性を改善するためのミーティングなどのように,民間支援団体等が実施する内容を特別遵守事項に設定することができるようにしてはどうかという御意見がありましたけれども,この保護観察そのものには期間とかいろいろな制約があることを考えますと,保護観察期間中の段階から,こういった民間支援団体等が行うミーティングやプログラムの受講等を受けさせることで,保護観察期間終了後も,更生緊急保護を用いるなどして引き続きミーティング等を受け続けることにつながり,改善更生とか再犯防止に資するということではないかと考えられます。   そのためには,必要かつ相当な者に対しては,このような民間支援団体等によるミーティングに参加することなどを特別遵守事項として設定して,保護観察対象者にその参加等を促すということが有益であるのではないかと考えます。   したがって,民間支援団体等によるミーティングに参加することなどを特別遵守事項として設定することを可能とする類型を更生保護法に追加する必要があると考えています。 ○保坂幹事 相当性と対象者と手続という三つについて,まとめて申し上げたいと思います。   配布資料10に「民間施設が実施するミーティングへの参加」として幾つか例が挙げられておりますけれども,こういったものを見たときに,現行の更生保護法で行われている保護観察所による専門的処遇プログラムや社会貢献活動と比較した場合に,その権利制約の程度というのは同程度あるいはそれ以下かなと思われるわけです。   ただ,もちろん特別遵守事項として義務付けるということが正当化されるためには,処遇効果が認められるということが必要なのだろうと思われるわけです。そうしますと,その期間ですとかあるいは密度なども含めまして,処遇上の効果が十分出るというようにするために,ある程度全国的な水準というのを維持すべきものと考えられ,具体的には法務大臣が認めて水準を満たすというものに限定する仕組みとするということが考えられようかと思います。   そして,処遇上の効果というのをきちっと担保することができたならば,その民間支援団体等のミーティングに参加するということを,特別遵守事項として設定する内容として類型化できて,それを遵守事項として追加するということが可能になってくるのではないかと思います。   続いて,対象者ですけれども,特に対象者を限定するというよりは,権利制約の程度が同程度だとしますと,保護観察の種別に応じての差異を設ける必要はないでしょうし,その保護観察の種類において,およそ不相当あるいはおよそ不必要というものではないのだろうと思われますので,法律的には全般を対象にしておいて,あとはその必要に応じて個別に設定するというのが適切なのだろうと思います。   続いて,手続ですけれども,現行法のものと比べて権利制約の程度が強いとは思われませんので,現行法の更生保護法52条第1項から第6項までにそれぞれ判断主体や手続が定められていますが,それに対応したものでよろしいのではないかと考えられます。 ○田鎖幹事 この「民間施設が実施するミーティングへの参加」ということは,一つ前の「検討課題」の「1」の「(2)」の議論とも共通する部分があろうと思います。やはり特別遵守事項として義務付けると当然不利益措置があるということを前提として制度を考えなければなりませんので,かつ,この場合はプログラムやミーティングの実施主体が民間施設であるということも考え併せますと,後々の論点とも関わってきますけれども,民間に言わば委託するような形で特別遵守事項の内容であるプログラムの実施をお願いするということになるわけでして,これはかなり特別遵守事項というものの性格ということを考えたときには,慎重にならざるを得ないのではないかと,むしろ生活行動指針のような形で改善更生に資するということで,参加を促していくようなことの方がふさわしいのではないかと考えます。 ○今福幹事 ただいまの御指摘の点でございますが,現行の更生保護法を前提としましたときに,プログラムなどの実施主体が公的機関に限られているのかということについて,私どもの解釈では,そのような限定はなされていないと考えております。御指摘のような民間施設が行うミーティングなどの義務付けがされていない理由は,そのような類型が現行の更生保護法に明確に規定されていないというところにあるものと思います。   現行法の下でも,特別遵守事項の内容としては,例えば「更生保護施設の規則で禁じられた無断外泊及び飲酒をしないこと」ですとか,「精神科医の指示に従って,幻覚,妄想の症状抑制又は緩和に必要な服薬を継続すること」などの特別遵守事項を設定できることとされておりまして,公的な機関が行う指示等に従うことのみを特別遵守事項として義務付けているというわけではございません。したがいまして,必ずしも公的機関が行う内容が義務付けの対象であるべきとは考えていないところであります。   もっとも,プログラム等への参加を含め,どのような特別遵守事項を設定するかということは,保護観察対象者の個別の問題性等によりますので,当該対象者に処遇上の効果が認められるものであるという前提が必要であると考えております。 ○田鎖幹事 その点は,よく分かるのですけれども,結局先ほど申し上げたように,「1」の「(2)」で問題になるのと同じように,内容の明確性,効果だけではなくて,やはり取消しがあるということですと,ますます,法的な縛りはないにしても,内容的に一定の水準が保たれているのかとか,履行状況の確認とかいうことも含めて,やはりどうしても民間施設で行う場合に難しい要素が出てくるというのは避けられないと思いますので,そういう点も考えますと,私は先ほどのような意見を持ちます。 ○小木曽分科会長 ほかに御意見はございませんか。   御意見はないようですので,次の「(2)」の「民間施設への宿泊の義務付け及び外出禁止」について意見交換を行いたいと思います。   こちらも,配布資料10の「2」の「(2)」に記載のある点について,いずれについてからでも結構ですので,御発言をお願いしたいと思います。 ○太田委員 これも本分科会で前回までに発言したところでありますけれども,対象者が悪い環境の下では,その影響を受けて更生に支障が生じやすい場合に,一定期間その環境から遮断した上で生活を立て直すという必要性がある場合がありまして,そのような受け皿としては,現在の自立更生促進センターがあるわけでありますけれども,これだけでは不十分ではないかと思います。一方で,近年は更生保護施設でも処遇プログラムを行ったり,補導職員の配置を増やしたりして,処遇の体制整備が図られているという実情がありますことから,そこへの宿泊の義務付けということを行うことが相当ではないかと思います。   また,更生保護施設への宿泊を義務付ける時期・期間という問題でありますけれども,仮釈放となった場合等に保護観察の開始当初から宿泊を義務付けるという場合が考えられるほか,社会の中に戻った後,遵守事項違反があったときに,その要因が悪い環境の影響を受けた中で行われたということである場合に,その対象者を,一定期間その環境から遮断した上で生活を立て直すという必要が認められることがあるわけでありますけれども,そうした場合に,すぐに遵守事項違反で刑の執行といくのではなしに,更生保護施設に宿泊を義務付ける遵守事項を新たに設定するという形で社会内で更生を図っていくということも考えられます。   宿泊の期間につきましては,これは保護観察対象者の個々の状況に応じた範囲で運用していくべきだろうと考えております。 ○保坂幹事 相当性から順次申し上げたいと思います。先ほど太田委員から御発言がございました更生保護施設といいますのは,更生保護事業法に基づいて専門の処遇施設として国の監督に服しています。そして,一定の処遇上の水準が担保されているということからいたしますと,その施設で指導を受けるために宿泊を義務付けるということについては,相当性はあるのだろうと思われます。   他方で更生保護施設以外にこれと同じような処遇の水準が担保されているというのはないのだろうと承知をいたしておりまして,もちろん宿泊を義務付けられるという効果からいたしますと,やはり同程度に水準の確保ができていないと,それは慎重に検討すべきことになるのだろうと思います。   そして,宿泊義務付けの時期ですけれども,太田委員のおっしゃるとおり,仮釈放の当初から義務付けるということもありましょうし,遵守事項違反があったときに,段階的に義務付けていくこともあろうかと思います。なお,週末だけ宿泊を義務付けるということも考えられなくはないのだろうと思いますが,その場合には,平日は別のところで宿泊して,週末だけ更生保護施設で宿泊するということで,どういうニーズがあってどういう効果があるのかということについては,もし仮にそういうこともありだとするのであれば,慎重に検討しておく必要があるのだろうと思います。   それから,期間でございますが,現在,自立更生促進センターでは,実態としておおむね3か月の宿泊が義務付けられていると聞いておりますけれども,個々の保護観察者の状況に応じまして必要な期間というのは変わってくると思われますので,現行の更生保護法もそうなっておりますけれども,法律上は一定の期間としておいて,あとは具体的な期間というのは運用で対応するというのが適切だろうと思うところでございます。 ○田鎖幹事 宿泊の義務付けあるいは外出の禁止ということを客観的に見ますと,外形的には拘禁に近いようなものであるということで,かなり権利制約が強いと,特に仮釈放者であれば,刑の執行を受けている状態なわけですけれども,保護観察付執行猶予者については,刑の執行自体は猶予されているものであるということを考えますと,やはりこれは義務付けという形で,事実上の拘禁というものを創出するようなことは,やはりすべきではないのではないかと考えます。   ぎりぎり考えてみても,例えば先ほど,遵守事項違反の場合にいきなり施設に収容するのではなくてというようなお話がありましたけれども,そういう極限的な場合で,しかも実際に取消しの判断が,もうほぼなされるというような場合に,こういったことをやって,うまくいけば取消しをしないというようなことはあり得るのかもしれないですけれども,基本的にやはりこういう激烈な拘禁と等しいようなものを,新たに内容として設定するべきではないと私は考えます。 ○保坂幹事 今の点ですけれども,現行法でいいますと,自立更生促進センターというところへの宿泊義務付けというのは,現行法上できると理解をしておりますけれども,それについては,特にその保護観察の種別についての区別はされておらないわけでございます。したがいまして,宿泊の義務付けが拘禁ではないかとおっしゃるわけですけれども,保護観察付き執行猶予者について設定可能にすることが,一律に不相当ということまでは言えないのだろうと思われます。   手続といたしましては,個別の対象者に応じて保護観察付き全部猶予者であれば,裁判所の意見を聞いた上で設定するという手続保障はあるわけでございますので,個別に必要性や相当性を踏まえて判断されればよろしいのかなと考えているところでございます。 ○田鎖幹事 これは感想のようなことになってしまうかもしれないのですけれども,確かに更生保護法上はそのようになっておりますが,一方でその前の段階の更生保護の在り方を考える有識者会議の議論を見ておりますと,主として仮釈放者を念頭に置いた上で,もちろんその有識者会議のきっかけとなった事件は仮釈放者に限られませんでしたけれども,仮釈放者を念頭に,特に満期で釈放になる人をどうすればいいかというようなことから自立更生促進センター構想というものが,あの会議自体の流れでは出てきたのだろうと私は理解しておりまして,しかし,更生保護法の中では,それ以前にその法案がずっと温められてきたという事情があるのかなとも思うのですけれども,特に法的地位に関わりなく,法律の中に盛り込まれるようなことになったと。   しかし,ふたを開けてみると,結局現状において自立更生促進センターにおいても仮釈放者を原則として受け入れているという御説明を以前の分科会でも受けました。ですので,ここは必ずしも現行あるものを無批判に受け入れるということではなくて,やはり法的地位の違いというものは,新たなものを構想する以上,常に意識する必要があると思いますので,そのような観点からも,先ほどのような意見を述べさせていただきました。 ○太田委員 必要性ですけれども,私がよく実務家の方から伺うのは,例えば保護観察付執行猶予者の場合には,事件前の悪い不良交遊関係にまた取り込まれてしまって,すぐに再犯を犯してしまうとか,薬物依存の場合には,社会の中で一人で生活をすると,すぐに薬物の再使用に戻っていってしまうということです。そこで,そういう者を一時期こういった民間施設に宿泊をさせ,悪い環境から遮断した上で,きちっとした生活を整えるという必要性は非常に高いのではないかなと思っております。 ○田鎖幹事 必要性というところに戻って考えてみたときに,一方でやはり仮釈放者であれば拘禁状態から出て自由社会の中で,しかし一定の指導監督,補導援護を得つつ自立を目指すという中で,ある程度本人の力でもって立ち直りに向けた努力を,要するに自律性の涵養ということが必要になってくるわけです。ですので,やはり義務付け,要するに強制的に外に出られなくするとかいうことは,相当程度慎重でなければならないのだろうと思います。むしろ自由な環境で自律的に適法な行動が選択できるようにするということが望ましいのではないかと,これは感想めいたことになってしまいますが,そういったことも制度の必要性というところでは考える必要があるのではないかと思います。 ○保坂幹事 外出禁止についての御質問なのですけれども,事務当局にお願いしたいのですが,外出を禁止する必要性・相当性という観点で,現在の保護観察の実務として,外出禁止ということを遵守事項として設定することができるのかどうか,仮にできるとすると,どういう場合に外出禁止をするということが有用ないし有効と考えられているのかについて教えていただければと思います。 ○今福幹事 施設に宿泊した場合でも,例えば夜間に犯罪性がある者と交際しようとするような対象者が実際に存在するわけですが,そのような者に対しまして,そのような時間帯に外出させずに,施設職員による規則正しい生活を送る能力や,生活習慣を身に付けるための処遇を集中的に受けさせることで,その改善更生が期待できる場合があることから,外出禁止を特別遵守事項で設定することは有用性があろうと考えております。   また,「深夜に無断外出しないこと」という特別遵守事項は,現行でも設定可能とされておりますから,施設に宿泊を義務付けられている場合であったとしても,そのような施設から外出を禁止することは相当性があると考えております。   外出禁止をすべき時間帯や期間についても申し上げますと,今申し上げましたような夜間の時間帯が考えられるほか,期間についても夜間に犯罪性がある者と交際するような問題性が除去されるまでの間に設定することは有用であると考えられます。   問題性が大きい対象者の場合には,仮釈放をしたときから宿泊の義務付けと外出禁止を組み合わせて処遇を行い,その後,問題性の改善度合いに応じて外出禁止だけを取り消すことなども考えられます。   また一方で,保護観察中に遵守事項違反があった場合に,その要因が夜間等に犯罪性がある者と交際したことであって,保護観察対象者を一定期間,そのような接触をさせないようにする必要があると認められるときには,その時点で外出禁止を義務付ける特別遵守事項を新たに設定するということも有用であると考えられます。 ○保坂幹事 続けてまた事務当局に併せて質問ですけれども,最後の「法整備の要否」に関して,その更生保護施設への宿泊の義務付けだとか,その義務付けられた施設からの外出禁止というのは,その資料にも書いています現行の規定によって設定することができるのかどうかについて,御見解を教えていただければと思います。 ○今福幹事 現行更生保護法第51条第2項第5号でございますけれども,同号では「法務大臣が指定する施設,保護観察対象者を監護すべき者の居宅その他の改善更生のために適当と認められる特定の場所であって,宿泊の用に供されるものに一定の期間宿泊して指導監督を受けること」と規定されています。   その趣旨ですけれども,ここで宿泊を義務付けることができる場所としましては,指導監督を可能とする場所でなければならないと考えられます。そのような施設として現在では,保護観察官が駐在をして指導監督を行える自立更生促進センターを法務大臣が指定しているところでございます。   一方で,今後,仮に更生保護施設で指導監督を担うこととなりますと,指導監督を担う更生保護施設への宿泊は,この規定で義務付けることができるものと考えられます。また,更生保護施設そのものに指導監督を担わせることとしない場合であっても,同号の設定の対象となるためには,その更生保護施設で指導監督を行うことができる処遇体制を整備していることが必要であると考えられます。   次に,宿泊施設からの外出を禁止することを,特別遵守事項で設定可能かということでございますけれども,前回の当分科会で太田委員から御発言があったとおり,「深夜に無断外泊しないこと」という内容は,現行の更生保護法の第51条第2項第1号の規定で設定可能でございますが,この規定は,社会生活上の規範である「健全な生活態度を保持すること」を具体化したものでありまして,標準設定例の「深夜に無断外出しないこと」といいますのは,監護者や監督を期待される者と居住しているような保護観察対象者を念頭に置いておりまして,深夜にこれらの監護者等に無断で居宅から外出することを禁止することを意味していると考えられます。この範囲を超えて期間や時間帯を指定して,その間の一切の外出を禁止するということが,この規定で可能であるかということについては,疑義が生じるものと考えております。 ○保坂幹事 先ほど御説明いただいたところで言いますと,まず更生保護施設での宿泊の義務付けにつきましては,まず前提として法整備等により更生保護施設での指導監督が行うことができるような体制になるのであれば,そこへの宿泊義務付け自体については,更生保護法第51条第2項第5号に当たるので,それ自体についての法整備は必要ないのかなという趣旨で理解をいたしました。   他方で,施設からの外出の禁止ということで,一切の禁止ということになりますと,現行の規定では疑義が生じるということでございましたので,もしこれが必要かつ有用だということであれば,法整備をするというのが望ましいのではないかと思われます。もとより法整備を行う場合でありましても,時間帯とか期間につきましては個々の対象者の状況にもよりますので,法律で一律に決めるのではなくて運用で対処すべき事柄なのだろうと思うわけでございます。 ○小木曽分科会長 この程度でよろしいですか。   それでは,ここで,休憩を取りたいと思います。                 (休     憩) ○小木曽分科会長 再開いたします。   「3」の「施設内処遇と社会内処遇とでの指導内容の一貫性」について意見交換を行います。   配布資料の「3」に記載のある点について,どの項目でも結構ですので,御意見をいただきたいと思います。 ○太田委員 「施設内処遇と社会内処遇とでの指導内容の一貫性」を持たせることにつきましては,昨年,平成29年12月15日に閣議決定されました「再犯防止推進計画」におきましても,指導方法や指導内容の見直すなどして,「矯正施設収容中から出所後まで一貫性のある効果的な指導の実施を図る」とされているところでありますし,刑事施設で特別改善指導として行われている薬物依存離脱指導及び性犯罪再犯防止指導と,それから保護観察所で行われております薬物再乱用防止プログラム及び性犯罪者処遇プログラムというものは,今でもある程度の連携というのはとられておりますけれども,それをさらに,より連続性のある指導内容にする必要があると思います。   さらに,先ほどの「1」の部分で議論があったような,新たな処遇方法の開発整備の中でも,施設内処遇と社会内処遇との連続性というものを考慮すべきであろうと考えます。   また,アセスメントツールを開発した場合にも,当該ツールを用いて再犯リスクだとか更生促進要因等をアセスメントした結果を含めた情報については,前刑のものも含めまして矯正施設及び保護観察所等の更生保護官署で共有する施策を検討すべきと考えられます。   ただ,その情報の共有というのは,非常に忙しい実務家にとりましては利便性の高いものでなければならないことから,書類があっちへ行ったりこっちへ行ったり,北海道へ行ったり九州へ行ったりと大変でございますので,例えば矯正と保護を貫くようなデータベースのようなものを構築するのも一案であると考えています。 ○保坂幹事 太田委員がおっしゃったことと重複しますけれども,新たに処遇方法として開発したプログラムあるいはガイドラインについては,施設内と社会内とが連続性のある内容にするということもありましょうし,アセスメントツールにつきましても,その前刑でやったアセスメントの結果が後刑でもいかせるように,そういった形できちっとそれが引き継がれるというような,まず運用がきちっと行われるということが重要だろうと思われます。   そういたしますと,その連続性にあるということのために,必ずしもそれは法整備は必要ないと思われまして,その矯正と保護当局がそれぞれ連携をして,きちっと運用できるというような仕組みというのがどう構築できるかということなのだろうと思われます。 ○小木曽分科会長 ほかに御意見はございますか。   御意見はないようですので,それでは,次に「第2 更生保護施設における指導監督の実施等」について意見交換をしたいと思います。   配布資料10の「第2」に記載されている点については,「1 趣旨等」から「4 法整備の要否・在り方」までの各項目が全体を通じて相互に関連していると思われますので,「1」から「4」までまとめて意見交換を行うことにします。   いずれについてでも結構ですので,御意見を頂戴したいと思います。御意見がある方は,挙手をお願いします。 ○太田委員 更生保護施設に指導監督を担わせることの趣旨ないし意義でございますけれども,これまでも更生保護施設では,単に宿泊と食事だけを提供しているというわけでは全くなくて,就労自立に向けた働き掛けだとかSST,社会生活技能訓練といったものを充実するなど,犯罪性や問題性の改善を目的とした積極的な処遇を行う施策が講じられているわけであります。   また,最近は薬物依存の回復プログラムを保護観察所の長の委託によって実施するなど,より専門的な内容にまで広がりを見せつつあります。このような施策の実施に伴い,更生保護施設職員の処遇スキルといったものも向上してきている実情にありますけれども,これら処遇は,いずれも補導援護として実施されていることから,これら処遇を受ける意欲が乏しい保護観察対象者に対して,強く処遇を受けることを促すということが困難な状況にあるのではないかと思われますし,そのような指摘が,既に部会のヒアリングの際にもされておりました。   そこで,更生保護施設に指導監督を担わせることで,処遇を受けることをより強く促して,更生保護施設での処遇を一層充実させるということが必要であると考えられます。   また,更生保護施設に指導監督を担わせることになると,施設内処遇から社会内処遇へ移行する際の段階的な処遇を行っていく受け皿として,更生保護施設を使いやすくなるということもあるのではないかなと考えます。 ○保坂幹事 事務当局への質問ということでございますが,その相当性として配布資料10にも書かれておりますけれども,現行法上,指導監督の実施者が保護観察官又は保護司に限定されている趣旨とともに,近年の更生保護施設における処遇体制や内容につきまして,見解を教えていただければと思います。 ○今福幹事 まず,趣旨についてでございますが,更生保護法におきましては,保護観察は指導監督と補導援護を行うことによって実施することとされておりまして,これらを保護観察官又は保護司をして行わせるものとされています。   このうち補導援護については,更生保護事業を営む者その他の適当な者に委託して行うことができるとされております一方で,指導監督はこのように委託して行うことができる旨の規定は設けられていません。   その趣旨でありますけれども,指導監督は,違反した場合には,不良措置がとられ得る遵守事項を心理的規制として,遵守事項を遵守するよう必要な指示や呼出しを行うなど,権力的な措置を行うことになるため,国家公務員としての身分を有する保護観察官又は保護司に限定されていることが挙げられます。   一方で,近年の更生保護施設における処遇の体制や内容についてでありますけれども,まず法制面では,平成14年に更生保護事業法等が一部改正されまして,その改正以前は宿泊及び食事の提供といった応急の救護のみしか委託できませんでしたが,この改正により,広く社会適応を促すための積極的な処遇をも補導援護として委託できるようになりました。   次に,施策面でありますが,近年では自立困難な者を受け入れた場合の委託費の加算を行うことですとか,薬物依存の回復プログラムを補導援護として更生保護施設に委託する取組を開始しておりまして,さらには補導職員を増員するための予算的措置を講じるなどの体制整備も進めているところでございます。   ただし,いずれにしても,委託される内容は,補導援護であることを前提としまして,更生保護施設側の理解を得つつ進めてきているものでございます。 ○保坂幹事 今の御説明によりますと,更生保護施設に指導監督ということをやっていただくことについては,これまでのところは言わば権力的な作用であることから,保護観察官又は保護司に限定されていたこととの関係というのを一つ整理する必要があると思われますし,これまでの委託内容というのは補導援護ということで,その施設側の理解を得ながら進めてきたということにも留意する必要があると思われます。   それと,更生保護施設で行っている処遇プログラム等の実効性を高めるという観点からすれば,必ずしも指導監督を担わせるということでなかったとしても,例えば先ほども議論がありました民間施設として更生保護施設が行うプログラムに参加する,あるいはこれを受講するということを特別遵守事項として設定することができる類型を新設するということも考えられましょうから,そういうことも含めて検討する必要があると思われます。   また,「主体となる更生保護施設の範囲」というところですけれども,仮に指導監督を担っていただくとした場合に,その施設の範囲ということになりますと,やはり指導監督にふさわしい体制,これは人数だけではなくて,やはり職員の方の身分でありますとか専門性だとか,あるいは保護観察所による監督の程度,こういったことから見て,そういうのがきちっと行き届いている施設であるということが必要になってこようかと思われますが,現状のところ,その更生保護施設の体制というのは,施設によって様々ですので,その中から適切なところが選定されるのかなと思われます。   先ほどの今福幹事からの御説明によりますと,これまで委託されてきた内容というのが補導援護ということでございまして,その指導監督を担うということになりますと,施設の方にもいろいろお考えがあるかと思われますので,そういった体制の面ですとか,あるいは施設側の意向というか,その点についてもやはり検討する必要があるのだろうと思われます。   さらに,「指導監督の内容」についてですけれども,先ほど相当性のところで申し上げたところにも関連をするわけですが,その指導監督の何を担わせることが必要なのかという観点から,これまで権力的な作用だということで主体が限定されていた関係からの検討が必要です。仮にそのプログラムを受けることを担わせるということであれば,そのプログラムの実施部分だけを担わせるということになるのだろうと思われます。   最後に,「4」の「法整備の要否・在り方」の関係ですけれども,仮に指導監督を担わせるとする場合には,その担っていただく内容にもよりけりだとは思われますが,法整備が必要になってくるのだろうと思われます。その場合に,特定の指導監督のメニューについて,その更生保護施設に委託できる旨の規定を設けて,委託先はその体制が整っているなどとして法務大臣が指定した施設に絞られると,こういった仕組みとするのが考えられるのではないかと思われるところでございます。 ○田鎖幹事 今の御指摘と一部重なる点もございますけれども,やはり現行更生保護施設の職員の方の中に保護司さんがいらして,その方が指導監督を行うということと,施設がそれ自体として指導監督を行うということは,やはり相当程度質的に異なるだろうと考えます。やはり権力的な措置を行う,施設として行う,その場に居住するということになりますと,矯正施設のような形になります。   私がお話を伺ったある更生保護施設の関係者の方からは,やはり指導監督が可能になって,その指導監督の方にウエイトを置くような処遇に移行してしまうのではないか,そうなると,やはり対象者の社会復帰のために最適なのかということは疑問だという戸惑いの御発言も聞いております。   実際問題として,更生保護施設,先ほど伺いますと委託費の加算ですとかいろいろな配慮も苦労もされているようでありますけれども,それでもやはりとにかく現場は余裕がなく,その中で指導監督を行うという権限,そういう施設として位置付けられたときに,むしろその指導監督の方へ,権力的な側面によって管理的な,管理の強化の方向に流れてしまうのではないか,そうすると本当にこれまでの長い更生保護施設の歴史の上にある性格というものが一変してしまうのではないかといった,先ほどの施設関係者と同じような危惧を私も有しております。 ○太田委員 先ほどの保坂幹事の発言の確認なのですけれども,選択肢としては,更生保護施設に指導監督全般ができるようにするという法改正が一つ。それから,先ほどの議題にもあったように,専門的処遇プログラム等を個別に民間に委託するということが,特別遵守事項としてできるようになるという選択肢もあるというふうに理解したのですけれども,ただ,この場合でも,これは特別遵守事項だとすると,指導監督の一部になっているので,それを実施する更生保護施設は指導監督を行っているということにはならないのかどうか,そこら辺の整理が私はできていないので,更生保護施設が指導監督できるという選択肢と,プログラムも委託といいますか,実質的に特別遵守事項を設定できるようにするという場合のその違いといいますか,法的構成の差について整理をしていただけますでしょうか。 ○保坂幹事 私の理解としては,要するに指導監督ということのあるパーツを,それを委託するというのと,特別遵守事項としてあそこに行けということを設定するというのの違いということでございまして,どちらもあり得るとは思うのですが,ただ前者の方,つまり指導監督の一部を委託するということになりますと,やはり指導監督の実施主体になり得るわけですので,そうすると今まで権力的作用ということで考えられてきたこととの整合性がやはり問題になるのかなという趣旨でございまして,特別遵守事項として設定すれば,そこに行くことが義務付けられるということなので,そういった問題は取りあえずは回避されるのかなという理解をしましたが,もし違っていれば事務当局から御説明いただければと思います。 ○今福幹事 今の御説明のとおりだと思いますけれども,端的に申し上げれば,特別遵守事項は保護観察対象者に対して義務付けられるものですから,今の例示のように更生保護施設におけるあるプログラムを受けること,これを特別遵守事項で付けられるというふうにした場合に,更生保護施設に入所している保護観察対象者本人にはそのプログラムを受ける義務が発生しているのだろうと思いますが,それを「受けなさい」と指示する主体が誰なのかということに関しては,本来的であれば,保護観察官又は保護司であります。これに加えて更生保護施設も「受けなさい」と言える権限が発生するかどうかということについて,保坂幹事の御説明の中では,更生保護施設に「受けなさい」と指示する権限を与える場合もあれば,更生保護施設にそうした権限を与えない選択肢もあるということで,区分けをされたものと思います。 ○太田委員 分かりました。 ○小木曽分科会長 ほかにこの「第2」の点について,御意見があれば挙手をお願いします。よろしいですか。   御意見はないようですので,そうしましたら,本日扱った全ての点について補充的に何か御意見がありましたら挙手をお願いいたします。よろしいですか。                 (一同発言なし)   それでは,時間でもありますので,「第3」以降の点については,次回以降の意見交換ということにさせていただき,本日の審議はこれで終了させていただきたいと思います。   今後の予定を事務当局からお願いいたします。 ○羽柴幹事 今後の予定について申し上げる前に,1点,本日の資料に関して確認させていただきたいと存じます。   本日太田委員が提出されました韓国法令の資料ですけれども,こちらにつきましては,韓国の現行法令を太田委員の文責で訳されたものという理解でよろしいでしょうか。 ○太田委員 はい,そのとおりで結構でございます。 ○羽柴幹事 どうもありがとうございました。   それでは次に,今後の予定について申し上げます。   次回の第3分科会の会議は,3月2日金曜日午後1時30分から予定しています。場所は東京地方検察庁の会議室となります。 ○小木曽分科会長 本日の会議の議事につきましては,公表に適さないものはないと思いますので,発言者名を明らかにした議事録を公表することとさせていただきますが,よろしいでしょうか。                 (一同異議なし)   では,そのようにさせていただきます。   本日は,どうも長時間ありがとうございました。 -了-