法制審議会 会社法制 (企業統治等関係)部会 第11回会議 議事録 第1 日 時  平成30年 5月 9日(水)   自 午後 1時33分                          至 午後 5時43分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  会社法制(企業統治等関係)の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神田部会長 それでは,予定の時間が来ておりますので,始めさせていただきます。   法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会の第11回目の会議を開会いたします。   皆様方には本日も大変お忙しい中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   それでは,いつものように,まず,本日の会議の配布資料の確認をしたいと思います。事務当局からお願いいたします。 ○竹林幹事 お手元には議事次第,配布資料目録,日程案,部会資料18及び19,参考資料42,委員等名簿を配布させていただいておりますので,御確認ください。   本日は御欠席の方はいらっしゃらないと伺っておりますが,坂本幹事が遅刻していらっしゃると伺っております。よろしくお願いいたします。 ○神田部会長 ありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。 ○竹林幹事 引き続きまして,人事異動の関係で委員等に異動が生じておりますので,御紹介をさせていただきます。   まず,稲垣委員が御異動により御退任されておりますが,御後任の方がまだ決まっておりませんので,後日御連絡を頂き次第,御参加いただくということを予定しております。   また,本日より当省の民事局商事課長の村松が幹事として参加させていただくこととなりました。 ○村松幹事 村松でございます。よろしくお願い申し上げます。 ○竹林幹事 そして,最高裁判所事務総局民事局の穗苅様に関係官として参加していただくこととなりました。 ○穗苅関係官 穗苅でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○竹林幹事 最後に,当省民事局付の藺牟田が関係官として参加させていただくこととなりました。 ○藺牟田関係官 藺牟田でございます。よろしくお願いいたします。 ○竹林幹事 どうぞよろしくお願いいたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,本日の審議に入る前に,事務当局から今後の審議の進め方について説明をしていただきます。よろしくお願いします。 ○竹林幹事 今後の審議でございますが,配布させていただきました日程案を御覧いただければと存じます。今回を含めまして少なくとも3回分ほどを使いまして,中間試案の項目の順に沿いまして,パブリックコメントの結果を踏まえた個別論点の検討を行うこととさせていただきたいと考えております。その後の予定につきましては,これら個別論点の検討に関する審議の状況を踏まえまして,別途,御相談させていただきたいと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ただいまの事務当局からの御提案のとおりにこの部会の審議を進めさせていただきたいと思いますけれども,よろしゅうございますでしょうか。   どうもありがとうございました。それでは,そのようにさせていただきます。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。   本日でございますけれども,お手元の議事次第に記載のとおり「株主総会に関する規律の見直しについての個別論点の検討」について御審議をお願いしたいと思います。   個別論点の検討をしていただくに当たりまして,事務当局においてパブリックコメントの結果の概要をお手元の部会資料18としてまとめていただいております。そこで,この部会資料18について,事務当局から簡単に説明をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○竹林幹事 ただいま御紹介いただきましたとおり,部会資料18は中間試案に対して寄せられた意見の概要をまとめたものでございます。3ページの(前注1)に記載させていただいておりますとおり,中間試案に対しましては65の団体及び120名の個人の方から御意見をお寄せいただきました。御意見の中には当部会の委員,幹事が所属されている,あるいは関係されている団体からの御意見も含まれてございます。年度の切り替わるお忙しい中,短期間で御検討いただきまして,また,非常に有益な御意見等を御提出いただきまして,誠にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。   寄せられた御意見につきましては,(前注3)に記載させていただいておりますが,必要に応じて賛成,反対,その他の意見等に私どもの方で適宜分類をさせていただいて,意見を寄せられた団体の名称及び個人の方の人数並びに意見の理由の要旨を記載させていただいております。寄せられた御意見は非常に多岐かつ詳細にわたるものでございまして,また,できる限り多くの御意見を御紹介させていただきたいということから,意見の要旨をまとめて記載させていただいております。紙幅の関係や時間の制約等によりまして,分類の方法や,要約の方法,表現ぶりというところにつきましては不十分な点,あるいは不正確な点もあり得るかもしれません。御意見の真意を反映していないという点もあり得るかもしれませんが,その点につきましては,どうか御容赦いただければと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。   また,団体の御意見につきましては,部会資料18の最後に別添として付けさせていただいております「意見提出団体とその略称対比表」に従いまして,賛否,その理由の箇所にその略称を付させていただいております。団体名がかなり長い団体等もございまして,私どもの方で適宜略称を付させていただいておりますが,特に他意をもってこの略称を考えたというようなことではございませんので,飽くまでこの部会資料限りの便宜的な略称ということで御了解いただければと存じます。   また,申し上げるまでもないかと存じますけれども,パブリックコメントの結果につきましては,数だけではなく御意見の内容ですとか,御提出いただいております団体の属性等も踏まえながら,要綱案の取りまとめに向けた今後の審議において参考にしていただければと考えております。   なお,私どもにおきまして,個別の論点の検討に当たり特に重要であると考える点等につきましては,個別の論点の検討のために作成する部会資料の補足説明におきまして,適宜御意見等に言及させていただきたいと考えておりますので,この部会資料18に対する御意見,御質問等は,個別の論点の検討の討議の際に頂ければと考えております。よろしくお願いいたします。   最後に,部会資料18でございますけれども,次回以降も適宜参照させていただく可能性がございますので,お荷物にはなりますものの,御持参いただきますようお願いいたします。分量も多いため,大変恐縮ですが,毎回印刷して配布させていただくということはしない扱いとさせていただければと考えております。御理解を賜れれば幸いでございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,部会資料18について皆様方から御質問,御意見もあるかもしれませんけれども,それらは,時間の関係もあり,関連する論点の議論の中でお出しいただければと思いますので,これから株主総会資料の電子提供制度の審議に入らせていただきたいと思います。   そこで,お手元の部会資料19のうちの第1について,事務当局から説明をお願いいたします。よろしくお願いします。 ○邉関係官 それでは,部会資料19の「第1 株主総会資料の電子提供制度」について御説明いたします。   なお,(前注2)のとおり,隅付き括弧の中に,関連しているパブリックコメントの結果が記載されている部会資料18の主な該当箇所のページを記載しております。また,この部会資料では幾つか試案の内容を参照している箇所がありますけれども,試案それ自体の内容につきましても部会資料18に記載がありますので,必要に応じて御参照いただければと存じます。本日の資料も大部となりますので,重要と思われる事項を中心に御説明させていただきたいと思っております。   まず,「1 定款の定め」ですけれども,ここでは試案第1部第1の1のような規律を設けるものとすることを御提案しております。   続いて,「2 電子提供措置及び株主総会の招集の通知」の(1)では,電子提供措置期間に係る部分を除き,試案第1部第1の2①のような規律を設けるものとすることを提案しております。電子提供措置期間については,(2)と(3)で取り扱っておりますので,ここでは除外しております。   2ページ目,(2)では,電子提供措置開始日と株主総会の招集の通知の発送期限について,それぞれどのように考えるかを論点として掲げております。パブリックコメントにおいては意見が分かれておりますが,このような結果を踏まえて,改めて御議論いただきたいと存じます。   (3)では,電子提供措置期間の末日を株主総会の日以後3か月を経過する日よりも後の日とすることについてを論点として掲げております。試案では,株主総会の日以後3か月を経過する日としておりましたけれども,パブリックコメントにおいては,これを1年を経過する日とすべきではないかというような意見なども寄せられております。そもそも電子提供措置期間を長期にすればするほど調査に要する費用が懸念されるところですけれども,今回,追って御説明させていただきます5の(2)のとおり,調査期間を電子提供措置期間中とするのではなくて,株主総会の日までとすることを御提案しておりますので,調査期間をこの御提案のとおりの規律にするということであれば,その懸念は当たらなくなるとも思われます。   3ページ目,(4)では,株主総会の招集の通知の記載事項について,試案のとおりとすることを御提案しております。   続いて,「3 書面交付請求」の(1)の本文では,試案第1部第1の4(2)①の(注2)の部分,つまり,書面交付請求権を定款で排除することができるものとするかどうかという部分を除いて,試案のとおりとすることを御提案しております。この定款で排除することができるかどうかという点については(2)で扱っておりますので,ここでは除外しております。   (1)の(注1)では,振替株式の株主は書面交付請求を銘柄ごとにすることができるものとするかどうかについては,引き続き検討することを御提案しております。これまでの部会の議論においては,銘柄ごとにすることができる必要はないという御意見なども頂いておりますけれども,他方で実務上の影響等を踏まえて検討する必要があるという御意見も頂いているところです。参考人として振替機関や口座管理機関の方々などを本日はお招きしていないものの,パブリックコメントにおいては口座管理機関の立場からの御意見として,保有する全ての銘柄についてのみ請求をすることができるという仕組みの方が負担が少ないという御意見も寄せられております。そういったパブリックコメントの結果を踏まえた御意見が現時点においてあれば,頂きたいと考えております。   (1)の(注2)では,書面交付請求をした株主が累積していくという懸念に対処するために立法による措置を講ずべきであるという意見について,どのように考えるかを論点として掲げております。パブリックコメントにおいては,この問題に対する立法的措置として,補足説明の3の(ⅰ)から(ⅲ)までにあるような具体案も寄せられているところです。いずれの案についても難しい問題があるように思われますし,また,先ほどの銘柄ごとに請求をすることができるものとするかどうかなどの結論が議論に影響し得るところでもございます。これまで明確にこの論点について御議論いただいていなかったところでもありまして,本日は皆様から御意見を頂戴したいと考えております。   4ページ目,(2)では,先ほど申し上げたとおり,株主が書面交付請求をすることができない旨を定款で定めることができるものとすることについて,どのように考えるかを論点として掲げております。パブリックコメントにおいては意見が分かれておりますけれども,書面交付請求の趣旨を,インターネットを利用することが困難な株主を保護するためのものと考えた場合に,これを定款で排除することができるものとすることがその趣旨にかなうものといえるかどうかについては,慎重に考える必要があるとも思われます。   5ページ目,(3)では,書面交付請求があった場合に,株式会社が交付しなければならない書面に記載すべき事項について,みなし提供制度により省略することができるものを同様に省略することができる旨を定款で定めることができるものとすることについて,どのように考えるかを論点として掲げております。みなし提供制度をめぐっては,パブリックコメントにおいて,みなし提供制度の対象である事項については,書面交付請求により請求することができる書面に記載する必要がないものとすべきであるという御意見が寄せられております。実際の条文の文言によっては解釈の余地があり得ないわけではありませんけれども,このような規律を仮に実現するということであれば,明示的な規定を設ける必要があると考えております。本日は,この御意見にあるような規律を実現すべきかどうかという問題について,ここで御議論いただきたいと思っております。この問題と,現行のみなし提供制度そのものを廃止すべきかという論点もあるわけですけれども,そちらにつきましては別に検討する方が良いと思われますので,追って御説明をさせていただく6で取り扱うこととさせていただきたいと思っております。   続いて,(4)では,招集通知の電磁的方法による提供に承諾をした株主に対しては書面の交付をすることを要しないものとすることについて,どのように考えるかを論点として掲げております。書面交付請求の趣旨を,インターネットを利用することが困難な株主を保護するためのものであると考えた上で,招集通知の電磁的方法による提供に承諾をした株主は,もはやそのような保護に値する株主ではないという考え方があるところです。ただし,こういった規律を実現することで,それに要する実務対応やシステム対応の負担が過大になるということになれば,あえてそのような規律とする必要まではないという考え方もあるように思われるところです。   続きまして,6ページ目,「4 電子提供措置の中断及び調査」の(1)では,電子提供措置の中断の規律について,試案の内容を一部修正したものを御提案しております。試案の内容のままですと,例えば電子提供措置の中断が株主総会の日の前の1週間に及ぶ場合であっても救済され得るという問題があったために,新たに③を追加しております。電子提供措置期間のうち株主総会の日以前の期間については,株主総会の招集の手続として電子提供措置をとることが求められており,逆に,株主総会の日後の期間については,証拠等としての使用に供するために電子提供措置をとることが求められていると考えますと,その趣旨が異なると考えることもできますので,この提案のとおり,株主総会の日以前の期間に生じた中断については,当該期間において中断が生じた時間の割合に基づいて救済規定の適用の可否が判断されるようにすべきであるとも考えられるところです。   7ページ目,(2)では,電子提供措置の調査の規律について,試案の内容を修正しまして,調査を要する期間を電子提供措置期間中ではなく,電子提供措置開始日から総会の日までの期間中とすることを提案しております。先ほどの中断の箇所でも申し上げたとおり,株主総会の日後の期間についても電子提供措置をとらなければならないとしている趣旨は,株主総会の決議の取消しの訴えなどにおける証拠等としての使用に供するためのものでして,この期間については,株主総会の招集の手続そのものとして電子提供措置が求められているものではないと考えることもできるところでございます。このように考えますと,株主総会の日後に生ずる電子提供措置の中断については,株主総会の決議の効力に影響を及ぼすことがないものと整理することができ,この期間の電子提供措置については,現行法における決算公告と同様に,調査義務を課すまでの必要はないとも考えられるところです。   「5 EDINETを使用する場合の特例」の(1)では,事業報告及び計算書類と有価証券報告書を一体的に開示する取組や,株主総会の前に有価証券報告書を開示する取組を促進する観点から,特例の適用対象を,有価証券報告書の提出義務のある株式会社が電子提供措置開始日までに電子提供措置事項を記載した有価証券報告書の提出の手続をEDINETを使用して行った場合とすることについて,どのように考えるかを論点として掲げております。   8ページ目,(2)では特例の内容について扱っております。イでは,中断や調査に要する規律の要否等についてどのように考えるかを論点として掲げております。まず,調査については,EDINETは開示書類が継続して公衆縦覧に供されることが法令によって担保され,安定的に運用されているシステムであり,かつ,企業は一度開示した書類を任意に改変することができない仕組みになっているという指摘がございますので,EDINETを使用する場合については,自社のホームページ上において掲載する場合に比べて,その中断が生ずるおそれは類型的に小さいものとも考えられます。そして,事業報告及び計算書類と有価証券報告書を一体的に開示する取組や,株主総会の前に有価証券報告書を開示する取組を促進する観点からは,電子提供措置開始日までにEDINETによる有価証券報告書の開示があった場合については,政策的に調査義務を課さないという考え方もあり得ると思われますので,こういったEDINETによる開示があった場合については調査を要しないとすることも考えられるところです。   続いて,中断については,EDINETを使用する場合であっても中断が生ずる可能性が全くないとはいえないことから,救済規定を設ける必要があるという考え方があると思われます。パブリックコメントにおいては,中断が生じた時間等の周知に係る措置を金融庁が一括してEDINETのトップページにおいてとるものとし,各株式会社による措置は省略することができるものとすることや,EDINETによる開示の中断については全てその効力に影響は生じないものとすることなどの御提案もございました。   ウでは,EDINETは不特定多数の者に対する開示のためのシステムであることから,議決権行使書面を含めてEDINETにより開示させることは相当でないと考えられますので,EDINETによる開示をした場合には議決権行使書面の交付については現行法と同様のものとすることを提案しております。   エでは,EDINETにおいては有価証券報告書の添付書類に係るウェブサイトのアドレスが付与されないという問題なども指摘されておりますので,株主総会の招集の通知には電子提供措置事項に係る情報を掲載するウェブサイトのアドレスに代えて,EDINETのホームアドレスなどの適切な事項を記載し,又は記録しなければならないものとすることを提案しております。   10ページ目になりますけれども,「6 みなし提供制度」では,みなし提供制度は廃止しないものとすることを提案しております。   なお,電子提供制度における書面交付請求についての論点は,先ほどの3(3)で取り扱っておりますので,ここで御議論いただきたいみなし提供制度を廃止することの当否の問題は,振替株式を発行する会社に電子提供制度を採用することを義務付けることを前提に考えますと,非上場会社においてインターネットを使用した株主総会資料の提供に関する制度として,電子提供制度と株主の個別の承諾を得て行う電磁的方法による提供制度,この二つだけではなくて,みなし提供制度をも引き続き採用することを選択肢として認めることの当否の問題と整理することができます。   「7 電子提供制度採用会社以外の株式会社における株主総会参考書類等の交付請求」では,電子提供制度を採用していない株式会社において招集通知を電磁的方法による提供に承諾した株主は,会社法第301条第2項ただし書及び第302条第2項ただし書の規定による株主総会参考書類等の交付を請求することができないものとすることについて,どのように考えるかを論点として掲げております。この問題については,会社法第301条第2項ただし書,第302条第2項ただし書の趣旨を,電子提供制度における書面交付請求と同様に,インターネットを利用することが困難な株主を保護するためのものであると考えますと,先ほどの3(4)の論点と同様の考え方になるようにも思われます。ただし,これらの規定の趣旨を,招集通知の電磁的方法による提供に承諾をした株主は当然に株主総会参考書類等の提供についても承諾しているわけではないので,書面を受け取るための権利を保障しているものであると考えますと,必ずしも同様の考え方を採らなくてもよいように思われるところです。   御説明は以上となります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,本日も二つぐらいに区切って御議論をお願いしたいと思います。   今御説明いただきました第1のうちの「1 定款の定め」から「4 電子提供制度の中断及び調査」までについて,まず,御意見等を頂きたいと思います。具体的には,資料の7ページの下辺りまでで,5から7までは,また後で御意見を頂きます。   それでは,7ページの下ぐらいまで,4までにつきまして,どなたからでも御質問,御意見をお出しいただければと思います。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 どうもありがとうございます。まず,1の定款の定めについては,これまで何度も申し上げてきたとおり,経団連としましては,上場会社に電子提供制度を一律に導入することに条件付きで賛成という立場であります。その条件とは,実務が回る柔軟な制度設計がされることであります。その上で,定款変更がみなし決議により,上場会社,場合によっては一定の上場会社に無理なく一律に導入されるというやり方が総会資料の電子提供を推進する上で望ましいと考えております。実務が無理なく回るためには,電子提供措置開始日については総会期日の3週間前まで,招集通知の発送については総会期日の2週間前までとすることが必須であると考えております。   招集通知の発送期限について申し上げると,例えば役員選任議案において,取締役何名選任の件という議題のみを株主の元に送付し候補者に関する情報を同封しなかった場合に,個人株主の投票率が下がるという懸念があります。電子提供制度の導入後も当面はそのような懸念から,少なくとも参考書類は書面で送る会社も相当数出てくるのではないかと思います。その場合には,やはり3週間前までに招集通知の発送をするとなると実務が回らなくなる懸念があります。そうとはいえ,一旦招集通知のみを送り,後に参考資料等を任意に発送するという方法では郵送コストが倍になってしまいます。こうした問題のほかにも,当然書面交付請求権への対応も行わなければなりませんし,株主提案権が実際に行使された場合の対応も頭に入れておく必要がありますので,総会期日の2週間前までとするC案以外は現実的ではないと考えております。   電子提供措置開始日にしても,招集通知の発送期限にしても,法制度上の期限は実務が確実に対応可能なものとし,更なる前倒しについては,法律による義務ではなく,実務の努力に委ねるべきであると思います。   もう一度まとめて申し上げると,上場会社に電子提供制度を義務付けるのであれば,電子提供措置開始日についてはB案,招集通知の発送期限についてはC案とすべきであると思います。そうでなければ,上場会社への一律導入について,経団連としては賛成と申し上げることはできません。   一律導入に関するもう一つのポイントは,選択肢の広い柔軟な制度にすることだと思います。電子提供制度を採用した会社が,それぞれの判断で電子化を徹底してもよいし,逆にフルセット・デリバリーを行ってもよいと,あるいは一部のみを書面化して送ってもよいし,アンケートその他の追加的な書面を同封してもよいと,そうした判断を可能とする選択肢の広い柔軟な制度にすべきであります。そのような選択肢をそれぞれの会社に広く与えた上で制度を一律導入すると,電子提供制度が企業にとって使いやすいものとなり,更なる電子化の推進に資すると考えております。今の案は,この柔軟性が既に確保されていると理解しています。   この柔軟な制度設計が望ましいという考え方からすると,2の(1)の議決権行使書面を電子提供措置事項から制度的に除外すべきか否かという点については,あえて議決行使書面だけを除外する必要はないと思います。実務において,議決権行使書面まで全て電子提供する会社が直ちに多数派になるとは思いませんが,将来のことも考えれば,会社に選択肢を残しておく方が制度として望ましいと思います。   次に,2の(3)の電子提供措置期間の末日を総会日の3か月後よりも後の日とすることについては,経団連としてはその必要性に疑問を感じています。現状でもTDnetでのアップは総会後1年間ほど継続していると理解していますし,EDINET上では有価証券報告書の添付資料として5年間,縦覧に供されていると理解しています。現行制度と電子提供制度の違いは,株主の手元に確実に書面が届けられているかどうかだけであり,株主が総会資料等をダウンロードすることができる点は同様ですので,末日に関しては,総会の3か月後で十分ではないかと思います。書面が送付されないために手元にないかもしれないという問題については,ほかの手段で書類が確保できるようにすることを考えるべきです。   それから,3の書面交付請求について,基準日までに振替機関等を経由して行うという方法は,実務としても対応可能であります。書面交付請求権自体に反対はしませんが,制度の詳細を決めるに当たっては,電子化推進という全体の方向性と書面交付請求権を残す目的との整合性を考える必要があると思います。書面交付請求権が必要である理由は,これまでの議論からはデジタル・ディバイドの保護にあると理解しておりますが,デジタル・ディバイドかどうかはいちいち確認できないので,制度上どうしても,デジタル・ディバイドでない株主でも書面交付を請求できるという立て付けにならざるを得ず,現にそのような案になっていると思います。そうした立て付けの中で,書面交付請求権を過度に保護することになれば,目指す方向性である電子化の推進の障害にもなりかねないということを認識する必要があると思います。   その意味で,3の(2)については,業種や株主構成等から電子化の徹底を追求したいという会社も当然ありますので,そうした会社においては定款自治の一つとして,書面交付を請求できない旨の定めを定款に置くことができるようにすべきであると考えます。   それから,3の(1)に戻りまして,(注1)の書面交付請求を銘柄ごとに行うことができるようにすべきかという点については,書面交付請求権の目的が何かという観点から考えるべきだと思います。デジタル・ディバイドの保護が目的であれば,銘柄ごとに行使を認める必要はないと思います。また,電子化の推進という全体の方向性からしますと,当然,書面交付請求が時間の経過とともに減少していくことが望ましいはずであり,(注2)の書面交付請求をした株主が累積していく問題については,そうならないような制度設計をする必要があると思います。   部会資料3ページ目の下の方の補足説明3の3行目からのところに,「株主は,一度書面交付請求をすれば,別途撤回をしない限り,その後の全ての株主総会に係る電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求しているものと取り扱われることとなる。」と書いてありますが,これでは累積の問題が避けられないと思います。書面交付請求が時間と共に減るようにするためには,やはり本来,株主総会ごとに毎回請求することを要するとすべきだと思います。臨時総会については対応し難いということであれば,定時総会については毎回,つまり毎年としてはどうでしょうか。毎年とすれば,補足説明にもある書面交付請求の有効期限が分からなくなるといった問題も生じません。毎年というのは非常に面倒に思われるかもしれませんが,デジタル・ディバイドでなくても今は請求できるという立て付けをとらざるを得ないことからしましても,年に一度ぐらいは書面を必要とする株主の方に手間をとっていただいてもよいのではないかと思います。書面交付請求がされた場合には,請求を受けた会社の方も当然,手間を掛けて対応するわけですから,それとのバランスも考慮した形にしていただければと思います。そうでもしない限りは累積の問題を制度的に解消することは非常に難しいのではないかと思います。   それから,(3)について,請求に応じて交付する書面にはみなし提供制度の対象となる事項は記載不要とすべきと思います。現行制度でもデジタル・ディバイドに対する交付も含めて記載不要となっているものを,電子化推進のためのこの新しい制度の導入において書面化させるということでは,正に後戻りになってしまうと思います。   ここで事務当局に確認させていただきたい点としては,書面での提供をみなし提供制度の対象事項でないものに限ることができる旨を定款で定めることができるとありますが,みなし提供制度の対象事項を書面化しなくてもよいとするために,各社において新たに定款変更が必要になるのか,それとも,何らかの一律みなし適用みたいなものを考えていらっしゃるのかということです。経団連としては,既にみなし提供に関する定款規定を置いている会社については,一律みなし適用になるとしていただきたいと思います。   (4)についても,書面から電子提供へという大きな方向性から考えますと,不要としてよいのではないかと思います。   それから,4(1)の電子提供措置の中断について,条件が一つ増えておりますが,新しく加わった③の条件を満たすためには,電子提供措置日が総会期日の3週間前とすると,総会までの間の中断した時間の合計が21日の10分の1の2.1日以内である必要があり,それを超える中断があった場合には予定どおりに総会を開催できなくなるということだと思います。これに関して,上場会社では東証のTDnetと自社サイトの両方に電子提供を行うようになると思われますが,その場合,TDnetと自社サイトの両方で同時に中断が生じた時間の合計が2.1日以内であれば電子提供措置としては有効であるという理解でよいのかを確認させてください。つまり,自社サイトでたとえ5日間中断しても,TDnet上で中断がなければ,電子提供されているわけですから,電子提供措置として有効とされるべきだという考え方です。   また,(1)の②について,電子提供措置期間全体の10分の1という概念が残っていますが,仮に総会の期日の後においてのみ中断が発生した場合,電子提供措置期間が総会の3週間前から3か月後までとした場合には,合計111日になるはずですから,総会後の3か月間のうち11.1日を超えて中断が発生した場合に総会の開催が適法でなかったとなるという趣旨なのでしょうか。   一方で,4の(2)の補足説明の7行目のところに,「株主総会の日後に生ずる電子提供措置の中断は,株主総会の決議の効力には影響を及ぼすことがないものと整理され」とありますので,電子提供措置の効力を考えるときに,②の条件はもう要らないのではないかと思います。   それから,電子提供措置の中断によるリスクですが,中断によって総会が予定どおり開催できなくなるリスクについては,実際に発生する可能性は決して高くはないと思います。ただ,万々が一発生してしまった場合に,その会社の実務に与える影響は甚大なものになると思います。ですので,今回,電子提供措置を導入し,さらに,上場会社には一律導入を義務付けるということでありますが,そのようなリスクは会社がとるべきものとして放置すべきでなく,制度導入の一環として何らかの手当てがされるべきだと思います。例えば,TDnetの安定性からして,TDnetに掲載すれば電子提供措置の中断の規定は適用しないとすることが一番実務的には簡便なように思いますが,TDnetでも不足ということで,このような議論になっているのであれば,更に信頼性の高い公的サイトを用意していただいて,そこに電子的に提供すれば中断の問題は問わないということにしていただきたいと思います。   別の切り口から言いますと,こうした万々が一のことに備え全ての上場会社が調査機関と契約して,毎年自社サイトとTDnetの両方の中断の有無を調査するというのは,三千数百社あると思われる全上場会社のコストや手間を足し合わせると,大きな無駄であると思います。経団連としましては,電子提供制度の導入のためにそうした新たな公的サイトを立ち上げるよりも,せっかく今存在しているEDINETを利用できれば経済的にも合理的ではないかという趣旨でEDINETの利用について御検討をお願いしたところです。法務省におかれましては,こうした趣旨を御理解いただいて,有価証券報告書の開示とは切り離して,総会資料の電子提供の場としてEDINETを利用できるように,金融庁との調整を含め,是非前向きに御検討いただければと思います。   望ましくないことですが,仮にTDnetに電子提供しても,それだけでは調査,中断に関する規定の適用を免れない,かつEDINETも広く開放されないということになってしまった場合について念のため申し上げておきます。現在の中断,調査に関するこの御提案は,債権者保護手続に倣ったものと私どもは理解しておりますが,ここで扱っている問題は総会の招集という定款自治が基本的に認められるべき会社の内部の事柄ですので,債権者保護手続と同様の厳格な調査手続を義務付ける必要はないのではないかと考えております。TDnetでも不十分であり,EDINETも利用できないということであれば,定款の定めにより調査を不要とできるといった旨の規定も検討すべきだと思います。それから,パブリックコメントにもございましたが,全株主にフルセット・デリバリーを選択的に行った場合には,調査・中断の規定の適用がないということも明確にしていただいた方がよいのではないかと思います。   すみません,長くなりました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。事務当局への質問が幾つかあったと思います。 ○竹林幹事 順番にお答えさせていただきますと,3(3)の電子提供措置事項のうちみなし提供制度の対象でないものに限ることができる旨の定款の定めを設けるという点につきましてですけれども,まず,このような規律を設けるかどうかという形で御提案させていただいており,現段階では,各社に定款の定めを設けていただくということを御提案させていただいております。仮に,このような規律を設けるということになった場合には,例えば,経過措置というような形の中で,現在既にみなし提供制度の定款の定めを設けている会社についてですけれども,みなし定款変更のようなことを考えるということも一つの選択肢ではあるとは考えております。ただ,まず,どういった規律にするかについて御議論いただきたいという趣旨で,このような御提案をさせていただいているものでございます。   続きまして,複数のウェブサイトに電子提供措置をとったような場合についての中断をどのように考えるかという点でございますが,まだ具体的な規律として入っているわけではございませんし,解釈の余地もあろうかと思っておりますけれども,私どもでは,基本的には株主の方に対して通知するアドレスは一つと考えておりました。どこを見ればいいのかということについて,こちらか,こちらを見てくださいというよりは,ここを見てくださいということを株主に対して通知することを考えておりましたので,その通知したアドレスのホームページについての中断時間について考えるということで考えております。実際に二つのホームページに載せられるというときに,二つのホームページのアドレスを通知することが許されるのかということにもよってくるかと思いますが,そこについては現時点で私どもとして,必ずしも確たる考えがあるというわけではないということとなります。   それと,三つ目の御質問だったと思いますけれども,中断が株主総会の開催後に生じた場合との関係でございます。株主総会の開催後に中断が生じた場合につきましては,必ずしも株主総会の手続自体の瑕疵を生ずるものではないとは考えておりますけれども,その後についても電子提供しておくべき義務についての義務違反の問題が出てくると考えているところでございます。   御質問についての回答は以上になります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。古本委員,いかがでしょうか。よろしゅうございますか。 ○古本委員 ありがとうございます。 ○神田部会長 それでは,川島委員,どうぞ。 ○川島委員 ありがとうございます。4ページ目の3の(2),株主が書面交付請求をすることができない旨を定款で定めることができるものとすることについて,意見を申し上げます。   以前も申し上げましたが,書面交付請求の在り方については,デジタル・ディバイドの問題も考慮し,個人株主が受け取ることのできる情報の量やタイミングが今よりも後退しないこと,また,個人株主の議決権行使にマイナスの影響を与えないことを前提とする必要があると考えております。したがいまして,3の(2)の考え方について,将来における法律の在り方としての可能性は否定しませんが,今回の見直しに盛り込むことは時期尚早と考えます。本件については,電子提供制度を導入した後に,書面交付請求がどの程度行われるのか,それによるコスト負担はどの程度か,また,それを減らすどのような工夫が効果的なのかなど,実態をよく把握,分析した上で,その当否について検討することが妥当と考えます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   小林委員,どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。私ども日本商工会議所といたしましては,この株主総会に関する手続の合理化について,内部で検討を行いました。第1の株主総会資料の電子提供制度の定款の定めについては,電子化という考え方そのものについては基本的には賛同しているところではございますが,ベンチャー企業や中小企業などの株式上場に至る会社を増やしていくという意味では,それぞれの会社が負担のない範囲となるように制度設計していただきたいということが一番の関心でございます。そうした視点から,株主の少ない比較的規模の小さな会社も含めて,現時点で全ての上場企業に電子化を義務付けることは,私どもの感覚としては,まだ許容できるだけの環境は整っていないので,現時点で必ずしも賛成していないと意見表明させていただいております。   環境整備という観点では,書面提供義務によって,いろいろな資料の送付のタイミングや組合せが複雑化することは避けていただきたいこと,また,そもそも実務的な対応が非常に困難になるのではないかと懸念しているところでございます。もちろん,中断調査の導入によってこれが大きく企業負担になることは避けていただきたいと考えております。   そうしますと,もし仮に上場企業全てに電子提供制度が義務付けられるのであれば,後ほど議論する論点でもございますけれども,例えば,書面交付請求権の定款による排除という設計が,やはり道筋としては入っていることが望ましいし,あるいは株主総会資料を電子提供する場合に,多くの企業にとってEDINET等が使いやすい状況が整い,かつ中断調査を要しない仕組みになっていないと,なかなか賛成しづらいというところがございます。   次の(2)の電子提供措置及びその招集通知のところで,電子提供措置開始日と株主総会の招集通知の発送期限について,少なくとも書面関係については一律の発送期限を設けていただかないと,実務としては対応が極めて煩雑になります。したがって,これはいずれも2週間前にしていただきたいということがございます。電子提供措置を開始する期限については,3週間前,4週間前という案は出されておりましたが,商工会議所はいずれも総会2週間前を維持していただきたいという意見を出しております。これは,現実的なことを言いますと,現時点での企業へのヒアリングを通じて,3週間前だと対応可能だろうという会社の方がどうやら多いということは分かってきたのですが,やはりそれでも非常に厳しいという会社があることは,リサーチを多少させていただいていることもあります。そこで,意見としてはやはり,2週間前でという意見をあえて述べさせていただきます。   もちろん,先ほど古本委員からもあったように,それぞれの企業の努力として,それを早めるということは今でもやっておりますので,その部分について否定するものではございませんが,意見としてはその点については,あえて強調させていただきたいと考えます。   それから,3(1)の書面交付請求の累積の観点ですけれども,こちらについて実務の観点からは,株主の意思を確認して一定の手続を踏んで,累積の防止をすることはやはり必要だろうと思っております。そういうことは必ず考えていただきたいと考えます。   もう一つ,(2)の株主が書面交付請求することができない旨の定款の定めでございますが,これは私どもとしては,やはり電子化が進んできているので,紙の資料に頼らない社会に向かうということであれば,実務的なメリットとして,これは会社の制度設計として少なくとも選択可能にしていただきたいということがございます。デジタル・ディバイドが今後数年間でほぼ解消されるかについては,いろいろな見方もあるかもしれません。しかし,法制度で一度作って,書面交付を必ず認めてしまうと,やはりいつまでも紙で送り続けざるを得ないし,この部分を現実に後から再度改正するのは非常に難しいだろうと考えられます。そういう意味で,社会の変化を先取りする設計にしてほしいという意見は強くございます。   そこで考え方として,例えば改正法の施行後一定期間を経た後,各社の定款自治に移行できる仕組みにすることも考えられると思っております。例えば,書面交付請求ができない旨を定款で定めることができるとの条文を入れていただいた上で,ただし,その施行時期は法施行から5年後として,その部分だけはしばらく止めておくという設計も全く不可能ではないと思いますので,御検討いただけると有り難いところでございます。   それから,(3)の書面交付請求できる事項をみなし提供制度の対象でないものに限ることを定款で定めるという部分について,考え方として整理はされておりますけれども,これまでみなし提供制度を使っていた会社につきましては,少なくとも電子提供制度を利用する場合でも引き続き交付不要になるようにしていただかないと,制度として後退する印象は否めません。また,もちろん新たにみなし提供制度を使いたいという会社もこれからも出てくる可能性は当然あるわけで,この部分についてはやはり残していただきたい。既に総会の特別決議で意思決定が行われた部分については再度定款変更する必要はないというみなし規定を置いていただきたいということは,申し上げるまでもないところでございます。   それから,4の電子提供措置の中断及び調査でございますが,先ほど古本委員からも詳しく御意見がありましたが,私どもとして今回の案を見て最も気になったのは,4(1)③のところでございます。中断時間の合計が電子提供措置開始日から株主総会までの期間の10分の1を超えないことという条件が付け加えられているということは,趣旨としては理解できなくはないのですけれども,企業実務からは非常に大きな懸念を持っております。例えば,自社のウェブサイトで株主総会資料を提供する制度を作り,仮に電子提供措置開始日から株主総会までの期間が3週間だと想定します。その10分の1にあたる2日と少しぐらいの期間でサーバダウンやサイバー攻撃があったとして,電子提供措置が停止したときには,総会そのものが成立しないということでは,非常に高いリスクを各企業に新たに背負わせるということになり,これは非常に耐え難い内容になります。   もちろん,TDnetやEDINETの使い勝手をよくして,そちらで電子提供を行えば免責され総会が成立するのであれば,また話は別なのですけれども,この条件を単体で見た場合に,非常に狭く制度設計がされると,これだけでもう賛成しづらくなります。そういう意味での会社側のリスクを減らすために,例えば,いわゆるフルセット・デリバリーをすれば,中断調査は行わなくてよいというような救済規定をあらかじめ置いておくことも考えられます。しかし,総会の成立という非常に重要な問題を前にして,恐らく普通の会社は書面を全部送ることを最初からデフォルトで選択すると思います。そうなると,電子化を進めるという政策目標からは本末転倒となりますので,この部分についてはもう少し慎重に考えていただきたいというところでございます。   電子提供措置の調査につきましては,これまでよりも随分,調査期間が短くなっております。したがって,費用的には一歩前進かなという感じもしないではないのですけれども,先ほどの紙で送るボリュームを結局のところは余り減らせないような仕組みならば,経済界が負担するボリュームが増えますので,トータルとしてのコスト削減にはなりません。この部分につきましては,全体としてパッケージで,これを利用する会社が使い勝手がよくなるような組合せを考慮していただきたいというのが希望でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,柳澤委員,三瓶委員,中東幹事の順でお願いできればと思います。 ○柳澤委員 発言の機会を頂きまして,ありがとうございます。会社法制の見直しに関する中間試案のパブコメ募集に際しまして,日本投資顧問業協会では機関投資家として意見書を取りまとめ,4月11日付けで提出をさせていただいております。その後,4月25日付けで顧問業協会のホームページにも同意見書を掲示しておりますが,改めて今回の部会で取り上げられている個別論点のうち,日本投資顧問業協会の意見書において見解が示されている項目と内容に沿って,機関投資家としての意見を述べさせていただければと思います。   まず,株主総会資料の電子提供制度の導入につきましては,全ての上場会社に電子提供制度の利用を義務付けることが必要との見解を持っており,電子提供措置開始日に関してはA案で示された,株主総会の日の4週間前の日,又は株主総会の招集の通知を発した日のいずれか早い日とすることに賛成をしております。   その理由としまして,機関投資家においては議決権行使スケジュールがタイトな状況となっているため,可能な限り早期のタイミングで株主総会資料が電子提供される必要があること,さらに,十分な議案精査期間を確保し,会社側と投資家との間で実効的な対話を促進していく上でも,ジャスダックやマザーズなどの新興市場を含め全ての上場会社に株主総会資料の電子提供制度の利用を一律に義務付けることが必須と考えております。その上で,電子提供措置開始日につきましては,現行の会社法第299条に定める株主総会の招集通知の発送期限から2週間の前倒しとなる4週間前にすべきという意見を提示しております。   なお,電子提供措置開始日を前倒しすることにより,機関投資家の議決権行使における精査期間の拡大につながるのみならず,会社側にとりましても投資家に対して総会議案の内容について事前説明を行う機会を増やすことができると考えられるため,議案の的確な理解を投資家に促すといった観点からもメリットがあるものと認識しております。   電子提供措置開始日につきましては,現状の紙ベースでの郵送に際して招集通知の印刷と封入作業に2週間程度を要することを考慮に入れますと,その期間が削減される分,2週間の前倒しは実務上も対応可能と考えられますので,A案とすることに賛成をしております。   なお,株主総会の招集通知の発送期限につきましても,電子提供措置を開始したことを速やかに,かつ確実に投資家に認識させるためには,電子提供措置開始日と同じタイミングにする必要があることから,A案を選択しております。機関投資家の意見としましては,電子提供措置開始日及び招集通知の発送期限,いずれに対しても早期のタイミングを支持しており,両項目ともA案に賛成をしております。   次に,EDINETの利用に関してですが,事業報告等と有価証券報告書の一体的開示を促進する観点からも,株主総会の前に事業報告等の記載事項を含む有価証券報告書を開示する場合には,会社法上の電子提供として認められるよう,積極的に検討を進めるべきと考えております。EDINETは金商法に基づく公的な電子開示システムとして会社及び投資家に幅広く利用されているため,会社法上の電子提供としてEDINETの利用が認められれば双方にとって利便性が高く,さらに,電子提供措置の調査を不要とするならば企業のコスト負担面からもメリットにつながるものと思います。   なお,EDINETの利用に際しては,法的観点のみならず情報ベンダーの対応等も含めた使い勝手やアクセス集中時のシステムの安定性など,実務的な観点からの検討も必要と考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。EDINETを使用する場合の特例につきましては,できればこの後,5から7まででお願いできればと思いますけれども,どうもありがとうございました。   それでは,三瓶委員,どうぞ。 ○三瓶委員 ありがとうございます。フィデリティも,今回のパブリックコメントにおいて意見書を提出させていただきました。本日,弊社のホームページにもその内容を開示しております。ですから,余り詳しいことは申し上げませんが,大きくポイントを絞ってお話しさせていただきたいと思います。   まず,観点として三つの大事な点があると考えております。まず,発行会社として株主に対する責任,このことを非常に重要視していただきたいということです。実務上とか現状ではということがあるかと思いますが,発行会社として株式会社としての責任,これをまず重要視してほしいということです。そのような観点からすると,1点目は,権利行使する側の利便性で,ここに問題があるということを申し上げていますので,そういうことについて十分に考慮いただきたいということ。   もう一つ,今回,この規律の見直しをしていますが,規律の見直しをするからには,何らか事実上の改善がなければその見直しの意味がないということです。例えば,これは既に議論させていただいていますけれども,既に多くの上場会社,例えば2016年の資料では1729社の株主総会の招集通知の発送が平均19日前だったということからすると,今の3週間という議論がいかに僅かな変化であるかということです。   3点目は,制度を考える上で分かりやすい制度というのが非常に大事だと思います。ということは,いろいろな部分に任意で発行会社が考えてやらせてくれというのが余りに多すぎると,制度全体としてどういうことを期待したらいいのかというのが分からなくなります。ですから,ある程度一定の期待ができるもの,そういったことが必要だと思います。   そういう意味で,幾つかのポイントで,例えば2の(2)ア,イ,電子提供措置開始日,通知の発送期限については,それぞれA案を支持いたします。例えば,このことについて今年の4月,通常,3月末決算企業とのいわゆるSRミーティング,発行会社の総務,法務の責任者の方と意見交換をする時期なのですが,このときに実態として電子提供措置を4週間前にするということは可能かということを一回一回ヒアリングをしてみました。そうすると,大抵の会社さんが既に3週間前に実際の発送をしておりますので,そういう意味では,そのコンテンツはできているということで,それは可能ですという回答でした。上場会社全体とは言えませんが,ヒアリングした結果,そういった回答でした。   あと,2の(3)電子提供措置期間の末日というところについては,こちらで御提示いただいている案に賛成です。   また,その次の3(1),銘柄ごとにするかどうか,ここは煩雑さを避けるという意味で,銘柄ごとにしなくていいのではないかという考えを持っています。そして,ここでの(注2)については,先ほど古本委員もおっしゃっていましたが,難しさを解決するには,1年という期限にすると,いろいろな意味で簡素化というか単純化ができるだろうと思います。   4の③,あと(2)ですけれども,ここについてもいろいろな御意見がありますが,私はこれは理にかなった規律ではないかなと思います。そして,(2)のことは,先ほどの御説明にもありましたけれども,2の(3)との連動からすると,こちらに提示いただいたような考え方でよろしいかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   中東幹事,どうぞ。 ○中東幹事 ありがとうございます。一般論としては,古本委員がおっしゃいましたように,せっかく制度を入れるのであれば,実務で運用しやすい工夫をすべきであると考えております。その点で,書面交付請求を定款で排除するということの可否についてです。ここで考えられている書面交付請求は,そのまま渡すという形のもので,フルスペックというか,現状とほぼ同じ状態にしてあげましょうと,こういう話かと思います。ただ,これはこれまでの部会でも,そこまでのものが必要かと言われていたかと思いまして,本当にこのような選択肢しかないのかということでございます。   川島委員が触れてくださるかと思っていたのですが,部会資料18の意見の概要の21ページに連合の御意見がありまして,「書面交付事務の外部委託を含め,株主への情報提供の確保・充実と会社における実務上の負担・コスト削減が両立し得る制度について検討を進めるとともに,その内容を法律・指針で定めるべきである。」という御指摘があるところです。私はこのための方策をもう少し模索した上で,書面交付請求権の定款による排除はしないと整理することができるのではないかと思っております。   以前の部会でも申し上げましたように,デジタル・ディバイドの者であれば通常はネット証券を使っていなくて,外務員とか,あるいは証券会社を頼って,そこで情報を得つつ売買をしているはずであり,であれば,例えばですが,証券会社にこの書面交付についての事務を委託して,そこでやってもらえばいいのではないかと思います。それならば株主の保護に欠けるものではありませんし,会社の負担も軽減されるでしょうし,さらには,適切な委託がされているのであれば,発行会社としては,仮に,証券会社に書面交付で何らかの不都合があったという場合にも,これは招集手続の瑕疵には当たらない,つまり決議取消事由にはならないという形の整理をすればいいのではないかなと考えております。   もしこういった形で整理をするのであれば,3の(1)のうちの(注1)の銘柄ごとにどうするか,あるいは(注2)の累積していく懸念をどうするか,といった問題はなくなり得るのではないかなと思っております。そうなれば,三瓶委員がおっしゃったように,分かりやすい制度にすることにも資するかと思っています。 ○神田部会長 それでは,前田委員,沖委員,田中幹事の順でお願いします。 ○前田委員 2ページの(2)の電子提供措置開始日などについて意見を述べさせていただきます。今回の電子提供の制度の趣旨は,これまでずっと議論がございましたように,決してコストの節約ということだけではなく,株主側に早期に充実した内容の資料を提供しようということにあるのですから,考え方としては,実務的に可能な限度一杯まで電子提供が早期に行われる制度が望ましいのだと思います。そして,印刷と郵送に要する期間が不要になることは間違いないわけですから,4週間前がいいとは思うのですけれども,ただ,先ほど古本委員,小林委員からも御指摘がございましたように,実務に無理を強いることはできませんので,尽力をしてもなお4週間前では対応できないような上場会社が果たしてあるのかということを見極めて,最終的に判断すべきことになるのだと思います。   他方で,招集通知の発送期限の方は,書面交付請求に応じた書面の交付の期限に合わせて,2週間前でやむを得ないのではないでしょうか。書面交付請求が実際にどの程度行われるのかが制度設計のいろいろな箇所に影響してくるように思うのですけれども,その予測は困難ですので,制度としては,相当に多くの請求がされても耐え得るようにしておく必要があると思います。そういたしますと,招集通知の発送とまた別に,大量の書面交付請求に応じて書面を送付しなければならないという事態は,余りにコスト負担が大きくなると思いますので,書面の送付は合わせて1回で済むことが制度上確保されているのがよく,そうすると,招集通知の方は2週間前でいいのではないかと思います。   それから,2ページの(3)の期間の末日については,確かに補足説明で御指摘いただいたような問題があると思われ,3か月を経過するよりも後の日とすることにも合理性はあると思うのですけれども,ただ,同様の問題は委任状とか議決権行使書面の備置きなどにもあり得ますよね。つまり,決議の存在すら知らないまま3か月経過して,その後,決議の不存在を主張したいというような場合はあり得るので,もしここを1年などにするのであれば,委任状などの備置き期間もこれに合わせて変更すべきではないかという議論がまた出てくる可能性があると思います。   それから,4ページの(2),書面交付請求の定款による排除は認めるべきでないと思います。これから株主になろうという者はともかくとして,既に株主になっていてインターネットを利用できない者があり得るにもかかわらず,多数決でそれらの者が情報を入手できないようにしてしまうことは,できないのではないかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。株主総会資料の電子提供制度につきましては,日本弁護士連合会でも基本的に制度の創設に賛成する内容の意見書を提出しておりますので,詳しくはそちらを御覧いただければと思います。ここでは,この論点についての今後の検討の進め方について意見を申し上げたいと思います。   まず,中間試案の補足説明では,パスワードを要求するなどして株主だけが当該情報の提供を受けることができる状態に置くことも可能であるということを明記していただいております。現行の会社法でも電磁的方法による議決権行使の制度がありまして,これは類似の制度だと思いますけれども,この場合は書面投票も可能であるのに対しまして,電子提供措置は書面交付請求を行使しない限りは株主から見て電子提供が強制されるということになります。そこで,パブリックコメントにもありましたが,合理的な本人確認に基づいてパスワードの届出を要求すること,その届出をした者だけが閲覧可能とするような措置をとった場合には電子提供措置をとったものとみなすというような規律は明確にしておく必要があるのではないかと思いますので,御検討いただければと思います。   次に,書面交付請求権についてでありますけれども,電子提供制度が実現しますと株式会社としては,一方ではウェブサイトを通じて早期に充実した内容の状況を提供すると,一方では書面交付請求権を交付した株主に対し適切に書面を提供するという二つの負担が出てくるということであります。そこで,この書面交付請求権は元々デジタル・ディバイドの問題を抱えた株主の保護のためでありますけれども,実際上は誰でも行使できるわけです。個人株主も,ほとんどこれは名義株主でありますので,実際問題として,取りあえず行使組も含めて大量の書面交付請求がされる可能性はあります。そうしますと,実際にその書面の郵送や封入に掛かる時間と費用,これが実際どれだけのものになるかによっては,コスト増になるおそれもありますし,果たしてこの電子提供制度が所期の効果を上げることができるかは,このような書面交付請求権がどの程度行使されるかに掛かっているところが大きいと思います。   そこで,やはり,部会資料にもありましたけれども,累積への対処,パブリックコメントにあった問題ですが,これはまず検討する必要があります。この部会資料の中の案では3番目の案が最も適切ではないかと思います。古本委員から御指摘がありましたけれども,書面交付請求権を毎年行使しないといけないとすれば,この問題はなくなりますが,これがシステム上,実務上,可能かどうかは難しいということであれば,書面交付請求に期限を設けて2,3年の限定した効果だけを認めると,このことが果たしてシステム上,実務上,可能かどうかということを検討する必要があるかと思います。   そこで,もう一つの方法である定款による書面交付請求権の排除ですが,これは株主の権利に関わりますので,最初にやはり累積問題への対処を十分に検討し,最後に,かつ慎重に,そういった方法がとれるかどうかを検討するということだと思います。これが可能かどうかの本質的な問題は,書面交付請求権の排除が定款自治になじむかどうかということだと思いますけれども,仮にこれを認める場合にも,既に株主になっている者の利益に配慮するために,改正事項の施行までに何年かの猶予期間を設けるか,又は改正後,その定款の変更の効力の発生までに何年かの猶予期間を置くということは必要になってくると考えます。   次に,書面交付請求権の対象となる書面の記載事項をみなし提供制度の対象でないものに限ることを定款で認めることは,これは明確な規律を置くべきであると思います。書面の一覧性を重視することから否定的な見解もありますけれども,電子提供制度を認めて電子提供を拡大するに当たって,現行法上,書面提供がされている事項を越えて書面提供することはやはり妥当でありませんので,このような定款の規律は認めるべきであると考えます。   また,招集通知を電磁的方法によって提供を受けることを承諾した株主に対しては,書面交付請求権を認める必要性はないと考えます。電子提供制度を採用する定款の定めのある会社では,電磁的方法によって招集通知を受けるという制度は,ウェブサイトにアクセスするための限定された記載事項の通知ですら電磁的方法で受領すればよいと,そういうことを認める,承諾するという制度でありますので,そのような承諾をした株主に書面交付請求権を認める必要性は,その趣旨からも,ないのではないかと思います。   なお,電子提供措置の調査義務を仮に義務付けるとした場合に,その対象を電子提供開始日から総会の日までに限定する案が部会資料で提案されておりますが,そのことには賛成であります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事 何点か御意見を申し上げさせていただきます。まず一番最初の,上場会社にこの電子提供制度を一律適用するかという論点でありますが,制度の分かりやすさという観点からは一律適用でいいのではないかと思います。この点については,小規模な上場会社では電子提供は必ずしも必要ないところもあるかと思いますが,この制度の下でも招集通知を全ての株主に書面で提供するフルセット・デリバリーをすることができます。そのような会社で追加的な負担になるのは,従来の書面による通知に加えて電子的な開示が義務付けられるということですが,電子的な開示は,これまでも実務上,行われてきているということもありますから,それほど負担にはならないのではないかと思います。ただし,全株主に対してフルセット・デリバリーを行った場合は,先ほども御意見があったと思いますが,例えば電子提供措置の中断及び調査の諸規制については,全ての株主に書面で通知している以上,仮にこういった規制を課すとしても,そういった会社については適用を免除するということが合理的になるかと思います。   それから,招集通知の発送期限については,元々日本企業は自ら設定したタイトな期限の下で苦しんでいるだけであって,その期限設定に余り合理性がないという観点から,私は,招集通知の発送期限もこれを機会にできるだけ延ばすと,少なくとも3週間にするという案に賛成したいのですけれども,フルセット・デリバリーのシステムを採るという場合には従来と変わらないようにするという考え方もあり得るかなと思います。   それから,最も議論があるであろう書面交付請求権を定款で排除するかどうかということですが,私,いろいろ迷うこともありますけれども,現状では排除には慎重であるべきである,少なくとも当面,強行法規にするのがいいのではないかと考えております。これは既に何回か申し上げたことでありますが,その理由は,デジタル・ディバイドの問題に対処するということもあるわけですけれども,それと同程度かそれ以上に,少なくとも現状で本制度を実際に実行したときに,個人株主の受け止めは,何か電子提供によって情報開示が充実するというよりも,むしろ,これまで書面で受け取れたものが受け取れなくなったと,そして,はがきが来て,URLにアクセスしてくださいと,アクセスするとPDFファイルが見られるということで,紙で従来は見えていたものをわざわざ手間暇を掛けて見なければならないと,こういう受け止めになるのではないかということを大変強く恐れております。それと,書面交付請求についての対応が大変だというのも,先行してこの制度を採用しているアメリカとかカナダでは,当然のことながら書面交付請求が強行法規化されており,これについて大きな問題も指摘されていないように見えます。アメリカで実務をしている方に伺っても,例えば,書面交付請求する株主が1%いたとしても,残り99%の株主には書面を送らなくていいわけですから,十分な費用節減効果があるという理解ではないかと思います。   日本でそのような考え方が必ずしも有力にならないのは,恐らく,例えばアメリカですと,書面で送るとしたら,立派な冊子を,株主総会日よりも相当早い,4週間とかもっと前に送るという事務が必要なわけですけれども,電子提供であればそれがされなくなるわけですね。日本でそういったことが余り有り難みを感じないのは,元々株主に送っている書面において非常に貧弱な情報しか提供されていないということであって,電子提供しても大してコスト削減効果が意識されないと,そういうことであって,根本的には株主に対する情報提供意識がこれまで貧弱であったということがあるかと思っております。このような状況に必ずしも十分な変化がないまま,諸外国に倣って電子提供を入れ,さらに,書面交付請求も定款で排除するということになった場合,その制度に対する個人株主の受け止めは,ただ単に情報提供をより弱化させる,より劣化させると,そういうふうに見られる可能性がとても高いのではないかと思っております。   そのようなことで,書面交付請求は少なくとも当面,強行法規にする,そうしますと書面交付がどんどん蓄積されていくということに対して何らかの対応が必要ではないかということですが,私はこれに関しても,基本的にはまずは実務的な対応を考えるべきではないかと,毎年の株主総会において,書面交付請求でなくて電子的に提供するという制度を選択させるという,選択機会を毎年与えるというやり方をまずは考えるべきではないかと思っております。書面交付請求権の行使期間を1年にして,毎年のようにその請求をさせるということになりますと,手間暇を掛けて,そして手間暇を掛けた結果としては,書面で従来見られていた情報をいちいちアクセスしてファイルを見ないとできない,しかも,そのファイルは書面による情報と別に変わらないということだと,これ自体も非常に株主の不満を増加させる要因になるのではないかと考えております。書面交付請求を強行法規化することによって制度激変に対する反発を和らげ,そして,実務の状況を見ながら,電子提供に慣れてきた時点で,各社の判断において,我が社は専ら電子提供によって情報提供するというような自治を認めることは,もとより考えられますが,少なくとも制度導入の当初においては強行法規的な書面交付請求をバックグラウンドにした制度を考えるのがいいのではないかと考えております。   最後に,ウェブによるみなし提供との関係ですけれども,これについては書面交付請求権を強行法規にするかどうかというところとも関連していると思っていまして,もし書面交付請求を定款で排除できるのであれば,みなし提供制度については,新たな電子提供制度に言わば吸収したような状態にするということも考えられるわけですけれども,書面交付請求を強行法規にするということになりますと,もしウェブによるみなし提供制度の対象である情報についても,書面交付請求をすると書面で送らなければならないとすると,従来書面で送らなくてもよくなったものも書面で送らなければならなくなるということになりますので,それはさすがに実務上の負担も大きいかなと思っております。基本的には,今回の新たな電子提供の制度と,ウェブによるみなし提供制度は相互に独立した制度として併存できると思っておりまして,ウェブによるみなし提供がされたときは,それは書面による提供が行われたときと同じであるという整理になるはずでありますので,みなし提供の対象となる事項については,書面交付請求がされたとしても,書面を交付しなくてもいいということでよいのではないかと思います。   ただ,現在のウェブによるみなし提供制度は,少しみなし提供の範囲が広すぎて,実態に少し合致していないところもあるかなと思っています。例えば,株主総会参考書類情報などは基本的にウェブによるみなし提供制度の対象になるわけですけれども,実際に実務では,個人株主への配慮から,参考書類情報についてはほとんどウェブによるみなし提供をしていないと理解しておりまして,その辺りのところは現在の法規制を実態に即して,少しこの対象を狭めるということも考えていいのではないかと思います。ただ,もしそのような形で合理的に対象を画したとすれば,ウェブによるみなし提供制度はそのまま存続して,かつ,新たな電子提供制度の下でも,このみなし提供については書面の交付は必要ないということでいいのではないかと思います。   そして,これについては,私は,必ずしもそういうことを定款で定める必要はないと思います。私は元々制度理解として,ウェブによるみなし提供と新たな電子提供制度とは両者併存だと思っていましたので,あえて各社の定款で定める必要はなく,法律上当然にそうなると考えてもいいのではないかと思っております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,梅野幹事,野村委員,青委員,齊藤幹事の順でお願いします。 ○梅野幹事 御発言の機会を頂戴し,ありがとうございます。日弁連の意見につきましては,先ほど沖委員から紹介がありましたとおり,3月15日付けで公表しておりますので,そちらを御覧いただければと思います。何点か,部会資料19について申し上げます。   まず,2ページの「(3) 電子提供措置期間の末日」ですが,これについて教えていただきたいのですけれども,現在,招集通知等については備置きとか閲覧謄写等の制度はございませんが,それとパラレルな形で電子提供措置という制度が作られるのでしょうか。言葉を換えて言うと,電磁的記録の備置きとか閲覧謄写といった制度がありますが,そういった制度は今回の電子提供措置に関しては考えられていないということなのかどうかということです。   例えば,会社法第312条に定められている電磁的方法による議決権の行使については,3か月間の電磁的記録の備置き義務があった上で,株主等は閲覧謄写をすることができますが,電子提供措置についてそういった制度を導入する予定はなくて,飽くまでも電子提供が行われるにすぎないということになるのではないかと思いますけれども,その理解で正しいのかどうかということです。   また,電子提供措置期間の末日を例えば1年後とすることに関連して,先ほど前田先生から御指摘があったところだと思いますけれども,部会資料の2ページを拝見すると,株主総会決議の不存在又は無効の確認の訴えや会社の組織に関する行為の無効の訴えなどにおいても株主総会参考書類等が証拠として用いられる可能性があるとの記載がございます。このように訴え提起の際の証拠として使用することを制度趣旨の一つとすると,他の制度との関連も問題になるのではないかと思います。例えば,吸収合併契約等につきましては6か月間の備置き義務があり,その趣旨としては,合併無効の訴えを提起するかどうかの判断資料となるためであるとされておりますが,先ほどの3か月よりも後の日とする制度趣旨を訴え提起のためと理解するのであれば,他の制度とのバランスをどう考えるのか。1年間に延ばすのであれば,他の制度はどうなのかという議論が出てくる可能性があると思います。今回はそこまでの御意図はないのだろうと理解しておりますが,その点も確認させていただければと思います。   逆に言うと,電子提供措置においては備置き,閲覧謄写という形をとることはない,つまり,電子提供措置というのは紙で残らないのだから,そういった点を考慮して,他の制度とは別に1年間,期間を延ばして保存しておくというような立て付けも考えられないわけではないかとも思う次第です。   次に,部会資料の3ページの「3 書面交付請求」の(注2)で触れられている,累積の懸念です。書面交付請求をした株主が累積していくという懸念は非常によく理解できるところですし,立法による措置も検討すべきであると考えます。以前,この点について部会で発言させていただいたかと存じますが,その際には,4ページで記載されている(ⅲ)の書面の交付請求の効力に一定の期間制限を設けるといった方向で検討するのがよいのではないかと申し上げたと思います。ただし,その期間については,1年という御提言が先ほどございましたが,1年では株主にとって少し煩雑に過ぎるのではないかというところから,例えば5年はどうかと思います。施行後5年たった段階で一旦,書面交付請求の効力がなくなるものとして,当然このためには周知徹底が必要だと思いますけれども,改めて交付請求を行わせるといった形をとり,徐々に書面交付請求をする株主の数を減らしていくというような対応が望ましいのではないかと考えております。その上で,先ほど沖委員からの御発言がありましたが,将来の方向性としては,4ページの(2)にあるように,交付請求することができない旨を定款で定めるということはあり得るのではないかと思います。   この点,日弁連の意見書10ページでは,将来的にはデジタル・ディバイド等の諸状況を勘案し,株主が書面交付請求をすることができない旨を定款で定めることができるものとすることも検討すべきであると意見を述べております。ただ,この点については,その時点におけるデジタル・ディバイドの状況であるとか,電子提供制度へのアクセスの技術的な容易さであるとか,EDINET等をスマートフォンで簡単に見られるようになっているかとか,そういったことを見極める必要があると思います。特に,部会資料19の4ページの下から3行目に書かれているとおり,書面交付請求を必要とする株主は議決権比率の低い個人の株主であることが想定されるので,定款変更という多数決により強制的にこれらの株主の権利を奪うというタイミングには相当注意が必要であろうと考えております。そのようなデジタル・ディバイドで実質的な不利益を受ける方がほとんどいなくなったというような状況を見極めた上で,法律を改正することが望ましい形であって,状況を踏まえずに予め期限を決めておくといったような対応にはなじまないと思います。状況を見つつ,将来において方向性を考えていく問題なのではないかというような気がいたしております。   最後に,些細な点ですが,6ページの「4 電子提供措置の中断及び調査」の(1)に関してですが,②と③の関係をどう考えるのかというところで,③の総会前の中断は電子提供開始日から総会の日までの10分の1を超えていなかったのだけれども,中断を生じた期間の合計がトータルの10分の1を超えてしまったような場合,そういった場合の法的効力をどのように考えるのかというような疑問を持ちました。   日弁連の意見は別として,今回の部会資料で気が付いたところをコメントさせていただきました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。質問が幾つかあったと思います。 ○竹林幹事 最初に御質問いただいた点は,御理解のとおりで結構です。   二つ目に頂いた御質問は,この制度はやはり電子提供ということの特殊性から,こういう措置も考えられるのではないかと,パブリックコメントで寄せられた御意見を踏まえての御提案という形になっておりまして,これによって他の現行の制度についてまで見直すということについてまでは考えていないということとなります。   三つ目の御質問は,古本委員の御質問と少し重なる点もあろうかと思っているのですけれども,私どもとしては,中断が株主総会前に生じてしまえば,株主総会招集手続の瑕疵ということにはなり得るとは思うのですけれども,株主総会後に生じたのであれば,必ずしも招集手続の瑕疵にはならないということが一応の考えでございます。 ○梅野幹事 大変よく分かりました。ありがとうございます。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。   それでは,野村委員,どうぞ。 ○野村委員 ありがとうございます。私はたった1点だけです。4ページの書面交付請求を定款で排除できるかどうかに関してでありますが,先ほど来から出ております議論を見ますと,今,全くインターネットにアクセスすることができないという人というカテゴリーと,それから,アクセスはできるのだけれども,今までどおり紙が欲しいという人ですね,自分で印刷するのが面倒くさいから紙を欲しいと言っている人に対応しなければいけないのかと,こういう議論になっているのではないかなという気がしています。   2説あって,定款で排除しないという立場は,少なくとも全くアクセスできない人がいる以上は,強行法規的にその人を保護する必要があるという考え方だと思いますし,他方で,定款で排除することを認めようという立場は,会社が後者のような方に対して対応する負担を考えれば,そこは排除できるとした方がいいのではないかということを議論しているのだと私は思うのですが,実は私は後者のような紙が欲しいと言っている人も,広い意味ではデジタル・ディバイドの人なのではないかなと思うのです。   といいますのは,私のゼミとかでは,レジュメを既にクラウドにアップして授業をやっているわけですけれども,あるときまでは私はそれをダウンロードして印刷して授業に持って行っていたのですね。それが面倒くさかったものですから,学生に少なくとも先生の分だけは印刷してくれと言っていたと,それがよく見てみますと,ゼミの学生は誰も紙を持っていないのですよね,みんなタブレット端末で見ていて,それで,あっ,私はデジタル・ディバイドなのだということに気付いたわけなのですが,そういう意味では現時点において紙を求めるという人も,本来理想としているデジタル社会の中で,デジタルだけで情報が開示されるということになじむという世界観から考えると,まだやや保護に値する人なのだろうなとも思いますので,そういう意味では,一定程度の期間はその方たちも含めて,制度的には現状が確保できるようにするということが必要なのではないかなとは思います。   それをどうやってフェードアウトさせていくのかということも考えなければいけないと思うのですけれども,これは一つには,これも大胆な発想かもしれませんが,例えばいずれかの段階で有料的な形になると,例えば,そういうものが欲しいのであれば,今,課金する制度は非常に簡単ですので,その人はインターネットにアクセスできるわけですから,課金されて,であれば印刷して送りますよというような世界が生まれてくると,そうすれば,例えば,中東幹事が先ほどおっしゃっておられたような,外部でそういうことをもう安くやりますよという業者が出てくるというような,そういう世界にだんだん移行していくということが合理的なのではないかなと,そんなふうに感じた次第でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   青委員,どうぞ。 ○青委員 まず,部会資料19の1ページ目からまいりますと,電子提供制度を導入することは必要であると考えているところ,上場会社に一律に導入すべきかどうかという論点に関しては,やはり上場会社が多々あるという中で,一般の方々による投資のしやすさということを考えますと,分かりやすさを重視して一律に導入するということが重要なことではないかと考えております。   2ページ目の電子提供の開始日,それから招集通知の発送期限でございますが,今回の見直しの目的が,招集通知の内容を充実させた上で,上場会社のコストや事務負担を削減することに加え,最も重視すべき点として投資家の方々の議案の検討期間をしっかりと確保していくというところがあると考えますので,発送等の期限についてはできる限り早くということが重要なことではないかと思います。   ただ,実務上回らないものまで求めるということは難しいということは承知しておりますが,国際的な比較で言っても,電子提供開始については株主総会の4週間前というのは十分可能ではないかと考えます。   それから,招集通知の発送期限につきましても可能な限り早く発送されるということが基本的には重要なことであって,任意でフルセット・デリバリーを行う場合について過度に配慮する必要はないと考えます。仮に招集通知と同時にフルセット・デリバリーを行うということを前提とした場合でも,現行の2週間前ということには余りこだわらずに,実務上の工夫をすることによって3週間前に送ることができないかどうかという点も考えた上で期限を設定するということが適当だと考える次第です。   それから,3ページの方にまいりまして,書面交付請求の方でございますが,こちらはまず,銘柄ごとの請求を認めるかという点もさることながら,書面交付の手続に携わる方々がしっかりと実務を回せるかどうかということが非常に重要かと思いますので,現在,別途,振替機関等々を交えて検討が行われているかと思いますが,そこで丁寧な議論がされていくということを希望いたします。   それから,(注2)の書面請求権を行使する株主が累積していくという問題につきましては,確かにそうした懸念は存在するところであり,今回の見直しは,実態として書面ができるだけ減っていき電子化に移行していくということが望ましいということを前提としたものであると理解しているところ,株主の意思というものを十分に踏まえて,本当に書面が必要な方には送るという形にすることが適当ではないかと考えられます。したがって,できる限りきちんと請求の意思を確認するという意味で,実務が回るならば毎年請求とするというのも一つの考え方ではないかとは思います。   それから,4ページの(2)の「株式会社は,株主が書面交付請求をすることができない旨を定款で定めることができるものとすることについて,どのように考えるか」という点ですが,株主総会情報を書面で受け取るという点は現行法で認められている株主の権利であり,会社ごとに書面請求の可否というのが異なってくるというのも非常に分かりにくいということがございます。企業の自由度を確保するということも考慮する必要があるかもしれませんが,こうした株主の基本的な権利に関してどこまで自由度を認める必要があるのかというところについても考えますと,この点については,全社一律に書面交付請求が可能であるべきと考えて,そのような定款の規定は認めないという形とするのが良いのではないかと考える次第です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   齊藤幹事,どうぞ。 ○齊藤幹事 ありがとうございます。まず,電子提供の時期につきましては,総会の日の2週間前であるといたしますと,改正の姿勢としては少し後ろ向きではないかと思います。ただ,これまで電子提供の経験がない企業におきましては,何か瑕疵がございますと株主総会の決議の効力などにも影響するため,慎重に事を運びたいというところも多いと思いますので,義務付けまでに2,3年の猶予期間を設けて,他の会社のノウハウなども見つつ自社のノウハウを蓄積するようなスケジュールで施行をするといった,準備期間があってもいいのかもしれないと思われます。   一方,投資家の方については,自主的に情報を収集することもされていると思いますので,電子提供された情報の入手先が事前に明らかになっている限り,招集通知の方は2週間前,場合によっては,書面交付請求に係る書面と一緒にということが合理的ではないかと思います。   次に,書面交付請求の定款による排除ですが,一般の定款の定めにつきましては,今のような時代においては機関投資家によるコントロールも期待できるようになってまいりましたので,株主一般の利益を害するような定款の定めはなかなか設けにくくなっているとは思いますけれども,この書面交付請求は機関投資家が利用するものではございませんので,機関投資家による利害調整が期待できない内容でもありまして,直ちに認めるべきではないと思います。   ただ,書面交付請求の蓄積に対する対処は必要だと思われまして,効力期間の設定というのが一つの合理的な案かと思います。1年後とか,あるいは5年後とか,何年後とかというところは難しい問題ではあると思うのですけれども。ある程度のところは口座管理機関のサービスに委ねられる部分も多いのではないか,つまり,中東幹事のお話にもありましたけれども,手厚いサービスを必要とする顧客は,通常はそれなりの手数料を口座管理機関に払っているはずでありまして,そのようなサービスの一環として,きちんと顧客の意向を確認するというようなことも根づいてくれば,1年ごとという設定でも問題はないのではないかと思います。その場合の,顧客の気持ちが十分に伝わらずに,場合によって書面交付請求が適時に行使されなかったという問題については,証券会社と顧客の間の問題の話で,決議の効力には影響を及ぼさないという整理が合理的ではないのかと思います。   デジタル・ディバイドにつきましては,野村委員と同じ意見でございます。デジタル・ディバイドという問題は,ITリテラシーの普及の話なのか,それとも,各個人がITを使うことの実質的な負担の話なのかということですが,ITリテラシーの普及ということで考えますと,ある程度の期間後にはこれは解消されていくことが期待されますが,例えば,現在の技術の下では,提供される情報を読むことに伴う身体的な負担感や操作の煩雑さの点では,紙のほうがよい,という人は多いと思われます。日本は世界にも類を見ない高齢化社会の急速な進展というものを迎えておりますので,個人株主の多くも,身体的な負担を感じやすい高齢者であることも想定されます。後者の意味でのデジタルへのハードルは会社法で保護するべきなのか,それとも,民間企業のサービスで対応していく問題なのかということを考えたとき,いずれは後者に委ねてもいいのではないかという意味で,会社法の方では,ITリテラシーが普及したら書面交付請求の意義も薄れていくという考えの下で,将来的には定款による排除というものも認めることも,あり得るのではないかとは思われます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,尾崎委員,北村委員,藤田委員,加藤幹事,松井幹事の順でお願いします。 ○尾崎委員 どうもありがとうございます。電子化の問題を考えるときに,二つの要素ということで,先ほど前田委員がおっしゃったように,企業サイドにとっての費用節約の問題と,もう一つ,株主への情報提供の問題と,こういう分け方ができるかと思います。費用の節約ということですと,コストが問題となり,コストが増えることには反対だという意見も出てくることになります。常にコストの削減とコストの増加と,そういった利害対立が出てくるだろうと考えます。これは企業のサイドでお考えいただければと思うのです。他方,株主への情報提供という点ですが,先ほど来から出ておりますように,単にコストの問題だけでなく,対話の促進にとっての株主への情報提供の問題というコンテクストで考えることも必要だということです。株主に情報を提供する,そして,その結果として株主総会が充実化していけばいいと,こういうコンテクストで考えたとすると,今回提案されていることとか,ここで議論されてきたことは,その情報提供の方法の問題だったわけです。今日初めて情報の中身が議論の対象となりました。田中幹事から,正に株主に対する情報提供が余りにも少ないのではないかとか,こういった御指摘があったわけですが,その点は従来から余りここでも議論されていなかったのではないかと思います。とても重要な指摘だと思っています。   情報提供の方法の問題に限って意見を申し上げますと,紙媒体よりは電子媒体の方がいいというのは,これはもう皆さん一致している意見だと私は思っております。私も,その方向性は正しいと考えます。つまり,タイミングとしては早ければ早いほどいいと。しかし,こういう電子的な方法を使いますと,例えばサーバに故障が起こったりとか,あるいはデジタル・ディバイドの問題をどうするのだ,というような問題が現実問題として出てきているわけです。その際,大事なことは,方向性です。先ほど来から皆さんの御意見の中にも出てきておりますように,見極めた上でとか,慣れてきたらとか,こういうふうなことを条件付けられておりますが,将来の方向性としては,やはり電子的な方法がメーンになるということは,ほとんど意見は一致していると思うわけです。   そして,それが今の段階において何ができるのかということについて考える必要があります。この点ではどうも温度差がいろいろとあるようです。先ほど来から皆さんの御意見を聞いていたときに,どうも段階的な方向性というのでしょうか,方向性について将来性についてみんなのコンセンサスが得られているという前提の下で,その方向に向かってどのように段階的にやっていくのかと考えるのが良いのではないかと思います。例えば,いわゆる書面交付請求権を定款で排除するというのは一番過激で,電子化の動きに対して一番強く背中を押すものかもしれませんが,それを最初からやってしまいますと,株主さんにとって,これは何という改正だ,という受け止め方があるかとも思うわけです。究極の到達点を考えて,段階的にそれに向かう,それがよろしいのではないかと考えます。   この点,私ども早稲田大学からも意見を出したわけですが,内部の研究会のときに,随分,書面交付請求権賛成派が多くて,私なんかが定款規定を置くという会社があってもよい,つまり選択肢としてあってもいいのではないかと言ったら,ものすごく叩かれたわけなのですが,今の段階で選択肢だと言ってしまいますと,やはりそちらの方向性に行くということについての抵抗が非常に高まってしまうと,今は思います。むしろ,電子化の方向に行くという方向性を意識しながら,株主を説得していくプロセスが必要ではないかと考えます。   つまり,株主さんにとってこれから将来,電子化というのが必要なのだと,先ほど野村委員がおっしゃったように,紙はやはり面倒くさいなとか,いろいろなことを思う人がいるかもしれませんが,そういう人たちにとっても,これからはそういう方向性が必要だということを知らしめる時間が必要なのではないかな,ということを感じるわけです。実務が安易に流れてしまって,フルセット・デリバリーで今もやっているのだから,これからもフルセット・デリバリーでやってしまいましょうという方向に行ってしまったら,これは方向性としては逆。電子化が遅れてしまうというか,止まってしまうわけで,やはり電子化の方向に行くべきではないかということが大前提にされなければならない。とにかく第一歩を踏み出すというためには,どのレベルまで制度として今の段階で作っておけばいいかと,そして,次のステップとしてどういう方向に行くのかと,その方向性については,企業のサイドの方にも,株主さんを説得していただく努力とか,様々要りましょうし,株主さんにとっても,やはり電子的な議決権行使という方向にまでこれから行くべきであるという広い視野に立った考え方が必要ではないかなと考えます。そういうふうになってきますと,情報提供サービス産業も生まれてくるでしょうし,いろいろなものが生まれてくるわけで,とにかく初めの一歩を実現する必要があるということです。   そして,書面交付請求権ですが,一回請求してしまうとずっとその効果があるという問題ですが,これは,先ほど古本委員がおっしゃったように,技術的にある程度解消できるかもしれない。毎年意向を伺うとか,様々な方法はいろいろとあるわけで,それはそれとして解消していけばいいと私は思っております。まずできるところからやってみる,上場会社の中でも一部という限定になるかもしれませんが,やってみるということこそ重要ではないかと考えております。   それ以外についても少し意見がありますが,早稲田大学の意見を御覧いただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   北村委員,どうぞ。 ○北村委員 発言の機会を頂き,ありがとうございます。大分時間がたっておりますので,部会資料19から,細かな点も含めて2点だけ意見を申し上げたいと思います。   まず,2ページの(3)の電子提供措置期間の末日のところです。先ほど前田委員からも指摘があったところでございますけれども,委任状や議決権行使書面の備置期間は株主総会の日から3か月となっております。また,ウェブ開示によるみなし提供に関する規定を見ますと,これも株主総会の日から3か月ということになっています。つまり,決議取消しの訴えの提訴期間と連動して,ウェブに載せる,あるいは備え置く期間が決まっているということになります。ここで,3か月を経過する日よりも遅く,例えば,1年を経過する日にするという理由として,決議不存在又は無効の確認や,ほかの会社組織に関する無効の訴えなどにおいて株主総会資料が証拠として用いられるということが挙げられています。会社組織に関する無効の訴えだったら提訴期間は6か月とか1年とかになるのですけれども,決議不存在だったら未来永劫ということになります。そうすると,それらの場合,例えば合併契約であれば6か月間備え置かれる,計算書類であれば5年間備え置かれるというように,証拠としてはほかのツールがあるわけですから,電子提供措置期間の末日は,今あるウェブ開示とか委任状等と合わせて3か月のままにするのが,私は合理的であり,説明しやすいと思っております。   2点目は,書面交付請求のところの5ページの(3)にあります,ウェブ開示によるみなし提供制度と書面交付請求の関係でございます。部会資料19では,書面交付請求があった場合の交付書面は電子提供措置事項のうちみなし提供制度の対象でないものに限る旨を定款で定めることができるとされています。最初に古本委員から,既にみなし提供制度があれば,定款のみなし変更が行われたと考えていいのかという御指摘がございました。これについては2通りの考え方があると思います。現行法の下で,既に,定款に定めれば電子提供のみでよく書面の交付が不要とされているのだから,現在みなし提供の対象になり得るものは書面交付請求の対象にならないと法律で一律に決めるという方法が考えられます。   しかしながら,現在のみなし提供制度というのは,それぞれの書類について根拠規定が違っております。だから,株主総会参考書類はみなし提供しないけれども連結計算書類はみなし提供するということを,各会社で考えておられるわけでございます。そういう状況からいたしますと,電子提供制度に基づく書面交付請求の制度が施行されたときに定款においてみなし提供をすると決めている書類については書面交付請求の対象にならないというみなし定款変更したと,このようにするのが現在とのつながりがよいのではないかと思う次第でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   藤田委員,どうぞ。 ○藤田委員 もう多くの方が意見を述べられたので,余り重ならないところを中心にお話ししたいと思うのですけれども,重ならないといっても論点それ自身は重ならざるを得ないですが,多少違ったことを言えそうなことだけお話ししたいと思います。まず書面交付請求をする株主の蓄積の問題ということが議論されました。蓄積という表現というよりは,むしろ惰性といった方がいいと思うのですけれども,本来必要な範囲を越えて,取りあえず,もらえるものはもらっておくという株主,つまりタダで書面がもらえるわけなので,これを積極的に放棄するインセンティブはありませんから,取りあえず請求だけはしておくかという形で書面交付請求権を行使する株主が相当数出てしまい,いつまでも本来予定したような電子化が進まないという話です。これは深刻に考えた方がいいような気もします。しかも,一回書面交付請求をしてしまうと,以後もずっとその効力が残ると,最初のところで一歩間違えると,状況が改善しないままいつまでも直らないということになってしまうので,影響が大きいです。   もちろん書面交付請求権を定款で排除できるとすれば話は簡単なのですが,差し当たり,書面交付請求権は排除できないという前提での議論をしたいと思うのですけれども,そういう前提をとった場合に,銘柄ごとに書面交付請求をするのではなく,銘柄問わず書面交付請求をする株主である旨を振替機関に申し出るというシステムを採るとすれば,可能な方法は,多くの方が言われたように,4ページの(ⅲ)でしょう。書面交付請求の効力に一定の期間制限を設けるしかないというような気がします。期間を1年とするか何年とするかはともかく,そうするしかないと思います。   ただ,そのとき重要なのは,投資家が自分のその状況,いつから書面がもらえなくなるのかということをきちんと把握できるようになっているかということだと思います。ここは,口座管理機関の方が来ていらっしゃらないので,システム設計上の制約が分からないため,仮定の議論しかできないのですが,もしシステム設計上の制約が余りなくて,自分が口座を持っている証券会社に聞けば,いつまで自分の書面交付請求の効力が残っているかが直ちに把握できるという状況が作れるのであれば,話はそれほど深刻ではないと思います。その場合は恐らく,多くの証券会社はサービスとして注意喚起してくれるでしょうし,それで問題は実質的にはなくなるのでしょう。おそらく一度の請求により,数年ぐらいの効力期間を設定したらいいと思います。   ちなみに,これを1年にして,毎年請求するようにさせるとしても,話が簡単になる,投資家から分かりやすくなるかというと,そうでもないのですね。程度の差にすぎません。つまり,幾つもの銘柄に投資していて総会の時期が違うと,同じ年度の総会でも既に有効期限が切れているのと切れていないのが混在したりします。ほぼ同じ総会の時期だったら大体,毎年請求すればいいということになるのですけれども,総会の時期がずれるとそう簡単でもなく,投資家側が混乱する可能性もあります。   ただ,これも口座管理機関の方がいないところで議論しにくいのですが,本当はこういう解決の仕方をするよりは,発行会社が投資家に電子提供を受けるインセンティブを与える工夫ができるような制度設計が本当は一番望ましいでしょう。総会関係書類は電子提供で結構です,書面は要りませんと言えば,何か利益を得られるという工夫ができるのが一番いいわけです。書面請求を銘柄ごとにしないという作りだと,それは非常に難しいのですけれども,もし銘柄ごとの書面交付請求ができるのであれば,発行会社も努力の余地が出てきます。利益供与との関係が問題になるのではないかという疑問があるかもしれません。確かに形式的に言うと,書面交付請求権を行使することと引換えに何かもらえるというのは,文言上は利益供与規制に該当し得るのですけれども,ただ,率直に言って,現在,議決権行使書面を返送したらクオカードをもらえるというようなことを実務でやっていたりするわけですが,それと比べるとはるかに問題は少ないですし,利益供与の問題があるからそんな制度を作れないなどと考えることはないと思います。銘柄ごとの書面交付請求というのがシステムの負荷が大き過ぎて駄目だというなら諦めるしかないですけれども,逆に言うと,そこで銘柄ごとの書面交付請求を認めるということの意味というのは,個々の会社に電子化を推進させるインセンティブを与えることを可能にするという利点も伴っていること,それとの絡みでシステムのコストの方を検討していただければと思います。   書面交付請求の情報の提供の範囲とみなし提供の関係は,先ほど北村委員が言われたのとほぼ同じような意見なのですけれども,制度の作りの明確化ということからは,会社が新しい電子提供制度を採用し,その制度の下で書面交付請求をしてきた場合は,従来のみなし提供制度と整合的な範囲でしか書面は要求できないとして,それとは別に,仮に新しいスタイルに乗らない世界でやるとしても,みなし提供制度は利用できるという形で併存を認めるという整理だとすると,両者は趣旨が大分違いますので,片方を現在採用していれば,新しい電子提供の下で書面請求の範囲を限定する定款の規定があるとみなすようなふうにはしないで,やはり新しい制度を採用する定款を変更するときに同時にやってくださいと整理し,そういう形で併存させるというのが一番合理的かなという気がいたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   加藤幹事,どうぞ。 ○加藤幹事 ありがとうございます。2点コメントさせていただきます。   1点目は,電子提供制度を採用する会社における招集通知の発送期限に関するものですが,この場合,招集通知の意味合いがほかの会社の場合と大きく異なっているような気がいたします。どういうことかと申し上げますと,制度の建前上,上場会社であっても,株主は,招集の通知を受けないと株主総会がいつどこで開催されるか分からない,ということであったと思います。しかし,今回の電子提供制度によって,言わば公的に認証された電子提供制度に基づき提供される情報を見ることによって,株主は,招集の通知を受けなくても,株主総会がいつどこで,どういった議案について開催されるかが分かるようになります。そうすると,電子提供制度を採用する会社における招集通知の意味というのは,もちろん議決権行使書面が同封される場合は別かもしれませんが,要はURLを通知するものに過ぎなくなると思います。しかし,実際には招集の通知を受けなくても,電子提供制度に基づき提供される情報を知ろうと思う投資家は,招集の通知を受ける前から情報にアクセスすることができます。つまり,招集通知の発送期限の問題は,招集の通知がなくても情報にアクセスできるという状況を踏まえた上で,それでもやはり招集の通知で一律にURLを提供する時期を2週間前倒しした方がいいかという観点から考える必要があると思います。   そういった観点からすると,現在でも東京証券取引所が少なくとも3月期決算,現在確認できるのは3月期決算の会社だけですけれども,3月期決算の会社については,株主総会がいつ開催されるかですとか,招集通知の発送日ですとか,会社のウェブサイトへのアップロードの日時の予定などについて非常に詳細なアンケート調査をしていただいていて,開示されているわけであります。そうすると,そういった情報があるにもかかわらず,言わば電子提供措置へのアクセスをより容易にするためという観点から,招集通知の発送期限を前倒しすることが合理的なのか慎重に考える必要があると思います。   2点目は,田中幹事がおっしゃったみなし提供制度と電子提供制度の関係に関するものですが,田中幹事のおっしゃるとおり,現在みなし提供制度を利用している会社も,法令及び定款で認められる枠一杯使っているわけではないということは重要だと思います。現在の定款の定め方というのは,全ての会社の内容を確認したわけではありませんけれども,事業報告,参考書類,計算規則,全てについて法務省令の定めに従ってインターネットで提供しますと1条書いてあるだけというのが多いのではないでしょうか。その上で,実際にその枠一杯ではなくて,各会社がその枠の一部についてみなし提供制度を使っているわけであります。   そうすると,こういう状況で,例えば電子提供制度ができた場合に,電子提供措置によって提供される情報の中でどれがみなし提供制度の対象なのかということが分からなくなるような気がするのです。電子提供措置によって情報を提供する際に,みなし提供制度の対象となる情報の範囲を明確にすることを求めることも考えられますが,そのような区別は電子提供措置を通じて情報を入手しようとする株主にとって意味のある情報ではありません。そのような要請をすることで,電子提供措置による情報提供の在り方に関する工夫の余地が制約されることは避けるべきだと思います。ただ,田中幹事の御意見を伺って,更に問題意識を明確にすることができたのですが,仮にみなし提供制度をこのままの状態で維持してしまうと,電子提供制度の開始に合わせてみなし提供制度の対象を枠一杯に拡大するという措置ができてしまうように思います。そういった可能性に何らの対処をすることなく,みなし提供制度を併存させることには問題あるように思いました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   松井幹事,どうぞ。 ○松井幹事 ほとんどもう言い尽くされていて,本当に端っこの方だけなのですが,北村委員から御指摘がありました末日の設定についてなのですけれども,先ほど来指摘がありますとおり,提供制度が総会以後3か月とされているのは,基本的に趣旨として,訴訟の関係の証拠資料の保全であると。そうだとすると,電子提供措置の調査であるとか中断とかについて,このような特段の別途の措置を設けてまで1年と延長するということについては,これは一体どういう制度なのか,罰則ですね,先ほど,提供義務違反という話が出てきましたが,どこに引っ掛かるのかとか,非常に曖昧な制度になってしまうと,そういう懸念があるかと思います。   その上で,やはり1年にしてほしいというニーズ,意見があったということで,もしそういうニーズがあるのだとすると,それは前年度からの経年比較がしたいという開示の充実の方を恐らく問題にしているのであって,正面からそういったものを株主総会の参考書類というものの開示の対象として保護するべきかどうかという議論をするということになるのだと思うので,経年比較みたいなニーズがどのくらい高いのかということと,それから,そういった比較がしたいという人たちが,本当に10分の1の中断期間であるだとか,あるいは総会前と同じ手順で見ることができるというようなことまで要求しているのかといったようなことを考える必要があるのだろうと思います。これは私が自分で判断することは難しいのですが,必ずしもそこまでは必要ないのかなと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   予定が,当初こちらの方で思っていたよりも1時間ぐらい遅れているのですけれども,休憩をする前に,恐縮ですけれども,5のEDINETについてだけ先に御審議いただければと思います。5について御意見を頂いた後,休憩をして,再開後に6以下を取り上げさせていただきたいと思います。   7ページの下から10ページの上辺りまでの「EDINETを使用する場合の特例」について,皆様から御質問,御意見があれば,お出しいただきたく存じます。いかがでしょうか。   それでは,神作委員,どうぞ。 ○神作委員 ありがとうございます。株主総会資料の電子提供制度が株主,特に,真面目に会社から提供された情報を解読して議決権を行使しようとしている株主にとって,取り分け有用なのは,EDINETと結び付いて総会資料が提供されるとともに有価証券報告書を総会前に閲覧できる場合であると思います。金商法上の継続開示制度に基づく有価証券報告書が提出されEDINETにより開示されることと,株主総会資料の電子提供制度とが結び付くことは,議決権行使について意思決定するに当たり,より豊かな情報を利用し得るという点で,非常に意味が大きいと思います。EDINETを用いる場合に特例として,部会資料19の8ページの(2)に幾つかの論点が挙げられておりますけれども,それ以外にもいろいろ考えるべき要素がないだろうかは,更に検討してみる必要があると思われます。   特例の内容として,中断や調査に関する規律の要否ですとか,議決権行使書面の交付,それからEDINETのホームアドレスなどの記載などが挙げられておりますけれども,それ以外にも,例えば,電子提供措置開始日の規律でございますけれども,現在のA案,B案というのは株主総会の日の4週間前又は3週間前と株主総会の通知を発した日のいずれか早い日となっておりますけれども,EDINETを通じて開示される際に有価証券報告書も提供される場合には,通常の株主総会の招集通知に比してより豊かな情報が提供されることになりますから,場合によっては株主総会の招集通知と,電子提供措置開始日を必ず合わせなければならないのかという論点もあると思います。また,株主総会の招集通知の発送期限についても,EDINETを利用する場合には,有価証券報告書の準備ができる期間との関係について考慮する必要があると思いますので,特別扱いする余地はないのか,株主総会の招集通知の時期についても考える余地があると思われます。   また,書面交付請求についても,EDINETを利用している会社は一般的に言えば株主の数も相当多いところから,定款で書面の交付請求権を除外するのは,今日の御議論を伺っていても,また,パブコメの意見を拝読しても,難しいとは思いますけれども,累積についての対処等々,書面交付請求権についても検討する必要性は大きく,更に検討する余地はあるのではないかと思います。また,調査や中断についての規律というのは,公的な金商法上の制度である継続開示制度にのっとっているわけですから適用を除外することが十分に考えられると思います。他方,取り分け会社法上記載が要求されている事項で,金商法上は要求されていない事項については,それが電子的に提供されている文書のどこに書かれているかが分かるような,そういう工夫というのもあるのではないかと思います。   いずれにしても,私は,株主総会に関する資料の電子提供が最も株主,取り分け議決権行使に熱心な機関投資家にとって一番意味を持つのはEDINETと結び付き,有価証券報告書と共に提供される場合であると考えておりますので,それを促進するような制度の在り方について,更に御議論いただきたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。今,神作委員の方から御指摘がありましたけれども,EDINETの記載内容がインターネットを通じて公表されていることは,これは国民にとって大変利便性が高いことですし,いわゆる一体的開示や有報の総会前開示を促進するという意味からも,是非,このEDINETを通じて開示されている場合には電子提供措置に特例を設けるということを前向きに検討すべきであると思います。   その上で,ですけれども,このEDINETですね,開示用電子情報処理組織の金商法上の位置付けについて押さえておく必要があるかと思うのですが,この制度は内閣府の電子計算機と開示手続を行う者,金融商品取引所,認可金融商品取引業協会の入出力装置を接続したものでありまして,公衆縦覧も財務局等,金融商品取引所,発行者に置かれた電子計算機の入出力装置の映像面に表示する方法となっているかと思います。これに対して,投資家等の一般国民が自らの端末を通じてインターネットを通してその記載内容にアクセスすることが認められていますけれども,これ自体は特に金商法上の法的な位置付けや担保はなくて,行政上のサービスとして実施されているということでないかと思います。そうしますと,現行法上,EDINETの中断の規定や個別書類等にアクセスするリンクが指定されていないことも,言わば当然のことだと思えます。   ただ,今回,電子提供制度を採用しますと,これは情報の提供を受ける者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに情報を記録する方法を採る必要があると,また,受信者がファイルへの記録を出力することにより書面を作成することができる方法でないといけないということになります。現行法上のサービスとして行われているEDINETは,これを閲覧する場合でも,これらの要件は実際上は満たされておりますので,是非,特例は認めるということでよいかと思いますが,そういったEDINETの法的な構成と会社法上の電子提供制度の関係は,きちんと整理する必要があるかと思うわけです。具体的に申し上げますと,要件上は,EDINETの記録内容が実際上インターネットを通じて公開されている場合には特例を認めるということになりますし,その要件を満たすのはEDINETを通して提出されたときではなくて,実際それがインターネットを通して閲覧可能になったときということになるのではないかとも思います。   また,中断やその調査に関しては,EDINETの行政サービス,これが国の運営する非常に信頼性の高いものであることから,中断や調査の措置までは不要ではないかと思います。ただ,EDINETの記載内容がインターネットを通じて公開されている,そのことにもし障害が起きて,そのことを会社が知ったときには,遅滞なく自社ウェブサイトで開示するというような措置も義務付けることは検討に値するのではないかと考えます。   なお,EDINETにより提出された内容がインターネットによって閲覧可能な措置がとられている場合に電子提供措置の特例を認めることは,もちろん進めるべきですけれども,EDINETの記載内容がインターネットを通じて閲覧可能な状態になっている,このこと自体は公衆縦覧に含められていないと理解されますけれども,これはなぜ入れないのかよく分かりませんが,これを機会に,インターネットの公開自体を公衆縦覧の一つの方法として明確にすることも検討する価値があるのではないかと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   齊藤幹事,どうぞ。 ○齊藤幹事 ありがとうございます。EDINETの位置付けにつきましては,神作委員や沖委員のように,この制度の利用ができるようになれば,より一層望ましいものであると思います。ただ,このEDINETの位置付け,あるいはEDINET利用の理念につきまして,もう少し明らかにしておくことができるのであれば,それがいいのではないかと感じております。   つまり,今後の国として進むべき方向として,電子提供に必要な設備というのは,みんなの利益にかなうものとして,インフラとして公的サービスとして進めていくべきであると考えるのか,本来は各企業で私的にやるもので,その補助としてEDINETも使ってもいいよという程度のものと考えるのかということであります。   こういうコストは国として担って,みんな利用できるものだと位置付けていくのが本来は望ましいのではないかと思います。ただ,そのときに,金融庁の方の面前で申し上げにくいのですけれども,このような官製サービスは信頼性が高いのですが,その信頼性の高さのゆえかもしれませんけれども,他のシステムの柔軟な接合とか,ユーザーのニーズに応じて前向きにシステムを開発していくという点におきましては,民間サービスに一歩遅れるところがあるのではないかと懸念いたします。この領域においては,いずれワンストップサービスの発展なども含めてサービスがアップデートしていくという展望を持って,EDINETもそういうものに対応していくような姿勢でこの問題に臨んでくださることを期待しています。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,小林委員,三瓶委員の順でお願いします。 ○小林委員 どうもありがとうございます。このEDINETを使用する場合の特例の適用対象でございますけれども,今回,EDINETを使用できる場合について,これまでよりも具体化される形で提案が行われたということは,一歩前進だろうと考えております。ただ,今回の提案で,EDINETを使用できる場合につきまして,電子提供措置事項を記載した有価証券報告書の提出手続を行った場合に限るという考え方が示されております。   実務的には株主総会資料,みなし提供の資料,それから有価証券報告書の資料と,3段階に分けることが可能なのですけれども,そのスケジュール上,まず株主総会資料,次に少し遅れてみなし提供の資料,そして最後に有価証券報告書の作成といった手順で進んでいる場合がほとんどだと考えております。これを,例えば,有価証券報告書の提出のときに株主総会資料を合わせるということになると,多分,一番早いところに全部合わせるということになるので,実務的には非常に困難だろうと考えています。   そうすると,この制度を使えれば非常に有り難いとは考えるのですけれども,現実により多くの会社が利用できる制度にすることを考えると,有価証券報告書の提出とは別のタイミングで,例えば臨時報告書の提出と同様の形で,EDINETによる電子提供措置がとれるようになれば,この仕組みの使い勝手がすごく良くなります。もちろん法務省の管轄ではないので,困難な部分もあるかと思うのですけれども,実務的にはそうしていただければ非常に使い勝手もいいし,現実的であろうと考えています。   もう一つ,特例の内容ですけれども,EDINETを使用して情報を開示する場合には,当該開示をもって電子提供措置をとったものとみなして,中断調査を要しないという設計であれば,例えば,上場企業全部,あるいは公開会社くらいまでは使えるという仕組みがすごく見えてきますので,そういう観点で考えていただけると非常に有り難いと考えております。 ○神田部会長 ありがとうございました。   三瓶委員,どうぞ。 ○三瓶委員 先ほどと同じ三つの大きな観点,権利行使側の利便性,改善,分かりやすさという3点から申し上げますと,EDINETを使うという特例は非常に重要な点だと思います。というのは,一つ,権利行使側の利便性という意味では,事報と有報の一体化を考えていくこと,それと株主総会前の有報,こういったことはずっとこれまでも言われてきたことです。こういったことに今すぐそれがなるかというのはあれですけれども,その方向に一つ,可能性が見えてくるという意味で,まず重要です。そして,こういったシステムを使うことによって運営の安定運用が期待されるということ,そして,分かりやすさという意味では,どこにそのものがあるのかということが非常に予見可能というか,誰にでもすぐ分かると,統一プラットホームを使うことがそういう意味で大事なのですね。   例えば,部会資料18の26ページには,ISS様がコメントとしてTDnetの話を挙げています。TDnetやEDINETというような言い方ですが,いずれにしても統一のプラットホームを使うことが大事だと書かれています。そういう意味では,TDnetは,現状の,例えばISS様が接続するシステムとしてはそうなっていますけれども,上場会社対象だと思いますし,EDINETをプラットホームにした場合でも,ここから更に接続をすることも可能であると聞いています。ですから,そういう意味で,より広くということと,先ほどの将来を見据えた有報,事報の一体化等も含めると,やはりEDINETの利用の特例を中心に,是非とも検討を進めていただきたいと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。   柳澤委員,どうぞ。 ○柳澤委員 ありがとうございます。EDINETを使用する場合の特例につきまして,補足的なコメントをさせていただければと思います。機関投資家として,特例の適用に当たり重要なポイントと考えておりますのは,事業報告及び計算書類と有価証券報告書の一体的開示や,株主総会前の有価証券報告書の開示を促していくという観点になりますので,電子提供措置事項の記載された株主総会資料のみを株主総会前に開示する場合には,特例は適用されるべきではないと思います。その意味におきましては,電子提供措置事項の記載された有価証券報告書が株主総会の前にEDINETを利用して開示される場合が特例の適用対象になるという整理が妥当であり,こうした株主総会前における一体的開示の促進効果といった観点が抜け落ちないように検討を進めていただければと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   金融庁の田原幹事,何かございますか。よろしゅうございますか。   それでは,どうもありがとうございました。ここで15分間休憩を取りたいと思います。4時15分に再開させていただきます。よろしくお願いします。           (休    憩) ○神田部会長 それでは,再開させていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。   お手元の部会資料19で言いますと第1の6,10ページの上から4行目から,11ページの上から2行目まで,「6 みなし提供制度」と「7 電子提供制度採用会社以外の株式会社における株主総会参考書類等の交付請求」,この二つにつきまして御意見がおありの方がいらっしゃいましたら,お出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。6のみなし提供制度についてですが,今回の新しい制度が導入された後でも,書面で総会資料の提供を続けることとなる非上場会社は恐らく存在すると思いますし,実際に存在しない場合でも,将来的に存在することになる可能性があり,そうした会社について,今使えるみなし提供制度を使えなくする必要性や特段の合理性はないと思いますので,制度を存続させることでよいのではないかと思います。   それから,7の電子提供制度を採用した会社以外の会社における交付請求ですが,これにつきましても,全体の目的,方向性としての電子化を進めるという観点からしますと,今回の制度導入を受けて,やはり個別に電子提供に同意した株主については,今後はもう書面交付請求権を維持する必要性は乏しいので,書面交付請求権を認めないことを明確にするということでよいのではないかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。みなし提供制度については先ほども御意見を頂いている方もあったとは思うのですけれども。特に,よろしゅうございますか。   それでは,先へ進ませていただきたいと思います。   次は,部会資料19の第2になります「株主提案権」についての御審議をお願いしたいと思います。   まず,事務当局からの御説明をお願いいたします。 ○坂本関係官 それでは,11ページ,「第2 株主提案権」について御説明させていただきます。   本文1(1)①は,定款変更議案の数の数え方について,どのように考えるかを問うものでございます。部会資料18の37ページ以下に記載しておりますとおり,パブリックコメントにおきましては,定款変更議案の数について,内容において関連する事項ごとに区分して数える旨の明文の規定を設けるものとすることに賛成する意見が多く寄せられました。他方で,このような明文の規定を設けた場合であっても,判断基準が不明確であるため,実務上の運用が困難であるという意見や,ガイドライン等によって判断基準を明確にすべきであるという意見もございました。   これらの意見は,仮に,このような明文の規定を設けた場合であっても,複数の事項が関連するか否かの判断には一定の解釈の余地があり得ることから,提案株主と会社との間で関連性の有無について意見が分かれる事態が想定され,そのようなときには紛争に発展するおそれもあり,会社としては紛争を避けるために関連性を保守的に判断せざるを得なくなるなど,実務上の運用が難しいことを懸念するものといえます。   そこで,パブリックコメントの結果を踏まえまして,定款変更議案の数については,一定の関連性がある事項ごとに区分して数える旨の明文の規定を設けることが考えられますが,前述のような懸念を払拭するため,具体的な判断基準についての考え方をここで改めて検討しておく必要があるものと考えております。   具体的な判断基準の例としまして,部会資料では二つの考え方を御紹介させていただいております。一つ目の考え方は,いずれか一方の提案が他方の提案を論理的に前提とする関係にあり,分けて審議すべきでないと考えられる場合にのみ関連性があるものとする考え方であり,二つ目の考え方は,このような場合のみならず,株主が通知した提案の理由の内容も踏まえて,いずれか一方の提案が他方の提案と密接に関連すると合理的に認められる場合についても関連性があるものとする考え方です。   一つ目の考え方による場合には,判断基準としては二つ目の考え方に比べて明確であり,会社として客観的に判断しやすいと思われますが,他方で,例えば,仮に,事業目的に10個の目的を追加する旨の定款変更議案が提出されたような場合,個々の目的ごとに区分して10個の議案として数えることとなり得るなど,関連性があると判断される場合が限定されすぎるのではないかという懸念もあるものと考えられます。   二つ目の考え方による場合には,このような懸念は払拭することができるものと思われますが,他方で,密接に関連すると合理的に認められるか否かの判断については一定の評価を伴うものであるため,一つ目の考え方と比べて,会社として客観的に判断することが難しくなるという懸念があるものと考えられます。   このように,これらのいずれの考え方につきましても長短があると考えられますので,ここでお示しした二つの考え方以外の考え方も含めて,どのように考えることが適切かについて御議論いただければと考えております。   本文1(1)②は,定款変更議案の提出に際しての株主側の手続について,今回,新たな御提案をさせていただくものです。パブリックコメントにおいては,株主が提案しようとする定款変更議案に複数の事項が含まれていると思われる場合に,会社において,その議案を幾つと数えるべきかを判断することとなり,その前提として,提案株主の認識を知るために提案株主との間で何らかのコミュニケーションをとる必要が生じて,手続が煩雑となるといった手続的な負担が生ずる上,その議案の数について提案株主との間で認識に齟齬が生じたときには,どのように数えるべきかをめぐって紛争に発展するおそれもあるという懸念が示されておりました。   このような懸念は,定款変更議案の数について会社側が判断することが前提となっていることもその要因の一つであると考えられ,そうであるとすれば,定款変更議案について,会社側ではなく提案株主側で自らの認識を前提として議案ごとに区分して提案しなければならないものとし,会社としては,提案株主による区分に従って形式的に議案を数えることができるものとすることによって,会社が提案株主の認識を改めて確認する手順を不要とすることができれば,前述のような懸念は一定程度回避することができるものと考えられます。   そこで,本文1(1)②におきましては,取締役会設置会社において,定款変更議案について会社法第305条第1項本文の請求を行う場合には,株主は,議案ごとに区分して当該請求をしなければならないものとすることについて,どのように考えるかを論点として掲げさせていただいております。   この場合には,会社としては提案株主による区分に従って,それぞれを一つの議案として株主総会に諮れば足りることとなります。仮に,提案株主が複数の事項を含むと思われる定款変更議案を提案しようとする場合において,複数の事項について区分せずに提案してきたような場合には,会社としてはそれらを一つの議案として取り扱うこともできますし,本文1(1)①でお伝えしましたとおり,一定の関連性がある事項ごとに区分して取り扱うこともできるものと考えられます。また,株主が膨大な数の事項を一つの定款変更議案として提案した場合で,仮に,それが濫用的な株主提案権の行使と評価されるような場合には,内容による提案の制限の対象になるということも考えられます。   次に,本文1(2),株主が提案することができる議案の数についてですが,部会資料18の31ページ以下に記載しておりますとおり,試案第1部第2の1本文については,パブリックコメントにおいて団体からの意見が分かれましたが,提示した4案の中ではA1案に賛成する意見とB2案に賛成する意見が比較的多く寄せられました。もっとも,そもそも数の制限を設けること自体に反対する意見や,提案することができる議案の数を5未満(1ないし3)とすべきであるというような意見もございました。なお,個人からの意見としては,数の制限を設けること自体に反対する意見が圧倒的に多いという結果となっております。時間も押しておりますので,それぞれの意見の理由につきましては,適宜,部会資料18の該当箇所を御覧いただきたいのですが,そのようなパブリックコメントの結果も踏まえ,株主が提案することができる議案の数についてどのように考えるかを改めて御議論いただきたく,論点として掲げております。   続きまして,15ページ,「2 内容による制限」について御説明させていただきます。   本文2①の内容は,表現ぶりを若干変更してはおりますが,試案第1部第2の2①から③までと同様の内容となっております。部会資料18の38ページ以下に記載しておりますが,試案第1部第2の2①から③までにつきましては,パブリックコメントにおいて,明文の規定としてこれらの拒絶事由を設けることに賛成する意見が多く寄せられました。「専ら」という要件についは,厳格で立証が困難であるため,会社がこの拒絶事由を根拠に株主提案を拒絶するという判断にちゅうちょし,拒絶事由の実効性が失われるとして,削除するか,若しくは「主として」という要件に変更すべきであるという意見も見られましたが,他方で,「主として」という要件ではやや不明確であり,濫用的でない株主提案権の行使をも制限してしまうおそれがあるという意見や,株主提案権を過度に制限することにならないよう,「専ら」という厳格な要件を用いることが望ましいという意見もあったことから,中間試案と同様の内容を維持させていただいております。   本文2②は,試案第1部第2の2④に対応するものでございます。試案第1部第2の2④についても,パブリックコメントにおきましては,明文の規定としてこのような拒絶事由を設けることに賛成する意見が多く寄せられましたが,他方で,具体的にどのような場合にこの拒絶事由に該当するかが不明確であり,会社による恣意的な解釈によって過度に株主提案権が制限されてしまうおそれがあるのではないかという懸念も示されたことから,このような懸念を軽減するため,内容を若干修正しております。   具体的には,株主総会の適切な運営が妨げられるか否かの方が,株主の共同の利益が害されるか否かよりも客観的な判断になじむと思われますので,株主総会の適切な運営が妨げられるか否かという前半の要件に,「著しく」という限定を加えた方が,会社による恣意的な解釈の余地は狭くなると考えられることから,「著しく」という限定文言を前半の要件に移動させております。   なお,パブリックコメントにおきましては,後半の「株主の共同の利益が害されるおそれ」があることを要件として要求する必要がないのではないかという意見もありましたが,株主総会の適切な運営が著しく妨げられることに加え,その結果として,株主の共同の利益が害されるおそれがあることも要件として明示することにより,単に会社側の都合上望ましくないような提案を拒絶することはできないことがより明確となり,会社による恣意的な解釈がされる余地がより限定的になるものと考えられるため,この要件を維持しております。   最後に,17ページ,「3 株主提案権の行使要件」について御説明いたします。   部会資料18の49ページ以下に記載しておりますとおり,株主提案権の行使要件のうち,300個以上の議決権という持株要件について,パブリックコメントにおいては削除又は引上げといった見直しはすべきでないという意見が多く寄せられました。これらの意見は,300個以上の議決権という持株要件の削除又は引上げは,300個以上の議決権という絶対的な基準が設けられた趣旨に反し,個人株主による株主提案権の行使を過度に制限してしまうおそれがあること,数の制限や内容による提案の制限に加えて持株要件を見直す必要性は乏しいことなどを理由として挙げております。   これに対しては,300個の議決権と100分の1の議決権の価値が著しくかい離していること,1%を大きく下回る議決権しか有しない株主からの提案に対する賛成割合は低いにもかかわらず,そのような提案のために株主総会の審議時間が割かれることにより株主総会の適切な運営が妨げられていることなどを理由に,300個以上の議決権という持株要件の削除又は引上げをすべきであるという意見もありましたが,今回,数の制限や内容による提案の制限を設けることになれば,株主提案権の濫用的な行使は一定程度排除することができると考えられるため,パブリックコメントの結果も踏まえ,本文3の(1)におきましては,300個以上の議決権という持株要件の見直しはしないものとすることを御提案しております。   次に,株主提案権の行使期限についてですが,パブリックコメントにおいては,前倒しに反対する意見が相対的に多く寄せられました。これらの意見は,現行法における株主提案権の行使期限を前提としても,会社の準備期間が必ずしも短過ぎるとはいえず,行使期限の見直しを基礎付けるような立法事実が認められないこと,行使期限の前倒しによって株主が十分な検討期間を確保することができなくなることなどを理由として挙げております。   これに対しては,株主総会の招集通知の早期発送や発送前開示に取り組む上場企業が増加している中で,現行法における行使期限を前提とすると,各種準備作業のための十分な期間を確保することができないこと,株主提案権が行使期限直前に行使され得ることが株主総会の招集通知の早期発送を妨げる要因の一つとなっていることなどを理由に,株主提案権の行使期限を前倒しすべきであるという意見もございましたが,今回,提案することができる議案の数の制限や内容による提案の制限を設けることになれば,提案の検討など,各種準備作業に掛かる時間は一定程度削減することができるものと考えられるため,パブリックコメントの結果も踏まえ,本文3(2)におきましては,株主提案権の行使期限の見直しはしないものとすることを御提案しております。   御説明は以上になります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,今御説明いただきました部分につきまして,御質問,御意見,どなたからでもお出しいただきたいと思います。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。まず,提案できる議案の個数については,基本的に限られた時間の中で特定の株主の提案に多くの時間を割くということは株主総会における議論の充実を妨げるものになりますので,より大胆に制限すべきという意見であります。中間試案の5あるいは10を軸とする案では数の制限としては不十分であり,1ないし3をベースとすべきであると考えています。   提案された議案の数え方ですが,やはり実務においては相当の確度をもって判断できる基準を定めることが望ましいと考えております。その意味で,経団連としましては,「内容において関連することが客観的に明白である事項」とすべきであると申し上げているところです。部会資料19の第2の1(1)①の(注)に二つ案が記載されていますが,後者である(ⅱ)の「密接に関連する」という要件だけでは,やはり実務としては自信を持って判断するのが難しいため,もう少し具体的にすることを検討していただきたいと考えております。   次に,(1)②の株主が議案ごとに区分して提案するという案について,非常に細かいことで恐縮ですが,1点確認したいことがあります。部会資料19の13ページの中ほどの少し下の,「なお」で始まるパラグラフの後半に,「関連性のない複数の事項を含む定款の変更に関する議案ではあるものの,後記2②の内容の拒絶事由には該当しない場合であっても,株式会社としては,当該議案を一の議案として扱った上で,一括して審議すれば足りる」とありますが,提案された議案の数え方と,総会への上程の仕方,審議のくくり方は別の問題ではないかと思いますので,特にここの「当該議案を一の議案として扱った上で」というのが特段の意味を持つものなのかどうかを確認させてください。例えば,株主から定款変更の提案議案があり,株主はそれを一つの議案だと主張し,会社はそれを三つの議案だと判断したような場合に,ここにあるように「一の議案として扱った上で」としないで,通常は三つの議案として数を数えた上で一括して総会に上程して一括して審議して決議すると思うのですが,その実務との関係で,「当該議案を一の議案として扱った上で」というのは意味を持ち得るのかということを確認させてください。   それから,株主が提案した議案の数が上限を超えた場合の取扱いですが,これについては,やはり上限数を超えた場合には全て不適法と扱うのが良いと考えております。全て不適法としない場合には,会社があえてチャレンジしない,異なる数え方をしない限りは,上限数を超えていても全ての提案が通るということを考え,株主が本来は上限を超えていることを承知の上で少なく申告して提案するといったことも起こり得ますので,上限数を超えた場合には,全ての提案を無効とすることを明確にしていただきたいというのが実務からの要望であります。   すみません,内容による提案もよろしいですか。次に,内容による提案の制限についてですが,やはり気になっておりますのは①の「専ら」という文言でありまして,ここに書いてあるとおりなのですが,提案株主の内心に係ることについて,専ら不正な目的であると会社が判断して拒絶するというのは,実務的には極めてハードルが高く,逆に今の状況よりも権利濫用的な提案の制限が認められにくくなるのではないのかという懸念があります。何度も申し上げておりますとおり,「専ら」という言葉を削除していただくか,「主として」としていただきたいのですが,仮に文言的に「主として」という言葉を入れることが据わりが悪いというのであれば,例えば,人の名誉を侵害すること等を「主たる」目的とする場合,あるいは「主な」目的とする場合といった形で,「主たる」や「主な」としてはいかがかと思います。   「専ら」とした場合と,「主として」,「主たる」,「主な」とした場合の違いについてお伺いしたいのですが,会社が内容として不適法として争った場合に,その内心が不適正であることに対する確からしさという観点で,実際どう違ってくるのかということを我々素人的に考えると,「専ら」というと大体8割ぐらいのイメージであり,「主として」,「主に」というと,一番大きな要因,一番大きな目的ということで,少なくとも5割程度あれば確実にそうだといえるのではないかと考えているのですが,その辺りはどう考えるべきなのでしょうか。また,その関連でお伺いしたいのが,権利濫用で争われたケースでの東京高裁の平成24年5月31日の決定において,東京高裁が,「主として当該株主の私怨を晴らし,あるいは特定の個人や会社を困惑させるなど,正当な株主提案権の行使とは認められないような目的に出たものである場合には,権利濫用として許されない場合がある」とし,「主として」という言葉を使用しているのですが,「専ら」という文言を規定に導入した場合と,この東京高裁の決定を踏まえた現状とで何か変わるところがあるのかという点であります。   もう一つは,内容による提案の制限に関して,部会資料にはありませんが,業務執行事項に係る提案の制限について申し上げます。株主総会は,通常は年に一度しか開催されないものでありまして,そもそも業務執行に関する決定を行うような機関ではないのですが,業務執行に係る提案が定款変更の形で行われることが非常に多くなっています。仮に日常的な業務執行事項が定款に定められてしまうようなことになると,機動的かつ柔軟な経営判断に支障が生じますし,企業の稼ぐ力にマイナスに働き,株主全体の利益に反することにもなりかねないので,こうしたことを防ぐ意味でも,業務執行事項に係る提案の制限については,やはり検討すべきであると思っており,先ほど,「専ら」,「主として」という言葉がありましたが,例えば,「専ら業務執行の範囲に属する事項を定款に定めることを求める株主提案はできない」といった旨の規定を設けるべきではないかと考えます。   最後に,株主提案権の行使要件,持株要件,それから行使期限について,部会資料を拝見する限り,パブリックコメントで見直し反対が多かったので,パブリックコメントを踏まえて見直さないということでどうかとしているように読めるのですが,パブリックコメントの意見数はともかく,意見としては,企業関係者は見直しに賛成,その他はおおむね見直しに反対と,二つに割れているというのが実態ではないかと思います。特に,行使期限の前倒しについては,企業関係者のコメントに加え,一部の大学からも賛成ないし条件付き賛成という形の意見が出されておりますので,パブリックコメントの結果から直ちに見直さないという結論に至るべきではないと思います。   また,行使期限の前倒しについて,補足説明に前倒し反対の理由としてパブリックコメントで寄せられた理由が幾つか挙げられていますが,これについて申し上げると,総会の準備期間が必ずしも短いとは言えないという理由はかなり主観的で,実務感覚には合わないと言えますし,前倒しによって株主提案権の行使や内容の検討期間が十分確保できなくなるという理由に関しても,8週間前にすれば十分検討できて,もう少し前倒ししたら検討できなくなるというものではなく,検討のスタートを若干早めればよいだけのことだと思いますので,余り合理的とは言えません。ということですので,持株要件の見直し,行使期限の前倒しにつきましては,引き続き御検討をお願いしたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。御質問が幾つかあったと思います。 ○竹林幹事 御質問いただいたものでございますけれども,まず,変更議案の数え方というのか,変更議案として一つだと株主の方が言われているときに,会社が三つだと考えられるというような場合ですけれども,私どもで考えておりますのは,最初に個数の問題といたしまして,一つとして扱う場面というのは個数としてもそもそも一つであり,三つとして会社が考えられたという場合について,分けて数えられるということであれば,個数自体は三つと扱われるということになるかと思います。   上程されるという趣旨について,私が,正確に理解しているか分かりませんけれども,補足説明で書かせていただいているように,一つとして扱うという場合には,変更議案一つとして一つの賛否を問うという意味で考えておりまして,もし会社として,それは三つと数えた上で上程される,審議される場合には,賛否自体は三つに分かれ得るという理解でございます。   続きまして,内容の制限の関係でございますが,主たると専らと申しますのは感覚的なことで,何とも申し上げにくいのですけれども,言葉の字義の上では専らの方が要件としては厳しくなるだろうとは理解しているところでございます。ただ,それで今の実務に影響を及ぼすのかと申しますのは,ここは権利濫用として認められる場合を一定程度はっきりさせたいということでございますので,ここで書いたもの以外が権利濫用として認められなくなるのかと申しますと,そういうわけではないと考えているところでございます。   また,裁判例を必ずしも前提としているわけではございませんけれども,実際の事案に即したときに,その事案を前提として,専らというふうな認定がされる余地というのもあろうかとは思っておりまして,必ず今の裁判例等を前提としたときに認められにくくなると私どもとして考えているわけではございません。   御質問いただいた点については以上になろうかと思います。 ○神田部会長 よろしゅうございますか。 ○古本委員 はい。 ○神田部会長 ありがとうございました。   大竹委員,どうぞ。 ○大竹委員 裁判例にも御言及を頂いて,議論になりましたから,私からも少し問題提起をさせていただいて,議論を豊かにしていただいたらと思います。今の内容による提案の制限に係る部分でありますけれども,例えば,株主が会社提案のA取締役の選任議案に反対し,自ら独自にB取締役の選任議案を提案する,その提案理由の中でA取締役の名誉を侵害するような事実の摘示をして,B取締役の方が良いのだというようなことを提案するというのは,ままある話かと思います。その場合に,事実の摘示がされているからといって真実性の証明の話はしないのだというのは補足説明の中でも言及されているので,それは理解いたしました。その場合に,摘示されている事実が取締役の資質能力に関わるものであれば,真実性の証明に至るまでもなく,それは許されるのだと基本的に考えることとしますと,A取締役の資質能力に関する事実の摘示がされる限り,なかなか「専ら」人の名誉を侵害するということには当たらないのではないかと思われ,そうすると,この要件に該当して内容が不適法であるというのはなかなか言い難いのではないかというのが今まで事件を扱っていた者の感覚ではあるのです。   逆に言いますと,仮に今のような解釈が正しいとすると,専ら人の名誉を侵害する目的に出たというのはどういう場合かというと,例えば,その株主がA取締役の不行状を指摘するのが3回目であるとか,毎年の取締役会で言っているとかといった場合には,その要素をも考慮して「専ら」という認定をするのだということになりましょうか。仮にそれがA取締役の資質能力に関わる事情であったとしても,そういう事情が加わらないと,「専ら」という要件を認定するのは少し抵抗を覚える事案が多いなというのが正直なところかと思うのですけれども,これらを委員及び幹事の先生方はどんなふうにお感じになられるか,御議論いただけたらと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,ほかにいかがでしょうか。小林委員,どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。まず,(2)の株主が提案することができる議案の数につきましては,日本商工会議所としては,株主の権利にも配慮しつつ,会社提案の一般的な議案数も念頭に置き,総会の限られた時間の中で株主全体の利益のために経営側と有意義な対話を行う時間を確保するという観点で,これまでも議案の数は3から5ぐらいが適当と主張しております。パブリックコメントでも,中間試案とは少し違いますけれども,役員の選任又は解任に関する議案を除いて上限を3にすべきであると申し上げておりまして,A1案に近いのですけれども,もう少し制限的に考えてほしいということを申し上げております。   もう一つ,株主が提案することができる議案の数の上限を超えた数の議案の提出の場合でございますけれども,これはやはり全て無効にしていただきたいということを申し上げてきましたし,今回も改めて申し上げるところでございます。現行実務では,元々会社自体,可能な限り提案株主とコミュニケーションをとろうとしております。しかし,協議によって議案を選択する方法や,株式会社の判断で株主総会に諮る議案を選択する方法は,実際には適法性の検討や,株主との協議の時間が非常に掛かってしまうような事実もありますし,実際に株主と連絡が取れない場合もあります。したがって,議案の数の制限を行う前提で考えたときには,やはり上限数を超える提案は全て無効とするようにはっきりしていただかないと,実際には会社としての対応が極めて困難になる事例が多いと考えておりますので,その点については御考慮いただきたいと思います。   それから,内容による提案の制限でございますが,今回の提案のうちの②につきましては,「総会の適切な運営が著しく妨げられ」と変えられておりまして,こちらについては一定の評価をさせていただきたいと考えております。   ①につきまして,「専ら」という文言につきましては,権利濫用に該当すると判断できる場合が非常に狭くなるという感覚でございますし,提案株主の内心に専ら不適切な目的があるというのを立証するのは困難だろうと考えております。そういう意味では,元々この部分に関して商工会議所としては,「専ら」というところは「主として」という文言をせめて使っていただきたいと申し上げておりましたので,これについても改めてお願いをしたいというところでございます。   それから,3の株主提案権の行使要件のところでございますけれども,こちらにつきましては,先ほど古本委員からの御意見にもありましたとおり,持株要件の見直し,行使期限の見直し,いずれも経済界としては強くお願いをしているところでございます。商工会議所は当然,会員数としても120万社以上の非常に多くの意見を基に,団体として意見集約しておりますので,私一人で申し上げているわけではございません。こちらについては強く,見直しの検討について継続していただきたいということを申し上げます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。株主提案権の問題につきましても今後の検討の進め方について意見を申し上げたいと思います。   まず,定款の変更に関する議案の数の数え方ですが,これは例年,資料版商事法務9月号に,その直前の6月の定時総会まで1年間の株主提案の集計がまとめられておりますけれども,これを見ましても,株主提案は定款変更議案の占める割合が非常に高くなっております。したがいまして,今回,数の制限を決める場合に,その所期の効果を発揮することができるかは,この定款変更議案の数の数え方に懸かってくることが多いかと思いますので,やはり会社法の中で明確な判断基準を置くべきであると考えます。   関連性の具体的基準ですけれども,部会資料の中では二つの考え方が示されておりますが,そのうち,一方の提案が他方の提案を論理的に前提とし,分けて審議すべきでない場合,この場合を一つの議案と考えるべきだと思います。これに対して,もし複数の議案が密接に関連すると合理的に認められる場合も関連性を認めるという基準を採った場合は,この密接,合理的という評価に解釈の余地が非常に広くなりますので,判断基準として機能することが難しくなるのではないかと思います。論理的な関係に限ったとしても,機関設計の変更のように幾つかの定款変更を必要とし,一部だけでは定款として成り立たないような場合も,この論理的な前提関係というところに含まれるかと思いますので,支障はないのではないかと考えております。   あと,部会資料の中で,複数の事業目的の追加を株主提案で提案する場合の問題が指摘されておりましたけれども,既に類似商号規制が廃止されておりまして,会社の設立の際にも原始定款では目的の記載の仕方はかなり柔軟に書けるようになってきているかと思います。これは株主提案の関係で定款変更議案として出す場合も,何個の目的として書くかというのは,ある程度まとめるとか,上位概念を使うというような形で一つの議案にまとめることが可能だと思いますし,それで,もし難しいのであえて複数に分けているということであれば,これは株主から見て分かりやすくしたということで,良心的な提案だと思いますので,それを何個と見るかということは,ある程度会社の判断に委ねてもいいのではないかと私には考えられるのであります。   その上で,議案の数が上限を超えた場合の扱いですけれども,やはり議案の数の数え方について会社と提案株主で考え方が対立するということが考えられますので,いきなり全体を却下してしまうということはどうも難しいのではないかと思われます。最終的には司法判断に委ねざるを得ないと。ただし,数の数え方が正しいということを前提にしますと,その中で,議案の数が上限を超えている場合に,どれについて適法性を検討して取り上げるかということは,これは会社に判断権を与えるべきだと思います。そうでないと,提案株主の方が,実際にあった例ですけれども,相当多数の議案を複雑に組み合わせて順序を付けて出してきたという場合には,会社の方でその全体について適法性の検討をすることを余儀なくされるということにもなりかねませんので,どれを取り上げるかの判断は会社が決めるということが必要ではないかと思います。   次に,内容による提案の制限の中で②の要件ですけれども,ここは株主共同の利益が害されるおそれの「おそれ」という部分が,どうも実際の総会運営の中で恣意的に運用されるのではないかという指摘が日弁連の中でもございました。今回の部会資料では,そういった点を御考慮いただいて,株主総会の適切な運営が著しく妨げられると,あと,株主共同の利益が害されるおそれがあるという形で二つの絞りをかけている要件を提案してくださっておりまして,非常に良いのではないかと思います。   この場合,そうであれば,要件を二つに区切っていただいて,一つはまず,株主総会の適切な運営が著しく妨げられると,もう一つは,株主の共同の利益が害されるおそれがあるというふうに,「おそれ」という部分は共同の利益だけに掛かると明記していただいた方が良いのではないかと考えます。その全体について会社の方で立証責任を負うということで,そういう方向を検討してくださればと思います。   あと,先ほど来,古本委員から御指摘があった専らの要件のところですけれども,ここは目的の観点から判断するということで,専らという要件を付けることによって会社が恣意的に運用することを防ぐという,その趣旨は重々承知しております。その上で,名誉毀損に関する法制度全体との関係といいますか,挙証責任の分配として,少し問題提起をさせていただきたいのですけれども,刑法の名誉毀損罪でも,名誉を侵害した者が230条の2の特例の要件を充足する場合,これは違法性阻却事由ということですけれども,その場合に不処罰とされていると。この230条の2の要件で,専ら公益目的であるとか,あるいは真実性の証明の事実証明は,名誉を侵害した被告人側にあるとされていると思います。   株主提案権について見ましても,提案をする株主に他人の名誉を侵害する特権が与えられているわけではないということだと思います。また,提案権を行使する場合に誰かの名誉を侵害するのに配慮して提案をすべきことは当然でありまして,実際それは可能だと思うのです。そうしますと,実際,提案の内容やその理由の記載中に人の名誉を明らかに侵害する事実が含まれている場合,会社の方でそれが専ら人の名誉を侵害する目的であるということが立証できない限り,提案として取り上げることを余儀なくされるということですと,名誉毀損が成立するような提案であったとしても,会社はそれを取り上げざるを得ないということになってしまいます。改正後は電子提供措置が実施されますので,その内容がインターネットを通して拡散されるということになるわけですけれども,そういった事態に会社が巻き込まれることが防げないということになってしまうわけで,これは考え過ぎなのかどうかということですね。もし専らという要件に代わる適切な要件があれば,その方が妥当とも考えられるのでありますけれども,この点は検討すべきではないかと思います。   最後に,株主提案権の行使期限の前倒しについてですが,今回,招集通知あるいは電子提供措置の開始期限が前倒しされる場合でも,論理必然的に株主提案権の行使期限を前倒しする必要があるわけではないということは,そのとおりかと思います。ただ,実際,書面交付請求権がどの程度出るか分からない中で,費用や封入の作業等の削減効果がどの程度あるか,そういったところを見極めながら,この行使期限の前倒しについては,招集通知の発送期限,電子提供措置の前倒しが行われる場合には,それと同じ期間,前倒しの必要があるかどうかは今後も検討の課題としていただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   三瓶委員,どうぞ。 ○三瓶委員 ありがとうございます。まず,数の制限なのですが,株主提案権の数の制限というのは,機関投資家からすれば非常に,機関投資家だけではないですね,株主からすると,重大な問題ではあります。ただし,フィデリティとしては,国内だけではなくて海外拠点も併せて,A1案を支持するということで意見書を出させていただきました。この過程は非常に難しかったのですけれども,まず,A1案からB2案まで全てについて,取締役の解任,選任議案については確保されているということ,そうすると,今,議論になっている定款変更議案についてどう考えるかということになります。   日本の今の実態をよくよく踏まえていくと,海外の投資家でも相当数,理解を示すところがあります。実際に北米,欧州,アジアの投資家と何回か電話会議をして,弊社内だけではなくて弊社の外の投資家とも話しましたけれども,反対と賛成が六対四ぐらいまでは理解が進んだと思います。ただ,最終的に本当に制限を認めていいのだろうかというところでは,最終的にはそこは踏み切れないという投資家が多かったというような状況です。   そこで,今の議論についてどう考えるかということですけれども,まず,11ページの(1)の①と②なのですけれども,①の(ⅰ)と(ⅱ)のどちらがいいかと,また,文言をどうしたらいいかと議論するよりも,②の方をよく考えた方がいいのではないかと考えます。というのは,提案する株主が責任を持って,幾つの議案を自分で提出しているのかと,上限がA案になるのかB案になるのか分かりませんけれども,いずれにせよその上限を理解した上で,その数以内のものを出すという責任を負うことは合理的だろうと思います。そこで,もしその表面的な数は範囲内だとしても,内容的にてんこ盛りにしていろいろなことを入れたとする場合には,その議案自体が非常に不明確になります。分かりにくい議案になります。そうすると,他の投資家,株主の賛同が得られるかどうか分かりません。特に,内容が余りにも多くなると,一部については賛成できる,ただ,ほかのところについては反対であるということになってきたときに,最終的に一つの塊としての議案には,賛成なのか反対なのか非常に判断が難しくなります。そうすると,最終的に,そうやっててんこ盛りにした場合には,提案した株主は実は賛成票を集めるには不利な提案をしていることになるのではないかと思います。そうすると,賛成を本当に勝ち取りたいのであれば,分かりやすい合理的な提案をすべきだと思います。   そうすると,提案する株主がきちんと議案の数を,こういう数で提案しますと言い,各議案の論点は絞るというのが,まずありきではないかと。ところが,それに対して,例えば上限を超えた数を提案した場合どうするのか,上限を超えている場合に,先ほど,そこで一発アウトということで無効にするという案もありましたが,本来であれば,これは法定の上限を超えています,ですから法定の上限内の数にもう一回再考してくださいということで押し返す。ただ,押し返した結果,その改善案というか,それが期限内になければ,それはもう無効とせざるを得ないと思います。そういったやり取りをするワンクッションを置くのがあるのではないかと思います。   欧米では通常,こういう議論をすると,そんなものは内容で判断するんだろうとすぐ言われてしまいますが,そういう意味では,内容について,先ほどいろいろなコメントがありますけれども,客観的になかなか決まらないということですが,そこは発行会社が責任を持つところだと思います。ある種,主観的な判断があるかもしれませんが,その判断に責任を持つ,それをしないと,内容についてどんなに言葉を選んだところで,客観的な判断基準は出来上がらないと思います。   最後の方で,要件として300個というところは見直しをしないということでよろしいかと思います。また,期限についてもそのままでいいと思います。株主権の制限につながることなので,例えて言うならば,民主主義の中で言論の自由に制限を加えるというぐらい重大なものと通常,捉えます。ですから,そこに制限を加えることはとても慎重であるべきです。ただ,日本の定款変更議案に入ってくるものが内容で余りスクリーニングされていないこともあるので,業務執行に関わることとか,経営監督に関わること,会社側の自由裁量の幅を奪ってしまうというようなものが多く見受けられます。ですから,そういったものはやはり本来,入ってこないようにすべきだと思います。一方でもっと真っ当な提案は,当然ながら,議案として受け入れる必要があると思います。   実際に定款変更議案の中で見受けられるのは,同一の株主から提案された議案にもかかわらず,その複数の議案間である種の矛盾を生じているというようなものがあります。これは,どれかうまくすれば通ればいいというような気持ちで提案している可能性があって,これは真面目に一つ一つの議案を精査する株主からすると,とんでもないことです。ですから,やはり提案する株主は一段とその責任を自覚して,同一の株主から矛盾するような複数の定款変更議案が提出されないように,また,他の株主の誤判断を誘起するような非効率な事態を避けるべきと思います。   ということで,先ほどの11ページの②のところについてと,あと上限の考え方ということを明確化していくと,ほかの,言葉で微妙にできるだけ客観的な判断ができるようにということをやっていく必要が相当部分,排除されるのではないかと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。   藤田委員,どうぞ。 ○藤田委員 株主提案権の提案ができる議案の数の数え方は,以前の会議で私が持ち出した問題でもありますので,若干コメントしたいと思います。まず,飽くまで議案の数え方について,定款変更議案に関する数え方に限定して議論しているので,念頭にある問題状況は,株主が一つの議案あるいは数の少ない議案であると主張し,会社がそれを複数であるあるいは株主が言っているよりもたくさんの数の議案であり制限を超えると主張しているという状況だけを想定します。議案の数え方はいろいろな問題の起こり方をするのですけれども,こういう問題だという前提でお話ししますが,要するに,会社はどこまで細分化できるか,株主はどこまで一つと扱えと要求できるかと,そういう問題だと考えられます。   その場合,こういう形で紛争になる以上は,まず株主に,どういう形で数えて提案しているのか言わせて,その上で会社が,それはそうですねと扱えばそれまでで,会社がそれ以上に分けて,もっとたくさんの議案ではないかと言いたいのであれば,会社がそう主張して議論するという流れに対応し,提案の①,②という形で規律を置くことは,問題の本質に即していて,良いと思います。   その上で,どう考えるかなのですが,現在(ⅰ),(ⅱ)の二つの提案があって,これは厳格に考えれば考えるほど株主にとっては不利といいますか,一括にできる範囲が小さくなりますので,厳しいということになります。そして,確かに(ⅱ)の考え方はやや曖昧過ぎる,会社としても,こういうことで分割して考えるということをする主張はしにくいというのは分かる気がします。それに対して,(ⅰ)は少し表現に問題があるような気がしております。まずその趣旨も確認させていただきたいのですが,今から申し上げる例は日本の会社で問題とならない例なので,余り良くないかもしれませんが,考え方を明らかにするためには分かりやすい例なので,あえてそれでお話しさせていただきます。   最近,私はある海外の団体に関係しておりまして,その団体が最近定款変更をしたのですけれども,その一つに定款の中の表現をジェンダー・ニュートラルな表現に変えるというもの,例えば,役員に関する条文では“he”で受けていたのをやめ,“he/she”とするとか,複数形に直しましょうとかいうことだったのです。何十か所と直したのですが,これは一つの考え方で一貫して多くの修正をしているものです。こういうタイプの提案は我々の議論のコンテクストでも一つの議案と数えるべきだと思います。しかし,この場合いずれか一方の提案が他方を論理的な前提としているとは言えません。ある条文の変更が他の条文の変更の論理的な前提となっているわけではないのです。ポイントは,論理的前提かどうかではなくて,ばらばらな議案として扱い,個別に決議して,一方は賛成,一方は反対という結果になった場合,明らかに論理的な矛盾となる,あるいは,少なくとも明らかに一貫性,整合性がないように思われる現象が起き得るということがあるなら,それは一括の議案として扱えと株主は主張する権利があるということなのだと思います。だから,論理的な前提となっているか否かが問題ではないことに注意したいと思います。ただ,そのように解釈するとしても,一つの議案として数えることができる範囲はかなり狭いことにはなります。   そこから先は,最終的な制限の個数を見ないと分からないので,例えば,上限数10であれば,このぐらいの数え方で私は十分だと思います。他方,一部の経済団体が主張しているように1個しか提案できないのだと,こういう数え方をしろというのは,難しいでしょう。5だとなかなか微妙になるのです。結局,提案の制限の数との関係で数え方というのも最後は決まってくると思いますので,差し当たり私は比較的明確で――明確という意味は私が申し上げたような意味ですが――厳しい数え方で行っていいと思うのですが,逆に,そのことを前提に上限数というのも考えるということで議論できればいいのではないかと思います。   古本委員の言われた点で,審議の仕方と議案の数の数え方の関係というのは,事務当局のお答えのとおり,直接論理的に完全に連動しているわけではないということでいいとは思うのですが,ただ,この辺りは,こういう法制が導入された後の実務の在り方は,よく考えていただきたいと思います。というのは,例えば,株主が幾つかの塊を一つだと言って提案してきて,会社が,いいですよと,そういうふうにいって審議するのであれば,それは今までどおり,柔軟に好きにやっていただいて,大した問題にならないと思います。それに対して,例えば,仮に提案の上限が10だとして,株主は定款変更を一つとして提案し,それと加えて別の三つほど株主提案をしてきて,会社は,いや,この定款変更は10である,残り三つは無視するという扱いをしたときに,それで,総会の当日,この10個の議案を一括審議し一括で決議しますとやってしまったら,本当にその10個という数え方というのは妥当だったのでしょうかという疑問を当然,引き起こすことになります。   という意味では,確かに論理的には,ここでの数え方と上程の仕方,決議の仕方は必ずしも連動させて,絶対的に連動するとは限らないのですけれども,要注意になることは間違いないと思いますので,従来は議案の数というのは法的にはほとんど意味がなかった,それに対して,このルールを導入する以上は法的な意味のあるものですので,そのことを前提に,やはり審議の仕方を考えなければいけなくなりますから,その限りでは,やはりこれは,どういうルールを導入するにせよ,また,この議案の数の数え方をどう考えるにせよ,こういうことを導入する以上は,丁寧な,少なくとも説得力があるような審議の仕方,議案の取り上げ方,決議の仕方を工夫していただく必要が出てくる,これはそうならざるを得ないと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,梅野幹事,中東幹事の順でお願いします。 ○梅野幹事 ありがとうございます。まず,15ページから16ページの「2 内容による提案の制限」の②についてコメントをさせていただきます。   日弁連の意見書では16ページにおいて,中間試案の④の「株主提案により株主総会の適切な運営が妨げられ,株主共同の利益が著しく害されるおそれがあるとき」について,会社が株主提案権を過度に制限する運用を行う口実となる可能性があるのではないかということを指摘いたしました。中間試案の①から③まで,つまり部会資料19の15ページの①による対応や,株主総会運営の工夫,例えば,提案株主の提案理由の説明の時間をある程度制限したり,多数の議案を一括して審議するなどが可能であることを考えると,中間試案の④を明文化することのデメリットの方が大きいのではないかという懸念があると申し上げました。   それについては今回,いろいろ工夫をされた②案が出され,それなりに懸念が解消されている部分はあると思いますが,引き続き上記の懸念が妥当する部分もあるのではないかと考えています。特に,部会資料19の16ページの下から10行目辺りの,「なお」から始まる段落について何点か疑問等がございます。まず,第1点目は,「なお」の次に,株主総会の適切な運営には,「総会当日の運営のみならず,総会の準備も含まれることを前提としている」とございますけれども,私の語感からいうと,事前に行使された議決権行使書をカウントすることなども運営と言えるのかも知れませんが,運営というのは主として,受付から始まる当日の運営を指すものであって,準備まで入れてしまうのはどうなのだろうかという素朴な疑問を持ちました。「準備」という言葉を加えればよいではないかとも考えたのですが,そうすると,かえって広くなり過ぎるということから,こういう記載になっているかという気もいたします。   次に,その後のところですけれども,具体例として,不必要に多数又は長大な内容の条項を含む定款の変更に関する議案が提案されたことにより,多大な時間が掛かり,他の株主による質問時間や他の議案の審議時間が大幅に削られるといったことが記載されています。しかし,こういった事態が本当に起こるのだろうかという点について疑問を持っております。先ほど日弁連の意見書を紹介しましたけれども,総会運営の工夫,つまり提案株主による提案時間の制限や,一括審議方式等により,ある程度時間は短縮できると思います。この点,部会資料19の13ページの真ん中辺りの「なお」という言葉から始まる段落にも,株主が膨大な数の事項を一つの定款の変更に関する議案として提出した場合に関して,一括して審議すれば足りるし,提案株主の説明が不必要に長くなる場合には,議長は議事整理権に基づいて提案株主の説明を制限することが可能であって,審議時間が許容できないほどに長くなることは余り想定されないというような記載があります。これは,膨大な数の事項を一つの定款に関する議案として提出した場合で,16ページの例とは少し違うのだろうと思いますけれども,同様の運営によって審議時間を余り長大にならないような形で持って行くことは可能ではないかと考えます。   また,ここでは触れられていませんけれども,議案自体ではなく,株主からの提案理由の参考書類における記載については,会社法施行規則第93条があり,適切であると考える分量を社内規定で会社が定めることができるので,その記載が膨大になることはないだろうと考えます。そういった意味から,このような事例が果たして株主総会においてここに書いてあるような弊害を生じさせるものなのかどうかという点については,若干の疑問があり得るのではないかと思ったところです。   もう一点,疑問がございまして,部会資料19の16ページには,当該株式会社の株主による株主総会の準備も株主総会の適切な運営に含まれるとされていて,下から2行目では,提案株主以外の株主が議案を検討するために,通常の総会準備においては生じないような時間を割く必要等が生じるといったことが書かれています。確かに機関投資家の皆様に御負担をお掛けすることはあると思うのですけれども,他の株主に生じる不都合が果たして会社が行う株主総会の適切な運営に対する障害になるというように読めるのかというと,私は疑問なように思います。   長くなりましたが,何を申し上げたいかというと,16ページの「なお」以下の段落で②についての必要性を論じられているのだろうと思いますけれども,こういった事例があったとしても,株主総会の運用の工夫等により対処できるのではないかということから,日弁連の意見書で指摘させていただいたような,この規定が濫用されるリスクというものは,やはりまだ否定できないのではないかと考えた次第です。   もう一点目は,提案することができる議案の数をどう考えるかということについてですけれども,日弁連では元の中間試案のB2案が適切という意見を述べさせていただきました。それについて細かく論じることはしませんが,部会資料19の14ページの1行目以降を拝見すると,議案の数は5未満,1ないし3とすべきであるとか,A1案に賛成する理由として,米国においては株主が提案することができる議案の数は1とされていることなどが挙げられています。   この点について,私などから申し上げるべき事柄ではございませんし,学者の先生方の御意見をお伺いしたいところですけれども,アメリカと日本の制度は異なっていると思いますので,アメリカにおける例を参考にしながら議論をするというのがアプローチとしていかがなのかどうかについて個人的に疑問を持っております。日本とアメリカでは株主総会の権限が異なっていて,例えばデラウェア州法上,総会の承認を要するのは取締役の選解任あるいは会社の基礎の変更に関わる合併等であって,これらの合併等の取引も取締役会によって行われ,株主ができるのは取締役会によって提案された当該取引に対して投票することだけである,などという記載も拝見しました。また,事業上の意思決定は取締役会の専権事項であり,株主が介入することはできないと,これについては別の議論があるようですが,そういった記載もございました。日本ではより広い株主総会決議事項が認められているので,アメリカの制度を参照しながらこういった議論をするということがどうなのかという点を疑問に思った次第です。   また,米国における株主提案については,ルール14a-7というプロキシー・ファイトの場合と,ルール14a-8という委任状行使書というのですか,プロキシー・カードに賛否の記載を設けることを要求する場合と2通りあって,後者の場合に1という制限が設けられているというように理解しております。要するに,日本における株主提案の場合はプロキシー・ファイトの場合なども含む事態を想定しているわけですが,アメリカでは,そういう株主への委任状勧誘,プロキシー・ファイトの場合と,株主提案とのすみ分けを前提としている制度であるという違いがあるようです。その一つを日本に持ってきて議論することが,アプローチとしてどうなのか。規律の一部を安易に輸入すると,過剰な規制となりかねないといった意見もあるようです。もちろん議論の本筋として5であるか10であるかというのは十分審議すべきだと思いますが,議論するに当たっては,日本とアメリカの制度の違いを踏まえた上で考えていく必要があるのではないかというように思った次第でございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。   中東幹事,どうぞ。 ○中東幹事 内容による提案の制限について,これが実際に運用できるのかという点をお教えいただきたく,発言させていただきます。   先ほどの大竹委員の問題提起を興味深く拝聴いたしました。私の理解するところでは,取締役の解任を提案する,あるいは,その取締役を再任したくないから他の取締役の選任を提案するといった形で取締役を誹謗中傷するような場合に,どういう取扱いになるだろうかという問題提起をしていただいたと思います。例えばなのですが,大竹委員がおっしゃった場合もそうだと思いますし,取締役の解任の提案をした場合に,株主総会前の提案時には必ずしも理由を言う必要はありません。解任だけを提案します,理由は参考書類に記載してくれなくてもいいですという形も可能です。ところが,総会当日,議事を進めてみたら,提案株主が気に入らない取締役の悪口を提案理由の説明として発言する,このような場合には,事前に止めることが困難であると思います。大竹委員から,例えば,3回ぐらい同じ提案があれば,「専ら」と認定することができるであろうという御意見がありましたように,やはり株主の提案の内容だけを見ていては,どのような目的であるのかは容易には認定できない場合も少なくないとも思います。   そういった意味で,部会資料18の意見の概要の各所で,最高裁が,要件が一義的に明確でないまま立法されると解釈に疑義が生じ,紛争の長期化が懸念されるとの御意見を示されており,そうであるとすれば,望ましい改正法にならないと思います。ただ,大竹委員が問題提起されたような形で,このような形ならば運用できるという基準を明確にすべく検討していく,あるいは三瓶委員がおっしゃったように,これは発行会社が腹をくくって決めるべきものなのであるという形で運用することにする,どちらの方向性もあり得ると思えます。実際の運用はどうなりそうかという点について,お教えいただければと思っております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,柳澤委員,松井幹事,前田委員,成田幹事,田中幹事の順でお願いできればと思います。 ○柳澤委員 発言の機会を頂きましてありがとうございます。株主提案権の内容による制限につきましては,日本投資顧問業協会が機関投資家として意見を提出しておりますので,その内容に沿って簡単にコメントさせていただければと思います。   株主提案権の内容による制限を設けることに関しては,会社及び投資家それぞれの観点に照らして望ましい方向と考えられるため,賛成としております。その理由としまして,株主提案権の濫用的な行使を制限することは,会社側の総会実務に照らして負担軽減等につながるメリットが想定されるばかりでなく,機関投資家にとりましても,議決権行使に際して極めて短時間に多数の議案精査を行う状況にありますので,本来精査を要すべき議案に十分な検討時間を確保できるようにするためにも,内容による提案の制限を行う必要性が高く,メリットがあるものと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   松井幹事,どうぞ。 ○松井幹事 提出できる議案の数と,それに対して無効とすることができるかという点について意見を述べたいと思います。この点については,先ほど来いろいろと説明,詳しい意見が述べられておりますけれども,A1案の意見と並んで多いとされておりますB2案の意見,32ページにありますけれども,これを見ますと,先ほど来指摘されているのは,ホール・パッケージでどのような機関を作りたいのか,あるいはどういう姿勢に基づいて定款を変更したいのかというような一つの考え方があって,それに基づいて一連の会社の機関ないし運用方針を変更するといったものがかなり懸念事項として挙げられているように思います。   今までであれば,このような合理性がある程度ある議案については,会社側提案として引き取るであるとか,どういうふうにまとめるかということについて交渉をするということを普通に行ってきていたわけでありますけれども,数ということが問題になってまいりますと,これを五つというふうにまとめて出したときに,会社の側が,いや,これは8だと思いますと通知をして,連絡が取れないので無効ですとしてしまうというような冷たい対応というのが出てこないかということが問題になってくるかと思います。提案権の行使期限を12週間にする理由として,丁寧な対話をするためというのが挙がっているというのを見ると,丁寧な対話をしたいという企業の姿勢は恐らくあるのだと思いますけれども,ニッチな事案として,このような連絡が取れなかったとか交渉が決裂したというような場合に,これは5を超えると無効であると一律に言ってしまうというのは,余り好ましくない可能性はあるかと思います。   また,同様に,選ぶ順番について会社にお任せするという方法についてなのですけれども,これは三瓶委員が,投資家がある程度はリスクをとるというような,分配の仕方として提案なさっていたことかと思いますけれども,これについても,恣意的な選ばれ方がされていないかというのを事後的に訴訟の場などで吟味されるのだというサンクションがきちんとついているという状態が望ましいかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   前田委員,どうぞ。 ○前田委員 どうもありがとうございます。定款変更議案の数え方についてだけ,簡単に意見を述べさせていただきます。今回,濫用的な行使は後ろの「内容による提案の制限」の方で抑えられるわけですから,個数の制限の方は,会社にとって使いやすいところにこそ意味があるのではないかと思います。ですので,議案の個数をめぐる紛争をできるだけ生じさせないよう,明確性を重視して,補足説明の(ⅰ)案の方がいいのではないかと思います。ただ,先ほど藤田委員のお話をお伺いして,今のままでは狭過ぎるので,これを修正した形にするのがいいのではないでしょうか。   ただ,明文規定を置くといたしますと,(ⅰ)案,(ⅱ)案,いずれを採るにしても,これだけ複雑な内容を過不足なく法文にするのは無理ではないか,そうすると結局,明文規定としては現在お示しいただいている,「内容において関連する事項ごとに」くらいしか書きようがないのではないか,そして,このようにしか書きようがないのであれば,もはや明文規定を置く意味も乏しいのではないかというような気もいたしまして,そもそも明文規定を置くかどうかも含めて検討しなければならないのだと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   成田幹事,どうぞ。 ○成田幹事 発言の機会を頂き,ありがとうございます。中東幹事から,最高裁のこの意見は何なのだというお叱りを受けましたので,それについての言い訳をまず,させていただきたいと思います。   最高裁の意見となっておりますけれども,私どもは制度を運用する側ですので,制度の当否についてはなかなか意見を申し上げる立場にないだろうと思っておりますので,下級裁判所の方に,こういう制度を入れた場合に裁判実務上,不都合がないかという観点から,意見を頂戴し,それを取りまとめたものでございます。   その結果として,こういった形で,不明確なので,もう少し何とかしてくれという意見が出てきたわけです。これは,制度自体を入れてくれるなという趣旨ではございませんで,明確にできるところは,もちろん明確にしていただければと思いますし,さはさりながら,どうしても条文を作っていく過程で解釈の余地が出てくるところは当然,避け難いところだとは思いますので,そういう避け難い部分につきましては,この部会で御議論いただいて,裁判実務において解釈のよすがとなるようなものを残していただければと,そういう観点で意見を申し上げているところでございます。   そういう前提で,今回の部分について申し上げますと,やはり議案の数え方,あるいは議案が個数をオーバーしてしまった場合の規律につきましては,どうしても曖昧な部分が出てくるかなと思っておりまして,この辺りにつきましては,特に前者の部分につきましては,先ほど藤田委員が,海外の事例ではありましたけれども,事例を御紹介いただきましたように,こういった事例に基づいて,もう少し議論ができたらなと思っております。   その点につきましては内容による提案制限も同じでございまして,大竹委員の方から出しました名誉毀損等の例,もう少し事案,あるいは事例に即して何か御議論いただければなと思っております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,予定の時間が来ているのですけれども,少し延長をお許しいただければと思います。田中幹事,齊藤幹事の順でお願いします。 ○田中幹事 すみません,できるだけ手短にさせていただきます。まず,議案の個数に関してですが,以前も申し上げましたが,私は五つあれば十分ではないかという意見を持っておりまして,パブリックコメントなどでは,機関設計の提案をするようなことを考えれば五つだと少な過ぎるというのがありましたが,それについては,関連性のある提案については1個の定款変更議案として提案できると考えますので,そのように考えれば,少な過ぎるということはないと思います。   ただ,その観点で,定款変更議案に関する関連性の要件についてですが,先ほど藤田委員がおっしゃったことでもありますけれども,(ⅰ)の「論理的に前提とする関係」というのは,厳密に読むと,例えば監査役を置くという定めを廃止して委員会を置くという定めを置くとか,厳密に考えればそのぐらいしか考え付かないような気がしておりまして,ですので,やはりそれだけでは株主提案を抑制し過ぎて合理的ではないと思いますので,そういったものだけではないのだということを明らかにしようと思うと,やはり(ⅱ)に書いてあるような,密接に関連するので一緒に提案するのが合理的である場合,というような規定ぶりくらいしかないのではないかなという印象を私は持っています。   それから,一連の議論に関する私の見方を申し上げますと,この度,株主提案権の制限という立法論が出てきたのは,ごく少数の,何十個もの株主提案をして,提案件数過去ナンバーワンだというのを誇るような,そういった提案事例に対してさえも,明文の規定がないために,なかなか権利濫用としてそれを拒絶することができないと,そういうごく少数のかなり極端なケースに対応するものなのであって,定款変更について,会社がこの規定によれば疑いもなく株主提案を拒絶できるようなルールを立法で作るというのは元々無理なのではないかと思っています。これは,我が国の株主提案が定款変更議案の変更も認めていることから,定款変更ということになれば多種多様な条項が考えられますから,どうしてもそうなってしまうのだと思います。   そういう法的不明確性を解決しようとするなら,アメリカのように,株主からの定款変更議案の提案をそもそも認めないというようなルールももちろん考えられなくはないわけですけれども,かの国ではそういったルールになっているために,昔入れた買収防衛策について,株主の大部分が反対しているのに経営者が頑張ってそれを変えないと,そういういろいろな弊害も出てきています。アメリカは元々,投資家株主が強い国ですから,株主権はそのぐらい制限されているのがちょうどいいのかもしれませんが,我が国では実態として必ずしも株主が強いわけではないということがありますので,それに加えて株主提案の権利も弱くすると,非常に悪いバランスになるような感じがします。ですので,法的不明確性がある程度残るとしても,例えば,定款変更議案については「密接に関連すると合理的に認められる場合」という程度の制限にするのは仕方ないのではないかと考えております。   それから,株主提案の内容制限については,「専ら」と「主として」の間の選択だとすれば,例えば過去の裁判例でも,主要目的ルールのように,「主要な目的」という文言を含む基準があるので,私自身は「主として」という形の立法にしてもおかしくないと思っています。ただ,先ほど大竹委員が問題提起してくださった事例に関して言えば,A取締役が取締役で適切でないのでB取締役を候補者として提案しますという議案は,会社は基本的に,それは受け入れざるを得ないと思います。これを受け入れないというのは,株主が取締役を選ぶという株式会社制度からして,少し考えにくいのではないか,A取締役がそれを名誉毀損だと思うなら,A取締役が不法行為の訴訟を起こすべきではないか,原則的にはそのように考えています。過去の裁判例で名誉毀損が主たる目的とされた事件は非常に特異な事件で,担当従業員が気に入らないから,その人の名前をさらすためにその人を取締役候補者として株主提案をするという,普通は考えられないようなケースであって,原則的には取締役の資質を問題にするというのは株主として当然のことでありますから,基本的にはそれを防ぐことはできないのではないかと思っています。   最後に,ここは事務当局としてはもう消極的なのかもしれませんが,行使期限の見直しというのは,提案権の濫用とは別に,少し考えていただけないかなと思っております。8週間あれば準備期間としては十分だという意見がパブリックコメントにもあったのかもしれませんが,現に今日の部会でも,例えば電子提供の日を総会日の4週間前にするというのが,株主提案権の行使期限が8週間前だとやはり難しいという意見が出ておりますし,また,過去の事件で考えても,8週間前に提案して,そこで会社が拒絶すると,仮処分の申立てがされて裁判になりますので,それで4週間で間に合うかといえば,現実的に間に合わないのではないかと。実際にこの行使期限によって,総会の招集通知の早期発送とか発送前開示に制約が掛かっているというのは否定できないのではないかと思っています。   私は,飽くまで試案ですけれども,総会日の12週間前又は前期末(定時株主総会の前事業年度の末日),そのどちらか遅い日までに提案しなければならないとか,12週が10週になるとしてもいいのですけれども,今回無理だとすれば,継続審議にしてくださってもいいのですが,問題点としては認識していただけないかと思っています。8週間というのは諸外国の招集通知発送の実務からいえば,どう見ても短過ぎるような気がしていますので,濫用とはまた別の論点として,引き続き考えていただけないかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   齊藤幹事,どうぞ。 ○齊藤幹事 ありがとうございます。今まで挙がっていなかった,役員の選任解任議案の数をどうカウントするかという点についてのみコメントさせていただきます。これを数に加えるかどうかというのは,例えば解任と選任の提案を組み合わせると,それで二つになるので,提案の上限が5だったら,残り三つになって,少し少ないかなといった,数の問題だけではなく,役員の選任,解任議案というのは質的にも少し異なるものではないかと感じております。というのは,株主提案の他の議案が会社に個別に注文を付けるというようなものであるとすれば,取締役の選任解任議案というのは経営を根本から変えるという支配に関わる側面が強いわけでございまして,送り込まれた取締役は,今度は,会社側の提案を,こちらは数に制限がないわけですけれども,作成できる側に立つ,そういう性質の提案であるわけです。役員の選任解任議案を株主提案から外すという法制をとっている国もありますが,我が国はそうではなく,この種の株主によるコントロールというのも認めているということで,少し質的に異なるものと扱ってもよいのではないかと。   もちろん濫用はあり得るわけですので,それに対する対処は必要ですけれども,それは内容の制限の方で捕捉することもできます。補足説明においては,濫用のおそれがないわけではないから,数の制限下にというような表現もございますが,濫用のおそれがあるものは全て数の制限の下に置くというのではなく,数の制限も一つの濫用の予防策であって,数の制限から外れる提案の類型について法がおよそ濫用の恐れがないと言っているわけではないと思います。   取締役の選任解任議案を数の制限の外に置くということを通じて,人事に関する株主総会決議については,数の制限に係る違反をめぐって,決議の効力について紛争が生じるおそれが少なくなるというメリットもあるのではないか。例えば,数の上限を超えているとして会社側が,ある株主提案を取り上げず,会社提案だけ株主総会で取り上げて,排除された株主提案の中に役員の選任議案などが含まれていた場合,会社側の役員選任議案に係る決議の効力はどうなるのかといった紛争の種を除去することもできるのではないかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   青委員,どうぞ。 ○青委員 今回の株主提案権の見直しに関しては,基本的には,株主総会における議論をしっかりと充実したものにしていくという観点から考えるべきものと考えておりまして,一人の株主の提案によって株主総会の貴重な時間を独占してしまうというようなことは防ぐべきであろうということで,議案の数や内容について一定の制限を設けていくこと自体は在るべき方向かと考えます。ただし,提案権行使のための持株要件の見直しという点に関しては,株主が合理性のある提案を行う機会そのものを妨げるということになりますので,この点の見直しはせず,現状を維持するという形が適当ではないかと考えます。   次に,行使期限の見直しに関しては,事務当局の資料では,「仮に,株主総会資料の電子提供制度が導入され,株主総会の招集通知の発送期限が1週間ないし2週間前倒しされた場合であっても,実際に株主提案がされた後,株式会社において提案株主が株主提案権の行使要件を満たしているかについての確認,提案内容の検討及び取締役会としての意見の作成等の各種準備作業を完了しなければならない時点までの準備期間は,現在と実質的に変わらないものともいえる」と整理されていますが,株主総会の招集に関する手続を早目に行うということから考えますと,企業の早期発送に向けた自主的な取組を含めて見たとき,なお十分な準備期間を確保する必要があるという意見も十分に合理的なものだと考えられます。また,今後株主提案権が実際に行使されるケースが増えてくる可能性も高いのではないかと考えられるところでもありますので,そうしたことを踏まえると,行使期限の前倒しについては,十分に検討あるいは議論し,柔軟に検討していくべき点だと考えます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   予定の時間を10分ぐらい延長してしまいまして,申し訳ありませんでしたけれども,本日はこの辺りにさせていただければと思います。   よろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございます。それでは,次回の日程等につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 次回会議につきましては,5月23日水曜日午後1時30分から午後5時30分までということで,当省20階の第1会議室で予定しております。   次回会議におきましては,取締役等に関する規律の見直しについての個別論点の検討について御審議いただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○神田部会長 本日も大変熱心に御審議いただき,どうもありがとうございました。以上で閉会させていただきます。ありがとうございました。 ―了―