法制審議会 特別養子制度部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  平成30年7月31日(火)    自 午後 1時30分                          至 午後 5時31分 第2 場 所  東京保護観察所会議室 第3 議 題  特別養子制度の見直しに当たっての検討課題(一読) 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○窪田部会長代理 それでは,予定した時刻になりましたので,法制審議会特別養子制度部会の第2回会議を開会いたします。   本日は,御多忙の中御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。   本日は,大村部会長が都合により御欠席されていますので,部会長代理として私が司会進行をさせていただきます。よろしくお願いいたします。   また,本日は,青木委員及び棚村委員が御欠席と伺っております。   議事に先立ちまして,前回会議以降,委員に人事異動がございました。山本麻里委員が御退任され,新たに藤原朋子委員が御就任されました。   藤原委員に自己紹介をお願いいたします。 ○藤原委員 御紹介いただきました厚生労働省の藤原でございます。児童虐待ですとか,この特別養子縁組の問題ですとか,様々な問題を子ども家庭局の中で担当する審議官ということで,本日着任をさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。   私は,児童福祉を担当するのは久しぶりですが,この問題,非常に大きな関心のある大きな懸案だと伺っておりますし,1年間,法務省さんの方でしっかり研究会を回していただいた上で,この部会の議論を始めたと伺っておりますので,皆様方の議論に一日も早く追い付けるように,しっかり勉強して参加をさせていただきたいと思いますので,何とぞ御指導,どうぞよろしくお願いいたします。 ○窪田部会長代理 よろしくお願いいたします。   なお,藤原委員は,本日は御都合により途中で御退席の予定と伺っております。   続きまして,配布資料についての御説明を,事務当局からお願いいたします。 ○倉重関係官 それでは,配布資料の説明をいたします。   まずは,部会資料2でございまして,こちらは,委員,幹事の皆様に事前に送付しているものとなります。   次に,参考資料についてでございます。   参考資料2-1は,特別養子制度の見直しに関する「参考条文集」となります。   参考資料2-2は,特別養子制度の利用に関し,「現行法の下で対応に苦慮する場合として指摘されている主な事例」をまとめた資料となります。いずれも,実際の事例を聴取した上で,法務省において抽象化したものということになります。   参考資料2-3は,「特別養子縁組成立件数」の経時変化,それから地域差に関する資料でございます。前回会議において,特別養子縁組に関する地域差について御質問があったことからお配りしているものとなります。   参考資料2-4は,「養子制度の比較表」です。同じく前回会議で,海外の制度に関する御質問がありましたことから,事務当局におきまして,文献調査の範囲で作成したものです。外国の制度につきましては,現在調査委託研究をしておりますので,報告があり次第,結果を共有させていただく予定です。 ○窪田部会長代理 それでは,本日の審議に入りたいと思いますが,本日の議事は,特別養子制度の見直しに当たっての検討課題についてということで,全体的な論点について,一読目の検討を行うものです。   配布した部会資料2に基づいて御審議をいただこうと思いますが,部会資料2のうち第5の部分は,前回会議で指摘された検討に当たっての視点を紹介するものですから,具体的な検討事項は第1から第4までということになります。   そこで,本日は第1から第4までを順に審議していき,第2と第3との間で一度休憩をとりたいと思っております。   それでは,早速第1の審議を始めたいと思います。まずは事務当局において,部会資料の御説明をお願いいたします。 ○吉野関係官 関係官の吉野でございます。   それでは,御説明させていただきます。   お手元の部会資料2を御覧ください。   初めに,この資料の全体について御説明をいたしますと,今回は四つの論点,すなわち,第1といたしまして養子となる者の年齢要件,第2といたしまして実親の同意要件,第3といたしまして実親による同意の撤回を制限する方策,そして,第4として特別養子縁組の成立について実親の同意を要しないことをあらかじめ確定する方策につきまして,本年5月まで法務省も参加しておりました研究会における議論と前回の部会における議論の結果を踏まえて作成いたしたものでございます。   では,まず第1についてでございます。   部会資料のうち,1ページの第1が,先ほど申しました養子となる者の年齢要件の見直しについて記載したものでございます。   その1,問題の所在には,まず,現行法が養子となる者の上限年齢を6歳とした理由を記載しております。その理由を①から⑤にまとめておりますが,中でも①にありますように,特別養子縁組においては,実親子間と同様の実質的親子関係が形成されることが期待されていたという点が注目されます。ただ,2ページ目の(注1)に記載をしました調査の結果によりますと,養子となる者の年齢要件が妨げとなって特別養子縁組が実現しなかったという例は相当数あるようですし,他方で,現行法の年齢要件が採用された理由を一つずつ見ましても,年齢要件は見直す余地のないものとは考えられないように思われます。   それでは,見直すとした場合に,上限年齢をどのように設定するかでございますが,特別養子縁組におきまして,引き続き実親子間と同様の実質的親子関係の形成を目指すべきであるのか,目指すべきであるとすれば,その内実はどのようなものであるのかなどといった点について,御審議いただくことが大事ではないかと存じます。また,具体的な年齢について考えるに当たりまして,この資料では,3ページの3(1)におきまして,15歳以上とすることには難があるのではないかという指摘を記載しておりますが,この点についても御審議いただければと存じます。   最後,4ページ目の4には,派生する二つの論点についても記載をしております。養親となる者の年齢要件,それから養親と養子との年齢差要件についてでございます。前回の部会でも話題になったところでございます。この辺りにつきましても,御意見を頂けますとありがたく存じます。   第1につきまして,事務当局の説明は以上でございます。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   それでは,ただいまの御説明を踏まえて,第1の養子となる者の年齢要件の見直しについて御意見を伺いたいと思います。特に順番は,この順番でという必要はないと思いますので,どこからでも御意見あるいは御質問等ございましたら,御発言を頂けますでしょうか。 ○床谷委員 すみません。初めにちょっと確認しておきたいんですけれども,この4ページのところにある第1の3の具体的な年齢要件についてのところで,三つの案が出ていますが,先ほど説明にもありましたけれども,15歳未満ということを,一応の大きな目安として検討するということと,案としてはなっているという理解ですが,15歳を超えた年齢について,例えば18歳未満まで,例外的にしろ,18歳未満まで可能にするということは,検討はされるんでしょうか。 ○窪田部会長代理 これについては,事務当局からまずお答えいただけますか。 ○山口幹事 では,私の方からお答えいたしますと,この部会の中で,18歳まで引き上げるというところを排除すると,そこはもうないのだという仕切りではございませんで,御議論次第では,そこまで引き上げるという選択肢もあろうと考えております。 ○窪田部会長代理 床谷委員,それでよろしいでしょうか。 ○床谷委員 はい。   今日付けていただいた外国法の制度を見ますと,基本的には未成年者にしている国,あるいは15歳未満の国がありますけれども,例外的に監護状態が継続していた場合とか,あるいは特別な事情がある場合には,一定の期間,フランスのように2年間という形で延ばすとか,そういうやり方はあるかと思うんですね。   ドイツの場合も,成年養子は基本的には単純養子ですけれども,監護実績がある場合とか,あるいは未成年者の子どもの兄弟が成年に達してしまっている場合に,この兄弟をそろって同じ家庭に引き取るというような場合に,立場が変わるのは都合が悪いのではないかということで,例外的に完全養子を認めるというようなこともありますので,要件を含めて,原則というよりは,むしろ例外になるのかとは思いますけれども,15歳より上のところも御検討いただければと思います。 ○窪田部会長代理 本日は,まだ一読ということですので,一定の方向を示した上で,それについて決めるというよりは,どのような方向に向けて検討するのかという点も含めて御議論いただければよろしいと思いますので,ただいま床谷委員から御指摘があった点も含めて,議論の対象とさせていただければと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○藤林委員 床谷委員の意見に関連しまして,私,以前から15歳ではなくて18歳未満まで引き上げるべきではないかなというふうな意見を申し上げているものです。   この機会に,児童相談所の現場として,どういうケースがあってそれが必要なのかということを,少し申し上げたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。   3ページ目の下から7行目辺りのところに,「養親の下における養育期間が余りに短期間となる場合にまで特別養子縁組を利用することができることとする必要はないと考えられる」というふうなところがあります。実際,15歳以上に初めて実親さんから分離された子供が,実親との法的な親子関係を終了させるということを子供が望まない場合もありますし,子供の利益にならない場合というのが実際には多いと思います。   ただ,そうは言いましても,非常に重症の性的虐待であるとか,又は配偶者間暴力で父親が母親を殺害してしまうといった,こういった場合のケースも経験しないこともなくて,子供と実親との関係,法的な親子関係を終了させることが,子供の利益にとって必要というケースも,実際,あるかなと思っております。   また,ここには書いていませんけれども,後の問題にも通じますが,15歳以上に初めて出会った子供と養親候補者が,特別養子縁組を形成することが妥当な親子関係に至るかどうかといった問題もあるかと思いますけれども,絶対それはあり得ないというエビデンスもないんではないかなと思っております。   事実上多いのは,15歳以前から同居している里親と子供の場合で,その後15歳になってから,子供が将来のことを考えて特別養子縁組を希望する,又は里親さんが特別養子縁組を希望する,そういった事例も実際に報告されていると思いますけれども,そういうケースが実際に多いのではないかなと思います。   または,一旦里親を解除されて,無理やり実親さんが引き取った,里親さんのところから5歳,6歳で解除されて,その後実親さんと一緒に暮らしていたけれども,やはりどうしてもうまくいかない。やはり実親さんとの子供との関係が非常に虐待的な関係になって,実親との法的な関係を終了させることが妥当といった場合には,元の里親さんに委託され,その後特別養子縁組が必要と考えられるといったケースもあり得ます。   また,これも実際によくあるんですけれども,養親候補者と子供が同居せずに,施設に入所しながら,長く週末里親という,週末だけ養親候補者の家に泊まりながら,やっと10代になって,又は15歳になって,里親委託の同意が得られて一緒に暮らし始めるといった場合もあります。こういった場合も,同居期間は非常に短いんですけれども,子供と養親候補者との心理的なつながりはもう5年,10年ありますので,本当に十分な心理的な絆が形成できているというケースも,我々も経験しておりまして,必ずしも15歳以上だから養育期間が短いので特別養子縁組が妥当な親子関係の形成ができないとは言えないのではないかなと思っています。   この点が,1点申し上げたいところです。   もう一つ,これもどうしても,私は法律家ではないので,釈迦に説法みたいなことになりますけれども,4ページの3行目から6行目までのところですね。「養子となる者に実親との関係を終了させるか否かという困難な決断を迫ることになり,相当でないと考えられる」ということなんですけれども,この辺はなかなか,読んでいてもちょっとしっくりこないところがあります。15歳以上の子供にとって,そういう困難な決断なのかということなんですけれども。児童相談所の現場において,15歳以上の子供にとって,中にはほとんど実親との交流がない子供さんも非常に多くいまして,そうなると,心理的な関係というのはもうほぼ途絶えているケースというのが多くあったりもいたします。そうすると,子供にとってそもそも実親のイメージがない,全然会ったこともないというふうなこともありまして,実親との関係を終了させることに困難な決断を迫ることにならないケースも実際にはあると思っています。   また,一方,子供の中には,先ほど言いましたように,15,16になって,将来のことを考えて,実親との関係の終了を望む子供さんもいるわけなので,そういった子供の意見を尊重しない,すなわち,15歳以上は特別養子縁組の機会がないということにはすべきでないのではないかなと思っています。   もう1点,この点につきまして,この辺は私はそれほど詳しくないんですけれども,離縁の場合は,仮に15歳を超えて離縁の申立てが実父母等からされたときにおいても,養親との実親子関係を終了させて,また実父母との関係が再開するわけですから,同じような場面,つまり,子供にとっては非常に判断に悩むケースではないかなと思っています。ところが,離縁においては,15歳以上の場合でも,養子の同意は要件とされていないという問題もあります。   一方,家事事件手続法では,離縁の審判手続において,15歳以上の養子の陳述聴取が義務付けられております。ですから,離縁の場合には,ある意味,養親との関係をこのまま続けるのか,これまでほとんど交流のない実父母をとるのかといった選択が,現行法でも迫られるというふうなことがあります。つまり,現行法において,離縁の場合には15歳以上の子供に難しい選択を迫って,その意向を汲んだ上で家裁が判断することになりますが,そういったことが,離縁については15歳以上は可能なのに,縁組について15歳以上は不可能というのは,どう考えたらいいのか。是非この点も,いろいろな御意見を聞かせていただければと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   床谷委員から御指摘があったのは,必ずしも年齢をそのまま引き上げるということではなくて,むしろ15歳という大枠が当てはまらない場合があるのではないか,特に兄弟,姉妹がいて,身分関係が異なるような場合について,考える必要があるかもしれないという御指摘でございました。他方で,今,藤林委員から御指摘があったのは,むしろ一般論として実態を踏まえるならば,15歳以上についても特別養子縁組が認められる必要がある,あるいは認めることが適切な場面があるかもしれないということだったかと思います。   最後に,離縁との関係でも御指摘を頂きましたが,先ほど全体を通してと申し上げましたが,多分,養親となる者の年齢要件の話は少し後に回して,まずは,養子となる者の年齢について,御議論いただければと思います。 ○水野委員 また少し前提問題になってしまうのですけれども,前回の審議会で村田委員から,特別養子をする必要がある場合はどういう子なのか,そもそもその点についての議論からするべきだという御発言があり,私は本当にそのとおりだと思いながら伺っておりました。2ページ目の「(注2)」が終わったところまでの,そこの2行に,正にこれが書いてあるわけですけれども,この点についての御議論を少ししていただかないと,養子の年齢についての議論もできないように思います。   例えば,実親子関係を切るということについても,どうも多様なイメージがもたれているような気がいたします。普通養子の場合でも,親権は養親の方に移ってしまいます。たしかに,親子関係についての相続権とか扶養義務というのは,残ると言えば残るわけですけれども,親権が移るということは非常に大きな効果です。   またたとえ特別養子であっても,欧米の養子のように,実親子関係が分からなくなってしまうということはありません。戸籍を見れば特別養子であることは明らかに分かり,戸籍をたどれば実親の情報も分かります。親権が移ってしまう普通養子がありながら,なぜこの特別養子をあえて利用しなければならないのか,議論が必要です。特別養子になりますと,養親の側からは離縁することができないという非常に大きな制約が掛かります。特別養子をなぜ利用しなくてはならないのかということについて御議論いただいた上で,年齢の問題についてもう一度考えたいと思うのですけれども。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   ただいまの点は,前回の審議会でも御指摘を頂いた点なのですが,この点について,事務当局の方からまず,何かご説明がありますでしょうか。 ○山口幹事 先ほど冒頭に御説明したところでもあるのですけれども,正に水野委員の御指摘のとおりでして,元々この現行法の立案当時は,特別養子制度というのは,実親子間と同様の親子関係の形成が期待されるものだと位置付けられていたわけですけれども,今般,もし養子となる者の年齢要件を見直すということになりますと,そのようなことを引き続き,すなわち実親子間と同様の親子関係の形成というのを,この制度で引き続き期待していくのかどうかと,この辺りから御議論いただく必要があるのかなと思っています。   場合によっては,今水野委員から御指摘がありましたように,特別養子制度というものを,そういうものではないのであると位置付けることも,選択肢としてはあり得るのかと思っておりますので,その辺り,現行法の立案当時期待されていたことは,もう今後といいますか,今回必ずしも維持していく必要があるのかどうかというところを,御議論いただければと思っております。 ○窪田部会長代理 水野委員から御指摘があった点について,何かありますか。 ○倉重関係官 具体例をということでございました。   先ほど冒頭にも御説明申し上げましたが,資料2-2は,短期間ではございましたけれども,委員の先生方,それから外部の方にも御協力いただきまして,事例をまとめさせていただいたものでございます。   まだ十分に整理ができておりませんので,必ずしもこういうケースがあって,これを解決するために今回の法改正を考えているんだというところまでは,はっきりと申し上げるところにはなっていないんですが,このうち第1でまとめさせていただけたもののうち,特徴的なものとしましては,例えば,幼少期から里親委託等で養育していて,長期間の養育の実績はあるんだけれども,いざ養子縁組をしようかなというときには年齢要件を超過していて特別養子縁組を選択することができなくなってしまっていると。ただ,養親としては,様々な事情があって,普通養子でなく特別養子の方でないと,なかなか養子縁組に踏み切れないといったような類型が,1つのパターンとして挙げられところでございます。   また,実親の同意というのが,児童福祉の現場でも非常に重視されているところでございまして,実親が同意について,連絡がつかなかったり,曖昧な同意をしたり,撤回したりというのを繰り返しているうちに,なかなか特別養子の方向でその子の処遇を決められないうちに,その子が6歳を超えてしまうというような類型が挙げられているところでございます。   また,大幅な年齢引上げの根拠にはなりませんが,6歳間近になっている子については,特別養子をスタートしようとしたときに,年齢要件ばかり意識してしまって,十分な実習の期間,その子の動機付けであるとか,養親候補者の実習の期間を確保できない,また,焦ってやってしまった結果,特別養子がうまくいかない結果になってしまうと,こういったような類型も挙げられるところでございます。   事例の収集については,引き続き続けていきたいと考えているところでございます。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   ただ,今の御質問の背景には恐らく,例えば,6歳を過ぎてから里親委託をして,10年間継続している。そうした場合に,里親は特別養子縁組を望んだけれども,年齢要件という点でもう駄目であるという場合でも,普通養子縁組は可能なのだとすると,普通養子縁組では駄目で,特別養子縁組を選択するのだ,あるいはその必要性があるのだという点について,恐らくもう少し御説明を頂けるとよろしいのかなと思います。先ほどの藤林委員の御説明の中でも,15歳以上でも必要性があるのではないかということだったのですが,それは,普通養子ではなくて,やはり特別養子を選択するということについて,何か理由といったようなものをもう少し御説明いただけると,議論がしやすいのかなと思います。 ○藤林委員 では,私の方から幾つか,多分,岩﨑委員の方が私よりも100倍ぐらい経験をお持ちなので,後で追加のコメントを頂きたいと思いますけれども,児童相談所で経験するのは虐待ケースで,先ほどちょっと触れましたように,重症性的虐待ケースというのは,実親と子供との再統合,家庭復帰はもうほぼあり得ない,100%あり得ないケースです。しかも,大人になった後も,この実親との何らかの法的関係,扶養又は相続といった関係が残っていることが,何の意味もないというか,利益もないと思っています。   それから,特殊かもしれません,特殊といっても,児童相談所ではよくあるわけなんですが,配偶者間の暴力で,一方の親が一方の親を殺害してしまう,子供にとっては,被害者の遺族であり,加害者の遺族になってしまうわけなんですが,被害者遺族である子供が加害者である片方の親と今後同居するとか,あとは交流をするというのは,これもほぼあり得ないと思います。そういった場合に,法的関係を残すことが子供にとって何ら利益にはならないと考えております。   あと,これもよく例として出しますけれども,実親が,よく経験するのは,薬物事犯ですね。なかなか覚せい剤等の事犯の場合には,繰り返し使用することによって,収監される方も多いわけなんですけれども,ほぼ家庭復帰とか再統合はあり得ないケースです。こういった方に対して,子供の永続的な環境を保障する意味で,養親候補者に打診をするわけなんですけれども,どうしても普通養子縁組ですと,養親さんにとって,子供と薬物使用者との法的な関係が残るということに非常に大きな抵抗感がありまして,そういう法的な関係を残る子供を養育することに自信がない,又は,子供にとってそれは非常に大きな負担になってしまうということで,うまく養親候補者が見付からないといったケースも経験するところです。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   ただいま御説明いただいた点も踏まえて御議論いただけますでしょうか。 ○藤林委員 これも,実際全国でケースとして,どれくらいケースがあるかどうか分からないんですけれども,兄弟のうちの1人を虐待死させてしまったケースなんかも,多分多くのあるのではないかなと思います。虐待死させた親の元に,その兄弟,死亡しなかった子供が,虐待死させた親と家庭復帰とか再統合というのは,これもほぼあり得ない。その意味で,子供は里親又は養子縁組が妥当と判断するわけですけれども,この場合も,子供と虐待してしまった親との法的な関係をずっと残しておくということには何の意味もないと思いますし,また,そういった関係が残ることに対する,やはり養親候補者の抵抗感もあるのではないかなと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   いかがでしょうか。 ○岩﨑委員 100倍経験があるかどうか分かりませんけれども,これ,なかなかいわく言い難いところなんです。私たちは,昭和63年1月1日までは普通養子でしか養子縁組ができませんでしたから,約500件ぐらい,子の福祉のための養子制度として普通養子を使ってやってきました。その中で,どれだけ普通養子が問題だったのかということを申し上げましたら,一つは,離縁が簡単にできるものですから,思春期等に子どもが扱いにくくなると,どうしても育て親さんは離縁届を取ってきまして,本当にこれ以上言うことを聞かなかったら,親子の縁を切るぞみたいなことを,やはりやってしまわれる方が実際当時多かったです。   私たちは,どういう人たちを普通養子のときでも選んできたかというと,飽くまでも子どもにとって親になる人を,実の親に取って代われる親になる人を探していたつもりです。特別養子と普通養子とで,私たちはどんな里親さんを選ぶのかという意味では,子にとって親として成立する人を一生懸命探してきました。離縁なんて,基本的にはできるけど認めないよっていうふうに言ってきた時代もありますし,逆に言えば,離縁という制度がある普通養子だったら,取りあえず子どもが二十になるまでは絶対に離縁しない,そこからは,子どもの選択に任せるみたいな考え方もできないことないよねって言いながら,でも,基本的には子どもにとってその親が,産んだ親と同等の親として機能し,その場所が自分にとって安全で安心ができる場所として位置付けられることが,養子縁組を私たちが積極的に考えてきた理由であって,普通養子でそれがなかなか難しかったことが何があるかというと,やはりうまくいかないとき切るという,それこそ親の方から子どもを切ることも,子どもの方から親を切ることも,逆に普通養子であるからこそ簡単にできるというところがあったような気がします。   では,離縁された子どもは,実の親の元へ戻ったかというと,大概戻っていません。そして,結果論としては,縁組を離縁した元普通養親たちが相変わらず,形の上では親子らしい保護を子どもに与えていました。それは,結果として,行きどころのない子どもを,自分たちが一時期の親子関係の問題から離縁をしようと,あるいは子どもが犯罪を犯した,借金まみれになって自己破産をしなければいけない,親戚から,どないすんねんな,あんな子のために財産,あんたら金使って,あの子どうなんねんなっていうようなことの批判を免れるために,取りあえず形の上では離縁をした上で,実質的親子関係を継続しているケースが結構ありました。それでも,先ほど言いましたように,離縁を表立たせて,親子関係を,子どもの方に自分たちの言うことを聞かせようとするようなことが,法律上のあやとしてできるというのが,私はある時期とても悲しく思いながら,その状態に対して,一生懸命子どもを励ましたり,親を励ましたりしていました。   特別養子になると,離縁が現実的にできませんから,離縁ができない特別養子は,私たちにこの子どもを,要するに,押し付けるのかみたいなことを言ってきた親もいましたけれども,最初から離縁ができないことが前提で養子縁組した,そして,親子をしていくしかない中で,子どもが立ち直っていくケースを幾つも見てきましたので,そういう意味では,実親子と同じという意味では,親となり子となった限り,親子として生きていくのだという,そして,ここが一番,親が与えてくれた私が安心できる場所だということさえ確認できれば,子どもたちは育っていく。それが,やはり形の上で整いやすいのが,特別養子だと考えています。   どっちがよくて,どっちが悪いというようなことはなかなか難しいことですけれども,戸籍が私たちのアイデンティティーを証明する最終的なものになりますので,普通養子の戸籍の記載が子どもたちにいろいろな差別を,社会的な差別を,そのまま残しているような現実が,私はやはり日常の仕事をしていてとても悲しいと思います。捨て子や非嫡の子どもが新しい親を得ても,その身分事項を記載された戸籍を持っていなければいけないというのが,同じように生まれてきて,同じように社会的養護の中にいて,戸籍上そういう差別が,あるいは区別というべきかもしれませんけれども,残されているというのは,どういうことなんだろうと思いますので,社会的養護下の子どもの全てに,平等に社会的サービスが与えられることを考えると,特別養子の方が普通養子よりも進めやすいと思っています。   それから,普通養子の相続の話ですけれども,私は,1件だけですけれども,山を相続しなければならなかった子どもがいまして相続放棄をしましたけれども,何度も何度も相続放棄をしたという書類を,その山に何らかのことが起こるたびに請求をさせられて,最終的には30幾つになっても,相続放棄をしたという書類を用意して,しかるべきところに提出をしなければならないという事態がずっと起こりまして,相続をしなかったのに,相続権があるという,相続が認められているという関係性は,なかなか厄介なものだと思いました。   そういうことも含めて,普通の親子として生きていくことが,子どもにとって与えられるべき安心できる場所だとするのなら,それは,時に普通養子の方が便利な子どももおりますけれども,社会的養護の子どもに関して言えば,特別養子が適用されることの方が,より子どもを守れることになるのではないかと思っています。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   ただいま,藤林委員,岩﨑委員から御指摘あった部分,普通養子ではなくて特別養子の方が望ましいのではないかという点について,幾つか御指摘があったと思います。一つは,普通養子の場合,離縁が容易だということがあるのではないか。それから,相続等の関係も切れるということがありましたけれども,その点も踏まえてなのかもしれませんが,特別養子の方が,養親となる者については安心感があるといったようなこと,これが具体的な違いとして,特に実際の現場におられる方たちから出た意見なのかなと思います。   その点も踏まえまして,是非議論いただきたいのですが。 ○磯谷委員 藤林委員,それから岩﨑委員のお話というのは,研究会のときにも伺いましたけれども,本当に理解できるところだと思います。   15歳を超えた子どもで,特別養子を希望するということが全くゼロかとかいうような話になってくると,ちょっとそこは,やはりあり得るんだろうなとも思います。ただ,一方で,私自身も長く東京で里親認定,養子縁組里親の認定に関わってきましたし,また,養子縁組などに関わっている民間団体の方からもお話を伺ったりしますけれども,恐らくある程度年長の子どもを特別養子として迎えたいと思っている養親というのは,極めてまれであろうなと思いますので,そういった極めてまれなところを制度として取り込む必要があるのか否かというところなのかと思っています。   それから,先ほど藤林委員が,実親子関係を残しておく意味がないとか,実親子関係を残しておくと害があるからなくしてしまうというお話があったかと思いまして,これも,お気持ちとしてはよく理解はできるところなんですけれども,ただ,実親子関係というのは,本来的にそう簡単に切るべきものではないのだろうと思います。実親子関係というのは,基本的には血縁に基づく自然的な関係をベースにしたものなのではないか。そうすると,「役に立たないから切る」とか,そういうこと自体が実親子関係の捉え方として適切なのだろうかと思わないでもないです。   それから,ちょっと幾つか申し上げますけれども,15歳になった子どもについても,子ども自身の意思で特別養子縁組を成立できるようにするかというところも,そういう希望する子が全くゼロというつもりはありませんけれども,ただ,やはり,経験的にも,15歳前後ということになりますと,大変思春期でいろいろな意味で揺れて,一般の親子関係でも本当に危機に直面することもあるわけでして,そういうふうな時期に子どもに決断をさせる,しかも,離縁が極めて難しいという特別養子縁組を決断させるということは,やはり相当のリスクがあるんだろうと思います。   それから,最後に岩﨑委員がおっしゃった,普通養子縁組ですと,離縁届を振りかざして,言うことを聞かないと切るわよというような話がありました。これも,本当にひどい話だと思いますけれども,ただ,そういうふうな養親さんというのは,元々適格性の問題が非常にあったのではないか,裏を返せば,その養親さんが特別養子縁組であればうまくやったのかというところは,やはりちょっと,それもまた疑問であろうと思います。   私も少ない経験ではありますけれども,特別養子の親御さんが,年長になった子どもに,お前を養子として迎えたことが,俺の人生の最大の失敗だったと言い放ったケースもありますけれども,特別養子だったら親子関係が安定するとか,そういったところは,少なくとも一律には言えないだろうと思っています。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   いかがでしょうか。   それでは,木村幹事,平川委員という順番でお願いします。 ○木村幹事 すみません,木村です。   藤林先生の御意見などをお伺いしたところ,15歳以上についての特別養子が必要なのものには,恐らく形式的に二つのパターンがあると考えられます。一つは,15歳より以前から事実上の委託などが行われており,事実上あるいは社会的な意味での養育関係が存在しているが,何らかの事情によって15歳になるまでに養子縁組ができなかったので,15歳過ぎてから改めて,現に存在している養育環境を法的な親子関係として承認してもらいたいというニーズです。もう一つは,15歳を過ぎて新たにマッチングを行って養子縁組を検討するパターンです。この二つがあると思われますが,少なくとも後者については,既に今日御提案いただいたところによると,3ページ3の(1)の①のところからでも指摘があるように,実際15歳を過ぎてから18歳になるまで,養親の元で新たにマッチングを行ったとした上で,養親の元で養育期間というものが3年未満になってしまう可能性があるため,果たしてそういうところまで特別養子のニーズがあるか。これについては,前者のこれまでの養育関係をベースにする場合と区別して考える必要があるのではないかなと思います。   私の理解が誤っているかもしれませんけれども,特別養子について,例えば,実親との親子関係を切断するとか,離縁について難しくするといったことの法的枠組みとか法的効果を通じて,飽くまで主たる目的は,養親の下で安定的な養育環境を確保するということが目的であって,実親子関係を切断することそのものは本来の趣旨ではないと考えております。そうすると,少なくとも15歳以上を過ぎてマッチングをするような場合に,本当にそういった安定的な親子環境の確保というニーズがどこまであるのかは慎重に考えるべきであって,実親子関係の切断ということにばかり着眼しない方がいいのではないかなと思った次第です。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   今の点は,藤林委員から何か御発言いただいた方がよろしいですか。 ○木村幹事 もし可能であれば,15歳以上を過ぎてから新たにマッチングするニーズというものが,実際現場でどれほどあるのかということについて,お伺いできればと思います。 ○藤林委員 木村幹事が言われたように,主にニーズとして多いのは,15歳以前から何らかの心理的なつながりを持っている里親さんであるとか,また週末里親さんの方が圧倒的に多いかなと思います。   15歳以降に初めて出会った養親候補者と子どもが,そこから親子関係を結んでいくというのは,実際まれだなとは思うんですけれども,絶対ゼロかというと,そうとも言い切れないというのは,私の中にどうしても引っ掛かるところがあります。 ○窪田部会長代理 それでは,先ほど挙手いただきました平川委員,どうぞ。 ○平川委員 今発言があった15歳以上からの親子関係の形成ということですが,この資料2の実質的な親子関係を形成するという趣旨からすると,本当にそれが形成できるのかどうかというと,少しそこはどうなのかなという気はします。おそらく余り実例がないような気がいたします。   特別養子縁組については,普通養子縁組と比較して,若しくは普通の一般家庭と比較して,安定的な家庭的な養育という観点から,実際できるのかどうかというと,やはり特別養子縁組も完璧ではない,問題発生がそれなりに発生をしているというデータが,以前の部会資料に出されておりますので,やはり特別養子縁組という形にあって,実質的な親子関係の形成を期待するということで,実態としては完璧な制度ではないのかなという状況もあるのかと思っているところであります。   そういった中で,年齢の引上げの関係でいいますと,子どもの最善の利益の観点からいうと,やはりあらゆる,様々な選択肢を確保しておくという観点が,ある意味重要なのではないかなと思っています。先ほど,児相の現場においてのいろいろな様々な話があり,どうしても親子関係を切断した方が望ましいのではないかというふうな判断があれば,それが子どもの最善の利益にとってもいい場合もあるかもしれませんし,その観点からみて,選択肢として幅広く捉えておく必要があるのではないかなと思っています。ただ,一方で,場合によっては,子ども自らが,もしかしたら親子関係を切断するということも迫られる可能性もありますので,その辺はどのような形で整理すべきか,例えば,15歳以上は一定程度要件を設けるなどを検討するとか,そういうふうな考え方もあるのではないかなと思っているところであります。   いずれにしましても,私も素人で現場の経験はないので,一般的な感覚でしか発言できませんが,今発言したような観点で検討していくべきではないかと思います。 ○幡野幹事 今まで何度か成年年齢が18歳になった場合に,15歳で養子縁組をした場合には3年しか養育期間がないというお話があったのですけれども,その点についてコメントを差し上げたいと思います。   養子縁組の国際比較の資料のフランス法の部分を見ると,完全養子縁組という日本でいう特別養子縁組に近い制度では,フランスの成年年齢は18歳であるにもかかわらず,例外として二十歳以下まで養子縁組を認めおります。おそらくフランス法では,親権が終わる成年年齢までしか養育しないとは考えられておらず,18歳以降にも事実上の親子としての養育の関係がある考えていて,15歳以上だから残り3年という考えをとることなく年齢要件を考えているのであろうと思いました。この点は,参考にできる部分があるであろうと思っております。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○水野委員 今,幡野幹事がこの養子縁組の国際比較の表を御覧になって発言されたことについて,少し心配になりました。私はこういう形で年齢だけの比較をすることについて,非常に危惧しております。これは前回も発言いたしましたけれども,西欧法と日本法とでは,大きな前提が違っておりますので,常にそのことを配慮に入れなくてはならないと思います。   まず,一つは,先ほど倉重関係官の方からも具体的なケースについて御発言がありましたように,その多くは,速やかに公的な介入が行われ,親権が剥奪されていれば,このようなことにはならなかったケースが多いということです。日本では,育てない親権者を放置したままずるずると来てしまい,養子縁組の段階になってから,初めて権利放棄の同意が具体化するわけですけれども,本当はそうであってはいけないので,育児支援をしてもうまく育てられない親からは,親権を剥奪して,育てられる里親に託しておく必要があります。深刻な性虐待を受けている子どもの親権を,速やかに公権力が介入して子どもを守っていなかったというこの事態そのものに,大きな問題があると思います。   それから,先ほど児相の現場のお話も重いと思いながら伺っておりましたけれども,子どもにとって非常に害のある親との関係がつながることが,養親をためらわせるという構造自体も,本当はあってはいけない構造なのだと思います。そもそもそういう親から子を守る負荷を,私人である養親に個人的に担わせるという前提が非常におかしいのではないでしょうか。子どもを守るために養親に実親と戦わせるという制度設計はとても危険であって,やはり社会が守らなくてはならないと思います。そういう公的介入が,日本の場合には非常に不十分なので,その問題がここの議論に流れ込んできていますが,まずなにより大きな前提の相違があることを自覚しなくてはならないでしょう。   それから,もう一つ,先ほど岩﨑委員から,戸籍という制度の問題性の指摘がありましたけれども,確かにそれがスティグマになることはあると思います。現状の戸籍の問題を,それがスティグマになるから特別養子がよろしくないということは,私自身,本当は言いたくなくて,とてもいけないことだと思いますけれども,現実にはやはり,岩﨑委員が言われたように,現状の戸籍制度を前提としたときには,それはスティグマになってしまいます。親子関係を切らなくてはならないような問題のある実親を持った子だということが,戸籍を見れば一目瞭然で分かってしまいます。そういう制度的な欠陥を抱えた上での議論をしなくてはならないことを,考えなくてはならないと思います。   私が危惧しますのは,特別養子の養親に,個人的にこの子どもを守る役割を押し付けてしまうことです。そういう結論になることだけは,何とか避けたいと考えております。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   年齢要件についての議論ではありますけれども,特別養子の仕組みをどうやって考えるのかという,かなり基本的な部分から議論しなければいけないということは確かだろうとは思いつつ,一方で,少しずつ議論を進めていかなければいけない部分というのもあるのだろうと思います。   本日の部会資料では,むしろ15歳未満ということを前提として,第1案,第2案,第3案というのを4ページで示していただいていますけれども,今日の御議論の中では,むしろ15歳に絞らないという御意見もあったかと思います。ただ,その上で,もう少しだけ御議論いただきたいのは,15歳という年齢要件を設けないという場合に,もう成年年齢までは原則として認めるというような発想なのか,あるいは,飽くまで例外的な場面として,15歳以上の場合でも認める場面というのが考えられるという意味でのものなのか,あるいは,やはり15歳というのを上限として考えていくべきなのかという辺りについて,少し御意見を伺えればと思います。この点については,いかがでしょうか。 ○浜田幹事 浜田です。   今日は大分上の方にいく話が出てきておりますけれども,私としましては,どちらかというと,全く今の方向性とは反対方向の意見を持っております。   何が言いたいかと申しますと,少なくとも子どもの意思が特別養子縁組制度,特別養子縁組を成立させるか否かについての決定的な意義を有するような制度は,制度としてはいかがなものかなと考えております。それは,例えば,子どもの同意が要件であるとか,子どもの意思に基本的に従うとか,いろいろなパターンはあると思いますけれども,そういうのはやはり適切ではないのかなと考えております。   何となれば,特別養子縁組は実親子関係の切断という,ほかには例のない重大な効果を生ずるものでありまして,そうすると,この辺りは藤林委員と意見が違うかもしれませんが,やはり未成年者が適切な判断をするというのは,もとより困難ではないかと考えます。また,法律上も実際上も,試験的な養育が求められているということもありまして,実務上も里親委託なりという形で養育が先行するということが多いと理解をしております。そういたしますと,子どもにいざ特別養子縁組についての意向を聞く段になりますと,その当該子どもは,その当該養親候補者ともう既に同居しておる,何らかの関係を作っているということが極めて多かろうと思います。そういたしますと,当該子どもは,実際,現実的には養親候補者の意向どおりのものしか答えることができないのではないか,要するに,例えば,特別養子縁組をすることはちょっとどうかなと思っていたとしても,実際いる家は養親候補者の家なわけですから,ここでは,縁組に同意する方向で行くしかないよねと答えねばならんのではないかということを危惧いたします。   もうちょっと加えてまいりますと,今のような話は,15歳とか,例えば12歳,15歳とか,そこらの年齢のことに係るばかりのことではなくて,これは,完全に個人的なところですけれども,子どもの意思を,この特別養子縁組の成立に当たって確認するということも,本来的にはどうなんだろうなと考えております。   今申し上げたように,現実的には子どもがどういうふうな意向を示すかということは,養親候補者の意向ということに,かなり大きく左右されるのではないか。そう考えると,子どもに意向を聞くということに,実質的な意味があるとは余り考えられないのではないか。もちろん,子どもの意見表明権というものが重要であるということを否定するものでは全くありませんけれども,特別養子縁組制度においては,この子どもの意見表明権というのが,余り重視されるという場面ではないのではないかなと考えます。   このように考えてまいりますと,私自身は,年齢要件を大きく上げることには懐疑的,少なくとも現時点において懐疑的でございます。年齢要件を現行法よりも上げるということ自体を否定するというところまではまいりませんけれども,上げるとしても,その幅,上げる幅については,おのずと限界があるのではないかと,このように考えています。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   ほかに,いかがでしょうか。 ○山根委員 山根です。   私も,今の御意見に賛成の立場です。   この制度は,当初は,恐らく乳児を想定していて,分別の生じる前に,実親子と同様の関係を作っていくということが主な目的ではなかったかと思います。ただ,それだけでは収めずに,拡大を図ろうというということには賛成はしておりますけれども,15歳,16歳と大きく拡大するのは,制度の根幹をとても大きく変えることになりますので,慎重に判断する必要があるのかなと思っています。   年齢が大きく上がれば,それだけやはり縁組の成立の配慮というか準備等も大変になるという素人考えを持ちますし,一気に上げることが混乱を招かないかなと,少し心配をしております。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○杉山幹事 杉山です。   私自身は,どの年齢まで引き上げるのが適当であるのかは,定見は持ち合わせておりませんが,1点ちょっと気になる点がございまして,それが,資料2の1ページ目の問題の所在の③にある,元々立法者が6歳,8歳という年齢とした理由の一つである,養子となる者の地位が早期に確定することが望ましいという点であります。厚労省の検討会のときも,年齢を引き上げると,本来であれば,この年齢が低い時に成立させることができたはずの特別養子縁組を,後にずらしていく可能性があるのではないかという指摘があったように記憶をしておりますが,その点については,その後の研究会等でも正面からは余り議論がされることはなかったように思います。   したがいまして,仮に年齢要件を引き上げるとした場合,本来であれば,これまでの6歳になる前に特別養子縁組を成立させることができたはずの子どもについて,それを例えば12歳とか15歳という年齢まで遅らせるということがないような,何か歯止めのようなものを作っていくのが望ましいのと思っております。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○岩﨑委員 現場の人間としては,とてもつらいことを言われたんですけれども,私たちも今,6歳が限度ですから,赤ちゃんから新聞に掲載した子ども,2歳で掲載した子ども,3歳で掲載した子ども,それでもなかなか決まらない子どもがいまして,どの子もさっさといい養親のなり手が出てきて,すっともらっていただけるわけではなくて,本当に毎回毎回,血のにじむような思いを我々もしながら,この人にこの子を託すかっていう決断を我々がしないといけない中で,最後が,取りあえず6歳未満までに引き取ってもらえなければ特別養子が成立しないものですから,4歳の後半ぐらいになると,取りあえずもう一回掲載しようか,もう一回掲載して,誰か出てくるのを待とうかみたいな,6歳未満までに何とかいい人を探さないといけないということに,非常にとらわれるんです。   実際,うちの職員からも,これ,年齢が12歳まで上がったとしたら,12ぐらいまで,もうちょっとのんびり考えようかというの出てくるんちゃうという話も,正直出ました。それに対して,今までも養子が欲しかったはずなのに,里親手当をずっともらいたいために養子縁組をしないという養子里親が,何年間に1人ぐらいいてはるんです,不埒なことを考えはる人が。何回も私たちチャレンジするんです。例えば,8歳未満で最後ですから,「もう8歳になりますよって,取りあえず申し立てませんか」って言うんですけれども,いろいろな諸般の事情があって,子どもに払われる措置費と里親手当が重要な収入源である場合に,それを単純に,その人の強欲さやからというようなことでは済まされないものもありますし,では,何でその人を選んだのだと言われるけれども,その段階では,その人も1人の子どもの親になるために必死に私たちと渡り合っていらした方だった。その中で,人生ってやはり変化していくので,それほど皆さんがおっしゃるように,どの子にもどの子にも間違いのない,実の親子に代わるような親子関係を,私たちが保障できるわけではないんです。   赤ちゃんやったらええとはいえ,赤ちゃんだって将来どんなことになるか分かりませんので,赤ちゃんから育てて思春期にめちゃめちゃすごいことになったケースも,私たち経験してきました。自分の思うとおりに親ができる年齢から育てたがために,いざ子どもが自分の意思を貫くようになったとき,すごい怒りの症状が出てきて,親子関係をなぎ倒すような結果になる,そういうことも実際問題,我々のところで起こります。   私は神様ではありませんので。 ○窪田部会長代理 まだたくさん検討すべき点がありますので,簡潔にお願いできますでしょうか。 ○岩﨑委員 間違いもたくさんあるかと思います。ただ,もう少し,何ていうか,年齢要件にしても,必要性があれば,そのことを考えるような余地のある法律にするわけにはいかないでしょうか。   例えば,18歳まで認めておいて,一つ一つの事例は裁判所に尋ねるわけですから,この子にとって,今この措置が一番ベターであるというようなことで認めていただけるような,そういう配慮のある年齢の決め方みたいなことはできないものでしょうか。子どものためになるなら,もう少し幅の広い議論をしていただくわけにはいきませんでしょうか。   すみません,長くなりました。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   久保野幹事,藤林委員という順番でお願いいたします。 ○久保野幹事 先ほど,杉山幹事からお話がございました,年齢を上げた場合に,特別養子を行っていく判断といったものがどのようにされるかということに対する観点を共有していまして,同じ観点を繰り返すだけにはなりますけれども,一方で,特別養子が適切であると判断された場合には,なるべく迅速に行っていくということが,子どもの時間感覚などを考えたときにも非常に重要だと思いますし,ただ,他面で,ここでも何度も出ておりますとおり,実親に対する支援を十分に行った上で,その限界というものを見極めて特別養子に移るという方の要素もありまして,実親に対する支援については拡充途上のものだと思いますし,また,非常に問題のある実親に対して,迅速に,先ほど親権喪失というのが例に出ましたけれども,親権喪失等を行って介入していくということが,どれほど迅速適切に見極めて行えているかということについても,私は現場におりませんけれども,なお課題があるのではないかと想像しております。   そのように,一方の実親支援の見極めの問題,他方で特別養子にフィットする状況というのはどういう状況なのかということについても,ここでなお議論がされているというような状況ですので,その判断過程,両者を含めての判断の要素ですとか,基準ですとか,そのプロセスですとか,あるべき時間的な,どのぐらい時間を掛けて行うべきか,あるいはどのぐらいの時間の中で行わなければならないかといったことについて,より明確化するということの課題が大きいのではないかと思っています。   何が言いたいかといいますと,その過程が明らかになって,その過程を踏んでいったときに,6歳では難しいのだというようなことが明らかになって,何歳上げようという議論ができると,議論がしやすいのだと思うのですけれども,個人的には,何かそれが余り見えないまま年齢を議論しなくてはいけないような困難というものを感じています。このようなことから,私の個人的な意見からしますと,どちらかというと,明確にこのような年齢の子について必要だということがあればともかく,そうでない場合に,年齢を,できる子にはやりましょうという,可能性を開いておきましょうという形で上げていくことについては,基本的には慎重にすべきだと思っております。   最後にちょっとすみません,例として挙げられているものにつきましても,6歳を過ぎたころに里親委託された例ですとか,特別養子に向けて動けるようにやっとなったのが6歳に達するころですとか,同意してくれたのが6歳に近くなってからだというような例が挙がっているわけですが,それぞれの事例で取り上げられているのは施設に入所していた児童であったということですが,施設に入所した時点,又は社会的養護の端緒が何歳だったのかというのは載っておりません。これも先ほどの意見と同じですけれども,何歳で児童福祉の枠組みに入った子が,どのぐらいのタイミングで里親等に判断されていくべきかというようなことの,ある程度のプロセスというものを見極めながら,年齢についても考えたいと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   議論の前提となる部分についての御指摘だったと思います。 ○藤林委員 先ほどの浜田委員の子どもの意見表明権の件なんですけれども,私の受け取り方が間違っていなければ,特別養子縁組については,子どもの意見表明権は,大して重視しなくてもいいのではないかなという意見だったかなと思うんですけれども,そこで,是非英米,フランス,ドイツなど,そういった諸外国では,養子縁組が成立していくプロセスのなかで,子どもの意見表明権はどのように保障されているのかというのをもし御存じの方があれば,教えていただきたい。もしなければ,また事務当局の方でも御提示いただけると思うんですけれども,私の知っている範囲,知っている範囲ってそれほど詳しく知っているわけではないんですけれども,イギリスにおいては,子どもの意見表明権を保障されており,しっかりアドボケートが付いて,それも含めた中で決定すると聞いているわけなんですけれども,もし御存じの方があれば,お教えいただきたいというふうに思います。 ○窪田部会長代理 その部分については,もし可能であれば,事務当局で資料を補っていただくということにさせていただければと思います。 ○床谷委員 少しだけ発言させていただきますけれども,子どもの意見の表明のことなんですが,比較法の表の中にありますように,フランスは13歳以上で,韓国もそうですけれども,子どもの同意を必要とするとなっていますが,確かフランスは,立法当時は15歳以上ということであったかと思うんですが,今13歳以上という形になっていて,これは,96年の改正で2歳下がったということなので,これは,私はフランス法の専門ではありませんのではっきり分かりませんけれども,恐らく96年ごろの子どもの権利条約に関する動きを反映しているのではないかと思います。   それから,ドイツ法の場合は,これは,未成年者全てが完全養子の対象ですので,子どもの意見は当然求められますけれども,ドイツ法は,親の同意は撤回不能なんですけれども,子どもの同意については撤回ができるようになっていますので,同意を取るときの手続とか,そういうことでしっかりと取った上で,最後の最後まで確実にするという形を採っていますので,その意味ではある程度,私が考えるには,子どもの意見ということは,かなり重視しているんではないかと思います。   それから,もう一つ,私自身はそのこととは別の観点があるんですけれども,特別養子の場合は,15歳以上の場合,子どもの意思で決定するということ,非常に反対意見が強いように今,聞きましたけれども,養子縁組の決定自体,必要性があるかとか,実親から養親の方に親の保護者関係を変える,法的親子関係を変えるということの判断自体は,法律の要件に基づいて,要保護性の要件に基づいて裁判所が判断することであって,裁判所から見て,その方がよいという判断に対して,子どもはそれを承知するかどうかという,そういう関係になっていると私は理解していまして,子どもの意思も親の意思もそうですけれども,要件の一つであって,それが決定権というような性格付けのものではないと理解しているところもあります。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   15歳という点に関しては,基本的には15歳以上であれば,自らの意思で普通養子縁組を結ぶことができるということとの関係で,特別養子縁組の必要性という議論もあったのだろうと思います。先ほどの中では,藤林委員から,15歳以上であったとしても,そういうことが必要である場合がないとは言えないという御説明があったと思うのですが,前回から出ている議論の中では,やはりそこの部分について,ある程度積極的にこういう場面が必要なのではないか,こういう必要性があるのではないかということがお示しいただけると,議論がしやすいのではないかということがあったのかと思います。   それとは別に,15歳以上,普通養子縁組の場合が,自ら普通養子縁組を結ぶことができるので,15歳以上だったら同意が必要という形になるのではないかということに対しては,床谷委員から別の可能性があるかもしれないということでお示しをいただいたものかと思います。   そのうえで,大変に申し訳ないのですが,本日,第1から第4までを全部扱わなければいけないというミッションが与えられておりまして,第1の部分についてですが,そもそも15歳ということ自体でかなり議論が出ておりましたので,その先にはいかないのかもしれませんが,養親となる者の年齢要件について,もし御意見があれば伺っておきたいなと思います。養親となる者の年齢要件,それから年齢差要件ということで,4ページから5ページにかけて部会資料2の中に示されていますが,この点については何か,御意見はありますでしょうか。   年齢の要件の部分がそもそも固まらないところで,この議論をするというのは大変に難しいだろうと思いますので,現時点でのご意見ということでご発言いただければと思います。よろしいでしょうか。   それでは,まだ恐らく第1についてもたくさんの御意見があるのだろうと思いますが,「第2 養子となる者の父母の同意要件についての見直し」,それから,関連しますので,第3の「実親による同意の撤回を制限する方策」,この二つについて,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○倉重関係官 それでは,関係官の倉重から説明いたします。   「第2 養子となる者の父母の同意要件についての見直し」及び「第3 実親による同意の撤回を制限する方策」についてでございます。   第2は,同意に関する第3及び第4を検討する基礎として,実親の同意そのものの位置付けについて御審議をお願いするものです。   第2の1では,実親の同意が必要とされている趣旨について,すなわち,現行法において,実親の同意は誰の利益,あるいは地位を保護するために求められているものかを問題としています。   また,この点から派生する論点として,6ページの(2)に特定の養親を前提としない同意,いわゆる白地同意を有効と考えるべきかという点も記載しています。白地同意の有効性については,実親の同意が要件とされている趣旨をどのように捉えるかという点から,論理必然的に結論が導かれるものと考えているわけではありませんが,第3及び第4における検討の前提となりますので,こちらで御審議をお願いするものです。   7ページの第2の2は,前回会議において御指摘のありました民法第817条の6ただし書と第817条の7との関係について,民法第817条の7の要件を満たす場合において,実親の同意が必要となる場面は,実は限定的ではないのかという点に関して,両条文の関係についての御審議をお願いするものです。(注)として記載しております民法第817条の7の在り方に関する点を含め,御意見を賜りたく存じます。   続けて御説明しますが,8ページの第3は,実親が一旦特別養子縁組に同意をした場合に,その同意の撤回を制限することができないかという点について,御検討をお願いするものです。   養親となる者の元で,養子となる者との間に試験養育期間を経て,信頼関係が構築されているような場合でも,実親が同意をした場合には,それまでの特別養子縁組成立に向けた努力が無駄になってしまうおそれが高い,このことが問題であるとして,実親の同意について,撤回を制限すべきではないかという意見がございます。まずは,このような方向での見直しを行うべきかどうかについて,御意見を賜りたく存じます。   また,仮に見直しの方向で御検討いただく場合には,10ページの第3の2(2)に記載いたしました要検討事項について御検討いただく必要があると考えておりますが,それらを踏まえ,事務当局としてたたき台として作成した案が,11ページの第3の3でゴシック体で記載しているものでございます。ただし,飽くまで見直しを検討する場合におけるたたき台という位置付けにすぎませんので,そもそも同意の撤回制限,このような方策を採用する必要はないという意見も含めて,忌憚のない御意見を頂戴できれば幸いでございます。   最後に,12ページの第3の4でございますが,こちらは,派生する論点といたしまして,実親の同意が特別養子縁組の審判手続開始前にされた場合にも,同意の撤回を制限する方策を設けることができるかについて,御検討をお願いするものです。この方策につきましても,事務当局においてゴシック体で記載したとおりたたき台を作成しておりますが,これも,飽くまで見直しを検討する場合のたたき台という位置付けでございますので,そもそもこのような方策を採用すべきかどうかという点から御審議いただければと思います。 ○窪田部会長代理 どうもありがとうございました。   関連する問題として,第2,第3を一緒に御説明を頂きましたが,そのうちのまず第2の同意要件の位置付けといいますか,基本的な性格に関わるものとして,ここで示されたような理解でよろしいのか,あるいはどういった問題があるのかといったことについて,御意見を伺えればと思います。   この点についてはいかがでしょうか。 ○床谷委員 ちょっと初めに,実際の現在の実務を確認したいんですけれども,6ページのところにある派生する論点からで恐縮なんですが,同意の取り方については,立法時に特定同意と匿名同意と白地同意と3種類あって,特定同意は全く問題ないけれども,匿名同意と白地同意については意見が分かれていたと。当時の資料だと,恐らくそのままどちらかとも決めないままに,法律が成立されたということかと思うのですけれども,実際上,匿名と白地の意味の理解が,人によってもひょっとしたら違うかもしれませんが,この事務当局がでまとめていただいた6ページのところにあるように,匿名というのは,実際は特定した相手は決まっているんだけれども,その人を実親側が,その人の人となり,個人的な属性や情報を知らないで同意をする。ただ,こういう人ですよという,どの程度のことを含めて情報をすくうのか分かりませんが,特定の誰それということは言わないで,要するに,匿名というところはそこにあるんだと思うんですけれども,そういう同意まではあると。   白地の場合は,全く誰になるかも分からないけれども,その段階で,要するにお任せしますという,そういう同意だろうと思うんですけれども,実際の現在の家庭裁判所に来るまでの段階,あるいはあっせんしている段階で,どちらに近いのかということをお聞きしたいと思います。   ドイツ法では明文の規定があって,決まった相手の名前を知らなくても同意はできるという条文になっている関係上,白地は駄目というのが向こうの解釈となっていると理解しておりますけれども,日本の場合は明確にしていないことから,実際上どうなっているのかということを,まず初めにお聞きできればと思います。 ○窪田部会長代理 ただいま,実務における御質問ということがありましたが,これについてはどなたかお答えいただけますでしょうか。 ○宇田川幹事 最高裁家庭局の宇田川でございます。   今,お尋ねのあった件のところにつきまして,例えば,児相やあっせん団体の方がどういう対応をしているかということも併せてお聞きする必要があるのかなとは考えておりますけれども,家庭裁判所において,具体的にどういう形で実親の方の同意を取得しているかというところについて,少し御説明を申し上げたいと思います。   現在の実務上,家裁調査官が実親の方と面接をして,この制度についての御説明などを申し上げて,その効果も含めて丁寧に説明していくという形で運用しておりますけれども,そもそもこの手続自体が,特別養子縁組成立審判の手続が特定の養親となる者からの申立てという形になっているというところがあって,そこについて,どこまで伝えるかというところは問題にはなってくるんですけれども,裁判所から積極的に養親候補者の情報というのは,余りお示ししていないとは思われます。   ただ,その背景として,先ほど申し上げたような,団体の性質によって差はあるとは考えておりますけれども,申立て時点で既に実親が児童相談所やあっせん団体から養親候補者に関する情報を得ていることが少なくないのではないかと推測しております。裁判所の方に,実親から養親候補者に関する情報を質問されるということも少ないという状態でございます。ただ,試験養育中の子どもの成育状況につきましては,家裁調査官から実親に伝えていることが多いと認識しておりまして,これは,特定の養親となる者の試験養育を前提としての,そういった状況をお伝えしていると考えておりますので,実務上は,養親候補者に養育された子の状況や利益も踏まえた上で,同意を得るというような形で運用をしているものと認識をしております。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   あっせん団体あるいは児相に関しては,何かございますでしょうか。 ○岩﨑委員 家庭養護促進協会の場合は,一応児童相談所とタイアップして,毎日新聞の紙面に毎週日曜日,「あなたの愛の手を」という欄に,写真を載せることを原則として子どもを紹介し,その記事を見た人からの申込みを原則として受けるとやっておりますので,明らかに,その段階では白地同意です。   もちろん,その子どもの申込者が適当な人であったり,あるいは既に我々との付き合いがあって,児相での登録も終わっていて,協会の講座も受けていて,その夫婦の人柄がよく分かっている候補者が出てきて,児童相談所に推薦をする段階では,児童相談所が具体的なこういう人,それは,名前を言ったり,所在地を言ったりしているとは限りませんけれども,こういう人が決まったので,引き取ってもらうように進めていきますよというのは,必要なところで実親に確認をしているのがポピュラーなやり方です。   ただ,行方不明の親が多いので,そういう意味では,実の親からすれば,ほとんど白地同意で事が進んでいるという形です。特別養子で610件ほど今まで整っておりますが,それで大きなトラブルになったのが,ちょっと前回お話ししました,住民票から所在が明らかになって,実の親が直接に子どもを返してほしいと,確定してから2年たっていましたけれども言ってきたというケースが1件ありますが,それ以外はさほど大きな問題もなく,今日までやってまいりました。 ○窪田部会長代理 恐らく,行方不明の場合は白地同意というよりは,同意は不要のケースということになると思います。基本的には,どこまでお話をするかということを含めても,裁判所においてもあっせん機関においても,匿名同意という,現行制度を前提とすると,完全な白地同意というのは考えにくいのだろうと思いますが,多分そういうふうになっているということだろうと思います。   ただ,今の派生する論点についてもなんですが,これは,本日の部会資料の中では,何が望ましいのかというのは,恐らくこの資料の中では実親の同意要件というのは一体何のためにあるのだということとの関係で,どういうふうに位置付けたらいいのだろうという,一つの素材として挙げていただいているのかと思います。部会資料の中では,子の利益のためのものとして考えるのか,あるいは親の地位を保護するためのものとして考えるのか,あるいは両方なのかという形での,一つの判断枠組みの提案をしてもらっているのだろうと思いますが,この点も含めまして,何か御議論はありますでしょうか。 ○磯谷委員 この同意の撤回制限につきましては,是非導入をお願いしたいと思っております。   私自身が代理人として経験したケースもそうですし,また,当事者として特別養子の申立てをされた方のお話を伺っても,同意がいつ撤回されるかということを非常に心配されているという現状にあります。   元々同意が,現時点では審判が確定するまで撤回可能とはいっても,裏を返せば,審判が確定すれば撤回できないということからすると,現時点においても,どこかではやはりもうこれは撤回ができないものになっているということを踏まえても,所詮,時間的にどこまで前倒しをするかという問題だと思っております。また,児童相談所の現場においても,この同意が最後まで撤回されるか分からないというところが,やはり特別養子をちゅうちょする一つの理由ということも聞いておりますので,そういう意味でも,是非導入していただきたいと思います。   それを前提に,今回,事務当局が出してくださった二つの提案のうち,まず一つ目の裁判所で行った…… ○窪田部会長代理 一応,第2の論点についてご議論をと思いますが,第2,第3の区別が難しいでしょうか。   すみません,今途中で区切ってしまいましたが,一応第2と申し上げましたが,第2についてだけ抽象的に議論するというのは難しいと思いますので,これを絞らずに第2,第3についてまとめて議論することにいたしましょう。   磯谷委員,どうぞ続けてください。 ○磯谷委員 すみません,では,手短に。   一つ目の11ページにあります,家庭裁判所での同意について撤回をできないようにするということ,これは,是非お願いしたいと思います。   ただ,裁判所における同意というのは,やはり実親にとっても大変重いものであるということに加えて,ほとんどの場合,これまでに既に子どもは手元から離れて,養親候補者のところで生活を始めているということが,既にある程度の期間続いているということを考えても,裁判所における同意を一定期間内は撤回できるというようなことにする必要性まではないのではないかというのが,私の意見でございます。   それからもう一つ,12ページのところのいわゆる特別養子縁組の成立の審判手続より前に行われた同意も,何らかの形で撤回できないようにするというところにつきましても,基本的にはこういう考え方を支持したいと思います。やはり養親候補者としては,できるだけ早い段階で,つまり子どもを預かって,本当にこれから子どもとの間で愛着関係を形成していくという段階で,既に同意の問題は片が付いているという方が,安定して子どもの受入れもできると思われますので,もちろん,どういった手続にするかとかいうところは,あるいはどこがこの同意を確認するかというところは,やや難しい問題はございますけれども,方針としては是非これについても導入の方向で御検討いただきたいと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○山口幹事 事務当局の方から,今の磯谷委員の御意見にちょっと質問させていただきたい点があるんですが,11ページの3の方の案につきまして,今,磯谷委員からは,一定期間内というのはもう要らないのではないかと。その理由としましては,既に子どもを委託してからしばらくたって,そういう検討する時間はあるだろうからという御指摘だったかと思いますが,実務上は,必ずしも試験養育が先行して,その後申立てになるという例ばかりではなく,申立てしてから,あるいは申立ての直前から試験養育が始まってというケースもあろうかと思いまして,そのような場合であっても,一定期間というのは要らないということなのか,それとも,そういう場合においては,すなわち,試験養育の期間がかなり経過していて,熟慮する期間も相当取れているケースにおいては,更に一定期間は要らないのではないかと,その辺りはいかがでございましょうか。 ○磯谷委員 ありがとうございます。   望ましいのは,やはり,ある程度は子どもがほかのところで,自分の手元を離れて養育をされていると,そういうふうな状況を実際上認識といいますか,実体験した上で,やはり同意を取るということが望ましいだろうと思います。ですから,考えようによっては,この裁判所での同意のタイミングについて,養育を開始してから一定期間ということも十分考えられるだろうと思います。   ただ,もう一つは,裁判所が実際にその同意を取るときに,やはり取り方の問題というのもあるのかなと。つまり,まだやはり揺れ動きそうだということであれば,同意を取るタイミングを裁判所の方で少しコントロールするということもあり得るんではないかなとも思っておりますが,今申し上げたように,撤回できない同意を得る時点としては,ある程度の期間,実際に子どもが実親の手元から離れていたという状況は望ましいだろうと思います。 ○山口幹事 重ねて,すみません。改めて御質問させていただければと思うんですが,今,最後の方に,裁判所の方で同意を取る時期を検討してはいかがかということで,そのとおりだと思うんですが,そこは,法文上は明らかにしておく必要はなくて,運用に委ねればよいということなんでしょうか。それとも,そこはさすがに,多少は法文に示しておいた方がよいということなんでしょうか。 ○磯谷委員 すみません。それについては,どうしてもこうでなければならないというほど強い意見を持っているわけではございませんで,恐らく裁判所の方のお考えもあるかとは思いますので,先ほど申し上げた以上,今のところは特に確定している意見というものはございません。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   ほか,第2について,第3まで含めてで結構ですが,御意見ございますでしょうか。 ○磯谷委員 すみません,続きまして,第2の方にちょっと戻りますけれども,7ページの実親の同意が不要とされる場合と書いてあるところなんですけれども,ちょっとここの趣旨を,私が余り正しく捉えていないのかもしれませんが,逆にこれを読んでちょっと思ったことなんですけれども,確かにこの817条の7の特別の事情というものと,それから817条の6のただし書のところというのは,実質的には区別がなかなか難しいんだろうというような形だろうと思っています。   それで,パターンとしては,同意があるものと,あとこの同意不要,特に虐待等の場合というところで分けて考えますと,まず,同意不要の場合に,特にこの虐待などがあるという認定で同意不要だとしたケースについて,なお817条の7の特別の事情,これを要件として求める意味がどのぐらいあるのかと思いまして,むしろこの同意不要の要件が満たされるようなケースであれば,あとはやはり特定の養親との養子縁組が子どもの福祉にとって適当であるということであれば,特別養子を認めることについて,特段問題はないのではないかと素朴に思います。   一方で,同意をしている場合についても,なおこの817条の7の特別事情を要求する意味というのも,改めて考えますと,どのぐらい意味があるのかなと。つまり,養親候補者も是非この子を引き取りたい,それから,実親さんの方も是非お願いしたい。そして,もちろんその新しい親子関係というのは,子どもにとってふさわしいものであるという状況下で,なおこの実親の監護が著しく困難又は不適当という,非常に重い要件を課すことというのが,果たして現実的にどうなのかなというところ,ちょっと改めて思った次第であります。感想めいて,申し訳ございません。 ○窪田部会長代理 磯谷委員の今の御発言は,むしろ817条の7を見直す必要があるということにつながりますでしょうか。あるいは,恐らく817条の7を見直さないのだとすると,817条の6とほぼ重なるのだったら,結局は同意が必要な場面というのは存在しないのではないかという御議論につながるのか,その点については,どちらなのでしょうか。 ○磯谷委員 すみません。まだ本当に,これについては今回改めて思ったものでありまして,余りよく考えていませんけれども,当初ぱっと感じたのは,やはり817条の7の要件の方の見直しというのもあり得るんではないかと,率直に申し上げて感じました。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   平川委員,水野委員という順番でお願いします。 ○平川委員 すみません,質問なんですけれども,この817条の6の同意不要要件で,意思表示はできないというんですけれども,父母による虐待の場合,これ,虐待している,イコール,同意不要だという運用なんでしょうか。それだと,かなり幅広く同意不要要件があるのかなという気がするんですけれども。 ○窪田部会長代理 御説明お願いします。 ○山口幹事 条文の読み方としましては,虐待というのは,その続きで出てきます,「その他養子となる者の利益を著しく害する事由」がある場合の一つの例として挙げられているものでして,ですので,そういう虐待があって,子どもの利益を著しく害する事由があると判断されれば,もう同意は不要だと,こういうふうになっていると思います。 ○平川委員 もしもこの同意不要要件を使うときに,この制度が使いづらくなってしまう,逆に,幅広く解釈できるがために,制度が使いづらくなってしまうという面もあるかと思いますが,そういう懸念に対して何か考え方があればお聞きしたいんですが,どうなんでしょうか。 ○山口幹事 では,事務当局から。   なかなか虐待に当たって同意が不要だとされる例というのは,実際上余り多くはないんだろうと思います。   それが,特別養子制度の利用の面では,利用しにくくさせているというところは確かにあろうかと思いますが,ただ,やはり実親に同意する,同意しないの選択を与えているという趣旨については,今回①,②として二つ,2方向から例を挙げておりますけれども,いずれにしましても,実親さんにとっては非常に重要なことでございまして,自分の実の子と実親子関係が切れてしまうかどうかという問題ですので,それが余りに安易に認められて,同意不要というケースがすごく広くなるというのが,特別養子制度の利用の面からいうといいことなんですけれども,全体的に見たときに,本当にいいことなのかという疑問があろうかと思います。   そうしますと,この同意不要の例というのが仮に狭くなったとしても,そのこと自体が悪いというふうな評価にはならないのかなと考えております。 ○窪田部会長代理 よろしいでしょうか。 ○倉重関係官 平川委員のご発言は,817条の6のただし書が,かなり広く捉えられる規定となっている反面,そのせいで,この場面は絶対にいけると確信が持てないので,かえって,ただし書要件が使いづらくなっているのではないかという御指摘も含んでいるのかなと考えましたが,実はこれは,法制審議会に先立つ研究会でも御指摘のあったところでして,実際の実務のニーズを酌んだ上での,そういった御意見があったことは間違いがないところかと思います。   したがいまして,その方向で,817条の6のただし書,これ以上どういうふうに具体化するかというところは,もちろん検討は十分必要だとは思っておりますが,そういった方向での検討というのは,この法制審議会で排除しているところではないということを,申し上げさせていただこうと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   恐らく,817条の6,あるいはそのただし書の見直し,あるいは817条の7も含むのだろうと思いますけれども,両者の関係も含めて,今回の法制審議会の検討の対象にすることは可能であるという理解ということでよろしいですね。 ○水野委員 もう20年も前に,この817条の7については,子どもの福祉に資する場合という要件だけで十分だったのではないかと批判を書いたことがあります。現行法の817条の7の文言では,スティグマ性を強めてしまうので,単に子どもの福祉を理由に,養子縁組成立がふさわしいと裁判所が判断する場合という要件の書きぶりだけでよかったのではないかと,立法直後から考えております。   それからもう一つ,同意の取り方についてなのですが,実務についてお教えいただきたいと思います。たとえば,ネグレクトで育てる気がないという場合,どういう形で,その実親を支援しているのでしょうか。当初はいろいろな困難を抱えて育てる気がないように見える親であったとしても,親に対する支援,働き掛けが十分に行われれば,その実親が成長して育ててくれる可能性があるとすると,もちろんそういう働き掛けをした方がいいと思います。   ですから,子どもを預けて機械的に2か月たったら育てる気がないと考えて同意したとみなすとか,ただ引き取りを促すだけで,引き取れないという親には同意を迫るというのは,よくないと思います。でも一方で,実親がとりあえず育てる気はないのだけれども,養子縁組に同意するのは最終的に自分が子どもを捨ててしまうことに思われて抵抗があって,預けきりにする。また,その子にとっては里親によって育てられるのがふさわしいにもかかわらず,親が里親委託を嫌がって施設に置いておいてほしいと言うと,それが実現されてしまう。そういうこともまたよくないと思います。その延長線上で,いつまでも預けきりにしながら,いざとなると同意権を振りかざすというのは,許されるべきではないと思うのです。ですから,親に対する働き掛けと関連して,どういう形でこの実親の同意を取るかというところが,実は一番重要になってくるように思います。前提にしておられるこの同意確認手続が,実親に対する支援や実親の養育困難の見極めと,どうリンクしているのかについて,お教えいただければと思います。 ○窪田部会長代理 それは,家庭裁判所への御質問ということになるのでしょうか。 ○宇田川幹事 今の話は,どちらかというと,児童相談所やあっせん団体の方でのお話かなと思ったんですが,その場面としては,特別養子縁組成立の審判の申立ての前の段階での実親なり,若しくは養親となるべき者への働き掛けかなと,私は理解しているところでございますけれども。もしそうでないというんであれば,またあれなんですけれども。 ○窪田部会長代理 ただいま御質問いただいた藤林委員,何かお答えいただけますでしょうか。 ○藤林委員 的確に答えられるかどうかあれですけれども,最初から特別養子縁組に同意している方は,特にもう支援は要りませんと,同意していますということなんですけれども,同意していない方で,同意していないということは,「要するに家庭復帰か引き取りを考えていらっしゃるんですね」みたいなことを言って,では,乳児院に面会交流に行ってください,里親さんに委託しているんであれば,里親さんに委託している子供を児相に連れてくるので,ここで交流してくださいと,面会交流の提案を投げ掛け,面会交流しながら家庭復帰に向けてのプランを提案し,それに乗っていただけるように,我々とか乳児院から保護者,実親さんに対してアプローチを行っていきます。   ただ,そのようなプランを示しても,最初は,「はい,分かりました」と言われても,その後の呼び掛けに応じない,また面会交流も出て来ないといったことがずっと続いていくわけですね。そういった場合に対しても,何度も催促というか,連絡をするわけですけれども,連絡にも応じない,いつの間にか携帯も通じない,住民票もなくなってしまったというふうな事態の中で,同意しないという事実だけが残ってしまうというのが,大体多くのパターンかなと思います。   ですから,何らアプローチをしていないということはないと,私は思っております。 ○岩﨑委員 協会が関係している,大阪市,大阪府下の児童相談所では,親が引き取るめどのない子どもを,早めに養子縁組の対象児として選ぼうという考え方を一応持って,日常的に仕事をしてくださっています。   特に,生まれてすぐに乳児院に預けた親で,中には「養子に出さない」ということを明確に発言して,それでも面会もなく行方不明になってしまうケースもあります。あるいは,未成年で母親になった娘の両親は「おじいちゃん,おばあちゃんとしても育てられないし,母である娘が何とかなるとは思えないので,チャンスがあれば養子に出してやっていただきたいです」という,おじいちゃん,おばあちゃんの要望を受けて,お母さんの同意が未確認のまま,現実的には養子候補児として上げて,母親からもし電話がかかってきたら,「一度あんたが児童相談所に顔出さないと,養子に出されてしまうよ」って言ってくださいねっていうような言葉を掛けてくださいというような指導はしていますけれども,今までの経験から,この親はなかなか難しいなって思えるケースでも,同意なしで養子縁組候補児として上げてきます。   それで,現実的に今回認容されたケースの中からちょっと幾つか選んでみたんですけれども,かなり裁判所は認容してくださいます。特に実母の行方不明の場合,養親となる者と養子となる子どもとの関係性がうまく育っている場合,それから,それなりに一生懸命児童相談所が実母宅に家庭訪問したり,電話をかけたりという記録が残っていますので,そういうものを根拠にして,かなり裁判所は認容して下さっています。私たちも今回調べてみて,改めて結構認めてくれているよねという気持ちになりました。817条の6を根拠に,子どもの利益のためにという7を,両方使って認容していただいているケースがかなりあります。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   水野委員に一つだけ確認をさせていただきたいのですが,先ほど817条の7に関しては,子どもの福祉に資するときといったような,一般的な要件にむしろ書き換えるべきではないかという御意見がありました。そのときには,現行の規定というのが,ある種,やはりこういう書き方になっていると,子どものスティグマになってしまうという御指摘がありましたが,それをふまえて,特別養子が成立する場合を実質的に広げるという趣旨なのか,飽くまで表現をめぐる問題として,そのようなスティグマが生じるようなことを避けるという趣旨で,特別養子縁組が成立する場面を拡張するということまでは含んでおられないのか,その点はいかがでしょうか。 ○水野委員 今の段階では,まだはっきりと申し上げられるほど考えを詰めておりません。現行法の要件でも,実親が脆弱性をかかえていて養育困難だけれども,その脆弱性には,本人の責任がないという場合があるでしょう。実親のかかえる困難にも多様なものがあり,その困難ゆえに子が差別を受けるのはおかしいということが常識になればいいと願っております。現行法の要件には当たらないけれども,子どもの福祉のために認めた方がいい場合というのは,具体的にはちょっと今思い付かないのですが,そういう場合もあろうかと思いますし,子の福祉というだけの文言に改めた方が,差別を減じる方向には働くだろうと思います。 ○窪田部会長代理 分かりました。 ○木村幹事 今,議論になっていた7ページの817条の6と7の関係ですけれども,今回817条の6のただし書の要件と817条の7は全くイコールではなく,817条の6の方がある意味厳格な要件だと理解されていると思います。そのうえで, ここにある父母による虐待とか悪意の遺棄というものについて,漠然と捉えると,子供の監護に不適切な人をイメージすると思われますが,立案担当者の解説などを読むと,例えば,虐待というものについては,892条の推定相続人の廃除の虐待と同じ意味として用いているというふうな解説があったりとか,次の悪意の遺棄についても,770条や814条の1項というものを引いて解説がされていたりもします。こうした観点からの説明によると,先ほど述べたような、なんとなくイメージしてきた虐待とか悪意の遺棄というものが異なってくるようにも考えられるのですが,今回の御提案,あるいはこの資料を作成していただいた際に,虐待あるいは悪意の遺棄というものについては,具体的に説明しにくいかもしれませんけれども,どういった意味内容として捉えればいいかということについて,御教示いただければと思います。   まず,それが第1点です。 ○窪田部会長代理 多分,条文の理解ということもあるのだろうと思いますが,ここでの問題を前提として,事務当局はどんなふうに理解して,この部分を説明していただいたのかということでお答えを頂けますでしょうか。 ○山口幹事 それでは,お答えいたしますが,非常に率直に申しますと,私どももよく分からないなというところが,非常に率直なところでございます。   ただ,817条の7の方は,どのような特別養子縁組についても成立要件になっているので,そういう意味では広いのかなと考え,817条の6のただし書は,そのうちの一部だというような,非常に漠然としたイメージで,大小関係で示しているところでございまして,確かに,今木村幹事御指摘のとおり,解説書などを見まして,悪意の遺棄というのも立案担当者としてはかなり広めに捉えていたということからしますと,この両条文の関係をこういう図示しておりますような大小関係で捉えられるものなのかというのは,疑問があろうかと思います。 ○木村幹事 一方で、ほかの条文とも関連性があることから,広く捉えられると解することもできますが,他方で、例えば,相続人の廃除のような場面を捉えると,親子関係そのものが切れるわけではないですけれども,その中の一つの主たる効果である相続人,あるいは法定相続権そのものを奪ってしまうような関係性であるとの形で狭くも捉えられると思います。かりに後者のようにとらえますと、この文言の使い方と解釈との関係で,817条の6というものが,もしかしたら実親というものから権利を奪うということ自体を正当化する限りの,かなり狭い意味だけで使われているとの解釈もあり得るのではないかとも思えましたので,その点についても,また御検討いただければと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○村田委員 今の木村幹事の御意見についでに乗っかってというか,事務当局への要望なんですけれども,今の虐待,それから悪意の遺棄もそうかもしれません。この言葉の持つ幅といいますか,解釈上,どこまでのものかということを,これからもし整理されるのであれば,今日,木村幹事が御提起された民法の中でのほかの条文における使い方との違いなり,同じなのかという問題が一つあると思うんですけれども,もう一つは,虐待に関して言うと,この場の検討の一つの端緒にもなっている児童虐待問題によって,児童福祉法上の虐待,あるいはそれに対応している児童相談所等の現場の実務での虐待の解釈というのがあろうかと思うんです。その虐待の場面においては,ネグレクトの問題もありますけれども,心理的虐待を含むというような形に整理をし直したことによって,虐待の件数が非常に伸びているというような社会的実態もありますので,そういう他の法律における虐待の概念と,ここでの虐待の概念というのも整理をする必要があるのではないかと考えますので,その点もよろしくお願いします。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   では,その点,次回までに事務当局の方で準備をしていただくということでお願いしたいと思います。 ○幡野幹事 先ほど藤林委員,そして岩﨑委員からご照会のあった,実親に子育てに関するプランを提示したけれども,なかなかそれに従おうとしない,けれども同意もしないというケースについて意見がございます。このような場合,一定の期間を設けて,同意不要にするということを明文化した方がいいであろうとは思っております。   フランスでは,完全養子縁組を認める際に,三つの事案類型があります。一つが同意によるものであり,もう一つが裁判による遺棄というものを宣言するケースです。これが,今お話ししたような,同意はしないけれども育てようともしないというケースです。そのようなケースも,その一つの要件の柱として,一つの事案類型として,きちんと明文化した形で条文が設けられております。フランスの場合は,1年間養育する意思を示さなかったときには,同意不要で養子縁組の要件が満たされるという制度を設けております。   3つ目がが,国家の被後見子という類型になります。少なくとも先ほど言った同意はしないけれども,育てようとしないというケースに関しては,条文を設ける,明文を設けるということもお考えいただければと思っております。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   第2,第3について御議論いただいていますが,かなり対象が広いので,ここで一旦休憩を頂きまして,後ろの時計で40分まで,10分間の休憩を頂戴したいと思います。40分から議論を再開させていただきたいと思います。           (休     憩) ○窪田部会長代理 それでは,時間になりましたので,議論を再開したいと思います。   第2,第3ということでございましたが,第3の「実親による同意の撤回を制限する方策」については,まだ,それほど多く議論がされていないところかと思いますので,もちろん第2の点を含めて結構ですけれども,特に第3について御意見があれば伺いたいと思います。 ○村田委員 言いたいことが二つあったので,どうしようかなと今悩んでいたんですが,すいません。   一つは,先ほど休憩前の議論で水野委員がおっしゃっていた,実親の同意を取る手続と実親への支援との関係についての御質問があって,実務の立場からのお答えを頂いたんですけれども,恐らく,特に虐待というような場面を念頭に置いた場合には,虐待があって,それに対して一定の支援をして,その後に子の特別養子縁組の話に持って行くかどうかというような,そういう単純な構造では必ずしもないケースの方がむしろ多いのではないかと。不適切な養育を何らかの形で発見をして,それに対して児童相談所等が対応されていく中で,やわらかい形での支援から始まり,それでなかなかうまくいかないときには児童福祉法27条,28条の措置,同意されない場合には裁判所の承認を得てというような手段であるとか,親権停止の手段をお考えになったりという流れがあって,その中でも,更に児相でいろいろ持っておられる,親への支援であったり指導のプログラムをたくさん類型化してお持ちだと思うんですけれども,それを実施されて,それでもなかなか難しいというときに,ある種の究極の選択の一つとして,子の特別養子縁組もオプションの中に入ってくるという,こういう位置付けではないかなと思いまして,そういう中での親の支援と同意の取り付けの実際というののイメージを全体像の中で考えた方が,より実態を踏まえた議論になるのかなと思ったところです。   ただ,自分にはその知見が必ずしも十分にはないので,どなたかからその辺り,少し御披露いただけたら,今後の議論の参考になるのではないかなと思ったという点が1点です。 ○窪田部会長代理 今,村田委員から御指摘ありました点については,どなたかからお話を頂くことは可能でしょうか。 ○藤林委員 今の質問に的確に答えられるかどうか分からないんですけれども,多分,現場において多いのは,先ほど言いましたネグレクト系の親の方が多いんですね。養育できないとか,何らかの事情があって同意で預けた,又は我々児童相談所が職権で保護した。それで実親に対していろいろな提案を行う,プログラムを行う,でも,全然応じない。応じないどころか,全然面会交流のないまま1年たってしまうという,これを悪意の遺棄というふうに捉えるかどうかは別にして,こういうケースが非常に多いかなと思います。   身体虐待のようなケースは,ある意味で親は一生懸命で,返してくれということでいろいろアプローチも向こうからしてきますし,それに対して,ちょっとまだ危ないのではないかなと思いながらも,慎重に親のカウンセリングを提案して医療機関に受診を勧めたり,又はいろいろなプログラムを提案したりしながら,それに乗っかっていきながら家庭復帰になったら,やはり難しい,もうこのまま面会交流を続けながら子供は成人していくのだろうと。しかし,親は親なりに一生懸命なので,親子関係を終了させるほどはないというふうなケースが多いのかなというふうな印象があります。   先ほど前半で私が言った重度の性的虐待とか,それから,きょうだい児を死亡させてしまうケースというのは,もはやそういった家庭復帰とか再統合プログラムの対象外のようなケース,要するに,家庭復帰がもうゴールにならないようなケースは,多分,特別養子縁組の対象にオプションとしてはなっていくのかなと思うんですけれども,そんなケースはそれほど多くないのかなというふうな印象はあります。   お答えになったかどうか,もし何か疑問点がありましたら,また追加の質問を頂ければと思います。 ○窪田部会長代理 村田委員はよろしいですか。 ○村田委員 はい。 ○窪田部会長代理 ほか,今の点に関してでも。 ○村田委員 すいません,続けてで恐縮です。   全然別の論点ですけれども,第3の4の関係で,派生する論点として事務当局から御提案のあったところで,余り御意見がまだ出ていかなかったかと思うんですけれども,ここの何がしかの新しいシステムを考えようというときに,この御提案の中では公的機関に対して申述をして,その後の撤回制限と,こういう仕組みが検討されているわけですが,この(注)を見ますと,公的機関として児童相談所のほかに家庭裁判所等ということになっております。   仮に,これが裁判所の手続もオプション,選択肢の一つとして考えてみようというときに,司法機関である裁判所にこれを担わせる意味というか,それがどこら辺にあるのかなというところは十分に御意見を頂けたらありがたいなと思ったところでして,特に,そもそも申述をさせる段階のところに意味があるのか,その後,何か月かたった,2年ですか,たつ間,じっと見守っていて,最後,確認をするというところに,その公的機関に意味を持たせるのかというところもあると思いますし,例えば,最初の申述を受ける段階のところに公的機関性が意味があるのだとすると,十分に説明をして分かってもらった上で真意を確認するには,それにふさわしい機関があるはずだというところに力点が置かれるのであれば,それは司法機関がいいのか,行政機関がいいのか,あるいは第三者委員会みたいなものがいいのかと,いろいろなオプションがあり得るのかなと。それはその機関の性質を踏まえて論じられる必要があるのではないかなと思っていまして,そこをいろいろな御意見を頂けたらありがたいなと思ったところです。 ○窪田部会長代理 申述の意味と位置付けということにも関わるのだろうと思うのですが,この部分については事務当局の方では何かお考えはありますでしょうか。 ○倉重関係官 ここの点につきまして,どのような機関がふさわしいのかというのを考えたときに,事務当局としては,まず,特別養子に対する同意が持つ法的意味を十分に説明する能力を持った機関である必要があるだろうというふうに考えているところでございます。同時に,その機関については,特別養子縁組との関係で中立である必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。   能力というふうな面から考えますと,児童相談所や裁判所といったものが考えられるかなというふうに考えていたところでございます。   一方で,この両者それぞれに検討すべき点があるというふうに考えておりまして,児相長につきましては,ほかの論点との関係で,特別養子縁組成立の手続の当事者にした場合には純粋な中立性を,当然,中立に仕事をしていただけるものとは考えていますが,法律で仕組む以上は中立性を制度的に担保しなくてはいけないと考えていますので,その点で問題がないかというのを検討する必要があると考えております。   一方で,中立性という点からしますと,裁判所が適当であるというふうに考えているところではございますけれども,実親が,わざわざ裁判所に出頭して同意をするということにした場合には,かなり手続的には煩瑣になってしまいますので,それに耐えられるかというような点は,検討が必要であるというふうに考えているところでございます。   この公的機関に期待する役割について,単に同意の申述を取るだけではなく,その後2か月間,撤回がないことを見守ることまで期待しているところの趣旨でございますけれども,同意は相手方のない単独行為であるというふうに観念されていますものですから,同意の撤回というのも,場合によっては相手方なく単独でできるというふうに考えることになるのかなというふうに,事務当局としては考えた次第でございます。そうしますと,例えば公的機関に対してせっかく同意の申述をしたにもかかわらず,そこから数か月以内に,私は単独でこれを撤回していましたというふうに言われてしまいますと,せっかく同意を確定しようとした意味がなくなりますものですから,ここでの制度の意味としては,同意の撤回手段を限定するところにも意味を持たせたいと,こういった考え方を持っているというところでございます。   したがいまして,我々としましては,ここに書きましたとおり公的機関が同意の申述を受け,かつその公的機関に対して同意の撤回がなければ,その同意が確定するのだと,こういう制度を提案させていただいていると,こういうことになります。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   今,事務当局から,一応,御説明を頂いたところではございますけれども,多分この部分に関してはいろいろな考え方,制度設計があり得るのだろうと思いますので,自由に御議論いただければと思います。あるいは,その他の論点でも結構ですが。 ○床谷委員 これに先立つ研究会の段階で,公正証書にする方法については消極的な意見が非常に多かったようで,ここではもう出てきていないんですけれども,私自身が,方法としては一つは公正証書,一つは裁判所への申述という両方で考えておりました。   裁判所への意思の表示については大方の方が賛成されると思いますけれども,公正証書にするということの意味合いなんですが,これは外国のフランスやドイツと,日本の公証人の違いということはかねがね指摘されているところではありますけれども,意思表示の,その同意をすることによって,どういう法的な効果が発生するかということの,それを説明する,理解させるという役割として,児童相談所よりも法律家,公務員でもある公証人の方がよいのではないかというふうに考えたということがあります。もちろん公証人の実態を十分把握せず言っているところがありますので,その点は留保しておきますけれども,個人的に知っている公証人さんは,裁判官出身だったり家裁の経験があったりで,こういうことについての関わりを持っても,十分対応できる方々ではないかと思ったこともあります。   同意の取り方というのは,撤回をどうするかということと非常に密接に関わっておりますので,同意をしっかり手続をとって,覆らないように十分に説得し,理解した上で,同意があれば撤回をできないようにするという形になるはずで,同意の取り方が曖昧であれば,撤回を許さざるを得ないという形になるので,やはりこれは両方,非常に関連しています。   同意を取るときに,法律的な説明だけをするのか,カウンセリング的なものまで含めるのかという議論も研究会ではされていたようですけれども,これはあっせんの制度,前置が取られておりませんけれども,今後はそういう方向に動くとすれば,そういう制度の法律もできましたので,心理的な部分とかカウンセリング的なところはあっせんの方で対応し,法的な部分の説明納得ということについては法を扱うところが,公証人ないし裁判所が行うというのが私の理解です。   そういう意味で,公証人の場での意思の表示,最終的には裁判所に提出される段階で初めて同意の意味は発効するんだと思いますし,仮に撤回は可能とするのであれば,裁判所に到着してからの期間を起算するといったようなことになるのかなと思いますけれども,そのような考えを持っております。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   ただいまのは4だけではなくて3も含めて,家庭裁判所への書面の提出以外に,公正証書によるものも認めるということでよろしいですよね。 ○床谷委員 はい。 ○窪田部会長代理 この研究会の報告書についてですが,これに法制審議会は拘束されるものでは全くないというふうに理解しておりますが,ただ,今の点については確か研究会でも議論がありましたので,もし事務当局から,その議論の御紹介という形でしていただけるのでしたら,それをしていただいて,ここでの議論の素材にしていただければと思いますが,すぐご紹介いただけますでしょうか。 ○倉重関係官 公正証書については,特出しで議論させていただいております。なぜかと申しますと,それに先立ちます厚生労働省の検討会においても,公正証書で同意をした場合には,その同意の撤回を制限してはどうかという意見が載っていたからです。   私の記憶の限りで恐縮ではございますけれども,今,床谷委員から具体的な公証人の方の能力を前提に,特別養子縁組の同意を任せてもいいのではないかという意見もあったところではありますけれども,果たして全ての公証人にそれを委ねることができるのかというような発言もあり,それはとは違う方向で検討してはどうかというふうな流れになったというふうに認識しております。   とは申しましても,先ほど申しましたとおり研究会の議論に拘束されるものではありませんので,今後また皆様の御審議に委ねたいというふうに考えている次第でございます。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   特に今,具体的に公正証書という御提案も頂いていたのですが,この部分について何か御意見はございますでしょうか。 ○村田委員 公正証書自体に意見があるわけではないんですけれども,全体として床谷委員がおっしゃったところの,そのカウンセリング的な機能と法的な点を重視した説明というところをそもそも分けるのがいいかどうかというところも議論の分かれ目なのかなという気がしていまして,先ほど申し上げたようないろいろな問題への対応の一連の流れの中でこれを位置付けるというときに,そういう支援的なものを含めた説明の中で,この自然な流れとして同意を位置付けるというのも一つの考え方でしょうし,それとは全く全然切り分けたところで,中立的な機関が同意を確認するというのも,それはメリットあると思うんですけれども,両方それぞれちょっと一長一短があるのではないかなという気がするので,少し議論をそこは深めた方がいいのではないかなと思うのが1点と,あともう1点は,中立な機関として,裁判所は中立性は確かにあると思うんですけれども,他方,敷居が高いというふうに認識されることもある組織で,私が言うのも何なんですけれども,そういうところで,あえて同意をしたというときに,本当は撤回したいと思った人が,わざわざ裁判所まで撤回をしに来るんだろうかという問題もあって,だからこそ安定していいのだという考え方と,それは実態から乖離するから,制度の作りとしてよくないという見方と両方あり得るような気がしていまして,国民的コンセンサスがどこに得られるのかなというのは,これまた慎重に考える必要があるのではないかと思いました。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○山口幹事 事務当局から床谷委員に御質問させていただければと思うのですが,先ほど委員の御提案としましては,公正証書でできたとしても,事務当局案でいうと,この一定期間とかは,裁判所に同意書みたいなものが届いてから起算すべきであるというような御意見だったかと思いますけれども,これは何か公証人で作成したときから起算するというのでは,こういう点でちょっとまずそうだなとかという辺り,ございますでしょうか。 ○床谷委員 特に公証人のところから起算したらまずいとかいうふうに考えて申し上げているわけではなくて,裁判所で取ることもあるし,公証人できちんと取ることもあるけれども,このスタートが違うというよりは,最終的には裁判所に来たところから起算して統一した方がいいのではないかというふうに考えた次第です。 ○山口幹事 ありがとうございます。 ○窪田部会長代理 今の部分について,床谷委員にちょっと1点だけ御質問させていただきたいのですけれども,そうしますと,結局,最終的には家庭裁判所に公正証書は送られるということになりますので,今,事務当局の提案にあるところと違うのは,家庭裁判所調査官による事実の調査を経た上でという部分が当てはまらないというだけだということになりますか。 ○床谷委員 家庭裁判所の対応の仕方は変わってくるということで,それが説明するのが家庭裁判所の調査官から公証人に替わるということだけなのかどうかは,ちょっと判断しかねますけれども,意思表示,同意の仕方の場面は二つあり得るのではないか,裁判所へ行かなくても,公証人のところできちんとやるという方法もあるのではないかと。ただし,手続のプロセスとしては最終的に裁判所に来るので,そこがもし撤回というのを可能な期間を入れるとすれば,入れるか入れないか,まだ決まっておりませんけれども,入れるとすれば,そこから起算をするべきではないかというふうに考えています。 ○窪田部会長代理 分かりました。ありがとうございます。 ○磯谷委員 先ほども申し上げたように,子の特別養子縁組の成立の審判前に同意を確定させる手続というのは非常に期待をするところですけれども,ただ一方で,やはり懸念もございます。   つい最近,民間のあっせんの団体の方からお話を伺ったときに,後から,すぐ,そのケースは撤回されたわけですけれども,精神的な問題を抱えた方だったというふうなお話もございました。やはりいろいろな方がいらっしゃるということを考えますと,公証人がやるにしても何にしても,そういったところをうまくスクリーニングができるような形である必要もあるかなと,そういう制度設計も必要ではないかなと思いました。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○藤林委員 私もここには非常に期待するところなんですけれども,先ほどの事務当局の説明で,児童相談所の中立性というのが果たしてどうなのかという御意見がありまして,そう言われてしまうと,そうだなと思ったんですけれども。この同意をどこで行うのかという点で考えた場合に,基本は家庭裁判所で行い,公証人の場合には公証役場で行うわけなんですけれども,児童相談所の場合には,別に児童相談所ではなくても,児童相談所の担当者が家庭に行くとかで取ることができる。なかなかこういった同意を取ることが必要な親御さんって,なかなか行ってくれない,児相に来てくれないという特徴があることを考えると,こういったアウトリーチができる児童相談所も,一つのオプションというか,加えていただくのが実務的には非常にありがたいなと思います。   それと,磯谷委員が言われた,その問題ってとても大きくて,このコメントをする前にそれを言われてしまったので,ちょっといろいろ考えていたんですけれども,その実親さんの同意というのは,本当に安定したものなのかどうかというのは確かに難しい方もあって,知的なハンディがあったり,精神的なハンディがある方の場合には,その同意能力というか,同意の持続性というものにも,十分考慮する必要はあるかなと思っています。でも,それはやはり児童相談所の実務の中で,非常に鬱状態になっている方から無理やり同意を取るのは,それはやはりよくないだろうと。多分,同意しますというふうに言われるかもしれないけれども,それは半年後,回復する可能性を考えたら,それは取るべきではないなと思うところもあるわけなんです。けれども,そのことも考えながら,それでもやはり同意を取るべき人からは取っていくということも,一方で進めていく必要があるかなというふうに思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   同意の撤回制限等については,ほかに御議論ございませんでしょうか。 ○杉山幹事 1点だけ,すごく単純な質問をさせていただきたいのですけれども,ここで言う同意の撤回制限が掛かるような同意は,家庭裁判所か,それ以外のどこでするかについては議論があるとしても,イコール817条の6にある同意ではないわけで,817条の6の同意はもう少し緩いものでいいとなると,撤回制限できない同意を置くことによって,かえってそのような同意が取りにくくなり,結局,同意不要手続となどを使わなければならない可能性が高くなるのではないかという素朴な疑問を抱いております。こういう手続を置いた場合に,実務上どんな影響があるのか,予想しているところがあったら教えていただけるとありがたいです。 ○窪田部会長代理 その部分については,事務当局で何かお考えはありますか。 ○山口幹事 すいません,ちょっと今,私,よく分かっていなくて,ここで言っているところの同意というのは,817条の6の同意とは違うのではないかということでしょうか。 ○杉山幹事 817条の6の同意は,家庭裁判所の前でしたりする必要はないわけですよね。あっせん団体に書面を出す形のものでも,同条の同意だけれども,それは撤回できるというものとして残り続けるという理解で合っているでしょうか。 ○山口幹事 そのとおりでございます,はい。 ○杉山幹事 そうすると,これをすると撤回できない同意だけれども,こちらだと撤回できる同意という二種類の同意を残しておいた場合に,かえって撤回できない同意が取りにくくなるのではないかというのが,私の疑問でございます。 ○窪田部会長代理 そうですね。今のは,単に御質問というより,多分どういうふうに制度設計するのか,こういうふうな制度設計をしつつ,今までの同意はそのまま手を触れずに残すのが適切なのかどうなのかという点に関しても検討すべきだという御意見を含んでいたものだというふうに理解しております。 ○倉重関係官 この点については,児童福祉の実務家の委員に質問をさせていただきたいのですが,我々としては現状の制度でもうまくいっている特別養子はもちろん存在しているので,その制度は制度として残しつつ,オプションの一つを増やせばいいのではないかと考えておりました。ただ,その結果,制度が使いづらいものになることは,もちろん避けなくてはいけないかとは思っているんですが,実際に現場の方から御覧になったときに,こういう制度を作ったときに本当にそれが使えるものなのか,それとも余り意味がないものになってしまうのかという点について,率直な御意見を頂けたら有り難いと思うのですけれども。 ○窪田部会長代理 それは岩﨑委員,藤林委員からお答え頂けますでしょうか。 ○岩﨑委員 最初に実親の同意があって,私たちは養親候補者を探し始めるんですけれども,それが試験養育期間中に同意が翻っていたり,あるいは裁判所からの審問があった段階で,母親が同意を翻したりということがあって,結局,一生懸命頑張って親子を作ってきたのに,その関係性が,その母の同意の撤回でもろくも崩れてしまうという,そういう経験をやはり再三させられてきたものですから…。取りあえず同意がきちんと取れた,その同意がというのば,最初にこの子を養子に出したいですと言った,それについていろいろな提案をしたけれど,「やはり私はどうしても育てられないです」という実母の同意書を取ったら,それに基づいて養親候補者を探し始めるわけです。改めて候補に挙げた夫婦と面接し,訪問調査をし,養育の意志をしっかり確認して,子どもとのお見合い,施設での実習をし引き取って試験養育期間に入るのにやはり半年掛かったり,1年掛かったりするのです。その間に,若い母親の場合には,いい男性に巡り会えて,「お前の子どもだったら俺が育ててやってもいいよ,縁組もするよ」なんて言われたら,同意は撤回されるんですよね。ところが,こちら側ではちょうど親子関係ができて,申し立てをしようとしていた段階であるみたいな,現実はそういうところで出てくるので,取りあえず最初に同意があって,そういうふうに「あなたの人生が今後変わったとしても,このあなたがなさった同意は翻すことができないものとして,私たちはこの子のために新しい育て親を探します」ということを,どこかで担保してもらいたいというのが現場からの要求だったわけです。   ですから,その最初の同意の段階で裁判所まで行って,裁判所で取りあえずあなたの同意をここで確認をしましたよということを言っていただいて,その間に我々は探し始める,そして引き取り,試験養育に入るという一連の作業をして,今度は養親となる者が,養親となる者と養子となる者との関係性を裁判所に見ていただくという形の申立てができれば,情報の流れ方も,双方に同じ審判書が行くというやり方も少しは変わってくるのではないかという期待だったんです。   ですから,それがこんなにややこしい法的なことになるというのは,ちょっと私なんかはよく分からないです。親の最初の同意を,ここから例えば2か月おきましょう。その間にもし決心が変わったら,それは認めます。そのときには,引き取る方向性で一緒に考えていきましょうと話ができて進むのであれば,当然そのように私たちもするのです。けれども時に,乳児院に入れてしまうと実母は面会も来ない,同意を確認するために呼び出しても連絡がつかないという状況の中で事が滞っていくことになるので,一旦裁判所で,それが本審判なのか中間審判なのか,取りあえず担保なのか,何でもいいから取りあえずこの人の同意を,これに基づいて我々が仕事ができるという効力を持ったものにしていただけたらいいというのが,本当に正直な話なんです。 ○窪田部会長代理 久保野幹事,今の点に関連してということでよろしいですか。 ○久保野幹事 多分,関連していると思うのです。ちょっと自信はないのですけれども,12ページの4の制度との関係で,試験養育を始めて,養親となろうとする者との間で信頼関係や愛情の形成が進行した場合の問題点というので,何となく試験養育に出して,うまく愛情が形成されて,特別養子につながっていくという場面を想定して議論しているのですけれども,ただ,試験養育というのは正にマッチングがうまくいくかですとかいうことを試験するために行っていくというところがあるわけでして,そういう意味では,最後までうまくいくかですとか,養子縁組を本当に申し立てるのかとかいうことをやるか,やらないか決めていけるのだと思うのです。養親となろうとする者が,やはりやめるかどうかということのある種決定権は最後まで持っていると言わざるを得ないと思うのです。   それで質問なのですけれども,実親が養子に出すということは同意して,試験養育を始めてというようなケースのうち,どのぐらい一度でうまくいって養子縁組申立てに至るのか,試験養育期間中に,やはりちょっとうまくいかないといったようなことになるケースの割合はどの程度なのか,そのようなことについて,少し実情を教えていただけたらと思います。 ○岩﨑委員 今までほとんど0%でした。潰れるとしたら,実習中に潰れます。引き取るまでに潰れます。それが正直なところです。要するに,一緒に関わり出して,この子を自分の子どもにするイメージがどうしても作れないところで崩れることはよくあります。また実習中になかなか懐いてもらえないけど,ともかく一旦引き取ってみたけどどうも不安で,正式な里親委託になってないので,やはり返しますということはあります。しかしそうですね,里親委託にもなり試験養育に入ってから結局は返しますという事例は,3年から5年に1件ぐらいです。引き取った当初の子どもは可愛くないのです。だから一所懸命私たちはフォローします。それに子どもが欲しい人たちですから,必死にやはり頑張られます。必死に頑張られれば,子どもは親から愛されたいわけですから,この人が確実に愛してくれる人たちだということが納得できるほど試し行動ができたら,きちんと子どもがすとんと,もう表情から体付きから全てが変わって可愛くなり,新しい親子が生まれますので,そこまで私たち,本当に必死にやります。   時々残念なのは,非常に乱暴な子どもがいて,自傷行為をしたりする場合に,里母が子どもを折檻しているのではないかというふうに児相がとって引き揚げられることがあったり,あるいは実の親が本当に最後の最後,まだ籍が残っているのやったら,この子を養子に出すのをやめますと,虐待の親なんかで無理やり引き上げられていったりということがありましたけれども,それも含めて,50年のうち,私の経験からすれば,5年に1件ぐらい,多くなったとしても3年に1件ぐらいです。   ただ,最近は実習中に潰れるケースの方が増えつつあるという気がしています。どうかすると,1年で2件ぐらいあったこともあります。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   久保野幹事,今の御発言を踏まえて何かございますか。 ○久保野幹事 結構です。 ○窪田部会長代理 よろしいですか。 ○木村幹事 すみません,12ページの4で書かれている審判の申立前にされた同意の確認手続について質問させて頂きたいと思います。私が聞き漏らしただけかもしれませんけれども,まず1点目としてお伺いしたいのは実親そのものが申立権者になるのかということです。ちょっと私はイメージが持てなくて,3の場合だと,実際に家庭裁判所の事実の調査を踏まえてということが書いてありますが,4のときの場合に家庭裁判所において申述するといったときには,実親であれば一体どういうことについて申述をし,家庭裁判所がどういうふうに関わってくるということについてお聞かせいただきたい,加えて、実際その御回答を踏まえて,家庭裁判所の方に,それが実際的に可能なのかどうかという運用の可能性についても教えていただければと思います。 ○窪田部会長代理 幾つか御質問がありましたが,まず,事務当局の方から答えていただくことがありますか。 ○倉重関係官 イメージしているシステム,制度の概要でございますけれども,申立てとしては実親が申立てをする事件をイメージしております。   具体的に,裁判所で行うこととした場合の話ですけれども,裁判所で行う手続としては,一つは調査官を使って,調査官の方に特別養子縁組制度の趣旨,その効果として一番大きい実親子関係の終了と離縁が基本的にはできないんだという辺りを説明していただいた上で,その法的効果について受け入れるということを実親に同意してもらうと。それをもって,裁判所としては,その同意があったことを確認する,そういう手続をイメージしております。又は,審判手続であれば裁判官が直接説明をして,それを確認するというようなことがあってもいいのかなというふうに考えているところでございます。 ○木村幹事 実親の方が自発的に家庭裁判所に行くというのはとてもイメージが持ちにくいので,あっせん団体の方などが裁判所に出向くよう声を掛けるということでしょうか。 ○倉重関係官 基本的に申立て自体は,あっせん団体又は児童相談所から,こういう手続を使ってくれないかと言われて申立てをすると。申立ては,裁判所に出頭してするのか,ほかの方法でするのかまでは考えておりませんが,そういうものをイメージしております。   同意についても,必ずしも出頭を要するのか,それとも,例えば調査官が適宜の場所で行うといったことが可能なのかという辺りは,今後も十分に検討していく必要があるかなと思っておりますけれども,必ずしも自分で出頭して,かつ裁判所でやらなくてはいけないというような手続をイメージしているわけではありません。 ○木村幹事 2点目ですけれども,家庭裁判所の調査官が,実際,法的効果について説明するというお話がありましたが,その場合,家庭裁判所の調査官が実質的な状況を踏まえて,何かしらカウンセリングそのものとはいかないですけれども,法的効果以外のことについて何かしら話したりするようなことは,イメージとして持っておられないということですか。 ○倉重関係官 基本的に,そういうことがあり得るかとは思いますけれども,それが要件であるというふうには今のところ考えていないところでございます。それは十分に,もしこのような方向で検討するとした場合には,十分に議論の対象になるところだとは思っておりますけれども。 ○木村幹事 その場合だと,公証人の場合とどこまで違うのかがかなり不明確なのかなという印象を持ちましたので質問させて頂きました。ありがとうございます。 ○窪田部会長代理 今の御質問の中には,事務当局の提案としてどういうふうなイメージなのかということと同時に,家庭裁判所にはそういう役割を振られたときにできるのかという御質問も含まれていたのだろうと思いますが,何か宇田川幹事,ございますでしょうか。 ○宇田川幹事 今日の今日でお話いただいたようなところで,その運用が可能なのかというところ,なかなか答えづらいところがあるかなと。今おっしゃられたカウンセリング的なところもやるのかどうかというところも,そもそも制度の立て付けとしてどういうところを本質として求められるかというところにも関わってくるかなというふうにも思いまして,今実際の特別養子縁組成立の審判手続でやっているような,事実上そういうことであれば可能であるというところはあるんでしょうけれども。ただ,何ともそこは現時点で,まだ何を本質とするかというところも固まっていない段階で,なかなかお答えすることは難しいかなと思いました。   あと1点,これまでの議論のところで少し,杉山幹事の方でも御指摘されていたような,これまでの撤回が可能な同意というのも残すということになるとすると,結局そこは,この実際の手続を撤回不能な同意の手続を求めるところでも,それはどうしても説明せざるを得ないんだろうと思いまして,そういうようなことだとすると,本当にそのような場合に,このような撤回できない同意をするということが本当に考えられるんだろうかというようなことは,すごく素朴な疑問として思いましたので,述べておきたいと思います。 ○窪田部会長代理 木村幹事からの御質問にあった部分は,あるいは先ほど村田委員から御指摘があった点とも関連するのだろうと思いますが,どうも家庭裁判所を相手方とする場合と,児童相談所を相手方とする場合で,手続のイメージが全然違うものになるのかなということがあるのだろうと思います。   そのときの同意をする旨の申述の意味というのも,どうも本当に両者において同じなのかどうなのかという点もあると思いますので,その部分については,もう少し検討していただいたらよろしいのかなと思いますし,特に木村幹事からあった,やはり実親の方から申立てをして手続が始まるというのは,ある種ちょっと考えにくいところがあるのは確かなんだろうと思いますので,その点を含めて少し御検討いただければと思います。 ○床谷委員 すいません,ちょっと確認なんですけれども,私自身は,先ほど杉山幹事がおっしゃったことについてはちょっと意表を突かれたという気がしまして,817条の6自体を改正する議論をしているものだというふうに理解をして考えてまいりました。現在の同意は撤回できるから,何らかの方式をきちんとして,一定の時期に撤回不能とするか,あるいはもう最初から撤回不能とするかという形に,同意の取り方をまるきり変更するんだと思っておりまして,それでいろいろな手続を細かく,正確な議論をしないといけないと思っていたんですが,現在の撤回できるようなものを残すというと,何か根底から私の考えは違ってくるので,そこのところ,例えば817条の6の第2項を作って,こういう方式の場合には撤回できないというような方式を事務当局は考えておられるというふうなことになるのか。私自身は,817条の6自体を変えて同意は要る,同意はこういう形でやる,こういう場合にはいついつからいついつまで撤回できる,あるいはもう撤回できなくする,そのためにはどういう人が,どういう形で,どういうことをレクチャーするかというようなことをこの条文の中に書き込む,あるいはあっせん法の中に書き込むというイメージでここにいるんですが,ちょっとそこを確認させてください。 ○窪田部会長代理 それについては,多分ほかの方も同じ疑問を抱いていると思いますので,ちょっと補足をお願いできますでしょうか。 ○山口幹事 事務当局からお答えいたしますと,事務当局として想定している制度としましては杉山幹事が御指摘のとおりでして,二元論といいますか,撤回可能な同意も残しつつ,つまり現行の制度を残しつつ,それと新たに撤回不能の同意のパターンというのを付け加えると,そういうイメージで考えておりました。   何でそういうふうに考えたかといいますと,やはり私どもとしましても,撤回不能の同意パターンのみでありますと,かえって同意が取得されにくくなるのではないかという懸念もありまして,現行でも,この親御さんの場合は大丈夫かなというケースと,この親御さんの場合はちょっと心配だなというケースがあろうかと思いまして,そういうまず大丈夫だろうというときに,あえて裁判所に出頭させて同意をしていただくですとか,児童相談所でもいいんですけれども,そこまで負担を掛けるのはどうかと思っておりまして,そういう観点から,現行のを残しつつ新たに撤回不能の制度を設けるというふうに考えている次第でございます。 ○窪田部会長代理 そこの部分は,恐らく研究会でも必ずしも二元論という形ではなかったですよね。 ○山口幹事 必ずしもそうではないと思います。 ○窪田部会長代理 恐らく研究会の段階では,同意の撤回制限の方から問題になっていって,撤回はいつまでもできるという形になると非常に不安定である。だから,やはり撤回について制限すべきではないか。しかし,制限すべきなのだとすると,それを踏まえた形で同意はしっかり取らなければいけないよという議論だったと思いますので,必ずしも,今,事務当局から御説明があった二元論で考えていたわけではないのだろうと思います。   ただ,だから一元論なのかということは,ここで自由に議論してもらったら結構なのだろうと思いますが,ただ,かなり大事なポイントだろうと思いますし,そういうふうな形で2種類の同意があった場合,同意の意味が同じなのかなというのは素朴な疑問としても出てくると思いますので,少し御意見があれば伺えたらと思います。 ○久保野幹事 ちょっと少し,今の論点にストレートに答えるというよりは,先ほど岩﨑委員に質問させていただいて,更に意見というので言わなかったところについて,今さら申し訳ありませんが,発言させていただきます。申立前にされた同意の撤回を制限するかどうかという資料の4の論点について,この手当をするかどうか自体も議論の対象だということでして,先ほど岩﨑委員から御説明いただいたような実情からしますと,なるほど,こういう場合は制限をして,その形成された愛情関係の延長で特別養子をスムーズに実現させてあげたい,させた方がよいと思うことは確かでありますし,私は,研究会までも関与をさせていただきましたなかで,そのイメージを中心に考えてきましたし,先ほど伺っていますと,試験養育開始の前に実習期間があって,脱落する方はその段階での脱落というのがむしろ現状だというふうにおっしゃって,恐らく,さらに実習期間の前の段階での何らかの協会側による判断というのもあると思われます。言いたいことは,岩﨑委員からご紹介いただいた実情は,かなりしっかりした仕組みの下で,基本的には試験養育が始まれば,ほぼ100%特別養子に行けるという体制の下でのお話でございまして,私のイメージとしましては,それは,資料の3で,審判手続の中で最初に行った同意を撤回できなくするというのを,試験養育まで少し前倒しにしたといったような形に近いものとして理解できるような気がしております。   そのように捉えるとしますと,資料の4で提示されている仕組みというのは,それよりもある種,ずっと広い射程を持つものだと思えます。(注)にありますように,白地同意の話も入ってくる可能性があり,そして2年が経過する日までというような,ここはもちろん修正の余地はあろうとは思いますけれども,枠組みとしてはかなり広いものとして入っていまして,そのような広い形で申立て前にされた同意の撤回を制限するという方策を入れることについては,直ちには賛成できないという感覚を持っています。   といいますのは,先ほどの質問のときに少し言わせていただきましたけれども,養親となろうとする者の側には,申立てをして養子にするかどうか決める余地が残されているわけでして,その余地が残されている一方で,実親側が同意の撤回を制限されるということになりますので,それがいかなる場合に認められるかということについては,かなり慎重に考えた方がいいと思っております。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○藤林委員 先ほどの同意,2通り残すというのは,何か児相の現場で言うと,実親さんに撤回できる同意と撤回できない同意,どちらにしますかって,なかなか難しいのではないかなという気がして,多分ここはどちらか一本に決めていただくのが実務上いいのかなと思うのと,ここから先は質問なんですけれども,児童相談所が同意を取ったときの,その後の仕組みというかプロセスがちょっとよく分からなくて,それを児相がずっと持っておいて,養親さんが申立てするときに何か文書を添えるのか,又は公証役場のように,児相が取った同意を家庭裁判所に何か送って,そこでオーソライズされるのか,その辺がちょっとよく分からないので,そのイメージを教えていただきたいということと,もう一つ,先ほどちょっとあった,家庭裁判所はアウトリーチをしないと私は思っていたんですけれども,する可能性もあるのかなと思っています。例えば親権辞任をしたときに,文書で送って,なかなか言ったけれども本人は来ないときに,調査官は家庭に会いに行って,それで確認するとかという,そういうこともされていらっしゃるのかどうか。親権辞任とこれって全く同じではないけれども,ある意味で,自らが身分関係を放棄していくという点では参考になるのかなと思って,その辺もちょっと教えてもらえたらと思います。 ○窪田部会長代理 それは事務当局から御説明いただけますか。 ○山口幹事 まず冒頭,藤林委員から,一元論の方がいいのではないかということですけれども,そうしますと,私どもの考え方がちょっと杞憂なんでしょうか,すなわち撤回不能の同意の手続のみにしたときに,ハードルが上がりすぎないのかなという懸念がありましたので,その辺り,また後で教えていただければと思います。   それから二つ目,では,どういう手続のイメージなのかということですけれども,これは正に先ほど窪田委員からも御指摘ありましたように,児童相談所に申立てをする場合と家庭裁判所に申立てをする場合とで,少しイメージは変わるのかもしれません。また,今日の御議論を受けて,お聞きしながら考えたところもあるんですが,やはりあらかじめの同意を得ておいて,それをいざ特別養子縁組の成立審判手続が始まった場合には裁判所に提供するということになろうかと思います。   元々イメージしておりましたのは,やはり実親さんが自発的に裁判所に出掛けていって,それで同意をするということよりは,恐らく児童相談所なりあっせん機関なりがいろいろサポートしながらされていくのかなと思っておりました。それからその後,第4のところとも関わるのですが,もし申立権者の中に児童相談所長も入るとしますと,そういうサポートをして書類を得ておいて,それで手続を申し立てるときにはその書類を利用するということが主たるイメージでございました。   事務当局,法務省の方からお答えできるのは以上かなと思っております。 ○窪田部会長代理 いずれにしても,現在の特別養子の成立要件は家庭裁判所の判断で,なおかつ例外事由に該当しない限り同意が必要となっていますので,その同意の書面は家庭裁判所には提出されるという形にはなるわけですよね。   その他の点を含めどうでしょうか。 ○藤林委員 先ほどの逆質問で,では,同意を一本にしたときに,かえって同意が得られなくなるのかというのは,ちょっとこれは即座に返答できないので,また1か月考えていきたいと思います。 ○宇田川幹事 親権辞任の場合に,家庭裁判所調査官がアウトリーチというのは,訪問して面談をして調査をするという,そういうことをおっしゃられているんでしょうかね。   事案にもよるとは思いますけれども,家裁調査官が,なかなか当事者の方に来ていただけない場合に,そちらに訪問して調査をするということはありますけれども,ただ,先ほどのカウンセリング的なというところとはちょっと違うというところで,飽くまでも訪問して面談をして調査をするということは事案によってしているということで,お答えさせていただきたいと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   ただいま出ていた問題として,同意について2通りのパターンで考えるのか,もうある程度厳格な要件にしたもので一本化するのかということに関しては,恐らく第2で扱った,同意が必要な場面はどのぐらい広いのかという議論とも多分関連しているかと思います。非常に限定されていて,同意不要の場合以外の場合ということであれば,その非常に限定された場合について,ある程度厳格な同意を求めるという仕組みも考えられると思いますし,いや,もっと緩いので,取りあえず今までどおりのものも残していこうというふうに考えるのかというのは,恐らく第3だけではなくて第2の論点とも関係して議論すべき点だと思いますので,その点も少し事務当局で御検討いただければと思います。   平川委員,挙手をされていたかと思いますが。 ○平川委員 すいません,今,部会長代理が言われたとおりですけれども,そもそも同意を取るとき以外は相当,実際の運用としてはそれなりの説得をして,撤回はできるけれども,それは相当厳しいであるとか,いろいろほかにも迷惑掛けてしまう可能性があり,厳しいよねというふうな話を実務的にしているのでしょうか。もし,実務的に同意を取るということの重みをそれなりに実親の方が受け止めていれば,途中で撤回ということはかなり少なくなるという面があるのかなと思っています。同意が必要である,その同意を取るためのいろいろな運用ということを,まずどういう実態にあるのかというのがポイントになるのかなと思っています。   あともう一つ,同意が取れませんでしたと。それで,特別養子縁組は諦めましたという場合,その場合,実態として里親や普通養子縁組に移るのか,それとも,できれば特別養子縁組が無理だったら,その子どもの養育も諦めちゃうという方向に行ってしまうのか,その辺,少し状況が分かれば教えていただければと思います。 ○窪田部会長代理 そうですね。特に同意が得られなかった場合に,現在どうなっているのかということについて,岩﨑委員,藤林委員からお話を伺えればと思うのですが。 ○岩﨑委員 基本的には同意が取れなければ,養子縁組を諦めるしかありません。協会の場合は児相が既に養子縁組前提で,この子どもの養親を探してくださいという段階で来ますが,そこで同意が取れていないケースもあります。ただ,同意を取るということについては,児童相談所はやはり一生懸命頑張ってやってくださっています。   我々が受けた段階から揺れているケースは,現実的には里親が見付かって,この人で進めますよという前に,もう一度確認を取るのが原則なんですけれども,なかなか私たちが困るのは,ほとんどのケースが,若いお母さんの場合で,行方が定かでないので,かつて養子に出すと言ったので,そして面会もないし,おじいちゃん,おばあちゃんに聞いても,あれは当てにはできないというのでという事例です。そこで,では,思い切って探してみよう。そのときには裁判所が判断をしてくれる,817条の6ないし7を適用してくださる。それは,かなりの実感として,手ごたえとして持っておりますので,私たちはそういうケースでも申し立てています。   ですから,そういうことも含めてなんですけれども,ただ,先ほども言いましたように,時折,突然母が出てきて返せだとか,子どもに会わせろだとかというケースが全くないわけではないので,できるだけ同意をきちんと取った上でやりたいというのは,ずっと私たち現場にいる者の強い動機ですので,その一つが二段階手続でもあったのです。児童相談所が同意を取ったものを児童相談所が裁判所に上げると,そして確認を裁判所に取ってもらって,そこから我々も動き出すというような形が,私は一番安心して仕事ができるような気はするんですけれども,いかがなものでしょう。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   藤林委員,御発言ありますか。 ○藤林委員 今の平川委員の質問なんですけれども,同意しませんと言われたケースを,では,児童相談所はどうしているのかというと,同意しませんと言いながら行方不明になってしまうケースも結構ありまして,その場合に,もう行方不明だからただし書でいけるのではないかと思いながら,いつ何時出てくるか分からない,同意しないと言ったではないですかといったときに,本当に認められるかどうかというのが,なかなか自信が持てない。なので,同意しないといった意思表示をしたまま行方不明になったケースを,特別養子縁組前提の養子縁組里親さんに委託するというのは難しいですね。過去に1回したことがありますけれども,本当にみんなはらはらしながら行方を見守ってきたというふうなケースがあります。   もう一つ,同意をしないと言ったまま,その同意しないということを言い続けているけれども,全然面会交流に訪れない,家庭復帰の取組に応じないという,これは悪意の遺棄ではないかというふうにも言いたいけれども,それは本当に認められるかどうか分からなくて,同意しないという意思表示をしながら連絡を取り続けているケースを,我々は特別養子縁組里親さんに委託して,養親さんが申し立てるというケースで,我々はいまだ経験していないです。でも,その問題を解決するための方策が,多分第4の,この後話し合うことではないかなと思うので,第3の撤回制限付き同意と,この後の第4とがミックスしていくと,多分,本当に必要な子どもに特別養子縁組が選択していけるのかなとは思っています。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   第4にいきたいなと思ったところで上手に振っていただいて,もう本当にありがとうございます。   ということで,第3に関連することがありましたらまた後ほど言及していただいても結構ですが,第4について,事務当局から御説明をお願いできますでしょうか。 ○吉野関係官 それでは,部会資料2の13ページ,「第4 特別養子縁組の成立について実親の同意を要しないことをあらかじめ確定する方策」について御説明いたします。   まず,13ページの第4の1におきまして,見直しの必要性について記載をしております。   ポイントといたしましては,まず,養親候補者が試験養育を始める前に,実親の同意を要しないことを確定させる方策を設けられないかという点と,次に,手続の申立権者に児童相談所長を加えられないかという点がございます。   具体的な方策といたしましては,まず,おめくりいただきまして,資料14ページの2の二段階手続論が考えられます。   これは,特別養子縁組成立の審判手続を二分し,1段階目におきまして,ある子につきまして,一般的に特別養子縁組が適当であることを確認し,又は実親子関係を終了させ,第2段階目で養親子関係を創設するというものでございます。   次に,同じく資料15ページの3に「親権喪失の審判を受けた者の同意を要しないこととする案」が考えられます。   この方策の難点といたしましては,同じページの(2)に記載をしておりますが,乗り越えられる難点ではないかという気もいたしておりまして,皆様の御意見を頂ければと存じます。   次に,以上の方策の難点を回避する案といたしまして,またおめくりいただきまして資料16ページの4に「具体的な規律案」を記載しております。   こちらも飽くまでたたき台として作成したものにすぎませんので,そもそもあらかじめ同意を要しないことを確定する方策を採用する必要はないという御意見も含めまして,皆様から忌憚のない御意見を頂ければと存じます。   なお,資料17ページの5には,特別養子縁組成立審判の手続内で,同意不要要件及び要保護性要件について中間審判をするという方策についても記載をしております。これは前回の部会でも御意見があったものでございます。この点も含めまして,以上,御説明いたしました実親の同意を要しないことをあらかじめ確定する方策について御審議を頂きたいと思います。   最後に,一番最後のページ,資料の18ページの第5におきまして,前回の部会において御提出いただいた重要な視点について,再確認をする意味で記載をしております。資料の第5についての事務当局の説明は以上でございます。 ○窪田部会長代理 どうもありがとうございました。   それでは,残りのテーマということで,第5は今回取り上げませんが,第4について,実親の同意を要しないことをあらかじめ確定する方策ということで,ただいま御説明を頂いた部分について御質問,あるいは御意見等ございますでしょうか。 ○杉山幹事 質問ですけれども,二段階手続の具体的なイメージが16ページ目にあるのですが,基本的にこれは別の裁判所で進めることを考えているという理解で合っているでしょうか。管轄も含めて,どのようにお考えなのかというのを聞かせていただけるとありがたいです。あと,第1段階の審判の主文といいますか,それが具体的にどんなものになるのかというのも,もしイメージがあれば教えていただけると有り難いです。 ○窪田部会長代理 ただいま御質問のありました2点について,これは事務当局からお答えを頂けますでしょうか。 ○倉重関係官 まず,同じ裁判所でなければならないかという意味が,まずは管轄裁判所が同じでないかどうかという点につきましては,今のところ,まだちょっと未検討と申しますか,まだ粗々なものを示しているだけということでございます。当然,構成する裁判官が同じという意味での裁判所が同一かという点についても,まだ未検討というところでございます。   主文につきましても,大変恐縮ではございますけれども,まだ未検討でございます。申し訳ございません。 ○山口幹事 ちょっと補充させていただきますと,ここは私どもの案というよりは,これまでの議論の紹介ということでございます。 ○窪田部会長代理 この点に関して,手続の問題として何かございますでしょうか。 ○高田委員 高田ですが,今の点に関連して,主文がどうなるかは別といたしまして,実質的には817条の6のただし書の要件の充足を確定するだけの審判という理解でよろしいわけですね。 ○山口幹事 はい。私どもとしても,そのように理解しております。 ○窪田部会長代理 よろしいですか。 ○平川委員 ありがとうございます。   14ページの二段階手続論のところで,1段階目の「一般的に特別養子縁組が適当であることを確認」とありますが,この確認のイメージがよく分かりません。私のイメージでは,特別養子縁組というのは,その置かれている子どもの状況からみて,マッチングがセットで成立するものなのかと思っていたんですけれども,1段階,2段階というふうなことで,この「特別養子縁組の利用促進の在り方」の参考資料の中で,手続を二段階に分けて議論するとなっていますけれども,適当であることを確認するという,その確認の中身というか,確認のイメージというか,要件というか,どういうふうなことが想定されていたのかというのをち教えていただければと思います。 ○山口幹事 これも事務当局案というわけではないんですけれども,私どもの理解しているところでは,先ほど岩﨑委員からもあったかと思うんですが,同意が確認できれば,次の段階ではなるべく実親さんの関与を手続から排除していけないかと,そういうニーズから編み出されたものだというふうに理解しておりまして,正に平川委員御指摘のとおり,私どもとしても,ここの確認というのは法律効果としてどういうものなのだろうかという辺りは疑問に思っているんですけれども,少し抽象的に申しますと,まず,1段階目では実親と子どもの関係,2段階目では子どもと養親の関係と,そういう段取りで考えていこうというお考えだろうと理解しております。 ○窪田部会長代理 よろしいでしょうか。   恐らく第1段階の方でのみ,実親の同意というのが問題となるというふうにすることによって,第2段階では,もう実親の同意の問題は扱わないというのが,この基本的な考え方だったのだろうというふうに理解しております。 ○木村幹事 すみません,今の御説明との関係で,14ページの(3)の御説明ですと,817条の7の所定の要保護要件「及び」817条の6のただし書の所定の同意不要要件と書いてありますが,この点について,今の御説明との関連をもう一度整理していただければと思います。 ○山口幹事 正にそのとおりでして,この二段階手続論でおっしゃるところの同意を確認しというのは,要保護性要件は関係ないものだというふうに整理しているんだろうと,私どもとしては理解しております。 ○倉重関係官 今の点ですと,まず,厚生労働省の検討会で書かれたものにつきましては,1段階目で正しく817条の6のただし書及び7の点について判断するような仕組みを考えていたんだと思われます。もっとも,事務当局として考えましたのは,恐らく要保護性要件,必要性要件というふうに817条の7を分解したときに,要保護性要件の存在を要する時期が特別養子縁組成立時期ではなくなるということで,民法の実体法上の位置付けをものすごく変えなくちゃいけないというふうに受け止めたところでございます。   したがいまして,そこの特別養子縁組の実体的な成立要件自体は動かさないで手当をできるという意味では,この4はそういうふうにはなっているんですが,その反面,この前段階で審理している817条の6のただし書のみということで,御指摘のとおり,「及び」という要請には満たしていないというのはそのとおりかと思います。   なお,念のため申し上げますと,ここは817条の6のただし書がこの時点で充足されていても,現行法上は,だからといって,成立時に同意がなくてもいいということと論理必然の関係にはありませんので,817条の6のただし書の充足が縁組成立より前の時点にあっても同意が不要になるというふうなことをするという意味で,実体法上の理解を変えることを提案しているというものになります。 ○窪田部会長代理 今の御説明でよろしいでしょうか。 ○木村幹事 すみません,もう1点だけよろしいでしょうか。   親権喪失の審判との関係についてですが,研究会のときでも議論が分かれていたと思いますし,比較法を見てもかなりばらつきがあるように思っております。私の一応のドイツ法の理解ですと,実親の権利というものを実際奪うということに対して,かなりドイツ法は慎重でして,基本法上の親の権利に関する観点から,かなり厳格な手続が設けられており、同意権喪失は親権制限・喪失とは異なるという理解が採られていると思います。しかし、こうした理解については、必ずしも比較法を見ると同じような形で法整備もなされていませんし,かなり幅広く意見のばらつきがあるというふうにも思われますので,この点について,是非,先生方の御意見をお聞かせいただければと思います。   こうした質問をさせて頂くのにはもう一つ理由がございまして、私が欠席させていただいた第一回会議の御意見の中で,同意権というものについて権利という発想を持たなくてもいいのではないかという御意見もあったと思いますので,そういった御意見を踏まえて,何かしらお話をお聞かせいただければと思います。 ○窪田部会長代理 まず,第1の部分で,親権喪失制度との関連性については多くの方の意見を伺いたいという事務当局の木村幹事からの御発言もございましたので,是非,自由にいろいろな感触を聞かせていただきたいなと思います。   また,同意権というふうに,まだ構成するのかどうなのかということについては,これについては高田委員から何か御発言を頂くということでよろしいでしょうか。私自身もちょっと発言をしたという記憶はありますが。 ○高田委員 特にございませんが,前回の発言は「同意権」という言葉遣いがされているということに,手続法の一研究者としては若干の違和感を覚えたということでして,具体的には,同意を拒絶する権利ですか,子の福祉のためにか,それ以外の理由のためにか分かりませんけれども,同意を拒絶する権利が残されているというのが現行法の理解ではないかというのが前回申し上げたかったことです。   ただ,それに対して,今日も出てまいりましたように,同意不要な場合を広げるべきであるという御意見が出ているように思いますので,その辺り,正に木村幹事のおっしゃるとおり,私も,実体権として同意を拒絶し,特別養子を成立させないという権利ないし権能というものが実親にあるのか,どの程度あるのかということについて,是非御意見を伺いたいと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○床谷委員 私は,先ほど少し申し上げましたけれども,この親の同意というのは権利ではないと思っておりまして,立法時の解説書を見ても,いわゆる普通養子の場合の配偶者の同意権とか監護者の同意権というのは,同意権という形で説明しておりますし,同意がなければ取消しの対象になると,縁組の取消し原因になるという形で効果もはっきり書いてあるわけですけれども,特別養子の場合は,同意がなければならないけれども,なくても成立させられるということなので,基本的に同意あるなしも含めて,子どもの特別養子をする必要があるかないか,特に必要かあるかないかを裁判所が判断する材料の一つだというふうに理解しております。ですから,その当時の解説書でも,親の特別養子の方の同意については「同意」という書き方で説明してあって,「同意権」というふうに「権」を付けて表示している記述は見たことはあるんですけれども,それほど多くはないというのが私の理解です。   それから,親権喪失との関係については,厚労省の検討会でも,私も発言いたしましたけれども,親権の喪失の原因が前回の親権法の改正のときに変わり,特別養子の同意不要要件の方に,表現がかなり一緒になってきたというところもあるので,それ以前は親権の場合は取消し可能で回復できるけれども,特別養子の場合は離縁はあっても,ほとんどないからという大きな差があるので,実務上違うという説明でしたけれども,今後は親権停止の方が多様化されており,喪失が更に厳格になるとすれば,その喪失の手続を同意不要の要件と接合させて,同意不要のただし書の書き方の中に,多分,項目を分けて1号,2号と書いていくとすれば,親権喪失の審判が既に出ているというのを一つ挙げるというのはあり得るのかなと思っています。 ○窪田部会長代理 どうもありがとうございました。   ほか,どうでしょう。広く御意見を伺いたいという木村幹事からの御希望もありましたが。 ○水野委員 はっきりしたお返事がしにくい理由の一つは,普通養子という制度が生きていることでございます。普通養子と特別養子とのすみ分けといいますか,未成年の普通養子という制度があって,それをどのような形で今後維持し,それと違うものとして特別養子をどのように考えていくのか。そのことについてのイメージが,今までうかがっている中でもいろいろとおありのようで,はっきりしないので,なかなか特別養子の同意権のイメージがつかないという問題があるように思います。 ○窪田部会長代理 今の点は大変重要な御指摘だと思いますし,基本的には特別養子における同意をどういうふうに位置付けるのかという問題に帰着するのかなという気もします。その点も含めて,何か御意見があればお聞かせいただければと思います。 ○岩﨑委員 ちょっと18ページのところの,これも毎回委員会で私も言われてきたんですけれども,特別養子が何か普通養子よりも一段高いものであるという見方は不適切ではないかと。一番高いというふうにとっているのではなくて,子どもにとって家庭的な安心感を得る程度が,一番が特別養子で,そしてその次が普通養子で,里親委託で,あるいは最後は施設養護で18歳までいくという,そういう順番だけのことであって,高いとか低いとかではなくて,特別養子になれば,ごく当たり前に生まれた親と同じ意味での家族の一員として保障されて,そこが安全で安心な場所であるということになるということが,その子どもにとって一番大事なことだと思うので,特別養子ができるだけ採れる子どもについては,特別養子で私たちは縁組をしたい。どうしても駄目な場合は,私たちも当然普通養子を使ってきました。   単身の女性がどうしてもこの子を養子にしたい,ほかの人で私たちも見付けられる可能性がもう極めて低いのに,この女性がこの子を養子にしたいというのであれば,特別養子で見付からない期間を長くするより,思い切って普通養子でこの女性にもらってもらおうと。もちろん父としての役割を果たしてくれる人がいるというような状況を整備した上でのことでしたけれども,そういうこともしたことがあって,子どもにとって今何を一番優先するかの中の順序であって,高いとか低いとかという意味で使っているわけではないと,私は思っています。   それで,どうしても子どもにとって,一人一人に家庭を用意してやりたい,安心できる家庭を用意をしてやりたい。だけれども,実の親は子どもを施設に預けっ放しにしたばかりではなく,面会も全くなく,そして引き取りのめども全然付けようとせず…… ○窪田部会長代理 すいません,岩﨑委員,今,同意要件の議論でございますので,確かに水野委員から普通養子の関係は出ましたけれども,できたら同意要件の点に絞って御発言を頂ければと思います。 ○岩﨑委員 すいません。だから,特別養子で同意が取れるケースは,ある意味でよほどのことがない限り翻らないであろうと思えるケースは私たちも動かしていくんですけれども,でも,それもできれば児童相談所長が改めてそうであることを認めて,審査をしてもらっておくことの安心感はあると思います。   特別養子の同意というのは,やはりそれだけに重いんですけれども,特別養子を子どもに逆に保障するには,行方不明の親の場合だったら普通養子さえ同意が取れないわけで,逆に言えば,特別養子だから審判してもらえる可能性があって,そして私たちにすると,817条の6を期待して申し立てているという現状の中で,そこをもう少し制度的に認められる形を採っていただければといいと思っていることです。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   実親の同意を要しないことをあらかじめ確定する方策ということで,論点については一応今は限定させていただければと思います。   床谷委員,御発言ありますでしょうか。 ○床谷委員 私はちょっと確認したいということで発言させていただきます。   先ほど木村幹事がおっしゃいました点のところに関連してですが,14ページのところに二段階論の趣旨について説明があり,厚労省の段階と現在の段階とは違うという事務当局の説明もありましたけれども,この二段階論ということについて,どこまでの範囲で私たちは考えたらいいのかということなのですが,第4の表題は「実親の同意を要しないことをあらかじめ確定する方策」というもので,その中に二段階論が入っているのですが,こういう場合だけに二段階論を考えているのか,同意を要しないということではなくて,同意がある場合も含めて,あるいは連れ子を含む親族養子とか転換養子のようなものも含めて,特別養子縁組の成立手続全てを二段階にするというふうに考えておられるのか,そこがここの1段階目と2段階目の説明のところが十分明確になっていないということで,ちょっと混乱してしまっています。その特別養子縁組にふさわしい子どもということで,同意の点と要保護性要件とどこまでを確定して,この子は適切な,適当なふさわしい子という,そういうふうなところを決定するというのは,先ほど幡野幹事から説明があったフランスの国家被後見子とか,遺棄児ですか,そういう子どものように,子どもをあらかじめこういうふうに決めておくという形につながるので,同意の問題とはちょっと違う場面ではないかというふうに,同意不要うんぬんということとは違うような気がするので,少し整理していただいて,二段階論をここに持ち込むことにはちょっと違和感があります。 ○窪田部会長代理 今の点については,二段階手続論それ自体を今提案しているというわけではないと思いますので答えにくい部分はあるかと思いますが,何か御発言はありますか。 ○倉重関係官 御指摘のとおり二段階論というのは,先ほど木村幹事からの御質問にもお答えしたとおり,特別養子縁組の実体要件自体を変えるような御提案であるということは十分に認識しているところでございます。   しかしながら,二段階手続論が出てきたニーズの中で一番大きかったものが,あらかじめこの同意を失わせてしまうことを確定するのだというような点にあったものというふうに私たちは理解しまして,それをこの項の中に整理させていただいたという次第でございます。   この二段階手続と申しますか,我々が提案しているものも含めてなんですけれども,現状でやはりうまくいっている特別養子縁組というのもあるというのが我々の認識でございまして,そういったものを含めて全て手続を変えることが妥当なのかということは最初に検討いたしました。その上で,先ほどから何度もオプションという言葉を使っておりますが,一つのオプションとして何か付け加えるような形で解決できないかというので考えているのが,今回,第4の我々がゴシックで提案させていただいている規律,研究会で到達した規律でございますす。   したがいまして,二段階手続論と直線上にあるものではないということは認識はしておりますけれども,あるニーズに対する答え,あるニーズに対していろいろな方策があるうちの選択肢という意味で,そのニーズに基づいてこの項は整理させていただいたと,そういうような理解で整理をさせていただいております。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   床谷委員,よろしいですか。 ○磯谷委員 二段階手続論の話なんですけれども,この間,ある民間のあっせんの団体の方から,養親の方に対して,実親の悪口を決して言わないようにお願いしているという話を伺いました。実の母のことを「産み母」と呼ぶそうですけれども,子どもにも,「産み母が産んでくれて本当によかった。生んでくれたからこそ,私たちは養子縁組ができたし,家族になれたんだ。」と説明するように促しているそうです。実親のことを決して悪く言わないでほしい,むしろ尊敬をするようにしてほしい,それこそ子どもの心の安定にもつながる,というのです。   ところが,実際に同意不要のケースの審判書を見てみると,当然ながら実親の養育がいかに問題だったかということが書かれることになるわけなんですね。つまり,今一つの手続で,養親候補者が実親の養育の問題性を主張し,実親がそれを争うという構図を強いているのです。本当は,子どもにとって養親さんと実親が争うということは決して望ましくないにもかかわらず,制度的にそういう構造にしてしまっているところが大きな問題なんだろうと思うわけです。   ですから,そういうふうに考えると,もちろん,いわゆる難しさがあることは百も承知で申し上げているわけですが,やはり実親子関係の問題についていろいろ審議をするときに,養親さんがそこに出てきて,当事者となって審議をするということは本来望ましくないし,また逆に,養親さんがこの子との間で適格であるかどうかという審理の場面において,同意不要となるような虐待等をした実親が入ってきて,自分のことを棚に上げて「養親候補者は不適格だ。」とか何とかと主張することも,やはり適当ではないんだろうと思うんですね。現在の制度や要件をどのように見直せば,この問題を解消できるのかということこそが,おそらく私たちに突き付けられている一番の課題なんだと思うんですね。   ご提案いただいている同意不要をあらかじめ確定する手続きについて,私が懸念するのは,先ほどもお話に出ましたけれども,結局,いわゆる同意の話だけではなくて,817条の7の要保護性要件についても,少なくとも文言を見る限り,やはり実親の養育上の問題が正に要件になっている。同意不要であることを先出しして確定をしたとしても,結局のところ,その後の特別養子の手続の中で,やはり実親の問題性を暴いていくことになるのであれば,本来はそれは望ましくないのだろうと思うんですね。そういう意味で,先生方には大変御迷惑をお掛けはしていますけれども,何とかいい手続,いい要件立てを検討していただけないかと思っている次第です。   その中で,先ほどちょっと水野先生もおっしゃっていただきましたけれども,この817条の7の要件そのものを少し軽くするというのは,一つ,いい解決なのかもしれないなというふうにもちょっと思いましたけれども,いずれにしても,二段階説の問題意識というのはやはりそういうところにあるというところを改めてお話をさせていただきました。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○久保野幹事 すいません,少し話題が戻りまして,親権喪失と同意不要との関係についてなんですけれども,床谷委員から先ほど,平成23年改正で文言が変わったことの意味ですとか,親権の喪失と停止の関係をどう捉えるかということとの関係があるという御指摘があったと思うのですけれども,正に喪失と停止の関係をどう考えていくかということと関連付けながら考えるべき問題だと思っております。   それで,言うまでもないですが,親権の有無と実親子関係の有無というのは全く別なことであって,直ちに同じ基準なりで導けるということにならないというのは正にそのとおりで,ドイツもそういう考え方だとは思うのですけれども,ただ,日本で喪失と停止の関係をどう考えていくかというような発想から,同意と喪失を重ねていないドイツと,親権の取上げと同意不要を重ねているフランスを簡単に比較しましたときに,私の知る限りでは,ドイツというのは親権喪失の規定を内容豊かに柔軟に改正していきまして,日本の発想でいうと養育支援に当たるような,児童福祉行政による養育支援に当たるようなものもその中に入るような形で制度を膨らませていて,そうしますと,そこでの要件というのは,親がする子どもの養育に国家が関与するということ自体を決める基準として働いているように思われ,そのような趣旨の基準と実親子関係を切断するに値するようなものを決する基準は,違うということになりそうに受け取れるのに対し,フランスの場合は,資料に挙がっている親権の取り上げとは別に,育成扶助と通常訳されることが多いと思いますが,そういう仕組みがあり,養育支援に当たるようなものはかなり幅広い範囲で,育成扶助の方で対応しているように思われ,親権の取上げというのはかなり極端な事例の方で使われるものというふうに制度が分かれているような気がいたします。   そのようなこととの関係で,日本において親権喪失と親権停止をどう捉えるかということを考えたときに,一つの選択肢としては,親権喪失に値するような状態というのは,特別養子の条件や要件がそろえば,同意不要で特別養子をして子どもの利益を図ってよいという状態と,実質的には重なるんだという整理をしていくのは,検討に値する考え方だと思います。すいません,長くなりましたが以上です。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   いかがでしょうか。 ○高田委員 周辺領域についてお伺いして恐縮なんですけれども,17ページの中間審判,前回,棚村委員から出てきた議論だと思いますが,念のための確認ということになります。①について,審判手続全体が長期化するおそれがあるということですが,それ自体はそのとおりかと思いますが,16ページの二段階に分けたときにおきましても,これらの手続全体としてはより長期化する可能性があるわけですね。取り分け現在の立て付けでは,恐らく同意不要の審判手続の審判に対しては即時抗告までできることになるのではないかと推測されますので,とことん争って,さらに本体の審判で,現在の要件が変わらなければ,先ほど,磯谷委員がおっしゃられたとおり要保護性について改めて問題とするということで,手続全体としてはかなりの大掛かりなものになるというイメージを持つわけですが,この理解でよろしいのでしょうか。 ○倉重関係官 お答えいたします。   まず,この4の具体的な規律として提案させていただいている制度も,まだかなり曖昧なもの,かついろいろ選択的な部分もあるものでございます。   特定の養親との関係でのみ同意が不要になるという審判として,この先行の審判を捉えた場合には,高田委員から御指摘のとおり全体としては長くなる。すなわち具体的な養親候補者が発見されて,その方のために先行の審判を行い,かつそれが確定して試験養育を始めるとともに,後行の成立手続を始めるというふうなものを考えると,全体としては長くなるというふうに考えております。   しかしながら,先行の審判を白地同意的なもの,そういうような効果の審判として捉えました場合には,例えばこの白地同意型の審判を採りつつ養親候補者を探すと。その養親候補者が見付かったときには,この先行の審判が確定していて,もう同意は要らないという状況ですぐさま試験養育を開始してもらい,後行の審判をしていただくことができる。こういう意味で,時間的にはかなり短縮できるのではないかというふうに考えております。   したがいまして,先行の審判が特定の養親との関係でのみ意味を持つものだというふうに仕組んだ場合には,正しく今高田委員の御指摘のとおり,時間的な意味では余り意味のない制度になってしまうという可能性はあるかなというのは自覚しているところでございます。 ○高田委員 意味のないとは私自身も申し上げませんし,おっしゃるとおりの差はあると思いますが,中間審判よりは,それでもという。 ○倉重関係官 中間審判型の場合は養親がやはり申立人ということで,先ほどの例では養親候補者が具体的に決まった後で始まるという意味で長くなってしまうという弱点があるのかなと,我々としては考えた次第でございます。 ○高田委員 分かりました。いずれにしましても,中間審判は今回のニーズには十分にこたえられないということは自覚しておりますが,なお中間審判の考え方も御検討いただければと存じます。 ○磯谷委員 個別の制度というわけではありませんが,長くなるということについての評価なんですけれども,一般に長くなるということがイコール悪いことと思われているかと思うんですが,実際にその手続をなさった方の話で,これは同意のあるケースですけれども,結局,長くて一番嫌だったのは,やはりいつ同意が撤回されるか分からないという,そこが一番不安だったというふうなことなんですね。単純に何か長いことイコール嫌なことということではないというふうなお話でした。   そういうことで,その辺りも考慮して,制度について議論していただければと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。 ○水野委員 先ほど磯谷委員のおっしゃったように,養子縁組成立手続きの中で,実親との切断手続を考えるということ自体が,非常によくないと思います。子と実親との関係を切るのと,子と養親をつなぐのとを同じ手続の中ですることは,子どもにとってよくないというのは,本当におっしゃるとおりだと思います。   本来ならば,実親を支援し,そしてあるところでこれはもう駄目だということで,実親の親権を奪い,それから養子縁組手続が始まるのが在るべき姿なのだろうと思います。そしてそこから先をどう組むかということは,ドイツやフランスのように,それぞれ喪失の中に何を入れ込むかでまた違ってくるのだと思います。日本法を考えるときに,事務当局が養子縁組手続きの中でしか考えられないという発想になっておられるのは,実際の親権喪失や停止がすごく例外的なものとしてしか機能していないことがあるように思います。もし親権喪失や停止が,育児支援とその限界という形できれいに動いているのであれば,それほど問題にならなかったのでしょうけれども,残念ながらそれらが動いていないのが日本の実情です。何しろ停止まで入れても全国で年間やっと二桁ぐらいですが,欧米諸国の水準だと親権制限判決は年間数十万のオーダーでしょう。この日本の実態を前提にしたときには,子どもを現に預かっている人に養親となって育ててもらいたいという段階で,初めてこの実親との断絶問題が動き出すことになるのが,構造的にやむをえないことなのでしょう。   ですから,私も本来は,本当に磯谷先生が言われるとおりだと思うのですけれども,それを酌めない現実があるのだとすると,養子縁組が具体化したときに,初めて実親との断絶が動き出すという手続きはしようがないかもしれないと思います。ただ,それでも,やはり養子縁組手続きが始まったときに,その手続の中でいったん切って,あらかじめできれば児童相談所などが相手方になって実親を相手にする切断手続だけを動かすことにして,そしてそこから先,養親との親子関係を作る手続を動かすということは,何とかできそうに思います。それを同意の扱いという現在の枠組みでやっていると,たとえば同意を不要とする要件があるとして進めていた養子縁組手続きに,突然現れた実親が,同意をめぐって参入するようなおかしなことになってしまいます。もう少し全体をお考えいただいて,養子縁組を契機とすることで構わないのですけれども,その手続の中をきちんと分離する案をお考えいただけないでしょうか。 ○窪田部会長代理 ちょっと私の方から,磯谷委員と,あるいは水野委員なのかもしれませんが,恐らく検討を進めていく上で必要な部分ではないかなと思うのですけれども,先ほど磯谷委員からも,養親と実親が当事者になって争うような紛争は避けるべきだ,それはもうそのとおりなのだろうと思います。ただ,その上で,そうだとすると,817条の7の要件というので,こういう書き方ではなくて,子の福祉のためといったように書き換えられないかということもあったのですが,ただ,ちょっと気になりますのは,恐らく現行の特別養子の仕組みというのは,やはり実親子関係を切るということを前提とした上で,実親子関係でどういうことがあったのかということが,多分,特別養子の成立の要件として挙げられているという理解もできるのかなと思っておりました。   もし,それを子の福祉だけにして,それについては実父母の同意があればいいという形になりますと,同意によって実親子関係が切れるという場面を認めるということが出てきて,それは従来の特別養子の考え方,それが絶対的なものだとは思いませんけれども,それと少し基本的な考え方が変わってくるのかなという気もするのですが,その辺りについてはどうでしょう。私の理解自体が間違っているのかもしれないのですが。 ○磯谷委員 その辺りは本当に,今回のペーパーを拝見して私も思ったところで,それほど深く考えられているわけでないのです。今,窪田先生がおっしゃったところは,すごく問題なのかどうかというところもちょっと何とも言い難いところなんですけれども,すいません,繰り返しになるようですけれども,アイデアは一つだけではなくて,要は養親候補者と実親がすごく相対立して,ある意味,非難し合うような構図を避けるための何か方策が必要だと思って,その一つの端緒としてあり得るのではないかなというふうに今日感じたという,大変,すいません,期待にこたえられないような答えですけれども,そういうふうなところでございます。 ○窪田部会長代理 とんでもございません。ありがとうございます。   いかがでしょう,大体よろしいですか。   ほか,御意見は特にございませんでしょうか。 ○浜田幹事 すいません,第4に関することで御発言ないようですので,ちょっとだけ戻らせていただいてよろしいでしょうか。   第3の最後のところで,平川委員の御質問に対して藤林委員からお答えになったので,藤林委員にちょっとお聞きしたいんですけれども,同意が取れずに特別養子縁組が無理だなとなったときに,次善の策として普通養子縁組とか里親に行くのか,それとも,もうそこでの家庭での養育は諦めてしまうのかという平川委員の御質問に対して,結論的には,特養前提の里親さんにそのまま委託を継続することは難しいというふうな御発言だったと思うんですけれども,ということは,要するに,そこで特別養子縁組できるといいなと思っていたお子さんというのは施設に帰る,又はせいぜい里親さんがあり得るということでしょうか。   何でこの辺りをお聞きしたいかというと,要するに,チャンスというのは現実的には1回しかないもの,特定のその人とのつながりが確定できなかったら,もうその子には,事実上ですよ,ほかの特別養子縁組というチャンスは,少なくとも実務上ないというふうに考えられるのかどうなのかというところで,ちょっと現状をお聞きしたいんですけれども。 ○藤林委員 ちょっと質問の趣旨が今一歩よく理解できていないので,実親の同意が得られなくて,それは,まだ具体的にこの養子縁組里親さんというふうに決まっていない段階で実親さんの同意が得られない場合に,現在の法制度では,養子縁組里親さんに,あなたにはこういう負担があって,審判が認められるかどうか分からないけれども,それでも委託されますかというと,大体断られるんですよね。ですから,その段階で養子縁組里親さんに委託するということは,まずあり得ないんです。   そうすると,やはり養育里親さんに委託するわけですね。養育里親さんの中でも,将来,15歳になったときに普通養子を考えるというふうな重複登録していらっしゃる方もあって,そんな方に委託していくというのが実務なんですけれども,15年間,それこそものすごい長期になってしまうわけなので,そこをもっと,こういう第4の考え方で確実に養子縁組里親さんに委託できて,養子縁組里親さんが負担がなくて,磯谷先生みたいに,養親さんと実親さんが闘わないような構造になればいいのかなと思っています。答えになったかどうか,分からないのですけれども。 ○浜田幹事 質問がはっきりしなくて申し訳ありません。   聞き違えだったらあれなんですけれども,原則としては,そういうときにはもう養子縁組里親さんに委託をしないのだけれども,たまにだったか,例外的にだったかやったケースがあってというお話もあったかなと思ったんですけれども。 ○藤林委員 そうですね。例外的にしたのは,同意しませんと言ったまま行方不明になってしまったというケースでチャレンジしたケースはありますけれども,これは例外的なものですね。やはり非常に負担が大きいです。 ○浜田幹事 ありがとうございます。   お聞きしたかったのは,チャンスが1回とか,現実的には少なければ少ないほど,特別養子の枠で拾わなければいけないというふうなニーズが高まるんだろうなというふうに考えたもので,実務的なところをお聞きしたかったという趣旨です。ありがとうございました。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○磯谷委員 全体でいいですか。 ○窪田部会長代理 はい,結構です。 ○磯谷委員 1点は,今日の一番最初の年齢要件のところですけれども,前回,是非事務当局に,12歳であれば,どういう根拠があるのかですね。それを発達心理学,その他の科学的な知見から何かサポートできるものがないかということをお尋ねしまして,そういった形で何か調査なり専門家の方にお尋ねいただくようなことが考えられないかというのが1点です。   もう1点は,同意について,客観的には本当に,例えば子どもと全く没交渉の親が,それでも同意をしない。同意をしない合理的な理由を聞いても何ら明らかにならなくて,ただ嫌がらせのように同意をしない。こういう場合に,民法で言えば私権の濫用として,そういった同意の不行使というのは許さないというような枠組みというのがあり得るのかどうか。何か我妻先生の本とかを開いてみると,そういった権利の不行使が濫用に当たるということもあり得るというようなお話も出ていますけれども,その辺りが一体どう考えられるのか,その辺りをまたちょっと,今日でなくて結構ですのでお調べいただければと思います。 ○窪田部会長代理 ちょっと最初の点も含めて,事務当局の方で検討させてもらうということでよろしいですか。   それでしたら,心理学者等の専門家の知見を得られるかどうか,あるいは2番目の没交渉の親に関して権利濫用という枠組みが考えられるかどうかについては,検討課題という形で預からせていただくということにさせていただきたいと思います。 ○平川委員 戻って申し訳ないんですけれども,年齢要件で,現行,原則6歳で,例外として8歳未満というのがあるかと思いますけれども,年齢要件を考える際,それぞれ6歳を上げるのか,それとも8歳を上げて,どういう上げ方をする,それぞれ上げるとすれば,それぞれの上げ方があると思いますので,それをちょっと今後の課題というか,テーマとして考えてはどうでしょうか。 ○窪田部会長代理 恐らくその部分は4ページで示されていて,第1案,第2案,第3案というのが出ているのが,第1案は12歳未満まで上限を上げる,第2案は12歳とした上で15歳まで上げると,第3案は15歳まで上げるというものです。今日,ただ,15歳以上という話も出ていましたので,そのときには,例えば15歳だとした上で更に上げるのか,あるいは12歳だとして更に上げるのか,あるいは最初から18歳までにするのか等々のオプションはあるという段階で,恐らく次の段階でもう少しそれを詰めていただかなければいけないということだろうと思います。 ○水野委員 今日の御発言のうちには,もっと低い年齢で抑えるべきだという御意見もあったように思いました。 ○窪田部会長代理 分かりました。   今のは単に組合せの話ということですので,低い年齢でもっと慎重に,上げるのだったら積極的な理由がない限りは上げないという御意見もありましたので,それを踏まえて検討させていただきたいと思います。   本来は,年齢要件のところをもう少し具体的内容まで詰められればよかったんですが,非常に段取りが悪い形で司会をしてしまいまして,本当にすいませんでした。   何かちょうど時間になってしまいましたので,一応,本日の審議については以上ということにさせていただきたいと思います。活発な御議論を頂いて,本当にありがとうございました。   それでは,次回以降の予定について事務当局から御説明を頂けますか。 ○山口幹事 それでは,次回ですけれども,9月4日火曜日の,時間は今日と同じで午後1時30から午後5時30分までの予定というふうになります。場所ですけれども,今日とまた異なりまして,この建物の隣の建物の17階というところで,東京高等検察庁の第2会議室というところで開催させていただきたいと思います。 ○窪田部会長代理 どうもありがとうございました。   それではお疲れさまです。 -了-