法制審議会信託法部会 第53回会議 議事録 第1 日 時  平成30年10月16日(火)   自 午後1時30分                          至 午後2時49分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  信託法の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○中田部会長 予定した時刻がまいりましたので,法制審議会信託法部会の第53回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   本日は,小幡委員,平川委員,衣斐幹事,渕幹事が御欠席です。   まず,本日の会議資料の確認を事務当局からお願いします。 ○大野幹事 お手元の資料について確認いただければと存じます。   本日は,前回お配りいたしました部会資料の49を使用いたします。部会資料49につきましては,前回お配りしたものをお使いいただくということですので,特に席上には配布しておりませんが,余部を準備しておりますので,お忘れの方がいらっしゃいましたらお申し付けいただければと思います。   また,事前に前回の部会でお配りいたしました部会資料49の「第17 公益信託の精算」についての新たな提案をしております部会資料49の2「公益信託法の見直しに関する要綱案のたたき台(1)」を送付しております。   このほか,当日の席上配布資料として,本日御欠席の平川委員から,「『公益信託法の見直しに関する要綱案のたたき台(1)』への意見」と題する意見書を頂いております。意見書の中では,第15の1,第17の3,第18の2,第19について,平川委員の御意見が述べられておりますので,適宜御参照いただければと存じます。   また,吉谷委員御提供の「信託主要法令資料」平成30年9月版を頂いておりますので,こちらも本日席上にお配りしております。   以上の資料につきまして,お手元にない方がいらっしゃいましたらお申し付けいただければと思いますが,いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。 ○中田部会長 前回から要綱案のたたき台の検討というステージに入っています。今回は,前回の続きとしまして,部会資料49の「第15 公益信託の変更,併合及び分割」から御審議を頂きたいと思います。   まず,部会資料49のうち,第15,第16,第18,第19について御審議いただきまして,その後,部会資料49の2の第17について御審議いただければと存じます。   途中,午後3時半頃,きりのよいところで休憩を挟むことを予定しています。   委員,幹事の皆様には,引き続き取りまとめに向けて御協力のほどよろしくお願いいたします。   それでは,本日の審議に入ります。   まず,部会資料49の残りの部分である第15,第16,第18,第19について御審議いただきます。事務当局から説明してもらいます。 ○舘野関係官 では,御説明いたします。   まず,「第15 公益信託の変更,併合及び分割」について御説明いたします。   第15の「1 公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更」,及び第15の「3 公益信託の併合・分割」につきましては,従前の部会資料において,委託者,受託者及び信託管理人の合意等としていた箇所につきまして,それぞれ(注)として全体を明示しております。   また,委託者の意思を尊重する観点から,それぞれ委託者が現に存しない場合には,合意による信託の変更,併合,分割の規律は適用しないものとする旨の提案を加えております。   また,第15の「2 公益信託の目的の変更」につきましては,従前の部会における御意見等を踏まえまして,寄附者の期待を害するような目的の変更を許容することは想定でないと考えられることから,(1)及び(2)の提案につきまして,目的の変更可能な範囲を類似の公益目的としております。   また,(2)では,目的の達成又は不達成により公益信託が終了した場合に,公益信託の目的を類似の公益目的に変更して公益信託を継続するためには,目的の達成又は不達成の日から3か月以内に行政庁に対して変更の認可の申請をすることを要する旨の提案をしております。   部会資料49の2の第17の2(1)では,公益信託の清算に関して,信託の終了の日から3か月以内に残余財産の引渡しの見込みを行政庁に届け出なければならないものとすることとしていることから,目的の達成又は不達成により公益信託が終了した場合には,3か月以内に清算の目処をつけて,そのまま終了するのか,類似の目的を有する他の公益信託として継続するのかを判断することとなります。   また,目的の変更の場面においても,委託者の意思を尊重するため,(4)として委託者が現に存しない場合には,合意による目的の変更を可能とする旨の規律は適用しない旨の記述を設けることを提案しております。   また,目的の達成又は不達成により公益信託が終了した場合には,委託者の通常の意思としては,元の目的に少しでも近い類似の公益目的に信託財産が用いられることを望むものと考えられるため,(4)においては,目的の達成又は不達成により公益信託が終了した場合には,受託者及び信託管理人の合意によって,公益信託の目的を類似の公益目的に変更することができる旨の提案をしております。   なお,第15の1(1)イ及び(3)イ,第15の2(3),第15の3(2)において,それぞれ許容される信託行為の別段の定めとしては,委託者を合意の当事者としない旨,第三者を変更の合意の当事者とする旨,変更を可能とする場合を限定する旨,委託者の同意を要しない旨などの信託行為の定めが考えられ,また,信託管理人を合意の当事者としない旨や行政庁による変更の認可や行政庁への届出を要しない旨などの信託行為の定めを設けることはできないものと考えられます。   次に,「第16 公益信託の終了」について御説明いたします。   まず,第16の「1 公益信託の終了事由」につきましては,従前の部会における御意見等を踏まえまして,(2)及び(3)におきまして,受託者が欠けた場合であって,新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき,又は,信託管理人が欠けた場合であって,新信託管理人が就任しない状態が1年間継続したときについて,それぞれ新受託者又は新信託管理人の選任の認可の申請がされている場合には,その申請に対する処分がされるまでの間は,公益信託は終了しない旨を提案しております。   また,第16の「3 合意による終了」につきましては,これも,従前の部会における御意見等を踏まえまして,原則合意による公益信託の終了はできないものの,信託行為に別段の定めを設けることによって,合意による終了が可能となる旨の提案をしております。   また,第16の「5 公益信託の終了の届出」につきましては,公益法人認定法第26条第1項の規定を参考として,公益信託が終了した場合には,遅滞なくその旨を行政庁に届け出なければならないものとする旨の提案を加えております。   次に,「第18 公益信託と受益者の定めのある信託の相互の変更」について御説明いたします。   この中で,第18の「2 受益者の定めのある信託から公益信託への変更」につきましては,これを許容する場合に,最も大きな問題となると考えられるのが,従前の部会でも御意見がございました信託法第258条第2項及び第3項の趣旨との整合性です。同条第2項及び第3項では,受益者の定めのない信託において,受益者の定めを設けたり,受益者の定めのある信託において,受益者の定めを廃止したりすることはできないものとされておりますが,これは,受益者の定めのある信託と受益者の定めのない信託とでは基本的な点が大きく異なっているため,これらの信託の変更を認めることは相当でないとの理由によるものとされています。そのため,受益者の定めのある信託と公益信託との相互の変更を許容するものとした場合には,同条第2項及び第3項とどのように整合するのかという法制面からの説明が必要となりますが,これを説明することは困難であると考えられます。   また,これまでの部会の調査,審議の経過を踏まえますと,受益者の定めのある信託から公益信託への変更を許容するとの前提の下においては,当該信託行為に公益信託として不認可処分を受けた場合には,受益者の定めのない信託として有効に成立するという旨の定めが設けられていた場合,結果的に受益者の定めのある信託を受益者の定めのない信託へと変更することが可能となってしまいます。そして,このような事態を防止するためには,受益者の定めのある信託から公益信託へ変更する場合には,公益信託として不認可処分を受けた場合には,受益者の定めのない信託として有効に成立する旨の信託行為の定めは無効とするなどの新たな特則を設けることなどを検討する必要があるものと考えられますが,行政庁が公益信託へと変更される前の受益者の定めのある信託について監督する義務はないことなどからすれば,実行的なエンフォースの仕組みを構築することは困難であると考えられます。   受益者の定めのある信託から公益信託への相互の変更を許容することで,利用者の選択肢は増加するものの,ただいま御説明いたしましたとおり,そのメリットを超える大きな課題があるものと考えられる上,従前の部会の御意見でもございましたが,当事者の実務的な負荷も軽減されないとしますと,このような仕組みを構築するにふさわしい意義があるとまでは言い難いものと考えられます。そこで,本部会資料第18の2では,受益者の定めのある信託と公益信託との相互の変更を許容しない旨の提案をしております。   次に「第19 その他」の中で,第19の「1 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託の取扱い」についてですが,こちらは,記載を簡略化はしておりますが,部会資料47の第19の2で提案しておりました,その提案の趣旨を変更するものではなく,同部会資料において提案していた簡易な移行手続等の採用の要否も含めまして,所要の措置を講ずるものとすることを提案しております。   以上でございます。 ○中田部会長 ただいま説明していただきました部分について,第15及び第16と第18及び第19の二つに分けて御審議いただこうと思います。   まず,第15及び第16ですが,第15については,2の「公益信託の目的の変更」のところで,目的の変更の可能な範囲が「類似の公益目的」とされています。また,第15の2の(2)において,いわゆるシプレを発動させる場合には,信託の目的を達成した日又は達成することができなくなった日から3か月以内に行政庁に対して変更の認可を申請するとの提案がされています。これらの点を中心に御意見を頂ければと存じます。   次に,第16につきましては,1の「公益信託の終了事由」について,従前の部会で出されました御意見を反映し,受託者又は信託管理人の不存在が1年を経過しても,新受託者又は新信託管理人の選任の認可の申請が行われている場合には,公益信託は終了しないという提案が加わっています。また,3の「合意による終了」では,これも当部会での御意見を踏まえまして,原則として合意による終了はできないものとするけれども,信託行為に別段の定めがあれば,合意による終了を可能とするという提案がされています。これらの点を中心に御意見を頂けますと,有り難く存じます。   もちろん,ほかの点につきましても,御意見があればお出しくださいますようお願いいたします。   それでは,第15と第16のどこからでも結構ですので,御自由に御発言をお願いいたします。 ○深山委員 第15について,基本的に提案されているものについて異存はなく,賛成したいと思うのですが,確認的に少しお尋ねしたいのは,この場面だけに限らないのかもしれないですけれども,信託行為の定めに別段の定めがあるときはそれによるとか,この限りでない,こういう記述がほかでもありますし,この15のところにも出てまいります。そして,15の2の(3)については,補足説明で具体的にどういう場合なのかというようなことを説明していただいております。   この説明自体には,内容的に異存ないのですけれども,こういう定めは許容されるけれども,こういう定めは許容できないということが,どう担保されるのかがよく分かりません。これは条文の作り方の問題に帰着してしまうのかもしれないのですが,抽象的な条文だけで,あとは解釈ですというのは,少し不親切というか乱暴な気がしています。要綱だからこういう表現をしているのであって,どの部分についての定めが許されるのかとか許されないのかということが,もう少し具体的に示されるのであれば,それでいいのかなとは思うのですが,この提案だけを見ると,単純にできると書いていながらできないこともあるというのが,やや分かりにくいのではないかなという印象を持ちましたので,質問方々発言させていただきました。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに関連する御意見,御質問ございますでしょうか,第15についてですけれども。 ○小野委員 すみません,解釈論かもしれませんし,細かい点なのです。   委託者が現に存しない場合というのが何度か出てきますけれども,これは,委託者の地位を譲渡している場合は,委託者たる地位が存すると理解してよろしいのでしょうか,それとも,属人的な意味合いで使われているのでしょうか。 ○中田部会長 今の御質問は,委託者の地位の譲渡があったときには,委託者が存在するといえるのかということでしょうか。 ○小野委員 現に存する状況として,これまで合意によって地位の譲渡可能と議論してきますけれども,この規律が適用になるという意味なのか,それとも,存するというのを生きているという意味を捉えるかということなのですけれども。 ○中田部会長 分かりました,ありがとうございます。   ほかに,第15につきまして,関連する御意見,御質問ございましたらお願いします。 ○吉谷委員 私も,15の提案には賛成でありますけれども,深山委員がおっしゃったように,ちょっと解釈としてやはりよく分からない部分が残るなとは思っています。   それで,具体的なところでお話ししますと,余り,元々本日の大きな論点ではないと思うのですけれども,説明の30ページのところで,2で第15の1の(3)のイについて,信託管理人の同意を要しない旨の定めを設けることはできないとなっているのですが,元々受託者が変更して通知をすればいいという形になっていると思いますので,これは,同意を要するとは元々はなっていないのです。例えば,信託管理人への事前同意は不要で,事後通知は必要だということを定めるのは構わないと思いますので,ちょっと若干解釈の問題なのかなとは思いますが,そこら辺は少し気になったという程度です。 ○中田部会長 ありがとうございます。   ほかにございますでしょうか。 ○林幹事 基本的には,私も15の1,2については概ね賛成なのですが,細かい点ですが,15の1の(3)のアです。28ページの4行目ですが,「遅滞なく,委託者又は信託管理人に対し」となっているのですが,これ,従前は,ここは委託者及び信託管理人に対しだったと理解しているので,ここをあえて又に変えられたのが,何か理由があるのかというのをお伺いしたかったことが1点です。   それから,その3について,「信託行為に別段の定めがあるときは」について,信託管理人の同意しない定めは許されないということで,そこの説明に書いてあるのですけれども,弁護士会の議論の中で出てきた疑問としては,軽微な場合ですよね。これは,実は,(1)の注のイで,目的達成が必要であることが明らかというので,こういう場合にもはまり得るので,同意がなくてもできる場合があるのではないのかという指摘もありました。もちろん(1)と(3)で違うとかもしれないのですが,そうした疑問はあり得るなと思いまいした。   ですから,先ほども出ました,別段の定めがあるときはできるというところがあるのですけれども,できるものとできないものがあるとすれば,その辺りを明確に条文上したほうがいいのではないかというところではあります。 ○中田部会長 ほかにございますでしょうか。 ○道垣内委員 大変細かいことで恐縮なのですが,信託目的を達成したとき又は達成ができなくなったときの扱いとして,第15の2の(2)においては,それでも3か月以内の申請で目的を変更させることができるとされています。そして,そのような変更が行われますと,それは信託が存続するという方向に多分なるのだと理解しています。そして,それは,現時点で議論すべき範囲に入っておりませんが,第17の2に規定されているところ,すなわち,3か月を経過したときにはどういう見込みなのかということを届け出なければならないというところと平仄が合わせられていて,3か月以内に目的を変更して相続させるか,完全に清算に移るのかということを判断せよという仕組みで合っているように思えます。そのような理解を前提とするときに,私が気になるのは,この3か月の間は,受託者はどのような権限を有するのだろうか,義務を負うのだろうかということなのです。   つまり,目的の達成又は達成不能になったということになりますと,16の1の(1)によりますと,信託は終了しているということになって,清算段階になりそうです。そして,そうなりますと,信託法の175条以下でしょうか,清算受託者は,いろいろなことをしなければいけない義務を負います。   その中には,例えば,条件付き債権についても,期限を到来させて弁済するということなどあるわけですが,2年後に払えばよい債務を現時点で支払うというのは,ひょっとしたら不当に信託財産に損害を及ぼす行為なのかもしれないのです。しかし,清算時には認められる。しかるに,その支払の後,目的が変更されて信託が存続するということになったら,それはどういう行為だったとなるのだろうかというのがよくわからないのです。一見,3か月という期間で平仄が合っており,スムーズに解決できているように見えて,実は何かよく分からないのではないかなというのが,読んだとき思った感想なのですが,いかがお考えでしょうか。 ○中田部会長 ありがとうございます。   余り御質問が続くと答えるほうも大変かもしれませんので,ちょっとここで一旦区切らせていただきます。   まず,15の1について幾つかの御質問がありました。さらに,今,道垣内委員から,15の2について御意見,御質問があったわけですが,15の2については,更にほかの委員,幹事の御意見も承ろうと思いますので,差し当たって15の1について,深山委員,小野委員,吉谷委員,林幹事から頂戴しました御質問についてお答えいただこうと思います。   大きく分けますと,信託行為の別段の定めの具体化について条文レベルで何らかの担保がされるのだろうかといったこと,それから,解釈論に当たるかもしれないけれどもということでございましたけれども,委託者が現に存しないというのは,地位を譲渡したときにどうなるのかということ,あるいは,信託管理人の同意不要が駄目だというような説明もあるけれども,それは,ほかのところと整合性がとれているだろうということ,ほかにもございましたけれども,このような御質問があったかと存じます。   この,まず第15の1についての御質問について,お願いできますでしょうか。 ○大野幹事 まず,信託行為の別段の定めの関係でございます。信託行為の別段の定めについては,網羅的に全てのパターンを書き切ることは難しいというところは御理解を頂きたく存じます。その上で,具体的な法律の表現振りについてが,他の条文の平仄,特にこの場合には信託法との平仄いうことかと思いますけれども,信託法など他の法制上の表現との平仄も含めまして,様々な検討が必要だろうと思っております。事務当局といたしましては,条文化に当たっては,適切な表現となるように努めてまいりたいと考えております。   また,小野委員から御指摘を頂いております,委託者の地位の譲渡があった場合に委託者が現に存するかどうかという点については,事務当局の現在の理解としては,現に存すると考えているというところでございます。   また,林幹事から御指摘がありました,公益信託の信託行為の定めの軽微な変更をするときの通知の相手方が「委託者及び信託管理人」から「委託者又は信託管理人」となっている点について申し上げます。軽微な変更をするに当たり,委託者と信託管理人がその事実を知らなければ通知をする必要があるものの,あらかじめ委託者と信託管理人のどちらかの同意を得ている場合もあるだろうと考えられます。この場合に,同意を得ている方には,わざわざ改めて通知をする必要はないだろうと考えられることから,ここは「又は」に変えたというものでございます。 ○中田部会長 この件に関しまして,御意見,御質問いただいた皆様から,更にございますでしょうか。 ○深山委員 特段の定めについて,今の説明自体は納得をいたしました。   ここの説明もそうですけれども,自由に定められないものとして,信託管理人に与えられている権限を奪うことはできませんということと,行政庁の認可を要するとされているところを要しないとするのは駄目ですということは,あちこち出てくるのだろうと思います。それらの点は,この新しい公益信託全体を通じた基本的なポリシーとして,その二つのチェック機能を重視していることの表れだと思いますので,そのことは,個別に条文に書くのか,通則的に規定を置くのか,何か明文で定めておいていただくといいのかなという印象を持ちました。 ○中田部会長 ほかに関連する御意見ございますでしょうか。 ○林幹事 先ほどの「及び」か「又は」かの点ですが,今の御趣旨であっても,この軽微の変更について,委託者と信託管理人と両方が軽微な変更がなされたことについて認識に至るべきだという前提でお話しされていたように思うのです。そうであれば,やはり「及び」の方が適切ではないかなと思いました。   弁護士会で議論をしていたときも,この点は,委託者と信託管理人の両方が知るに至るべきだから,素朴に「及び」だろうと思っていたのです。確かに事実上どちらかが先に知っていたということはあり得るかもしれないのですけれども,一応要件として委託者と信託管理人の両方が知るに至るべきと理解して書くとすれば,「及び」の方がいいと思いました。あるいは,委託者と信託管理人の両方が知るに至るべきということが条文上明確になるように規定すべきと思いました。 ○中田部会長 いただきました御意見は,条文のレベルでどのように書くのかという問題が一つございます。もう一つ,この部会における審議の内容,あるいは部会資料というのも,将来こういう経過で条文ができているのだということを理解する上での資料になるのではないかと思いますので,最終的にどうなるのかは,法制的な観点からの検討も必要かと思いますけれども,ここでお出しいただいた意見,資料というのは意味を持つのではないかと思っております。   林幹事のおっしゃった点につきましても,これは法制的な面もございますでしょうから,御指摘を踏まえて検討していただこうと思います。   ほかに,第15の1についてございますでしょうか。 ○吉谷委員 今の御説明を聞いて,ちょっとよく分からなくなったのですけれども,この15の1の(3)のアというのは,遅滞なく通知をして,反対されたら変更はできないという意味ですか,それとも,受託者が変更できるという意味なのでしょうか。 ○大野幹事 御指摘の点については,事前に同意をしている人がいれば,その人は,変更の事実を了知しているため,通知をすることは要しないとしているだけであって,事後的に反対されたら変更することができないとするものではありません。 ○中田部会長 この15の1につきましては,先ほど御紹介いただきました平川委員からの御意見の中でも,幾つかのコメントないし御質問がございます。これらにつきましても,事務当局の方で更に検討していただこうと思いますけれども,もし今の段階で,何かお答えいただける部分があるのでしたらば,お願いしたいと思いますがいかがでしょうか。 ○大野幹事 平川委員の御意見の中では,例えば,意見書の2ページの「C」という項目で信託管理人の合意を前提とすべきといった御意見を頂いているところでございます。ここは,元々信託法第149条合わせているところでございまして,事務当局としては,この点について,公益信託の場合であっても,特に信託法第149条と異なるものとすべき事情はないだろうと考えて,このようにしております。 ○中田部会長 それでは,その他の件も含めて更に検討していただいて,次の資料にその結果が反映されるようにしていただければと存じます。   ほかに15の1についてございませんようでしたら,先ほど道垣内委員から御指摘を頂きました15の2に進みたいと思います。   15の2の(2)で,目的を達成した日,あるいは達成不能となった日から3か月以内にとあるけれども,その間の法律関係は,取り分け受託者の権限,義務についてどうなるのかということについての御質問でした。   ここでは,17の2と平仄を合わせているのではないかという御指摘がありまして,17の2自体は,次の部会資料49の2の中でまた出てくるわけですが,その内容は,49における17の2と同じですので,ここで併せて御議論いただいて大丈夫だと思います。   この15の2について,ほかに御意見,御質問がございますでしょうか。 ○林幹事 2の(2)のただし書きの3か月の部分についてですが,3か月の期間について,3か月でいいという意見もあれば,短いという意見もあったのですが,それ両論あったということを申し上げます。それから,これについても,別段の定めがかかるように読めるのですが,弁護士会の議論では,仮に3か月としたとき,3か月より長くするような別段の定めは,必ずしも許容すべきではないのではないのかという意見もありましたので,申し上げます。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに,15の2についてございますでしょうか。   それでは,今の道垣内委員と林幹事からの御意見について,お答えいただけますでしょうか。 ○舘野関係官 まず,道垣内委員から御指摘の点は,おっしゃるように,終了をしている場面ですので,立場的には清算受託者になってしまっていると思われますので,それを踏まえて整理させていただければと思います。   あと,林幹事からありました,3か月のところに別の定めがかかっているように見えるというのは,確かに不明確な点があるとは思います。3か月はもちろん縮めることはできないですし,この別段の定めは許容されないと思いますので,書き方含めて検討したいと思います。 ○中田部会長 よろしいでしょうか。 ○深山委員 今の道垣内先生の御指摘の点は,理屈の問題として,その目的の達成若しくは不達成が,それ自体が終了事由とされて,観念的にはそうなった瞬間に終了していると一方では言いながら,3か月以内に人選があると,言わば終了しなかったものとして,復活を認めるというところに本質的な問題があるのだろうと思います。規律としては,その3か月以内にシプレの申請があって終了しないことになったときに,その間になされた行為の効力が遡及的に覆るのか,その間になされたことはその効力を否定されないと整理するのか,どちらかなのだろうと思います。   そこは,理屈の上ではどちらもあるのかもしれないのですけれども,どちらも,実務的な不都合が生ずるような気がします。この3か月間というのは,ペンディングの状態というような位置付けにしておくべきであり,さっさと清算業務に入ってしまうのが,そもそもいいのかなという疑問を感じた次第です。一定期間については,それを3か月にするかどうかも含めて検討が必要なのでしょうけれども,復活の機会を検討する期間を設けて,その間は,緊急のものはともかくとして,そうでなければ,あんまり法律関係が進まないようにしておくという何か工夫ができたら良いということを,全くの思い付きですけれども,申し上げたいと思いました。 ○中田部会長 ほかに関連する御意見ございますでしょうか。 ○吉谷委員 恐らく,実務的な観点からは,終了して残余財産があったら,今までも寄附をして終わりというのが一般的でしたので,基本はそれでよかろうと思っているのですけれども,ただ,特に何か金額が大きいとか,あるいは今後は財産がいろいろな種類ができてきますので,何か継続したほうがいいなというような,考慮するような事情があるのであれば,そういうことを考慮しても,考慮することによって清算が3か月間は停滞しても,それは,受託者としては義務違反にはならないというような形で考えていただけるのがいいのではないかなと思いました。 ○中田部会長 ほかにございますか。   実務的な点も含めて,問題点の所在というのが,道垣内委員の御発言をきっかけに明らかになってきたと思います。それを,条文あるいは要綱案という形でどこまで書くのか,解釈に委ねるべきところがあるのかということも含めて,検討していただこうと思います。 ○道垣内委員 私が質問したきっかけというか,根本にあるのは,信託法180条の条件付き債権,存続期間が不確定な債権,その他その額が不確定な債権に係る債務について,裁判所に対し,鑑定人の選任を申し立てて,その鑑定の評価額で弁済できるというのは,清算という特殊な場面だから,やっと正当化されることだと思うのですね。債権者にとってもたまった話ではないですよ。   そうすると,こんなドラスティックな債権者の権利を害するような行為をしておいて,それから,いや,続くことになりましたとか言われたら,債権者は立つ瀬がないような気がしますので,ちょっとその辺りも御検討の上,お考えいただければと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに関連する御意見等ございますでしょうか。   15には,あと「3 公益信託の併合・分割」もございますけれども,よろしいでしょうか。またあれば,お出しいただければと思います。   さらに,「第16 公益信託の終了」についてはいかがでしょうか。   先ほど申しましたが,16の1の終了事由の(2),(3)にただし書きが付いておりまして,新受託者又は新信託管理人の選任の認可の申請が行われている場合には終了しないという提案が入っております。また,3の合意による終了についても,信託行為の別段の定めという折衷的な解決を御提案いただいています。いずれも,この部会での御意見を踏まえたものだと理解しておりますけれども,これを含めて,ほかに御意見いただければと思いますが。   よろしいでしょうか。 ○林幹事 先ほどの16の1の(2)と(3)のただし書きについてですが,個人的には補足説明の欄に書かれたようなことでいいかと思います。   要するに,1年間の間に新受託者は選任されないといけない。ただし,認可をもらうのは1年経過してもいいよと,こういう御趣旨かと思いまして,それはそのとおりだと思っています。前回申し上げたときも,基本的にはそういうつもりの理解ではおります。要するに,信託法第163条では,1年以内に裁判所によっても選任されないといけないという理解すべきであり,その点は変わらないという前提で,ただし,認可まで1年以内に得なければならないとすると,若干それは厳しいであろうと思います。 ○中田部会長 ほかにはいかがでしょうか。   ほかに,15,16を通じて御意見がございましたら。 ○神田委員 すみません,何か間が抜けた確認的な質問になるのですけれども,16の3に関連して,これ一般論なので,ここだけではないのですけれども,こういう信託行為の別段の定めというのは,事後的に削除したり設けたりすることは,別の規定を使ってやれるものなのでしょうか。   形式的に決めてしまえば分かりやすいのですけれども,駄目とか,中身を言い出すと,例えば,この例で言うとですけれども,別段の定めがないときに,事後的に別の規定を使って別段の定めを設けていいのだろうかという気はする反面,別段の定めがあるときに,例えば,委託者が死亡したり,替わっていくことを見越して,それを削除しようという気になったときは認めてもいいような気もしてくるのですね。ですから,そういうちょっと実質的なことを言い出すと切りがなくなるように思えるので,整理していただければという意味で御質問させていただきます。 ○中田部会長 ありがとうございました。   今の御意見の中にも既に含まれていたかと思いますけれども,個別的に検討するという問題でもありますが,もし通則的にと申しますか,別段の定めの事後的な変更について,神田委員の方からもし御意見ございましたら,御示唆いただければと思いますけれども。   特に,問題の提起ということで。 ○神田委員 はい,それにとどめさせておきます。 ○中田部会長 分かりました。   それでは,御検討いただくということでよろしいでしょうか。   ほかに,第15,16を通じてございますでしょうか。   それでは,続きまして,第18及び第19の論点について,御意見を頂きたく存じます。   このうちの,第18の「2 受益者の定めのある信託から公益信託への変更」のところですけれども,ここでは,この変更をできないものとするとの提案がされております。この点を中心に御意見を頂けますと有り難く存じます。   また,その他の点につきましても,御意見などございましたらお願いします。第18と第19のどこからでも結構ですので,御自由に御発言をお願いします。 ○小野委員 解釈論ですし,恐らく答えはできるという答えだと思うのですけれども,昨今といいますか,これからも遺言代用信託が非常に有用性が高いと思うのですけれども,遺言代用信託として1本の信託契約の中で,受益者連続型の信託を設定し,かつ,自分が死んだときに備えて公益信託の設定を合意する,それは,変更ではないから当然できるという,質問をする必要もないかもしれませんけれども,将来,うがった見方かもしれませんけれども,これを禁止した以上は,そういうこともよろしくないみたいな議論が出てくるといけないので,そういうような柔軟性は確保されており,飽くまでこれは,信託契約の変更によることであるという点,確認をさせていただければと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   関連する御意見,御質問ございますでしょうか。 ○新井委員 第18の提案については,私は賛成いたします。   理由は三つあります。   まず第1に,受益者の定めのない信託,つまり目的信託と公益信託というのは,受益者がいないという点のみの一致はありますけれども,法的な構造自体が大きく異なっていると思います。したがって,その両者が行ったり来たりするということは認めるべきではない,法構造上認めるべきではないと考えます。   第2に,やはり信託法258条の2項,3項によって,法技術的に,まず相互に移行させるということは無理だと思います。258条の2項,3項を今変える必然性は全くないと思います。ですから,2番目の理由としては,法技術的な理由で不可能だと考えます。   そして,第3に,御存知のように,目的信託というのは,まだ一件の設定もないわけです。目的信託の利用促進をどうするかというのは,別の場で議論すべきであって,もっと促進すべきだという立場もあるかもしれませんけれども,今ここでの立法事実としては,やはり第18の2のような規定を設ける必然性はないと思います。   したがって,第18の提案に賛成します。 ○中田部会長 ありがとうございました。   この点につきましては,新井委員あるいは他の委員,幹事でこの提案に賛成であるという方もいらっしゃいますし,やはり納得はできないのだけれども,今回のこの補足説明などを読んでみて,致し方ないかという委員,幹事もいらっしゃるかもしれません。平川委員の御意見の中でも,消極的な御意見を出していただいておりますが,大勢としましては,望ましいことかもしれないけれども,今回はやむを得ないかということで,事務当局の御提案を受け入れていただいているのではないかと拝察しております。   ただ,その中で,具体的な解釈論かもしれないけれどもということで,小野委員から受益者連続型といいますか,遺言代用信託の場合にどうなるのかというような御指摘,御質問がございました。これについて,もしお答えいただけるのでしたらお願いします。 ○舘野関係官 小野委員から御質問の点は,解釈といいますか,信託契約,遺言信託の仕組み方にもよるのかもしれないですけれども,少なくとも受益者の定めのある信託から公益信託に同一性を持って継続していくということはできないという提案になっておりますが,遺言信託ですとか停止条件つきの信託契約ですとか,その仕組み方次第では,そういったものは実現できる余地はあるのかなとは思っております。 ○中田部会長 小野委員,よろしいでしょうか。 ○小野委員 はい。 ○中田部会長 ほかに,第18,第19についてございますでしょうか。 ○林幹事 繰り返しですが,先ほど中田座長の方でおっしゃられたような理解であるのですが,特に2については,従前,私益信託,公益信託の変更というのが何とかできないかと思って考えていましたし,こちらでもそれなりに議論されたところと思うのですが,いろいろ問題があって,例えば,大阪弁護士会の意見は引き続き認めるべきだったのですが,先ほど言われたようなことで,悩ましいながらというか,そういう状況は,私としては一応は理解をしているつもりです。   小野委員のおっしゃられたこともつながるのですが,この二つの類型について,これまでの本法制審の補足説明の中でも,こういう制度は作らないけれども,現行法の下なりで,それに実質的に同じようなことできるはずだという説明は度々されてきたところです。この両方の類型においてもです。その点は,一問一答など何かの場合にはきちんとご説明いただきたいと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○山田委員 第19が今,入っていますか。 ○中田部会長 はい。 ○山田委員 その3の「その他所要の規定を整備するものとする」のところについての項中で,149条というのが適用されないものとするに入っていないということに関わる質問をさせてください。   149条とは何かというと,信託の変更は関係当事者の合意によってできるという規定です。これは,適用されないものにはしない,適用されるとすると,第15のところに話が戻ってしまうのですが,第15のところは,1で公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更が挙げられていて,2で公益信託の目的の変更が挙げられています。3は併合・分割ですからちょっと触れないとして,そうしますと,信託の変更には,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更と,それから信託の目的の変更はくくり出して,特則がここに定められることになるけれども,それ以外の公益信託の変更は,149条でいくということになるのでしょうか。質問をさせてください。   そうすると,細かな規定は置かなくてもいいのかもしれませんが,認可をどうするのかとか,ちょっとそういうところが落ちているようにも思いますし,公益信託の変更を全てこの第15の1と2だけで抱えるというのは,ちょっとこれまでの議論をよく覚えていないのですけれども,無理があるかもしれないなと思いましたので,本来は第15のところで発言すべきだったかもしれませんが,第19の3,その他のところで発言をさせていただきました。 ○中田部会長 ありがとうございます。   15の1,15の2の規律と信託法149条の関係について,もしございましたらいただきたいと思いますし,よろしいですか。 ○舘野関係官 149条が外れているのは,法制的な理由によるものです。現時点ではそれ以上でもそれ以下でもないということでございますので,第15の1に書いてある方法によって信託の変更はできると,今はそのように考えております。 ○中田部会長 そうすると,149条の適用がある場合もあるのですか。149条は適用はないという御質問ですよね。 ○山田委員 そうです。第15の1は,149条の適用があっても,それに対する特則として位置付ければ,問題は解決するだろうなと,私流の解釈で,それがいいかどうか分かりませんが,と思っています。目的についても,それでいけるだろうと。   しかし,それ以外の信託の変更というのがあると考えているのか,ないと考えているのかということに関わります。 ○中田部会長 ということですので,この149条と,それから部会資料の15との関係について,少し整理して御検討いただきたいと思います。御指摘ありがとうございました。   ほかに,第18,第19を通じて,ございますでしょうか。   それでは,続きまして,部会資料49の2の第17について御審議いただきたいと思います。   事務当局から,この第17について説明をお願いします。 ○舘野関係官 では,部会資料49の2にいきまして,「第17 公益信託の清算」について御説明いたします。   第17の1及び2は,従前の部会資料と同一の提案でございますので,今回新たに提案をしております第17の「3 公益信託の清算のための新受託者の選任」につきまして,御説明いたします。   信託法第173条第1項は,裁判所は,同法第166条第1項の規定により信託の終了を命じた場合には,法務大臣若しくは委託者,受益者,信託債権者,その他の利害関係人の申立てにより,又は職権で当該信託の清算のために新受託者を選任しなければならない旨を定めております。これは,公益確保のための信託終了命令がされた場合において,その清算を公的機関の関与の下で適正に行い,ひいては不法な信託の活用を抑止するためとされています。   本部会資料第17の3では,公益信託認可を取り消される場合を想定しておりますので,信託法第173条が想定する場面とは異なるものの,部会資料49の第12の「4 公益信託認可の取消し」の提案を踏まえますと,公益信託認可を取り消される場合は,当該公益信託の受託者が行政庁による勧告や命令に従う意思がないものと考えられ,内部ガバナンスに相当な問題があるものと考えられますし,受託者としての能力が欠如しているおそれもあります。そのような公益信託の受託者に清算を任せることは相当でないと考えられることから,本部会資料第17の3では,信託法第173条の規定を参考として,公益信託認可の取消しにより公益信託が終了した場合には,行政庁又は委託者,信託管理人,信託債権者,その他の利害関係人の申立てにより,当該公益信託の清算のために新受託者を選任しなければならないものとすることで,清算の適正性を担保することを意図しております。これにより,残余財産が公益の領域から出ることのないようにすることが担保されるものとも考えられます。   なお,部会資料49の第17の4では,公益信託の残余財産が公益以外の領域に出ることがないことを確実にした上で,速やかに清算をする必要が高いものとして,公益信託認可を取り消される場合とともに,合意により公益信託が終了する場合を挙げておりましたが,第52回会議では,合意により公益信託が終了する場合について,合意による終了は正当な行為であり,これが悪質な目的に使われる場合には,受託者の善管注意義務違反が問われるべきであることから,公益信託認可の取消しと合意による公益信託の終了を同視する考え方について反対するとの意見がございました。   確かに合意による終了の場面では,受託者及び信託管理人は,公益信託が終了することについての合理的な判断をした上で終了に合意をしているものと考えられることから,本部会資料第17の3では,新受託者を選任しなければならない場合として,公益信託認可を取り消される場合のみを挙げ,公益信託が合意により終了する場合は対象としないこととしております。   また,公益信託認可の取消しによる終了の場面においても,当該公益信託認可の取消しによる終了の日から3か月をめどに,残余財産の引渡しの見込みについて行政庁に届出を行わなければならないことからすれば,速やかに新受託者を選任し,清算手続を進める必要がございます。また,公益信託認可の取消しを実際に行った行政庁が,その公益信託認可が取り消された事情について,最もよく事情を承知しているものと考えられることから,第17の3では,委託者,信託管理人,信託債権者等の利害関係人とともに,行政庁に新受託者選任の申立権を付与することとしております。   なお,ここで選任される受託者は,適正に清算をするために選任される者であり,信託法第177条の清算受託者として同条に規定する職務を行うことが予定されております。そのため,その選任について,行政庁の認可を受ける必要はないものとの整理をしております。   以上でございます。 ○中田部会長 それでは,部会資料49の2の第17について,御審議を頂きます。   前回の部会では,部会資料49の第17の4の提案がありまして,それについて両論ございましたのですけれども,今回その審議状況を踏まえて,新たに第17の「3 公益信託の清算のための新受託者の選任」という新しい提案がされています。   この点につきましては,取り分け皆様から御意見を頂きますと有り難く存じます。   ほかの点も含めまして,どこからでも結構でございますので,御自由に御発言をお願いいたします。 ○小野委員 また確認,解釈論的な質問になってしまうのですけれども,認可取消しの状況ですと,恐らくこの公益信託はかなりいろいろ問題を抱えている状況ということを前提としますと,新受託者が,清算受託者ですけれども,厳格責任といいますか無限責任を負うという状況はちょっと気の毒ですし,それでは成り手もいないのかなと思うこともあって,これは通常の私益信託の場合も同様なのですけれども,この途中から限定責任信託にするということも,信託法上は禁止されてはいないかと思うのですけれども,すみません,解釈論的な質問で申し訳ないのですが,そういう理解でよろしいかどうかということと,立法する場合には,その辺も踏まえていろいろと立法的な手当てをいたただきたいという点が,まず第1点。   もう1点はちょっと違う点なのですが,行政庁も選任の申立人になったということで,これは非常に重要なことだと思いますけれども,その方が,かつて議論したことですが,受託者の解任とか信託管理人の解任のようなケースで,特に委託者がいなくて,利害関係者が受託者又は信託管理人どちらかになってしまう状況において,両者が,認可取消しまで至らなくても,大分混沌としたり,逆に両者がつるんでいるかもしれません。そういうときに備えて,別に義務ではないので,そういう場合にも行政庁が申立人として,利害関係者として加わるということは,公益信託という観点からして望ましい姿だと思いますし,事務負担とか行政庁として負担が増えるわけではなくて,単に申立権を持つというだけですから,それほど差し支えないのではないのかなと思うのですけれども,この2点について,ちょっと御検討いただければと思います。 ○中田部会長 関連する御意見,御質問ございますでしょうか。 ○林幹事 17の新たな3については,前回の議論を踏まえたものとして,非常に前向きに賛成はしたいと思います。ただし,新たな3では,まず,行政庁ほかの申立てによりとなっているのですけれども,取り消されたんだけれども,あえて新たな清算受託者が必要ないと判断したときは申立てしなくていいという余地もあった上でのこういう表現なのかと理解したのですがそれでよろしいでしょうか。ほとんどの事案では新たな清算受託者選任されるべきなんだろうと思いましたけれども,申立てせずに選任されなくてもよい場合も想定しているかが,質問です。   それから,前回,私,保全処分のことも申し上げたのですけれども,この補足説明の中には保全処分に関する部分がなくて,できれば保全処分も使えるようにした方がいいと思います。こういう事案なので,申立てしたら,ほぼほぼすぐに新受託者選任されるべきだという気はするのですが,何らかタイムラグはあり得るかもしれませんし,一応制度としてはあったほうがよいと思います。ここにあえて触れられていないのは,当然含まれた趣旨だということで御準備されているのかもしれないのですが,その点,確認させてください。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに関連する御意見等ございますでしょうか。   今,17の3についてお二人から意見を頂戴しましたが,これについては,平川委員の意見書の中にも御提案があります。こういったことを,また事務当局の方で検討していただきたいと思いますが,ただいまの御意見,御質問等について,コメントございましたらお願いします。 ○大野幹事 第17の3で,申立てがない場合はどうなるのかということですけれども,行政庁や利害関係人が何も申立てをしないというのは,申立てをする必要がない事案なのだろうと考えられます。そこで,先ほどの林幹事の御質問に対したお答えということになりますと,そういう事案なので,行政庁や利害関係人が選任の申立ての必要がないと判断するのであれば,それはそれでよいということになります。   また,保全処分については,過去の部会でも御意見が出まして,事務当局としても検討してみたのですけれども,選任の申立てがあれば,それはすぐに新たな清算受託者が選任されるべき場面であろうと考えられます。そのため,申立てから選任までの隙間を埋めるために保全処分を設けるまでの必要はなかろうと考えられました。そこで,特にここでは御提案しなかったというものでございます。 ○舘野関係官 小野委員から御質問いただきました限定責任信託が途中からできるのかという点ですが,おっしゃるように解釈の問題もあるのかもしれないですけれども,信託法上の規律を見る限りでは,後からでもできるのだろうということは思ってはおります。 ○中田部会長 あと,小野委員からいただきました第2点ですが,これはよろしい,今のお答えの中で含まれているということでしょうか。 ○小野委員 いや。行政庁に申立権をほかの場合でも与えたほうが望ましい状況があり得るのではないかということで,特に解任の場合で,利害関係者が1人になってしまったときで,例えばその人が怠慢なときということで。 ○中田部会長 大変失礼しました。   この点については,それぞれのところで今までも若干議論があったかと思いますけれども,最後,また全体を通じて見直す際に,今の御指摘を踏まえて,もう一度検討していただければと思います。   それでよろしいでしょうか。 ○小野委員 はい。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○山本委員 先ほどの林幹事とのやり取りの関係で確認なのですけれども,ほとんどの,あるいは1人を除く全ての利害関係人は,あえて申立てをするまでもないだろうと思っていたところ,1人の利害関係人が清算のための新受託者の選任の申立てをしたときに,「選任しなければならないものとする」としますと,必ず選任しないといけないという趣旨だと理解すればよろしいのでしょうか。   それで本当によいのかといことが少し気になるのですけれども,問題はないでしょうか。 ○大野幹事 まず御質問に対するお答えとしては,選任の申立てがあるのであれば,裁判所としては,選任しなければならないということでございます。ただ,これは解釈上の問題なのだろうと思われますが,終了時の受託者と同じ人物を選ぶという余地はないのではないのかなとも考えております。この点については,いかがでしょうか。 ○山本委員 「新受託者」というのは,そのような趣旨と理解すればよろしいのでしょうか。 ○中田部会長 やや解釈論の問題なのですけれども。 ○山本委員 文言としては,「選任することができる」ですと,裁判所が判断して,そのままでもよい場合には選任しなければよいということになるのかもしれないと思うのですが,「選任しなければならない」としますと,今のような解釈論が出てくるのかと思いました。 ○中田部会長 ありがとうございました。   そのできるというのと,しなければならないという言葉の法制的な使い分けの問題と,それから実質的にこのままの提案の形で,不当な結果が出ないだろうかということを含めて,検討していただこうと思います。   ほかに。 ○吉谷委員 17の1の方なのですけれども,ここで,ちょっと前からよく分からないところで,残余財産の帰属すべき者の指定に関する定めを置かなければならないとなっているところなのですが,これが信託法182条1項1号の帰属権利者を定めよという意味なのか,そうすると,信託法183条6項というのがあって,清算期間中には受益者とみなされるわけですので,受益者としての監督権限をこの帰属権利者である国や地方公共団体等が持つということになってしまい,最終計算の承認者にもなるとなってしまうのですが,そこまでを求めているのでしょうか。   議論の中では,贈与というような選択肢を信託行為の中で書くことでも足りるのではないかという御意見が今まであったのですけれども,そこがまだよく分かりませんので,そこについて,どういう意味なのか教えていただけないかと思います。 ○中田部会長 ほかに,この点に関連する御意見等ございますでしょうか。   よろしいでしょうか。 ○舘野関係官 今の御質問に,現時点の整理で回答しますと,まず,第17の1(1)の提案で,公益信託における帰属権利者というのは,その信託法上受益者とみなされている帰属権利者とは異なるものではないかという,従前の部会での御意見等を踏まえて,そういう趣旨で「帰属すべき者」という言葉遣いをしております。やはり公益信託の場合,終了後に突然受益者とみなされる帰属権利者というのが現れるというのはおかしいのではないかという考えです。   そうすると,この部会資料でいう帰属すべき者というのは,本来その信託法上の帰属権利者が受益者とみなされることで有している監督権のようなもの,清算受託者の解任権ですとか信託財産の処理の状況の報告徴求権ですとか,そういったものは持っていないということになるのかなと思います。そうすると,清算の監督が問題になってきますが,公益信託の場合には信託管理人がいますので,帰属権利者の代わりに信託管理人が清算の監督を行うことになるのかなと思っております。   最終計算の承認のところにつきましては,検討が必要かなとは思います。一応,信託法の184条の最終計算の承認を求めている趣旨は,承認を求めることで,清算受託者の清算事務処理について検証を行う機会を確保し,その事務処理の適正な遂行を確保するということでございますので,その意味では,信託管理人の承認は必要なのかなとは思いますけれども,更にこの帰属すべき者についてその承認が必要かどうかというのは,こちらの方で整理させていただければと思います。 ○中田部会長 よろしいでしょうか。 ○吉谷委員 残余財産がきちんと適正に処分されているかということの確認は,信託管理人がやるべきだと思いますし,帰属権利者というのを設けるのであれば,ある意味信託管理人は要らないというような前提にもなってしまいかねないと思いますので,やはり,今ご説明のような形で,帰属権利者ではないような者を設けるというのに賛成という意見でございます。 ○中田部会長 ほかに,これに関連する御意見等ございますでしょうか。 ○山田委員 今の直前の話題についてです。   御説明のあった第17の1の残余財産の帰属すべき者は受益者としないと,信託法上の受益者には位置付けないということについて賛成です。そういう方向で,そして,それが分かるような形で進んでいくといいなと思います。   その上で,詰まらないことなのですが,残余財産の帰属すべき者として,帰属権利者とは区別しましたとおっしゃったのですが,信託法182条は,まず残余財産の帰属すべき者として,それを帰属権利者と定義しているので,ちょっとその使い方は避けたほうがいいのではないかと思います。それが,直前の話題に関することです。   それから,もう一つ,すみません,別の発言をさせていただきます。   第17の1の(2)のところに「公益法人等」ってありまして,何を含めるのかなということがあります。公益法人の定義は,公益法人認定法にはあるのですが,この法律で公益法人認定法の定義をそのまま使えるかどうか分かりませんので,まずは,公益財団法人と公益社団法人が入るだろうと思います。しかし,その上で,いわゆる講学上の公益法人というのでしょうか,公益の性格の強い法人というのが幾つかありますので,それをどこまで入れるかというのは,御検討いただけたらいいなと思います。   私の意見としては,余り広げないほうがいいかなと。公益法人認定法はちょっと広いかもしれないなと思いますが,そこは,いろいろな観点からの検討が必要だろうと思いますので,よろしくお願いいたします。 ○中田部会長 今の点は御検討いただくということでよろしいでしょうか。 ○新井委員 17の3について,細かい文言ではなくて,この規定の一般的な点に関する意見を述べたいのですが,よろしいですか。 ○中田部会長 はい,お願いします。 ○新井委員 前の提案では,公益法人的な構成をして,信託財産をみなし贈与としていたところ,今度それをやめまして,信託的構成にしたということで,規定が非常にすっきりして,信託法らしい規定になったということで,私としては,基本的な在り方については賛成します。 ○中田部会長 ありがとうございました。   先ほど来,吉谷委員,それから山田委員の一つ目の御指摘で,帰属権利者の概念について少し整理したほうがいいのではないかというご意見を頂戴しました。   先ほど山田委員から,別のところで御指摘いただきました,部会資料49の一番最後の後注のところで引用されている条文との関係もございまして,182条ないし184条というのは適用があるかのように書かれていますので,これとの関係も含めて検討していただこうと思います。   ほかに,この第17につきましてございますでしょうか。   そうしますと,本日は幾つか御意見や御指摘を頂戴しましたが,それを含めて,事務当局に検討していただこうと思います。   ほかに,本日の審議対象につきまして,補足的な御意見などございますでしょうか。   当初,途中で休憩を挟むと申し上げたのですけれども,審議を十分にしていただいたことと理解しておりますので,ほかに特にございませんようでしたら,本日はこの程度にしたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。   それでは,最後に,次回の日程等について,事務当局から説明していただきます。 ○大野幹事 次回日程は,平成30年11月20日火曜日午後1時半から午後5時半まででございます。場所は,現時点では未定でございますので,改めて御連絡差し上げます。   次回は,前回と今回の部会で御審議を頂戴いたしました結果を踏まえまして,公益信託法の見直しに関する要綱案のたたき台の(2)を提示させていただきたいと考えております。   その中では,検討が必要な残りの論点について明示いたしまして,引き続き皆様に御審議いただくことを予定しております。   引き続き,どうぞよろしくお願いいたします。 ○中田部会長 それでは,本日の審議はこれで終了といたします。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。 -了-