法制審議会 民法・不動産登記法部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  平成31年4月23日(火)自 午後1時00分                      至 午後5時55分 第2 場 所  東京高等検察庁第二会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第2回会議を始めます。   前回御欠席になられた委員,幹事で,本日お見えの皆様から自己紹介を賜りたいと考えます。 ○市川委員 東京地方裁判所の民事第43部で部総括を務めております裁判官の市川と申します。よろしくお願いいたします。 ○沖野委員 民法を専攻しております東京大学の沖野でございます。どうかよろしくお願いいたします。 ○佐久間幹事 同志社大学の佐久間でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○橋本幹事 日弁連から来ております幹事の弁護士の橋本です。よろしくお願いします。 ○山本幹事 行政法を専攻しております東京大学の山本と申します。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いします。   引き続き御紹介申し上げます。幹事の交代がありまして,本日から岩崎琢治幹事に参加を頂きます。 ○岩崎幹事 東京法務局の民事行政部長で参りました岩崎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。   続きまして,農林水産省からは室賀関係官,林野庁からは三間関係官に御出席を頂いております。それぞれ自己紹介をお願いいたします。 ○室賀関係官 農林水産省農地政策課の室賀でございます。よろしくお願いいたします。 ○三間関係官 林野庁森林集積推進室の三間と申します。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。   続きまして,法務省事務当局の方で,前回会議に欠席しておられて,本日出席の筒井健夫委員,自己紹介をお願いいたします。 ○筒井委員 法務省の審議官,筒井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。   本日から新たに出席することになる法務省関係の関係官,川畑局付,宮﨑局付,福田局付から自己紹介をお願いいたします。 ○川畑関係官 法務省民事局付の川畑と申します。よろしくお願いいたします。 ○宮﨑関係官 法務省民事局付の宮﨑と申します。よろしくお願いいたします。 ○福田関係官 同じく法務省民事局付の福田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。   本日は,潮見委員,平川委員,宇田川幹事が欠席でございます。   配布資料の確認を致します。事務当局から確認を差し上げます。 ○川畑関係官 では,資料につき,確認をお願いたします。   本日配布させていただいていますのは,部会資料2「土地所有権の放棄」と部会資料3「共有制度の見直し(1)」でございます。   あと,今机上には,参考資料2として「外国法制調査(ドイツ)」というものも置かせていただいております。この外国法制調査は,前回お配りさせていただいたところですが,ドイツにおける動産の所有権放棄の項目等を加筆した差し替え版となっております。今後はドイツの法制度につきましては,今回お配りしたこちらの資料を御参照ください。   また,今回,財務省の明瀬関係官から御提供がありました「法制審議会 民法・不動産登記法部会提出資料」がございます。   それぞれの資料の配布の趣旨や内容につきましては,後ほど御説明をさせていただきます。配布されていない資料がおありでしたら,途中でも結構ですので,事務局の方までお知らせいただければと存じます。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。 ○道垣内委員 間に合ったのは東京地方だけかもしれませんが,郵送で資料が届いた方もいらっしゃると思います。送られてきた資料と本日の席上配布資料とは異同があるのでしょうか。 ○川畑関係官 異同はございません。 ○道垣内委員 ああ,そうですか。わかりました。 ○山野目部会長 本日から,内容にわたる審議をお願いすることになります。これを進めるに当たりましては,今後のスケジュールのイメージを,委員,幹事,関係官の皆様方におかれて共有しておくことが有用であると考えられます。   簡単に申し上げますと,私たちの当面の作業目標をどのようなものとして考えるかということについての提案を差し上げるものでございます。 ○大谷幹事 前回御説明いたしましたとおり,所有者不明土地問題に関する民事基本法制の見直しにつきましては,2020年中の制度改正の実現を目指すことが政府方針とされております。   これを踏まえますと,中間試案をパブリックコメントに付して審議を進めるという法制審議会の通例の手続をとるとすれば,事務当局としては,年内にも部会としての中間試案をお示しいただけるよう,準備を進めたいと考えております。 ○山野目部会長 ただいま法務省事務当局を代表して,大谷幹事から,年内にも中間試案を作成し,パブリックコメントに付するという手順を当面考えて,皆様方に審議をお願いしたいという提案がございました。   これにつきまして,御質問や御意見がおありでしたならば承ります。よろしゅうございますか。   それでは,今後,審議の進捗に応じて,いろいろ考えなければいけないことは出てまいるかもしれませんけれども,当面の作業の手順を,ただいま大谷幹事から説明を差し上げたような仕方で想定し,御審議をお願いするということにさせていただきます。   本日は,所有権の放棄及び共有制度の見直し(1)という審議事項について,審議を頂く予定でございます。大変長丁場になります。おおむね目安といたしまして,2時半頃に一度,それから4時頃に一度,10分ほどずつ休憩を設けたいと考えております。   早速,最初の審議事項であります土地所有権の放棄を取り上げることにいたします。   部会資料2に基づく審議をお願いすることになります。部会資料2の全体について,事務当局から説明を差し上げます。 ○川畑関係官 それでは,部会資料2につき,御説明させていただきます。   土地所有権の放棄につきましては,資料の各項目がそれぞれ連関していることから,全体につき,まとめて御説明をさせていただきます。   まずは,第1の土地所有権の放棄を認める制度の創設の是非についてです。   人口減少による土地の需要の縮小に伴い,価値が下落する土地が増加する傾向にある中,土地への関心が失われて,所有者により適切に管理されない土地が増加し,それが所有者不明土地の予備軍になっていると指摘されております。   この状況で,所有者不明土地の発生を抑制するために,所有者が土地を手放し,第三者が土地を管理することができる仕組みが必要ではないかとの指摘があることから,土地所有権の放棄につき,検討することが必要と考えられます。   土地所有権の放棄につきましては,現行民法に規定がなく,確立した最高裁判例も存在せず,その可否は必ずしも明らかではありません。そこで,所有者不明土地の発生を抑制する方策として,土地所有権の放棄を可能とする制度の創設を検討する必要があると考えられます。   一般に,権利の放棄とは,権利の喪失を目的とする単独行為をいうものとされており,今回は,この意味での放棄の概念を前提にして,民事法制の枠内で,土地所有権の放棄につき,御検討いただきたいと考えております。   この意味での土地所有権の放棄がされれば,土地は所有者のないものとなりますが,所有者不明土地を抑制する観点からは,土地が無主のまま放置される状況を許容することは困難であることから,土地が放棄された後,直ちに帰属先機関が所有権を取得する構成にすることが望ましいと考えられます。   この観点からは,現行法が所有者のない不動産は国庫に帰属するとしていることは,一つの望ましい法律構成といえ,これを参考に検討を進めることが考えられます。   土地を手放すための仕組みとしては,所有権放棄以外にも寄附,これは民法上の贈与契約と考えられますが,これにより,国や自治体が所有者から土地を譲り受けることが考えられ,現在,財政制度等審議会・国有財産分科会においては,国が寄附に応ずる場合を拡大することにつき,検討がされております。   しかし,寄附の場合には,受け手である国等の同意がなければ,所有者は土地を手放すことができず,限界があり,また,財政制度等審議会においても,資産価値がなく,売却等の見込みがない土地の引受けを想定した議論はされておらず,少なくとも魅力の乏しい土地を手放すための仕組みとしては,寄附は所有権放棄の代替とはなり難いと考えられます。   なお,土地所有権の放棄には,土地の管理コストを帰属先機関に転嫁することにより,所有者が自身の土地を適切に管理する責任を免れる結果を生じさせる側面があることから,所有権放棄を論ずるに当たっては,現在,国土審議会・土地政策分科会において検討されている土地所有者の責務に関する議論も踏まえた検討が必要であると考えております。   それでは,4ページを御覧ください。   土地所有権の放棄は,権利の放棄であると同時に,所有者として本来負うべき土地の管理の負担を帰属先機関に転嫁する側面があることから,無条件に認めることはできず,一定の要件を満たす場合にのみ認めるべきものと考えられます。   この4ページの資料本文では,土地所有権の放棄を認めるための要件として,①から⑤の案をお示ししていますが,これらはそれぞれ異なる観点からのものであり,相互に排斥し合うものではなく,適宜,複数組み合わせて要件とすることも可能であると考えております。   本文の①と②は,土地の管理コストに着目した要件です。この管理コストの負担が土地所有権の放棄を認める場合の課題であると考えられることから,これを放棄者に負担させることで,帰属先機関が負担する管理コストを抑制するとともに,将来的に安易に土地を放棄することを念頭に置いて,所有者が土地を管理しなくなるモラルハザードを回避する趣旨で,①をお示ししております。   もっとも,放棄者が管理コストを永続的に負担しなければならないものとすると,所有権放棄制度自体が機能しなくなるおそれがあるため,放棄者が負担する管理コストは一定限度にとどめる必要があると考えられ,納付する額をどのように設定するかが課題になると考えられます。   次に,②も土地の管理コストに着目するものであり,帰属先機関が実際に土地を管理していくに当たって掛かる管理コストをできるだけ抑える趣旨でお示ししているものです。   この要件につきましては,土地所有権の放棄が,一定の要件が満たされれば,申請により公的な帰属先機関に帰属する点や土地の管理に大きな負担が生じないことを想定する点で,相続税の物納の仕組みと類似していると考えられることから,物納の要件を参考にしております。   次に,③ですが,これは,自然災害により土地に崩落の危険が発生し,近隣住民に危害が生ずるおそれがあるケースのように,放棄者が負担する土地の修繕等の費用が高額に上っており,所有権の放棄を認めなければ酷な場合を念頭に置いているものであります。   このようなケースにおいては,地域住民の安全確保や国土の保全のような公共的観点から,公共事業や公的助成などにより危険を除去すべきであり,土地所有権の放棄をさせる必要はないとの指摘があり,このような観点も踏まえて,御意見を賜りたいと考えております。   ④につきましては,手続的要件としてお示ししているものです。   土地は,可能な限り継続保有され,また,流通されて利用されるべきものと考えられることから,まずは放棄しようとしている土地の取得を希望する者に土地取得の機会を与え,それでも引取手が現れなかった場合にのみ,土地所有権の放棄を認めるべきという趣旨でお示しをしております。   もっとも,どのような場合に引受先がないと認定するかについては,検討が必要であり,形式競売や空き地・空き家バンクのような既存の仕組みを利用したり,公告等で土地の利用希望者を募ったりすることが考えられ,具体的な手続についても念頭に置いて,御意見を賜れればと考えております。   ⑤につきましては,土地所有権の放棄が帰属先機関への負担の転嫁である側面があることから,帰属先機関の同意を要件とするものですが,同意を要件とするのであれば,単独行為である放棄の概念と矛盾するとも考えられることから,法的性質の議論と併せて御意見を頂ければと考えております。   次に,10ページ,放棄された土地の帰属先機関について御説明を致します。   放棄された土地は,何らかの機関に引き継がれ,管理されることが必要ですが,放棄される土地は市場価値が乏しく,民間で引き受けるのが困難なものが多いと考えられることから,帰属先機関は,公的機関又はそれを背景にしたものにせざるを得ないと考えられます。具体的には,国,地方公共団体,そして,いわゆるランドバンクのような土地を取り扱う専門機関等が候補として挙げられます。   現行民法上,所有者のない不動産は国庫に帰属するとされているとともに,相続財産管理の手続を経て,土地が国庫に帰属する場合もあり,現行法上,国は国有財産として土地を管理しており,ノウハウも有していること,国は最終的な土地政策の責任を負う立場にあると考えられることから,本文におきましては,放棄された土地は,最終的には国に帰属することを提案しております。   もっとも,放棄された土地については,国が行政目的で取得するものではないことから,地方公共団体等が公益の観点から,その土地を必要と考えるのであれば,そちらに優先的に土地を帰属させる案をお示ししております。   これまで,一定の要件を満たす場合に土地所有権の放棄を認める方向で御説明をしてまいりましたが,具体的にどのような機関が要件の具備を審査し,どのような手続で土地を帰属先機関に帰属させるかについては,別途検討が必要です。   そこで,12ページの補足説明(4)のアにおいて,考え得る一つの構成をお示ししております。   これは,所有権放棄の意思表示は一律に国に対してすることとし,その意思表示を受け,国の機関が所有権放棄の要件を満たしているかどうかを審査し,要件を満たしていることが判明すれば,その土地が所在する地方公共団体に土地の情報を提供し,それを受けた地方公共団体が土地の取得を承諾すれば地方公共団体に,取得を拒絶すれば国に,土地が帰属するものとする構成であります。   この構成を採る場合には,所有権放棄の意思表示がされたときは,地方公共団体の承諾を停止条件として,地方公共団体に土地を帰属させるものとする一方で,地方公共団体の拒絶を停止条件として,国に土地を帰属させるものと考えることが可能であります。   これは飽くまで一案であり,例えば,地方公共団体に寄附の申出をしましたが拒絶されたと,こういったことを放棄の要件に組み込んでしまう構成であったり,放棄された土地の帰属先を一律に国にするのではなく,土地の性質に着目して,地方公共団体が利用・管理する意義があると認められる土地については,地方公共団体に帰属するものとする構成など,ほかにも様々な構成が考えられることから,忌憚のない御意見を賜れればと考えております。   次に,13ページの関連する民事法上の諸課題について御説明いたします。   1は,土地以外の所有権放棄の可否についてです。   民法上,所有権放棄につき,定めた規定はないことから,土地につき,所有権放棄を認める制度を創設するのであれば,建物や動産について,所有権の放棄を認めるべきかどうかを検討する必要があると考えられます。   建物につきましては,時間の経過とともに老朽化し,管理コストが土地以上に掛かる場合が多いと考えられます。また,同じく不動産である土地については,滅失させることができないことから,放棄を認める必要があるのに対し,建物については,取り壊すことで物理的に滅失させることができる点で,土地とは性質が異なると考えられます。そして,建物は土地工作物に該当し,その設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害が生じたときには,建物所有者は免責されない損害賠償責任を負うこととなります。   これらの理由により,建物の所有権放棄を認めるのは相当ではないと考えられ,本文アの案をお示ししております。   次に,動産につきましては,現行法上も所有権放棄が可能であるという解釈が有力であり,社会で広く認められているごみの廃棄についても,公法上の規制の枠内で動産の所有権を放棄しているものと考えられることから,本文イでは,この解釈を前提にして,規定の要否につき,御検討いただくことをお示ししております。   本文ウは,現行法上,自由に放棄できると規定されている共有持分について,規律は基本的に維持しながら,方式につき変更することについて,御検討いただくことをお示ししているものであります。   共有者が持分を放棄しても,他の共有者に持分が帰属するにすぎず,所有権が全部帰属先に移転すると,所有権の放棄とは問題が異なると考えられること,共有関係を簡便に解消する持分の放棄は広く認められるべきと考えられることから,現行法の規律は基本的に維持すべきと考えられます。   他方で,最高裁判例は,共有持分の放棄は相手方を要しない意思表示から成る単独行為であるとしておりますが,これによれば,例えば土地の共有持分の放棄の意思表示が他の共有者が了知できない方法でされたときでも,実体法上は直ちに放棄の効果が発生することになり,他の共有者は自己の権利関係を認識することができず,相当ではないとも考えられます。   そこで,本文ウの案をお示ししております。   最後に,15ページの放棄された土地に起因する損害賠償責任につき,御説明を致します。   1は帰属先機関の責任,2は放棄者の責任について,お示しをしております。   現行法上は,放棄された土地や土地上にある帰属先機関の工作物に起因して,第三者に損害が発生したケースであれば,民法第709条や第717条の規律に従い,帰属機関が損害賠償責任を負う場合があります。また,帰属先機関が国又は地方公共団体であれば,帰属先機関が国家賠償責任を負う場合もあります。   被害者保護の必要性は,土地所有権の放棄の有無により左右されるものではないことから,本文1では,帰属先機関の不法行為責任について,新たな規律を設けないものとすることにつき,御検討いただくことをお示ししております。   次に,放棄者につきましては,現行法の規律では,損害賠償責任を追及するのが困難な場合があると考えられます。例えば,放棄者が軟弱地盤につき,適切な措置を採らないままに土地を放棄し,帰属先機関も適切な措置を採らなかったために地盤が崩落して,周辺住民に損害が発生したような場合,被害者が放棄前の管理不全につき,放棄者に不法行為責任を問うに当たっては,措置義務違反の有無や因果関係などの点で問題があると考えられます。   このような場合においては,土地所有権の放棄がされなければ,帰属先機関が不法行為責任を負うことはなかったはずであり,帰属先機関と放棄者との間の損害の公平な分担の観点からは,帰属先機関が損害賠償責任を負う場合には,放棄者に対する求償権を取得するという新たな規律を設けることが考えられます。   もっとも,この場合には,求償権の消滅時効であったり負担割合,放棄より以前の所有者の責任や負担割合をどう考えるかというような課題があると考えられ,これらの点につき,御意見を賜れればと考えております。   説明は以上でございます。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げました土地所有権の放棄に関わりましては,関連する事項について,財政制度等審議会においても目下,調査審議が行われているところでございます。   この審議会における審議の状況や,関連して,国有財産の管理の観点から留意すべき事項等について,国有財産の管理の方面,関心から,資料を本日用意してもらっております。そちらの方面について,関係する御説明を聴取しておくことが適当であると考えます。 ○明瀬関係官 財務省理財局国有財産業務課長の明瀬でございます。   本日は発言の機会を頂きまして,誠にありがとうございます。先ほど御紹介いただきましたけれども,所有権の放棄の御議論をされるに当たりまして,国有財産の総合調整を行っております立場,また,実際に国有財産の管理を行っている立場から,少し申し上げさせていただきたいと思います。座って説明させていただきます。   お手元に,財務省理財局と書いた資料があるかと思います。そちらを1枚おめくりください。   1ページ目に,全国の種類別土地面積を示したグラフがございます。これを御覧いただきますと,日本の国土のうち,森林が大体7割ぐらい,農地が1割ぐらい,宅地が5%ぐらいということになっていまして,比較的資産価値が小さくて,管理に手間が掛かる森林や農地の割合が圧倒的に大きくて,こうした土地について,放棄の潜在的なニーズが大きいと考えられますので,所有権放棄を検討するに当たりましては,このような国土の全体像を踏まえる必要があるかと思います。   例えばでございますけれども,森林の6割,見ていただくと,民有林と書いてございますけれども,6割は民有林が占めておりまして,人工林につきましては現在,民間の所有者が公的な補助金などを利用しながら,自らの責任で間伐等の森林整備を行っております。   また,この住宅地,宅地の中には,崖地などは補修に多額な費用を要するものがございまして,このような土地が大量に放棄されるようなことになれば,帰属先機関の管理費用は極めて大きくなると,その管理費用は国民や住民の負担になると。所有権放棄により追加で生じる負担というのは,相当な規模になるのではないかと考えているところでございます。   また,国が利用する予定のない土地を引き受ける場合には,普通財産として管理をすることになるわけでございますけれども,次のページをお開きください。   現在,財務省が国有財産部門として管理している普通財産というのは,一番下の左側の10万ヘクタール,このうち6万ヘクタールにすぎないわけでございまして,一方で,所有者不明土地問題研究会の試算によりますと,これから2040年までは,所有者不明土地が310万ヘクタール増加するとされておりますので,規模感にかなりギャップがあり,広く放棄を認めようとする場合には,実務上の受入れ体制も必要になるものと考えられるところでございます。   このように,土地所有権の放棄の要件や必要な手数料などを検討するに当たりましては,国土の状況を踏まえつつ,それぞれの土地の価値や管理コストなどを具体的に念頭に置いていただければと考えているところでございます。   また,この状況を踏まえますと,放棄を広く認めますと,国民や住民の負担が相当なものになるのではないかと考えられますので,所有者不明土地の発生の抑制のためには,所有権放棄だけではなくて,既存の仕組みも活用しながら,総合的に対応を検討する必要があるのではないかと思います。   本日,先ほど御紹介がございましたけれども,部会資料の8ページにも書いてございました,8ページの一番下のところに書いてございましたけれども,所有者不明土地の発生を抑制するためには,まず土地の継続保有を政策で支援するほか,土地の流通を促進することが重要であり,所有権放棄は最終的な手段と考えられることから,所有者が保有を望まない土地については,まずは利用意欲のある者に土地の所有権を取得する機会を与えて,それでも引き取り手が現れなかった場合にのみ,土地所有権の放棄を認めることが望ましいと考えられるという文がございますけれども,この指摘は重要であると考えているところでございます。   すなわち,土地を価値を認める者に譲り渡すようなシステムがあれば,あえて国民や住民負担となる所有権放棄を認める必要はなくて,土地の流通を促進するためのマッチングの仕組みなどの関係も踏まえながら,放棄の要件などについて検討する必要があるかと思います。   また,もう1点,放棄の仕組みについて,少し申し上げさせていただきます。   例えば,投機目的で購入した土地が値下がりしてしまったので放棄したいというようなケースで,放棄を認めることが適当かどうかというのは,慎重な検討が必要ではないかと考えているところでございます。こうしたケースの放棄を認めれば,モラルハザードが生じる懸念が高まるのではないかと考えているところでございます。   所有権放棄は,土地を所有しない者も含めて,国民や住民一般に負担を求めるものでございますので,モラルハザードが生じれば,最終的には放棄もできるんだということになれば,放棄制度の創設によりまして,かえって土地の管理状況が悪化するということにもなりかねないものでございますので,国民の,また住民の経済的利益や全国的な土地の管理水準に大きな影響を与えることでございますので,その重要性に鑑みて,放棄の要件は法律で明確に規定する必要があると考えます。   さらに,法律で定めた要件に該当するかどうか,放棄する者の意思や経緯なども含めて,確認することが必要でございまして,土地の帰属先ではない公的な第三者機関が審査・認定を行う仕組みが必要ではないかと考えるところでございます。   また,本日の部会資料の3ページのところに,国土審議会の特別部会の取りまとめが引用されてございます。この中で,市場ベースのマッチングが成立しなかった土地について,地域の公益につながる利益,利用・管理する意義があると認められた場合には,市町村自らが利用・管理,取得をしたり,また,広域に影響が及ぶ場合には,都道府県が利用・管理,取得する場合が考えられ,また,公物や公的施設を管理している国,地方公共団体の立場で,当該公物等の適切な管理の観点から管理,取得する場合もあり得るとの,特別部会の取りまとめでございますけれども,こちらが引用されてございます。   放棄される土地の性格に応じて,適当とされる機関に土地が帰属する仕組みを構築できれば,土地の適正な利用・管理が確保できるのではないかと考えているところでございます。   私からは以上でございます。 ○山野目部会長 明瀬関係官から説明がありました財務省資料につきましては,これから部会資料2についての審議をお願いする中で,あわせて,御意見や御質問などを承ることがかないますれば幸いでございます。   部会資料2の審議をお願いするに当たりましては,内容が盛りだくさんでございまして,もちろん,掲げられている事項が相互に密接に関連している側面もございますけれども,まずは若干区切って審議をお願いしたいと考えます。   初めに,1ページの第1,土地所有権の放棄を認める制度の創設の是非及び4ページの土地所有権の放棄の要件,ここまでのところについて,御意見,御質問などを承るということにいたします。どうぞ御随意に御発言を下さい。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 弁護士の蓑毛です。   所有者不明土地の今後の発生を予防する方策として,土地所有権を放棄するということを可能とする制度を設けることは有益であると思いますので,この制度の創設について賛成いたします。   補足説明にあります必要性,土地所有権,権利の基本的構成,土地を手放すための仕組みとして考えられる他の方策,土地所有権の放棄を認める制度について,いずれについても,書かれていることは妥当だと思っております。   ただし,今,関係官からもありましたように,この要件をどうするかについては,慎重に考えるべきだと思いますし,土地の経済的価値であるとか,あるいは管理コストであるとか,そういったものを類型化し,適切な要件,プロセスを考えるということを前提とした上で,このような放棄の制度を認めるということについて賛成いたします。 ○中村委員 弁護士の中村でございます。   今の蓑毛幹事からの御発言に,少し補充させていただきたいと思います。   日弁連のワーキンググループの協議では,土地を手放す制度の創設という導入自体に反対する意見はございませんでしたけれども,部会資料のように,単独行為で放棄とするのか,それとも,要件を満たしているかを誰が判断するのかとかいった観点から,帰属先側が事前に要件のチェックとか,それから,引き受けるか否かを検討するという方向に行くのであれば,それはもはや単独行為と呼ぶようなものであるのかというところも考え,寄附ないし贈与構成を採った方が,帰属先が選択をするというか,意見を述べる機会ができるという意味で,端的ではないかという意見もございました。   それから,所有者不明土地の発生を抑制するという今回の諮問事項に沿った検討ということであれば,利用しやすい制度であって,負担が少ないということでないと,結局利用されずに,目的を達し得ないということになってしまいますので,今後放棄の要件を検討するに当たって,余り厳格になり過ぎないようにということと,手続が難し過ぎないということは必要かと思います。   まず方向性についてだけ申し述べました。 ○松尾幹事 最初に,土地所有権の放棄を認めるかどうかということと,それを認めるとした場合のその要件に関して,2点申し上げたいと思います。   第1点は,土地所有権の放棄を考える場合に,その背景として,国が土地に対して,どういう権限や責務を持っているかということについて,基本的な考え方を整理しておく必要があると思います。   これについては,大きく二つの考え方があるように思われます。一つは,国は土地について,既に私有地になっているものについても何らかの権限,原有権(original property)を保持していて,一種の大地主的な立場を持っていて,土地の管理についての権限と責任を負っているという考え方です。この考え方によれば,私人が土地所有権を放棄した場合には,ちょうど,地上権を設定した土地について地上権の放棄がされると,268条1項本文で,地主に返され,その使用・収益権限が地主に当然帰属するように,土地の所有権が放棄されると,国に返され,その使用・収益権限も当然国に帰属することになり,放棄の意思表示も国に対してされることになると思います。   もう一つは,既に他人の所有地になったものについては,国は強制収用権限を別にして,とにかく他人の所有権であって,それについて放棄を認めるということは,いったん無主物となり,その先は法律の規定によって帰属先が決まるという考え方です。  その何れが妥当であるかについては,日本の土地所有制度の沿革,歴史的経緯に遡って,土地に対して国がどういう権限・責務を負っているのかということを確認し,それとの整合性も振り返りながら,考える必要があるのではないかと思います。   それを前提にして,第2点ですが,土地所有権の放棄を認める場合の具体的な要件ですけれども,土地所有権の放棄を認めることが必要となる問題領域をどうやって絞り込むのかということを,まず考える必要があると思います。   土地所有権放棄の要件として,先ほど川畑関係官から,要件として考えられることを詳細に列挙していただきました。非常に重要な論点を挙げていただいたというふうに思います。   それを考える場合の基本的視点として,土地所有権の放棄が認められるべき固有の領域はどういう所かというと,まずは私人間の取引で売買や贈与が成り立たないというような土地だということになりそうです。   そのうえで,土地が非常に危険な状態になり,一般的にみて私人の手では管理困難になってしまったものについて放棄を認める,といったように限定するのか,それとも,そこまでいかなくても,実際に固定資産税も払っている,ちゃんと管理もしてきたけれども,個人的な事情でちょっと私はもう管理し切れませんというような場合にも放棄を認めるのか,その際には特別な費用負担をしてもらった場合に認めるのかという点について判断する必要があると思います。  そして,この点の判断は,先ほど第1点として述べました,土地の所有権放棄の理解の背景にある国の権限・責務をどういうふうに捉えるのかということとも連動しており,そのことも考慮に入れて,土地所有権放棄を認めるべき固有の領域,それを踏まえての具体的要件をどう絞り込んでいくかということを整理する必要があるように思います。 ○佐久間幹事 最終的には,放棄の要件について申し上げたいんですが,その前提といたしまして,土地の所有権を手放すことができる制度の創設自体は賛成なんですけれども,その制度を創設していくに当たっての基本的視点としまして,今回頂戴いたしました資料の補足説明では,権利放棄自由の原則というのが割と表に出てきているように感じます。その原則を基に,土地所有権についても,恐らくは,本来は放棄することができて当然であるという考え方があり得る。しかるところ,現在はそのようなことになっていないから,これから創設しよう。その場合に,要件を定めるに当たっては,5ページにございますけれども,例えばですけれども,権利濫用に該当しないと考えられる場合を類型化する考え方があり得る,というふうに述べられております。   ここから申し上げることが,実際の要件設定にどのぐらい,具体的に反映してくるのかはよく分からないんですけれども,スタンスといたしましては,異なるスタンスも十分成り立つのではないかと思っております。権利放棄自由の原則のところで例示されております,4ページですが,519条は債権ですので置いておきまして,268条1項,287条,ほかに例えば275条もあるんですけれども,これらの規定を見ますと,そもそも権利の放棄が自由であることを原則として,出発点として,これらの規定が設けられているかというと,そういう見方もできるとは思うんですが,権利放棄をすることができるとしても,放棄によって影響を受ける者があるときには,その影響を考慮して,この場合にはこの要件の下で放棄を認める,という限定的な考え方が採られているというふうに見ることもできるのではないかと思います。   そういたしますと,土地の所有権の場合は,地上権や地役権の放棄,あるいは永小作権の放棄と違いまして,直接相手方になる人とか,放棄によって権利関係に直接影響を受ける人がいるわけではございませんけれども,先ほど来出ておりますとおり,国民負担というところに典型的に表れるように,社会的には大きな影響が生ずる。それは,不利益を被る存在があるということだろうと思います。そうすると,土地所有権の放棄を認めるといたしましても,そもそも権利濫用に当たらなければいいんだという考え方よりは,飽くまで精神論になりますけれども,この要件の下でなら認められるだろうというふうに考えるべきなのではないかと,まず思っております。  その上で,放棄の要件についてですけれども,現在挙げられている要件につきまして,それぞれ個別に反対ということはございません。   ただ,③はちょっと特殊な場合ですのでこの要件を除いて他の要件を全部つなげて考えたとしましても,例えば,所有者の今の財産状況では管理を継続しようと思えばできるんだけれども,したくないという人も,放棄をすることができる可能性がある要件になっているのではないかと思います。①について,管理費用を全部払えというのであれば,そうはなりませんけれども,一定限度に限る,そして,②の帰属先機関が負担する管理に掛かる費用は比較的小さい。③のような特殊な事情はなく管理をしようと思えばできるけれども,引受先は見付けることができないということになると,十分な資力のある人であっても,場合によっては,これらの放棄の要件を全部充たすことになりかねないと思うんですね。   したがいまして,私は,少なくとも,当該の人にとって管理を継続することが困難である事情が認められるということは,要件に加えるべきであろうと思っております。長くなりまして,すみません。 ○山野目部会長 佐久間幹事の著作の中に,民法総則の概説をなさった御本がありまして,契約自由の原則というものが,原理としてあることは当然であって,民法上,規定の上での根拠もあるけれども,それに対し,単独行為自由の原則というものは,そんな原理原則は当然にはないですよという御説明があって(『民法の基礎1総則』,第4版では44頁),私は拝読して,なるほどと思った記憶があります。もちろん単独行為は,およそ認められないというお話をなさっているものではなく,それが認められるに当たっては,局面ごとに要件の精査が必要でありましょうというお話になってくるものでありまして,今正に,ここで話題にしている土地所有権の放棄というものについて,それを単独行為として構成するかどうかについては,中村委員から御指摘があったように,更に議論を要する側面がありますとともに,佐久間幹事から問題提起を頂いたように,仮に単独行為だとして構成する際にも,その要件について十分な検討が必要であるという,誠にごもっともな御指摘を頂き,関連して,部会資料第2の提案の部分については,③の要件について,取り分けそれを精緻化すべきであるという観点からの御指摘を頂きました。 ○藤野委員 ありがとうございます。藤野でございます。   今,産業界でまとまった方向性というのが明確に出ているということではないのですが,この論点自体が,今後,管理していくのが難しい土地が多く出てくる,という問題意識からスタートしていることを考えますと,現在土地の所有者である方に頑張ってもらうというよりは,一定の範囲で放棄という形を認めて,所有者を管理の責任から解放するということも,今後いろいろ発生する問題を解消する上では,意義のあることではないかと思っております。   もちろん,放棄後の管理コストの問題とか,様々な問題は出てくると思いますが,技術の進歩によって,管理コストを下げられる可能性もございますし,放棄された土地をずっと国が管理し続けるという前提で考えるのではなくて,むしろ,先ほど関係官の方もおっしゃっておられたように,流通の促進という観点から考える,例えば小さい土地一つだと,誰も買い手が付かないけれども,放棄された土地がまとまってきて,ある程度大きなまとまった土地になったところで,それを使って,新しい取引のチャンスを生むとか,そういった考え方というのもあるのではないかなというふうに思っております。   したがいまして,次の論点の話になってくるかとは思うのですが,放棄する人と,それを受ける国なり地方公共団体なりとの関係に加えて,さらに放棄された土地が,その後,転々流通するということも想定した上で制度設計を考えていく,例えば,土地に内在する瑕疵の問題も考慮した制度設計なども考えていただけるとよろしいのではないかと思います。 ○増田委員 今までの方と少しダブるところありますが,私もこの所有権放棄の制度に賛成であります。この制度を認めないと,逆に,これからの大量の相続時代,それから土地利用の可能性が,だんだん,これから少なくなっていくということを考えますと,社会全体での不利益が大きくなってくるのではないか。そして,この中にも記載してありますけれども,現状,寄附の制度があることはありますけれども,それが事実上,やはり機能,なかなか動かし難いということもありまして,新たに放棄の制度を作るということに賛成であります。   一方で,先ほど財務省の方から御説明がありましたんですが,やはり土地の管理ということを考えますと,量的な面,どの程度放棄された土地が出てくるのか,あるいはどの程度,やはり考えておかなければいけないのかという量的な面にも,一方で目配りが必要であって,要は,できるだけ使いやすい制度である必要があると思いますけれども,しかし,その後の管理が,かえって逆におろそかになるということを招かないようにしていく必要があると。   これから個々の具体論になっていくと思いますが,やはり放棄については,一定の要件をきちんと検討して設けるということが必要でありますし,特にモラルハザードにつながらないような仕組み,モラルハザードにつながるものは,きちんとはじくような要件を考える必要があると思いますが,その要件に当たるかどうかを,どこが,誰が一体判断するのかということなども,きちんと検討する必要があると思います。   まとめて言いますと,やはり今持っている土地を,今回のここでの議論ではないんですが,基本的には利用しやすいようにしていく仕組み作りがもっと必要でありますし,それから流通制度についても,もっともっと手直しが必要だと思いますが,社会の実態を見ると,そちらの方に流していけるような土地よりも,これから所有権放棄を認めなければいけないようなものが相当多く出てくる,そういう可能性があると思いますので,この所有権放棄の制度を今回,要件をきちんと検討することによって新たに設けると,こういうことに賛成であります。 ○岡田委員 土地家屋調査士の岡田といいます。   土地の所有権の放棄を認める制度の創設に関しては,何ら反対するところではございませんけれども,先ほど財務省の方の御説明の中で,放棄による対処は最終手段というお話もございました。確かにおっしゃるとおりだと思いますし,放棄以外の方法で,所有者不明の土地を発生する,回避できるような策というのは,引き続いて検討していく必要があるんだろうとは思っております。   例えば生前贈与を促進させるような税制措置であったり,それから,私どもは,どうしても実務上,お隣の方にお会いする場面で,所有者が分からない土地,あるいは放棄してしまいたい土地ということを相談される場面がありますけれども,お隣の方が購入する,あるいは引き受ける場面において,何らかのインセンティブ措置があってもいいのではないかなということは,常々思うところでございます。 ○今川委員 司法書士の今川です。   私も,所有権も私権の一つですから,基本的に放棄は認められるべきというふうに考えています。ただ,土地は国土を形成しておりますし,また公共的な性格がありますので,放棄者に対しては責務もあるということから,一定の制約が必要だと思います。   一定の制約というのは,放棄する人が一定の負担を負うということをベースにすべきと考えています。そして,最終的には国土として,国民全体で,国が管理の負担を受け入れるべきではないかと思っております。   それで,要件を考えるときですけれども,4ページの第2ですが,①をベースとして考えて,②,④については,これは放棄というよりも,マッチングをどうするかという観点から考えた方がいいと思いますし,③は,これは放棄をする人に負担を負わせていいのか,いい案件なのかどうかという観点で考えていくのがいいというふうに考えております。   それから,基本的なことになるんですが,ルールを定めるに当たって,土地であるとか個人の事情を考慮するというのもいいですけれども,放棄されようとする土地が存する地域の利用計画がどうなのかというのが非常に大きいと思います。ですから,国土全体に対して,本来は細かく計画が定められているのが理想であろうかと思います。   その利用計画によって,土地の利用・管理の在り方が決まりますので,放棄のルールが決まる。つまり,放棄する人がどこまで負担をして,帰属者がその後の負担をどこまで負うかというのも,計画によって決まってくると。帰属先機関も,それによって決まってくると思います。   国が最終的に,国ということは国民全体ですけれども,管理の負担を受け入れるという考え方に立ちますので,放棄をする人が一定の負担を負うにしても,一定以上超えたものは,帰属機関が決まれば,帰属先が負担していくというようなルールを作るべきと思っております。 ○山野目部会長 今川委員から,部会資料4ページに掲げております①以下の要件のうち,取り分け①から④の要件について,大変細かく分析していただく御発言をもらいました。少し前の佐久間幹事の③の要件に関する御言及と併せ,今後,①から⑤の全体について,その組合せの可能性も含めて,考えを深めていかなければならないと感じます。   あわせて,ただいまの今川委員の御発言の中に,恐らくは,①から⑤の中では明示に視点としてお示ししていない,欠けているものについての重要な御指摘も頂きました。土地利用計画との関係という論点でございます。   ただいま,当部会における調査審議と並行して,国土審議会の計画推進部会におきましては,地域の土地利用構想の在り方を,これからもう少しきちんと見直していかなければならないという論点の検討が進められております。そうした動向もにらみながら,ただいまの今川委員の御指摘も思い起こし,当部会における審議も進めてまいらなければならないと感じます。   引き続き,委員,幹事の皆様方からの御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 先ほど,所有権の放棄を認める制度を創設することに賛成と申し上げましたが,具体的にどのような要件を設けるべきかということについて,少し意見を申し上げたいと思います。   この問題を考えるに当たっては,もう既に複数の委員,幹事の方からも意見が出てきていますが,土地を類型化して考える必要があるのではないかと思います。具体的には,管理コストの観点と経済的な価値の観点から,土地を大きく四つの類型に分けられるのではないかと思います。   1つ目の類型は,現時点で価値があって,市場で流通することが可能な土地です。このような土地については,放棄して国に帰属させるのは,経済的な観点からも無駄ですし,手放す人からしても経済的に損失ですので,そういった土地の放棄を認める必要はないと思います。   2番目の類型としては,現時点で経済的価値を見いだすことは困難だけれども,何らかの努力,処理を行うことで,価値を見いだすことができる土地です。これは,例えば,その土地自体が細分化された土地の一部だけれども,周辺の土地を併せて取得して整序等することによって,経済的価値が生まれたりであるとか,あるいは,地方公共団体にとっては防災的な価値があったりといったものがあると思います。こういったものを全て国に取得させて管理するというのではなくて,何らかの方法で地方公共団体等に取得してもらう方法を推し進めることが重要だと思います。   3番目の類型は,現時点で経済的価値がなく,今後も価値を見いだすことが困難な土地です。ただし,この困難なものの中にも,二つ種類があって,在り方研究会等でも議論されていましたけれども,いわゆる粗放的な管理手法で足りるもの,過大な管理コストが掛からないものです。   もう一つ4番目の類型として,経済的な価値がない上に,管理コストが過大になるものがあります。これは,先ほど明瀬関係官からも御指摘のあった,崖崩れを起こしているような土地であったりとか,あるいは老朽化した建物が乗っている土地であったりとか,土壌汚染のある土地といったものです。   基本的には,今我々がこの議論をする中でターゲットとすべきは,3番目の類型,これを最終的に,放棄によって国に取得してもらうべきだと考えます。   以上申し上げたことと,部会資料2,第2「土地所有権の放棄の要件」との関係は次のとおりです。   まず,先ほど申し上げた,4番目の類型の土地には,様々な問題があります。この類型は,部会資料2の4ページでいえば③の土地ですが,今回の法改正ではこれは放棄の対象から外した方がいいと思います。これを入れると,財政的な問題等,様々な問題が起こって難しいということもありますし,確かに自然災害等によって,土地の崩落の危険が発生させられてしまった個人をどう救うかという問題もありますが,これは特別法などで,被害に遭った人に対する何らかの支援をするとか,そういったことで解決すべき問題であって,土地所有権の放棄で解決すべき問題ではないと思っております。   次に,粗放的管理で足りるという土地,これは部会資料2の4ページでいうと②ですが,②の要件のうち「流通も容易なとき」というのは,要件から外すべきだと思います。   その上で,粗放的管理手法で足りる土地のうち,不動産市場で流通させられるものであるとか,あるいは地方公共団体で取得した方がいいものについては,必ずしも民法の要件で解決するのではなく,部会資料2の4ページの④や8ページの(4)で書かれている手続を基に,ただしもう少し柔軟に,ランドバンクであるとか地元の不動産業者さん等含めて考えながら,いかに流通に乗せていくか,地方公共団体に引き取ってもらうかという仕組みを作って,そういう手続・プロセスで解決していくことがいいのではないかと思います。   そして,最後に,粗放的管理で足りる土地のうち,市場で流通させることも地方公共団体に引き取ってもらうこともできないものは,無償で放棄を認めていいかというと,そこは考え方によると思うのですが,私は,部会資料2の4ページの①にあるように,土地所有者が土地の管理に係る費用を負担することが,必要だと思っております。   現時点で土地を所有している者には,責務がありますので,将来にわたって全ての管理費用を負担しろということではありませんが,一部の費用を負担してもらった上で,放棄を認めることがいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 弁護士会の先生方におかれては,恐らくバックアップの過程の中で,当部会の調査審議と並行して行われている国土審議会の土地政策分科会特別部会において,土地を手放す仕組みについて,土地を類型化してアプローチをしようとする動き,議論が進められているところを見て,そちらの方にお出になっていらっしゃる弁護士の委員の先生と,問題意識に関し,連絡調整をなさっていただいたであろうというふうに想像します。検討を深める上で,有意義な御議論を頂いたというふうに感じます。 ○吉原委員 私は法律の専門家ではないので,少し違った視点からの発言になるかと思いますし,ちょっと的外れなところもあるかもしれませんが,御容赦いただければと思います。   土地を手放す仕組みが必要であるということは,全くそのとおりであると思っています。その上で,それが放棄という法的な手段なのかということについては,時間を掛けた慎重な検討が必要だと思います。仮に放棄を認めるとしても,そこに至るまでのプロセス,そして考え方を,多くの人が共有していくことが大事だと思います。   放棄ということが法的に認められるようになった場合,その法律行為を,これから10年,20年,30年と多くの人が重ねていく中で,土地というものに対する国民の意識がどう醸成されていくのだろうかということを考えますと,短絡的に放棄というものを認めることは,当然,この部会資料2に書かれているように,差し控えなければいけないわけです。   少し大きな視点で考えてみますと,なぜ所有者不明土地問題が出てきているかというと,恐らく相続というものが,人口減少社会において,従来の在り方だけでは立ち行かなくなってきているということがあるのだと思います。つまり,法定相続人だけで財産を分割して,継承し,維持管理,利用していくということだけでは,受け取る相続人が少なくなるなかで,立ち行かなくなってきている。   そうなると,親族以外の受け皿,より具体的には,権利の受け皿,それから管理主体としての受け皿というものを作っていかなければいけない。社会の中で新しい仕組みを作っていくという,大きな構図の中での,この放棄の議論なのだと思っております。   そうした中では,大きなパッケージとしての政策が必要で,先ほど委員や幹事の先生方から出ていたように,これは万能薬はないわけでして,放棄を認めることで問題の大半が解消するというわけではないわけですから,放棄という手段に過剰な社会的な期待が寄せられないよう,期待値を正しく伝えていくということが,まずあるのだろうと思います。   その意味では,放棄という言葉が独り歩きをしないように,また法的ないろいろな論争が起きてしまわないように,丁寧な議論の積み上げが必要だと感じているところです。   長くなって申し訳ないのですけれども,この資料を拝見して,放棄という概念を考える上で,2点大事なことがあると思いました。   一つは,土地という財が持つ特性です。土地という財は,ほかの財とは違って,次の世代にきちんと引き継いでいくべき公共的な性質を持つものです。そして,2点目は,だからこそ,その公共的な特性を持つ財を所有するということには,当然責務が発生するのであると。   その責務の部分については,前回横山関係官からご説明があったように,国土審議会土地政策分科会特別部会の取りまとめにおいて方向性が示されたわけですけれども,そうした公共性のある財を所有することには責務が伴うゆえに,それを手放すときには一定の制約が課されるということを,世の中に丁寧に示していくことが必要であると思います。   そのように考えますと,もしも民法の中に,土地の所有権は放棄できるという条文を盛り込むのであれば,それと対になる概念として,土地の所有権には責務が伴うという条文をセットで盛り込むことが求められるのではないかと思います。   国土審議会の方で,ようやく,土地の所有者が負うべき責務,それから国や地方公共団体等が担うべき役割というものが議論され,土地基本法に反映していこうという段階にあるわけです。その段階において,放棄という新たな概念が入ることで社会的な混乱が招かれないように,「負動産」というような悲しい言葉が今,広がってしまっているわけですけれども,やはり土地とは代々引き継いでいくべき大切な財であるということを皆が共有できるような立て付けにすることが必要であろうと思います。 ○山野目部会長 放棄ということの土地政策上の意味を丁寧に説明していかなければいけないこと,そしてまた,相続法制との連関を図って検討を進めていく必要があるという重要な御指摘を頂きました。 ○道垣内委員 これまでの御議論に,別にそんなに異論があるわけではありません。とりわけ,佐久間さんがおっしゃったことは,極めて大切だと思います。ただ,1点だけ申しますと,「所有権は義務を伴う」という条文を置くのはやめていただきたいということです。たしかに,所有者で損害が生じれば賠償責任を負うとか,いろいろなところに,所有権から生じる義務は存在するのですが,一定の歴史的な意味を背負ったEigentum verpflichtet.という規定を現在の時点で置くというのは,勘弁してほしいと思います。 ○山野目部会長 所有者の責務を法制上,どこでどのような表現で表していくことが適切であるのかということについては,引き続き,関係する幾つかの審議会における法制上の位置付けについての調査検討を待って考えていかなければいけないと感じます。   本日は,吉原委員と道垣内委員から,それぞれの観点における重要な御注意を頂きました。   引き続き,いかがでしょうか。   第3に,ひとまず進んでよろしいですか。   それでは,部会資料2の10ページ,第3のところ,帰属先の問題についての御案内を差し上げております。ここについて,皆様方からの御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○道垣内委員 非常に技術的な話なのですが,放棄の時点では,誰に帰属するかというのが決まっていないという文章になっているわけですね。   そうしたときに,よく分からないのは,なぜ,放棄の結果として国に帰属するということを前提にして,国が地方公共団体に移転するというのではなく,放棄によって,直接に,放棄者から地方公共団体その他の機関にいくというふうな構図を採らなければいけない理由は何なのでしょうか。 ○山野目部会長 部会資料2の10ページで,一つの考え方の候補として,事務当局からお示しした法的構成についての部会資料作成の意図に関するお尋ねの部分を含んでいたと考えますから,事務当局から,もし御説明がおありでしたら,お願いいたします。 ○川畑関係官 今御指摘いただいた考えにつきましても,確かにおっしゃるとおりだとは思っております。   ただ,一旦国に土地が帰属して,そこから地方に動かすということになると,財政法の規律であったり,もろもろの,今,別途設けられているような規制等もございますので,そこは,できれば外して,地方にいくのであれば,それは直接地方にいかせた方がいいのではないかというのが,この資料を作成したときの意図でございました。 ○山野目部会長 よろしいですか。   引き続き御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 3点あります。  1点目は,道垣内先生がおっしゃるのと同じような感覚があって,土地を放棄した場合には国に帰属するという考え方を,まず固めるのがいいと思います。その上で,先ほど申し上げましたように,手続的要件とするのか,前置する手続とするのか,ただしワンストップにした方がいいので,土地を放棄したい人は,国にその旨の意思表示するのだけれども,その後の手続として,必ずしも部会資料2の10ページに書かれたようなものでなくて,もう少し柔軟に,民間人が取得したり,地方公共団体が取得したりする仕組み,法的な構成まできちんと詰めていないのですが,何かそういう,しかるべき人に土地を渡すプロセスを考えた方がいいと思います。  2点目ですが,そのような土地を帰属させる手続に関して,部会資料2の12ページにある「所有権放棄の審査・認定を行う国の機関」については,よく検討した方がいいと思います。土地所有権の放棄についてどのような要件を設けるかは,これから議論される訳ですが,例えば,国の同意は要らない,つまり一定の要件を満たせば,放棄をすれば土地が国に帰属することになったとしても,その要件の認定機関が国の機関ということになれば,運用の仕方によっては,非常に重い手続になって,放棄の手続がうまくいかないおそれがあると思いますので,要件の認定を誰がするのか,それをどのような形で行うかは,もう少し検討する必要があると思います。   3点目,土地を帰属させる手続に関して,部会資料2の12ページにアとイがありますが,今申し上げたような問題点を含みつつも,基本的にはアのように,地方公共団体と国との関係では,地方公共団体が欲しいと言えば地方公共団体に渡すけれども,そうでなければ最終的には国に帰属するという仕組みがいいと思います。イは,地方公共団体が欲しいと言わない場合であっても,地方公共団体に帰属させるように読めるのですが,地方公共団体の実情等を考えますと,財源の問題からいっても,管理を行う人的資源の問題からいっても,地方公共団体に帰属させるというのは無理があると思いますので,最終的な帰属先は国ということで,制度を創設すべきだと思います。 ○松尾幹事 今の蓑毛幹事の御意見に続けてですけれども,土地所有権の放棄を認めた場合の土地の帰属先の問題と,土地所有権放棄の手続の問題は,かなり関連しているところがあると思います。   土地所有権の放棄,これは意思表示ですけれども,要式行為にするのかどうか,恐らく要式行為にするということになるのではないかと思うんですが,どこの機関の窓口で,どういう要式で意思表示をするのか,そのときに要件を満たしているかどうかの審査をどういうふうに行うかということが問題になります。   その審査を経て,例えば土地所有権放棄証明書をもらって,それを登記所に持って行けば土地所有権を放棄した旨の登記手続ができるのか,土地所有権を喪失したということの対抗が必要な場合に,そういう手続をとれるのかということまで見越した手続の流れも含めて,土地の帰属先と連動させて議論しておいた方がいいように思います。   最終的な帰属先については,法的な構成としては,放棄手続の窓口となる機関と,土地の帰属先は別に考えて,放棄された土地の帰属のプライオリティーは法律で決めておいて,最終的に決まった段階で帰属機関に直接帰属という形を採ることは十分可能であると思いますけれども,やはり実質的審査をどこでやって,どういう証明書を発行して,登記手続とどういうふうに連動させるかという問題を考慮しつつ,考えたいと思います。放棄された土地の帰属先のプライオリティーについて,地方公共団体に優先権を認める案が示されておりますけれども,地方公共団体の中にも市町村,都道府県とある中で,市町村が固定資産税を徴収していることをどう考えるか,放棄された土地の帰属先決定の問題とはまったく関係ないか,市町村の権限と責務について議論の整理は必要であるように思います。市町村に優先権なり優先帰属なりを認めるとしても,実施に無理があるような制度設計をすることはできませんが,一応考え方の手順は,しっかり踏んだ方がいいのではないかと思います。 ○増田委員 私も簡単に申し上げますけれども,手続的な面と,それから帰属先と,かなり関連している部分があると思うんですね。   当事者から放棄の意思表示があった後,私も,まず一番身近な自治体で利用性を考える,そして,最終的には国という,そういう出方が現実的だろうと思うんですが,いずれにしても,帰属するまでの期間を時間を区切らないと,そういう土地の利用可能性を余り長く検討されても困るので,一定の時間の中で,最終的に,市町村の方でどうしようかと,多分,通常ですと,普通財産で持つことになると思うんですね。それで,議会などの関係もあるので,時間が思ったよりも長く掛かる可能性があるので,その場合には国で,国に帰属した後,市町村がやはり使いたいとなったときは,国と市町村の間で,従来の手続で,今回の創設されたやつではなくて,従来の手続でやっていくと,多分市町村の方は,固定資産税が取れなくなることはありますが,ほとんど,むしろ当事者がお金を付けて出していかざるを得ないような土地でしょうし,固定資産税の収入というのは,ほとんど期待されていない土地だと思いますので。   ですから,私は,いずれにしても手続的に,時間で一定の期間を区切って,それで,もし可能であれば,市町村の方がその間にきちんと意思表示すれば,普通財産の方で帰属されるような仕組み,ただし,やはりある程度の,半年とか,そのぐらいの間の中では,最終的には国の方に帰属するような仕組みにしていくという,その手続な面を考えていく必要があると。   それからあと,誰が一体,要件に該当しているかどうかを判断するかですが,これは最終的には,帰属先は国の組織の中では,財務省の理財ということになるので,できるだけそこから遠い組織,ただし公的なところで,要件に該当しているかどうかをきちんと判断するという,そういうことを考えていく,外形的にも客観的であり,そして不公平になっていない,公平性が保たれるというところをやはり担保するためには,やはり公的な組織でないといけないと思いますし,しかもできるだけ帰属して管理する部局と遠いところ,どういうところがあるか,そういう観点で検討する必要があると思います。 ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   大体,他の委員の先生方がおっしゃられたことと重なるのですが,私,最初,この資料を拝見して,社内等でも検討していたときに,帰属先機関として,かなり広い選択肢が挙げられていて,ランドバンクとかも含めて書かれていましたので,想定されている放棄という手段が,先ほど蓑毛先生がおっしゃったような4分類のうち特定の場合だけを想定している,というよりは,例えば寄せ集めることで利用価値が生じて取引が可能になる土地や,あるいは,それ以外の類型も含めて対象にしようとする意図があるのかな,と思っておりました。もし,寄せ集めることで利用価値が生じるような土地に関しては,放棄ではなくて,別の形で整理するということであれば,所有権放棄の対象になる土地の範囲が非常に狭くなるので,そうすると,おのずから帰属先機関というのも絞られてくるのかなと思った次第です。   もちろん,所有権放棄というのを広く認めて,それによって,より多彩な土地の利活用を可能にするというような方向性もあり得ると思っておりますけれども,今日いろいろ議論をお伺いしている限りでは,どちらかというと所有権放棄を認める範囲を狭くする,というご意見が多いようですので,どちらの方向に持って行くか,という前提を明確にした上で,今後,議論を整理していただくのがよろしいのではないかと思います。 ○今川委員 今川です。   12ページに,地方公共団体が希望するときには,と書いてあるんですが,読み方がまずいのかもしれないんですが,希望するということは,寄附にちょっと近くなっていて,こういう概念が今,放棄のところで入ってくるのかな,要件として入ってくるのかなというのはちょっと思いました。   それと,12ページに書いてある,国の機関というふうに書いてあるんですが,私も,民間人も入った形で,公的な機関としての,ある意味,前さばき機関みたいなものがまず受け入れると。自治体は,公共的な利用とか管理のノウハウはあるんですけれども,流通に乗せるというか,商品として扱うというようなノウハウはありませんので,まずその前さばき機関が,第三者への利用権の設定をするとか,処分をしていくとか,そして,自治体や国が放棄の帰属先として受け入れるというようなことを判断していくというのが,いいと思います。   その場合に,放棄をしたときに,前さばき機関が受け取るんですけれども,前さばき機関に所有権が必ず移転するとするのか,利用権の設定とか処分先,処分とか帰属先が決まった時点で所有権を取得するのかという,その辺の細かい理論構成は必要と思います。   それと,この前さばき機関が,ある意味,放棄をしたい,どうしたらいいんだろうと考えている人の駆け込み寺的なもの,相談窓口みたいなものも兼ねることができるのではないかという気もしております。 ○水津幹事 放棄された土地の帰属先機関に関する規律について,意見を申し上げます。   第1は,無主の不動産の帰属先機関を定める民法239条2項との関係です。   同条項は,土地については,新たな土地が生じた場合と,土地の所有権が放棄された結果,無主の土地が生じた場合との双方を含むものと見ることができます。   ここで検討されている事項は,同条項の改正に関するものとして,新たな土地が生じた場合も含めて,無主の土地の帰属先機関一般を射程に含んだものなのか,そうではなく,土地の所有権が放棄された結果,無主の土地が生じた場合のみについて,特別に規律を設ける趣旨なのかが少し気になりました。   第2は,無主の土地の帰属先機関に関する規定の置き方です。   無主の土地の帰属は,所有権の取得の原因の一つです。遺失物の拾得については,民法は,それが所有権の取得の原因であるという観点から,その原則を定める一方,遺失物の拾得及び返還に係る手続その他その取扱いについて必要な事項は,特別法である遺失物法がこれを定めています。   そうだとしますと,無主の土地の帰属についても,民法は,その原則を定める一方,その細目は,特別法がこれを定めるとした方が,バランスがよい気がしました。 ○山野目部会長 水津幹事のお話を伺って,ほっとしました。   ここまでの委員,幹事の御指摘で,土地所有権の放棄についての要件の細目,手順,それから要件の認定及びその機関などについて,きちんと規律を整備せよという御指摘を頂いていて,正に今日,そういったことについての多くの御意見を頂くことが重要でありまして,いずれもごもっともなことであると同時に,それを全部民法に書くものであろうかということが,だんだん不安になってきました。むろん,それが必要であるということになれば立案の任を尽くすことになりますけれども,しかし,それは大変であるという気分を抱きます。テクニカルな手段としては,法務省令が定める方法で,とか,民法404条の法定利率みたいに書いてしまう手もありますけれども,しかし多分,ここまでの委員,幹事から御指摘いただいた事項を,法務省事務当局が法務省令に書こうとして立案している姿というものは,いささかイメージしにくいものであって,これは困ったことになったなというふうな感想も抱きましたけれども,しかし,水津幹事から今ヒントを頂き,またそれを受け止めて,今後検討していただくということも,かなうものではないかということを感じます。   引き続き,御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○畑幹事 私,民事訴訟法が専門ですので,今の話について,専門的な知見を有しているというわけではないのですが,一定の要件の下で放棄ができるという制度を仮に作るとした場合に,放棄をしたい人は要件を満たしていると思っていて,しかし,国なりの機関の側では満たしていないと判断されたという場合に,そこをどうするのかということも,問題としてはあるかなとは思いました。   行政的な不服申立てみたいな話になるのかどうかとか,あるいは,放棄をする権利とか地位というのは,そもそもそこまで強いものではないというふうに考えるというのも,判断としてはあるかもしれませんが,いずれにしても,そういう問題も考えておく必要があるかなと思いました。 ○山本幹事 先ほどからお伺いしていますと,単独行為としての放棄そのものというよりは,そこに至るプロセスの部分,あるいは,そこに関与する機関が重要であるというような御指摘がいろいろございまして,形としては,特別法というものも考えられるのではないかということがございました。   もしそういうことになりますと,例えば,一種の行政処分のような仕組みを,そこにかませていくといったようなことも可能ですので,行政処分と,それから私法上の権利変動との関係を特別に法定して整理をするという手順になるのではないかと思います。   具体的にどうこうというところまでは,ちょっと考えておりませんけれども,そこはいろいろな可能性が,制度としてはあり得ると思います。 ○山野目部会長 これから手続の具体像を更に検討を深めていくということになりますと,要件の充足に関して,放棄をしようとする土地所有者の側と受入先の帰属機関とが意見を異にするに至った場合の紛争の処理の方式については,かなり細目にわたる検討をしていかなければいけないであろうというふうに予測されます。その際には,ただいま御指摘いただいたような観点を含め,畑幹事や山本幹事からお知恵を頂戴してまいりたいと考えます。ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。 ○松尾幹事 すみません,議論の整理について,一つ確認しておきたい所があるのですが,部会資料2の2ページの2段落目に2というのがあって,土地所有権放棄の基本的構成で,その2段落目,「しかし」というところですけれども,「所有者不明土地の発生を抑制する観点から土地所有権の放棄を認めるに当たっては,土地が無主の状態で放置されることを許容することは困難であり」とあって,その後ですが,「放棄が認められれば,直ちに帰属先機関が所有権を取得するものとする必要がある」とされています。   この「困難であり」と,その先の「放棄が認められれば」という部分が直ちに結び付くものかどうかということであります。   つまり,繰り返しになりますけれども,土地所有権の放棄については,放棄されたことによって,一種の大地主としての国に当然帰属してしまうという,地上権放棄のようなスタイルを考えるのか,それとも放棄によって,一瞬無主の状態が生じて,そして法律の規定によって帰属先が決まっていくという構成を採っていくのかという点の確認です。   現在の239条2項の方は,無主の不動産については国庫に帰属するということですので,そこがちょっと曖昧というか,どちらにも解釈できる感じがいたしますが,今後,所有権放棄の手続を作って,一定の期間,先ほど増田委員から御指摘ありましたけれども,例えば,市町村が手を挙げるかどうかということを待っていて,最終的な帰属先を決める間の期間というのは,これは無主状態と考えるのかどうかという点についても,考え方を整理しておく必要があるように思いました。 ○山野目部会長 旧民法財産編26条という規定がありまして,今日の民法やそれを前提とする民法学では,比較的,そういう議論をすることを没却してしまっている傾向がありますけれども,融通の外に置かれたもの,流通の外に置かれたもの,取引外に置かれた(hour du commmerce)財物という概念を提示をしている規律がございました。   松尾幹事のお話を聴きながら,そういうものを思い起こしまして,ヒントを頂いたと感じます。そのような思考ももちあわせていなければならないと感じますとともに,なかなか重い宿題であって,所有権というよりは,恐らく物の概念ないしは自然公物概念の抜本的再編を要求しているお話になってくるところがありまして,検討を進めていく上で,いろいろ勇気が要る側面もあるかもしれません。   しかし,ヒントを頂いたようなことについても考え込んでいかなければならないと思うものでございます。   引き続き,いかがでしょうか。 ○道垣内委員 私のこれから発言が,どういう位置付けになるのか分からないのですが,最初は放棄の要件という話が出まして,その放棄の要件の充足については,放棄によって,最終的に所有権を取得するところの国の行政機関が判断するということを前提に,その判断に対して,どういうふうに不服申立てをするのかという話をしていたと理解しているのですが,本当にそうなのかというのが若干気になるところがあります。つまり,仮に放棄というものが,一定の実体的な要件を満たしていなければできないというふうに考えるならば,例えば民法の条文として,「○○の許可を得て放棄することができる」というふうになるはずであって,そして今度,ではそこの「○○」というのに,民法上,何を入れるのですかということになると,恐らく感覚としては,「裁判所」しか入らないような気がするのですね。   もちろん,手続の仕組み方によって,そこを行政機関にするということは十分可能であるし,さきほど私が申し上げたような条文の形にしなくても,許可を得て,初めて放棄ができるというふうな実体法上の規律と,それをバックアップするための行政法的な規律というもので処理ができるというのならば,それはそれで全然構わないんですけれども,通常のこれまでのいろいろな民事実体法の作りからすると,許可を得て放棄することができるという条文になってしまい,かつそうなると,許可主体には裁判所しか入らないような気がするということも,今後の議論を精緻化していく際に,お考えいただければと思います。   そしてまた,許可を得なければ放棄ができないということにするということは,増田委員がおっしゃった,どの時点までに帰属先を決めるのという問題にもかなり密接に関係していて,放棄はできますと,それは実体法的な要件が満たされていれば,放棄は実体的にも効果がその時点で発生しますということになると,半年であれ何であれ,地方自治体がオーケーというまでの間,フローティングな状態になるというのは変な話で,その間,無主物になっているとしますと,松尾さんがおっしゃったように,その時点で,即時に国庫に帰属するのではないかという気もいたしますので,その6か月なら6か月という間は,まだ放棄はされていないということで仕組むのか,放棄はされ,国庫には帰属したんだけれども,最終的な帰属先はまだ決まっていないという形で仕組むのかといった選択肢もあるような気もします。併せて今後の検討をお願いするというか,我々もしなければいけないわけですが,ちょっと一言申し上げておきます。 ○山野目部会長 道垣内委員から重要な御指摘を頂いて,議論の整理をしていただきました。おまけに条文まで書いていただきまして,許可を受けて初めて放棄をすることができると,あるいは,許可を得なければ放棄をすることができないというような書きぶりの法文になるかもしれないと,本当はこちらの法務省事務当局が考えることですが,描いていただいて,今後の作業の重要なヒントになるであろうと感じます。   必ずそうなるかどうかは,検討を続けてみないと分かりませんけれども,有力な法文の描きぶりであろうというふうにアイデアを頂戴いたします。   それと同時に,どこそこの許可をというときが,それが裁判所の審判であるとか許可の裁判であるとかに限定されるものかどうかは,もう少し考えていくことにいたしましょう。本日,吉原委員とか増田委員から,政策的な観点を大いに含ませて,判定する機関を考えてみましょうという御指摘などを頂いたところを踏まえますと,裁判所というのも絶対あり得ないアイデアではないかもしれませんけれども,いろいろな考え方を進めていく中では,求められているものは,何といったらいいでしょうか,逆収用委員会なのですかね。   今までの右肩上がりの時代の日本社会が持っていた土地に関する第三者判定機関である収用委員会は,土地を取られたくないと言っている国民に対し,いやいや,提供してもらいます,ただし有償ですということで,補償金について争いがあったらどうぞ,ということなどの解決をする機関として設けられてきました。   もちろん,収用委員会の裁決は行政処分ですので,異論があれば,通常の民事判決手続ではなくて,抗告訴訟によって処理されることになるものでありますが,言わば人口減少社会に向かった日本は,あれと逆立ちするようなものというのが,ひょっとしたら必要であって,土地を持ち続けたくないんですと,費用も余り払いたくありませんと言っている人に対して,第三者判定機関が,いやいや,あなたの希望が,ある要件で認められますけれども,その範囲で許可を与えるという裁定をしますと,不服があったら抗告訴訟を提起してくださいというような道筋になっていくのかもしれません。   判定機関の在り方は,本日,考えなければいけないということを多くの委員,幹事から御指摘を頂きましたから,引き続き,大きな宿題として認知されなければいけないと感じます。 ○道垣内委員 一言だけ,私の立場を申し上げておきます。   私は,裁判所にすべきであるという発言をしているつもりはなくて,放棄ができるということだけを民法に書いて,あとは行政的な手続によるということになると,この間は誰に帰属しているのかとか,いろいろな問題というのが多分出てくるだろう。そして,また取消訴訟が起こって認められたら,どの時点で放棄が認められたのか。そうすると,やはり,許可があって初めて放棄の効果が生じるというふうな形に仕組んだ方が,恐らくスムーズにいくのではないかと思うわけでして,それは,それを裁判所でないところにしたいときには,どういうふうに全体として仕組んでいけばいいのかという,そういうふうな観点が必要ではないかということであります。意見として,裁判所にすべきであるという意見が出たというふうに御理解いただかないようにお願いいたします。 ○山野目部会長 ご主旨は,十分に分かっておりますよ。  ○道垣内委員 議事録上,明確にしておきたいと思います。 ○山野目部会長 いずれにしても,道垣内委員からは重ねて重要な御指摘を頂きまして,ありがとうございます。   ここで,すこし休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開します。   部会資料2の,今度は第4のところについての御意見を承ります。1と2に分かれていますけれども,一括してお願いします。ここについて御意見を伺います。 ○佐久間幹事 1と2両方について,意見を述べさせていただきます。   まず,1なんですけれども,これは,先ほどの休憩前に議論がされたところと,あと,ちょっと,私自身の発言で恐縮ですけれども,権利放棄の自由などというのがあるのかということに関わってなんですが,休憩前の最後に,山野目部会長が,土地の逆収用みたいなものですねというふうにおっしゃいました。私は,正にそういうイメージをもっております。今のところ,土地所有権の放棄という言葉が使われておりますけれども,この先,土地の所有権を手放す仕組みができたといたしましても,民法典に,土地の所有権は,例えば先ほどの裁判所の許可を得てでしょうか,これを「放棄することができる。」というふうに書くことになるのかについて,かなり疑問を持っております。   その続きということになるんですけれども,アとかイも,結論として,建物については,処分をしようと思ったらすることができる。動産についても,処分をしようと思ったらすることができる。その後に誰かが所有権を持ち続けるという形ではない処分をすることもできるということになっており,決着がある意味でついている,かなり安定した状況になっているんだと思うんですね。   それについて,わざわざ建物所有権の放棄は認めないとか,動産の所有権の放棄は認めるとか認めないとか,そういうことを民法に本当に書けるんだろうか,あるいは書くことが,その含意するところも含めて適当だろうか,ということを非常に疑問に思っております。これがアとイについてです。   そして,ウについて,実は私,異論がございまして,現在の規定は,放棄をしたらどうなるということは書いてあるんですけれども,放棄について,どういうふうにして共有持分の放棄をするかということは書いていないんですね。   例えば,今問題となっております,所有を望まない土地というものが共有になっているときに,単に他の共有者に放棄の意思表示をすることだけで一抜けできるというのは,ちょっとあり得ないのではないかと私は思っています。   それでは,最後まで遅れた人が,単独所有者になって,所有を望まない土地を1人で抱え続けなければいけないことになるからです。土地に限らず,共有持分が増えるというのは,必ずしも利益になるとは限らないということを考えますと,少なくとも,放棄の意思表示を要求し,これも少なくともなんですが,異議がなかった,適時に異議が述べられなかったらその放棄の効力を生ずるとか,あるいは,先ほどの放棄の自由なんかないんだということからすると,他の共有者の同意を得て初めて放棄をすることができる,とすべきではないか。ただ結局,同意を得たら,放棄をするというよりは持分の移転だということになるのではないか。こう考えるのが,私は望ましいのではないかと思っております。   それから,2について,ごく簡単に意見を述べさせていただきたいんですが,特に(2)についてですけれども,第三者に損害が生じた場合に関して例えば軟弱地を例に挙げて書かれておりますけれども,放棄者の責任は第三者に損害が生じて初めて問題にすることでいいんだろうかということを疑問に思いました。第三者に問題が生じる前に,土地を,例えば国が引き取ってみたら,軟弱地であって,将来問題が生じそうだということになった場合に,民法でいうと担保責任に当たるようなものを考えなくていいかということです。   それでいいか,というふうに申し上げるのは,両論あるなと思いまして,担保責任を認めることにしておかないと,引取機関としては,相当調査をしてからしか,引き取ることの決断がしにくいと思われるのに対し,他方でしかし,担保責任を追及されることがあるんですということになりますと,これは,負担を免れるために土地を手放すということのメリットを大きくそぐことになりまして,ちょっとどちらがいいのかはよく分かりません。今日の段階では,損害賠償にかかわらず,むしろ担保責任的なものも検討した方がいいのではないか,ということを申し上げておきます。 ○中田委員 ただいま佐久間幹事が第4の1のアとイについておっしゃったことに,基本的に共感を覚えております。   仮に何か規定を置くとなると,物権放棄の自由という原則を書いて,その例外を書くか,あるいは,物権放棄は自由ではないという原則を書いて,その例外を書くかということになるんですが,いずれも非常に書きにくいのではなかろうかと思います。   それから,建物について別だとすると,現在,無主の不動産は国庫に帰属するという規定がございますけれども,239条2項をどうするのかということが問題となるような気もします。   また,他の法制との関係も詰める必要があると思います。   さらに,建物は放棄できなくて,動産は放棄できるとなると,建前というんでしょうか,建物に至る前の段階だったらどうかとか,あるいは他の土地の工作物はどうかとか,非常に複雑な問題が出てきて,限られた時間の中で,そこを詰めることができるのかなということを危惧いたします。   それから,共有持分については,佐久間幹事の御懸念はもっともだなということを感じましたが,他方で,現行法の下で,既に放棄が認められているわけでございますので,現行法の下でも存在する問題について御指摘になられたと思うんです。そうすると,果たして現行法,その部分について変更するということまでを含意しておられるのかどうかが,ちょっと御趣旨がよく分からなかったんですけれども,現行法について,また255条を更に詳しく書いていくというのは,どうもやはり,これも限られた時間で難しいのではないかなという気がいたしました。 ○蓑毛幹事 私も建物の所有権放棄について,少し違った観点から,意見を申し上げたいと思います。   先ほど私自身が申し上げましたように,土地の所有権の放棄に当たっては,建物等が乗っている場合,特に老朽化した建物が乗っているような場合には,過大なコストが掛かりますので,放棄を認めるべきではないという意見を持っております。   ただし,最終的に放棄をする際,国に帰属させるときには,建物がない更地の状態で渡すとしても,先ほど申し上げましたように,放棄をするための要件ではなくて,手続・プロセスとして,地方公共団体に引き取ってもらうことを考えたときには,全て更地にしてから手続をスタートするというのは,余りにも無駄があって,地方公共団体としては,建物と土地一緒になった状態で引き取るよというケースもあると思うんです。   そういう意味で,建物の所有権放棄ができるかという議論とは別に,手続・プロセスのところでは,建物が乗った状態で,市場で流通できないかとか,自治体で引き取れないかとか,そういったプロセスを考えるべきではないかと思っています。 ○今川委員 私は,先ほど申し上げましたように,土地所有権は原則放棄できるというふうに立て付けるべきだと思っていまして,したがって建物も同じという考えです。   放棄に条件を付けて,条件を満たした場合には放棄を認めるというものを細かくしていきますと,結局は,一定の条件を満たしたときには受け取るということになって,寄附に限りなく近くなっていくと思われますので,放棄を認めた上で,放棄をする人間がどこまで負担をするかというような観点で考えたらいいと思っております。   したがって,建物も放棄は認められるが,個別法で,建物が建っている場合は,土地と建物を併せて放棄をし,建物の除却費用を負担する,あるいは,建物を除却した上で土地を放棄するというようなルール化がいいと思っています。そして,除却費用がない,出せないような人は,個別でまた考えていくと。   それから,利用・管理されていない建物についてですけれども,これは空家等対策の推進に関する特別措置法という特別法もありますので,そこで,空き家をどうするかということは考えていけばいいと思っております。 ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   第4の2の方の話になるのですが,よろしいでしょうか。   先ほどの,放棄の要件のところとも関連するのですが,第2の②のアにございましたような,有害物質が土地にあるかどうかといったような話になってまいりますと,企業間の取引においても,あり,なしを特定するのはかなり難しい,特に,ないことを証明するためには,かなりの費用と時間が掛かるということで,実際にはそこを明確にせずに取引を行うこともありまして,今回の話でも,放棄の時点で常にそれを明確にすることが本当にできるのか,というところは疑問がございます。   したがって,有害物質などの問題については,必然的に,こちらの第4の2の方の事後的な責任分担の話ということになってくるのではないかと思っておりまして,例えば帰属先機関であるとか,あるいは,更にそこから先に,第三者にその土地がいくということを考えますと,どうしてもやはり,放棄する所有者の方に,最初の時点で表明保証なり,それに代わる何かをしていただくというところが大事になってくるのかなと思っております。   ただ,一方で,そこの要件をあまりに厳格にしてしまうと,そもそも所有者は放棄で何ら対価も得ていないという状況の中で,そこまで全部責任を負わせるのが妥当かという問題も出てくるかと思います。更に言うと,仮に責任が現所有者,放棄した所有者にあるとしたところで,その所有者が個人の方の場合に,責任を負担する資力があるのかというところもありますので,どういった形でここを制度設計するかというのが,非常に重要なところだと思っております。   民法などの法律に任せる,というのも一つの手だとは思いますけれども,仮に,放棄された土地を流通させるというようなところまで含めて制度設計を考えるのであれば,逆に,転々と流通した後に取得した第三者が不測の損害を被らないようなやり方というのも考える必要があるのではないかと思っております。 ○岡田委員 岡田です。   今の関連する民事法上の諸問題において,建物の所有権の放棄は認めないものとすることでどうかということでございますけれども,当検討会におきましては,これ,区分建物に関しましては検討外というふうに考えたので,よろしいんでしょうか。老朽化のマンションの問題等もございますけれども,そこをちょっと教えていただけたらなと思いました。 ○山野目部会長 つまり区分建物の所有権を放棄すると,敷地との一体処分が要請されている規律の下では,土地所有権の問題と連動してくることになり,かなり込み入ったお話になる。なるほど,いや,これは難儀ですね。 ○大谷幹事 建物の所有権放棄は認めないということでございますので,区分所有の建物についても認めないということを,この資料ではお書きしております。 ○山野目部会長 岡田委員は,お続けになられることは。 ○岡田委員 いいです。大丈夫です。 ○山野目部会長 お尋ねだったわけですね。 ○岡田委員 はい。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○道垣内委員 すみません,まず,1のウなんですが,佐久間さんがおっしゃったところは,ごもっともではないかと思います。   中田さんの方から,現行法にある問題であると指摘されまして,それはそうなのですが,佐久間さんは,それに対して回答を用意されていらっしゃるわけですね。つまり,現行法は,放棄したときのことを書いているだけであって,放棄の要件は書いていなくて,ブランクになっているとも解されるので,現行法を変えるということとは必ずしもならないというのが第1点と,第2点は,もう一つの部会資料が,共有に関して,様々なところを再検討しなければならないということになっておりますので,今現在,放棄の問題を扱うときに,255条だけを扱うということになりますと,ピンポイントで扱った感じがするわけですが,他方,共有の議論において,255条を扱わなかったということになると,今度は,そこをピンポイントで排除したといったインプリケーションが出てくる可能性もあります。時間が限られた中で大変ですけれども,私は,検討した方がよいのではないかと思います。   次に,2の(2)でしょうか,担保責任ですけれども,担保責任というときに,結果として産業廃棄物が出てきたということになったら責任を負うのか,それとも,産業廃棄物が出てくる可能性というものを認識したり,あるいは認識すべきであったのに,それについてきちんと言わない形で放棄をしたといったときに,責任を限定するのかという問題があるような気がいたします。   というのは,可能性として,ごく僅かでも何かある可能性があるというふうにしたときに,塩漬けにしてしまえば,別に除去費用が発生するということはないのですよね。それに対して,放棄して国に帰属させたり,あるいは,国が一旦取って,何らかの形で利用するというふうな形にしたりすると,それが顕在化し得るわけであって,そうすると,担保責任の肯定は,塩漬けにしておこうという方向に働く規律になってしまうような気がします。そうすると,全体としての本部会ないしは改正の趣旨と,どうも齟齬するのではないかなという気がします。   そうなるとやはり,一定の主観的な要件を課した上での責任なのかなという気がするということでございます。 ○水津幹事 第4の1のアとイのところですが,既に意見が出ているとおり,建物の所有権の放棄は動産の所有権の放棄や土地の所有権の放棄と異なって,一切認められないとする理由は,十分ではない気がします。   その理由の一つとして,建物は,取り壊せば足りることが挙げられていますけれども,この論理を強調すると,動産の所有権の放棄も,認められないこととなりそうです。しかし,動産の所有権の放棄は,反対に,権利濫用などに当たらない限り,認められるとされています。  他方,建物は,その放棄によって無主とすることが認められれば,国庫に帰属することとなる点で,動産とは異なります。しかし,同じく国庫帰属とされている土地については,一定の要件の下で放棄が認められるとされています。また,建物の所有者は,土地工作物責任を負うことも,指摘されています。しかし,土地の所有者も,土地の所有に伴う義務や責任を負うとされているため,建物の所有権についてのみ,その放棄は一切認められないとする理由としては,弱い気がします。   部会資料では,土地の所有権の放棄の要件は,先ほど問題とされていましたけれども,権利濫用に当たらないと考えられる場合を具体化したものであるとされています。動産の所有権の放棄も,権利濫用に当たらない限り,認められるとされています。ここでは,所有権の放棄は,権利濫用に当たらない限り,認められることを前提とした上で,どのような場合に権利濫用に当たるかは,目的物の性質の相違に応じて類型的に異なるという考え方を見て取ることができます。   そうだとすると,建物の所有権については,その放棄は一切認められないことを首尾一貫した形で基礎付けるためには,建物の所有権の放棄には,常に権利濫用に相当する事情があることを示さないと,難しいのではないかという気がします。 ○中村委員 共有持分の放棄に,戻ってよろしいでしょうか。 ○山野目部会長 どうぞ。 ○中村委員 13ページの第4のウのところについて申し上げます。   先ほど佐久間幹事から御指摘がありました,共有持分の放棄をした場合に,もしそれがとても持ちにくい,管理しにくい不動産であったというような場合に,先に放棄してしまった者が,出遅れた人に全部負担を転嫁するということになりかねないということにつきまして,私も実務上の懸念を持っております。   例えば,知らないうちに産業廃棄物を廃棄されてしまったような土地というようなものにつきまして,先に土地の共有持分を抜けた人は負担を免れ,最後になった人は,先ほど検討いたしました難しい放棄の要件を満たさなければ自分は手放すことができないということになるということが,果たして公平なのかという問題が出てくるかと思います。   申し上げるまでもありませんけれども,共有にはいろいろな形がございますよね。例えば,夫婦で持っているとか,兄弟で持っているとか,親しい間柄で持っている関係であれば,自分の持分を放棄することによって,他の共有者がどれだけの負担を受けてしまうのかということについて,それなりに慮って,放棄するかしないかを決めるということになると思いますけれども,片や,どこの誰が共有者か分からないけれども,遠い昔のいきさつによって共有になっているというようなものの場合には,別の共有者に対して配慮するというインセンティブもなかなか働かない中で,このまま255条を維持してしまってよいのかという懸念を持っております。   また,ここでは,他の共有者に対する放棄の意思表示を要求するという,同条を維持することを前提とした記載もございますけれども,仮に維持したとした場合には,自分が一体どれだけの持分を持つことになっているのかということを知らないということになりますと困りますので,しっかりした通知のシステムというのは必要かなというふうに感じました。 ○山田委員 二つ発言させてください。一つは,共有持分の今話題になっているところで,もう一つは,ちょっと出てきていないことですが,ついでに申し上げます。   共有持分については,確かに現在の民法255条に規律があるということを前提にしながら,土地の所有権の放棄を認めるという制度を考えるときには,土地の共有持分の放棄を255条によらずに,ここで議論している,要するに国ですか,あるいは引受機関に共有持分が属するような形で,共有持分だけ喪失するということの当否も検討するのがよいのではないかと思います。   それは,1ページ目にある,土地の関心が失われて適切に管理されない土地が増加し,所有者不明土地の予備軍となっているという指摘は,そのとおりだと思いますし,これに対して,政府を挙げて対応しようとしている一端をここで担っているんだと思うんですが,この問題を解決するために,単独所有権について,放棄をどうしようかというのを今形作っているわけです。   直前の方の御発言にあったのと,多分重なるのではないかと思うんですが,村落共同体が所有していた山林で,大正から昭和ぐらいに,村の長老たちというんですかね,主要な人たちが10人とか20人で共有登記をしているというものが共同相続になって,そして,入会団体というのが解消して,消滅してというのが,今,恐らく日本に多数あるのだろうと思います。そういったところは,正に共有であるということも加わって,土地への関心が失われて,適切に管理されない土地になりやすくなっているという事情が,更に一層あるのだろうと思います。   そして,ではそこを255条の規律で解決するのが適当かというと,2,3の方が発言されたように,それは,もちろん中に,私がここを頑張ってやるから皆さん放棄してくださいという人がいれば,それでいいですが,しかし,みんなが関心を持たなくなっているとなると,せっかくここで単独所有権の放棄の制度を作るわけですから,作ろうとしているわけですから,共有持分は255条があるから,それで任せて,少し整理するなり外しましょうというのは大変残念なところです。   したがって,255条については,ちょうどこれと逆の立場で立ち向かってほしいなと思います。最後やはり,様々な問題があってできないということであれば,それはそれで仕方がないのですが,最初の段階で落としましょうというのは反対です。   それから,もう一つは,法人が土地所有権を放棄できるかという問題です。   どこにもこれ,自然人と書いていないので,含まれると考えているんだろうなと予測したんですが,そこはちょっと,明記を当分しておいていただくのがいいように思います。最後,条文にするときには,区別しないならば,わざわざ書く必要はないのですが,事務当局が法人も含むと考えているならば,書いてほしいと思います。   まだそこはペンディングですということであれば,私の意見は、同じように,自然人であるか法人であるかにかかわらず,同じ仕組みで土地の所有権の放棄はできるというふうにすべきではないかなと思います。   今,私が最後に申し上げた意見に対しては,直前に申し上げたことと関連すると,相続がどうも所有者不明土地の背後には,多くの場合絡んでいるというところから入りますと,法人は相続がないから外してもいいのではないかという議論はあるのかもしれないなと,立法事実というんですかね,として,外せるのかもしれないなと思うのですが,しかし,実体法上の要件を設けて,それの位置付けはいろいろあるとしても,権利濫用に当たらないタイプのものを実体法上の要件として書き込もうという考え方が一つありましたので,仮にそれに立つと,実体法上の要件を書き込んで,そして,それを事前に審査する何らかの手続も設けようというのが,今日出されている最大公約数だと思いますので,そのときの実体法上の実体的な要件の中に,自然人に限るというのは書くべきではないというのが私の意見でございます。 ○中田委員 私は,255条の改正を,最初からすべきでないという意見ではなかったつもりです。   何人かの方がおっしゃったことですけれども,放棄をすることによって,早い者勝ちで抜けることができるのはおかしいではないかと,これは全く同感でありますし,この資料を拝見して私も最初に思ったことです。   ただ,その抜本的な解決の仕方として,255条に意思表示プラス適時の異議ということですと,ほかにも波及することがあって,慎重に検討する必要があると思ったので,先ほど申し上げましたが,むしろ方向性としては,今山田委員がおっしゃった,全体として単独所有権の放棄と,それから,それのバリエーションといいますか,共有持分権の放棄というのを併せて考えるという方向が筋だろうと思います。   ただ,その筋を通すのに,果たして時間的な余裕があるかどうかということが気になるところですけれども,方向はそちらだろうなと思います。 ○垣内幹事 先ほど山田委員から御指摘のありました法人の取扱いとの関係で,広い意味では関連する民事上の諸課題ということで,若干私の感じているところを申し述べたいと思います。   一つは,法人の場合ですけれども,取り分け,ある土地を所有している法人が,例えば倒産して,破産手続が開始されたというときに,しかし,その土地に有害物質がある等の問題があって,なかなか換価が事実上できないというようなことがあり得るかと思います。   その際,破産手続上の問題としては,破産財団からの放棄を認められるかどうかという問題があって,これは裁判所が許可するかどうかというところに係ってくるところで,いかなる場合に許可をしてよいのかということが議論されているということかと思いますけれども,許可がされないということになりますと,財団にその財産が残るということになり,しかし換価ができなければ,これを所有権の放棄という形で何とかできないかという問題は当然出てくるところで,その場合,所有権の放棄はできないということになりますと,どうやって手続を終結させるのかというような問題が出てくることになろうかと思います。   仮に,所有権は放棄できなかったのだけれども,これは破産に限らないことですが,法人が解散等によって法人格を失ったというときに,その所有権がペンディングな形になるわけでして,その場合の取扱いはどうするのかといったような関連問題が存在するのかなと思われますと同時に,この問題は,本日の資料で申しますと,2で,放棄された土地に起因して,何らか損害賠償の問題が生じるときに,その責任をどうするかということがあるわけですが,これも,例えば自然人で放棄をした主体が,なお主体として残っているという場合には,適切な分配に関する規律を設けるということで処理することが,第一次的には考えられようかと思いますけれども,法人格が消滅しているというようなものが放棄の主体であるというような場合を想定したときにどうかといった点についても,この問題を検討する際に,一つ留意することが考えられるかなと感じます。   また,もう1点,これは法人の場合ではないのですけれども,やはり,取り分け資料の15ページの2との関係で,放棄そのものの問題ではないのですが,元々被相続人が土地を持っていて,しかし,その土地が非常に問題があるものであると,本来であれば放棄したいようなものであるというきに,しかし放棄が認めらないということで,しかし相続がその後に発生して,相続人がいずれも相続放棄をしたというようなことがあり得るかと思いますけれども,その際に,やはりその土地に起因して損害が生じたというときに,相続人の責任をどうするのかといったような問題も,2に関連する,広い意味で関連する問題としてはあるのかなと思いますので,この審議会で,部会で正面から議論の対象とするべき問題がどうかという点については,いろいろ御判断にお任せしたいと思いますけれども,関連問題として感じたところがありますので発言させていただきました。 ○蓑毛幹事 今,垣内先生からお話がありましたので,私は専門分野としては,倒産・事業再生を主に扱っている弁護士でありまして,破産管財人として,土壌汚染があった土地についての財団放棄ということも経験しておりますので,少し申し上げたいと思います。   現時点で,東京地方裁判所においては,法人の破産手続で,不動産が残っていて,これがどうしても売れないというときに,どうやって破産手続を終わらせるかというと,破産財団から放棄して終わらせるということをしています。   この破産財団からの放棄というのは,今ここで議論されている所有権の放棄とは違った概念で,破産管財人の管理処分権から外すという意味です。そして裁判所は,その許可をしないということはなく,許可をして,不動産を財団から放棄させて終わるということをしています。   放棄をすると,その不動産が法人の管理下に戻ることになって,その意味で法人は,登記簿謄本が閉鎖されても,概念的には残っているということになるわけですけれども,破産法人は実際には不動産を管理することができませんので,裁判所が,破産財団からの不動産の放棄を許可する際には,その後どうやって不動産の管理がされていくのか,管理がされない状態でも大丈夫なのかということを確認しながら進めていくことになります。   いわゆる粗放的管理で足りるものについては,裁判所は比較的緩やかに放棄を認めますが,例えば工場を操業していた会社が破産して,その土壌に汚染があることが認められた場合には,私の知る限り,東京地裁の運用では,破産管財人の報酬以外の全ての資産を土壌汚染の除去につぎ込んで,なるべく汚染を除去した上で放棄を認めるということをしております。   例えば税金の未納があったりすると,財団債権の順番としてはどうなるのかという話もあるのですが,実務上は,土壌汚染の除去は税金よりも優先するということで,できる限り土壌汚染の処理をして,放棄するということをしております。   今,垣内先生からありましたけれども,私としては,破産管財人の選択肢を増やすという意味でも,法人による土地所有権の放棄ということを認めた方がよろしいのではないかと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。   部会資料2の第4のところにおいて,1及び2について,多岐にわたる御意見を頂きました。第4の1については,アとイについて,その政策的な内容そのものの当否についての御意見も頂きましたし,関連して,どのような規律で民法上表現をしていくか,あるいは表現していかないことがよいのではないかといったような観点からの御心配の御指摘も頂きました。   それから,ウのところについては,現行255条の運用の下でも存在するが,しかし今後,更に検討していかなければならない問題があるのではないかという御指摘があったことを踏まえ,それを当部会で引き続き,どの範囲で審議の対象としていくかということについて,種々の御意見がありました。事務当局の方で整理をさせていただくことにいたします。   あわせて,ウのところについては,山田委員から,ここでお示ししている発想とは異なる全く新しい見地から,土地に関する共有持分の放棄について,国庫などに帰属させるという,本日の休憩前に要件や手順について御議論いただいた内容に係る,その規律に服せしめるというアイデアもあるものではないかという注目すべき御提案も頂きました。   皆さん御覧いただいたと思いますが,山田委員はこういうアイデアマンでいらっしゃいます。誰も考えないようなことをおっしゃっていただき,感じ入るばかりでした。ご提案いただいたことは今後,部会において検討していかなければならないと感じます。   すこし考えますに,共有持分を放棄して国庫などに帰属するということになりますと,考え込まなければならない問題も生じます。普通の土地もいろいろ荒れ果てている土地があり,悩ましい事例が多いでしょうけれども,さらに共有持分になると,不動産鑑定でいう共有減価が生じ,余計,価格的には困った状況のものを国庫などに帰属させることになりますから,国有財産管理や林野行政のお立場から見れば,種々悩ましい部分があるというお話があるかもしれません。休憩前に御議論いただいた土地所有権一般の放棄の要件の中で,もし山田委員の提案をそこで考えていく際には,共有持分について国庫などを帰属先としてイメージした放棄の要件のところをまた精査しなければいけないという宿題も頂いたものであろうというふうに感じます。   第4の2のところについては,ここで問題提起を差し上げている損害賠償の問題に加えて,いわゆる担保責任と類似の発想を考える余地がないかどうかという観点の御指摘があり,また,そのような発想で物事を進めたときに,それが法的構成の上でも,いろいろ難しい問題がありますとともに,その政策的な実質的当否の観点から見たときに,いわゆる土地所有権の放棄の自由度に影響する側面があるということの御指摘もあって,いろいろ考えなければいけない難しい問題があるということが分かりました。引き続き事務当局の方で,頂いた意見を議事全般にわたって整理をさせていただくことにいたします。   部会資料2について,土地所有権の放棄について御議論をお願いしてきたところ,一渡り御覧いただいたということになりますけれども,土地所有権の放棄全体について,何かここで御指摘を補っていただくようなことがおありでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,この土地所有権の放棄の議論をひとまず区切りとするに当たりまして,私から一言差し上げます。   土地所有権の放棄という問題提起を差し上げて,意見を述べていただきました件について,ここまで審議で明らかになりましたように,当部会が属する法制審議会に加え,財政制度等審議会及び国土審議会において調査審議が進められている各事項が互いに関連している側面がございます。つきましては,これらの審議会の事務当局を務め,当部会に関係官をお出しになっておられる各省におかれましては,引き続き緊密な連絡調整をなさっていただき,政府として整合性のある施策を企画・立案していくことがかなうよう,各段の御協力をお願い申し上げます。   土地所有権の放棄については,ここまでといたしまして,続きまして,部会資料3で審議事項を用意しております共有制度の見直し(1)に進むということにいたします。   部会資料3のは,分量がすごく盛りだくさんでございます。部会資料3の中の,ひとまず第1の1から第1の4までの範囲について,事務当局から説明を差し上げます。 ○脇村関係官 事前にお送りさせていただいておりますので,項目について簡単に御説明させていただきたいと思います。   まず,第1では,通常の共有における共有物の管理を取り上げており,1では,共有者の同意と共有物の管理に関する行為について御検討をお願いしているところです。   補足説明にもございますとおり,民法では,共有物を変更・処分するには全員の同意が必要である,あるいは保存行為については単独ですることができる,変更及び保存行為を除く管理に関する事項は過半数で決することができるといったことが規律としてありますが,ここの資料では,この大きな枠組みについては基本的に維持しつつも,不必要に共有者全員の同意を要求することで,問題となっている行為をすることができないといったことを回避するなどの観点から,問題となり得る個々の行為について,解釈の明確化等を含め,検討することを提案しております。   例えばということで,本文では①から③ということで,各共有者の持分の価格に従って,過半数で決する事項について,一定の定めがされた場合に,それを変更することですとか,特段の定めなく共有物を利用する者がある場合に,共有物を利用する者を変更すること,あるいは共有物について,第三者に対して賃借権その他の使用を目的とする権利を設定すること,こういったことを取り上げておりますが,御検討いただければ幸いです。   8ページにいきまして,2では,共有物の利用方法の定めの手続を取り上げております。   先ほど御説明させていただきましたが,民法では,管理に関する事項については,基本的には持分の過半数で決することができるというふうに定められているところですが,この過半数で決するということの意味につきまして,学説等の中には,共有者全員での協議,話合いを経なければならないという意見もあるところでございますが,この意見によりますと,例えば共有者の中に所在等不明の者がいる場合には,協議をすることはできませんので,なかなか利用方法を定めることができないということになり,そうしますと,やはり問題があるのではないかということで,ここでは,過半数を有する者の意思に合致すれば足りるとすることについて,そのことを明確化することについて,御検討いただきたいということを御提案させていただいております。   次に,同じページの3でございますが,ここでは,共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法を取り上げております。   共有物の管理に無関心な人,無関心な共有者が賛否を明らかにしない場合や所在が不明である,そういったことから共有者に賛否を問うことができない場合には,そういった不明共有者の同意を得ることができませんので,なかなか共有物の管理に関する事項,変更・処分を含めた管理に関する事項を定めることができないということになってしまいます。   そこで,この資料では,催告をしても共有者が賛否を明らかにしない場合や,所在が不明であるため共有者に賛否を問うことができない場合に,共有物の利用が阻害されることを防止する観点から,共有者の手続保障を図りながらも,変更・処分や管理行為,こういったことをできる仕組みについて設けることができないかを検討することを御提案させていただいているところでございます。   また,この補足説明にも書かせていただいていますが,この問題を検討する際には,先ほど言いました所在不明というのはどういったものですとか,そういった探索,所在者,共有者の探索の在り方についても御検討いただく必要があると思いますので,併せて御検討いただければと思います。   また,(注)にも書かせていただいておりますが,公的機関による事前審査,こういったことについても御検討いただければ幸いでございます。   次に,12ページにいきまして,4では,共有物の管理に関する行為と損害の発生を取り上げております。共有物の管理に関する行為がされることによって,同意をしていない共有者に損害が生ずることがございますが,それに対応するため,本文のような案について御検討いただければ幸いでございます。   簡単ですが,説明としては以上です。 ○山野目部会長 部会資料3の第1の1から4の説明を差し上げました。   御意見を頂くに当たりましては,これ全部というのは分量が多過ぎますから,初めに第1の1,通常の共有における共有物の管理の部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 今回のこの第1の1を議論する意義というか,どの範囲で議論するかということのお考えを,もう少し説明していただければと思います。   勝手に推測するに,この後議論する新たな制度,共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法であるとか,あるいは,共有物の管理者の制度を設けるに当たって,それがうまくワークするために,何か管理行為なのか,何が変更・処分行為なのかということを明らかにしておくことに意義があるのかなと思いました。一方で,では,それをどこまで,どんな範囲で,議論するのか。特に,部会資料3の5ページに書かれていることは昭和41年最判の解釈を変えるという意味なのか,共有不動産に共有者の1人が住んでいて,その人に明渡しを求めることが出来るのか出来ないのかということは,実務的にも非常に大きな問題になるものですから,どこまで掘り下げて議論されるつもりなのかということが気になりましたので,その点を御質問したいと思います。 ○山野目部会長 事務当局から,資料作成の意図の御説明を補足ください。 ○脇村関係官 資料の作成の意図としましては,まず,この後に出てくる同意,明確に同意がないケースについても一定の行為をできるようにするということを議論することにしておりますが,そもそも,どの行為が過半数でできるのかについては,ある程度明確にすべき問題であるんだろうなと思っています。   特に,今先生がおっしゃった,どういったときに利用できるのか,明け渡しも含めてですね。こういったものについて,当局としましては,やはり,後で変更できるかどうかによって,いろいろとその定め方の仕方も変わってくると思いますので,そういった意味では,きちんと議論をしていきたいと思っております。   今先生のおっしゃっていた中で,先ほど最判の話があったと思うんですが,この①,②というのは,そういう意味で,似たような話であるわけでございますが,既存の,現在のところ住んでいらっしゃる方についての変更をどうするのかについても,ここの資料自体は,ある意味,結果的にはというか,変更できるということをについて検討することも指摘しているところです。   ②についての,部会資料3の5ページの最判との関係についてですが,これは異論があるかもしれませんが,最判の読み方は,人によって多少温度差があるような気がしていまして,私自身,この部会資料を作る際には,あの最判は,共有の利用方法の定めがないケースの判例ではないかと思っており,そうすると,利用方法の定めをどういった場合にできるかとは,本当はリンクしないのではないかという気もしているんですけれども,他方で,あの最判は,過半数を持っている人でも追い出すことはできないという結論でございますので,ここで検討をお願いしている提案は,過半数で誰が利用するか決められる,その意味で,利用者を変更できるということまで含めて議論させていただいているところですので,結論が変わってくるのかなという気は若干していますが,そこも含めて,本当にそれでいいのかということは,是非御検討いただきたいというふうに思います。 ○山野目部会長 蓑毛幹事,どうぞお続けください。 ○蓑毛幹事 今脇村さんがおっしゃったことがよく理解できていないのですが,共有者の過半数でもって利用方法を改めて定めれば,昭和41年最判の結論とは違って,明け渡しを求めることができるということですか。 ○脇村関係官 まず前提として,あの最判の読み方だと思うんですけれども,ここで議論をしようとしている事後に定めをする場合のな議論ではなくて,まず事前に,例えば,この人が利用できますよと定めた後に,それを無視して違う人が住んでいたケースについて,その定めに基づいて明渡しを求めることができるかというのが問題になると思うんですけれども,恐らくあの最判自体は,そこについて,特定の考えを示したというよりは,そのケースは想定していない,定めていないケースだと思いますし,そうすると事後に定めをする場合も同じではないかと。   ただ,その読み方として,本当にそうなのかというのは,多分議論のあるところですので,部会資料としては,先ほども言いましたとおり,あの最判は約束をしていないケースですので,今回の議論は,約束し直すことをできますかねということを提案しているので,矛盾しないのではないかと記載をしているのですが,是非民法の先生方の御議論を伺わせていただきたいというふうに思っております。 ○山野目部会長 民法の先生方や,あるいは……では,蓑毛幹事,どうぞ。 ○蓑毛幹事 いやいや,民法の先生方でなく,私が発言するのも何ですが。昭和41年最判は,「少数持分権者は,自己の持分によって,共有物を使用収益する権原を有し,これに基づいて共有物を占有するものと認められる」と判示しています。だから,共有者の過半数で利用方法を定めても,明渡しを求めることはできないのではないでしょうか。ただし,その人は他の共有持分者の利用権限を害しているので,損害賠償等には応じなければならない。もしこれを抜本的に解決したいのであれば,共有物の分割請求を行うしかない。恐らく実務も,共有者の過半数で決めさえすれば明け渡しを求めることができるという前提で動いていないように思うものですから,申し上げた次第です。 ○佐久間幹事 実務的にはそういうふうに動いているんだろうなと思いながら,私はこの原案に賛成の立場から,ちょっと申し上げたいと思います。   ただ,その前に,この同意あるいは共有物の管理に関する行為について,例えば①から③までの三つが挙がっているのですが,これだけを解決することでいいのか,あるいは,少なくともこの三つだけは規定を置くのがいいのかはよく分からないということを申し上げた上で,私はこの方向がいいのではないかと思うということを,申し上げたいと思います。   今,御意見にございましたとおり,例えばですけれども,現在少数持分権者が占有をしている場合に,多数持分権者は過半数決定によって立退きを求めることができるかというと,恐らく一般的には,できない,あるいは少なくとも容易にはできない,正当な理由がないとできない,と考えられているのではないかと思うんです。   ただ,私が常々疑問に思っておりますのは,自分の持分に関しましては,確かに共有物全部の使用収益をすることはできるわけですけれども,他の共有者の持分に関しましては,これは適法な決定がなく行われているとすると,一種の不法占有なのではないかと思います。また,これは①,②に関わるんですけれども,一旦決定を得て適法に占有をしている場合も,例えば無償で使用しているときには,確かに適法に無償で使用しているわけですが,単独所有者が所有する物件について,無償で使用している人よりも厚い保護に値するという理由が,私には実は分かりません。   また,適正な対価を支払って使用しているという場合も,単独所有の物件でありますと,言わば賃貸借に当たる場合なのではないかと思うんですが,その場合に,賃借人に与えられる保護よりも更に一段厚い保護が与えられるということも,少数持分権者には自分の持分があるということによってどうして正当化されるのかというのが,私にはよく分からないんです。   そこで,その分からないということを前提とした私なりの整理によりますと,誰が占有使用するかに関する定めの変更自体は,全くパラレルに考えられるのかどうか分かりませんが,例えば単独所有者が占有者に明渡しを求める場合に,言わば,明渡しを求めようと決めることに当たるのではないかと思うんですね。   ただ,明渡しを求めることを決めて,権利を行使したとしても,相手方にその権利行使を妨げる正当な理由というか権原があれば,それは通らない。例えば,賃借人の保護の規定があるのであれば,それは通らないというのと同じことが,ここで問題になるのではないかと思うんです。   不法占有者であれば,占有を続けることのできる権原はないので,明け渡さなければならない。使用貸借の場合も,例えば使用貸借の目的が達せられているというようなことであると,解除の意思表示をされた場合には,明け渡さざるを得ないわけですから,それと同じ状態になるのではないか。これに対して,例えば建物賃貸借では,賃貸人は,正当な理由がないと,そもそも解除はできませんし,期間満了の場合も,正当な理由がないと更新を拒絶することができず,結局明渡しの請求はできないというようなことが借地借家法に定められています。共有の場合の少数持分権者の占有についても,こういった場合と同様の保護を与えればいいのではないかと,私は考えております。   その意味で,この①,②,③は,そもそも共有者が合理的に共有物を管理していくということだとすると,各共有者はどういう権利を持っているのか,どういう行動をその権利に基づいてとることができるのかということを整理する,その材料になるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   今の関連の御意見,御発言は,この時点で頂いておいた方がよいと感じますから,この関連で御意見がおありの方は,どうぞおっしゃってください。 ○中田委員 今の関連といいますか,全体の大きな話という趣旨で申し上げたいことがございます。現在の共有に関する規定は,分割して終了する共有を想定しているのだけれども,現実には存続するタイプの共有が多く存在している,それに関する規律を考えることが必要である,これは1980年代から,山田委員を始めとして指摘されてきたことです。今回の提案も,そういった方向のものかなというふうに考えております。それは存続型であり,その中では団体的な規律というものが重視されるようになってくる。佐久間幹事のイメージしておられるのも,そちらの方向なのかなと感じました。その方向で,今回のように検討していくことには異論がございませんですけれども,検討課題もやはり意識しておく必要があるだろうと思います。   3点申したいと思います。   一つは,従来の分割終了タイプの共有に関する規律をどうするのか。取り分け,共有物分割請求制度の改善を検討する必要はなかろうかということです。   それから,2番目に,存続タイプの共有,あるいは団体的規律が強く及ぶ共有を考えるときに,その対象をどうするのか。不動産だけなのか,動産にも及ぶのか,それとも準共有の規定を通じて,他の財産権にも及ぶのかということです。   それから,三つ目は,共有以外の制度との関係,あるいは他の制度に及ぼす影響をどう考えるのか。組合あるいは権利能力なき社団,入会財産などとの関係があります。   つまり,ここで問題となっているのは,所有者不明土地の問題への対応を超えて,共有制度全体をどのように理解するのかということが根本にあるんだと思います。ただいま,蓑毛幹事と佐久間幹事との間で若干の考え方の違いが浮かび上がってきたのは,多分このような根底的な問題を反映しているのかなと感じました。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。全休的な検討の取組に当たっての心構えを整理していただきました。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   第1の1のところに関しまして,実務の中で,実際にどうしているかというと,何が管理に関する事項に該当するか分からないので,とりあえず安全策で共有者全員の同意をもらっておこう,という場合も結構多くて,そういう観点からいいますと,全員の同意が必要でない場合について,特に検討していただける,というところは,非常に有り難いと思っております。   ただ,ここで挙げられている①から③の中の,特に③に関しまして,「共有物につき第三者に対して賃借権その他の使用を目的とする権利を設定すること」を過半数で決することができる,と明記していただけるのは,非常によいのかなと思う一方で,ただし書のところが気になります。これは,飽くまで短期賃貸借の期間の中でということで,下級審判例等も参照されて,こう書かれていると思うのですが,ここについては,共有物の機能に変更を生じさせないような使用であれば,期間にかかわらず,管理に関する事項と考えることもできるのではないかという意見が,既に幾つかの会社から出ております。   特に,昨年出された「所有者不明私道への対応ガイドライン」の中などでも,例えば電柱の設置であるとか,ガス管の敷設ですとかといった場合で,管理に関する事項として整理されているケースはございます。ここは書き方の問題でもあるとは思うのですが,民法第602条各号の定める期間の範囲内でやるべきというものもある一方で,そうでないものもあると思いますので,飽くまで共有物の機能に与える影響というところに着目して整理していただき,もし具体的に書かれるのであれば,そういった方向で検討していただくのがよろしいのかなと思っております。 ○山田委員 ちょっと複数のことを申し上げたいと思いますが,性格が異なるように思います。申し訳ありません。   まず,この第1の1に書かれていることの性格なんですが,第1パラグラフの最後の3行を見ますと,解釈を明確にすることや解釈を見直すことでどうかというふうに終わっているんですね。これは,法文には手を付けないで,解釈で対応しようということをここで,共同作業しようとおっしゃっているのか,それとも,解釈を明確にするために法文を新たに書きおろすと,解釈を見直す,見直した後のことを法文で新たに書き起こそうということも含んでいるのか。   見直すべきでない,明確にする必要がないならば,する必要ないんですが,明確にしたり見直したりしようとしたときには,法文で書くということも含まれているのかというのが,これはすみません,質問です。   付随して意見を言うと,やはりそれがないと,ここで議論しても仕方がないかなと思います。各界の主要な方々が集まっているところで,解釈をこれでいきましょうというふうにすれば,それなりに意味があるのかもしれませんが,余り多くの時間を掛けるものでもないし,本当にそうなるかどうかも分からないわけですので,そういうふうに思います。   質問がありまして,後半意見です。   それから,二つ目は,第1の1,あるいは,ここに限らないのかもしれませんが,民法の第2編物権,第3章所有権,第3節共有に置かれるものなのかどうか。これは別に,特別法で外出ししても構わないんですが,要するに,適用対象が共有全部なのか,それとも不動産なのか,土地なのかということで,どうもここは,共有全部で作られているなと思いました。   そうすると,混和とか,動産が混和して共有になったときにも使われる規定になるので,少し丁寧に考えないといけないなというふうに考えました。ですから,これは,事務当局が今これを作っているところでは,どういうふうにお考えなのかということです。   それから,最後は,ちょっと今までの質問とは違うのですが,例えば,第1の1の①,②,③のようなのを書き込んでいきますと,かなり詳細な規定を置いて規律しようという姿勢になってくると思うんです。そのときは,共有者全員があらかじめ合意をして定めを置くことで,これと異なる規律を,我々共有者ではこれでいこうというふうにしたときに,認められるのかどうかということについては,最後それは,書くかどうかというのは,またちょっと出口のところの問題があると思うのですが,しかし,どちらで考えるのかということです。   物権法ですから,強行法なので,当事者の合意は認めないという考え方は,現実にはないのかもしれませんが,非常に単純に考えると,その道が出てきてしまうんだと思うんですね。しかし,そうではなくて,当事者全員が合意をすれば,当事者間でルールを変えられるという考え方はあるように思います。そうすると,どの範囲で変えられるかということも問題になってくるかなと思います。   そのときに参考になるのが,建物区分所有法には規約で定められることというのがあって,建物区分所有法で書かれているルールを,一方向だったり双方向だったりするんだと思うんですが,あるいは項目によってですが,当事者ですよね,区分所有者が規約で定めることによって,変えることができるというのがありますので,現在の民法には,その点については何ら語られていないんですけれども,詳細な規定を今の時点で置くならば,置くほど,そこについてのさばきをどうするのかということは,やはり考えないといけないのではないかなというふうに思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   事務当局に補足説明をお願いしようと考えますが,山田委員から種々御心配を頂きました。   法制審議会は法律の解釈を確定する場所ではないということは,もとより御注意いただいたとおりでございまして,解釈を見直すことでどうかという記述は,解釈を統一しようということではなく,もしかしたら規定を設ける必要があるかもしれないという御議論をお願いするつもりでおりました。また後で事務当局からもおっしゃっていただきます。   それから,全般について,共有物という言葉を用いて今のところ,問題提起を差し上げていますけれども,議論の進み具合によっては,共有地の議論になるかもしれない,あるいは共有不動産の議論になるかもしれないという含みは常に持っております。補足説明で常にそのことをお断りしていなかった,若干不手際があるかもしれませんけれども,最終的に,ここでの御意見を集約して,規律上どう表現していくかということを究めていくということになるであろうと考えます。   それからあと,民法に規定を置くかどうか,249条以下に規定を置くかどうかという問題に関連して,置かれた規定の強行規定性という問題は,補足説明で欠けておりまして,御注意いただき,ありがとうございました。今後考えていかなければいけないであろうと考えますし,それは,ヒントを頂いた建物区分所有の状況との比較とか,中田委員の御発言にあった組合法理や組合の規定の適用関係などと交錯するところをどう考え込むかといったような御指摘とも関係してくるものと思います。   事務当局から補足説明をお願いいたします。 ○脇村関係官 繰り返しかもしれませんが,解釈自体,それは条文化も含めて,検討していただきたいという趣旨でございます。   また,対象につきましても,中には,不動産に限定しますかどうですかということを明確に書いているものもございますが,当局としては,現時点では,まずは不動産に限定しないことも含めて広目に提案をしておるところですが,当然今後の議論においては,内容によって絞り込んでいくということも想定しているところでございます。   最後の,先生おっしゃった強行規定どうするかという議論は,共有者間の特約の取扱いをどうするかという問題の一つではないかという気もしておりまして,また先生から,いろいろ教えていただきたいというふうに思っていますが,ここで部会資料,この資料を作る際に,一つだけ考えていましたのは,過半数で決めたことについて,過半数で変えるということは,規律としてあるとして,例えば,過半数で決められることも含めて,全員で決めたときに,正に全員で決めたときに,それを変更するのをどうするのか,あるいは,それをどう引き継ぐのかというのは,別途問題になるのかなとは思っていましたが,ちょっと特約の扱いをどうするかも含めて,また私どもで勉強したいと思います。 ○山野目部会長 山田委員,よろしゅうございましょうか。 ○山田委員 はい,結構です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○松尾幹事 今,部会資料3の第1の1「共有者の同意と共有物の管理に関する行為」の議論をしているわけですが,この後に出てくる第1の3「共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法」の方では,共有者の一部が不明であるとか,意思決定をしないというときに,不明共有者とか意思決定しない共有者がいても,管理に関する意思決定できるように,要件を緩和していく案が準備されていて,私は今問題になっている所有者不明とか,共有者の一部不明の問題に対する対応策としては,非常に重要な部分であると思っています。   他方,そちらの方で要件を緩和するということとのバランス上,第1の1の通常の共有のところで,さらに要件を緩和する必要がどこにあるかということは,しっかり見極めて,要件緩和の主たる対象を明確にしておく必要があるのではないかと思いました。   今議論に出ておりました,本来ならば多数決でできることについて,全員で合意したんだけれども,再び多数決でやろうというのは,これはやはり共有者間の合意の問題ですから,最初は全員合意の解釈として考えていくということで対応できると思います。   それから,ちょっと気になりますのは,部会資料3の2ページ(3)の「なお」から始まる段落の4行目で,現行法上全共有者の同意が必要とされている行為類型についても,持分の4分の3あるいは3分の2でできる類型も設ける余地がある旨の部分です。ここはちょっと問題なのではないかと思っておりまして,これが必要な場面はどういうことかということについて,ちょっと具体的な問題類型を念頭に置いて,検討してみた方がいいかなと思います。   この後論じることになる共有者の不明,あるいは意思決定しない共有者の問題について,どのように要件を緩和して所有者不明土地問題に対応するかについては,かなり突っ込んだ提案を頂いていると思いますので,そちらの方との関係について,確認しておく必要があるかなと思いました。   その際,通常の共有ルールについての見直しに関しては,部会資料3では管理,変更,保存を挙げていただいておりますけれども,そもそも共有の最初にある249条の使用について,重要な問題が残されたままになっているように思います。つまり共有者間でまだ何の合意もできていないときに共有者の1人が使い始め,私は持分権に基づいて,共有物全部について使用できるでしょうといったときに,その共有者に対し,他の共有者が,いったん元に戻して,どう使うかを決めてから使用しましょうねということを,いえるのかいえないのかということについて,曖昧な状態であります。しかし,この問題は,共有物の利用をめぐる共有者間の合意の意味に関する根本問題として,変更・管理・保存行為の場合とも関わってきます。それは引き続き,解釈に任せるということでいいのか,それとも通常の共有のルールにについても踏み込んで再検討するとすると,一番曖昧になっている部分についても何か提案すべきではないかということについて,ちょっと気になりましたので,発言させていただきました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   一番最後におっしゃった問題は,例えば,昭和31年最高裁判所判決の理解ないし,その機能範囲の問題についての検討を深めた上で,規律として表現するものを設けるか設けないかという議論に発展していくものであろうと考えます。その前に御指摘を頂いたことを含め,引き続き事務当局の方で受け止めさせていただきます。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   そうしましたら,第1の1に続きまして,第2の2でございますけれども,8ページで問題提起を差し上げている問題でありまして,現在の249条以下の法文には,協議という場面が出てまいりません。取り分け251条で,全ての共有者の同意を取り付ける,あるいは252条で,過半数で意思形成をするという場面への言及がございますけれども,それは何か,集会とか会議とかいうようなものを契機として用意するのか,そういうものを要求しなくてよいのかということについて,必ずしも明確でないという現状理解を踏まえ,問題提起を差し上げているところでございます。   この2の部分についての御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 協議を経ることを要しないことを明確にするということは賛成なんですが,協議を経ることを要しないということに対応するのが,過半数を有する者の意思に合致しているということなのかどうかが,ちょっとよく分かりません。つまり,意思の合致をそれ自体として,この案は提示しているのか,意思が合致しているということが表されているということを要求しているのか,私は何らかの形で表されていないといけないんだろうと思います。それが一つと,もう一つは,共有者全員について,自己の法律関係を全く自ら知ることのできない状況で決定されているということが,望ましいのかどうかということはあると思うんですね。   そうだとすると,協議あるいは話合いを経ることを求めるだけの利益ないし権利はない。だけれども,どのような決定がされるのか,あるいはされたのかでもいいかもしれませんが,それを知る利益ないし地位は保障すべきなのではないかと思います。 ○山野目部会長 全員が当事者になっている協議を法律行為としてするという契機を絶対的に要求するものではないという方向性を示しているところまでは,文意は明らかであると思いますが,過半数の人たちの複数の意思表示が,ただ同時に並んで存在していればいいのか,過半数の人たちの間の意思を結合させる何らかの容態,法律要件が存在するかという問題についての御疑問の提示,それから,それとは別な問題として,いずれにしても,過半数の人たちが決めたことを共有者全体に情報として行き渡らせる必要があるのではないかという問題提起も頂きました。   引き続き検討していく事項ですけれども,何か事務当局から補足説明がありますか。 ○脇村関係官 前半の方については,ちょっと法的な構成はあれなんですけれども,イメージしていたのは,過半数の人で集まって話をして書類を作るとか,何かの表示行為をイメージはしておりましたが,それをどう表現していいのかというのは難しい問題なんですが,そこはそういう意味で考えていました。   また,先生がおっしゃった最後の,次の問題として,教えてあげた方がいいのではないかという問題だと思うんですけれども,そこは議論としてあるんだろうと思っておりまして,ただここで書きたかったのは,まず,必ず協議が要るということまで言ってしまうと,正に,本当に動かなくなってきますので,そこは外した上で,なお,知る機会をどうするのかについては,効力とは直接関係ない方向で手当てするということも一つあるのかなとは思っていましたが,是非皆さんの御意見を頂ければというふうに思っております。 ○山野目部会長 佐久間幹事は,今のところ,よろしゅうございますか。 ○佐久間幹事 はい。 ○沖野委員 この点は,今のご提案のイメージとしては,過半数を1人で独占はしていないという想定で,何人か寄らないと意思決定ができないというようなイメージだと思うんですけれども,この規律だと,過半数を有する人が1人いれば,あとは100人いようが何人いようが,その人たちのことは何も気にする必要はないという形になるように思われます。それがいいのかという問題があるように思われます。協議や話合いというのは,同意を取ることまでは要らないけれども,意見表明をする機会であるとか,情報提供を受ける機会だとか,そういう意義があるわけで,そういうものが全くなくして決めるということでいいのかと。   確かに,所在不明の場合には同意は取れないではないかということであれば,それは所在不明の場合の特則を考えればいいのではないかと思われます。ただそこでも,協議というのが何を指しているのかということによるんですけれども,過半数さえ握っていれば,もうその人が考えることだけで全てを決めていける,この対象となる範囲,つまり過半数でいける分については,ですが。そういう規律を明確化すべきだということだとすると,他の人,過半数を握るに至らない人は分割請求でいくということで,分割でどんどん解消していくのが望ましいやり方なんだということになります。本当にそういうものを想定しているということであれば,それでいいようにも思われます。けれども,果たしてそう言っていいのかと,共有の一般の規律として,それでいいのかというのは,やはりためらわれると思っております。 ○山野目部会長 今,沖野委員から明快な問題提起,問題整理を頂いたと感じます。   これを受けて,御意見がおありの方は,今このタイミングでおっしゃってください。それ以外の点でも結構です。いかがでしょうか。   お話をかなり明快にしていただいたと感じますけれども,御意見がないのは,しかし難しい問いであるということでしょうか。 ○中田委員 思い付きなんですけれども,民法では,組合について,過半数決定と過半数同意とが区別された規律になっております。業務執行については670条で過半数決定で,組合代理については670条の2で過半数同意です。ただ,ここで過半数というのは,組合員の頭数の過半数であって,本日御提案いただいているのは,持分の価格に従った過半数ということですので,そこに組合とのずれが出ていると思います。   果たして,共有について,頭数ということではなくて,価格の過半数ということで,決定ではなくて同意でいい,協議なしでいいのかどうか。このようなことが,今の沖野委員の御提示された問題であるのかな,頭数ではなくて価格の過半数という点にも,検討すべき点があるのではないかと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   組合の規律と共有の規律は,頭数でいくか,割合的な一種の投票を考えるかという差異があって,そのことに留意する必要があるけれども,人々が討議し合うという契機,議事が行われるという契機も,それとして重要であるというふうに考えて,共有者間で議事と議決が行われるべきだという発想でいくか,持分の大きさによっては議事は要らなくて,議決が行われればそれで足りると考えるかという問題が,なるほど難しい問題でありまして,1回の会議で皆さんが同じ意見になるということではないかもしれませんけれども,今後の事務当局の整理に反映してまいりますから,この段階でお考えがあったら承っておきたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○山田委員 これに限らず,一般的な話になってしまうのですが,集団的に利益が帰属する,あるいは法的な効果,負担も帰属するという場合に,多数決で決められることは,いろいろなところに幾つもあります。しかし,そのときには,少数の反対者が意に沿わない結果になってしまうということは仕方がないとして,多数決でやってよいというルールが各所にあるんだと思います。   しかし,そのときには,全部探せばいろいろなのがあるかもしれませんが,最近そういう議論をするときには,やはり少数の反対者に対しては,ちょっといい言葉があるかどうか分かりませんが,コミュニケーションを取りましょうということが話題になります。それは多分,事前事後だと思うんですね。あるいは一方でもいいのかもしれませんが。それが別の文脈で語られると,手続保障という話になるのかなと思います。   したがって,どうもこの8ページの2の3行,共有者全員での協議(話合い)を経ることを要しないことを明確にすることについて,どう考えるか。いいか悪いかと,何か二者択一を迫られているような感じがするんですが,どうもやはり,イエス・オア・ノーでは答えられないのではないんでしょうか。やはり方向としては,この補足説明の中にある,他の共有者の中に所在不明等が不明である者がいれば決められない。この隘路(あいろ)は,やはり今回,時間を掛けて検討するわけですから,そこは乗り越えるべきなんだと思うんですね。   だけれども,乗り越える方策として,協議,話合いを経ることを要しないとし,それを明確にするというのではないんだろうなと思います。何かもう少し,ちょっと事務当局には,頭で汗をかいてもらわないといけないのではないかなと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   よい言葉かどうか分かりませんが,とおっしゃっていただきましたが,やはりコミュニケーションという言葉が良い言葉であろうと感じます。手続保障は,ちょっと堅いですよね。   事前及び事後のコミュニケーションか,あるいは事前又は事後のコミュニケーションか,しかし,いずれにしてもそれらについて軽々しく扱うという感覚で議論をすることはできないという観点の御提示を山田委員から頂きましたし,それから沖野委員の御発言で,仮にそこのところを引き続き重く考えていくということであったとしても,所有者不明土地問題などとの関係における政策的な課題の克服は,次の3の問題のところについて,しっかりした規律を仕込めば,それとして克服していくという余地もあるものであるから,そこにも留意する必要があるという御指摘を頂いたところであります。   2のところについては,今日はこの辺りまでの御議論を頂いておいて,整理をさせていただくことでよろしゅうございましょうか。ありがとうございます。   それでは,ここで,少しお疲れかもしれませんから,休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開します。   部会資料3「共有制度の見直し(1)」の第1の3のところについての御意見を承ります。 ○蓑毛幹事 第1の3のような同意取得の方法の制度を設けることについて,強く賛成します。   前回,メガ共有などというような言葉を申し上げましたが,所有者不明土地問題の本質は,所有者が分からないというだけではなくて,その後,調べた結果,非常に多数の共有者が存在することが判明する点にあります。このことは,実務的にも非常に問題になっております。   共有者が多数になっているために,共有物について関心がなく,管理方法について同意を求めようとしても,なかなか反応してくれない人が多いというケースもありますし,共有者の一部が所在不明,所有者不明の状況になっているものもあります。そういうことを踏まえますと,このような規律を設けることが適切だと思います。   ただし,1点,更に検討すべきだと思うことがあります。8ページの(注)に,「催告や公告についての公的機関の事前関与の要否につき」ということが書かれています。ここでいう公的機関の事前関与というのは,補足説明等を読む限り,催告や公告が適切になされているのか,また,そのことについて確答がされたのか,されていないかということを,公的機関で確認するという趣旨だと理解しました。   それを超えて,催告や公告の内容,どのような管理をするかという内容について,ある程度,裁判所等で審査をした方がいいのではないかという意見が日弁連内で出ています。   つまり,催告や公告をして,確答しない人については,権利保護というか手続保障はしているのだから,それでいいではないかという考え方がある一方で,特に変更又は処分について,潜在的には反対とか,変更又は処分によって不利益を被る人もいるということを考えると,催告や公告の内容に関し,必要性や相当性について裁判所で審査する,非訟手続になると思いますが,そのような手続を経た方がいいのではないかということについて,私自身はまだ今,確定的に見解を持っておりませんが,検討した方がいいのではないかと思っております。   管理行為については,そのような手続は要らないのではないかという考え方もありますが,管理行為についても,例えば,その管理の方法によっては,共有者に対して,一定額の管理費用を負担せよということになる,それが場合によると,金額が大きくなるということもありますので,管理行為についても,その必要性や相当性について,裁判所の許可を得るということを,今の時点でそうすべきだと申し上げるものではありませんが,検討した方がいいのではないかと思っています。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   3で提案していることについて,全般的な賛成を頂いたのと併せて,注記のところについて,更に考えてほしいという御意見,加えて,更にそれを発展させる形で,管理のことをおっしゃいました。   管理とおっしゃったのは,一般の言葉使いでいう共有物の管理のことだというふうに受け止めていいですよね。 ○蓑毛幹事 この3の提案ですが,③は共有物の変更又は処分についての定めであり,④が,共有物の管理についての定めと理解しました。特に③については,必要性や相当性について,裁判所の許可を得ることを検討してはいかがと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   おっしゃっていただいたことは,今のようなことですから,ここの3にも関係があります。取り分け注記との関係で,関連があるというふうに感じます。   それとともに,ただいま12ページの4まで説明を差し上げたところですが,実は13ページから後で,管理権者を裁判所が選解任し,あるいは共有物について,その管理に係る必要な処分を命ずることができるという規律の提案も差し上げているところでありまして,これらの審議とも関連させながら御議論いただくべき事項について,今,問題提起を頂いたと感じます。 ○今川委員 私も,先ほど蓑毛幹事がおっしゃったのと同意見です。同意取得の方法については賛成ですし,公的機関の関与は,やはり必要になってくると思います。   今,新しく規律を設けるわけですから,事後的に裁判所が最終的に判断する,紛争解決するというのではなくて,あらかじめ紛争を防止する仕組みが必要だと思いますし,管理の中にも一定の処分も入ってきますので,そういう場合には,やはり取引の安全の観点も必要だと思いますし,今,山野目先生がおっしゃったように,管理者の選任ということも絡んできますので,公的機関の関与は必要だと思っております。   それから,所在不明であるということの問題ですけれども,どういう作業をして所在不明とするのかというルールは,一定程度,はっきりさせておく必要があると思います。   我々実務家からしますと,特殊な場合は別として,所在を捜すというのは,そんなに苦痛ではないわけでして,例外はもちろんあるんですけれども,要はルールがきちんとしているかというところだろうと思います。   それから,催告,公告の方法ですけれども,登記簿上の名義人に対して,あるいは登記簿上の住所地に通知をするという選択肢も提示されておりますが,登記の重要性,それから登記情報を最新の情報に更新することの重要性を認識するという意味では,一つの方法だろうというふうには思います。   それから,将来において,戸籍情報や住民情報,住所情報と登記情報との連携が図られて,もしも職権で変更登記が入るというようになれば,それは当然にそうなるんであろうと思います。   ただ,一方で,今回,デジタル手続法案において,住民基本台帳法の一部改正の一環として,政令改正になると思うんですけれども,住民票の除票の保存期間を現行の5年から150年に延ばすということで,所有者の所在の探索に,かなり利便性が向上すると,こういう環境も整うわけですので,登記簿上の名義人でよしとするか,一定のルールを定めて,所在を探索するかどうかというところは,これから検討はしていくべきだと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ただいま衆議院の内閣委員会で審議されている途上の住民票の除票の扱いに関わる制度改革をにらんだ御指摘も頂きました。   蓑毛幹事から問題提起を頂いた8ページの3の注記のところでございますけれども,ここに注記を添えて問題提起を差し上げている趣旨は,ひとまず最小限は,この催告や公告などの手順が,何といったらいいでしょうか,最小限形式的な手順で,きちんと行われたかという事実の確認が必要だけれども,それですらあっても,単に私人が動いてやりましたというだけではなく,公的機関が関与した方がよいのではないかという意味合いを,少なくとも込めて差し上げています。   蓑毛幹事からは,更に発展させ,その催告や公告をその状況,あるいは時宜においてすることの適切性というような実質的判断も,場合によっては,してもらった方がよいという仕組み方もあるではないかというお話も頂いたところで,そちらの後ろの方のお話は,御案内差し上げたように,この後に,まだ説明を差し上げていない部分と関連させて議論していただく必要があります。   単なる事実の形式的確認であるならば,必ず裁判所にしてもらわなければいけないということでもないであろうと感じます。一種の公証事務であるということになりますから。その辺のところについては,この部会資料として,何か特段の方向を前提としてお願いしているものではなくて,皆様方に御議論いただきたいと望みます。議論をオープンにしておきたいという気持ちから,3のところの注記は差し当たり,裁判所ではなく,公的機関というふうに記しております。   13ページから後の話も関係ありますよ,というふうに,私,先ほど申し上げてしまいましたけれども,もう少し精密に言うと,その辺のところを見極めながら,御議論なさっていただく必要もあるであろうと感じます。 ○道垣内委員 後ろに関係するので,今発言すべきかどうか分からないんですが,公的機関の関与について,一言だけ申し上げます。   結論的に,どういうふうな法制度がいいというふうな,何か強い意見があるわけではないのですけれども,信託法を比較して少しお話ししたいと思います。大正時代にできました信託法におきましては,受託者が悩む場面においては,裁判所にいろいろ相談できる,指示を仰ぐことができる,というシステムになっていたわけです。それは,英米の信託法がそうなっているから,そうなっていたわけですが,それでも英米信託法と比較しますと,ごくわずかであり,平成19年に新信託法を作るというときに,裁判所にどんどん相談をしていく,これは権限ないかどうかというのをあらかじめ聞けるようにしようとか,いろいろ意見は出ました。しかし,裁判所から大反対が起きまして,どういったことを受託者がやれば,より適切に受益者が保護できるかなんていうことが,裁判所に,その都度その都度判断できるわけないではないかと主張されたのですね。私は,もっともな反論だと思っておりますが,そういった反対もあり,現行の信託法は,裁判所があらかじめ,事前の段階でいろいろなチェックを入れて,こうやったらいいのではないのというふうなことに対して,お墨付きを与えるという制度は原則的には存在しないこととなりました。   これについて,もちろん,それは不適切な立法だったという評価も十分あろうと思います。しかし,日本の法制度において,一つのコンシステンシーが必要であると考えたときに,信託法においては,個々具体的に何をすべきであるというふうな判断というのが,裁判所に委ねることはおよそ不可能であるという判断がなされ,他方で,共有のときには,裁判所にやってもらうといいのではないというふうに言って,みんな,そうだそうだというふうに言うのは,私は若干,どこかにおかしいところがあるのではないかという気がいたします。それでもそれを乗り越えてやろうというならば,もちろんそれで結構なのでして,したがって,私は結論として,何かを主張するわけではないというふうに申しましたが,日本法の中での,そういう一貫性,統一性というものも考慮に入れて,御議論いただければと,いただいた方がいいのではないかというふうに思います。 ○山野目部会長 よく分かりました。松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   この部会資料3の第1の3「共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法」につきましては,既に蓑毛幹事,それから岡田委員の方から御発言ございましたが,私も全面的に賛成したいと思います。   その上で,細かな点を3点ほど確認したいんですが,一つは,今回,意思表明をしない共有者とか,所在が不明な共有者の意見を考慮に入れなくてよい理由です。それを正当化する理由として,部会資料3の9ページの(2),(3)に書いていただいていることは,きちんと整理していただきたいというふうに思っております。つまりそういうふうに,共有持分権の効力を制限してよい理由が,(2)の方には,意思表明をしなかったり,不明な共有者の合理的意思に反するとは言えないのではないかということが書かれていて,(3)の方では,さらに,これらの者の権利を制約しないと共有物の利用が阻害されることから,それを防止する観点であることが記されています。   特に(3)は,やはり非常に重要な点なので,こういう形で共有持分権の効力を制約する根拠は何かということについては,きちんとその理由を整理して確認しておくことが肝要であろうと思いました。   その上で,細かな要件に関しての確認なんですが,部会資料3の8ページの3の②の中で,「他の共有者の所在が不明であること」という部分があるんですけれども,この中には,所在不明のほかに,そもそも共有者が誰か分からないという場面,例えば,共有者の1人について相続等が生じていて,共有者が分からないという場面も含まれるのかどうかということについて,要件を確認させていただきたいと思います。   後ほど,共有物自体が相続の対象財産だと,遺産共有ということは出てきますけれども,共有者の1人について,相続等が生じていて現在誰が共有者であるのか不明な場合は,ここに含めていいのかどうかということであります。   それから,もう1点は,先ほど岡田委員から発言がございましたけれども,確認の手続で,登記簿上の住所に催告等の書面を送付すればよいということですけれども,共有者の全部又は一部が不明の場合に,所有権あるいは共有持分権の効力を制約する類似の例として,土地収用法の場合の不明採決の場合がございます。この場合には,過失なくして知ることができないという要件があります。また,昨年成立しました所有者不明土地利用円滑化法の中では,特定所有者不明土地ということを判断するときに,相当な努力をしても分からないという規定を法律に置き,その意味については,非常に詳細な政省令,ガイドラインが出ておりますので,そういう場合とのバランスをも考慮した上で,この手続上の緩和ということが問題ないかということを確認したいと思いました。   不明所有者の探索のために過大な負担を課すと,やはり本末転倒になってしまいますので,そこはバランスを確認した上で,客観的に明確な,ここまで確認しておけばいいですよというルールにすべきではないかと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   松尾幹事から多岐にわたる御意見を頂きましたから,それらを踏まえ今後の整理を進めたいと考えます。   最後の方でおっしゃった,このゴシックで示してある文章の共有者の所在が不明であるということの意味は,御指摘等も踏まえて,これから更に深めていこうと考えます。恐らく,もちろん御指摘があった土地収用法の不明採決の局面であるとか,昨年成立した所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法などの,この局面を扱う規律の先輩に当たるところがありますけれども,どちらかというと,あの系統の法制を参考にしたというよりは,これは民事法上設けようとしている規律でございますから,不動産登記法の70条が,現在既に,登記義務者の所在が明らかでないという概念を用いており,あれと同じ発想で,ここに規律表現のサンプルをお出ししているものであろうと理解します。   そうであるとすると,所在が分からない場合のみではなく,一種のもちろん解釈から,所有者そのものが分からない場合も含まれると考えられますし,70条の運用の中で積み上げられてきたところを参考にしながら,過失なくして,というふうに正面から書くということにするかどうかを考え込みつつ立案をすることになりますが,仮に書き込まなかったとしても,もちろんその辺のところは運用の中で考慮されていくということになると想像されます。   今,松尾幹事から御指摘いただいたようなことに注意をしながら,今後,この種類の制度を採用するときの規律表現を考え込んでまいりたいと考えます。ありがとうございます。 ○佐久間幹事 今話題になっていることとちょっとずれるんですけれども,3の特に①に関しまして,先ほどの2と組み合わせるようなことは考えられないのかということを,ちょっと伺いたいところがございます。   それは,今3で話題になっているというか,焦点が当たっているのは,過半数を得たい,あるいは全員同意を得たいときに,不明の方がいる,あるいは答えない人がいるということで,その人たちを除いて過半数に,あるいは全員同意にするための手続ですよね。   ただ,例えば,2の場合,先ほど沖野委員が言われたことが気になっておりまして,共有者の1人が持分の上では過半数を握っていると。ただ,その場合も,1人では決定できないのではないかというふうなお話がありましたよね。私はできていいのではないかと思っておるんですけれども,ただ,そのときに,私自身が先に申し上げましたことでいうと,他の共有者について,自分の権利が知らないうちに動いてしまっているということはいいんだろうかと,先ほど申し上げたつもりなんですね。   これを前提といたしますと,例えば過半数を持っている人,あるいは,何人か合わせて過半数を超えている人たちが,過半数でもって決することができる事柄について決定したいというときに,何をもって決定することができ,その決定はどの時点から効力を生ずるのかということを考えた場合,まず,過半数で内部的には決めました,あるいは一人でどうするか決心したとします。そこで決められたことについては,他の人たちが幾ら反対したって,少数なのですから,どうしようもない。ただ,そのようなときであっても,過半数で決めることについては,①の相当な期間を定めて,他の共有者に,管理に関する行為について承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることは必要である。催告をして,承諾を得られたならいいんですが,承諾しないというのであっても,結局それでもって,過半数の決定というのはプロセスとして終わりました,その返事をもって効力を生じました。返事が来なければ,相当の期間を経過することによって,同じく決定,法的に効力を生ずる決定となりました。3の提案は,こういうふうにも使えるのではないかと思いました。   3そのものについては,全体としては賛成ですが,それと違う用い方をすることは,排除されているのかどうかということをちょっと伺いたいということです。同意を調達するために,要件を満たすためにしかこれは使えないのか,ほかの使い方もあるのかということです。 ○山野目部会長 お尋ねの仕方で,今御発言を頂きましたけれども,2と3の関係に関し,御指摘を頂いた2の問題を解決するために3の発想を,言わば移入して問題解決をしていくということは考えられているかということについて,法務省事務当局において,特段の前提とか,何か御案内したいという強いものを持っているものではなく,むしろ今,佐久間幹事に御提案いただいた発想をヒントとして受け止め,今後の議事の整理をしていくということになるものであろうと考えます。   あわせて,佐久間幹事に御礼を申し上げるとすれば,つまり,先ほどの2のところは,確かに山田委員に明快に整理していただいたように,コミュニケーションは要るか要らないかというふうに,大上段に短兵急に聞かれれば,なかなか要らないと,そんなものは蹴飛ばしてしまえとは,なかなか言いにくいですが,反面,実務なり事業の現場で,様々な悩みを抱えている方々から見れば,コミュニケーションは必ず要る,なおかつ,そのコミュニケーションは必ず重いものですというふうにされたのでは,この2のところの論点が重くなり過ぎて,お話が非常に進みにくいという問題にぶつかります。   理論的にこう考えられるという側面と,政策的な実効性の確保という面の両方を見て,非常に悩ましい状況になりますけれども,その隘路を打開していく際の一つの,唯一の方途ではないかもしれませんけれども,ありうるアイデアとして,2で考えられているコミュニケーションというものは,それとして重要であるが,しかし,そのコミュニケーションを確保するための様々な工夫として,3で御提示申し上げているようなものも今後組み込んでいくというようなことは考えられてよいという,佐久間幹事から今頂いたヒントは貴重なものでありますから,それも踏まえ,今後,事務当局において議事を整理することにさせていただきます。   佐久間幹事,ひとまずそのようなことでよろしゅうございましょうか。ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。 ○岡田委員 実務の観点からということで申し上げさせていただきますと,本日の前段の前半の議論にありました土地の所有権の放棄の要件のところで,隣接地との境界が特定されという要件が一つ,案として挙がっておりますけれども,このような場面におきましても,実際,隣接地の方と境界がはっきり決まらなくて,処分を諦めるというような場面もたくさんございます。実際にございます。そのような意味からも,このような方策が準備されることは,とても必要な措置だろうというふうには感じております。   境界の安定は,私どもにとってみれば,安心の根本というふうに考えて,日々業務をしておりますし,そのような観点からも,隣接地の,隣接の方の境界を確認するという行為が,このような形で,今現在は全員の同意をもらってきなさいというような場面もあったりもするので,是非こういう措置は必要ではないかなというふうにも感じております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ここでの議論に,もちろん関係することでありますが,改めて相隣関係を議論するときに,今の岡田委員がおっしゃっていただいた観点を再度強調して,御指摘いただければ有り難いです。   引き続き,3のところについて,いかがでしょうか。   ひとまずよろしいですか。 ○山田委員 質問です。どこかに書いてあるかもしれませんが,申し訳ありません,見付かりませんでした。   この3のところで,公告が出てきます。公告の方法としては,どんなことを具体的に考えていらっしゃるのか。今の段階で結構ですので,事務局のお持ちのものを御説明いただけませんでしょうか。 ○脇村関係官 今のところは,幅広く考えてはいまして,新聞なりインターネット,いろいろ考えているところなんですけれども,恐らく,公的機関が入るかどうかによっても変わってくるのかなという気がしておりますので,もし公的機関は入らずに,民間でやるんでしたら,新聞とかそういう普通の,会社とかでされているケースになると思いますが,ちょっとそこは併せて検討したいと思っていますが,どうしたらいい,先生,何か御意見いただければ。 ○山田委員 いわゆる官報,日刊新聞,電子公告という,それですか。 ○脇村関係官 そうですね,はい。ただ,公的機関を関与させるかかどうかで大分変わってくると思いますので,それも含めて検討させていただきたいというふうに思っております。 ○山田委員 分かりました。 ○山野目部会長 よろしいですか。   したがいまして,公的機関を関与させることにするかどうかという注記のところが,小さな文字で書いてありますけれども,この制度のイメージを作っていく上では重要な論点であって,引き続き検討しなければならないと感じます。   この3のところ,大変難しい議論ですが,今日の段階で御意見を承っておくことを頂いた上で,検討を続けようと考えますから,更なる御発言を頂きます。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。今まで御指摘いただいたところを踏まえて,では検討させていただきます。   続きまして,12ページの4のところ,共有物の管理に関する行為と損害の発生のところについて,御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。 ○脇村関係官 少し,資料作成の意図を少しだけ説明させていただきたいと思っていますが,先ほど蓑毛先生から,3の催告,公告の内容について,審査した方がいいのではないかという御意見を頂いたのとも関連するんですけれども,この4について,あえてこういった損害の填補に関する提案させていただいたかといいますと,公告を使ったケースについて,内容それ自体に,事前事後,特に事前に介入するのは難しいかもしれないけれども,他方で,それによってむちゃくちゃなことをされたケースについては,きちんと損害を填補するということが重要ではないかというふうに思っておりまして,この4につきましては,今でもある問題ですが,特にこの3についてのような,催告なり公告の手続を入れる場合には,重要な規律になってくるのではないかというふうに考えているところでございます。 ○蓑毛幹事 今,脇村さんからありましたので,私自身の意見を申し上げると,強く裁判所の許可の制度を作ってくれと申し上げているつもりはありませんので,ちょっとその点だけ補足しておきます。   そういうことも含めて,その先にある共有物の管理者のところもそうですし,例えば,その後の最後のところの売渡し請求のところの金額の妥当性のところであるとか,様々なところでいろいろな問題が出てきますので,そういったところについて,これは要るのではないか,要らないのではないかということをもう少し問題提起をした上で,皆で議論した上でということですので,現時点で私が,先ほどの3のところについて,全てのケースについて,裁判所の許可を求めるべきだと申し上げているつもりは全くありませんので,ちょっとその点を少し補足で申し上げておきます。 ○山野目部会長 蓑毛幹事の御意見は,大変よく理解することができました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。4のところでございます。 ○道垣内委員 よく分からないのですが,これ,誰が損害を填補するのですか。決定者ですか。決定に問題があったという場合にでしょうか。また,決定と因果関係がある場合なのでしょうか。私はシチュエーションがよく分からないままなのですが。 ○脇村関係官 すみません,そこがなかなかあれなんですけれども,先生がおっしゃっているとおり,当該行為をした共有者と同意をしている共有者が,ずれるケースがあろうかと思います。そういった意味で,どちらにもなのか,あるいは行為をした人だけなのかというのがあれなんですが,一応合意をしている以上は,責任を負うのかなという気もするんですが,すみません,是非御意見いただければというふうに思っています。 ○道垣内委員 いや,何というか,それは,例えば共有物の管理のときの善管注意義務違反なのでしょうか。つまり,例えば,1人だけ行方不明の人がいるから,その人については催告で同意を調達したとして,だけれども,そのときのその判断においては,善良な管理者の注意に反することはないとしても,責任を負うのでしょうか。行方不明のその人を抜きにしてやったということが根拠になってでしょうか。   何に基づいて責任を負っているのか,私にはよく分からないままなんですが。 ○山野目部会長 恐らくこの部会資料作成の意図は,先ほどの別な議題のときに出ましたように,法制審議会は別に法律の解釈について意見を述べる場所ではありませんから,放っておいても民法709条の要件が全て主張立証がかなうときに,立証した被害者が当該要件を充足した加害者に対して損害賠償請求をすることができることは当然でありまして,そのことをわざわざ規律表現として設けるとか,ここで御審議をお願いするとかいう必要はありません。   709条ではカバーできないような局面があり,それが,この前の1から3までの規律を設けたことによって生ずるとすれば,そのことについての付随的な法制上の措置として,必ずしも民法709条の要件を充足していなくても,金銭による補償といったらいいか賠償といっていいか悩む部分があるものですから,補填という言葉を用いていますけれども,そのようなことができるということを,もちろん解釈の提案ではなく,法制上の規律として,こういうものがあり得るのではないかということで,問題提起を差し上げています。   御案内はそこまでであって,そこから先のものを,何か事務当局として深く考え込んでお出ししているものではありませんから,委員,幹事におかれまして,そのようなきっかけでの議論ならば,こういう面でのこういうことは考える必要があるというような御示唆を多く頂くことがかなえば,これをまた事務当局で受け止め,整理してまいるということになりますから,何とぞお知恵を頂きたいというふうにお願いする次第でございます。 ○道垣内委員 それでは,質問しないで意見を述べますが,帰責根拠が不明であり,置くことに反対します。 ○大谷幹事 すみません,こちら,ここの部分が,やや分かりにくいところがあったかと思いますけれども,この部会に先立つ研究会の議論では,こういう形で催告をしたけれども答えなかったという人は,例えば不法行為的なことをされることについてまで同意をしたということになりませんかねという議論が元々あって,不法行為責任を問うことができないわけではありませんよということを確認した方がいいのではないかという議論が確かあったように思います。   道垣内委員の御意見を頂ければと思うんですが,不法行為責任を,これは問わないという意味ではありませんということ,それは当然だということでは,規律を置く必要はないということになるんでしょうし,そこのところがはっきりしないのであれば,明確にするということもあり得るということなのか,いかがでしょうかね。 ○道垣内委員 すみません,よろしいですか。   そうすると,書き方として,いろいろあり得るわけでありまして,つまり,1又は3の検討中の規律に従って,同意をするということは,当該行為の責任の免責の意思を含まないという書き方をするというのが一つであるのかなあ,いやおかしいな,やはり,提案者は,提案による責任なのですかね。いや,行為による責任なのですかね。   いずれにせよ,大谷さんがおっしゃったことは分かるんですが,4のような書き方にはならないのではないかなという気がいたします。申し訳ございません。 ○中田委員 今の大谷幹事の御説明で分からなくなってしまったんですけれども,3の③の規律は,催告又は公告をした共有者は,確答していない共有者以外の共有者全員の同意を得てとなっていますよね。確答しなかった人は,同意したとみなされるのか,それとも全体の中から排除されるのかというのは,私は,むしろ全体から排除されるのかなというふうに理解していたんですが,そういう理解ではないんですか。 ○大谷幹事 その御理解自体は,そのとおりでございます。排除されるということでございます。 ○中田委員 それはそれでいいんですね。 ○大谷幹事 はい。 ○中田委員 そうすると,明示的な同意をした人と,全体から排除された人と2段階あるわけですね。そのうち,明示的に同意をした人が責任を負うことになるとすると,その根拠は何かということが余りはっきりしないというのが道垣内委員の御指摘で,会社法において,決議に賛成した役員の責任というのもあるわけですが,それと同じようなものなのか違うのかとか,やはり誰が誰に対して,なぜ請求できるのかということを整理していただくとよろしいのではないかと思います。 ○脇村関係官 元々の議論というか,想定していましたのは,この共有者はそれぞれ,持分に応じて利用する権利を有しておりますので,その定め方によって,ある1人が,全く使えないですとか,そういったときに,何らかのそういう権利侵害的なものが発生したときについては,何らかのそういう責任を追及できてもいいのではないかということを考えておりました。   それはある意味,共有者間での権利侵害してはいけないという義務的な発想,共有者の持分をきちんと尊重しないといけないというか,そういったことの裏返しなのかもしれないなと思っていますが,それとの関係で,権利侵害について,何からの手当てをしないといけないかというのが,最初思っていたところです。   先ほど,その続きの話として,では権利侵害をしたとき,あるいは権利を尊重しないといけないということを尊重しなかったことについて,誰が責任を負うのかというのは,2通りあるのではないかと思っていまして,積極的に同意をして,そういった,ある意味権利侵害するような定めをして利用させたこと自体に求めるのか,やはり利用したこと,実際に利用していたとか,そういったことに求めるのか。その辺りはまだ,どうしていいのかがよく分からないところもあり,それは恐らく,そもそもそういう権利を侵害されたケースについて,どういった理由で責任を負うのかが,検討が不十分だったせいなんだろうと思いますので,また改めて検討していきたいと思っているところでございます。 ○道垣内委員 もう1点だけ言わせてください。   その大前提として,現存してというか,何といいますか,アクチュアルにというか,現実に同意をした人というのは,その結果として,自分が不利益を被っても,損害賠償請求権を有しないのではないかということがあるような気がするのですが,そこも本当にそうなのかという疑問も生じるのですね。   よく企業などで契約に基づいて一定の行為義務を負うというときについて,こんなことやっては駄目なのではないかと指摘しますと,いや,顧客の同意を取っていますから大丈夫なのです,と答えてくださいます。しかし,消費者,顧客が,そのような変更ないしは行為によって,どのような不利益を被るのかということが十分に理解できていないときに,いくら同意があるからといって,そのような不利益が生じることにつき悪意または有過失の大企業の方が,そういった変更ないし行為を提案して,それで同意を取りましたから責任ありませんと言われますと,そうはならないでしょうと,私はよく思うのです。   そうすると,共有の場面においても,提案をして,同意があったら,同意をした人は必ず責任は問えなくなるのかというと,それはそうではないわけであって,そこのところも考えないと,このようなみなし同意か,中田さんの話では,排除であるという話だったんですが,そういう人について,その人は責任を追及できますよというふうな規律を置くことの意味が変わってまいります。その点も気になるということを申し上げておきたいと思います。 ○蓑毛幹事 何か具体的な事例を想定しておっしゃっていただいた方が,分かりやすいのかなと思いました。   例えば,非常に価値のある土地があって,それが5人の共有になっています。そして,それを貸せば,年間1,000万円の賃料が得られる土地でした。ところが,共有者の1人が自分の近しい人に,ただ同然の金額で,この制度を使って貸してしまった。後になってから,所在不明だった人が現れて,本来は年間1,000万円取れるのだから,その5分の1の200万円分,自分が損害を被ったと主張した。例えばこういったようなケースですかね。   このケースで,そもそも所在不明だった人に200万円の損害があったと言えるのか,それを誰に請求できるのか,そのような管理をやろうと言った人が悪いのか,貸してもいいよと言って,明示で同意した人も責任を負うのか,そういった議論でしょうか。   例えば会社の取締役であれば,取締役の善管注意義務があるので,株主に対して責任を負うことはありますが,共有者にはどのような義務があるのでしょうか。共有者が管理方法について明示の同意をしたら,損害賠償請求を負うのか。なかなか難しい問題があると思います。あるいは,主体的に自分の近しい人に貸すということを言い出した人には責任があるのか,しかし言い出したということの法的な意味は何なのか。   この辺り,一体,何が損害なのか,何に基づいて共有者が責任を負うのかということは,もう少し具体的な事例を,ちょっと今思い付きで事例を申し上げましたけれども,そういったことを整理して議論した方がいいと思いました。感想だけですけれども。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   いえ,感想に尽きる話ではなく,正に民法の先生方から御指摘を頂きましたし,蓑毛幹事からは,具体的な局面として検討すべきものの一つの例を挙げていただきました。   御指摘よく分かりましたから,4のところは事務当局において,直ちに没にするという話にはならないかもしれませんけれども,皆様方に具体的に議論いただける局面を,次の議論の機会に部会資料において提示をさしあげ,それで御議論を引き続きお願いしたいと考えます。   4のところ,このようなことでよろしゅうございましょうか,今日のところは。 ○山田委員 もう一度検討してくるとおっしゃったので,それで結構です。楽しみにしています。 ○山野目部会長 分かりました。   今おっしゃっていただいた感触も,事務当局の方で受け止めてもらうことにいたします。ありがとうございました。   それでは次に,部会資料の13ページから後ろに即して,第1の残余の部分についての資料説明を差し上げます。 ○脇村関係官 では,御説明させていただきます。   5から7までは,共有者の,共有物の管理者について取り上げております。   5では,選任について取り上げており,(1)では,共有物を適切に管理したり,第三者に対する便宜を図る観点から,管理者の選任を義務とすることや裁判所による選任について取り上げております。   (2)では,共有者による管理者の選任の要件を取り上げております。   (3)では,裁判所による選任の要件等を取り上げており,特に,この裁判所の介入をどのような場合に認めるか,御検討いただければ幸いです。   (4)では,共有者による申立てによる選任を取り上げておりますが,その要件と併せて御検討いただければと思います。   6では,管理者の権限や義務,報酬について取り上げており,権限については,(注)にもありますが,裁判所が共有者全員の同意に代わる許可の裁判をすることや,共有持分喪失行為についての同意取得の方法など,併せて御検討いただければというふうに存じます。   7では,他に検討すべきということで,いろいろ書かせていただいておりますが,共有者以外の第三者を選任することができるのかといった管理者の資格や管理者の任期,管理者を置くことができる共有物を不動産に限定することや,辞任・解任,不動産に関して管理者を選任したことを不動産登記における登記事項とするのかや,管理者の法的性格などについて検討することが考えられるところでございます。   8につきましては,裁判所に必要な処分について取り上げております。今後検討がされる予定である不在者財産管理又は相続財産管理人が問題となる場面では,財産管理人の選任のほかに,裁判所が他の必要な処分を命ずることができるのかについて検討することを予定しており,共有物の管理においても同様に検討すると考えられますので,御意見いただければというふうに思います。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた中で,第1の5,共有物の管理者の選任等の部分について,まず御意見を承ります。 ○蓑毛幹事 共有物につきまして,以前から申し上げているとおり,極めて多数の共有者がいたり,所在不明の者がいたりする場合があります。このようなことを踏まえますと,共有物の管理者を選任して,適切に管理する仕組みを作ることは有益だと思いますので,この制度の創設に賛成します。   ただし,その先の議論,部会資料でもこの後にいろいろと書かれていますが,共有物の管理者がどのような権限を有し,どのような義務を負うかということについては,非常に難しい問題がありますので,共有物の管理者の制度を設けることを前提として,更に議論を深めるべきだと思います。   この5の提案について意見を述べますと,まず,共有者の管理者をどのようなときに選任することができるか,あるいは選任しなければならないかということについて,甲案は,全ての共有物について共有者は管理者を選任する義務を負う,乙案は,共有不動産について共有者は管理者を選任する義務を負うとなっている。丙案は,共有者は共有物の管理者を選任することができるとなっていて,義務ではないと,こういう立て付けになっていると理解しました。   この点に関しては,不動産に限るとしても,共有者は常に管理者を選任しなければならないとするのは無理があると思います。そこで,丙案に賛成します。   (3)の第三者の申立てによる選任ですが,これは,私ども弁護士が持っている問題意識を酌んでいただいたと思うのですが,例えば乙案のように,一定の要件を満たしたとき,すなわち共有者の数が多数に上る,共有者の中に所在等が不明な者がある,共有物が管理されておらず,害悪等が発生しているというときに,このような状況で,所在不明の者も含めて全ての共有者を相手にするのは非常に大変です。今回の配布資料にはありませんが,訴訟も含めて,そのような者を相手にするときには,実務的な観点からは,共有物に管理者を置いた上で,その管理者を相手に交渉したり訴訟を起こしたりできるようにすることは,非常に有益だと思います。そういう意味で,少なくとも一定の要件を満たしたときには,第三者の申立てにより,管理者を選任するということがよろしいのではないかと思います。   一方,今回の事務局の提案は,今私が申し上げたことと整合しないものになっていまして,甲案か乙案を前提とした場合に,第三者は裁判所に選任の申立てができるとなっています。ここを何とか解決できないかと思っております。   恐らく事務局で作成された意図としては,共有者が管理者を選任する義務があるからこそ,第三者は,管理者選任の申立てができるのであって,共有者に義務がない場合にまで,第三者が管理者の選任を申し立てることはできないという前提に立たれているのではないかと理解しました。そこを,何とかなりませんかねというところです。   具体的には,5の(1)で,丙案,つまり共有者は共有物の管理者の選任をすることができるということをベースとしつつ,(3)のアの乙案のように,一定の要件を満たす場合には,共有者は管理者を選任する義務があるという立て付けにした上で,そのような場合には,第三者も裁判所に選任の申立てができるというふうにしてはいかがというふうに思っております。 ○山野目部会長 純粋な丙案は,多分今でも解釈上できますね。しかし今,蓑毛幹事から,純粋な丙案に加え,更に内容を豊かなものにして,それと第三者申立てとの関係についても,発展的に議論してほしいという御提案がありました。ありがとうございます。 ○道垣内委員 また,日本法全休の話とのバランスの話なのですが,(1)の甲案,乙案というのは,突出しているのではないかと思います。また,(3)の裁判所への選任を求め得るというのも,日本法上,突出しているのではないかという気がします。   私は覚えていることが少ないので,覚えている範囲で信託法の話をしますと,信託において複数の受益者がいるという場合には,受益者の同意を得たりするのが面倒なんですね。また,複数の受益者みんなが信託の管理に関心を持っているわけではありません。そこで,信託法は,信託を設定する際に,受益者の保護のために受益者代理人を定めることができるという話になっています。しかし,定めなければならないということにはなっていません。   そして,定めなければならないという発想というのは,実は,相手にする人に有利に,あるいは,便利になるようにしようという発想なのですが,少なくとも,信託法では,建前上,そういう発想は採られていない。しかしながら,それに対して,信託行為,つまり信託契約を作るのは,みんな信託銀行であり,受託者としては,1人を相手にすると簡単だから,受益者代理人を信託行為で,自らが受託者になる信託行為で定めてしまおうとする。だから結局,信託法の建前としては,複数受益者の利益のための代理人だと書いてあるけれども,これは実は受託者の便宜のための制度になってしまっていて,建前の説明とずれているという批判もあります。強く批判されているのは佐久間さんですので,後で御意見を伺えればと思いますけれども,そして,その佐久間さんのおっしゃっていることの方が,実は本音だというふうにいうと,本件は非常に日本法上,一貫性を持った提案になっているんですね。でもそれは,言ってはいけない本音のはずです。受益者の便宜のためにこそ,受益者代理人がいるわけであって,だからこそ受益者代理人を置かなければならないのではなく,置けるという話になっているのではないかと思います。   関連しないかもしれませんが,若干続けて言いますと,複数の人がいるときに,全員一致が建前のときには代表を定めなければならないということには日本法上の原則としてはなっていません。例えば複数後見人,複数成年後見人の場合であっても,2人ともオーケーといった場合にだけ行為をするのが慎重でいいという考え方で後見人が複数にされている場合もあるわけです。それが合手的行動義務と呼ばれるものであり,慎重に,かつ,相互監視をしながら事務をすすめていくということですね。権利者がたくさんいるときに便利なように,意思決定を単純にすればいいのだという仕組みにも,日本法全体としてはなっていないと思うのです。   3番目といたしまして,実は管理者の権限というところに関連して,18ページの上から3行目ぐらいの③ですかね,4行目ですね。そこに,共有者の持分の価格の過半数の決定で管理者の権限を制限することができるものとすると書いてあるのですが,これがまたよく分かりません。つまり,(1)の方の甲案,乙案というのは,代理人を定めてスムーズに動くようにしなければいけない,管理者を定めて,スムーズに動くようにしなければいけないというふうに言っておきながら,他方では,権限としてすごい狭めてしまうと,それは達成できないわけですよね。   そうなると,そこにも,ポリシー上の矛盾ないし対立みたいなのがあるのではないかなという気がして,私としては,このままでは,そうたやすく賛成できないというふうに思っております。 ○佐久間幹事 私も甲案,乙案は反対でございまして,共有は飽くまで私人の権利関係であり,共有者が,共有物について,どのようにするかということを決めればいいことであり,その点で,所有者の自由と変わらないと思います。第三者に,たとえ決定方法とはいえ,どのようにして意思決定をしなさいとか,あるいは何か法律行為をせよと求めることができるとか,そういう権利があるとは,およそ思えないと考えております。   それに対し,例えば丙案については,先ほど山野目部会長が,現行法でもできるはずなんですよねとおっしゃり,私もそう思います。ただ,例えば管理人の権限について,6以下でしたっけ,デフォルトルールとして,こういう権限を認めるんですというようなことを定めることは,いろいろな場面で役立つのではないかと思います。そこで,例えば,共有物の管理人を選任することができるというようなこと,あるいは,この丙案を置いて,その管理人の権限をデフォルトルールとして法定するということは,あってもいいのかなと思っております。   あともう1点,第三者の申立てによる選任については,この①,②,③が,アンドなのかオアなのかちょっと分からないですが,アンドで結ばれているとしましても,例えば共有者が多数に上る場合であって,その中に所在不明の者があったとしても,先ほどの3でしたっけ,同意取得の方法をかませれば,現に所在を把握している共有者に接触して,その人に所在不明の人との関係をちゃんと調整してくださいということを働き掛け,働き掛けに応じてくれるならば決定を調達することができるし,動いてくれなかったら諦めるしかないということではないか,と思っております。   ③の共有物が管理されておらず,害悪等が発生しているというのは,要するに第三者が迷惑を被っているということなんだろうと思いますが,その場合に,妨害予防請求とか妨害排除請求をするときは,共有者の1人を捕まえて請求することはできないんですかね。私は可能なのではないかと思うんですが。   できないのであれば,それが容易になる方法を考える必要はあるのかなとは思わないわけではないですが,できるのであれば,この③の場合に,共有者間で意思決定をしてもらう必要はないので,管理者をそれに代わるものとして置くということは,必要性が乏しくなるのではないかと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   少し前の蓑毛幹事と私とのやり取りで,丙案は現行法でもできるでしょう,というふうに申した趣旨は,できるから丙案は要らないのではないかと申し上げる意味ではなく,今,佐久間幹事におっしゃっていただいたように,丙案の規律のみを置くということで話が終わるのではなく,これを置くと,その管理者の標準的な権限のありようについての規律を置く前提が整ったり,あるいは第三者申立ての規律を関連させて置く可能性が開かれたり,さらには,不動産登記法を改正して,土地建物については管理者を登記するということが自然に法制上成り立つといったようなことがあり得ますから,蓑毛幹事からも御指摘がありましたが,引き続き議論する価値があるだろうということで申し上げました。趣旨を明瞭にしていただいて,ありがとうございました。   その他,佐久間幹事からは,第三者申立てを認める場合について,(3)アの乙案のところにある①,②,③の論理的関係や,それぞれの性格についての評価についても,注意すべき点がそれぞれあるという御指摘を頂きました。   引き続き御意見を頂きます。藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   今の共有物の管理者のところですけれども,企業の実務サイドからは,やはり,かなり評判がいいというか,特に,共有者が多くてなかなか話が進まないときに,第三者が申立て等で管理人を選任できるという制度のメリットは大きいのではないか,という意見はかなり出ております。   (1)の原則に関しても,これはちょっと意見が分かれているのですが,甲案,乙案でもいいではないかという考え方も当然ございます。ただ,一方で,法律的な話を離れると,共有者に共有物の管理者の選任を義務付けた場合に,本当に熱心にやる人が管理者になってくれれば良いのですが,そうでなかった場合には,管理者にならなかった他の共有者は当然共有物への関心がなくなりますし,管理者自身も余り関心ないということになって,ますます管理が行き届かなくなるのではないかという懸念も若干出ているところです。したがって,ここは,甲案,乙案のように常に管理者の選任を義務付ける,というよりは,本当に必要なときに,選任ができるような制度の方がいいのではないか,というのは,今,感覚的には思っているところでございますが,現時点では,両方の意見があるということを申し上げておきたいと思います。   あと,今の話の関連で,管理者を選任する際の話は,ここに出ておるんですが,例えば解任するときはどうするのかとか,そういったところの話も,セットで議論する必要があるのではないか,と思うところです。 ○今川委員 私も,共有物の処分や管理を促進するという観点からすると,この管理権者を選任するというのは非常に有益と思います。特に,第三者が共有物に対して何らかの行為をしたいというときに,数が非常に多いと,一人一人と交渉しなければなりませんけれども,やはり管理者がいると,それはスムーズに進む。実際の取引を促進するという意味からは,管理者を置くということは非常に有益と思います。   それで,裁判所に選任の申立てをするということも,やはりあった方がいいように思われます。そうしないと,結局,管理者を置くことができるといっても,置かれない場合が多くなってしまいますので,申立てができた方がいいと思います。   ただ,その場合には,申立ての前に,(注2)ですかね,14ページの(注2)ですけれども,選任の機会を与えるためにも,催告をするということが必要と思います。   それから,先ほど放棄のところで出ていました,放棄の前段として,マッチングですね,利用,あるいは,それを所有したいという人たちがいる場合に,その共有物に対してアプローチをするというときに,利害関係人の範囲,管理人,管理者を選任する利害関係人の範囲は,なるたけ広い方がいいとは思われます。   そうすると,13ページの(注1)ですけれども,購入を希望している人,普通は利害関係人を考えるときに,購入を希望している人となると,結局全て,誰でも認めていいということになってしまうので,余りこれは,抑制的に考えるのが普通なんですけれども,先ほど申し上げましたように,選任を催告すると,そうした上で申立てをしていくというふうに作り込みをすれば,逆に申立てをする人を広く認めていくということは,今回,特に共有物の管理・処分をスピーディーに,スムーズにやれるようにという観点からは,非常に有益と思います。 ○山野目部会長 道垣内委員,次,佐久間幹事の順でお願いします。 ○道垣内委員 私には全く理解できません。というのは,例えば,非常にたくさんの人が共有していてもいいし,10人でもいいのですけれども,そのとき現存している人との間の交渉がうまくいかないといって,管理者の選任を申し立てる。しかし,大体みんな合意していて,しかし,所在不明の人もいるというときには,以前検討しました催告の手続によって合意を取るために共有者側が行動すればすむのですね。   それを,処分を受けようとする,させようとする側が処分をスムーズに進めるためには管理者がいた方がいいという話は,所在がはっきりしており,同意をしている人たちですら,催告手続といった強制手段を採ろうとしていないときに,「いや,絶対処分した方がいいよ」と言って,勝手に管理者を選任して,それで,その管理者1人と交渉して,よし,処分しようというわけでして,そんなむちゃくちゃな制度はありませんよ,日本法上。 ○山野目部会長 今川委員に何か御発言があったら,また伺いますけれども,まず順番として,佐久間幹事,お願いします。 ○佐久間幹事 もうちょっと上品に言おうと思うんですけれども,同じようなことを。   今道垣内委員がおっしゃったようなシチュエーションで,管理人を選んだとしますよね。この管理人は,一体どういう決定をできるんだろうかというのが分かりません。管理人は善管注意義務を負うわけですよね。その善管注意義務の内容として恐らく欠くことができないものとして,所有者の意思を尊重する,共有者の意思を尊重するというのがあると思うんですね。   その場合に,道垣内委員がおっしゃったようなシチュエーションで管理人が選ばれました。その人と交渉して,管理人が,「いいです。売却しましょう。」といえば問題なく売却できるのかというと,それは単なる義務違反だから,法的には有効だということになるのかもしれませんけれども,当事者の合意をきちんと調達できない状況で管理人を選んだって,管理人は実際上動きようがないのではないかというふうにも思います。   それで,結局,先ほど私の名前を出していただいたのに,コメントしないでおこうと思ったんですけれども,受益者代理人の話と,やはり全く一緒だと思うんですね。都合のいい人をとにかく立てさせて,取引をしようというんだとすると,当該物件について全くまだ権利を持っていない人が,自分が取得したいから,あるいは都合のよいような取引の内容にしたいからということで,そのように動いてくれるかもしれない可能性のある人を相手方のほうに立てさせようというわけですから。余り上品に言えていないかもしれませんけれども,やはり反対です。 ○山野目部会長 十分に上品であったと感じます。   今川委員,何かおありですか。 ○今川委員 後で出てくると思いますが,私は処分行為をする場合には,裁判所の許可が要るというような立て付けになるんだろうなと思っていましたので,そういうのを前提として意見を申し上げておりますし,どうしても意見が分かれている場合には,最終的には共有物分割請求をされるんだろうとは思いますし,それと,単に数が多いというだけではなくて,不在者がいるというような場合には,有益なのかなとは思っております。 ○山野目部会長 ただいま,(3)裁判所による選任の要件等の中のア,第三者の申立てによる選任をめぐって,委員,幹事の間で,かなり熱い議論が交わされております。どの御指摘も傾聴に値することではないかと感じます。   次のページのイにある,共有者が裁判所に対して選任を申し立てるというお話のところについても,委員,幹事にもし御意見があったら,伺っておきたいとも考えます。   それから,そのほか,(1),(2)などについても,まだ仰せでない意見があったらおっしゃってください。いかがでしょうか。 ○山田委員 促された点ではなくて,5全体について申し上げたいと思います。     共有物の管理者という制度は,共有に関する管理の行き届かない状況がある場合に,そのレベルを上げていくための法制度として,たくさんのことが検討されているんですが,私は,唯一ではないにしても,重要な役割を果たすべきものだと思いますので,これについては時間を掛けて,知恵を集めて,いい制度を作っていくべきだと思います。そして,この制度は作るべきだと思います。   そして,共有者でなくてもいいが一つ目ですね。   それから,二つ目は,(1)については丙案が適当だと思います。なぜならば,共有であるだけを理由に管理者を選任しなければならない,あるいは,不動産に限ったとしても,管理者を選任しなければならないというのは,過大な負担だろうと思います。   確かに,(3)のアの乙案に書いてあるような事例を見ると,不動産については,選任しなければならない事情があるかもしれないというのは,そう思います。しかし,家族が2人で,これ夫婦でもいいですし,親子でもいいですし,兄弟でもいいです。不動産を購入したら,共有になることが多いと思います。そのときに,管理者を選ばなければならないと民法に定められているから,管理者を選びましょうと。選ぶコストは低いかもしれませんが,ちょっと制度として過大だと思います。そうしますと,丙案で管理者を選任することができると,これだろうと思います。   そして,先の方に関連するんですが,そのときに重要だと思われますのは,共有者全員を管理者が代理すると,代理権があると,その範囲は全部ではなくてもいいと思います。ちょっと,処分・変更に係ることはできないというのはあり得ると思いますが,できるとするのが,一つポイントだと思います。   そして,代理とともにですかね,あるいは含まれるのかもしれませんが,裁判上の訴訟遂行が共有者全員のために,原告としても被告としてもできるということを明確なルールとして置くことというのが,この(1)の丙案を採ることにおいて,重要な意味を持つと思います。   そして,(2)ですが,管理者の選任の要件を過半数で決することを積極的に検討すると良いと思います。ここ,全員の同意で決することができるならば,作るまでもないのかもしれませんが,過半数で管理者を選任できるとすると。随分状況は変わるのではないかなと思います。   第三者による申し立てによる裁判所の選任は,あった方がいいんだろうと思うんですが,ちょっと理屈をどう付けるかというところは,御発言が出ているように難しいなと思います。しかし,信託がちょっと例になっているので,信託を例にすることの意味がよく分からないところもあるんですが,私も信託を例にすると,受託者がいなくなって,新しい受託者を選任するときに,必要がある場合はですが,裁判所が選任するという規定があります。申立ては利害関係人がすることができるというものです。そのようなものも参考になると思います。   ですから,そういう考え方はあり得るかなという感じがしますが,信託は,一旦出来上がった信託で,受託者がいなくなって,みんな困っているという状況があるんですが,共有は,管理者がいなくて困っているという状況は,信託の受託者がいなくて困っているというのに比べると,大分小さいかなと,法的な意味で,小さいかなと思われますので,ちょっと,第三者の申立てによる選任のところは意見を持ちません。 ○山野目部会長 イのところは,いかがでしょうか。 ○山田委員 イのところもですね……しかし,(2)の②があれば,いけるのではないかなという気もします。 ○山野目部会長 共有者による裁判所への選任の申立ては,第三者申立てとは状況が異なり,共有者が裁判所に申し立てることはありうるというお話ですね。 ○山田委員 ええ,共有者による選任は,丙案でもあり得ると思うのですが,そして,アのところの弊害が随分小さくなると思います。しかしそれは,(2)の②ですかね,②でいけることもあり。そこまで,裁判所の選任を作ること,そのことに私は反対ではないんですが,抵抗が大きいのであれば,代替策はこの中には用意されているなと思います。 ○山野目部会長 どうもありがとうございました。   山田委員から幾つか有益な御注意を頂きました。管理者を仮に制度として設けるときに,管理者は共有者である必要はないということは,それをきちんと補足説明に書いてありませんでしたが,資料作成の意図は当然にそうです。御注意いただきまして,ありがとうございました。   それから,第三者申立ての適否については,今日種々の御指摘がありましたから,引き続き検討していかなければなりません。参考までに御案内しますと,現在国会においては,表題部所有者の記録が変則的な状態になっている状態を是正するための個別法の審議が予定されていますが,その法律の案の後ろの方に,管理者を選任することができるという制度があって,あれは信託法の受託者が不在であったというケースの規律を参考として,こちらの方に可能な範囲で参考にしようというものが,法制的な説明です。今,くしくも山田委員から,いろいろ議論を続けていくに当たっては参考にしてくださいという御指摘を頂きました。   この5の点について,引き続き御意見を頂きます。いかがでしょうか。中村委員,どうぞ。 ○中村委員 ありがとうございます。   私自身は,丙案プラスアルファといった辺りが妥当かなと思っているのですけれども,問題は,その場合に,管理者を選ばなければならなくなるような事態というのは,共有者間で利害が反しているような場合,又は共有者がたくさんいてなかなかコミュニケーションができないような場合とか,そもそも共有者がどこにいるか分からないといった難しい事案になろうかと思います。   ここの13ページの(2)の管理者の選任の要件との関係が問題になってくると思うのですが,その場合に,過半数で管理者を選べるということにしますと,過半数で押し切られて,自分が信頼していない,又は管理を委ねるつもりがない人が管理者になるという事態になり得るわけですね。   部会資料の後の方を拝見しますと,管理者の権限と義務という辺りでは,委任に関する規定を参考に,権利義務を考えるような想定になっているかと思うのですけれども,委任というのは信頼関係のある人に対して,ある法律行為を委ねる,又は準委任であれば,ある法律行為以外のことを委ねるということになりますが,信頼関係を基にする委任に準じて,例えば善管注意義務の中身を同じように考えることができるのかとか,管理者の権限を同じように考えても大丈夫なのかというところを,もう少し踏み込む必要があるかと思います。   つまり,まず過半数で管理人,管理者を決定することができるとしていいのか,要件が軽過ぎはしないかというのが一つと,その場合に,権利義務の範囲をどのように考えるのかということです。   後に検討するとされていますけれども,管理者の訴訟上の権限をどうするのかという問題もあって,共有をめぐる訴訟に関しては,ものすごく難しい問題がある中で,管理者が訴訟追行できるということになってしまうのか。その場合,従来,固有必要的共同訴訟であることが要求されてきたものが,たまたま過半数で選ばれた管理者にできてしまうというようなことになりはしないかとか,大変難しい問題があると思いますので,ここは,丁寧に区分けをして御提案いただければ有り難いと思います。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。   ほかに,5のところはいかがでしょうか。よろしいですか。   5について,有意義な御議論を頂きました。5の(1)は,甲案,乙案,丙案の中,比較的丙案に言及していただいた委員,幹事が多かったように思います。   甲案というものは,これはもう,ほぼ考えにくいですね。どう考えても,共有物一般で管理者を選任しなくてはいけないという,これが規律として成り立つチャンスというものは,ほとんど埒外であるだと感じますけれども,事務当局で引き続きお考えください。   それから,(2)について,幾つか御指摘いただいた点を更に深めていきます。   (3)は,アのところについて,たくさんの御指摘がありました。あわせて,イについても御意見を頂いたところであります。これらの全般について,検討を深めてまいりたいと考えます。委員,幹事の皆様方には,御意見を頂きまして,ありがとうございました。   続きまして,6,共有物の管理者の権限等にまいりますが,今,中村委員のお話に少し,それについての問題提起が含まれていたところであります。   改めて,6のところについて,委員,幹事の皆さんの御意見を頂きます。   6のところで,権限,それから義務,報酬などについての話題を提供しておりますけれども,いかがでしょうか。   (2)と(3)は,多分このようなことであろうと考えられますが,そこについても御意見を頂きたいですし,取り分け(1)の権限のところについては,この機会に御意見があれば承っておきたいと考えます。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 共有物の管理者の権限に関しては,先ほど中村先生がおっしゃったように,全員一致でなく選ばれる,つまり反対者がいる訳です。こういう状況で,管理者は何ができるのかということを考えなければいけません。特に今,私どもの方で関心があるのは,仮に,訴訟の遂行権限を共有物の管理者が持つとすると,影響が大きいので,よく考えなければいけないと思っていまして,そこと併せて全体的に考えないといけない。共有物の管理者の権限を,今回の部会資料の範囲だけで考えるのは難しいと思っています。   その上でですが,共有物の管理者が,反対者もいる中で選任されていることからすれば,基本的には,17ページの(1)①にあるように,共有物の変更又は処分をするには,共有者全員の同意を得なければならない,ということにすべきと思います。次に,その際の同意取得の方法は,18ページの②にあるように,第1の3の方法も使えるよと。これもいいと思います。共有物の管理者の選任に反対した人であっても,変更・処分について聞かれたときに確答しなかったのだったら,その人は定足数から除くということでもいいと思います。   では,共有物の管理方法を変えるときはどうなるのか。今回の提案は,一旦過半数で選ばれてしまえば,共有物の管理者は,管理行為に関する限りは,③の制限がない限り,オールマイティーということのようです。共有物の管理者は,善管注意義務を負うので,変な管理はしないだろうということが前提なのでしょうが,しかし,それでいいのかという問題意識を持っています。とはいうものの,管理方法を一々変える度に,また全て同意を取り直しということになると,それも無理でしょうから,このような提案に落ち着くのかなと思っているのですが,管理者の権限については,訴訟も含めて,全体を見た上で,バランスをとって,何度も申し上げているように,管理者の選任に反対者がいることも考慮して,考えなければいけないと思っています。 ○中田委員 ちょっと御質問なんですけれども,先ほどの今川委員の御発言とも関係するんですが,管理者が置かれた場合であっても,共有物分割請求というのは依然として可能だという理解でよろしいでしょうか。   それから,もう一つ,共有物分割請求について,合理化するような方策は,今後御検討の御予定はおありでしょうか。 ○脇村関係官 まず前半につきましては,作成したときの意図としては,共有物分割,当然できる,共有物分割できる前提で考えていました。その上で,緊急性あるときにどうするか,管理者が変に動いているときに止めるかというのは,保全的な手法も含めて検討していくんだろうなとは思っておりました。   もう1つの方は。 ○中田委員 分割請求手続が,現在なかなか機能しにくいところを是正することを検討するかどうか。 ○脇村関係官 ありがとうございます。次回の,次の部会資料には,共有物分割を取り上げようと思っていまして,そこでいい知恵が出せるといいんですけれども,どこまでの案が出せるのか,今検討中ですが,項目としては取り上げる予定にしています。そこで皆様に,是非御意見を頂きたいとは思っているところです。 ○山野目部会長 中田委員に1番目の御質問いただいたとおり,管理者が選任されていても,共有物分割請求の手順に何らさわりになるものではないということが資料作成の意図であるということの紹介をしてもらいました。   明言がありませんでしたけれども,共有物分割請求訴訟が固有必要的共同訴訟であるということにも特段影響はなくて,管理者がいるから,別に管理者だけ相手にすると分割ができるということにはならないという前提で資料を作っているものであろうと思いますが,引き続き御意見を頂いていきたいと考えます。   それから,後半のところでありますけれども,実は,今日は「共有制度(1)」という部会資料をお示ししていますが,「共有制度(2)」というものを次回以降にお諮りしていこうと考えておりまして,中田委員の少し前の御発言で問題提起を頂き,今も問題提起いただいた共有物分割の在り方についての改善点はないかという課題,それから,共有と訴訟の関係の問題,さらに,共有物に係る時効取得の要件の見直しという難問ばかりあります。   今日の段階で,これだけの議論があって,次回,これよりも難度が上がりますから,ご負担をお願いしますけれども,そのように調査審議を続けてお願いしようというふうに考えているところでございます。   引き続き,いかがでしょうか。   それでは,権限のところは,蓑毛幹事から,ひとまずはこれを見ておいたけれども,まだまだ全体で見なければいけないという御指摘があったとおりだというふうに感じますから,御議論いただいたところを踏まえ検討を続けてまいるということにいたします。   続けて,20ページの7,管理者につき検討すべき事項,そのほかにないかという問題提起がありますが,これだけ尋ねられても,やや御議論がしにくいかもしれません。あわせて,第1の8まで,最後の8まで御検討をお願いし,21ページの8の裁判所による必要な処分,これらについて,本日段階で御指摘いただけることを承っておきます。   ここもやはり最初に御議論いただいた管理者の制度の基本像のところについて,更に議論を深めていかないと,そこから派生し,発展した論点である7や8のところは,議論がしにくいという感触をお持ちの方が多くいらっしゃると想像しますし,それはごもっともなことであるであろうと感じます。本日段階で頂く御意見で結構ですから,承っておきたいと考えます。いかがでしょうか。 ○岡田委員 管理者を選任された場合に,20ページのところにありますけれども,不動産に関して,管理者を選任したことを不動産登記における登記事項にするのかについても,検討が必要ということでございますけれども,私どもの立場から発言させていただけるとすれば,交渉等と書いてございますけれども,お隣の方に会うために,めくらめっぽう,山の共有者20人に当たるよりは,とても有り難いと思います。管理者がいていただけると。   それを登記簿によって公示することを前提というか,必要,検討しましょうということでございますけれども,登記簿のこれ,甲区欄なのか表題部なのかというところまで,今のところの感触でいいんですけれども,教えていただけるかなと思いますが,いかがでしょうか。 ○脇村関係官 すみません,まだそこまで考えていないですが,恐らく,管理者の権限ですとか,そこに書いています,登記の効力をどうするかによって,どちらか変わってくると思いますので,それを踏まえて検討していきたいと思っております。 ○山野目部会長 こちらの事務当局の席では何か,多分,表題部ではないかとかという声というか呟きが聞こえますけれども,実は準共有の民法の規定の適用関係について,特段の規律を設けなければ,権利部乙区に記録されている権利についても,準共有の場合に管理者の規定が働くものですから,例えば休眠抵当権の処理などで困る場面の抵当権の登記名義人について,準共有をする者が多数に上るような事例において,管理者を選任して問題処理を進めるというような用いられ方をすることもあり得るものです。そうすると,必ずしも表題部に記録するという話にはならないかもしれません。これは技術的な問題ですから,こちらで引き続き検討するということにいたします。   引き続き,いかがでしょうか。   道垣内委員,次,今川委員,お願いします。 ○道垣内委員 登記事項とするということの意味なのですが,登記をしなかったらどうなるんですか。その人は管理者としては行動できない。あるいは,そうではない人が名前を書いてあったら,表見代理が当然に成立するのでしょうか。いや,おかしいですよ,これ。それは登記事項にはならないと思いますよ。 ○山野目部会長 道垣内委員の御意見をおっしゃってください。 ○道垣内委員 登記事項にすべきではありません。 ○山野目部会長 現行法の規律で,登記上記録をしていて,それについて,しなかったときどうなるかというような議論が起こる場所というものは,既存法制にいくつかあるわけでございますから,それらとのにらみで,また,今の御指摘も踏まえた上で関係法律整備において検討していくということになるでしょうか。 ○今川委員 先ほどの議論に絡むのかもしれません。第三者が管理者の選任申立てができるかどうかというのは,皆さんいろいろな意見があるというのは分かったんですが,管理者を置いたとして,共有者全員の同意によって処分権限を与えることができるということについては,多分御異論はないんだろうと思うんですけれども,そのとき,取引の安全の観点からですと,第三者にそれを,どのようにして証明していくのかと。同意があったということを何らかの形で示せばいいということにはなるんでしょうけれども,取引に入る第三者からすると,やはり,例えば公正証書により証明しないといけないとか,そういうものがないと,安心して取引ができないということもあるとは思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。御指摘に引き続き留意します。   ほかにいかがでしょうか。 ○佐久間幹事 8でもよろしいでしょうか。 ○山野目部会長 お願いします。 ○佐久間幹事 裁判所が,ここに書かれている,共有物の管理に関し,必要な処分を命ずることなんですが,想定されているのは,結局,共有者間で必要な合意を調達することができないとき,というか一定の合意に達しないというときに,その達しない合意に代わる,言わば処分許可みたいなものを,裁判所に期待するということでいいか,ということを伺いたく存じます。もし仮にそれでいいとしたら,それは先ほどの,裁判所による管理人の選任と同じようなことになるんですけれども,共有者が,これは資料にも書かれているところですけれども,共有者自身が決定することができない,要件にのっとってできないところを,他者が決定するというのはいかがなものか。適当ではないのではないかと思います。 ○山野目部会長 現在の民法の規律の中で見出される局面としては,不在者の財産の管理において,裁判所が与える,現場でニックネームで呼んでいる権限外許可の審判があります。あの民法の法文も必ずしも明晰ではないかもしれませんが,少なくとも実務の運用としては,売却処分までの権限を審判によって与えることができるという解釈・運用がされてきたと理解しています。   今の佐久間幹事の御意見は,そこまで裁判所が,ここの8でするということは相当でないという御意見を承ったというふうに理解してよろしいのですね。 ○佐久間幹事 不在者財産管理の問題についてですか。 ○山野目部会長 不在者財産管理の似た局面と比べてみて…… ○佐久間幹事 いや,似ていないのではないかと。不在者財産管理の場合は,不在者自身が自ら管理をすることができない状況にあるので,管理人を選び,その管理人に権限を与えているのに対し,ここで想定されているのは,共有者が1人もいないという場合ですか。 ○山野目部会長 ええ,似ているようにみえ,しかし,似ていないから,さてどう考えるかということでしょうか。 ○佐久間幹事 そうそう,似ていないから,同じようにはできないのではないかと。 ○山野目部会長 現行の不在者財産管理の法文の言葉の使いぶりを踏まえて申しますと,それは不在者財産管理の局面であるからかもしれませんが,かなり大きなことができるという,裁判所ができるという運用になっていますし,8の太字の規律表現が不在者財産管理と同じになっていますけれども,あれと同性質の問題ではないですよ,という御注意を今頂いたと受け止めました。 ○佐久間幹事 はい,そうです。すみません。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。   おおむね,共有物ないし共有不動産の管理権者の問題の全般について,御意見を承ったというふうに受け止めてよろしいでしょうか。   今日の審議の過程で明らかになりましたように,いろいろ宿題はたくさんございます。次の審議をお願いする機会に向けて,事務当局において整理してもらうということになります。   部会資料の,ただいま第2の遺産共有における共有物の管理の手前のところまで,一巡して御意見をおっしゃっていただくところまでまいりました。言い換えますと,第2の部分がまだ残っております。   残された時間との関係からいうと,あと若干締めくくりの御案内がございますから,これ以上,第2のところに入っていって,御議論をお願いすることは困難ではないかと感じられます。   次回の部会におきましては,この部会資料3の第2の遺産共有における共有物の管理の問題について審議をお願いし,その後,次の部会資料として用意を差し上げるものの審査をお願いすることになります。先ほど少し申し上げましたけれども,共有物の時効取得,共有と訴訟,それから,共有物分割の在り方などの諸点について審議をお願いします。   引き続き,共有の御論議をお願いするに際しても,また部会資料を作成するに際しても,中田委員から御指摘があったように,分割終了のタイプと存続するイメージの共有との区別に留意しましょうという御話があり,これはごもっともなことでありまして,留意を致しますし,あわせて,その際に,中田委員から御指摘があった共有物分割の在り方について考えてほしいという論点は,正に次回の審議資料で扱われます。   本日,共有の第1の部分についての審議をお願いしていただいたところを顧みて,御案内を差し上げます。   本日,共有制度の見直しについて検討をお願いしなければならない事項の前半につきまして,多様な方面からの御意見を頂きました。思い起こしますと,明治に近代の法律制度が始まりました際,御案内している船舶共有の場合に限った話ではなく,今以上に共有という事態の特性を捉えた法律思考がされていたものではないかと思われます。   明治13年の太政官布告第36号(明治13年7月17日太政官布告第36号)には,「共有財産ヲ管理スルノ権」を有するという者が登場いたします。実は均分相続制を導入した戦後改革の機会にこそ,あらためて共有というものの在り方を考え込んでおく必要があったと感じますけれども,それが必ずしもなされないまま,今日に至りました。本日,この議題について,改めて法律家や各方面の皆様に,ここで論議を始めていただきました。緒についたばかりでございますが,始めていただいたことは,今後議論がどういうふうに進んでいくかを考え込まなければなりませんけれども,いずれにしても意義が大きいと感ずるものでございます。   事務当局から,次回に向けての事務的な御案内を差し上げます。 ○大谷幹事 今,正に繰り返すまでもなく,次回はクールビズでということですけれども,資料もお持ちいただけると思いますが,次回の日程は,平成31年5月21日火曜日の午後1時から午後6時まで,場所は同じく,この東京高等検察庁の第2会議室になります。   テーマは,現時点では,共有の後半部分と,それから遺産分割の促進,財産管理というものを予定をしておりますけれども,こちらの方でできる限りの準備をして,早目に資料送付させていただきたいと考えております。 ○山野目部会長 事務局から御案内を差し上げました。   これをもちまして,法制審議会民法・不動産登記法部会第2回会議を散会といたします。   どうもありがとうございました。 -了- - 1 -