法制審議会 会社法制 (企業統治等関係)部会 第18回会議 議事録 第1 日 時  平成30年12月12日(水)   自 午後 1時30分                          至 午後 3時06分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  会社法制(企業統治等関係)の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神田部会長 それでは,予定した時刻が参りましたので,始めさせていただきます。   法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会の第18回目の会議を開会いたします。   本日も,皆様方には大変お忙しい中お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。   それでは,いつものように,まず本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いします。 ○竹林幹事 お手元には,議事次第,配布資料目録,部会資料27,委員等名簿を配布させていただいております。また,席上で附帯決議案の案も御用意しておりますけれども,部会資料27の御説明と併せて,後ほど御説明をさせていただきます。   なお,本日は,日髙委員,松井幹事,衣斐幹事が御欠席と承っております。また,大竹委員におかれましては,遅れて御出席いただけるという御連絡を頂いております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   よろしゅうございますでしょうか。   それでは,本日の議事に入らせていただきます。   本日は,お手元の議事次第に記載のとおり,「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(仮案(2))」について御審議を頂くことを予定しております。   それでは,この部会資料27の全体及び附帯決議案の案について,事務当局から説明をしていたただきます。よろしくお願いします。 ○竹林幹事 部会資料27の「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(仮案(2))」について御説明させていただきます。   部会資料26の内容から修正している部分のうち,重要であると思われる部分につきまして,簡単に御説明をさせていただきます。   1ページの第1部第1の「2 電子提供措置」の①の部分でございますが,当部会において御意見が分かれておりました電子提供措置開始日について,ブラケットを外して株主総会の日の3週間前の日とさせていただいております。   3ページの「3 株主総会の招集の通知等の特則」の①の部分でございますが,同様に,当部会において御意見が分かれておりました株主総会の招集の通知や電子提供措置事項を記載した書面の発出の期限について,ブラケットを外して株主総会の日の2週間前の日とさせていただいております。   4ページの「4 書面交付請求」の④の部分でございますが,当部会において御意見を頂いておりました書面交付請求による書面の交付を終了する旨の通知及び異議を述べるべき旨の催告をすることができるまでの期間につきましては,ブラケットを外して書面交付請求の日又は異議を述べた日から1年とさせていただいております。   5ページ及び6ページの第2の「1 株主が提案することができる議案の数の制限」の主として④の部分でございますが,法制的な観点から改めて検討させていただき,補足説明に記載させていただきましたように,原則として提案の内容である事項ごとに一の議案として捉えることを前提としつつ,議案の数の取扱いに関する規律を設けることとし,定款の変更に関する二以上の議案に関しては,当該二以上の議案について異なる議決がされたとすれば,当該議決の内容が相互に矛盾する可能性がある場合には,これらを一の議案とみなすものとするものとさせていただいております。   7ページの第2部第1の1(2)の次に,部会資料26におきましては(3)として取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任の項目を記載させていただいておりましたが,当部会においてなお御意見が分かれておりましたことなどから,当該項目については削除させていただいております。   12ページの第2の「2 社外取締役を置くことの義務付け」については,当部会において御意見が分かれておりましたが,ブラケットを外させていただいております。なお,補足説明に記載させていただいておりますように,当部会における御意見,御議論を踏まえますと,社外取締役が欠けた場合であっても,遅滞なく社外取締役が選任されるときは,その間にされた取締役会の決議は無効とならないと解釈することができ,また,直ちに過料の制裁が課されることにもならないと解釈することができると考えてございます。   18ページ以下の第3部「第2 株式交付」でございますが,法制的な観点から改めて検討させていただきまして,「1 株式交付の内容」の補足説明に記載させていただいておりますように,株式交付の実施の可否については,株式交付の実行前に客観的かつ形式的な基準によって判断することができるようにするため,他の株式会社等は会社法上の株式会社に限るものとし,株式会社と同種の外国会社は除いてございます。   部会資料27についての御説明は以上でございます。   続きまして,附帯決議案の案について御説明させていただきます。   この附帯決議案の案は,「1」が電子提供措置開始日に関する規律についてのもの,「2」が株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書に関する規律についてのものでございまして,当部会におけるこれまでの御議論を踏まえまして,事務当局において作成させていただきました。   念のため,附帯決議案の案を読み上げさせていただきますと,「1 株主総会資料の電子提供制度に関する規律については,これまでの議論及び株主総会の招集の手続に係る現状等に照らし,現時点における対応として,本要綱案に定めるもののほか,金融商品取引所の規則において,上場会社は,株主による議案の十分な検討期間を確保するために電子提供措置を株主総会の日の3週間前よりも早期に開始するよう努める旨の規律を設ける必要がある。2 株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書に関する規律については,これまでの議論及び当該登記事項証明書の利用に係る現状等に照らし,法務省令において,以下のような規律を設ける必要がある。(1)株式会社の代表者から,自己が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者その他の特定の法律に規定する被害者等であり,更なる被害を受けるおそれがあることを理由として,その住所を登記事項証明書に表示しない措置を講ずることを求める旨の申出があった場合において,当該申出を相当と認めるときは,登記官は,当該代表者の住所を登記事項証明書に表示しない措置を講ずることができるものとする。(2)電子通信回線による登記情報の提供に関する法律に基づく登記情報の提供においては,株式会社の代表者の住所に関する情報を提供しないものとする。3 1及び2の規律の円滑かつ迅速な実現のため,関係各界において,真摯な協力がされることを要望する。」というものでございます。   これらは,金融商品取引所の規則に関する事項や会社法の委任に基づく事項等を定める法務省令でない法務省令に関する事項でございまして,要綱案に記載することは必ずしも相当ではございませんので,附帯決議とさせていただいております。当部会の委員等の皆様の御了承を頂くことができ,当部会として附帯決議をしていただけるということでございましたら,法制審議会総会におきましても,要綱案とともに附帯決議を御審議いただき,御承認いただくことができましたら,法務大臣へも要綱と附帯決議を併せて答申いただきたいと考えております。   附帯決議案の案についての御説明は以上でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,皆様方から御質問,御意見をお出しいただければと思います。   幾つかに区切って御審議を頂きたいと思います。部会資料27でいいますと,第1部,第2部,第3部とありますので,第1部から始めさせていただきます。   第1部について,御質問,御意見があればお出しいただければと思います。ページ数でいいますと,部会資料27の1ページから6ページまでになるかと思います。また,今最後に御説明いただきました附帯決議案の案のうちの電子提供措置に関する部分,「1」ですね,「3」も関係あるのかもしれませんが,附帯決議案の案の「1」についても,御質問,御意見があれば,ここで併せてお出しいただければと思います。   どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。   第1の「株主総会資料の電子提供制度」につきましては,電子提供措置開始日を総会の3週間前,招集通知の発送期限は2週間前と,企業実務に御配慮いただいたことに感謝申し上げます。また,書面交付請求の催告期間につきましては,経団連といたしましても,再度内部で議論した結果,御提案の内容で取りまとめることで意見がまとまってございます。   ただし,一言申し上げさせていただきますと,今後の世の中のデジタル化の進展,それから株主サイドにおけるデジタル対応の浸透状況,こうしたことにつきましては,引き続き注視していくべきであり,将来的には書面交付請求を定款の定めによって行えなくすることや,書面交付請求権自体を廃止することについても検討が必要であると考えております。   また,電子提供措置の中断の関連では,資料に記載はありませんが,東証のホームページを自社のホームページ等のサブ媒体として,電子提供措置に使用できるようにしていただけると伺っております。東京証券取引所様の御理解に感謝を申し上げたいと思います。   それから,第2の「株主提案権」につきましては,前回も申し上げましたけれども,今回取り上げられておりませんが,300個以上の議決権という現行の行使要件,この撤廃ないし引上げと,現状総会の8週間前までとされております行使期限の見直しにつきまして,今後の引き続いての検討課題としていただければと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○竹林幹事 古本委員からお話しいただきましたとおりですけれども,東京証券取引所様と御相談等をさせていただきまして,現在,私どもといたしましては,飽くまで自社ホームページ,あるいは契約先のホームページというのをメインのホームページと定めていただきまして,仮に,そちらで中断が生じてしまった場合には,いわゆるバックアップとして東京証券取引所様のホームページを御参照いただけるという方向で調整をさせていただいてございます。   ただし,東京証券取引所様の方で,例えば,自社ホームページが中断したときに,東京証券取引所様のホームページが正常に稼働していたかどうか,あるいはそこにアップロードされておりましたファイルが元のものと同一のものかどうかということにつきましては,技術的に証明することができる範囲というものが限られている,その制約を前提とした上で,経済界の皆様に飽くまでバックアップとして御利用いただく,その限りで東京証券取引所様に御了解を頂いております。また,詳細につきましては,経済団体の皆様に窓口になっていただくのかもしれませんけれども,経済界の皆様と東京証券取引所様とで御相談等いただきまして,詳細を詰めていただき,最終的にはどういう形で御利用いただくことができるのか,東京証券取引所様から上場会社の皆様に御案内いただくということになろうかと考えております。   青委員,もし,補足いただくようなことがございましたら,お願いいたします。 ○青委員 基本的に,ただいま御説明いただいたとおりで問題ございません。   補足といたしましては,システムメンテナンスなどの際には,私どものホームページが見られないということもどうしても起こり得ますので,その点は,あらかじめ御了承いただければと存じます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   よろしゅうございますでしょうか。   それでは,小林委員,どうぞ。 ○小林委員 どうもありがとうございます。   第1部のところに関しましては,今回幾つかお示しいただいた内容で,おおむね私どもとしてはよろしいかと思っておりますが,電子提供措置の中断期間につきましては,やはり電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間の10分の1というのは非常に短く,サーバーダウンが心配な会社はたくさんございまして,東京証券取引所様のウェブサイトがバックアップとして使えるということは,大変有り難いことだと思います。関係者において周知,あるいは便宜を図っていただくような形での準備をお願いしたいところでございます。   もう一つ,今回のこの総会の規律の変更につきましては,様々な実務上の準備が必要,あるいはその周知が必要ということもありますので,実際の施行に当たっては,周知活動ができるための十分な準備期間,施行までの期間をとっていただきたいというのがお願いでございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,柳澤委員,どうぞ。 ○柳澤委員 発言の機会いただきまして,ありがとうございます。   今回,新たに設定された附帯決議案の案の「1」に関してですが,日本投資顧問業協会として,機関投資家の立場から附帯決議案の内容に賛同いたしますとともに,これまでの議論における機関投資家の要望を御考慮の上,附帯決議という明文化した形で反映いただいたことに深謝申し上げたいと思います。   要綱案で定められた規律については,現状に照らして最低限実務が回る仕組みに配慮したものと理解しておりますので,飽くまでも現時点における対応としては,電子提供措置開始日を株主総会の3週間前とすることで,やむを得ない面があるとの認識にはなりますが,上場会社に対しては,附帯決議の文言を踏まえて,引き続き可能な限りの前倒し提供に努めていただくよう,改めて要望しておきたいと思います。   附帯決議案では,こうした企業に向けた努力義務に加え,議案の十分な検討期間を確保するために,取引所規則において電子提供措置を3週間前よりも早期に開始するよう努める旨の規律を設ける必要があると定められており,機関投資家の要望をルールとして具現化していく踏み込んだ対応も盛り込まれていることから,これまでの議論の成果として,国内外の機関投資家から一定の評価が得られる取りまとめ内容になっているものと考えております。   なお,改めてではありますが,株主総会前の議案検討期間の拡充は,企業が投資家に対して議案の的確な理解と実効的な判断を促す機会につながるのみならず,企業と投資家の対話を促す上でも欠かせない基盤を形成するものと考えられます。こうした電子提供制度を導入することの意義や,そもそもの趣旨に立ち返り,企業と投資家の双方にとってより望ましい制度運営の在り方を課題として共有しながら,意図した成果が十分に発揮されるよう,ハードローの充足にとどまらないより実効性のある対応が求められると考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか,この第1部についてですけれども。   それでは,三瓶委員,どうぞ。 ○三瓶委員 ありがとうございます。   今,柳澤委員がおっしゃったこととほぼ重なってしまうかもしれませんが,まずは,電子提供措置の要綱案について,3週間前というのは,これまでの皆さんの御議論を踏まえて,ごく僅かでも,それ以上のことを要望するのが難しい状況にあると伺った上で,やむなしとしています。ですから,多くの企業にとって,これが到達点ではなくて,飽くまでもミニマムスタンダードだということで理解しております。そういう意味で,附帯決議案の案の「1」に盛り込んでいただいたことということが,全体としての条件だと理解していますので,その点,是非よろしくお願いいたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,青委員,どうぞ。 ○青委員 先ほどから話が出ております株主総会資料の電子提供措置の開始時期についてでございますけれども,上場会社の一律の適用ということを踏まえると,株主総会の招集手続に瑕疵が生じないよう,3週間前にすることが必要という,現実への考慮を求める声を踏まえて,要綱案ではこのようになったものと理解してございます。   この点,法律上は最低限の規律ということで3週間前とせざるを得ないといたしましても,株主が株主総会議案の検討ですとか企業との対話に充てる期間を十分に確保することは,極めて重要でございますので,各企業におかれましては,3週間前にとどまることなく,既存の実務の見直しなどの工夫を精一杯行っていただき,可能な限りの努力を重ねていただいて,実態として十分な検討期間が確保されるようになることが重要だと考える次第でございます。   このことは先ほどから出ておりますように,中長期目線の投資家の方々に共通の考え方だと考えてございますし,経済界の方からも個々の企業におきまして,更なる前倒しに向けた自主的な努力が継続されると考えている趣旨の御発言もございましたので,関係各界の方々の共通の理解が得られたものと考えてございます。   私どもといたしましては,本部会での議論や,今回御提示いただきました附帯決議案を尊重した形で,法定期限にとらわれることなく,株主総会資料の提供の早期化,株主における十分な検討期間の確保の実現を促す観点から,私ども東証の規則改正を含めて,上場会社に対しまして必要な働きかけを行っていきたいと考えている次第でございますので,関係各界の御協力を,この場をお借りして重ねてお願いできればと存じます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   第1部は大体よろしゅうございますでしようか。   それでは,おおむね第1部につきましては,今の資料と附帯決議案の案の「1」について,この部会としても御賛同いただけたと理解させていただきます。   それでは,続きまして部会資料27の第2部,具体的には6ページから13ページまでになると思います。「取締役等に関する規律の見直し」について,御質問,御意見をお出しいただければ有り難く存じます。どなたからでも結構でございます。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 どうもありがとうございます。   第2の「社外取締役の活用等」の「社外取締役を置くことの義務付け」について申し上げたいと思います。   これまで経団連といたしましては,大きく二つの理由から反対であると申し上げてまいりました。1点目は,ガバナンス体制の在り方についての考え方でございます。ガバナンス体制の在り方は,各社が各々の経営理念,経営戦略,業種,業態等に応じて構築していくべきものであり,社外取締役の設置につきましても,法律で義務付けるべきものではなく,各社がソフトローの下で株主との建設的な対話を行って,創意工夫を凝らしつつ決めるべきものであると,こういう基本的な考え方がございます。もう一つは,もう少し現実的な話でございまして,現状,社外取締役を置いていない会社もまだ相当数ある中で,仮に,これが義務付けられますと,事実上,1名ではなく2名選任せざるを得なくなるのではないかという懸念があるということでございます。   もちろん,一般論として,上場企業において社外取締役が存在することが望ましいということにつきましては,特段の異論があるわけではありませんし,また,この部会でも御意見がございましたが,法律で社外取締役が必ず存在するということが明示されることになれば,日本の上場企業のガバナンスについて,内外の投資家に対してアピールできるというメリットもあるかもしれないとは感じているところでございます。また,実質2名以上の選任が必要になるのではないかという点につきましては,今回,補足説明に,社外取締役が欠けた場合であっても,遅滞なく社外取締役が選任されるときは,その間になされた取締役会の決議が無効となるわけではなく,過料の対象にもならないと解釈することができると,こういう記載もございますので,この補足説明の記載が維持されるということであれば,経団連といたしましても,この項目について検討できると捉えております。   なお,要綱案では,「濫用的な株主代表訴訟を制限するための措置」につきましては結局取り上げないことになっておりますが,今回の改正で社外取締役を置くことが義務付けられるのであれば,社外取締役活用の一つとして,訴訟委員会の設置なども今後の検討課題としていただきたいと考えています。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,井上幹事,どうぞ。 ○井上幹事 第2部の第1の1で,先ほど冒頭に竹林幹事から御説明のございました取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任について,当部会として意見が割れているので,この要綱案からは落としますという御説明を頂いたところかと思います。これに関しましては,前回の部会以降の動向等も踏まえますと,再一任に係る規律を設けることについて,検討を続けてはどうかと考えております。   本年6月のコーポレートガバナンス・コードの改定では,取締役会が行う報酬制度の設計及び具体的な報酬額の決定について,経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう,客観的透明性ある手続に従うことを求める内容が盛り込まれたところでございます。前回までの部会資料で御提案いただいておりました取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任については,前回の部会において示されていた法務省案の内容については,取締役報酬の決定プロセスの透明性を高めるものであること,また,会社法において規定されることにより,取締役報酬の決定プロセスの透明性の確保のための実効性が確保されることといった観点から,実効的なコーポレート・ガバナンスに資するものとして意義のあるものと考えておりまして,できましたら,再一任に係る規律を求めることについて,検討を続けていただきたいと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局からお願いします。 ○竹林幹事 井上幹事から御意見をいただいたところでございますけれども,現時点におきましては,これまでの部会の議論,かなりの長期間にわたって御議論いただいていたところを踏まえますと,再一任の項目について,昨今の情勢を考えましても,部会として合意を頂くことは難しいのではないかというのが,私ども事務当局の考えでございます。   他方で,私どもといたしましては,報酬の決定方針を決定することを義務付けるということですとか,開示のところで,決定方針に関する事項の開示を求める,あるいは取締役会の決議による報酬の決定の委任に関する事項の開示を求めていくということで,対応させていただくのが適切ではないかと考えているところでございまして,こちらは,金融庁様におかれましても,府令の改正等をなさっているところかと存じますので,どういった形で企業に開示を求めていくのが適切かどうかということにつきましては,引き続き御相談させていただきながら,法務省としても適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   今の点も含めて,その他の点でももちろん結構でございますので,御質問,御意見を出していただければ有り難く存じます。   それでは,沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。   その決定の再一任の点について,意見を申し上げます。   今回,株主総会の決議事項からは除外されるということですが,ただいま法務省から御説明がありましたように,報酬内容の決定方針との関係の説明義務,あるいは事業報告における開示,取締役会の決議による報酬等の決定の委任に関する事項について開示を行わせるということによりまして,定時株主総会での取締役報酬の改定議案の審議に当たり,株主は前年度の事業報告の再一任に関する記載を踏まえまして,質問を行ったり,議決権を行使することができますので,このことを通しまして,間接的に再一任について規律を及ぼすという,そういう効果は期待できるのではないかと思います。   この点につきまして,2点意見があります。   1点目は,開示の内容でありますけれども,再一任の有無や委任先,委任事項が考えられると思います。ただ,代表取締役は,取締役会から再一任された権限,すなわち自らを含む取締役ごとの報酬の配分に関する権限を,会社に対する忠実義務に従い,法令を遵守して適切に行使する義務があると考えられます。各会社におきましては,代表取締役がこの権限を適切に行使するための措置ですね,この点について手続や内規があると考えられますので,そのような措置がある場合の,その措置の内容も開示の対象に含めることを御検討いただければと思います。   2点目は,その開示の範囲の明確化についてです。会社法施行規則121条4号が開示を義務付ける取締役報酬は,職務執行の対価としての財産上の利益であって,最近事業年度に係るものとされております。これによって,ある事業年度と客観的に対応する報酬は,額が確定している限り,その事業年度に開示がされなければならないとされております。ところが,事業年度との対応関係や額は一応決まってはいるようですが,その支払の可能性がどの程度あるか分からない報酬について,開示義務があるかどうかの判断基準というのはどのようになるかという点であります。   実は,この点は,退任後のいわゆる顧問報酬等が,取締役の職務執行の対価でないことから,開示の対象にならないというように理解されていますので,実務では,顧問報酬を前提に取締役報酬の額を決め,顧問報酬の額で取締役報酬を調整するということが行われているというように理解しております。このような場合には,在任中に顧問就任と顧問報酬の合意がされているとも見られることから,取締役職務としての対価と顧問としての対価との区別がかなり微妙になることも考えられます。そこで,先ほどの施行規則の要件が,企業内容と開示府令に基づく取締役の1億円以上の連結報酬の開示要件として採用されており,長期10年以下の懲役という重い罰則発動の構成要件として位置付けられていることから,退任後の顧問報酬との区別とのためにも明確化されることが望ましいと考えます。   この点については,法的な評価と会計処理との連携が考えられると思います。先ほどの施行規則121条5号では,最近事業年度における見込みの額が明らかになったものが開示対象とされており,当期の退職引当金繰入額やストック・オプションの費用計上額を開示すべきとの見解が示されています。このような解釈によれば,一定程度明確になることが考えられますが,これは,事業年度との対応関係が明らかでない報酬についての規定とされております。当期との関係が明確なものについても,役員賞与等について,当期に費用計上すべき額を開示すべきであるという立案担当者の見解も示されており,これと同じ考え方をとりますと,当期事業年度に対応する報酬は,費用計上すべき場合に開示対象になるとも考えられますので,明確性に役立つのではないかと考えられます。   このような基準につきまして,新法成立後に施行規則が定められると思いますが,その際の規定ぶりや,あるいは何らかの方法で解釈上の真意を示すことが望ましいと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,梅野幹事,小林委員,柳澤委員の順で,梅野幹事,どうぞ。 ○梅野幹事 発言の機会を頂戴しまして,ありがとうございます。   ただいまの沖委員の発言と若干関係する点について,今まで日弁連内で行われた議論を紹介させていただきたいと思います。   今回の会社法部会が始まる際に,日弁連として,退任役員に関する開示の規定を事業報告書に盛り込むという提案をしたらどうか検討しておりました。これは,取締役退任後の相談役・顧問が一定の報酬を受領するなど,一定の利益を受けている場合に,報酬その他の処遇条件,その処遇を与える理由,その他ガバナンスに関連する事項を事業報告書において開示してはどうかといった内容でございました。未来投資戦略2017や経済産業省におけるコーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針と同じく,相談役等についてガバナンス上の問題点があり得るのではないかという問題意識に基づくものでした。より具体的には,相談役等による心理的な圧力等が,適切なガバナンスないしは事業執行の阻害要因となっている場合がないか,あるいは,今沖委員が少し触れられたところですが,相談役等に支払う報酬等の支払が実質的には退職慰労金の分割払であり,役員報酬に該当している場合があり得るのではないかといった問題意識でした。  特に,相談役等については,社内ですら実態が把握されず,監査部門,監査役や会計監査人によるチェックが働いていない可能性もあるようです。そこで,事業報告に載せることで,よりチェックが働きやすくし,退職慰労金の後払いといった性質を持つ支払を抑止できるのではないかと考えたものです。   ただし,この案につきましては,取締役とか執行役という元々は会社法の機関であった者を対象とすることを考えてはいたものの,会社法・会社法施行規則において,相談役等の会社法上の機関ではない者の開示を求めることがどうなのか,さらに,東証による相談役・顧問等の開示に関する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」記載要領の改定がなされ,ソフトローにより一定の開示がなされ得るようになったこともあり,日弁連としてはそれ以上の検討はいたしませんでした。従前本部会において,このような議論をしていたわけでもなく,この段階において規則の改正といったことを主張するものではございませんがが,昨今の状況に鑑みますと,将来,事業報告においてこういった情報の開示を求めるということは,検討に値するのではないかと思いましたので,このような提案を検討していたことを御紹介できればと思って,発言をさせていただいた次第です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,小林委員,どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。   まず,個人別の報酬等の内容に関わる決定の再一任につきましては,商工会議所といたしましては現行法の規律を見直さないというところを,これまでも支持しております。公開会社といってもいろいろなレベルの会社がまだあるということもあって,様々な技術的な要素を説明するのは,非常に負担が大きいというのが実情です。そのため,今回情報開示を充実させる目的で,報酬の決定の委任に関する事項に関して一定の開示を行うことを前提とすれば,規律として再一任について株主総会の議決等にかける手続を求めることは必要ないと考えております。   その情報開示の充実に関して,元々私どもとしては,コーポレートガバナンス・コードの対応とか有価証券報告書等での対応が図られてきたことから,全体として規律を見直す必要はないと考えております。しかし,今回の公開会社というくくりでは,有価証券報告書の提出義務のない非上場会社の中小会社が非常に多いということで,同じ開示義務を課すのは疑問を感じているところでございます。   既に申し上げましたとおり,株式会社の24%,おおよそ4社に1社が公開会社であって,中小同族会社も含め様々な規模感の会社がいるということからも,現状のままの段階で開示内容あるいは項目を増やすことについては,企業の負担を増す弊害が非常に大きいと考えております。この部分に関しては,理念上の問題もあるのかもしれませんけれども,企業の実態を考慮していただきたいというのが,私どものお願いでございます。仮に,現実にこのような規制を入れるということであれば,この制度の周知,あるいは現実的には定款変更をしてでも株式譲渡制限会社の方に移行することを促すなど,一定の周知がもう一度なされる必要があるのではないかと考えます。ですので,この部分の矛盾等については,やはり制度の方の理念を追い掛けるだけではなくて,現実の方を考えて,法務対応能力において劣後する中小企業に対する広報,相談対応等を強化していただきたいというところがございます。   それから,2の補償契約についてでございます。商工会議所としては,補償契約における補償金額の開示について,株主からの無用な疑念,訴訟リスク等を懸念して,企業による役員等への正当な補償を妨げるリスク,デメリットがあるということをお話しして,反対の立場をとっております。   一つ質問をさせていただきたいのですが,企業実務としてちょっとしたクレームなどの比較的小さなトラブル,小さくない場合もあるんですけれども,トラブルの早期解決を目的に,解決金などの名目で,支払うことがございます。この場合,金銭については会社が負担して,支払う名義は場合によっては役員となることもありますが,取締役としての経営判断の責任について会社が肩代わりする性質のものではなくて,単純に業務執行に伴って発生する会社の費用にすぎず,利益相反も問題にならないものがほとんどと考えております。このような支出については,今回の開示の対象にはならないと理解しておりますけれども,そのような理解でよろしいのか,御教示いただきたいという質問でございます。   開示の部分で,年度に補償した金額の開示が,当該役員について幾らということでございますから,補償が発生するのは,通常それほどしょっちゅうあるものではございませんので,ある程度事情が分かれば,開示内容を見ると,金額を含めた案件の内容が特定されることになります。和解においては,その和解内容の守秘が前提となりますので,開示義務があることで和解という解決手法自体が難しくなることも十分考えられるところでございます。和解による解決への障害になることに加え,元々全体として悪意,重過失の場合は補償できないとか,対会社責任も補償できないなどと法務省提案に書かれており,会社補償が利用できるのは軽過失以下のケースに限られることも考慮しますと,役員別でということであればなおさらですけれども,引き続き,ここでいう補償契約の①のイの(イ)については,少なくとも補償金額の開示の対象から外していただきたいと考えます。   それから,社外取締役を置くことの義務付けにつきまして,私どもから,前回,規律の対象に上場会社だけでなく有価証券報告書提出会社が含まれており,非上場の有価証券報告会社が約1,000社あると申し上げました。実際に直接的な影響を受ける会社がどのぐらいあるのかというところは,大会社などで社外取締役を未だ設置していない会社となりますので,一定程度は少なくなるとは考えておりますが,実態を認識した上で議論していただきたい,ないしは議論すべきであったと考えております。   この点について,ボリューム的にどの程度の影響が出るかということについて,御検証されたのかどうかを確認させていただきたいということでございます。社外取締役の設置を義務付ける対象が上場会社でないところにまで及ぶということであれば,やはり施行後一定の準備期間は,そのような会社にとってどうしても必要になるため,その部分についても,併せてどのように考えられているのか,御教示願えればと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。   質問があったかと思います。 ○竹林幹事 お答えすることができる範囲でお答えをさせていただきますが,会社が当事者になられているような場合において,瑣末なトラブルに関して解決金として金銭を支払われるというようなときについては,今伺った限りでは,会社補償の場面と少し違うのではないかとも思われますので,会社が当事者として支払をされる場合につきましては,必ずしもこの開示が掛かってこないという場面もあるのではないかと伺ったところでございます。   また,非上場会社について,どれくらい実態を認識しているのかという御質問でございますけれども,なかなかデータとしてどこまで正確なものかということをお話しすることが難しいので,部会資料としてはお示ししておりませんけれども,可能な限りでデータ等について提供いただきまして,それほど多くの会社が影響を受けるわけではないと考えております。上場会社の残りの社数に比べれば,多くございますけれども,当初小林委員からお話がございましたような,1000という単位には到底及ばないと認識してございまして,飽くまで事務当局としてはということでございますけれども,既に社外取締役を置くことが相当でない理由の説明義務等を負っていることなど,これまでの過程も考えていただければ,そこまで大きな負担ではないのではないかと判断させていただいた次第でございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。   よろしゅうございますでしょうか。   それでは,柳澤委員,三瓶委員,川島委員の順で,柳澤委員どうぞ。 ○柳澤委員 発言の機会いただきまして,ありがとうございます。   要綱案の第2部では,第1の「1 取締役の報酬等」,第2の「2 社外取締役を置くことの義務付け」の2点に関して,機関投資家の立場からコメントさせていただければと思います。   まず,第1の「1 取締役の報酬等」につきまして,報酬決定の再一任に関してですが,今回の要綱案では,これまで検討してきた報酬決定の再一任に際しての株主総会決議が結果として取り上げられず,機関投資家としては大変残念な取りまとめになっていると受け止めております。取締役の個人別報酬の決定を委任された取締役会が,その決定を代表取締役に再一任するといった実務慣行は,取締役会による代表取締役に対する監督に不適切な影響を与える可能性があり,ガバナンス上の問題をはらんでいることから,再一任をする場合には,株主総会の決議による承認を要するとした従来の提案を支持しておりましたので,要綱案からの削除については,可能であれば引き続き残しておくことが望ましいものと,現状においても考えております。   しかしながら,報酬決定の再一任について,株主総会の決議を採らないこととするならば,企業に対しては,報酬決定プロセスの客観性,透明性を確保する観点から,(1)報酬等の決定方針で示された内容を詳細に説明していただくとともに,(4)情報開示の充実に掲げられた各項目について,特に,③取締役会の決議による報酬等の決定の委任に関する事項を含めて,具体的で分かりやすい開示に努めていただくよう,機関投資家の立場から要望しておきたいと思います。なお,開示項目に関しては,法務省令で例示列挙されることになろうかと思いますが,想定される内容については,ここまでの部会での議論及びその趣旨を踏まえた上で,的確に定められる必要があるものと認識しております。   このような企業による報酬等の決定方針に関する説明や情報開示の充実への対応が適切になされることを前提として初めて,株主総会の決議によらず,再一任の合理性に関して,外部から実質的に一定程度のチェックが可能になると考えておりますので,最低限の規律を充足するにとどまらず,客観性,透明性ある手続として,より望ましい対応を期待するとともに,その内容が投資家に明確に伝わるよう,開示に対して前向きに取り組んでいただければと思います。   こうした観点から,対応を要するものとして,コーポレートガバナンス・コードの補充原則4の2の①では,経営陣の報酬に関して,取締役会が客観性,透明性ある手続に従い報酬制度を設計し,具体的な報酬額を決定すべきであると定められているのに加えまして,公表された開示府令の改正案においても,役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の内容及び決定方法について,開示を充実することが求められております。今回の要綱案で取りまとめられたように,会社法によるハードローとしては,報酬決定の再一任に際して株主総会決議を要するまでには至っておりませんが,上場会社に対しては,コーポレートガバナンス・コードや開示府令の改正案において,報酬決定の手続の客観性,透明性の確保が要請されてきておりますので,会社法で定められる報酬決定方針の説明及び情報開示の充実に努めていただくとともに,独立した報酬委員会を設置,活用するなど,より高い合理性を持った役員報酬ガバナンスの構築に向けて,取組を更に進展させていくことが求められると考えております。   次に,第2の社外取締役の活用等に関してですが,2の社外取締役を置くことの義務付けにつきまして,コメントさせていただければと思います。   これまでの部会でも意見を提示してきましたが,日本投資顧問業協会として社外取締役の選任義務付けに対しては賛成を表明しております。今回の要綱案では,社外取締役が欠けた場合の懸念事項に関して,補足説明で新たに記載がなされ,取締役会決議の効力や過料の制裁等について,その解釈が示されてきていることから,こうした整理に基づいて,上場会社等でも対応がしやすくなったものと考えております。なお,機関投資家の立場から繰り返し述べてきた見解にはなりますが,コーポレート・ガバナンスの実効性向上を果たしていく上での最低限の品質保証的な規律付けが整備されるという観点に照らし,会社法において,社外取締役の設置が義務付けられることの意義は大きく,更に不選任への後戻り的な動きが許容されない環境が整うことも併せて考慮に入れますと,今回の取りまとめは,国内資本市場に対する信頼性確保と評価向上につながる見直しとして,重要なメッセージを有するものと受け止めております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,三瓶委員,どうぞ。 ○三瓶委員 ありがとうございます。   まず,取締役の報酬等についてですが,前回の部会資料26に,情報開示の充実の①から⑥に関して,それぞれ補足説明がありました。この補足説明の内容は最低限として,是非省令等に落とし込んでいただきたいと思います。この①から⑥について,ここに書いてあるだけではいろいろな読み方ができるので,今まで議論してきたことを踏まえて,補足説明が前回あったと思いますので,それを是非お願いしたいということです。   ここには背景もありまして,今,ソフトローとハードローの組合せでいろいろな改革が行われています。その中で,いい面では,いろいろな改革がスピーディーに行われると。それは,企業側に選択肢が多いということですね。その中で,先進的な企業は,その取組がかなり思い切ったことをされて改革していかれるので,マーケットに対してグッドプラクティスを提供しています。それをまた学んで,次々と改革に進む会社さんもたくさんあります。一方で,法令遵守というレベルにとどまって,いわゆるミニマムスタンダード,それさえ守ればいいということで,そこから一歩も動かないという会社も実際はあります。ですから,かなり格差が開いているという状況です。   これは,海外の投資家から見ると,一つ一つのソフトロー,ハードロー,又はその周りの開示の規則等,全て詳細まで分かっていない人からすると,非常に複雑です。何でこんなに格差が許されるんだろうかということになります。ですから,今回もせっかく,報酬に関してはコーポレートガバナンス・コードの改訂が6月にあって,なお,今は有価証券報告書について内閣府令で改正の準備がされています。という意味では,それと会社法の方の改正もきちんと足並みをそろえて,開示に関して進めていっていただきたいと思う次第です。この足並みがそろっていないと,非常に分かりにくくなって,分かりにくいというのは,場合によっては,その市場には手を付けない方がいいとかいうことになりますから,非常に大事なことだと思います。   そして,これにも関連しますが,企業のそういった自律によって,いろいろな選択肢を選んでいくということからすると,それを任せられる一つの条件として,社外取締役がいるということですから,この義務付けとして,今回要綱案を作っていただいたのは歓迎いたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,川島委員,どうぞ。 ○川島委員 ありがとうございます。   第2の「2 社外取締役を置くことの義務付け」について,意見を申し上げます。   私は,これまで法律で義務付ける必要はないと繰り返し申し上げてきましたし,その考えは今も変わりはありません。そのことを申し上げた上で,本日示された要綱案については,当部会における様々な議論の積み重ねを踏まえた部会としての取りまとめということで,やむを得ないものと受け止めますので,反対はしないということを,念のため申し上げておきます。   なお,見直しの目的は,飽くまでガバナンス強化であり,この義務付け自体は手段にすぎないと思っております。関係各所における実効性確保に向けた取組をお願いし,発言といたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,青委員,どうぞ。 ○青委員 3点述べさせていただきます。   まず,取締役報酬の開示の関係でございますけれども,どの程度の記載を求めるかによりまして,その開示が,有意義なものになるのか,無意味なものになるのか,大きく変わる部分かと思いますので,この点について,株主の関心事項が適切に記載されるような開示が行われるようお願いできればというところが1点でございます。   それから,2点目といたしまして,取締役の個人別報酬の決定に係る再一任でございますけれども,なかなか本部会で合意を得ることが難しいことは分かりますけれども,少なくとも取締役会が再一任を決めるに当たりましては,それが本当に適切かどうか,特に取締役会として十分な監督機能を果たしたと言えるかどうか,真摯に検討することが必須であって,十分な検討もないままに再一任をするのでは,不適切ということになるかと思いますので,そうした考え方については,できる限り周知を図ることが望ましいのではないかと考える次第でございます。   それから,三つ目といたしまして,社外取締役を置くことの義務付けでございますけれども,ここのところは,昨今の社会情勢であるとか,あるいは経営者が様々な点について自由度を持って物事を考えられる仕組みにしていることを前提としまして,その上で,社外取締役の方が入って,適切に経営を見ていただくことが,一番基礎的な状態になることになりますので,義務付けが要綱案に入ったことに関しまして賛成いたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,古本委員,どうぞ。 ○古本委員 どうもありがとうございます。   先ほどは,要綱案から再一任の部分の記載が削除された状態でしたので,一言も申し上げませんでしたが,井上幹事から再考すべきであるという御意見も出されましたし,柳澤委員からも,可能であれば今でも再考すべきではないかという御意見もございましたので,再一任について一言だけ申し上げたいと思います。経団連といたしましては,この件について総会決議等の要件を入れることには,一貫して反対の立場です。ほかの委員の方からも御意見ございましたが,役員報酬の問題につきましては,再一任に関する情報も含めまして,合理的な範囲で開示を充実させることにより,投資家による監督も可能となると思いますので,是非今の形で取りまとめていただくことを要望いたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかに,この第2部についていかがでしょうか。   それでは,北村委員,どうぞ。 ○北村委員 ありがとうございます。   12ページの第2の「2 社外取締役を置くことの義務付け」についてお伺いいたします。補足説明の最後の段落について,社外取締役を一時的に欠いたことで,すぐに過料が課されるわけではないというのは,そのとおりだと思います。問題はその上の二つの段落です。社外取締役がいない場合に,取締役会がそもそも決議をすることができるのかという問題と,社外取締役が一時的に欠けた場合はどうかという,この二つについて説明がされております。   まず,確認させていただきたいのですが,今回の改正では,現在の327条の2の説明に代えて社外取締役を置くことの義務付けを定め,それ以外に,例えば,369条の決議のところで社外取締役が欠けても決議は有効にできるとか,決議を行うことを妨げないという,そういう規定は設けないということでよろしいでしょうか。 ○竹林幹事 御認識のとおりで結構です。 ○北村委員 そうすると,社外取締役を欠く場合の決議の有効性というのは,解釈に委ねられるということになります。補足説明の下から二つ目の段落にあります,社外取締役が一時的に欠けた場合というのは,例えば,監査役会で社外監査役が一時的に半数を下回ったとか,監査等委員会の場合に,一時的に社外取締役が過半数にならなかったとか,あるいは,特別取締役制度を採用しているときに,一時的に社外取締役がゼロになったと,こういう場合も同じような解釈がされるのかということが問題になり得ます。そこで,,もし解釈に委ねるということでありましたら,法務省から詳細な解説をお出しいただいて,それについて,いろいろと解釈論が積み重ねられていくことを期待しなければなりません。その辺り御配慮いただけばと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,大竹委員,田中幹事の順で,大竹委員どうぞ。 ○大竹委員 今の北村先生と同じ問題意識からの質問なのですけれども,13ページの第2段落の「当部会における議論を踏まえると」という段落につきまして,3行目から,「社外取締役が欠けた場合であっても,遅滞なく社外取締役が選任されるときは,その間にされた取締役会の決議は無効とならないと解釈することができると考えられる」との文章についての質問です。前回も随分御議論いただいたんですが,周知の最高裁の昭和44年12月2日の判決によりますと,その取締役が出席しても,なお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは,右の瑕疵は決議の効力に影響がないものとして決議は有効になると解するのが相当であるとし,これがその後の裁判例の基本的な枠組みとなっているように思います。   今般,この部会資料に書かれている解釈による場合,社外取締役を欠いた状態で,会社としては欠員補充をしようとしていたけれども,その間に重要な取締役会決議事項が生じたため,やむを得ず決議をしたが,その後,遅滞なく社外取締役を選任しようとしたけれども,株主総会で否決されたため選任することができなかったという事例を考えるといたします。これを有効と解釈するとしますと,先ほどの昭和44年最高裁判決の枠組みとは少し違う枠組みを採用することになろうかと思います。   具体的には,その取締役が出席しても,なお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情がある場合とは別の特段の事情の類型を認めるという枠組みにいくのか,もっと別の枠組みを考えるのか,前回ベストエフォートという議論も出ておりましたので,実務家としては,もう少しその辺りにつきまして何か手掛かりとなるような御議論を頂けると,実際の事件に出会ったときに,自信を持って裁判ができるなと思う次第でありますので,御意見を頂戴できればと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局への御質問ではないと理解します。この部会に対する問題提起ではないかと受け止めますけれども,事務当局はいかがですか。 ○竹林幹事 部会で御議論いただいた中では,社外取締役の位置付けということにつきまして,そもそも取締役の一員ではないか,遅滞なく欠員が補充された場合については,監督機能が回復されたと見ることができるのではないか,あるいは,今御指摘がございましたような最高裁判例の流れの中でも解釈することができる場合があるのではないかと,いろいろな御意見いただいたところかと思います。もとより,私どもといたしましても,解釈の余地が残ってくることは十分承知しておりますけれども,事務当局の認識としましては,前回までの部会で御議論いただいたところを踏まえまして,今回補足説明を書かせていただいたというところでございます。 ○神田部会長 ありがとうございます。   それでは,田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事 今回の案の取りまとめにつきましては,関係者の理解,意見が対立する中で,それぞれが譲って合意に達したものと理解しておりますので,私としまして,今回の案に反対するものではございません。   その上で,取締役報酬に関して,1点意見を申し上げさせていただきます。   取締役会の決議によって,各取締役の報酬の配分を代表取締役に再一任するという実務は,本来取締役の監督を受けるべき代表取締役が,自己の報酬のみならず他の取締役の報酬をも左右するということになり,取締役会の監督義務の履行の観点から,基本的に問題があると考えております。今回,株主総会で再一任について承認を要求するという案は落ちてはおりますけれども,このような慣行に問題がないとされたということではなく,今回の提案のような情報開示の充実を通じて,実務の改善を促していくのがよろしいかと思います。   それから,近年の諸外国の報酬に関する規制を見ておりますと,やはり報酬に関連して株主総会の意見を聞くということに一定の意味があるという考え方が,次第に有力になっているかと思います。やはり決議という形にしますと,役員報酬そのものに反対とすると,報酬が払われなくなってしまうからとか,あるいは役員の選任議案に反対すると,役員が選任されないということになってしまうということから,株主として報酬体系に不満があっても,そのことをそれ自体として言うということが,必ずしも現在の議案からするとちゅうちょされるという部分もあるかと思います。このような観点から,海外では,日本でいえば勧告決議という形で,報酬パッケージに対して賛意,賛否を表明するというような代替案が行われるようになってきたのではないかと思います。   このようなプラクティスも,現行法の下で勧告決議という形であれば,何ら法的問題もなく行うことができるかと思いますので,そのようなハードローだけでなくて,ソフトローや慣行を組み合わせて,役員報酬に対して適切な規律が働くように努力していくことを期待したいと思います。   それから,先ほどの社外取締役が欠けている場合の決議の効力に関してですが,特段の規定を設けないとすれば,基本的には最高裁判例による決議の効力に影響がないと認められるというか,特段の事情の解釈ということになるわけですけれども,私の理解しているところ,現在の最高裁判例は,文字どおりに読むと,かなり簡単に決議の効力を維持してくれる判例法理になっているといいますか,つまり,例えば,招集通知がある取締役に通知されない場合でも,出てこなかった取締役が出てきたとしても,出てきて,そして反対しても,まだ決議の結果に影響がなければ,決議の効力に影響がないと認めてくれるというのがある,あるいは利害関係のある取締役が決議に参加している場合でも,その人を除いてもなお決議が成立する場合は,決議の効力に影響ないと認めてくれると,そのような判例でやりますと,社外取締役が欠けていても,その社外取締役が出てきて,例えば賛成の決議がなされたというときに,反対の議決権行使をしても,なお決議が成立している場合は,決議の効力に影響ないと認めてくれるのではないかということであります。   学説は少し,決議の効力を簡単に認め過ぎているんではないかという方に,むしろ意見があるわけでして,そういった学説は,例えば,瑕疵が重要であれば,その決議の効力への影響とは無関係に決議を無効とすべきではないかという,株主総会決議の取消事由に関する裁量棄却事由と同じような解釈をとっている学説もありますが,判例は,少なくとも明示的にはそういう解釈をとっていませんので,もしもそうだとすると,社外取締役が欠けていても,むしろ決議の効力に影響がないとも考えられる場合の方が多いのではないかと思います。   ただ,それですといささか,余りにも規律が働かなさ過ぎるような感じもしますので,やはり社外取締役を入れることが比較的容易であるにもかかわらず,入れないまま延々と取締役決議を続けている場合は,コーポレート・ガバナンスの観点から問題が生じているので,それは社外取締役を入れなかったことによる問題でありますので,社外取締役がいないことによって,非常にガバナンス上問題があるために,このような決議がなされたと。社外取締役がいれば,そのような問題は生じなかったから,そこで決議の効力に影響を及ぼすかもしれないというふうな,そういった解釈によって,決議が無効とされるということはあり得るかと思います。   ただ,実際にそのように最高裁が認めるかどうかも,私,はっきりしないと思っていまして,現在の決議の効力に影響があるかどうか一本ですと,通常そうだと思いますが,取締役の全員一致で決議が承認された場合,普通,社外取締役が入っても,決議の効力に影響が及ぶということは余りないのではないかということであります。従来,この部会の中で余りそういう見解を採る人がいなかったかもしれませんけれども,実際には,決議の効力に影響が及ばないとして,社外取締役がいなくても決議は有効と解釈することができる場合が多いのではないかと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,中東幹事,どうぞ。 ○中東幹事 私も,大竹委員が問題提起してくださった点について,述べさせていただきたいと思います。   基本的に,それほど田中幹事がおっしゃったことと違わないと思うのですが,大竹委員の問題提起に即して申し上げると,最高裁昭和44年判決の枠組みとは違った枠組みで考えることになるのだと理解しております。というのは,最高裁判決は,当該取締役が出席していたか否かによって結論が変わったかを問題としているわけですが,今回は,その当該者が選ばれていない場合ということでございますので,選ばれていない人が出席していたかどうかによって結論が変わるかどうかという枠組みでの審査は不可能であると思っています。むしろ,田中幹事がおっしゃいましたように,コーポレート・ガバナンスの問題ですので,コーポレート・ガバナンスのシステムに欠陥があるような形で決議が行われただろうかという観点から,司法審査をするということになろうかと思います。   その意味で,会社がこのシステムを構築するに当たって,きちんとやろうとしただろうか,それがきちんとできていたのであれば,これをあえて効力を否定する方に考えなくてよいだろうと思います。例えば,提案する候補者の選び方について,適材を提案したのに,選任決議で否決されてしまったという場合には,やむを得ないのではないかという場合が少なくないでしょうし,他方で,承認される見込みが乏しい候補者の提案しか,会社ができなかった場合には,会社はベストエフォートを尽くしていないのではないかという疑義を受けることになろうかと思います。会社法上のコーポレート・ガバナンスのシステムをどれだけ会社が実現・維持しようとしたかが問われ,その努力を怠った場合には取締役会決議の効力が否定される場合もあるということであり,元の問題に戻りますと,最判昭和44年判決とは別の枠組みが使われることになろうかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,藤田委員,どうぞ。 ○藤田委員 この期に及んで,余り理論的なことを追及する場ではないとは思いますが,余り盛り上がっているので,私も少しだけ意見を申し上げます。   大竹委員が提起された問題についての答え方は,私も基本的に中東委員と同じで最判昭和44年とは違った枠組みで考えるべき話だと思います。特定の取締役に招集通知が送られず参加できなかったときに,仮に,その人が参加していたらどうだったろうかという形で問いを立てられる場合が,最判昭和44年の射程の及ぶ問題で,ここではそうではない話を扱っているというべきだと思います。   次に,最初に北村委員が言われたことと関係しますが,ここでの答えがその他の会議体にも影響があり得るかという点については,私はそういう考え方は危険だと思っています。特定のメンバー構成を要求する趣旨あるいは強さは,会議体ごとでかなり違うと思うからです。   例えば,指名委員会等設置会社において,三委員会のどれかにおいて社外取締役が過半数でなくなったときには,その委員会は有効な決定をすることはできないと解すべきだと思います。社外者が過半数を占めないような構成で何か決めるとことは,指名委員会等設置会社では予定されていない。社外者過半数の委員会による決定ということは指名委員会等設置会社の本質的な要素として要求されているからです。これに対して,今回の規定が入り,社外取締役1人の選任が義務付けられたからといって,1名社外者が混じっていることが,取締役会が有効な決定をするための必須の条件とまで言わなくてはならないか,取締役会はその構成ではもはや何も決定できなくなるかということは,別途検討の余地のある問題だと思います。少なくとも,指名委員会等設置会社における各委員会で社外取締役が過半数ではなくなった場合とは違うという議論をする余地は十分あると思います。   そういう観点から見ると,社外者が欠けた後一生懸命その後補充に努力したかとか,比較的短期で補充されたといったことが考慮要素として効いてくるべきかも,私は疑問には思っています。もちろん,社外取締役が欠けたなら補充に努めることがあるべき姿であることは異論ないですし,過料の発動においては,こういう要素も考えてもいいかもしれませんけれども,取締役会決議の効力にどのぐらい影響ある話かというと,実は自明ではないと思います。速やかに補充されたときにまで取締役会決議が否定されることはないということに反論するつもりはありませんが,逆にある程度長い間補充がなされなければ,取締役会決議が当然に無効になると反対解釈されるという含みがあるとすると,この補足説明はちょっと書き過ぎているような気もしないではありません。   最終的な結論については意見が分かれるところですし,クリアな線を引くということは,補足説明の範ちゅうを超えているかもしれません。また,条文上ははっきりもしていないにもかかわらず,こういう場で議論することで一義的に明確な答えを決めるということは,そもそもできないと思いますが,枠組みとしてどう考えればいいかということは,先ほど申し上げたとおりで,社外取締役の選任の要請が,それを欠く取締役会がそのままでは決議する権限を奪うような話なのかということが本質的で,また,ここでの議論が取締役会決議以外には,当然には広がらないということではないかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしゅうございますでしょうか。   そうしますと,第2部はいろいろ御意見が立法論として対立し,あるいは分かれる点もいろいろありましたけれども,これまでの部会の審議を通じて,歩み寄ってというか,取りまとめへ向けて御協力を頂いて,今の線が出ているということかと思います。   今日,数々の御指摘を頂きましたので,これらの御指摘も踏まえて,事務当局の方で精査,整理をしていただくということになろうかと思います。   それでは,続きまして,第3部ですね。ページ数は多いのですが,その他,13ページ以降につきまして,御質問,御意見がございましたらお願いいたします。また,併せて附帯決議案の案のうちの「2」,株式会社の代表者の住所の部分についても,御質問,御意見ございましたら,併せてお出しいただければと思います。どなたからでもお願いしたいと思いますが,いつものように古本委員,どうぞ。 ○古本委員 どうもありがとうございます。   第2の「株式交付」につきまして,一言だけ申し上げたいと思います。   今回新たに株式交付制度が導入されることになるわけですが,この制度は,最初の頃の部会でも申し上げましたように,税制上の手当てがあって初めて意味をなすものと言えますので,制度の導入とともに,適切な税制上の手当てが行われるように,関係する省庁間での調整を是非よろしくお願いしたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。   「第1 社債の管理」の「1 社債管理補助者」の「(2)社債管理補助者の資格」につきまして,意見を申し上げます。   当部会におきましては,弁護士,弁護士法人に社債管理補助者の資格要件を認めることを御検討くださり,ありがとうございます。これが認められた場合に,弁護士等による利益相反行為等又は自然人である弁護士が死亡等により社債管理補助者が不在となる可能性について,弁護士会の会則等による適切な実務対応のルール作りが必要との課題がございました。   社債管理補助者は,社債の発行会社との間の委託契約に基づき,社債権者の法定代理人として発行会社に対して社債権を行使していくという関係に立ちます。したがいまして,利益相反につきましては,弁護士が社債管理補助者に就任した場合には,発行会社や各社債権者から社債管理補助者への就任以外の案件について委任を受けた場合に,利益相反が問題になります。弁護士,弁護士法人の利益相反の規律につきましては,弁護士法,あるいはこれを踏まえて会則として定められました弁護士職務基本規定に,これを規律する規定があります。ただ,これの適用ということになりますとかなり難しい点もありますので,今後日本弁護士連合会としましては,ガイドラインの制定によりまして,その解釈の指針を示すことを考えております。   今回の仮案におきまして,社債管理補助者は,社債権者のために公平かつ誠実に社債の管理の補助を行わなければならないものとするという規律が定められることが予定されております。弁護士が社債管理補助者の業務を遂行するに当たりまして,この公平性や誠実性を確保することができるようなガイドラインの規律を,今後検討してまいります。また,弁護士が自然人であることから起きる問題につきましても,弁護士等が社債発行会社との間で社債管理補助者の委任契約を締結する際,自らが社債管理者としての業務を遂行できなくなった場合に,事務を承継する社債管理補助者について定めることを義務付けるといった条項を,やはりガイドラインで定めることを検討してまいります。   日弁連としましては,今般内部的なしかるべき手続を経まして,そのようなルール作りを行うことにつきまして共通の認識といたしましたので,ここに御報告申し上げます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,小林委員,どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。   株式交付について,今回の案では,この株式交付の対象から外国会社が外されております。元々商工会議所では,この部分については,ある程度柔軟な制度にしていただくことを要望しておりました。特に,今回の外国会社の部分につきましては,これを活用する場面が相当に考えられるので,期待をしておりましたが,ここがなくなるということについては,これを検討していた私どもの検討会等では,大変失望しているところでございます。   理由については述べられているところではありますが,会社法には,第819条とか933条など,外国会社についてのところで規定されている文言や,あるいは株式交換で外国会社を念頭に置いた規定もございますので,これらの規定ぶりを元に御検討いただくことはできないのでしょうか。 ○竹林幹事 私どもといたしましても,外国会社を外すということは苦渋の選択といいますか,非常に残念な思いもあったのですが,現時点におきましては,やむを得ないと判断しております。 ○神田部会長 小林委員,いかがでしょうか。 ○小林委員 なかなか難しいというところでございますが,これはまた,次回の法改正の議論でもよろしいんですけれども,やはり再度取り上げていただきたいところではございますので,この辺はよろしくお願いしたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかに,第3部につきましていかがでしょうか。   それでは,成田幹事,どうぞ。 ○成田幹事 ありがとうございます。   附帯決議案の案の2の(1)につきまして,登記官は,当該該当者の住所を登記事項証明書に表示しない措置を講ずることができるとありますが,これが一切の例外を認めないものなのかどうかという点を確認させていただければと思います。と申しますのは,やや特殊なケースなんですが,DVの加害者が原告になって,DVの被害者が代表者を務める会社を相手に訴えを起こそうとした場合に,会社の本店の実態がなく,かつ,DVの被害者の住所が登記上判明しないとなってしまいますと,訴えを起こせなくなるのではないかという懸念があるのかなというところでございます。   こういった事情を示して,住所あるいは本店所在地不明で訴えが提起されれば,裁判所としては,登記所などに調査嘱託をするといったようなことも考えられるかとは思っておるところですが,回答を拒否されてしまいますと,なかなか手の打ちようがなくなってしまいまして,原告の裁判を受ける権利との関係が気になるところでございます。ですから,例えば,そういった調査嘱託に基づく場合には,何か住所情報が取得できるような形にしていただければと思っているところでございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   これは,商事課の宮崎幹事,よろしくお願いします。 ○宮崎幹事 ただいまの最高裁民事局の成田幹事からのコメントに関して,私,民事局商事課で商業登記を担当している部署の者でございますので,コメントさせていただきますが,その登記官が登記事項証明書に表示しない措置を講ずるという部分ですが,これで,登記事項証明書上非表示ということになったとしても,代表者の住所が登記事項であるということは変わらず,ですので,その代表者住所を仮に変更したとすれば,当事者は変更登記申請をしなければならないということになりまして,そうすると,登記所には代表者の住所が記載された申請書などが,登記簿の附属書類として保管されるということになると考えます。その上で,商業登記法11条の2で登記簿の附属書類の閲覧については,利害関係を有する者は請求をすることができるとありますので,この規定によって,仮に御指摘の事例で言えば,原告など当事者本人が登記所に閲覧請求をしてきた場合には,この利害関係があるかないかを個別に判断するということになろうかと思いますが,ただ,非表示とした理由を踏まえますと,その利害関係の判断というのは厳格になされなければならないものだろうなと,現時点では考えているところです。   どのような場合に閲覧を認めるかというもの,現時点で明確な線引きをまだ検討しているという状況ではありませんけれども,御指摘の被告となるべき会社の営業所とか事務所に実態がない,管轄の決定を送達ができないような場合に,では閲覧が許容されるかというような場合というのは,考えなければいけないことかと思いますが,例外的な場合には閲覧が許容されることもあるのではないかと考えます。   また,裁判所からの調査嘱託に関してですけれども,一般に裁判所の調査嘱託に対しては,これに対して回答する公法上の義務を負っているとも言われておりますが,他方で,正当な事由があれば回答を拒むこともできるとも言われておりまして,この正当な事由というものの判断の中で,一方では非表示とした事由,プライバシーの問題を考慮した上で,他方で当該裁判でその情報,その住所の情報を得る必要性が,どういった関連性からあるのかとか,あるいは登記所以外のところから情報を得ることができるのか,できないのかなどなどを考慮して,回答するかどうかが判断されることになろうかと思いますので,調査嘱託に対して,一切これは回答できないということになるということではないものと思っております。 ○神田部会長 ありがとうございました。   よろしゅうございますでしょうか。   ほかに,第3部について御質問,御意見ございませんでしょうか。   それでは,沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。   「第2 株式交付」の「2 株式交付計画」について,審議の終盤になりまして恐縮ですが,2点意見を申し上げたいと思います。   1点目は,株式交付につきまして,会社法800条と同じ規定を置くかという点であります。株式交換等につきましては,会社法800条におきまして,いわゆる三角株式交換を行うための規定が定められております。株式交付につきましても,これと同じ仕組みですね,三角株式交付のニーズ自体はあると考えられますので,800条に株式交付を追加することを一応御検討いただければと思うのであります。これが1点目。   それから2点目でありますが,これは,出来上がった改正法の条文の解釈の問題になるかもしれませんが,株式交付計画の交付比率を一定の幅を持って定めることが可能かどうかという点に関するものであります。   仮案では,5の⑥におきまして,株式交付親会社は効力発生日を当初の効力発生日から3か月以内の日に変更することが認められております。株式交付による公開買付けの開始後に競合的な公開買付けが開始された場合には,公開買付期間の延長が認められており,そのために,株式交付の効力発生日を変更することが考えられます。しかしながら,競合的な公開買付けの公開買付価格に対応するために,株式交付計画の割当てに関する事項を変更し比率を上げようとしても,株主総会決議が必要になります。募集株式の発行におきましては,株主総会は,発行する株式の上限と払込金額の下限を定めて,取締役会に委任することが可能になっております。   株式交付は部分的な株式交換と位置付けられておりますが,その機能としましては,現物出資による募集株式の発行と同じであり,株式交付計画におきましても,2①ウの数とエの割当てに関する事項,比率ですね,これらを上限で定めて,株主総会の承認を得て,その範囲内で取締役会決議に基づいて定めた数と,比率に基づく株式交付を行うことも考えられると思いますので,これができれば,競合的公開買付けの対応は可能になると思われます。   実務上,算定機関による株式交換等における交換比率は,一定のレンジ,幅を持って表示され,その範囲内での交換比率による株式交換契約は締結されていると理解しております。このような実務からすれば,上記のような運用も不可能ではないと考えられるのであります。これは,条文の解釈の問題になるかもしれませんが,今後の条件の作成,あるいは政省令の制定におきまして,これが可能となるような書き方がもしできれば,あるいは,少なくとも不可能ではないような書き方をすることが可能であれば,一応御検討いただくようにお願いしたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○青野関係官 1点目の株式交付に関して会社法第800条と同等の規律を設けるかどうかという点については,現時点では,そのような規律を設ける予定はございません。   また,2点目については,基本的には,御指摘いただいた株式交換についてと同様の考え方になるのではないかとは考えますが,おっしゃったとおり,いずれにしても,解釈の問題ということになろうかと思います。 ○沖委員 法務省のお考えは理解いたしました。ありがとうございました。 ○青野関係官 1点補足でございますけれども,1点目の株式交付に関して会社法第800条と同等の規律を設ける予定はないというのは,今回,株式交付制度の新設について御議論をいただいているのは,現物出資に関する検査役の選任等の負担があることが,自社の株式を対価として他の株式会社を買収することの支障になっているという指摘等を出発点としており,親会社の株式を対価とする場面,つまり,自社の株式を対価とするわけではない場面については,新たな規律の対象として想定していないからということでございます。 ○沖委員 一応,おっしゃることは理解しております。   株式交付を,親会社の株式を付与することが,これが当然前提になるということで,ただ,それ以外の金銭等も一応対価にはできるということですから,そこに親会社の株式を,その株式交付親会社の更に親会社の株式を使う場合に,800条と同じような規定の意味があるのではないかと考えた次第です。   ただ,今のお話は理解できましたので,ありがとうございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかに,第3部についていかがでしょうか。   特によろしゅうございますでしょうか。   そうしますと,この第3部につきましては,若干の事項について御指摘を頂きましたけれども,それ以外につきましては,この資料の線でほぼこの部会としての同意が頂けていると思いますので,今日頂きました御指摘の点について,事務局において最終的な確認というのでしょうか,をしていただければと思います。   それでは,全体について,何か御質問,御意見等,言い残したこと,その他ございますでしょうか。   特によろしゅうございますでしょうか。   それでは,いつもよりは早いのですけれども,今日はこの辺りとさせていただきたいと思います。   今後の予定等につきまして,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 本日頂戴しました御意見も踏まえまして,事務当局において精査の上,会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案の案及び附帯決議案を作成させていただき,次回の部会におきまして,同要綱案及び附帯決議をお取りまとめいただきたいと考えております。 ○神田部会長 以上のような進め方を考えておりますけれども,そのような進行とさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。   どうもありがとうございます。   それでは,次回の日程等について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 次回でございますけれども,1月16日水曜日午後1時30分から午後5時30分まで,法務省地下1階の大会議室で予定させていただいております。   次回会議は,比較的短時間になるかと思います。遠方から御足労いただいております先生方もいらっしゃり,大変恐縮ですが,どうぞよろしくお願いいたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   本日も大変熱心な御審議を頂き,誠にありがとうございました。   これで,18回目の会議を閉会とさせていただきます。   どうもありがとうございました。 ―了―