法制審議会戸籍法部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  平成30年2月9日(金)     自 午後 1時32分                          至 午後 4時41分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  戸籍事務にマイナンバー制度を導入することに関する意見書         死亡届出義務者および資格者に係る事情説明と要望         戸籍事務へのマイナンバー制度導入のため更に検討を要する事項 第4 議 事 (次のとおり)  議        事 ○窪田部会長 それでは,予定した時刻がまいりましたので,法制審議会戸籍法部会の第4回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして,ありがとうございます。   本日ですが,須藤委員,澤村幹事が御欠席と伺っております。また,小野瀬委員が遅れて参加されるということでございます。それ以外の方でまだお見えになっておられない方もおられますけれども,時間になりましたので,始めさせていただきたいと思います。   それでは,本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いをいたします。 ○渡邊幹事 お手元に配布資料目録,議事次第,委員等名簿を配布させていただいております。   またお手元に部会資料4と参考資料の13から15,それから磯谷委員が提出されました資料,黒澤参考人の提出の資料をあらかじめ配布をさせていただいております。不足の資料等ございましたら,事務当局まで随時お申し付けいただければと存じます。   配布資料の御説明は以上でございます。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   ただ今配布資料の御説明を頂きましたが,不足等はございませんでしょうか。   それでは,審議に入りたいと思います。   最初に,磯谷委員からの資料の御提出がございますので,磯谷委員から御説明をお願いいたします。 ○磯谷委員 磯谷です。先ほど御紹介いただきました日弁連からの意見書について,ごくごく簡単に御説明をさせていただきます。   日弁連といたしましては,これまでもマイナンバーについての危険性については指摘をしておりましたところでありますけれども,この度,戸籍情報とこのマイナンバーをひも付けするということについて,プライバシー侵害の観点,それから費用対効果の観点などから,そのようなひも付けはしないように求めるという内容の意見書を提出しております。   内容につきましては,お読みいただきまして,審議にいかしていただければと考えております。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   ただ今の磯谷委員からの御説明について質問等ございますでしょうか。   それでは,磯谷委員からも御説明がございましたが,分量がございますので,資料に今すぐ目を通していただくというのは難しいかもしれませんが,お持ち帰りの上,きちんと目を通していただいて,今後の議論の参考にさせていただければと思います。どうもありがとうございました。   それでは続きまして,本日は質疑の参考とするため,参考人の方をお呼びしております。事務当局から参考人の御紹介をお願いいたします。 ○渡邊幹事 本日は,死亡届の届出資格者の拡大というのが一番最初のテーマになっておりますけれども,この審議の関係で,特定非営利活動法人りすシステムの黒澤様に参考人として御参加を頂きたいと考えております。死後事務あるいは任意後見受任,そういった事務をNPO活動としてされている方ということになります。 ○窪田部会長 ただ今御紹介のありました黒澤参考人に御発言を頂くことについて,皆様御異議はございませんでしょうか。   それでは,部会資料についての議論に入りたいと思います。   事務当局からの説明の後に,黒澤参考人から御発言を頂きたいと思います。   本日は戸籍事務へのマイナンバー制度導入のため更に検討を要する事項について御議論を頂きます。   まず,部会資料の4の第1,死亡届出の届出資格者の拡大について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○杉谷関係官 それでは,部会資料4の第1につきまして,杉谷の方から御説明いたします。   まず,御説明資料として,この部会資料の4と参考資料の13をお配りしております。13の方は横になっておりますポンチ絵の方なのですけれども,こちらも併せて御参照いただければと思います。   まず,戸籍法上の死亡の届出でございますけれども,こちらは報告的届出となっておりますが,その人の権利,義務が消滅すると同時に,相続が開始したり婚姻が解消したりするなど,身分法・財産法上重大な効果が発生することになります。そのように,生存者の親族法の相続法上の利害が影響するところが大きいということもございますので,死亡の事実が発生した場合は,迅速,的確に戸籍にその旨を記載しまして,公証する必要があるということになります。   そのため,戸籍法は死亡者と密接な関係を有する者を,これを届出義務者又は届出資格者,届出をすることができる者ということで定めまして,届出の際にはこれらの者について確認することによって,戸籍の記載の真実性というものを担保しております。   一人の人間が死亡したという事実を確認するために,死亡の届出については必ず死亡診断書又は死亡検案書の添付を要することとしております。これが戸籍法の第86条第2項に定めがございます。そして,これらが添付されていない届出については,基本的には,原則としては受理すべきではないと解されているところでございます。このようなことで,戸籍への虚偽の記載を防止することとされております。また,その死亡した方のその人間の身元を確認し,戸籍上の個人と正しくひも付けるために,届出義務者,資格者を定めております。そういった形で死亡の届出をできる者も含めて規定がされているところでございます。   また,ちなみに死亡の届出に関するものとして,埋葬又は火葬の許可に関する事務を行っておりますが,死亡届出等の届出地の市区町村長と埋葬・火葬の許可をする市区町村長,これらは一致をさせることにしておりまして,こういったことで迅速,正確な死亡の届出と的確な埋葬又は火葬の許可が行われることを期するということになっております。   続きまして,2番目の方なのですけれども,死亡届の届出人に関する改正の経緯について若干触れたいと思います。   まず,戸籍法の第87条でございますけれども,第1項で,親族が第一順位,親族以外の同居者が第二順位,そして死亡の場所である家屋又は土地の所有者若しくはその管理人が第三順位ということで,これらの者に死亡の届出の義務を課しております。そして,昭和51年なのですけれども,戸籍法の一部が改正されまして,死亡の届出は同居の親族以外の親族もこれをすることができるということで,死亡届の届出資格をこれらの者に与えたところでございます。   このような改正が行われた背景でございますけれども,届出義務者は制裁規定等の関係からも,むやみにその範囲を広げるべきではないとしておりますが,その一方で,遠隔地であっても死亡等の事実を知ることは極めて容易であるということで,同居していない親族に届出の資格を付与することは,戸籍の迅速,的確な記載,報告を求める趣旨に反するとは思われないということで,同居していない親族が,義務者ではなくて資格者として追加されたところでございます。   さらに,平成19年でございますけれども,また戸籍法の一部が改正されまして,この届出資格者に後見人,保佐人,補助人,任意後見人が追加されております。   このときの経緯でございますけれども,近年親族等の付き合いのない独居者の死亡者が増えているということで,親族を探すことが困難な場合,あるいは探しても応じてもらえないこともあるということで,最終的には法務局又は地方法務局の長の許可によって,この死亡の事実を職権記載するという取扱いになることもあります。   ただ,このような手続を踏むことによって,埋葬許可が遅延するという問題点も指摘されていたというところで,生前の被後見人等を保護する法的地位にあった者である後見人等については,死後の届出の資格を付与しても差し支えないのではないかということで,こういった改正がされたということでございます。   そして,3番目でございますけれども,現状の問題点でございます。任意後見人については,任意後見契約をします。その後,任意後見監督人が選任されると。そうすると任意後見の契約受任者から任意後見人になります。この任意後見人になった時点で,届出資格者として資格が付与されるわけなのですけれども,任意後見受任者につきましては,戸籍法の第87条2項に定められている届出資格者には当たらないという現状でございます。   ただ,任意後見人と任意後見受任者の違いでございますけれども,本人の事理弁識能力が十分でない状況となって後見人,監督人が選任されることになったか否かの違いでございまして,生死の状況を知ることができる密接な関係を有する者であることには違いはございません。   そして,現行法上,死亡の届出については迅速かつ的確な報告を求めているということは先ほど申し上げましたが,任意後見人と同様に,やはり迅速,的確な報告ができる立場であるということが,この任意後見受任者にもいえるかと思います。   また,ポンチ絵の方にもグラフを掲示しておりますが,死亡届の届出人の不在による影響ということで,昨今では独居老人の増加に伴いまして,死亡届の義務者,あるいは資格者が不在となって,速やかに届出がされないという事案が増加するおそれも出てきております。   こういった近年の高齢化社会を反映いたしまして,身寄りのない高齢者を中心に,自身の死亡後の諸手続について,第三者に事前に委任する死後の事務処理の委任契約をする例が増加しているとされております。   そのような独居者が死亡した場合に,独居者との死後の事務処理の委任契約を受任した者に対して,独居者の死亡届の届出資格を付与すべきであるとして,全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会から要望が過去にも提出されております。   他方,ここで死後の事務について,そもそも本人に届出することができる事務なのかというと,若干疑問が生じるところでございます。すなわち本人が提出することができない自己の死亡届について他者に委任するということができるのかという疑問が生じるところでございますけれども,先ほど御説明したとおり,この戸籍法上の届出資格者については,この本人といかに密接な関係にある者かということが第一に主眼として置かれておりまして,その者に対して個別の固有の事務として,届出を出す権利というか,資格を与えるという考え方を採っております。   ですので,そもそもの死後事務受任の契約の有効性うんぬんとは別の話として,受任者自身に死亡届を出す資格があるかどうかということを主軸として,法制上の措置を検討していくということになります。   ただ一方で,委任後見受任者及び死後の事務処理委任契約を受任した者を,これらの者を届出資格者に加えるとしましても,その届出人が届出資格を有する者であるかどうかということについて,窓口の方で書面で確認できることが必要となります。   以上のことから,方向性としては,まず任意後見受任者については,死亡届の届出資格者を付与することとしまして,死亡届出をする際には,任意後見契約の登記事項証明書等を添付させることとするということが考えられます。   また一方で,死後の事務処理の委任契約を受任したものにつきましては,それが分かる何らかの書面によって確認することができるのであれば,それを届出人として認める余地があると考えられるところでございます。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   それでは続きまして,本日参考人としてお越しいただいております黒澤参考人から御説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○黒澤参考人 皆さん,こんにちは。ただ今,御紹介にあずかりました,NPOりすシステムというところから参りました,法務担当の黒澤史津乃と申します。よろしくお願いいたします。   本日は,このような会にお招きいただき,私ども法人が長年にわたって切実に願ってまいりました死亡届出の資格者の拡充についてということで,事情説明をさせていただく機会を与えていただきまして,本当に心から感謝いたしております。   今,詳しくいろいろ死亡届出については御説明いただきましたけれども,では私たちこういったNPO法人ですけれども,どういった業務を行っていて,どうして死亡届にこれだけ関わっているか,そして今までどういうことで困ってきているのか,そういったことをかいつまんで御説明させていただきたいと思います。   今日資料に付けていただきました書類を見ながらお聞きいただければと思います。   まず初めに,NPOりすシステムというNPO法人の概要というところなのですけれども,私どもの業務,一言で表現するとすれば,契約によって作られた家族ということだと思います。先ほども御説明にありましたように,従来型の家族には頼れない人,それから積極的に頼りたくないという人,そういった高齢者がかなり増えてきておりまして,そういった高齢者が,御自分が判断力を失ってきたときのこと,それから亡くなった後のこと,そういったことを積極的に自分自身で決めていこうという機運が高まってきています。   ただ,そういった方々でも,幾ら決めたこととはいえ,一人だけで老後を迎えて一人だけで亡くなっていって,その後の処理をするというのはもちろんできません。今まではそういうことを家族が全て担ってきたけれども,家族に頼りたくない,頼れない,そういう人たちのために高齢者の人の自己決定を何とかして,その実現を支援していこうという活動を私どもはやってまいりました。もうかれこれ25年間こういう活動をしてきております。   その間,特に積極的な広告宣伝活動,営業活動というのはNPO法人ですし,してきておりません。もうそういった方々のニーズ,そういったものを一つ一つ酌み上げていくことによって,今25年かけてここまでの形を作り上げてきておりまして,契約者の累計で今もう5,000人ぐらいになっております。   では,契約によって作られた家族であるということを申し上げましたが,その契約家族というのはどうやって作るのだろうということなのですけれども,それはまず一番大事なのは本人の自己決定,本人の契約意思ですので,その契約意思が担保されるということで,必ず公正証書による契約で行っています。それが一番重要なところだと思います。   お配りした資料の中で,4ページ目を御覧いただけますでしょうか。こういったちょっと横向きになっていますけれども,こういった図表になっています。   私どもは人生を三つのステージに分けて考えてくださいということを契約者の方々にお願いしています。私どもりすシステムの契約を考える方というのは,この図表でいうと一番左上,生前(自立)とありますが,全て自己管理可能な,この時期にいらっしゃる方が契約を考えると思います。そういう方がグレーな病気という時期を通過して,そのまま③の死後,亡くなるというステージに行く場合もあります。   もう一つは,1階下の②後見(認知症等)とあります。判断力を喪失してしまうような,そういったところに寄り道してから最後は死に行くということもあります。その中間でこのグレーというところをだらだら,まだらぼけとよくいわれますけれども,そういった状況にずっと行ってそのまま③の死のところに行くケースもあります。   どのルートを通っても,今,生前(自立),全て自己管理可能というところにいる人たちも,必ず最後はこの死後というところに行きます。ここにいらっしゃる皆さんも必ず最後はこの死後のところに行くわけです。   私どもは契約によって家族の代わりをしていくわけですから,この人生どのステージにいても,今は自己管理が全て可能ですけれども,グレーのところに行っても,それから判断力を喪失してしまった,この後見(認知症等)のところに行っても,それから亡くなった後でも,私どもが法人として家族の代わりですと手を挙げていかなければいけない。そのためにきっちりとした契約を3種類結んでいただくというやり方をしています。   そのステージごとに一番目の生前(自立)及びグレーゾーンとありますけれども,ここについては本人の判断力があるという前提ですので,生前事務委任契約という委任契約を作っていただきます。二つ目の判断力を喪失してしまったときのために,先ほど御説明にもありましたように,任意後見契約を必ず結んでもらいます。それから最後,亡くなった後のことですが,私どもは特に財産のところまでは踏み込みません。遺言はまた別途になりますけれども,その前の段階,お体のちょっと生々しいお話ですけれども,亡くなった後,遺体を搬送して火葬して納骨すると,そういった一連の御遺体の処理の手配をすること,それから荷物のこと,それからあと死亡の各種届出の手続のこと,そういったことを死後のことを委任する死後事務の委任契約,この三つの契約,これを公正証書でしていただく。これによって初めて契約による家族というものが作られます。それがこの点線で囲ってある契約家族の守備範囲ということになっております。   これをすることで何ができるかということなのですけれども,この契約家族の守備範囲というのは,お年寄りが老人ホームに入居したり,それから病院に入院したりする際には身元引受保証人というのを求められます。身元引受保証人の業務範囲とこの契約家族の守備範囲というのが完全に一致すると私たちは考えています。こういったことで,私どもは身元引受保証人がいなくて老人ホームに入れないとか,そういう方たちの対応もしてきております。   では,戸籍法の死亡届とどういう絡みがあるのかということなのですが,この三つの契約のうち,後の任意後見契約と死後事務委任契約,この二つが関わってくると思います。任意後見契約については,もうずばり該当の法律がございますので,契約の内容としては,任意後見契約に関する法律という法律に完全に沿った内容になっています。この中でもやはり先ほどお話にありましたように,亡くなる直前に本人の事理弁識能力があるのかないのかということによって,最終的な立場が任意後見人という立場になっているのか,それとも任意後見受任者という立場で死を迎えるのか,それはどちらか分かりませんけれども,そのどちらにおいても必ずやらなければいけないことは,死亡の事実を知ったら終了の登記をしなければいけない。これが義務として課されているということがあると思います。   それから,死後事務委任契約についてなのですが,これは特に該当する法律が今は私の知るところではございませんので,これはもう私どもが25年間蓄積してきた内容を委任の内容としています。私どもが必ず入れているのは,公正証書の中に本人の祭祀を主宰する者の指定を受けておくということです。祭祀主宰者の指定を受ける。それによって親族ではない私たちが,御本人の火葬や納骨ができるようにするということです。その上で死亡届を含む各種年金,保険,それから携帯電話とかいろいろありますけれども,そういったものの死亡による契約終了であったり,そういった死亡の届出ということも行っていますし,当然御遺体の搬送,それから24時間以上の保管,それから火葬,納骨,そういったものの全て手配を行っています。   実際に私どもが葬儀社というわけではないので,実際に葬儀をするというわけではなくて,手配師のようなものだと考えていただければいいかと思います。ちまたでは,葬儀社による生前予約,生前に葬儀を買っておく,互助会のようなものとかもいろいろあると思いますが,そういうものとはちょっと一線を画していると思います。そういったものは結局,亡くなったら御家族が約束していた葬儀社に連絡をして,御家族の下でまた進んでいくということがありますので,やはりそこで親族というのが必要になってくるのです。そうではなくて,私どもの死後事務委任契約は,家族が全くなくても祭祀主宰者の指定を受けていることによって,私どもが喪主の形になって死後事務を執り行っていくというところが大きな違いかなと思います。   ここで今,死亡届という言葉が初めて登場したのだと思うのですけれども,このように先ほど申し上げたように,今自立にいる方も必ず3番の死後に行きますので,私どもの契約者,先ほど累計で5,000人と申し上げましたが,既にその中で亡くなった方というのが約800件ぐらいもう既に,そういった死後事務を執り行ってきています。現存の契約者数も3,000人ぐらいいらっしゃいます。この現存の3,000人の方,もちろん解約ということはありますけれども,解約を除けば,今後この契約者は必ず先々亡くなりますので,その分,死後事務,死亡届というのが必要になってくる。契約者の数だけ死亡届が今後出てくるということが考えられるのです。   ですので,これだけの件数を私ども過去も800名の方,いろいろと死亡届を扱ってきていますので,かなりの実績といろいろそういった実情というものは,いち早く把握しているのではないかなと自負しております。   では,死亡届の実際というのを次にお話させていただきます。レジュメでいうとちょっと順番が前後しますけれども,3番のところです。死亡届の実際ということなのですけれども,皆さん当然御存じのとおり,死亡届,人が亡くなれば必ず必要となるのですけれども,ここにいらっしゃる先生方も,もちろんこれまでたくさんの死と関わってこられたと思うのですが,その数だけ当然死亡届は提出されたわけです。だけれども,その死亡届一つ一つについて,その関わったことのある死,その方の通夜,葬儀のことは覚えていらっしゃると思うのですけれども,死亡届について意識されたことってほとんどないかと思うのです。実際御自身の例えばお父様,お母様が亡くなったときの死亡届というのは書いたかなとか,余り意識されていないと思うのです。   これは,同じように戸籍法に記載のある出生届とか婚姻届とか,それは覚えていらっしゃると思うのです。御自分で提出なさるというのとは大いに違っているところだと思います。先ほどの御説明にあったように,死亡の届出も義務者と資格者というのが厳格に規定されているのですが,実際はどうなっているかというと,使者として各役場の戸籍係に提出に行く,提出に走るというのが実際だと思うのです。御遺族は悲しみに暮れているわけですから,その葬儀社が代行してそういうことを行っている。   なぜ急ぐのかということなのですが,それも先ほど御説明いただきましたけれども,墓地埋葬等に関する法律の第5条になるのですけれども,この火葬・埋葬許可証というのは,死亡届の受理と必ず引換えに行われるのです。なので,死亡届が受理されなければ火葬・埋葬の許可証が出ない。つまり死亡届が受理されないと火葬ができないということなのです。なので,もういち早く死亡届を受理してもらわなければ困るということで,そこで葬儀社の社員の方が走っているわけなのですけれども,でもその裏には,そこで厳格な死亡届の義務者若しくは資格者が届出人として名前を書いているという大前提があるわけなのです。しかし,死亡届の届出人に名前を書いてもらうにも届出人が分からないということでは,走って出しに行こうにも出せないという事実がある。それが死亡届の実際,今まではそこで困ることが余り表立ってはなかったのですけれども,私どもが扱う中では非常にそれが増えてきているということがあると思います。   一つ戻って,2番目の,りすシステムにおける死亡届の類型というところをちょっと御覧ください。りすシステムが関わる死亡届の届出人,誰を選んでいくかということで,ここにちょっとざっと挙げさせていただきました。まず同居人がいる場合,これはもう明らかに同居の親族だったり親族でなくても同居人であれば義務者になりますので,それは問題ありません。それから,幾らひとり暮らしであっても,公立病院で亡くなった場合には,もうこれは公設所の長として出すということで問題ありません。従来問題が多かった私立病院で死亡した場合,これも私立病院の長が,実は家屋管理人として院長先生がこれは病院の住所と院長としての名前で出せるということになっているので,これも今は余り問題がなくなりました。   (4),(5),(6)とアンダーラインが引いてありますが,これは少し問題が大きいケースなのです。老人ホームと施設で死亡した場合なのですけれども,これは普通,家屋管理人として施設長さんというのが挙がると思うのですが,これが拒否されてしまうケースが結構あると。それから独居の方が賃貸住宅で亡くなった場合,これも家主というところがあると思うのですが,これも家主もやはり拒否してしまうケースがある。   では,4番,5番で誰か同居していない親族を探せばいいのではないかということなのですが,この同居していない親族というのは,義務者ではなくて資格者ですので,いや,もうそんなの嫌だよと拒否されてしまえば,そこで強制はできないということになってしまう。   次,7番,こういった場合でも,先ほど話にあったように,成年後見人が付いていたり任意後見契約でも本人が事理弁識能力を失って任意後見人となっていれば,その立場で提出することができるので問題はないと。   8番,これが一番大きな問題にもなってくるのですが,お一人暮らしで賃貸でなく持ち家に住んでいると。最近よく話題になるいわゆる孤独死,自宅で死亡してしまうケース,これで親しい親族もいない。当然持ち家なので家屋管理人もいない。後見人も付いていない。突然死だったといった場合には,これはもう拒否されるとかいう問題以前に,義務者も資格者もいないという状況になってしまうということがあります。   それでは,次のページに行きまして,こういった大きく分けて八つの類型の中で,この中でもやはり死亡届の現場で,実際に混乱の多い事例というのを挙げると,4番と8番だと思います。最初ここ,持ち家の自宅で死亡したケースとありますが,これが一番最後に申し上げた8番なのですけれども,これはもう申し上げたとおりで,今これから親族との付き合いも全くない,独身で当然配偶者も子供もいない独居の方,そういう方が自宅で突然亡くなりました。孤独死というのがニュースにはなりますけれども,その届出を誰がするかというところまではニュースにならないと思います。でも実際,これは届出人になる人が誰もいないという例だと思います。   もう一つが,これも私ども非常に多い例なのですが,4番の老人ホーム等の施設なのです。ここで,今,厚労省なんかもなるべく病院でなくて自宅や老人ホームで自然な死を迎えようということで,みとり介護というのを非常に推進していると思うのです。そうした流れの中で,私どもの契約者も病院ではなくて老人ホームのみとり介護で亡くなる方がとても増えてきています。   そういった場合というのは,そもそも私どもの契約者は家族がいないとか頼れないとかいう人たちなので,では死亡届,誰に届出人になってもらおうと,まず考えるのが老人ホームの施設長さんに,あなた家屋管理人として義務者なので,届出人として名前を書いてくださいとお願いするわけです。でも,まず返ってくるのが,もうぎょっとして無理ですと言われるのです。そんな個人情報をさらすようなことはできません。もう大体7割,8割それで断られます。やはりこうした制度が周知されていないこの死亡届の届出人のということが問題になっているかとは思うのですが,もう絶対に駄目だと言われてしまう。ただ,そこで幾ら説得しても,もう時間との闘いなので,私どもはそうすると,役所の窓口に相談に行くと,こうこうこうなのですと。   結果,どういう結末になるかということなのですが,一つは,役所がそこで親族探しをしてくださるのです。親族探しをしたら非同居の親族が見付かりました。そこで半無理やりお願いをして渋々引き受けてくれました。それで何とかなるケースもあります。   もう一つは,探したけれどもいなかった。探して見付かったけれども断られた,そういうケースがあります。そういうときにはどうするかということなのですけれども,さきの御説明では市区町村長の職権で記載の消除という方法もあるとは聞いておりますけれども,それには所管の法務局長の許可が要るとか,いろいろと手続が煩雑になってしまい火葬までに時間がかかってしまいます。   本当に死亡の届出というのは,皆さん御承知のとおり人間の権利義務の主体の終期を決めてしまう大事なものなのに,こんなに不安定で綱渡り的な届出人探しというのを日々行っているというのが,私どもでの現状ということなのです。   そこで,最後に結論としてということなのですけれども,私どもからのもう長年切実に願ってきた要望ということで,任意後見受任者,それから死後事務を受任している者,この二つを何とか死亡届の届出資格者に加えてはいただけないかということで,これはもうただ民間の私どものような小さな一法人が業務上困るからというだけの必要性ではないと思うのです。いろいろと法律には必要性と許容性というのが必要だというようなことを,私はもう素人ですけれども,そういう教えを受けたこともありますけれども,その必要性という面からいえば,やはり今後想定される日本の社会の家族構成の変容というのが,まず第一に大きくあると思います。   今,りすシステムの会員さんの家族構成というのは,恐らく日本の30年後を映す鏡のようなものだとも言えると思うのです。現在の高齢者ではまだまだマイノリティー,少数派だと思うのですけれども,もうりすシステムの会員さんの現在の高齢者は,子供がいない,配偶者もいない,いたけれども亡くなったというのも含めて,離婚した方も非常に多いです。そういった配偶者なし,それとかまだまだ兄弟とかがいる人は多いのですけれども,中でもあの世代でも一人っ子という方もかなりいます。そういった方々を契約者に抱えている私たちが,今これだけ死亡届出人がいないと困っているということは,では私ぐらいの世代が30年後,みんな高齢者になってきたときに,一体どういうことになるのだろうと。やはり現行の戸籍法87条の規定だけでは,やはり戸籍の死亡届の受理というのは,もうどうしたってスムーズに進まなくなるのではないかということなのです。   ですから,やはり先ほど御説明にあったように,任意後見受任者や死後事務受任者というのは,死亡の事実をいち早く知れる。遠くの付き合いのない親族よりは確実に死亡の事実は知れるということで,ここに必要性もあるということだと思います。   もう一つの一方の許容性についてはどうかということなのですが,任意後見受任者については,先ほど申し上げたとおり,亡くなったことについて,終了の登記,後見登記で終了の登記をしなければいけないと,法律で義務になっていますので,それもありますし,そういった登記があるということで,その権限が登記されている,登記事項証明書というものもありますので,そこが大きく挙げられると思います。   一方で,死後事務委任契約については,多少難しいところもあるかもしれないのですが,私どもの法人は,任意後見契約を必ずしていただいているので,それほど問題はないのですが,任意後見契約を締結しないで死亡事務だけを受任しているというほかの業者もたくさんありますので,これから私たちの法人だけのことでなく,全体を考えていくとすれば,やはり火葬・埋葬の権限を持っていても死亡届が受理されずになかなか火葬ができないという事態は避けていったほうがいいのかなということを思います。   最後としては,死亡届がもたらす意義というのを考えれば,安易に範囲を広げ過ぎるのもよくないというのももちろん重々承知しているのですけれども,やはり任意後見受任者や死後事務受任者の権限,本人の意思によって与えられた権限をしっかり確認するということによって,より今の,それから今後想定される現実の社会に適合した,そういった届出,死亡届出ができるようになるといいなと私どもは切実に願っておりますし,期待しております。皆様どうぞ御検討のほどよろしくお願いいたします。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   現在の状況とそこでの問題について,大変に分かりやすく御説明を頂いたかと思います。   それでは,せっかくの機会でございますので,ただ今の黒澤参考人からの御説明に対して,委員,幹事の皆様方から何か御質問等はございませんでしょうか。 ○久保野幹事 御説明どうもありがとうございました。非常に問題状況を理解することができました。それで,1点質問させていただきたいのですけれども,火葬・埋葬の権限がありつつも死亡届が出せないということについて,とりわけ死後事務委任のみ契約されている場合の困難について最後に教えていただいたのですけれども,それとの関係で,途中の御説明で,りすシステム様の場合は,祭祀主宰者の指定を受けておくというお話がありまして,その関係といいますか,つまりどういう事務を委任した人の場合に,特に死亡届が出せないことに困難が生じるのかということについて,火葬・埋葬の権限を付与されるということと,その祭祀主宰者の指定を受けるということの関係について教えていただけたらと思います。お願いします。 ○黒澤参考人 ありがとうございます。   ほかの業者さんがどういうふうなやり方で死後事務というのをやっているのかというのは,私ども余り詳しくは分からないのですけれども,りすシステムのやり方としては,当然死後事務の委任を受けるメニューの中で,御遺体の搬送からそれから法律で定められている24時間以内の保管をする。それから火葬をして納骨をする。実際にはその手配ということになると思うのですけれども,そういうことが書かれているわけですけれども。   それとはまた別の観点から,果たして親族でない私たちが,そういったものを手配する権限があるのかどうか,もしそこをないと言われてしまってはできなくなる。後から突然出てきた親族に何の権限があってやったのだと。その死後事務委任契約自体が,もともとすごく不安定なもの,死後の委任契約が有効だと最高裁の判例が出たのも90年代になってからですので,そういったこともあって,やはりより確実にその権限を明らかにするために,やはり民法上で規定されている祭祀主宰者の指定というものを受けておけば,後々文句は言われないだろうなという,そういうことから,ちょっと観点は別になるかもしれないのですけれども,その死後事務のメニューの中に祭祀主宰者の指定とあるわけではなくて,メニューは具体的な火葬であったり納骨であったり,一方で,公正証書の中に必ず一文,祭祀主宰者の指定というものを入れていただくというようにしています。 ○窪田部会長 久保野幹事,よろしいでしょうか。 ○浦郷委員 御説明ありがとうございました。   本当に私たちが知らないところを説明していただけたと思います。   一つ気になりましたのは,この死亡届の届出をすべき者,できる者ということで,事前説明のところで第3番目に家主,地主又は家屋若しくは土地の管理人ということで,その人は届出義務者ですよということを説明いただいたのですけれども,今のお話だと,老人ホーム等又は賃貸住宅等でも,ここが拒否をされてしまうということでした。賃貸の場合は,昔は大家さんと借人,店子はとても近い関係だったと思いますけれども,今は随分,本当に管理だけのところもあって,なかなか離れているから拒否されてしまうと思いますけれども,この老人ホーム等の施設というのは,最終的に死亡もあり得ることはある程度想像できますよね。そうであるにもかかわらず,そこを拒否されてしまう。でもここは義務ですよということでお願いするということはできないのかというところをちょっとお聞きしたいと思います。 ○黒澤参考人 ありがとうございます。   もうそこが今一番困っているところで,本来義務者なので,私どもも当然そういった説明はするのですけれども,まず時間との闘いなので,そこで例えば本社とどうこうと法務部とどうこうとかいうことをする時間がないということと,やはり全くそのことについて理解がないのです。全く知られていないというか。ですから,本来は,今回は私どもの説明の要望としては資格者の拡充ということなのですが,もともとはそういったことを周知徹底してほしいということもあるのです。   これはまた管轄が法務省とは違うとは思うのですけれども,厚労省の方でみとり介護というのを,これは老人ホームとかあと自宅でのみとり介護というのも推進していくということなのですが,それを推進していくのであれば,その裏返しにそういうことが起こる,それから私どもとしては,やはり老人ホームの施設長に就任するときは,そういうこともあり得るということを,当然に理解していただきたいのだけれども,そういう教育は全くなされていないというのが現状で,逆にこの間あった事例では,そういったお宅は義務なのですよといったら,では何でお宅は任意後見人になっていなかったのですかと怒られたのです。いや,本人のまだ事理弁識能力があるうちに,死亡届出人がいないからと監督人選任の申立てをするのもおかしな話ですと言ったけれども,全く通じないのです。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   浦郷委員の御質問と同じ印象を抱きまして,みとり介護で老人ホームに入ったのに,死亡届も出してもらえないというのは,ある種衝撃ではあったのですが,これは参考人というよりは事務当局に御質問をすることになるのかもしれませんが,第3の家主,地主又は家屋若しくは土地の管理人に,老人ホームの施設長は該当するのでしょうか。 ○渡邊幹事 一般論として申し上げれば,家屋そのものの管理人が老人ホームの施設長かと思いますので,当たると考えられると思います。ただ,義務者ということで列挙されておりますけれども,同居の親族については,これが義務者だということについてはよく分かりやすいところでございますが,それとは少し違うというのもあるのかと思います。いずれにしましても,一般論で申し上げれば当たるということになろうかと思います。 ○窪田部会長 分かりました。   家主という場合は建物の賃貸借がある場合ですし,地主というと土地の賃貸借がある場合で,家屋若しくは土地の管理人というと,むしろ自己所有の家屋若しくは土地について管理人がいる場合であるのかなという当初抱いていたイメージがあり,そうだとすると,そもそも第3に当たるのかどうかも議論の余地があるのかなと思い,質問させて頂きました。だから当たらないという趣旨ではなくて,分かりやすく当たるようにしてしまえばいいのだろうなと思いますが,その点をちょっと確認させていただきました。   ほかはいかがでしょうか。 ○鷲﨑幹事 御説明ありがとうございます。   今回この届出資格者について範囲を広げるという方向はとてもよいことだと思ったのですが,順位について制限はないということを維持したとしますと,仮にそこで何か資格者の範囲を広げることによって,何か問題を運用上生ずるという懸念はないと考えてよろしいのでしょうか。つまり理論的には,例えば同居していない親族に一切通知することなく事後処理の委任契約を結んでいる業者の方が,勝手にとは言い過ぎなのですが,その契約に基づいて直ちに届出をして埋葬するということは,理論的には可能ということになりますでしょうか。 ○黒澤参考人 そこはなると思います。私ども,りすシステムの元々の理念が自己決定ということなのです。やはりそこは財産の法定相続人というところとは切り離して考えるべきだと思っておりまして,私どもも契約のときに亡くなったときとか,緊急時に誰に連絡してほしいかというのをあらかじめ必ず契約時に聞いておくのです。中にはもう一切知らせないでほしいという方もいらっしゃいます。そういうときに,でもこの死亡届のことがあると,無理やり探し出して知れてしまうということがあるのです。   本来私どもが一番大事にしているのは,自己決定,自分の意思を死後も貫いてほしいということがあるので,知らせないでほしいという人の親族には知らせたくない。ただ,相続とは切り離すので,そうはいっても最終的に御本人の自宅の片付けをして貴重品を引き揚げた上で,遺言がないから相続人に引き渡すというときには,もちろん戸籍調査をして法定相続人に当たる方にはお引渡しをするのですが,そのときには,もう必要な死後事務については御本人の遺志に沿った形で進めさせていただきましたと。もちろん必要があればそういった書類は全部とってお見せすることはできますけれどもというような形の対応をしているので,これも考え方なのだとは思うのですが,私どもはそういう考え方をしているので,そのためにもやはり祭祀主宰の指定というのを確実に受けておく,公正証書で受けておく,そこをやはり大事にしております。 ○木村幹事 大変丁寧な説明,どうもありがとうございました。   1点質問なのですけれども,一番最後に御説明いただいた点で,死後事務受任をしている者のところについて,りすシステムさんでは契約を締結しているのだけれども,実際に契約を締結していない業者も多いというふうな表現をされたのですが,受任をしていて契約を締結していないというのは,どういう御趣旨だったのか。つまり公正証書という形での契約はないという意味なのか,もっと違った意味なのかという点について教えていただければと思います。 ○黒澤参考人 すみません,最後早口になったのであれだったと思うのですが,そのときに申し上げたのは,りすシステムとの契約というのは,必ず3点セットなので,生前の委任契約,それから任意後見契約,死後の契約,三つそろっていて初めて家族の代わりができるという考え方なので,任意後見契約も必ずしているのです。だけど,ほかの業者さんでは,その任意後見契約をしていないというケースもかなり多いみたいなのです。認知症になったらそのときに法定後見で成年後見人を付ければいいとか,そういう形で,当然その任意後見契約をやらなければ公正証書でなくても,任意後見契約は公正証書でしなければいけないという法律の定めがあるので,任意後見を入れると必ず契約は公正証書になるのですが,逆に任意後見を入れなければ,私署契約でも可能になってくるという実情はあると思うので,だからかどうかは私は分からないですけれども,死後事務委任契約だけをしていたりとか,任意後見を抜かして生前の委任契約と死後だけをやっているというケースがあるというふうな意味で申し上げたので,死後事務を受任していて契約していないというのはないと思います。ただそれが公正証書か私署,公正証書でない契約かは分からないですけれども。 ○久保野幹事 立て続けで済みません,もう一つ質問が今出てまいりました。と申しますのは,先ほど資格者の間で順位のようなものを考えなくてよいのかという質問があったのですけれども,義務者と資格者の関係についてどう考えるのかということを考えておりまして,法制上どうかというのは,後ほど事務局に教えていただこうと思っているのですけれども,実務上の扱いとしまして,先ほどおっしゃったように,自己決定でこの方という,りすシステムさんにというので委任があったとしても,ごめんなさい,曖昧さを残す第三順位などは省きまして,第一順位の義務者がいらっしゃるようなときというのは,ケースとして少ないのかもしれませんけれども,義務者がいれば義務者を優先するというお考えで動かれているか,そこは違うかという点を教えていただけますでしょうか。 ○黒澤参考人 そうですね,その第三順位の家屋管理人は,非常に先ほどの老人ホームの問題がありますので,それは省くとして,通常幾ら私たちのようなちょっと変わったというか,マイノリティーの家族構成のいる方であったとしても,当然に同居人がいれば,例えば御夫婦なんかの場合が多いですけれども,同居人がいればその方に頼んでいきますし,病院で亡くなった場合には病院長というのはあると思います。やはり余り,ごめんなさい,私どももそこまで優先順位を考えてというような動きではなくて,必然的にその方がやりやすい,病院長に当然死亡診断書を書いてもらったついでに,いないのでということで死亡届の方の届出人になってもらうという,とにかく迅速性という意味ではそっちが速いと。もし任意後見人で後見人になっていたとしても,後見人は資格者なのですけれども,ただ後見人として出すのも簡単かと思いきや,実は後見登記事項証明書を添付しなければいけないので,もし金曜日の夜に亡くなったら,月曜日の朝を待たないというような事態も生じてくることがあるので,やはり迅速性ということを考えれば,義務者の上位の順位の人たちに出してもらうほうがやはり,やりやすいという言い方は変ですけれども,それはもう便利です。 ○窪田部会長 ほかはいかがでしょうか。 ○大橋委員 今日はありがとうございました。   先ほど死後の世界,死後のところに入ると法律がないというお話があって,実はこういうふうにきちんと登記とかされて契約をしっかりやっているところは問題ないとは思うのですけれども,私のところに相談が来るのは,むしろそういうちょっと怪しげな業者が,だんだん衰えていく老人をいいことに,財産のところにも手を付けていろいろやり過ぎてということで,消費者問題の末端みたいな話が出て,だけど,主務官庁がいないというようなところで,さあどうするというので,国会かなんかから宿題が出て,消費者庁と厚生労働省が消極的な権限争議をやっているような状況がある中で,今回資格を広げようということをするんだとすると,こういう登記とかをきちんとされているところであれば,それを証明書で出してやるというのは非常に分かりやすいのですけれども,登記していないような団体が出てきたときに,窓口でこの人は大丈夫ですということを確認するということで,今日は事務局から出てきた書類では,何らかの書面というやり方をしているので,これは具体的に何で確認するのかなというのは,ちょっと大事なところになるかなと思うのですけれども,具体的に何を見たらよろしいのですか。 ○黒澤参考人 私,これはもう本当に私の個人的な今の考えなのですけれども,やはり公正証書による契約なのかなというところは思います。本人がきちんと契約意思を持って御自分の死後の事務を頼んだということ,それがやはり私署契約では,本人の契約意思というのが果たして本当に担保されているのかどうかは分からないというところがありますし,やはり死後事務受任といったときに,私も範囲の広げ過ぎというところは多少懸念材料として思っているのですけれども,その一つにはやはり,先ほど私どもは葬儀社の生前予約とは違うのだよということを申し上げましたが,葬儀社が,いや,うちは生前に死後の葬儀を契約していたのだと言ってくれば,それもでは死後事務委任契約なのかということにもなりかねないと思うので,やはりきちんと,例えば公正証書で私たちがやっているように,祭祀主宰者の指定をしているというところをもって,きちんとした死後事務の受任ということにつながる。   でも,果たしてそれが私なんか実務を見ている中で,夜間の戸籍の担当窓口がそれを全部チェックできるかというと,そこもまた難しい問題にはなってくるかと思うのですが,考えられるのはそういうところかなと。   あと,おっしゃっていただいたように,昨年1月の内閣府の消費者委員会の建議というので,やはりこういった事業をやっているところの監督省庁がないということで,非常に問題になっていまして,それについても今すごく動きがあって,いろいろ調査には入っていて,いろいろとこれから整理がされてくるということがあるので,それも私どもも期待しているところの一つではあります。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   ほかはいかがでしょうか。   本日のお話は大変参考になったかと思います。特に死後の事務処理に関しては,多分死後の事務処理自体が非常にたくさんの内容が入っているという問題と,何人かの方から御質問が出た点も,恐らく死亡届について誰が出すかという問題と,通常はそれに伴う葬儀を誰が主宰するのか等々の問題,複数の問題があるのかなと思って伺っておりました。大変に参考になりました。どうもありがとうございました。 (黒澤参考人退室) ○窪田部会長 それでは,ただ今参考人からも御説明を頂いて,その中でもかなり実質的な話も出てきたかと思いますが,死亡届について届出者の拡大について少し議論をすることができたらと思っております。   御質問も含めてということになろうかと思いますが,こういう方向で考えられるのではないかという御意見も含めてお出しいただければと思います。 ○新谷委員 NPO法人りすシステムの方からお話ありましたけれども,私は公証事務に携わったものですから,任意後見契約等と死後の事務委任ですか,この関係について作成段階からのお話をしたいと思うのですけれども,まず公証事務の場合は本人確認を必ずするということになりますので,その意味では公証人が委任者及び受任者の本人確認をすると。公正証書の中身とすれば,委任契約,それから任意後見契約を作るときには,必ず委任者については本籍と住所,氏名,生年月日,これは書くということになっていますので,例えば委任契約のまま任意後見,いわゆる任意後見監督人が選任される前に亡くなったといった場合についても,本籍が必ず委任者は書かれますので特定できると。   これは必ず任意後見契約というのは,先ほど登記の話をしていましたけれども,登記所に公証人が嘱託をするという,こういうシステムになっていますので,登記事項証明書には必ず委任者の本籍が出てくるということになると,本人の特定については間違いないだろうと,こう言うことができます。   それと,実務上いろいろ任意後見契約が,実際に任意後見監督人が選任される前に亡くなるケースというのは結構多くございます。それは現実問題として,私のところにも契約をされた方が市役所の窓口へ行って,「新谷さん,亡くなったのよ,おばあちゃん。届出をしに行ったら私では駄目なのよ。どうするのよ」と言われたことがありますので,それは市役所の方といろいろお話してくださいということでしましたけれども,やはり任意後見人のところと任意後見監督人が選任されるか受任者のままなのかということの違いがあるので,その辺のところは,実情からそこについては資格を与えてもいいのかなというのは個人的な感想です。   それからもう一つは,死後の事務委任契約,これは3点セットということでお話がありましたけれども,3点セットでやる場合もございますし,1点だけでやるケースも幾つかやりました。それについても,私も同じように御本人については,本来公正証書の任意後見契約のときは本籍を書きなさいとなっていますけれども,死後の事務委任で本籍を書くという規定は恐らくないと思います。   通常であれば本人特定のためだけだということで,住所,氏名,年齢,生年月日だけだと思いますが,私は死後の事務委任でも委任者については必ず本籍を入れておいたほうがいいですよということで,別に余分な事項を書くわけではないので,本籍ということですから,戸籍も必ず添付させていただいて,確認をしてということでやっています。   その中で委任契約の中身については,いろいろありますけれども,祭祀承継という話もしました。僕は個別具体的には,葬儀のこと,供養に関する,それから永代供養に関する一切の事務だとか医療費,施設利用料,その他いわゆる終わった後の債権があれば,その債権の受領というようなこと。   もろもろほかにもありますけれども,あとは亡くなった後,官庁等への届出事務を委任すると出していますけれども,ここで現役のときにはまだ,この官庁等への届出義務が入ったとしても,これは戸籍の届出は別個の義務者と資格者があって,両方には入っていませんから,戸籍だけはできないですよということを,今注釈を含めてやっていたというのは実情ですが,その意味では死後の事務委任も公正証書でやるということであれば,公証人の方が本人確認をして,委任者,受任者を確認して,本籍まで記載されていれば,それで死亡届というのは,亡くなった人が戸籍上のAという者と死後事務を委任したAという者がイコールであるかどうかというのは,チェックポイントになると思いますので,そうすれば公正証書で本人確認しているということであればいいし,登記事項証明書は当然ないわけですけれども,公正証書は必ずお客様の方に正本を渡します。若しくはなかったら謄本の請求ができますので,それを死亡届書に添付すれば,本人が間違いなく亡くなったということの担保ができるのではないかなと思います。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   新谷委員,1点だけ御質問させていただいてよろしいでしょうか。   恐らく先ほどのNPO法人のような形でざっと定めておく,あるいは新谷委員から死後の事務処理委任についてこれこれの内容が定まっているという,ある意味で,それだけ全部そろっているのであれば,制度の仕組みを変えれば,そうした場合に死亡届の提出者であるということを認めるというのは,もう問題なしにできるのだろうと思うのですが,今の事務処理委任契約がある程度限定されているような場合,そういった場合どうなるのかなということで,届出ということ自体は入っていなくても,あるいは葬儀ということがあるのであれば,葬儀の前提として当然死亡届を出すというのはあるのだろうなとは思うのですが,それ以外の財産のことしか書いていないような場合とか,そうした場合に,そもそもそうした例があるのかどうかもよく分からないのですが,何か御意見があったら伺えればと思います。 ○新谷委員 基本的には死後の事務委任をやられている方というのは,私がやった中ではほとんど一人住まいです。要するにその周辺といいますか,その周辺には一人も親族がいないというケースが大半です。   それから,親族はいるけれども,もう数十年前にいわゆる離婚をして,今,子供がどこにいるか分からないという,そういう形でもう親子の縁もないというようなことで,ほとんどの方がNPO法人をやる場合もありますし,資格者に頼む場合もありますし,近所の方とか本当に友人,知人という方に頼む場合というケースがありますけれども,大半は,葬儀の関係とその届出の関係はほとんど入っています。   遺言,いわゆる財産の処分の関係が入らないケースがありますけれども,それは遺言でやらせていただくというケースが多うございました。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。 ○鷲﨑幹事 ささいな点なのですが,過去にもこういった要望があったという御説明もあったのですけれども,これまで改正に至っていなかったというのは,何か特段考慮すべき理由があったのですか。それとも単にニーズが,機運が高まっていないというか,ニーズがそこまでに至っていなかったという理由なのでしょうか。 ○杉谷関係官 要望があったのが平成28年でございまして,最近のことでございます。 ○窪田部会長 ほかはいかがでしょうか。 ○大野幹事 全国の市区町村の窓口で死亡届を受けている側から申し上げますと,今,大橋委員と黒澤参考人の最後の部分のやり取りですとか,新谷委員からの公正証書で死亡事務委任が行われる場合というようなお話のところがあったわけですけれども,実際に死亡届を受け入れる側からすると,それを一律に判断できるもののその基準がすごく必要だと思うのです。例えば任意後見の方は,任意後見としての登記事項証明書ということの,その言葉を見ればいいわけですけれども,公正証書で単に死亡事務委任ということだと,具体的な公正証書に載っている中身の部分を見なければいけないので,そこの公正証書ということなのであれば,具体的に何が書いてあれば,そこで届出人資格があるという判断ができるのかどうかという部分は,それは当然戸籍法の中に書くレベルではないとは思うのですけれども,それ以下の細かいところの整理の仕方として,そこは一律の判断ができるような形でまとめる必要があると考えております。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。 ○浦郷委員 この亡くなられた方の死亡届を出すというのは,先ほどからも何回もお話に出ていますけれども,本当に迅速に事を進めなければいけないという,ちょっと特別な状況でもあると思うのです。これから高齢化社会でどんどん高齢者も増えますし,お一人暮らしの本当に周りに身寄りのないという方も増えていくと思います。   やはりそういう中で,今回のような任意後見受任者についても届出資格を拡大するとか,今のりすシステムさんのように,きちんと公正証書により事務処理の委任契約までしているというところに関しては,やはり何らかの方法で届出資格を拡大するような方向で進んでいったらいいのではないかなと思います。でもやはり,死亡届を出すというのは身分法とか財産法上の重大なことにつながるので,そこについては,しっかりと確認できるような,何らかの書面というのは,私はちょっと専門的なことは分からないので,先生方に考えていただくということで,やはりそこをきちんと担保して,少しでも拡大の方向にいけたらいいのではないかなと思っております。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   全体の議論の流れとして,委任後見契約がある場合について拡大することについては,ほぼ異論がない状況かと思います。その上で,死後の事務処理委任契約があった場合についても,基本的には拡大の方向ということが考えられるということであったかもしれませんが,それを実際に具体的にどのような要件のもとで認めるのかという点で,もう少し検討をする必要があるのかなと思いました。   それでは続きまして,次の議題に移りたいと思うのですが,大変申し訳ないのですが,ちょっと議題の順番を入れ替えさせてください。部会資料4の「第3 戸籍事務における連携情報の参照について」を扱いたいと思います。   それでは,これについて事務当局から御説明をお願いいたします。 ○櫻庭関係官 それでは,資料の8ページ,「第3 戸籍事務における連携情報の参照について」御説明いたしたいと思います。   この議題につきましては,戸籍法部会第2回の会議で一度議論しておりまして,引き続きの議論ということで,若干前回の議論のおさらいをさせていただきたいと思います。   1番として,「市区町村における連携情報の参照について」でございます。   現状,受理の判断に必要がある場合には,届出人に戸籍の謄本等を添付するよう求めているほか,必要に応じて電話照会や公用請求によって情報を取得しまして事務処理をしているという状況でございます。   戸籍法部会の第2回の会議では,マイナンバー制度導入後の新たな戸籍事務として,ゴシック体で記載しておりますように,市区町村は,届出の受理の審査に当たって戸籍情報を確認する必要がある場合には,原則として,届出人が戸籍謄本等を届出の際に添付しなくてもよいものとして,マイナンバー制度を導入するために,国が構築する戸籍情報連携システムの情報を参照して審査を行うことができるものとするということとしてはどうかということを御議論いただきまして,おおむね賛同を頂いたところでございます。   また,この参照情報,具体的に連携情報の参照範囲につきましては,実際の事務においてどの程度過去の戸籍に記載されている情報を確認する必要があるのかも踏まえまして,参照できる範囲を定めてはどうかという議論がありまして,全連の御協力を頂きまして,協力いただける9市区町村に対して,ほかの市区町村の戸籍情報を参照する頻度等について調査を実施したというところでございます。   調査の結果につきましては,本籍地の市区町村に照会を要する戸籍情報につきましては,現在戸籍と,この場合,現在戸籍というのは現在の戸籍で,それ以外の,遡ってみなければいけない戸籍を従前戸籍と定義しますけれども,現在戸籍のみで確認することができないものでも,従前戸籍を二つ程度遡れば必要な確認をすることができるという調査結果を得ました。   また,届出件数の多い死亡届,出生届,婚姻届及び離婚届につきましては,現在戸籍を参照しただけでは審査が完了せず,相当程度ほかの市区町村の戸籍情報を確認しているということも判明いたしました。   このため,戸籍法部会第2回会議におきましては,現在戸籍のみ参照することができるとしてはどうかという甲案と,十分な不正参照防止策を講じた上で,従前戸籍も参照することができるようにしてはどうかという乙案について議論がされていたところでございます。   資料の9ページの真ん中で,甲案と乙案の違いが,戸籍の届出をする国民の皆様や市区町村の事務担当者にどのように影響するかということを記載してございます。   まず,甲案ですけれども,甲案のように現在戸籍のみ参照することができるとした場合でも,国民にとっては相応の戸籍謄本等の取得,添付の負担軽減が見込まれるところ,市区町村が届出の受理,不受理の審査をする際には,現状と変わらず従前戸籍について本籍地の市区町村へ電話等で照会をするという必要性が生ずるところでございます。   一方,乙案のように,従前戸籍についてもそこで参照することができるといった場合につきましては,本籍地市区町村に電話照会を行わなくても,自ら戸籍情報に接することができますので,従来電話で戸籍情報を照会してきた市区町村だけでなく,電話を受けて戸籍情報を請求してきた市区町村側の業務の効率化も期待することができると考えられます。   また,市区町村側で内容の確認が取れるということからしますと,届出人としての国民の方も,施行規則第63条に基づいて,戸籍謄本の提出を求められる機会が一層減少することになると考えられます。   戸籍法部会の第2回の会議におきましては,乙案については現在の取扱いとして,現在戸籍は届出人本人に提出させ,従前戸籍については公用請求等によって市区町村側で確認しているという現状があるのであれば,問題がないのではないかという意見も出されたところではございますが,従前戸籍を参照するとした場合でも,その範囲について引き続き検討する必要があるのではないかというところで,議論がとどまっていたというところでございます。   続きまして,9ページの下,項番2の「参照範囲について」という点について御説明をいたします。   従前戸籍を参照することができるとした場合でも,どういう形で参照することができるかということにつきましては,いろいろな考え方があるところでございます。今回①,②ということで大きく二つの考え方について御提案しております。   まず,①でございますけれども,現在公用請求等によって確認している戸籍情報につきましては,今後も確認する必要があるということですので,審査のために必要な従前戸籍については,特段制限を設けずに参照できるという考え方が一つ考えられます。   ②番としましては,遡って参照できる従前戸籍数を制限する。例えば二つまでは参照できますという形で従前戸籍数を制限して,それ以上遡って参照する場合には,必要性についてコンピューターの処理画面に確認のメッセージを表示させたり,あるいは事務処理担当者以外の者を複数関与させたりという,そういった仕組みを設けるという考え方もあります。   また,調査の結果,類型的に従前戸籍を多数確認する必要があったというのは,戸籍訂正等が挙げられます。そういったものにつきましては,何度も遡って見なければいけないわけですので,特段制限を設けないといった考え方もあるところでございます。   今お示しした考え方につきましては,考えられる方策の一例ということですので,これに限定することなくいろいろな意見を頂戴いただければと思います。   続きまして,説明の方を続けさせていただきますけれども,10ページでございます。10ページ,3番の「不正な情報参照を防止する策について」という点について御説明申し上げます。これにつきましては,「(1)一般的な対策」というものと,直近の戸籍情報の不正利用の事案ごとに対応が考えられる「(2)個別対策」とに分けて御説明いたしたいと思います。   まずは(1)の一般的な対策ということについてでございます。こちらも,戸籍法部会の第2回の会議で御説明した内容とかぶるところがございますけれども,改めて御説明いたしたいと思います。   三つほどポツが並んでおりまして,一つ目でございますけれども,現在届出を契機に情報を参照するということが考えられます。そうした場合に,業務処理を終了する前には届出事件を受理するのか,あるいは不受理とするのかといった形で,いずれかの処分決定を行うのが通常の取扱いでございますけれども,情報を参照しただけで届出事件の処分決定をすることなく,業務処理の終了ボタンを押すといった場合には,事件とは関係なく情報を不正に参照したという可能性がありますので,コンピューター処理画面に警告メッセージを表示するということでございます。   また,警告メッセージが表示されたにもかかわらず,処分決定をすることなく業務終了したものにつきましては管轄法務局に自動的に通知するとして,具体的な監督処分を受ける端緒を与える案ということで整理してございます。   もう一つは,誰がいつどのような戸籍情報を参照したか,証跡ログを残すとともに,年に1回以上,管轄法務局長等による監査を実施するという案を挙げてございます。またさらに,悪質な不正参照に対応するため罰則を設けてはどうかというのが,三つ目の案になってございます。   罰則規定につきましては,実際に法文化する際には,ほかの類例を参考に,もう少し詰めた検討が必要になってくると考えてございますが,一つの参考としましては,(注)の13番で挙げさせていただきました住民基本台帳法の例がございます。この住民基本台帳法の例のように,情報システムを使って事務を行う職員や,あるいは職員であった者に対して,機密性の高い個人の戸籍情報を漏えいしてはならないといった義務規定を設けた上で,この義務規定に違反した場合に罰則を設けるといったことが考えられるところでございます。   続きまして,11ページの方を御覧いただきたいと思います。   個別対策ということでございます。こちらは参考資料の15というところで,戸籍不正閲覧等事件例というのを御用意しました。そちらにつきまして,直近の不正事案をまとめておりますので,こちらで御説明したいと思います。   こちらの参考資料15の方で①から④ということで,直近の四つの事例について記載してございます。   ①と②というのが,戸籍事務に関わる職員が端末を利用して戸籍情報を取得した例ということになります。また,③と④は,戸籍事務に携わる職員以外の者でございますけれども,そういった者が第三者的な立場で不正な公用請求をしたという事例になります。   ①について簡単に概要を申し上げますと,大阪市の職員が大阪市長の戸籍情報を業務とは無関係に閲覧していたという事例でございます。   ②につきましては,尼崎市の職員が家系図を作成するために,関係者の戸籍情報を印刷したという事例でございます。   ③につきましては,ストーカー目的であったにもかかわらず,筑西市の職員が,地籍調査の目的と偽って公用請求をした事例。   ④につきましては,新潟県の県の職員と嘱託員とが,親族の戸籍情報を確認する目的であったにもかかわらず,正当な業務目的があると偽って公用請求したという事例でございます。   これらを類型化しますと,対策が必要なものとしましては,まずは興味本位で著名人の戸籍情報を取得するという類型,あるいは家系図を作るといった形で端末を操作する職員がその親族に関わる戸籍情報を取得する類型,またストーカーとかあるいはDV目的ということで,加害者となり得るような職員が被害者本人の戸籍情報を取得する類型に分けられるのではないかと考えられます。   このうちまず著名人等の情報の不正取得対策,そして自己の親族の家系図を作成する等の目的外利用の対策について,どういったことが考えられるかということで,11ページの上の方に書いてございます。一つは,ゴシック体の方で記載されていますように,一定の期間に著名人など特定の者の戸籍情報について探索的な操作をするなど,不自然なアクセスがあった場合ですとか,あるいは一定の期間に特定の職員が一定の閾値を超えた検索行為をした場合に,コンピューター処理画面に自動的に警告メッセージを表示するとともに,管轄法務局等に通知するといったことが考えられます。   一例として,検索条件の絞り込み過程に不自然な痕跡のある検索行為をした場合ということで,括弧書きで記載してございますけれども,この例でいいますと,例えば婚姻の相手方の戸籍情報を呼び出すということで,婚姻の届出情報の入力する画面を呼び出しまして,そこに夫の欄につきましては適当な固有の名前を入力した上で,妻の欄に著名人の名前を次々に入力して,この人の戸籍情報を呼び出すと,そういった動きが考えられますので,それは通常の事務では考えられない行為でございますので,それについては不正な処理ではないかということで処理をするということが考えられます。   また,ストーカー,DV被害の防止策ということでございますけれども,加害者となり得る職員が一人で情報を参照するということを防止する観点から,事前にDV被害の届出等,そういった情報秘匿の申出があるような事件にフラグを立てて,届出が出た場合に係長等の承認を得るなど,事務処理の担当者以外の関与を経るという,そういった仕組みにするということも考えられるところでございます。以上が市区町村の関係での対応ということになります。   続きまして,11ページの4番の「法務局における連携情報の参照について」ということで御説明いたします。これからの議論は法務局の職員がこの連携情報を参照するというものになります。   まず(1)連携情報の参照と参照範囲について御説明いたします。   法務局におきましても,市区町村の行う戸籍事務についての指導や,あるいは戸籍訂正の許可において,市区町村をまたいで戸籍情報を確認する必要がある場合がございます。このため,ゴシック体で記載されていますように,(1)法務局は,市区町村の行う戸籍事務への指導,戸籍訂正の許可及び無戸籍者の確認など,戸籍事務に当たって戸籍情報を確認する必要がある場合には,マイナンバー制度を導入するために国が構築する戸籍情報連携システムの情報を参照して審査を行うことができるものとする。この場合において,参照範囲については,現在戸籍のほか従前戸籍についても参照することができるものとすると,こういった考え方がありますので,これを提案してございます。   続いて,(2)の不正な情報参照を防止する策について御説明いたします。   一般的な対策としましては,市区町村の担当者に対する対策とおおむね同じでございます。12ページの方に具体例が記載されてございます。一つは,法務局の職員が戸籍情報連携システムを利用する端緒としましては,受理照会あるいは戸籍訂正ということになりますので,受理照会や戸籍訂正を契機に情報を参照したものの,当該事件の指示書やあるいは許可書の起案に必要な帳票の出力に至らずに,業務処理を終了しようとしたものについては,不正参照の可能性があるとして,コンピューター処理画面に警告メッセージを表示するとともに,そのまま業務処理を終了したものについては,管轄法務局長等に通知するという案を提示しております。   ここで,通知する相手先を管轄法務局長としていますのは,管轄法務局の戸籍事務担当者そのものがチェックするということでありますと,第三者的なチェックをするというのが難しいということも考えられますので,一つは管轄法務局の長から命を受けました戸籍課長ですとか,あるいは地方局の場合は,それを管轄する管区の戸籍課長,そういったところが確認するといったことが考えられるということで提案してございます。   また,誰がいつどのように戸籍情報を参照したか証跡ログを残すとともに,年に1回以上管轄法務局等による監査を実施するといった提案ですとか,あるいは罰則規定を設けて,悪質な不正参照行為を処罰するという案につきましては,市区町村の職員による不正参照防止策と一緒でございます。   また,個別対策につきましても,市区町村の職員に対する場合と同様ですので,ここでの説明は省略させていただきたいと思います。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   それでは説明を頂いた部分について御議論させていただければと思います。   基本的には,市区町村及び法務局に関して,それぞれ参照範囲をめぐる問題と不正なアクセス等があった場合に対する対応策ということで出ておりましたが,これについての御意見等はございませんでしょうか。 ○大野幹事 11ページの不正防止の個別対策の部分です。御説明を聞いて非常によく分かって,このような形でよいとは思いますけれども,ほかに資料の作り方の部分なのですけれども,先ほどこの文章だけ読んでしまって最初私が理解したのは,著名人をあらかじめ登録しておいて,その人が見られた場合ととってしまったのですけれども,逆に下の方のストーカーのところは,当然申出で本当に特定の方にデータ上,フラグを立ててということになりますけれども,今回の部分は自分と誰か有名人をとりあえず,本名かどうかさえ分からないところで入れてみて,その人の戸籍情報を見ているかどうかということですから,あえてここで著名人という言葉は使わずに,表題としては戸籍情報の不正取得の防止ですし,次の3行目のところの括弧の著名人が考えられるというのは,そこはもうなくていいのかなと思いました。 ○窪田部会長 今のご意見は,特に著名人等ということで,あらかじめ登録しておかないと,この対象にならないのかという,そういう疑義が生じないように変えたほうがよろしいということでしょうか。 ○大野幹事 登録するわけにもいかないでしょうからということです。 ○窪田部会長 その点はちょっと御検討いただければと思います。   ほかはいかがでしょうか。 ○磯谷委員 質問が若干とあと意見でございます。   まず,質問については,11ページのストーカーやDV被害の防止策という点ですけれども,これは現に先ほどもちょっと御説明もありましたが,被害があったということもあるということですけれども,現状としてはどういうふうな対策が講じられているのかというのを,分かる範囲で教えていただければというのが質問です。   それから,半ば質問,半ば意見かもしれませんが,9ページの下の方に参照範囲の話がございますけれども,これは①の方が特に参照範囲については制限を設けない。②の方は一応制限を設けて,それ以上の場合には,例えば事務処理担当者以外の方が関与するとか,そういうふうな工夫になっていると思うのですけれども,私の理解では,恐らく本来この戸籍事務に必要であれば,それは二つとはいわず三つでも四つでも,それは参照する必要はあるわけでして,そうするとこの②というのは,むしろどちらかというとこの不正な情報を防止する策の一環ではないかなと思うのですけれども,そういう理解でよろしいのかということを確認しつつ,それであればやはり本来は必要であるのであれば,参照範囲に制限を設けるべきではなく,不正防止をどういうふうにやるかという問題なのかなと感じました。   それからあと,不正防止策については,書かれていることについては,いずれも有効だと思うのですけれども,私ども日弁連で議論したときには,この証跡ログを残して年1回以上管轄法務局等による監査を実施するということについて,頻度は少なすぎるのではないか。やはりもっとタイムリーに見ていく必要があるのではないかと。例えば現場で,もっと頻度を上げた形でのチェックというのも必要なのではないか。   それから,著名人の方で閾値の問題がありましたけれども,先ほどの9ページの下の②とも絡むのですが,一般的な対策としてもやはり閾値を設ける余地というのはないのだろうかと。実際の検索がどういうものかがわからないので,なかなかイメージしにくいのですけれども,異常な参照の仕方が類型化できるとすると,そういった参照があった場合に,不正の疑いがあるということを発見しやすくするとか,そういうふうな形で策を講じることができないかという意見もありました。   それから,罰則について,ここでは悪質な不正参照行為を処罰するということになっていますが,その下の例を見ると,漏えいについて処罰をするような形になっています。そうすると,例えば漏えいではないけれど,自分の興味本位で閲覧をしたりすることについて処罰するということを,どう考えるのか,その辺りについてはちょっとまた教えていただければと思いました。いろいろと申し上げて申し訳ありませんが,以上です。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   全体で5点ということであったかと思いますが,一つずつちょっと確認させていただければと思います。   まず最初に,11ページのストーカー,DV被害対策に関して,とりあえず現状はどうなっているのかということで御質問がありましたが。 ○杉谷関係官 こちらに書かれているのは,飽くまで情報参照において市区町村職員からのDV被害にあった方に対する支援ということなのでしょうが,現状のDV被害対策というのですか,防止対策としては,基本的には恐らく謄抄本の請求があったときに,出さないようにするかどうかといった観点なのかなと思います。   もっとも,現状では戸籍法上,謄抄本の請求があった場合に,例えばDVの加害者の方が親族の方であって,その方から謄抄本の請求があったとした場合に,婚姻関係にあったけれども,離婚した後に自分の子と元配偶者が同席している戸籍を取るというケースというのはあり得ると思うのですが,そういったものを一律に交付しないという取扱いはしていません。というのは,戸籍には住所が記載されておらず,本籍しか記載されておりませんので,今のDV支援措置というのは,基本的に住所を隠すという措置でございますので,戸籍を請求するに当たって,一律に出さないというような措置を講じているということはございません。   ただ,戸籍法第10条に規定がございますけれども,そういう本人等,親族等も含むものですけれども,本人等から請求があった場合に,不当な目的であることが明らかなときは,これを拒むことができると第2項に定めがございます。市区町村長が例えばDV加害者の方から戸籍謄本の請求があったときに,これが不当な目的である。例えば住所探索などを目的とするようなものが明らかである場合は,これは拒むことができるということになりますので,それは市区町村長の判断によって拒むケースはあると思います。   もう一方で,住所については,届書の記載事項証明書というのを法務局あるいは市区町村の方で発行しているところ,届書の写しを証明書として請求する場合があるのですが,その場合にDV被害を受けたということで支援措置決定が出ている場合には,届書に記載されている住所は隠す取扱いとしているところでございます。 ○磯谷委員 そうすると,多分ここでの問題というのは,第三者が加害者になるというよりも,市役所の職員などが加害者になることを想定して,それを防止するという話だと思われますが,現在のところはそういった視点での防止策というのは余り講じられていないということでしょうか。 ○杉谷関係官 そうですね,市役所の戸籍事務担当者が,自庁内の市役所の戸籍システムを閲覧するに当たって,システム上何らかの閲覧制限をかけたりとか,そういった措置というのは現状では行っていない状態でございます。 ○窪田部会長 それから,第2点目として,これは9ページだったと思いますが,参照範囲について御質問があったかと思います。 ○櫻庭関係官 この点につきましては磯谷委員の御指摘のとおり,②につきましては,基本的に制限の在り方の一環といいますか,方策,対応策の一環というふうな捉え方もできると思います。何らかの形の制限を設けた上で2回というのが原則で,それ以外は例外だと考えれば,参照範囲の制限についての原則例外というふうな捉え方もできるのかもしれませんけれども,磯谷委員がおっしゃったとおり,総じていえば,対応策の一環と捉えることができると考えております。 ○窪田部会長 それから3点目として,10ページの中ほどでしょうか,誰がいつどのような戸籍情報を参照したか,証跡ログを残すということについて,年に1回以上監査を実施するというのだけれども,もう少し頻繁に何か工夫できないだろうかという御意見だったと思いますが。 ○櫻庭関係官 その点につきましても,おっしゃるとおり,まず市区町村の担当課の方で定期的に確認するということも,当然上司の方が定期的に確認するということもできますでしょうし,管轄法務局の方でもいろいろ通知を得たもの,ある程度人員の体制とかも必要になってくると思いますけれども,リアルタイムに通知を受けて機動的に監査したりとか,あるいはこちらも人とか予算とかの関係もありますけれども,本省にそういうふうな機器を置いて,そこで監視するとか,そういったこともいろいろなものの考慮の上ですけれども,考えられると思います。 ○窪田部会長 それから4番目として,11ページの一定の閾値を超えた検索行為というものに関しては,別にこれは有名人に関する不正アクセスの問題だけではなくて,一般的にも考えられるのではないかという御指摘だったと思いますが。 ○櫻庭関係官 これも磯谷委員の御指摘のとおり,一般的にも考えられますし,システム的にもこういった不正な検索につきましては,類型的に異常なものを検知するというやり方があるとお聞きしておりますので,そういうものを発見しやすくして,対応するということは可能と考えております。 ○窪田部会長 最後に,罰則に関して10ページでございますけれども,(注)の13に上がっている罰則の話というのは,もともと違反行為が漏えいに関してのものであるというふうなことで,したがって違うということになるのか同じ程度なのか,もっと重いのか軽いのかもよく分からないのですが,今検討している範囲でお答えいただければと思いますが。 ○櫻庭関係官 最終的には法文化する際には,いろいろまた類例とかを含めて検討しなければいけないのかなと思っておりますけれども,まず見ただけで処罰するというのは,なかなかちょっときついのかなと考えております。そういった類例がもし何個もあって,我々が考えておりますこのシステムと扱いが近いものであれば,それを参考にして採用するということも考えられますし,なかなか類例がないようで説明は難しいのであれば,こういった既にあるような仕組みを使って対応していくということが考えられるのではないかと思います。 ○窪田部会長 見ただけで罰するというのがどうかといっても,同時にこれは冒頭の磯谷委員からの御意見,日弁連の意見にもありましたけれども,マイナンバーとも連携してのデータ管理ということになりますので,やはりセキュリティーの問題というのは実はやはり非常に大きいと思いますので,少し適切な形で慎重に御検討いただければなと思います。   ほか,いかがでしょうか。 ○久保野幹事 今さら基本的なことになってしまうかもしれないのですけれども,先ほど自庁内の戸籍情報を見るということ自体については,現在では制限は設けられていないというようなお話が出たと思うのですけれども,一般的な個人情報についての,私自身は全く不案内なのですけれども,一般的な個人情報についての規律などに基づいて,職務担当者ではない人が閲覧したり,あるいは職務担当者であるけれども,職務と関係のないプライバシーに関わる情報を参照するということについて,禁止する等の一般的なルールというのは存在していないということを前提にお話しているということの理解でいいのでしょうか。すみません,そこを教えていただければ,どういうものがあるのかということを教えていただければと思います。 ○北村幹事 当然ながら業務に必要な範囲で参照するということになっております。今回挙げられた事例は,いずれも業務と関係のない範囲で行っているということですので,当然それは処分の対象にもなろうかと思っていますし,いずれも業務の範囲内でやることを前提としているということになります。 ○渡邊幹事 若干補足させていただきますと,その戸籍事務担当者はIDとパスワードを持っていて,その戸籍情報システムにアクセスできるということになりますので,戸籍事務担当者以外の者がそのシステムを使うということは,システム的に想定はされておりません。そしてまた,戸籍事務担当者は本来職務上必要な範囲でということが,北村幹事の方から御説明したように想定されておりまして,今後更に職務上必要だという確認をシステム的にいかに担保していくかと,先ほど櫻庭関係官の方から御説明したように,届出事件があってそこからそれに関連する戸籍を見ることができるような形にすると,そしてその事件がきちっと処理していないとアラートが別のところに行くというようなシステム的な対応ということを今回御提案しておるところでございます。 ○櫻庭関係官 若干補足しますと,戸籍六法の1,263ページに記載してありますが,電子化したときの事務処理,電子情報処理組織による戸籍事務の取扱いについてという,いわゆる7000号通達というのが出ておりまして,パスワード管理ですとか,コンピューター処理をする上での必要なもろもろの規律があるということでございます。また,通達より下位のレベルでもそういったものが出ているということでございます。 ○大野幹事 今のお話なのですけれども,確かにそのシステム的なチェックの部分は,住民基本台帳法の方のネットワークのシステムですと,自分がIDを持っていたとしても,本来業務とは別な形の不正利用をしてはいけないですとか,回数のチェックだとかという本当のテクニック的なチェックもシステム的にいろいろ行われているはずなので,その辺は住民基本台帳の方のシステム的なチェックも確認して,その部分は必要な部分は取り入れるということが必要なのではないのでしょうか。 ○窪田部会長 久保野幹事は今の御質問に関してはそれでよろしいですか。 ○久保野幹事 そのようなルールがあるだろうとは思っての御質問でしたけれども,ただその効果は,今のところ情報処理特有の何らかの効果,違反した場合の効果が定められているとかということは特になくて,もちろん職務上の義務違反の処分の対象になったりですとか,あるいはプライバシーを侵害されたとする私人との関係で,不法行為責任なり賠償責任が問題になり得るといったような一般的なことはあるにせよ,情報処理特有の何らかの罰則なり不利益な効果といったことは,特に存在していないということでよろしいのでしょうか。 ○窪田部会長 先ほどの御説明があったのは,内部的な処分の話であって,処罰の話ではないということだったと思いますし,ちなみにこれはプライバシー侵害の不法行為が成立しても,国家賠償法1条が適用されるケースですので,個人責任は認められないということになります。 ○久保野幹事 ごめんなさい,一般ルールになるかという意味での質問です。 ○窪田部会長 それはそれでよろしいですかね。 ○川島委員 ありがとうございます。   不正な情報参照を防止する策について,事務局案をおおむね妥当と受け止めた上で2点意見を申し上げます。   まず,対策として例示されているもののほかに,例えばこれは磯谷委員の御発言と重なるのですけれども,戸籍情報参照の証跡ログを管轄法務局長が監査することに加えて,市区町村における戸籍情報の管理責任者が日常的に管理できるようにすることや,届出の種類に応じて参照できる戸籍情報を必要最小限に絞り込むような仕組みを設けるなど,不正参照を未然に防ぐことができるようなシステム上の工夫や仕組みについて,専門家の知見も得ながら検討を深めていただきたいと思います。   次に,罰則規定の設定については,不正参照を行ったこと,知り得た情報を漏らしたこと,それを使って悪用したことなど,類型に分けて罰則の必要性の有無を含め,その在り方を検討していく必要があると考えます。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   ただ今の検討方向についての御意見と受け止めましたが,事務当局の方から何かございますでしょうか。   それでは,今の川島委員の御意見を踏まえた上で,更に検討していきたいと思います。   ほかはいかがでしょうか。 ○石井幹事 筑波大学の石井です。   今までお話のありました戸籍事務における連携情報の参照についてなのですけれども,確認ですが,これはマイナンバーとの連携とは関係なく,戸籍事務内連携を意図した話であるという理解でよろしいわけですよね,というのが1点目です。   それから,一般的な情報の保護との関係で,行政機関個人情報保護法と,この参照範囲の制限ですとかその罰則については,一般法と特別法の関係のようなものを立つのかどうかということについて整理をお聞かせいただきたいなというように思います。例えば行政機関個人情報保護法の中には,55条の中に行政機関の職員が職権を濫用して,個人の秘密に関する事項を収集することについての罰則があったりもしますので,そういった辺りの規定との関係というのの整理が必要かというように思いました。   それから,9ページのところ,参照範囲ですけれども,戸籍制度に関する研究会は,一応現在戸籍が前提になっていますので,参照範囲は必要な範囲で参照できるほうが望ましいと思いますけれども,制限を設ける形で,②の方ですか,遡って参照できる従前戸籍数を例えば二つまでというように制限するというような方向性を基本的な考え方としたほうが,プライバシー的には説明がつきやすいのではないですかというようには思います。   それから,10ページですけれども,ログは保存期間の検討は要らないのですかという点についてお伺いしたいと思います。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,4点ございましたが,今回の提案というのは戸籍に関する戸籍データの扱いに関するものということで,マイナンバーそのものに対しての対策ではないということだったかと思いますが,それはそれでよろしいですか。 ○渡邊幹事 おっしゃるとおりでございまして,異なる行政機関間ではございますけれども,同じ戸籍事務を担当しているということで,戸籍事務内の連携として今回御提案をしているところです。これは情報提供ネットワークシステムを用いて他の行政機関との間で行う,マイナンバー連携とは別の種類ということになります。 ○窪田部会長 それから2点目として,個人情報保護法との関係が一体どうなるのかという点です。 ○北村幹事 現状の戸籍法ですけれども,129条で適用除外とされてございます。そこは今適用除外,そこは公開のルール等を別途定めているからということにはなります。ただ,今回御提案の中にも罰則等の御提案もさせていただいているところですので,個人情報保護法での規律等も参考にしながら,適用除外の関係とかも整理して対策をとっていく必要があろうかと考えております。 ○渡邊幹事 申し訳ございません。お手元の六法の234ページに,戸籍法129条ということで,個人情報保護法の適用除外の条文がございますので,お時間あるときにお目通しいただければと思います。 ○窪田部会長 それから3点目として,参照範囲はプライバシーの保護という観点からは,むしろ①,②というのがあったのですけれども,②の方のような形で,制限を原則とするということが適切ではないかと,これは御意見だったと理解しておりますけれども,これについては恐らく先ほど,そもそも②が参照範囲の問題なのか,むしろ参照範囲には①とした上で,プライバシー対策という観点から,あるいは秘密保護という観点からの措置として,言わばそれにかぶせるような形で一定の制限を加える方法ということが考えられるのではないかという御意見,あるいはそういった可能性についても御指摘がございましたので,その点を含めて検討させていただくということでよろしいでしょうか。   最後4番目として,ログの保存期間ということがございましたが,これについてはいかがでしょうか。 ○渡邊幹事 まだ,ログの保存期間というレベルにおいては検討が進んでおりませんので,実際,システム自体をどのように設計するかということと併せて,その辺りは考えていくことになろうかと考えております。 ○窪田部会長 それでは,よろしいでしょうか。 ○石井幹事 すみません,あと1点だけ。   戸籍法の適用除外の範囲が先ほど御説明がありましたけれども,4章の規定が適用しないというようになっていて,罰則の部分がかぶらないといいますか,適用除外にならないのですよね。そうなると,結局関係性が出てくるという理解でよろしいわけですよね。 ○渡邊幹事 おっしゃるとおりでして,罰則については戸籍法特有の観点から,更に特別法的に定める必要があるのではないかと考えておるところです。 ○鷲﨑幹事 ありがとうございます。   対策として,いずれも妥当なものと思うのですけれども,更により強化しようとしますと,不自然なアクセスがあった場合に警告するなどがあるのですけれども,それは単にアクセスの様子だけを見るのではなくて,これは先ほどの議論に関連するのですが,届出の内容と閲覧や検索の内容とが整合しているということを,できるだけ機械的にチェックすることができることが望ましいと思いました。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   御意見として承っておくということでよろしいかと思います。   それでは,ほかにこの第3に関して御意見等はございませんでしょうか。   それでは,一旦ちょっとここで休憩を頂戴して,あの時計で40分からということですね。それではちょっと15分ほど休憩を頂戴して40分から再開するということでお願いいたします。           (休     憩) ○窪田部会長 それでは,時間になりましたので,議事を再開させていただきたいと思います。   残りの部分,順番どおりに進めさせていただきたいと思います。   部会資料4の「第2 文字の取扱いについて」について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 それでは,「第2 文字の取扱いについて」御説明をさせていただきます。   4ページから5ページ,6ページまでについては,前回資料に記載させていただいたところと基本的に同じでございます。前提のところですので,今回もまた(注)6のところ,字種,字体,字形といったものの区別を御説明しながら御議論いただければと思っております。   改めてですけれども,字種というものが原則として同じ音訓を持って,語や文章を書き表す際に文脈や用途によっては,相互に入替えが可能なものとして用いられてきた漢字の集合体としてのまとまりのことということで,こちらには「学」という字について,現在一般的に使われている文字と旧字体のもの,「桜」についても同様のものを挙げさせていただいております。同じ字種として一つにまとめることができるとされております。   字体につきましては,文字の骨組みのこととされております。先ほどの例につきましては,同一の字種ではございますけれども,別の字体とされております。   字形については,個々の印刷の形状のことということで,いわゆるデザイン差と呼ばれるようなものになります。付けるとか,離すとか,払うとか,止めるとか,跳ねるとかいった微妙な違い,そういった違いまで様々なレベルのデザイン差,字形の差があるとされておりますけれども,こちらはいずれも字体としては同じ字だと整理をされているものでございます。   これら今までの文字の取扱いについて前回第2回の部会におきまして御議論いただいた上で,今後連携情報,国の方で整備いたします連携情報で使用いたします文字については,まず連携情報を整理するためには,市区町村ごとのシステムで用いている文字のコードが異なっているため,機械的に一人一人の戸籍の情報を統合して,連携情報を作成することができないことから,まず文字を整理する必要があるのではないかという御説明をさせていただいたところでございます。   第2回会議におきましては,現に市区町村で戸籍に記録されている文字を収集した上で,同じ文字と異なる文字と峻別する文字の同定作業を実施する,そして可及的に字形の同一化を図ることについての議論がされて,おおむね賛同が得られたところでございます。前回の議論を踏まえまして,今後文字の同定作業につきましては,参考資料の14も併せて御覧いただければと思いますけれども,文字の同定作業に関して知見をお持ちである専門家の方に入っていただきまして,戸籍文字整備委員会というものを設置したいと考えてございます。   全国の市区町村の戸籍の文字をできるだけ来年度早い段階で始め,文字を収集し,その上でこちらにありますけれども,文字一つずつですけれども,まずは機械的にこの文字とこの文字が同じ文字なのかどうかというものを確認していき,既に戸籍統一文字に入っているものであれば,そちらに収れんできるのかどうか,あるいは戸籍統一文字も含めていただいていますけれども,IPAの文字情報基盤の方に含まれている文字,できるだけここに収れんしたいとは考えていますけれども,これらに対応できるのかどうか,これらと同じ文字なのかどうかというものの同定作業をやっていきたいと考えております。   機械的にそういったものができないようなものにつきましては,同定の可否に疑義と書いていますけれども,この文字整備委員会で確認していただいて,一つずつ目で見ていただいて,この文字はどういう文字なのかということを確認いただいて,包摂する先の文字というものを特定していただく,そういう作業をやっていくということになります。   その上で,今後文字についてどういう対策をとっていくのかということにつきまして,第2回の会議で御議論いただいたところでございます。   第2回会議では,戸籍法50条3項に,戸籍の正本に記録する文字の範囲を定めるであるとか,乙案としては,規定はしないけれども,この同定基準を確定,公表して正本に記録し,その表示に用いる文字の範囲の一覧を戸籍窓口に備える,いわゆる電話帳のような本のものを戸籍窓口に備えることで対応するといった案,あるいは特段何も正本の方については市区町村の文字については対応しないという丙案というものをお示しさせていただいたところ,甲案と乙案の中間ぐらいがよいのではないかという御意見があったところではございます。   それを踏まえまして検討をいろいろいたしました。ただデザイン差,字形の差というものがあったとしても,本来的にはこの字体というものは同一であると整理をされております。ですので,このデザイン差を全てなくして一つのフォント,一つのデザインに制限するというのは難しい,第2回会議での御意見もフォントまで統一せよという御意見ではなかったと理解をしております。   そこで,第2回会議での御議論を踏まえまして,以下の方策を講ずることでどうでしょうかという御提案をするものでございます。   今考えておりますのは,連携情報に使用する文字として整備された文字と文字コード,これは整備文字等と申しますけれども,これを公表いたします。そしてこの整備文字等にひも付けることができる文字の同定基準を確定,公表する。そして今後新たに戸籍の正本に用いる文字については,字形について特段の制限,デザインについては制限を設けませんけれども,同定基準に従って整備文字とひも付けられた文字を記録しようとするものでございます。   こちらは端的に申しますと,国において整備する連携情報に使用する文字の文字コードと市区町村で用いるシステム,その市区町村のシステムの文字のコード等をひも付けることを考えている。そのことによって市区町村の文字が国の方で対応する文字として見られるようにしようとするものでございます。   こうしますと市区町村の戸籍システムの文字コードを全て統一するというまでの必要もございませんし,個々の字形,微妙なデザイン差にいろいろ愛着があって今まで外字が作られてきた経緯もございますので,それらについても対応することもできるのかなと思っております。   さらに,転籍などで新たな戸籍を記載する場合には,この整備文字等とのひも付かない新しい文字は作らないという形,あるいは必ず整備文字等とひも付けるという形で対応するということで新たな文字が増えないようにすることができるのではないかという提案でございます。   第2回会議の御議論を踏まえますと,やはり文字が今後さらにどんどん増えていくのがやはりまずいということで,その新たな文字を作らないような対策をすべきではないかという御議論だったと理解いたしましたので,その文字コードを対応させて,そこにひも付かせるということで対応していくということを御提案するものでございます。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   ただ今の事務局から御説明を頂いたことについて何か御質問,御意見等はございますでしょうか。 ○安達委員 安達でございます。確認のために質問いたしたいと思います。非常に珍しい文字を先祖代々使って外字になっているとします。新たに戸籍を作るときも,それを使いたいと窓口で言ったとします。新しいシステムを開始する際に,現在あるそのような文字を事前にどれかのグループにひも付けておくという作業をきちっとやるということでしょうか。 ○北村幹事 今御質問あったのは,正にそのとおりでございまして,全市区町村の戸籍の文字を収集して,それをどのグループというお話でしたけれども,正にどの文字と対応するのかと,その対応表を作っていく作業をこれから行っていきたいと考えております。 ○安達委員 そうしますと,新しいシステムが運用されてから発生する極めて特殊なケースとしまして,新しく戸籍を作るときに,今まで見たことのないようなデザインあるいは字体といったほうがいいのでしょうか,そのような字を持ってきて,それで戸籍を作りたいという場合,つまり既存の文字のグループのどれにもひも付けられない文字で戸籍を作りたいといってくる場合が想定されるのですが,そのときにそれを仮に外字として市区町村が登録するとなると,その文字をどのグループにひも付けるかというのは,すぐにはできないために,市区町村では,新しい外字で戸籍を作るという対応をする一方で,連携システムの方では,そこに該当する文字がない,ないしはまだ決まっていないという状態がしばらく続くということになるのでしょうか。 ○北村幹事 基本的にそうならないようにそこは対応して,必ずそのひも付けをできるようにしてもらおうと考えております。 ○安達委員 そうしますと,窓口で,「この字はシステムで使うことになっているこの字と一番似ていますね。その範ちゅうに入れて連携システムに登録いたします」というやり取りがあって戸籍の受理をするということでしょうか。 ○北村幹事 基本的に今の想定としてはそうなるのかなと思っております。 ○窪田部会長 恐らくこの特殊な文字というのが問題になるのは名字の方なのですけれども,下の方の名前の方は,もう今登録できる文字が限られていますので,古くからある名字に関してですと,全く新しい漢字を使った全く新しい名字が出てくるというパターンではなくて,恐らくある市区町村においては登録されていてひも付けもされているのだけれども,別の市区町村に行ったときに,まだ外字登録されていなくて,でもその場合にはその字そのものとしては,もう既にひも付けはされているというパターンなのだろうと思います。 ○安達委員 分かりました。要するに困るような事態は一応ないような案であるということを確認したかったという趣旨です。どうもありがとうございました。 ○窪田部会長 どうもありがとうございます。   ほかはいかがでしょうか。   字の問題は,分かったような分からないような気もして,ちょっと落ち着かないところではあるのですが,今の時点で何かご発言がありますでしょうか。 ○大橋委員 今お聞きしたのですけれども,その作業というのは具体的にどれくらいの時間がかかるのかという,それによって全体的な運用のスケジュールも決まってくるかなと思いますが,それを聞きたいということが1点です。   それと,今のやり取りの中で珍しい漢字を持ってきた方が,それはひも付けされるというときに,この珍しい漢字がどれにひも付けされるというところまで,その御当人にははっきり分かるという,そういう仕組みになっているのか,それとも御当人にはこの表で持ってきたところだけで,中のものは見えないようになっているのか,一応そこを教えていただきたいと思います。 ○北村幹事 まず,スケジュールの点ですけれども,どうしても全市区町村の文字を集めるというのは,一定の時間が必要かとは思っています。ただ,これを進めないことには,連携情報というものは作っていけませんので,できるだけ急いでやりたいと。今おおむねまず来年度から文字を集め,それの同定作業をしていくということで3年ぐらいかけて,その間に何とか終わらせる。そして急いで情報を作っていくということを今想定しておるところでございます。   あともう1点ですけれども,基本的には一般の方,国民の方が目にされるのは,戸籍の正本の文字ということを想定しておりますので,必ずしも連携情報とこの字とひも付いていますよということまで確認いただくということまでは今想定はしていない。飽くまでも証明書として出しているのは,正本の市区町村のシステムに入っている文字で出すものというふうなことを想定しております。 ○窪田部会長 よろしいでしょうか。 ○大橋委員 だから,ちょっともう自分が証明もらう分には,自分が望んだもので出るので,全然問題はないのですけれども,ただ中で,動いているときには別の形でひも付いているというような,こちらについては,御当人は知らないという形で,ですけれども,ここの同定は間違いなく全国津々浦々していただけると保証があるということで,そこはちょっと確認しておかないと。 ○渡邊幹事 全市区町村の文字を集めると申しましたけれども,全市区町村の戸籍正本システムの全ての字を集めようと考えております。これが今のところ128万字ほどあると。しかしながら,それは6社ほどベンダーがございますので,実際の字は重複しているというか,機械的に処理できる部分も多いと想定はしております。最後のところでどちらに包摂されるのかと悩む字が5,000から1万弱ほどあるのではないかという,そういう見込みでございまして,その同定作業がされない文字が,戸籍正本のシステムに残るということは現時点で想定をしておりません。全てやりたいと考えております。 ○大野幹事 ちょっと今の部分の関連なのですけれども,その文字がいわゆる整備文字等ということでひも付けされた場合,それこそそれにひも付いている珍しい文字の方が,では別の市町村に新戸籍を作りますという手続をしている場合の想定なのですが,そこで更に珍しい文字の外字が,その新しいところではないようなときには,届出を受けている際には,御本人の戸籍の正本上の文字がそういう文字で,それが自動的に新しいところにも動いていくということが,届出の受付のときにも分かってほしいし,逆に新しい新戸籍のときにも,本人が知らないまま文字が変わりましたというのは,それはまずいわけなので,そこが珍しい文字であってもひも付いていれば,そのメーカーなどが違って,外字を作らなければいけない場合には,それが作られる状態で運用ができるようにしないとならないと思います。   逆にいうと,ちょうどその新しい戸籍を作るきっかけに,ではこの珍しい文字なので,こちらの一般的な文字にしてもよいですかというようなことも,できれば届出の窓口ができれば望ましいわけなので,その辺も届出の際にそれが分かる状態がいいかと思いますので,その辺も併せた形の整備が必要かなと考えます。 ○北村幹事 今の御意見を踏まえて,また窓口でどういう対応をすべきかというのは,よく考えたいと思います。 ○窪田部会長 ありがとうございます。   大橋委員から御指摘があった部分も,本人には正字しか見えないのだから,それでいいというよりは,むしろ場合によっては,どういうふうにリンクしているのかということをひも付けられているのかということを示すことによって,場合によっては単純なコードの方に促していくという政策的な対応としての意味もあるのだろうと思います。その点も含めて,今方向を決める必要はないかもしれませんが,少し御検討を頂ければと思います。   ほかはいかがでしょうか。 ○手塚委員 文字コードというレベルでの今の御議論はよく分かったのですけれども,これが出力,要するに人間の目に視認性を出したときには,やはりプリンターに出力するなりでこういうふうに出すわけですけれども,そこのところで前お話のあったのでは,たしかベンダーさんによってプリンターで出す文字の形状が違うというような,同じコードでも,そういうところは,今回はどういうふうに整理されていくと考えればよろしいでしょうか。 ○北村幹事 市区町村のいわゆる正本の戸籍システムについては,維持をすることを考えています。そして,今ある文字と連携文字,連携するシステムの文字等をひも付けるということを考えていますので,一般の国民の方が目にされる証明書は,従前のその市区町村のシステムから出される文字ということで,そこは変化がない。どうしてもそこはシステムによってしまうところはありますけれども,そのままということを想定しております。 ○窪田部会長 よろしいでしょうか。   ほかはいかがでしょうか。 ○三橋幹事 確認になりますが,この文字の統一といいますか,ひも付けて一定のものに集約していこうという作業は,マイナンバー制度のネットワーク連携に用いる連携情報を整理するために,その名寄せをするために必要だと,そういう理解でよろしいですよね。それで,正本は正本としてそれぞれの字句で置いておいて,国の方で集約し整備していく戸籍情報連携システム及び戸籍副本データ管理システムの文字がばらばらだったら困るので,一定の文字に整理していこうということだと思うのですけれども,それが正に複数の自治体に存在しているある特定の人の戸籍を,同じ人のものだということで名寄せするということなのですが,その正確性というのはどのように担保されるのか。逆に言えば,ちょっと文字の議論とは離れるかもしれませんけれども,名寄せをしていけば必ず間違いなくこの複数の自治体に散在している戸籍が同一の人物のものとして確定されるのであれば,そのデータの信憑性というのはどのように担保されるのかということを教えていただければと思います。 ○北村幹事 法制審が始まる前に行っておりました委託調査研究の中でも,今副本のデータについて,ある程度名寄せをしたらどうなるかという調査結果も行いました。外字が表示されないという前提ですけれども,その漢字,お名前を表示される文字と生年月日,性別ということの三つを合わせますと,大体もう99.5%ぐらいもう既に合うと電算戸籍になっています。さらにそこの文字コードが統一できることによって,外字の方も統一できますので,さらにその精度は上がると。機械的な名寄せというものはできると考えております。 ○窪田部会長 よろしいでしょうか。 ○畑委員 中身に異論はないのですが,ちょっとこの資料について教えていただきたいのです。7ページの一番下の辺りからゴシック体でこういうことが考えられるがどうかとなっていて,8ページに入って今後新たに戸籍の正本に用いる文字については,同定基準に従って整備文字等とひも付けられた文字を記録するものとするとあります。その次の段落,ゴシックでない段落の下から5,6行目ぐらいですが,さらに新たな戸籍への記載の際には,整備文字等とひも付かない新しい文字を作成することを制限するとの考え方もあり得るとなっているのですが,ちょっとこの関係がよく分からなくて,明朝体で「あり得る」とされている考え方がゴシック体で提案されているように見えるのですが,そういう理解でよろしいのでしょうか。 ○北村幹事 基本的には,ひも付けることを前提としておりますので,こういう考え方で作っておりますということです。ただ,そこについてはいろいろな御意見があるかもしれませんので,なお,慎重な検討を要するということで留保を付けさせてはいただいております。   ただ,事務局といたしましては,基本的にはもう文字については整備文字等とひも付ける形でやっていただきたいと。そのことによって新たな文字が今後どんどん増えていくということを防ぎたいと考えておりますということでございます。 ○畑委員 分かりました。 ○窪田部会長 畑委員の御質問は,安達委員の先ほどの御質問とも関連すると思うのですけれども,実際にひも付けられないような外字が出てくる場面というのは,そもそもあり得るのでしょうか。 ○北村幹事 余り想定はされないかなとは思っては今おります。 ○窪田部会長 制限するというのは,何かある意味で,そういう場面があるということを前提として制限するということになりますけれども,ちょっとそういう場面がそもそもあるのかなというのがよく分からなかったものですから,ちょっと御検討いただければと思います。あと,書き方はちょっと工夫したほうがよろしいかなと思います。   ほかはいかがでございますでしょうか。   それでは,文字の話,また今後も何か出てくるかもしれませんが,今日のところはとりあえず以上のような形で議論を調整させていただきます。   続きまして,部会資料4の第4です。市区町村及び法務局の調査権についてということで,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○渡邊幹事 御説明申し上げます。   市区町村,法務局の調査権につきまして,既に第3回の部会で御議論いただいたところです。その御議論の結果を反映した部分を中心に御説明をしたいと思います。   まず,市区町村の審査権の関係でございますけれども,そこに書かせていただきましたように,12ページの(2)かつては形式的審査権しかない,あるいは民法で再婚禁止期間とか,そういったものが定まっておりますけれども,そういった法定要件具備の有無しか判断対象にしていないという考え方があったというところで挙げさせていただいております。   しかしながら,次のページですが,一方で出生届等については,出生証明書といった届出に係る事実を証明する資料を添付することを戸籍法自体が要求しておりまして,その届出に係る事実の有無を確認する必要があると法が考えているということを見て取ることができます。   さらに,戸籍法は届出本人の署名押印というものも求めておりますし,前回は簡単に御説明をしてしまったのですが,戸籍法は,届出の本人確認と不受理申出をした者に係る申し出た者の出頭の確認といった制度も設けております。(注)の18を御覧いただきたいと思います。戸籍法には,元々はこういった本人確認不受理申出の制度はございませんでした。そうしたところ,平成13年頃,当事者の知らない間に偽造婚姻届等が出されて不実記載がなされるという事案が相次いで発生しました。当時の資料によりますと,平成12年の末から14年の初めに,報道されただけでも9件,1件ずつそれぞれが複数の人と知らないうちに養子縁組をされていたとか,そういったような事案が発生したということでございました。   こうしたことを受けまして,平成14年に,一旦知らないうちにされてしまった婚姻あるいは養子縁組について,そのまま戸籍に一旦記載されて,それが戸籍訂正で消されると,経過が残るような形で戸籍が残るということにつきまして,これでは非常に困るという被害者の方,あるいは社会的な要請がございました。そこで,申出による再製の制度が設けられました。戸籍の再製と申しますのは,戸籍が滅失したときにのみ,それまではできるとされておりましたけれども,御本人が申し出た場合にも,一定の理由がある場合には,こういった再製,すなわち,偽装婚姻をしたというようなところの経過が出ない形での戸籍を作り直すことができるという制度が設けられたところでございます。   この制度,お手元の戸籍六法の191ページ,法の11条の2になります。申出による再製ということで設けられております。ただ,これによって偽装婚姻等が勝手になされた場合に,戸籍自体,戸籍面自体を元に戻すことが可能にはなったわけでございますけれども,その後また知らないうちに婚姻届が出されるですとか,あるいは氏を替えるために形式的には届出意思があるのだけれども,養子縁組届を出したというような報道が,また平成19年の改正の際の部会資料によりますと,短期間に7件ほど報道されておりました。そうすると,最後の戸籍面がきれいになればいいのではなくて,そもそも戸籍の届出の受理,入り口のところから,やはり方策を講じる必要があるのではないかと考えられ,平成20年に届出の際の本人確認と不受理申出の制度,これはお手元の戸籍六法の199ページ,27条の2という規定がございますけれども,こちらの改正に至ったわけでございます。27条の2の1項と2項が本人確認に係る規定でございまして,3項,4項が不受理申出制度に関する規定となります。   こういった本人確認制度や不受理申立制度が新設されたということもございます。また住民基本台帳法,戸籍事務の隣でやっていただいております住民基本台帳法によりますと,住基法の34条に調査権の規定がありまして,これはコンメンタールによりますと,実質的な調査をするものだというようなこともいわれているところです。   こうしたことをもろもろ考え合わせますと,少なくとも観念的には届出する方の意思も審査対象にはなっているだろうと考えることが合理的であるということを御説明申し上げているところです。   ただ一方で,市区町村の窓口がどこまで踏み込んだ調査が実際にできるのかといった,その調査の手法については,実際に現地調査に出掛けていって,その現場を確認するといったようなことは実現可能性に乏しいわけでございまして,余りに厳格な審査を要求することは,市区町村に不可能を強いることにもなります。また,不適切な届出人に不便,負担を加えることも想定されるところですので,手法としては主として市区町村長が持っている書類あるいは戸籍情報又は届出人が出してくる届書あるいはその添付資料といった書類を対比して精査するといったところが,主たる調査方法になるとして想定されているというところをお示ししていただいたところでございます。   こうしたことにつきましては,講学上の考え方として(注)17の山畠先生の「注釈民法」を少し引用させていただきますと,市区町村長はもとより実体法上の要件具備の有無を審査し,また法令の解釈についても当然に判断する権限を有するのであって,ただ審査の手法,程度に限界があるにすぎない。通常形式的審査といわれて理解されているものは,むしろ形式的審査の義務の話のことではないかといった御指摘があるところでございます。御紹介させていただきました。   こうしたところを受けまして,市区町村の調査権につきまして,(3)でございますけれども,前回に付け加えさせていただきましたのは,一番下のパラグラフ,「また」以下になります。届出人に対する質問等につきまして,住民基本台帳法34条の規定も参考にさせていただきますと,やはり市区町村の戸籍事務担当者に質問権も与えるのが適切であろうということでございます。   その最終的なまとめといたしましては,15ページの一番上のゴシックです。飽くまで法律の根拠なく行政法上行うことができると考えられております任意調査の範囲内でということでございますが,市区町村長は届出,申請の受理に対し,必要があると認めるときには,届出人,その他の関係者に対する質問あるいは文書の提出を求める,その権限を設けることが適切であると御提案をいたします。   次に,法務局の調査権についてでございます。法務局の調査権につきまして,先回更に限定が考えられないかという御示唆を頂いたところでございます。実際に法務局の調査がどのような場面で行われているかと申しますと,(1)に書かせていただきましたように,市区町村の方から受理照会ということで指示を求める,そういったものが上がってまいります。この受理照会を受けた法務局において,市区町村長に対して,戸籍事務を全国統一的に遂行するために,戸籍法3条2項によって市区町村長に対する指示,助言,勧告等が認められておるわけでございますけれども,こういったものを行うために,必要な範囲で,関係資料,関係者等について任意調査を行っているというのが現状でございます。   この戸籍事務でございますけれども,住民基本台帳事務は自治事務とされておりまして,本来地方自治体の事務と考えられているところでございますけれども,この戸籍事務は,本来的には国が行うべき1号法定受託事務として位置付けられております。これを実現する趣旨で,戸籍法3条2項が置かれていると理解をしております。   そうしたことを前提といたしまして,これまで届出に係る事実について,あるいは意思も含めてですが,市区町村から受理照会があったときに,法務局が調査をしているということが実態として主たるものであったということをここで確認をさせていただきたいと思います。   また,この受理照会における調査対象でございますけれども,16ページの2,第2パラグラフですが,報告的届に係る出生や死亡の事実などの客観的な事実が大半を占めております。ただ,近年の社会的な要請を受けて行われるようになったものもございまして,これが虚偽の養子縁組であると疑われる届出に関する受理照会ということになります。   この近年の社会的な要請というのを(注)23に記させていただきましたが,平成15年,先ほども申出に係る戸籍の再製制度あるいは本人確認制度,不受理申出制度等が設けられた経緯を御説明したところでございますけれども,それと軌を一にした平成15年頃から全国の戸籍事務を担当する方々で構成される全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会の総会で,養子縁組についての不実記載を防ぐための方策が要望されていたということがございます。また,平成22年までの間に養子縁組を悪用して極めて複数の方と養子縁組をして,氏を変えさせて養子に借入れをさせるといった事件が,社会的に広く報道されたということもありまして,この平成22年の3200号通達に至ったというところでございます。   この3200号通達でございますけれども,(注)24に記させていただきましたように,例えば届出前6か月以内に養子縁組を2回やったケースといったような,具体的な基準をお示しして,そういったものがある場合には,受理照会していただいて結構ですというような形になっております。これを受けて法務局において,関係人に話を聞くなどの調査をするということになっております。   こういった現状にあるわけでございますけれども,法務局の調査権に関する今般の考え方といたしまして,管轄法務局長が市区町村に対する助言又は指示を行うために調査を行う権限については御案内のとおり,明文上規定がないわけでございますけれども,飽くまで規定がなくてもできる任意調査の範囲内で,例えば間接強制の規定があるとか,そういったことですらない純粋な任意調査の範囲内であれば,法律の根拠はなくても,これが行うことはできるというのは一般的に考えられているところでありますし,また,先ほども申し上げましたように,戸籍事務は1号法定受託事務でございまして,管轄法務局長等が戸籍事務の全国的に統一された運用を実現するという目的で,戸籍法3条2項の指示等ができるとされております。前回御案内したように,例えば戸籍訂正について法務局長が個別案件について許可をするというシステムもあったりするところでございます。   こういったことを踏まえまして御提案でございます。18ページですが,まずはこの法務局の調査が,この受理照会と,国と地方の関係が一つ問題になるわけでございますけれども,地方である市区町村の方からの照会によっているという,そういった場面が主であるということを明示的にお示しした上で,その照会にお答えをする,その事務遂行に必要と認められる範囲内で実施されるということを明らかにした形がよろしいかと考えております。   また,先回の会議で意思についての実態が必ずしも明らかでない中で,意思を対象とする調査というのはどう在るべきかといった御指摘を頂いたところでございます。虚偽の養子縁組に係る受理照会のようなケースに関しまして,そういった懸念は頂いた上で,一方で現在市区町村の皆様からは,元々市区町村からの御要望で始まったということがございますが,評価を頂いているところでございまして,これを廃止するということは非常に難しいというか,できない中で,むしろ対国民という観点においても,また国と地方との関係という意味においても,法的な根拠を明確にすることの方が望ましいのではないかと私どもとしては考えているところでございます。   ただ,御案内のとおり,形式的意思の合致のある事例などについては,それが評価の基準が必ずしも一義的ではないというのは御指摘のとおりかと考えておりまして,濫用事例に当たる疑いがある場合に限り,この調査権が発動されるということを別途確認する必要があると考えております。   そこで,御提案するところが18ページの中ほどのゴシックでございまして,法務局の調査権につきまして,法律の根拠なく行うことができる任意調査の範囲内において,市区町村から受理照会を受けた場合,その他戸籍法3条2項の指示等を行うに当たり,必要があると認める場合の届出人その他の者に対する質問あるいは文書提出要求,そういった権限に関する規定を設けることを御提案いたします。   そして,それに当たって虚偽の養子縁組届に係る受理照会のような意思の有無を対象とする調査については,濫用事例に当たることが,そういった疑いがある場合に限り,調査権が発動されるべきことを確認することが適切であると御提案をいたします。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   前回までの議論を踏まえて,より掘り下げた形で御提案を頂いたものかと思います。   これについて御質問,御意見はございますでしょうか。 ○石川委員 今,渡邊幹事から適切に御説明いただいたのですけれども,ほとんど大きな改正は実は私の方が絡んでいまして,全国の戸籍連合協議会の私は会長で,今もやっているのです。国民の認識は実はこれは法定受託事務ですけれども,実は市町村の事務という思いが強い。なぜかというと,市町村に届出をしますので,そういう認識が非常に強いということをまず皆さん方に分かっていただきたい。   したがって,例えば13ページの(注)の18にあります偽装婚姻届についての戸籍の再製制度については,異例な形ですが,こういう取扱いをしたのは,飽くまでも偽装を受けた方から見ますと,どうしても戸籍には直した場合でも跡が付く,あるいは家裁で結論を出せという,これは非常にひどいだろうということで,こういう対応をお願いをし,なったわけでございます。あるいはその後もかなり養子縁組等で偽装の関係が相当,偽造があったわけでございますので,できるだけ入り口でどこまで調べ,調査をするかということが大きな課題になっておりまして,たしか20年に法27条の2で,ある程度調査,これが法的になかなか難しいところですけれども,本人確認だとかできるようになったのも,ある面では,戸籍を国民の信頼の下にやるためには,状況に応じて変えていかなければいけない。しかも法律的に国と市町村との役割がありますけれども,市町村に一定の調査権を,調査権という言葉がいいかどうかは別として,与えないと現実的には非常に市町村がつらい立場に立ちます。特に13年のときの偽装結婚については,ほとんどその自治体のところは首長に,マスコミと世論が押しかけたという事実があります。   そういうことを考えますと,是非今回の場合に一定の範囲で,法的な技術論はあると思いますけれども,市町村に,一定の事実確認だとかいろいろなことを与えるということは,私は避けては通れないことだと思います。是非お願いしたいと思います。 ○窪田部会長 どうもありがとうございます。   御意見として承るということでよろしいでしょうか。   ほかはいかがでしょうか,御質問,御意見,いずれでも結構です。 ○磯谷委員 この点については,私ども日弁連の中でもいろいろ議論をしておりますが,基本的に今まで法律に定めがない状態でやっていたことを,きちんと法律に定めることについては,前向きに評価をしております。   また,濫用事例がある中で,やはりこういったものについては,きちんと排斥をしていかなければいけないだろうというところも理解はしておるのですけれども,前回も少し発言させていただきましたが,特に養子縁組につきまして,先般の節税目的での養子縁組も認めた最高裁の判例などに照らしますと,LGBTの方々が婚姻の代わりに養子縁組を使うことも許容されるように思われます。そのような場合,この調査がプライバシーに対して侵害的に作用するおそれがあるのではないかという懸念は引き続き持っています。その点については,しかし最後のところで,今回事務当局からも,飽くまでもこの濫用事例に当たるようなものについてのみ発動するのだというお話がありました。そうすると,恐らく実質的なところでは,差がないのだろうと思いますけれども,そうだとすると法文にどう書き込むのか,通知や通達のような形で十分なのかというところが,多分ポイントになってくるのかなと考えております。   しかしながら,私どもにもいいアイデアがあるわけではありません。つまり,法律にこういうふうに書けば適切に制限できるではないかというようなところまでなかなか至っていないので,歯切れが悪いのですけれども,幾つか議論をしている中で,アイデアとして出てきたのは,一つは特に虚偽の養子縁組などを想定すると,届出又は申請が不当な目的あるいは不正な目的でなされた疑いがあるときとか,そういうふうな形で書くのが一つありなのかなという話が出ていました。それから今日はむしろ出生だとか死亡だとか,そういった事実についても調査対象になるということで,これも以前そういうふうなお話も出てきていましたので,例えば届出書に記載のある事実につき確認の必要があるときとか,そういうふうな形で制限をするというのもありなのかなと思っております。   何か日弁連として正式な御提案ということではないのですけれども,飽くまでもアイデアというふうなところですけれども,できる限り法律のレベルで適切な運用ができるような担保をしていただきたいなというふうなところでございます。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   今の磯谷委員からの御指摘というのは,基本的には調査権については認めた上で,調査権を発動する場面を限るということで提案をしていただいたのは,多分前回の議論も踏まえた上で非常に慎重に対応していただいたと思うのですけれども,それを実際に法文とか法制度に仕組んでいくときに,具体的にどういうふうにするのかという非常に大変に重要な御指摘だったと思います。これについては,引き続き御検討をお願いしたいと思います。   ほかはいかがでしょうか。 ○大野幹事 大野ですけれども,まず市区町村の方の調査権は先ほど全連会長の石川委員の方から申し上げましたので,私からは法務局の方の調査権のお話を申し上げます。   今,磯谷委員からも御指摘がありましたけれども,市区町村側から法務局に受理照会をするという部分は,例えば先ほどの養子縁組の濫用,例えば自分の今の名前ではもう消費者金融からお金が借りられないので,名字を替えるために養子縁組というのがかなり以前は頻発していたところがある中で,いろいろ調整された結果,その3200号通達で,一定の基準を設けて,今の受理照会という仕組みができたところです。それによって,それだけではないとは思いますけれども,かなり濫用ではないかというような養子縁組,ゼロにはなっていないのでしょうけれども,減っているようなところは見受けられるところですし,またそれ以外の部分でも,必要な市町村の窓口での審査だと,そこまで細かいところまでは調査し切れないというところで,受理照会をすることによる調査をしていただいているわけですから,その部分の法務局の調査権を法定で定めるという必要はあるかと思いますので,その規定の仕方は今後いろいろ考える必要があると思いますけれども,方向性としてはその必要はあると思います。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。 ○新谷委員 今のに関連しますけれども,創設的届出のみならず,報告的届出,いわゆる事実の届出,出生届,死亡届,これについては法定添付書面ということで,出生証明書を添付しなければならない。死亡診断書若しくは検案書を添付しなければならないと,こういうふうにやって,きちっと付いている事案は問題ないわけですけれども,法務局の中で受理照会というのが市区町村から上がってくる中には,やはり一番多いのは恐らく報告的届出では出生届で出生証明書の添付がない。直近に生まれた子供さんの場合ですと,最近の子供さんは自宅分娩とかなんかで出生証明書がなくても,その手の形でいろいろ,これとこれをそろえればいいというふうにやって問題ないのです,受理照会されたとしても。   ただ,問題なのは,やはり大きくなってから青年に近くなってから上がってくるというケースも,恐らくまだ結構あるのではないかなと思います。無戸籍の問題というのは,民法772条の規定の問題は別としまして,事実としていまだにある。そうすると,その届出人ないし事件本人,出生児そのものよりも,やはり届出に行かなければいけないわけですし,一番肝心なのは母子関係ですから,ただ母子関係そのものよりも,御本人をお呼びする,いろいろな調査をするというので,今具体的には何も調査権というのはなくて上がってきて,事実上には,いわゆる市町村長の手足となって管轄の法務局が処理をするということでは,家庭裁判所も一緒なのですけれども,そういうある意味での指導助言する,昔監督するという形になっていましたけれども,それは上がっている。   ただ,問題なのは何を言いたいかというと,その届出人の方が出生地でそのままずっといるわけではなくて点々としているわけです。そうすると受理照会がどこで出生届をするかによっては,管轄法務局だけでは間に合わない。他の県にまたぐとなると,法務局が幾つかまたぎます。そうするとやはりその中で法務局だけではなくて,逆にいうと,出張していくというのは,なかなかできないところがありますので,調査嘱託というような形で,現実問題は処理をしている事案があると思います。そういう意味では,そういうところまで含めた形の法整備をしていただければもっといいのではないかなというふうな感じをしているというところです。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   ただ今の大野幹事,それから新谷委員からの御意見も含めてということだと思いますが,それについて事務当局の方からは何かございますか。 ○渡邊幹事 調査嘱託の今お話がございましたけれども,それは法務局と法務局との関係ということになりまして,組織内部の関係ということになろうかと思います。戸籍法に定める事柄,あるいはまた別のレベルで定める事柄といったことも含めて検討させていただきたいと思います。 ○窪田部会長 それからもう一つ,現在の第4というのは,専ら創設的届出を想定しながら書かれているのかなと思うのですが,それに対して,報告的届出についてもやはり調査権の話をもう少し詰める必要があるのではないかという御指摘が含まれていたかと思います。これは特にあれですかね,創設的届出を想定しながら書いてはいるけれども,報告的届出についても当然及ぶものという趣旨でよろしいですか。 ○渡邊幹事 報告的届出につきましては,客観的な事実関係を対象にしておりまして,出生という誰から子供が生まれたかという例えば出生届であれば,そういった事実を対象にするわけでございます。   今,新谷委員からお話がありましたのは,そういったものであっても,長い間その出生から時間が経過している場合には,調査に意を用いなければならないときがあるということかと思います。ただ,そのことについては客観的事実であることには変わりませんので,具体的にどういった資料があればよいかといった実例も多々ございますので,そういったところからスキルを共有していくということが肝要かなと伺いました。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   それ以外いかがでしょうか。 ○大橋委員 この法務局の調査権の点なのですけれども,これはやはり市区町村の調査権と違うところは,やはりこれは法務局の問題は,国と市町村,国・地方関係にも関わるところなので,そこにきちんとした配慮をしましたということを,やはりこの審議会とか法律を作るに当たってチェックしておかなければいけないのかなという気がします。   そうしますと,今日の(注)の26のところで,並行で権限を作ったのではないかと,そういうようなことの問題,そこについてもきちんと答えられるように,今,地方公共団体が自分でやっているところに法務局というところに調査権を入れるような形になるので,形式的にはそこでダブルトラックの権限を作ったというようなことを言われかねない。それが地方分権との関係で正当化できるのですかという,そういう質問は当然出てくると思うので,そこについてはやはりちょっと整理しておいたほうがいいかなという気はいたします。   ですけれども,今まで言われてきたのは,自治事務について,本当は自治事務に対してできない関与を,こういう形でバイパスを作るのはおかしいではないかという,そういう議論から出てきた話なのですけれども,今回のものは法定受託事務だということが一つということと,そういう権限を作る場合も,国が自分で手を出して自己執行してしまうような場合です。この場合でいえば,届出を国が出ていって受理してしまうとかと,そういうようなやり方と,単に調査で入るという,そのやることの中身も違うということもあって,今回はそういう調査業務に限定されているということで,そういう例は福祉の分野なんかで国が補完的に調査に入るというのは一方でありまして,ただしその場合,間接強制調査でできているので,罰則付きで入っていくということで,今回はそれよりももっとマイルドで任意調査で入らせてくださいということなので,ですから今言った3段階のところなんかから見ると,かなり配慮した形で仕組みを作っているということは言えるのかなと思います。   それで,今日のこの報告書のところで,一つは比例原則を厳守しますということを言っていただいているということと,一つは適合場面を受理照会とかという形で具体的に出していただいてということで,かなり限定された形になっていて,あと,ですから,この権限の発動がかなり限定的ですよということの確認ということなので,この確認をどういう形で出すかということで,法文上出すと。法律上の文言で表すのはなかなか難しいようであれば,省令とか政令とか,あと今までの通達を見直すような中で,そういう具体的な例示をきちんとやるとかというような,そういうものの併せ技のような形で制度設計していただければ,そこのところの説明はできるのかなというような気はいたしましたので,ちょっとそういう点を含めて検討いただければと思います。 ○窪田部会長 ありがとうございます。   今,大橋委員御自身が大変に丁寧に説明してくださったと思いますけれども,それも踏まえた上で文面等を少し検討していただければと思います。   ほかはいかがでしょうか。   それでは,少し議論も出尽くした感じはございますけれども,第1から第4まで全部を通じて,やはりちょっとこの点を確認しておきたい,あるいはこの点を申し上げておきたいということはございませんでしょうか。   それでは,本日の審議はこの程度にさせていただきたいと思います。   最後に,次回の議事日程等について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○渡邊幹事 次回の会議ですが,本年3月9日の金曜日,時間は午後1時30分から午後5時30分までを予定しております。開催場所は,ここと同じ法務省20階第1会議室になります。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   それでは,本部会の第4回会議はこれにて閉会とさせていただきたいと思います。熱心な御審議を賜りまして,本当にどうもありがとうございました。 ―了―