法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第2分科会第4回会議 議事録 第1 日 時  平成30年1月30日(火)    自 午後 1時24分                          至 午後 3時03分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  1 若年者に対する新たな処分について         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会第2分科会の第4回会議を開催いたします。 ○酒巻分科会長 本日は,御多用のところお集まりいただきましてありがとうございます。   議事に入る前に,第6回の部会以降に,部会の委員及び幹事に異動がございましたので御紹介いたします。   林眞琴氏が委員を退任されまして,新たに辻裕教氏が委員に任命されました。   また,吉田研一郎氏が幹事を退任されまして,新たに宮田祐良氏が幹事に任命されました。   委員,幹事の異動は以上です。   本日は,当分科会における審議の中で,家庭裁判所の実務の実情等について御質問があったとき等に適切に対応していただくため,澤村幹事に御出席をお願いしております。   次に,本日の配布資料について事務当局から御説明をお願いします。 ○羽柴幹事 本日,配布資料として,配布資料7「若年者に対する新たな処分(検討課題等)」を配布しております。なお,これまでの部会及び当分科会の会議における配布資料は,ファイルに綴じて机上に置いております。   配布資料の内容については,後ほど御説明いたします。 ○酒巻分科会長 ただいまの御説明に何か御質問はございますか。   御質問はないようですので,審議に入ります。   初めに,本日の進行について確認をさせていただきたいと思います。   部会第6回会議におきまして,これまでの当分科会における検討状況について,中間報告を行い,当分科会に属さない委員・幹事の方々から様々な御意見を伺ったところです。   今後の当分科会では,部会でのこれらの御意見をも踏まえながら,更に専門的・技術的な検討を加え,考えられる制度の概要案等を作成するとともに,検討課題を整理していきたいと考えております。   論点表に掲げられた論点について,それぞれの検討課題の検討に要する時間等に鑑み,まず,本日の会議においては,これまで検討されたことがなかった新しい制度について検討することになるため検討に時間を要するのではないかと考えられる「若年者に対する新たな処分」について意見交換を行い,「宣告猶予制度」及び「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」については,次回以降の会議において意見交換を行うという順序で検討を進めたいと思います。このような検討の進め方でよろしいでしょうか。            (一同異議なし)   それでは,本日は,「若年者に対する新たな処分」についての意見交換を行いたいと思います。   まずは,部会第6回会議において,「若年者に対する新たな処分」に関して御意見がありましたので,その内容について,事務当局から説明をしていただきます。 ○羽柴幹事 部会第6回会議において,当分科会に属されていない委員及び幹事の方から,「若年者に対する新たな処分」に関する御意見がございました。   本日の議論に先立ち,その要旨を御紹介いたします。   若年者に対する新たな処分,以下,本処分と言いますが,本処分の正当化根拠及び法的性質については,「本処分の対象者は保護処分の対象から外れる18歳以上の成年であるため,本処分を保護原理によって正当化することはできず,正当化根拠については,対象者が罪を犯し,法益を侵害したことに着目せざるを得ない」との御意見,「成人に達したとしても,少年と共通するような若年者の特性に基づいて保護的な原理での規制を加えていくことは,理論的に十分あり得る」との御意見,「犯した罪に見合った処分をしなければならないというような注意規定を設ければ,理論的,体系的な整合性は保つことができ,裁判所もそれを基準に判断することになり,不当な処分が起きることは懸念されない」との御意見,「本処分の目的は改善更生に必要な処遇を行うことであり,応報という観点は考慮する必要はない」との御意見がございました。   本処分の対象者については,「重大な罪を犯した場合は,実刑あるいは執行猶予付きの自由刑によって対応し,自由刑の内容の充実や保護観察の充実等によって再犯防止を図るのが筋である」との御意見,「現在であれば懲役や禁錮の執行猶予にされるというような者も本処分の対象になる余地はある」との御意見がございました。   本処分の内容については,「起訴猶予となる者に対し厳しい処分をすることは罪刑均衡の観点から困難ではないか」との御意見,「起訴猶予となる者の行為責任には幅があるので行為責任による制約があることと施設収容処分ができないということとは直結しない」との御意見,「開放性,教育性,利益性を強めるとすれば,収容期間を長めとすることも検討できるのではないか,また,週末拘禁,夜間拘禁,開放施設での処遇なども考え得るのではないか」との御意見,「若年成人の中には,社会内での処遇だけでは再犯防止や改善更生が難しい者が含まれていると思われるので,後に保護観察を実施することを前提として,短期間であっても施設に収容し,問題のある環境から分離して集中的な処遇や生活環境の調整を行うことには一定の有効性が認められるのではないか」との御意見,「保護観察の実効性を担保するため,遵守事項に違反した場合に,一定期間,環境分離として,行為責任の限度で少年院等に短期間収容して教育を行う措置を設けることや,遵守事項違反がある場合に,社会内処遇の方法を見直すための集中的な調査・鑑別を行うため,短期間少年鑑別所等に収容する措置を設けることも考えられる」との御意見がありました。   本処分の手続については,「調査・調整機能の活用という観点からの検討が必要であり,特に家庭裁判所以外の機関が処分決定や手続の選別などをするということになる場合,専門性のある者による調査,働き掛けを確保する必要がある」との御意見がありました。   そのほか,全般的なものとして,「現在検討されている各制度は,現在の家庭裁判所における調査,処遇と比較すると,見劣りがするものではないか,再犯防止という観点から見ても不十分なものではないかと考えられるため,現在の家庭裁判所等において行われている制度との比較を意識して議論することが適当である」との御意見がございました。 ○酒巻分科会長 ただいまの部会第6回会議における委員・幹事からの御意見の要旨の説明について,御質問のある方は挙手をお願いします。   よろしいでしょうか。   次に,今後の意見交換においては,検討課題を整理しながら具体的な制度の概要案を作成していく必要があることから,その参考とするため,事務当局において,これまでの当分科会における意見交換の内容や,部会での御意見などを踏まえて,考えられる制度の概要や検討課題等をまとめた資料を作成してもらいました。   そこで,まず,事務当局から,配布資料7「若年者に対する新たな処分(検討課題等)」の説明をお願いします。 ○羽柴幹事 配布資料7について御説明いたします。   「若年者に対する新たな処分」につきましては,これまでの部会及び当分科会における意見交換を踏まえ,「考えられる制度の概要」とともに,検討課題となると考えられる事項を記載しました。   現時点において考えられるものを記載したものであり,もとより御議論の対象をこれらに限る趣旨ではありません。   考えられる制度の概要や検討課題として記載した事項について説明します。   まず,「考えられる制度の概要」についてですが,これまでの検討によれば,「1」にあるとおり,本処分の目的については,「少年法における「少年」の上限年齢が引き下げられ,18歳及び19歳の者が保護処分の対象から外れることとなった場合,比較的軽微な罪を犯した18歳及び19歳の者に対し,改善更生に必要な処遇や働き掛けを行うことを可能にする」ということになると考えられ,また,本処分を設けるに当たっては,「2」にあるとおり,これから検討していくものですが,必要な手続を整備する必要があると考えられますので,それらを記載しています。   次に,検討課題について御説明いたします。   検討課題は,「1」の「若年者に対する新たな処分」と「2」の「本処分の手続」の二つに大きく分けて記載しています。   まず,「1」の「若年者に対する新たな処分」以下「本処分」と言いますが,本処分については,「(1)正当化根拠及び法的性質」のほか,「(2)対象者」,具体的には,比較的軽微な罪を犯した18歳及び19歳の者を対象者とするか,あるいは,比較的重い罪を犯した者も対象者とするか,「(3)処分の内容」,具体的には,施設収容処分と保護観察処分について,それぞれ,いずれも必要性・相当性・処分の内容が検討課題となり,また,保護観察処分の遵守事項に違反したときの措置についても検討課題になると考えられます。以上のほか,「(4)その他」にあるとおり少年鑑別所の活用が検討課題になると考えられます。   次に,「2」の「本処分の手続」について御説明いたします。   本処分の手続を検討するに当たっては,一つ目の「○」にあるとおり,「判断主体及び判断事項」,すなわち手続の過程において判断が必要となる事項ごとに,それを判断するのにふさわしい判断主体の在り方が検討課題になると思われます。   また,二つ目以降の「○」にあるとおり,「手続の公開・非公開を含む審判の方式」,「家庭裁判所調査官の調査機能の活用等,要保護性の調査の在り方」,「調査又は審判への呼出しに応じない者に対する措置の在り方」,「検察官又は弁護士等の関与」,「処分の取消し」,「不服申立て」が検討課題になると考えられます。   なお,手続についての検討課題は,これら以外にも多々あり得るところですが,大枠についてこれから御検討いただくという段階ですので,本資料では,「その他」と記載しています。   配布資料7の説明は以上です。 ○酒巻分科会長 ただいまの説明に,この段階で,御質問や,ほかにも検討課題等があるのではないかといった御意見がある方は,挙手をお願いします。   御質問等はないようですので,「若年者に対する新たな処分」について,配布資料7に沿って意見交換を行いたいと思います。   まず,配布資料7の「1」の「(1)正当化根拠及び法的性質」について意見交換を行いたいと思います。   既に大分議論したところでございますけれども,御意見のある方は挙手をお願いします。 ○加藤幹事 今,分科会長からもお話があったとおり,新たに設けようとしている処分の正当化根拠ですとか法的性質については,分科会においてはかなり議論が重ねられている点ですし,ある意味で共通認識らしきものが得られつつあるのではないかとも思っているのですが,部会第6回会議におきまして,特に成人に達したとしても,少年と共通するような若年者の特性に基づいて,保護的な原理での規制を加えていくことは,理論的にはあり得るのではないかといった御意見もございましたので,従前との重複を承知で1点申し上げます。   現行少年法の少年を対象とする保護処分については,いわゆる保護原理によって正当化される部分があると考えられていますが,保護原理による処分の正当化の背後にあるのは,子供がまだ未成熟で,判断能力が十分ではないという社会的事実だけではないと考えられます。   すなわち,法的な理解として,子供は元々親の監護下にある自由の制約された存在であるから,そのような子供に対する国のパターナリズムによる介入もまた正当化されるという考え方が背景にあるように思われます。   そのような考え方によれば,民法の成年年齢が引き下げられた場合に,民法上成年者となり,親権に服さないこととなった18歳及び19歳の者については,現行少年法の保護処分の正当化根拠がそのままは当てはまらないということになるのではないかと思われます。   若年者の中に少年と類似する特性を有する者がいたとしても,そのこと自体を新しい処分の正当化根拠として処分を行うということは,過剰な権利制約につながるおそれがあるのではないかと考えられる点から,新たに設ける処分の法的性質については,その点を踏まえて検討がされなければならないと考える次第でございます。 ○池田幹事 私からも今の点に関連して意見を申し上げます。   本処分の法的性質あるいは正当化根拠につきましては,既におまとめいただいているところの繰り返しにもなるわけですけれども,比較的軽微な罪を犯した成人に対して,改善更生に必要な処遇や働き掛けを行うことを可能にする目的で設けられるものでありまして,それ自体,応報を目的とするものではないと整理されてきました。このことからすれば,その法的性質は対象者の要保護性に応じて行われる改善更生に必要な処分だということになろうと思います。   また,その正当化根拠につきましては,本処分は成人に対するものですから,保護原理によって正当化されるものではなくて,対象者が罪を犯し,法益を侵害したことが,これを正当化する理由になると考えられます。   しかし,他方で,この処分が保護原理によっては正当化されないというのは,罪を犯したことを非難できる限度を超えて国家が処分を行うことが正当化されないということでありまして,およそ何らかの働きかけを行うことまでもが禁じられるということにはならないと思います。そのため,今,加藤幹事からの御指摘にあったところですけれども,18歳及び19歳の者を含む若年者に対して,その特性に応じた処分や処遇を行うことは,直ちには否定されるものではないということになろうと思います。   若年の成人の中に少年に類似した特性を有する者がいるということにつきましても,そのような者との関係でも,処分を行うことが正当化される範囲内で,すなわち,罪を犯したことを非難できる限度で,その特性に応じた処分,処遇の在り方として,適切なものがどのようなものかということを検討することになるものと考えております。 ○山﨑委員 今のお二方からの御発言に関連してなのですけれども,まず,加藤幹事がおっしゃった,親の権利との兼ね合いでという点に関しましては,これまでも何回か発言をさせていただいていますけれども,歴史的に見て,アメリカの少年裁判所が創設された当時にそういう考え方があり,我が国に戦後,少年法が導入される際に,そういった説明が引き継がれたという歴史的なものではあると思うのですけれども,現在,保護原理的なものを,国親思想のみで説明するのが適当かというと,必ずしもそうではないのではないかと思っています。   特に子どもの権利条約が批准をされている今日では,子どもが未成熟な存在であり,成長,発達の過程にあるということを端的に捉えて,その成長,発達を保障することが国の対応,責務であると,こういうふうに捉えるべきであって,必ずしも親の親権という概念を介することは適切ではないのではないか,というのが1点でございます。   二つ目なのですけれども,従来の議論では,18歳,19歳を対象として新たな処分を検討するということでしたが,先ほど池田幹事からは,18歳,19歳を含む若年者と言われました。この点,どこまでの年齢を想定するのかということが非常に大事な点ではないかと思っています。   対象者のところで議論すべきことなのか分かりませんけれども,ここで申し上げておきますと,これまでこの処分の立法事実として言われてきたのは,従来保護処分が可能であった18歳,19歳に対して,少年法の少年年齢を引き下げるとすると,保護処分が科し得なくなるし,刑事処分の対象からも外れてしまうことへの対応ということだったと思います。そういうことであれば,必然的に,処分の対象は18歳,19歳に限られるということになるのではないか。これを20歳以上の成人,すなわち従前から刑事処分の対象にされてきた人をも対象に加えるということになると,そこには異質な問題が生じてくるので,ここはしっかり区別をすべきだろうと考えております。   その上で,18歳,19歳が仮に少年法上の少年ではないとされた場合にも,なお働き掛けが必要であるという場合があるのではないかということについては,ほぼ共通の認識があるのではないかと思うのですけれども,では,なぜそう考えるかというと,やはりその年齢層の者たちが,未成熟であり,発達過程にある存在であるということについて,これは少年法の少年年齢がいかに変わろうとも,実態としてやはり変わらないわけでして,したがって,18歳,19歳が,年齢という類型的に見て成長過程にある未成熟な存在であるというところが背景にあるのだろうと考えております。   このように,対象者をどのように捉えて,どの年齢層を想定するかといったことをきっちり,ある意味決めてからでないと,どういう処分が適当か,あるいは,手続はどういうものが適当かということが言えないと思います。これまでの議論からすると,あくまで18歳,19歳という年齢層を対象として議論すべきだろうと考えております。   それとの関連でもう一つ付け加えますと,現行の少年法では,健全な育成を期しということで,第1条の条文が定められているわけですけれども,新たな立法をする際には,先ほど言いました成長発達の過程にある未熟な者に対して,どういう考え方を示すことになるのか,といったことも意識しながら議論することが必要ではないかと考えております。 ○酒巻分科会長 対象者の問題は,次の項目でも議論いたしますが,今の山﨑委員からの御意見に関連してでも結構ですし,それ以外でも結構です。この正当化根拠,法的性質につきまして,ほかに御意見がある方は挙手をお願いします。 ○川出委員 新たな処分の正当化根拠,法的性質につきましては,私も加藤幹事,池田幹事の意見に賛成です。その上で,この点に関して部会で出ていました意見について,一言意見を申し上げたいと思います。   部会では,保護原理というのは親権の代行とか補充というものだけではなくて,例えば高齢者とか障害者に対して一般の成人とは異なる取扱いをするといったかたちでの保護原理というものもあるので,今回,仮に18歳,19歳の者が親権の対象から外れたとしても,保護原理に基づく介入をすることは可能ではないのかという指摘がありました。   確かに,そこで例として挙げられていました成年後見制度のように,成人に対しても保護原理に基づく介入が認められている場合もあるのですが,それは,まさに成年後見がそうであるように,意思決定能力が不十分な場合の話であって,意思決定能力が備わった成人に対して,その保護を目的として意思に反した権利制限を認めているものではありません。したがって,部会での意見が,成年後見のような制度を前提にしたものであるとすれば,それは,新たな処分を保護原理で基礎づけることの根拠にはならないだろうと思います。   あるいは,部会での御意見の趣旨は,むしろ,今後は犯罪を行った高齢者とか障害者についても,その保護という観点からの介入を積極的に認めるべきだということなのかもしれません。しかし,もしそこまでやるとなると,我が国の法制度全体に大きな転換を図ることになりますので,相当に時間をかけた慎重な検討が必要になります。少なくとも,既存の制度との整合性という観点からは,意思決定能力を備えた成人に対して保護原理に基づく介入をすることを認めるのは難しいのではないかと思います。 ○山﨑委員 今の川出委員の御発言にも関連するのですけれども,1の(1)で書かれていますが,「要保護性に応じて」という,この「要保護性」という概念を果たしてどう捉えたらいいのかというのは,まだ私にはよく分からないところがあります。   川出委員に前回御質問させていただいて,回答はいただいているのですけれども,保護処分,少年法上の保護処分で用いられている要保護性と同じであろうと,あるいは,その刑罰との関係であれば,特別予防上の必要性ということとも同じ趣旨ではないかという御回答をいただいたかと思うのですけれども,これを同じように捉えてよいのだろうかということには,私は若干違和感を持っていまして,少年法上の要保護性というのは,かなり少年特有の概念として整理されてきたのではないかと感じております。   教科書などによりますと,三つにこの要保護性としては分析できるとされており,一つは犯罪的危険性若しくは累非行性,二つ目として保護処分による矯正可能性,三つ目として保護相当性ということで言われております。これと同じような,そのまま要保護性ということをこの新しい処分において考えるのか,一方で,特別予防といいますと,もう少し抽象的というか,曖昧というか,広い概念にも感じられていまして,それを要保護性と言ってしまうのであれば,先ほどもちょっと問題になった高齢者や障害者など,この新たな処分の対象とならない成人の方々の特別予防ということと,どう区分けができるのかといったところが,ちょっとまだ難しく感じております。そういった点でも何か,御見解があれば教えていただければと思っております。 ○酒巻分科会長 「要保護性」という言葉は,私自身は,これまで少年法の世界で使っていたものという認識で理解していましたが,事務当局として何か補足することはありますか。 ○羽柴幹事 事務当局としては,今御指摘いただいたような認識で「要保護性」という言葉を用いて資料の作成をしております。 ○酒巻分科会長 新しい処分について,従来の言葉を用いて検討すると様々な問題が出てきますけれども,言葉の用い方にはこれからも慎重に注意して検討を進めていきたいと思っております。   正当化根拠につきましてはこの程度にいたしまして,次に進んでよろしいでしょうか。            (一同異議なし)   次に,「(2)対象者」について,御意見がある方は,挙手をお願いします。 ○池田幹事 資料にお示しいただいておりますうちの2点目,自由刑の全部執行猶予となるような者等について,意見を申し上げたいと思います。   先ほど御紹介いただきましたように,部会においては,これらの者について,本処分の対象者とすることについての意見がありましたので,目的と関連した形で申し上げます。   現行法は,成人が罪を犯したときは,刑事処分の対象としておりまして,この取扱いを変えること自体は相当ではないと思いますので,これを前提として考えますと,本処分は,少年法における少年の上限年齢が引き下げられた場合に,比較的軽微な罪を犯したために起訴されず,そのために刑事処分の対象とはされない18歳及び19歳の者,すなわち成人に対し,改善更生に必要な処遇や働きかけを行うことを可能にするという目的で設けられたと理解されます。   他方で,成人が比較的重い罪を犯すなどしたことによって,自由刑の実刑あるいは全部執行猶予が相当であるとされる場合には,いずれも原則に従えば,刑事処分の対象とするべきことになります。そしてこの場合の,刑事処分を受けた者の改善更生や再犯防止というものは,刑事処分を受けた者に対する処遇をより一層充実させることで図られるべきであって,現にそのための施策の検討もされているところと存じております。   以上によりますと,自由刑の全部執行猶予相当の者は,原則どおり刑事処分の対象となる以上,本処分の対象者としては想定されることにはならないと考えております。 ○加藤幹事 先ほど山﨑委員から御指摘のあった対象者,年齢による対象をどうするかという点でありますが,御指摘のあったとおり,18歳及び19歳の者が,年齢が引き下げられることによって従来の保護処分の対象から外れ,したがって,その18歳及び19歳の者に対する処遇をどのようなものとするかという問題意識が念頭にあるわけですので,まずは,18歳及び19歳の者に対する処分の有様,処遇の在り方というところを念頭に検討すべきものだとは認識しております。   ただ,この問題は,当分科会で取り上げられている新たな処分の問題だけで,諮問事項全体に答えられているわけではありませんので,他の分科会で検討されている様々な制度との兼ね合いで,その範囲などについても決まってくるところがありましょうから,確定的に18歳及び19歳の者だけが対象となり得て,それ以外の若年者は対象となり得べき制度はあり得ないのだと言ってしまうことはできないのではないかと思えます。ただ,前提として,その18歳及び19歳の者を念頭に制度を構築してみるという考え方で議論をするのが,まずは先決なのではないかと考えているところです。   それから,今,池田幹事からも御発言がありましたが,対象者の範囲という,もう一方の問題ですが,刑事処分の対象とする者と,今回の新たに作ろうとしている処分の対象とする者の振り分けという観点から発言させていただきますと,現行少年法では,少年が罪を犯したときは,家庭裁判所において,刑事処分が相当であるか,それとも保護処分が適当であるかということを検討して,適切な処分を選択するということとされており,刑事処分とする必要が否定できないような事案があったとしても,保護処分の方がより適切であるという場合には,刑事処分ではなくて保護処分を選択するという仕組みになっています。   このような制度となっているのは,少年が一般的に可塑性に富むことが多く,その改善更生が期待できるということだけではなくて,刑事処分とする必要が否定できないような場合であっても,少年であるがゆえに,刑事処分を行わずに保護処分に付するということが,社会的にも許容されているということも前提になっているのではないかと考えられます。すなわち,一種の社会からの寛容が期待される,認められていると言えるのではないかと考えられるわけでございます。   しかし,選挙権年齢が18歳に引き下げられたのに続いて,民法の成年年齢が18歳に引き下げられて,少年法における少年の上限年齢も18歳未満に引き下げられたという仮定の下で,18歳以上の者が罪を犯し,刑事処分の必要がある場合に,その者の改善更生には刑事処分以外の処分を行うことの方が適切であるという理由で刑事処分を行わないということについて,ただいま申し上げたような国民の寛容を期待すべきであるとは必ずしも思えないところがあります。   成人が罪を犯して刑事処分を行う必要があるという場合には,基本的には刑事処分を行い,その者の改善更生は,より一層の処遇の充実によって図られるべきであり,そのための検討も併せて行われているところです。   したがって,刑事処分を行うべき者には刑事処分を行い,その上で,その者の改善更生に必要な処遇の充実を図るという方法を採るべきであって,本処分の対象者は,犯した罪が比較的軽いことから,刑事処分が行われない者のうち,改善更生・再犯防止のために処遇や働き掛けを必要とする者であるとすべきではないかと考えているところです。   そして,そのような者を表す言葉として,要保護性のある者という,その用語を用いるかどうかというところは,先ほど山﨑委員から御指摘があったように,要保護性という言葉の内容をもう一度考えてみなければならないという御指摘があったのだと認識しましたが,基本的には,これまで用いられてきた要保護性という言葉と,そう大きな違い,本質的な違いのある内容ではないのではないかとも思っているところです。 ○山﨑委員 まず,今,お話の中で,年齢について,18歳,19歳の者を念頭に置いた議論をするということは,私もそれがよいと思っていますが,ほかとの兼ね合いでそれ以上になるかもしれないということになりますと,先ほどの繰り返しになりますけれども,現行保護処分を受けている18歳,19歳の者と現行刑事処分の対象となっている20歳以上の者とでは,やはり利益状況も変わって,今と比べてどういった負担が増えることになるのか,ならないのかといった点ですとか,20歳以上の者を想定しますと,どの年齢までが果たして線が引けるのかといった問題が当然出てきますので,ここはやはり分けて,18歳,19歳の者について議論すべきだろうというのが,私の考えです。   二つ目の全部執行猶予が相当になるような場合はどうしたらいいかというのは,ちょっと私もまだいろいろ考えているところで,結論が出ていないのですけれども,例えば,現行の少年審判における処分の割合を見ますと,審判不開始,不処分が約6割,保護観察が約3割,少年院送致が約1割,あと少ないところで,刑事処分相当の逆送とかありますけれども,そこに当てはめると,どの辺の層までを対象と想定するのか,という観点も必要かと思います。また一方で,成人の刑事処分でいいますと,起訴猶予が6割,略式命令の罰金が3割程度ですか,こういったところのどこまでをどうカバーするのか,当然,罰金の保護観察付き執行猶予をどうするかとか,起訴猶予でどうすることが可能なのかといったことの兼ね合いではあるのですが,そういったところもにらみながら,具体的に,こういった程度の犯罪であれば,ということを意識しながら議論する必要があるのではないかなと思っております。   最後に,加藤幹事がおっしゃった比較的軽微な犯罪ということと要保護性に関する御説明がちょっとよく分からなかったのですが,事案の軽微性と要保護性という概念は,一応別の観点のものかなと,私は理解しております。 ○加藤幹事 少し分かりにくい表現になってしまい,申し訳ありません。   おっしゃるとおり,犯した罪が比較的軽いということと要保護性とは,別のことなのですが,犯した罪が比較的軽いことから,刑事処分が行われない者のうち,その後申し上げた,改善更生のためにその働きかけや処遇を必要とするべき者,この概念,この部分と要保護性というものの異同について申し上げたというつもりでございます。 ○酒巻分科会長 今の山﨑委員の御意見に関連してでも結構ですし,対象者について,ほかに御意見ございますか。 ○加藤幹事 山﨑委員から御発言のあった,どういう範囲の者を想定するのかという点について,それを念頭に置いて議論すべきではないかという御指摘だったと思われますが,これも実はいろいろな考え方があるのではないかと。特に,罰金相当の者,略式とおっしゃいましたが,略式相当の者について,どのようになるのかという点などについても,この分科会で罰金の保護観察付き執行猶予の活用というテーマでも議論がされていますし,そもそも本処分の在り方として,どのようなものとするかということについての検討状況なども踏まえて検討する必要がありますので,略式相当の者を一つとっても,こちらの新たに作ろうとしている本処分の対象とするか否かについては,もう一つ全体との兼ね合いというところの検討が必要であろうと思われます。そのため,どの層の対象者を念頭に置くのだということを先に決め切って議論していくというのは,なかなか難しいのではないかとも感じるところです。 ○酒巻分科会長 ほかに御意見はございますか。   それでは,次に,「(3)処分の内容」についての意見交換に移りたいと思います。   まず大きく,「施設収容処分」と「保護観察処分」については,区分して御意見を伺うこととし,「保護観察処分」と「対象者が遵守事項に違反したときに採り得る措置の要否・内容・当否」につきましては,いずれも保護観察に関連する事項ですので,まとめて御意見を伺うこととしたいと思います。   それでは,まず,「施設収容処分」について御意見がある方は挙手をお願いします。 ○加藤幹事 施設収容処分を設けるかどうかということに関連して,部会において御指摘のあった「起訴猶予となるような事件について,行為責任にも幅があるので,行為責任の範囲内で施設に収容する処分を設けることは可能ではないか」という点について,実務的な観点から2点ほど申し上げます。   まず第1は,検察官は,刑事訴訟法第248条に掲げられております犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況を考慮して,訴追を必要としないときは公訴を提起せず,起訴猶予処分としているというのが一般論であります。   確かに,部会で御指摘があったように,起訴猶予処分とする事案には様々なものが含まれているわけでありますが,犯した罪が重い場合には訴追を必要とするという判断をする場合が多いのでして,反面で,訴追を必要としないとして起訴猶予処分とする事件の多くは,比較的軽い罪の事件であります。起訴猶予処分となる事件の中に,重い罪の事件が多数含まれているということはないというのが,実務的な感覚です。   比較的重い罪名でありながら,起訴猶予処分となっている場合もあるのではないかという統計上の御指摘があるのだと思いますが,御案内のとおり,我が国の刑法は,構成要件の幅がかなり広く定められていますので,重い罪名が付いていても起訴猶予処分になっているというのは,その内容を見てみれば,罪責は比較的軽いという事件ではないかと察せられます。そうではなくて,罪責も重いのに,あえて起訴せずに起訴猶予処分になっているというのは,それはそれ相応の事情がある例外的な場合と考えるのが,実務感覚ではないかと考えます。   施設収容処分の必要性・相当性,施設収容処分を設けることの必要性・相当性の検討に当たっては,これらのことをまず念頭に置く必要があります。   2点目ですが,比較的軽い罪を犯した者の要保護性というものをみてみますと,要保護性という言葉の定義は一旦おきまして,従来使われていた意味での要保護性というものをみてみますと,文献におきまして,現在の少年事件において,「大半の事件では非行事実の軽重と要保護性は対応・相関する」,あるいは,「軽微な非行には一過性のものが多く,特別な保護の手当を要しない少年が多い」,さらには,「他の少年が思いとどまれる犯罪,特に重大な犯罪に走るのは,性格・環境的に根深い問題がある場合が少なくない」などと指摘されているということからしましても,一般に重い罪を犯した者については要保護性も大きく,比較的軽い罪を犯した者については要保護性も小さいという相関性があるのではないかと考えられます。   そういたしますと,犯した罪が比較的軽いものであり,かつ,起訴猶予となって刑事処分の対象とならない者の多くは,要保護性の小さい者だと考えられます。もちろん,非行事実と要保護性とが不釣合いであるという場合がないわけではなくて,そういうものもあるとは考えられますが,制度としての施設収容処分を設けるかどうか,その必要性・相当性を検討するについては,以上述べたようなことを踏まえた検討が必要なのではないかと考えているところでございます。 ○池田幹事 ただいま加藤幹事から,施設収容処分について,具体的にどのような事例が想定されるかということについて御指摘をいただいたのですが,その必要性や相当性を検討するに当たっては,そのような手法を設ける目的との関係も検討しておくべきだろうと思います。   本処分一般について申し上げますと,その目的は,対象者に処遇や働き掛けを行うことによって,対象者の改善更生を図るということにあるわけですので,施設収容処分を設けるという場合でも,その目的は同様のものになるはずです。そして,施設内処遇が処遇効果を上げて,そうした目的を達するためには,ある程度の収容期間が必要だと思われますので,その目的の達成のために,どの程度の期間が必要か,その期間施設に収容することが正当化され得るのかという観点から,処分の必要性・相当性を検討する必要があると思います。   部会で示された御意見の中では,具体的な在り方として,夜間拘禁,あるいは週末拘禁というような,言わば一時的な収容を行う処分についても指摘があったところですけれども,このようなものも処遇による改善更生のための手段として正当化できるのか,特に収容期間が限られておりますので,その期間に処遇を行うのか,行うとして,どのような内容となるのか,また,その効果を期待し得るかといったことについても,検討を要する課題にはなるものと考えております。   また,新たな処分としての施設収容に関して,別の委員の方から,再犯リスクの主たる要因が,交友関係あるいは家族関係といった環境面にある対象者を,問題がある環境から分離して集中的な処遇を行い,その後に引き続き保護観察を行うものとして,短期間の施設収容処分と保護観察処分を組み合わせたような処分を設けることについても,御意見をいただいております。この御意見につきましても,そのために想定される収容のための期間のほか,収容中の処遇や問題のある環境から分離するという目的のための手段として,ほかに何らかの方策が考えられ得るかというような様々な観点も踏まえつつ,その必要性や相当性を検討する必要があると考えております。 ○川出委員 池田幹事から御指摘があったとおり,部会で,短期の施設収容処分の導入についての御提案がありました。以前の分科会で,私は,新たな処分の対象となるが軽微な犯罪であるということだとすると,その行為責任に対応する施設収容処分というのは,考えられるとしてもかなり短期になるだろうから,そのような処分は,改善更生という観点からは余り意味がないのではないかと申し上げました。他方で,部会では,短期の施設収容処分でも意味があるのではないかという立場から御提案がなされておりますので,現場の感覚として,施設収容処分というのは,どのくらいの期間があれば,処遇の効果が期待できると考えられるかを,可能であれば教えていただきたいのですが。 ○小玉幹事 施設収容処分における処遇を実効あるものとするためには,どの程度の収容期間を要するのかという御趣旨の御質問だと思いますけれども,この点につきましては,正に今,議論がされている,新たな処分における施設収容処分の目的や保護観察処分との関係をどう考えるか,あるいは対象者に関して,どの程度の質や量の情報が得られているか,さらには,対象者の要保護性の程度,施設内処遇の内容や手法など,様々な要素を考慮する必要がありますので,一概にこれぐらいの期間が必要と申し上げることは困難であることは,まず申し上げておきたいと思います。   その上で申し上げますと,例えば,現在少年院におきましては,家庭裁判所における社会調査や少年鑑別所における鑑別により得られた在院者に関する情報を踏まえた上で,職員と在院者との間で信頼関係を構築しつつ,個々の問題性などに応じて在院者の内面に踏み込んだ指導を行うことによって,その改善更生を図っているところです。このように,在院者の間で信頼関係を構築し指導の効果を上げるためには,相応の期間が必要となるところでありまして,現行の教育期間としましては,おおむね11月から12月を標準としており,また,いわゆる短期課程,これは問題性が単純又は比較的軽くて,早期改善の可能性が大きい者に指定されるものですが,このような短期課程の場合には,おおむね3月から5月を標準としています。   新たな処分としての施設収容処分に,少年院における矯正教育と同様の処遇効果を期待するとした場合には,対象者の資質,特性や問題性などについて十分な調査がなされていることを前提としても,今申し上げたような現行の矯正教育に要する期間の実情を踏まえると,やはりそれ相応の期間が必要になると考えております。 ○山﨑委員 今の点に関連してなのですけれども,私は,付添人としての実務経験上の感覚からしますと,短期の少年院送致というのが少なくなってきているようにも感じるのですが,少年院送致決定の中での短期処遇の割合や数というのは,統計的に出るのであれば確認しておいてもいいかと思うのですが。 ○小玉幹事 平成28年の少年院新収容者は2,563人いたところですけれども,このうち,短期課程が指定された者は505人,その割合は約19.7%となっております。   ちなみに,入院時の年齢が18歳及び19歳であった者が1,217人なのですけれども,このうち,短期課程が指定された者は198人,割合として約16.3%であったと承知しています。 ○山﨑委員 関連して,私の実務経験の感覚から言いますと,例えば,交友関係,家族関係に問題があるという少年はやはり少なくないのですけれども,その場合でも,収容してその手当をしようとすると,やはり一定程度の時間はかけないと,特に家族関係はそう簡単に修復もできないのではないか,というのが一般的な感覚です。 ○酒巻分科会長 ほかに御意見がなければ,次に移りたいと思いますが,よろしいですか。            (一同異議なし)   次に,「保護観察処分」や,「対象者が遵守事項に違反したときに採り得る措置の要否・内容・当否」についての御意見を伺いたいと思います。御意見のある方は挙手をお願いします。 ○池田幹事 保護観察処分についても,先ほど述べたのと同様に処分の目的をどう考えるかということを検討すべきだと思うわけですけれども,現状で,保護観察は,社会内において対象者の改善更生を図ることを目的として指導監督及び補導援護を行うものであって,現行少年法の下においても,いま主として議論の対象となっております18歳及び19歳の者を含む少年の改善更生に効果を発揮しているものと思います。したがいまして,本処分との関係でも,保護観察処分を設けて,対象者の要保護性に応じて保護観察に付し,指導監督及び補導援護を行うことは,対象者の改善更生を図るという目的を達成するための方策として必要であると考えられます。   また,相当性ですけれども,保護観察は対象者の権利制約を伴うことにはなるわけですけれども,社会内処遇ですので,施設収容に比べますと,その程度というものは小さいと考えられます。もちろん,それは,具体的な期間や処遇内容にもよるわけですけれども,比較的軽微な罪を犯した者についても,保護観察に付することは,それ自体としては相当として正当化され得るものと思います。   その場合の期間ですけれども,これも,対象者の改善更生にはどの程度の保護観察の期間が必要かということ,他方で,対象者は比較的軽微な罪を犯したものであることが想定されていると。これを前提にした場合は,どの程度の期間であれば,相当なものとして正当化されるかという観点を踏まえて検討される必要があると思います。   以上が保護観察の必要性・相当性に関する部分ですけれども,もう一つ併せて,遵守事項に違反したときの点について申し上げます。   部会において,こちらについては,委員の方から,対象者が遵守事項に違反したときは,施設収容を行う制度を設けることについて御意見があったと,先ほど御紹介をいただきました。このことに関連いたしまして,現行少年法には,保護観察の対象者が遵守事項に違反したときに採り得る措置として,一定の手続を経て,当該対象者が少年院に送致される制度,少年法第26条の4に基づく制度が設けられておりまして,この制度の概要等を確認しておくことが,今後検討を行う上で有益だと考えられますので,事務当局に御説明をお願いできればと考えておりますが,いかがでしょうか。 ○羽柴幹事 現行少年法第26条の4の「保護観察中の者に対する措置」について御説明をいたします。   この制度は,保護観察に付されている者が,保護観察における指導監督に努めたにもかかわらず遵守事項を遵守しない場合に,このような保護観察中の新たな事由の発生という事態を捉えて,保護観察所の長の申請により,家庭裁判所において,遵守事項違反があり,その程度が重く,当該保護観察の継続によっては本人の改善更生を図ることができないと認める場合に,児童自立支援施設等送致又は少年院送致の保護処分を言い渡すこととするものです。   この制度は,重大な遵守事項違反という保護観察中の新たな事由の発生という事態を捉えて,新たに決定をするというものであり,保護観察の保護処分決定の対象となった事由と同一の事由について,重ねて保護処分を決定するというものではございません。 ○池田幹事 現行法上,遵守事項違反の場合に施設収容されるという可能性はあるわけですけれども,その制度の趣旨は,重大な遵守事項違反を新たな審判事由とした上で,少年に要保護性が認められる場合に,少年院送致決定という新たな保護処分を行うということと御説明をいただきました。   こうした処分は,保護原理によって正当化されるものと考えられるわけですけれども,他方で,現在検討している本処分は,そうではなくて,対象者が罪を犯し,法益を侵害したということについて,非難が可能な限度で行われるものでありますので,これと同列に論じることはできないのではないか,つまり,重大な遵守事項違反があった場合に,そのことを理由として,新たに処分を行うという制度を設けることはできないのではないかと思います。   可能性としては,新たに処分するというのではなくて,そのような事態に対応して,保護観察処分を事後的に施設収容処分に変更するという制度を考えることもあり得ようかとは思うわけですけれども,前提として,犯した罪が比較的軽微であって,そもそも施設収容処分が正当化されないというものとの関係では,そうした処分の変更を正当化することも難しいと思いますので,この点に留意をする必要があろうかと思います。 ○山﨑委員 私も,基本的に池田幹事と同じような意見です。そもそもが軽微な事件という前提ですし,施設収容申請のような考え方も取りづらい,執行猶予の取消しのようなこともできないという中で検討することになるわけですが,実際に少年たちを見ていると,やはり良好解除を目指して,きちんとやれば早く終わるからということで頑張ってやる子がほとんどだと私は思っています。一応,施設収容申請があるからねと,きちんとやるんだよ,という意味はあるかとは思うのですけれども,多くの子はやはり真面目にやって,保護司さんのところに1か月2回行くようなことをなるべく早く終わらせようというモチベーションでやっている子がほとんどですし,可塑性がある年齢層の者を対象にした処分でもありますので,基本的には良好解除の方で担保できるという発想をとった方がよいのではないかと思っております。   併せて,期間の点も出ておりましたけれども,例えば,現行の少年法上では,交通の短期保護観察であれば,3か月,4か月程度というふうなことが実情だと言われておりますけれども,こういった類型によっては,かなり短い期間というのも選択肢として持っておくということは考えられるのではないかと思っております。現地視察で東京の保護観察所でも伺いましたが,あまり長い時間ですと,やはり意欲の面でも持ちづらいという点も念頭に置いておく必要はあると思います。 ○川出委員 保護観察の遵守事項違反があった場合の措置として,部会においては,新たな特別遵守事項を設定する等の,社会内処遇の方法を見直すための集中的な調査を行うために,一定期間少年鑑別所等に収容して,調査や鑑別を行う行政上の処分を設けたらどうかという御提案もありましたので,これについて意見を申し上げたいと思います。   これは,元々の処分を言い渡す段階で,例えば,現行少年法の観護措置に当たるような処分を設けるかどうかということに関わる問題かと思います。仮にそのような処分を設けるのであれば,それを,事後に保護観察の遵守事項違反があった場合に,例えば特別遵守事項を変更するなどして,処遇の方法を見直す際の調査のために用いることができるようにするという制度は,理論上は十分あり得るだろうと思います。   その上で,こうした制度については,まず新たな特別遵守事項を設定する等により,社会内処遇の方法を見直すために,身柄を収容してまで調査を行う必要性が認められる事案がどのくらいあるのかという観点から検討する必要があります。そして,仮にそうした必要性が認められる事案が一定程度あるとすれば,どのくらいの期間,どういう施設に収容して,どのような調査を行うのか,さらに処分を決定する手続をどうするのかといった点を具体的に検討する必要があるだろうと思います。 ○酒巻分科会長 ほかに御意見はございますか。   御意見はないようですので,それでは,次は,(4)「その他」について,御意見がある方は挙手をお願いします。 ○加藤幹事 少年鑑別所の活用の観点から意見を申し上げます。   要保護性に応じた処分を行って処遇を行うことで,対象者の改善更生を図るという処分を行うに当たっては,少年鑑別所の鑑別機能を活用するということは十分に考えられるのではないかと思います。   例えば,現行少年法と同様に,審判の段階で鑑別を行う機関として少年鑑別所を活用するということも考えられますし,先ほど川出委員からも御紹介があった部会での御意見にあったように,遵守事項に違反した場合に,その社会内処遇の方法を見直すための集中的な調査を行うために,少年鑑別所を活用するといったような御意見も述べられていたところであり,保護観察を行っている途中段階で活用するということも考えられるのではないかと思われます。   ただ,一方で,少年鑑別所による鑑別の際に,その施設に収容するということを前提といたしますと,当然その点では対象者の権利制約という問題も生じてきますので,その必要性,相当性について,今後検討する必要があるのではないかと考えます。 ○山﨑委員 私も,基本的に加藤幹事がおっしゃったことと同じような考え方をしております。鑑別を徹底しようと思えば,やはり施設に収容してというふうな発想になりがちですが,飽くまで比較的軽微な事件ということで,起訴猶予に該当するような事件でそこまでやるべきかという点については,やはり問題があろうかと思います。身柄を釈放すべきような事件であれば,在宅での鑑別の利用ということがどういう形で可能かということをベースに考えるべきではないかと思っております。   また,念のため申し上げますと,少年鑑別所を利用するということについては,飽くまでやはり,捜査とは切り分けて,事件が裁判所に行ってから後に,司法的チェックの中で鑑別も行われるべきだろうということは,これまで申し上げているとおりです。 ○酒巻分科会長 「1」につきましては,この程度でよろしいでしょうか。            (一同異議なし)   それでは,引き続きまして,「2」の「本処分の手続」について意見交換を行いたいと思います。   まず最初に,「判断主体及び判断事項」について,御意見のある方は,挙手をお願いします。 ○加藤幹事 これまでの意見交換で述べられた本処分を設ける目的あるいはその法的性質,さらには対象者等に対する御意見を踏まえて,この判断主体あるいは判断事項について,飽くまで考えられる枠組みの一つとして意見を申し上げたいと思います。   既に繰り返し意見が述べられておりますように,本処分の対象者は,若年ではあるが成人なのだということからいたしますと,刑事処分を行う必要があるときは刑事処分を行うべきだというのが,まず原則的な考え方だと考えられます。   そうすると,まずは,罪を犯した若年の成人について刑事処分を行う必要性を判断するという必要があるわけでありますが,刑事処分の必要性の判断は,現行法上,検察官が起訴又は不起訴の判断という形で担っているものであります。したがって,この判断は,今後も検察官が行うことがふさわしいものではないかと考えられます。   その上で,本処分を設ける趣旨は,少年法における少年の年齢が引き下げられて,18歳及び19歳の者が保護処分の対象外となった場合に,犯した罪が比較的軽く,刑事処分の対象とならない者について,これまで行われてきた改善更生に必要な処遇や働き掛けが行われなくなるのではないかという懸念に対応するものであります。   そうすると,このような者について,処遇や働き掛けの必要性,あるいはその内容を判断するということが必要になるのでありますが,これは,現行少年法の下において,家庭裁判所調査官が要保護性の判断に必要な資料の収集や働き掛けを行った上で,少年審判を経て,要保護性に応じて保護処分に付するか否か等を判断している家庭裁判所が最もこの任務を担うのにふさわしい機関なのではないかと考えられます。   この二つの点をまとめますと,18歳及び19歳の者が罪を犯したときは,まず,検察官において刑事処分の必要性を判断し,刑事処分の必要がある者は起訴して刑事処分の対象とするが,刑事処分の必要性がないと判断されて刑事処分とならなかった者については,家庭裁判所が家庭裁判所調査官の調査機能等を活用して,要保護性の判断に必要な資料を収集し,少年審判と同様の審判過程を経て,処分に付するか否かの判断を行うという枠組みとすることが考えられます。もちろん,この過程では,家庭裁判所調査官による従来行われていた働き掛けといった作用も活用されてよいのではないかと考える次第であります。   もっとも,今申し上げましたのは,ざっくりとした一つの考えられる枠組みにすぎず,仮にこのような枠組みを土台とするにしても,その様々な制度概要があり得るのはもちろんでありますので,一つの御参考として申し上げました。 ○酒巻分科会長 今,加藤幹事から,家庭裁判所が家裁調査官の調査機能等を活用して要保護性の判断に必要な資料を収集して,今の少年審判と同じような審判を経て,この新たな処分に付するか否か等の判断を行うという枠組みの考え方が示されたわけですが,これについて,家庭裁判所の方ではどのように考えるか,御意見がございましたら,お願いできますでしょうか。 ○澤村幹事 先ほどからお話に出ていますように,新たな処分というものが比較的軽微な罪を犯した18歳や19歳の成人となる者の改善更生のために,その対象の者の要保護性に応じて必要な処遇を行うということを目的とする制度だということでありますと,そこで判断されるべき内容というのは,現在の少年審判手続で判断されている内容とおおむね共通する部分が多いと考えられますことから,現在少年審判手続で用いられています家庭裁判所の調査,審判の機能を用いて,この本処分に関する判断をするということについても,裁判所としては大きな違和感はないところでございます。 ○山﨑委員 私も,今のお二方と基本的には同じような考え方をしております。家庭裁判所が主体としてはふさわしいのではないかと思います。   重なるところはありますけれども,今の少年法上の保護処分において,要保護性の判断をする上では,対象者の人格的な要素とともに,環境的な要素についても,しっかり多角的な観点から調べる必要があるということで実務は行われておりますし,そのために,家庭裁判所調査官という,心理学ですとか教育学ですとか,人間行動諸科学と言われている素養を持った方々が,そういう経験を積んできて実務に当たっておられます。当部会のヒアリングですとか現地視察でも明らかになったと思いますけれども,このような仕組みによって,少年審判では非常にアセスメントが充実している,その結果,適正な判断がされて処遇にもいかされていると,こういうところが非常にメリットとして評価できるところだろうと思っています。   今後,この新たな処分を設ける場合には,要保護性という内容が全く少年法上のものと同じかどうかということは,まだ整理がついていませんけれども,かなり近いものだとしますと,やはり家庭裁判所調査官のそういった蓄積というのはいかしていくべきだろうと考えております。   ただ,先ほども申し上げましたが,少年法では,その目的として,健全な育成を期しという内容が入っているわけですが,新たな立法をする際には,どのような目的をうたうのか。それによって調査で可能な範囲ですとか内容というのが変わってくるのか,こないのか,こういったところはしっかり考える必要があるだろうという点は,申し上げておきたいと思います。   また,実際に処遇の有効性ということからしても,これも保護観察所等の現地視察で指摘されていましたけれども,成人の執行猶予における保護観察の場合と保護処分としての保護観察の場合では,ベースとされている基礎資料が異なり,アセスメントがきっちり行われている保護処分としての保護観察の方が非常に効果を上げやすいということが言われていますので,この新たな処分の大部分が保護観察ということになるのであれば,その処遇の有効性を担保するという意味からも,やはり家庭裁判所調査官の活用を考えるべきだろうと思っています。   更に言いますと,働き掛けということで,先ほどお話ありましたけれども,実際調査だけではなくて,その調査の過程で,家庭裁判所調査官が様々な働き掛けをして,対象者ですとか保護者にその問題性を認識させて,行動を変化させるような実際上の処遇効果というのも,これは,軽視できない非常に有効なところだろうと思っています。現在も家庭裁判所における教育的措置で様々な取組がされていることや,試験観察などにおいて,補導委託先という外部の機関との連携ももう幾つも持っているなど,家庭裁判所には活用できる資源がありますので,そういった社会資源を有効に活用しながら,対象者の改善更生を図っていく。その実質的な処遇効果という面でも,やはり家庭裁判所の活用を考えるべきだろうと考えています。 ○池田幹事 この処分は,要保護性に応じた処分を行うということで,家庭裁判所の御判断をいただくということが適切だというのは,私も異論はないところです。他方で,この処分は,前提として行為責任の範囲内で処分をするということが前提となっておりまして,その法益を侵害したことについて,非難が可能な限度において科されるということを担保する方策も,併せて検討しなければならないと思われるところであります。   この点に関して,部会でいただいた御意見の中に,「犯した罪に見合った処分をしなければならないという内容の注意規定を設ければ,裁判所もそれを基準にするから,不当な判断に至ることはないのではないか」という御指摘があったところですけれども,担保する方策としてそれが適切かどうかということや,あるいは,ほかに考えられるところはないかというところも併せて検討しておくべきだろうと考えます。 ○酒巻分科会長 ほかに御意見はございますか。   ないようですので,それでは,次に「手続の公開・非公開を含む審判の方式」についての意見交換に移りたいと思います。   御意見がある方は挙手をお願いします。 ○池田幹事 まず,現行の少年審判について申し上げますと,立法政策として,その手続を非公開とすることが適切であるという判断に基づいて非公開となっていると,一つ理解することができるのではないかと思います。   他方で本処分も,今御議論にもありましたように,家庭裁判所において少年審判と同様の手続を経て行うものとすることが考えられるわけですけれども,これも,立法政策として公開するか,非公開とするかということを検討する際には,手続を公開すべきだという方向の要素と,非公開とすべきだという方向の要素とをそれぞれ勘案して,いずれが適切かということを検討することになるものだと思います。   前者について,公開は相当だと考える方向の議論としては,現在の刑事裁判自体が公開を要請されておりまして,その裁判の公開というものは,裁判の公正を担保すると,制度として保障するという重要な意義があるという考え方に基づいているものと思われるわけですが,他方で,非公開とする方向の議論として,特に現行の少年法が少年審判手続を非公開としている趣旨や目的を確認しておくことが必要であろうと思います。   そこで,本処分の公開の当否・要否を検討する前提として,事務当局に現行少年法の公開に関する考え方の趣旨を御説明いただければと思うのですが,いかがでしょうか。 ○羽柴幹事 少年法第22条第2項が,「審判はこれを公開しない」と定めている理由については,「未成熟な少年の情操を保護するとともに,公開により少年が特定されることで,その社会復帰が妨げられることを防ぐことを目的とする」,「審判では,少年の要保護性を判断するために,少年や家族のプライバシーに関わる事項も明らかにされるため,その保護を図る必要がある」,「それと関連して,もし審判が公開されることになると,調査や審判において少年や保護者がそのような事項を明らかにすることをためらい,その結果,十分な情報に基づく適正な審判ができなくなるおそれがある」などと説明がされているものと承知しています。   なお,少年審判は非公開とされておりますけれども,様々な制度によって,その公正が保障されているものと承知しています。 ○池田幹事 今,幾つかの点について御指摘をいただいたわけですけれども,少年審判を非公開とする目的のうち,最初に御指摘いただいた「未成熟な少年の情操の保護と,その特定が社会復帰の妨げとなることの防止」という点は,本処分が成人を対象とするものなので,直ちには当てはまるものとは言えないと考えられるところであります。   他方で,本処分は,対象者の改善更生を目的として,要保護性に応じて処分を行うという点では,少年審判と共通する性質を持っていて,先ほどから出てきておりますように,審判の方式も,家庭裁判所において,家庭裁判所調査官の調査機能等を活用して資料を収集し,少年審判と同様の審判を経て処分を行うという方式とすることも考えられるところです。   そして,仮にそのような方式とするのであれば,先ほど,2点目以降でお示しいただきました,例えば,「審判の過程で明らかにされる対象者や関係者のプライバシーの保護」という趣旨や,あるいは「関係者に情報提供をためらわせないということによって,十分な情報を得て審判の適正を図る」という趣旨は,本処分にも当てはまるものだと考えられます。   併せて,公開自体は手続の公正を図るという趣旨で要請されるものですけれども,公開以外にも,告知や聴聞機会を設けるとか,あるいは弁解・不服申立の機会を設けるという形で,公正を図る手段は考えられるところでありまして,手続を非公開とした場合であっても,その公正さを保障するということは可能であると考えます。 ○酒巻分科会長 現に少年審判を行っている家庭裁判所の立場から,公開・非公開の問題について,御意見があれば伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○澤村幹事 具体的な手続が確定していない段階でありますので,この処分の手続というのが,現在の少年審判手続とおおむね同じだというような前提でお答えしますと,今池田幹事がおっしゃっていることとほぼ同じことになりますけれども,この処分の場合にも,家庭裁判所が対象者の要保護性を的確に判断して適正な処遇を選択するためには,非公開とすることが望ましいと考えます。   その趣旨は,今出ているようなこととほぼ同じですけれども,要保護性を判断するためには,対象者やその家族のプライバシーに関わる事項についての審理が必要となってきますところ,それらの情報は保護の必要性の高いものですし,仮に公開の手続で行うとすれば,対象者ですとか,その家族,学校などの関係機関が,必要な情報を開示することをためらうということが考えられ,そのような状況のもとでは,裁判所として適正な判断ができなくなるおそれがあると考えられるためということになります。 ○酒巻分科会長 ほかに御意見はございますか。   よろしいですか。   それでは,次に,「家庭裁判所調査官の調査機能の活用等,要保護性の調査の在り方」について,御意見を伺いたいと思います。御意見がある方は挙手をお願いします。 ○山﨑委員 家庭裁判所調査官の調査機能を活用すべきと考えるのは,基本的には先ほど申し上げたとおりでして,それがゆえに,それも含めた家庭裁判所が判断主体とされることが望ましいだろうということです。もう一つ,これは処分の取消しにも関わるところかもしれないのですが,先ほど家庭裁判所調査官による処遇的な効果も活用すべきだと申し上げたこととも関連するのですが,現在行われているような教育的措置で不開始,不処分になっているという扱いについて,処分と位置付けて処分をした上で解除するというふうな作りになるのか,あるいは処分を必要とする手続の過程において事実上の働き掛けと考えるのか,いずれかの方法論は別として,そういったことは,是非,選択肢として考えた方がよいだろうと思っております。   これは,試験観察についても同様でして,そういった現行で機能しているものを,処分あるいは手続にどう位置付けるかという観点も併せて検討する必要があるかなと思います。 ○加藤幹事 私も,山﨑委員がおっしゃっていただいたのと似たような意見ですが,いずれにしても,要保護性の判断に必要な資料を十分に収集するというのは,現在家庭裁判所調査官において,少年審判において担っていただいている機能の一つでありましょうし,加えて,御指摘のあった調査の過程においての働き掛けによって,改善更生を図るという機能,これも,現在家庭裁判所調査官が担っていただいている機能だと認識しておりますので,これらの家庭裁判所調査官の機能等を活用することが適切なのではないかと考えております。   さらに,新たに設ける制度との関係で,家庭裁判所調査官の役割を更に検討すべきではないかという御指摘も,そのとおりではないかと認識しております。 ○山﨑委員 先ほど公開・非公開のところで言い忘れたのですけれども,私も非公開がふさわしいと思っております。   ただ,池田幹事から,今回仮に18歳に下げた場合に,対象者が未成熟であって,社会復帰に困難を伴うということはなくなるとおっしゃったのは,にわかにそうは言えないのではないかと思います。少年法の適用上限年齢を18歳に下げたからといって,別に実態として少年たちが成熟するわけではありませんので,そこは,評価としては,やはり20歳以上の成人と比べれば類型的に未成熟である,という捉え方をすべきだろうと考えているのは,当初申し上げたとおりです。   あと,もう一つ申し上げれば,そういう年齢層の者ですと,なかなか公開の手続でどこまで法廷でしっかりと話せるか,率直にいろいろな自分の弱いところも出せるかという問題もあります。その意味で言いますと,やはり非公開の審判の方が対象者の問題性を出させやすいといいますか,その上での働き掛けというのがしやすいという面も,加えて申し上げておきたいと思います。 ○酒巻分科会長 ほかに御意見はございますか。この程度でよろしいでしょうか。   それでは,次に,「調査又は審判への呼出しに応じない者に対する措置の在り方」について,御意見がある方は挙手をお願いします。 ○加藤幹事 現行少年法で言えば,同行の在り方ということになるのだと思います。もちろんこの本処分,新たに作ろうとしている処分においても,調査・審判への対象者の出頭確保というのは重要であると考えられますけれども,ただ,その確保方法について検討を行うためには,結局どのような調査・審判を行うのかを前提として検討する必要がありますし,少なくとも処分や手続の大枠がある程度はっきりしていないと,言わば付随する手続である出頭確保方策について検討に入るというのは,なかなか難しい点があるのではないかと思われます。   したがいまして,出頭の確保は重要であるということは確認した上で,まずは,処分や手続の大枠についての検討を進めるということになるのではないかと考えます。その上で,出頭をどのように確保するかについては,措置の内容,措置を設ける必要性・相当性,あるいは措置を採る手続等を検討することになるのではないかと思います。 ○酒巻分科会長 この点について,ほかに御意見はございますか。   ないようですので,次に,「検察官又は弁護士等の関与」について,御意見がある方は,挙手をお願いします。 ○加藤幹事 検察官あるいは弁護士等の関与についてですけれども,まず,検察官の方から申し上げますと,これも,現行の少年手続においても,検察官の関与の在り方については大分議論があった上で,要件を設けて,あるいは関与できる部分を限定して設けられているという経緯もございますので,基本的に新たな設けられる処分の手続の大枠についての検討をした上で,それに応じて,その要否から検討していく課題になるのではないかと思われます。   弁護士等の関与の在り方についても,基本的には同じことではないかと思われ,結局その処分の手続の大枠の検討の結果を踏まえて,弁護士の方が,現行の少年法でいえば付添人でありますが,弁護士あるいはその付添人の関与の目的,役割,権限,そういったものを検討することは必要になるのではないかと思います。 ○山﨑委員 私も,今の加藤幹事と基本的には同じで,もう少し制度を,処分,手続が決まってきてからかなと思っていますけれども,弁護士の関与という観点で言いますと,観護措置のように鑑別のための身体拘束というのを認めるのかどうかということは,一つ関連してくるところではないかと思っています。 ○酒巻分科会長 この程度でよろしいでしょうか。次に,「処分の取消し」,それから,「不服申立て」についてまとめて意見交換を行いたいと思います。   さらに,最後に「その他」がございますが,ここまでに掲げられている検討課題以外の手続上の問題について考えられることがございましたら,それも含めて御意見を伺いたいと思います。 ○加藤幹事 前の2点について申し上げたのと基本的に同じであります。基本的には,制度の大枠についての検討を進めた上で,それにふさわしい処分としてどのような処分の取消しの仕組みがあり得るのか,あるいは不服申立ての仕組みがあり得るのかということを検討していくべき課題なのだろうと思っております。   もとより処分の取消しあるいは不服申立ての制度というのは,これ自体は重要なものだと考えられますので,検討の対象とはなり得るのだと思いますが,まずは,大枠を見通した上で検討に入るのが合理的ではないかと考えるところです。   若干付け加えますと,不服申立てについて申し上げれば,これはどのような処分に対して,誰がどのような理由で不服申立てを行うのかということ,その手続がどのようなものになるのかという検討であろうと思われます。   一方で,本処分が要保護性に応じて行うものであるということを前提にしますと,処分に付した上で,要保護性が解消したときには,その処分を取り消すということになるのでありましょうが,この場合に採る措置として,執行機関において解除するのかとか,あるいは裁判所において処分を取り消すということになるのかとか,その辺りも検討課題になるのではないかと考えているところです。 ○山﨑委員 まず,先ほど弁護士の関与のところで誤解を招くような言い方だったかもしれないので,一応もう少し説明しますと,観護措置のような身体拘束を伴うことが関連すると申し上げたのは,別に身体拘束がなければ弁護士は必要ないという趣旨ではなくて,裁判所において処分が決まる以上は,やはり手続には弁護士が関与するべきである,というのが基本的な考え方です。   その上で,捜査段階で身体拘束されている者については,被疑者国選弁護の対象範囲が拡大されてきていますので,それとの関係もやはり考えなければいけないでしょうし,さらに,捜査が終了した後も,観護措置のようなことで身体拘束が継続されるというか,新しく採られるのであれば,これはなおさら必要だということで,国選を含めた弁護士選任制度の対象とする必要性が更に高くなるであろうと,こういうことを考えているのが1点でございます。   もう一つは,こういう新たな処分を設ける場合,先ほど加藤幹事がおっしゃった整理との関係なのですけれども,検察官が起訴相当というものは起訴をし,残りのものは新たな処分にする,とした場合に,結果として,現行のような全件送致といいますか,起訴相当部分以外は全件を家庭裁判所に送るという考え方になるのかどうか。そこで家庭裁判所に送るべき事件と送らない事件というのを,さらに選択する余地を検察官に残すのかといったところも,一応検討すべきテーマかなとは思っています。 ○酒巻分科会長 事務当局が若干説明の補足を行うということなのでよろしくお願いいたします。 ○羽柴幹事 先ほど公開・非公開のところで,少年法第22条第2項につきまして,事務当局から説明をいたしました。その点を,委員・幹事の方々に引用して御発言をいただいたのですけれども,事務当局側の説明が言葉足らずで伝わりにくい言い方をしたかと思いますので,念のために申し上げさせていただきます。   第22条第2項の趣旨として申し上げました1点目は,未成熟な少年の情操を保護するとともにではありますが,そもそも少年について,特定がされないようにするという,そういう規律があることとのセットにおきまして,公開により少年が特定されることでその社会復帰が妨げられることを防ぐことを目的とすると申し上げるべきところでしたが,言葉が足らなかったので補足させていただきました。 ○酒巻分科会長 それでは,これで,配布資料7の検討課題等に記載されている検討課題については,一通り意見交換を行ったわけですけれども,現時点でほかに御意見のある方がおられれば挙手をお願いします。   よろしいですか。   それでは,若年者に対する新たな処分についての本日の意見交換としては,この程度にしたいと思いますが,よろしいでしょうか。            (一同異議なし)   本日の審議は,これで終了いたします。   今後の予定について,事務当局から説明をお願いします。 ○羽柴幹事 今後の予定について申し上げます。   次回の第2分科会の会議は,2月14日水曜日,午前10時から,場所は法務省第1会議室でございます。 ○酒巻分科会長 本日の会議の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を作成し,公表することとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。            (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。   本日はどうもありがとうございました。 ―了―