法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第7回会議 議事録 第1 日 時  平成30年4月26日(木)    自 午前 9時58分                          至 午前11時40分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 少年法における「少年」の年齢を18歳未満にすること及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方について         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の第7回会議を開催します。 ○井上部会長 本日は,御多用中のところお集まりいただきましてありがとうございます。   まず,議事に入る前に,前回の当部会会議以降に委員・幹事の異動がありましたので,御紹介させていただきます。   林眞琴氏と田中素子氏が委員を退任され,新たに裕教氏と川原隆司氏が委員に任命されました。 ○辻委員 法務省刑事局長を命じられました辻でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○川原委員 最高検察庁の川原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○井上部会長 よろしくお願いします。   また,吉田研一郎氏,隄良行氏,吉田智宏氏が幹事を退任され,新たに大塲玲子氏,玉本将之氏,戸苅左近氏が幹事に任命されました。 ○大塲幹事 保護局観察課長の大塲でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○戸苅幹事 最高裁刑事局第二課長の戸苅でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○井上部会長 なお,本日は,大沢委員と,ただいま御紹介した玉本幹事は,所用のため欠席されておられます。   次に,事務当局から本日の審議で用いる資料について説明をお願いします。 ○羽柴幹事 本日,配布資料として,配布資料18「分科会における検討(中間報告)(2)」を配布しております。   配布資料18は,各分科会ごとに,それぞれ担当する論点についてまとめた資料であり,制度概要の内容として一定程度の認識の共有が図られたと考えられるものを「考えられる制度の概要」に記載した上で,今後更に検討を要すると考えられる点を「検討課題」に記載したものです。この資料は,後ほど,各分科会からの報告に際して用いられる予定です。   また,参考資料として,各分科会における統計資料等の配布資料を配布しております。   なお,部会第5回会議においてお配りした配布資料14「論点表」を参考のため机上に置いております。   最後に,本日御欠席の大沢委員から,本日の意見交換に関しまして御意見の送付がありましたので,席上に配布させていただいております。 ○井上部会長 それでは,審議に入りたいと思います。   第5回会議以降,各分科会において,それぞれ担当する論点について,考えられる制度概要案の作成及び検討課題の整理を行っていただくこととしており,前回の第6回会議においては,それぞれの分科会から,その検討状況について御報告いただき,部会全体として意見交換を行ったところです。その際に頂いた御意見をも踏まえて,その後,各分科会において「考えられる制度の概要」の作成に向けて具体的な検討を進めていただきました。各分科会での検討については,当部会に報告していただいて,当部会において更に意見交換を行うことになっていることから,本日は,中間報告として,各分科会で検討中の「考えられる制度の概要」とその課題につきまして,それぞれの分科会長から御報告を伺い,それを基に皆様の御意見を伺うことにしたいと思います。   今後,各分科会においては,本日の部会での議論を踏まえて,残された検討課題について,言わば詰めの検討を行った上で,「考えられる制度の概要」をまとめ,当部会に報告していただくという運びになろうかと思います。   本日は,このような今後の審議の進め方を念頭に置きながら,皆様から,各論点について,「考えられる制度の概要」や「検討課題」に関する御意見,あるいは,更に詰めておくべき点というものがございましたら,その点の御指摘,御注意もいただくという形で議事を進めさせていただければと考えます。   この後の進め方は,前回会議と同様に,第1分科会,第2分科会,第3分科会の順で分科会ごとに区切って,それぞれ担当する論点について報告を伺い,その上で,皆様に意見交換をしていただき,最後に包括的な意見交換を行うということとしたいと思います。   このような進め方でよろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,第1分科会の担当する論点から意見交換を行いたいと思います。   まず,第1分科会における検討状況につきまして,佐伯分科会長から説明をお願いしたいと思います。 ○佐伯委員 第1分科会が担当する論点について,分科会における検討状況を御報告いたします。   第1分科会は,部会第6回会議の後,部会での委員・幹事の皆様の御意見を踏まえながら,3回にわたり会議を開催し,考えられる制度の概要と検討課題について検討を行いました。分科会における検討状況につきまして,各論点ごとに御説明いたします。   まず,「刑の全部の執行猶予制度の在り方」についてです。   配布資料18の1ページを御覧ください。   第1の「保護観察付き執行猶予中の再犯についての執行猶予」について,「考えられる制度の概要」,以下「制度概要」と略しますが,「制度概要」にあるとおりの制度とすることに異論はありませんでした。「情状に特に酌量すべきものがあるとき」という要件については,文言を改める必要はないという意見や,社会内処遇の継続により更生を図るという趣旨が読み込めるものである必要があるとの御意見がありました。再度の執行猶予を言い渡すことができる回数を1回に限ることには,異論はありませんでした。   保護観察付き執行猶予中の再犯について執行猶予を言い渡すのが適当な事案としては,保護観察による再犯防止及び改善更生に失敗したとは言い難く,実刑に処するよりも社会内処遇を継続する方が再犯防止及び改善更生に資するといえる事案が考えられることに異論はなく,保護観察に付するか否かの判断基準や判断資料については,このような制度を設けても,基本的には現在と変わらないと思われるという意見がありました。   第2の「再度の執行猶予を言い渡すことができる刑期」については,再度の執行猶予を言い渡すことができる刑期の上限を2年に引き上げる案と3年に引き上げる案について,量刑資料などを検討した結果,「制度概要」にあるとおり,2年に引き上げることにおおむね意見が集約されています。   第3の「執行猶予を取り消すための要件の緩和」については,「検討課題」にあるとおり,必要性及び相当性のほか,二つ目の「○」に記載したように,緩和するとすればどのような要件とするかに関して,「A案」と「B案」について検討しているところですが,それぞれに問題点も指摘されているところです。また,三つ目の「○」に記載の三つの仕組みは,施設内・社会内の処遇が,不必要・不相当に長期にわたらないようにするという観点から検討しているところです。   第4の「猶予期間経過後の執行猶予の取消し」については,「制度概要」のとおりの制度とすることにおおむね意見が集約されていますが,「検討課題」にあるとおり,一つ目の「○」の刑法第27条との整合性,二つ目の「○」に記載の仕組みについて検討しており,刑の一部を免除し得る仕組みについては,刑期の一部の執行猶予の取消しと同様の指摘がありました。   第5の「資格制限の排除」については,「検討課題」にあるとおり,必要性及び相当性や要件等が検討課題となっています。   次に,2点目の「自由刑の在り方」についてです。   配布資料18の3ページを御覧ください。   この論点については,「制度概要」にあるとおり,「懲役刑及び禁錮刑を単一化して新たな自由刑を創設する」,「新自由刑は,刑事施設に拘置して,作業を行わせることその他の矯正に必要な処遇を行うものとする」制度をひとまず前提として,新自由刑の内容や法定刑等の在り方について検討を行いました。   「検討課題」の「1 新自由刑の内容」にあるとおり,刑罰の目的との関係や義務付けを正当化する根拠は何かという観点などを踏まえて,矯正に必要な処遇を刑の内容とすべきか否か,矯正に必要な処遇を刑の内容と考えるとしても,拘禁との性質の差を示す観点から,条文をどのように規定するかなども検討課題となっています。   次に,「2 新自由刑の下における法定刑等の在り方」にあるとおり,新自由刑と懲役刑及び禁錮刑の軽重や法定刑の上限及び下限についても検討課題となっています。   なお,刑法第16条の「拘留」については,懲役刑及び禁錮刑と単一化せず,存置するべきであることに異論はありませんでした。   「3 その他」にあるとおり,新自由刑の導入前にした行為について,新自由刑を言い渡すものとすべきかなどの時的限界についても検討課題となっています。   続いて,3点目の「社会内処遇に必要な期間の確保」についてです。   配布資料18の4ページを御覧ください。   この論点については,「制度概要」にあるとおり,仮釈放の期間について,「残刑期間によるのではなく,裁判所が必要な期間を定めることとするA案」と,「残刑期間が法定期間に満たない場合には当該法定期間とするB案」について検討を行いましたが,A案とB案のそれぞれについて,「検討課題」の「1」の「(1)」や「(2)」に記載された内容が課題として指摘されました。   次に,「検討課題」の「2 その他」について,まず「(1)現行の仮釈放制度の積極的活用」については,現行法上,「改悛の情があるとき」とされている仮釈放の要件に,社会内処遇に必要な期間の確保という観点も含まれるよう見直しを検討してはどうかとの意見があり,その必要性・相当性が検討課題となっています。   「(2)仮釈放中の保護観察について刑法に規定すること」については,現時点において喫緊の必要性があるとまではいえないのではないかとの意見があり,見直しの要否や当否が検討課題となっています。   なお,「保護観察付き刑の一部執行猶予制度の見直し」については,刑の一部執行猶予制度がまだ開始されたばかりであり,時期尚早ではないかということでおおむね意見が集約され,更なる検討はしないことといたしました。   最後に,4点目の「若年受刑者に対する処遇原則の明確化」等についてです。   配布資料18の6ページを御覧ください。   まず,第1の「若年受刑者を対象とする処遇内容の充実」については,いわゆる少年院受刑についてもその方策の一つとして検討を行いましたが,刑事施設において,少年院の人的・物的資源やノウハウを活用した処遇の充実が図られるのであれば,少年院受刑について検討する必要性は低いのではないかとの意見があったことなどから,「考えられる施策の概要」にあるとおり,「刑事施設において少年院の知見・施設を活用して,若年受刑者の特性に応じた処遇の充実を図る」こととし,その具体的な処遇の内容としては,①及び②とすることにおおむね意見が集約されています。   次に,第2の「若年受刑者に対する処遇調査の充実」については,「考えられる施策・制度の概要」の「1」にあるとおり,「個人の特性に応じた適切な処遇を選択するため,若年受刑者に対する処遇調査の充実を図る」ことについておおむね意見が集約され,その具体的内容としては,「検討課題」の「1」にあるとおりの意見がありました。   また,「2」の「少年鑑別所の鑑別機能を活用するため,鑑別の対象となる受刑者の年齢の上限を引き上げる」ことについてもおおむね意見が集約され,「検討課題」の「2」にあるとおり,鑑別の対象とする受刑者の年齢の上限を具体的に何歳とするかが検討課題となっています。   第3の「若年受刑者に対する処遇原則の明確化等」については,「制度概要」の「1」と「2」にあるとおりの明文規定を設けることにおおむね意見が集約されています。   「1」については,「検討課題」にあるとおりの内容を盛り込むことを検討しており,また「2」については,特に若年受刑者の支援に当たり,現在,少年院において行われている支援内容を参考とし,「検討課題」にあるとおりの内容とすることを検討しています。   第1分科会が担当する論点についての御報告は以上です。 ○井上部会長 ありがとうございました。   それでは,第1分科会が担当する論点につきまして,いずれの論点からでも,あるいはまとめてでも結構ですし,また,ただいまの佐伯分科会長の御報告に対する御質問でも,あるいは御意見でも結構ですので,御発言のある方は挙手をお願いしたいと思います。   なお,本日の趣旨からしますと,前回と同様,まずは第1分科会に所属されている委員・幹事以外の方に御発言を頂くのが適当かと考えますので,よろしくお願いします。 ○山下(幸)幹事 ただいま御報告を頂いた中の,資料18の2ページの「第4 猶予期間経過後の執行猶予の取消し」について意見を述べたいと思います。   先ほど,佐伯分科会長から御報告がありましたけれども,執行猶予期間中に更に罪を犯した場合に,現在ですと,新たな犯罪についての刑事手続の進行中に執行猶予期間を経過した場合には,前の刑の言渡しは効力を失うために,前の刑は執行されなくなるという運用であり,それが法律の制度になっているわけです。   今回これを改めて,執行猶予期間中が経過した後でも,遡ってといいますか,その取消しができるということを検討されているということでございますが,これについて,それができるということについての理論的な説明,一応,分科会の方ではそういう論理的な説明もされているんですけれども,そのことがどれだけ説得的な説明になっているのかということや,どうしてこれを今回,これまでの運用を変えなければならないのかということについての必要性や必然性が,どうも十分理解できないところでございます。そして,実際これが法律制度としてできてしまうと,現在の運用が変わるということになりまして,かなり実務にも大きな影響があると考えられます。したがって,この制度の導入については,もう少し慎重な議論が必要ではないかと考えるところでございます。 ○羽間委員 「刑の全部の執行猶予制度の在り方」について申し上げたいと思います。   第1分科会におかれましては,少年法の適用対象年齢が引き下がり,刑の全部の執行猶予に付された場合に,現在,保護観察や少年院送致の保護処分に付されている要保護性の高い18歳,19歳の少年について,初度の執行猶予から保護観察を積極的に付することを可能にする制度改正について検討されていると理解をしております。   しかしながら,議事録を拝見いたしますと,最高裁判所の幹事から,執行猶予に保護観察を付けるかどうかの基本的な考え方は,今回の制度の見直しによっても変わらないのではないかという御発言がございました。また,今回の見直しを経て,最初の執行猶予のときに保護観察を付す事案が増えるのかどうか,どれほど増えるのかという点について,予測を申し上げるのは難しいということでございました。他の委員からも,現行の裁判所において,再度の執行猶予がないことが,保護観察を付すことについてのちゅうちょになっているということが万が一あり得た場合には,そのちゅうちょがなくなることで活用が図られるという御意見などがございました。前回の部会で私が申し上げたことに関するこれらの御意見を拝見しておりますと,第1分科会において検討されているような改正がなされたとしても,保護観察付き執行猶予が多少は増えたとしても期待されているほどには活用されないおそれが高いのではないかと考えています。   他方で,他の分科会の議事録を拝見いたしますと,仮に少年法の適用対象年齢が引き下げられた場合に,執行猶予が付されることになると予想される層に対する措置について,「第1分科会において,保護観察付き執行猶予の活用が検討されているから大丈夫だ」というようなニュアンスでの御発言がなされ,保護観察付き執行猶予の活用をもってカバーされることを前提とした議論にとどまっております。   私が危惧しておりますのは,このまま各分科会でばらばらに議論が進んだ結果,各分科会の制度に狭間ができてしまい,保護観察付き執行猶予の制度が十分に活用されないために,全く対応できないという者が相当数出てきてしまうのではないかということでございます。各分科会における制度,特に実刑にならないような比較的軽微な罪を犯した者を想定している制度の対象者を検討する際には,保護観察付き執行猶予が,ほとんど現行と変わらない程度にしか活用されないという場合も十分あり得るということを前提として,実刑にならなかった18歳,19歳の執行猶予者や罰金となる者も,それらの制度の対象に含めて検討しておく必要があるのではないかと考えます。 ○田鎖幹事 私の方からは,「自由刑の在り方」について意見を述べたいと思います。   新自由刑において,矯正に必要な処遇を刑の内容とすべきかどうかということが検討課題とされておりますので,その点について若干申し述べます。   刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律におきましては,既に作業のみならず,各種指導を受けることも遵守事項とされておりまして,正当な理由なくこれを拒めば懲罰を科され得るという意味において,義務付けがなされているところでございます。このこと自体の当否についても様々に議論があるわけですが,矯正処遇を受けることを処遇法上の義務にとどまらず刑の内容とすべきということについては,私は疑問を感じております。   現行法上は,作業が懲役刑の内容である以上,作業の拒否に対しては懲罰を科さざるを得ないということになります。しかし,あえて作業を拒否するという受刑者は,多くの場合,懲罰という不利益を意に介さない人々で,懲罰を受けて単独室に収容されることを意図して作業を拒否するというような場合もありますように,懲罰が必ずしも義務の履行を担保する機能を果たしておりません。   一方で,圧倒的多数の受刑者は作業に従事しておりますけれども,彼らは懲罰を科されるから作業を拒否しないというのではなく,消極的ではあるにせよ,作業を義務として受けて入れているため,作業に従事していると考えられます。   矯正統計を見ますと,怠役による懲罰は全体の約3割を占めておりまして,突出して多いわけでありますけれども,それは恐らく,作業が刑の内容であるために,正当な理由が認められなければ,言わば機械的に懲罰を科さざるを得ないということも背後にあると予想されます。   他方で,各種指導の拒否ということは,形式的には遵守事項違反となりますけれども,懲罰の対象となることは現状ではほとんどないということでございます。本人が自ら指導を受け入れることこそが重要であるということが,現場では理解されているからであろうと考えられます。   しかし,各種指導を受ける義務も刑罰の内容であるとされれば,その義務違反は当然に懲罰の対象とせざるを得なくなります。それは,現在現場で行われているような,指導を受けたがらない受刑者に対して粘り強く働き掛けて本人の意欲を引き出そうといった取り組みをむしろ弱めてしまって,かえって改善更生の機会が減ってしまうことが危惧されると私は考えます。 ○太田委員 「社会内処遇に必要な期間の確保」,中間報告でいいますと4ページに当たる内容でございますけれども,質問と意見,要望でございます。   現在の制度の概要として提案されているA案,B案とも,保護観察期間が余りにも限られている現在の残刑期間主義よりも,はるかに優れていると思われます。ただ,A案の場合,責任主義との関係で,裁判所に期間を設定する権限を与えようとするものであると思われますけれども,その場合,仮釈放そのものの決定は,現在同様に地方更生保護委員会が行うものと考えているのかどうかという点を,まずお聞きしたいと思います。 ○保坂幹事 A案につきまして,仮釈放の決定と,残刑の期間ではない必要な期間の決定という二つの決定事項があるわけですが,それについて,判断主体を分けるのか,つまり仮釈放自体は地方更生保護委員会とし,期間は裁判所にするのか,それとも両方とも裁判所にするのかということを明示した議論は,今のところはまだ行われていないという理解です。 ○太田委員 分かりました。   もし,仮釈放の決定は地方更生保護委員会に,それから期間の判断,決定は裁判所にとなる場合,恐らく地方更生保護委員会が,まず仮釈放を決定した後に,疎明資料を裁判所に送って,期間だけを決定してもらうという仕組みになろうかと思いますけれども,期間の実質的な判断というのは,むしろ地方更生保護委員会の方が適正にできると私は考えるわけでありますけれども,果たして期間だけを裁判所に判断してもらうということが適当なのかどうかということを,更に第1分科会の方で御検討いただければと思っています。   そもそも,どこの機関がやるかという問題とは別に,期間の判断ができるのかどうかという点については,一般的に,仮釈放後に再犯のリスクが高い期間というのは,ある程度罪種ごとに既に分かっておりますので,それを基準に,後は個々の受刑者の問題に応じて修正するという形で,私は判断できると考えております。   そうであるとすると,再犯のリスクがある程度高い期間を類型化した,刑事政策では一般的な折衷主義と呼ばれているのがこのB案であると思いますが,こういった制度の方を採用するということも考えられなくはありませんけれども,海外の制度を見ますと,どうしても法定期間は短くなりがちでありますので,余り期間を短く設定しすぎると,再犯リスクの高い期間とか,処遇に必要な期間というものをカバーできないおそれがありますので,その点を含めて御検討いただければと考えております。 ○山﨑委員 「刑の全部の執行猶予制度の在り方」に関して,先ほど羽間委員からも御意見がありましたけれども,関連して意見を述べたいと思います。   仮に少年法の適用上限年齢が18歳未満に引き下げられた場合の対応について,例えば私の所属する第2分科会の方では,比較的軽微な罪を犯し,検察官が訴追を必要としないと判断した対象者については,家庭裁判所において現行の少年審判類似の手続によって,若年者に対する新たな処分を付するという制度が検討されております。   これに対して,検察官によって起訴をされた者,すなわち,比較的重い罪を犯した18歳,19歳ということになると思いますが,実刑になる者を除けば,第1分科会で検討されている執行猶予制度の対象になると考えられます。   先ほど羽間委員からもありましたけれども,今検討されている制度改革で起訴をされた18歳,19歳の者に対して,一つは,果たして現実に保護観察が活用されるということになるのかどうかという点がまずあります。さらには,この執行猶予制度の改革と,例えば新たな処分とを並べて考えた場合に,18歳,19歳の軽い犯罪から重い犯罪まで,様々な犯罪に対して対象者の立ち直り,更生,そして再犯防止といった観点から見たときに,現行の制度と比較して,果たして十分と言えるのかどうかという視点を持って,更に検討を重ねていただきたいと考えております。   そして,この点に関して,現行の少年法では,比較的重い罪を犯した18歳,19歳が検察官から訴追された場合であっても,刑に処せられている間を除けば,資格制限を受けることがないものとされており,そのことによって,処分を受けた後の就労を中心とした立ち直り,更生が図られやすくなって,結果として再犯防止につながっていると評価できるのではないかと考えております。   したがって,第1分科会の議論におきましても,特に若年者を中心として資格制限の排除を認める方向での検討を重ねていただきたいと思っている次第です。 ○井上部会長 ほかにいかがでしょうか。   先ほど,まず第1分科会に属しておられない方からと申し上げましたが,分科会に属されている委員・幹事の方の発言を制する趣旨ではありませんので,御意見のある方は御発言いただければと思います。 ○福島幹事 先ほど羽間委員から御指摘があったところについて,趣旨をもう一度申し上げた方がよいと思ったので,発言させていただきたいと思います。   確かに,仮にこの見直しがなされたとしても,保護観察を付けるかどうかの基本的な考え方は変わらないのではないかと申し上げたことがあったと思うのですが,確か,その際の論点は,保護観察付き執行猶予が実刑と執行猶予の間の中間刑的に使われているのか,それとも執行猶予が相当な事案の中で保護観察を付ける,付けないの判断をしているのかという論点であり,私の方からは,多分現在の実務は後者,すなわち,執行猶予が相当な事案の中で保護観察が適切な者を選んでいるのであろう,そして,その考え方は,仮にこの見直しがなされたとしても,今後も恐らく変わらないのではないかということを申し上げたと思いますので,その辺の趣旨を補足させていただきます。   それから,予測をなかなか申し上げにくいという点も,確かに申し上げたのですが,やはり実際にどういう判断をするかは,個々の事件で,それぞれの事件の事情を踏まえて各裁判官が判断するということになりますので,裁判所の事務当局にいる者として,なかなか予測は申し上げられにくいという趣旨で申し上げました。その点を補足させていただければと思います。 ○井上部会長 ほかに御発言がないようでしたら,第1分科会の担当する論点についての意見交換はこの程度にさせていただいてよろしいでしょうか。   それでは,引き続き第2分科会における検討状況につきまして,酒巻分科会長から説明をお願いしたいと思います。 ○酒巻委員 第2分科会が担当する論点につきまして,分科会における検討状況を御報告いたします。   第2分科会は,部会第6回会議の後,部会での委員・幹事の方々の御意見を踏まえながら4回にわたり会議を開催し,考えられる制度の概要と検討課題について検討を行いました。   分科会における検討状況について,各論点ごとに御説明申し上げます。   まず,「宣告猶予制度」についてです。   配布資料18の8ページを御覧ください。   この「宣告猶予制度」につきましては,「考えられる制度の概要」,以下「制度概要」と略しますが,「制度概要」にありますとおり,裁判所は,一定の比較的軽微な事案について,有罪であると認めた場合において,相当と認めるときは,量刑を行った上で,判決の宣告を一定の期間猶予することができるものとする制度を前提にして,対象事案や具体的制度の在り方等について検討を行っております。   まず,「検討課題」の「1」の「対象となる事案の範囲」につきましては,一つ目から五つ目までの「○」にある事案等を対象にするかについて検討を行っております。それぞれの対象事案における具体的な検討課題については,「・」に記載してあるとおりでございます。なお,三つ目の「○」の「単純執行猶予相当の事案(初犯の薬物事案を含む)を含むか。」の項目に記載してある四つの「・」のうち,上から三つの「・」につきましては,二つ目の「○」,つまり「罰金相当の事案を含むか。」についても,同様に検討課題になるという趣旨で記載しております。   次に,「2」の「具体的な制度の在り方」につきましては,「(1)」から「(9)」までにあるとおり,判決の宣告を猶予する要件,その判決における刑に,更に執行猶予を付することができることとするか,宣告を猶予する期間,手続,宣告猶予期間中の保護観察を必要的なものとするか,また,どのような場合に宣告猶予を取り消して判決を言い渡すこととするか,その手続,不服申立ての在り方などが検討課題になっております。   続きまして,「3」の「制度の必要性及び相当性」という点につきましては,当分科会において制度の在り方を検討している過程で,現行法上の制度である起訴猶予制度や執行猶予制度に加えて,この宣告猶予制度を設ける必要があるのか,また,使い分けが可能であるのかなどの指摘があり,制度の必要性及び相当性として,一つ目及び二つ目の「○」に記載した点が検討課題となると考えられたため,それらを記載しているところです。   次に,「4」の「その他の制度設計」につきましては,簡略な手続によって保護観察に付する仕組みとして,「○」の下の二つの「・」に記載した制度の御提案がございまして,それらの制度を設ける必要性及び相当性が検討課題となっているところです。   以上が「宣告猶予制度」に関することです。   次に,2点目の「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」についてです。資料の11ページを御覧ください。   「考えられる施策・制度の概要」,これについても,以下「制度概要」と略しますが,「制度概要」にありますとおり,罰金の保護観察付き執行猶予が適する事案に,その活用を図ることについて検討を行っているところです。   罰金の保護観察付き執行猶予は既に現行法上の制度であるため,「検討課題」といたしましては,まず,「1」及び「2」にあるとおり,活用に適すると判断するための要素及び活用に適する事案・対象者の判断方法について検討し,判断資料の在り方,保護観察所や少年鑑別所の調査・鑑別機能の活用の在り方などが検討課題となっております。   次に,「3」の「活用するための課題」につきましては,略式手続を経る場合と公判手続を経る場合のそれぞれについて検討を行い,それぞれ「・」で示した事柄が検討課題になっているほか,いずれの手続を経る場合にも,保護観察の適切な期間の在り方などが検討課題となっております。   そして,以上を踏まえまして,「4」にあるとおり,「活用するための法改正の要否・内容」が検討課題となっておりますけれども,現時点までに,法改正を要するとの意見はございませんでした。   以上が「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」の論点についてです。   最後に,3点目の「若年者に対する新たな処分」について御説明いたします。資料の13ページ以下を御覧ください。   「若年者に対する新たな処分」,以下「本処分」といいますけれども,本処分につきましては,まず「制度概要」の「1」の「概要」にある制度を前提とするということに異論はありませんでしたが,「検討課題」の「1」にあるとおり,20歳以上の者も対象とするかが検討課題となっております。   次に,本処分の内容として,「制度概要」の「2 処分の内容等」にあるとおり,保護観察処分を設け,保護観察処分少年に対するのと同様の保護観察を行い,保護観察を継続する必要がなくなったときはこれを解除するものとすること及び「(2)」記載のときは不処分としなければならないことについては異論がありませんでしたが,「検討課題」の「2」の「(1)」にあるとおり,施設収容処分については,比較的軽微な罪を犯し,訴追の必要がないと検察官によって判断された者に対する処分として必要性及び相当性があるのか,そのような対象者について,処遇効果を上げるために必要な期間で,かつ,施設収容が正当化される期間はどの程度かなどが検討課題となっております。また,「(2)」の保護観察処分につきましては,要件のほか,期間及びその定め方,遵守事項違反の場合にとり得る措置などが検討課題となっております。   手続につきましては,「制度概要」の「3」に記載の内容とすることについて異論はありませんでした。この点については,「検討課題」の「3」の「(1)」にあるとおり,家庭裁判所が検察官に送致する仕組みや刑事裁判所が家庭裁判所に移送する仕組みを設けるか,あるいは,「(2)」にあるとおり,少年鑑別所による在宅鑑別のほか収容鑑別(観護措置)を設けるかなどが検討課題となっており,また「(3)その他」につきましては,手続に関する各論的な項目として,「○」として掲げている諸点が検討課題となっております。   第2分科会が担当する論点についての御報告は以上です。 ○井上部会長 ありがとうございました。   それでは,先ほどと同様ですけれども,第2分科会が担当する論点につきまして,いずれの点でも結構ですし,あるいはまとめた形でも結構です。また,ただいまの酒巻分科会長の報告に対する御質問でも結構ですし,御意見,あるいは御指摘等でも結構ですので,御発言のある方は挙手をお願いしたいと思います。   これもまた,まずは第2分科会に属しておられない委員・幹事の方から御発言いただき,ある程度経ったところで,皆様全員から御発言いただくという形にしたいと思います。 ○廣瀬委員 幾つかありますのでまとめて申し上げます。   まず,新たな処分について,対象者が20歳かどうかというのが項目に挙がっており,分科会では,政策的判断として18歳,19歳を対象にするということを前提に議論されています。そのこと自体をよくないなどと言うつもりはないですけれども,若年者の特性ということで考えていけば,もう少し幅広い年齢層を対象として考える余地はあるのではないかという点は指摘しておきたいと思います。   それから,先ほど羽間委員や山﨑委員が言われたこととも共通するのですけれども,起訴されて単純執行猶予や罰金とされた者に対する手当てが十分できるということであればよいわけですが,各分科会でいろいろな工夫を考えておられますけれども,今のところ,執行猶予や罰金となる者に保護観察が付く割合が大幅に増えるという見通しは,元裁判官としての実務感覚に照らしてもかなり厳しいのではないかと思います。   また,新たな処分が起訴猶予者を対象にする制度だとしても,起訴猶予の対象となる犯罪・事案にも実際にはかなり幅があるわけです。罪名の縛りもないですし。そういうことを考えると,単純執行猶予や罰金に相当するような犯罪をした者も対象となり得ることを想定して考える必要はやはりあるのではないか。そこはもう少し御検討いただけたらと思います。   そのこととも連動するのですけれども,施設収容処分の要否という点で,非難の可能性の限度ということで枠をはめ,長い期間は無理ではないかとか,短い期間では効果が上がらないのでそもそも収容が難しいのではないかといった議論がされていますけれども,やはり再犯防止を目的として改善更生や必要な働き掛けをするということであれば,たとえ短期間であっても,施設収容処分を作るということは非常に必要性が高いし,有効性もあるだろうと思います。適切な事例,それにふさわしい事例がそう多くはないかもしれませんけれども,実務経験に照らしてもある程度はあると思います。それから,今日,大沢委員の意見書を頂きましたけれども,この中でも,環境に問題があれば,更生のためにそうした環境から一定期間切り離すことが必要な場面も出てくるというようなことも御指摘されています。やはり一種の収容処分をしないとそういうこともできないわけですから,そういう必要性は間違いなくあるだろうと思います。   実際に審判をしてきた者の経験から言わせていただきますけれども,保護観察しか処分がないというところで保護観察を選択するということになると,実際にそれは審判とか処分という形で受け取る方の感銘力という点もそうですし,それから処分する側も適切な処分を選択しているという実感をなかなか得づらいし,また非常にやりにくいだろうと思います。ですから,数は少ないかもしれないですし,期間も短いかもしれないですが,保護観察より一つ上の施設収容処分があるという前提があるのとないのとでは実際には随分違ってきます。そういう意味でも,これは必要性があるだろうと思います。   相当性の点について,非難の可能性の限度で処分を行うということで枠をはめるとしても,この点自体,私には異論がありますが,それはおくとして,その点について基準や注意事項,注意条項などというものを置いて,不服申立ても保障されるということになれば,事案に応じて適切な運用が十分期待でき,相当性の点でも問題はないだろうと思います。   分科会では,アメリカのブートキャンプが成功していないとの紹介がありましたけれども,他方,ドイツの少年拘禁のように,長年の蓄積があって実績があるという短期の処分もあるわけです。最近のヨーロッパでは,短期の拘禁処分は非常に積極的というか,活用されてきているわけです。ですから,今の少年院の運用状況のみを基準として,それと同じことができないなどということから,新たな処分の効果が期待できないのではないかという議論は,早計過ぎるのではないかという気がします。是非もう少し御検討いただきたいと思います。   それから,保護観察の遵守事項に違反したときにとり得る措置についてです。保護観察はそもそも対象者に接触して,説得して働き掛けるという制度です。平成19年の少年法等の改正のときに,不良措置として施設送致申請の制度をわざわざ作ったわけですけれども,その背景には,やはり,そういう担保措置,制裁措置がなくては保護観察はうまくいかないという共通認識ができて改正をしたはずなのです。その共通認識は今でも変わっていないわけですし,諸外国の保護観察やそれに近い制度を見ても,皆そういう担保措置が設けられているわけです。ですから,新たな処分においても,遵守事項に違反してきちんと保護観察を受けないという者に対して,施設送致・収容も含めた可能性を担保しておくということは,やはり必要であると思います。   比較的軽微な事案を前提とするからそういった担保措置は必要ないということを考えておられるかもしれませんけれども,大沢委員の意見書にも指摘があるとおり,初発の犯罪や軽微な犯罪に対する早期の実効的な対応というのは非常に重要であるということは,恐らくこの部会における共通認識だと思います。そうすると,やはりそこできちんと指導に従わないような者に対して実効的に対応できるように,短期でもいいから施設収容処分を確保しておくということは,非難可能性という枠をはめたとしても十分作れると思いますし,また作っておく意味は非常にあるだろうと思います。是非ここは御検討いただきたいと思います。   それから,観護措置についてです。処分類似のものを決めるときに収容鑑別を行う必要性はあるだろうと思います。これは是非進めていただければと思います。   手続や処分の効力については,これまでの少年法に基づいた少年審判や法理,実践があるわけですから,それが活用できるように,いかせるように御検討いただけたらと思っております。 ○青木委員 質問と意見を申し述べます。まずは,念のための確認ですが,若年者に対する新たな処分のところで,考えられる制度の概要というところに書かれている制度設計については,今,廣瀬委員からも御指摘があったように,20歳以上の者も対象とするかという検討課題はありつつも,ここに書かれている制度概要というのは18歳,19歳を念頭に置いて制度設計されているものと理解してよろしいのでしょうか。 ○保坂幹事 そのとおりです。 ○青木委員 そうだとしますと,言い方が細かすぎるのかもしれませんが,この検討課題のところで20歳以上の者も本処分の対象とするかということではなくて,20歳以上の者についても本処分のような処分の対象とすることが考えられるかということで検討した方がよいのではないかと思います。と申しますのは,例えばこの制度概要では非公開の審判となっていますけれども,さすがに20歳以上で非公開の審判というようなことが本当にあり得るのかどうか分かりませんけれども,その制度そのものを仮に20歳以上の者も対象とするということで想定するとしますと,検討を要するところはまた別途出てくるのではないかと思うので,問題の立て方としてはそうするべきではないかと思います。   その関連ですけれども,ここで若年者に対する新たな処分ということで検討されている内容というのは,大くくりのところでいいますと,刑罰を科すことなく社会内での働き掛けを行うということについて,そういうことがふさわしい者に対する働き掛けの一つ,処分ということになるのだろうと思います。   ほかの分科会で検討されていること,あるいはこの分科会の中でもほかの部分で検討されているところにも,言わば刑罰を科すことなく社会内での働き掛けを行う,処分を行うということについての論点があると思います。この18歳,19歳の若年者に対する新たな処分というのは,刑罰を科すことは適切でないけれども,社会内での働き掛けをするというものだと思いますが,刑罰を科すこともできるけれども,あえて刑罰を科さずに社会内での働き掛けを行ったり,何らかの処分を行うという類型もあるのだろうと思います。   そういう類型について,どういうものがあり得るのか。立法事実としてそういうものを設ける必要性があるのかということについて,実際に立法事実の方から検討して,こういう人に対してはこういう働き掛けが必要だけれども,今の制度ではなかなかふさわしいものがないので,では,どういう制度設計があり得るのか。そういう働き掛けをする必要性,相当性があるのか。特に刑罰を科することもできるけれども,処分を行うというものについては比較的問題はないのでしょうけれども,刑罰を科することは適切でないけれども,社会内での働き掛けを行うということについては,正にその必要性,相当性が相当問題になるのだろうと思います。   そういう意味で,そういう両方の種類,刑罰を科することもできるけれどもあえて刑罰を科さずに働き掛けを行う場合,それから刑罰を科すことは適切でないけれども,働き掛けを行う場合,それぞれについて,どのような立法事実があるか,こういう人について,こういうことが必要だというのを,年齢もそうですし,どのような事案のどういう人というのをある程度想定して,それぞれについてどういう必要性,相当性があって,それにふさわしい制度設計はどういうものかという検討をする必要があるのではないかと思います。   どういうところに必要があるかというのは私は必ずしもよく分からないのですけれども,もし仮に少年法適用年齢が引き下がるとしたら検討しなければならないのは,先ほどからも出ているように,18歳,19歳について,比較的軽微な罪を犯した人については,この新たな処分である程度カバーされると思いますけれども,そうではなくて,罰金になったり執行猶予になる者について,本当にそれでカバーされるのだろうかと考えますと,例えば軽微な罪を犯した人は家庭裁判所の調査があるわけですが,起訴される人はそれがないということだけを見ても,同じにはならないわけです。本当にそれでよいのだろうかと思います。   第2分科会の中でも議論としては出ているようですけれども,場合によっては18歳,19歳の起訴される者についても,別途何らかの手続で手当てをして,それについては資格制限もないし,あえて刑罰ではない形で処分をするというものも,もしかしたら考えなければいけないのではないかと思います。そのようにいろいろと今と同じような手当てをしようと考えると,年齢引下げをしないのが一番よいのだろうとは思うのですけれども,仮に引き下がるとしたら,その部分について,例えばどういう制度が必要かというようなことも考えていかなければならないのではないかと思います。   そういう意味で,どのような事案,どのような年齢層,どのような者について必要性がどこにあって,どのようにするのかというのは,少し横断的に検討する場所があった方がよいのではないかと思っております。 ○太田委員 先ほどの廣瀬委員の御意見を伺っていて,この若年者に対する新たな処分について,事務当局にお尋ねしたいことがございます。   若年者に対する新たな処分として科される保護観察において遵守事項違反があった場合に,施設収容などの不良措置がないということになれば,かつての1号観察と同じ問題がやはり生ずるのではないかと思います。   そこで,先ほども話題に出ていました平成19年の少年法改正によって,1号観察の遵守事項違反の場合の警告とか,それから施設送致申請の制度が導入されたわけでありますけれども,その背景として,保護観察の現場でどういう不都合があって,それからどういった現場からの要望があったのかということについて,分かる範囲で結構でございますので,教えていただければと思います。   また,この改正によって,1号観察の実施においてどのように改善されたのか,現場の保護観察官や保護司にとってやりやすくなったという点で,何か統計ないしは数値というもので表せるようなものをお持ちであれば,お示しいただきたいと思います。 ○今福幹事 平成19年の少年法等の改正により,1号観察における不良措置として警告と施設送致申請の規定が設けられましたが,改正前は,保護観察処分少年に対して遵守事項違反に対して端的に対応できるような規定はありませんでした。当時は,現場におきまして,再三の指導に反して保護司や保護観察官の下に出頭もしない,保護観察官等が接触することすらできなくなるなど,遵守事項の不遵守を繰り返し,保護観察が実質的に機能し得なくなっている事例が少なくないにもかかわらず,対処できる法的枠組みは,必ずしも十分なものとは言えないという不都合な事情がありました。これらの事情は,当時の国会審議において説明がなされております。   また,当時の現場の要望,声という点についてお答えすると,この少年法等の改正が議論された法制審議会少年法部会の中で,「遵守事項違反による何らかの措置,特に接触の確保を図ることができるということは,積年の夢,課題であり,ほとんどの保護司が望んでいる。それだけ現実に接触の確保,あるいは遵守事項を守らせるということについて,あらゆる努力をした上でも難しいという場面がある」という説明がなされているところです。   次に,この法改正による効果という御質問に対する端的なお答えになっているかは必ずしも分かりませんが,保護観察実施中に本人の居場所を把握できなくなり,実質的に指導ができない,いわゆる所在不明になった者の数や割合について,法改正前後での変化を申し上げます。この点,法改正前の平成18年の年末時点ですと,所在不明の保護観察処分少年の数は280人,1号観察係属件数全体に占める割合は約1.0%でありましたが,平成28年の年末時点で同様の数字を見ますと,所在不明者は89人,全体に占める割合は約0.6%ということで,いずれも減少しておりました。   現場の保護観察官からも,保護観察処分少年の間で,遵守事項や保護観察に対する意識が高まったというような事例報告は多数なされている上,「保護観察がやりやすくなった」という意見についても,現場の保護観察官だけでなく,数多くの保護司の皆様からも少なからず出ているという状況でございます。 ○太田委員 今,御説明があった点は,要するに,この警告とか施設送致申請の制度ができたことによって,保護観察の現場ではやりやすくなった,所在不明者も減少したということであろうかと思います。そうだとすれば,裏を返せば,遵守事項違反の場合に施設収容などの不良措置がないと,保護観察は,現場にとっては非常にやりづらいものになるのではないかということが考えられると思います。   今後,仮に,若年者に対する新たな処分としての保護観察において,遵守事項違反の場合に対応する措置として,施設収容などの措置がないということになれば,新たな処分における保護観察は,保護観察の現場にとっては動機付けとか処遇効果に非常に苦労される,すなわち非常にやりづらい制度になるのと同時に,実効性に欠ける制度になるのではないかと,ただいま伺っていて感じたところであります。   さらに,そもそも論で言いますと,本来,処分というのは,例えば犯罪者の危険性とか,これは保安処分の場合の表現ですけれども,要保護性,これは保護処分の場合でありますけれども,こういった処分の場合には,こういった要保護性ないしは危険性に比例して課すという制度にあります。しかし,この新たな処分の制度は,行為責任による限定を非常に厳格に求め,起訴相当の者に対して科される刑罰の関係あるいは差別化を図る必要から,当該処分に社会内処遇としての保護観察だけを設け,施設内処分を設け得ないというところに制度の困難性があるのではないかと考えております。   加えて,この新たな処分というのは起訴猶予処分になった者全てを手続の対象にするということでありますけれども,確かに起訴猶予処分が相当の者の中にも,再犯防止や改善更生に向けた対応が必要な者がいることは間違いないと思われます。しかし,起訴猶予対象者を全て家庭裁判所に送致して調査,審判を行って,その上で保護観察の処分だけだとして保護観察に付したとして,結局,遵守事項違反はあっても,何ら施設収容等の不良措置がとれないということになると実効性を欠くことになると思われます。   そうでありますと,これは第3分科会の話になってしまいますけれども,むしろ起訴猶予相当の者に対する制度としては,この新たな処分にはよらないで,むしろ第3分科会で今検討しています起訴猶予に際して守るべき事項を設定する制度の方が,守るべき事項に違反した場合には,最終手段としての起訴とか,それからいろいろな不良措置をとれますし,また,現在,年齢制限を設けないという案が出ておりますことから,これにより対応するということを検討した方がよいのではないかと思われます。 ○羽間委員 私も若年者に対する新たな処分について,意見を申し上げさせていただきたいと思います。   先ほど廣瀬委員から御紹介がありましたとおり,第2分科会においては,現時点で想定されている対象者を前提にする限り,新たな処分に施設収容処分を設けることは理論的に難しいという議論がなされていると承知しております。   しかしながら,少年法の適用対象年齢が引き下げられた場合に,どのような犯罪者処遇の方策が可能であるかということを検討するためには,理論面に加えて,処遇の実践面において十分な効果が得られるかどうかという議論をすることも必要です。第2分科会の議事録を拝見いたしますと,新たな処分において,保護観察のみの制度が構想されていると理解しましたけれども,施設内処遇を組み込まなければ十分な効果を得ることが難しいと言わざるを得ません。これは,二つの場面で問題となり得ます。   第1の場面は,新たな処分の内容を選択する時点です。その時点で施設内処遇を選択できるということが重要だと考えられます。特に,捜査段階では被疑事実を認めていて起訴猶予になったものの,家庭裁判所送致後に否認,あるいは黙秘に転じ,処分決定時までその状態が続いているなど,自己の犯罪と全く向き合おうとしない者,あるいは家庭裁判所調査官の調査や家庭裁判所の審判において,「保護観察などを受けるつもりは全くない。どうせ取り消されたって起訴猶予なんだから,さっさと取り消してくれ」と述べるなど,保護観察を受ける意欲が全くないことが明らかな者などは,社会内処遇のみでは効果を期し難い典型的な例でございます。   第2の場面は,社会内処遇において遵守事項違反があった場合です。第3分科会では,少年鑑別所に収容しての調査が検討されており,同様の調査が第2分科会の検討事項にもなっていると承知しております。このような措置は,適切なアセスメントに基づく保護観察を実施するため有益なことと考えております。しかし,そういった調査と両立するものとして,遵守事項違反があった場合に施設内処遇に転換するということを可能とする制度としておくことも極めて重要です。施設内処遇という可能性があるからこそ,遵守事項を守るということへの心理規制を保ち,保護司の下に通うなど,保護観察をきちんと受けることを確保し,さらに,再犯の危険性が高まっている危機場面から,本人や社会を守るということが可能になると考えます。仮に,遵守事項違反への適切な措置が設けられないのだとすれば,新たな処分における保護観察は,その名前は保護観察となっているものの,その実質は更生緊急保護,すなわち受ける意欲がある者や支援を求める者に対してのみ効果がある支援に近いものとならざるを得ないのではないかと危惧いたしております。   以上,申し上げたことを前提といたしますと,新たな処分に関して,三つの方向性の選択肢が考えられます。   第1に,新たな処分の中に施設収容処分を設ける,第2に,新たな処分以外で施設収容が可能な制度を導入する,第3に,効果的な処遇は困難であると整理した上で,年齢引下げの是非について検討する,の三つでございます。これらの事項について,今後の分科会,あるいは部会において,更に検討していく必要があるものと考えます。 ○山下(幸)幹事 私の方からも,若年者に対する新たな処分について意見を述べるとともに,その後質問をさせていただきたいと思っております。   まず意見でございますが,先ほどからいろいろ議論もされていますけれども,この新たな処分につきましては,もちろん当初からいろいろ議論がされてきているんですが,かなり議論が詰まってきている中で,詰まれば詰まるほど,これは保護処分ではないとされていたんですけれども,内容的には家庭裁判所に送致して,家庭裁判所で調査官の調査を経て,非公開の審判で決めるというような,ほとんど,現在の少年法が定めている保護処分と同じようなことをしようとしていると考えられます。   ところが,今回の議論は,18歳,19歳が成人になることを前提に,そうなった場合を想定して,行為責任で判断するということが前提になっているために,結局,その範囲の問題がありますけれども,比較的軽微な事案で検察官が不起訴処分にした場合にだけ使えるとなっているために,現在,少年法で18歳,19歳は少年ということで家庭裁判所に全件送致されて,少年事件全体の中で4割ぐらいを占める割合で,家庭裁判所で処理をされているわけですけれども,恐らく今回の新たな処分というのは,それと比べると,相当限定されたものになると考えられるところであります。先ほど廣瀬委員や羽間委員からは,逆に施設収容となる者も処分の対象に入れるべきだという御意見もあったんですけれども,それは元々これを成人扱いした上での新たな処分ですので,行為責任で限定するという議論からすれば無理があると思われます。結局,この新たな処分というのは非常に限定的なものになっていて,18歳,19歳が少年であることを前提の現在の制度と比較すると,相当見劣りがするものに,やはりならざるを得ないと考えられます。   以上は私の意見です。これを踏まえて事務当局に対する質問ですけれども,この議論で,新たな処分ということで,果たしてどのぐらいの事件が,事件数とか割合ですけれども,この新たな処分の対象として家庭裁判所に送致されることが予定されているか,考えられるのかということについて,もし何か事務当局の方で考えられていることがあれば,それを教えていただければと思います。 ○羽柴幹事 少年法の少年の上限年齢が18歳未満に仮に引き下げられた場合,現在,保護処分の対象とされている18歳及び19歳の者が,この新たな処分,あるいはほかのいかなる処分を受けることが予想されるのかという御質問だと理解しておりますけれども,そういった処分の結果は,もとよりそれぞれの事件の内容等による事柄でして,また,その処分結果の分布は,結局裁判所等が判断した結果の集積ということになりますので,現在において,その予測ということを一概に申し上げることは困難だと考えております。 ○佐伯委員 これまで委員・幹事の皆様の御意見を伺っていますと,皆さん,若年者に対する新たな処分の検討が少年の上限年齢の引下げの是非を検討する上で非常に重要であるという御意見をお持ちであり,私もそのとおりだと思います。また,皆さんから御指摘のあった検討すべき事項は,非常に多岐にわたっているように思われます。第2分科会が御担当の検討事項はいずれも重要なものだと思いますけれども,若年者に対する新たな処分を検討することが特に重要であることと,検討事項の多様性を考えますと,是非この論点に特に力を入れて御審議いただけるようにお願いしたいと思います。 ○奥村委員 1点だけお願いですが,この若年者に対する新たな処分として保護観察処分が採り入れられた場合に御検討を忘れないようにしていただきたい問題があります。資料の15ページに被害者関係のことが書かれていて,「その他」の一番下の「○」のところに犯罪被害者等の権利利益の擁護のための制度として5点ほど挙がっております。これらはいずれも検討課題ですが,損害賠償命令制度についても是非見直しを御検討いただきたい。刑事裁判における有罪被告人に対する簡易迅速な賠償制度として損害賠償命令が導入されましたが,被害者等は債務名義を得るだけで,同制度は実効性がなく機能しない場合が出てくるということであります。同制度は,現在,第3次犯罪被害者等基本計画におきましても加害者の損害賠償責任の実現が重点課題となっている折から,その一環として是非御検討いただきたいということです。 ○井上部会長 そろそろよろしいでしょうか。   それでは,この段階では,この程度にさせていただきたいと思います。   引き続き,第3分科会における検討状況について,小木曽分科会長から説明をお伺いしたいと思います。 ○小木曽委員 第3分科会が担当する論点について,検討状況を御報告いたします。   第3分科会は,部会第6回会議の後,部会での委員・幹事の方々の御意見を踏まえながら4回にわたり会議を開催し,考えられる制度の概要と検討課題について検討を行いました。   その検討状況について,各論点ごとに申し上げます。   配布資料18の17ページを御覧いただきたいと思います。   まず,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」についてです。   第1の「検察官が働き掛けを行う制度の導入」については,「考えられる制度の概要」,私も,以下「制度概要」と申しますが,「制度概要」にある制度について検討しているところです。   この制度については,「検討課題」の「1」にあるとおり,一つ目の「○」の「必要性」のほか,二つ目の「○」の「相当性」として,裁判所による犯罪事実の認定を経ていない時点で,検察官が守るべき事項を設定し,一定の処遇を行うこととすることが相当かどうかが検討課題となっています。   「検討課題」の「2 対象者等」については,起訴相当事案の対象者に限定するという意見と,起訴相当か起訴猶予相当かという区別ではなく,働き掛けが必要な被疑者を対象とするという意見とがあり,想定される対象者や対象事案が検討課題となっています。   次に,「3 制度の枠組等」については,「(1)守るべき事項の設定」として,その内容,調査,手続,不服申立て制度を設けるか否か,設定される守るべき事項の内容の基準の要否が,「(2)指導・監督」については,その方法,期間が,「(3)その他」としては,期間満了の効果として公訴提起を禁止することとすべきか,守るべき事項に違反した場合の対応として,起訴することのほか,守るべき事項の変更等の措置を設けるかが検討課題となっています。   第2の「起訴猶予となる者等に対する就労支援・生活環境調整の規定等の整備」については,「制度概要」の「1」にあるとおり,更生緊急保護について,事前調整を明文化し,対象範囲を拡大することについては,おおむね意見が集約されていますが,「検討課題」の「1」の「(1)」,「(2)」にあるとおり,要件や現行法との整合性等が検討課題となっています。   「制度概要」の「2」の「検察官の被疑者に対する訓戒等について明示的規定を設ける」ことについては,「検討課題」の「2」にあるとおり,必要性及び相当性,内容が検討課題となっています。   配布資料18の20ページを御覧いただきたいと思います。   次は,「保護観察・社会復帰支援施策の充実」,「社会内処遇における新たな措置の導入」及び「施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」についてです。これらの論点は,社会内処遇に関するもので,相互に関連しておりますことから,これら三つの論点をまとめて「第1」から「第6」までの具体的な検討項目を設け,それぞれについて検討しています。   第1の「特別遵守事項の類型の追加」については,「考えられる施策・制度の概要」,これについても,以下「制度概要」と申しますが,「制度概要」にあるとおり,保護観察対象者の改善更生を促進するため,特別遵守事項の類型として,「1」及び「2」の内容を追加することについて検討しています。具体的には,まず,「1」については,「検討課題」の「1」にあるとおり,その必要性及び相当性,対象者,法務大臣が定める基準の在り方が検討課題となっています。   また,「制度概要」の「2」の内容を追加することについては,「検討課題」の「2」にあるとおり,要件・基準,法整備の要否等が検討課題となっています。   第2の「犯罪被害者等の視点に立った処遇の充実等」については,「制度概要」の「1」及び「2」にあるとおりの制度・施策とすることに異論はありませんでした。「1」の刑の執行初期段階における犯罪被害者等の心情等の伝達については,「検討課題」の「1」にあるとおり,対象とする事案,聴取を担当する機関,聴取の手続,処遇への活用方法等が検討課題となっており,「2」の保護観察における指導に,より犯罪被害者等の視点を加えることについては,「検討課題」の「2」にあるとおり,「(1)損害賠償を促すための措置」及び「(2)被害者等の状況を理解してそれを踏まえて行動することを促すための指導」について,それぞれ義務付けの必要性及び相当性,法整備の要否等を検討しています。「(3)」にある「接触禁止等の特別遵守事項の拡大」については,現行の特別遵守事項を更に拡大すべきかどうかが検討課題となっています。   第3の「刑の執行猶予中の保護観察の仮解除の活用促進等」についてです。まず,保護観察の仮解除については,「制度概要」の「1」にあるとおりの制度とすることでおおむね意見が集約され,「検討課題」の「1」にあるとおり,その要件・基準について,客観的かつ適正な判断を担保するために,具体的で明確な基準としてどのようなものを設けるべきかといったこと等が検討課題となっています。   「制度概要」の「2」の刑の執行猶予中の保護観察を解除することができる制度については,「検討課題」の「2」にあるとおり,「必要性」として解除の仕組みが必要となるような事案があるか等が検討課題となっており,事務当局において実情を調査しているところです。   第4の「外部通勤作業や外出・外泊の活用等」については,「制度概要」にあるとおり,刑事施設内から社会内に向けて円滑な移行を図り,社会復帰を促進するため,「①外部通勤作業や外出・外泊をより活用する」,「②刑事施設内における開放的処遇を拡大する」,「③仮釈放後に段階的な処遇を実施する」ことについては,異論はなく,具体的な方策等として,「検討課題」の「1」から「3」までにそれぞれ記載した点が検討課題となっております。   第5の「保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用の在り方等」については,「制度概要」の「1」にあるとおり,「保護観察の処遇方針の策定等のため,少年鑑別所への通所による調査をより活用する」ことについておおむね意見が集約されており,具体的な課題として,「検討課題」に記載した点を検討しています。   「制度概要」の「2」の「保護観察の遵守事項違反があった場合に,執行猶予の取消しの申出をするか,新たな特別遵守事項を定めるなどして保護観察を継続するかを判断するため,少年鑑別所への収容を伴う集中的な調査を行う制度を設ける」ことについては,「検討課題」の「2」にあるとおり,必要性,調査の内容,対象者のほか,最後の「○」に記載したとおり,現行の留置制度と組み合わせた制度とすべきか,別の新たな制度とすべきか等が検討課題となっています。   第6の「更生保護事業の体系の見直し」については,「制度概要」にあるとおり,「更生保護施設が行う専門的な処遇等を更生保護事業として明文で定める」ことを検討しており,「2」の参入要件等が検討課題となっています。   なお,資料には記載しておりませんが,法整備を要しない運用上の施策として,保護観察において,対象者の再犯リスク等をより適切に評価するためのアセスメントツールを開発するとともに,罪種や問題性に応じて効果的な処遇を行うための手法をガイドライン又はプログラムとして開発・整備すべきことについて,意見が集約されています。   第3分科会担当の論点についての御報告は以上です。 ○井上部会長 ありがとうございました。   それでは,先ほどの二つの分科会について同様の要領で御質問,あるいは御意見を出していただければと思います。   御発言のある方は挙手をお願いします。 ○山下(幸)幹事 配布資料18の17ページの一番最初の起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方の「検察官が働き掛けを行う制度の導入」に関して意見を述べます。それからその後,24ページの「保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用の在り方等」についても意見を述べたいと思います。   まず,起訴猶予等に伴う再犯防止措置の関係ですけれども,これについては,日本弁護士連合会の方で,今年の3月22日付けで意見書を出しているところでございまして,このような制度を作ることについて反対する意見書を公表しておりますので,委員・幹事の皆様におかれましては,是非御参照いただければと思っております。   第3分科会におけるこの議論におきましては,検察官が一定の守るべき事項を設定した上で,一定期間,保護観察官が指導・監督を行う制度という形で検討が進んでいるところでございます。しかし,まだ検察官が起訴,不起訴も決めていない段階において保護観察をするのと同様の効果となるべき保護観察官の指導・監督ができるという制度設計については,いろいろ問題があるのではないかと考えております。   前回のこの部会で,山﨑委員からも御指摘があったんですけれども,検察官がこういう形で保護観察を含む社会内処遇を行う方策につきましては,これまで刑法の全面改正の議論であるとか,被収容人員適正化方策に関する部会の議論とかにおいては,いずれもこれは採用されないという形で議論がされてきた経過があるところでございまして,なぜ,今回このような制度を導入することにするのかということについて,理論上,又は法制度としての相当性という観点から,より慎重な議論をしていただきたいと思います。   それから,24ページの第5の「保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用の在り方等」についてですが,現在,少年事件において保護観察になった場合の保護観察につきましては,家庭裁判所の調査官による調査を含めた社会調査の結果が非常に有益であると指摘されているところでございまして,やはり少年鑑別所だけの調査だけでは,その点が調査の在り方として不十分ではないかと考えられるところであります。   また,今回この24ページのところにありますけれども,保護観察の遵守事項違反があった場合に,少年鑑別所の収容を伴う集中的な調査を行う制度を設けるということが検討されているところでありまして,それにつきましては,先ほどの御報告にもありましたが,現行の更生保護法第80条の留置制度とは別に,またはその組合せとして検討するということでございます。   しかし,遵守事項違反があって執行猶予の取消し申出をするか否かの判断のために少年鑑別所へ収容するということにつきましては,その必要性と比較して,その不利益性が非常に大きいということから,そのような制度の導入については非常に疑問があるところでありまして,より慎重な議論をお願いしたいと思います。 ○武委員 これまで私たち被害者は,処遇の中で,被害者の視点がほとんど考えられていなかったことで,とても苦しい思いを抱えてきました。   ですので,説明をお願いしたいのですが,22ページの「被害者の状況を理解してそれを踏まえて行動することを促すための指導」の一番最後の「○」に「法整備の要否」と書かれているのですが,ここが私たちにとって少し分かりにくいので,もう少し説明をしていただきたいです。   それともう一つは,議事録に,更生保護法の総則的な規定の中に,犯罪被害者の視点に立つということを加えることを考えるべきではないかという意見があったのですが,そのことも少し詳しく教えていただきたいと思います。 ○羽柴幹事 御指摘の検討課題ですけれども,「保護観察官が処遇を行うに当たっての考慮要素の一つとして,被害者等の状況を追加すべきか」ということが資料に記載されています。これは,考えとしては,保護観察官が被害の内容や被害者の方の要望をきちんと把握し,犯罪被害者の視点にも立つことを心掛けて処遇を行っていくことが重要だという御意見があり,そのためには,保護観察処遇の総則的な規定を見直して,その中に被害者の視点に立つことについて位置付けるということも有効なのではないかといった御意見がありました。   今,保護観察処遇の総則的な規定の中に書かれている考慮要素としては様々なものがありますけれども,そこには,この「被害者等の状況」という文言は含まれておりませんので,「被害者等の状況」ということも考えることが重要であるためそこに加えた方がよいのではないかという検討課題が検討されているというところです。 ○武委員 その規定の中に犯罪被害者のことを盛り込んだら,被害者のことだけを考えなさいというイメージなのですが,私は,この規定に被害者のことを盛り込むということは,被害者のためだけのものではないと思っています。それは,加害者が社会に戻ったときに,一人の人として生きなければいけないわけです。人間らしく前を見て,しっかり生きていくために,私はとてもこのことは大切で,必要なことだと思いますので,是非検討していただきたいです。よろしくお願いします。 ○山下(幸)幹事 先ほどの「保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用の在り方等」という点に関して質問をしたいんですが,よろしいでしょうか。   現在,少年鑑別所において調査は行われているんですけれども,ここでいう「少年鑑別所の調査機能の活用」の調査の内容というのが,今現在行われているものが,その要素のまま活用するということなのか,また,もっと新しい,例えば,家庭裁判所で現在行っているような調査の仕方も取り入れてといいますか,そういうことで,もう少し調査の在り方を変えていくのか,これは事務当局の方でよろしいと思うんですが,何かその辺について検討されていることがあるのかどうかということをお聞きしたいと思います。 ○羽柴幹事 今御指摘いただきました調査の内容につきましては,この資料の「1」及び「2」にそれぞれ「調査の内容」という「○」がありますとおり,検討課題であるということについては共通の認識があるところですけれども,その具体的な内容について詰めた議論がされているという状況ではございません。 ○井上部会長 ほかに御発言はございませんでしょうか。   よろしいですか。   それでは,第3分科会の担当する事項に関する意見交換は,ひとまずここまでとさせていただきます。   最後に,各分科会の担当論点を通じた横断的な御意見,あるいはこれまで出されていない論点についての御意見,更には「論点表」の大項目の1の「少年法における「少年」の年齢」に関する御意見など,当部会の調査審議の対象事項全般について,御意見があれば承りたいと思います。   いかがでしょうか。 ○山﨑委員 全般に関わる意見ということになりますけれども,ここまで各分科会で,少年法の適用上限年齢を引き下げた場合を仮定した上での様々な検討を含めて,制度について検討が進められているわけですけれども,特に先ほど佐伯委員の方から御指摘があったように,私が所属する第2分科会の新たな処分というものが極めて重要な意味を持っているということを,今日改めて感じました。   この点を検討していく上で,少年法が定めている健全育成という目的,そして保護原理というものと,刑事裁判実務における行為責任主義,制裁原理といったものの違いというものがやはり大きく,少年法の適用上限年齢を18歳に下げた上で現行制度と同様の有効性がある制度を構築するという作業には,なかなか課題が多いなということを実感しております。   加えて,この間の作業で改めて考えておりますことは,これらの制度を今後検討するに当たって,18歳,19歳ということでカテゴライズされていますけれども,現実には,犯行した際には17歳ですとか,あるいは16歳以下の少年たちが犯した罪というものも,その制度の対象になり得るということを忘れてはならないのではないか,と感じております。これは御承知のとおり,少年事件でも,在宅の事件ですとそうですし,特に行為者が多数の犯罪などですと,事件が発生してから検挙され,さらに,検察官の処分がされるまでに数か月以上の相当な期間を要している事案があります。また,重い事件ですと,例えば鑑定などの必要があって,最終的な処分が決まるまでに,数か月から年単位で手続に時間がかかる場合もございます。少年法の適用年齢は,基本的に,犯罪行為の時点でなく,処分をする時点を基準としているということがございますので,これに変更が加えられない限りは,17歳,更には16歳以下の少年が犯した罪も,少年法の適用から外れてしまって,現在,検討しているその他の制度の対象となり得る場合があるということになると思います。   したがって,そういった低年齢の少年たちが犯した罪というものが,それぞれの制度の対象になることがあり得る,ということも含めた検討というものが必要ではないかと考えております。 ○山下(幸)幹事 第2分科会の若年者に対する新たな処分と,第3分科会における起訴猶予等に伴う再犯防止措置の検察官が働き掛けを行う制度の関係が,今現在は別々の分科会で議論されていることもあって,非常に分かりづらくなっていると思うのです。   説明等を見ると,検察官が働き掛けるというのは,起訴,不起訴を決める前の段階であって,そして,新たな処分というのは,検察官が不起訴処分にした後のことだということなんでしょうけれども,いずれも,今のこの制度の提案では保護観察的なことをやるということなんですけれども,この二つの制度の関係ですね。先ほど太田委員も少し言及されていたのですが,二つの制度をどういうふうに使うのか,どの時点で行うのかということとか,その関係が非常に分かりづらいものですから,これは別々の分科会で議論していることもあるので,今後はこれはこの部会でということかもしれませんが,この二つの制度の関係とか,どれをどう使うのがよいのかとか,又はどちらかは使わないということなのか,いずれにしても,この辺をもう少し調整した議論をしていただきたいと思います。 ○井上部会長 ありがとうございました。   ほかに御発言がないようでしたら,この程度にさせていただきたいと思いますが,よろしいですか。   それでは,そうさせていただきます。   本日は,各分科会からの御報告を受けて,幅広い視点から多くの御意見をお伺いしました。   各分科会におかれましては,こうした御意見をも踏まえつつ,各論点に関する検討項目の残された課題について,詰めの議論を行っていただきたいと思います。そして,部会におけるその後の議論を深めることができるよう,制度概要案をまとめるとともに,それについての検討課題を整理していただければと思います。その検討結果を当部会に報告していただいた上で,当部会において,更に議論を深めることとしたいと考えます。   このような進め方でよろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。   本日の審議は以上でございますので,これで終了させていただきます。   今後の予定につき,事務当局から説明をお願いいたします。 ○羽柴幹事 今後,各分科会の第7回又は第8回会議を行うこととなります。第1分科会の第7回会議は5月15日火曜日の午前10時から,第2分科会の第8回会議は5月17日木曜日の午前10時から,第3分科会の第8回会議は5月18日金曜日の午前10時からです。場所は,いずれも東京地方検察庁の会議室を予定しております。 ○井上部会長 引き続きよろしくお願いします。   なお,本日の会議の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を作成し,公表するということにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。   本日は,どうもありがとうございました。 -了-