法制審議会 特別養子制度部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  平成30年9月25日(火)   自 午後 1時31分                         至 午後 5時31分 第2 場 所  法務省赤れんが棟第6教室 第3 議 題  中間試案の取りまとめに向けた検討 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○窪田部会長代理 それでは,予定した時刻になりましたので,法制審議会特別養子制度部会の第4回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   本日は大村部会長が所用により御欠席でございますので,部会長代理の私が司会進行をさせて頂きます。   それでは,議事に先立ちまして,前回会議以降,委員に人事異動がございましたのでご紹介させて頂きます。東京家庭裁判所の前所長代行の青木晋委員が御退任され,新たに所長代行になられた水野有子委員が御就任されました。また,最高裁事務総局家庭局長の村田斉志委員が御退任され,手嶋あさみ委員が御就任されました。それでは,水野委員に御挨拶をお願いいたします。 ○水野(有)委員 水野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○窪田部会長代理 それでは,手嶋委員,自己紹介をお願いいただけますでしょうか。 ○手嶋委員 9月10日付けで前任の村田の後任といたしまして最高裁家庭局長になりました,手嶋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○窪田部会長代理 よろしくお願いいたします。   続きまして,配布資料についての御説明を事務当局にお願いいたします。 ○倉重関係官 それでは,配布資料の確認を致します。   本日は御審議の資料として部会資料4を配布しております。参考資料はございませんが,御審議の参考としていただくため,同資料20ページに掲載しております制度の対比表を抜粋したものをお配りしております。   以上でございます。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   それでは,本日の議事に入りたいと思います。本日の議事は,お手元にありますとおり「中間試案の取りまとめに向けた検討」ということでございますが,これまでの御審議を踏まえた上で中間的な取りまとめに向けた検討を行うものです。配布しております部会資料4に基づいて御審議を頂きますが,部会資料の第1では年齢要件に関する検討を行っており,第2では特別養子縁組成立手続の在り方を検討しております。そこで,本日はまず第1について90分程度御審議を行い,そこで一旦休憩を取った後で第2について審議をすることにしたいと思います。   それでは,第1の審議を始めたいと思いますので,まずは事務当局において部会資料の御説明をお願いいたします。 ○吉野関係官 それでは,御説明いたします。お手元の部会資料4を御覧ください。部会資料4のうち,中間試案としてこの部会における取りまとめの対象となりますのは,見出しとして記載している部分を除きましたゴシック体で書かれている部分でございます。部会資料4の補足説明は,今回の審議のために特に付したものでございます。   部会資料のうち1ページから10ページにかけて記載しています第1が,先ほど部会長代理からも御指摘がございました養子となる者の年齢要件の見直しについての記載でございます。養子となる者の年齢要件につきましては,これまでの審議を踏まえ,甲案,乙案,丙案の3案を併記する形で提案をさせていただいております。   甲案は,養子となる者の年齢の原則的な上限を特別養子縁組成立の審判申立時において8歳未満にまで引き上げるとともに,例外的に審判申立時において12歳未満にまで引き上げるものです。乙案は,養子となる者の年齢の上限を特別養子縁組成立の審判申立時において13歳未満にまで引き上げる一方で,縁組成立時においては15歳未満でなければならないとするものです。甲案,乙案は,養子となる者の同意を縁組成立の要件とはしないものでございます。これに対しまして,丙案は,養子となる者の年齢の上限を特別養子縁組成立の審判申立時において18歳未満にまで引き上げるというものであり,さらに養子となる者が縁組成立時に15歳に達している場合には養子となる者の同意を縁組成立の要件とするものです。部会資料4は中間試案の取りまとめに向けたたたき台でございますので,このような形でパブリックコメントに付すべきかという観点からも御意見を頂ければと思います。   また,甲案は例外要件を,一つ目として,8歳に達する前から養親となる者に監護されていた場合,二つ目として,8歳に達した後に審判申立てをすることについて特別の事情又はやむを得ない事由がある場合としておりますが,このように例外要件を設ける場合,特に二つ目の例外要件につきましては,以前の会議におきまして,例えば兄弟のうち下の子が特別養子縁組をすることになったが,上の子も同じ養親と縁組をする場合は例外としてもよいのではないかといった御意見がございましたが,具体的にどのような場合が特別の事情又はやむを得ない事由に該当すると考えるか,御意見を頂ければ幸いです。   また,乙案につきましては,審判申立時に13歳未満,養子縁組成立時に15歳未満としております。このような年齢とした理由につきましては,部会資料4ページの8行目以下や9ページの17行目以下,9ページですと6の(5)に記載しておりますが,申立時13歳未満とすることや,これに加え養子縁組成立時の年齢をも要件とすることについてどのように考えるかについても御意見を頂けると幸いです。   最後に,10ページの7には,派生する二つの論点,すなわち養親となる者の年齢要件,それから養親と養子との年齢差要件について,試案には盛り込まないこととした旨の記載をしておりますが,この辺りにつきましても御意見を頂けますと有り難く存じます。   第1につきまして,事務当局の説明は以上でございます。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   それでは,この第1の部分について,中間試案の取りまとめに向けてということになりますが,御意見を伺わせていただければと思います。内容的には,最後の養親となる者の年齢要件及び年齢差要件に関しては,やや派生的な問題だろうと思いますので,特に第1の冒頭に挙げられております甲案,乙案,丙案をめぐって御意見を伺わせていただければと思います。ただいま御説明を頂いたことについての御質問を含めて,いかがでしょうか。 ○床谷委員 床谷です。今の甲案,乙案,丙案なのですけれども,前回の座長の取りまとめですと,8-12,12-15,15-18という幅を持った案があるという形でまとめられたと思うのですが,今回の丙案というのは一律に18歳未満の者にしてあるということで,私も基本的に15歳未満で,18歳というのは例外という位置付けで,これまで意見を述べさせていただいております。その点がこういう形になっているというのは,最大の幅を取ったということだと思うのですけれども,乙と丙の間にあるのが前回の意見だったので,むしろこれだと,御覧になった方々は,18歳未満で申立てだと,これは二十でも成年でもできるんだねという形で,いきなり広く捉えてしまうと思うので,かなり反対意見も誘発するかなと思うところです。その意味では,丙案も甲案のような形で,むしろ,する方がよいのではないかと。少し乱暴といいますか大ざっぱな丙案ではないかと,読ませていただいて,感じました。   それから,これは内容についての質問なのですけれども,甲案について,「8歳に達する前から引き続き」ということになっていますが,この「引き続き」というのは8歳前の監護期間の長さは問わないと理解してよろしいでしょうか。例えば,前日でも構わないと理解しておいてよろしいでしょうか。「引き続き」という言葉の意味として,8歳前にかなりの部分があって,その後の手続の中で12歳まで行くというイメージではなくて,申立て時に8歳未満ということであればよいと,1日前でもよいということで,そういう理解でよろしいでしょうか。 ○窪田部会長代理 ただいまの床谷委員のご発言のうち,1番目の点は御意見ということだと思います。2番目の御質問について,事務当局からお答えいただけますでしょうか。 ○山口幹事 では,事務当局から,まず御質問の方についてですけれども,正に先生御指摘のとおりでして,8歳に達する直前から監護を始めた場合も,甲案では行けるという前提で書いております。取りあえず,お答えについては以上ということになります。 ○窪田部会長代理 床谷委員,今のお答えで,よろしいでしょうか,それとも,むしろその点についても含めて議論すべきだということになりますでしょうか。 ○床谷委員 これは,例外的に12歳に延ばすということの意味合いが,前回まで議論してきたことに関わるのかなと思ったので,8歳までに相当な監護期間があって,それから後,決心をして,手続をしてということで,12歳未満ということでようやく手続が始まるとか,そういうことなのかどうなのかが分からなかったので,お聞きした次第です。 ○窪田部会長代理 今の点は一つの論点ということになろうかと思いますし,また,丙案に関しては,甲案並びの規定の仕方が考えられるのではないかという御意見を伺いましたが,特に今の点に関連して,他の方から御意見等はありますでしょうか。 ○磯谷委員 磯谷です。私も,内容の賛否はともかくとして,この甲,乙,丙の作り方というのが,少し決め打ちしているような印象を持たれるのではないかと思いました。今,床谷委員からお話があったように,18という主張であっても甲案に近い形というのもあり得るでしょうし,また,特別の事情のようなものを付けるかどうかというのも,また一つの要素,それから,乙案で示されている成立時の年齢を決めるというのも一つの要素ですけれども,一方で年齢については,例えば乙案の13歳というのも,必ずしも13歳でなくてもあり得るのかなとも思います。ということで,聴き方としては何か,甲,乙,丙のいずれかと書き切るよりも,そういった点も含めて,どういった在り方がよいのかというような形で,ただ,そうはいいましても,ある程度モデルがないと分かりにくいというところもそのとおりだと思いますから,少しその辺り,工夫をして,柔らかめにお書きいただく方がいいのかなと思いました。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   これに関しては,少し皆さんの御意見を伺いながら,どういう形が中間試案に望ましいのかということも詰めていきたいと思います。ほかに御意見はございますでしょうか。 ○棚村委員 私は,良い方に理解して,元々やはり6歳とか,例えば8歳とか12歳,それから15歳,18歳,20歳未満は全部という,いろいろな上限年齢の考え方について立法の過程で出てきていました。そのときに,甲案という原則8歳未満という考え方はやはり現行法とほとんど同じくということだと,せっかく時間をかけて議論していますから,やはり特別養子縁組制度の目的,普通養子縁組制度との関係,それから年齢構成についての実際のニーズも勘案する必用もあります。そうすると結局,8歳という,この間,浜田幹事から御提案いただき,それから,私は12歳未満という,小学生くらいまでの上限年齢への引き上げ提案をさせていただいて,床谷先生は15歳未満で,18歳未満という御提案ももちろんあって,そのとき,年齢をそのまま出して議論をしていくというよりも,少し絞った形で三つ出してもらったと理解しております。つまり,そのときの原則年齢の設定というのは,飽くまでも特別養子をどう位置付けるか,それから実際に,特別養子でなければならない必要性,普通養子では駄目であるというニーズがどれくらいあるか,それから,私自身が目的のところでお話ししましたように,わらの上の養子型,実子型として使われている部分と,それからもちろん虐待に対応するという形もオーバーラップしてくる場合もありますし,そのときにどれくらいまでの年齢の子に対して特別養子を広げていくことが妥当なのだろうかということを,いろいろな要素で見ていかないとならないのではないか。   そのときに多分,目安として小学校に上がる前という現行法の考えていた制度設計は,最終的には立法のときに,これから定着していったときには拡大する可能性がありますよということを言っていたので,全く動かせないものではない。しかし,現状ではどこまで上限年齢を拡大させることが,本来の制度として考えていた特別養子の類型が,日本の今のニーズや現状に合っているか,期待されているのか。そして,もう少し先のことを考えた場合にどこまで対応可能かということの中で議論するときに,自ずからでてくるのではないか。どの年齢が一番いいのだということは,いつの立法のときも,どこの国でも,非常に悩むわけです。お隣の韓国については床谷委員が詳しく紹介もしてくださっているのですけれども,入養制度というものと,それから親養子という特別養子という中で複数の制度が併存していて,最初に2005年のときは7歳未満というのが政府案だったのが,15歳未満に上がってきたり,それから目的も,被虐待児だとか婚外子という要保護児童を助けるというものが,再婚家庭の安定とかそういうものが出てきたり,そういう意味ではどこの国でもさまざまな議論が出てきて,特別養子縁組をどういうふうに位置付けていくか,どんな利用が予定されるか,そして,どういうニーズに応えていくべきものだろうかということをある程度議論した上でやらなければいけないのですけれども,なかなかしっかりしたデータや合理的な根拠が見つからないわけです。   前のときも,お話ししたときに,アメリカの例ですけれども,里親から養子縁組をしているケースというのはかなりあるわけですけれども,1歳未満の赤ちゃんで,わらの上からの養子型というのは本当に数%あるかないかなのです。1歳から5歳までが55%,6歳から10歳までが26%,そして,それ以上の年齢になっていくと非常に少なくなっていくわけです。そうなると,それぞれの国でやはり養子縁組,特に特別養子縁組,断絶型の養子縁組の利用については,オープンアドプションとかそういうようなことで,再婚の場合にはそういう少し開かれた形で実親との関係も開いていこうと,こういう流れがある中で,年齢としてどうかというときに,私は,もちろん甲案というのは8歳未満ですし,それが,磯谷委員も言われたように,引き続き,例えば何歳から監護されていたような条件があれば,例外的には12歳未満までは認めていいという案です。その辺りのところで,私は,実は一番重要なのは,12歳,13歳,それから15歳,18歳という中で,どの辺りに収れんさせてコンセンサスが得られるかということになると,細かい年齢だけ挙げて議論しても,多分余りこれが正しいとかこれが絶対おかしいという話は出てこないと思うのです。   そうなると,やはり8歳未満とか,あるいは13歳未満という,私は小学校が終わるぐらいまでと考えたのですけれども,どうも,まとめていただいたもので,中学に入る辺りのところでということで13歳というのが出てきて,それで,成人年齢の関係もありますから,多分15歳と18歳辺りを具体的にどういうふうに考え位置づけるかというのが最終的には焦点として議論ですべきところだと思うのです。つまり,8歳から始まって13歳とかという辺りで,どこ辺りを原則に持って行くかというのが,やはり特別養子の目的との関係,普通養子縁組との関係では重要な点になってくると考えます。それから,ニーズとか実際の利用ということを考えると,15歳とか,やはり18歳ぐらいまで特別養子による保護がどうしても必要なのだというニーズの話とか活用の話が出てくれば,当然そこまで上がってくる可能性はないわけではありません。   だから,特別養子の原則年齢をどのくらいに設定をして,本来の制度趣旨としてどういうものを中心として考えていくかという問題と,それから,例外的に特別なニーズや事情があるのであれば,原則年齢を一定程度は広げて使いやすくしていかなければいけない。その辺りの議論で行くと,今回の議論の中で,やはり8歳とか12歳,13歳未満とか,あるいは18歳未満という整理自体は,理論的には十分理解できる提案であると考えています。むしろ,マックス15歳,18歳まで引き上げるとすれば,15歳や18歳の年長の子供たちの同意とかを必要とするのか,意向をどういうふうに反映させるのか,そういう議論になってくると思いますので,その辺りでは,整理の仕方として,それほど私は違和感を感じませんでした。つまり,前の整理というのは常に,6歳未満であるとか12歳未満であるとか15歳未満であるとか,この年齢要件というのが例外なく定めるものであれば,正に年齢をそのまま出して議論しなければいけないと思うのですけれども,それほど細かく,仮に設定される原則年齢を出したとしても,例外としてここまでは認めるというものを認めるのであれば,一応いいかなと思いました。その上で,ここがまずは原則年齢になって,ここからが例外的な措置も対応できるということで議論をしていいのかなというのが私の感想です。 ○窪田部会長代理 どうもありがとうございました。   先ほどの磯谷委員からの御指摘もあったところですが,年齢をどうするのかという問題については,これを分解していくと,原則年齢を何歳にするのか,例外年齢を何歳にするのか,例外をどのような場合に認めるのか,あるいはそういう例外は設けないこととするのかといった幾つかの論点があるのだろうと思います。一方では,それを全部出して中間試案で問うというやり方もあるとは思うのですが,その場合にかなり複雑な形での議論をしてもらうということになるかと思います。その意味では,現在の甲案,乙案,丙案がこれでいいかどうかという問題はあるにしても,モデルとなるようなものを示すということも,恐らく中間試案の段階では必要なのではないかと思います。特に中間試案として提示して,そしてパブリックコメントを頂戴するという前提で,どういう案をここの場でまとめていったらいいのか御議論を頂ければと思います。具体的には丙案については床谷委員からもう一つのご提案を頂きました。これは丙案になるのか,丙が1と2があるとか,そういうことになるのかよく分からないですけれども,そういう点も含めて積極的に御意見を伺えればと思います。 ○藤林委員 もう早速議論の中身に入っているような気がするのですけれども,その前に確認したいことがありまして,パブリックコメントにどのような形で出ていくのかというイメージが,法制審議会の委員になるのが初めてなものですから,今回の資料4のような,ある程度の選択肢が示されて,それに対する補足説明があるというふうな形になるのか,又は,この案,甲,乙,丙だけで説明が別になるのか,その辺のイメージを説明いただいた上で,今後の議論に入っていきたいなと思っているのですけれども。 ○窪田部会長代理 それについては,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○山口幹事 まず,こういうふうに甲,乙,丙と並べまして,それで補足説明を付けるという形になります。ただ,今,先生がおっしゃった前半と後半の違いがよく分からなかったのですが,もう少し教えていただけますでしょうか。 ○藤林委員 要するに,補足説明が非常にシンプルなものなのか,今回のように結構詳しく説明が加わっているものなのかという,そんなところなのですけれども。要するに,甲,乙,丙の違いがどうなのかという説明とか,国際法との比較というところまで,今回のようなものが出ていくのか,もっとシンプルなものでなるのかというところを,もう少し御説明いただければ有り難いかなと思っております。 ○山口幹事 では,改めてお答えいたしますと,ある程度詳しめにはなろうかと思いますが,ここまで詳しいものになるかどうかは,まだ検討ということかと思います。最終的には,補足説明の部分は事務当局の責任において作成するということになりますので,これまでの御議論を踏まえて,私どもの方で,ここは削除した方がいいのではないかとか,ここは残した方がいいのではないかと,その辺の取捨選択をさせていただくということになります。 ○藤林委員 そうすると,今日の審議会は,甲,乙,丙の中身だけでなくて,補足説明がこれでいいのかどうか,もっとこういう説明が在るべきではないだろうか,そんなところも議論を進めていくというふうなイメージでよろしいのでしょうか。 ○山口幹事 それは,そのようなイメージでよろしいかと思います。補足説明の部分について今,細部まで含めてこの場で決めるということではないですが,補足説明の部分についてはこういうことを是非書いてほしいとか,あるいは,この部分はミスリーディングなので避けるべきではないかということは御意見を出していただければと思います。   なお,一般的には中間試案を出す場合には,ゴシックの部分だけで中間試案という形で一つなると,もう一つのファイルとして中間試案の補足説明という形になって,補足説明を加えたものが出るという形になろうかと思います。 ○手嶋委員 意見と申しますよりは質問でございまして,従前の議論を十分承知しておりませんので,重なってしまうところがあるのかもしれませんのですが,そこはおわびの上で質問させていただきたいと思います。   甲案の最後に,又は8歳に達するまでの間に同請求がされなかったことうんぬん,特別の事情がある場合についても同様とするとあるのですが,これは具体的にはどのようなことが想定された内容になっているのでしょうか。 ○山口幹事 では,事務当局からお答えいたします。余りこれはずっと長くこの問題について議論していたというわけではありませんので,まだ議論は熟していないかと思います。ただ,これまでの議論で出てきましたのは,例えば,兄弟を養子にするという場合で,弟の方は年齢要件を充足している,この案でいいますと8歳より下になっているのだけれども,お兄さんの方は年齢を超えている,そういう場合に,弟は年齢を超えていないから養子にし,お兄さんはできないとかというようにするのがいいのかどうかと,そういう場合などは,一つ,この「特別の事情」,あるいは「やむを得ない事由」に当たるのではないかという議論がありました。ただ,そこを更に越えて,例えばこういうのもあるのではないかとか,そこまで進んでいるわけではございません。 ○手嶋委員 そうすると,どの程度狭いものか,広いものかというのも,これからの議論にオープンということで理解すればよろしいのでしょうか。ありがとうございました。 ○窪田部会長代理 多分そのような形だろうと思います。今の兄弟のケースに関しては,比較的最初,第1回だったか第2回だったかで床谷委員から御説明を頂きまして,そういった場合の対応というのは必要かもしれないということが出ていたかと思います。   ほか,いかがでしょうか。 ○水野(紀)委員 これまでもお話ししてまいりましたように,現状の貧弱な養親支援を前提とすると,私自身は現行法の年齢を上げる必要を感じておりません。ただ,もし必要があるとすれば,現行法が養親に実親と直接対峙させる仕組みを採っているために,実親の妨害に遭ってしまうという理由で,ずっと養親と幼いときから親子関係を作りながら特別養子にできなかったという場合を救出するための延長というのはあり得るかもしれないとは思っております。ただ,それは経過措置という形でやればいいというのが私の基本的な意見ではありますけれども,もう,その立場に固執して,年齢を上げるのなら席を立つというようなことは申しません。甲案に賛意という形で意見を述べたいと思います。補足説明のところで詳しくお書きいただきましたように,15歳以上になりますと,本人に意見を表明させるという要件が掛かってくるのは,非常に問題で,やはり少なくとも丙案は,よろしくないことだと思います。実親を捨てることを公式に宣言させることになりますので。事態が判断できない幼いうちに社会が親子関係を作ってあげるのが特別養子制度だろうと思いますので,もっと幼い方がいいとは思うのですが,少なくとも丙案は余りにも残酷であるように思います。できれば中間試案の段階で落とせないでしょうか。   先ほど棚村委員からニーズがあるという御説明がありましたように,諸外国では,その国なりのいろいろな事情があるのでしょうけれども,再婚家庭を安定させるというようなニーズでしたら,日本法の場合には普通養子がございます。本当なら普通養子についての議論を合わせてすべきだと思うのですが,今回はしないということでしたら,それはやはり特別養子という,普通養子では成立し得ない類型について考えていくのが制度設計として考えるべき方針なのではないかと思います。   当初からお話ししておりますように,特別養子が被虐待児対応に用いられるということについて私はとても危惧しておりまして,育児支援が非常に貧弱な状況で,素人の特別養親に被虐待児対応を任せるために年齢制限を上げるというのは,すごくおかしな改正であると思っております。できるだけ幼い方がいいと思いますし,そういう問題を捨象するとしても,やはり子ども自身に,親を捨てる,親との縁を切るという意思決定をさせるのは,残酷です。擬似選択という非常に残酷な拷問があるわけですけれども,そういうことを迫ることになりかねないように思います。もちろん経過規定の設計についてはある程度柔軟であってもいいかと思いますけれども。 ○窪田部会長代理 どうもありがとうございました。 ○磯谷委員 先ほど窪田先生の方から,甲案,乙案,丙案というまとめそのものは有益ではないかというお話がございまして,それは私もそう思います。ただ,今,水野委員も,そもそも8歳というところについて疑問を引き続き呈されておりますし,確かほかにも委員の間に,果たして上げる必要性があるのか,仮に上げるとして,原則年齢の方を上げるのか,例外年齢の方だけ上げればいいのかと,いずれにしてもその辺りがまだ明確になっていない。とすると,出し方によっては,あたかもこの部会が甲案,乙案,丙案にそれぞれ収れんされているというような受け止め方をされるのは少し違うのではないか,特に,私は一番最初のときから申し上げておりますように,できれば心理学の専門家の知見なども踏まえて年齢については考えるべきだと申し上げておりますこととの関係上も,余りこの年齢が絶対的なものだというように受け止められるのはいかがなものかと思います。ですから,ここはもうあとは事務当局の方の説明かもしれませんけれども,仮にモデルとして甲,乙,丙を並べるとしても,必ずしもこのまとまりが絶対的なものではないという,この組合せが絶対的なものではないということは分かるように,お願いしたいと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。今御指摘があった心理学等の観点からの専門家の知見ということについては,法務省の側で現時点では準備等はしていないということでよろしいでしょうか。 ○山口幹事 前回も少し御説明申し上げました,中間試案の取りまとめの後にヒアリングを予定しておりまして,その場で,今考えておりますのは,心理学の学者の先生にお越しいただいて,まず御講演を頂き,その後,質疑応答の時間も設けるということを考えております。そこである程度の知見は得られるのかとも思いますが,磯谷委員もかねておっしゃっておられましたように,そういう科学の力ですぱっと12歳と明確な答えが出るわけでは恐らくないのだろうと,今,その先生との接触の中で感じているところでございます。 ○窪田部会長代理 心理学の御専門の方にヒアリングをするというのが中間試案の取りまとめの後というのは,順番が違うのかもしれませんが,多分,スケジュール的にはやむを得ないだろうと思います。磯谷委員から御指摘を頂きました部分については,場合によっては,括弧で何歳とかという形で選択肢を残すのはあると思うのですが,ただ,やはり最初のところが6歳から15歳までで,後の方が,例えば12歳から18歳までといったものではなく,イメージとしては甲案,乙案,丙案というのは,大くくりに言うと,現行制度に近いもの,現行制度よりはかなり年齢を上げたもの,そして最終的に15歳以上をカバーするものというような三つのタイプという形で整理はできるのかなと思っています。年齢に関しては,さらに表記の仕方,場合によっては少し幅を持たせるというようなことが可能性としてあるのかなと思って伺っておりました。   今の点も含めて,自由に御議論いただければと思います。 ○藤林委員 では,少し議論の中身に入っていきたいと思うのですけれども,その前に,1点だけ少し違和感がありまして,1ページ目の甲,乙,丙案の丙案の(2)のところに,15歳に達しているときは特別養子縁組成立には養子となる者の同意がなければならない,ここは年齢要件の見直しの甲,乙,丙なので,同意がなければならないということがあたかも丙案の必須のように書かれているのは,私としてはどうなのかなと思っていまして,これはまた別に立てていただいた方がいいかなと思っております。これは意見です。   少し補足説明の中に入っていきたいのですが,先ほど質問しましたように,一般の方が補足説明を見て,ミスリードとか,又はそういうことがないように,また,より正確な理解が進むようにということで,じっくり読ませていただきました。重要なのは,2ページの特別養子縁組制度の趣旨,目的のところが,ここはとても重要なところかなと思っております。ア,イ,ウ,エと示されていまして,専らアとイということで,この後の議論,文章が組み立てられております。エについての説明が私の考えるところと少し違和感がありまして,特に3ページの25行目のところ,エの考え方が,「疑問が残る」というふうになっているところがあります。   私は基本的には,アは以前からの考え方ですけれども,イですね,縁組によって形成された法的に安定した家庭環境で養育されること,これは特別養子縁組の制度趣旨の大きな一つであると私は思います。これは2009年の国連総会で採択されました,皆さんご存知だと思いますけれども,児童の代替的養護に関するガイドライン,指針でも,実親家庭の元に復帰するか,そうならない場合には,施設,里親といった代替養育を検討する前に,養子縁組といった永続的解決策を探るというふうなことがガイドラインで示されておりまして,その意味では,このように法的に安定した養育環境を国連ガイドラインも推奨しているわけですし,イの考え方というのは国際的な指針に沿った考え方だということができるのではないかと思います。ただ,イの考え方も,飽くまで「未成年者が」というふうなことで書かれているわけなのですけれども,ガイドラインの考え方は永続的な解決策ですから,未成年の間だけ養育されることを目的とする考えでは,ガイドラインに完全に沿っていないのではないかと思っています。永続的な解決策,永続性といったものを,どこかできちんと説明していただきたいと思います。   エについてなのですけれども,2009年の国連指針が公表されまして,2010年ですかね,子どもの権利委員会が日本政府に対してこのガイドラインを考慮するように勧告が行われて,それから7年後の2016年に児童福祉法が改正されました。この中でやっと,養子縁組が児童福祉法上,児童相談所の業務として位置付けられたわけです。ですから,それまでは養子縁組が児童相談所の業務として位置付けられていなかった,飽くまで里親さんと子供との関係の中で,場合によれば15歳又は18歳になって普通養子縁組が組まれるというふうなことがずっと行われていたのかなと思います。児童相談所の中には積極的に年長児童に対して養子縁組の取組をする児童相談所もあったかもしれませんが,全体としては年長児童に対する養子縁組の取組はずっと遅れたままになっていたと思います。   その結果,どうなっているのかといいますと,社会的養護に措置されている子供が国内で3万数千人いるわけなのですが,平成25年の厚労省調査では,そのうちの2万人はこのまま家庭復帰の見込みがないまま施設,里親に措置をするというふうな方針を児童相談所が示しているという統計があるわけなのです。けれども,なかなか家庭復帰の見込みがないまま長く施設,里親に代替養育の下に置かれているという子供がたくさんいらっしゃるわけなのです。こういった子供の中には,実親との関係を終了させない,18歳以降,20歳以降,実親とともに生涯を暮らすという子供さんもいらっしゃるかもしれませんけれども,中には実親さんとの関係がもうほぼなくなってしまっている,又は終了させた方がいい子供も多いのではないかと思います。が,実際には養子縁組,特に特別養子縁組のチャンスのないまま,しかも措置解除後の里親と子供との関係というのは,法的な関係も何もありませんので,子供の生活環境として,大勢の法的に永続性な関係が保障されていない子供さんがいらっしゃるという現状があると思います。   こういった国連ガイドラインで示しているような永続的な関係を持たないままの子供が実際に何人いるのかというのは,家庭復帰の見込みのない2万人のうちの何百人なのか何千人か分からないのですけれども,こういった子供たちに養子縁組といった法的に安定した養育環境を提供したいというのが,私は第1回目から訴えているところです。   2016年に児童福祉法が改正されて,養子縁組が児童相談所業務に位置付けられ,またここで議論されるというような,特に後半で話しているような特別養子縁組制度において,児童相談所長が申し立てるなどの制度ができてきますと,このように5年も10年も15年も代替養育に措置しっぱなしという子供は多分,少なくなっていくと思います。ですから,今後はそのような長年法的に永続性が保障されない環境の中に置かれる子供というのは少なくなっていくと思うのですけれども,今現在,そのようなチャンスがないまま10歳,15歳,17歳でいらっしゃる子供に対して,養子縁組といったチャンスをどのように提供していくのか。その中には,これもまた後で話しますけれども,普通養子縁組ではなくて特別養子縁組が必要な子供さんも一定数含まれていらっしゃることを考えると,エの意味というのは十分あるのかなと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。1点だけ,私からも質問させてください。最後におっしゃった点なのですが,15歳以上ですと普通養子縁組が可能なのですが,その中に一定数は特別養子縁組でなければならないお子さんたちもおられるということでした。これは以前から多分,質問として出ていた部分なのですが,具体的にどういうお子さんたちなのかというのを少しお話しいただけますでしょうか。 ○藤林委員 これは多分,何回も説明しておりまして,私の説明が十分伝わっていないので,明らかなニーズとして認識されなかったのかなと思うのですけれども,実際に例として挙げているのは性的虐待のケースですよね。非常に重度で,乳幼児期に性的虐待の被害を受けて,到底,実父とともに暮らす家庭復帰というのはほぼ想像できない,あり得ないケースがあり得ると思います。そういうケースも経験してきました。また,重度の身体虐待又は虐待死亡ケースなのですね,この場で言っていいのか,少し今,話しながら迷うのですけれども,兄弟を虐待死亡で同じ環境で亡くされた,その兄弟というのは,今後,虐待死亡の結果収監された親とともに暮らすということはなかなかあり得ない。 ○窪田部会長代理 以前から出ていた質問というのは,そのケースでも普通養子縁組をすれば,そもそも元の実親との同居というのは普通,考えられないわけですし,未成年であったとしても,もう親権を行使することはできないわけです。それとの関係で,今のケースが非常に深刻なケースだということは分かるのですが,普通養子縁組では駄目で特別養子縁組でなければいけないという点について,もう少し御説明を頂けますでしょうか。 ○藤林委員 これは子供の立場に立って考えた場合にどういうことが起こってくるかというと,やはりずっと扶養・相続の関係が残るので,将来にわたって何らかの扶養義務についての照会が来るのではないかとか,相続に関しての照会が来るのではないかといった問題もありますけれども,もう一つ思い付いたのは,本人が暮らしている環境に実親が突然やってくる可能性というのはなかなか否定できない。普通養子縁組で戸籍が残っている以上,本人の住民票というのはたどっていくことが可能なわけです。それはブロックを掛ければいいということも言われるかもしれませんけれども,なかなかブロックを掛けたからといって,いろいろなミスがあって,たどってくるという可能性を考えますと,戸籍が残っているということがやはり非常に大きな不安を与えてしまうということにつながるのではないかと思います。   18歳まで,子供はこういった非常に深刻な虐待をする実親が,突然現れるのではないかという不安を,一定数,持っているわけですけれども,実務上,児童相談所が住民票を動かさずに,28条の申立てを行ったり親権停止を行ったりしているわけなのです。けれども,大人になれば住民票なしで生活するというのは非常に不便ですから,自分の住んでいるところと住民票を一緒にしていくわけです。そういった場合に毎年住基ブロックを掛けるというのも非常に大変なのです。そういった実親との関係,望まないにもかかわらず突然会いに来るという不安からも遠ざけるということが可能になっていくのではないかと思います。 ○窪田部会長代理 分かりました。 ○水野(紀)委員 藤林委員にお伺いしたいのですが,よろしいでしょうか。前回,幼い子供でないと無理なのではないでしょうか,大きくなった子供の場合には里親委託は,特に重度のお子さんは難しいのではないでしょうかと質問しましたら,藤林委員が,やはり性虐を受けてきたような,ある程度大きくなられたお子さんは,里親委託は無理ですとおっしゃったように記憶しております。実務でもやはりそうなのだろうなと非常に納得しながら印象的に伺いました。それを前提にいたしますと,藤林委員が希望していらっしゃることは,そういうお子さんを加害親から守る役割を特別養親に求めるという御趣旨なのでしょうか。 ○藤林委員 性的虐待に関して言いますと,確かに10代で性虐待で保護して,里親さんが委託して,その結果,養子縁組を組んでもいいような親子関係に至るケースというのは難しいです。難しいけれどもゼロではないと私は思っていまして,その後,里親さんと子供との親子関係が,養子縁組を組んでみようとお互いに思うぐらいまで至るケースもあると思います。もう一つ,先ほど言いました非常に重度の身体虐待のケースであれば,例えば兄弟で年少の子供さんが虐待死亡の結果,上の子供さんだけが生き延びたといったケースもあるわけなので,そういったケースも里親委託は十分可能ではないかと思います。   こういった生き延びた兄弟にしても,性虐待を受けた被害者にしても,やはり実親さんの存在というのは非常に不安を与えるもので,それは何歳になっても,中学生になっても高校生になっても,児童福祉法の対象年齢である間は何とか児童相談所が守りますけれども,それ以降というのはもう守るすべはほとんどないということを考えると,養親との法的な関係が子供を実親から守るということがあり得るのではないかというのが先ほどの私の趣旨です。 ○水野(紀)委員 そういう加害を行う実親から被害者であるお子さんを守るというのは,私人である養親にはいささか荷が重すぎるという気がいたします。それから,そういう実親であった場合に,これは特別養子になっても,子供の存在を知る限りは追いかけてくるでしょうし,それを養親が守るということはできないだろうと思います。養親に頼るのではなく,いかに社会が子どもを守るかという問題を,まず考えなくてはならないのではないでしょうか。 ○平川委員 この特別養子の位置付けが少し,私もまだ整理されていないような気がします。研究会の中間報告書も改めて見返して,この中間報告書と今回の部会は連続性はないと聞いていますけれども,ただ,やはり特別養子とは何かというところについての前提の議論がまだ深まっていないような気がします。私がこの部会に参加するに当たって,特別養子という位置付けは,やはり実質的な親子関係を形成すると,法的にも実体的にもそれを目指すのであって,特に法律がその実態を下支えしていくものだという認識でいたわけでありますが,そういった意味で,では,実質的親子関係とは何なのかとなりますと,やはり幼少期から監護を始めた場合に実質的親子関係の形成が期待されるものであるということで中間報告にも書いてありましたので,そういった意味で言うと,余り年齢を高くするということに関しては,もう少し議論を深めていく必要があるのではないかと思います。そういった意味で,児童心理学の先生方から,実質的親子関係という観点から見て,それは本当に年齢的にはどういうことになるのかというふうな専門的な知見を聴くというのが必要なのではないかと思います。   ただ,基本的にはそうなのですけれども,例えば,里親もそうですし,普通養子縁組もそうですけれども,幼少期からそういう実質的な親子関係があり,実質的にこの特別養子縁組を使うときの年齢が,例えば15歳なり17歳でもいいのですけれども,そういうときにそういう実質的な親子関係が形成をされていて,それが特別養子縁組という制度を使う年齢が上になっていくということに関しては,選択肢として保障されるべきではないのかと考えています。   その上で,15歳以降の関係で言うと,ここに書いてありますけれども,同意がなければならないというところで丙案の(2)に書いてあるのですけれども,これが本筋の話,もちろんこういう問題はきちんと考えなければならないのですけれども,これが15歳という線を引くときの,同意がなければならないからできないのだというところの記載,書いてあるのですけれども,もう少し,知恵を働かせる必要があるのではないかと思っています。   例えば,2歳からずっと里親で育てられ,17歳になって特別養子縁組をしたいという希望があり,実質的な親子関係になっているという方に関して,先ほど藤林委員が言ったように,親の顔を見たこともないし,関係性がないということに関して,親子の縁を実質的に切るということに関して,それはある意味で残酷な制度だという側面もありますけれども,ある意味,積極的な制度でもあるという二つの側面があると思いますので,それをどう考えていくかという整理が必要なのではないかと思います。   簡単に言えば,まず,実質的な親子関係は何なのか,そして,この特別養子縁組を必要とする人がそれをどうやって使えるようにしていくのか,そして,その次の15歳の考え方をどう整理するのかという考え方の段階を追って整理をしていくということが重要なのではないかと思っているところです。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。先ほど藤林委員からもお話がありましたが,丙案の(2)の部分というのは別の論点として扱うということを含む御意見かと思いますが,この部分について,事務当局では何かお考えはありますでしょうか。 ○倉重関係官 丙案の(2)の取扱いにつきましてですが,こちらにつきましてはどうしても15歳という年齢と,普通養子における代諾養子縁組等の関係でのみ出てくる論点ということになりますので,(2)だけを別に論点として立てるということは難しいのではないかと考えております。したがいまして,15歳以上で養子縁組が成立するという可能性のある丙案との関係でのみ出てくる問題点でございますので,整理としては,やはりここに位置付けざるを得ないのではないかと現時点では考えているところでございます。 ○山口幹事 補足いたしますと,ただ,補足説明の書きぶりは,今,平川委員から御指摘がありましたように,まず制度趣旨のところから話をしていって,それとは別の問題として同意をまた論じるという流れにするということは十分あり得ると思いまして,私どもも何となくそういうつもりで書いてはいるのですが,まだ不十分なところはあろうかと思いますので,更に検討させていただきたいと思います。 ○床谷委員 7ページの6のところなのですけれども,表題のところに,「養子となる者の意思との関係(丙案を採用する場合の問題点)」ということで,今御説明があったように,これは丙案だけの問題だという事務当局の御理解ですよね。前回御発言がどなたかから,平川委員でしたか,ありましたように,15歳未満の者についても現行の家事事件手続法の65条の関係というのが多分残ってくるのだろうと思うのです。そうすると,同意という形の意思ではないけれども,意向とか気持ちとかそういうのを聴くのかどうかという形では問題となり得るのではないかと思うのです。その点を,養子となる者の意思との関係というところの,例えば9ページの「各試案との関係」というのがありますけれども,そこのところもやはり丙案の問題点を示しているというのが中心なので,今申し上げた点を今後議論するのかどうか,今回の出し方の問題ですけれども,意思というのを同意ということに限定するのかどうか,そこのところが,タイトルの関係で,丙案というのは7ページの6のところにありますけれども,むしろ(1)の後ろにこういうのを付けるのは分かるのですけれども,その辺りのことが気になりましたので,意見を言わせていただきました。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。今の点についてはどうでしょうか。 ○山口幹事 すみません,事務当局から。質問という形になってしまうのですけれども,今,床谷委員がおっしゃいましたのは,家事事件手続法で,いずれにしても意見の聴取みたいなものは必要になってくるのであると,そのことの指摘が漏れているのではないか,端的に言うと,そのようなところでしょうか。 ○床谷委員 前提として,あの規定は特別養子の審判には適用しないという前提で議論しているのかどうかが気になっているわけです。 ○窪田部会長代理 私が発言するのが適当かどうか分からないのですが,現行法の規定だと,適用される可能性はやはりあるのなのだろうと思います。ただ,その上で本人の意思,未成年者,子供についても意思を尊重して意見を聴くというのと,15歳以上であれば,普通養子縁組については本人の意思によって決まるので,もし特別養子縁組を考えるとしても,やはりこれは意向調査ではなくて本人の意思がなければいけない,それを同意というか承諾というかはともかく,その点ではやはり違いはあるのかなとは思います。子供の意思の聴取というルールの適用があるとしても,その違いは残るのではないかとは思います。 ○高田委員 若干の補足ですが,私の理解も65条の適用はあると考えております。ただ,65条は意思の把握であって,必ずしも意思の聴取ということは要求していないわけでありまして,65条に従って,恐らく家庭裁判所も子供の実情に応じて適切な方法で子の意思の把握をされていらっしゃると思います。この規定の適用があるかどうか,家事事件手続法の制定時にも議論となりましたけれども,特別養子は6歳,8歳ということですので,実際的に意見の聴取まですることはないだろうということで,特別に手当てはしなかったわけですけれども,もし6歳,8歳という基準を上げるとすると,当然何らかの方法で65条の要件を満たすような工夫を家庭裁判所にお願いすることになるのではないかと考えております。   それを踏まえてですが,恐らく意思という言葉使いが今の床谷先生の疑問を生んだのかもしれません。その辺りを含めて用語法を御工夫いただければと思います。 ○窪田部会長代理 今の点も含めて,もう少し補足説明の部分について文言を詰めていただければと思います。 ○磯谷委員 磯谷です。若干戻ってしまいますけれども,私が申し上げたかったのは,先ほどの水野委員とある意味で同じなのですけれども,藤林委員の方から年齢が高いお子さんについても特別養子縁組が望ましいというお話が幾つかございました。ただ,よく考えてみますと,同じような境遇のお子さんというのはそれなりにいて,しかし,その中で特別養子が可能なお子さんというのが,つまり,幸いにもよい養親候補者に恵まれるというのはかなり少ないのだろうと。そうすると,特別養子をすることによってその人たちを守るという発想では取りこぼしが多数発生するのではないかと思います。したがって,藤林委員の問題意識は大変,そのとおりだと思いますが,それはまた,特別養子であろうとなかろうと,こういった境遇のお子さんをしっかり守ってあげられるような手当てをやはりすべきなのだろう,そちらが本筋なのだろうと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○久保野幹事 最初の方の話に戻ってしまうかもしれませんけれども,甲案で特別の事情がある場合という基準を挙げて,例外を認めていくという枠組みを採っているという点で,甲案に賛成の意見を述べるものです。   前回,私は年齢の引上げ自体について疑問の立場で,どちらかというと強硬な響きもするような形でお話ししましたけれども,少し言葉足らずだったと思っておりまして,ニーズがあり,使っていく道を開くことが適切であるというものがあれば,それについて封じるのはよくないとは思っているというところがございまして,それとこの賛成意見が少し関係しますけれども,6ページ辺りに反対の理由として,具体的なニーズが余り見えないということが書かれていまして,これは何度も言っていることの繰り返しになりますが,厚労省の調査以来,年齢要件がネックになってできなかったものがあると御紹介がありますが,その中身について一つ一つがどういうものかが分からないと,具体的には要保護児童として保護されるに至った年齢がゼロ歳や1歳だったのか,あるいはそれがそもそも6歳を超えていたのかといったような,どういう事情なのかというのが見えないというところがありました。   他方で,6ページの25行目辺りに,別の文脈ではあるのですけれども,書かれていることとして,年齢を上げるということによって,より早期に成立させることができたはずの特別養子縁組の成立時期が遅れていくことになって,かえって子の利益を損なうことがないかという懸念が紹介されていまして,このような懸念は確か研究会のときの児相長の方からもあったと思いまして,このような懸念との兼ね合いというものが問題だと思っています。そう考えましたときに,真にニーズのあるものを今,明確に文言として示すようなところまでは難しい中で,「特別の事情」という形で要件立てすることによって,明確にすべき事柄,明確にすべきものが,取り出されて,そこを埋めていくということが期待できるのではないかという気がしています。少し楽観的かもしれませんけれども。   ただ,7ページに,それにどういうものが当たるかが正に問題だということですけれども,ここまでの議論の中で,例えば要保護児童として保護の下に入ったのがそもそも何歳なのかといったことですとか,あるいは実親への家庭復帰ができないと判断された場合にはということが特別養子の選択肢を採る前提として考える要素として挙がってきているわけですが,その判断に要する合理的な期間はどのくらいなのか,そのようなことを考慮して,この「特別の事情」ということが具体化されていくことを期待するのが,むしろよいのではないかという感触を持っています。後の方で児童相談所の関与についても提案がありまして,私は賛成なのですけれども,むしろ児童相談所が今までよりも関わっていく中で,そのようなものが明確化されていくということが望ましいのではないかと思います。それがうまく明確化の方向で働くということを期待するとしますと,例外の年齢については,もしかしたら12歳というのにこだわらないということもあり得るのではないかと思っています。   例外の年齢と少し関係あるところとして,趣旨のところに飛ぶのですけれども,「実親との関係を終了させてまでして養親との安定的な関係を築くことを要する子か」というような考え方が前回から出ていまして,この考え方の場合,実親との関係を終了させるということは養親との関係を安定的な関係にすることに資する要素として挙がっていると思うのですけれども,これが逆に働くことはないのかということが少し気になっていまして,つまり,実親の関係を終了させることが,養親と安定的関係を築くことにマイナスの影響を与えるということは考えられないのかという点について,これはヒアリングのときに専門家の方に伺うべきことかもしれませんが,もし今の時点でそのような方とのお話というので何かありましたら,教えていただきたく思います。   最後に1点,ついでに,すみません。趣旨のところで先ほどエについて御意見がありまして,私自身の意見としましては,実はエの考え方で,つまり長年実質的に形成されてきた里親子関係を持った方が実親子関係のみの関係にしたいとお考えのときに認めるということは,可能性としてはあってもいいのではないかと実は思っておりますけれども,ただ,それは根拠といいますか,基礎となるのが,正に事実上形成されてきたものを法的に認めるという,少し趣旨の違うもののような感じがしておりまして,一言補足で述べさせていただきました。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。幾つかの御意見,それから御質問もありましたけれども,特に実親との関係を断絶するということが必ずしもプラスにだけではなくてマイナスに働く場合があるかもしれないという点については,何か事務当局の方で考えていることはありますでしょうか。 ○山口幹事 事務当局でございますが,率直なところを申し上げまして,今初めてそういう視点もあるのかなと思い至った程度でございまして,特に何か私どもの方で他分野の知見を得ているということでございません。 ○岩﨑委員 少し山口関係官とも相談して,今回は言わない方がいいかなと思っていたのですけれども,今やはりいろいろなことを言われると,少し申し上げたいと思います。   私は500件ほど,普通養子時代に社会的養護下の子供の養子縁組をしてまいりました。その中で大半のケースは,普通養子を認めた実親たちが子供を育てることに介入してくることというのは,ごく普通のお母さんやお父さんだったら,ありません。もう手放したと思っています。だから,法的な親であるという意識さえ,私はないと思います。そんなことを説明する人も,その手続上の中で裁判所で少し言われたかもしれませんけれども,普通養子の裁判所って実の親の方に,この子を養子に出しますね,よろしいですね,こちらはきちんとこの子を養子縁組して育てますね,いいですね,では,許可しましょうというのが基本的なパターンでしたから,その結果,何が残るかなんていうことの説明がほとんどありませんでした。   今までに普通養子の子供が死んだケースが何件かございます。事故死,病死,自殺等々,そういう自分たちが世話をした普通養子で死亡してしまった子供,死亡したことを実の親に知らせておりません。知らせたくないです,現実の問題として,知らせていません。知らせないことがいいことなのかどうなのかということについては,私にはよく分かりません。結果としては,知らせません。   普通養子という,いわゆる社会的養護の子供の普通養子って,実の親と育て親との間に何ら関係もないです。   そういう中で,子の福祉のために私たちは親子関係を作ってきました。もちろん実の親が死亡したからといって連絡があるわけではありません。連絡があるのは,親が残した借金を取り立てるための連絡であったり,実の親が生活保護を申請したことによって,区役所の方から,あなたは扶養義務があるので親に対して何らかの援助をしませんかというような問い合わせが来るだけです。親が死んだのだということをうちの子供たちは知る。顔も知らず,死んでしまった親に対する思いよりは,今実際に育ててくれている親の面倒だけは何とか見たいなと思っている子供たちがたくさんいることを,私は逆にとてもうれしいと思っているぐらいです。   法的な親,法的な親と言われるけれども,実際問題,法的な親という自覚は実の親にも,それから養子に出された子供にも,ほとんどありません。子供が実の親に会いたいのは,自分を産んだ人だからです。法的な親であるから会いたいのではなく,自分を産んだ人だから会いたいのです。それは普通養子の子供も特別養子の子供も同じ思いです。特別養子の子供は親子関係が切られています,ありません,赤の他人になっています。でも,自分を産んだ人だから,彼らは会いたい,知る権利を主張して,戸籍を追うのに今,戸籍謄本がとれないのです。とても悔しい思いをしている子供たちがいます。   そういう意味では,親子って何だろう,実質的な親子関係って,先ほどからも何度も言われましたけれども,私は育てた人こそが親だと思っていますので,生活をともにし,親子としての,家族としての信頼関係が築けている状態が実質的な親子関係だと思います。それは,ゼロ歳から始まることがとても望ましいですけれども,ゼロ歳の子供を手放す実の親の同意の方がこの先,翻る可能性はいろいろあるわけです。逆に言えば,5歳や6歳や7歳になってしまって,施設で面会もなく親も引き取れなくなって,養子に出してくださいと言われるケースがあって,私たちは大きな子供の養子縁組先を必死になって探しますが,6歳の壁に阻まれて普通養子にしかならない子供たちがいます。   例えば,今,藤林委員がおっしゃった,15や17歳の子供たちが「養子縁組をしてもらいたい」と里親に頼み,里親も,「今になったらうちの子になってもいいよね」という思いがあっても,一瞬ちゅうちょするのは,実の親との関係が普通養子では切れないので,ということは,この子を普通養子で私たちの子供にすると,この子の実親をこの子の親族として,その存在を我々の家族の親族の一部として認めないといけないのではないか,そのとき,犯罪者である父や犯罪者である母や,あるいは心を病んでしまって入退院を繰り返している親や,あるいはDVで夫から逃げてきて,今なお離婚も成立していない,よく分からない親たちが,自分たちの家族の中のうちの養子の親族としてどこかで関わり合いを持つことがひょっとしたらあるのかもしれないという思いが,里親の方には養子縁組をすることにちゅうちょが働くことは大いにあると私は思っています。   そういうことをどんなふうにして現場の人間は解決をしていけるのか,こんなとき私たちは,特別養子さえ認めていただければ,それでも言ってくる親もいるかもしれないです。今も特別養子縁組が確定してから,子供に会わせろ,子供を返せと言ってくる親はいます。でも,法律であなたはもうこの子の親ではありませんと言い切れるところが我々の強みです。特別養子を認めてもらえたら,裁判所が判決として出されるわけですから,あなたの親である立場性はもう認められてはいないのですよということを親に突き付けられることでしか私たちは子供を守ってやれないという,とても悲しい現実を抱えて仕事をしていることをどうぞ少し分かっていただけたら有り難いと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。岩﨑委員からの大変重いお話も頂いたと思うのですが,岩﨑委員,年齢要件との関係では,特に今のお話は,むしろ丙案のように一切制限を設けないというところにつながっていくということでしょうか。 ○岩﨑委員 15歳未満までの養子縁組で18歳までを特例とする,ですよね,最大で,それがそれほどたくさんあるとは思っていません。今みたいに特殊なケースのときに特殊なこととして認めていただけたらいいと思いますし,今こんな制度は絶対できないと言われましたけれども,15歳以上の子供がもし特別養子をしたいのか,普通養子の方がいいのかという二者択一の選択権を子供に与えることというのは絶対今の法の体系ではできないのだと山口関係官に言われましたけれども,それができるようにはやはりできないのでしょうかということを少し提案したいです。 ○窪田部会長代理 棚村委員,今の関連ということでよろしいですか。 ○棚村委員 はい。先ほども少しお話をしたのですけれども,原則年齢を何歳にするかという話と,例外をどこまで認めるかという話は,むしろ,それを認めれば,今言っている,8歳が出て,8歳から12歳,13歳から15歳とか,それから18歳まで延ばすという,15歳から18歳というのは,実は私も前はそういう案を支持していました。ただ,この間,特別養子制度についていろいろと議論をしている中で少しずつ変わってきたのは,一つはやはり特別養子縁組というものをどういうふうに考えるか,実の親との関係を終了させて,そして新しい親との親子関係をきっちり作るということ,これは先ほどの議論にもありましたけれども,過去に築かれてきた関係を法的な関係と転化するために特別養子を使うということまで認めるのか,それともやはり現状の子供の監護養育をできるだけ継続的,安定的にさせるかと,そこの辺りでも随分違うと思うのです。それから,養子になるという子供の地位の安定とか,早期にそれを確定しないと,子どもを法的に不安定な状態のままで置くということになるのもよくない。また,もしかすると,決断がなかなか付かないというのもそういうような要素があったかもしれないのですね,里親として,あるいは事実上は面倒を見てきたけれども,特別養子という決断ができなかったとか,そういうことについての配慮ということを考えるとすれば,ある程度,低い年齢の子供たちにターゲットにし,原則年齢はそこに置くとしても,それから,普通養子縁組も使いづらかったり問題があるというのは先ほどから指摘があるようですけれども,それをどうやってうまく使いながら,特別養子と普通養子という二つの制度を併存させるか,未成年養子の使い方をどういうふうに振り分けていくか,そして,最終的には,先ほどから出てきたように,ある程度小さいときから育てられていたのだけれども,里親委託とか,事実上長らく監護養育されてきたのだけれども,その子供たちに対して特別養子のチャンスを与える必要があるのかどうかということも考慮して,私は議論をする必要があると思うのです。   その上で,戻りますけれども,8歳から12歳という案が一応,目安として出てきて,それで,13歳未満という乙案のところですけれども,中学校に入るとか小学校を終えたぐらいなところを一応目安として置いておいて,少しは今より上限年齢を広げるのだけれども,例外的にどういうふうに構成するかというのはいろいろな余地があると思うのです。それを考えていくと,例外として18歳未満とかそういうところまで広げる余地もあると考えると,原則年齢を一体どこに置いて提案をしていくべきか,例外をどこまで,どんな条件だったら認められるかというような議論にしていった方がいいと思うのです。余り性虐とか犯罪の話とかいう特殊な重い事例をもって一般の民法の規律をどうするか,通常の一般的なケースをルール化していくべきかというのはなかなか難しいと思うのです。例えば経過措置を認めるとか,例外的にはこういうような可能性も,要件を厳格化した上で年齢の高い子にも特別養子のチャンスを与えるということはあってもいいのですけれども,原則年齢が一体,特別養子というのをどう位置付けて,どういうふうに現状の中で子供を安定的,継続的に育てるという環境や機能を確保し強くするためには,どういう養子となるべき者の上限年齢設定が一番いいのだろうというので,一応,乙案を渡しは支持をさせていただきたいと思っています。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   年齢に関してはいろいろな議論が出てきているところではありますけれども,甲案に関しては積極的に,これを8歳とするのか,原則年齢6歳を維持するのかという点はあるかと思いますが,この仕組みについては複数の方から御支持を頂く意見があったかと思います。乙案についても今,御意見がございました。丙案に関しては,15歳,18歳という形での御意見はありましたが,床谷委員,それから岩﨑委員からは,むしろ丙案,15歳を原則年齢として,18歳までを例外的に延長できるという仕組みとして仕組んではどうかという御意見だったかと思います。藤林委員も恐らく丙案の立場なのだろうと思うのですが,その点に関してはいかがでしょうか。 ○藤林委員 私も岩﨑委員,床谷委員と同じで,特例としての18歳でもいいのかなと思っています。少し付け加えますと,棚村委員が言われましたように,本来は,例えば虐待ケースで,親子関係が終了した特別養子がいいのかどうかというのを,早い段階で判断して,15歳,16歳になる前に,12歳,13歳でしっかりとした,子供にとって,この趣旨のイにあるような法的に安定した家庭環境を準備するというのが本来だと思うのです。ただ,そういった法制度から漏れてしまった方々が今,一定数,15,16,17歳にいらっしゃるのであれば,例外的に何らかの措置が必要ではないかということで,お二人の委員と同じ意見です。 ○窪田部会長代理 承知しました。   そうしますと,丙案に関してはむしろ,中間試案の段階から外すべきではないかという御意見もありましたけれども,少なくとも丙案として残すという場合には,今のような形で少し組み直したものとするというのが,少なくとも法制審議会の中間試案としては適切だということになろうかと思います。   これ以外の部分についてはどうでしょうか。 ○宇田川幹事 時間も迫っているところで,申し訳ないのですけれども,付随的論点のところで年齢差要件についての記載がございまして,これまでも論点としては掲げられていたところですけれども,法制審のこの部会ではそこまで議論がされていなかったかなというところもありまして,少し考えているところを申し上げたいと思います。   資料にも,「『親子らしさ』の在り方は時代とともに変わり得るものであり,養親子間の年齢差として何歳程度が適切であるかを法律で一義的に決定するのは困難である」ということで,年齢差の要件については盛り込まないという形で記載されているのですけれども,裁判所が結局,実親子らしい年齢差ということの判断を求められるとすると,この点についての社会的なコンセンサスがないにもかかわらず,こちらで裁判所が判断するということになりまして,そうすると,いろいろな考え方がある中で何ら基準なく判断をしていくということになると,その判断も非常に幅の広いものになってしまって,予測可能性も失われ,不安定なものとなってしまうという可能性もありますので,そうすると,逆に制度の利用が進まなくなってしまうというおそれもあるのではないかと考えております。ですので,本当に年齢差要件を設けなくていいのかどうかということについては御議論いただきたいなと考えているところでございます。   他方,例えば乙案にあるように,この案ですと,例えば養親となる者が25歳と20歳,それから養子となる者がほぼ15歳という場合が想定されるのですけれども,年齢差が5歳余りというケースが想定されるところで,このような場合でも安定的な家庭環境における養育が達成できるのであれば,これは縁組成立を認めて差し支えないというのがこの部会でのお考えであるというのであれば,それは一つの考え方かなとも思いまして,どの案を採るかという,甲案か丙案かにもよるとは思うのですけれども,少し年齢差というものを,その場合にはあえて更に判断する必要なく,これは安定的な家庭環境があればよいという御判断もあるのかなとは思いまして,そうであれば,先ほど申し上げたような裁判所の判断が幅の広いものになるということの懸念もなくなってくるのかなと思いまして,この点も併せて御議論を頂きたいと思います。中間試案との関係では,何かしらその問題提起についても盛り込んでいただければと思いますし,今後更に,年齢要件の見直しと連動して,この年齢差のところについても御議論いただければと考えております。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。実はちょうどその話に持って行きたいなと思ったところを本当に上手に御説明いただいて,どうもありがとうございました。   年齢差要件の部分に関しては,従来の部会の中ではそれほどいろいろな形で検討してきたわけではありませんが,それは議論してこなかったというよりは,年齢の部分で議論がまとまらず,その先に行くことができなかったというところかと思います。今回,最終的な中間試案をどう取りまとめるかはもう少し検討が必要だろうと思いますが,甲,乙,丙で年齢がかなり違ってきますので,乙や丙を前提として,従来の養親の方の年齢要件についてはそのまま維持するということで当然によいのかといった点が問題となるだろうと思います。親子関係は多様性があるといっても,これについては,やはりいろいろな考え方があるのだろうと思います。その部分について御意見を伺いたいということと,恐らく宇田川幹事の御意見というのは,だから年齢要件を設けろということだけではなくて,年齢要件を設ける,設けないということも,少なくとも中間試案の対象とすべきではないかということも含まれていたのかなと思います。この辺りについて御意見を伺えますでしょうか。 ○岩﨑委員 ものすごく単純なことで言えば,養親となる最低年齢が25歳と今,決められています。そうすると,25歳はあけなければいけない。25歳を最低ゼロ歳だと考えてのことだと思うのです。ゼロ歳の子供を引き受けるとき,養親となるべき人が25歳。 ○窪田部会長代理 現行法を前提とすると,恐らく5歳と25歳の方の組合せだろうと思います。 ○岩﨑委員 いや,だから,その段階であってもです。例えば,だから10歳の子供を養子にしようとする人は,少なくとも,25を足すから35歳以上でなければいけないわけです。ただ,もう少し上限で言えば,私たちは親子の最大年齢差を40歳と決めました。40歳というのは,子供が20歳になったときに親が60である,今は65歳ぐらいが定年になりますから,成人したときに,20歳というのはまだ大学生ですから,親のすねをかじっているときに定年になって,その後どうできるかということも考えないといけないのですけれども,子供が親を介護することも考えると,最大年齢差を,例えば40ないし45歳という形を基本的に置くというような形はとれないですかねと。 ○窪田部会長代理 案としては十分にあり得ると思います。年齢差要件について下限,上限,あるいは両方とも設けるという考え方もありますし,年齢を何歳にするかというと話がややこしくなりそうですが,少なくとも下限は設定するけれども上限は定めないという選択肢,それから,下限は定めずに上限だけ定めるという選択肢は恐らくないのだろうと思いますが,それから,一切設けないという選択肢が考えられるだろうと思います。その辺りについて御感触を伺いながら,中間試案として出せる程度の取りまとめがもしできるのであれば,その方向で考えていきたいと思います。 ○床谷委員 私の意見は以前に申し上げたとおり,個別のケースで違いますので,余りはっきりした線を出す必要はないのではないかということと,特別養子縁組が新しい家庭での養育を基本的にはするということですので,余りにも年齢が近いというのはおのずと裁判所が除くだろうという信頼の下で申し上げております。今回の場合は置かないということで言い切っていますけれども,置くことも検討の余地はあるというようなことは当然,書いていただいて,前に頂いた比較表の中に最低年齢と最高の幅というのが書かれてあって,特に連れ子養子の場合は特例を置いている国もありますので,それでも10歳ぐらいはあいていないといけないというところが西洋の考え方だと思うのですが,アジアの場合は逆に,また違う発想で年齢差を考えていますけれども,国によっては年齢差をきちんと置くことは憲法違反だという判断をしているところもあるように見ていますので,少しこの点は慎重に検討された方がよいかと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。恐らく,裁判所を信頼したいという気持ちに対して,宇田川幹事からは信頼されても困る,具体的に判断するときにやはり年齢差要件を客観的に示してもらわないと判断できないという御意見だったのだと思います。その点も含めて,いろいろな方の御意見を伺いたいと思うのですが,いかがでしょうか。 ○棚村委員 目安としてそういうものがあるといいという点については,裁判所としては確かにそうだろうと思います,判断する側で価値観だとか親子観みたいなものがある程度多様化して,判断にばらつきがでてしまうのも拙いかもしれません。ただ,床谷先生の方がむしろ詳しいと思うのですけれども,海外を見ると,子供がないとか死んだ場合とか,親が行方不明とか,かつてそういう要件を課していたところが,だんだんそういうのが撤廃されたり,それから,年齢差要件もかなり厳格に要求していたのが緩やかになっていったり,同性のパートナーが,例えば特別養子みたいなもの,もちろん生殖補助医療も使えるというふうなことになってきたときに,やはり親子って何なのかということが問われて,むしろ特別養子の場合も,それを利用して,適合性とか適格性とかマッチング,そういうようなもので,多分,踏み込んだ判断とか何かをするというより,本当にいい環境の下で親子関係が形成されているのかと,生活が安定して営まれているのかということが非常に重要で,それが何か別の目的であったり,何か危険な面があれば,積極的に将来を占うというよりは,何か問題はないかということを裁判所はやはり見て判断していく傾向にあると思うのです。そのときに,余りにも年齢差が近かったり,年齢差がなくて,それで将来に親子関係の形成に不安があれば,むしろ子供の利益に本当になるのだろうかというところで裁判所としては判断をしてもらうほかないのかなというのが,私の今の段階の考えです。 ○窪田部会長代理 今の点について,特に裁判所の方から御意見というのがあれば伺っておきたいと思います。 ○水野(有)委員 東京家裁の水野でございます。多分それぞれの研究者の方が正義をお持ちで,その正義から見るとおのずと明らかなのだと思うのですけれども,ここで年齢差についてこういうポリシーで決めてほしいというのまで決めていただければ,多分できると思うのですが,それも決めないと,やはり少し難しい。例えば今,棚村先生のおっしゃった,ともかく子の福祉にとっていいかどうかだけを考えてもらえばいいと決めていただければ,それはそれでよくて,余り年齢差ではなくて,本当にきちんと保護してくれるか,例えばお父さんの方は年が大分上でお父さんらしくて,お母さんの方はすごく近いけれども,その二人全体として見れば親として機能しているということも,率直に言ってあり得ると思いますし,また,特殊な例であれば,これもなかなか両説あり得るなと私が思ったのは,虐待されたお子さん同士で,お姉さんが年上のお父さんと結婚して,弟を子供として引き取りたいとかいうときに,では,果たしてそれをどう考えるのかとか,何といいますか,結構ポリシーに絡むことでして,そのポリシーになることを白紙委任されると困ると。   こういう方向性で考えてほしいというものが出れば,それはそれで,例えば年齢差に関してはこれこれにおいて考慮するとか,どういう表現か分かりませんが,少し関連して違うところも言わせていただくと,先ほどおっしゃった,少し戻るのですが,甲案で出ているし,今後,丙案でも出るかもしれない「特別の事情」というところに関しても,皆様がおっしゃっていることそれぞれは分かるのですが,結局この法律としてはどの「特別の事情」を採ったのだろうかが分からないと,なかなか裁判所も判断し難いので,ある程度開かれた要件にならざるを得ないことがあり得るということは私どもも承知しているのですが,できましたら方向性とか考慮要素とか,それをできたら法文に,できなくとも法制審でですかね,ある程度,方向性を出していただくと,できるだけ安定した判断ができて,国民の皆様に御迷惑の少ない利用しやすい制度になるかと思いますので,どうかよろしくお願いいたします。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。具体的な年齢差要件というよりは,やはり年齢差要件があればその方がいいのでしょうけれども,そうではないとしても,何をもって判断するのかということについて何らかの形でやはり示して,それが共有される必要があるという御指摘で,非常に重要な御指摘だったかと思います。この点も含めて,事務当局で少し案を検討していただきたいと思いますが,事務当局の方から,第1の特にこの点について確認しておきたいということはございますでしょうか。 ○山口幹事 年齢要件のところの,1ページで申しますと丙案というところがありまして,これまでの本日の議論を踏まえますと,丙案の(1)を原則15歳,例外18歳というふうな形に改めようと思っております。ただ,その場合に,なぜ15歳なのかという説明を補足説明のところに書かないといけないということがございまして,その辺りについてもう少し,床谷先生,藤林先生,岩﨑先生にお聴かせいただければと思うのですが。 ○木村幹事 私もずっと疑問に思っていたのですけれども,確かに年齢であれば,乙案と丙案の間の15歳という年齢が置かれるのは分かるのですけれども,なぜ15歳という年齢が乙案の例外としては全く認識されずに,丙案の例外として15歳が…… ○窪田部会長代理 丙案だったら,改めれば原則が15歳になるということですよね。 ○木村幹事 はい,乙案の13歳という年齢の内容を15歳に上げるという考え方は,およそ採ることはあり得ないということですか,理論的には。 ○窪田部会長代理 乙案は13歳と15歳ですよね。13歳を15歳に上げて。 ○木村幹事 私の理解が。先生方が,取りあえず15歳という年齢を基準にされていると私は受け取って,乙案は原則13歳で15歳となっていますけれども,乙案の説明の趣旨のところの趣旨自体は維持したままで,15歳になるという考え方はおよそあり得ないということをお聴きしたかったのですけれども。意味が分からないですかね。 ○倉重関係官 恐らく質問の御趣旨というのは,請求時に15歳以下であればいいというような,ある意味,乙ダッシュみたいなものが考えられないかという御指摘かと思うのですが,我々どもで検討した段階では,やはり子の同意を要するかどうかで線引きをするだろうというのが乙案の基本的な発想で,子の同意を要するかどうかというのを基準にするのであれば,それはやはり成立時において15歳に達しているかどうかで判断しなくてはならないだろうというのがまず最初にございまして,ということで,乙案については成立時15歳というのをスタート点にして作った案ということでございます。したがいまして,その発想がそこにございますものですから,請求時15歳にするというのは乙案の基本的なコンセプトとは異なるものになるのかなと理解しているところでございます。 ○木村幹事 すみません,私の理解が。4ページの乙案の説明のところだけを読めば,およそそういうふうな形で15歳であるということの説明がなかったので,取りあえずこの考え方を前提に,プラス養子の同意の話をされているというふうなイメージで受け取っていたのですけれども,今の倉重関係官の御意見とすれば,そもそも同意の話で乙案と丙案が明確に分かれるということなのですか。 ○窪田部会長代理 かえって混乱しそうな状況になっていると思うのですが,私自身の理解では,床谷委員から出ていた案というのは,丙案において,ただ18歳未満となっているけれども,そうではなくて,むしろ15歳,18歳というのを甲案に沿うような形で,15歳という年齢を原則としつつ18歳まで例外を拡張するという考え方が採れるのではないかという御意見だったと理解しております。ですから,木村幹事がおっしゃるような形での乙案との連続性というのを,考えれば考えられるのかもしれませんが,恐らく今まで出ていた案はそうではないのではないかと思います。   その上で事務当局からは,では,15歳原則とするのはなぜなのだという,そこの説明を考えてくれというのが出ていたとは思うのですが,それについては,私の方で発言するのが適当かどうか分からないですけれども,15歳未満の場合であれば代諾養子というのが普通養子の制度ではある中で,代諾養子に代わるような形での言わば後見的な仕組みとしての特別養子制度の15歳未満というのを考えるというので一応,説明は付くのかなというという気もします。床谷先生,今のような答えでよろしいでしょうか。 ○床谷委員 私もほぼ同じ考えです。15歳未満の場合は,代諾ということは,要するに自分の判断だけではない,保護が必要な年齢ということなので,特別養子も今でいう要保護性という言葉,広い意味で言うと,その年齢の子供を対象とするものとして選択肢として置くと,そこから先は特別な事情がある場合に限って認めていくと,ただし,飽くまで未成年養子という幅にはなるだろうと。ただし,私の場合は申立時にしていますので,これが申立時だと成年になるではないかという御批判はあるわけですから,亀甲で「成立時に」と入れることはあり得るかとは思います。 ○山口幹事 ありがとうございました。木村幹事に御指摘いただいたので,せっかくですから少しおさらいしておきたいというのと,補足説明を補足したいというところがあるのですけれども,4ページの8行目を御覧になっていただきますと,今改めて読み返しますと非常に言葉足らずだなと思っておりますが,乙案というのは,まず,①で平成34年4月以降に18歳になるということがありますねと,②で,特別養子制度の目的というのは養育ですねと,そうすると一定期間の養育期間は必要だということで,言わば18マイナス2,3年かなと,養育期間を2,3年と捉えますと,18マイナス2,3で15,6歳かなとなりまして,それで③のところで,養育期間のスタートまでに家庭裁判所での審理に一定の期間がかかるでしょうと,これは大体,最長ですと2年ぐらいかかるのかもしれないと考えますと,15,6マイナス2ぐらいと考えると13,4ぐらいだろうというところで,13というところを導いているところがあります。   今,床谷委員からも御指摘がありましたように,15歳未満と考えますと,正に15歳未満を,成立時を亀甲括弧で入れれば何とかなるのかなとは思うのですけれども,反面,成立時を15歳とするだけでは,例えば,かなり15歳に差し迫ったときに申立てがされると,審理を大急ぎでやらないといけないとかとなって,かなり無理が生じてしまうというところがありますので,成立時を基準とするのはかなり難しい問題もあろうかと思っています。そういう悩みの上で13歳ぐらいとしておりまして,私から申し上げるのも変なのですが,丙案の原則年齢を13歳未満とするというのはいかがでしょうか。 ○岩﨑委員 18歳未満まで。 ○山口幹事 原則年齢を13歳未満としまして,例外は18歳というのが丙案だとするというのは説明はしやすいのかなと思うのですが,いかがでしょうか。 ○岩﨑委員 なるほど。 ○窪田部会長代理 甲,乙,丙というのをだんだん減らしていこうと思ったら,次に丁が出てきて戊が出てくるということにもなりそうですが,今の部分も含めて,恐らく亀甲括弧でどこまでを入れるのかというのは今ここでは簡単に決まらないだろうと思いますので,できるだけ今出た御意見を踏まえながら,次回,もう一回,中間試案の取りまとめまでにチャンスがございますので,そこで何とか最終的な取りまとめができるような形で事務当局に工夫してもらってと思っております。木村幹事から御指摘を頂きました部分は,どう組み合わせるかというよりは,むしろ乙案の説明の部分に少し問題があるようにも思いますので,その点についても検討をお願いできればと思います。   それでは,一旦休憩を頂戴して,後ろの時計で25分から再開させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。           (休     憩) ○窪田部会長代理 それでは,時間になりましたので,法制審議会の方を再開させていただきたいと思います。   後半の方では,「第2 特別養子縁組成立の審判手続の見直し」について扱いたいと思いますが,これは三つのブロック,「1 児童相談所長の利害関係参加」,それから14ページの「実親の同意の撤回を制限する方策」,それから17ページ以下の「特別養子縁組の成立に係る規律の見直し」からなっていますが,この順番に沿って進めていきたいと思います。   最初に,1の「児童相談所長の利害関係参加」について,ご説明をお願いします。 ○吉野関係官 それでは御説明いたします。   第2の1は,児童相談所長の利害関係参加に関する規律でございまして,児童相談所長は,家庭裁判所の許可を得て,特別養子縁組の成立手続に参加することができることとするものです。   児童相談所長の利害関係参加につきましては,部会資料3におきましては,「中間決定を活用する案」の中に記載をしておりましたが,特別養子縁組の成立手続について,どのような変更を加えたとしても,養親となる者の負担を軽減する観点から有益であると考えられましたことから,独立した論点として取り扱うこととしたものでございます。   ただし,資料作成後に改めて検討いたしましたところ,第2の3の17ページ以降の部分で甲案を採用した場合には,児童相談所長は第1段階目の手続の申立権を有することとなりますので,当事者となる資格を有する者に該当することとなり,現行の家事事件手続法第41条及び第42条に基づきまして,当事者参加及び利害関係参加のいずれも可能であるのではないかと考えるに至りました。したがいまして,17ページの3における甲案を採用する場合には,この方策は採用しないことになるものと思われます。   私どもの考えが誤っていないといたしますと,本方策につきましては,甲案を採用しない場合の前提として御意見を頂きたく存じます。よろしくお願いいたします。 ○窪田部会長代理 これについては,3の部分の説明がなされないと。 ○山口幹事 後ほど,17ページ以下の説明で,改めてもう一度させていただこうかと思います。 ○窪田部会長代理 ちょっとすみません。今御説明を頂きましたけれども,3の部分の説明を踏まえた上で,この1を扱った方が簡単だろうなと思いますので,今伺ったご説明については,一旦保留した上で,先に2の方に進めていただくということでいかがでしょうか。   では,倉重関係官の方から,2の「実親の同意の撤回を制限する方策」を御説明いただけますでしょうか。その後,3,1という順番で扱っていくことにしたいと思います。 ○倉重関係官 それでは,第2の2について御説明いたします。   第2の2は,実親の同意の撤回を制限する方策に関する規律でございまして,基本的には,前回の部会資料と同様のものとなります。   1点,前回部会資料で設けました「特別養子縁組に関する実親の同意は,次に掲げるいずれかの方式によってしなければならない」との規律につきましては,本部会資料では亀甲括弧を付しました。この規律は,現在は特段の方式が定められていない同意を要式行為にしようとするものでございますので,特別養子縁組成立の要件を現行法よりも加重する側面もございますことから,このような規律を設けることが適切であるかどうかについて,改めて御審議を頂きたいという趣旨でございます。   これに加えまして,これまでも御審議いただいております各論点,すなわち,同意の撤回を許す期間の長さをどのように定めるか,審判申立前の同意の撤回を制限する場合には,白地同意をどのように扱うか,申立前の同意を受ける公的機関としてはどこが適切かといった点につきましても,引き続き御審議をお願いいたします。   以上でございます。 ○窪田部会長代理 どうもありがとうございました。   それでは,ただいまの御説明を踏まえまして,実親の同意の撤回を制限する方策について,御意見を伺えればと思います。 ○棚村委員 同意についての公的機関に関する点ですけれども,例えば,児童相談所に対する同意,特にケースワークの中での実親の同意をとるといった場合に,記録ですとか,そういうものをどういう形で,どんな説明をして,どんなふうに取るのか,書面でどういう形で残すのか,こういうことについての様式の統一とかいうことまで考えておられるんでしょうか。   当然,公正証書の場合も同じですよね。それから,家裁で行う場合も同じことが起こると思うのですけれども,そういうようなガイドラインというようなものがきちっと,事前の説明で何を話しするのか,そしてどういう形でそれを記録として公的に残していくか,そういうようなことについて,一応お考えの上で御提案をされているということだとすれば,少しお話を聞けると有り難いと思います。 ○窪田部会長代理 今の点について,いかがでしょうか。 ○山口幹事 なかなかこの,仮に児童相談所という選択になった場合に,どういう説明をして,どういう書類を受け取るのかというところまで想定した上で提案しているというわけではございませんで,まず,順番どちらがいいのか分からないんですけれども,まずは,どの機関がいいのかというところが固まってから,細目を詰めていきたいと考えているところでございます。 ○棚村委員 私自身が,家庭裁判所が実親さの同意を取るときに,調査官なんかがどういう説明をして,どんな形で取るんだろうかということについては,ちょっとお話も聞いたことがあったし,ヒアリングをしたこともあったので,分かりやすかったわけです。しかし,公証人とか児童相談所ということになると,それぞれ役割や専門性とか御経験とかが違うので,しかもどういう場面で,どの段階で誰が誰と来られて,誰がどういうふうに説明を受けて,どんなものを取るのかという,ちょっとイメージが湧きにくかったものですからお尋ねしました。特に児童相談所については,ちょっと藤林先生とかにお聞きすればいいと思うのですけれども,いつも,やはりこの2段階手続の問題のときも出てきますけれども,児童相談所は,児童虐待でも,福祉的に,ケースワーク的に,むしろ当事者に寄りそって支援しようという立場と,それから強制的な措置を採り実親から子を引き離すとか,実親の同意を取るときも,むしろ中立にといった場合でも,置かれた立場によって,片方で握手を求めて,もう片方で切りつけるという,その二つの役割が非常に大変でコンフリクト,利益相反を起こさないか心配になります。この間の目黒のお子さんの虐待死の事件のときも,児童相談所の家族を支援をするという立場と,それからもう一つは,やはり御家族に対して敵対しても子供を守らなければいけないという,その二つの立場が同じところでさせられるということの制度的な矛盾というか,そういうことへの御指摘や批判があるわけです。   このように見てくると,児童相談所が実親の養育支援をしたり,親子再統合を図る立場と,養子に出して親との縁を切るという同意をとり,養子になることの縁組の支援みたいなものをどういうふうに調和させるのかということによっては,本当にそれがふさわしいのかとも考えてしまいます。つまり,児童相談所のケースワーク機能の中で実親からの縁組への同意を得ることと,実親の家庭復帰の支援とで対立してしまわないか,むしろ,そういうことは,岩﨑先生とか藤林先生にお聞きした上で,もしそれが実親との関係を終了させて特別養子縁組ということへのカウンセリングとか,同意を取るための適切な支援ができているということであれば,それを公的な記録として残すことで,それに一定程度効果を認めていくということはあると思うんですけれども,その場合,やりづらくないのだろうかということも含めて,ちょっとお聞きしたかったものですから。 ○窪田部会長代理 久保野幹事,今の関連ということでよろしいでしょうか。 ○久保野幹事   ちょっと,すみません,言わせていただくと,今の,何を事前に説明して同意をしてもらうのかということと,少し関係すると思うんですけれども,この子については特別養子を行うことが適切なのだということ,後の論点で一般的必要性要件として挙げられていることについては,この段階で,特に(2)のような同意を考える場合に,同要件の存否については,どういう前提になるのか,関係するのかしないのかというところも含めて,関係するように思いましたので,質問させていただきます。 ○窪田部会長代理 恐らく,両者関連する部分もあると思うのですが,この部分については,まず事務当局の方からお考えをお聞かせいただくということでよろしいですか。 ○山口幹事 久保野幹事から御指摘がありました一般的必要性との関係ですけれども,私どもの頭の中では,ここは一般的必要性とは切り離して,もう純粋に同意の話だけに絞ってお願いしようという頭でおりました。 ○窪田部会長代理 もう一つの棚村委員から御指摘あった公的機関といっても,かなり性格の違うものがあるということについて,まず事務当局のお考え,あるいはこの点を検討としてほしいということがありましたら,その点についてご確認をお願いできればと思います。 ○山口幹事 棚村委員御指摘の点,正に私どもも同感でございまして,児童相談所長はほかの,もし第3の1の手続を導入するとかとなりますと,言わば当事者みたいな形で,場合によっては実親と対立的な立場に立つということにもなりますので,そういう方に,一方では同意を,対立的に同意を取るのか,仲間として同意を取るのかという辺りも非常に仕組みにくいと思いますし,そういう意味ではなかなか,児童相談所という選択肢は難しい選択肢かなと思っているのが,率直なところでございます。 ○窪田部会長代理 これについては,藤林委員あるいは岩﨑委員から御感触のようなものを伺えればとも思うのですが,いかがでしょうか。 ○藤林委員 事務当局の言われるとおりかなと思うんですけれども,日常的に実親から特別養子縁組の同意を取るというのは,通常ケースワークの中でやっているわけなんですが,その同意とこの同意は全然質が違うのと,やはり非常にグレーなケースがあったときに,では,同意をしていただかないのであれば,我々が申し立てますというふうな,そういうのはいかがなものなのかということを考えますと,その中立性という観点で,必ずしも児童相談所がこの場合の公的機関にならなくてもいいのではないかなと思っているところです。 ○窪田部会長代理 磯谷委員,どうでしょうか。 ○磯谷委員 磯谷です。   私も悩ましい問題だとは思うんですけれども,ちょっといろいろ考えて,御提案としては,都道府県にしてはどうかというのが提案です。   まず,児童相談所の難しさというのは,先ほどからも出ているように,正に個別のケース,具体的なケースを扱っているというところで,やはり中立性が問題になるということは当然だと思います。一方で,家庭裁判所という選択肢なんですけれども,これはもちろんあり得ない選択肢ではないと思ってはおりますが,いろいろな意味で融通が利きにくいところ,水野判事には申し訳ありませんけれども,率直に言って,融通がなかなか利きにくいところだと思うんですね。   例えば,都道府県の本庁という,本庁機能のところと仕組みますと,多分いろいろな工夫ができるだろうと思っています。例えば,第三者を利用して,第三者が聞いて,その結果を報告をしてもらった上で,それを都道府県知事が承認といいますか,そういうふうな形もあり得る。それから,あと,出張とか,要するに,こういうふうな親御さんというのはなかなか,来てくださいと言っても来てくれなかったりとかいうふうなことがありますけれども,で,また,家庭裁判所の調査官といってもなかなかそれが,例えば,やはり土日だとなかなか難しいとか,夜間はっていう話になりかねないところ,率直に言って,その辺りは,都道府県であればある程度機能ができるだろうと。そういうふうに行政という部分もありますので,かなりいろいろな工夫で,先ほどの中立性うんぬんといったところも,ある程度払拭できるんではないかと思います。   裁判所となりますと,多分,少額ながらやはり印紙代を払えとか,郵券を納めろとかいう話にもなってきかねないですけれども,行政だとそういうこともございません。   ただ,もちろん懸念といいますか,難点はございまして,現実には今,例えば,児童福祉法28条の申立て等については全て児童相談所に権限が委任されているということになっておりますけれども,少なくとも児福法の建前では,例えば,特別養子についての,先ほど藤林所長からもお話があったように,業務としては都道府県の業務ということになっておりますし,また,そういった措置についても都道府県が行うということになっていますので,規定上はやはり若干難点があることは理解いたしますけれども,ただ,実務上はかなり工夫ができるんではないかということで,私としては,都道府県というのも是非選択肢として考えていただければと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   では,中間試案において,公的機関という形で言われても,多分実際のイメージはできないということだろうと思います。中間試案としてパブコメに付すためには,やはり具体的にどういう機関を想定しているのかというのを示さなければいけないのだろうと思いますが,その中で,家庭裁判所,それから今,都道府県という形で,児童相談所については,むしろ少し慎重に考えた方がいいかもしれないという御意見だったかと思います。   それ以外のものも含めて,いかがでしょうか。   浜田幹事どうぞ,その後,宇田川幹事でお願いいたします。 ○浜田幹事 浜田です。   私は,やはり家庭裁判所にお願いすべきことではなかろうかと言おうと思っておりましたら,今都道府県というなかなか魅力的な御提案を頂いて,もう一度考え直さねばならんと思いつつ,最初に思っていたことを申し上げます。   もう児童相談所がやはりふさわしくない,ふさわしくないと申しますが,やはりお立場を考えると,そこは難しいと言わざるを得ないと思います。   ついでながらに申し上げますと,やはり公証人さんは,これは都市部の公証役場に限られるかもしれませんが,何人もの公証人さんが同時に同じ部屋にいらして,極めて効率的に事務を進めていかれるわけですね。そういった中でこのような,きっと時間もかかったり,お母さんも沈黙してしまったりとかいうふうなことの同意を取り付けるという作業は,やはりなかなかに難しかろうと考えております。   そういった中での,消極的な選択というわけでもないんですけれども,家庭裁判所でありましたらば,先ほどの融通の利かないという話とはちょっと別の話になりますけれども,書いていただいているとおり,例えば,調査官を活用いただく等によって,きっちりと聞くべきことを,きちんとかけるべき時間をかけて聞いていただくということも可能であろうと考えますと,やはり家庭裁判所が最適であろうと,つい先ほどまで確信を持っておったところでございます。   あと一つ,ちょっとどこにあったかぱっと出てまいりませんけれども,手続的にちょっと重たくなる,この亀甲括弧に入っているように,こういうような方式に限って,いずれかの方式によってしなければならないというふうな規制をはめると,手続的に重たくなるのではないかというふうな危惧が語られたかと思いますけれども,ここだけ取り上げると,それはそういう側面あるかもしれませんけれどもと,それは,この同意について,今までなかったような新たな大きな効力を認めるということであるわけですので,それの反面で,手続が若干重ためになるということは,ある意味致し方ないということではないかと考えるところが一つ。   あと,前回でしたか,裁判所ってなかなか人がひょいっと行きにくい機関であるというふうな御指摘もあったかと思いますけれども,ちょっと私も現実があんまり分かっていないんですが,恐らくは,実際に同意をしに出向こうという話になると,親御さんが親御さんだけで向かわれるということはあんまり想定できないのではないか。そこには,恐らく児童相談所の方であったり,民間団体の方とかが,一緒に行こうよと,いついつ迎えに行くからねとなるのではないかと想像するわけでございます。そういたしますと,なかなか足が向きにくい機関だというところは,さほど気にしなくていいのかではないのかなと考えておるところでございます。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。 ○宇田川幹事 今,浜田幹事からも御指摘があったところで,こちらの今日の資料4の14ページにも記載されているんですけれども,まずお聞きしたかったのは,結局今回,これまで特段の方式は定められていなかった同意を要式行為とするということで,浜田幹事からの御意見もあったんですけれども,実務上,児童相談所やあっせん団体の方の方が,これを要式行為にして,これまでスムーズにやっていたものが,スムーズに本当に行くのかというところを,もう少し事情としてお聞きしたいなと思っているところでございまして,あと,2段階の手続もこの次に議論を予定されているところですけれども,それを設ける場合に,果たしてどこまでこの制度が必要なのかということも,併せて議論していく必要があるのかなと考えています。   裁判所に実親の方が申立てをしないといけないということですと,先ほどもありましたように費用の問題もありますし,精神的な負担というのもあるんだろうと思いますので,そういうことからも,本当にこういう要式行為に限ってよいのかということは,御議論いただく必要があるかなと思っております。   それと,以前に,岩﨑委員から御紹介していただいた支援の実情があったかと思うんですけれども,実親からの同意の取得に当たっては,その前提として,子を育てられない実情を聴取した上で,ただ,こういうサポートがありますよというような提案をして,それでも駄目なんですかというような,そういうカウンセリングをしながら,実際に育てるんですか,それとも,やはり育てられないということで同意をするんですかというような,実親との関係でのやり取りをされているということも御説明いただいたかなと認識しておりまして,そうしますと,この同意をするかどうかというところについても,そういった,どういう支援をするかという,カウンセリング的な部分のところと切り離すことが本当にいいのかというところに,どうしても疑問を持つところでございまして,裁判所の方ではこういったカウンセリングというようなことはできませんので,何か同意に当たって代替手段のアドバイスをしたり,同意の撤回があった場合に,引き取りに向けて何かサポートをしたりすることはなかなか難しいとは考えておりまして,そこら辺も機動的にできる公的機関が望ましいのではないかということで,今,磯谷委員からも御指摘のあった都道府県というのは,我々にとっても非常によい選択肢であるかなとも捉えたところでございます。   それとあと,2段階手続を採用する場合に,1段階目の審判において,同意の有無について判断をすることになるということからすると,その際,実親が同意の有効性について争うということもあり得て,そうすると,なかなかこのような事前の手続を設けても,後に同意が覆されるということを防ぐというニーズには十分応えられないということもあり,同意をすべからく要式行為とした上で,更に同意について司法判断を二度にわたって行うというようなことというのは,手続が重くなって,なかなか合理的ではないのではないかなとも感じるところではございます。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   磯谷委員は,家庭裁判所に代えて都道府県だったのではなくて,家庭裁判所とともに都道府県ということだったのかと思ったのですが,そうではなくて,むしろ都道府県でしょうか。 ○磯谷委員 別に裁判所と何か口裏を合わせているつもりはないのですけれども,私としては,だから,2の(1)の方は,これはもちろん裁判手続の中ですから裁判所ということになりますが,(2)の方については,率直に言って都道府県で,本庁機能の中でいろいろ工夫ができるのではないかとお話ししています。 ○窪田部会長代理 私が誤解しておりました。   ただいま,浜田幹事,宇田川幹事からも触れられた点なのですが,14ページ,2の4行目のところから亀甲括弧になっている部分に関して,要式行為とすることをどう評価するかということで,浜田幹事からは,むしろ要式行為とするとしても,その後やはり撤回制限というような形の大きな効果を与えるものなのだから,むしろトータルとして見れば,別にハードルが高くなったというよりは,こうしたものでもいいのではないかというご意見がありましたし,宇田川幹事からは,むしろやはりこういうふうな形での同意を求めて,かつ,同意がひっくり返されることはないとはいっても,多分同意の有効性という形で争われるという意味では,紛争の蒸し返しみたいなことは多分避けられないかもしれない。そうだとすると,ここまで重く仕組む必要があるのかということで,やや慎重な御意見だったかと思いますが,これについても,できるだけ多くの方の御意見を伺えればと思っていますが,いかがでしょうか。 ○岩﨑委員 私は,都道府県というのは誰がするんだろうと思います,結局。皆,里親の認定も都道府県,知事の認定になっているんですけれども,やっているのは児童相談所なんですね。本庁の人たちって,やはり日常の業務が非常に事務的なことが多いので,よほど,やはりそういうことに慣れた人を長く置いていただけるのだったらいいのですけれども,都道府県というのは,人事がよく動きます。児相でさえ,あんなに転々と変わるのに,都道府県の役人さんで,この仕事を長く,これはやはり経験が要りますから,長く勤めていただくことによって信頼関係ができてくるというところをとると,まだ児相の方がましだと。児童相談所がきちんとソーシャルワーカーとして親と,だって,最初に訴えてくるのは児童相談所なんですから,この子供を預かってくださいとか,育てられませんという申立てがあって,その先をどう見越していくかということだと思うんですね。   私は,施設に預かるまでに,この子供を施設に預かったら,あなたが親として最低限度なさらなければいけない子供との信頼関係を継続する行為として,例えば,最低月に1回は面会に来られますか,年に数回外泊をして,親子がともに暮らすようなことがやはりできなければ,子供にとって,あなたと別れた悲哀を含めてずっと施設で残っていくというのは,とてもしんどいことなんですよという説明が,しっかりされるべきだと思っているんですね。それが,施設とも協働しながら,親にきちんと引き取ってもらえるような支援が,水野先生がおっしゃる支援がしっかりあって,なおかつ,それで育てられない状況にあるのを,児童相談所がやはり3年も面会に来ていないとか,全然連絡をしても会えないとかという親に対して,ある意味では児童相談所として子の福祉のために養子に出すという,その決断を含めて,1段階目の申立てをして戴く。同意もそうであって,その児童相談所が付き添って,実の親が裁判所に呼ばれたときには一緒に行く。   私は,何で実の親が申立てをするというのがないのかがよく分からなくて,実の親が養子に出したいと悩んで結論を出したとき,では,そのことを今,裁判所に行って,きちんとそれを決めましょうと。もちろん,あなたが決心した後翻すことが許される期間も設けられています,審判に対しても抗告ができます,だけど,今あなたが,これだけ私たちが支援の材料を提供して,なおかつ,養子に出したいとおっしゃるのなら,それは,同意をしたという申立てを裁判所にしましょうと持って行くことができやすいような気がします。私のところが民間団体として引き受けた場合には私たちが,児相が預かられた場合は児相のワーカーが所長名でそれを申し立てるという,やはりそのスタイルが一番,児童福祉にかなっているようには思うんですけれども,どうでしょうか。 ○磯谷委員 では,1点だけ。   今,岩﨑委員からお話いただきましたが,都道府県であれば,先ほどもちょっと申し上げたように,いろいろな形で仕組むことができるだろう。例えばですけれども,それこそ岩﨑委員のような方に委託をして,そして,岩﨑委員と事務方の職員とで一緒に行って説明をする,そして,そこで十分な同意が確認できれば,そこのところで同意を得るとかいうふうな形も可能だろうと思うので,そこは,本当にいろいろ仕組めるだろうと思います。   あと,都道府県の立場ですけれども,確かに規定上は,児童福祉法上は都道府県の役割ということにはなっているものの,一方で,児童福祉審議会などを都道府県では置いておりまして,児童福祉審議会というのは中立の機関ではないのですけれども,しかし,一方で,児福法上,児童相談所の業務の適正について助言をしたりというふうなこともやっているので,やはり本庁の方というのは,少し児童相談所とは違った立場で機能をしています。ですから,そういう意味も含めて,この同意を得るということは十分考えられるのではないかと思っております。 ○岩﨑委員 弁護士はどうなんですか。 ○磯谷委員 そういうものを含めて,仕組めるだろうと。 ○藤林委員 本庁が行うとしても,多分多くの都道府県の本庁は,児童相談所に事務委任してしまうのが関の山ではないかなというふうな気がして,結局児童相談所がするのかなという気がするんです。   それはちょっと置いておくとして,児童相談所が行うことのデメリット,メリットを考えた場合に,やはり実親さんにケースワーカーなりにカウンセリング的に関わりながら,ずっとやり取りをしていく中で,特別養子に同意をしますと言われたとしても,それは,撤回制限の伴う同意という,ある期間がたてばもう後戻りできないんだと,非常に重大な決定だと思うんですね。これを,児童相談所との間でやり取りしていいのか,実親さんの覚悟というか決心を,もう一つ念押しする意味で,やはりそのことについての最終的な同意は,家庭裁判所というところでしっかりしましょうと,ケースワーカーが一緒についていきましょうと,書面も取り寄せましょうというふうな,やはりある面,伴走的な役割が,児童相談所ではないかなと思っています。   ただし,家庭裁判所は融通が利くと思いますし,今後も融通が利くのではないかと思っていますので,是非お願いしたいなと思っているところです。 ○窪田部会長代理 それぞれの機関について意見が出ていますが,久保野幹事,いかがでしょうか。 ○久保野幹事 機関については,私自身は,やるとすれば家庭裁判所がよろしいのではないかと思っていたところでして,その意見と,15ページに,前回,私,親権の辞任との関係を考えるべきだと申し上げて,余りはっきり趣旨を申し上げずに言ってしまって,ここに書かれていることとはちょっと何か違うことを考えて親権辞任を挙げたんですけれども,それがどのぐらいうまく説明できるが自信ないまま発言していて申し訳ないんですが,まず,家庭裁判所ということとの関係で言いますと,ここで言う(2)の同意というものがどういうものなんだろうというのが分からないなと思っている中で,前回の資料の中で,同意には,実親が親子を切るということの側面と,子供の利益について判断するという側面というのを考えることができて,子供の利益の方を考えることについては,特別養子縁組というのは,家庭裁判所が子供の利益を判断するという制度なんだから,そこに任せる仕組みになっているので,考えなくてよいといいますか,そういう方向の整理がされていたと思うんですけれども,そのように考えたときに,同意をして,あとは家裁が子供の利益を考えていきますよという段階に移るということは,自分が子供の利益について考慮する義務というのか責務というのか地位というのか分かりませんが,そうではなくなるということを示すものではないかという意味で,その比較を考えていまして,そうだとすると,辞任と同じものではないけれども,家庭裁判所ということにならないかというのが,まず1点目でした。   もう一つが,先ほど一般的必要性要件との関係を質問させていただいたんですけれども,一般的必要性要件と本当に切り離して,この同意を語れるのかというところを,もう少し,まず教えていただきたいという感じがありまして,恐らく実務的になさっているのは,やはりこの子は特別養子にふさわしいと判断して同意ということをなさっているのではないかという気がしまして,ところが,ここで,制度的には,先ほどのように切り離されたものとして仕組みますと,実態としては恐らく,実質的には一般的必要性要件があると見込まれるケースでやられるとは思うんですが,制度としては,(2)の同意がされて撤回はできなくなったけれども,実は一般的必要性要件が否定される場合があるということを想定して考えなければいけないとなると思いますので,そこでいうときの同意というのは,確かに親権者としての義務を免れることにはならないということなんでしょうけれども,では何なのかということを,考えなくてよいのかということが気になっています。   すみません,詰め切れていないので,そこまでの発言ですみませんが。 ○窪田部会長代理 久保野幹事からの御指摘というのは,(1)だったら,審判手続における同意なので,特別養子ということを含んだ上での同意というのがもう少し明確になっていけれども,(2)では,縁組成立審判の申立てがされる前の同意というのは,一体どういう意味の同意なのかという点も含めての問題提起ということでよろしいでしょうか。   特に,親権の辞任といったような形でのものと同質なのか,違うのかという点も含めて,それを詰めないと議論しようがないという部分があるのだろうと思いますがが,これについては何か,事務当局の方から何かありますか。大変に難しい問題提起だったのだろうと思います。 ○山口幹事 正に,非常に難しいですので,的確にお答えできるか分からないんですが,私どもの頭としましては,ある程度の割り切りみたいなものがあるということだろうと思います。今,久保野幹事から御指摘がありましたような場合には,もう同意があれば,同意はあるのねと,それとこれ,一般的必要性は別なので,御指摘のように,同意を取れたんだけれども,一般的必要性が結局認められなくて養子縁組がうまくいかないという場合も,そういうケースが生じることはやむを得ないという割り切りを,無意識のうちにしていたんだなと思っております。 ○水野(有)委員 ちょっと,今のことに関連してなんですが,宇田川幹事がおっしゃったことと重なるのかもしれないんですけれども,今の話とも重なるんですが,この同意を家庭裁判所が受けるといったときに,何を求められているのかが,実はよく私は分かっていなくて,例えば,本当にその人が同意したかどうか,何ていいますか,届出みたいなもの,ただ書面で同意しましたかで,はいというのだけでしたら,全く家裁でやる必要はないと。   ただ,おっしゃったように,前提のところをある程度調べて,こういうことはあるのか,ないのかというお話もするのであれば,家裁でやる意味はあるんですが,ただ,事件も起きていないときに一体何を聞けというのかというのもございまして,元々家裁でやってほしいという御提案には,何をどこまで求められているのかが分からないので,分からない以上,できるとは言えないというのが,私の個人的な感覚でございまして,分からないものはできない。   正直言って,単に真意かどうかの確認だけで有効,無効については一切判断しない,相続放棄のようなものを御想定されているのか,それとも,ある意味調査の先取りのようなものを御想定されているのかで,全く意味は変わってくると思いますので,その辺りも詰めていただいて,あと御提案いただければ,できることはするんでしょうし,できないことはできないと申し上げるしかないのかなと考えております。 ○窪田部会長代理 久保野幹事から御指摘があった問題ですが,非常に抽象的に答えると,この後,特別養子縁組が成立したら,その効果を甘受するということについての一般的同意なのだろうと思いますが,ただ,そうだと言いつつ,今水野委員からも御指摘ありましたけれども,そういった甘受するという意思について,真意であるかどうかという,相続放棄の申述の確認程度のものでよいのか,そうではなくて,そのことは,特別養子縁組が成立すると効果としてはこうなんだよと,そのときにはこうなるんだよということまでサポートして説明した上での同意ということまで求めるのかというのでも,かなり性格が違ってくるのではないかという御指摘だろうと思いますし,久保野幹事の問題点の提起もそこにあったのかなと思います。 ○久保野幹事 すみません。単に一言ですけれども,意見の方向性としましては,先ほど宇田川幹事から疑問があった点と重なりまして,なかなか実質的には一般的必要性要件とは切り離しにくいのではないかという感覚を持っておりまして,それが正しいのかどうかということは留保しますけれども,もしそうなのだとすると,後の論点についての議論で2段階の手続きが実現するのであれば,それとは別にこれを設けるということの意義については,疑問があるという意見に賛成します。 ○木村幹事 今の議論で,どなたにお聞きしたらいいか分からないんですけれども,(2)の中でも,審判申立前の話で養親を特定している場合と特定していない場合が書かれていますけれども,久保野幹事がおっしゃっているのは,基本的に両者を含んでいるのか,むしろ白地同意の場合の養親を特定していない場合における一般的必要性要件との話なのか,どちらかお聞きしたいと思います。 ○久保野幹事 正にそこも気づいたところでして,実は,白地である,白地同意が認められるかどうかという問題点は,養親を特定しないでの同意でいいかという文脈で,これまでは使われてきたと思うんですけれども,それとは別に,一般的必要性要件があるかないか分からない状態で,特別養子に同意をするということはどういうことなのかという問題が,別途あるのではないかというのが趣旨だと思います。 ○手嶋委員 重ねて同じような趣旨になってしまうかもしれないんですけれども,結局のところ,3でこれから議論をされることになるんだと思いますが,どのような審判の方式を採るのかということとの関係を抜きに,ここだけを独立に議論するのは難しいのではないかと思っておりまして,非常に形式的なところで言えば,この2の(1)の規定というのは,仮に3で乙案を採るということになりますと,これを別立てでこのように規定する意味がどこまであるんだろうかとも感じますし,それは,結局のところ,3の仕組みが不可争性はある程度前段階で確定をしたいという仕組みだとすると,それとこの2がどの程度分業することになるのかというところが,イメージしにくいというところがあるかと思いますので,御議論,どのような形でするのが合理的かというところを踏まえて,お進めいただけると有り難いなと思います。 ○窪田部会長代理 どのようにお進めしたらいいのか悩ましいところであるのですが,ただ,今まで御意見を伺っている中では,特に(2)に関しては,公的機関をどのように考えるのかという問題とともに,そもそも(2)のような仕組みというのを立てることの特に必要性でしょうか,そうした問題もあって,様々な議論が出ていたところだろうと思います。   今,手嶋委員から御指摘いただきましたように,恐らく3の問題と完全には切り離して議論するということ自体ができませんので,一旦この段階で2の論点については留保した上で,3に進めさせていただいて,必要があれば再度戻って議論するという形にさせていただければと思います。   それでは,3の「特別養子縁組の成立に係る規律の見直し」ということで,多分これが後半部分では本丸といいますか,天王山になるところだろうと思うのですが,これについての御説明お願いできますでしょうか。 ○倉重関係官 それでは,御説明いたします。   第2の3は,特別養子縁組の成立に係る規律の見直しに関するものでして,甲案及び乙案の2案を掲げております。部会資料3では,手続の見直しの方向性について,①案から④案までの4案を掲げておりましたが,今回の部会資料の甲案及び乙案のいずれも,前回の部会資料の④案である2段階手続を導入する案を基本とするものでございます。   まず,補足説明の1では,用語の整理を行っております。   部会資料3では,民法第817条の7の前半の要件を要保護性要件と呼び,後半の要件を必要性要件と呼んで,手続の在り方について検討しておりました。しかし,この点については,必要性の意味するところが明らかでないとして,同条の要件について改めて整理すべきであるとの御意見を頂きました。そこで,本部会資料では,民法第817条の7の要件を分析的に整理いたしまして,ある子供について,一般的に誰かとの間で特別養子縁組をする必要があるということを一般的必要性要件と呼びまして,その後,その子について,特定の養親との間で養子縁組を成立させることが,その子供の福祉のために必要であること,これを適合性要件と呼ぶこととしております。   その上で,一般的必要性要件と適合性要件とはそれぞれ独立に判断されるべきものであることから,これらの要件は同時に判断される必要はなく,段階的に判断されることが許される,こういった考え方を基礎としまして検討を行っております。   次に,補足説明の2及び3では,前回部会資料の①案から③案を採用しなかった理由を記載してございます。ただし,前回部会資料3において,①案としていました中間決定を活用する案につきましては,実は,本部会資料の乙案と近い部分もございますことから,今後の検討次第では,最終的に中間決定を活用する案に近い結論となることもあり得るものと考えております。   補足説明の4から6までは,甲案及び乙案について説明しております。   20ページの対比表,本日は別紙としてお配りしておりますが,こちらも併せて御覧ください。   甲案及び乙案は,いずれも特別養子縁組を2段階の審判によって成立させようとするものです。まず,1段階目で,一般的必要性要件並びに同意又は同意不要要件について審理をしまして,これが認められる場合には,子供について親権行使禁止及び認知禁止の効果を生じさせた上で,2段階目で適合性要件の審理をしまして,これが認められる場合に,特別養子縁組を成立させるという基本的な流れにつきましては,両案に違いはありません。   甲案と乙案の違いは,甲案では,1段階目の審判と2段階目の審判とを別個の申立てによる別個の事件で行うこととしておりまして,1段階目の審判については,児童相談所長に申立権を認めているのに対し,乙案では,養親候補者のみに申立権を認めておりまして,1個の手続の中で順次2段階の審判がされるということにしている点にございます。その結果,甲案では,児童相談所長は特定の養親候補者が見付かる前の段階で,1段階目の審判を得ておくことができるのに対しまして,乙案では,特定の養親候補者が見付かった後で,養親候補者において1段階目の手続を申し立てなければならないということになります。したがいまして,養親候補者を探す前の段階で,同意不要要件の問題をクリアしておきたいという実務のニーズにかなうのは甲案ということになりますが,一方で,1段階目の手続と2段階目の手続との連続性を確保するという観点からは,乙案の方が望ましいということになります。   甲案及び乙案については,多くの論点について検討を加えておりますが,可能な限り御審議にお時間を使っていただきたく,説明は概略的なものとさせていただきます。   以上でございます。 ○窪田部会長代理 どうもありがとうございました。   それでは,甲案,乙案ということで,前回より絞った形で案を提示していただいておりますが,これについて御意見あるいは御質問を伺えればと思います。 ○棚村委員 前もちょっとお話をしたのですけれども,甲案と乙案で整理をしていただいて,それで,最終的に一般的必要性要件みたいなことと養親子適合性要件というものを切り離して,分けて,それぞれ独立して判断をしていくということ,こういうきっぱりと分けられるのかというのがいつも疑問に感じています。それで,アメリカ法の動向をもう一度見てみるとTermination of Parental Rightsというんで,要するに,アメリカでも,児童の虐待やネグレクトがあるときに,実親の権利を終了させる手続という,第1段階の手続が確かにあります。それが,結局,児童相談所に当たるDCS,DCF(Department of Chilren’s Service;Department of Children and Family Services)というんですか,日本でいうと子ども家庭局みたいなところが,州のそういうところが介入をして,親子の再統合,実親支援を行うのか,それとも暫定的な後見,もうちょっと恒久的な養育をさせるための後見でいくのか,それとも,親族に養育委託みたいなのでいくか,あるいは,特別養子縁組という日本の断絶型の養子縁組でいくのか,そういうようなことについてある程度見通しを立てながら,それが必要だということになったときに,親権終了の手続をすることになります。   ところが,問題になってきたのは,里親委託をされて,それがかなり長期間になって,ドリフト(里親家庭の漂流)というか,いろいろなところにたらい回しになってしまうとか,そういう問題もあって,やはり養子縁組だったら,養子縁組先みたいなものをある程度見通した上でないケア・プランをしないといけないというので,最近は養子縁組の決定と,それから親権の終了手続みたいものを一定程度連続させるような改革がなされています。つまり,同じ子については,同じ児童裁判所や裁判官や調査に関わった者がそういう調査をし,子供の代理人とか,もちろんDCFS(児童家庭局)の代わり,親や親の代理人も含めて,どういう措置やどういうケアプランが子どもにとって必要で適切なのかということを話し合った上で,それが難しいというような場合に,親権の終了の手続,家庭裁判所とか少年児童裁判所に当たるところが行って,なおかつ,養親のところに,この養親だったら子供はとてもうまく適合していくという,試験養育みたいなのも含めて調査結果や資料を出してもらって,それで,最長1年(12か月)をさらに細かく時間を区切ってアドバイザリーヒアリング(助言・諮問)というのと,それから中間の審判型審理(Adjudicatory Hearing)みたいなのと,それから,要するに最終審理(Disposition Hearing)みたいなところで,かなり慎重に,どういうケアプランや措置が一番子供にとっていいかというので段階的に審理を進めていくのです。そして,養子縁組についても,最終的に養親となろうとする候補者に当たるような人と子供が親子として本当にうまくいくかどうかみたいな心証を得たときに,養子決定を裁判官が下すことになります。実親の権利を終了させる手続と養子決定を出す手続が有機的に連携したり,ある程度連続させないと,結局中間の空白地帯みたいなのが生じて,ドリフトしてしまって,本当に子どもにとっていい家庭に恒久的な措置ができないというのが,パーレンスパトリエ(国親)という国家後見的な発想をするアメリカでも,第1段階の実親をきる手続と第2段階の養親縁組を認める手続とをある程度連続をさせるという改革が行われています。これまでは実親との関係を切る手続と養子決定の手続の2段階というんで結構切り分けをしてやっていたものが連続をさせるという新たな傾向がでできています。   フロリダなんかは正にそういう改正を行っていて,時間を区切って,とにかく1年以内にはそういう形で迅速な対応がとれるように,恒久的なケアとしてのパーマネンシーを保障する養子縁組に結び付くようにと工夫をし始めています。アメリカでのこういうような動向を考えると,私自身は,前言っていたような,1段階で実親が適当ではないとか,十分なケアができないということをきれいに切り分けて,そして,新しい親と本当にうまくいくかという養子縁組の成立手続とは,まるっきり別の手続として独立させておくということに対して,今の日本の仕組みの中でも大丈夫かなという危惧があるのです。仮に2段階を分けて,それから児相長の関与とかいろいろなものを入れるにしても,そういうような形で一つの手続の中を二つに分けて,それぞれの関係や手続きとしての連続性とか整合性みたいなのを確保しながら,役割分担をしながら連携をする,実親と養親になろうとする人たちが事実上対立構造になるとか,争いあわなければならないということはできるだけ避けて,児相長なんかが適切な役割を果たせる部分は果たしていただいて,できるだけ一体的な手続の中でスムーズに役割分担をしながら,子供にとって最終的な一番いい親との安定的な関係を形成するというイメージで考えています。そういう意味では,乙案の方がいいのではないかとも考えています。   そうしますと,やはり同意だとか,養子となる者の年齢の問題とか,そういうことについても,おのずと特別養子縁組というのはこういう目的を持って,実の親との関係を段階的に終了させ,新しい養親のところに段階的に移行させるとそういう明確な目的を持った手続や制度ということであれば,これぐらいの年齢が適切ではないかとか,どういう同意をどの段階で誰が取るかということも,ある程度明確になってきますし,例えば,支援をしている段階で,先ほど藤林先生も言っていましたけれども,児相なんかがある面では実親の元に戻すか戻さないかみたいなケースワーク的な段階でもって,養子縁組についてのパーマネントなケアプランみたいなものとして同意を取るというのは,なかなか立場上は難しいと思うところもあります。そうすると,今回のお話というのは,年齢の問題も,それから同意の問題も,特別養子成立手続の問題も,誰がどの段階でどういう関わりを持って,どういうところを基準にどう判断するべきなのかということを考えていくと,余りきちっと両手続を分断して,両手続の連続性や密接関連性を考慮しないで分けるということについて,それだけくくり出して,同意もそうですけれども,事前にくくり出して審判をしてしまうみたいな方策について違和感をずっと持ってきました。   同意がなければ特別養子縁組が成立しない子供が多いことはよく理解していますが,それだけの理由でもって,何に対するどういう同意をいつ誰がどういう形で取ったものが,実親子の関係を切ってしまうような重大な効果を持つかということを慎重に検討する必要があると思います。長くなりましたけれども,基本的には,この手続の全体の組み方としては,2段階ということは賛成したいと思うのですけれども,それを,完全に独立したものとして位置付けるということについては,ちょっと疑問があるということです。それから,もう一つは,これまで中間審判みたいなのをなぜこだわっていたかというと,やはり空白みたいなものをできるだけ置かないという理由,それから,実親を完全に本当に排除できるというのは,海外の場合だって,そういう手続を分けた上でもかなり慎重な手続を,段階を経て区切っているということ,また,今回の改正は必要最小限の手当てというと,あまり実体的要件や手続構造を大幅に改めることに躊躇があるからです。   先ほど言ったアメリカのフロリダ州のように,助言審判があって,中間審判があって,それで最終審判があるのですけれども,最終審判までは,実親の権利は回復する可能性があるとされています。そういう中で,特別養子みたいな断絶型の養子の可能性もあって,ただ,時間は1年と区切っていますから,1年間実親に対して監護ができるように合理的な努力をして働きかけをしたのに,何の反応も,交流ももとうとしない,責任を果たそうとしない実親については,そこではじめて親子関係が切られることになるのです。裁判所が,実親と子の関係を切るという手続についても明確に関わって今は丁寧にやっているので,そういう意味では,私は,今回の特別養子縁組の手続面での改正についても,やはりそういう一般的必要性要件と,それから養親子適合性要件という,かなり具体的なものとはっきり分かれるようにお考えになっていると思うんですけれども,一応は分かれるけれども,そうやって連続性や関連性を,他の国々を見ても,まるっきり断った上で次の段階に進んだということに対する反省が見られていますので,直ちに甲案には賛成できないという感じがしています。つまり,何を言いたいかというと,アメリカでは,一時期,実親の支援をしないでおいて,むしろ子供をすぐに里親委託とか養子縁組をして実親から引き離すということに対して非常に批判が出ましたので,その後は同意があれば別ですが,同意のない強制的な手続では慎重にやりながら段階を追って親子関係を終了させて養子決定に進んんでいると言えます。だから,いきなり養子縁組に向かうことが全ていいんだという前提で動いているわけではないので,その辺りのところは,手続としての連続性や一体性を保ちながら,要件もきちっと切り分けるためには,中間できちっとした機関が入って,ある司法判断なりやっていかないと,そう簡単に,先ほどから久保野幹事も言われているように,実親の権利とか何とかを事前に,全く見通しも立たないまま同意ということだけくくり出して喪失させていく手続というのが,本当にやこれでいいのかどうかも含めて,疑問に思いました。 ○窪田部会長代理 どうもありがとうございました。   最後の点は同意の問題ですので,後でまた扱っていただければと思いますが,今の棚村委員からの御指摘は,一般的必要性要件と適合性要件,多分完全には切り離すことはできないのではないかということを前提としつつ,ただ,乙案のような形で進めるということについては賛成だという御意見として理解したのですが,それでよろしいでしょうか。 ○棚村委員 はい,結構です。 ○窪田部会長代理 ほかには,いかがでしょうか。 ○藤林委員 アメリカの法制度を一つのモデルとしての意見だったと思うんですけれども,私の理解する範囲では,アメリカの養子縁組,年間5万件で100倍ぐらい多い。多くは虐待ケースで,年齢も非常に高い年齢の子供もいて,委託した里親さん,養親候補者とうまく親子関係ができるかどうか,非常に不透明というか,なかなか見えない中で,でも,それが安定するまで待っていると非常に時間が掛かるので,結果的には,実親さんのターミネーションのプロセスと適合性のプロセスを並行しているというのは分かるわけです。けれども,日本の現状は,実際こういった虐待ケースというのはほとんどなくて,どちらかというと,私とか岩﨑委員の多く経験するのは,施設,里親に預け放しにして,なかなか連絡がとれない,家庭引き取りにならない,虐待ケースというよりは,親責任を放棄しているケースなのかなと思っているところなんです。   そう考えますと,そういった最終審判がどうなるか分からない状況で,親は同意するのか,同意しないのかということも表明されない方に対して,我々が養子縁組候補の方に打診する場合に,やはり白地同意という選択肢をやはり残しておいていただきたい。ここで,第1段階での確定がしたところで,その養親候補者に打診するという,そこのニーズは結構大きなものがあるのではないかなと思っています。   甲案のいいところは,同時申立ても可能というところも書いてあるわけなんで,ケースによっては,あらかじめ養親候補者に委託しつつ,第1段階を進めていくということもできるわけですから,必ずしもそれを排除しているわけではなくて,やはりケースによって選択できるという意味では,白地同意の可能性を含んでいる甲案を,私としては採用していただきたいなと思います。 ○窪田部会長代理 ほかの方からも御意見がございますか。 ○木村幹事 今,藤林委員の御意見を伺っていて,一つ事務当局の方に質問があるんですけれども,乙案の場合の同意というものを第1段階で取る場合は,これは,基本的に養親を特定した上で取る同意なのか,理論的に白地同意として捉えるべきなのか,どちらなのかについて教えていただければと思います。 ○山口幹事 乙案の場合は,養親となる者しか申立権がないということですので,特定の具体的な養親を前提とした同意と考えております。 ○木村幹事 ありがとうございます。 ○窪田部会長代理 それだけでよろしいですか。 ○木村幹事 はい。 ○窪田部会長代理 それでは,高田委員,お願いいたします。 ○高田委員 前回はこれ以外の案を申し上げたわけですが,私自身の感触ですと,先ほどの棚村委員の御発言は,もしかすると乙案そのものというよりも,手続的な中間裁判を想定されていらっしゃるのではないかとも思います。   そのことに関わりますけれども,今回の案,後戻りの想定されない安定した状況で試験養育期間に入るということを可能にする手続を,知恵を絞って考えていただき,かつ,甲案の方は,いわゆる白地で養子適格を判断する,あるいは特別養子適格を判断するということで,養親となる者が確定しない段階で,あるいは養親探しの段階で,第1段階の判断を可能にするということを目指されているということで,非常によく考えられた魅力的な案だろうと思うんですけれども,ただ,これから中間試案としてパブリックコメントに付すという場合においては,いずれも実体的な効果を想定された,言葉はちょっと不適切かもしれませんが,単なる手続的な中間裁判ではないものを考えておられるということで,共通していると思われます。   その上で,甲案と乙案ということですが,甲案と乙案の違いというものが,先ほど連続性を確保という形で説明されたわけですけれども,連続性確保をすることにどういう意義を見いだされていらっしゃるのかということをお伺いしたいと思います。具体的に申しますと,甲案と乙案の違いがどこにあるのかということを,もう少しはっきりされた上で,パブリックコメントに付す方がよろしいのではないかということで,その点を確認させていただいた方がよいのではないかということです。   私の理解しますところ,ご指摘がありましたように,甲案と乙案の違いは,児童相談所長が申し立てることができるかどうか,すなわち,第1段階の当事者と第2段階の当事者が変わってよいということと,それに加えて白地同意がそれによって可能になるということでしょうか,判断事項は養子適格ということで同じですから,その点は変わらないわけですので,先ほど申し上げた2点以外でどこが違うのかということを,もう少しはっきりされた方が,本日の議論においても有益なのではないかなということで,御質問させていただきます。 ○窪田部会長代理 今の点については,いかがでしょうか。 ○山口幹事 まず,私の方からお答えいたしますと,実際問題としまして,甲案ですと,1段階目の養子適格の審判が出た後に,養親候補者を探すということも考えられまして,そうなりますと,かなり時間があいてしまうと。そこまでは実は考えていなかったんですが,棚村委員御指摘のようなドリフトみたいな問題も起こり得なくはないのかと思っております。   それに対しまして,乙案というのは,具体的な養親となる方がもう前提とされておりますので,シンプルに考えますと,養子適格の審判が出たはいいけれども,なかなか養親候補者が見付からないという宙ぶらりんな期間が生じにくいのが乙案かとも思いますが,もう少し考えるとそうでもないのかもしれませんけれども,まず,シンプルに考えると,そういう違いがあるかと思っております。 ○窪田部会長代理 よろしいでしょうか。 ○杉山幹事 前回も少し申しましたが,私は元々2段階手続をするのに対してはどちらかというと消極的だったわけですが,ただ,実務上,早い段階で養子適格者を確定しておいて,そこから養親候補者を探すという必要性があり,それには,中間審判では十分に応えられないので,2段階で考えていく方向性もあるのではないかと考えるように至ったわけであります。甲案と乙案との間では,そのニーズに応えるという点では,個人的には甲案の方に魅力を感じていまです。   確かに甲案によりますと,先ほど棚村委員がおっしゃったように,養親候補者が見付かる見込みがないにもかかわらず,第1段階の手続だけ先に進められ,その後,宙ぶらりんの状態が生ずるという懸念はございますが,17ページの甲案の(2)のイにあるように2段階目の審判の申立ても,1段階目の審判の確定から1年以内に申し立てなければならないとして,期間制限を設けているので,その点についてはある程度は担保がされているのではないかと思います。また,同時並行で1段階目と2段階目を進めることができるというのもメリットで,乙案の場合には,段階目でそれほど争いがないような場合であっても,確定までにそれなりに時間が掛かってしまうところ,甲案の場合,同時並行で審理がされれば,実親の方があまり争っていない場合には,結果的には早く養子縁組が成立するという点でも魅力を感じます。   甲案と乙案の違いという点について,余り意見が出ていないのですが,身分関係の当事者でない児相長に申立権を認めるが許容されるのかという点は,話問題になるのではないかと思われます。確か厚労省の検討会のところで,2段階にするかどうかは別といたしまして,児相長に申立権を認めるべきだという考え方が出されていましたが,それに対して,民法の先生などからは,やはり身分関係を切る申立てを他人がすることに対して,やや抵抗があったように記憶をしております。今のところ,甲案ですと,1段階目だけで実親と実親子の関係は切れるわけではなく,そこまで大きな効果ではないのですが,ただ,他人に申立権を認めてもいいのかという点は,補足説明などに表れているといいのかなと思います。   とはいえ,例えば,親権喪失などで検察官に申立権がありますので,結局のところ,他人であっても申立権は認められることになりそうですが,そうであれば,研究会の段階でも少し出されたと思うのですけれども,検察官に申立権を認める可能性はあるかと,その点も検討の余地があるのかなと思い「す。   取りあえず,以上です。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   それでは,宇田川幹事,水野委員という順番でお願いします。 ○宇田川幹事 すみません,宇田川です。   まず,甲案についての考え方で,これまでにも裁判所の立場から申し上げたところではあるんですけれども,実際の縁組成立の審判の時期が,1年以内の申立てであっても,かなり最終的な成立の審判というのは先になるということも予想されまして,そのときに,正に縁組成立の養子適格という言葉は使われていますけれども,やはり一要件で,要件としてはどうしても一部と位置付けられざるを得ないところの一般的必要性とか同意とかというところについて,その先の見通しのないまま,どこまできちんとした判断ができるのかというところについては,裁判所としては懸念を持っているところでございまして,資料にも書かれていますとおり,それぞれの手続についての連続性の担保が必要ではないかと考えているところでございます。   それともう一つ,質問させていただきたいのは,実際に,例えば,これまでも紹介されていた母親が例えば行方不明とか,音信不通であるというような事案の場合に,その後に母親が戻ってきて,実は生活状況,経済状況も変わったので育てたいというような,そんな話をしたときに,養子適格の審判の取消しというようなことを想定されているのかどうかというところを,お聞きしたいと考えております。   それと,養子適格の審判の実体法上の効果のところについて,何人も親権行使を禁止される,何人も認知を禁止されるという,非常に重たい効果が付与されているところだと思うんですけれども,そうしますと,結局は効果があっての要件判断という形になりますので,この要件の判断についても,本当に現在想定されているような一般的必要性要件というようなところでの判断が可能なのかどうかと。例えば,今後親権者の変更によって新たな人が出てくるのではないかとか,父親の出現というのが想定されるのかどうかということも含めて,必要性の要件というのを判断していかないといけない部分も考えられるのかなと思いまして,そういったことが,果たしてそもそもよいのかという議論もあると思いますし,そういう判断を求められるということになるのかというところも,問題になってくるとは思いますので,そこについて,1段階目の手続で何を達成するのかというところをもう少し意識して議論が必要かなと思っておりまして,中間決定的な話なのかどうか分かりませんが,単に手続に実親を排除するというような,そういうことの方策として考えていくことも,一つ考えられるのではないかと思っているところです。 ○窪田部会長代理 次の水野委員の御発言に行く前に,今の御質問として,一つは養子適格の審判の取消しみたいなことが考えられるのか,やはり行方不明だったお母さんが出てきたときにはどうかという話がございました。それから,親権行使の禁止に関して,やはり具体的な内容も含めて,それに対する手当といったようなことについても御質問がありましたが,それについて,何か事務当局から回答していただくことがございますか。 ○山口幹事 それでは,二つとも少し共通しているところがあるかなと思いますので,一つ目の御質問についてお答えする中で,二つ目についての考え方も御説明することになろうかと思います。   すなわち,養子適格の審判が出た後に,恐らく想定しておられるのは,それで試験養育が始まりましたと。試験養育がまだ継続中に,行方不明だったお母さんが現れて,いろいろ養育環境整いましたんで,養子適格の審判取り消してくださいということを念頭に置かれた御質問かと思いました。   それにつきましては,確かにそういうときに,いや,もう試験養育が始まっていますので,今さら手遅れですと言って,親御さん,お母さんの申出を蹴るというのは,お母さんにとっては酷なのかもしれませんけれども,そこはどっちを採るのか,誰の利益を考えるのかということかと思っておりまして,そこで,試験養育がもう既に始まっている段階で,取りあえずその試験養育をやってみて,そして,うまく適合するのかどうか,養親との関係が適合するのかどうかを見た後に,それで合わなかったときに母親の元に戻すのか,それとも,そこは母親,実親優先でいくのかという決断なんだろうと思います。   私どもとしましては,この考え方では,実は,実親の方に一歩引いていただくという考え方に立っております。そういう意味では,二つ目の方の親権者の出現を想定した判断になるのかという問題につきましても,それは,基本的には想定していないと。その問題を考えるのは,試験養育が終わってからであろうという,試験養育といいますか,2段階目の審判が終わってからであろうと考えております。   そのように考えておりますのは,正に子の利益を考えたときに,どちらがよいのかということで,これは,実は私どももよく分からないところではあるんですけれども,私どもが考えますのは,試験養育の途中で実親が現れたからといって,それをやめて,もう一度実親の元に戻すのが,子の利益のためによりよいのかというと,そこに疑問があるということで,今のように考えている次第でございます。 ○窪田部会長代理 何かございますか。 ○宇田川幹事 いや,ありがとうございました。   ただ,本当に皆さんがそういう価値判断をされるのかどうかというところもありますし,この養子適格のところの実体法上の効果についても,例えば,妊娠したということも知らされないでいた父親がいた場合に,本当にそういう権利まで奪ってしまっていいのかと,試験養育が進んでいる段階でそれを聞いて,やはり自分の子だったら育てたいと思った親から,本当にそういう権利も奪ってしまっていいのかというところも含めて,御議論いただく必要があるのかなと思います。 ○窪田部会長代理 今,比較的分かりやすい例も挙げていただきましたので,それについても御意見を伺いたいと思いますが,その前に,水野委員,どうぞ御発言をお願いします。 ○水野(有)委員 今のことの続きなんですが,今の御回答だと,一般的な取消しというのは認めないけれども,最終的な縁組成否の判断においては,お母様が出てきて,お母様が出てきたことと,お母様と,お母様かお父様か分かりませんが,実親が出てきた後,新しい養親とどちらが子の福祉に反するのかというのも,判断要素に,縁組の成否に入るという御見解ということでしょうか。 ○窪田部会長代理 取りあえず,事務当局の見解を述べてもらうことにしましょう。 ○山口幹事 私どもとしてはそうは考えておりませんで,そこでは適合性,この資料の用語を使いますと適合性ということになりますが,適合性の要件を判断するときに,実親の家庭で養育された方がよいのか,それとも,養親の家庭で養育された方がよいのかというような比較みたいなものは,もうしないという前提,考え方に立っておりますので。 ○水野(有)委員 ですよね,そうおっしゃっていましたよね。   そうだとすると,先ほどの御回答がやや不正確かなと思います。というのは,それを判断するという趣旨ではなくて,一般的に試験養育を開始した以上は,類型的にそういうのは排除する方が,全体としては子の福祉に適するというような御判断をとられるという御趣旨ですか。どのような実親が現れた場合も,それは,制度としては,そういうものは一切考慮しないという方が,全体としては子の福祉に合致するという御判断を採られるという御趣旨でしょうか。 ○山口幹事 そのとおりです,はい。 ○水野(有)委員 意味はとてもよく分かりました。 ○窪田部会長代理 私も分かりました。先ほどやはり御説明の中では,養子適格の取消しには結び付かない,飽くまで適合性要件の話は,養親と養子との関係ですから,それを貫くというのが,この制度の趣旨ということでしょうか。 ○水野(有)委員 となると,取消しは一切認めないということ,お考えですよね,この制度の御提案はね。 ○窪田部会長代理 それが,養子適格の審判をするということの意味なのではないでしょうか。 ○水野(有)委員 そうなると,だから,それでいいのかどうかは,皆さんに御議論いただきたいということでございます。 ○窪田部会長代理 宇田川幹事からは,本当にそれでいいのだろうかという問題提起も含まれていたのだろうと思います。 ○床谷委員 すみません。ちょっと先のところに戻って恐縮ですが,確認のためにもう一度お聞きします。この甲案と乙案の違いということと,先ほどの2の実親の同意の撤回を制限する方策との関係なんですが,先ほど白地同意は,こちらができて,こちらができないというような発言がありましたんですかね。同意の仕方について,こちらはここまで行けるけれども,こちらは特定だけとか,そういうふうな関連性があるように聞いたんですけれども,この甲案と乙案の中のアのところの一,二,三号の中の一号の同意している場合というのは,どちらもこれは共通ですよね。申立人,申立人といいますか,申し立てた人が甲と乙では違うというところは分かるのですけれども,既に同意があるからということで,例えば,2の(1)の場合はそうなんでしょうけれども,(2)を認める場合には,これ,どちらもあり得る話だろうと思うんですね。そうすると,特定同意だけなのか,匿名同意なのか,白地同意かという区別は,甲と乙ではない,もし2の(2)を採用するとすれば,ないと理解してよろしいでしょうか。   それとの関係ですが,この図は縁組成立で終わっているのですが,縁組不成立の場合,適格性ないということで不成立の場合,甲案の場合は,養子適格のところに戻ると,別の人の申立てというところに矢印が戻る。2の場合は,最初のところに戻る,それが期間の制限に係ると理解してよろしいですか。 ○山口幹事 それではまず,1問目のところからなんですけれども,第3の2の(2)におきまして,まだ手続が始まる前に同意,公的期間に対して同意がされたと。その後に,乙案を採用した場合に手続が始まる場合ということを,床谷委員が想定されているケースだと理解しておりまして,その場合には,第3の2の(2)の同意というのは,いわゆる白地同意でございますので,同意の性質としては白地同意なんであろうと。それで,乙案の仕組みで手続が始まりますと,第1段階では既に第3の2の公的機関の同意がされていて,しかもそれが撤回不能の期間になっているねですとか,あるいは,まだ撤回不能の期間が経過していないのであれば,同意は存在するねということを確認するということになろうかと思いまして,その場合には,確かに御指摘のとおり乙案でも白地同意の存在を確認するということになろうかと思います。   取りあえず,第1問についてのお答えとしては,これでよろしいでしょうか。 ○窪田部会長代理 何かございますでしょうか。   今の御説明は,乙案において,一般的な形で申立てがあった後であれば,同意というのはもう相手が特定したものかもしれないけれども,手続前に同意をしているのであれば,それは白地同意ということになるし,その白地同意についても乙案との関係では別に排除されるという仕組みは採用していないということだったのだろうと思います。だから,その意味では,2の実親の同意の撤回を制限する方策の14ページの(2)については,これを前提とするのであれば,乙案の場合であったとしても,白地同意はあり得るという御説明だったと思います。あり得る説明なのかなとは思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,第2点についてはどうでしょうか。 ○山口幹事 第2点は,1枚紙の甲案,乙案の紙を御覧になっていただきまして,床谷委員から御質問があったのは,甲案の場合で縁組不成立になったら,次,どこからもう一回スタートするのかということで,それは,恐らく御指摘のとおりだと思いますが,養子適格の審判が出た後に戻ってくるということで,別の養親となる候補者が現れれば,その方に申し立てていただいて,その場合には2段階目のみの審理をするということを考えておりまして,乙案につきましては,これまた御指摘のとおりでして,縁組不成立になりますと全部なくなってしまって,一番左の申立てのところから始めていただくということになるというふうな頭でおります。 ○窪田部会長代理 よろしいでしょうか。 ○床谷委員 はい。それを図で示すかどうかということも,お聞きしたいのですが。 ○山口幹事 ちょっと考えさせていただきたいと思います。技術的なところがありますので,できる範囲でやってみたいと思います。 ○窪田部会長代理 ちょっと具体的な効果等には詰めていく必要があると思いますが,甲案と乙案の違いというのは,ある種分かりやすく示すポイントなのかなと思います。   ほかには,いかがでしょうか。   それでは,木村幹事,棚村委員という順番でお願いします。 ○木村幹事 先ほど,宇田川幹事からの御質問があった関係でお伺いしたいんですけれども,仮に甲案を採った場合,乙案でも同じかもしれませんが,第1段階目で養子適格について判断をして,それについて,効果として親権行使の禁止や認知の禁止という効果が生じるという理解の下で,先ほど宇田川幹事が,その要件と効果の関係で,親権行使の禁止や認知の禁止といった効果を踏まえて,要件について判断をしなければいけないとおっしゃったように思ったんですけれども,効果自体は養子適格が,その辺の効果の位置付けなんですけれども,前段階で判断するのは一般的必要性要件あるいは同意要件があるかという要件に基づいて,養子適格があるかということ自体を判断するものであって,親権行使禁止や認知禁止というものを,確かに効果としては書いてありますけれども,どういう効果として理解すればいいのか,ちょっと抽象的で申し訳ないんですが,直接的,あるいは主たる効果は養子適格であって,親権行使禁止や認知禁止というのは,言葉は適切なのが思い浮かばないんですけれども,間接的というか,直接的なものではないように思われますが,その点,事務当局の方にどう考えておられるのかということをお伺いしたいのと,実際裁判所として判断する際には,そういうふうにうまく切り分けられるのか,あんまり質問がよくないですね。どういうふうに具体的に判断されることになるのかということについて,お伺いしたいと思います。 ○山口幹事 正に,直接的な効果というのは養子適格なんだろうと思うのですけれども,その養子適格という言葉は,養子適格があるというのは,特に実体上の,実体がないと申しますか,そういうものだろうと思います。その中身を示しているのが親権行使,認知禁止ということでして,間接的と表現されるべきものか,ちょっとよく,ただ何となく,感覚は私もそのとおりかと思っておりますが,飽くまでそういうものであると。   親権行使あるいは認知の禁止というものが何のためにされるのかということを,念頭に置いて御判断いただくということなのかなと思います。すなわち,それは,試験養育を安定的なものにするために求められる効果なのであると,そういうことを念頭に置いて,御判断いただければと願っているところです。 ○窪田部会長代理 ちょっと発言してよろしいですか。   私自身は,養子適格自体は特に法的な効果はなくて,親権行使の禁止が法的効果だと言われると若干違和感はあります。やはり養子適格があるということが主たる効果であって,養子適格が与えられることによって,次の手続が始まる,それが適合性要件を踏まえたものであって,縁組成立につながる次のステップであって,ただ,その次のステップというのは非常に浮動的な状態なものですから,そのときに,親権が行使されたりすることによる介入を避けるというか,言わば凍結するというようなイメージなのだろうと思います。だから,そういう意味で,養子適格の効果というよりは,養子適格によって始まった次のプロセスに伴う付随的な効果なのではないかなと思っておりました。そういう説明で宇田川幹事が納得してくださるとは到底思えないのですが,そのような説明もあるのかなと思いました。 ○棚村委員 私も,正にそうなんですけれども,親権行使といった場合の禁止は,どっちかというと,濫用的な親権行使を封じるという意味では分かります。その期間だけということですね。ところが,認知ってことになると,法的に親になる可能性を封じてしまう,法的に実親になるチャンスをやはり奪ってしまうということなんで,これについては,やはり少し慎重に考えないといけないのではないか,幾ら養子適格があるかどうかということなんですけれども,養子に行った方が幸せなんだろうかという話をするときに,実の親が持っている認知する権利,法的に父親になる可能性みたいなものを封じた方がいいんだという,そういう判断まで付随的にもう出てきてしまうとなるのかというのは,ちょっとやはり疑問があります。   つまり,濫用的に妨害的な親権行使,こういうものについて封ずることで,手続を円滑に進めないと切りがないというのは分かるのですけれども,法的にお父さんになりたいという可能性をやはり潰すためには,相当親として無責任な,いろいろな重大な問題行動をしていないと,例えば,親権終了のアメリカ法なんかでいくと,やはり薬物乱用だとか性犯罪だとかの犯罪を常習的に繰り返すとか,いろいろな親権終了の要件に該当する行為をやった上で,先ほど言ったみたいな段階を踏んで確認していくわけですよね。単に養子になった方がいいだろうなという話で,多分認知禁止だと,これは,ドイツ法もそうだと思うんですけれども,匿名出産とか秘密出産法を作るときも,非婚の父の地位みたいなものについてほとんど分からないので,母親が言ってくれなければ表に出てこないんだけれども,言ってくるようになった場合にどうするかというのは,少し実体上の権利の問題も考えておかないと,手続の効果として,当然に子供の利益の観点から認知の権利も制限される,こういうものまでやっていいんだと,妨害はありとあらゆるものだけれども親権行使の濫用と,それから認知という,法的に親になる権利やチャンスみたいなものを一定の形で封ずるというのは,もっときちんと説明をしておかないと,今後,大きな問題が起こり得ると思いますね。だから,時間がたったから,あんたはもう実親だけれども,ただ,産んだり,生殖に関わったというだけだから,もうアウトというケースと,それから,もちろんそういう極端なケースもありますけれども,実際の関わりを持とうとしたり,持ち始めたという人たちも,なくはないと思います。 ○岩﨑委員 ほとんどないよ。 ○棚村委員 ちょっと待ってください,発言しているところですから。   その可能性についても十分納得できるような説明をしないといけないのではないか,一律に認知禁止という重大ないう効果が生ずる,効果がかなり重大なだけに,法律家としては,福祉のもちろん現場としては,そんなことはないよということを言われると思うのですけれども,そういう中で,説明だけはきちんとしてくださいという話だけです。別にこれを,何が何でもやるなという話ではなくて,やる以上は,ほかの国でも問題になっているので,それをきちんと説明をしておかないといけないのではないかといういう話です。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   その部分についてのためらいというのは事務当局もあって,それが,認知の部分については亀甲括弧に入っているということだろうと思います。この部分について,積極的に削除するでもいいし,あるいは,積極的に入れるのであれば,こういう理由付けがあるというのでも結構なのですが,何かご意見はありますでしょうか。   手嶋委員,もう,ただ今の私の発言に拘束されずに,自由に御発言ください。 ○手嶋委員 どうもありがとうございます。   裁判所がどう判断するかというところにつきましては,一般的には,要件として法文上定められたものについて判断をし,それにどういう効果が結び付けられているかということだと思うんですけれども,ただ,法文上,どういうふうに書かれるかということがございますが,ある程度一般的な解釈を許す文言にならざるを得ない部分はあるんだと思いますので,そのときに,要件判断どうするかということになると,それに結び付けられる効果を勘案しながら判断をすることになるというのが,一般論としては言えるかと思います。ですので,効果が重ければ重いほど,その判断の内容は重いと,その判断の過程も重くなるということは,一般論としては言えるのではないかなと思っております。   あと,さらに,どういう効果が結び付けられるかということについては,正に今の御議論なんではないかと思うんですけれども,基本的には,どうしてその効果が結び付けられるのかというのが,法理論上,基礎付けられているということがあると思いますし,手続的にどういう保障がされているかということも,もちろん考えられることになるのではないかと思っておりますので,そこは,詰められるのであれば,今後の御議論によることになるのかなと思います。   あともう一つは,ただ,そういう重要な効果が結び付けられることになる,また,例えば,先ほど宇田川幹事からも申し上げさせていただきましたけれども,ある意味,実親が,要するに養育できる実親が後で現れたときに,取消可能性もないのだという効果が結び付けられるものとして,これが企画されているということが,パブコメ等でも十分分かるような形で提案されなくてはいけないのではないかと思いますし,更に申しますと,この甲案,乙案だけですと,いずれにしてもそのような効果が結び付く案しかないということになるかと思いますが,そういう選択肢の提示でよいのかというところはあるかと思います。それが,正に中間判断という提案に魅力を感じる委員の方々も複数おられるということかと思いますので,その辺も含めた御提案の形を考えていただけた方がよろしいのではないのかなと思っております。 ○窪田部会長代理 今の点については,事務当局の方で,何かございますか。 ○倉重関係官 今御指摘いただいた点でございますけれども,中間決定案につきましては,今回の部会資料ではちょっと批判と申しますか,採用できなかったような理由を述べているところでございます。しかしながら,冒頭の補足説明でも述べましたとおり,実は,乙案と中間決定案の距離というのはそれほど遠くないとも見られるところがございまして,本日の議論の行方次第では,中間試案においては,3案併記ということも考えられるかなとは思っているところでございます。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。 ○磯谷委員 私は,改めて甲案を支持いたしますけれども,せっかく杉山幹事が甲案を支持してくださった,その根拠が,当初的確な養親が見付からなくても,養子適格を先に先行させて,そういうニーズがあるというふうにおっしゃっていただいた,それはまた,藤林所長からもそういうニーズがあるといって,それは否定はしませんけれども,ただ,私としては,恐らくそういう可能性というのは余り多くはないのではないかと思っていることと,加えて,この二つの手続を連動させるのを,例えば,後半の第2段階の申立てをかなり短くすることによって,現実的には,おおむね養親がめどが付いている状況で,児童相談所としては申立てをすることになるんだろうと予想をしています。   また,逆の立場からといいますか,別の視点からすると,児童相談所がめども立たないのに,第1段階の申立て,裁判までやるかというのが,多分多くの児童相談所はそれはしないのではないかなというふうな印象も持っています。   むしろ,そこよりも,私は,この児童相談所長が申立てができるという,ここが非常に大きい。それは,前々回になりますけれども申し上げたとおり,また今日もお話が出ましたが,実質的な意味での実親との対立構造に,養親候補者が巻き込まれないで済むということであります。加えて,この特別養子の制度ができて,多分それほどもう時間がたたないうちから,いろいろと問題点として指摘されてきたのが,やはりプライバシーの問題でして,養親の住所であるとか,そういったプライバシーが実親の方に知られる。それによって,実親から連絡を受けてしまうというふうなこともありました。もちろん,オープンアダプションとかということもありますけれども,ただ,問題なのは,予測しない形で養親が実親から連絡を受けるということは,これはやはり避けるべきであろうと。   一方で,特にこの同意不要要件が問題になるようなケースというのは,内容的に,この実親の養育がかなり問題があるということになるんであろうと。そうすると,そういうふうな審判書,しかも,それがかなり争われる場合には,多分審判書にもそれなりに詳しく書かれるのではないかと思うのですけれども,そうすると,そういったものについて,また養親が見る機会があるというのも,これは,実親側にとっても耐え難いことであろうと。そうすると,そういうことを考えると,やはりこの乙案というのは,一定程度の前進ではあろうとは思いますけれども,やはり甲案のような大きなメリットというのは得難いところだろうと思います。   それから,あと,認知禁止についてですけれども,ここも,こういうふうに甲案の図を見てみますと,何となくこの養子適格と縁組成立との間が空いている。この間に認知ができないのはおかしいのではないかという話になりがちですけれども,これ,元々は,基本的に今でも養子縁組が成立してしまえば,それから認知ということはできないわけで,要するに,どれだけそこの問題を先取りするかの話だと思うんですよね。この甲案を採る以上は,やはり一定程度の保全的な仕組みというのはやはり避けられない。程度はともかくとして,時間的な差というのが幾らか生じるということからしても,やはり保全的なものというのは導入せざるを得ない。その一環として,この親権の行使の禁止とか認知禁止というのは,認められてしかるべきなんではないかと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございました。   それでは,棚村委員,岩﨑委員という順番でお願いします。 ○棚村委員 先ほど,高田委員の方からも御質問があったんですけれども,私は元々研究会のときから中間審判活用派だったんですけれども,乙案でも,申立権者に児相長を入れるか入れないかというのは,必ずしも利害関係参加だけではなくて,可能性としてはあり得ると思ったのですが。児相長なんかも児福法で規定されるわけですし,それから,養親については民法で多分規定されることになるので,申立権者を前の段階のところで児相長の可能性というのは,私はあって構わないのかなと考えたのです。むしろ,そういう考え方を中間審判が駄目であっても,いわゆるそういう可能性というのは排除されていないのではないか。   そうなると,あとは,独立した二つの手続を考えていくのか,それとも,一体となったものを考えていくかという話になるので,先ほどから言っている役割分担とか,それぞれの権利がいつなくなって,やはり一番私が危惧するのは,実親の権利というのはいつなくなるかというと,最後,養子縁組でこの人のところで幸せに育つんだというところで,結果的には実親の権利がなくなることと,養子縁組という新しい親子関係の形成があって,できる限り同時的に処理できるとよいと思います。それを考えると,二つに分けて別々に独立させてやることのメリットというのは,先ほどから言うように,手続上は児相長が申立権を持ったり,いろいろな形で関われるとした方がいいし,それから,親権行使の禁止とかいろいろな要件を考える場合でも,終わりの方の可能性というか,幸せな家庭の形成というのが,できるだけ新しい養親子関係の成立を見通せれば,こういう効果が生ずるということについては,ある程度納得できると思います。最終的には新しい親の元で,実親の権利が切れて新しい親がそこに出てくるわけですから。ところが,それを実親との関係を切る手続,それから新しい親と関係を結ぶ手続ということとで,もちろん完全に切り離すことができればいいんですけれども,今の仕組みの中で,やはり弊害とか問題点があるところを直して,申立権者も別に児童福祉法で親権の停止とか,そういう人と同じように入れるようなことも可能だとすれば,乙案の中でもそういうような配慮ができるのではないか。   つまり,甲案のメリットと言われているところを乙案の方で,それから,甲案に完全に切り離されたときに,先ほどから言っているそれだけの効果みたいなものを認めちゃっていいのかとか,それから,一番私はポイントになってくるのは,養親の候補者がいない段階で,とにかくこの子は養子に出た方がいいんだということについては,やはりある程度養親の候補者が具体的に何人か,この人っていうことに決まっていなくても,いるような段階でやっていかないと,これから養親候補者を見つけるために実親の関係を排除してしまうことにちょっと心配なところがあるんですよね。二つを切り離したときに,何のための養子適格性の判断なんだということになると,やはりかなり新しい両親というものが具体的にあって,実親がいかになかなか難しいかというのがあって,その中でやるとすると,児相長の申立ても,乙案の中でなんとか取り込めナスカ,だから,3番目ぐらいの案があってもいいのかなというのが,私の考え方です。 ○窪田部会長代理 どうもありがとうございます。   棚村先生,ちょっと1点だけ質問なんですが,児童相談所長が乙案で申立人となった場合には,最後の縁組成立までいくわけですか。 ○棚村委員 そうですね,今言ったみたいに,児童相談所長は利害関係参加でもいいですし,それから…… ○窪田部会長代理 児相長が利害関係参加する場合だったら分かるのですが,乙案で,児相長に申立権を認めた場合に,養子適格まではいいと思うのですが,最後のある特定の養親との間の養子縁組が成立するところまで…… ○棚村委員 つまり,身分関係についての申立権はなかなか難しいと思いますよね。 ○窪田部会長代理 甲案だと,養親となる者については,2段階目で入るのですけれども,乙案の方で,児相長を申立人とした場合に,その問題がどうなるのかなという点がちょっと気になりましたので。 ○棚村委員 ただ,私自身は,親権の停止とか喪失なんかでも,かなり児相長が関わったり,後見人にもなれるということは起こりますよね。 ○窪田部会長代理 多分,親権の停止については問題はないと思うのですが,この人とこの人の間に親子関係を成立させるということについて,ほかの人が申立てをするというのが,できないわけではないのかもしれませんけれども,ちょっと疑問に思ったということでお聞きしたということです。 ○棚村委員 はい,分かりました。 ○倉重関係官 少し補足させていただきますと,基本的には,窪田部会長代理から御説明があったとおり,新しく法的な身分関係を設定するときに,第三者が申し立てる手続はなかなか想定しづらいのではないかなと考えていたところでございます。特別養子縁組の離縁のように,法律上の親子関係を終了させる場面では,検察官申立てってあり得ると思いますけれども,やはり創設する場面で第三者が申立てというのは難しいように思われます。   ただ,一つ,この申立ては養親となる者というのは維持しましても,例えば,訴訟担当的な形で児童相談所長が申立てをすると。その場合,本来の申立人としてが養親となる者であること自体は前提とされておりますが,児相長が申立てをするという手続上の形を作ることは,今後検討の余地があるかなとは思っているところでございます。   それともう1点,中間決定案というのを,丙案として載せるべきではないかという御指摘との関係で確認をしておきたいのですが,今ここで申し上げている中間決定というのは,実体法上の要件は動かさないというのを前提として,縁組成立時に一般的必要性,今回の言葉でいいますと,一般的必要性要件と適合性要件があること,これが縁組成立時に必要であるという,時的な部分はずらさないことが前提になろうかと思います。そうしますと,中間決定が先行したとしても,中間決定後の事情変更というのは,実親は主張をすることができなくてはおかしいということになると思います。そういうふうな主張の可能性がある以上,その実親を手続から排除することはできないと考えられますので,基本的には最後まで実親が関与する手続になるということを前提に,御検討いただきたいと思います。   したがいまして,同時に,最終的な審判に対する即時抗告権も実親は持つと,これが中間決定案ということを前提に,この案を丙案として記載するべきかどうかという点については御意見を頂ければと思います。 ○窪田部会長代理 それでは,その点検討いただく前に,岩﨑委員から御発言を頂いて,その上で,中間決定案の扱いについて,少し考えてみたいと思います。 ○岩﨑委員 すみません,途中で発言をして。   ただ,養子適格を審判するまでの間に,やはり様々な可能性をチェックをしていただくことが必要なんだろうと思うんです。未婚の母なんかの場合に,別れてしまった彼氏に妊娠をしたことが伝えられていなくて,あえてそれを伝えようと思っても,もう行方が分からなくてみたいなケースが,私たち,日常的にはとても多くて,認知を私たちはしてもらいたいと。できるだけ,父が分かっている場合には,その人が認知をして,養育に対してどう思っているのかということと,養子に出すことに対して同意ができるのかどうかというのは,つまり,非常に大事なことだと思っていますので,それは,養子適格の段階までの間に,可能な限り努力をするということが必要だと思います。   でも,中には,もう全く口を閉ざして,父になる人のことを言わない母もおりますので,そんなときに,ひょいと出てくるということがないとは言えませんけれども,それには,それなりの母の覚悟があって言っているのだとすれば,こういう状態になっていて,今さら認知をするというようなことが,どれだけ可能性があるのかということはあるので,当然特別養子縁組が認容されれば,認知の必要性がないというところで認知禁止が出てきているんだろうと,私は判断をいたしました。   それで,やはり甲案が,私たちが仕事をする上ではとても,一番それにのっとっていると思いますし,できれば,実の親から養子適格を申し立てられることができないんだろうかと。養子に出したいという親のニーズの中に,私たちから見れば,当然努力すれば養育できるのではないかということが含まれていても,頭から養育をしたくないと頑固に言い張るのであれば,その実の親から,「私は育てられません」という申立てをしてもらうことによって母の決断がしっかりと取れるという可能性もあるので,場合によっては,あっせん団体だとか児童相談所の職員が当然付き合って申し立てるという形をとるかと思いますけれども,実の親からの申立ても検討していただけないかなっていうふうに思います。   それから,最初に養親となる者の申立てがある方が確実ではないかともおっしゃいますが,こんな子がいて,この子供が養子適格になれば,あなたとの関係を継続させますというやり方をすると,養親側には,子供が欲しい人たちですから,そのことに対してすごく強い期待を持って申し立てることになりますので,養子適格をその養親が厳しく審査をしてくださいということにはならない場合の方が,私は逆に心配になりますので,ここは,できれば養親となる者が申し立てるという,甲案もそう書いてあるんですけれども,養親となる者が申し立てるというよりは,児童相談所長や実親や,あるいはそれに代わる人として,例えば,最初の同意を,撤回できない同意の確認をする人なんかの方が,適当で養親となる者をここに入れることはどうなんだろうという気持ちがいたします。   もちろん,マッチングがなかなかうまくいかないケース,私たちにもありますけれども,藤林委員の場合も私の場合も,申し立てる段階になれば,その子供にはどういう資源があるかということは当然考えますし,児童相談所は養子縁組里親として登録をした人しか使わないわけですから,どういう人がいて,どういう子供たちにその必要性があるかということを考えます。ただ,障害を持った子供などはなかなか決まらないことはあります。 ○窪田部会長代理 まだ論点がかなり残っていますので。 ○岩﨑委員 決まらない子供がいて,その養子適格ができたけれども,なかなか適当な養親となる人が見付からないということは,子供にとってはあるということを,一応私たちの立場としてお伝えしておきますので,それも含めて考えていただければと思います。   長くなってごめんなさい。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   甲案に関しても,申立人について少し検討してほしいということで,これは,ちょっと事務当局の方で検討してもらえたらと思います。   その上で,特に次回,中間試案を取りまとめなければいけないのですが,それとの関係で,甲案,乙案という形で今二つが出ていますが,それ以外に中間決定を活用する案については,位置としては,甲,乙,丙になるのか,ちょっとその並べ方もあると思うのですが,それに関して御意見があれば,今伺っておきたいと思います。 ○棚村委員 結局,ずっと引っ掛かっているのが,実親の権利がいつなくなって,新しい親との関係が結ばれるって,二つの関係なんですよね。それのときに,最終的にちょっと踏み切れないところが,やはり先ほど言った事情変更とか,それから実親が出てきて育てる能力があったり,そういうのに,いないものと思ってどんどん手続進めていたら,手続の安定性とか効果ということで実親の権利がなくなってしまうということに対する,ちょっと引っ掛かっている部分があるのです。   多くは問題ないと思うのですけれども,それだけ無責任なほったらかしの親だから,何か言ってくることはないですけれども,もしその人たちが,例えば養育する計画なり見通しなり,そういうものを持っていたときに,もう時間が過ぎたから,ここでもう切れるんだということを,こういうような形でやっていいのかというのが,最後ちょっとあって,先ほどもお話ししたら,そういう取消しということはないんだと,それから,むしろ,事情変更もないんだと,実親は排除されるんだと割り切ってしまってよいのか,そういう選択が,ある立場の方からすると,甲,乙でいいのかもしれないんですけれども,なかなかそういう実態的な不安定な状況の中で,可能性としてあり得るんだとしたら,中間審判というのを丙案としてもし置いといていただいて,それはもう全然必要ないというなら仕方ありませんが,むしろ,ここまで来たら,実親は異議だとか文句だとか,争うということから排除されるんだということで皆さんが賛同されれば,甲,乙だけでいいかなと思っております。 ○久保野幹事 私も,丙案として中間決定の案を入れるというのは賛成です。   繰り返しにはなりますけれども,正に実親をどの段階で完全に排除するということが,制度の立て付けとしてよいかという,途中で,その点は明確に問うた方がいいと思います。議論がされた部分について問うための一つのよい方法だと思いますので,是非入れていただきたいと思います。 ○窪田部会長代理 恐らく中間試案の段階では,可能性があるものについて,ある程度幅広にとった上で,なおかつ相互の違いがかなり明確になるように,できるだけその部分をクリアに説明することが望ましいのだろうと思います。先ほど養子適格の撤回あるいは取消しの可能性の問題等もありますし,そうした部分について,できるだけ分かりやすい形で,次回までにたたき台をまとめていただけたらと考えております。   本日は,「特別養子縁組の成立に係る規律の見直し」,これを踏まえた上で,2の「実親の同意の撤回を制限する方策」,それから1の「児童相談所長の利害関係参加」について御検討いただくということでしたが,大体今までの議論で,実質的な意見はほぼ出ているのかと思いますが,1に関して何か御発言がありましたら伺えればと思います。 ○高田委員 1点だけ確認ですが,1について,先ほどの御説明ですと,この表でいきますと甲案の上の四角の中は,利害関係参加ではなくて当事者参加になるという御説明だと理解してよろしいわけですか。 ○倉重関係官 先ほどの説明ですが,甲案を採用した場合には,児童相談所長は利害関係参加も当事者参加もすることができると。それは,現行法の家事事件手続法上の条文上,もう手当は要らないんだと,こういうふうな考えに至ったという説明でございます。 ○高田委員 了解いたしました。 ○久保野幹事 急ぎではないかもしれないんですが,親権行使禁止概念のところで,児童福祉法上の33条の2や47条での児相長が親権を代わりに行使するということは,多分想定されているのではないかと思うので,そことの関係については,意識して何か書いた方がいいかもしれないと思いました。 ○窪田部会長代理 要するに,親権喪失停止だったら,未成年後見開始になりますけれども,多分そういうふうな形ではなくて,一時的なものだとすると,それに合わせた対応が具体的にどうなるのかという点についても,少し分かりやすく書いてもらうということですかね。 ○久保野幹事 私の趣旨自体は,むしろそこでの説明は少なくとも必要だろうと,実質的にどうするかはともかく。 ○窪田部会長代理 はい,分かりました。ちょっとその点も,検討お願いいたします。   ほかには,よろしいでしょうか。 ○床谷委員 これは質問なんですけれども,この利害関係参加の方式自体には賛成なのですが,ここで出ているのは,参加するかしないかというのは,担当の児童相談所長が適正な縁組が成立するかどうかという最後までを見て,参加を考えるということになるんですよね。そこの(注1)のところにありますよね,利害関係参加というのは,する場合としない場合があると。子の利益にかなうかどうかを,これは最後まで見通さないとできない話だと思うので,最初の段階に入るかどうかを,最後を見ないといけないという構造になってしまうんですけれども,そこのところは,少し気になったところがあります。   ドイツ法の説明を前しましたけれども,必ず入るという形で,どっちになるか知らないけれども支えるんだという,そういうやり方もあるかと思うんですね。現在の事例を見ると,例えば,里親さんは特別養子やりたいと言っているけれども,児童相談所が待ったをかけるというような事例もあるので,そういう常に添えるものなのか対立するものなのかということも含めて考えると,なかなかその辺りのことは難しいのかなというところがありました。   それから,これは家庭裁判所の許可を得てという形なんですけれども,この場合の家庭裁判所の許可というのは,何を基準に判断されるのか,利害関係参加そのもののことをよく存じませんので,そこはちょっとお教えいただければと思います。 ○窪田部会長代理 今の点についてはいかがでしょうか。 ○倉重関係官 まず,最後まで見通すかどうかという点につきましてですけれども,これも,甲案,乙案,丙案もあるかもしれませんが,いずれを採用するかという問題とも関連するのかと思いますが,少なくとも甲案を採用した場合には,1段階目の手続の段階では特定の養親がいなくてもいいということになりますので,その意味では,床谷先生がおっしゃった出口という部分は見通せていないという状態での参加もあり得るかと思っております。この場合の見通しというのは,すなわち,その子について一般的必要性が認められるか否かという観点からの,児相長の判断ということになろうかと思っております。   当事者参加をした場合には,当然申立人ということになりますので,申立人と同一方向を向いた立証活動をしていただくことになろうかと思います。ただ,児童相談所長が利害関係参加を検討する場合には,養親となる者が申し立てておりますので,確かにその特定の養親との間の特別養子縁組が前提となっておりますので,その意味では,御指摘のとおり,最終的な特別養子縁組が前提になっていると言っていいかと思います。   2点目ですけれども,当事者参加をした場合には,当然申立人となりますから,認容方向での活動をしていただくことになると。児童相談所長が,この子については特別養子縁組以外の方向もあるのではないかと思っている場合とか,この養親さんとの関係での特別養子縁組には待ったをかけたいという場合には,当然利害関係参加ということで申立人と敵対する方向での活動も可能になると考えているところでございます。   以上でございます。失礼しました。 ○窪田部会長代理 床谷委員,よろしいでしょうか。   床谷委員からは,恐らくどちらを選択するかという以外に,当然にもう全部に参加するという形のものも,制度設計としてはあり得るというお話だったのかと思いますが。 ○倉重関係官 家庭裁判所の許可に点につきまして,ちょっとお答えしておりませんでした。   すみません,こちらについて,十分詰め切れていなかったので,少し検討させていただきます。 ○窪田部会長代理 それでは,水野委員,どうぞ。 ○水野(紀)委員 では1点だけ。   戸籍についてです。岩﨑委員や藤林委員が実務の中で理解していらっしゃる戸籍の運営について,正確なところを詳細に確認していただければと思います。あるいは,戸籍の利用の仕方によっては,できないというのは思い込みなのかもしれません。たとえば,産んでもらった人を知りたいときに,本当にたどれないのかどうか。除籍された者も,たどる権利はあるでしょう。ただ,実親が転籍していると,そこは難しくなるのかもしれませんが,いわゆる士族を利用すればなんとかなるかもしれません。問題があるとしても,民法の問題ではなくて,戸籍実務で対応できることなのかもしれません。戸籍実務と民法の関係というのは複雑で,ときには戸籍実務の通達だけで,例えば,準正子の氏が強制的変更と任意的変更の間を揺れ動いたりしたようなことがあります。戸籍実務についての正確な情報を共有した上で,議論したいと思います。   それからもう1点だけ,久保野幹事が,年齢を延ばすことによってマイナスが生じるのではないかといわれた点についてですが,年齢を延ばしてしまいますと,できるだけ里親手当をもらうため,あるいは子の反抗期などの様子を見ているため,ぎりぎりになってから特別養子を申請するという可能性について御検討いただいたのか,お教えいただければと思います。 ○窪田部会長代理 ありがとうございます。   今の戸籍の話は,もちろん戸籍管掌者の方ではたどることはできるのですが,実子とか,あるいは実親の方から,たどることができるのかということを含めて,手続の問題について確認するということでお願いいたします。   それでは,もう時間になってしまいましたが,大変に活発な議論を頂きましてどうもありがとうございました。   次回,何とか中間試案を取りまとめなければいけないということで,よろしくお願いしたいと思います。   それでは,本日は大変にありがとうございました。 -了-