法制審議会 民法・不動産登記法部会 第3回会議 議事録 第1 日 時  令和元年5月21日(火)自 午後1時00分                     至 午後6時04分 第2 場 所  東京高等検察庁第二会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第3回会議を始めます。   本日は御多用の中,またお足元の悪い中,御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。   御出席をお願いしている関係官に,本日新たに加わっていただく方がお二人おられますから,御紹介申し上げます。法務省民事局付の小田智典さんを御紹介いたします。 ○小田関係官 法務省民事局付の小田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。   もう1人,関係官の御紹介があります。農林水産省林野庁森林整備部森林利用課森林集積推進室長の安高さんを御紹介申し上げます。よろしくお願いいたします。 ○安高関係官 安高でございます。今日は,三間に代わりまして出席させていただきます。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   本日は,阿部眞一委員及び増田寛也委員が御欠席です。あと,まだお見えになっていない委員が若干おられます。   配布資料の確認を事務当局から差し上げます。 ○宮﨑関係官 まず,事前に送付しました資料としまして,部会資料4「共有制度の見直し(2)」,部会資料5「遺産分割の促進等」,部会資料6「財産管理制度の見直し」の3点がございます。それぞれの資料の配布の趣旨や内容につきましては,後ほど御説明させていただきます。   配布されていない資料があるようでしたら,途中でも構いませんので,お知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 資料の確認を差し上げました。   内容の審議に進むことにいたします。   前回,部会資料3に基づいて,「共有制度の見直し(1)」の御審議をお願いいたしました。これが全部終わっておりません。   部会資料3の後ろの方の部分,第2,遺産共有における共有物の管理の部分をお開きください。部会資料3の21ページ目でございます。   ただいま御案内申し上げました第2,遺産共有における共有物の管理について,事務当局から説明を差し上げます。 ○脇村関係官 では,御説明させていただきます。   部会資料3,第2では,遺産共有における共有物の管理について取り上げております。   遺産共有は,基本的に通常の共有と同じだと考えられておりますので,前回皆さんに御議論いただきました通常の共有で検討された各項目についても,同様に検討することが考えられるところでございます。   ただ,遺産共有特有の問題としましては,4で取り上げる遺産の管理者について,個々の遺産の管理だけではなくて,遺産全体の管理者についても検討することが考えられるところでございますので,遺産共有特有の問題について,幅広く御意見いただければというふうに思っております。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げました第2の部分につきましては,細かな見出し,項目を掲げておりますけれども,この部分について,一括して御意見を承るということにいたします。   どうぞ御意見をおっしゃってください。いかがでしょうか。   前回,遺産共有ではない,言わば通常の共有の場面について,管理者の制度を設けることとか,所在不明の人とのコミュニケーションに関する特例的な新規の規律を設けるといったような事項について,問題提起を差し上げました。それとほぼ類似の事柄を,遺産共有の場面において,どのように考えるかという問題提起を差し上げているところでございます。御意見がおありでしたならば,仰せいただきたく存じます。いかがでしょうか。 ○吉原委員 ほかの先生方が御発言ないようでしたら,せん越ですが,意見を申し述べたいと思います。   共有物の適正な管理を行うために,遺産共有についても管理者を選任できるようにすることは大変重要で,必要なことであると考えます。そして,その際に必要なことは,管理者の選任を行うことが後々の遺産分割と登記を進めるインセンティブにつながるようにすることではないかと思います。   当面,管理者権限で日常の管理ができ,共有のままでも問題ないということになってしまいますと,逆に,管理者を立てて終わりとなる可能性もあるかもしれません。   これが適切な例か分からないのですが,例えば,自治体の固定資産税実務の現場におきましては,相続登記が未了で,課税台帳上の納税義務者が死亡者のままになっている事案については,相続人の1人に相続人代表者指定届を出してもらい,その人に代表して納税手続を行ってもらうということを現場の運用で行っています。   そして,自治体の方に聞きますと,近年,この相続人代表者の代替わりがぽつぽつと出てきているということです。つまり,登記名義人がおじいさんのまま,これまで相続人代表者として固定資産税を払っていた父親が亡くなり,次に息子が代表者になるということです。これでは実務上は問題なくても,登記簿上の名義と実態のかい離は解消されないままということになります。   こうした例を考えますと,この管理者制度についても,管理人を選任することが後々の相続人間の話合いを促し,共有状態の解消につながるような方向で設計することが大事かと思います。そして,その意味では,管理者の資格について,管理者は共有者の1人でもいいですが,できれば専門的な知見を有する第三者であることが望ましいと考えます。   日頃から専門的な知見を有する第三者が関与することで,相続人の間の合意形成が促され,遺産分割と登記につながっていくことが大切かと思います。 ○山野目部会長 遺産共有についてお諮りしている事項について御意見を頂きました。   引き続き,この範囲で意見を頂きます。いかがでしょうか。よろしいですか。   よろしいですかとお尋ねしても,実は少し,余りよろしくない部分があって,今お諮りしているのは,遺産を構成する個々の共有物についての管理の局面においての御議論であります。   本日,併せて部会資料としてお配りしている部会資料6「財産管理制度の見直し」の後ろの方におきましては,遺産を全体として捉えた上で,その管理の在り方をどうするかという問題提起も差し上げようとしているところでございます。そちらと,ただいま説明を差し上げた審議事項とが,異なることではありますが,密接な関連を有している側面があります。   したがいまして,ただいま特に御意見がないようであれば,ひとまず区切りといたしますけれども,部会資料6について御議論いただく際に,ここで話題を差し上げた事柄を思い起こしていただき,こちらとの関連を御議論いただくということも,もちろんあり得るものと考えております。   先に進めてよろしいでしょうか。   それでは,部会資料3の次の部分,第3,持分の有償移転による共有の解消の部分について,事務当局から説明を差し上げます。 ○脇村関係官 御説明いたします。   第3の1では,通常の共有における不明共有者の持分の売渡請求権などについて取り上げております。   共有の解消方法としては,現在でも共有物分割請求がございますが,ここでは裁判以外の方法で共有を解消することができないのかについて取り上げております。具体的には,共有者の一部の所在が不明である場合や一部を特定することができない場合について,供託を活用して不明共有者の保護を図りながら,持分の売渡しを請求する又は不明共有者持分と併せて第三者共有物を売却することを取り上げています。   (注)にもございますとおり,共有物の管理者との関係についても御検討いただければ幸いです。   第3の2では,遺産共有における不明共有者の持分売渡請求などについて,同様に取り上げております。   遺産共有についても,通常のケースと同じく検討することが考えられるところでございますが,他方で,補足説明にも書かせていただいたとおり,遺産分割は一つの財産を分割する共有物分割とは異なり,基本的には複数の財産の集合体を遺産全体として分割するものですので,遺産分割の前に持分の売渡しなどを認めて,遺産の一部である特定の財産のみを先に分割するのと同じ効果を生むことを認めるのは難しいのではないかというふうに考えられるところでございます。   なお,補足説明の最後に記載しておりますが,次の部会資料で取り上げています遺産分割期間を設けることも検討される予定でございまして,この論点については,遺産分割の期間制限とも関係して議論されるべき事柄もあるかというふうに考えております。 ○山野目部会長 第3の持分の有償移転による共有の解消について説明を差し上げました。   中身を御覧いただきますと,そこにありますとおり,1のところと2の項目とが分かれております。   まず,1の通常の共有における不明共有者の持分の売渡請求権等についてお諮りいたします。   この事項について,御意見のある方はおっしゃってください。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 今回御提案いただいている売渡請求権の創設について,賛成いたします。   非常に多くの共有者があり,かつ,その共有者の一部が所在不明であるといったような場合について,その状況を解消するために非常に有意義な制度だと考えます。   ただし,1点,この制度を設けるに当たって考慮すべき事項として,不明株主に支払われる,供託される対価が適切であるかどうかが問題になろうかと思います。   この点について,部会資料の25ページの(3)のイのところで,供託する金額が妥当であるかを事前に審査するかどうかについて記載されていますが,27ページの(7)に記載されている公的機関が関与する際に,金額の妥当性についても審査する制度を設けるべきだと考えます。 ○山野目部会長 思わず,蓑毛幹事が株主の,あるいは株式のとおっしゃったものですが…… ○蓑毛幹事 ごめんなさい。株主ではなく、共有者と言うべきでした。 ○山野目部会長 それは言い間違いではなくて,わざとおっしゃったものでしょうか。   今お諮りしている事項は,英語で言うとキャッシュアウトですよね。金銭を提供して,当該法律関係から出ていってくださいということをお願いする制度でございますけれども,これが従来の日本の実定法制において存在しているところは,民法本体よりも,むしろ建物区分所有法制とか会社法制ですね。そこの議論を蓑毛幹事は参照なさって,かつ,会社法制でも議論があるように,売渡請求の価格が大事であるということを踏まえた御注意を今頂きました。   何か補足がおありですか,どうぞ。 ○蓑毛幹事 いやいや,わざとではなく言い間違いです。ただ,おっしゃるとおり,価格の妥当性に関して,制度としても実務運用としても様々議論されている会社法179条以下の株式等売渡請求が念頭にあったこともあって,言い間違えました。 ○山野目部会長 すてきな言い間違いであったと受け止めます。   この部分について意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○道垣内委員 制度の設計そのものに直接関わるかどうか分からないのですけれども,何のための制度なのかということも重要なのだと思うのです。   つまり,共有財産があって,共有者の中にどこにいるのか不明な人がいるという偶発的な事情によって,分割もできないということになり,ある者が共有持分権を有しているのに,その経済的な意味というのを十分には実現できないという事態になっている。   しかるに,その者の共有持分権の経済的な意味を実現することを妨げられるいわれはないので,なるべくその人が実現できるようにしようということになり,そのために,金銭の供託等の方法による共有の解消というのを認めていこうというふうに考える,というのが1つありますね。  これに対して,共有者はいるのだけれども,その人が所在不明であるために,経済的な価値の実現ができていないので,例えば第三者がその不動産全体を取得できるようにするということなのか,ということですね。もちろん,共有者の1人が自己の持分権の経済的な価値を実現するために全体を取得したうえで,共有者の1人であった当該取得者から第三者がそれを購入し,そのことによって,当該財産が完全に金銭化されるということは十分あり得るのですが,当該共有土地を効率的に使うためには,なるべくならば単独所有にして,ビルが建てられた方がいいのだというふうに考える,はなから,そのための手段として考える,という方向もあるのかもしれません。  前者ならば,私にも,その必要性がよく分かるのですが,後者が正当化できるのかということについては,私は疑問です。ひょっとすると,そのような理念的な問題は,最終的なルール作りには影響しないかもしれませんが,こういう話をする際に,何となくではなくて,何のためのものなのかということをきちんと考えて議論することが必要なのではないかと思います。 ○山野目部会長 この制度を仮に創設するとした際の制度趣旨について,どう考えるかという問題提起を頂きました。   ここは続けて議論しておくことががよろしいですね。ただいま道垣内委員から問題提起があったことについてお尋ねします。藤野委員、どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   私も,この売渡請求権の創設については賛成でございます。   先ほどの制度趣旨との関係でいいますと,もちろん共有者の方の経済的な利益の実現ということはあると思いますが,やはり第三者,共有物の取引相手の第三者がいる,というところも想定した制度にしていただくのが良いと思っております。  制度を設けていただくこと自体は非常に望ましいと思っておりますけれども,例えば共有物の所有権移転に関する法的安定性の問題とか,売渡請求権を行使できる複数の共有者がいらっしゃる場合にどちらの方を優先するのかといったところとか,対外的な公示手段とか,また,共有者の一人が売渡請求権を行使したけれどもその後の手続が進まない,といったような場面というのも十分考えられるところかなと思いますので,そういった場面でどうするのか,といったところも含めて,制度を作られる際に御配慮いただければ,実務上のニーズにも沿うのではないかと考えております。 ○道垣内委員 第三者が取得しやすくするという観点を入れるということの正当化根拠が私にはよく分かりません。そのようなことを言い出せば,10人が共有していて,共有のままでは使いにくいけれども,誰も所在不明ではないというときにも,第三者から見て,それは単独所有にして売却して,何か有効活用した方がいいではないかというふうに判断できるときには,その10人の意思を圧殺して,いや少し言葉がきついので言葉を換えたいと思いますが,制約して,外から見たら,これはもっと有効に使えるという判断を実現することも認めるという方向につながるような感じが私には拭えないんですが,そんなことを認める必要は,私はさらさらないのではないか,あるいは,認めることを正当化することはできないのではないかと思います。私は,正当化するとしたならば,それは現在持っている不動産の持分権者の権利を実効的なものとするという観点からしか正当化できないのではないかと思います。   藤野さんがおっしゃったことに対して私は反対していますが,まったくおかしいと思うわけではなくて,そういう考え方も十分にあり得ると思います。しかし,別の考え方を私は採りたいと思います。 ○山野目部会長 何か圧殺の方が分かりやすいような気もしますが,それは措くとしましょう。   余り図式的に整理し過ぎることはよくありませんが,共有持分権者のための売渡請求なのか,買いたいなどと考えている第三者のための売渡請求なのかという御議論を始めていただいているところです。   藤野委員,何かおありですか。 ○藤野委員 すみません,今の道垣内先生の御意見も非常によく理解できるところで,第三者が介入して売渡請求権を行使するという話ではないとは思っています。あくまで共有者間の話として,まず整理していただいた上で,ただ,当然,売り手がいるということは買い手もいるわけですので,その買い手が現れたときに買い手が困らないような制度にしていただく方が,やはり混乱は避けられるのではないかというところで申し上げたのが先ほどの意見でございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。   今の点は,事務局でも留意して,引き続き議論を検討し,議事を整理しますけれども,部会資料で御説明しているところに即していうと,前回御議論いただいた共有者間のコミュニケーションがうまくいかなくなっている場面で,問合せをして答えてもらうといったような仕組みを入れようとしていますけれども,あの仕組みに依存して,処分までするということは行き過ぎであって,こちらの売渡請求の制度に処分は委ねようという説明を部会資料ではしています。   この考え方でいくと,藤野委員が留意を促して頂いた,第三者との関係も考慮すべき場面もあるかもしれませんけれども,一応この制度の趣旨としては,共有者相互のコミュニケーションが不全に陥っている場合の打開策の一つとして,このようなものもあるであろうという建て付けで,話題の提供を差し上げていると理解されるところでございます。   引き続き,御意見を伺います。 ○中田委員 意見というか,御質問なんですけれども,所在不明という概念と不在者の財産管理あるいは失踪宣告との関係がどのように整理されているのか,お教えいただければと思います。   所在不明の方がもし軽いんだとすると,有償移転という効果を直結させることが,ほかの制度との関係で,バランスはどうなのかなということでございますけれども。 ○脇村関係官 事務当局の方としまして,ここの所在不明について,格別こちらの方は,軽くしようとか,そういったことは正直,今のところは考えていないんですけれども,ただ,認定の在り方とか,実体法的には一緒だとしても,どう認定していくかというのは,また別の問題が出てくるかもしれませんので,公的機関の関与の在り方も含めて,認定の在り方は考えていきたいと思うんですが,実体法的に何か緩めたいとか,そういったことは正直,余り考えていないというのが正直なところです。 ○中田委員 いずれにしましても,本日部会資料6で検討されます不在者財産管理制度とも併せて,整合性を考えるべきではないかと思います。 ○水津幹事 民法253条2項は,共有者がその持分に応じた管理の費用の支払,その他共有物に関する負担に係る義務を1年以内に履行しないときは,他の共有者は,相当の償金を支払って,その者の持分を取得することができるとしています。ここでは,持分の一方的な移転は,共有者が一定期間,共有物に関する負担に係る義務を履行しなかったということで正当化されていると考えられます。この規律について,共有者が不明であるときの扱いを補充する,という方法もある気がしました。不明共有者については,この規律を適用することができる場面が多いのではないでしょうか。  いずれにせよ,不明共有者の持分の売渡請求権に関する規律を新たに設けるときは,民法253条2項の規律とのバランスを考える必要があると思います。 ○山野目部会長 現行法253条との役割分担という観点の御指摘を頂きました。   引き続き,いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 2点ございまして,まず,今の水津幹事の253条に関する御発言について,253条の場合,請求してから1年経過しないといけないので,時間が掛かってしまうということから,時間を掛けずにというのが,この制度のメリットなのではないかなと思いました。それが1点目です。   もう1点は,23ページの第3の①,②の関係なんですが,これが,実はよく分かりません。補足説明にもそういう考え方があると書いてあったと思いますが,①があればいいのではないかと思っておりました。それで,②は一体どういうときのためなんだろうかというふうに考えましたところ,先ほど道垣内委員と藤野委員のやり取りがあった第三者のための売渡請求を,全面的ではありませんが,多少考慮しているのかなというふうにも思わないではありませんでした。   でも,②のようにう遠というか,わざわざ権限だけ得て,売買をもう一度やりますというのよりは,①だけで整理した方がいいのではないかなと,私は思いました。 ○松尾幹事 先ほど中田委員がおっしゃったことと絡むと思うんですけれども,この共有物の管理に関する同意取得の方法について,所在不明の共有者に対しては公告し,一定期間内に確答がないときはその者以外の共有者の持分価格に従って管理する制度については,所在不明の共有者の一種の財産権の制約になりますので,財産権を制約する様々な形態とか程度について,ほかの制度とのバランスを確認するということは,やはり大事なことではないかと思います。   特にこの場合,「共有者の所在が不明」という要件をどの程度具体的に規律するかという点に絡む問題です。例えば,「所有者不明土地」という点に関しましては,昨年の所有者不明土地利用円滑化法では「相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地」と定義されました。その上で,現に建築物が存在せず,かつ業務用等の特別の用途に供されていない「特定所有者不明土地」について,収用適格事業者が取得するための手続要件を土地収用法のそれよりも緩和して,都道府県知事への裁定申請に基づく裁定と公告により,土地収用法上の権利取得裁決と明渡裁決があったものとみなす制度が導入されておりますが,その場合,所有者不明と認めるために,一定の合理的な探索をしても確知できないことについて政令で細かな規定を置いております。それは所有権や共有持分権を取得してしまう制度ですので,共有持分権に基づく権利行使の制約とは所有権制約の重さ軽さという違いはあるかもしれませんけれども,いずれにしても,財産権の制約の程度と権利者の所在不明の認定要件とのバランスを確認することは重要ではないかと思いました。 ○佐久間幹事 度々すみません,先ほど申し忘れましたので。   ②は要らないのではないかというふうに,私,申しましたが,②を仮に置くとしたらということで,ちょっと疑問がございまして,私の理解では,②では,まず相当な金額を供託することによって,共有者の一部が不明共有者の同意なしに目的物を処分する権限だけを得る。その権限を行使しての契約自体は,現にあるというか,不明共有者を除く共有者全員と相手方,ここでいうと第三者と書かれている人だと思うんですが,の間でする。売買代金の支払等も,義務の履行も,両者というか,不明共有者を除く共有者全員と第三者との間でするということなのではないかと思うんですね。   その上で,この場合について,所有権の移転が,要するに履行が一応全部済んだ後,供託金が,実は割合的な不明共有者の取り分に満たないというときは,第三者も何か責任を負う,第三者にも請求することができるというふうに書かれていると思うんですけれども,契約の代金を支払った第三者が,なぜ供託金の不足分について責任を負わなければいけないのか,疑問に思います。これを置く場合には,第三者は所有権を取得し,代金を支払ったんだったから,その後の法律関係にはもはや関係がない,という整理をする方がいいのではないかと思いました。 ○脇村関係官 先生から御意見いただきましたので,法律構成も含めて,改めて検討していきたいと思います。   先生のおっしゃっている趣旨は,不明共有者との他の共有者の問題は共有者間の内部関係として処理すべきではないかというお話だと思いますので,その妥当性も含めて検討していきたいと思います。 ○山野目部会長 この論点について,他にいかがでしょうか。   蓑毛幹事が最初におっしゃった売渡請求の際の価格の問題についても,御意見があったら頂いておきたいと考えます。 ○今川委員 今川です。   この制度,最終的には,共有者の持分の移転の登記をしなければならないということになってくると思います。そして,持分を失う人というのは不在者ですので,当然共同申請ができない,持分を取得した人間の単独申請になるということになりますと,売渡請求の効力が発生している,その要件が全て満たされているということを,登記官がしっかりと確認しなければならないことになるんですが,不明であるという,その調査を定められた要件に従ってしっかりしたこと,それから相当な金額で,その金額の相当性,それから供託をしたこと,そして,さらに公告をしたこと,これらの全てを登記官が申請受理の際に確認するというのは,非常に困難だろうと思われますので,やはり効力発生の確認は公的機関の方で行うべきではないかと。   そして,その証明書を付けることによって,単独申請を認めるというような方法がいいのではないかなと思います。 ○山野目部会長 27ページにおきましては,登記手続の場面での障害を取り除いておく必要があるという問題提起を差し上げていますが,やはりそこが重要ですよという御指摘を今川委員から頂きました。   ほかに御意見はおありでしょうか。 ○垣内幹事 私自身は,この制度を導入すべきかどうかということについては,格段の定見を有しておりませんけれども,仮に導入する場合に,どのような制度として導入するのかという点に関して,今回の資料ですと,27ページの公的機関の関与等が問題とされているところですが,ここの説明にもありますように,取り分け,事後的に請求権行使の効果の有無が争われるような事例というものを想定いたしますと,例えば不在者を被告とする確定判決があって,既判力で確定されているということであれば,それはそれなりに安定した効果が実現できるということになるかと思いますが,そうでないという場合ですと,いかに公的機関が関与,何らかの形で関与するとはいっても,後で争う余地というのは残るんだろうというように思いますので,その点を考慮に入れつつ,実際には,余りそういう,後で出てきて争うようなことは考えられないというような事例であれば,確定判決がなくても,そんなに心配することはないということなのかもしれませんけれども,一定程度そのような心配があり得るということになれば,どうするのかというような問題も出てこようかと思いますので,その辺りも考慮に入れつつ,これを導入する場合には,制度設計を考える必要があるのかなという印象を持っております。 ○山野目部会長 手続面の整備のことを承りました。   これ,持分の時価で売渡請求をすることができるという制度像をお示ししていますが,これは大丈夫でしょうか。   蓑毛幹事から冒頭御注意があって,きちんとした機関に審査させるべきであるというお話があったし,部会資料自体も,不動産鑑定理論の専門家などに判断をしてもらって,ということを記しておりますが,恐らく大切なことは,そのような手続も大切ですし,専門家の力を借りることも大事であるとしても,不動産鑑定士の仕事というものは,これこれの考え方で判定してくださいと示されれば,もちろん専門家ですから,判定しますが,基本になる制度の考え方を示さないまま,あなたは専門家だから価格を出してくださいと求めても,それは出すことができないのですよね。   どのような発想で,この持分の時価というものを考えるかということを少し考えておかないと,危ないのではありませんか。   持分を持分として市場に出したということだと,それはすごく安い値段になりますよね。その持分を含む一筆の土地を全体として処分する際の売却価格に持分の割合を乗じて得られる数学であれば,それなりに高くなるものですから,そこのところはきちんと,法文にどういうふうに表現することができるかはともかくとして,考え方を整理し,少なくともここでの御議論で整理していただいた上で,それを受け止めて,あと手続,手順であるとか,専門家への支援の要請とかというお話になってくるであろうと考えます。その辺のところをチェックしないで話を進めていって,後で財産権保障との関係で抵触の疑義がありますとかというふうに言われることは困ります。   冒頭に蓑毛幹事からも問題提起を頂いているところでありまして,その関係で御意見があったら,頂いておきたいと考えますが,いかがでしょうか。   もっと申しますと,持分の時価といいますけれども,持分を一般のマーケットに出したときと共有者同士で譲渡するということになった場合では価格が異なりますし,それから,持分の半分以上を持っている者の持分の価格と僅少な持分を持っている者の価格の判定とでは,考え方が違うものであって,それらの点に留意しながら,物事を考えていかなければなりません。 ○佐久間幹事 全く実務を知りませんし,意見に当たることは言えないんですけれども,今の関連で,少し心配というか,どうなのかなと思っていることがあります。それは,かなりかっちりとした制度を組むと,最初に不動産鑑定士などの評価を得て,公告の手続もとって,今のお話ですと,もしかしたら,更に公的な審査というようなものがある。公的審査といっても,多分,そこでまた誰か別の不動産鑑定士を雇ってとかというふうになるわけですよね。そうすると,ものすごく手続費用がかさむのではないかと思うんですね。   そうなると,そのような費用を掛けてまでこの制度を利用しようという人は,どういう人なんだろうかというと,相当大きな価値のある不動産について,しかも,共有状態をずっと残すというよりは,自分1人で何か自由にできるとか,あるいは,他に売却するめどが立っているという人なのではないかと思うんですね。   仮にそうだとすると,今の山野目部会長のお話と,そこがつながるのかなと思うんですけれども,どのような場合を持分権の処分についてモデルとして考えるかというと,結局はマーケットに出すことを前提に,実際上は使われる制度なんだということで考えていく方が,現実的なのではないかと思いました。 ○蓑毛幹事 部会長のおっしゃったことは,非常に難しい問題だと私も思っておりまして,この制度を導入するとして,では,妥当な価格をいかに定めるのか,時価と定めることでいいのか,具体的な定め方については,よく検討する必要があります。   正に御指摘のとおり,部会資料の23ページの第3の1の①と②,共有者間で売渡請求権を行使したときの当該持分の価格と,全体を売って,その金額に占める不明共有者の持分に応じて按分した価格というのは,一緒になるのか,違っていいのか。この辺りを含めて,なかなか難しい問題だと思います。   例えば,法律に時価と定め,時価をどう考えるかということで,思い当たるのものとして,会社更生法があります。会社更生法では,更生会社の事業財産全体の評価基準や,担保目的物の評価基準について,時価概念を採用しているのですが,時価とは何ぞや,すなわち具体的な資産の種類に応じた時価評価の方法をどのようにすべきかについては,すさまじい議論がされています。不動産について言っても,取引事例法,収益還元法,原価法その他様々な考え方に基づき,また不動産の具体的事情を類型別に整理して検討するということをやっています。   ですので,この制度を作るときに,法律の中で,基準となる考え方は示すべきだと思いますが,そもそも時価でいいのかどうかとか,そういったことも含めて考えなければならないと思います。 ○中田委員 直接関連するかどうか分からないんですけれども,この制度を考える際に,建物区分所有法との類推ということがあり得るかと思うんですが,しかし,建物として存続していくべきものと,基本には,少なくとも現行法の下では分割の対象とされる共有とで,同じような発想で足りるのかどうかということが,今,部会長御指摘の持分の評価というところにも反映しているのではないかと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。だいたい、よろしいですか。はい、山田委員、どうぞ。 ○山田委員 山野目部会長が問題提起されたところについて,準備していないんですが,今,数分考えたところの意見を申し上げたいと思います。   持分について,時価ということですが,どう表現するかはともかく,不動産を全体として流通した場合の価格というのを想定し,それが多分時価になるんだと思うんですが,それに持分割合を掛けたものということを基本にすべきだろうと思います。決して,持分の流通価格ではないということだろうと思います。   持分の流通ということを想定できるかどうかも分かりませんが,一般的に持分の価格というものを素人が想定した場合には,一つの不動産の価格に持分割合を乗じたものよりも下がるんだろうと思うんですね。そういうのを欲しがる人は少ないでしょうから。   したがって,そこは,時価という表現を仮に採るとしても,持分として流通を想定して考えるのではないということは,先ほどの部会長の表現を使うならば,不動産鑑定士に具体的に鑑定をしてもらう際に,そういう考え方で鑑定してくださいということは,一件一件指示する,依頼するというのではなくて,ルールの中に落とし込めればいいのだろうと思います。   そして,その上で,いろいろな類似の例,あるいは平仄を合わせたらいいだろう,バランスをとるべきだという議論が出てきましたが,今日のための配布資料の中に共有物の分割があって,余りたくさん書かれていないんですが,その中に,全面的価格賠償の方法による分割ということが触れられています。   この持分売渡請求というのは,経済的・実質的には,かなり共通する面がある,あるいは隣接する面があるのだろうと思います。したがって,一つ前の,私が直前に申し上げたこととの関係でいえば,さほど例は多くないのだろうと思いますが,全面的価格賠償の方法による共有物分割における例を,裁判例を調べていただいて,そこでどういうふうに,価格賠償で,先ほどの言葉を使うならば,キャッシュアウトしてもらう人にキャッシュを払っているのかということは,十分に参考になるだろうと思います。   そして,その上で,最後にちょっと申し上げますと,全面的価格賠償の方法による分割が認められているので,持分の売渡請求権というのは十分に検討に値するものだと思うんですね。さほど特別なものではないと,そういうふうに理解して,考えていったらいいだろうと思うんです。   ただ,大きな違いは,全面的価格賠償による分割は,裁判所の裁判による分割でありますので,裁判を経ずに,これ,形成権の行使のような形で所有権の移転,持分権の移転を認めるのではどうかということで,お諮りがされているように思います。手続をどこまでハードルを高くするかというのは,これからの話なのかもしれませんが,しかし,基本的に,裁判所を100%かませるということは考えていないように思いますので,そこが大きな違いであって,その点はしっかり検討していくべきだと思います。 ○山野目部会長 幾つかの重要なヒントを頂きました。ありがとうございます。   蓑毛幹事から,会社更生法の際の幾つかの規定の時価について,大きな議論があったという御紹介を頂きました。   私からも御紹介を続けますと,もう少し不動産法制に近いところから題を採りますならば,山田委員が部会長をお務めになった被災関連借地借家・建物区分所有法制部会で,建物区分所有法制の場面で導入された売渡請求の制度をめぐって,そこの時価とは何かについて,あの部会でさかんな議論がありました。   最終的な法文には,時価というふうに表現されていますが,その時価の考え方は,法制審議会の部会の議論を参照した上で,これが望ましいということを人々が確認することができるような仕方が示されたという経緯があったと記憶しております。   私たちが扱っているここの議論も,最終的にどういうふうな法制上の表現や考え方の整理になっていくか分かりませんけれども,人々の財産権保障に関わる側面をはらんでおりますから,しっかり考え込まなければいけないお話ではないかと感じます。 ○脇村関係官 すみません,今更ですが,最後に部会資料,1点だけ説明させていただきますと,部会資料23ページの①,②の時価の書き方,少し変えておりまして,②の方は,全体の価格を持分で割って支払うべき金額を算出するということを明確に書いています。これは,全部を売る前提で考えていたので,共有持分そのものを売却するのではなくて,その方が計算しやすく,間違いないだろうということで書いています。   ①はそこまでは書いていません。例えば共有者が3人いて,3人のうち1人が他の1人の持分を取ったケースは,全部を取得するわけではないので,全体の価格を持分で割って支払うべき金額を算出していいのかなというのが少し気になったというのがあったわけでございますが,ただ一方で,今皆さん御意見あったように,そもそも,きちんと全体で割った方がいいのではないかという御意見を否定するつもりもなかったわけでございまして,②の方は確実に全体を売るので,間違いないだろうと思って,①はどうなのかなというのがすごい気になっておりまして,それで,今日頂いた御意見を踏まえながら検討したいと思いますし,また,先ほど言いました,全部を取るとは限らないケースについての処理についても,また皆さんの御意見を頂きながら,当局として考えていきたいと思っているところでございます。 ○山野目部会長 では,引き続き議事の整理に努めてください。   29ページの2に行ってよろしいですか。遺産共有の場面で,同様のことを考える可能性についての問題提起でございます。   お話の大部分は,先ほどの1についての御指摘が,ここでも考えなければいけない事項としてありますから,当然それを踏まえ,議事の整理を致しますけれども,ここ固有の議論として,何か御指摘があれば承ります。よろしゅうございますか。   それでは,1と同じような仕方で諸点に留意し,議事の整理を続けることにいたします。   29ページは,遺産共有の方は置かないことではどうかという,部会資料の示唆はこうですけれども,置くか置かないかについての御検討を進めるため、引き続き考え方を整理していくことにいたします。   部会資料の3について,前回積み残しにしておきましたけれども,ここまでの審議を頂きました。   引き続き,部会資料4で,「共有制度の見直し(2)」についてお諮りを致します。   部会資料4の第1及び第2の部分について,事務当局から説明を差し上げます。 ○脇村関係官 では,御説明いたします。   部会資料4の第1では,共有物の取得時効を取り上げております。   土地について,相続が生じている場合に,共同相続人の1人が当該土地を長期間占有しているケースについて,共有開始の方法としては,所有・占有している相続人が共有物の所有権全部を時効取得するということが考えられるところでございます。そこで,ここでは考えられるケースについて,補足の中で例を挙げた上で,取得時効の在り方について検討することをお願いしているところでございます。   現在の判例をベースにしますと,占有の開始時点で当該土地が共有であると認識しているケースなどは,そう簡単に取得時効を認められないと思いますが,レジュメに記載しているような事例で認めるべきか,認めるとして,法的構成をどのように考えるか。例えば,単独自主占有をどのような場合に認めるか,その立証責任をどうするのか。さらには,他主占有から自主占有への転換などについて,御検討を賜れればというふうに思っています。   また,第2では,相続回復請求権を取り上げております。   相続人が相続によって,財産について権利を主張することができなくなるケースとしましては,今言いました取得時効あるいは債権の消滅時効などの一般的なルールのほかに,相続特有のルールとして,5年又は20年の経過により時効消滅するという相続回復請求権の消滅時効のルールがございますので,ここで併せて取り上げております。   取得時効について,何らかの見直しをする際には,併せて検討すべき点があるかなどについて,御意見賜れればというふうに思っているところでございます。 ○山野目部会長 部会資料4「共有制度の見直し(2)」,第1の部分について,まずお諮りします。   第1,共有者による共有物の取得時効,これについて,御意見がおありの方の御発言を頂きます。 ○蓑毛幹事 第1の共有者による共有物の取得時効を認めれば,所有者不明土地問題の1つの側面,すなわち土地が多数の相続人による遺産共有の状態になっていて,ますます不明な人が増えていくという今の状況を打開する一つの有効な手段になるとは思うのですが,御提案のような,現実に占有をしている相続人の1人が他の相続人から時効で権利を取得するという考え方については,現時点では消極的に考えています。   自主占有というものの基本的な判断基準は,占有取得の原因である事実によって外形的・客観的に定められるというのが基本的な考え方であり,ここでは,相続による占有取得というのがどういうものなのかが問われるべきです。   典型的なケースとして,田舎の自宅と畑を親から引き継いだ長男が,相続により単独で占有しているというケースが考えられます。ほかの兄弟は遠距離,遠隔地にいて,余り田舎の家や畑には関心を持っておらず,そして,その長男が固定資産税も納めていて,畑も耕していて,ずっと占有していて,ほかの相続人の人たちは,何もそれについて関心も持たずに,文句を言わないでいると。   このような状況が続いたときに,果たしてこれは,相続開始の時点から,その長男は,他の相続人の部分も含めて,自分の所有地だというふうに考えて占有をしていると考えるのか,それとも,そうではなくて,他の兄弟たちは田舎にいる長男に任せて,言わば使用貸借のような形でやっていて,使っていいけれども,でも固定資産税等は納めてくださいねと言ってやっているのか。私は後者だと思っていまして,相続が開始して,他の相続人がいるにもかかわらず,その時点で全ての土地について,他の相続人を排除して自主占有になったというのには,無理があると思っています。そうではなく,時間の経過とともに,少しずつ客観的な状況や,土地の占有についての長男の意識が変わってきて,長年の間に,これは自分の土地だと思うようになるというのが実態ではないでしょうか。   部会資料3ページにある昭和54年最判も,恐らくはそのような考え方に基づいていて,相続というのは基本的には他主占有であり,相続人の1人による単独の自主占有が認められるためには,その1人が他に相続持分権を有する共同相続人がいることを知らないため,単独で相続権を取得したと信じて当該不動産の占有を始めた場合など,その者に単独の所有権があると信ぜられるべき合理的な事由がある,この事案では,家督相続が絡んだ事案だったと記憶していますが,そういう例外的なことがあって初めて単独の自主占有になると言っています。今回の提案は,所有者不明土地問題を解決するために有効だとは思うのですが,そのために従来の自主占有概念を大きく変えてしまうことには,ちょっとちゅうちょを覚えるところです。長くなってすみません。 ○山野目部会長 ありがとうございます。慎重に,という御意見を頂きました。   引き続き,いかがでしょうか。 ○松尾幹事 今の蓑毛幹事の御意見に続けてなんですけれども,共同相続が開始した後,遺産分割がされないまま,共同相続人の1人がずっと相続財産である土地の管理をしていて,あとの共同相続人は何も言ってこない,その1人の共同相続人が固定資産税もずっと払い続けている場合があります。例えば,最初の5年ぐらいはしようがないなと思って管理していたんだけれども,誰も何も言ってこない状態が10年なり20年なり続くうちに,当該相続人にも相続が生じ得ますし,共同相続人にも相続が生じるなどして連絡が困難な状態になっているときに,土地の管理を継続している者やその承継人の所有権取得に通じるような制度上の手立てが何かあるのかというのが,問題の中心部分かと思います。   これに対する現在の制度の対応を見ると,民法162条の所有の意思の要件に関する昭和54年判決は,当初から単独相続だと思っていたということが前提ですので,そもそも最初から共同相続人がいるということが分かっていた場合には妥当しないと思われます。そうなると,ほかに考えられるのは,185条の所有の意思をほかの共同相続人に表示するとか,あるいは新権原に基づいて占有を開始するとか,他の共同相続人による黙示的な共有持分権の放棄や遺産分割の協議が成り立ったとか認められるようなことがなければ,既存の制度ではカバーできない問題ではないかと思われます。   ここに制度のループホールが生じていて,本来ならば何かルールがある,時効取得に通じるようなルールがあってもよいはずなんだけれども,それがないということなのかどうか,ここが一番取り組むべき問題ではないかと思います。   この問題は,先ほどの不明共有者に対する共有持分権の売渡請求権による有償移転の制度とも関係している点があって,有償移転の制度で対応すればいいのか,制度間の役割分担ということもにらみつつ,やはり時効取得についてもなおループホールが存在するということであれば,それをどうやって要件化していくかということかと思われます。   やはり中心になるのは,所有の意思をどう認定するかという問題で,最初は共同相続だということを認識して占有を開始し,5年,10年管理している間に,共同相続人から何も言ってこないし,だんだん共同相続人が誰かも分からなくなっているようなケースもあり,そういう状態がずっと続いて,自分はきちんと固定資産税も払っていても,所有の意思の表示の方法がない場合もあります。   新権原については,下級審の裁判例では,土地の共同相続人の1人が建物を建築し,自分名義で登記した場合に,これが新権原になるかについて,高裁判決には肯定したものと否定したものがありますが,建物の建築・所有のための土地権原は所有権に限りませんので,新権原による問題解決も決定打とはなりえずに,185条には限界があるかも知れません。   それを前提に,こういう事態に対応するような所有の意思の認定あるいは時効取得に通じるような要件化を図るべきかどうか。ちょっと私も,結論的には非常にまだ迷っていますけれども,もしこの問題に正面から取り組むとすると,やはりそこの要件化を図る必要があるかどうか,他の共有者の持分の放棄の黙示的な認定ということとの差別化も含めて,検討する必要があると思います。 ○中村委員 私も,共有であることを認識している場合というのは,自分の持分を超える部分については,権原の性質上,自主占有とはいえないですので,時効制度そのものを抜本的に見直すことなく,共有についてだけ時効の成立要件をがらっと変えるというようなことは,なかなか難しかろうというふうに思います。   日弁連のワーキンググループでも,この時効でという考え方については,慎重意見が多くございました。   そうはいいましても,部会資料で御提案いただいておりますような状況が存在して,それを乗り越える手立てがあった方がよい,望ましいということもあるのは事実ですので,ほかにどのような方法がということで,ちょっと考えてみたんですけれども,1点は,今松尾先生から御指摘がございました,先ほどの資料3で検討した共有者間での持分の売渡請求というものを,もう少し幅広に,使いやすいものにした場合に,今ここで問題となっているようなケース,先ほど蓑毛幹事から挙がりました事案のように,例えば長男が長く,長期間にわたって管理・占有していて,固定資産税も全て支払い,ほかの共有者はいなくなっているとか,所在は分かっているにしても全く関心を示していない,いわゆる丸投げ状態であるというような場合を打開していくための方策として,長い間の管理の労力,手間暇,固定資産税の支払いなどを,その売渡しの対価にきちんと組み込んだ上で,低廉な価格で買い取ることができるというような可能性まで広げることができれば,無理に時効という形にしなくても,乗り切れるケースは出てくるのではないかというのが1点です。   それから,もう一つは,先ほど水津先生から御指摘のあった253条2項ですとか,民法255条,共有者の1人がその持分を放棄したとき又は死亡して相続人がないときは,その持分は他の共有者に帰属するという規定を手掛かりにするということです。本来ですと,所有者のいない不動産というのは239条2項で,また,相続の場合は959条によって,国庫に帰属するということになるはずですけれども,共有という持ち方の特質に鑑みて,255条のような特則が設けられているということですので,共有の場合には承継取得ではない持分の取得の方法が現にあるという,そこのところに遡りまして,時効取得で何とか救済できないかというようなケースに対応するための制度として,255条とか239条2項も参考にして,新たに組んでみるということも,可能性としてはあるのではないかと考えましたので,お伝えしておきたいと思います。 ○山野目部会長 御提案を頂きました。ありがとうございます。   平川委員,どうぞ。 ○平川委員 ありがとうございます。   前回欠席しましたので,共有関係に関しては,少しずれる発言になるかもしれませんが,お許しください。   共有者の共有物に取得時効の制度を入れる目的は多分,共有者を単純に1人にし,それによって後々,その土地に関しての様々な手続について管理をしていくための一つの手段としての考え方があるのかな,と思いました。ただ,その目的と,時効によって単独の取得を可能にすることが,本当に適切であるのかどうか。もう少し考えていかないと駄目なのではないかと思います。   単独所有者の1人が長期間,土地を占有して,「単独所有者のように振る舞う」事例がありますけれども,その「振る舞う」とは,どういう意味なのでしょう。場合によっては渋々,その土地を管理するために畑を耕していた例もあります。渋々,固定資産税も払っていましたけれども,実は後々,共有者がいることが分かって,どうしようかという例もあります。他にも,いろいろな考え,事例もあると思いますし,まずやり方としては,共有の在り方そのものを,もう少し議論をしていくことが必要なのではないかと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   今,部会資料で御提案いただいている内容というのは,基本的に,複雑な権利関係をなるべくシンプルにするということで,考えられる限りのオプションを挙げていただいているという趣旨だというふうに理解していますので,そういう観点からいえば,方向性としては,この取得時効の話についても反対するものではございません。  ただ,中身的なところについては,既にいろいろと他の委員の先生方がおっしゃられているとおりのところはあるのかなと思っておりまして,特に,他主占有から自主占有への転換という法律構成を使った場合に,では,いつから本当の意味での取得時効の期間が始まっているのかというところが,分かりにくいのではないかと思っております。また第三者の話をすると,ちょっと怒られてしまうかもしれませんが,仮に共有者間で,取得時効が成立した,という整理をしたとしても,そこに新たに取引に入ってくる第三者から見たときは,やはり不安なところというのがあるのかなと思っておりまして,そういったところが明確になるかどうか,というところで,取得時効の制度を仮に何らかの形で変えたとしても,第三者との取引を想定すると,実務上は使い勝手がどうしても悪くなってきてしまうのかなというところはあると思いますので,ちょっとそういった観点から気になっているところです。 ○山野目部会長  第1のところについて,御意見を頂いたというふうに受け止めてよろしゅうございますか。ありがとうございました。 ○押切関係官 すみません,農林水産省ですけれども,法理論的な議論というのは,先生方が本当にこちらでということだと思いますので,うちの役所というか,ここにいる意味として,実態面ということだと思いますので,あえてお時間を頂きましたけれども,先ほどお話があったみたいに,確かに今,農村の現場に行けば,先ほど蓑毛先生がおっしゃったように,地元に残った,長男であるかどうかは別として,地元に残った人間が,農地なり何なりを自分で管理して,固定資産税も払っているというのが今の現実です。   そのときに,では,都会に出た人間がどこまで,特に農地について,自分のものである,いわゆる価値があるものとして認識しているのかということを考えていくと,確かにこれまでは,いろいろな思いがあったのかもしれませんけれども,これから10年,20年たっていく,今のすう勢を考えていけば,どんどんそれに対する関心というのは,現実的には薄れていく流れなんだと思います。   今回,所有者不明の土地というのは,農地含めて,一般の宅地なりも含めて,大きな議論になっていますけれども,これも財というのが,常に価値があるものというのを前提に置くのか,それとも,これからの世の中,必ずしもそうではないという世界に,どうマッチする仕組みを作るのかということで,今回議論がスタートしているのではないかなと思います。その中に,農地というのは,ある意味では,ある意味,先頭を切った状態にあるのかもしれないなと思っています。   我々の役所の方も,できるだけ農地はしっかり使ってもらいたいので,所有権までには今のところ手を出していませんけれども,できるだけ,共有者の1人の意思が確認できれば,それをできるだけ,賃貸借の世界で使いやすいような仕組みというのは作ってきていますけれども,ただそれも,例えば10年間なり20年間,その仕組みでできたとしても,その間にまた,元々の方がお亡くなりになれば,どんどん共有状態が膨らんでいって,結局そういう,利用,利用で攻めていっても,根っこのところに何らかそれを,是正するというと表現が違うのかもしれませんけれども,それをよりきちんと収れんしていくようなルール付けというものをしていただかないと,なかなか利用の世界だけでは処理できない世界が,現実的に10年,20年,30年たつ中では,生じるのではないかと思いますので,先ほど来,共有のルールでやるのか,それとも売渡しの請求でやるのかと,いろいろな議論はあったように認識しますけれども,いずれにしても,何らか今回,ルール付けというところには是非至っていただきたいというのが,事業を持っていたり,農村現場を見ている我々として希望するところです。 ○畑幹事 私の専門分野から,口出しをするところではないと思うのですが,遺産共有の場合が,主に資料で扱われているのですが,先ほどの売渡請求権について,遺産共有の場合は少し違う面があるのではないかと,資料に書いてあるのですが,そのことがやはり妥当しないのかということはちょっと気になりました。   つまり,部会資料3の29ページ辺りには,遺産共有の場合は,全体として分割するはずのところを一部についてだけ,何か移転したりというのは適切でないのではないかというようなことが示唆されているので,同じことは取得時効についてもあるのではないかと思いました。   これはもう,遺産分割なんかしないということが前提になっているようにも見えるのですが,もし遺産分割になったら,新たな取得時効で取得した分をどうカウントするのかというような問題は,一応考えておく必要あるのかなと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   押切関係官がおっしゃったことについて,一言申し上げます。   日本における産業の経営や経営者の在り方という問題を考えたときに,商業・工業の領域においては,経営の主体が法人である場合が圧倒的な割合を占めますから,自然人の世代交代がそれにどう向き合うかという問題は,株式の承継という仕方で問題提起がされるのに対し,農業や林業の領域においては,自然人の世代交代に伴い土地そのものについて起こる相続において,均分相続制の導入後に生ずる事象として,数次相続の蓄積による所有者不明という問題が宿命的に突き付けられています。   会社法制においては,株式の持主や準共有者などが行方不明になったという事態に対する手当てが既に用意されているに対し,農業・林業などが主に悩みを抱え込んでいる土地法制については,それに対応する手当てがございません。   その関係から,それに悩む農地政策当局,林業政策当局がお悩みになって,様々な賃借権や利用権などを法制化するという営みを積み重ねておられることは,よく承知しております。所有権や共有に手を触れるということについて,遠慮がちでいらっしゃるということも理解します。   今ここで,会社法制に先行されていることを睨みつつ,土地法制がどう考えるかということについて,皆さんにお悩みを共有していただいて,議論をお願いしているところでございます。   押切関係官におかれましては,いろいろ感ずるところもおありでいらっしゃることでありましょうから,見守っていただければ有り難いと望みます。   第1の部分について,意見を引き続き伺います。 ○松尾幹事 すみません,今回御提案いただいた,部会資料4の第1の中で,やはり一番注目すべきは,共有持分権者の1人による占有を,従来のように,他の共有持分権者との関係では,他主占有ということなのか,それとも自主占有と見るのかという,かなり大胆な提案もしていただいていて,これをどういうふうに受け止めるかということは,やはりしっかり議論すべきではないかと思います。   共有持分権者の1人による占有をどう性格付けるかというのは,非常に難しいと思います。自分の持分については自主占有だけれども,他人の持分については他主占有だということについて,共有学説の所有権複数説と単数説とに関わるか,前者だと自主占有を根拠付けうるか,あるいはこの問題とは直接関わらない話かもしれませんけれども,やはり非常に難しい問題です。したがって,共有持分権に基づいてスタートした占有をどういうふうに性格付けていくかは,論ずるに値する問題だと思います。   それから,もう1点,そのこととも絡むんですけれども,共有持分権については,所有権ということですから,消滅時効がなく,他の共有者は何年放っておいてもそれだけで権利が消えるということがありません。ところが,地上権や永小作権であれば,これは他物権であるから,消滅時効にかかり,所有権に吸収されてしまう。けれども,共有持分権はその制度がない。これもやはりループホールの一つなのかなと思います。   といいますのも,共有持分権者は不明共有者が権利行使しない状態がいくら続いてもその持分について時効取得はできない一方で,不明共有者がいくら放っておいても消滅時効にかかることがないという,この空白状態は,何か埋めるべきなのかどうかということを,やはり時効の問題としても論ずべきなのかが気に掛かるところです。   不明共有者に対する方策として,先ほどの共有持分権の売渡請求に基づく有償移転について,今畑幹事からも御指摘ありましたように,遺産共有の場合にはちょっと性格が違うのではないかということは重要で,遺産分割との関係を取得時効ではどのように整理できるのかということも含めて,やはり時効の問題としても捉えるに値するかなと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   第1の部分について,御意見を頂きました。   取得時効の見直しそのものについては,慎重に考えてほしいという御意見を複数頂きました。また,中村委員から御発言があって,弁護士会で御議論いただいた成果を踏まえ,提案も頂きました。   立法事実として指摘されていることを理解するとともに,それに対して,取得時効の見直しという仕方で向き合うということも,あり得なくはないけれども,時効による取得ということに固執せず,権利の取得や共有の在り方というものを直截に考える幾つかの制度的な工夫を考えてほしい。あるいは,売渡請求を考える際の時価の問題について,一つ前の論点のところで,時価とは何かという御議論を頂きましたけれども,さらに費用の問題も考慮に入れ,起こっている事象に向き合うことを可能とする制度にするということもあり得るのではないかという御指摘を頂いたところであります。   今後,事務当局が議事を整理していくに当たって,中村委員始め弁護士会の先生方に,更に御意見の細部をお尋ねすることがあるかもしれません。引き続き,どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○道垣内委員 終わり掛けているところ,すみません。   全体としては,取得時効を認めるべきではないという見解が多いので,あえて申し上げるべきことではないのかもしれませんけれども,念頭に置かれているのが,農地で,田舎で1人だけ占有して耕作しているという場面だと考えますと,なるほど,それは取得時効かもしれないねという感じがしないではありません。しかし,田舎の農地で,ほかの人が余り気にしていなくて,というのは,法律の条文には書けないわけでして,そうなると,このルールは,ちょっとポリティカリー・インコレクトな言い方になりますけれども,分かりやすくするために例を出しますと,親と同居していた長男がそのまま土地に住んでいて,いろいろ文句はあるのだけれども,妹さんとかお姉さんとかは,まあまあという感じで,そのまま時間が経過してきて,それで,やはり,もうこれはきちんとしなければという話になったときに,長男が突然に時効取得を主張する。そういうことになりますと,ほかの兄弟姉妹としては,何ですかそれはという話になると思うのですよね。   念頭に置いているシチュエーションにだけ適用を限定することはできないということを念頭に置きながら,この問題は議論すべきだろうということを,申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。多くの委員,幹事が共有するところを今,簡潔に確認するお話をしていただいたというふうに感じます。   第2の方にいってよろしいでしょうか。   それでは,第2,884条の見直しの可能性について,御意見を頂きます。 ○潮見委員 相続回復請求が問題になる場面での取得時効に関する現在の判例法理をもう一度精査して,あるべき取得時効の在り方というものを考えてみようということ自体については,私はやっていただいたらいいし,好ましいことではないかと思っております。   ただ,そのことが,884条自体の見直しにつながることなのか。884条を残して,取得時効のところの考え方を変更あるいは改善することによって,現在の問題は解決できるのではないかというところもないわけではありません。ですので,そうしたところもひとつ考えていただきたい。   それとまた,矛盾することを申し上げますが,884条自体は,いろいろな問題を抱えていると私自身は思います。むしろ,884条というものは廃止するべきではないのかという意見があるというのは,ここに書かれているとおりですし,脈々とそういう見解は続いておりますし,私自身もそれが望ましい方向かと思います。   他方で,現在の884条というものを少し離れて,相続回復請求制度の在り方というものについて,どのように考えたらいいのかというときに,相続回復請求の制度自体を改善することによって,将来好ましい制度へと変容させるべきではないかという意見があるのも,また事実だと思います。   そういう意味では,884条を見直すかどうかというのは,大掛かりな作業になります。そこは十分に意識しながら,今後の検討を進めていただきたいと思います。 ○山野目部会長 部会資料の作成の意図としても,一つ前の御議論で取得時効の問題提起を差し上げておりますところから,相続回復請求権の問題についても気になる部分があるので問題として提示を差し上げようということで,ここに載せているというものであり,また,その程度にとどまるものです。   潮見委員から御示唆もあったように,果たして,多々問題を抱えている相続回復請求権について,見直しの必要があるかもしれないけれども,この部会に与えられたミッションとアングルにおいて,することが適切であるかということは,少し考え込んでみなければなりません。今頂いた御注意を踏まえ,引き続き議事を整理いたします。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,今の潮見委員の御指摘などを踏まえ,ここのところを引き続き検討することにいたします。   10分間の休憩にいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   引き続き,「共有制度の見直し(2)」の御議論をお願いいたします。   部会資料4の第3から第5までについて,事務当局から説明を差し上げます。 ○脇村関係官 御説明いたします。   第3では,共有物分割を取り上げております。   共有物分割が適正かつ迅速に行われることは重要だと思いますので,共有物分割について,見直すべき点があれば,御指摘いただきたいというふうに考えているところでございます。   補足説明では,全面的価格賠償や固有必要的共同訴訟などについて取り上げておりますが,その点も含め,そのほかの点についても御意見賜れればというふうに存じます。   第4では,共有等に関する訴訟を取り上げております。   1では,筆界特定訴訟を取り上げておりまして,判例によりますと,共有地の隣地の所有者が筆界確定を訴訟提起するには,当該共有地の共有者全員を被告として訴訟に関与させなければいけないというふうにされていますが,例えば,隣地の所有者が死亡したが相続登記されていないケース,あるいは,隣地の所有者の住所の表示が登記簿上適切でないケースなどに申立人が負うことになる負担の軽減策,8ページの補足説明では,例えばということで,甲案,乙案,記載しておりますが,御意見賜れればというふうに思います。   また,補足説明1のとおり,共有地の隣地の所有者が筆界確定を求めるケースのほか,補足説明2のとおり,共有者の1人が自らの共有地と隣地との間の筆界確定を求めるケース,別にございますので,併せて御検討いただきたいと思います。   また,2では,登記名義人又は相続人が複数いる場合の関係訴訟を取り上げております。筆界確定訴訟とは違い,いわゆる固有必要的共同訴訟ではございませんが,執行の場面まで考えますと,所有権登記名義人が死亡したケースには,原告となる方は相続人を探索する負担を負うことなどが考えられますところであり,その点は,結論的には筆界確定訴訟と似たものでございますので,併せて御検討いただきたいと思います。   また,3では,その他の訴訟について,問題あるものについて御検討いただきたいという趣旨で書かせていただいています。御意見賜れればと存じます。   4では,共有者の管理者の訴訟権限を取り上げておりますので,不在者財産管理や相続財産管理を参考に,御検討いただきたいというふうに考えているところでございます。   また,第5で,その他ということでございまして,これまで共有を取り上げておりましたが,これまでに取り上げていなかったものを含め,取り上げるべきものがございましたら,御意見賜りたいというふうに考えているところでございます。 ○山野目部会長 初めに,第3の共有物分割について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 日弁連のワーキンググループで出た意見で,まだ生煮えのものですけれども,第3の共有物分割を解消する方法として,価格賠償による共有物分割のための非訟手続を設けることはできないだろうかという意見がありました。   訴訟か非訟かによって,どれだけ手続が軽くなるか,よく分からないところもありますが,やはり訴訟は少し重いので,非訟でどうかという意見がありました。 ○山野目部会長 現在の制度の理解では,形式的形成訴訟であるとされておりますが,形式的とはいえ訴訟になっているところを,形式的というふうに言われている側面,性格を端的に受け止めて,非訟事件にする可能性という問題提起を頂きました。 ○垣内幹事 いろいろ難しい問題がございまして,確たる考えを持てているということではないんですけれども,共有物分割に関して,資料で書かれているような全面的価格賠償の方法に関する判例法理を条文として明確化するであるとかいったことは,もちろん考えられると思いますし,また,今御発言のありました非訟手続化ということも論点になり得るところだというふうには思います。   その上で,そうした問題を考えていく際に,一つの理論的な整理と申しますか,理解として,そもそも共有物分割請求権というものを実体法上観念するのかどうかというようなところについて,実は従来,必ずしも明快ではなかったようにも思われるところで,仮にそういう請求権があるとした場合には,それが例えば全面的価格賠償を求める場合と現物分割を求める場合とで,同じ請求権なのか,それとも異なる請求権があるのかといったような問題もあり,ですので,専ら全面的価格賠償を求めて訴え提起したときに,現在の一般的な理解ですと,現物分割もあり得べしということなのかなと思いますが,そこは学説上は議論があるところかと思います。   仮に請求権的なものを認めていくとしますと,非訟事件手続化ということを考えるときに,請求権そのものについての純然たる訴訟手続が,どういう形で観念し得,そのことが非訟手続を考える際に障害となり得るのか,なり得ないのかといったようなことを検討していく必要が出てくるのかなというふうに考えておりますので,その辺りの問題があるのかなと,現時点では考えているところです。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   前回会議で中田委員から,共有物分割のところについても,いろいろ考え込むことがあるという御示唆を頂いていたところでございます。本日,部会資料で問題提起を差し上げています。   ほかに御意見はおありでしょうか。   この全面的価格賠償というものは,258条の文理をどういうふうに,逆さにしても出てきませんから,何とかなりませんか。法科大学院の授業において,日頃,条文は大切ですよと教えていた舌の根が乾かない後で,いや,条文にはないけれども,こういうものがありますというふうに話すことも,いいかげん何とか勘弁してほしいという気持ちがありますから,先ほどから手続の話も出ていますけれども,方法の実体的内容といいますか,中身自体についても,いろいろ御示唆があったら頂戴しておきたいと考えます。いかがでしょうか。 ○藤野委員 すみません,ちょっと手続的なところの話になってしまうのですが,7ページの最初の方に書いていただいている,いわゆる固有必要的共同訴訟の場合の共有者の氏名,名称,住所の探索のところの負担ですね。   この論点に限らない話だとは思いますが,ほかの論点だと,例えば,そもそも共有者の一部だけを特定してやるというような方法もあり得る一方で,やはりどうしても固有必要的共同訴訟でやらざるを得ないというものもあると思いますので,そういった場合も想定して,基本的には,なるべくここを簡略化するというところを意識して,今後検討いただければというところのお願いでございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。承りました。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,大体頂いたような御意見を踏まえて,検討を続けてよろしゅうございますか。 ○脇村関係官 蓑毛先生から非訟のお話を頂いたので,少しだけさせていただきますと,非訟事件において処理する方が,一般的に訴訟より軽いといわれていますので,一つの考え方ではないかなと思うんですが,他方で,今問題となっている一番の問題は,恐らく,誰が被告かを特定しないといけない,住所を特定しないといけないということだろうと思います。   恐らく非訟だとしても,どう作るかによりますが,例えば遺産分割審判と同じような仕組みということにしますと,恐らく,必ず全員の共有者について特定をして,相手方として,最終的には,審判の告知,送達等しないといけないということになりますと,そこの点について,恐らく訴訟と非訟で,それほどの違いはないのかもしれないのかなと思っています。   ただ,非訟にすることによって,訴訟よりは手続が柔軟にできるという点を捉まえて,何か仕組みができるのであればということは考えられるところですので,是非,すみません,それについて,何かあるのかというと,ないんですけれども,そういった非訟にすることによって,この辺が,うま味があるといっては変ですけれども,あれば,是非御意見賜りたいというふうに考えているところでございます。 ○山野目部会長 弁護士会から非訟手続というヒントを頂いて,検討していくことが有益かもしれませんけれども,何か今日の段階で頂いておく御発言はおありでしょうか。   そうしましたら,弁護士会からは,今日は問題提起ということで頂いたというふうに受け止めますから,細部をこれから深めていかならず,また弁護士会の先生方にも御協力をお願いいたします。 ○道垣内委員 言わずもがなのことだと思いますが,例えば共有物分割訴訟に関して,全ての共有者の氏名,名称,住所を探索しなければ提起することができないから,簡易に何とかできるようにすると言われますと,よく分かるような気もするのですけれども,先ほど,不明なときに持分を取得できる制度を作るという話がありまして,それならば,その制度でやればいいではないかという話になるのだと思うのですね。   今回は,第1クールとして,いろいろな手法というもので,今まで論じられたりしているものを,並列的に出して議論をしているということだろうと思うんですけれども,これがだんだんと煮詰まっていったときに,共有物分割で分からないときに簡略化するというところには賛成が多かったよねと,共有物の持分を行方不明の人から取るのは賛成が多かったよねと,何とかは賛成が多かったよねといって,並べてしまうということになりますと,それは,一個一個は,それはそうかもしれないけれども,同じ効果をもたらしうる制度について,どれがよいのかという議論もあり得るわけだと思うのですね。   ですから,今はいろいろな可能性について議論するということで,それは全然構わないと思いますけれども,仮に賛成とか,あるいは反対というふうにいいましても,いろいろな全体構造の中で本来は決まってくる事柄であるということの留保がついていると考えていただいた方がいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 第2読の議論が楽しみですよね。今の第1読で,いろいろ出していただいたところを踏まえ,と次は,ただ並べるのではなく,一つ一つの提案について,軽重を判断した上で,統一的な制度像を作っていくということが必要であるという御注意,御提言を頂きました。ありがとうございます。   ほかになければ,第4の1の筆界確定訴訟をお諮りしますけれども,よろしいですか。   第4の1,筆界確定訴訟について御意見を承ります。 ○岡田委員 岡田です。   この筆界確定訴訟に関することとは,少し,直接的ではないかもしれませんけれども,①のところですね。共有者全員の氏名又は名称及び住所を探索することとなる原告の負担を軽減する観点からという部分に関しましては,ちょうど先週法案が成立しました表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の施行が予定されるところでございますので,これらとのやはりリンクというのは,考えていくべきだろうと思いました。   それから,筆界確定訴訟ではないのですけれども,不動産登記法123条以下の筆界特定手続というのは,とてもフレキシブルな手続だというふうに現場では考えておりますので,前置的な考え方もありなのではないかなと,筆界確定訴訟の前置的な考え方をも,できるのではないかなというふうには考えているところでございます。 ○山野目部会長 筆界確定訴訟に,筆界特定の手続を前置することの検討の可能性,必要という問題提起を頂きました。   なお,岡田委員から御指摘があった,つい先頃国会で成立を見ました法律につきましては,政府の責任で法務省が立案して,衆議院に提出し,次いで,原案のとおり参議院で可決したものでありますが,当部会に対する諮問事項と密接な関係を有しています。   今,村松幹事が,まだ所用のため,お見えになることができませんけれども,ここの委員,幹事,関係官の皆様には御報告をしておかなければなりません。村松幹事が席に着きましたならば,御報告を差し上げるようにいたしますから,しばらくお待ちを賜るようにお願いいたします。   筆界確定訴訟について,ほかに御意見はおありでしょうか。 ○中村委員 筆界にかかわらず,少し全体的に申し上げさせていただきます。   訴訟代理人になる立場として,日弁連ワーキンググループでは,かなりの意見が出まして,まだ整理してお伝えできる段階ではないのですけれども,まず,平成8年の民事訴訟法の大改正の際に,共同提訴を拒む者がいる場合についての措置というのが大きなテーマになって,立法過程では,4分の3の多数者が提訴すれば,残りの者に対して,裁判所が参加命令を出して,そして,訴え提起を適法とするという案が挙がっていたにもかかわらず,結局見送りになったという経緯があると伺っております。   このような訴訟法上の大問題について,ここでどこまで踏み込めるのかということについての方向性を,なるべく早い段階で,少し先生方に御議論いただいてというふうに思っておりますのが一つです。   それから,ここで議論することになるとしてということで,筆界確定について申し上げますと,資料の8ページの甲案,乙案,丙案というふうにございますけれども,甲案については反対が多く,乙案については反対ないし慎重意見,丙案については,最も現実的であるという意見は多かったものの,やはり加わることができなかった共有持分権者のために,例えば訴訟告知を義務付けるなどの手続保障をする必要があるのではないかという意見が比較的多かったことをお伝えしたいと思います。   特に,訴訟告知がなされたとして,もし参加してくる者がいたとすれば,それは恐らく,代表してあるいは管理者の名前で訴訟追行している者に対する反対意見を持っている共有者であるということが想定されますので,管理者になっている共有者に補助参加するというのは,なかなか考えにくいものがあろうかと思います。   かといって,相手方に補助参加するというのも考えにくいので,では独立当事者参加になるのだろうかとか,いろいろ考えるべきことは多く,まだ1巡目の議論の段階で,具体的な案をお示しすることはできませんが,この問題をどこまで踏み込むかということと併せまして,2巡目の議論のところで,ワーキングのほかの弁護士とともに考えて,御提案させていただきたいと思っております。   筆界確定につきましては,そうやって,本来あるべき筆界はどこであるのかを探索するという面があって,実質非訟事件ですので,申立事項に拘束されないという面がありますから,そうしますと,ある意味,管理者とされた人に任せても,それほど支障はない可能性もあろうかと思うのですけれども,実務的には,所有権確認と併合提起されることなども考えるのでしょうか。その場合は,権利の得喪に関わるということになってきますので,本当に管理者に任せてよいのかとか,そういう意見も上がっておりました。   取りあえず,これだけお伝えいたします。 ○山野目部会長 往時の幾つかの民事訴訟法改正の際に議論されてきた内容と,ここで議論をお願いする事項との関連,また,それを踏まえて,この部会で議論をお願いする事柄の広さといいますか深さについては,今御注意を頂きましたから,過去の議事録,検討の経緯を改めて点検して,事務局の方で早急に整理するようにいたします。   その上で,もちろん,どの辺りまでの広さを持って御議論をお願いするかは,委員,幹事の御意見を踏まえながら,議事を整理していくことになりますから,何かこういうふうに決まっているというものはありませんけれども,今中村委員から御注意いただいたことを踏まえ,委員,幹事の皆様方に引き続き御意見を出していただければ有り難いと感じます。   引き続き,御意見を伺います。藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   筆界確定訴訟ですけれども,実際に,隣接地の所有者と起こした経験のある会社,業界から頂いている意見も反映いたしますと,やはり現実的なところで,先ほど中村先生がおっしゃられたように,8ページに挙げられている3案の中では,丙案がいいのではないかという意見が多数でございます。   また,共有者全員を被告とすべきか否かについてという9ページ,(3)の論点に関しましては,隣地の相続登記がされないことによる不利益を筆界の確定を求める者に負わせるというところは,考え方を一度見直していただけると非常に助かる,というのが,やはり強い要望として出ているところでございますので,理論的にどうするかというところまでは検討しきれておりませんけれども,要望として申し上げたいと思います。 ○畑幹事 全般にということなのですが,所有者を特定できないとか所在が分からないということは,資料の9ページ辺りにも書いてありますが,共有地でなくても生じる問題ですので,ここだけを切り取って,特殊な制度を設けるということでいいかどうかというのは,ちょっと疑問がないではないです。   ただ,余り法律家的に,従来の仕組みとの整合性ばかり言っていると,どこも前進できないということにもなりかねないのですが,少し考える必要はあるかなと思いました。   それから,当面の筆界確定訴訟についてですが,今までの法律状態というのは,やはり共有地の所有者というのは,それぞれが強い利害関係,最大の利害関係を有しているので,被告あるいは原告にしなければならないという考え方だと思いますので,そこからいくと,やはり弁護士会の議論の御紹介もありましたけれども,甲案,乙案辺りは,かなりドラスティックかなという感じがします。   丙案になると,もう少し今の状態との連続性が保てるかなという感じがするのですが,ちょっと確認なのですが,この管理者というのは,例えば,部会資料3で選任を検討していた管理者というのと同じなのか別なのかということを,ちょっと教えていただけますか。 ○脇村関係官 今,畑先生から御質問いただいた点ですけれども,一義的には,部会資料3で検討していたものを想定はしているんですが,この後,相続財産管理の見直し等もしておりますので,最終的には,相続財産管理に出てくる管理人も含めて,ここに入れるかどうかを併せて検討していく方向で今考えています。   そういった意味で,置ければ,置いた場合どうするかというところでございます,併せて検討していきたいと思っています。   あと,すみません,先ほど手を挙げさせていただいたのは,中村先生から平成8年の御議論がありましたので,少しだけ部会資料の説明をさせていただきますと,御存じのとおり,平成8年のときには参加命令の議論がありましたが,こと境界,筆界確定に限りますと,原告が共有者であるケースにつきまして,判例が,被告にしてしまっていいですよと,残りの共有者の人はですねとしています。そのため,参加命令の制度とほぼ同じものを実現しておりますので,ここでは,そういった意味では,その判例を前提にすると,あのときの議論というのは,一応解決済みなのかなと思っています。   ただ,ここで取り上げていない,例えば,共有者が原告になるようなパターンで,かつ,全員の代わりにやるようなケースについて,全員がそろわないといけないケースについて,全員がそろわなくてもできるという制度を検討するのであれば,当時の議論というのは,もう一度出てくるんだろうと思いますが,差し当たり,今レジュメに出てきています筆界特定ですとか,次に出てくる登記関係は,大体被告を想定して,2の方は被告を想定しているので,今のところは出てこないんですけれども,もし広がれば,出てくるんだろうなと思っています。   また,先生の方から頂いた話で,訴訟告知という御議論があったと思います。恐らく手続保障の在り方としては,訴訟告知あるいは人訴等における通知とか,そういったいろいろな方法があると思うんですけれども,相続登記されていなくて,相続人が見付からない,探索しないといけないときに,訴訟告知あるいは通知でやるときには,その通知とか告知をする相手方を誰が捜すかも,併せて問題になるのだろうと思っておりますので,今後また御意見いただきたいというふうに思っているところです。 ○山野目部会長 ただいま議論を差し上げたように,丙案に登場してくる管理者は,例えば共有物の管理者もありますし,この後の部会資料で御議論いただく財産管理の際の管理人のようなものも含まれ得るものと理解されます。   いずれにしても,実体上の管理者を丙案は言っております。民事訴訟法35条,37条が定めている特別代理人のように,訴訟手続との関係という手続の次元でのみ誰かの利益を代わって表現する人を考えているのではなく,ひとまずはそういう実体的な管理者概念を提示し,御意見を承ろうという趣旨でお出ししております。 ○畑幹事 どこからお話ししていいか,よく分からないのですが,まず,参加命令の話については,先ほど脇村関係官からお話があった平成11年の判例が,資料の10ページで紹介されているかと思います。   ついでに言えば,これも皆様御案内と思いますが,その後,判例上は固有必要的共同訴訟とされている入会権の確認という類型についても,本来仲間である共同権利者で提訴を拒む者すなわち原告に加わるべきだと従来考えられていた人を被告に回すことでよいという判例が,平成20年に出ておりますので,念のため申し上げておきます。   それから,今の丙案の話でありますがいろいろな管理者があり得るということを理解いたしましたが,いずれにしましても,この局面では,管理者がどういう義務を負うか,どういう職務を果たすべきかということが重要な意味を持つと思われます。   例えば,当面は管理者を被告にして訴えを起こすと。しかし,管理者の側では,相続人であるとか所在不明であるとかいう人を捜す義務を負うというように考える,手続保障という意味では,そういうように考える方がいいだろうと思います。参加形態のお話もありましたし,それも重要ですが,それ以前に,連絡が付くということが重要だと思いますので,そういう意味で,丙案の方向で行くのであれば、管理者の職務,義務のようなことが重要になってくるのかなという気がいたします。   取りあえず,その程度です。 ○中村委員 前回議論しましたように,仮に管理者が過半数で選任されるということになりますと,管理者から委任を受けて,訴訟代理人になったような場合に,全共有者の意見を代表していない管理者から受任して,一体どのような訴訟活動ができるのかというような,実務的な懸念もございまして,いろいろ議論が紛糾していたところですので,またこれから詰めまして,また御紹介させていただければと思っております。 ○山野目部会長 よろしくお願いします。   ほかにいかがでしょうか。 ○道垣内委員 丙案でいいのではないかという話が出て,その丙案における管理者というのは,前回出た管理者であるという話なんですが,ここに書いてありますように,相手方から筆界確定の請求をするときに,管理者相手にするというときには,反対当事者である当該第三者が管理者の選任を求めるという申立てをしなければいけない,必然的にそうなるわけですね。   ところが,私は,前回,管理人の選任について,第三者からの選任申立てを認めるべきではないというふうに申したのです。そして,仮に今回,ここでは丙案をするということになったとしましても,ここで第三者申立てによる管理者というのを認めるというふうになることが,より広い範囲で管理管理者について第三者申立てが一般的に承認されるのだという結論には結び付かないはずだということは強調しておきたいと思います。   筆界確定というのが,もちろん実体権の処分の意味合いも持ちますけれども,それでも両者のために確定をした方がいいだろうというふうに考えられて,処分性みたいなものは少ないというふうに考えたときに,この場合においては,第三者も申立てができるし,このことについては,第三者申立ての管理者は行為ができるというふうに定めることがあったとしても,それは一般的な話とは別であるということです。第三者申立てで管理者を選ぶべき場合はほかにもあるかもしれませんが,それは一個一個考えていかなければいけないのであり,1つのところが認められたといって,それは当然には拡大しないはずだということは言っておきたいと思います。 ○中田委員 ただいまの道垣内委員の御発言とも関係するかもしれないんですが,私,甲・乙・丙案を拝見して,一番極端な,頭の体操として思い付いたのは,検察官を相手にできないかということです。   と申しますのは,筆界確定自体が公益的な問題であるけれども,しかし,私的な利益とも関係するという性質があるといわれています。それから,管理者というのも,一体それは誰のためのものなのかについて,いろいろな御意見があります。それを一番極端なところまで突き詰めていくと,公益の代表者としての検察官ということもあり得るんだろうと思います。   ただ,多分それは,実現は非常に難しいと思うのですけれども,新たに管理者を置く際に,検察官を相手にするという一番極端な制度と比較して,どこで公益以外のものを組み込むのかを考えるという,頭の体操みたいなこともあり得るかなと考えました。 ○山野目部会長 甲,乙,丙の後に,丁案として検察官というものをおっしゃっていただきました。   筆界確定訴訟,恐らく行政事件訴訟法による公法上の法律関係に関する訴訟であろうと考えられますが,あそこで検察官が出てきている例は,余りないのではないかというふうに記憶しますけれども,しかし,この局面に即して,今中田委員がおっしゃっていただいたことは,興味ある御提案であるというふうに感じます。 ○市川委員 今検討していただいているところによりますと,共有者の一部が不明であるとか不在,住所が分からなくて,結局,連絡が付かないまま,筆界確定訴訟の結論が出て,対世効が出るという事態も想定され得ると思います。この場合,訴訟手続に全く関与せず,訴訟告知も不可能で,連絡がいかないまま結論が出たというような共有者にも対世効があるとしますと,後からそういう共有者が判決の効力を争うことができるということになるのか,その場合,どういう手続で争うことになるのかということも,当該共有者の手続保障という観点と,あとは筆界の確定の手続的な安定性という観点から,議論を整理する必要があるのではないかと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ここもそうですし,この後の訴訟,幾つかの論点も,御指摘のことを考えなければいけないところですね。ありがとうございます。 ○垣内幹事 大体主要な問題点は,既に出尽くしているかなと思いまして,民事訴訟法の研究者という観点から申しますと,おおむね畑先生が先ほどおっしゃったことに,私も同様に考えております。   この問題を最も抜本的に解決しようということですと,これはそもそも,一般的に筆界確定,境界確定訴訟について,固有必要的共同訴訟であるという考え方をやめるというので,これが資料ですと,9ページの(3)のところの考え方かなというように思います。   ただ,問題となっているのが公法上の境界ということで,必ずしも所有権そのものではないというところでワンクッションある中で,だから,所有者が全員そろっていなくてもいいではないかという議論は,感覚的にはありそうな感じもする一方,しかし従来は,少なくともそういう考え方は採っておらず,当該土地を所有している者,これは共有者を含めて,当事者適格があるということになっているということだとしますと,その一部の者だけでいいというのは,その一部の者には当事者適格者たる資格があるということを前提としつつ,ほかの人は捨象してよいというのは,同時に矛盾していることを右手と左手で言っているような形になりまして,なかなか一部の者だけでいいという理論を組み立てることは難しいのかなという気がしております。   ですので,いっそ中田先生が言われたように,検察官を被告とするということになれば,これはそういうものだということになるんだと思いますが,一方では所有者が関与すべきものであるとしつつ,一部だけでいいというのは,なかなか難しいのかなという感触を現在のところ持っているところです。   そうしますと,原則的には固有必要的共同訴訟なのだけれども,一定の場合に,それを緩和するということで,そういう観点から,甲・乙・丙案というものが提案されているということかと思います。   甲,乙,丙の順番で,あるいは丙,乙,甲の順番でハードルが上がっていくんだろうというのは,今まで様々な方がおっしゃったのと私も同様で,甲案はまず,死者を当事者としてするということは,なかなか難しいのではないかというように思いますし,乙案ですと,これも誰でもいいので,一部の人ということだとすると,なかなかそれも説明が難しいのではないかということがあります。そういう観点からすると,丙案が一番無難だろうという印象を,今のところは持っているところです。   ただ,結局,固有必要的共同訴訟であるという前提は維持するということですので,元々当事者適格のある人が漏れていたという事態が後で問題とされることはあり得て,その場合について,先ほど市川委員から言われたような問題があるということかと思います。   元々,筆界確定訴訟の効力というものがどういう性質のもので,その効果がどういう形で当事者及び第三者に及んでいるのかということ自体が,なかなかそう一義的に,従来明らかにされていないような面もあるように思われますので,そこの理論構成次第によっても,話は変わってくるところなのかなと思いますけれども,しかし,一般的に固有必要的共同訴訟であって,誰かが漏れていたということであれば,効果はそもそも生じないというような考え方が,従来一般的であったのかなというように思いますが,例えば,乙案とか丙案とかいう形で,一定の手続を踏んで,当事者適格が認められているのであると。したがって,元々その人たち,例えば管理者に当事者適格があったのだということになれば,これは,固有で誰かが抜けているという場合とは少し違うということになりますので,当然に効果がないということではないだろうということになりますが,逆にその場合に,手続保障が十分になかった第三者にどういう救済手段を講じていくかということを,今度は考えなければいけないということで,一種の第三者再審的なものを考えるのかどうか,考えるとして,どういう要件で考えるのかといったようなことを議論していく必要が出てくるのかなということを考えております。 ○山野目部会長 最後におっしゃった点は,一つ前の市川委員の御指摘を受け止めて,またお考えを披歴していただいたというふうに聞きました。   甲,乙,丙の各案の軽重,見方,特色について,今,垣内委員が整理していただいたとおりではないかと感じますし,多くの委員が類似の観点から御意見をおっしゃっていただいたというふうに聞きました。 ○畑幹事 提案するということでは,特にはないのですが,筆界確定訴訟は公法上の境界を確定するものだという位置付けになっていて,それを私人間で確定するのがいいかどうかというような話もあるのですが,先ほど岡田委員から御紹介があった不動産登記法上の筆界特定の制度を作った際には,それを行政処分として構成して,不服があれば,そちらのルートで争うというようなことも議論され,結局採られなかったわけですけれども,先ほどの中田委員の御発言との関係でいえば,公益に関わるということを端的に反映するとすれば,そういう選択肢もないではない。ただ,一度議論して,採られなかった選択肢ではあるということです。 ○山野目部会長 筆界特定の制度を設けた際の行政事件訴訟として受け止めるべきではないかという発想自体は,恐らく間違っていなかったと考えますが,経緯のある議論でありまして,今,畑幹事から,それを思い起こしていただいた上で,こことどういうふうに議論を関連させるかという観点の御指摘がありました。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,ひとまず,その次に向かってよろしいでしょうか。   2の登記名義人又はその相続人が複数いる場合の登記関係訴訟についてお諮りします。いかがでしょうか。   こちらも11ページに,甲,乙,丙の三つの案をひとまず,お考えの題材として御提示しています。 ○松尾幹事 先ほどの筆界特定の話と,それから,今回の部会資料4,第4の2の,例えば取得時効の被告とするときの話というのは,こちらの方が重たいというか,実体法上の問題ともどうしても絡んでくるので,その点を考慮に入れた整理が重要だと思います。   そのときの議論の仕方として,あえてそうしていただいていると思うんですけれども,筆界特定のときの議論を平行移動させる形で,こちらでも甲・乙・丙案というふうにしていただいていますけれども,11ページの丙案の管理者を選んだときに,なお書き以降の「登記義務者であるかどうかは,実体法上の所有権や共有持分権を有しているかはどうかではなく,登記上の記録により決せられるものであり」ということで,形式的な被告として,取得時効の要件を満たしているかどうか判断することが想定されています。   このときの管理者の法的な地位を,あくまでも一種の形式的なものというふうに考えていいのかどうかということです。例えば,強制収用の場合は,相手方が分からない場合には不明裁決という制度がありますが,その実体権の処分に関わる要件を満たせばという制度です。したがって,ここでの管理者の権限としても実体法に関わる権限か,そうだとすればその法的根拠は何か,不明の所有者または共有者と法的にどういう関係に立つかを詰めておく必要があると思うのです。不明の所有者や共有者との関係でも取得時効の制度を適用可能にするために,やはり何かの制度,ルールがなければいけないと思うわけです。そのような権限をもつ管理者の制度が筆界特定でも用いられることは可能だと思います。   すみません,ちょっとまだまとまりませんけれども。 ○山野目部会長 恐らく今度は,検察官は出てきませんね。挙げられている甲,乙,丙の範囲で議論をお願いするということにならざるを得ませんが,いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 まだ私自身の意見は固まっておりませんが,弁護士会内のワーキンググループでの議論を御紹介します。   先ほど中村委員からありましたとおり,弁護士会での多数意見は,筆界確定訴訟について,丙案プラス訴訟告知を義務付けて,手続保障への配慮をして欲しいというものでした。そして,この2の場合には,より所有権そのものに関わる問題ですので,甲案・乙案は難しい。認められるとすると丙案ですが,この場合でも,管理者を選任した上で,かつ,分かる範囲で他の相続人等をきちんと捜して訴訟告知をした上で,訴訟に参加させることが最低限必要なのではなかろうかと。   それでも,手続保障として不十分だという意見もあり,今議論が止まっているところです。 ○山野目部会長 先ほど,一つ前の筆界確定訴訟の議論で,中村委員から,弁護士会の方でお考えになり始めたという御構想の御披瀝を頂きましたが,あれは筆界確定訴訟に止まる話ではなくて,ここも射程に入れて弁護士会の先生方に御検討いただくことがかなうというふうに受け止めますから,引き続き,よろしくお願いいたします。 ○道垣内委員 先ほど松尾さんが何とおっしゃったのか,ちょっと私,十分に理解できなかったのですが,丙案の管理者って,訴訟活動としては,なるべく取得時効の成立を否定するように頑張るんですよね。つまり,形式的な人ではなくて,所有権を守るべき人であり,そのことは,よく確認しておいた方がいいんだろうと思います。   ですから,善良な管理者の注意を持って,所有権が取得時効で取られてしまわないように頑張ると,そういう人だということです。 ○脇村関係官 11ページの甲案のなお書で書かせていただきましたのは,理屈の問題として,従前,共有の管理者,所有権の管理者のような議論をしていましたけれども,この訴訟構造でいきますと,必ずしも所有者とは関係がない,登記名義で被告が決まってくるので,そこは少し特殊ではないかということを書かせてはいただいております。   ただ,もちろん仕事としては,登記名義人のために働くわけでございまして,更に言うと,登記名義があることで,本当はその奥にあるかもしれない所有権を守ることを仕事として,任務としてやっていくことを想定しており,そういう意味で,このなお書は,従前,共有の管理者と言っていたけれども,ちょっと,法的には少し違うかもしれないなということを書かせていただいた程度でございますので,仕事としては,頑張ってやっていただくことを想定はしていたところでございます。 ○山野目部会長 全ての人事訴訟が,そのような雰囲気であるかかどうかは存じ上げませんけれども,人事訴訟の法廷を傍聴したある人の体験記では,検察官が被告になっていて,請求原因事実を原告の側が陳述するのに対し,裁判所が認否を述べてくださいと求め,請求原因第1項はどうですかと言うと,検察官は,不知,第2項はどうですか,やはり不知と言って,不知,不知,不知というふうに陳述を繰り返す役割をしていたのが,非常に印象的だったという話でありまして,ここもきっと,管理者が不知,不知,不知と言うかどうか分かりませんけれども,道垣内委員がおっしゃった,守る方向でディフェンシブに動くものでしょうね,という感覚は,そのとおりでしょうし,脇村関係官からも,それを踏まえた御説明があったと感じます。   それからあと,民事訴訟法は,ここの管理者とは異なりますけれども,特別代理人を選任した局面については,民事訴訟法32条が定める範囲でのみ訴訟行為をすることができると限界の枠付けをしているような工夫もしていて,いろいろな類似の局面がありますから,それらをも参考とし,道垣内委員が留意してほしいとおっしゃっていただいた点を引き続き検討していくことになるものでありましょう。 ○中田委員 御検討していただければというだけのことなんですけれども,取得時効については,原始取得であるという考え方が一般的であると思います。もちろん,例えば道垣内委員などから新たな問題提起がされてはいるわけですが。しかし,登記上は移転登記がされるわけです。   移転登記をすることに伴う幾つかの問題点というのは,ここに出ているんですが,仮に原始取得だというふうに考えたときに,登記手続の一部でも緩和できないだろうか,それによって,今回の問題に対応できないんだろうかということを御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 登記制度の議論をする際,時効取得を含む様々な登記制度の諸局面での登記手続の簡略化を論点として取り上げます。   中田委員が御示唆のとおり,実体と切り離して議論できることではありませんから,今日の御議論を思い起こしてくださいというふうに,皆様方にお願いして,今御指摘いただいた論点を取り上げようと考えます。   そのように,今のところ考えていますけれども,よろしゅうございますか。ありがとうございます。 ○佐久間幹事 ちょっと,もう既に議論が進んでいるときに,今更聞くのは恥ずかしいんですけれども,この2の御提案は,取得時効の完成には争いがなくて,登記名義を移す移さないということだけが問題となっているという局面なんでしょうか。   なぜそんなことを伺うかといいますと,10ページから11ページにかけて,これは,実体法上の問題ではなくて,要するに登記の問題にすぎないんだからというふうに書いてあるんですけれども,争いになる場合は,通常,取得時効の完成についても争われるのではないかと思うんですが。それを除外しているのであれば,私,これ別に,あり得るかなと。除外されていないとすると,権利の得喪に正に関わることなので,権利を喪失する人を相手にしないで,こういう手続的な措置だけで済むのかどうか,疑問に思いました。   私の勘違いでしたらそれでいいんですけれども,勘違いでなかったら,このように思います。 ○脇村関係官 議論の前提としては,所有権の得喪について争いがある,取得時効の完成について争いあるケースも想定して,議論をしていたんだろうと思います。ですから,逆に言うと,甲案とか乙案というのは,そのケースであると妥当ではないという意見があるのではないかと。   一方で,丙案についても,これでも足りないのではないかということで,丙案は法的構成でいきますと,一応所有権を失う,登記名義人で所有権,負けてしまう人がいるわけですけれども,そういった人を代理人あるいは訴訟担当的にすれば,一応の手続保障は整うかもしれないけれども,実際どうなんだろうという,そういう議論だと思いますので,ここでの議論では,正に,取得時効について争いがあるケースも含めてどうするか。ただ,本当にそれでいいのかというのが,いろいろ御意見いただいたところだろうというふうに思います。 ○山野目部会長 争いがある場合を除外するルールというものは作りにくいように感じますから,含まれているものではないでしょうかね。   原告は,20年前占有していた,20年後占有していた,以上,請求原因事実を陳述しますと述べると,被告は,どちらも知らないというところまでは,知らないと言ってほしいですが,更に積極的に,平穏,公然,自主占有を争うような抗弁まで出してくださいというようなところを期待するところまで役割をお願いするかどうかということは,少なくとも手続的な理屈では余り割り切れなくて,道垣内委員の言葉にあった善管注意義務みたいなものをこの管理者は負っているものでしょうという実体的な理解も見ながら,どういう役割をお願いするかを考えていかなければならないと考えます。   佐久間幹事,お続けください。 ○佐久間幹事 そうだとすると,私は,特別な,こういう方策を講ずることには反対だということでございまして,各共有者を相手としなければならないし,共有者が不明である等の場合については,不明者がある場合の措置を,これから財産管理のところなどでも講ずることになるであろうと思われますので,そちらに委ねることが適当だというふうに考えます。 ○畑幹事 私も,先ほど申し上げたように,所有者が不明であるとか所在が分からないというのは,共有の場合に限らない問題であろうかと思いますので,今佐久間幹事がおっしゃったように,ほかのところの話に完全に委ねるのがいいかどうか分かりませんが,ほかのところでの話と併せて考えていく必要があるだろうということは思っております。   それから,ここでも,取得時効を理由とするという訴訟に限定されているかに見えるのですが,典型的にそれが問題になりそうだということでしょうか。ほかにもあるのではないかという気もするわけですが。   それから,甲案,乙案,丙案についていえば,先ほども申し上げたとおりで,甲案,乙案はかなり厳しく,やれるとすれば丙案で,本来の権利者の手続保障のようなものをどう確保するかということを考えるということかなという気がいたします。   それから,これは,この次の12ページの3にも関わってしまうのですが,実際にそういうことはないのかもしれませんが,登記手続請求とその他の請求を併合提起するようなこともありはしないかと思われるので,便宜上分けられたのだと思いますが,次の3の問題も,併せて考える必要があるだろうというようには思いました。 ○山野目部会長 理論上は,取得時効に限る話ではなくて,もちろん売買をしたけれども,移転の登記をしてほしいとか,そういうものも含まれます。典型的に現実社会で問題になる場面として,取得時効を話題として提供さしあげました。   それから,畑幹事から御注意いただいたとおり,2の話と3の話は,請求が客観的併合で定立される場合がありますから,完全に切り分けられる話ではなく,御示唆があったとおり,便宜上,二つ分けてお諮りしているというところでございます。 ○垣内幹事 ここでも畑先生の御意見と,基本的に同様なんですけれども,先ほどの筆界確定訴訟の場合とこの場合とで,似ているところもあるわけですが,何が違うのかということを考えてみますと,先ほど来御指摘ありますように,こちらの方は,所有権そのものが問題となっている程度というのがより強いということで,より具体的に申しますと,筆界確定訴訟というのは,そもそも訴訟物たる請求権が観念できるのかどうかがよく分からないものだというところで,それがまた難しいところでもあるかと思いますけれども,こちらの方,2で検討されているもの,これは登記請求権が訴訟物だということが明らかで,かつ,その実体法上の請求権そのものは,登記名義人の相続人全員に対して立つべきものであるということですので,その中で,例えば乙案のように,一部の者を被告とするということになりますと,これは典型的な訴訟担当ということになるんだろうと思います。   筆界確定の場合が,訴訟担当なのかどうかというのは,ちょっとよく分からないところがあって,そこはそちら独自の問題がありますが,こちらの方は,そういう問題として考えることになるということで,それを正当化するだけの理屈が立てられるのかというようなことが問題となり,丙案であれば,もう少しハードルは低いかもしれないということかと思います。   ただ,他方で,先ほど来畑先生からも,他の場合との整合性ということの指摘がありますけれども,いろいろな類似の事例というのが,いろいろな場面で考えられるかと思うんですが,若干話としては遠くなってしまうんですけれども,例えば,この本日の資料ですと,登記がきちんとされているかどうかという点に着目して,相続登記がされていない場合の対応が問題とされているわけです。   この場合について,相続人の側では,きちんと登記をしておけばよかったのに,していないと。そのことによって,原告側にとっては提訴困難を生じさせているという問題があって,そういった問題意識が,こういう提案に反映しているところがあろうかと思います。   似たような問題といたしまして,これは古くから,会社等の法人の場合に,例えば代表者の登記が,不実の登記がなされているとか,変更されないままになっているというときに,裁判実務上,判例の考え方ですと,これは登記を信じて訴えても駄目であって,真の代表者を代表者として訴訟遂行させる機会を与えない限り,適法に判決することはできないという考え方が採られております。   それに対して,仮にここで提案されているような規律を導入するということになりますと,登記がされていないことを理由として,真の義務者を当事者としなくても訴訟遂行ができるという場合を認めることになりますので,従来の考え方からの飛躍はかなりあるという見方もできるのかなというように感じております。   他方で,ただ,訴訟告知を組み合わせてはどうかというような御意見も出ておりますけれども,従来,会社等を被告として,しかし,真の代表者を代表者としないで,送達等もするという場合についても,会社の所在地に代表者に対する送達を行うことによって,会社に対して訴え提起があったということを知る機会を与えておくことが重要であり,それがなされていれば,会社としても,後でその結果を覆せないのではないかといったような議論は,判例を前提としても,主張されているところでありますので,訴訟告知等を充実した形で仕組むとすれば,それほど従来の,その種の考え方も含めて考えると,その発展系として捉えるということはあり得るのかもしれないなというような印象を今のところ持っております。 ○松尾幹事 先ほど道垣内委員のおっしゃった,管理者については,これは所有権を失うということですので,時効取得が成り立たないように善管注意義務を負うという点で,そこは私も同じ考えです。   ただちょっと,先ほどもっとはっきり申し上げればよかったんですけれども,申立権者が誰かということと絡んで,後に改めて管理者の話も出てまいりますので,あるいはそちらでまとめて議論すべきかもしれませんけれども,確認させてください。例えば,部会資料4の11ページから12ページ,登記名義人がA,B,Cで,占有者がDだというときに,A,B,C,いずれも所在不明でどこにいるか分からない,場合によっては数次相続生じているかもしれないというときに,Dとすれば時効取得を主張するために,誰を相手に訴訟を起こせばよいかという場面で,この管理者の制度を創設するとして,Dは申立権者になれるのかどうか,その議論はどこかでされるのか,そこを確認させていただきたいと思いました。それが明確にならないと,余り使える制度にはならないのではないかというふうに感じます。   この点について,申立権者の法的地位というのは,微妙なものがあるという点を申し上げたかったということです。 ○山野目部会長 丙案に登場してくる管理者は,先ほどの筆界確定訴訟のところも,ここで議論をお願いしている丙案の場合も,登場してくる管理者が共有物の管理者であるようなこともあれば,財産管理における管理人であるような場合もあって,松尾幹事から今お尋ねがあった,それぞれについての申立権者をどうするかということは,それぞれの制度を検討するに際し,引き続き御検討をお願いしていくことになります。   その上で,少し前の御発言で,道垣内委員から御注意があった点は,訴訟を提起する必要との観点から,申立ての機会を認めるかどうかということ自体は議論してもらってよろしいけれども,そのことが一般的に,第三者は申立てをすることができるという議論に,なし崩し的にといいますか,膨張していくということについては,自分は非常にそこのところは,そういうことになると困ったものであるという観点で見ていきたいというお話も頂いていたところです。   どうぞお続けください。 ○松尾幹事 正にその点で,およそ占有者からの申立てということは考えられないのか,今山野目部会長から確認していただいたように,それぞれの管理者のところで各論的に議論した方がいいと思いますけれども,やはり最終的には,その問題は避けて通れない問題かなと思いました。 ○山野目部会長 松尾幹事の御意見は,丙案で仮に制度を構築していく場合において訴訟提起の必要があるような局面は,なるべく積極的に申立権を与えられる利害関係人というふうに扱うべきであるという御意見をおっしゃっていただいたと受け止めてよろしいですか。 ○松尾幹事 はい。これは,後で不在者の財産管理人の問題等も出てまいりますので,そこで改めて検討する必要があると思いますが,その可能性も含めて,やはり議論をせざるを得ないと思っています。 ○潮見委員 松尾幹事のお話にもありました,申立権者をどうするかとか,管理権者をどうするかということについては,基本的に,今回問題になっている,例えば筆界確定にしても,あるいは登記の手続訴訟についても,単なる手続的なものではなくて,それ以外に実体法上の権利の得喪,これは道垣内さんとか佐久間さんが言われたことだと思いますけれども,そういう問題にも関わってきていますので,これから整理していただく際に,単に訴訟提起上の便宜性も大事だと思いますけれども,訴訟手続上の便宜という観点だけではなくて,背後にある実体法上の権利の得喪に関わる問題なので,そういう観点から,誰を申立権者として捉えていくのが,それぞれの権利とかシチュエーションごとに適切なのか。あるいは管理権者にしても,管理者にしても同様に,どのような者が,この場面においては相当なのかというのを,実体法上の権利義務関係を意識しながら組み立てていくという方向で検討をしていって,紛れのないような,あるいは場合によったら,規定自体を断念するというような判断をしていただければいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 ごもっともな御意見であるというふうに受け止めました。   2のところ,よろしゅうございますか。 ○山田委員 道垣内さんも手を挙げていらっしゃったので…… ○山野目部会長 では,山田委員,次,道垣内委員,お願いします。 ○山田委員 2のところですが,1も多分,共通の問題だと思います。   所有者不明という要件が,第4のところにどういうふうに関わっているのかというのが,ちょっと分からないので,質問になるかもしれません。   しかし,意見の形で申し上げますと,所有者不明ということ自体も,どう定義するかということが大問題ですが,その要件を定めた上で,それに当たるものであれば,1の筆界確定訴訟,2の登記関係訴訟について,何らかの方便というか,方策を考えると良いと思います。しかし,丙案なのではないかと思うんです。必要性というものは十分にあるように思いますので,あとは理屈をどうやって構築できるかということになるかなと思います。   ただ,太文字のところだけ見ますと,7ページの第4の1の筆界確定訴訟,10ページの2ですが,どうも所有者不明であるということがなくなっていて,2だけ見ますと,登記名義人又はその相続人が複数いるというだけで始まっていて,甲案,乙案,丙案を見ると,相続登記がなされていないというのがポイントかなと思うんですが,相続登記がなされていないけれども,すぐに所有者は見付かるというのだってあるわけで,そういう場合を含めるべきではないだろうと思うのですが,事務当局がどういうふうにお考えになっているか,今の段階で明らかであれば,おっしゃっていただきたいですし,いや,そこはそうですねということであれば,今後の議論では,その問題を明確に進めていただければと思います。 ○脇村関係官 想定していましたのは,相続登記がされていなくて,よく分かっていないケース,相続人がすぐ分からないようなケースを想定しているんですけれども,どういった仕組みとするのかについては,相続登記されていないようなケースについて,管理人という制度を作り,さらに組合せとして,先ほど中村先生がおっしゃっていた告知を入れるかとか,そういった組合せはあるのかなとは思っていました。ただ,作り方によっては他に波及してしまいますので,その辺の波及をしないのかも含めて,慎重な検討が必要なんだろうなというふうには考えていたところです。 ○山田委員 繰り返しですが,私の理解ですと,所有者不明という要件がどうであれ,それに当てはまる場合と相続登記がなされていないというのとは,大分というか,差がある。小さな差ではなくて,社会的に,それは違うだろうと。一方は他方も含むんだと思うんですが,違うだろうと思いますので,そこは,どこかの段階で議論をしていったらいいだろうと思います。 ○道垣内委員 私が発言しようとしていたことよりも,ずっと重要な議論がされていると思いますので,まず,その点について一言。所有者不明ではないときにも拡大していくかもしれませんと言われたら,もうお話になりませんとしか言いようがありません。   それはさておき,私は,佐久間さん,松尾さん,潮見さんの話を伺っているうちに,私が,この管理人というのは所有権を守るんですよねというふうに言ったときに,私が,どうもよく分からないなと頭の中で思っていた問題が何であるのかがだんだん分かってきましたので,それを発言させていただきたいのです。松尾さんは,時効取得の例で,A,B,Cという共有の人がいて,Bはいるんだけれども,A,Cはいないという話をされましたが,そのときには,Bさんには管理者を選ぶインセンティブがないんですよ。   つまり,自分が共有持分権を有する土地について,第三者の時効取得を理由に,登記がなくなっていくわけですよね。そうすると,あなた,管理者を選びなさいと言われても,いやいや結構ですというふうにいって,放っておくのが,彼にとっては最も合理的な行動であって,やらない方がいいという感じがします。そうすると,Bが選ぶことはあり得ないだろうと思います。   そうすると,相手方が選ぶのかということになりますが,これまた例の,親権者と子どもの利益相反行為における特別代理人制度みたいな話になりまして,特別代理人制度というのは,客観的な立場で判断をするということが予定された制度であるところ,特別代理人のリストを裁判所が持っているわけではなくて,利益相反行為をしようとする親権者が自分の知人を紹介することになり,そうすると,その者は親権者の影武者であって,なかなか子どもの利益が図られないということがよく言われますが,同じになりかねないですよね。   第三者が管理者の選任の申立てをしたとき,管理者候補者のリストが裁判所にあるわけではありませんから,第三者は,自らの有利にやってくれる人を管理者として推薦し,その者が選任されることになりかねない。そういったときに,どうやって所有者の利益,所有者というのは,時効取得される前の所有者ですが,その者の利益を守るための管理者を選任できるというシステムにするのかというのは,結構難しいような気もします。そういうのも含めて考えないといけないのであり,さあ管理者を選びますというだけではダメだろうという気がいたします。 ○山野目部会長 山田委員が御指摘になった問題、つまり筆界確定訴訟や登記関係訴訟において,所有者不明が少なくともゴシックでお示ししている部分に要件として掲げられていないという問題は,これから法制化の見通しが得られるのであれば,当然のことながら,要件として明記するということを努力していかなければいけない事柄でありまして,脇村関係官が拡大していくおそれがあると言ったのは,拡大していけばいいという意味で言ったのではなく,当然,御注意を受け止め,拡大がないように心掛けるというお話でありますから,引き続きそこは検討しなければなりません。ありがとうございます。   2のところについて御議論いただきました。たくさんの御意見を頂きましたけれども,丙案をもう少し深く考えていこうという御意見が複数ありました。   それから,所有権の得喪に関わる重大な問題であるところから,そもそも丙案のような方向ですらも,考えることは相当慎重に見なければいけなくて,他の制度に委ねるとか,他の制度との関連を考えて,解決を見いだしていくべきではないかという御意見も頂いたところであります。引き続き,事務当局において,議事を整理してもらうことにいたします。   先に進みます。   12ページの3のところは,畑幹事から少し御指摘がありましたから,何かあれば承るということで,3と,それから13ページの4の共有物又は遺産の管理者の訴訟権限のところ,併せて御意見を承ります。どうぞ御発言を下さい。 ○垣内幹事 すみません,よろしいでしょうか。   今のところでなくて,直前のところについて,ちょっと追加で発言させていただいてもよろしいでしょうか。 ○山野目部会長 お願いします。 ○垣内幹事 私,いずれの問題についても,筆界確定についても登記請求についても,丙案がこの中では最もありそうではないかということを申し上げたんですけれども,丙案を仮に今後,更に検討していくということだったというときに,ちょっと私,この部会全体の議論の中で,財産管理に関する話というのが,いろいろなところで,いろいろな形で出てきているような感じがいたしまして,十分に私自身が整理できていないところがあるんですけれども,今日の丙案というのは,いずれもこれは,管理者というものが相続人全員のために訴訟遂行するということを考えているのかなというふうに拝見を致しました。   それはそれとして,一つあり得る考え方だと思うんですけれども,他方で,分かっている人は相手にした上で,分からない人を代表する人を誰か選任するということも,ほかの制度との組合せによっては,あり得るというように思いますので,その場合には,分かっている人は自分が被告になり,そうでない人は,その人たちのための管理者というものが出てくるというようなバリエーションもあるのかなというふうに理解をしているんですけれども,したがって,そういうバリエーションも含めて,今後検討していくということになるのか,ちょっと前提にもし誤解があるようであれば,今教えていただければ有り難いと思います。 ○大谷幹事 今御指摘いただいたとおり,恐らく,今の相続財産といいますか,遺産の管理人的な者がいるとして,それは相続人全員を代理するという形が一つ考えられるというふうに,今ここで御議論いただいているのは,そういうところだと思っております。   今御指摘のあったところ,例えば,分からない人を特定して,それが何人かいるときに,何人かを同時に代理する人,それは不在者財産管理という形で考えることもできると思いますし,後ほど出てきます財産管理との関係で,今のところ,並列的にお示しをしておりますので,こちらの方としても,今の時点で整理が付いているわけではございませんけれども,今後その方向で,しっかり考えていきたいというふうに考えております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   それでは,3と4のところについての御意見をお出しください。   3のところ,特段御指摘がなければ,4のところで,共有物又は遺産の管理者の訴訟権限について御意見を承った上で,ここの検討を続けようと考えますけれども,いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 4の共有物又は遺産の管理者の訴訟権限のところを議論する際に,日弁連内で問題意識が出てきたのですが,共有者が,共有者の1人ではなくて,第三者を管理者として選任した場合に,その者が訴訟を遂行したり,あるいは法的な紛争について交渉したりすることが,弁護士法上の非弁行為にならないかという議論が出ています。   弁護士法72条は,法律に特段の定めがあれば非弁行為にならないと定めていますので,民法に管理者の制度ができて,管理者の権限として訴訟追行等が認められれば,適法になるのでしょうが,この制度が濫用的に使われては困ります。   今後,具体的に共有物の管理者が,どのように選任されて,どのような権限・義務を負うかが明らかになるにつれて,問題点が明らかになると思いますので,今後の議論を見据えながら,また意見を申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 司法書士法29条との関係でも考えなければならない問題があるかもしれません。ここの本題ではないかもしれませんけれども,留意してまいるということにいたしましょう。ありがとうございます。   そのほかに,いかがでしょうか。   それでは,部会資料4の14ページ,第5,その他のところを検討しておかなければなりません。ここについて,御意見をおっしゃっていただきますようお願いいたします。 ○平川委員 その他ということですので,やはり「不在者不明」という概念が先ほど出ましたけれども,その辺は,もう少し突き詰めて考えていかないと駄目ではないのかと思いました。   「登記簿上は不明」ということと,その情報を,例えば住民票との連携をどうしていくか,どういう努力をすれば不明者として認定されるかどうかも含めて,議論が必要なのではないかと思いました。 ○山野目部会長 第5回会議ないし第6回会議において不動産登記制度の議論をする際に,登記と戸籍との情報連携のことを議題として,問題提起を差し上げようと考えています。   ただいまの平川委員から頂いた御指摘を忘れないように,部会資料を準備するようにいたします。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   共有のところの関連で,もしかすると,この先に予定されているのかもしれませんが,入会権の問題というのがここの中に入ってくるのかどうか,今回の検討に入ってくるのかどうかというところを,ちょっと教えていただければと思います。 ○山野目部会長 藤野委員に,もう少し入会権のことの問題意識をおっしゃっていただいた方が,どういうふうに受け止めたらよいかが分かるかもしれません。 ○藤野委員 そうですね。入会権に関しても,登記名義と実体関係に齟齬があって,対応に困るケースがあるのではないかと思いましたので,射程に入るのかどうかということをお伺いしたかったところです。 ○山野目部会長 分かりました。   登記名義との関係では,表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律で措置されている部分がございます。しかし,実体関係については,御指摘の点も含めて,課題が種々想定されるところでありますから,また藤野委員から具体的な御提案を頂けるかどうかも含めて,事務当局と意見交換をお願いするかもしれませんから,よろしくお願いします。 ○畑幹事 申し訳ありません,ちょっと,4の訴訟権限の話に戻って,一言だけ申し上げてよろしいですか。   何も言わないのもどうかと思いまして,ですが,いい考えがなくて恐縮なのですが,訴訟権限の問題はかなり難しいと考えております。   つまり,訴訟というのは,勝つかもしれないし,負けるかもしれないものですので,実体法でイメージしている処分行為であるとか,管理行為であるとか,保存行為であるとかいうものに,うまく当てはまらないところがあるので,ここでは処分に準じるようなものとして扱うような提案になっておりますが,なかなか簡単ではない。   取り分け,目的財産の帰属自体を争うような場合であれば,何となく処分に近いかなというイメージがありますし,そういうことを言った判例もあるのですが,もう少し軽微な訴えについてはどうかというようなことになると,そこまでのことでもないという見方もあり得るかと思います。   またそれは,管理者の選任のされ方にも恐らく影響して,みんなが,共有者がみんなで,この人にお願いしますと選んだのであれば,それなりの権限を認めるというのも,それほどおかしくないという見方もあり得そうですし,選任のされ方についてのルールと併せて考える必要があるのではないかと思います。 ○山野目部会長 4のところ,御議論いただいていませんでしたから,畑幹事から御意見を頂き,ありがとうございました。   第5のその他のところも,よろしいですか。   それでは,共有制度の見直しの(1)と(2)の審議をお願いいたしました。   論点は盛りだくさんであり,それぞれについて,多種の貴重な御意見を頂きました。事務当局において議事を整理いたします。   ここで休憩にいたしましょう。           (休     憩) ○山野目部会長 始めます。遺産分割の促進等に関する審議をお願いいたします。部会資料5について,事務当局から説明を差し上げます。 ○脇村関係官 では,説明させていただきます。   第1では,遺産分割の期間制限を取り上げています。   遺産共有の状態は遺産分割により解消されますが,実際には遺産分割がされず,被相続人名義のまま,遺産に属する土地が放置されることも少なくないと思いますので,期間制限を設けて,遺産分割促進することについて検討することが考えられます。   検討に際しましては,期間をどうするか,起算点をどうするかといった点や,期間徒過の効果について検討することが考えられます。   部会資料では,遺産分割は被相続人ごとにされるもので,ある土地について,数次相続が生じている場合に,被相続人ごとに,原則として,全ての遺産を調査した上で,それぞれ遺産分割手続を実施しなければならないことや,遺産共有と通常共有が混在している場合にも,遺産分割と共有物分割の手続をそれぞれ別個に置かざるを得ないことになることなどを踏まえ,期間徒過をした場合には,法定相続分に従って分割されたものとみなし,具体的相続による分割の主張をすることができないものとして,遺産に属する各財産につき,共同相続人全員を共有者と,遺産共有の状態から,法定相続により定まる持分割合の通常共有の状態に移行させということについて取り上げております。御検討いただければと思います。   そのほか,相続放棄との関係など,いろいろと問題がございますので,御意見賜れればというふうに存じます。   第2では,遺産分割の期間制限以外に,相続による遺産承継を円滑にし,相続により土地の所有者が不明になることを防止するための他の方策が何かあるかということについて取り上げております。   補足説明では,例えばということで,相続により土地の所有者が不明になることを防止するために,相続の開始前に,相続開始後の土地の帰属先をあらかじめ定めるために,何らかの方策について取り上げております。ニーズも含め,御意見賜ればというふうに存じます。 ○山野目部会長 御覧いただいておりますとおり,第1のお話と第2のお話は,やや性格を異にいたします。そこで,分けて御議論をお願いすることとし,まずは第1,遺産分割の期間制限についてお諮りを致します。どうぞ御意見をおっしゃってください。 ○潮見委員 第1のところですけれども,このままの形では,とてもではないが賛成することはできません。見て,少しびっくりしたというのが正直なところです。   三つぐらい,四つになるかもしれませんけれども,言いたいことを,最初ですから申し上げさせていただきたいと思います。   一つ目は,所有者不明土地問題というのは重要な問題だということは,私自身は理解しているつもりです。しかし,それだからといって遺産分割制度から外れるものを作るのかよという点です。   遺産分割というのは,相続の中でも最終的な財産の帰属を決めるものです。それなりに重要なはずです。所有者不明土地問題で,そうした一般的な制度としての重要性を有しているものを本質的に変更するような仕組みを導入することに対して,違和感を抱くところです。   遺産共有状態を解消するのは,基本的には権利者の判断ですし,消滅時効あるいは除斥期間的なものがなじむような性質のものでは到底ないように思うところです。   土地の持つ公共性とか,あるいは公益性の観点から,土地については公共の福祉を優先させるとしても,取り分け遺産共有の場では,このことを理由にして,他の遺産に属する財産を含めた遺産全体に対する共同相続人の利益だとか,財産管理権とか処分権を奪うということについては慎重でなければいけないのではないか。そういうところがここに表れていないというところが,正直言って残念です。   土地と結び付けられた公共的な利益だとか,あるいは公益といったものを実現する観点から,個人の所有権その他の財産権に介入することを正当化するとしても,それにはおのずから限度があるのではないかと思うからです。   所有者不明土地対策という理由からの個人の財産管理への介入の必要性とか,あるいは相当性という観点から見たときに,遺産全体について,みなし分割だなどというような制度を導入するというのは,遺産分割の制度全体,また遺産の管理とか処分の全体について,相続人に不利益を及ぼすおそれが極めて余りにも大きい。   特に,時の経過によって通常共有になるとみなしたときに,補足説明でもこれは指摘されていますけれども,寄与分とか特別受益とかを主張する機会が奪われるということは,大問題だと思います。   せいぜい土地に限定した枠組みに何かとどめるということとか,あるいは,この前の相続法の改正で正面から認められた遺産の一部分割の制度の活用とか,あるいは例のみなし遺産だとか,あるいは価格での調整だとか,代償財産とか,いろいろなスキームがあるわけですから,そういうものを工夫して,土地に限定したスキームというものを描くべきではないでしょうか。   今回,補足説明の4ページの6の(1)のところに,いろいろ御懸念を書いていますけれども,遺産分割をしたものとみなすということの持つ重大な反作用と比べると,こんなもの微々たるものにすぎない。これが第1点です。   それから,長くなって申し訳ありませんけれども,第2点ですけれども,遺産には土地以外のものもたくさんあります。こういう提案をしたことによって,例えば,預金契約はどうなるのか。預金債権はどうなるのか。それ以外の財産について,その後の帰属形態はどうなるのか。単に準共有と言い切って済み切れないような問題が,たくさん出てくると思います。   そのような精査をして初めて,このような検討課題というものが論点として上がってくるのではないだろうかと思いますが,そのようなものをこれから検討して,では今回示されたみなし遺産分割などという枠組みが維持されるのかといったら,そのことについては,正直言って悲観的にならざるを得ません。   でも,やると言うんだったら,そこまで徹底して見ていただいて,それが遺産分割全体に与える影響というものを慎重に検討してください。それが2点目です。   それから,3点目ですけれども,遺産分割されなかったら通常の共有に合わせるという,この考え方が果たして適切なのかというようなところに少々疑問を覚えます。   要するに,現在の遺産共有から遺産分割への流れという中で,遺産の共同帰属形態というものを私なりに考えたときに,果たして,こうした前提にある捉え方というものに対して,若干首をかしげるところがあるからです。     要するに,遺産が共有されている状態での共有というものが,通常の共有だと理解されて書かれているようだと思いますけれども,いろいろな学説を見たら,確かに遺産共有状態は共有であって,合有ではないと言われていますけれども,その共有だと言われている中でも,いろいろな操作がされているんですよね。純粋な共有という扱いなんてされていない。それは前の相続関係部会で,いろいろ議論したところからも出てくるところだと思うんです。   そういう意味では,遺産共有の前の状態が通常の状態だというふうに,仮に理解されているとしたら,これは大きな間違いではないかというふうに思うところです。   それから,遺産分割後の状態も考えた場合には,普通に遺産分割がされたら,具体的相続分に従って,遺産の最終的な帰属が決まるというのが普通の考え方だと思うんです。それを遺産分割しなかったら,時間がたてば,それが法定相続分による通常の共有の形で整理されるんだという捉え方というのは,遺産分割の考え方と整合性欠くのではないかと思います。   むしろ,仮にこういう制度を入れるのであれば,遺産共有後の遺産分割については,具体的な相続分を前提とした共有状態の解消という方に委ねておいて,それで特別に,第三者の保護が必要であれば,例えば土地に特化した形で,第三者保護のための枠組みを作るとか,そこでは法定相続分とか,あるいは指定相続分ということを組み込むことは,現在の法制度上は,あるいは判例法上は,できないわけではないと思いますから,むしろそちらの方向を目指す方が,従来の遺産の共有,それから分割という制度全体の枠組みと整合的ではありませんかというふうにも思ったところです。   ほかにも言いたいことはありますが,こうした形での,期間が経過して何もなかったら,法定相続分又は指定相続分に従って,遺産の分割がされたものとみなすという枠組みで今後考えていくことについては,今の段階では,私は到底賛成できないということです。 ○道垣内委員 潮見さんの御発言が,何か2段階になっているような気がします。そもそもこういうふうな,みなし分割か分かりませんけれども,そういう制度がよくないというのと,土地に関してはともかくという話があったような気がするんですが,私は,全体の制度についての賛否をひとまず置きまして,潮見さんも指摘されたところなんですけれども,4ページの6の(1)の意味が全然分からなかったので,一言したいと思います。   つまり,「もっとも」以降ですね。不動産だけならば,不動産が所有者不明のままに,相続登記がされないまま数代にわたりというふうなことになると,それは困ったことだと,誰のものか分からなくなってしまっていると,そういう話は分かるわけで,そのときに,所有者不明土地の対策からすると,不動産に関しては,法定相続分ないしは指定相続分で分けられたということにしましょうという制度自体は,分からないわけではありません。しかし,そうしたときに,具体的相続分における特別受益の主張とか,あるいは寄与分の主張でも何でもいいのですが,そういう実体的な権利がなくなるというふうにする制度設計する必要は全然ないのではないかという気がします。   遺産中に存在している不動産に関して,法定相続分に従った共有,単純共有になったのだが,ほかの財産の配分で調整をしたり,あるいは精算金で調整をしたりというのがあったって,別に所有者不明土地問題に何ら影響を及ぼすわけではありません。そこのところまで,面倒くさいから全部分割されたことにして,あと,そういうふうな主張というのは一切できなくなったということにしようよというのは,何か,求めていることに対して,異常に大きな効果を与えているような気がします。私としては,全体としてこれがいいかどうかという点にも疑問があり,潮見さんも何回も,仮にというふうな言い方をされましたけれども,不動産についてだけ,みなし分割をするとしても,調整はいろいろあり得て,相続人間のそういう,各相続人の権利というのは,別に減少しているわけではないと考えるというのが,あるところなのかなという感じがしました。 ○山野目部会長 不動産に限って考えるかどうかというお話や,仮に期間制限を設けたときに,期間を過ぎた後,寄与分等についての権利主張を封ずるということでよいか,あるいは,狙っている政策効果よりも,はるかにそれを超えている,大振りのことを考えているのではないかといったような御指摘をいただき,かなり本質的な観点のことについて両委員からお話がありました。 ○蓑毛幹事 潮見先生や道垣内先生のように,理論的なところとか本質的なところを申し上げることはできないのですが,弁護士会内での意見として,あるいは私自身の意見としても,遺産分割の期間制限について,所有者不明土地問題との関係での効果がよく分からないし,この制度を設けることによって相続人に与えるデメリットを,もう少しよく考えた方がいいのではないかと思います。   つまり,遺産分割を促進するために,遺産分割の期間制限を設けると言っているのですが,期間を過ぎると,法定相続分なり指定相続分に応じた共有状態になる,つまり,現行法と比べると,遺産共有状態から通常共有状態になるというだけであって,そのことによって,所有者不明土地問題の解決に向けて,どのような効果があるのかがよく分かりません。   遺産共有であろうが通常共有であろうが,多数の共有者がいるという状況は変わないとすると,この制度を設けることによって,どれほどの効果があるのかがよく分からない。恐らくは,今回検討されている他の制度,例えば共有持分の売渡請求とか,そういった制度において,通常共有では権利行使できるけれども,遺産共有では権利行使できないという整理をされているところもあるので,遺産共有を脱して通常共有になれば,他の制度と組み合わせることで,所有者不明土地問題が解決に向かいますよということなのかもしれませんが,その辺りの整理も明らかでなく,よく分かりません。   他方,もう既に幾つか,複数の先生方から指摘されていますが,現行法では,遺産分割協議はいつでもでき,その際,相続人は,特別受益や寄与分などの権利主張をできるところを,遺産分割に期間制限を設けることにより,そのような権利主張をできなくするという不利益あるいはデメリットを,相続人に与えることになります。また,相続放棄との関係も重要で,相続放棄できる立場にあった人が,遺産分割のみなしの効果が生じた後に,相続があったことを知って,相続放棄をしたいという場合は一体どうなるのか。このように様々考えなければいけないことがありますので,理論的なというか法体系の一貫性ということに加えて,この制度を作ることによる効果や,不利益として何があるかということを議論しないと,進めることは難しいのかなという印象を持ちました。 ○山野目部会長 政策的効果に関する疑問の指摘をしておきたいというお話を頂きました。 ○中田委員 先ほど潮見委員が,この提案に対して,根源的な疑問を呈されたんですが,現在第1ラウンドですので,考えられる方策をいろいろ出してみられたというものだというふうに私は理解いたしました。その上で,ただやはりちょっと,なかなか問題が多いなという気がいたします。   もう既にお三方から出ていることですけれども,期間制限をすると,具体的相続分の多い人が不利益を受けることになるわけです。その手当てが必要だというのは,そのとおりなんですが,遺産分割調停をしていて,期間が過ぎそうなときに,調停の申立てを取り下げるという方法を戦略的に使うことによって,具体的相続分の少ない者がこの制限を有利に使うことができる。そうすると,遺産分割にゆがみをもたらすという可能性があると思います。   それから,遺産分割の合意解除ですとか,あるいは錯誤取消とか詐害行為取消とかが,期間制限との関係でどうなるんだろうかと,あるいは,判例は認めていませんけれども,債務不履行解除がどうなるんだろうかというような問題もあろうかと思います。   それから,ただいま蓑毛幹事から御指摘のありました相続放棄の問題については,私も疑問があるように思います。   5ページを見ますと,期間経過後,相続放棄を認めないことにしても,相続開始後,相当の年数が経過しているのであれば,通常は,放棄をするかどうかを決めているから大丈夫だろうというようなことが書かれているのですけれども,例えば法定相続人が相続放棄をしたために,自分が相続人となったことを知らない者であるとか,あるいは,法定相続人が死亡していたんだけれども,疎遠なためにその事実を知らなかった者であるとかが保護されないという可能性があるわけでして,それでいいとは,なかなか言い切れないのではないかなと思います。   それは,単に具体的な問題として支障があるというだけではなくて,より一般的な問題として,この制度は,放棄あるいは承認についての主観的起算点からの熟慮期間に加えて,客観的起算点からの除斥期間ないし上限期間を設けるということになると思うんですけれども,そうやって相続放棄を制限するということは,単純承認による相続を一層強化することになって,結局は,相続制度の在り方の本質に関わる問題が含まれているのだろうと思います。   そういうことを考えますと,やはり今回の御提案は,御趣旨は理解できるんですけれども,かなり課題が多いのではないかと思います。 ○山野目部会長 潮見委員,道垣内委員から,相続制度の本質的な在り方に関わる問題提起を頂いたし,蓑毛幹事からは,政策的効果についての検討の必要性ないし疑問の御指摘がありました。中田委員からも,それらを更に整理した形でおっしゃっていただき,その中で,そういう本質的な議論とともに,ややテクニカルなことになりますが,ゴシックで示しているところの「例えば」の文章を見ますと,例えば,遺産分割をすることができる期間が経過するまでに,遺産分割の合意又は遺産分割の請求がない場合には,とあり,この「ない場合には」というものは,実は細かく考え始めると,いろいろ多義的であります。中田委員はそこをおっしゃったものですけれども,何らかの手続を申し立てたけれども取り下げるというようなことがあったときに,それをどう受け止めるか。   それから,合意とか協議とかのルートでいった場合には,一旦協議を始めたと言えば,この期間経過を免れるか。協議を始めたけれども,いつまでも決まらないということはよくあることであり,そのまま長々と協議不調の状態が続くというような事態をどう受け止めるか,とか,これを本当に採用しようとすると,細部を考え込まなければいけない事柄というものはたくさんあります。 ○大谷幹事 ありがとうございました。   遺産分割の期間制限と,その効果のところで今,通常共有に移行するということに,様々な御異論もございましたし,よく理解できるところがございますけれども,本質的には,遺産分割がされないことによって,それがずっと放置されることによって,所有者不明土地問題というのが,やや解決が難しくなっているということがないだろうかという観点から,できるだけ遺産分割をしていただけるような方策として,何かないかということで,これまでも研究をしてきて,こういう形で出させていただいたところでございます。   その遺産分割の期間制限を掛ける対象として,不動産に限るべきではないかとか,様々な御議論を頂きました。それを踏まえまして,もう少し精査をしてみたいと考えております。 ○山野目部会長 蓑毛幹事が,政策的効果について,ちょっとよく分からないとおっしゃったところは,確かにまだ,ちょっと判然としない部分があります。   恐らくは,遺産分割をなるべくしてほしいという政策的要請がある,そのこと自体は,それほど異論のないところではないかと考えますけれども,仮にそういう発想で,このような制度を作っていったときに,これが法制審議会の答申になれば,多分新聞に大きく見出しで,遺産分割期間の制限というふうに出て,何年か以内にしなくてはいけないというふうに法律がなっていくよというふうなアナウンス効果が出たときに,期間が経過する前であるとすると,何か国の法律がそうなっていくんだから,早くしないといけないと受け止め,それを見て早くする人というものも,ある人数までいるかもしれないですが,いざそうやって待ってあげて,期間が経過してしまった後は効果が,個々のものについて,持分共有になる。それは,関係者多数の状態をわざわざ作り出し,助長して固定している面があります。そうなったときに,所有者不明土地問題の解決は,もっと難しくなるという側面があって,何のためにこれを入れたかという疑問が,期間が経過してしまった時点のことを考えると,あり得るところであります。   恐らく,部会資料を作成し,いろいろ様々な論点を横断的に考えている側にとっては,個々のものについての持分共有になって,そのままほったらかされると,そうかもしれないけれども,蓑毛幹事御自身から御示唆があったように,共有持分の売渡請求とか共有物の管理の制度とか,導入されようとしているほかの制度と組み合わせることにうまく成功すれば,異なる展開がある。そこをにらみながら,こういうことも一つのメニューとしてお出ししているということであろうと思われます。 ○佐久間幹事 今のままだと,あっという間にこの提案が消えるかもしれないので,そうならないように一言,そうならないって,最終的に通るかどうかはともかくとして,もう少し時間を掛けて考えた方がいいのではないかと思うところがありますので,申し上げたいと思います。   この部会は,すごく難しい課題を抱え込んでいると思っておりまして,それは,所有者不明土地問題の解決に資するように,民法又は不動産登記法の改正をするということが至上命題でありながら,それを解決しようと思うと,別にここに限らず,民法上あるいは,不動産登記法上はまだ出てきていませんが,非常に大きな問題に取り組まざるを得ないというところがあると思うんですね。   そこで,今,潮見委員や道垣内委員,あるいは皆さんおっしゃったのかもしれませんが,1つ1つの論点について、それは所有者不明土地問題の解決ということにおいてどの程度の意味があるのかという視点は,この審議会の発足の目的からして,もちろん重要であると思うんです。ただ、そうであっても,所有者不明土地問題の解決のために仮に遺産分割のところに手を入れるということになると,遺産分割そのものについて,先ほどの相続回復請求権も同じだと思うんですけれども,そもそもそれはどういう制度なのかを考え,ほかに合理化することがあるのか,ないのかということも考えてもいいんだろうと思うんですね。   例えば,遺産分割に関して申しますと,相続というのは多分,標準的な家族構成ですと,といっても標準的な家族構成が何かよく分かりませんが,例えば,夫が妻より5歳上で,妻が25歳から30歳ぐらいの間に子供を産むというように仮定しますと,相続って,10年から15年ごとに次の相続が起こるんですよね,多くの場合に。それを今は,遺産分割の期間制限がないので,ゆっくりやりましょうと。もめだした場合,とことんもめましょうと。そうこうするうちに,その相続人のなかに死亡する者が出て、次の相続が起こる。さらにその次の相続が起こる。こうして相続人がどんどんぶら下がっていく。土地に関していうと,これが,所有者不明土地問題の根元の原因の一つだと思うんですが,そもそもこのような,不合理なというか,不透明なというか,ややこしくなるばかりの財産状態を,土地以外についても放っておいてよいのかというと,それは余り好ましくないのではないかと,私は思っています。   所有者不明土地問題を解決するためにということから,乱暴に,遺産分割を促進しましょう,それを期間制限でやりましょうとは言えませんけれども,所有者不明土地問題に限らずとも,遺産分割というのは,何かインセンティブがないと,早く処理しましょうということになりづらいところがあると思うので,細かい作り込みはいろいろしなければいけませんし,それができなければ,諦めなければいけないと思いますけれども,遺産分割を促進するというインセンティブを与えるような意味でも,期間制限を考えるということはあり得るのではないかというふうに私は思っています。   その際,具体的相続分等に関していえば,先ほど道垣内委員がおっしゃったような特別受益,寄与分の調整は別途金銭的に図るということだって,枠外であり得てもいいと思いますし,今の趣旨でいうと,不動産だけに限ってということはないですけれども,もめるような財産の対象がはっきりしているんだったら,そこだけは早く処理させるようにということで,期間制限を掛けるということもあり得ると思うんです。要領の得ない言い方で申し訳なかったですけれども,結局,所有者不明土地問題の解決は大事なんだけれども,それは起点であって,そこからもう少し広く考えることがあってもいいのではないかと思い,遺産分割については,そもそもが,もう少し合理化した方がいい面があるのではないかと,私は思っております。 ○山野目部会長 カルチャーなのでしょうか。今まで日本人は,遺産分割はいつまでもしなくてよいというふうに,法制的に理解されるし,そのような意識で暮らしてきたけれども,ここにおいて,もちろん間近に迫った具体的問題は,所有者不明土地問題であるけれども,それに限った話ではなく,いつまでも遺産分割をしなくてよいという制度ないし意識を,この機会において見直すという余地はないですか、ということを今,佐久間幹事はおっしゃったものではないかというふうに聞きました。 ○潮見委員 検討するのはいいと思うんですけれども,それをやり始めるとしたら,今の遺産分割については早期に行うべきであるというインセンティブを認めるのかどうか。個々の遺産分割の調停では,いろいろな要素が絡んでいます。   単に分割を早くやる必要がある,あるいはそれが望ましいというふうに言えるかどうかということ自体に入り込んで,是非検討していただきたいと思いますし,また,今のようなことをおやりになるのであれば,先ほどの繰り返しになりますが,それ以外の,土地以外の遺産,あるいは契約上の地位とかを,どのように処理していくのかということも考えた上でやっていただきたいですし,家裁の実務にどう影響を与えるのかも考えていただきたい。   家事調停など,いろいろ苦労するところがありますから,そうしたところへの影響も含めた形で検討はしていただきたいし,それをもしやるんだったら,この部会でやるということになりますけれども,そこまでの御覚悟を持ってやらなければいけないではないかと思いますが,発言はこれでやめます。 ○山野目部会長 いやいや,ご遠慮なさらないで,どうぞ,何度も発言していただいてよろしいです。 ○佐久間幹事 調停に関していえば,ここにも書いていますけれども,調停に掛かっていれば,例えば5年,10年というこの期間制限が発動するということは,そもそも考えられていないのではないでしょうか。   その上で,調停の取下げがあったらどうかという,先ほどの中田委員の話はもちろんあり得て,そこは考えていかなければいけないだろうと思います。けれども,要するに,ここで,これはやめてくださいねというのは,当事者の間でいがみ合っている状態を,一定の解決の方向を示さないで,いつまでも続けているという,その状態はやめろということであって,その解決のための手段としての調停で,別に審判でも何でも構わないです,訴訟でも構いませんが,そういった手続にのっているものまで期間制限に掛けるということは,最初から考えられていないのではないかと思うんですが。 ○山野目部会長 多分,そこはそのとおりで,潮見委員がおっしゃったことは,それから話に入っていって,より本質的な覚悟を部会に求めたものでありましょう。 ○佐久間幹事 それはそのとおりです。別に私は,覚悟をしなくていいというふうには言っていません。 ○山野目部会長 承りました。道垣内委員,お願いします。 ○道垣内委員 ありがとうございます。   佐久間さんおっしゃったので申しますと,まず,遺産分割を何年間かやらなかったら,法定相続分に従って分割がされたものとみなすというときには,共同相続人に得する人と損する人がいるんですよね。   つまり,ある5人がいて,それがみんな,この3年間で合意をしなければ損するんだということならば,合意をするというインセンティブがあり,合意の方向性が生まれるわけなんですけれども,長引かせると有利になる相続人がいるということが重要な話ところであり,結局,これは,本当は法定相続分より少ない人に有利になる制度であるということになります。それがどうして正当化されるんだろうかという問題が,まず存在します。   2番目に,どうしてこれがうまくいくのかというのが,今一歩,まだやはり分からないところがあって,蓑毛さんがおっしゃったところにも関わるのかもしれませんが,今佐久間さんが,相続で共有になって,それで,さらに,その共有の分割をしないうちにまたいくと共有になって,それ,単純共有にしてもそうなりますよね。   例えば,おばあちゃんの宝石が5人の共有になったといって,それは遺産共有だったんだけれども,物権法上の普通の共有になりましたとしましても,その宝石を売却しないうちに,更に相続が生じたということになると,今まで遺産について,共有者がどんどん下にぶら下がってきて,増加していたというのと,基本的には変わらない事態になるので,どうしてそれでうまくいくのかというのが,私にはちょっとよく分からなかったというのが1個あります。今僕,うまくいく理由が分からないということを幾つ言ったのだろう。 ○山野目部会長 二つ目です。 ○道垣内委員 では,3番目として,潮見さんがおっしゃったことなんだけれども,権利関係がやはりよく分からないというのは,例えば,ゴルフ会員権が通常共有になりましたというふうに言ってみたって,それ,誰に帰属させるかということを最終的に決めないということにはならないですよね。   だから,何で,何が解決されているのか。取り分け,不動産以外のものを通常の共有にしたということで,何が解決されるのかというのは,私にはちょっとよく分からないなという感じがしました。 ○佐久間幹事 私1人だけ発言しているように聞こえて,何か嫌なんですけれども,多分この提案は,先ほど蓑毛幹事でしたっけ,がおっしゃった,通常の共有と遺産の共有の場合のほかのところの作り込みの違いを前提としているんだと思うんですね。   今の論点だけではなくて,これまでの提案は全体的に,全部つながればうまくいくかもしれないというような,そういう提案ぶりになっていると思うんです。そして,通常共有についてはかなり,いろいろなところで方策を盛り込むことによって,解消とか,ややこしい状態から脱却する方向を作ろうとしているのに対し,遺産共有のままだと,個別財産の処分といったことがなかなかできないので難しいよね,ということかと思います。   そうすると,先ほど道垣内委員がおっしゃった,通常共有がずっとぶら下がっているのと遺産共有のどこが違うのかというと,私は,共有のなかのいろんな問題についての作り込みのところで違いが出てくるように,原案レベルではなっているのではないかと思っています。 ○道垣内委員 指定相続分ということ自体も,本当は一義的には,なかなか決まらないという問題もありますけれども,遺産共有ではなくて,通常の共有にしたら,今まで議論してきた管理者の制度とか,いろいろ使えるから,うまくいくんだということになりましたときに,ではそれで,どうして法定相続分でやらなければいけないんですか。   具体的相続分による通常の共有ではいけないのか。 ○佐久間幹事 決まらないからでは…… ○道垣内委員 決まらないからだと思うんだけれども,決まらないということは,実は,指定相続分も同じなのではないかなと思うのです。 ○佐久間幹事 指定相続もそう…… ○道垣内委員 遺言で決まるんだけれども,その遺言の有効性とか,そういうものが確定しないと決まらないというところがあります。しかるに,例えば,具体的相続分が仮に決まらなくても,決まらないままに管理者の制度みたいなものを動かすということは,不可能ではないんだろうと思うんですね。全員一致でないとあることができないということを前提にしたときに,しかし管理者が選任されているということになると,管理者がいろいろな判断をして,不明な人の持分割合についてオーケーを出すということになったときに,そのオーケーを出した不明な人の持分権というものが,実際には何分の1であるかということが,あらかじめ正確に決まらなければ,管理者としての権限行使ができないのかというと,何かそうでもないような気もします。ただ,余り自信ありませんから,もうやめます。 ○垣内幹事 私,事柄の実質について,何も定見はないのであれなんですけれども,先ほど,道垣内委員の批判に対する佐久間幹事のお答えに関して,私は,恐らくこういう話なのではないかなと理解したところについて,若干発言させていただきますと,道垣内委員が言われたのは,例えばこのような期間制限等の規律が入ることによって,遺産分割の促進が図られたんだけれども,それは功を奏さずに,結局分割はされなかったという場合には,それは法定相続分で,今日の提案ですと,分割される,分割というか,持分が決まるということなので,細分化していってしまうという事態は変わらないではないかという御批判なのですけれども,佐久間委員のお考えというのは,基本的に,こういった方策を導入していくことによって,期間内に遺産分割がきちんとされるという事態を増やしていこうということですから,それが首尾よく達成されれば,そのような事態はそもそも生じないと。それこそ目指すべき目標ではないかという御趣旨で言われているのかなというように理解を致しました。 ○平川委員 質問なんですが,補足説明の想定どおり,遺産分割がされ,その後,登記がされれば,所有者不明土地の発生は抑制されるとなっています。登記は,誰がやるのでしょうか。「遺産分割をした後に,登記がされれば」という但し書が付いていますけれども,登記は誰がするのかを教えていただきたいと思います。 ○脇村関係官 遺産分割をした後の登記は,基本的には相続人がするということになるんだろうと思います。 ○平川委員 そうなると結局,登記がされなければ効果がない,という意味合いにも見えます。遺産分割が自動的に登記につながるような仕組みというのは,民法では考えられないのでしょうか。それは手続の問題なので,別の議論という話になるかもしれませんけれども。 ○山野目部会長 平川委員が御示唆になったように,実はこの遺産分割の期間の制限のお話と,相続登記の義務化の是非ないし義務化する場合の,どういうタイミングでしてくださいとうことをお願いするかという話は関連し合っている側面があります。この部会において議論をお願いするものは多く,いろいろな論点が相互ににらみ合っているところがあって,なかなか難しい議論を委員,幹事にお願いしていますけれども,ここもそうです。   遺産分割の期間を限って,そのことによって遺産分割を促進したからといって,直ちに登記がされるものですかと問われると,そうとは限らず,しかし,相続登記の義務化の話との組合せの仕方によっては,何かそこに別な打開の姿があるかもしれないという,こういう組合せになっています。 ○村松幹事 今御指摘いただいた,部会長からも御説明ありましたけれども,登記の促進と,相続登記の促進という文脈で,今後御議論いただきたいものとしては,相続登記義務化の問題がございます。   また,義務化の議論をするに当たっては,今,これも御発言ありましたけれども,申請者の負担の軽減策というのがございますので,その中では,どの範囲の人で相続登記の申請ができるのか,あるいは,その際にどういう書面を付ければいいのかと,こういった部分での更なる,現状よりも更なる負担軽減策なんかを考えなくてはいけないという議論はございますので,そういったところで,引き続き議論はしていただく必要はございます。   ただ,遺産分割の期間制限をして,遺産分割をなるべくしていただくということになりますと,一般的には,せっかく遺産分割していただいたわけですので,登記につながりやすいだろうということは当然,もちろんございますけれども,それに際しても,義務,さらには負担軽減策と,こういう議論が重要になってくるというのはございますので,いずれにしても,そちらの部分について,今後,何回か後に,そちらの方も議論させていただくという予定でございます。 ○山野目部会長 平川委員,お続けになることはおありですか。 ○平川委員 いや,大丈夫です。 ○山野目部会長 よろしいですか。   引き続き伺います。 ○潮見委員 先ほど垣内幹事がおっしゃったことに関連するんですけれども,いいかどうかは別として,期間制限を設けることによって遺産分割は促進されましょう。それはそうだと思いますけれども,ここの問題というのは,遺産分割を促進する制度を設けたけれども,首尾よくいかなかった場合に,法定相続分あるいは指定相続分による通常の共有という状態が出現するということです。しかもそれは,土地に限らず,全ての遺産を構成する財産について,そのような状況が生じるということです。   それが,果たして当事者間の,例えば取得する財産の部分の公平に合致するのかとか,あるいは,それぞれの財産について,それぞれが持っている属性とか,そういうものを考慮に入れたときに,先ほどのゴルフ会員権なんかそうだと思うんですけれども,果たしてこういう扱いが適合的なのかという問題が恐らくあるのではないかと思うんです。   ですから,検討されるときは,そこも含めて,少し検討をお願いしたいと思います。本当にこれでやめます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。全ての委員,幹事は御発言を続けていただく権利がありますから,ご遠慮をいただくには及びません。 ○吉原委員 私は法律の専門的なことは分からないのですけれども,この資料5の4ページの6の(1),正に潮見委員が御指摘された「もっとも」のところを拝読して,立法事実として,これだけで十分なのかなという疑問を持ちました。   私も今,結論があって言っているわけではないのですけれども,もしも遺産分割の期間制限の対象を全財産としたときに,世の中にどう説明するのか。これは,前半でいろいろ議論された訴訟の話とか,個別の話とは違って,とても多くの人に関わる問題です。全部の遺産にこの期限を設定しますよというときに,なぜならばということを,どのように説明するのだろうと考えました。   もし説明するとすれば,やはり被相続人の死亡後,なるべく早期に遺産分割を行い,登記をすること,あるいは金融資産であれば必要な手続をすることが,次の世代に役に立つことであると。共有状態が長期化することで権利関係が複雑化すると,後々いろいろな問題を起こすので,それを自分たちの代できちんと解消しておきましょうねと,そういうことが社会的な要請としてあるんですよということを,基本的な制度の考え方として,言っていく必要があると思います。   今回のこの部会に諮問されていることは,所有者不明土地問題についてどうするかということです。しかしながら,それに対する対応を考えていきますと,土地だけを対象にした方策もあれば,やはり全て,それ以外の財産にも関わることも出てくるわけで,そこをこれからどうやって切り分けていくのか。土地だけに限定していくのか,あるいは,それ以外に関わることもやるのであれば,そこをどのように立法事実として世の中に説明していくのかということは,この期間制限だけでなく,ほかの論点にも関わってくると思っております。 ○水津幹事 すでに意見が出ているとおり,具体的相続分によって分割を受けることができる相続人の利益を制約してまで,遺産共有から通常の共有へと転換させることに,どのような意味があるのかを,丁寧に示したほうが良いと思います。   なお,相続放棄については,これもすでに意見が出ているとおり,遺産分割の期間が経過したことをもって,相続放棄をすることができなくなることを正当化するのは,難しい気がしました。 ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   一定の期間で区切ることが良いかどうかというところが,今の議論の中心になっているかと思うのですが,政策的なところでいうと,仮に期間で区切るとして,3年,5年という期間で区切るのか,あるいは10年,20年という長期スパンで区切るのかによって,制度の性格がかなり変わってくるのかなと思いますし,過去に遡及させて,登記申請義務との組合せの中で,そういった制度にするのか,それとも将来のことだけを考えるのかというところでも,かなり変わってくるのではないか,というところがございますので,余り早い段階で選択肢を減らさないでほしいという思いはある一方で,検討するのであれば,やはりそういったところも,併せて御検討いただいた方がよろしいかなと思った次第です。 ○山野目部会長 いろいろ丁寧に検討してくださいという御要望を藤野委員から頂きました。   いささか短答式試験問題風に四択で申し上げてみますけれども,部会資料が述べている期間の制限といわれるものの期間の制限が,制限された期間が過ぎてしまうと,何が起こるか。   肢の1番は,期間が経過すると,特別受益や寄与分の法律関係処理がされなくなるということでよいかどうか。あるいは,理論的に本当にそうなってしまうかどうか,この辺りが,悩みどころの一つ目であります。   肢の2は,期間が経過すると,遺産を構成する個別のものについて,共有の関係となることが確定する。不動産に限り,又は限らないで,この効果が生ずるということを議論していくことになりましょうけれども,さあどうしたものでしょうか。   肢の3が,期間が経過すると,家庭裁判所に遺産分割の請求をすることができなくなる,そういうことを規律として採用することは良いか,それとも不適切であるか。   肢の4は,期間が経過すると遺産を構成する個別のものについて,共有物分割請求の訴えを提起することができることとなる。不動産に限り,又は限らないで,いずれにしてもその規律の妥当性を検討していただくことになります。   細かく考え始めると,これらのことの検討を部会資料は要請したものであろうというふうに受け止めます。そのことについて,今,抽象度のそれぞれ高い観点から,あるいはそうではなく技術的な検討を含めての御指摘など,様々な観点の御提案や御注意を頂いたところであります。   御発言がおありの方は伺いますけれども,いかがでしょうか。   様々な難問があるという御指摘は,繰り返しませんけれども,それらを頂いたとともに,メニューとして捨てないでくださいということをおっしゃった方も何人かおられたものでありまして,これらを踏まえ事務当局において議事を整理し,引き続き検討するということでしょうけれども,さてどうしたものでしょうか。何かこの際,さらなる御発言があれば頂きます。 ○吉原委員 私は,これは残しておいてもいいと思います。   相続人の中で,いろいろな人間関係があって,遺産分割協議が進みづらい状況が生まれ,協議が先延ばしにされてしまう。他方で,訴訟を起こすほど大ごとにはしたくないという思いもあることを考えますと,やはり遺産分割を促進するインセンティブを増やしていくことが必要で,その一つの案として,こういう考え方はあるのだろうと思います。   この具体的な期間や実効性を考える上では,是非,司法書士の方々を始め,現場で遺産分割に携わっている方の声を聞くことも必要であろうかと思います。   私が今まで自治体の方に話を聞く中では,例えば,一般的に,1年以内に遺産分割協議が行われることは少ないと,ある自治体の方の話ですけれども,一周忌で親族が集まったときに,そろそろ話し合おうということになることが多いとか,あるいは,相続について親族間でもめると,登記まで2,3年掛かる,もめていなくても2,3年経過して,結果的に相続登記がされていなければ,それ以降になって相続登記が行われることは,経験上まずないと言った自治体の方もいました。   つまり,一たび遺産分割協議や相続登記のタイミングが逃されてしまうと,その後,例えば国土調査があるとか,公共事業が入るとか,あるいは売却の見込みが立つとか,そういったきっかけがない限り,協議が進みづらいという実態があるのは確かだと思いますので,こうした促進策というものは,引き続き検討する意義が大きいと思います。 ○蓑毛幹事 最初の方に発言したので,私の発言が,遺産分割の期間制限をメニューからなくしてくれという趣旨で思われたとすると,そうではありませんので,これはメニューに残してくださいということを改めて申し上げたいと思います。   今まで様々議論がありましたけれども,アナウンス効果として,国民の皆さんに対して,遺産分割には期間制限があるんだよ,その間に遺産分割を行ってくださいというメッセージを発することは,有益なことだと思います。   ただ,一方で,ちょっと問題があると考えるのは,先ほど申し上げたとおり,期間を過ぎたら通常共有になるということを,どう考えるかで,通常共有になることで,所有者不明土地問題の解決に向けて、これだけの効果がありますよという整理ができれば,なお良しだと思っています。   また,期間制限の間に遺産分割を行った場合に,相続人に何かもっと違ったメリットを与えた方がいいと思います。道垣内先生からご発言がありましたけれども,通常共有にするというのは,それぞれの具体的な相続分からすると,プラスの人とマイナスの人がいて,結局はゼロサムの話です。期間内に遺産分割を行わないことによる通常共有というゴールは,相続人のある人にとってはメリットになり,ある人にとってはデメリットになりということで,相続人全員が期間内に遺産分割を行おうというインセンティブが働かないところは問題ですので,期間制限内に遺産分割を行った場合には,別のメリットを考える必要があると思います。   一方,これまでの議論で様々出ましたけれども,遺産分割の期間制限を設けることにより,相続人に不利益になることが様々ありますので,例えば期間制限を延長する制度を設けられないかであるとか,みなし分割が起こった後でも,当事者が遺産分割協議を行いたいといった場合には認めるような制度,またその場合,税務上の問題も発生しそうですので,その対処も考えなければらない。様々そういったことで,メリットをなるべく大きくし,デメリットをなるべく小さくすることを考えれば,この制度は,検討の余地があると思いますので,メニューに残した上で,検討を進めていければと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   潮見委員,次,今川委員,お願いします。 ○潮見委員 すみません,やはりしゃべることにしました。   冒頭に申し上げましたように,この今日示されたものだと,到底賛成できるレベルではありません。ただ,途中からいろいろ申し上げておりましたように,もう少し精査してください。   みなし遺産分割というのは、いろいろな場面に影響があります。その影響は非常に大きい。まして,先ほど吉原委員がおっしゃられたことにも関わりますけれども,これ,具体的相続分云々とか,特別受益だとか,あるいは寄与分とかの主張というものを仮に,先ほど山野目部会長がおっしゃったように,封じるなどということになると,これは,社会に対するメッセージというものを慎重に検討しなければいけないと思います。   そういう意味では,今回の部会では,所有者不明土地問題に照準を合わせてやっておりますが,仮にそれを土地の外に広げて見ていくということであれば,ほかの部分についても,メリット・デメリットのみならず、みなし遺産分割ということがどういう意味を持つのかを見なければいけません。それが法的に,どういう意味を持って捉えられるのかということもきちんと整理した上で,社会に対する影響というものも考えた上で案を出さないと,正直言って怖いです。   ですから,検討するなとは申し上げませんから,検討する際には是非精査してください。言いたいことは分かっていただけると思います。 ○今川委員 吉原委員に,司法書士という名前が出ましたので,一言だけ。   現場の感覚としましては,相当長期間,相続が発生して,不動産について,遺産分割協議もせずに放置されているという人が,何らかの理由で,外部から要請等があって,来られることはあります。そのときに特徴としては,まず,預貯金については終わっているということがあります。不動産だけ置いておくということ。それと,相当長期にわたって放置されているという例が,感覚的に多いなと思います。   遺産共有というのは,やはり所有関係が未確定なので,この状態が長く続くと,二次相続等が起きますと,所有関係がはっきりしないという状況がずっと続きますので,なるたけ早期に解消するというのは,やはり必要かなと思います。   今回の分割に期間制限をして,法定相続分で分割したものとみなすという,一つの選択肢として提示されたんだろうなと思うんですけれども,我々の内部でも,やはり強制的に意思表示を擬制するとか,特別受益などの具体的な相続分が考慮されないということで,やはり慎重に検討すべきだという意見も確かにあります。   それと,通常共有になったとしても,今まで管理放棄されていたものが,急に管理が健全に行われるようになるとは限りませんし,放置されていた不動産について,通常共有になったから急に共有者が積極的になって,共有物分割請求までするかというと,そうではないので,やはり遺産共有でも通常共有でも,例えば管理者を置くのも一つだろうと思いますけれども,共有物の管理,利用,そして処分までも含めるかどうかということも含めて,それを促進していくということが大事だと思います。   そこで,我々内部で協議していまして,ちょっとしたアイデアですけれども,遺産分割ではなくて,相続が発生して,一定の期間を置いて,その期間を経過したら管理者を置かなければならないというような規定を置いて,その管理者によって遺産分割を促進したり,共有状態の管理を健全にしていくというような方法もあるのではないかという,これは本当にアイデアみたいなものが一つありましたので,御報告をさせていただきます。 ○山野目部会長 司法書士会から一つ提案も頂きましたから,今後検討の対象にしてまいります。   最初と,つい先ほど蓑毛幹事から御指摘がありましたが,通常共有に移行すると何が起こるかということは,法律理論的には,先ほどから御議論いただいているようなことになると考えられますけれども,その政策的効果がよく分からない部分が,現段階では非常に大きい。   分からない理由はいろいろあって,一番大きい理由は,この部会で今審議しようとしているほかの制度,取り分け共有物の管理と相続財産の管理ですけれども,そこの帰すうが,もう少し輪郭が見えてこないと,遺産分割の期間を制限したことが一体どういうふうな事態に結び付いていくかが,実際上結び付いていくのかが分からない部分があります。   ほかの事項も,引き続きこの部会において審議を頂き,その中で出来上がっていくものと遺産分割の期間の制限とを組み合わせたときに,どういうことが考えられるのかを改めて点検してみる必要があるとともに,潮見委員から御注意いただきましたとおり,そのようにして向かいつつある遺産分割の期間の制限の在り方が,国民の権利保護との関係で,どのような事態を意味するかということを,精査という言葉をお使いになりましたけれども,正に精査していかなければいけないということではないかと考えます。   事務当局に対し,今のような意味で,実質的に議事を整理していただくというお話を,やはりお願いせざるを得ないだろうというふうに考えます。   特段のことがおありでしたら伺いますけれども,引き続きこのようなことで検討を続けるということでお許しを頂くことがかないますでしょうか。よろしいですか。   それでは,第1のところの御議論は伺ったということにいたします。   第2として,問題提起をしている事項がございますから,「その他」という表題が付いていますけれども,ここについての御意見を頂きます。   余りラベルを張ることは良くありませんけれども,印象付けるために申し上げると,生前の遺産分割の,予約なのか,本契約なのか分かりませんけれども,そういうものがあり得るとしたら御議論くださいということであり,ここに部会資料に載せているところでありますけれども,その他という見出しでお示ししているとおり,もちろん,そのほかにもアイデアはあり得るところであるし,例えば,とお示ししているものが,大いに可能性があるということで,推奨申し上げているという趣旨でお出ししているものでもありません。   それらを踏まえて,御随意に御発言を頂きたいと望みます。いかがでしょうか。 ○中村委員 日弁連では,この例については反対多数でございました。また,私も,これ拝見しまして,推定相続人全員が関与しながらという想定になっているんですけれども,このようなことができるものが,後に一部の人が不明になったり,連絡が取れない,協議ができないという事態は考えにくいので,問題山積の中で,これを無理して検討していく必要が果たしてあるのかということについては疑問を感じております。 ○平川委員 私も,これは,法律でどうやって担保するかが,よく分かりませんでした。ただ,行政的に物事を推奨していく,遺産相続に関して事前に話合いをしましょうとか,それによって所有者不明土地問題が少しでも解決していく方向になれば,行政的に奨励をしていくという観点で進めてもよいのかなと思います。ただ権限の問題とかを含めて,不明な点が多々ある印象がありました。 ○山野目部会長 従来の相続法制の基本的な思考様式から離れる度合いは,第1の遺産分割の期間の制限なんかよりもはるかに,この第2のその他のところに例として示されているものの方が大きく,見方によっては,とんでもない話だというふうに見える部分もあるかもしれませんし,いや,だからこそ,この機会にやったらどうかというお話もあるかもしれず,むしろ第1よりも振れ幅が大きい第2の方について,皆さんから御意見はないものでしょうか。   このままで,非常に勇気の要る制度を更にエネルギーを費やして考えるということにするのかどうか,中村委員と平川委員からは明確に御意見をおっしゃっていただきましたけれども,可能な限り,委員,幹事の皆さんの御意見を承っておきたいと考えます。 ○潮見委員 先ほど部会長がおっしゃったとおりで,やめた方がいいかなという意見です。   ただ,事業承継円滑化法と同じように,何か工夫をすることはあり得るのかなとは思いますけれども,ただあれは,関係省庁とか,いろいろな方面でいろいろ知恵を出し合って,ああいうスキームを作ったのですが,それと同じようなものをここで作るということも少し,個人的には難しいかなというような感じもします。 ○山野目部会長 中小企業承継の領域という,かなり個別法,特別法的な色彩の濃厚なものを,標準的・普通法的な規律として入れようとしている側面があるということも言えるのではないかと感じます。   お三人,慎重にという御意見を今頂きましたけれども,積極的に推すという方はおられませんか。   それぞれ明瞭に意見を御発言なさったお三方がおっしゃっていただいたというように感じますから,これらを受け止めた上で,もう1回ぐらいチャレンジしてみますか。なかなか険しいであろうというふうには思いますけれども,大谷幹事,何か御感触があったらどうぞ。 ○大谷幹事 ただいまの皆様の御発言を踏まえまして,もう少し論点をしっかり絞っていく方向で考えていきたいと思います。 ○山野目部会長 それでは,よろしくお願いします。   部会資料5についての御議論をお願いしましたけれども,何か御発言を補足しておきたい方はおありでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,次にまいることにいたします。   財産管理の制度を審議事項として取り上げることにいたします。   部会資料6の第1の部分について,事務当局から説明を差し上げます。 ○宮﨑関係官 関係官の宮﨑です。   私の方から,部会資料6「財産管理制度の見直し」の第1,不在者財産管理制度の見直しについて御説明させていただきます。   まず,1ページ目の本文1から御説明いたします。   現行法下の不在者財産管理人は,一般に不在者の財産全般を管理するものと理解されております。そのため,不在者財産管理人は,判明している不在者の財産の全部を管理しつつ,他に不在者の財産がないかを調査するなど,財産全般を管理するための事務作業等の負担を強いられ,事案の処理にも時間を要しているとの指摘があります。また,そのような負担の大きさから,予納金の額が高額になることもあると言われています。   もっとも,不在者財産管理人の制度は,不在者の利益を保護する趣旨に基づくものですので,不在者の利益を害さないのであれば,特定の財産のみを管理することもあってもよいのではないかとも考えられます。そこで,この本文1では,不在者財産管理人が不在者の財産のうち特定の財産のみを管理の対象とし得ることを明文化してはどうかというものです。   この検討に際しましては,かえって不在者の利益を害する結果とならないようにすべきことや,このように特定の財産のみを管理対象とする場合には,他の財産については全く調査しないとしてしまってよいのか,また,管理事務の遂行過程で他の財産が判明した場合にはどうするのかといった問題についても,部会資料の補足説明の中では言及してございます。   続きまして,3ページ目なんですが,本文2は,不在者財産管理人の選任の申立権者である利害関係人の範囲について,どのように考えるのかというものとなっております。具体的には,財産の取得希望者,隣接地の所有者,地方公共団体というのを掲げております。   現行法上は,利害関係人とは,法律上の利害関係を有する者をいうと解されておりまして,私人が財産の取得を希望する,また,単に隣地に住んでいるなどというだけでは,直ちには,ここでいう利害関係人には該当しないものと考えられます。   もっとも,財産の利用促進等の観点から,こうした者たちにも財産管理の申立権を与えるべきであるとの指摘もありますので,これらの者たちを利害関係人に含むとしてはどうかというのが,本文の2になります。   一方で,不在者財産管理人は,不在者の利益を保護することを目的とした制度であり,これらの者たちにも申立権を付与することは,その目的と合致するといえるのかどうかなどが課題となるかと感じています。   なお,部会資料では,地方公共団体については,昨年成立しました所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法において,適切な管理のため,特に必要があると認めるときという要件の下で,地方公共団体の長などに対して選任申立権が付与されている点についても紹介してございます。   続きまして,本文3にまいります。   一般には,不在者財産管理人には,申立人以外の第三者が就任することがほとんどであると思われますが,それだと管理費用,取り分け報酬が高額になってしまうこともあります。そこで,本文3は,申立人自身が直接的に管理行為を行ったり,あるいは管理人に選任された上で,自ら管理行為をすることができることを前提に,そのような場合には利益相反関係が生じやすくなりますので,利益相反行為に関する規律を整備してはどうかというものです。   本文4は,これと似ていますが,数人の不在者,特に共有物の複数人が不在者である場合,このような場合にも,管理の合理化の観点などから,1人の管理人を選任すること,それ自体はできるということを前提に,利益相反行為に関する規律を整備してはどうかとするものです。   続きまして,本文5ですが,現行法下では,管理人がある財産の処分行為を行うかどうかは,管理人自身の判断,それから,裁判所による権限外行為許可の判断に委ねられるわけですが,その判断基準をもう少し明確化できないかというものです。部会資料の中では,考えられ得る考慮要素を例示的に列挙してございます。   そして,本文6は,管理人による手続の終了の在り方に関するものです。   現行法下でも,不在者財産管理人が供託をして,管理業務を終了させている事例自体はあるものと思われますが,一方で,そもそも管理人が不在者に渡すべき金銭を供託できるのかについても,必ずしも明らかでないという指摘もあります。そこで,管理人による供託をよりやりやすくすることができないかということを記載してございます。   私からの説明は以上になります。御意見賜れればと思います。 ○山野目部会長 それでは,第1の1,不在者の特定の財産を管理対象とする不在者財産管理人の選任という審議事項について,お諮りを致します。良いニックネームかどうか分かりませんけれども,スポット管理といわれているものについて本格的に法制上の措置の可能性を考えてみようという問題提起でございます。いかがでしょうか。 ○道垣内委員 現行の不在者財産管理人の制度で,仮に当該不在者が,ある不動産の共有持分権を持っていたら,それも当該不在者の財産として,不在者財産管理人が管理することになると思うんですね。そうしたときに,個別財産における不在者財産管理人制度というのを設けるに際して,共有持分権を対象とする不在者財産管理人という制度というのは,別に理論的に排除されるべき対象ではないような気がします。   そうなってきますと,これまでいろいろ出てきた管理者の制度との関係というのが出てくるわけであって,もちろん最終的には,いろいろなところで調整を図らなければならないと思われますので,これはこれで,不在者の話として考えるというのでしょうが,今までも不在者のことを考えていたような気もしないでもないので,それをどういうふうに整理するのかなという問題があるような気がいたしました。   その上で,もう幾つかだけお話ししますと,先ほどのテーマであったところの遺産分割のところでも,遺産分割協議が,ある程度してもできないときには,管理者を選任しなければならないとするというのも,ありうる制度設計であるという発言があったと思うのですけれども,そのとき思いましたのは,費用は誰が出すんだろうということです。当然相続人であるという見方もできるのかもしれませんけれども,どうなのかなと。   今まで,管理者というのが一杯出てきたときに,何か余り費用の問題というの,誰がその人の報酬を出すのということについて考えないまま,管理者,管理者というのが出てきたような気が,私の思い込みかもしれませんが,しております。それに対して,不在者の財産管理の話をするときには,不在者のためにするんだから,不在者の財産から出すんだよ,それが基本だよと,そういうのが現行法の流れとしては出てくるわけですが,それを先ほどのように,共有持分権を不在者財産管理の特定財産として,対象特定財産として措定し,共有物の管理をするということになると,当然に不在者の財産から支出するのかなというのも気になってまいりますし,もしそういうふうなことをするのであれば,3ページの利害関係人という範囲のところに,他の共有持分権者というのは入れるのかなという気がします。   ちなみに,最後に,あともう一言だけ申しますと,3ページのところの1で,①不在者の特定の財産の取得を希望する者,こういう者について私は絶対に反対。 ○山野目部会長 御指摘いただいたことは,いずれもごもっともなことで,あとまた,最後におっしゃったことは,道垣内委員がずっと,他の論点との関係でも強くおっしゃっていただいたことを改めて承りました。 ○岡田委員 以前,国土交通省の主催で,土地の所有者の所在の把握が難しい土地の検討委員会というのが,平成27年,28年ぐらいにございましたけれども,そちらの議論においても,各自治体の方がたくさん,この委員会には参加されていました。公共事業の用地を取得するような係の方々が多かったですけれども,その方々の御意見の中でも,特定の不動産についての不在者財産管理人の選任という制度があれば,とてもいいなという意見があったのは,今記憶に残っておりますので,御報告をさせていただけたらと思いまして,発言をしました。 ○橋本幹事 このスポット運用というものは,東日本大震災の津波被災地の方で一応やられていたと。それから,最高裁さんは強く否定されていましたが,大阪地裁の方でもそういう実例はあるというふうに,我々日弁連の方では情報を把握していまして,日弁連的には,在り方研究会の当時から,物に着目した財産管理制度の導入というのは,基本的に賛成したいと。   ただ,要するに,いいとこ取りをするのではないかというような濫用の危険とかがあるので,その辺りの運用ですね。詰めは必要だろうと思います。   それから,申立権者ですけれども,先ほど,取得を希望する者に認めるべきではないという道垣内先生のお話がありましたが,地上げを狙っているとか,そういうようなやつは駄目だろうと思いますが,公共事業などで取得を希望したいというケースもあり得ると思うので,取得を希望する者を一律に排除する必要は,必ずしもないのではないのかなというふうに我々としては考えていまして,むしろ申立権者を広げていくべきではなかろうかというような,そんな感じですね,日弁連的には。 ○山野目部会長 それでは,議事進行として,2の不在者財産管理人の選任の申立権者についての御議論を,無理にやめてくださいというふうにお願いするのもおかしな話ですから,1と2のところ併せて,御意見があったら承ります。いかがでしょうか。   橋本幹事に申し上げますけれども,道垣内委員が何回かおっしゃったことは,利害関係人の範囲が膨張していくこと一般への危惧の中で,買受けを希望した人についてのことをおっしゃっているのに対し,橋本幹事がおっしゃることも分かります。分かりますと共に,買受けを希望した人を利害関係人に入れると,一言買いたいと言えば,利害関係人になってしまうところから,概念として機能しないものではないかという,実際問題もそうですが,理論的にも心配な部分があるということは考えていかなければいけないであろうと感じます。しかし,意見は承りました。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   まず,個別の,特定の財産を管理対象とすることができるようにする,ということに関しては,やはり多くの業界から賛成の意見が寄せられています。   あと,利害関係人の範囲につきましても,基本的には,広く認めていただいた方がいいのではないかと思っております。もちろん,どういう場面で管理者の申立権を認めるかというところでは,ある程度絞り込む要件を設ける必要は出てくると思うのですが,なるべく認めていただきたいなと思うのは,例えば隣接地,正に隣の土地でちょっと問題が起きていて,それを直ちに是正したいというような場合です。   これはもちろん,隣接地の所有者の利益でもある一方で,不在にしている土地の所有者にとっても,第三者に被害を与えないという意味で,管理者が関与することによって救済される側面があるのではないか,というのがございますので,そこはひとつ,やはり優先的に検討をお願いしたいところはございます。   あとは,やはり公共事業,公共的なインフラ整備の観点で利用したいという利害関係人に関しては,やはり管理者の申立権が認められるべきではないかと思いますし,その範囲が,例えば土地収用法レベルの範囲にとどめるべきかどうか,という点に関して申し上げるならば,もう少し広く考えていただいても良いのではないか,と考えているところでございます。 ○松尾幹事 先ほど,管理者の申立権者のところで一言発言しましたので,ここでもやはり発言する必要あると思いますので,発言いたします。   先ほど,申立権者について,部会資料6の3ページで幾つか案を出していただいていて,道垣内委員から,特に不在者の特定の財産の取得を希望する者については問題ではないかという御意見も出されました。   ここはやはり非常に難しい問題ですけれども,今の段階ですので,解釈か立法かは別にして,方向を確認するという意味で,ぎりぎりどこまで可能なんだろうかということは,やはり詰めておく必要があるかなと思います。   利害関係人として,相続人はオーケー,それから債権者もいい。その先で,取得を希望する者はどうでしょうかということが問題になっていますが,先ほど来出てきた時効取得者については,時効取得の要件満たしているという主張ですから,これは難しいですが,考慮の余地はあるかなと思います。   それから,隣人で,先ほど藤野委員おっしゃったように,例えば,不在者の土地の木が隣に倒れ掛かってきていて困る,損害が生じそうになっているというときも,損害が発生すれば債権者ということになるんでしょうけれども,この段階で何とかしなければいけないというときには,やはり考慮に値すると思われます。それから,先ほどの公共事業の場合も,強制取得の手続云々というのも時間やコストの掛かる話ですので,考えられるかと思います。ということで,ぎりぎりの境界線というんでしょうか,限界がどこまでかということについては,やはりここで確認しておくことには意味があると思いました。   それから,費用の点で,これも道垣内委員がおっしゃられたように,不在者財産管理制度の一つの問題点は,予納金が結構掛かるということで,先ほどの隣人の木が倒れ掛かってきてすぐに対応が必要であるという場合にも,なかなか使えないという一つの理由が,予納金が高いということもありました。   これとともに,管理人の報酬をどうやって払うのかということと併せて,実現可能な制度を併せて考えておく必要があると思いました。ここは確認です。 ○山野目部会長 申立権者については,単に買受けを希望する者という者をどう考えるかということが,引き続き大きな論点であります。そこについては御意見を頂きたいですし,併せて,地方公共団体を申立権者にすることについてはどうかという問題提起も差し上げていますから,それらについて御意見を幅広く承ります。いかがでしょうか。 ○宇田川幹事 家庭裁判所の実務の観点から,少し申し上げたいと思います。   現行の不在者財産管理制度の運用の関係でございますけれども,今回,事務局の方で整理していただいた資料でも記載していただいておりますように,不在者という,人の財産の管理を目的とする制度ということで,財産全般を管理するものと理解されていることから,選任された財産管理人においては,財産全般を調査して,条文に従って財産目録を作成してということで,財産全般を管理しているというのが通常の状態でございます。   その上で,特定の不動産の,例えば売却ということが問題になった場合には,こちらの資料に記載の要素として書いていただいているようなところについて,9ページで書いていただいているように,帰来可能性,その他,強制執行の可能性,それから財産全般の状況を踏まえて,不在者の利益が保護されているかどうかという観点から,売却の権限外許可の判断をしているというところでございます。   このようにすることによって,結局は,何らかの債務がある場合に,変に債務不履行に至らないように,履行遅滞になって遅延損害金がかさまないようにとか,特定の不動産だけを売却してしまって,本来,管理の必要性がある不動産などについても,本当は手当てを,管理をしなければいけないのに,そういうこともできなくなってしまうというような事態,そういったことも防ぐということで,不在者の利益全般の保護を図っているというところではないかというふうに認識しております。   その観点で,今回,特定の財産のみを管理対象とした場合に,先ほど少し,いいとこ取りというようなことでの御発言もありましたけれども,そういうことがないかどうかというところが懸念されるところでございます。実際に売却の判断,権限外許可の判断のときに,裁判官としましては,やはり制度趣旨が第一義的には不在者の財産の保護ということであれば,その趣旨から考慮するものでございます。その場合に,この権限外許可の判断要素,判断要件との規律との関係もあるかとは思いますけれども,具体的にどういうところを管理人に調査してもらうのかとか,どういうことを判断すべきかというところが,この不在者財産管理制度の延長とか,明文化ということでの規律になると,制度趣旨との関係で,特定の財産のみの場合に,本当に不在者の利益の保護を図れるのかというところで,迷いが生じる部分もあるのではないかというふうに考えておりまして,そういった懸念も踏まえて,規律を明確化していただくことも含めて,御議論を頂きたいというふうに考えているところでございます。 ○山野目部会長 よろしいですか。裁判所としてお持ちの問題意識を理解いたしました。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   私は一応,この個別財産の不在者財産管理を設ける場合には,ということを前提として,ちょっとお話しさせていただきたいと思うんですが,まず選任の申立権者のところで,特定の財産取得を希望する者というのは,私も入れるべきではないとは思いますけれども,不在者の財産管理が不在者のためであるというのは,二つの面を分けて考えた方がいいのではないかと思っているんです。   一つは,選ばれた管理人は,専ら,不在者の財産をなるべくよい状態にするために行為をする。しかし,そもそも総体財産の不在者財産管理においても,利害関係人が選任を申し立てるのは,不在者の財産をきちんと守って上げようという目的でする場合も,それはないわけではないでしょうけれども,そうでなくて,自分が債権の回収をしたいからといった,要するに自分の利益を図るためにというのが契機であることは,幾らでもあるはずだと思うんですね。   そうだとすると,選任の申立権者については,他人の財産管理に介入するだけの根拠さえあれば,最終的には自分の利益を得るためであるという目的が別にあったとしても,問題がないのではないかと思っております。ただ,その観点からしても,①はちょっと,そこまでの利害関係はやはり有していないだろうということで,よろしくないのではないかなと思います。   もう1点申し上げたいのは,仮に何らかの事情で,個別の不動産について売却をすることを可として,不在者財産管理人が選ばれた場合に,実際に売却が適正に行われたときに,受け取る代金について,10ページで出てくる供託の活用が関係してくると思うんですが,それによると,供託してもいいし,しなくてもいいということになると思います。しかし,私は,ほかに権限がなかったら,供託しなければならないとすべきではないかと考えています。個別財産のみの管理権限を仮に認めるとしても,そこから派生してくるこういった問題について,不在者の利益を図るためにきちんとした手当てを考えておくべきではないかと思います。 ○道垣内委員 よく分からなくなってきたところがありまして,発言自体をやめた方がよいのかもしれませんが,まあ,発言します。  松尾さんが,取得時効があった後に,登記を動かすのに特定財産についての不在者財産管理人が必要だというふうなことをおっしゃったときに,私は心の中で,当該特定財産は不在者の財産ではないのではないか,と思ったのです。しかしながら,登記を移転するためには,代理人管理者みたいな人が必要だというのは,今までも何回も出てきたところで,それはそうかなという気がします。それで,それを不在者の財産管理人というふうに言うか言わないかはともかくとして,そういう場合はある。   しかし,さらに考えてみると,そういうふうに,不在者の財産ではないものについても,不在者の財産管理人が選任される場合はあるのではないか,という気もするのですね。例えば,不在者が売買契約を締結して,それで,買主が所有権を取得しているんだけれども,いまだ登記を移さないうちに,いなくなってしまったというふうな場合に,一般論として,不在者の財産管理人というのを選任して,登記の移転というのが請求できるという制度設計というのをするということは考えられる。しかし,本当にそれでよいのかという気も何となくするわけですよね。そして,時効の場合と,実はそれは,区別は本当は付かないのではないかという気もしてきて,所有権取得しているんだけれども登記手続ができないと,実体法上は所有権を取得しているというふうに考えますと,よく分からないなという感じがしてきたのですね。発言の機会を与えていただいたのに,パスしようかしまいか,躊躇したのですが,よく分からないということを皆さんに分かっていただくということはいいのかもしれないと思って,あえて発言しました。   2番目,これは言いたかったんですが,公共のために取得するというのは,それはいいのではないか,したがって,取得したい人というのを一律に排除するというのはよくないのではないかという発言が出ましたが,それは公共というものの定義の問題です。公共のためのものとして,土地収用とかできる場合はもちろんそうですし,もしそれをもう少し拡大するというのならば,地方公共団体とか,そういうときに拡大するというのもあり得るかもしれない。けれども,あり得るかもしれないけれども,それって行政法によって,一定の要件のもとで認められるべきなのでしょう。議論を聞いていて,こういう言い方するのは大変失礼なのですが,どうも,それを不当に拡大していって,効率的に使うことについて公共という概念が,結構拡大しているような気がするんですね。   きちんとそこに大きなマンションを建てる人は,土地を効率的に利用しているから公共だというふうに言えるかのように拡大するのは不当であり,それは私,全く公共ではないと思います。公共の取得を認めるというのは,それはそれで一定の要件の下で認めるかもしれませんが,それと当該不動産が欲しい人が選任申立てができるというのは,全く違う話だということは強調しておきたいと思います。 ○山本幹事 地方公共団体の話が出ましたので,一言私の考えを申し上げたいと思いますが,5ページに地方公共団体に関する記述がありまして,結論としては,私はこれは,十分考えられるだろうというふうに思います。   ただ,検察官がというアナロジーが出てくるのですけれども,そこはやはり,役割がかなり違うということを意識した上で,制度を組み立てる必要があるのではないかと思います。   第3の20ページの辺りで,特別な土地管理制度の話が出てきまして,ここのところで,大きく二つこの制度の利用の仕方が考えられるということで,一つは,積極的にその土地を公共のために使うということ,それから,二つ目が,公共の安全のためにそこを管理するという二つのことが書かれているのですけれども,この二つに対応して,一つ目で申しますと,公共のために土地を使う土地収用の場合で言えば,地方公共団体が自分で事業をする起業者として出てくる場合もあれば,事業認定・収用裁決を行う公益性の判断をする主体として出てくる場合もありますので,更に二つあるかと思いますけれども,それがあり,そして,もう一つは,公共の安全を守るために地方公共団体が出てくることもあるわけで,20ページのところに書かれていることに対応するような役割を地方公共団体は持っていて,言わば財産管理の制度,手続を使って,幾つかの公共の目的を達成しようとするということになるのではないかと思います。   ですから,この中にも出てきますし,先ほどからも少し議論が出ていますけれども,恐らく考える上では,特に公共のために使うという意味で言えば,土地収用法,それから,先頃成立した,特別に利用権の設定をする特別措置法,それから,強制の契機は入らないので,ちょっと違うのですけれども,ただ,公共のために使うという点でいえば,前回議論した放棄について,地方公共団体を関与させるという話が出てきましたけれども,そういった制度との関係を整理する必要があるのではないか。そのバランスと言いますか,全体として整合的な制度になるようにということを考える必要があるだろうと思いますし,公共の安全という点で言えば,一般的な警察法のもろもろの制度,あるいは,この後でも少し書かれていますけれども,民法の相隣関係等の規定との関係を整理して,制度を組み立てる必要があるのではないかと思います。   非常に一般的な話で申し訳ございませんでしたが,以上です。 ○山野目部会長 地方公共団体を民法が定める不在者の財産の管理の標準的な規律として申立権者に追加することの是非については,一つ二つ悩ましい部分がございます。   一つは,地方公共団体を申立権者にするときの不在者財産管理の制度の制度趣旨との関係をどのように説明するかということは,考え方の整理を要します。   宇田川幹事のお話と山本幹事のお話を関連させて見ていきますと,地方公共団体は,自分の地域の中のある人が不在で,あのままいくと,あの人の財産が困ったことになる,住民の1人であるから見てあげたいというつもりで申し立てるのであれば,宇田川幹事が強調なさった従来の制度趣旨理解と,それほど衝突しません。   それに対し,不在者が置いていったあの土地が周りに影響を与えるから,地域の整備・開発・保全の観点からみると,土地政策的に問題であるという問題意識から申立てをするとすると,それは,この部会資料の19ページから後の,最後に出ている第3のところで取り上げている管理の制度だったら理解することができますが,他人の財産を管理する不在者の財産の管理のときに,地域の荒廃を防ぐという観点を入れるということは,いささか今までの議論を飛び出しているところがある,絶対いけないということにはならないと思いますが,いささか考え込むところがあります。   もう一つの悩みは,いずれにしても,法制上,民法に,地方公共団体の長が何かができるという部分が,今まではありません。ここを入れるとすると,成年後見のところも,もはや現場では相当な役割を果たしている市町村長申立てがなぜ入っていないかといったような議論も想像され,法制上のエレガントな説明の観点からも少し悩ましい問題があって,いずれにしても考え込まなければなりません。今,両幹事からおっしゃっていただいたことを中心に,また引き続き考えていくということになろうと思います。ありがとうございます。 ○水津幹事 地方公共団体については,一律に,不在者財産管理人の申立権を与えるのではなく,引き続き,不在者の財産の管理について法律上の利害関係を有する者に当たるかどうかを,個別の事案で判断することとすることで良いのではないでしょうか。  山野目部会長のおっしゃった法制上の問題をクリアするのは,難しいような気がします。また,所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法38条が挙げられていますが,同条は,あくまで,所有者不明土地につき,その適切な管理のため特に必要があると認めるときに,国の行政機関の長又は地方公共団体の長に申立権を与えたものです。そして,部会資料にあるように,その背後には,同法上,国及び地方公共団体は,所有者不明土地の利用の円滑化等に関する施策を実施する責務を負っている,という事情があるものと考えられます。そうだとすると,同条の規律は,一般化することができるものではないように思います。 ○松尾幹事 今問題になっている公共団体とは異なりますが,先ほどちょっと問題になり掛けた公共事業者については,事業用地が必要だけれども所有者が分からないというときには,不明裁決制度があって,そこでは収用委員会の審理もあり,価値が評価される手続がありますので,それとの整合性をどう考えるのかという問題は,確かにあると思います。   その一方で,大変興味深く思いましたのは,先ほど道垣内委員と橋本委員との間のやり取りの中で,特定の財産の取得を希望する者をどうするんだということについて,意見が交わされて,これは非常に興味深い問題だし,大事な問題だと思いました。   特に,不在者の財産が塩漬けになってしまっていて,登記名義も今では正確ではないし,どこにいるかも分からない,そういう土地は放っておいていいんだという考え方も一方にあると思うんですね。他方で,それを使いたいという人がいて,何とか連絡を取りたいんだけれども取れないという,こういう形で取引がスタックしてしまっているような状況について,何か制度を設けるのかどうかというのは,今回の現行制度の見直しの中では,非常に難しいけれども,避けて通れない問題で,余りに難し過ぎるので本当は踏み込みたくない問題かもしれませんが,やはりここは何らかの議論をしなければいけないのではないかと思われます。   特に,部会資料6の3ページから4ページに書いていただいている,民間事業者が何か開発しようとして,そこそこ何か有効利用できるのではないかというようなときに,制度としてどう対応するのかということが問題です。所有者不明土地利用円滑化法によって導入された,地域福利増進事業に特定所有者不明土地を使うときに,これは民間事業者でもよいということになっていて,ただ純粋に私的な利益ではなくて,地域福利増進事業だというところで,一種の公益に関わるということで,どうにか財産権の制約に対する正当化が図られていると考えられます。   したがって,所有者不明土地の管理人を選任するために,その土地が欲しいという人が申立権者になれるのかどうかについても,それだけだと問題である場合に,プラス・アルファの公益的な要素をどこまで要件化していけるのか,いくべきなのかということが,やはり問題としては重要ではないかと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   前回会議で今川委員からも御指摘のあった問題が,今議論が続いていますから,後で伺うことがありますけれども,中田委員,御発言お願いします。 ○中田委員 ちょっとずれますので,どうぞ今川委員の方から。 ○山野目部会長 今川委員が前回,買受け希望の者でも申し立てることができるという可能性は考えてみましょうとおっしゃって,道垣内委員と佐久間幹事の,その後沸騰した議論が続きましたが,可能性として考えてみようというお話であって,歯止めなしにあれを入れようという議論は,なかなか成り立ちにくいであろうと思いますけれども,御趣旨はそういうことだというふうに受け止めていいですか。 ○今川委員 あのときは前提をはっきりすることなしに申し上げたものですから。管理者を置かなければならないという,甲案,乙案でしたか,そういうものが前提となっていれば,置く義務があるんですから,誰が選任を申し立ててもいいということは言えるかもしれないという意味で申し上げました。   一般的には,買い受け希望者まで申し立てを認めると,結局は誰でもいいのかということになりますので,ここは制限していくべきだとは思っております。 ○山野目部会長 理解をしました。ありがとうございます。 ○中田委員 今,議論になっております申立権者の適格性の問題と,管理人の適格性の問題とは,一応区別した方がいいのではないかと思います。   両者は関連しているとは思いますし,ただいまの今川委員の御発言も,そういうことだったと思うんですが,管理人の適格性あるいは権限・義務については,大分前に宇田川幹事がおっしゃいましたように,不在者の利益の保護であるということを前提とすれば,そこは通しておくということが必要になると思います。   もしそこに別の要素を入れるとすると,委任管理人,不在者が置いていった管理人ですね,委任管理人との異質性が出てくることになるかもしれないのですけれども,多分そこは区別できないのではないかと思います。そうだとすると,特定の財産についての管理をさせるということになると,権限・義務を明確化していくことが必要になってくるだろうと思います。   それに関して二つ申し上げたいと思います。一つは,2ページに不在者の債務について,弁済権限を与えるかどうかが議論されているのですけれども,これは見方を変えて,金銭債権者は不在者の財産に対して何ができるのかということを考えていくと,管理人の権限を増やさなくても足りるのではないかと思います。例えば,差押えをするとか,あるいは売却した代金を差し押えるとか,詐害行為で取り消すとか,あるいは供託金に対して,何らかの方法で関わっていくことができるということになると,そこは大丈夫だろうと。   それから,もう一つ,3ページに,管理対象の追加について,管理人に申立権を与えるということも提案されて,検討課題になっているんですが,これはちょっと微妙なところで,管理人の権限や義務の範囲を,それによって広げることになりますので,そこをどう考えるのかということを検討する必要があろうかと思います。 ○山野目部会長 申立権者の議論が大切であるとともに,また,それと相互に関連するけれども,一応切り分けて,管理人のシルエットをきちんと考えましょうという御注意をいただき,それについては,部会資料のこの後,既に説明は差し上げていますけれども,5ページの一番下から始まる3の項目の問題であるとか,7ページの4の項目の問題であるとかが関係します。もちろんそれ以外にも,管理人のシルエットをめぐって,中田委員から御指摘いただいたような観点から考えなければいけない問題があろうと思います。   そのようなこともありますから,この3とか4の御検討をお願いしたいというふうには切望するものでありますけれども,ちょうど時間でしょうか。   この3と4の議論に入っていくと,かなりの延長になってしまいます。したがって,本日,部会資料の説明としては,第1のところの事務当局説明は差し上げていますけれども,委員,幹事の皆さんの御議論は,1と2について御意見を承ったという扱いにし,3から後は説明が済んでいることを前提として,皆様方の御意見を伺うということで,次回の進行を始めるということにいたします。   内容にわたる議事をここまでといたします。   この後,若干御報告や御案内がございます。   まず,ただいま開かれている会期の国会において,当部会に諮問されている事項との関連で重要な立法上の成果がありましたから,所管の村松幹事から報告があります。 ○村松幹事 御報告申し上げたいと思います。   今国会に,所有者不明土地の対策の一環ということで,ちょっと長い法律名になりますけれども,表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案というのを提出してございました。   こちらの法案につきましては,衆参それぞれ審議いただきまして,先週になりますけれども,5月17日に成立,法律になったということでございます。参議院で可決されて,成立したというところになってございます。   内容的には,所有者不明土地の中でも非常に特殊な発生要因に基づく土地ということになりますけれども,いわゆる表題部所有者欄に所有者の記載はある,逆に言いますと,もちろん,権利の登記が起きていない,そういう非常に特殊な状態の土地というのが,全国的にございまして,例えば表題部所有者欄に,普通であれば住所,氏名が書かれるべきところ,住所の記載がないといったものであるとか,字持ち地というふうに申しますけれども,地域名の記載,そういったような記載がされていて,人の名前が書かれていない。そういう非常に非正常な土地というものがございますけれども,そういった土地に関する特別な対策というものを,今回のこの部会での御審議いただいている全般的な検討とはちょっと別に,別枠で,これは対策を採らざるを得ないだろうということで法案を作ってございます。内容的には,登記官,それから所有者等探索委員というものが,所有者探索というものを個別に,一筆一筆行うという取組を基本といたします。   その上で,どうしても所有者がよく分からない,調べたけれども,100年近くおかしな状態のまま続いておりますので,結局資料も散逸している,所有者が分からないといった状態になった場合に,管理の特例ということで,今ちょうど,ずっと御議論いただいておりましたけれども,管理制度の特例というものも,今回の改正では入れてございます。   内容的には非常に,こういった特殊な土地を対象にしているというところで,かなり思い切った内容のものになっておりますけれども,今ちょうど御議論いただいておりました対物的なといいますか,スポット的なといいますか,そういった管理の対象というのは正に,調べたけれどもよく分からなかったと,そういった土地に関してだけ管理の対象にするというような,そういう内容になっております。   また,申立ての範囲は,今御議論ずっとありましたけれども,こちらについては,塩漬けにしないという制度趣旨を重視しまして,管理の希望が具体的にありますと,そういったものについては,申立てを認めるというような方向で,全体的に整理をし,また,国会でもそういった説明をさせていただいて,成案に至ったというところになります。   こちらについて,登記の探索部分については,6月以内に施行するということになっておりますので,今年中にはそういった探索に取り掛かるということになり,また,管理の部分,管理者の選任といった管理の部分については,これ,もうちょっと先に,準備の上で施行ということになっておりますし,また,探索が終わって,やったけれども分からないと,こういうことになりませんと,そういった管理の話は出てまいりません,これはちょっと先になっておりますが,いずれにしても,今年中に探索部分については,しっかり取り組んでいくということとされておりますので,御報告させていただきます。 ○山野目部会長 特殊な形態の所有者不明土地に限って,かつ,不動産登記の手続との関係に限局されたものではありますけれども,昨年来,法務省事務当局が念入りな検討の上に立案して,今回,国会で議了を見たものであります。決して出来の悪い法律ではありません。   次回,第4回会議の御案内を事務当局から差し上げます。 ○大谷幹事 本日も長時間ありがとうございました。   次回の日程は,6月11日の火曜日午後1時から午後6時までということで,この建物の15階,東京地検の1531号室というところになります。本日とはフロアが異なりますので御注意ください。   テーマといたしましては,財産管理制度の見直しの続きと相隣関係規定の見直しということになりますけれども,本日お配りいたしております資料6については,次回もお持ちいただければというふうに存じます。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いします。   第3回会議をお開きといたします。長時間お疲れさまでした。どうもありがとうございました。 -了-