法制審議会 会社法制 (企業統治等関係)部会 第13回会議 議事録 第1 日 時  平成30年 6月20日(水)   自 午後 1時30分                          至 午後 3時56分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  会社法制(企業統治等関係)の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神田部会長 それでは,予定した時刻が参りましたので,法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会の第13回目の会議を開会させていただきます。   本日も皆様方には大変お忙しい中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   それでは,いつものように,まず,本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○竹林幹事 お手元には議事次第,配布資料目録,部会資料21及び22,参考資料44,委員等名簿を配布させていただいておりますので,御確認ください。   なお,本日ですけれども,北村委員,田原幹事,成田幹事から御欠席の御連絡を頂いております。 ○神田部会長 ありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。   本日は,「その他の見直しについての個別論点の検討」についての御審議をお願いいたします。   まず,部会資料21の「第1 社債の管理」について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○邉関係官 それでは,部会資料21,「第1 社債の管理」について御説明いたします。本日の資料につきましても,重要と思われる事項を中心に御説明をさせていただきたいと思います。   「1 社債管理補助者」の(1)では,弁護士及び弁護士法人についても,社債管理補助者の資格を付与するものとすることについて,どのように考えるかを論点として掲げております。中間試案においては,弁護士,弁護士法人以外の者についても,資格を付与するかどうかの検討対象としておりましたが,パブリックコメントにおいて,弁護士,弁護士法人以外に資格を付与すべき者についての具体的な御提案がなかったため,今後,部会においては,弁護士,弁護士法人に限って検討するということでよいのではないかと考えております。   パブリックコメントにおいては,弁護士,弁護士法人に対して社債管理補助者の資格を付与するものとすることについては賛成する意見が多数でしたが,利益相反行為や自然人である弁護士が社債管理補助者となることなどに関する懸念も指摘されているところです。社債管理補助者の資格を付与するものとする場合には,このような懸念に対しての弁護士会の会則等による適切な実務対応のルール作りが必要であるとも考えられるところです。   なお,(注)にあるとおり,社債管理補助者が自然人である場合には,社債管理補助者が死亡したときには会社法第714条と同様の規定の適用があるものとすることが考えられます。   続いて,2頁目,(2)のアでは,社債管理補助者の権限等について試案第3部第1の1(4)のような規律を設けるものとすることを提案しております。パブリックコメントにおいては,これに賛成する意見が多数でしたが,仮差押え,仮処分等の債権保全手続や,倒産手続における債権査定の申立てについては,社債権者集会の決議によらないですることができるようにすべきであるという意見もあったところです。しかし,補足説明に記載のとおり,社債管理補助者の位置付け等からすると,この意見のとおりとすることは難しいものと考えられます。   イでは,社債管理補助者についても会社法第740条第3項と同様の規律を設けるものとすることについて,どのように考えるかを論点として掲げております。補足説明に記載のとおり,社債発行会社と社債権者との間の情報伝達の仲介を社債管理補助者の中心的な職務と位置付けるものとすると,社債管理補助者が社債発行会社から債権者異議手続における催告を受け,社債権者に対してこれを伝達するということも重要な職務であるという考え方があり得ると思われ,会社法第740条第3項と同様の規律を設けることも考えられます。   (3)では,パブリックコメントの結果も踏まえて,そのほかについては試案第3部第1の1のような規律を設けるものとすることを提案しております。   「2 社債権者集会」の(1)では,パブリックコメントの結果を踏まえて,試案第3部第1の2(1)のような規律を設けるものとすることを提案しており,また,続いて(2)でも,パブリックコメントの結果を踏まえて,試案第3部第1の2(2)のような規律を設けるものとすることを提案しております。   御説明は以上となります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,この部分につきまして皆様方から御質問,御意見をお出しいただきたいと思います。どなたからでも,どの点でも結構でございます。いかがでしょうか。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 どうもありがとうございます。第1の「社債の管理」につきましては,試案で示された内容に特段の異論はございません。1(1)の「社債管理補助者の資格」につきましても,弁護士,弁護士法人に資格を与えることに特段異論はありませんが,補足説明にありますとおり,弁護士会として適切な実務ルールを作るなりの対応をしていただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。1の(1)社債管理補助者の資格につきまして,弁護士及び弁護士法人に社債管理者の資格要件を付与することを論点として掲げていただき,ありがとうございます。補足説明で指摘を受けました論点,ただいま古本委員から御指摘を受けました論点につきまして,日本弁護士連合会としての立場を御説明いたします。   日弁連では,社債管理補助者の資格要件の拡大を要請するに当たり,弁護士及び弁護士法人が社債管理補助者の担い手となる場合の様々な課題や環境整備につきまして検討を行っておりました。その課題の中には部会資料で指摘されました二つの論点も含まれております。利益相反行為の点につきましては,弁護士,弁護士法人は,弁護士法第25条及び弁護士職務基本規程等の会則上,職務を行えない事件が定められております。社債管理補助者は,社債発行会社との間の委託契約に基づき,社債権者の法定代理人として社債発行会社に対して社債権を行使するという関係に立ちます。弁護士又は弁護士法人が社債管理補助者に選任された場合には,社債発行会社だけでなく,社債権者に善管注意義務等を負う立場になります。このため,社債発行会社との間で当該社債発行に関する受任,その他の案件の受任や法律顧問契約の締結がなされた場合等には,利益相反行為の取扱いについて問題となり得るところであると考えております。今後,弁護士及び弁護士法人について社債管理補助者の資格が付与される場合に備え,日本弁護士連合会において,このような利益相反行為等について会則やガイドラインを制定することを含め,適切な実務対応のルール作りを進めてまいります。   また,自然人である弁護士が償還期間中に死亡等により不在となる可能性につきましては,社債管理補助者の死亡に会社法第714条と同様の規律の適用があるものとすることが部会資料の本文中に御提案されております。日弁連としても,中間試案に対するパブリックコメントの意見書におきまして,試案第3部第1(9)の(注)には既に賛成しており,これを死亡の場合に拡張する御提案に賛成いたします。その上で,弁護士及び弁護士法人について社債管理補助者の資格が付与される場合に備え,日弁連としても,弁護士が死亡等した場合の円滑な事務承継等を行うための措置につきまして,会則やガイドラインによる適切な実務対応のルール作りを進めてまいりたいと考えております。   パブリックコメントでは,社債権の弁済の取扱いについても御指摘がございました。弁護士,弁護士法人は,預かり金を自己の金員と区別して保管する義務が会則上,定められていますが,これを踏まえまして,更に社債権弁済の取扱いにつきまして会則やガイドラインにより適切な実務対応のルール作りを進めてまいります。今後,本部会において御審議を頂き,弁護士,弁護士法人に社債管理補助者の資格が認められる方向となる場合には,日弁連としてこのような諸課題につきまして,会則等による適切な実務対応のルール作りを進める旨の意向を正式に表明する予定です。   次に,2の社債権者集会,(1)元利金の減免の(注)について意見を申し上げます。試案第3部第1の2(1)のような規律を設けた場合,社債発行後の金利の引下げにより社債発行会社の経営が回復したと誤解され,社会的な評価が誤認されてしまう可能性があることが指摘されております。社債権の元利金の減免は,デフォルトを回避し弁済金額の増加が見込める場合に経済的合理性があるとされており,これが会社法第733条第1項第4号の裁判所の決議認可の判断基準ともされていると理解しております。社債の償還が延長されるなどデフォルトに近づくと,社債の評価は当然低下しますが,社債権者集会の決議に基づき元利金が減免され,これによってデフォルトが回避されたときには信用は一定程度回復することが考えられます。これ自体は不当とはいえませんが,これを越えて不合理な評価を避けるためには,振替社債の銘柄公示情報の中に,延滞等のデフォルトに関する情報以外に,金利の減免が社債権者集会の決議に基づくことを情報として追加することが考えられます。その後は市場の評価に委ねるということになると思われます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,神作委員,どうぞ。 ○神作委員 ありがとうございます。まず,第1の1の(1)社債管理補助者の資格について,私の意見を申し述べさせていただきます。社債管理補助者の中心的な権限は,法的倒産手続への参加権限,具体的な債権の届け出ですとか,執行手続における配当要求,また清算での参加権限としての債権の申出などですが,これらの業務は,正に弁護士あるいは弁護士法人に担っていただくのに非常にふさわしい内容のものであると思われます。また,先ほど,沖委員からも御説明がございましたように,利益相反の問題が生じるというのは確かでございますけれども,それについては一定の規律やガイドライン等で御対応いただけるということでございますので,社債の中には,例えば満期までそれほど長くないというようなものもありますし,また,今回の提案自身,社債管理補助者が複数存在することを認め,権限や機能を分担するということも想定しておりますので,必要に応じて金融機関と共に社債管理補助者をお務めいただくなど実務レベルで工夫をしていただくこととして,私としては,社債管理補助者の資格について,弁護士及び弁護士法人についても資格をお認めしてはいかがかと考えます。   それから,もう1点,発言させていただきたいと思います。部会資料の2頁のイでございますけれども,社債管理補助者について会社法第740条第3項と同様の規律を設けるという点についてでございます。この点につきまして,私は賛成いたします。社債管理補助者の中心的な役割は,発行会社と社債権者との間で情報の言わば伝達係をするというのが非常に重要な機能の一つになるはずだということをこれまで申し上げてまいりました。中間試案の第3部第1の1(4)④におきましては,委託契約に従って社債の管理に関する事項を社債権者に報告し,又は社債権者がこれを知ることができるようにする措置をとらなければならない,という御提案をしていただいているところでございますけれども,その趣旨に鑑みるならば,会社法第740条第3項と同様の規律を設けるということは,社債管理補助者に最も期待されている役割の一つを明らかにするという意味において適切な御提案であると思います。   以上2点,申し上げさせていただきました。ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにございませんでしょうか。いかがでしょうか。   特に,よろしゅうございますでしょうか。   そうしますと,この項目につきましては,他の項目と異なりというのは何ですが,部会としての方向感がお出しいただけているように思います。それでは,次へ進ませていただきます。またお気付きの点があれば,戻っていただいても結構です。   それでは,次に部会資料21の「第2 株式交付」について取り上げます。事務当局からの御説明をお願いします。 ○青野関係官 それでは,部会資料21の4頁以下に記載している「第2 株式交付」について御説明いたします。株式交付については,パブリックコメントにおいて,試案第3部第2の1から5までのような規律を設けるものとすることに賛成する意見が多数であったため,本文において,試案第3部第2のような規律を設けるものとすることを提案しております。   株式交付については,パブリックコメントにおいて,例えば,既に子会社である他の株式会社の株式を追加で取得する場合等についても,株式交付を利用することができるものとすべきであるという意見がありました。しかし,他方で,パブリックコメントにおいては,これらの場合については,株式交付を利用することができないものとすることが妥当である旨の意見もあり,また,株式を対価として親子会社関係を円滑に創設することができるようにするという株式交付の制度趣旨や,株式交付の利用の可否は株式交付の実行前に客観的かつ形式的な基準によって判断することができるようにすることが適当であると考えられることに照らし,これらの場合についても株式交付を利用することができるものとすることは困難であると考えられます。   また,そのほかの意見として,パブリックコメントにおいては,株式交付子会社の株主の保護規定を設けるべきであるという意見がありました。しかし,他方で,パブリックコメントにおいては,株式交付子会社については,株式譲渡の主体ではないことから特段の手続を要しないとしても問題はないという意見等もあり,また,そもそも,ある株式会社の株式が現物出資財産として給付される場合について,現物出資財産の給付者以外の株主の保護のために規律が設けられているわけではないことを踏まえると,株式交付制度の導入に当たって,譲渡人以外の株主の保護のための手続に関する規律を設けることについては,慎重に検討する必要があると考えられます。   以上のことから,本文においては,株式交付を利用することができる場面や,株式交付子会社の株主の保護についての規律を設けるなどの変更を加えずに,試案第3部第2のような規律を設けるものとすることを提案しており,これらの点については,補足説明の2及び3(1)において記載しております。   最後に,部会資料6頁の一番下になりますが,補足説明の3(2)は,パブリックコメントにおいて,株式交付子会社の株式の譲渡しの申込者に対し,株式交付親会社が作成する対価の相当性に関する書面を閲覧謄写する権利を付与することも検討すべきであるという意見があったことを踏まえ,記載しております。事前開示事項を記載した書面等の備置きは,株式交付親会社の株主及び債権者に対し,その権利行使の判断に必要な情報を提供させることを目的とするものであり,そのような観点から株式交付親会社が記載する対価の相当性に関する情報を,株式の譲受けの相手方当事者である譲渡しの申込者に閲覧等させることは,その制度趣旨に照らして疑問があると考えられる一方で,株式交付親会社の株式でない金銭等を対価とする場合には,会社法施行規則第184条第1項第2号,第4項第2号から第5号までを参考として,当該対価について参考となるべき事項を,試案第3部第2の3①により株式交付親会社が株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みをしようとする者に対して通知すべき事項に追加することなどは考えられるのではないかと思われます。そこで,これらの点についても御意見を頂戴できればと考えております。   御説明は以上です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,御質問,御意見,いかがでしょうか。   それでは,小林委員,どうぞ。 ○小林委員 どうもありがとうございます。この株式交付の件につきましては,商工会議所から,先のパブリックコメントにおいて,この制度を設けることについては賛成する立場を表明しております。その上で,せっかく制度を創設するのであれば,企業が活用しやすい制度設計としていただきたいことも意見表明させていただいております。   今回の資料を拝見するに,どちらかというと形式的な理由で,株式交付子会社の範囲をこの範囲にとどめるという説明がされていると読めますが,実務的には,経済的な必要性やどのような場合に使いたいかの動機面から,意見を申し上げおります。そうしますと,株式交付の対象として,中間試案に示された会社法施行規則第3条第3項第1号の範囲である100分の50以上の株式を保有する場合だけでなく,同項第2号の100分の40以上の株式を取得し実質的に支配権を有する場合,あるいは更に,同項第3号まで含めるべきではないかと考えております。会社法における親子会社の判定というものは,同項第1号から第3号までの実質基準を適用してきていることからすると,子会社化するための株式交付の要件をここで狭くする必然性は必ずしもないのではないかと考えております。   もう一つ,既に子会社化している場合に,親会社が子会社の株式を追加して取得する場合には,今回創設されようとする株式交付の制度は利用できないわけですが,経済的な必要度から言いますと,もちろん子会社化という動機はありますが,必ずしも子会社化することそのものだけではなくて,支配権をより強めることへの企業ニーズも決して小さくありません。例えば,一旦子会社化した子会社の株式を3分の2以上にしたいというようなときにも,子会社であってもこの制度を利用できるというところにそれほど必要性としての差は余りなくて,子会社の支配権を強めたいニーズもそれなりにあるものと考えています。こちらについてはやはり検討を続けていただきたいと考えます。   もう一つ,今回,株式会社というところが対象なのですが,子会社側の方として,実務上は,外国の買収先がLLC(有限責任会社)やLLP(有限責任事業組合)というケースも相当数あると考えております。持分会社の取扱いにも工夫の余地がないかと考えますので,こちらについても検討については継続していただきたいと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,坂本幹事,どうぞ。 ○坂本幹事 ありがとうございます。経済産業省の意見として参考資料44で配布をしていただいております。内容は,これまでも繰り返し意見を述べさせていただきましたとおりでございますし,今,小林委員からあったのと重なるものでございますが,そもそもこういった制度整備,規律を設けていただき,株式対価を活用したM&Aを円滑化できるようにしていただく措置については,極めて政策的な意義が大きいものと思っております。   一方で,活用できる場面につきましては,是非この子会社株式の買増し,また昨今,数的にも増えております持分会社を買収する場合ということにつきましても,こういった制度が使えるようにということで,元々のこういった制度整備の趣旨,我が国企業の競争力強化のために事業再編を行いやすくするという観点からしますと,是非そういった同様のニーズのある場面についても活用できるようにする方向での議論をお願いできればと思っております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   今の点,あるいはほかの点,いかがでしょうか。   それでは,前田委員,どうぞ。 ○前田委員 今議論のありました,子会社株式の買増しに株式交付の利用を認めるべきかという点について,前に補足説明にあったかもしれませんが,もし議決権60%から70%への買増しにこの制度を使えることにしますと,なぜ10%から20%の買増しは駄目なのかという議論が出てきて,それを駄目だということを合理的に説明するのは難しいように思います。株式交付の制度は,制度の半分は実質的に株式交換の規律を基礎に作られており,制度が余り複雑になることを避けるべきだということも考慮しますと,今回は,組織再編としての実質を伴うように,親子会社関係の創設の手続として,単なる子会社株式の買増しまでは含めないということでいいのではないかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,加藤幹事,どうぞ。 ○加藤幹事 ありがとうございます。別の論点で,かつ,パブリックコメントで余り指摘されていないことなのですけれども,株式交付について意見を述べます。株式交付に関する規律は,株式交付を組織再編の一種として位置付けるということで,言わば組織再編の規律を流用している側面があると思います。その中で,株式交付親会社についてのみ株式買取請求権も要求することが提案されているわけなのですけれども,それは過剰規制ではないかという気がしております。そもそも株式交付という仕組みを作る目的は,募集株式の発行における現物出資規制,すなわち,検査役の調査と財産価額塡補責任では株式を対価とするエクスチェンジオファーを規制する手段として適切ではないので,新しい制度を作ることにしたということだと思います。その際,組織再編とエクスチェンジオファーに類似点があることは否定できませんが,エクスチェンジオファーにおいて生じる弊害,若しくは不適切な利用の仕方を防止するためにどのような規制が必要かという観点からの検討も必要だと思います。そして,組織再編に関する規律を出発点とすることは妥当だと思いますが,ある程度の取捨選択も考えていく必要があると思いました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事 株式交付の子会社の株主に対する情報提供について,一言申し上げたいと思います。今回の部会資料の7頁のところにも書いてありますが,株式交付親会社としては子会社株主に対価を交付しますので,対価について参考となるべき事項を通知するということは穏当であろうと思います。他方で,対価の相当性に関する事項まで通知しなければならないかということについては,この制度は独立当事者間での取引にも適用され得る,つまり,株式交付が成立すれば子会社になるわけですが,それ以前は,両当事会社間には特段の資本関係がないという場合がありますので,そのような場合に,言わば買い手の側に,売り手株主に対して自らが提示する対価が相当であるかどうかを説明する義務がそもそもあるのかという点が問題になろうかと思います。この点は,公開買付けの場合は,買付者に対してかなり厳格な情報開示義務が課されていますので,実質,対価の相当性に関わるような事項も開示が求められているようなところがあると思うのですが,あれは上場会社ないし,それに準ずる会社であるということから正当化できるとしても,非公開会社を含め全ての会社に適用される手続としては,買主に対して売主の株主に対価の相当性についてまで情報開示を求めるのは,やや正当化しにくい規制になるのではないかと思います。   むしろ,対価の相当性について何がしかの意見を述べるべき者がいるとすれば,それはむしろ株式交付子会社の取締役会の方ではないかということがあります。近時,買収の対象会社の取締役の義務というのが会社法学で議論されていますが,対象会社の取締役は,自社の株主に対して何らかの義務を負っていると考える説が有力であると思います。そういう点からすれば,対象会社,つまり株式交付子会社の取締役会に対して,対価の相当性について何らか意見を言わせるという制度があってもいいのではないかと思います。   ただ,この制度は特別支配株主の株式等売渡請求と違って,対象会社取締役会の承諾を要しない制度ですから,対象会社取締役会は,この相当性に関する情報を持っていないと,そういうケースがあり得ます。その場合は,「対価の相当性に関して情報を持っていないので述べることがない」という記載でも許されるということになるでしょう。これは,公開買付けにおける対象会社の意見表明に近いものですので,そういったものを要求するというのは一つの制度としてはあり得ると思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。株式交付につきまして,意見と質問を申し上げます。   まず,意見の方ですが,日弁連としましてパブリックコメントに対する意見書におきまして,株式交付子会社の株主に対する情報提供制度の検討はお願いしておりましたが,ここでは今回の部会資料の御指摘と,ただいまの田中幹事からもありました御指摘を基に意見を申し上げます。   株式交付は,株式交付子会社を子会社にする場合に限り用いることができ,買増しには用いることはできないということを前提として制度設計しましたときに,株式交付子会社の株主の方から見ますと一度限りの機会と受け止められ,買増しのために利用することに特段の制限がない金銭対価や現物出資による募集株式の発行の場合とはいささか異なった,判断の難しい立場に置かれることにはなると思います。また,株式交付親会社が株式交換親会社と同等の事前開示を行うためには,株式交付子会社の計算書類等や後発事象を知る必要があり,このためには通常,株式交付子会社の協力が必要になります。株式交付子会社がこのような協力をする事情としましては,その取締役会が買収に同意しているとか,子会社株主に適正な対価が交付されるようにという配慮ということだと思われます。そのような子会社の協力に基づいて提供された情報に基づいて,親会社の開示がされるわけですから,その情報に子会社株主の立場で一切アクセスができないというのもいささか問題が残るところかと思います。   そこで,田中幹事から御指摘もありましたように,対価の相当性に関する事項というのは,これは親会社の判断ですから,子会社の株主に開示することに問題があるとしても,親会社の計算書類等や後発事象に関する事項は,株式交付の申込みをしようとする株式交付子会社の株主に対する通知の内容に含めることは検討してもよいのではないでしょうか。株式交付子会社の株主は,株式交付の申込みをしても,親会社株主になることが保障されているわけではありませんが,少なくとも不当に少ない対価で売り急ぎをしてしまうということを防止する効果はあると思いますので,御検討くださればと思います。   質問でありますけれども,坂本幹事や小林委員から御指摘がありました,株式交付をより広く利用することを可能にすべきではないかという問題意識からの質問です。   株式交付利用の可否を客観的かつ形式的な基準により判断するという観点から,株式交付によって取得する株式の下限を,株式交付子会社が会社法施行規則第3条第1項第1号の子会社に限定することにつきまして,同号の中には親子会社関係の判断基準となる,自己の計算において所有する議決権の中に他の子会社が保有する議決権も含まれているとされております。以前の部会におきまして,この子会社性の判断は実質基準によるという御説明を受けておりましたが,その子会社性の判断基準時というのは,株式交付効力発生日という理解でよろしいのでしょうか。   もしこのような理解が正しいとしますと,株式交付親会社は買収スキームの立案に当たり,株式交付を行うのと併せて,株式交付子会社の株式を保有する他の会社を実質基準によって子会社化し,残株式だけを株式交付によって取得するということも可能となりますので,お尋ねする次第です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。御質問がありましたけれども。 ○邉関係官 お答えいたします。試案で示されている考え方というのは,沖委員御指摘のとおり,会社法施行規則第3条第1項第1号の「自己」には,いわゆる実質基準によって判断される子会社も含まれますので,その範囲においては実質的な基準も考慮されているということになります。客観的かつ形式的な基準というものを貫き,そこについても全て形式的に株数だけで考えるという判断もあり得るところかとは思うのですけれども,他方で,沖委員も利用することができる場面を広げた方がいいのではないかといった御意見をお持ちであると理解しておりますけれども,逆に,そのような形で,株数だけで全て判断しましょうということにしますと,利用することができる場面が狭まることにもなります。加えて,経済的に実態として事業を行っているグループ会社の範囲とは少し異なるグループ会社の範囲を,この株式交付を行おうとする場合には考えなければならないということになってしまうことも懸念しております。   今回,飽くまでも株式交付子会社については実質を加味しないようにしているというのは,実質的な判断をできる限り排斥しようというものでして,少しでも実質的な判断を加味することがあってはならないというものではありません。株式交付子会社は,株式交付が実行されるまではグループ会社ではないことが基本的に想定されますが,そのような会社を株式交付によって子会社とするために取得すべき株式の数については,できる限り客観的に判断することができるように,当該会社の株式の過半数となるように計算されることとした方がよいのではないかと考えている次第です。程度の問題ともなりますので,どこでどのような線を引くのかという点については,多様な御意見があり得るとは思うのですけれども,現時点で私どもが御提案しているのは,そのようなものとなります。 ○沖委員 ありがとうございます。その辺り,適切な基準を引くということで検討を進めていただければと思います。ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,藤田委員,どうぞ。 ○藤田委員 きちんと最後の結論まで出せていない状態で発言をするのは心苦しいのですけれども,先ほど,加藤幹事と田中幹事から問題の指摘があったのは,要するに,今回の制度は,組織再編的に作られていて,しかも,かなり律儀に制度を作られているのだけれども,元々そんな話ではなかったのではないかということでしょう。要するに,現物出資規制を受けないで現物対価で株式を交付できるようにするための理屈として組織再編とのアナロジーを持ってきただけなので,どこまで組織再編をコピーした内容で作らなければいけないかというところは,もう少し検討したらどうかということで,加藤幹事や田中幹事から指摘があったのは,いずれもそういったことと関係するような論点だと思います。   株式買取請求権については,批判が出たので,少し申し上げておきますと,確かになかなか難しい問題だと思います。まず,そもそも行き過ぎ感があるというのは,私も印象はそのとおりなのですが,ただ現行法それ自体そもそも立て付けがよく分からないところがあります。特別決議にするだけでいいのか,それとも買取請求権まで与えるのかという話は,現物出資規制の株主の保護の側面が問題になっているわけですが,要するに,有利発行的な状況が生じることを問題にしているのです。この点についてそもそも現行法の規制の平仄がよく分かりません。新株の有利発行の場合,特別決議さえあればよくて,株式買取請求権はない。ところが,合併比率などの不公正という形で有利発行類似のことが起きる場合は,なぜか特別決議プラス反対株主の株式買取請求権という救済がある。つまり新株発行と組織再編で,同種の利益が害された場合の救済について不整合が既に存在しています。今回の株式交付というのはどちらで見たらいいのか,組織再編にそろえるといえば買取請求が付くし,有利発行と同じなのだといえば買取請求は要らないということになる。無理に組織再編にそろえる必要があるのかというのが,突き詰めれば,加藤幹事の質問を突き詰めた場合の問題ということになります。   正直,よく分からないところがあって,元々新株発行の特則的な性格であったところ,途中から組織再編的に扱うことで現物出資のところをクリアしようとしたために,一旦は組織再編の方に非常に寄った形の規制になってしまったけれども,改めて考えると,そこまで新株発行から遊離する必要はあるのかという気もしないではありません。他方,特別決議を経れば現物出資規制なしに新株発行できるという制度は現行法はとっていないですね。そこで,仮にここで株式買取請求権がなくてもいいと言ってしまうと,そことの不整合というのはどうしても出てくる。元々現行法自体どこまで平仄がとれているかに端を発している話なので,私も結論をどちらが正しいか今,断定できないのですけれども,確かに現在,やや律儀に組織再編に合わせすぎているような印象があるので,買取請求や対価の相当性の説明等,幾つかの点で少し再検討していただければと思うところです。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   そうしますと,大体よろしゅうございますでしょうか。   それでは,幾つか大変重要な御指摘を頂いたと思いますので,その頂いた御指摘については,更に検討させていただき,それ以外につきましては,大体方向はお出しいただけていると思います。どうもありがとうございました。   それでは,次へ進ませていただきまして,部会資料21でいいますと「第3 その他」ということになります。事務当局から御説明をお願いいたします。 ○青野関係官 それでは,部会資料21の「第3 その他」について御説明いたします。   「1 責任追及等の訴えに係る訴訟における和解」ですが,試案第3部第3の1については,パブリックコメントにおいて,これに賛成する意見が多く寄せられ,これに反対する意見はなかったことから,そのような規律を設けるものとすることを提案しております。   次に,「2 議決権行使書面の閲覧等」については,まず本文2(1)において,試案第3部第3の2②アのB案のような規律を設けることを提案しております。  試案第3部第3の2②アについては,株主が書面による議決権の行使に関する株主総会の招集の手続又は決議の方法についての調査以外の目的で議決権行使書面の閲覧等の請求を行ったときを拒絶事由の一つとするA案と,株主がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で議決権行使書面の閲覧等の請求を行ったときを拒絶事由の一つとするB案の両案を掲げておりました。パブリックコメントにおいては,意見が分かれましたが,個人を中心としてB案に賛成する意見が相対的に多く寄せられました。B案に賛成する意見の理由としては,株主名簿の閲覧謄写請求において認められている範囲よりも閲覧謄写を制限するような規律は,閲覧謄写請求権の濫用的な行使を制限するという趣旨に照らして過剰な制限となるということや,A案を採ることにより,同じ意見を持つ株主と出会い幅広い議論をするために議決権行使書面を閲覧等することが認められないこととなれば,少数株主による株主提案そのものを否定することにつながるという指摘が多くありました。また,A案を採った場合には,株主による効率的な委任状の勧誘等が不可能となり得る一方で,会社は,過去の株主総会における議決権行使結果を参照しながら一部の株主に対して委任状勧誘を行うことができ,経営者側と株主との間の公平さを欠くこととなるという指摘もありました。さらに,同様に,議決権行使書面の閲覧は少数株主が共同で株主提案をするために不可欠であるということを理由として,個人を中心として,一定の場合において議決権行使書面の閲覧等を制限すること自体についても反対する意見の方が相対的に多く寄せられました。   このようなパブリックコメントにおける意見を踏まえると,現行法上許容されていると考えられる,株主が少数株主権の行使のために必要な持株要件を満たすために他の株主を募る目的や,株主総会の議案について委任状の勧誘を行う目的で行う閲覧等の請求を権利の濫用と評価して制限することについては,慎重な検討が必要であると考えられます。   他方で,試案第3部第3の2のその他の点については,パブリックコメントにおいて,これに賛成する意見が多数であったことから,本文2(2)においては,試案第3部第3の2②ア以外の点については,いずれも試案第3部第3の2のような規律を設けるものとすることを提案しております。   続いて,「3 株式の併合等に関する事前開示事項」ですが,試案第3部第3の3については,パブリックコメントにおいて,これに賛成する意見が多数であり,これに反対する意見はなかったことから,そのような規律を設けるものとすることを提案しております。 ○藺牟田関係官 引き続き,4以下の登記に関する論点について御説明いたします。   本文4は,試案第3部第3の4についてどのように考えるかを論点として掲げております。パブリックコメントにおいては,A案に賛成する意見とB案に賛成する意見とに分かれており,このような結果を踏まえて,改めて御議論いただきたいと存じます。   本文5(1)は,試案第3部第3の5に対応するものです。パブリックコメントにおいては,これに賛成する意見が多数ではありましたが,利害関係を有する者の範囲が不明確であるという理由等から反対する意見もあり,また,弁護士,司法書士など一定の資格を有する者にいわゆる職務上請求を認めることを条件に賛成する意見や,職務上請求が認められない限り反対するという意見もございました。このようなパブリックコメントの意見も踏まえ,(2)以下の論点も含め,改めて御議論いただきたいと存じます。   (2)は,(1)のような見直しをするものとした場合に,利害関係を有する者の範囲についてどのように考えるかを問うものです。パブリックコメントにおいては,利害関係を有する者の範囲が不明確であるという指摘があったほか,これに該当するか否かの判断に困難が伴うとの指摘もありました。利害関係を有する者の範囲については,代表者のプライバシー保護の要請と登記事項証明書の交付を受ける必要性を考慮して検討すべきであると考えられますが,その検討に当たっては,想定される一定の類型ごとに検討することが有用であると考え,(注)において,パブリックコメントに寄せられた意見等に表れた主な事例を①から④までの類型に整理した上,それぞれについて利害関係を有する者に含めるべきか否かを論点として掲げております。このような具体的なケースの検討も踏まえ,(2)の論点について御議論いただきたいと存じます。   (3)は,パブリックコメントにおける意見も踏まえ,(1)のような見直しをするとした場合に,弁護士,司法書士など一定の資格を有する者にいわゆる職務上請求を認めるべきか否かを問うものです。この点,戸籍法においては,弁護士等の一定の資格を有する者は,受任している事件等に関する業務遂行や,所定の紛争処理手続の代理業務の遂行のために必要がある場合に,戸籍謄本の交付を請求することができることとされており,代表者の住所が記載された登記事項証明書の交付請求についても,これと同様に,弁護士など一定の資格を有する者に職務上請求を認めるものとすることが考えられ,この点について御議論いただきたいと存じます。   (4)は,試案第3部第3の5の(注)に対応するものです。インターネットを利用して登記事項を把握する方法としては,オンラインで登記事項証明書の交付請求をし,窓口において,又は郵送により受領する方法と,登記情報提供サービスを利用して登記情報を閲覧する方法があります。このうち登記情報提供サービスにおいては,利害関係の有無といった個別事情を判断することや,弁護士等をそれ以外の利用者と区別して取り扱うことはいずれも困難であり,少なくとも当面の間は代表取締役等の住所についての提供はしないものとすることとせざるを得ないと考えられます。   他方で,パブリックコメントにおいては,インターネットを利用して代表者の住所を含む登記情報を取得することができなくなると,実務上の利便性や弁護士等の正当な職務上の利用が阻害されることとなるという指摘もありました。そこで,インターネットを利用する場合においても,一定の者に限っては代表者の住所を含む登記情報を提供することができるものとすることについては引き続き検討する必要があると考えられ,本日はこの点についても皆様から御意見を頂きたいと考えております。   本文6では,試案のとおり,会社法第930条から第932条までを削除するものとすることを御提案しております。   御説明は以上です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,御質問,御意見,お願いします。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。第3の「その他」につきましては,1の「責任追及等の訴えに係る訴訟における和解」,3の「株式の併合等に関する事前開示事項」,6の「会社の支店の所在地における登記の廃止」,これらについては特段のコメントはございません。残りの2と4と5について,若干意見を申し上げたいと思います。   2の「議決権行使書面の閲覧等」につきましては,部会資料では,閲覧謄写請求権の拒絶事由に関して中間試案のB案,すなわち「当該請求を行う株主がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき」とすることでどうかとされていますが,「議決権行使書面の閲覧等」の規定を設けた元々の目的,趣旨に照らせば,やはりA案,すなわち「当該請求を行う株主が株主総会の招集の手続又は決議の方法に関する調査以外の目的で請求を行ったとき」とするのが妥当であろうと考えます。   部会資料にも触れられていますが,株主提案を行った株主が株主総会後に議決権行使書面の閲覧謄写を請求して自らの提案に賛成した株主を特定し,その上で次年度の総会に向けて勧誘等を行っているケースがあり,そうした会社で実際に勧誘行為等を受けた株主から会社に対してクレームがなされるなどの不都合が生じています。部会資料では,このような権利行使は権利の濫用ではないと評価する旨の記載がありますが,このように事実としてほかの株主に迷惑が及んだ事例があるわけで,また,一般的にも,他の株主の議決権行使の内容が確認できるとなりますと,場合によっては嫌がらせ目的等でその内容を確認するといった濫用的な事例が発生する懸念も否定できないと思います。ほかの株主の議決権行使結果を知ることが株主の当然の権利かについては疑問があるところであり,その意味で,濫用的権利行使の防止としてはB案では不十分な面があり,A案を採る方が妥当であると考えます。   次に,4の「新株予約権に関する登記」についてですが,新株予約権の払込金額は資本金の額に直接影響するものでもありませんので,新株予約権の発行の段階から登記事項として公示することまでの必要はないと考えます。中間試案のA案,すなわち「登記を不要とする」のが妥当であると考えます。   最後に,5の「株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書」についてですが,(1)の請求権者を「住所の確認について利害関係を有する者」に限定すること,(4)のインターネットでは住所に関する情報を提供しないものとすることにつきましては,プライバシーの保護の観点から賛成です。(3)にあります弁護士,司法書士等に請求権を与えることについても,特段反対はございません。   ここで1点確認させていただきたいのですが,(1)に請求権者として「その他一定の者」という文言が記載されていますが,これは(3)の弁護士,司法書士等を指すと理解してよろしいか,御確認をお願いしたいと思います。   それから,5の(2)の(注)に例示されている①から④,つまり請求権者についての例示ですけれども,私たちは,このままでは「代表者の住所の確認について利害確認を有する者」としては広過ぎるので,もう少し限定すべきであると思います。単に株主であるから,債権者であるから,常に「代表者の住所の確認について利害関係を有する」というのは言い過ぎではないかと思います。元々,代表者の住所を登記項目から削除できないかという問い掛けに対しては,前の会社法制部会で,裁判実務等の場面で必要であるので削除できないという結論に至ったものと理解しております。そうであれば,①と②は削除するか,③の中に内包してしまうのが適切で,③についても,「これから取引を開始しようとする者」とか,「訴えを提起するか否かを検討している者」まで含めるのではなく,もっとシンプルに「訴えを提起しようとしている者」だけで十分ではないかと考えます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。確認の御質問があったと思います。 ○竹林幹事 確認いただいた点でございますけれども,この資料上「その他一定の者」と書いておりますのは,基本的には有資格者,(3)の部分で記載している者を念頭に置いております。ただ,①から④までにつきましても,こういう人たちについて含めるべきか否かについて御意見を頂きたいという趣旨で御理解いただければと考えているところでございます。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。   それでは,梅野幹事,どうぞ。 ○梅野幹事 発言の機会を頂戴し,ありがとうございます。まず,部会資料8頁の2の議決権行使書面の閲覧等でございますけれども,日弁連としては,元々のB案のような規律を設けることに賛成をしております。その理由につきましては,この部会資料にまとめていただいたところでほぼ尽きており,B案に賛成します。つまり,株主名簿の閲覧謄写請求で認められている委任状勧誘等の目的による閲覧請求は,議決権行使書面においても否定されるべきではなく,現行法上禁止されているとまではいえない株主の権利行使をこれ以上制限すること,株主名簿の閲覧謄写請求の場合より制限するということは妥当ではなく,かえって部会資料の9頁に御記載いただいておりますような,経営者側と株主の間に情報格差が生じるといった問題も生じ得るところから,中間試案のB案に賛成したいと思います。   次は,部会資料の10頁の5,株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書について,日弁連としては,中間試案に対する意見において,次のように意見を述べております。すなわち,弁護士が迅速に代表取締役の住所を知り得るための措置が設けられること,具体的には,弁護士による職務上請求制度が創設されること,及び弁護士によるオンラインによる登記事項証明書の交付請求により,代表者の住所地の記載された登記事項証明書を取得できることがいずれも手当てされない限り,本提案,つまり,今回の5につきましては反対するというものでございます。   不特定多数の者が取得できる登記事項証明書に代表取締役の住所が記載されることにより私生活上のプライバシーが害され得るため,これを保護する必要があるという点については,もちろん日弁連としても異論があるものではございません。しかし,問題は,部会資料11頁の,特に(4)に記載されている,インターネットを利用して登記情報をオンラインで閲覧する場合について,一律に代表取締役等の住所についての情報は提供しないものとせざるを得ないという点でございます。   日弁連がこの点を問題としておりますのは,単に裁判実務上,代表取締役の住所を把握する必要性が高く,登記情報提供サービスによって代表者の住所を取れなくなると不便になるということ,その点はもちろんあるのですけれども,それだけではございません。消費者被害案件を取り扱っている弁護士は多くおります。また,日弁連でも消費者委員会等が中心になって消費者被害に日頃取り組んでおります。特にこういった弁護士,弁護士の実務の現場から,代表取締役の住所を登記情報提供サービスを通じて早期に知る必要があるという強い要請があるということでございます。   この点,重要だと考えるので,もう少し敷衍させていただきたいのですけれども,株式会社は,詐欺商法といった消費者被害をもたらす犯罪に隠れみのとして多く利用されている実態がございます。例えば,劇場型勧誘といわれていますけれども,複数の業者が役回りを分担し,パンフレットを送り付けたり電話で勧誘したりして,消費者があたかも得をするように信じ込ませて,実態不明の金融商品などを買わせるといった手口がございます。こういった案件においては,消費者をだますために多くの株式会社が登場します。このような被害に遭った消費者を救済するために私ども弁護士が関与する場合が多くございますけれども,その場合に調査や裁判を行おうとするときに,加害業者を特定するために代表取締役の住所を迅速に把握することが不可欠となります。   もう少し具体的に御説明しますと,加害業者を探知するためには,被害者と打合せをし,被害者が受け取ったパンフレットなどを見て,被害者の話を聴きながら,事務所のパソコンに向かって,登場する会社について網羅的に探索をする。その上で代表取締役の住所地と,ほかに収集した情報等を突き合わせて会社の同一性とか関連性を把握していくということがございます。加害業者を追っていくためには,代表取締役の住所を含む多くの登記情報を確認しなければならないことは決してまれなことではございません。この場合,必ずしも調べようとする会社に対して利害関係があるかどうか,その段階では分かりません。そうやって調査をした上で初めて加害業者かどうかがはっきりしていくわけで,当初の段階では必ずしも利害関係の有無について確認できないまま,まずは網羅的に調べる必要があるということでございます。   こういう形で迅速に代表者の住所を知り得ない場合には,消費者被害案件では加害者を特定できない,あるいは特定が遅延する結果訴訟提起することができない,さらには被害回復ができないといったことにもなりかねません。これでは現在の実務に悪影響をもたらし,ひいては消費者被害に遭った国民等の利益に反することにもなるというように考えております。   部会資料の10頁(3)に記載されておりますとおり,弁護士などに職務上請求を認めていただくことは大変有り難いと思います。そういう方向で御検討いただければ大変有り難いと思いますけれども,職務上請求による場合,どうしても時間が掛かってしまうという問題があって,その意味では,先ほど申し上げたような案件に対応するのには十分ではないという点が挙げられます。   この点,部会資料13頁の5行目以下において,このような意見を御紹介いただいた上,「そこで」から始まるところで,「インターネットを利用する場合においても,一定の者に限っては代表取締役等の住所を含む登記情報を取得又は閲覧することができるものとすることについては,引き続き検討する必要がある。」という御指摘を頂いており,そこは大変感謝しております。もちろんこういった御検討の前提としては,費用を要するといったシステム上の課題等があることは,私どもも重々承知しておりますけれども,仮にこういった方向で立法がされる場合には,その段階までに登記情報提供サービスにおいて,代表取締役等の住所が記載された登記情報を弁護士が職務上取得又は閲覧することが可能となるようなシステムとしていただけるよう,強く要請させていただきたいと思います。   長くなりましたが,日弁連の立場を御説明いたしました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,小林委員,どうぞ。 ○小林委員 どうもありがとうございます。その他の第3のところで,まず1番の責任追及等の訴えに係る訴訟における和解については,特に異論はございません。ただ,中間試案で記載されていないところをコメントさせていただきます。株主による責任追及等の訴えの提起の制限について,特に中小企業におきましては,株主あるいは元取締役,OBというようなところの内紛系の訴訟がよく起こります。これは経済的な価値の問題ではなく,嫌がらせ目的の提訴もあることから,本来目的の訴訟から逸脱しており,訴訟による人的,経済的資源の損耗を強いられるということもございます。したがって,こういった,株主による本来の目的にかなわない責任追及の訴えについては制限を設けていただきたいということを,今回,中間試案に記載されていなかったので,また改めて申し上げておきたいというところでございます。   それから,2番目の議決権行使書面の閲覧等については,商工会議所ではパブリックコメントにおいて,閲覧等の拒絶事由としては,やはりA案の方を支持させていただいております。こちらは,先ほどの古本委員のお話もございましたとおり,元々の制度趣旨は,株主の意思に基づかない議決権行使とか議決権行使書面による投票が正確に採決に反映されないという瑕疵ある処理を防いで,決議が適法かつ公正になされることを担保するためであります。したがって,その後の決議の取消し等の訴えを請求するために定められた権利と考えますと,やはり本来の趣旨から逸脱した請求についてまで認めるべきではないと考えております。   内部的に検討したときに,意見として,現在,SNSのような個人による情報発信や通信手段が発達しており,株主が自己の提案に賛同してくれる株主を探す手段として議決権行使書面の閲覧という手段に頼る必要性は低下してきているのではないかと考えております。そうしますと,本制度は本来の趣旨に従った制度として整備運用していただくということにして,株主には別の手段による自助努力をお願いするということであったとしても,必ずしも過大な負担にはならないのではないかと考えているところでございます。   それから,3番目,株式の併合等に関する事前開示事項につきましては,特に異論はございません。   4番の新株予約権に関する登記につきましては,商工会議所としては,手続登記費用の軽減等の観点を考えると,A案を支持したいと考えております。   もう一つ,5番目の株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書でございます。商工会議所としては,会社代表者のプライバシー,安全は尊重されるべきというところから,中間試案での提案そのものについては基本的なところは賛成でございます。しかし,その上で,代表者の住所を登記事項証明書の原則不記載にする際の利害関係人の範囲については,やはり円滑な経済取引を阻害しないような配慮が必要ということをこれまで申し上げております。   今回の資料におきまして,(2)(注)③のところで,株式会社とこれから取引を開始しようとする者などについて検討していただけるということについては,感謝申し上げるところでございます。   現在の,特に中小企業に関わる実務でございますが,取引の実情として,代表者の住所については,取引の開始前,期間中における与信審査,与信管理のためにそれなりの頻度で利用されてございます。そういたしますと,これが非常に把握に障害が起こるということになると,実務的にかなりの影響が出ると考えております。改正後の制度においては,こうした現行実務が滞らないように配慮をお願いするということでございます。これは,インターネットにおいて代表者の住所が事実上閲覧できなくなることについては,基本的には慎重に検討していただきたいという意味を含みます。   このようなことをなぜ申し上げるかといいますと,一般的にこれから取引をしようとする販売先とか取引先が大企業であれば,会社としての信用力が分かりますので,代表者個人の住所まで調べる必要は多くの場合,生じないと考えます。逆に,取引先が小規模な会社になればなるほど,公表されている会社概要,信用情報などの情報量が圧倒的に少ないという現実から,会社が小規模になればなるほど,会社と代表者の個人のところが近づいてきて,特に資産等については一体性が強まるというようなこともございます。そこに着目いたしますと,住所情報が,不動産登記で自宅の抵当権の設定などがどうなっているのかに次はつながってきます。会社登記の代表者の住所と一体的に見ることによって,取引の前段階,あるいは取引中であっても,住所情報を閲覧する必要が,会社として必要になることがよくあるということは御認識いただきたいと思います。そういう意味では,小さな企業ほど取引の際に代表者住所という情報へのニーズが高まって,実務で活用されているということについては念頭に置きながら,ここは慎重に御議論いただきたいということでございます。そういうようなところは申し上げておきたいというところでございます。   6の会社の支店の所在地における登記の廃止については,特に異論はございません。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,三瓶委員,どうぞ。 ○三瓶委員 ありがとうございます。まず,8頁,2の議決権行使書面の閲覧等についてです。これは9頁の補足説明に記載があるとおり,先ほども御意見がありましたけれども,ここに書いてある「経営者側と株主との間に情報格差を生じ公平さを欠く」などの指摘,また,少数株主権の行使のために必要な持株要件を満たすために他の株主を募る目的,議案について委任状の勧誘を行う目的など,こういったことについて濫用とまでは認められないという意見に賛成します。   また,2017年5月の日本版スチュワードシップ・コード改訂で,指針4-4に,他の投資家と協働して対話を行う集団的エンゲージメントが有益な場合もあり得ると規定されています。このことと議決権行使書面の閲覧等が,直接関係があるということではないのですけれども,株主権の行使行動の方向性ということでは,一定の関連性があるというか,方向性が一致すべき部分でもあると思います。ですから,先ほど申し上げたような行為を濫用と認めるような感じがあると,齟齬や混乱を来すのではないかという懸念があります。   次に,10頁目,5の株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書についてです。ここでは利害関係を有する者の範囲というのが論点になっていると思います。ここで事務局から提案していただいた(2),(3)というのは非常に興味深いのですが,(2)の(注)については,①から④を単純に含めると,必ずしも妥当でない場合が含まれて,範囲が広過ぎる可能性があるということ,一方,(3)のように「一定の資格を有する者は,…のために必要があるときは」とすると,資格要件があり限定し過ぎではないかと考えます。   そこで,範囲条件として,ここで英語の5W1Hで例えますと,(2)というのはWHO「誰が」で範囲を考えているのではないかと,その結果,該当すれば,WHOEVER「誰でも」となって,範囲が広過ぎるというのが先ほどの点です。(3)の場合は,WHO「誰が」,WHEN「いつどのような状況下で」,WHAT「何の目的で」という3条件で範囲を考えているように思います。ただ,最初のWHO「誰が」というところに資格要件を付けているので,ぐっと前提の範囲が狭められています。私の考えでは,(2)と(3)の折衷というとあれですけれども,例えば(3)を元にして言いますと,「誰が」の範囲に①から④を含めるようにするということで,もう少し利用者の範囲が広がる。ただし,その範囲だったら誰でもいいわけではなくて,先ほどの(3)のような,いつどのような状況下で,何の目的でということが同時に条件に入ってくることがいいのではないか。そうすると,結果的には(3)に近い範囲だけれども,少し広い範囲になると思います。(2)の(注)の③,④には何の目的でということが少し書いてありますが,こういったことがその条件に盛り込まれると,ちょうどいい範囲が設定できるのではないかと思います。   これを踏まえて,(4)のインターネットを利用したオンラインでの閲覧の場合ですが,これは大変難しいところだと思います。技術的に難しい問題があるかと思いますが,ただ,言い方として,オンラインで閲覧する場合は提供しないとなってしまうと,端から手段としてこのルートを使うと提供しないということになってしまうので,そうではなくて,誰がいつどのような状況下で何の目的でということを要件とした場合に,インターネットを利用したオンラインでの閲覧の場合に,うまく条件適合を確認できないために今の段階では提供できないということにしておくべきではないかと思います。ですから,これが何らかの方法で可能になれば,将来的には必然的にオンラインでも可能になると,そんな格好ではないかということです。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,前田委員,どうぞ。 ○前田委員 どうもありがとうございます。議決権行使書面の閲覧等についてだけ,意見を述べさせていただきます。今の三瓶委員の御意見とほぼ重なるのですけれども,この閲覧謄写請求の制度は招集手続と決議方法に関する調査のための制度だということは,まず異論のないところだと思いますので,私は前回までは,考え方として,試案のA案の方,決議方法等に関する調査以外の目的なら拒めるという案の方が明快でいいというように考えておりました。   しかし,確かに補足説明にお書きくださっていますように,次の株主総会での株主提案権行使に備えて,どの株主がある議案に賛成したかという,株主名簿の閲覧では得られない情報を得るために議決権行使書面の閲覧請求がなされた場合に,これは古本委員,小林委員のお話にありましたように,本来の制度趣旨とは異なった目的による請求であることは確かだと思うのですけれども,請求者が株主として有する利益のために請求しているという面は否定し難いところでありまして,これを権利の濫用とまで見るのは困難なのだろうと思います。   そういたしますと,今回の閲覧等に関する規律の見直しの趣旨は,権利濫用になるような請求を抑えるための明文規定を設けようということですので,その見直しの趣旨に照らすと,試案のA案では閲覧請求を制限し過ぎることになってしまうのではないかと思います。ですので,試案のB案の方で,権利濫用となるような場合だけを抑えるという案に賛成をしたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,尾崎委員,どうぞ。 ○尾崎委員 ありがとうございます。私も当初,議決権行使書面のところですが,この制度は,そこに書かれているとおり,招集手続,決議方法に関する調査をすることで,例えば決議取消訴訟とかこういったことで自分の議決権行使書面が正しく扱われたかどうかを客観的に明らかにする仕組みだと考えておりました。ということで,早稲田意見ではむしろ総会検査役をうまく使うべきではないかと述べております。全体としてそういう意識が我々はあったからで,そこにも,ABいずれかであれば,B案に賛成するということを述べていたかと思います。この制度の趣旨が拡大しているのだと考え,つまり,次の総会に向けて,現在の提案権を行使されている方が,この前どういう議決権行使されたのかということを確認する制度でもあってもよいのではないかと思います。こういう確認の趣旨からすれば,B案でよろしいのではないかと,私も考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかに,いかがでしょうか。   そうしますと,この項目は1,3,6については,小林委員から1に関連して御発言はありましたけれども,1そのものへの反対ではないので,1,3,6については中間試案の線について,この部会でもほぼ御異論はないかと言っていいかと思います。2,4,5については,いろいろ御意見をお出しいただきましたが,2それから5については,それなりに御意見は頂いていますが,4については,御発言はあったのですけれども,今一つ御意見を頂けてはいないように思います。4,それから,今いろいろ御議論いただきました5も(2)と(4)辺りについて,もし追加で御発言があれば,大変有り難いと思いますけれども,いかがでしょうか。   特に,よろしゅうございますでしょうか。それでは,先へ進ませていただきます。戻っていただいても結構でございますので。   それでは,最後にというのでしょうか,パブリックコメントの結果を踏まえて,これまで議論に上がらなかった点などについて,もし御意見等がございましたらお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。   それでは,坂本幹事,どうぞ。 ○坂本幹事 ありがとうございます。参考資料44の意見書の二つ目の論点として入れさせていただいております,2頁目の上から3分の1ぐらいのところ,執行役員等をめぐる検討課題についてということで,これまでも何度か経産省の方から意見を提出させていただきました点でございますが,改めて,資料に沿って発言をさせていただければと思います。   執行役員については,平成9年頃から一部の企業で,取締役会のスリム化に伴いまして,執行役員を選任するというところが現れ始め,近年,コーポレートガバナンス改革の流れの中で,取締役会の監督機能の強化,社外取締役の選任が進む中で,規模の適正化ということともあいまって,業務執行取締役の数が削減をされ,一方で執行役員などの会社法上は必ずしも会社法の機関としては位置付けられていない経営陣幹部というのがますます重要な役割を果たすようになってきている,場合によっては執行役員社長といったような形で経営トップがそういったポジションにあるということも生じていると理解をしております。   こうした執行役員の選任につきましては,現行の会社法上,取締役以外の業務執行を担う機関が指名委員会等設置会社における執行役以外は存在しないという中での実務の工夫という面もありますし,典型的には,年度の初めから株主総会までの間の社長の空白を避けるために,特に最近,若返りということも進んでおります中で,取締役でない新社長を会社法上の代表権を有する者として選任するニーズというのも想定されるところでございます。   こうした経営陣幹部については,実質的には従来の業務執行取締役と同等の重要な経営上の職責を果たすという場合があるにもかかわらず,善管注意義務ですとか報酬規制,あるいは情報開示といったような会社法上の規律の対象にならないという点については指摘をされているところかと考えております。こうした執行役員という形で選任されている者のうち,特に業務執行取締役と同等の,特に重要な職責を果たす者については,例えば,指名委員会等設置会社の執行役と同様に会社法上位置付け,一定の規律をかけていくということ,会社の機関として正式に位置付けを与えていくということも検討してはどうかということを考えております。   特に,監査等委員会設置会社ですとか,今回の試案の中で第2部第2の2のA案のような規律が入った場合の監査役設置会社において,その重要な業務執行の決定についても取締役に委任することが可能となった場合に,例えばそういった権限移譲を受けて業務執行の重要な部分を担う者については少なくとも,執行役と同等に,会社法上直接の規律の対象とするということも検討に値するのではないかと考えております。   こうした事象の根っこには,コーポレートガバナンス改革の議論の中で,取締役会のモニタリング機能を強化させようという流れの中で,監査役設置会社等においてもこういったモニタリングモデルを実現しようというときに,監督機能と業務執行機能の分離を進めるという取組に伴って現れてくるものとも考えられまして,こうした機関設計を選択した場合に,監督者(ディレクター)と業務執行者(オフィサー)との分離を徹底するということに,現行法制上,限界があるということについて,どう考えるかという問題にもつながるのではないかと考えております。   ただ,非常に大きな論点につながるということでもありますので,必ずしも今回のこの法改正の中でということに限らず,将来的な検討課題の一つとして,その評価や対応について議論をしていただくことも有益ではないかということで,意見を出させていただきました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   今の点,あるいはそれ以外の点につきまして御意見,御質問等ございますでしょうか。   それでは,神作委員,どうぞ。 ○神作委員 ありがとうございます。今,坂本さんから御意見が出されましたけれども,非常に重要な御指摘であると思います。会社法は取締役会の権限として,支配人その他の重要な使用人の選任及び解任については取締役会で決議するということで,そこでは会社法上の選任,解任についての法的位置付けというのはあるのですけれども,坂本さんが御指摘されたような,それ以外の各種規制,情報開示等々については,未整備であるということは否定できないと思います。   特に,監査等委員会設置会社や,試案第2部第2の2のA案のような規律が設けられた場合には,監査役設置会社においても相当な権限を持つ,しかし,会社法上位置付けがはっきりしない者が出てくる可能性があります。先ほど申し上げたように,「重要な使用人」について一般的な規律を考えるか,それとも,もう少し射程を絞って執行役員に限定して検討するということもあるかと思いますけれども,いずれにしても非常に重要な問題提起で,学会においても同様の問題意識を持っている方は少なくないのではないかと認識しております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかに,いかがでしょうか。   それでは,藤田委員,どうぞ。 ○藤田委員 今の坂本課長からの意見ですけれども,今回の改正というより将来の課題として広く考えるべきではないかというのには私も全面的に賛成でございます。ただ,どういう問題と考えて,位置付けて議論するかということについて,まずは,きっちり考える必要があると思います。執行役員も実は異なったタイプのものがあって,取締役会サイズを絞ったために従業員になったというタイプの人,経営の中心のトップというわけではなくて,あえていえば取締役会メンバーの中でやや周辺的なところにいて,将来は取締役になるかもしれないが取締役の数を絞れば落ちてしまう,そういうタイプの執行役員もかつては少なくとも多かったと思います。他方,最近,耳にするようになってきたのは,異なったタイプです。執行役員社長と呼ばれましたけれども,CEO的な人をあえて取締役会メンバーにしないようなことが可能かという,そういう観点から出てくる業務執行者です。  私は,特に後者が非常に重要な検討課題になり得るという気がしています。今,神作委員が,現行法で抜け落ちているところという観点が,従業員的な人について,そのままで放置していいのですかという意味だとすると,今私が申し上げたCEO的な人というのとは少し違うタイプのものということになります。そちらの方も問題はあると思うのですが,むしろ業務執行をする中心的な人の取締役会メンバーではなくすることの可否というのが,恐らく将来的には一番重要な検討課題かと思います。   既に最初の説明であったところですので,余り繰り返しませんが,取締役会の機能を監督――業績を評価し,選定,解職や報酬をコントロールするという意味での監督ですが――に純化し,取締役を執行役から独立性を強化するということを言っていくと,取締役会のメンバーではない人に業務執行させて執行と監督を分離すべきであるという方向性は出てきてもおかしくはない。現行法でそれを明示的に認めるのは指名委員会等設置会社だけですけれども,そのほかの会社でどこまでそれができるのかというのは,現行法上,確かにはっきりしないところはありますし,また,立法論としても積極的に全ての会社でそういうことができるようにすべきだと考えるべきかどうかもよく分からない。また,認めるとしたら,どのような要件の下で認めるべきかというのは,意見が分かれるかもしれない。それは結局,どういう会社がどういうガバナンスの機構を備えるべきかということをめぐって,余りきっちり整理されていないことに由来する問題で,これを「執行役員に関する法的問題」という切り方をすること自身が,問題の設定としてはあまり正しくないのかもしれません。むしろ取締役会の在り方,会社の機関についての選択肢の一環として議論すべきような気がします。業務執行者について,なぜ取締役会構成員であることを要求してきたのか,資格を切り離せるのはどういう会社なのか,完全に従来型の取締役会を維持しながらもこういう選択肢は許せるのか,許せないのか,その辺りは余りきっちり整理されていません。   参考資料44を見ますと,取締役ではない執行役員社長のようなものを置くことを実務の工夫と紹介されているのですが,これを非常にポジティブに評価していいのかどうか自身はっきりしない。例えば年度初めから総会までの間の暫定的なものとしてというのはともかく,恒常的な制度として正面から採用していいのかというと,少し評価が分かれるところなのではないかと思います。今回,取締役会の権限を縮小し,業務執行者に移譲する余地を認める提案が通るかどうか分かりませんが,仮に一定の要件を満たす場合にそれが認められるとした場合に,取締役ではない執行役を認めるというのはその要件と連動するのか,しないのか。もし連動するなら,一定の範囲が現行法の下で執行役員社長というのを置くような行動については否定的な評価をすることにもつながりかねないということになるので,あるいは現状よりもやや規制強化的な面すら出てくるかもしれないのですけれども,そういったいろいろな基本的な点で整理しなければいけないことがあると思います。そういう大きな機関設計一般の選択肢の問題として,きっちり整理した上で,その一つとしてこの問題を議論することはいずれ必要になる。ただ,今回の改正において残された時間内にできるはずはありませんから,長期的な課題として議論すべきですが,現に結構ニーズもあるとすると,そう悠長な話でないという前提で検討されることを期待したいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,松井幹事,どうぞ。 ○松井幹事 ありがとうございます。今,業務執行と監督の分離の話と,名称にかかわらず,実質的に考えるべきかどうかという話が出てきたのですけれども,それの関わりで,1点だけ,新経営陣が年度初めから株主総会までの間に業務執行ができないという話で,ここに代表権を与えるということが書かれていて,この代表権というのが普通,会社法第351条で取締役というのは職務代行者というのを決めたり,きちんと法律にのっとった手続でないと代表権を与えないという形にしていると思うのですけれども,これをしなくてはいけないニーズが想定されるとあるのですけれども,具体的にもしそういうニーズがあるということで御存じのことがございましたら,教えていただけると幸いです。 ○坂本幹事 想定されるということで,具体的にというところまでは,まだ詰めておりません。 ○神田部会長 よろしいでしょうか。 ○松井幹事 はい。 ○神田部会長 それでは,ほかの点を含めて,いかがでしょうか。   それでは,青委員,どうぞ。 ○青委員 経産省からの提言につきまして,今後こうした点を考えていくことについては重要かなという感じはいたします。ただ,この点を考える際に,監査役設置会社,監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社というそれぞれの機関設計の形態において,どういうふうな形で権限を分配するのか,あるいは,取締役である経営トップがいない場合に,経営トップ以下の方がどういうところまで業務執行を行うことができるのかという点について十分な議論を行うことが必要だと思われます。また,それらの3形態以外に実質的に機関設計の幅を広げるというような議論になるのかどうかといった点については,慎重かつ丁寧な議論が必要になると思います。   また,現状,「社長執行役員」を置いていらっしゃる会社の実態としては,恐らく,年度が開始する4月から6月までの期間において,取締役として選任するための株主総会の手続が間に合わないために一時的にそうした地位を有する方を置いていらっしゃる例がかなり多いのではないかと感じてはおります。そうだとすると,そもそも組織論の話ではなくて,手続的な分野に限定して議論すべき問題かもしれないという感じもしますので,そこのところは各社のニーズなり実情なりというのを十分に加味する必要があるのではないかと思われます。また,「業務執行取締役の数が減少する中で」というお話がございましたけれども,少なくとも今,執行役員社長という役職を置いている会社の中で,私の知っている限りでは,社内取締役が5名ぐらいはいらっしゃるような会社が主なところかと思っており,そうした点についても実際,どういうニーズがあってのことなのかという点についても十分に目を配りながら,今後の議論をしていく必要があるのではないかと考えます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,尾崎委員,どうぞ。 ○尾崎委員 全く違う話でよろしゅうございましょうか。 ○神田部会長 もちろんです。 ○尾崎委員 今回も,例えば電子化の話にしても何とかにしても,対象とすべき会社という点で,いろいろなものが全て株式会社の中に入ってしまっている。本当にそれでいいのかという問題意識を表明したいと思います。現在の会社法も,大学で授業をしていると,学生さんにはなかなか分かりづらいところがあって,例えば括弧書きでいろいろと,何とか設置会社はとか,あるいはこういう大会社はとか,場合によっては金商法の適用されるような会社もあるという指摘があります。今急にこうしろということではなくて,そろそろ会社の区分の立法というのでしょうか,そういう形の議論というのももう一度あっていいのかなという感じがしております。いろいろと会社の種類によって随分,本来適用すべき会社とそうでないような会社とか,いろいろとあって,使い分けをすればいいのだという議論もあるのでしょうけれども,技術的な話ですが,今からこういうことも考えておかないといけないのではないかと思うのです。いずれ将来の課題として,まだ随分先かもしれませんけれども,そういうふうな点も少しこれから考えていかなければいけない。今回もどういう会社を想定するかによっていろいろな議論の仕方が随分変わってくるのだろうという感じがしております。感想程度のものになりますが。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしゅうございますでしょうか。   それでは,ここで一旦,休憩を取らせていただきたいと思います。いつも15分程度なのですけれども,もし12,3分でよろしければ,3時15分までということでよろしいでしょうか。3時15分まで休憩とさせていただきます。よろしくお願いします。           (休     憩) ○神田部会長 それでは,再開させていただきます。   次の御審議をお願いしたいと思うのですけれども,「取締役等の欠格条項の削除に伴う規律の整備についての検討」ということであります。部会資料22になります。事務当局からの御説明をお願いいたします。 ○藺牟田関係官 それでは,部会資料22について御説明いたします。部会資料22は,いわゆる欠格条項を削除する場合において,これに伴って要する規律の整備についてどのように考えるかを問うものです。   成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づく成年後見制度利用促進基本計画及び成年被後見人等の権利の制限に係る措置の見直しに関する業務の基本方針において,欠格条項が数多く存在していることが成年後見制度の利用をちゅうちょさせる要因の一つになっているとの指摘を踏まえ,速やかに必要な見直しを行い,平成30年通常国会に見直しの結果を踏まえた関係法律の改正法案を提出することを目指すこととされ,現在会期中の平成30年通常国会に成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案が提出されております。   この法律案では,現行の欠格条項を削除し,例えば,心身の故障により業務を適切に行うことができない者といった個別的かつ実質的な審査の規定を整備するという基本方針に従い,公務員,士業,法人役員,営業許可などの分野で188の法律を見直すこととされております。株式会社及び一般社団・財団法人については,一般的に国又は地方公共団体による監督等が存在せず,実効的な個別審査規定を整備することが難しいこと等から,この法律案において一括した見直しの対象に含めることは見送られました。   もっとも,内閣府に設置された成年後見制度利用促進委員会において,欠格条項を削除するものとした場合における会社法制上及び実務上の影響等を踏まえた代替措置の必要性及びその内容等において,当部会において議論を行った上,会社法の改正法案には欠格条項の見直しに関する規定も併せて盛り込む方向で検討を進めることが求められており,また,同法律案附則第7条においても,会社法及び一般社団法人及び一般財団法人に関する法律における欠格条項について,同法律の公布後1年以内を目途として検討を加え,その結果に基づき,欠格条項の削除その他の必要な法制上の措置を講ずることが求められております。そこで,欠格条項を削除する場合において,これに伴って要する規律の整備について御議論いただきたいと存じます。   部会資料本文1は,成年被後見人等の取締役等への就任についての会社法上の手当てに関するものでございます。部会においては,成年被後見人等が就任承諾を取り消した場合には,取締役等として会社法上の責任を一切負わないものとする考え方もあり得るため,この点について強い懸念を示す御意見が複数ありました。成年被後見人等が取締役等としてした行為が積み重ねられた後に就任承諾を取り消すことができるとすれば,法的安定性を著しく害することとなると考えられますし,経営に失敗した場合に,その責任を免れさせるために就任承諾が取り消されるおそれも否定できず,これらを踏まえると,就任承諾を取り消すことができるものとすることは相当でないと考えられ,成年被後見人が取締役等に就任する場合に必要となる一定の手続を設けた上で,その手続をとったときは取締役等への就任の効力が確定的に生ずるものとし,その手続がとられなかったときは,取締役等への就任を当初から無効とすることが考えられます。   そこで,民法上の規律を前提として,(1)では,成年被後見人が取締役等に就任するには,成年後見人が法定代理人として就任承諾の意思表示をしなければならないものとするとともに,成年後見人が就任承諾をするに当たっては本人たる被後見人の同意を得なければならないものとすること,また,(2)では,被保佐人が取締役等に就任するには,保佐人の同意を得た上で就任承諾の意思表示をしなければならないものとすることを論点として掲げております。   本文2は,職務執行の取消しを制限する規定を設けることに関するものです。成年被後見人等が代表者として第三者との間で契約を締結した場合には,民法第102条の適用又は類推適用により,この契約を取り消すことはできないと解することができると考えられますが,対外的な業務執行以外の職務執行についても同様に解することができるかどうかは明らかではありませんし,そもそも個々の職務執行について,行為能力の制限を理由として取り消すことができるとすること自体に取引の安全を害する懸念があります。そこで,制限行為能力者が取締役等としてした行為は,行為能力の制限によっては取り消すことができないものとする規定を設けることを御提案しております。   本文3は,欠格条項の削除に伴う規律整備として,このほかの手当ては講じないものとすることについてどのように考えるかを問うものです。部会においては,取締役等の終任に関し,法律関係を明確にするため,会社法に強行法規として後見開始の審判を受けたことを取締役の終任事由とする旨の規定を設けるべきであるとの御意見もありましたが,これに関しては,破産手続開始の決定を受けた場合と同様に,後見開始の審判を受けた取締役についても,民法の委任の規定により,その地位を当然に失うものとした上で,そのような者を再度取締役として選任するか否かはその後の株主総会の判断に委ねれば足り,会社法に明文の規定を設ける必要はないという御意見もありました。   民法第653条第3号は任意規定と解されており,取締役等が後見開始の審判を受けたことを終任事由としない旨の特約を会社との間で締結することができるとも考えられますが,それは相当でないとして,会社法に後見開始の審判を受けたことを終任事由とする旨の明文の規定を置くべきであるという考え方もあり得ます。しかし,会社法に明文の規定がないからといって,直ちに任意規定と解する必然性はありませんし,このような特約の有効性に疑問を呈する参考人の御意見もあったことからすれば,特約を排除するためにあえて終任事由について明文の規定を設ける必要はないとも考えられます。そこで,この点についてどう考えるか,御意見を頂きたいと存じます。   このほか,民法第713条が会社法上の責任に適用されるかという問題がありますが,この問題は現行法においても存在し,解釈に委ねられているため,欠格条項を削除するものとした場合においても引き続き解釈に委ねることが相当であると考えられます。   御説明は以上になります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,御質問,御意見,いかがでしょうか。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。部会資料に記載の前提のとおり,取締役等の欠格条項を削除するということであれば,法的安定性確保の観点から,部会資料の1,2に記載の手当て,これが必要であると考えます。就任に際しては同意,承諾を必要とすること,取締役等としてとった行為については行為能力の制限を理由に取り消すことができないとする御提案に賛成です。   「3 その他について」のうち,「後見開始の審判を受けたことを取締役等の終任事由とする旨の規定を設けないこと」につきましては,部会資料の補足説明に記載がありますように,後見開始の審判を受けたときに取締役等がその地位を失って,再任するか否かの決定を株主総会で行えるという制度設計になっているのであれば,異論はございません。   ただし,保佐人についてですが,保佐開始の審判を受けたことは民法上委任の終了事由となりませんので,このままでは取締役等に選任された後に被保佐人となっても,その時点で取締役等としての地位を失うことにはならないということかと思います。この点は民法どおりなのでしょうが,今までの会社法とは,欠格事由がなくなることによって少し変わってきますので,被保佐人については,保佐開始の審判を受けたときに,後見開始の審判を受けたときと同様に,一旦取締役としての地位を失うという形,つまり,もう一度株主の判断を仰ぐということも考えてよろしいのではないかと思います。   一つ質問ですが,今回の部会資料には,成年被後見人等が第三者に損害を及ぼした場合の当人の責任について明示的な言及がないように思いますが,成年被後見人等も就任したからには,そうでない人と同様に責任を負うと理解すべきなのか,確認をさせていただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。御質問の点を。 ○竹林幹事 その点につきましては,部会資料4頁の責任能力の規定についてというところで触れさせていただいてございまして,制限行為能力者であるということによって一律にその責任を免れるということではないと考えているのですけれども,責任能力の規定が債務不履行責任に適用があるかないか,会社法上の責任が債務不履行責任なのか,不法行為責任なのか,特則として,会社法上特別の責任なのかというようなところにもよろうかと思いますけれども,解釈の余地は残されていると考えております。 ○神田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事 部会資料の1,それから2につきましては,以前の部会でも,このようにした方がいいのではないかと申し上げたところです。すなわち,成年被後見人等が後見人等の承諾なく取締役等に就任しますと,後でこれが取り消されたときに非常に複雑な法律問題が生じますので,これらの者は,後見人等の同意を得た上で就任承諾した場合にだけ取締役になると,そして,なった以上は取締役として完全な権限と義務責任を負うとすることが必要であると申しました。そういう意味で,1と2はそのような考えと完全に合致しておりますので,これには賛成でございます。   他方,取締役等の義務と責任に関しては,3の(2)ですか,責任能力の点に関し,特に明文の規定は設けず,解釈問題になるということで,このような立て付けにすること自体は特に反対は致しませんけれども,会社法の規定というのは,対株主,対会社間だけでなくて第三者の利益を保護するために取締役の義務や責任の規定が設けられておりまして,これらは全て強行法規であることに鑑みますと,成年被後見人等であっても,1に書いてある要件を満たして承諾した以上は,完全に取締役としての責任が課されると解釈すべきであると考えます。   この点について,特に部会で何かの決定をする必要はないでしょうが,私は,取締役等の役員の責任は非常に厳しいもので,確かに会社によっては資産管理会社のようなもので,ほとんど第三者に対して債務を負っていないため,成年被後見人であっても役員等に就任して無理のない範囲で仕事をして報酬を得るということが十分にできる場合もあるかと思いますが,もしも会社が普通に事業をして負債を負いますと,その取締役は,会社法第429条第1項に代表される非常に厳しい責任を負うことになります。その点について,特に就任の承諾等をする成年後見人や保佐人が成年被後見人等の利益のために承諾の意思表示等をするということが極めて重要であって,当然のことながら,成年被後見人は成年後見人に利益を保護する善管注意義務を負っていると思いますので,仮にこの承諾が相当の注意を尽くしてなされず,最終的に成年被後見人が会社法上の責任を負ったとしますと,成年後見人の方が成年被後見人に対して責任を負うという場面も十分想定されます。今回,このような制度を作ること自体についてはもう異論の余地がないようですから,致し方ないとしても,成年被後見人をそのような非常な法的リスクにさらすことになるということを関係者重々承知の上で,この制度を運用していってもらいたいと望むところであります。   それから,最後に,その他の終任のところなのですけれども,私も古本委員と同じような疑問を感じておりまして,終任のところについて手当てがないと,現行法と少し違うことになるというだけでなくて,例えば,被保佐人になる前に取締役に就任した者が被保佐人になったときに,そのまま取締役の義務と責任を負い続けるということが,果たしてこの人の真意に合致するのかという点も考える必要があると思います。もちろん辞任をすることは自由であるわけですけれども,義務と責任を負っている以上,辞任に対しても多少の制約が会社法上掛かってきますし,また,辞任の意思表示が十分に自分自身の利益のためにできるかということも,被保佐人になっている以上,多少の疑問もあるわけですから,私としては,そういったこともありますので,被後見人又は被保佐人になったというところで一旦任期が終了するということを会社法上明確にするべきではないかと思います。   その点に関して言うと,私は,1の就任承諾の規制が入ると,基本的には被後見人や被保佐人が取締役に就任するには,後見人,保佐人の同意等が要件になってきて,同意等が得られないときは,言わば資格がないような形になるので,従来も資格を事後的に失ったときはそこで終任すると考えられていますから,仮に終任事由に関して明文の規定を入れなくても,就任承諾について1の規制を入れれば,事後的に取締役が成年被後見人又は被保佐人になった場合は,そこで終任するという解釈も可能なのではないかと思います。この点については,私自身も今日になるまで十分に考えてこなかったので,自信がないのですが,取締役が就任後に成年後見開始決定または保佐開始決定を受けた場合の法律関係を明確にするような規定を入れた方がいいのではないかと現在は考えております。 ○神田部会長 ありがとうございました。同じシュウニンという発音で二つの漢字があるので,議事録のときにきちんとチェックするようにお願いします。   それでは,藤田委員,どうぞ。 ○藤田委員 今,田中幹事が言われたことと大きく重なるのですが,基本的に前回,私もかなり慎重な発言をした方で,そのときの最大の問題意識は,就任承諾を取り消せば何もなかったことになるというのが一番大きな問題だと考えたことで,それについては今回,かなりきちんと手当てされていますので,基本的にはよくなったかと思います。   念のために確認ですけれども,例えば成年後見人の就任の承諾は,商業登記の取締役の変更登記の際の添付書類になるのでしょうか。つまり,それは登記の段階できちんと承諾をとったかは一応チェックされるという建前でしょうか。   その他,終任事由の3について,気になる点はほかにもあります。現行法では非公開会社ですと取締役の任期は10年まで延ばせます。そうすると,就任後,例えば1年ぐらいで被後見人,被保佐人がついた場合には,あと9年間は何も問われないで続けられるのかという点が,気になります。直ちに終任にするということも考えられるかもしれませんが,せめて一定期間内に成年後見人の同意なり保佐人の同意なりを得る,それができないと地位を失うぐらいのことはしておかないと,長い任期を想定すると問題があることもあるような気がします。根本的に1で書いてあるような発想と整合的な規律を設ける限りにおいては,被後見人,被保佐人の活躍の場を不当に狭めるといった批判を受けることも余りないと思いますので,少し考えていただければと思います。 ○神田部会長 ありがとうございます。確認の質問がありましたが。 ○竹林幹事 今御確認いただいた点は,登記事項について,どういった証明書を要求しているかということに関わりますので,確認した上で御回答差し上げたいと思います。 ○神田部会長 それでは,野村委員,どうぞ。 ○野村委員 ありがとうございます。私も最初,この話がこの部会に登場したときには,民法の中でも,例えば営業の許可を受けた未成年などのような規律のように,きちんと取消しができないような形の制度設計が必要だという発言をさせていただきましたので,それとかなり類似した形での結論に至っていることについては非常に有り難く思いますし,また賛同したいと思います。   特に,2などについては,確かに現行の民法第102条によりますと,代理に関しては取り消すことができないということが明記されていますが,業務執行については,対内的業務執行は,必ずしも代理という概念とは一致しないものがたくさんありますし,会社法の中には,例えば決議に賛成したことによって責任が発生するといったような規定がたくさん設けられて,推定規定などもございますので,そういうときに責任逃れのために,あの決議のときのことは取り消させてくれというような個別の対応をすることは望ましくないと思いますので,就任自体のところで一旦承認を受けている以上は,その種の内部の行為一切についても取り消せないという形にするのが合理的ではないかとは思います。   それから,恐らく解釈で,これはもう当然のことなのだと思いますけれども,1に関して,就任承諾というのは恐らく理論上は,株主総会の決議が終わった後に就任のオファーがあって,それに対して承諾をするという整理というのに理論的にはなるのだと思いますが,一部には株主総会の決議の効力との関係がどうなるのかという懸念も出そうな気もしますので,基本的には被後見人の人を取締役に選任する株主総会の決議があったとしても,その後に仮に成年後見人が承諾をしなかったということで就任できないということになったことが株主総会の他の取締役選任の決議に影響しないということは前提であるということを確認していただけると有り難いと思います。   そのようにしませんと,事前に成年後見人等がきちんと了解していますということで株主総会の決議を進めたところ,後になってから問題が起こるということもなきにしもあらずだと思いますので,その点だけ確認できればと思います。   それから,先ほど来から問題となっています保佐開始の審判がなされたことをどう取り扱うかというのは,やはり非常に重要な問題で,先ほどからも繰り返し出ていますので,問題は共有していると思いますけれども,これを恐らく立法するときに,新たな委任契約の終了事由に加えるのは,立法的にかなりハードルの高い交渉事になるのではないかというような気もします。そこで私は,先ほど田中さんがおっしゃられたように,最初の選任のところの規律に書き込む方向で対処するのが良いかと思います。具体的には,被保佐人が取締役等に就任する場合,又は保佐開始の審判がなされたときには,その保佐人の同意を得なければならないというふうに書いてしまうという形で,最初の方の1のところに組み込んで議論をするというような形の方向が望ましいと思いますが,いずれにしても何らかの形で,保佐開始の審判がなされたときに一旦リセットして,もう一回選び直すというような手続になるようにしていただければ有り難いと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,中東幹事,どうぞ。 ○中東幹事 先ほど田中幹事がおっしゃった点の一部についてです。全体としていい規律の整備をしてくださっているのですが,1の就任承諾について,これがきちんと行われるということが大切であると思っています。つまり,承諾に当たって,あるいは同意に当たって,しっかりと判断がされること,そのための制度的な担保が不可欠だと思っています。以前の部会で違った意見も出されたかに記憶していますので,確認をさせていただきたいと思うのですが,田中幹事がおっしゃいましたように,この承諾あるいは同意に問題があった場合について,一切責任を負わないというわけではなくて,損害賠償責任を負う可能性があるということについて,こういう理解でよろしいか,この点の確認をお願いしたいと思います。 ○神田部会長 今の確認は,宛先は事務当局なのか,部会なのかということがありますけれども,もし事務当局からあれば。 ○邉関係官 今頂いた御質問の点ですけれども,責任を負うことがあるかといった局面では2通り,恐らく場面といいましょうか,対象者があり得ると思うので,少し分けて御説明させていただこうと思いますけれども,まず,被成年後見人,すなわち取締役等となった者が会社法上の責任を負うかどうかといったところにつきましては,先ほど田中幹事から御意見を頂いた点でもございまして,部会資料においては補足説明の最後の部分,責任能力の適用関係等と絡んで,解釈に委ねられている部分であるという整理をしているところです。   もう1点,責任を負うかどうかといいますと,承諾をした後見人は責任を負うかといった点がございまして,こちらも田中幹事から御説明いただいたところではありますけれども,会社法上の責任というよりは,恐らく成年被後見人との関係で責任を負うかどうかといった議論はあり得るのではないかと整理をしております。 ○神田部会長 ありがとうございました。   それでは,松井幹事,どうぞ。 ○松井幹事 すみません,今の議論なのですが,成年被後見人との関係でどういう責任を負うことになるのでしょうか。 ○邉関係官 成年後見人は成年被後見人に対して民法上善管注意義務を負っていると思いますので,その義務の違反になるのかどうか。つまり,仮にですけれども,取締役に就任した成年被後見人が会社法上の責任を負ってしまったと,第三者から損害賠償請求を受けて,例えば1億円の責任を負ってしまったといった場合に,遡及的にといいましょうか,そもそもとして,なぜ取締役に就任をすることについて承諾をしたのかといったことが問題になるわけでありまして,そこについて善管注意義務の問題があり得るということではないかと整理をしております。 ○松井幹事 ありがとうございます。私は,この話が1回目に出てきたときにもここに書かれていることと少しずれた話をしたのですけれども,今回も同じ話でありまして,高齢化により,一人株主兼社長一人取締役のような会社で活用されることが非常に予想されるわけですけれども,現在でもそういった人たちが企業承継をどのようにするのかというのがとても問題になっているかと思います。死亡前にプランを書いて承継を進めるべきというような方針が一方であるときに,承継に際して不安定性がやはり増大してしまうという可能性がありますので,これについては出口戦略といいますか,このような人たちが取締役に就任の承諾をするに当たり,いつこの人たちが辞めるということになるのかという出口について示すということが必要なのではないかと思います。普通の人はやらないのに,それは差別ではないかという話はあるかもしれませんけれども,一定のハンデを負いつつ経営をするというノーマライゼーションにおいては相応の責任が必要なのではないかと思うことから,このように思っております。   その点で,今の会社法で何ができるかということなのですけれども,先ほどの,9年間何もせずにずっとできるというのはどうか,みたいな話がありましたけれども,そういった場合に,やはり任期を短くして同意を頻繁にもらうのはどうかとか,例えば,何か事が起きたときに株主総会を招集するというときに,株主が取締役に議題を示して招集をという場合,株主であり取締役である人が通常の判断ができなくなってしまっていたりしますと,手続が最初から進まなくなってしまうというようなことがありますので,例えば招集権者を定めておくであるとか,何かしらの出口の手続を定款に書き込むなり,任期を短くするなり,何かしらの手当てがあるのが安全なのではないかと思いました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,梅野幹事,どうぞ。 ○梅野幹事 ありがとうございます。非常に細かい点で恐縮です。先ほど野村先生が御発言いただいたところと少し関係するのですけれども,この御提案について検討する過程において疑問が出てまいりましたので,もし事務局において何らかのお考えがあればお伺いしたいと思って,お伺いする次第です。   取締役選任の際の参考書類には,会社法施行規則第74条第1項第2号に,取締役候補者の就任の承諾を得ていないときはその旨を記載するという規定がございます。これと同様に,提案の1を前提とした場合に,成年後見人が本人の同意を得ていなかったり,または,成年後見人が就任の承諾をしていない場合,こういった事項を参考書類に開示するのかといった問題も出てくるように思われたので,その辺について,何かお考えがあるのであれば,お伺いしたいと思った次第です。もちろん開示の仕方によっては,ノーマライゼーション等にも反するような事態にもなりかねず,微妙なところもあるかと思うのですけれども,もしお考えがあれば頂戴したいと思った次第です。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○竹林幹事 今御指摘いただいた点につきましては,今まで検討していなかった点でもございますので,そういったことが適当かどうかを含めて検討させていただきたいと思います。 ○梅野幹事 ありがとうございます。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。   沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。1の就任承諾につきましては,民法の解釈上は,成年後見人はあらかじめ成年被後見人の行為に承諾を与えることができないと解釈されているようですので,会社法の取締役等に就任するには,成年後見人が本人の同意を得た上で就任の承諾をしなければならないという明文の規定を置くこと,この手続をしない就任は無効とすることに賛成いたします。これにより,就任の承諾が取り消されるというような事態はなくなるものと理解しております。   2につきましては,取引の安全を確保する観点から,御提案に賛成いたします。   次の3についてですけれども,ここでは民法上の委任の終任規定,終任事由に関する規定が強行法規性を持つかどうかということが論点になっておりまして,そのような強行法規性を持つと解することもできるとされております。その根拠として,監査役の善管注意義務についての理解が指摘されているのですけれども,確かに監査役の善管注意義務につきましては,民法上の委任を引くだけで,取締役のような忠実義務の規定はないのでありますが,この監査役の善管注意義務の規定に関連して,任務懈怠による損害賠償責任の規定があって,これが全株主の同意がない限りは免除できないというような強い強行法規性を持っているということの効果として,その前提になる監査役の善管注意義務も任意規定とは到底考えられないということになるのだと思います。   これと同じことが成年被後見人についての欠格事由が削除された場合,委任の終了事由に関する規定まで果たして強行法規性を持つといえるかどうかというところに,やはりいささか疑問が残ると思うわけであります。したがいまして,複数の委員,幹事から御指摘がありましたが,保佐人に関する扱いと併せまして,終任事由に関する明文の規定をやはり置くことを前提とした方が良いのではないかと思いますので,御検討をお願いできればと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   大分いろいろ御意見をありがとうございます。   それでは,齊藤幹事,どうぞ。 ○齊藤幹事 難しい問題につきまして,いろいろ事務局にお考えいただいて,ありがとうございます。そのおかげで多くの課題が解決されてきているように思われるのですが,幾つか気になる点がございまして,細かい点なのですけれども,申し上げさせていただきます。   2の規律は必要という点につき,既に御意見があったところでございますが,私も賛成でございます。これは商業登記制度との関連も見据えながら,整理すべき事項であるように思います。商業登記制度が,この文脈でも取引安全の保護のために,重要な意義を有すると存じます。登記事項は代表取締役であることですので,登記に対する信頼を保護するというのは,代表取締役であると登記された者は,善意の第三者との関係ではあたかも代表取締役であったかのように扱うことになるわけですが,代表者であっても被後見人である場合には,その者がした行為が取り消され得るという実体法がございますと,おおよそ代表取締役がした行為は,後日,その者が被後見人であったことにより取り消される得るものだ,また,そのことは誰でも覚悟しておく必要があるということになりますので,「代表取締役」という登記に対する信頼保護,という理屈だけでは,被後見人である代表者が行った行為を善意の第三者との関係で有効とする根拠を提供できなくなります。ですので,登記制度も含めて法制度全体として取引の安全を保護するためには,実体法として,被後見人である代表者がした行為は取り消されないことが定められている必要があると思います。   確かに民法第102条というのがございますけれども,これは民法の解釈に依存いたしまして,民法の解釈がどのように発展していくか分からないという点もございますし,既に御指摘いただいている対内的業務執行の安全ということもございますので,会社法としてきちんと実体的な規定を置いておくべきだと思っております。ですので,2は必要ということでございます。   次に,就任承諾の意義なのですけれども,これを取締役の資格とすることについては,一つの考えであると思います。ただ,資格とした場合には,就任承諾を得られなければ代表取締役ではなくなってしまうということになるわけでございますが,後見開始の審判を受けるのは,いつ起こるか分からない事態であるので,会社の対内的対外的業務の法的安定性や,取引の安全への保護への配慮も必要であると感じております。再任されたが,就任承諾が欠ける場合につき,どのように法的安定性を図るのかという点につき,詰めておく必要があるのではないか。会社法第354条も挙げられているのですけれども,就任承諾を得ないことが会社側の帰責事由といえるか,代表者が被後見人であるということを何らかの事情で知ってしまった場合に,その人が保護の対象外になってしまう可能性があるがそれでよいかなど,もう少し解釈論を詰めてから,改正案を固める必要があるのではないかと思われました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。たくさんの大変有益な御指摘を頂きまして,どうもありがとうございました。   梅野幹事,どうぞ。 ○梅野幹事 部会資料21の先ほどの5の代表者の住所について,日弁連の意見を紹介した際に少し漏れがありました。大事な点なので,補足させてください。   元々の中間試案には(注)というのがあって,「インターネットを利用して登記情報を取得する場合における当該住所の取扱いについても所要の措置を講ずることを検討するものとする。」とございまして,それについて弁護士会の意見があるのですが,紹介し忘れておりました。この(注)についても,日弁連として,弁護士による登記情報提供サービスの利用に当たって,代表者の住所地が記載された登記情報の取得が可能とされない限り,反対するとの意見を述べております。この点,重要な点でございましたので,補足させていただきます。お時間を頂戴し,ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,本日はこの辺りとさせていただきたいと思います。   次回の日程等について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 次回につきましては,7月4日水曜日午後1時30分から午後5時30分まで,東京地方検察庁15階の総務部会議室で予定させていただいております。   次回におきましては,私どもといたしまして,これまで3回の御議論を踏まえて改めて御意見を伺っておきたいという論点について,御議論を頂きたいと考えております。 ○神田部会長 ありがとうございました。   本日も大変熱心に御審議を頂き,どうもありがとうございました。本日の会議はこれにて終了といたします。どうもありがとうございました。 ―了―