法制審議会 会社法制 (企業統治等関係)部会 第17回会議 議事録 第1 日 時  平成30年10月24日(水)   自 午後 1時29分                          至 午後 3時34分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  会社法制(企業統治等関係)の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神田部会長 それでは,予定の時間よりも1分ぐらい早いのでございますけれども,委員,幹事の皆様方おそろいでございますので,始めさせていただきたいと思います。   法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会の第17回目の会議を開催させていただきます。   皆様方には本日も大変お忙しいところを御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   それでは,いつものように,まず本日の会議の配布資料の確認をしたいと思います。事務当局からお願いいたします。 ○竹林幹事 お手元には,議事次第,配布資料目録,部会資料26,参考資料52,委員等名簿を配布させていただいておりますので,御確認ください。   本日は日髙委員,藤田委員,衣斐幹事が御欠席でございます。   以上です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,本日の審議に入らせていただきたいと思います。   本日ですけれども,お手元の議事次第に記載のとおり「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(仮案)」について御審議をお願いすることになります。   そこで,まず部会資料26の全体について,事務当局から説明をしていただきます。よろしくお願いします。 ○竹林幹事 それでは,部会資料26の「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(仮案)」について,御説明させていただきます。   部会資料25の内容から形式面において修正している部分もございますが,本日は,特に御意見等を頂きたい実質面において修正している部分を中心に,簡単に御説明させていただきます。なお,特に御意見を頂きたい部分にはブラケットを付けてございます。   1ページの第1部第1の「2 電子提供措置」の①でございます。当部会におきましては御意見が分かれております電子提供措置開始日について,ブラケットを付けて,株主総会の日の3週間前の日とさせていただいております。   3ページの「3 株主総会の招集の通知等の特則」の①でございますが,同様に,当部会において御意見が分かれております株主総会の招集の通知や電子提供措置事項を記載した書面の発出の期限につきまして,ブラケットを付けて,株主総会の日の2週間前の日とさせていただいております。   4ページの「4 書面交付請求」の④でございますけれども,当部会において御意見を頂いております書面交付請求による書面の交付を終了する旨の通知及び異議を述べるべき旨の催告をすることができるまでの期間でございますが,ブラケットを付けて,書面交付請求の日又は異議を述べた日から1年とさせていただいております。なお,電子提供措置の調査につきましては,当部会において頂いた御意見を踏まえまして,電子提供措置の調査に関する規律を設けないものとする方向で検討させていただいているところでございまして,記載を削除させていただいております。   6ページの第2の「1 株主が提案することができる議案の数の制限」の④でございますが,当部会において,なお明確でないという御意見を頂いたことなども踏まえて,改めて法制的な観点からも検討させていただき,定款の変更に関する議案については,異なる議決がされたとすれば当該議決の内容が相互に矛盾することとなる場合には,まとめて一の議案と数える方法とさせていただいております。   6ページの(注)でございますが,同様に改めて法制的な観点からも検討させていただき,定款の変更に関する議案について,株主が一の議案と数えることとなる事項ごとに区分して議案要領通知請求をしなければならないものとする規律に代えまして,株主が提出しようとする議案の数が10を超えるときにおける10を超える数に相当することとなる数の議案の決定の方法に関する規律を設けるものとさせていただいております。   9ページの第2部第1の1「(3)取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任」につきましては,当部会において御意見が分かれておりますことなどから,全体にブラケットを付けさせていただいております。   11ページの「(5)情報開示の充実」の補足説明でございますが,当部会において頂いた御意見を踏まえまして,事業報告の内容に含めなければならないものとすることが考えられる事項を記載させていただいております。   12ページ及び13ページの「2 補償契約」の(2の注)のウ及びエでございますが,当部会において頂いた御意見を踏まえまして,株式会社が費用又は損失を補償した場合に事業報告の内容に含めなければならないものとする事項について,部会資料25の内容の一部を削除する見直しをしております。   13ページの「3 役員等のために締結される保険契約」の①でございますが,当部会において頂いた御意見を踏まえまして,改めて検討させていただき,株式会社を被保険者とする保険契約については,株式会社による補償に関する適切な規律が設けられ,適用されるとすれば,あえて重ねて役員等賠償責任保険契約に関する規律を適用する必要性は大きくないとも考えられることから,規律の対象に含めないものとしております。なお,この変更に伴いまして,②及び③の文言についても若干の修正をさせていただいております。   14ページの(3の注)でございますけれども,当部会において頂いた御意見を踏まえまして,役員等賠償責任保険契約を締結しているときに事業報告の内容に含めなければならないものとする事項について,部会資料25の内容を一部削除する見直しをしております。   15ページの第2の「2 社外取締役を置くことの義務付け」につきましては,当部会において御意見が分かれておりますことなどから,全体にブラケットを付けさせていただいております。なお,補足説明に記載させていただいておりますとおり,当部会におきましては,仮に上場会社等について社外取締役を置くことを義務付けたとしても,社外取締役は取締役会の構成員の一人であって,これを特別扱いして,社外取締役を欠くときに有効に取締役会の決議をすることができないとまで考える必要はないという御意見を頂いております。   会社法におきましては,指名委員会等設置会社における各委員会等の機関については,その構成員のうち一定数が社外役員でなければならないという規律が置かれておりますけれども,本文におきましては,これらの規定とは異なりまして,「上場会社等は,社外取締役を置かなければならない」という定め方をすることを想定してございます。このような定め方であれば,取締役会の決議要件との関係においては,社外取締役も取締役でございますので,社外取締役を特別扱いせず,社外取締役を欠いている場合であっても,直ちに有効に取締役会の決議をすることができないこととなるものではないと整理することができると考えております。本文は,このような整理を前提として,上場会社等について社外取締役を置くことを義務付けるものとするというものでございます。   24ページの第3部第2の「3 株式交付子会社の株式の譲渡しの申込み等」の(3の注2)でございますけれども,当部会における御指摘を踏まえまして改めて検討をさせていただき,法律関係の安定を図ることを目的として,募集株式等の発行に関する会社法第211条に倣った規律を設けるものとしております。   28ページの「5 株式交付親会社の手続」の⑥及び(注1)から(注3)まででございますけれども,株式交付親会社が効力発生日を変更することができるものとしております。例えば,株式交付について,公開買付規制が適用される場合において,公開買付期間の延長を要するようなときは,株式交付の効力発生日を変更する必要が生ずる可能性が高いと考えられます。もっとも,株式交付子会社の株式等の譲渡人の数は相当な数になる可能性もございますので,効力発生日の変更に株式交付親会社と当該譲渡人全員の間の合意を要するものとすることは相当でないと考えられます。そこで,公開買付期間の延長に関する規律も踏まえまして,株式交付親会社は,単独で,株式交付計画において定められた当初の効力発生日から3か月以内の日に効力発生日を変更することができるものとするとともに,株式交付子会社の株式等の譲渡しの申込みの期日を変更することができるものとし,この場合には変更後の効力発生日及び申込みの期日を公告しなければならないものとしております。なお,これらの日は,株式交付計画の内容として,株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みをしようとする者に対し通知しなければならない事項でございますので,株式交付親会社は,これらの日について変更があったときは,当該株式の譲渡しの申込みをした者に通知しなければならないものとすることを想定しております。   32ページの第3の4「(2)株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書」でございますが,補足説明に記載させていただいておりますとおり,株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書に関する規律につきましては,当部会における御議論等を踏まえ,基本的に現行法の規律は見直さないものとするものの,例外的に,株式会社の代表者が特定の犯罪の被害者で再被害を受けるおそれがあるものである場合において,当該代表者から申出があったときは,当該代表者の住所を登記事項証明書に記載しないものとしまして,あわせて,電気通信回線による登記情報の提供に関する法律に基づく登記情報の提供におきましては,代表者の住所に関する情報を一律に提供しないものとさせていただくこととさせていただいております。この見直しにつきましては,会社法及び会社法に基づく法務省令の改正等を伴わないものとなりますので,要綱の項目からは削除させていただいた上で,附帯決議として取りまとめるものとさせていただきたいと考えております。そこで,全体にブラケットを付けさせていただいております。   部会資料26についての御説明は以上でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,いつものように,幾つかに区切って御議論をお願いしたいと思います。   そこで,まず最初は,今御説明のありました部会資料26の第1部の「第1 株主総会資料の電子提供制度」から始めさせていただきたいと思いますので,この第1について御質問,御意見等がございましたら,お出しいただければと思います。どなたからでもお願いいたします。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。この株主総会資料の電子提供制度につきましては,現在,ブラケット付きにはなっておりますけれども,電子提供措置開始日につきましては総会の3週間前,招集通知の発送期限につきましては総会の2週間前としていただきましたことに,まず感謝申し上げたいと思います。この新制度が導入された後は,上場会社につきましては,会社の規模を問わずに,一律に,電子提供措置が義務付けられることになるわけですので,株主総会の決議に瑕疵が生じないよう,十分な配慮が必要となると考えます。これまでも申し上げてまいりましたが,電子提供措置事項には,監査に時間を要する計算書類等も含まれます。また,招集通知の発送に際しましては,電子提供制度が導入された場合でも,参考書類等の書面を任意に同封する方が望ましいと判断することも,実務においては十分想定されますし,さらには,書面を交付しなければならない株主とそうでない株主の分別,特定も新たに必要になります。   こうしたことを考慮いたしますと,法律上の義務としての電子提供措置開始日,招集通知の発送期限の設定につきましては,慎重に御判断いただく必要があると思います。もちろん私どもも,投資家の方々から早期提供の要請があることにつきましては,十分承知しております。個々の企業におきましては,これまでも可能な限りの早期提供の努力がなされておりますが,今後も更に前倒して開示すべく自主的な努力が継続されるものと考えております。  是非とも今の立て付けを維持していただきまして,それ以上の早期開示につきましては,投資家の方とも十分に対話をした上で,個々の企業が努力をすべきものという形で整理いただければと思います。   次に,書面交付請求につきましては,今回,催告の期間を3年から1年としていただいたことは,実務にとりましては,大変有り難いことだと考えております。ただ,書面交付請求又は異議がなされてから1年が経過した後でなければ催告ができないということになりますと,招集通知の際に催告を行った場合には,翌年度の招集通知の時点では催告できないことになります。そうなりますと,催告が来る時期が株主ごとに異なってきたり,催告が来る年と来ない年が生じるという可能性もございまして,株主にとってもかえって分かりづらいものになるのではないかと思います。書面交付請求を行う株主は,主としてデジタルデバイド,つまり高齢の方が中心になるであろうということを考慮いたしますと,制度はシンプルで分かりやすいものであるべきと考えます。そういたしますと,やはり催告は,毎年の定時株主総会の招集通知とともに行われ,実務的にその他の手段では行われないという形になった方が分かりやすいのではないかと思います。   例えば,今の案にただし書を付けていただいて,「定時株主総会の招集通知と共に催告を行った場合には,翌年度の定時株主総会の招集通知と共に催告を行うことができる」といった文言を加えていただくことを是非御検討いただきたいと思います。なお,臨時株主総会の場合には,その時点で請求権の効力が残っている株主につきましては,全員に書面を交付するということで異論はございません。   それから,「4 書面交付請求」の③のみなし提供についてですが,これに関する定款変更についても,みなし定款変更の対象にしていただきたいと前回の部会で申し上げましたが,今回の案でもこれまでと同じように,改めて株主総会での定款変更決議を要することになっています。電子提供制度を採用する会社にとりましては,みなし提供の規定は実務上必須になると捉えておりまして,上場会社に電子提供制度を一律に導入するということであれば,今の立て付けでは,その点についてはみなし定款変更がなされる一方で,みなし提供については各社,総会決議をしなければならないことになりますが,これでは,せっかくみなし定款変更を認めていただく意味がほとんど失われてしまうのではないかと思います。ここは,みなし提供についても,電子提供制度の上場会社への一律適用の一環として,みなし定款変更を認めていただきたいと思います。   それから,もう一つ,実務の観点からどうしても気になりますのが「電子提供措置の中断」のリスクです。特に,会社のホームページ上で総会前に10分の1,つまり2.1日以上,システムダウンが生じた場合には,不適法になってしまうという点につきましては,何らかの形でセーフティーネットを構えていただく必要があると考えます。電子提供措置の中断につきましては,TDnetに電子提供を行う場合は適用除外をするといったような規定を設けていただけないかとこれまで部会で申し上げてまいりました。この点,東証の方で御異存ないということであれば,是非とも実現していただきたいと思います。仮にそれが何らかの理由ですぐには難しいということであれば,少なくとも電子提供先として,自社のホームページに加えて,TDnetにも提供することができるということを明確にしていただいた上で,両方のサイトに総会資料を電子提供する場合には,両方で同時に中断が生じていない限りは,ここでいう中断は生じていないとすることをお願いしたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかに,いかがでしょうか。   それでは,小林委員,どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。今回提示された要綱案の懸念事項について,意見を申し述べさせていただきます。なお,基本的に,これまで述べてきた意見のうち変わっていない点は,改めて申し上げません。   まず,株主総会資料の電子提供制度について,日本商工会議所としては,電子提供措置の中断について,費用の面で問題だった調査の項目が削除されたことについては,評価しております。しかしながら,中断期間に関しまして,電子提供措置開始日から株主総会日までの期間の10分の1という条件は,現時点でも懸念しております。会社が努力しても,サーバー等が2,3日ダウンすることが起こり得るということは,十分考えられます。これにより,株主総会の不成立や決議無効というようなリスクが残るということでは,やはり看過できません。このような制度では問題が大きいため,中断期間の規律は削除していただきたいと思います。ただし,どうしても残さなければならないのであれば,できる限り各社が安心して電子提供ができる方法や環境を整備していただく必要があります。   古本委員の御指摘もございましたが,自社サイト以外にTDnetを始めとする社外のサーバーを活用し,複数のサイトにアップしていることを招集通知によって株主にあらかじめ知らせておけば,それらのサイトが全てダウンしなければ,電子提供は中断していないとみなされると考えてよいかということについて,質問させていただきます。   それから,以前にも少し申し上げ,電子化の本来の趣旨とは離れるかもしれませんが,電子提供措置を実施した会社がフルセットで全ての書面を全員に提供した場合には,最低限,株主総会の不成立は避けられると考えてよろしいかも質問したく思います。   それから,累積防止の観点で,今回,催告ができるまでの期間について,3年から1年と大幅に短縮していただいたことを評価したいと思います。しかしながら,今回,会社ごとに書面交付を請求している全ての株主に一斉に催告できるようにはなっていないことは残念に思います。株主総会招集通知と同時に催告することが一番実務的に取られる手段であると考えられますが,要綱案の仕組みでは株主情報の管理,印刷,封入,送付の実務は相当に複雑になると考えております。仮に株主総会の2週間前のタイミングで,招集通知と同時に催告する場合,関係する名簿管理等の作業が時間的に間に合うか否か意見聴取されているのかどうかについて,確認したく思います。それから,電子提供措置の開始日を株主総会の3週間前にする選択肢,それから招集通知の発送期限を株主総会の2週間前とする選択肢を今回御提案いただいたことについては,企業実務への配慮を頂いているものとして,感謝いたします。この方向で進めていただければと考えております。情報提供の早期化には特に異論はございませんが,全ての会社に対して義務付けるという意味では,この提案内容が限界であろうと考えます。その上で,基本的に各会社の努力ができることにつきましては,それを行っていただくように日本商工会議所としても呼び掛けていく前提では考えております。円滑な制度導入のための環境整備と,企業側の不安を取り除く措置,解釈の提供等について御検討をお願いします。 ○神田部会長 ありがとうございました。質問が幾つかあったようですけれども。 ○竹林幹事 お答えできる部分からお答えをさせていただきます。まず,複数のホームページを御用意して,それを株主の方にあらかじめ通知しておくようなことという御質問でございましたけれども,今現在,私どもといたしまして,中断が生じるリスクというのを自衛していただく方法としては,いわゆるバックアップとしてのホームページを御用意いただくということが考えられると思っております。それは,必ずしも自社ということではなく,委託先というようなことでも構わないのではないかと考えているところでございます。   ただ,これも現時点ではということでございますけれども,やはり原則として自社なのだというところは維持させていただきたく,まず,自社のホームページを株主の方に御覧いただく,こっちも見られます,こっちも見られますということではなく,まず自社を見ていただく。ただ,自社のホームページに何か支障が生じてしまった場合については,その次のもの,バックアップのものでも構わないということを考えているところでございます。   ただ,他方で,TDnetの関係につきましては,東証様と御相談させていただかなければいけない事項もあるかと思っておりますので,こちらの方で預からせていただき,検討をさせていただきたいと考えているところでございます。   フルセットで送った場合の効果はどうかということでございますが,不成立ということにはならないだろうとは考えておりますけれども,フルセットで送ったということも考慮した上で,総会手続の瑕疵に当たるのかどうか,仮に当たったとして,裁量棄却になるのかどうかというようなことが問題となってこようかと思っております。現時点での私どもの考えとしましては,仮にそういう措置をとられた場合には,さすがに裁量棄却の余地があるのではないかと考えているところでございます。   その他,現在の制度を実務上問題なくできるのかどうか関係者に確認したのかという御趣旨の御質問でございますけれども,ほふり,証券会社,あるいは信託銀行の関係者の方とは,別途,打合せの機会は持たせていただいておりまして,この1年という期間ではなく,3年の期間であったとは記憶しておりますけれども,そういった形でどういうふうな運用がされるのかということは,確認させていただいておりまして,その範囲では,各関係者の方から制度自体についての疑問といいますか,支障があるという御意見は頂戴しなかったと考えております。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。   それでは,経済産業省の松本関係官,どうぞ。 ○松本関係官 ありがとうございます。経済産業省の方において,今回の電子化についていろいろ検討して提案をさせていただいたという経緯も踏まえて,2点ほど申し上げたいと思います。   まずは,これからの詳細な制度設計においては,やはりインターネットの利用環境のしやすさですとかは変わっていくということを踏まえて,可能な限り柔軟な形で御検討いただきたいという点が1点でございます。   もう一つは,制度が実際に施行,実施に移されてからですけれども,どのように利用,更に変わっていくであるとか,もちろん制度の理解がどの程度素早く広まっているかということによるかと思うのですけれども,書面交付請求の在り方ですとかについても,再度もう少し,形を厳しく定めない形の規定の仕方もあるのではないかということを考えております。   2点目としましては,今回,書面交付請求として交付しなければならないということについては,基本的には法定事項ということになっていますけれども,場合によっては,定款によって書面交付請求できる書類の範囲を狭めるであるとか,そもそもできないものとするということについても,長期的には考慮の余地があるのではないかと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,三瓶委員,どうぞ。 ○三瓶委員 ありがとうございます。電子提供措置について,電子提供措置の開始日を株主総会の日の3週間前とするということがどのようなメッセージの発信になるのかということについて,述べさせていただきます。   今までも議論させていただきましたが,全株懇の平成29年度調査報告書のデータによれば,電子提供措置開始日が株主総会の日の3週間前ということは,集計対象上場会社の招集通知発送日との比較でいうと,平均2.3日の前倒しということです。電子提供措置開始日と招集通知の書面発送日の間には,実務上,校了後の印刷,封入の時間があるということだと理解しています。部会資料2によれば,この校了後の印刷,封入に掛かる時間は,通常10日から2週間程度,全株懇の資料「企業と投資家の建設的な対話に向けて」によれば,通常2から3週間程度の期間を要するということです。ですから,電子提供措置開始日の設定は,この印刷,封入期間の前にできることを考えれば,平均2.3日の前倒しというのは,極めて限定的な改善と言わざるを得ません。   また,全株懇の同じく平成29年度調査報告書のデータによれば,招集通知の発送前開示のタイミングについて,7割強の会社が招集通知の納入後,発送日までというタイミングを選んでいると回答しています。ここは推測ですが,このことは,もしかするとフェア・ディスクロージャー・ルールに対する理解が十分に進んでいないことが理由かもしれません。書面での招集通知発送よりも前にホームページ等で開示することへのちゅうちょがあるかもしれません。ということで,このままでは,やはり遅々として改革が進まない日本という印象をますます強く内外に発信することになると懸念します。   したがって,もう一歩踏み出していただきたいという私の考えは,これまでどおり変わりありませんけれども,ただ,法改正としてはどうしてもここまでと,先ほど古本委員からも,規模にかかわらず一律に義務付けということで,株主総会の日の4週間前はどうしても難しいところもあるというお話もありました。規模による支障がどのぐらいあるのか少し分からないところですけれども,そういうことで難しいということならば,せめて何らかの,ソフトローの形か何かで,電子提供措置開始日は,総会招集の取締役会決定後,招集通知の校了後,この段階で早期開示に努めるように促す方法を是非検討していただきたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,前田委員,どうぞ。 ○前田委員 ありがとうございます。4ページの「4 書面交付請求」④の書面交付請求の失効については,書面交付請求をした株主が累積をしていくという問題に対して,適切な手当てがなされたものと思います。   これに関連して,それほど強く申し上げるほどの意見ではないのですけれども,今のままですと,これによって書面交付請求の失効した株主が,またすぐ次の基準日前に改めて書面交付請求をできることになろうかと思います。デジタルデバイドの弱者かどうかは,通常は,そう短期間に変動するものではないことを考えますと,会社がせっかくこの手続で書面交付請求を失効させたのであれば,それを全く無にしてしまうことのないように,この手続で一旦失効すれば,少なくとも1年とか2年は書面交付請求できないことにするくらいの措置は,今後できるだけ書面交付請求を減少させていくための方策の一つとして,考えられるところではないかと思います。ただ,うっかり期間内に異議を述べるのを忘れた株主もいるでしょうから,余り厳格にするのも適切でないとは思いますけれども,少し御検討いただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,柳澤委員,どうぞ。 ○柳澤委員 発言の機会を頂きまして,ありがとうございます。今回の要綱案で取りまとめいただいた各論点の方向性につきましては,パブリックコメントでの様々な意見を踏まえ,これまでの部会で審議を尽くしてきた成果というべき提案になりますので,日本投資顧問業協会としても,機関投資家の立場から,その内容を重く受け止めております。全体として要綱案に賛意を表したいとは考えておりますが,株主総会資料の電子提供制度に関して,機関投資家としての要望も含めて,2点ほどコメントさせていただければと思います。   まず1点目,電子提供措置開始日と招集通知の発送期限に関してですが,これまで繰り返し投資顧問業協会として意見を述べさせていただいたとおり,機関投資家による十分な議案精査期間を確保し,企業と投資家の実効的な対話を促していくためにも,早期のタイミングでの情報開示と発送通知が必要とされることから,いずれも株主総会の4週間前とする案を支持してきております。しかしながら,今回の要綱案におきましては,それぞれ3週間前,2週間前とする取りまとめ案が提示されており,恐らく国内及び海外投資家ともに早期の情報開示と発送通知への強い要望があったと考えられるだけに,機関投資家としては,大変残念な内容と言わざるを得ないと思っております。確かに,会社法によるハードローとしての規律付けになりますので,現状の実務に照らして,やむを得ない面もあるかと思いますが,引き続き何らかの方法で企業側の早期対応への任意の取組を促していくような手立てを講じることが望ましいのではないかと考えております。   仮に,こうした要望を踏まえた形で部会の成果物の中で明文化を図っていただけるとした場合には,例えば,前回改正時と同様の形式で,要綱の附帯決議として,企業の早期対応に向けた任意の取組,努力義務といった観点での記載について,御検討いただき,その上で,今後,取引所規則などのソフトローへの反映に関しても,御検討の俎上に載せて,更に御議論いただけるようであれば,機関投資家の立場からは大変有り難いと思っております。   今回の電子提供措置に伴う期限設定は,飽くまで現状において,最低限,企業の実務が回る仕組みに配慮したものと理解しておりますので,今後の対応準備期間なども見据えて,なお一層の早期対応に取り組んでいただくことが,議決権行使における十分な議案精査期間を確保するためには欠かせない要件と考えておりますので,改めて切に要望しておきたいと思います。   次に,2点目,電子提供措置におけるEDINETの使用に関する特例に関してですが,本論点につきましては,再度御検討いただき,今回の要綱案に改めて盛り込まれてきたことに対し,機関投資家として深謝申し上げたいと思います。EDINET使用の特例によって,株主総会前に事業報告書及び計算書類と有価証券報告書を一体的に開示する取組が促進され,議決権行使に際して活用できる開示書類がより充実した情報を含んで体系化されていくことが望ましいと考えておりますので,その政策的な効果が期待できるという観点に照らして,本特例を定める意義を再確認しておきたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,青委員,どうぞ。 ○青委員 2点ございまして,1点目は,株主総会資料の電子提供のタイミングでございますけれども,今回の改正を機に,株主におけます株主総会議案の検討や企業との対話に充てることができる期間を十分に確保することが,我が国の資本市場の課題であるということを御理解いただいた上で,より早期の情報提供がなされていくことになることが重要だと考えております。この重要性自体については,今回の改正の議論を通じて,各社に御理解を頂けたところかなと考える次第でございます。今後,より早期の情報提供を実現するためには,業務のシステム化や様々な実務慣行の見直しなどを,コスト面も含めて考えていくことが必要だと考える次第でございます。ただ,そうは言っても,法制度を決めるときに,全社に適用されることになりますので,どうしても対応できない会社があることも考慮する必要がありますので,その意味で,法定期限が3週間前となることにつきましては,やむを得ないという面はあるのかなと考える次第でございます。   ただ,株主の熟慮期間を長く取ることができるように各社努力することが必要ということに関しましては,御異論がないところでしょうし,先ほども経済界の方々からそうした方向でしっかり考えていくべき課題であるという趣旨の御発言がありましたので,是非そういう考え方を世間に対しても示していくことが適切であると考えてございます。したがいまして,法定期限が3週間になった場合は,その趣旨について対外的に発信する際には,3週間前に電子提供を行えば十分だという意味では決してないことをしっかりと示していくことをお願いしたいとともに,私どもも情報提供の早期化につながるよう動いていきたいと思いますし,会社様の方におきましても,そうした方向になるように,経済界の方々も一緒に動いていただければ助かるというところだと考えてございます。   それから,書面交付請求の方でございますけれども,株主が議決権行使をする機会と,そのために必要不可欠な情報を入手する機会というのは,やはり多数決で奪われるべきではないと考えておりますので,原案のとおり,書面交付請求の仕組みを設けることについて賛成でございます。将来的に,株主のほとんどがインターネットを滞りなく使える人であるというような状況まで行けば,いろいろ考える機会になるかもしれませんけれども,基本的にそこまで行かないレベルならば,書面交付請求について見直しをするのはかなり慎重に考えていくべき課題ではないかと考えます。   それから,書面交付請求の有効期間の関係ですけれども,こちらは実務的に一番うまくいくようにすることが重要だと考えますし,仮に電子的な提供を受けられるような株主の方が出てきた場合に,それがすぐ反映される方がよいという面もあるかと思いますので,書面交付請求の有効期間については,過度に長くするのは余り適切ではないのではないかと考える次第であります。それで,先ほど招集通知のときに一緒に異議のあり,なしを問うという,そういった御意見もございましたけれども,そういう方法も多分あるのでしょうし,あと,株主総会決議通知を送られるときに確認するというような方法もあるでしょうし,そこのところは実務上,最もやりやすい形の仕組みとしていくのが適切ではないかと考える次第でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,部会資料の第1は終わらせていただいて,必要があれば後で戻っていただいても結構ですので,第2の株主提案権についての審議をお願いしたいと思います。   大竹委員,どうぞ。 ○大竹委員 ありがとうございます。意見というよりは,少し解釈上の質問なのですけれども,定款変更に関する議案の数の数え方の点についてでございます。具体的には,部会資料の6ページ,第2の株主提案権の1の④についてということになります。   複数の事項をその内容とする定款の変更に関する議案の数え方につきまして,従前の御提案では,別個に可決又は否決されたとすれば,当該提案の理由との整合性を欠くこととなるか否かという基準だったと理解しておりますが,今回の事務局の御提案では,異なる議決がされたとすれば,当該議決の内容が相互に矛盾することとなるか否かという基準に変更されたということかと思います。そこで,この変更後の基準は,従前議論していました,客観的に,あるいは理論上,両立し得ない,又は矛盾するという一番狭い解釈と同じか,違うかという点を御議論いただきたいというのが問題意識ということになります。   具体的には,今日御欠席なので恐縮なのですが,第11回の会議におきまして,藤田委員から,役員に関する複数の規定の主語をheからhe or sheに変えるという場合の数え方について問題提起がありましたが,今回の提案だと,これは一つと数えることになるのかどうなのかと,文言のみを虚心坦懐に見ると曖昧な点が残るようにも思いまして,問題提起をさせていただきました。   同じような例なのですけれども,例えば,取締役と監査役のそれぞれにつきまして,別の条項で,選任時の年齢を65歳以下とするといった年齢制限条項を設けるという場合につきましても,同様の問題が生じようかと思います。事務局に何かお考えがあればお聞かせを頂けたらと思いますし,藤田先生がいらっしゃらないので恐縮なのですけれども,もし何か委員の皆様方の御意見などをお伺いしていただければと思って発言をさせていただきました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。大竹委員の御質問というか御発言について,事務当局から,もしありましたら,お願いします。 ○竹林幹事 議論のきっかけという形になるかもしれませんけれども,私どもといたしましては,矛盾することとなるという言葉の捉え方に最終的にはなってくると思いますので,この言葉自体には解釈の余地というのが当然入ってくるのではないかとは思っております。これまでの部会での御議論を踏まえ,飽くまで私の考え方ということでございますけれども,論理的に矛盾するという,論理的にというのを明示していないという意味では,それよりは少し広く解釈する余地はあろうかとは考えております。   他方で,といいますか,藤田委員がおっしゃったように,he or sheとか,言葉の主語を変えるという,元々の提案の数え方という点についても解釈の余地はあろうかと思いますが,これを仮にばらばらのものと数えた場合につきましては,それを全体として見たときに矛盾すると考えるという解釈の余地はあろうかと考えております。取締役,監査役の年齢についても同じようなことかと思っておりまして,取締役が何歳以下,監査役が何歳以下というのが違ってはいけないのかというと,そういうわけではないと思いますので,これは別々に考えることはできるのであろうと,ただ,それが元々の年齢を一律に決めて,ある意味,退任いただく時期というのを明示したい,明確にしたいのだということであれば,それは両方そろっているのが当然だということになろうかと思っておりますので,矛盾すると解釈する余地もあるのではないかとは思いますが,感触としては以上でございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。   今の点につきまして,もし委員,幹事の皆様方から御意見,御感想があれば,お出しいただきたいと思いますけれども,いかがでしょうか。今日,藤田さんは御欠席なので,また別途聴いてみたいとは思いますけれども。   大竹委員,どうぞ。 ○大竹委員 そうしますと,今の事務局の御説明だと,提案の理由まで参酌して,その提案の議決の内容のみではなくて,理由をも参酌して判断をするということも許容される,あるいはそうすべきだということになりますでしょうか。 ○竹林幹事 矛盾するというのを判断するに当たって,参酌する余地はあるとは考えておりますけれども,それをしなければいけないかとか,そこまでのことを必ずしも申し上げているわけではなく,やはりこういう言葉をどういうふうに解釈していただくかという解釈論に委ねられることになろうかと考えております。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。   今の点につきまして,御発言,ほかの委員,幹事の皆様方,ございますか。   田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事 従来,非常に常識に外れたというか,提案の数を誇るような形の株主提案がされているので,それに対処するための法改正をするということで議論してきています。誠実な株主提案をしている株主を邪魔するような形でこの法改正が提案されているわけではないと思うのです。今回の事務局案に関して言うと,矛盾した提案以外は1個の「事項」ごとに一の議案と数えると言っているのですけれども,「事項」というところにやはり解釈があるわけであり,すなわち,「事項」というのは社会通念で判断されるので,社会通念上1個の事項の提案をしているのに,それを会社の側でばらばらにして,あなたは4個提案していますよ,みたいなことを認めるものではないと思うのです。   今,急いで電力会社の最近の株主提案を見ましたけれども,例えば,ある電力会社に対する株主提案は,こういう定款条項を追加すると。本会社は,使用済み核燃料再処理事業から撤退する,そのために以下の事業を行う,1,再処理を前提とした中間貯蔵施設への使用済み核燃料の輸送を行わない,2,再処理工場に使用核燃料を輸送しない,以下,比較的短文で4項目の措置をするというものです。私は,これは一の事項に関する株主提案だと思います。それを会社の側でばらばらにして,あなたは四つ提案していますね,なんていうことを認めるものではないと思います。   これまでの議論は,株主提案の濫用の危険を重視するような感じになっていますけれども,基本的には,社会通念上1個の事項は1個の事項なので,それを会社のほうでばらばらにして株主提案を妨害するようなことを認めるのが今回の法改正の趣旨ではないと思っております。これは飽くまで私の解釈でありますし,また,確かに何が一の事項に当たるかの解釈は難しい場合もあるかもしれませんが,そこは最終的には裁判所に対応していただけると私は思っております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか,この点について,御発言があればお伺いしますけれども。よろしゅうございますでしょうか。必要に応じて,藤田委員の御意見も何らかの形で伺えればと思っております。   それでは,第2の株主提案権につきまして,どの点についてでも御質問,御意見をお出しいただきたいと思います。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。株主提案権につきましては,10個という数につきましても,目的等による制限につきましても,経団連としては十分納得しているというわけではありませんが,繰り返しになりますので,ここではあえてコメントは致しません。ただ,株主提案権の行使要件と行使期限につきまして,記載を頂いていないのですけれども,実務にとって重要な問題ですので,再度,一言だけコメントさせていただきたいと思います。   経団連といたしましては,行使要件のうちの300個以上の議決権,これは是非とも削除ないし引き上げるべきと考えております。300個と1%では要件が余りにも不均衡でありまして,濫用的な株主提案権の行使を十分に抑止するという観点から,もっと合理的な基準に改定していただく必要があると考えています。   また,実際に株主提案がなされた場合,先ほど田中先生からの電力会社の例などが出ましたけれども,実際には非常に複雑になってございまして,最初に提案自体が要件を充足しているかどうかを確認する,それから内容を吟味いたしまして取締役会としての意見を作成するといった対応が必要になってまいりますが,実務的には相当の時間が掛かります。特に,盛りだくさんの定款変更議案がなされるといった場合には,なおさらでありまして,期限がぎりぎりになってからそのような提案がなされますと,総会の準備に支障が生じかねません。そうした観点から,行使期限につきましても見直す必要があると考えます。要綱案,仮案ですけれども,記載がありませんので,今後の課題ということになるかと思いますけれども,是非この点を御留意いただければと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   小林委員,どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。株主提案権については,提案できる個数の制限,あるいは不適切な内容の制限について,日本商工会議所としては一貫して賛成しております。今回,議案の数の数え方が明確化されましたが,幾つか文言について整理されていたり,10個を超えたりしたときの取扱いに一定の方向性を示されたことは有り難いことだと思います。この方向で御検討いただきたいと考えております。   個数につきましては,会社提案の個数等を参考に3個から5個ぐらいが適当であると日本商工会議所としては従前より申し上げてきております。提案できる個数が10個では多過ぎると考えており,複数の株主から提案されればすぐにも株主総会の議事に影響する数だと考えております。今,古本委員からもお話がございましたように,行使要件あるいは行使期限を全く見直ししない前提で10個という数は,余りにも多いと感じます。行使期限や行使要件の問題を現時点で取り上げないのであれば,個数に関しては再考をお願いいたします。 ○神田部会長 ありがとうございました。   北村委員,どうぞ。 ○北村委員 ありがとうございます。まず,部会資料26の6ページの④のところで,定款の変更に関する議案については,「複数の事項について異なる議決がされたとすれば当該議決の内容が相互に矛盾することとなる場合には,まとめて一の議案と数え」るとなっています。これは以前の部会で示された,複数の事項ごとに別個に可決又は否決されたとすれば,当該複数の事項相互間の整合性を欠くこととなるおそれがある場合を一と数えるよりもかなり狭いことになります。つまり,整合性を欠くおそれではなくて相互に矛盾するという表現になっているわけですから,一つのくくりが狭くなり,それだけ実質的な提案の個数が減るということになるわけです。もちろん,どのようにくくるかということにつきましては,先ほど田中幹事から適切な御意見もあったところでございますけれども,社会通念で考える必要があります。そして個数については,この部会で示された10や5あるいは5未満という意見の中で最も多い10が採用されているのですから,比較的くくり方は狭くてもいいのではないかと思った次第でございます。   前々回の藤田委員のhe or sheですけれども,heをhe or sheに変えるということは,実質的な定款変更というよりは,形式的な文言の修正ですから,それを5か所出てきたから5個の提案であると考えるのは社会通念ではおかしいことになると思います。   もう1点は質問でございます。同じ部会資料の6ページの下の補足説明のところ,今回新たに入ったところでございますけれども,10を超える提案があったときですが,株主の方が優先順位を定めているのであれば,それに従い,そうでない場合は株式会社が定める方法となっております。株式会社が定めるということは,株式取扱規程などであらかじめ方法を定めていることを想定しておられるのか,あるいは10個を超える提案が来れば,その都度,会社が自由に決めることができるということなのか,いずれでしょうか。また,後者の場合は,客観的基準に従い,例えば,提案議案が並べられた順番の上から10となるのか,あるいは可決されそうでないものから10個選んでも,それは構わないのか,これについてもし御意見がありましたら,お伺いしたいと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。 ○竹林幹事 御指摘いただきました会社が定める方法というのは,私どもとしましては,あらかじめ株式取扱規程とか,会社の内規で差し支えないと思っておりますけれども,一定の合理的な数え方を予定しておいていただくということを考えております。ここで申し上げているのは,余りに便宜的といいますか恣意的にされるのが問題であろうというふうなことでございますので,難しそうなものから除くというような方法はどうかと思いますけれども,そうではなく,基本的にあらかじめ合理的な方法を定めておいていただければ,それに従って数えていただくということを想定しております。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございました。   それでは,ほかに第2の株主提案権について御質問,御意見はございますでしょうか。   野村委員,どうぞ。 ○野村委員 細かなことで恐縮なのですけれども,第305条第4項のところに,そもそも提案のできない事由として,例えば第1項の議案が法令若しくは定款に違反する場合とか,実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかったというようなものがあって,これは,この改正が行われた後もそのまま適用されるのだと思うのですが,十幾つ提案されている中の上位の方にこれが含まれている場合については,提案があった10個の中から引いてなのか,それとも繰り上がるのかということについて,教えていただければと思います。 ○竹林幹事 条文の立て付けにもよろうかとは思うのですが,一応,私どもとしましては,形式的に数えていただくというためにこういう規定を入れようと思っておりますので,まず形式的に10,特定していただいた上で,今回入ります目的による提案の制限も含めまして,除外すべきものがあれば,その10から除外していくという適用順位が合理的であろうとは考えております。企業が先に違法なものを除外して10取り扱うということが必ずしも妨げられるものでもないとは思いますけれども,私どもとしましては形式的に数から数えていただくということを想定しております。 ○野村委員 ありがとうございます。 ○神田部会長 よろしいですか。   ほかに,いかがでしょうか。   それでは,先へ進ませていただきますけれども,戻っていただいても結構ですので,後でお気付きになったような点があれば,そのときに戻っていただければと思います。   それでは,次はお手元の部会資料26,第2部,7ページ目ですけれども,第1の1,2,3とあるので,まず第1の「1 取締役の報酬等」,具体的には7ページから11ページの補償の前までについて,御質問,御意見をお出しいただければ有り難く存じます。どなたからでも結構です,いかがでしょうか。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。「1 取締役の報酬等」のうちの「(3) 取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任」について申し上げたいと思います。これまで何度も申し上げてまいりましたが,代表取締役を始め,取締役,監査役は善管注意義務を負っておりますし,多くの会社では「報酬等の額の決定に関する方針」に加えて,個別報酬額の算定式などをあらかじめ定めておりますので,再一任が白紙委任であると単純に評価すべきではないと考えます。   特に,上場企業につきましては,金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ報告書におきまして,「報酬の決定,支給の方法や,これらに関する考え方を具体的に分かりやすく記載することを求めるべきである」とされましたし,さらには,「報酬プログラムに基づく報酬実績について,当期の報酬額に決定した理由が開示されるべきである」となりましたので,今後,報酬決定プロセスと報酬実績について,開示されることになると思います。   こうしたことからいたしましても,再一任を受けた者が恣意的な運用をするということは考えられないと思います。企業の報酬体系につきましては,再一任するかどうかも含めて,各企業それぞれのボードポリシーに基づいて,創意工夫をして構築していくべきものでありますので,代表取締役等への再一任について株主総会決議の対象とまでする必要はないと考えております。経団連といたしましては,再一任について規律を設けるということには強く反対です。   次に,「(5) 情報開示の充実」についてですが,これ自体は結構だと思いますが,現在,金融庁で有価証券報告書に記載すべき事項に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正が行われていると伺っております。法務省におかれましても,事業報告での開示が有価証券報告書での開示を超えるようなことにならないように十分に調整していただきたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   小林委員,どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。「(3) 取締役の報酬等についての個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任」につきましては,日本商工会議所としては,ここに規律を入れることについては,強く反対しております。今,古本委員から御指摘のあったとおりですが,CGコードなどを参考に様々な任意の工夫を各社が行っているため,このような企業実務に影響しないようにするという意味でも,現行制度を維持することがよろしいと考えております。   それから,「(5) 情報開示の充実」について意見を申し上げますが,従前より規律を見直す必要はないと申し上げてきていますが,開示対象の公開会社には,有価証券報告書の提出義務のない非上場会社である中小企業が多く含まれています。そのような中小企業にも,同じ開示義務を課することに疑問を感じております。   中小企業庁の平成29年度の中小企業実態基本調査によれば,約20万社の企業が株式譲渡制限を定めていないと回答しています。割合でいいますと,株式会社の24%,およそ4社に1社が公開会社となります。会社法を導入した平成17年の調査での約50万社,57%という数値と比較しますと,およそ半減してはおりますが,様々な規模の会社の中に,譲渡制限を付けていない状態になったままの非常に小さい中小企業もまだ数多く含まれるであろうと考えております。本来は,株式譲渡制限会社を選択しようと考えて,それが可能な会社には,定款変更を促す必要はありますが,現時点で,様々な経緯や理由によって,会社法が公開会社として本来想定する対象とは異なる株式の所有や経営実態の会社がこの公開会社の中に多く含まれるという現実を商工会議所としては重視しております。したがって,開示項目や内容を増やすことは,かえって企業の負担が増す弊害の方が大きい場合もあると考えることから,義務付けは引き続き反対をさせていただきます。   報酬等の規律の義務付けを行うのであれば,法改正における開示の規律の対象範囲を絞り込んでいただきたいと思います。今,古本委員からの御指摘がありましたように,有価証券報告書との関係で開示の範囲をどのように考えるかというお願いがございました。今回,公開会社というだけでは非常に範囲が広くて影響が大きいことを考えると,有価証券報告書提出会社と一致させるという考え方もあるかもしれませんし,場合によっては,公開会社かつ大会社が相当ではないかと考えます。元々公開会社に関する開示の規定の全般の在り方についても検討をすべきだと思います。つきましては,対象範囲を絞り込んでいただくよう,強くお願いをいたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   柳澤委員,どうぞ。 ○柳澤委員 発言の機会を頂きまして,ありがとうございます。「1 取締役の報酬等」につきましては「(3) 取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任」に関して,コメントさせていただければと思います。取締役の報酬等の決定を委任された取締役会がその決定を代表取締役に再一任するといった実務慣行は,取締役会による代表取締役に対する監督の実効性が低下する懸念があることや,代表取締役自らが自身の報酬を決めることになるなど,ガバナンス上の問題を多くはらんでいると考えられますので,取締役に再一任する場合には株主総会の決議を要するとした要綱案に賛成をしております。   なお,その際に機関投資家として留意いたしますのは,併せて,より的確なガバナンス評価を行うために必要な情報開示の充実が図られるかどうかという点であり,これまでもコメントさせていただきましたが,要綱案10ページから11ページ「(5) 情報開示の充実」に記載された会社役員の報酬等に関する事項①から⑥については,いずれも取締役へのインセンティブ付与の具体的な内容と機能を把握する上で有用性の高い情報に位置付けられますので,開示を充実すべき項目として適切であると考えております。このうち,「③ 取締役会の決議による報酬等の決定の委任に関する事項」においては,補足説明に例示されているように,再一任をしている旨,再一任の相手方及び再一任をしている事項を開示していく必要があり,こうした情報開示の充実を通して,再一任の是非や合理性に対して一定のチェックを掛けることが可能となり,企業と投資家の間の対話を深める端緒にもなるものと認識をしております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。質問させていただきます。1の「(1) 報酬等の決定方針」についての改正ですが,指名委員会等設置会社での改正を予定しているかどうかということを教えていただければと思います。第409条第1項では執行役等の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めなければならないとなっていますが,以前の部会資料におきまして,今回提案されている方針はこれにとどまらず,総体としての取締役の報酬等の内容,報酬等の種類等の決定方法,業績連動報酬等に係る決定等に関する方針も含まれるという御説明があったと思います。このように解釈しますと,今回の改正で義務付けられる決定方針の内容は,第409条第1項の方針よりも広いものを含むというようにも考えられますけれども,そうだとしますと,平仄をとるという観点からは,指名委員会等設置会社についても改正が必要とも考えられるかと思いますが,この点について,どのようにお考えでしょうか,教えていただければと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○竹林幹事 私どもといたしましては,今は,指名委員会等設置会社に同様の規律を盛り込むということは想定してございません。基本的には総体としての取締役の報酬等の決定方針等を決めて,個人別の取締役の報酬等を定めていただく,大きなものを決めて,小さなものを定めていただくということでございまして,当然,個人別のものを定めるということであれば,その前提として決定方針というのは決まっているだろうとは思うのですけれども,最終的に個人別の報酬を決めていただくというのが目的と考えてございますので,既に個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めなければならないとされている指名委員会等設置会社についてまで,前者の広いものを改めて決めることを求めるということは考えておりません。 ○沖委員 分かりました。ありがとうございました。 ○神田部会長 梅野幹事,どうぞ。 ○梅野幹事 ありがとうございます。細かい点で恐縮なのですが,9ページの補足説明1行目なのですけれども,『また,イの「その他法務省令で定める事項」は,例えば,(ⅰ)第236条1項第1号から第4号までに掲げる事項』となっていて,(ⅱ)とか(ⅲ)などは「概要」になっているのですが,(ⅰ)だけ「概要」になっておりません。いろいろな考え方があるとは思うのですが,第236条第1項第1号から第4号は,新株予約権の目的となる株式の数とか行使期間になりますので,実務上,これを全て総会決議で決めることができるのかという観点はあるのかと思います。総会決議でそこまで決めるのもなかなか難しい可能性がありますし,あるいは,元々株数については,イの御提案のところで「当該新株予約権の数の上限」というような大きな枠になっていますので,こちらの(ⅰ)についても「概要」とする定め方もあり得るのかと思いました。   次に,11ページの補足説明,情報開示の部分の「④業績連動報酬等に関する事項」です。先ほど古本委員が御発言されたところとも少し関係するのですけれども,④のそれぞれの事項を見ると,(ⅰ)で,「金銭でないときはその内容」,(ⅱ)では,「株式会社の業績を示す指標の内容及びその指標を選定した理由」等かなり詳細な形での開示というのが想定されています。実務上いろいろな会社がありますけれども,業績連動報酬で想定されるKPI,キー・パフォーマンス・インディケーターですか,これと実際の達成数値を公表していない企業も多いと思いますので,余り詳細に開示を要請すると,企業側の負担もかなり大変になるという考慮もありますので,この辺りについても,概要とするような考え方もあるのかと思います。今検討されているという有報開示の内容等ともバランスをとりながら,この辺りについての記載ぶりというのは御検討いただく余地があるのかと思った次第です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   加藤幹事,どうぞ。 ○加藤幹事 ありがとうございます。1の(4)の①について,確認したいことがあります。(2)アに掲げる事項についての定めに従い株式を引き受ける者を募集する場合には,その出資の履行を要しない旨を定めるということが御提案されていますが,(2)アに掲げる事項は,報酬としてその株式を直接発行する場合,又は株式の取得に要する資金に充てるための金銭を報酬として交付する場合となっています。後者の場合,すなわち,株式の取得に要する資金に充てるための金銭を報酬として交付する場合は,(4)①のアとの関係ではどのような扱いになるのでしょうか。出資の履行を要しないという定めがある場合に,株式の取得に要する資金に充てるために交付する金銭はどのように位置付けられるのか,確認させて下さい。 ○神田部会長 ありがとうございます。 ○邉関係官 御回答いたします。(4)①は,現物出資という形を取らずに,出資を要せずに株式を発行するための特則です。「(2)アに掲げる事項についての定め」として想定しているのは,飽くまでも(4)①の特例を利用する前提としての報酬決議であり,株式を報酬とする場合における(2)の決議となります。株式の取得に要する資金に充てるための金銭を報酬とする場合については,そもそも出資を要せずに株式を発行する必要がありませんので,(4)①の特則を適用する必要がないことになります。 ○神田部会長 よろしいでしょうか。 ○加藤幹事 ありがとうございます。そうすると,「(2)アに掲げる事項についての定めに従い」を明確にした方がいいように思います。ただ,特に強い要望ではありません。ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,三瓶委員,どうぞ。 ○三瓶委員 度々ありがとうございます。9ページの「(3) 取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任」の件ですが,基本的には削除することには反対ですが,ポイントが二つあります。   一つは,コーポレートガバナンス・コードの改訂がありました。その中で,報酬委員会の設置について,コンプライ・オア・エクスプレインが求められています。この方向性と矛盾するようなことがないようにというのが一つです。   もう一つ,万が一これを削除という場合に,(5)の情報開示,特にその「③ 取締役会の決議による報酬等の決定の委任に関する事項」というのは非常に重要ですので,これは必ず残していただきたいということ。これがどういうふうに株主,投資家に見られるかということですけれども,株主が求めているのは,説明責任,透明性です。これが最も重要で,もしそれを果たしていない,自分たちではきちんとやっていると思っているが,株主からそれを果たしていないと受け止められれば,経営トップの再任議案への反対票は増加するということになると御理解いただきたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,次に移らせていただきます。繰り返しになりますけれども,お気付きになったときには戻っていただいて結構でございます。   それでは,2と3,補償契約と役員等のために締結される保険契約,ページ数でいいますと11ページから14ページまでについて御質問,御意見をお出しいただければと思います。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。   古本委員,どうぞ。 ○古本委員 どうもありがとうございます。3のD&O保険につきまして,一言だけコメントさせていただきたいと思います。今回の部会資料では,会社補償を前提とする,会社を被保険者とする契約については,規律の対象から除外をしていただいたということと理解いたしましたが,経団連といたしましては,これに加えて,対会社責任特約部分の費用を役員が負担している保険についても,対象から除外することをもう一度,御検討いただきたいと思います。役員が費用を負担している,これは形式的には契約者ではないということで,除外されていないのかと思いますが,実質的な利益相反性の有無という意味では,利益相反性はないと考えることができると思います。これを除外していただけますと,現行の実務との親和性が高い規律になりますので,お願いする次第です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   小林委員,どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。補償契約とD&O保険について述べさせていただきます。保険契約につきまして,今回,開示に関する項目がある程度縮小されていることについては,評価をしております。しかしながら,情報開示によって訴訟リスクが生じ,正当な補償が妨げられるデメリットを生じるため,そのおそれがない範囲にしていただきたいと従前より申し上げております。今回の案の「当該事業年度に補償した金額」について,よほどトラブルが多い会社でもなければ,補償が発生するのは,通常は,年度内に1回あるかないかであると考えております。ある程度事情を知っている方であれば,和解金額が開示されるということで,中身が分かってしまうことになります。利益相反性があることを理由に情報を開示すること自体は,一定程度はやむを得ないのかもしれませんが,一般に,和解金額を守秘することが和解自体の最も重要な条件となることが当然あります。和解後の訴訟リスクなども考えると,和解金額を開示することが,事実上,和解を妨げてしまう場合があり得ると考えます。和解金額の開示を求める規定については,削除をお願いいたします。   もう一つ,先ほど申し上げましたように,開示対象が公開会社であることについて,公開会社といっても様々あるということは先ほど申し上げたとおりです。今回の検討において,補償契約やD&O保険で想定される会社には,非常に規模の小さな公開会社は含まれていないことを考えますと,例えば公開会社かつ大会社等に修正することを,御検討いただきたいと考えます。   もう一つ,役員等のために締結される保険契約について,規律の対象を前回より絞り込んでいただいていることは評価しております。しかしながら,先ほどの古本委員の御指摘の対会社責任特約部分の費用を役員が負担している場合も考えていただければ有り難いと思います。また,私どもとしては,金額等の開示がなくなったということは大変有り難いのですが,保険加入の旨を開示させる点に懸念を持っております。保険に加入していない人が分かってしまうことになりますと,D&O保険を掛けていない会社にとっては,新たに保険加入しなければならないという強制力が事実上働くようになると私どもは考えます。嫌がらせ目的等の悪意ある攻撃者に狙われたときに,あるかないか分からなければ,保険を掛けているだろうからと,訴えられずに済むこともあると思います。しかしながら,掛けていないと分かってしまうと,あえて嫌がらせをしようとするインセンティブが働く可能性がございます。そのリスクを回避するために,開示が求められるから,D&O保険を掛けざるを得ない会社もあると思います。本当は自分の会社は余りリスクがなくて,経済的にも保険に加入しないことが合理的であるという判断をしている会社に,情報開示によって加入せざるを得ないという意思決定の歪みが生じるということは,問題だと思っております。したがって,加入の有無を含め,開示を強制する規定というのは入れるべきではないと考えます。   この点に関しては,もう一度,現実の影響を考えていただき,実質的な利益相反性がそれほど大きいわけではない場合には,開示まではさせる必要がないと私どもは考えておりますので,再考いただきたいと考えます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかに,いかがでしょうか。   特によろしゅうございますでしょうか。それでは,先に進ませていただきます。   次は,部会資料26の第2部の第2ということになりまして,「社外取締役の活用等」であります。ページ数で申しますと14,15,16の上までということになります。御質問,御意見,どなたからでもお出しいただければ有り難く存じます。   古本委員,どうぞ。 ○古本委員 どうもありがとうございます。社外取締役を置くことの義務付けについてコメントさせていただきたいと思います。これまでも申し上げてまいりましたが,ガバナンスの在り方は,本来,それぞれの会社がそれぞれの経営理念,企業戦略の下で,株主と建設的な対話を行いつつ,創意工夫しながら構築していくべきものだと,これが本来であると考えてございます。こう申し上げた上で,仮に設置が義務化された場合の実務的な懸念について,若干申し上げたいと思います。   現状,かなり多くの上場会社が社外取締役を既に選任済みであるというのは事実ですけれども,適任者がいないので設置していないとする会社もまだかなりの数,残っているのも事実です。そうした会社も含め,設置が義務付けられた途端に,1名ではなくて2名以上,社外取締役を選任しなければならなくなる,例えば,2020年度の定時株主総会で複数の選任が必要になるということになりますと,十分な時間もなく,実務における影響は甚大なものとなります。   今回,補足説明で,仮に欠員が出ても取締役会決議が無効になるわけでないという趣旨の御記載を頂いておりますが,企業といたしましては,過料のリスクをとるということもなかなか難しいものがございますので,その点についても,1名選任でも対応できるという何らかの安心材料を示していただけないかと思います。   仮に取締役一般に欠員が生じた場合は,欠員が生じたタイミングに応じて,次の定時株主総会で選任するなり,場合によっては,一時取締役の選任を申し立てるなり,必要となれば臨時株主総会を開いて対応するということになるのではないかと思うわけですが,社外取締役の選任につきましては,人選などにも一定の時間が掛かりますので,合理的に速やかに手続をとる限りは過料とはならないのではないかと認識しているわけですが,今後,仮に社外取締役の設置が義務化された場合でも,欠員が生じたときの対応につきましては,先ほど申し上げたような認識に基づいて実務対応すれば構わない,つまり,今までの実務運用についての認識を変更する必要はないということを何らかの形でお示しいただければ,新しい規律が導入されても,1名選任でも対応しうると思いますので,よろしくお願いしたいと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。   小林委員,どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。社外取締役を置くことの義務付けは,日本商工会議所として,現行法の規律を見直さないことを支持しております。今回,B案が削除されたことは大変遺憾です。一方で,社会的な要請が大きいテーマでもありますので,仮に義務付けを考えるのであれば,立法事実として十分かということを考えていただくと同時に,次の点を考えていただきたいと思います。   規律の対象は上場会社だけでなく,有価証券報告書提出会社,監査役設置会社で公開大会社を含みます。今回,株式会社に社外取締役の設置を求める範囲を株式が一般に流通していない非上場会社まで含める必要がないのではないかということを考えます。実は,数の上で,上場企業約3,700社を除いて,非上場の有価証券報告書提出会社は約1,000社あると聞いております。そのうち,社外取締役を設置しないこととしていてその理由を説明している会社がどのくらいあるのか,私どもは分かりませんが,相当数あると考えます。今まで議論されてきた内容は全て,上場企業に関しての議論でした。設置していない理由を説明している非上場企業がどのような状況であるかや,上場企業と同じような考え方を適用できるかを議論しないまま,義務付けを行うことに基本的に大きな疑問がございます。   当然,社外取締役を置いている非上場会社もあるようですが,適任者を探すことについては,上場会社でも苦労しており,そのような非上場会社への影響は非常に大きくなると考えております。私どもとしては,仮に社外取締役設置を義務付けるのであれば,少なくとも,上場会社に限るべきであると考えております。そうしますと,非上場の有価証券報告書提出会社で,現行の会社法第327条の2の規定が適用され,そのまま説明義務を維持することになります。すると,規律が2段構えとなるため,非上場会社に配慮された規律になるのではないかと考えております。   もう一つ,先ほどの古本委員からの御指摘にもありましたように,社外取締役が地震など不慮の事故等で欠員が生じる場合などで取締役会決議の瑕疵が生じないようにしていただきたいということは重要です。先ほど申し上げたように,適任者を探すのに苦労する企業が多いということなので,数年間,準備期間を設けることも必須でございます。   立法事実を明示すること,取締役会決議の安定性を確保すること,相応の準備期間を確保することをお願いしたいと思います。基本的に義務付けには賛成しかねるところではありますが,対象範囲を含めて,もう一度,丁寧に考えていただきたいと申し上げます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。事務当局,お願いします。 ○竹林幹事 古本委員,小林委員から御意見を頂いたところではございますが,私どもとしましては,法制的な観点からは,仮に,義務付けをすることができた場合については,過料の制裁の規定は設けざるを得ないと考えております。また,平成26年改正時に上場会社等と,公開会社であり,かつ,大会社であって,有価証券報告書の提出義務を負っている会社について,こういう説明義務を負わせたということを前提として,更に一歩進める議論をさせていただいておりまして,むしろ,経団連様,あるいは日商様の加盟会社の中で,非上場会社にはこういう事情があるのだということを具体的にお示ししていただければとも思いますけれども,この前提で,更に一歩進める方向で,御議論いただきたいと考えているところでございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,前田委員,どうぞ。 ○前田委員 ありがとうございます。15ページの補足説明のところで,社外取締役の設置が義務付けられた場合に,社外取締役を欠いてなされた取締役会決議の効力の問題が取り上げられ,直ちには決議の効力に影響はないという解釈が示されています。この問題は,改正法成立後の解釈問題でございまして,この部会で必ずしも解釈を統一しておく必要はないとは思うのですけれども,補足説明で示されますと,今後の解釈に非常に大きな影響を与えると思いますので,一言意見を申し上げさせていただきます。   私は,この解釈には少し無理があるように感じております。まず,規定の仕方としては,会社が社外取締役を置かなければならないと規定しようが,取締役の1名以上は社外取締役でなければならないと規定しようが,同じことであって,ここの規定の仕方が決議の有効,無効の解釈に影響することはないように思います。   規定の仕方にかかわらず,資格要件を欠く取締役で決議をしたことになりますので,決議に瑕疵がないとはいえないのではないでしょうか。確かに,意思決定の場面で社外取締役が果たすべき役割は限られており,社外取締役がいないことは,瑕疵の程度としては小さいのかもしれませんので,決議の結果におよそ影響を与えることはないと言い切れるのであれば,社外取締役を欠いても決議は有効だと考える余地は十分にあるのだと思います。しかし,今回の設置義務付けに当たりまして,監査役会設置会社の社外取締役に期待される機能としては,やはり代表取締役らから独立した立場からの議決権行使を通じた監視機能も含まれているはずであって,社外取締役がいないことが決議の結果におよそ定型的に影響を与えることがないとまでは言い切れないように思います。   これまでも,例えば,指名委員会等設置会社で社外取締役を欠いて指名委員会の決議がされたときの決議の効力ですとか,あるいは監査役会設置会社で社外監査役を欠いたままされた監査の効力などで同様の問題が存在しておりました。異論はあるのかもしれませんけれども,私は,資格のない者がした決議とか監査は,原則,無効だと考えておりました。ですので,今回,立法で決議の効力に影響はないという手当てをすることは考えられると思うのですけれども,解釈だけでこの補足説明の結論を導くのは,無理があるのではないかというように思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事 社外取締役を置くことの義務付けについては,何回か御意見申し上げたように,私自身は,当然行うべき実態調査を抜きに,このように義務付けをするということについては,消極的にならざるを得ないということで,その考え方は今も変わっておりません。   ただ,その点は措くとして,仮に義務付けをする方向で議論を進めるとした場合,欠員が生じたときの決議の効力の問題について,なかなか難しい問題があるかと思います。前田委員がお話しになったように,この補足説明に書かれているような,取締役会の決議に瑕疵そのものがないというような見解が果たして受け入れられるかどうかは,難しい面があるのではないかという気がしております。決議には瑕疵があるが,瑕疵は決議の効力に影響を及ぼさないという形で,決議が有効と認められるというのは,判例法理に照らしてあり得るかと思いますが,これが,例えば,欠員が生じてから会社が欠員を補充するまでの間に重要な決議事項が生じて,やむを得ず欠員のまま決議したという場合は,恐らく判例もその決議の結果に影響を及ぼさないという解釈を採る余地はあろうかと思いますが,この判例法理を利用して,何年も社外取締役を置かない状態が継続するというようなことになった場合は,やはり法の趣旨からしても,取締役会の決議の効力に全く影響を与えないと言えるかは,少し疑問があるかと思います。   その上で,これが現実的な代替案になるかどうかは分かりませんけれども,一つ,仮に社外取締役の義務付けをするとすれば,こうしたらいいのではないかという案をお話ししますと,上場会社等が,取締役が取締役選任議案を提出するときは,その議案に1人,社外取締役候補者を置かなければならないと,これだけを義務付けるというものです。株主は,社外取締役は要らないとか,あるいは,社外取締役は一般には要ると思うけれども,この社外取締役候補者は社外取締役にふさわしくないと考えるのであれば,反対することは自由であるべきで,その結果,社外取締役を選任する株主総会決議が成立しなかったからといって,会社が制裁を科されるのはおかしいのではないかと思っております。このような形で義務付けをする場合には,結果的に社外取締役の選任決議が否決されたとか,あるいは任期中に社外取締役の欠員が生じたというような場合は,法令の違反にはならないということです。議案を上程するときだけ掛かる義務という考え方です。   私は,最初に断ったように,元々義務付け消極論なので,本当はこういうのも入れなくてもいいと思っているのですが,もし入れるとすれば,こういう案が考えられるのではないかということで御意見を申し上げました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   柳澤委員,どうぞ。 ○柳澤委員 発言の機会を頂きまして,ありがとうございます。第2の社外取締役の活用等につきまして,補足的にはなりますが,2の社外取締役を置くことの義務付けに関してコメントさせていただければと思います。   日本投資顧問業協会として,社外取締役の選任義務付けに対して賛成する趣旨を表明しておりますが,ここまでの意見の取りまとめに際しては,こうした機関投資家の見解に関しても御考慮を頂いたものと理解しております。今回の要綱案では,社外取締役に欠員が生じた場合の考え方について一定の整理がなされ,これまでの両論併記の状況から,仮案ながらも,社外取締役の選任を義務付ける方向で一本化されるに至っており,国内資本市場に対する信頼性の維持,向上につながる提案として,高く評価されるべきと考えております。改めてではありますが,コーポレート・ガバナンスの実効性向上に資する最低限の品質保証的な要件として社外取締役の選任が義務付けられることは,今回の改正を通して発信されるメッセージの中でも,機関投資家としては特に重要なものと受け止めておりますので,要綱案への賛意と併せてその意義を強調しておきたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。2の社外取締役を置くことの義務付けの論点につきまして,質問をさせてください。今回のような義務付けの規定が仮に置かれた場合に,社外取締役が欠けたときは,役員の補欠の選任の対象になるものと理解しておりますけれども,第346条第1項の権利義務役員の規定,第2項の一時取締役の選任の対象になるかどうかについて,どのようにお考えでしょうか,お願いいたします。 ○神田部会長 ありがとうございます。 ○竹林幹事 こちらにつきましては,いずれも対象になると考えております。 ○神田部会長 よろしいでしょうか。 ○沖委員 はい。 ○神田部会長 それでは,中東幹事,どうぞ。 ○中東幹事 ありがとうございます。義務付けに違反した場合の効力について,意見を述べさせていただきたいと思います。前田委員がおっしゃったように,解釈論で対応するということになると,補足説明が与える影響は大きいと考えております。ただ,この解釈論が難しいかというと,私自身はそうは思っておりません。つまり,瑕疵があっても有効になる場合がある,原則は無効だけれども,有効になる場合があると考えております。確かに前田委員がおっしゃったように,補足説明の理由付けについては,賛成することができません。つまり,書き方によって有効か無効かの結論が変わるものではないことについて,前田委員がおっしゃったとおりであると思いますし,指名委員会等設置会社にしても,一定の機関設計を選べば,社外取締役を入れなさいという,ある種の義務付けになっているわけですから,ここを整理し直すのは問題であると考えます。翻って,監査役会設置委員会であればこういう解釈ができるという話になると,では,指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社についてはこういった解釈ができなくなる,つまり,少しでも瑕疵があれば効力に影響するという反対解釈に至りやすくなることもあり得るかと思いまして,この理由付けは良くないと思います。   ただ,瑕疵があるかどうかについては,やはりこれは会社のベストエフォート・ベースの問題であると思っています。会社としては一生懸命やったけれども,やはり瑕疵が生じてしまっていたのであれば,これを理由に無効とするわけにはいかないと,田中幹事もおっしゃったような判例の延長線で考えていくことになろうかと思います。その点で,従来からも,監査役会設置会社であっても,監査役会に社外監査役が実はいなかったという場合について,これは判例が蓄積されているところ,実際問題としてもあったわけで,裁判所がしっかり対応してきています。また,先ほど来,出ていますように,欠員が生じたという場合については,一生懸命,欠員補充に努めてもらうということに尽きるのかなと思います。   あるいは,今まで余り言われていませんが,後から実はこの人は社外性を満たしていなかったことが分かるという場合,あるいは後から社外性を失う事情が生じていたという場合も,これまでもないわけではなかったはずでして,この辺りを含めて同僚の松中学准教授と共著論文を公表させていただいております。例えば,実務では社外取締役候補者に,あなたはこういうところは大丈夫ですねという確認書を出してもらう場合があると承知していますが,候補者自身は社外に該当していると判断していたものの,実はそれが違っていた,あるいは後になって知らないうちに変更が生じたという場合も全然ないわけではないと思いますが,こういう場合には会社として十分注意したかということに尽きると思います。   また,先ほどの田中幹事のお話を聞いていて思ったのですが,社外取締役の要件を満たす候補者の選任を附議した,だけれども株主総会が否決してしまった,こういう場合には社外取締役がいなくなってしまいます。こういった場合に,会社の責任であるから以後の取締役会の決議は全て無効だという話にはならないと思います。こういったことをいろいろ考えますと,いろいろな状況が実はあり得て,実際に無効になるかどうかについては,会社が努力を尽くしたのだろうかが問われるべきだと思っています。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   三瓶委員,どうぞ。 ○三瓶委員 ありがとうございます。この2の社外取締役を置くことの義務付けの件ですが,私は,この補足説明の後半部分の,社外取締役を欠いている場合であっても直ちに有効に取締役会の決議をすることができないこととなるものではないとする整理に賛同します。このことは,機関投資家の多くが社外取締役の再任議案について,その賛否判断の根拠として出席率基準というのを設けています。こういった考え方と基本的に整合すると思うからです。今,何人かの委員の方もおっしゃいましたけれども,この方は適任ではないと思ったときに反対票を入れるということがあります。その結果,欠員ができるかもしれません。ただ,それによって,その間,取締役会の決議が無効になるということを期待しているわけではなくて,可及的速やかに,どのぐらいの期間が妥当か分かりませんが,別途,社外取締役を選んでいただくということを期待しているわけです。そういう意味で,一時的に社外取締役を欠いているということで取締役会の決議ができないというのは期待していないし,現実的ではないと理解しています。そういう意味では,機関投資家としては,非現実的な又は硬直的な対応でがんじがらめになるということを期待しているのではなくて,ある程度,先ほど権利義務取締役の話も出ましたけれども,そういったこともあり,一時的な何かの対応策というものを変な副作用ではない形で取り入れていただいて,本来期待するような社外取締役の機能を発揮していただくということを目指しているので,その辺をうまく考えていただけたらと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   青委員,どうぞ。 ○青委員 私も2の社外取締役を置くことの義務付けについて,今回,ブラケットは付いてございますけれども,基本的に社外取締役の設置について義務付ける方向で御提案いただくことについて賛成でございまして,是非この方向で進めていただければと存じます。理由はこれまで申し上げてきたとおりでございますので,本日は省略をさせていただきます。   それで,先ほどから議論になっております社外取締役に欠員が生じた場合の効果ですけれども,どのような理論構成をするのかというところはございますけれども,少なくとも方向感としては,欠員が生じた場合に取締役会が成立しないという形になってしまいますと,なかなか実態として,補欠を含めてかもしれませんけれども,2名選出せざるを得ないという形になってしまって,今回の改正のねらいは,少なくとも1名の社外取締役が入ることで,取締役会の決議が対外的に開かれた形で適切になることを期待するということでございますので,その範囲内で十分であると考えますので,過度な対応が必要にならないような形で取りまとめできれば,一番理想的ではないかと考える次第でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   尾崎委員,どうぞ。 ○尾崎委員 社外取締役を置くことの義務付けに関して,先ほどから話題として出ておりますけれども,1名だけを選んでいた場合に欠員が生じてしまった場合については,本来の姿は補欠を選んでおけばいいということだと思います。補欠制度というのは正にそういうための制度だと理解します。社外監査役制度を設けたときもそういう話だったかと私は記憶しているのですが,ただ,今回の提案については,先ほど古本委員がおっしゃったように2名選んでおかないといけないという趣旨と,実務の方にメッセージとして受け止められているようです。しかし,提案は2名を選べではなくて,飽くまでも最低1人置きなさいということが今回の提案内容ですから,1人だけ置いていたというケースについて,その方が欠けてしまった場合どうするかという問いに対しては,本来的対応ならば,私は補欠を選んでおいて対応しておくべきだと思うのですが,それは結果としては2名を選ぶということに確かになります。しかし,1名は飽くまでも補欠です。それ以外にも,「一時その職務を行うべき者」を選んでもらうという対応も有り得ます。そうはいっても,やはり社外の人は急にはなかなか選べない危険性はあるのだろうと思います。それこそ適任者がいない,それを探してくることはなかなか難しいと。そこで,先ほど中東先生がおっしゃったように,ベストエフォートだという感じがするわけです。ある意味でこういう事態は例外的事象であって,こんな状況が長期に続くということは,立法のメッセージとして社外取締役を置かなければならないということを義務付けるならば,おかしな事態なわけで,飽くまでも臨時,例外的事象であるとして扱えばよいと思います。   こういう例外的事象の場合にどういうふうに対応するのかでありますが,法形式的に見ると,提案どおりの立法が実現すれば,やはりこれは違法状態です。しかし,その場合に,取締役会決議をしなければいけない場合もあるでしょうから,何らかの対応をしなければいけない。繰り返しになりますが,法的対応としては一時その職務を行うべき者を選んでもらうしか本当はないのだろうとは思うのですけれども,それすらできないときに,ベストエフォートをしたにもかかわらず社外取締役を選任できなくて決議をしてしまった場合,それを無効とするというのは余りにも硬直的な処理であるという感じがするわけで,やはり違法状態なのだけれども,何とか有効として解釈をする必要がある。従来の解釈論の中でもあり得たことだろうと私も思っておりますので,それでいいのではないかと思っております。ですから,余りこれが長期に続くというのはよくないと,田中先生がおっしゃった,そのとおりだと私も思っておりまして,飽くまでも例外的,一時的な状況であると。繰り返しになりますが,本来ならば補欠を選んでおくのが筋だろうと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかに,いかがでしょうか。   齊藤幹事,どうぞ。 ○齊藤幹事 ありがとうございます。新しい条文の立て付けの解釈への意義につきましては,既に議論が尽くされていると存じますが,私も,文言が決定的にならないという点については賛成でございます。このような解釈の可能性を示された事務局の御配慮も理解できるのですが,業務執行権限のない取締役の職務というのは,取締役会への出席,審議を通じて取締役の職務の執行を監督するということですので,御提案の書かれ方をしていたとしても,社外取締役の存在が前提となっている取締役会において,社外取締役が不在であるということが,その取締役会の構成の瑕疵にならないと言い切ることは難しいように思われます。ただ,これまでの議論でも明らかになってきましたように,社外取締役に期待されている職責というのは,その任期を通じて業務執行全体をモニターすることであって,特定の決議の是非を判断することに尽きないのでありまして,遅滞なく補充してモニター機能を回復するということができれば,全体として見て,瑕疵がないということは言えるのではないかと。ですので,そのように遅滞なく補充がなかった場合に,効力を否定するなり,過料を科すというような制裁を科していくような法の運用を促すような解釈論を提唱していくべきであろうと思います。   取締役会決議の効力のように,適法,違法が二分される法律の解釈はグレーの領域への対応が難しいところでございまして,また,現在の判例法理は,決議の瑕疵の重大さではなく,決議への影響というところに焦点を当てた表現になっておりますため,今述べたような解釈にうまく当てはまらないところはございますけれども,実際には,具体的な事案において,裁判所は上手に当てはめをして,結論をよいところに落としているようにも思えますので,そのような裁判所の解釈に期待をしたいと思っております。   一点質問があるのですが,社外取締役を義務付ける場合には,対象会社については登記事項にするということが過料のエンフォースメントを実効的にするためには有効であると思うのですけれども,登記事項になるということでよろしいでしょうか。 ○竹林幹事 現在のところは登記事項にすることまでは念頭に置いておりません。 ○神田部会長 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。   それでは,本来ですと休憩を取るべき時間かもしれないのですが,あと「第3部 その他」ということなので,このまま続けさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。   それでは,「第3部 その他」,ページ数は16ページから最後までということになるのですけれども,どの点につきましても御質問,御意見をお出しいただければと存じます。どなたからでも,いかがでしょうか。   それでは,小林委員,どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。「第3 その他」の中で,「4 会社の登記に関する見直し」のところで,「(2) 株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書」というところでございます。日本商工会議所といたしましては,会社代表者のプライバシー,安全性は尊重されるべきですが,円滑な経済取引を阻害しないように配慮していただきたいと,従前より申し上げておりました。今回,インターネットでは閲覧できないが,法務局では取得できるという方向性を補足説明で御説明いただきました。この程度であれば,やむを得ないかと考えておりますので,この方向で検討していただければと考えています。 ○神田部会長 ありがとうございました。   ほかに,いかがでしょうか。   沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。2点あります。最初は,「第3 その他」,4の「(2) 株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書」ですが,今回の補足説明で書かれました御提案ですけれども,株式会社の代表者のプライバシーの保護と登記事項証明書を公開する必要性との関係という難しい問題につきまして,これまでの部会の審議を踏まえておまとめいただいた内容と考えておりますので,日本弁護士連合会としましても,この内容の御提案に賛成いたします。   その上で,でありますけれども,今回の改正とは切り離しての話なのですが,登記情報提供サービスにおきまして,代表者の住所を一律に公開しないようにするという点でありますが,この前もこの部会で御説明しましたように,弁護士の証拠収集手段としましては,このサービスは非常に重要で,かつ,必要なものだと考えておりますので,今回の改正とは全く切り離してでありますけれども,今後も弁護士につきましては,この情報を提供していただくような措置,システム上の手当ても含めまして,継続的に将来の課題として御検討いただければと思います。これはお願いであります。   もう1点は,社債の論点なのですけれども,「2 社債権者集会」,「(1) 元利金の減免」の論点についてであります。今回の改正は,第706条第1項第1号に当該社債の全部についてする債務の免除を追加するということで,和解として可能という解釈がありましたが,法的安定性の観点から明文規定を設けるということですので,賛成であります。改正法の施行後は裁判所が決議の認可に当たりまして,決議の合理性の確保のために適切な後見的役割を発揮していただくということが期待されると思います。   ただ,ここで当該社債の全部についてする債務の免除というところで,その債務の全部と一部の免除が考えられると思うのですけれども,この全部の免除ということにつきましては,少なくとも理論的には全く互譲がなく,また,全社債権者の利益があるかないかを問わず全部を免除してしまうということを多数決原理で認めるということですので,社債権者集会の権限としては,これを認めることは強大な権限でありまして,ある意味で非常に画期的な改正ということになるのではないかと思います。   この論点につきまして,部会の審議の中で,社債の募集条項にこういったことが可能であるという定めがある場合だけ適用してはどうかという御提案もあったようですが,これは法制上の理由から採用されていないということだと理解しております。その上で,99.9%の免除でも100%の免除でも数量的にはほとんど差がありませんので,別に全部を対象に加えることに反対するわけではありませんが,少なくとも理屈から言いますと,かなりこれは画期的な権限ですので,今回の改正を施行するに当たっての経過措置,その中で,やはりなぜ社債権者集会の多数決で社債の全部の免除ができるかというと,そういった法律が施行されていて,そのことを前提に社債の募集がされて割当てがされているということは大きいと思いますので,例えば経過措置の中で遡及適用しないということも一応,考えられるのではないかと思います。これは飽くまで意見として聞いていただければいいのですけれども,そういった辺りも含めて慎重に御検討いただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。小林委員と沖委員からお話のありました,会社の登記事項証明書における代表取締役の住所の記載につきまして,一言だけ申し上げたいと思います。いろいろな意見のある中でこういう形で整理いただきまして,どうもありがとうございました。インターネットでは一律に提供しないという一方で,登記所に行くと,非常にごく例外的な場合を除くと閲覧できるということで,経団連といたしましては,これで十分だということでは必ずしもないわけですけれども,インターネットで誰でも見られるような状態ではなくなるということは大きな前進だと思っております。この形で進めていただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,今日お伺いしたい点は大体これで終わりなのですが,全体について言い残したこと,あるいは追加でお気付きになった点等はございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。   それでは,この要綱案の取りまとめも最終段階をこれから迎えていきますので,今日御指摘いただいた点を踏まえて更に先に進めますけれども,お気付きになった点がありましたら,どうか別途,事務当局の方までメール,電話,その他の方法で,是非お知らせいただきたく存じます。よろしくお願い申し上げます。   それでは,本日は予定の時間よりは早いのですけれども,一通り御審議いただき,御意見等を頂きましたので,この辺りとさせていただきます。   次回の日程等について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 次回でございますけれども,11月14日水曜日午後1時30分から午後5時30分まで,当省20階第1会議室で予定をさせていただいておりますけれども,本日頂いた御意見を踏まえて,次回を開催させていただくかどうかというのも含めて検討させていただきまして,別途,御連絡をさせていただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   本日も大変熱心な御審議を頂き,ありがとうございました。   以上で散会いたします。ありがとうございました。 ―了―