法制審議会信託法部会 第49回会議 議事録 第1 日 時  平成30年5月15日(火)   自 午後1時30分                         至 午後4時20分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  公益信託法の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○中田部会長 予定した時刻が参りましたので,法制審議会信託法部会の第49回会議を開会いたします。   本日は,御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   初めに,前回の会議から今回の会議までの間に幹事等の交代がありましたので,御紹介いたします。   まず,最高裁判所民事局の穗苅学局付及び法務省民事局の大野晃宏参事官が幹事として参加されることになりました。また,民事局の宇野直紀局付が関係官として参加されることになりました。   それでは,新たに部会に参加されることになりました方々から,簡単な自己紹介をその場でお願いいたします。 ○穗苅幹事 では,最高裁民事局の方に着任をいたしました穗苅でございます。いろいろこれからお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大野幹事 この部会にて事務当局を務めさせていただきます民事局参事官の大野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○宇野関係官 法務省民事局で局付をしております宇野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中田部会長 これから,どうぞよろしくお願いいたします。   本日は,小野瀬委員,岡田幹事が御欠席です。   それでは,本日の会議資料の確認を事務当局からお願いします。 ○大野幹事 では,お手元の資料について確認をしていただければと存じます。   事前に部会資料46「公益信託法の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討(1)」を送付しております。資料がお手元にない方がいらっしゃるようでしたら,お申し付けください。   引き続きまして,今回御用意いたしました部会資料46につきまして,少々御説明いたします。   部会資料46は,これまでの部会の御審議及び先般実施いたしましたパブリックコメントの結果を踏まえて,中間試案を修正したものでございます。   本文の提案は,これまでの部会の御審議及びパブリックコメントの結果を踏まえて,一本化しているものもございますが,なお意見が分かれている論点につきましては,甲案及び乙案の両案併記としております。甲案は現行制度に近い案であり,甲案,乙案に優劣がない点は従前同様でございます。   また,委員,幹事の皆様には,既に本年7月までのスケジュールをお示しさせていただいております。審議の進捗次第ではございますが,本日,6月,7月の3回にわたって公益信託法の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討として御審議いただくことを考えておりまして,その後は要綱案のたたき台をお示しさせていただき,更に御審議いただくことを考えております。   なお,6月及び7月の部会資料は,別途準備をさせていただきます。 ○中田部会長 ただいまの大野幹事の御説明について,御質問などございますでしょうか。よろしいでしょうか。   審議に先立ちまして,私の方からも一言申し上げます。   前回も申しましたとおり,3月に開催されました部会から,要綱案の取りまとめに向けた検討というステージに入っております。   これまでの御審議において,公益信託の受託者が取るべき体制など実際の認可審査の段階で求められると考えられる点につきましても,多くの御意見を頂戴しました。非常に有益かつ貴重な御意見でありまして,新しい法制度の運用に当たって大きな意味のあるものだと思っております。とはいいますものの,この部会の任務は,法律レベルでの新たな公益信託法の要綱案を取りまとめるということでございます。   部会の審議もいよいよ終盤に入ってきておりますので,要綱案を取りまとめるに当たって,この部会でのコンセンサスが得られるようにするためにはどのように考えるのかという観点から御発言を頂きますと,一層有り難く存じます。   前回の部会からの引き続いてのお願いで大変恐縮ですけれども,委員,幹事の皆様におかれましては,何とぞ御理解,御協力をお願いいたします。   それでは,本日の審議に入ります。   まず,部会資料46につきまして,全体を二つに分けて説明していただきまして,御意見を頂戴したいと思います。   まず,第1から第6までについて御審議をお願いします。   事務当局から説明してもらいます。 ○舘野関係官 それでは,部会資料46について御説明いたします。   今回は,中間試案から変更しております箇所を中心に,その内容及び理由と,今回検討すべきであると考えられる事項等につきまして御説明申し上げます。   まず,「第1 新公益信託法の目的」及び「第2 公益信託の定義等」につきましては,大きな変更はございません。   第2の「1 公益信託の定義」の本文において,法制上の理由等から形式的な修正を行ったのみでございます。   また,中間試案においては,第2の「3 現行公益信託法第2条第1項の削除」という項目を立てておりました。現行公益信託法第2条第1項の削除には,主務官庁による許可制の廃止という意味と,主務官庁による許可等を受けていない受益者の定めのない信託を有効とするか,無効とするかという二つの論点が含まれておりましたが,主務官庁による許可制の廃止につきましては,中間試案及び本部会資料の第7の1等で,主務官庁による許可等を受けていない受益者の定めのない信託を有効とするか,無効とするかという点につきましては,中間試案及び本部会資料の第3の2等で提案させていただいていることから,単独の論点として掲げておく必要性が低いと考え,中間試案の第2の3の提案は削除しております。   次に,「第3 公益信託の効力の発生」について御説明いたします。   ここでは,第3の「2 不認可処分を受けた信託の効力」の提案について,中間試案で(注2)として記載しておりました考え方を取り上げないこととしております。公益信託の不認可処分を受けた受益者の定めのない信託については,信託法第11章の規定とは別の特則,特に受益者の定めのない信託における5,000万円の受託者要件や存続期間の制限等を緩和する旨の規定を設けることについて議論がされてきました。しかし,従前の部会においても御意見を頂いておりますが,そのような特則を設けることは,脱法的な受益者の定めのない信託の創設につながる懸念が払拭できません。   したがって,中間試案第3の2の(注2)の考え方は取り上げないということとしております。   続いて,「第4 公益信託の受託者」については,本日の部会では審議の対象としておりませんので,「全体P」という表示をさせていただいております。   なお,この第4の論点につきましては,最終的に甲案,乙案のいずれの案を採用するか決定するために,新たな公益信託の受託者に必要とされる能力等について今一度整理をする必要があると考えております。   また,これまでの部会等でも御説明してまいりましたが,当該受託者となろうとする者が公益信託の受託者として必要な能力を有していることをどのように審査するのか,これは特に乙案を採用しようとする場合に問題となると考えられますが,いずれにしても,認可審査実務が十分ワークするようにするためにはどうすればよいのかという点についても,改めて検討する必要があると考えております。   したがいまして,主に今申し上げましたような整理・検討を行った上で,7月の部会において御審議を頂くということを考えております。   次に,第5「公益信託の信託管理人」について御説明いたします。   まず,第5の「1 公益信託における信託管理人の必置」について御説明いたします。   中間試案第5の1の提案では,(注)として,公益信託事務の規模等に応じて,公益信託の信託行為に,事務処理及び会計の監査権限を有する者を指定する旨の定めも設けなければならないものとするとの考え方を示しておりました。この点につきましては,本部会資料第5の2において,公益信託事務の適正な処理の監督をなし得る能力の確保という観点から検討することといたしましたことから,中間試案第5の1の(注)は取り上げないこととしております。   次に,第5の「2 公益信託の信託管理人の資格」について御説明いたします。   本論点について,中間試案からは,(1)として「公益信託事務の適正な処理の監督をなし得る能力を有する」という点を加え,それに伴い,中間試案では(注)として示していた考え方を取り上げないこととしております。   公益信託における信託管理人は,公益信託のガバナンスの中心を担うことが期待されており,その役割の重要性を踏まえると,これを担保するものとして公益信託の信託管理人に一定の能力を課す必要があると考えられます。   当該能力を担保するために必要とされる体制等につきましては,新たな公益信託の受託者に求められる能力も踏まえて検討する必要があると考えますが,受託者に関する中間試案第4の提案及びパブリックコメントにおける意見等も踏まえ,ここでは「公益信託事務の適切な処理の監督をなし得る能力」と表現しております。ただし,能力の内容につきましては,詳細な検討が必要ということで「P」というマークを付しております。   次に,第5の「3 公益信託の信託管理人の権限,義務及び責任」について御説明いたします。   中間試案第5の3(2)の提案では,「信託管理人の権限は,信託行為の定めによって制限することは原則としてできないものとし」との提案をしておりました。これは,中間試案の取りまとめに至る議論の中で,公益信託の信託管理人の通知受領権等の権限につきまして,実務的な観点から信託行為による制限を許容すべきとの御意見があったことを踏まえ,中間試案の別表1において,「信託行為に権限を有しない旨の定めを置くことを許容するか」という欄に△を付していた権限等が存在していたことによります。   しかし,信託行為の定めによる制限を可能とした場合,例えば受託者が行った利益相反行為や競合行為についての重要な通知の通知受領権を信託管理人が有さない旨の定めなどが置かれることが考えられ,受託者がそのような重要な行為を行った旨を受託者を監督すべき信託管理人が知らないだけでなく,信託の当事者の誰も知らない事態が生じるおそれがあります。   公益信託の信託管理人に期待される役割の重要性に鑑みると,信託管理人の権限を信託行為の定めによって制限することは相当でないと考えられることから,本部会資料第5の3の本文の提案のとおり,「信託管理人の権限,義務及び責任は,信託行為の定めによって制限することはできないものとする。」との提案をしております。   次に,「第6 公益信託の委託者」につきまして,新たな公益信託の委託者の権限は,主にこの後に出てまいります「第13 公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任」から「第15 公益信託の変更,併合及び分割」までにおける議論を踏まえる必要があるため,そちらでの検討を踏まえた上で検討することとして,今回は特に提案はしておりません。 ○中田部会長 ただいまの説明に対して御意見を頂戴したいと思います。二つに区切って進めたいと思います。   まず,ただいま説明のありましたうち,第1から第3までについて御意見をお願いいたします。第1から第3までのどこからでも結構ですので,御自由に御発言をお願いいたします。 ○深山委員 発言の範囲が第3までということで,第4のところは外れていますし,第4自体がペンディングということなので,今日の議論からは外れていると思うのですが,第4の受託者の資格とも関連すると思われる第3の2について,若干申し上げたいと思います。   第3の2,すなわち不認可処分を受けた信託の効力に関しては,中間試案の(注2)が削除されたという変化があります。その理由として,脱法的な目的信託の創設につながるということが説明されておりまして,そのこと自体にはもちろん異論がないのですけれども,ここで特則として考えられる条項の中には,例えば信託管理人を信託契約で創設する場合にも必置とするというように,従来の規律よりもむしろ厳しい要件を課する特則というのもあり得ると考えております。そういう意味では,緩めるのであれば脱法的になるという懸念も当てはまりますが,むしろ厳しい規律については,脱法的な目的信託の創設を認めることになるという懸念は,必ずしも理由にならないような気がいたします。しかし,冒頭,部会長からも説明がありましたように,取りまとめる段階ですので,(注2)を更に検討しろというふうに申し上げるものではございません。   ただ,一言申し上げたいのは,やはり受託者要件に関わる信託法の附則3項の関係であります。これについては,もちろん第4を議論する,恐らく7月の会議では取り上げられるのかなというふうには想像しているのですが,仮に(注2)のような特則を設けないということになると,現行法にある附則の3項がここの場面でどのようになるのかというのが気になるところではあります。   7月の議論の前倒しするようで恐縮なのですが,そこの議論を充実させるため,あるいはそこに向けての資料を充実していただきたいという思いから少し申し上げます。この附則3項自体の読み方,取り分け括弧書きの意味合いが,読み方は幾つかあるように思われます。そのことは,過去,この部会でも話題になった記憶もありますが,学芸,技術,慈善,祭祀,宗教その他の公益を目的とするものを除くというところの読み方如何です。一つの読み方としては,いわゆる公益信託を指しているのだと,認可のある公益信託を指しているという読み方もあるでしょうし,そうではなくて,ここは11章で規定している私益信託であるところの目的信託であって,なおかつ目的が公益的なものを指しているという読み方もあり得るような気がしますし,また,私益信託か公益信託かを問わず,その両方を指しているのだという読み方もあるような気がいたします。   研究者の中でどれが通説的か,私は存じ上げませんが,いずれにしても,その読み方自体に解釈の余地があるような気がするわけです。もちろん法制審ですから解釈論をしてもしようがないのですが,この規定自体を見直す余地があるのかどうかというのは立法論だと思います。   3項自体が経過措置であって,別に法律で定める日まではこうしましょうということですから,どこかで見直されることが想定されており,附則4項を見ると,公益目的の信託に関する見直しがなされたときにそれは検討しましょうというようなことが書いてありますので,正に今ここで議論をしているこの段階というのは,一つの見直しの機会なのだろうと思います。   そういう意味では,解釈論としてどう解釈するにしろ,立法論として,現行法の附則3項を見直す必要があるのではないか。その議論の前提として,現行法の附則3項は何を意味しているのかということを踏まえた議論が必要なような気がいたします。この附則3項の問題というのは,何度かこの場でも話題に出て,前参事官の中辻さんも言及されておりましたので,どこかでは議論すべきテーマであることは間違いないので,是非7月の会議の機会にしていただきたいということを申し上げるとともに,その結果を踏まえて,この第3の2のところも最終的には評価すべきなのかと考えている次第です。 ○中田部会長 ありがとうございました。   第3の2の元あった(注2)については,従来の御意見を更に敷衍していただきましたこととともに,それが附則3項との関連があるのだということで,その点につきましては更に7月の部会に向けて検討していただくことになると思います。   また,目的,受益者の定めのない信託と公益信託の関係について,従来から幾つかの議論があったと思いますけれども,そういうこともまた踏まえて,引き続き検討することになろうかと存じます。   ほかに,この点でも結構ですし,ほかの点でも結構ですが,いかがでしょうか。 ○平川委員 3の2の(注1)としてあったところに関連するのですけれども,公益性が不認可となった信託について,目的信託として成立させるとの信託行為の定めがある場合に,それが第11章の目的信託として成立するかどうかということは,第11章に定める目的信託の要件に沿って決すればよいことで,又は第11章に定める要件に足りないのであれば,11章に定める目的信託として成立させたいという意思に沿って,足りない要件を付加又は修正していけばよいのであって,わざわざ公益信託法の中に受益者の定めのない信託として効力を生ずるなどという規定を置く必要はないと考えますので,やはり3の2のところで,公益信託法の中で,不認可処分を受けたときから受益者の定めのない信託として効力を生ずるというような規定を公益信託法の中に置くということについては,ちょっと御再考願えないかと思います。   こういう規定を置くということは,何か非常に曖昧になって,百害あって一利なしと思うわけなのですけれども,目的信託として第1章に定める要件を満たしていないにもかかわらず,第3のカテゴリーの受益者の定めのない信託の効力を認めるという趣旨にも受け取られ,認可を受けていないのに公益を標榜する,公益性のない信託を生む危険性をもはらんでいると思います。つまり,このような信託を認めることは,一種の非適格公益信託的地位を公益信託法の中に認めるような結果になってしまうと思います。   公益の増進というのは,様々な形態の信託を認めれば図れるというものではなく,やはり一定の縛りの中で健全な枠組みを作っていかなければ増進にはつながらないと思います。   このような考え方が出てくるというのは,そもそもその前の第2の1の公益信託の定義の中で,「受益者の定めのない信託であって」という要件をわざわざ入れたところからもその思想が来るのかなと思うのですけれども,このくだりというのは,前にも申し上げた--ちょっと蒸し返しになって,まとめの段階では申し訳ないのですけれども,公益認定法第2条4項の公益目的事業の定義を見ますと,その定義は「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。」というふうにされておりますように,公益を目的とするといえば十分で,その言葉の中に不特定多数の受益者のための信託であることが当然に既に規定されていると言ってよいと思います。   「受益者の定めのない信託」との文言を残存させることにより,公益信託が第11章に定める目的信託とは異なる別のカテゴリーの公益信託という別類型であるということが,かえって不鮮明になると思います。   その結果,第3の2の(注1)や(注2)であるように,第1章の目的信託として認めるというような積極的な規定を置くべきという議論につながるわけですけれども,このような主張の素地というのは,受益者の定めのない信託の中に二つのカテゴリー,目的信託と公益信託があるとの立場を採って,両者を受益者の定めのない信託という大きなくくりの中に入れることによって関係を曖昧にするために生ずるものであると思いますが,そのようなくくりの中に公益信託というのを入れるという考え自体がちょっと両者の関係を曖昧にするために不都合が生ずるのではないかと思う次第です。   また,もう一つ,蒸し返しになるのですけれども,公益信託の定義の中で,「宗教,祭祀」というのを入れることにはやはり今も違和感がございますが,公益認定法の第2条4項では,公益目的事業は,「学術,技芸,慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業」というふうにあり,祭祀や宗教というのは例示として入っておりませんので,公益という点で共通している法律ですから,法令で使う言葉をそろえたほうがよいのではないかと思う次第です。 ○中田部会長 ありがとうございました。   3点の御指摘だったと思います。一つ目が,第3の2の現在でいうところの新たな(注)ですね,従来の(注1)というのをむしろ採るべきであるということについての御指摘だったと思います。   それと関連して,第2の1の定義の中で,「受益者の定めのない信託であって」という文言を取り上げないこととすべきであるということでした。これは,中間試案の前から一貫して主張してこられたことですが,中間試案の結果,また,それに対するパブリックコメントも踏まえて,ここでの要綱案の取りまとめの段階でもこのような形になっているわけですが,従来の主張を再度提起されたものとうかがいました。   3点目が,この定義のところで「祭祀,宗教」とある部分を,公益法人認定法とそろえる形で,むしろ削除したほうがいいのではないかと,こういう御指摘だったかと思います。 ○平川委員 パブリックコメントでもそのような意見を出されている方がいたと思います。 ○中田部会長 これに関連した御意見ございますでしょうか。 ○樋口委員 では,ちょっと2点だけ申し上げます。   1点は,今,最後に言われた祭祀,宗教というのが違和感があるということですね。これは,ちょっと英米法の建前からいうと,学術,技芸,慈善,祭祀,宗教というのは全部入っているものだから何の違和感もないのですが,しかし,この会議に参加して,私もいっぱい得るものがありましてね。それで,ああ,何だこうだったのかと思ったことがある。それは信託と限らないのだけれども,日本の公益団体活動というのが,非常にやはり何という言葉でいいのかな,細分化ということを何かもっとうまい言葉で言うといいのですけれども,その言葉が出てこない。何というのでしたっけ,こういう……,日本的なものなのですけれども--タコつぼ化みたいな話ですね。   つまり,例えば祭祀,宗教って,宗教法人法というのがあって,別にくくられてしまっているわけですね。それから,慈善の方も社会福祉法人があり,それで慈善の中に医療も入るとしても医療法人法があり,それから学術なんていうのは学校法人法というのがあって,ここで全体としての公益活動を我々は議論しているわけでは実はない。重要な部分は全部ほかのところへ取られてしまっているのですね。もっとも,そちらは宗教信託とか何とかいう話ではないから,ちょっと信託というくくりではそうではないのですけれども,それは私みたいな半分アメリカ人から見ると,もうびっくり。それで,そういうことを議論していて,ここで,しかも定義規定の中で,昔のイギリス法の伝統によるようなものなのですか,それだけが残っているというのが非常に面白いというコメントですね。   二つ目は,その中で,やはり不特定かつ多数というのが日本的こだわりで,何でこんなことを言わないといけないのかという,本当の公益というのは学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他というので十分なのに,こういう何か要件を--これは繰り返しで,それこそ繰り返しではなくて,もう蒸し返しだと言われてもしようがないことなのですけれども,不特定はまだいいのかもしれないのですけれども,多数である必要はなくて,例えば私が公益信託を設定して,毎年1人だけということで奨学生を決める。それは明らかに公益信託の要件に合致すると思うのですけれども,多分そういうふうに運用してくださると思うのです。最終的には1人であっても,きっと候補者が多数であるからとか,何かそういうような言い方で。しかし,誤解を生じますよね,普通に考えれば。不特定かつ多数というような形でわざわざ限定して,それらの第1のところでは「民間による公益活動の健全な発展を促進し」と書いてあるのに,こういう限定的な条件をどうしても付けざるを得ないというのが,難しい--私には理解が難しいということを繰り返し申し上げました。 ○小野委員 議論する視点というと大げさですけれども,そのときに濫用から入っていくと,全ての制度は濫用されるので,濫用よりも勝る目的とか利益があるかどうかから入っていくべきではないかと思いますし,一般に制度導入を論じる際にはそういうふうに議論されているかと思うのですけれども。   今回の事務局の説明でも,脱法的であるとか受託者要件の緩和になるという議論がありましたけれども,緩和かどうかという議論も一つの価値判断かもしれませんけれども,一方において,委託者の権限を大幅に減退させるとか,信託管理人を必置にするとか,あと善管注意義務を任意規定ではなくするとか,非常に厳しい部分をこれまで議論してきているのですね。別に緩和することだけを考えているわけではなく,これまでの部会の資料見れば,そういうふうに議論をされています。それを濫用といって,一つの側面のみに注目して議論するというのは,どうもなかなか腑に落ちないのであって,もし濫用の危険があるということが非常に現実的であるということであれば,それはそれだけとして取り上げて,信託法改正で自己信託を導入した際に詐害信託で通常の信託よりも規律を厳しくしたりとか,そういうことをされたと思うのです。こうしたアプローチをしないと,それぞれの立場,利害からの議論だけで終始してしまって,まとまるべきものもまとまらないのではないかと強く懸念します。   (注2)を残す,残さないというよりも,(注2)が残ることが今までの議論の必然ではないかと思います。その上で繰り返しになりますけれども,委託者の関与をなくす公益目的の目的信託にふさわしい新たな制度を考えるというのがこれまでの議論で,受託者要件の議論だけに是非とも終始しないで,受益者という概念はありませんけれども,公益信託の認可が取れようが取れまいが,そこにおける真の受益を受ける方というのは,給付型であれば,給付を必要とする国民・市民の方ですし,事業型であれば,福祉とか環境かもしれません。そのために一番いい制度は何かということを考えないと,受託者が悪いことするかもしれないとか,受託者要件を緩和することを目的としているのだとか,繰り返しになりますけれども,議論の前提がちょっとぶれていると思います。 ○中田部会長 今のご発言は,直接的には(注2)を残すということですね。 ○小野委員 そうです。それで,(注2)で何をどう規定するかということを議論する。その上で,更に濫用の危険があるのかどうかということを議論する。受託者要件の緩和だけが(注2)ではないという大前提に立つということが重要ではないかなと思います。 ○中田部会長 (注2)を取り上げないこととするというのは,今日は濫用という言葉が出てきましたけれども,以前からも,ほかの幾つかの理由で(注2)については消極的な御意見の方も割合いらっしゃったということで,事務当局からの今回の御提案になっていると思います。説明の中で濫用ということが出てきたものですから,それを前提とするのはおかしいのではないかと,こういう御指摘だったかと伺いました。 ○新井委員 不認可処分を受けた受益者の定めのない信託についての一定事項について,信託法11章の特則を設けるべきではないと考えられるという点については,私はこれに賛成します。というのは,緩和とか厳格化といろいろ意見が出ましたけれども,体系的なことを考えてみると,11章の特則を認めると,一方には公益信託があって,他方に目的信託があって,その両者でもない,11章の内実が緩和されたような一つの新しい類型ができまして,これは一体どっちなのかと,いろいろな類型論が出てくると思うのです。   ですから,私としては,やはり今回の議論の進め方としては,公益信託と目的信託,その二つでいくということにしたらどうでしょうか。   そして,目的信託をどう活用するか,活性させるかという議論は,私はそれは必要だと思うのです。その際,この特則をどうするかということの議論はあるでしょうけれども,それは取りあえず別途ほかの場でやるべきであって,この特則をどうするかという議論を始めると,それ自体また非常に大きな問題になってしまいます。一応このように考えながら議論を進めて,特則の扱いはそれとは別のところで検討していただいたらどうかと私は考えます。 ○能見委員 今議論になっている点に関連しては,私も,新井委員の御意見に賛成です。公益認定の申請をして不認可の処分を受けたために,目的信託として存続するというときの特則を認めるということになると,公益活動を行うことを目的とするけれども,最初から公益申請しないで目的信託を目指すというものが出てきたときに,それとの整合性が問題となると思いますので,なかなかその調整が難しい。両者を同じに扱おうとして,最初から公益申請しないものについても特則を認めるというのはありうるとは思いますが,議論がまとまれば結構ですけれども,なかなか今の段階でまとまりそうはないので,そういう意味で,不認可処分の場合についても特則は考えないという方向は,今の段階としてはしようがないのなと思います。   この点に関連することですが,現在の提案の第3の2の本文でちょっと気になったところがあります。それは,「不認可処分を受けても当該信託を受益者の定めのない信託として有効に成立させる旨の信託行為の定めがあるときは」という文言の意味なのですが,例えば,仮に今後の議論で公益信託については,自然人を受託者にしても構わないというような立場が採られた場合に,自然人を受託者とする公益信託の認可申請を求めたけれども,ほかの理由でもって不認可処分を受けたので,今度は,目的信託として存続させたいというときに,信託法の目的信託のところの規律は従前のままで,受託者については附則の3項がそのままであるとすると,不認可処分を受けた公益信託が目的信託として存続を図るためには目的信託の要件に合わせないといけないことになるのだろうと思います。   そうなりますと,「不認可の処分を受けた時から受益者の定めのない信託としてその効力を生ずる」ということはできなくて,目的信託としての要件を欠いているというある意味での瑕疵というのでしょうか,それを治癒するための時間が必要になるように思います。あるいはほかにも何か,もしかしたら問題が出てくるかもしれませんが,例えば公益信託の場合に,50年ぐらいの存続期間を念頭に置いて公益信託の仕組みを考えたが,不認可の処分を受けて目的信託になると,20年を超えてはいけないという規律があるので,それに合わせていろいろな調整をしなければいけないというような問題も生じるかもしれません。要するに,公益信託として不認可処分を受けたものが目的信託として存続するために,一定の調整が必要であり,そのための一定の時間が手続きが必要になるのではないかという懸念を持ちました。 ○中田部会長 今の御指摘は,第3の2については,(注2)を落とすのはよいだろうと。しかし,その結果として,附則3の要件を満たさない,当初は公益信託としての申請をしたものについての取扱いが問題となるという御指摘だったと思いますが,それはどのレベルで対応すべきことなのでしょうか。つまり,信託行為の書き方で対応すべきことなのか,それとも法律で対応すべきことなのか,あるいは運用か,いかがでしょう。 ○能見委員 まずは,最初に公益信託の認可申請する際の信託行為において,万一不認可処分になって目的信託として存続することになったときのことを考えて,それに対応できるようなことまできちんと書いておくことを要求するのは適当ではないと思います。   そこで,不認可処分を受けた後から目的信託として存続できるように対応することになると思いますが,それは事後的に信託行為を修正するなどして対応すべきことだと思います。基本的には当事者,受託者なり委託者なりが信託行為の当事者として対応すべき問題だと思います。従って,法律で特則などを設ける必要はないと思います。ただ,今の第3の2に書いてあるままですと,目的信託として存続する場合にどうなるのかということが問題になるのだろうと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに,関連するご発言はございますでしょうか。 ○林幹事 同じく3の2の(注)等についての意見ですけれども,これまで,不認可になっても直ちに信託は無効になるのではないという,その前提で議論してきていますので,その前提でどう整理するかという形で3の2の検討事項が出てきているという流れはありますので,その前提で考えるということです。   私自身は(注2)について賛成していましたが,今回このような検討事項になったときに,どうすべきかは悩ましく思います。それで,(注2)が採用されないのであれば,結論からいうと,附則3項の法人要件や5,000万円の要件について再検討すべきだと考えます。   繰り返しにはなりますが,結局,不認可処分を受けたときにその信託がどうなるかというのは,能見先生も御指摘された疑問でありまして,特に現行の附則3項の法人の5,000万円要件を満たしていない受託者だった場合に,結局,信託として存続していかないというのであれば,上記のこれまでの前提の議論が活かされていないことになってしまいます。   その場合の,一つの方法は,不認可の場合に目的信託の5,000万円と法人の要件を満たしている者を新たに何とか受託者に据えて,やり直すというのか,その手続がどうなるのか,受託者が1年不在であればどうなるか,いろいろ気にはなります。ただ,目的信託の受託者要件を満たしている者を何とか連れてくるということができるかどうか,現実的かどうかは分からないことからしますと,私としてはやはり何が原因かといえば,附則3項の法人と5,000万円要件であるとどうしてもなってしまいます。先ほどの御指摘もありましたが,4項においては,要する公益信託に関して検討するときにその要件も検討しなさいとなっているわけですから,検討されるべきだと思います。   ただ,検討したときに,では代案は何か,要するにこの附則3項なりも,濫用なりの危険があるからという趣旨があるのは分かるので,それを担保した代案では在るべきですが,どのようなものかは悩ましいのですが,深山委員もおっしゃいましたが,第4なり検討するときか,また,別のときに何らかもう少し議論の時間を頂けると有り難いと思います。   ただ,公益信託法でもいろいろ,制約の掛け方という,ガバナンスの仕方というのを議論してきましたから,何とかそれを参考にしながら検討できないのかと--目的信託の附則3項の改正という観点においてもですね--思います。   これは,何とか広く目的信託が使えるようであれば,小野委員も言われたように,更にその信託をもって利益を受ける方々が増えるのではないかと思いますので,是非検討いただけたらと思っています。 ○中田部会長 ほかに。 ○吉谷委員 中間試案の(注2)がなくなったことには,まず賛成しておるのですけれども,今回の御提案の2の(注)の方には賛成の立場であるというのは変わらないです。それは,直接的には私はこの本文に書いてある内容のうち,「不認可処分を受けても当該信託を受益者の定めのない信託として有効にさせる旨の信託行為の定めがあるときには,有効に成立する」については構わないと思っているのですけれども,その後に「当該信託は不認可処分を受けたときから効力を生ずる」というふうになっていて,このように,不認可処分を受けたときから効力を生じるというふうに定める必要は全くないと思っているというところです。   それで,ここで問題になっているのは,事前に目的信託が設定されていない場合に,新たに公益信託を設定しようとしています。公益信託が不認可だったので目的信託にする,ということなので,実務的な観点からいうと,不認可だということが分かれば,そのときに目的信託として続けることにするのか,どうするのかというのを考えればいいというだけなので,余りこのような定めを事前に信託行為に書いておくということが,到底ちょっと想定できないかなと思います。   ただ,デフォルトルールというだけなので,こういう定めがあると決定的にまずいかというと,いつ始まりますというのが書いてあれば,例えば信託財産を移転したときに始めますというふうに書いておけば,それに従うだけだというふうに理解しておりますので,そういう意味では第3の2の本文については,余りこだわりはないというところが結論になるかと思います。   一方で,今,御議論いただいている受託者の範囲との関係で申し上げますと,(注2)について私が主張していたことと目的信託そのものの受託者の範囲についての考え方は余り変わるところはなくて,目的信託というものを受託者の範囲を拡大してまで進めていくという理由がちょっとよく分からない。余りそういうニーズがあるのかどうかというところが非常によく分からないところでありますので,本当にそういうことを議論するのであれば,ニーズがあるということをまず確認してからなのではないかなと思うところであります。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○小野委員 すみません。重複にならないように発言します。   先ほど新井教授,能見教授の発言に対して反論するわけではありませんけれども,附則3項の中で公益を目的とする目的信託を除くと明文化されておりますから,法体系として今の信託法は公益目的の目的信託を別扱いとすることを前提としているという解釈というか,理解も決しておかしくはないのではないのかなと思います。   今から何かを作るというよりも,繰り返しになりますが,附則3項の規定そのものが(注2)を残す議論につながるかもしれませんけれども,前提としているのではないかと思います。   それから,2点目として,目的信託としての受託者要件を欠く,或いは事後的に欠く,解釈はいろいろあるのかもしれませんけれども,初めから受託者要件が欠けている場合には無効と,あるコンメンタールには書かれておりますし,事後的の場合には,それは受託者の任務の終了事由になりますと書かれております。   恐らく,今の議論の前提はどちらにも当てはまらない,新しい状況と思いますけれども,いずれかしかないということであれば,公益信託を目指し認定を取りに行ったけれども,何らかの理由で取れなかったという場合,受託者要件を欠いて無効ということになりますが,それよりも,新たな受託者を探す,若しくは5,000万がなければ,一生懸命何かの形で5,000万調達するとか,これが解釈論になるのか,立法論になるか分かりませんけれども,そういうように何とかやっていくべきところ,いきなり無効となるというのは善意の資金,善意のお金,善意の人の努力というものがいかされていくのではないのかなと思います。この2点について,ちょっと申し上げました。 ○中田部会長 ありがとうございました。   今,無効とおっしゃったのですけれども,仮に附則3項の規定が現在のままだとして,最初からその要件を満たしていない場合は,これは無効ということでよろしいわけですよね。 ○小野委員 公益目的でない目的信託を目指したものであれば,解釈論かもしれませんが,そういうふうにコメンタールには書かれておりますよね。ただ,この場合は,公益信託を目指した訳で,公益目的の目的信託として一概に無効にはならないのではないかと。そう解釈することのメリットというのは,新しい受託者を探すことができる,もし受託者のガバナンスの問題である…… ○中田部会長 御主張は分かるのですけれども,公益信託を目指して認可を求めたところ,認可が下りなかったことによって,本来であれば目的信託として認められないものが認められることになるという,そこの説明が十分ではないのではないかということがこれまで御指摘いただいていたことだと思うのです。   認可によって何らかの効力を与えるのではなくて,不認可によって何らかのプラスを与えるということが十分説明できないのではないかという御指摘を何人かから頂いておりました。 ○小野委員 すみません。繰り返しますけれども,附則3項の括弧で公益目的の目的信託を除くと規定されていることをどう見るかという論点から離れても,受託者案件を欠く場合無効とせずに任務の終了とすることができれば,任務の終了が誰かに便益を与えるということにはならず,新たな受託者を探すわけですから,公益的目的という観点からも,誰かが得をする,誰かが濫用するという状況ではないと思うのです。無効にすることの方が,いろいろな準備行為とかを含めて行動があるにもかかわらず,それを無効とすることの方が制度設計としてふさわしくない議論に思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかにございますでしょうか。 ○吉谷委員 ちょっと先ほど,目的信託のニーズがといったところの説明が不十分であったかもしれませんので付け加えますと,仮に公益信託をやろうと思っていましたが不認可でしたというような場合に,別に目的信託を使う必要はありませんで,一般の信託で,ただ単に信託終了時には残余の財産を受益者として委託者が受け取りますというふうな形にしておけば,同じようなことはできると思いますので,そういう意味でニーズがないと思います。   公益信託の場合は,委託者に戻らないということは非常に重要で,これは税の恩典との関係において譲れないところだと思うのですけれども,目的信託の場合には当然,税の恩典は特にないと思いますので,一般の信託として成立させれば十分だろうと思います。 ○中田部会長 ほかにございますでしょうか。   この点につきまして,従来から,弁護士会の御出身の委員・幹事の方から(注2)を残すべきであるという御主張があり,本日もそれを維持されまして,3人の委員・幹事の方から,ニュアンスはそれぞれ若干の違いがあるかなというふうに承りましたけれども,ご発言をいただきました。他方で,第3の2自体をなくすほうがよい,(注)の考え方を採るべきであるという平川委員,吉谷委員の御意見,あるいは(注2)というのをなくしたほうがよいという新井委員,能見委員の御意見もありまして,今のところは,やはり少なくとも(注2)は削るというご意見の方が,弁護士会からの従来からの御主張,御意見はございますけれども,そうでない御意見の方が現在のところは多数かと存じます。   ただ,それにしましても,弁護士会の委員・幹事の方から,(注2)を削るのであれば,あるいは削られないとしても,附則3項との関係を更に検討すべきではないかという御指摘を頂いております。   大体その辺りが本日の御意見かと承りましたが,ほかに関連する点ございますでしょうか。もしないようでしたら,この辺りで事務局の方からご発言をいただきたいと思います。もしあれば,御意見というか,コメントをお出しください。   ちょっとお待ちください。平川委員,どうぞ。 ○平川委員 すみません。今の第3の2の本文のこの趣旨をもう一回確認したいのですけれども,「当該信託は不認可処分を受けた時から受益者の定めのない信託としてその効力を生ずる」という規定をわざわざ入れなければならない趣旨というのは,不認可になったけれども,目的信託として生き長らえるようにさせたいという設定者の意図を酌んで,11章の規定の要件を備えるための期間の何かみなし効力発生期間というか,暫定的な例えば6か月猶予するみたいな,要件を満たすための期間として6か月間はみなし効力を認めるみたいな,そんなような趣旨でこういう規定を積極的に入れたほうがよいということなのでしょうか。 それとも,11章の要件を満たしていないけれども,無条件で効力を認めてあげるということなのですか。 ○大野幹事 「信託としてその効力を生ずるものとし」という表現の趣旨が伝わりにくいのかなというところは,事務当局も表現ぶりを更に検討する必要があるだろうと考えているところでございますけれども,元々の意図しているところとしては,受益者の定めのない信託の要件を満たしているのであれば,そちらで生きていきますという,そういう趣旨でございます。 ○平川委員 分かりました。そうすると,不認可処分を受けそうだなと思ったらば,どんどん受託者も替えていくとか,何かそういうような措置が期待されているということですね。 ○中田部会長 実際の運用の仕方がどうなるか分かりませんけれども,申請をしていて,その後で,申請の決定が出る前の段階でどんどんいろいろ変えていくということは,多分実際上はなかなか難しいのではないかと思いますが,この点につきましては,中間試案の補足説明の中で,不認可処分を受けた信託の効力,この規定を置くことの意義,趣旨など,あるいは従来の(注1),(注2)について説明がございまして,その点については現在も維持されているものだと理解しております。   ほかの点についてもしございましたら,よろしいですか。 ○平川委員 結構です。 ○道垣内委員 小さな話なのですが,(注2)があることによって,「第11章の規定を適用するものとする」ということの意味が,それとの対立関係で分かるのですね。というのは,第11章を変容して適用するのか,第11章を適用するのかという選択肢だから。(注2)がなくなったときには,そのまま適用と言うことが明らかなのだから,「受益者の定めのない信託としてその効力を生ずる」というだけになるのではないでしょうか,文言の問題ですが。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○林幹事 第3の2の本文の読み方のような話になっていますが,要するに,この定めがなければ,不認可のときには当該信託というのはもうそこで終わってしまって,以後続かないのだけれども,この定めがあれば,不認可となったけれども,その信託は一応信託として同一性を持って,事後,目的信託なりとして存続する余地を残す,そういう趣旨で議論してきたのではないでしょうか。   それで,不認可になったときに,どちらの信託にいくかということについて,本文の方は11章の信託なのだと書かれている,と至ってすごいシンプルに読んでいました。逆に定めがなければ,不認可となればその信託はそこで終わってしまうので,それこそその場合は,ゼロから新た信託を設定するほかはない,それに尽きてしまうと,そういう御提案だったかと思います。   そういう検討事項の趣旨に理解しています。元々,大阪弁護士会の意見は,その認可にかかわらず,認可の申請しなくたって,第3のカテゴリー的なもので残るべきだということだったのですけれども,それはそもそもこの提案でもなくなっているというふうに理解をしています。第3の2の本文におけるに,定めがある,なしの違いというのはそういうところにあるのだというでこれまで議論していたと思いますので,念のため申し上げます。 ○中田部会長 ただいまの中間試案以来の理解についての御説明だったと思います。他方で,道垣内委員の御指摘は,(注2)をなくすとすれば,むしろわざわざ書かなくたって,もう当然のことなのだから,ワーディングにも跳ね返ってくるだろうと,こんな御指摘であったかと存じます。   ほかに,この点でも結構ですし,第1から第3,全体についてございましたら御意見をお出しください。   大体よろしいでしょうか。   先ほど平川委員からの祭祀,宗教についての御意見が出まして,それに関連しまして,樋口委員からのコメントとおっしゃいましたけれども,御意見を頂きました。この点については,また検討していただくということになろうかと思いますけれども,一応現在のところはこの形で,中間試案においても支持を受けているということでは来ていると思います。   ほかにございませんようでしたら,先に進めることにしたいと思います。   続きまして,部会資料46の第4から第6までについての御意見をお願いします。と申しましても,実質的には第5が本日の対象になっておりますので,第5が中心になるかと存じますけれども,先ほど深山委員から,第4についても関連して御意見を頂きましたように,第4,第6についても御意見いただくことは結構でございますが,今日のメインは第5でございます。よろしくお願いします。   第5の信託管理人について,その資格で公益信託事務の適正な処理の監督をなし得る能力という要件を追加するというのが今回の提案でございます。これは追加というよりも,ほかのところで出ていたのをこちらで具体化したということだと思いますけれども,この点を中心に是非御意見を頂ければと思います。 ○深山委員 第5の2のところは,中間試案の(注)がゴシック体部分に格上げされたような印象を持って伺いましたけれども,そのこと自体について,私自身は賛成をいたします。信託管理人であれば,公益信託事務の適正な処理の監督をなし得る能力を備えることを要件として,どういう能力がそこに求められるか,あるいは法律上要件とするかということは十分に議論されるべきだろうと思います。信託受託者の資格・能力とも似たような議論が行われることになるわけで,もちろん立場の違いがあることから,全く同じにすべきではないのかもしれませんけれども,やはり相互に関連する論点だと思います。   そういう意味では,第4のところの受託者の能力にしろ,第5の信託管理人の能力にしろ,新しい公益信託制度の核になるところだと思いますので,今後,十分議論するということについて大いに賛成したいと思います。   そこでは,受託者の方では,自然人を認めるかどうかということが一つの大きな論点になっているわけですが,他方,信託管理人については,自然人であることをむしろ想定しているのかもしれませんし,少なくとも自然人でいいかどうかということはこれまで一切議論になっておりません。そういう前提で,もちろん自然人に限る必要はないわけですが,自然人も含めて,適正な監督をなし得る能力についての議論を今後していただければなと思う次第であります。 ○中田部会長 ありがとうございました。   第5の2の(4)に信託管理人が法人である場合についての規律がありますので,それから逆に考えると,自然人も想定しているということなのかなというふうに理解しておりました。   ほかにございますでしょうか。 ○山田委員 十分に見ていないので,見落としがあればおわびを申し上げて,取り消させていただきます。   第5の2の(2)ですね,旧の2が削除されています。それ自体は問題にする趣旨ではないのですが,受託者と信託管理人が兼ねられないというのは,どこかに残りましたでしょうか。もし残らないならば,どこかに残したらよろしくありませんか。 ○中田部会長 それは,再度確認したいと思いますけれども,多分それは前提になっているのだろうとは思うのですけれども,どこに出ているかということは再度確認したいと思います。 ○山田委員 一つの考え方として,ここで議論することではないかもしれませんが,信託法が定めている信託管理人の規定で今の問題を処理するという言い方もあるのかもしれませんが,何を信託法に準拠し,何は信託法にいちいち遡らないのかというところがクリアになる必要があるのかもしれません。 ○中田部会長 ごめんなさい。「信託法124条に掲げる者に該当しないこと」というのが今回の提案では削除されていて,その結果,未成年者,成年被後見人,被補佐人,そして受託者ということが,表面には出ていないのですけれども,当然それはほかのところでカバーしているという前提になっていると思います。 ○山田委員 はい,分かりました。 ○沖野幹事 私がこの規定の読み方を間違っているのかもしれませんけれども,2の(2)のアで,受託者又は受託者と特別の関係を有する者に該当しないことですから,受託者ができないことはここで明らかになっているのではないでしょうか。 ○中田部会長 特別の関係を有する者…… ○沖野幹事 いや,その前の部分の受託者です。これは入っていないのですか。ここは,飽くまで特別の関係だけですか。 ○中田部会長 ありがとうございます。   これは,この規定の表現自体についても分かりにくいということで,中間試案以来こういう形になっていると思いますが,趣旨については特に御異論のないところでございますので,疑義のないように,更に表現を検討していただくことと思っております。   今の沖野幹事の御指摘も含めつつ,「124条に掲げる者に該当しないこと」というのを削除した結果,その点が分かりにくくなっていないかということをもう一度検討して,ワーディングについて御検討をいただきたいと思います。 ○能見委員 この「適正な処理の監督なし得る能力」を信託管理人に要求するという,その考え方についての意見です。今後は,軽量なといいますか,軽装備の公益信託も認めていこうというときに,ここで余り高い能力を要求するというのは適当ではないのではないかという問題意識です。中間試案のところの(注)の中に書いてあることと関係しますが,例えば会計の専門的な知識がないといけないとか,そういう高度な専門的な能力まで要求するのは適当ではないと思います。この表現のもとで具体的にはそういうことまで要求しているわけではないと思いますが,高度な専門的な能力を要求すると解されるおそれがありますので,そう考えるべきではないということを指摘しておきたいと思います。ここで信託管理人に要求しているのは,ごく普通の人でも有する能力であって,他人の監督ということに未経験な人でも,こういうことを注意しなくてはいけないということが明らかになれば,普通は監督ができるというので,ごく普通の自然人でも構わないと考えるべきです。能力が特に劣っている人は駄目ですすけれども,普通の能力があれば構わない。こうした点についての考え方を議論しておく必要があるかと思います。これは,公益信託というものをどの程度広く,幅広に認めていくかということと関係すると思いますけれども,いずれにせよ何か共通の理解が必要なのかなと思いました。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ただいまの御指摘は,余り高い能力を要求すべきではないということで,中間試案の第5の2の(注)にあるようなものに限定すべきではないという御意見かと存じますが,何らかの能力を求めるということはよろしいでしょうか。 ○能見委員 何らかの能力というのは,例えばどういうことを求めますか。 ○中田部会長 信託の内容や種類によって違うかもしれませんけれども,抽象的に言えばこういう,今出ているような書き方になろうかと思いますけれども,その中身について余り高いものを求めるべきではないということなのか,それともおよそ信託管理人について能力要件を一切課すべきではないというところまで進めるということなのかです。 ○能見委員 それを表現するのは難しいのですが,普通の人の能力という程度を考えています。行為能力という意味での能力の問題は,先ほど議論になった信託法の124条とも関係しますが,同条が公益信託の場合にも適用されるのであれば,未成年,成年被後見人,被保佐人は信託管理人にはなれないわけですね。ただ,124条が適用されないとなると,能力要件が重要になってきますが,ここでの問題との関係はどうなるか,先ほどの議論を十分理解しなかったので,ごめんなさい。 ○中田部会長 124条については,第4の1の(2)で,受託者が自然人である場合について,(2)のアで「信託法7条に掲げる者に該当しないこと」というのが入っておりまして,それを受けているということになりますのと,受託者については,沖野幹事からも御指摘いただいたようなことであり,124条を書くことはむしろ重複になってしまうということで削られたのだと思います。その上で公益信託事務の適正な処理の監督をなし得る能力ということについて,その中身について御趣旨は十分承りましたけれども,そういう何らかの能力を要件とすることについてですが。○能見委員 分かりました。そうすると,124条をクリアした上で,受託者を監督する能力ということが問題となるということですが,そこで具体的にどの程度の能力を考えたらいいのか,言葉でうまく表現できないのですが,公益信託にもいろいろあり,非常に大規模な公益信託で,きちんとした会計などをしなくてはいけないようなものであると,その会計の適切性なども判断できなければならないということがあるかもしれません。他方で,それほど大きな規模ではないというものではそれほど高い能力は必要でないということがあるかもしれません。しかし,私が言いたかったのは,例えば普通の会社員,仕事をしているような人,仕事をする上での一定のあるのであるから,そのぐらいの能力があれば信託管理人として必要な能力があると考えるのか,あるいは何かもっと専門的な能力がないといけないと考えるのか,という問題です。私は,前者の考えに賛成ですが,ただ,だんだん能力水準を低くすればするほど,この信託管理人の資格としての能力ということをわざわざ要求することの意味がなくなってくる。この辺が難しいように思います。   私自身信託管理人をしたこともなく,受託者を監督するためにどの程度の能力が必要かよくわかりませんので,そういう意味で抽象的な言い方しかできませんが,繰り返しになりますけれども,余り高い能力というものを要求すべきではないのではないかということを意見として述べておきたいと思います。 ○中田部会長 分かりました。どうもありがとうございました。   ほかにございますでしょうか。 ○樋口委員 これは後で議論になるということなのでしょうか,第4のところの受託者のところも同じです。適正な処理をなし得る能力という意味で,これ本当に曖昧な言葉でですね。でも,こういうのを法律の中に入れておくことに日本では意味があるのかもしれない。実際には,認定のときの認定基準で使われるわけですよね,これが根拠になってね。それが今,能見先生がおっしゃったように,認定の際に非常に何か厳しいことを言ってもらうと,結局,公益信託ができないという話になるので,それは困るでしょうと,それは本末転倒です。   やはり,一定の能力は必要だよねというぐらいのことはあると思うのですけれども,これに代わるいい言葉があるかというと,なかなかないので能見先生も苦労されているわけだから,もう私なんかにはとても案は出てきませんが,やはり趣旨としては非常に高い制限的な要件を付け加えようという話になると,とにかく公益信託を作ろうよという話で公益信託を作ろうという,改正しようとしているのに,一つ一つ制限的な話を持ってくるのは,やはり方向として間違っていますよということは確認しておきたいと思います。   ちょっと別の話で,これはちょっと質問だけなのですけれども,第4の2というところに,これは4の話は後で全部やるのかもしれませんが,前も聴いたことがあるのかもしれないので,本当にもし重複だったら許してもらいたいが,受託者の権限,義務及び責任で,「善管注意義務,軽減することができないものとする。」と書いてありますね。これをわざわざ,つまり私の頭からすると,では忠実義務はいいのだ,公平義務も要らないのだという,そちらは軽減することができるというふうに反対解釈されそうな気がするのですけれども,それはそういう趣旨なのでしょうかということなのです。あるいは,かつてそう思われていたように,善管注意義務の中に全部含まれるというような趣旨でここでは書いてあるのかどうかということだけ,ちょっと確認をさせてください。 ○中田部会長 この点については,中間試案前のこの部会で,善管注意義務の軽減の不可ということに関連して,今の点も議論していただいたところだったと思います。本日,受託者については取り上げないということでございますので,今の点について再度確認するようにというご指摘を頂いたということにしたいと存じます。   前半について,能見委員の御指摘を踏まえ引き継がれつつ,最終的にはこれは認定基準の問題になるだろうということで,ただ,その認定基準に委ねざるを得ないけれども,それを法律で余りにも高いレベルの能力を求めるということまで書いてしまうと,認定基準自体を縛ってしまって,適当ではないだろうということだろうと伺いました。   その上で,最終的には認定基準に委ねることであって,ここで議論すべきことではないかもしれないけれども,何か適当なワーディングがないか,取りあえず本日こういう言葉が提案されているわけですけれども,認定基準に委ねるにしても,何か適切な言葉があれば更にお出しいただいて,検討をしていきたいと存じます。取りあえず,今日のところはこういう御提案ということになろうかと思います。 ○吉谷委員 一応,今の実務で,どういう人が信託管理人になっているかということについて少しお話をいたしますと,弁護士さんであるとか会計士さん,税理士さん,司法書士さんといった職種の方ももちろんなっていらっしゃるのですけれども,それ以外の法人でお勤めになられた方などもなっていらっしゃるので,そういった方も含めて,そういう何らかのチェックするような経験をお持ちの方であれば認められるようにしていただきたいなと考えております。   2については以上でありまして,3もあるのですが,3に進んでよろしいでしょうか。 ○中田部会長 はい,お願いします。3とおっしゃいますと第5の3…… ○吉谷委員 はい,そうです,第5の3です。 ○中田部会長 はい,お願いします。 ○吉谷委員 一応,私どもの方,信託協会で中間試案に対して意見を述べておるのですけれども,ここで少し気になっているところがありまして,一番気になっていますのは,信託事務費用の前払いのところの規定であります。ここについては,受益者に報告をするのですけれども,法律の読み方では事前の報告というふうに書いてあると思いまして,恐らく前提として,まず信託行為に信託事務費用の前払いについて,こういうものについては認めますよというようなことが書かれている場合であれば,前払いについては事後報告でも構わないのではないかなと考えまして,ちょっとそういうものまで制限するという趣旨であれば,やや厳しすぎるのではないかなと思います。   それ以外にも,信託行為の中では報告の時期を定めたり,こういう方法でとかこういう形でとか,内容面についても言及したりする場合があるかもしれませんので,そういったものまで制限するという趣旨であるとすると,何にも信託行為に書いてはいけないと書いても余り意味はないのだというところまでいくと,これは少し行き過ぎではないかなと思うのですけれども,ちょっとそこら辺がはっきりしないというところが,我々にとっては少しどう読めばいいのだろうと思うところであります。 ○道垣内委員 すみません。2点あります。1点目は,能見委員が,信託管理人の資格について,「信託法124条に掲げる者に該当しないこと」というのが削除されたというか,置かないということになったことが若干関係するかもしれないとおっしゃったのですが,私は,信託法124条が削除されたというのは,未成年者や成年被後見人や被補佐人が例えば信託管理人として指定されたときに,未成年者であること,成年被後見人であること,被補佐人であることのみを理由として資格制限をしてはならないということであって,それと,適正な処理の監督をなし得る能力を有するということを求めるということは,矛盾はしていないのだろうと思います。これが第1点です。   第2点目は質問なのですが,それは今,吉谷委員がおっしゃったことに関連して,私,前払いというのが実はよく分からないのです。というのは,民法上の委任契約ですと,受任者は委任者からお金を渡してもらっているとは限らないわけですよね。しかるに,委任者のために一定の費用を出さなければいけないというときに,「自分のポケットから出すのはちょっと嫌なので,先にください」というのが前払いですね。ところが,信託の場合に,受託者は信託財産をまさに所有しており,信託財産から直接に出捐することができるわけですね。そのときに,前払いということが必要であるという場合が,実務的には存在するのでしょうか。 ○中田部会長 もし吉谷委員からお答えいただけるのでしたら。 ○吉谷委員 ほとんどの信託の事務費用については,信託財産から直接引き出して払い出すということを,私どもはやっています。信託銀行なので,もうそこにお金がありますから,何かで運用しているものをすぐに現金化して振り込んだりするというのはできます。ただ,例外的に現金払いのようなことがあって,事前に金額がきちんと決まっていないというような場合がありまして,そういう場合には金額を決めずに,事前に引き出して持って行くということをすれば,前払いというふうになると考えています。   実は,信託銀行では使われていないです。というのは,自分の固有の財産をまず引き出して持っていって,その後で信託勘定から金額が固まった段階で清算するということをするからです。 ○道垣内委員 後半,最後におっしゃった,現在,信託銀行でやられているという方式は,固有財産から支出するという方式なのですが,信託財産から支出するということは可能だし,先ほどの例そのものも,本当に固有財産から支出しているというべきなのかには理論的には怪しいところがあるように思います。内部的に信託財産を入れているという口座から支出しなかったからといって,固有財産から支出しているということになるのかというのは問題ですが,その問題は措きます。   さて,そうしますと,前払いを認めるために,信託行為の別段の定めというのは認めるべきであるという御主張は,極めて例外的な場合のためのものなのでしょうか。そうしたときに,それを,前払いのときには後でよいと個別的に書くのはまだしも,いわんや,より一般的に信託行為に別段の定めがあるときには認められるというのは,吉谷委員が必要であると主張されているところを大幅に超過した形での例外を認めるということになります。そして,そもそも,吉谷委員のおっしゃった場合が前払いに該当するのか,という問題も踏まえ,私は,吉谷委員のおっしゃるようなルールにする必要はないのではないか,という気がします。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○渕幹事 受託者のところで伺うべきなのかもしれないのですが,信託管理人について,外国法人とか,日本国籍がなくて外国に居住している人とか,そういった方も就任できるという理解でよろしいのでしょうか。 ○中田部会長 御指摘ありがとうございます。その点,検討させていただきます。 ○林幹事 先ほどの5の2の適正な処理の監督をなし得る能力のところにちょっと戻ってしまって恐縮ですが,大阪弁護士会の中間試案の意見は,当初の(注)に反対でして,要するに,この基準があると,信託管理人のなり手がなくなって,公益信託が動かなくなるのではないかという懸念からでした。そのため,今回のような(1)の適正な処理の監督をなし得る能力というときにおいても,これ能見先生がおっしゃったことと同じですが,能力の基準が高いとなり手がなくなるという懸念があるので,多少緩和されたものであるべきと思います。   若干,私,理解不十分かもしれませんが,ここの公益信託事務の適正な処理というのを想定しているのが,結局,基準が一般的に公益信託事務というものを想定してなのか,当該公益信託について,当該公益信託の信託財産であったり,信託事務の内容に対して適正な処理をなし得る能力なのか,という点はあるかと思います。一般的にはというと,本当に能力の基準が高くなってしまうのでしょうけれども,個別の信託財産なり信託事務に対してということであれば,能力の基準の多少バリエーションは広がるように思いますし,それが在るべきもののように思いますので,申し上げます。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○大野幹事 事務当局がイメージしておりましたのは後者の方ですか,当該公益信託事務を踏まえてということを考えておりましたけれども,それでよいかどうかということもこの場で御議論いただければと考えているところでございます。 ○中田部会長 林幹事は,一般的なものだと高いレベルになってしまうから,当該具体的な公益信託に応じての方がよいという御意見と受け止めてよろしいのでしょうか。 ○林幹事 基本的にはそうです。私の考えもまとまったものではないのですが,一般的にというと,事案を鑑みずに一挙に高くなりそうだという気がします。   個別の事案において,信託財産なり信託事務に対して監督できるかというのは,やはりそうした監督自体はできないと駄目だというところかもしれないので,そういう点で見ていくのだろうとは思います。そうであっても,どの辺りのレベルに基準を置くのかという問題はあるかもしれなくて,その点において基準が高くなってしまうと,結果としては同じになってしまうかと思いますので,その辺りは悩ましく思っています。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○沖野幹事 すみません。ちょっとこれも二つありまして,一つは,今頃聴くことではないのかもしれませんが,改めて読み返して,よく分からないことが出てきたものですから。   信託管理人ですと,2の(2)以下,特に(4)について,同じ問題は今回ペンディングとなっております受託者についての--受託者が法人である場合の5ページの1の(3)なのですけれども,受託者が法人である場合には,役員等について(2)に該当する者がないということになっておるのですけれども,(2)に該当する者は罰金の刑に処せられたとか,それから公益信託の受託者であったのだけれども,その責任があるような状況下で取消しということをもたらしたという場合があるのですけれども,これらは法人そのものにも妥当するように思われて,役員だけではないように思われます。   同じことが信託管理人についても妥当しそうなのですけれども,これは役員というか,その構成する自然人といいますか--に限っているのはどういう理由であっただろうかと,補足説明などを見てもよく分からなかったものですから。   もう一つ,今回,これもペンディングのところではありますけれども,受託者についての1の(2)のオの責任があるという部分に,「又は信託管理人」というのが削除されております。削除されたままで,信託管理人の方でそれを引いているということなので,受託者として責任があったという場合と,信託管理人としても落ち度があったとか責任があったというような場合があるのかもしれないのですけれども,これを削除した理由というのは何なのでしょうか。ペンディングのところで申し訳ないのですけれども,信託管理人の方にも引かれているものですから,説明していただければと思います。 ○舘野関係官 今,2点御質問いただいたうちの最初の1点の方につきましては,今,信託法施行令の3条というところに,「受益者の定めのない信託の受託者となることができる法人」という条文がございまして,それを引いてきておるのですが,法人そのものにも妥当するのではないかというところについては,一旦検討させていただければと思います。   もう1点の「又は信託管理人」というのを削除したというところなのですけれども,こちらの方については,後ろの第5の2(3)のところで,「前記第4の1(2)に掲げる者に該当しないこと。」ということで,信託管理人のところでも引いてきておりましたので,前のところは飽くまで受託者の要件ということで,「又は信託管理人」というのを削除したというのが変更した経緯ではあるのですが。 ○沖野幹事 元のままですと,受託者となる者がかつて受託者であった場合とかつて信託管理人であった場合で,それぞれ公益信託の取消しについて一定の帰責のようなものがあった場合をカバーし,信託管理人の方にも信託管理人であった場合と受託者であった場合と両方含む形になっているのですが,今回の御提案だと,信託管理人として何らかの責任があるような場合は,およそどちらからも除外するというふうに読めるのですけれども,そういう理解にならないかということと,そういう趣旨かということを確認させていただければと思います。 ○大野幹事 御指摘を踏まえ,書きぶりを再検討させていただきたいと考えております。 ○中田部会長 今頂きました御指摘,2点ありましたが,法人自体についてどうかというのは,これは公益法人認定法を見ながらこういう規定を作り上げてきたときに,若干議論があったと思いますけれども,法人自体についてどうなるかということについては,御指摘を踏まえて更に検討していただくということにいたします。   「又は信託管理人」を削った結果,実質的に抜け落ちてしまうところが出るのではないかという御指摘についても,御指摘を踏まえて,もう一度検討していただくことにしようと思います。よろしいでしょうか。   ありがとうございました。   ほかにございますでしょうか。   第1から第6まで御意見を頂戴しましたが,ほかにもしございませんようでしたら,ここで一旦休憩にしたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,ここで休憩にしまして,15分後の3時20分に再開いたしますので,その時間になりましたら御参集ください。           (休     憩) ○中田部会長 時間が来ましたので再開します。   部会資料46の第7から第12までについて御審議いただきたいと思います。   事務当局から説明してもらいます。 ○舘野関係官 では,第7以降を御説明いたします。   まず,「第7 行政庁」及び「第8 公益信託の成立の認可の申請」につきましては,それぞれ中間試案の第7及び第8の提案から修正等は行っておりません。   次に,「第9 公益信託の成立の認可基準」について御説明いたします。   まず,第9の「1 公益信託の目的に関する基準」,それから第9の「2 公益信託の受託者の行う信託事務に関する基準」,それから第9の3の(2)までは,中間試案の提案に形式的な修正を行ったのみであり,実質的な修正・変更はございません。   第9の3の(3)「公益信託の信託財産に,他の団体の意思決定に関与することができる株式等の財産が原則として含まれないこと」につきまして御説明いたします。   中間試案第9の3(3)の提案では,(注)として「公益信託の信託財産に他の団体の意思決定に関与することができる株式等の財産が含まれるか否かを公益信託の成立の認可基準としない」との考え方を示しておりました。   これまでの部会及びパブリックコメントにおいては,議決権行使によって他の団体を支配するという受託者の行動が問題視されるべきとして,この(注)の考え方に賛成する旨の御意見もございました。しかし,受託者が信託財産に含まれる株式等の保有を通じて,営利法人等の事業を実質的に支配することを認めれば,公益信託の受託者が実質的に営利事業を行うことにつながることになりかねないと考えられることから,そのような事態を防止するためには本基準が必要であると考えられますし,公益信託の受託者は,他の団体の事業活動を実質的に支配するような行動を採ってはならないことを明示するためにも,基準を明示しておく必要があるものと考えられます。   したがって,本部会資料第9の3(3)では,中間試案第9の3(3)の(注)の考え方を取り上げないこととしております。   次に,第9の「4 公益信託の信託行為の定めに関する基準」について御説明いたします。   本部会資料第9の4の提案においては,中間試案第9の4の提案に形式的な修正をしております。また,中間試案第9の4(1)エ(ウ)の(注)として示しておりましたエ(ウ)の基準,すなわち「公益信託に係る費用のうち当該公益信託の運営に必要な経常的経費の額が一定の割合以下となると見込まれるものであること」との基準は不要であるとの考え方については,取り上げないこととしております。   新たな公益信託における受託者及び信託管理人の報酬については,採算確保が極めて困難である等の現在の公益信託における問題点を踏まえ,本部会資料第9の4(1)ウの本文のとおり,不当に高額にならない範囲又は算定方法が定められていることを求め,公益信託の受託者及び信託管理人の適正な報酬を確保することとしております。   しかし,当該報酬が公益信託事務の運営に係る他の費用との間で,相対的には比率が大きくなることはあり得るため,公益信託の受託者及び信託管理人の報酬について一定程度制約を課したとしても,それのみをもって必要な費用が公益信託事務のために使われることを担保することは困難であると考えられます。   したがって,中間試案第9の4(1)エ(ウ)の(注)の考え方は取り上げないことといたしました。   なお,本部会資料の提案を検討するに当たっては,公益信託事務が金銭の助成等に限定されている公益信託について,収支相償等の会計に関する基準を適用しないものとした中間試案第9の4(2)の提案につきましても,再度検討いたしました。結果的に,本部会資料第9の4(2)本文の提案は,中間試案の提案からは変更はしておりません。   ただし,事業の種類によって会計に関する基準を適用するか否か区別するためには,実際の運営の場面において慎重な検討を要するであろうと考えられます。例えば,中間試案の補足説明にも記載いたしましたが,学生寮を有償で学生に提供し,その寮生に奨学金を支給するなどの事業型と助成型の両方の公益信託事務を行う公益信託について,それは事業型の公益信託であると判断されるのか,又は事業型と助成型の二つの公益信託事務を行う公益信託であると判断されるのかなど,公益信託事務を区分するための基準について検討しなければならないと考えられます。   また,後者のような区分をすることを前提とした場合に,そのような公益信託において多額の運用益が発生した場合,それが事業型又は助成型のどちらの公益信託時に用いられる信託財産の運用によって発生したと考えるのか,そもそもそのような区別をすることが可能なのか等も含め,今後検討しなければならないと考えられます。   次に,「第10 公益信託の名称」及び一つ飛ばしまして「第12 公益信託の監督」につきましては,それぞれ中間試案の第10及び第12の本文の提案から修正等は行っておりません。   最後に,「第11 公益信託の情報公開」について御説明いたします。   第11の「1 公益信託の情報公開の対象及び方法」の本文の提案につきましては,中間試案第11の1の提案から修正等は行っておりません。   第11の「2 公益信託の公示」の本文の提案につきましては,公益法人制度との整合性及びパブリックコメントの意見も踏まえ,新たに公益信託の受託者に対する勧告・命令,終了の認可又は公益信託の受託者であった者が終了の届出をしたときを公示の対象とすることを追加しております。   終了に関連する公示につきましては,中間試案第16の「3 委託者,受託者及び信託管理人の合意による終了」の論点とも相互に関連いたしますが,仮に委託者,受託者及び信託管理人の合意のみによる終了を許容したとしても,最低限,行政庁に対する何らかの届出等は必要となると考えられることから,本文のような提案をしております。 ○中田部会長 ただいま説明がありました第7から第12までについて,まとめて御審議いただきます。   どこからでも結構ですので,御自由に御発言ください。 ○深山委員 2か所ちょっと申し上げたいのですが,まず最初に,第9の3の(3)のところについてまず申し上げたいと思います。   ここは,今御説明があったように,中間試案ではあった(注)を落としているということで,「他の団体の意思決定に関与することができる株式等の財産が原則として含まれない」という規律を明確に入れようという御提案だったわけです。これは,パブコメを含めた議論を踏まえてということであれば,それはそれでまとめる方向で考えなければいけないのかなとは思うのですが,ただ,前からも申し上げていたことですけれども,これがきちんと合理的な基準として機能するのかということについては,なお疑問を感じております。   元々この考え方というのは,公益法人の規律を参照しているのだろうというふうに理解していますけれども,ただ,公益法人の方は正面から収益事業ができるということもあって,こういう規律というのは当然あってしかるべきなわけですが,そこは公益信託の場合は違うわけで,必ずしもパラレルに考えるべきかなということも根本的に思います。それはさておくとしても,ここで,「意思決定に関与することができる」というのが,どういう比率かにかかわらず,株式を持っていたら駄目というふうに読むのか。他方で,例外のところで,実質的に支配するおそれがない場合には許容するというのが,どういうものをイメージしているのかということが,この文言からは必ずしもよく分かりません。   公益法人の方を参照しているということから推して考えていきますと,例外的な扱いのところで,50%以下の場合には許容するという趣旨なのかなというふうにも推測されるのですけれども,では,果たしてそれで合理的な基準と言えるのか。もちろん,50%以上の議決権があれば,実質的な支配になるということは間違いないわけですけれども,例えば会社等で議決をするときには,過半数の株主の出席を定足数にして,その出席株主の半分で決議をするというようなことが一般的だと考えられますので,そうすると,2分の1のそのまた2分の1で,4分の1強の議決権を持っていれば可決要件は満たすというようなことも想定されます。   ですから,必ずしも50%を意味するのだろうかという疑問がありますし,別に1人で可決できなくても,例えば相当の割合を持っていれば大きなインパクトといいますか,議決する際に発言権を持つということもありますので,実質的に支配するというのは,どのくらいの比率を持っていたらこれに当たるのか,いずれにしてもよく分からないなという気がいたします。そういう点で,基準として機能するのかという疑問があります。   それから,ここで懸念されている趣旨として,営利活動,営利事業を行うような団体を支配することによって,実質において,公益信託が事業を行うようなことになりかねないということが懸念として示されております。そこが問題なのだとすれば,仮に何かこのような規定を設けるにしても,そのことをもう少しストレートに表現する必要があって,そもそもこの基準が要るかという疑問があるのですけれども,仮に基準を置くのだとしたら,少なくとも「他の団体の事業活動」というところを,「営利を目的とする他の団体の事業活動」というふうに限定をするとか,最低限そのぐらいのことを検討する必要があるし,こういう基準を設けようとする趣旨に照らせば,それで足りるという気もいたします。もう少しここは議論といいますか,検討すべきではないかというのが私の意見です。取りあえず,まず1点だけ申し上げます。 ○中田部会長 2点あるとおっしゃいましたけれども,取りあえず今,これでよろしいでしょうか。   それでは,この点に関しまして,関連する御意見等ございましたらお願いします。 ○樋口委員 私も今,深山さんがおっしゃったことに賛成です。   それに,11ページのところへの変更点のところで,公益信託の受託者が株式等の財産を保有することを全て禁止すべきとの考え方もあり得るけれども,そうではなくて,今回は善管注意義務もあり,それから適切な分散投資を行うことも求められているのであるからという形で,ごく普通にルールとして認められているプルーデント・インベスター・ルールというようなものを取り入れて,とにかく金銭に限定しない株式もいいという立場を明らかにしてもらったことは私も賛成で,感謝します。   ただ,(3)の言い回しがやはりなかなか難しくて,一方では,信託というのは,御存じのように,反トラスト法という言葉の基にもなったようなことでもあって,株式保有を通じて,とにかく事業支配をするカルテル,トラストというやつですよね,ああいうものに使われたこともあるのでね。だから,こういうふうに書くのは分からんでもないのですけれども,まずそこで,つまり他の団体の意思決定に関与することができる株式等ですね。株式というのは,だって,株主総会に出ていって,何らかの形で意思決定に参与することができる権利だから,その財産が原則として含まれないことを必要としという,これを認定その他のところで考える人たちは,やはり原則は駄目なのだというふうになるのではないかという,例外としてという話が,これが実質的に支配するおそれがない場合,50%どころか,3割程度だって実質的に支配するおそれは絶対あると思うのです。だって,ある会社の株式を30%も持っているなんていうのは,もう相当な支配力に決まっているのだから。   だから,そうすると,そういう公益信託が出てくるかどうかは,実現性というか,リアリティーはどれだけあるのか分からないのですけれども,ちょっとこの言い回しの点がですね。では,どういうふうにうまく修正したらいいのかというのは,ちょっと代案がなくて申し上げるのも申し訳ないけれども,一歩前進,しかしもう一歩配慮してくださらぬかというお願いです。 ○松下幹事 今の点に関係してちょっと御質問があるのですけれども,まず深山委員に御質問です。今,御指摘のあったとおり,公益法人の認定等に関する法律で似たようなものがあって,5条の15号ですか--が今日の資料の10ページの第9の3の(3)に当たるものなのですけれども,先ほど,私が聴き落としたのだと思うのですけれども,公益法人と公益信託で違っていいという理由というか,違えるべきだという理由がちょっとよく分からなかったので,それを教えていただきたいです。   それから,もう一つの質問は,事務当局なのですが,5条の15号を見ると,例外の方ですね,ただし書に当たる部分については,政令で定める場合というので,更に下位規範を設けて具体化するということは想定されていると思うのですけれども,公益信託法についても,この例外の部分について更に下位規範に落として,より具体的にするということを現時点で想定されているのかどうか,それについて教えていただければと思います。 ○中田部会長 それでは,それぞれに御質問を頂いたわけですが,どちらから。 ○深山委員 すみません。先ほどの私の説明がまずかった点をちょっと御指摘いただいたようでして,訂正しようかなと思っていたところを,正にお聴きいただいたのですけれども,ここの株式を保有することに関していえば,公益信託と公益法人との違いから説明するというのは余り適切ではなくて,先ほど二つ申し上げたいと言った二つ目の方で言おうとしたことをこっちの方で言ってしまったので,説明を訂正させていただきます。   ただ,公益信託とパラレルでいいかどうかはさておいたとしても,先ほど申し上げたように,この基準を置くことについては疑問があるという,そこは変わらないということですので,よろしくお願いします。 ○松下幹事 了解しました。 ○大野幹事 もう1点,事務当局に対する御質問の点でございますが,現段階では下位法令ということは想定はしているところではあるのですけれども,ただ,新しい公益信託についての法律の所管省庁が最終的にどの省庁になるのかというところもございます。この辺りは政府内部で検討を続けてまいりたいと考えております。 ○山本委員 これは,公益法人の法律の書き方も含めた問題ですので,ここで申し上げるのが適当かどうか分からないのですが,危惧されていることないしは規制しなければならないことが意思決定に関与できることなのか,実質的に支配をして,自分の意思を実現することができるということなのか,どちらなのかがよく分からないルールになっているのではないかと思います。この点を整理しないと,どう規定すべきかということも定まらないように思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○小幡委員 先ほどの,基準を明らかにするために何らかの形で,政令になるのか,あるいはガイドラインになるのか分かりませんけれども,という話なのですけれども,正にこれは行政庁の認可の基準なので,今の株式の保有の点も含めて,どこまでが認められるかということは,何か,ともかく絶対に明らかにしなければいけないことだとは思います。そのやり方がどうなるかということが非常に実質的には大事だと思うので,多分ここで書かれていることを,今,ここでいろいろ皆様の言ったことを反映しながら,細部を詰めていただくということになろうかと思いますが。   ちょっとまたこれも今更で申し訳ないのですけれども,2番のところの例えば「収益を伴うことは許容される」とありますが,ここはあれですよね,目的の達成のために必要な信託事務であることというところで読み込むということですよね,という確認です。   そうすると,収益については,もうずっと以前からいろいろ議論がありましたけれども,実質的にここの言葉を,実際に認可する場合に,これは結構大変だと思うので,やはり何らかの形で,どの程度必要なというところで,全部,非常に抽象的な形で投げるのかどうかという辺りも含めて,今後ちょっと検討が必要かなと思っております。 ○中田部会長 ありがとうございました。   今,第9の3のほかに,2についても御意見頂きましたが,ほかに。   第9の3の(3)の(注)を取り上げないこととしたことについて,趣旨自体については大体の御理解がいただけていると思いますが,しかし,それを表現をする仕方として,現在のような書き方でよいのかどうかという点が一つ。   それからもう一つは,法律と政令,あるいはガイドライン等々のどこで規定することにするのか,もし法律以外のところで規定することを考えるのであれば,法律でどの程度のことを書くべきか,この辺りの御指摘を頂いたと思います。   最後の点につきましては,第9の2についての小幡委員の御発言についても,同様な問題があろうかと理解いたしました。   こういった御指摘を踏まえて,さらに表現などについても検討を進めていただくということにしたいと思います。   ほかにいかがでしょうか,第9でも結構ですし,ほかでも結構です。 ○渕幹事 今,小幡先生がおっしゃったこととの関係での確認ですが,ここでの収益というのは,「収益事業」というときの収益という意味で,単に収入という意味ではないということでよろしいのですよね。 ○舘野関係官 すみません。収益事業における収益という意味ではなくて,公益信託事務から発生する収入という趣旨でおりました。 ○渕幹事 しかし,それだと,収入が生じることがあるのは,あらゆる活動で当然のことなのではないでしょうか。 ○中田部会長 今,多分収入というのは,収益があるということを意味しているのだろうという趣旨かなと思ったのですけれども,それでも不十分ですか。 ○渕幹事 収益という言葉に,恐らく二通り意味があるのかと思うのです。まず,例えば,所得税とか法人税の課税あるいは会社法との関係で,収益から費用とか損失を引くという意味で,収益というふうに使うことが考えられます。その場合は,収益から費用とか損失を控除したものが残額として利益とか所得になります。それは,法人とか個人について,あるいは個人とか法人がやっている事業について,そのように観念できるということだと思います。   今申し上げた意味では,収益というのは単なる収入というような意味で使われているのですが,これに対して,私が申し上げた差し引いた残高である利益とか所得のことを「収益」というふうに呼ぶこともあるのではないかと思います。ここでの「収益」という語の使い方は,今,後で申し上げた意味でしょうか。 ○舘野関係官 すみません。そういう意味では,今,渕幹事がおっしゃられたことと同じ認識でございます。 ○渕幹事 ありがとうございました。 ○中田部会長 収入という言葉と収益という言葉で混線があったようですけれども,考えているところは同じだろうと思いますので,今御指摘いただいたことで一致していると思います。   ほかに。 ○能見委員 余り専門的知識がないのでよく分からないのですが,第9の4の(1)の「エ 公益信託の会計について」の(ア)のところについて質問ないし意見を述べたいと思います。この部分は,収支相償の考え方を公益信託の場合にも持ち込むということで,先ほどの御説明ですと,事業型の信託の場合にそれを持ち込む必要があるということであったと思います。その考え方の当否を考える前に,ここでいう「収入」が何を意味するかが私としてはよく分からなかったところがあります。   まず,前提問題として踏まえておきたいのは,ここに書かれているのは公益認定のときの基準ですね。従って,事業型の公益信託において,まだ実際に事業を始める前に,どのような収入がどれだけあるかなどはわからないのであり,信託行為であまり細かいことまでは書けない。いろいろな収入が入るときに,それをどうするかということについて,あまり具体的,詳細に書くものではないし,そんなことはできないのだと思います。こうした理解を前提して,公益認定の際に要求される収支相償となんなのか,その場合の収益とは何を意味するのかということです。例えば事業型の信託で美術館運営の事業を行う場合に,経常的にというか,それなりに一定の寄附が見込めるとすると,そういう寄附は,収支相償の対象となる「収入」になるのでしょうね。   そうだとすると,例えば信託行為の中で,寄附があったときは,半分は事業に回すけれども,半分は何か基本財産みたいなものに組み入れるというような定めが当初の信託行為にあると,それはエの(ア)の定めの下で許されるのか。そこがよく分からなかったのですが。ここまでは質問です。   私の意見としては,寄附が入ってくると,それを全てその年度で使わなくてはいけないというのはおかしい感じがします。公益信託を設定する最初の段階での寄附などは,全額を基本財産として,そこからの収益だけを「収入」として運用するということができると思いますが, 公益信託が成立した後で寄附が入ってくると,それは全て「収入」になってしまって,当年度ですか,次の年度ですか,使わなくてはいけないというのはおかしいと思います。   更に言えば,後から結構多額のお金が寄附として入ってきたときには,それはある種の追加信託的なものだと考えることもできると思いますが,そうすると,これを全て使わなくてはいけないというのもおかしな感じがするので,ここでいう「収入」というときに,今のような寄附というのは入るのだろうかというのが,私の質問といいますか,疑問であります。もしかしたら,私の理解の不足,誤解があるのかもしれませんけれども,以上の点についてお答えいただければと思います。 ○舘野関係官 今の能見委員の御質問に関してお答えしますと,現段階では我々の方として,おっしゃるとおり,寄附ももちろん収入に当たるということを考えておりまして,収支相償の考え方については,公益法人で今捉えているものと余り違うものをイメージしているということではありません。ですので,結論からすると,入ってきたものについては使わなければいけないということになってきてしまうのかなとは思うのですが,ただ,公益法人の方では,例えば単年度ではなくて,大きな収入がその事業年度で入ってきたときに,例えば翌年度以降の事業計画等も見て,それでこの収支相償を満たす,満たさないということを判断されているということであるとも認識しておりまして,そういう運営がもし可能なのであれば,一定程度柔軟な運用はできるのかなとは思ってはおります。 ○能見委員 特に,事業型の公益信託で美術館などの運営をしている場合に,資金繰りが苦しいというので,寄附なんか募ったときには,かなり多額の寄附が入ってくる可能性があると思うのですけれども,そういうものについて,その事業年度なのか,次の事業年度なのか,細かいことはわかりませんが,いずれにせよ使わなくてはいけないというのはおかしいと思うので,最初に信託設定されたときに,それなりに多額のお金が第三者からの寄付として信託財産を構成する場合とほぼ同じような使い方ができるようにすべきではないか,そのような理解といいますか,そういうことがここで読めるようにしたほうがいいのではないかと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   御指摘の点は,この基準をどうするかというときに,(ア)だけではなくて,(イ)の遊休財産額も含めていろいろ検討したところだったと思いますけれども,今のような御指摘も当然クリアにしておく必要があると思いますので,またその点については詰めていただき,明確にお答えしていただけるようにしたいと思います。   その上で,法律の中でどこまで規定するかというのが,次の段階のまた検討事項になろうかと思いますけれども,取りあえず今日は御指摘を頂いたということにさせていただきたいと思います。   ほかに。 ○深山委員 先ほど二つ申し上げたいと言った二つ目の方は,今,能見先生からも御発言のあった4の(1)のエのところです。エのうちの(ア)の収入については,能見先生の御指摘のとおり,私もここを単年度で考えるのは妥当でないと感じますし,(ウ)のところは,これは逆に支出というか,費用の点についての規律で,こちらの方も運用次第なのかなとは思いますが,この表現だけを単純に読み,費用全体のうち経常的な経費の額が一定割合以下という基準をそのまま単純に当てはめますと,個々の信託次第なのでしょうけれども,経常的な経費は一定掛かるが,それ以外の費用としては,さほど出ていくものはない信託というのもあるような気がいたします。そうすると,一定割合以下に収まらないということになって,この基準が杓子定規に運用されると引っ掛かってくるものが出てきて,認定基準なので最初のところで見るのかもしれませんが,どうもそこは柔軟に考えないと,この字面どおりではまずいような気がします。   先ほどちょっと先走って申し上げたように,ここのルールも公益法人に倣ったルールかなと思うのですが,公益法人の方は,収益事業を正面から認める関係で,公益事業に使う費用を一定程度確保するというような観点からルールが設けられていて,それはそれで合理的だと思うのですが,公益信託の方は一定の公益信託事務に伴う収益活動というのは認められているものの,原則は正面からは収益活動を目的とするということが想定されていません。この分母と分子を考えたときに,分母の中にそもそも収益事業のための支出というのも元々入ってこないということもあって,公益法人の方とはパラレルに考えられない側面があるのだろうと思います。   いずれにしても,先ほど申し上げたように,運営する上で生じる費用というのが,経常的なもの以外に余り想定されていないような信託もあり得るような気がするので,この基準が果たして合理的なのかについては,改めて疑問を呈したいというところであります。 ○中田部会長 何かこういうふうに修正したらいいとかという,もしアイデアございましたら,あるいは本日なければ,また後日でも結構でございますので,お考えいただければと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○明渡関係官 公益法人の状況について,何点か御説明いたします。   4のエのアの部分で,能見先生がおっしゃっていた話でございますけれども,大きな寄附があった場合,当年度若しくはその翌年度に必ず使わなければいけないというような形にはなっておりません。特定費用準備資金というふうな形で,今後こういうふうな形で使っていくというようなことを明らかにしていただくと,それは積み立ててといいますか,計算上は別に除外されているというような形がございます。   あと,エのウの関係で申し上げますと,公益法人の場合につきましては,公益目的事業比率が100分の50以上となると見込まれるものであるというのが認定の要件となっております。多くの場合,認定時点ではこの要件というのは問題がないということが多いですけれども,時間がたってきて,本来やろうとしていた事業がうまくできなくなってきた場合に,こちらの方の要件を満たさなくなってくるというようなことがあり得るように思っております。   これは,信託の場合,同じように考えられるのかどうか分かりませんけれども,本来の信託としてやるべきものが徐々になくなってきて,管理費部分だけ費用が掛かってくるというのが時間がたったときに出てきた場合に,そのような公益信託の認可を取り消すことができるようにする,何らかの一定のルールがあるほうがいいというのは一つの考え方ではないかと思います。   あと,先生方の御意見であったものではございませんけれども,ちょっと一言,念のために申し上げておきますと,4の(2)の部分でございます。   公益法人においては,金銭の助成をしているものとそれ以外の事業を行っているものについての区分は特段ございません。奨学金を給付している公益法人たくさんありますけれども,それは給付事業という形で,他の事業と同じように経理上,会計上の基準が用いられております。   信託と法人においてどのような整理をするのか,同じにするのか,別にするのかというような御議論の中で決めるものということは承知しておりますけれども,一方で,税の優遇を受けているというような,このような会計上の縛りがあるから,それがあるからというふうなところもあると思いますので,仮に縛りがない場合にどうなるのかというようなことも,この場でかどうかは分かりませんけれども,念頭に置いておく必要があるというふうなことだけお伝えしておきたいと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   公益法人の運用についてお教えいただきましたけれども,ほかに。 ○林幹事 若干繰り返しかもしれませんが,4の1のエのウの「経常的費用の額が」というところです。日弁連で議論したときには,まず経常的経費というのが若干分からないなというところがありました。御説明だと,基本的には公益信託の場合は受託者の報酬であろうということでもあったのですが,一応その前提で議論するとしても,公益法人と全くパラレルに考えにくいと思います。それは,収益事業というものは考えられず,公益信託事務のみをするというところを考えたときに,このような区別が必要なのかという疑問の意見がありました。   御懸念も分かるのですけれども,そうすると,やはりパーセンテージをどう捉えるのかという問題になって,公益法人では50%と出ていますけれども,収益事業がないわけなので,そのときに何パーセントなのかという具体的なイメージがないと分かりにくいというところでありました。   それからもう1点は,先ほど明渡さんの発言にもあったのと同じ問題意識なのですが,パーセンテージが何らかあったときに,事業型においても,要するに期間が決まっていて,縮小していって,最後終わろうとしているときに,パーセンテージ厳格にやっていくと,最後の方は本当に適正ではなくて,非常に少ない報酬になってしまって,事務がワークしないということがあり得ます。報酬というのは,ある面においては,財産とか事業の規模ではなくて,固定的な部分もきっとあるはずで,それは,事業型でも終局場面によると,それが割合からすると増えていくのはいたし方ないところもあると思うので,そういう面をどう考慮しながらルールを作っていくのか,そういう問題意識が日弁連の議論でも出たので,申し上げます。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○吉谷委員 信託報酬が経常的経費に全額入るのかどうかというのは,それは信託報酬の作り方次第なので,余りそこを一律に決めすぎないほうがいいのではないかと思いました。というのは,報酬の部分の中に,費用込みで報酬を払うというような場合もありますし,また,信託の事業の内容によっては,公益認定ガイドラインにいう事業費,当該法人の事業の目的のために要する費用の中に振り分けられるように思いますので,そこについては少しガイドラインレベルなのかもしれないのですけれども,振り分けについては少し慎重にしたほうがいいかなと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   第9について,ほかにいかがでしょうか。   第9の特に3の(3),4の(1)のエの(ア)と(ウ),さらに4の(2)について御意見を頂きました。   第9の3については,先ほど整理したところでございますが,4につきましても,(ア)について,特に寄附のような場合にどうするのかと。それは,現在の公益法人実務においては,運用でカバー,対応されていて,おかしなことにならないように対応できているけれども,それにそろえるということでいいのか,更に何らかの形で書き込む必要があるのかという問題提起を頂いていると思います。   (ウ)については,これは表現ぶりもそうですし,実質的に考えて,公益法人と公益信託と同じでいいのか,さらに,公益信託の信託財産を使っていって,どんどん縮小して,最後,少なくなっていったときに,その比率がこのままだとうまくいかないのではないかと。そうすると,明渡関係官もおっしゃってくださいましたけれども,最後どうするかということも踏まえて,もう少し考えたほうがいいのではないのかという御指摘を頂いたと思います。   (2)につきまして,助成型と事業型との区別というのは,これは公益信託特有のものですけれども,果たしてそれが実際の運用においてどのようになっていくのかということも考えるべきであると,こんな御指摘を頂いていると思います。   第9について,もしあればお出しいただきたいですし,あるいはほかのところでも結構でございますけれども,御意見を頂ければと存じます。 ○道垣内委員 第9がなければということなのですが,それ以外の点でよろしいでしょうか。 ○中田部会長 特にないようですので,もし。 ○林幹事 第9の3の株式の保有の点で,若干言いそびれましたので,繰り返しかもしれないのですが,意見を述べさせてください。   この規定を置きたい趣旨というか,事態は理解はしたのですけれども,この論点では,要するに株式の保有のパーセントなりを,受託者基準か,公益信託基準かのいずれによるかという問題点があります。それは日弁連や大阪で議論しても,両方あり得て,なかなか悩ましいというところではありました。   受託者全体でというのが在るべき姿かもしれませんけれども,一方,それだとワークしにくいというか,いろいろあり得るというのは御指摘の部分でもあると思いますし,その辺は悩ましかったというところです。公益法人法の15条の2号と同じような条文を機械的に持ってくることは立法技術的にはできるのでしょうけれども,結局は政令なりにおいて,パーセンテージをどう置くかによって全然違うと思います。また,この基準だと,実は例外で,実質的に問題ないというところを認定を受ける側が説明すべきことになるのだと思いますけれども,その点がどうあるべきかは,個人的にはより悩ましいと思いますので,その基準というのは非常に重要だなと思いました。   日弁連の議論では,ここが仮に基準がなくても,実質的に他の株式会社の組織を支配してはいけないという基準があるのは当然だし,現実にそういうことが起これば,受託者の解任とか,あるいは目的不達成で終了とか,あるいは認可取消しとか,そういうところで手当てされることは間違いないというのは前提だと思うので,ちょっとその辺も加味しつつ,ここで認定の基準としてどういうルールがあるか,またいいのかというか,改めて検討すべきとは思いました。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに,第9についてございますでしょうか。   ございませんようでしたら,道垣内委員,お願いします。 ○道垣内委員 すみません。何か同じことを何回か角度を変えて申し上げておるのですが,第10の規律,その取り分け1なのですが,これは公益信託は名前を付けなければならないというルールが背後にあるということなのでしょうか。 ○大野幹事 はい,そういうことでございます。 ○道垣内委員 それは何のためですか。 ○中田部会長 名前を付けるということは,今までも前提として考えていたと思うのですが,もし更に具体的な問題の御指摘があれば。 ○道垣内委員 いや,法人ならば,法人格があるもので,名前を付けなければならないのですが,受託者が公益信託の受託者になっているときに,当該信託に名前が付いているということは論理的には必然的に要求されるものではないと思います。   もちろん,監督官庁といいますか,行政庁とかそういうところにいろいろ書類を出す必要がありますから,今回の公益信託法においては,書類の一貫性を明らかにするため名前を付けることを求め,そのときには,公益信託という名前を入れてください,といったルールにするというのはよく分かります。それはそれで結構なのです。   しかし,そうであるならば,事務手続の問題もあるので,一貫性がある書類を整備するために名前を付けさせましょうというルールが求められることになるのであり,その点を何にも書かないでいるのはおかしいと思うのです。信託というものが存在しているときに,それに名前が付くというのは必然的ではありませんから。そうすると,公益信託には公益信託という文字を用いた名前を付けなければならないというのが,まず最初のルールとしてこなければならないのではないかという気がします。 ○中田部会長 ありがとうございました。   公益信託という言葉を名称の中に入れなければいけないということの説明は,既にされていることだと思います。今おっしゃった事務手続のこともあるでしょうし,公益信託に対する信頼の確保であるとかということを言っておりますけれども。公益信託という言葉を名称に含めるということは,当然にその名称があるということを前提としているわけですが,そもそもその前提の規律がないではないかという御指摘だろうと思います。それは前提についての規律を置けばいいということですか,それとも……。 ○道垣内委員 私は,もし1を置くのならば,公益信託には名前を付けなければならないということがないと,論理的には成り立たないはずであるというだけです。名称を付ける際には公益信託というのを含まなければならないというルールもあり得ますけれども。   けれども,比較的分かりやすいのは,名称を付けましょう,そしてそのとき,公益信託という名前を入れましょうというものですよね。それで結構なのですけれども,理屈上はおかしい議論がしばしばなされているような気がしましたので,どうも気になるということです。 ○中田部会長 ありがとうございました。   書かれざる前提というのをむしろ正面に出して,それの必要性,当否を明らかにすべきであると,こういう御指摘だと理解いたしました。 ○道垣内委員 それも結構ですが,書かれざる前提はこの要綱の書かれざる前提であって,論理的な書かれざる前提ではないということですね。 ○中田部会長 ええ,分かります。ですから,そこを,前提を入れるべきかどうかについて,その理由を検討しろという御指摘だったと思いました。 ○道垣内委員 まあ,理由自体は検討しなくてもいいのですけれども。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○深山委員 今の議論に触発されて申し上げます。論理的には道垣内先生のおっしゃるとおり,当然に名称があるということでなくても,それは成り立つ話だと思うのです。したがって,名称を付けるときには公益信託を入れろという規律も選択肢としてあるのでしょうけれども,他方で,11のところでは情報公開についてのルールがあって,2のところで公示をするということになっております。もちろん公示をするときに名前を必ず使わなければいけないという,論理的な必然性はないのでしょうけれども,やはり分かりやすさからすると,何々信託の公示であるということが分かるようにしないと,実務的にも,最初の申請の事務手続時だけではなくて,そのときもそうでしょうけれども,その後成立した後のことを考えても,やはり不便だろうと思います。そうであれば,御指摘のとおり,まずは名称を付けるということをはっきり言って,その中になおかつ公益信託という文字を入れなさいというほうが,ルールとしては実務的によろしいのかなという気がいたしました。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○吉谷委員 名称については,実務をやっている人からはそれほど抵抗があるというお話は,取りあえずは聴いていないです。ただ,確かに,名称って何なのかというのはちょっとよく分からないところはありますので,それが既存の公益信託を移行するときに,これが名称だというふうに,大体何か名称みたいなものはあるのですけれども,そこに公益信託と入っていなかったら,公益信託と入っているところを読むとか,あるいはこちらから言ったものが名前になるとか,何かそういうふうにうまく移行ができるようにしていただけたらなと思います。 ○中田部会長 名称について,本質論を提起していただきましたので,いろいろな具体的な問題があるということが明らかになってきたと思います。この点を含めて,ほかでも結構ですが,いかがでしょうか。 ○能見委員 ちょっと今の議論の続きなのですが,私も基本的には,道垣内委員の言われたように,信託というのは一般的には,公益信託を含めてですけれども,名前があるとか,名前がなくてはいけないというものではない。ただ,その名前を付けてはいけないということはないので,名前を付けると,そのことの影響が幾つか生じる。,例えば第10の3との関係とかですね。名前を付けてよい,そして付け場合には公益信託という名前を含まなければならないというだけの話だとすると,余り論理的な結論ではないが,実際的なことを考えると,そういうことでもよい。  私としては,今言いましたように,第10の3が少し気になっています。公益信託に委託者の名前を使って,「誰々公益信託」というように委託者の名前を使うというやり方があり得ると思うし,実際にイギリスなんかはそういう公益信託が,今はどうだか知りませんけれども,かつては非常に多かったと思うのですが,そういう場合には,例えば第10の3のところにちょっと関係しますけれども,不正の目的ではないけれども,同じ名前の信託というのも出てくるかもしれない。それはかまわないということなのか,という点です。考え方としては,公益信託の名称というのは,本当の意味での名称ではなく,誰々が作った信託ということを示すだけだから,同じ名称になっても構わないということも言えるかもしれないし,他方で,公益信託には会社の場合と同じように,やはりそれぞれ一つずつ名称がなくてはいけないという前提をとると,そこからの論理必然的な要請ではないかもしれないけれども,同じ名前を使った公益信託は駄目だということになるかもしれない。名称に関しては,基本的な論点があり,どのような立場をとるかによっていろいろなところに影響するかなという感じがいたしました。   ○中田部会長 ありがとうございました。   これは,運用の段階で実際にいろいろな問題が出てくるのだろうと思います。 ○平川委員 今の名称の使用のところで,不正使用があった場合の10の4項なのですけれども,「3に違反する名称又は商号の使用によって事業に係る利益を侵害され」うんぬんで,公益信託の受託者は,その事業に係る利益を侵害する者などに対して,侵害の停止又は予防を請求できるという規定があるのですけれども,この「事業に係る利益」というのを,何というか,収益事業というだけではなくて,公益的な本来の「事業に係る利益」という言葉も,何かちょっとよく分からないのですけれども,公益目的の事業が侵害されることを含むのだというのを,もうちょっと分かるような言葉に置き換えることはできないかなと思うのですけれども。 ○中田部会長 ありがとうございました。   今の御指摘を含めまして,第10の4の表現ぶりにつきまして,もう少し検討してもらおうと思います。 ○道垣内委員 検討していただくのはいいのですが,それで構わないのですが,「事業」という言葉は途中でやめましたよね。 ○中田部会長 それがあるものですから,その点も含めて検討してもらおうと思います。   名称について,そもそも必要なのかという根本論が出てきまして,そのお陰をもちまして,いろいろな問題があることが認識され,さらに第10の4の表現についても更に検討する必要があるということが分かってきたと思います。   ただ,その上で,名称を付けても付けなくてもよいというところまで,いくかどうか。道垣内委員はそれでもいいというふうにお考えのようですけれども,大方の御意見は,名称は付ける,その場合に公益信託という文字を用いなければいけないというルールを明確にする,というのであったかと思いました。実務上もそれが必要だし,情報公開や,あるいは事務処理の上であるとかという面でも必要ではないかという御意見が多いように伺いました。道垣内委員も,必ず名称を付けるかどうかを選択制にすべきであるとまで強くおっしゃっていないようにも伺ったのですが。 ○道垣内委員 選択制を主張しているわけではありません。事務の届出から情報公開,行政庁の公示に至るプロセスにおいて,名称というものの存在が非常に対象の同一性を示すのに便利であるので,必要であるということで全然構いません。 ○中田部会長 ありがとうございました。   それでは,この規律の書き方について,今の点を含めて更に検討していただくということにしたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。   もしございませんようでしたら,まだ時間は少し早目ですけれども,本日の審議はこの程度にしたいと思います。   最後に,次回の日程等について,事務当局から説明してもらいます。 ○大野幹事 次回の日程でございますけれども,平成30年6月19日(火曜日)午後1時半からおおむね午後5時半まででございます。場所は,現時点では未定でございます。改めて御連絡差し上げます。   次回は,「公益信託法の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討」の2として,中間試案の第13から15まで,18,19に当たる論点等について,引き続き皆様に御審議いただくことを予定しているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中田部会長 ほかに何か。 ○林幹事 進行と日程のことなのですけれども,今の時点では7月まで予定が入っていますけれども,進度の次第でというか,その後にまだ何度か法制審を入れるという,その前提で理解しておいてよろしいのですよね。 ○大野幹事 はい。そのような前提で,日程につきましては,夏以降のものにつきましても調整させていただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中田部会長 ほかによろしいでしょうか。   それでは,本日の審議はこれで終了といたします。本日も熱心な御審議を賜りまして,ありがとうございました。 -了-