法制審議会戸籍法部会 第9回会議 議事録 第1 日 時  平成30年9月28日(金)    自 午後 1時30分                          至 午後 4時00分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  戸籍事務へのマイナンバー制度導入のため更に検討を要する事項 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○窪田部会長 それでは,予定した時刻がまいりましたので,法制審議会戸籍法部会の第9回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   なお,本日の審議会ですが,石川委員,須藤委員,手塚委員,久保野幹事,三橋幹事,衣斐幹事が御欠席の予定と伺っております。また,安達委員は15分ほど遅れて参加されると伺っております。   それでは,本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○杉浦幹事 お手元に配布資料目録,議事次第,配席図,委員等名簿を配布させていただいております。また,事前に部会資料9をお送りさせていただいております。不足の資料等がございましたら,事務当局までお申し付けいただければと存じます。   配布資料の御説明は以上でございます。 ○窪田部会長 ありがとうございます。お手元の資料,よろしいでしょうか。   それでは早速,審議に入りたいと思います。   本日は,質疑の参考とするため,参考人に来ていただいております。事務当局から参考人の御紹介をお願いいたします。 ○杉浦幹事 本日は,市区町村及び法務局の調査権について,また,戸籍訂正についての審議の関係で,東京都大田区区民部戸籍住民課の髙橋課長補佐に参考人として御参加いただきたいと考えております。 ○窪田部会長 ただいま御紹介がありました髙橋参考人に御発言を頂くということについて,皆様御異議ございませんでしょうか。   それでは,髙橋参考人から御発言を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○髙橋参考人 ただいま御紹介にあずかりました,東京の大田区で戸籍の方を担当しております髙橋と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。着座にてお話の方をさせていただきたいと思います。   それでは,席上配布をさせていただいているレジュメの方に従いまして,私の長年の経験の中でのいろいろな実務的なお話というようなところで進めてまいりたいと思います。   それでは,初めに調査権についてというようなところで,具体的な事例,事案等々について今まで経験したようなところ,どんな感じだったのかというようなところなども含めまして,お話をさせていただければと思います。   まず最初に,市区町村の戸籍事務において届出人等に対し,質問をし,又は文書の提出を求める典型的な場面というところでございますが,これは現在は戸籍法の第10条の3で規定するところの本人確認の場面などがあります。窓口に戸籍の全部事項証明書,それから戸籍の届出等の際に,来庁している方の本人確認をさせていただいているところですが,そのときの本人確認,その場面では通常,運転免許証等の規則第11条の2で示されている1号書類や2号書類の提示,そういったものをお持ちでない方については3号でいろいろ聴き取りをするというようなところで本人確認を行っているところでございます。そういうような場面であるとか,それから,同じく法第10条の4で規定するところで,やはり戸籍関係証明書の請求がなされたときの請求書に書かれている内容に不備があったり,また足りないところがあったりなどしたときには,それらのところを補うべく説明要求というところで説明を求めて,審査を行っております。そのほか,平成15年の法務省民事局の通達で,不受理申出の取下げなんかのときに,一歩踏み込んだ場面で審査を確認して,御本人かどうかの確認をしてというような先例も中には示されているものもございます。なので,典型的な場面というと,そういうような場面になるのかなと思っております。   それから,市区町村における質問等と法務局における質問等との関係というところですが,現在,私たち戸籍事務につきましては,市区町村においては形式的な審査権を持っているというようなところ,それから法務局の方では実質的な審査権を有しているというようなところで切り分けがなされております。例えば出生届であるとか婚姻届,養子縁組届などもありますが,いろいろな疑義がある場合,書類上は調っているのだけれども,その内容に一歩踏み込まなければならないような場合,その場合,市区町村では形式的な部分の審査を行って,実質的な部分については法務局の方に規則82条に基づきまして照会をして,その指示,助言を待つというような形で,実質的な部分について法務局の方に委ねているというようなことになっております。   実際にあった例としましては,例えば出生届では医師の出生証明書を添付して届出をしてもらっているところですが,中には出生証明書を少し直してしまったりとかしたり,それから,母を,生まれてきたお子さんからするとおばあちゃんに当たる方に直してしまって,そういうようなところで,その母子関係に少し疑義があるというような場合,そのときにはその出生届をお預かりして,法務局の方にその実質的な審査の方を委ねて照会をするというような事例もあります。そうしますと法務局の方では,その出生届の母子関係の部分であるとか,その実態について,実際にその方のお宅にお邪魔したりなどして事実の関係を確認するというようなところを行っていると聞いております。   また,昨今では,平成22年に虚偽の養子縁組の取扱いに関する通達なども示されておりますが,そういったものであるとか,それから,やはり外国人との虚偽の婚姻というようなものも非常に増えておりまして,結構,警察からも照会を頂くことがあるのですけれども,そういった場面で,婚姻を審査するための要件,民法に規定されている要件は全て備わっているのだけれども,何か怪しいなというようなもの,そういったところなんかは,やはり実質的な部分を法務局の方に審査を委ねるために,受理照会というような形で照会をするというようなこともあったりします。したがいまして,市区町村と法務局の調査権の関係というのは,そういうような形になっているところでございます。   それから,質問等の現場で対応に苦慮した経験というところでございますが,実際,窓口でいろいろなお話をお伺いしなければならないというような場面は非常に多くて,最近,無戸籍者の問題などについてもそうなのですけれども,いろいろ御事情を結構深くお聴きしないと,法務局の方に照会をするに当たっても,その前提となるいろいろな資料等については市区町村の側でいろいろ御用意をして,それで照会に掛けるということになりますので,そういった場面においても御本人の方からいろいろなお話をお伺いして,書類を作成していくというようなことになりますので,中には余り話したくないような内容であったりとかする場面もあるのかなと思っております。ただ,その場合でも一応,お話を聴いてというようなところで,聴いた内容でこちらの方では書類の方を作成させていただいて,照会に上げさせていただいております。実際,市区町村の窓口でお話をお伺いしたものを上げたところ,結局,法務局の方ではまた違った話をされるというようなこともあったと聞いておりますので,できる限りのところでというようなところになるのかなと思っております。   以上が調査権についてというところになりますが,続きまして戸籍訂正についてお話をさせていただきます。   市区町村において戸籍訂正事由を認識する端緒についてですが,戸籍訂正になるようなものが,どういう場面で分かるのかというところになりますが,多くの場合,戸籍全部事項証明書であるとか個人事項証明書であるとか,そういった戸籍の証明書を御本人が請求されて取得した段階で,そのときに御本人等から,戸籍の記載に誤りがあるのではないかというような申出がありまして,それを端緒に戸籍訂正にというような場面が非常に多いのかなと思います。   そのほかには,戸籍法113条,114条,116条などの戸籍訂正の裁判が確定しますと,家庭裁判所の書記官から本籍地の市区町村長宛てに通知が来ることになっております。その通知で戸籍訂正があるのだなと認識するというような場面も時々あるかなと思っております。それから,届出の場面や証明書を請求されて交付する場面で,市区町村長側が申請書の内容等々から誤りがあるということを発見する場合などもあります。   そのほかには,ほかの市区町村や行政機関から戸籍法24条3項に基づきまして通知を頂くこともあります。それによって戸籍訂正が必要な誤記等が発見されるというような場面がありまして,例えば,ある市区町村で一つの戸籍を直したというような場面に,そこから,例えば転籍で別の市区町村に戸籍が動いているというような場合,基本的にはその誤ったままで新しい市区町村でも戸籍が編製されるということがありますので,そういうような場面などで,元のところで誤記の部分について戸籍訂正がされると,転籍先の新しい本籍地の方にも24条3項で通知をして,その通知に基づいてまた戸籍訂正を行うというような関係になっていくかなという場面もございます。   そのほかには,戸籍法116条の戸籍訂正,いわゆる確定判決に基づく親子関係不存在だとか,嫡出否認だとか,そういった戸籍訂正をすると,その後の身分行為をいろいろしていますと,それらの身分関係の戸籍の記載を正しい形に全部整序をするという訂正があります。そのような場合に,やはり116条の確定判決に基づく訂正によって,そういった関係する戸籍の整序というものが出てきますので,そういった場面というようなときに認識する場合もございます。   そのほかには,戸籍法の施行規則第41条や第43条などに規定されるような重複して届出をしたものであるとか,それから,戸籍の証明書を添付していただいていろいろな戸籍の届出をしていただくのですが,戸籍の全部事項証明書の添付というものの,取ってからどれぐらいのものを添付するのかというような規定はございませんので,そのタイムラグの関係で,例えば昨日,親御さんが転籍届をしている,しかし,その在籍している方が1週間前に取った戸籍の方を添付して婚姻届をされるというような場面もあったりします。そうしますと戸籍の記載が合わなくなるというようなこともありまして,こういうことによって最終的にはそれぞれの関連の届書がそれぞれの本籍地に行った段階でそれらのことが発覚して,やはり連絡が来て,通知が来て,それらの戸籍の訂正につながっていくというような場面もあるかなと思っております。   したがいまして,訂正事由を認識する端緒というようなことでは,いろいろなことが想定されますが,通常,窓口で戸籍の請求をして,関係人の方からここの部分が違っているよというような形で御指摘を受けてというようなところになることが多いかなと思います。   続きまして,市区町村が戸籍訂正があることを認識した後の一般的な手続の流れというところですが,戸籍法の第24条第1項におきましては,錯誤等の誤記等があった場合には関係人に通知をして戸籍訂正を促すという形で定められているところでございます。したがいまして,そういうようなときに,24条1項で原則としては関係人の方に通知をして,戸籍訂正をしていただくというようなところになっているのかなと思います。   ただ,この通知なのですが,では,全てのものについて通知をしているかというと,そういうものではなくて,実務の上では,先ほども申し上げましたように,窓口で御本人の方から御指摘を受けるというようなことが多いというお話をさせていただきましたが,そのような場合には通知等をわざわざ差し上げることなく訂正の方に入っていくというような形になっております。また,この通知も,ただし書がございまして,市区町村の過誤,要は市区町村に原因のある誤記等があった場合には,通知をすることなく次の2項の規定に動くというような形になっておりますので,そういうようなときには通知は差し上げないというところになります。   そして,それらの誤記等々が発見されましたら,その誤記がいつどういうものを基本に誤記になったのか,例えば婚姻届で戸籍が編製された際にその誤記が発生したというような場合には,その婚姻届書をまず確認させていただいて,その婚姻届書の記載と戸籍の記載を対照すると,そのそごが出てくる,そして,誤りが戸籍の方になるというような場合には,届書が基本的に正しいというようなところで,市区町村長限りの職権で訂正をするというような形になっていくというようなところで,発見されると,何に基づいてそれが記載されたか,いつそれが誤記したのかというところをまず見極めた上で,それに関連する資料,届書であったりとか関係戸籍であるとかそういったものを用意しまして,そこからいろいろな手続に入ると。中には,その届書のとおりに戸籍の方も記載されていて,それが誤りだったというような場合には,関係人の方に113条の戸籍訂正の審判を受けていただくような御案内をさせていただくこともあります。   また,先例の中では,昭和47年に出ている通達なのですけれども,届書などによってその誤記が明らかな場合は市区町村長限りで戸籍訂正をというような通達になっております。したがいまして,届書がもう既に保存年限が経過をして,ないような場合,そのような場合に,公簿としてそのほかにも戸籍受附帳というようなものがあったりしますので,そういったもので明らかと思われるような場合には,今度は2項で,管轄法務局の長の許可を得て戸籍訂正をしていくというような場面になったりするときもございます。   なので,流れとしてはそういうような形で,まず,その誤記等々の原因等を確認させていただく,そのためには関係する資料を用意するというようなところから始まって,その後の具体的な戸籍訂正の手続へ入っていく場合,又は関係人の方に家庭裁判所の方に足を運んでいただく場合などがございます。   それから,3点目の24条1項通知の運用の実態というところですが,どのような場合に24条1項通知をしているのか,同条2項による職権訂正が可能と判断した場合に限って通知をしているのか,そうではないのかというところ,またもう一つが,24条1項通知をする場合,届出人等に対してどのような通知をしているのかというところですが,正にこれはケース・バイ・ケースかなと思っております。   典型的なもので言いますと,刑訴法の498条第2項ただし書の規定による通知が来ることがございます。その場合には,婚姻が無効であるとの確定判決がなされていたりとかというようなことの通知になることが多いですので,そういった場合には,御本人宛てにこの24条1項の規定に基づいた通知を差し上げて,裁判手続をしていただいた上で,戸籍訂正申請をして,戸籍の訂正をしていくというような場面もございますし,そのほか,先ほどの戸籍法24条3項に基づいて通知を頂いた場合に,例えば氏などを訂正したというような通知を頂くことがあります。その場合に,氏というのは代々つながって引き継がれてきているものになりますので,現在の方たちの氏という部分もあったりとかしまして,親御さん又は祖父母のところの戸籍を直したとしても,その孫の代のところまで,氏がどうなっていくのかというところで,民法上の氏が婚姻をしたりとかすると基本的に変わるというような考え方もありますので,そういった中で現在のそのお孫さんたちの氏をどうするかというようなところ,御本人たちの意向なども確認をさせていただく意味も含めて,24条1項の通知を差し上げて,そういった意向の方も確認した上で訂正に入っていくというような場面もあったりします。   なので,ケース・バイ・ケースで通知をする場合,しない場合というのもありますが,御本人の意思を確認しなければならない,若しくは正しいものが何か判断が付かないというような場面,公簿の中にいろいろなパターンの記載があったりすると,どれが正しいのかが判断付かなかったりする場合とかもありますので,そういうような場合には24条1項通知,若しくはその前提としてのいろいろなお手紙を差し上げるというような場面もあったりとかします。   それから,四つ目ですが,法務局の許可を求める場合の典型事例,市区町村長限りでの職権訂正を行う場合の典型事例というようなところですが,先ほどもお話しさせていただきました戸籍法116条での確定判決による親子関係不存在であるとか,嫡出否認などの裁判が確定した場合で,その後の整序,身分関係のいろいろな移記が残ってしまうというような形のものであったりとか,そういうような場合も一応24条1項の通知をまずは差し上げるという形になります。24条1項の通知をすると,関係人の方から,これはどういう意味ですかというお問い合わせが大体入ってきますので,そうすると具体的に御説明をさせていただくのですが,そういうような通知ができない,又は整序をする意思が全くその関係人の方にないというような場合などは,24条2項で管轄法務局の長の許可を得て,その整序,要は身分関係をこちらのAの戸籍からBの戸籍に移記をするというようなものだったりとかしますので,そういうようなものについては,一応,現行法上は御本人たちに113条の戸籍訂正をしていただくという形になっておりますが,それをしない場合であるとかそういうような場合には,24条2項で管轄法務局の長の許可を得て訂正をするというような場面もあったりします。   最近では,重ねての養子縁組をなさっていた方々が,やはりそれらの縁組について無効というような確定判決を受けてくることがありまして,そういうような場合には,重ねて縁組をしているものですから,あちらの戸籍,こちらの戸籍の縁組事項を移記したりとか,そういうような場面も非常に多かったりとかしています。そのような場合も先ほどと同様に,113条の戸籍訂正まで行くこともなく24条2項で管轄法務局の長の許可を得て訂正をするというような場面も多々あったりとかするかなと思います。   そのほか,例えば生年月日が誤っていたというような場合,そのときに,47年の先ほどの通達に基づきますと,出生届書によってその誤りが明らかである場合は市区町村長限りで職権で訂正を行うというような形になっております。大体がこの出生の届書を確認するという場面のときというのは,例えばそのお子さんが学校に上がるとかそういったときになることがありまして,現在,戸籍の届書というのは,規定上,大体のところにおいては5年間保存するとなっておりますので,5年をすぎてそれが発覚するということになると出生届書がもう保管されていないというようなことになってきます。そうすると,先ほどの先例による,届書によってその誤記が明らかという場面には行き着きませんので,そうすると他の,例えば窓口で戸籍の届出がなされると戸籍の受附帳というものを作成した上で戸籍の記載に入っていくという形になっておりますので,その戸籍の受附帳の方にもやはり出生年月日というのが記載されております。公簿である戸籍受附帳の方にはそういったことで出生年月日が記載されていて,それによって戸籍の誤記が明らかというような場合も中にはありまして,そういうような場合には届書がございませんので,やはり原則どおりの管轄法務局の長の許可を得て戸籍訂正をしていくというような場面もあったりします。   それから,戸籍訂正の実務において困っていることというところですが,戸籍関係の証明書を取得した際などにその誤記を発見された場合,そのような場合というのは何らかの手続で必要というようなことから,その戸籍の全部事項証明書等々を必要とするというようなところで請求される場合が多いわけですので,その先の手続が進まないというようなところが出てきます。そのため,戸籍訂正は速やかに行わなければならないところなのですが,今までもお話ししてきましたように,いろいろな確認をしたり,それから,届書がもう保管されていないというようなところから,家庭裁判所の方を御案内せざるを得ないというような場合もあったりとかして,戸籍訂正で正しい記載に持って行くまでの時間が非常に掛かるというようなことも多々ございます。そういった場合に,訂正の根拠となるいろいろな資料等々がなかなかそろえられないというようなところ,一方では早く正しい戸籍の方を御用意しなければならないというようなところと,そういったところのせめぎ合いみたいなところもございまして,そういったところでは非常に苦慮している場面というものが多いかなと思っております。   また,公簿等にそういった根拠資料が見られないような場合などにつきましては,結果,関係人の方に裁判所の方で正しいものを認定をしていただくためにも,裁判をしていただかないとならないのですが,そういった御案内をしますと,何で俺がというようなところでお話を頂くというようなことも非常に多かったりします。その辺のところで,戸籍訂正のときには速やかに処理をしなければいけない反面,手続に少しお時間が掛かるというようなところもあったりとかして,そういった場面では非常に苦慮しているというようなところになるかなと思っております。   最後に,戸籍法改正に望むことということで,調査権,戸籍訂正を中心というところなのですが,調査権につきましては,現行の市区町村の立場としては形式的な審査権というところを維持していただきながら進めていただくといいのかなと思っておりますし,また,戸籍訂正の場面については,少しでも戸籍訂正の事務手続が簡素化されて,根拠となる資料等々も,どういう形で届書の保管がなされていくのかという部分も少しあるかなと思うのですが,そういったところで,手続が少しでも簡素化されて速やかな戸籍訂正処理ができるような形になるといいのかなと思っているところでございます。   雑駁ではございますが,以上,私の方からお話の方をさせていただきました。 ○窪田部会長 髙橋参考人,どうも本当にありがとうございました。調査権,それから戸籍訂正については,この審議会の中でもいろいろ議論をしてきているところではございますけれども,本日,参考人から具体的な例を挙げていただきながら詳しく御説明を頂いたことで,問題の所在や,具体的な流れを理解することができたかと思います。   せっかくの形でこういうふうに御説明を頂きましたので,委員,幹事の皆様方からも何か御質問等がありましたら御発言を頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○磯谷委員 磯谷です。ありがとうございます。   最初の1の(3)のところの確認なのですけれども,質問等の現場で対応に苦慮した経験というところですけれども,先ほどのお話を踏まえると結局のところ,窓口でいろいろと話したくないものも聴かなければいけないというところがあって,そのお答えを得るのに苦慮されているという趣旨なのでしょうか。 ○髙橋参考人 はい,中にはやはりお話しされたくないというような方もいらっしゃるのは事実で,無戸籍者の問題なんかでいろいろな出生のときのことを確認したりとかするときもなかなかお話しいただけないというような場合も中にはあったりとかしますので,そういうところをうまく引き出していくというようなところで非常に苦慮している場面というのは多いのかなと思っています。 ○磯谷委員 ありがとうございます。 ○窪田部会長 よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。 ○川島委員 今日は御説明,ありがとうございました。   戸籍訂正について1点,お聞かせいただけたらと思います。今の法律の下で,戸籍訂正事由が市区町村長の過誤によるものであるときは,届出人への通知を要せずに職権による戸籍訂正手続を行うことが可能になっているというケースについてなのですけれども,御本人の知らない間に自分の戸籍が訂正をされているということを後で知った場合に,前に取り寄せたものと現に取り寄せたものとの違いについて,例えば問い合わせがあったりだとか,あるいはそういうことを通知しなかったということに対して,例えば何らかの苦情のようなことが起き得るものなのかどうなのか,その辺のところを御経験に照らして教えていただけたらと思います。 ○髙橋参考人 基本的に,御案内を差し上げる場合と差し上げない場面というのがあるというお話をさせていただいたのですが,多くは,例えば氏や名前の字体が違っているというようなことで,お名前の字体というのはなかなかその方,その方によって非常にこだわりをお持ちの方もいらしたりとかして,そういうようなところが,先ほども言ったように,元が直ったことによって全部通知が来て直していくというような場面になったときに,御本人宛てに一応御案内をするのですが,その後に,やはり代々つながっているようなものになると,そのときの御案内はしていたとしても,そのお孫さんであったりとかそういうようなところで,その訂正の経過が全然分からないというような場面もあったりしたとき,どういうことなのだろうかというようなお話を頂くというようなことも時々あったりします。   ただ,その場合には,もう戸籍に記載されているものがそのものでしかないので,当時の資料というものはもうなかったりしますので,そのときの状況にもよりますが,どうして訂正をしたのかというようなところを御案内する場面というのもありますが,基本的にそのときの,いつのものなのかとかいうようなところで,資料が残っていればそれに即した説明をさせていただいたりとかしますが,なければもう分からないので,その旨お話をさせていただいて,御理解を頂くというようなこともあるかなと思います。   ただ,これも本当にケース・バイ・ケースで,実際そういうお話を頂いたりとかすることも過去にはやはりありましたので,そういったときにはそういうところで,訂正の資料が残っていればそれらの確認をしていくというようなところもありますし,それから,事例としてはやはり,文字の関係だったのですが,文字の関係で訂正をしてあったのを,戸籍を見て御本人の方から,これはどうして訂正をしたのだろうかというようなところでお話を頂き,それはその訂正をしたときの資料が残っていましたので,その資料を確認したところ,御本人からの申出で直してあったというようなところがありました。そういうようなこともあったりしますので,お話を頂くという場面は非常に,全くないということではないですが,時々そういうことでお話を,戸籍の記載を見て訂正の方がされていることによって,これはどうしてなのだろうかというようなところでのお話を頂くということは時々ございます。苦情にまでにはならなかったりとかすることが多いのですが,それほどそれに対してどうというようなところは余りないのかなと思っております。 ○窪田部会長 よろしいでしょうか。   私の方からも一つ質問をさせてください。字体の問題というのは比較的分かりやすいのですが,字体の問題以外でそうしたことについて問い合わせを受けるというようなことは,実務上あるのでしょうか。 ○髙橋参考人 事例が思い浮かばないですが,全くないかというと,そんなことはないかなとは思います。 ○窪田部会長 ほかに,いかがでしょうか。 ○落合幹事 私の方から聞くのはおかしな感じもするのですけれども,1点,最後のところで課長補佐がおっしゃっていたのは,実質的な審査の方は,なかなか市区町村ではというようなことで,要は法務局の方にというような趣旨でよろしいのでしょうか。その辺を少しお話頂ければと思いますが。 ○髙橋参考人 審査権,調査権につきましては,市区町村の窓口で実質的なところまで踏み込んだ審査をするというのは非常に難しいものがありますので,現行の取扱いの状態で維持をしていただければと思っているところでございます。 ○窪田部会長 ありがとうございます。 ○大橋委員 同じ点なのですけれども,今日の御説明の中で,市区町村は形式的審査権,法務局は実質的調査権と,両者があいまって調査権を行使しているという役割分担があるというお話しだったのですけれども,これは大田区に限らずに全国の市区町村でそういう運用がされているという理解で正しいのかという質問です。そうだとしますと,今回の改正で,窓口に調査権を置けばいいというのが普通の法システムなのに,そのほかに法務局の方に置くという点を問う意見が多分あると思うのです。そのときに,この行政分野の特色として,そういう役割分担があって,両者を含めての調査権ですということになるとすれば,やはり法務局の方にも調査権の何らかの規定がないと対国民との関係でおかしいという気もします。役割分担の話というのは調査権を考える上で大事なのかなと思いましたので,そこの点をお聞きしたいところが1点目です。あともう1点は,通知をするという場合の話で,大半は御本人からの面談というか,口頭の中で行われているという話だったのですけれども,もう一つ,他機関からの連絡があった場合ですが,その場合は必ず通知はしているということで,そこでの省略というのはないでしょうかという,この点も教えていただければと思います。 ○髙橋参考人 まず最初の方の審査権のお話,調査権のお話ですが,例えば現在,形式的な審査権というようなところで,いろいろな創設的な婚姻届であるとか養子縁組届であるとか,届書に記載すべき事項を記載して,戸籍法の中で定められている記載事項を記載して届出がされているかどうか,そして,その婚姻の意思があるかどうかというのが民法の方の規定にもありますので,そういったところを審査して,その婚姻届であれば婚姻の要件審査をして,受理をする,しないということを審査しているわけですが,例えば意思確認というものについても,形式的な審査権であればこそなのですが,意思があるのかどうか,戸籍の届出は本人出頭主義を採っておりませんので,使者の方がお持ちになる場合もあるし,どちらか一方の方がお持ちになる場合もありますので,そういったときには,その届出人の署名,押印でその意思を窓口などでは審査をして受理を決するというようなところになっております。   これが実質的な審査というところになると,その意思確認の部分,この署名は誰がしているのかとか,その意思を確認するというところが非常に難しいというようなところも出てくるのかなというようなところで,やはりその辺のところ,それで,そういうところに疑義がある場合に,管轄法務局の方にそこの辺の意思の確認をしていただくために受理照会をしていくというような切り分けになっておりますので,これはうちだけではなくて全国的にそういう形でなっておりますので,そういう取扱いというところになるかなと思います。   それから,もう1点の通知の関係ですが,ほかの行政機関から来たいろいろな通知,例えば入管から来る場合もありますし,いろいろなところから,同じ市区町村から来るような場合もありますが,そういったときに通知を必ずしているかというところですが,やはり基本は通知をするところなのですが,ケース・バイ・ケースで,さして影響のないようなものだったりとかすると,例えば本籍の地番号というのは何番地幾つという枝番が付いていたりとかするものがたまたま漏れていたりとかするというような場面もあったりします。そういうようなときにまで御本人宛てに通知を差し上げるというようなことはしていないのが実際のところかなと思っていまして,入管からのいろいろな手続で分かったような場面のときには御本人に確認をするという意味もあったりとかして,通知を差し上げることが多いかなと思っております。 ○窪田部会長 ありがとうございました。大橋委員,よろしいでしょうか。   ほかの委員,幹事の方からは何か御質問等はありますでしょうか。 ○新谷委員 後の調査権のところで話をしようかと思いましたけれども,今,髙橋参考人の方から,法務局の調査ということですので,若干,経験を交えて話を少しさせていただきたいと思うのですが,法務局に対して市区町村の方から,例えば先ほど言った出生届の受理伺いがされるという場合は法務局で具体的な調査をするのですが,その調査方法について若干,説明をさせていただきたいと思うのですけれども,出生届は先ほど,先例でということがありましたけれども,学齢に達した子供の場合だとか,出生証明書がないだとか,50歳以上の女性だとか,いろいろな基本的な先例があります。これは六法にも207ページの49条のところの参考先例で載っておりますので,そこの先例に基づいて大体,市区町村の方が法務局に受理照会というのを上げてくるというのが実際です。   特に,学齢に達した子供の場合は,親御さんが何らかの事情で出生の届出を怠っているというケースが非常に多いのですけれども,どういうことで発覚するかというと,一般的には,今までの経験からすると,事件本人であるお子さんがパスポートの申請をしたいということで戸籍の証明書を請求した,ところが戸籍にはないということが判明するのが多いと,いわゆる今でいう無戸籍という事例が多いと思います。この場合は基本的には出生証明書も添付がないというケースですので,受理照会です。受理照会を受けた法務局では届出人等に対して,出生証明書に代わる証明が何かないかとか,例えば母子で写っている写真等がないかとかいうようなことで,それがあればお出しくださいということで実子の判断をすると。それでも実子の判断ができないというときは,より具体的な調査方法として,法務局の職員が現地に赴く,現地に赴くというのは2通りありまして,一つは出生届書のところに生まれた所,いわゆる出生の場所が書いてありますので,その出生の場所に赴いて,その近隣の方からいろいろ話を聴くと,その調査する場所が,例えば東京局以外の県外だとすると,その法務局の方に,A法務局からB法務局の方に調査嘱託というような形をして,こういう照会がされて,こういう届出の内容について出生の事実,母子関係の事実について調査してほしいという形で,その現地局から直接行ってもらって,御本人に間違いないというような形があって初めて,分娩の事実が確認できたのでこの出生の届書は受理して差し支えございませんということで市区町村長に指示を行うというケースが法務局,ですから,先ほど髙橋参考人が言われたように,形式的な審査権と実質的な審査権と分けると,法務局の方ではそういう意味では実質的に現地に赴いたり,調査嘱託ということでやったりというようなことでやっているというケースです。   全体的に,来る前にこの件数を調べてみたのですけれども,昭和60年が全国的に,これは戸籍誌という雑誌に載っていますけれども,昭和60年は全国で4,682件,平成7年が6,103件,平成17年が4,423件,直近で出ている数字では平成28年の2,133件と意外と多い,その4分の1ぐらいが出生届に関する受理照会という形があるということです。何か参考になればということでお話しいたしました。 ○窪田部会長 ありがとうございました。実質的審査,法務局の方の審査についても御説明を頂いて,イメージがよくつかめたかと思います。   ほかに御質問等はありますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,本日は髙橋参考人,お話を頂きましてありがとうございました。大変に参考になりました。それでは,参考人には御退席を頂きます。どうもありがとうございました。   それでは,続きまして「戸籍事務へのマイナンバー制度導入のため更に検討を要する事項」について御議論を頂きたいと思います。   まず,部会資料9の「第1 市区町村及び法務局の調査権について」,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○遠藤関係官 それでは,部会資料9,第1につきまして順次,御説明を差し上げます。   まず,1でございますけれども,こちらは市区町村の調査権についてということでございます。(1)で中間試案の概要及びこれに対する意見を簡単におさらいの意味でまとめさせていただきました。中間試案におきましては,届書の記載事項や添付資料についての質問を初めとした届出の受理全般に関する質問については,法律及び規則について明確な根拠規定が置かれていないと,そういった現状を踏まえまして,国民に対して明確な根拠規定を示し,届出審査に係る事務処理を円滑に進めることができるようにしておくことが望ましいという考え方から,届出又は申請の処理に当たって,任意調査の範囲内において届出人その他の関係者に対して質問又は文書の提出の要求をすることができる旨の規定を設けるものとするという提案をお示ししたところでございます。この中間試案に対しましては,様々な関係者に対する負担を懸念する意見,あるいは調査の方法,限度,調査の範囲等について明確な規定振りとすべきであるなどといった意見が寄せられたところでございます。   これらを踏まえまして,事務当局において再度検討した結果というものが2ページの(2)というところでございます。基本的には中間試案での考え方と今回の資料で考え方を変えたというところではございません。現行法の下でも行われている資料提出の求め,あるいは質問につきまして,法律上の根拠規定を設けるということを目指しているということでございます。これに伴いまして市区町村職員の職責の範囲を広げたりであるだとか,あるいは届出人その他の関係者に対して,調査に応じなかったことに対して何らかのサンクションを設けるといったことは想定はしていないというところでございます。他方,調査権の範囲について明確にすべきではないかといった意見も頂いておりますので,それらを踏まえて,可能な限り調査権が機能する場面について明確に規定するということが必要なのではないかというように考えておるところでございます。   そこでということで,ゴシックのところでまとめさせていただいておりますけれども,市区町村長は,届出又は申請がされた場合において,この法律の規定により届出人又は申請人が明らかにすべき事項が明らかにされていないと認めるときに,調査権,質問,文書の提出を求めることができる旨の規定を設けるという提案をさせていただいたところでございます。   引き続きまして,2,法務局の調査権についても併せて御説明を差し上げます。こちらも(1)は中間試案の概要と意見を改めてまとめさせていただいたものでございます。法務局の調査権につきましては,市区町村長から受理照会と呼ばれる照会を受けた際に,市区町村長に対する指示等を行うために必要な範囲で,関係者に対して資料,それから任意の質問調査等を行っているというところでございます。こちらの法務局の調査権につきましては,こちらも現在,法律上の根拠規定は置かれておりませんので,何らかの規定を設ける必要があるのではないかということで,中間試案を示したところでございます。これに対しては,実質的審査権の拡大につながるのではないかといった懸念等,あるいは現在,規定がなくてもできているものなのであれば,改めて規定を設ける必要はないのではないかといった意見も頂いておるところでございます。   (2)考えられる規定というところでございますけれども,こちらも基本的には中間試案の考え方と何か変更したということではございません。従来の調査権の範囲について変更を生じさせるという趣旨での改正ではなく,飽くまで現在の実務の運用について明文の法律上の根拠を規定するということが望ましいであろうという発想でございます。また,こういった根拠規定を設けることによって,国民に対しても法務局が調査をする根拠が示されることになりますので,調査を受ける側にとってもある程度,どういう根拠に基づいて質問を受けることができるのかということも認識することができますし,そういった規定があることによって,届出審査に係る事務処理を円滑に進めることも可能になるのではないかというように考えております。   こちらの法務局の調査権につきましても,どういった場面で調査権が機能するのかということを規定上明確にするということが必要になってくるかと存じますけれども,この点につきましては,必ずしも法務局の場合は,市区町村長のように届出あるいは申請等がきっかけとなってということではございませんで,先ほど申し上げましたとおり,受理照会というものがきっかけとなって,そこで必要な指示等を行うために法務局において実質的な調査を行うということでございますので,そういった観点から,こちらもゴシックでまとめておりますけれども,中間試案と同様の表現ぶりになっておりますが,市区町村長からの照会を受けた場合,その他,法第3条第2項の指示等を行うに当たり必要があると認める場合に,届出人,申請人その他の関係者に対し質問,文書の提出を求めることができる旨の規定を設けるものとするということで,考え方をお示ししているところでございます。   (注2)と(注3)につきましては,これまでの部会の議論等でも何度か話題に上ったところかと思いますけれども,いわゆる調査権の内容といいますか,内心の意思に及ぶような調査が行われるのではないかという議論に関するものでございます。この点につきましては,(注2)のところにお示ししておりますけれども,基本的には現在の実務運用を踏襲しまして,戸籍面上から把握することが可能な外形的な事情によって,届出に対応する意思を欠くことを疑うに足りる相当な理由がある場合に限って調査権が限定的に行使されることを実務上明確化するというような考え方に従いまして,基本的には内心の意思に及ぶような調査につきましては,御懸念のような内心の意思の調査を拡大するというようなことはないようにしたいと思っております。   (注3)につきましては,これは関連する最高裁の判例ということで,届出意思といいますか,ここは養子縁組の例でございますけれども,昭和23年の最高裁の判例によりますと,縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があったとしても,それが他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないときには養子縁組は効力を生じないという判断が示されたところでございます。他方,最近出された平成29年の最高裁の判例でございますけれども,こちらは相続税の節税目的と養子縁組の縁組意思との関係についての判例でございます。こちらは,専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について当事者間に縁組をする意思がないときに当たるとすることはできないというように判示をしておりまして,こういった最高裁の判例等も踏まえまして,適切な調査の範囲等について引き続き適切な実務運用を図ってまいりたいと考えておるというところでございます。   第1につきましての説明は以上でございます。 ○窪田部会長 ありがとうございました。中間試案でのパブリックコメントを踏まえつつ,基本的にはこの問題に関して中間試案で示された方向を維持しつつ,やや補足的な説明も付け加えていただいたものかと思います。この点について,まず,御質問,御意見等を伺えますでしょうか。 ○川島委員 ありがとうございます。今御説明いただいた内容について,基本的に賛成の立場で,1点,質問をさせていただけたらと思います。   パブコメなどでも,任意調査の範囲の拡大につながらないようにといった懸念の声があって,その点,市区町村の調査権については中間試案に対して補強がなされておりますけれども,一方,法務局の調査権についてはほぼ中間試案のままということになっておりまして,その点について補強をする必要があるのか,ないのかだとか,御検討に当たっての経緯なども教えていただけたらと思います。 ○窪田部会長 事務当局から御説明お願いします。 ○遠藤関係官 御指摘のとおりでございまして,市区町村のところにつきましてはパブリックコメントでの意見あるいは部会での御議論等を踏まえて若干,事務当局の方で改めて案を示させていただいたというところでございます。他方,法務局の方も同様な形で何らかの規定の見直しといいますか,中間試案で示した案の見直しができないかということも考えてはみたわけではございますけれども,やはり法務局の,まず,調査の発動する場面というのが,受理照会を受けた際に,その照会に必要な範囲でということにどうしてもなる,それ以上の説明がなかなか難しいということでございますので,ほかに適切な表現がなかなか見当たらなかったというのが率直なところでございます。また,調査の範囲,何を対象とするのかということにつきましても,これも正にケース・バイ・ケースということに,結局のところは,ならざるを得ないのかなと思いまして,そういう意味で,指示を行うに当たり必要があると認める場合というところで,過度な調査には及ばないようなという意味での限定をしているというつもりではあるのですけれども,それ以上,具体的に,こういった形で調査権の範囲を限定しましたというような案を,現時点でなかなかいいアイデアが浮かばなかったというところでございます。 ○川島委員 ありがとうございました。 ○窪田部会長 今の点に関連してでも結構ですし,ほかの点でも結構ですが,いかがでしょうか。 ○大橋委員 今回,内容は基本的には変えていないということでしたので,確認の意味なのですけれども,結局,どういう場合に調査権を使うかという場面を明らかにして,調査権の行使に当たっては,これは今までも何回も議論した点ですけれども,法律の掲げる目的に合ったものでなければ駄目ですよということと,必要範囲を越えてはいけませんという必要性の限定は掛かるのだということを日本語で少しやわらかく表すと,こういう形になったと私は読んだのですけれども,そういう理解でよろしいのでしょうかということです。今日,先ほど実務の方から御説明を伺って,法務局の調査権の実態というお話をかなり聞いて,先ほど補足の説明で,年間6,000件とか4,000件とかという件数で国民に対して法務局の方が出ていって,やっているというものが,法律上何も根拠がないというのは,やはりかなり問題はあるなということは,今日また思いを新たにしました。やはりこういう形で足場をそえると,現場で実務されている方も心強いのではないかなという,これは感想ですけれどもそのように思いました。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。後半はコメントということで,前半については大橋委員から,そのような理解でよろしいのかという御質問が含まれていたかと思いますが,どうでしょうか。 ○遠藤関係官 正に御指摘いただいたとおりでして,事務当局の趣旨としては,大橋委員の前半部分のお考えのとおりでございます。正に後半の部分が我々の問題意識というところでございまして,実際の現場で行われている調査等について,やはり何の法律上の根拠も置いていないというのは,対国民との関係でも余り適切な状況ではないだろうと考えておりますので,そういった意味で,いろいろと御議論はあろうかと思いますけれども,こういった規定を設ける方向で考えていきたいと考えている次第でございます。 ○窪田部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。   なお,今後のスケジュールを私の方から御説明させていただいてよろしいでしょうか。法制審議会は今日を除いてあと3回,すでに予定が入っていたかと思いますが,特段の事情がなければそれで取りまとめということになるのだろうと思います。法制審議会についてはいろいろな進め方があるだろうと思いますが,恐らく最後の少なくとも1回,たぶん2回ぐらいは最終的な要綱案の取りまとめをするということになると思いますので,今日を含めて,提示していただいた部分については,特にゴシックの部分については,最終的な要綱案に向けて,そろそろかなり厳密に詰めていかなければいけないという段階なのだろうと思います。その点も含めまして,場合によっては細かい表現も含めて御意見を伺えればと思っております。 ○畑委員 私も全般的にはこういう根拠規定を置くというのは適切だろうと思いますし,どういう場合かということを明らかにするという努力もできるだけすべきだろうと思っております。文言について言えば,市区町村長の方,ゴシック体だと,明らかにすべき事項が明らかにされていないと認めるときということになっていて,これは現行法の10条の4を参考にしたものだろうと思います。私自身が意見を申し上げることはできないのですが,この文言が現状で行われている市区町村レベルでの質問なりをしている場合を過不足なく表しているのかどうかということについては,現場の方の意見も踏まえつつ御検討いただければと思っております。 ○窪田部会長 今の点についてはいかがでしょうか。この法律の規定により届出人又は申請人が明らかにすべき事項が明らかにされていないということについての質問というのは,先ほどの御説明との関係で言うと,形式的審査権の範囲を示すということなのかもしれませんけれども,それがうまく表現されているのかという点の御質問を含むものだったと理解しております。これについて,事務当局からは何かございますでしょうか。 ○遠藤関係官 御指摘ありがとうございます。正にこのゴシックの参考にした条文は,今,畑委員の方から御指摘のありました戸籍法10条の4というところを参考にしたところでございます。こちらにつきましては,今回の部会での資料で御審議いただくに当たってたたき台として示したものでございまして,事務当局としてこれで行きたいというふうに,そこまで固まっているというものではございません。今,御指摘のあったところも含めて,適切な表現ぶり等につきましては,法制的な観点からの検討も必要になってくるかと思いますし,あるいは実質としても,こういった表現で適切なものかどうかというのは,是非ともこの場でも御審議いただきたいと思っておりますし,我々の方としても引き続き考えなければいけない論点であろうと認識をしております。 ○窪田部会長 ありがとうございます。恐らく形式的審査,実質的審査の振り分けという大きな枠組みについては特に強い異論はないのかもしれませんが,それがうまく書き表せているのかどうかという点については,もう少し検討が必要なのかもしれないとして理解いたしました。   その他,いかがでしょうか。   私の方からも1点,よろしいでしょうか。法務局の調査権について,「市区町村長からの照会を受けた場合その他」とあるのですが,その他としては具体的にどんな場合ということになりますでしょうか。 ○北村幹事 先ほどお話が出ていましたけれども,無戸籍の関係でも法務局の方でもいろいろな調査等を行います。その場合に,届出がないので,受理照会という形ではなく,情報を頂いて法務局の方で積極的にいろいろアプローチをし,調査をしているという現状にございますので,そういった点は入ってくるかなと思っています。 ○窪田部会長 なるほど,分かりました。   ほかにいかがでしょうか。   ありがとうございました。それでは,一旦ここで休憩をさせていただきまして,後ろの時計で,2時55分から再開とさせてください。後半の議論で,更に2の戸籍訂正を扱いたいと思いますが,必要があれば第1の部分に戻って御議論いただきたいと思います。それでは,一旦休憩を頂戴いたします。           (休     憩) ○窪田部会長 それでは,時間になりましたので,後半,法制審議会を再開したいと思います。   それでは,「第2 戸籍訂正について」,1,中間試案の概要及びこれに対する意見,それから,2,検討の途中まで,(1)と(2)までのところで一旦区切りたいと思いますので,そこまでの部分について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○遠藤関係官 それでは,「第2 戸籍訂正について」ということでございますけれども,4ページの1,中間試案の概要及びこれに対する意見というところで,若干議論が複雑といいますか,いろいろな論点を含むところでございますので,若干詳しめに補足説明,それから中間試案の内容をおさらいという形で記載,まとめさせていただきました。   まず(1)ア,戸籍訂正手続の現状というところでございますけれども,現行法,法律及びそれに伴う通達等も含めてということになりますが,手続としては主として,まず,家庭裁判所の訂正許可審判の手続が必要となる戸籍法第113条又は第114条の訂正許可審判による戸籍訂正手続,それから,確定判決が出たことに伴いまして訂正が必要となる場合について規律をしております戸籍法第116条の確定判決による戸籍訂正手続,それから,戸籍法第24条第2項の管轄法務局長等の許可を得て行う職権による戸籍訂正手続という三つの手続が法律で規定されております。これに加えて,戸籍実務上,身分関係に影響を及ぼさないような軽微な事項について,戸籍面上誤記・遺漏があることが明白な場合の一定の類型については,市区町村長限りでの戸籍訂正手続が認められていると,こういう現状でございます。   これら四つの手続の関係につきましては,まず,家庭裁判所あるいは確定判決に基づく訂正手続,当事者からの訂正の申立てを受けて行う戸籍訂正,先ほどの分類でいきますと①と②という,この手続が原則という建て付けになっております。そういったこともありまして,市区町村長としては戸籍訂正事由を発見した場合にあっても,まずは届出人等の関係人に適切な手続をとるようにという趣旨で事前の通知をすると,そういう規律になっておるところでございます。併せて,家庭裁判所の訂正許可審判による戸籍訂正手続と確定判決による戸籍訂正手続の関係につきましては,法文上明確な切り分けがされていないと,そういった現状でございます。   これらの現状を踏まえまして中間試案でお示しした考え方としまして,まず,裁判所の手続を経なければいけない戸籍訂正手続ということで①と②,それから,裁判所の手続を経なくても職権で訂正が可能である③との関係につきましては,戸籍事務へのマイナンバー制度導入によりまして,国,法務大臣においては連携情報の整備等を行うということが検討されておりますけれども,その前提として,できるだけ迅速に戸籍の訂正を可能とすると,正確な戸籍の記載を実現する必要があるであろうという問題意識がまず一つございます。また,訂正許可審判手続を経なくても戸籍の訂正事由があることが明らかだということもありますけれども,こういった場合についても家庭裁判所の手続を経なければならないということがどこまで合理的かという,そういった問題点もあろうかと思います。こういったことを踏まえて,③の職権による戸籍訂正手続を認めるべきではないかという考え方を示したところでございます。   また,これと関連しまして,職権による戸籍訂正ができる場合の中でも,身分関係に影響を及ぼさないような軽微な事項について戸籍面上誤記・遺漏があることが明白な一定の類型につきまして,戸籍実務で今現在運用として行われております市区町村長限りでの職権訂正について法律上の根拠規定を設けるということを提示したところでございます。また,裁判所の手続を経る戸籍訂正の関係,①と②の関係ということにつきましては,人事訴訟手続において判断されるべき事項につきましては基本的には訂正許可審判によらないという形で整理をしてはどうかという考え方を示したというところでございます。   こういった考え方に対しまして,(2)で中間試案に対する意見等ということで,いろいろと多数の意見を頂いておりますけれども,賛成意見もございましたけれども,やはり一定の反対の意見というのもございました。特に,③職権による戸籍訂正手続と裁判所の手続を経る戸籍訂正手続,①,②との関係につきましては複数の意見が寄せられておりまして,その意見の概要の詳細につきましては前回までの部会資料等を参照していただければと存じますけれども,その意見の内容を分析しますと,基本的には管轄法務局長等の許可を得て行う職権による戸籍訂正というのが一体どういう場面で機能をするのかというところが十分整理できていないことに起因して,いろいろと御心配,御懸念等の意見が示されたと受け止めたところでございます。この点につきましては,この部会での調査審議におきましても複数の委員,幹事の先生方から同様の指摘を頂いていたところでございます。部会資料におきましては,改正後にどういった新たな規律を設けるのかといったことも視野に入れながら,改めて各種,戸籍訂正手続の関係について整理を試みたというところでございます。   6ページの2,検討というところでございまして,まず,この各種戸籍訂正手続の関係を整理するに当たっての視点ということで,(1)に注意的に記載しておりますけれども,以下の検討に当たっては,まず(ア)として戸籍訂正の内容,具体的には訂正に係る事項が身分関係に影響を及ぼすものであるかどうか,あるいは訂正に係る事項が人事訴訟において確定されるべきものか否か,加えて訂正に係る事項が軽微なものかどうかという,この訂正の内容に着目して考え方を整理をしたということと,もう一つ,(イ)として訂正事由の明白性と記載しておりますけれども,訂正事由のあることが市区町村において客観的に明らかかどうかという,この二つの観点から各種の戸籍訂正手続を分類するのが相当ではないかということで検討したところでございます。   (2)以下がその具体的な各種の手続との関係について検討したところでございますけれども,まず(2)は家庭裁判所による訂正許可審判を経て行う戸籍訂正手続と,確定判決が出されことに伴いまして行われる戸籍訂正手続との関係でございます。これらはいずれも裁判所の手続を経る必要があるという点において共通しておりますけれども,これまでの部会での調査審議等におきましては,戸籍訂正の内容に着目して,人事訴訟によって戸籍の訂正をすべき事項については訂正許可審判の対象とはしないという方向性で議論が進められておりまして,この点については特段の異論が見られなかったと認識しております。基本的には中間試案でも反対意見等を頂いておりませんので,この方向で考えていきたいなということで,事務当局として改めて検討を進めたところでございますけれども,その中に1点だけ,これまで人事訴訟事項ということに着目をして議論を頂いていたところでございますけれども,6ページの下から5行目,下線を引っ張っておりますが,116条の戸籍訂正ですね,確定判決による戸籍訂正が機能する場面として,人訴事項以外に一つ考えられる類型として,出生による日本国籍取得の確認判決が出た場合の戸籍訂正というのがあるのではないかという検討に至ったところでございます。   この出生による日本国籍取得の確認判決というのが若干分かりづらいところではございますが,出生当初は日本国籍を持って戸籍に記載をされているという方がいらっしゃったとして,その後,自己の志望により外国の国籍を取得するとそういった事態が生じますと,これは国籍法上,自己の志望により外国の国籍を取得した者につきましては日本国籍を喪失するという規定がございまして,これによって日本国籍を失い,戸籍から除かれるという場面がございます。ただ,自己の志望による国籍の取得というものの中には,例えば法定代理人が外国で所要の手続を行いまして外国籍を取得するという場面も含まれてございますけれども,必ずしも日本国籍が失われるということを意識してそういった手続をとられるという方が全てかというと,場合によってはそうではないというケースがございまして,その日本国籍を喪失したことを事後的に争うという類型がございます。仮にこういった形で日本国籍の地位確認の訴えが提起されまして,その認容判決が確定をしますと,一旦,日本人として生まれて,自己の志望により外国籍を取得し,日本国籍を喪失したことによって戸籍から除かれるということになるわけでございますけれども,その後,日本人の地位確認判決を得たことによって,その戸籍に除かれたのが間違いであったということで,戸籍を除籍したことについて戸籍の訂正をするということが考えられるかと思います。こういった場面を考えますと,116条によって戸籍訂正を行うべき場合というのが必ずしも人訴対象事件に限られないのではないかということに,検討の末,至ったというところでございまして,それも含めた形で113,114条の訂正許可審判と確定判決による戸籍訂正,116条との関係を整理する必要があるのではないかという考えに至ったということでございます。   以上を踏まえまして,7ページの冒頭のところでゴシックで記載しておりますけれども,方向性としましては,113条,それから114条の戸籍訂正許可手続については,確定判決によって戸籍の訂正をすべき事項は対象としないものとするという考え方をお示ししたところでございます。ただ,具体的な規律の在り方につきましては引き続き検討する必要があろうかと考えておりまして,例えばということで事務当局の仮の案をお示ししたところではございますけれども,こういった規定ぶりが妥当なのかどうかも含めて,この部分についての御意見,御審議を賜りたいと考えております。   もう一つ補足しまして(注7)でございますけれども,こちらもこれまでの部会での議論の中でも何度か話題に上ったところかと思いますが,刑事事件において戸籍に不実の記載,記録がされたことについて公正証書原本不実記載罪等の確定判決がされたと,これによって偽装婚姻等が刑事事件で確定したというような場面において,市区町村長が検察官からその旨の通知を受ける,24条3項の通知を受けるという場面があろうかと存じます。この場合につきましては,偽装婚姻ということであれば婚姻について戸籍の記載がされているわけでございますけれども,理論上は116条の対象といいますか,人事訴訟において確定すべき事項ということに当たろうかと思うのですけれども,刑事事件においてそういった偽装婚姻である旨の判決が出されたということが市区町村長の方において把握されたということであれば,それは戸籍の訂正事由があることが明らかであると市区町村において判断するということも許容されるのではないかという考え方に基づきまして,その点につきましては後の職権での戸籍訂正の問題として整理することができるのではないかということで,事務当局としての考え方をお示ししたところでございます。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   それでは,後半の戸籍訂正でございますけれども,①,②,③,更に④ということになろうかと思いますが,幾つかのタイプのものがあるうち前半と後半を分け,議論の多い①,②と③との関係に関しては後ほど扱わせていただきたいと思います。ここではまず,①と②の関係,訂正許可審判による戸籍訂正手続と②の確定判決による戸籍訂正手続の関係について御説明を頂きました。その中では,中間試案では専ら人事訴訟ということを前提として考えていたけれども,どうもそれに限らず,確定判決によって戸籍の訂正をすべき事項は対象としないということが適切ではないかということで,一部修正した形での御提案を頂いているものと理解しております。   それでは,この部分について御質問,御意見等はありますでしょうか。 ○澤村幹事 中間試案の段階までのように,人事訴訟によって身分関係を整序すべき場合に,そちらを経てから戸籍の訂正をすべきというような基本的な切り分けについては異論はないところですけれども,今回のように確定判決によって戸籍を訂正すべき場合とそれ以外の場合等を区別するという場合に,その線引きがどこにされるのかということは明らかでないように思われます。戸籍の訂正を申し立てようとする御本人の方にとっても裁判所にとっても,そこは混乱を招くことになりかねないのではないかと思います。特に,この116条というのは,どういう形で戸籍を訂正すべき場合かというものの規定をしているのではなくて,確定判決があって,それによって戸籍を訂正しなければならない事態になった場合には,この116条の手続をとるということが規律されているわけですので,訂正すべき事項による切り分けが現在の規定でもされているわけではないのに,これをよすがとして何か線引きをしようとするのはなかなか難しいのではないかと思います。 ○窪田部会長 ありがとうございました。この点について御意見を伺うことができましたが,これについて事務当局からは何かありますでしょうか。 ○遠藤関係官 今御指摘いただいたような問題点があるというのは,正に御指摘のとおりかなと思っておりまして,116条の現在の規律としましては,戸籍訂正を対象とするような事件に基づく確定判決という趣旨ではなく,確定判決の内容としては,例えば国籍の地位確認もそうかと思いますし,あるいは人事訴訟の親子関係不存在確認もそうかと思うのですけれども,それ自体は直接,戸籍の訂正を目的とする訴えではないけれども,その結果として戸籍の訂正をする必要があるという場面についての規律だと考えられるかと思います。そういったことを踏まえますと,116条の規定によって戸籍の訂正をすべき場合というような書きぶりが適切かどうかというのは当然,議論としてはあり得るかと思いますけれども,今回の部会の段階では,そのほかに代わるものとして適切な案を事務当局として準備できなかったという事情もありまして,部会資料ではこういう示し方をさせていただいたということでございます。この点については,我々としても引き続き議論,検討しなければいけない論点であると認識しております。 ○窪田部会長 澤村幹事からの御意見の中には,人事訴訟が対象とする事項であれば,それ自体として一定の範囲の切り分けということが可能となるわけですけれども,確定判決によって戸籍の訂正をすべき事項と言った場合には,それができるのかどうなのかという問題点の御指摘があったのかと思います。この点は,大事な点だと思います。 ○畑委員 私も大筋では,こういう方向かなと思っております。国籍取得の確認判決というのは随分渋い例を発見されたなと思っておりますが。それから,澤村幹事がおっしゃったことも確かにそのとおりで,確定判決によって訂正すべき場合は対象としないというのは,ある種トートロジカルな表現になっている面があるように思います。文言について事務当局でも検討されておられると思いますけれども,これは全く思い付きですけれども,例えば,人訴事項その他確定判決によって訂正すべき事項は対象としないとか,そういった書き方なども含めて御検討いただければと思います。 ○窪田部会長 ありがとうございます。   今の点に関して,御意見はありますでしょうか。 ○澤村幹事 恐らく確定判決で戸籍を訂正できる場合というのは,かなり広くなってくるのではないかと思われます。そうしますと,戸籍訂正許可の審判の申立てがされたときに,それを受けた裁判所,あるいはそれをしようとする御本人の方が,これは確定判決をとることができるものなのかどうかというようなことを考えなければならず,それはかなり難しいことになってくる可能性があるのではないかというような気がします。   ここに挙げていただいている出生による日本国籍取得の確認判決は,それによる戸籍訂正ができる例ですが,それ以外に全くこのような例がないと言えるのか,あるいは,今の実務では確定判決の主文ではなくて理由中の判断によって戸籍の訂正をすべき事由が生じている場合には,それによっても戸籍の訂正ができるという運用がされていると理解しておりますが,そういう場合も含めて考えますと,確定判決によるべき場合を全て除くというような規律にすること自体が本当にいいのかということも併せて検討が必要ではないかと思います。 ○窪田部会長 ありがとうございます。   ほかの委員の方からは,ございませんでしょうか。   やや異なる性格の問題が錯綜しているのかなという感じもするのですが,確定判決があった場合に訂正ができるかどうかという問題と,①,②の切り分けのところでどういうふうに扱うのかという問題,少し性格の違う問題なのかなと思いながら伺っておりました。確定判決によって戸籍の訂正をすべき事項というのがリストアップされていればいいわけですけれども,それがない状況の中で,確定判決があれば訂正はされるかもしれないけれども,そうではなくてもされるかもしれないという事項もあるかもしれません。その点は,畑委員から御示唆を頂いている点にも係るかと思うのですが,少し検討していただくのが望ましいかと思います。この点については,どうでしょうか。 ○北村幹事 今の御指摘を踏まえて,なお検討したいと思います。特に113,114条の範囲をある程度限定する,事項によって限定した上で,あと116条という形で,今のような形だと本当にぐるぐる回っている形になってしまいますので,どういう形で限定が可能なのか,改めてそこは事務当局の方で検討させていただきたいと思います。 ○窪田部会長 その点については,どうぞよろしくお願いいたします。   ほかにもこの部分について御意見はございませんでしょうか。 ○新谷委員 今の,非常に切り分けが難しい,少し手元に,記憶で話をするのですけれども,昭和32年の出生による国籍取得確認の判決の主文だけだと,恐らく戸籍の実務では戸籍訂正できないと思います。恐らくこれは理由中に,澤村幹事が言われたように,理由中も勘案して戸籍訂正するのだというのが,恐らくこの昭和32年の最高裁の判例だと思うのですけれども,そこへ行くと非常に難しい,116条の確定判決で訂正できるというのは非常に考え方としては,どういうふうに切り分けするのか,本来だったら,私の個人的な考えでは,国籍取得の確認判決であれば,その判決をもって戸籍法113条の戸籍の記載に錯誤があるということで訂正すべきではないかというのが個人的には考えているというところです。少し,意見にならないと思いますけれども。 ○窪田部会長 大変に参考になる御意見だろうと思います。畑委員からも御指摘がありましたけれども,国籍の確認という非常に渋い例が挙がっているのですが,それに対してどう対応できるかという問題にも係りますので,その点も踏まえて御検討いただければと思います。   ほかはいかがでしょうか。   それでは,もう一つの論点については,かなり議論もあるところだろうと思います。7ページの(3)からの部分について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○遠藤関係官 それでは,(3)につきまして説明を差し上げます。検討の部分が長いので,検討の概要ごとにブロックごとを切りながら,この部分についてはどういう論点について検討したものかというのを併せて説明を差し上げながら,部会資料の説明とさせていただきたいと思います。   まず,中間試案で示した案をもう一度ここで記載しておりますけれども,戸籍の記載又は届書類その他の書類から訂正事由があることが明らかであると認められる場合について,職権による戸籍訂正手続によることができるという提案をしたところでございます。これにつきましては,訂正事由が明白である場合には職権訂正できるという切分けにするのが合理的ではないかといった考え方に基づきまして,こういった提案を示したというところでございます。   こういった提案と現行法との関係ということについて,もう一度おさらいといいますか,振り返って確認をさせていただきたいと思うのですけれども,現行法24条におきましては,こういう訂正事由が明白かどうかという観点からの整理をしているというわけではございませんで,条文上はただし書に,その錯誤又は遺漏が市区町村長の過誤によるものであるときは通知をする必要もなく職権での訂正をすることができると,24条1項,2項併せて読むと,そういう規律になっているということでございます。こちらにつきましては,訂正事由の明白性に関係する,市区町村長に過誤があるということは市区町村長にとって訂正事由が明白だということとイコールという考え方も成り立ち得るところではありますけれども,訂正事由があることが明らかであるという場面としましては,このような場合に限られるものではないのではないかというように考えておるところでございます。   (注8)と(注9)につきましては,パブリックコメントで寄せられた意見に関しまして,注意的に事務当局の考え方を記載したということでございます。まず,中間試案に対するパブリックコメントの中で,市区町村の窓口で間接事実を積み上げていって事実認定をしていくというような場面が,職権訂正の場面でそういったところが増えるのではないかというような御懸念を示された意見を頂いておりますけれども,それにつきましては,基本的には事務当局としてはそういうことを考えているわけではございません。先ほどの中間試案の考え方の基本的な発想としては,戸籍の記載などから客観的に訂正事由が認められる場合ということを念頭に置いておりまして,間接事実を積み上げていくというようなことで訂正事由があるか否かを探索するというようなことを考えているわけではないということでございます。この点につきましては,どういった形で規律を設けることによってその趣旨が明らかにできるのかということは引き続き検討する必要があるかと思っております。   (注9)でございますけれども,こちらは職権訂正手続に関する規定と裁判所の手続を経て行う戸籍訂正との関係ということでございまして,職権訂正できる場合は必ず職権訂正によらなければならないと,裁判所の手続を経ることは許されないとなると困るという趣旨の御意見を頂いておりましたけれども,事務当局としてはそういったことを考えているわけではございませんで,条文を置くとしますと,職権訂正手続につきましては職権訂正することができるという趣旨,現行法と同じような規律ぶりになるかと思いますので,そういった意味では,裁判所の手続が排除されるまでの効力を新たに作るということは考えておりません。   ただ,事実上の想定される実務の運用ということになろうかと思いますけれども,訂正事由があることが明らかな場合に,あえて裁判所の手続を自分は経てきますので,職権訂正しないでくださいというようなことをおっしゃるような方がどれだけいるのかというところは少し考えなければいけないところかなと思っておりますけれども,理論上はそこを何らか切り分けて,絶対この場合は職権訂正手続でやってくださいというような規律を設けるということを考えているわけではございません。   続きまして,8ページでございますけれども,こちらは改めて御意見等を頂いたところを踏まえて,考え方の整理を試みたということでございまして,職権訂正手続と裁判所の手続との切分けの考え方ということでございます。現行法につきましては,先ほど御説明差し上げましたが,条文上は市区町村長の過誤によるときは通知を必要とせず職権訂正できるという規定ぶりになっておりますけれども,他方で過誤によらない場合には,まず通知をすると,通知をした上で御本人が適切な手続をとらない場合,あるいはそもそも通知をすることができない場合には職権の訂正ができると,そういう立て付けになっております。ここで法文上は,訂正事由といいますか,訂正の内容等について特に何らの限定も付されていないと,ただ,通知が失敗してしまえば市区町村において職権での訂正が可能になるというように,法律の形式的な文言から見ますとそういうふうにも読めるのですけれども,実際の実務の運用におきましては,基本的には訂正事由があることが明らかではない場合には,そもそも市区町村長でどういう形で直せばいいのかということが分からないということに帰着しますので,通知等がうまくいかなかったとしても職権訂正は行っていないという解釈,実務運用がされているというものと承知しております。こういった解釈,実務運用を踏まえますと,中間試案でお示ししました考え方につきましては,現行法の戸籍実務と比較して職権訂正の場面を拡大するという考え方に立つものではなく,むしろ戸籍訂正をすることができる場面について,実務で行われている運用の法的な根拠を与えると,そういう説明が可能なのではないかというように考えておるところでございます。   そういった観点から,実際,具体的にどういう規律にするかということも踏まえて,改めて整理することを考えてみますと,まず,現行法上は本人に通知するということを義務付けた上で,通知することができない場合,通知をしても戸籍訂正の申請をする者がいないときに初めて職権による戸籍訂正を認めているということになっておりますけれども,訂正事由が明らかである場合に常にこのようなプロセスを踏まなければならないということになると,やはりそれは迂遠だという考え方があり得るかと思います。こういったことから中間試案では,訂正事由があることが明らかであると認められる場合には,このようなプロセスを経ずに職権による戸籍訂正手続によることが可能であると,そういった考え方を示したということでございます。   続きまして,なお以下のところが,今度は現行法で認められております通知,届出人又は届出事件本人に対する通知に関する検討ということになってございます。職権による戸籍訂正手続が認められる場合につきましては,先ほど来から御説明差し上げておりますとおり,まず届出人,届出事件本人に訂正事由があることを通知するというプロセスが法律上,要求されております。この趣旨としましては,訂正許可審判手続をとるということを本人たちに促すと,そういった位置付けの下でこういった通知を市区町村長に義務付けているというところでございますけれども,仮にその戸籍訂正事由が明らかである場合には職権による訂正が可能であるという規律を設けることとしますと,職権で訂正が可能なのに,わざわざ裁判所の方に行ってくださいと届出事件本人たちにお願いをするというのは,これは余り合理的な仕組みではないと思われますので,この場合には通知をする必要はなくなるのではないかと考えられるところでございます。   また,他方これまでの調査審議の中で,戸籍訂正に当たって事前に本人たちにノーティスといいますか,訂正しますよということを注意的にでも通知した方がよいのではないかというような御議論もあったかと思いますけれども,先ほど参考人の髙橋課長補佐の方にも御説明を頂きましたとおり,現在の戸籍実務におきましては,市区町村長が何らの端緒もなしに訂正事由があることを発見するという場合はむしろまれでございまして,基本的には御本人が戸籍謄抄本等を取られた際に戸籍の記載の誤りに気づくというケースがほとんどというような実態がございます。そうであるとすると,事前のノーティスについて法律でわざわざ規定をする必要がどれだけあるのかと,そういった観点からの検討も必要になってくるかと思っております。   そういったことをもろもろ考えますと,事前の通知ということについて法律上の規定を置くということにつきましては,法律上の根拠,あるいはそれが実務においてどういった形でワークするのかということにつきまして慎重な検討をしていかなければならないのかなという,事務当局の検討の結果,そういった考え方に至ったというところでございます。さらに,通知について事後的な通知を必要とするという規定を置くということについても考えられるところではございます。この点につきましてもこれまで部会での御審議等も頂いておるところでございますけれども,現行法は事後的に通知を行うといった規定を設けておりませんので,新たにそういう規定を置く場合には,どういった根拠といいますか法律上の必要があるからこういう規定を置くのだと,そういった説明ぶりについても引き続き検討する必要があるのかなと考えております。   「おって」以下につきましては,9ページの下の方にゴシックでお示ししております現時点の事務当局の考え方を整理するに当たって,関連する現行法の規定との整理について検討したところでございます。まず,「おって」のパラグラフでございますけれども,こちらは現行法で,市区町村長の過誤による戸籍訂正につきましては届出人等への通知は必要とせずに職権による戸籍訂正が可能となっているということでございますので,このルールにつきましてはいずれにしてもいじらない,基本的には現行法のこの規律,考え方を維持するということが相当ではないかということで考えておるところでございます。   また,「なお」以下でございますけれども,これまで戸籍訂正事由があることが明白である場面を念頭に置いて部会資料の説明をさせていただきましたけれども,先ほどこちらも参考人の方からお話がありましたとおり,市区町村の方で戸籍の記載に誤りがあること自体は分かるのだけれども,結局どう直せばいいのか分からないと,そういう場面というのが残らざるを得ないのかなと考えておるところでございます。こういったケースにつきましては,やはり現行法の24条1項のように,市区町村長の方から届出人等に対して通知を行って,裁判所で適切な手続をとってくださいという趣旨の通知,連絡をする場面というのは残らざるを得ないのかなと考えております。こういった観点から,現行法24条1項の規律につきましては維持をするということが考えられるかと思います。他方で,職権訂正ができる場面を訂正事由が明白である場合という切分け方で規定を置くとすると,それ以外の場面で職権による戸籍訂正が予定されるということが基本的にはなくなるのではないかと考えておるところでございます。そうしますと,24条1項の通知というのは本人に裁判所の手続を経た上でやってもらわなければ,もう戸籍訂正できないという場面に限られますので,その場合には現在の24条2項前段の規律を維持する必要はなくなるのではないかと考えた次第でございます。   これらを踏まえまして,具体的な考え方を整理するとすると,ゴシックのような記載になるのではないかということでございますけれども,まず①としましては,24条1項本文の規律を維持するということでございます。それを前提としまして,②として,上記①にかかわらずと書いてございますけれども,戸籍の記載,届書の記載その他の書類から戸籍訂正事由があることが明らかであると認められる場合には,管轄法務局長等の許可を得て職権での戸籍訂正をすることができるという切分け方になるのではないかということで改めて考えを示させていただいたというところでございます。(注11),(注12)につきましては,先ほど,「おって」以下で説明をした内容等について補足的に説明をしたということでございます。   (3)につきましては以上でございます。 ○窪田部会長 それでは,(3)について御議論いただきたいと思います。ただ,(3)は,①及び②と③,管轄法務局長等の許可を得て行う職権による戸籍訂正手続との関係についてというタイトルにはなっておりますけれども,必ずしも関係の話だけではなく,むしろ管轄法務局長等の許可を得て行う職権による戸籍訂正手続が一体どういう場合であるのかということと,それによって,特に①が排除されるのかどうかという問題についての御説明が前半部分だったのかなと思います。そして後半部分では,その通知の必要性ということについて御議論いただいて,最終的に9ページの①,②という形で示される方向を最終的なものとして示していただいたということかと思います。これについての御質問,御意見等はありますでしょうか。 ○川島委員 ありがとうございます。今回,市区町村長が職権により戸籍訂正を行うことに関する規定を整備することについては異存ありません。その上で,戸籍訂正に関する通知について意見を申し上げます。   事前の通知の目的は当事者による手続を促すことですけれども,事後の通知の目的は,このように変えたということを当事者に知ってもらうことだと理解をしております。今回取り上げられている職権による戸籍訂正について,確かに事前の通知を省略しても問題ないと考えますが,その一方で当事者が戸籍が訂正されたことをずっと知らずにいることについては国民一般の感覚として違和感があると思います。今日の参考人のお話の中でも,このような訂正は件数としてはそう多くないようなので,今回の②のケース,そして,10ページ目の(4)のケースについて,行政上の事務負担,事務負荷とのバランスも踏まえながら事後の通知について検討を行う必要があると考えます。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。今御指摘を頂いた部分について,事務当局の方では何か補足説明等はございますか。 ○遠藤関係官 ありがとうございます。事後の通知につきましては,先ほど参考人,髙橋課長補佐の方からも御説明があったかと思いますけれども,本籍地の地番が変わったようなケースについてはそこまで通知するのはどうなのかというようなお話もありましたけれども,基本的には本人の何らかの身分関係に影響を及ぼすような事項につきましては,実務上の運用としては御本人なりに通知をされていると承知をしております。現在そういった規律は特段置かれていないにもかかわらず,そういった運用が実際にされていると,そこは基本的には市区町村の方としても,やはり本人に及ぼす影響というものを考慮した上でそういった適切な対応を採られているのかなと承知をしております。   法律で何か規定を置くとした場合に,それにどういった効果が伴うのか,どういった法律上の,法律事項として規定するに値するような実質を伴う内容のものとなっているのかということも併せて検討しなければいけないということもございまして,そういったことも含めて,規定を設けるかどうかということは考えなければいけないかなと思っております。また,実際の今の運用,適切になされていると認識しておりますけれども,必要に応じて通達等でこの訂正に関する運用の指針等について示すというような方向性もまたあり得るのかなと思っておりまして,そういった実務的な対応も含めて,規定を設けるかどうかということも検討していかなければいけないのかなと考えておるところでございます。 ○窪田部会長 いろいろな論点があると思いますが,今の点について,ほかの方からの御意見はありますでしょうか。 ○磯谷委員 私の方も基本的に,やはり事後の通知はあった方が望ましいだろうと考えておりますのは,先ほど川島委員さんがおっしゃったことに加えて,ほとんどないだろうとは思いますけれども,訂正した結果が更に間違っているようなことがあるとすると,やはり通知をすることによって本人がそれに気づくということもあるのだろうと思っております。ということで,事後の通知はやはりあった方が望ましいとは思っておりますけれども,それを法律に書くかどうかというのは,そこは事務局から御説明がありましたように,必ずしもそれが必要かどうかというのはあり得ると思います。やはり法律に書いてしまうと,通知をしないと何か違法だというような形になると,かえってまた無用な紛争を招くかなとも思いますので,先ほど通達にお書きになるというアイデアも示されましたけれども,できればやはりそういうふうな形で明確に一応した上で,ただ法律には書かないということも考えられるのではないかなとは思います。 ○窪田部会長 どうもありがとうございます。 ○大橋委員 この通知のところの議論なのですけれども,結局は本人があずかり知らないようなところで自分の基本的な公証事項に係るものが変わっているというような事態はやはり避けたいと,そういう思いがあります。今日の実務のお話ですと,本人を巻き込んでやっているのだから,本人はもう知っているから通知はほとんど必要がないと,そういうことだったのですけれども,大半がそうだとして,残される部分が本当にどうなのかというところの不安感があって,先ほどからの御質問も同じようなところだと思います。   それで,8ページに書かれている24条1項の通知の意味なのですけれども,これは私は別に調べたわけでも何でもないのですけれども,これはもちろん一つには裁判手続を促すという意味もありますけれども,その前提として,行政機関の方で発見したことを御本人に知らせるという意味もこの条文の根底にはあるのかなという気がして,そういう機能がこの行政過程を閉じるまでの間に本当に担保されるのかというところの不安がありますので,事前にせよ事後にせよ,その形式が通達を通じてであれ,御当人があずかり知らないところで変わったということがないということが担保されるというようなことは,どこかで保障していただくというか,そういうことがないと,今回のパブリックコメントを出された方は気持ちが落ち着かないのではないかなと,そういう印象を持ちました。 ○窪田部会長 ありがとうございます。   いかがでしょうか。 ○畑委員 私も基本的に今まで出てきた意見と共通で,ほとんどの場合,御本人の申出でということであればその限りで通知の必要はないのだろうと思うのですが,数は少ないかもしれないけれども,必要性がある場合がもしあるとすれば,そこに何らかの手当てはあってしかるべきではないか。つまり,全ての場合に通知をしろという規定を置くと,それはやりすぎだということになるのだろうと思うのですが,できれば,必要な場合に限って通知すべしという方向をできれば目指したいと思います。うまくそういうことが書けるのかとかそういうことはあるとは思いますし,最終的には磯谷委員がおっしゃったように法律では難しいのかもしれませんが,方向性としてはやはり少し考えてみるべきではないかと私も思っております。 ○窪田部会長 ありがとうございます。   ただいま出てきた意見は基本的にいずれも,別に事前の通知を原則として,それがないと動かないという方向ではないけれども,それを変えるとしても,しかし,明白性がある場合について,これはもう一切通知は要らないのだというのではなく,何らかの形で,それが法律であるか通達であるかはともかく,やはり本人にそれが知らされるということが確保されることが望ましいという御意見という点では共通していたかと思います。書きぶりがどうなるのか難しいところはあるのかもしれませんが,むしろ,少なくとも最終的に出す要綱案等の中で,補足説明の中で事後の通知も不要であるというふうなことが出ると,多分今の趣旨とは逆になってしまうと思いますので,少しその点を事務当局で御検討いただければと思います。   事務当局からは何かございますか。 ○北村幹事 今までの御議論で,事後の通知は御本人さんたちのためにしてあげればよいのではないかという御意見が強かったかなと思います。ただ,先ほど来申し上げていますように,その通知というものを今回改めて法律で書くとなった場合に,通知の法的な意味,あるいはその効果というものも考えないといけないと思っていまして,そうすると,この通知というものは何だろう,お知らせという意味だったら,法律で書くのが適当なのか,あるいはまた,遠藤関係官の方から申し上げましたように,通達の中で必要がある場合にお知らせするという形で置くのがよいのかというところも,今日の御議論を踏まえてなお検討したいかなと思ってございます。 ○窪田部会長 ありがとうございます。その点についてはよろしくお願いいたします。   それ以外に,ただいま扱っている部分については何かありますでしょうか。 ○大橋委員 すみません,よく理解できていないのですけれども,7ページの(注9)のところで,職権訂正をこう書いても,裁判を通じた戸籍訂正を排除する趣旨ではないということで割と理論的に説明されたのですけれども,でも,こう書くと,私は仕分けられるような印象をもちました。というのは,行政機関限りでできる簡易迅速な手法を一方で書いて,それがあるにもかかわらずに時間とコストが掛かる裁判の方を使いたいという人が出てきたときに,本当に裁判所の方が快く迎え入れてくれるかどうかというようなところは,今までの似たような場面を想定しても,議論がありそうな気もして,ここのところを少し慎重に検討する必要はないのか,本当に両方並列ですということになるのか,そこはまだ私も今日は,先ほどのお話を聞いていて,疑問を抱えているような状況ですので,御検討いただければと思います。 ○窪田部会長 関連しまして,私もその点について一つ教えていただきたいのですが,①の場合と③については重複する場合はあるのかなと,③の明白性が認められるのだったら,そちらで扱ってもいいけれども,①の手続は排除されないという場合はあるのかなと思うのですが,②の対象となる場面において,明白性があるから③で扱えるという場合は具体的にはあるのでしょうか。 ○遠藤関係官 まず,大橋委員の方から御質問があった点につきましては,基本的に裁判所の方が,明白かどうかというのを申立てがあった段階で判断ができるのかということが一つ,問題になろうかと思います。③の規律というのは市区町村長が,市区町村長の方で保管,把握されている書類等に基づいて誤りであることが明白だということが分かる場面を想定しておりますので,裁判所の方はその届書類等を直ちに見られるわけではございませんので,申立てがあったら多分,受けざるを得ない,これは訂正事由が明白だから市区町村長でできるのではないのかというようなことを多分,判断しづらいのではないかということもございまして,そこのところをうまく線引きできるかというのは,我々としても少しまた考えなければいけないのかなとは思っております。ただ,実際の運用上ではそういった問題は恐らく生じないだろうということで,注意的に,そういうことはないのではないでしょうかということをニュアンスとしてお伝えしたかったと,そういう趣旨でございます。   部会長の方の御質問でございますけれども,②,今回書きぶりを変えましたけれども,いわゆる人訴対象事項について訂正事由が明白であるという場合があり得るのかという御質問ですけれども,基本的にはないと思っておるのですが,一つだけ考えられるのが,先ほど7ページの(注7)のところでお示しをした,刑事事件の確定判決があった場合ということにつきましては,これは理論上は,偽装婚姻の場合ですと婚姻の記載がもう戸籍上されているということにはなろうかと思うのですけれども,刑事事件の確定判決が出されたということが市区町村長の方で把握されたということなのであれば,基本的にはそういった公的な手続を経て,偽装婚姻だと認定されたものについて戸籍の記載を残しておくというのは相当ではないのではないかと考えておるところでございます。 ○窪田部会長 分かりました。   今の点でも結構ですし,その他の点でも結構ですが,いかがでしょうか。 ○鷲﨑幹事 以前,欠席時に,出ていたかもしれないのですけれども,今回のような訂正があった場合の訂正の履歴は内部的にはずっと管理されていて,ただ,証明書などの発行において当人の目に見える形では履歴が出てこないという理解でよろしかったでしょうか。 ○北村幹事 訂正につきまして,法務局長の許可を得て訂正したものについては戸籍に基本的には残ります。ですので,そこを見れば訂正したことは分かるという形になります。また,それが全て移記されるかどうかというのはまた別の問題になってきますけれども,またそれとは別に,今後,戸籍を国の方で管理する部分について,その履歴の部分については管理できる,市区町村においても,市区町村長限りで直した軽微なもの,先ほど髙橋課長補佐の方から御説明があったようなものであったりとか,本当に誤記のようなものの類いについても,履歴のログは残っているとは聞いております。 ○鷲﨑幹事 実務上は残されている。 ○北村幹事 はい。 ○鷲﨑幹事 分かりました,ありがとうございます。 ○窪田部会長 ほかはよろしいでしょうか。   それでしたら,最後に残っております(4)の部分について,事務当局から御説明をお願いします。 ○遠藤関係官 (4)につきましては,③の管轄法務局長等の許可を得て行う職権訂正と④,許可を要せずに市区町村長限りで行う職権訂正との関係ということでございます。③と④との関係につきましては,訂正事項が軽微であり,かつ身分関係に影響を及ぼさないものについては,あえて法務局長等の許可を得ずとも市区町村長限りで職権訂正を行っているという現行の戸籍実務の運用を前提としまして,これに法的根拠を与えるという観点から中間試案をお示ししたというところでございます。この中間試案につきましては,御意見も頂いたところではございますけれども,その御意見の内容を見ますと,③と④との関係というよりは,③のそもそもの職権訂正ができる場面というところがはっきりしないのではないかと,そういった問題意識からの意見を頂いていたかと受け止めております。   そういったことを踏まえまして,今般,③の法務局長等の許可を得て行う職権訂正手続の範囲について,ある程度整理をさせていただいたということでございますので,その整理を踏まえて改めて,中間試案と同じ内容ではございますが,訂正事項が軽微であり,かつ戸籍訂正を行っても身分関係に影響を及ぼさないときにつきましては,法務局長等の許可を得ずに市区町村長限りで職権訂正を行うという考え方を改めてお示ししたというものでございます。   説明は以上でございます。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   この部分については特に変更はないということでございますが,これについて御意見等はありますでしょうか。 ○木村幹事 今の御説明によると,③と④の区別については,今回の資料における(3)の整理をふまえ,中間試案の内容を変えないという御趣旨であると理解しました。しかし,他方で,例えば中間試案に対する反対意見では,対象事項が特定され,かつ限定列挙とされていない限り反対だという意見もあったと思います。先ほどの御説明あるいは今回の資料の記載ですと,必ずしもこうした反対意見にどこまで対応しているのか,若干分からない点がありましたので,もう一度御説明いただきたいと思います。 ○窪田部会長 今の点はいかがでしょうか。 ○遠藤関係官 そういった御意見もあったかと思いますが,基本的には,できる場面につきましては,訂正事項が軽微であり,かつ身分関係に影響を及ぼさないという限定は中間試案の段階でも付していたところでございます。更にこれを限定列挙するという御意見,御意見としては承っておりますけれども,戸籍訂正というのは非常にいろいろな場面,いろいろな記載事項につきまして訂正することが考えられますので,逐一それを限定的に列挙するというのはなかなか困難ではないかと事務当局としては考えておりまして,そういったことも踏まえまして,中間試案と同じような形での提案をさせていただいたということでございます。 ○木村幹事 この点に関連することですが,第5回資料において訂正事項が軽微かつ身分関係に影響がないというものとして,一覧表にて具体例を示していただいたと思います。それについては,列挙された具体例の中にも, 訂正事項が軽微かつ身分関係に影響がないと判断されうるかどうかという点に関する質問があり,それに対してはおそらく今後の検討課題とされていたものもあったように思われます。今回の提案ではそのまま同じ基準・表現が用いられておりますところ,訂正事項が軽微かつ身分関係に影響がないものとして挙げられている,あるいは念頭におかれている具体例が適切なものか,つまりどのようなものが具体例に含まれうるのかという点が十分に精査されていない部分もあるのではないかという印象を少し持っております。実際,法文上,限定列挙することは難しいという点は分かりますが,そういった精査も改めて要るのではないかということを意見として述べさせていただきます。 ○窪田部会長 ありがとうございます。意見としてということではございましたが,第5回において扱ったリスト,特に明確なものがあれば,少なくとも補足説明の中では示すことができると思うのですが,何らかの形でやはりある程度,明白性と軽微性という要件を満たす場合について御説明いただけるといいのかもしれないと思いました。あるいは,先ほどあった事後の通知の話もこの部分と若干関わりがあるのかなと思いますのは,明白で軽微だったらもう事後の通知も何もなくて,いつの間にか変わっているということになるのか,あるいは少なくとも事後の通知がされるということであれば,何らかの検討の機会も与えられるということなのかもしれませんが,その点も含めて御検討いただければと思います。   ほかに,いかがでしょうか。   1点,私の方から申し上げるのは適切ではないのかもしれませんが,今回,資料を読んでいて,結構読みにくいなという感じがしておりました。今伺いながら,読みにくかった理由が少し分かったような気がしております。(2)以下については,全部,①と②の関係,①,②と③の関係,③と④の関係といった形で示されているのですが,やはり相互の関係より,まずは①,②,③,④をきちんと示していただいて,そして,その上で相互の関係としてどういうふうな関係になるのだというのを説明していただく方が,ひょっとしたら分かりやすいのかなという気がいたしましたし,実際にも最後に示されている結論はそういうものだったのではないのかなと思いますので,その点も含めて御検討いただければと思います。   ほかに,全体を通じてでも結構です。 ○大橋委員 最後の軽微の点なのですけれども,限定列挙は無理だと思いますけれども,例示のようなものは最終的に通達等で何らか示されることはあるのでしょうか。あった方が統一的な運用もできるし,批判される方の意見も酌めるし,また,これは法務局長も関与しないところで行われることなので,そういう点でのコントロールということも考えると,そういう例示は出ていた方がいいのかなというような気がしたので,そこの見通しみたいなことをお知らせいただければと思います。 ○窪田部会長 その点はいかがでしょうか。 ○北村幹事 概括的な先例であるとか個々の先例とか,今まで積み上がってきたものはありますけれども,その辺り,今回,法律に書き込むということにおいてどういう形でお示しするのがよいのか,先ほど来の御議論もありますので,その辺りも踏まえて,なお検討させていただきたいと思います。 ○窪田部会長 その点,よろしくお願いいたします。   ほかはよろしいでしょうか。   それでは,本日の審議については以上とさせていただければと思います。   それでは,次回以降の会議の日程等について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○杉浦幹事 次回の会議は,本年11月2日金曜日,時間は13時30分から17時30分までを予定しております。開催場所につきましては後日メールでお知らせいたします。   以上でございます。 ○窪田部会長 それでは,本部会の第9回会議はこれにて閉会にさせていただきます。熱心な御審議を賜りまして,本当にありがとうございました。 ―了―