法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第14回会議 議事録 第1 日 時  平成31年1月30日(水)   自 午後1時29分                         至 午後3時27分 第2 場 所  東京地方検察庁会議室 第3 議 題  1 少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすること及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方について         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の第14回会議を開催いたします。 ○井上部会長 本日も御多用中のところお集まりいただきまして,ありがとうございます。   まず,議事に入る前に,前回の当部会以降,委員・幹事の異動がございましたので,順次御紹介させていただきます。   川原隆司氏,辻裕教氏が委員を退任され,新たに小山太士氏,吉田誠治氏が委員に任命されました。 ○小山委員 先般,法務省刑事局長を拝命いたしました小山でございます。よろしくお願いいたします。 ○吉田委員 最高検察庁検事の吉田です。どうぞよろしくお願いします。 ○井上部会長 今福章二氏,加藤俊治氏,戸苅左近氏,福島直之氏が幹事を退任され,新たに東山太郎氏,福家康史氏,古田康輔氏が幹事に任命されました。 ○東山幹事 法務省刑事局刑事法制管理官の東山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○福家幹事 最高裁判所刑事局の第一課長になりました福家と申します。どうかよろしくお願いいたします。 ○古田幹事 法務省保護局担当の官房審議官になりました古田でございます。よろしくお願いいたします。 ○井上部会長 次に,関係官としてこれまで法務省保護局長に出席していただいているところですが,法務省における異動に伴いまして,新保護局長になられた今福章二氏に関係官として当部会に出席していただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,今福さん,よろしくお願いします。   なお,本日,酒巻委員におかれましては,所用のため欠席されています。   まず,初めに,事務当局から資料について説明をお願いします。 ○羽柴幹事 本日,配布資料として,配布資料22「統計資料4」,配布資料23「統計資料5(公判請求・略式命令請求関係)」,配布資料24「18歳及び19歳の少年並びに20歳及び21歳の成人の処分状況(平成29年)」を配布しています。配布資料の内容につきましては,後ほど御説明いたします。   また,参考資料として,「部会第8回会議から第13回会議までの意見要旨(制度・施策関係)」と「遵守事項に違反したときの施設収容についての課題」を配布しています。   さらに,太田委員から,「若年者に対する新たな処分」に関する意見交換の中で御意見を述べられる際の補助資料として,「若年者に対する新たな処分の仕組み」と題する資料が提出されていますので,併せて配布しています。   参考資料の「部会第8回会議から第13回会議までの意見要旨(制度・施策関係)」は,事務当局の責任において,当部会第8回会議から第13回会議までにおける各委員・幹事の御意見の要旨をまとめたものです。   参考資料の「遵守事項に違反したときの施設収容についての課題」は,本日の会議における意見交換の際の御参考としていただくため,第13回会議における川出委員からの御発言を踏まえて,考えられる仕組みと課題を整理したものです。   あわせて,第12回会議で配布しました配布資料21「検討のための素案」及び参考資料「犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備-検討のための素案-」を再度机上に置いています。   なお,本日も前回までの配布資料はファイルにとじて机上に配布しております。   続きまして,配布資料22から24までについて,御説明いたします。   配布資料22は,部会第1回会議で配布した配布資料8を最新のデータに基づいて更新したものです。   部会第1回会議で配布した配布資料8は,平成27年までのデータに基づいて作成したものでしたが,今回の配布資料22は,平成28年及び29年のデータに基づいて作成したものとなっています。   まず,目次を御覧ください。   例えば,資料番号4-1のように経年比較の統計については,新たに平成28年,29年の数値を追加したほか,資料番号4-9のような単年のデータにつきましては,新たに平成28年分と29年分の資料を追加いたしました。   最新の数値について,主なところを御説明いたします。   資料番号4-1及び4-2を御覧ください。   平成29年には,刑法犯の検挙人員,刑法犯少年の検挙人員ともに減少しており,資料番号4-1のとおり,刑法犯については21万5,003人,資料番号4-2のとおり,刑法犯少年については1万7,287人でした。そのうち,刑法犯の再犯者率は48.7%,刑法犯少年の再犯者率は35.5%でした。   続いて,資料番号4-3及び4-4を御覧ください。   平成29年には,資料番号4-4のとおり,一般保護事件の終局総人員は2万4,603人に減少しており,資料番号4-3のとおり,年齢別の終局総人員数は,平成28年には中間少年が多く,平成29年には年長少年が多かったことが分かります。   続いて,今回の配布資料22には,配布資料8の内容を更新する以外に,新たに追加した資料が2点ございます。   まず,1点目については,資料番号4-11を御覧ください。   資料番号4-11は,各年における出所受刑者の人数,そのうち一定期間内に再び刑事施設に入所した再入者の人数及び出所受刑者に占める再入者の割合の推移を表したグラフです。   このうち,①から③までのグラフについては,2年以内,5年以内,10年以内の再入者等について表したもので,これらは配布資料8において掲載していたものを更新したものですが,④のグラフについては,今回新たに追加したものです。これは,出所受刑者の刑事施設への2年以内の再入率について,年齢層別に明らかにしたものです。このグラフによれば,平成28年に出所した受刑者で,出所時の年齢が29歳以下であったもののうち,2年以内に再び刑事施設に入所した者の割合は10.7%であったことが分かります。   資料番号4-12を見ますと,平成28年に少年院を出院した者のうち,2年以内に少年院に再入院し,又は刑事施設に入所した再入者の割合も10.7%であったことが分かります。   続いて,2点目については,資料番号4-15を御覧ください。   資料番号4-15は,略式命令請求事件の既済人員を罪名別にまとめた表です。以前に配布した配布資料8の「略式命令請求事件の既済人員」では,年齢層別の統計でしたが,今回の資料番号4-15では,25歳までの1歳刻みの年齢別の既済人員数を追加いたしました。   配布資料22「統計資料4」の説明は以上です。   続いて,今回新たに作成した配布資料23「統計資料5(公判請求・略式命令請求関係)」について御説明いたします。   この資料は,検察における処理時20歳及び21歳の者の罪名別公判請求数,略式命令請求数等の資料であり,このうち資料番号5-1は平成28年,5-2は平成29年の統計です。   先ほど御説明した配布資料22では,刑事通常第一審の終局人員に関する統計も,略式命令請求事件の既済人員に関する統計も,罪名が「刑法犯その他」,「特別法犯その他」などとしてまとめられている部分があり,これらについて具体的な罪名が分かりませんが,若年者による犯罪の傾向や処罰の状況を把握する上で,罪名別の統計が有用であると思われることから,配布資料23では,処理時20歳及び21歳の者をまとめて,罪名別公判請求数,略式命令請求数を算出し,あわせて,それらの終局処分総数に占める割合を示したものです。   配布資料23「統計資料5(公判請求・略式命令請求関係)」の説明は以上です。   続いて,配布資料24「18歳及び19歳の少年並びに20歳及び21歳の成人の処分状況(平成29年)」は,部会第5回会議で配布した配布資料15を,最新のデータである平成29年のデータに基づいて更新したものです。   なお,配布資料24の3ページ目の「検察における処分状況」の数値について,配布資料15では自動車損害賠償保障法違反の処分人員を算入していませんでしたが,同法違反の処分人員も年齢別のデータがありますので,今回の配布資料24ではその人員も算入しています。   参考までに申し上げますと,自動車損害賠償保障法違反による処分人員については,平成27年は,総数は70人,その内訳は,公判請求4人,略式命令請求48人,起訴猶予11人,その他7人でありまして,平成29年は,総数は117人,その内訳は,公判請求23人,略式命令請求69人,起訴猶予18人,その他7人となっています。   配布資料の説明は以上です。 ○井上部会長 ありがとうございました。   ただいまの配布資料についての説明に関して,質問等がございますでしょうか。   特にありませんか。   審議の中で疑問が生じたら,御発言の中でその点も含めて質問していただければと思います。   それでは,審議に入ります。   前回,第13回会議におきましては,「検討のための素案」に盛り込まれている制度・施策のうち,検討課題が多く残されている「若年者に対する新たな処分」について意見交換を行うとともに,その他の制度・施策についても,まだ検討課題が多く残されている事項や,検討に時間を要すると思われる事項について,意見交換を行ったところです。   これらの検討課題が多く残されている事項につきましては,前回の意見交換を踏まえ,更に議論を深める必要があると考えられますので,本日も,前回と同様,まず「若年者に対する新たな処分」について意見交換を行い,その後,他の制度・施策のうち,まだ検討課題が多く残されていると考えられる事項や検討に時間を要すると考えられる事項について御審議いただきたいと思っておりますが,このような進め方でよろしいでしょうか。               (一同異議なし)   ありがとうございます。   それでは,まず,「若年者に対する新たな処分」について意見交換を行いたいと思います。配布資料21「検討のための素案」の該当部分は,24ページ以下ということになります。   初めに,前回と同様,全般的な在り方について,総論的な意見交換を行いたいと思います。   御意見がある方は,挙手の上,御発言をお願いします。 ○池田幹事 「若年者に対する新たな処分」の全般的な在り方について意見を申し上げたいと思います。   これまで,「若年者に対する新たな処分」は検察官が起訴猶予と判断したものを対象とする制度として検討されてきました。これは,18歳及び19歳の者が成人となった場合に,罪を犯したのであれば刑事処分によって対応するという取扱いを前提とすると,起訴猶予となって刑事処分がなされない場合においては処遇が行われなくなるという懸念があったことから,その場合にも必要な処遇を行うことができるようにするという考え方によるものです。   ここでは,18歳及び19歳の者が成人となった場合には,罪を犯したこれらの者に対して刑事処分によって対応するという取扱いが前提となっています。それは,一方において少年法では,少年の健全育成を目的とし,刑事処分と保護処分のいずれかふさわしい処分を選択できるとした上で,保護処分を原則とし,刑事処分によるのは保護処分によるのが不適当な場合に限定される,そのように理解されているのに対して,18歳及び19歳の者が,少年ではなく成人とされますと,少年法の適用対象からは外れますので,これらの者が罪を犯したときは刑事処分によって対応することとなるとされるためです。   以上の理解に対しましては,前回の部会において,「若年者に対する新たな処分」の対象者を起訴猶予とされた者に限らず,例えば罰金相当の者まで含めるべきであるといった御意見もありました。そこで,仮にこのような考え方に立つといたしますと,その場合には,そもそも「若年者に対する新たな処分」の趣旨,目的がどのようなものであるか,性質をどのようなものとするか,刑罰の対象となる者と,「若年者に対する新たな処分」の対象となる者とを分ける制度上の基準ないし考え方をどのようなものとするか,罪を犯し,処罰をもって臨むべき成人に対して,刑罰の対象とならない場合を設ける必要性,許容性が認められるのかどうか,などといった点を考える必要があります。   また,仕組みとしても,刑罰と「若年者に対する新たな処分」との関係を踏まえて,家庭裁判所が刑事処分相当と判断した場合には,当該事件を検察官に送致する,他方で,刑事裁判所が罰金相当あるいは「若年者に対する新たな処分」相当と判断した場合には,当該事件を家庭裁判所に移送する,そういった仕組みを設けることになるのかなどを考える必要があります。   さらに,仮に検察官が起訴猶予と判断した場合だけでなく,罰金など一定の刑事処分に処すべきものと判断した場合にも,「若年者に対する新たな処分」の手続に乗せなければならないとしたときには,検察審査会との関係についても,「若年者に対する新たな処分」の対象者を起訴猶予と判断された者に限る場合とは別の問題が生じることになるものと思われます。   検察審査会制度は,検察官の公訴権行使に一般国民の感覚を反映させて,その適正を図ることを趣旨とするもので,検察官による公訴を提起しないという判断の当否を審査対象とします。しかし,検察官が,罰金などの刑事処分が相当と判断した場合であっても,起訴せずに「若年者に対する新たな処分」の手続に乗せなければならないとする場合,そのことによって「若年者に対する新たな処分」の手続の対象となり,さらに,当該処分が言い渡されたときにも,検察官の公訴提起をしないとする判断を検察審査会の審査対象とするのか,その場合,検察審査会に何を審査させるのか,どのような判断を求めることとなるのかという点に,検討を必要とする問題があるように思われます。 ○廣瀬委員 今の池田幹事の御発言ですけれども,趣旨を正確に理解しているかどうか分からないのですが,18歳及び19歳の者を成人扱いとした場合に,「刑事処分が原則ということを前提にして制度を考えていくべきだ」ということ自体については,私も異論はありません。他方で,これまで何度か申し上げて,他の委員からの御発言もありましたけれども,検察官の起訴・不起訴の判断というのは,長期の実刑相当で起訴が明白だという事件は別として,起訴するかしないかが個々の検察官の裁量によって変わってくるという事例は結構あると思います。その場合に,被害者の意向は当然考慮されますし,その行為や結果の重大性も考えられますが,再犯の危険性の程度,その危険性をどうやって防止したらよいかというような刑事政策的有効性も当然検討されると思われるわけです。   この点,現行法下において,現在でも訴追裁量権が幅広く認められており,訴追裁量の判断の際には,そういう刑事政策的な有効性も考慮するということが言われているわけです。そこで仮に「若年者に対する新たな処分」が導入された場合,訴追裁量権の行使という観点から見てみると,検察官の訴追裁量の選択肢をある意味充実させるというか,選択する上での考慮事項を増やすということになるのだと思うのです。先ほど池田幹事がおっしゃったような問題もありますけれども,実際問題として考えてみると,新しい制度ができて,それが有効に機能するということになれば,既存の起訴・不起訴の判断にもいろいろな影響を及ぼしてくるのは不可避だと思います。太田委員がこの前,提示されたように,明確に「若年者に対する新たな処分」の対象として,罰金となる者も含むという形に変えるかどうかは別として,実際問題として「若年者に対する新たな処分」ができて,有効性も認められるということになれば,訴追裁量の判断の過程において,その有効性も踏まえた上で,これまで罰金にしていたような者も「若年者に対する新たな処分」の対象として振り分けるということは十分あり得るし,またそれは不可避なのだろうと思うのです。   ですから,この問題は,検察官の適切な訴追裁量権の行使が,再犯防止や犯罪者の立ち直りのために有効に機能するかという観点から考えていくということが非常に大事だと思うのです。   そうすると,事案の性質・軽重等による起訴・不起訴の当否は,正に正義・公平の観念も含めて検察官が専権事項として判断することが適切ですけれども,先ほど述べたような,特に本人の問題性,資質や環境の問題点などから再犯のおそれがどのぐらいあるのか,その再犯のおそれにどう対応すればよいのかというような問題については家庭裁判所の調査や審判,あるいは保護処分類似の措置が非常に有効に機能してくると思うのです。ですから,訴追裁量権の適正な行使という観点から考えても,検察官,家庭裁判所等のそれぞれ専門性を十分発揮し,対象者の選択や適切な処分の振り分け,仕分が有効にできる制度を考えていくということが,非常に大事なところだろうと思うのです。   ですから,そういう観点からの検討も是非した方がいいということを,今の御意見とは少しかみ合わないかもしれませんが,一言申し上げておきます。 ○山﨑委員 今の点に関しましては,これまでの議論では,池田幹事がおっしゃったように,18歳,19歳の者を成人とするのであれば,刑罰が相当な事案は刑罰で対応するという議論の前提があったと思いますので,そうではなく,起訴は相当だけれども,罰金相当の者も対象とするということであれば,また新たな検討が必要になってくるということかと思っております。私は,それはなかなか制度として難しいのではないかという感想を持っております。   もう一つ,別の観点になりますけれども,この「若年者に対する新たな処分」の法的性質に関して,保安処分との関係という観点から意見を述べたいと思います。   今回の諮問を受けた法制審議会の総会においては,この部会の第1回会議でも資料として机上配布されておりましたけれども,検討されるべき刑事政策的な措置については,実質的な保安処分への道を開くようなことがあってはならないとして,その点への配慮も十分にし,拙速にならないよう慎重かつ丁寧な議論を進めるべきであるという御意見がありました。   こういった総会での指摘も踏まえますと,当部会においても,「若年者に対する新たな処分」と保安処分との関係についても,十分に整理して検討しておく必要があるのではないかと考えています。この点に関しましては,昨年11月に刑事法研究者から出された声明においても,その内容いかんによっては「若年者に対する新たな処分」が保安処分の本質を有することになりかねないといった指摘もなされているところであります。   この点,保安処分の定義自体にそもそもいろいろあるとは思うのですけれども,例えば犯罪者などに対して犯罪防止のために科す刑罰以外の保護,教育,矯正,治療などの強制処分といったような定義がされているかと思います。そして,我が国の刑事法制度では,このような保安処分を少なくとも正面からは採用してこなかったということについては,異論がないところだと思います。   今回,仮に少年法の適用年齢を18歳未満へと引き下げた場合には,18歳,19歳の者に対しては少年法の健全育成という目的は及ばないということになりますが,そのような中において,検察官が訴追を必要としないため公訴を提起しないこととした者に対し,刑罰とは異なる処分として対象者の犯罪危険性を根拠に賦課される特別予防措置としての新たな処分を課すということになりますと,その法的性質は保安処分と共通するということにならないのでしょうか。取り分け,「若年者に対する新たな処分」の内容として,施設収容処分まで認めるという場合には,行為責任主義との関係が極めて曖昧となって,より保安処分へと接近することになりはしないかと考えられます。   いずれにしましても,この「若年者に対する新たな処分」に関しましては,先ほど挙げたような総会での指摘も踏まえて,保安処分との関係という観点からもその内容や法的性質論を十分に検討する必要があると考える次第です。 ○山下幹事 今の山﨑委員の意見に関連して,同じような観点で私からも意見を述べたいと思います。   「若年者に対する新たな処分」の法的性質については,前回,井上部会長とのやり取りの中で,井上部会長からは,既に今井委員から,非難可能な行為がなされたことをきっかけとして対象者の特別予防を目的として行う処分と理解できるという見解が紹介されたところであります。   これを踏まえますと,18歳,19歳の者が少年法上も成人となることを前提として,特別予防を目的として行われる処分ということになりますけれども,現行少年法上の健全育成の理念というものが外れ,今回の諮問においても言及されている再犯防止という観点からすれば,検察官が刑事処分としては起訴しないと決めた事件について特別予防のために新たな処分を行うということですので,それは18歳,19歳の者の再犯可能性という危険性を根拠として行うことにならざるを得ないと考えられます。そうだとしますと,先ほど山﨑委員からも懸念が述べられましたけれども,正にこれは保安処分の性質を有することになると考えられます。   そもそも,なぜ少年法上も成人となるとされる18歳,19歳の者についてだけ,このように新たな処分として大きな負担を課すことが許されるのかということについても,これまで十分な説明はなされていないと思いますけれども,このような保安処分となるような新たな処分というものは認めるべきではないと考えます。 ○青木委員 この「若年者に対する新たな処分」の正当化根拠について考えれば考えるほど分からなくなったのですけれども,元々の出発点として,これは今の18歳,19歳の者が成人として扱われるようになった場合という前提で,しかもその成人というのは,自律した存在であると,自律的な主体として尊重されるものであるという前提で制度が組まれるということだったと思います。   ところが,実際に出てきている中身というのは,今20歳以上について前提となっている自律した大人というものを対象だと考えるとすると,すごく違和感のある制度になっていると思うのです。例えば,行為責任の範囲内でと言いながら,一旦,検察官が起訴はしないと決めた者について,家庭裁判所調査官の調査に応じなければならない,場合によっては10日間収容鑑別もされるかもしれないという手続的な負担は少なくとも負わされることになるわけです。   そのような制度を,若年者あるいは18歳,19歳の者に限らず一般的な成人に対してもできるという前提で,取りあえず今回は18歳,19歳の者についてだけ行うというものなのか,それとも,元々少年法の適用がされていた18歳,19歳の者についてだけ特別に設けるものなのかということも,実は余りはっきりしていないのではないかと思います。   「検討のための素案」の検討課題には,「18歳及び19歳の者が保護処分の対象から外れることとなった場合に」と書かれていて,これまで保護処分の対象となっていた者についてのものだからできるというようにも読めるのですけれども,そうだとすると,自律した本当の大人というか,今の20歳以上と全く同じ制度ではない制度として組んでいるということになるので,そうだとすれば,なぜほかの大人と区別するのか。その区別の根拠というのが正当化根拠になるのだろうと思いますけれども,その説明はなくて,あるのは今まで保護処分を受けていたというだけだと思うのです。そういう説明で正当化されるのかということも検討する必要があると思います。   本当に成人として扱うのであれば,「若年者に対する新たな処分」というのは,いろいろな意味で今の法律の考え方に抵触する中身を含んでいると思います。そういう観点で正当化根拠が本当にあるのかどうかということについてももう一度きちんと見直す必要があるのではないかと思います。 ○羽柴幹事 先ほど,保安処分につきまして御発言がございましたけれども,議論の整理の観点から少し御紹介をさせていただきたいと思います。   いわゆる保安処分,それはどのような定義として考えるかにもちろんよるところと思われますけれども,これまで保安処分と言われていたものといたしまして,昭和49年の改正刑法草案に規定された保安処分がございます。ここにおいては,禁錮以上の刑に当たる行為をした心神喪失者若しくは心神耗弱者又はアルコール,薬物中毒者について,再犯のおそれがあり,保安上必要があると認められるときに,一定期間,保安施設に収容する処分を行うことができるとされており,また,必要があるときは,裁判所の決定により収容期間を更新することができることとされておりました。   このように,保安処分は行為責任の有無及び軽重に関わりなく,対象者の将来の危険性を基礎として処分を行うものとされていたところです。   これに対しまして,これまでのこの部会における御議論におきましては,「若年者に対する新たな処分」は行為責任の範囲内で処分を行うものとされておりまして,その行為責任の範囲内で処分を行う必要があるかどうかという点が,先ほど申し上げた保安処分とは異なるところであろうと思われます。 ○井上部会長 多義的な言葉ですので,その言葉だけで,そうだからどうだといった議論をするのは適切でなく,事柄の実質でお考えになり,議論された方が生産的ではないかと私は思いますけれども,次回以降も更に御検討いただければと存じます。   総論的な部分についてはこのぐらいでよろしいでしょうか。   それでは,次に進ませていただき,「一 対象者」,「検討のための素案」の24ページになりますが,これについて意見交換を行いたいと思います。   御意見がある方は,挙手の上,御発言をお願いします。 ○羽間委員 「若年者に対する新たな処分」の対象者につきまして意見を申し上げたいと思います。   前提として申し上げておきますと,以前にどなたかから御意見がございましたように,年齢引下げに伴う刑事政策的措置につきまして,成人となる18歳,19歳の者に対して,許される限度で検討しなければならないという考えについては,特に反対するつもりはございません。   他方で,現行の少年法の審判・処遇が果たしている役割・処遇効果の重要性に照らしますと,引下げに伴う深刻な刑事政策的後退を避けるためには,その許される限度の中では最大限処遇効果の高い方策を選択していくべきであろうと考えております。   その観点で見ますと,「若年者に対する新たな処分」は,そういった限度の中で家庭裁判所調査官の調査など,現行でも効果を上げている仕組みを取り入れていこうとする制度です。今後検討されていく処分や処遇内容にもよりますけれども,この制度に期待されている処遇効果を考えますと,その適用対象について必ずしも起訴猶予となるような事案に限定する必要はなく,場合によっては,これまでなら刑罰が科されていたような事案で,刑罰を科すよりも再犯防止に向けた処遇を行った方がよいというような若年者に対しても,この制度の対象とすることも検討されてよいのではないかと思います。   現在までの当部会で検討されている措置を俯かんしてみますと,実刑となるような重い罪に及んだ者に対する措置としては,自由刑の法改正や受刑者への処遇の充実といった検討がなされているのですけれども,それよりも軽い刑罰についての対応措置については,やや心もとない印象を持っております。特に,これまで私からも何度か申し上げ,他の委員の方々からも御指摘がございましたように,罰金となるような事案について,罰金の保護観察付き執行猶予のみで対応できるのかということにつきましては,この制度の実効性や,どの程度十分に活用されるのかという観点から疑問がございます。   そこで,どういった仕組みにするのかという点は更に御検討いただければと思いますが,いずれにしても,「若年者に対する新たな処分」の対象者につきましては,起訴猶予者に限るのではなく,これまでであれば罰金等になっていたような者で問題性が高く,刑罰よりも処遇を優先すべきようなものについても含めることができる制度としておくことが必要なのではないかと思います。 ○山下幹事 前回の第13回会議で太田委員から「若年者に対する新たな処分」についての幾つかのバリエーションの案が提案されましたが,そのうちの「C案」について意見を述べたいと思います。   この「C案」というのは,検察官が公判請求する事案を除いて,行為責任によれば起訴も不起訴もあり得る事案とか,これまでであれば「若年者に対する新たな処分」がなかったために略式罰金にしていたとか,法定刑に罰金がないために公判請求されていた無銭飲食の事案などを家庭裁判所に送致した後,家庭裁判所において刑事処分の必要性と「若年者に対する新たな処分」による特別予防の必要性とを比較衡量した上で,より適切な方の処分を選択させて,家庭裁判所が略式罰金を含めて刑事処分にすべきであると判断した場合には検察官に逆送させるという制度として提案されておりました。   これは,明白に起訴すべき事案以外については,検察官は家庭裁判所に送致して,その判断に従うということになりますので,18歳,19歳の者が少年法上も成人となった後も,言わば先議権の大部分を家庭裁判所に認めるというものであり,そこまで言うのであれば,18歳,19歳の者についての全ての事件を家庭裁判所に送致して,家庭裁判所に先議権を認めた方が徹底するとも考えられますし,逆に,この提案は現行法でできることをほとんどそのまま実現しようとするものであって,なぜそもそも現行法を変更しようとしているのか全く分からないことになると思います。   「C案」というのは,「検討のための素案」で対象事件が「訴追を必要としないため公訴を提起しないこととされたもの」とされたことに対する対案として提案されたわけですけれども,この見解は,かえって現在の素案の限界とか問題点を浮き彫りにしたとも考えられるものでありまして,いずれにしても,「C案」というのはそういう問題が非常にある見解ではないかと考えます。 ○井上部会長 太田委員,何か反論はありますか。 ○太田委員 私は「C案」をお勧めしているというわけではございませんで,バリエーションとしてこういう案もあるだろうということです。ただ,1点だけ申し上げますと,検察官の判断の中に予防的な判断が従来から含まれているとすれば,略式起訴全部を対象にするというのは,果たして適当かどうかということは考える必要があるのではないかと思います。要するに,略式起訴にも本当に処遇が必要ないというケースがかなり多く含まれていると思いますので,そういったものは従来どおりの手続として略式起訴,略式罰金にするということもあるのではないかと考えているところであります。 ○井上部会長 ありがとうございます。   お勧めの案ではないということですが,一つのバリエーションとして御意見を伺いました。 ○山﨑委員 今話題になった太田委員の配布資料でいいますと「A´案」というのもモデルとして出ていますけれども,今,太田委員の御発言のうち検察官の方で処分が必要ないと考えられるものもあるのではないかという御発言にも関連すると思うのですが,少なくとも第2分科会の議論では,検察官にはそうした要保護性に関しての判断をすることは基本的に難しいと,それはやはり家庭裁判所で行うべきであるという議論がありまして,その結果,素案のような整理になってきていると理解しておりますので,やはり要保護性の判断を検察官に求めるというのは難しいと思われます。   したがって,「A´案」というのもなかなか難しい制度ではないかと考えております。 ○井上部会長 このぐらいでよろしいですか。   それでは,次に進ませていただきます。   次に,「二 手続」について,御意見がある方は,いずれの点からでも結構ですので,挙手の上,どの点について御意見をおっしゃるのかということを明示して御発言をお願いしたいと思います。 ○澤村幹事 前回の会議で委員や幹事から御発言がありました事項について,2点ほど申し上げたいと思います。   1点目は,この「二」の「手続」の「1」,「調査」に関することです。   前回,犯罪事実の認定と社会調査の先後関係についての御発言がありましたので,現在の少年審判手続における非行事実の認定と社会調査の関係について御説明いたします。   現在の少年審判手続におきましては,まず,裁判官が記録に基づいて法的調査を行い,非行事実が存在することについての蓋然的な心証が得られた場合に,家庭裁判所調査官に対して調査を命じ,社会調査を行っているものと承知しております。   非行事実についての蓋然的な心証が得られない場合や,蓋然的心証は得られるものの,少年が非行事実を強く否認するなどしていて,非行事実の認定を行う前に社会調査を進めることが相当ではない場合には,裁判官は調査命令を発令するのに先立ちまして,非行事実を認定するための審判期日を開き,非行事実の有無の審理をし,その認定ができれば,少年にもその旨を説明した上で調査命令を発令するというような運用が行われていると承知しているところです。   2点目は,「4」の「罪証隠滅又は逃亡の防止を目的とした身体拘束の措置」についてです。   現在の実務におきましては,逃亡のおそれ等を理由として観護措置をとることによって少年の調査・審判への出席が確保されているものと理解しておりまして,仮に,「若年者に対する新たな処分」において,逃亡のおそれなどを理由とする身体拘束の措置を設けないということであれば,それに代わる調査・審判への出席を確保する制度を検討する必要があると思われます。この点に関連しまして,前回,呼出状や同行状によって逃亡のおそれについては対処できるという旨の御発言があったと記憶しております。現行の少年法に規定されている同行状につきましては,これを発布するためには正式な呼出しが可能であることが前提となっておりますので,呼出状の送達ができない場合,例えば定まった住居がない場合や,所在が分からない場合などは,この方法を採ることはできません。   したがいまして,「若年者に対する新たな処分」において設けられる同行状が現行の少年法に規定されている同行状と同様の仕組みのものとなりますと,調査・審判への出席確保の手段としては,同行状だけでは不十分であると思われますので,その点も考慮した制度設計を検討する必要があると思われます。 ○山﨑委員 今の事実認定と調査との関係についても若干関連するところではあるのですけれども,恐らくこの審判手続全体が非公開の手続により,職権主義の下で行われるであろうという点についての問題意識を述べたいと思います。   今回想定されている「若年者に対する新たな処分」というものは,現行の少年法の健全育成目的に基づく保護処分とは違って,利益処分の側面を有するというものではなく,飽くまで不利益処分ということになるのではないかと考えられます。   それにもかかわらず,少年法上の少年ではなく成人とされた18歳,19歳の者が犯罪事実を争う場合に,20歳以上の成人と違って,職権主義に基づいた非公開の審判によって,予断排除原則や伝聞証拠の排除法則もない手続で事実認定をされることについて,憲法上の適正手続という観点から問題はないのかどうか,新たな処分は刑罰でないからという理由だけで正当化されるのかといった点は,十分検討する必要があるのではないかと思っています。 ○井上部会長 ほかにいかがでしょうか。   特に御発言はないようですので,次に移らせていただきたいと思います。   次は,「三 処分」について,資料は26ページ以下になりますが,項目がたくさんありますので,前回と同様ですけれども,特に相互に関連しているのが「1 処分の決定」から「3 不服申立て」までとなることから,これを一くくりにして御意見を伺いたいと思います。   いずれの点からでも結構ですので,御意見がある場合はどの点かということをまず明示していただいて,御発言をお願いしたいと思います。   いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,特に御発言のお申出がないようですので,先に進ませていただきます。   次に,残りの「4 保護観察処分」及び「5 処分の取消し」を一まとめにして意見交換をさせていただきます。   これまでと同様の要領で,いずれの点について御発言いただけるのかということをまず明示した上で,御意見を述べていただきたいと思います。 ○川出委員 「4 保護観察処分」の「(四) 遵守事項に違反した場合の施設収容処分」について意見を申し上げたいと思います。   前回,遵守事項違反があったときの施設収容について,検討課題を申し上げました。これにつきましては,本日配布していただいた「意見要旨」ですと23ページに記載がなされております。加えて,先ほど事務当局から御説明がありましたように,それをまとめていただいた「遵守事項に違反したときの施設収容の課題」という参考資料が配布されておりますので,この資料に沿って,遵守事項違反があったときの施設収容の仕組みやその検討課題について,新たな内容も加えた上で,敷えんして述べさせていただきたいと思います。   まず,資料の最初の「共通する検討課題」の一つ目の「遵守事項違反があったときの施設収容の目的・機能をどのようなものとするか」という点です。前回申し上げましたように,この制度については,元々は,「若年者に対する新たな処分」としての保護観察の実効性を担保する措置が必要であるというところから議論が始まっております。   その上で,その目的については,端的に保護観察の実効性を担保するためのものと考えて,施設収容を遵守事項違反に対する一種の制裁と位置付けるという考え方と,そうではなく,この場合の施設収容も,飽くまで遵守事項違反によって示された対象者の問題性,要保護性に対応して,その改善更生を図るための措置であって,それが同時に保護観察の実効性を担保する効果を持つという考え方があり得ると思います。   このうち,前者の考え方によりますと,この場面に限って英米法の裁判所侮辱のようなものを導入するということになりますので,それは妥当ではなく,「若年者に対する新たな処分」の枠内で説明が付く後者の考え方を採るべきだと思いますし,分科会でもそれを前提として議論をいたしました。   その上で,ここからは前回申し上げなかったことですけれども,この場合の施設収容を対象者の改善更生を図ることを目的とするものと位置付けた場合にも,当初の保護観察の関係で施設収容がどのような機能を果たすことを期待するかによって,それは更に二つに分かれると思います。そして,どちらの制度にするかが収容期間や処遇内容に影響してきます。   具体的に申し上げますと,まずこの場合の施設収容を,保護観察は失敗したという前提に立って,遵守事項違反に表れた対象者の問題性を施設内での処遇によって解消するための制度と位置付けるとすれば,恐らく現在の少年院における処遇に類似した処遇を比較的長期間行うことが必要となるだろうと思います。   これに対して,もう一つの考え方は,「若年者に対する新たな処分」が飽くまで保護観察,社会内処遇がベースとなっており,遵守事項違反があったときに施設に収容するのも保護観察をより効果的に行うためである,言い換えますと,保護観察の継続が一時困難となった者を施設に収容し,その時点での問題に応じた収容処遇を集中的に行うことによって,その後再び効果的に保護観察を継続し得る状態に至らせるための制度と位置付けるものです。   このような位置付けをした場合には,必要となる収容期間は,現在の少年院での処遇よりも短くなる可能性があると思いますし,また,これは保護観察に戻すための処遇ですので,処遇内容も異なることになるだろうと思います。   以上が,「共通する検討課題」の部分です。   続いて,「考えられる仕組み」のところですけれども,資料で「①の仕組み」,それから「②の仕組み」として,前回申し上げた二つの仕組みが記載されております。   まず,「①の仕組み」は,当初の審判において保護観察に付する処分をし,遵守事項違反があったときは,家庭裁判所の審判において保護観察処分を施設収容処分に事後的に変更するというものです。この仕組みについての検討課題は資料に記載されているとおりですが,改めて確認いたしますと,まず,この仕組みの下では,当初の審判で言い渡されて一旦は確定した処分が後に変更され得るわけですから,いわゆる裁判の安定性を害することにならないのかという課題があります。   また,施設収容処分をすることができるのは,当然のことながら,それに見合った行為責任がある場合に限られますが,この仕組みは,遵守事項違反に表れた対象者の要保護性の変化に対応して,審判において事後的に処分を変更し,新たに施設収容処分に付するというものですので,そうである以上,この処分に付すことが許容されるのは,行為責任の観点から見て当初から施設収容処分が許容されるものでなくてはならないはずです。そうしますと,これまで,当初からの施設収容処分について指摘されている問題,すなわち,「若年者に対する新たな処分」の対象者の中には施設収容処分が許容される程度の行為責任の者はほとんどいないのではないかという問題が同じく妥当することになります。これが二つ目の検討課題です。   さらに,この仕組みにおいては,当初の審判では保護観察に付することができるか否かのみを判断し,その後遵守事項違反があったときに行われる処分変更の審判において,行為責任として施設収容が許容されるか否かが判断されることになります。そうしますと,当初の審判では,施設収容が許されるか否かという観点から行為責任に関わる事実の検討と認定がなされていませんので,処分変更の審判においては,行為責任を基礎付ける犯情に関わる事実を含む犯罪事実について改めて認定して,処分決定を行うことが必要となるのではないかと考えられます。そして,処分変更の審判の際にそのような事実認定をするのであれば,その審判に対する不服申立てにおいては事実認定まで含めた不服申立てを認めることになるのではないかというのが,3番目の検討課題です。   以上が「①の仕組み」です。   続いて,「②の仕組み」ですが,これは,当初の審判において言い渡すことができる処分として,保護観察に付すともに遵守事項違反があったときは施設に収容し得ることを内容とする処分を設けるというものです。   この仕組みにおける施設収容は,当初の審判で言い渡されるものではあるのですが,直ちに対象者を施設に収容するものではなく,遵守事項違反がなければ施設収容がなされずに処分が終了しますので,その点では,それは刑の全部の執行猶予と類似する処分と言うことができると思います。   そうしますと,この仕組みの下で施設収容を含む処分が許容される行為責任を考えるに当たっては,刑の全部の執行猶予の考え方を参考として,この処分が許容される行為責任が当初からの施設収容処分が許容される行為責任よりも軽いものであると考えることができるのかということが検討課題になります。刑の全部の執行猶予は,それが取り消された場合に刑が執行されて,刑期分の刑務所への収容がなされるとしても,その刑期に対応する実刑よりは軽い行為責任に相当するという考え方が現在の量刑実務では採られていると理解しておりますが,今申し上げたことは,そうした考え方を前提とするものですので,それ自体の当否はまた別途問題になろうかと思います。   その上で,仮に,この仕組みにおける処分は,当初からの施設収容処分よりも軽い行為責任に相当するものであると考えられるとして,具体的にどの程度の行為責任のものであれば,この「②の仕組み」が許容されると言えるのか,例えば,罰金相当と考えられる程度の行為責任の者を対象とすることが許容されるのかという点が更に検討課題になります。保護観察に付すとともに遵守事項違反があったときは施設に収容し得ることを内容とする処分は刑罰ではありませんので,行為責任の観点から見て,仮に刑罰が科されるとすれば罰金相当の事案が入ってくる可能性があるのかどうかが問題になるということです。   それから,遵守事項違反があったときに施設に収容し得るとしても,収容の要件を定めるに当たってどういう場合に収容するものとするか,こういった点も検討する必要があります。   最後に,これは理屈の上では「①の仕組み」についても問題となり得ますので,共通する検討課題ということになるのかもしれませんが,特に「②の仕組み」を採った場合は,家庭裁判所が,当初の審判において,将来を見据えて施設収容を含む処分を言い渡すということになりますので,その場合の施設収容期間をあらかじめ法定しておくのか,あるいは,複数の期間を法定しておいて,家庭裁判所がその中から選択する仕組みにするのか,あるいは期間の上限とか下限を法定した上で,家庭裁判所が個々の事件で具体的に期間を定める仕組みにするかといった点も検討課題になろうかと思います。 ○井上部会長 幾つかの重要な問題点の指摘といいますか,これから検討する必要のある点の御指摘だったと思います。   では,今の点でも結構ですし,ほかの点でも結構ですが,御意見のある方は御発言をお願いします。 ○太田委員 私も,「若年者に対する新たな処分」を保護観察のみとして,その遵守事項違反があった場合の不良措置として施設収容を行うという制度にする場合,今の川出委員から説明があったように,施設収容はどれぐらいの期間にするかということを考える上でも,その収容の目的というものを考えてみる必要があるということと,それから,同じぐらい重要なのは,施設から退所した後の社会内処遇期間をどのように確保するのかということについても考えてみる必要があるのではないかと思います。   まず,収容の目的でありますけれども,川出委員から制裁と処遇という二つの考え方があるというお話がありました。私は,「若年者に対する新たな処分」の対象となるのは,そもそも起訴猶予相当,あるいはせいぜい罰金とか全部執行猶予相当といった比較的軽微な事案に限られている上に,基本的には社会生活を送りつつ指導監督や補導援護といった支援を受けながら更生を図っていくことが相当な事案でありますから,この施設収容というのは,遵守事項違反があって,そのままでは社会内での自律更生が難しいという場合に,一旦施設に収容して悪い環境から遮断をしたりとか,又は施設の中で規則正しい生活を送らせることで改めて社会内処遇に戻すことができるようにすることを目的とすることが適当であって,少年院のように施設の中で様々な処遇を行って,人格の矯正を行うとか,一定の知識を身に付けるとか,技術を身に付けるとかというものとは異なるものであり,したがって,施設収容の期間というものは,ある程度短いものが適当であるように思われます。   もっとも,今から申し上げますように,施設から退所後の社会内処遇期間の確保のための制度的な工夫の在り方によっては,施設収容の期間の上限といったものは異なり得るのではないかと思います。ただ,今,川出委員のお話を聞いていて思ったのは,従来の保護観察について,遵守事項違反に伴う不良措置の性質は処遇ということを原則としつつも,かといって制裁としての性質が全くないわけではないということが通説になっているかと思いますし,保護局が出している正式な文書にもそのように説明されてありますので,制裁というものが全くないと考えるのはよろしくないのではないかと思っております。   次に,施設退所後の社会内処遇期間の確保の必要性ということについての意見を申し上げたいと思います。   今申し上げましたように,この「若年者に対する新たな処分」というものが社会内での若年者の更生を図るものであって,施設収容も健全で規則正しい生活をするために必要な最低限のものであるとすれば,逆にその施設から今度は退所した後もやはり一定期間対象者の予後を見守るための社会内処遇の期間を設けることが不可欠ではないかなと考えます。   私もいろいろ考えてみまして,施設退所後に社会内処遇期間の確保をするには幾つかの方法が考えられると思いますが,そこにはやや難しい問題もあるように思われまして,この処分の内容を検討いただく際に併せて検討すべきように思われますので,例を挙げて説明をさせていただきたいと思います。   配布させていただいた資料「若年者に対する新たな処分の仕組み」を御覧いただきたいと思います。   まず,1ページ目の一番上,この線で書いてあるのが保護観察処分,社会内での処遇期間でありまして,遵守事項違反があった場合に不良措置としての施設収容期間を肌色の囲みで示しております。   最初の「図1」ですけれども,施設収容が行われたとしても,保護観察期間がそのまま進行していると考えた場合です。仮に保護観察処分の期間が1年であるとしまして,6か月の間保護観察を行ったところでいろいろ問題が出てきて,遵守事項違反があって,もう自律更生が難しいと判断されて,そこから施設収容を仮に3か月行ったとしますと,まだ保護観察の期間が3か月残っておりますので,退所した後に3か月,保護観察,社会内処遇を行うことはできるかと思います。ただ,この方法ですと,「図2」のように,今度は最初9か月の間保護観察を行った後に,問題があって施設収容を3か月行った場合,施設の退所の時点では,最初の保護観察期間がそのまま進行していると考えますと,保護観察期間が残っておりませんので,結局退所と同時に処分も終わりということになってしまいます。さらに,「図3」のように10か月が経過した段階で家庭裁判所が施設収容の決定をした場合には,保護観察期間も途中で終わってしまっていますので,これも施設から退所後,何も社会内処遇もないということになってしまうかと思います。これはよろしくないのではないかという点が問題になろうかと思います。   そこで,施設収容した後に社会内処遇を確保する方法は大きく三つぐらいあるのではないかと考えてみました。   まず,「その1」でございますけれども,こうした事態を避けるために,施設退所後も社会内処遇期間を確保するために,施設収容が始まった段階,すなわち,家庭裁判所の決定の段階で,当初の保護観察を一時停止する方法が考えられるかと思います。これが「図4」でございますけれども,保護観察開始から10か月が経った段階で施設収容が行われて,その段階で保護観察が停止されますので,2か月分保護観察が残っておりますから,施設収容が終わった段階でもまだ2か月の間,保護観察を行うことができるかと思います。   しかし,この保護観察の一時停止という制度を選択いたしますと,問題となるのは,「図5」のように,このような極端なケースは恐らくないと思うのですけれども,一応理論上考えられるのは,11月と10日ぐらいとか,保護観察をほとんど行った段階でどうしようもない状態になってしまって施設収容にしたという場合には,結局保護観察期間が20日しか残っておりませんので,施設収容が終わった後保護観察を再開しても,予後を見守る期間が20日しかないことになってしまうということです。   そこでもう一つ考えられる方法が「その2」で,2ページ目の「図6」と「図7」ですけれども,施設収容の上限をやや長めに取っておく必要があるかもしれませんが,施設在所者の状況を考慮して適切な時期に仮退所するという制度を設けるという方法です。   そして,その施設収容期間の残期間をその施設収容の後の社会内処遇の期間とする方法が「図6」になります。ここでは仮に施設収容を6月と書いてありますけれども,その途中で仮退所にして残った残期間を社会内処遇とする方法です。しかし,この方法ですと,現在もこういう問題はあるわけですけれども,施設収容が非常に長く行われた場合に残期間が少なくなるということがあるために,6か月あったとしても,5か月と20日ぐらい施設収容をやったとすると,社会内処遇の期間はほとんど残っていないということになってしまいます。   そこで,「その2」の中でももう一つの方法は,「図7」のように仮退所となってから一定期間保護観察ができるように規定しておくということが考えられます。   これらの場合には,施設退所後の社会内処遇というものは,最初の保護観察とは異なるものであるために,家庭裁判所による施設収容決定の場合には,恐らく当初の保護観察というものは施設収容処分に切り替わる,変更するという形になるであろうと思います。しかし,この仮退所という方法の場合には,施設収容の上限をやや長めに取っておかないといけないようになりますので,それをどう考えるのかという問題もあろうかと思います。   そして,もう一つの考えられる仕組みが「その3」,3ページ目ですけれども,家庭裁判所において施設収容を決定する際に,併せて退所後の保護観察期間も決定しておく方法です。この場合,家庭裁判所は収容前の社会内処遇の実施状況とか,それから,施設内で想定される処遇の内容,社会に戻った後の受入先確保の見込み等に基づいて退所後に必要な社会内処遇の期間について判断するとともに,元の犯罪の行為責任に照らして,どの程度の社会内処遇期間であれば許されるのかという点も判断して,適当な社会内処遇期間を設定するという仕組みがあろうかと思います。   このように,私は何らかの方法を用いて施設収容後の社会内処遇を確保する必要があると思いますが,これらの三つの方法のいずれにも共通する問題は,施設収容後の社会内処遇において,改めてまた自律更生が難しいという遵守事項違反が起きるという状況になった場合にどうするのかという問題でありまして,やはりこの段階で社会内の環境から遮断して規則正しい生活をさせる必要がありますし,それから不良措置が何もないということも,やはりこの段階で問題になるかと思いますので,再度の施設収容も認められるとすることも考えられますけれども,こういうことについても今後検討していく必要があろうかと思います。   実は,この種の問題は,現行の少年法上の少年院送致とその後の保護観察にも内包されているものでありますけれども,少年法の場合には20歳までとか,それから23歳までとか,そういう期限があるために,その時点で保護観察が終了するということになりますけれども,そうした期限のない若年成人の場合に,保護観察は1年として施設収容の間は停止するという制度を採らない限り,保護観察をどこかで終了するという方法を考えなければいけないということです。   比較的軽微な事案が対象でありますから,ここまで問題性が深刻なものがそれほど多いとは思いませんけれども,制度論としてはあり得るために検討しておく必要がありますし,また,この問題は原処分に施設収容処分を設ける場合にも保護観察処分を設ける以上は考えておかなければいけないものでございます。   さらに,一番最後の「図10」に書いておきましたけれども,原処分として保護観察処分以外に施設収容処分を設ける場合にも,施設退所後の社会内処遇をどのように確保していくのかということについても,併せて検討する必要があろうかと思います。   私自身は,「若年者に対する新たな処分」の保護観察において遵守事項に違反があった場合の不良措置として施設収容を行うという制度は十分に考えられると思いますけれども,その採否に当たっては,今述べたような施設収容の目的とか期間とか,施設退所後の社会内処遇の期間と確保についても併せてこの部会で御検討いただければと思っております。 ○大沢委員 私もこの遵守事項に違反したときの施設収容について,川出委員,太田委員ほど精緻な意見ではないのですが,意見を述べさせていただきたいと思います。   この遵守事項違反の施設収容処分は,現行法の下でのいろいろな保護観察では,いずれもその遵守事項違反に対して何らかの不良措置があるわけです。例えば,少年院の仮退院の方だったらまた少年院に戻すとか,そういうものがあると思うのですけれども,これに対して,もし「若年者に対する新たな処分」に付した後,遵守事項違反があった場合に,何もこういった不良措置を設けないということになってしまうと,要するに言うことを聞かない人に対して打つ手がないということになってしまうので,やはりそれは保護観察の実効性を保てなくなってしまうのではないかということが懸念されると思います。   その場合に,私が思うのは,短期の施設収容処分を設けるということは選択肢としてもあり得るのではないかと感じます。ですから,施設収容の目的ということになると,この保護観察処分の実効性を担保して,それで対象者の改善更生を確実なものにするということではないかと思います。その場合に,やはり施設をどのような性格のものにするのかということをおそらく議論しなければいけないのではないかなと思います。これは刑罰ではないので,もちろん刑務所のようなものではないと思うのですね。私は,できればこの施設というのは社会内処遇とのつながりを保てるようなものができたらよいのではないかと漠然と感じています。   それで,一つの参考になるかもしれないと思って申し上げたいのは,私がたまたま取材で見る機会を得たドイツの少年拘禁施設です。これは,最長でも4週間未満というものであり,この中にいらっしゃるのは皆さん専門家の方ばかりなのでもう御存じだと思うのですけれども,なおかつこの拘禁施設については,ドイツの国内でもいろいろな意見があるということもありますので,飽くまで参考としてなのですけれども,私が取材した所長さんによると,そもそもこの拘禁施設に入っている人は,「遵守事項を守らない人が全体の半分ぐらいはいるのです」ということをおっしゃっていました。それで,その入っている人がどういうことをするかというと,「日中は教会に行って社会奉仕的な活動をしたりとか,近くの工場に行って作業をしたりということをしているのですけれども,夜は鍵付きの部屋があって,そこできちんと過ごします」ということをおっしゃっていました。「自覚を促して,やはりここには二度と来たくないなと思ってもらわないと困るんです。ですからユースホステルではいけないんですよ」ということをその所長さんがおっしゃっていたのが印象に残っています。   鍵付きの部屋に入れるかどうかはさておき,私が漠然とイメージしているのは,例えば夜はきちんと施設内にいさせるのだけれども,例えば日中は施設外で社会奉仕活動をさせて更生を図らせるというような,完全に施設に閉じ込めておくのではなくて,社会とのつながりというのを持ちながら,社会内処遇にまた緩やかに戻していくことができるような,そういった少し柔軟なことも考えられないのかなと,これは飽くまで素人の考えなので恐縮なのですけれども,思っています。 ○廣瀬委員 今お三方の御意見を伺っていて,非常に共感できるところもあるのですけれども,施設収容処分相当な対象者がほとんどいないという点については,私は,そうは言えないのではないかということをいろんな角度から言ってきましたが,重ねて申し上げておきたいと思います。   また,私としては,家庭裁判所における処分の選択肢としての当初からの施設収容処分と,それから遵守事項違反があった場合の措置としての施設収容処分,この双方が必要だと考えております。   その場合に,その目的や期間をどう考えるかということについて整理をして申し上げておきたいと思います。これまでなかなか議論がかみ合わないため,ずっと歯がゆい思いをしているのですが,その理由として,施設収容のイメージの違い,施設収容というと今の少年院の長期処遇,1年ぐらい収容して,施設内でみっちり教育すると,そのようなイメージを持っておられる方が多いためではないかと思うのです。これまで,施設収容処分の対象となる者はなかなかいないのではないかとか,実刑相当の者でなければ対象とならないのではないかというような議論が出ていたわけですが,その背景には,どうもそういうことがあるのではないかという気がするのです。実際に下される処分,処遇を考えた場合,先ほど川出委員がおっしゃられたように,施設収容の目的や期間などを考えるべきですので,ほとんどは社会内処遇,保護観察に準じたような処分が活用され,それが中心になって運用されていくということは間違いないと思います。同時に,先ほどから御指摘があるように,社会内処遇に実効性を持たせるためには,指導監督に従わなければそれでおしまいということでは困るわけで,それへの対応措置をきちんととることができなければいけないと思います。そういう意味で,一定期間,施設に収容して集中的に密度の濃い教育をして,これからの社会内での指導監督にきちんと向かえるように動機付け・目的付けをしていくことを考えるべきだと思います。そうだとすると,その期間はそれほど長くなくてもよく,6か月とか3か月,あるいはそれより短い期間ということも考える余地があるのではないかと思うのです。   それから,今の大沢委員の御意見にも出ておりましたけれども,「コンバインド」,つまり施設の中での教育・処遇と社会の中での教育・処遇とをリンクさせて,相互に出し入れ,あるいは相互に乗り入れするような形で,組み合わせてうまくやっていくということが,欧米諸国などでは,いろいろな形でたくさん行われているわけです。先ほど出された短期拘禁,施設からの一時的な外出・外泊などもその一つです。   そもそも施設内の処遇と社会内の処遇を,矯正保護庁という一つの役所が担当して有機的・弾力的に行っているところもあるわけです。ですから,矯正と保護,施設の中の処遇と社会内の処遇をもっと組み合わせてやっていくということをしっかり考えていけば,日本の場合でいえば保護観察官と法務教官というようなことになるのでしょうけれども,それがもっと相互に協力して相互乗り入れするような形でいろいろやっていくということも,十分考えられるのではないかと思うのです。   当初の施設収容は駄目だと言われているわけですけれども,先ほど言ったように,保護観察がなかなかうまくいかないときに,きちんと指導に乗せるため,真剣に取り組んでもらうために施設に収容して集中的な教育をすることが許されるのであれば,同様な教育指導が必要だという判断がされる場合,例えば,本人が自分の問題の自覚が不十分で自分を改善することに目が向いていないとか,真剣に反省していないとか,すぐに社会内処遇をやってみてもほとんど効果が見込めないというようなケースもたくさんあるわけです。実際に私も少年審判を十数年担当してきてそう実感しています。そういう場合に,まず一定期間施設に収容して,動機付けというか,オリエンテーションというか,心構えをきちんと作ることが必要となりますから,そのための当初の施設収容という選択肢を設定するというのは,十分あり得る話だと思うのです。   「若年者に対する新たな処分」として新規に発想するわけですから,若年者に対する処分全体の関係性・有効性を考え,いろいろな形での組合せを考えてやっていくというようなことも,従前の制度にとらわれないで,もう少し諸外国にも学んで前向きにやっていくということを是非考えていただきたいのです。これは前から言っていることですけれども,今回,心強い御意見も伺えたので,それに勇気付けられ,重ねて言わせていただきます。 ○山﨑委員 先ほど川出委員が説明された「遵守事項に違反したときの施設収容についての課題」というペーパーを見ながら質問したい点が3点ございまして,可能であれば川出委員に教えていただきたいと思っております。   まず一つ目ですけれども,この「②の仕組み」に立った場合なのですが,結論として,「若年者に対する新たな処分」として考えられる保護観察処分には,2種類のものができるというイメージなのかどうかという点です。   今回説明されているのは,遵守事項に違反したときには施設収容がされるような保護観察というものだと思うのですけれども,それとは別に,施設収容という可能性がない保護観察処分というものと,二つ考えるというようなことなのか,それとも,新たな処分については常に遵守事項違反の場合に施設収容となる保護観察処分という一つに絞るということになるのか,その点について教えていただければと思います。 ○川出委員 「若年者に対する新たな処分」は飽くまで行為責任の枠内で言い渡すことができるものですから,行為責任からすると,遵守事項違反があったときという条件付きとはいえ施設に収容し得るという内容の処分はできない事案もあると思います。ですから,御指摘のとおり,理論上は,施設収容の可能性がある保護観察と,その可能性がない保護観察の2種類があるということになります。その上で,保護観察のみという処分を実際に設けるかどうかについては,実効性を担保する手段がない処分は意味がないということから,それを設けないという考え方もあるでしょうし,逆に,担保手段がないからといって,問題のある対象者に対して何も処分をしないというのは問題だということから,それを設けるという考え方もあろうかと思います。 ○山﨑委員 ありがとうございます。   二つ目は,「②の仕組み」を採る際に,検討課題の二つ目の「・」なのですけれども,「例えば,罰金相当と考えられる程度の行為責任である場合」と書かれているのですが,この「②の仕組み」のように考えた場合には,そもそも対象となる事件が起訴猶予相当事案だけでなく,罰金相当の事案も入ってくることが必然となるのか,それとも,また別の意味合いでこの罰金相当ということが書かれているのか,その辺りはいかがでしょうか。 ○川出委員 これは飽くまで起訴猶予になった場合を想定したものです。これまで議論があったように,仮に起訴されたとすれば罰金相当である事件が,犯罪の軽微性以外の理由で起訴猶予になる場合もあると思いますので,そのような事案を想定したものです。 ○山﨑委員 あと1点です。   そのような「②の仕組み」で考えた場合に,先ほど処遇の目的や内容について考えられるものということで御説明あったのですけれども,保護処分を実効化するための処遇という観点で考えた場合に大体想定される期間というのが,川出委員のお考えだとどの程度なのか,もしイメージがあればお答えいただければと思います。 ○川出委員 先ほどは,考えられる仕組みの一つとして,保護観察に戻すための施設収容というものを申し上げたのですが,現在はそのような制度はありませんので,果たしてそのような制度が実際に機能するのかどうかも,まだよく分からないところがあります。そのようなわけですので,それが仮に機能し得るとして,どれくらいの収容期間が必要かについてのイメージも持ち合わせておりません。 ○山﨑委員 ありがとうございます。   関連して,簡単に意見を述べさせていただきます。  先ほどから様々な御意見を伺って,私もこれから考えたいと思うのですけれども,一つは,施設収容処分ということになりますと,少年院での収容というのが原則というか,それを具体的なイメージとしてやはり持ってしまうわけですが,これまでのお話を伺っていますと,少年院での処遇では,対象者と職員との信頼関係を構築するまでにもそれなりの時間が掛かるというようなお話がありますし,短期の少年院の処遇というのは全体的に見ると非常に数は少ないと思われますので,そういった辺りの処遇の内容とそれに必要な期間ということは慎重に考える必要があると思います。また,施設の場所という問題もあると思います。既存の少年院ですと,やはり交通の不便なところに多くございますので,先ほど大沢委員のおっしゃったような社会内処遇との連携ということが現実に可能なのかどうか,あるいはそれに代わるような,市街地にそういった場所があり得るのか,その辺の具体的な施設の場所についても考えながら議論しないといけないと感じました。 ○羽間委員 私も遵守事項に違反したときの施設収容処分について意見を申し上げたいと思います。   まず,施設収容に求める処遇効果につきまして,理想を申し上げれば,現行の少年院と同様の効果を求める方がよいということになります。しかし,現在議論されている「若年者に対する新たな処分」のように,行為責任の限度で処分を行うという性質を前提とした上で,必要な者に適切に活用しようとするのであれば,求める処遇効果としては,「保護観察を再び有効に行い得るようにする」というように捉えることがベターであると思います。   その場合,必要とされる収容の期間は,ある程度短い期間,具体例を申し上げるのは少し難しいのですけれども,例えば,比較的軽い事案ということであれば,2,3か月程度の中で収容を行っていくということも考えられるのではないかと思います。その中でいかに充実した処遇を施設内で行っていくかということについては,更に検討していきたいと思っておりますけれども,少なくとも保護観察官による施設内処遇の関与というものが必要になってくるのではないかと考えております。   他方で,この遵守事項違反の際の施設収容処分の目的について,遵守事項違反をしたということについての制裁やショックを与えるということではなく,より有効な処遇を行う点に見いだすということであれば,施設内において最低限の処遇効果が見いだせる程度の期間は必要であると思っております。その期間についても,感覚的なところになってしまいますけれども,例えば2か月を下回るというほどの短期間としてしまうことには抵抗を覚えるところです。   こういった観点も踏まえ,今後は,収容期間の在り方についても更に検討をさせていただければと思います。   次に,先ほど廣瀬委員も触れられていましたけれども,現在の少年事件の実情に照らして考えますと,「若年者に対する新たな処分」の対象となる者の中には,相当に問題性が高く,家庭裁判所調査官や裁判官において直ちに保護観察処分とすることに適さないということが明らかであると考えているような者も対象になることが考えられます。   先ほども申し上げましたとおり,施設収容に求める処遇効果ないし目的について,対象者の問題性の程度に応じたより適切な処遇を行うことで,保護観察を受け得るようにすると考えるのであれば,そういった事案について直ちに保護観察を始めるというのではなくて,保護観察の開始前に,短期間であっても施設内処遇を行い,保護観察を受け得る状態にまで施設内で処遇を行った上で,その退所後に保護観察を行うというような処遇の在り方も検討していくべきではないかと思います。   このような,仮に名前を付けますと,保護観察開始前の短期間の施設内処遇というようなものについて,許される事案がどの程度あるのかについては,引き続き御検討いただければと思いますけれども,こういった仕組みが設けられれば,保護観察の処遇を実施する側から見ても,非常に有効なのではないかと考えられますので,この点について改めて指摘をさせていただきたいと思います。 ○井上部会長 特に御発言がなければ次に移りたいと思いますが,よろしいですか。   それでは,次に「四 犯罪被害者等の権利利益の保護のための制度」について御意見がございましたら,どの点について御発言なのかということを明示した上で御発言をお願いしたいと思います。   特にございませんか。   それでは,どなたからも御発言がないようですので,若年者に対する新たな処分の最後になりますが,「五 家庭裁判所への移送」について御意見がある方は,挙手の上,御発言願います。 ○山﨑委員 すみません,その「五」ではないのですが。先ほどの遵守事項違反の場合にどのような形で施設収容処分が認められるか否かという点については,これからも検討されると思うのですけれども,やはり全般的な問題としては,起訴をされた18歳,19歳の者と,起訴猶予相当として「若年者に対する新たな処分」の対象となる18歳,19歳の者とのバランスというか,そこも改めて考えないといけないのではないかと感じております。   先ほども保安処分との関係で,行為責任の下でという御説明があって,その中で認められる処分は何かという問題が大変重要だということもあるのですが,それと同時に,手続的な負担という面で考えたときにも,起訴をされる18歳,19歳の者の場合に対して,起訴猶予となった場合の手続が非常に手厚く検討されているように感じまして,起訴をされた場合とされない場合とで,全体の仕組みとしてバランスがとれるのかどうかという観点も必要ではないかと思った次第です。 ○井上部会長 手続の種類が違いますので,どちらかが負担が重いとは一概に言えないかもしれませんが,そのような視点も必要だという御指摘だと思います。   特にほかに付け加えることがなければ,「若年者に対する新たな処分」についての本日の意見交換はこの程度とさせていただきます。   次に,その他の制度・施策について意見交換を行いたいと思います。   冒頭申し上げたとおりですが,前回と同様,「若年者に対する新たな処分」以外の制度・施策のうち,これまでの議論を踏まえてまだ検討事項が残されている事項,あるいは検討に時間を要すると考えられる事項について,これまでの御意見は既に整理していただいたところですので,新たに付け加える御意見,あるいはこれまでの御意見を更に敷えんするような御意見等がございましたら,御発言を頂きたいと思います。   最初に,前回の部会において,保護観察の特別遵守事項に関して,保護観察の号種ごとに区別することとすべきかについて御議論があったところですが,その中で現行法の立法経緯について言及があったと記憶しております。そこで,これからの議論の前提として,その立法経緯について事務当局から説明していただこうと思います。 ○大塲幹事 御説明申し上げます。   現行の更生保護法は,平成19年6月に成立しましたが,成立以前は「犯罪者予防更生法」と「執行猶予者保護観察法」の二つの法律に基づき保護観察が実施されておりました。具体的には,1号観察から3号観察,すなわち保護観察処分少年,少年院仮退院者,仮釈放者についての保護観察は犯罪者予防更生法を根拠法とし,4号観察,すなわち保護観察付執行猶予者についての保護観察は執行猶予者保護観察法を根拠法として実施されておりました。   平成17年に設置された「更生保護のあり方を考える有識者会議」において,更生保護制度の実効性や再犯防止機能について検討がなされる中で,根拠法が二つに分かれていることが更生保護制度の趣旨や目的,内容を不明確にしているとの指摘がなされました。そのような指摘を踏まえ,両法を整備して一つの法律に統合し,更生保護の機能を充実強化することなどを目的として更生保護法の制定に至りました。   特別遵守事項については,更生保護法制定以前も設定可能ではあったものの,どのような事項をどのような基準で設定するかなどに関して規定が設けられていませんでした。そこで,更生保護法では全ての号種が対象となることを前提に,特別遵守事項として定め得る事項の類型を整理し,明示的に規定することとなったものです。   更生保護法の立法経緯は以上であり,その過程である「更生保護のあり方を考える有識者会議」や国会審議の場などにおいて,特定の特別遵守事項について特定の号種の対象者に限定して設定すべきであるなどといった指摘はなされておらず,実際に更生保護法において,特定の号種に限定して設定することとされている特別遵守事項の類型はございません。 ○井上部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいまの説明を踏まえて,「若年者に対する新たな処分」以外の他の制度・施策について,どの制度,施策からでも結構ですので,御意見がある方は挙手の上,御発言をお願いします。 ○今井委員 刑の執行猶予中の保護観察の仮解除の活用に関して,一言申し上げたいと思います。この問題につきましては,これまでもここで御意見がありましたけれども,保護観察付き執行猶予の対象となった者の改善更生を図るという観点から,いわゆる良好措置を充実していくことにつきましては,その者の処遇を受ける動機付けや改善更生の意欲を高めることにもつながり,刑事政策的にも重要な課題であると考えられますので,そのような制度的な枠組みを今後とも積極的に検討することは大変意義のあることだと思われます。   現在,検討されております良好措置の充実に関する制度の一つとして,保護観察付き執行猶予となった者の保護観察の仮解除について,その主体を地方更生保護委員会から保護観察所の長に変更し,そのことにより,その活用の促進を図ろうと考えられているものと思います。この制度につきましては,これまでの検討においても必要であり有用であるとの認識が当部会でも共有されていると思われますし,また,理論的な問題も見当たらないように思われます。そこで,十分に実現可能な改正であると考えられますので,これが制度化された場合には,改正の趣旨に沿って適切な運用をお願いしたいと考えております。   他方で,保護観察の本解除の制度についても意見交換があったかと思いますけれども,例えば第12回の部会で指摘されましたように,これにつきましては理論面や制度設計の在り方のほかに,その必要性あるいは実務的観点からも課題がまだ多く残されているように感じております。現段階では導入の実現を図ることは難しいのではないかと考えております。   そこで,まずは仮解除につきまして,主体を変更するという制度改正を行い,その活用促進に努めていくこととした上で,本解除制度につきましては,仮解除の運用状況を踏まえて,更に本解除まで認めるべき必要性があるかを確認しつつ,別の機会に改めて検討するのが現実的な対応ではないかと思います。   このように,今回の諮問への対応といたしましては,本解除制度の導入は見送ることとし,将来の検討課題とすることがよいのではないかと思っているところであります。 ○羽間委員 ただいま今井委員から御発言があったとおり,今般,仮解除の判断主体を変更するという改正を予定しているところですので,まずはその活用の促進を図り,本解除の導入につきましては,その運用状況を見て改めて判断するということで,将来の課題とすることについては理解できるところでございます。   ただ,将来の課題とするにしても,まずは法改正後の仮解除の運用が改正の趣旨に照らして適切になされる必要がございまして,それがなされず,運用上の課題が残ったままでは,制度としての課題の検討を行う機会というのが来ないままになってしまいます。   そこで,今般の仮解除についての改正がなされた後に,その改正趣旨に照らした適切な運用がなされることについて,事務当局に強く求めたいと思います。 ○山﨑委員 私は保護観察における更生保護施設への宿泊義務付けについて意見を述べたいと思います。   述べる前に,まず質問なのですが,先ほども更生保護法の制定について御説明いただいたのですけれども,更生保護施設の実態について3点質問させていただきたいと思います。一つは,20歳未満の者を受け入れている更生保護施設というのが全体の中でどのぐらいあるのかという点です。また,その中で,20歳未満のみを対象としている施設があるのかどうか,あればその数を教えていただきたいと思っています。あわせて,そういった施設で20歳未満の方がどのぐらい入所をされているのか,その年間の人数など分かれば,今日でなくても結構ですが,教えていただければと考えております。 ○古田幹事 少年のみを対象としている更生保護施設はございます。収容人員等については追って次回に報告させていただきたいと思います。 ○井上部会長 それでは,次回にお願いします。   他にありましたらどうぞ御発言ください。 ○山﨑委員 私が関係者の方などから聞きますと,少年の専門の受入れ施設というのはほとんど数が少なくて,受け入れると言っている施設でもなかなか若年者の受入れには積極的とは言えない状況にあるのではないかと考えられますので,今の状況の御説明を受けてからまた意見は述べたいと思いますけれども,少なくとも若年者に,今回特に18歳,19歳の者も含むということになりますと,更生保護施設への宿泊を義務付けるということがどれほど現実的に可能なのか,という点があると思います。また,特に仮釈放者などには累犯の受刑者の方などいると思いますので,そういった中高年の方々と接触をすることのマイナス,悪風感染といったような問題が生じないかということも大変危惧をしております。   前回も申し上げましたけれども,各号種の保護観察の対象者は法的な地位が明らかに違いますので,私は1号観察あるいは「若年者に対する新たな処分」で設けられる保護観察の対象者をこの宿泊義務付けの対象と考えるというのはやはりよくないのではないかと考えております。   また,この点に関して,前回までに太田委員から私の発言に関連して宿泊義務付けは決して身体拘束ではないという御意見を頂いております。身体拘束,拘禁ということではないにしましても,1号観察や「若年者に対する新たな処分」の対象者となるような若年の方々というのは,基本的には社会内でほかに居住する場所があるにもかかわらず,そういった義務付けが行われるということで,保護観察所長の判断で特定の場所に宿泊を義務付けられるということになると思われますし,やはり仮釈放をされた方などとは違って,対象者にとっての自由の制約という面では非常に大きなものがあろうかと思われますので,そういった対象者の法的地位あるいは特性に応じた個別の検討をすべきではないかと考えております。 ○田鎖幹事 今の山﨑委員の意見と関連するのですが,同様に更生保護施設への宿泊の義務付けに関して私も意見を述べたいと思います。   これも前回,当時幹事でいらした今福関係官から特定の住居等への居住の義務付けというのは号種を問わず保護観察を実施する上では基本のことであるという御説明を頂きました。一定の場所に居住するという義務があるという点は,全くそのとおりなのですけれども,他方で,この更生保護法第51条第2項第5号の,特定の宿泊場所において一定期間宿泊を伴う指導監督を義務付けられるという特別遵守事項については,保護観察対象者の意思にかかわらず,国が一方的に指定した特定の場所に宿泊すべきことを義務付けるという点において,保護観察対象者の居住移転の自由に対する高度の制約になるというような御説明を,第3分科会の第2回会議において事務当局から受けております。そのように,自ら定めた住居を届ける,そこに居住する義務というのとはやはり違う,通常の場合に比較して,自由の制約度が高いものであるということは確かなわけでありまして,その点で第51条第2項第5号というのは,第1号ないし第4号,あるいは第6号とは少し異質な要素を含んでいるのではないかと私は考えます。   例えば保護観察付執行猶予者の場合でありましても,特に罰金の保護観察付き執行猶予の場合をとって考えてみますと,このような人に対して居住指定がなされるということは一体どうなのか。最終的に,罰金が支払えない場合に,これは成人ということであれば最終的には換刑処分が可能ということになりましても,やはり例外的な場合でありまして,同じ4号観察でも自由刑の執行を猶予されている人と,罰金刑,財産刑を猶予されている人とを比較してみたときに,やはりこうした居住の指定,宿泊の義務付けというものが持つ重さというのは大きく違ってくるのではないかと考えます。   ですので,先ほど山﨑委員が指摘されたように,現行の1号観察,それから,仮にできるとして「若年者に対する新たな処分」といったものの対象者というのは除外すべきという御意見に私も賛同いたしますけれども,さらには,今述べたように性質の違うものが4号観察一つとっても含まれているということですので,この際,特に第51条第2項第5号については,果たしてこのままの形でよいのかということはもう少し検討する必要があるだろうと思います。先ほども立法経緯についての御説明を頂きましたけれども,むしろその当時の特別遵守事項を規定するときの考え方というのは,生活指針的なものとか,目標のようなものとか,性格が曖昧なものがごっちゃになって特別遵守事項として規定されているようなところがあったので,そういったものの性格を整理して,遵守事項として不利益処分があるものとそうでないものとを分けましょうということで規定されて,ただその際に,法的地位による違いという視点はそもそも有識者会議の段階でもなくて,それがゆえに,国会の審議においてもそのような視点での質疑といったものがなされなかったと理解しておりますので,「若年者に対する新たな処分」というものの検討も契機として,再検討すべきだと考えます。 ○武委員 私は,更生保護施設というところをもっと活用するべきだといつも思っていました。いきなり社会に出すというのは,問題がなければいいのかもしれないですが,何らか問題があるときは,社会に出てしまうということに心配があります。例えば,多くが戻ったところの環境が同じです。家庭環境が同じだったり,親の考え方が変わらない,地域に戻れば仲間がいたり,いろいろ心配なことがあるので,ある程度の期間,更生保護施設に入って,まず同じところに住む習慣を付けること等,そういうことが私は大事だと思うので,もっともっと活用されるべきだと思います。それが,制約をされるとか,身柄を拘束するとか,そういうことには当たらないと思うのです。それが本人のためになり本人がこれから健全に生きていく形を作るためだし,そして再犯を防ぐことが社会のためだと思います。その後,社会に戻ってまた何らか悪いことに誘惑されて,そこに手を染めるということになってはならないのです。繰り返しになりますが,本人や社会のためにも,もっと更生保護施設が利用されるべきだと思います。 ○井上部会長 特に更に御発言がなければ,このくらいでよろしいでしょうか。   それでは,その他の制度・施策についての本日の意見交換はここまでとさせていただきます。   さて,私に関することで恐縮ですけれども,私は本年2月をもちまして,法制審議会委員を退任することになっております。したがいまして,当部会に属する委員としての任務も終了しますので,部会長についても退任ということになります。   つきましては,本日のこの会議で私が部会長を辞した上で,新たな部会長を選任していただくのが,これからの部会運営や審議を円滑に行っていく上で適切ではないかと考えますので,そうすることについて皆様の御了解を得たいと存じます。御了解頂けますでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。   そこで,新部会長の選任をいたしたいと思いますが,法制審議会令第6条第3項により,部会長は部会に属すべき委員及び臨時委員の互選に基づき,会長が指名することとなっております。   委員及び臨時委員の互選ということですので,皆様の御意見をお伺いしたいと思いますが,自薦でも他薦でも結構ですので,どなたからでも御発言を頂ければと思います。 ○今井委員 刑事法の分野における御経歴,御実績に照らしまして,部会長には佐伯仁志委員が適任であると考えるところでございます。 ○井上部会長 ただいま今井委員から佐伯委員を部会長に推薦する旨の御提案がありましたけれども,この御提案に対して御意見はございますでしょうか。   特に御意見がないようですので,部会長には,佐伯仁志委員が互選されたということでよろしいでしょうか。               (一同異議なし)   佐伯委員におかれてもよろしいでしょうか。 ○佐伯委員 お引き受けいたします。 ○井上会長 それでは,ただいまの議事のとおり,部会長には佐伯委員が互選されました。   部会長につきましては,互選に基づいて会長が指名するということになっておりますので,法制審議会会長として,ただいま互選されました佐伯仁志委員を部会長に指名させていただきます。   ここからの議事は佐伯新部会長にお願いいたしますので,佐伯部会長は部会長席にお移りいただければと思います。               (佐伯委員部会長席に移動) ○佐伯部会長 ただいま部会長に選ばれました佐伯でございます。   微力ではありますが,皆様の御協力を得まして,充実した審議ができるように努めてまいりたいと思いますので,どうぞ御協力のほどよろしくお願い申し上げます。   本日の審議は,これで終了となりますが,今後の具体的な議事等につきましては,私の方で検討し,事務当局を通じてお知らせすることにさせていただきたいと考えますが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   ありがとうございます。   次回の日程について事務当局から説明をお願いいたします。 ○羽柴幹事 次回会議につきましては,部会長と御相談をさせていただきまして,その上で,追って皆様に日程をお知らせいたします。 ○佐伯部会長 それでは,引き続きよろしくお願いいたします。   なお,本日の会議の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を作成し,公表することとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   議事録の取扱いにつきましては,そのようにさせていただきます。   最後になりましたが,井上前部会長から一言御挨拶を頂きたいと思います。 ○井上会長 私は,法制審議会には平成元年,1989年に幹事として加えていただいたのが始まりで,その平成が終わろうとする今満期釈放となるわけですけれども,この間,断続的ではありますが,30年近くにわたり,委員・幹事を勤めさせていただいてまいりました。部会は主に刑事手続法に関係する部会でしたが,本部会が九つ目となります。その九つのうち,本部会を除き八つは答申をまとめるに至り,それが新規立法や法改正として実現しております。今回の部会だけが,2年近く審議をしてきたものの,まだまだ道半ばということで,私としても非常に心残りであると同時に,皆様に重責を負わせたまま一人抜け出すようで,心苦しくも存じております。   本部会の審議事項は極めて重要な事柄であり,今日もたくさん御意見が出ましたが,これからも白熱した議論が続いていくだろうと思います。拙速はもちろんいけないのですけれども,物事には「機」というものがありますので,その機を逸さないよう,一回一回充実した審議を集中して行っていただいて,然るべき時機に,どういう結論になるかは分かりませんけれども,御意見をまとめていただき,もし積極方向で何か変えるということでしたら,それを立法に結び付けて,速やかに実現していただくことを期待したいと思います。   どうかよろしくお願いします。   どうも長い間ありがとうございました。 ○佐伯部会長 それでは,本日の会議は終了いたします。   本日はどうもありがとうございました。 -了-