法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第3分科会第7回会議 議事録 第1 日 時  平成30年 3月29日(木)   自 午前 9時59分                          至 午前11時44分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  1 起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方について         2 保護観察・社会復帰支援施策の充実,社会内処遇における新たな措置の導入及び施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方について         3 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会第3分科会の第7回会議を開催いたします。 ○小木曽分科会長 本日もお集まりいただきまして,ありがとうございます。   本日,加藤幹事は,所用のため欠席されております。そこで,審議の充実のために,加藤幹事に代わり,隄幹事に御出席をお願いしております。   また,審議の中で家庭裁判所の実務の実情等について御質問があったとき等に適切に御対応いただくため,澤村幹事に出席をお願いしております。   それでは,資料について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○羽柴幹事 本日,配布資料として,配布資料15「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方(検討課題等)(4)」,配布資料16「「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」及び「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」(検討課題等)(4)」を配布しております。   また,配布資料14を再度机上に置いております。   配布資料の内容については,後ほど意見交換の際に御説明します。 ○小木曽分科会長 それでは,審議に入ります。   初めに,本日の議事の進行ですが,前回の会議では,「検察官が働き掛けを行う制度の導入」についての意見交換の途中で会議を終わりましたので,本日は,まずこの検討項目について続きの意見交換を行いたいと思います。   その後,これ以外の検討項目について,当分科会におけるこれまでの委員・幹事の方々からの御意見を踏まえ,2巡目,3巡目の意見交換を行いたいと思います。   その順序ですけれども,まず,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」の論点に関する残りの検討項目についての意見交換を行い,その後,「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」及び「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」の検討項目について,順次意見交換を行うということにしたいと思います。   このような進め方でよろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それから,今後の予定ですが,4月26日に,部会の第7回会議が予定されております。分科会における検討状況は,逐次,部会に報告することとされており,部会第7回会議においては,本日までの分科会での議論の状況について,中間報告をしたいと思います。本日の会議では,この中間報告に向けて,当分科会が担当する論点に関する検討項目につき,考えられる制度の概要作成のために検討すべき課題等が適切に顕出されるようにする観点からも,御意見を頂きたいと思います。   それでは,初めに,「検察官が働き掛けを行う制度の導入」について,配布資料14に沿って意見交換の続きを行いたいと思います。   先ほど申しましたように,本日は部会第7回会議前の最後の分科会でありますので,部会第7回会議に中間報告を行うことを考えますと,本日は,この検討項目以外にも,全ての検討項目について,御意見を伺う必要があります。   もとより,活発な意見交換は制約されるものではありませんが,検討項目が多岐にわたっており,限られた時間内で意見交換を行う必要があるということを御承知おきいただきたいと思います。   また,この「検察官が働き掛けを行う制度の導入」の検討項目についても,配布資料14の検討課題の「3 制度の枠組等」の「手続」以下の事項については,前回全く議論が及びませんでしたので,それらの事項について優先的に御発言を頂くのがよろしいと思います。もちろん,それ以外の事項についての御意見でも結構です。   それでは,いずれの事項からでも結構ですので,いずれの点であるかを明示していただいた上で,御意見を頂戴したいと思います。 ○保坂幹事 「手続」の中の同意に関してです。被疑者の同意の要否自体も一つの論点ですし,なぜ同意が必要なのかという根拠も論点だとは思うのですが,仮に同意を要するとした場合に,根拠との兼ね合いでもあるわけですけれども,同意の対象なり内容は何かということを検討しておく必要があろうかと思われます。   同意を必要とする理由・根拠が,守るべき事項の遵守に向けての実効性の担保だとすると,その前提として,検察官がその説明をした上で,被疑者がその内容を理解してそういう仕組みを受け入れるということと,守るべき事項の内容に異存がないということ,それが同意の対象なり内容になってくると思われます。   続いて,「検察官以外の機関の関与」という点ですが,検察官以外の機関というと,裁判所が思い付くわけですけれども,仮に関与するとすれば,それが果たして適切なのか,必要なのかという点でいいますと,現行の保護観察の特別遵守事項の設定について,どのような仕組みになっているのか,その趣旨は何なのかということを確認しておくことが必要と思われます。   この点は,事務当局に趣旨を質問したいと思っているのですが,すなわち,現行の更生保護法の1号観察と4号観察については,特別遵守事項の設定に当たって,設定するのは保護観察所の長になるわけですが,1号観察であれば家庭裁判所の意見を聴く,4号観察であれば言渡し裁判所の意見を聴くということになっています。他方で,2号観察と3号観察については,特別遵守事項の設定は地方更生保護委員会が行うことになっていまして,特別遵守事項の設定の主体なり手続なりが保護観察の種別によって区分されている趣旨を,事務当局の方から御説明いただければと思います。 ○今福幹事 今御指摘いただきましたとおり,1号観察と4号観察における特別遵守事項の設定に当たっては裁判所の意見を聴くものとされております。まず,1号観察については,保護観察処分をした家庭裁判所が関与することとされております。その趣旨は,そもそも保護観察処分を決定したのは当該家庭裁判所でありますから,特別遵守事項の内容について意見を形成するのに十分な情報を有している立場にあるということ,また,当該家庭裁判所は,例えば,少年法第28条に基づいて,保護観察所に対し,当該少年に関する報告又は意見の提出を求めることができるなど,法令上,保護観察処分後も当該少年の処遇について一定程度関与すべき立場にあり,これらのことなどを踏まえたものでございます。   次に,4号観察については,保護観察付き執行猶予を言い渡した裁判所の意見を聴くものとされております。趣旨について申し上げますと,当該判決宣告裁判所は,公判期日における証拠調べの結果に基づき,特別遵守事項の内容について意見を形成するのに十分な情報を有している立場にあるということ,特別遵守事項に違反した場合に執行猶予を取り消すか否かの判断主体が裁判所であるということなどに鑑みて,裁判所の意見を聴くこととされているものと承知しております。   一方,2号観察と3号観察の場合は,地方更生保護委員会が特別遵守事項を設定することになっております。その趣旨は,地方更生保護委員会が仮退院や仮釈放の許否の判断機関であり,どのような内容を特別遵守事項とするのかという観点も踏まえて,仮釈放等の許否の判断が行われる必要があるということから,特別遵守事項の設定については地方更生保護委員会にこれを委ねるのが相当であると考えられたためであるとされております。 ○保坂幹事 そのような御説明を前提としますと,今議論している守るべき事項の設定に関与する機関をどのように考えるかということでいいますと,まずは,対象者について十分な情報を持っている機関はどこなのかということと,その守るべき事項に仮に違反した場合に対応する機関がどこなのかということの2点が要素になると思われます。   そうしますと,今検討中のものについては,事件の起訴・不起訴を判断しようとする段階であれば,検察官が事件記録を保管し,対象者についての情報を最も多く保有していると考えられることからしますと,守るべき事項の設定主体は検察官とするのが相当だろうと思われますし,違反した場合の対処という観点からしましても,どのような仕組みを設けるかによりますけれども,仮に被疑者を起訴する,公訴提起をするということも可能にする仕組みというのであれば,やはりその観点からしても,起訴するという対処をする検察官の判断で行うのが相当ということでして,それ以外にほかの機関の意見を聴くべきニーズというのは見当たらないと思います。 ○田鎖幹事 今の点に関してですけれども,確かに,情報を一番保有しているのは検察官であると,違反等があった場合に対応する機関としても検察庁であるということですけれども,そもそも改善更生のためにどういう働き掛けが必要なのか,そういったニーズを適切に見極める能力があって,そのためにどういった守るべき事項を設定すべきかということも,これまた専門的な見地から判断する必要があるということになるのだろうと思いますので,仮に制度を設計するとすれば,ですけれども,最終的には検察官において定めるとした場合であっても,そこに,後ほどの「検討課題」の一番最後の「4」の項目である「少年鑑別所の調査機能の活用の在り方」とも関わってくると思うのですけれども,どのような形で専門的な機関の判断を絡ませるかというのは当然に必要になってくる考慮事項だろうと考えます。 ○保坂幹事 今の田鎖幹事の御発言は,そのとおりだと思います。ただ,ここで議論している,関与機関をどうするかというのは,必要的な関与,すなわち,関与しなければそれが設定できないという仕組みを設けるかということであって,設定に当たって有用な情報や専門的知見を取り入れるということとは少し違う観点かと思います。   次に,「弁護人(弁護士)の関与」というところですけれども,これが必要,あるいは,国選弁護のような制度が必要ではないかという御意見もあったわけですが,これもまた,同意を要する根拠や理由にもよるかと思います。   先ほど申し上げたように,この仕組みの実効性を確保するための同意というものを考えた場合に,その同意をするかどうかの前提として,弁護士あるいは弁護人に相談をしたいということであれば,十分相談した上で受け入れるということの方が実効性の確保には資するのでしょうから,それはそれで望ましいと思われるわけですが,そのような根拠での同意を考えた場合に,その同意のため,同意をするかどうかの決断のためだけに,在宅の被疑者も含めて国選弁護制度,あるいは必要的弁護とすることまで必要かということについては,慎重な検討が必要と思われます。   つまり,そこで弁護人が関与しないと同意として成り立たないという仕組みにしますと,およそ弁護人がなければ今検討中の措置なり手続なりをとることができないということになって,そのために公費で弁護人を雇うということまでするのかということについては,慎重な検討が必要と思われます。 ○田鎖幹事 今のは,実効性に資するという観点であれば,という御発言でした。他方で,そうではなくて本人に対する権利制限的な,あるいは,これを法的なものと考えるか,事実上の,実質的なものと考えるかは別として,義務を課すようなものと捉えて,そのために本人の任意の真摯な同意が必要なんだと考えた場合には,弁護人の関与というのは積極的に必要というふうに結び付きやすいのかなと考えます。公費でわざわざ付けないと駄目なのかというような御指摘もあったのですけれども,一方で,これは対象者が比較的軽微な事案を犯した人ですから,必ずしも身体拘束されている事件に限られないわけなんですが,しかし,今,国選弁護の制度がかなり拡充して対象が拡大しているわけですので,そもそも少なくとも実質的に権利制約的,義務を課すような性格があるということを考えると,私は弁護人の関与というものはなくてはならないだろうと考えます。 ○小木曽分科会長 そのほか,「不服申立て」や「期間」といった点もございますが,いかがでしょうか。 ○保坂幹事 「不服申立て」ですが,「A案」,「B案」と,不服申立て制度を設ける案,設けない案が資料に書かれていますが,「A案」で不服申立て制度を設けるとすると,申立先は裁判所ということになると思われます。   今検討している仕組みについて,検察官が守るべき事項を設定する根拠を訴追裁量に由来すると考えていきますと,被疑者をこの仕組みの対象にし,かつ,特定の守るべき事項を設定したことについて,対象者なりその弁護人なりが裁判所に対して不服を申し立てるということになると,正にその訴追裁量の行使の在り方について裁判所がその当否・可否を審査するということになってしまい,これは,前回会議で福島幹事もおっしゃっていたように,そのようなことが果たして相当なのかについて大いに疑問があると思われます。 ○田鎖幹事 今御指摘の点は,正に訴追裁量があることを前提としてこの仕組みを考えるというふうな出発点に立ちますと,ごもっともな御指摘でありまして,そう考えると,そもそも不服申立てというものが有効な形で制度設計できるのかというと非常に難しいというか,無理であろうと思われるわけです。   一方で,「その他」の論点とも関わるわけですけれども,弁護人の関与ですとか検察官以外の関与ということもなかなか現実問題として難しいという御意見があるわけです。そうすると,結局,全体として見たときに,コントロールというか統制が働かないシステムとなってしまい,そのような枠組みの中で,そもそもこういった働き掛けをすることが適切なのか,相当なのかという疑問にまた戻ってくるというのが私の意見です。 ○太田委員 今の「不服申立て」の点についてですが,印象程度のコメントにすぎませんけれども,同意を得るという制度をどういう根拠に基づいて行うかということにもよるのかもしれませんが,同意をするかしないかという選択がある制度の中で,不服申立てという場面を少し想定しづらいように思います。要するに,離脱する自由ということが認められるとすると,同意をするかしないかということの選択をする場面以外で,何か不服を申し立てるということの場面が私はイメージできないという印象を持っております。同意を得るという手続を設けるということであれば,それ以外に何か別途不服申立てという制度の意味合いとか場面設定というのが理解しづらいと感じております。   続けて,「(2)」の「指導・監督」の「期間」についてです。以前,田鎖幹事が,この期間はどう在るべきかという議論の中で,公判の平均審理期間と比較しながら,6か月又は1年という期間で指導・監督を行うというのであれば対象者の負担が増えるという趣旨の指摘をなさったかと思いますけれども,今回検討対象になっている,起訴するかどうかの判断の前に一定の守るべき事項を設定して一定期間様子を見るという仕組みを設けることとするときに,その期間がどう在るべきかを考える際には,犯罪をしているということが前提ですから,本来なら当然刑罰を受けなければならない被疑者に対して,刑罰を科さずに社会に戻すわけでありますので,当該被疑者が再犯に至らずに更生するためには何をどの程度すべきかという判断と,それから,被疑者に対する負担がどの程度のものであるかという判断,さらに,当該犯罪によって被害を受けた者がいるわけですから,その被害者に対する配慮といった点,これらを総合的に勘案しなければいけないのでありまして,起訴された場合の通常公判の自白事件の審理期間における負担と同一のものとして比較するのは合理的でないと思います。   確かに,対象者の負担が過度にならないようにするという観点から,上限を設けることは必要でありましょうが,その一方で,ただ被疑者に対する負担が軽いか重いかということだけを基準に期間の在り方を考えるのは適当でなくて,どれほどの期間であれば守るべき事項を設定して指導・監督を行うことの趣旨が達せられるのかという観点こそ考慮すべきではないかと思います。   そうした観点に立った上で,それでは,日本の現行法制度や現在の実務との関係でどのように制度設計したらよいのかということについてでありますけれども,例えば,対象者に対して身柄拘束を伴う処分を課さずに社会の中で指導や監督を行う現在の制度としては,少年に対する1号観察,保護観察処分があるわけでありまして,その解除の運用が一つの参考になるのではないかと思います。1号観察につきましては,更生保護法におきまして,保護観察所の長は,保護観察処分少年について,保護観察を継続する必要がなくなったと認めるときは,保護観察を解除するものとすると定めておりますけれども,ここでいう,「保護観察を継続する必要がなくなったと認めるとき」の内容によっては,保護観察所の長が,保護観察処分について,どの程度の期間観察すれば,その先保護観察を継続しなくとも改善更生を図れると判断しているのかということでありますので,それが参考になるのではないかと思います。   そこで,事務当局に,更生保護法の「保護観察を継続する必要がなくなったと認めるとき」ということの意義と,実際に1号観察において,一般的にで結構ですけれども,この解除までに要する期間がどうなっているのかということについてお伺いしたいと思いますけれども,いかがでしょうか。 ○今福幹事 まず,一点目の御質問についてお答えします。更生保護法第69条で規定されている「保護観察を継続する必要がなくなったと認めるとき」がどのような場合を指すのかということについては,犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則第82条第1項に規定されています。同項の規定を申し上げますと,「健全な生活態度を保持している保護観察処分少年について,その性格,年齢,経歴,心身の状況,家庭環境,交友関係,保護観察の実施状況等を考慮し,保護観察を継続しなくとも,当該生活態度を保持し,善良な社会の一員として自立し,確実に改善更生することができると認めるとき」とされています。   続けて,二点目の御質問についてお答えします。平成28年中に1号観察が終了した者のうち交通短期保護観察を除いたものについて,解除までの期間ごとに分けて申し上げると,3月以内の者は0人,6月以内の者は134人,9月以内の者は2,911人,12月以内の者は653人,15月以内の者は3,142人,18月以内の者は794人,21月以内の者は495人,最後に24月以内の者は287人,そして24月を超えている者は467人という状況でございました。 ○太田委員 ということは,今,1号観察で解除になった者が9,000人近くいて,その解除までの期間が3月以内が0人で6月以内が134人にすぎず,その期間が6月を超えて,例えば15月以内の者,すなわち6月から1年3か月までぐらいの者だけで7,000人近くを占めているわけでありますので,これは保護観察処分少年での場合ではありますけれども,解除までに要する期間というのは,この期間を大過なく過ごした場合にはその後も確実に改善更生ができると考える期間ということになりますので,見極めるための経過観察を要する期間の目安としては参考になるのではないかと思います。   そうしますと,守るべき事項を設定して指導・監督をする期間についても,一応ここには「A案」,「B案」と書かれてありますけれども,「B案」のように「6月より短い期間とする」というのは,この保護観察処分少年の実務を考えますと,期間としては短すぎるのではないか,6月以内の間に改善更生を見極めるというのは実際上困難であって,制度の趣旨を全うすることができないのではないかと考えます。 ○田鎖幹事 今の「期間」の点について私も申し上げたいと思うのですけれども,太田委員から,そもそもこのスキームは罪を犯していることが間違いないということが前提であると,本来であれば刑罰を科されるべきであるのに刑罰を科さないで,別途このような手続の対象とするのだと,そういうお話でございました。   おっしゃることもよく分かるのですが,一方で,現行法では起訴便宜主義が明確に定められておりまして,刑罰を求めて訴追するかどうかを第一次的に検察官が判断するということがそもそも制度上,組み込まれてしまっているということで,この制度枠組み案というものも,起訴猶予が一応考えられるものが対象となっているということですので,なかなかそこは難しい部分があるのではないか。諸外国のように起訴法定主義をとっているということであれば比較的分かりやすい話なのですけれども,そもそも刑罰を科すことを求めないということが前提として考えられる事案ということですので,しかも訴追裁量の枠の中で働き掛けをしていこうということを考えたときに,6月以上というような期間がどうやって正当化されるのかというのは慎重に考えなければいけないのではないかと。以前にも繰り返し申し上げたのですけれども,この「趣旨」のところで,一応,起訴に伴う負担の回避,そして早期の社会復帰の実現とありますので,ここをきちんと趣旨,目的として掲げるということを維持するということであれば,6月以上ということはないのではないかなと考えます。 ○太田委員 今の起訴便宜主義,起訴裁量主義ということでありますけれども,これがあるからといって,必ず一定のこういう罪については起訴しないというスキームになっているわけではなくて,検察官が,刑事訴訟法上の規定にある種々の事情を勘案した上で,例えば窃盗を犯した者は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処すると規定されてあるところだけれども,種々の事項を勘案した上で,再犯をするかどうか,更生できるのかどうか,社会に対する安全の確保はどうなのか,被害者に対する配慮などということを勘案して訴追の有無を判断をすることができるというのが起訴裁量主義なので,必ず処罰しないということが前提になっているという趣旨ではない。だとすれば,検察官が起訴・不起訴を考える際の一つの事情として,こういった一定の事項を守ることが更生に資するという場合に,一定の守るべき事項を課した上で起訴猶予にするということは,本来の裁量の制度の趣旨にも合致するのではないかと思います。   それから,余計なことかもしれませんけれども,起訴法定主義というのは,よく日本の教科書に書いてあるように,証拠がある場合には必ず起訴するという制度の趣旨ではございません。起訴法定主義の典型とされている,例えばドイツの場合では,膨大な数の訴追打ち切りが制度上認められています。要するに,起訴法定主義と起訴裁量主義の違いは,起訴猶予にすることが,ドイツの場合,起訴打ち切りといった方がよいのかもしれませんけれども,起訴猶予にする場合には,法定されている基準に従って起訴猶予にする,起訴打ち切りにすることができるという趣旨でありますから,証拠がある場合には必ず起訴するという制度では全くないということは確認しておいた方がよいかと思います。   ただ,起訴法定主義において基準が法定されているといっても,結局,抽象的な規定になっているので,最終的には検察官のかなり広範な裁量があると私は聞き及んでいるということを,付言ですけれども述べておきたいと思います。 ○保坂幹事 「指導・監督」の「指導・監督の方法」で,配布資料には「保護観察官による指導・監督の在り方」とありますけれども,議論の前提として皆さんが想定されているとおりだと思いますが,この保護観察というのは現行の保護観察のやり方をイメージすると思われ,保護観察官と保護司が協働する,保護観察官あるいは保護司が対象者と接触をして行状の把握をしつつ指導・監督を行っていくということだろうと思います。   それから,「その他」の「守るべき事項に違反した場合にとり得る措置」についてです。先ほどからも議論がありましたが,この仕組みを検察官の訴追裁量に基づいて構成するとすれば,検察官が守るべき事項に違反した場合にとり得るとすれば,起訴する,公訴提起をするということになろうかと思われます。起訴猶予相当の者というのを前提とした場合に,それを守るべき事項に違反したからといって起訴するのであれば,それは重罰化ではないかという御指摘もあったところですが,今検討中のものというのが,以前から何度か申し上げていますけれども,検察官がこれを守るべきだということで設定をして,それを守らない,あるいはきちんと履行しないという事情があったときに,きちんと守ったという場合と比較すれば,それは被疑者にとって有利な事情というのが乏しくなる,そうすると,積極的に起訴猶予にする事情が足りないとなりますと,その状況の下で起訴をするということの判断をするということは十分に考えられるところですし,その場合に,違反したら必ず起訴するという仕組みではなくて,違反した内容ですとか,あるいは程度とか,その他の事情も考慮して,起訴する場合もあれば起訴しない場合もあるとするのであれば,少なくとも,いかなる違反があっても必ず起訴しますという制度でない以上は,起訴する場合があることそのものが重罰化というのは当たらないのではないかと思います。 ○田鎖幹事 今の御説明を伺っていて,少し混乱してしまったのですけれども,まず前提として,確か前の分科会でも出たと思うのですが,守るべき事項が守れたら訴追しないと,そこは前提とされているという理解でよろしいでしょうか。守れなかったときに訴追ありきではないということはあったのですけれども,単に守ったことが有利な事情の一つとしてしんしゃくされるにすぎないのだとすると,その部分も必ずしも訴追しないという判断には直結しないかなと思われまして,そうすると,現状,刑事訴訟法第248条の下で行われている犯罪後の情況の一資料として判断するということに,結局,吸収されるのかなとも考えまして,少しお尋ねする次第です。 ○保坂幹事 守るべき事項を検察官が設定して,それをきちんとこなしてきましたということであれば,通常の流れとしては,それは起訴猶予にするのだろうと思います。通常の流れとしては,そのようなものを想定するということなのだろうと思いますが,以前にも少し申し上げましたけれども,判明している事情を基にすれば,守るべき事項を守ったら起訴猶予という判断になるのでしょうが,それまで分かっていなかったこと,例えば,単発的な犯行だと思っていたら実は常習的だったということが分かってきた場合には,守るべき事項を守ったとしても,その前提としてのいわゆる犯情の部分の認定が違っていたということになりますと,それは起訴することもあるわけですが,そういった事情が新たに判明したということがなければ,守るべき事項をきちんと守ってきたら,流れとしては通常,起訴猶予になるのだろうし,そういう仕組みであると私は考えております。 ○田鎖幹事 そういたしますと,そもそも制度の枠組みをかちっと定めるのがなかなかこれは難しいと感じておりまして,このような形での制度化が難しいとなると,それがふさわしいのか,相当なのかという疑問にまた結び付くと,今のはまだ感想めいたものですけれども,一応申し上げます。 ○太田委員 保坂幹事の説明にほとんど尽きてはいるのですが,あえて屋上屋を重ねればということで,先ほど,守るべき事項に反した場合にとり得る措置ということについて,本来守るべき事項というのは被疑者の改善更生,再犯防止のために特に必要だということで設定してあるものですから,それに違反するということは改善更生に関しては危うい状態にある,支障を生じる可能性が極めて高いという状況にあるわけでありますので,そういう場合には起訴をすることができるというのは当然であろうと思います。公訴時効が生ずるまでは,現行法でも,起訴猶予にしてあっても,再起して訴追することは可能であるわけですので,それをあえて措置というかどうかというのは別としても,とり得ることは当然だと思います。   私は,むしろここでとり得る措置があるとすれば,あえて措置だとすれば,比較するのがいいのかどうか分かりませんけれども,保護観察付き執行猶予でも,遵守事項違反があった場合に,形式的に違反があったということだけで直ちに取り消すわけではありません。その者の改善更生とか再犯防止ということに関して本質的な問題があるということであれば,起訴ということになるのでしょうけれども,そうでない場合には,更に改善更生や再犯防止に資するために,守るべき事項をどのようにすればよいのか,これは実際の指導という形で,設定された事項の中で指導していくという形でできるという場合もあるでしょうし,更に守るべき事項を変更するということをもって対応するということで効果的な対応が期待できる場合もあるでしょう。その場合,元々,守るべき事項には被疑者の同意が必要だという制度設計であれば,この場合でもやはり同意が必要だということになるでしょうけれども,そういうふうに内容を変えるとか,それから,期間について,最初から上限があって目一杯設定されている場合は難しいですけれども,まだ期間延長が可能であるとすれば,そういった期間の延長ということもあり得る,そういうものとして私は措置というものを捉えておりますので,違反したからすぐに公訴という形ではありません。正に本来のこの制度の趣旨に従った,守るべき事項の変更とか期間の延長とか,それから,指導・監督の中での事実上の運用といいますか指導内容の工夫とか,そういうことで対応していくということを当然に予定しておかなければいけないと考えております。 ○小木曽分科会長 そのほかの点は,いかがでしょうか。この項目についてはこのくらいでよろしいですか。   それでは,「検察官が働き掛けを行う制度の導入」については,本日の意見交換としてはこの程度ということにして,次に進みたいと思います。   次は,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」の残りの検討項目であります「起訴猶予となる者等に対する就労支援・生活環境調整の規定等の整備」についてです。   この項目につきましては,当分科会の第5回会議において配布資料に沿って意見交換を行ったところですけれども,その際の御意見を踏まえつつ,更に具体的な検討を行うことに資するよう,事務当局に資料の加筆・修正をお願いいたしました。それが配布資料15ですので,まず,その説明をお願いしたいと思います。 ○羽柴幹事 配布資料15について御説明します。   配布資料15は,当分科会第5回会議で配布した配布資料11を基に,第5回会議での議論を踏まえつつ,加筆・修正を行ったものです。   配布資料11からの主な変更点について御説明します。   まず,「考えられる制度の概要」については,前回までの意見交換において異論がなかったと思われる点を踏まえ,「1」にあるとおり,更生緊急保護の対象範囲の拡大の目的として,「対象者の円滑な社会復帰を図るため」を追加し,また,拡大の具体的内容として,「更生緊急保護の事前調整について明文規定を整備するとともに,勾留中・起訴猶予処分前から更生緊急保護を行うことができるものとするなど」と追加して記載しています。   次に,検討課題のうち,「1 更生緊急保護の対象範囲の拡大等」については,「(1)更生緊急保護の事前調整についての明文規定の整備」に関して,これまでの御議論を踏まえ,「趣旨」として,「運用上行われている事前調整の要件及び手続等を定めることにより,より円滑な更生緊急保護の実施に資すること」と記載しています。   次に,「(2)勾留中・起訴猶予処分前の者への対象範囲の拡大」については,これまでの御議論を踏まえ,「趣旨」として,「勾留中・起訴猶予処分前から就労支援や生活環境の調整等を行うことにより,円滑な社会復帰を図ること」と記載しています。また,起訴猶予者に対する更生緊急保護について,現行法上,「身体の拘束を解かれた後」に行うものとされ,かつ,その対象者が「訴追を必要としないため公訴を提起しない処分を受けた者」に限定されている趣旨との関係に留意する必要があるとの御意見があったことから,「現行法の趣旨との整合性」を検討課題として追加し,「更生緊急保護の対象が釈放後・起訴猶予処分後に限定されている趣旨と整合するか」を追加して記載しています。   最後に,「2 検察官による訓戒等の規定の整備」については,これまでの御議論を踏まえ,「趣旨」として,「検察官の再犯防止に向けた意識を涵養・継続するとともに,関係機関との連携を円滑化すること」を追加して記載しています。   配布資料15の説明は以上です。 ○小木曽分科会長 ありがとうございました。ただいまの説明に御質問,あるいは,これ以外の検討課題があるのではないかといったような御意見がありましたら,挙手をお願いします。 ○太田委員 1点だけ確認ですけれども,この配布資料は今度の第7回の部会にこの文言で報告がなされるということでよろしいでしょうか。今日の議論を踏まえた修正があるとは思うのですけれども,基本的にはこのような形での報告がなされるということでよろしいでしょうか。 ○羽柴幹事 中間報告につきましては,後ほど分科会長からお話があろうかと思いますけれども,そこも御議論の対象かとは思われますが,事務当局として,特段何か異なる資料を想定するというような考えを持っているわけではございません。 ○太田委員 分かりました。それを踏まえて,蛇足かもしれませんけれども,今の御説明いただいた検討課題の「1」の「(1)更生緊急保護の事前調整についての明文規定の整備」の「趣旨」の中で,「より円滑な更生緊急保護」とありますけれども,ただスムーズに行けばいいということだけではなくて,事前から調整することによって,より本人の更生に資するような支援といいますか保護がなされるということの趣旨をより強調するために,「より円滑かつ効果的な」といった文言を報告案の一つの検討内容に入れていただければと思います。 ○小木曽分科会長 確認ですが,検討課題「1」の「(1)」の「趣旨」の2行目の「より円滑な」とあるところを「より円滑かつ効果的な」という文言にしたらどうかという御提案であるということで,御意見として承っておくということでよろしいですか。   それ以外に御質問,検討課題等はございますか。   では,配布資料15に沿って意見交換を行いたいと思います。   部会での中間報告に向けて,これまでの意見交換を踏まえて検討項目全体について議論をしておきたいと思いますが,本日の時点で特に議論を深めておくべき点,あるいは,これまでの御発言以外の御意見がありましたら,それを優先的に御発言いただくのがよろしいかと思います。   御発言がありましたら,挙手をお願いいたします。 ○田鎖幹事 「2」の「検察官による訓戒等の規定の整備」関連で若干申し上げたいんですけれども,以前にこういった規定の整備について私も意見を述べさせていただいて,一方で,裁判所に関しては刑事訴訟規則,それから,警察での取調べについては犯罪捜査規範にも定めがありますということを保坂幹事から御紹介いただきました。そのとおりなのですけれども,当然ながら刑事訴訟規則は最高裁判所規則でありまして,犯罪捜査規範については国家公安委員会規則であるということで,仮に規定する場合ですけれども,そのこととのバランスを考えたときに,果たしてどういうところに書き込むのが適切なのか,やはり刑事訴訟法というのは余りにもバランスが悪いのではないか,重さとしても,趣旨との関係でも違うのではないかと思うのですが,何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。 ○保坂幹事 どこに規定するかは技術的な話だと思うのですが,どのような行為を規定するかに関わってきていると思います。検察官が組織の内部の方針としてこういうことをしましょうということであれば,通達でも別によいわけですが,例えば,関係機関との協力連携ということになると,関係機関もそれに従っていただけるような規範である必要があると思います。それが刑事司法機関であれば刑事訴訟規則でもよいのかもしれませんが,例えば,それ以外の行政機関も検察官との協力ということになりますと,法律ということになろうかと思われまして,規定の形式もさることながら,どういった内容のことをここで定めるのかということをまず先行して議論する必要があるのではないかと思います。 ○小木曽分科会長 それ以外の点はよろしいですか。   御意見がなければ,次に参ります。次は,「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」及び「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」の論点です。   この論点に関する検討項目については,当分科会の第4回会議から第6回会議にかけて,配布資料に沿って意見交換を行いましたが,その際の委員・幹事の方々からの御意見を踏まえつつ,更に具体的な検討を行うことに資するよう,事務当局に,既に配布した資料の記載を加筆・修正したものを作成してもらっております。それが配布資料16ですので,事務当局から,説明をお願いします。 ○羽柴幹事 配布資料16について御説明します。   配布資料16は,当分科会第5回会議及び第6回会議で配布した配布資料12及び配布資料13を基に,第5回会議及び第6回会議での御議論を踏まえつつ,より具体的な内容を追加するなど加筆・修正を行ったものです。   配布資料12及び配布資料13からの主な変更点について御説明します。   まず,「第1 特別遵守事項の類型の追加」の「検討課題」の「1 民間施設が実施するミーティングへの参加やプログラム等の受講」については,「法務大臣が定める基準の在り方」の下に,「法務大臣が水準を確保するために定める基準はどうあるべきか(内容が明確かつ効果的であること,履行状況の確認が可能であること等)。」を記載しました。   また,「2」の「(1)更生保護施設への宿泊義務付け」については,「法整備の要否」の下の「・」に「(更生保護施設で指導監督を行う体制が整備できれば同号で設定可能か。)」を記載し,「(2)宿泊を義務付けられた更生保護施設からの外出禁止」については,「要件・基準」の下にその具体的内容を記載するとともに,「法整備の要否,内容」として,「外出の許可主体や禁止すべき時間帯等を明示すべきか。」を記載しました。   なお,配布資料13に記載していた更生保護施設における指導監督の実施については,検討の結果,同施設における処遇を充実させるという目的を達するためには,同施設に指導監督権限を付与しなくとも,「第1」の「考えられる制度の概要」の「1」のとおり,同施設が行う処遇プログラム等の受講を特別遵守事項として設定することができるようにした上で,保護観察官による充実した指導監督を行う運用で対応できるということで,おおむね意見が集約されたと思われることから,配布資料16には記載しておりません。   次に,3ページの「第2 犯罪被害者等の視点に立った処遇の充実等」については,「検討課題」の「1 刑の執行初期段階における犯罪被害者等の心情等伝達制度」について,「対象となる被害者等」の下に,「必要性・相当性の観点からどのような要件とすべきか。」,「聴取の手続」の下に,「どのような場合に聴取するものとすべきか。」,「聴取した意見・心情等の処遇への活用方法」の下の一つ目の「・」に「(「被害者の視点を取り入れた教育」等)」を記載しました。また,「損害賠償債務についての把握の在り方」を検討課題として記載しました。   続いて,「2 より犯罪被害者等の視点に立った指導」については,「(2)」の「法整備の要否」の下に,「保護観察において犯罪被害者等の視点に立って処遇を行うことを明文化すべきか。」を記載しました。   次に,5ページの「第3 刑の執行猶予中の保護観察の仮解除の活用促進等」については,「考えられる施策・制度の概要」の「1」の保護観察の仮解除に関して「(1)」から「(3)」までを記載しました。   「(1)」については,「考えられる施策・制度の概要」に,「保護観察所の長は,保護観察付執行猶予者について,一定の要件があるときは,保護観察を仮に解除することができるものとする。」と記載し,「検討課題」に,「趣旨」として,「改善更生に向けた意欲を高めるため,仮解除の活用を促進すること」及び「改善更生の意欲を損なわないようにするため,適時に仮解除を行うことを可能にすること」を記載しました。   また,「(2)」については,「考えられる施策・制度の概要」に,「仮解除の要件・基準を具体的かつ明確なものとする。」と記載し,「検討課題」に,「要件・基準の在り方」として,「客観的かつ適正な判断を確保するため,具体的かつ明確な基準としてどのようなものとすべきか。」及び「遵守事項及び生活行動指針の遵守が必要であることを明示すべきか。」を記載しました。   さらに,「(3)」については,「考えられる施策・制度の概要」に「保護観察所の長は,保護観察を仮に解除されている保護観察付執行猶予者について,一定の要件があるときは,仮解除の処分を取り消さなければならないものとする」と記載しました。   続いて,「2 刑の執行猶予中の保護観察の解除」の「検討課題」については,これまでの議論を踏まえ,「必要性」として,「(仮解除に加えて)解除の仕組みが必要となるような事案はあるか。」を記載しました。   次に,7ページの「第4 外部通勤作業や外出・外泊の活用等」については,まず,「検討課題」の「1 ①外部通勤作業,外出・外泊の活用」について,「更生保護施設等が外部通勤作業,外出・外泊を受け入れた際の取組」の下に,「取組(処遇)等の具体的な内容をどのようなものとするか。」及び「当該処遇等を更生保護事業に位置付けることが適当か。」を記載しました。   また,「2 ②刑事施設内の開放的な処遇の拡大」については,「具体的内容,その必要性及び相当性」として,拡大の内容を記載しました。   さらに,「3 ③仮釈放後の段階的な処遇の実施」については,「更生保護施設への宿泊を伴う段階的な処遇の活用の可否」及び「宿泊を伴う処遇後の指導の在り方」の下に,「第1」の更生保護施設への宿泊や更生保護施設が行うプログラム等の受講の義務付けを活用すべきかを記載しました。   次に,8ページの「第5 保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用の在り方等」については,「検討課題」の「1 少年鑑別所への通所による調査」について,「趣旨」として,「少年鑑別所において行われる調査を活用することにより,保護観察を行うために必要な情報を得て,処遇の充実を図ること」を記載し,「対象者」として,その下の二つの「・」を記載しました。   続いて,「2 少年鑑別所への収容を伴う集中的な調査」については,「趣旨」として,「執行猶予の取消しの申出をするか,新たな特別遵守事項を定めるなどして保護観察を継続するかを判断するため,収容して集中的な調査を行うこと」を,「対象者」として,その下の二つの「・」を,「要件」として,「遵守事項違反があり,執行猶予の取消し申出をするか否かの判断をするため必要があるとき。」を記載するとともに,「手続その他」の下に,「現行の留置制度(更生保護法第80条)と組み合わせた制度とすべきか,別の新たな制度を設けるべきか。」を記載しました。   最後に,10ページの「第6 更生保護事業の体系の見直し」については,「検討課題」の「1」の「趣旨」として,「処遇水準を確保すること」及び「更生保護施設による専門的な処遇等の実施を促進すること」を,「内容」として,「更生保護施設に入所させて行う専門的処遇及び更生保護施設への通所形式による処遇を更生保護事業として明確に位置付けるべきか。」を記載しました。   次に,「2 参入要件・監督の在り方」について,「事業に対する監督の内容」の下に,「現行法から変更する必要はあるか。」と記載しました。   配布資料16の説明は以上です。 ○小木曽分科会長 ありがとうございました。ただいまの御説明に,御質問や,ほかにも検討課題があるといったような御意見がありましたら,お願いいたします。   よろしいでしょうか。   それでは,配布資料16に沿って,資料に示されました「第1」から「第6」の検討項目ごとに意見交換を行いたいと思います。   まずは,「第1 特別遵守事項の類型の追加」についてです。   この検討項目につきましても,特に議論を深めておくべき点,あるいは,これまでの分科会で御発言いただいた意見以外の御意見を中心に,御発言がある方は,挙手をお願いいたします。 ○田鎖幹事 「第1」の「2」の「更生保護施設への宿泊義務付け」等の関連なのですけれども,「要件・基準」のところである程度明確になっているかとは思うのですが,要するに,遵守事項違反があって,再犯可能性が高くて,このままでは保護観察の継続が難しいという場合に限って行うという趣旨だと思われますので,その点をはっきりさせる,これでもある程度明らかということはできるのですけれども,イメージ的には,取消しの申出の検討を既に開始しなければいけないような段階,申出をするということになっているわけではないですけれども,そういうことが明らかになるような要件の定め方,あるいは基準の定め方というのが必要ではないかと考えました。 ○小木曽分科会長 今のは資料の2ページの「(2)」の「要件・基準」のところですね。 ○田鎖幹事 はい。さらに言えば,保護観察付全部猶予者に関することの関係で述べさせていただきました。 ○小木曽分科会長 ほかはよろしいですか。よろしければ,今の田鎖幹事の御発言は,御意見として承るということにしたいと思います。   もう一点,先ほど事務当局の説明の中にありましたけれども,配布資料13に記載してありました「更生保護施設での処遇を充実させるため,保護観察における指導監督を同施設に実施させることができるものとする」という点については,更生保護施設が行うプログラムの受講を特別遵守事項として設定可能とすることができるということになれば,必ずしも同施設に指導監督権限そのものを付与しなくとも,更生保護施設が同プログラムを実施することができ,同施設での処遇を充実させるという目的を達成することができるということで合意が得られたと思われますので,「更生保護施設における指導監督の実施」は配布資料16には記載されておりません。この点を確認しておきたいと思いますが,よろしいでしょうか。   この点について特段御意見がなければ,「第2」に参りたいと思いますが,よろしいですか。   では,次に,「第2 犯罪被害者等の視点に立った処遇の充実等」について意見交換を行いたいと思います。   御意見がありましたら,挙手をお願いいたします。 ○田鎖幹事 「第2」の検討課題の「2」の「(2)」の一番最後の点で「法整備の要否」として「保護観察において犯罪被害者等の視点に立って処遇を行うことを明文化すべきか。」ということがございますので,若干,意見を述べさせていただきます。   現在も更生保護において被害者等のための施策が進められているわけでもありますけれども,現状においては被害者担当官,それから被害者担当保護司というものが明確に指名されて,そのいずれについても,任に当たっている間には加害者を対象とする保護観察ですとか生活環境の調整を担当しないということとされて,被害者支援施策を担当する人は加害者処遇に関わらないと明確に区別されていると理解しております。   そういうふうに考えますと,被害者等の視点に立って保護観察を行うということを規定するといたしますと,元々保護観察というものが指導監督と補導援護の調和の上に成り立つなかなか難しいものであるという,その困難さを更により一層増すことになるのではないかということと,もちろん保護観察の在り方そのものの捉え方に変更も迫るような大きな問題であろうと思います。私自身は,被害者支援官のような別のカテゴリーを設けた方が,被害者支援の充実のためにも,より良いのではないかと個人的には考えるのですけれども,いずれにいたしましても,やはり大変大きな問題ですので,別途,よりふさわしい場が設定されて,そこで慎重に議論がなされるということが必要なのではないかと考えました。 ○太田委員 今の点に関してですけれども,書きぶりの問題だろうとも思います。確かにここだけを読んでしまうと,保護観察が犯罪被害者のためだけに行われるような文言にも読めますが,そんなことはあり得ないわけで,元々,更生保護法の目的規定にもきちんといろいろな要素が入っているわけなので,被害者等の視点も含めてという趣旨であろうと思いますが,それに応じた文言に変えた方がよいのではないかと思います。   そもそも,今の被害者担当官の話ですけれども,保護観察において犯罪被害者に対する配慮をするというのは当然であり,被害者担当官とか担当部署を作った趣旨は,保護観察官が被害者支援を同時にやると役割葛藤によって非常に難しい立場に陥るということで分けたのであって,保護観察によって被害者支援に対する配慮をしてはいけないということではありません。ただ,この文言そのものは少し工夫の余地はあるのではないかと,またそれをどこに規定するのかという技術的な面は後でいろいろ検討すべきだろうと思いますけれども,確かにその点で少し文言は配慮した方がよいのではないかという気もいたします。 ○羽間委員 太田委員がおっしゃるとおり,文言に関しては検討する必要があろうかと思うのですけれども,私も少しこのことに関して意見を申し上げさせていただきたいと思います。意見を申し上げる前提として,事務当局に確認をさせていただきたいのですけれども,現行の更生保護法の総則的な規定の中に,犯罪被害者等の視点に立った処遇を行うという趣旨の規定はないということでよろしいのでしょうか。 ○今福幹事 ただいま御指摘いただいたとおり,更生保護法の総則的な規定には犯罪被害者等の視点に立って処遇を行うことは含まれておりません。例えば,更生保護法の総則的な規定として,第3条において,法の「運用の基準」が定められていますが,同条で列挙されている考慮要素は,対象者個人に焦点を当てたものが列挙されているという状況でございます。   このほか,下位の法令としては,犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則というものがあり,例えば,生活環境の調整を行う場合の調査事項として「被害者等の状況」が明文化されております。しかし,御指摘のあった,処遇における総則的な規定としては,特に,指導監督の方針を定めた同規則の第41条第1項では,考慮要素として「被害者等の状況」は明記されておりません。ただ,同項の考慮要素の一つとして,「犯罪又は非行の内容」が明記されており,この文言の中で「被害者等の状況」を読み込んでいます。   一方,事務の取扱手続を定めた大臣訓令には,指導監督の方法の一つに被害者に関連する事項が列挙されておりますので,読み上げさせていただきますと,「被害者等の心情,その置かれている状況等を理解させ,その被害の回復,謝罪等を行う必要があることを自覚させること」というものです。しかし,これは飽くまでも事務の取扱手続を定めた訓令上の規定です。 ○羽間委員 ただいまのお答えを踏まえまして,私の意見を申し上げさせていただきたいと思うのですが,以前の分科会でも申し上げたとおり,私は犯罪被害者等の視点に立った処遇の充実のためには,個別の施策を導入するということだけではなく,また,そういった個別の施策の適用場面があるか否かにかかわらず,処遇に当たっている保護観察官一人一人が被害の内容や被害者の方々の要望をきちんと把握するということが重要であると考えております。その上で,今まで太田委員もおっしゃっていらしたのですけれども,更生を果たすためには加害者,つまり保護観察対象者に罪を振り返らせて,被害の現実を正しく理解させるための働き掛けを行うことが被害者の視点にも立つということではないかと考えております。   今の事務当局からの御説明のとおり,更生保護法には下位の法令の総則規定でも被害者の視点に立つということについて明文で定めた規定というものはないということでございましたので,この際,他の制度の導入と併せて,総則的な規定の中に,考慮要素の一つとして犯罪被害者の視点に立つということを加えるということも考えられるのではないかということで以前も御提案をしたところでございます。具体的に更生保護法に規定するのか,下位の法令に規定するのかなどというようなことは,特に具体的な案を持ち合わせているわけではございませんけれども,先ほどの事務当局からの御説明や保護観察官の実務への影響という観点も踏まえて検討していただければと考えています。 ○小木曽分科会長 そのほかの点についてはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,次に,「第3 刑の執行猶予中の保護観察の仮解除の活用促進等」について意見交換を行いたいと思います。   これについても,更に議論を深めるべき点,あるいはこれまで御発言いただいた意見以外の御意見等がありましたら,お願いいたしたいと思います。 ○保坂幹事 前回までの議論を踏まえて,事務当局に質問があるのですが,以前に田鎖幹事から,仮解除の活用が低調な理由として,法務省令で定めている要件が厳しすぎるのではないかという御指摘がありました。   すなわち,「保護観察を仮に解除しても,当該生活態度を保持し,善良な社会の一員として自立し,改善更生することができると認めるとき」という仮解除の要件が厳格すぎるのではないかという御指摘があったわけですが,1号観察の場合の解除の基準と比べたときに,保護観察付執行猶予者の仮解除の基準がどのような位置付けになるのかについて,御説明いただけたらと思います。 ○今福幹事 保護観察処分少年に対する解除の基準につきましては,先ほども御説明申し上げた社会内処遇規則第82条第1項に書かれております。もう一度申し上げますと,「健全な生活態度を保持している保護観察処分少年について,その性格,年齢,経歴,心身の状況,家庭環境,交友関係,保護観察の実施状況等を考慮し,保護観察を継続しなくとも,当該生活態度を保持し,善良な社会の一員として自立し,確実に改善更生することができると認めるときにするものとする」と規定されています。これに対して,仮解除の基準は,同規則第103条に規定されております。これらを比較してみると,先ほど申し上げた解除の基準には,「確実に改善更生することができると認めるときにする」というように,「確実に」という文言が明記されていますが,仮解除の基準の方には,「確実に」という文言が要件とされていないという点が,解除の基準と仮解除の基準における差異でございます。 ○保坂幹事 解除については,本解除だけあって,「確実に」という要件が加重されていると理解しました。そういたしますと,基準の文言上では,仮解除の方が厳格ではないということになると思われます。   以前に部会で配布された資料の統計がございましたけれども,1号観察の終了人員のうち約8割が解除ということで保護観察を終えているということでして,つまり,より厳格な基準であるはずの解除については8割が終えているということでした。もちろん対象者が違いますので,簡単に比較のできる問題ではないということではありますけれども,文言そのものがハードルを上げ過ぎてしまっているということは必ずしもないのではないかと思われます。   他方で,仮解除が促進されるべきことはそのとおりだと思われますので,仮解除の決定,判断主体を保護観察所の長とするということを今議論しているわけですけれども,それに伴って,前回会議でもありましたけれども,仮解除の基準についても,配布資料にありますように,客観的かつ適正な判断に資するために明確かつ具体的な基準とするということですので,その中でも改めて検討していく必要があると思われます。 ○小木曽分科会長 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。   ところで,刑の執行猶予中に保護観察を解除できる制度の導入については,第5回会議におきまして,次にこのテーマについて議論を行うときまでに,解除を必要とする事案があるかどうかの調査をお願いしたところですので,引き続き調査はお願いしたいと思います。   次回部会への中間報告という観点から,これについて何か更に御意見がありましたら,お願いしたいと思いますが,よろしいでしょうか。   よろしければ,次に,「第4 外部通勤作業や外出・外泊の活用等」について意見交換を行いたいと思います。   御意見がありましたら,挙手をお願いします。 ○保坂幹事 「2」について質問をしたいと思います。「2」の「刑事施設内の開放的な処遇の拡大」の二つ目の「○」の「具体的内容,その必要性及び相当性」の下に「・」が二つあって,これは,以前に田鎖幹事から御提案があったものが資料に書かれており,その御意見があったときも少し説明がされたような気もするのですが,事務当局の方から,刑事施設内の開放的処遇について,今,現行法の下でどのような規定に基づいてどのようなことを行っていて,それを今後どのようにしていくということなのかについて,改めて御説明いただければと思います。 ○小玉幹事 まず,施設内の生活や行動に対する制限を緩和していくことは受刑者の自発性及び自立性を涵養する上で有効ですので,刑事収容施設法第88条第1項による制限の緩和制度に基づいて,個々の受刑者の状況に応じ,例えば施錠設備のない居室に収容したり電話による通信を実施したりするなど,段階的に開放的な処遇を行っているところです。   また,自発性や自立性の涵養等の観点から,刑事収容施設法第88条第2項に基づいて,刑事施設に通常必要とされる保安上の設備又は措置の一部を設けず,一般社会の生活に近い環境を実現した開放的施設における処遇も行っています。具体例としましては,従来から網走刑務所の二見ヶ岡農場ですとか松山刑務所の大井造船作業場などにおきまして構外作業を行わせているところです。さらに,市原刑務所,これは交通事犯者を収容する開放的施設でありますが,こちらでも同所の開放的処遇が社会復帰に効果的と考えられる交通事犯以外の受刑者を収容して,開放的な環境の下で就労支援や就労後の職場定着に向けた指導などを集中的に実施する取組を先般,試行として開始したところです。   その他,例えば美祢社会復帰促進センターや島根あさひ社会復帰促進センターにおきましては,監視カメラや無線タグの導入により,職員の同行なしでの施設内での移動が可能でありますし,同じ島根あさひ社会復帰促進センターにおいては,受刑者が余暇時間に自由に出入りできる多目的ホールで情報端末を操作して日用品の購入申込みを行うことも可能となっております。   このような特別な設備,構造や専用の機器などが必要となるものを一般の施設にも広く拡大していくことは,実際上なかなか困難ではあるわけですが,制限の緩和制度に基づいて段階的に処遇の開放度を高めていくことは今後も行っていく考えであります。   また,刑事施設の外において職員が同行して作業などを行う刑事施設外処遇が刑事収容施設法第87条で規定されておりますが,この刑事施設外処遇の具体例として,例えば社会貢献作業としまして,地域の介護施設における入居者の散髪や介護ですとか,公園の清掃,除草作業,あるいは公民館や通学路の除雪作業などを実施しているところでして,その実績も年々増えているところです。この場合,外部通勤作業や外出・外泊とは違って,受刑者の戒護に当たる職員が必要になるわけですので,そのような職員確保などの条件が整えば,今後も刑事施設外処遇の機会を増やすことを検討していきたいと考えています。 ○保坂幹事 そういたしますと,ここでのテーマになっている開放的な処遇の拡大ということでいえば,施設構造上の問題や職員の体制の制約はあるにせよ,可能な範囲で今後も拡大していくという方針だと理解をしました。   他方で,当然のことでありますけれども,開放度・自由度を高めますと,逃走のリスクだけではなくて受刑者間のトラブル等のリスクも高まってきますので,それを防止するという観点からすれば,対象者の選別については慎重に行う必要があります。その上でですけれども,開放度を高めるといいましても,目的は施設内から社会内への円滑な社会復帰ということなのですけれども,どのように開放度を高めるのかという中身ですとか,あるいは対象者を選別するに当たっても,どのような対象者にどのような効果が見込まれるのかということを検討する必要があろうかと思われます。   ちなみにですけれども,第1分科会では,若年受刑者について少年院と同様の処遇を取り入れるということが処遇内容の充実として議論されておりまして,少年院の施設というのは当然,刑事施設よりは開放的ではあるわけです。その第1分科会での議論というのも注視しながら,こちらでも検討する必要があると思われます。   いずれにしても,開放度を上げていくということでいえば,先ほど小玉幹事から御説明があったように,既に刑事収容施設法に根拠規定があるということですので,それをどこまでやるかということについて,特に法整備が必要だとは思われないわけですけれども,矯正当局の方でも開放度の拡大に向けて取り組んでいくということなので,それは進めていただければと思います。 ○小木曽分科会長 そのほかはいかがでしょうか。   よろしければ,次の「第5 保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用の在り方等」について意見交換を行いたいと思います。   これについて御意見がありましたら,挙手をお願いいたします。 ○羽間委員 この論点につきましては,これまでの分科会でも何度か発言をさせていただいてきたのですけれども,その補足の趣旨も含めまして,改めて意見を申し上げさせていただきたいと思います。   「2」の「少年鑑別所への収容を伴う集中的な調査」について,まず,この措置を講じる場面について申し上げたいと思います。以前にもお話しいたしましたとおり,4号観察であれば,その適用場面として私が念頭に置いておりますのは,遵守事項違反があって,その情状が重いと認められる場面,すなわち執行猶予取消しの原因となる事実が存在している場面でございまして,例えば,問題のある環境から分離すべき再犯リスクがあるというようなこと,それのみをもってこのような措置を講じるというようなことは考えていないので,その点について確認の趣旨で改めて申し上げさせていただきたいと思います。   次に,以前の分科会におきまして,この措置について私の方から,取消しをするかどうかだけを考えるための集中的な調査に限る趣旨ではございませんということを申し上げたことがございましたが,この発言を通して申し上げたかったのは,収容の上で調査をする目的あるいは内容についてでございます。すなわち,現行の留置制度については,執行猶予の取消し申出をするか否か,これを検討の中心とする運用になっているものと承知をしておりますけれども,例えば,遵守事項違反があってその情状が重いときでも,再犯リスクの内容や程度に応じた新たな特別遵守事項を設定するなど,処遇内容を見直して指導を強化すれば社会内処遇を継続することができる事案も存するのではないかと考えています。そういう事案においては,これまでのように執行猶予の取消し申出をするか否かのみの判断ではなく,取消しに比べて権利制約の程度が低く,かつ,より対象者の再犯防止・改善更生に資するような方法がとり得ないかどうかについても検討すべきであり,その検討のために,対象者の資質等について一定期間,集中的に調査をするということが考えられるのではないかということでございます。   まとめますと,少年鑑別所に収容するということは,対象者本人にとって法的には不利益を伴うことでございます。他方,自分で自分の行動がコントロールできず,犯罪,非行の危険が高まっているという人にどうアプローチをしたらよいかということを検討するために,丁寧な調査ができるという機能があると考えております。 ○保坂幹事 今,羽間委員がおっしゃったとおり,少年鑑別所に収容して調査を行うということが有用な場面があることは,そのとおりだと思います。したがって,その観点からしましても,配布資料にありますように,調査の内容としてどのようなものを行うのかということや,対象者をどのように選別するのか,あるいはそれをするための要件,期間が検討課題になろうかと思われます。以前にも申し上げましたけれども,その建て付けをどうするかということでいいますと,現行法に留置という制度があるわけですが,その留置は,留置ができるとだけ規定されてあって,留置した後どうするのかというのは規定されていないわけですが,そこで調査をするということは禁止されているのかどうか,禁止されていないとすれば,留置の際に調査を行うということも現行法上可能なのかどうか,あるいは,それが留置にとどまっているということだから調査まではできないとすると,その留置のところに付け加えて調査ができるという規定を設ける仕組みというのが一つの行き方だろうと思います。もう一つの行き方として,前にも申し上げましたように,留置という仕組みとは違う建て付けとして構築するということも考えられるということですので,そのことも併せて検討していく必要があると思われます。 ○田鎖幹事 関連といいますか,今,御説明というか御発言のあったような限定的な場面での制度の構築ということを考えますと,正に,少し前に議論いたしました,検討課題でいいますと「第1」の「特別遵守事項の類型の追加」の「2」の「(1)更生保護施設への宿泊義務付け」というのは,正に遵守事項違反があって,「第1」の方では情状が重いというふうにはないわけなのですけれども,情状が重いような場合に調査をする,そして,新たに遵守事項としての濃密な処遇を行うことで保護観察が継続できる場合もあるというような形で,今問題になっている「第5」の制度と関連付ける,リンクするような形で制度が設計できるのではないかと考えました。 ○羽間委員 私の意見を申し上げさせていただきますと,今御指摘の二つの制度というのはその目的が異なっているもので,どちらかが先とか,リンクできるとか,定まった前後関係とか,そういったものがないのではないかと考えています。   具体的に申し上げますと,少年鑑別所への収容を伴う集中的な調査というのは,遵守事項違反があったときに,保護観察の見直し,例えば遵守事項をどう設定するのかといったことの調査を目的としておりますけれども,宿泊の義務付けを特別遵守事項として設定することは処遇方法の一つであるという違いがあると考えます。   他方で,宿泊の義務付けは権利制約の大きい遵守事項でございますので,少年鑑別所での集中的な調査を行って必要性を判断するというように調査が先になされる場合も想定できますし,逆に,宿泊の義務付けがなされている対象者が遵守事項に違反し,その情状が重い場合などであるものの,他に社会内での処遇を継続できる方法,これを見極める必要があるような場合に,少年鑑別所等での集中的な調査を行うことが考えられるというように,どちらの措置が先だとか,リンクするとか,そういうことではないのではないかと思っております。 ○田鎖幹事 私が先ほど述べた問題意識というのは,元々「第1」のところで申し上げたように,どうしても宿泊の義務付けをしなければならないような場面というのは,あるとしてもかなり限定されなければならないだろうという問題意識がまずございまして,どういう形であればそれに見合った限定的な,かつ適切な制度が作れるのかという観点から述べた次第です。ですので,確かに,先ほど誤解があったかもしれないですけれども,今の「第5」の検討課題に上がっている調査のうち収容を伴うような集中的な調査が必ず先行しなければならないということにはならないわけですけれども,何らかの調査を経た上で宿泊義務付けなりのかなりの制約的な新たな条件が付け加えられなければならないということは,恐らく異論はないと思いますので,そういった趣旨で,慎重な調査がまず先行した上で,対象者が絞られて,そして,例えば宿泊義務付けのような制約的な新たな条件が設定可能であると,そういう仕組みが必要ではないかという趣旨で申し上げました。 ○太田委員 今の点については,少年鑑別所で通所や収容で行う調査と,先ほどの遵守事項として宿泊義務付けを設定するかどうかの調査というのは,違う問題ではないかと思います。共犯者の状況とか保護観察対象者の生活環境というところで問題性というのが明らかになっている場合に,宿泊を義務付けることが更生にとって非常に重要であるという場合に特別遵守事項を設定するという場面とは必ずしも一致せず,ここで想定されているような少年鑑別所による調査といったものを前提としなければ宿泊の義務付けができないというのではないと思います。もちろん調査をやった上で宿泊義務を課すという場面も出てくるでしょうけれども,その調査が必ず先行しなければいけないというものではないと思います。   それから,ここでの検討事項として,私の感想といいますか印象だけ申し上げておくと,先ほどの収容を伴う集中的な調査のお話で,私が羽間委員の御主張を100%理解しているかどうか自信はないのですけれども,もしこれが,必ずしも執行猶予の取消しをするかどうかという場面だけのものではないとするならば,対象者といいますか要件のところに,遵守事項違反プラス,その情状が重いときという,そこまでの要件としなくともよいように思います。現在,違反の情状がすごく重く,要するに,自立更生が不可能だという場合にだけしか執行猶予が取り消されていない実務と考えると,情状が重く,執行猶予の取消しを申し出るときにしか収容を伴う調査ができないとするかどうかは,今後いろいろ検討していく中で,具体的な制度設計として要件をどうするかということは検討した方がよいのではないかと少し感じております。表現しにくいのですけれども,要するに,情状が重いときの文言の内容と実際の運用という現在の在り方を考えると,ここでの制度設計をどうしたらいいのかということを今後,検討すべきではないかと思います。 ○小木曽分科会長 そのような御意見であるということで,それ以外になければ次に参りますが,よろしいでしょうか。   最後に,「第6 更生保護事業の体系の見直し」について意見交換を行いたいと思います。   この点について,御意見がありましたら,挙手をお願いいたします。   よろしいですか。   それでは,「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」及び「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」についての本日の意見交換はこの程度としたいと思います。   本日意見交換を行った各論点につきまして,現時点で補充的,補足的な御意見があれば伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○太田委員 最初に少し気にはなっていたのですが,一応申し上げておいた方がよいのではないかと思いますので,あえてコメントさせていただきます。   配布資料15の「第2」の「2 検察官による訓戒等の規定の整備」のところですけれども,文言とか書きぶりだけの問題だと思いますが,「趣旨」として,当分科会の議論の経緯を踏まえないでいきなり「検察官の再犯防止に向けた意識を涵養・継続するとともに,関係機関との連携を円滑化すること」と聞いた場合に,少し意味が分かりにくいのではないかと思います。私の理解が間違っていないとすれば,現在でも検察官が訓戒等を行う機会はあるわけですね,きちんと被害者と話合いをしていらっしゃいとか,きちんとした生活を維持しなさいというような訓戒を今でもやっているので,あえてここで規定を整備することの意味は何かとすれば,「検察官の再犯防止に向けた意識を涵養・継続するとともに,関係機関との連携を円滑化すること」によって,訓戒等の目的というものをより効果的に行うことということだったと私は理解しておりますので,少しこの書きぶりが分かりにくいのではないかという気もします。分科会長に一任いたしますけれども,もう少し書きぶりがあるのではないかという気もいたしました。   まず,私の理解がそれで合っているかどうかということも一応確認させていただきたいと思います。要するに,訓戒等は現在でも行っているところ,わざわざ規定を設ける趣旨はこれですよということでよろしいわけですね。 ○保坂幹事 私の理解では,検討課題のところにありますように,何ができるというような規定を設けるのか自体がまだ検討課題であり,ふだん検察官がやっている訓戒ができるようにするという規定を設けるというのも一つでしょうし,この「等」の中に,例えば関係機関はそれに協力するという規定を設ける,検察官は協力を求めることができるという規定を設けるということも考えられるので,そういう意味で,この「等」にはいろいろなものが考えられると思います。そういう規定を設けるとすると,規定が設けられれば,そういったことを検察官が今後もずっと引き続いて行っていくという効果もあるでしょうし,関係機関に協力を求める根拠規定ができれば,協力は促進されるということなので,確かに訓戒等の中がまだそういう意味では未定であるものの,「訓戒等」という,若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会の取りまとめ報告書のワーディングを使ってここに表現しているという趣旨なのではないかと思っています。 ○太田委員 もう少し広いイメージなわけですね。分かりました。ありがとうございます。 ○小木曽分科会長 私も一つ確認させていただきたいことがありまして,先ほど,配布資料16の「第2」の「犯罪被害者等の視点に立った処遇の充実等」の「2」の「(2)」の「法整備の要否」というところで少し議論がありましたが,これは,中間報告をする際の文言としては「法整備の要否」,それから「明文化すべきか」という書き方でよろしいですか。内容について御意見があったということで,報告するときの項目としてはこういう書き方でよろしいでしょうか。 ○太田委員 私は明文化することには賛成でありますけれども,書きぶりといいますか,保護観察の目的といいますか,その内容として,犯罪被害者の視点も含めて行うという,「立って」ということだと少し誤解をされる可能性があることから,明文化するに当たってどのような内容にしたらよいのかということを御検討いただければと申し上げたので,「明文化すべきか」ということに関しては異論はございません。 ○小木曽分科会長 部会への中間報告は,配布資料16の書きぶりでもよろしいということですか。 ○太田委員 「に立って」というのが,少し私は強いのかなという印象を持ったものですから,「視点にも立って」とするか「視点も含めて」とかですね。保護観察の目的規定とかはもうあって,本来の内容に入っていますから,ないのが犯罪被害者の視点だということを加えるような趣旨の文言にした方がよいのではないかということでございます。 ○小木曽分科会長 承りました。ほかに補足的な御発言がある方,おられますか。   よろしければ,本日の意見交換は以上といたします。   冒頭で申しましたとおり,本日までの分科会の議論の状況につきまして,その要旨を4月26日の部会第7回会議において中間報告として報告したいと思います。その中間報告のための資料の内容につきましては,事前に当分科会の構成員の皆様にお示しいたしますけれども,最終的な取りまとめにつきましては,前回と同じように分科会長に御一任いただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   ありがとうございます。それでは,私の責任において中間報告の内容を取りまとめて,部会に報告するということにしたいと思います。   では,本日の審議は以上で終了です。今後の予定について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○羽柴幹事 今後の予定について御説明します。部会第7回会議が,4月26日木曜日午前10時から予定されております。場所は法務省大会議室となります。 ○小木曽分科会長 本日の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を作成し,公表することといたしたいと思います。よろしいですか。               (一同異議なし)   では,そのようにさせていただきます。   本日はありがとうございました。 -了-