法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第12回会議 議事録 第1 日 時  平成30年11月28日(水)   自 午後1時30分                          至 午後3時51分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすること及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方について         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の第12回会議を開催いたします。 ○井上部会長 本日は御多用中のところお集まりいただきまして,ありがとうございます。   本日は小木曽委員,武委員,戸苅幹事におかれましては,所用のため欠席されておられます。   まず初めに,事務当局から,本日の審議で用いる資料につきまして説明をお願いします。 ○羽柴幹事 本日,配布資料として,配布資料21「検討のための素案」を配布しております。また,参考資料として「犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備-検討のための素案-」と題するA3の資料をお配りしています。   これら資料の内容につきましては後ほど説明いたします。   なお,前回会議で参考資料として配布しました「部会第8回会議から第10回会議までの意見要旨」を参考のため机上に置いています。   また,本日の意見交換の中で,事務当局から事案について御説明する際に,第2分科会第10回会議で配布された配布資料26を用いる予定ですので,この資料も机上に置いています。 ○井上部会長 それでは,審議に入ります。   前回の会議におきましては,少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることについて意見交換を行いました。本日は,前回申し上げたとおり,非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備に関する制度・施策について,引き続き議論を行うこととさせていただきます。   そして,これもまた前回御了承いただいたとおり,それらの制度・施策について更に詰めた議論を行うために,分科会の検討結果として示されたもののうち,どのような組合せが適当か,また,どの制度等を選択して更に議論を深めていくべきかといった検討に資するため,事務当局に素案を作成してもらいました。   そこで,まず,事務当局から,その素案について説明をお願いしたいと思います。 ○羽柴幹事 「検討のための素案」について御説明いたします。   配布資料21「検討のための素案」と,参考資料「犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備-検討のための素案-」を御覧ください。なお,以下の説明では,前者の配布資料を単に「素案」と,後者の参考資料を単に「参考資料」と略して申し上げます。   配布資料21は,分科会の検討結果として示された「考えられる制度・施策の概要案」及びこれまでの部会における御議論を踏まえて,今後,諮問事項であります「非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備の在り方」を御検討いただく上での素案として作成したものです。この素案は,前回の部会における部会長の御指示を受けて,個別の制度・施策の組合せに関する検討のための素案について示したもので,部会における御検討の参考とする趣旨で作成したものです。もとより部会の御議論を方向付けるといった趣旨のものではありません。   素案の目次を御覧いただくと,分科会における検討結果を基にして,「1」から「10」までの制度・施策を掲げており,1ページ以降にそれぞれの制度・施策の概要や,分科会で示された検討課題等を記載しています。後ほど御説明するように,分科会の検討結果のうち,この素案に記載していないものを除いては,制度・施策の概要及び検討課題等は,変更を加えずにそのまま記載しています。   また,参考資料は,これらの制度・施策を主として「自由刑」に関係するもの,「執行猶予・罰金」に関係するもの,「起訴猶予」に関係するものに分類して,それぞれに対応する制度・施策を記載したものですので,素案と併せて御覧いただければと思います。   参考資料の「自由刑」の欄の左半分にあるとおり,施設内処遇の対象となる者に関する措置として,「1」から「4」までの制度・施策を掲げています。   「1」の「自由刑の単一化」は,素案の1ページにあるとおり,懲役及び禁錮を単一化して新たな自由刑を創設することを内容とするものです。   「2-1」の「若年受刑者を対象とする処遇内容の充実」は,素案の4ページの上段にあるとおり,刑事施設において,少年院の知見・施設を活用して若年受刑者の特性に応じた処遇の充実を図ること,「2-2」の「若年受刑者に対する処遇調査の充実」は,同じページの下段にあるとおり,刑執行開始時に行う精密な処遇調査の対象者を拡大するなど処遇調査の充実を図るとともに,少年鑑別所の鑑別の対象となる受刑者の年齢の上限を「20歳未満」から引き上げること,「2-3」の「若年受刑者に対する処遇原則の明確化等」は,5ページにあるとおり,若年受刑者に対する処遇原則及び受刑者に対する社会復帰支援について明文規定を設けることを内容とするものです。   「3」の「刑の執行等の初期段階における被害者等心情等伝達制度」は,素案の7ページにあるとおり,刑の執行等の初期段階において,犯罪被害者等から心情等を聴取し,処遇にいかすとともに伝達すべきものについては加害者に伝達する制度を内容とするものです。   「4」の「外部通勤作業及び外出・外泊の活用等」は,素案の9ページにあるとおり,刑事施設内から社会内に向けて円滑な移行を図るための取組を行うことを内容とするものです。   なお,分科会の検討結果に盛り込まれていた社会内処遇に必要な期間の確保のための制度については,部会において,「4」の「外部通勤作業及び外出・外泊の活用等」の施設内処遇と社会内処遇を連携させつつ受刑者の円滑な社会復帰を図るための施策が検討されており,このような施策を優先し,期間中の社会内での適切な受皿の環境整備に向けた取組やその効果を踏まえた上で,別の機会に改めて検討すべきとの御意見があったところ,これに対しての特段の御異論がなかったことから,素案には記載していません。   次に,参考資料の「執行猶予(自由刑)・罰金」の欄にあるとおり,自由刑の執行猶予や罰金刑の対象となる者に関する措置として,「5」から「7」までの制度・施策を掲げています。   「5」の「刑の全部の執行猶予制度の拡充」は,素案の10ページにあるとおり,保護観察付き執行猶予中の再犯について,情状に特に酌量すべきものがあるときは,再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができるものとすること,また,再度の執行猶予を言い渡すことができる刑期の上限を2年に引き上げること,さらに,猶予期間経過後の執行猶予の取消しに関することを内容とするものです。   他方,刑の全部の執行猶予の在り方に関して,分科会の検討結果に盛り込まれていた保護観察の遵守事項違反を理由とする執行猶予の取消要件の緩和については,部会において,まずは実務において,執行猶予が取り消されるべき事案を的確に把握してより積極的に取消請求を行うなど,一層の適切な運用に努めることによって対応し,制度化についてはその推移を見て改めて検討すべきとの御意見があったところ,これに対しての特段の御異論がなかったことから,素案には記載していません。   また,執行猶予を言い渡された者について,原則として一律に資格制限規定の適用をしないものとする制度についても,部会において,それぞれの行政目的や趣旨に照らして資格制限規定の適用を排除することが相当か否かという判断を刑事裁判で行うことは相当ではなく,再犯防止推進計画に基づく各府省における見直しの要否の検討に委ねることが相当であるとの御意見があったところ,これに対しての特段の御異論がなかったことから,素案には記載していません。   「6」の「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」は,素案の14ページにあるとおり,罰金刑が相当である事案で,保護観察付き執行猶予に付することが有用かつ相当であると考えられるものについて,検察官が必要な主張・立証を行うなどして,その活用を図ることや,保護観察所及び少年鑑別所の活用を図ることを内容とするものです。   「7」の「刑の執行猶予中の保護観察の仮解除の活用促進等」は,素案の16ページにあるとおり,保護観察の仮解除の主体を変更することでその活用の促進を図ること,また,刑の執行猶予中の保護観察の解除制度を設けることを内容とするものです。   なお,分科会の検討結果に盛り込まれていた宣告猶予制度については,これまで起訴猶予となっている者を対象とした場合には,検察官において訴追を必要としないと判断されるものであるにも関わらず,専ら処遇を行うために公訴を提起するということになり,そのようなことが適当なのか,また,公訴提起の意義と整合するのか問題があるとの御意見が示され,これまで執行猶予となっている者を対象とした場合には,執行猶予と宣告猶予との使い分けが合理的にできるのかという御意見が示されており,このような御議論の状況を踏まえて,素案には記載していません。   次に,参考資料の「自由刑」及び「執行猶予(自由刑)・罰金」の欄のそれぞれの右半分にあるとおり,自由刑の実刑となった者が仮釈放となった後の保護観察や,自由刑又は罰金の保護観察付き執行猶予となった場合の保護観察について,「8-1」から「8-4」までの制度・施策を掲げています。   「8-1」の「保護観察における新たな処遇手法の開発,特別遵守事項の類型の追加等」は,素案の18ページにあるとおり,保護観察処遇における新たなアセスメントツールや新たな処遇手法を開発・整備すること,また,民間施設が行うプログラムの受講等を特別遵守事項の類型に追加すること,さらに,更生保護施設における宿泊を義務付ける運用を行うことを内容とするものです。   他方,分科会の検討結果に盛り込まれていた施設からの外出禁止を特別遵守事項の類型に追加することについては,部会において,更生保護施設側の体制上の問題等から,運営が困難である以上制度化も難しいとの御意見があったところ,これに対しての特段の御異論がなかったことから,素案には記載していません。   「8-2」の「犯罪被害者等の視点に立った保護観察処遇の充実等」は,素案の19ページにあるとおり,更生保護法の規定に,保護観察等の措置をとるに当たっての考慮要素の一つに,被害者等の状況を追加すること,また,賠償に向けた行動等を生活行動指針に設定し,指導を行うための規律を規則等で設け,当該指導を充実することを内容とするものです。   「8-3」の「保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用」は,素案の20ページにあるとおり,仮釈放者又は保護観察付執行猶予者について,収容を伴う鑑別やこれを伴わない鑑別を求めることができる規定を整備すること,「8-4」の「更生保護事業の体系の見直し」は,素案の22ページにあるとおり,更生保護施設が行う専門的な処遇や通所・訪問による処遇及び更生保護に係る連携の拠点としての役割を更生保護事業として明文化することを内容とするものです。   最後に,参考資料の「起訴猶予」の欄にあるとおり,起訴猶予の対象となる者に対する措置として,「9」及び「10」の制度を掲げています。   「9」の「若年者に対する新たな処分」は,素案の24ページから29ページまでにあるとおり,罪を犯した18歳及び19歳の者であって,訴追を必要としないため公訴を提起しないこととされたものを対象として,家庭裁判所における手続を経て,保護観察所の保護観察等の処分を決定する制度を内容とするものです。   「10」の「起訴猶予となる者等に対する就労支援・生活環境調整の規定等の整備」は,素案の36ページにあるとおり,起訴猶予処分前の者や勾留中の者に対して更生緊急保護を行うことができるよう,その対象範囲を拡大することや,検察官による関係機関に対する協力依頼規定を設けることを内容とするものです。   なお,分科会の検討結果に盛り込まれていた検察官が働き掛けを行う制度については,部会において,検察官ではなく,これまで18歳及び19歳の者に対する知見が十分蓄積されている家庭裁判所において手続を行って,処分を決定する「若年者に対する新たな処分」によることの方が適当であり,今回は制度化を見送ることがよいのではないかとの御意見があったところ,これに対しての特段の御異論がなかったことから,素案には記載していません。   説明は,以上です。 ○井上部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいま事務当局から説明がありました配布資料21及び参考資料「犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備-検討のための素案-」を用いながら意見交換を行いたいと思います。   意見交換の進め方ですが,まず,全体の在り方について御質問・御意見をお伺いした後,これらの資料に沿いまして,「自由刑」に関するもの,「自由刑の執行猶予・罰金」に関するもの,「起訴猶予」に関するものという順序で,それぞれの項目ごとに意見交換を行うこととさせていただきます。   まず,制度・施策の組合せの全体の在り方について意見交換を行いたいと思います。素案の内容や,ただいまの事務当局の説明に対する御質問ということでも結構ですし,御意見でも結構です。もっとも,個別の制度・施策についての各論的な御意見につきましては後ほどお伺いしたいと思いますので,まずは全体についての御意見,御質問があれば,どなたからでも挙手の上,御発言をお願いします。 ○今井委員 総論的な感想ですけれども,今,説明がありました素案と参考資料は,大変役に立つものだと思いました。参考資料を見ますと,「自由刑」の分野,「自由刑の執行猶予・罰金」の分野,「起訴猶予」の分野ごとに,これまで議論してきました考えられる制度・施策の概要が適切に位置付けられておりまして,個人的にも大変理解をしやすくなったと思っております。   組合せの内容を見ますと,各分科会での検討結果も踏まえた部会での議論状況が適切に反映されたものとなっていると思われますし,必要な措置が,それぞれの利点をいかしていく形で,例えば罪を犯した18歳及び19歳の者に対して,どのようなことをすると必要とされている改善更生の機会を与えることが可能となるかという観点から,組合せとして適切なものが記載されているのではないかと思いました。   もちろん,個別の制度の中には,検討課題が残されているのではないかと思われるものもありますけれども,今後,更に具体的な詰めた検討を行う際には,こちらの素案と参考資料を前提に,18歳,19歳の者に対して十分な改善更生の機会を与えるにはどういう組合せがあるかを検討するのが生産的ではないかと思ったところです。特に,制度的課題と青字で書いてあります運用面の課題が明確にされていることが,今後の議論を整理するのに役立つのではないかと思っております。 ○池田幹事 私も全体について意見を申し述べたいと思います。   これまでの部会で示された御意見の中には,18歳及び19歳の者に対する刑事政策的措置として検討されている施策が,必ずしも十分なものではないのではないかという御指摘もあったところです。   しかし,仮にそのような御意見が,少年法が適用される場合と遜色のない処遇が,それらの者に対して漏れなくなされるべきことを前提にしているとすれば,そのような前提には疑問があるものと考えております。   前回の年齢に関する議論の中で,川出委員から,民法上の未成年の子の監護・教育が一義的に親権者に委ねられていることや,それに伴って民法上の親権者には未成年の子の権利・自由に対する制約となる広範な権限が認められているということを踏まえた上で,民法上成年に達した18歳及び19歳の者に少年法の保護原理が適用できるかという問題については,親権に服さないこととされた者に対して,国家が保護原理に基づいて保護処分を行うということは正当化できないことになる,あるいは,法制度全体としての整合性の観点から説明できるかを更に検討する必要があるとの御指摘があったところです。   さらに,橋爪幹事からは,責任主義が,個人を自律的な主体として尊重し,また,国家による不当な介入を回避するという観点から重要な意義を持つものであるということに鑑みて,自律的な主体として尊重される者について責任を超える処分の対象とすることは責任主義の観点からは正当化することが困難であり,そうである以上は,処分は飽くまでも行為責任の範囲を超えることができないとの御指摘もあったところです。   このように,民法の成年年齢が引き下げられた以上,18歳及び19歳の者に対して行為責任を超えた処分をすることは国家による介入の限度を超えており許容され難いと考えるとすると,例えば罰金の事案を例にとりますと,行為責任としては罰金刑が相当であるとされる以上は,罰金の実刑や保護観察付き執行猶予にとどめるべきであって,これを超える制約を伴う処分,例えば少年法の少年院送致のような施設収容処分を行うということには問題があるものと言わざるを得ないように思います。   以上によりますと,当部会において検討すべき18歳及び19歳の者に対する刑事政策的措置は,少年法に基づいて行われる少年に対する保護処分との比較においてではなく,18歳及び19歳の者に対して許容される限度において,効果を上げられる措置はどのようなものかという観点から検討されるべきであるように思います。   先ほど提示していただきました各制度・施策の組合せについても,そのような観点から更に検討を重ねれば,18歳及び19歳の者に対する刑事政策的措置としては十分なものになるものと考えられます。 ○大沢委員 今回のこの素案の中に残らなかったものについて,一言申し上げたいと思います。   受刑者の更生のためには,施設内処遇と社会内処遇の連携を深めて,実社会にソフトランディングさせていくということが大切であると思っていまして,そういう意味では,社会内処遇の期間をしっかり確保するという意義は大きいのだと思います。今回,残念ながらこの項目は検討項目から外れることになりましたけれども,第10回部会で太田委員が指摘されたとおり,この期間が十分確保されていないという現状はやはりあると思いますので,これをいつまでも放置しておいていいものではないと私も思います。特に若年者の場合は,可塑性に富む一方で,周囲の影響を受けやすいという部分もあると思いますので,やはり社会内処遇の期間を十分とって立ち直りを図っていくということは,私は重要なのではないかと思っています。   ですから,まずは社会内での受皿を確保することが先ということになるのかもしれませんけれども,この問題が検討課題であるということは,最終的な取りまとめのところに明記していただきたいと私も希望します。 ○井上部会長 「社会内処遇に必要な期間の確保」という項目を素案に加えるべきだとまで求めないが,今後の検討事項であることを明記すべきだという御趣旨ですね。 ○大沢委員 そうです。 ○青木委員 少年法適用年齢を引き下げないのがよいと思っているということは前回申し上げたとおりですが,少年年齢が仮に引き下げられた場合という前提で意見を申し上げたいと思います。   参考資料の方ですけれども,「若年者に対する新たな処分」が「起訴猶予」の枠の中に入っています。これは起訴猶予に関連するもの,要するに起訴されない者という意味ではここに収まっているのは分かるのですけれども,その隣も含めて,起訴猶予となる者との関係で言いますと,起訴猶予はその段階でもう刑事手続から外されるわけですが,この「若年者に対する新たな処分」というのは,その後更に別途の手続があるわけです。これは18歳,19歳の者に限って,別途の手続に移行するという処分だと思います。   そういう意味で言いますと,この「若年者に対する新たな処分」というのは,この枠の下の方にあるのはそのとおりなのですが,むしろはみ出した形になっていて,しかも「起訴猶予」という3段に分かれているところとの関係で言うと,この上の段の保護観察にも及ぶものですので,この枠とは多分違う枠が設けられるべきものだろうと思います。   そういうことで考えますと,刑事手続に乗った場合の執行猶予になったり罰金になったり,あるいは,特にその執行猶予・罰金の部分ですが,この部分に関して,「若年者に対する新たな処分」と同じように18歳,19歳の者について特別の手続がないということも,この参考資料から分かるわけですね。よいかどうかという問題はおくとしまして,いずれにしても18歳,19歳の者について適切な処遇をするという観点で,起訴猶予の部分についてだけ,そういう特別なものを設けるということでよいのかどうかというのが問題としてあると思います。中身については,それぞれの課題のところで申し上げたいと思います。 ○田鎖幹事 私も参考資料を拝見した上で意見を述べたいと思います。   「自由刑」と「執行猶予(自由刑)・罰金」に共通する内容として,それぞれの段の右半分に,「8-1」から「8-4」までの社会内処遇,保護観察に関する内容が掲載されているわけですけれども,これには,これまでの制度設計の検討でも,仮釈放者と保護観察付執行猶予者とを余り区別せずに議論してきたということもあります。   そもそも更生保護法自体が,1号から4号までの全ての対象者について共通の規定を基本的に置いているということで,こういう整理の仕方になるというのは分かるのですけれども,改めてこうやって整理していただきますと,やはり仮釈放者と執行猶予になる者については,それぞれの法的な地位の違いに応じた対処,考慮というものが必要になるだろうと思われますので,今後の個別の場面での検討に当たっては,そういった独自の法的地位に応じた考慮というものが必要なのではないか,そういう視点を踏まえた議論が必要ではないかと考えます。その上で,そういったことが必要だということであれば,現行法は法的地位に関係なく共通の規定としてあるかもしれないけれども,そこに手を入れることもあり得るという方向での議論が必要ではないかと思います。   その意味では,一番下の段の「起訴猶予」に関連するものとして,「若年者に対する新たな処分」の中でも保護観察が出てくるわけですけれども,では,この保護観察は一体どういう中身になるのかといったことの検討とも関わってくると思われます。 ○山﨑委員 この全体の枠組みと,素案には記載されていない資格制限の排除と宣告猶予に関連して発言をしたいと思います。   私自身も前回申し上げましたように,少年法の適用年齢は引き下げるべきではないと考えておりますけれども,仮に引き下げるとした場合に,青木委員もおっしゃいましたが,起訴されない18歳,19歳の者に対しては「若年者に対する新たな処分」という制度を設けて他の成人とは異なる手当てをするということであれば,起訴をされる18歳,19歳の者についても同様の観点から特別な手当てをする必要があるのではないかと考えております。   これまでの審議で確認されていますように,現行の少年法は対象者の立ち直りと,その結果としての再犯防止という点で有効に機能しており,その中では家庭裁判所調査官による調査及び教育的な働き掛けというものが重要な役割を果たしております。ところが,この素案全体を見た場合には,18歳,19歳の者に対する家庭裁判所調査官による調査及び教育的働き掛けというものは,この図で言いますと左下の起訴猶予となって「若年者に対する新たな処分」の手続の対象となった者にしか実施されていないということになります。起訴された者に対してはこういった手当てはされず,要するに,実際にはより手当てが必要だと考えられる対象者に家庭裁判所調査官による調査が実施されないということになるわけでして,対象者の抱える問題性の把握ですとか,その者の立ち直りに向けた適切な処遇選択が十分になし得ないという問題が残るのではないかと考えます。   これに関連して,資格制限の排除に関しましても,この素案には記載されておりませんけれども,現行では,18歳,19歳の者が起訴されて刑の全部の執行猶予の判決を受けたという場合でも資格制限が排除されるということになっております。これが素案のとおり資格制限を受けるということになりますと,18歳,19歳の者にとっては,定職に就くということが立ち直りと再犯防止には非常に重要であるところ,それを困難にするという問題があるのではないかと思います。   この点,前回の部会で,いわゆる銃刀法ですとか質屋営業法を例に挙げられて反対される意見もありましたけれども,18歳,19歳ということに限って言えば,これらの法律で何らかの不都合が具体的に出るということは考えにくいのではないかと思いました。他方で,実際に子供の立ち直りなどに関わっておられる方のお話を聞きますと,例えば保育士や介護福祉士,調理師などについて,18歳,19歳の者がこれらの職業に就いて立ち直りを図ろうということは少なくなく,こういった資格の制限がないことが若者の立ち直りに非常に有効である,というお話を伺っております。そういった観点からも,資格制限の排除というのは,やはり18歳,19歳に限って言えば検討課題として残すべきではないかと考えます。   この点について,他の成人と異なる扱いをすることが許されるのかというような反対意見もありますけれども,重ねて申し上げるように,起訴猶予の場合に「若年者に対する新たな処分」を設けるという形で異なる扱いを認める以上は,資格制限の排除に関しても同様に考えてよいのではないかと思っております。   以上も踏まえますと,そもそも少年法の適用年齢の引下げには反対でありますけれども,仮に年齢を引き下げる場合については,起訴猶予となる事案での「若年者に対する新たな処分」だけではなく,起訴された事案において,18歳,19歳の者の特性を踏まえた新たな手続及び処遇が必要ではないかと考えます。この点,これまで検討されてきた宣告猶予制度は素案には含まれておりませんけれども,宣告猶予制度そのものではないにせよ,起訴された18歳,19歳の者に関する新たな手続及び処遇ということは,引き続き検討する必要があるのではないかというのが私の意見です。 ○井上部会長 御意見は2点あったと思うのですけれども,まず,最初と最後に触れられた新たな手続については,そういう項目を設けるべきだという御趣旨ですか。 ○山﨑委員 宣告猶予そのものではないにしろ,何らかそういった手続が考えられないかということを今の時点では考えております。 ○井上部会長 もう一つ,資格制限の排除についても,この素案に加えるべきだという御趣旨に聞こえたのですが,そういうことですか。 ○山﨑委員 はい。 ○井上部会長 その2点について,事務当局として何かお考えがあれば,お聞きしたいと思います。 ○羽柴幹事 事務当局としましては,組合せの素案を作成するに当たりまして,ただいまの問題関心から御提示のあったような制度につきましては,いずれの点も,現時点において制度の具体的な内容が明らかでないため,内容及びどこにどのように組み込むかが判然としないことから,素案には盛り込んでいないところです。   現在お示ししている資料に載っているもの以外で,今後の検討のために素案に含めるべきという御意見のある制度がございましたら,制度の概要を具体的に示した形で御提案いただきますと,議論のために非常に有益ではないかと考えます。 ○井上部会長 素案に盛り込まれた他の制度・施策は,まずまず具体的な形で示されていますので,御提案のような制度・施策もアジェンダにのせて検討すべきだという御意見であれば,それについても,同レベルの具体的な案を明確に示していただきたい。そうすれば他と同程度に立ち入った議論ができると思いますので,できれば書面で具体案を示していただければと思います。次回ぐらいまでに事務当局の方に御提出いただければ,素案の各事項に加えて検討できると思いますので,そういうことでよろしいでしょうか。 ○山﨑委員 はい。御提案できるかどうかも含めて検討させていただきます。 ○山下幹事 この参考資料の方の一番下の「起訴猶予」の欄に書いてある「若年者に対する新たな処分」との関係で,先ほど池田幹事が述べられた意見に関して意見を述べます。   先ほど池田幹事からは,この「若年者に対する新たな処分」の関係においては,成人になったことを前提として,行為責任や責任主義という観点から見て許容できるかどうか検討する必要があるという御指摘がございました。基本的には,成人になったということであればそうだと思いますが,一つは,これまでの議論の中でも,再三私も疑問を提起していますけれども,この処分は,刑事処分でも保護処分でもないと言われてきており,「起訴猶予」の欄に書いてありますけれども,検察官による起訴をしないという者につきまして,家庭裁判所でこのような手続を行うということについて,この手続は一体どのような性格なのかということがいまだによく分からないまま議論が進んでいるかと思います。   これまでは家庭裁判所における保護処分の手続は,取り分け家庭裁判所調査官,それから少年鑑別所による調査で,様々な個人的な家庭環境なども含めた,要保護性に関する調査が綿密に行われた上で保護処分がなされてきていて,これは正に,少年で,かつ,健全育成の理念の下で,初めてそれが許容されていたかと思うのですけれども,これが成人になったということになりますと,先ほどの行為責任や責任主義という観点からこのような手続がそもそも許容可能なのか,そして検察官が勾留を経て,捜査を経て起訴しない,公訴を提起しないと判断した者について,この手続によって,更に不利益な処分を科すということがそもそも許されるのかどうか,健全育成の理念が外れることを前提として,再犯防止という観点から許容可能なのかどうかということについて,いまだに十分な議論が尽くされていないと思います。一番下の欄の「起訴猶予」だけが18歳,19歳の者に関わるもので,この上の「自由刑」及び「執行猶予(自由刑)・罰金」の二つは,18歳,19歳の者を含む全ての受刑者又は全ての罪を犯した人に対して適用されるわけですけれども,この一番下の部分だけが突出していて,かつ,これが今回の非常に重要な,一つの大きな目玉として挙げられていますが,いまだにその法的性格が十分詰められていないために,本当にこういうものを許容することは可能なのかどうかということが十分議論されないまま,ここに挙げられていると思いますので,この点について更に議論を深めていただきたいというのが私の御意見でございます。 ○井上部会長 全体についての意見交換は,このぐらいでよろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきます。   配布資料21及び本日配布の参考資料に沿って,順番に御意見をお伺いしていきたいと思います。   最初に,「自由刑」に関係するもろもろの制度・施策が一つのまとまりとして示されておりますので,この点から御意見をお伺いしたいと思います。   そこには個別の制度・施策が列挙されているわけですけれども,その個別の制度・施策それぞれについて御意見を伺う前に,まず,自由刑に関係する制度・施策全体の全般的在り方について御意見があればお伺いしたいと思います。 ○太田委員 自由刑の全般について意見を申し上げたいと思います。   まず18歳,19歳を含む若年者に対して,個々の受刑者の特性に応じて,施設内で柔軟かつ充実した処遇が行われ,社会内処遇にも円滑に移行した上で充実した処遇が行われるようにするためには,この参考資料の「自由刑」の枠内にありますような諸制度,諸施策を導入して,一連の処遇プロセスを全体として充実させ,強化させていくということが必要かつ重要であると考えます。   少し個々のことに入りますけれども,具体的に申し上げますと,自由刑の単一化によって,例えば経験とか学力が不足していて社会生活に支障がある者など教育等を十分行う必要がある若年者に対しては,作業を大幅に減らして改善指導や教科指導を行うなど,個々の受刑者の特性に応じて柔軟な処遇を行うということが可能になるだろうと思いますし,特に若年受刑者につきましては,この若年受刑者に対する処遇原則により,その処遇上,特に留意すべき点というものを明らかにして,その指針となるべき規定を設けるとともに,少年院等の知見とか施設を活用して,若年受刑者の特性に応じた処遇の一層の充実を図ろうとする若年受刑者を対象とする処遇内容の充実や,その前提として,個々の問題性を的確に把握するための若年受刑者に対する処遇調査の充実が図られることによって,きめ細かな処遇が確保されることになろうかと思います。さらに,受刑者に対する社会復帰支援に関する規定が設けられることで,その取組が一層促進され,受刑者の円滑な社会復帰にも資するものと考えます。   また,刑の執行等の初期段階における被害者等心情等伝達制度によって,犯罪被害者等の心情等が受刑者の処遇にいかされることになり,そのような観点からも,受刑者の改善更生のための働き掛けの充実が図られるということになろうかと思います。   加えて,施設内処遇の段階で外部通勤作業及び外出・外泊の活用等を推進するとともに,社会内処遇の段階でも保護観察における新たな処遇手法の開発とか,仮釈放者に対して濃密な社会内処遇を行う必要がある場合には,運用上,更生保護施設への宿泊の義務付けや,個々の特性に応じた処遇が行われるということを始めとして,様々な処遇メニューが実施されることとされており,施設内処遇から社会内処遇への円滑な移行というものが一層促進された上で,社会内においても充実した処遇が実施されるものと考えます。   以上のとおり,実現を図るべき制度・施策のパッケージとして適切なものであると思いますし,仮に少年法の適用年齢が引き下げられた場合には,これまで保護処分の対象であった者への措置としても大きな効果が見込まれるものと考えます。   ただし,18歳,19歳を含む若年者に対する自由刑の執行と処遇のための刑事施設が,果たして従来のような少年刑務所の形でよいかどうかということは,この部会や,それから分科会においても十分に検討されているとは思われません。現在の少年刑務所は,少年受刑者が少ないこともありますけれども,成人との混合収容となっておりますし,しかも,かなり年齢の高い成人も収容されております。加えて,施設の規模が比較的大きく,少年受刑者に対しては特別な少年処遇といったものが行われておりますけれども,一部の少年刑務所を除きますと,刑務作業の比率がかなり高くなっております。   18歳,19歳を含む若年者に対してきめ細かい処遇を行うためには,このような混合収容でよいのかどうか,それから,分離収容を行うとすれば年齢基準をどうするのか,18歳,19歳を含めた若年受刑者は一定数に及ぶと推測されますけれども,どの程度の規模の施設とするのかといったことを検討しておく必要があるように思われます。場合によっては,その方針の中には,若年受刑者に対する処遇原則として取り込んだ方がよいものもあるかもしれません。若年受刑者に対する処遇原則や社会復帰支援の明文規定を設けることは重要ではありますけれども,それを具体的に実現するための刑事施設の方向性といったものも,併せて検討しておく必要があるように思われます。 ○井上部会長 ほかに御意見はございませんか。   特にお申し出がないようですので,個別の項目の検討に移ってよろしいでしょうか。   それでは,まず,自由刑における施設内処遇に相当する「1 自由刑の単一化」,「2-1 若年受刑者を対象とする処遇内容の充実」,「2-2 若年受刑者に対する処遇調査の充実」,「2-3 若年受刑者に対する処遇原則の明確化等」,「3 刑の執行等の初期段階における被害者等心情等伝達制度」,「4 外部通勤作業及び外出・外泊の活用等」について意見交換を行いたいと思います。   これらの制度・施策については,これまでの議論において,例えば「自由刑の在り方」については,刑の内容や規定の在り方等に関する御意見を頂いていますし,「若年受刑者に対する処遇原則」については,このような規定の要否や内容に関する御意見などが示されたところですが,全体として,議論が集約の方向に進みつつあるのではないかと感じております。これまでの意見交換を踏まえて,更に新たな御意見,あるいは,これまでの御意見を敷えんする御意見などがあれば御発言いただきたいと思います。   いずれの点でも結構ですので,御意見がある方はどの点について御発言になるかを明示の上,御発言をお願いします。 ○大沢委員 「2-1」の「若年受刑者を対象とする処遇内容の充実」というところに関してですけれども,仮に,今後少年法の適用年齢が引き下げられた場合に,これまで保護処分を受けていた一定の層が刑事施設に来ることが予想されるだけに,少年院のノウハウや施設を活用して,教育的な要素を導入していくということは意義があることだと思っています。   その場合に重要だと思うのは,今までの刑事施設における処遇の文化のようなもの,あるいは矯正職員の意識のようなもの,そういったものも,やはりこれからは単なる作業ではなくて教育をしていくのだという方向に変えていってもらう,そういう改善更生のためにどのような処遇が必要なのかということの共通認識を持ってもらうということが,私は大事なことなのではないかと思っています。   ですから,そのように持っていっていただくためにも,「2-3」にあるように処遇原則の明文化というような,法律である程度このような趣旨を示していくということも大事なのではないかと思っています。 ○太田委員 「3」の「刑の執行等の初期段階における被害者等心情等伝達制度」についてです。内容は正にこういった方向が望ましいと考えておりますけれども,その項目の「被害者等心情等伝達制度」という名称について,これは別に正式な名称ではありませんけれども,「心情伝達」とまとめてしまいますと,被害者から聴取して,それを受刑者に伝達するということが主目的なような印象を持ってしまいます。この制度の趣旨としては,むしろ,被害者等から心情等を聴取してそれを処遇にいかす,後々の仮釈放の審査であるとか保護観察にもいかす,そして聴取した内容の中で被害者が伝えてほしいというものがあれば,それを受刑者に伝えるということが目的ですので,もし項目としてまとめるときは,名称としては「被害者等聴取制度」などとした方が,より全体の趣旨を的確に捉えているのではないかと思いますので,内容に関わることではございませんけれども,意見を述べさせていただきました。 ○井上部会長 「聴取」と言ってしまうと,また限定されるという御意見があるかもしれませんね。 ○太田委員 聴取をした上で,どうするかですね。 ○井上部会長 更に全体を包括するような良いネーミングのアイデアがあるか,お考えください。 ○田鎖幹事 私は,「4」の「外部通勤作業及び外出・外泊の活用等」で,特に外出・外泊の活用に関して,受皿として更生保護施設の活用をするということについて述べたいと思います。   他の社会内処遇においても言えることですけれども,今回,更生保護施設にかなり期待をするような運用でありますとか,あるいは規定が構想されていると思われます。私も,外出・外泊の受入先に更生保護施設がなり得るということ自体を否定するわけでは全くないのですけれども,ただ,活用ということを考えたときに,更生保護施設の実情というものをやはり考えざるを得ないと思います。大半の施設は収容定員が20名以下の小規模施設でありまして,そういった人たちを限られた数のかなり平均年齢の高い職員の方々で支えておられると承知しております。   現在,再犯防止推進計画との関係で,「これからの更生保護事業に関する有識者検討会」が開催されているようでございますけれども,この中でも,実際,更生保護の現場に携わっている方から,最も平均的な規模の20人定員の施設で100%収容したとしても,基準職員がここ20年間で2人増えたそうですけれども,増員後の職員定員である5名分の給与を十分に支払える委託費は支給されない構造になっていて,また,収容率に応じて支払われる仕組みであるといった委託費の構造の問題はいまだにあると指摘されております。   こういった状況で新たに,仮に受刑者の外出・外泊の受入れが加わるということになりますと,正に更生保護施設の側に更に身を切るような大きな負担を強いることになるのではないかということが懸念されまして,やはり必要な人材を確保する,あるいはそれを可能とするための財政基盤の強化のための抜本的な施策が採られない限り,実際面で,ここで言われているような活用ということが期待できないのではないかと懸念されます。そういったことを考えますと,そもそも法整備を要せずに運用で対応するということでありますと,やはり国が自ら受皿を確保する努力というものも,当然に引き続き今後もなされるべきでありまして,更生保護法第51条第2項第5号の法務大臣が指定する施設としての自立更生促進センターのさらなる拡大,発展といったものについても,併せて粘り強く追求していただきたいと考えます。 ○山下幹事 「2-3」の「若年受刑者に対する処遇原則の明確化等」について意見を述べます。   これまでも意見を述べたことがありますけれども,これは,こういうものを作るなという趣旨ではないのですが,先ほど太田委員から,少年刑務所等の関係で,若年受刑者に対する処遇がどれほど充実することができるのかというような問題提起もあったところであります。これまでの議論でも,現在の少年院において行われている処遇と,少年刑務所において行われている処遇はかなり違うということは明らかになっているところでありますけれども,若年受刑者に対する処遇につきまして,どれほど効果的な,また有効な処遇ができるのかということについては,まだ十分詰めた議論とか提案がされていないように思われます。   そのような中で,処遇原則だけを書けばいいということではないと思いますし,何よりも若年受刑者という若年の年齢を別に定めるわけでもないとされているわけで,この処遇原則を定めれば何か変わるわけではなく,飽くまでそれに対応する具体的な処遇の内容というものが,もう少し具体的,明確に示されなければ,単にこのような処遇原則を書けばいいということにはならないと思いますので,その点がまだまだ十分議論が詰まっていないといますか,取り分け18歳,19歳が起訴されて自由刑を受けるという場合の処遇について,現在の少年院において行われている処遇とどれほど近い処遇が可能なのか,またそれが具体的にどういうものを考えておられるのか,そういう具体的中身がまだまだ詰まっていないのではないかと思います。 ○井上部会長 抽象論にとどまるのではなく,より積極的・建設的に,こういうことが考えられるのではないかということを示していただければ,議論がより活性化すると思いますので,よろしくお願いします。 ○山下幹事 はい。そこはまた検討します。 ○井上部会長 この程度でよろしいですか。   それでは次に,参考資料で言いますと一番上の段の右側,自由刑の実刑となった者が仮釈放になった後の保護観察に関して,「8-1」から「8-4」までですが,これらについて御意見をお伺いしたいと思います。   これらについては,自由刑の執行猶予・罰金に関係するものとしても後ほど意見交換を予定していますので,その際に御意見を頂いても結構です。ここでは自由刑との関係で,特に御意見があれば,この段階でお伺いしたいと思いますが,いかがでしょうか。   この段階ではよろしいですか。   それでは,次に進ませていただいて,参考資料中段の自由刑の執行猶予・罰金に関係するものについて御意見をお伺いしたいと思います。   ここでも先ほどと同様に,個別の制度・施策に関する御意見を伺う前に,まず全体について,御意見があればお伺いをしたいと思います。 ○川出委員 参考資料において自由刑の執行猶予・罰金に関係するものとして分類されているもの全般について,少年法の適用対象年齢が18歳未満に引き下げられた場合の18歳及び19歳を含む若年者に対する処遇の有効性という観点から意見を申し上げたいと思います。   少年法の適用対象年齢が18歳未満に引き下げられた場合,罪を犯した18歳及び19歳の者は,起訴されれば行為責任の範囲内で刑罰を科されることになりますが,そのうち自由刑の実刑にならない者に対しては,自由刑の執行猶予あるいは罰金によって対処がなされることになります。再犯防止という観点から見ますと,執行猶予というのは,再び犯罪を行った場合には,自由刑であれば刑事施設に収容される,罰金であればそれを支払うことになるという心理的な威嚇効果によって対象者の自発的な更生を促し,再犯防止を図るという面と,これを保護観察と結び付けることによって社会内での積極的な処遇を行うという面があります。今回の制度案では,今申し上げたうちの前者についても,「5」の「刑の全部の執行猶予制度の拡充」の最後に挙げられている「猶予期間経過後の執行猶予の取消し」を認めることによって,実効性をより高めようとしていますが,対象者の改善更生を図るという観点からより重要なのは,後者の保護観察付き執行猶予です。これにつきましても,参考資料の「5」にあるように,保護観察付き執行猶予中に再犯があった場合にも再度の執行猶予の言渡しを可能にするとともに,再度の執行猶予を言い渡すことができる刑期を引き上げるという制度改正を行うものとされています。このように再度の執行猶予の要件を緩和することによって,初度の執行猶予の際の保護観察付き執行猶予の活用が促進されるとともに,再犯を犯した者のうち,なお社会内処遇によることが相当である者についても,保護観察付き執行猶予を活用しやすくなることが見込まれます。これによって,対象者の特性に応じて,必要があれば保護観察に付することができる可能性が広がりますので,対象者の改善更生が期待できることになると思います。   このほかにも,これも参考資料に示されていますが,保護観察付執行猶予者について,少年鑑別所の調査を活用して必要な情報を得た上で,処遇方針等の策定を行うということにより,保護観察自体が充実するということが期待できますし,また,保護観察については,新たな処遇手法を開発整備しつつ,少年鑑別所ですとか民間の更生保護施設等を活用することによって濃密な処遇を行うことが可能になる内容となっております。これらを組み合わせることによって,保護観察付き執行猶予に付された者について,今まで以上に充実した処遇を行うということが期待できると思います。   以上のとおり,執行猶予に付される者を対象にして実現を図るべき制度・施策としては,ここに示された制度案は全体として適切なものであって,少年法の適用対象年齢が引き下げられた場合にも,18歳及び19歳を含む若年者に対して行うことができる措置として十分な効果が見込まれる内容になっているものと思います。               (白川委員 退室) ○青木委員 今の御意見に関連して,自由刑の執行猶予・罰金のところについて,先ほど最初に申し上げた意見との関係で,例えばということで,18歳,19歳の者について特則を設けることもあり得るのではないかという意見を申し上げたいと思います。   必ずしもそれが良いかどうかについてまで,まだ考えたわけではなくて,例えばこういうことが考えられるのではないかという範囲のことですけれども,確かに執行猶予を取り消されずに過ごすということで一つの効果はあるのでしょうけれども,18歳,19歳の者に関して言えば,これまでであれば1号観察に付されたものが,この中に入ってくる可能性が高いと思うのですね。そういう場合には,やはり保護観察付き執行猶予の方が効果があるであろうとも考えられます。   一方で,保護観察期間をどのようにするのかということとの関係で,1号観察は2年ですけれども,例えば18歳,19歳の者については,原則として執行猶予は保護観察付きにして,しかも,その期間は2年にする。それで,例えばその保護観察については解除制度を設けるとか,あるいは18歳,19歳の者について罰金を科す場合には,原則として保護観察付き執行猶予にするとか,そのようなことも検討には値するのではないかと思います。   申し上げたいのは,今,例えばということで申し上げたのですが,先ほど山﨑委員が言われた資格制限の排除も含めて,18歳,19歳の者について「若年者に対する新たな処分」という特則を設けるのであれば,この部分についても18歳,19歳の者の特性に鑑みた特則を設けて,他の20歳以上の成人とは違う形のものもあり得るとすると,もう少し検討する中身というのは増えてくるのではないかと思います。 ○井上部会長 山﨑委員に申し上げたことと同じことを青木委員にもお願いしたいのですけれども,今,「例えば」ということで御意見を伺ったのですが,更にお考えくださって,より具体的な案を示していただければと思います。書面で出していただければ,より深く幅広い議論ができるのではないかと思いますので,部会長としてお願いしておきたいと思います。   ほかに御意見がなければ,この部分についてはこのぐらいでよろしいでしょうか。   それでは,先に進んで,自由刑の執行猶予・罰金に関する個別の制度・施策について意見交換を行いたいと思います。番号で言うと,「5」から「7」までです。   いずれの点でも結構ですので,どの点について御発言になるかを明示した上で,御発言いただければと思います。 ○橋爪幹事 私からは,「6」の「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」について申し上げたいと存じます。   まず,議論の前提を確認しておきたいと思いますけれども,現行法におきましても,罰金の保護観察付き執行猶予は当然可能であり,これは特段の法改正を要する事項ではありません。したがいまして,当部会で検討すべき事柄は,これが取り分け若年者の改善更生・再犯防止のための手段として有効に活用できるか,あるいはそれがどのような場合かという問題に尽きるかと存じます。この点につきまして,私の方から思うところを2点申し上げたいと存じます。   第1に,適用範囲,対象です。以前の部会でも申し上げましたけれども,執行猶予が可能な一定の金額以下の罰金刑相当の事案につきましては,そもそも類型的に行為責任が小さいことが一般的です。したがいまして,自由刑であれば,実刑か執行猶予かの選択においては,行為責任の大小が決定的な基準となりますが,このような金額以下の罰金刑の場合には,そもそも行為責任が類型的に小さいことから,保護観察付き執行猶予を選択する際には,行為責任の程度のみが決定的ではなく,むしろ直ちに金銭的な負担を科す必要性が乏しく,かつ,保護観察によって再犯防止が十分に期待し得る者か否かという特別予防的な観点が重要な基準となるように思います。すなわち,飽くまでもこの制度は,保護観察付き執行猶予にふさわしいものに限って,適用されるべきであることが重要であるように思います。   したがいまして,仮に,従来は少年として保護観察に付されていたものが,仮に成人年齢の引下げによって少年法が適用されず,罰金刑になる場合でも,漏れなく保護観察付き執行猶予となるわけではないことをまず確認しておきたいと存じます。   第2に,保護観察の実効性に関する問題です。罰金刑につきましては,お金を払ってしまえばおしまいであり,保護観察の実効性に乏しい旨の御指摘があったかと存じます。確かに罰金刑についてはお金を払えば刑の執行は終了することから,保護観察を受けるよりも,罰金を払っておしまいにしたいという層が一定数存在することは否定できないと思います。しかし,既に申し上げましたように,保護観察による再犯防止効果が十分に期待し得ない層に対しては,初めから罰金の実刑を選択すべきことになると思います。飽くまでも罰金による金銭的負担を心理的威嚇として,かつ,保護観察の実効性が十分に期待できる層に限って保護観察付き執行猶予判決が選択されるものであると理解しております。   また,遵守事項違反があり執行猶予が取消しとなった場合は,対象者は罰金刑の執行を受けたことになりますので,これはその後,再犯があった場合には,前科として不利益に考慮される可能性があります。この点は,遵守事項違反を抑止する一定の効果となり得ると考えます。もちろん,このような不利益がある点につきましては対象者に十分に説明する機会が重要になるかと存じます。   更に申し上げますと,遵守事項違反は飽くまでも裁量的な取消事由であることが重要です。すなわち遵守事項違反があったとしても,違反内容や違反の背景等の具体的事情を勘案した上で,最終的には裁判所が取消しの要否を判断することになります。もちろん,執行猶予を取り消して金銭的な痛みを与え,それによって再犯防止を図ることが適当な事案もあり得ますが,他方,場合によっては,遵守事項違反があったとしても,なお保護観察を継続することが適当と評価し得る場合もあり得るかと存じます。したがいまして,遵守事項違反があっても,常に罰金を払っておしまいになるわけではなく,事案によっては,更に保護観察を継続することも可能であるはずです。   このように,まず対象者を適切に選別した上で,かつ,柔軟な対応が可能であれば,取り分け若年者の改善更生・再犯防止を図る方法としまして,罰金刑の保護観察付き執行猶予には一定の効果が期待できると考える次第です。 ○酒巻委員 今の橋爪幹事の御意見に対する質問でございます。私も橋爪幹事がおっしゃったとおり,罰金の保護観察付き執行猶予は現存しているので,これを何とか活用するのはよろしかろうと思いますし,その対象者についてはいろいろ考えるべきであるという今の御意見に全面的に賛成なのですけれども,その上で,例えば,どのようなタイプの若年犯罪者が対象者に当たるのか,具体的に挙げていただけるとより分かりやすくなるのではないかと思いました。 ○橋爪幹事 その点は,今後の部会で御議論いただくべきことかと考えておりますが,私なりの感覚,感想を申し上げますと,やはり罰金の金額が一定の基準になると思います。また,若年者であり,金銭的痛みが再犯防止のための威嚇として十分に機能する者であり,かつ,社会内処遇によって再犯予防を図ることが十分に期待できる層というのは,犯罪傾向や犯罪内容に即して,一定数,存在すると思います。これらの者を適切に類型化できるのであれば,これらの層に対しては罰金の保護観察付き執行猶予を重点的に活用することがあり得るのではないかと考えております。   先ほど,池田幹事からも御発言がございましたけれども,仮に少年法の適用年齢が引き下げられ,18歳,19歳が成人となった場合についても,18歳,19歳の全ての対象者について,保護観察付き執行猶予を導入する必要はないと考えております。飽くまでも,保護観察付き執行猶予に適しており,効果的に再犯防止が図り得る層に限って,このような選択があり得ることを重ねて強調しておきたいと存じます。 ○太田委員 今の酒巻委員の御質問にも一部お答えできるかもしれませんので,この罰金の保護観察付き執行猶予の活用について,少し意見を申し上げたいと思います。   今後この罰金の保護観察付き執行猶予を活用するとすれば,例えば幾つかの事態が想定できるわけでありますけれども,例えば執行猶予が取消しになった場合に,罰金の徴収というのは,かなり時間が経っているので果たして困難にならないかとか,それから罰金が納付できない場合には,やはり若年者に対しても労役場留置というものが執行されることになるとか,検察や裁判所の実務の影響も少なからず考えられるところでありまして,逆にこうした影響を懸念する余り,罰金の保護観察付き執行猶予というものが余り活用されないということも考えられなくもないと思います。   今般の検討では,これは法改正はせずに運用の中で活用を促進していくということでありますけれども,それだけで今後十分な活用がなされていくのかというと,やや心もとないのではないかというようにも感じております。   また,今回の部会では,執行猶予や罰金の層への措置と,それから別に起訴猶予の層への措置が分けられて検討されていますけれども,この起訴猶予の層に対する措置の内容次第では,その措置の予防的効果に期待して,起訴,不起訴の判断にも影響が出てくると思いますし,それから罰金の保護観察付き執行猶予の適用とも無関係ではないと思われます。   そこで,先ほどから橋爪幹事や酒巻委員からお話が出ているように,私が非常に重要だと思うことは,罰金の保護観察付き執行猶予がどのような対象者に対して,どのような意義を持つのかということであろうかと思います。   私個人的には,行為責任としては罰金が相当であるものの,本人の生活状況などに非常に問題があって更生に支障が生じやすいとか,それから,法定刑としては罰金しかない,若しくは量刑としては罰金相当であるものの,本人は就労もしていないために,もし取消しになった場合には罰金を納付できない可能性もあるということから,この保護観察において職業補導などを行って就労させて社会生活を送らせることで再犯を防ぐことができるし,きちんとした経済生活も送れるようになるというような場合に,罰金の保護観察付き執行猶予というものが適用できるのではないかというイメージを持っております。   今,お話に出ましたように,この罰金の保護観察付き執行猶予についていかなる対象をイメージして,どのくらいの数を見込んでいくべきなのかについては,なお検討が必要なのではないかと思っております。 ○井上部会長 その点も,こういうタイプの対象者については適切ではないかというアイデアがあれば,是非示していただければと思います。 ○太田委員 はい。幾つか腹案がございますので,またいずれ出したいと思います。 ○山﨑委員 私は,罰金の保護観察付き執行猶予の活用における,保護観察所及び少年鑑別所の調査機能の活用について,若干意見を述べたいと思います。   まず,この「活用」というものは,素案にも書かれていますけれども,同種再犯のおそれや保護観察に付することによる処遇効果などを考慮して,保護観察付き執行猶予の有用性,相当性を判断すること,さらにはそれを裁判手続で主張・立証するためのものとして想定されております。つまり刑罰の適用にも向けた情報の収集ということになりまして,現行少年法で行われている健全育成という目的の下での家庭裁判所調査官による調査というものとは大分質的に異なってくるだろうと理解をしております。   そして,その調査というものの対象が,被疑者の生活状況ですとか家族関係といった事柄だけではなく,いわゆる一般情状に関する事実全般や,場合によっては犯罪行為そのものに関する事実も含まれる可能性があると考えておりまして,さらに,その調査の結果が裁判手続の立証にも利用され得ること,さらに,被疑者からすると,その保護観察所,少年鑑別所による調査と捜査機関による取調べとが区別しづらいということからしますと,この調査に当たっては,やはり黙秘権の告知など,十分な規律がなされるべきではないかと考えております。 ○羽間委員 先ほどの橋爪幹事の御発言につきまして,お話を申し上げたいと思います。私は,これまでの部会において,罰金の保護観察付き執行猶予の処遇効果について,少年・若年者の処遇に携わってきた者,そして若年の犯罪者・非行少年の研究をしてきた者として,幾つか意見を申し上げてきました。   先ほどの橋爪幹事の御発言の中に「お金を払って終わり」という点に対する御指摘がございまして,それは私が以前に申し上げたことを引用されたのかと思いますが,その点につきまして,私の発言の趣旨がうまく伝わっていないところがあったのかなと思うところがございましたので,少しだけ補足をさせていただきます。   前提として,遵守事項違反があったときの対応ですが,遵守事項違反があった場合に直ちに執行猶予を取り消すというようなことは私も全く考えておりません。保護観察の現場におきましては,対象者の社会内での更生のために,保護観察官において懸命に処遇を継続しているということは私自身も経験してきたことでございまして,十二分に承知しております。   自由刑の執行猶予の取消しというのは,そういったことを前提として,たとえそのようにして保護観察官が何とか社会内で立ち直らせようとしても,どうしても更生が難しいという場合に,最後の手段として採るものでして,保護観察官は,たとえ執行猶予の取消しがなされて,対象者が刑事施設に収容されたとしても,収容中に生活環境の調整を行い,また,仮釈放となった場合には再度保護観察を行い,更生に向けた処遇を継続していくということになります。   これに対して,罰金の保護観察付き執行猶予は,保護観察官が処遇を継続し,最後の手段として,これが限界だということで執行猶予を取り消して罰金を支払わせたとしても,そこで処遇が終わってしまうということを申し上げているところでございまして,前々回私が申し上げました「お金を払って処遇もおしまいになる」というのはそういう趣旨でございますので,そのことを補足させていただきたいと思います。 ○佐伯委員 私は,「7」の二つ目の刑の執行猶予中の保護観察について解除制度を設けるという点について,意見を申し上げたいと思います。   このような制度の導入につきましては,分科会での検討でも指摘がなされておりますけれども,刑法の理論的観点と,それから実際上の必要性の観点の両面から十分な検討を要すると思われます。   まず,理論的観点についてですけれども,判決で執行猶予の期間中保護観察に付することを言い渡している以上,保護観察を解除し,事後的に保護観察の期間を短くすることは,裁判内容の変更であると言わざるを得ませんので,判決後の事情により保護観察を継続する必要がなくなったとして,裁判内容を事後的に変更して保護観察を解除することが許容されるかが問題となると思います。   どのような場合に保護観察付き執行猶予が言い渡されるかにつきましては,第1分科会で保護観察付き執行猶予を実刑と単純執行猶予の中間的な重さの刑と位置付けるという考え方と,執行猶予相当事案のうち,被告人の改善更生のために保護観察所による補導援護,指導監督が必要と考えられる者に保護観察付き執行猶予を言い渡すという考え方が紹介されましたけれども,前者の考え方によれば,行為責任に応じて言い渡された保護観察を解除することは,一種の刑の事後的な変更を認めるということになるのではないかと思われます。また,後者の考え方によれば,裁判後の改善更生の状況によって,保護観察を本解除することができると考えることもできますが,執行猶予の期間中に付される保護観察について,専ら改善更生のために必要か否かという観点のみから,言い換えれば,行為責任の観点とは全く関係なく判断するものとされていると言い切れるのかについては,なお十分な検討が必要であると思われます。   次に,必要性の観点につきましては,少年法の保護観察の場合は本解除がなされれば,全く自由の身になるのに対して,刑法の場合は執行猶予中であるという点については全く変わりがなく,仮解除ではなく本解除にすることにどのくらいメリットがあるのかについても検討が必要だと思われます。さらに,仮にこのような制度を導入するのであれば,解除を認める主体,要件,手続等についても理論的観点,実務的観点から様々な検討を加える必要があると考えられるところであり,なお多くの検討課題が残されているという印象を持っております。 ○福島幹事 今の保護観察の解除制度について,私からも1点だけお話しさせていただきます。   ただいま佐伯委員から検討課題の御指摘がいろいろありましたけれども,私の方からも実務的な観点からの検討課題を付け加えさせていただきたいと思います。   裁判実務では,保護観察に付す場合の執行猶予期間をどのように定めるのかということについて,保護観察に付す,付さないとは切り離して執行猶予期間を定めるという考え方と,保護観察に付すことを考慮した上で,執行猶予期間を定めるという考え方があり得るように思われますが,仮に後者の考え方に立ちますと,執行猶予期間は保護観察の有無と連動してくるということになってまいりますので,執行猶予期間と切り離して保護観察を解除するということが許されるのかという問題も出てくるように思われます。ほかにもあるのかもしれませんが,このような実務的な問題についても慎重な検討が必要になるということを付け加えさせていただきたいと思います。 ○青木委員 今のに関連して,保護観察期間なのですけれども,全解除というか,解除を認めた方がよいという御意見の中には,やはり保護観察期間が余り長くなってしまうと,かえって逆効果であるというようなことがあったかと思います。   そういう点で申し上げますと,今,執行猶予期間と保護観察期間のお話がありましたけれども,現在は保護観察期間と執行猶予期間は一緒になっているかと思いますが,例えば保護観察期間については原則として3年にして,特に必要がある場合はそれ以上というような形で,執行猶予期間と切り離して最初から言い渡すというような制度も検討する余地があるのではないかと思います。 ○井上部会長 このくらいでよろしいでしょうか。   では,次に進みます。   参考資料の中段の右側ですが,保護観察付き執行猶予となった者の保護観察に関しまして,「8-1」から「8-4」までについて意見交換を行いたいと思います。   これらの制度・施策については,ひとわたりこれまでの部会での議論において御意見を伺っていますが,更に付け加えて新たな御意見,あるいは敷えんする御意見があれば御発言をお願いします。いずれの点からでも結構ですが,どの点について御意見があるのかを明らかにした上で,御発言をお願いします。 ○田鎖幹事 何点かございますけれども,まず「8-1」のうち,特別遵守事項の類型の追加の点について述べます。   「民間施設が行うプログラム・ミーティングの受講等を特別遵守事項の類型として追加」するという点でございますけれども,ここでは民間施設として更生保護施設と,その他の民間施設が想定されていて,更生保護施設も担うことが想定されているわけですけれども,ここでのプログラムの提供者が更生保護施設である場合に若干懸念がございます。このプログラムの提供自体は補導援護の一環として行う,そういった援助を受けるということが,対象者からしますと,同時に指導監督の内容である特別遵守事項を履行することになるという関係にございます。   抽象的,理念的には,援助の提供と指導監督の主体が違うということで区別はできるわけですけれども,ただ実際には,援助を提供するということが指導監督の中身を実質的に担うということになりますので,どうしても補導援護の内容自体にも影響を及ぼすことになりはしないかという懸念でございます。特に,実際にはプログラムを受講する人の中には,特別遵守事項としてプログラムの受講が定められていない人もいて,中には特別遵守事項として指定されている人もいるとなったときに,全体としての援助の提供というものが変質してきてしまわないか,先ほども御紹介しました有識者検討会においても,仮にそうなった場合の更生保護施設の援助機能についての懸念が示されているように私は理解いたしました。ですので,そもそもこのようなことでいいのかということと,仮にこういった類型を追加する場合であっても,更生保護施設の行う補導援護機能を害さないようにするための何らかの手当てなり工夫というものが必要ではないか。具体的には,特別遵守事項として提供する場合には,そこに特化したものとして別個に提供できるような場合に限定するとか,何からの配慮というものが必要ではないかと考えます。  次に,更生保護施設への宿泊の義務付けで,これは運用において対応するものとなっているところでございます。   これは御説明にもあるように,更生保護法第51条第2項第5号に基づき実施できるとされているものでして,上の自由刑の枠にも共通する議論として述べさせていただきますが,この第51条第2項第5号というのは,元々は仮釈放者を念頭に置いたものとして立法化されたもので,現実の運用としても,今日までは仮釈放者を主に対象として,かなり限定された範囲で運用されてきたものと承知しております。ですので,今回,運用において対応するとはいいましても,保護観察付執行猶予者に対して,これを活用していくということは,実質的に見ますと,新たに遵守事項を追加するにも等しいような大きい運用の変化であろうと考えます。   特に,仮釈放者ではなく,まだ刑の執行自体は猶予されている対象者に対して,こうした自由の制約を行うことについては,全体に関わる意見としても申し上げましたけれども,やはり法的地位の違いに伴う異なる考慮が必要であろうと考えます。ただ,実際問題として,この更生保護法の立法過程では,こうした観点からの議論はなされなかったと理解しております。   保護観察付執行猶予者に対する特別遵守事項の設定に当たりましては,法と規則によって裁判所から意見の通知を受けて,その範囲内で定めるとされておりますが,これに基づいて一定期間の濃密な処遇を行うとしましても,執行猶予の期間というのは,通常は仮釈放の期間よりも相当長期に及ぶわけであります。そういった場合に,この一定の期間に法律,飽くまで法律のレベルですけれども,上限は定めないで,保護観察所長の判断に完全に委ねてしまってよいのかという疑問が湧きます。実質的に保護観察所長の判断に委ねることができるとすれば,わざわざ裁判所の意見を踏まえるという意義には乏しいという問題が生じます。そうだとすると,今度は裁判所に大枠についての意見を述べてもらう必要性が出てくるわけですけれども,果たしてそういった期間というものを言渡し裁判所に的確に判断していただけるのかという疑問もあります。   そういう意味でも,やはり冒頭にも述べましたように,その法的地位に配慮した制度設計というか運用ですね,運用において,なかなかそれは難しいということになると,やはりその規定自体を見直して規律することが必要ではないかというような意識です。   最後の点ですけれども,「8-3」の保護観察処遇を見直す場合における少年鑑別所の機能を使った調査ということですけれども,「保護観察の処遇を見直す場合において」というような書きぶりですと,以前にも山下幹事から指摘はあって,私も若干意見を述べさせていただいたと思うのですけれども,どうも飽くまで保護観察を継続するためだと,施設収容を可能な限り回避するためだという趣旨が明確にならないわけであります。このような懸念というのは,下の「起訴猶予」の関係,新たな処分の関係でも保護観察の処遇の見直しのための措置というものが構想されておりますので,それとの関係でも,余計に保護観察の継続という趣旨が背後に退いてしまうのではないかという懸念を持ちますので,そこは明確化すべきであろうと考えます。   その点で,やはり先ほどの仮釈放者と比べて,刑の執行自体は猶予されているものということで,より慎重な対応が必要ということであれば,ここも規定自体をきちんと分けるといった見直しが必要ではないかと考えます。 ○太田委員 今の2点ですけれども,まず最初の方の更生保護施設等の民間施設が行うプログラムの件でございますけれども,現在,多くの更生保護施設で非常に進んだ薬物処遇などを重点施設などでも行っておりますし,それからここで定められていることは,今の補導援護で行われているようなもの全てを指定することではなく,その中で一定の基準を設けた上で,法務大臣が指定したものに限定するという趣旨になっておりますので,そういった方向性で運用していくことで,より望ましい社会内処遇が行われるのではないかと思います。   それから,保護観察付き執行猶予の場合の更生保護施設への宿泊義務付けでございますけれども,やはり保護観察付き全部執行猶予になったということであっても,社会内での生活が非常に乱れてきているであるとか,保護観察官の指導にも適切に従わないというときに,場合によっては遵守事項違反による取消しという方向に進まざるを得ないということはあろうかと思いますけれども,その前に生活の立て直しや,不良交友の遮断,そういったことによって更生が図れるという機会の中間的な対応といいますか,そういったものを認めることによって,施設収容を回避,要するに刑務所への収容,実刑を避けつつ,社会内で更生を図っていくという点で,非常に望ましい扱いではないかと思いますので,こういった運用を行っていくということが,犯罪者の社会復帰,再犯防止という点で非常に有効ではないかと考えるところであります。 ○奥村委員 私は2点ありまして,まず1点目は質問ですが,「8-1」のところで「濃密な処遇を行う必要がある」とあります。「濃密な処遇」というのは抽象的には分かるのですけれども,具体的にはどういうものをイメージしているのでしょうか。 ○今福幹事 「濃密な処遇」の意味合いは,保護観察官による面接等の接触の回数を特に増やしたり,あるいは処遇開始後に再度アセスメントを行い,その結果によっては処遇方針を変えつつ,より問題性に応じた処遇を重点的に行うことなどを想定しています。また,今申し上げたような指導監督の部分での「濃密」という意味合い以外にも,例えば就労支援をより重点的に実施するというような意味合いもございます。 ○奥村委員 ありがとうございました。   次に,質問ではなくて「8-2」の犯罪被害者等の視点に立った保護観察処遇の充実等のところですが,これは自由刑のところにも書いてあるのですけれども,配布資料21の19ページに「具体的な賠償計画を立て,賠償に向けて就職活動を行う」と賠償の問題が書いてありまして,20ページには「賠償等に向けた努力をしていくことが重要であることから,具体的な賠償計画を立て,賠償に向けて行動すること等を生活行動指針として設定し」ということがうたわれています。これは参考資料の自由刑のところにも入っていますけれども,ところが配布資料21の7ページにはこれがないんですね。この点は,是非付け加えていただきたいと思います。 ○保坂幹事 資料の作りが分かりにくかったかもしれませんが,今御指摘のあった「8-2」というのは,この素案では後ろの方に書いてありますが,この参考資料でいいますと,自由刑の分野にも妥当しますし,執行猶予の分野にも妥当するという,そういう趣旨で保護観察の在り方としての規律を設けるということですので,当然のことながらどちらにも妥当するという趣旨での素案になっているということでございます。 ○奥村委員 分かりました。 ○井上部会長 それでよろしいですか。 ○奥村委員 はい。それは是非充実させていただければいいので。 ○山﨑委員 大きく2点あるのですが,まず「8-1」の最後の宿泊の義務付けに関して質問があります。今回提案されている運用の対象は,いわゆる少年法の保護処分としての保護観察も含まれているのか,さらに,「若年者に対する新たな処分」の保護観察についても,今後の議論次第ということもあるのでしょうが,これも対象として想定されているということになるのでしょうか。事務当局の方でお答えいただければ有り難いと思います。 ○保坂幹事 「若年者に対する新たな処分」における保護観察については,施設収容を設けるかとか,その処分の内容自体もまだ,分科会でもそこまで詰め切っていないのですが,議論の前提としては,保護観察の内容としては他の対象者と同様のものを想定した議論がなされたと理解をしておりまして,もし,例えば先ほども御意見があったように,この「若年者に対する新たな処分」における保護観察については,それ以外の者に対する保護観察とは別立てでするという御意見も含めて,部会の方で御議論いただくべきものではないかと理解しております。 ○山﨑委員 1号観察については,含まれるという理解で想定されているのでしょうか。 ○保坂幹事 その点も今までの分科会での議論によりますと,宿泊義務付けについては,現行法の下で1号観察も対象になっておりますので,それを今回対象から除外するというような議論がなされたとは認識しておらず,同様のもので行っていくという前提だろうと理解しますが,その点も含めて御異論があるのであれば,部会で御議論いただければと思います。 ○山﨑委員 では,それを前提に意見として申し述べます。1号観察は,当然,在宅処分としての保護観察であり,明らかに仮釈放者とは地位が異なると思いますし,更に「若年者に対する新たな処分」ということになりますと,起訴猶予となった者に対する新たな処分ということですので,仮釈放者などと同様に,裁判所の判断もなく身体拘束の処分を更生保護施設で行えるというのは,やはり行きすぎではないかと思われますので,そこは区別した検討が必要ではないかと考えております。   次に,「8-3」の「保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用」ですけれども,これもまず御質問があるのですが,ここの2点目に書かれている場所の問題なのですけれども,「少年鑑別所又は刑事施設」と書かれていますが,この刑事施設というのは,具体的にどういった施設を想定されていて,少年鑑別所とその刑事施設で,対象者なり,そのケースとしてどういう使い分けを想定されているのか,もしイメージがありましたら教えていただければと思います。 ○保坂幹事 少年鑑別所に収容する場合もあれば,刑事施設に収容する場合もあるということで「又は」にしていまして,刑事施設に収容した場合における少年鑑別所の調査機能としては,恐らく少年鑑別所の職員が刑事施設に行って調査をするということだろうと理解をしていますが,いずれにしても,そのどちらかに収容して,少年鑑別所の持っている調査機能を活用するという趣旨ですので,収容場所の点について御意見がございましたら部会の方で御議論いただければと思います。 ○山﨑委員 やはりこれについても,対象者の年齢層が相当広範に及ぶと思いますし,その方の属性といいますか,犯罪傾向なども相当幅があるものかと思います。仮にこれが少年鑑別所に収容されるとなった場合に,元々観護措置で入っている本来の収容者といいますか,少年たちに与える影響については当然考えないといけないと思いますので,そういう対象者の選別や,さらには少年がいる居室とか,入浴の際の分離が可能かとか,そういった点は十分検討する必要があるのではないかと考えております。   もう一つは,この収容での鑑別を認める場合の要件ですけれども,本来,保護観察は対象者の身体拘束をしないという処分ですので,これまでも意見を述べましたが,少なくとも遵守事項違反という明確な基準がないままに,処遇の見直しの必要性という理由で10日間という身体拘束が許容されるかという点は,慎重に検討する必要があるのではないかと思っています。処遇方法の見直しを行うためということで,想定される具体例について御説明いただきましたけれども,一方で,呼出しですとか引致・留置という現行制度を使って,なおそれができないと言えるのかどうか,その点も含めて,新たな制度を設ける必要性自体を慎重に検討しなければならないのではないかと考えております。 ○太田委員 今の山﨑委員の1号観察処分に対する宿泊義務付けの法的構成の問題でありますけれども,確かに当初の処分としては,家庭の保護環境とか,それから監護能力がある程度あるという場合に1号観察は取られるので,この規定を使って更生保護施設の宿泊の義務付けをするケースというのは余りないのかもしれませんけれども,ただ,法的な構成としては,現在でも1号観察は,その後の対象者の問題行動,不良環境等によって,施設送致申請をすることで少年院送致になるというケースが実際にかなりあるわけでございますので,法的構成としては問題はないと思いますし,実際に1号観察,当初は親の監護能力,それから保護環境がある程度期待できるとして1号観察にしたものの,例えば元共犯とか不良交友に取り込まれて,非常に生活が乱れ始めているというときに,いきなり施設送致申請するということよりも,こういった更生保護施設で悪い環境から遮断をして生活を立て直していくということの方が,より更生への近道であるという場合もあると思いますので,必要性も非常に高いのではないかと私は考えております。 ○山﨑委員 今の御意見ですけれども,施設送致申請をすることになりますと,新たな審判事由として構成して裁判所の判断を仰ぐわけですので,それよりはよいのではないかという考え方はいかがかと思います。裁判所の判断もないままに身体拘束を認めるということが,保護処分としての保護観察に元々想定されているのかということについては大きな疑問があると考えます。 ○井上部会長 これくらいでよろしいでしょうか。   次に,参考資料の下段の「起訴猶予」についてです。   初めに,前回会議において,大沢委員から,18歳及び19歳の者で少年院送致となっている事例の中で,犯した罪はそれほど重くないものがあるのではないかという観点から,例えば第2分科会で配布された資料「平成28年に少年院を仮退院した者(少年院送致決定時18歳以上の者)のうち,在院期間が140日以下であるもの」の中から,犯した行為がそれほど重くない具体的な事例を紹介してほしいという御依頼があったと承知しておりますが,この点について,事務当局から説明をしてもらいます。 ○今福幹事 それでは,御説明いたします。   資料は第2分科会の配布資料26です。机上に配布しておりますので御参照ください。   なお,この資料は,平成28年に少年院を仮退院した者のうち,在院期間が140日以下であるもの71名につきまして,審判書等の記録を確認して作成したものです。この資料の事例の中から,犯した行為はそれほど重くないものとして,非行事実のみからすると比較的軽微と言い得るものを抽出して御説明いたします。   具体的には,比較的軽微な非行事実の事例に該当し得ると思われる次の三つの観点に当てはまる事例,すなわち,一つ目は,非行名が法定刑長期3年以下の罪の事例,二つ目は,財産犯や身体犯で,被害結果が比較的軽い事例,三つ目は,大麻取締法違反で比較的所持量の少ない大麻の単純所持事例を抽出いたしました。なお,複数の犯罪事実がある事例については,そのいずれもが,ただいま申し上げた観点に当てはまるもののみを抽出しております。   その結果,合計13件の事例を抽出いたしましたので順次御説明をいたします。   まず一つ目のグループの,非行名が法定刑長期3年以下の罪の事例は6件です。   最初に,15番のいわゆるストーカー規制法違反は,アルバイト先の同僚である被害女性の携帯電話機にSNSのメッセージを送り続けるなどした事例です。   17番と48番の青少年健全育成条例違反は,いずれも中学生の被害女性と性交を行った事例です。   22番の暴行は,内縁の妻である被害女性の太ももを足蹴りするなどした事例です。   25番は,盗撮目的で店舗や駅のトイレに侵入したという建造物侵入3件と,トイレ内で盗撮をしたという軽犯罪法違反2件の事例です。   47番は,警察官から逃げようとして民家に侵入したという住居侵入及び外泊等を繰り返していたというぐ犯の事例です。   二つ目のグループの,被害結果が比較的軽い事例として,財産犯で被害額の合計が1万円未満である事例及び身体犯で加療期間等が3週間未満の事例について御説明をいたします。   最初に,財産犯で,被害額の合計が1万円未満の事例は3件で,いずれも非行名は窃盗です。   30番と32番は,いずれも複数回の食料品等の万引き事例で,被害額合計はいずれも約8,600円です。   56番は,集合住宅の駐輪場から無施錠の自転車,これは時価5,000円相当ですが,これを盗んだという事例です。   次に,身体犯で加療期間等が3週間未満の事例は28番の1件のみで,非行名は傷害です。この事例は,交際中であった被害女性の顔面を殴打するなどして,加療約2週間を要する頭部外傷等の傷害を負わせたというものです。   最後のグループである,大麻取締法違反のうち大麻の単純所持の事例は3件です。各事例における大麻の所持量だけを申し上げますと,6番は約4.75グラム,14番は約0.47グラム,70番は約0.18グラムです。   資料の説明は以上でございます。 ○井上部会長 ありがとうございました。   ただいまの説明について何か御質問はございますでしょうか。 ○大沢委員 今の説明の中で幾つか,それぞれの犯罪というか,やった行為のことは分かったのですけれども,裏にある背景事情,例えばこの子が保護観察中であったのか,また,割と何度もやっている子だったのかとか,そういうことも,多分こういう処遇には影響したと思います。例えば,先ほど内妻を足蹴にしたというケースがあったと思うのですが,22番ですか。それから,あと8,600円ぐらいの万引きをしたというケースが二つあったと思うのですけれども,30番と32番ですか。それから,駐輪場から5,000円ぐらいの自転車を盗んでしまったという56番があったと思いますが,それ自体は悪いことではあるものの,140日間も入れることなのかなと素人だと思ってしまいます。保護観察中であったとか,常習性があったとか,そういう付随事情等がもしあるのであれば,分かればで結構なのですが,教えていただけると参考になると思ったものですから,よろしくお願いします。 ○今福幹事 飽くまで審判書で把握できている範囲でありましたら,今申し上げることはできます。その限度で,飽くまでプライバシーの観点も踏まえて簡略に御説明いたします。   まず22番の暴行ですが,<事件の内容や対象者の経歴等について説明がなされた。>。 次の30番の窃盗ですけれども,<事件の内容や対象者の経歴等について説明がなされた。>。   次の32番の窃盗は,<事件の内容や対象者の経歴等について説明がなされた。>。   最後の56番の窃盗ですけれども,<事件の内容や対象者の経歴等について説明がなされた。>。 ○井上部会長 今の説明ですけれども,個別の事件,事案に関わることですので,公表に適するかどうかについては検討させていただきたいと思いますが,皆様におかれても,その点の取扱いにはくれぐれも気を付けていただきたいと思います。   ほかに御質問等はございますか。   それでは,今の点も踏まえて,御意見を頂きたいと思います。   ここでも,まずこの分野全体について,御意見があればお伺いしたいと思います。 ○橋爪幹事 この法制審議会少年法・刑事法部会の課題は,二つあると理解しております。   第一は,少年法の適用年齢の引下げをめぐる問題と,第二に,若年者を含む犯罪者全般に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方です。このような観点から,「9」及び「10」の項目でございますが,これは先ほど青木委員からも御指摘がございましたように,方向性や問題意識,適用場面の違いはあるわけですけれども,ある意味,この二つの方向性に対応する方策であり,共に検討課題に適した有効なものであると考えます。   まず,「9」の「若年者に対する新たな処分」でございますけれども,これは仮に少年法の適用年齢が引き下げられた場合,保護処分の対象から外れることになる18歳,19歳の者を対象とするものでありまして,具体的な内容については更に検討が必要と考えますが,家庭裁判所,少年鑑別所,保護観察所のノウハウや人的資源を活用して,改善更生に必要な処遇を実施し得る点,さらに,比較的軽微な罪を犯した段階で,早期の働き掛け,介入を行い,将来の再犯を効果的に防止し得る点におきまして,一定の意義があると考えます。   また,「10」の「起訴猶予となる者等に対する就労支援・生活環境調整の規定等の整備」は,若年者に限らず比較的軽微な罪を犯した者一般につき,勾留中に,あらかじめ釈放後の住居その他の生活環境の調整を行うことができるととし,さらに,釈放後起訴猶予処分前の者を更生緊急保護の対象に加えることにより,このような希望があり,かつ,必要性がある者に対して有効な援助をすることができると思われます。これも改善更生・再犯防止にとって有効な方策であると考えます。   このように,「9」及び「10」につきましては,更に検討課題はあると思いますが,軽微な罪を犯した者の改善更生・再犯防止にとって一定の効果があることは明らかであり,更に具体的内容について議論を深めることが重要であると考えます。 ○井上部会長 ほかに,この項目についての全般的な御意見はございませんか。   よろしいですか。   それでは,個別の制度・施策について御意見を伺うことにさせていただきます。   まず,「若年者に対する新たな処分」についてです。参考資料では下段の左側ということになります。   いずれの点からでも結構ですので,御意見のある方はどの点について御発言になるのかを明らかにした上で,発言をお願いします。 ○川原委員 私が以前に申し上げました補足という意味で,発言をさせていただきたいと思います。   私は,第10回部会におきまして,犯罪事実自体は重大であるものの起訴猶予とされる類型を御紹介しましたが,これに関する補足でございます。   本日,机上に,参考資料「部会第8回会議から第10回会議までの意見要旨」が再配布されておりますが,その15ページの上から三つ目にある「◎」に記載されているとおり,起訴猶予とされる場合に考慮される六つの要素を申し上げました。   これは,これまで,私自身が平の検察官時代に主任として事件を取り扱ったことに加えまして,いわゆる決裁官となりまして東京23区を管轄する東京地方検察庁本庁の刑事部の部長等の立場で,多数の事件の決裁を行ってきたという私自身の検察官としての実務経験を踏まえて申し上げたものでありますが,今申し上げたような事件の処理,決裁に当たっては,当然,従前の事件の取扱いも参考にしておりますので,従前の取扱いと大きく異なる処理でもございません。また,この発言をするに当たっては,私自身の実務経験に加えまして,決裁官として日々多数の事件決裁に当たっている経験豊富な他の検察官にも確認した上で申し上げたものであります。したがいまして,ここで御紹介した六つの要素というのは,私の検察官としての実務経験に基づき申し上げておりますが,専ら私個人の感覚というのにとどまらず,検察実務を踏まえたものであるということを御理解していただきたく補足して申し上げます。   また,このときに,この六つの要素の中の「④被害回復やそれに伴う示談がなされたこと,被害者が宥恕していること」の要素を考慮して起訴猶予とされる事案について,比較的ありふれたものであるのか否かという御質問を頂きました。これに対しては,記録に基づく説明は難しいとお答えしたところでありますが,私の記憶を元に,他の検察官にも確認した結果から補足して申し上げます。   まず,ある意味で当然のことではありますが,起訴すれば実刑になり得るような重大事案については,「④」の要素があったとしましても,これを理由として起訴猶予とされるのは例外的なものと言い得るのでありまして,そう頻繁に経験するものではありません。そうした中でも,以前にも申し上げました,特に性犯罪の被害者が,その精神的負担ゆえに捜査,公判に協力するのが困難であることを理由として起訴猶予とする場合につきましては,示談等が成立している場合も多く,そのような場合には「④」の要素もありますが,基本的には「⑤被害者が公判への協力に難色を示していること」という要素が考慮されて起訴猶予とされる場合でありまして,先ほどの意見要旨の12ページの一番下の「◎」に記載されておりますとおり,本処分の手続の対象とすべきであるかを慎重に考えていただく必要があるという意見を述べたところであります。   このような,性犯罪で「⑤」の要素を考慮して起訴猶予とされる場合を別としますと,犯罪事実自体は重大で実刑となり得る事案であるものの,「④」の要素を考慮して起訴猶予とされることがあり得る事案というのは,数が多いとは言えませんが,強いて挙げるとすれば,例えばプライバシーに深く関わる犯罪で示談が成立して,被害者が処罰を希望しない事案であります。例えば,不倫の事実や性的写真など他人に知られたくない秘密を暴露すると脅して多額の金銭を支払わせるような恐喝の事案であります。ただ,こうした事案は,相当な資力のある被害者との交際関係が前提となって,多額の金銭を脅し取ることになりますが,このような関係に乗じた犯行で,かつ,実刑となり得るほどの高額な被害額の事案というのは,18歳又は19歳の者が行うことは考えにくく,実際にも,私自身,18歳又は19歳の被疑者がこのような犯行をした事案というのを取り扱ったことはございません。   このような被害者のプライバシーに深く関わる事案以外で,犯罪事実自体は重大で,実刑もあり得る事案であるものの,この「④」を考慮して起訴猶予とされることがあり得る事案の具体的な例としては,これも強いて申し上げれば,会社等の組織の中で行われた財産犯で,当事者間で問題が解決されて被害者も裁判を望まない場合,例えば,会社の経理担当者の立場にある被疑者による被害額が高額な業務上横領の事件で,被疑者が全額を弁償して被害会社が宥恕している事案や,ある会社の営業所長が架空契約によって会社に繰り返し代金を支払わせた高額詐欺の事案で,被害弁償がなされるなどして当事者間で問題が解決しており,被害会社が宥恕している事案のような限られた態様のものが挙げられます。もっとも,今申し上げたような態様の高額の横領や詐欺の罪を犯すことができるのは,当然ながらそれが可能な立場にある者に限られるため,このような態様の事案の被疑者はそれ相応の年齢である場合が通常でありまして,被疑者が18歳又は19歳であったというものは経験上,取り扱ったことはございません。   このように,本処分の手続の対象とするか否かを別途検討していただくべきと思われます,性犯罪で,被害者がその精神的負担ゆえに,捜査,公判に協力するのが困難であることを理由の一つとして起訴猶予とする場合はおくとしまして,犯罪事実自体は重大で,実刑もあり得る事案であるが,「④」の要素,すなわち被害回復や被害者の宥恕があることを考慮して起訴猶予とされる事案は,ありふれたものとは言えないのが実感であり,まして,18歳又は19歳の者について言えば,ほとんどないと言っていいものと思われます。 ○廣瀬委員 川原委員から検察実務の御経験に基づいて,非常に詳細な具体例のお話をいただきまして参考になりました。   ただ,これは当たり前の話ですけれども,現行法では,18歳,19歳の者は家庭裁判所に全件送致されていますし,逆送されているのは一般事件では1%程度ですから,検察官のお立場で御経験が少ない,印象が乏しいというのは無理もない話だろうと思います。そのため,現在の少年保護事件全体でみたときに,御紹介いただいたような事案がほとんどないということにはならないのではないかということをまず指摘させていただきたいと思います。   そうすると,今の段階では,現行の家庭裁判所の実務の中で,それなりに重い事例だけれども,審判の段階までに示談や宥恕がなされたりした場合に,処分をどうしているのかということを参考にすべきではないかと思います。それで,先ほど少年院に送致した事例の説明がありましたけれども,そういう事例で考えていきますと,私も少年事件だけでも十数年の実務経験がありますが,その経験を基に思い返して考えてみますと,議論の余地のある財産犯罪で弁償等があった場合はおくとし,人身被害,身体に関わる犯罪である傷害や恐喝などでそれなりに被害の程度が重い事例であるものの,謝罪や示談をしているということによって処分を検討するといった事例は,決して珍しくないと思います。それから,重い罪名の中では,先ほどお話があったような性犯罪などで,示談・宥恕がなされるような事例というのもあります。それから,数は多くないですけれども,親族間での殺傷事件で,被害者が処罰は余り求めていないというような事例も見聞きしますし,私自身が扱ったこともあります。また,第2分科会で既に紹介されている若年成人の起訴猶予の事例の中にも,罪名等から見ると,この被害者の関係などが問題になるものが含まれているのではないかと推察されます。   このように,異なる立場で実務経験に基づき,「ある」,「ない」と言い合っていても平行線になってしまいます。もちろん,今18歳,19歳の起訴猶予者のデータはないわけですから,以前から申し上げているように,飽くまでも,若年の起訴猶予者について,参考程度ではあるにしても,実際の事例をデータ化して検討したほうがいいのではないかということでお願いしてきたわけです。けれども,それは結局,有意な調査ができないため難しいというのが事務当局の結論のようですから,そういったことを前提として今後この論点を検討していく際の視点として,私なりに3点申し上げておきたいと思います。   まず1点目です。この点は,ずっと違和感を感じておりますが,実刑相当,あるいは実刑の可能性が非常に高いというものでなければ施設収容は許されないということを前提にしたような意見が出ておりますけれども,第2分科会において,川出委員が指摘されたように,刑事裁判の実務において実刑になる事案というのはそれほど簡単に決まるわけではありません。行為責任の上では,実刑も執行猶予も両方あり得る中で,実刑にしようか執行猶予にしようかと裁判官が悩むというのは刑事裁判実務ではもう日常的なことで,ある意味では第一審裁判官の一番の悩みの種といってもいいぐらいの微妙な問題なわけです。また,「若年者に対する新たな処分」の施設収容というのは,現行の自由刑とは異なって,応報を主たる目的とするわけではないということですから,そういう意味でも施設収容処分が許容される事案や対象者をもう少し幅広く考える余地があると思います。このように行為責任の枠内での処分という制度とするのだとしても,実刑になるか否かを絶対的なメルクマールにして施設収容処分になり得るかというのを検討するのは適当ではなく,もう少し広く,執行猶予になり得る者も施設収容の対象として許容される余地は十分あるのではないか,そうすると,施設収容の対象者の幅が大分広がるのではないかと思います。   2点目は,これは先ほど太田委員もおっしゃっていましたし,以前に伊藤委員もおっしゃっていたと思いますが,今は,起訴するか,不起訴にするかしか選択肢がない中で起訴猶予処分の判断をされているわけです。けれども,新たに,「若年者に対する新たな処分」という別の選択肢も作るわけです。しかも,有効に機能するものを作ろうと今苦労しているわけです。そうすると,当然,訴追を決定する検察官においても,今と同じ判断基準にはならないだろうと思います。「若年者に対する新たな処分」の有効性ということも考えて起訴猶予にするという例も,恐らくそれなりの量は出てくるだろうと思います。現行とは選択肢が違ってきているのに,現行と同じ判断をするということはおかしいわけですから。そういう意味で,現行の起訴猶予事例だけをみて,適する事例の有無を検討して,それで制度を決めていくというのは正しくないのではないかと思います。やはり制度設計に当たっては,実際の運用として想定される場面も推測して,もう少し幅広く多角的に考えていく必要があるのではないかということであります。   3点目は,これは以前に申し上げたことですけれども,「若年者に対する新たな処分」の対象事例は少ないという御意見もあるわけですが,少ないとしてもあり得るのであれば,それに対する受皿を設けておかなければ,制度として,欠陥とまでは言いませんが,不十分なものになってしまうと思います。選択肢として設けておいて,該当するか否かは裁判所が適切に判断すればいいわけでありますし,不服申立制度も保障するということにすれば,人権の問題でも手続の問題でも手当てはできるわけです。施設収容処分が許容され,その必要性もある事例が想定されるにもかかわらず,その選択肢を設けないということは適切ではないのではないか。政策的な判断としても,その選択肢を設けることの有効性がいろいろあると思うのです。そういうことも勘案して,対象事例が多いか少ないかだけではなく,やはり選択肢を設けておくということが非常に重要なのではないかと思います。こういった観点に留意しつつ,引き続き検討させていただきたいと思っております。 ○川原委員 廣瀬委員の御発言の冒頭の部分に関して補足して申し上げますと,少年事件に関する検察官の経験でありますが,私が申し上げた,私に経験がある,ないというのは,家庭裁判所から逆送で戻ってきたものだけではなくて,警察から検察庁に送致を受けて家庭裁判所に送る段階で,当然検察官として,主任あるいは決裁官として扱っていますので,警察から直接送致される法定刑が罰金以下のものを除けば,事件の内容を見ていますので,それほど,逆送に限っているため狭いというものではないという点だけ補足して申し上げておきます。 ○廣瀬委員 それはよく分かりますし,そのとおりだと思います。ただ,終局処分が家庭裁判所の審判で決まるということになると,示談,弁償なども,捜査段階,すなわち,検察官が家庭裁判所に送致する前の段階では行われず,家庭裁判所に送致された後になって行われるというのが多いということも経験則から,お分かりいただけるのではないかと思います。 ○井上部会長 それぞれのお立場で考慮の中身は違うように感じましたけれども,お二人からの御発言も踏まえて議論したいと思います。   更に付け加えて御意見ございませんか。 ○山﨑委員 「若年者に対する新たな処分」については,今後十分に検討する必要があると思うのですが,廣瀬委員がお考えになっている施設収容処分というのは,どういう施設で,どういった処分をすることを想定されていらっしゃるのか,もし現段階でイメージなどあればお聞きしたいと思っているところです。 ○井上部会長 今あれば,お話しくださっていいですし,今後更に突っ込んで検討するときに,もう少し詰めて,御発言いただくのでも結構ですけれども,いかがでしょうか。 ○廣瀬委員 それでは,時間もないようですから,次回に御説明させていただきます。 ○井上部会長 ほかに付け加えて御意見はございませんか。   よろしいですか。   それでは,「起訴猶予となる者等に対する就労支援・生活環境調整の規定等の整備」について御意見がおありの方は御発言願います。 ○山﨑委員 この整備が行われた場合に,実際に更生緊急保護で対象となる事案がどの程度のボリュームで増えそうなのか,そして,それが現行の保護観察所や更生保護施設のキャパシティーとの関係で,果たして現実的に可能なのかというイメージについて,もしお分かりでしたら,お答えいただければと思います。 ○羽柴幹事 少なくとも分科会で検討していた中で,そのような数について,この程度であるというボリューム感というような議論は出ていなかったと認識しています。 ○井上部会長 よろしいですか。   特に付け加えて御発言なければ,本日の審議はこのぐらいにさせていただきたいと思います。   本日は,「検討のための素案」を事務当局から示していただき,ひとわたり意見交換を行ったところですが,まだ多くの検討課題が残されているものや,新たに提案をするか御検討なさるというものもありますので,今後更に時間を割いて議論を行う必要があるのではないかと考えられます。   そこで,次回会議におきましては,残された検討課題の多い制度・施策を中心に意見交換を行うこととしたいと思います。具体的には,部会長である私に委ねていただき,私の方で検討し,あらかじめ事務当局を通じて,どの点を中心に審議を行うかをお知らせするということにさせていただきたいのですが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   ありがとうございます。   では,次回の日程について,事務当局から説明をお願いします。 ○羽柴幹事 次回第13回会議は,12月19日水曜日の午後1時30分からです。場所は法務省大会議室を予定しています。 ○井上部会長 引き続きよろしくお願いします。   先ほど保留にしていました個別の事件に関わる事務当局の説明についてですが,いろいろな情報を継ぎ足していくと個々の事案が特定され得るかもしれませんので,この点についての議事録の取扱いは私に御一任いただき,公表に適さず非公表とした方がよいと認められる部分がありましたら,そこを除いて公表することとし,それに当たると認められる部分がなければ全て公表するということにさせていただきたいと思います。いずれの場合も,公表する部分については,発言者名を明らかにした議事録を作成して公表するということでよろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。   本日は,どうもありがとうございました。 -了-