法制審議会 第181回会議 議事録 第1 日 時  平成30年6月4日(月)    自 午後2時03分                         至 午後2時27分 第2 場 所  東京高等検察庁第二会議室 第3 議 題  特別養子制度の見直しに関する諮問について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○吉川司法法制課長 ただいまから法制審議会第181回会議を開催いたします。   本日は,委員20名のうち16名に御出席いただいておりますので,法制審議会令第7条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   初めに,法務大臣挨拶がございます。 ○上川法務大臣 法制審議会第181回会議の開催に当たり,一言御挨拶を申し上げます。   委員及び幹事の皆様方におかれましては,御多用中のところを本会議に御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。また,この機会に法制審議会の運営に関する皆様方の日頃の御協力に対しまして,厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。   本日,御審議をお願いする議題は,特別養子制度の見直しに関する諮問についてであります。これは,新たに御検討をお願いするものでございます。   特別養子制度は,昭和62年の民法改正によって創設されたものでございますが,これまで見直しはされてきませんでした。特別養子は,児童養護施設に入所中の児童等に家庭的な養育環境を与えるための選択肢の一つになるものでございます。しかし,現在の制度におきましては,養子となる者が原則として6歳未満でなければならないとされているために,施設に入所中の6歳以上の児童について,利用することができないなどの問題点が指摘されております。   そこで,特別養子制度の利用を促進する観点から,民法の特別養子に関する規定等の見直しについて御検討をお願いするものでございます。この諮問については,速やかに審議に着手していただきたいことから,本日は,臨時の総会を開催することとしたものでございます。御審議,御議論をよろしくお願い申し上げます。 ○吉川司法法制課長 法務大臣は公務のため,ここで退席させていただきます。           (法務大臣退室) ○吉川司法法制課長 ここで報道関係者が退室いたしますので,しばらくお待ちください。           (報道関係者退室) ○吉川司法法制課長 本日,御出席なされる予定でした井上会長におかれましては,急な体調不良のため欠席されることとなりました。そのため,法制審議会令第4条第4項に基づき,会長代理の岩原委員に代行いただくこととなります。   それでは,岩原委員,お願いいたします。 ○岩原会長代理 岩原でございます。   ただいま,御説明のございましたような事情により,本日は私が司会を務めさせていただきます。どうか,よろしくお願いします。   まず,前回以降,本日までの間に新たに就任された委員の御紹介をさせていただきます。京都大学名誉教授の大石眞氏が委員に御就任になりました。どうぞ,よろしくお願いいたします。 ○大石委員 今,御紹介のありました大石でございます。どうぞ,よろしくお願いいたします。   専門は憲法及び立法学ですが,最近は,なぜか墓地埋葬というところに凝っております。年のせいかもしれません。よろしくお願いします。 ○岩原会長代理 それでは,本日の審議に入りたいと存じます。   先ほどの法務大臣の御挨拶にもございましたように,本日の議題であります特別養子制度の見直しに関する諮問について,御審議をお願いしたいと存じます。   初めに,事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ○山口参事官 民事局参事官の山口でございます。諮問事項を朗読させていただきます。   諮問第106号,実方の父母による監護を受けることが困難な事情がある子の実情等に鑑み,特別養子制度の利用を促進する観点から,民法の特別養子に関する規定等について見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。 ○岩原会長代理 続きまして,この諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○小野瀬幹事 民事局長の小野瀬でございます。   諮問第106号につきまして,御説明申し上げます。   この民法の特別養子に関する規定は,昭和62年に設けられたものでありますが,その後,30年以上見直しがされておりません。その一方で,近時の報告によりますと,実方の父母による監護を受けることが困難であるため,児童養護施設に入所するなど,社会的な養護を必要としている児童は数万人に上っております。これらの児童の中には,特別養子縁組をすることにより,家庭と同様の養育環境において継続的に養育を受けられる可能性のある者もいるとの指摘がされています。   しかし,特別養子縁組の養子となる者は,原則として6歳未満でなければならないとされているため,この要件が障害となって,縁組をすることができない場合があるとの指摘がされています。   また,特別養子縁組の成立には,原則として実方の父母の同意が必要ですが,一度同意がされても,縁組成立の審判が確定するまで同意の撤回が可能とされているため,養親となる者は,養子となる者の試験養育を開始した後も不安定な立場に置かれることとなり,養親となることをちゅうちょする場合があるとの指摘がされています。   このような指摘等を踏まえますと,特別養子縁組の養子となる者の年齢の上限を引き上げることや,一定の場合には,実方の父母の同意の撤回を制限することなどを検討し,この制度をより利用しやすいものとする必要があると考えられます。   そこで,特別養子制度の利用を促進する観点から,民法の特別養子に関する規定等を見直すことについて,法制審議会の御意見を求めるものであります。   諮問第106号についての御説明は以上のとおりであります。よろしくお願いいたします。 ○岩原会長代理 どうもありがとうございました。   それでは,ただいま御説明のありました諮問第106号につきまして,御質問及び御意見を承りたいと存じます。   御質問と御意見を分けまして,まず御質問がございましたら,承りたいと存じます。いかがでしょうか。 ○大石委員 質問の方ですが,この見直しの背景を拝見しますと,300件近くの中で70%近くが同意要件で,15%余りが年齢要件ということになっておりますが,先ほどの大臣の御説明でも,今の御説明でも,①年齢要件のことが先に挙がっているということで,同意要件のところが実質は多いような印象なのですが,年齢要件が先に,どうしても,この説明として挙がるというのは,何か特別な背景があるのでしょうか。 ○小野瀬幹事 特別養子縁組の要件として,どういうものがあるのかということですけれども,基本的には,子供の年齢というものが基本的な要件の一つかと思います。   あとは,これは形式的な話ではありますけれども,民法の条文が,まず年齢要件が先に規定されているというところもございます。   そういったことから,確かに,御指摘のとおり,障害としては同意要件の方が多いのですが,今申し上げましたような理由で,資料上は年齢要件の方を先に書いていると,そういうことでございます。 ○大石委員 分かりました。 ○岩原会長代理 よろしいですか。   ほかに何か御質問ございますでしょうか。 ○佐久間委員 ありがとうございます。   今の特別養子の要件,この主に四つ,先ほど御説明いただきました。①と②の関係というのは,当然,①も必要だし,②も必要だということだと理解をしてよろしいのでしょうかというのが質問であり,2点目は,当然,見直しという中身については,先ほど具体的な御説明があったこと以外,例えば,実父母の同意を必要としない場合など,これは当然ある範囲ということだと思いますけれども,そういうところの検討も排除されないと,こういうふうに理解してよろしいのでしょうか。 ○小野瀬幹事 この実父母の同意,それから子の利益のため特に必要があると認められること,これは二つとも,必要な要件ということでございます。   また,実父母の同意につきましては,今御指摘のような点も含めて,制度の見直しについて,御審議いただければと考えております。 ○佐久間委員 ありがとうございます。 ○岩原会長代理 ほかに何か御質問ございますでしょうか。 ○山根委員 ありがとうございます。   確認なのですけれども,厚労省の方で取りまとめがあり,その後,法務省の方で,研究会で審議が進んでということもありますし,論点は相当整理をされて,絞られて,今後の議論に入るというような理解でよろしいのでしょうか。 ○小野瀬幹事 御指摘のとおり,法務省としては,研究会でいろいろ議論の整理をしておりますけれども,法制審議会の方で御議論いただくのは,必ずしもそれに限られるというわけではございませんので,諮問の観点から必要な御議論をしていただければと思っているところでございます。 ○岩間委員 ありがとうございます。   養子となる者の年齢要件の例外である6歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合というところですが,この監護というのは,実態はどういうものなのか,試験養育に当たるものだけなのか,それとも,その他の里親等でもよいのか,場合によっては,ここの運用を柔軟にするということも考えられるのか,ということをお伺いしたいですが。 ○小野瀬幹事 こちらの方は,養親となる者に監護されている場合ということですので,やはりそこは将来的に養親となる者でなければいけない。別の人に監護されていたということでは,この養親となる者に監護されているというところには入らないと,そういう理解でございます。 ○岩間委員 そうしますと,この試験養育というものと,一般の,例えば里親的な監護とは区別はあるのでしょうか。 ○小野瀬幹事 そこは,その区別はございませんので,実質的にその者が監護しておればよいので,例えば,里親という形で監護していても,そこは大丈夫でございます。 ○岩原会長代理 ほかに何か御質問ございますでしょうか。 ○内田委員 養護施設に入所中の児童に家庭的な養育環境を与えるというのは,大変結構なことですので,是非,そういう方向で検討を進めていただきたいと思います。質問として,特別養子制度の利用件数が年間500件程度で推移しているということで,非常に少ないですね。それに対して,父母の同意要件とか年齢要件がクリアされれば,特別養子制度が使える件数というのが,一応調査では二百数十件上がっていますけれども,それでも数が非常に少ない。   もちろん,潜在的には,もっとたくさんの件数があるということかもしれませんけれども,特別養子制度の利用件数が非常に少ないことからすると,なぜ少ないのかの要因の説明として,実父母の同意要件と年齢要件だけで尽きているのかというところがよく分かりませんでした。   そこで,もし事前の調査で,ほかに何か要因があるのかどうか,もしあるのであれば,それに対して,民法の制度を改めるということが有効な施策となるのかどうかといったことについて,もしお分かりであれば,お聞かせいただきたいと思います。 ○小野瀬幹事 二つの要件以外にどのような問題があるかというのは,ここはなかなか,私どもも承知しておりませんが,全体としてこれだけの件数になっているというのは,この特別養子制度の認知度自体が低いのではないかとは考えております。   したがいまして,この制度自体の周知というものをもっとしっかりとやっていかなければいけないのかなとは思っております。 ○岩原会長代理 よろしいですか。   ほかに何か御質問ございますでしょうか。 ○大塚委員 ありがとうございます。   諮問の内容として,利用を促進させるという観点からとありますけれども,なぜ利用を促進させなくてはいけないかという社会的要因をお聞きしたいと思います。例えば,虐待の増加とか,どのようなことを考えていらっしゃるのでしょうか。 ○小野瀬幹事 先ほど御説明申し上げましたとおり,児童養護施設に入所されている方の中で,この制度の要件によって,特別養子縁組が利用できないという御指摘もあるところでございます。もちろん,虐待の問題というものもありますけれども,やはり養護施設に入所されている方に家庭的な養育環境を与える機会を増やすということは,そういった方々にとっての利益になるものではないかなと思っておりますので,虐待についてどうしていくかということも含めた大きい流れの中で,今回のこれも見直すと,そういう位置付けにもなるのかなと思っております。 ○岩原会長代理 よろしいですか。   ほかに何か御質問ございますでしょうか。   よろしいですか。特に御質問がないようでございましたら,次に,御意見がございましたら,承りたいと存じます。いかがでしょうか。 ○内田委員 養護施設に入っている児童というのは,同じ親から生まれた兄弟姉妹がそろって入っているというケースも多いように聞いていますが,その場合に,養子に出るとなったときに,ばらばらになってしまうという可能性もあるわけですね。したがって,兄弟姉妹がいる場合,どういうふうに考えるかといったことも是非積極的に御検討していただければと思います。意見というよりも,要望ですけれども,よろしくお願いいたします。 ○岩原会長代理 ほかに何か御意見ございますでしょうか。   よろしいでしょうか。特に御質問,御意見がないということでございますれば,ここで,諮問第106号の審議の進め方について,御意見があれば承りたいと思います。 ○内田委員 諮問第106号につきましては,私もいろいろ質問をさせていただきましたが,専門的,技術的な事項が相当多数含まれておりますので,通例に倣って,新たな部会を設けて,調査,審議をし,その結果の報告を受けて,更に総会で審議することにしてはどうかと思います。   したがって,部会の設置を提案させていただきたいと思います。 ○岩原会長代理 ただいま,内田委員から,部会設置等の御提案がございましたが,これにつきまして,御意見はございませんでしょうか。   よろしいでしょうか。ほかに意見はないようですので,また,特に御異議もないようでございますので,諮問第106号につきましては,新たに部会を設けて,調査,審議をすることといたします。   次に,新たに設置する部会に属すべき総会委員,臨時委員及び幹事に関してでございますが,これらにつきましては,会長に御一任いただきたいと思いますが,御異議ございませんでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○岩原会長代理 どうもありがとうございます。   それでは,この点は,会長に御一任願うことといたします。   次に,部会の名称でございますが,諮問事項との関連から,諮問第106号につきましては,「特別養子制度部会」という名称にいたしたいと思いますが,いかがでございましょうか。           (「異議なし」の声あり) ○岩原会長代理 どうもありがとうございます。   特に御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。   ほかに,部会における審議の進め方も含め,御意見はございませんでしょうか。   よろしいですか。   それでは,諮問第106号につきましては,特別養子制度部会で御審議いただくこととし,部会の御審議に基づいて,総会において,更に御審議願うことにいたしたいと存じます。   これで,本日の予定は終了となりますが,ほかにこの機会に御発言いただけることがございましたら,お願いいたしたいと存じます。何かございますでしょうか。   よろしいですか。   それでは,特に,御発言もないようですので,本日はこれで終了といたします。   本日の会議における議事録の公開方法につきましては,審議の内容等に鑑みて,私といたしましては,議事録の発言者名を全て明らかにして公開することにいたしたいと思いますが,いかがでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○岩原会長代理 どうもありがとうございます。   それでは,本日の会議における議事録につきましては,議事録の発言者名を全て明らかにして公開することといたします。   ほかに特に御発言もないようでございますので,本日はこれで終了といたします。   なお,本日の会議の内容につきましては,後日,御発言を頂いた委員等の皆様に議事録案をメール等にて送付させていただき,御発言の内容を確認していただいた上で,法務省のウエブサイトに公開したいと思います。   最後に,事務当局から何か事務連絡がございましたら,お願いいたします。 ○小出関係官 次回の会議の開催予定につきまして御案内申し上げます。   今回は臨時でお集まりいただきましたところでございますが,御案内のとおり,法制審議会の総会は2月と9月に開催するのが通例となっております。次回の開催につきましても,現在のところ,本年9月に御審議をお願いする予定でございますが,具体的な日程につきましては,後日改めて御相談させていただきたいと存じます。委員,幹事の皆様におかれましては,御多忙とは存じますが,次回の日程につきまして御配意いただきますよう,よろしくお願い申し上げます。 ○岩原会長代理 どうもありがとうございました。   それでは,本日の会議を終了いたします。   本日は,お忙しいところをお集まりいただき,熱心な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。どうもありがとうございます。 -了-